ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 「統合医療」のあり方に関する検討会> 第2回「統合医療」のあり方に関する検討会議事録




2012年4月25日 第2回「統合医療」のあり方に関する検討会議事録

○日時

平成24年4月25日(水) 15:00~17:00


○場所

厚生労働省講堂


○議題

1.「統合医療」の評価方法について
2.その他

○議事

○佐々木調整官 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第2回「『統合医療』のあり方に関する検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様方におかれましては、大変お忙しいところ、本検討会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 最初に、前回御欠席だった構成員の御紹介をさせていただきます。
 元日本学術会議会長の金澤一郎構成員です。
 あと、本日は羽生田構成員、門田構成員より御欠席との御連絡をいただいております。
 また、本日も特別参考人として関係者に御出席をいただいております。
 財団法人聖路加国際病院院長の福井次矢参考人です。
 福井参考人には、後ほど御発表いただく予定でございます。
 それでは、最初にお手元の資料の確認をさせていただきます。
 いつものとおり、議事次第、座席表のほかでございますけれども、資料1としまして、福井参考人の提出資料。
 資料2としまして、丸井構成員の提出資料。
 資料3としまして、渡辺構成員提出資料。
 資料4が論点メモ。
 資料5が「統合医療」を提供している主体という1枚紙でございます。
 それから、大部になりますけれども、参考資料としまして、平成22年度厚生労働科学研究の特別研究事業の報告書をお付けしてございます。
 資料の欠落等ございましたら、事務局にお申し付けいただきたいと思います。
 よろしいでしょうか。
 それでは、以降の進行は、座長にお願いします。
○大島座長 大島でございます。よろしくお願い申し上げます。それでは、早速、議事の方に入らせていただきたいと思います。
 まず、最初に構成員欠席の場合には、代わりに出席される方の扱いについて、事前に事務局を通じて座長の了解を得ること、及び当日の会議において承認を得ることと規定されております。
 ということで、本日は、羽生田委員の代わりとしまして、今村参考人が御出席ですので、これをお認めいただくということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○大島座長 ありがとうございます。それでは、お認めいただいたということで、議事の方に入らせていただきたいと思います。
 まず、最初に、今日は大臣が御出席ですので、最初に大臣から一言ごあいさつをいただきたいと思います。
○小宮山厚生労働大臣 厚生労働大臣を務めております、小宮山洋子でございます。今日は、お忙しい中、検討会に御出席をいただきましてありがとうございます。
 今日は、第2回ということですが、1回目伺えませんでしたので、是非、皆様に一言ごあいさつをしたいということで、今日は出席をさせていただきました。
 これまで、日本の医療は、近代西洋医学を中心に発展をして、御承知のように、世界に誇れる長寿社会になっています。
 ただ、一方で、がんですとか、生活習慣病などの慢性疾患に対しましては、近代西洋医学が必ずしも万能ではないという、そういう御意見もございます。
 こうした中で、伝統医療などに対する関心、これは、最近、特に高くなっていると思います。
 私自身も、民主党の中の「統合医療」の勉強をする会のメンバーでございまして「統合医療」の必要性については、私も強く意識を持っているところです。
 一方で「統合医療」といいましても、さまざまなものがございますので、安全性とか有効性については、科学的な根拠が求められているというような課題もいろいろあるかと思います。
 この「統合医療」の評価につきましては、近代西洋医学的な手法だけでは測れないものがあると思いますので、新しい手法を是非御検討いただきたいと思っています。
 「統合医療」を推進していくためには、どんな取組みが必要なのかということを、是非、検討会の皆様にも活発に御意見をいただきまして、厚生労働省といたしましても、積極的に検討をしていきたいと思っておりますので、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
○大島座長 ありがとうございました。今のお話で、この会がどういう方向に向かうのか、随分見えてきたような感じもいたしますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 それでは、議題に入りたいと思います。
 議題は「統合医療」の評価方法についてであります。
 カメラ撮りは、ここまでとさせていただきます。
 前回「統合医療」の評価方法についても、さまざまな御意見をいただいたところですが、この点については、平成22年度の厚生労働科学特別研究の中で、研究代表者であった、福井参考人が、1つの考え方をまとめて示されていますので、今日は、そのお話を最初に伺って、そこから入っていきたいと思います。福井参考人、よろしくお願い申し上げます。
○福井参考人 聖路加国際病院の福井です。
 平成22年度の厚生労働科学特別研究事業で「統合医療の情報発信等のあり方に関する調査研究」を行い、その研究代表者を務めさせていただきました。最初にどういう研究を行ったかということ、その後、評価や研究の方法論に関するお話を20分程度させていただきたいと思います。
 お手元に資料がございます。資料1の1枚目に研究メンバーを記載しております。
 2枚目が、研究の目的です。伝統医療と相補・代替医療の両方をまとめて、TRM/CAMと呼んでおります。
 3つの目的をもってこの研究を行いました。最初が、安全性、有効性あるいは経済性等に関する評価方法の問題点です。先ほど大臣のお話にもありましたが、TRM/CAMにつきましては、評価が難しく、「現在国際的に用いられている評価方法とは異なる方法でないと評価ができないのではないか」という御意見がいろいろあるようです。それについての、私たちの調査と考えを述べさせていただきます。
 2番目が、一般の方々への情報提供の実態について調べるということ。これにつきましては、この研究グループで行った研究の結果について、丸井先生が後ほどお話をされることと思います。
 3番目が、外国の状況についての調査です。全体として、我が国における「統合医療」の情報発信の在り方について検討するということになっております。
 研究の方法のうち、評価方法につきましては、非常に難しいとの御意見があるものですから、過去に行われたいろいろな研究を拝見して、どうして従来のまたは国際的に用いられている研究方法では難しいのかについて調べることにしました。
 情報提供と外国の調査については、省かせていただきます。国民への情報提供の実態につきましては、インターネットを使った調査の結果について、丸井先生の方から御説明があるかと思います。
 外国の状況につきましても、アメリカのいわゆる厚生省に相当するところの、NIHの一部局であるNCCAMの調査も行いました。最後のところで触れたいと思いますが、ここでは研究費の一元管理を行っていて、情報も一般の患者さんや国民向け、医療従事者向けの情報提供をきめ細かく行っているとのことです。
 例えば、患者さん向けの情報ですと、ウェブサイトでヘルス・インフォメーションというサイトがあって、ウィークデイには、CAMに関する質問も受け付けていて、テキストチャットやeメールを介して回答もしています。
 医療従事者向けには、ウェブサイトでe-learningとか、レクチャーシリーズがあり、CAMのリサーチに関するサマリーもウェブサイトで提供しています。
 それ以外に、紙の媒体でニューズレターのゲッツ・ザ・ファクトというものも発行しています。
 外国の状況につきましてはインド、韓国も調査させていただきました。
 インドも韓国も医療制度が二本立てになっていて、教育のルートも別個につくられているという点は、我が国との大きな違いです。
 本題の安全性、有効性、経済性等に関する評価方法についてであります。確かにいろいろな報告書に、従来の考え方、つまり私たちが臨床疫学とか、EBM、エビデンス・ベースド・メディシンと呼んでいる考え方で評価するのは不十分との記載がございます。しかし、私たちが読むところでは、どうしてEBMといいますか、現在の考え方での評価が不十分なのか、その理由が書かれていません。
 EBMとは、ランダム化比較試験であるとか、EBMとは、均一な治療法をすべての患者さんに適用しなければならないとか、症状などの全人的な効果についての評価はできないという、EBMの誤解に基づいて、EBMの手法では評価できないと結論している報告書が、実は大部分であるということがわかりました。
 確かに「統合医療」というのは、多くの医師が日本で勉強してきた西洋医学とは、いろいろな点で異なります。
 第1に、陰とか陽、虚とか実など、漢方医学でいう診断の疾病概念、診断概念が違うものですから、そのような考え方で患者さんを割り振って評価したものを、西洋医学だけしか学んだことがないドクターがその研究結果に基づいて漢方を使おうとしても、全然違うカテゴリーの患者さんを診ることになりますので、研究でいうところの外的妥当性に大きな齟齬が生じるというのは事実だろうと思います。
 それから、TRM/CAMでは、治療による結果が定性的で、かなり主観的なものが多いというのも事実だと思います。また、治療の効果が非常に多種類にわたり、生存率とか、病気が治った治らないなどということだけではない、そういう複合的な点をどうやって扱うのかという点も指摘されています。しかしながら、これらの点は両方とも臨床疫学やEBMで精力的に研究が行われてきているところで、それなりの手法が開発されてきています。
