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2012年5月15日 第4回労災診療費のレセプト審査事務に関する検討会議事録

労働基準局労災補償部補償課

○日時

平成24年5月15日(火)18:00~20:00


○場所

厚生労働省共用第6会議室(中央合同庁舎第5号館2階)


○出席者

(参集者:五十音順、敬称略)

小西 康之、竹内 啓博、蜂谷 將史、松島 正浩、山口 浩一郎

(厚生労働省:事務局)

鈴木 幸雄、若生 正之、倉持 清子、河西 直人、藤原 毅、栗尾 保和、松本 和之、岡村 圭介、倉重 潤一郎

○議題

(1)労災診療費のレセプト審査事務の委託等について
(2)その他

○議事

○松本職業病認定調査官 定刻になりましたので、ただいまから「第4回労災診療費のレセプト審査事務に関する検討会」を開催します。
会議を始めるに当たり、資料の確認をさせていただきます。本日の資料は次第の次からとなります。資料1は検討会報告書(案)です。5頁となっています。6頁目が参考資料1で、以下参考資料が続いています。下に通し頁を付けています。最後の頁が16頁となります。資料は以上ですが、欠落等はありませんか。よろしいでしょうか。
 また、写真撮影は以上とさせていただきます。これ以降は写真撮影をお控えください。
 それでは、山口座長、この後の進行をよろしくお願いいたします。
○山口座長 それでは議事に入ります。本日は前回の会議に続きまして、労災診療費のレセプト審査業務の委託の可否あるいは是非について、引き続き検討をお願いいたします。いくつか資料が配布されていますので、まず事務局から説明をお願いいたします。
○栗尾職業病認定調査官 それでは、労災診療費のレセプト審査事務の委託に関する費用対効果等について、ご説明いたします。参考資料1、6頁と振られた資料をご覧ください。資料の絵では、委託した後の形で記載していますので、まず現行の形を説明させていただきます。資料の絵に「委託する業務」の「審査」、「行政に残る業務」の「審査」、「委託者としての確認」という3つの四角い箱がありますが、現行は中央の「行政に残る業務」の「審査」が1つだけある形で、この中で「保険診療ルール」、「労災固有」を一体として審査しているということです。
 また、資料の左下、点線で囲んでいる中に「現行要している経費」として、平成24年度の予算額を記載しています。読み上げますと、1)審査担当職員561人の人件費が16億3,100万円、2)事務所借料や事務機器等借料の事業費として6億5,600万円、3)審査委員564人の謝金として7,400万円、合計で23億6,100万円となっています。
 この額と比較して増となる経費、減となる経費という形で、資料をまとめています。また、試算の前提としては、労災レセプト審査のうち、保険診療ルールの審査を委託することとして、試算をしています。
 資料中ほどの絵の部分ですが、現行で行っている審査のうち、「労災固有」の部分の審査を国に残し、「保険診療ルール」部分の審査を委託すると、左側の四角い箱の☆1になりますが、増となる経費として審査手数料が必要となります。
 ☆1ですが、第1回の検討会に提出しています平成22年度労災レセプト件数、約351万件を医科・薬剤に区分したものに、第2回検討会の資料における単価、これは審査のみではなく、審査・支払いを含めた手数料単価ですが、医科・薬剤のそれぞれの単価を乗じて算出し、3億1,600万円を要すると試算をしています。
 次に「行政に残る業務」についてです。保険診療ルール部分の委託による業務量の減に伴い、国の人件費の減が見込まれます。真ん中の四角の「行政に残る業務」の「審査」という箱の中で、網掛けの「労災固有」の部分が残り、「保険診療ルール」部分が委託により委託側の箱に移ってなくなるということで、ブランクで表示をしています。☆2として2億5,900万円の減と試算しています。
 先ほどと同じように、右側の「委託による増減経費」の欄の☆2に内訳を記載しています。審査担当職員が90人の減、561人から471人になるということにより、2億4,000万円の減。審査委員が141人の減、564人から423人になることにより1,900万円の減と、合わせて2億5,900万円が減できるものとして、試算をしています。
 この減できる職員数の考え方については、2頁後の参考資料3、8頁をご覧ください。現在はレセプト審査において、労災固有部分、保険診療ルール部分を一連として行っていますので、それぞれにどれくらい業務量を要するかという明確なものはありませんので、全国の6労働局の審査担当職員に対し、サンプル調査を行ったところです。その結果は真ん中に記載していますが、審査に占める割合は、労災固有部分76.7%、診療報酬点数表等部分が23.3%と、概ね3:1。労災固有の審査は、診療報酬点数表等に基づく審査に要する時間より約3倍長くなっているという結果となっています。
 労災固有部分の審査においては、私傷病との区分や、医療効果の情報の把握のために、前月分以前のレセプトの確認も必要となることが多いということで、これが時間のかかる要因の1つとなっているとのことです。
 それで、この3:1という値をもとに、削減可能人数を試算したところです。内容は資料の下の網掛け部分になります。まず審査担当職員数については、審査担当職員は審査以外にも機械入力であるとか、支払いにかかる照会対応などの業務を担っていて、業務全体のうち、審査業務の比率は大体3分の2程度と見込んでいます。したがってこの3分の2に、先ほどの3:1の比率、つまり4分の1を乗じると16%という値が算出されます。審査担当職員数561人に、この16%を乗じて、90人という数字を算出しました。
 次に、審査委員の数については、審査委員の行う業務は審査業務のみとなりますので、先ほどの3:1、つまり4分の1である25%そのままを、審査委員の数564人に乗じて、141人を算出しました。
 参考資料1に戻っていただき、3つあるうち、いちばん右側の四角い箱の☆3になります。保険診療ルールの委託に伴い、委託した審査結果について、保険者として確認する必要が生じることが見込まれますので、これに要する経費を増となる経費として試算をしています。
 この委託した審査結果にかかる保険者としての確認に、どの程度の業務量を要するのかというところも、具体的に不明な部分が多いところです。この資料については、委託により削減可能となる審査担当職員数の半数、5割を要することとして積算をしていて、この場合は1億2,000万円の経費を要するという試算となっています。結果、全体として、現行と比較して1億7,700万円の増と試算しています。
 1枚おめくりいただいて、もう1パターン試算をしています。前の頁と相違する点は、☆3の委託した審査結果にかかる保険者としての確認の部分のみで、参考資料1においては、委託により削減可能となる審査担当職員数の5割としていたところを、このパターンでは3割として積算したものです。この場合、7,200万円の経費を要すると試算され、結果、全体として、現行と比較して1億2,900万円の増と試算しています。
○松本職業病認定調査官 引き続き資料の9頁をご覧ください。こちらには「労災固有の審査を含め民間に完全委託した場合の見込額」というものをまとめています。コストとしては26.4億円以上という見込みになっています。内訳としては、人件費が18億円、事務所借料が4.5億円、事務経費が3.2億円、審査委員会経費が0.7億円となっています。
 コストのほうは「26.4億円以上」と、「以上」という表現を使っています。それは、その下の*のところですが、支払基金に委託した場合と同様、保険者としての確認のための費用、いまご説明した保険者としての確認のための費用、それから委託団体を監査・指導するための費用が別途かかるという考えのもと、これを「以上」という表現にしています。
 内訳として、人件費については、労災固有の部分を含めて民間に委託するということですので、やはり労働ということに詳しい社会保険労務士くらいの知識のある方に見ていただく必要があるだろうということから、その方の給与を想定しています。ここには事業主側が負担する社会保険料負担金等も平均給与額に上乗せしています。
 また、医療事務ということで、こちらも同様の考えですが、このような積算をしています。さらに、事務所借料については、これらの人数について必要な面積というものを、国の業務室面積算定基準に基づいて算定して、都道府県別の坪単価からその必要額の積算をしています。比較対象として、下段に平成24年度の国の見込額を記載しています。国の見込額としては、コストが23.6億円ということです。その内訳は、人件費16.3億円、事務所借料3.4億円、事務経費3.2億円、審査委員会経費0.7億円となっています。
 これらに基づいて、実際に審査・点検が行われての査定減という部分ですが、民間に委託した場合については、やはり例がないことから不明という形にしています。国においては平成22年度の実績で、38億円という額を上げています。
