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2012年3月13日 第113回労働政策審議会雇用均等分科会 議事録

○日時

平成24年3月13日(火)15時00分~17時00分


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

公益代表委員

林分科会長、権丈委員、佐藤委員、田島委員、中窪委員、山川委員

労働者代表委員

小林委員、齊藤委員、關委員、中島委員

使用者代表委員

川﨑委員、瀬戸委員、中西委員、布山委員、渡辺委員(松本委員代理)

厚生労働省

藤田政務官、髙井雇用均等・児童家庭局長、石井大臣官房審議官、
伊藤総務課長、吉本雇用均等政策課長、成田職業家庭両立課長、
吉永短時間・在宅労働課長、大隈均衡待遇推進室長

○議題

1 パートタイム労働対策について
2 その他

○配布資料

配付資料 No.1 関係する審議会の状況
No.2 論点及び関連する主な意見
参考資料参考No.1 検討項目(案)

○議事

○林分科会長 おそろいになりましたようなので、これから「第113回労働政策審議会雇用均等分科会」を開催します。本日は、冨高委員と渡辺委員がご欠席です。なお、渡辺委員の代理として日本商工会議所産業政策第二部担当部長の松本様にご出席いただいております。なお、本日は、藤田政務官がご出席の予定です。政務官は政務のために途中退席される予定です。よろしくお願いします。
 議事に入ります。議題は「パートタイム労働対策について」です。まず資No.1について事務局から説明をお願いします。

○大隈均衡待遇推進室長 資料を説明します。資料No.1は「関係する審議会の状況」です。関係する審議会として、上半分にありますように、労働政策審議会・労働条件分科会が2月29日に開催されております。この場において、「労働契約法の一部を改正する法律案要綱」について、厚生労働大臣から労働政策審議会長に対して諮問がなされているところです。資料はまた後ほどご説明します。
 下半分にありますように、社会保障審議会・短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会は、直近では2月13日に、短時間労働者の社会保険適用に関する論点ということで議論が行われております。これが直近の状況です。
 もう少し詳しい状況をご説明します。労働条件分科会の関係です。資料No.1-2は「労働契約法の一部を改正する法律案要綱」で、厚生労働大臣から労働政策審議会長に対する諮問文です。実際に諮問をなされた内容は、1枚めくっていただき、また資料No.1-2については、後ろに昨年末に取りまとめられております建議もついておりますので、そちらも適宜ご参照ください。諮問された労働契約法の一部を改正する法律案の要綱は、昨年12月26日に労働政策審議会長から厚生労働大臣に対してなされた「有期労働契約の在り方について」という建議を踏まえて、厚生労働省で作成したものです。
 1頁の第一です。有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換。これは「有期労働契約の長期にわたる反復・継続への対応」という項目で建議の中に盛り込まれていたものです。第一の一を少し読みますと、同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約ということで、更新された有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなすものとする。契約を反復更新して、通算期間が5年を超える場合に無期契約の申込みをすると使用者は申込みを承諾したものと見なす。効果として無期契約が成立するということです。この場合、以下にありますように、新たに成立する無期労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件とするものとする。括弧の中は別段の定め、ここは個別の労働契約ですとか、就業規則、労働協約、こういったもので何らか別途の定めをしている場合を除いて、新たに成立する無期契約は有期契約のときと労働条件を同一とするということです。
 第一の二については、建議の中のいわゆるクーリング期間についての定めです。二の最初の3行目の上までは、これは契約と契約の間に空白がある場合を意味します。3行目、契約と契約の間に空白がある場合であって、当該満了した日の翌日から次契約の契約期間の初日の前日までの期間が6月以上あるときは、当該空白期間の初日前に、契約期間が満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しないものとする。
 簡単に申し上げると契約と契約の間に空白期間があり、その空白が6か月を上回る場合には、空白期間の前後の有期契約は通算しないということです。
 括弧の中については、2頁の1行目の「六月」の下の括弧は当該一の有期労働契約の契約期間ということで、これも1つ括弧を飛ばして3行目にいきます。この契約期間が1年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に2分の1を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した期間ということで、これは有期労働契約の契約期間が1年に満たない場合、クーリング期間は、1年に満たない有期の期間に2分の1をかけて端数を処理した期間ということで、厚生労働省令では、端数についての計算の方法について定めるということです。いま読み飛ばした2頁の1行目の後半半分の括弧は(当該一の有期労働契約の契約期間を含む二以上の有期労働契約の契約期間が連続しているものとして)の括弧の部分は、非常に短かい有期契約を、短かい空白期間をはさんで繰り返している場合、そういうものは1つの有期契約として捉えるということで、その捉え方の基準を厚生労働省令で定めるということです。二は、クーリング期間の算定の方法についての非常に技術的な規定です。
 第二の有期労働契約の更新等については、建議の中に「『雇止め法理』の法定化」という項目があり、それを踏まえて条文化されたものです。第二の後ろから5行目の「有期労働契約であって一又は二のいずれかに該当するもの」の一又は二というのは、雇止め法理が適用される2つの種類の有期契約ですが、次の頁にありますので、また後ほど説明します。この2つの種類の有期契約に該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶すること、即ち雇止めをするということが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなすものとする。
 該当する有期労働契約の2つのタイプが3頁に一と二ということで規定されています。一は、いわゆる実質無期となっている有期労働契約ということで、東芝柳町工場事件の最高裁判決で示されたタイプの有期労働契約です。「当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること」という書き振りです。
 二は、日立メディコ工場事件の最高裁判決の中で示された、労働者が雇用関係の継続を期待することに合理性がある場合の有期労働契約についての規定です。「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること」とされています。
 第三は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止です。「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない無期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないものとすること」とされております。第三についても建議の内容を踏まえて条文化されたものです。
 第四のその他は形式的な整備を行うことと、第六の附則ということで、施行期日は雇止め法理などについては、公布の日から施行するということ、ただし書きにありますように無期転換、あるいは不合理な労働条件の禁止は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するということです。また、経過措置については、無期転換の対象になる有期契約は施行日以後から開始する有期契約に適用されるということです。また、三に検討規定がありまして、無期転換の規定の施行後8年を経過した場合の見直しということです。無期転換が実際に行われるのは施行後5年、そこからさらに3年を経過した場合に見直しがなされるということです。労働契約法の改正法案の要綱の中身については以上です。
 「短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会」の資料は資料No.1-3です。2月13日の特別部会に提出された資料です。左下に4と書いてある部分をご覧ください。2月13日の特別部会においても、平成19年法案の内容を参考に、以下の項目について検討ということで、週の労働時間、賃金水準、雇用期間・雇用見込み期間、労働者の属性、企業規模といった点についての議論が行われたところです。さまざまな意見が出されており、2月13日の時点では部会長からも一部では意見の一致もあるけれども、大部分においてまだ意見の食い違いがあるというご発言が最後にあったところです。
 中でも適用の範囲について、中小企業等を適用除外とする意見と、企業規模にかかわりなく適用を図っていくという意見が出ているという部会長からの発言が最後にあったところです。簡単ですが関係する審議会等の状況については、以上のような状況です。

