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2012年6月21日 第4回技能検定等技能振興の在り方に関する検討会議事録

職業能力開発局能力評価課

○日時

平成24年6月21日(木)15:00~17:00


○場所

中央労働委員会 労働委員会会館講堂(7階) 
(東京都港区芝公園1丁目5番32号)


○議題

(1)企業・団体及び都道府県・都道府県協会からのヒアリングについて
(2)都道府県・都道府県職業能力開発協会に対するアンケート結果について
(3)その他 

○議事

○今野座長 それでは皆さんお集まりですので、時間が早いのですが始めたいと思います。ただいまから第4回「技能検定等技能振興施策の在り方に関する検討会」を開催いたします。本日は松井委員がご欠席です。本日、お手元の議事次第にあるテーマでやっていきたいと思うのですが、企業関係者の方と地方関係者の方からヒアリングを行います。残った時間の範囲内で、都道府県及び都道府県職業能力開発協会を対象にしたアンケートをいたしましたので、その結果について報告をしていただきたいと思っています。まず事務局から、ヒアリングの進め方についてお願いします。
○原田調査官 お手元の資料1のとおり企業団体の方、4名、県、地方協会から1名ずつお越しいただいております。この順に従ってお話をお伺いすることにしたいと思います。
 前回の検討会で、企業技能検定に協力いただいている業界関係者の方からできるだけ多くお話を伺うべきではということでしたので、このような形で用意しました。県と協会については、地域規模等を勘案して、このお二方にお越しいただいています。以上です。
○今野座長 それでは、ヒアリングを始めたいと思います。資料1にありますように、とんでもない非常にタイトな時間、スケジュールになっておりますので、とりあえず各方から10分お話をいただいて5分間質疑応答、そういう形で進めたいと思います。人数が多いものですから、オーバーすると全体がカバーできなくなる心配がありますので、一応15分間でバサッと切らせていただきます。最後に残った時間を用意しますので、その残った時間で発表者の方は言い足りないことを言って、質問するほうは質問し足りないことを質問していただく、そんな進め方にさせていただきますので、とりあえずは冷たく15分で切りたいと思います。ご協力のほどよろしくお願いします。それでは、まず株式会社三ツ矢代表取締役の草間誠一郎さんからお願いいたします。
○草間氏(株式会社三ツ矢) 株式会社三ツ矢の草間と申します。今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。それで私の説明ということで、早速始めさせていただきます。
 お手元の資料をご覧ください。1枚に約4つのスライドという形で、縦に順番が並んでおりますので、その辺ご確認をお願いします。私どもの会社ですけれども、1931年に旧海軍の追浜工廠の指定工場となりまして、戦後は通信機部品等のめっき加工から、海底の通信ケーブル中継器、宇宙、防衛関連、日本初の宇宙飛行士であります毛利博士の使った反射鏡、最近の話題では「はやぶさ」に搭載されている部品等、さまざまな高信頼度部品のめっき加工を手がけて、80年間めっき一筋で歩んでおります。
 私どもの会社の概要について説明するのは、ここの本論ではないと思いますので、主なトピックスとしては2008年に「元気なモノ作り中小企業300社」、それから今年「東京都中小企業ものづくり人材育成大賞知事賞」を受けさせていただきました。先ほども言ったように会社概要については私どものホームページがありますので、下記のアドレスをご参照していただきたいと思います。
 私どもの企業での特にめっきに関する「国家技能検定への取り組み」について説明します。まず社員のほうには、希望者の受検費用の負担。これは当然1級、2級いろいろな級があるのですけれども、その級を受検する1回だけの受検費用を会社で負担しております。もう1つは、当然受けてもらう以上は受かってもらわなければいけないので、受検者のための社内準備講習会。合格者にはこの説明資料にあるとおり1級、2級に月の手当を出しております。現状、受検希望者は多いのですけれども、あとで説明させていただく技能検定の実情も鑑みて、社内調整をしているというところです。やはり国家技能検定ですので、対顧客へのアピール度としては非常に高いと考えております。
 当社の「資格手当支給者」の概要ですけども、スライド4に書いてあるとおり1級めっき技能士、2級めっき技能士、作業環境測定士、高度熟練技能者、ここまでがいわゆる国家資格となっております。教育主事と私どもの認定上級・中級に関しては、社内の資格という形になっております。
 次の頁を見ていただきますと、私どもの社内のキャリアアップシステムの説明がございます。スライド5のようにマネジメントのコース、それからエキスパートのコースということで、それを混在させて、我々の社内ではこれをキャリアマトリックスと呼んで、1マスごとに必要な知識、能力、人格面、それから当然経験、これら要件をすべて明確にして、社員一人ひとりに面接をもって、将来どこを目指していくのかということをやって取り組んでおります。
 特に次の下の6番ですけれども、製造部門に関しては我々の社内で独自の実技試験を設定しております。技能は1級なんだけれども、人を教えたりマネジメントするのはどうしても苦手な方もおりますので、そういう人をむしろ社内でしっかり待遇を高めていこうという目的で、これを作りました。国家資格のめっき技能検定をベースに、当社の製造現場に合うようにレベルを上げてアレンジしております。
 上級、中級に合格しますと月に、私どもの社内の規定でこれだけの手当を出しております。写真は最初の上級試験のときの模様を撮ったものです。めっきって何が難しいのかというところを補足して説明します。電気めっきというのは皆様もご存じの方はいらっしゃると思いますけれども、めっきをつけたい製品を-極にして+極にめっき皮膜となる金属を、めっき皮膜となる金属が溶けている水溶液に浸漬して電気を流すことによってめっきをつけております。水に溶けていますので、金属は+イオンを帯びていますから、電気を流すと-極のほうに引き寄せられて、+-を中和して電気めっき皮膜がつくという仕組みになっております。
 次の頁を見てください、「電気めっきは電流密度の分布制御が難しい」ということを説明します、図に書いてあるとおり電流密度の大きい所、少ない所があり電流の分布が偏在しております。
 例えば「ハルセル試験」という写真があるのですけども、この試験はめっきをつけたいものに斜めに配置して、めっきのつき方が電流密度によってどのように変わるのかということを試験するための道具です。これは技能検定でも実際に使われます。
 「クロムめっきのハルセル試験結果」というスライドを見ていただくと、ちょっと見にくいのですけども、左の電流密度が大きい部分がちょっと白っぽくなっています。この部分しかクロムめっきがついてないのですね。ほかの部分はめっきはついておりません。いかに均一にめっきをつけることが難しいかということが、これを見ていただくとおわかりになると思います。
 こういう難しさを皆さんに理解していただいたうえで「技能認定までの流れ」を見てみます。いま東京都鍍金工業組合では経営者の方が30名程度技能認定委員として参加されて、6月21日にいろいろな前準備を開始して、6月30日に説明会を開催し、そして7月11日にリハーサルをします。リハーサルで不具合があると困るので、それの調整のための予備日として10日間程度として、7月21、22、23日に実技検定ということで実施予定でおります。ただ、いまはもう正直言ってこの3日間でもう手一杯で、これ以上受検者が増えても消化できないという事態になっております。
 最後2枚の頁です。いまのは東京都の関係ですけれども、「他県の技能認定の状況」について説明します。宮城県では本当ですと宮城県産業技術総合センターさんみたいなところが協力してくれるとありがたいのですが、むしろ断られて、めっき企業1社さんにいまお願いしてやっていただいています。現状では受験者15名程度が限界です。秋田も現状は有志でやっているのですけれども、30名が限界。名古屋地区はトヨタのお膝元だけあって、名古屋市の工業研究所の協力もあって、100名以上、毎年そういう実績を受け入れてやっております。
 最後になりますけれども、「皆様にお願いしたいこと」は、いまものづくりが大事だということを盛んに言われているのですけれども、なかなかその辺が我々にとって目に見えてこないというのが実感です。やはり国家戦略としてものづくりの位置づけを明確にしていただきたい。それを戦略に基づいて今後の議論を進めていただきたいということが1点。もう1つ、もちろん国家戦略でものづくりが重要だという戦略が出た前提の下ですけれども、やはり東京都の鍍金工業組合みたいに、技能認定が行われている現場の実態をよく見ていただいて、手弁当で検定と技能継承と人材育成に積極的に取り組んでいる職種にかかわる検定については、むしろ資金、設備、ソフト面での各県のニーズに即したさらなる積極的支援をお願いしたいと思っております。
 最後になりますけれども、こういうヒアリングに貴重な時間をいただいて、改めて委員の皆様にお礼を申し上げて、私の説明を終わらせていただきます。以上です。
○今野座長 私のほうから質問いたします。最後の13枚目のスライドで、例えば、何名が限界と書いてありますが、これはこれ以上受検者が来ても対応できませんという意味の限界ですか。
○草間氏 そういうことでございます。現実にもう上限一杯で、受検者がめっき組合だけではなく、要するに大企業のめっきの現業、現場があるところも受検させてくれということで申し入れられています。ただ、国家検定である以上、それを排除することはできませんので、それも無条件に受け入れていると。先ほど言ったように、東京都の事前準備を見ていただくとわかるとおり、ちょっと1社でこれをやることは非常に限界がきているというところです。
