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2012年5月9日 第5回厚生科学審議会健康危機管理部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成24年5月9日(水)14:30~16:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

(委員)

宮村部会長
明石委員 石井委員 大友委員 大野委員
黒木委員 野村委員 古米委員 山本委員

○議題

1 健康危機管理調整会議の開催報告について
2 改正国際保健規則(IHR2005)について
3 世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)について
4 東日本大震災に関する対応について
5 その他

○配布資料

厚生科学審議会健康危機管理部会委員名簿
資料1     健康危機管理調整会議の主な議題について
資料2-1   国際保健規則(IHR2005)について
資料2-2   IHR(国際保健規則)に基づく我が国の連絡窓口( NFP:National Focal oint)の平成22年度~平成23年度の活動内容について
資料3-1   世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)について
資料3-2   第11回世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合概要
資料3-3   第12回世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合概要
資料3-4   GHSIにおける今後の優先課題と取り組み
資料4     東日本大震災における厚生労働省の対応
参考資料1  厚生科学審議会健康危機管理部会関係規定
参考資料2  厚生労働省健康危機管理体制のイメージ図
参考資料3  健康危機管理調整会議議題一覧
参考資料4  世界保健機関(WHO)による危機管理-国際保健規則(IHR)-
参考資料5  国際保健規則(IHR2005)〔抜粋〕
参考資料6  第11回世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合共同声明
参考資料7  第12回世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合共同声明
参考資料8  世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合10周年記念文書

○議事

○小澤健康危機管理官 
 では、定刻になりましたので、ただいまから「第5回厚生科学審議会健康危機管理部会」を開催いたします。
 私、厚生労働省大臣官房厚生科学課健康危機管理官の小澤でございます。よろしくお願いいたします。
 委員の皆様には、本日は御多忙のところお集まりいただきまして、厚く御礼申し上げます。
 本日は、岡部委員、金田委員、加茂委員、吉川委員、工藤委員より欠席の御連絡をいただいておりますが、委員14名のうち、出席委員は過半数を超えており、会議が成立しておりますことを御報告いたします。
 また、前回、第4回の開催から、人事異動により事務局に変更がありましたので、御紹介いたします。
 矢島技術総括審議官でございます。
 塚原厚生科学課長でございます。
 それから、私、健康危機管理官の小澤でございます。よろしくお願いします。
 それでは、事務局を代表いたしまして、矢島技術総括審議官より一言ごあいさつを申し上げます。
○矢島技術総括審議官
 先生方には、大変お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。また、日ごろから厚生労働行政、いろいろな面におきまして御支援、御協力をいただいております。厚くお礼申し上げさせていただきたいと思います。
 実は、この会議、昨年3月に開催する予定だったわけですが、御存じのように東日本大震災で、会議を開くことができませんでした。
 先生方にはいろいろな意味で、今回の震災も含めまして、健康危機管理について、いろいろと御協力、御支援をいただいております。本当にお世話になりました。また、健康危機管理の問題につきまして、我々、対処しなければいけないことがたくさんあるかと思います。そういう意味で、本日、先生方から御意見等をいただければありがたいと思っております。
 震災以外にも、食中毒ですとか国内外の感染症の発生とか新型のパンデミックの関係等、国民の生命・健康に影響を及ぼすような事態が多々ありますので、今後とも引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 簡単ですが、私のあいさつとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○小澤健康危機管理官
 それでは、報道関係の方の頭撮りはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 続きまして、本日の会議資料の御確認をお願い申し上げます。
 お手元の議事次第の方に、資料ということで、資料1から枝番がついて恐縮ですが、資料4まで。それから、参考資料1から8までございますので、念のため御確認をお願いします。もし、資料の欠落等がございましたら御指摘いただきますようお願いいたします。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、これよりの議事進行につきまして、宮村部会長にお願いいたします。部会長、よろしくお願いいたします。
○宮村部会長
 それでは、早速議事に入りたいと思います。
 今日の「議題1.危機管理調整会議の開催報告について」、まずは事務局から御説明ください。
○小澤健康危機管理官
 それでは、私、小澤より、まず健康危機管理調整会議の開催報告について御説明させていただきます。お手元の資料1、それから参考資料、特に2と3をごらんになっていただきますようお願いします。
 順番が逆になって恐縮でございますが、まずこの健康危機管理調整会議の位置づけを改めて御説明させていただくために、参考資料2、厚生労働省健康危機管理体制のイメージ図という資料をごらんになっていただきますようお願いいたします。
 一口に健康危機管理と申しましても、さまざまなところから情報が寄せられてきます。例えば保健所ルートもございますし、海外の関係機関あるいは研究者からの直接の報告といったものが、例えば省内の健康危機管理に関する関係課あるいは直接官房の方にそれぞれ情報が寄せられます。こういった情報を、今の厚生労働省の健康危機管理体制としては、大臣官房厚生科学課健康危機管理対策室というところを設けまして、ここで一たん集約します。
 そして、ここの主催で危機管理調整会議というものを、省内関係課、国立試験研究機関の先生にも御出席いただきまして、開催の頻度としては課長クラスの健康危機管理調整会議を月1回、課長補佐クラスの幹事会の会議をそれぞれ月1回ずつ開催いたしまして、この場におきまして情報の共有、対策の検討あるいは部局間の調整といったものを実施しております。それぞれの対応については、例えば部局から報告があって、それについての対応を調整するということをやっています。
 これが健康危機管理調整会議でございまして、これまでの開催状況を資料1で簡単に御説明させていただきます。こちらでは、過去1年、23年5月から24年4月までの健康危機管理調整会議の主な議題についてということで記載させていただいております。過去1年、開催実績としては、健康危機管理調整会議本会議が12回、幹事会が12回、それからこの間、臨時会議につきましては7回、それぞれ開催しております。
 各分野で議題を取り上げていますが、主なものとしては、1.医薬品関係。血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」服用患者での重篤な出血に関する注意喚起について。これは、死亡例が5例出た事案でございますが、これについての報告をしております。それから、治癒肝炎の新薬による劇症化事例。これは、免疫抑制効果の高い薬を用いた際に、劇症化する事例が発生しているといったことについての状況と対応の報告をこの会議の場でしております。
 2番目は、食品関係でございます。飲食チェーン店等における腸管出血性大腸菌食中毒の発生について。これは、北陸地方の焼き肉屋での腸管出血性大腸菌、0-157の発生事例についての発生状況、それから対応状況の報告をしました。それから、岐阜県羽島市の食中毒疑い事例というのは、ノロウイルスの発生した事例でございます。
 3番目の感染症関係につきましても、それぞれ報告しております。まず、鳥インフルエンザの人での発症状況については、毎回定例でWHOあるいはOIEから発表のあった資料に基づく、世界での発生状況を毎回報告しております。それから、個別の感染症の事例としては、北京で発生した野生型ポリオの事案についての報告を23年9月にしております。それから、米国における鳥インフルエンザ患者発生。これは、豚との接触歴がない方の発生事案でございますが、これについても報告いたしました。
 それから、中国広東省深圳市における高病原性インフルエンザの感染事例について。あるいは、こういった事例を受けまして、鳥インフルエンザH5N1関連情報収集体制の強化についても、この調整会議の場で検討いたしました。
