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2012年5月18日 専門医の在り方に関する検討会(第7回) 議事録
○日時
平成24年5月18日(金)10:00~12:00
○場所
厚生労働省 専用第22会議室(18階)
○議題
1.前回(第6回)までの主なご意見
2.関係団体等からのヒアリング
(1)東京医科歯科大学 全国共同利用施設医歯学教育
システム研究センター長
(2)日本病理学会理事長
3.論点項目の素案について
4.その他
○議事
○医師臨床研修推進室長(植木) 定刻となりましたので、専門医の在り方に関する検討会を開催させていただきます。本日は、先生方にはご多忙のところご出席を賜り、誠にありがとうございます。
まず、本検討会の構成員に交替がありましたのでご紹介させていただきます。東香里病院理事長の三上委員に替わりまして、小森耳鼻咽喉科医院院長の小森貴先生です。高山委員、森山委員から所用によりご欠席とのご連絡をいただいています。
本日の議題に関連して参考人として、お三方においでいただいています。まず、東京医科歯科大学全国共同利用施設医歯学教育システムセンター長の奈良信雄先生です。日本病理学会理事長の深山正久先生です。同じく、日本病理学会将来構想検討委員長の佐々木毅先生です。
なお、本日は、事務局の幹部が朝からの国会審議の関係で陪席ができておらず大変申し訳ありません。国会の対応が済み次第こちらに駆けつける予定ですのでご寛恕ください。
それでは、以降の議事運営を座長にお願いいたします。
○高久座長 皆さん、ご多忙のところお集まりいただきましてありがとうございました。審議を進めてまいります。まず最初に、資料の確認を事務局からお願いします。
○医師臨床研修推進室長(植木) お手元の資料の確認をいたします。まず、議事次第、構成員、参考人名簿、座席表の4枚セットです。次に、ヒアリング資料-1として、奈良先生ご提出の「医学部教育:現状と課題」です。次に、ヒアリング資料-2として、深山先生ご提出の日本病理学会の資料です。それから、事務局提出資料-1として、「前回(第6回)までの主なご意見」。次に、事務局提出資料-2として、「検討会における論点項目(素案)」です。以上です。
○高久座長 皆さんのところに資料が整っていると思います。本日の議事は、前回までの主なご意見、ヒアリング、論点項目の素案についてです。まず、議事1として、前回までの主なご意見について、事務局から事務局提出資料-1に基づいて説明をよろしくお願いします。
○医師臨床研修推進室長(植木) お手元にお配りしている事務局提出資料-1「前回(第6回)までの主なご意見」をご覧ください。これまでと同様に、前々回までのご意見に前回分をアンダーラインを付して追加しています。なお、全体の分量が増えたことから、全体の流れやバランスを考慮して、一部項目の構成を整理し直した部分や、言い回しや「てにをは」を若干修正した部分がありますが、大意は変えていません。時間の関係で、追加部分について一部割愛して、読み上げさせていただきます。
2頁です。2「医師の質の一層の向上について」の下から2番目の○です。「専門医の養成プログラムを作成するにあたっては、指導医として必要な資質や専門医ごとの必要症例数といった視点の検討も必要である。」
4頁、下から3つ目の○です。「米国では専門医の養成プログラムの中に基礎研究を行う期間を設けていることもあり、専門医の養成プログラムのバリエーションを考えていくことによって研究志向の医師を育てることもあり得るのではないか。」
その下です。「専門医の領域を一度設定すると縦割りになりやすいので、自分の専門ではない領域の患者が来た時に、他の領域の専門医と患者を中心に意見交換ができるようなシステムを考える必要があるのではないか。」
その下、「患者から見てわかりやすい専門医とすることも重要であり、専門医の種類をどこまで増やすか、どこまでを専門医とすれば良いのかについては、患者がどのあたりまで医師の専門性を理解できるかということも踏まえて考える必要がある。」
6頁、中ほどの○です。「今まで『かかりつけ医』として活動してきた医師は『総合医』とし、これから教育を受けて総合的な診療能力を有する専門医となる若い医師は『総合診療医』とするべきではないか。」
7頁、いちばん上の○です。「『総合医』を専門医として位置づけることと、いわゆる総合的な診療能力を全ての医師が持つこととは、少し意味合いが違っているのではないか。」
3つ下の○です。「総合的な診療を行う医師には、医療機関における診療だけではなくもっと幅広く診てもらう必要があることから、『総合診療医』より『総合医』という言葉のほうが良いと思う。」
その下の○です。「総合的な診療を行う医師の名称は、国民にとってわかりやすい例えば『総合医』などに統一すべき。」
8頁の中ほどの○です。「総合医というのは、他の領域と同等か、より厳しいトレーニングを受けた医師であるという認識で1つの領域を作るべきで、総合医より専門医が上であるというような認識は間違っていると思う。」
10頁、中ほどの○です。「専門医の配置については、国がすべて統括をしているイギリス以外では、アメリカ、フランス、ドイツ、韓国などそれぞれ工夫はしているが、現実には、うまくいかないというのが現状のようだ。」
11頁の中ほどの○です。「専門医制度の確立により、地域医療が改善するような設計も必要であり、そのためには養成プログラムを地域にどのように配置するかを議論することが重要である。」
12頁、いちばん最後の○です。「地域の専門医に関する情報は医師がよく知っているので、自分の専門領域以外については患者を適切な専門医等に紹介をするべきであり、それを個人的なネットワークに頼るのではなく、行政や医師会も関与して地域で医療も介護も連携していくシステムを作っていく必要がある。」以上です。
○高久座長 これは後でまた論点整備などのときに議論になると思います。
引き続いて、「議事2.関係団体等からのヒアリング」に入ります。本日は東京医科歯科大学の奈良先生から医学部教育について、それから、日本病理学会の深山先生から病理専門医について、ご紹介いただきます。ご説明時間は大体20分で、その後、質疑応答を15分ぐらいと考えていますので、よろしくお願いします。
○奈良参考人 東京医科歯科大学の奈良でございます。先ほどのご説明にもありましたが、専門医を育てるに当たっては若い医師の育成が前提になります。この観点から医学部教育は非常に重要視されると思います。実際、この10年間で医学部教育は大きく変わりました。医学教育の現状と課題をご紹介させていただきたいと思います。
(スライド開始)
今日お話させていただく内容として、医学教育改革がこの10年間で必要になった背景、医学教育改革の中で中心的な役割を担っている「医学教育モデル・コア・カリキュラム」、1つの例として私どもの大学でのカリキュラム改革、そして最後に医学教育における課題についてご説明したいと思います。
まず、なぜ医学教育を変えなければいけないのでしょうか。これに答えるには、海外の医師が日本の医学教育をどう見ているかが参考になると思います。たまたま東大に客員教授でいらっしゃったGordon Nowell先生が、「日本の医学教育はガラパゴスだ」という発言をされています。これは決して、日本の医学教育が劣っているという意味ではなくて、欧米から見て特異な、ユニークな教育を行っているということだと思います。また、慶應大学にいらしたRao先生が、臨床技能教育が日本ではかなり遅れていると指摘されています。
私どもは2008年に文科省から委託事業を受けました。当時、学士入学制度を医学部に導入すべきかどうか議論があり、海外の医学部教育制度を調査するプロジェクトでした。オーストラリアから始まり、イギリス、ドイツ、アメリカ、オランダ、アイルランド、スペイン、韓国など14か国の医学教育システムを視察し、意見を交換してまいりました。
医学教育システムのサマリーをお示しします。日本では主に18歳~19歳の高校卒業生が医学部に入学し、6年間の医学部教育を受けます。卒業後、国家試験に合格してから臨床研修を受けその後に専門医研修に入ります。アメリカやカナダでは他の学部を卒業した学士に対して4年間のメディカル・スクール(Medical School)で教育を行った後、研修に入ります。医学教育システムは国によってかなり差があります。どの教育システムがベストかは断言できず、それぞれの国の社会、文化、経済、政治などに委ねられると思います。
システムはともかく、海外の医学教育では共通した教育技法が認められます。医学では知識の教育が重要ですが、それが従来のような講義型中心よりも、少人数テュートリアル教育によって学生自身に自己学習を行わせるという方向に向かっています。すなわちPBL、TBLの活用で、後ほどでご説明します。
また、従来から欧米でも基礎医学と臨床医学がセパレートして教育されてきましたが、多くの国ではそういった敷居をなくして、基礎と臨床医学を統合して教育することが推進されています。自己学習を推進するためにe-ラーニング・システムの整備が充実している国が数多く認められます。
医学部の最も重要なミッションが医学生に対する臨床能力の教育です。日本の医学教育はドイツから輸入しまし、教養教育、基礎医学、そして臨床医学と分けて教育されてきました。しかし、現在では多くの国で、ドイツも含め、入学後の早い時期から臨床技能教育を導入しています。面接技法や診察技法の訓練も重点的に行われています。面接技法や診察技法は、実際の患者さんに行く前に模擬患者(SP)さんでトレーニングを受けています。また、臨床技法はシミュレータを使ったシミュレーション教育も活発に行われています。最終的な臨床実習は、いわゆる診療参加型臨床実習としてClinical Clerkshipによって、学生が責任を持って患者に接して実習を受けるというスタイルを導入している所が多くなっています。
その一方で、研究も重視しなければいけないということで、MD-PhDコースや選択コースによって学生時代に研究マインドを涵養することも行われています。それから、グローバル化として、特にEUでは国際交流が極めて活発です。