 一方、本検討会の委員の寺澤先生に伺ったことですが、我が国の漢方薬は、生薬の品質が厳格に規定されていて、外国で用いられている生薬と異なって、研究をする上ではメリットが大きいとのことです。
 そもそもEBMというのは、医学的根拠に基づいて、そのほかの要因も組み合わせて医療を行おうというものです。エビデンスを作る臨床研究の方法には、コホート研究や症例対照研究、ランダム化比較試験(無作為化比較試験)、データをいろいろ組み合わせるタイプの費用効果分析までいろいろありますが、研究の結論を、真実とは違った方向にもっていくバイアスが入りやすいか、入りにくいかによって、レベルづけをしようというのが、EBMの基本的な考え方ということになります。確かにRCT、無作為化比較試験は、一番結論が誤っている可能性が少ないものですから、もし、それができれば、それに越したことがないというのは事実です。しかし、臨床状は、ランダム化比較試験を倫理的な理由で行えない場面も少なくないため、そのような場合には、レベルは低くなりますが、異なる研究デザインを採用した研究の結果基づいて医療を行おうということを言っているにすぎません。レベルガ一番上のランダム化比較試験でなければだめというのは、最初から、EBMでは一言も言っていない話であります。
 患者さんのデータが実際にない場合には、エキスパート・オピニオンを重視しようというのがEBMですので、こういう方法論が全く適用できない対象はほとんどないと思います。
 次に、このグラフは、世界中で行われている、無作為化比較試験、一番レベルの高い臨床研究がどれくらい行われているかについて、1970年から2010年まで追ったものです。2010年は、1万5,326件のRCTが行われていて、そのうちのたった1,163件、7.6%が「統合医療」分野のRCTでした。
 一方、我が国では、2010年にRCTは551件行われていて、そのうちの17件、1.5%が「統合医療」分野のものでした。
 世界の診療分野別RCTを見ますと、2010年に一番上に来ていますのが三角で示しているがんの研究です。その次が循環器。1983年辺りを見ていただきますと、このグラフの1970年から1995年辺りまでは、実は圧倒的に循環器分野でRCTが行われていました。そこから、5年ほどかけて、がん分野と徐々に入れ替わってきました。当初から、米国がリーダーシップを取って、RCTをたくさん、頻度が高い循環器分野で行ってきましたけれども、今は、がんの分野も、エビデンスの高い研究がたくさん行われるようになってきております。一番下の黒丸のラインは「統合医療」関係で、随分遅れて立ち上がってきております。同様のことが日本にも当然言えるわけです。
 次のグラフは「統合医療」のシステマティックレビューについてのものです。テーマごとに、質の高い無作為化比較試験をまとめて結論をトータルとして出すという研究方法が、システマティックレビューです。たとえば、一番左側の鍼につきましては、これまでに30のシステマティックレビューが行われていて、こういう研究をまとめて世界中に発信しているコクランライブラリーというところに掲載されています。その次に多いのが漢方ということになります。
 これは、2008年から2011年までのデータですが、これらのシステマティックレビューに1,200件の無作為化比較試験が引用されていて、そのうちの3.3%にあたる40件が日本人によるものです。ごらんになっておわかりかと思いますが、効果ありという灰色で塗りつぶしている部分が随分少なくて、鍼のところでは4件、マッサージのところが1件、太極拳が1件で、ほとんどのものが未確定、効果を判定できないという結論になっております。
 次は、「統合医療」分野に配分された研究費です。2003年から2009年度までのものですが、2003年から2006年度までは、厚生労働省の研究費が比較的多かったのですが、最近では、文部科学省の方が入れ替わって多くなり、2009年度は4億7,000万円の研究費が「統合医療」分野に使われているというものです。
 これをアメリカのNCCAMの研究費と比較しますと、20倍の差があります。人口比で考えても、6倍、7倍アメリカでは使っているということになります。
 スライドは以上です。これに基づいて、私が考えたことは、少なくとも研究については、我が国ではコントロールタワーが必要ではないかということです。
 といいますのは、日本で「統合医療」分野に配分されている研究費は、複数の省庁から出ていて、どういうテーマを重点的に国として追及するのかもわかりにくく、恐らく研究者の興味にしたがって応募されて、できのいい申請書を書いた研究者に研究費が回るという仕組みだと思われます。少なくとも研究費の一元管理、その一元管理という意味は、研究の方向性を国として見極めるということと、研究費を有効に利用すること、そして、研究の成果を第三者の立場で評価するという、そういう意味で、何らかの常設機関があった方がいいのではないかと強く思いました。
 そして、米国のNCCAMを参考にということにはなりますが、何らかの情報発信の機能もどこかが一元的に担う必要があると思います。できることなら、研究関係のセンターと一緒に研究者への情報発信、それから、一般の国民向けの情報発信が、今よりも整備される必要があるのではないかと思います。
 最後に1点だけ、先ほどの評価方法、研究方法の件につきまして、これは、「統合医療」分野だけの問題ではございません。我が国では臨床疫学や医療統計の専門家が育成されておりませんので、十分内容がわからないまま研究の方法論について発言される方が多いのではないかと思っております。
 米国や欧州は、臨床家とともに研究方法の専門家が一緒に研究する体制が整えられています。我が国では研究方法の専門家が本当に少ないものですから、EBMや研究方法論について誤解が広まっているのではないかと思います。
 いろいろな研究結果や調査データを統合するタイプの研究方法では、アウトカムを全部まとめる方法としては、例えば、効用値、ユーティリティーという概念だとか、主観的な評価を数値化する方法もいくつも開発されてきております。研究の方法論は、過去20年間ずいぶん発展してきておりますので、研究方法論の専門家とともに、「統合医療」も是非レベルアップをしていただき、外国の研究に伍する研究を行っていただきたいと期待しています。
 以上です。
○大島座長 ありがとうございました。最後は、「統合医療」だけではなくて日本全体の臨床研究の不備な状態まで言及されました。続きまして、同じ研究事業において一般の方々が「統合医療」をどのように利用しているのか、また、どのようなイメージを持っているのかという調査研究について、丸井構成員から、その結果について御報告をお願いしたいと思います。10分程度でお願いいたします。
○丸井構成員 私、構成員の丸井でございます。先ほど福井先生から御紹介がありました、平成22年度の「統合医療」に関連した、特別研究の分担として、それまで食品あるいは感染症についてのリスクコミュニケーションについて、さまざまな角度から研究あるいは行政のお手伝いをしてきましたので、その立場から参加させていただきました。
 また、前回、第1回目に「統合医療」とは何かというお話の中で、スライドでも一覧表が出まして、各種の療法が挙がってまいりました。そのリストをつくりました責任もございまして、今日、御説明をさせていただこうということになります。
 「統合医療」に関連しまして、資料2というのが、ただいまの福井先生の資料の後にございます。右下に資料2のページが振ってありまして、資料2の右下に1と書いてございます。真ん中に44と書いてありますが、これは報告書全体のページです。
 分担としまして「統合医療」の利用状況及び「統合医療」に関する情報提供に関わる研究ということで、統合医療、そもそも前回のお話のように「統合医療」とは何かと言うボーダーが明確でないところで「統合医療」という言葉を使って質問をしようということで、非常に出発点から難しい問題がありました。
 対象としては、大きく考えられましたのが、いわゆるマスメディアの情報発信、そして、もう一つは、一般の方がその情報をどのように受けとめ、あるいはどのように利用し、実際にどのように実践しているかということ。
 もう一つは、医療者が統合医療についてどのように考え、現実にどのように実践あるいは行動していらっしゃるかと、この3つの角度があるというふうに考えております。
 ただし、最後の点につきましては、この検討会の議論そのもの、医療とは何かというところにも関わってくる話でして、これについては、平成22年度には、最終的には行っておりません。
 ということで、まず、マスメディアを対象としてということですけれども、これは、主として新聞記事の検索エンジンを用いまして、2001年から2009年、5大新聞で「統合医療」「代替医療」「補完・代替医療」「民間療法」「医療類似行為」「伝統医療」というような用語でどのような記事があるかということで、そこに挙がってきましたリストを一とおり挙げていきますと、それが、前回示されました一覧表です。
 例えば、これでいいますと、何枚かめくっていただいて、右下に7ページと書いてある表がございます。表2です。各種療法の利用経験というので、はり・きゅうからずっと下の方まで漢方、その他というところまで入ってきております。これを前回、リストとして挙げたわけです。
 このようなリストを質問紙としてつくりまして、これは一般の方ということですけれども、実際には、いわゆるオンラインで情報を集めるということで、3,000名を2組としました。AとBの2組につきまして、Aに対しては、実際にどれくらい利用しているかと、そして、そのときに、どのような情報を選択に用いたかということを質問しました。
 もう一つは「統合医療」を利用したか、そして、それによって何か不都合なこと、不利益があったかというようなことを聞くという2つのグループを設定しました。
