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2012年6月25日 医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループ(第6回) 議事録

○日時

平成24年6月25日(月) 14:00~16:00


○場所

厚生労働省 専用第23会議室(19階)
東京都千代田区霞ヶ関1-2-2


○議題

臨床研修の指定基準について 等

○議事





          臨床研修制度の評価に関するワーキンググループ(第6回)



               日時 平成24年6月25日(月)
              14:00~
             場所 厚生労働省専用第23会議室(19階)

○臨床研修指導官 定刻より少し早いようですが、皆さんお揃いですので、医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループを開催いたします。本日は、先生方にはご多忙のところご出席をいただき、誠にありがとうございます。
 まず、本ワーキンググループの構成員に交替がありましたので、ご紹介させていただきます。日本医師会の今村先生に替わりまして、日本医師会常任理事の小森貴先生です。
○小森委員 日本医師会の小森と申します。臨床研修医を受け入れたときは、私は有床診療所の医師でしたが、ここに来る前に6年間、石川県の医師会長をしておりましたので、金沢大学と金沢医科大学の臨床研修に外部委員として様々な形で関与させていただきました。よろしくお願いいたします。
○臨床研修指導官 本日の議題に関連しまして、参考人として聖路加国際病院長の福井次矢先生にお越しいただいています。また、文部科学省医学教育課から渡辺企画官にお越しいただいています。
 以降の議事運営につきましては、座長にお願いいたします。堀田先生、よろしくお願いいたします。
○堀田座長 皆さん、お集まりいただきましてありがとうございます。それでは議事を進めてまいります。まず資料の確認を事務局からお願いします。
○臨床研修指導官 それでは、資料の確認をさせていただきます。まずは、本日のワーキンググループの議事次第の束ですが、議事次第、構成員名簿、参考人の名簿、座席表が1つの束になっているもの、それから、横向きになっていますが、ヒアリング資料が1、2、3とそれぞれ大きく3束、事務局の提出資料が1、2、3と3束あります。なお最後に、東北厚生局管内の基幹型臨床研修病院という1枚紙を置かせていただいていますが、これは事務局提出資料3の追加がありましたので、1枚だけ置かせていただいています。また、ご案内を差し上げます。
 それと、冊子が横に置いてあるかと思います。本日のヒアリングに関連いたしまして、日本医師会様より集計結果報告の詳細な冊子を提供いただきましたので、先生方の机上に置かせていただいています。これはヒアリング資料-3の関係です。
 資料、不足等ありましたら事務局にお申し付けください。以上です。
○堀田座長 不足する資料があればお申し出いただきたいと思います。よろしいでしょうか。それでは、議事に入りたいと思います。まず、基幹型臨床研修病院の指定基準等について事務局から説明をお願いします。
○医師臨床研修推進室長 お手元にお配りしている事務局提出資料1をご覧ください。「基幹型臨床研修病院の指定基準等について」です。1頁、「平成21年臨床研修制度の見直しの概要」です。これは指定基準そのものを含む制度全般の見直しの概要で、特に平成22年度の研修から適用している平成21年度の制度見直しについての概要です。見直しの趣旨としては、臨床研修制度の基本理念は変えることなく、1つは臨床研修の質の向上を図る。もう1つは医師不足への対応を行う。
 それに基づきまして、大きく3つの観点から見直しをしています。1つ目が研修プログラムの弾力化です。必修の診療科は内科、救急、地域医療の3科です。従来の7科から減らしていますが、一方で、外科等の5科から2科目を選択して研修を行う選択必修の形を導入しています。大きな2つ目は、基幹型臨床研修病院の指定基準の強化です。新規の入院患者数、あるいは救急医療の提供などについて基準を強化しました。この見直しによりまして、基準を満たさなくなる病院については、平成23年度末、すなわち本年3月末までの間は経過措置として指定を継続することとしていました。いわゆる激変緩和措置です。これにつきましては、のちほど改めてご説明をいたします。(3)として研修医の募集定員の見直しです。1つは都道府県別に募集定員の上限を設定する。また、各病院の募集定員につきましては、研修医の受入実績や医師派遣等の実績を踏まえて設定することにしています。
 次頁以降が具体的な指定基準を一覧にしたものです。根拠としているのは、1つは医師法に基づく省令の規定、そしてもう1つは、その省令に基づく施行通知です。一覧にしますと、次の頁以降、全部で22項目になっています。主立ったものを見てまいります。1つ目、臨床研修の基本理念に則った研修プログラムを有すること。2つ目、必要な数の医師を有していること。4つ目、救急医療を提供している。5番目、臨床研修を行うために必要な症例があること。これにつきましては、下に※1として記述しておりますが、具体的には、年間の入院患者数は3,000人以上であること。これは省令の施行通知で定めています。ただし、平成21年度の制度見直し、すなわち、平成22年度の研修医から適用している見直し以前から指定を受けている施設につきましては、個別の訪問調査により指定が継続される場合もあるという取扱いをしています。それから6番目、臨床病理検討会(CPC)を適切に開催していることなどが挙げられます。
 次頁の10番目、研修管理委員会を設置していること。12番目、適切な指導体制を有していること。これにつきましては、下の※2をご覧ください。研修医が5人に対して指導医が1人以上配置されているというような内容になっています。14番目、受け入れる研修医の数が、臨床研修を行うために適切であること。これは※3で、病床数を10で除した数又は年間入院患者数を100人で除した数を超えないこと。17番目、協力型臨床研修病院として研修医に対して臨床研修を行った実績があること。これは※4で、2年間研修に対して臨床研修を行ったことに相当する実績があることを掲げています。
 4頁の19番目、臨床研修病院群を構成する関係施設相互間で緊密な連携体制を確保していること。21番目、将来、第三者による評価を受け、その結果を公表することを目指すこと。この下の21と22につきましては、下の※にあるように省令の施行通知により規定しています。以上のような基準の一覧ですが、次頁に、その指定基準を巡るこれまでの経緯について少し詳しめに掲げております。
 まず平成16年度から、新制度の導入当初ですが、主な指定基準として、以下の4点について協力型の病院と共同で満たすこととされていました。必要な症例があることについては、内科・外科等の年間入院患者、それぞれが100人以上としていましたし、救急医療を提供していること、CPCを適切に開催していること、指導医1人が受け持つ研修医は5人までが望ましいことといったような規定にしていましたが、平成22年度からは、その指定基準につきまして、基幹型の病院が単独で満たすこととしています。例えば、必要な症例につきましては年間入院患者数が3,000人以上、救急医療提供、あるいはCPCの適切な開催、それから研修医5人に対して指導医1人以上配置することといったようなことについては、基幹型病院が単独で満たすことが必要です。
 なお、この年間入院患者数3,000人以上につきましては、平成24年度、すなわち本年4月からですが、平成21年度のこの見直し以前から指定を受けている年間入院患者数3,000人未満の病院につきましては、個別に訪問調査を行い、1つは適切な指導・管理体制があること、もう1つは研修医が基本的な診療能力を修得することができるという、この2つが満たされる場合には指定を継続することにしておりまして、昨年度末の医道審議会臨床研修部会において検討、決定をして導入をしております。なお、この直近の訪問調査の結果は、のちほど事務局提出資料2として改めてご案内をいたします。以上です。
○堀田座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局の説明に関しまして、何かご意見をいただけますでしょうか。これは、いままでの変更の内容のリマインドといいますか、整理をするということで、改めて何か新しく変わったわけではありません。よろしいでしょうか。これを踏まえて、これからの議論に入ってまいります。
 それでは、本日お越しいただきました福井先生から、「臨床研修アンケート中間解析結果」についてご紹介いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○福井参考人 スライドもあるようですが、お手元の資料で説明させていただきたいと思います。私の資料はヒアリング資料-1のA4版の横で見るものです。このアンケート調査は、本ワーキンググループの座長の堀田先生を主任研究者として立ち上げられた「医師臨床研修制度の評価と医師のキャリアパスの動向に関する調査研究」の一部です。入院患者数が年間3,000人以下の病院とそれ以上の病院で、2年次研修医が身に付けた知識や技能、態度に差があるかどうか、そして経験症例数について、やはり3,000名以下の病院と3,001名以上の病院とで差があるかを調査しました。