こうした海外の医学部教育を視察して、日本の医学教育が反省しなければいけない点がいくつか挙げられます。まずは教育の中心が今もって講義中心であることです。講義の良い点はたくさんあるのですが、学生からしてみればどうしても受け身になります。それから、現在ではかなり改善されているとは言いながら、講座間の縦割りがあります。このため、同じ項目を複数の講座で教えたり、逆に、どこからも教わらないことがあったりします。そしてもっとも重要な課題が、見学型の臨床実習です。見学型でも臨床実習は可能ですが、学生が責任をもって患者の診療に当たるという積極的な実習ではありえません。それから、評価法や国家試験にも課題が残されています。
1つの資料として、全国医学部長病院長会議で2年に一度実施している教育のカリキュラムの調査の結果をお示しします。臨床実習の時間数は平成21年に文科省の医学教育カリキュラム検討会で1,500時間以上が望ましいと提言されました。この提言が出される前の平成21年度の調査では、臨床実習の時間数が1,500時間を下回っている大学が3分の1ほどでありました。平成23年度の調査では1,500時間を超えている大学がだいぶ増えてきて、1,500時間を下回っている大学は減り、臨床実習時間数が増えていることが伺えます。
しかしながら、臨床実習については、時間数だけではなく内容も問題です。全国医学部長病院長会議の調査によれば、診療参加型実習が現在でも多くの大学医学部で根づいていないことが分かります。診療参加型実習が根づかない原因にはいくつかの問題があります。国家試験対策に追われて十分な臨床実習の時間数が確保できないだけではなく、国民が学生の診療を受けいれないなどの課題が指摘されます。
日本の医学教育に大きなインパクトを与えたのが、2010年9月のアメリカECMFGからの通告です。それは、2023年から、ECMFGの受験資格として、アメリカの医学校協会のLCME、または世界医学教育連盟(WFME)の基準など国際基準で認証された医学部の出身者に限るとの通告です。しか受け入れないことを通告してまいりました。アメリカでは臨床実習の時間数を規定しているわけではありませんが、例えばカリフォルニア州の法律では、臨床実習を72週以上受けた者でなければ州の免許を与えないことを明記しています。そこで実際には、アメリカの大学では、72週以上あるいは80週近く実習を行っている大学がほとんどです。それに比べ、日本の先ほどのデータを見ますと、臨床時間数がきわめて少ないと言えます。ヨーロッパ版では医学教育カリキュラムの3分の1以上は臨床実習を必要とすることを書いています。これを当てはめますと、日本は6年間の医学教育ですから、2年以上の臨床実習を受けなくてはいけないことになります。グローバル化に対応し、現在、医学教育の質保証を行う認証認承制度を準備しております。
さて、現在多くの大学医学部で医学教育の改革が進められています。10年あるいは20年前に比べますと、生命科学と科学技術が進歩し、それに伴って学生が学ぶべき知識や技術の量が膨大化、さらに細分化されています。さらに新たな視点での学問領域や診療分野が出てきている。例えば、私自身の専門は白血病ですが、白血病の治療は、従来、抗がん薬で絨毯爆撃的な治療を行うことが主流でしたが、現在では分子標的治療のようなピンポイントの治療ができるなど、長足に進歩しています。さらに、社会のニーズは多様化していますし、地域医療や福祉・介護、国際交流、創薬、これらに対しても気を配って教育しなければなりません。こうした観点から、医学教育のあり方そのものが見直されています。
教育技法も改変が進められています。医学知識は従来は講義によって教授されてきました。これはヨーロッパの例ですが、ヨーロッパは1学年が400人から500人と非常に多人数ですので、従来は講義で行える。講義は効率良く教育できますが、得てして学生は受け身になりがちです。また、成人は自分から勉強しなければいけないという必要性を感じて初めて勉強するし、学習法も自らで選択するといった成人学習理論に基づく考え方もあります。そういったことから、現在の医学教育の方向性としては、従来の講義を中心とした教育手法ですべてを教えることはできないことを、まず念頭に置かなければいけないと思います。すべてを教えられないとすれば、e-LearningなりICTを用いて勉強できる環境を整えることが重要になってきます。そうは言いながらも、医学部教育では、臨床医あるいは医学者というプロフェッショナルを育てるミッションがありますので、必須の知識は少なくともがっちり医学部教育の中で修得させなければいけません。決して自由放任にさせていいというわけではないのです。さらに、先ほど申しましたが、基礎医学や臨床医学は完全には分離できず、臨床医学の教育にも基礎医学が必要ですし、基礎医学の理解にも臨床医学の知識が必要です。
このような現在の医学および教育の特徴を鑑みると、従来の学問体系では対応できないと考えられ、医学教育改革が進められてきました。1987年頃から医学教育の改善が検討され、1996年には本日の座長をされています高久先生が中心になって21世紀医学医療懇談会が開催され、さらに医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議によって医学教育モデル・コア・カリキュラムが策定され、医学教育のあり方が大きく見直されることとなりました。
現在では80医科大学、医学部のすべてが少なくとも医学教育モデル・コア・カリキュラムの内容に則った教育をしています。カリキュラムが策定された後は、学生がきちんと学習しているか評価しなければいけません。そのため、全国の医学部の先生たちが集まって問題を作成し、学生の学習到達度を評価する共用試験が2005年度から正式に始まりました。
学習内容の精選とともに進められているのが少人数教育です。従来の講義はもちろん重要で、現在も行われていますが、それだけではなくて、学生自身に考えさせるようなテュートリアル教育に進み、また、臨床実習も、ただ単に学生が先輩医師の手技を見ているのではなく、実際に責任を持たした形での診療参加型実習に向かっています。このためには、国民の理解が必要です。また、共用試験を強化することも重要でしょう。臨床実習は患者にとって安全でなければいけませんし、学生にとっては効果がなくてはいけません。これらの要求に合うように医学教育モデル・コア・カリキュラムが構築されています。
医学教育モデル・コア・カリキュラムというのは医学部で教育すべきコアを示しているに過ぎません。あくまでも医学部教育の中の2/3程度で、残りは各大学が工夫をして、大学の持つバックグラウンドや地域性などそれぞれの特殊性を考慮したエレクティブなカリキュラムの構築が要求されています。
現在の医学教育の構造をお示しします。6年間の中で臨床実習を基本的には5年生、6年生の2年間で行い、臨床実習に入る前の教育では、コア・カリキュラム+選択カリキュラムによる教育が行われます。臨床実習前の共用試験によって、学生が臨床実習を受けるのにふさわしい知識、態度、技能を身につけているかどうかを評価した上で臨床実習を行わせまする。卒業後は国家試験に合格してから臨床研修を受け、その後は専門医のトレーニングを受けることになります。
医学教育モデル・コア・カリキュラムは既にご案内だと思いますので簡単にご説明致します。医学教育モデル・コア・カリキュラムはA~Gの7領域に区分され、必須学習内容を精選し、かつ基礎・臨床医学の統合が基本になっています。
Aの基本事項では、医の原則として、医の倫理、プロフェッショナリズム、安全性の確保などが6年間にわたって教育されます。B領域は、形態、機能、個体の反応、病態など基礎医学を括っております。Cの領域では、各器官、すなわち循環器、呼吸器、消化器など器官別の構造と機能、臨床的事項を統合した形のカリキュラムになっています。Dは全身に及ぶ免疫や感染症関係などに関する事項ですが入っています。E領域では、診療の基本として、例えば医療面接技法、診察技法、検査、手技などが掲載されています。F領域は社会医学に相当します。
Gは臨床実習に関わる領域で、診療参加型として、学生がチームの一員として診療に参加することが望まれています。実際の患者さんの診療にタッチするわけです。診断や治療計画の策定について、もちろん学生自身が行うわけではなくチームとして策定するのですが、それに参加し、カルテにも記載します。指導医は常に学生を評価しながら、形成的なフィードバックを行い、良かった点はどんどん伸ばすし、改善すべき点はその場で指導します。
なおかつ、臨床実習では、発生頻度の高い症候なり疾患をきちんと修得させ、緊急を要する症候や疾患、さらに死亡原因の高い疾患などを対象に、学生時代に触れさせることを目指しています。
医学教育モデル・コア・カリキュラムはその後2回改定されていますが、時間の都合で割愛させていただきます。
医学部教育の実際の例として、東京医科歯科大学での医学部教育の現状をご紹介したいと思います。東京医科歯科大学では、6年間の中で2年間の教養教育をこれまで維持してきましたが、教わるべき医学的な知識が増えて膨大化した現在、昨年から1年間に短縮することにしました。ただ、教養教育は大切ですので、その後の6年間の中で、講義やセミナー等での教育は残しております。2年次には、正常の構造や機能を勉強するという意味で基礎系の講義・実習があります。ここでは、例えば神経であれば解剖や機能、感染症なら細菌学やウイルス学、分子生物学などといった共通する分野を一緒にまとめた形でのモジュル制を敷いております。3年生からは臨床医学の教育を受けます。ここではブロック制で、臓器別に、内科や外科などと診療科を分けずに一緒に教育することにしました。4年生の5カ月はプロジェクト・セメスターで、この期間は講義や実習が全くなく、学生はそれぞれ自らが選んだ研究室に配属され、研究活動を5カ月行います。東京医科歯科大学の中で研究しても良いですし、学外施設や海外の研究室で研究を行うことも可能です。そして、4年生の後半から臨床導入実習として、臨床実習を受ける前の、診察技法や検査などを学んだ上で、5年生、6年生で臨床実習を受けます。この期間に、医療チームの一員として実際の患者さんを対象に診断・治療・臨床推論などを学びます。
教育の技法については、講義はもちろん残っていますが、問題解決能力を養うためにProblem-Based Learningを導入し、学生自身が患者症例シナリオについてどこに問題があるか、問題があった場合には、情報を集めて解決し、8名前後のグループ全体で討議します。教員はテューター(tutor)として参加し、指導します。