 4番目は、通報のあった健康危険情報ということで、定例でがん治療に係る有害事象について、それぞれ報告をしております。
 その他というのは、医薬品、食品、感染症といった既存のものに当てはまらないものについても取り上げております。例えば岐阜県における目のかゆみなどの症状を呈した児童・生徒等の発生について。これは、昨年9月2日に発生した事案でして、768人の児童・生徒が同様の症状を呈した。当時は原因がわからなかったのですが、これについての状況も報告してしおります。
 それから、鳥インフルエンザ研究についてというのは、5月3日に「ネイチャー」で論文が発表されましたが、鳥インフルエンザウイルスの遺伝子を組みかえることによって、哺乳類間でも感染のおそれが発生するということについて、ウィスコンシン大学の河岡先生の研究についての扱い。その論文の掲載が一時差しとめになり、その間、WHOあるいはアメリカ等で議論されたので、それを受けての対応を検討したということがございます。
 それから、北朝鮮による人工衛星と称するミサイルの発射の発表に対する厚生労働省の対応についてということで、これもまさに先月13日にミサイルが発射されましたが、これについての対応を検討しております。
 最後は、ベトナムにおける原因不明疾病についてということで、先月、皮膚に病変が発生する疾病がベトナムで発生しているので、これについての情報を収集して、WHOにもその状況の照会等をするという対応しております。
 開催状況としては、以上でございます。詳細の開催状況につきましては、参考資料3に、昨年5月から今年4月までのそれぞれの会議での議題を記載しております。
 以上でございます。
○宮村部会長
 ただいまの説明について、御意見、御質問。どうぞ。
○石井委員
 日本医師会の石井でございます。御説明ありがとうございます。御説明とイメージ図、そしてこの会議というものを見させていただきますと、印象として言えるのは、ちょっと閉じた系だなと感じます。
 アメリカのCDCの長官のお話を昔、聞かせてもらったことがありまして、わからない、原因がまだ特定されないような疾病とか事象が生じたときに、どうやってそれを特定し、そして対応の引き金を引くかということの一番大事なことは、官民あわせたネットワークだと。そのネットワークが生きているか生きていないか、そしてそのネットワークの片方には現場が必ずあるというお話を聞かせてもらったことがあります。
 そういう意味では、役所的には本当に完結したシステムだと見えるのですが、例えば日本最大のNGOである日本医師会みたいな現場とつながったところとどうやって向き合うかというのは、この会議で見えたということは後追いですから、問題なのは、生きて動いているときにどういうネットワークで動けるかという概念を、これにつけ足してもらう。チャンネルはこういう形をとりましょうというのは、勿論医師会だけの問題ではなくて、さまざまな機関とあわせた概念があると、もっと生きてくるのかなというイメージを持ちました。
 意見でございます。
○宮村部会長
 こういう御意見ですけれども、何かこれについて。課長。
○塚原厚生科学課長
 御指摘、ありがとうございます。
 例えば感染症の問題ですと、感染症課の方で適宜、医師会を初め、いろいろな関係団体とは御相談しながらされているという前提で、省内の連携がちゃんととれるようにと。例えば食中毒なのか感染症なのかわからないというときに、こういう場できちんと情報共有することによって、どちらも対応していないというのがなくなったりという、どちらかというとそういう内部的なことを目的として、最初、スタートした会議でございますので、そのような印象があるかと思います。
 ここには書いていないのですけれども、勿論、担当部局、あるいは原因不明の段階では厚生科学課の方で、適宜、外部の関係の方々にいろいろ御相談させていただきながら対応しているという前提だということで御理解いただきたいと思いますが、御指摘でございますので、今の御意見を反映できるような形で、運営上もわかるような形で、絵のかき方についても工夫したいと思います。
 ありがとうございました。
○宮村部会長
 よろしいですか。ほかに御意見、御質問、ございませんか。どうぞ、野村委員。
○野村委員
 同じような話なのですけれども、関係省庁と記入してあるのですけれども、厚労省の中のイメージ図の中で、実際に今、先生がおっしゃったようなアクションを急速にとっていくために、どういうふうにこの関係省庁以外と連絡を取り合うようにされていらっしゃるのか。この会議等を開かれている中に、厚労省ばかりで済まないことのような気がするので、その辺をどうされているのかなと思います。
○矢島技術総括審議官
 規模にもよるのですけれども、国家的レベルになったときには、内閣官房の安全保障・危機管理担当があります。各省、関係する部署を含めて情報共有、情報交換をして、適宜、連携する体制ができ上がっております。先ほどの、例えば北朝鮮の人工衛星と称するミサイルの話であれば、関係するところで情報を共有するということはあります。
○宮村部会長
 ほかに。大野先生。
○大野委員
 今のことと関係してくるのですけれども、WHOの国際保健規則を読ませていただきましたら、コンフィデンシャリティーが強くうたわれていて、それを解除するための条件も書いてありますけれども、簡単には解除できない。なかなか公には言えない状況ですね。ただ、今まで議論がありましたように、厚生労働省だけで危機に対応するのは難しいと思いますけれども、関係機関に秘密保持を条件にいろいろ意見をいただく必要があると思うのですけれども、そうしていただければありがたいと思います。
○矢島技術総括審議官
 先ほどの健康危機管理の幹事会とかには、国立医薬品食品衛生研究所とか保健医療科学院とか感染症研究所も含めて、国の研究機関で必要なところについては適宜入っていただいて、情報共有しつつ、専門家の先生方にもお話を伺うという体制になっておりますので、そういうところで初動と言うんでしょうか、まず集まって、我々の中でできるところについては対応しております。
○宮村部会長
 では、石井先生。
○石井委員
 何度も済みません。例えばミサイル、飛翔体。北朝鮮のあの事象で言いますと、物が落ちてくるだけではなくて、あの燃料というものも実は大変な毒であるとネットでは調べられたわけです。だから、厚労省にはお話しないで、そういうものなのだなという認識でやっていましたが、それが日本のどこかに落ちて燃え尽きていなければ、その地域に突然そういう事象が生じるわけですね。
 それを診るのは、軍隊、自衛隊とか、さまざまな専門家だけではなくて、地元のドクターが診ざるを得ない局面に即座に入るわけです。そうすると、そのときの情報と対応というのが、できれば事前なり、それから事後にしても連携して動くということがすごく大事になるのかなと思います。
 もう一点は、東日本大震災の事象におきましては、日本医師会会長が会長を兼ねて被災者支援連絡協議会というものが立ち上がって、今も動かしていただいていますが、そこには厚労省も文科省も入っていただいている。いろいろありますが、それはどういう場所に位置づけられるかというと、読めないのです。だから、そういうことを含めて、これはこれで勿論すばらしいのです。困るということではなくて、こういう概念といろいろなものが、もう一つ外のネットワークの見え方があると、それが一層生きてくるのではないかなと思って最初に発言したのです。
○宮村部会長
 どうぞ。
○小澤健康危機管理官
 ただいまありました、今回の北朝鮮による飛翔体の件につきましては、まさに石井先生、おっしゃいましたとおりヒドラジンの問題が懸念されたところでございます。今回の4月13日の発射に際しては、私ども厚労省の方から全国のDMATに対しまして、ヒドラジンの情報、それからそれの対処に関する資料を送らせていただいております。実際に、仮にDMATが今回の事案で動くことになった際の念のための対応として、そういった資料も送らせていただいております。
 ヒドラジンの問題につきましては、医療関係者だけではなくて、消防関係者も今回、触れ得るものですので、消防庁の方からも同様の資料で、消防関係者に注意喚起はしているところでございます。
 もう一つ、被災者支援のことにつきましては、今回のイメージ図は健康危機管理に限ってつくっているものでございますので、被災者支援という観点になりますと、私ども厚労省におきましては復興支援本部がございまして、そこが中心になって被災者支援に当たっているという状況でございます。
○宮村部会長
 どうぞ。
○黒木委員
 日本中毒情報センターの黒木です。
 今のロケット燃料問題なのですけれども、先生も御存じのとおり、日本中毒情報センターの方で、1,1-ジメチルヒドラジン等に関する毒性、症状、治療等の情報を前回もおつくりしまして、厚生労働省から出していただいております。今回も同様な形をとらせていただいております。
 中毒情報センターとしても、医師会や薬剤師会などNGOの先生方との協力も必要であると、先生の御発言で改めて気づかせていただきました。厚労省の枠組みのスキーム以外にも、まだいろいろ検討しなければいけないところを実感いたしました。
○宮村部会長
 どうぞ。
○野村委員
 後でお話してもいいのかなと思ったのですけれども、震災のときは復興支援とおっしゃいましたけれども、震災のときに発生する、透析の患者とか慢性病の患者の健康危機はあるのですね。そのときに国の方も混乱されていた感じで、現場とか民間の医師の方たちのイニシアチブで解決した問題がいっぱいあるというのは、外にも出ている話だと思うのです。
