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2011年11月29日 第3回社会保障給付費の整理に関する検討会議事録

政策統括官付社会保障担当参事官室

○日時

平成23年11月29日(火)10:00~12:00


○場所

経済産業省別館10階1012会議室


○出席者

委員

岩本康志座長 稲森公嘉委員 勝又幸子委員
新保美香委員 土居丈朗委員 栃本一三郎委員
山田篤裕委員

事務局

香取政策統括官(社会保障担当) 武田参事官(社会保障担当)
朝川政策企画官 鈴木政策評価官室長補佐

○議題

社会保障給付費の整理に関する御意見について

○配布資料

資料 社会保障給付費の整理に関する御意見について

○議事

○岩本座長 それでは、委員の先生がおそろいになりました。定刻になりましたので、ただいまから「第3回社会保障給付費の整理に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様には、御多用のところ、お集まりいただきましてありがとうございます。
 なお、遠藤委員、柏女委員、金井委員、林委員、山縣委員は、本日は御欠席です。よろしく御了承をお願いいたします。
 まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○武田参事官 本日お手元に配付しております資料でございますが、まず議事次第がありまして、座席表がございまして、資料として、「社会保障給付費の整理に関する御意見について」という、ホッチキスどめしたものをお配りさせていただいております。それから、その後にもう1枚、一枚紙ですが、「社会保障分野における支出の累計」を併せて配付させていただいておりますので、御確認をお願いいたします。

○岩本座長 それでは、議事に入りたいと思います。
 まずは、事務局で資料を用意しておりますので説明していただき、説明後に一括して御議論をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○朝川政策企画官 それでは、説明させていただきます。最初に、資料にページが振ってございませんで、申し訳ございません。
 まず、1枚おめくりいただきまして、今回の資料は、これまでに先生方からいただきました御意見を、赤い枠の中に少し整理させていただいております。最初のところは、総論ということで幾つか挙げてございますが、まず法律上の給付をめぐる権利義務が設定された事業、こうしたものについての費用を把握することが必要ではないかという御意見。2つ目として、社会保障給付費統計が財源と対比しやすいという現在の特徴、あるいは、統計がこれまで利用されてきた状況からしますと、ILO基準に基づく現行の社会保障給付費の概念から離れるべきではないのではないかという御意見。そして、対象範囲について考えるときに、ILO基準をもとに社会保障制度審議会の定義なども踏まえて設定するのがいいのではないかということ。更に、SNA統計では、個人消費と集合的消費という概念で消費を区別していることを参考に、個人に対するものを社会保障給付費、それ以外のものを社会保障費、そのように整理することができるのではないかというもの。更に、我が国の今後の社会保障の全体像を統計的にとらえるためには、厳密に法律上事業の実施が義務づけられた個人に対する給付、それを把握するだけでは少し足りないのではないかということ。次に、国際的な比較の観点からは、地方が実施している機能上社会保障的な事業にかかる費用は統計として把握すべきではないかということ。最後に、直接個人に帰属するとは言えないような予防的介入や普及啓発のようなもの、そうしたものも社会保障制度としては不可欠ではないかという御意見をいただいてございます。
 1枚おめくりいただきまして、機能に着目した切り口として、特定のリスクやニーズが存在するか、あるいは個人に帰属する給付かという切り口を御議論いただきましたが、それに関する御意見としましては、一番下の赤い枠の中ですけれども、最初のものは先ほどのページにもございましたが、必ずしも個人に帰属するとは言えないようなものも社会保障制度として不可欠なものがあるという御意見。2つ目のところは、例えば若年の未就労者に対する職業訓練等を一体として行う事業について、委託をして行っている場合、受託事業者だからといって個人の給付に当たらない、そう割り切ってしまうこともできないのではないかという御意見。3つ目は、予防接種というものは、経緯からすると、昔は集団保障的なものだったけれども、最近は個人への給付という性格も併せ持つようになってきているのではないかという御意見。その次は、最近始まった特定健診は、個人とともに社会集団としての国民全体のことを考えた制度であるのではないかということ。最後には、小児慢性特定疾患治療研究事業。これは、名前は研究事業という位置づけになっておりますが、実質上は医療費の給付である。そういうようなものもあるのではないかという御意見がございました。
 次のページですけれども、「法令」に基づく事業かどうか。そういう法令上の根拠を切り口にして考えていったときの論点でございます。これに関しましては、1つ目は再掲ですが、法律上給付をめぐる権利義務が設定された事業にかかる事業、そういったものを把握していくことが必要ではないかという御意見。2つ目は、単純に法律上の根拠の有無だけで判断してしまうと、例えば、同じ健診でも特定健診と39歳以下の健診で扱いが異なってしまうとか、そういう問題が生じるのではないかという御意見がございました。
 1枚おめくりいただきまして、主体や対象について、制度に普遍性があるかどうかという切り口についての御意見としましては、1つ目は、国全体で国民が普遍的に受益可能なものとして事業の実施が義務づけられているか。そういったところを基準にしてはどうかという御意見。2つ目は、普遍性を判断する際に、集団をどの程度のもので普遍性を見ていくかが問題になるのではないかという御意見がございました。
 次のページですが、統計実務上の把握の問題、地方単独事業についてどうやって把握するかという論点につきまして、一番下のところで、日本は地方統計が整っておりますので、時間をかければ多分集計できるのではないかという御意見をいただいてございます。
 これら、これまで御議論いただきましたことを踏まえまして、その次のページでございますが、社会保障給付費統計等の整理の方向性について、案の形で整理させていただきました。
 まず1つ目は、「社会保障給付費統計の対象範囲について」ですけれども、これは、1回目からありますが、社会保障給付費統計については、ILO基準に則るということがまず原則としてございます。その基準に則って、厳密に法令に基づき事業の実施が義務づけられている個人に帰属する給付、それを把握し得る統計となるよう整理を行うこととしてはどうかということでございます。
 括弧書きにありますとおり、この場合、財源構成にかかわりなく、事業の性格のみをもとに判断して、地方単独事業についても、このILO基準に則って法令に基づき事業の実施が義務づけられている個人に帰属する給付かどうか、これに該当するものは統計の対象にしたらどうかということでございます。
 こうしますと、現在、社会保障給付費統計の対象となっている事業のうち、例えば社会保障給付の提供を行う者の養成事業のような、個人に帰属するとはいえないような事業などはその対象外になるということになります。一方で、同時に、社会保障をめぐる状況の変化というものがございますので、その変化による給付の性質の変化についても考慮した上で対象範囲を再整理してはどうかということでございます。
 このように、概念上、対象範囲を上記のようなものに限定するということを適当とするとしましても、統計実務的にこれらの数字をいかに把握するかという問題、あるいは、把握方法で得られる数字が統計に用いるだけの精度を有しているかという問題、あるいは、集計項目に沿った細分化が可能であるかどうか、そういったことを検討した上で、実際の集計範囲を定めていくことが必要ではないかと考えられます。
 2つ目は、「社会保障の全体像の把握について」という課題でございます。今、整理しましたように、法令に基づき事業の実施が義務づけられる個人に帰属する給付を社会保障給付費の範囲と考えていくとすると、社会保障給付費のみならず、我が国における社会保障に要する費用全体を把握することも一方で必要であるので、整理後の社会保障給付費統計に含まれないこととなりますような、以下のような3つ、まず1つ目は、事業の実施が義務づけられていないような事業、2つ目は、「個人に帰属する給付」以外の「給付」に類似するような事業、3つ目としては、施設整備費などを含めた費用を把握することとしてはどうか。例えば、OECDの社会支出を活用する。そういったことで、これら社会保障の全体像についても把握していったらどうかということでございます。
 資料の説明は以上でございます。

○岩本座長 追加の資料はよろしいですか。

○朝川政策企画官 追加の資料は、前回、御提出してある資料の抜粋を表示させていただいております。

○岩本座長 ありがとうございました。
 それでは、この資料に沿って今日の御議論をいただきたいのですが、今日で一応最終回ということで、検討会として一つにまとめて区切りをつけるということだと思いますが、まず、今日、御説明された資料のように、論点がございまして、それについてこれまで2回の検討会で出された意見を整理していただいたということでございます。
 この検討会は、もとは、社会保障と税の一体改革をまとめていく過程で、社会保障給付費の範囲について整理するように求められているものでございますので、一応、一体改革成案に書かれていることに関して答えを出さなければいけないということでありまして、その答えの出し方が、御説明の最後にありました、「社会保障給付費統計等の整理の方向性(案)」というものでございますので、こういう形でまとめてよいかどうかということについて御議論いただきたいということ。あと、意見のところでまだ埋まっていないところ等もございますし、あるいは、限られた時間でしたのでまだ十分に御発言していないこと、あるいは、意見が出た後で更に議論を続けたいということがあるかと思いますので、それについて御議論をいただきたいと考えております。
 それでは、皆様、御質問、御意見等がございますか。
 山田委員、どうぞ。

