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2012年5月7日 第2回社会保障審議会生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会議事録

社会・援護局

○日時

平成24年5月7日


○場所

厚生労働省講堂(低層棟2階)


○出席者

委員

石操委員 岩田正美委員 岩村正彦委員 (部会長代理)
岡崎誠也委員 (門吉代理) 奥田知志委員 柏木克之委員
勝部麗子委員 櫛部武俊委員 小杉麗子委員
駒村康平委員 高杉敬久委員 武居敏委員
谷口仁史委員 野老真理子委員 長谷川正義委員
花井圭子委員 (伊藤代理) 広田和子委員 藤田孝典委員
藤巻隆委員 堀田力委員 宮本太郎委員 (部会長)
宮本みち子委員 山村睦委員 (青木代理)

○議事

○宮本部会長
 定刻となりましたので、ただいまから第2回「社会保障審議会生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」の開催をさせていただきます。
 連休明けということになりますけれども、委員の皆様はあまり関係ないという方が多いのではないかと思います。大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は津田厚生労働大臣政務官が御出席ですので、議事に入る前に冒頭あいさつをお願いいたします。

○津田厚生労働政務官
 皆さん、こんにちは。前回の部会では、生活困窮者、孤立者の現状あるいは生活保護制度の現状に関わる課題を中心に各委員からお話を伺いました。大変深い洞察に基づいた学識経験者の意見や支援の現場からの本当に生の御意見を興味深く伺ったわけでございます。
 本日は今、座長からもお話のありましたように、この生活困窮者対策あるいは生活保護制度の見直しの方向性について、皆様から御意見を賜りたいというのが1点。それから、2点目は新たに3名の委員からヒアリングを行うということになっているわけでございます。本日の3名の委員皆様も現場での支援に携わってこられた方と伺っておるわけでございます。
 今後、検討していく生活困窮者対策や生活保護制度の見直しについて、現場の支援者や当事者の声を生かしたものにするためにも、生活困窮者への支援を通じて、見えてきた課題や今後の制度検討への御提案などについて、積極的に御報告をいただき、とりまとめに向けて努力をしてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 続きまして、事務局の方から委員の出席状況について、御報告をお願いできますでしょうか。

○古都総務課長
 本日は上田委員、藤巻委員が御欠席と伺っております。高杉委員が所用のため1時間程度遅れるということで伺っております。また、岡?委員の代理といたしまして、門吉高知市健康福祉部福祉事務所長に御出席いただいております。また、花井委員の代理といたしまして、伊藤連合生活福祉局長がお見えになる予定ですが、交通機関が遅れているため、後ほどお見えになると思います。
 出席につきましては、委員総数24名の3分の1を超えておりますので、本日のこの委員会は開催要件を満たしているというところでございます。

○宮本部会長
 よい出席状況でございまして、大変感謝しております。
 それでは、カメラ撮影の方はここまでとさせていただきますので、御退出をお願いします。
(報道関係者退室)

○宮本部会長
 本日は前回御欠席された堀田委員に御出席いただいております。議事に入る前に、簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。

○堀田委員
 さわやか福祉財団の理事長をしております堀田でございます。
 20年前に法務・検察の足を洗いまして、以後20年間、新しいふれあい社会の創造という旗印で、共助の世界を広める運動をずっと続けてきております。今回のテーマにつきましても、そういう視点からいろいろな例を申し上げたいと思いますけれども、簡単に基本的な考えだけ申し上げさせていただきますと、生活保護は、働けない方々については現物給付によって、しっかり精神的な自立を支えていく。働ける方々については、その人に合わせた働く場を準備・斡旋いたしまして、経済的な自立、精神的な自立を支援していく。そういう考え方がいいのかなと、現場でいろいろやりながら感じております。
 ただ、働くと言いましても、営利の世界で働く場というのは非常に厳しい選別がありまして、実際上は非営利の世界、つまり共助、助け合いの世界の場において柔軟な働き方、柔軟な能力の生かし方。これをさまざまに用意することが重要ではなかろうかと考えております。これまでの働き方というのは、雇用主といいますか、受け入れる側の都合で枠を決め、基準を決め、場が提供されておるわけでありますが、すべての人について、それぞれの持っている能力に対応してその能力を生かす場を、社会の中でみんなで協力して見つけるという考え方でこの問題に取り組むのがいいのではなかろうか。そういう意味では、共助の世界、NPO等々、我々がしっかりとネットワークを組んで、これはハローワークともネットワークを組んで、社会環境を整えていくことが必要かなと思っております。
 具体的なことは、また機会を得て申し上げさせていただきます。ありがとうございました。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 それでは、早速議事に入りたいと思います。まず、前回も配付されまして、今回も資料に入っておりますけれども、資料1「生活困窮者対策と生活保護制度の見直しの方向性について」。
 この文書の中身については、前回事務局の方から説明があったところでございますけれども、残念ながら十分に時間を取って、皆さんの御意見、御質問を受けることができませんでした。改めて委員の皆様から、この基本的な文書について、御意見、御質問等があれば、まず受けていきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 長谷川委員、どうぞ。

○長谷川委員
 では、せっかくの機会ですから、この資料を見せていただきまして、生活困窮者の支援の関係、横浜市で今いろいろな形で取り組んでおりますので、参考までに御紹介といいますか、考え方について報告させていただければと思います。
 前回の自己紹介でも申し上げましたように、横浜市の生活保護世帯は約5万世帯あるのですが、保護率としましても18.5‰ですから、全国平均に比べれば若干高いのだと思います。今、横浜市では606人のケースワーカーで対応しているんだということでありますけれども、平成16年から就労支援事業を展開しておりまして、行政区は18区ありまして、専門的に行う就労支援専門員を配置して、それぞれにいろいろな支援を講じているわけです。
 今年は60人くらいに増えておりますけれども、昨年度は48人で対応してきた中で、3,662人に対して実際に就労できた方が1,969人ということですから、約半分の54%くらいの就業率になるわけです。これによりまして、生活保護の廃止世帯は518世帯あったということを聞き及んでおります。これは保護費の縮減を考えますと、年間で約8億5,000万ということを伺ってきております。
 もう一つは、横浜市の独自のハローワークを通さない就労支援対策を講じておりますが、これに関しましては市を事業者として、18区あるそれぞれの保健センター保護係を事業所としまして、地方公共団体による無料の職業紹介事業を展開してきておりまして、これは18年度から行われております。これによって実際に求人開拓者といいますか、要は企業を回る方々が約6人で、これは市の職員ではなくて、民間の事業者に委託して、訪問して回ってきていただいているそうです。こういう方に対しまして、昨年は627人に対して340人ほど実際に求人に対して就職ができたということで、結果としてはそれらの状況が挙げられております。
 もう一つ、片方では就労意欲を喚起させる事業にも取り組んでおりまして、これはすべての区で行っているということではなく一部の区ですが、特に横浜ですと寿町という地域がありますので、そのような区の方では実際に生活リズムに合わせるような生活訓練をする。2つ目には、実際に面接をしたり、集団の活動ができるような社会訓練をする。もう一つは、専門的な技術訓練をする。この3つの訓練を一体化して、これはハローワークとうまく活用してケースワーカーと一緒になって2か月くらい訓練をする。訓練をしたことによって、例えばビルの清掃をするとか倉庫、あるいは工場の警備をするとか、女性の方で言えば調理の補助をするとか、そういうような新たな職に就くという就労意欲を喚起させる事業も展開しております。
 一番下に書いてあります、中高生に対する学業の支援ですが、特に生活保護の受給世帯の中で中学生の2年生とか3年生で高校進学をしたいというようなお子さんがある。そうした生徒に対しましては、区内にある大学、例えば保土ヶ谷区には横浜国大もあるし、港北区では慶應義塾大学もあるし、そういう大学の学生さんのボランティアと連携をしながら、週2回とか3回とか定期的に子どもたちとの触れ合いをしながら、学習の支援をしている。結果としましては、高校進学も円滑に進んでいるようですけれども、いずれにしましても、そうしたことをこれからは市内でも全区的に取り組んでいきたいということを報告として承ってまいりましたものですから、参考までに御紹介をいたしました。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 長谷川委員の方から横浜市の生活困窮者支援、就労、進学に具体的に結び付いている例について、大変興味深いお話がございました。長谷川委員のお話自体に質問をしたいところですが、そこは禁欲いたしまして、長谷川委員、その方向性そのものについては、おおむね経験に即して、正しいのではないかという御趣旨と伺ってよろしいでしょうか。

○長谷川委員
 はい。

○宮本部会長
 ありがとうございます。
 小杉委員、どうぞ。

○小杉委員
 資料1を見て質問ですけれども、いいでしょうか。資料1の困窮者対策の大きな方向性があって、その中の一つの柱として、生活保護制度の見直しという順番の書き方だと思います。体系のポイントとして、堀田委員もおっしゃいましたが、柔軟な働き方といいますか、働く場の方をもっと柔軟にしなければ、いろいろな可能性のある人たちが社会に参加していけない。
 そういう視点が非常に重要だと思いますけれども、2枚目の「生活保護制度の見直し」の中では、当面にしても制度の見直しという抜本的なものにしても、出口の就労というものに対してあまり柔軟なことが書かれていないような気がするんです。ハローワークと一体になった就労支援の強化。一般就労に行ける人は勿論それがいいのですが、そうではない人たちのための方向性みたいなものが制度の見直しの中には見えてこないかなと思うのですが、この辺はどのように考えていらっしゃるのかを教えていただければと思います。

○宮本部会長
 事務局、どうぞ。

○古川保護課長
 今、生活保護の就労につきまして、御質問がございました。堀田委員からもお話がございましたように、いろいろな形での働き方が当然必要だろうと思っております。勿論、稼働可能な方についてであれば、経済的に自立をしていただけるというのが一つの望ましい形であろうと思いますけれども、そこに至る前の段階で、今、横浜市さんのお取組みの御説明がございましたが、まず生活を律するところから始めなければならないという方もいらっしゃるわけでございます。
 そうした柔軟な働き方というのは、当然、生保受給者に対しましても考えていきたいと思っております。

○宮本部会長
 小杉委員、よろしいでしょうか。

○小杉委員
 ここに書いてある範囲ですと、社会貢献、就労体験という労働ではない形のものとハローワークを通じた一般就労と、ここのところだけしか見えてきていなくて、その途中のさまざまな人たちを受け入れてくるには、今の法律制度だけで大丈夫なのかという不安を感じているものですから、その辺まで考えることをされるのかどうかということです。

○宮本部会長
 課長、いかがでしょうか。

○古川保護課長
 まさにこれから整合性の見直しというのは、要は大枠の考え方でございますので、この特別部会でもさまざまな御議論をいただきまして、そうしたものが重要だと御指摘をいただきますれば、当然念頭に置いて、さまざまなことを考えていきたいと思っております。

○宮本部会長
 よろしいですか。生活保護制度の見直しに関しては、その出口を言わば肉厚にしていただくといいますか、メニューを整えていくということ。これは逆に言えば、生活困窮者対策とも重なってくるということだと思います。
 勝部委員、どうぞ。

○勝部委員
 資料1の方を拝見させていただいている中で、「?債務整理や家計の再建を支援」とありますが、今回の生活困窮者の支援の問題については、確かに就労の機会、早期発見、さまざまな課題があると思いますけれども、権利擁護の視点といいますか、いろいろな問題。この部分で言うと、家計再建で貸付ということが書かれているのですが、貸付をしてもその管理の問題でありますとか、権利擁護、いろいろな問題に巻き込まれていくというところで、かなり困窮に陥ってしまう人たちも多くあります。
 特に経済的には遺産があったり、それなりに生活ができていても、生活を守るというか、いわゆる権利擁護の視点がないためにどんどん困窮に陥ってしまう人たちを我々もたくさん見ているわけですが、ちょうど介護保険が導入される際に、日常生活の自立支援事業、地域福祉権利擁護事業というのが以前スタートして、それが相当な数でパンクする状態になってきているということがあるのですが、この辺りも今までのおざなりな感じでの取組みではなくて、一人ひとりをきっちりサポートしていく。これもまたパーソナルサポート的なものも含めてになるかと思いますが、家計の再建という枠組みだけではなくて、生活を守るといいますか、権利擁護の視点もどこかに含まれるとありがたいという感じがしております。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 恐らくこれから議論をしていく中身とも関わると思いますが、今の段階で事務局の方からございますか。

○熊木生活困窮者自立支援室長
 ありがとうございました。権利擁護の視点を盛り込むべきということでございますので、今後さまざまな議論の中で考えていきたいと思います。今のところ青年後見制度ですとか日常生活自立支援事業ですとか、さまざまなものがございますけれども、おっしゃられたような日常生活自立支援事業がパンク状態にあるといった問題も一般的に指摘されているところでございますが、今回こういう形で総合的な相談体制、強化を図ろうという中で、各機関の連携をきちんと図ることによって、一定程度解決される部分もあると思いますし、その他どのような対応が必要なのか、その点については今後の議論の中で考えていきたいと思います。

○宮本部会長
 ありがとうございます。地域福祉課長、どうぞ。

○矢田地域福祉課長
 今、室長からお答え申し上げましたけれども、この日常生活自立支援事業は私たちも大変重要な施策だと思っておりまして、今回いろいろと新しい政策を考える中に同時に埋め込んだ形で、いろいろと検討を進めていきたいと思っておりますので、勝部さんの御意見も非常にありがたいと思っております。

○宮本部会長
 勝部委員、よろしいでしょうか。
 では、お願いします。

○花井委員(伊藤代理)
 代理出席ですが、発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 今回の資料1の提案ですが、まさにこれから人口が減っていくという中で、一人ひとりが持っている能力を少しでも皆さんに発揮してもらうという意味でも、少しでも就労や社会参加につながるような取組みを積極的に展開していくような方向性の非常にいいアイデアが幾つも出ておりまして、ありがたいと思っております。
 一方で、財政制約から生活保護の削減の主張がずっとありますが、生活保護制度は、安心のセーフティネットであり、人々が安心して社会参加ができ、チャレンジできるための条件という意味でも積極的に評価できるというような位置づけもできるのではないかと思っております。
 社会参加と就労参加という意味での中間的就労等のアイデアが出ておりますが、その必要性は重々理解していますが、新しい働き方ということになると、そのワークルールがまだ確立されていないという懸念があります。新しい働き方の検討に当たっては、この場か、あるいは別の場で、ワークルールについても検討が是非必要だと思っております。
 「?生活困窮・孤立者の早期把握」については、地域の関係者がいろいろな形で努力をして、連携を取って発見するという動きが出ております。しかし、個人情報の問題が引っかかるという指摘が依然としてある中で、一番使われているインフラである電気とかガスとかの事業者との連携も一部出てきているようですが、それが更に進むようにできないものかと思っております。
 通知が何回も出ていることは承知しておりますけれども、支社単位で自治体と連携協定を結んだり、具体的な取組みをされている、ところがあるようですので、そういう取組みを横につなげていくようなことができないものかも考えております。民生委員については、いろいろな役割を担う非常に貴重なその地域の資源として活用されているわけですが、担い手の確保の問題や、報酬もない中で頑張っていることについても、何とか対応が取れないものかと思っております。
 その他、たくさん言いたいことがありますけれども、以上にしておきます。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 ワークルールについて、支援者の連携について、これは特に事務局からお答えいただく必要はないですか。
 では、石委員、どうぞ。