 次に10頁をご覧ください。前回の会議などでも、労災保険の「治ゆ(症状固定)」という言葉が、いろいろ議論の中で出ていましたので、ここで整理をする観点から、「労災保険の『治ゆ(症状固定)』について」資料を提出しております。労災保険の治ゆについては、業務上の負傷又は疾病に対して、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待し得ない状態に至ったものであり、負傷にあっては、創面がゆ合し、その症状が安定し医療効果が期待し得なくなったとき、疾病にあっては急性症状が消退し、慢性症状は持続してもその症状が安定し、医療効果がそれ以上期待し得ない状態になったときをいいます。
 こちらの治ゆですが、医師の意見、それからレセプト審査を通じて把握した医療情報等を踏まえて、労働基準監督署長が治ゆの判断を行っています。
 また、11頁以降については、第1回目から第3回目まで資料を提出させていただきましたが、その中で表現が曖昧となっていたところなど一部表現の適正さという観点から、文言修正等をさせていただきました。細かい説明は省略させていただきますが、それぞれの資料をその後ろに添付しています。以上です。
○山口座長 それでは、ただいまの説明に対して、ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。
○竹内先生 最初に説明いただいた外部委託にかかる費用の試算についてのコメントは、この段階でしたほうがよろしいでしょうか。それとも報告書(案)との絡みでしたほうがよろしいでしょうか。
○山口座長 どちらでもいいと思います。話しやすいところでお願いします。
○竹内先生 それでは、後ほどいたします。
○山口座長 何かご意見はありませんか。ないようでしたら、次に移りたいと思います。まず事務局で、第1回会議から第3回会議までの議論等を報告書(案)のたたき台としてまとめていただいておりますので、それをご紹介ください。
○松本職業病認定調査官 皆様のお手元に資料1として、検討会報告書(案)を配布しております。こちらは事務局でまとめさせていただき、座長にもご一読いただいております。それでは、〈1〉から読み上げます。
〈1〉 検討の経緯及び目的
労災診療費のレセプト審査事務については、平成23年12月8日の衆議院決算行政監視委員会において、「労災診療費のレセプト審査事務の社会保険診療報酬支払基金等への委託についても検討を進めるべきである。」との決議がなされた。
このため、本検討会では、厚生労働省からの依頼により、労災診療費のレセプト審査事務を社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)等に委託することについて、審査事由や費用対効果等の視点から検討を行った。
○山口座長 この点はいかがでしょうか。検討の経緯・目的ですから、あまり問題はないと思います。表現等でいかがですか。よろしければ、次の〈2〉にいきたいと思います。
○松本職業病認定調査官 はい。
〈2〉 労災保険におけるレセプト審査
1 労働者から療養補償給付請求があった場合、労働基準監督署長は労働者の負傷又は疾病が業務上か否かを判断し、業務上災害と認定された場合には支給決定(行政処分)を行い、当該負傷又は疾病の療養に要した費用について、労災診療費として医療機関に支払うことになる。
2 療養補償給付は業務上とされた範囲で給付されるものであり、また労災保険料の全てを事業主の負担としていることから、労災診療費の支払の範囲は業務外である私傷病等が含まれないよう、レセプト審査を行うことが必要となる。
3 業務上の負傷又は疾病に対して、治ゆした後にその身体に一定以上の障害が存する場合には障害補償給付を行うこととなる。
○山口座長 この点はいかがでしょうか。
○松島先生 最初の項目のところですが、その項目の前に、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付の説明を入れたほうがいいのではないかと思います。例えば「労災保険制度では、業務上の負傷又は疾病にかかった労働者に対して、療養補償給付を行うとともに休業補償給付を行い、身体に障害が残った場合に、障害補償給付を行っている」ということを入れた方がいいと思います。いきなり「労働者から療養補償給付請求があった場合」と書いてあるので、ここにどういうのがあるのかを書き添えたほうが、あとの流れがスムーズになるのではないかという印象を受けました。
○山口座長 わかりました。1の前に労災保険制度について、簡単に説明があったほうが分かりやすい、つながりが良くなるというご意見ですが、いかがですか。特にご意見がなければ入れていただくことにしたらどうかと思います。
私のほうから言わせていただくと、2の療養補償給付の部分で、私傷病が含まれないように確認するレセプト審査は、行政処分と密接不可分であるということを強調するというか、これがいちばん大きな特徴だと思いますので、そのことが分かるような表現が入っていたらどうかなという気がします。例えば「私傷病か否かの判断は、労働基準監督署長が業務上と判断した負傷あるいは疾病の範囲や医学的な根拠等に基づいて判断することから、レセプト審査は行政処分と密接不可分な関係にある」というような文章があれば分かりやすいのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。
 それから、レセプト審査で私傷病だと判断された場合、ここでは査定という言葉を使っていますが、査定された場合に、被災労働者の不服申立の関係はどのようになるのか、事務局で簡単にご説明いただけたらと思います。
○松本職業病認定調査官 レセプト審査で私傷病ということで査定をされた場合、実際に査定された部分については、今度は医療機関の方で健康保険に請求してもらうことになります。健康保険ですと個人負担分がありますので、当然医療機関は被災労働者に個人負担分の請求を行うことになります。
 それに対して、被災労働者が不満ということになりますと、私傷病として査定された部分全額を被災労働者が医療機関に一旦支払い、それを費用請求という形で労働基準監督署に請求することになります。
○山口座長 わかりました。それは直接レセプト審査に関するものではなくて、その結果に関することですから、文章としては特にいいですね。前の療養補償のところで、行政処分と密接な関係にあるということは必要ではないかという気がします。
○松本職業病認定調査官 実際に費用請求をされた場合、監督署では、それを業務上か業務外かという判断をしなければいけないということで、そういう意味では行政処分につながる話です。
○松島先生 3に「治ゆ」があります。今日は労災保険の治ゆについて資料提出があったわけですが、その考え方とか、治ゆになった場合には療養補償給付とか休業補償給付を打ち切って、障害がある場合には障害補償給付が行われるということを、ここに記載したほうがいいのではないかと思います。そういう必要性はありませんか。
○山口座長 3の2行では足りませんか。
○松島先生 3に「治ゆ」と書かれていますが、今日わざわざ労災保険の治ゆについて資料の提出がありました。これは分かりにくいからこういう資料が出たのだと思いますので、そこの考え方と治ゆになった場合にどうするのかということは労災保険の特有の部分です。ですから、この辺の項目に何か文言を入れたほうが理解しやすいのではないかと私は思うのです。
○山口座長 松島先生のご意見はごもっともだと思いますから、検討してください。
○松島先生 医療機関から提出されるレセプトには、被災労働者に対する診療、検査、投薬等の状況が記載されておりますから、労働基準監督署長が医療効果の有無を判断する際に必要な情報になるわけです。そういうことで現状の労働局の審査では、そこのところはどのようになっていますか。
○松本職業病認定調査官 ご質問の確認ですが、レセプト審査でいろいろ医療情報があるわけですが、実際に労働局が審査をして、それを労働基準監督署にどのように提供しているのかという趣旨でしょうか。
○松島先生 これは今までのほかの特徴とは違いますが、そこが理解できないと、あとの話がやりにくくなると思います。
○山口座長 松島先生がおっしゃった点は、例えば、労働基準監督署長が行う治ゆの判断は、労災保険給付の支給・不支給に重要なかかわりがあり、主治医等の意見や被災労働者の症状の経過を踏まえて行われる、という治ゆの認定の説明があったほうがいいのではないかというご意見です。
○松本職業病認定調査官 それと先生から質問があった労働局でレセプト審査をしている中で、医療情報を把握してどのように提供するのかという点ですが、労働局のほうでレセプト審査を行っていることを通じて把握した医療情報について、行政処分に役立つようにということで、一定程度情報をまとめて、適宜、労働基準監督署に提供しています。
 ですから、労働基準監督署においては、先ほどの治ゆの資料にもありますが、主治医である医師の意見、レセプト審査の内容等を踏まえて、その方の症状固定、いわゆる治ゆの時期を判断しています。それで症状が固定されているとなると、治ゆということで次の障害補償給付等の給付、処分のほうに結び付いていきます。
