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2012年3月22日 第3回乳幼児身体発育調査企画・評価研究会(議事録)

雇用均等・児童家庭局母子保健課

○日時

平成24年3月22日(木) 13:30~15:30


○場所

厚生労働省共用第9会議室


○議題

1 乳幼児身体発育調査結果の評価等について
2 その他

○議事

○芳賀栄養専門官
 定刻より少し早いのですが、構成員の先生方がおそろいですので、ただ今から「第3回乳幼児身体発育調査企画・評価研究会」を開催いたします。構成員の皆さまには、ご多忙のところご出席いただきましてありがとうございます。
 開催に当たりまして、雇用均等・児童家庭局母子保健課長の泉より、ご挨拶申し上げます。

○泉母子保健課長
 皆さま、こんにちは。お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。母子保健課の泉でございます。本日は第3回の乳幼児身体発育調査企画・評価研究会ということでございます。昨年秋に第2回を開催し、新しい乳幼児身体発育曲線についてご承認いただきまして、それを4月からの母子健康手帳に載せるというところまで議論していただきました。
 併せて、その際に今年度の残りの時間でさらに検討しますということで、横山構成員の研究班で引き続き作業していただく、いわば宿題事項が三つほどございました。本日は、その報告に基づくご検討と審議を中心にお願いしたいと思っております。
 また、これは今日の議題にはなっておりませんけれども、この作業を通じまして、低出生体重児の問題が大きいことをあらためて認識いたしまして、来年度からの厚生労働科学研究の中で低出生体重児の要因や介入研究を行うための基礎的な情報収集といった研究もスタートするように、今は公募が終わって評価の段階なので、まだどういう形でということはご報告できませんが、そういう企画も動いていることを併せてお知らせしておきたいと思います。
 また、この調査は10年に1回でございますので、次に検討するとすれば10年後ということになります。今日の機会に、次に向けた提言といったことがございましたら、併せていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○芳賀栄養専門官
 本日の構成員の出欠状況ですが、衞藤隆構成員、住友眞佐美構成員、月本一郎構成員から、事前に欠席のご連絡をいただいております。また、本日は専門参考人として「乳幼児身体発育調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関する研究」の研究協力者で日本成長学会理事長の田中敏章先生にご出席いただいております。
 それでは、この後の議事進行は多田座長にお任せいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

○多田座長
 それでは、議事を進めさせていただきます。はじめに、資料の確認を事務局からお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○芳賀栄養専門官
 お手元にお配りしております資料の確認をお願いいたします。まず、一番上に本日の議事次第、座席図がございます。次に、資料1「乳幼児身体発育調査企画・評価研究会」開催要綱、資料2といたしまして横山構成員提出資料「乳幼児身体発育調査結果の評価及び活用方法に関するワーキンググループの報告」、参考資料といたしまして「人口動態調査の特別集計結果例」、最後に机上配布資料といたしまして前回10月24日に開催されました第2回研究会の資料3でございました同ワーキンググループの中間報告をご参考までに配布しております。以上が配布資料でございます。不足等がございましたら、お知らせください。

○多田座長
 それでは早速、議事に入りたいと思います。最初に、議題(1)の「乳幼児身体発育調査結果の評価等について」から、ご討論いただきたいと思います。
 まず、事務局からご説明いただけますか。

○芳賀栄養専門官
 お手元の資料2をご覧ください。昨年の10月24日に開催された第2回研究会において、「乳幼児身体発育調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関する研究」の研究班のワーキンググループの中間報告がありました。その中で、(1)出生時の体重及び身長について、(2)保健指導マニュアルの作成等、(3)乳幼児期及び就学期以降の体格標準値についての3点に関しましては、今年度内に研究班でさらに検討を行うとのご報告でした。この3点に関しまして、その後の検討状況を研究代表者でもある横山構成員からご報告いただきたいと思います。

○横山構成員
 研究班におきまして、前回の中間報告の後、さらなる調査結果の評価を行ってまいりました。調査結果の評価等に関する報告については、資料2として提出させていただいているとおりですので、こちらに沿って説明させていただきます。
 本日は参考人として研究班の研究協力者である日本成長学会の田中敏章先生にお越しいただいていますので、(1)~(3)のうち、先に(3)について田中敏章先生にご説明いただきたいと思います。それでは、(3)の「乳幼児期及び就学期以降の体格標準値について」、田中先生よろしくお願いいたします。