 その部分につきましての調査が、右あるいは左で4ページとか、5ページというところで、一般の「統合医療」の利用状況に関わる研究というところです。これを見ますと、やはりサプリメント、健康食品というのが、利用経験があって最も多い、あるいは各種マッサージというようなものが非常に利用頻度が高いということになっております。
 また、以前利用したけれども、今はやっていないというので、各種マッサージなどがあがっています。利用をやめる理由は、効果が余り感じられないとか、身近に利用できる場所がない、あるいは費用がかかるというようなものが大きい理由でした。
 もう一つのグループも同じように、3,000人ずつの2つのグループですが、ほとんど同じような結果でした。
 そして、例えば、実際に医師から紹介されるというような、いわゆる「統合医療」の中では、温熱療法あるいは骨接ぎ、接骨、食事療法というような項目が医師から紹介された、あるいは医師と相談して行ったというのも似たような回答になっておりました。
 そして、少しページをめくっていただきまして、右下に19と書いてございますページがございます。途中に、先ほどの質問票なども入ってございます。
 これは、一般の「統合医療」に対するイメージという研究でして、これは、また、別のほぼ3,000人を対象としまして、「統合医療」についてどのような知識を持っているか、認識をしているか、「統合医療」に対してどのような態度を持っているかということを調査しました。
 先ほどのように、マッサージ、サプリメント、漢方薬という辺りで利用経験が非常に高い。あるいは知っているかということを聞きますと、マッサージ、漢方薬、サプリメントというのが「統合医療」の中でよく知っているということになっています。
 しかし、それでは、実際によくわかっているかというと、必ずしもそうではなく、マッサージとか漢方薬については、かなりわかっている、自分たちにとってもわかっているもので、比較的安全だというふうに考えているという回答が多かったわけです。
 しかし、これは、単年度の研究班で、断面調査を行いましたので、実は、イメージをつくったために、よいイメージがあるので利用しているのか、あるいは利用経験があったので、イメージがよくなったり、悪くなったりしたのかという、その辺りの因果関係といいますか、どちらが、どちらを決めているかというのは、この段階では、どちらとも言えずというところで調査を終了したことになります。
 初めに少しお話ししましたけれども、医療者向け、これが、実は一番我々が知りたいところですけれども、実は、医療者に対してこの手の調査をするということは、ある意味では非常にリスキーなことです。医療者のだれにということもありますけれども、単に反発を呼ぶというよりは、攪乱をするというか、予断を与えるということになります。なぜこんなことを聞くのかということを当然医療者は考えます。そういったことで、医療者に対する調査は、非常に慎重にしないといけません。特に、この検討会での、例えば「統合医療」をどういう場所で、だれがどういうふうにするかというようなことを、ある程度明確にした上でないと、あるいは実際に、それを推進するのかどうかというようなことも被調査者が考えてしまうと、そういう調査になってはいけませんので、これについては、注意深く、もう少し、この検討会の議論を待って、本当は調査したい。是非、知りたいところではあると考えております。
 以上、先ほどの福井先生の2番目の項目について、簡単に御報告させていただきます。
○大島座長 ありがとうございました。それでは、前回の検討のまとめが出ていますので、その論点メモについて事務局から説明していただいて、討論に入りたいと思いますので、その説明の方をよろしくお願いいたします。
○知念課長補佐 それでは、事務局の方から、資料4について説明させていただきます。
 前回の検討会において、事務局の方から4つの論点を示させていただきましたが、それにつきまして、構成員の先生方からいただいた主な御発言についてまとめさせていただいております。
 まず、1つ目の論点ですが、「統合医療」をどのような概念としてとらえるべきか、ということに関しましては、「統合医療」とは、近代西洋医学とそれ以外の伝統医学や相補・代替医療とを統合したものと言えるのではないか。といった御意見や、だれが、だれに対して行う療法について検討するのか整理すべきといった御意見。
 また、ある程度のところで定義や範囲を決めてから議論してはどうかといった御意見をいただいております。
 次に、論点2つ目ですが、「統合医療」について、現時点において、どの程度の科学的知見が得られていると言えるかという論点につきましては、「統合医療」の評価基準の策定は非常に困難とされている。個人の反応が異なることからランダム化比較試験(が実施できない分野が多くあるという御意見をいただいております。
 3つ目ですが、「統合医療」の安全性・有効性等について、どのように評価したらよいかという論点につきましては、副作用や医療事故につながっているものが現実にある。安全性・有効性の評価が非常に重要であり、安全性・有効性がきちんとした形で評価されなければ、推進はできないといった御意見、また、新しい評価手法によって、今までブラックボックスであったところが、今後、客観的に解明されていくのではないかといった御意見をいただいております。
 おめくりいただきまして、最後の論点になりますが、「統合医療」を推進していくためには、どのような取組が必要かということにつきましては、「統合医療」には良いものとそうでないものとが共存している。このため、評価する基準を明確につくる必要がある。その上で、国内外のデータを整理して分析する必要があるのではないかといった御意見や、有害事象を含めた情報発信を消費者に対して正確に行っていく必要があるという御意見をいただいておりました。
 続きまして、資料5をごらんください。横紙の資料になりますが、先ほどの論点の1つ目に関連しておりますが、「統合医療」については、その提供している主体について整理できるんではないかといった御意見をいただきましたので、その観点からまとめさせていただいております。
 いわゆる「統合医療」には、医師等の医療関係者により提供されるものと、医師等以外の者により提供されるもの、または利用者自らが利用しているものがあるというふうに考えております。
 下の図の方ですが、一番小さい枠囲みの中は、医師により提供されるものとしてまとめております。
 具体的には、抗がん剤の副作用の軽減のために処方された医療用漢方薬や、また、医師の指示の下で実施されるあん摩、マッサージ指圧、温泉療法やサプリメント等が挙げられると考えております。
 続いて、真ん中の枠囲みになりますが、医師以外の医療関係者により提供されるものとなっております。
 具体的には、はり師やきゅう師により実施される鍼灸、また、薬剤師等からの服薬相談の下で服用される一般用漢方薬を挙げております。
 最後に、一番大きな枠囲みになりますが、こちらは医療関係者の提供によらず、患者、利用者自身の判断で提供されるものとしてくくっております。
 具体例としましては、ヘルスケアサービスとして提供される、マッサージやヨガ、フィットネス、また、温泉への入浴や音楽鑑賞などが挙げられると考えております。
 事務局からの説明は、以上になります。
○大島座長 ありがとうございました。前回の議論のときに、「統合医療」というのは、そもそも何なのかというところから始まったんですが、余り厳密に、この議論をやり始めると、泥沼に入ってしまう可能性があるので、そこは大まかにこんなところだろうという御理解、それはそんなに大きく構成員の中で違わないだろうということで、統合医療の範ちゅうについては緩やかな理解で進めてゆこうということが1つ。
 そして、既に実態として、いわゆる「統合医療」という範疇に入るものが国民の中に随分多く使われていて、特に欧米では、使われている頻度や量が非常に大きく、しかも、日本はまだそうでもありませんけれども、公的な費用も非常に多く投入されているといった実状がある。
 このような実態を踏まえて、今後を考えた場合に、このまま放置しておいていいものかどうか、今、問われているのではないかというところがスタートだろうというコンセンサスをいただいたと思います。
 中にはいいものもあるし、あるいは中には悪いものもあるだろうと、いいものであれば、どう使用していくのがいいのかという方向に議論が行くし、悪いものであれば、それはやめてもらうしかない。現実に、いろんな副作用等が出ているものもあります。
 最も多いのが、良いか悪いかよくわからぬというものですが、この状況をこれからどうすればよいかを考えると、統合医療をどう評価するのかということが避けられません。
 それで、今日は、その辺について福井先生の班でまとめられたお話を伺い、それから受ける側の意識というところで丸井先生のお話を伺いました。ということで、今日の議論をスタートしてゆきたいと思います。
 御自由に、どうぞ、御質問を含めて。
○金澤構成員 申し訳ありません。前回、出席できなかったものですから、今のまとめの論点整理の中で、2点ほど、ちょっと伺わせていただけたらと思います。1ページ目の2つ目の○の途中に、「統合医療」の評価基準の策定は非常に困難、それはいいです。問題は、次なんです。「個人の反応が異なることから」とわざわざ言う理由がよくわからない。この辺の具体的な御説明が、もしあったんでしたら、教えていただきたいというのが1つです。
 もう一つは、2ページ目の最後のところで、「よいものとそうでないもの」というのは、ちょっと余りいい表現ではないように思うんですね。つまり、誰にとっていいのか、何といったらいいでしょうかね、国民にとって有用と考えることができるものか、科学的に誤っているものか、そういう意味なんでしょうか、特に「よいもの」という言葉がよくわからない。この2つをお願いします。
○大島座長 どうぞ。