○松島先生 労働局がレセプト審査をしている情報を、労働基準監督署長は行政処分に活用しているということですね。そうすると、いま説明のあった点をここに記載して、レセプト審査と行政処分は密接不可分な関係であることを記載しておかないとほかのレセプト審査とは全く違うところですよね。書いておかないと皆さん理解できないと思うのです。
○山口座長 その点は是非、そのようにお願いします。ほかにご意見はありませんか。
○小西先生 確認というか伺いたい点ですが、2で「また労災保険料の全てを事業主の負担としていることから」という言葉が入っているのですが、これは必要な情報なのでしょうか。
○松本職業病認定調査官 検討会の場か説明に上がった際か定かではないのですが、そういうご意見があったことを受けて、ここに記載しております。そのときのご意見の趣旨は、保険料はすべて事業主負担ということになって、私傷病が含まれたものが給付されると保険給付の支払いが増えていくことから、私傷病によって不適切な不要な給付が増えることによって保険料が上昇してしまうことについて、ご指摘があったと認識しております。
○小西先生 事業主負担だけではなく、例えば、仮に労働者が負担しているからと言って、費用が膨れることは問題ですよね。事業主だけが保険料を払っているからというのが、どのような意味で必要でしょうか。結局は業務上と判断された場合には、その限りで支払うというところが肝になっているので、何となく事業主負担だということを追加として記載することも考えられるのかもしれませんが、療養補償給付が業務上とされた範囲で給付されるものであるということに尽きるのではないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
○山口座長 小西委員の意見は、この文章は要らないということですね。検討してください。それでも意味が十分通じるようなら必要ないかもしれません。ほかにご意見はありますか。竹内先生、ご発言の箇所はまだ先ですか。
○竹内先生 〈3〉です。 
○山口座長 それでは、ほかにご意見がないようでしたら、〈3〉がいちばん重要なところです。そこにまいりたいと思います。
○松本職業病認定調査官 はい。〈3〉は長いので、1だけを読み上げます。
〈3〉 支払基金への労災診療費レセプト審査事務の委託について
1 支払基金への委託の範囲の検討
(1) 労働基監督署長が労災保険給付を行うには、法律上、被災労働者の負傷や疾病を業務上と判断した上で支給決定(行政処分)する必要があり、労災診療費も療養補償給付が支給決定されて初めて生じるものである。健康保険における診療費は、労災保険のように事前に保険給付の支給・不支給の決定という行政処分がなされることを前提としておらず、この点は両制度の根本的な違いである。業務上外の判断や労災保険給付の支給・不支給の決定は、労働基準監督署長の権限であり、かつ義務でもあることから、これらについて支払基金に委託することは問題がある。
(2) 労災診療費のレセプト審査を業務内容で分類し、支払基金への委託が可能か検討する。
1) 審査業務の内容による分類
労働局が行っているレセプト審査事務の内容に着目して分類すると、次のように整理できる。
ア 労災固有部分。労災保険は業務上と判断された負傷又は疾病に保険給付を行うものであることから、労災レセプトの審査に当たっては業務上と判断される負傷又は疾病に限定する必要があり、私傷病を排除するための審査が必要である。負傷又は疾病の治ゆの判断は労働基準監督署長が行うものであり、レセプト審査から得られる医療情報等を基に行うものである。
イ 診療報酬点数表等に基づく審査部分
労災診療費は基本的には診療報酬点数表等に準拠していることから、診療報酬点数表等に基づく審査が必要であり、具体的に審査しなければならない項目は以下のとおりである。
(ア)記載漏れや労災保険指定医療機関番号等の確認
(イ)診療行為の名称、算定ルール等の確認
(ウ)医薬品の名称、価格等の確認
(エ)医療材料の名称、価格等の確認
2) 支払基金の審査の範囲
支払基金による診療費の審査は、保険医療機関等において行われた診療行為が療養担当規則や診療報酬点数表等により定められた保険診療ルールに適合しているかどうかを確認する行為であり、具体的に審査しなければならない項目は以下のとおりである。
(ア)記載漏れや記載不備等の記載事項の確認
(イ)診療行為の名称、算定ルール等の確認
(ウ)医薬品の名称、価格等の確認
(エ)医療材料の名称、価格等の確認
3) 以上のことから、労災レセプトのうち、上記、1)イの診療報酬点数表等に基づく審査部分については、支払基金の保険診療ルールの審査と重なる部分があり、委託に係る検討対象となり得るが、労災固有部分すなわち業務上の負傷・疾病と私傷病を区分する審査等の労災固有部分の審査は、労災保険給付の支給・不支給の決定という行政処分に密接不可分の関係であることから、現状では支払基金に委託することは問題があり、また実際の経費負担の面からみても、行政処分を行う国が直接審査するほうが効率的であり、労災保険給付の適正な運営に資するものと考える。
なお、保険診療ルールの分野について支払基金等への委託を検討するに当たっては、業務上として支給決定された労災レセプトに限定すれば、業務外として不支給決定となった審査の必要のない労災レセプトを委託の対象から外せるが、審査期間の点で問題が出てくる(3-(2)参照)。
○山口座長 それでは、1の「支払基金への委託の範囲の検討」ですが、いかがですか。
○松島先生 (1)の5行目に「健康保険における診療費は、労災保険のように事前に行政処分を行うことを前提としておらず」とあります。事務局にお聞きしたいのですが、健康保険ではどういう視点から審査をしているのですか。
○松本職業病認定調査官 健康保険の関係ですが、1つには、被保険者の資格を持っているかどうかという得喪の視点から保険者としての審査、判断が行われていると理解しています。
○松島先生 そうすると、そのことを労災保険の前に入れてはどうでしょうか。労災保険とその辺が全然違うわけですよね。
○松本職業病認定調査官 そうですね。
○松島先生 ごちゃごちゃ入れるのがいいかどうかわからないのですが、いかがなものでしょうか。
○山口座長 入れたほうがはっきりするようでしたら、入れたほうがいいのではないかと思います。
○松島先生 小西先生、ほかの先生、どうですか。あまり文言が増えてしまうとごちゃごちゃしますか。
○小西先生 私はそれほど気にはならなかったのですけれども。
○松島先生 わかればいいのですがね。
○山口座長 文章の流れいかんですね。
○若生補償課長 行政処分とそうではないものとの区別を明確にする意味で、記載した方が明らかになると思いますので、そういう方向で検討してみます。
○山口座長 目で読むのと、耳で聞くのとでは多少感じが違ってきますから、ご検討ください。
 それから(2)の労災固有部分ですが、労災保険の場合に、保険料は全額事業主負担ですので、私傷病が含まれると保険料が増大するという要素があります。それが先ほど保険料の記述が入った理由ではないかと私は思っていたのですが、小西委員からあのような意見が出ましたので、先ほどの点と労災固有部分への記載についてご検討いただきたいと思います。
また、レセプト審査から得られる医療情報を基に、治ゆの判断を監督署長が行うということは、先ほど松島先生からご意見があって問題になったわけですが、こういう観点からもレセプト審査を通じて、医療効果にかかわる情報を把握する必要があるということですので、必要な箇所にこの点についても、こういう趣旨であるということがわかるような記載があったほうがいいので、それをご検討いただければと思います。
○松島先生 もう1つ、しつこいようですが、2頁のいちばん下の、3)に、労災固有部分としての私傷病の区分について記載されていますが、先ほど触れた治ゆの審査について、支払基金では行っていない、支払基金では治ゆという観点の審査は行っていないわけですね。
○蜂谷先生 行っておりません。
○松島先生 そうすると、2頁の最後の行に「等」と書いてありますが、医療効果にかかわる情報の把握も入れて、支払基金の審査項目になっていないということを記載した方がいいのではないでしょうか。そこが違うところだと思いますので。
○蜂谷先生 そこが根本的に違うところです。
○松島先生 ですから、そこがわかるようにしていただきたいと思います。
○山口座長 それは重要な点だと思いますから、そのようにお願いしたいと思います。ほかに何かご意見はありますか。
○竹内先生 いまの続きの、3)の結論のところ、3頁の上から3行目「また実際の経費負担の面からみても、行政処分を行う国が直接審査する方が効率的であり」という記載がありますが、ここは根拠としてはどういうものになるのですか。
○若生補償課長 これまでの検討会でそういうご発言があったものですから、先生方の意見を集約するという意味で書いたものです。その時の検討会では、別々に審査するより国が一元的に審査したほうが二度手間にならないのではないかというご発言があって、国が直接やったほうが効率的だという趣旨で案を作らせていただきました。