○林分科会長 ただいまの事務局の説明について、委員の皆さまからご質問、ご意見等がありましたらご発言ください。

○佐藤委員 労働契約法の第一の一ですが、無期転換の権利が発生したときに、短時間勤務の方を想定して無期転換の権利が発生するわけですが、そのときにフルタイムの無期になりませんかと言ったら、自分はいやですと、短時間で無期にと言ったら、短時間で無期を作らなければいけないのか。権利としては現状で無期にするというのが権利なわけですね。そのときに普通の正社員転換と同じように、会社としてはフルタイムの正社員を是非と言っても、私はフルタイムでは無理なので短時間で働き続けたいですと言ったときには、短時間の無期を作れという趣旨が1つ。もう1つは、会社が聞いて断った場合の権利はどうなっているのかです。本人が言ったら、会社は聞くわけですよね、どうされますかと。私はいいですと言ったとき、その権利はずっとその期間中は転換の権利は残っているのかどうか。その2つを教えていただければ。

○大隈均衡待遇推進室長 転換後の労働条件は、労働時間を含めて従前の労働条件と同一とするとありますが、パートタイム労働者の無期を作らなければいけないかについては、別段の定めがある場合には、例えば個々に労使で協議して従前と異なる労働条件を定めることができるということではないかと思います。

○山川委員 同一の労働条件ということなので、原則は同一のまま続くということではないのでしょうか。もちろん法律とか就業規則に違反しない限り話合いで変更するとか、そういう可能性があるにしても、何も決めなければ、期間を除けば同一ではないかと思いますけれども。

○佐藤委員 短時間を作らなければいけないわけですよね。

○吉永短時間・在宅労働課長 いまほど山川先生がおっしゃったとおりです。基本的な法律の枠組みには要綱の第一の一に書いてあるとおりで、原則は契約期間が無期か有期かを除いて同じ条件に転換する形成権的な申込みの権利があるという形になりますので、その上でフルにするか、しないかの議論はもちろんあってよくて、労使が一致すれば、そういう条件になると。ただ、それがなければ基本的には同じ賃金、いろいろな福利厚生も含めて同じ条件の下で契約期間だけは無期になるということが、基本的契約法の考え方だと思っております。あくまでも申込みをしたときという形になりますので、逆に言うと申込みをしなければ有期の条件がそのまま継続する形になると思っております。

○林分科会長 そのほかにご質問、ご意見ございますか。

○瀬戸委員 この労働契約法の一部改正云々は、今後の予定の審議の中での結果と均等分科会との兼ね合いで、何が影響され、何が影響されないかみたいなところはどのようなのでしょうか。

○吉永短時間・在宅労働課長 今後の見通しは、本来であれば今日閣議決定する予定で契約法を結んでおりましたので、若干労使間の文言の調整が進んでいる状況だと理解しております。有期労働法制についてはこういう形で整理が進んでいる状況なのかと思います。その上で、パートタイムの方については相当数が有期労働者であるということになりますので、そういう意味で、新しくできる有期労働法制を1つ前提としながら、今後のパートタイム労働対策の在り方について検討していく形になるのではないかと思っております。

○林分科会長 今日が閣議決定の予定だったのですか。

○吉永短時間・在宅労働課長 通常の手続きですと、本日が最終閣議ということで、今日までに出す予定でしたが、若干作業が遅れていると聞いております。

○林分科会長 当分科会で検討するときに、この法案要綱を所与のものとして考えていっていいということでよろしいのですね。

○吉永短時間・在宅労働課長 私どもの理解としては、有期労働法制についてはパートタイムの方、期間雇用の方、あるいは派遣労働者の方、いろいろなカテゴリーの方がいらっしゃるのだと思います。そういうさまざまな有期労働者のカテゴリーの大枠を有期労働法制でどういう形で無期転換していくのかということも含めて議論が進んでいるのだろうと思っております。その中で、パートタイム雇用の問題ももちろんあろうかと思いますが、そういった問題については、こういった一般的な有期労働法制の在り方を踏まえた形でのご議論をいただければと考えているところです。

○林分科会長 そのほかご意見、ご質問等ございますか。社会保険も含めてどうぞご意見があったらお話ください。この点についてはほかにご意見がないということで、次に資料No.2についてご説明をお願いします。