○佐々木調整官 事務局より回答申し上げます。ただいまの御質問、実は2点とも、前回特別参考人としてお招きしました、日本統合医療学会の渥美先生よりいただいたところでございますので、ここに記載してございます内容は、その当時の議事録といいますか、それをそのまま記載でございますので、済みません、詳細については、この場で確認はできませんけれども、この言葉のとおり、御発言いただいたというところでございます。
 ちょっと答えになっていないかもしれませんけれども、済みません。
○大島座長 ほかにいかがでしょう。どうぞ。
○広井構成員 福井先生のお話について質問を2点ほどさせていただければと思います。全体を非常に印象深くお伺いしたんですが、福井先生の資料の右下に薄くページ数で出ている12ページのところで、世界の全RCTと「統合医療」分野のRCT件数というグラフに関してです。これは、全体が一万五千幾つで、「統合医療」関係が1,163というのは、確かに少ないと言えば少ないかと思うんですが、もともとの母数が圧倒的に「統合医療」以外の分野のというのは大きいということを考えれば、割合で考えると、必ずしも「統合医療」分野はRCTなり、何なりが行われていないとは必ずしも言えないのではないかと。この辺りの解釈といいますか、逆に言えば、RCTなりEBMが課題であるというのは、「統合医療」に限ったことではなくて、むしろすべての医療に共通したものであると、そういうことにもなるのではないかと、それが1点でございます。
 もう一点は、15ページ目の資料で「統合医療」のシステマティックレビューのコクランライブラリーのがございますけれども、これで未確定というのがかなり多いわけですが、この辺りをどう解釈したらよいかということです。効果ありでもない、効果なしでもない、未確定ということですが、どのように理解すればよいかということでございます。
○福井参考人 2つ目からいきますと、これは、システマティックレビューですので、対象患者数を物すごく増やして、できるだけ統計学的な有意差が出やすくするためにやっていますけれども、それでも有意差が出ないというものです。Aという薬と、Bという薬、従来使っている西洋医学的な治療法と、例えばCAMの何かを比べて、それが、例えばある1つのテーマについて、5つのRCTが行われていると、そのRCTのデータを全部まとめてAという薬とBという薬の有意差が出るかというのを調べる、有意差がそれでも出ないというのが未確定です。有意差が出たものが効果ありという方にいっています。ほかの分野に比べて、すごく効果なしというものの比率が高いのが、このCAMの分野だと思います。
 それから、先ほどの1万5,326、2010年度のRCTが、私たちがパブメドで検索したものですけれども、その中で1,163あったと。これは、何を母集団として考えるかによって違うものですから、あくまでもRCT全体の中で、これだけあったということで、母集団というか、何をイメージするかによって大分違うとは思うんですけれども、それ以上のことは、ちょっと言えないと思います。
○大島座長 どうぞ。
○伊藤構成員 質問ではありませんが、やはり「統合医療」とは何かという定義が、やはりまだあやふやといいますか、やはりそこをきちっとした上で話を進めないとだめだと思います。
 福井先生から報告いただきました「統合医療」というのは、伝統医療、主に補完代替医療という領域のお話だったと思いますが、前回の1回目のときに「統合医療」というものはどういうものかというと、その1つの意見として、やはり今の近代西洋医学、これは絶対ありきなんですね。それに、それ以外の伝統医療なり、補完代替医療を加えて、更にQOLを上げようという医療であって、補完代替医療の中には医療ではないようなものも含まれているということになります。
 そうしますと、やはり「統合医療」というのは、近代西洋医学と、それ以外のものを組み合わせて、医師主導でやっていく医療だと、私は考えています。そこで、統合というのは、何と何を統合するかということでございますが、近代西洋医学とそれ以外の医療、それから西洋医学と東洋医学というふうにいってもいいですし、伝統医療と未来医療というふうに言ってもいいと思います。特に、西洋医学が、今、欠落していると思われる全人的なところに、補完代替医療に欠如しているエビデンスを加えた形で、両者を統合させる、そういうふうに私は考えています。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○今村参考人 資料5について、お尋ねしたいんですけれども、医師により提供されるものの具体例の中に、その一番上のポツ、抗がん剤の副作用の軽減のために処方された医療用漢方薬とございますけれども、そのほかの漢方薬については、既にEBMというのがはっきりしているし、保険収載もなされているから、これについては、いわゆる「統合医療」というものから外すというふうに考えてもよろしいんですか。そのほかのものとは、ちょっと違うと。
○大島座長 どうぞ。
○佐々木調整官 事務局からでございます。ちょっとこの具体例としては、今の保険収載で使用されている医療用漢方薬というのに当たるかどうか、済みません、厳密に確認しているわけではございませんが、「統合医療」というのは、前回の検討でも、近代西洋医学と、そして、また、その他の伝統医学とを組み合わせたものという形で、一応、概要をある程度のコンセンサスをいただいているのかなと思っているところでございます。
 そういう意味からしますと、現時点で、例えば、内臓の手術を行った後で処方される漢方薬、そういったものを1つの組み合わせという形で、いうならば「統合医療」という見方ができるかと考えております。
○今村参考人 そのほかのものと比べて、相当エビデンスレベルというのが違うと思うんですけれども、そういうものと一緒に議論するということになると、かなりこの議論というのが拡散するような感じもするんですけれども。
○大島座長 どうぞ。
○佐々木調整官 事務局からでございます。御指摘のとおり、多分、いろいろな「統合医療」と一くくりにしたときに、今村先生おっしゃるように、いろいろなエビデンスが明らかになっている程度というのは、さまざまあるかと思います。
 ただ、いずれの療法であっても、その根底に流れる考え方、すなわちエビデンスというものがどれだけあるのか、安全性、有効性等といったものでございますけれども、そういった点について、共通の考え方で御議論いただいたと思います。
 いずれにしましても、そういったくくり方も含めて、この場で御議論いただきたいと思っております。
○大島座長 後で、渡辺構成員の方から、特に漢方を中心にお話をいただきますので、今、御指摘のように、漢方とここはちょっと違うなと、多分、どなたもみんな感じていると思いますので、その辺の話を後でいただきますので、また、そこで御質問をいただければというふうに思います。
 ほかにいかがでしょう。
 どうぞ。
○金澤構成員 たびたび済みません、福井先生にちょっとお伺いしたいと思います。私は研究方法がなかなか難しいということは、よく理解しているつもりなんですけれども、先生の班で御研究をなさった中で、ナラティブなものをNBMとか、そういうものを含めて、新しい統計処理とか、新しい測定の方法だとか、いろんなことを考えられるほかに、今の普通の統計の中で、通常有効率5%で判断しますね、そういう有効率を少し変えて見るということは考えられたことがあるんですか。
 先ほどの15ページに「答えが出ない」というか、「有効性が出なかった」というお話がありましたけれども、これも、考えようによっては「傾向」というような言い方で言えば、効果がないわけではないと思うんですね。その辺、検討されましたか。
○福井参考人 検討といいますか、これは、出版されているものがこうなっているという話です。恐らく先生がおっしゃるのは、5%というのが、臨床的に意味があるかどうかという点だと思います。その点については、実は絶対的な回答はありません。このことは西洋医学でも同じで、CAMに特有の問題ではないと思います。
○金澤構成員 西洋医学で認められている薬の中にも、有効率1%で評価したら落っこちてしまうものがたくさんあるわけですよね。そういうことを考えますと、現実は連続性のあるものとも見えるわけですね。ですから、ある意味では非常に重要なところだと思うんですね。
○福井参考人 統合医療の分野では、循環器分野やがんの分野と違ってデータがまだ集積されていませんので、データを丹念に集積するという作業もしながら、重要なテーマについてはRCTをプロスペクティブに行うという、両方のタイプの研究を行うべきだと思います。地道な観察研究をやらないで、突然RCTをやろうというのは、むちゃな話です。ほかの分野はたまたま研究者も多いし、患者さんも多いし、データも集まっていますので、「統合医療」とは違ったステージにきているというだけで、「統合医療」も丹念に研究を積み重ねることで、今の循環器やがんの領域と同じレベルにエビデンスは高まっていくと思います。
○大島座長 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ。