○竹内先生 実際の数字の分析というよりも、概念的に一気通貫でやったほうが作業としては効率的であろうという考え方をベースにしているということですね。
○蜂谷先生 これは基金で審査する内容と労災固有の部分がありますので、できる人であれば、私病も一緒にわかりますので、1人で見たほうがいいということで、審査する側の精度を上げれば、かなりいいのではないかという気がしております。そうしないと1回出したレセプトに私病があるかどうかもわかりませんので、再度見直すことになると思います。最初のレセプト審査の外部委託に関する費用の試算のところで、1回基金に渡して、戻ってきたものをもう1回見直す。二度手間になるということと時間がかかります。
○竹内先生 後ほどまた出てきますが、業務委託できるかもしれない部分についてのコスト分析の話と、移管できない部分の表現が非常に似ているというか、効率的ではないという結論に至っていて、その辺の因って立つ前提というか根拠が違うということなので、もう少し説明を加えていただければよろしいかと思います。
○山口座長 これは竹内委員がおっしゃったように、4頁で委託した場合の費用対効果の問題とも関係があるわけですね。
○竹内先生 そうですね。そちらはそちらの分析、こちらは残せないという部分についても、それもさらに効率的なのだからいいということで補強されている文章になっているかと思います。その辺は全然違う話なので、ちょっと混同してしまうかなということです。
○山口座長 そうすると、この文章の表現自体があまり良くないのですかね。「また実際の経費負担の面からみても」というのが、あとで検討する委託した場合の費用対効果と重なっているように読めてしまうのですね。
○竹内先生 そうです。経費負担というよりも、一般的な作業効率等を考えれば、一体でやったほうが効率的だろうという、至極当たり前のことを言っているのです。
○若生補償課長 ここのところは費用対効果の問題と違う切り口で区別ができるような整理をしてみたいと思います。
○山口座長 ご趣旨はおっしゃるとおりで、私もそれでいいと思いますが、言葉として考えてくださいませんか。経費負担と書いてあるから後ろの問題と同じことを議論しているように受け取られかねませんので。趣旨がはっきり出るように。
○若生補償課長 作業効率とか、そういうのがいいかなと思います。
○山口座長 そうですね。ほかに何かありますか。ないようでしたら、次の2に移りたいと思います。事務局、お願いします。
○松本職業病認定調査官 はい。
2 労働局と支払基金の審査体制の検討
(1) 労災レセプトの労働局の審査は、年間の労災レセプト351万件、請求金額2,215億円(平成22年度)に対して、審査担当職員数561人、審査委員数564人(平成24年度)、査定件数24.6万件(査定率7%)、査定金額38億円(査定率1.7%)(平成22年度)となっている。
 労働局においては、労災保険の保険者として、労災レセプトの全数を審査しており、審査担当職員1人・1月当たりの審査件数は521件(1日当たり52件)、審査委員1人・1月当たりの審査件数は519件(1日当たり519件)となっている。また、審査担当職員は、労災保険制度や医療事務の知識・経験を有する者を採用し、研修等を通じて専門性を高めている。
 (2) 支払基金の審査は、年間のレセプト6億1,226万件、請求金額11兆3,496億円(平成22年度の医科歯科分)に対して、審査担当職員数約3,000人、審査委員数4,674人(平成23年度)、審査件数663万件(査定率1.1%)、査定金額247億円(査定率0.2%)(平成22年度)となっている。
支払基金においては、審査支払機関としてレセプトの全数を審査しており、審査担当職員1人・1月当たりの審査件数は1万7,007件(1日当たり1,546件)、審査委員1人・1月当たり審査件数1万916件(1日当たり1,559件)となっている。また、審査担当職員は、採用後各種研修を通じて保険診療ルールの知識を高めている。
 (3) 上記のとおり、支払基金における審査担当職員1人・1日当たりの審査件数は1,546件であり、1日10時間審査を行ったとすると、1時間当たり約150件であり、労災レセプトの労働局の審査件数1人・1日52件と比べると、1件当たりの審査に要する時間に相当の違いが見られる。
 これら支払基金の審査はコンピューターによる審査も導入していることから、一概に比較は難しいものの、支払基金と労働局とのレセプト1件当たりの審査時間の違い等から、支払基金に委託した場合、現在の労働局の審査と比べて、どの程度審査・査定できるか不明なところもある。
 このことから、支払基金に委託する場合には、現在、他の公的医療保険の保険者が行っているように、労災保険の保険者である国は支払基金が審査した結果について、改めて確認することが必要となる。
 なお、労災レセプトの場合には、労災固有の判断に係るものがあり、保険者として全数審査する必要があることに加え、緊急の手術を要するものや、重篤な傷病に係るものも多く、単純に査定件数や査定額の違いを論じることはできない。
○山口座長 それでは、この点について、何かご意見はありますか。4頁の(3)は議論の中で出てきた内容がまとまっていますので、多少議論する部分もありますが、(1)と(2)は事実をまとめたものですので、ご意見というほどのものはないかと思います。3はいかがでしょうか。
○松島先生 蜂谷先生、これだけ増やされたら審査委員は怒るでしょうね。いまやっているのに、これが増えた場合、1人の件数が。
○蜂谷先生 そうですね。審査のほうは、手術をされない先生も結構いますので、中で多い人と少ない人がいます。ただ、労災のほうは内容が濃いですね。
○松島先生 ですから、それだけお忙しい先生が、労災レセプトを真剣にという表現は良くないのですが、ご覧になる時間が大変だと思います。いまだって10時間ぐらいで、あれだけレセプトを処理しているのですから。
○蜂谷先生 基金のほうはそれから保険者側に行きますので、そこでまた疑義がついて、それが返ってきます。審査にも影響がでますので、かなり正確にされていますね。労災のほうは国ですから、その辺は中でやりますので。
○山口座長 そういう問題があって、なかなかそう簡単にはいかないのだということはわかります。よろしいですか。ご意見がないようでしたら、次の3の「審査期間の検討」に入りたいと思います。
○松本職業病認定調査官 はい。
3 審査期間の検討
(1) 労災診療費は、月10日に労災指定病院から労働局に提出され、翌月15日頃に医療機関に支払が行われる。支払基金も同様で医療機関への支払は翌月20日頃となる。
(2) 労災レセプトの審査について、労災固有の項目を除き保険診療ルールが適用される項目を支払基金に委託した場合、支払基金が最初に審査を行い、その後、労働局が労災固有の項目と支払基金に委託した項目の再確認を行うことから、審査期間は、現在労働局が行っている期間より長くなる。
 なお、現在、労働局は療養補償給付の支給・不支給が未だ決定がなされていないレセプトの審査も並行して行い、支給決定と併せてレセプト審査も終了するが、労災レセプトの委託を支給決定されたものに限定した場合には、レセプト審査は支給決定後に行うため、さらに審査期間が長くなる。
 (3) 審査期間が長くなることは、医療機関への労災診療費の支払が遅れることとなり、保険者として迅速に医療費を支給する観点から問題となる。
○山口座長 この点はいかがですか。あまり問題はないと思いますが。ないようでしたら、4の「委託した場合の費用対効果」に移りたいと思います。この部分は手数料の部分のみで、これ以降については本日議論をいただく国が委託することにより合理化できる部分、保険者としての確認に要する費用等について案をまとめていただこうと思いますが、それでよろしいでしょうか。
○松本職業病認定調査官 では、この部分を読み上げさせていただいてよろしいでしょうか。
○山口座長 お願いします。
○松本職業病認定調査官
 4 委託した場合の費用対効果
支払基金に労災レセプトの審査について、保険診療ルールの範囲内の業務を委託した場合に要する費用は以下のとおりである。
(1) 手数料
委託した場合に発生する手数料は、支払基金から提出された資料に基づき試算したところ、約3.2億円となる(審査だけでなく、支払いに要するコストも含めた手数料額である。)。
 いま座長からご説明がありましたが、(2)の国が委託することによる合理化関係、(3)の手数料以外の費用等関係については、ご議論を踏まえて記載をと思っております。
○山口座長 この費用対効果の点は、本日ここで議論をまとめていただくことになっております。先ほど竹内委員がおっしゃっておられたのもこの点ではないかと思いますが、どうぞ存分にご意見をお願いいたします。
○竹内先生 費用対効果の検討ということで、ここではどちらかというとコストのことに関して議論するという形で項目立てされております。この効果のほうとして、前回か前々回にも発言させていただきましたが、効果として現行の査定減の水準を維持するというような目標については記載したほうがよろしいかと思います。