○山田委員 非常に短い期間に大変簡潔におまとめいただきまして、どうもありがとうございました。
 御説明いただいた最後の「社会保障給付費統計等の整理の方向性(案)」ですけれども、2つほど質問がございます。質問というよりは、それはここで議論すればよろしいことなのかもしれませんけれども。第1は、「社会保障給付費統計の対象範囲について」の第2段落の最後の2行です。「社会保障をめぐる状況の変化による『給付』の性質の変化についても考慮した上で」となっておりますけれども、これは、私が議論を失念したこともございまして、ここの「性質の変化」というものが具体的に何を指しているのかということを教えていただきたいというのが第1点であります。
 第2点目ですけれども、OECDの社会支出統計は、私も昔かかわったことがありまして、これもよくできた統計だと思いますけれども、社会支出といった場合、OECDはいろいろなレベルの社会支出を、ネットでとか、そういったものを考えているわけですけれども、これはいろいろなレベルでの社会支出を活用してはどうかということとして考えてよろしいのか、それとも、いわゆるPublic Expenditure、いわゆるSOCXと言われているところを見ていこうということなのか、ちょっとそこら辺がわからなかったので、教えていただければと思います。
 以上です。

○鈴木補佐 まず1つ目でございますけれども、「社会保障をめぐる状況の変化による『給付』の性質の変化について考慮した上で」というところは、先ほど、意見の中にも幾つかありましたけれども、例えば予防接種の目的のようなものは時代によって変わってきているとか、時代が変わると、今まで給付として行ってこなかったようなことが給付として必要だよねという形で、広く、例えば、それこそ特定健診などはそういう形で今入れており、これは給付ですね。今までは、社会保障ではなくて、どちらかというとサービス、公衆衛生、そういうものに近い形でしたが、今度は社会保障として全国民に現物として給付すべきものと考えられるようになってきたという部分があるので、そもそも制度も移り変わっていきますし、今までは給付ではなかったものが給付に入ってくる、逆に、今までは給付として考えられてきたものが、必要でなくなってくるということは余りないかもしれませんけれども、そういうような変化があるので、現状の給付としての性質をきちんと考慮した上で、きちんと切り分けていく必要があるのではないかというところの表現になっているのかなと思っております。
 第2点目でございますけれども、「OECDの社会支出を活用」と書いてありますのは、どうしても国際比較等が必要になってきますので、SOCXがやはり基本になるとは思います。ただ、SOCXは、基本的にきちんとOECDの基準で決まっておりますので、例えば、ここで言いますと、事業の実施が義務づけられていない事業とか、我々が欲しい範囲を勝手に決めて、それがSOCXですというわけにはいかないので。ただ、基準はSOCXになると思いますが、それをベースにして、例えばそれに、昔で言えば、社会保障関係総費用のような、それに更にオンして、全体でこれくらいありますとかいうものをつくることは可能だと思いますけれども、基本は、OECDのSOCXになるのかなと考えております。

○香取政策統括官 若干補足しますが、後段の「社会保障の全体像の把握について」は、基本的には、今、御説明したとおりで、給付費統計について、ある程度、個人との関係できちんと給付といえるものを整理するとなりますと、ここでも議論がありましたように、それ以外のさまざまな社会保障に関する支出、例えば国民経済計算的な視点で見たときに、社会保障にどれだけお金を使っている、あるいは、政府全体としてどのくらいの規模の支出を行っているというものを見たときには、それ以外の、言うところの事業費であるとか、設備整備費、補助金、そういったものもきちんと把握する必要があるということで、そういう全体像が把握できるような統計をとるということがまず必要だろう。そのときには、国際比較等々との問題もありますので、基本的にはSOCXベースのものをとるということで2段階と。
 更に、ここの御議論の中で、言わば、そういう統計上は入ってこなくても、さまざまな政策遂行上あるいは統計の活用上把握すべきものもあるだろうということなので、できるだけ全体を把握するという考え方に立って、そうしますと、統計上は、最後はどういう形になるかわかりませんけれども、OECDベースでこういうものがあり、付帯的にこれには入らないけれども、例えばこういうものについて統計をとると。今、お話があったように、かつて制度審がとった統計は、そういう何段階かにミシン目を入れて、できるだけ幅広くいろいろな関連するものをサイドという形で統計をとってきたという経緯もありますので、やはりそういった、できるだけ全体像を把握できるようなものをもう一つ用意するということで、こうしたものもきちんととるようにこれからはしていこうということで御提案しているところでございます。

○岩本座長 勝又委員、どうぞ。

○勝又委員 今の山田委員の御質問について、ネットも含むのかという御発言があったのですが、これは、実は、OECDの社会支出が、何年かに一度、Net Social Expenditureという統計をとっておりまして、それは税と給付を一体的に考えようという考えのもとで行われているものです。具体的に言いますと、例えば給付を現金で与えると、それが課税ベースに入って、そこから所得税を納めるとか、そういうものは、実際には給付されていないという主張です。つまり実質(ネット)では、国庫に戻っていってしまうので給付されていないということです。
 そのほか、間接税の関係で、消費税の税率が非常に高い国があるとすると、現金をもらっても、それをつかって何かを購入したときにまた税金として国庫に戻っていってしまう。ですから、国によっては、給付はたくさんされるけれども、実際に使えるネットの費用はそこを差し引いたものではないかという議論があって、そういうものを考慮した形でのSOCXの発展形のようなものを集計している。
 さらに、もう一つは、税制優遇措置で、例えば扶養控除とか、特定の、例えば障害者だったら障害者がいる世帯に対して、ある一定の所得を控除する。そうすると実際に納付する税額が低くなる。それは逆に言うと税収が入らない分見えざる給付を与えているという考え方がありまして、そういうものも考慮するという考え方です。
 それも含むのかという御質問があったと思うので、現状を申し上げますと、OECDのSOCXをベースとしたデータの収集が何年ごとに行われていまして、これはEUのEurostatでも着手されてきたことです。それをこれからずっと経常的にOECDが実施していくかどうかはわからないのですけれども、各国の議論の中で、税と給付の関係を明らかにするということで非常に意味のあるものであると思っております。

○岩本座長 OECDの社会支出にかかわる書き方ですけれども、私の理解としましては、社会保障給付費が必ずしも社会保障の全体ではないという認識は、この検討会の方で持たれたと思いますけれども、そういった誤解を招かないように、社会保障の全体像を把握する、そういう統計も必要なのではないかということで、後半の段落は書かれているのではないかと思います。
 最後に「例えば」と書かれておりますので、具体的にどうするかというところをここで決めて提案する形ではなくて、その前の文章まで、このようなものを把握してはどうかというところが整理の方向性であって、ただ、そこで止めてしまいますと、具体的なものが何も見えないということで、「例えば」ということで、現状ある統計を活用してはどうかというところまで書き込んだということだろうと思います。
 ほかの考え方もあるので、昔の社会保障制度審議会がつくっていた社会保障関係総費用というものを改めて集計するということであれば、これは日本の行政の考え方に基づく社会保障の費用の統計ができ上がっていますけれども、それをここで提言するというのは、この検討会の守備範囲を超えているのではないかと思いますので、こういう形で、現状でできることでとどめておいて、これは幅広く、ほかのものも別に排除するものではない、そういう考え方でいいのかなと思っております。
 土居委員、どうぞ。