○大隈均衡待遇推進室長 資料No.2「論点及び関係する主な意見」について説明します。前回お出しした資料ですが、前回の意見を新たに書き加え下線を付しております。その部分についてご説明します。まず1頁の第8条の差別的取扱いの禁止です。論点として事業主はパートタイム労働者であることを理由として、合理的な理由なく不利益な取扱いをしてはならない。そしてガイドラインで「合理的な理由」を例示するという論点です。2頁の下線部分です。まず、労働者側委員のご意見として、第8条が企業のネガティブチェックリストにならないよう、3要件を廃止した上で、ガイドラインを作成するのが非常に重要であるという意見が出ております。また、下線を引いた2つ目です。ガイドラインで示す合理的理由には、3要件に準じた内容は入ってくるというご意見もありました。また、その次の○ですが、例えば、契約時に配転するか否かは想定できないと。企業の中で配転が必要か等、具体的なイメージを考える必要があるというご意見が前回出たところです。
 使用者側委員のご意見として2頁目の上から2つ目です。企業の実態として、処遇を考える際には、3要件が有効に機能しているということで、現行の3要件で問題が発生していないということでした。また次の○ですが、第8条の枠組みを変えることには反対ということです。予測可能性を確保するのであれば、それは法文上に書くべきであるということです。下から3行、4行ぐらいにありますように、合理的な理由とだけ条文に書いて、中身はガイドラインというのは分かりづらいというご意見がありました。また3頁のいちばん上の○ですが、ガイドラインで合理性について決めるのは難しいと思う。まずは中身をどうするかを知りたいというご意見がありました。
 公益委員のご意見として2頁のいちばん下ですが、通常の労働者とパートタイム労働者の賃金の決め方や賞与の有無違いの差について合理性の判断基準が3要件であるということ。下半分にありますように、ガイドラインを設けるとしたら、従来の3要件も合理的理由となるのか。また3要件のみならず他の要素もイメージしているのかというようなご質問があったところです。
 続いて4頁です。有期法制を前提とした場合の3要件の在り方について、どのように考えるべきかという論点に関連して公益委員のご意見として、有期の建議にある期間の定めの要件と、職務の内容と配置の変更の2つの要素の位置付けの違いを踏まえ、パートタイム労働法の条文の枠組みをどうするかの議論が前提になるというご意見があったところです。
 5頁にパートタイム労働法の第9条第2項の在り方について、どのように考えるべきかという論点がありますが、関連で6頁です。労働者側の委員のご意見として、正社員と職務が同じパートタイム労働者であって、人材活用の仕組みが一定期間同じということであれば、「一定期間」は差別的取扱いを禁止すべきであるというご意見がありました。こういった事業所では、パートタイム労働者はキャリアラダーのいちばん上まで行って、正社員に転換していくという中で「一定期間」はパートタイム労働者が正社員となる過程の一部分であるということで、正社員と同じように取り扱うべきであるというご意見がありました。また、2つ目にありますように第8条や第9条第2項の「全期間(一定)期間を見込んで」というところが引っかかるということで、人材の適性や将来可能性について、確たる判断はできないというようなご意見もありました。
 使用者側委員のご意見としては6頁のいちばん上の○にあるように、正社員の待遇は、将来の見込み、期待も込めて、人材活用の仕組みの最終的な到達点まで見て判断するというご意見もありました。また、2つ目にあるようにパートタイム労働者が正社員に転換した時点で、正社員と処遇を同じにするということはあり得るけれども、その前から正社員に転換することを見込した制度は現実には即さないというご意見ですとか、第9条第2項はそもそも第8条をどうするかを踏まえて、考えるべきであるというご意見もありました。
 公益委員のご意見はいちばん上にあるように、正社員間でも、人材活用の到達点が異なると。しかし、そういう場合であっても、人材活用が同じである期間は、同じ処遇体系となっているというご意見がありました。また2つ目は、第9条第2項の一定期間同一の方法で賃金を決定する努力義務が、どれだけ実務上実効性があるかというご意見もありました。また、第8条との関係で、第8条を前提に第9条が規定されているということで、第8条と第9条は別々に議論ができないのではないかというご意見。4つ目は、有期法制との整合性という、先ほどご紹介したご意見と関連して再掲させていただいております。
 新たに書き加えているところとしては10頁をお開きください。10頁は第9条の関係です。パートタイム労働者の雇用管理の改善のため、事業主による取組を促進しつつ、パートタイム労働者の納得性を向上させる方策ということですが、公益委員のご意見として調査結果なども引用していただいて、キャリアアップとともに納得性の向上は、なお課題であり議論を深めたいというご意見をいただいております。
 その下の11頁は通勤手当の関係です。公益委員のご意見として、通勤手当の関係でパートタイム労働法第3条で事業主は一般的にパートタイム労働者の就業実態等を考慮して、労働条件、教育訓練、そういった雇用管理の改善に関する措置について、均衡確保の努力義務があると。指針においても、法律上の措置の対象にならないものについても均衡等を考慮して取扱うと書かれていると。これを踏まえると、例えば通勤手当について、現行法上においてもどれだけ努力義務が果たされているのか問題になり得るのではないかというご意見をいただいております。
 13頁は職務評価制度、職業能力評価制度関係の論点です。労働側委員のご意見として、パートタイム労働者の処遇改善のため、希望する方にキャリアラダーを整備して正社員化を促すことは必要であり、職業能力評価制度等の導入を積極的に推進すべきであるというご意見をいただいております。
 15頁は教育訓練の関係です。労働者側委員のご意見として書いておりますが、一定期間人材活用の仕組みが正社員と同じ基幹的パートタイム労働者については第10条第2項のキャリアアップのための教育訓練の実施を義務化すべきであるというご意見をいただいております。
 17頁は福利厚生の関係です。労働側委員のご意見として、一生涯に数回であればこそ、パートタイム労働者にも慶弔休暇を適用すべきであるというご意見ですとか、忌引きを理由とする解雇、自主退職の例があるというようなご意見がありました。
 他方で使用者側のご意見としては、慶弔休暇、特に忌引きにより不利益を被った事例やデータがどのくらいあるのだろうかというような問いかけもあったところです。2つ目の○も中小企業では、忌引きが欠勤と扱われるような、そういったような極端な例はないのではないかと。慶弔休暇の付与は企業の裁量に委ねるべきであるというご意見をいただいているところです。
 18頁、19頁は通常の労働者への転換の関係です。労働者側委員のご意見として、いちばん下に書いておりますように、正社員への転換の間口を広げてほしいというご意見をいただいております。
 また、公益委員のご意見としては、中間形態に関する発言が労使双方から出ていると。法律改正まで必要とするかどうか分からないけれども、中間形態の利用可能性についても検討してほしいというご意見をいただいております。
 第13条の説明義務の関係です。21頁です。使用者側委員のご意見としては、パートタイム労働者の採用時の賃金は地域相場による説明でも良いのかを含めて議論したいというご意見がありました。また、公益委員のご意見として、納得性の向上が課題であるというご意見をここでも改めて載せているところです。
 その他(履行確保)の関係で22頁です。労働者側委員のご意見として、誠実に対応しない場合、企業名の公表や過料が必要であると。対象企業の割合は関係ないというご意見を新たに追加しているところです。
 25頁、26頁はその他(法の適用関係)ということで、労働者側委員のご意見として、フルタイムパートがパートタイム労働法の適用対象外になっていると。しかし、実際にはパートタイム労働者と同じような処遇で扱われていて、保護する必要があるというご意見をいただいております。2つ目の意見も同趣旨のご意見です。3つ目のご意見ですが、疑似パートがパートタイム労働法の対象にならないのであれば、指針等も含めて有期法制の対象になることを確認していかなければならないというご意見もあったところです。
 使用者側委員のこの点に関するご意見としては1つ目の○にあるように、あくまでも短時間労働者法を前提に議論したいというご意見がありました。2つ目の○もフルタイム労働者がパートタイム労働法の対象になるのは非常に違和感を持つというご意見とともに、無期契約のフルタイム労働者は、企業ではかなり正社員に近いイメージであるということで、その具体的な実態を教えてほしいというご意見もありました。いちばん下にあるように、短時間労働者法であり、法律の対象は明確にしてほしいというご意見がありました。
 また、この点に関する公益委員のご意見として、いちばん上にあるように、パートタイム労働法は、少しでも通常の労働者よりも所定労働時間が短い労働者を対象としているということで、無期のフルタイム労働者と通常の労働者との処遇差については、基準法や契約法といった法律で対応すべきではないかというご意見ですとか、2つ目の○にあるように、いまパートタイム労働指針にフルタイム有期が盛り込まれておりますが、今後は有期法制により対応されるであろうというご意見ですとか、フルタイムの無期契約労働者を対象にすると全ての労働者を対象にした法律を作る議論になるということですとか、4つ目にあるように、疑似パートは有期法制の対象になるのではないかというご意見ですとか、26頁ですが、無期のフルタイム労働者と無期の正社員の労働条件の格差の問題は、基準法第3条の社会的身分に当たらない。民法の公序良俗、労働契約法第2条の「均衡」、この辺りの適用関係について、まだ未知の領域であると、判例も未形成であると。しかし以降ですが、パートタイム労働法は労働時間が短いということで対象を整理しているので、フルタイム労働者を対象にすると言うと、これは逆行してしまう。違う場で議論したほうが良いというご意見があったところです。前回の意見として加筆した部分は以上です。