 あとは、委託による経費の分析のところです。基金のほうに委託する場合に、それで削減できる人件費がある。その代わりに委託費を払うことになります。民間の世界でも何でも、物事を委託するというのはそうなのでしょう。委託をすればコストが下がる、ただそれに見合ったものを支払うわけですから、本質的に言うと、国でやる1人当たりの単価のコストと、委託した場合の単価のどちらが高いのか、低いのか。本質的にはそこに尽きてくるのだろうと思うのです。
 ただ、今回の分析では先方のコストはわかりませんので、いま提示されている比較というのは、現行の基金の医科と薬剤に分けた単価で、現行の件数をチェックした場合に払うだろうというのが3.16億円ということになっています。それに対して削減される経費が小さいということで、コストが増加するということで、これはまだ登場していませんけれども、結論的には効率的ではないという判断になろうかと思います。
 こういう数字の分析をされる場合に、これは白黒どっちかに付いてしまうのです。分析はすべて前提を置いてやられると思うのですが、前提を置いてやられた数字というのが、この場合は増と出ています。これは前提を変えたら減になるわけです。だから、数字というのは非常に独り歩きする危険性があって、その前提というものを、報告書の中ではきっちり明示すべきだと思っています。
 ここでいちばん大きい前提というのは、いま現在基金が請求されている99.4円なり49.6円というコスト構造です。民間的な発想になるのでしょうけれども、削減される経費が例えば2.4億円であり、審査委員のほうを足すと2.5億円であれば、その削減できる経費見合いを支払うという方向の議論はできないのかどうか。それは、法律改正とか、そういう大きな話になってしまうのでここで議論することはできないのかもしれません。移管するコスト見合いのものを払うと。基金のほうでは、新たに移管するのであれば、新たな単価を設けてもらう余地はないのかどうか、そういう疑問点があります。ただ、そういう検討はされずに、現行の基金の単価で委託費は前提を置いているということは理解しています。ただ、いま言ったような視点もあり得るので、その辺りを報告書にどの程度載せていくかというのもあるのですが、そういう視点があると思います。
 もう少し細かい話になってくると、いま削減されている減となる経費と見込んでいる部分が、前提についてもこちらの追加資料の8頁で説明していただいていますが、例えば審査担当職員90人の減少というのは16%です。これは、業務の3分の2程度のうちの4分の1ということです。例えば、これを20%減少できるとすると、結論が逆転します。例えば6労働局にヒアリングしていますが、もう少しヒアリングの範囲を広げたら結論が変わってくるのかどうかというところも、物事を判断する余地として必ずあろうかと思います。
 ここで選択されている労働局は、わりと都市部なのかと思うのです。地域によってどの程度ヒアリングの結果にばらつきがあるのか、という辺りも検証してみないと、本当に仮説としてどの程度信頼性を置けるかというところは判断できないだろうということです。
 いまのは削減する人数の仮説の話ですが、今度は移管して追加的に発生する、委託者としての確認の部分があります。この部分というのは、要するに増となる経費で0.27億円が新たに発生しています。この部分の考え方として、新たに発生するものなのか。ある見方をすると、移管する部分がその部分を切り離して移管するのではないのか。だから、もともと残っているコスト、もともと発生しているコストという見方はできないのか。いまは、追加的に発生するコストというふうにやられていますが、その部分については追加的ではないという見方はできないのかという疑問点があります。
 削減される人数の仮説の話と、新たに追加的に増となる経費の仮説について疑問というか、そういう見方はできないのかどうかという点をコメントさせていただきました。第1としては、そもそも委託費の考え方の部分自体を変えてしまう検討はできないのかということです。
○蜂谷先生 そうすると90人分が浮きます、何もしなければそのまま労働力が余っています。ところが、実際にはほかの仕事ができればプラスです。その少し残った人数で後ろでやれば同じです。だから、最初に残った90人分の仕事量がほかの仕事をしていればほかの仕事ができるわけですから、そうするとここは増にはならないです。
 計算上はなるけれども、実際上は前半で1回基金のほうに行きます。行くと90人分余っています。それで、後半になって3割の27人分は後半でやる仕事を、前もってやっておけばここは空きます。普通の通常業務ですから、時間的にはプラスにはならないのではないか。
○竹内先生 その点をお聞きするのを失念しておりましたが、この減少する人数というのは非常勤雇用の方で、全くなくなってしまう変数なのか、それとも固定的にいる方の話で、別の業務にその力を発揮されるのか、そこは確かに確認しないと。
○蜂谷先生 審査担当職員ですからかなりできる方ですよね。
○河西課長補佐 労働局の場合、審査に当たっている方は、これまでにも資料で提出させていただいておりますけれども、非常勤の方なので、その業務がなくなれば仕事がなくなるので、契約がなくなってしまう形になります。その分が費用としては削減になります。業務をほかのところに回すという形にはなりません。
○蜂谷先生 ここで減になったものは、2.4億円が減ですね。非常勤ですから、また雇うということはしないのですね。
○河西課長補佐 はい。
○竹内先生 全体として見たときにコストはどうなのか。こちらで減った分だけ、基金のほうでまた増やされるのかどうかというところがあります。基金のほうで増やさないで、現在の人数でやるのであれば、それは確かに社会的に見ると効率化しているのかもしれないです。ただ、基金の枚数であるとか、いまの審査体制を見ると、なかなか厳しそうだと想像しますので、やはりその分の方は雇うのだろうとは思うのです。そこの辺りが違うのですが、基金の現有の方々でやるのであれば、その分は効率化されるのだと思うのです。
 そうすると、いまの99.4円とか49.6円という経費は下がるはずなのです。さらに追加の業務、基金の業務のボリュームが増えるわけですから、単価が下がることもあり得るのだと。
○蜂谷先生 時間が増えます。いままでは夜9時までだったのですが、今年からは夜10時までOKになりましたので、1時間増になります。休日及び祝祭日は夜7時が8時になりました。
○山口座長 これは市場での取引ではないから、単価が件数によって高くなったり低くなったりするという性質のものではないのではないですか。
○竹内先生 企業が合併するとか、何か共通的な部分を一緒にして効率化しようという発想というのは、やはりボリュームを増やして、1件当たりの作業時間なりを短くするという発想なので、基金のほうに共通業務を移管して、社会的なコストを下げていこうというのは、基本的にそういう発想なのだと思うのです。ただ、抱えているリソースが十分かどうかというのは当然あります。それを超えてしまうような、リソースが限られている場合は追加的に採用しなければいけないでしょうし、コストが上がるケースだってあるとは思います。
○蜂谷先生 審査の場合には、自分のノルマが終わったらみんな帰ってしまいます。だから、全体として増えれば増えるのではないですか。
○竹内先生 現実的にどうなるかというのはわかりませんけれども、一般的な共通業務を大きくするという発想はそういうことだと思います。
○山口座長 竹内委員がおっしゃっているのは、レセプトの審査業務を社会保険診療報酬支払基金に委託する。だけど、報酬を払わないで委託するのだったら非常に合理的だということでしょう。
○竹内先生 違います。報酬は当然払うことになると思います。その報酬の単価が、ここで決められている現状の1枚当たりの単価ではなくて、追加的に生じるというか、削減できるコスト見合いの委託料に基金との交渉でならないのかということです。
○山口座長 それは、労災レセプトの委託が合理的かどうか、そういうことが可能かどうかではなくて、むしろ労災レセプトを社会保険診療報酬支払基金が受けるならば、支払基金としてどのような合理化をすべきであるかという議論なのではないですか。
○竹内先生 基金側の話かと思います。労災の審査の特殊性のある部分は残すという前提ですけれども、そちらの単価のほうが安いというのも何かおかしいような気がいたします。
○蜂谷先生 基金は電レセで、こちらは紙ベースですよね、その辺はどう考えたら。
○山口座長 委託者としての確認という業務が、これはもともと内部化されていた仕事で、新しくできた仕事ではないのではないかというご意見ですけれども、ごくわかりやすい例として、私が宿題をやるのはいやだから、誰かに頼んで500円払ってやってもらったとします。ところが、どうも頼りなくて、これは合っているのかどうか検算しなければいけないという業務というのは新しく出てきた業務なのではないですか。500円払って仕事を移管するのだったら、それは仕事がなくなってしまわないと合理的ではないのではないですか。いままでは自分がやっていたから、検算の必要はなかったわけだけれども、それを他人に任せたために検算する業務が出てきたら、これは新しい負担、コストではないか。もともと内部化されていたと、文章では表現できるかもしれないけれども、それは分けてやった場合の新しいコストではないか。
