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2012年4月16日 第10回ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成24年4月16日(月) 17:30~19:30


○場所

厚生労働省 専用第21会議室 (中央合同庁舎第5号館 17階)


○出席者

(委員)

永井座長 福井座長代理
小幡委員 鎌谷委員 栗山委員 高芝委員
辰井委員 玉起委員 知野委員 堤委員
徳永委員 藤原(靜)委員 藤原(康)委員 前田委員
増井委員 俣野委員 武藤委員 山縣委員

(事務局)

文部科学省: 渡辺安全対策官 宮脇室長補佐
厚生労働省: 矢島技術総括審議官 尾崎研究企画官 石田主査
経済産業省: 長部課長補佐 金澤課長補佐

○議題

(1)ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しの検討
(2)その他

○配布資料

資料1「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」見直し案に係る意見募集の結果について(案)
資料2「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の見直し案
資料3ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しの方向性について(案)
資料4「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の見直しについて(案)
参考資料1三省委員会委員名簿
参考資料2ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針

○議事

○尾崎研究企画官(厚生労働省) 
 定刻になりましたので、ただいまから文部科学省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会」、厚生労働省 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会」、経済産業省「個人遺伝情報保護小委員会」を合同で開催いたします。委員の皆様にはお忙しい中、また、時間が遅い中、お集まりいただきましてお礼を申し上げます。
 まず、配布資料の確認をさせていただきます。お手元の資料で、議事次第の下に「配布資料」と書いたものがありますので、それを見ていただきたいと思います。資料1から4。参考資料1と参考資料2。その他、委員の皆様の机上には、委員資料1、委員資料2という形でファイルを2冊ご用意しております。この委員資料につきましてはお持ち帰りにならないようにお願い申し上げます。以上ですが、不備等ございましたら事務局までお知らせください。
○永井座長 
 ありがとうございます。それでは議事に入りたいと思います。ゲノム指針の見直しにつきましては、平成24年2月3日から3月3日まで、パブリック・コメントを実施し、広く国民の皆様から意見を募集し、いただいたご意見について、事務局が資料1のとおり対応案を取りまとめたところです。本日はパブリック・コメントの結果を踏まえた対応についてご議論をいただきたいと思います。前回に引き続き、委員の皆様におかれましては、ご発言はなるべくポイントを絞って簡潔にお願いしたいと思います。また、本日の議論をもちまして、ゲノム指針の見直しについて、本委員会の意見の取りまとめを行いたいと思います。委員の皆様方におかれましては、よろしくお願いいたしたいと思います。
 では、パブリック・コメントの結果と対応案について、事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料としましては、資料1、資料2、資料3が関係しているものです。基本的な説明については、資料1と資料2を用いたいと思います。まず、資料1です。先ほど座長からもお話がありましたように、平成24年2月3日から3月3日まで文部科学省、厚生労働省、経済産業省のホームページ等を通じて意見募集をしたところ、全体で意見提出者数は46件、意見数は94件でした。いただいた主な意見の概要及びその意見に対する考え方は以下のとおりです。取りまとめの都合上、意見については要約し、内容により同趣旨の意見等は適宜集約するとともに、多くの意見のあった項目や指針の内容の追記・修正を伴う意見等を中心に整理いたしました。それでは、資料1、資料2に基づいて説明をいたします。
 まず、資料2の4頁から5頁をお開きいただきたいと思います。意見としまして、本指針の適用範囲を明確にするため、第7の21(3)、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の内容を「適用範囲」に移動させるべきというものです。この資料第7の21(3)は、資料2でいきますと68頁ですが、ヒトゲノム・遺伝子解析研究とは何かという用語の定義をしているものです。ここにも幾分情報が載っている所ですので、資料2の5頁にありますとおり注を用いて記載し、わかりやすく整理したいと考えております。
 今回の資料について最初に説明するのを忘れていましたが、黒くマーキングしてある所が見直し案からの変更点ということです。下線部は現行指針と見直し案の変更点です。
 資料1の1頁、多施設共同研究を行う場合に当たって、統一された基準で倫理審査等を行うために、他の倫理審査委員会への審査依頼について規定すべきという所ですが、ここは資料2の12頁のとおり、共同研究の場合の他の倫理審査委員会への審査依頼の取扱いについては臨床研究指針等を参考にして整理する、というようにしているところです。
 続きまして、資料1の3番目、資料2は22頁の最後になります。「外部の機関から試料・情報の提供を受ける場合のインフォームド・コンセントの内容」との規定、これは研究計画書の記載事項に関する細則のところですが、どのインフォームド・コンセントを指すのかわかりにくいということで、22頁にあるように、適当な語句、表現となるように整理させていただいているところです。
 資料1の2頁、「インフォームド・コンセントのあり方に関する意見」です。今回の倫理指針見直しは妥当、予め同意を得るのは行き過ぎなどいろいろな意見がありました。これについては、この委員会でも議論され、内容は右側の欄にありますが、それを踏まえ原案どおりと考えているところです。
 次に資料1の(10)、インフォームド・コンセントの撤回に関する意見です。今回の方向でいいという意見とかいろいろな意見がありましたが、これについても、3省委員会での議論と同じような意見ということで、資料1の3省の考え方に書いてある議論の内容を書くことにより、原案どおりということでいきたいと考えております。
 資料1の(11)「提供者及び代諾者等の希望により、他の提供者等の個人情報の保護や研究の独創性の確保に支障が生じない範囲で研究計画及び研究方法についての資料を入手又は閲覧することができること」については、見直し案については削除させていただいたところですが、意見のほうは、非常に重要な事項であり、臨床研究の指針との整合性からも削除しないほうがよいということで、資料2の35頁のように、現行指針と同じ文章をそのまま記載するとしたところです。