また一部にはTeam-Based Learningを導入し、まず、学生に試験問題を与えて、最初は個人ごとに回答させ、その後グループで討議して同じ問題を解いて、理解を深める手法です。
PBLもTBLも学生の自己学習を推進する形式で、自己学習に役立つようにe-Learningの環境整備も行っています。
次にシミュレーション教育についてご説明しますです。これはシミュレータを使って、実際の患者さんに行く前に臨床技能教育を受けるものです。「スキルスラボ」とおよそ380m2オープンスペースで、いくつかのシュミレータを使って実習を行っています。ここでは、まず1つとして診察技法のトレーニングが行われます。肺の呼吸音や副複雑音、心音や心雑音の聴診のトレーニング、超音波検査、内視鏡検査などを行います。次に、簡単な医療手技として、採血、皮膚の縫合、中心静脈穿刺、気管挿管などをトレーニングします。
臨床推論を学ぶ意味では、症例のシナリオに沿ったバーチャルソフトを用意し、学生の自己学習、並びに評価にも用いられます。一部のアドバンストのコースでは、鏡視下手術のトレーニングなども受けられるようにしています。
臨床実習では、Clinical Clerkship、いわゆる屋根瓦方式を取っています。もちろん診療科長が責任を持っていますが、その下で、診療チームに分かれて、講師あるいは助教クラスがヘッドになり、学生は研修医と一緒になって、患者さんの診療に参加します。臨床実習の場は主に大学病院の病棟ですが、教育関連病院でも実習を受けます。
東京都内で開業医の先生にお世話になりながら在宅医療に参加したり、海外の病院で臨床実習を受けることもあります。
医学部教育では将来の医学・医療を担う人材の養成も欠かせません。研究者の育成を目的として、まず1つは、MD-PhDコースを設けています。ここでは、学生が4年間の医学部教育を受けた後、大学院へ行って3年間の研究活動を行い、論文を書いて博士号を取得してから臨床実習に戻ります。そして、研修を受けて臨床医になったり、研究者になります。毎年3~5名程度の学生がこのコースに入り、この間は経済的に補助をしています。また、特別な研究者養成コースを設け、通常の6年間の教育を受けた後、大学院に進み、その後、ポスドクになるという制度もあります。この間も、経済的な補助として奨学金を与えますが、研究者になれば返還しなくてよいという仕組みです。これらによって将来の研究者を育成しようと考えています。
国際グローバル化に対応するには、国際交流も重要です。まず研究面ですが、ロンドンのImperial Collegeと完全なExchange Programを実施しています。先ほど申しましたプロジェクト・セメスターの5カ月間、4学年の学生を毎年4名、Imperial College に派遣して、現地で指導を受けながら研究活動を行っています。同時に、Imperial Collegeからも、3カ月ですが、学生が毎年4人来ており、私どもの大学の研究室で研究活動を行っています。Imperial Collegeの学生は日本で研究することに関心が高く、毎年4人の人員に対して、応募者の倍率がかなり高いと聞いています。このほか、オーストラリア、チリ、タイ、ガーナなどにも学生を派遣し、多彩な研究活動を展開しています。
臨床実習については、アメリカのHarvard Medical Schoolと提携し、毎年8名の学生を3カ月間派遣し、アメリカの学生と同じくClinical Clerkshipを体験させております。彼らの経験を基に、学内のClinical Clerkshipも充実させています。
学生だけでなく、教育の教育に対する質の向上ではFaculty Developmentが重要になります。この10年間、毎年10名ほどの教員をHarvard Medical Schoolに約1週間派遣し、医学部教育の改善に向けた意見交換を行ってきています。またHarvard Medical Schoolの教員を招請し、学内でのFaculty Developmentに参加してもらってPBLの教育法を紹介してもらったり、アメリカでの診察技法トレーニングを紹介してもらうなどの機会も設けております。
最後に課題についてです。医学部教育はこの10年間でずいぶんと改善はされてまいりました。しかしながら、まだまだ課題は多いと思います。現在、全国医学部長病院長会議では医師養成のグランドデザインを提唱し、医学教育の課題を検証し、改善に向けた提言を行っています。例えば卒前教育では、入学者選抜から始まり、臨床実習前の教育、臨床実習の教育にしてもいくつかの課題が指摘されています。国家試験のあり方、卒後の臨床研修のあり方、専門医養成などにも改善すべき課題があると思います。
医学教育の国際基準に対応した医学教育の分野別認証もまだ確立しておらず、これも大きな課題として捉えています。医学部教育の国際認証の確立については、文科省、全国医学部長病院長会議で現在検討を重ねている段階です。
少し時間が超過して申し訳ありません。現在の医学部教育の現状と課題についてご紹介させていただきました。ご清聴ありがとうございました。
(スライド終了)
○高久座長 奈良先生、どうもありがとうございました。非常に豊富な資料をご提供いただきました。残念ながら時間がきてしまいましたので、もし誰かどうしてもご質問がある方がいらっしゃいましたら、どうぞ。
○福井委員 この検討会の専門医制度との関連では、おそらく臨床実習のところがいちばん重要で直接的な関連を持っていると思います。臨床実習が診療参加型にならないということはもう20年以上前から言っている話です。先生のスライドの中に、「国民の理解が必要」という言葉がありました。もう1つは教員側で、医師免許を持っていない学生を教えることに、何か事件があったときの危惧が強くて、なかなか皆さんやってくれないということでした。伺いたいことは、国民の理解を高めるために何か実際にやっているのかどうかということ、それから、教員の意識を改革するために何か進展があったのか、その2つです。
○奈良参考人 ありがとうございます。まさにご指摘のとおりであります。まず、国民の理解を得ることはなかなか難しいのですが、例えば大学病院では、入院患者さんには予めきちんと説明して、「教育機関ですから学生が診療します。将来の医師のためにご協力をお願いします」ということで、まず同意を得てから臨床実習を行うようにしています。入院している患者に限定はされていますが、それで「ノー」と言う患者さんはそれほど多くはなく、ほとんどの人に協力していただいております。また、医学生の臨床技能教育を支援する模擬患者さんの活動もあります。これは全国にいろいろな団体で模擬患者さんとして医学教育に参加しようというボランティア活動です。これらの努力が突破口になると思います。
もう1点が、教員に対するご指摘についてです。実際にClinical Clerkshipで学生に診療をやらせると責任問題が発生するのを心配する教員があろうということですし、また教員の側にClinical Clerkshipとはどのように行えば良いのか周知されていない点もあると思います。そこで、文科省の協力を得てで診療参加型臨床とはこのようなものですというモデルになるビデオを東京医科歯科大学が中心になって作り、全国の医学部に配布させていただきました。また、講演会やシンポジウム等でも広げていますので、教員の意識も徐々に変わってきているかなと考えています。
○高久座長 ありがとうございました。時間になりましたので、次に、深山先生から病理の専門医について、よろしくお願いいたします。
○深山参考人 日本病理学会から、病理専門医、並びに専門医制度の現状について、お話させていただきます。病理医、病理専門医に関する内容について、数枚のスライドを使ってご説明申し上げます。
(スライド開始)
病理学は、病気の成り立ちに焦点を当てた研究を行っているわけですが、病理診断、病理解剖を通じて医療に貢献している医学の一分野であると位置づけています。医療の中の病理学を実践している医師を「病理医」あるいは「病理診断医」と呼んでいます。病理学会は、病理医が臨床医学・医療において果たしている役割、意義の重要性を鑑みて、40年前から「病理科標榜」を目指した努力を積み重ねてきています。同時に、信頼できる病理医を育成する目的で、34年前から専門医制度を構築、整備してまいりました。
そこで、一般の方にややわかりにくいところもあるかと思い、「病理医とは・・・」と題したスライドを用意していますが、病理医は生検・手術検体の病理診断、細胞診断を行うことで、実際の診療に携わっています。それから、顕微鏡を用いた診断に加えて、最近では、重要な分子の発現や異常を調べる分子病理診断も取り入れて、個々人に適した治療に結びつく診断を行っています。
外科系の診療科の手術前あるいは手術後、および内科系診療科とのカンファランスに参加して、病理学的立場から見解を述べ、チーム医療の一員として診療に貢献をしています。
手術中には迅速診断を行い、縮小手術や不必要なリンパ節郭清の回避などに貢献をしています。
また、不幸にして患者さんがお亡くなりになった場合でも、病理解剖を行い、臨床病理カンファランス(CPC)を開催して、病院の医療の質を臨床医とともに点検しています。こうしたCPCには、近隣の開業医の先生方なども参加されることもあるということです。
病理医には、診療に関連してお亡くなりになった方の調査解剖を通じた死因究明、医療評価で力を発揮することも期待されているものと考えています。
この図は、こうしたものをまとめてポンチ絵にしたものです。こうした細胞診断、生検診断、手術診断、術中迅速診断を通して実際の医療に貢献をしています。お亡くなりになった患者さんがいらっしゃっても、病理解剖といった最後の診断を通じて臨床医とともに検討を進めていくということです。我々病理医は「メスを使わない外科医、聴診器を持たない内科医」であるという医師像を考えています。
こういうことで,病理専門医研修の一般的目標という項目の中で???と書いてありますが、この3つは、病態を正確に認識して、これを診断する能力、これが非常に重要であるということです。稀ではない一般的な症例については的確な病理診断を下す。この診断をした上で臨床医に助言を行って、必要に応じて批判を行う。こうした能力を獲得することを専門医の条件としています。
同時に態度として、患者およびその家族の立場を尊重し、他の医師および関係者と協調して医療に当たる基本的態度を有することが必要であると、こうした点においても必要な態度を取得することを専門医の目標と考えています。