 そういった個々の自由な動きを、せっかくこういう仕組みがあるのであれば、逆に阻害せずに、後からそれを更に後ろ支えしてあげられるような調整役を買って出るとか。勝手に動く現場を非難する云々ではなくて、現場が自由に動けるような形のシステムというのを、こういうところが担ってもいいのではないかと思っております。
○宮村部会長
 重大な指摘だと思います。この東日本大震災のことについては、また各論で後からコメントいただきたいと思います。
 今の健康危機管理調整会議の開催報告及び調整会議の位置づけについての御意見、ディスカッションはこれでよろしいでしょうか。
 では、次に進みたいと思います。議題2.国際保健規則(IHR)、2005年に大幅に改正になったのですが、これについて事務局から御説明をいただきましょう。
○高岡国際課長補佐
 国際課でございます。資料2-1、国際保健規則(IHR2005)についてという資料について御説明いたします。また、参考資料4、参考資料5に関連の資料をおつけしてございます。参考資料4は、国際保健規則(IHR)の概要を絵にしたものと、参考資料5につきましては、本文を和訳、抜粋したものでございます。
 資料2-1ですけれども、委員の皆様方、既に御承知かと思いますが、国際保健規則(International Health Regulations)は、世界保健機関(WHO)で策定された国際規則でございます。これは、国際的な交通に与える影響を最小限に抑えて、疾病の国際的伝播を最大限防止するということを目的として策定されておりまして、1951年に国際衛生規則(ISR)として制定後、1961年に改名されております。
 2005年に大きな改正がされておりまして、それまでは黄熱、コレラ、ペストの3疾患を対象としてきておりましたが、SARS、鳥インフルエンザ等の新興・再興感染症による健康危機に対応できていないということ。また、各国がその対応について、ちゃんとした体制ができていないのではないか。そのコンプライアンスを確保する仕組みが欠如しているということ。WHOと各国との協力体制が欠如しているということ。また、テロへの対応の必要性などが指摘されておりました。
 ですので、2005年に、主には、原因を問わず、国際的な公衆衛生上の脅威となるあらゆる事象をWHOに報告することを、IHR参加国に義務づけるということと、各国ごとにIHR担当窓口(National Focal Point)、NFPを常時確保することを義務づけることを改正の中に盛り込み、2007年6月から改正IHRを発効しております。
 最近のこのNFPに関する活動につきましては、後ほど御説明させていただきますけれども、今後の動きということでございます。IHRの参加国につきましては、IHRで定められた体制の整備を発効後5年以内に完了することとされておりました。これが2012年615日までということでございますが、一部の国ではいまだ体制の整備が完了していないということで、期限の2年間の延長申請ということがなされております。日本では、既に国内法を改正するなどして必要な体制の整備を完了しているところでございます。
 以上です。
○宮村部会長
 ありがとうございました。補足で小澤さんの方から。
○小澤健康危機管理官
 引き続きまして、お手元の資料2-2をごらんになっていただきますようお願いします。私の方から、このIHRに基づくフォーカルポイントの活動内容につきまして御説明させていただきます。実際の国内のフォーカルポイントは、私ども健康危機管理対策室の方に設けております。
 その中での活動状況としては、最初の丸、WHO事務局長による勧告の国内伝達ということで、これは以前発生しましたHINIの新型インフルエンザの流行の状況について、これが季節性インフルエンザと同様の動向となりつつあることから、世界的な流行状況をポストパンデミックとする旨の発表が行われたことを国内へ伝達しております。
 それから、WHOとの間の情報共有ということで、まずはこちらのサイトに掲載された情報については、随時私どもの方から国内関係者に伝達しています。更に、以下の報告をWHOに対して私どもから行っております。
 具体的には、22年6月22日ですが、インフルエンザの国内発生状況について毎週報告。これは、後にWHOから不要との連絡に基づきまして中止しております。それから、22年9月7日、国内における耐性菌の発生状況についてWHOへ報告しております。それから、22年12月7日に国内の鳥インフルエンザ発生状況について報告しております。それから、昨年3月11日の東日本大震災の際は、原子力発電所への影響についてWHOに報告し、5月31日まで継続して情報提供を実施しております。
 それから、ほかのIHR参加国連絡窓口との個別の情報交換としては、結核、麻疹等の感染症患者の国際渡航等に関し、情報交換を実施しています。
 その他とありますが、このWHO西太平洋地域事務局が加盟国の連絡窓口を対象として行った訓練に、一昨年12月2日と昨年12月1日に、いずれも参加しております。
 活動状況としては、以上でございます。
○宮村部会長
 ありがとうございました。これらのIHRの情報というのは、議題1で討論しました健康危機管理調整会議に逐次報告されているわけですね。
○小澤健康危機管理官
 さようでございます。
○宮村部会長
 今のお二人の説明について、御質問、御意見、ありましたら、どうぞ。お願いします。
○大野委員
 IHRへの参加国はどのくらいあるのでしょうか。
○高岡国際課長補佐
 WHOに加盟している194カ国すべてが参加しております。
○大野委員
 わかりました。
○大友委員
 WPROが開催しているNFPを対象とした実施訓練というのは、具体的にはどういう内容になっているのでしょうか。
○斎藤厚生科学課国際健康危機管理調整官
 健康危機管理対策室の斎藤です。私は、昨年2011年の訓練に参加しておりますけれども、これはWPROがコントローラとなりまして、仮想のシナリオを用いて各国に情報を流していきまして、それに対してNFPがとるべき連絡を随時行っていく。その対応を記録して、連絡すべきところに連絡し、IHRに則り報告すべきポイントで報告されているか、検証をしていくという図上訓練をやっております。
○宮村部会長
 ありがとうございました。ほかに御質問、御意見ありますか。
 それでは、次の議題に移ります。次は、「議題3.世界健康安全保障イニシアチブ(GHSI)について」、これも事務局から御説明をいただきます。
○小澤健康危機管理官
 続きまして、資料3-1、3-2、3-3、3-4、それから参考資料6、7、8が関係資料になります。世界健康安全保障イニシアチブについてということで御説明させていただきます。
 もともと世界健康安全保障イニシアチブ(GHSI)は、2001年9月に発生しました米国における同時多発テロを受けまして発足したものでございます。これを受けて、米国、カナダ政府が呼びかけまして、世界的な健康危機管理の向上、それからテロリズムに対する準備と対応に係る各国の連携を話し合うことを目的として、日本で言えば厚生労働大臣になりますが、各国保健相レベルの会合が2001年11月に発足いたしました。
 この閣僚級会合のもとに、実務者レベルのグループとしての世界健康安全保障行動グループ、Global Health Security Action Group、GHSAGと読んでいますが、これが設けられまして、我が国からはがん対策、国際保健、医政担当審議会がメンバーとして登録されております。それから、専門家会合としては、生物・化学テロ等の健康被害への対応につきまして、それぞれ専門家分野ごとに技術的な検討作業を行うための専門家グループが設けられております。
 2.構成でございますが、全体で9か国でございまして、日本、カナダ、米国、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、EC。そして、WHOはオブザーバー参加になっております。
 閣僚級会合につきましては、2001年11月以降、毎年1回開催されておりまして、一番最近は昨年12月にパリで開催されております。
 専門分野の状況といたしましては5つ設けられておりまして、1つは、リスク管理及びコミュニケーションWG、そのもとでのコミュニケーターズネットワーク。あと、実験施設のネットワーク。それから、パンデミックインフルエンザWG。それから、日本が議長になっておりますが、化学イベントWG。それと、核・放射線源の脅威WGと、それぞれグループが設けられております。
 この詳細につきましては、お手元の参考資料8に、後ろの日本語の3ページにそれぞれのWGの構成と概要を書いております。
 資料3-2で、前回、第4回健康危機管理部会開催以降の閣僚級会合につきましての報告をさせていただきます。平成22年12月2、3日にメキシコで開催されました第11回GHSI閣僚級会合の概要でございます。
 日本からは、岡本充功厚生労働大臣政務官ほかが出席されました。
 そして、この際の主な議論としては、まず年次報告や専門分野の活動報告。それから、このときはH1N1インフルエンザの対応の後でしたので、それの総括。それから、炭疽菌テロをシナリオとしたコミュニケーションの訓練。それから、共同声明の採択が行われております。
 次に、資料3-3をお願いいたします。こちらが昨年12月に開催されました世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合の報告でございます。これは、昨年12月9日にパリで開催されまして、日本からは小宮山厚生労働大臣代理として、厚生労働省大臣官房麦谷審議官、実際のメンバーでありますが、出席されました。