 引き続き(11)の細則に関することです。意見として「遺伝情報の開示に関する事項」について、括弧書きで「開示が行われない可能性もあることを含む」ということを追加したわけですが、これについてもわかりにくいということで、資料2の36頁のように主語を記載してわかりやすく整理したところです。
 資料2の37頁の8番、「遺伝情報の開示」については、原則開示と従来から整理されていたものですが、3省の委員会においてもいろいろな面から検討、議論が行われたところ、結局、原則開示を維持するとなったわけですが、パブリックコメントでも同じような関係の意見が出てきたということです。そこも、資料1にあるように、まずは「遺伝情報の開示について、不確実なデータの開示への懸念に関する意見」として、そこに記載の内容が出てきたこと。あと、遺伝情報の開示について、開示しなくてもいい場合の検討で、個人情報保護法との関係から説明をしたということで、その点に関係する意見が出てきたということです。また、「その他の意見」として、開示することを原則とすべきとか、3省委員会でもやり取りがあったような意見が出てきたということです。右側の欄には3省委員会での考え方を整理し、原案どおりとしております。
 資料1の4頁、「遺伝情報の開示と医療行為の関係に対する意見」とあります。これは遺伝情報の開示にかかわるところで、ここの場では議論があまり意見として出てこなかった項目です。例えば、医師でない研究者が開示を行い、その結果、何らかの「診断」情報が与えられると医師法違反となる可能性があるとか、主治医を通じて、当該患者に開示がなされるような仕組みのほうが望ましいのではないかというような意見です。遺伝情報の開示については、診療目的の解析等は対象としておらず、基本的には提供者から求めがあった場合に研究結果の開示をするものであるということ。現在の項目の中でも主治医を通して行うべきであるものというのは示されているということで、ここについては、先ほどの意見と同様に、遺伝情報の開示の原則については引き続きそのままとすると考えているところです。
 続いて、資料1の法令用語です。「又は」「若しくは」の使い方です。これはご指摘のとおり整理をするということです。
 次に「遺伝情報の開示における不開示事由に関する意見」です。研究業務の適正な実施に著しい支障を及ぼす場合等の内容について明確にしてほしいとか、どのような場合に開示すべきかの一般的基準の適用例を具体的に示す必要があるとか、この辺に追加した項目については研究機関側からの見解であり、開示するか否かは提供者等の権限に委ねられなければならないというような別の意見もありました。これにつきましてはQ&Aにおいて、遺伝情報の全部又は一部開示しないことができる要件の内容について整理していきたいと考えているものです。
 次の項目、資料2では40頁です。(3)の項目について、開示する場合、「当該遺伝情報に関してそのヒトの健康状態等を評価するための情報としての精度や確実性等」に関する説明は、「必要に応じて」と書いてあるのですが、これについては、必ず実施すべきとの意見があったということです。この指摘を踏まえ、指針本文をいま書いてありますようにすることで対応したいというところです。
 続きまして、倫理審査委員会関係の意見のほうに移ります。資料2は44頁です。「倫理審査委員会委員の構成に対する意見」というところにつきましては、外部委員数について、半数を複数にするというのは合理的ではないかという意見と、各指針で統一すべきという意見もあれば、要件の緩和については、研究者側の意向を反映しやすくする危険性があり、厳しい条件を明記すべき等々の意見がありました。この内容についても、この委員会でいろいろと検討された上でのことということで、その辺のことを考え方に書きまして、原案どおりとさせていただこうと考えているところです。
 資料2では45頁、「迅速審査手続に関する細則」です。迅速審査の要件に関して、臨床研究指針等で規定されている「最小限の危険を超える危険を含まない研究」の要件を新設し、指針間で統一することを要望、という意見がありました。3省の考え方としては、ご指摘を踏まえ、指針本文を修正するということで、資料2の45頁にあるように、提供者及び代諾者等に対して最小限の危険。括弧書きでその定義がされていますが、それを超える危険を含まない研究計画の審査は、迅速審査の手続に付せるというようにしたところです。
 次に、資料2では52頁です。個人情報でない情報の取扱い関係です。(2)一部の解析とかを委託をする場合について、今回の検討において、委託する場合は契約等により担保すべき事項について追加したところです。その契約により担保すべき事項を細則で示しました。この流れの中で、その次の、「委託を受けた者に対する監督に関する細則」については削除していたところですが、委託を受けた者に対する監督は重要であるという意見があり、本指針の細則を修正し、もともとの細則を付けることとしております。
 次に、14「研究を行う機関の既存試料・情報の利用」に関しての意見について説明いたします。資料2は53頁です。既存試料の情報の利用に関する意見については、そのほかの指針と完全に整合性を図ってほしいとか、ここの内容は研究者の利のみを考慮しているのではないか、というような意見がありました。この項目はいままでA群・B群・C群で整理されていたところを、文章の構成としまして、疫学指針や臨床研究指針に合わせて組み直したというところです。3省の考え方にあるような流れということですので、そのままとさせていただきたいということです。
 続いて、この項目のその他の意見です。全ゲノム配列を解読するという説明をした場合は遺伝子解析の説明をした場合と全く異なるので、区別すべきではないか等の意見がありました。3省の考え方にありますように、全ゲノム解析等を伴う研究も含め、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に既存試料・情報を利用する場合は、第5の14の規定に基づき、実施する研究内容を踏まえて当該既存試料・情報の利用について慎重に判断することが必要ということで、区別をつけずに慎重にやるべきであるという考え方に基づいて、そのままとしております。
 次に、「外部の機関の既存試料・情報の利用」に関する意見に移ります。資料2は55頁の下から56頁、特に56頁です。意見としては、再同意の取得が困難な場合は、少なくとも検体採取時に同意を受けている試料・情報についてのみ提供・利用を可能とすべきではないかというようなことです。これについて、再同意が取れない場合についてもいろいろ条件をつけまして、そこをクリアすれば使えるようにするということを3省委員会のほうで検討したかと思いますので、その内容を説明しまして、原案どおりとさせていただきたいと考えております。また、「通知」や「公開」の要件を明確にしてほしいという意見がありました。このご指摘については、Q&Aで整理したいと考えているところです。
 続いて「保護すべき個人情報」です。資料2は57頁、「全ゲノム配列の取扱いに対する意見」については、全ゲノム配列そのものを個人情報と考えるべきかどうか明確にする必要があるのではないか、単一遺伝子疾患の変異と同等の扱いをすべきである等々の意見がありました。個人情報かどうかについては、3省の考え方にありますように、見直しの中で遺伝情報関係については整理したということもありますが、単一遺伝子疾患等の希少な疾患に係る遺伝情報の場合等、個人を特定することがある場合には、取扱いには十分留意しなければいけないということは認識されているところですので、その趣旨をQ&Aで整理したいと考えております。
