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2012年7月9日 第9回「原爆体験者等健康意識調査報告書」等に関する検討会議事録

健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室

○日時

平成24年7月9日(月)13:30~15:30


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○議題

1.開会
2.議事
 (1)報告書(案)について
 (2)その他
3.閉会

○議事

○佐々木座長 こんにちは。それでは、定刻になりましたので、第9回「『原爆体験者等健康意識調査報告書』等に関する検討会」を開催させていただきます。
 初めに、本日の委員の出席状況について事務局から御報告をお願いいたします。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 本日の出席状況でございますが、伊豫委員から欠席との御連絡をいただいております。ただいま荒記委員の方が遅れておりますけれども、事後参加する予定と伺っております。
 以上となります。
○佐々木座長 それでは、議事に入ります。
 本検討会では、これまで8回、ワーキンググループを含めますと12回にわたりまして「原爆体験者等健康意識調査報告書」やそれに関連する事柄について検討・検証を行ってまいりました。精力的な御議論をいただき、前回は報告書(案)を御検討いただきました。その際、報告書の構成の問題や、よりわかりやすく注をつける等の御提案を多くいただき、再度検討の場を設けてはどうかということでありましたので、本日御参集をいただいております。
 本日は、これまでの修正内容を確認し、報告書をまとめたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 まずは事務局から資料の確認をお願いいたします。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 それでは、お手元の資料を御確認ください。
 本日の資料につきましては、資料1といたしまして「『原爆体験者等健康意識調査報告書』等に関する検討会報告書(案)」。
 参考資料といたしまして「床下のセシウムに関する調査の現状」。これは英語で書いておりますけれども、床下のセシウムに関する調査の現状ということで、第17回の広島国際シンポジウムの抄録の抜粋ということになっております。
 資料に不備がございましたら、事務局までお願い申し上げます。
 また、卓上に前回までの資料をつづった青いファイルを御用意しております。適宜御参照ください。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、早速報告書(案)の検討に入りたいと思います。
 まず、事務局から、報告書(案)について前回からの変更や修正の内容を中心に御説明をいただきたいと思います。お願いいたします。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 それでは、御説明に移らせていただきます。
 まず、資料1を皆様、お手元にお願いいたしたいと思います。資料1でございますけれども、大きな変更点といいますか、構成上の変更点といたしましては、最初「概要と検討経緯」ということで整理させていただいたものを「報告の概要」ということで1ページ~3ページまで、4ページ以降を「報告の詳細」ということで2部構成にさせていただきました。
 それでは、修正点、変更点について御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、1ページ目の2の「(1)『原爆体験者等健康意識調査報告書』に対する疫学的視点からの評価」ということで追記しております。こちらにつきましては、基本的に研究のデザインなどにつきまして概要にもしっかり盛り込んだ方がよろしいのではないかというような御意見を踏まえましてこのような形で挿入させていただいておりますが、これにつきましては「報告の詳細」のローマ数字2、6(2)において詳述をしているところでございます。
 続きまして、「(2)黒い雨を体験したと回答した者の健康状態」ということでございます。こちらにつきましては、「黒い雨を体験した」という言葉と「原爆の体験」という用語が混在しているのではないかという御指摘がありまして、それぞれについて説明を加えた方がよろしいということがございましたので、1ページの下の段でございますけれども、注の2ということで追加をさせていただいております。
 済みません、追加でございますけれども、2の(1)のところにも注をつけさせていただいております。こちらの方でございますけれども、「本検討会において、調査報告に携わった者から広島市等が行った調査は横断的な調査であることから、疾病の有病率等に関する正確な評価は困難である等と報告をされた」という記載がございます。ここの部分について少し表現がわかりにくいのではないかということでございましたので、それにつきましても1ということで「横断的な調査では、罹患率は計算できず、有病率上昇有無の正確な評価は困難となる」というような注をつけさせていただいております。
 2ページ目になります。2ページ目の部分でございますけれども、こちらにつきまして(2)からの続きになるのですけれども、(3)の4行くらい上のところから「精神的影響については、これまでの科学的知見から放射線の直接影響による場合は致死的な照射量が必要であり」というようなことを追加させていただいております。
 2ページ目の一番上のところに「また、黒い雨の体験率により高体験率地域と低体験率地域を区分して比較した」というような記載ぶりがあるのですけれども、体験率の解釈について注をつけました。それが2ページ目の下の注にあります3でございます。「黒い雨の体験率については、地域別の比較をするための客観的な指標としてワーキンググループにおいて検討、算出したものであり、その高低により地域指定をするための指標として算出したものではない」という注をつけさせていただいております。
 続きまして、2ページの「(4)要望地域における広島原爆由来の残留放射線等の程度」ということで、ここに5という注をつけさせていただいております。これにつきましては原子爆弾の放射線の種類にどのようなものがあるのか、この辺りについて少し解説を加えさせていただいております。注の5となります。「原子爆弾により生じる放射線の種類には、初期放射線と残留放射線に分けられる。初期放射線は爆心からの距離と共に急激に減衰し、広島においては爆心地から1kmでは約4500ミリグレイとなるが、2.5kmでは十数ミリグレイ程度。残留放射線については、誘導放射線によるものと放射性降下物によるものが考えられる。誘導放射線は初期放射線のうち、中性子が地面や建物に当たり、それらの物質を放射化したものからの放射線である。爆心地からの距離や時間と共に急激に減衰し、広島においては原爆投下後1日後に爆心地からの1.5kmの地点に無限時間居つづけた場合で約0.1ミリグレイと推計される」というようなことを追記させていただいております。
 更に2ページ目の(4)の3行目のところに「内部被ばく」という言葉が出ております。この「内部被ばく」という言葉について解説を加えさせていただいているのが2ページ目の一番下でございます。「内部被ばく:放射性物質の吸入や飲食による体内取り込みにともなう被ばく」ということで注をつけさせていただいております。
 3ページ目でございます。これはまた追って後ろの方で出てくるのでございますけれども、上から2行目以下でございます。床下から出たセシウムの値における記述でございます。これにつきまして追記をさせていただいたところでございます。
 次の「3 結論」のところでございます。こちらの方の2行目でございますけれども、「その原因は黒い雨が含む放射能による放射線被ばくへの不安や心配によるものと説明できると考えられた」、これにつきましては黒い雨の放射線によるという直接的なかかり方について表現に注意が必要だということで、黒い雨が含む放射能による放射線被曝への不安によるものと説明できるという形で少し追加しております。
 更にその2行下のところのなお書きでございますが、「精神的な評価指標の悪化については、地域に依拠しているのではなく、むしろ、個々人が黒い雨を体験したことを記憶していたかどうかに依拠しているものと考えられる」という部分を前回の御議論を踏まえて追記しております。
 最後のくだりの部分ですが、ここは「また、現時点で、要望地域において広島原爆由来の放射性降下物が存在したとする明確な根拠が見いだせず、先行研究からも放射線の影響による不安が生じるとは考えられない。これらより、調査結果は、要望地域において広島原爆由来放射線による健康影響の合理的根拠とはならない」、こちらにつきましては前回の表現から先行研究の例も踏まえまして記載ぶりを改めております。
 続きまして、4ページ目以降でございます。4ページ目につきましては、見出しに「報告の詳細」というものをつけさせていただいた以外、特に変更ございません。
 5ページにつきましても特に変更はございません。
 6ページ目でございます。一番下の方に「ワーキンググループの報告概要」ということで書いてございました。こちらについては「(1)ワーキンググループ参集者」「(2)ワーキンググループにおける検討内容」ということで、(1)と(2)が逆の構成となっておりましたが、こうした方が見やすいだろうという御意見がありましたので、反映しております。
 続きまして、7ページ目をごらんください。(3)に解析結果の限界ということで、ワーキンググループにおける限界点などの列挙がございます。上から4番目でございます。「黒い雨の体験などの調査項目は、原爆投下後60年以上経過しての調査であり、リコールバイアスの存在を念頭において結果を解釈する必要があると考えられた」、このリコールバイアスについて注の7として下につけております。