○石委員
 NPOの団体の皆さんに一生懸命に取組みをしていただいて、先回も申し上げましたように、私のところは3年目にこの事務を受けてのところでありますので、積み重ねが少ないものですから、そういう部分では不十分さや皆さん方に失礼な発言をするかもしれませんけれども、どうも早いうちに無様な発言はしておいた方が、だんだん発言がしにくくなるようでありますので、先にさせていただきます。
 先ほど、家計再建のための貸付のことがありましたけれども、この制度を導入されるに当たって、仮に万が一債権が回収不能になったときに、どうやって回収していくのかということを考えるわけであります。例えば国の基金とか貸付金に対して保険をかけておくとか、そういう制度がないとなかなか地方自治体としては、この貸付制度の踏み切りが難しいのではないかと考えております。それが1つでございます。
 あとはランダムになって申し訳ありませんけれども、パーソナルサポートサービスの制度化ということもうたわれておるわけでありますけれども、我が村は保護世帯が11世帯です。隣の1万2,000人の町が2町ありますけれども、ここが58とか49とかいう世帯の数であります。そういう中で、大規模福祉事務所と違って小規模自治体、地方の自治体ではパーソナルサポートを担う受け皿がケースワーカー以外しかないのかなと思っております。
 鳥取県は58万4,000人の人口でありますけれども、県内でNPOの団体が幾らあるのかと見ますと、200を超えております。ただ、この生活困窮者に関わるNPOではないと思っています。障害者自立支援の関係のNPOが今のところは、実態としては多いのではないかと思っておりますので、その辺は非常に難しさがあるという気がしておりますし、その他世帯の減少や低所得者世帯の生活の安定を図るということでは、先ほど非営利の場で働く場を準備しなければならないということでありましたが、先ほど申しましたように非営利の団体の数が限られておると思っておりますので、その辺をどうやっていくのかなということで考えますし、我々のところの求人倍率はコンマ6程度ですので、国より全体容量が低いということでありますので、そこら辺は非常に難しさがあるかと思っております。
 地方で考えたときに、制度の中で就労活動を支援すると言うことがありますけれども、現行制度の中では資産を持ってはならないということがありまして、ある程度柔軟に対応がされておるということでありますが、幸い就職があったときに、車は通常資産として保有できないということでありますので、いずれの状態も車がないと非常に難しさがあると思っております。
 鳥取県西部で言いますと、米子市と境港市にハローワークがあって、日野郡と西伯郡に一つハローワークがあります。25万の人口の規模だと思っていますが、その中でハローワークが3つであります。就労活動をしても、いずれにしてもこれは車がないと、とてもではないが、就職があったとしても、そこに公共交通機関があっても一日に何便という状態でありますので、非常にこの辺は難しいと感じるわけであります。実際の対応としても難しいなと思っておりますので、制度改正ではここら辺も地方の意見をくみ上げていただければと思っておるところであります。
 就労支援を拡大するということでありますが、まさしくこの部分はそれこそ言いましたように、郡部の町村はハローワークがどちらかと言えばないという実態でありますので、県から事務を受け継いで3年目になります。身近なところで生活困窮者や生活保護者のカバーは日常生活の中ではできると思っていましたけれども、就労支援ということになりますと、米子のハローワークまでいかなければ対応ができませんので、この部分ではもっと広域的な取組みが必要ではないかと思っております。社会的企業の皆さんにお世話になるにしても、町村独自ではなかなか外に自治体、1万2,000人の自治体にそういう企業が合うということでは取組みが事例としては難しいだろうと思っていますので、ここら辺は広域的なものが必要かと思っておるようなところであります。
 とりあえず、それで止めます。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 家計再建支援の在り方、特に回収が困難になった事態と自治体の責任について。2番目に地域の実情に即した議論の在り方について、ということだと思います。2番目の問題は大変大事な事柄で、私どもも十分留意して議論をしていきたと思います。
 第1の問題については、現段階で事務局の方から、これからの方向性の議論に関わって何かありますか。

○熊木生活困窮者自立支援室長
 まず、いずれの意見も大変貴重な御意見でありまして、今後細かい議論をしていく中で十分勘案していくべきものと思います。現段階におきましては、家計再建については、今までは貸し付けるということに重点が置かれておって、そこにきちんと家計の指導などができていなかったということを前回申し上げました。例えば福岡の取組みですと、平成18年から貸付を行っていて、きちんとした家計指導を行った結果、今まで5件しか貸し倒れがないということを聞いてございます。
 そういったように人をきちんと付けまして、指導を行っていくということで、ただお金を貸すのではなくて、本当に家計の再建をしっかり根本的に図っていくということを考えられないかということでございます。今後、具体的に考えていきたいということで、それによってどれくらい貸し倒れが生じ、財政的な負担とが生じるのかというのが見えてくると思いますので、その上でご指摘の点もきちんと議論をしていきたいと思います。

○宮本部会長
 石委員、よろしいですか。
 では、広田委員、どうぞ。

○広田委員
 私はこういうところは得意ではないですから、今日は発言を差し控えておこうと思ったのですが、権利擁護のお話が出たんですね。今、日本は大変な状況で、この連休中に毎日新聞を読みましたら、何かメンタルヘルス健診を3,000万人を対象にやると。そんなことをしたら日本国民の何割も恐らくうつだろうという状況で、津田政務官は政務官である以前に民主党の国会議員ですから、そんなものは止めた方がいいと。それは医療費が莫大にかかるだけで、国民を幸せにしません。
 私は日本の精神科医療の被害者として、ほかの精神の検討会にも入っていまして再三言っていますが、治せない精神科医療に誘導しない方がいいと思います。うつを早期発見、早期治療、早期支援ではなくて、予防した方がいい。もっと明るい日本にしなければいけないということがまず1点です。
 その上に立って、権利擁護の一番最初のところに、民間事業者や公的機関、地方自治体との共同、連携強化、総合相談支援体制というのがやたらに好きなんですね。でも、いつも見えないのは、本人の自己決定なんです。私は精神医療の被害者として危機介入相談をやっていますから、この14年間、今、たたかれている神奈川県警の現場をずっと回っています。いわゆる精神科救急のニーズが警察の保護室にあると知ったときから、ずっと神奈川県警を回っていますが、その中で自殺未遂者にもたくさんお会いしています。
 先日も二酸化炭素中毒の御本人が、1回目は警察ルートで入院して、そのときお巡りさんが「部屋に入ってください」と言ったけれど、本人は入院がいいと判断して、入院のお手伝いをしました。出てきてもう一回やったんです。未遂を。その後、1人のために救急隊、消防、警察、30~40人体制で出ています。そういう時代なんです。
 それが一段落して、私は御本人からお話を伺った後、お巡りさんたちに「警察官が10人もいつまでも張り付いていたら大変ね」と言いました。県警本部長でも記者でもだれにでも言ってやりたい。解除したらどうですかというくらい大変なんですね。こういう現状が本当に警察官をうつにしていて、先日も言ったかもしれませんが。神奈川県警の課題はうつなんです。そして、全国民の課題もうつなんですよ。
 翌日、その御本人のところへ私はほかの相談者と一緒に家を片づけに行ったんです。一段落付いて御本人が、横浜市のある区の障害支援担当にお話をしたら、担当が御本人に生活保護を勧めたんです。ところが御本人は「働きたい」んです。自殺未遂イコール生活保護と誘導する行政があるんです。それが生活保護を増やして御本人に不利益を与えたり、御本人の働く気をなくしているんです。さっき堀田さんがおっしゃったように、本当に働けない人は生活保護かもしれない。でも御本人が働きたいという意思があって、彼は現在、アルバイトを始めました。
 もう一つ、28歳の青年は我が家の駆け込み寺に泊まりにきて、2回泊まったときに、彼もいろいろな事情があります。「これでやっと安心して帰ってこれる家ができた」と言うから、「月に一度だけよ」と言っていました。彼は、「生活保護制度を使ったら僕はだめになってしまうから」ということで、親が今、援助をしているんです。そして、就労支援につながろうとしています。
 そういうふうに御本人の意思に基づいた権利擁護、御本人の自己決定を優先しないで、あたかも周囲が何かエスカレーターに乗せていって、その人を支援することがその人の幸せだと思っている障害のジャンルもあります。それをここに導入してはいけない。あくまでも御本人の能力を削いではいけない。御本人の能力が最大限生かせて、御本人が幸せを感じられる制度とかシステムにしない限り、これは毎日新聞がたたいたところの官僚が法案をつくればいいと思っているだけの法案ではなくて、国民にとって幸せな法案でなければいけないということで、是非御本人の自己決定を最優先にし、御本人の能力が発揮できるものにしていただきたいということです。
 以上です。

○宮本部会長
 ありがとうございました。権利擁護における自己決定。これもこの部会で深めていかなければいけない問題だと思います。
 宮本委員、どうぞ。

○宮本みち子委員
 「?中高生に対する支援の強化」がありますが、この件について一言時間をいただきたいと思います。あとで谷口委員の方から詳細な御報告があると思いますが、今、高校の中退問題を見ると、象徴的に表れておりますけれども、定時制高校、通信制高校、偏差値の低い高校に、この生活困窮者問題、将来的に仕事に就くことに最も困難を抱える人たちが大量にいるという現実があると思われます。
 OECDの昨年の報告によりますと、OECD加盟国の中で15~16歳から24歳の失業者及び不就業者の問題に立ち向かわねばならないということを言っているわけですけれども、その中で失業リスクが高い集団として、高校中退者、移民、マイノリティ、貧困地帯、農村部、僻地。ここに暮らす15~16歳から24歳が仕事に就くのに最もリスクを抱えているという指摘があります。日本でどうかということですけれども、日本にもそのままこれが当てはまると思います。
 高校生の中退問題に関しては、この2~3年、内閣府でも調査をやり、厚労省、文科省でもこの問題に対して取り組まねばならないという認識がようやく高まってきたところでありまして、ここに力を入れることは非常に重要なことだと思いますけれども、あとでサポートステーションの件に関して、谷口委員の方からも出るかと思いますが、数年前から高校在学中にサポートステーションと学校とが連携をして、早期に何らかの問題を抱えている高校生に対して、協力をしてサポートをしていくという体制をつくり、各地で努力をしておりますけれども、学校というのは先生方たちが異動した途端に元に戻ってしまいます。
 先ほど横浜でも聞きましたけれども、先生数名の熱心な方が異動した途端に、完全に元に戻ってしまうんです。その体制をつくるのに、どんなに努力をしてきたかということを考えると、本当にこの状況は問題が多くて、元に戻らないための体制をどうやってつくるのかということになろうかと思います。
 高校に関しましては、中退をどうやって防止するかということですけれども、これは単に中退を防止するという言い方ではなくて、後期中等教育レベルの教育をいかにして保証していくのかという話でありまして、現在の日本の高校というものがそれに合っているかどうかということの検討も必要であり、学ぶ多様な高校生に対応した多様な教育の在り方が必要だと思います。
 その前の段階としての義務教育における学力の問題。ここを抜きにして高校の中退問題は解決しない。更にさかのぼれば、学校に上がる前の就学前教育に手を付けることが大変重要でありまして、これは他の国がもう既に就学前教育のところで手を付けなければ、後々で大変難しいということを経験し、取り組んでいる。それを日本でもやるべきではないかと思います。
 学校で書かれている多様な問題に関しては、学校だけでできないということはもう既にわかり切っていることでありますけれども、学校だけでできないことをどうやって体制下していくかということ。これを?に関連した形でつくっていくということが生活困窮者対策になっていくのではないかと思います。
 以上でございます。

○宮本部会長
 後期中等教育段階でのセーフティネットについてでございます。文科省からもおいでですが、何かコメントはございますか。

○藤野政策課長(桐生代理)
 御指摘をいただき、ありがとうございます。多くの御指摘をいただきましたけれども、中でもサポートステーションが学校と協力して、高校中退になる前の方をいろいろと発見していただいているという取組みも我々は伺っておりまして、こういったことに学校として組織的にどういうふうに協力していけるか。また、そういった枠組みを文科省としても何らか手立てを考えていかなければいけないと検討しておりますので、更に御意見をいただきまして、検討を進めさせていただきたいと思っております。ありがとうございました。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 議論は尽きないわけですけれども、これから委員のヒアリングがございまして、その後も、また皆さんのお話を伺えると思いますので、一旦ここで区切らせていただきます。見直しの方向性について、示唆的な議論がたくさんございました。是非事務局の方でこれを集約して、見直しの方向性をバージョンアップしていただきたいと思います。
 それでは、議題2になりますけれども、委員からのヒアリングを行いたいと思います。前回もお願いしたところでございますけれども、櫛部委員、谷口委員、藤田委員からそれぞれお話を伺うことになっております。順番ですけれども、まず櫛部委員、次いで谷口委員、藤田委員という形でお話をいただければと思います。それぞれの委員に対してというよりは、お三方からお話を伺った上で、また全体で議論を進めていきたいと思います。
 それでは、まず櫛部委員から、大体15分くらいでお願いいたします。

○櫛部委員
 わかりました。ストップウォッチを押してしゃべりたいと思います。
 北海道釧路市から参りました、櫛部武俊と申します。釧路市は人口18万5,000余人の漁業、石炭、紙パルプを主要産業とした町でしたが地域経済が次第に衰退し生活保護を受けている方が市民18人に1人という町であります。地域経済の疲弊に対する、不況に対する市民的な危機感、生活保護、障害、母子あるいは高齢介護など、支援を要する人に対してどうしたらいいんだろうということで、市民各階層が危機感を共有している町でもあります。
 今日はお時間がありませんので、生活保護の数字がどうしたということは省かせていただきまして、私どもが9年前から、特に国の生活保護の制度の在り方に関する専門委員会の報告、17年の国の通知、21年の社会的居場所と新しい公共の報告などを踏まえながら、この9年間、生活保護受給者の自立支援の取組みをしてきたことを今日は御報告を申し上げたいと思っております。それがこの会の議論に資することを願って、御報告をさせていただきます。
 今日は当事者が発言をするDVDがございます。これは後ほど、その仕組みを御紹介しますが、音がなかなか聞き取りにくいかと思いますが、今日のために時間を短く編集してきたものですので、それを見ていただきますと、自立支援が何であるかということが皆さんにお伝わりするのではないかと思いまして、最初からこれでいきたいと思っています。よろしくお願いします。中間的就労といういろいろな取組みをしております。

(動画再生)