 資料2は57頁です。「連結可能匿名化された情報と個人情報との関係に対する意見」です。対応表の管理と個人情報の関係という意見がきているわけですが、こちらも当該3省委員会において十分意見交換された上で、いまの状況になっているものです。その内容について、右側に書いてあるような整理になったと思いますので、この整理を用いまして、同様に原案どおりでいくというところです。なお、「ただし」以下のところは、既存の項目ではありますが、同一法人内の別の部門において匿名化が行われ、かつ、対応表が厳密に管理されているような場合については、当該機関全体として十分な安全管理が確保されていることを前提に、安全管理措置の程度を区分して定めることができるということを57頁の細則に規定をしていることも、情報としてここに書いているものです。
 次は、資料2の3頁との絡みですが、前文の最後に、法律関係について「遵守」するということが書いてあるのですが、それを「尊重」に変更すべきという意見もありました。法令等については、遵守する必要があるので規定して書いているものですので、これは原案どおり「遵守」でいくということです。
 続いて「個人情報の開示」等の意見に移ります。資料2の64頁の(3)にかかわるところです。「利用停止等」とは、個人情報の不適切な利用等があった場合に、提供者等が個人情報の利用停止等を求めることを希望する場合であり、インフォームド・コンセントの撤回とは区別して扱うべき、ということが書いてあります。64頁の(3)絡みの、現行指針のところに「利用停止等に関する細則」がありまして、ここにこういう解説がされていると。その例示というか、インフォームド・コンセントの撤回が引用されているわけです。インフォームド・コンセント撤回と利用停止とはちょっと違うのではないかという意見がありましたので、ここは適切な表現となるように整理をするということで、基本的にはその項目については削ることにしております。
 資料1の次は「用語の定義」関係です。資料2の72頁をお開きください。「(11)試料・情報の収集・分譲を行う機関」という用語があります。この定義について、「収集・分譲」等についてわかりやすくという意見がありました。本指針においては、ここに書いてある一連の流れを「『収集・分譲』という」というように整理したいと考えております。
 続いて「『バンク』という用語に対する意見」です。書いてあるように「バイオバンク」という表現をそのまま用いることは避けるべきとか、今回表現の統一を図って、ここに書いてあるような作業をしたことは評価できるが、バンクの定義が一律でないとはいえ、定義づけをして、その機能と試料・情報の管理についての道筋をつけることは必要とか、バンク関係について、OECDのガイドライン等で一定の帰結をみているので、その辺を遵守するという条項を入れるべきとか、「バンク」という用語に戻したほうがいいとか、というような意見がありました。「バンク」という用語については、この委員会でも議論をした上で、「バンク」と称されるものについては様々な形態が考えられる等々から、今回、行為として整理したところですので、その内容を書いているものです。
 あと、なお以下で、「ヒトのバイオバンク、及び遺伝学研究用データベースに関する(OECD)ガイドライン」等、というのはバンキング関係で参考になりますので、それを紹介できるように、関係のものをQ&Aで示していきたいというように考えております。
 続いて、資料1の「研究者等や倫理審査委員会委員の教育・研修関係」です。資料2の8、21、46頁とそれぞれ関係しているわけですが、意見としましては教育・研修の内容を記載すべき、具体的な教育内容をどうやって担保するのか、倫理審査委員会の教育及び研修は必須ではないのかという意見もあった一方で、そもそも委員に相応しい人を指名しているので不要、という意見もありました。この項目は、この委員会で教育・研修というのは大変大事だということで特に入れた項目ですので、それを説明をしたものが3省の考え方に書いております。趣旨等については、Q&Aで整理をしたいと考えているところです。
 あと資料1で「全体に関する意見」が3つありましたので、それについての考え方を示しています。まず最初は今後の運用に関する意見ということで、本指針の改定の内容については適当であるという一方で、ある研究がゲノム指針の対象となるか否かなどの判断の難しい事例を各省が収集し共有することも、全国の研究者及び倫理審査委員会のメンバーにとって非常に有益であると考えられ、その辺のことを考えてみたらどうかという提案がありました。これにつきましては、あくまで今後の話ですが、新たな典型的な事例とか事項についてQ&A等で追加で反映させるなど、適宜、Q&Aの改定などに努めることで対応し、必要に応じて、委員会等で聴く場を設けるなどを考えていきたいということを記載しています。
 続いて、「遺伝情報の取扱い全般に関する意見」が2つほどありました。遺伝子検査ビジネスの課題というところです。この問題は遺伝子検査ビジネスの、ここに書いてあるような課題を考える中では、この指針は非常に重要であることを強調しておきたいという意見や、企業や保険会社等の雇用、保険加入の際の利用については、不利益を受けるようなことがあってはならないことを明記すべきだ、罰則規定のある法律の制定を含めて、個人情報漏洩リスクを皆無にすることなどを考えたらどうか、等々の意見がありました。これにつきましては、もともとこの委員会の認識としましては、ここに書いてあることは検討すべき課題と認識されていたかと思いますが、今回の指針自体については研究を対象とするというところもあり、その範囲を超えるものであるということで、今後、別途検討すべきと考えると整理したところです。
 もう1つ、「遺伝情報の全般的な取扱いに関する意見」として、被験者とその家族について個々人のリテラシーを高める必要があるということ、そういったことを高められれば、一般による研究活動の認知・理解を促すことができ、倫理的な課題も別の方面から解決できるのではないかと。また、日本では一般社会におけるヒトゲノム・遺伝子解析研究についての知識が不足しているので、倫理的側面を含めたビデオなどで知識を得られる体制を確立すべき、という提案がありました。この辺は重要と考えているところですので、その趣旨を解説等で周知していきたいと考えています。
 以上が主に多くの意見があった項目に対する内容の追記・修正というところです。概括的に申しますと、この委員会で議論があった主な項目については、パブリックコメントでも同じような意見があったのではないかと、原案どおりとさせていただくというところです。また、新たにそれ以外のところで特に追加することを考えた項目は2つあり、1つが多施設共同研究を行う場合の要件の追加。それと、迅速審査に関して1つ項目を追加したところが主なことになります。以上です。
○永井座長 
 ただいまの説明に関して、ご意見をお願いいたします。
○堤委員 
 資料1の10頁でちょっと細かいことなのですけれども、いちばん下のカラムで、「必要に応じて3省の合同委員会等で有識者の意見を聴く場を設けるなど適宜対応していきたいと考えます」とありますが、3省の合同委員会は一応本日で閉められるので、この「3省合同委員会等で」と言わずに削ってしまって、「有識者の意見を聴く場を設けるなど」と、実際にやるのがそうであればそのように書いたほうがいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○渡辺安全対策官(文部科学省) 