 結果の概略として、前年と同様、年次報告がされましたが、今回のポイントとしては、これまでの活動の10年間を総括して、今後の展望。それを紹介する10周年記念文書というものが採択されております。
 そして、資料3-4がGHSIにおける今後の優先課題と取組みということで、2010年から3か年戦略アプローチを採用して、この表にありますような領域横断的な課題に現在取り組んでおります。
 具体的には、まず脅威・リスク評価ということで、脅威・リスク共通評価手法の開発、あるいは評価ツールの作成もしております。
 それから、パンデミックインフルエンザにつきましては、H1N1の対応から得られた教訓の還元。それから、情報共有あるいは検知能力の開発。それから、サーベイランス情報の迅速な共有ということも検討されております。
 それから、リスク・クライシスコミュニケーション。こういった場合のコミュニケーションも危機対応では重要な要素になってきていますが、1つは、リスクコミュニケーションのガイドラインの開発。それから、特に近年、コミュニケーションの手段として重要となってきていますソーシャル・メディアを活用したリスク・クライシスコミュニケーションガイダンスの開発も進めております。
 それから、対抗医薬品ということで、これはそういったことが起きた際のワクチンというものが対抗医薬品になりますが、それの準備状況の評価。あるいは、共有の取組みといったことも現在、議論されております。
 それから、ラボ検査対応能力ということで、オールハザード対応に向けた国際ラボネットワークの構築の取組みがされております。
 それから、IHRの強化に向けた取組み。
 それと、除染については、主に化学物質に対するヒト除染に関する経験と、ワークショップ等を通じた共有を進めております。
 それから、早期警戒報告ということで、CBRN事象の早期警戒・報告のための共通プラットフォーム作成、マネジメントの実施といった取組みを現在、このGHSIの中で進めております。
 以上でございます。
○宮村部会長
 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明について御意見、御質問、どうぞ。石井先生。
○石井委員
 この資料3-4の表をずっと見ていきますと、例えば下から2つ目の除染という項目でワークショップ等を通じた共有という項目がありますが、これに対する参加というのは政府系の方だけが出られるものなのか。それから、その成果物としての情報は、我々を含めたさまざまな国内のところにどうやって還元していただけるか、その辺を教えてください。
○宮村部会長
 どうぞ。
○斎藤厚生科学課国際健康危機管理調整官
 健康危機管理対策室の斎藤です。ただいまの御質問の件ですが、GHSIあるいはGHSAGと言われる閣僚級、局長級会合、以下、専門家WGの成果というのは、基本的にはクローズドな中でやっております。クローズドな中で各国が非公式的な形で、率直に意見交換する場という位置づけでやることを大事にして、専門的な事項をなるべく共有するというスタンスでやっております。ただ、例えばこういった除染などといったことに関しては、かなり技術的な問題も入ってきておりますので、国内でも専門家の先生に適宜ご参加をいただいているところです。
 除染のワークショップにつきましては、1回目は内閣官房の先生あるいは大学の先生にも委員として御参加いただいておりますが、このたび、この秋には都内で日本が主催してワークショップをやることになっております。その際にも、基本的にはまずはクローズドな関係者の中で会合を開催させていただく予定ですが、その内容の共有ということに関しましては、各国、参加国の協議のもと、決めていくことになります。
 ただ、この除染というのは、例えば米国で行われている最新の知見、イギリスで行われている最新の知見を共有していく非常に重要な機会ですので、なるべく国内の方にそれを還元できる体制を引いていくようにしていきたいと思っております。
○宮村部会長
 よろしいですか。
○石井委員
 では、要望として、今回の東日本大震災でも、工場とかさまざまな備蓄に関する問題点があり得たという反省がありまして、万が一、震災がもっと工場とかコンビナートとか、そういうものが集積しているゾーンで発生すれば、これは我々が聞いたこともないような化学物質がちまたにいっぱいあふれて、それとレスキューを同時進行するという事象が想定されますので、是非その点は情報提供していただければと思います。
○斎藤厚生科学課国際健康危機管理調整官
 御指摘ありがとうございます。基本的には、それぞれの優先課題として取り組んでいるものと、厚生労働科研の研究班が対応している形になっておりますので、その研究班の中で、更に国内で実施できるような形で落とし込んでいく作業を同時に行っていることを申し添えておきます。
○宮村部会長
 ほかにございませんか。どうぞ。
○古米委員
 資料3-1の一番下に専門分野の状況についてお聞きします。先ほどの御説明ですと閣僚級会合があって、9か国が共通した認識を持ちながら情報交換する、あるいは方向性みたいなものを議論すると。それに比べて、ワーキンググループという形で幾つか議長国を決めて行っていると。例えば放射線ということだとか、あるいはリスクコミュニケーションということは、今回の東日本大震災の場合、非常に大きな課題であったわけで、そういったイベントがあったときに、この専門ワーキンググループというのは実際、何か活動されておられるのか。
 ただ、組織として存在していて、どこかの議長国が提案すると動くという形で機能する組織なのでしょうか。その辺の活動状況はいかがでしょうか。
○斎藤厚生科学課国際健康危機管理調整官
 健康危機管理室の斎藤です。こういった緊急の事態が起きた場合には、24時間365日対応するコミュニケーションプロトコルというものを作成しておりまして、例えば日本で何か発生して、日本が各国の専門家の意見を聞きたいといった場合には電話会議を主催することができるようなシステムをつくっております。その際に、どこに連絡して、その電話会議システムを使って、どのように参加を呼びかけるかという体制は組まれておりまして、2か月に1回、その訓練というのも行われております。
 勿論、こういった突発的な事象というのは、我々のイニシアチブの中でも非常に関心が高いことでございますので、それぞれのネットワークで検討されることになります。今回、核・放射線源の脅威WGというものがございますけれども、この中で電話会議等を通じて、また実際の顔を会わせての会合の中でも、福島原発事故の対応というものが検討されております。また、例えばドイツなどで発生した食中毒等につきましても、このグループの中で迅速に情報共有するという形で動いております。
 また、長期的に取り組む課題につきましては、必ず局長級あるいは閣僚級の中で認証を得たものを優先事項として設定して、着々と作業を進めるといった2種類のやり方があるところでございます。
○宮村部会長
 よろしいでしょうか。ほかにございませんか。どうぞ。
○野村委員
 先ほどの震災のことについての追加質問なのですが、震災後に緊急にWGをされて、それが何か政策に生かされたということはあるのでしょうか。
○斎藤厚生科学課国際健康危機管理調整官
 今回の原発事故のことに関しましては、どちらかというと日本がどういうところでどういう情報を出しているかという情報源を共有するということがまずテーマで、あとは、日本以外の各国がどのような対応をとるかという情報を共有することが主であったかと思います。特に政策的に生きたという点では、今回の事象よりも、パンデミックインフルエンザの発生時、例えばワクチンを投与する際の優先順位をどのようにするかといったときに、各国の状況を事前に政策的検討の題材として共有して評価することができたことが、特に成果として挙げられております。
○宮村部会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、今日の一番大きな議題に移りたいと思います。「東日本大震災に関する対応について」ということございます。これをまた事務局から御説明ください。
○小澤健康危機管理官
 それでは、東日本大震災における厚生労働省の対応、お手元の資料4に基づきまして御説明させていただきます。
 昨年3月11日14時46分に三陸沖でマグニチュード9.0の地震が発生いたしました。地震、津波の大規模な被害が発生しまして、被害状況としては、ここにも記載しておりますが、死者1万5,858名、行方不明者3,057名。更に、避難者も34万4,477名と、非常に甚大な被害をもたらした災害でございました。
 2ページ目に、特に医療・社会福祉施設関係の被害状況を記載しております。
 被災地の病院・診療所の被害状況ということで、例えば病院につきましては、岩手・宮城・福島の区域で380ございまして、うち全壊が10、一部損壊が290と、この地域のおおむね4分の3の病院が何らかの形で被害をこうむったという状況でございました。診療所につきましても被害が非常に甚大でございまして、この地域に4,036ございます医科診療所のおおむね3割、歯科診療所につきましては2,597診療所のおおむね4割が、それぞれ全壊または一部損壊の被害が出ております。
 それから、福祉施設につきましても、この地域、7,206施設中875施設が全壊または一部損壊の形で被災いたしました。こうした形で、医療・社会福祉関係の施設におきましても非常に大きな被害があったというのが、今回の震災でございます。