 これがいろいろ地元のテレビに出たり、自分たちが取材をしたりした当事者の声です。これは私どもが進めている自立支援の参加者との取組みです。これからこのプログラムの構造をパワーポイントで御説明を申し上げたいと思います。
 この就労自立というところにケースワーカーが立ちまして、受給者を引っ張りあげるという構造、ケースワーカーにぶら下げていくという形ですね。枠組みとしても稼働能力があれば、ほぼ受けられないか。受けてもすぐに出てきなさいという構造でもあります。福祉事務所はどちらかと言うと自己完結型で今まで仕事をしてきたかと思います。
 その後、ここに日常生活自立、社会的自立、経済的な自立というのが入ってきまして、どう組み立てようかということでありました。当然、私たちとしてもその当時、16年、17年、いわゆるステップアップ、最後の上がりは就労だと、廃止だという枠組みは基本に持っておりました。しかし、地元の受給者の顔を見ますと、そう簡単にはいかないだろうということで、地元の方々と協議会、検討会を持ちまして、中間的就労という場をつくったのです。
 これは市内のNPO、企業まで18か所くらいに委託しまして、先ほどのようないろいろな行き場所、子どもの勉強から動物園とか公園の作業とか、株式会社からNPOまでの地域の資源の中にこの場所を入れ込んだというのが最大の特徴で、あのような形で従来であれば、だめなおじさんであったかもしれないし、学校も行かない子どもだったかもしれないけれども、こういう枠組みで見ていくと、全然違うんだと言えるかと思っております。言わば受給者の群像として出てきた。縦で今までずっと見ていたのですが、横で見てくると、例えば受給者のだれかを支援することができるとか、支援されるだけではないというようなこたし、とが勉強会の中でも起きてきましたし、中には最後のおじさんはNPOの職員に今なりまし受給しながらピアカウンセラーになって、次の新しい受給者のケアをしている方もいます。そういう形の循環がここで起きてきているということであります。
 ここで重要だと私が思うのは、もう一つ、そのときにはまだ未分化ではありましたけれども、横の福祉授産とかソーシャルファームとか社会的企業とか、まだそのときは見えなかったんだけれども、そこも入れようと。実際に福祉授産などがあるではないかということで、しかし、もっと発展させることはわからないけれども、入れようということで入れました。ただ、そのときはまだ見えなかったのですが。
 今までは上がりが就労と廃止というようなことでありましたけれども、中間的に就労とか、そこで居場所がつくられて元気になっていくということは、上がりの通過点ではなくて、その場自体に力があるということではないかとお話をしたいわけです。こういう当事者が回復している様子。あるいは新しい可能性を獲得している様子自体に、それが示されているのではないかと思います。
 仙台の被災地で伺ったことですが、救護施設がもう決まっていると。ただ、空いていない。それで中間的な支援のところで待機していたら、その方がケアをされて元気になって、そこに行かなくてもアパートから通って、ごはんを食べられて、何とか生活できるようになったという事例もあるのです。プロセス自体を大事なものとして、通過点ではない中間的な意義を考えていかなければいけないのではないかというのが仙台での経験でもそうでした。 パワーポイントの使い方があまりわからないのですが、こんな絵とかこういうのが先ほども出ましたけれども、いろいろな場面で、皆さんは200名ほどですけれども、参加してやっているということです。
 そこに着目をすると、やはり新しいケアの考え方をしていかないといけないのではないか。最後のセーフティネットと言った途端に、ほかに行くために何もしないみたいなことになってはよくないと。むしろ逆だということで、私たちは呪縛のようだった就労自立をひっくり返してみたんです。そうすると非常にかけがえのない私の獲得こそが本当なのではないかと。これはだれにも代わることができない。
 でも、就労の自立はもし働けなかったら、ちゃんとした制度があるはずだし、日常生活がうまくいかなかったら、さまざまな介護やその他のケアがあるはずだし、人によって就労自立が重点的な人もいれば、日常生活でもあるのでしょうけれども、いずれにしてもかけがえのない私の獲得というのがあるんだろうと設定すると、逆に就労の自立や日常生活が非常にフレキシブルに考えられるようにおもいます。
 例えば就労自立、今、釧路ではこの4月から社会的企業創造協議会を立ち上げました。今はまだ中間的就労はアンペイドワークですが、ペイドワークになるように地域に困ったこと。例えば買い物難民で釧路は困っています。遺品整理なども困っています。そういう社会の困った種を受給者や生活困窮者とともに事業化していく取組みを旗揚げしていこうとしています。そういう方向で、まさに横化していく方向が一つは考えられた。
 日常生活の自立、保健師さんによる血圧測定も勿論あると思います。お年寄りの場合は血圧カフェなどいいのではないかという話があって、朝はみんな血圧が心配なので、朝みんなで体操をした後にそこに寄ってお茶を飲んで、そこのマスターは実はインテークのベテランだったというような感じの方がいらっしゃる
方が、なになに相談所に行くよりはよほどいいのではないか。そういう事業を起こそうと。
 そういう日常生活の課題もあるのですが、一番ここにあるのは、やはり教育だろうと。今まで学校では不登校対策として見られなかった子どもは先ほどのようなことになるわけですから、地域でもっと成人から若者まで一貫した地域福祉教育を立ち上げていく。そういうオールタナティブなものをつくっていくということが日常生活の自立では大事なのではないか。ここでは問題があることが不登校ではなくて、もっとそこが活性化していくのではないかというような意味合いを私たちは考えております。
 最後に釧路市福祉事務所の若手の職員が、私があまりにアナログな人間なもので、一生懸命やろうということで連休の前半をつぶしてつくってくれた図です。1年目、2年目、3年目の若手のケースワーカーが何とかやりたいということで・・。 今までの生活保護受給者の居場所づくりから地域づくり、社会的企業づくりがオールタナティブな地域福祉教育づくりを方向性として持って、そのための枠組み、政策、財源、だれが担うのかということをつくっていきたい。そのための土台がこの仕組みです。9年前からようやく、こういう枠組みで何とかやってきたのがよかったかなと思っております。ここがないと受託、委託を繰り返していたり、なかなか文化性を脱色した連携という事務連絡で終わってしまったりするので、これが大事なのではないかと思っております。
報告を終わりたいと思います。ありがとうございました。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 いわゆる釧路モデルとして知られるようになった実践的な経験のお話でございました。先ほど質疑応答はお三方のお話を伺ってからと申し上げましたけれども、お話の理解を深めるために、あるいは整理をするために、事実関係に関わる確認の御質問は今の段階でもお受けしたいと思いますが、何かございますか。
 小杉委員、どうぞ。

○小杉委員
 最後の土台なことをもうちょっと説明していただけますか。受託と委託を毎年繰り返すのではなくて、これは一つの形がしっかりできた継続的なものになっているということでしょうか。

○櫛部委員
 はい。ワーキンググループというのがございまして、それが第1次、第2次と委員に地域の方を入れて、NPOの方を入れて、継続してやっていまして、常に振り返りの委員会みたいなものもやって、報告書を出して、また戻すというようなことをして、なるべく可視化して皆さんに御理解をいただくような枠組みを基本的につくっています。
 ただ、コミュニケーションがなかなかないと、契約しました、はい終わりということもないわけではないので、これは本当にそういう意味での動かし方は非常に難しいわけですけれども、会議をして向き合って問題解決をしていくと。いろいろといきさつはあると思うんですね。NPOにしてみれば、役所にあるでしょう。役所もNPOにいろいろあるかもしれない。でも、その前の問題解決のために、どういう胸襟を開いてやるかということしか残っていないと思います。それが物すごく大事で、あるいは意外にできないということなのかなと思っております。
 釧路的には危機感が全体にあるので、そういうことに関しても関心が強く、よく経営者の会議に呼ばれて話をするという場面もままあるからできるのか。しかし、これは日本的にどこでもつくらなければいけないことなのかなと、私は思っています。

○宮本部会長
 ほかに確認の御質問はよろしいですか。櫛部委員、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、谷口委員の方からお話を伺えますでしょうか。

○谷口委員
 皆さん、こんにちは。僭越ながらお話をさせていただくことになりました、谷口と申します。本日はよろしくお願いします。
 私は不登校、引きこもり、ニートと困難を抱える若者の自立支援に携わっております。今回は宿題としていただいたヒアリング項目について、我々の活動に求めた観点あるいは実践の紹介、これを通じて答えさせていただきたいと思うところであります。
 それでは、早速ですが、まずは若者支援自立支援分野との共通課題から3つ、かいつまんで御説明をさせていただきます。
 まず第1点目は、施設型支援の限界というところであります。公的支援の拡充に反した厳しい現実を鑑みると、やはり来ることを待つといった施設運営では、本来支援すべき対象にアプローチできていないのではないだろうか。こういった観点ということであります。
 次に2点目、直接的支援の必要性ということであります。いじめ被害による自殺であるとか虐待による死亡事件、これらをかんがみれば、単なる相談窓口の開設、助言、指導といった方法では立ち行かない時代に来ているのだと。こういう危機感を持っているということであります。こういった観点から行くと、より積極的に、環境への直接的なアプローチも必要なのだろうと考えるところであります。
 次に3つ目に入ります。従来の枠組みの突破ということであります。子どもたち、若者が抱える問題は、近年深刻化、複雑化しているわけであります。学校教育段階のつまづきが将来の自立にも影響を与えていってしまう。こういった観点からいくと、自立まで責任を持って継続的に見守る体制の構築。公的支援の在り方を考えるに当たって、今後は欠くことのできない視点ではないかと考えているところであります。
 以上のような観点を持って、活動を展開させていただいているということで、次はこれらの視点をどのように活動の中に具現化していったのか。この点に移りたいと思います。
 今、画面にごらんいただいているのは、佐賀県における当法人の位置づけを示した概要図です。平成22年に施行された、子ども・若者育成支援推進法に定められる3つの主要機関。そのうちの総合相談窓口として機能する、子ども・若者総合相談センター、そして県内唯一指定される指定支援機関。この2つを我々のNPOが担っています。
 それでは、なぜ一NPOがこれだけ県の公的機関、専門機関が構成する協議会において、中核機関となり得たのか。この背景にあるのがアウトリーチ、これを中核事業とするNPO活動、そして地域若者サポートステーション事業で培った現場での信頼ということであります。
 まずNPO本体事業でございますけれども、平成15年からの総計で3万件を超える相談、そして7,000件を超える派遣家庭。このうち9割以上から学校復帰、引きこもり状態からの脱却、進学・就職等の客観的な改善の報告が寄せられているということであります。
 他方、サポステにおいては、相談件数は既に4万件を超え、継続的な支援を受けた若者が2,300名いるということで、これらの利用率は全国トップレベルであるということであります。これを機能させているのがアウトリーチでございまして、アウトリーチがあったからこそ、やっと支援に結び付くことができた。いわゆる社会的に孤立をしていた若者たちが全体の43%を占めているということであります。
 それでは、これまでの家庭訪問のたぐいとは何が違うのだろうか。この点について考えていくに当たって、一つ音声をお聞きいただきたいと思います。

(音声再生)

