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2012年1月20日 第6回「原爆体験者等健康意識調査報告書」等に関する検討会議事録

健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室

○日時

平成24年1月20日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第12会議室(12階)


○議題

1.開会
2.議事
 (1)「「原爆体験者等健康意識調査報告」の検証に関するワーキンググループ」検討結果について
 (2)放射線影響研究所が発表した「原爆直後の「雨」情報」について
 (3)その他
3.閉会

○議事

○佐々木座長 おはようございます。定刻になりましたので、第6回「『原爆体験者等健康意識調査報告書』等に関する検討会」を開催させていただきます。
 初めに、本日の委員の出席状況について、事務局から御報告をいただきたいと思います。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 本日の出席状況でございますが、荒木委員及び米原委員から御欠席との御連絡いただいております。
 以上でございます。
 では、マスコミの方、カメラ撮りはこちらまでということで、申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 では、座長、引き続きよろしくお願いします。
○佐々木座長 それでは、議事に入ります。
 これまでワーキンググループにおいて、原爆体験者等健康意識調査報告について、更に掘り下げた検討を行っていただいておりました。今般、報告がまとまったということでありますので、まずはその御報告をいただきます。また、先日、放射線影響研究所より原曝直後の雨に関する情報が公表されました。本日は公表された内容について、放射線影響研究所から御報告をいただくことになっております。
 事務局から参考人の紹介と資料の確認をお願いいたします。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 それでは、本日お越しいただいて参考人の方のお名前を御紹介いしたします。
 放射線影響研究所理事長でございます大久保利晃様でございます。
○大久保参考人 大久保でございます。よろしくお願いいたします。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 続きまして、お手元の資料を御確認いただきます。
 資料1「参考人名簿」でございます。
 資料2-1「『原爆体験者等健康意識調査報告』の検証に関するワーキンググループ報告」。
 資料2-2「『原爆体験者等健康意識調査報告』の検証に関するワーキンググループ報告付属資料(解析結果)」でございます。
 資料3「大久保参考人提出資料」でございます。
 なお、このほか、皆様の席上の方に正誤表という形で1枚紙を置かしていただいております。原爆体験者等健康意識調査報告の検証に関するワーキンググループということで、資料1-2の関係で正誤が発見されましたので、資料1-2とセットとして見ていただければと思います。
 以上でございます。資料に不備がございましたら、事務局までお願いいたします。卓上には前回までの資料をつづらせていただきました青いファイルを御用意しておりますので、是非御参考いただければと思います。
 以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 昨年8月31日に開催いたしました第5回検討会において、原爆体験者等健康意識調査報告について、更に掘り下げるべき視点等について、皆様に御議論をいただきました。その後、これまでワーキンググループにおいて、川上委員を中心として、多大な時間を費やしての解析作業、そして、4回にわたる精力的な御議論をいただき、今般、報告書がまとまったということでございますので、座長をお務めいただいた川上委員から御報告をいただきたいと思います。
川上委員、よろしくお願いいたします。
○川上委員 川上の方から報告させていただきます。
 今回、ワーキンググループの座長を務めさせていただきまして、検討を重ねた結果を資料2-1と資料2-2にまとめまして、先生方のお手元の方にございます。
資料2-2は基本的にワーキンググループで検討しました資料を全部付けてございますので、これが全体像でございますが、それを資料2-1としてワーキンググループの方でサマリーにまとめさせていただきましたので、まずは資料2-1を中心にワーキンググループの検討結果を御報告させていただきたいと思います。
 私も座長を務めさせていただきまして、随分限定されたデータを使いながら、いろいろと困難に当たりながら検討をしまして、ワーキンググループのメンバーの先生方には、大変深く感謝をいたしております。
 また、私で十分説明ができていない部分は、後ほどワーキンググループのメンバーに入っておいでになりました柴田委員、金委員、あるいは事務局の方から御追加をいただきたいと思います。
 それでは、資料2-1の目次を開きまして、2ページから順番に御説明を進めさせていただきたいと思います。
 まず、本ワーキンググループの目的でございますが、これはこちらの検討会の方で幾つか掘り下げた検討が必要と指示をされました事項につきまして、特に健康影響に関する調査部分と黒い雨の降雨地域及び時間の地理分布に関する調査について、検討を進めさせていただいております。
 検討内容につきましては、ワーキンググループの検討に際して留意すべき事項を検討会からいただいておりまして、これは別紙1とか2に付けてございますが、あと、これはまた見ていただくとしまして、こういう項目について、ワーキンググループでは検討させていただきました。
 検討結果はここにありますように、4回の検討結果を行っておりますが、この間にワーキンググループの委員に方には、いろいろと細かい解析をしていただいたり、メールでの審議をしまして、非常に密な検討を進めてきたということも御報告させていただきたいと思います。
 参集者につきましては、別紙3にございますので、ここでは省略をいたします。
 検討結果の方に入りますが、まずメインの部分に入ります前に、検討の前提と今回使いましたデータ、原爆体験者など健康意識調査のデータについて、簡単にポイントを抜き出してお話をしておきたいと思います。
 まず、本ワーキンググループの方の検討の前提といたしまして、2ページの下半分にありますように、広島原子爆弾由来の放射性降下物は一部の地域でしか現時点では確認されていなくて、また、今回要望されております地域の黒い雨につきましても、放射性降下物が含まれたどうかについては、現時点では確認されていませんで、これは保留事項として明確にしておこうということでスタートしています。