○林分科会長 ありがとうございました。これは、皆様の意見をまとめたものなのですが、このペーパーについてお気づきの点、ないしは、もう少し発言の趣旨を明確にしたいというような点がありましたら、補足をしていただきたいと思います。特にそのような点がなければ、まず全体を通してご意見、ご質問等がありましたらお願
いします。

○中島委員 先ほどの有期法制のところで、第3「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」という文章があります。それと、パートタイム労働法との関係について、一般的なイメージでいいので、どういう関係になるのかをもう少し説明していただけないでしょうか。

○吉永短時間・在宅労働課長 現行のパートタイム労働法については、これまで分科会の中でもご議論をいただいたとおりですが、第8条あるいは第9条において、特に第8条においては職務、人材活用の仕組み、有期、無期で差別する取扱いをしてはいけない。それ以外についても、均衡をとるような努力にかかっているというような法制になっています。一方、新しく議論が進んでいます労働契約法については、有期労働契約であることを理由として、労働条件が有期か無期かという形で、その労働条件の相違が職務あるいは人材活用の仕組みを考慮して不合理と認められるものであってはならないとなっています。
 職務と人材活用の仕組みの考慮要素については、パートタイム労働法では要件になっているものが考慮要素に入っているというところで違いはありますが、それぞれを考慮したうえで不合理と認められるものであってはならないという構成になっています。あくまでも有期法制においては、有期か無期かによる相違について、合理的か不合理かを判断すると。一方、現行パートタイム労働法ですと、この有期法制がどのような形で関わってくるかはありますが、現行法について言えば、職務人材活用の仕組み、有期、無期の3つの要件で判断していく関係になるということです。

○林分科会長 よろしいでしょうか。追加の質問はありますか。

○中窪委員 1点、形式的なところですが、資料No.2の26項の公益委員の発言で、労働契約法第2条の「均衡」とありますが、これは労働契約法第3条の間違いではないかと思います。

○林分科会長 第3条の第2項ですね。中島委員のご質問に関係して、有期労働法制の当該職務の内容及び配置変更等の範囲その他を考慮する内容は、パートタイム労働法と同じであるという理解でよろしいのですか。

○吉永短時間・在宅労働課長 労働契約法における考え方が、最終的にどのような形になるのかが、国会審議等も含めて決まってくるのだろうと思っています。少なくとも、法律上書かれています考慮要素の文言は、基本的にはパートタイム労働法で用いられているいわゆる職務の内容です。労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度が職務の内容とされていること、あるいは職務の内容及び配置の変更の範囲という書きぶりは、パートタイム労働法とほぼ同じような内容になっています。そういう意味で、法律は異なっていますが、用いられている文言がほぼ同じですので、同じような考え方に立つのではないかと考えています。ただ、法律の構成が若干違っています。労働契約法については考慮要素になっていると。一方でパートタイム労働法については、要件になっているというところが、個別のケースになると若干違いが出てくるケースもあり得るかなとは思っていますが、基本的な枠組みとしては要件で見ても考慮要素で考慮しても、大きな枠組みとしては同じになるのではないかと考えているところです。

○山川委員 いま課長のおっしゃられたとおりだと思います。特に、労働条件分科会で、パートタイム労働法第8条の要素とどこが違うという議論を特段したわけではないと記憶はしています。おっしゃられたように、言葉が同じですので、パートタイム労働法第8条の要件を考慮して、先ほどお話があったように、要素ということで、合理的か不合理かを判断する資料になると。
 もう1点、違いがあるとしたら、こちらの法案要綱では、その他の事情というのがありますので、こちらのほうが若干パートタイム労働法の2つ以外のものも含んで考慮され得るという形では、柔軟性があろうかと思います。

○佐藤委員 そうすると、ここのところは、有期、無期による労働条件の違いが考慮されるのは、職務内容ですよね。それと、職務の内容及び配置の変更の範囲ですよね。仕事が変わるとか、職場が変わるとか。もう1つは、その他です。その3つを考慮していると。特に、その他が例示的な議論をしたわけではないと。わかりました。

○林分科会長 ほかにご質問等はありますか。

○中島委員 また戻ってしまうのですが、パートタイム労働者の多くが有期雇用ですよね。そうすると、こちらは司法上の効果を規定した法律ということで、縦横の関係で期間なのか、短時間なのかで、そこは内容によってだと思うのですが、どちらかが優先して適用されるようなことは考えられるのでしょうか。

○吉永短時間・在宅労働課長 バッティングしているようなケースであれば、新しい法律が優先だという考え方はもちろんあるわけですが、基本的にはどのような観点で合理不合理、あるいは差別的取扱い、差別されてはいないかという辺りを議論するかということで、どちらを問題にする方が申し立てるかで議論が進んでいくのではないかと思っています。ですから、有期でパートの方でいえば、もし労働契約法がこのまま成立すれば、この労働契約法に基づいて自分の処遇について不合理だという形で申し立てをすることもできるでしょうし、パートタイム労働法に基づいて3つの要件に該当するにもかかわらず、通常労働者の方と取扱いが違うことについて、その取扱いについて改善するようなご主張をすることもできるという関係に立つと思います。
 ここの考え方は、必ずしも両方で違うことを言っているわけではないのだと思っていますので、考え方の整理として、どのようなものを対象として、どのようなものを考慮要素あるいは要件として整理をするかの法的な考え方によって、分かれていることではないかと考えています。

○山川委員 いまの点も、この現行法を前提にすればおっしゃるようなことで、有期契約労働者対象、パートタイム労働者対象で適用対象は分かれますし、後法は前法を廃するというような形が適用されるかどうかという問題もまたあろうかと思います。これも、労働条件分科会では、両方の法律の適用関係の議論は特段していませんでした。あとは個人的な意見になりますが、そういう問題が起きるので、やはり両方の規定の整合性はこの場でも考える必要があるのではないかと思っています。