 「(4)検証結果」ということでございます。こちらがいわゆるワーキンググループでの検証の結果に入るわけでございますけれども、前回の議論の中で、ワーキンググループにおいてどのようなデータを用いて、どのような手法を用いたのか、その対象者数は何かという御指摘がございました。これらについてすべて盛り込むのがなかなかボリューム的に多かったので、ワーキンググループ報告書での該当部位についてこちらに追記させていただいております。それが7ページの(4)の4行でございます。
 続きまして、8ページ目でございます。8ページ目は、ワーキングで解析されました内容について、マル1、2、3、ということで主に3本柱が立っております。これらの検証結果のまとめにつきまして、どこから引用したのかを明確にするために、例えばマル1の部分ですと「ワーキンググループの報告ローマ数字2、4(1)マル1及びマル2の検証結果より」ですとか、マル2の部分であれば「ワーキンググループの報告ローマ数字2、4(1)マル1及び2の検証結果より」ですとか、そういった形で反映しております。マル3につきましても同様に反映しております。
 また、8ページの「マル3黒い雨の地理分布について」ですが、「黒い雨の降雨域については、広島市等から提出された『原爆体験者等健康意識調査報告書』においては、原子爆弾災害調査報告書に示されている分布より、広い分布が示された」というその根拠がどういうものに基づいているのか、9ということで注をつけさせていただきました。「『原爆体験者等健康意識調査報告書』は、約3万人の回答(有効回答率74.1%)を基本としている。このうち、黒い雨の体験状況の解析に用いられた数は、1565人と報告されている」ということで記載を注記しております。
 続きまして、9ページでございます。6(1)マル1の辺りに過去の気象学者の方による報告が2つ出ております。これらについて出典を明示すべきということがございましたので、注で宇田先生の部分は10、増田先生の部分については11ということで、それぞれ引用させていただいたところでございます。
 続きまして、10ページ目をごらんください。10ページ目につきましては、「(2)要望地域における健康影響について」というところでございます。こちらは冒頭で御紹介をいたしました部分で、済みません、1ページ目に戻ると、2(1)の概要に注記しました部分の詳細がここに該当するわけでございます。この中で横断調査なので疾病の有病率等に関する正確な評価が困難だという辺りについて少しわかりにくいというようなことがございましたので、1ページ目では注をつけましたけれども、こちらの方では更に詳しく議論のやりとりですとかを注記しております。「(2)要望地域における健康影響について」の2段落目の3行目からになります。「本検討会において、調査報告に携わった者から、広島市等が行った調査は横断的な調査であることから、疾病の有病率等に関する正確な評価は困難である等と報告された。また、この問題を巡って、これらの調査は自己申告による一時点での受療の有無を尋ねた疾病の有無でしかないこと、正確性の問題(診断について医師等の担保がされていないこと)、過去の疾病への罹患を評価しないものであること、疾病の罹患が増加したか正確な評価は困難である旨の議論があり、調査報告に携わった者から今回のデータは参考値であると報告された。また、現在、病院等で受けている病気について、糖尿病と甲状腺機能低下症などを一緒に一つの項目として聞いている点について、調査報告に携わった者から、個々の疾患と被爆あるいは黒い雨との関係を医学的な因果関係までいうものではないと報告されるなど、放射線による身体疾患の影響をとらえるよう十分に設計されていないと考えられる」という部分を追加しております。
 続きまして、11ページ目でございます。こちらにつきましては下に(3)があるのですけれども、その6行くらい上に「ワーキンググループの報告を受け、検討会において議論を行った」という記載がございます。ここら辺は科学的知見として、例えば40グレイを超える線量があった場合に頭の方に影響が出るとか、あとは50%の致死率に上るのは3グレイ程度というような表現ぶりにしていたのですけれども、いろいろと文献を参照するともう少し幅を持たせた方がいいというような御意見もございましたので、「約40グレイ」ですとか「3~5グレイ」ということで記載を改めさせていただいております。
 11ページ目の(3)の「マル1過去に行政により行われた検討」ということで、ここは昭和51年、53年の報告ですとか、12ページに行きますけれども、平成3年に広島市等が行った報告について記載がございます。これにつきまして前回質問がございました。これらについてどのような形で周知しているのか、みんなの手元に入るのかというようなことがございました。これについてお答えさせていただきます。報告書には記載しておりませんけれども、昭和51年と昭和53年の調査は厚生省が委託を行って調査を行ったもので、これは報告書を厚生省の方で受けておりますけれども、例えばどこかで売っているとか、すぐ手に入るというような状況にはございません。また、平成3年に行われました広島県・市の設置の専門家会議でございますけれども、これも同様の状況でございます。ただし、こうした報告がなされた際にどのような周知が行われたのかを調べてみたのですけれども、なかなか手がございませんでした。しかしながら、新聞記事などを見ると、記者会見を行ったというようなこともございます。なお、昭和51年、53年、平成3年の調査の内容につきましては、今回の第1回の検討会で資料として提示しておりますので、現在だれでもホームページで閲覧することはできる状況にございます。現在はそういう形になっておりますことを御報告させていただきます。
 12ページに移っていただきまして、マル2の辺りがいわゆる床下から出ましたグローバルフォールアウトの現状ですとか、床下のセシウムの現状等についての記載でございます。ここにつきましてまずマル2のところでございますけれども、マル2の4行目辺りからでございます。基本的に日本の土壌にはどれだけのグローバルフォールアウトがあるのかというのが1行目、2行目、3行目でございまして、そこに広島で確認されたセシウムの調査報告を引用させていただいております。更にこれらの床下のセシウムについてですけれども、広島原爆由来かグローバルフォールアウトか検討が行われているということで終わっていたのですけれども、最近2012年1月にシンポジウムがございまして、本日の参考資料につけさせていただきました資料のような報告がございましたところを追加しております。マル3の上4行くらいでございますけれども、「最近では2012年1月に第17回広島国際シンポジウムにおいて報告があった。これによれば、最大で見積もって上記広島における値の約5%の広島原爆由来のセシウム137の推定がなされたが、仮定を重ねた上での推定にすぎず、相当の誤差も存在するなど、現時点では広島原爆由来のセシウム137が同定されたことを示すものではない」という部分を追加させていただいております。
 それから、マル3のところでございますけれども、広島原爆に伴う研究の現状についてということで、第2回の検討会で議論した内容でございます。ここにおきまして4行目のところで、「この地区に常時滞在した場合の累積被ばく線量は概ね10から30ミリグレイとされている」という記載ぶりがございます。これにつきまして10~30ミリグレイと確認されたインパクトはどういうものなのかきちんと説明すべきだという御指摘がございましたので、注の13ということで注記をさせていただいております。「常時滞在した場合の累積被ばく線量とは、生涯そこに留まったと仮定した場合の被ばく線量の総計である。なお、国際的な知見としては放射線によるがんの発生リスクは100~200ミリグレイ未満において統計学的には有意ではない」というような報告がなされているという注をつけております。
 更に「原爆投下直後に仁科氏」ということで裸で個人のお名前が使われておりましたので、所属とフルネームを反映させていただいたというのが変更点でございます。
 続きまして、13ページ目でございます。13ページ目の部分につきまして、「7 結論」の5行上でございます。「今中哲二氏の推計によれば」ということで、こちらも記載がベクレルとミリグレイが混在して、最大見積もり量ですとか最小見積もり量が明確でないというような御指摘がありましたので、少なく見積もってこれくらい、多く見積もってこれくらいという形で記載ぶりを変更させていただいております。
 13ページの「7 結論」の(1)のところでございます。まず「7 結論」でございましたけれども、前回は文章がずっとつながって、どこの部分に何が書いてあるのか明確ではないというようなところがございましたので、こうした形で(1)(2)、次のページの(3)ということで小見出しをつけさせていただいたところでございます。
 更に(1)につきまして、5行目~6行目の辺り、「精神的な評価指標の悪化」とは一体何を指しているのか、一体どういうものを指しているのかという辺りがわかりづらいという御指摘がありましたので、「主に精神的な評価指標(神経過敏に感じたか、絶望的だと感じたか、そわそわ落ち着かなく感じたか等の精神的な自覚症状)」という注をつけさせていただいております。
 下のところに注の14という形で注をつけさせていただいております。ここは13ページの上から4行目のところに「積算空間線量」というちょっと特殊な難しい言葉が出ておりましたので、これについて注をつけさせていただいております。今中哲二氏の推計で積算空間線量という言葉が使われていますけれども、これはどういうことかといますと、ここに書いてありますように「黒い雨とともに地表沈着した放射能による、平均的な外部被ばく量。なお、人の被ばく量を求めるには、建物の遮蔽効果、屋外・屋内の滞在割合、人体そのものでの減衰効果などを更に考慮する必要がある」というような報告がなされているようなものでございます。
 最後のページの方になります。主な変更点はございませんけれども、「付記」のところに不安軽減の相談などの取組みが有用である可能性を御指摘いただいているのですけれども、現状において何か自治体の方なり国の方でこうしたものに対して対策をとっているのかどうかというお尋ねがございました。結論から申し上げますと、現状こういう要望もあるわけで、こういう人たちに対する相談事業はやっておりませんで、今は原爆被爆者相談事業ということで、広島県、長崎県、広島市等にやっていただいております。原子爆弾の傷害作用により今なお特別な状態にある原子爆弾被爆者に対して適切な助言、指導を行い、原子爆弾被爆者の健康の保持及び福祉の向上を図ることとしておりまして、基本的には御相談の事業を被爆者の方々、皆様に対してやっているというようなものでございます。