○丸井構成員 前回もちょっとお話ししましたので、くどくなりますが、先ほど金澤先生から、いい、悪いというふうに決めつけてよいのかというお話がありました。私は、先ほどお話ししましたように、リスクコミュニケーション、食物アレルギーのことをやっておりまして、食物アレルギーというのは、この食べ物は、いいか、悪いかとは決められません。例えば、卵は95%くらいの人にとってはいい食べ物です。ところが、ほんの数パーセントの方にとっては、食物アレルギーとして、ときとすると、非常に激しい症状を示すということで、いいか、悪いかというのは、モノがいいか、悪いかではなくて、それをだれがどのように使うかというところで、いいか、悪いか、結果として出てくるのであるというように考えられます。いわゆる「統合医療」のさまざまな療法も、その療法がよいのか、悪いのか、あるいはサプリメントもよいのか、悪いかではなく、どんな人がどのような場面でどれくらい取るのかと、どのように取るのかと、それによって決まってくるということです。それが、今のお話の非常に、どこか5%、1%で切ったりはできない。非常に連続的であるというところに、というふうにもつながってきます。よい、悪いというのは、決め難いというところは、そういう状況を考える必要があるということだと思います。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○梅垣構成員 先ほどの福井先生の15ページのところにも関係するのですが、私はサプリメントの分野をやっているんですけれども、こういうエビデンス、例えばイチョウ葉エキスとか、エキナセアとかで出てくるんですけれども、実は、食品の場合は使われているものの含有成分がばらばらなんですね。かなりコントロールされている材料を使っている実験もありますし、全くコントロールしていないものを使った実験もあって、その使う実験材料によって、結果がポジティブに出たり、ネガティブに出たりする。そういうところも、少し、この分野は難しいんではないかと思います。
○大島座長 ほかに、いかがでしょうか。
 どうぞ。
○福井参考人 外国で行われている研究では、日本の漢方薬とは違って、検証しようとしている薬自体にばらつきがあるために、評価が非常に難しいと聞いています。日本のクオリティーコントロールされている薬を使った方がいいのではないかという意見は、複数の方から伺いました。
 外国で行われた研究結果をそのまま使えないという理由の一つは、診断の概念が異なる場合があるという点です。陰とか陽、虚とか実などの概念に基づいて行う漢方医療と、西洋医学的な診断概念に基づいて使う場合では、随分対象患者さんが違ってきます。RCTやシステマティックレビューの中には、漢方の診断概念に基づいているものから、西洋医学的な診断概念に基づいて漢方をただ使っているというものまで、ばらつきが大きいように思います。
○大島座長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
○広井構成員 もう一つ、これは自分に跳ね返ってくるような質問になってしまうんですが、福井先生の評価の中で、経済性という点も入っております。10ページにも統合型研究ということで、費用効果分析というのもあるわけですが、「統合医療」の経済性に関する研究というのは、やはり極めて少ないという理解でよろしいものかどうか。
○福井参考人 ざっと見たところでは、目につくような論文はありませんでした。私たちのデータには何もありません。
○大島座長 ほかにいかがでしょうか。
 ちょっと当たり前過ぎるような言い方になるのかとも思いますが、今まで私たちがやってきた医療というのは、科学の基礎の上に立った成果で、成立していると、こういうふうに言ってよろしいでしょうか。
○金澤構成員 どういう意図の御質問なんですか。
○大島座長 科学以外のものが非常にウエートが大きいとか、大きくないとかということになった場合に、「統合医療」というわけではありませんが、きちんと評価されてはいないけれど、実際の医療の場では、評価がなされないまま使っているものというのは結構あるといってよいのか、ということについて、ある程度コンセンサスのようなものを得ておいた方がいいのかなと思ったんですが。
 実は、私は、ほとんどが科学的な評価と成果の上に乗っかっているだろうと思っているんですが、私の認識が違っているとすると、その上に立って議論をしてゆけば、道筋が見えてくるのかなとも思ったんですが、いかがでしょう、こういう質問自体おかしいぞという御意見があれば、どうぞ。
○福井参考人 EBMの立場から言いますと、何をもってエビデンスとみなすかという話にもなるかもわかりません。例えば、大量出血した患者さんに輸血をすることの有効性は、RCTで検証されていません。だれにとっても当たり前の話なものですから。心肺停止を起こした人を対象に、心肺蘇生をする場合と、しない場合を比べるといった研究も行われていません。
 しかし、エビデンスがないというかというと、だれもそうは思わない。エビデンスがなくても当然だと思われることも実はたくさんあって、特に医療の現場では、診断の進め方についてはエビデンスがないことが非常に多い。治療については、最近数十年間でいろんなRCTが行われて、エビデンスが随分出てきました。それでも、これがベストだと必ずしもみなされていないものもたくさんあります。西洋医学的な科学的な考え方、枠組みで実証されたものを多くしようというプロセスに、今われわれはいるのであって、まだまだエビデンスにサポートされていないところはあると思います。価値観または信念に基づいて行われていることもたくさんあるというのが実情だと思います。
○大島座長 ありがとうございました。ほかに御意見いかがでしょう。そのことと「統合医療」的な議論と同じ並列的な枠組みで考えていいのかどうかということに関しては、いかがでしょうか。
○福井参考人 先ほども循環器やがんの分野ではエビデンスが出てきていると申し上げましたが、確かに「統合医療」の分野は、漢方も含めて、主観的な効果判定とか、複数のアウトカムを同時に見るとか、そういう意味では、がんとか循環器の場合よりも、やや複雑な評価が必要ですが、それでも同じ方法論の延長上で十分評価はできると思います。時間と人手とお金をかければ、サイエンティフィックな方法でできる部分はたくさんあると思います。
○大島座長 ほかにいかがですか、どうぞ。
○伊藤構成員 エビデンスというのは、やはりいろいろなレベルがあると、前回も私はお話をいたしましたけれども、RCTに近い形のできるものとして漢方やサプリメントなどが考えられます。ところが、鍼灸になりますと、本当の意味での完全なプラセボかどうかは疑問が残ります。
 ただ、非常に漠然としたものを、例えば疲労であったり、しびれであったり、痛みというのは、非常に主観的な要因が強いもの、こういうものを何か評価しようと思えば、通常のものではなかなかできなくて、やはり新しいバイオマーカーといいますか、そういったものを見つけていく必要があろうかと思います。
 今までわからなかったブラックボックスが、新しいテクノロジーを使えば、例えばファンクショナルMRIであったり、omicsであったり、そういう技術を使えば、今までわからなかったものが明らかになってきますので、それは、順次進行形でやっていったらいいと思います。しかし、これはだめだというものは、最初から除く必要があるかと思います。従って、エビデンスレベルに応じた形で、今すぐ決めるのではなくて、将来新たなエビデンスがでてくることも含めて考えていけばというふうに思います。
○金澤構成員 座長の御質問に、私の意見を言いたいと思います。私も座長に賛成です。科学的な考え方でやはり臨まなければいけないと思っています。当然、科学の中には、先ほど私もちょっと言いかけましたけれども、統計学が入っているわけでありまして、それから、いろんな意味でバイオマーカーを含めて、これから統合医学の中で使われるものに対してのマーカー的なものも発見していかなければいけないんだろうと思います。東洋医学と言えどもやることは、やはり西洋医学で今までやってきたことをやるべきだと思います。今まで西洋医学で行われてきたサイエンスを、やはり求めて行動してもらいたいと思うんです。
 そのときに、問題なのは、先ほど私は少し言いましたけれども、評価が問題なのであって、統計学その他を含めて、全く効果がないという状況が科学的に証明されたものに関してはあきらめてもらいたい。
 もう一つ、これは、サイエンティフィックに明らかにマイナス効果があるというものに関してもあきらめてもらいたいです。それは、誤ったメッセージを国民に与えるからです。それが、言うならば「悪いもの」なんだろうと思って理解しております。そうではないものに関しては、我々は社会科学的にどこまでそれを許容するかということを、やはり真剣に考えるべきだろうと思っています。私は、もうちょっと緩やかにしていいんではないかと思っているんですが、そういう意味で、少なくとも結論が出るまではサイエンスを中心に考えるべきだと思っています。従って、座長に賛成です。
○大島座長 いかがでしょうか、私には、議論を誘導しようという気持ちは全くありませんので、御自由に。私自身も変わらなければいけないと判断したら、変わろうと。
 どうぞ。
○今村参考人 また、資料5についてですけれども、患者、利用者自身の判断で提供されるものというところで、マッサージだとか、ヨガ、フィットネス、温泉入浴、音楽鑑賞、森林浴、アロマセラピーとありますけれども、こういうものについて、いちいちこちらの方でどうだこうだというふうな検討事項に入るのかなと、ある資格を持った人、こういうものが施術者になって提供するもの、これは、恐らく議論の中に入ると思うんですけれども、こういったような、今、申し上げたような、サプリメントはまた除いていただきたいんですけれども、上に掲げた5つみたいなものがどうなのかなという感じはするんですけれども。
○大島座長 いかがでしょうか。どうぞ。
○伊藤構成員 我々の臨床試験の中で、先ほど先生がおっしゃったアロマセラピーを導入しています。これは、1つのドラッグ・デリバリー・システムという形で、今、我々は考えています。メタボリック・シンドロームの方々を対象にした臨床試験では、口からいろんなものを食品として摂取するとカロリーが増えるといった問題が生じますが、アロママッサージによってその有効成分を皮膚から吸収させますと、血管拡張作用に加えて、血糖値を降下させる作用が認められます。アロマセラピーと言えば、一般的には単にエステ的な意味合いに捉えがちであろうかと思うのですが、一旦そういう研究に入ってみますと、いろんなものが見えてくるということがございますので、全部否定するわけではなくて、可能性のあるものは、少しでも我々は採用していこうと考えております。