○竹内先生 内部でやっていたとしても、ダブルチェック的なものがあったと思うのです。そのダブルチェックのダブルのほうのチェックというのはもともとあったのではないのかという単純な発想なのです。ただ、本当に一般的に言うと、それを外出しすれば当然それをチェックする部分が増えるというのは確かに一般的だと思います。ただ、そういう部分もあるかもしれませんねという問題提起です。
○松島先生 これは蜂谷先生がおっしゃったように、現在、基金のほうは電子レセプトでしょう。労災が遅れているのです。全部紙ですから。それを電子レセプトをやっているところに、紙媒体を持っていって、これも見ろなどというのはどうなるのか。労災のほうも将来電子レセプトになったときにはお願いするのもいいのでしょうけれども、いまは全然違うやり方ですから、そこを一緒にして委託するということで、やれと言われればするのかもしれませんけれども、えらいことだと私は思うのですが、先生はいかがですか。
○蜂谷先生 実際にやっているときには、電レセを見ていると眼が疲れてしまうし、頸はだるいし、肩は凝るのです。ところが、紙のほうは下向きでこうやってパッと見てやると早いのです。1画面に3頁分出ますけれども、私は紙のほうが楽です。紙は指摘がある場合は、すぐに書いてしまいますけれども、電レセでしたらそれを全部打ち直さなければならないのです。返戻も全部言葉を付けて打ち直すと1つに随分時間がかかります。だけど、時代の流れでそうなっているのでしょうか。
○山口座長 審査の経費ですが、支払基金のほうに安いコストで引き受けろという要求になったときには、支払基金としては、業務から組織から合理化しないとやっていけないですから、それはそもそも話が違うでしょうと言われてしまう。支払基金のほうの問題もあるかもしれないけれども、あくまで問題は労災保険のレセプト審査を委託する、外部化するのが適切かどうかということで、労災保険のほうから見るほかないのではないかという気がします。
○竹内先生 おっしゃることはよくわかります。それは基金側のコスト構造であり、合理化の話であるので、基金の単価で3.16億円をはじき出したと。ここを小にすることが、費用対効果の分析としてよいのだろうなと。それ以上突っ込む話をいうのはなかなかまとめられないものになると思います。
○山口座長 たぶんそこは1つの数字では推計したり、断定したりしにくいので、費用の試算も、1)、2)と2つ出ているのではないかという気がします。
○竹内先生 ☆1のところについては、いま座長がおっしゃった考え方というのはよく理解できます。☆2のところについて、もうちょっと削減できるのであれば、結論は逆になることもあり得るのだというのは事実だと思います。実際にこの試算というものが、このヒアリングをベースにした一定の仮説計算ですので、その仮説を変えることによって結論が変わることもあり得るということについてはご認識されているでしょうけれども、要するに幅を持った結論を明示されてはいかがかと思います。
○山口座長 それはそうかもしれませんが、その結論になるためには、支払基金のほうの現状を変えなければいけませんよね。
○竹内先生 私が申し上げたのは、支払基金の委託費の部分ではなくて、こちら側で減少すると見込まれる人件費の問題です。国側の審査担当職員であるとか、審査委員ということです。
○若生補償課長 竹内先生がおっしゃった点については、対象を広げて調査をしてみたいと思います。審査をしている方の感覚でいくと、私病などの審査をやるには、これまでのレセプトを見る必要がありますが、健保点数は当月のレセプトを見れば大体わかるものということです。私病かどうかの判断について、本当にそう言えるかどうかについての審査に手間暇がかかるということと思います。
 また、先ほど事務局が説明しましたように、私病などを査定し、被災労働者が査定結果に不服であれば、今度は費用払いという労災請求がされます。外部に委託したときに、査定の理由と監督署長の判断が全く違ったりした場合、どのような整調になるのかといった難しい問題があります。
 1:3という数字が調査対象を広げることで極端に変わるかどうかは私もよくわかりませんが、審査担当の実務的な経験をもとに1:3という数字が今回出てきたものと思います。
○山口座長 先ほどのところで申し上げればよかったのかもしれません。証文の出し遅れかもしれませんが、3頁の費用対効果の前に、「実際の経費負担の面からも、行政処分を行う国が直接審査をするほうが効率的であり」ということになっているのですが、そこで効率ということの一部ではあるでしょうけれども、いま行われている一連の手続を分けて、外部に委託することによって、労災保険の運営全体がぎくしゃくしてしまったら何も意味がないので、労災保険の被災者の請求、認定判断、給付が滞りなく一連の過程として行われるというのが、制度としていちばん基本的なことで、それは最小限確保されていなければいけないと思います。それが必要なのだということを、どこかでわかるように強調したほうがいいのではないかという気がします。
 ほかに、費用対効果のところでご意見はありませんか。ほかにないようでしたら本日の議論、それから本日お出しいただいた資料を基にして文章化をお願いしたいと思います。次は、5の「支払基金の保険者と労災保険の保険者」になります。事務局よりお願いいたします。
○松本職業病認定調査官 はい。読み上げます。
5 支払基金の保険者と労災保険の保険者
健康保険制度においては、保険事故が発生した場合に、保険金を支払うための審査は保険者が行うのが原則(健康保険法第76条第4項)であるが、労災保険の保険者は国一つであることから、保険者数の観点からは支払基金に委託する必要性は低いものと考える。
○山口座長 ここの部分はいかがでしょうか。
○松島先生 労災保険は保険者が国1つですけれども、支払基金との違いを記載すべきではないでしょうか。支払基金の場合は、労災と違っていっぱいあるのでしょう。事務局の方でどうでしょうか。
○松本職業病認定調査官 はい、そうです。支払基金の場合、健康保険については保険者が全国で約1,500カ所あると認識しております。各医療機関が保険者ごとに診療費の請求を行うことになると大変というか、支払基金に一括して請求するほうが医療機関の負担も軽減され、効率的だと考えられます。このように、支払基金が一括して審査をすることは、その必要性もたぶんあるのだろうと思います。
○松島先生 そうすると、労災保険とは全然違いますよね。そこのところを記載しておいたほうがいいと思うのです。
○山口座長 それは、そういうことで是非お願いいたします。支払基金がなかったら、大きな病院の場合には保険者に請求するときに何百何千と請求しなければいけないからそれは大変は大変です。
○若生補償課長 5番の場所もここでいいのか、制度的なものなのでもう少し前に出したほうがいいのか、ちょっと検討させていただきたいと思います。
○山口座長 前に出すことになれば、どの辺がいいのですか。仕組みのところですか。
○若生補償課長 そうですねえ。
○山口座長 何か座りが悪いですね。
○河西課長補佐 保険者の数については、2の3頁の「診療体制」のところに事実関係をずっと入れています。保険者の数は約1,500という話が出ましたので、1,500の関係はこちらに記載させていただいて、結論の部分で労災の保険者は国1つなので、というような整理をさせていただこうと思います。
○山口座長 検討してください。ほかにないようでしたら次に移ります。次は〈4〉の「支払基金への委託の検討結果」です。事務局よりお願いいたします。
○松本職業病認定調査官 はい。
〈4〉 支払基金への委託の検討結果
当委員会において、労災レセプト審査の支払基金への委託について検討したところであるが、労災固有部分の審査は、労災保険給付の支給・不支給の決定という行政処分と密接不可分な関係にあり、国がこれを支払基金へ委託することは困難である。また、診療報酬点数表等に基づく審査部分を委託することについて、審査事由の違い、審査体制、審査結果の保険者(国)としての再確認の必要性及び審査期間について検討したとおり、審査担当職員数や1人当たりの審査件数等に大きな相違が見られること、仮に支払基金に委託したとしても、労災固有部分の審査と委託した審査結果の保険者としての確認は国として行う必要があり、非効率であること、現在の審査期間より相当程度長くなる余地がある。
 この結果、現時点では支払基金に委託するメリットは乏しく、国が労災レセプトを一括して審査する方が効率的かつ適正であると判断される。
○山口座長 この点はいかがでしょうか。
○松島先生 今回、費用面のことがここには記載されていないのですが、本日の議論を踏まえれば、審査期間の延長の後ろのほうに、費用面では国が直接審査したほうが安価であるとか、結論ではないけれども何か入れないと、ここで尻切れトンボみたいで変なのです。もしそういうことが可能であれば入れていただきたいと思います。