 知識、態度、技能の評価では、3頁から10頁まで記載した98項目について、例えば、3頁のいちばん上の、「患者の解釈モデルを聞きだすことができる」という項目については、「確実にできる、自信がある」、「だいたいできる、たぶんできる」、「あまり自信がない、ひとりでは不安である」、「できない」という4段階評価をしてもらいました。「確実にできる、自信がある」、あるいは「だいたいできる、たぶんできる」と答えた人のパーセンテージで解析をしています。経験症例数につきましては、11頁から最後の17頁まで85項目あります。このうちの最後の4項目は、死亡診断書、死体検案書、CPCレポート、紹介状などの医療記録の記載数です。この経験症例数につきましても、以前から私たちがやっていたものと同じフォーマットで、2年間で症例が0、1~5例、6例~10例、11例の4段階評価をしてもらったものです。以前と同じ解析をするために、ここでは6例以上、つまり6例~10例、あるいは11例以上に○をした研修医の割合を算出しています。
 1頁目に戻ります。今年の2月から3月にかけて調査を行い、4月20日締め切りでデータを解析しました。回答のあった研修施設は全部で598、大学病院が88、研修病院が510です。98項目プラス85項目と、非常に調査項目が多いものですから、いわゆる簡略版と拡大版に分けました。拡大版の98項目プラス85項目に答えてもらう研修医は、5人に1人ということで各施設にお願いしたために、トータルでは4,715名から回答があったのですが、拡大版の全ての項目に答えてくれたのはそのうちの1,095名です。残りの3,620名は簡略版で、知識、態度、技能については98項目中の35項目、経験症例数については、85項目のうち39項目に答えていただきました。したがって、項目によっては4,715名が答えたものもありますし、3,620名しか答えていないものもあります。解析の結果、3,000人以下の年間入院患者数の病院の研修医は36名でした。非常に少数です。表1にありますように、3,001人以上の入院患者数を抱えている病院で研修した研修医がほとんどということになります。研修医の特性を、年間入院患者数3,000人の上下で分けたところ、大きな差はありませんが、大学病院では年間入院患者数3,000人未満は0でした。したがって、臨床研修病院で研修をした研修医の36名が、年間入院患者数が3,000人未満の病院でのプログラムで研修したということになります。
 いちばん最後の行にある必須科目保持プログラムについては、もう少し細かい分析が必要です。1つの病院に複数のプログラムがある場合、全てのプログラムを弾力化したところと一部分のプログラムを弾力化したところがあり、その点の分類が十分ではありませんので、この数字については今回は無視していただければと思います。
 結果は裏の2頁にあります。年間入院患者数3,000人以下の施設に属する研修医のほうが、3,001人以上の病院に属する研修医よりも、知識や技能、態度の項目中、「確実にできる、自信がある」あるいは「だいたいできる、たぶんできる」と答えた割合が有意に高い項目が3項目ありました。そちらに挙げたように、「医療費や社会福祉サービスに関する患者、家族の相談に応じ、解決法を指導できる」などの項目です。反対に、入院患者数が3,001人以上の施設の研修医のほうが、入院患者数が3,000人以下の施設での研修医よりも、「自信がある」「たぶんできる」などと答えた割合が有意に高かったのは「カンファレンス等で簡潔に受持患者のプレゼンテーションができる」という1項目でした。
 次に経験症例数につきましては、6症例以上を経験した割合が、年間入院患者数が3,000人以下の施設で研修した研修医で有意に高かった項目が6項目ありました。不眠、腰痛、骨折、妊娠分娩などの6項目です。逆に、入院患者数が3,001人以上の施設で研修した研修医のほうが6症例以上経験した割合が有意に高い項目が2項目、比較的急性期の病院で多い急性冠症候群と動脈疾患などでした。
 以上、私たちが調べたデータで見る限り、年間入院患者数3,000人以下の病院で研修をした研修医の知識や態度、技能が、それより多い入院患者数の病院で研修した研修医に比べて劣るということは言えず、ほとんど同じレベルと見なしてよいと考えられます。
○堀田座長 ありがとうございました。大変膨大な資料ですが、要約すると表3でまとめていただいたような形になるということです。前回も同様なものをやっておりますので、ある意味でその比較も今後できるかと思います。関連の研究を同じ研究班の中で分担してやっていただいているものがありまして、田中委員からEPOCを活用した臨床研究の評価に関する研究の中間報告をまとめていただきましたので、ご説明いただきたいと思います。
○田中委員 基本はお手元にお配りしてあるものと同じなのですが、申し訳ありませんが、2カ所ほど訂正させていただきます。EPOCは既に何度もお話しているように、インターネット上で東大の医学医療情報ネットワークセンターにアクセスして、研修医、指導医、プログラム管理者、研修統括部門の人などが見たり入力したりすることができるシステムです。ユーザーといいますか、研修医の数だけでいいますと、大体4,000~5,000人ぐらいですので、全国の研修医の6割くらいが使っているということになります。
 今回の解析は2010年に研修を開始した研修医ですので、福井先生の調査と同じ対象学年になります。プログラムの修正が行われた研修の学年です。2年の研修が修了した、2012年6月8日の時点で、データベースに入力されているものを解析の対象としております。事実上、2年間修了しているというところです。基幹型病院の場合は、データベースの解析上の制約があり、協力病院や協力施設を含んだデータになっています。大学病院と言っても、例えば大学病院と研修病院が一緒に組んでいる場合は、大学病院のデータとしてカウントされます。病院基本情報は、REISや厚労省からご提供いただきました。
 これからお話する疾患の経験率は、研修医の自己評価によっています。EPOCの場合は指導医がそれを監査するということになっていますが、指導医の入力率が一部の病院で低いために、Nが減ってしまい統計上不正確になるということと、指導医の入力率が高い病院では研修医の自己評価とマッチ率が高いという2つの理由から、研修医の自己評価を使っています。そうは言うものの、例えばEPOCは登録している研修医の100%が必ずしも入力しているとは限りません。一部の病院は少し入力率が下がっている所もありますので、2年間やれば当然経験しているであろうと思われる発熱、意識障害、貧血をそれぞれ100%と補正することにしました。具体的には、例えば発熱は96%と出ていれば、それを100%と見なすということで、ほかの項目を補正するという形になっています。
 EPOCでは、評価のカテゴリーが3段階になっています。満足すべき水準にある、許容できる水準、あるいは不満。満足と許容を合わせて1つにまとめて、2つのカテゴリーでFisherの確率検定を行っています。3つ以上を設定した場合は、直線性の傾向を検定するCochran-Armitageという方法を使っています。
 「研修医によるプログラム評価」は、EPOCでは、2年間終わった段階で、この研修プログラムを「勧められる」「おおむね勧められる」「あまり勧められない」「勧められない」かという4段階で評価をしてもらっています。その結果は、お手元の表にありますように、臨床研修病院が1%を有意水準とすれば、有意に勧められる度合が高かったということになります。また、病床数で言えば、600床以下の病院のほうが勧められる割合が多かったということになります。ただ、入院患者は5,000人をカットオフにしていますが、5,000人以上と5,001人以上では差がありませんでした。3,000人ではなく5,000人をカットオフにした理由は、この解析で3,000人以下の病院で研修した研修医は16名しか登録していませんでしたので、統計上無理があるということでこのようにしています。
 「その理由は?」ということで、少しEPOCのデータを見てみますと、EPOCには「研修医による病院ごとの環境評価」という項目があり、休暇・休養、経験症例数、経験症例の種類、手技の数、手技の種類などを、「満足」「許容範囲内」を1つのカテゴリーにして「不満」と区別いたしました。その結果、休暇・休養に関しては、600床以下のほうが満足度が高く、1%の有意水準でそういうことになります。検査・手技、検査の種類もいろいろやらせてもらえたという点で600床以下のほうが1%有意水準で、有意に満足度が高いということになります。ただ、経験症例の種類に関しては、1%水準では有意差が出ることはありませんでした。以上が満足度です。