○大島座長 ほかにいかがでしょうか。また、ちょっと私の方からお聞きしたいのですが、社会あるいは国民が安心して、納得して受けることができる、説得力のある医療とは何かと設問を立てたときに、合理的に説明、証明ができる根拠のある医療であると言えば、多分、一定の理解をいただけるんではないかと思うんですが、そしてこの条件を備えたものが、科学であり、科学的な方法論であると言ってもよいのではないかなと、この点は、いかがなんでしょうか。いや、そうではないと、まだ、ほかに十分に国民、社会が安心し、納得し、受けることができ、説得力のある医療には、こういう条件を満たしたものがあるぞというような点については、いかがなんでしょう。こんな設問はおかしいということであれば、これも御自由に御意見をいただきたいんですが。
 どうぞ。
○今村参考人 先ほどのことにも関わってきますけれども、要するに、利用する方自体がいい気持ちであるとか、ほっとするとか、そういうこと自体が、体全体にいい影響を及ぼすというのは、かなり確からしいと。
 しかし、そういうものを医療というふうな範疇に入れるということ自体がちょっと違和感があるというふうに私は感じております。
○大島座長 いかがでしょうか。
 どうぞ。
○伊藤構成員 例えば、化学療法では、様々な副作用が出てきます。これに対して西洋医学的なアプローチもあるのですが、ここに鍼灸やアロマを試みてみますと、やはりそれに付加価値があるように思いましたので、それを我々は臨床試験でやっています。やはりそういうものを一つひとつ積み重ねていって、エビデンスを出していくことが重要であると考えます。先程、主体がどなたかということがございましたけれども、これはやはり医師でないと、私はだめだと思っています。医師主導ですが、医師自身がするのではなくて、他の医療従事者とチームでやる、チーム医療こそが、私は「統合医療」だと考えております。
○大島座長 いかがでしょうか。福井先生のお話では、私の言葉で言ってしまいますが、臨床研究というのは、きっちりとした枠組みができていて、相当に完成度の高いものであると。しかし、臨床研究の研究デザインなど、基本的なことがきちんと理解されていないと、どんな臨床研究も有効に生かされるものにならないと、そういうことが非常に多いんではないかということです。そこをきちんと理解して行えば、それは、相当いいものになるはずで、その可能性は十分にあると、こんな言い方でよろしいでしょうか。
○福井参考人 今村先生との御質問とも関わりますが、自覚症状、例えば、気分がよくなるとか苦痛とか、不快感、そういう指標でもってある治療の効果を見ようというときには、かなり注意して評価をしないと、暗示的な効果やプラセボ効果が入り得ますので、かなり厳密な科学的方法論でもって評価する必要があります。治療とは無関係に、気分がよくなるとか、よくなった気がするとか、そういう主観的な反応が起こっている部分を差し引きするために、被験者がどちらの治療を受けたか分からない形にする必要があるわけです。何をアウトカムとして見るのかによって、研究デザイン、研究方法論が随分違ってきます。そこのところを厳密にやるための方法論は、既に臨床疫学分野で確立されていますので、研究方法の専門家と一緒に統合医療の評価研究をやれば、インターナショナルにも高く評価される研究は、幾らでも行えると思います。
○大島座長 その枠組みで「統合医療」と称されるものもきちんとやれば、相当レベルの高い評価に耐えられるものが出てくるだろうと。
○福井参考人 はい、十分できると思います。ただ、西洋医学の場合と同様に、RCTができないテーマというのもありますので、全部がRCTでなければならないという考え方は、まず改めていただく必要はあります。
○大島座長 いかがでしょうか。何か、科学の方、科学の方へ誘導しているように思われると、どうぞ。
○広井構成員 科学であるべきという点は、先ほどの座長のお話や、金澤先生がおっしゃられたことに、私は基本的に大賛成なんですが、科学とはそもそも何かということを考えた場合に、特に今の疾病構造の変化ということを踏まえますと、前回も出た議論かと思いますが、科学というものの在り方をかなり広くといいますか、とらえていく必要があるんではないかと思います。
 やはり、今、現代の病というようなことを考えますと、うつとか精神疾患が多くなっているというのは、言うまでもないですし、高齢者のケアですとか、ましてや終末期のケアとか、そういったところまで考えると、科学的な方法論というのを、かなり射程を広げて考えないといけないわけで、前回から既にある議論ですけれども、近代科学的な心と体を完全に分離するとか、要素還元主義的な在り方が、いろいろな分野で見直されているというのは、これは「統合医療」に限った話ではないと思いますので、やはりそういった現代の病といいますか、疾病構造の変化に応じた科学の在り方という視点は、やはり意識する必要があるのではないかと思います。
○大島座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。どうしても近代科学の方法論というと、デカルト由来の要素還元主義が頭に浮かんでしまうんですが、福井先生の話している臨床研究というのは、必ずしもある臓器に特定な原因を見つけて、それに対してどうするのかということではなくて、ある集団を丸ごと見ていくという方法論で、それも科学的な研究方法であると認められていると、私はとらえているんですが、そこがごちゃごちゃになると、今、広井先生の言われた疾病構造が違えば科学の在り方も違ってよいのではないかと言うことですが、高齢者の場合には、老化があります。その老化に多種類の病気が、しかも慢性病が併存するというような状況になってきますので、そうした構造と若い人のように単一臓器に対する単一疾患のような場合とではまったく違ってきます。いかがでしょうか。
 どうぞ。
○丸井構成員 今、科学の議論に入ってきているんですけれども、ある人は、医療とはプラセボ効果であるというふうに喝破する人もあるくらいです。ここでの話は、何を話をするかというところに、少し戻したいと思います。「医療」は、メディカル・プラクティスの話をしているのか、それとも医学としてのメディカル・サイエンスの話をするのかと、その辺のところを少し整理しないといけないと思います。話を大きくしていくと、どちらかというと、理念的なものとしての、前回からそうですけれども、理念的な「統合医療」というよりは、融合医学というか、世界でさまざまなものを融合していこうというような、そういう方向で考えるような、東西医学を融合しようというような話なのか、そして、そのときにどのように科学的根拠、メディカル・サイエンスとしての根拠を裏付けていくのかというような高邁な議論を、ある意味では非常にサイエンティフィックな議論をここでするか。あるいは、そうではなくて、我が国で、ここ恐らく150年くらいでき上がってきた、いわゆる近代医学基づく近代医療を足場として、それで、具体的に、では、それをどこまで緩めていって、私たちの現実の医療にそれ以外の、今、たくさん挙がってきますけれども、それを現場に入れていくことができるのかと、そういう意味では、いわゆる科学的科学というよりは、政策科学に近いような、英語でいうと、多分、レギュラトリー・サイエンスに近いようなものとして考えていくというのは、もう一つの立場です。そういうわけで、大きい形での融合を考えるというのは、少し大きい目標ですが、現実的には、現在の我々の制度的な医療を一体どこまで、もう一度組み直すところまではいかないにしても、境界を緩めていったりしながら、医療の現場で、前回、私はわざわざ言いましたが、一体、だれが、だれに対して、どのような場で行っていくのかと、そういう境界をある程度定めていけたら「統合医療」への考え方というのは、少し変わってくるのではないかと思います。
○大島座長 この場は、私は、専門家が集まっている場ですから、政策に専門家としての意見を提供するための場だという理解をしています。必要であれば、いわゆるサイエンスのものが何なのかというところまで踏み込んで議論を展開していくということも必要かもわかりませんが、あくまで国民の健康を守るため、あるいは国民の健康度を改善するために、最初に大臣もおっしゃいましたが、「統合医療」と言われるものが混乱している状況をどう整理してゆくのかと専門家の立場から意見をまとめて具申することだと理解しています。
 どうぞ。
○伊藤構成員 やはり「統合医療」というのは医療でございますので、やはりサイエンスに裏づけられたものでなければならないし、サイエンスを追及していかなければならないと考えます。これまで、我々がやってきた近代西洋医学の臨床試験(RCT)は非常にシンプルな形で組むことができます。例えば、高血圧の人に、ある新薬をプラセボと比較するというような、プライマリーエンドポイントもセカンダリーエンドポイントもはっきりと提示できます。
 ところが、「統合医療」の対象となる場合には、先ほど先生がおっしゃったように、例えば、認知症などの老人を対象とした場合に、生理的な老化の問題も考慮しなければならないし、その人個体の諸問題、すなわち、心の問題、それから周りの環境、ソーシャルな問題といった、複雑系なんですね。そういう複雑系をどう統計学で処理していくかというのは非常に難しくて、おそらく、別の統計学的手法を用いなければならないと思います。
 勿論、RCTでできる場合は、西洋医学の通常の統計学でいいと思うのですが、そういう均一系に対して、統合医療の多くは複雑系という、やはりそういうところのベースが違いますので、その辺も研究の対象になってくると、私は思っております。
○大島座長 ありがとうございました。次の渡辺先生のお話がありますので、できれば、もう一人くらい、何か御意見、南さん、一言。