 事務局からの説明は以上となります。御審議をお願いいたします。
○佐々木座長 どうもありがとうございました。
 今、御説明がありましたように、前回多数の御意見をいただきましたので、それを極力取り入れつつ、またできるだけわかりやすいものにしようということで、やや専門的な表現については注釈をつけるなどしてわかりやすくする努力をいたしました。また、その後、委員の方々から多数の御意見をいただいております。そういうものを取り込んで今回の報告書(案)ができております。全体の整合性、統一等、私も注意したつもりでございますが、まだまだ不十分でございまして、例えば言葉の使い方の不統一などもあろうかと思います。ただいまの御説明を受けて、全体的なこと、構成の問題、表現の問題あるいは細かい言葉の使い方等も含めて御意見を賜りたいと思います。御自由に御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 言葉の不統一もあるのですが、米原委員、よろしいですか。お願いいたします。
○米原委員 説明いただいた2ページの(4)のタイトルのところに「残量放射線等」とあります。この残留放射線という言葉は多分残留放射能ができて、そこから出てくる放射線という意味で使われていると思うので、完全な間違いではないと思うのですが、その後ろの方で4ページの下から4行目に出てくるタイトルのところは「残留放射能」という言葉になっておりまして、これは同じものを指すものであると思うので、統一するとすれば、やはり放射線は残留するものではないので、放射能が残留しているという意味合いから残留放射能の方がいいのではないかと思います。残留放射線という言葉は下の脚注のところにも出てきますので、すべて残留放射線のところは残留放射能の方がいいのではないかと思います。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 事務局、よろしいでしょうか。私もこれは残留放射能という言葉に統一した方がいいのではないかと思いますので、そのように変更させていただきたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、お願いします。
○川上委員 私も一度拝見しておきながら少しうっかりしていました。1ページ目に「横断的な調査では、罹患率は計算できず、有病率上昇有無の正確な評価は困難となる」という脚注がついているのですが、この脚注の意味は、罹患率が計算できないので、ある要因と疾患リスク上昇との正確な評価は困難となるという意味だったのか、それとも罹患率が計算できない上に、かつ今回の調査では受診しか聞いていないので有病率の評価は無理だったというという意味か、どちらが近かったですか。ちょっと私自身は混乱しているのです。
○佐々木座長 事務局の方からどういう意図か。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 ここの1の表現につきましては、実際検討会の方で調査に携わった方からの記述を抜粋してきたものなのですけれども、これではわかりにくいというようなことで第8回の検討会のときに議論がなされて、その際に確かに有病率などもわからないし、そのほかにも例えば自己申告であるところの問題点ですとか、アンケート調査の限界などもいろいろと出てきたのですけれども、端的にここでは有病率の上昇有無の正確な評価は困難だという発言者の発言をそのまま持ってきております。
○外山健康局長 ですから、両方の意味で記載しているので、そこのところはもうちょっとはっきり書いた方がいいかもしれません。
○川上委員 でしたら、「罹患率は計算できず」は正しいと思いますので、その後「調査設計上、有病率の正確な評価も困難である」とかいうような書き方の方がよいかもしれないと思いました。済みません、ここでは、1番は横断的な調査、一般論を話していらっしゃるのですね。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 申し訳ございません。そうです、こちらは概要でしたので、有病率のみの話だけ書いてしまっているのですが、「ローマ数字2、6(2)において詳述」という10ページのところの、先ほど追記しましたという辺り、全体からして疾患の状態を評価するのはなかなか難しいということでやっている、いろいろとこちらの方に議論の内容を書かせていただいているのですけれども、概要の方に引用してあるのは、横断的な調査では有病率しか出なくて、有病率だと疾患が増えた減ったというような正確な評価は難しいですねという部分の説明だけこちらの方に書いてしまっています。そんな状況です。
○佐々木座長 どうぞ、荒記委員。
○荒記委員 この件ですが、横断調査あるいは疫学上の横断的研究は因果関係を決める基本的な方法論の1つなのです。ですから、この方法ではここで書いてあることの有病率の正確な評価はできないと思います。だけれども、ここで書いてあるのは有病率の上昇です。要するに上昇という意味は、ある特定の集団、今回みたいに黒い雨を体験したと記憶した集団、この人たちが黒い雨を体験していないと答えた集団と比べて有病率が高かったのかは全く正確にできるわけです。そのためにこういう解析法が、疫学的な方法論としてあるわけです。ですから、ここで有病率上昇と書いてあれば、正確な評価がむしろできると、評価困難ではないと思うのです。ただ、ここで単に有病率の正確な評価は困難、要するに上昇という字句を除いてしまってあれば、これは恐らく一般的には無理だと思います。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 今のお話は有病率上昇の上昇はない方が。
○荒記委員 上昇というよりは増加とかいう意味です、上昇という意味は。これは疫学的方法の横断的な研究で非常に重要であり、一番使いやすい方法論ですから、それなりに正確な結果が出せるようなデザインが組まれるわけです。有病率が上がっているかどうか、これが今回の目的なわけだと思うのです。
○佐々木座長 経時的なことをやらなければ、縦断的なことをやらなければ上昇とか減少がわからないという話ですか。そういう意味ではないですか。
○荒記委員 そうではない、横断的な研究自体で評価ができるということです。ここではできないと書いてありますが、できるということです。
○佐々木座長 そうすると上昇は取った方がいいと。
○荒記委員 穏やかに書くならそういうことです。
○佐々木座長 川上委員、どういたしましょう。
○川上委員 1つの案は荒記先生が言われたことを踏まえて、「横断的な調査では、罹患率は計算できず、有病率増加の正確な評価は困難となる」というふうにすると理解しやすいかなとは思います。
○荒記委員 いや、「有病率増加の正確な評価は困難となる」といったら、私は異論があります。そうではなく、逆です。
○川上委員 難しいですね。私の提案は、1ページの1は「罹患率は計算できず、要因と疾病リスクとの関係の正確な評価は困難となる」の方がすっきりはしている気がします。
○荒記委員 それは余りあいまい過ぎて、もしくはそうだとすれば横断的な調査をここで持ち出す意味がなくなってくる。
○川上委員 そうですね、ただ罹患率が計算できないと因果関係の証明は難しいので。
○荒記委員 いや、それは確率レベルの問題ですから。疫学的な方法は統計的な危険率5%で結論を出すわけですから、あるレベルで本当かどうか、増加するしないの問題があるのです。だからこの辺の問題は疫学的方法だと、それを前提としてこういう一般的な現場のデータから、あるいは患者のデータから正確な結論を出すことに使うので、これ自体は非常に有効な方法だということになっているのです。その有効な方法の1つが横断的な研究であって、これは確かにコホートスタディで経時的に見ていくことと比べれば結論は比較的弱くなりますが、だけれどもそうかといってこの横断的研究をやったから全く結論を出せないのだと言ってしまったら、これは疫学の方法論全体を否定することになります。ですから、横断的な研究で有病率が増加したかどうか、しているかどうかは言えます。ここは逆にできないと書いてあります。
○川上委員 罹患率が計算できないのは確かだと思います。
○荒記委員 だけれども、横断研究で増加は判定できる、結論を出せる。有病率が増加しているかどうかで。
○佐々木座長 柴田委員。
○柴田委員 今の議論で先生がおっしゃる増加しているかどうかというのは、2群の比較をしたときに、ある群が別の群に対して有病率が高いかどうかという意味ですね。有病率自体はいいのですよ。前回私がお話ししたのは、横断的な研究で計算できないのは罹患率だということです。
○荒記委員 そこだけにとどめているのならいいのです。ただ、ここで有病率の問題まで持ち出してしまって、しかもそれを否定していますから、それだと問題だと思います。
○佐々木座長 川上委員。
○川上委員 やはり罹患率が計算できる場合と有病率だけの場合とクオリティにかなり差が出てきてしまいますので、そのニュアンスをここに入れておいたらどうかなと思うのです。そういう意味では「罹患率は計算できず、正確な評価は困難となる」くらいの表現ではだめでしょうか。
○荒記委員 それには私は完全に異論があります。何のために疫学的な方法があって、しかも横断的にやられた研究が超一流の欧米の雑誌にも採用されているのか。それを正確でないと全部否定することになります。それはちょっと。
○川上委員 ただ、有病率は死亡率とか、あるいは治癒率とかにも影響を受けるので、そういう意味で少しクオリティが下がってしまうのは確かなので、そういうものを少し入れておいたらと思いますが、表現が難しいですね。
○佐々木座長 わかりました。ここは御議論を踏まえて表現の仕方をもう少し御相談をして、適切な表現にしたいと思います。この注釈をつけること自体はよろしいですね。
○荒記委員 それは構いません。
○佐々木座長 柴田委員、お願いします。
○柴田委員 本文の書き方次第では注釈が要らなくなるかもしれません。
○佐々木座長 そこは表現の問題としてもう少し検討させていただきます。