 これも、今後のゲノム指針の見直しというのが、今回もし改定をしていただきました後に、どういうタイミングでということに関係するかと思うのです。この指針が対応できないような事情が生じて、緊急にQ&Aなどを周知する必要がもしあれば、この委員会の先生方にまたお伺いする可能性もあるかもしれないのではと思って書いてあります。「等」で書いてありますように、とにかく有識者の意見を聴きながら、事務局としてQ&Aの改定などを臨機応変に対応したいという趣旨です。
○辰井委員 
 質問ですが、資料2の45頁の迅速審査の手続に関して、「提供者及び代諾者に対して最小限の危険を超える危険を含まないもの」に関しては、一応迅速審査に委ねられるという規定を入れるという提案で、それ自体は必要なことだろうと思います。質問といいますか、意見といいますか、いままでこの規定は、臨床研究指針の規定であることから、普通我々が思い浮かべるときは、身体に危険があるかどうかという観点から見てしまうことが多いと思います。しかし、ゲノムの場合身体には危険はないけれども、プライバシーなどの観点から考えなければいけないという場合がしばしばあると思われます。この点について、例えばQ&Aなどで例を挙げたりする予定はありますか。
○渡辺安全対策官 
 まさにご指摘いただいたような点については、事務局においてもいろいろ検討させていただきました。45頁に書いてありますのは、「最小限の危険」という中に、身体的、心理的、社会的危害ということが入っております。したがって、身体的侵襲がないということで直ちに決めるものではないという趣旨というのは、まさにおっしゃるとおりかと思っています。そのような点についてこの周知をする際、もしくは必要であればそのQ&Aなどでこれを補足していくことは重要かと思っております。
○高芝委員 
 いまの点ですが、私もこの点が今回追加になったところだと思って気になっていました。45頁の「最小限の危険」のところで括弧書きを見ると「日常生活や日常的な医学的な検査で被る」というのが前提になっていると思うのです。日常生活と遺伝子解析というのは場面的にどうなのか、一致するのかということがわかりにくかったということです。
 それから「日常的な医学的検査」というように、日常性の中で最小限の危険を考えるということのようですので、遺伝子解析というのは、日常性とは必ずしも場面が違うところで危険というので、別の意味の、危険と言ったら言葉が適切かどうかわからないのですが、考慮しなければいけない事項が想定されるものですから、この定義がこのままだと、Q&Aで足りるのかどうかということがあります。そもそも、この細則で規定を置くことの意味は、それなりの意味があると思いますので、その点をご留意いただければと思いました。
 それとの関連で1つ気になったのは、迅速審査手続に付するかどうか。本体の(5)を見ると、「倫理審査委員会は、その決定により迅速手続を設けることができる」となっています。この細則に従って振り分ける、つまり委員会にかけるのか、迅速手続に付するのかというのはどのように分かれてくるのか見えにくいところがあったので、この点を質問させていただきます。
○渡辺安全対策官 
 前者については先ほど回答させていただいたとおりですが、運用に際して留意していただくことを周知していくことだと思っています。
 後者のご質問については、45頁の(5)で「倫理審査委員会は、その決定により迅速審査手続を設けることができる」ということで、迅速審査手続の中で、実際にそれを迅速審査とするかどうかという決定をどのようにするかというのを規定していただくことになるのかと思います。現在、研究現場ではどのようにしているかを聞くと、実際には迅速審査手続の中で委員長が決定するといったことを明確にしているということでした。
○堤委員 
 いまのところと関係するのですが、8頁の12の(3)のところで、多施設共同のときの手続というので今回足していただきました。ここの項目と、いま議論になっていた迅速審査のところが密接に関係する箇所だと思いますので、その関係性についてQ&Aで示しておいていただくと、読むほうも読みやすいのではないかと思いますので、そこは是非お願いいたします。
○辰井委員 
 意見募集の中で、遺伝情報の開示についてかなりたくさんの意見があったようです。いまの内容についてどうこうということではないのですが、その肝心なところで私は出られなかったことが多かったので、議事録に残るように意見を言わせていただきます。
 今回、遺伝情報の開示の規定と、個人情報の開示の規定というか趣旨等の切り分けが難しいということになって、その結果原則開示は崩せないということになったということは一応理解しております。ただ、それが最も望ましい解決かというと、やはりそうではないと私自身は思っています。いまは差し当たり法律との関係でそれが崩せなかったことは理解いたしますが、やはり医学研究に相応しい規制のあり方は今後も検討がなされるべきだと思います。そこは特別法を作ることも含めて検討がなされるべきである、という意見を申し上げさせていただきます。
○永井座長 
 ほかにはいかがでしょうか。もしほかにご意見がないようでしたら、この見直しに関する議論は、本委員会として取りまとめにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○辰井委員 
もう1つこれも意見です。以前「試料等」という文言だったところが、「試料・情報」という文言に変わり、その情報の定義の中に「遺伝情報」という文言が入るということに今回はなりました。これは、定義の明確化という説明ですが、このことによって純粋に情報だけを使ったような研究も、この指針の対象になるように読めるようになったように思われます。それが不当なことかどうかはわからないのですが、差し当たりは合理的な範囲で指針を読んでやっていくしかないことも理解しています。
 この点について、この委員会で十分な議論がなされたかというと、さほどなされてはいないと思うのです。その割に、読み方によってはすごく適用範囲が広がってしまう可能性がありますので、この点もそれほど議論は尽くしていないのではないかという意見を一応申し上げたいと思います。今後さらに検討すべき課題として残っているはずであるということを申し上げます。
○永井座長 
 それは、Q&Aを追加するということで、もう少し深めることはできますか。
○辰井委員 
 これは私の意見ですが、いまQ&Aで深められるだけの議論をここでしなかったのではないかと思います。
○永井座長 
 もしよろしければ、いまからでも何かご意見をおっしゃっていただけますか。
○辰井委員 
 ちょっと準備ができておりません。
○渡辺安全対策官 
 補足いたしますと、いまのゲノム解析研究という定義の中でも、一応細則のところなどで「遺伝情報を二次的に利用する研究を含む」ということは入っております。確かにいままでも入っていたのですけれども、いままでは「試料等」ということだったので、今回明確化したということはあるかと思っております。
○栗山委員 
 この倫理審査委員会の構成についてです。度々申し上げていて恐縮なのですが、ここの結果に現在反対するものではありません。質問の中にもありましたように、ほかとの整合性を大切にして、この構成でいいのかというのは反対するものではありませんが、不安を感じています。個人としてできることには限りがあると思うのですが、何か方法があれば、これがどのような結果を招くのかということについては、引き続き見ていきたいと思っているというだけの意見表明です。