 本ワーキンググループにつきましては、こうした放射線の健康影響につきましては、ここに挙げましたように幾つかの既に出ております権威のある機関の報告書など、資料閲覧をしながら検討を進めておりますが、これらは本ワーキンググループで直接扱ったデータではございませんので、参考資料として、全体として使わせていただいた形になっております。
 3ページ「2 『原爆体験者等健康意識調査』の設計等について」。
 広島県市の方で行われた調査の設計につきましては、この検討会の先生方には、検討会を通じまして、既に十分御説明がなされていると思いますので、これは割愛をさせていただこうと思いますけれども、4ページの方に進みまして、こういう調査を解析する際に、どんなデータの限界があったかということについて、ワーキンググループでとりまとめたポイントを御説明したいと思います。
4ページ「3 データの限界について」。
 この調査データ自体は限定された調査データを使って、できる限りの範囲で検討を行いましたが、例えば今回の黒い雨体験につきましては、手帳を持っていない方について、あなたは黒い雨を体験されましたかという設問の回答内容で、黒い雨体験の有無を比較しておりまして、群の設定が対象者の自己申告によるものになっているというのは、注意が必要だという認識で進めております。
 こちらは心身の健康、つまりアウトカムの方の評価も同じ自記式質問票によって行っておりますので、同じ自記式の中で暴露要因と結果要因を調査している点で、対象者の方の設問への回答傾向などによって結果が左右されている可能性は否定できないと考えて進めました。
 ただ、ワーキンググループの飛鳥井委員からは、質問票の設計に当たって、こうした黒い雨体験があるかないかという質問を心身の健康の後ろの方に持ってきて、できるだけ影響が少なくなるようにしたとか、あるいはMMPIのK尺度のような、答え方の傾向を調整しても同じ結果になるような工夫をされたという御説明がございました。
 調査が行われた内容の方ですけれども、主に精神的な影響に関する評価尺度が多うございまして、身体疾病の調査については設問方法に方法上の限界がありますので、今回のワーキンググループでは、主に精神的な影響に関する分析にフォーカスを当てております。
 降雨時間の地理分布の解析ですが、意識調査の方のデータから出ました黒い雨の範囲というのは、黒い雨を体験された方がいれば、その範囲はすべて黒い雨の地域になっておりましたが、この調査に関しまして、黒い雨を体験しなかった方の情報がありましたので、それを取り入れて降雨時間、降雨地域の地理分布の解析をする必要があると考えて、これを進めております。
 5ページ、検討会の方でも御指摘をいただいておりますが、調査項目は原爆投下後60年を経過しての調査でありますので、その点、どの程度の正確さがあるかについて、十分に考慮しなくてはいけない。不正確な可能性があることも頭に置いて進めております。
未指定地域、いわゆる手帳等などを対象となる地域以外の部分で、爆心地より遠距離にあるデータ数に関しては、この調査におきましても、非常に大きな調査ではあるのですが、遠距離に行けば行くほどデータ数は少なくなりまして、十分な解析が困難な場合も実際にございました。
 また、生活状況やADLなど、こういう対象者の方の精神健康に影響を与える可能性がある別の要因の調査項目について、十分なデータが取られていないことも見解として挙がっております。
 最後に、この検討会の方で、昭和25年以降に調査対象地域に転入してきた部分を比較対象群として使用する解析をした方がいいのではないかという御指示をいただいておりましたのですが、ワーキンググループで議論しましたところ、広島の原爆に関しましては、転入群に関して非常に特殊な点が幾つかあって、これを十分に比較対象の中で調整し切れないということで、ワーキンググループの委員の理解が一致いたしましたので、この点については今回、解析を実施しておりませんので、御理解をいただきたいと思います。
 5ページ「4 ワーキンググループにおける解析について」。
 ワーキンググループ自体は、黒い雨体験の精神的な影響に関する検討と降雨域の推定と、この2つについて行っていますが、まず先に精神的な影響への分析結果について御説明をしたいと思います。
「(1)心身への健康影響について」でございまして、これが8ページくらいまで詳細に記載がございます。
 先ほど申し上げましたように、身体的な疾患への影響につきましては、調査設計上、評価が困難であるということでございまして、今回は精神的な影響に注目をして行っております。
 調査自体は自己記入式質問票による調査部分と面接による調査部分の2つがございますので、この2つそれぞれについて分析を行って、結果が一致するかどうかということも同時に検証いたしました。
 6ページ「1 自記式質問紙による調査(基本調査)データの解析結果の解釈について」をお話して、それから、7ページ「2 面接調査データの解析について」をお話ししたいと思います。
6ページの最初の○であります。基本調査の方で広島県市から出されております報告書の結果を再確認するという意味で分析を行いました。被爆者健康手帳などを持っていらっしゃらない方につきまして、自記式質問紙による降雨の申告によって、黒い雨体験を区分いたしまして、同じ調査票におけます心身の状況との関連性を性別、年齢、収入、介護状況という要因を調整して分析を行っております。
 この結果、sf8_pcsは身体的なQOLを示すものですが、これは有意に出ておりませんが、これ以外のsf8_mcs、これは精神的なQOLを示すもの。K6は抑うつ不安の状態、IES_RはPTSDに関連するような症状の調査項目でありますけれども、これらの3点につきましては、いずれも黒い雨を体験したとお答えになっていらっしゃる方の方が、非体験群に比べて5%の危険率で有意、つまり間違っている可能性は少なくて、大きな差があるという形で、全体として精神健康状態が黒い雨体験の方が悪い傾向が見られました。これは広島県市の方の調査結果の再確認という形になっております。
 この分析に引き続きまして、次の○でございます。原爆に体験するほかの体験等、例えば御自身や御家族の原爆におけます大変な体験、あるいは放射線による健康影響にどの程度不安を持っていらっしゃるかということの項目が、今の関連性にどういう影響を与えているだろうかということの分析を出していただいております。
 これらの原爆に関するほかの体験を同じ統計モデルに投入して調整をいたしますと、黒い雨体験と精神健康の幾つかの尺度の関連性は、非常に小さくなったり、あるいは場合によっては有意性がなくなるというような結果が認められました。特に放射線の健康影響に関する心配や不安を尋ねた質問、問10の3でございますが、この影響が非常に大きいと思われまして、先ほど見られました黒い雨体験ありと精神健康状態が悪いという関係の大部分は、この放射線の健康影響に関する心配や不安によって説明されると推測されました。