○土居委員 今の座長の御見解に、基本的に私も賛成で、そういう方向でいいと思います。あと、付け加えて幾つかコメントさせていただきたいと思います。
 かつての状況を考えますと、社会保障給付費統計が最初にできたころというのは、OECDの社会支出という概念も、今のような基準に整理されていたわけでもありませんでしたし、そこまでITの時代でもなかったわけで、そういう意味では、統計を集めるだけでもなかなか大変な時代だったということから言えば、設けられた当初の社会保障給費に期待されていた役割というものと、今日、社会保障給付費統計に期待されている役割というのは、時代の変化とともに変わっていると見るべきなのではないかと思います。特に、税と社会保障一体改革との関連で、この統計の活用という話が出てきたということであるならば、この整理の方向性の案の1行目にあるように、「法令に基づき事業の実施が義務づけられている個人に帰属する給付」を把握し得る統計という位置付けでこれから行っていくということでいいのではないかと思います。
 特に今後は、予算編成のときにも、もともと活用はされていて、今年度予算の公費負担が確定する段階ないしはそれによる直前ぐらいの段階で、大体、社会保障給付費はこれぐらいになりそうだという予測、見通しも示されていたとか、あとは、将来推計として、5年後、10年後に、社会保障給付費がどのぐらいになるかということも活用されていたということはこれまでのとおりでありまして、これも今後、引き続き役割として期待されるところだと思います。
 多少、定義の変更に伴うところで欲張りなお願いをするとすれば、旧定義と新定義という部分で若干、何年も続けていく必要があるかどうかわかりませんが、統計の継続性とかそういうようなことも含めて言えば、旧定義と新定義の数字が一応は載っているという状況も、欲張りなお願いかもしれませんけれども、もし可能ならば、そういう統計の示し方もあるのかなと思います。
 次の点は、社会保障の全体像の把握ということですけれども、私は、基本的に、OECDの社会支出を活用するということは、勿論、それだけがすべてではないにしても、これはかなり活用できるものだろうと思います。特に国際比較が可能であるところは大きなメリットの一つで、これは我が国の社会保障の支出の位置づけが、他の先進国と比べてどうかということを見て、我が国の政策をいろいろ再検討する、他人のふり見て我がふり直すというような意味においても、OECDの社会支出は結構いい統計だろうと思います。
 その際に、これもまた欲張りなお願いかもしれませんが、今まで以上に、財政の決算統計や予算統計などの間と、このOECD社会支出との間の対応関係を、より意識的に考えることが重要ではないかと思います。勿論、現段階でも、ある程度は、特に決算の統計はある程度のリンケージがあると思いますけれども、特に予算を組む段階で、この予算を組んだらどういうような姿になるのかということを、社会保障給付費統計の方がリンケージは密ですけれども、OECDの社会支出の、特に山田先生がお触れになったSOCXとの部分の対応関係は、もし予算編成の中で活用するということであれば、予算の支出とOECDのSOCXとの間のリンケージがどうなっているかということを意識しながら数字を活用する。そうすると、これを増やすとこっちがこう動く、そういうリンケージを考えながら政策を検討するという形でも活用できるのではないかと思います。
 以上です。

○岩本座長 土居委員から御意見が出ましたけれども、これに関連して、どうぞ。

○山田委員 土居委員が最後に触れた予算とのリンケージに関して言えば、また少し話はずれるんですけれども、前回までに出た話かもしれませんが、交付税に、地方に送る社会保障給付部分が一応織り込まれてだされているということですけれども、実際にそれがどう使われているかというのは、これから地方から何か情報を得るとすれば、もし可能であれば、これだけ社会保障給付ですよといって交付税の中に織り込まれているうちの、実際にどれだけが使われているのか、もしくは、もっと多く使っているのかといったことは、これは日本国内の統計の話として押さえておくと、今後、財政をどう考えるのかということについて参考になる資料になるのではないかと考えます。

○岩本座長 では、土居委員。

○土居委員 林先生がいらっしゃらないのですが、確かに、そこのリンケージというか、要は、一般財源化されたものとして国が義務づけている地方の支出、勿論、社会保障分野ですが、ここをきちんと、実態というか、交付税の配分を決める段階でどういうふうになっているかということを意識的に理解することは重要だと思いますが、多分、総務省は、厚労省の要望を、基準財政需要額を決める段階においてはいちいち聞いてないのではないか。つまり、予算編成の支出を決める段階で、今は余り大々的にしてはいませんが、三位一体改革のとき、ないしは、それ以前の一般財源化という政府の方針が明確にあったころの時期には、今までは国庫補助負担金という形で出していたものをやめて、交付税措置に変えていくという話があって、そのときは、役所の名前は厚生省と自治省だったかもしれませんが、そういう話はあったと思います。
 ただ、一旦、一般財源化された社会保障に対する義務づけのある部分の交付税措置というのは、毎年毎年総務省が、極端に言えば、彼らの予算の範囲内でいじっているという状態なので、逆に言うと、要望しようにも要望のしようがないというか、実態を把握することはとても大事だと思いますが、予算編成ないしは交付税の配分決定までのプロセスでは、残念ながら、そこまできめ細かく連携をとって、ここはそんなに減らさないでくださいとか、そういうことは多分言えないのではないかと思います。そこはむしろ事務局にお伺いした方がいいかもしれません。

○香取政策統括官 今のお話を整理しますと、予算と決算という頭の整理で考えると、今やっている社会給付費統計は、実際にどれだけ費用が使われたかということを見ているので、予算、決算という頭で見ると、言わば決算に近いものをやっていることになります。私ども、数字を発表するときは、社会保障給付費統計で、決算として、実際に、今年だと、今年は2011年ですけれども、例えば2009年の社会保障給付費は幾らですと出すわけです。もう一つあるのは、今年の国の予算上、社会保障給付費は幾らになっていますと。これはまさに予算上の数字でお示ししていることになります。
 仮に、予算ベースで、例えば、ここで、単独事業についても統計に入れるという概念整理をしたとした場合に、予算上どうなっているかという話をするとなると、頭の整理としてはどういうことをすることになるかというと、各都道府県市町村が編成している予算を全部集めてきて、その中から全部抜き取って、幾らになっているという統計をすることになります。つまり、何が言いたいかというと、交付税というのは、交付税という形で地方に財源措置をするときの財源の内訳を示していることになるので、実際に都道府県や市町村が予算上に組んでいる予算と、交付税上の積算は当然一致していませんので、予算ベースで幾らという、今、国がやっているような統計と同じものを、国、地方を通じてつくるという頭になると、基本的には、そういう予算で整理をするという頭になるので、交付税の中がどうなっているかということとは実はリンクしないことになります。
 もう一つ。前回、総務省さんが6.2兆という数字をお示しになっているんですけれども、実は、あれは決算統計からとっているわけです。つまり、実際に自治体が幾ら支出したかというところから該当する項目を拾い上げて積み上げるという作業をしたわけで、その意味で言うと、言わば決算ベースの数字ということになります。基本的に、我々の理解では、統計ものは決算ベースというか、実際に幾ら使ったかということを見ることになるので、その意味で言うと、予算の数字は計画値ということになりますし、更に、交付税は交付税の内訳をやっているだけなので、交付税の中身を幾ら整理しても、予算ベースで幾らという議論ともつながりませんし、決算で幾らということにもつながってこないので、多分、交付税の中身の議論というのは、この話とは別に、財源措置がしてあるとか、していないとかという、統計とは別の理念上の議論になるだろうと思います。
 その意味で言うと、今一応、国で、予算ベースで幾らということをお示ししていますけれども、予算ベースでも、ここで言っているような出口の統計と同じような予算ベースの数字を仮につくれという話になると、それは一応、概念的にはつくれると思いますけれども、ひょっとしたら、できるころには1年間が終わっているということになってしまうかもしれないので、そこは、県と市町村で千数百あるので、そこは少し検討させてください。

○栃本委員 いいですか。

○岩本座長 栃本委員。

○栃本委員 今の事務局の説明というか、答弁は極めて妥当なものだと思います。その上で、最後に言った、1年かかるかもしれないという部分はやらなければいけないということだと思います。
 それともう一つ。先ほど、政策評価官が、山田先生の質問に対して、例の、同時に社会保障をめぐる状況の変化による給付の性質の変化について考慮した上でという説明の例示で、予防接種関係や特定健診など、そういう保健やヘルスの部分で例示を挙げて説明されたんですけれども、もう一つ参考までに例示をしていただきたいのは、社会福祉の領域だったらどういうものになりますか。

○鈴木補佐 障害者関係等々であれば、基本的にはずっと社会保障ですよねという形でやっているところが多いと思います。

○岩本座長 勝又委員。

○勝又委員 あるとすれば、給付としてはかつて出されていなかった、例えば障害者の分野でも、かつて小規模作業所などについて補助されていたものは、「給付」という概念ではなくて、小規模作業所の活動を補助していくという形だったけれども、(今はもう自立支援給付の中に入っていますけれども)、実際は、そこで働いている人の仕事だったり、そこで活動する人には生活の場であったりするようなこともあり、間接的には福祉サービスになっていくものだったわけです。昔は、そういう意味では、小規模作業所というのは位置づけがなかったので全く入っていなくて、障害者施策への補助金として地方自治体レベルではときどき出ていたということですけれども、その性格上、施設や物に対しての補助と位置づけられていたとしても、実際はサービスや活動が行われていたようなものも、その例示であるのではないかと思います。