 何度聞いても心痛くなる声なのですが、これがまさに社会的に孤立する、こういった行く末の一つと思いますけれども、この方の場合も実は複数の公的支援機関を受けてなお改善できずに、こういった状態に至ったというケースであります。
 実は地域若者サポートステーションで我々が対応しているケースの5~6割が複数の支援機関の利用経験があるにもかかわらず、ニートの状態に至った若者たちであるということであります。こういった既存の公的支援の限界を念頭に置きつつ、これからは冒頭で言及させていただいた公的支援の在り方についての視点、これらの課題の解決の方向性として4つ、活動の中で取り入れているものを御紹介させていただきたいと思います。
 まず1点目は、関係性についてです。やはり我々は人の人生に関わる仕事でございますから、専門性があって当たり前だと考えているところであります。しかしながら、先ほどのようにつながる力が弱い。そういった孤立する若者たちへのアプローチということを考えると、当然それだけではだめだということになります。こういった点について、関係性というものを重視したさまざまな工夫点を活動の中に取り入れているということで、今、画面にごらんいただいているところであります。
 実は我々の組織は8割が20代、30代の比較的若い世代によって構成されているというのは、まさにこの観点でございまして、いわゆるお兄さん、お姉さん的な斜めの関係性を活用することによって、そういったものを突破できないかといった観点を持っているということであります。
 当然、専門的な支援に至るとそれだけではだめで、その若者、子どもにどういった家族関係があって、どういった関係者が関わって、これまでにどういった支援を受けてきたのか。これまでの経緯。言葉のやり取りレベルまで分析をして、しっかりと当事者にとって一番受け入れやすい存在とは何だろう。こういった問いを支援者が考えた上でマッチングをしていく。こういった取組みを今、展開をさせていただいているということであります。
 次に2点目、環境への働きかけということであります。学校での不適応に関しては、本人への指導に偏りがちなのですが、実はその不適応の背景には貧困であったり、あるいは虐待、DV、家族問題、こういったものが実際には隠れている。こういったこともあります。医療機関についても同じで、実は虐待に遭っている子どもに幾ら投薬をしたからといって、状態が改善するわけがない。そういった家庭環境で抱えている問題をしっかり解決していかなければ、本質的な改善には至らないということであります。ならば、そういった問題も生活場面を共にすることによって、しっかりと把握をして、家族とともに解決をしていく。こういった観点が必要になるということであります。
 そういった点で行くと、個の限界があると思います。個人の資質、経験に頼った支援では、これまでの限界は超えられません。そういった点でしっかりとバックアップ体制を組織内にも整えていこうではないかという視点であります。
 そういった点でいくと、専門性というのが非常に重要なのですが、これが福祉系の方々あるいは教育系の方々だけで構成されてしまうと、考え方や対応の仕方にも偏りが出てしまうということもあります。そこで、右の上の方に書いておりますが、あらかじめ多様な専門資格を持った者をスタッフとして内包しているということであります。こういった異なる意見を持った人たちとともに、さまざまな観点を持って、この若者たちにとってどういった支援が一番適しているのだろうか。こういった点について喧々囂々話し合いながら、しっかりと方針を立てているということであります。
 また、ボランティアの力もさまざまな場面で活用しているのですが、それも支援介入困難度、本人の状態に応じて、どこまでが彼らが役割を担えるところなのか。専門家が関わるべきところはどこなのか。こういった点を考えることによって、費用対効果も大きくすることができる状況にあります。
 もう一つ、4点目は1つの組織の限界もあらかじめ謙虚に認めていこうではないか。こういった観点であります。ボランティアベースの団体から公的な専門機関に至るまで、地域でだめなことは全国の団体にまでということで、現在11に及ぶ重層的なネットワークを構成させていただいております。自分たちにできないことは、ほかの団体に御協力を願って、しっかりと解決をしていく。こういった体制の下で実現しているのが次のページになります。
 多面的アプローチという手法でございます。本人が問題を抱えたとき、本人支援だけではなくて、家族が抱える問題も専門機関とともに一緒に解決をしていく。これを実現するのが伴走型のコーディネートということになりますが、本人との信頼関係を深く保ちつつ、そういった問題を解決していくということになります。こういった手法に基づいてやれば、重篤なケースにおいても9割の改善が認められるというのは、まさにこれらの観点に基づいた実践の結果だと考えているところであります。
 2ページ飛ばしていただいて、これらの若者支援の取組み。現場の感覚から見た困窮者支援の見直しの方策という点について、大きく3つだけ御紹介をさせていただきたいと思います。
 まずは入口ということになります。前回の自己紹介のときに言及させていただきましたが、ケースワーカーさん、最前線の強化は必須だろうと考えております。実際に地方では何の専門性もない新人の行政職員の方が、いきなり最も困難な現場に回されてしまう。思い悩んで苦しんで、うつになるというケースワーカーの皆さんも現実にはまだいらっしゃるということであります。
 今回、ヒアリングをした項目を下に書いております。後ほど読んでいただければと思いますが、こういった現場の声は真摯に受け止めた上で、仕組みを考えていく必要があるのだろうと思います。そういった意味でも現場には、特に最前線には見立てと支援が専門的に行える人材の配置が必須であろうと考えているところであります。
 また、若者が抱える問題が複合化、深刻化しているという観点では、一つの専門性というところでも事足りないということでありますから、そういった点で複数の専門職によるチーム対応は是非とも原則としていただきたいと考えているところであります。
 駆け足になって申し訳ございませんが、次に2点目に移らせていただきます。適切な役割分担と積極的な連携についてということであります。生活保護、実は多くの方々がいきなりその状態に陥るというわけではありません。各世代のステージで実はサインを出しているのではないか。こういう観点であります。実際に我々のサポートステーションで独自に集計している、「被支援困難者(経済的事由で必要な支援が受けられない若者)」は全利用者の2~3割ということでございますから、こういった若者に最初に触れたところから伴走し、自立までしっかりと導く。こういった姿勢が予防的観点としてからも必要になってくるのだろうと思います。
 そういったところで非常に可能性を持っている事業として、地域若者サポートステーション事業が出てくるわけでございますけれども、制度については御案内の通りということで省略させていただきたいと思いますが、やはり一番強い点は若者支援、こういったところに専門性を持った団体が受託をしているというところが一つの大きな特徴になってくるのだろうと思います。単なる専門性だけではなく、実際に関わり方がうまい。そういった人たちが支援をしていくということは非常に重要になってくるだろうと思うところであります。
 先ほど他の委員の話にも出てきましたけれども、中退者の問題も今、先駆的に、それこそこれまでの従来の枠組みを突破した形で、文科省と厚労省が連携を取って事業が実行されています。ただし、その規模というところでは、実際に配置されている専任の人材が1人、2人といったところもございますので、そういったところはしっかりと人員を強化して、サインを出している時点で継続的にフォローをしていく体制を構築する必要があるのだろうと思うところであります。
 積極的な連携を可能とするためのインセンティブに移りたいと思います。今、画面にごらんいただいているグラフというものは、佐賀の若者サポートステーションに関係機関から寄せられた相談件数をグラフ化したものであります。連携を推進するに当たっては、一極集中、負担の増加、こういった点にしっかりと配慮をしなければ、せっかくの取組みがつぶれてしまうという観点であります。
 我々のところは単なる相談ではなく、認知行動療法を活用した適用訓練等を実施しております。非常に改善率も高いということで、今、一番増えているのが医療機関、福祉機関からの相談であります。1つ大きかったのは、やはり投薬だけでは解決しないということを医療関係者に気づいていただいた。こういった点については非常に大きな成果と思います。しかしながら、問題点はサポートステーション、一定額の委託事業でございますから、支援する若者が増えれば増えるほど、負担というものは当然増加するということであります。今後生活困窮者対策の仕組みを変えるに当たっては、懸命に頑張っているNPO等の組織に対して過度な負担がかからないように配慮する、ということを考えると、やはりそれなりに結果を残したところにはしっかりと予算が傾斜配分される。そういった仕組みも検討の課題の一つなのだろうと考えているところであります。
 民間への委託の促進という点でございます。多くの場合、行政機関の最前線で頑張っている支援者は、地方の場合、嘱託であったり非正規であったり、契約社員であったりということで、短期で辞めてしまう方がかなり多いということであります。行政の正規職員も異動がありますのでノウハウの蓄積は非常に怪しいものがあるということです。
 そういった点で行くと、運用基盤を整えた民間団体に委託を出すことになると、どういった効果が望めるのかということで、下の方に進路決定者数の推移を書いておりますが、我々のところは年々その成果が充実をしていっている。それはスタッフの中にノウハウが、団体としても蓄積されているからこそではないかと思います。こういった点も留意しながら、行政側も抱えている事業をしっかりと民間に委託を出していく。こういった取組みを進め成果を求めることも重要なのではないかと思うところであります。こういった取組みの下に、実際に出てくるのが責任を持って自立まで見届けるための体制づくりということになろうかと思います。
 補完的な対策として3つ挙げております。1点目、伴走型の支援。これについては後ほど藤田さんの方が関連した発表をされるということでございますので、省略をさせていただきたいと思います。
 2点目、社会的な企業の創設。これも櫛部委員の方から御発表をいただいたところですので、割愛させていただきたいと思いますが、若者の中には実際に職業訓練とかそういった支援歴よりも職歴が欲しい。働く経験が欲しい。お金ではないのだといった若者も実際にいる。ここに着眼をしていただきたい。つながりの中でしっかりと経験を積み、社会へと一歩踏み出していく。こういった受け皿もしっかりと用意をする必要があるのだろうというところで挙げさせていただいたところであります。
 最後3つ目になります。今あるものを最大限に活用することで、何とかできないだろうかというところの取組みを御紹介させていただきます。1つは欧米に比べて日本の若者支援分野は、一つひとつの事業の予算はかなり小さい。そういったところで非常に苦しい運営の中で、若者を支援しているのが実情ではないかと思います。そういった点で、佐賀県の場合は、画面にごらんいただいているように、複数分野の支援事業を一NPOが獲得していく。そうすることによって、結果的に総合的な支援体制を整えているという事例であります。
 幾つか実例を挙げさせていただきますと、ICT活用支援事業。これは教育委員会との事業でございますが、義務教育段階で不登校に陥った若者の中で特別な事情がある場合は、パソコンを通じた学習と我々の訪問支援をセットにすると学校の出席扱いにできるといった事業であります。
 更には、高等教育段階においては、中退のリスクが非常に高い若者に関しては家庭から支えていこうということで、いわゆる家庭教師を派遣して、継続的に支援をして、そのリスクを軽減する。あるいは違う自立支援に結び付けていくといった事業も県の教育委員会が委託実施していただいております。
 就労段階においては、認知行動療法、職親制度を活用した上で、従来の職業訓練ではなかなか自立が難しい。そういった若者の支援にも携わらせていただいているということであります。
 こういった形でしっかりと視点を変えて工夫を重ねれば、こういった厳しい現状の中でも多くの若者が自立へと歩みを進めていく。こういった状況が佐賀では出てきているということであります。
 駆け足の説明になってしまいましたが、多くの当事者は本当に困窮し、苦しんでいらっしゃるというさなかで、それこそ対応する人によって、それが救われるかどうか、自立できるかどうかというものが変わってくる。こういう状況であります。そういった点で考えてみると、相当数この仕組みというものを変えれば、自立できる人たちが増えていくんだろうと考えるところでありますし、また、一つの保護家庭を支える予算でいくと、実はNPOの分野で言えば、複数名の雇用を満たすことすらできるわけです。強いてはそこで活動を拡大することによって、多くの子ども、若者がさらなる自立につながる可能性があるということを考えれば、この分野は戦略、それこそ方法論さえ間違わなければ、今後の希望のある社会を実現するための新たな活力にもつながってくるのではないかと考えているところであります。こういった観点を持って、今後の議論にも臨ませていただきたいと思っております。
 駆け足で不十分な説明になってしまい申し訳ございません。以上でございます。

○宮本部会長
 谷口委員、どうもありがとうございました。これまた大変リッチなお話でございまして、社会的孤立の問題はこの部会が取り組むべき大きな問題でございますけれども、若い世代の実践化が古い関係、新しい関係をいろいろと束ねながら、アウトリーチを実現していくという、これまた非常に示唆的なお話でございます。
 事実関係といいますか、確認したい方がたくさんいらっしゃると思いますけれども、いかがでしょうか。
 岩田委員、どうぞ。

○岩田委員
 2点お伺いしたいのですが、1つは8ページにあるアウトリーチという言葉ですけれども、これは支援がアウトリーチ型という意味ですね。問題発見といいますか、一番最初に問題を持ってくるのはどういうところでしょうか。つまり、問題発見のときもアウトリーチという言葉はよく使いますので、念のためお聞きします。これが1つ。
 もう一つは14ページですけれども、ネットワーク活用型の支援の関係性の変遷というのがあって、導入から終結まで4段階と書いてあって、最後は分散、移行、離脱化というのは、つまり支援の終結と考えていいのだろうと思いますけれども、フランスの社会的排除の研究などでは、逆に本人が離脱してしまって引き込もっていくといいますか、最初には支援に結び付き、次に支援者に依存していって、その後引きこもるという3段階説という説があります。ここはディスカッションになってしまうかもしれないですけれども、このようにうまいこと行くのでしょうというのが私の質問です。

○宮本部会長
 2点ですけれども、よろしいですか。

○谷口委員
 ありがとうございます。まず第1点目についてですが、このアウトリーチというのは広義の意味で取っています。中核事業で実施しているものは家庭教師方式のアウトリーチですから、家庭に継続的にお伺いしながら支援をするというところですが、もう一つは地域若者サポートステーション事業が今、展開されておりまして、当法人でも受託させていただいておりますから、学校への訪問、問題の発見という意味でのアウトリーチ。両方あるということであります。左側に挙げている実績は家庭を対象としたアウトリーチ、家庭教師方式に絞った形で計上をさせていただいているということであります。右側のサポートステーションの43%というものは、まさに広義の意味でのアウトリーチでつながったケース。これも含め全体の43%を占めているということであります。
 2番目の関係性の変遷でございますが、実際にヨーロッパ型と違うところは、日本の場合は引きこもってしまう若者が非常に多いということです。そういった意味で行くと、我々の家庭訪問、家庭にお伺いするケースというのは、そういった意味で離脱化の可能性が非常に少ないということになるわけです。居場所がそこに限定されていますから、つまりはそこにしっかりと継続的に通っていく。もし会えないような関係性になってしまったときには、別の担当者がお伺いをする。そうすることで、またつながりを回復していく。こういったことができる支援手法ということになるわけであります。

○宮本部会長
 岩田委員、よろしいですか。
 事実関係について確認しておきたいことは、ほかによろしいでしょうか。
 それでは、3番目の御報告になりますが、藤田委員、お願いできますでしょうか。