○今野座長 そうすると、ニーズはすごくあるが、供給ができていないということですか。
○草間氏 これ以上増えると、今度は4日間になるのですが、例えば東京都ですと4日間必要であろうと言われていますが、対応できるかどうかです。私どもも組合員の関係上、今年、1社で10名受けさせてくれと言っても、これは実状をよくわかっていますから、やはり社内で、ちょっと待ってくれということで、君は来年にしなさいとか、そういう形で調整をしているのが実状です。
○大関委員 私が東京都の労働経済局長のときに、同じような問題がありまして、企業で大変だと。当時はまだ世の中の景気が良くて、いろいろな支援策といいますか、放っておいてもあったのです。いまは民間企業が、困っているところに手を差し延べてくれない。しかし、いまは必要なときだけ欲しいという環境になっているのです。おそらく聞いている方々たちは、うらやましい環境だなと思っていると思うのです。その1つは、会社としてもこういう検定にどんどん受かってくれることはメリットがある。だから、受かってもらいたいので一生懸命やっているわけです。受けるほうも、受かれば毎月5万円からのお手当が出ると。
○草間氏 そうですね。うちの場合は5,000円になっています。
○大関委員 やはり、両面からのメリットがあるから、放っておいても受検者が出てくるという環境だと思うのです。おそらくほかの職種ではどんどん尻つぼみで、何かお互いメリットが出るような環境をつくってあげないと、世の中としては必要なのに要請されない。そういうことが続くのではないかという気がしているのです。
○草間氏 おっしゃるとおりだと思います。正直言って、結局、いまビジネスベースに乗らないとだめ、しかし乗らないけれども、ものづくりにとって必要な基幹技術・技能はあると思うのです。ですから、そういうものも国として、国家戦略に基づいてどういうふうにするのか、そういうところをしっかり決めて。別に資金だけではなくて、ソフト面や人的面でいろいろ助けることはできると思うのです。特に、私がもったいないと思ったのは、60代、70代の団塊の世代で、後継者をつくりたいという熱意に富んだ人はたくさんいらっしゃいますが、教える相手がいなくて結果的に海外のほうへ行って、端的に言うと、日本のものづくりのコンペチターをたくさん育てていると。これは世界的に見ればいいことですが、その辺も国として何とかできないのかと思っています。
○今野座長 それでは機械的で申し訳ないですが、15分経ったので切りたいと思います。ありがとうございました。次に技研精機株式会社製造部製造課課長の佐藤秀昭さんお願いします。
○佐藤氏(技研精機株式会社) 私は技研精機の製造課の佐藤と申します。皆様にお配りするような資料がちょっと用意できていなくて申し訳ありませんが、口頭で話した内容を理解していただく形でお願いします。
 簡単に会社の説明から始まります。私ども技研精機は東京の板橋区に位置しており、創業は1969年です。当時は巻紙のタバコの機械を製造する会社で創業しました。その後、高い精度要求、品質対応をするために試行錯誤が始まり、本田及びキヤノンとの取引きが始まりました。これまで培われた加工経験をもとに、二輪及び四輪の開発の試作部品ならびに液晶部品、半導体関係などの製品などを扱う形になって、いまでは大型機械関係、難削材加工などのニーズの対応をするために、新しい加工技術をチャレンジしている状況です。簡単な説明ですが、そういう事業の概要です。
 早速ですが、「技能振興施策について」の説明という形で始めさせていただきます。「技能・技術の継承や若手技能者の育成に向けた取り組みについて」は、近年、製造業に関しては、取引単価の下落など競争が激化しつつある中で、やはり、生き残りをかけて生産体制の見直しとして、磨き上げてきた技術なども含めて、ノウハウをいかに継承していくかという形で、いま現在直面している問題があります。
 その中で、取組の1つとして人材の適在適所を図っております。作業者一人ひとりの技量・経験、そういった無駄などが生じてしまう現状がありますので、状況に応じて人が移動したり、製品の停滞などをなくすなどといった工夫をして、作業による負荷バランスの偏りをなくすといった取組をしております。そうすることによって、お互いにコミュニケーションを図ることもできますし、最大限必要と言われている多能工の育成にもつながっていくかと考えております。
 その中で、多能工育成に力を入れることによるメリットとしては、我々中小企業ということもありまして、少ない人数でより多い仕事をこなそうということと、生産変化に対する柔軟な対応をしていこうと。それと幅広い知識を持って、各分野に挑戦する気持が必要だと。あと不測の欠員が出る場合がありますので、そういった対応をしやすいために、そういうことが必要だと思っております。
 「採用時や採用後能力開発における技能検定の活用について」は、日々の作業を行う中で、自己の技術力を明確に知るために技能検定を受検させています。経験年数に応じて2級を取得し、その後、さらにその上の1級を目標として技術を磨き上げて、勉強させることで技術レベルの向上をさせ、また幅広い専門知識が身に付くと同時に、受検のための勉強や練習を通じて品質への意識、時間に対する意識といったものが学べて、自己のスキルアップにつながっていくと考えております。技能検定には、技能士の資格を持つことで、やはり周りからの作業に対する信頼が得られることもありますので、自信を持って作業を行えることにより、業務に対するモチベーションも上がっていきますし、活性化した現場をつくるためには非常に大切であると我々は考えております。
 「技能検定以外の社内の能力評価の仕組みについて」は、私どもの仕事内容が、多品種少量生産ということもありまして、来たものに対して、どういったものが来るかというのが、本当にお客様から図面が来て初めてわかるものであって、これを評価の括りとして、新規で加工が任されるものがあるか。ある程度、独自で加工ができるものなのか。もしくはリピート性が高いものであって、ある意味、それなりの知識があれば、ボタン押し状態とよく言われるのですが、そういった取付け、取外しをしてボタン押しができる作業者。そういった括りで、社員教育の評価をしております。実際、これに関しては、毎年面談を行って、技能の能力評価という意味で、今後の目標を我々のほうで指示したり、それぞれの班によって教育カリキュラムを毎年作っておりまして、それに基づいて自分がどこのレベルまで到達したのかの評価をしているところです。
 「技能振興に向けて、今後どのような施策が重要と考えるか」については、いままで磨き上げてきた技術・ノウハウをいかに継承・向上させていくかという問題から、やはり、中国をはじめとする製造業の技術力アップもありまして、安い人件費による低コストはいくら試作中心の精密加工とはいえ、我が社としても必ず直面しなければならない課題です。このような認識の下で会社の体質を強化するということで、QCDの能力を高め、技術・ノウハウの向上をさせることを目的とした生産活動が必要であると思っております。
 しかし、いま現状の話になりますが、ものづくりというものに対して、やはり、コスト面からの話になるのですが、競争が激しいこともあって、価格のほうがかなり安い価格。仕事を確保するという意味で、要は仕事がない状態で機械を遊ばせているのだったら、何とか仕事を安くても取って、つないでいこうという考えもかなりあると思うのですが、それが果たして良いものを提供するということでいいのであろうかという疑問符もあります。あまりにも価格が安いことに関しては、当然のことながら、無駄を省くといいますか、そういったところがかなり多く出てきて、品質を落とすのではないかというところに行き着いてしまうのかなと。それがいまの日本の製造業にとって果たしていいものなのかというところが、私どもの考えとしてはあります。我々にとっては、そういった意味では品質第1という形で考えて、日々そういうスタイルを崩さないで取り組んでいる状況です。
 「技能検定への取り組みについて」です。社員の技能検定の受検状況は、良いものを作るために設備や環境も大切ですが、その中でも特に現場で作業を行う社員の一人ひとりの技術・技能の育成が重要です。この技術・技能のレベルアップや継承を図るべく、従業員の育成の1つの手段として、やはり技能検定の取得を積極的に推奨しております。毎年多くの社員が技能検定を受検して、合格すれば技能士となって、現在では我が社でも全社員の約40%が技能士として活躍しております。また多くの技能士を保有することで、企業としても高い技術力を保有する証明になって、お客様から信頼が得られるとも考えております。創業当時から多くの技能士を保有して、いまでは自社検定に取り組む形になり、自社検定を行って7年目に入りました。自社検定に関しては、会場の中での作業者同士の公正を図るということで、いろいろと気遣いをする部分がかなりあります。そういった緻密なスケジュールを組みながら、実施会場として行っております。
 協力体制については、我々の会社では、技能検定の資格を持つ社員に対していろいろなサポートとして、積極的に受検を推奨しています。その中で、受検に必要な事務手続といった一切合切を我々のほうで代行してやっています。また受検費用に関しても、最大3回までは会社で負担しています。練習場所、機材、材料の提供といったものもすべて負担しております。先輩技能士による勉強会の実施といったことで、できる限り技能検定の合格者への支援という形で、積極的に取り組んでいる次第です。