○香取政策統括官 今の勝又先生のお話で、少し頭の整理ができました。一つは、機関補助です。機関補助はどういうアナロジーがあるかというと、救急病院に対して態勢保障のために補助金を出す。つまり、必ずベッドを空けておけとか、一定の人を必ず配置してスタンバイしておけとかいうときに、診療報酬以外の形で補助金を出しますね。あれと同じように、例えば事業所の運営なり事業所で活動している個々人のそこでの活動を支援するために、機関に対して補助するという形で出している場合、それを個人帰属と整理するのか、団体の運営補助として考えるのかという、機関補助の整理の問題。
 もう一つは、恐らく、概念上、社会保障の概念に入るかどうかあいまいなもの、つまり、生活支援だと福祉というか社会保障なのかもしれませんけれども、就労支援とか、小規模作業所もそうですし、ああいう通勤料みたいなものの就労支援系のものをどう考えるか。それは、一般的に、就労支援系の雇用系のものを社会保障の概念の中でどう位置づけるかということになると思います。でも、そこは多分、区分の問題で、福祉の区分になるか、雇用の区分になるかだから、あれは今でも入っているのかな。

○鈴木補佐 通勤料は入っています。

○香取政策統括官 通勤料は入っているね。だから、その2つかなという気がします。

○栃本委員 今、そういうようなお尋ねをして、どの程度真剣に考えているのかなということを試したわけですけどね。試したと言うと語弊があるけれどもね。その上で、今回、座長がおっしゃったように、大枠の社会保障給付費というものの整理ということで、社会保障給付費統計の対象範囲そのものについては、ある種、極めて限定的できちんととらえるということと、サブというと変だけれども、もう一つのものとしても、どの程度の比重かよくわからないけれども、きちんと位置づけるという2つのものを明示することは、それを宣言したということは非常に重要なことだと思います。
 その上で、社会保障給付費の先ほどのお尋ねにも関係あるけれども、通俗的に言うと、一般人でもわかる言い方で言うと、「年金、医療、その他福祉」の「その他福祉」の部分がどの程度とらえられるかというのは地方政府にかかっていることと、もう一つ、地方政府が、2回目のときの議論で、交付税交付金のような形で行う国と、そうではない国があるとかいろいろありましたね。財政上の国と地方との関係ということで。地方政府が、ある種行おうとしているような領域について、今回整理した、法令に基づき事業の実施が義務づけられているという部分について、グレーと言うと変ですけれども、かなり幅のある部分が出てくると思うんです。前に北欧のいろいろな議論をしたと思いますけれども、その分をどのくらいとらえるかというのは、厳密に中に入れなければいけないということを僕は申し上げているんじゃないけれども、その部分はきちんと押さえておかないと。昔、5対4対1でやったとき、本当は1未満だというので、どうしようかというようなことを言っていて、例の3対3対3とか、4対3で、3が社会福祉だみたいな国がありましたよね。素人的な言い方をすると。そういうことで言うと、5対4対1がかなり変化したことは確かですけれども、それは、生保の関係と介護保険の関係が効いてきているわけですけれども、いわゆる地方政府が行う部分のものは、繰り返しになりますが、きちんと補足しておくことは重要なことです。それをどの程度社会保障給付費の対象範囲の中に入れるかというのは、既に、1回目、2回目に専門家の方々からお話があり、私も勉強させていただきましたのでよくわかるんですけれども、そこら辺についてよく考えなければいけない。
 特に、仮に社会保障給付費の統計上の整理はこれですよといったときに、市町村のレベルが言うかどうかわからないけれども、都道府県のレベルの人たちが、じゃ、社会福祉の部分はどう考えるのかという、反撃ではないけれども、それは総務省とは違った意味での地方政府のお尋ねというか、御意見のようなものは必ず出ると思います。そこら辺をきちんと、対応策をというわけではないけれども、答え得るものをちゃんと用意しておかれることが必要だと思います。どうしても、総務省とか何とかということもあるけれども、それとは別に、地方政府が、都道府県や市町村が、社会保障給付費についてどう考えるか、ないしは、見ていきたいかということもあるので。これはここでの議論とはちょっと違うけれども、そこら辺も事務局には是非検討しておいていただきたいということです。

○岩本座長 土居委員、それに関連しての議論ですか。

○土居委員 はい。

○岩本座長 では、土居委員、お願いします。

○土居委員 統計の把握の実務にも視野を広げたところで、今のお話に関して私の意見を申し上げます。法令というのは、あくまでも国の法令であって、国の法令は、当然、厚労省は把握しているわけです。それに基づいて実施されている。しかも、それは義務づけられているということですね。まず、しかるべき補助が出ている、ないしは国庫負担がある、これは極めて把握しやすい。逆に言えば、予算段階から、都道府県市町村から統計をもらわなくても、その負担割合に基づいて予測ができるということですね。一番厄介なのは、国庫は全く国費を出していないけれども、義務づけがあるというもの。これが一番把握しにくいもので、勿論、概算とか、そういうものはある程度はわかるかもしれないけれども、ひょっとしたら、把握漏れというか、厚労省ですら義務づけているという意識が余りないけれども、市町村レベルでは義務づけられていると認識しているというレベルのものがあって、恐らく、栃本委員がおっしゃっているのはその話で、これは本当に、地方分権改革なり地域主権改革なりの議論のところでも争点になっていたりもする。勿論、自治体側から、それをやめてほしいというケースにおいてリクエストが出てくるというパターンですが、ひょっとしたら、この統計を把握する上では、そういう地方分権をしてほしいというリクエストがないけれども、国が法令で義務づけているということであって、お金は出ていない可能性があるので、そこの部分が、全部の法令を洗いざらいというほどにはいかないとは思いますけれども、厚労省としてどれぐらいそういう部分にアプローチできるかというところに、この対象範囲の議論もかかわってくるのかなと思います。

○岩本座長 それに関連して、ちょっと私の方から申し上げます。仮に、そういう地方段独事業の方も把握するということで、国が調べ始めたときに、社会保障給付費に入るものとして、個人に帰属するものだけを集計しますと言うと、地方の方は、それに含まれないものもいろいろやっているのにという、そういう疑問といいますか、不満が出てくると思います。これは、社会保障給付費が個人に帰属するというところで線を引いているところをどう考えるかということで、そんなに堅く考えないで、もう少し広くとってよという考え方を持つ人もいるかもしれませんけれども、統計として、個人に属する消費支出と、そうではない形で集合で消費しているものという消費支出とを区分けするという作業を、これは社会保障の分野だけではなくて、すべての政府の支出について行っているわけでございます。その部分が、今、社会保障に適用されているということなので、ここだけ例外扱いすることは、統計の方からはちょっと考えられないという話になりますので、それは社会保障の分野として、個人に帰属するものだけが社会保障関係の支出ではない、それ以外のものがありますということで、特にそういうものが大きいものが社会福祉、公衆衛生の分野だと思います。その分野が冷遇されないような形で配慮することが、多分必要だろうと思います。
 ですから、もし、国が地方にそういう調査をかけるといった場合には、社会支出の方の統計としても必要になってくるわけですから、社会保障給付費の対象になるもののみを調査するということではなく、そうした集合的な消費に当たるものも拾い上げて一緒に調査するということであれば、そういう疑問や不安がやわらぐか、あるいは、なくなるかなと考えております。
 あとは、国の資料としても、社会保障給付費に一番焦点が当たりますけれども、これが社会保障のすべての支出ではないことができるだけ同時に伝わるような形の資料の御説明の仕方とか、そういったものを今後工夫する必要があるのかなということが、この検討会の議論から今回浮かび上がったことかなと考えております。それで、社会福祉関係の先生、公衆衛生関係の先生がいろいろと御心配されていることを少しでも解消するように、努力しなければいけないことがあるかと思っております。