 どうぞ、金委員。
○金委員 荒記先生に教えていただきたいのですが、横断研究一般は非常にクオリティの高いものもあるというお話でしたけれども、今回の広島市が行われた横断研究は有病率を算出するのに十分だというふうには私たちは今まで認識がなかったと思うのです。
○荒記委員 それならいいのです、ワーキンググループからの報告はそういうことをちゃんと具体的に書いてくださいと私はこの間申し上げた。
○金委員 今回の広島市の行われた横断研究は、例えば対照群の設定に不十分なところがあるとか、そういう解釈でよろしいですか。
○荒記委員 それはいいのです。だけれども、この部分はそれをもって横断的な研究は意味がないのだ、結論を出せないのだという書き方なのです。それはとんでもないと思います。
○佐々木座長 わかりました。ありがとうございました。ここのところの表現については後ほどまた御相談しながら適切な表現にしたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 リコールバイアスの説明も入れていただいておりますが、この点は柴田委員、何か追加のコメントなどありますでしょうか。
○柴田委員 リコールバイアスの説明は7ページの脚注に書いてありますけれども、一般論としてはこういうことで、もともとはここに書いていますように症例対照研究と言われるものでリスクファクターを探すときに、症例の方がどうしても一所懸命思い出そうとするので頻度に差が出てくる可能性があるのだと。これをもう少し一般的な使い方でいうと、我々が分析した事例でいえば、例えば被爆者の方について戦後日米合同調査団がありまして、そこでいわゆる急性症状を調べた。長崎のデータしか我々は分析していないのですけれども、そこで日米合同調査団のときには、例えば脱毛があったという人はある割合だった。日米合同調査団の調査が行われたときはまだ被爆者援護法も何もない。その後、昭和60年ごろだと思いますけれども、いわゆる被爆者手帳の申請をするというときに、長崎市の方では当時の急性症状を書いてくださいということで、そういうデータがあるわけです。たまたま我々は両方の調査、つまり日米合同調査団の調査を受けた人の中で申請をした人、そういうグループを見つけて、どういうふうに変わっているか、要するに何十年も経ったときに記憶がどうなるかという観点で少し調査をしております。そうすると、例えば脱毛でいうと、日米合同調査団のときには、12%くらいが脱毛があったと回答していたのに、申請時になるとほぼ倍くらいになる。それは一所懸命何とかというふうな、いろいろなファクターが働いてきてバイアスが生まれるのではないか。そういうことがありますから、ここはその辺に関係していると考えています。
○佐々木座長 よろしいでしょうか。
 この辺も疫学調査をするときに、こういったことを十分に考慮しながら設問をしたり、あるいはデータ解析をしなければいけないということであって、だから質問に答える方がうそをついているとか、そういう意味ではないということでございますね。
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、荒記委員。
○荒記委員 確認なのですが、更に大事な結論のところなのですが、13ページの「7 結論」の「(1)黒い雨を体験したと回答した者の健康状態」で、ここに書いてある本文中の「広島市等」から始まった5行目の「主に精神的な評価指標の悪化が見られ、この原因は黒い雨の体験そのものではなく、放射線による健康障害に対する不安等の要因により説明されると考えられた」というこれはかなり断定的な結論なのです。確認なのですが、こういうふうに言うためには、いわゆる疫学的なコンファウンダーの検討が必要です。要するにここでいえば精神的な評価指標が悪くなった、例えば神経過敏になったとか、絶望的になったとか、そわそわ落ち着かなくなったということが放射線による不安等の要因、要するに放射線関係の不安が原因だというふうな断定的な結論として良いかの問題です。これが合っていればそのとおりでいいのですが、普通はこういうような精神症状、神経過敏とか、絶望的だとか、落ち着かないとか、これは過去の、それこそ大昔の、しかも思い出した黒い雨の体験によるよりも日常の普通の生活で起こってくる原因によるものです。だれだってふだんの生活で神経過敏になったり、絶望的になったりしているわけで、そちらの方の原因が普通は強いのです。だけれども、ここではそうではなくて放射線に対する不安が原因だというのですから、だとすれば精神的指標が悪くなったということに対して、疫学的な研究デザインとしてコンファウンダーである今言った日常生活が原因ではないということを否定できているかが問題になります。できていると思うのですが、それを確認したいのです。
 というのは、放射線による健康障害だというためにはコンファウンダーを否定すると、普通はいわゆる多変量解析をやらないとこの結論は出せないのです。今回は黒い雨体験を思い出したグループと思い出さなかったグループの比較で結論を出しているわけです。黒い雨の体験を思い出した人の方がこういう不安とか神経過敏が多かったからこういう結果が出てきたのですけれども、先ほど言いましたふだんの生活で起こっているいろいろな不安、それは両方のグループで一応コントロールして、それらの影響はないのだという結果が必要です。そのために多変量解析が必要なのですが、そういう解析はやられているのでしょうね。これはワーキンググループに聞きたいです。
○佐々木座長 川上委員。
○川上委員 今、資料を見て確認しようと思って途中なのですけれども、結論というのか、こういう可能性があるということをワーキンググループの方から報告をしましたのは、主に黒い雨を体験された方としない方を比較して精神的な健康指標に差があるということを見た上で、幾つかのデモグラフィックスを調整した後で放射線に対する不安という項目を投入するとほとんど差がなくなるという現象からそのように推定しています。これにこれ以外の生活の不安を投入したかと言われると、ちょっと私は記憶になくて、そこまでの解析はしていないなというのが現状です。
○荒記委員 そうすると一番重要なコンファウンダーの影響を除外できていないということになってしまいますが、それでいいのですか。
○川上委員 このケースでは放射線による不安を入れると関連性がなくなるので、放射線による不安で十分説明できるのではないかという形でとどまっていると思います。
○荒記委員 そうすると疫学的な結論を出す場合の基本、少なくとも分析疫学の基本であるコンファウンダーの影響を除いて結論を出すという原則に反してしまって、もしこの文章を疫学の専門家が読めば、そんな結論は出せないということになりかねないと思います。だからその辺が大丈夫ならいいのですが、本文中どう書いてあるかに尽きるのです。今、川上委員がおっしゃった放射線の影響を投入したという、投入してどうやったかという解析を私は今すぐわからないのですが、どういった解析方法を。
○川上委員 ワーキンググループの報告書に詳細に書いてあります。
○荒記委員 その方法が日常生活のイベントで起こる不安とか神経過敏を除いてあるのならいいのです。除けていないなら問題です。
○川上委員 ちょっと確認させてください。恐らく幾つかの生活上のコンファウンダーを投入したという記憶があるものですから、ちょっと探させていただいていいでしょうか。
○荒記委員 私もあったように思うのですが、ただ、今は最後の段階ですから、それを追及された場合にやっていないと大変なことになってしまいます。今回の報告書の結論そのものが全部でたらめだということになりかねないですから、一応確認したいと思います。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 柴田委員、御発言はありますか。
○柴田委員 ここの文章が少し不適切なのかもしれません。広島市の報告書がファイルの中に入っていますが、そこの資料というところに広島市の調査の質問が全部書かれています。
○佐々木座長 資料の幾つになりますか。
○柴田委員 済みません、参考資料の7、後ろの方です。そこの資料というところです。下に通しのページがついていますけれども、32ページからが調査の調査票です。その中で2次の調査だったと思うのですけれども、46ページの問6ですか、そこの2以下のところで、実際に影響があったかどうかというよりは、自分が放射線の影響でこういうふうになっていると思うかどうかという聞き方をしています。
○荒記委員 それだけで終わってしまうと完全に誘導尋問ですよ。
○柴田委員 だけれども、質問紙はこうなっているのです。たしかこういうものを入れたらこれで説明できたというような話だったような気もするのですけれども、川上先生、違いますか。
○川上委員 おっしゃるとおりです。今の解析結果はそういう形のものです。
○柴田委員 これは佐藤先生がやられたので、たしか2次面接のときの解析結果だと思います。
○荒記委員 でも、それですと広島市の調査でそういう方法を使われ、そういう結果を出された。それはそれでいいのです。ただ、今回ここの結論の部分で書いてあるのは、この検討会の結論なわけでしょう。そうするとこの検討会でそのとおり認めるかどうか、やはりこちらで考えなくてはいかぬわけです。
○柴田委員 だからこの書き方はまずい。
○荒記委員 だったらまずいと思います。ですから、その辺を私は確認したいと思います。
○柴田委員 広島の調査を追認しているような感じになってしまうからでしょう。だから広島の調査はこういう問題があったのだということを指摘すればいい。
○荒記委員 それは当然書かなければいかぬ。そうすると今回の報告書の結論は変わってしまうわけでしょう。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 今、大変大切な御指摘をいただいておりますので、そこのところの表現をどうするかということについては、ワーキンググループの川上委員を中心としてまたお考えいただいた方がいいと思いますので、事務局、ちょっと覚えておいてください。
 どうぞ。
○松岡総務課長 今の点については報告の大事な部分でもございますので、少し御議論いただいて、ここで方向をはっきりさせていただいた方がいいと思います。