そういうことで私ども病理専門医制度をつくっているわけですが、臨床研修の2年間は必修科目としています。その上で病理専門医研修を4年間行って、先ほど言った能力を獲得する。死体解剖資格を得て、病理解剖診断を行う、臨床病理検討会に出て十分に討議できる能力を身につける、と考えており、そうした資格を持った人たちに対して2日間にわたる試験を課しています。
一旦、病理専門医となった後も、5年間で資格審査を行って、更新の手続を要求しているわけですが、この際には、人体病理業務に実際に従事していることが条件なので、管理職に移行された方などについては、資格の保留ということになってしまいます。それから、この5年間に生涯学習基準によって定めている単位を100単位以上修得していることを、更新の条件としています。
病理専門医制度について、簡単に歴史と現状について触れたいと思います。病理専門医制度の歴史に関して、私たち病理医、病院の中で果たす病理学の重要性を、国民の皆さんにご理解いただく努力と、併せてこうした病理専門医制度の整備を行ってきたということで、この2つを並行して表にしています。
1973年から内科学会・外科学会とともに、病院の病理を充実しなくてはいけないという働きかけを政府にしてまいりました。2008年にはこうした努力が実って、病理診断科の標榜が認められています。こうした努力と並行して、認定病理医制度を整備し、病理認定試験といったものを実施してきました。かつ、現在は病理研修登録といったものも行って、研修する人たちを登録して、最後まで、専門医取得まで応援する仕組みをつくっています。
こうした専門医制度の整備、充実は病理専門医にとって非常に重要であると私どもは考えています。このことは、病院における病理医雇用を促進して、病理医リクルートを支援するものであると考えています。特に、私どもでは人材不足が続いています。「がん対策推進基本計画改定案」においても、病理医不足の深刻さが認識されていると理解していますし、その対策として、「若手病理診断医の育成を行う」と書き込まれるということを聞いています。病理医を必要数配置するには、一学会レベルでは非常に困難な状況であり、こうした専門医制度の整備という観点から、十分にご配慮いただきたいと考えています。
このスライドは、実際に、病理専門医の現状はどうかということを示しています。病理学会は4,000名の学会ですが、医師会員はその8割強、3,500名で、専門医は2,120名です。医師会員以外は、歯科医師会員が5%程度いらっしゃいます。こうした病理専門医は、対人口比が、資料には「1.4」と書いていますが、「1.7」の間違いですので、ご訂正をお願いします。いずれにしても非常に少なくて、全医師の0.8%です。日本医師会の2008年の必要医師数調査でも、病理医の不足率が73.5%で、3.77倍と最も不足している医師になっています。
地域分布はどうかということで、北海道から九州まで一応日本地図の様に並べたスライドですが、人口10万人当たりで比較しますと、病理専門医が最も少ないのは福井県と三重県、人口10万人当たり大体0.9といった数値です。最も高い石川県で、3.4ぐらいです。
がん診療連携拠点病院における病理専門医も深刻でして、表の黄色いところで見ていただきますと、がん診療連携拠点病院数が372あるうちの常勤病理医不在病院が48、13%に上っており、放射線科医3%に比べますと、こうした数の不足が非常に深刻であることがおわかりいただけるかと思います。
アメリカと比較します。これは2005年のデータですが、人口10万人当たりの病理医はアメリカの約5分の1であることと、2分の1程度の麻酔科医と比較しても3分の1程度に低いということで、病理医が非常に不足していると考えています。
病理専門医にはどのような道をたどってなっていくのかという現状について、ご説明したいと思います。まず、研修施設、指導体制、カリキュラムといった点についてです。
研修認定施設は現在488施設ですが、4年間のうちに、剖検症例40例、生検症例5,000例を検出するに十分な条件を備えている病院で、病理専門医研修指導医が専任していることを条件にしています。
これらの条件にいろいろな項目で若干不足している病院ですが、協力を受け入れることもできる病院が270程度あります。研修指導医は1,794名。これは、病理専門医で更新を1回以上行った者で、希望する者に研修指導医の資格を与えています。
私どもの学会では、研修要綱、研修カリキュラムを整備し、研修手帳を研修をしている個々の医師にファイルとして配付しています。カリキュラムは、Basic、Advance?、Advance?という形で、比較的弾力的に運用できる形で定めています。
こうしたものを全部修得した人たちに対して専門医試験を行っています。この専門医試験は4つのパートに分かれています。稀だが重要な疾患、日常的な生検・手術標本、細胞診について実地で試験をする。それから、病理解剖症例、ガラスの標本、肉眼の写真などを与えて、報告書を実際に作るといった実地試験を行う。そして、臨床医といろいろ討論する能力も、面接で測っています。顕微鏡100台をそろえることのできる医学部実習室を利用して、実地試験委員が大体6カ月ぐらいをかけてこの問題を作るといった形で、力を入れて試験を行っています。
合格率はどうかといいますと、大体年間60~70名ぐらい、率にして8割程度の合格率で推移しています。
スライドは、大学を卒業した後どのような形で専門医に行くのかと、こうしたものをグラフで示したものです。卒後6年、7年、8年と書いてあります。現在、臨床研修を必須としていますので、現在では7年目から専門医の試験を受ける形になっています。7年目、8年目に大きな山がありますが、このあと緩やかな山があります。これはほかの臨床科を経てから病理専門医を取得する医師の存在を示しているものと考えています。こちらに実際に病理を志望して、大学院に入学をしながら専門医のコースをたどるモデルケースを示しています。こちらは大学院を経ないで研修医、専門の研修ということで、病院専門医の資格を取得する人のモデルケースをお示ししています。
最後に、病理専門医制度は学会としてどのように取り組んでいるか、あるいは問題点といったものをご紹介します。私どもは病理専門医を支えるための施策として、専門医研修を支えるということで、病理研修登録を始めています。登録した方には、研修手帳のファイルを配布して、専門医部会の会誌である雑誌を無料で配布しています。そして、専門医研修を続けることをエンカレッジしています。その他に生涯教育についてですが、一旦、病理専門医を取った後、生涯教育を支えていかなければならないと考えており、こうした診断講習会なども頻繁に開かれるように努力をしています。
こうして学会内には、専門医制度を運営するための委員会と生涯教育を司る委員会を設けて、こうした制度を維持するように努力しています。
病理学会における専門医制度の1つの特殊性ということで、口腔、歯科医の方がいらっしゃることをご紹介したいと思います。私どもは口腔病理専門医という資格を認定しています。顎口腔領域の疾患に関する病理診断を行う歯科医師といった方たちが存在し、病理学会に275名いらっしゃいますが、口腔病理専門医は106名です。病理専門医と同様に認定試験を行っており、口腔独自の問題と病理専門医の試験との共通問題が半々、解剖試験も実際に受けていただいて、死体解剖資格を必須としています。年に10名未満の方たちが認定を取得しています。こうした口腔病理専門歯科医という身分の問題ですが、専門医制度の枠内に捉えていただいて、こうした方たちにも専門医としての資格を与えていただきたいと考えています。
私たちは、病理専門医制度の問題点として、病理専門医が絶対的に不足し地域に偏在しているなど、深刻な問題点を抱えています。学会としては、生涯教育を充実させていく更なる努力が必要だと考えています。いまのところ、まだ日本ではあまり問題になっていませんが、アメリカでは、神経病理とか皮膚病理といったサブスペシャリティを取得する話もあります。こうした点についても将来的な問題として考えていかなければならないと考えています。
改めて、病理医を必要数配置するには、一学会レベルでは非常に困難ですので、この専門医制度の整備という視点で是非積極的な施策を考えていただければ、大変ありがたいと思っています。
(スライド終了)
○高久座長 ありがとうございました。ただいまの深山先生のご説明に、どなたかご質問をどうぞ。深山先生、アメリカと日本、特にアメリカは多いですね。やっていることはそれほど変わらないと思うのですが、なぜですか。
○深山参考人 アメリカは1900年初頭から、かなりこうした病理専門医に対する取組みがあったと聞いていますが、そういうことでアメリカの病理専門医、病理医の地位が非常に高いと。
○高久座長 賃金も高いわけですね。
○深山参考人 専門医の中でも、より高いということもあります。
○高久座長 どなたか、どうぞ。
○小森委員 日本医師会の小森です。私の同級生は100人のうち6人が病理医になっており、非常に特殊な学年であったと思いますし、石川県ですので最も病理医が多い。私は6年間県医師会長をしており、死因究明システムで病理の先生に大変お世話になっています。
我が国は行政解剖が非常に特殊で遅れているということから、行政解剖で言う監察医ということが、病理の先生が少ないことにも大きく関与しているのではないかと思っており、これから第三者的な事故調、そして病理の先生がたくさんおられるのは、日本の医療の水準を維持するためには必須のことと思います。どうしたら病理医が増えるかということについて、先生は、一学会レベルでは困難なので、できれば日本全体として施策を考えていただきたいというご要望だったと思います。
あとは、助成金とポストの確保がありますが、私はいまほど申しましたように、事故調等を含めて、各一定病院等については、あるいは地域等については、病理医の配置を義務づけていくことも非常に重要な視点ではないかと思います。それを含めてもう一歩進んで、先生方から病理医を増やすための具体的な方策を、今日はご遠慮なさったのではないかと思うのですが、かなり考えていらっしゃると思いますので、そこを教えていただきたいと思います。
○深山参考人 先生がおっしゃったように、特に私どもは2つ重要な視点として、1つはがん拠点病院における病理医の配置です。大体いつも遠慮しながらしゃべっているのが病理医の態度なのですが、私ども病理医としてはこれを是非義務づける形で書き込んでいただければ、大変ありがたいことだと思っています。