 最後に、要望になりますが、技能検定の協力体制ということで、弊社で自社検定を行うことによって、メリットとしては作業者が自社の検定者だけなのです。自社検定は外部の方々を取り入れていないのです。我々がやっている作業がどうしても機密の関係上で、外部の方々をあまり入れたくないというのが現状ですので、そのために自社の検定で行っているのです。日ごろ行っている作業場や面識がある人同士のことですので、特別に検定においては気軽に作業者の方々は行えるメリットはあると思います。しかし、その半面、企業側の負担で見ると、先ほど話したとおり、手続的な話、費用面といった一切合切を負担していることもありまして、そういったところを全面とは言えませんが、できる限り見ていただくと非常に助かると思っております。
 それについては、検定を行う人数や自社検定を行うための検定委員の人数、作業内容によってできる限り検定に携わる人を極力減らす工夫などをして、そういった負担を協会のほうにかけないような形をとっていくつもりでもありますので、我々にとっては効率的な方法といったものがあれば、是非ともアドバイスをいただいて、毎年行うことによって、いろいろと進め方に工夫ができるのではないかと思っていますので、いろいろな情報をいただけると非常に助かると思っております。以上で私の報告は終了させていただきます。
○今野座長 ありがとうございました。それではご質問をお願いします。いかがでしょうか。これは技能士になると、例えば手当をもらえるとか、昇進に有利とか、そういうことはあるのですか。
○佐藤氏 技能士になりますと、一応、手当として2級で2,000円、1級になりますと3,000円という形で毎月支給しております。
○今野座長 例えば、現場でこのぐらいのクラスに昇進するには1級を持ってなければいけないとか、そういうのはあるのですか。
○佐藤氏 特別そういったところはないのですが、やはり、多能工育成というところから、実際に私もいま検定委員としてやっているのですが、上司からも、ほかの検定のところも受けてみろという話も実際のところ出ています。そういったところで、私自身も教育も含めて行っているところです。
○今野座長 ありがとうございました。次は株式会社日立製作所総合教育センタモノづくり教育本部本部長の八幡康さんお願いします。
○八幡委員(株式会社日立製作所) 私のほうからは、当社グループの紹介を簡単にさせていただいた上で、技能伝承・強化にどう取り組んでいるかということを、全社的な共通の施策を中心にご紹介させていただいて、最後に技能検定制度の活用状況についてご報告したいと思います。
 スライドの1番が「会社概要」です。株式会社としての設立は1920年ですが、社内では小平浪平という創業者が国産初の5倍力モーターを作った明治43年を創業に置いており、いま102年経ったところです。従業員数は約32万人強です。
 2番のどんな事業をやっているかについては、全体像が書いてありますが、その他を含めて11の事業セグメントで、幅広く事業を展開していることになります。
 3番、そういった事業は日立製作所本体のほか、ここに書いたような主なグループ会社が担っているということです。
 4番、直近の決算、売上げの状況は、事業セグメント別の売上高が左の円グラフで、それぞれこんな割合になっております。そういった売上げがどこで発生しているかということが、右の円グラフです。日本で57%、海外で43%となっております。いま社長の中西は、この43%という比率を早く50%以上に上げろということで、全員で取り組んでおります。
 5番は、地域別にどこにどれぐらいの会社があって、どれぐらいの社員が働いているかということです。先ほど全体で約32万人と申し上げましたが、真ん中に箱がありますが、そのうち日本は約21万人ですので、海外で11万人ぐらいということになります。非常に簡単ですが、これまでが会社の概要です。
 この先、「技能伝承・強化策について」です。6番のスライドを見ていただくと、創業者小平浪平は「事業の発展は人にあり」という考え方で、先ほど申し上げた明治43年の創業と同時に、「徒弟養成所」を作りました。これが現在の日立工業専修学校という姿になっております。この学校は、主に製造現場で将来核となる人材を事業所に送り出している学校ですが、そんな理念が現在にも受け継がれているということかと思っております。
 下の概念図のようなものは、先ほど申し上げたように、多数の事業所やグループ会社で成り立っており、人材育成の基本は、下側の箱にあるように、各社、あるいは事業所で、それぞれ取り組んでいるのがベースになっています。ここでは技能者を例に挙げますと、新人向けの高等職業訓練校のほか、技能五輪への参加、もちろんOJTが中心になるわけですが、事業所におけるいろいろな技能競技会や、技能検定制度の活用を総合的にやって人を育てているということです。それら事業所独自の取組のほかに、全社共通的な取組として、上の箱に書いたようなものをやっているということで、そのいくつかをご紹介したいと思います。
 8番のスライドは、社内で「e-Meister」と呼んでおりますが、これは技能伝承を補完する仕掛けです。従来の技能伝承というのは、基本的に人から人へ伝えていくことだったわけですが、団塊の世代が大量にリタイアしていくという中で、なかなかそれもままならないということもあり、もちろん人から人へというところが中心にはなるのですが、それを補完する意味での技能の見える化、コンテンツ化に取り組んでおります。画像、あるいは動画、音声といったものを使って、誰にでもわかりやすいものということで、8番のスライドです。これは細かくて恐縮ですが、銅管のロウ付け作業の例です。ここに画像やビデオで撮った動画をパソコン上で表示することによって、OJTによる技能の伝承を補完するというものです。
 10番は「全社技能競技会」というものを、現在は1職種だけですがやっております。溶接・製缶ということで、我々は社会インフラ系の製品が多いものですから、溶接作業というのは極めて重要な作業になっております。各事業所の代表選手に年に1回集っていただいて、技能を競うということをやっております。最近の様子では、10数事業所から20名弱の選手が参加して、2日間ぐらいかけて競技会をやっております。
 11番からは技能五輪の関係です。過去からずっと技能五輪に参加して、これは去年の全国大会の例ですが、アンダーラインが引いてある11職種に出場しています。
 12番は、第1回から継続しているということで、最近は全国大会には参加人数は50人強の選手が参加しているということになっております。
 技能五輪への取組と人材育成の関係はどうかというのが13番です。左上に「研修機関」とありまして、先ほど申し上げた日立工業専修学校、元の徒弟養成所で、中学卒の少年、少女を3年間鍛えるということをやり、事業所でも独自に採用する高校卒の技能職がおります。そういった中から、技能五輪の選手を選抜して、2年とか3年の訓練をして、技能五輪に挑戦するということで、若者に対する技能の伝承、あるいは高度化といったものに取り組むことはもとより、選手がいずれ数年後、自らが指導員となって選手の育成に当たるというサイクルを通じて、いわば人間としての成長も期待すると。そういった中から、将来製造現場のキーパーソンになって活躍をしてもらう人を育てていこうという考え方で続けております。
 「技能検定制度の活用状況」です。これはなかなか全体を網羅した統計がありませんので、14番は茨城県内に多数の事業所が集まっておりますが、これは茨城県内限定、なおかつ昨年度の状況のみです。事業所としては4事業所、24のグループ会社、専修学校などが関係しております。表に示した25職種、47作業、延べ1,149名という受検人員となっております。そういう意味では機械保全、機械加工を中心に相当活用している会社であると思っております。
 15番は、今回は茨城県のみならず、栃木、群馬、神奈川、静岡、山口にある主要な工場から技能検定に関するアンケートで得た紹介です。現在の技能検定制度に対する評価という意味では、モチベーション向上につながるとか、受検者のみならず、指導員自身の育成にも役立つということで非常に評価しております。回答のほぼ全事業所において「技能士」ということの場内掲示をしております。検定料については、特に全社統一的なルールはなくて、これは事業所ごとに、例えば特級・1級は会社負担とか、あるいは合格者のみとか、合格しなくても同じ作業で2回までは会社が負担するとか、これは事業所ごとでまちまちの運用になっております。
 16番は、13事業所のアンケートの結果のみですが、受検職種は「横ばい」が多かったです。受検人員については「増加」が4事業所。これは技能伝承の気運が高まっているとか、設備稼働率向上とか、工場増設といったことです。一方で、採用人員減少によって、受検人員が減っているところもあるということです。
 最後は、いまの制度に対する評価・要望として、現行制度を評価。是非続けてほしいというのが基本的に全部そうです。ただ、実技の試験課題が時代に合っていないものもあるのではないかという問題提起や、検定料を中身に見合ったものに変えてはどうかという意見が出ておりました。ここに書いたのは特に斟酌せず、そのまま現場の声を載せておりますので、お含み置きいただきたいと思います。以上です。
○今野座長 ありがとうございました。それではご質問をお願いします。
○大関委員 スライド7は、技能のデジタル化ということで日立さんは取り組んでおられると。日立さんみたいに大きなところはいまでもデジタルですが、技能のほとんどがアナログの世界が多いのです。これを何とかデジタルで記録していきたいと。企業に属していない技能士の職種は日本に多いわけです。これは何かの応援というか、すくって作っていかないと。その地域にしかない技能があるのです。例えば、土佐に行くとサンゴのものづくりをやるとか。技能士会は今年からできるだけデジタル化していこうと思っているのです。そういうことで名工の技とか、そういうものを日本の財産として残していけるような仕組み、支援策がとれないかという思いがしております。以上です。