○俣野委員 
 この指針案の直接の内容ではないのですけれども、今後何年か先の見直しに向けて、その間のことについて、ここにも一部今後の運用については書いてありますが、Q&Aに関しても1回で全部作ってしまうのではなくて、おそらくそのように考えているのだとは思うのですけれども、適宜Q&Aもアップデートしていくシステムを必ず維持していただきたいということです。もう1つは、できましたらこの案もできるだけ早く英文化していただければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○永井座長 
 いまの英文化の件について、事務局はどのように考えておりますか。
○渡辺安全対策官 
 現行のゲノム指針についても英文化はしております。こちらの新しい改正案についても、改正の告示が終わりましたら、速やかに対応したいと思います。Q&Aは非常に重要だと思っておりますので、私どもとしてはこの告示をさせていただくときまでには整理させていただきたいと思っています。その後、説明会などをさらに積み重ねさせていただいて、そこでいただいたものなども加えて、実際に施行するまでに、もう一度ブラッシュアップする。施行した後も、また非常に重要なQ&Aが溜まってきたら、それを適宜リバイスしていきたいと思っています。
○堤委員 
 いまの手続なのですが、Q&Aができた時点で、我々が事前に見ることはなしなのでしょうか。Q&Aが公表され、何か気になる点があった場合にどちらかに申し上げることができる手続になるのでしょうか。それとも、一般の方と同じような立場になるのでしょうか。その手続はどのように想定されているかを教えてください。
○渡辺安全対策官 
 まさに今回これをお認めいただければ、基本的な見直し案の方向性であるとか、その考え方は整理されますので、これから事務局で案を作らせていただいて、Q&Aで実際に公表する前までに、事前に委員の方にもお伝えできればと思っています。
○山縣委員 
 これは確認なのですが、疫学を専門にしている者として、これから大規模な疫学研究、これまでもずっと疫学研究が行われてきているわけですが、その中に遺伝情報を1つの情報として入れていくと。即ちその遺伝子解析そのものが主たる目的ではなくて、この情報を活用する場合に、研究機関の多くというか、協力機関の多くは生体試料をそもそも扱わなかったり、ゲノム情報を出さない機関が多くあります。だけれども、全体としてはゲノム情報は使うのでゲノム指針で問うと言った場合に、共同研究機関、つまり倫理審査委員会を、倫理審査を行うもしくはそれを迅速審査、もしくはそれを委託ということもできるわけですが、ただ単に臨床情報を提供する所や行政機関というのが、この中には入らないという理解でよろしいのですか。それとも、これは入れるという形で、しかし運用上は倫理審査を委託するなり何なりして、迅速に研究が行われるようにしていくのか。前者であるという理解をしているのですが、その辺りのところはQ&Aでしっかり書いておかないと難しいかという気がするのです。
○渡辺安全対策官 
 研究機関にそういう所が入るかどうかということで申し上げますと、例えば定義の中で「共同機関等」というところがありますが、そこは研究を行う機関が、その提供側から試料・情報の提供を受ける場合にはそれを含むということなのですが、試料・情報という中に含まれればそれは入ってくるのかと思っています。ただ、実際にその現場において、自治体などから基本的な情報を貰うというような運用については、現場のご意見もいただきながら、Q&Aなのか、場合によってはこの定義の見直しが必要なのかも検討した上で最終的に決めたいと思っております。
○徳永委員 
 何人の委員から既に言及はされているのですけれども、開示の原則は動かせなかったけれども、実際には、不確実な情報とか、臨床的な意味がまだ確かでないものまで開示するという意味ではないということが、ともすると誤解を受けやすい状況にあると思うのが1つです。
 もう1つはバンク・データベースという言葉を使わないで、運用の注意を書いたということで、これも十分に理解されない可能性が残っていると思いますので、これらについてQ&Aをきっちりわかりやすく書いていただきたいということです。委員の方々にQ&Aの内容を事前に諮っていただきたい。是非そのことをお願いしたいと思います。
○増井委員 
 Q&Aの話がずっと出ていて、私自身も非常に重要だと思っています。指針が非常に広いプラットフォームを用意して、その中で自由度が上がったような部分があるように見えるところもあります。それだけにQ&Aが大事だという意見が先ほどから出ています。ただ、これまでのQ&Aの運用を見ていると、やはり踏み込んだことを書けない側面もあって、なかなか難しいと思っています。そのことにどのように対処できるのかというのは、そのときどきの判断の中で、これからいちばん大事になってくるように思います。
 そういう運用をされるかどうかはわからないのですけれども、いちばん最初にゲノム指針ができたときには、委員会の登録をするサイトが、がんセンターの中にできて、そこでの議論というか、クエスチョンを投げられるようなシステムを作るという話を聞いたことがあります。今度のものは、そういう意味でいろいろと変わったところ、変わらなかったところがあります。先ほどのバンクの話にしても、データベースの話にしても混乱を来す部分はどうしてもあると思っています。
 それに対して、本当にQ&Aでできるのかどうかということもあります。本当は、どういうことがやられているか、どういうふうに考えられているかということを、羅列でいいので、出てくるようなサイトを維持していただけたら、それは大変ありがたいと思っております。実際にそういうことが行われていると、自分たちの考えるあれにもなりますし、そこにまた問い合わせることもできます。匿名でもいいのですが、このように考えて、こういうふうにやっているという事例があることは、倫理委員会の運用の上でも、私どもはありがたいと思っています。これは意見ということで、今回どうこうということではないのですけれども、Q&Aの不足を補う部分がどうしても必要になってきたのではないかという気がいたします。
○武藤委員 
 今回、先ほど辰井委員もおっしゃいましたが、個人情報保護法の下でこの指針を改定することの、非常な難しさを感じながら取り組ませていただいたと思っております。意見の中にもありましたが、「業務上著しい支障を来す場合」というのがわりと多用された点について、研究参加者や一般の方から見てどう見えるのかというのは非常に気にしているところです。ただ、今後医療情報に関する個人情報保護法に基づく別の法律とか、マイナンバーとか少し動きがありますので、是非継続的にこの議論の場が続くことを希望したいというのが1点目です。  2点目は、今回倫理審査委員会の役割がより一層重くなったと感じています。例えば、インシデンタルファインディングスについても、結局はこうすべきということはここには書き込まれず、現場で判断をして、倫理審査委員会もそれをオーソライズするという仕組みになっています。倫理審査委員会が考えなくてはいけないことが非常に増えたという点が、おそらく今後教育・研修において、とても重要な点かと思います。そもそも委員に相応しい者を指名しているので不要というご意見もありましたが、私はそんなことはないと思います。倫理審査委員会が、どんな教育・研修を受けるべきかについては、具体的にこの指針において難しい判断を迫られている点を例示した上で、こういう取組みをすべきだということを示していくのも大事かと思います。