○林分科会長 ほかに全体を通してのご質問、ご意見等はありませんか。それでは、少し論点ごとに議論をしやすいように、絞りながら進めていきたいと思います。まず、第8条の差別的取扱いの禁止について、特に意見を強調しておきたいところがありましたら、お話いただきたいと思います。使用者側委員からは、3要件の維持というご意見があったのですが、3要件の中に「無期」であることというのが入っています。今回の有期契約法制がほぼ成立するだろうということで、その整合性の問題もありますので、その辺りについてご意見がありましたら、お願いしたいと思います。

○布山委員 既に4頁に主張として入っているのですが、いちばん上の○です。当時は建議だったのですが、その中にいま諮問されている第3の中身が入っていたので、これを盛り込まれて答申をされれば、3要件の議論は余地があるのではないかと思っています。

○林分科会長 その一方で、契約期間の定めの有無は、人材活用の仕組みと密接に関わるという発言もありましたので、その辺りはどのように考えていますか。

○川﨑委員 確かに、そこに密接に関わる部分はありますが、今回のこの条文案を拝見するのと併せて、大きく言うと人材活用の仕組みの中に包含されると考えて、企業の中としては運用していくと考えます。

○林分科会長 ほかに、第8条についてはご意見はありませんか。公益委員の先生方で、何か労働契約法制との整合性の点でご意見がありましたら、お願いします。ないようでしたら、次の第9条のほうに移らせていただきます。

○中窪委員 1点だけ、どうしてもわからないのは、先ほどの期間が定めがあることによる不合理な労働条件の禁止のところで、労働条件の相違について、これは期間の定めがあるから相違しているのだということで、差別という言葉は使っていないのですが、やはり考え方としてはそこが理由になっていることを前提にしていると思います。これは、どのように判定することになるのでしょうか。つまり、ほかにいろいろな条件、問題があって、ほかのファクターから違っているのか、それとも期間の定めがあることによってこうなっているのかは、結局そこをクリアしないとここに載ってこないのに、何が問題かが却って結論を先に出しているような気がするのですが、その辺りの判断の仕方について、労働条件分科会では何か議論はされているのでしょうか。

○吉永短時間・在宅労働課長 具体的な法律の施行の関係は、これから国会での議論等も踏まえてという形にはなろうかと思います。1つの考え方として、中窪先生もご指摘のとおり、期間の定めがあることにより、労働条件の相違について不合理と認められるものであってはならないということになっているので、あくまで期間の定めをキーにして、そこに差があったときに、合理的か不合理かを決めていくという考え方に、新しい労働契約法の案文は立っているのだろうと思っています。
 それに際して、考慮要素として、パートタイム労働法でいう職務と人材活用の仕組み、その他の事情を考慮するとなっています。職務が違うときにその差があることが不合理と認められるかどうか、あるいは人材活用の仕組みが違うときに不合理と認められるかどうか、その他の事情として具体的に何か念頭におかれているものは現実にあるわけではなくて、バスケットクローズ的に書いてあるものだと思いますが、その他の事情で不合理と認められる要素となるものがあるかどうか。このような考え方に基づいて、不合理かどうかを判断していくのだろうと思います。
 その上で、もしパートタイム労働法的な考え方に立つとすれば、いまパートタイム労働法は要件で考えていますので、職務が違うときには第8条は適用しない。あるいは、人材活用の仕組みが違う方については適用しないというような形で、差別的取扱いの対象が制限されています。職務が違うときあるいは人材活用の仕組みが違うときに、労働条件の相違の差があることが不合理と認められるかどうかを考えたときには、パートタイム労働法的な考え方に立てば、そこは職務が違う、あるいは人材活用の仕組みが違う場合については、合理性があると認められるケースが非常に多いのではないかというような当てはめになるのではないかと考えているところです。

○山川委員 おっしゃったとおりで、あとは補足ですが、期間の定めがあることによりというのは、そこを理由として不合理性を判断するということで、もしこれがないとすると、先ほど来問題になっているようなパートタイム労働でかつ有期労働契約の場合にどうなるのかという問題が起こってまいります。したがって、ここではやはり「期間の定めがあることにより」という一種のカテゴリー化したものをここに規定せざるを得ないということではなかろうかなと思います。あとは、どうやって期間の定めがあることによって相違が生じたかは、課長がおっしゃられたように、事実認定の問題ではないかという感じがして、運用上の問題になるかと思います。職務の内容及び配置の変更の範囲は、先ほどの話に若干戻るのですが、それを理由として合理性が認められることがあり得るという意味での要素になると思います。先ほど課長の説明のあったところ、使用者側委員からもご意見のあったところです。ただ、期間の定めがあることは、今度は逆に合理的であることを説明するファクターとしては、この有期労働契約の条文から言えば位置づけられないのではないかと思います。そういう意味で、3要件の最後のところは、やはり位置づけが違うということで、整合性が必要になるのではないかと思った次第です。

○佐藤委員 先ほどのパートタイム労働法と労働契約法制が変わったときの整合性の考え方が、こちらの労働契約法制であれば、無期と有期の間の労働条件の違いについて、職務内容が違っても一応議論には乗るわけですよね。パートタイム労働法ですと、仕事内容が違えば、第8条で落ちてしまうのです。ですから、整合性というより、考え方を揃えると。ここでいえば、フルタイムがパートタイムにと、労働時間の長短による処遇の違い、現状ですと仕事が違えば落ちてしまいますが、もしこのような書き方にすると、仕事が違ってもパートタイム労働法の第8条の検討の俎上には乗ると。つまり、労働条件を検討するときに、これですと有期と無期を比較すると、仕事内容が違うからといっても、そこで落ちるわけではないですね。まず、議論の検討対象にはなり得るという理解でよろしいですか。

○山川委員 私がそれを答えるべきかどうかわかりませんが、有期労働契約の議論では、職務内容は要素ですので、それだけで100%落ちるわけではありません。ただし、合理性を判定する要素として、つまり有期だからという一種のラベル張りによって不利益な取扱いをしてはいけないと。例えば、実質的に職務の内容で説明できるものであれば、それは合理性があり得るであろうということで、有期労働契約法制のほうでは100%落ちることはないと思います。パートタイム労働法でその整合性を取って議論する内容は、こちらで議論するということだと思います。

○林分科会長 また第8条に戻っておりますが、第8条について、ほかにご意見はありますか。

○中島委員 いま話題になった有期労働契約の当該職務の内容、配置の変更の範囲、その他の事情などの内容については、特に政省令で定めるということにはならないわけですね。