○河村委員 5枚目に「地域別事業展開」がそれぞれありますが、検定や技能五輪の関係で他地域、他国への取組はどうなのでしょうか。
○八幡委員 現状は日本だけです。社内的には結構海外も一緒だろうという問題意識は高くて、特に、愛知県でトヨタさんとかデンソーさんが昨年のロンドンの五輪で、たしかタイの選手だったと思いますが、トヨタやデンソーのタイの会社に所属する選手が金メダルを取ったりしているのです。そういうのも刺激になって「どうするんだ」と言われていまして、そこはこれからの取組になっております。
○今野座長 ほかにいかがですか。私から1つ、最後のスライドで「評価・要望」の中で「海外のモノづくりレベルも調査した上で」はどういう意味なのかと思ったのですが。
○八幡委員 詳しく私も聞けていないのですが、おそらく中国や韓国という所とものづくりの競争になっていまして、特に技能五輪の分野では、韓国にだいぶ持っていかれているところもあり、日本の中だけで閉じるというのではこれからは駄目ではないですか、という問題意識だと思うのですが。
○今野座長 ありがとうございました。次に日本内装仕上技能士会連合会会長の飯島勇さん、よろしくお願いします。
○飯島氏(日本内装仕上技能士会連合会) 日本内装仕上技能士会の飯島です。本日はこの中で発言の場をいただきまして大変ありがとうございます。私はものづくりの現場から、是非とも生の声をお聞かせしたいと思いまして、今日参上したわけです。
 1番に、「職人の世界にも魅力があることを知らない人が多過ぎる」ということです。こういう検討会では、皆さんものづくりというのは貴重なものだと思っておりますが、一般の方はどれだけものづくりに理解があるかということは、なかなか理解し難いこともあります。今日も城南職業能力開発センターで、午前中講義してきて飛んできたわけですが、私が10数年前に職業能力開発センターで講師として派遣されて行ったときには、景気もある程度よかったこともあり、30名募集の中で100名近く人員が来ました。それだけまだ魅力があったわけです。日本の業界もまだまだ捨てたものではないと私も100名近い人の中から30名を採るわけですから、試験として面接をするわけです。私は見事合格をした人に気合いを入れるために、その中で落ちて泣いている人もいるのだから、1年間を修業の場として頑張りなさいと伝えてきました。
 その当時は、企業が70社、100社応募してきて、大体30名の枠のうち、25名ぐらい就職できました。現在は2次募集をしても、今年は18名しかおりません。私もこれには危機感を感じて、どういうふうにしたらものづくりを若者に伝承していけるかと思っております。やはり、魅力ある技術を提供していかないと、先萎んでしまっていくのではないかと思っております。
 私どもは、その中の生徒を毎年受けております。企業が即戦力を選ぶのです。職業能力開発センターで1年間を通してやってきた者に対して、即戦力なんていうのは無理なわけです。しかし、私はその中で1年間を通して見ていた子を、毎年1人か2人を預かって5年間修業させて、5年間という目標を決めて独立させます。その独立した子が問題を抱えているのは、人を雇えないいまの状況です。現状況が変わり、その卒業生が人を使って事業を展開していけばいちばん良いことですが、それができない今の世の中は、ちょっと悲しいかなと思っております。
 もう1つは、城南職業開発センターのインテリア科では18歳から30歳までの生徒が受けております。その中で、高校の先生が言った言葉で「うちの生徒は出来が悪いから、職人にしてくれ」と。そんな馬鹿げた話を平然とするわけです。それなら職人は頭が悪いのかと。私は別に良くありませんが、そんなことも含めて、学校の教育制度も見直さなければいけないと思っております。
 2番目に、「技能士会はじめ、多くの技能士が、国家検定である技能検定制度や技能振興を支えている」。私は全国の会長をやっておりますので、北海道から九州まで講演に回っているところです。ものづくり技術者の意識改革とか、技能振興についての話を進めております。その中でいちばん気になるのは「先生、1級を取ったら国は何をしてくれるのですか」と問われることです。これに尽きるのです。私はその中で「とにかく1級を取って、こういう組織に入ってきて、皆さんは1級を取ってからが出発点だよ」と常に話しております。そういう若者が結構おります。昨年も広島へ行きまして、その話をした途端、私のいる東京に飛んできて、今日も来ています。そういう子が増えればいいのですが、なかなかそういう人は難しくて限度がある。先萎みする子を踏まえて、もう少し国の助成をいただけたらと。
 私どもは技能検定に携わる全国の技能士さんが、1日だけの技能検定の戦力ではないのです。会議を重ねて、皆さんがそこで討論して、技能検定をするわけです。この中で皆さんが言われることは、技能検定を取って、我々はいま生きている以上、国の制度がこんなものだからしようがないということを聞いております。実際、いくらもらえるのかという話になりますと黙ってしまうのです。これをいま若手に引き継ごうとしています。しかし、若者が手を挙げないのです。そうすると、ものづくり振興はなくなってしまうのです。これは皆さんよくお考えいただきたいと思います。
 もう1つは、「心ある技能士が、もっともっと活動し易いように、国家的な支援や仕組みが欲しい」という話です。我々は全検を通したり、カラーコピーの資料を見ていただければ結構ですが、私たちは国が何もしてくれないのならば、私たちで独自に動こうということで、2006年に私は何回も足を運んで、技能大会にこぎつけたわけです。その中で、技能士は費用がかかっても構わないと。我々は世界へ出て闘いたいんだと考える人が多いです。
 その中で、アメリカの若者と日本の若者は技術大会をして、アメリカのジム・ウォーカー氏が「これは日本とアメリカの友好関係で絶大なものだ」ということで、いろいろな面から支援してくれています。今回の震災のことに対しても、即座に日本の技能士が危ないということで、アメリカのユニオンの会長から義援金を送っていただきました。岩手県の技能士会の犠牲者も出ておりますので、即座に岩手県に送金をさせていただきました。そんなこともありまして、我々が民間レベルでやらなければいけない。これは本当は国が少し助成をして、ものづくりのために頑張ってほしい。我々はいろいろな政治家の方ともお話をしますが、全部把握仕切れないということです。
 私も各現場を回りますが、異常に悲惨なのは、我々は建築の中の最終仕上げです。これがきちんとできないと、お客様は受け取らない。先日間に合わない現場がありましたので、調布のマンションへ飛んで行きましたら、そこに私より確実に上の70歳過ぎの人がヘルメットをかぶって20人ぐらいいました。これを見たときに、厚生年金とかいろいろなものに対して、いままでの日本であれば本当は楽に暮らせるはずです。これができない状況で、何でものづくりが続けられますかということです。これも踏まえて、皆さんで検討をいただきたいと思っております。
 結局、ものづくり振興に対して、政治家の皆さんは、日本は苛酷よと言います。日本はものづくりだから。そのものづくりを推進するのは我々一般の者が、大企業の方に話をさせていただきました。私たちは本当のレベルの、いちばん零細企業の観点からものを話しているわけです。ですから、皆さんがその観点の中で、ものづくりの現場から発信しているわけですから、1級を取ったら制度の在り方も。私どもも1級を取ったら月1万円を差し上げています。私はその中で検定員ではありません。検定員をやりますと技能を教えられませんので、あえて私は外れています。要請は受けていますが、それではいまの7年で取れる1級は誰が教えるのですか。これは無理です。13年かかって1級を取れたものは、7年では無理です。
 そういうことも含めて、皆さんとこのような場所で話をさせていただきましたが、できれば国の政策として、1級を取ったらどの程度の支援ができるよとか。もう1つは、技能検定に携わる人たちが、次の世代に引き継げるような場面をつくっていただきたいと思っております。私の話は強烈な話をしましたが、以上ですが、ひとつご検討のほどをよろしくお願いいたします。
○今野座長 ありがとうございました。どうぞご質問をお願いします。技能検定を支えている人の年齢が非常に高い。それを引き継ぐ次の世代がいないと。何年したら駄目になりますか。例えば、どのぐらいの緊急性かなと思いまして。
○飯島氏 実際、私は回りまして、各団体と協議するわけですが、現在、70歳近くの人が技能検定に携わる中で、これはもう若手に引き継いでいかないといけないということで、
緊急を要しています。若手が1日働けばいくらなのと言うと、結局そこにきてしまうのです。ある程度、国家戦略で少しフォローしていただかないと、技能検定は昭和34年から始まっているわけですから、その中で何ひとつ動いていないのが技能検定です。これをどこかで動かさないと、私たちはものづくり立国なんていうことは考えられません。ですから、九州のある方も、生徒さんに「1級取ったら何ができるの」と言われたそうです。「先生、それは違う」と。「1級取ったら、皆さんそこで意識を変えて、さらなる技術向上を進めなさいというのが、先生方の意見ではないですか」と話したところ、「大変申し訳ない」ということでした。本来ならば、そこで少しの是正、取らない方、取った方の差別化が必要ではないかと私は思っております。いかがでしょうか。
○今野座長 ほかにいかがですか。