○佐々木座長 もう少し議論してはっきりさせろというお話なのですが、川上委員、何かわかりましたか。
○川上委員 先生方に御検討いただいて、どのような方向性にするかということをお考えいただけたらと思いますが、まず事実ですけれども、荒記先生が御指摘のあったような日常生活のほかのストレス要因などを調整しているかというと、調査設計というか、調査票自体にそういう項目がありませんので、調整ができていません。収入や介護状況、あるいは日常生活をできるかどうかということは調整をしておりますけれども、例えば放射線に対する不安とお金に対する不安とどちらが強かったのかみたいな検討はできていないので、厳密にどちらが強いかということについては明らかにできてはないとは思います。
 個人的にはかなり黒い雨体験から起きてくる精神健康の悪化への1つの流れとしてはリーズナブルな形ではないかと思いますけれども、ほかの可能性がないかと言われると確かに可能性は残ると思いますので、その点はちょっと留保した書き方にした方がいいかなとは私自身も思います。
 ただ、もう一点申し上げておきたいのは、ワーキンググループでやった解析はこれだけではありませんので、地域別に分けて黒い雨体験率の高いところと低いところで健康影響が違うかということについてはもう十分検討していますので、これだけで決して報告書全体がひっくり返ることはまずないだろうと私自身は思っています。
 ただ、この解釈、つまり黒い雨を体験した方で精神的に不調が多かったのは、放射線に対する健康不安で全部説明ができるかどうかというと、ここで決め打ちをしてしまって次の施策に進むというほどの強い根拠ではないかもしれない。1つの大きな仮説だとは感じます。
○荒記委員 ですから、少なくとも今、柴田先生がおっしゃったように、このままの表現でこの結論を出すということは、後々専門家からとんでもない追及をされかねないと思うわけです。ですから、その辺は広島市の報告がそうであったならそうで、ここの結論はその辺はまだ結論を出せないという、何らか表現はある程度和らげて書かないと、これは大変なことになりかねないと思います。どこでどういう専門家が見ているかわからないです。しかも、今回この委員会全体がいろいろな面で追及されているわけです。これは当然の話なのですが、少なくともここは疫学的な検討会と聞いていますので、疫学的に絶対追及されないような表現にしておかないと危ないと思うのです。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 関連して、今日の資料のワーキンググループの報告書があります。その23ページの2つ目はそれに関連しておりますでしょうか。読みますと、「更に原爆に関連する体験等(自身や家族の原爆による体験や放射線による健康影響への不安等で調整すると、有意性が低下したり消失したりする。中でも、放射線の健康影響に関する心配や不安を尋ねた問10の影響が大きかったことから、放射線の影響による病気の心配や放射線のせいではないかとの不安が、黒い雨体験群の精神的健康状態が悪いことを説明する要因となっていると思われる」。これと関連ありますか。
○川上委員 今、読んでいただいた部分が先ほど議論になったパートの部分の根拠になっている資料だと思います。
○佐々木座長 荒記委員が言われているのは、これではちょっと不十分であるという。
○荒記委員 いや少なくとも日常のライフイベントで起こるいろいろな不安とか自覚症状、その影響を除外しコントロールした上での結論になっていないので、これは本当に危ない、十分でないのです。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 事務局から補足させていただきます。
 今の点ですけれども、実際今回の広島市さんが行われた調査については、確かにデータの限界があるということでワーキンググループで議論をされております。その限界という前提を置いた上で、こういう形になったと事務局としては理解しておりまして、例えば「データの限界について」という辺りは、より詳細にはワーキンググループの報告書の21ページ、皆様のお手元の資料の21ページの辺りに「データの限界について」という記載が述べられているわけでございます。
 この中でずっと21ページの真ん中から22ページにわたっていくのですけれども、22ページの上から3つ目のところに「生活状況やADL等、指標とする尺度に影響を与える可能性がある項目について、回答者の負担との兼ね合い等から、十分なデータが取られていないことがあった」というような記載がございますので、そういう限界を踏まえた上でワーキングループにおける解析を行ったというような流れになっております。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 いずれにしても今のようなお話がコンパクトな言い方の中で、結論の中で誤解を招かないような説明の入った言い方にしなければいけないということだと思います。
 金委員。
○金委員 荒記委員が取り上げた部分は、広島市側が主張している黒い雨の体験と精神的な評価指標の悪化が関係するのだというところが1回否定されているのですね。否定されている根拠として、広島市側が行った調査の中の放射線健康障害への不安要因が関与しているのではないかと出ていまして、当然調査項目に入っていない日常生活ストレスなども影響しているかもしれないけれども、そこは測定していないのでわからないということがワーキンググループの流れだったと思うのです。ここでは測定していない項目についてわからないというのが抜けていたので、黒い雨という広島市さんの主張は残念ながらここでは支持できなくて、放射線の健康障害の方に関与しましたよということだけは出てしまいましたので、そこはもう少し補強されるといいのかなと思いました。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ここのところは大事なところでありますので、もう少し検討させていただいて、適切な表現に修正をすることを考えたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、土肥委員。
○土肥委員 全く別なところでよろしゅうございますか。11ページなのですが、これは私が前にもちょっと不安に思っていたところなので早く言えばよかったのですが、(3)の少し上のパラグラフからなのですが、「ワーキンググループの報告を受け、検討会において議論を行った。放射線による精神・神経系への影響に関しては科学的知見として、約40グレイを超える線量があった場合におこるとする知見がある一方で、全身に放射線を浴びた場合には3~5グレイ程度で致死率は50%にも上るという知見がある。こうした知見も踏まえると、黒い雨体験の自己申告と精神的健康状態の悪化が、放射線の中枢神経への直接の影響によって生じたとは考え難く」云々というところがあるのです。これは私よりも佐々木先生とか米原先生に伺った方がよろしいと思いますが、ここで言っている40グレイというのはsupralethalな話なのですね。ですから、これを比喩に出すこと自体がノミを大砲で殺そうというような比喩になってしまっているので、比喩が余り適切ではないから、ここの部分は削除した方がいいような気がするのです。
 といいますのは、人間の場合、ここには3~5グレイで致死率が50%といいますが、このLD50は実際には測定されたことはないのです。ですから、かもしれない、でもそうではないかもしれない。通常は4グレイというようなものは、例えば骨髄移植するときの全身照射からすると、nonmyeloablativeというか、ほとんど骨髄の非可逆的な照射量ではありませんので、回復が十分可能な量なのです。それと40グレイという場合はちょっとあり得ないような放射線で、40グレイを頭に照射というのは、現実には脳腫瘍のときに1か月、2か月かけてかけることはあるけれども、1発とか何分割でかけることはありませんので、ちょっと非現実的な話を比喩に出してここを説明するのはいかがなものかなと思うのですが、いかがでしょうか。
○佐々木座長 金委員、お願いします。
○金委員 重要な点の御指摘をありがとうございます。
 実はこれは私が指摘したのですが、先生がおっしゃるように、ここで40というのは脳腫瘍の治療で限局的な照射を行った場合の総量が40グレイということになります。これはチェルノブイリの事故の精神的影響に関するWHOレポートに引用されていまして、ですからチェルノブイリ後の精神的不安は決して脳神経的な問題ではないのだよということを言うためにそこに書いてあったものですから、同じものを私がここに指摘したというところです。
 LD50は広島の原爆の後に藤田先生ですか、どういう計算をしたか詳しいことは存じないのですけれども、そこで計算されておられましたので、それも指摘させていただいたのです。そこがちょっと専門家から見てあいまいだというなら、また考え直したいと思います。
○佐々木座長 米原委員。
○米原委員 精神的な影響はチェルノブイリでもかなり問題にはなっていて、それが検討されているのですが、国連科学委員会ではやはりそこの部分は放射線との関係ははっきりしないということで取り上げていないことがありまして、それとその記述の中ではもっと低い線量で起こるかどうかという問題です。それが線量の増加と関係が見られないから、物理的な放射線の影響との関係は否定できるという表現が今の2008年の報告書のチェルノブイリの部分であるのですが、そういったところもここに加えたら、これだけでいきますとやはりそんな40グレイの関係のことしか述べていないので、因果関係というか、そういうものを示すにはかなり奇異な感じがするところがあるということを先生は言われたのだと思いますが、検討されて、今のところ国連科学委員会の報告書では、低い線量のところも線量とともに増えているということがないので否定できるというところも加えたらどうかなと思います。
○佐々木座長 ここの文脈は、中枢神経系に放射線によって異常が生じて、それがもとで精神的な影響を受けるというようなことはこれくらい高い線量でないとないので、今、議論されているような低い線量の精神的影響は直に放射線の影響であるとは言えないのだということが言いたいわけなのですね。そこへ具体的な線量が出てきているので、やや違和感があるかもしれません。意味はそういう意味だと思いますので、その辺も表現の仕方をもう少し工夫する必要があるかなと思いますが、それで金先生、よろしいでしょうか。