○岩本座長 勝又委員。

○勝又委員 今の御意見に賛成で、個人に帰着するだけではなくて、集合的なということも考慮した形で考えていくということは、それがいいと思います。
 実務的な話で、林先生が前に、日本の地方統計は整っているので時間をかければ多分集計できるのではないかという御意見をいただきましたが、私も、そう思います。ですが、ここに統計に携わっている人がいないので、そう言っても、やってくれるかという不安があるわけです。
 私は、地方財政状況調べという、総務省の地方財政局が毎年実施しているデータについて調べたことがありますが、かなり細かいものを調べていらっしゃる。それも、県レベルと市町村レベル、政令指定都市、純計という形で、県と市で重複しているものが含まれないように、きちんと精査したりされています。あと、各自治体には報告させる決まったフォームがあって、その報告の方法についてはマニュアルも市販されているのですが、非常に細かく、こういうものは入れる、こういうものは入れないとか、そういうこともちゃんと書いてあります。政策議論の参考にするという意味で時々に、例えば私が知る限りでは、少子化対策が非常に話題になったときには、特別表というものをつくって、あなたの市では、少子化対策についてどのくらい対応しているかということも調査されている。しかし、そういうものの詳細データは公表されていません。年報という形で公表はされていますが、例えば社会福祉費とか老人福祉費と書いてあっても、その中にどういうものが含まれているのかということがわからないので、こちらとしては、例えばILOにしても、OECDにしても、今、機能別分類とか政策分野分類となっていますけれども、そのときに、この部分は高齢者ですか、障害者ですか、この部分については家族に関するものですかということについて分類することができないんです。そうしますと、そういうものを細かくブレークダウンした形での調査を、毎年実施している地方財政状況調べというものに、機能別分類等を入れるというようなことをしないと、実務的には地方財政状況調べの集計表からだけでは集計するのが無理ということになります。

○岩本座長 栃本委員。

○栃本委員 たしか地方財政審議会というものがありますね。今、統計が出ていないとおっしゃいましたね。都合がいいというか、都合がいい整理であるとか、そういうものがしばしば行われて、ゆっくりやっている風情があるんですけれども、本来であれば、勝又先生がおっしゃるところに関係がありますが、そういうところできちんとそれをしてほしいというか、そういうことです。

○土居委員 そのとおりです。

○岩本座長 土居委員、どうぞ。

○土居委員 内閣府の方で、都道府県と政令市だけでしたか、SNAをつくるためなのか、別に統計をとっていたのかなと思います。ただ、勝又委員がおっしゃるように、細かくブレークダウンできるようなレベルにはなっていないので、あくまでも目的別歳出の細分の限りにおいての細かいデータまでしか入らない。勿論、政府機関の中だったら、個別の自治体の数字を全部、勿論、我々一般国民も情報公開請求を出せばその数字は全部出てくるという意味においては、秘匿されているものではないということではありますが、おっしゃるように、高齢者向けなのか、子ども向けなのか、何なのか、細かいところまで厳密には分けられていないというのは事実だと思います。そこはもう少し、将来的には、働きかけを何らかの形で行う必要があるだろうと思います。
 それから、あと1点。先ほどの話に戻りますが、恐らく、社会保障給付費統計の対象範囲を、より厳格に定義づけるところで、最後の最後にぎちぎちしなければいけなくなってくるのは、何をもって義務づけられていると理解するかということだろうと思います。これがまさに地方分権改革でも議論されている話で、義務づけられているといえば義務づけられていると見られるけれども、その度合いが微妙に、法令の書きぶりによって、一応書き分けられているということになっていますが、社会保障給付費統計としてどこまで入れるか、どの程度の強度の義務づけまでをもってこの統計の中に入れるかということは、恐らく、最後に何らかの判断をしなければならないのかなと思います。
 ただ、私の理解では、今までも既に社会保障給付費統計としてこういう経費を含めているという現行の定義があるわけですから、その現行の定義から大きく逸脱するような形で義務づけという範囲を更に大きく拡大するとか、そういうような話にはなりにくいのかなと思います。そういう意味で言うと、交付税で基準財政需要額に入っているからといって、それは義務づけだと理解するべきではない。あくまでも個々の社会保障、社会福祉関連の法令に基づくところでの判断だろうと思います。

○岩本座長 最後、その交付税の話はわりと誤解されやすいところですけれども、交付税は一般財源ですので、基準財政需要の方に項目、金額が算定されていても、それに使わなければいけないという縛りはかけていないということがあります。
 ついでですので申し上げます。地方単独事業という言葉も若干誤解が広がることもあるかもしれませんので、この場で説明しておきますと、地方の事業が補助事業と地方単独事業に分類されて、補助事業というのは国の補助金が入っているということで、この補助金は、その事業のために使いなさいよという特定財源になっているということ。そういうものが入っていないものは、地方が一般財源で事業を実施しているものです。「単独」という言葉から、地方が独自の判断で実施している事業のように受けとめられそうですが、勿論そういうものも含みますけれども、先ほどからお話が出ているように、国から義務づけられていますが、全額を一般財源でしている事業も地方単独事業に含まれていて、まさにその部分が今議論になっているということでございます。
 あと1点。これは、予算あるいは調査をして情報を集めたときに、個人に帰属する部分とそうでない部分を分類するというところが十分にできないことがあり得て、それについては、資料の中で、統計実務面に関する御意見の先頭のところに、「異なる性質を併せ持つ費用が混在しており、その内訳が不分明な場合の取扱い」という項目が立てられています。これについては御意見が出ていなかったのでこのまま来ていますけれども、素通りもどうかと思いますので、一言申し上げておきます。
 こういうことは、統計作業一般に生じる話でありまして、実務的な対応についても、かなり確立された原則がございます。まずは、何らかの方法で按分するよう努力するということでありまして、それは、補助的な情報を使うなり、あるいは、仮定を置いて按分していくということだろうと思います。例えば、一般管理費であれば、その事業に携わっている従業員数がわかれば、それに基づいて比例的に配分するとかいうことも一つのやり方であります。事業の性格から、それでは明らかに不適切であって、別の方がいいということがわかっているのであれば、そうした別の按分比率を用いるということですし、あるいは、少しサンプリングしてみて、実際に調べてみて、その按分比率を用いるなど、そういうことをしているということです。
 どうしてもわからない場合には、代表的なところに一括して計上するというやり方も許されているということですので、この部分に関しましては、この場で悩んでいても仕方がないので、そういう統計実務の一般的な原則に従って個々に対応していただいて、精度がある統計をつくっていただければありがたいと思います。
 そのほか、御意見、御質問等がございますか。
 勝又委員、どうぞ。

○勝又委員 今日、一枚紙で配っていただいた、前にもいただいた資料のお話です。この中で、?として「赤字補填のための支出」とありますが、これを、例えば、非常に放漫経営をしていて、お金をたくさん支出してしまうような制度があるとします。昔は、それが公立の施設だったりすると、公立の施設に赤字補てんとしてお金を出してしまうことがありました。なぜその公立施設はそんなにお金がかかるかというと、ただ単に放漫経営だけではなくて、公立施設なので、そこに働いている人は公務員だと。そうすると、地方公務員の人件費というものが、今はどうなっているかよくわからないですが、非常に高かった。それで、その人件費を賄うためにその施設に対してお金をたくさん出さなければいけないということでお金がかかるというような場合があったと思います。そういうような事情も、実際にもらっている1人当たりの福祉サービス費の、このくらいが1人当たり福祉サービスで、でかかりますよと言ってもらっている措置制度の時代でも、それ以外にもっと人件費がかかるということで、その部分は地方自治体が補てんするというようなことがあったと思います。
 これについてどう考えるかということで皆さんの御意見をお聞きしたいところですが、統計上は、払ってしまっているので、効率が悪かったからお金を払うのか、よかったから払うのかということは別にしても、もう払ってしまっているので、それは支出にカウントされると私は思っています。ですから、赤字補てんのための支出は給付ではないというような考え方は、おかしいのではないかと考えています。

○岩本座長 追加資料の方にお話が行きましたので、この図の見方はちょっと複雑なところがありますので少し整理したいのですが、上段が収入で下段が支出と書いていますが、収入の項目のところを支出として議論しているという状況です。これは、この資料に書いている収入と支出というのは、社会保障の部門から見ての収入と支出ですけれども、だれかの収入はだれかの支出でありまして、社会保障以外の政府部門が支出したものが、この社会保障の部門の収入になるという形で、社会保障部門以外の支出の方が今取りざたされているという議論です。
 ?が今議論になったんですけれども、社会保障に対してどれだけお金が投入されているかということであれば、見方としては、収入の上に書いているもの、点線も含めて全体を見るということがより適切な見方になる場合があります。医療を考えていただければわかるかと思いますけれども、利用者負担も、これは医療費に使われているものになります。公立病院の赤字も、そのお金は医療のために使われていることになりますので、医療に幾らお金を使ったかということであれば、この収入に書かれている点線も含めたものを見た方が適切であるということになりますが、社会保障給付費上は保険による給付の部分を指していて、赤字補てんの部分は、患者から見たらその分安く済んでいるということで費用に入っていない。そういう整理の仕方になってしまっているということですけれども、勝又委員は、この?の部分をおっしゃられたように、支出されているのだからという御意見だと思います。
 土居委員、どうぞ。