○大関委員 いま内装のほうで言っていただいたけれども、タイル、畳、瓦の関係の方はみんな(後継者等が)いなくなったのです。まだ内装は恵まれているほうです。鳶職にしても、いまこんな不況の中で失業しなくていいねと言う人もいるのです。ところが逆で、失業できないのです。そういう中で、民間企業で働いていると退職金や年金があるかといえば、事情をよく知らなかったといえばそれまでですが、当時の環境はそういう環境ではなかったのです。そこでいまの時代を迎えてしまって、だんだん高齢化してくる。相変わらず70歳の人が鳶職で乗っている。こういうことがいまの職人世界です。ここに何か仕掛けをしてやらないと、技能士会は怠け者ではないのです。いくらでもやるのです。ですから、自己負担しろと言えばするのです。自分たちで頑張れと言えば、自前で行くし、技能五輪でも行くのです。国内のグランプリでもみんな自前で行っているのです。
○飯島氏 これもアメリカ大会では何千万円もかかっています。その視察も私たち4名で、向こうとの話合いに行っています。ですから、やることに対してお金はみんな惜しまないです。ただ、もう少し国が検討してほしいと思います。
○大関委員 まあそんなことで、ひとつお願いします。
○今野座長 いかがですか。先ほどおっしゃられたことで、教えている方は5年間ずっと面倒を見て、卒業して行った子は自分で独立して、しかし、そこから先は人を雇えないというのは、仕事がないから雇えないのですか。そうではなくて、働く若い子がいないから雇えないのですか。
○飯島氏 そうではないです。仕事はあります。賃金がいま、昔と違って滅茶苦茶安いのです。そうすると、自分が稼いだお金は、いま全国で検討していますが、1秒1円、8時間労働で2万8,800円になるはずです。これがもらえない。朝7時から10時ごろまで働いて1万5,000円が精一杯です。そうすると、若い人を雇って、その給料が払えないのが現実です。やる人はいっぱい集まってきています。しかし、その余力、親方がないということです。是非とも、ここの格差を何とかいろいろな面からバックアップしていただければありがたいと思います。
○今野座長 それでは時間ですので、この辺で終わりにしたいと思います。ありがとうございました。次は和歌山県商工観光労働部商工労働政策局労働政策課課長の西本晴彦さん、お願いします。
○西本氏(和歌山県) 和歌山県労働政策課の西本です。本日は、このような場でお話させていただく機会をいただきまして、誠にありがとうございます。技能検定と技能振興に関する和歌山県の現状と課題について、ご説明させていただきます。和歌山県は、最も規模の小さい都道府県の1つということで、そういう所の実情ということでご理解いただけたら幸いです。
 1「本県における技能振興に関する取組」のトピック的なものを1つ冒頭にご紹介いたします。我が国におけるものづくり産業を支えてきた基盤として、技能検定に裏付けられた技能士の技術力はもちろん大きな役割を果たしてまいりました。本県においても例外ではなく、伝統産業である家具の製造をはじめ、あらゆるものづくりの現場で技能士が果たしてきた役割は非常に大きく、今後も本県のものづくり産業にとって、質の高い技能士は必要不可欠であると考えております。
 そうした大前提に立ってはおりますけれども、全国的な流れと同じく、やはり本県でも若年層を中心に、技能離れが進んでいる現状にあって、これ以上こうした流れが続くと、県の産業の崩壊を招くものとして、非常な危機感を持っています。そういうことで、改めてものづくり立県を目指すためにということもあり、平成24年度からの重点事業として、「わかやま産業を支える人づくりプロジェクト」を開始いたしました。これは、工業高校におけるものづくり人材の育成に、地域企業が積極的に参画する仕組みとなっております。高校側のニーズと、企業の二—ズを行政が間に立ってコーディネートするものです。いまのところ、県内5つの工業高校と、約90社が参画しております。
 具体的には、企業の技術者が学校で授業をする取組、^-企業の経営者などがものづくりの未来像を学校で講義する取組、あるいは学生の職業体験ということで、企業が学生を一定期間受け入れるインターンシップ的な取組と、さまざまなメニューの中から、地域の実情に応じ、効果的に組み合わせて実施しております。こうした取組は、これまで個々の工業高校と、企業間で1:1の関係の中で、単発的にこれまでも実施されてきておりましたが、1:多の取組は、私どもにとっては初めてのことになります。この取組は今年から始まったばかりですが、ひいては技能検定の受検者数の増、技能士の育成にも行く行くは寄与してくれるものと期待しております。
 そうした技能振興の取組を進めている一方で、今回検討会の皆様にご検討いただいている見直し方針等を受け、本県では所管している「和歌山県職業能力開発協会」に対し、協会の運営と検定制度の在り方について指導を行いつつ、経費の削減、あるいは収入の増加の2つの観点から、共同して改革対策を進めてきました。経費の削減について、やはり大きなものは人件費になろうかと思います。事務局の人員については、平成22年度以降退職者の補充を見送っていて、当時7名いた事務局職員が、現在は4名になっております。これによって、年間約900万円の人件費を削減しております。この人員は、現状の技能検定を実施するための、ほぼぎりぎりの人員ではなかろうかと考えております。
 技能検定の実施については、関係団体の皆さんに働きかけをして、協力協定を結んで実施していただくような取組も進めております。平成25年度には新たに1職種が加わって、計20職種で協力協定による実施となります。協力協定というのは申すまでもなく、協定先団体の理解と負担の上に成立しているということがありますので、その点には十分留意する必要があると思います。
 収入増の取組として、受検者数を増やすために、技能士を目指す中小企業の従業員、あるいは工業高校の教師・生徒に熟練技能士を派遣し、実技指導を行う取組を行ってまいりました。それを「次世代ものづくり人材育成事業」ということでやってまいりましたけれども、これについては「ふるさと雇用再生特別基金」を活用し、平成22年度と平成23年度の2カ年間実施いたしました。この事業を実施したことによる直接の効果として、わずかながらではありますが検定の受検者が年間30名増加しました。
 以上のような取組に加え、今後さらに引き続き協会の会員数、検定受検者数を増やすための取組と、さらなる給与カットを含む徹底した経費削減を検討しているところです。また、新たな収益確保のために、求職者支援訓練、研修会、講習会などの自主事業の実施も含めて検討しているところです。
 ただ、現実的にはこうした取組もすべてできるわけでもなく、やったとしても大幅な収支改善には極めて困難ではないかと思っております。また、現状では自主事業を検討いたしましても、人的リソースが決定的に不足しておりますので、実現性には大いに問題があるのではないかと考えております。こうした取組を実施しても、年間約700万円の収支不足という試算もあります。それに、人員についてはこれ以上削減することは、協会の運営に直接影響があるということで、これ以上は困難かと私どもも考えております。
 今回の見直し方針が示されて以降、関係団体の方々、あるいは事業者の方々から、私どもや協会に寄せられた意見をいくつか資料上でご紹介させていただいております。かなりストレートな書きぶりですが、ここでは詳しく一つひとつは紹介いたしませんけれども、いずれも大変な危機感をもって心配していただいていることがおわかりいただけるのではないかと思います。
 以上ご説明してまいりましたとおり、今回の「補助金削減方針」が、本県の技能振興行政に与える影響は極めて深刻なものがあります。本県における技能検定制度そのものが立ちゆかなくなる危険性も孕んでいると思っております。これは、決して和歌山県のみの特殊事情ではなく、和歌山県が特に検定受検者が少ないといった事情を差し引きましても、全国多くの都道府県で同じような危機感を共有しているところです。先日、岐阜県で開催された、全国の主管課長会議の席上においても、多くの府県の皆さんが、協会の存続にかかわる厳しい問題であるという認識を示されておりました。削減されることになるであろう国の補助金の補填を、都道府県が単独で行うことは、これまでのこの制度の国と地方の在り方や、各自治体の財政状況を鑑みた場合、それはちょっとあり得ないことかと思います。
 そこで、この事業仕分けによる補助金の削減方針の趣旨を踏まえつつ、諸々の対策を講じても、なお人的・経済的基盤が脆弱な地域において、これまでと同様、将来にわたって技能検定制度を維持するためには、補助金の交付及び検定手数料に関して、次のような配慮をお願いできたらと、必要ではないだろうかと考えております。
 1つ目は、補助金の交付に当たり、受検者数の多少にかかわらず、最低限の人員及び経費は必ず必要になりますから、一律削減ということではなく、受検者数に応じて、少ない地域の削減率を優遇するなど、これ以上の削減が困難な管理的経費などの負担に配慮した仕組みを検討していただけないでしょうか。2つ目に、検定手数料についても、自立的・安定的な検定制度の確立の観点から、実施にかかる経費を勘案の上、適切な水準に改定すること。その際に、事務の煩雑化や受検者の混乱が懸念されますので、過度の細分化は避けつつ、全国標準料金を設定することを検討していただけたらと考えております。
 冒頭に申し上げましたとおり、技能検定は本県の産業を支える基盤として欠くべからざるものでありますし、これまでも、そしてこれからも引き続きその役割を果たし続けられるよう和歌山県、職業能力開発協会が一体となって取り組んでまいりますので、委員の皆様方におかれましても、こうした地方の実情を踏まえたご議論、ご検討をお願いいたします。以上で和歌山県の説明を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。
○今野座長 それでは、ご質問をお願いいたします。
○畑中委員 確認ですが、2の2の1で「職員の整理」ということで、平成22年から平成24年で7名から4名にされたということですが、補助金は平成25年度に半減の予定ですけれども、その以前に平成22年、平成23年と減ってきたことに対応して、これだけ減らしてきたということでしょうか。それとも、来年度の大幅な削減を見越して、あらかじめこのぐらいの体制にしておいたということなのでしょうか。それから、この4名というのは事務局長も含めて4名ということなのでしょうか。この4名というのは正規職員だけの数なのか、それとも嘱託だとか、そういう方はほかにいるのですか。