 水道につきましても被害がございまして、昨年3月12日から今年3月23日の数字ですが、現時点でも4万5,000戸、断水被害が生じている状況です。これまで226万戸の復旧を果たしてきているということで、今後はその復旧と、それから水道管の耐震化も進めていくこととしております。
 4ページ目からは、今回の対応状況でございます。まず、初動対応といたしまして、お手元のスライド番号4、5をごらんいただきますようお願いします。
 まず、スライド番号4でございますが、政府の対応状況としては、14時46分に震災がありまして、矢島技術総括審議官が参集を受けるわけですが、4分後に官邸で緊急参集がかかって、厚生労働省の災害対策本部も4分後の14時50分には立ち上がりまして対応をすぐ始めました。
 医療分野の対応におきましては、まずはDMATの最大193チームが現地で活動したという実績がございます。それから、医療関係団体の医療チームの派遣、あるいは薬剤師の派遣ということも行いました。それから、保健師・看護師の保健活動。あとは、管理栄養士の派遣、心のケアチームの派遣といった形で、あらゆる職種の方が実際に被災地に入りまして、医療活動を行ったという状況でございました。
 それから、スライド番号5で、医薬品・物資につきましては、一般・医療用医薬品の被災地への搬入、あるいは飲料水の搬送等を翌日から始めて、それで現地への物資の供給を行ったところでございます。
 介護・福祉・生活につきましては、介護職員の派遣、あるいは被災地の要援護者の他都道府県への受け入れ。これは、実績としては1,850人でございましたが、こういったことも進めました。それから、仮設住宅の着工、あるいは御遺体の埋火葬の体制確保。それから、生活資金の貸付、事業者向けの融資ということも進めました。
 それから、子ども関係では、妊産婦・乳幼児に対する支援のポイントを周知したり、「子どもの心のケアの手引き」を配付するといったことの取り組みを進めております。
 次のスライド番号6、7をお願いします。雇用の分野におきましても、厚生労働省の対応をそれぞれ進めております。
 失業保険の特例とありますのは、失業保険の給付日数、最短では90日になりますが、これを120日追加で最長210日とする対応を当初とりました。その後、最終的には更に延長する措置がとられております。
 それから、雇用調整助成金についても支給要件を緩和するということでの特例がとられ、また、一方で雇用の復興ということで、ハローワークの出張相談、更には「日本はひとつ」しごとプロジェクトということで、雇用の創出という取組みも進めております。
 それから、その他では、医療・介護・年金での保険料の減免、あるいは一部負担金の減免という障害福祉サービスも含めた自己負担の免除といった取組みも、実際進めました。
 こういったものが今回の災害全体の対応になりますが、今回の東日本大震災の特徴としては、原発事故への対応というのが同時にあったということで、いわゆる複合災害であったということが1つ言えるかと思います。スライド番号7でございますが、被災者への健康支援という面で厚労省としての取組み状況を記載しております。
 まず、福島県で実施されている全県民を対象とした県民健康管理調査。これ自身は福島県の事業ではございますが、これに対しましても、例えば子どもの甲状腺超音波検査の実施のための医師の確保など、厚生労働省としても技術的・人的な支援を実施しております。
 それから、相双地域等医療・福祉復興支援センター。南相馬市に事務所を開設しまして、この地域の医療機関・福祉施設の従事者の確保のための支援を、厚労省から人を派遣して現地の従事者確保に当たったというセンターを設置しております。
 それから、被災者の搬送ということで、屋内退避指示が出ていた20km~30km圏内の病院・老人保健施設の患者の入居者を福島県内外へ搬送するといった取組みを行いました。
 それから、お手元のスライド番号8、9でございます。こちらは、食品安全での対応を記載しております。
 まず、スライド番号8の方は3月までの対応を中心に記載しています。
 昨年3月に事故が発生した直後、これまでの対応というところで3月17日に暫定規制値を設定いたしました。具体的には、年間被曝量線量を5ミリシーベルトという考え方のもとで、それぞれ放射性ヨウ素、放射性セシウムにつきまして、例えば放射性セシウム、野菜類等で言えば500Bq/kgといった形で基準を設定いたしました。そして、その基準を基に検査を実施いたしまして、この基準を超過した場合にはロットの回収・廃棄、あるいは地域的な広がりを見せる場合には、出荷の制限あるいは摂取制限といった形での指示を原子力災害対策本部から出す。それが検査結果を下回れば、それを解除するといった取組みを進めました。
 そして、9ページは、今回4月からの新たな基準値の設定でございます。
 今年3月までは、暫定規制値ということで年間許容被曝線量を5ミリシーベルトとしていましたが、4月からは新たに年間1ミリシーベルトということで基準値を引き下げました。こちらにつきましては、コーデックス委員会の指標を用いる。それから、実際の検出濃度も時間とともに相当程度低下しているということで、こういった被曝許容線量を設定しまして、その上で食品群の設定につきましても、一般食品あるいは乳児用食品という形でカテゴリーを変えました。例えば一般食品であれば、放射性セシウムの基準値は100Bq/kg、乳児用食品につきましては50Bq/kgということで基準値を設定して、これに基づきまして新たな検査を進めているところでございます。
 スライド番号10、11が水道水での対応でございます。
 水道水につきましても、先ほどの食品と同様に年間被曝許容線量5ミリシーベルトという考え方のもとで、暫定規制値として放射性ヨウ素300Bq/kg、乳児につきましては100Bq/kgでございます。それから、放射性セシウムは200Bq/kgということで、それぞれ基準を設定いたしました。
 そして、摂取制限を実施しまして、乳児による摂取制限は20地域で実施しまして、福島県飯館村を除きまして、19地域では解除されております。一般の摂取制限は、3月21日から4月1日にかけて福島県飯館村で実施しました。なお、5月10日以降につきましては、現在を含めまして摂取制限を行っている地域はございません。
 4月4日以降、モニタリング方針というのを政府で設けましたが、この結果に基づきまして、現在、10都県を重点地域として、1週間に1回以上、水道水の放射性物質の値を検査しておりますが、4月以降は、全域で検出下限未満、または微量検出の状況になっております。
 スライド番号11ですが、水道水中の放射性物質に関する指標の見直しについてということで、これも先ほどの食品の見直しに連動していますが、新たな目標を設定する放射性物質の核種につきましては、飲料水の規制値と同様、放射性セシウムを対象としています。その具体的な目標値としては、10Bq/kgを新たな管理目標として、仮にこれを超えた場合には原因究明、あるいはそれが長期間継続する場合は、その線量を低減するための措置を検討し、衛生上の問題を回避するという取組みを進めております。
 最後、スライド番号12をお願いいたします。労働安全衛生分野での取組みでございます。
 事故以後、現在に至るまで、東電福島第一原発事故で復旧作業をやっている作業員の方が多数ございます。この方々の放射線被曝のリスクというものがございますので、その健康管理に現在万全を期しているところでございます。米印にありますが、原子力被曝災害の拡大防止を図るために、緊急作業時の被曝線量の上限を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに上げることを行いました。これは、昨年12月のステップ2の完了をもちまして、緊急時被曝線量限度を100ミリシーベルトに引き下げております。その他の方につきましては、通常の被曝限度を適用しております。
 そのような線量管理、健康管理の徹底ということでございますが、1つは、東電に対して被曝線量の低減、あるいは迅速な測定、それから健康診断あるいは日常的な健康チェックの実施、それから医療体制の整備といった指導を行っております。
 それから、長期的な健康管理体制の構築としては、被曝線量や健康診断の情報を蓄積するデータベースを構築。それから、健康相談を実施したり、あるいは現に職業についていない方に対する検診等の費用援助といった取組みを実施しております。
 以上でございます。
○宮村部会長
 ありがとうございました。非常に多岐にわたる報告だったわけですが、これは東日本大震災における厚生労働省の対応ということでまとめていただいたわけですけれども、個々のケースについては、例えば通達とか基準が出たりしてパブリケーションができていると思うのですけれども、まとまってパブリケーションというか、公に出ているもの一部なのでしょうか。それとも、これからまとめとして準備されていくか。もしそうだとしたら、どんな形で出ていくのか、ちょっと教えてください。
○小澤健康危機管理官
 今回の厚労省の対応全体をどういった形でまとめるかというのは、現在、直接は聞いておりませんが、いわゆる厚生労働白書を毎年出しますので、ここでやるというのは考えられるところです。ただ、ここは担当部署に直接確認した話ではございませんので、改めて、もし必要があれば御報告いたします。
○宮村部会長
 それでは、各先生方から御質問、御意見をいただきたいと思います。
○石井委員
 かいつまんで主なお話、御質問もさせていただくと、1つはパワーポイントの7を見せていただきまして、被災者への健康支援という項目で、この前のところから複合災害であったというくくりは、まさにそのとおりだと思うのです。ですから、先ほど来申し上げているような話が、ここでどこまで反映されるかということが、それも迅速にということが非常に問題だっただろう。