死因究明制度、これも非常に重要な問題点です。どういう体制になるかが現在議論になっていますので、これをどのような形で運営するかという具体案が決まらないと、具体的な施策として盛り込んでいくのはなかなか難しいかと思いますが、一定以上の特定機能病院とかそういう病院では、自分たちの病院の中での院内調査を非常に充実させていかなくてはいけないとなっていますので、先生のご指摘のように、そうした病院には病理医は必ず常勤として置くべきであるといったことも重要なことだと思いますので、是非学会としても具体的に提言をしていきたいと思っています。
○門田委員 今おっしゃられたとおりに、何とか増やしていかなくてはいけないというのは、よく分かります。私はがん対策推進基本計画を検討していくときに、これは非常に重要事項だということで、今回計画に載せました。ですが、それをいまのタイミングで基準にしたら、逆に拠点病院がなくなってしまうのです。ですから、一方では増やしていただかないと、そういうことはなかなか書きづらいことだと思います。これは大きな枠で決めるよりも、是非、何とか学会でご努力していただかないと、難しい問題ではないかと思っていますが。
○今委員 八戸市民病院の今です。麻酔科、救急、小児科、婦人科などは、臨床研修制度が始まって、医師数は少ないのですが、それを志望したいとかやってみたいという研修医がある程度の確率で市立にいるわけです。病理については、いま、必要とか義務づけるという話はありましたが、育てるというか、研修医から、もしくは学生から育てるという何か方策とか、作戦とかがありますか。
○深山参考人 それに関しては日本病理学会もかなり積極的に取り組んでおります。学会の各支部は7支部ありますが、各地域で夏の学校をやっていて、医学生に病理学の面白さを伝えたいという取組みをしています。それは学生を集めて合宿をして、病理学のいろいろなCPCなどを行い、実際に伝えるといった努力です。初期研修のときには2年目からかなりいろいろ選択ができるようになっていますが、このときに、積極的に病理の研修を入れていただく取組みはしています。今年から病理研修の登録制度を始めまして、そうした方たちには無料でファイルとか雑誌などを配って、専門研修を続けられる努力をしています。ですから、学会としては、そういう点での方面にかなり力を入れているところです。
○藤本委員 NPO法人地域医療を育てる会の藤本と申します。今日は貴重なお話をありがとうございました。病理専門医制度の歴史のところで、国民に対する努力についてお話をされていましたが、実際には政府への要望が中心であったかと思われます。私たち一般の市民は直接病理医の先生と出会うこともなかなかありませんし、まず病理医という方々が私たちの医療にどれだけ大きな存在であるかを知らない人がほとんどです。国民に対して広くアピールをすることが、ひいては若い学生さんたちに対しましても普段から自分たちの進路の選択の1つに病理医があるのだという認識にもつながってくると思うのですが、そのような一般国民へのアピールはどのようにお考えですか。
○深山参考人 これも私たち学会でも非常に重要なことと考えており、年に1回から2回の市民公開講座を開いています。この際には特にがんを取り上げることが多いのですが、単に病理が大事だということだけではなくて、市民の皆さんにがんの知識を知っていただくと、どうしても必然的に病理診断が大事だということで、病理の存在をアピールする形で市民公開講座を行っています。
ただ、私どもは何せ力不足なので、大きな新聞に取り上げられるとか、そうした特集の記事を組んでいただけるとかは、極めて稀で、5年に1度ぐらいあるかどうかといった状況ですが、そうした方向に向かっても一生懸命努力をしているところです。是非、一般の市民の団体の方から声を上げていただければと思います。よろしくお願いします。
○山口委員 長年の懸案であった病理診断科を掲げることができるようになったのは2008年だったというお話でしたが、いま現在それを掲げられている病院はどのぐらいあるのでしょうか。
○佐々木参考人 実際に診療標榜として看板を掲げている病院はまだまだ非常に少のうございます。ただ、大学病院などを中心に、機能標榜という形で病理診断科と名称を変えている所が徐々に増えてきております。病理学会としても、機能標榜としての形の病理診断科という看板をいろいろな病院で掲げていただくという動きを、これからしていきたいと考えています。
○山口委員 患者さんの目から見ると、病院に入った所に名前が出ている、出ていないというのは、かなり存在感としては違うと思います。せっかくこれを得たという話なので、それがどっと広がっていて欲しいと思いますが、病院のほうにはなかなか広がっていないのではないかという感じがするものですから。
○松尾委員 私の口から言うのも何ですが、大学の中で病理の部門というと、病理学教室という基礎部門に入っています。一方、病院では病理部があって、人体病理、あるいは臨床病理と実験病理、この部門が分かれていて、例えば教授選考などをすると、どうしても研究業績重視で、これは臨床とよく似ているわけですが、実験病理が主体になってしまうということですので、現実としてあるのかと思うのです。
ですから、そういう意味で言うと、いま話の中で研究の話も出てきたのですが、圧倒的に不足しているのは臨床病理をやる専門家であって、この人たちをどう育てるかは非常に大きな問題で、そういう意味では、大学の中でも臨床病理をやる人を、例えば臨床のスキルを重視して人選をするとか、あるいはそういったポストを増やすことをしないと、根本的に人は増えないのではないかという気がします。
○金澤座長代理 皆さんのおっしゃるとおりなのです。実は昨日、厚生科学審議会の科学技術部会があり、そこで新しい再生医療あるいは遺伝子治療に関する報告があったわけです。そうした新しい医療の試みで、因果関係は別として、亡くなった方が2人ほどおられたのですが、いずれも病理解剖されていないのです。私はこういうことは絶対にこのまま見過ごすべきではないと思います。少なくとも亡くなった原因をたどらなければいけない。その場でも発言したのですが、結局、病理解剖は病理の方がいくらしゃかりきになっても、これはできるわけがないので、臨床医の教育が大事なのではないかと実は申し上げました。
国民の皆さんにご理解をいただくというプロセスももちろん大事なのですが、先ほどの奈良さんの話の中にあったかどうか記憶にないのですが、病理解剖の重要性の教育には相当腰を据えて教えないといけないのではないかと思うのです。20年前は30%以上だった剖検率が、いまは全部合わせてもたぶん8%いかないのではないかと思うのです。そういう状況は、非常に深刻に捉えるべきではないかと思っています。
○桃井委員 臨床におりますと、病理診断の重要性は高度医療のみならず、日々の医療で極めて重要でその存在と質は医療の質そのものにかかわると実感されます。病理は剖検のみならず生検材料も含めて医療の質の根幹にかかわる専門性ですので、病理医が相対的に、あるいは絶対的にも極めて少ないという状況は、少ない医師数で努力して世界に冠たる質を保っている日本の医療のコストパフォーマンスを極めて悪くしていると、思います。
ですから、病理専門医が不足しているという問題は、先ほど深山先生がおっしゃったように、一学会の努力の問題に帰するのは適切ではないと私は思います。診療科の偏在が言われている中で、病理はその極端なところに存在していて、専門性遍在化問題を極めて強く訴えている問題であるに過ぎないと思いますので、一病理学会で努力せよという問題では全くなく、もはや日本の医療は診療科の偏在を何らかの緩やかな制限といいますか、突然極端な制限はなかなか難しいので、何らかの緩やかな制限を掛けて、若者の希望だけに依存するのではなくて、何らかの緩やかな制限がとれるシステムで、必要な専門医を確保するという動きをとらざるを得ない状況にきているのではないか、と思います。その極端な例が病理医不足に過ぎないのであり、医療に必要な専門性の提供体制をどうするかという意味で全体として考えるべきだと思います。
○小森委員 先ほど死因究明のお話がありましたが、医療に関する死亡例とは全く関係のない視点から、犯罪死を見逃すことがないように資する調査委員会が警察庁であります。そこでは法医学者を何倍に増やせという話になっています。ですから、確かに法医解剖と行政解剖、病理解剖、調査解剖という言葉をお使いになりましたが、そこの問題も1回1回議論をしないと、それぞれで要る要るというお話があって、双方の連携がなくて、実際に少ない中で、門田先生がご指摘になられたように、その枠をつくれと言っても、学会で努力していただかないと、それはできませんというお話の中では先に進みませんので、こういった議論も一緒にする必要があるのではないかと強く思いました。
○池田委員 専門医制度のほうから見ると、桃井先生が言われたように、病理、臨床、特に病理診断医の差が日米で非常に大きいというのは問題だと思うのですが、それはそれなりに理由がおそらくあると思うのです。病理学会ではこれまで実験病理を非常に重要視して、ここにきて病理診断医を増やそうと。
それから、トレーニングの仕方が全く違います。私が以前所属していた血液内科の後輩が、いまニューヨークで病理診断医のトレーニング即ち、レジデンスプログラムに入っているのですが、4年間のプログラムの中で、はじめの2年間は術中迅速標本の診断も含めて毎日毎日surgical parthologyのトレーニングしている。そういうトレーニングの仕組みがあるのです。
その結果として専門医資格を取得する訳ですから、それなりのステータスが得られることもありますので、ステータスだけを上げてくれということではなくて、そういうトレーニングの厳しい仕組みをつくる。そして病理診断医の必要性を強調し、やはりステータスを上げてくれというふうに持っていかないといけないのではないかと思いました。
○深山参考人 池田先生のご発言について、一言だけコメントさせていただきます。私どもは、先ほど試験の問題については縷々ご説明し、かつ、プログラムについてもご説明しています。私どもとしては、現在の非常に少ないリソースの中からかなりの力を入れて教育をしていることだけは申し添えたいと思います。それから、一般の方たちに病理診断の重要性、病理診断を直接ご説明するとか、病理解剖の結果をご説明するという取組みも、病理のほうとしては努力してやっているということも、付け加えさせていただきたいと思います。