○西本氏 事務局の人員については、今回の事業仕分けによる見直しの方針が出されて以降、平成25年度を見越して退職者の補充を控えることによって、あらかじめ削減してきました。職については事務局長が1名、プロパーの通常の職員が3名の体制です。正規の職員ばかりで、臨時職員は入っておりません。
○北浦委員 2つほどお伺いいたします。いただいた資料の裏側の上のところで、いろいろご苦労されている状況が出ています。「収益の多い職種のみを実施することが考えられるが、県内の受検希望者が受検出来なくなる」と書いてありますが、これは実施されない職種についての受検ができなくなることが、相当存在するということですか。つまり、少数であっても、そういうのができなくなるという意味なのか。広域的な形で受検をするということが、和歌山県の場合には可能なのかどうか。これはあくまで仮定の話ですけれども、そのようなところを教えてください。
 2つ目は、手数料の問題です。「過度な細分化は避けるとともに、都道府県間で均衡を欠くことのない」と、非常に慎重な書き方になっています。その「細分化」という意味は、職種とかそういう意味なのでしょうか、あるいはランクを付けるというようなことなのか、その辺をもう少し解説してください。
○西本氏 1つ目のご質問は、いわゆる広域的に受検ということになると、たぶん和歌山県では実施しないこととなった試験については、大阪などに出てということになろうかと思います。結果としてそうなればそうせざるを得ないわけで、やむを得ない部分はあると思います。丸っきり無理だという話ではないと思います。
 手数料に関して「過度の細分化」といいましても、職種ごとに細かく決めるということではなくて、ある程度いくつかのグループに分けて統一料金を設けるとか、そういう段階を作ってグループ分けをしてはどうかということを考えております。
○今野座長 ありがとうございました、時間がまいりました。最後は、愛媛県職業能力開発協会専務理事・事務局長の高岡松雄さんからお願いいたします。
○高岡氏(愛媛県職業能力開発協会) 愛媛県職業能力開発協会として、この場に来させていただきまして大変ありがとうございます。配付しております資料に基づいて説明させていただきます。1「技能振興施策について」です。愛媛県における取組の事例をご紹介いたします。ものづくり産業等において、卓越した技能・技術を有し、優れた指導力がある方を、県が「愛媛マイスター」として認定しております。そのマイスターの方に、業界団体等が実施する技術講習会、中学・高校生等を対象とした職場体験講座等において講師になっていただいて、技術指導などを行っていただいております。当協会がその業務を調整して担っております。
 また愛媛県においては、県内の優れた技術や製品を選定し、愛媛ものづくり企業「すご技データベース」を整理し、愛媛県下113社をまとめたものを発行しております。ホームページでも公開しております。この「すご技データベース」を利用し、中学・高校生等に対し、企業の経営者や技能者にセミナーを今年度開催することを協会として事業をいただいております。
 「今後重要と考える施策について」ですが、現在の若者は自分の地域にある優れたものづくり産業をあまり知らないという問題が、当県では指摘されております。それが、雇用のミスマッチにもつながるのではないかと考えております。そこで、在学中の早い段階から、地元のものづくり産業を知り、ものづくりに関心を持つ機会を設けることが必要ではないか。そういう取組を、国としても政策化していただければありがたいと思います。
 「国への要望について」は、いまの話と重なりますけれども、第1に学校教育における職業意識の涵養が重要と考えております。熟練技能士等による体験教室など、学校現場で積極的に取り組んでもらうよう、文部科学省との調整を含めたご支援をお願いいたします。第2に技能グランプリですけれども、最近は隔年実施ということで行っております。熟練技能者が、技能の日本一を競う大会で、本当に技能振興に大いに役立っていると思っております。左官などの職種については、業界独自で競技大会を行っています。これらを技能グランプリに集約し、その他板金とか塗装などもあると思うのですが、より活性化していただきたいと思います。
 2「技能検定制度について」です。本県が取り組んでおります受検者数の拡大策として取り組んでおりますのは、ものづくり産業における若年技能者の確保につなげる観点から、工業高校の生徒を対象として、卓越した技能の披露や、実技指導等を行い、技能検定受検を強く勧めております。平成17年度は58人であった高校生の受検者が、平成23年度には209名と大幅に増加しております。愛媛県は、必ずしも公共交通機関が充実していないことを踏まえ、受検者の利便を図る観点から、試験場での実施回数を増やし、受検者の確保につなげております。
 「費用の効率化について」です。既に、先ほども企業の事例がありましたけれども、企業として実施する場合に、自社の従業員等に対しても、練習材料を提供するわけです。そういう観点から、低額で材料を提供していただくことにより、材料費の節減を図っております。当協会には自前の実技試験会場は全くありません。会場費の負担が大きいため、施設提供企業や、ポリテックセンター愛媛に協力を仰いでいるほか、県立高校や、県立職業能力開発校には、会場費を免除していただいて、これも会場費の節減に努めているところです。
 また、事務局として松山市郊外の県有施設に入居することにより、事務所費を低く抑えることや、現在、協会の正職員を5人に抑制しておりますが、そのうちの1人は再任用の活用などにより、人件費の節減を図っております。ただし、材料費の節減について企業にお願いしているところですが、経済状況が非常に厳しくなっており、協力がなかなか難しくなっていると思われます。技能検定試験の材料は、いわば試験のための特注品が多く、供給企業が少ないという問題があります。例えば、東京の企業から購入した場合には輸送コストもかかるといった問題もあります。
 「今後の検討課題」としては、試験会場の集約化ということです。そもそも私どもの協会は試験会場を持っておりません。集約化に対応する機械台数を揃えることもできない状況であり、このために集約した会場での技能検定の実施回数を増やすだけになります。結局、事業費の削減につながらないおそれや、試験会場への交通費の負担などで、受検者数が減少するといった結果になるおそれもあります。ほかには、管理費の大部分を占める人件費の削減を検討せざるを得ませんが、現時点でも、正規職員は5人で、全員がプロパーです。給与水準も決して高くないことから、経費節減にも限界があり、補助金を大幅に削減された場合、来年度以降も円滑な検定実施体制をとれるかは大変心配しているところです。
 「手数料の在り方について」は、補助金の大幅減への対応として、手数料の引上げによる収入増が考えられ、技能検定をめぐる厳しい情勢を考慮すると、若干の引上げはやむを得ないと考えております。受検者の負担を考慮し、そういう水準にとどめることが望ましいのではないかと思っております。
 手数料の設定方法は、職種ごとに費用に見合う手数料を設定することを検討されているやにお聞きしております。結果として、一部の職種についてはそういうことをすることによって手数料が相当高額になり、また労働者や学生等の手数料負担が重すぎることも出てくるということではないかと思われ、結果としては、当該職種の技能検定が衰退するおそれもあるように思われます。
 また、手数料がいろいろな体系というか、種類が多くなると事務的にも、そういう手数料体系の収受が、我々職員はギリギリの人員体制で行っているので、そういう収納ミスが増加することも懸念されるということ。そういうことを勘案すると、現行が果たしてきた手数料負担を一定程度に抑える必要性を超えるほどのメリットが、果たしてあるかどうか。あるようには思えないため、現行の方法の維持がよいのではないかと考えております。
 「国の補助金交付の在り方について」考慮いただきたいと思います。まず、技能検定制度の維持を根幹に据えていただきたい。次に、受検者数の多寡にかかわらず、制度運営には一定の固定費が必要です。特に本県のような地方においては、都市部に比較して人口規模が小さい上、公共交通機関による利便性が悪く移動費用も高いなど、不利な条件を抱え、規模の経済が働きにくいといった状況です。以上の点を考慮されないとすると、和歌山県の方もおっしゃいましたが、各県に協会が存在して、技能検定受検の機会を確保することが困難になるのではないかと考えております。
 最後に「国への要望について」として、次の4つをお願いいたします。1番目は、現在職種の上位級として特級まであるわけですが、しかし特級は管理的要素が強くて、職人が目指す上位級としては非常に受けにくい。そういうことを考えれば、1級合格後、長年経過しても挑戦する資格がないベテラン技能者の意欲向上が衰退するのではないか。そういう方々の目標向上のためにも、これぞ技能の最上級という上位級の新設もご検討をお願いいたします。
 2番目は、小学生から高校生までを対象として、技能士をPRして、技能尊重の気運を国レベルで盛り上げていただきたいと思います。
 3番目は、職種ごと・級ごとのレベルについて、現在も基準の細目はありますが、これはほとんど一般の方にはわかりにくいのです。特に中小企業等の人事部門へ営業に行った場合に、技能検定合格者の効果を正確に評価できない面があります。このために、受検勧奨PR用に、職種ごと・級ごとに技能の到達レベルが簡潔かつ具体的にわかるものを策定していただきたい。これにより、技能検定が普及し、ひいてはものづくり現場の技能の向上、能力の向上につながるのではないかと考えております。