次の○でございます。しかしながら、この部分までの解析では、黒い雨体験は自己申告によるものになっておりまして、自己記入式の中の同じ自己申告同士の関係を見ているという問題点から、まだ解決ができておりませので、できるだけ客観的な比較を可能とするように、黒い雨体験をされたという地域を設定いたしまして、その地域ごとで心身の健康状態の比較を行うという分析を次に進めております。
 7ページ、実はこの地域区分の非常に詳しい詳細は、この後の9ページ以降で黒い雨の降雨時間の地理分布で御説明いたしますので、ここではごく簡単にだけ、7ページの上の○の部分で御説明をしたいと思います。
 基本的には原爆投下時にいらっしゃった地域と黒い雨を体験したかどうかという情報を基にいたしまして、高体験地域群、つまりその地域にお出でになったという方が50%以上、黒い雨を体験したと回答をされた地域と、50%未満の低体験地域群というこの2つに地域を区分いたしまして、それぞれの対象者の間で精神健康の尺度を比較いたしました。
 この結果、先ほどは幾つかの尺度で差が出ておりましたが、K6という不安、抑うつの尺度についてのみ有意差を持って、高体験地域群にいらっしゃった方で精神的な健康状態が悪い、高得点となることが観察をされました。なお、この有意差につきましては、原爆に関するほかの体験などを同じモデルに入れて調整しましたので、ここでも特に放射線の健康影響についての心配や不安が媒介要因になっている可能性が高いと推測されております。
 次の○でございます。今のような地域部分でも少し問題がありますので、もう一つ解析を追加いたしまして、広島市などから新たに指定を要望されております地域と、その外側の地域の間で精神健康に差があるかどうかという分析も追加でやっておりますが、ここにつきましては、いずれの精神的な健康状態の評価尺度においても有意な差が認められておりませんで、むしろ要望地域の方が有意に身体的な健康がよかったというような結果にもなっておりまして、この要望地域とそれ以外の間では差が明確ではございませんでした。ただ、先ほど申しましように、遠方の特に被爆時に外側の地域にいたという数が50名程度と限られておりまして、この点は注意しておいた方がいいのかなと思っております。
 「○以上をまとめますと」につきましては、既に申し上げた部分を簡単にサマリーしたものですので、ここは割愛をさせていただきます。
 次に7ページの下から「2面接調査データの解析について」を御説明したいと思います。
 面接調査データの解析につきましては、まず最初の○ですが、原爆体験区分として6つの区分を使いまして、これは直爆群、入市群、救護群、大雨群、黒い雨体験群、黒い雨非体験群。黒い雨体験群と非体験群の定義は、先ほどの自記式質問書によるものと全く同じでございますのが、この6群を考えて、精神健康尺度を比較しております。
 8ページ、黒い雨体験群と黒い雨非体験群の各尺度の得点には、統計学的に有意な差がある場合が多くて、一般的に黒い雨体験群に精神健康が悪いという傾向が示されておりまして、これは先ほどの基本調査、自記式質問票の結果とほぼ同じになっております。
 幾つかの尺度、SF36というものの活力という尺度とか、社会生活機能がよいという尺度、あるいはここの健康に関する尺度、GHQ28という精神的な不調に関する尺度につきましては、直爆群の中でも黒い雨を体験したという方と非体験者を比較すると、黒い雨体験の方の方が精神健康が悪くなっていますので、黒い雨体験の影響が直爆を受けた群の中でも見られたということが追加で報告をされております。
 8ページの次の○にいきまして、この6群の比較では少し問題があるのではないかという指摘があって、今度は2群に区分をしました。黒い雨体験群と黒い雨非体験群の2群だけの非常に純粋な比較の方に分析を移しまして、同じように精神健康に関する尺度の比較をしております。
 先ほど、自記式質問票の方でも行いましたように、原爆に関するほかの体験の影響も検討いたしました。その結果、SF36の解釈度やGHQ28やPTSDに関する尺度につきましては、黒い雨非体験群と黒い雨体験群の間に有意な差が認められまして、黒い雨体験群の方が精神健康が悪いということが示されております。これも先ほどの基本調査の方と全く同じ結果になっております。
 原爆に関連する体験を説明変数と加えた場合ですが、ほかの体験をモデルに加えまして調整したときには、黒い雨体験群と黒い雨非体験群の有意な差は見られなくなりました。ただ、こちらの方はデータ数が少ないこともありまして、例えば黒い雨を体験している方はほかの原爆に関する体験も解析しやすいという傾向にありますので、類似した2つの指標を同じモデルに入れてしまうと結果が出にくくなるという多重共線性という問題も起きている可能性はあるかなということは、解析を担当した先生から指摘されています。
 その次の○ですが、今までのは黒い雨体験を自己申告したものを情報として使っておりましたが、更に地域別の比較を面接調査データについても実施しております。地域の区分は先ほど御説明したものと全く同じでございまして、面接データの方で4つの尺度を比較しております。結果としては、低体験地域群と高体験地域群の間で、面接調査データについては精神健康の尺度に統計的な有意差はなかったということでありますが、全体的に高体験地域群の方が多少、精神健康の尺度が悪い傾向にはありました。原爆に関連するほかの体験を調整変数に加えた場合も結果は同じでありまして、問10の3、放射線による健康影響の不安が特に関連する傾向にありました。
 ここまでが黒い雨体験の心身への健康影響に関する主要な結果です。
 続きまして、9ページの「(2)黒い雨の降雨時間の地理分布について」の解析結果を御報告したいと思います。
 推定された降雨域及び降雨体験の回答の確からしさの検証を目的といたしまして、降雨時間に関する地理的な分布の解析を行っております。回答の確からしさの観点から、原爆10日から降雨体験まで移動がなかったと仮定をいたしまして、地域での黒い雨の体験率を推定して、黒い雨の推定体験率が高い地域というものが同定できるかどうかという検討を行っております。
 以前、検討会のときに飛鳥井参考人がおっしゃっていたのですが、黒い雨体験がなかった方につきましては、どの地域でなかったかという報告をされておりませんので、黒い雨なしという方の情報を使うときに、どの地点をその方に割り当てたらいいかが余り明確ではありませんでした。
 飛鳥井参考人のお話だと、原爆投下時から非常に動き回っていらっしゃるので、位置が同定できないとのことだったのですが、この問題につきまして、次の○ですけれども、降雨体験がある方に限定して、原爆投下時にいた地域と降雨を体験した地域との一致割合を比較検討しましたところ、少なくとも今回の対象になっております爆心地からの距離が10km以上の地域に関しましては、一致が92%程度と高いということがわかります。つまり、原爆投下時からそんなに移動をされていないことがわかりましたので、今回は、投下時にいた地域は報告がございますので、これを使って分析をするということを実施しております。