 関連して3点目は、この指針で設けられている倫理審査委員会については、機関のほうでその運用が任されていて、例えばESの指針に基づく倫理審査委員会のように、文科省のほうでその実態を把握することは非常に難しい距離間の委員会だと思います。これはご意見にもありましたけれども、各委員会で経験したことを、どのように事例として積み重ねていって、今後の課題にするのかということも仕組みとして重要かと思っております。
○永井座長 
 いまの点について、事務局から発言はありますか。
○尾崎研究企画官 
 医療情報の関係の話は、動きがあるようだということは我々も承知していますので、そのときの検討を受けて指針の修正なり改正なりということが出てくるのではないかと考えています。ただ、どのようになるかはまだ検討されているところですので、はっきりはわかりません。
○山縣委員 
 いま武藤委員からもお話がありましたが、今回、研究が非常に多様化したということと、あとは臨床研究の指針と疫学研究の指針との整合性という点はとても大きかったと思います。それに伴って、倫理審査委員会が判断するに当たって、こういう整合性を含めたものを踏まえて適切に判断するという前文が入ったのは非常に大きなことです。つまり、武藤委員が言われたように、やはり倫理委員会の役割というのは、それだけ大きくなって、いろいろな判断が、いろいろな研究に対して出てくるときに、どういう研究デザイン、研究様態に対して、それぞれの倫理委員会がどういう判断を、どういう理由で下したのかということが、いろいろな情報として共有できると、いろいろな委員会で判断していくときにいいかなと。Q&Aだけでは十分に対応できず、これからどんどん新しい形態が出てきて、それがにっちもさっちも行かなくなったときには、見直しが必要だという話になるのかもしれません。そのような仕組みがあって、倫理委員会の研修だとか、そういうところに、そういう情報が役立てられるような仕組みを作っていただけるといいかと思っております。
○栗山委員 
 いま武藤委員のおっしゃった、一般の人や参加の人はどう考えるかというのは、私に聞かれたのではないことを十分承知しながら、「著しい」というようなこと、もしかしたら議事録に残っていないところで、どなたかの先生に伺ったのかもしれないのですが、私の感じでは、要望したときに、割と簡単にこれを理由に断られると感じました。ただ、これは法律的には、相当な理由がないと受けなければいけないと解釈されるものだというお話を伺いました。その距離感は、それぞれの立場によってものすごく違うのだろうと思いました。
 それと同時に、本当に開示することを絶対にしないと言い切って、そうすると参加者がどれだけ減るのか。そういう参加者も、そこの先生方が考えているよりは、そのことによって参加人数は影響しないだろうというのが私の一般の人間というか、もしかしたら参加する側だけの人間の感覚だということを、あまり説得力のない話なのですが申し上げさせてください。
○永井座長 
 ほかにご意見がないようでしたら、本日いただいたご意見への対応、あるいは文言の修正については座長にお任せいただいて、本日をもちましてゲノム指針の見直しの取りまとめとさせていただきたいと思いますが、この点はご了承いただけますか。
(了承)
○永井座長 
 ありがとうございました。事務局には、引き続き見直しの告示に向けての作業をお願いいたします。このゲノム指針の見直しについては、昨年4月からこの委員会で、ゲノム研究の進展及びそれに伴う課題について、多くの方々からヒアリングを含めて、幅広い観点からご意見をいただきながら、個人情報保護や試料等の提供者への配慮等の問題について、非常に多くの時間をかけて検討を行ってまいりました。
 このゲノム指針の取りまとめに当たりまして、これまでの検討のプロセス及び今後の課題等について、審議会の親部会に報告するために、資料4のような形で、本委員会としてのステートメントの案を作成しております。この内容について、事務局より説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料4をそのまま読み上げます。ヒトゲノム・遺伝子解析研究は、研究の過程で得られる遺伝情報が、研究に用いられる試料等の提供者及びその血縁者の遺伝的素因を明らかにし、その取扱いによっては様々な倫理的・法的又は社会的問題を招く可能性があるという側面があることから、人間の尊厳及び人権を尊重し、社会の理解と協力を得て、適正に研究を実施することが不可欠である。
 このような基本的認識の下で、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の適切な推進が図られることを目的として、研究現場で遵守されるべき倫理指針として、平成13年に文部科学省、厚生労働省及び経済産業省において「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」を策定した。
 ゲノム指針については、その後、平成15年の個人情報の保護に関する法律等の成立を踏まえて、平成16年に、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省の専門委員会において、主に個人情報保護の観点から検討が行われ、全部改正が行われた。この改正においては、個人情報保護法等の成立を受けた個人情報保護の視点からの見直しに重点が置かれたことから、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進展に対応した見直しについては必ずしも十分ではなく、3省における専門委員会でも、その取りまとめに際し、今後、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進展を踏まえて検討を行うことが必要であると報告している。
 近年、ヒトゲノム・遺伝子解析研究については、解析技術の進展に伴い、より高速かつ簡易に遺伝情報を解読できるようになってきており、新しい治療法の開発や個人の遺伝情報に対応した医療の実現等に向けて、様々な研究が進められている。
 このような状況に鑑み、本年4月より、3省の委員会を合同で開催して、近年のゲノム研究の進展等に対して、ゲノム指針の見直しについて検討を行った。
 検討の過程においては、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進展の状況、遺伝カウンセリングにおける課題、バンクの状況、ルールの状況等について、有識者からのヒアリングを行い、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進展とそれに伴うゲノム指針の課題について、現状の把握に努めながら、個人情報の保護や試料等の提供者等への配慮にも留意しつつ幅広い観点から議論を行った。
 検討に際しては、近年、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進展に伴い、従来の単一遺伝子疾患等の研究から、疾病や薬剤応答性に関するSNP(スニップ)の解析や全ゲノム解析等のより大量の遺伝情報を取り扱う研究へと、研究スタイルが多様化してきている現状を踏まえつつ、個人情報の保護や試料等の提供者等への配慮を十分に勘案しながら、社会の理解が得られるよう、慎重な検討を行った。