○高久座長 深山先生、佐々木先生、どうもありがとうございました。最後に、「論点項目の素案について」、議事3ですが、事務局から説明をよろしくお願いします。
○医師臨床研修推進室長 お手元に配付している事務局提出資料2をご覧ください。「検討会における論点項目(素案)」です。夏までを目途にお取りまとめいただく中間まとめに向けて、今回、そのたたき台としての素案をお示しするものです。今後、この検討会において複数回にわたってご議論あるいは肉付けをしていただき、8月ごろまでに中間まとめとして、お取りまとめいただければと考えています。
素案の内容ですが、先ほどご案内した主なご意見の構成あるいは内容を基本的に踏襲して、そのエッセンスをまとめたものとなっています。今回は最初ですので一通り読み上げさせていたただきます。
1.検討にあたっての視点。
○ 専門医の在り方を議論するにあたっては、専門医を「患者さんにとって安心・安全で標準的な医療を提供できる医師」として育てることを前提として検討するべきではないか。
○ 新たな専門医の仕組みについて議論するにあたっては、これから臨床研修を修了する若い医師をどのように育てるかという視点で考え、既に専門医を取得している医師等との関係については、別途検討するべきではないか。
2.求められる専門医像について。
○ 専門医とは「神の手を持つ医師」や「スーパードクター」を意味するのではなく、「それぞれの診療領域において十分な経験を持ち、安心・安全で標準的な医療を提供できる医師」と定義してはどうか。
○ 「標榜医」、「認定医」、「専門医」という用語の定義についてどのように整理するか。
3.専門医の質の一層の向上について。
(1)基本的な考え方。
○ 専門医制度を持つ学会が乱立して、制度の統一性、専門医の質の担保に懸念を生じるようになった結果、現在の専門医制度は患者の受診行動に必ずしも有用な制度になっていないため、専門医を認定する新たな仕組みが必要ではないか。
○ 専門医制度の検討にあたっては、統一性のある臨床能力本位の認定制度により、専門医の質を担保する仕組みとし、患者の視点から議論するべきではないか。
○ どのような専門医を養成するのかを明確にした上で、そのために必要な指導医や経験症例数等を踏まえて養成プログラムを作成することが重要ではないか。
(2)専門医の位置づけについて。
○ 新たな専門医制度を確立することにより、研修プログラムを充実させて医師の診療レベルが高まること、医師が習得した知識・技術・態度について認定を受けて開示できること、患者が医師の専門性を判断できるなどの意義があるのではないか。
○ 新たな専門医制度の検討においては、プロフェッショナルオートノミー(専門家による自律性)を尊重しつつ、国の関与の在り方や医療提供体制における位置づけについても検討するべきではないか。
○ 専門医制度の設計にあたり、専門医のキャリアや認定基準など専門医に関する情報を国民に公示することなどのインセンティブについてどう考えるか。
(3)専門医の認定機関について。
○ 専門医の認定は、学会から独立した中立的な第三者機関が学会との密接な連携の下で行うべきではないか。
○ 中立的な第三者機関は、医療の品質保証を目的として専門医制度を運用し、医師の自己規律に基づき医師養成の仕組みをコントロールすることを使命とし、医師不足や地域偏在・診療科偏在の是正にも効果があるように運用するべきではないか。
(4)専門医の領域について。
○ 18の診療領域を専門医制度の基本領域として、基本領域の専門医を取得した上でサブスペシャルティの専門医を取得するような二段階制の仕組みとするべきではないか。
○ 専門医の認定については、個別学会が認定する仕組みではなく、診療領域単位の専門医制度にするべきではないか。
○ いわゆる「総合医」・「総合診療医」は、専門医の一つとして基本領域に加えるべきではないか。
(5)専門医の認定・更新について。
○ 専門医の資格取得後も生涯にわたって標準的な医療を提供するためには、専門医資格の更新の在り方について検討するべきではないか。
○ 専門医の認定・更新に当たっては、地域医療についても問題意識を持つような医師を育てることが重要ではないか。そのような医師を養成する上で、例えば日本医師会が実施している生涯教育制度を受講することについても議論してはどうか。
4.総合的な診療能力を有する医師について。
(1)総合的な診療能力を有する医師の在り方について。
○ 総合的な診療能力を有する医師の定義としては、「頻度の高い疾病と傷害、それらの予防、保健と福祉など、健康にかかわる幅広い問題について、わが国の医療体制の中で、適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的に提供できる医師」とすることが考えられるのではないか。
○ 「一般医」、「プライマリ・ケア医」、「家庭医」、「総合診療医」などの名称について、国民にとってわかりやすい、例えば「総合医」に統一し、「かかりつけ医」は患者の立場から見た別のカテゴリーとして整理してはどうか。
○ 総合的な診療能力を有する医師の定義からすると、その名称は「総合診療医」とし、「かかりつけ医」である「総合医」とは区別した方が良いのではないか。
(2)総合的な診療能力を有する医師の養成について。
○ 総合的に全体を診ることができる能力は重要な専門性だと考えられるので、関連する学会で養成に必要なプログラムについて検討して一本化して養成していくべきではないか。
○ 総合医を目指す若い医師を増やすためには、養成プログラムの整備に加えて、医療行政的なバックアップも考える必要があるのではないか。
○ 総合医を養成するためには、初期臨床研修に加えて一定の研修期間が必要ではないか。
○ 卒前教育と初期臨床研修とその後の研修を充実させることにより総合医の養成は可能ではないか。
5.地域医療の安定的確保について。
(1)専門医の養成数について。
○ 専門医制度の議論においては、専門医の質の向上に加えて、量のコントロールも重要な問題ではないか。
○ 専門医制度において、診療科や地域における医師の適正数を誘導する方法を設けることについて検討するべきではないか。
○ 新たに専門医を目指す医師が、専門とする領域や研修プログラムを選ぶ方法についてどう考えるか。
(2)医療提供体制における専門医。
○ 医療提供体制全体の中で、医師の専門性の分布や地域分布について、グランドデザインを作ることが重要ではないか。
○ 専門医のトレーニングにおいて、社会のニーズに合わせ僻地や医師不足地域における研修を行うことなどを検討するべきではないか。
○ 専門医の制度設計において、地域医療支援の観点から地域偏在是正のための具体的な仕組みを盛り込むことについてどう考えるか。
○ 現在のフリーアクセスの利点を生かしつつ、患者が総合的な診療能力を有する医師や適切な専門医にアクセスするための仕組みについて、どう考えるか。
以上です。よろしくお願いいたします。
○高久座長 ありがとうございました。いずれも非常に重要で、かつ難しい問題ですけれども、ご自由にご意見を言っていただければと思います。最初に申し上げたように、この論点項目を整理し、夏ごろまでに大体の報告書の素案を作る必要があると思いますので、ご自由にご意見を伺いたいと思います。今先生、どうぞ。
○今委員 八戸市民病院の今です。3頁のところに「総合医」と「総合診療医」という言葉が出てきて、今回のこの会議でも少し揉めたと思いますが、この用語が違うと、例えばインターネットでこの結果を見ている人たちも全然ピンとこなくて、青森に帰ってからもよく聞かれるのですが、ここが他の外科学会とか病理学会などはすごくわかりやすいのです。この「総合医」と「総合診療医」だけが未だに私の中でもよくわからないのですが、ここで解決すべきことなのでしょうか。
○高久座長 最終的には、ここで決めなければ報告書が書けないと思います。ですから、どちらがいいかということを皆さんで議論していただければと思います。高杉先生、どうぞ。
○高杉委員 日本医師会からお話をさせていただいたときに、「かかりつけ医」と「総合医」は一緒だ、これから若い人たちを育てるのは「総合診療医」にしてほしい、あるいは「総合診療専門医」でもいいですが、きちっと区別してほしいと言ったはずなのですが、いつまで経っても語句の整理ができずに同じことを書いている。私はそこで議論をきちんとするならしてもいいと思います。今まで日本の医療が非常に効率よく安くできている功績は、「かかりつけ医」あるいは「総合医」と呼ばれる人たちの語句の整理をしたからです。その意義をなしにして「総合医」という言葉をごちゃ混ぜに使うのは、今までの先輩たちに対して申し訳ないと思うし、日本医師会としての立場をご説明したはずなのですが、そこのところをきちんと整理してから議論に入っていただきたいと思います。
○高久座長 わかりました。
○池田委員 この検討会における論点項目のこの素案は、今までここで議論された論点をかなりよく整理されていると私は思います。ただ、今、おっしゃったように問題点というか、まだ意見が集約できていないところがあることも、そのまま書かれていますので、これを基にしてコンセンサスが得られているところ、おそらく前半の部分はかなりコンセンサスが得られているところだと思いますから、そういうものと、ここで論点として議論するところを区別しながら、はっきりしているところははっきりしている、議論すべきところは議論すべきところとしながら、進めていかなければいけないと思います。事務局の方は非常に苦労して、今までの議論を中立的によくまとめられたと私は思いました。
○高久座長 そうですね。
○桐野委員 名称の問題は今後も検討しないといけない問題だと思いますが、今回、議論している趣旨は、論点項目の素案の「1.検討に当たっての視点」の2番目の○で書いてあるように、既に取得している専門医の方の問題や、既に医師として活動している方の問題を最初に考えるのではなく、将来の我が国の専門医制度をどのように設計すればいいかということを考えることが趣旨ですので、それをまず念頭に置いた上で、この名称の問題を論じていただくのがいいのではないかと私は思います。
○高久座長 そう思います。