 そこで回答者がその地域、町村の単位として区分していますけれども、回答者が10人以上でおいでになった地域で、黒い雨体験の割合が50%以上の方が体験したという地域を対象といたしまして、時刻ごとの降雨開始時間がどのように分布していたかをビジュアルに示しております。8時に始まったとか、10時に始まったとか、いろいろな御報告がございますので、それを使いながら、気象条件と同じように説明が付くように、降雨開始時間が分布していくかどうかというものを検討しております。先ほど御説明しましたように、黒い雨の体験が50%以上の地域で、回答人数が10人以上いた地域と、そうでない地域の区分もこの情報を中心に行っております。
 これらにつきましては、資料2-2の133ページをごらんいただけますでしょうか。上半分のパワポに推定体験率が50%以上の地域が掲載されております。黄色でマークしたものです。縦軸の方に町村が書いてございまして、一番左から2つ目のところに合計とありますが、これがその地域で黒い雨を体験した、あるいはその地域に原爆投下時にいたと回答した回答者の数であります。10人以上が回答した地域だけをここには示しております。その中で何%の方が黒い雨を体験したかという割合が、その隣の被爆時体験というパーセントで示されております。例えば一番上の筒賀村では、10人が回答されて、70%の方が黒い雨を体験したとお答えになっている形になっています。
 未指定地域のうち、今、申し上げたように、黒い雨の推定体験率が50%、かつ回答人数が10人以上のところは、北西側の6地域に限定をされておりまして、そのうちの4地域の町村の一部は既に大雨地域に指定をされておりました。この6地域のうち上の2地域は20km以上のかなり遠い場所でありまして、この辺りについては回答者が10人、17人と少なくて、これで体験率として十分な精度を有した推定になっているかどうかについては、ワーキンググループでも多少議論がありましたが、明確になっておりません。
 133ページから丸がずっと続いておりますのは、降雨時間の開始時刻ごとに地理分布を、例えば8時なら8時とか、10時にその時点で黒い雨がもう降り始めていましたと回答した方がどのくらいいたかというものをプロットしておりまして、丸の大きさは回答人数になっております。非常に遠距離の方であるにもかかわらず、爆心近くの降雨時間と既に同時に降り出したと回答がございましたり、あるいは開始時刻や降雨時間の継続時間にばらつきが多少多いということもありまして、黒い雨体験の報告がどのくらい確かかということについては、本ワーキンググループでは、どの程度、確かかということについては、明確にできないという結論になりました。率直なところ、遠方で降り出したと言っても、本当に降っていたかもしれませんし、気象データとのマッチングが十分にできなかったので、ワーキンググループとしては、この回答の確かさについては、結論が出ないという結果になっております。
 特に遠距離地域の降雨体験の確からしさの検証につきましては、遠距離地域におけますデータ数が少なくなっておりまして、しかしながら、今後データを集めればよいとは言いながら、遠距離地域においては、恐らく原爆投下時にいた人は少ないということも考えられておりまして、今後は調査を計画するとしても、少し困難ではないかという意見もワーキンググループでは出されておりました。
133ページは50%以上の体験率があった部分のデータだけをお示ししていますが、140ページの方には爆心地から6km以遠で検討しましたすべての地域につきまして、回答者数と黒い雨体験の割合が出ておりますので、御参考にごらんいただけたらと思います。
 御質問もあるかもしれませんが、先に進ませていただいて、資料2-1の10ページ「5 まとめ」をさせていただきたいと思います。
 「(1)黒い雨を体験したと回答した者における健康影響について」。
 現在、被爆者健康手帳や健康診断受診者証を所持しておらず、黒い雨体験があると回答した黒い雨体験群は、黒い雨の体験がないと回答した黒い雨非体験群に比べて、精神健康の指標が悪い傾向が見られまして、原爆体験者等健康意識調査、自記式質問紙による調査データにより報告された黒い雨体験の自己申告と精神健康状態の悪さという関連性の御報告を再確認した形になっております。
 ほかの被爆群においても黒い雨体験群と黒い雨非体験群を比較した場合も、黒い雨体験群の方は精神健康が悪いという結果もございました。黒い雨体験の有無と精神的健康指標とのこれらの関連の大部分は、原爆に関連する体験など、特に放射線の健康影響への不安や心配によって説明されると推測しております。
 「(2)高体験地域と低体験地域の比較による健康影響」。
 私どものワーキンググループで新たに行いました解析ですが、より客観的な指標となることを期待いたしまして、黒い雨の体験率により高体験地域と低体験地域を区分して比較を行った場合には、高体験地域でK6、つまり抑うつ不安の指標においてのみで有意に精神的な健康状態が悪いことが示されました。
 この結果は黒い雨体験の自己申告による検討よりも、より客観的と考えられますけれども、同じ地域においても、人によって黒い雨の暴露が異なった可能性があれば、結果を過小評価している可能性になりまして、もう少し差が本当はある可能性もございます。あるいは逆に、今回の分析では、単に黒い雨体験を報告した者の多い地域を高体験地域に選んでおりまして、気象条件とかその他の情報を加味した体験地域の区分にはなっておりませんので、要する自己記入式質問紙による黒い雨体験の多い方の地域を高体験地域としたという点で、いわゆる自己記入式質問票によるバイアスの問題を完全には排除できていないという問題もあることを付記しておきたいと思います。
 なお、放射能への不安や心配という項目を調整することによって、以上で見られたK6の有意差も消えることから、この場合でも高体験地域でのK6の高さは放射能への健康の不安、心配によって説明できると考えております。また、被爆者健康手帳を所持しないものについて、今回の要望地域で原爆を経験した者が、これ以外の地域で経験した者と比べて精神的健康状態が悪いという明確な結果は得られておりません。
 「(3)黒い雨の地理分布について」。
 黒い雨の降雨域については、広島市などから提出されました原爆体験者等健康意識調査報告書において、原子爆弾災害調査報告書に示されているよりも広い分布が示されております。本ワーキンググループについては、推定された降雨域及び降雨体験の回答の確からしさの検証を行いましたが、同じ地域において黒い雨の体験率が50%を超える地域は未指定地域においては一部に限られること。
50%を超える地域を未指定地域においては一部に限られること。特に爆心地から20km以遠においてはデータ数が少なくて、検証が十分できないこと。本人の60年以上前の記憶に頼っていることなどから、その報告の正確性がどの程度かというのを本ワーキンググループでは十分に明らかにすることができませんでした。大変残念ながら、今回の調査データから、本ワーキンググループで黒い雨の降雨域を確定することは困難であると考えまして、これはワーキンググループの委員のコンセンサスを得たところです。