 4番目は、技能検定を含めた技能振興は国家戦略と言っていましたが、国家的課題であると思っております。そのためには、技能検定等の技能振興策を、国が責任を持って推進し、各県の財政状況に左右されない施策の展開を是非とも検討していただきたい。以上です、よろしくお願いいたします。
○今野座長 それでは、ご質問をお願いいたします。
○畑中委員 技能グランプリ実施職種の拡大というのは、具体的にはどのような職種を考えておられますか。
○高岡氏 左官は業界でやっております。板金職種もあると思います。造園もあります。そういうところがどうかと思っております。以前は左官も、板金もグランプリがあったと思うのですが、どういう理由か離れて、技能五輪の職種は増えているけれども、グランプリ職種は減っていっている状況ではないかと思っています。そういう意味で、技能振興としては、全国大会は非常に盛り上がりますから、是非検討していただければいいかと思います。
○今野座長 ほかにないようでしたら、愛媛県はここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。今度は全体で結構ですし、お話になった皆さんもしゃべり足りないことがあったら手を挙げてください。
○宮本委員 株式会社三ツ矢の草間様に質問させていただきます。配付していただいたチャートの3頁に「受検のための社内準備講習会実施」とありますが、具体的にはどういう方が指導員になってやっているのかを1点お伺いいたします。その下の表に「資格手当支給者」の一覧があります。上のほうの1級、2級という国家資格の下のほうに社内資格があります。7頁を見ると、手当が国家資格の10倍ぐらいの手当になっているように見受けます。どういう基準でこの社内資格を認定されているのかをお伺いいたします。
○草間氏 受検のための社内準備講習会実施について、今はもう制度としてなくなっていると思うのですが、高度熟練技能者、それから1級技能士が指導しております。
 なぜ社内資格認定のほうが高額なのかということですが、先ほどもこちらのヒアリング出席者からもご意見がありましたが、確かに国家試験として合格したことは重要なことですけれども、これで満足されては我が社としては困るわけです。それで非常に難しいのですけれども、もっと上を目指してもらおうということでそういうものを設けました。下を見ていただきますと上級、中級1名ずつというので、合格するのにうちの社内ではかなり時間がかかっています。上級、中級を受かった従業員は、当然1級は国家資格として持っています。ですから、ここで満足しないで、もっと高みを目指してほしいという目的でこれを作りました。
○今野座長 それとの関連ですが、同じ表で「教育主事」というのは何ですか。
○草間氏 教育主事というのは、いわゆる60歳以上で、定年を迎えた製造現場の技能士です。特に技能的に優れている人間を、教育の目的でいまは継続雇用しています。教育主事ではないのですけれども、最高はうちの場合には70歳の人間が現役でめっき作業をしております。
○大関委員 全体を通じてということで、国のかかわりとして厚生労働省はいちばん辛い立場なのかという気がしているのです。私が同情してもしようがないのだけれども、ものづくりに対して、政治的環境が非常に冷え込んでいます。
 私はドイツが好きなのでよくドイツへ行くのですが、行くとわかるのが、ドイツとベルギーというのはものづくりでは非常によく似ています。なぜドイツはあんなに元気なのだということになると、ドイツは教育からすべてを含めてものづくりに国が関与しているわけです。ベルギーは、どちらかというとものづくりも立派なのだけれども、民間任せなのです。
 それが、今はユーロ圏へ行くと、ドイツが1人勝ちみたいな状況です。ドイツは輸出国だけれども、ユーロが安いから、どんどん競争力が高まる。コストも、東ドイツが合併したことによってコストも安くなった。ものづくりは国が支えている。
 日本が元気だったのはどういう時代かというと、護送船団方式で、いろいろな重工業を中心として一緒にやってきたわけです。自動車にしても、鉄にしても、船にしても。そのことが日本の基盤を作ってきました。これが基本になっていて、それで放っておいても、高度成長でグアーッと行ってしまったわけです。それは国が関与しなくても、ベルギーみたいな国にしたかったらやれるのです。だけど、ドイツみたいに競争力の強い国にしようと思った場合は、国として財産を逃がしては駄目なのだと思うのです。護送船団とまで極端なことは言いませんけれども、ものづくりに対して、その兵隊をもっと大事にしてもらいたい、抱え込んでもらいたい。
 例えば技能五輪に行くのも、自前ではなくて日本の代表として行くのならば、それぐらいはスポーツのオリンピック選手と同じではないのかと。しかも、それは世の中に金メダルを取ったら評価してやろう、英雄にしようというような世の中、そういうことが大事なのかという気がするのです。現に金メダルを取っている国はどこかといったら、スイスであり、韓国であり、中国であり、インドです。結局、そういう国が経済でもどんどん強くなっているわけです。これからは、ますますその差が開かれるのではないのだろうかと思うのです。
 もう1つは自治体の役割です。今どういう現象が起きているかというと、国が切ったのだから、自治体も切るよという流れがほとんどだと思うのです。これも不思議な流れだと私は思っています。日本が駄目なら、メイドイン東京で勝負しようではないかと。
○今野座長 申し訳ないのですが、ご意見はお聞きしますが、せっかくお話をいただいた人に質問をしないと失礼なので、またあとからお願いいたします。
○大関委員 はい、ここで止めます。
○塩田委員 和歌山県の資料の裏面にいろいろ書いてあったご意見に、全く同感です。それが、皆さんの気持ではないかと思います。私がこの会議に出させていただいて、予算削減だということは皆さんもわかっているわけです。だけど、それで終わらせるのではなくて、せっかく皆さんからいただいた中で、若いといいますか、もっと小さい子どもを一生懸命育てて、子どもにいろいろな技能士の非常に腕の良いのを見てもらって、それで長い時間をかけて5年、10年先に優秀な人を育てるという方面に、予算の削減だけではなくて、どこかでひねり出していただいて、厚労省に頑張ってもらって、その中の一部の予算でいいから、そういうことにお金を回すような取組を是非組み込んでいただきたいと思います。今野先生にお願いして、そういう会議にしていただければ助かると思います、お願いいたします。
○飯島氏 その中で、私たちはものづくり振興で、中学生を対象とか、高校生を対象に、ちょっと前になりますけれども市川の中学1年生に進路についての講演をいたしました。その中で、私たちの会員10名ぐらいが、前でものづくりの実践をいたしました。私が30分ぐらい楽しい話をして、ものづくりはドイツはこうだと。会長のおっしゃるように、私もドイツへ視察に行きましたが、これはちょっと別格かなと。でも、ものづくりに対して日本は負けていません。ただ、国の在り方が違うということだけです。
 その中で学校の先生は何を言ったかというと、これは普通の授業ではあり得ないと。こういうものづくり振興が大事なのだということを、校長もおっしゃっていました。本日も、ある工業高校からインターンシップで来ています。私に発信がかかっているのは、中学生に対して、実演と講演をお願いしたいということで、もう発信をかけています。私もその中で大事なのは、先ほどおっしゃられたように、これらの子どもたちに夢を持たせてあげたいというのが1つの希望であります。
 我々はそんなに長く生きられないと思います。その中で、やはり次の世代を担っていく子どもたちに夢を与えてあげるのがいちばんふさわしいのかと思っておりますので、どうぞご議論のほどよろしくお願いいたします。
○北浦委員 いちばん最後にお話された、愛媛県能開協会さんは、全体的にいろいろあった中で、国への要望の中に、職種級ごとの到達レベルが具体的にわかるものの策定ということが出されていたと思います。これは、いまの検定基準ではなくて、もっと能力評価基準のようなものを考えられているのだと思うのですが、これはどのような用途とか、あるいはどのような背景の中でこういう要望が出てきているのですか。
○高岡氏 大変簡単なことなのですけれども、全国版のパンフレットには、1級、2級、特級の技能レベルが初級であり、中級であり、上級であるという文言しかないわけです。評価基準というのではなくて、企業へ行って説明するときに、本当に完結した、1級はこれぐらいだよと。企業の中で従業員のレベルとしては、何年ぐらい経験して、こういう内容だよということがわかるような意味で、基準を噛み砕いた、わかりやすいものを載せていただければということです。
○今野座長 私は知らなかったのですが、そういうものはないのですか。なんとなく企業で使っているときには、何かイメージは持っているわけですよね。3級はこういうレベルの社員に取らせる、2級はこのレベルに取らせるというようにイメージされているので、当然企業内ではあるだろうと思うのですが、いかがでしょうか。
○飯島氏 これは日本ではないのですけれども、アメリカへ行ったときに、1級の見積り、2級の見積り、3級の見積りとありました。1級はハイクラスでちょっと値段も高いですよと。2級はそれなり、3級は皆さんが見ているとおり、安いけれどもちょっと技術は落ちますよ、というシステムが国の政策でできないものかと思っております。
○今野座長 一般論で言うと、もともとヨーロッパ的な社会がそうですから、それがアメリカに行った。その点で日本とかアジアとは事情が違ってる、社会の歴史とか構造が違うということがありますから、なかなかですね。余計なことを言いました。