○田中参考人
 日本成長学会理事長の田中です。よろしくお願いします。日本人の小児の体格の評価についてですけれども、今まで標準値として毎年、文部科学省の報告書で5~17歳の身長データ。それから、乳幼児の体格については、厚生労働省が10年ごとに全国調査を行ってデータを作っております。従って、10年に1回は同じ年のデータがそろうわけで、その年のデータを標準値としてずっと用いておりました。戦後、徐々に日本人の体格が向上してきて、戦後から見てみますと男子でも6~7?高くなっていますし、女子もそれぐらい高くなってくるわけですけれども、そのデータがだんだんプラトーに達してきたのではないかということで、日本人の小児の評価の標準値というものが作れるのではないかということで、日本小児内分泌学会と成長学会が協働で合同の標準値委員会を作成して検討しました。
 そして、その標準値の条件としては、小児の全年齢にわたる男女別・年齢別の身体測定値を入手できる年度であること。それから、成人身長の「セキュラートレンド」といいますが世代間の成長促進の差といいますか、成長促進現象といいますか、そういうものが終了していること。それから、成熟のセキュラートレンドです。これは「思春期の早さ」といえばわかりやすいかと思います。思春期もだんだん早くなってきていますから。それが終了したこと。できれば、肥満増加傾向が明らかになる以前の年度であること。というのを四つの条件としたのですが、肥満に関しては条件が整わないのですけれども、最初の三つの条件、データが入る、セキュラートレンドが終わった、それから成熟のセキュラートレンドも終わったという三つの条件に合うということで検討しました。表1を見ていただくと、成人身長がそのように、その前もあるのですけれども、1985年、1990年、1995年と、ほぼプラトーに達していると考えられます。女子も157?、158?ということで、1995年、2000年、2005年は、ほぼプラトーに達しているだろうと考えられます。それから、成熟の指標としましては、思春期の半ばの年代です。大体男子の13.5歳、女子の11.5歳の半ばの年代の身長を比較していますけれども、これは2000年でほぼプラトーに達したのではないかと評価いたしました。このため、小児の集団の長期的な体格の評価及び疾患の診断基準、小児慢性特定疾患治療研究事業における成長ホルモン治療の適応基準としては、2000年を日本人の小児の体格の基準として、これを用いて評価するのが妥当ではないかと考えられました。実際に次の7ページの表は男子身長、女子身長を、そこに2000年と2010年の平均と-2.0SD、-2.5SD、-3.0SDの線が書いてありますけれども、ほぼ一致しております。
 ということで、基本的にはこれから日本人の小児の体格の基準値を2000年ということで評価していくということで、長期的な日本人の子どもの変化が見られるのではないかと。肥満に関しては少し問題があって、体重に関してはプラトーがはっきりしなくて、だんだん増えてきています。ただし、どこかを基準にしないと、10年ごとに肥満の評価が違ってきてしまうということになってしまうので、今後も2000年をとにかく基準にして、それを基にして全体の長期的な評価をしなければいけないだろうと。肥満の子どもの評価というのは、基本的にゴールデン・スタンダードがないのです。というのは、大人はBMI22というのがゴールデン・スタンダードです。これは疾患率が一番低いという疫学調査が既に出ていて、そこが一番健康であろうというデータが出ているわけです。ところが、小児に関しては、何が一番健康な身長・体重の割合なのかという疫学的なバックグラウンドが出ていない状況ですけれども、今後そういうデータを作るためにも、その基準値として、2000年を基準として評価していこうというのが学会の考えです。以上です。

○多田座長
 ありがとうございました。まだ(1)(2)があるのですが、田中先生には予定がある中でご出席いただいているということで時間がありませんので最初に田中先生が今ご紹介くださった(3)のところだけご討論いただきたいと思います。構成員の先生方、何かコメントあるいはご意見がございますでしょうか。
 板橋構成員、お願いします。

○板橋構成員
 学会での基準を2000年にするということについては同意するのですが、年齢の下限を、今回の厚生労働省で作ったものと、どうリンクさせていくのか、その辺りはどうでしょうか。

○田中参考人
 下限というのは。

○板橋構成員
 年齢を5歳から用いるのか。それとも、0歳から用いるのか。

○田中参考人
 基本的には0歳から用いると考えていますけれども、乳児に関しては、まだ詳しく検討していないところがありますので、今後また学会の標準値委員会で乳幼児のセキュラートレンド等について検討しますけれども、加藤先生からいただいたデータを一応検討してみますけれども、乳幼児の方はそれほど大きな変化はみられないので、やはり2000年度でよいのではないかと思っております。

○多田座長
 板橋構成員、よろしいですか。
 他に、ございますか。

○山本課長補佐
 事務局です。今回10年ごとに、より現在の子どもの状況を示すものとして母子健康手帳には2010年の乳幼児身体発育調査の結果で作成した乳幼児身体発育曲線と幼児の身長・体重曲線を掲載しております。それと、2000年に固定して評価すべきということの関係について、もう少し分かりやすくご説明いただけないでしょうか。