○土居委員 例えば、地方自治体がつくった公立の施設が国の法令で義務づけられていて、国が十分に国庫負担を実態にそぐう形ではしていなくて、それで赤字が生じるということであれば、これは地方が負担しているという話になるのかなとは思いますが、公立病院などは別に法律で義務づけられて設置しなければいけないということにはなっていないと思います。任意でつくったと。任意でつくっていて、そこで赤字が出たとしても、法令に基づいて事業を実施して義務づけられているものではないのではないか。確かに、社会保障の支出として、全体の把握の中には当然入るべきものだと思いますけれども、今の、より狭義の話の社会保障給付費統計ということで言えば、あくまでも義務づけがあるかどうかというところは一つの大きなポイントで、もし、義務づけられているならそうだろうと思いますけれども、そうでなければ、含めるべきものではないのかなと思います。
 恐らく、今後、ひょっとすると、そういう発想を、経済学者はそういう方向で入れるという意見を、すべての範囲でと言っているわけではないのですが、そういう意見があるのは、出来高払いではなくて包括払いで出すという発想ですね。つまり、効率化にインセンティブを付けて国が補助をするというケースが出てくるかもしれない。ないしは、一括交付金カットという話が国庫負担の中でも出てくるかもしれない。そういうような場合は、むしろ悩ましい問題がこの定義において出てくるかもしれない。つまり、あくまでも、国としては包括払い、ないしは大くくり化して一括交付金という形で、法令に基づき実施される事業に対して行うかもしれない。そのときに、予定以上に地方の、「予定以上」というのは、そうなる前の状況のとおりに事業を実施した場合、包括払い、ないしは一括交付金という形ですから、今まで以上に地方の支出がそこに必要となるかもしれない。それは赤字補てんという形ではないかもしれませんけれども、そういった場合には、国が事業自体、全体を義務づけているということである限りにおいては、国はここまでしか出さないというふうに包括払いなりで決めたということであれば、その残りは地方が支出した経費という分類にする。今までは、例えば3割負担とか何とかといって国が出していたものが、3割という計算方法ではなくて、率に直すと、例えば25%程度になるような包括払いを仮にしたとすると、その差は地方が出したことに結果的になっているとすれば、そこは地方が出したという経費にカウントするという話にするということは、私は、それはそれであるんじゃないかと思います。義務づけられていないもので赤字補てんが出てきたとしても、それは社会保障給付費統計の中には入れることにはならなのではないかと思います。

○香取政策統括官 この表はどういうつくり方をしてあるかというと、国庫補助事業以外の、先ほど座長がおっしゃるところの単独事業について、地方が支出しているものが社会保障の収入・支出のどの部分に出ているか、どういう出方になっているかということを示した表ですので、例えば?はまさに上乗せ・横出しで給付として出しているものなので、これは社会保障給付費の支出のところで出ているものであると。それから、一部負担を埋めているものは、一部負担という形で支出を見ているものもありますが、利用者負担の一部を行っているものなので、収入面では出ているところがありますし、まさに今言っている?のところは、出方としては、入りのところにお金を入れていることになるので、収入のところに書いています。あるいは、保険料の補てんも、本来であれば、保険料をもって充てるところを、保険料を軽減して、あるいは、保険料の赤字を入れているということになるので収入に入っているということになるので、お金の入れ方として、自治体側から見ると支出ですが、それが社会保障の歳入・歳出のどこにどうお金が入っているのかという、その入れ方の性質を分類したということです。
 支出していることと給付かどうかというのは、一義的には決まってこないということなので、今の赤字補てんの例で言えば、ぎりぎり詰めていくと何の赤字かというような話になってきて、例えば、その建物を建てた償還のお金の赤字かもしれないし、人件費の補てんかもしれないし、あるいは、何か高い機械を買って赤字になったとしても、確かに機械を使って検査をしているから、それは給付といえば給付じゃないかという話になってくるので、そこは、別の形で実態的な判断が必要になると思います。この表自体は、どこにお金を入れている形になっているかという入れ方を見ているだけの表なので、ここから、これが給付かどうかということが直ちに出てくるというものではありません。
 それと、今日の議論で、制度全体をお示ししたように、そもそもここで言っている社会保障給付費のところが、公費に入らないものでも、性質上「給付」となるものは入れようという議論になるとすると、そもそもここの範囲が動くことになって、言うところの単独事業の中で給付費の中に入ってくるものというカテゴリーがここにできることになりますので、そういう意味で言うと、この表は、今日の議論を前提にするのであれば少し直すと。あるいは、これとは別にそういう全体像を把握するもう一つの絵をつくって、両方を並べてお示しすることになるかと思います。

○岩本座長 栃本委員。

○栃本委員 それで非常によくわかったし、この部分が、最後の部分で区分けしたものが新たにつくられると理解しましたが、?の「給付費以外の制度に基づいた給付を行うための支出」という表現は、前からありましたか。

○香取政策統括官 ありました。この頭の部分は、今の社会保障給付費には入っていないけれども、給付と言えるものがあるのではないかということだと思います。今回の整理でいくと、この?のうちのかなりの部分は給付の中に入るという整理になるかと思います。

○栃本委員 この「給付費以外の制度に基づいた給付を行うための支出」というフレーズで使っていたんだろうけれども、そういうもので従来から使っていたのかな。

○香取政策統括官 いえ、これは今回、この検討会のためにつくったものです。

○栃本委員 だけど、この表現は一工夫。だって、ちょっとおかしいもの。

○香取政策統括官 おかしいですね。

○栃本委員 だから、おかしいと言わせないでくださいよ。これは、ここでの議論の整理のために出したということですけれども、フレーズ自体はちょっと直さなきゃいけない。

○岩本座長 済みません、ちょっと私の方から。
 ?の話をもう少し補足しますと、収入項目の中で見ると、ここに収支差があるので、これを補てんするということで、そこを埋め合わせていく形でということで、一応、隣に書いていますけれども、重ねるような形になる部分だろうと思います。それで、上で、社会保障のところには収入と支出の合計が合うような形に書かれると見た方がいいかもしれません。
 それで、?の扱いについて、社会給付費の統計ではなくて、国民経済計算でどのようにしているかと見た場合、これは、社会給付の方ではなくて、多分、政府最終消費支出の方に入るのではないのかなと思いますけれども、どうでしょうか。私も今、うろ覚えで話していますが、確認といいますか。ほかに入らなければあらわれるとしたら、ここにあらわれるものではないかと思っております。例えば、さっき言った公立病院の赤字であれば、医療関係の支出のところにあらわれてきて、どこかに計上されるということになるので、そちらの方にあるということではないかと思います。
 国民医療費でもこれが漏れているという問題がいろいろあって、それを問題視する意見もございますけれども、国民医療費というのも、個人の方に給付されるというところの金額で見ているということであって、医療資源を使っているけれども、給付に行っていない部分のお金は見ていないので、それが入っていないという形で問題が提起されているという話ではないかと思います。
 土居委員、どうぞ。

○土居委員 先ほど、?の話は今のお話だと思いますけれども、?は、今は入ってないですか。

○香取政策統括官 入ってないですね。?は、要は、歳入面で手当をしているということですから、例えば国民健康保険の医療費はこれだけありますということで、歳出で計上されているわけですね、幾らかかっていると。この中が、税で幾ら、保険料で幾らということを、ある市町村はさまざまな理由で保険料が十分に取れない、あるいは、政策的に赤字補てんということで入れているということになりますから、その分だけ保険料が減っている格好になっているので、例えばこれを足してしまうとダブルカウントになるので、その意味では、給付費とは、ここは、3の金額が動いても、あるいは、あっても、なくても、給付費には影響しないことになります。