 なお、11ページですが、大瀧委員の方から未指定地域の一部にそれでも黒い雨の体験率が50%を超える地域があって、それらの地区の中には宇田の小雨地域に含まれない区域を持つ地域があったことから、宇田雨域の外側でも黒い雨が降った地区が存在する可能性が示されたことは重要ではないかという御意見がございましたが、残念ながら本ワーキンググループの報告書のとりまとめの途中に発言がありまして、この点についてワーキンググループでは十分に検討、議論をしておりませんので、今回は大瀧委員の御意見として、付記させる形で補足をさせていただいております。
 なお、10人未満の地域も含めた地域に関する黒い雨体験の詳細な情報は116~123ページまでに詳細な表として出ておりますので、こちらの方をごらんください。
○佐々木座長 川上委員、ありがとうございました。
 まず、ワーキンググループに参加された委員の方で、何か追加の発言があれば、お願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○柴田委員 特にございません。
○佐々木座長 金委員、もし今の御報告に追加するようなことがあれば。
○金委員 報告書については、特に追加することはございません。
○佐々木座長 事務局からは何か。
○高城原子爆弾被害者援護対策室長補佐 こちらからも特に補足すべき点はございません。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御報告につきまして、これからしばらく議論をしたいと思います。川上委員を始めとして、ワーキンググループの皆様には大変にお忙しい中、大変な労力をかけて作業をしていただきました。この場を借りて御礼を申し上げます。
 それでは、御質問あるいは御意見がありましたら、御発言をいただきたいと思います。
 金委員、どうぞ。
○金委員 この議論が何を議論しているかということで、以前も話が出たと思いますが、1点確認です。
 冒頭2ページに、放射性降下物が含まれていたかどうかは、現時点では確認されていないという表現がございます。仮にその放射性降下物があったとしても、精神的な影響が放射線の神経系への直接の影響によって精神的な影響が出るということは、この場合は全く考えられないと思います。チェルノブイリ事故などのWHOの報告書を見ましても、40Gyという大変高量な被曝量がない限りは、精神への影響はないという前提で書かれています。
 なぜそれがわかるかというと、脳に腫瘍ができた場合に、脳に対して放射線療法をやるわけですが、その場合も40Gyという大変強い線量を与えないと精神症状が出ないということが知らせております。ちなみに40Gyというのは、脳に与えた場合、人間は耐えることができますけれども、全身に与えた場合は耐えることができなくて、3Gyの被曝量で50%の方が亡くなってしまうということが、たしかUNSCEAR報告書に記載されていたと思います。
 ですから、今回の住民たちの居住地域に仮に放射性降下物があったとしても、それが脳神経への直接の影響によって精神状態の悪化をもたらすということは考えられないということでありますので、いずれにしても、精神状態の悪化は被爆あるいは放射線や被爆にまつわる不安を介した心理的なものということになるのではないかと思っております。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに御発言はありますでしょうか。メンバーでなかった方は、伊豫委員、土肥委員、私ですね。
 土肥委員、どうぞ。
○土肥委員 特にありませんが、何となくもやもやしていたものが大変明快にまとめられていると思いました。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 伊豫委員は何かありますか。
○伊豫委員 私は精神科医でございますので、当初より認知行動科学的には、心配というものが非常に感情や心身、行動に与える影響が大きいということを申し上げたつもりだったのですが、そういった結果であったということだと思います。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 私から伺いたかったのは、黒い雨体験群と黒い雨非体験群、10ページの高体験地域と低体験地域と地域でも分けていただいておりますが、こういう地域の違いと被曝線量との関連というのは、検討はできないものでしょうか。例えば高体験地域と低体験地域とでは、そこにおられる方の被曝線量に差があるのか、ないのか。そういう検討はなされていないでしょうか。
○川上委員 私は被曝線量の専門ではないので、あとで事務局等から補足をいただこうと思いますが、地域を地図上にプロットしてみますと、意外と北西の遠いところが高体験地域になっておりまして、通常は放射線量といいますと、爆心地からエクスポージャといいますか、それとは少し違ったパターンを示しているのは率直なところです。
 事務局の方からは、何か補足等はございますか。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 今回のワーキンググループの検証においては、被曝線量という観点からは、特に検討しておりません。ただ、本検討会の方で、放射線降下物というのが論文等でしっかりと確認できたという事実は、当該要望地域ではないということを、検討会のこれまでの議論の中でご確認いただいておりますが、それを前提として、そこは留保付きで進めなければいけないねというような形で、ワーキンググループの先生方に解析をしていただいたという状況になっております。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに何か特に御質問や御意見はございませんでしょうか。
 もう一つは、これはワーキンググループに参加されなかった方の御意見を伺いたいのですが、ワーキンググループがこのような検討のされ方について、これでよかったかどうか。そして、もっとほかにこんな方法があったのではないという御意見があれば、伺っておきたいと思いますが、土肥委員、これでよかったとお考えでしょうか。
○土肥委員 わかりません。わかりませんけれども、ほかに余りやりようがない。ですから、途中でおっしゃったと思いますが、黒い雨を体験したという人たちの気持ちの中には、同時にほかのファクターを持っていらっしゃる方もあって、そういう不安とかいうようなものが同時にあるということは容易に想像できます。ですから、今回ワーキングで他の解析をやってみられたという意味では、大変評価できるのではないかと思います。
○佐々木座長 伊豫委員はいかがですか。
○伊豫委員 特にございません。
○佐々木座長 私も大変に精細な、的確な御検討をいただいたと思っております。重ねて、このワーキンググループの皆様の御努力、その成果に対しまして、この場を借りて、もう一度御礼を申し上げます。ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、先日、放射線影響研究所から公表されました原爆直後の雨情報について、放射線影響研究所理事長の大久保先生に来ていただいておりますので、御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○大久保参考人 それでは、御説明をいたします。資料3をお開けいただきたいと思います。