○田中参考人
 学問的には、先ほど言ったように長期的な変化を見るので2000年を用いようということですけれども、今回2010年の現状値ということでは、今の母親たちが使う値、今の子どもの値が基本的にそこに載っているわけで、細かく見ると何十グラムかの変化が見られるわけです。ですから、その時代の子どもが使う基準値として2010年を使うのは問題ないのではないか。特に2000年よりも例えば少し体重が低いというところはありますから、その差を母親が心配して急にたくさん食べさせてしまうとか。そういう逆に現状に即さないような問題も出てくると思いますので、現状値としては母親たちが使う値として2010年を使うのは問題ないのではないかと思います。

○児玉構成員
 実は現場として2010年の乳幼児を使うのが現状を一番把握していて、いろいろなことで比較するときに参考になるだろうと思います。そうしますと、小学校へ入ると今度は6歳以上になると2000年の曲線を使うとなると、一般の人も小児科医でも、なぜそうなったのかと不思議に思うと思いますので、あまり変わらないとしても普通の診療の場等で利用するのは2010年版を6歳以降の学童期も使うようにしていただく方が実際には使いやすいものになるのではないかと思いますが、その辺りはどうでしょうか。

○田中参考人
 個人個人のものを使うということと、集団的な学問的なものを評価するということは違うと思います。我々学会としては学問的な問題でやはり2000年を中心として、やはり基準がぶれるのはまずいだろうということで2000年を使うと決めています。2010年も実際にそれほど大きな差はないのです。ですから、そういう意味では2000年を使っても臨床的な問題として大きな問題は出てこないのではないかと思います。

○児玉構成員
 むしろ、あまり大きくないのであれば2010年版を使うのが学術的にまずいというのが、よくわからないのです。例えば論文などを書いたときに、日本人の平均の-何SDとか表示したときに、その-何SDは2000年版のデータからとったということを書かなければいけなくなるので、これが10年後もそのままだとしたら、20年も前の基準値を使っているのかと、むしろ不自然な状態になるのではないかと思いますが。

○田中参考人
 国際的には、やはりイギリス等も1990年と決めてずっと評価しているというのが普通ですから、日本人は2000年と決めたということをきちんと公表して、それで評価するといえばよいのではないかと思います。

○多田座長
 他の構成員は、いかがでしょうか。両方の考えがあると思いますけれども、私も一つに先ほど肥満という話がありましたけれども、そういう基準が一つであるというのは、時代によってあまり変わらないというので良いのではないかという気もいたしますし、逆に母子健康手帳のところで見たときに大きいか小さいかという比較がこの10年で変わっているということの基準をどうするか。今までは母子健康手帳で使っているものと田中先生が作ってくださった0歳から成人までの長い曲線は必ずしも我々はくっつけて考えていなかったように思いますが、板橋構成員はその辺をどのようにお考えになりますか。

○板橋構成員
 身長は2000年でも2010年でもほとんど動いていないのですが、体重については平均出生体重が下がってきています。にもかかわらず、それを2000年値を目標にしてしまうということの是非を議論しておく必要があります。例えば小さめに生まれてそこに追いつくということと、大きめに生まれてそのように推移することのでは意味合いが異なります。最近しばしば指摘されるプログラミングという考え方からすれば本当によいのかと。もちろん、日本のデータがないし、これから厚生労働省が検証する必要があると思いますが、そういった理由でこの体重に近づけよう、目標にしようという意識が過度に出なければよいと思います。全体の中の個人の位置付けを見るという意味合いで使う限りはよいのではないかと思います。
 2010年版を母子健康手帳に載せるのは、それはそれで構わないと思います。2000年の値を「標準値」とすると、標準は目標ということになります。身長はよいと思いますが、体重はそれを目標値として位置付けるのかどうかは、多少議論が必要だと思います。

○吉池構成員
 データを分析し、それを解釈していくという立場からは、基準値をどこかで固定した方が良いと田中先生がおっしゃるとおりだと思います。例えば学校保健統計で以前は毎年、規準値が変わっていたのが、固定化されるようになり、きちんとしたトレンドが見られるようになった。毎年の調査なので極端なことが起こっていたわけですが、では10年に1回の調査の場合には、10年に1回ぐらいだから変えてもよいのではないかという考え方と、長期的には一つ固定して、それを基に判断するという両方の考え方があると思います。ですから、学会のスタンスとしては、一つの基準に固定して長年の傾向を見ていく。例えば論文を書くときはこのように考えた方が良いということを示していただけると、データを表すときには大変ありがたいと思います。
 一方で、この研究会では今まで議論がなかったのですが、国際基準との関係というのがあります。これは論文だけではなくて、例えばWHOやワールドバンクなどのデータを提出するときに、日本基準だと全く比較にならないということがあります。そうしたときに、国際基準については、どれを使って日本のデータを表わすとよいとか。その辺のところも、ある程度コンセンサスが得られていた方が良いのではないかと思います。BMIにしても、国際肥満協会(IOTF)が定める成人のBMI25に相当する子どもの値ですとか、WHOの基準等さまざまあるわけですが、その辺も意識する必要があるのではないかと思っております。