○土居委員 給付費はそうですが、給付費統計というのは、支出面と収入面と両方あって、恐らく、消費税の5%云々という話は、収入面で国庫負担がどれだけ、地方負担がどれだけ、そういうもの。私の理解は、?の部分は、本来は保険料で徴収すべきところが、そこができていないので、地方費負担のエリアになって統計上は公表されているということですね。
 そこで、これは別にここでやるというよりか、政治理念の話なのかもしれませんが、まさに5%消費税を上げるといったときに、どれだけが国で、どれだけが地方かという話のときに、?は別に義務づけられた地方の負担ではないわけですね。地方独自の判断で保険料を上げずに、一般会計からその分を投入した、繰り入れたという、特に国民健康保険の場合は、そういう判断だということだとすると、そこは、義務づけられていないけれども、実態としては地方が負担している。今の統計もそうだと思います。それで国の負担が3で地方が1とかという、今の社会保障給付費の国費対地方費の配分では3対1という形になるという話になってくるということなので、そこは、アンフェアというと言い方が悪いかもしれないけれども、義務づけられている中で、国は国費として出す、地方は地方費として出すという話になるということなのに、結局は地方が勝手に、と言うと怒られるけれども、減免したがために、地方がたくさん支出していて、だから税財源が足りないからもっと地方に消費税を増やしてくれとなると、ロジックと統計の示し方とが、うまくかみ合ってない、整合性がないのではないかという感想を持ったというだけの話です。

○岩本座長 いずれにしても、?の部分は、下の社会保障給付費の方でカウントしていれば、もし、足し併せればダブルカウントになるようなものなので。

○土居委員 足すのではなくて、区別、線引きです。地方費負担も、義務づけられた地方費と、そうでない、支出の側は義務づけられているけれども、負担をする側は別にそれを地方費で投入しなければならないとは書かれていないけれども、地方の裁量の余地があるので、そこの判断で、保険料を上げずに一般会計繰入を増やしたということで、結果的に、支出の側では義務づけられた事業ということに着目して給付費の支出を定義するということだとしても、収入面で見ると、必ずしも、地方費の負担は、義務づけに応じて出した部分と、裁量に応じて出した部分が混ざっているという結果になっているというところを気にしたという話です。

○香取政策統括官 実際の統計上は、現に支出しているものを統計でもらっているので、3のところに例えば消費税が入っていれば、それは地方が負担したものとして計上されている。それは、おっしゃるように、法律上の整理とは違う形で歳出が行われていることになっていると。たしか、地方の統計も、これは一般会計から国庫特会への繰入となりますが、ほかにも、法定繰入しなければいけないものもありますから、法定で繰り入れているものと任意のものとで一応2つあって、全体として一般会計から繰り入れているものという形で、地方自治体の決算はそういう形で出しておられると思います。
 例えば、介護保険は、介護保険特会への一般会計からの繰入は法律で禁止しているので法定上出ていますが、おっしゃるように、国保はそういう規定がありませんので、ある程度、市町村の判断でそういうことができる。判断でやっているというか、しようがないからやっているという話にもなりますが、その判断はともかくとして、実際はそういう、実態として計上されているものとして統計上は出てくるということになります。

○岩本座長 まだ御発言がない委員で、何か御意見、御質問等がございますか。
 新保委員、どうぞ。

○新保委員 この検討会でいろいろ社会保障給付費について学ばせていただいて、本当に感謝しております。意見となりますが、先ほど、社会保障給付費統計等の整理の方向性のところで、「社会保障をめぐる状況の変化による給付の性質の変化についても考慮した上で、対象範囲を再整理する」ということについて議論がありました。私自身は生活保護の領域のことをさせていただいておりますが、近年は、生活保護も自立支援に力が入れられており、それにかかわる給付も、すぐに即効性を持ってご本人の現在の生活を支えるというものばかりでなく、本人が様々な力を得ていくための支援、例えば将来に向けた学習支援、就労支援やその前段階の支援など、時間をかけてご本人の力を醸成していくような取り組みの重要性が見直されています。そのように考えていきますと、やはり時代状況の変化によって社会保障給付費の内容が変わってくるということは、あり得ることではないかと思っております。こうした変化に応じて対象範囲を再整理していただくという点は、是非お願いしたいところです。以上です。

○岩本座長
 稲森委員、どうぞ。

○稲森委員 いろいろ勉強させていただきまして、ありがとうございます。
 私も、今回の整理の方向性として、まず、統計の連続性等にも十分配慮した上で、社会保障給付費については厳密に把握をする。しかし、そこに含まれないものも広く別の形で示して全体像の把握を試みる。こういう2段階、あるいは、もう少し多段階あってもいいのかもしれませんが、そういうような形で整理をするという方向性に賛成いたします。
 その上で、1点確認させていただきたいのは、国の法令による義務づけということで、国の法令には何も規定がなくて、条例だけで行っている、資料の(3)の「法律に基づかない条例」というものについては、これは上の方には入らない、給付費には入れずに、全体像の方に入ってくることになる、そういう整理と理解してよろしいでしょうか。

○鈴木補佐 はい。基本的にはそういうような形の整理になろうかと思います。

○岩本座長 そのほかに何か御意見、御質問等がございますか。
 勝又委員、どうぞ。

○勝又委員 今、ここで、意見とりまとめのときに出てきている国際基準として、ILOとOECDというものが例えばということで出ていますけれども、先ほどらいお話があった、旧社会保障制度審議会がやっていた広義の社会保障がありますが、私は、それをこれから導入するということはいかがなものかと思います。どうしてかといいますと、社会保障費の統計は、国際比較ができることが一つの重要なポイントであるというお話がありましたけれども、そういう意味では、日本が独自に、その時々の政治関心や、その時々の政策的理由によって範囲を決めたりするようなものが恒常的に統計として発表されていくこと自体はよろしくないと私は思っています。ですから、例えばSNAなど、いろいろな国際基準に基づいて集計しますが、実際のところ、各国において、中央政府と地方政府の在り方もさまざまですし、おなじ分類に厳密にどこまで入るのかという、きちんとした意味でのマニュアルのようなものができていなくて、議論しながら進めていくという部分があるにしても、決まった国際基準に基づいたものを議論の土台にしていく必要があるのではないかと思っています。

○岩本座長 栃本委員、どうぞ。

○栃本委員 既にいろいろな分権改革とか、その他、諸先生が携わられているいろいろな、国と地方との関係の整理とかそういうことで、もう既に結論は出ているのでしょうけれども、やはり社会保障の領域というのは、社会政策上、補助金で政策を打つということと、法律をつくることによって政策を打つという2つのものがあって、補助金によって政策は打つなということがある種の方向であることは承知していますので、それはそれでいいのですが、まだ端境期というと変ですが、その部分がかなり残っているというか、善悪というか、それがいいことか悪いことかは言いませんけれども、残っている部分があるので、そこら辺の部分を丁寧にしなければいけないと思います。
 それと、もともと、大昔、機関委任事務と団体委任事務を変える作業のときに、第一次委任事務の整理に関する委員会があったでしょう。地方自体の事務について膨大な作業をして、第一次と第二次があって、第一次の方に入っていたらよかったけれども、第二次の方になった時点で、分権というか、そういう観念が薄くなってしまって、もともと、地方政府は条例によって定めることができるという形に、第一次の方に入っていたものはなったけれども、第二次の方は、国が定めた法律に基づいて、それに則った形の条例でなければだめだみたいにしたでしょう。第二次はそうですよ。だけど、第一次と第二次でやたらと量が多かったものだから、ありとあらゆる領域があったものだから、膨大だから、社会福祉とかそういうものは第二次の方になったんですね。それでずいぶん風向きが変わって、当初は分権だということだったけれども、第二次のときには既に冷めていたというか、従来どおり、国の法律に基づいてという形になったという経緯がありまして、その部分についても少し、お時間はないでしょうけれども、事務方もごらんになる必要があるのではないかと思います。
 もう一つ。これは言わずもがなというか、聞く必要もないことではあるけれども、この資料の例の法令に基づく事業の実施が義務づけられている制度かという部分で、これは社会福祉法の第2条があるでしょう。第2条の第一種社会福祉事業とか第二種社会福祉事業を制限列挙しているわけだけれども、ああいうものは、この言い方でいうと何に当たるのかなということ。例えば、医療計画などで定められた、こういうふうにしなければいけないというような義務づけとは違うんですよね、勿論。事業の実施が義務づけられているというものでは全くない、という格好かな。

○香取政策統括官 例えば、特別養護老人ホームの設置を地方自体に義務づけているわけではないので、そういう意味では義務づけではないと。

○栃本委員 そうか。じゃ、社会福祉法の第2条は。

○香取政策統括官 あれは、そういう意味で言うと、第一種社会福祉事業は、国と自治体が設置することができるだから、「できる規定」です。公立の特養をつくることができると。つくらなければならない、とは書いてないです。現に、公立の特養を持っていない自治体は幾らもあります。