○藤田委員
 それでは、よろしくお願いいたします。埼玉でNPO法人ほっとプラスで代表理事をしております、藤田と申します。
 私はホームレス状態にある方、あるいは生活困窮状態にある方。もう何でもありといいますか、対象を選別しない形で相談を受けるというNPOで活動をしております。
 私たちのこれまでの活動ですが、原点としてはホームレス状態にある方の相談をずっと受けてきました。最近ではその中でもホームレス状態という極度の困窮状態というだけではなくて、その中で自殺をしたい方とか、あるいは先ほどの谷口さんと対象が重なる形にもなるかもしれませんけれども、若い方たちの相談支援も継続して受けています。あとは刑務所から出てきてしまって、今日住む場所がない、支援が必要だという方もいらっしゃいます。そのような活動を約10年近く活動してきています。
 当然、写真でもお見せしていますけれども、河川敷で暮らすことを余儀なくされている状態にある方がいらっしゃるのではないかと思っています。これは本人が選択して、その状態にあるというわけではなくて、前回の発言でもさせていただきましたけれども、そういう状態に追い込まれているという状態としてとらえる方が適切ではないかということを思っております。
 具体的に私の方では、どういう方たちが相談に来るのかという方たちをお見せしたいなと思って、パワーポイントをつくってきました。さまざまな相談状態、困窮状態にある方たちですが、事例1の方とか事例2の方、あとはその次に事例3の方、いろいろな方たちがさまざまな生活課題を抱えて相談に来られることが現状だと思っています。
 問題はこういうさまざまな方たちに対して、専門機関がどう対応しているのかというところだと思います。これが実は先ほどの谷口さんの発表でもあったとおり、今の現状だとなかなか対応し切れていないのではないかというところからスタートラインに立たないといけないだろうということを思っています。
 さまざまな状態にある方は、谷口さんの資料でもたくさん言われてしまったので繰り返しになってしまうのですが、私たちも全く同じ認識を持っております。さまざまな生活課題を複合的に抱えています。この複合的という言葉が非常に重要だと思います。それは一般的には、何でそんなことができないのと思われがちですけれども、それは御本人が抱えてきた生活歴とか生活習慣とか、さまざまな背景があるのではないか。その背景に少しアプローチする必要があるのではないかということを思っています。
 私たちとしては、例えば事例1の男性にはどう関わるのかというところです。これは言ってみれば、後で少しまとめをしたいと思いますけれども、生活保護が必要だったケースですし、もう一つは緊急に病院受診が必要だったケース。あるいは病院からすぐに退院する支援。退院後にアパートを探すといっても、緊急連絡先がないとアパートは当然、不動産屋さんは貸してくれませんので、その連絡先をどうするのか。あるいは身体障害を負っている場合は御本人で申請の意思がなければ、行政の方は動いてくれませんので、身体障害者の手帳を取ろう。あとは障害者福祉サービスを入れていこう。さまざまなことをしていくということが必要で、これは必要だということがわかっているのですが、だれも一緒にアプローチしてくれる人がいないということが問題だろう、課題だろうということを思っています。
 あとは同様のケースで2つ目の方は、もう生活保護だけではどうにもならない。生活保護プラス社会福祉協議会さんの支援とか金銭管理をしてもらう支援とか、病院受診、アパート契約、ハローワークへの付き添い、ジョブコーチとして就労支援を継続するための伴走型という支援が必要だろう。職場とのコミュニケーションをしていくことの支えが必要だろうという方です。
 事例3の方もどのように支援していったのかを見ていただけたらと思います。中には手術の際に同意書が取られるので、同意書にもサインをしてもらえないので、私たちとか私たちの法人の弁護士が代理でサインをするというような事例も見受けられています。必要な支援があるんだけれども、権利擁護の部分をどうするのかということは再三、今後出てくる課題かなと思っています。これもNPOとしては、もういろいろオーダーメードといいますか、四苦八苦しながら手づくりの支援を日々構築しながらやっているのが現状かなと思っております。
 私たちの支援活動は、主に弁護士、司法書士との連携をしたり、あとは住まいの提供、そもそも家がないという状態で駆け込んでこられる方たちが日々いらっしゃいますので、そういう方たちにシェルターを提供するということとか、さまざまなことをしています。成年後見制度が必要だろうということであれば、生活保護受給者の方、利用者の方にも成年後見制度を活用してもらうということもやっています。
 引き続きアフターフォローが非常に重要になってくるかなということを感じています。私たちの支援活動で、厚労省さんでも昨年度、社会的居場所づくりということが議論されたと思いますが、社会的排除状態にある方は非常に孤立しやすいといいますか、当たり前ですけれども、孤立している状態にあるかなということを思っています。特に私たちのところに相談に来られる方は、生きていてもしょうがないんですと言う方とか、生きる希望がありませんという方とか、これからどうしていったらいいでしょうという方たちに、では、頑張って仕事を探しましょうねとすぐに言えるような状態にはないんだということが認識として必要かと思います。
 まずは自尊心を高めるための仲間同士の交流であったり、生きがいづくり、生きがいと感じられるようなものを一緒につくっていくことが必要だろうと。これは創造的な作業になってくるのではないかということを認識しています。
 先ほどの写真は、月に1回、私たちの団体で憩いの会という食事会を設けています。そこに30~50人くらいが一緒に集まって食事をするというだけの会ですが、そこで一緒におしゃべりをしたり、仕事を今後どうやっていこうかということを考える場所になっています。
 次に既存の福祉の問題で挙げていますが、どうしてこういった方たちが私たちのところに相談に来なければいけない状態になっているのかということを改めて確認したいと思っています。先ほどから幾つか出ているのですが、私の今日のテーマはジェネラル・ソーシャルワークをもう少し定義していこう、根づかせてもらいたいということを思って話をしています。ジェネラル、特に総合的なという意味で、総合的ないろいろな複合的な課題を抱えた人が相談できる場所がそもそもないのだというような認識を持っています。
 例えば生活保護を受けたければ、生活保護の窓口ですし、高齢者であれば、高齢者の窓口ですし、問題が細分化されてしまっている。それはずっとワンストップという形で相談を受けようということで改善がされてきてはいますけれども、まだまだそうなっていないのではないかということを思っています。
 あとはこれも決定的なことですが、先ほどの谷口さんの支援も櫛部さんの支援もそうですが、いわゆる法外の支援になっていますので、社会福祉法に基づく支援。例えば高齢者の介護福祉サービス、障害者の自立支援サービスということで法律に位置づけている対象者を支援することに対しては、報酬が支払われる仕組みになっているのですが、残念ながら私たちのところに相談に来られる方は、その対象からそもそも漏れているために、それに対してどう支援をしたとしても、報酬がなかなか得られない仕組みになっています。ここでの社会福祉の実践が根づかないということが言えるかと思います。これは谷口さんと同じ認識です。
 私たちの提案としては5つあるのですが、1つ目がそもそもそういった谷口さんがやられていること、櫛部さんがやられていること、私たちがやっていることもそうですけれども、今までNPOが対象を選別しない形で実践をしてきたものを少しまとめようということと、まとめることでそれを制度化していく必要があるのではないかということを思っています。
 1つソーシャルワークという概念がありますが、ケースワークということからソーシャルワークという、日本も歩みを一歩前に進めていってもらいたいということを思っています。先ほどからずっと出されている人と環境に対してアクセスをしないといけない、アプローチをしないといけないということが言われていますので、その人のケースというだけではなくて、その人の人と環境にアプローチをする人たちを要請しないといけないのではないかということを思っています。
 今後は対象を選別しない形で支援できるような専門職を地域でどう配置をしていくかということが、これからの課題になってくるだろうと思っています。それに引き続いて、更には権限が移譲されないといけないのではないかということも思っています。この辺りを実践の制度化にどう落とし込むのかということがこれからの課題だろうと思います。
 ジェネラル・ソーシャルワーカーということは、そもそも何なのかというところですけれども、実はもう私たちの地域には既にいろいろな社会資源がたくさんちりばめられているんですね。これは厚生労働省さんがずっと基盤整備という形で、戦後やられてきたところだと思います。その地域にはもうたくさん資源がありますので、要はその資源にアクセスできない人たちがいらっしゃる。そこにアクセスすることを援助するということでも十分ではないかと思いますし、あとはそういった資源をコーディネートするということを今後やっていく必要があるのではないかと思います。
 私は社会福祉士という社会福祉の専門家と言われる職種でやっていますけれども、既に私でも難しい、これだと厳しいというような複雑な社会福祉制度になっています。この人にはどの制度があればいいのか、どう活用すればいいのかということは、私たち専門家ですらもわからないほど制度が高度化してしまっていますので、それが御本人にとって、どう選んでいけるのかということは、御本人一人にとっては難しいと思うんです。そこに一緒にアドバイスをする方とか、一緒に支えていく方が必要なのではないかということを思っています。
 1人の当事者、例えば事例1とか事例2の方には、どういう資源があれば、関わっていったのだろうか。よくなっていったのだろうかということを見た際に、いろいろな関係機関を私たちはコーディネートして、つないでいくんですね。当事者の方たちは孤立している状態で、いろいろな資源が本当は使えたのだけれども、それがさまざまな理由で使えていないという状態にあるだけなのではないかということを感じています。いろいろな機関とネットワークということで先ほどから言われていますけれども、それは不可欠なのではないかということを思っています。
 2つ目としては、多様な自立の形を認めてもらいたいということを思っています。一番下に書いていますけれども、承認される場がまず必要だと思っています。これは多くの方が自尊感情を傷つけられています。私たちの対象とする方は、成功体験をこれまで積み重ねてきたことも非常に多くないんです。もう一度、同じようにハローワークに行ってもだめではないか。自分が認められるような場所はないのではないか。そもそもあきらめという方も多くいらっしゃるんです。
そこにだめではないかと言って、励ますとか叱咤激励をするということも大事な方もいらっしゃるのですが、まずはその方がありのまま、今後はどうしていきたいのかを一緒に考えることが必要ではないかということを思っています。
 そのためには少し時間がかかってもしようがないのではないかということを私たちは思っていまして、就労自立をイコール自立として見てしまうと、やはり問題があるのではないかということは、これまでの議論と全く同意をするところであります。
 これから議論しようとしていることは3番目だと思いますが、社会福祉の対象をどうするのかということを議論していくのだろうと思います。私たちの支援は対象を選別していませんので、対象をどう選別して制度化していくのかが今後の課題になってくると思いますけれども、制度として置き換える以上は、ある程度その支援から漏れてきてしまう人が必ずいるだろうと思います。いるときに今の現状として支援が必要な人が支援から漏れているのですが、そのときに制度のセーフティネットを張り直すといいますか、そこに関われる人を地域にどう配置するのかという課題がようやく出てきているのではないかと思っています。
 いろいろな制度があって、そこから漏れてしまう人が必ず出るのだということは当たり前なので、出たときにその人にだれが関わるのかということを今後も集中して議論をしていっていただけたら、ありがたいと思います。
 4番目に、既存の社会福祉。これはこれまで厚労省さんが築き上げてきたことだろうし、皆さんと一緒につくり上げてきた社会福祉はまず存続することが大事だということを思っています。よく生活保護制度の見直しということになると、引下げの議論が必ずなされますけれども、現状ですらも生活保護の利用者の方は十分な生活が営めているとは、私たちは現場でずっとやっていますけれども、そうは思えないです。最低限の生活しか保障されていませんので、まずはこの最低生活を維持することが必要だろうと思いますし、あとは単純な就労支援という形での生活支援にならないようにということを思っています。
 そのために一番大事なのは、ケースワーカーさんに過重な負担が求められているということがあるかと思います。どれだけいい議論をここでなされても、どれだけ厚生労働省さんの方でいろいろな重要な通知を出したとしても、現場のケースワーカーさんが非常に負担が重ければ、それを守ることとか、それを推進していくことはできませんので、今後ケースワーカーさん、福祉事務所の負担をどうして軽減していくことができるだろうかが大事かと思います。ここでも議論ができたらと思います。
 私は提案として3点出していますけれども、専門職の採用を少し促進してみてはどうなのかということはずっと出しています。社会福祉士とか精神保健福祉士というようなソーシャルワーク、人と環境にアクセスできる専門職というものが福祉事務所にほとんど配置されていないのが現状だろうと思います。
 2つ目に、成年後見制度を社会福祉、特に生活困窮状態にある方の支援、生活保護受給世帯の支援に導入できないかということを思っています。成年後見制度は資産がある方たちへの財産管理という意味合いで導入されたことが強いと思いますが、権利擁護を進める上では、成年後見制度の特に身上監護と言われているような、その人の身辺的な支援をしていくような生活支援をしていく人たちが必要だろうということを思っています。
 最後にNPOは民間団体との部分共同、これは今後も推進していくことが必要だろうと思っています。私たちも谷口さん同様、いろいろな経験を蓄積してきていますので、この経験を主要な社会福祉の団体なり、福祉事務所でも導入できるのではないかということを思っています。
 最終的に今、生活困窮状態にある方たちの支援を、私たちは生活アセスメント、何がその人の生活課題なのだろうかということを見出すためのアセスメントをしていこうということをやっていますけれども、生活アセスメントと生活支援プラン、御本人一人ひとりのプランを導入していくことが必要ではないかということを持っています。これは御本人から出された要求ではなくて、客観的、専門的な視点で見た形で支援をしてくいという方向性が必要なのではないかと思っています。
 これは残念ながら、福祉事務所の現場では生活アセスメントと生活支援プランを丁寧に立てられる人が多くないのではないかということが私の認識です。これはケアプランでもそうですし、障害者の自立支援でもそうですが、エビデンス、根拠に基づく支援がなされているんです。ケースワーカーさんの価値観とか思いも非常に大事ですけれども、価値観とか思いだけではなくて、御本人の要望と社会の状況を照らし合わせて、それを根拠を持って支援していく体制をどう取るのかということが今後考えていく必要があるのではないかと思っています。
 私たちはこういう幾つかの提案をさせていただいていますが、最後に厚生労働省さんと日本総研さんと一緒に、社会的困窮者の効果的な自立支援の在り方と専門職の役割に関する調査研究ということで去年からずっと研究をしてきました。そちらの報告書も参照していただいて、今後どうしていったら支援がなされるのかを一緒に検討いただけたら、ありがたいなと思っています。
 私たちはジェネラル・ソーシャルワーク、特にソーシャルワークというような専門職を地域にちゃんと配置していくことが必要だろうということを思っています。今後も私たちの中でいろいろと議論をしていく中で、制度化の道ができればありがたいと思っています。
 ありがとうございました。

○宮本部会長
 藤田委員、ありがとうございました。
 谷口委員の話と対象こそ異なれ、いろいろな点で重なる、これまた大変豊富な支援経験のお話でございました。更にそれをジェネラル・ソーシャルワーク等、具体的な制度改革の御提案としてまとめていただいたところも特徴的であったかと思います。
 同じように、今の藤田委員のお話の確認に関わる御質問等がもしございましたら、まずお受けしたいと思います。
 勝部委員、どうぞ。

○勝部委員
 これも先ほどの岩田委員のお話に似てくるのですが、相談に来る人がまず書いてありますが、社会的孤立でありますとか、御自身がどこに相談に行っていいかがわからないという人たちをどんなふうにアプローチして、こういう発見をしていくのかというところ。これは先ほどのお話とも重なるところだと思いますけれども、要は社会的孤立の問題をしていく場合に、援助をしていく内容のこともさることながら、そこまでつながってくれば、援助していくことは専門職として、ある程度やっていける話ではあると思いますが、どうやってそこを発見していくかという問題について、どんな対応をされているのかを教えていただきたいと思います。

○宮本部会長
 藤田委員、お願いできますか。後で谷口委員からも一言お願いします。

○藤田委員
 私からはアウトリーチという形で先ほどから出ているのですが、そのアウトリーチの機能を私たちは主に外部の専門機関に置いているかなと思います。例えば福祉事務所から相談が出されるケースとか、社会福祉協議会さんからあったり、あとは児童相談所からも相談があるんです。刑務所からもあります。その問題を発見する機関が外にあって、一緒に対応しましょうということで対応していることがほとんどかなと思っています。
 あとは訪問紹介があれば、私たちの方からアクセスしていく、あとは孤立している高齢者の方で民生委員さんから連絡が入っていれば、その高齢者の方にお宅に訪問してみたり、団地に行ったりということも機能としては持っているかと思います。その2点です。

○宮本部会長
 谷口委員、いかがでしょうか。

○谷口委員
 実は厚生労働省さんが進められているネットワークがすごく重要な観点だと思います。それこそ一つの分野だけでなく、その複数分野にまずネットワークを広げる。関係機関とあらかじめしっかりと協定を結んだ上で、そこで声をキャッチしていくということが第1点目として重要なのだろうと思います。
 しかしながら、公的支援機関だけのネットワークでも薄いということで、我々は実は700団体以上の情報の一元化。いろいろな考え方を持った団体があるのですが、その手法、主義、主張にとらわれず、まず子ども、若者に関連して活動をしている団体に御協力をいただいて、子育てサークルも含んでいますが、700団体以上の情報を掲載したガイドブックをつくって、そういった関係団体からの相談も受けるようにしたというところが一つあります。
 そのネットワークを機能する上で一番重要だったのが、このアウトリーチです。特に訪問支援の家庭訪問の手法ということですね。いわゆる孤立をしている、外部との接触を断っている、多重に困難を抱えている、そういう人たちにしっかりと寄り添える。そういった支援手法を我々が持っていたからこそ、関係機関の人から、あるいは当事者の方々から支持をされて、あれだけの相談件数が寄せられるようになってきたということであります。

○宮本部会長
 ありがとうございました。勝部委員、よろしいですか。
 では、小杉委員。

○小杉委員
 藤田さんに、NPO法人ほっとプラスの持続可能性はどんなものでしょうか。

○藤田委員
 持続可能性は厳しいかなというのが正直なところでして、5年後、10年後、今のNPOがどれだけ残っているのかということが今後の課題かなという部分もあると思いますが、私たちの団体は寄附とか会費で主に運営していますし、あとは生活保護の中で一部払える方とか年金が払える方の中では、シェアハウスとか入居費用として一部負担してもらうこともありますが、残念ながら職員の給与も対価として十分支払える状態ではありませんので、ボランティアに委ねられてしまうところが非常に大きいかと思います。
 専門性を持って支援をしたいという社会福祉の学生さんなり、研修に来られている大学院生の方もたくさんいらっしゃるので、ここにちゃんと人的な支援にお金が付くような制度なり仕組みができないと、私たちの後輩といった方たちも育っていかないのではないかということを思っています。私と後輩の生活を支えていただけるような制度化のめどを立てていただけるとありがたいなと思っています。

○宮本部会長
 ありがとうございました。是非御検討を期待したいと思います。複数の補助金を束ねて何とかという話は、先ほど谷口委員からもございました。
 ほかに藤田委員に対する事実関係の御質問はよろしいでしょうか。
 それでは、今、お三方からお話がございまして、これはそれぞれ大変豊かに共鳴し合っているようなところがあると思います。全体を通して、事実関係を超えて御意見がございましたら、更に御質問を重ねても構いませんし、是非お願いをしたいと思います。
 駒村委員、どうぞ。