○田中参考人
 その選定に関しても標準値委員会では検討していまして、BMIも2000年を使おうということで基本的に合意しております。日本人の肥満の評価には、主に肥満度が使われていますけれども、やはり国際的にはだんだんBMIということになっていくと思います。ただし、今までの肥満度とBMIが相関することは分かっていますけれども、それをどのようにうまく検討して移行していくかが我々の今後の課題だと思っております。

○多田座長
 他に、ございますか。今の国際基準のことなど、ご意見がありますか。国際的に国の基準をどうするか。

○吉池構成員
 厚生労働省の方に質問です。国際機関からのデータのリクエストがあると思いますが、今まであまりそういう統計上の、例えば Height for age 、 Weight for age による5歳未満の低栄養児の割合というのが出ていなかったように思います。その辺の対応状況は今どうなっているのでしょうか。

○山本課長補佐
 国際機関に登録するデータについては、たぶん統計情報部などで対応されていると思われます。最近、WHOでも子どもや妊婦の栄養状況について、世界共通の目標値を定め、進捗状況を評価するという「健やか親子21」などと似たような検討がされており、5月の総会でも議題になると伺っております。WHOの案では、5歳未満の子どもたちの発育阻害の削減の指標としてはWHO Child Growth Standards の中央値に対する-2.0SDという指標などが示されています。そういったWHOの指標が各国の総会等で承認されれば、そのデータを提供が求められますので、日本でも対応を検討しなければいけなくなると思っております。

○多田座長
 今のようなご議論を基に、田中先生がおっしゃったように上の方を2000年というのはセキュラートレンドが一定になっているというのでよいと思いますが、下をどうするかということで、今のようなご意見があり、やはりその年の2010年を基準にした方が良いという考えと、2000年でつなげた方が良い。それとの違いとしては、10年ごとに比較していく意味はあると思いますが、国際的な基準に日本を合わせたときに6歳以上は2000年、それ以下は2010年というのも、少し問題があるかもしれないという気も確かにいたします。
 板橋構成員、児玉構成員、日本の乳幼児は今後どのようにしていくかというのを学会などで検討するご予定がありますか。学童期以降の大きい方は学会できちんと決められたということですので、今日、学会で決めるわけにもいかないわけですから、およその基準を吉池構成員がおっしゃるように、ここの構成員の間でのコンセンサスを得ておいて、その後検討していただいたことを、どう入れていくかということを考えてはと思いますが。

○板橋構成員
 私が知らないだけかもしれませんが、学会で具体的に乳幼児の成長について、どのように、どういう対象で評価していくかというのは、きちんと議論はされていないように思います。
 それから、とくに乳幼児期は栄養法の影響が強く出ますので、母乳栄養児ですと恐らく生後4、5か月ごろから人工栄養児とは成長が異なっていく傾向はこれまでも推測されています。その辺りを今後乳幼児の身体発育値にどう反映させていくか、その成長の違いが最終的にアウトカムに影響するのであれば、例えば肥満度などに影響するのであれば、母乳の成長曲線をむしろ基本にするべきだという話にはなるのでしょうが、まだまだそこまでの議論はされていないと思います。小児科学会の栄養委員会では、どうでしょうか。

○児玉構成員
 特に検討はされていないです。今の議論で考えますと、体重の方はいろいろ比較して、今日の資料でデータを見せていただいていますが、たぶん身長の方も検討されていると思いますので、そういうデータも分析しながら検討することになるのではないかと思いますが、小児科学会栄養委員会で今のところ、その検討をする予定はありません。

○多田座長
 横山構成員、その辺で何かコメントがありますか。体重はよいけれども身長の方は。あるいは、加藤構成員の印象だけでも結構です。

○加藤構成員
 出生時の身長と体重はよく相関しておりますので、印象としましては体重で確認できていることは、ほぼ身長でも同じ傾向がいえると思います。

○多田座長
 ただ今のご議論からすると、今後、学会等でも2000年と2010年、あるいはその前からのトレンドの変化の要因について、栄養法や母親の体格の変化も含め、検討していただきたいと思います。その上でやはり、子どもの発育の評価のためには何かの基準があった方が良いのではないかと思います。吉池構成員がおっしゃったような意味では、田中先生からご提案があったように、2000年と2010年の乳幼児の発育曲線が大きく違っていないようですので、とりあえずは2000年の方で統一しておくということでいかがかと思います。そういうことで、どなたかご意見があればいただきたいと思います。