○外山健康局長 済みません、健康局長ですけれども、先ほどの荒記先生のところの「7 結論」が一番重要でありまして、我が方としては今日報告書をいただけるものかと思っておりましたけれども、そこで事務局の方でちょっと修文を考えてみました。それでよろしいかどうか御吟味いただきたいのです。
○佐々木座長 お願いします。
○松岡総務課長 今の荒記先生の御指摘を踏まえますと、先ほどの7の(1)の7行目から8行目のくだりですけれども、「悪化が見られ、この原因は黒い雨の体験そのものではなく、放射線による健康障害に対する不安等の要因が可能性の1つとして考えられた」というのを入れるというのが1つでございます。
 もう少し強調するとすれば、「体験そのものではなく」と「放射線による」の間辺りにでも「データに幾つかの限界はあるものの」といった文言を挿入する。7行目と8行目のところですけれども、「この原因は黒い雨の体験そのものではなく、データに幾つかの限界はあるものの、放射線による健康障害に対する不安等の要因が可能性の1つとして考えられた」といったものが考えられますが、いかがでしょうか。
○佐々木座長 まず、川上委員、それから荒記委員、どちら。
○川上委員 荒記先生の方から。
○佐々木座長 では、荒記委員から。
○荒記委員 確かにそのとおりで、「1つとして」を入れるのは全然問題ないです。これは非常に明快でいいと思います。ですから、「原因の1つ」と入れるということは、普通のライフイベント、普通の日常生活も原因になっている可能性を含めるわけ、あるいは前提としているわけですから、「1つとして」を入れるのはいいと思います。
○佐々木座長 川上委員。
○川上委員 今の修文でも私は結構かと思いますが、もう一つ私が先ほどここの間に考えていましたやり方は、「黒い雨を体験した方の精神的な健康指標の悪化が、放射線による健康障害に対する不安を調整すると消失、減弱することから、黒い雨中の放射線の影響とは考えにくい」という結論を出すことも可能かと思います。
○佐々木座長 ワーキンググループの報告書にあるところをもう少しここに盛り込むということですか。
○川上委員 そうですね。
○佐々木座長 荒記委員
○荒記委員 これはある程度行政的な配慮、表現法ですから、今、背景にあるいろいろな社会的、政治的な状況の上でここをどういう文章にするかという問題だと私は思うのです。ですから、今、川上委員の言い方だとかなり否定してしまうのです。これは今の全体的な状況でまずいのではないか。広島市の報告書が出したものをある程度採用しながら、この検討会で一番大事な結論はこうだと言うべきであって、広島市の結論は要するに原爆の影響だと、放射線の影響だということですから、それを全面的に否定するような今の表現ですと、だとすればこちらで本文の書き方をかなり手を加える必要があると思います。そうでないと、今、おっしゃったことを結論で書くわけにはいかない。できるだけ短くしないとだめですから。そういう意味で私は事務局のおっしゃった「可能性の1つとして考えられる」というのは非常に明快でいいと思ったのです。だけれど、ワーキンググループの方がいろいろ細かく検討されているでしょうから、それは御検討いただいて結構です。
○川上委員 最初の事実自体は結構だと、それで真実だと思うので、私はそれで賛成いたします。
○外山健康局長 そうすると結論のところの13ページとその前段の11ページの真ん中辺りに、ワーキンググループにおいて以下のことが確認されたという中でも、今の結論の議論と関連することが記載されているわけです。ここの記載ぶりもどうするかというのが1つございますので、御検討願いたいと思います。
○佐々木座長 今のお話は11ページの「ワーキンググループにおいては」という2つ目の点と考えてよろしいですか。「より客観的な指標として、黒い雨の体験率により」、ここは割合詳しく書いてあるところですが、川上委員、いかがでしょう。
○外山健康局長 1つ前のポツ。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 ただいま局長から御指摘がありましたのは、1つ前に「提出されたデータにおける黒い雨体験の自己申告と精神的健康状態の悪さとの関連性が再確認され」、その後に言っている「特に放射線の健康影響への不安や心配によって説明されると考えられた」というここのくだりでございます。
○外山健康局長 「説明される」という言いぶりを結論と少し平仄を合わせる必要があるのではないかと。
○佐々木座長 今のお話は11ページですか。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 はい、11ページ目のワーキンググループにおいては以下のことが確認されておりますでポツが幾つかありますけれども、そのうちの一番上でございます。
○川上委員 今の御指摘はそのとおりで、結論をそういうふうに修文しますと、ここも2か所「説明できると考えられた」が出てきますけれども、いずれも「説明される可能性があると考えられた」と言っていくのが適切かなと思います。
○佐々木座長 「可能性がある」が「説明できる」の前ですね。「説明できる可能性がある」「説明される可能性がある」という言葉を入れる御提案だと思います。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 済みません、確認ですけれども、先の1個の丸だけと言っていたのですが、2つ目の丸の方にも後ろに「説明できると考えられた」というところがあるので、ここも同様に訂正してよろしいですか。
○佐々木座長 そうです、今、申し上げましたのは、1のところは「説明される可能性があると考えられた」、2のポツのところは「心配によって説明できる可能性があると考えられた」ですか。それでよろしいですか。
○松岡総務課長 13ページのところでもう一度確認でございますが、先ほどの荒記先生などの御指摘を踏まえますと、7行目~8行目のところですけれども、「悪化が見られ、この原因は黒い雨の体験そのものではなく」、ここに「データに幾つかの限界はあるものの、放射線による健康障害に対する不安等の要因が可能性の1つとして考えられた」、そんな修文かと思われますが、いかがでしょうか。
○佐々木座長 川上委員、よろしいですか。
○川上委員 私の方は異論はありません。
○佐々木座長 荒記委員。
○荒記委員 結構です。いいと思います。
○佐々木座長 では、そこの修文はそれでいいと。
 先ほど問題になりました40グレイのところはどうしましょうか。今、ここでうまく修文できますでしょうか。
 米原委員、何かいい意見は、こうしてはというものがありますか。
○米原委員 物理的な放射線の影響ではないということをここに入れるか入れないか、入れるとすれば全体でそういうことはないのだということを言うためには、先ほどの国連科学委員会の低い線量のところも線量との関係がないということで否定されている、ただそこを書くにはやはりもう少し説明が必要、すぐにこういうものが出てきていますので、前の文との関係が余りはっきりしなくてこういうふうにできているという問題があると思います。やはり物理的な放射線の影響ではこういうものは起こっていないということがここで説明としては必要であるということであれば、そういう説明を入れて、それで低い線量のところも今、否定されているというものも入れて、これを入れるということであれば、奇異なところはなくなるのではないかと私は考えます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 金委員。
○金委員 どうしても広島市さんの行った調査の妥当性という部分と併せて被曝線量に関する報告書も出ておりましたので、被曝線量が仮にあるという主張をされたとしても、そこからこういう精神的な不安が生じることはやはりないのではないかということを入れた方が主張がより明確になるかなという気はしておりますけれども、結論のところでまた40グレイということをもう一回ここで言わなくてもいいのかもしれないと思います。結論のところはそういう可能性があると考えられた後に、かかる不安の原因として、今回論じられているような被曝線量から脳神経科学的な影響を経由して精神症状が生じるという科学的知見は今のところないというくらいの書き方でここはいいのではないかなという気がします。40グレイとか、先ほどの低線量被曝のドーズレスポンスの関係がないという辺りは結論ではなくて、例えば11ページのところにもう少し詳しく入れ込んでおけばどうかなという気がいたします。
○佐々木座長 13ページの先ほど御検討いただいたところのすぐ下ですね、「なお、科学的知見として」というところに線量の問題が出てくるのですが、このところの言い方をもう一度言っていただけますか。
○金委員 「なお、かかる不安の原因として、今回論じられている程度の被ばく線量によって脳神経科学的な影響を経由して精神症状が起こるという科学的知見は今のところ得られていない」というくらいの書き方でいかがでしょうか。
○佐々木座長 どうぞ、土肥委員。
○土肥委員 それで随分よくなったと思います。ただ、40グレイで起こるというのは、ここで言っているのは精神的問題というよりか、ほとんど意識消失とか、そういうことを考える急性期のものなのです。だからこれと何十年も経ってからの話というのはちょっと違うのではないかなと思ったのでそういうことを申し上げたのですが、我々が言いたいのは、ロングスタンディングな精神的な障害が起こるかということで、ここで言っているのは、恐らくは40グレイかかったときの一番大きな理由は脳浮腫も含めた精神障害というよりもう神経障害なので、これを一緒には考えられないと思っています。
○金委員 ここで大事なのは、低線量被曝が神経に作用して、神経が変性して、永続的な精神障害が残っているのではないかという不安が一部にありますので、当然40グレイでしたらそういう限界がありますので、50ミリグレイとか30ミリグレイで神経障害が永続的に残って精神症状を出すことはあり得ないのだというニュアンスがどこかにあった方がいいのでは、表現は先生にお考えいただくとして、そういうことでございます。