○駒村委員
 これは意見あるいはお三方に対する質問も含めているわけですけれども、櫛部さんのところは以前、勉強させていただいておりましたので、今日は質問をさせていただくところはないのですが、むしろ谷口さんと藤田さんのところで共通する部分で2つあります。
 1つは今の社会的企業やNPOの持続可能性に関わる問題。あるいは先ほど石さんからお話があった、うちの地域にはそういう資源がないんだよと。今回の戦略の中でも重要なのが、かなりの部分が民間の非営利の部分に期待をしている部分があるわけですので、今までどおりのような藤田さんがさっきおっしゃったような、もう本当にぎりぎりでやっているような話ではいけないと思うんですね。ある種、継続性と専門性のあるスタッフを確保しなければいけないと思います。
 谷口さんの資料の22ページのところで、業務契約委託に関するリクエストが出ているわけですけれども、端的にお聞きしますと、私も経済学なので、どういう業務契約なりが必要なのかなと。社会的企業も企業でありますので、経営資源を確保しなければいけないと思います。ここに書いてあるのは貢献度に応じて予算や財源が配分されると。
 ただ、これを見ていると、これは貢献と言っても投入量なのか、どうなのかというふうにもここに出ている絵は見えますね。考え方としては幾つかのやり方があると思いますけれども、例えばやった量、やった回数に応じて完全に業務報酬が発生するとか、あるいは地域包括的な形で、包括的にこのエリアは受託させてもらうと。このエリアに対して業務契約をして報酬を受け取る。あるいはこれは難しいと思います。これは次の質問にも関わると思いますけれども、何かアウトカムを指標にしたペイ・フォー・パフォーマンスみたいな考え方があるのかどうか。この辺は経営されていて、お二人にもしあれば、どういうアイデアがあるのか。これが1つ目です。
 2つ目ですけれども、谷口さんのお話にも藤田さんのお話にもエビデンスのお話があったのですが、ここも大変興味深くて、藤田さんの方にはニーズの見える化というところで、今までのお二人のお話を総合しますと、櫛部さんのように長いことやっていたキャリアのある人ではない、非常に経験も資格もかなり危ない方がある種、勘と度胸でやっていた部分があるケースワーカーの生活保護の場面があるのではないかと思いますが、このエビデンスできちんとしたニーズの見える化でやっている内容。思いではなくて、きちんと見えるような形で根拠に基づいてやると。そのために藤田さんが考えられている、こういうエビデンスをつくるためには、どういうデータなり情報が必要で、それは可能なのかどうなのか。
 谷口さんの方では、既に支援のマッチングや困難度の測定に使われているような表現ぶりだったのですが、これは実際にどういうエビデンスをつくられているのか。これを教えてもらいたいなと思います。
 1つは、きちんとした介入をするためのエビデンスづくりはどういうことができるのか。2つ目は、社会的企業をきちんと経営、継続的に専門性のある方を雇っていただくためには、どういう経済的な報酬が設定されればいいのか。この2点を教えてもらいたいなと思いました。

○宮本部会長
 2点ともお二人に対してということでよろしいですね。
 それでは、谷口委員の方からお願いします。

○谷口委員
 まず第1点目についてです。我々の分野の中では批判を浴びることが多いのですが、結果を見ていくしかないのだろうなと思っているところです。なぜかと申しますと、我々の地域だけではなくてもそうですが、古くからやっている社会福祉系のところが全体を牛耳ってしまって、実際には新しい芽を削いでいるところもあります。いわゆる既得権益ということになるかと思いますが、実はそういったところに大分苦しめられたところが設立当初はありました。結果が残っていないのに、なぜかその地域を全部コントロールされているところがあったりした。
 そういったところの経験から踏まえると、新しい芽、新しい解決策を持ったところをしっかり見ていくところも含めて、我々はスタッフに常に日ごろ、数字を大事にしろと言うんです。結果として行政に伝えていく。それこそ説明責任を果たすためにいろいろな税金を払っている方々に認めてもらう。そのためには数字が必要だと。ただし、私たちが求める数字というのは、一人ひとりの人生なんだと。こういうふうに言っています。無機質なものではなく、しっかりとその人の困難を解決したと。こういったところの数字を大事にしようという形で運営をしてきました。
 そういったところで、今後は報酬とか配分をするときには、そういった数字を大事にしていった方がいいのだろうというところでありますが、1つ付け加えさせていただきたいのは、やはり結果の取り方が重要だろうと思います。今は結果イコール、例えばサポートステーションだったら就労であるとか、そういったところに世間的には目が行ってしまいがちなのですが、そうではなく各段階においてどうなったのか。
 私が推奨しているのはファイブディファレントポジションといいまして、対人関係であるとか思考、メンタル、あるいは環境の変化。こういったものを多角的にとらえて、実際にどれだけ自立の状態まで近づいたのか。これは実際に厚労省さんの高校中退者等アウトリーチワーキンググループの報告書にも掲載いただいておりますけれども、そういった形できっちりと周りに理解していただけるように、更にはその成果が分かり易い、そういったものを新たにつくっていく必要があるのだろうと思うところであります。
 それとエビデンスはまさに共通しているところだと思います。なぜ私たちがあらかじめ組織に複数の支援分野の専門職を組み込んでいったかというのは、新しいものをつくるときに、最初は試行錯誤しかないからと思います。
アウトリーチという現場、これは実はいろいろな支援機関の失敗の積み重ねがそこにあったりします。いろいろな機関を回って回って、だめでだめで、いよいよ孤立して家庭訪問をしてくれというケースが多いわけですから、それを解決するためには、そういった複数分野の知見をまずは結集をして、その中から発展的に集約をして新しい支援手法として構築していく必要がある。という観点で出てきたのが、現在実践している支援手法。それをどうやって評価していくのか。どうやって改めて発展させていくのか。こういった視点を持って、エビデンスを追求していっているところであります。

○宮本部会長
 1つだけ確認ですけれども、数字を大切にする、一人ひとりの人生を表す数字というのは、具体的にはどういう数字ですか。

○谷口委員
 難しいのですが、我々の改善率も実は最初の状態と彼らが欲している次のステージに進みたい状態、ここをまず一つの目標にするということです。例えば、まずは外に出れるようになりたいということであれば、まずはそこに行こうということになりますし、次の段階は就職ということになれば、そちらの段階ということになりますし、困難と思いというところを着眼して、まずはその状態変化を見ていくということと、行政向けに関してはどうしても厳しい方の結果というところですから、サポートステーションの場合には、進路決定者ということになります。そういった点で内部的なものと外向けと使い分けて今、扱っているところです。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 では、藤田委員、お願いできますか。

○藤田委員
 1つ目に、私も社会福祉の分野からこの視点を見ていますので、業務形態については、現状は社会福祉の制度を見ていく中で、なぜこの方たちに支援が及んでいないのかを見ないといけないのかなと思っていますので、業務形態として、例えば地域包括支援センターがあったり、あとは社会福祉協議会さんがあったり、福祉事務所があったり、社会福祉法人がこの部分の社会福祉を担ってきたと思いますが、補助金で主に運営されているということとか、行政の方の大きな方針として、ここに重点的にお金を出そうということに決まれば動いていのでしょうけれども、残念ながら特にこの分野だと対象がだれなのかが決められない、定かでないという状況にありますので、対象があるのかないのかがわからないという状況です。
 ここに適用する業務形態が今後どういう形があればいいのか、私の中でもまとまっていないところですけれども、柔軟にどうNPOが動いていけるのか。その柔軟性を担保しながら、そこの対象者に関わっていくというような非常に難しい制度化ということが今後考えられていかないといけないのではないかと思っています。
 要は補助金が受けられたり、行政からの大きなお金を受けると動きにくくなる。これは柔軟性を失うことになりますので、NPOがこれだけ活発にやっている理由は、要はお金に縛られないということだと思います。縛られ過ぎないと生活に困窮することになってしまいますが、バランスよくそれを支えていくのかということが今後大事かなと思っています。
 2つ目にニーズの見える化。データとか根拠に基づく支援ということですけれども、これはあまり有名ではないですけれども、社会福祉の現場ではソーシャルワーク実践という形で、ソーシャルワークという形である種社会福祉が体系化されているんです。これはこれまでホームレス状態にある方の支援であるとか、あとは生活保護受給をされている方の支援。特に生活保護受給者の方であれば、福祉事務所の方の支援ですけれども、そういった方たちの支援を見させていただいて一番感じていることが、御本人のニーズと支援をしたい人の支援する目標、プランのミスマッチが非常に起こっているのではないかと思っています。
 これは例えばわかりやすい例だと、ケースワーカーさんが根拠なく、頑張りなさいという言葉をよく口にされるんです。これは象徴的な発言かと思いますが、なぜ頑張れないのかというような問題を少し丁寧に見ていくと、私たちのNPOで見ていけば、例えばその方に知的障害があって何度も失敗を繰り返しているんだけれども、更に頑張りなさい、頑張りなさいと言われて、もう嫌なんだと思っている。あるいはその人がそもそも頑張れるような学歴を得られるような環境になかったのではないかということとか、あとは精神疾患があって、そもそも頑張りなさい、働きなさいという手前でちゃんと治療をしないと、そもそも働けないよということがわかってくるということとか、これまでの支援はややもすると、根拠がない支援になりがちだったのではないかということを思っています。
 これは少し厳しい言い方になってしまうと思いますが、私たちは特に谷口さんもそうかもしれないですけれども、客観的に今の社会福祉の現場の課題を見ていかないといけないのではないかということを思っています。ある種データとか情報とか、そういった根拠に基づく支援はソーシャルワークの実践の中で、ある種応用ができるというところもたくさんありますので、それも可能ではないかということは感じています。

○宮本部会長
 藤田委員、恐らく第1の質問で駒村委員の伺いたかったことは、縛られずにかつ効率的な補助金の在り方は考えられないだろうかと。そこはいかがでしょうか。

○藤田委員
 まさにおっしゃるとおりで、そういう補助金の考え方があり得ると思うんです。これもどうなのかはわからないですけれども、ようやくワンストップのサービスとか、あとはパーソナルサポートのサービスとか、今、全国でやっている寄り添いホットラインというサービスでもそうですけれども、そういったところでは少しモデル的に、行政の方から発言はあるけれども、少し弱めるというか、柔軟性を削がないようにという工夫がなされ始めてきていますので、難しいですけれども、工夫次第で何とかやってもらえないかと。どうにかして制度化してもらえないかということを思っています。

○宮本部会長
 谷口委員、何か補足はございますか。

○谷口委員
 先ほどのものに関して一つ補足ですが、実は地域若者サポートステーション事業。これは非常にある意味、使い勝手のいい事業だと思っています。なぜかと申しますと、企画競争で選ばれるわけで、実はかなり自由度が高いのだろうと。今までの委託事業の中でもそういうふうに考えているところです。
 もう一つの方向性として見えてきているのが、いわゆる傾斜配分というものもインセンティブというものも、実は乗せられているんです。高校中退者等アウトリーチ事業は、これは全部に広げた方がいいと思いますが、今のところ全部のサポステがやっているわけではありませんし、実際に実績に応じて、本体事業の予算も若干差が付けられているというところがあります。
 更にもう一つ上の段階に行くと、生活支援等継続支援事業が上に乗っかってくるということで、人員体制で行くと3名ないし4名が拡充できるという形で、実はかなりカスタマイズできるような形になってきているんです。そういった形で現行の中でもかなり工夫がこらされているところでありますから、そういう意味で共通の目標、やはり進路決定者数であるとか、来所者数、相談数、これは求められてしかるべきだと思いますけれども、それを実現するための手段としてはかなり自由度が高められつつあると考えているところです。

○宮本部会長
 ありがとうございました。駒村委員、よろしいですか。
 石委員、どうぞ。

○石委員
 行政側はなかなか対応ができないということを言われておりますけれども、先ほど藤田さんの発表で、私は本当にいい発表だったなと思っておりますし、ジェネラル・ソーシャルワーカーのケアは本当に大事なことかなと思っています。ケースワーカーが一人でできるというのは限界がありますし、能力を高めるというのも質を高めるというのも限界がありますので、社会資源という言い方でしたでしょうか、社会資本という言い方だったでしょうか、それの力を借りてトータルでカバーしていくというのは、いい提案だったなと思っておるところであります。
 その対象者を選別してしまっているということがありましたが、それは役人としては当然それをやるでしょう。責任逃れといいますか、自分の責任の範疇から出ないということをやると思いますけれども、それをカバーするのがジェネラル・ソーシャルワーカーかなと思っていますので、総合的なコーディネートができる組織の提案。いわゆるそういう人なり、役割の提案はすばらしいことであったかと思っています。
 私どものところは自治体が小さいですので、先ほどありました制度から漏れた部分というのは、やはり職員が一生懸命になってやっていますので、そういうことを申し添えたいと思います。例えば要保護児童対策協議会ということでやっていますけれども、児童虐待の関係ですが、これはそれぞれの現場で絶対に関わるのではないということを言っています。私が責任を持つので、学校現場や保育現場が記者会見に出るようなことは絶対にするのではないぞと。とにかく持ってこいということを言っていますので、そういうことが私どものところはできておるのかなということを申し上げ、この提案は非常にいいなと思っています。これはあまり金がかからないと思っていますけれども、いかがでございましょうか。

○宮本部会長
 石委員、何かお二人に対する御質問ということではないですね。
 では、堀田委員、お願いします。

○堀田委員
 2点、1つは理念的なこと。もう一つは実践的なことです。御発表はいずれもしっかり自立という本質を踏まえた上での具体論で、感銘を受けました。すばらしい実践だと思います。一番基本としては、やはり自尊感情が必要であり、居場所が必要である。それによって意欲を生み出し、生きる場所をつくっていく。そういう発展の仕方ぶり、本当にそのとおりだと思います。
 ただ、なかなか本人中心、本人の尊厳を実践するというふうに変えていくのが難しいのでありますけれども、この点について一つ、報告書を紹介させてほしいと思います。厚生労働省の報告書で、厚生労働省の参事官室で懇談会をされてまとめられた「転換期の社会と働く者の生活」というのが題でありまして、副題に「『人間開花社会』の実現に向けて」という報告であります。平成16年6月、厚生労働省のホームページで引ける報告書であります。
 この中で働き方の柔軟化、ペイドワーク、アンペイドワークだけでなく、そのほかのいろいろな例えばスタイペンドを得る働き方、あるいは地域通貨相互報酬といったような働き方。いろいろな人のいろいろな能力をその人中心に考えて、柔軟な対応を生み出していくための方策が考えられております。この報告書は出されて以来、全く読まれなかった。多分書いた人くらいしか読まれず、経営側にも労働側にも全く評価されていない残念な報告書であります。
 これは山崎正和さん、清家篤さん、中村桂子さん、川勝平太さんと相当突っ込んだ議論をいたしまして、今までの働き方を転換しようと、パラダイム転換を図ろうということを提言しております。未熟な段階にとどまっておりますけれども、今日議論の出ましたいろいろな点で参考になることを提言いたしておりますので、これがもう一度生き返るといいなと。それが第1点であります。
 第2点は、NPO等々のいろいろな面での役割が強調されまして、それはそれで本当に先駆的ですばらしい活動を展開しておられますし、従来のやり方とは違う、非常に包括的な縛られない活動を展開しておられます。
 もう一点、実はそういった活動をするもう一つの注目点が、地域社会です。町内会というと封建親父の会長が出てきてよろしくないのですが、新しい形の町内会、自治体あるいは地域協議会、いろいろな言い方でありますが、そういう動きが全国的にかなり出てきております。孤立した方々、あるいは就業しない若者、老夫婦等々についても、ここでしっかりとネットワークで拾い上げ、自尊感情、居場所をつくり出し、能力を引き出していこうという活動が行われるようになっていて、この流れは相当重要ではなかろうか。
 進んだ自治体では、これは名古屋の河村市長が始めて、名古屋ではあまり進んでいないようですが、地域の協議会として何に使ってもいい予算。例えば横手市でありますと年間2,000万とか、相当なお金を使って、これは縛りがない地域の志ある人々が、その地域の問題を解決するために協議して使うというお金の出し方をしております。横浜の方でも地域協議会がお金をもらって動き出している。NPOと併せて地域の力が動き出しておりますので、そちらの注目もいろいろと要るのかなと。これが2点目でございます。