 御承知の方が大部分だと思いますが、イントロとして、私どもの使命を確認させていただきます。私どもの研究所は、原爆放射線被曝による長期的なリスク、確率的影響と申しますけれども、それを実際に固定集団を長期間観察することによって明らかにするというのが目的でございます。ですから、一番大事なことは、固定集団の中から発生する死亡あるいは疾病というようなものを高い精度で観察をすること。その個々の方々の放射線の被曝線量をできるだけ正しく把握すること。この2つが必要でございます。
 資料にございますMSQ、Master Sample Questionnaireの省略でございますけれども、これは今、申し上げたうち、被曝線量を推定するために必要な調査として行われたものでございます。
 黒い雨というのが今回の主題でございますけれども、放射線影響研究所は黒い雨からの放射線被曝量に関しては、いろいろな予備調査はいたしております。その結果高い精度で黒い雨情報から被曝線量を推定することができないという結論となり、黒い雨についてはこれまで正式なデータとしては一切取り扱ってきておりませんでした。したがって、放射線影響研究所から黒い雨に関する研究論文は1本も出ておりません。
 ところが、去年11月になりまして、黒い雨に関する研究論文が出ているというようなことが報道されました。よく調べましたところ、うちの研究員ではなくて職員が、用務でアメリカのオークリッジ研究所に出張しているときに、細かいことはよくわからないのですが、政府に対する報告書としててつくられたようなものではないかと思います。
 ですから、これは全く科学ジャーナルに出ていたものではなくて、内部資料がどういう経緯で外部に出たのか私どもは把握しておりませんけれども、長崎のあるドクターがそれを入手されて、それで放影研で黒い雨の研究をしていたというようなことが報道されました。そういうことで今回、放影研の方で黒い雨を取り扱うことになったという経緯がございます。
 少し時間が逆転しますが、放影研では今、申し上げた被曝線量の精緻化をするということに関して、長年幾つかの課題を持っておりました。そのうちの一つが、被爆位置の精緻化でございます。直接の被曝線量は、被爆した位置が一番大きな影響を持っております。次に遮へいの状態ですが、いずれにしても、どの位置で被爆したかということが精緻化できない限り、それ以降の作業は進みません。
ところが、その作業をしたのが原爆が投下されてから数年から十数年まで、そのくらいの間に調査をされておりまして、その当時、いろいろな情報で被爆位置を調べて、それを座標に落とすとき、米軍、陸軍がつくった地図をずっと使っておりました。その後、20~30年経ってから、その地図が紙ベースでつくられていたために、東西方向に約3%伸びていたことがわかってまいりました。実際の被爆距離にしますと10mから、大きいところで20mくらいの差ですが、爆心地に近いところでは、線量としてはかなりの違いになってまいります。そういうことがございまして、いつかは精緻化しないといけないということがございました。
 2005年、私がこちらに参りましてから、ようやくDSO2という被曝線量システムの作業が一段落いたしまして、その精緻化にかかったわけであります。その精緻化をするためには、もう一度原票に戻って、被爆位置に関する情報を再確認する必要がございましたので、長年、放影研が直接被曝線量だけで放射線の被曝量を計算していたということに対して、今回の内部被曝の問題とか、あるいは誘導放射能に対する被曝線量を無視したことについて、かなり御批判をおっしゃる方がおりましたので、どうせ調査をし直すなら、それに関連した情報もどれくらい確認できるかを確かめておく必要があるだろうということで、2007年から被爆位置を再確認する作業のかたわら、調査票に書いてあるものすべてを電子化する作業をずっとしておりました。
 ちょうどこれは偶然の一致なのですが、昨年の秋にほぼ入力が終わったところで、今、申し上げた山田論文が話題になったわけでございます。長崎のそういうことを最初に発見された先生と報道機関の方々が長崎の研究所の方に何回かお見えになりまして、今までの放影研のデータの中で、どういう位置づけになるかということについて、幾つか御質問を受けておりました。その過程で放影研が今やっている作業の中で、1万3,000人ほどの黒い雨の情報を放影研が掘り出したということを報道機関が大きなニュースとして取り上げられましたものですから、私どももそれは説明をする責任があるだろうと思いまして、11月半ばに事情を説明する記者会見を行いました。
 その席でデータ入手確認の経緯については十分説明をしたのですが、それにしても現在、国で黒い雨の降雨域の委員会を持っているのに、なぜそういう大事なデータを隠していたのかという質問を受けました。今、申し上げたような事情で、隠していたわけではないのですが、その分布図を是非つくって間に合わせろという御要望がございました。そういうことで、今日御紹介するような作業をしたわけでございます。
 したがいまして、これは最初にお断りをしておきますけれども、今回の資料は科学論文の引用ではありません。1万3,000件のデータの分布がどうなるかだけを見せてほしいという御要望に応えるために、その目的のために作業したものでございます。
 それでは、資料の方に入らせていただきます。このMSQというのは、放影研の作業の中で幾つか調査票が試行錯誤でつくられておりますが、現時点でもこのMSQという調査票が一番基本になる調査票としてとらえられております。放影研のコホート、固定調査集団は1950年の国勢調査の全国調査附帯調査で、長崎、広島で被曝したと回答された方が基本になっております。この方々のうち、長崎、広島に住んでおられた方、約20万人に対してABCCがこの調査票を使って、いろいろな聞き取り調査をしたわけでございます。
 ですから、このMSQは20万人近くの方を調査いたしましたが、それ以外にも1950年以前に別な調査をした部分についても作成をしているようであります。その前で使っていたいろいろな調査票も、このMSQをつくったときの転記をして、すべてMSQの方へ集約するようなことをしたということで、現在確認できているMSQの数は、最初の段落の最後にございますが、約16万人と私どもは確認をしております。このMSQですが、今、申し上げたように、基本的に本人に面接をするつもりでつくったのですが、後半の方に書いてありますように、それに加えてそれ以前につくった調査票の内容も転記をしたということがわかっております。