○佐々木座長 ここのところは表現の仕方を考えたいと思います。また、御相談はいたしますけれども、表現についてはまた考えさせていただきたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 今日、参考資料が配られておりまして、原爆投下後、1~3年後に家屋が建てられた床下のセシウムに関する調査の最近の状況が追加されておりますが、この点について米原委員、何か補足の御説明のようなことがありますでしょうか。
○米原委員 これは前々回のときに御説明したとおりのものですので、この中の一部に入っている、12ページのところで説明されているものと同じだと思います。
○佐々木座長 12ページのマル2のところに書かれておりますが、このとおりでよろしいでしょうか。特にこの点について御議論はございませんでしょうか。
 では、そのほか何か御議論があればと思います。
 どうぞ、川上委員。
○川上委員 私から一番最初の1ページの脚注1で少し申し上げて、荒記先生の御意見もいただいたところですけれども、私の理解ですと、横断的な調査であるという限界と調査の設計上からも例えば病気の質の調査項目などについてこれは必ずしも放射線の影響とするのは適切ではないという委員の御意見もあったと思っていますので、1つの案は、脚注1は削ってしまいまして、上の(1)の4行目から始まります「本検討会において、調査に携わった者から広島市等が行った調査は横断的な調査であることから」の部分を「横断的な調査であり、また調査設計上から疾病の有病率等に関する正確な評価は困難である」というふうに続けたらどうかなと思います。このとき飛鳥井先生が御報告されたのもそのことだったかと思います。
○佐々木座長 「調査設計上から」。
○川上委員 「疾病の有病率等に関する正確な評価は」、そこは全くそのままなのです。
○佐々木座長 「関する正確な評価は困難である」というのを本分の方に入れて、脚注を消去するというお考えですが、この点は荒記委員、いかがでしょうか。
○荒記委員 これは1ページの問題ですね。
○佐々木座長 1ページの2の(1)の真ん中辺であります。「調査は横断的調査であり、また」というふうに続く。
○荒記委員 全体の2の(2)ですか。違いますね。
○佐々木座長 今は「報告の概要」、1ページ、報告書(案)の最初のページの真ん中辺であります。
○荒記委員 そこの(1)番ですね、先ほどの議論ですね。
○佐々木座長 そうです。
○荒記委員 これは「正確な評価は困難である等と報告された」、だからこれも私の理解ではちょっと決めつけ過ぎだと。川上委員の案を、済みません、もう一度言っていただけますか。
○川上委員 「調査に携わった者から広島市等が行った調査は横断的な調査であり、また調査設計上から疾病の有病率等に関する」というふうに続けるのが私の御提案なのです。
○佐々木座長 「関する正確な評価は困難である」。
○川上委員 「と報告された」という。
○荒記委員 ただ、ではどうしてここで有病率を問題にし出すのか。今回の我が検討会の調査目的に、有病率自体は関係ないことだと思うのです。有病率が上がっているかどうかが問題であって、有病率が具体的に何パーセントであるということは全然関係がない。ですから、それを強いてここで持ち出して有病率について調査がうまくできなかったというのは、こちら側、検討会からの一方的な言いがかりのように聞こえてしまいます。
○川上委員 このとき飛鳥井先生が御報告されたのは、黒い雨を体験された方とされない群で疾病の報告率が違うということをお話になっているのですが、その有病率の調査項目自体が少し不十分なのではないかという御指摘が委員からありまして、飛鳥井先生が確かに放射線の影響にはちょっと十分ではなかったかもしれませんとお答えになっているので、そういう意味で「調査設計上から疾病の有病率等に関する正確な評価は困難である」というのは意味は通るような気がするのです。
○荒記委員 だけれども、その記述自体はあくまでも重箱の隅をつついて相手を攻撃するような表現なのです。全体に相手の広島市の報告書は何を言いたいのかということの本質に迫った修正ではないと思います。やはり広島市のこの調査は、実際に黒い雨を体験したグループはいろいろな精神的な影響指標が上がっている、悪くなっているということを言っているので、それを有病率ということを持ち出して言うとすれば、一個一個の症状が有病率に相当することになるのです。不安だとか、心配だとか。ですから、それが上がっているかどうかは、そのこと自体は広島市のデザインでも、調査でも十分やっているわけです。ですから、そのこと自体は問題はないと思うのです。
○川上委員 ここは「疾病の有病率」という書き方なので。
○荒記委員 でも、疾病の有病率を出すという目的はないでしょう。例えば精神的影響、精神的な指標全体の、全部ひっくるめた影響が何パーセントあるというような議論は、広島の調査では本質的な議論ではないですね。あくまでも広島市の調査で言いたいのは、黒い雨を体験した人がそれらの割合が高くなっているということを言っているわけで、割合が何パーセントということは議論していないわけです。それを一方的にこちらが攻撃してしまうのは、私はまずいように思います。やはり何か作為があるように聞こえてしまいます。
○川上委員 私の理解と少し異なるところがあるのですが、ワーキンググループでは、ワーキンググループの冒頭で精神的な影響以外に身体的な疾病の項目について解析をするかどうか検討をしたのですが、それは今のような議論の流れを経て、個々の疾病の有病率、例えば肝臓病とか、そういうものについては検討は今回やめておこうという結論になってきているのですけれども、そのことと関係した文章かなと思っていたのです。
○荒記委員 そういう細かいことは本文のところで触れていただくならいいのです。ただ、ここの部分は全体の概要なのでしょう。
○佐々木座長 こちらは概要です。
○荒記委員 本当にコンパクトにまとめたということでしょう。そこに余り本質的でない議論を持ち出して、しかも相手の非を追及するような表現は、私はちょっとまずいと思います。失礼でもある。
○松岡総務課長 済みません、今の部分でございますが、10ページの「(2)要望地域における健康影響について」ということがありまして、そこの7行目に詳細を書いております。「本検討会において、調査報告に携わった者から、広島市等が行った調査は横断的な調査であることから、疾病の有病率等に関する正確な評価は困難である等と報告された」ということでありまして、今の川上先生の御指摘を踏まえると、「調査であり、調査設計上」云々と入れるということになろうかと思いますけれども、それをこの詳細のところを踏まえて概要のところにもこの趣旨をよくわからせるということで上げさせていただいているということでございます。
○荒記委員 だから概要のところはこちらの検討会の結論でしょう。ワーキンググループが検討して、その結果こういう結果を出したということの文章の責任はワーキングループが負わなくてはいけないわけですね。そういうふうに断定してしまった場合に、いろいろな角度からの批判に耐えられるかどうかが私は不安なのです。ちょっと無理だと。本質の議論をしていないから。一方的に市の方のやった報告書を基に、それをそのままうのみにしてここにそう書いたにすぎないのだとすると、しかもそれをこの検討会が責任を負わなければいけないのだとすると、これはあるべきではないと思います。
○佐々木座長 今の注はそのままにしておきますと、今、言っているのは1ページの概要の2の(1)の真ん中辺で「本検討会において、調査報告に携わった者から広島市等が行った調査は横断的な調査であることから、疾病の有病率等に関する正確な評価は困難である等と報告された」のは、これはワーキンググループから報告されたと言ってもいいと思うのです。
○川上委員 この部分は広島市の御説明をされた方がこういうふうにおっしゃったので、ワーキンググループではありません。
○佐々木座長 ごめんなさい、広島市が報告したということですね。そこのところに1の注書きをして、注意書きの言い方が問題という御指摘が先ほどあったのですが、それの解決策として注意書きを外して、本文中に説明を加えてはというのが先ほどの川上委員の御提案だったわけです。
○荒記委員 今の表現は、あくまでもこの文章の主語は検討会だと思うのです。要するに調査報告に携わった者はワーキンググループのメンバーという意味ですね。
○外山健康局長 これは市のことなのです。ただ、2の(1)が報告書に対する疫学的視点からの評価ですから、やはりここは主文はこの検討会が主語になるわけなので、そういった意味では向こうの内部でといいますか、「有病率の正確な評価は困難である」と言ったとしても、この検討会としてどうであるかということをここに書けばいいのであると思います。ですから、精神的な影響を含めて検証した結果をとりまとめて考えられるということでありますけれども、この検討会で「広島市が行った調査は横断的な調査であり」、そこで止めるか、「ある」とか、あるいは時系列的なことがもう少し必要だとか言うかどうか、そういう話にとどめておけばいいのではないかと思います。
○荒記委員 それならいいです。
 ただ、もう一つは、どうしてもこの文章を残すのなら、例えばこの検討会のワーキンググループからこういうような意見があったというならそれでいいですけれども、ちょっと細か過ぎて概要に書くような項目ではないですよ。どうもしてもそれが必要だというならそうされて。
○川上委員 確かに本質でないといえば本質でないと思います。注があって、注が正確な表現ではないので、どのようにしたらうまく収まるかということを考えただけです。
○佐々木座長 前回も多少問題になったのですけれども、概要と詳細とをどういうふうに書くかということで、詳細に書かれていることの要約という言い方もあるかもしれませんけれども、全体像を短くして最初につけておくと、そこだけ読んでも全体の報告書の中身がほぼわかるようにしておいた方がいいのではないかというのが考え方であります。ただ、全体の報告書がそんなに長くないので、全部読んでいただいてもいいではないかという考えであれば、概要をわざわざつけなくてもいいという、これは前回の議論に戻ってしまうのですが、前回は概要ないし要約を一番前につけましょうということで、こういうものをつけているわけであります。
 局長、何か。
○外山健康局長 趣旨はもうよくわかっておりますので、ちょっと修文させました。