○宮本部会長
 資料の御紹介を含めて、ありがとうございました。
 勝部委員、どうぞ。

○勝部委員
 私たち大阪では、今は制度のはざまでありますとか、ジェネラルなソーシャルワークの話が出ておりましたけれども、平成16年からコミュニティソーシャルワーカーということで、はざまの専門屋さん。いわゆる縦割りのところにお金が付くと、どうしても縛りがかかります。高齢から来れば、高齢にお金が付いていますので、どうしても高齢者中心になりますし、障害者の関係の活動をしているNPOもお金がそこから出ていれば、それをやっていくのが当然役割になりますけれども、はざまを支援するということをメインにした補助金をつくることを地域福祉計画の中で描いております。
 現実に府内で中学校域に1人ずつ、そういうワーカーを配置するということで、藤田さんたちが目指しておられるようなホームレス支援から、DVの問題、不登校の問題であるとか、そういうことが財政的裏づけを持ちながら、引き受けていく主体は私たち社会福祉協議会もやっておりますし、法人がやっているところ、NPOがやっているところ。それは市町村によってどういうところが適切であるかについては、選択ができるという形態で現在行われております。
 多分いろいろものを充実して、縦割りのところでまた付けて、そこを総合化というと、そこにひずみができるということが、この間繰り返されてきているわけですので、今のお話を聞いていますと、はざまをしっかり受け止めるというところの問題と、私たちもそれと関連してパーソナルサポートの仕事も現在行っているわけですけれども、先ほど堀田委員の方からお話がありました、地域コミュニティの中からそういう問題を発見していく力、地域力をどう高めていくかという問題と併せて、地域から一番遠く、地域の中で一番声を潜めている人たちの発見がなかなか一般コミュニティの中では見つけにくい。あるいは見つかりにくく過ごして、潜在化してしまうところでいいますと、そこを専門家でしっかりと酌んでいくような両建てが必要であるとすごく思っています。
 そういう意味では、是非またこのコミュニティのありようの問題と専門的な介入をしていく仕組み。ここが早期発見、孤立の問題のところでは重要になってくると思いますので、是非その辺の議論が今後進められたらと思います。

○宮本部会長
 はざまの補助金の対象というのは、具体的にどういう方々になるのでしょうか。

○勝部委員
 制度のはざまの人が対象です。制度につながっていない人、あるいは多問題の課題を抱えている人、問題を自分で認識できていない人、SOSが出せない人を支援するというのが仕事の中身です。そう考えますと、社会福祉協議会が先ほどいろいろな問題に対して拒否するというか、はっきり言ったらそういう言い方をされたような感じがしていたのですが、それは多分その仕事が貸付の仕事をしていたり、事業に付いた仕事をしている場合は、例えば車いすを貸しますみたいな仕事ですと、だれを対象にと決まっていれば、そういう言い方になるわけで、むしろどこが主体だからだめということではなくて、どういう補助金の付け方になっているか。対象を何に絞っているかということによって、補助の考え方が変わることによって、だれがというよりは、事業としては成り立つのではないかというのが、大阪の経験からはそういうふうに思っています。ですので、うちも何でもやっていますということです。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 特に櫛部委員は、私の理解が正確であれば、もともと専門職として入職されたというふうに、そういう意味ではジェネラル・ソーシャルワーカーの走りだったと思いますので、その辺りに対するコメントも含めて、お話をいただければと思います。

○櫛部委員
 やはりNPOの経営は非常に厳しくて、今お話がありましたが、社協が古い公共から新しい公共は議論のあるところだと思いますけれども、少なくともNPOの職員は非常に厳しい状況に釧路でも置かれています。
 私たちは生活保護受給者の自立支援の委託をするときに、人件費補助にするか、事業補助にするかをすごく悩んだんです。なぜならば、この先行きがわからなかったからです。セーフティネット補助金の先行きがわからなかった。つまり人件費としたら、当然人を雇うだろうというときに、来年から2分の1で、うちも役所で金を出せないから止めましたとなったらどうなるんだろうと思って人件費の積算が中身なんですけれども、事業という形でしてきたんです。最近このセーフティネットが、平成20年から子ども支援も含めて10分の10という形になって、ほかのところがずっと広がって、北海道の段階では人件費補助という形でやっているわけです。
 私たちはそこの転換が若干図れなくて、人件費補助もしなければいけないとは考えているのです。釧路のNPOで事業系の障害者の自立支援法をベースにした経営をしながら、あとは制度外のものをやっているんですが、それは国の補助金などをずっと使いながらやっていますが、それは時限ですから切れてしまったときに職員が浮くんです。そこをどこでやるのかということを今年は相当悩んで、せっかくいいことをやっているんだけれども、それで苦境に立たされるという状態が現実にあるわけです。そんなのでいいのかということが一つ。
 丸がかえでNPOですと言っているところもあります。それでいいのかと。自主性はある程度、その3分の1がいいかどうかはわかりませんが、自主財源、国のお金、あるいは地域のファンドを含めて、そういう組み合わせで考えていかないといけないだろうと。ただ、もし人件費補助という点に限って言うと、直接その分をずっと続けていくというのが国としてあってもいいかと。ただ、事業とか自主性がNPOには必要ですので、そこは分けていかないと、丸々もらってNPOですと言うのも変だなという気もしますし、そこはあるかなと思います。
 専門性ということですが、私たちの事務所はついに社会福祉主事の資格の3科目主事を入れても3割を切ってしまいました。郡部だったらかなりそういうところが多いわけで、絵に描いた餅と。大学の福祉教育の先生に言わせると、大学の教育は資格取得に走ったためにだめになったとおっしゃる方もいるので、私は社会福祉士がそれだけでいいとか悪いとかはなかなか言えるものではないと思っております。
 釧路のワーキング部会で議論になったのは、先ほどのニーズをつかむという話と関係があるのですが、当事者性と翻訳力が専門性だという話になって、いろいろな部署をわたってきて、清掃、いろいろなものを回ってきて、福祉事務所に来ても、その経験はきっと生きるはずだという議論になったんです。全員が大学を出て何とか資格を取ってということだけで専門性とは考えていない。
 福祉事務所はキャパが大きいので、役場の現業部門がなくなって民間化すると、浮いた人間をどこで吸収するかとなると、それは九州でもそうですけれども、福祉現場で吸収することが多い。役場にある5人職場のところでだれかが心の病になったときに、一人がアウトになるとやっていけないので、キャパのある福祉事務所に異動して来るわけです。そういう状態の中で何とかその部分も抱えなくてはならない、大卒の人も含めて、専門性のつくられ方を資格があるから、ないからとなってしまうと、職場の中で分かれていっていくと思います。ニーズについですが企画の人とも話しているのですが、NPOから挙がってくるニーズは、我々が一生懸命、夜中に企画を立てて、さあ市民はどうですかと言ったときには反応がなくて、NPOから挙がってくるニーズの方が割と精度が高いというお話もあるくらいで、企画の職員が午前1時、2時までやってつくっているのは何だったんだろうなということも言っているくらいなので、それは確かにあると思います。
 ニーズという言葉もいろいろな議論があって、本当に何がニーズなのかはわかりにくいものではあります。寄り添いホットラインの電話を受けたりすると、幾ら支援とかで例えば法テラスが付いても、御本人の不全感といいますか、そこはそれだけで解消できるほど簡単ではないんだなということをすごく感じておりまして、パーソナルサポーターなり、もっと当事者の側の方にいかないと、制度も生きないという状態にあるのではないかと・。 特に適応障害の方のお話を聞いていると、本当にもやもやしていて、それがうまく伝わらないとおっしゃっている。制度の側にいるとそれはこうですね、ああですねと支援として流していくのですが、そこに生じている不全感は解消されないのだと思っております。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 先ほど石委員の方からあった、今日はNPO、社会的企業の御活躍が伝えられているわけですけれども、それはある程度、規模の多い都市での話であって、うちの周りにはそんなものはないぞというお話もございました。お三方のどなたでもいいのですが、そういうコメントに対して、何かお話があれば。
 谷口委員、どうぞ。

○谷口委員
 私も年間に全国50か所くらい講演とかで行かせていただいたときに、必ず地域の団体との交流を持つようにしているんですが、実際に先ほど御指摘をいただいたような、そういったNPOが全くないというところもありますが、なかったらもうつくるしかないということだと思います。そういった意味で行くと、行政の役割は非常に大きくて、行政の方々がそういった団体を育てる意識を持って、ある程度、人材育成から団体形成の音頭を取ってもらうというということで、実際に実現できたところもあります。
 九州の方でも私が関わって、それこそ行政の方々と一緒になって、いわゆるボランティアベースで頑張っている若手を一つの団体としてまとめて、それで法人化をして、それが実際に子ども・若者育成支援推進法に基づくセンターを受託したという流れがあったりします。つまりはそういった仕掛けも重要になってくるのかなと思うところです。
 もう一つだけ言わせていただくと、全国にはいい取組み、先進的なものがあるのですが、それがなぜ仕組みとして動かないのかということになると、その仕組みをそのまま地域に持ってきたとしても、まさに今、問題として挙げられた人材の問題が必ず出てくるわけです。
そういった点で一つ解決の糸口として考えているのが、社会問題の解決の過程で人材を育成する戦略的人材育成という事業を平成15年からやっているのですが、今日の発表資料の13ページを開いていただくと、下の方に書いております。実際に我々のところはボランティアの力もすごく強いです。子どもたちにとってみれば、先生方の御指摘がありましたように、単に専門性があればいいのかというと、そうではないんです。お兄さん、お姉さん的にアプローチをしてもらった方が効果が出るというケースもあります。
 それはあくまでもしっかりと見極めた上で派遣をするということになりますが、実は大学の先生方と協力をして、そこで専門資格を学んでいる学生たちに呼びかけていただいて、ボランティアとして派遣をしていくというところです。その中で実は人材育成をやっている。それが10ページになりますが、選抜研修制度というのをやっています。ここでは実際に我々専門スタッフによる選抜だけではなくて、当事者による選抜もやっています。実際にある程度立ち直りかけた子、あるいは問題を抱えた子。その子たちに実際に入ってもらって、その支援者が果たしてそこで関係性をきちんとつくれるのかどうか。そこを見極めた上で、選抜をして派遣をしている。だからこその結果というところもあります。
 実際にこの分野をうまく使えば、文科省さんもいらっしゃっていますので一つ言わせていただきたいのが、いわゆる教員免許を取得しようとしている若者はかなり多いですね。そういった学生たちに、不登校、引きこもりを含め、困難を抱えた子どもたちの自立支援の実践を積んでいただく。その実地訓練をした上で、その経験が教員免許の取得に生かされていく。そういった流れをつくっていただくと、そこにはお金をかけずに、人の流れが実際には生まれてくるわけです。
 そういった意味も込めて、地域にないのであれば、協力してくれる大学を捕まえて、そういった思いを持った学生、若手から新たな団体づくりを行うこともありなのではないかと考えています。

○宮本部会長
 藤田委員、どうぞ。

○藤田委員
 もうほとんど言われてしまったのでいいかなと思うのですが、地域に実はスーパーマンはたくさんいらっしゃるんです。この人にしかできないという方たちが結構いて、NPOもその一つだと思いますが、その人がいるから支援がうまく回っていくといいますか。これまではそういった人たちは、あの人はすごいねというだけの評価だったと思うのですが、そうではなくて一歩進んだ形で、その人がいなくてもできるような仕組みづくりにしていかなければいけないのではないかと思っています。私にしかできない、この人は私にしか支援ができないとか、この部分だと私にしか担えないというところでなくて、少し精度が落ちたりとか、いろいろな問題点はあるにしても、人材育成はある種このNPOの分野でもしていかないといけないのではないかとは思います。
 あとは谷口さんと同じように、なければつくらざるを得ない。それは人もそうですし、資源もそうですし、ニーズから始まるといいますか、地域でよくよく見ていただければ、その人が一人でいて、生活に困っている状況があれば、恐らくその周辺には同じような生活課題を抱えている方がいらっしゃると思うんです。いずれはそのニーズに向き合うとしたら、それは社会資源をつくるなり、創造するなりして対応せざるを得ないのではないかと思っています。それをだれがやるのか、その地域でどういった人たちがいるのかということを丁寧に見ていくことが今後必要になってくるのではないかと思います。
 そのためには勝部さんがおっしゃった地域福祉計画とか行政計画といったことの中に人も含めて、その地域のことをどう見ていくのかというような、これまではどうしても機関とか資源というと建物とかお金とかに目が行きがちだったかもしれないですが、どういった人が地域にいるのかという、人にスポットライトを当てながら、支援する人といったものに注目していただけたらありがたいなと思っています。

○宮本部会長
 ありがとうございました。恐らくそこで堀田委員のおっしゃった地域社会の発信につながってくるのだと思います。
 石委員、どうぞ。

○石委員
 なければつくらなければならないということで、ありがとうございました。今、3年目に入っていますので、そういう取組みをしていきたいと思いますけれども、私の行政の中での地域住民の評価は、村長に頼んでも何もしてくれない。自分たちでしなければ何もしてくれないという評価であります。それは小さな組織で行政がやれることは限界があるということですので、自分たちのことは自分たちが考えながら、自分たちがやってほしいということを提案して、耐えて、耐えて、耐えて、ここまで来まして、多少その雰囲気が出てきましたので、首長に頼っても何もしてくれないので、自分たちの地域のことは自分たちで考えようという取組みが平成16年に提案してからですので、大分定着してきました。
 ただ、いわゆる特別な資格をお持ちの方というのはなかなか少ないですので、地域の中心になられる人等はできてきますと、学校の話もありましたけれども、人が代わってしまうと、ぽしゃってしまうこともありましたが、それを持続可能なものにしようということでありますので、このたびの課題もそういうことで地域を支えるシステムは、それはやはりコミュニティをベースにしながらつくっていきたいと考えておりますので、そのことを申し添えさせていただきます。ありがとうございました。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 私はまた議論に聞き入ってしまって、時間管理を忘れがちで、かなり時間は進行してございます。
 高杉委員、どうぞ。