○吉永短時間・在宅労働課長 政省令に定める場合であれば、この要綱の中にも入っているはずです。要綱に入っていないということは、具体的に政省令で定めることはないと思います。また、労働契約法については、通常ですと指針を作らないという整理になっていますので、そういう形で具体的に示していくことも考えにくいのかなと思っています。そういう意味で、その他の事情を考慮要素にすべきものがあれば認定していくと。ただ、それについて少なくとも立法過程では、具体的に何かを目指しているところではないと。あくまでも、職務と人材活用の仕組みについては明確な例示になっていて、これについては考慮要素になっていますが、それ以外の要素についても考慮すべきものがあれば、入っていくだろうと思っています。

○林分科会長 第8条はこのぐらいにして、次に第9条の賃金の均衡についてご意見をお願いします。

○小林委員 資料No.2でいうと8頁ですが、これまでの議論の中でも雇用管理改善計画について、使用者側委員からは「経済状況の中でなかなか難しい」というご意見があったかと思いますが、1つ実例を挙げながら、好事例ということで、もう1度この必要性について意見を申し上げます。
 運輸業界の1例ですが、大手企業でかなりパートタイム労働者を使っている企業がありまして、パートタイム労働者のかなりの人数が、短期間でやめては、その補充を繰り返すような事例が実際にあります。こういった状況ですと、スキルアップ、キャリア形成、処遇改善などもままならないばかりか、企業のほうでも短期間で離職されてしまうというのは、あまり思わしくないということがあって、この企業ではこれを重大な問題と捉えて、例えば処遇改善については、部門ごとにばらばらだった昇給制度をわかりやすく整理したり、パートタイム労働者の人事制度について着手したところがあります。これを労働者のほうも、安心して働けるということで好意的に受け止めて、労使ともに経営上、とてもいい結果が出そうだという事例があります。
 この8頁の記録にもありますように、なかなか経済状況が不安定な中で計画を立てるのは難しいというご意見がたくさんあり、もちろんそれは理解するのですが、この改善計画については人件費がどうというよりも、働くパートタイム労働者の方が安心して働けることが目的の1つであると思っています。必ずしも賃金水準を上げることだけ、どれほどパートタイム労働者を雇用するかということだけが問題ではなくて、安心して働いてもらって、結果的に企業の生産性の向上にもつながるというような目的を持っていると、過去の記録を見ていて改めて思いましたので、雇用改善計画については、是非作成していくべきだと思いますので、ここでもう1度意見を申し上げます。
 もう1点です。10頁ですが、いまの事例のように、そういった人事制度や計画を作ることによって、パートタイム労働者も安心して働ける、イコール納得性も確保できると思っております。私たち労働者側委員は、安心して前向きな気持で働くことは、企業の生産性向上にとっても非常に重要なことだとずっと主張してきました。雇入れのときに教育訓練やキャリアアップに関する事項、苦情処理についても、その窓口をきちんと整理して明示することは、10頁に書いてある納得性に対して、非常に有効であるということも、併せて再度、意見を申し上げたいと思います。以上です。

○渡辺委員(松本委員代理) いま行動計画のお話が出たのですが、すでに触れていることもあるかもしれませんが、改めてということで、例えばパートタイム労働者の方が100人単位でいる企業もあれば、10人以内という企業、2人ぐらいしかいないという企業もあります。そういう中で、パートタイム労働者の方々にどういう形で働いていただくのかという点は、企業により差があるわけで、雇用管理の改善のための措置をどの企業も作らなければならないという話には、どうしてもならないのだろうと思っております。現状の指針あるいはパートタイム労働法の第3条で、「努めるものとする」という書き方がされておりますので、これに応じて事業主は自社の雇用戦略、事業戦略に応じたパートタイム労働者の雇用管理を進めていくという形がいちばん自然です。経済活力という意味でも、いちばん効果的ではないかと思っております。重ねて言いますが、各企業により、様々な雇用形態があるにもかかわらず、行動計画の策定を一律に企業に求めるものというのはなかなか難しいと思っております。よろしくお願いします。

○林分科会長 先ほどの納得性の向上、あとキャリアアップ等につながる説明義務、そういうようなことについて、使用者側委員からは何かご意見はございますか。行動計画という形ではなくというか、そこら辺のところで何か考えられるものがあるのかどうか、ご議論いただければと思うのですが。

○渡辺委員(松本委員代理) やはり個々の労働者と事業主、あるいは管理者とのコミュニケーションの問題なのだろうと思います。パートタイム労働者の雇用形態、あるいはパートタイム労働者に期待するものというのは、それぞれの企業によって違いますので、そのパートタイム労働者の処遇あるいは処遇の決め方、今後の職業訓練、教育訓練といったものについて、説明することをもう少し増やすことは、場合によっては必要なのかなという感じを持っております。

○中島委員 雇用管理計画というのは必ずしも画一的なものである必要はないので、あくまでも雇用管理改善に資するという努力の姿勢ということですので、そこは柔軟でいいのではないかと思います。特に調査結果を見ますと、小規模企業の4割が賃金表を作成していません。賃金表を作成するだけでも、非常に納得性の向上には役立つと思います。

○林分科会長 第9条第2項については、ご意見等はございませんか。公益委員から、第9条自体が第8条を前提に規定されているということで、第8条の規定次第によって、第9条の書き方が変わってくることがあり得るのではないかと思うのですが、5頁以降の第9条第2項について、ご意見はございますか。ないようでしたら先に進めます。第10条「教育訓練」について、ご意見等がございましたらお願いします。

○關委員 11頁の通勤手当のところに戻らせていただきます。前回、公益委員の方からもご指摘があって、11頁から12頁にかけて記載がありますが、この法第3条において、均衡待遇の確保についての一般的な努力義務が規定されているといったところだと思うのですが、その点を踏まえますと、通勤手当を職務関連賃金と位置づけた上で、法第9条の対象としていくことも、一定の合理性があるのではないかと考えております。さらに、法の趣旨に照らして鑑みると、指針の中にもありますように、職務に関連して支払われるもの以外の手当についても、通常の労働者との均衡が考慮されるべきだと思っておりますし、この規定を法律のほうにも括弧書きをして、第9条に盛り込むこともあり得るのではないかと思っております。
 特に通勤手当については、職務の提供と密接不可分だと思っておりますし、労災を考えても、通勤災害は保険給付の対象になっていることを考えますと、やはり職務とは密接不可分ですし、さらに言えば正社員だけに限るということの合理性はないのではないかと思っております。ですから、パートタイム労働者についても、通勤手当は正社員に準じて支払う必要があるのではないかと思っております。以上です。

○布山委員 私も改めて読み返して、現行指針では、先ほど關委員がおっしゃったように、職務に関連して支払われるもの以外もそれぞれ考慮してくださいということになっていて、その結果、ある程度パートタイム労働者の方々にも通勤手当を出しているような形の現状があると思っています。そういう意味では、この指針の内容を事業主に一層周知をして、考慮を促していくような方式というのもあるのではないかと思っております。
 また、先ほど通勤手当と通勤の労災の関連性がよくわからなかったので、それは別に考えたほうがいいのかなと思うところです。