○山口座長 そうですね、せっかくその前で費用対効果の議論をしているわけですから、そこの結論といいますか、まとめといいますか、そのような言葉があったほうがいいような気がします。全体として言っているとも言えますけれども、それがあったほうが締りがいいと思います。「安価」という言葉はどうでしょうか。
○松島先生 竹内先生、いい言葉はないですか。
○山口座長 どう表現したらいいでしょうか。安価であるというのは。
○竹内先生 やはり、ここには「効率的」という表現があうのでしょうけれども、私が先ほど問題提起させてもらったのは、費用対効果として、この手の問題はその係数の分析としてやるのは非常に難しいのだと。いろいろ説明をしていただいて、実際の審査の現場の事務作業であるとか、概念的に監督署と登場人物が二者だったのが三者になると、それは当然非効率性が生まれる土壌があるわけです。概念的には、効率的でないという結論は1つの考え方としてあるのだと思います。係数として安価であるとか、そこを表現するのは仮説に依拠しすぎではないかと思います。
○松島先生 その辺は、いい文言を考えてまとめてください。私は下町育ちだから、変な言葉を出して申し訳ないです。安価などという言葉を。
○山口座長 いや、安価という言葉を使うのです。労災の補償の費用を誰に負担させるのがいいかというと、最安価で、いちばん安いコストで、労災の事故を避けられる者に負担させるのがいいという考え方。それは最安価リスク・アボイダーといいます。そのときには最安価という言葉を使っているのですが、何か考えていただくということでいいですね。
 ほかにないようでしたら次に移ります。本日、事務局から資料が出されました支払基金以外の民間団体に委託した場合はどうかという議論をしなければいけないと思います。これまでに出た議論を考えてみますと、委託の対象になり得るのは、診療報酬点数表等に基づく審査部分のみだと思われます。仮に委託した場合に、審査期間が長引く、審査結果に対する保険者としての再確認が必要であるという問題も出てきています。
 このことから、国が労災レセプトの審査を単独で実施するより、効果的に運用できるかどうかがはっきりとわからない。そこのところは何も確証がなくて不明だという状況です。さらに民間の場合には、支払基金は現行のきちんと出来上がった仕組みですから、そういう問題はほとんどありませんが、民間の場合には、国が受託者に対して十分な監査や指導を行うような仕組みや体制が新しく必要になってくるのではないかと思います。
 例えば、いまは国のほうでレセプトの審査もやっているわけですが、労災保険の審査については、経験や知識のある人がやっているのです。それを民間で新しくやることになったら、そういう経験のある人でない人がタッチすることになると、いろいろ問題があると思われます。民間に委託した場合には、そういう補助的な仕組みが新しく必要になってくると思われます。
 こういうことから、民間団体への委託については、支払基金への委託の検討以上に何かメリットがあるということはあまりないので、むしろ審査内容とか、審査体制としていろいろ新しい問題が出てくるという点が懸念されるのではないかと思います。この点はいかがでしょうか。民間団体への委託というのを、1つの項目として検討しなければいけないかと思いますので、その点について先生方からご意見がありましたらお願いいたします。
○松島先生 全国規模で、労災の公平とか中立の立場で審査に当たる専門医を確保するのは相当至難の業だと思います。それを民間にお願いするのはなかなか難しいのではないかと思います。
○山口座長 蜂谷先生どうですか。民間団体に委託した場合、審査に当たる専門医の先生に関してですが。
○蜂谷先生 たぶん厳しいのではないですか。労災は労災保険指定病院診療所協会でやっています。私は医師会からの派遣です。また、局から派遣されるのと二通りあります。しっかりした後ろ盾があれば問題ありませんが、専門医の先生はなかなかいないのではないですか。
○山口座長 労災の審査とか、医療の関係ではありませんけれども、法律の関係でもそういう公的な仕事があって、一定のレベルの法律家、弁護士をかなりの数必要だという場合には、個々には無理で、やはり弁護士会か何かが噛んでくれないと。民間の場合、それをどこがやるかですけれども、常識的には松島先生がおっしゃったように、先生方をどうやって見つけられるのかは非常に懸念されるところです。
○小西先生 前のところとも関連して、この検討全体ともかかわるところで私が理解していないところなのかもしれないので教えていただきたいのです。〈4〉と〈5〉のところで、支払基金に委託した場合はどうか、支払基金以外に委託した場合はどうか、ということが検討されているところかと思います。〈4〉のところでは、支払基金への委託に関しては、大きく分けて2つのことが書かれています。このことは〈5〉のところも基本的には変わらないのかと思っています。
 1つ目は、行政処分との密接不可分な関係にあるということ。2つ目は、コストのことだと思います。コストのことは数字のこともあったりするのですが、行政処分との密接不可分であるということとの関連についてなのですが、これは私の理解不足なのかもしれません。第1回のときに配布していただいた資料を見ますと、平成22年度ぐらいまでは、委託をしているという資料をいただいています。それが平成23年度、平成24年度に、徐々に段階的に労働局に移管しているという状況です。そういうことからすると、行政処分と密接不可分であるということはなんとなくそうなのかと思うのですが、過去においては委託をしていたという事実があるわけです。そこをどう説明するのか、というところが必要になってくるのかと思います。コスト的には下がっているみたいですけれども。
○山口座長 それは、説明していただいたらわかりやすいと思います。
○若生補償課長 これまでに委託してきたことは、国が最終的に審査・査定をすることを前提に、レセプトの事前点検をするという性格付けなので、支払基金のように審査により、査定することを委託するというものではありません。あくまでも事前チェックです。
○河西課長補佐 これは、国会の場でもお叱りを受けたのですが、公益法人のところに委託をして、事前点検をしてもらっていました。実は、その公益法人のところには、私どものところを退職した職員が入っていて、そういう意味では労災保険の専門性は高いわけです。そこに加えて、職員の方で、診療報酬の点数をチェックできるような方を採用し、事前の点検を行い、レセプトに疑義があるものについては付箋を付けて、労働局の職員が効率的に審査できるように、事前の前捌きをしてくれていたわけです。
 そのような意味で、先ほどありました事前点検をやっていたので、今回のような委託とは性格が違います。最終的には労働局のほうで全部実際に査定をする。事前にチェックはしておいてもらうわけですけれども、医学的な情報みたいなものも、必要なものは全部労働局で整理をし、監督署に提供するという形になっていました。今回の委託と以前やっていたものとは、そういう意味で違います。
○小西先生 十分理解できていないのですが、本日の資料の15頁の修正していただいたところの棒グラフを見ますと、平成20年度については、委託費全部で35億円という額が出てきていて、それが平成24年度では全額が行政経費になっています。いまの説明だと、ごくわずかの部分を委託していたので、今回のところとはちょっと違うのだという説明でした。この棒グラフでは、従来は100%委託費ということになっているように見えるのですが、これがよくわからないのです。
○若生補償課長 いまの基金に委託するということは基金の査定結果について国は再審査でしか争えないという仕組みです。現在の基金の制度に沿っていけばそのようなやり方になります。基本的には基金が査定権限を持って、それに対して再審査という形で国が抗弁をしていくということです。
 これまで国が委託した形態は、最終的には国が自分たちの判断で査定ができるような仕組みになっていたので、そういう意味では委託の性格の違いがあるのかと思います。
○鈴木労災補償部長 もう少しわかりやすい事情を言わないと理解していただけないかと思います。以前は随意契約で、経年的に継続的にある団体を想定してできたので、ノウハウの蓄積も外部にできたわけです。いま民間に委託するとなれば、基本は毎年一般競争入札が前提で、本当に必要な場合に関して、企画競争のような形もあり得るかもしれませんが、基本はそういうことになります。
 ただ、委託事業でも、こういう性格のものは5年に1回といったスパンでやることも可能ですが、いずれにしてもその境目において、先ほどから話題になっている、専門医をどう確保するかという問題は必ず起こってきます。そういう不安定なものについて委託があり得るのかという議論が、この〈4〉と〈5〉の間に大きな溝としてあります。支払基金はその目的でつくったものですから、それについても法令的な整理は必要になると思いますが、そこに委託することについては、そんなに問題は起こらないと思うのです。今後民間に委託するに当たっては、一般競争入札という前提が必ず発生してくるということで困難だという先ほどからの課題が生じてくるということがいちばん大きいのではないかと思います。