○松岡総務課長 今の概要のところで少し細かい話だという御指摘がございましたので、1ページ目の2の(1)でございますけれども、4行目のところです。「本検討会において」云々ということから、次の「困難である等と報告された」といったくだりについては後ろの方に詳細を書いておりますので、概要からは削除させていただくというのではいかがでございましょうか。
○佐々木座長 いかがでしょうか。
○川上委員 私はそれでも結構だと思います。
○佐々木座長 何か御意見はございますか。細かいところはもう一度メール等で御相談をいたすつもりでありますが、一応そういう方針でできるだけ概要は大事なところを要領よく書くということを考えたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、金委員。
○金委員 関連して3ページの「3 結論」のところも、では身体的影響については削除されるのでしょうかということが1点。
 もう一点は、精神的な評価についても「個々人が黒い雨を体験したことを記憶していたかどうかに依拠しているものと考えられる」で終わっているので、それだけでよろしいのでしょうか。ほかの要因によって説明できる可能性があるということをここでもつけておくべきではないかなと思うのですが、いかがでしょうか。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 概要の結論というところは先ほどの結論をまたまとめたものであります。身体的な影響については調査の設計上、判断しがたいということはどこかで入れておいた方がいいと思っておりますが、3ページの結論のところも今日の議論を踏まえて修文する必要があるところが出てくるかもしれません。
 事務局で特に何か。
○松岡総務課長 今の先生の御指摘ですが、13ページの「7 結論」のところに書いていることでございます。ここについてはいろいろ結論として書いている部分の1つのパートでございますので、身体的影響についての部分は残しておいていただいた方がよろしいかというのが1点と、それから、その下の「むしろ、個々人が黒い雨を体験したことを記憶していたかどうかに依拠しているものと考えられる」といったところについては「依拠している可能性があると考えられる」といったような修文が考えられるかと思います。
○佐々木座長 いかがでしょうか、金委員。
○金委員 結構です。ありがとうございました。
○佐々木座長 どうぞ、川上委員。
○川上委員 今のところでちょっと別のことですが、今の「3 結論」の2行目のところに「放射能による放射線被ばくへの不安や心配によるものと説明できると考えられた」という文があるのですが、ここも可能性を入れていただけますでしょうか。
○佐々木座長 先ほど御議論いただいたところをこちらに反映するようにいたします。
 ほかに御意見がありますでしょうか。ほかに特に御発言はないでしょうか。
 広島の爆心地から西の方向でしょうか、がんの死亡率が高いというような報告もあると聞いておりますが、こうした報告について何か一般的にどのように受けとめたらよろしいものかということでコメントがあればお教えいただきたいと思います。
 柴田委員、何か御発言はありますか。
○柴田委員 論文を読んだのですけれども、著者の提唱するモデルの下で解析するとこうなりましたということです、対象者は被爆者なのです。だから西北の方で少し高くなっているということですけれども、いわゆる雨域と関連づけるのはちょっと無理ではないかなと思います。
 それと著者もディスカッションの中で言っているのですけれども、線量の他には性別と被爆時の年齢だけが説明変数です。何十年と経った間のイベントを見ていくわけですが、先ほど話にあった生活習慣とか、がんでいうと血縁とか、そういう情報は全然入っていないということで、そのまま、雨と関係があるというのはかなり飛躍があると思っています。
○佐々木座長 線量評価との関連はあるのですか。
○柴田委員 著者の論法は、広島の場合は被爆地域がほぼ円形になっているから、線量には距離でいうと方向性はないと考えられるが、がんの罹患率にはモデルの下で推定した、だからそれは線量だけでは説明できないということです。ほかのものを持ってくるときに、先ほど言いました生活習慣とかいうこともあるわけですけれども、著者はそれとは違うもの、要するに黒い雨の影響をほのめかしているというところがあります。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 これに関してどなたかほかに御発言はありますか。
 よろしいでしょうか。
 ほかに、この報告書(案)につきまして御意見はいかがでしょうか。
 どうぞ、金委員。
○金委員 また3ページの結論の2行目なのですけれども、同じ表現でも込めている意味が違って受け取れると思ったのでお聞きしたいのですが、「その原因は黒い雨が含む放射能による放射線被ばくへの不安」とありますが、黒い雨が放射能を含んでいるということを当検討会が認めていると受け取られてしまう可能性があるのではないかと思います。これは住民の方が黒い雨に放射線が含まれているのではないかなと思って不安になるという意味だと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
○柴田委員 やりとりしたときに、たしかそういうふうに書いたような気もします。客観的に含まれているのだという話ではなくて、黒い雨には放射能が含まれていると思うから、それが不安の原因だと。
○金委員 でしたら、ここは「黒い雨が放射能を含むのではないかという放射線被ばくへの不安」とか、そういう書き方の方が。
○佐々木座長 それによる放射線被ばくへの不安ということですね。わかりました。この辺もより誤解のないような言い方にしたいと思います。ありがとうございました。
 もし御発言がないようでしたら、本日貴重な御意見をいただきましたので、この御意見を報告書に反映をしていきたいと思います。その修正文については私の方で事務局とも相談しながら案をつくらせていただいて、それを委員の方々にも見ていただいて、最終の報告書にしていきたいと考えております。どうしても大きな問題が出てくればまた御相談することもあろうかと思いますが、一応検討会として集まるのは今日で最終にしたいと私自身は考えております。ただ、大事な点についての御意見は修正文の中に反映させていただいて、委員の方々の御意見を伺って報告書を完成させたいと思っております。そういったことで今後の進め方はよろしいでしょうか。どうしても集まって議論した方がいいというような問題が出てまいりましたら、そのときはまた考えますけれども、できるだけ今後はメール等で御連絡をとりながら報告書の完成をできるだけ早くしたいと考えておりますので、その点を御了承いただければと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、これまで大変精力的にとりまとめに御協力いただきましてありがとうございました。今回「原爆体験者等健康意識調査報告書」を中心に検証を進めてきたところであります。本検討会はその報告書を完成することによって終了したいと思っております。
 なお、放射性降下物に関してはいろいろな検討がなされている状況でもあり、新たな知見が今後出てくるようであれば、必要に応じ科学的な視点から妥当、適切であるかを評価していくことが今後も重要であると考えております。
 また、本検討会の座長あてに質問状が送られております。この質問状は既に委員の方々には配付をさせていただいているところであります。また、一部誤解があると考えられるところについては報告書の注、特に注の3がそうして起こったものでありますが、それをつけるなどして対応をしているところであります。今後の対応としては事務局とも相談をしておりますけれども、直接的な審議事項ではないこと、法の制度論に関する見解が含まれていることもございますので、事務局で案を作成したものを、これも皆様にごらんいただいた上で事務局から返していただくようにしようと思っておりますが、この扱いについてもよろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、最後に健康局長からごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○外山健康局長 皆様方には「原爆体験者等健康意識調査報告書」などの科学的検証につきまして、若干細部は座長預かりとなりましたけれども、重要な部分につきましては本日結論いただいたと思っておりまして、心より御礼を申し上げます。
 第1回の開催時にも触れましたけれども、被爆地域の指定につきましては、昭和55年にとりまとめられました原爆被爆者対策基本問題懇談会の報告におきまして、被爆地域の指定は科学的、合理的な根拠のある場合に限定して行うべきであるとされておりまして、これが現在まで政府としての一貫した方針となっております。
 平成22年に広島市から提示されました地域拡大の要望におきまして、その根拠となった報告書を科学的に検証する場として本検討会が設置されましたが、本日まで足かけ1年半の審議をいただいたところであります。原爆投下から66年を経た現在において科学的な検証を行うという非常に難しい課題に対しまして、検討委員会及びワーキンググループの委員の皆様におかれましては大変精力的に御議論いただきまして、一定の結論をいただいたことに改めて感謝を申し上げるとともに、この報告書を受けまして厚生労働省としての検討を進めてまいりたいと考えております。
 最後となりますけれども、皆様方におかれましてはさらなる御活躍をお祈り申し上げるとともに、今後とも厚生労働行政への御指導、御鞭撻をいただければ幸いでございます。ありがとうございました。
○佐々木座長 どうもありがとうございました。
 それでは、これをもちまして本日の検討会を終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

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代表: 03-5253-1111
内線: 2318

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