○關委員 通勤手当と労災の関係でいうと、手当自体がどうこうというよりも、通勤というもものをどのように捉えるかというところかと思っておりまして、それは労災の対象になっているということは、すなわち職務と密接なのではないかという判断をしたということです。その点だけ伝えておきます。

○林分科会長 通勤手当については以上でよろしいでしょうか。では、次の16頁以下の4「福利厚生」にいきます。現行の法律上は施設の問題として掲げられていますが、現実には慶弔休暇の問題で議論されてきたわけです。これについて、何かご意見等、もう1回言っておきたいということがありましたら、お願いいたします。

○中西委員 慶弔休暇については、実際の企業の現場では、パートタイム労働者に忌引き等の事情が発生した場合、シフトの変更等柔軟な対応を運用している例も多いと思います。忌引きが欠勤として扱われ、あとで人事考課や契約更新判断に反映されるような極端な例はないのではないかと考えますが、パートタイム労働者がやむなく取った忌引きが欠勤として扱われたり、人事考課や契約更新判断に反映されたといったことがどの程度あるのか教えていただきたいと思います。実態を踏まえた検討を行うべきではないかと考えます。

○中島委員 実際にお話を聞くのは辞めたあとなのです。ですから、どの程度という、具体的な労働相談などの数字がないのですが、地方にお葬式に行くために1週間休まなくてはならなかったということで、結果的に辞めてしまう、あるいは有給休暇を使い切ってしまうということは、多々聞いております。ですから、稀な例かもしれませんが、もともと弔慰休暇というのは頻度が少ないものなので、データ的には出てきませんが、是非手厚い配慮をお願いしたいというところです。

○林分科会長 これについては、運用上もある程度実態として認められているということと、不利益について、あまり直接的な例はないということであれば、規定してもいい、あるいは規定しなくてもよいということなのでしょうか。

○川﨑委員 実態的に、慶弔の慶のほうはあらかじめわかっていることが多くて、弔のことが議論の俎上に上っているのだと思うのですが、実態として弔のことに関して言うと、制度の有無にかかわらず、弾力的な運用で、きちんと経営者側も対応しているというようなことだと思います。
 一方、福利厚生は、基本的には企業側が、雇用、管理、処遇の一連の戦略に基づいて決めていくものでありますので、そういったことに関してまで法律の網に掛けて担保しておくことはそぐわないと考えます。現実的な弾力的な運用の中で問題なく行われているものであれば、あえてこの場で法制化する必要はないと考えています。

○林分科会長 これは前回の法改正のときに国会の議論になっていますよね。

○大隈均衡待遇推進室長 国会でも審議会でも議論になっています。

○小林委員 実態を踏まえた検討ということもあったのですが、逆に、例えばこの慶弔休暇をパートタイム労働者にも与えることによって、大きく経営に何かしらの影響を及ぼすようなことがあれば、経済状況も踏まえ、いろいろと検討の余地があると思うのですが、いま同じ職場の中で、正社員とパートタイム労働者が一緒に働いている事例というのは非常に多いと思っております。
 例えば正社員の方の親御さんが亡くなったときは、直ちに忌引きですと。パートタイム労働者の方が、もし万一有給休暇などが残っていなかった場合に、悪いけれども欠勤で行っておいでよという言葉はあっても、欠勤ということであれば、それはやはり人間ですから、一生懸命働いている中で、少し差別的な意味合いを感じざるを得ない場面も実際にはあると思っていますので、大きく経営に影響がないのであれば、同じ労働者として、パートタイム労働者にも慶
弔休暇を付与するのが良いのではないかと思っております。

○林分科会長 そのほかにご意見はございますか。

○渡辺委員(松本委員代理) 慶弔休暇の問題は、週の労働時間と密接に関わると思います。通常の労働者と近い労働時間を働く方もいらっしゃれば、毎日は来ない、来ても半日ぐらいしか仕事はしないという、極端に労働時間の短い方もいらっしゃいます。それはいろいろなご事情があって、学生のアルバイトもあれば、主婦の方で家庭と仕事の両立をされている方々もおり、そういった方々を雇用している企業は相当数あります。これもまた、個々の企業においてそれぞれ違いますので、これを法律で一律に定めるということよりは、むしろいまの指針で広げていく形のほうが妥当ではないかと使用者側委員として考えております。同じ趣旨で通勤手当についても、1日1往復して働いていただく時間が異なりますので、これも一律に決めるよりは、むしろ現行の指針によりさだめられておりますので、十分にそれで今後も使用者の自主的な取組に期するべきかと思っております。

○林分科会長 慶弔休暇については以上にして、次に「通常の労働者への転換」について、ご意見等をお願いいたします。中間形態の利用可能性という問題が、公益委員から指摘されておりますが、この辺を踏まえたご意見がありましたらお願いいたします。
 特にないようですので、次の第13条「待遇の決定に当たって考慮した事項の説明」に入ります。納得性の向上という観点からすると、この辺りは少し深めていくことが可能ではないかと思いますが、ご意見等がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 次の「その他(履行確保)の問題」に進みます。企業名の公表、過料という問題と、紛争解決援助の2点がございますが、いかがでしょうか。

○山川委員 これまでは、それほど詰めて議論をしてなかったところかと思いますので、質問ですが、仮に企業名公表を考えるにしても、勧告に従わないということで、勧告が前提になっていますが、実態として、勧告というのはどのような形でなされているのかについて、何かありましたら。どのぐらいの例があるかわかりませんが、勧告の中身、例などを簡単に教えていただければと思います。

○大隈均衡待遇推進室長 勧告の例ということですが、勧告は平成20年度は2件、平成21年度は1件、平成22年度は2件となっております。例えば事業所に報告徴収に行き、法違反があれば、まずは助言をすると。助言によって是正されないときに指導書を出し、それによっても、是正されないときに勧告を行うことにしておりますが、それ以前の指導のところまでで、かなり是正していただいているということです。
 中身につきましては、第6条、あるいは第12条の関係です。正社員転換の事例などでは、どういう措置を採るかについて時間がかかるとの説明をくり返すのみで、一向に改善されないような場合について、勧告を行っております。粘り強く指導を行っておりますので、指導までで、かなりのものが是正されております。

○山川委員 そうしますと、かなり指導の中で是正の努力を、実際上は考慮されていると。その指導もかなりいろいろな内容を、その事案に応じて含み得るという理解でよろしでしょうか。