 だから、例えば悪い想像をたくましくして言えば、原発事故、プラスケミカルなものがあそこに混ぜ込んであったらどういう対応ができたのだろうかということも、我々の頭の体操の中にあるわけです。したがって、最初に申し上げたようなネットワーク型の対応というものがどうしても必要だっただろうと思わけです。
 その次の段階で、地元の医療が全くなくなって死に絶えてしまえば、そこのコミュニティは死に絶えるので、そこを踏みとどまる方策というのが、我々が一番気を配ったところなのです。だから、DMAT、JMATが次々サポートするという体制を、この後もどうやって考えていくかという話になるわけです。
 そこで、そういう入り口の話はともかくとして、7にある被災者への健康支援の1つ目の丸で、全県民を対象とした健康管理調査というのが、私も被災者の1人ですから実際に送られてきています。非常に微に入り細をうがった調査票なので、書き切れないと返し切れないという形で、なかなか数が積み上がらないというのが1点あると思います。
 それから、甲状腺に関しましても大分時期遅れになっていますので、地域の医療機関が本当に一生懸命協力しないと、どの道、全例検査していくというのは、時期遅れがそのままずっと積み残されていくような感じに見えます。それが2点目。
 そして、そのためにも、日本医師会として関係省庁にお願いしているのは、ナショナルセンターという位置づけでサポートしていただけないかということを、ずっと言い続けているわけです。ここの文言には、福島県の事業をサポートすると書いてあるわけですね。実際には、先日の竜巻の被害で、アパートには福島県民の被災者、避難民があそこにいたわけですね。福島県民というのは、保健所のディストリビューションを見ますと全国に散らばってしまっているのです。帰り切れない。その中でも、私のいるいわき市辺りにかなり戻ってきているという事情がありますが、それだけで済まないのです。
 ですから、福島県が主体的にと幾ら言っても、役所がまだ関東にある町もありますし、そして、福島県の抱えている問題、不安というのは、この関東で抱えている不安、問題意識と全く共通でして、日本じゅうがまたそうなのです。この間、九州に行っても同じお話を伺いました。それをどうやって一つずつ解決していくかという問題は、日本という国が抱えた問題だと思うのですね。それをまず、福島県から一つずつ解きほぐしていかない限り、この国の持っている不安感というか、先が見えない感じはとれないのではないかと思います。
 だから、そういう意味で、国の姿が見えてほしいということをずっと言い続けているわけです。それは健康だけではなくて、実はあらゆる不安なのです。水、そしていろいろなことが不安ですね。この道路、通っていいのですか、この生け垣はどうしたらいいのですかということは、植物学とか動物学とか環境とか、上がってくる、毎日漏らされる不安にあらゆる周知を集めて即座に対応しないと、この地域には住めないという結論が出てしまうわけです。それがナショナルセンターという位置づけです。
 後の項目で、またお話がありますが、1回切らないとあれでしょう。その辺のところを。
○宮村部会長
 ちょっとコメントをいただけますか。
○塚原厚生科学課長
 幾つか御指摘、ありがとうございました。
 全県民健康調査の関係でございますけれども、特に県外に避難されている方の対応ということで御指摘がございました。こちらの方は、福島県立大とも相談させていただきまして、厚労省関係で言いますと、結核予防会が窓口になり、全国展開しておりますので、その中で特段御協力いただけそうな病院あるいは診療所の方に御協力いただくような形で、県外に避難している方も同じレベルで健康管理が受けられるような体制をつくらなければいけないということで、1月に厚労省の方で関係機関にお集まりいただきまして、そういった体制をこれから徐々にとっていくのだということで取組みを進めてきております。
 その結果、どのぐらいの実績が出てきているかというのは、まだ手元に持っておらないわけでありますけれども、そんな取組みをさせていただいています。
 それから、甲状腺のお話がございましたけれども、甲状腺の検査をスタートしまして、特に18歳以下の子どもを対象に先に始めています。特に飯館村とか、かつての緊急避難準備区域になっているところを、まず先にやろうということで、もう万の単位で子どもの検査がされております。
 位置づけとしましては、放射線の影響が、甲状腺に対して、今はないという前提でございます。チェルノブイリの状況を見ても、もう何年かしてから影響が出てくるということですので、今の状況をまず確認するのだということで、2年をめどに対象者の検査をやりたいと、県の方で準備をしてくださっています。県外の方も含めて、実施体制については私たちも協力していこうということでございます。そういう状況で進んできているということでございます。
 それから、特に放射線に対する健康不安対策ということで御指摘がありましたけれども、これも福島県だけの問題ではなくて、全国の問題だという御指摘でございました。これはまだできていませんけれども、原子力規制庁が環境省の中にできるという考え方で準備が進められておりますので、それを前倒しをするような形で環境省の方が音頭をとりまして、リスコミを積極的に進めていこうじゃないかという取組みをしております。
 これには、今日、御出席されておられます明石先生のおられる放医研なども協力してくださりながら、食品の問題、その他もろもろの問題がありますので、厚労省の方からもメンバーが出るような形で、環境省が音頭をとってリスコミをどう充実させていくかということを議論しております。これも全省的に連携しながら取り組んでいくことになろうかと思います。
 そのほか、お答えに漏れがあるかもしれませんけれども、以上、ざくっとした話ですけれども、お答えをさせていただきました。
○宮村部会長
 どうぞ。
○石井委員
 間接関与ではなくて、ナショナルセンター、国の関与という形をとっていただけないかという話についてはいかがですか。
○矢島技術総括審議官
 特に、今回の原子力発電所の災害に関しましては、基本的には細野大臣のところで一括的にいろいろと調整していただいている中で、我々厚生労働省としてもいろいろと御協力させていただいています。その中に、そういう御要望のような話もあると我々も承っておりまして、原子力災害に対応できる施設についての要望も県から出ていて、それについていろいろな議論があると聞いているところであります。
○石井委員
 明石先生にこの間も御相談して、岩手県でホットスポットがある。そして、健康に対する大きな不安がある。それを何とかしたいということで講演会をすることにしていただいた。そして、例えば関東圏で同じような事例か何県かにまたがってあります。だから、福島県の枠の中だけで対応すればいいだろうという話でもないということなのですよ。それを我々が一々拾って対応するだけではなくて、国がその全般をカバーする。しかも、放射能汚染の不安だけで済まないのです。そういうことをある種の窓口のようなものを、外部機関に委嘱するようなことをやってくれということではなくて、まず福島県のたとえばいわき市など被災民近傍で直接関与していただきたいという意味で申し上げているわけです。
○宮村部会長
 審議官、お願いします。
○矢島技術総括審議官
 先生の御指摘は、我々、しっかり承らせていただいておりますので、関係部署にしっかり伝えたいと考えています。
○宮村部会長
 ほかに。どうぞ、野村委員。
○野村委員
 同じことで教えてください。1の健康支援の調査なのですけれども、科学技術部会でも常々皆さんからも、被災された方にそういった調査を行う場合には、その方たちに過度の負担等を与えず、直接的なメリットがある意味での調査をやっていってほしいという要望がいつも出ていたと思うのですけれども、その辺りについてはどうでしょうか。
○矢島技術総括審議官
 私どもの方からも、調査する場合にはそういうことに配慮するようにということの通知を出させていただくとともに、そういうことも踏まえて、ここにありますように県民健康管理調査というものを福島県が主体となって取り組んでいただく。そこに我々がいろいろと御支援させていただくという形になっております。御指摘のような懸念がないような形で進めさせていただいていると理解しております。
○野村委員
 書き切れないとおっしゃっていたものですから。
○矢島技術総括審議官
 そこのところも議論がありました。ただ、どういうふうにしたら少しでもいいかということを、例えばそのときの天気がどうだったのか、どういうニュースがあったのか、そういう記憶を呼び起こして書いてもらうように、現地の人たちの意見を踏みながら、どういう形が状況をわかりやすく調査できるのだろうかということも踏まえて、福島県立医科大学の方も工夫していただいて調査が進んでいる。そのときにも、福島県の地元の医師会からも、担当の理事の先生にも入っていただいて、いろいろと難しい点はあるのですが、少しでも調査でちゃんと実態が把握できるような形を現場で工夫していただいたと考えております。
○野村委員
 被災された方たちの実態把握をされるだけではなくて、調査のときに必要な、心身ともに支援を求める人がいたら、それに対応できるような仕組みがということも言われたと思います。
○矢島技術総括審議官