○松田構成員
 出生体重は確実に減っているわけです。そのことを前提にしてもセキュラートレンドが2000年で固定しているという結論にしてよろしいのでしょうか。今の段階では2000年にするのが妥当と考えますが、10年後には変わってくる可能性はあるわけですよね。

○田中参考人
 これは全部パーマネントというわけではないので。ただし、今までの日本人の体格の変化を見てくると、主に栄養で大きくなったと思われますが、ほぼプラトーに達したという判断の基に今やっているので、それが変わってくれば当然違う標準値を検討せざるを得ない時期が来るかもしれませんけれども、当分何かを基にしてとにかく判定しなければいけないので、これを基にしようということです。

○松田構成員
 何かを基にしようという観点での2000年のフィックスということでは理解できますが、今後は変わる可能性は十分秘めているという理解でよろしいでしょうか。

○田中参考人
 どれぐらいで変わるかわかりませんけれども、変わらないとは言えません。

○吉池構成員
 5年に1回改訂される食事摂取基準の乳幼児の体位基準値には、10年に1回の乳幼児身体発育調査のデータが用いられてきました。体格変化がかなり大きかった時代には、それらの変化も加味しながら右肩上がりの体位基準値を決めて、例えばたんぱく質やエネルギーの摂取目標量を定めていました。近年は、それが止まったと判断して、直近の値の中央値を使うというのが、子どもでも、成人でも基本的な考え方になっています。今後のことは健康局で検討されると思いますが、私としては、給食や栄養指導上の基準と、母子健康手帳などでの個別のアセスメントのための基準は、やはり直近のデータを用いるのが望ましいと思います。

○多田座長
 ありがとうございました。他に、何かありますか。確かに、松田構成員がおっしゃるように出生体重低下に関連する要因については、将来検討していただく項目ということにして残しておき、とりあえずは田中参考人からご説明いただきました乳幼児の体格標準値については、就学期以降同様にとりあえず2000年にします。ただ、母子手帳に関しては最新の2010年の値を掲載する、ということで各構成員の先生、よろしいでしょうか。
 もし、よろしいようでしたら、後ほどまたご意見があればいただくことにしまして、(3)の問題は一応ここまでとしまして、(1)(2)の方も関連があると思いますので、横山構成員からご説明いただければと思います。