 肝心の雨のことですが、中ほどの段落で、調査票の中に関する質問としては、原爆直後、これはフォールアウトレインですから、ただの雨ではなくて、降下物を含んでいるような雨に会いましたかという意味かと思います。それに対して、解答欄はイエス、ノー、アンノーン、場所、それだけで丸で囲むような形のごく簡単なものでございます。それ以前の調査票もほとんど同じです。そういう簡単な調査票ですから、2~3日後に被曝したとか、あるいは9月中旬に被曝をしたというような記載が調査を担当した人がメモしているものもございます。
 結果的に私どもの調査の対象であるLSS、寿命調査集団でございますが、この集団について一番しっかりとした記録が残っておりますので、まずこの人たちの中で、このMSQという調査票に、雨に会ったと答えている人の数を数えました。そこでLSS寿命調査の対象になった人の分布図とそれ以外でMSQが残っているものの分布図、この2つに関して御説明をいたします。
 結果ですが、3ページの表をごらんいただきますと、広島と長崎、被爆距離を2,000m以内、2~2.5km、2.5km。1行おいて比較対照群として入れました原爆の後で市内に転入されてきた方々、NICと言いますが、このグループの方に分けて、雨に会ったか、ないか、わからない、情報なしと分けております。
 ごらんのように、まず広島の方で見ますと、2km以外の方々の数が2万6,000強ございますが、半分近くが何も書いていない。その中で黒い雨に会った数が6,200と読んでいただきます。会っていないと答えた方が9,000あったということです。
 この中で見ていただきたいのは、まずNIC。この転入された方の中には、いわゆる私どもの対象が10kmですので、10km以遠の住んでおられた方。あるいは近隣の市長村に住んでおられた方々。そういう方々がその後、広島あるいは長崎市内に転入された方が多いわけです。ですから、中には雨を経験された方があっても不思議ではないですが、ごらんのように2万人の中で広島の場合は19人、長崎の場合6,000の中で1人もイエスと答えた方はおられません。ですから、基本的に私どものデータは、このLSSに関しては被曝者、特に2~2.5kmくらいまでの方のウェートが非常に多いということですね。直接被曝を受けた方々に雨は降ったか、降らないかという回答を求めたという結果だとごらんください。
 その結果、後ろの方には図がございますが、1Haの方。これは今、申し上げていた広島におけるLSS対象者の雨に会った場所の分布図、人数でございます。円が大きいものは人数が多いという関係です。特に中心部を拡大したのが1Hbの方の図であります。すぐその後に、長崎のH、LSSの分布が出ております。
 4ページの表は、先ほど申し上げたLSS以外で私ども持っておられましたMSQの雨に会った数でございます。これはほかの情報はございませんので、とりあえず雨に会ったという方の数と分布だけをお示ししてございます。その図が後ろの方に付けてあります。結論的に申し上げますと、私どものデータの分布を見ますと、これは雨にディペンドした分布というよりは、被曝者の所在にディペンドしたような分布であることが明らかでございます。
以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ただいまの御報告をいただきまして、御質問や御意見があろうかと思いますので、御発言をいただきたいと思います。
 確認でありますけれども、1ページのフォールアウトレインというのは、一般の方にはわからないと思いますが、例えば黒い雨と同義語と見てもよろしいものなのか。
○大久保参考人 その辺が一つ大きな問題で、調査員が記入した調査票をコンピュータに入れるときのコーディングマニュアルはしっかりと残っておりますが、残念なことに面接要領がありません。被曝者の方にお会いしたときに、それぞれどの項目について、どういう聞き方をするかというマニュアルが残っておりません。したがって雨についてどういう聞き方をしたのかがわかりません。残っている調査票を見ますと、私の感じでは特に被曝者の方でも無記入が非常に多いので、雨についてはわかったら書けと。わからなかったら、そのままでいいというようなものだったのかもしれないし、しかも雨というのを黒い雨と聞いたのか、あるいは被爆直後に降った雨と聞いたのか。その辺のところがどうも今の時点では、全くわからないということでございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 いかがでしょうか。柴田委員、何かありますか。
○柴田委員 今のフォールアウトレインですけれども、実際に例えば私が聞かれても、それがフォールアウトのためなのか、火事で起こった雨なのかというのはわからないです。これはアメリカ主導で英語ではこう書いているけれども、日本語を見れば、単に雨にしているわけで、聞かれた方もそうだと思います。
○佐々木座長 いかがでしょうか。
 この図をごらんになって、ワーキンググループのメンバーの方は、何かお感じになることはありますか。
○川上委員 ワーキンググループで高体験地域と判定された地域とも違うようですし、かなり違った種類のデータを見ているような印象は少しあります。
○佐々木座長 いかがでしょうか。
 大久保先生、今後この情報については更に何か、放影研として御計画はあるのかどうかをお聞かせいただければと思います。
○大久保参考人 そもそも私が被爆位置の精緻化の作業のときに、黒い雨の情報を拾えという指示を出した動機は、先ほど申し上げたように、放影研が直接被曝以外の被曝経路を無視しているという御非難が随分聞こえてくるものですから、どういうデータを持っているのかだけは確かめおかないといけないというのが動機でございます。ですから、せいぜいやったとして、黒い雨に会ったか会わないかによって、何か疾病の発生の頻度が違うのかに関し可能であれば解析をしようかというくらいのことでございました。
 現在、線量の見直しのために、所内に研究者の委員会を設けております。その中で今、申し上げた直接被曝以外の経路からの線量について検討する小委員会をつくっておりまして、その小委員会に黒い雨データについての入力が終わったので、これを研究に生かせるかどうかというのを検討してもらっております。既に1回会議を開いて、意見を交わしているようでありますけれども、それがちゃんとした科学的なプロジェクトとして成立するのかしないのか。その辺も今の時点では申し上げられません。
○佐々木座長 いかがでしょうか。
○金委員 どうもありがとうございました。先生の資料の5ページにある1Haの図と、ワーキンググループの資料2-2の133ページにある図でございます。133ページですと、かなり遠い地域の方でも黒い雨体験が50%以上で、点が付いています。先生がお示しくださいました5ページの1Haで見ますと、ほとんどが10kmに集中しておられると見えますが、これは133ページの図に出ている遠い地域については、近い地域と同じように十分な代表性を持ったサンプル調査が行われた上で、こういう結果になっていると考えてよろしいのでしょうか。