○山口座長 それは重要な点ですから、十分に。
○小西先生 コストの面については理解できているのですけれども、例えば外部の人から、従来は委託していたのに、今度はなぜ委託できないのだという質問が仮に出てきた場合に、それに答えられるような形で報告書にも一言書くほうがいいのかと思ったのです。これは、従来の委託の方法とは違うのだと。今回議論されている支払基金への委託というのは、従来平成20年度からやっていた委託とは全然違うのだと。違う形で、完全に業務の一部を外部に出すのだと。従来は委託の部分があったのだけれども、行政処分と密接不可分な関係があるということは、従来の仕組みでは確保できていたのだけれども、今度は確保できるかどうかわからないリスクが考えられるのだという説明は必要ではないですか。
○山口座長 いま課長が言ったように、民間団体だったら、これだけの額だったら当然競争入札になります。そうすると、新規参入が行われて、経験とか知識という問題があります。いままで委託していたのは、どういうところに委託していたのかというと、それは役所の仕事をよく知っている公益法人で、使っている人も役所のOBで、労災についての知識とか経験がある人だから、そういう心配はまずなかったのです。
 そういう形での経験とか、知識とか、能力のある特定のところに委託してもいいというのだったらあり得ると思います。だけど、競争的に入札というのだったら、それはちょっと問題があります。そういう心配のないところで、支払基金が出ているのだろうと思いますけれども、ここは現在の状況で健康保険のレセプトの審査という大きな仕事を抱えていますから、それとの整合性があるのかどうかというのがここでの検討してきた問題です。
○蜂谷先生 教えていただきたいのですが、支払基金以外にこういう団体があるとしたら、そこは医者を抱えている団体なのですか。いままでであれば、ただ疑義を出すだけです。査定をするときには医者が査定をします。支払基金はかなりの医者を抱えていますので、労災を見るということは、循環器から脳外など殆ど全域にわたり見ていきますので、そういう専門性の高い医者を集められますが、民間団体であればどうかということが1つあります。ただ疑義を出すだけだったら、基準を見れば大体わかります。医者を抱えてやっている団体があるかどうかをお聞きしたいのです。
○山口座長 そういう団体がでてくる、質はともかく、チャンスがあれば、ビジネスマンがいたらそういうのをつくってくるのではないですか。だから、お医者さんもどこかで集めてくるでしょうが、医師は不足しているから質的にどうでしょうか。。
○蜂谷先生 定年を過ぎた人を集めてですね。
○鈴木労災補償部長 既にあるものとして、市町村の国保が、保険者としての審査をする際に委託するような業者はあるのですけれども、医師をどのぐらい抱えているかの情報はありません。
○蜂谷先生 いまは、国保も国保で医師を抱えてやっています。
○鈴木労災補償部長 職員ももちろん最低限やっていますが、業者に出している部分があるはずです。固有名詞を言うと差し障りがあるので。
○蜂谷先生 あるのはあるのですね。
○鈴木労災補償部長 はい。
○山口座長 ほかにはよろしいですか。
○小西先生 全体を通してもう1つ。今度はコストに関しての部分です。先ほど竹内先生からご指摘があったように、もし支払基金に委託することを前提とした場合に、どんどん単価が下がっていくのではないかというお話が出てきたかと思います。実際、支払基金が来たときの資料を見ますと、コストは15年間で22%ぐらい下がっているということです。もし支払基金に委託することになると、このような形でコストは下がるのではないかという意見はたぶん出てくると思うのです。
 他方で、第1回のときに配布していただいた資料になるのですが、逆に国が自ら外部に委託しなかった場合には、別にこういうコストはかかりませんというようなものがあったら、それも含めてコスト計算をするのであれば記載することが必要ではないのかと思ったのです。第1回のときの資料の24頁のところで、国に完全移行後の見込額のところに関連してですが、国自身で行う場合には、レセプトのオンライン化によって、平成26年度以降は3.2億円減になるということが載っています。コストを比較する際には、こういうことも含めて考える必要があるのかと思いますが、その点はどうなのですか。
○若生補償課長 支払基金の単価が経年的に下がってきている事実は確かにあります。竹内先生がおっしゃったように、例えば、うちが何年後に国の建物に入ることによって、コストが下がることは大体推測できるのですが、相手方がどのぐらい下がるかを推測して変数を決めるというのは非常に難しいと思います。変数を予想することが困難な中で、国だけ下がると推論することは、国をより有利に評価する可能性もありなかなかしづらいところがあります。だから、いまある条件で試算して、あとはそういう要素もあるけれども、それは不確定要素として評価するということは可能かと思うのです。
○小西先生 わかりました。
○山口座長 基金のほうのコストは下がってきているけれども、何に影響されて下がってきたのかというのはつかめないでしょうね。
○竹内先生 先ほどの話にもありましたけれども、結局払わなければいけない委託費に見合うコストを下げられるかという当事者側の検討をするということしかできないのだと思うのです。3.16億円であれば、3.16億円を削減する努力はできるのかどうかということが重要になってくるのだと思います。
○山口座長 大体皆さんからご意見が出たのではないかと思いますが。
○竹内先生 すみません。支払基金以外の団体への委託のところで、私もよくわかっていない部分があります。そもそもこれを議論するというのは、もともと支払基金に委託できる部分は、労災固有の部分を除いての部分だという議論をしておきながら、労災固有の審査を含めて民間に完全委託するということを議論する意味が私はよくわかっていないのです。もともと公益法人にやっていただいたものを、国に戻した時点で、これは密接不可分性が強いので、それは国がやるべきだと判断されたと私は理解しています。それなので、この完全委託はこの議論の流れからはちょっと。
○若生補償課長 おっしゃるとおりでこれまでの議論には即さないのですが、レセプトの点数のチェックだけにするのか、診療報酬ルールのように医学的な部分を含めてやるのかとかあまりにも変数が多すぎて、ほとんど推計ができない状況だったので、やむなく全体を委託した場合の仮定の資料を作ったということです。一応参考までにという形で、全部といういちばんわかりやすいものを仮定のものとして作ったということです。
○竹内先生 私は議論の流れの中で、完全委託というものがレセプト審査の制度の安定性、信頼性の意味で、あり得ないと理解しているので、議論がよく見えないのです。
○山口座長 民間団体に委託と出ているけれども、全部委託などはとてもあり得ないというのは、当然の制約として出てくると思っていました。
○若生補償課長 議論には即さなかったのですが、資料が何もないわけにはいかないので、参考という趣旨で提出しました。ただ、いまおっしゃったように、労災固有の部分の審査は基金と同じように、委託が困難という先生方のご議論をもとに整理いたします。
○竹内先生 民間団体に全面移行するとなると、監査とか監督といった新たな制度を設ける。それであれば、基金のほうに全面移行することを検討したほうがまだ現実的なのかと思っていました。
○鈴木労災補償部長 試算の概念だけです。
○若生補償課長 この表を使って議論するのは、これまでの議論の流れから難しかったかもしれません。
○山口座長 細かい点は、多少の法律や規則の改正が必要になるのでいいと思いますけれども、基本的には現行の制度の上でということだろうと思います。支払基金の制度を根本的にいじるのが可能だったら、それはまた全然別の話です。
 ほかにないようでしたら、本日の議論はこの程度にさせていただきます。一通り報告書の検討を終えていただいたわけですが案文にない点もあります。費用対効果のところなどがそうですので、もう一度会議を開催する必要があると思います。次回の会議の日程はどうなりますか。
○河西課長補佐 先ほどお伺いしましたところ、29日の午後6時であれば先生方にご出席いただけるというお話でしたので、29日の午後6時からということでお願いしたいと思います。
○山口座長 問題は、費用対効果の残ったところと、民間委託のところ、議論が出た結論のところですね。あとは、本日出た議論どおりに報告書の文章がなっているかどうかの確認をしていただいたらいいわけですね。
○河西課長補佐 はい。本日ご議論いただいたところについては、できるだけ早く先生方のところにたたき台をお送りさせていただいて、ご意見をいただいたものをまとめるような形にしたいと思います。
○山口座長 それでは、そういうことでお願いいたします。長時間にわたってどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局労災補償部補償課

医療福祉班: 03(5253)1111(5564)

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