○横山構成員
 それでは、(1)と(2)について説明させていただきます。まず、(1)ですけれども、資料2の最初のページに戻っていただきまして、ワーキンググループで前回の中間報告のときに幾つか宿題があったということで、そのうちの一つですけれども、1ページ目の2(1)に書いてありますが、出生時の身長・体重について平成22年の調査で客体となった乳幼児の出生時の体重・身長は平成12年の調査に比べてわずかに減少していたため、本研究班において関係する要因について主として平成12年調査と比較して検討を行いましたのでご報告します。平成12年調査と平成22年調査での出生時の体重の低下について確認したいと思います。
 表1が2ページにあります。この表を見ていただきまして、上段が男子で下段が女子です。妊娠週数別に左右で平成12年と平成22年を比較しています。例えば男子で総数を見ていただきますと、平成22年と平成12年の差は右側の方で、総数でマイナス0.061とありますけれども、前回調査と比べて平均すると男子では0.061?小さくなっている。女子では同様に見まして0.045?小さくなっていると読みます。これを妊娠週数別に見ましても、ほとんどの週数でご覧いただきますように若干誤差の範囲のものもありますが、ほとんどの週数で低下傾向になっております。この0.061と0.045がなぜ低下したのかということの理由を調べましょうということになりますが、説明の文章が?になります。平成12年と平成22年調査で出生時の体重の変化に及ぼす妊娠期間短縮の影響を検討しました。3ページの表2を見ていただきますと、左側が男子、右側が女子で妊娠週数が一番上の列にあります。男子で見ますと平均でマイナス0.19と書いてあります。約0.2週短縮している。女子も0.2週短縮しているということになります。先ほどの出生時の体重の0.061と0.045が妊娠期間の短縮でどれぐらい説明できるのか。影響があると考えられますので、その影響の大きさを検討するために、平成12年と平成22年でもし妊娠週数の分布に変わりがなかったとしたら、出生時体重はどれぐらい変わったのかというのを統計学的な共分散分析という方法を使いまして分析しました。すなわち、3行目に「妊娠週数で調整」とありますが、出生時の体重と書いてある0.061が普通の単純に見た変化、低下幅です。妊娠週数の影響を補正するとそれが0.034になるということで、従いまして0.061と0.034の差は引き算しますと0.027になりますが約半分ぐらいですので、この0.061の半分ぐらいは妊娠週数の短縮で説明できることになります。女子の方も同様で、0.045が妊娠週数で補正しますと0.017ということで、約6割が妊娠週数の短縮によって説明できることが確認できました。
 続きまして、出生時の体重と関連する要因は他にもございますので、平成22年と平成12年の調査で出生時の体重と関連する要因を調べたのが表3でございます。これは左側の列に幾つかの要因が書いてありまして、平成22年と平成12年で男女別に、そこに書いてある偏回帰係数というのは、例えば妊娠週数プラス1週当たり男子平成22年度は0.145と書いてありますが、この読み方としては妊娠週数が1週増えると体重は平均して0.145?多いと読みます。女子及び平成12年も同様に見ます。他の要因についても調べてみますと、関連している要因としてはここに挙げてある七つです。ただし、上から四つ目の「妊娠中の体重増加」は、平成12年は未調査ですのでわかりません。これらが関係しているということがわかります。これは重回帰分析という方法で、ステップワイズという統計学的な方法で有意なものを選び出しています。他の要因を見ますと、例えば妊娠中の喫煙はプラス10本とありますが、例えば20本であればこの数字を2倍して0.091の2倍で大体200gくらい一箱当たり体重が少ないと読みます。ということで、出生時の体重と関連している要因としてはここに示してあります七つが、これは重回帰分析ですので、お互いの影響を補正しても出生時の体重と関連しているということが示されています。
 これらの要因が出生時体重と関連するということがわかりましたので、続きまして平成12年と平成と平成22年でこれらの要因がどのように変化したのかを見たのが表4になります。表4をご覧いただきますと、上が男子です。これは一般調査です。先ほどの表2は病院調査ですので、若干妊娠週数の値が違いますけれども、一般調査でいいますと妊娠週数は0.1週短くなっている。女子は0.16週短くなっているということです。それから、身長に関しましては男子の場合は0.3?増えています。BMIはマイナス0.10ですが、統計学的に有意ではありません。初産の割合の変化はほとんどありません。胎児数の変化もほとんどありません。喫煙に関しては少し減っております。単位が本数ですので、平均で0.46本減っていることになります。ですから、これらの要因のうち平成12年と平成22年で変化したものが体重が小さくなっていることに影響している可能性があります。
 そこで、表5になりますけれども、先ほどと同じような考え方で、今度は一般調査なので数字が変わりますが、男子は0.040、女子は0.049小さくなった。各要因で先ほどと同様に調整してみます。例えば妊娠週数は先ほどと同様ですが調整しますと、0.04が0.26ということで約半分が妊娠週数で説明できることが一般調査でも確認できました。さらに、他の要因についても順番に調整してみました。これは順番に加えて調整しておりますので最後にいくとすべてを調整したと読みますが、妊娠週数調整したところから大きな変化はございません。身長・BMI等を調整しても0.26から大きくは変化しないということで、若干の影響はあると思われますけれども、平成12年と平成22年の体重減少への寄与の大きさというのは著しく変わっていませんので、それほど大きくはないと考えられます。先ほど言いましたが、妊娠期間中の体重増加については平成12年で調査しておりませんので、今回は比較を行うことはできませんでした。以上が、主な解析結果になります。
 以上を要約しますと、5ページ目にまとめとして書いていますが、平成22年調査結果における解析では、妊娠週数が短いこと、母の身長が低いこと、母のふだんのBMIが小さいこと、妊娠中体重増加が少ないこと、初産、多胎、妊娠中の喫煙は、それぞれ互いの影響を補正しても、出生時の体重が低いことと関連していました。それから、平成12年と平成22年の比較をしたところ、平成22年調査では出生時の体重は少し減少していました。その減少した差の半分弱は妊娠期間の短縮で説明できましたが、残り約半分については、先ほどのいろいろな要因で検討してみましたが、両調査年で把握されており比較可能だった各要因(母の身長、ふだんのBMI、初産経産の別、胎児数、妊娠中の喫煙)の寄与は比較的小さかったことから、これら以外で何か比較的大きな要因があるかもしれないということが推測されます。ここまでが(1)の出生時の体重が低下した理由に関する分析になります。
 それから、(2)は「保健指導マニュアルの作成等」ということで、前回のワーキンググループの宿題として乳幼児期の身体発育については、保護者の関心が高いことから、保護者の不安や疑問に対して、適切に保健指導等を行うことが必要であるということで、本研究班において、身体発育曲線、幼児の身長体重曲線を保健指導等に用いる際の留意事項に関するマニュアルを作成しております。本日の資料の一番後ろに、ページ番号は振ってありませんけれども別紙で「乳幼児身体発育評価マニュアルの構成」があります。このような構成でワーキンググループの先生方にお願いしまして現在執筆いただいておりまして、かなり原稿も集まり、今日もこの後で内容についての精査をする予定になっております。章立てに関しましてはそこに書いてあるとおりで、「はじめに」と身体発育調査の説明、身体計測の方法やその機会など。身体発育曲線と身長体重曲線に関する説明。それから、発育評価の方法について、実際の例等も含みます。保健指導に関する留意事項が第6章で、「その他」で発育ソフトの紹介という形で章立てをしまして、現在進めているところでございます。以上です。