 今度は満足度ではなくて経験率を分析してみます。EPOCでは、厚生労働省が定めた250項目以上の項目全部が調査対象となりますので、それについて「十分できる」「できる」「要努力」の3段階で調べることになります。Cochran-Armitageを使いましたが、頻度の高い20症候の経験率の合計を統計対象にすると、0.0001の水準で、大学病院のほうが上位にきますし、入院患者数で言いますと、入院患者が多いほうが有意に経験率が高いということになります。ただ、これは別に3,000人以下だけが低いということではなくて、直線的な関係があるということで、入院患者数が多ければ多いほど有意だという結論です。
 ショック、熱傷など、救急を要する11症状で、ちょっと間違っているところがありまして、大学病院が臨床研究病院より有意に高いということはなくて、有意差はありませんでした。しかしながら、入院患者数で言えば、入院患者が多い病院のほうが経験率が高いという傾向が認められます。
 全国的に経験率が低い病気というのがあります。代表的なもので言えば熱傷なのですが、熱傷に絞って言えば、やはり大学病院のほうが経験率は高く、入院患者数も多いほうが有利だということになります。高血圧、肝疾患など、経験すべき48疾患も厚生労働省が定めているものですが、こちらの研修状況も大学病院のほうが研修病院に比べれば有利ということになりますし、病床数は多いほうが有利、入院患者数も多いほうが有利ということがあります。ただ、先ほどから申し上げているように、大学病院というのは大学病院だけでは必ずしもなくて、協力病院を含んでいる場合が多いのです。臨床研修病院も中にいくつかの協力施設を持っていれば、当然それも含まれています。
 それから、経験目標の中には、非常に低いものがやはりあります。例えば、代表的なもので言うと、泌尿・生殖器の診察というのが非常に低いのですが、こちらのほうも大学病院のほうが高い、入院患者数が多いほうが高いという傾向はあります。
 指導体制評価は、どちらの群も差はなかったということです。
 以上まとめますと、プログラム満足度は一般研修指定病院、あるいは病床数が600床以下のほうが有意に高いということになります。これらの病院の特徴は、休暇・休養、手技経験の多様さの満足度が高い。疾患の多様性の満足度は差がないということです。しかし、これは主成分分析ではありません。例えば満足度が高いの寄与因子はどれかということは言えないと思います。必修症候、疾患の経験率は大学病院プログラムのほうが一般研修指定病院プログラムより有意に高く、病床数、入院患者数の多い病院のほうが有意に高いということが言えます。
 以上が、私が当初ご用意したものです。「謝辞」ですが、EPOC運営委員会や厚生労働省、UMINセンターに感謝いたします。
 福井先生のアンケートを22日にいただきましたので、ご参考までに少し対比させてみますと、調査対象の研修医の数の分布はほとんど変わらないと思います。ただ、福井先生のデータよりも3,000床以下はさらに少ないので、それが統計上いろいろ問題になってくる可能性はあります。ただ、概ねの分布は大きく違っていないのではないかと思います。アンケートの違いなのですが、いろいろ要素はあります。例えば福井先生のアンケートは6症例以上を経験しているということですが、EPOCは1症例でも経験していれば経験したということになるという違いがあると思います。もう1つは繰り返しになりますが、統計処理が、Cochran-Armitageという全体の傾向を通して見るという分析の仕方をしているので、例えばNが16というのは、ほかの数に比べて圧倒的に少ないので、影響が消されてしまいます。例えば、こういったもので見ると、確かに3,000人以下は経験率が実はいちばん高いのです。こちらの傾向が効いているので、入院患者数が多いほうが経験している割合が高いというデータが統計上は出てきます。そこが福井先生のデータとの乖離点かと考えています。以上です。
○堀田座長 ありがとうございました。福井先生のご報告、田中先生のご報告をまとめてディスカッションしたいと思います。手法が違うものですから、必ずしもぴったりというようにはなりませんが、傾向的には似たようなところもあるという印象を持ちました。規模が小さいから駄目という傾向はないという印象でしたが、先生方からご意見やご質問をいただきたいと思います。
○神野委員 福井先生の資料で、規模で大きな差はないということはわかるのですが、2頁目の上の表を見せていただくと、3,000人以下の所で高い項目というのは、どちらかというと地域密着型、あるいはコモンディズィーズ的な分野であって、特にいちばん上の医療費や社会福祉サービスに関する相談などは、本質的にはこれから在宅や地域医療で求められるところだと思われます。おそらく3,000人以下ですので、例えば平均在院日数を15日ぐらいにすると、大体125床ぐらい、100~150床ぐらいの病院という計算になると思いますが、そういった地域の中小病院で、こういった項目が高いというのは、大きな違いとして注目すべきだと思います。選ぶ研修医の思いというのも違うと思いますが、単純に3,000人以上になると、どちらかというと専門医志向の方が増えてきて、特に22年の研修制度の見直し以来、専門医コースというのが多くの大学病院にできておりますので、専門医志向の方々にすれば、こういった地域の社会福祉サービスに関してあまり感心がないのかなと見えてしまうのですが、これはいかがでしょうか。
○福井参考人 先生のおっしゃるとおりです。先ほど大きな差がないと言ったのは、少し舌足らずなところがあって、98項目中の3項目と1項目、下の経験症例数については85項目中の6項目と2項目という意味で、全体的に見ると、あまり大きな差がないと見なすのが適切かなと思いますが、やはり項目から言いますと、先生がおっしゃるとおりで、3,000人以下の病院の地域密着型の特徴と、おそらく、指導医の先生と、かなり密接な人間関係が何となくうかがわれるような気がするところがありまして、本当は研修医1人当たりの年間入院患者数で、もともとカウントしないと駄目な指標だと思います。大きな病院で3,000人以上のところであっても、研修医をギリギリまでたくさん採っているところと、3,000人の所で、最低限2人でずっとやっている病院では、1人の研修医としてのクオリティというのは違うのではないかと思います。
○横田委員 ちょっと質問ですが、まず3,000人以下の病院というのは、大体地域的に言うと、例えばへき地とか、どういった地域に多いのか、そういった地域の偏在などはあったりするのですか。
○福井参考人 すみません。そこのところの解析をはまだ行っていませんので、今お答えすることはできません。
○横田委員 私たちは、去年の6月に国の補助金をいただいて、地域の支援センターを立ち上げたわけですが、こういったセンターができまして、定期的に臨床研修施設の指導医を集めまして会議等をやっております。その中に、卒後臨床研修機構のサーベイをやっておられる先生がおりまして、そういった先生からも3,000人以下の病院へ行って、実際に指導やヒアリングなどをしているのですが、かなり熱心に、しかもユニークな研修をしている所が多いという意見をたびたび拝聴しています。こういった客観的なデータもそうですが、指導医の先生方から、そういった意見等も聞いていただくとありがたいなと思います。
○堀田座長 田中先生のEPOCの分析については何か。
○小森委員 私は初めての出席なのですが、いままでの5回の議事録を拝見いたしますと、EPOCに対する評価について、大学病院であればいろいろ階層もあり、人員も多いので、これは可能だけれども、一般の臨床研修病院では手数がかかってとてもできないと。そういうご議論があったように私は拝見をしたのですが、今日の発表を見ますと、むしろ逆の評価が出ておりますが、その辺りのことについてはどのように考えたらよろしいのでしょうか。
○田中委員 まず入力率で見ると、大学病院は大体96%ぐらいが入力しているのです。一般研修指定病院は93%と、あまり有意な差はないと思われるのです。ですから、煩雑だといっても、例えば小規模病院ほど研修医の数も少ないので、そういう意味では、そういう手間は少ないのではないかと思われます。
○小森委員 もう1点よろしいでしょうか。いわゆるスタンダードとミニマムとの内訳はどのようになっているのですか。
○田中委員 2010年の時点では、90%以上がスタンダードで、ミニマムはごくわずかです。両方のデータを合算しておりますが、ごくわずかです。
○堀田座長 そのほかいかがですか。先ほどの3,000人未満か以上かというのは、事務局の基幹病院の訪問調査結果がありますけれども、それはあとでしますか。ここでついでに紹介してしまったほうが議論がしやすいかどうかですが。
○臨床研究指導官 もし必要であれば。
○堀田座長 3,000人以上と未満で、施設数にはだいぶ差はありますが、その特徴というか、何か変わりはあるかという話が出ていました。そこに関連して事務局が訪問調査をしていますので、それをちょっと紹介してもらいましょうか。
○医師臨床研修専門官 それでは、事務局提出資料2をご用意ください。「基幹型臨床研修病院訪問調査結果」について、ご説明させていただきます。