 実際の調査の仕方も、例えば保健所が関わる場合には、保健師とか保健所医師が関わりながら、もしそういう問題があれば個別に対応させていただく形ができるような仕組みになっていると思います。ただ、郵送だけの方もいらっしゃいますので、そういうことがどこまで把握できるかという課題はあろうかと思いますが、県の保健師の方々にもきちんとつなげるような形でいろいろと検討していただいていると認識しております。
○野村委員
 そういう意味でのお金が非常に行っているようなので、是非有効に使っていただきたいと思っています。
○宮村部会長
 私から1つ質問させていただきます。震災後の感染症対応ということですが、直後にはワクチンの定期接種どころではなかったと思うのですけれども、1年たって、それはきちっとキャッチアップできているかどうかということを教えていただきたいということが1つ。
 それから、震災後に、感染症、特に洪水後の例えばE型肝炎とか腸管感染症が流行することが心配されるわけですけれども、それについて、これが1年経ってから、そういう事実があったのか、それは認められなかったのかということについて、どこかで報告なされており、厚労省として把握されているかどうかということを教えてください。
○斎藤厚生科学課国際健康危機管理調整官
 健康危機管理対策室の斎藤です。
 まず、1つ目のワクチン接種の状況の件でございますけれども、2010年、震災前との比較でございますと、例えば麻疹・風疹、MRワクチンの接種率のデータで申し上げますと、全国的に上がる中で、被災地では若干接種率が落ちているところがあると聞いております。また、ポリオワクチンの接種時期でもあったわけですが、実施できないところもございましたので、一時的に接種率は下がったと聞いております。ただ、その後、秋に接種を行うなどして、接種率はある程度持ち直していると聞いております。
 2点目の被災地での感染症の発生状況でございますけれども、地震や津波等で傷を負われた方の破傷風患者の発生とか、津波で水を飲んだ方のレジオネラ症の発生はあったようでございます。また、幾つか散発的に呼吸器疾患等の発生も見られておりますが、大規模な発生というのはなかったものと確認されております。また、ノロウイルスによる感染性胃腸炎の発生というものは一部避難所でございましたけれども、御指摘のようなE型肝炎とかに関しましては、特に流行が見られたということは報告されてございません。
 被災地の感染症の発生につきましては、感染研感染症情報センターが発行しております病原微生物検出情報というものの中でまとめられております。こちらを御参照いただければと思います。
○宮村部会長
 ありがとうございました。ほかに。まず、明石先生。
○明石委員
 放医研の明石でございます。1点、厚労省にお伺いしたい点があります。それは、今、私どもの研究所でも、今回の震災、原子力・放射線の影響について電話相談をやっております。原子力・放射線の事故というのは、生物・環境以外に精神的、それから経済的・社会的な影響が出るというのは前から言われていることなのですが、質問の内容が、放射線の健康影響というよりも、精神的・心の問題にかなり移ってきている。私どもの研究所自体に精神的な専門家がいないもので、外の心理的な専門家の応援をいただいて、今、電話相談に対応しています。
 恐らく心の問題というのは、厚労省の方が我々の研究所よりも大分強いだろうと思うのですけれども、原子力災害に必ずついてくる心の影響等について窓口をつくっているとか、もしその情報が何かあったら教えていただければありがたいと思っております。
○矢島技術総括審議官
 PTSDという意味での専門家が心のケアをやっております。あくまでもPTSDということなのですが、そのときに今回の放射線の影響についてまでわかった上でPTSDの話ができるかどうか。実際にやっていただいている国立精神・神経センターの先生方は、普通の一般災害での御経験はあるのですが、そこまで対応できるかどうかまで、我々は把握しておりません。
○石井委員
 情報を含めて。実は、福島県立医大の精神科のチームが災害直後から現地入りしていただきました。福島県では、災害による後遺症的なメンタルケアに関しては対応が非常に早かった、ただ問題なのは、先ほど申し上げたように、また明石先生がおっしゃったように、納得して夜寝て、朝起きたら、やはり不安なのです。もう一回、どうなのだろうという話に戻るわけですね。これは地域住民というのは、NHKの放送を見たって、何をしたって、また新しい情報が入ってきますから、それに対する答えが欲しくなるのです。
 それが与えられていないという状況で、いわゆるトラウマ、PTSDという問題では、もうなくなってきているのですね。言葉遣いとして適当かどうかは別として、ある種の集団ヒステリーのような状況が蔓延していると私は認識しています。だから、それにこたえないといけないということなのだと思うのです。それで、先ほどからナショナルセンターという言葉を使っているわけです。
 もう一つ、感染症に関しましても、我々、DMATからJMATを引き継いで、日医などが立ち上げた被災者健康支援連絡協議会でやっていたことは、まさに感染症はどうなっていくかです。避難所、水とか衛生状態が非常に悪い状況が1か月から2か月、それがまた継続して寒い発災当時から、今度は非常にじめじめした季節が続きましたので、散発的にはいろいろなレポートがあります。ノロもありましたし、呼吸器感染症もありましたし、勿論、破傷風もありました。
 ただ、幸いなことに、小児科医会の協力も得られて、ワクチン接種なりが地元でできないところには、直接行っていただいて、地域での活動を継続してもらったものですから、1年経った時点でみても、今回はこの程度で何とかおさまったのではないだろうかというのが、今、考えているところです。
 それで、せっかくですから、食品のという次のページの論点に入ってよろしいでしょうか。
○宮村部会長
 どうぞ。
○石井委員
 地元でのいろいろな話を聞いていますと、まず仕事をし、そして安心して住みたいという要望の中で、例えば福島県で15万人ぐらいの住居を失って避難状態の方々がまだいるわけですね。それに対して、1年経って、まだ仮設という状況で、住居が仮設であると、仕事も仮の仕事になるわけです。したがって、ソーシャルウェルフェアという概念からすれば、まさに厚生労働という概念からすれば、それが享受できない状況の方々がいるわけです。それをどういうふうに考えていくか。
 これは被曝がなくたって、同じ状況が宮城・岩手にありまして、コミュニティがいわゆる流れ解散状態になってきているという状況は同じだというお話を伺っております。いつまで仮設住宅に住まなければいけないのかということは、非常に大事なメッセージなのです。本格的な帰還や移住はいつから始まるのか。被曝の問題、放射能汚染の問題がそれに相乗しますと、今、福島県は除染が済めば住めますというメッセージが来るのですが、しからば、それはいつなのだということに答えられる方がだれもいないのです。大臣が来たときに直訴するというのが、大体、今のパターンなのです。それ以外のところでは、話をしてもだれも聞いてもらえない。答えはないという状況なのですよ。
 それは、除染がない宮城・岩手がどうなのかというと、ここも同じような状況なのです。復興計画ができて、新しいまちづくりが起こって、そこに移り住んだら、国の言うソーシャルウェルフェアが手に入る、それがいつかが見えない、見えないまま置かれるということは、これこそメンタルにも絶望感が増しているわけです。まして、御老人が多いゾーンであれば、それは終の住みかなしにさまよっていなさいということを宣告するにすぎないことなのですよ。この辺を、今日の話題に入るかどうかは別として、まずお考えいただくということが第1点です。
 もう一点、ちょっと長くなって恐縮ですが、食品の基準値に関して言いますと、汚染の基準値が、茨城・福島の漁業・農業が復活するかどうかのクリティカルなポイントのところで、もう一回ハードルが上がったのです。これが逆であったら、彼らは仕事に戻って、そして自分で稼ぎをつくれる。ということは、自分で保険証が持てるという状況が出たであろう、ちょうどその瞬間にハードルが上がったものですから、彼らは、新しい作付はできないし、新しい漁に出ることもとりあえずできないわけです。このタイミングでよかったのか、悪かったのかということは検証していただく必要があると思います。これが2点目の指摘です。
 以上でございます。
○矢島技術総括審議官
 復興に関しましては、国といたしましては復興庁をつくって、2月から一元的に進めていこうということでやっておりますが、御指摘のように、地元の方々の御意見とかを調整した上で、例えばどこに建てるのかということの調整はいろいろと難しいということは聞いております。ただ、なるべく現場、地元の方々の意見を尊重して、例えば高台にするのかも含め、具体的にどういう案をそれぞれの県がつくっていただくかということで、いただいた計画を基に復興庁の方で具体的に予算配分をやるということになっております。
 先生の御指摘のように、なるべく早く、どこかに場所が決まればいいのでしょうけれども、地元の人たちの意向も踏まえて議論がされていると聞いています。そういう意味では、補正予算はかなり早い時期からついて、金額もかなり積まれていたのですが、実際に見てみますと執行されていないというか、使われずにそのまま年を越してしまった。御指摘のように、地元の中でもどうするかということを御議論していただくということで、遅くなっているという状況もあるみたいです。いい方向で少しでもすすめることができればと思っております。
○林食品安全部企画情報課長補佐