 ほかにご質問はないでしょうか。よろしいようでしたら次の話題に入ります。八幡さんは委員ですからいていただかないと困るのですけれども、お話をされたほかの方も興味があれば聞いていってください、お忙しければ離席して結構です。次に、先ほど言いました都道府県と都道府県協会を対象にしたアンケートを行いましたので、その結果について報告してもらいます。
○原田調査官 都道府県と都道府県協会に対してアンケートを実施し、ご回答をいただきました。いくつかの都県、協会の方々には、本日、この場にもお越しいただいておりますが、ご協力いただきましてありがとうございます。
 資料2が都道府県に対して行ったアンケートの結果、資料3が都道府県協会に対するアンケートの結果です。都道府県の結果について、概要としては3枚、6頁あります。その後ろに「自由記述のまとめ」があります。「概要」には、自由記述の中で数多くあった回答、代表的な回答を記載しております。後ろの「自由記述のまとめ」には、自由記述欄にご回答いただいたものを、原則的にすべて載せるということで整理しました。
 都道府県アンケートから順にご説明します。1「技能振興施策の充実・強化について」では、最初に教育関係所管部局、産業施策所管部局と連携した、若年者に対する取組をお伺いしています。それぞれの部局と連携して、高校生等に対して実技指導、企業見学、セミナー等を実施した。そのうち特に技能士や熟練技能者を活用したものが15ということで、いちばん多かったということです。自由記述との関連で申し上げますと、「概要」では数の多い順に上から3つ取っております。「自由記述のまとめ」では、「小・中学校レベル」、「高校・専門学校・職員訓練校レベル」等対象別に分類した形で整理をしておりますので、後ほどご覧いただければと思います。
 概要の1頁に戻りまして、以下「熟練技能者等に対する独自の認定制度」を都道府県ごとに聞いていて、「ある」と「ない」を合計すると47になりますが、大部分の都道府県で独自の認定制度を設定しているということです。
 4「技能振興施策で効果のあった取組」は選択式ですが、複数選択ですので、こういうところで効果があったとご認識いただいています。右側で「その他」は自由記述ですが、こういう事柄です。これについても、後ろの「自由記述のまとめ」で、それ以外のご回答を紹介しております。
 5「今後効果的と思われる取組」について、選択肢の中ではこういうところに○を付けていただいております。ここの「その他」でも「自由記述のまとめ」で整理をしております。
 以下裏で、(2)業界における技能士の活用促進、(3)で企業内における人材育成支援の強化、それぞれご覧のとおりです。
 3頁、6「国・中央職業能力開発協会に対する要望」です。ここには、「高度熟練技能者を学校へ派遣する事業を復活すべき」以下多い順に3つ紹介しております。これについてもその他は、後ろの資料で紹介しております。
 2「技能検定制度関係」です。最初に、受検者数の傾向を自由記述で回答していただいております。各県ごとにいろいろな記載をしていただいておりますが、全体的な傾向としては、ここにありますように「減少」と答えているのが20都道府県あります。業種別にご回答いただいている所ではここに整理しておりますように、「建設業関係」で減少しているとお答えをいただいた所が6となっております。「等級別」に記載していただいた中ではこういう数になっております。
 「受検者拡大のための取組」では、それぞれの項目で、影響の大きさを選択肢から選択していただきましたが、多くの項目について「影響は大いにある」、又は「影響はある程度ある」というのが大体過半数、あるいはその大部分ということです。4頁の円グラフも同様です。その他の自由記述、これまでの取組について記載があります。
 5頁では、2「費用の効率化について」お伺いしております。業界団体からの協力ということがありますが、円グラフで約3分の2が以前と比べて難しくなっている状況です。費用の節減策についても、これまでの見直し等々について、あるいは今後の取組等についてご回答をいただいたものを整理しております。
 右側で3「手数料の在り方について」です。「現行の手数料水準」について、多い順に記載しております。「実施費用の水準と同額にする等、急激な引上げは受検者数の大幅な減少等をもたらすことを懸念。」次が、「最低限の引上げは行わざるを得ない。」、「現行水準を維持すべき。」、「引上げは悪影響を及ぼす。」、「引上げは慎重に行うべき。」、「手数料の値上げが必要。」。これは、複数回答の所をここに掲載させていただいておりますが、何らかのご回答をいただいたものについては、後ろの資料で整理しておりますので、後ほどご覧いただければと思います。
 (2)今後の手数料の方式について、「現状と同じ一律を維持する」が25、下のほうの○で「職種別の受検手数料とする」が19、「意見なし、無回答」で3です。47都道府県のうち、それぞれ25、19、3というご回答をいただいております。それぞれの理由については、後ほどご覧いただければと思います。
 6頁は、職種別手数料を支持するといった場合、どういう基準、グループ化、金額の差、その他の留意点ということでお伺いしたもののご回答です。
 4は、補助金の交付の仕方についての考え方をお伺いしております。(1)イが管理費について、ロが事業費についてそれぞれ、こういうご回答をいただいております。(2)では補助金額の確定方法についてお伺いしておりますが、回答はこのような形で分かれています。
 最後に、5「国・中央職業能力開発協会に対する要望について」整理しております。以上が都道府県からのご回答です。
 次に、資料3で都道府県能力開発協会にからの回答の取りまとめです。これも同様に概要が3枚で6頁あり、その他等の自由記述を後ろの資料に整理しております。
 1「技能振興施策の充実・強化について」お伺いしているものから始まっておりますが、協会等において、独自の認定制度を設けている所が17あります。活用例はここにあるとおりです。2「技能振興施策で効果があった取組」で選択をしていただいておりますが、5の「実技指導」がいちばん多いというご回答をいただいております。「その他」は記載のとおりです。
 右側で、3「今後効果的と思われる取組」について選択式のものと、「その他」として自由記述していただいたものです。2頁は、「(2)業界における技能士の活用促進」です。これも、選択肢でご回答いただいたものと、「その他」として自由に記述していただいたものとでこのような形です。同様に(3)で「企業内における人材育成支援の強化」、右側の(4)で「若年技能者の育成支援」を、選択式と自由記述で、書いていただいたもののご紹介です。4は「国・中央職業能力開発協会に対する要望」です。
 3頁は2「技能検定制度関係」です。受検者拡大策として、最初に受検者数の傾向です。全体的な傾向としては、減少・横ばい、個別の職種等について増加しているものと、減少しているもの、あるいは級別に増加しているもの、減少しているもの、あるいは高校生が特に増加傾向にある等々、いろいろなものがあるというのを詳しく記載していただいております。
 「(2)受検者数拡大のための取組」では、会場確保、時期、学校・企業・業界団体に対する働きかけ等についての影響の有無をお伺いしております。「影響は大いにある」「影響はある程度ある」を加えると非常に大きな割合で影響があるということです。
 4頁では、「取組」について、ご回答いただいております。4頁の右下で2「費用の効率化について」で、関係団体等との連携等について、それから5頁で、その協力についての産業構造の変化や経済情勢の影響をきいており、「以前と比べて難しくなっている」が9割を超えている状況です。「実技試験の費用節減について」ですが、中央協会における見直しは、「現在の技能レベルの維持等に配慮すべき」と24協会からご回答がありました。「賛成」が16協会からありました。その際に、いろいろ考慮・配慮すべき事柄がそれぞれ記載されていて、ここに記載されているようなことを併せてご回答いただいている状況です。
 3「手数料の在り方について」で、「現行水準が望ましい」というもの、「補助金削減になれば引上げが必要」、「現行の手数料が安い」、「受検者に応分負担を求めることも必要」、「職種ごとに経費が手数料に反映されていない」等々のご回答をいただいております。これら以外のご回答については、自由記述のほうで整理をさせていただいております。「今後」については、「現状と同じ一律」が24、下から3行目で「職種別の受検手数料」が23ということでご回答をいただいていて、理由についてはここに記載のようなことを書いていただいております。6頁は、職種別手数料とした場合についての水準・基準、それからグループを設定した場合のこと、その他留意点です。
 4で補助金の交付、確定の仕方についてご意見を伺っております。「詳細がわからないので回答できない」「詳細を示すべき」ということでのご回答が数多く寄せられている状況です。
 最後は、5「国・中央職業能力開発協会に対する要望について」ということです。ここに記載している以外にも後ろの資料で掲げております。以上です。
○今野座長 本日は予定の時間も過ぎましたので、一応報告は聞いたということで、資料はお帰りになってからゆっくり見ていただいて、次回の研究会でこれに基づいて議論の時間を取りたいと思います。本日は報告のみということにさせていただければと思います。次回の予定をお願いいたします。
○吉田課長補佐 次回は6月29日(金)の13時から16時ということで、場所は中央労働委員会会館の6階会議室でお願いいたします。既にご案内しておりますが、7月10日と17日、さらに予備日ということで27日もお願いしておりますが、日程の確保をお願いいたします。
○今野座長 それでは、これで終わります。ありがとうございました。


(了)

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