 まず、訪問調査の結果をご紹介する趣旨を簡単に説明させていただきます。先ほど事務局提出資料1でも説明いたしましたように、平成21年度の制度見直しにおいて、目標の達成のために必要な症例を確保する観点から、年間入院患者数3,000人以上であることが、基幹型臨床研修病院の指定基準に追加をされました。このたび厚労省で、この基準を満たさず、平成23年4月時点で基幹型臨床研修病院の指定に係る激変緩和措置の適用対象となっており、かつ調査期間中に研修医が在籍している29病院、全病院を対象に訪問調査を行いました。この結果は、小規模病院を基幹型とする臨床研修の実態を把握し、また指定基準についてご検討いただく上で有用な資料となると考えますので、ご紹介をさせていただきます。調査対象は先ほど申し上げたとおりで、調査の実施体制は3名で、昨年末から本年2月にかけて、書面上の外形基準の審査、あるいは研修医アンケート、研修医による症例呈示、あるいはインタビュー等によって行いました。
 次の頁です。調査対象となった29病院の開設者あるいは地域、年間入院患者数、病床数ごとの内訳を示しております。
 評価に当たっては、臨床研修病院の指導管理体制に関すること、研修医の基本的診療能力の修得状況の2点を軸として評価を行いました。調査結果ですが、総合評価についてはA、B、Cの3段階で行いました。結果としてAが4病院、Bが23病院、Cが2病院という結果でした。もう少し評価軸に沿って、ブレークダウンした項目ごとの評価が次の表です。
 さらに細かく評価の基本要素ごとの評価を次の頁に示しています。○△×で「適切」「概ね適切」「不適切」という形で評価をいたしましたが、総合評価で「不適切」とされた病院はいずれかの項目で×を含んでおりますが、1の2)の指導医からの指導、あるいは3)の研修の管理体制、2の2)の?、診療録の記載といった事項のいずれかで不適切であったことが見受けられます。
 次の頁です。対象病院を年間入院患者数を縦軸、病床数を横軸にそれぞれ4分割して、それぞれの層における総合評価を記したものです。オレンジで薄く塗られておりますのがAだった病院、そして薄くブルーで塗られているのがCだった病院です。これをさらに年間入院患者数2,000人と病床数200床で区切って、4つに分類したのが次の頁の表です。同じ表ですが、?のグループは、年間入院患者数、病床数ともに、それぞれに2,000人以下、あるいは200床以下の比較的規模の小さな病院、そして?のグループは200床以上だけれども、年間入院患者数が2,000人以下の、どちらかといえば、平均在院日数が長い、あるいは病床利用率がわりとゆっくりした病院、逆に?のグループは200床以下だけれども、年間入院患者数は2,000人以上という、どちらかといえば、平均入院在院日数は相対的に短いほうで病床利用率が良いほうの病院、そして?は年間入院患者数は3,000人以下の病院の中でも、200床以上、2,000人以上で、比較的大きな規模の病院というグループになっております。
 9頁です。それぞれのグループごとの総合評価及び中項目の評価を見ております。薄くオレンジで塗られている欄が、それぞれの評価項目の中でいちばん多かった評価を表しています。?及び?のグループで、相対的に中項目でaだった項目が多いようにも見受けられるのですが、一方でcだった病院もそれぞれ?、?のグループにありますので、こちらから言えることは、年間入院患者数が3,000人未満という比較的小さい規模の病院では、それぞれの病院ごとに研修の内容に差があって、一般化するのは少し難しいのかなということは言えるのかなと思います。
 続いて10頁です。こちらは研修医アンケートから2年次研修医の記載内容を基に、ローテート状況の調査をしたものです。結果として、平均70.6%の期間を基幹型病院で研修をしておりまして、全員一度は基幹型病院で内科を研修していたという事情がありました。
 11頁です。こちらは1年次、2年次合わせて自由記載欄に書いていただいた内容を、ある程度類型化してお示ししております。「よかった点」としては、先ほどの診療科間の垣根が低く、他科の先生方にも相談しやすい。あるいは先ほどもありましたが、マンツーマン等、非常に密度が濃く丁寧な指導に満足している。症例や手技を数多く経験できるといった記載が多く目につきました。一方で「残念だった点」としては、6例と少ないのですが、診療科が少ない。当然と言えば当然なのかもしれませんが、そういったこともございました。症例数が少ないといった記載は1名の方に見られました。
 12頁はご参考ですが、平成22年度の厚労科研で、桐野高明先生が研究代表者としておまとめいただいたものですが、小規模の臨床研修病院に対する実地訪問調査の概要を示しております。結論といたしましては、きめ細かい指導を受けているため、概して臨床能力は高く、臨床研修は充分に行動目標、経験目標を達成することができていたのではないかという結論をいただいております。
 今回、関連して年間入院患者数3,000名未満の病院がなかった東北地区におきまして、同じ時期に同じ調査形式で、年間入院患者数3,000人以上の病院について、訪問調査を行っていただいたので、その結果を東北厚生局の堀内審査専門員よりご報告いただきたいと思います。よろしいですか。
○堀内審査専門員(東北厚生局) 東北厚生局の堀内です。よろしくお願いいたします。資料3をご覧ください。あとから付けた1枚ものの資料をご覧ください。これは、東北厚生局の現在の基幹型臨床研修病院の様相を見ていただきたく示したものです。東北6県で、合わせて84病院が基幹型臨床研修病院として研修を行っております。募集人数は832名になりますが、採用実績は417名、約半分ぐらいが現在稼働している状態です。特に震災後、福島県の研修医が減少しています。これはいろいろな形で報道されています。
 同じ時期、同じ状態で行った項目ですが、資料3をご覧ください。開設者、都道府県、年間入院患者数は、ここに書いてあるとおりです。いままで6年間にわたって大体各県2病院ぐらいを毎年調査しておりまして、今回が大体2巡目の初めというところです。比較的各県の代表的な病院が多かったわけですが、それ以外にも規模の小さい病院も含まれております。
 2頁をご覧ください。調査結果です。ここに書いてあるとおり、総合評価はAが0、Bが7、Cが0という状況です。項目1、2はここに書いてあるとおりですのでご覧いただければと思います。この中で特筆すべきなのは、2の2)、患者の問題を把握し、検査や治療計画の全体像を把握して診療にあたり、臨床上の疑問を解決するための自己学習の習慣がついているか、ということですが、これについてはここに書いてあるとおり、比較的良い研修をやっているなという印象を受けました。
 次に3頁をご覧ください。小項目についてです。これもここに書いてあるとおりで、特にコメントはありませんが、ご覧いただければと思います。
 4頁の調査結果?(小項目)です。これもここに書いてあるとおりです。いちばん臨床研修で大切な、良い指導者についていろいろな経験をして、それをよく解析して、自分の検査・治療に応用していける、あるいは、そういうことを指導者の下でやっていけるという環境が整っているかという点においては、概ねいいのではないかということです。これは、今回、小さな規模との比較ということで出しましたので、あとの結果については、事務局のほうからお願いいたします。
○医師臨床研修専門官 それでは、次の頁をおめくりください。青と赤のグラフがある5頁です。こちらは、いずれも2年次研修医のアンケートの結果から得られたデータです。1つ目のグラフは、「基本的な臨床検査・手技の習熟度についての自己評価」を4段階で記載していただいたもの、福井先生のアンケートと似通った評価軸になっております。これを年間入院患者数3,000人以上の病院を対象とした東北調査と3,000人未満の病院を対象とした全国調査で、その平均を比較いたしました。ざっと見ますと、項目ごとの傾向は似ていて、本当に大ざっぱな数字のつかみではありますが、平均値も同じような値であったということがあります。
 6頁も福井先生と同じような評価の仕方をしておりますが、「経験症例数について」、0例~11例以上を4段階に症例の規模で分けて、到達目標にあるような症候や疾患ごとにそれぞれの自己申告で記載していただいたものです。こちらも、項目ごとの傾向は両調査で非常に類似しておりまして、全体の平均値も同じような値になっております。これらから、研修医の経験する症例の種類や数、到達目標にあるようなレベル、あるいは検査・手技などの傾向、経験内容については病院規模にかかわらず大きな差異はないのではないか、ということが1つあるかなと考えています。以上で説明を終わらせていただきます。
○堀田座長 ありがとうございました。いま3つのご報告をまとめてというような形になります。それぞれ切り口が違ってはいますが、規模で見たときにどれほどの差があるかというと、特徴はそれぞれ少しずつあるにしても、全体としてレベルはある程度維持されているという印象だと思います。田中先生の切り口は5,000例という切り口でありますが、3,000にしても変わらないのですか。