○南構成員 何を申し上げたらいいか、よくわからないのですけれども、メディア的といいますか、国民感情でいいますと、恐らく、先ほどの広井先生が言われたことが、かなり近いのかなと思います。国民の多くは、先ほど小宮山大臣も言われたように、高度先進医療が非常に進んだ日本の医療の恩恵を大きく受けているわけですね。高度成長時代からずっとそういう恩恵を受けてきて、しかしながら、今、必ずしも国民は、今の医療に必ずしもハッピーではないという現状があるわけで、特に高齢期の、先ほど座長もおっしゃいました、老いも含まれる人間の終末期、さまざまな身体的、社会的状況をどういうふうに改善できるかとか、これは必ずしも医療だけに答えを求めること自体がおかしいのでしょうが、国民は、そこでいわゆる「統合医療」に期待するのではないかと思います。医療をどこまでみとめるのかということ、また、どこまでが医療なのかということが問題になると思うのです。
 誤解を恐れずに申し上げれば、今の公的医療は高度先端的なものに、費用的にも医療全体の力も傾き過ぎていないかと思っている国民が意外といるんではないかということです。高度先端的医療で答えの出ない患者さんが多くいて、その方がいわゆる「統合医療」などに期待を持つということが実態であり、それが悪いとは言えない気もします。
 そうした実態に、国も医療制度がどう応えるかというのは、非常に難しい部分があって、先ほど広井先生も言われたように、科学とは何とか、科学的な証拠とは何かということを極めていっても余り答えは出ないんではないかというような感じが、私自身はしています。日本の保険医療は現物給付で、これだけの費用で好きな医療を受けなさいというふうにはなっていないわけです。ただ、国民は必ずしも高度先端的な医療ではないものにも期待を求めている、その結果が、今の「統合医療」の議論に至っているんではないかと思います。まとまらなくて申し訳ないんですが、そういったことを感じます。
 以上です。
○大島座長 ありがとうございました。まだ、多分、どうぞ。
○金澤構成員 申し訳ない。資料5の一番外枠に、医師以外のもの云々、提供されるものと書いてあって、これが「統合医療」の一部のように見えます。でも良く見ると、この枠の一番下にサプリメントとありますでしょう、けれどもサプリメントはあくまでも医療ではないんですね、明確に、医療ではないと規定されている健康食品のわけです。これは、厚労省として矛盾しているので、整理した方がいいかもしれないと思います。ちょっとこれはまずいかもしれない。
○佐々木調整官 ありがとうございます。まさに資料5は、前回複数の先生方から、シチュエーション、すなわち、だれがだれに対して行う療法について検討するのか、その中で、具体例として、なかなか考えあぐねたところがありまして、御指摘ありがとうございます。まさに、この中で、どの部分を我々として「統合医療」としてとらまえて、完全にコンセンサスをいただく必要はないかもしれませんけれども、一応のターゲットをお認めいただきながら御議論を進めていくのが、非常にいいのではないかということで提示させていただいたものでございます。ありがとうございます。
○大島座長 それでは、渡辺先生のお話しする時間がなくなってしまっても困りますので、よろしくお願いします。
○渡辺構成員 慶應大学の渡辺でございます。本質的な議論の中で、お時間をつくっていただいてありがとうございます。
 今村先生の御指摘もっともで、今、伝統医療を巡る問題というのは、喫緊の課題が多々ございます。実は、今週も、昨日、今日、明日とWHOと電話会議を2時間ずつやる予定になっております。最初にこの委員会のお話をいただいたときに、漢方が抱える喫緊の課題を早く進めるために、漢方の分科会のようなものを作っていただけないかというお願いをした経緯がございます。
 前回の委員会でも申しあげましたが、漢方はRCTが345、今はもうちょっと増えていて、360くらいになっていますが、構造化抄録が英訳されていまして、コクランライブラリーに入っております。そういった意味では、エビデンスの蓄積というものがかなりあると考えていただければと思います。
 本日お話ししたいのは、実は漢方の存続が大丈夫かという話でございます。
 福井先生の特別研究の前の年にやった特別研究がこれでございます。『漢方、鍼灸を活用した日本型医療創生のための調査研究』ということでやらせていただきました。班長は、黒岩祐治先生、現在、神奈川県の知事になられております。
 漢方専門家、鍼灸専門家だけの集まりではなくて、一般の方の意見を聞こうということで、丹羽宇一郎現中国大使、当時、伊藤忠の会長であるとか、JTの涌井洋治会長、JR東日本の新井亮介副社長など、各界の有識者の方に集まっていただきまして御意見をちょうだいしたものであります。すべてが、このホームページ(http://kampo.tr-networks.org/sr2009/)で見られますので、是非ともごらんください。
 そもそも漢方というのは、日本独自に発達した伝統医学です。起源は確かに古代中国なのですけれども、日本に伝わったのは5、6世紀です。特に江戸時代に入って蘭方がヨーロッパから入ってきた後に、漢方という名前を付けました。
 例えば岡倉天心が「日本画」と名付けたのと同じように、「日本方」とか、「和方」とか「大和方」にすべきだったとよく指摘されるんですけれども、漢方という名前が付いているがために中国のものと同じだと誤解されます。しかし実際には、日中韓で話をしていても、日本の漢方だけは、非常に異質なんですね。中国、韓国はかなり共通点が多いんですけれども、日本の漢方は他の2カ国の伝統医学とは相当に異なっております。
 今日お話しする2つは本当に喫緊の課題ということで、1つ目は国際化及び国際標準化、2つ目が生薬の資源問題でございます。
 1つ目の国際化ですけれども、伝統医学の中には、我々が東アジア伝統医学と呼んでいるもの、すなわち日中韓のものが1つ。それから、アーユルヴェーダ、これはインドです。ユナニ、これはアラブ、これが三大伝統医学です。それにチベット医学を加えると、四大伝統医学ということになります。
 これらがグローバル化したのは、1990年代です。アメリカ、ハーバード大学のデービット・アイセンバーグが、アメリカ人の3人に1人が補完代替医療を使っているという論文を書いてから、世界中で補完代替医療および伝統医学に注目が集まり始めました。
 世界中で伝統医学が注目される中で、中国、韓国は、国が相当力を入れてやっています。2009年の2月に中国が国際標準化機構(ISO)に、新たにTC249を申請して、同年9月にそれが承認されました。
 本来、ISOというのは、ネジの規格であるとか、内視鏡で言えば、鉗子の規格であるとか、そういった工業製品を決めるのが本来のISOの役目でございます。
 そこに伝統医学を入れるということは、非常に異質ではあったのですが、これが認められてしまいました。
 現在までに2回正式な会議が行われまして、第3回目が、5月21日から24日に韓国の大田で行われます。
 ここで議論するのは、全部で5つの課題でございます。1つは、生薬そのもの、植物そのもの。2つ目は、製剤の安全性と質。3番目が、鍼灸の針です。4番目が鍼灸の針以外の機器類。例えば、中国では舌診計であるとか、韓国では脈診計などを開発しておりますので、こういったものを検討する。5番目が情報です。ここには用語などが入っていまして、非常に重要です。
 現在、ワーキンググループ1で盛んに議論されているのは、朝鮮人参の規格です。パナックス・ジンセンというのが朝鮮人参なんですけれども、韓国は、朝鮮人参の本場は韓国だから、韓国産の朝鮮人参を差別化するように主張しています。これは、すぐに商売に結び付くことなので、かなり熾烈な争いになっています。   
このISOが日本にどのような影響があるのかということは、まだはっきりとはわかりません。可能性としては、例えばワーキンググループ1でいうと、ある生薬については、同じ名前でも日本でしか使わない植物がございます。こういったものが基準から外れる可能性もあります。
 ワーキンググループ2の製剤のところであれば、日本と中国では同じ名前の葛根湯でも生薬の配合比が異なる。こういった異なる配合比のものが否定されないか、また、製造方法そのものも日本と異なる基準で標準化されないか?それから、鍼灸の規格でも日本のものがはずされないか、その他のデバイスにも影響はないか。
 ワーキンググループ5は、インフォマティクス、すなわち情報なんですけれども、これは、用語の定義なども含めて、電子カルテの時代になったときに、やはり用語というのは非常に影響を与えるので、こういったことに日本の主張が外されないか、などなど懸念されます。
 もう一つ、伝統医学の国際化プロジェクトにはWHOの国際病名分類があります。正式名称は「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」通称ICDと呼ばれておりますが、現在ICD-10 からICD-11への改定作業をWHOがやっております。そこに伝統医学を入れようという計画になりまして、2010年12月6日に、東京とジュネーブの同時記者会見を行いました。2011年には、WHOのICDを扱うWHO-FICという組織の年次総会で、伝統医学を内容に組み込んだ日本のWHO協力センターが承認されております。
 現在、どこまで進んでいるかという話をいたしますと、これが、ウェブで公開されているICD-11のアルファー版でございます。細かくて恐縮なんですけれども、現在のICD-10は22章まであります。ICD-11では23章に伝統医学を入れるという計画で、このようにアルファ版にも伝統医学が入っております。この中身も全部見られる状態になっております。現在、最終的な詰めをやっておりまして、先週辺りから毎週のように電話会議をやって、5月2日から5日の香港での会議で、伝統医学の章のアルファー版を完成させる予定になっております。
 ICD23章の使い方ですが、「統合医療」という話にもつながると思うんですけれども、あくまでもICD-10もしくはICD-11の1から22章の西洋病名を基本的に選びます。しかしながら、例えばがんであれば、がんの初期と末期では患者さんの状態が違う。人間をみたてるのが漢方なので、同じ病名であっても、患者さんの状態の違いを明らかにするために、漢方の証を付加する。ちょうど西洋医学と漢方医学が、地球儀の経度と緯度のような関係で、その交点に患者さんの病気と状態があり、治療の目標がある、というのが日本の考え方であります。