 これまでの議論を踏まえ、今般、委員会として意見を取りまとめた。
 なお、検討の過程においては、近年、研究のみならず、医療においてより大量の遺伝情報を扱う機会が増えてきたことや、個人を対象とした遺伝子診断等の遺伝子ビジネスが拡大してきていることなどを踏まえ、遺伝情報に基づく差別や不正行為を禁止するため、保険や雇用等を含む様々な分野における遺伝情報の利用や保護に関して、法律による規制が必要ではないかという意見があった。このような課題は、研究にとどまる問題ではなく、様々な領域や分野の事業に関連してくること、人権の尊重、個人情報の保護、違反行為に対する罰則等、検討すべき事項が広範にわたること等から、国として、幅広い関係者の意見を聴きながら、慎重かつ十分な検討を進めていくことが必要である。今後、国際的な動向や遺伝情報を扱う関連事業の進展に対応して、この課題に対する検討が進められることを望む。以上です。
○永井座長 
 1頁の下から5行目、「本年4月」ではなくて「昨年4月」というご指摘を、いま福井先生からいただきました。ほかにはいかがでしょうか。
○堤委員 
 いくつかあります。先ほどの議論も踏まえてのことです。2頁の「これまでの議論を踏まえ、今般、委員会としての意見を取りまとめた」という上に、こういう趣旨のことを入れていただけたらということで2点あります。もう1つ3点目は後で申し上げます。
 例えば、「遺伝情報の開示にかかる検討において、個人情報保護法等と学術研究の関係においては、必ずしも現在の整理が妥当とはいえないこと、また、倫理指針に法に定められた条文を改変して引用することと倫理的要件、インフォームド・コンセント等を併列して記載することが必ずしも妥当とはいえないと考えられ、これらは今後の検討課題とされた」というのが1点目です。もしよければ、そういう趣旨を付け加えていただきたいということです。
 2点目は、「ゲノム情報をもとに、多数の被験者を長期間にわたり追跡調査するゲノム・コホート研究方法の実施に際しては、研究分野を対象としたヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針、臨床研究に関する倫理指針、疫学研究に関する倫理指針、すべてがかかわる場面があり、今後はこれら指針の統合等を検討する必要があると考えられた」。先ほど山縣先生が発言されたことはそういう趣旨のこともあろうかと思います。
 もう1点も非常に大事だと私は思っております。「今後も発展し続けるであろうヒトゲノム・解析研究が、適正に推進されるためには、研究者自らが本指針の趣旨を十分理解した上で研究を行うとともに、ヒトや遺伝情報の多様性及び特性について国民の理解が促進する必要もあることから、研究者は研究に用いる試料等を提供する被験者や市民に対して真摯に向き合うことが望まれる」。先ほど議論になったと思いますが、個人情報保護法と学術研究の関係です。それから、大規模な疫学、ゲノム・コホート研究のようなときの3つの指針の関係を、この委員会としては申し上げておいたほうがいいのかと思います。3点目に申し上げましたように、「被験者と真摯に向き合う」というのは、この取りまとめの中では是非入れておくべきではないかと思いました。
 もう1点付け加えさせていただきます。最後「なお、検討の過程においては」というように、「検討の過程においては」というのが2頁の2行目と、いまの「なお」のところと2回出てきておりますので、下のほうは削ってもいいのかと思います。それから「個人を対象とした」云々という、いわゆるDTCの遺伝子検査が想定されているようなところがありますが、正確に申し上げますと「個人や子どもを対象とした、科学的根拠が希薄な遺伝子検査等を提供する遺伝子ビジネス(事業者がDTC遺伝子検査や、医療機関を経由して遺伝子検査をするような事業モデル)」というのが正確な表現になろうかと思います。これは付け加えていただければと思います。
 先に申し上げました3つの点については、先ほどの議論も踏まえて、何らかの形でそういう趣旨の文言を案に入れていただけたらと思って申し上げました。長くなりましたが以上です。
○徳永委員 
 2頁の3番目の「検討に際しては」という段落について、「従来の単一遺伝子疾患等の研究から」と書くと、何か薬剤応答性に関するSNP(スニップ)に研究が移ってきた印象になります。いま次世代シーケンサーでよく解析されているのは、単一遺伝子疾患の原因遺伝子の解明ですので、「単一遺伝子疾患等の研究に加えて」とした方がよいと考えます。その後の「疾病」という言葉は、おそらく単一遺伝子疾患の対極にある「多因子疾患」を意図するといます。ですから、結論としては、「単一遺伝子疾患等の研究に加えて、多因子疾患や薬剤応答性に関するSNP - - -」と書いたほうがわかりやすいかと思います。
○辰井委員 
 この見直しについての文章は、この委員会からのメッセージとしてそれなりに重要性を持つと思います。いまの堤委員のご意見は、一応3省の事務局の方としてどのように対応される予定かを聞かせていただければと思います。
○永井座長 
 事務局いかがですか。
○渡辺安全対策官 
 こちらは、基本的に3省委員会において、このまとめを行った後、その考え方などを整理したものということですので、本日追加でいただいた意見が基本的な方向性として妥当ではないかということでしたら、一言一句ということではありませんが、その趣旨を可能な範囲で永井先生とご相談させていただけたらと思います。ただ、この見直しについては、やはり基本的な方向性を示すということですので、細かいことというよりは基本的な考え方を整理するということになるのかと思っています。
○永井座長 
 基本的には、いまの趣旨を汲み取りたいということですね。
○増井委員 
 議論の中で、最初のうちは随分出て、その後は個人情報に負けてあまり議論には出なかったのですが、ゲノム情報の保護の問題というのは、この指針の中で書かれている部分が随分あります。2頁の2つ目のパラグラフの「検討に際して」のところですけれども、「個人情報の保護や試料等の提供者等への配慮」のところに、やはり「ゲノム情報の保護」というのを入れていただきたいと思います。それは、いちばん最初のときに議論された、個人情報とゲノム情報はどういう関係にあるかということを、より深く意識しなければ我々の判断ができない、そういう時代になったということがありますので、情報のカテゴリーとして、個人情報というカテゴリーだけでは不足しているということを皆様も認識されていることだと思いますので、その点も踏まえて、ここに「個人情報及びゲノム情報の保護」という言い方をするのも重要なことではないかと思います。
○知野委員 
 先ほど来Q&Aの話がありました。このペーパーは委員会に出されるということで、かなり専門的で、経緯についての記述がかなりの部分を占めています。一般の人から見た場合に、何がどう変わったかというところを、もう少し要約とでもいうのでしょうか、Q&Aのさらに前の段階として、それを示していくようなペーパーを作ることはしないのでしょうか。
○永井座長 
 先ほどの増井委員の「個人情報及びゲノム情報の保護」と、いまの知野委員の件の2点について事務局からお願いいたします。
○渡辺安全対策官 