○高杉委員
 今日はいろいろと地域での若者、あるいは生活保護者をどう見るか。新しい取組みを知りまして、私は日本医師会ですけれども、これは尊敬いたします。ただ、どうやっていくかということで、さっき堀田先生のお話で、地域は変わりつつある。新しい日本あるいは町ができている。これは高齢者の認知症がいっぱい増えてきている。これを放っておくわけにはいけない。地域づくりで町が変わってきております。これは変えなければいけないし、この中にこの人たちも組み込んで、要するに行政悪い縦割りの癖をなくして、いろいろな情報が入ってくると思います。
 これは福祉事務所の仕事だけではない。NPOの法人の人たちには頑張ってもらっているけれども、ちょっと手助けがあれば、もっと頑張れる。その輪を広げていくとか、いろいろな取組みがあるんですけれども、それを是非とも縦割りではなくて、横割りの政策の中で、これは生活困窮者だけではない、認知症のまちづくりは絶対に始まっていますから、ぼけ老人がどこを歩いているかわからないというのは困る。この中に若者たちをどうやって組み込んでいくかということも考えるべきだろうと思いました。

○宮本部会長
 ありがとうございました。
 もう一つ、埼玉の経験について、山村委員代理の方からお話があると承っておりますので、よろしくお願いします。

○山村委員(青木代理)
 日本社会福祉会の山村会長の代理で出ています、埼玉県社会福祉会の青木でございます。
 私どものところは埼玉県から受託している事業が幾つかありまして、その一つが自立支援専門員の事業、住宅ソーシャルワーカーの事業、ホームレス支援の事業等です。それらの受託は主に社会福祉士である会員を採用して、その事業に関わる人件費でございます。
 その中の特に22年度から受託しております住宅ソーシャルワーカー事業ですが、これは無料低額宿泊所から普通のアパートに移るような支援、あるいは具体的に住まいがないということで福祉事務所の方に尋ねた場合に、福祉事務所からの依頼でその方をシェルターに預かり、そこから普通の住宅を探していくとか、あるいは病院からの退院。高額家賃の方のアパート探し。そういった住宅に関わる支援を行うものです。これはさいたま市を除く全部の福祉事務所と関わりを持ちながら、支援を行っております。
 現在、常勤換算で35名の支援員を採用して、それに当たっておりますが、私どもが一番気を付けているのは、住宅を探すことだけではなくて、その後その人たちが地域でどうやって生活ができるか。その地域での生活を支えるための活動に重きを置いております。これは社会福祉士という本来の法律上規定されている目的等に照らして相談に応じるだけではなく、さまざまな関係者と連携をして問題を解決していくということが設置の目的でございますので、それを実践しているということでございます。内容的には先ほど藤田さんの方からお話があったような、ジェネラル・ソーシャルワーカーとしての活動をしているということです。
 私どもが埼玉県とそういう形で協働して、この事業を行っているということで、私が勝手に考えていることかもしれませんけれども、そのメリットは常に一定の水準の効果が期待できるということです。私どもは倫理綱領を持って、その視点に従って支援をしておりますので、その支援がぶれることがないということでございまして、特に権利擁護の視点は忘れないようにしております。
 それから、組織的に対応しておりますので、常に一定のレベルの活動ができる。内部にさまざまなチェック機能を設けていること。支援マニュアルを策定しておりますので、統一された手続による実践、統一された記録を作成し、それを福祉事務所の方に提出するというような方法でやっております。
 したがいまして、さまざまな資源を活用していくわけですけれども、地域社会の中にもしなければ、何とかつくっていきたい。あるいはいろいろな資源を結び合わせることによって、無料低額宿泊所入所者あるいはホームレス状態の人が地域の中で安定した生活ができるような支援に努めているところでございます。私どもが駆使する援助技術としては、エンパワメントであるとかストレングスの視点で利用者を支えることですし、寄り添う支援といいますか、私どもには決定権がございませんので、あくまでも本人の力を利用しながら、その自己決定を尊重している。そういった中で具体的な本人のニーズに合う結果を導くように努力をしているといったようなことでございます。
 代理で出席していて大変申し訳なかったのですが、埼玉県としてそういった活動があるということの紹介をさせていただきました。ありがとうございました。

○宮本部会長
 どうもありがとうございました。
 これで最後ということにさせていただきたいのですけれども、奥田委員の方から。

○奥田委員
 すばらしい発表をありがとうございました。物すごく刺激を受けました。具体的な制度のことについてはさまざまな御提案がありましたので、テーマというか全体的なことになるかもしれませんが、まず第一には、議論の前の議論ですが、この議論が始まったときからですけれども、あまり拙速に生活保護削減議論ということにならないようにというふうにお願いしたいということ。
 そういう意味では、非常に包括的な制度設計のテーマを議論するべきで、私は第一のセーフティネット、第二のセーフティネット、そして最後のセーフティネットとしての生活保護というのは、今後も当然あるわけですから、第三の部分と切り離してすべてを議論してしまうのではなくて、その前提を持った上で、全体の包括的な議論を制度設計していくべきだろうと思います。これは前置きです。
 第1のものとして、前回からもそうですけれども、例えば私はホームレス支援法が一番直近の関わってきた法律ではありますが、ホームレスの自立支援法の中には、自立の意思のある者を支援するという前提から始まっていまして、この自立の意思は何だというのが10年間の議論の非常に大きなテーマでありました。
 困窮者支援の今回の議論の中でも、就労の意欲という言葉が繰り返し出てくるのですが、現実から行くと、非常に希望なき社会というか生きる意思という、先般報告された、死にたいと思ったことはありますかという調査結果もそうですが、生きる意思とか生きる意味ですね。その辺りからの掘り起しから実は考えざるを得ないところになりますので、就労の意欲まで行くのに実は何ステップか要るだろうというのが実情だろうと。
 そういう意味では、最初に言いたいのはこの意思の問題で、意思とは何かということですが、今回の議論の中ではこの動機づけであるとか、意思の醸成みたいなものとか、そういうものが非常に大きなテーマになるのではないかと。困窮状態自体が複合的だということ。それが縦割りの中でなかなか包括的にとらえられなかったということともに、やはり無告状態ですね。告げる先がないという、そこから始まる制度ですから、先ほども岩田先生がおっしゃった、アウトリーチの事柄が起こってからのアウトリーチ型の支援以前に、インテークの部分でのアウトリーチが本当にできるのかという、ここのところは非常に難しいと思いますが、やらざるを得ないと思います。
 2つ目のテーマとしては、私は主体性の問題が非常に大事だと。そういう意味では、社会的包摂という言葉も大事ですが、これは社会側の責任の問題として、包摂型の社会をつくるというのは大事ですが、当事者からすると参加という言葉の方がより一歩踏み込んでいるのではないかと。御自身が自分の判断でそこに参加すると。そういう意味では主体性の確保ということで、その参加というテーマが今回は非常に大きなタームになるのではないか。しかも自立と参加ではなくて、厳密に言うと参加と自立だろうと。自立と参加と言いたいのですけれども、自立することによって参加できるんだというような、先ほど藤田さんがおっしゃった就労イコール参加というのはおかしいのではないかというのは、私も本当にそう思いまして、参加の中から自立が生まれてくる。順番としては参加と自立だろうと。
 しかも、この参加というテーマの中には相互性がある。1つは自尊感情です。自分が大事だという。もう一つは自己有用意識だと思います。自分が何かの役割を担うという自己有用感を持つ。自尊感情を得ると同時に自己有用感を持つという、この参加の相互性といいましょうか。そういうものが両立する支援が非常に長続きをすると思います。
 3番目のテーマとしては、段階的、中間的という言葉。これは皆様の発表の中にも出てきたと思いますが、非常に大事だと思います。拙速に結果を出すというのではなくて、現実としては段階的であり、中間的であるという支援の在り方。どうしても結果を出したいので、何人が就職したかみたいな話にすぐに行くのですが、もしくは生活保護から何人が脱したかとなるのですが、多分それは近道であるけれども、結果は遠回りになると現場では思っています。ですから、この段階的という言葉とか中間的という、中間的就労という言葉も出ていますが、その辺が非常に大事。
 ただ、これがある一定期間、継続的に一貫して行われるべき事柄であるので、そこにおいてはもう出ましたが、データベースの構築、サポートのプランですね。そして、そこに一貫して関わっていく仕組みとしての伴走型支援。私はジェネラル・ソーシャルワークもいいのですが、何でもかんでも片仮名になっていくので、伴走型ということを書かれているので、伴走型でいいのではないかと思うのですが、伴走型支援という体系の中で、データベースはどうつくるのか。サポートプランの作成については一元化をしていけるのかどうか。そこに伴走型支援が実行力を持てるかどうかということが非常に大事だろうと思います。そういう意味では、非常に相互型のケアが可能になる。
 4番目に、更に複合的であるということです。これは困窮要件が複合化しているというのはもともとですが、同時にサポートも複合化していく。例えば具体的に言うと、この7つの項目の中の6番目の安定した住居ですけれども、住居として安定しているだけではなくて、そこの暮らしとか生活、社会的な面で安定しているか。そうするとケア付き住宅とか、もしくは貸付制度にしても単に権利擁護事業だけではなくて、ケア付き金銭管理というものが可能かという複合化していかないと、複合的要件を持った人たちなのだから、複合的な頭の設定をしないと難しいのではないか。就労にしても中間就労はケア付き就労のことだろうと思うわけです。
 そういう意味では、複合的であることが非常に大事。それは最初のテーマに戻りまして、生きる意味ということも、かつては右上がりの成長時代は働いて給料をもらって何ぼのものだという人生観が占めていたと思うんです。どこか戦後社会は満足することが幸福だったと思います。それだけの見返りもあった成長時代があった。しかし、今からは生きる意味も複合化していく。合わせて一本みたいな、そういう生きる意味をコーディネートできるかどうか。非常にロマンチックな話に聞こえるかもしれないけれども、これが実際には具体的に生きる場においては非常に大事なのだと。生きる意味も考えることにおいて複合化して考えて、意義性の複合化が要るのではないかと。
 最後に付け足しですが、NPOの財源問題ですが、私もNPOです。職員をいっぱい抱えていまして、もう大変ですけれども、何とかしてほしいと思うのですが、藤田さんの意見に賛成で、全部を委託事業でやってしまうとNPOではなくなるわけです。そんなにはNPOではないと意地を張って言っているわけです。
 ですので、一つはNPOに関わる事業に関して、委託の形しか取れませんか。つまり事業主体が地方行政になるわけです。地方行政が事業主体になって、そこから事業委託としてNPOに出されるわけです。そうすると、どこまで行っても事業主体は行政だという話になる。それとは違う形で財源を地域の共有のものとして使えないのかということは思います。
 しかし、更に言うと、私は今回の困窮者支援においてNPOを活用するのだったら、寄附制度も含めて、日本に寄附文化がどこまでつくれるかが勝負で、私はNPOをやっていく上で寄附は自由の担保だとずっと言い続けていまして、これを手を抜くとNPOはだめになると思っています。ですから、やはりお金が集まるNPOと言ったら変な言い方ですが、公明性とか情報交換も含めて、意義のあるNPOを我々側がつくれるか。そこにはお金が集まるだろうし、集めやすい仕組みを国でもう一段階、この間で大分緩和されましたけれども、うちは認定NPO法人をもらっていますが、更に一歩二歩を踏み込んだ形で、民間のお金が動く仕組みがつくれないか。そんなふうに思います。
 長くしゃべりまして、済みません。以上です。

○宮本部会長
 ありがとうございました。最後に大事な、特に財源の問題で大きな提起があったと思いますが、この議論はもっと深めてみたいと思いますが、時間の関係で続けるわけにはいきません。
 それでは、ここで本日の委員の皆さんからのヒアリングを終了させていただきたいと思います。短い期間だったにもかかわらず、重量級のプレゼンテーションを御用意いただき、感謝申し上げたいと思います。
 最後になりますけれども、これで第2回の部会ということになりますが、会の運営や事務局への要望などをもしここでおっしゃりたいことがあれば、承りたいと思います。
 駒村委員、どうぞ。

○駒村委員
 事務局に資料をお願いしたいと思います。資料1で求職者支援の話があったのですが、今、求職者支援制度で生活保護を受給している方が実際に使われているのかどうなのか、統計があれば教えてもらいたいというのが1つ。
 右肩上がりの経済でもないわけですし、年功賃金というわけでもなくなってきて、むしろ非正規の方が多くなって、しかも経済ショックで家を失うということがあるわけですが、居宅保障という政策分野を考えていっていいかどうかわかりませんが、さっきのところにも居宅の確保という書きぶりがあったのですが、社会保障としての住宅政策が日本には欠けていたのかもしれませんが、公営住宅を含めて、現在政府として住宅保障について、どういう考え方を取っているか。何かまとまった資料があれば、いただけたらと思います。よろしくお願いします。

○宮本部会長
 それでは、事務局の方でよろしくお願いします。

○古都総務課長
 今、御指摘のあった資料については、相談をしながら作成をして、次回に出したいと思います。

○宮本部会長
 ありがとうございます。
 それでは、今日は3時間みっちりやってしまいましたけれども、本日の議事を終了したいと思います。この後、厚生労働省から国家戦略会議に生活支援戦略の骨格について報告があるわけですが、是非その報告の内容にも今日の議論などを反映させていただければと思います。

○広田委員
 部外者でよくわからないのですが、伺っていると、支援する側の大変さが今日はいっぱい出てきたんです。これが続いていくんですか。

○宮本部会長
 恐らく次回以降、また異なった観点からの御報告をいただくことになると思います。

○広田委員
 自己決定というのは精神障害の分野だと当事者不在が多いから。ここは生活困窮者が主体の話だと思って出てきていますから、変わっていくならいいんです。

○宮本部会長
 今、申し上げたように、次回以降も委員からのヒアリングを続けていきたいと思います。多角的な観点から総合的に議論を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。どなたにお願いするかは現在調整中になりますので、しばらく御猶予をいただければと思います。
 次回の開催について、事務局からアナウンスメントをお願いします。

○古都総務課長
 次回は5月30日水曜日の10時からを予定しております。場所は調整中でございますので、また追って御連絡をしたいと思います。
 なお、事務局の不手際で、先ほど山村委員の代理で青木委員がお見えになっておりましたことについて、御紹介が漏れておりました。大変申し訳ございませんでした。

○宮本部会長
 それでは、本日の議論はここまでとさせていただきます。
 これで終了いたします。長い時間、ありがとうございました。


(了)

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