○田中委員 5,000で切っているのは満足度のところです。
○堀田座長 そこだけですね。
○田中委員 そこだけです。私のヒアリング資料-2を見ていただきますと、例えば13頁を見ていただきますと、階層は出ていますが、3,000と3,000~5,000、5,000~7,000と7,000~1万と1万以上と、そのように分かれています。EPOCの分析によれば、満足度は大学病院よりは臨床研修病院のほうが高い、あるいは600床以下の病院のほうが高いということは言えるのです。1個でも経験していれば経験なのですけれども、経験率で言えば、入院患者数の多い病院のほうが有利だということです。ですから、満足度と経験は逆の傾向を示しているということです。
○堀田座長 3,000人以下の入院患者さんのところは、協力型ですか。基幹型ですか。
○臨床研修推進室長 基幹型です。
○堀田座長 基幹型だけを問題にしているわけですね。ですから、そういう意味では、ある程度の基準をクリアしているけれども3,000人以下だということ。これが1つの基準として、今後そこを足切りするかどうかという話になっていたのが、どうもそうではないなという印象を持ちましたが、いかがでしょうか。
○岡留委員 3,000という数字が独り歩きしているような感が拭えないのです。いつの時点で3,000というのが出てきたのか。そのエビデンスはどこなのだろうかと。厚生労働省のホームページをずっと見ているのですが、その論拠というか、おそらくこれはどこかの政治マターであったかもしれませんが、どうもノンアカデミックなところで出てきているようなところがあるのではないかなということ。医事課長の田原さんがいるので、あまり痛切に言いたくはありませんが、どうも3,000という数字に何でこんなに捉われなければならないのか。いままでの議論を見ていたら、ほとんど差がないと。当然な話だろうと思うのですよ、結果的には。私たちは、この3,000という数字をこれからどうしようという方向にいくのだろうかと、私でさえも疑問に思うのです。疑問提起なのですが、いかがでしょうか。
○医師臨床研修推進室長 3,000人という基準の根拠ですが、先生ご指摘のとおり、何かの明確な算定根拠があって、イコール3,000ということではありませんで、実は事務局提出資料1の5頁、「基幹型臨床研修病院の指定基準をめぐるこれまでの経緯」というところをご覧いただきたいのですが、平成16年度、いわゆるいまの新制度導入当初の基準といたしましては3,000というのはなく、内科・外科・小児科・産婦人科・精神科の年間入院患者100人以上としていたところが、平成22年度の見直しの際に、基幹型臨床病院が単独で満たす要件の1つとして、必要な症例があることという、必要な症例の規模として、年間入院患者3,000人以上という基準が導入をされました。3,000人以上というのは、実は平成15年度以前に臨床研修病院の指定をする際の条件として、新制度導入前に300床又は年間入院患者数3,000人以上という基準があったことを踏まえて、臨床研修部会で審議をした結果、やはり症例として一定程度必要で、かつ15年度以前には3,000人という基準があって、これがある程度合理性があるのではないかということで、3,000人というのが改めて22年度に設けられた。かつ、いま申し上げた300床のほうは、病床数で一律に区切るのはいかがなものかという部会でのご議論を踏まえて採用されなかった。そういう経緯を踏まえて、22年度以降に年間入院患者数3,000人以上というのが、規定をされております。この右側に書いてありますように、その際に、激変緩和措置ということで、今年の3月までの間には、3,000人に満たなくても指定を継続することとしておりました。その激変緩和措置の期間が3月で切れるものですから、改めて臨床研修部会で検討をした上で、右側に書いてありますように、これは制度見直し以前から指定を受けている病院についてのみですが、3,000人未満となる病院につきましては、個別に訪問調査を先ほどのような項目で行うことによって、適切な指導・管理体制、あるいは研修医が基本的な診療能力を修得することができると認められる場合には、3,000人に満たなくても指定を継続するというやり方を導入したという経緯でございます。以上です。
○岡留委員 そのデータの比較の仕方なのですが、初期臨床研修制度以前のデータが出てきているでしょう。それはスーパーローテーション方式とか、いろいろ加味させると、ほとんどストレート研修の時代でしょう。比較はできないと思うのです。偏ったローテーション方式で、偏った研修方式だから3,000という数字が出てきたのではないかと、いつも頭の隅にあるのです。
○堀田座長 ただ、今回3つのご報告の中で、3,000にあまり根拠がないなというのは、何となく皆さん了解事項になるかなと思いますので、先生がいまおっしゃったように、ここにあまりこだわって線を引いても意味がないようです。むしろ、もっと中身を精査する必要があるのではないかということだと思います。
○片岡委員 先生方のご発表のデータをお聞きして、最初に神野先生がご指摘されたのと同じなのですが、やはりプライマリ・ケアを学ぶという観点では、こういう中規模、小規模の病院での研修の意味というのが非常に大きいということが、改めて示唆されるデータだったのではないかと思います。現実的にそこでいい研修が行われているかどうかという評価について、やはり今回3,000という基準がきっかけとなって、こういったような詳細な調査が行われたことは大変意味があったのではないかと思います。訪問調査は、すごく手間もかかるし、大変なことだったと思うのですが、それによってわかったことというのは、研修の本質的な部分を表していると思います。自分自身でも、協力型施設の訪問等は独自に行っておりますが、大学病院も含め、訪問調査はどのプログラムでも有用であり、東北で網羅的な調査がなされているように、今後適用を広げることを検討するほうがいいのではないかと思います。
○堀田座長 そうですね。大変貴重なご意見をいただきました。数値で表われるものだけではなくて、中身はどうなのかというのは、おそらく訪問調査をして、例えば研修医にインタビューしたりとかということによって、随分また違ったものが見えてくるのだろうと思います。そういう意味では、東北のほうのデータもなかなか良いデータだと思います。ほかにご意見をいただけますか。
○神野委員 今回、事務局提出資料の2のほうですが、このデータというのは、調査期間中に研修医が在籍している29病院ということなのですが、では、この3,000人以下の基幹病院で研修医が在籍していない病院というのは、いくつかありますでしょうか。
○医師臨床研修推進室長 ございます。
○神野委員 分母はどれぐらいなのですか。
○医師臨床研修推進室長 申し訳ありません、いまちょっとデータを。
○神野委員 100分の29ではなくて、30いくつ分の29なのですよね。私が言いたいことは、3,000人以下で研修医に人気のない病院というのはどんな病院かなと気になるのですが、岡留先生もおっしゃったように、3,000というのは全然意味がないことは今回の資料でもわかりましたし、その前の桐野班のデータでもそういう結果が出ておりましたので、3,000に代わる何らかの基準というのが必要ならば設定すべきでしょう。そこにはもしかしたら、いまおっしゃったような評価というのもあるかもしれないし、あるいはきちんとした専従の事務局体制とか、いくつかの項目を挙げていって議論すればよろしいのではないかなという気がいたします。ただ、いずれにしましても、今回のデータというのは、22年の研修制度見直し以降、初めてのデータですよね。ようやく22年のモデルチェンジの評価ができる時期になったので、22年のモデルチェンジをもう一度考えてみなければいけないのかなと思います。
○医師臨床研修推進室長 先ほどご指摘がありました3,000人未満で研修医がいない病院、手集計なのですが、大体20~30病院あるということです。
○福井参考人 いま、神野先生がおっしゃったことについては、まだ解析が終わっていないのでお話はできないのですが、平成22年に研修を開始した研修医について、弾力化プログラムに移行したプログラムで研修をした研修医と、以前と同じ、最低7科ローテーションしている、継続プログラムで研修をした研修医のデータがあります。それらについてデータの解析中ですので、その結果を先生方に知っていただいた上で、ディスカッションしていただければと思います。
○堀田座長 弾力化した以後も、7科必修のままやっている病院も結構ありますよね。
○福井参考人 データを見た感触では、約30%が従来と同じプログラムを維持している病院で研修したようです。残りが弾力化した病院での研修です。その弾力化にもかなりの差があって、厚生労働省が決めた3つの科だけのローテーションで、あとは1つの診療科の研修を行っている病院、中間的な数の診療科をローテーションしている病院もあります。そのあたりの解析をこれから行いたいと思います。