○小森委員 私は初めての出席ですけれども、これまでの6回にわたった議論のすべての資料、議事録を十分拝見させていただいたつもりです。いま池田先生も言われましたように、素案については、これまでの議論を十分踏まえて大きく網羅してあるということで、素案については評価をさせていただきたいと思います。また桐野先生がおっしゃいましたように、これからどうするのかということについて、たたき台として適切なものを挙げていると思います。いま、初期の段階から名称の問題についてあまり突っ込んでお話することは、必ずしも問題の本質ではないと思っていますので、そこは切り分けていきたいと思います。まず基本的に、この素案の論点項目については十分整理しているということで、日本医師会としては評価をしたいと思います。
○高久座長 ありがとうございました。私も名前の問題というのは、結局、重要であるけれども本当の本質的な問題ではないと思います。池田先生が理事長をされておられる日本専門医制評価・認定機構のほうでも、総合医の育成に関するワーキンググループを作って検討されるということですから、そこでも当然、名前のことが話題になると思いますし、これはメディファクスからですけれども、そこには関連する学会と日本医師会、プラナースに参加を呼び掛けることになっていますので、総合医にするか総合診療医にするか最終的に完全にここで一致しない場合には、「総合(診療)医」にして、もう少し時間をかけてしてもいいと思います。福井先生、どうぞ。
○福井委員 総合診療というか、プライマリ・ケア関連の学会をやってきた者の立場としては、例えば内科のトレーニングを受けた後、循環器の専門医になるとか、消化器の専門医になるイメージは誰でも持つと思います。このプライマリ・ケアに関しても、どちらかというと総合医という大括りな幅広いトレーニングを受けた後、主として病院で働く総合的能力を持った人を「病院総合医」と呼び、1人で開業してプライマリ・ケアをされる方を「家庭医」と呼ぶ。それらを二階にするときにはベースのところを「総合医」と呼んで、それにサブスペシャリティ的なというか、プライマリ・ケアにサブスペシャリティというのはちょっとおかしいですがさらに働く場所によって専門性を特化させたのが、病院総合医であり家庭医であるというイメージを持っています。そういう意味で総合診療医というのは、どちらかというと病院に特化したプライマリ・ケア医と考えられます。
○高久座長 アメリカのホスピタリストですね。
○福井委員 いわゆるホスピタリストに相当する言葉だと、私たちは思っています。
○高久座長 わかりました。
○藤本委員 この総合医を含めた医療の提供体制がきちんと回るためには、国民の理解が必要だと思います。そういう意味で2頁の(3)の「専門医の認定機関について」、3頁の5の(2)の「医療提供体制における専門医」、このあたりに国民の目線というか視点というか、もしそういった項目があるようでしたら論点整理の中で追加していただければと思います。
○高久座長 わかりました。山口先生、どうぞ。
○山口委員 ちょうどその話が出ましたので。総合医についていろいろ議論があるのはわかりましたが、いろいろプレゼンテーションがあった中で、専門医をこれから新しい組織で認定していく、今までの学会の認定でなく、中立的な第三者機関がこの専門医を認定する新しい制度を作ることに関しては、どなたもご異論がなかったと思います。
○高久座長 そうです。
○山口委員 これは長年の懸案で、喫緊の課題と言われつつも一向に進まなかった中で、少なくとも認定する組織というものについては、これをスタートすることについて、十分に皆さんの合意を得たのではないかと思います。そういう意味で、具体的に池田委員が前にお示しになった構想というのは、ただ単に学会だけでなく、日本医師会も病院会も参加して検討していただいた構想だったと思っていますので、ただ単に学会から独立したということだけでなく、全医療界が結集し、さらに医療を受ける側も参加するような形で、中立的な第三者機関の創立を、是非、早く進めてもらいたい。この専門医制度の問題を一歩前進させる意味でも、できれば3番ぐらいのところに盛り込んでいただければという感じがします。
○高久座長 最終的な報告書の中には、池田先生が提案されたように、第三者機関についてある程度具体的なことも書いたほうがいいのではないかと思いますが、以前、日本医学会が提唱して専門医制の審査機構を作ったときには、医師会の先生も入っていただきましたし、メディアの方にも一般の人として入っていただきましたので、今回は報告書の中に、池田先生とご相談して具体的な案を書いていただければと思います。
○高杉委員 誤解なきように付け加えるのですが、日本医師会は、この専門医制度に対して反対しているわけでは決してないのです。
○高久座長 それは、よくわかっています。
○高杉委員 ただ、国保連合会などの医療費削減策の中に総合医という名前が出てきたのです。これ用に使われたのでは困るからということが、ものすごくアレルギーとして私たちにはあるのです。専門医と全然違う考え方です。
○高久座長 私は医療費削減策と専門医制とを結び付けるのは非常に困ると思います。それから、もちろん以前に反対のあった人頭割りという形と総合医を結び付けるのも非常にまずいと思いますので、それはしたくないと考えています。
○高杉委員 そこのところを区別していただければ、私はそれに対して異論はありません。むしろ福井先生のおっしゃること、それから前沢先生のプレゼンに全く同感です。
○高久座長 ありがとうございました。ほかに、どなたか。
○平林委員 國学院大学の平林でございます。今日のところは論点項目ということで、おそらく出されていなかったのだろうと思いますが、中間まとめを発表するときには、この前提として、いまなぜ、我々が専門医制度の在り方について検討しなくてはならないのかというあたりを書き加えていただけると、一般国民にとってみたら、とてもわかりやすいのではないかと思いましたので、その点をお願いしておきたいと思います。
○高久座長 わかりました。ありがとうございました。桐野先生、どうぞ。
○桐野委員 高杉先生がおっしゃったことはごもっともで、総合医あるいは総合診療医の名称はどうであっても、総合的に診る医師を専門医制度の中にきちっと位置づけて、これはひとつの専門性ですよというコンセンサスは得られたと思います。もう1つ得られたのは、そういう医師はいわゆるサブスペシャリティというか、もう少し狭いところの専門医と比べると、上下の関係に見られたりしがちなので、それではいけないような制度設計をしましょうということも、私はコンセンサスが得られたと思うので、高杉先生がおっしゃるのはごもっともですが、その心配がないような格好で作ることが私は必要だと思っています。
○高杉委員 今日はマスコミの人も入っているので、あえてここのところだけは強調します。これからの若い医師をどのように育てるかという視点です。
○高久座長 わかりました。
○小森委員 もう1点だけ、よろしいですか。我が国における開業医の多くの方、ほとんど全員と言ってもいいと思いますが、10年以上、病院勤務医としてそれぞれの専門性を、ある意味で極めた非常に太い背骨を持って開業しておられます。そして開業の後に地域の医療、産業医活動、学校医、健診、また地域の老人の方々、保健・民生委員の方々、ケアマネ、介護、看取り、さまざまなことで、また生涯教育として成長していきながら、総合的な診療をしながら全人的に住民の方々とともに医療をつくっています。それがワンストップサービスとして、安価で高質な医療を支える非常に大きな日本の特質ですので、そういった方々をこれからどう考えていくのかを含めて、病院を中心とした高度な専門医と一般的な診療、この2つだけの議論をするのが、将来の日本の医療提供体制、国民にとって本当に幸せなのかどうかということがあり、あえて分けて議論させていただいたということです。国民のためにどうあるべきかという視点でお話していることをご理解いただき、次回以降、また議論させていただきたいと思います。
○高久座長 桐野先生、どうぞ。
○桐野委員 関連することで、同じことを別の言い方をしているだけかもしれませんが、この制度をもし作るとしますと、西ヨーロッパ型だと総合的な診療を行う医師というのは、こういう言い方がいいかどうか、身分なのです。ヨーロッパでは1段下に見られる医師として作られているのです。しかし、日本の制度はそれには全く馴染まないので、いろいろ検討した結果、横並びで基本的な診療科の専門家として総合医を位置づけて専門医としていくという、ある意味では画期的な方法だと私は思いますから、是非、位置づけを高くしてこの制度を作っていただきたいと希望します。
○高久座長 桐野先生のおっしゃるとおりです。最近では、そうすると行く医師がいなくなったので、どんどん地位を高める努力をアメリカ、フランス、イギリスでもやっているようですが、桐野先生がおっしゃったような形でスタートしたものですから、なかなか難しい様です。日本の場合には、繰り返し言いますが、本当に大変なのが総合医ではないか。むしろ専門の人は自分の専門の分野の患者だけを診ればいいわけですから、楽なのではないかと思っています。
○藤本委員 付け加えた形になるのですが、一般の患者というのは、どうしても専門という言葉には「高度である」というイメージを持っています。マスコミの方とお話をしたときに、総合という言葉に対比する言葉は部分だろうと。例えば、いま専門医と呼ばれている先生方を臓器別あるいは疾患別医という形で、それに対する総合医だったらわかりやすいという話をしたことがあります。どうも総合医、専門医という名称は、何か区別してというか対比してお話しているようなイメージがありますので、その辺をどう考えるかということも、国民に対するアピールの仕方としては大事な視点なのではないかと思います。
○小森委員 そうですね。私どもの主張も、したがって、総合的、全人的な医療をする医師については「総合診療専門医」ということで、国民の方々にご提示していく。まさに桐野先生がおっしゃった横並びということです。それはさまざまな観点から山口先生がご指摘になり、池田先生がやっておられるような本当に中立的な第三者機関で、それを評価していくことについて私どもも主張しているということです。決して委員がご指摘のような、総合的な医療をする医師を下に見て専門医をという議論が出発点ではないと思っていますので、理解をいただければと思っています。
○高久座長 基本領域の中に1つ加えることになります。基本領域ですから内科、外科、耳鼻科、眼科、そういうものの1つとしてすることになると思いますので、そういう意味では下ということではないと思います。ほかにどなたか、福井先生、どうぞ。