 ですから、あくまでも西洋医学と伝統医学との統合というものが、このICDの改定にも色濃く反映されるということになります。
 次に、各国の伝統医学政策をお話します。昨日クローズアップ現代を見ていただいた方もいらっしゃるかもしれませんけれども、中国のタスリーという会社が出てまいりました。タスリーという会社は、創業17年ですが、現在の売上は2兆円です。これが中国の伝統薬ではナンバー3の会社なんだそうですが、ナンバー1、ナンバー2の会社を入れて、その他の企業も全部含めると、恐らく中国だけで10兆円近い経済効果ということになるかと推測されます。
 では、中国がそんなに先行してやってきたかといったら、実はそうでもないんですね。文革の後、解放政策をして、1988年にやっと政府に伝統医学の専門部局ができました。ですから、たかだか、まだ20年の歴史しかない。その間に10兆円市場にまで押し上げた、という点がすごいと思います。
 中国の伝統医学専門部署は国家中医薬管理局といい、衛生部という保健省の下部組織なんですけれども、専従職員が80名います。伝統医学の国際化を推進する国際部には10名の職員があります。
 それから、国立研究所には、中国中医科学院というのがありまして、職員が1万名おります。そのほかに、省レベルとか、市レベルでも競い合って産業育成、学術研究を推進しています。
 中国の戦略というのは、伝統薬を売るという大きな産業を創生することなのですが、中医学の薬をそれだけでヨーロッパに持って行っても、どういうものかわからないので誰も買いませんね。そこで、どういうものであるかということを説明する医療そのものをパッケージで輸出する、という戦略を取っています。要するに、薬というハードだけではなくて、その薬を取り巻く医療やいろんな情報というものをパッケージで売るという戦略です。伝統医療そのものを組織的に普及するために、世界58か国にある201の中医学の学会を統合して世界中医薬学会連合という組織を作り、国家戦略と学術が一体化して世界に中医薬を売るという基盤をつくってまいりました。
 こうしたプロジェクトに、国レベルでいうと、2011年の予算として730億円が計上されております。このほかに省レベルとか市レベルを足すと、相当の投資をしているということがわかります。
 もう一つは、知的財産ですね。知的財産に関しては、2010年の11月にユネスコの世界遺産に中国の鍼灸を登録しました。実は、この前に、韓国が「東医宝鑑」というものを世界記録遺産に登録しております。ですから、中国、韓国は伝統医学のブランド化を強め、知的財産化ということをねらって戦略を立てているということになります。
 韓国政府の事情ですが、やはり保健省の中に伝統医学を扱う部局があって、20名くらいの専従職員が働いています。
  残りの時間でもう一つの喫緊の問題、生薬の資源問題をお話しします。
 日本の漢方薬の生薬資源の約8割、恐らく85%近いものが中国からの輸入に頼っているというのが現状です。このグラフは、中国の経済発展に伴って、生薬の値段が非常に高騰していることを示しています。
 中でも、甘草・麻黄という重要な生薬については2000年以来、輸出規制品になっています。甘草というのは、日本の漢方薬の7割に入るため、日本での漢方市場は伸びているんだけれども、甘草の日本向けの割り当てというのは変わっておらず、将来的にさらなる市場拡大を制限する可能性があります。
そうした状況は朝日新聞の別冊GLOBEのホームページhttp://globe.asahi.com/feature/110515/index.htmlでも見られますので、是非、ご覧いただければと思います。
 日本の国内生産を盛んにすべきではないかというので、たばこ栽培から生薬栽培へ転換したらどうかというようなことを、去年の10月に朝日新聞のオピニオン欄に書かせていただいたのですけれども、実は、その足かせになっているのが、薬価の問題でございます。
 この図は、いろいろなエキス製剤が1996年から2008年、すなわち約10年間に薬価の改定ごとに下がってきて72%に下落したことを表しています。つまり原材料の生薬の価格が上がっているにも関わらず、末端価格の薬価は約3割ほど下がっていることを示しています。私は、いつも葛根湯を持ち歩いていますが、この4月の薬価の改定で、葛根湯の1日分の値段が67.5円だそうです。3割負担で20円。1日に3袋ですから、1袋当たりが6円の自己負担で済むというものになります。これだけ安いことは、非常に国民にメリットがあるんですけれども、原材料である生薬栽培を振興しようとした場合に、その価格を抑えなければいけなくなってしまい、国内栽培推奨の足かせになっているという現状がございます。
 こういう製剤ではなくて、保険適応の生薬を組み合わせて煎じてもらう漢方薬を処方することがあります。慶應病院でも私の患者さんの約1割くらいには、煎じ薬でお出ししております。
 そういった方は、がんであるとか、膠原病であるとか、炎症性腸疾患だったりとか、重篤な疾患の方が多いんです。こういった疾患の方々にお出しする生薬については、大手のの卸業者が今年の4月から医療用の漢方の生薬の提供を実質中止する、という判断をしました。原材料費が高騰して、相場価格が薬価に見合わなくなったためです。今までも売れば売るほど赤字になる逆ざやでどうにか医療を守ってきたのですが、ついに耐えきれなくなった。今度は残った会社にしわ寄せがいくんですけれども、200品目くらい薬価収載の生薬の中で、薬価でやっていける、すなわち原材料費の買値価格が売値価格の薬価よりも低くてもうけが出る、という生薬の品数は、たった20品目ということを聞いております。要するに、20品目の売上のもうけで、残りの180品目のとんとんか、赤字になる生薬の損をどうにかカバーしているという状態になっております。このままでいくと、医療の現場から、保険収載の生薬がなくなる日も近いのではと懸念している次第です。
 30年以上前に、大塚敬節先生が「原材料がなくなれば、漢方は滅びる」と警鐘しておられます。今や日本では医師の9割が漢方を使っている。さらにグローバル化によって世界で伝統医学が大ブームになりつつある。盛んになるのは結構なんだけれども、それで原料がなくなってしまうと、日本の漢方は存続しない。大塚先生がおっしゃられた心配が現実になりつつあります。
 2009年の行政刷新会議の事業仕分けで、漢方薬が保険からはずされそうになったとき、当時私は、日本東医学会という学会の保険担当の理事をしておりまして、他団体と協力して署名活動をしました。その結果3週間で92万4,808名の方に御署名いただきました。
 このときから、漢方を残すのは医師のためでもなく、業界のためでもなく、国民のためである、ということを強く思うようになった次第であります。
 伝統医療と最先端医療が結び付いた「統合医療」のモデルこそ日本の売りだと思います。これは、中国にも韓国にもない。伝統医療の中でも日本だけが、ロボット手術と漢方の組み合わせやがん治療と漢方の組み合わせを既に行っている。こうした最先端医療と伝統医療の統合こそが世界に対して日本の売りになるのではないでしょうか。
 生薬栽培についても、植物工場、カルス培養など、いろんなバイオテクノロジーを駆使すると、質の高い材料を用いて、質の高い医療の提供ができる。先ほど福井先生の方から、日本の漢方の質が高いというお話がありましたけれども、三次元HPLCで品質の検査をすると、10年間のロット間の差がほとんどないんですね。それくらい日本の漢方薬というのは、複合の生薬製剤でありながら品質が高くて安定している。安全で安心な漢方薬製剤、これも売りになるのではないでしょうか。
最後の1枚です。華岡青洲、だれもが知っておりますが、華岡青洲は、実は漢方家でもあるのです。華岡先生は、乳がんの手術の前後に漢方薬を用いるということで、「統合医療」の走りです。ここは、日本独特の融通無碍、ある意味では、何でもありというふうなところなんですけれども、こういった華岡先生の精神というのが受け継がれた日本型の「統合医療」というものを是非とも残していただければと思います。こうした議論もこの場でやっていただければ大変にありがたいなと思っております。
 どうもありがとうございました。
○大島座長 ありがとうございました。時間もありませんので、御質問があれば、お一人か、お二人くらい、何か御質問ありますでしょうか。
 どうぞ。
○金澤構成員 終わりの方の2つ目の話題に関してですが、これは、言われ始めて長いんですね。生薬の原料を中国にほとんど独占されたんではないかと言うことですが、これだけ議論が長く続いていた間に、何かプログレスはありませんでしたでしょうか。
○渡辺構成員 一番ネックになっているのは、甘草という生薬ですね。これは、輸出規制品なので、日本の市場が伸びても、日本の割り付けというのが決まっているんです。ですから、日本の市場の伸びに応じて、甘草の割り付けが増えるかというと、ずっと10年来、同じような量なんですけれども、たとえば三菱樹脂が植物工場で甘草の苗を生やすという技術を開発しましたし、鹿島建設が水耕栽培で甘草を育成すると、5年かかるものが1年半とか2年でできるというような技術も開発しております。国内栽培に道筋をつけたと思います。
○大島座長 よろしいでしょうか。それでは、その他で、何か御意見等はございますでしょうか。
 特にございませんでしたら、事務局の方から、次回の予定等について、よろしくお願いします。
○佐々木調整官 次回の開催日時、場所につきましては、先生方に調整させていただいた上で、追って御連絡申し上げたいと思います。
○大島座長 それでは、これで、第2回目の「『統合医療』のあり方に関する検討会」を終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

医政局総務課 (内2513、2520)

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