○堀田座長 ここで一区切りさせていただいて、医師会から今日、小森先生がデータを持ってきてくださって、医師会病院における臨床研修に関する調査結果があります。これを踏まえて、またディスカッションに戻りたいと思いますので、小森先生よろしくお願いします。
○小森委員 スライドもありますが、お手元のパワーポイントの資料でご説明をしたいと思います。私ども、特定の主張を目的にして発表させていただくわけではなくて、ただ医師会病院というのは、すべてが地域医療支援病院であること。そして、紹介率がおおよそ80%以上であるというような特徴があります。また、さまざまな経緯によりまして、比較的西日本にこの病院の所在の中心がある。この3つの特徴があるということを少し頭に置いていただいて、ご覧いただければと思います。
 1頁です。対象は全84病院中、回答数は66病院です。2頁は「許可病床数」ですが、66病院のうち、100~199床が35病院、200~299床が19病院です。3頁は「年間入院患者数」ですが、65病院のうち3,000人以上が17病院、次いで1,000~1,999人が16病院。ちなみに、最少は50~99床の病院で124人、最多は300~500床未満の病院で9,803人でした。4頁は、「許可病床数別年間入院患者数(基幹型)」です。そこに書いてある、いま議論になっている100~199床の病院1病院が、基幹型であって3,000人以下に該当するわけですが、2,924人、1病院のみです。
 「CPC開催」は全病院の回答です。300床以上で開催ありが7。200~299床で開催あり7。当然、病床数が多いとCPCの開催が多くなっていますが、ご承知のように基幹型病院についてはCPCの開催は義務ですので、医師会立の7病院、基幹型の病院はすべてCPCは開催をしております。6頁は「救急医療の提供」の状況。7頁は「医療法上の必要医師数」。ほぼ充足、また病床数が多くなる度に、救急医療の提供がなされていることが明確です。「病院数:指導医数別」の表は8頁です。大変少ない病院がありますが、ほとんどこれは基幹型並びに協力型の病院ではありませんで、あくまで協力施設、あるいはどれにも属さないという病院がほとんどです。9頁は「指導医数:臨床研修病院種別」ということですが、いまお示しをしたとおり、指導医数は、基本的に基幹型病院についてはおおむね足りている現状かなと思っております。
 10頁は、「臨床研修病院種別病院数」です。ご覧になっていただければよろしいかと思います。11頁は「年間受入研修医総数:許可病床数別」です。客体数が少ないですので、おおむね病床に応じてということでご覧いただければと思っております。12頁は「年間受入研修医数:臨床研修病院種別」。13頁は「基幹型臨床研修病院としての研修医募集定員及び受入数」ですが、書いてあるように、平成22年度については定員合計が36人中受入数が24人、平成23年度については定員が34人中18人という現状です。14頁は指導医数、15頁は研修期間、16頁は研修医の受入数。17頁は「協力型臨床研修病院としての研修期間」。18頁は「協力型臨床研修病院としての研修科目及び延べ研修医数」。19頁は研修医受入数、並びに研修期間。21頁は研修科目及び延べ研修医数。このあたりはお目通しいただければよろしいかと思っておりますが、いま3,000人の問題がたまたま出ましたので1点だけ、26頁に3,000人を切っているある1つの病院からの意見ということで、参考までに書いてあります。それだけ読ませていただきます。
 「基幹型臨床研修病院の基準が強化され」、これは3,000人ということです。「中小病院にとっては困難さを増している。しかしながら、本来の臨床研修の理念からすれば地域医療やプライマリケアを中心とした中小病院こそが理想にかなうものがあると考える。臨床医を目指す者のために少なくともこのような選択肢を残すべきである」。3,000人以下の病院が1病院たまたまありましたので、その方の貴重な意見ということでご紹介をさせていただきました。貴重なお時間、ありがとうございました。
○堀田座長 大変詳しい資料を掻い摘んでお話いただいたので、フォローできなかった部分があるかもしれませんが、その辺はご質問をいただければと思います。
○小森委員 それと、集計結果の細かいものは皆様に一部ずつお渡ししていますので、それこそお時間のあるときにご覧いただければと思います。
○堀田座長 この資料には出てきませんが、詳しいほうに例えば習熟度や満足度といったようなものも出ていますか。
○小森委員 今回のアンケートでは、その件については調査をしておりません。
○堀田座長 いまの小森先生からのご報告について、何か特別にご意見はありますか。よろしいですか。
○横田委員 基本的なことを聞いてよろしいですか。医師会病院の定義は医師会立病院なのか、私立病院という形もありますが、どういう形でやっておられるのですか。
○小森委員 すべての病院が一律というわけではありませんが、医師会立病院というふうにご理解をください。多くは、病院が次々とできていく時期において、国公立並びに民間においても病院がないという現状のところに、地域医療を守るという観点から、それぞれの地区医師会がそれぞれ医師会立病院を建設をして、少しずつ増えてきたという状況とご理解いただければと思います。
○堀田座長 そのほかはいかがですか。岡村先生、何か。
○岡村委員 田中先生の資料や福井先生の資料は研修内容という観点から出されていたのですが、いま小森先生から出されたものに地域というのが少し出てきたもので感じたのですが、医師会病院が西日本に多いとおっしゃいましたか。1つには、本日の話題では「地域」という言葉があまり出てこなかったのですが、今後、今日の指定基準ということをグローバルに考えるときに、先ほども東北というやや特殊なデータを出されて、今回も医師会病院という、西日本に多い地域医療を中心に建てられた病院といったところで考えたときに、研修内容だけで切ってしまうとまずいような気がします。まとまっていないのですが、小森先生、例えば東日本だとJA系の病院が多いとか、西日本だと医師会立が多いとか、そういうのは何かありますか。
○小森委員 それはいろいろな要因がありまして、一律に申し上げられないのですが、お答えにならないかもしれませんが、神野委員が先ほどおっしゃいましたように、医師会病院の特徴として、地域によって全く違うわけですが、国公立並びに民間の病院が必要であるのに、さまざまな経緯でできなかったところを医師会立として作ったところがほとんどです。比較的郡部というような所で、非常に大きな国立病院機構などは、さまざまな事情で戦前の陸軍病院、海軍病院や、いろいろなことを引っ張ってきていますよね。そういったものがたまたまないというか、そういう意味での地域病院が多いことと、いま申し上げましたように、中にはかなり高度医療を担っている所もありますが、比較的多くはプライマリケア、一般医療、二次救急まで担当している所が多いですから、そういう意味では100%地域医療支援病院であって、本来の趣旨の地域医療支援病院、ほとんどの病院は紹介率80%という病院であるという特徴があると思います。
○堀田座長 そのほか、ご意見はいかがですか。大滝先生よろしいですか。
○大滝委員 医師会病院に限ったことではなく、外形基準の数で切ることが実態に合っていないことが、はっきりはしてきたと思います。では次に何を基準にするかを考えたときに、いまの話題ともつながりますが、一律でいいのかということも検討する必要があると、いまのデータを拝見して思いました。以上です。
○堀田座長 皆さん、今日のデータでおそらく同じような感想をお持ちだと思いますが、単に何千で切るということにあまり根拠がなさそうであると。ただ規模が小さければ、それだけまた逆に地域特性や、そういう特徴のあるプログラムを立てやすい。あるいは、人間関係がかなり濃密である傾向はありそうだと。そういう場合に数だけではなくて、特色のあるプログラムをある程度許容できるかどうか。今後は、そういう問題になると思います。この辺で何かご意見をいただければと思いますが、岡部先生いかがですか。
○岡部委員 この医師会病院の資料は2,924人と3,000人に近いのですが、3,000人という数は前の年の数ですか。お話を聞いていて、それも不思議な気がしたのです。例えば、過去5年間の平均なり変動率みたいなものを考えて、境目を切るほうが科学的な気がしました。
 もう1つは、先ほどの事務局提出資料に2と3があって、結局大項目でCが付いている病院が資料2では2つあって資料3のほうは0です。これは、あまり気にしなくていいことですか。
○医師臨床研修推進室長 先ほど来申し上げましたが、資料2は3,000人未満ということで訪問調査をさせていただいて、その結果A、B、Cの評価をしています。資料3はもともと基準をクリアしている3,000人以上のところで、今回の調査については資料2の3,000人未満のほうに一部Cという評価がありました。このCの病院の取扱いについては、8月に開催をする臨床研修部会のほうで、それをどうするのかということをご議論、ご決定いただくことになります。