○大久保参考人 もともと10km以上のところは調査対象になっておりませんので、たまたま何かの都合で、例えば胎内被曝者がおりますが、そのお母さんの位置とか、あるいは二世の調査もしておりますので、被爆者の御両親の調査とか、いろいろな調査をしておりますので、たまたま遠くの方が1~2例入ったということはあるかもしれませんが、基本的には10km以遠については、比較対照者以外には対象にしておりません。
○金委員 そうしますと、1Haで遠い地域に少し赤い丸が付いていますが、これは割と偶発的にそういうデータが得られたということであって、系統的に調べたわけではないということですね。
○大久保参考人 その通りです。また、こういう特殊例については気になったので詳細に個別に見ましたが、例えば直接面接ができなくて、郵便で回答をもらっているとか、家族の証言であるとかが2~3ありました。全部ではございませんけれども、直接御本人の回答でこの位置というのもございましたが、そういうのも遠いところには混ざっておりました。
○佐々木座長 ほかにいかがでしょうか。
 柴田委員、どうぞ。
○柴田委員 黒い雨とフォールアウトですが、長崎では西山地区にかなりフォールアウトがあったということが最初からわかっていたわけで、実際に調べられています。しかし、西山の人が黒い雨に会ったということを言っているというのは、私自身は知らないです。つまり、黒い雨即フォールアウトなのかというのはよくわかりません。多分そんなに黒いのではなくて、白いというか、そんなものだったと思います。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。時間の余裕があるものですから伺っておりますが、土肥委員は御感想とか、何かありますか。
○土肥委員 17ページを見ているのですが、真ん中のカラムの2番目に八幡村というのがございます。これは佐伯郡の八幡村の話だと思いますが、雨を見たと回答した人が1で、回答しなかったのがなんぼかというのがわからないので、これはある意味ではかなり早い時期なので、今回のものよりかは随分信憑性が高いと思われるのですが、かと言って、これが1で、こちら側が50~60%の頻度になっているので、どうなのかなと見てしまったんです。LSSに入っていないものの中で、こちらもデータがあるし、広島市の方にも両方にデータがあるものについては、八幡村が一番遠いんですね。
 この丸は1~5が書いておりますが、実数は1なので1人しかいなかったのかもしれませんし、そのほかに例えば5人いたけれども、1人しか雨に会っていないと回答したのか、その辺がわかりません。
○大久保参考人 御指摘のとおりで、今日お見せしているデータについては、これはあくまで雨に会ったという方の数を実数でお見せしているだけなので、例えば表でごらんのように、ある群によっては倍以上が無記入とか、とんとんに会っていないという方があるのですが、その方々の場所のデータはございませんので、こういう形ではお示しをすることはできません。ですから、あくまで会ったという人がどこにいたかというだけのデータですので、その点は御承知の上で見ていただく必要があると思います。
○佐々木座長 いかがでしょうか。
 伊豫委員は何か御発言はありますか。
○伊豫委員 特にございません。
○佐々木座長 直接関係ないですけれども、せっかく大久保先生がおられるので伺いたいのですが、原爆投下当時の気象のデータはどのくらいあるものでしょうか。そのときも気象は見てあったんだろうと思いますが、線量評価とか、そういうことに使えるものがあるのかどうか。好奇心なんですけれども、もし御存じでしたら。
○大久保参考人 非常に精緻なデータがございます。例えば爆発してからのいろいろな地点に到達するまでの放射線量の減衰の計算をするときなどには、空気の湿度の程度とか、そんなのも全部使っていますので、非常に緻密なデータがございます。当時の風向、風速、そういうデータも全部かなり細かく残っております。
○佐々木座長 そういうデータがあると、その後の気象科学の進歩の技術を使えば、当時のことが再現できるというようなこともあるような気がいたしますが、そういう可能性はあるわけですか。
○大久保参考人 私は専門ではないので、余り細かくは申し上げられませんけれども、被曝線量の推定の計算はかなり細かいことをやっています。10kmまでのすべての距離を細かく網目状に区切って、その間で放射線が進んでいったときに、その途中で例えば中性子ですと空気中の分子にぶつかって、またそこで放射化が起こったり、いろいろなことが起こりますので、それをすべてステップ・バイ・ステップに計算をしていって、それで最後に到達した線量を計算していますので、その過程でそういう風速とか湿度なども入れていると思います。
○佐々木座長 いかがでしょうか。ほかに御発言はありますでしょうか。
 どうぞ。
○土肥委員 当日の気象ですけれども、これは柳田邦男の小説で恐縮ですが、『空白の天気図』という本がありまして、江波山というこの真ん中の島ですが、それの一番南の方に山がありまして、そこに気象の観測所が今でもあります。この気象庁の観測の人は大変なストリクトに時間どおりにきちんと来るんだそうです。ところが、それに来ないということで、その日は広島から本庁の方には送れていないんです。職員がたどり着けないんでしょうね。恐らく翌日からは回復したと思います。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 それでは、この問題については、議論をこの辺りで終わらせてよろしいでしょうか。大久保先生には、大変御多用の中を私どもの求めに応じて、わざわざお出かけいただきまして、大変貴重な御説明をいただきまして、ありがとうございました。改めて御礼申し上げます。
 本検討会では第1回から計6回にわたりまして、さまざまな参考人の方からのヒアリングを交え、議論を重ねてまいりました。また、本日ワーキンググループから御報告をいただきました。次回はこれまでの論点を整理し、とりまとめに向けた作業に入っていく必要があると思っております。
事務局の方で、そのように御準備をいただけますでしょうか。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 それでは、そのように準備をさせていただきます。
○佐々木座長 どうぞ。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、予定の時間より少し早いのでありますけれども、この辺りで終了させていただきたいと思います。何か事務局から補足的な御発言がありますでしょうか。
○高城原子爆弾被爆者援護対策室長補佐 次回の日程でありますけれども、これにつきましては、また追って御相談、御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。
○佐々木座長 それでは、これをもちまして、本日の検討会を終了させていただきます。
どうもありがとうございました。


(了)
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