○福井委員 いまの議論と全く同じことを、以前私がプレゼンテーションしたときにも申し上げました。従来、専門医のイメージは狭い範囲を深く診るというものですが、今回の総合医の議論では幅広く診るということの専門性を多くの人に認めていただけるような働きかけをしないと、いつまで経っても全く違うカテゴリーで話をしてしまうように思います。高久先生をはじめ医療界のリーダーの先生方が、幅広く診ることは、狭い範囲を深く診ることと同じくらい重要な専門性なのだということを説得していただけるようなキャンペーンを、お願いしたいと思います。
○高久座長 そうですね。
○金澤座長代理 ただいまは大変に大事な議論をしておられると思います。ある領域の専門医がどこにいるかを国民の皆さんが自分で探せるようにきちんと開示することが大事であると、で言われているわけです。その一方で、開業医のような総合医がそういう専門の人を紹介するという方向もひとつの医療の在りようとして重要ではないかというわけです。この二つの方向は多矛盾する部分があるのです。ですから、その辺をこれから国民の皆さんに専門医を開示あるいは提示していくときに、少し考えながら行う必要があるのではないかと思います。
○高久座長 私はそういう医療提供体制システムのことについて、よく知らないのですが、たしか県のホームページか何かに、どこにどの病院があって、その病院にはどういう専門医がいるか、インターネットで調べればわかるようになっていると思います。ですから、むしろ一般の方が専門医のところに直接行かないで、まず総合医に診てもらい、一般的な病気についてはそこで診ていただき、その先生の判断に応じて専門の病院に行くようにする。そういう体系の重要さをよく理解していただくのが必要ではないかと思っています。私自身も今は家のすぐそばの開業の先生に主治医になっていただいて、薬をもらっています。すぐそばですし顔見知りですから、そのほうがはるかに便利です。そのほうが本当はいいのですよという認識をみんなに持ってもらう必要があると思います。ただし、いざという時には、どこの病院にどういう専門家がいるかということを、総合医の先生にもよく理解していただく、一般の方にも知っていただくシステムを作っていく必要があると思います。桃井先生、どうぞ。
○桃井委員 3頁の5の(2)に医療提供体制にリンクして掲げていただいたのは、大変ありがたいと思います。専門医の制度設計は医療提供体制の制度設計そのものですので。その中で3番目に地域偏在是正のみが書かれています。いまは全体が医師不足ですので、専門性偏在と言っても現実感があまりない診療科が多いと思います。しかし、これからは地域偏在是正のみならず、専門性偏在是正も極めて重要な事項になってきますので、地域偏在のみならず、専門性偏在是正のための具体的な取組みを盛り込むことについてどう考えるか、両方併記していただくほうがよろしいように思います。
○高久座長 そうなのです。これは池田先生の考えておられる第三者機関の中で、ある程度専門医の数も決めていかなければならないと思いますが、地域の偏在は非常に難しいですね。ドイツでは州の医師会が中心になってやっていますが、日本の場合には大学病院や行政など、各地域ごとにある程度コントロールできるシステムを是非作っていく必要があるでしょうね。完全にコントロールするというのは非常に難しいですが、医療関係者の間でコントロールすべきではないかと思います。ほかにどなたか、門田先生、どうぞ。
○門田委員 ただいまご意見のありました医療提供体制そのものがこの専門医制度と絡んでくると同時に、もう1点は教育体制です。医師の育成ということで、ひとつのキャリアパスが見えてくる形のものを作っていくことが重要なことだと思います。ひとつ提案ですが、3頁の(2)のいちばん下に「卒前教育と初期臨床研修」云々と書いてあります。私は、総合医の話として、いま申しているのではないのですが、今日、卒前教育の話を聞かせていただきましたが、この間に入る初期臨床研修との関係は検討されていないと思います。いまどの学会の専門医制度を見ても、内容はともかくとして2年間をそのままとり入れて、残り3年間をどうするということが学会の専門医制度の条件になっています。教育は育成という意味からすれば、これは非常に重要なファクターだと思います。ですから、ここの初期臨床研修と専門医の問題は非常に重要なつながりのあることなので、ここのところも一度、どこかの段階でしっかりとお話を聞かせていただくことが必要ではないかという気がします。
○高久座長 高杉先生、どうぞ。
○高杉委員 今度お持ちしますけれども、我々医師会が新しい提案というか、各県に1大学あるわけですから、医師研修機構を各県に作ろうということです。地元にできるだけ残っていけるようなシステムを作り、そこに登録して臨床研修に入っていくことにしたら偏在が是正されるのではないか。できるだけ卒業した学校で地域の研修もし、臨床研修を終えて専門医に入っていくシステムが提案できればいいかなと思います。そんな提案をしています。これは、あえて大学教育から臨床研修につながるようなシステムで考えていったらどうかということです。異論もあるでしょうが、日本医師会としてはそういう提案を考えて、この次にお見せしたいと思います。それが伏線にあって、大学教育がどうなっているかということを、今日、あえて奈良先生にお話いただいたということです。
○金澤座長代理 いま、教育の話になっていますので、日ごろ考えていることをちょっと申し上げます。総合医の教育というものは、いまの医学教育体制そのものが専門制に分かれているところを、ローテイトしたら出来上がるというものではないのです。ここは極めて大事なところで、これは私の個人的な意見ですが、ある時期は外国で教育してもらうというのはひとつの手なのだとさえ思います。ただ、それは別に考えるとして、私はいまの日本の状況を見ますと、開業しておられる先生方に協力していただくことによって、これは一部可能なのではないかと実は思っています。医師会の方が何とおっしゃるかわかりませんが、私はそれ可能だと思っていますので、うまくご協力いただいてひとつの形を作っていくことも、あり得るのではないかと思っていますので、そこだけ申し上げておきます。
○高久座長 臨床研修の必修化が始まってずいぶん経ちますが、あのときの精神は、2年間でプライマリ・ケアの教育をやるという事でした。要するに総合医の教育をやろうとしたのですが、実際には各診療科を回る。地域医療実習は別だと思いますが、各診療科の専門家の間を回っても総合医の教育にはならないです。地域医療実習も開業の先生や診療所に行くのはいいのですが、それを保健所や老健施設みたいな所で、簡単にすませているところがずいぶんあった様です。それで非常に不満が出て、桝添厚労大臣のときに私が委員長をさせられ、1年間は内科と救急と地域医療実習にして、2年目はある程度自分の専門に行ったほうが、かえって能率的ではないかという大学側からの意見が強く出て変わったわけです。そういう見地からすると、初期研修はむしろ1年でもいいのかもしれません。内科と救急と地域医療だけやる。たしか厚労省では初期研修を見直すはずですから、そのときにもう1回検討していただく必要があるのではないかと思います。
それから、今日の奈良先生のお話にもありましたし、私も書いたことがありますが、いまの国家試験の3日間で500題というが学生時代の臨床実習のクオリティを上げるのに対して非常に阻害的な因子になっている体制。CBTやオスキーをかなりちゃんとやっていますから、その後のプロセスを国家試験でテストする。この事は全部厚労省に関係するマターですから直接関係はありませんが、答申の中に入れていく必要があるのではないか。皆さんからご意見も出ましたので、そういうふうにさせていただきたいと思っています。
○小森委員 金澤座長代理が医師会の名前を出され、異論があるかもしれないとおっしゃいましたが、異論はございません。まさに先ほど申し上げましたように、現在の我が国の医療の最大の美点の1つは、専門性という太い柱を持った比較的重装備の開業医が、直接、国民の方々とお話をしながら信頼関係を持って医療を行っているところが、非常に安価で高質な医療のアウトカムを得ている最大の原因の1つだと思っています。この開業医の在り方、また新しく総合的な診療をなさる方々の育成等については、私どもの学術会議で高久先生に座長をしていただき、おまとめをいただいたところですし、長い間、生涯教育推進委員会で福井先生が委員長を務められ、基本的あるいはシステマティックでサイエンティフィックなものをちゃんと作り上げ、さらに総合的な診療が行える、全人的な医療ができる開業医を育成していくことをやっているわけです。まさに金澤先生がおっしゃったように、これから総合的な医療を行っていく、またそれを希望されるドクターについて、それを指導する大きな責任は日本医師会にあると思っていますし、それは十分協力をしてまいりたいと思っていますので、金澤先生のおっしゃった主張については異論はないとお答えしたいと思います。
○富田委員 名古屋医療センターで教育臨床研修を担当している富田です。先ほど座長もおっしゃったように、各科の専門家を回っても決して総合診療医は育たないと思っています。実際、うちの病院でも一時期、総合診療科がなくなって、各専門家を回るだけのローテーションだけの研修だったのですが、総合内科が立ち上がると全然見方が違うのです。ただ、各臨床研修病院に総合内科医が必ずいるかというと、それほど数がいませんので、これは今日の話ではないですが、卒前教育で、大学でもうちょっと総合内科的な時間を増やしてもらうのが現実的ではないかと思います。
○高久座長 それでは時間になりましたので、これで専門医の在り方に関する検討会を終わらせていただきます。今日も活発なご議論をいただきまして、ありがとうございました。次回につきまして事務局からお願いします。
○医師臨床研修推進室長 次回は、本日の議論を踏まえた論点項目の修正案を提示させていただきたいと考えています。それから追加のヒアリングも実施したいと考えています。次回は6月の開催を予定していますが、詳細な日程が決まり次第、追ってご案内いたしたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。
○高久座長 ありがとうございました。
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