○岡部委員 そういう意味では、個別調査されることには意味があるということだと思います。個別調査をするときに、どういう基準でするのかという考え方があると思います。その際、例えば3,000人程度より少ない病院というのは、確かに先ほどのお話ですと0.8%の36病院なので、数としては調査しやすい程度のスケールであることになりますよね。ですから、サンプリングする対象としていちばん裾野の小さめの病院をサンプリングして、その病院がどういう状態にあるということを訪問して調べてみるという、そういう考え方もあるのではないかと私自身は話を聞いていて思いました。
○田中委員 それと関係しますが、99.6%か99.5%の研修医がいる病院に、エネルギーを注いだほうがいいような。例えば0.5%の病院を排除する理由を探すためとか、どうかする理由を探すというよりは、99.5%の人が研修している病院が、きちんとやっているかどうかを見る方策を考えたほうがいいような気がします。
○神野委員 これから日本の医師のありようというか、今更ですが、専門医だけでいいのか。それから総合医、家庭医をどれだけ作るべきかという話とは密接に関わってくるわけで、全部専門医でいいならば、大規模病院で専門診療科でバリバリやっていただければよろしいと思います。しかし、どうもこれから高齢化の時代とか地域の医療を考えたら、そうは言っていられないので、総合医、家庭医、ジェネラリスト、そういう希望をしている学生もたくさんいらっしゃるはずですので、そういう方々をきちんと育てることができる研修はどうあるべきかという視点を、これから入れるべきなのかなと思います。
○横田委員 いまの神野先生と全く同感で、私たちも地域医療支援センターを作りまして、そこに主に総合診療とか救急を主体としたキャリアパスを作っています。そこで大体、初期研修が終わってから3年か4年ぐらいすると救急や総合内科の研修医、専門医の資格が取れるということですが、初期研修だけではなくて卒後6年目ぐらいまでの後期研修も含め、両方あって完成したドクターが育っていくのであって、初期研修だけ、あるいは後期研修だけと見ずに、両方バインドした形で物事を考えていく視点が非常に重要ではないかなと思っています。
○医師臨床研修推進室長 先生ご指摘の後期研修、つまり専門医の研修のあり方等については、別途3月に簡単にご案内をいたしましたが、専門医のあり方に関する検討会というのを省内に立ち上げておりまして、そちらのほうで?久先生を座長にご審議を賜っております。当然、ここでの初期研修のあり方と後期研修のあり方というのは、十分リンクをさせていかなければ意味がないというのはおっしゃるとおりで、両方の情報を交換するというようなことで、シームレスなキャリアパスということも念頭に置きつつ私どもも考えてまいりたいと思っています。
○堀田座長 最初から岡部先生から、学部教育と初期研修と専門研修は一連の流れの中で位置づけなければ、これだけ切り離しできるようにしていても駄目だろうという指摘を受けていました。それもありまして文科省からもこの会議に参加していただいております。文科省から何かコメントはありますか。
○文部科学省医学教育課企画官 いまのコメントですが、いろいろと文科省の教育等々を考えている場合に、キャリアパスは決して2年間ではないので、いままで先生方が言われましたように、医師の1つのキャリアパスは10年ぐらいになるのですか、まずそのぐらいのことも念頭に置きながら、ご議論いただけたらよろしいのかなと思っています。
○堀田座長 学部教育が充実してきて、クリニカルクラークシップなどがどんどん進んでくれば、初期研修の一部は取り込める形にはなります。そういう流動性があるものだから、あまり固定的に考えすぎないほうがいいのかもしれません。今日は基幹型の臨床研修病院の指定基準等というテーマで話をしていますが、福井先生から出していただいたデータは、どちらかというと平成22年度研修の終わりの方の満足度や達成度といったものが、実は前のものとどう違ってくるのか。見直しプログラムの変更によってどう変わってきたかという、本当はそこが見たいところですが、それはいつごろわかりますか。
○福井参考人 解析中で、間に合いませんでした。
○堀田座長 次の機会に、是非よろしくお願いしたいと思います。何か解析などで、こういったところはどうかというような提案はありますか。
○岡部委員 先ほどの話にもつながりますが、前後ですね、前の状態から臨床研修をやって、そのあとどうなったかという全体が見えるような解析が、何年後かには実現できるといいと思います。
○堀田座長 福井先生、何か追加することは。
○福井参考人 調査研究は、まず平成15年にやって、そのあと必修化された1期生、2期生、3期生を対象に、ずっと同じ項目を使ってきましたので、そのような時間軸上、今回弾力化された1期生がどういうところに位置しているかを、是非お示ししたいと思っています。
○岡村委員 事務局提出資料の3のいちばん最後の「経験症例数について」というグラフを興味があって見ていたのですが、例えば青と赤がとても差があると思います。26の腎不全や34の急性冠症候群の青と赤の差が結構あります。これに関しては3,000人以上の東北調査ですが、いいのかなと思って見たのですが、この表の見方が左側のバーで見たときに、1.5というのは、1例~5例までと6例~10例の中間になりますね。ですから、基本的にこれが1.5より上に行っていれば、そこそこの経験はできるというような意味で解釈すればいいのかなという気がして見ていたのですが、ただこの表の作り方が、1例だと1点だし10例でも2点になるので、何かもう少し良い表現があったほうが良いと思います。
○堀田座長 例えば、ドットで分布を出すという手もありますね。
○医師臨床研修専門官 福井先生のほうでは6例以上の割合という形で出されていましたね。もし、そういうほうがいいということであれば、6例以上だった研修医の割合を出すこともできるし、どうでしょうか。ここより深く掘り下げて見たほうがいいということなら、もちろんそういった。
○岡村委員 結局、このまとめ方が福井先生は6例以上と言われて、田中先生のEPOCは1例というところだったし、事務局はまた違った表現をされていますね。
○医師臨床研修専門官 いちばん大雑把な形で申し訳ありません。
○岡村委員 最初のこの臨床研修のワーキングの1でしたか、これの当初の目標が臨床研修の質の向上を図るという。要するに臨床研修の質の向上というのは、必要な疾患、症状というのをある程度の数、経験できるといったことで見たときに、疾患ごとにもちろんどれぐらいの経験が必要かというのはありますが、1例とか6例とか、何か足並を揃えるような表現があったほうがいいかなと考えていたのですが。
○福井参考人 そもそも曖昧な数値ではあります。研修医によっては経験した病気の患者数をきちんと記録に取っている人、つまり研修ノートをしっかりと記録していて、2年を振り返って自分は何例経験したということをきちんと言える人と、大雑把で大体これくらいだろうという数値しか答えられない人がいます。したがって、そこのところを頭に置いていただいて数値を読んでいただく必要があると思います。
 もう1つ重要なことは、知識と技能、態度がどれくらい身についたのか自己評価をしてもらって、その妥当性を担保するために、経験症例数を訪ねることとしました。経験症例数がゼロなのに、自分はできるというふうな答えが得られれば妥当性がないということになります。症例数のある程度多い人が、知識、技能、態度が身についたと答えていれば、整合性が取れるわけです。自己評価ではありますが、知識、技能、態度の到達度で評価するのが望ましいと思っています。
○堀田座長 それは自己評価だけではなくて、客観評価にどうやって持って行けるかがものすごく難しいところですね。それは今後の重要なテーマだと思います。何かほかにご意見はありますか。
○田中委員 当初は、250いくつありますが、なるべくたくさんの病気を経験して幅広い臨床経験を積んでもらいたいというのはあったと思います。そのときは、症例数よりは、もっと幅広いものを経験してもらいたいというのはあったと思います。もし今回、大幅な見直しをするということであって、もっと経験項目を絞らないと、経験症例数だけにフォーカスしていくと、あまりにも250いくつというのは多すぎるので、ボコボコ抜けるところが出てくるのだろうと思います。ですから、かなりそれは根本的な議論が必要ではないかと思います。
○堀田座長 経験をしなければいけない項目についての整理や、そういったものを平行的にやっていかなければいけないと思いますが、今日の全体の指定基準ということから言うと、まだこういった指定あるいは調査が必要だということが何かありますか。今後、追加で何かできることがあれば追加してもらいたいと思いますので、どうでしょうか。それから、先ほど福井先生、田中先生に研究班のデータの中間的な報告をしていただきましたが、これから研究班で出てきた成果については順次この会議で報告していただき、新しいものに基づいて皆さんのご意見をいただきたいと思っています。大滝先生も含めて、いま海外の調査等も含めてやっていただいています。よろしくお願いいたします。