○多田座長
 横山構成員、ありがとうございました。それでは、構成員の先生方からコメントあるいはご意見があれば、いただきたいと思います。(1)の細かい説明をいただきましたが、(2)のマニュアルに反映する点でも、(1)の議論から何かこういうことは反映した方が良いのではないかというご意見があったらいただきたいと思います。各構成員の先生、どなたかいかがでしょうか。

○板橋構成員
 先進国では日本が唯一平均出生体重が下がってきているという論文を見るのですが、低出生体重児の出生率はOECDの加盟国を見ても全体的に上がる傾向にあるわけで、なぜ日本だけが平均出生体重が下がるのか、いまひとつ私自身の中ですっきり理解できないところがあります。例えば超低出生体重児や極低出生体重児が増えたといっても出生に占める割合は極めて少ないので、正期産児の低体重化で説明できるということでよろしいのでしょうか。体重が下がるファクターは統計学的な処理で理解できるのですが、日本全体を含めていったときに、海外と比べてどこがどう違うのかというのが、いまひとつはっきりわからないのです。別の次元の議論だったかもしれませんが。

○多田座長
 横山構成員、コメントございますか。

○横山構成員
 2ページ目妊娠週数別で先ほどご覧いただきましたけれども、各週数どこで見ても低下しているということで、34~42週の計という形での集計でも0.054。この週数においても低下しているということで、その原因についてはこの数字の上からは今のところ示されていないということです。

○児玉構成員
 私も妊娠中のことは全くわかりませんが、産婦人科の先生から妊娠中のダイエットなどもあるけれど、高齢妊娠が非常に増えている。それも出生体重が少なくなっている要因ということがディスカッションされていると聞きましたが、今回はそれに関しては検討されてはいないのでしょうか。母親の年齢です。

○横山構成員
 検討はしております。表3の分析のときに母親の年齢の分析を同時にしましたが、影響がなかったのでそこに載せませんでした。ただし、これは互いの影響を補正した場合に、年齢は影響ないということなので、例えば高齢だから妊娠週数がどうということがあると影響あるかもしれませんが、これらの影響を補正すると母親の年齢というのは有意な関係が見られなかったということです。

○児玉構成員
 もう一つは妊娠中の体重増加に関してですが、私はデータなどはなくて、たまたま私の娘が2人妊娠して産科の先生の指導を受けましたが、1,000床近くあるようなかなり大きな市民病院の産科でも、絶対に妊娠中10?以上増えるなと。普通の体型・BMIの娘ですけれども、10?以上増えたら妊娠中毒になる危険があるということで、そういう指導が徹底的にされている。町の産科の先生に行っていた子どもも、今は妊娠中に胎児の体重が何gというのがわかります。それを基準値を見せて、それ以上増えないようにという指導が徹底されておりまして、その辺りも今日も産科の先生がいらっしゃるので、私は感じだけですけれども、現場の産科の先生方の指導がそういう状況で、それが多少出生体重の低下と、何となくそういう感じを受けているのですが、違いますか。厚生労働省が2006年に妊産婦の指導を出して、妊娠中の体重のコントロールに関しては大分浸透してきていると思いますが、ごく最近出産した娘への指導を見ていますと、そういう状況だったので、厚生労働省の指針がまだ全体に浸透するのは時間がかかるのではないかと思っていましたが、いかがでしょうか。勝手なことを言いまして、すみません。