○大隈均衡待遇推進室長 はい。そういったことでやっております。

○林分科会長 履行確保の点について、そのほかにご意見はございませんか。次に、24頁の「その他」の(労働条件に関する文書の交付/苦情の自主的解決)に移ります。第13条と絡んでくると思うのですが、苦情の自主的解決について、契約時にそのようなことが明示されているとか、そういうところについては、納得性の向上に資する点はあるのではないかと思うのですが、この点について、何かご意見等がありましたらお願いいたします。

○渡辺委員(松本委員代理) 以前にも意見として出たかもしれませんが、自主的解決の制度を企業が持ち、対応窓口の周知を図るなど、丁寧に労働者に説明をしておくということも、納得性の向上につながることではないかと思っております。基本はコミュニケーションをしっかり取っていくということかと思っております。

○山川委員 いまのご意見に同感で、前にJILPTの企業内紛争処理の調査研究をしたのですが、そこで、かなり先進的な企業はいまおっしゃられたような形で、短時間労働者に限ったことではないのですが、従業員にわかりやすいような形で相談窓口を整備していると。組合も含めてやられているところがありますけれども、そういうものというのは、いろいろなところで議論されつつありまして、コミュニケーション促進という点では有効ではないかと思います。

○林分科会長 この点については特に異論がないようです。次にフルタイムパートの問題、「その他(法の適用関係)」という問題がありますが。

○齊藤委員 パートタイム労働法は通常の労働者に比較して、短時間で働く労働者を対象としていることは、十分に理解しております。しかし、実態として短時間労働者と同様の雇用管理が行われていることもありますので、短時間労働者と同等の雇用管理をしていながら、通常の労働者と同じ時間で働いているフルタイムパート労働者がいるのも事実です。実際に、流通関係ではほとんどパートタイム労働法を適用して、きちんとやられていることが多いのですが、まだ製造業などでは、同じように働いていてもパートタイム労働者の方と同じように扱われていて、雇用形態は有期なのですが、契約更新はきちんとなされておらず、ずるずるになっているというのも実態的にはあるのです。有期労働契約法制ができていますが、あくまでもこれは民事効で、裁判になったときにどうなるかという法律でありますので、行政指導の対象にはならないと思っております。
 こういった部分については、きちんと行政指導の手を届かせることが非常に重要だと思いますので、パートタイム労働法の例外規定なり何なりで、パートタイム労働法の関係で行政指導ができるようなことにしていただければ、非常にありがたいと思います。

○林分科会長 いまのご意見に対して何かございませんか。では、一応いただいた論点ごとに議論をしたのですが、全体を通して最後に意見がありましたら、お願いいたします。

○中窪委員 全体というわけではないのですが、先ほど言い忘れてしまったものですから、第13条のところで、決定に当たって考慮した事項の説明のところで、あるいは法の履行確保にかかわることですが、こういう説明を求めることについて、不利益取扱いを禁止する規定がないというのは若干不備な感じがします。これは労働者側委員の意見でも出ていますが、現在指針の中でも、それについて不利益取扱いが禁止されていることが明記されておりますので、できればこれは法律の中にきちんと書いたほうがいいのではないかと思いましたので、公益委員の意見としても1つ入れておいていただければと思います。

○佐藤委員 労働契約法制のところで読み方だけ教えてください。1つは、後ろのほうの考慮する部分は職務の内容及び配置の変更の範囲というのは、変更の範囲というのは職務の内容までかかるのですね。職務の内容が1つと、それと配置の変更の両方にかかるのですね。

○大隈均衡待遇推進室長 はい。「変更の範囲」は、「職務の内容及び配置」にかかります。

○佐藤委員 わかりました。もう1つは、労働契約の内容である労働条件というのは、労働契約に書かれているものすべてが入る、例えば賞与の有無について、「賞与がない」と書いてあった場合が合理的かどうかも入るし、それは労働条件で書かれているものすべてということですね、退職金がないとか、賞与がないとか、生活関連手当がないとか。労働条件というのは特に議論は、すべて入るのですね。

○大隈均衡待遇推進室長 労働条件分科会の中でも、この労働条件はどこまでの範囲を含むのかという質問がありました。就業規則等にも明確に定められていないような、食堂であるとか、福利厚生も含まれるのかという質問がありましたけれども、ここの労働条件は、賃金以外にも、福利厚生、教育訓練など、また、実質として会社の労働契約内容において労働条件となっているものも含め、広く労働条件一般を指すものであるということで、事務局からも回答しております。

○林分科会長 そのほかに全体を通してご意見等はございますか。

○中窪委員 いまのことに関係してくるのですが、私自身答えがあるわけではないのですが、法律の構造が、有期労働契約法制は、とにかく広く取って不合理と言えるかどうかを精査するという感じですが、パートタイム労働法は、とにかく区分けして、完全に同一と見なされるものであれば差別はいけないというところから始まって、賃金については、職務に関連するものはこういうもの、職務内容が同一の場合には、さらに同一の方法という形で、がちっがちっと、それぞれの箇所で固く対処しているという感じがあるのです。ですから、もし有期労働契約法制にそういう広い網を掛けた場合に、この法律自体をどうするのか。もちろん、いまのままでいけないということもないと思うのですが、両者をどのように整合的に考えるかということを、もう少し広く考える必要があるのではないかなと、今日議論をお聞きしておりまして感じました。
 特に賃金に関しては、第8条と第9条、第9条も第1項と第2項で、非常に分かれているものですから、その中で通勤手当は非常に議論になっていますけれども、その外には、前回私が申し上げましたが、一般的な努力義務もあるものですから、それをもう少し整理できないかなというのが、率直な感想です。

○山川委員 概ね同様の視点からですが、先ほど出てきた第9条の第2項なども、非常にカチッと決めた第8条に入らない部分が、第9条第2項として取り出して、しかも、正直言ってどれだけ実効性があるかわからないというようなことですと、第9条第2項の存否自体も、もし第8条の在り方を考える際には、第9条第2項がそもそも必要かという点も含めて、考える必要があろうかと思います。

○佐藤委員 第8条がかなりリジットに決めてあるために、そこから落ちているけれども、実際上は有期労働契約で更新されて、長期に同じような働き方をしている人たちがいるところを、第9条のほうでカバーしているというのはあります。
 第8条の決め方が、労働契約法制のような形になれば、先ほどの職務の内容とか、配置の異動も考慮の部分で、そこでかなりの部分は入ってしまうと思うので、ですから、第8条の規定の仕方如何かなと思います。それによっては、第9条の部分を吸収したような形で、第8条を作れるかなというように思います。

○林分科会長 いまの公益委員のご意見に対して、労使からご意見はございますか。特に全体を通じて、これ以上の議論はないということなので、本日の第113回労働政策審議会雇用均等分科会を終わります。本日の署名委員は、労働者代表は關委員、使用者代表は布山委員にお願いいたします。ご苦労さまでした。


(了)

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