○栃本委員 それはそうです。それでわかりました。それで結構です。

○岩本座長 土居委員、どうぞ。

○土居委員 先ほどの念押しのような話で、お手間をかけることになるのは気が引けますが、願わくば、今後、社会保障給付費統計の示し方ということで、収入面での公費、地方費の示し方で、できれば地方費のところは任意の支出を分けられるような形でお願いしたい。今は分かれていなくて、地方が出したものは地方費という形で出されていて、それが、もし、統計の集計で可能ならば、法令に義務づけられて出されている地方費と、事業自体は義務づけられているけれども、地方費としては任意である部分とを分けるという形で示されると、よりいいのかなと思いました。

○香取政策統括官 それは総務省と相談します。今回の事業仕分けのときも実はちょっと似たような話があって、自治体自身がそこはちゃんと区分して管理していない部分もあったらしくて、一般会計に繰り入れているもので、法定繰入とそうでないものを一緒に調査で上げてきた自治体もあったらしくて、それを精査するのに総務省は結構大変だったらしいです。ですので、今のお話は、そもそも正しく自治体の方でそういう形で把握してもらうということをしていただいた上で出してもらうようにしなければいけないので、実務を担っている市町村との関係もあるので、総務省と相談して調整します。

○岩本座長 あと、論点の中で御意見が上がっていないものとしては、資料の2枚目の「根拠」の一番下のところ、制度が時限的なものはどう区分するのかということが抜けております。これは、たたき台の考え方としては、恒久的、時限的を問わず、そういうことが義務づけられて、実施されていればそこに計上するという考え方がまずあるかと思いますが、これについて、御異論なりコメントがある委員は御発言をお願いします。
 勝又委員、どうぞ。

○勝又委員 今おっしゃるとおりで、時限的であったとしても、入れていくということだと思います。それから、最近は、補正予算とか、補正予算によって基金を設けてそれで行うというようなこともされていますので、それがずっと続くということを前提にしないものがたくさん出てきたという実態もありますので、入れていくのがよろしいかと思います。

○岩本座長 山田委員、どうぞ。

○山田委員 それについては、むしろ、勝又委員に是非お伺いしたかったんですけれども、ILOでは、benefits on a regular basisというふうな限定をしていて、それがSocial securityのInstitutionsに入るというふうにされているので、ここは、ご趣旨として入れるべきというお考えはわかるんですけれども、a regular basisをどう考えるのかということは、ここで出てきているだけあると思いますけれども、やはり難しいところではないかなという気が少ししています。ご趣旨としては、確かによくわかりますが。

○香取政策統括官 それと、基金は、国が支出した段階で計上するのか、自治体がその基金に基づく事業で支出した段階で計上するのかという話があって、本来の趣旨から言うと、自治体が支出段階で本当は計上するということになると思いますが、それは把握がかなり難しい。実際問題で言うと、統計をとるのは結構難しいでしょう。

○岩本座長 土居委員、どうぞ。

○土居委員 これは、収入面との対応ということもあり得ると思います。今の収入面は、即時払いで今年度予算に計上し、今年度給付に回っているという形で出ている部分で、当然、実施機関が地方自治体であるという場合であっても、国からの補助負担金は国費という形で計上されている。それとの整合性という意味で言えば、国費で基金を地方自治体に積むということだとしても、国費扱いをするべきだと思います。ただ、支出をどうするかというのは、基金を積んだ段階では給付されているわけではないということなので、支出のタイミングは、統計の把握が一苦労なさることになるのかなと思いました。

○香取政策統括官 要するに、年金のことを考えると、積立金を持っているわけですから、保険料を払ったというか、歳入で出たときと実際に払うものがずれているわけです。だから積立金もあれにちょっと近いかと思いますので。今は、基金として積んだ段階で支出で計上しているよね。

○鈴木補佐 そうです。

○香取政策統括官 そこは、今のような話から検討が必要かと思います。

○岩本座長 勝又委員。

○勝又委員 今の話は、結局、一つには、どういうデータを整備しておかなければいけないかという話で、最近、基金というものがはやりで、そういうものが入ってきたということ自体に十分に対応できていないというところがあるので、本来、年金と同じように、フローでちゃんととらえていくべきだと思います。

○岩本座長 山田委員が提起されましたレギュラーベーシスについての考え方ですが、国の時限的な措置というのも、はっきりと時限がわかっていないものもあって、当分の間という言い方するものもあるし、はっきり、もうこれでやめますということがわかっていれば、レギュラーベースにならないという考え方もできるかもしれませんけれども、実際問題、適用は難しい面があるかなという気がします。
 例えば、今、高齢者の自己負担は、法定の方では2割のものを、予算措置で、しかも補正予算の方で1割という財源を毎年確保してきているということですけれども、予算としては、これは1年限りの措置ですが、毎年続いているという現状があって、これはレギュラーベーシスなのか、そうではないのかという判断をどうつけるか。そういう問題を現に今抱えているということですね。
 ですから、レギュラーのインターバルをどこまで見るかということにもかかわってくるかと思います。1年はレギュラーではない、5年はどうなのかという論点があるかと思いますが、これはどうしましょうか。ここの場で結論が出るかどうか。
 勝又委員、どうぞ。

○勝又委員 実務上は、どこまでデータをとるのかというときに、手間というか、全体の99兆円のお話をしているのに、額で判断して申し訳ないですけれども、10億円の話をどこまで手間をかけてフォローするかという、実務上の手間と全体の額への影響という形で、あえて集計しないというものが出てくるのではないかなと思います。

○岩本座長 では、この論点はひとしきり議論があったという形かと思います。
 そのほかにまだ漏れている議論につきまして、御意見、御質問等がございますか。
 それでは、一通り御意見が出尽くしたということで、本日いただいた御意見には、今日の資料の最後にあります「社会保障給付費統計等の整理の方向性(案)」の修正が必要になるものはないように、私は感じております。
 私からの提案ですけれども、この検討会では、この文面どおりとりまとめることとしてよろしいかどうか、皆様にお諮りしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
(「異議なし」と声あり)

○岩本座長 異議ございません、ですか。それでは、こちらの「整理の方向性(案)」と書かれています文言の「(案)」が取れるという形で、検討会としてとりまとめることにいたしたいと思います。
 それでは、最後に、香取政策統括官、ごあいさつをお願いできますでしょうか。

○香取政策統括官 済みません、短い期間に大変厄介なお仕事をお願いしまして、大変ありがとうございました。
 この話は統計の整理にかかわることでございますが、冒頭、座長からもありましたように、社会保障給付の全体像をどのように考えるかという成案の御下問を踏まえての検討ということになります。土居委員等からお話がありました、消費税の配分云々の話もありますが、直接的には、全体像の整理というところにかかわるところで一つ整理するということでお願いしたものでございます。
 これとは別に、お話がありましたように、4経費との関係でありますとか、そういったことはまた政府部内で関係省庁と調整しながら、この問題とは少し別のディメンジョンで議論させていただきたいと思います。
 今回整理いただきました案で、今もちょっと御議論がありましたように、まだ幾つか、実際にどういう形で統計整理をしていくかについては議論があるところです。一応、検討会としては今回一通りの締めをさせていただきますが、この後、我々の方で実務的な整理を、今日、御議論があった基金の扱い等々も含めて、少し整理をした上で、また機会がございましたら何らかの形で、私どもの整理を先生方に御報告する場を設けられればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 大変短い間でしたけれども、大変精力的に御議論いただきまして、どうもありがとうございました。
 以上でございます。

○岩本座長 ありがとうございました。
 それでは、最後に、私からも簡単にごあいさつをさせていただきます。
 委員の皆様方には、御多忙のところ、熱心に参加していただきまして大変ありがとうございました。
 こういう政策が絡んだ統計の話という、珍しいと言っていいかどうかわかりませんけれども、まれに見る検討課題というものの座長を仰せつかりまして、消費税が絡むお話ですからどうなることかとも思いましたけれども、やはり専門の見識がある皆様が御意見を交わす中で、非常に有意義な形で議論がまとまったのではないかと考えております。さまざまな分野の先生の皆様が、社会保障とはそもそもどういうものかというところから始まって、議論を交わしたということで、この検討会の議論の成果は非常に意義があったものではないかと感じております。
 皆様、重ね重ねになりますけれども、どうもありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして、「第3回社会保障給付費の整理に関する検討会」を終了させていただきます。
 委員の皆様、事務局、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室

代): 03-5253-1111(7679、7697)
ダ): 03-3595-2159

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