 基準値の設定でございます。これは、昨年度以来、非常に長い議論の末に今の形で基準値として改定させていただいたところでございます。消費者の方々からは、より厳しい、安心できるものにしてほしいという意見が多く、またパブリックコメントでもそういった意見の数が非常に多い中で、また生産者の方々からの先生がおっしゃったような御意見もあるということで、非常に難しい対応を必要としたところでございます。
 厚生労働省としては、食品の安全・安心ということが確保しなくてはいけない大きなミッションであると考えておりますけれども、御指摘のようなところも踏まえて、関係省庁とも連携しながらリスクコミュニケーションを図ったり、あるいは生産の対応で、どういう形で作付すれば放射能が下がるかといったことも関係省庁で取り組んでいただいておりますので、そういったことも、しっかり連携して今後取り組んでいきたいと考えております。
○宮村部会長
 ほかに御意見、どうぞ。
○古米委員
 先ほど感染症について、災害後の大規模なものはなかったということは非常に幸いだったと思いますし、私自身は水道とか水に関わっている専門家としては、被災後の水道に対する対応は比較的うまくいったと思います。それがある意味、感染症防止にプラスに働いたようにも思います。厚生労働省としてはこういった対応をしたというレビューをされていますけれども、改めてそのレビューの在り方について意見を申し上げます。
 今回の災害では、実は水道が直っても下水処理場が全く機能しないため、水道を使い始めて、排水がうまくいかないと感染症の原因微生物が流れていく過程で一層危険な状況になりえた。下水道は、まだまだ復旧が進まない。そうすると、下水道を所管する国土交通省だけでなくいろいろな省庁が関わって、感染症を防止するべく機能しないといけない。ここは厚生労働省の部会ですけれども、改めて、今回に関しては厚生労働省としての対応と、もう一つ、水を介した感染症に関連したときにほかの関連省庁と連携してどういったところをどう工夫されて、どう対応されたのか。
 更に言うならば、津波被災したところにおける瓦れきの問題でも、あのままずっと瓦れきやヘドロが堆積した状態、さらにはそのような状態が夏に起きていたらどうなったかということも想定すると非常に危険な状態だったと思います。厚生労働省としての危機対応と、それと関連した機関がどう連携して動いたかというのを何か取りまとめて、今回はこういうケースだったから、どうにかなったとか、是非レビューを整理していただく。できればそういったものは、先ほどの国際的の場もあるので、日本から英語で情報発信するということが国際貢献につながると思いますので、是非御検討いただければと思います。
○宮村部会長
 大変前向きな御意見、ありがとうございました。ほかに。はい。
○山本委員
 食品の放射性物質対策を取りまとめさせていただいた者としては、この時期、福島産のものの信頼回復ということが一つの大きなポイントになるだろうということでありました。安全を優先させるということで、更に安心感もつけ加えて、消費者に対してはそういう動きをとったということだと。ただ、生産者に対しては非常に厳しい状況になったのかなということで、一部不安を示される専門家の方もおられたことは確かです。
 ただ、一部の福島の農水関係の御意見を伺ったときには、逆にそういった基準にしていただいたことによって、福島産のものが同じレベルの安全性を持っているということを保証するものであるということで、歓迎する意見も一部にはあった。今後、海産物がどうなってくるのかというのが今まだはっきりしておりませんので、その辺の調査等を進めていただかないと、安心感を持って提供することはできないのかなということで、そこがモニタリングの重要性といいますか、そういうものを今後、しっかりとやっていただければなと思っております。
 もう一点、食品に関してですけれども、一義的には地方自治体が食品衛生を担当するわけですが、復興支援の中の厚生労働省の関与として、そういう食品産業というものの衛生管理的なものの対応というものを、どのようにしてとらえてきたかというのはちょっと見えていない部分があります。津波ですべて流された工場が、そろそろ再開しているように聞いております。そういうところでつくり始めているとなると、結局、土壌中にいた菌の芽胞とか汚染が出ているものを、どの程度把握して再開しているのか。その辺の全体の状況を厚労省としてももう少し把握すべきではないかと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○林食品安全部企画情報課長補佐
 食品の衛生については、食品衛生法にのっとって対応されているところでございますけれども、是非参考にさせていただきたいと思います。
○宮村部会長
 どうぞ。
○大友委員
 これは前から課題になっていたのですが、明石先生が中心になってやっていらっしゃる緊急被曝医療体制と、厚生労働省の災害対応の医療体制との連携のすり合わせについてです。今回の震災でも、福島県の初期被曝医療施設がほとんど緊急避難地域になってしまって使えなくなった。そこに対して、2次被曝医療施設である福島医大しか残っていない。それに対して、3次としての放医研、広島大学、長崎大、弘前大からの支援はあるけれども、それ以外のところからの支援がうまくできなかったという問題があったと思います。大きく失われた初期被曝医療体制のところが周辺から十分バックアップできなかったということです。今回は、Jビレッジが、初期被曝医療施設としての機能を補完した訳ですが、Jビレッジの医療体制整備は、緊急被曝医療体制以外の枠組みからの支援に大きく頼っていたと思います。
 それから、原発事故対応の初期のころ、原発の中で爆発事故が起きて、汚染して、なおかつけがをした人が多数発生する危機があって、そこに対して日本救急医学会、もしくはDMATが支援したわけです。今回は、現場レベルで調整して何とか対応したわけですけれども、今回の経験を基に、文科省の緊急被曝医療体制と厚労省の災害医療体制とが、現場レベルでの臨機応変に頼るのではなく、事前計画上も連携できるような体制を今後つくっていかれるのか、その辺のお考えがもしあればお聞きしたいと思います。
○宮村部会長
 審議官。
○矢島技術総括審議官
 今、先生御指摘いただいたように、1次被曝医療機関が既にその段階で使えなくなってしまったということで、福島県立医大にかなりお願いするような体制になったということだと思います。では、実際に被曝した患者の搬送がどうだったかというと、数的には何とかできたのかなと思っております。実際の現場で事故に遭われたとか被曝された方で、医療が必要な方についての対応は、きちんとできたのではないかと思っております。
 ただ、先生、御指摘のように、もう少し広い意味でどういうふうに担っていくのかということについては、1次被曝医療機関を20km圏内というのでしょうか、少し近くにあり過ぎましたので、今後、地域にどういうふうにつくっていくのかという体制づくりをちゃんとやっておかないと、今のままの形であれば近過ぎるという可能性があるので、これはこれからの課題だと思います。
 放医研や、専門的に担っていただいているところとどういうふうに連携していくのかということについては、国としてこれからいろいろと調整していかなければいけないのではないかと思っております。
○大友委員
 前から、明石先生の方からも連携に関して問題だということを御指摘いただいておりますので、今回の震災の経験を踏まえて、もう一歩前進させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○宮村部会長
 どうぞ。
○石井委員
 ちょっと補足しますと、いわき市にある福島労災病院と磐城共立病院が1次被曝医療機関としては生き残った機関、2つです。それから、山を越えた郡山の病院群が対応していただいたというのがありまして、だからあのぐらいでおさまったと言えるのではないかと思っております。郡山の方は、何のタイトルもないけれども、頑張った。いわき市の方では、医師会や病院団体がそういう場合にはグループとしてお受けしますという申し合わせを改めてやったという経緯があります。
 それを今度は普通の状態に置きかえて、そういう在り方が平時から必要なのではないかという見え方をしていただく必要があるのではないかと思います。
 もう一つは、オフサイトセンターが近くにあり過ぎた。あれは致命的な欠陥です。それはここには書いていませんが、そういう問題があったということだけは共通認識として持っていないと、あれが機能しなかったことによる問題というのは非常に大きな問題だと思います。
○宮村部会長
 ありがとうございます。それはよろしいですか。
○矢島技術総括審議官
 はい。
○宮村部会長
 時間が予定より相当過ぎましたけれども、せっかくここまで来て、貴重な御意見、たくさんありがとうございました。更にありましたら二、三伺いますけれども、よろしいですか。
 それでは、この東日本大震災のことについては、特に正確な事実の検証を行って、次に起こり得ることに対しての想定外でない、いろいろなことの準備ができるような前向きな対応を厚労省が中心にやっていただきたいと思います。
 それでは、これで今日予定いたしました議事が終了いたしました。次回の開催は未定ですけれども、緊急に開催を要することがなければ、年に1回程度、定例で開催したいと思っております。その際は、また追って、日程調整等の連絡をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 健康危機管理対策室  田仲
 電話:03-5253-1111(内線:3818)

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