このペーパーで今回の概要を示すということもあるかと思うのですが、我々としてはこれがまとまったときに、通知などでそれをしっかり周知するなど、そこも含めて考えてまいりたいと思います。
 それから「遺伝情報及び個人情報」という形が問題なければ、それは入れてもいいかと思います。ただ、個人情報の中にも遺伝情報は入るということなので、その辺のワーディングがどうかは少し考えたいと思います。
○辰井委員 
 研究者は興味があって直接調べていると思うのですが、突然現場で被験者になるとか、情報提供という話を持ちかけられるかもしれない。そういうときに、パッと見てわかるように、例えばホームページに掲載するとか、何らかもっとわかりやすいものが必要ではないかと思いました。
 個人情報と遺伝情報の話ですが、個人情報の中に遺伝情報が含まれる云々という話よりは、個人情報の保護という考え方と、遺伝情報の保護、あるいは適正な利用という考え方、その2つは異なる理念に基づくものとして存在していますので、そのことを示すために両方を。個人的には「及び」でつなぐと、印象としては一緒くたになりますので、違う言葉で書き分けていただきたいと思います。
○永井座長 
 状況によって、ゲノム情報は個人情報になる場合もならない場合もあるということですので、その辺のニュアンスを出してほしいということだと思います。
○藤原(靜)委員 
 事務局にお伺いします。先ほど来の堤委員、辰井委員、増井委員のご意見はそれぞれにごもっともな部分があるとは思います。そこで伺うのですが、このペーパーの性格というのは、このペーパーと今回の報告書の関係はどういう関係になるのですか。いまのようなご意見を全部入れていくとするならば、このペーパーの性格はどのようなものか知りたくなってきました。つまり、どういう議論をやったかという経緯なのか、先ほど堤委員がおっしゃったように、議論の対立はこんなにあったのだということをメッセージとして伝えたいのか、あるいは最大公約数的に、親委員会に対してこういう視点、こういう観点で大枠は議論しましたということを申し上げたいのかによって違ってくると思うのです。対立点を詳細に書き込めば書き込むほど、何をやったのかという話になると思ったので、関係をお伺いしたいと思います。
○渡辺安全対策官 
 こちらのペーパーについては、これが見直しについての答申のような形で、実際にどういうことを見直すということまで含んだようなペーパーではないかと思っています。あくまで我々としては、これまで議論してまいりましたのは、本日でいうと資料3のような内容です。それを本日まとめていただいたということですので、それのまとめに至るまでにどういう検討を行ってきて、今後の課題としてはどういうものがあるかを整理したものです。やはり、詳細な議論の経緯といったことを書くという趣旨よりは、基本的にこういう検討を行って、こういうことが課題となっているということを、なるべく簡潔にということで整理したらどうかという趣旨です。
○堤委員 
 いま整理していただいて、藤原先生のお話も含めてなのですが、やはり対立点があったということは、次の検討課題でもあるしというふうに考えたほうがいいのではないかと思って先ほど申し上げた次第です。別に長々と書いていただきたいということではないのですけれども、それは非常に大事なことであったのではないかと思います。最初の6回ぐらいまでのところは、開示の話を相当やってきた経緯もありますので、そこは非常に大事な論点だったと認識しています。
○武藤委員 
 いま藤原委員からご質問があったことの追加なのですが、これは宛名のあるペーパーではないのですよね。親部会に宛てた紙ではなく、皆様へというか、国民の皆様へという趣旨の紙になりますか。
○渡辺安全対策官 
 見ておわかりいただけますように、この見直しについてということを、3省の委員会で、このように見直しを行ったということです。
○永井座長 
 このあり方を議論し始めると、また一からすべて議論になるのですが。
○堤委員 
 やはり、親部会に出したとしても広く読まれることは間違いないと思われますので、あまり細かくならないような形で、論点としてはこんなことがあったというのは広く知っておいていただいたほうが、今後のためにもつながっていくのではないか。そういう位置づけになるのではないかと感じていました。
○永井座長 
 経緯、論点、課題がうまく織り込まれるように最終的に整理させていただきたいと思います。
○藤原(靜)委員 
 いま座長がおっしゃったように、論点、経緯、課題のうち、特に論点が端的に盛り込まれる形がよろしいのではないかと思います。なぜ先ほどのような質問をしたかというと、堤委員は、議論について妥当である、妥当でないの判断までいくつかの論点についておっしゃいましたけれども、そういう議論をし出すとまた収まりが付かなくなります。そういう意味があったので、先ほど辰井委員が、議事録には私の意見は載せていただきたいという形にとどめられたのだと私は理解しました。修正するのであれば、論点を掲げるということに、とどめたほうが趣旨はよくわかるのかという気がいたしました。私の意見です。
○永井座長 
 そういうことでよろしいでしょうか。最終的には座長と事務局で相談させていただいて取りまとめたいと思います。いまご発言いただいた点については十分留意して、できるだけ織り込むようにしたいと思います。そういうことでご了承いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(了承)
○永井座長 
 ありがとうございました。その他ということで、事務局から連絡事項をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 本日おまとめいただいたゲノム指針の見直しにつきましては、今後、審議会の親部会に適宜諮る等の各省庁内でのプロセスを経た後、見直しの告示を行いたいと思っております。告示後は、説明会等を開催し、見直しの内容や、その考え方について幅広く周知を行ってまいりたいと考えております。
○永井座長 
 この委員会は1年にわたり、非常に多数の開催をさせていただきました。また、その間にもいろいろ打合せ等で委員の先生方には、非常に多くの時間と労力をいただきましてありがとうございました。まだ課題がたくさん残っておりますが、とりあえずはこの形で、この何年かは研究者に指針として示して、さらに次の改定のときにはより建設的な形で作業が進められればと思います。本当に長い間ありがとうございました。最後ですが、本日は矢島技術総括審議官がご出席ですので、ご挨拶をいただきます。
○矢島技術総括審議官 
 厚生労働省技術総括審議官の矢島です。3省の合同委員会として、本日最終的な取りまとめができたと思います。代表いたしまして一言御礼を申し上げます。この倫理指針の見直しについては、昨年4月19日に第1回を開催し、本日で10回目の合同委員会となります。先生方には、1年間という長きにわたり、お忙しいところをご出席いただき、精力的にご議論いただき本当にありがとうございました。取りまとめをすることができましたことを御礼申し上げます。どうもありがとうございました。
○永井座長 
 どうもありがとうございました。本日の委員会はこれで終了させていただきます。長い間ありがとうございました。


(了)
<問い合わせ先>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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