○大滝委員 関連して1つよろしいですか。桐野先生の研究班のときから話題にしていたのですが、この3,000人云々の数以外に、どの地域に何人研修医がいるのが妥当なのかを、何を基準に考えるかという案の1つとして、研修の経験目標にもある、救急患者数を提案したいのです。救急患者がどれぐらいその地域で発生しているのか、救急車に限らず、歩いて受診する急患を診るいわゆるウォークインなどもあると思います。3,000人が妥当かどうかは別として、大きい病院のほうがいいという理由の1つが、小規模病院は症例が少ないのではないかという点だったと思います。救急の告示はしていても、そこに急患がどれだけ来るのかが大切でしょう。救急車の受入れや、診断のついていない人を見る機会の多さは、これからの基準づくりの根拠の一つになると思います。たしか去年もこれを話題にさせてもらったと思いますが、それぞれの病院で診ている救急患者数は、どれくらい把握できるのでしょうか。
○堀田座長 例えば、救急外来に月に救急車の搬送件数が何人というのは、病院ごとにすぐに出ますよね。ただ、研修医はどこまでそれに絡んでいるかという話になると、変わってくると思います。
○福井参考人 最近は歩いてくる脳卒中の患者が多いとか、救急車だけでは救急の実態というのはなかなか把握できないので、そこのところがどういうデータに基づくかというのは重要ですよね。それと、一般外来での研修を結構させていない病院が多くて、入院患者しかまだ見させていないプログラムというのはかなりありますので、そこをどう誘導するのか。どういうデータが必要なのかなということを話し合ってもらえればと思います。
○大滝委員 すぐに結論が出ることではないと思います。アイディアとして、そういったことも今後の方向性の1つとして大切だと思います。
○堀田座長 確かに、私は3月まで急性期の三次救急病院におりましたが、研修が終わってから三次救を経験したことのない医師が後期研修医として他病院から回ってきて、当直をやらなければいけないとか救急対応しなければいけないときには、非常にそこは困るというのが実感としてあります。ですから、何らかの格好で、急性期病院での救急にも一応は暴露される必要はあるのではないかという気はします。小規模病院だけでやっている方は、そういう経験なしで過ぎていってしまうことになるのである一定期間、救急医療施設に襷掛けで研修に行くといったことも含めて、考えるところはあるのではないかと思います。
○岡留委員 この初期臨床研修制度の最初の理念で、プライマリケアということを謳っていますから、必ず救急は外せないだろうと思います。ウォークインにしても救急車にしてもそうです。これは次回以降のテーマになるかもしれませんが、このローテーション方式が本当に必須ストレート研修でいいのかどうかということに、これを詰めていくと結局はそこにつながってくるのではないかと思います。私どもの所で言わせていただくなら、例えばERに2年間は必ず当直体制で入るとか、総合診療部で外来を見させるとか、そういうのをデューティー化している。研修医諸君は、決して嫌がらないのです。そういう例はたくさん聞いています。先週、日本病院学会を主催させていただきましたが、そこの臨床研修のシンポジウムでも、そういう意見が多かったのではないかと思っております。
○神野委員 もとの3,000人以下の話につながるかもしれませんが、私はもちろん三次救も大いに結構ですが、救急だけという視点は、また、この3,000人につながってしまうと思うので、外来患者をきちんと診るような研修プログラム、いま先生のおっしゃった総合診療というのもありだし、別に総合診療科でなくてもローテーションで外来診療を診る。ただ、外来で初診患者を診るとか外来患者を診るのと救急患者を診るというのは、もちろんシチュエーションは違うけれども、そこを同じような判定基準にしていく必要はあるのかなと。そうすると地域密着型の病院で、救急車の台数は少ないけれども、外来でウォークインで肺炎やら不定愁訴などをたくさん診ていらっしゃる、たくさん研修できるというのも、救急を診るのと同じような基準で評価してあげる必要があるのかなと思います。
○片岡委員 パラメーターをどのようにというのは難しいと思います。例えば同じ規模の病院であっても、救急を重点的に行って地域に貢献度が高い所もあるし、規模は同じぐらいだけれども違う機能を持っている所もあると思うので、そういう意味では救急車の台数だけでは測れないと思いますが、ただそれも1つのパラメーターではあろうと思います。それに加えて、実際に研修医の先生がファーストタッチでどこまで関わっているかということを保障するという意味で、外来研修、ER研修のあたりはむしろ必須項目に入れてもいいのではないかと思います。
○横田委員 先ほどの神野先生のお話と全く同じですが、それぞれ病院に特徴はありますよね。全部を用意しろと言われても用意できないですから、それはこの2年間の研修期間の中で襷掛けにしたりという形で、いくつかの病院で研修したり、そういうプログラムの自由度を上げて、例えばERのような救急対応然り、地域密着型の家庭医的なもの然り、こういったようなものが診られるようなプログラムを作ることが非常に重要であって、病院そのものの機能を全部揃えることは無理なのではないかと思っています。
○堀田座長 1つの病院で、基幹型だから全部自己完結しなければいけないかどうかとはまた別の話だということで、特徴のある病院と組んで、いろいろな特色のあるプログラムがあってもいいというご意見かと思います。ほかにいかがでしょうか。
○医師臨床研修推進室長 今日、何人かの先生方からご指摘がありましたが、へき地をはじめとする地域医療の観点です。このワーキンググループでも、これまでも複数の先生方から度々ご指摘、ご議論がありましたが、別途地域医療の観点というのは各自治体の方々からご要望もいただいております。それから、国会においてもご指摘がなされているところです。
 例えば、先日の国会ですが、具体的には先週19日の参議院の厚生労働委員会においても、へき地への医師派遣を行ったり、へき地において臨床研修を行う研修病院については、募集定員の加算を行うなどの評価を行うべきではないかといったような趣旨のご提案がありました。また、いま申し上げた各自治体からのご要望については、これまでにいただいているものも含めて事務局のほうで整理をして、近いうちにこのワーキンググループの場でご案内をしたいと考えております。そこで先生方には、以上、いま申し上げたような観点も踏まえまして、今後引き続きご議論を賜れればと考えております。
○堀田座長 そのほかの論点はいかがでしょうか。
○小森委員 いまのことと関連しますが、専門医のあり方に関する検討会は私も出席をさせていただいておりますが、その議論の中でも地域医療、あるいはプライマリケアというものを基本に持った専門医という存在も非常に重要であるということも指摘をされています。したがって、純粋培養的な専門医ではなくて、専門医であっても一定の方針の要件として、再び戻って、基礎的な、あるいはプライマリケア、地域のさまざまな社会保障のあり方等に関しても学ぶ機会というのが必要なのではないか、ということが指摘をされております。そういった中で、またこの部会でも議事録で拝見をしたのですが、保健所の研修が悪いというわけではありませんが、ヒアリングでお話された方から、保健所はドクターが1人で事務的なお仕事が多くて満足度も低かったということも聞いておりますが、地域の開業医師がさまざまな研修に参画できることは現実に多く行われておりますが、しかし病院、あるいは大学病院等によって濃淡があります。そのあたりのことについても、一定の規格というか水準、スタンダードというものはある程度求めてもいいのではないかと。あまりきつい問題は難しいと思いますが、保健所を回って地域医療これでよしということではないようにも思いますし、そんな論点も多少ありますので、岡留先生から、一貫をした学部教育から生涯教育までの観点から方向を捉えるというお話もありましたし、そこをご紹介を申し上げるとともに、そういったことに対する評価があってもいいのかなということです。
○堀田座長 今日予定しました議論は、大体皆さんにしていただいたかと思っております。次回以降、また引き続きありますので、新しいデータがまとまりましたら順次ここで議論していただきます。次回以降の予定をお願いします。
○医師臨床研修指導官 今後の開催日程ですが、次回は9月を予定しています。委員の先生方には詳細が決まりましたら、後日またご案内させていただきます。事務局からは以上です。
○堀田座長 少し時間が早いですが、本日の医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループをこれで終了いたします。医事課長、何か一言。
○医事課長 大変精力的にデータを出していただきまして、ご議論をいただいております。このワーキンググループでは今年中に論点整理をしていただくことになっておりますので、是非お願いしたいと思います。どうもありがとうございました。
○堀田座長 どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省医政局医事課
医師臨床研修推進室

直通電話: 03-3595-2275

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