○松田構成員
 最初に、板橋構成員のご質問ですけれど、これは前回のワーキングでもお話ししたかもしれませんが、誘発すると週数が早くなります。体重減少の約半数が妊娠期間の短縮であるとすると、そこの要因が絡んでいる可能性はありますけれども、病院調査でも一般調査でも誘発分娩か自然分娩かというところまで調査はしていません。ですから、そこはわかりませんが、帝王切開のグループと自然経膣分娩とどれぐらい違うのかといったことを詳細に検討していけば、わずかな違いが明らかにされるということが考えられるかもしれません。ただ、私は別の観点でずっと疑問を持っていますが、例の体外受精のIVFETの子どもが大きくなるというのが、培養液の問題などでこの前から盛んに言われています。そうすると、次の10年後のものはぜひ不妊治療の有無、体外受精の有無といったことまで検討していく方が、だんだん全体の出生に占める割合が増えていきますから、そういったことが交絡因子になってくる可能性は出てくると思います。
 児玉構成員のご質問ですけれども、少なくとも私は主に全国の周産期センターのいろいろな先生との交流がありますが、そういった先生はほとんどおられないです。我々は産科的に異常があれば、例えば妊娠高血圧症候群というのはかなり体重増加と関係がありますから、そこにはターゲットを絞ってしますが、普通に大きくしているのであれば、2008年の段階の妊娠前の体重と考えながら指導するというのは、ほとんどの周産期センターの先生はごく普通の考えだと思います。

○田中構成員
今、松田構成員がおっしゃったように、多分画一的な指導はしていないと思います。学会でも医会でも元の体重によって、あなたはこれぐらいの方がよい。あなたはこれぐらいにしてくださいということで、医師の場合はそういう本も出して勉強していただいていますから、多分そういうことはないと思います。助産師の保健指導は一律に10?増は駄目ということはよく聞きます。一律にそういう話はしないでくれという話はしております。

○多田座長
 私は産婦人科ではないのですけれども、産婦人科の先生のところに行って時々拝見していると、このごろはうんと増えるのは制限するにしても、母親たちはやせておりますので、むしろ食べることをかなり推奨しています。そこで横山構成員におたずねしたいのですが、これはふだんのBMIでやっています。統計がなかなか取れないと思いますが、板橋構成員がおっしゃるような意味では、半分が週数であるなら半分は妊娠中の栄養も関係するのではないかと思いますが、この調査ではそれは出ないですか。別にデザインしなければ出ないですかね。

○横山構成員
 この調査では出ないので、それは妊娠期から追いかけるような方法をとって別途やらなければいけないです。

○多田座長
 これは先ほど課長がおっしゃったように今後検討していただく項目にぜひ入れていただくと。半分は大体これでよいと思いますが、残り半分は児玉構成員がおっしゃったように、私たちがいろいろ考えていた高齢の問題などが今回は出てこなかったのです。いささかがっかりするというか、ですから、かなり大きな要因がまだ隠れていると思っています。各構成員の先生もこれからの検討項目で何かあればコメントをいただいておいたらと思います。

○芳賀栄養専門官
 事務局です。今の座長のお話を受けてですが、そういった妊娠中の栄養状態の影響などに関するコホート研究はできないかということで、平成24年度の厚生労働科学研究費の公募課題としております。冒頭の課長の挨拶にもありましたが、乳幼児身体発育調査という設計の中でどうしても把握できるデータの性質が規定される部分がありますので、他の要因に関しては今後、研究班等で取り組んでいくような体制を検討しているところでございます。

○多田座長
 よろしくお願いします。松田構成員がおっしゃったような意味の不妊治療をした人たちがどうなっているかということも大変大事な問題だと思いますが、今後これも全部聞くのが適当かどうか。10年後にはまた検討材料にしていただきたいと思いますが、アンケートが正確に取れるかどうか。今おっしゃったような別のデザインをした方が良いのかもしれません。そのようなことをご検討いただきたいと思います。他に、ございますか。
 それでは、ご意見がないようでしたら、これで横山構成員のご報告の(1)(2)(3)、あるいは田中先生に先ほどご紹介いただきました(3)の項目について、このワーキンググループの報告を了承するといいますか、そのとおりに進めていただくようにしたいと思いますので、母子保健課でよろしくお願いします。
 それでは次に、議題2の「その他」というところで、事務局からご説明いただけますか。

○芳賀栄養専門官
 本日お配りしております参考資料をご覧ください。母子保健課では統計情報部に人口動態調査の出生票の特別集計を依頼し、分析作業を現在進めております。この中から幾つか今回ご報告させていただきます。人口動態統計は全数が把握されている貴重な情報源ですが、出生時の体重に関して統計情報部から毎年公表されている統計表では詳細がわからない部分がございますので、出生票から得られる情報をクロスして分析したいと考えております。詳細な分析はまだ行っておりませんが、本日参考資料に一例として出生時の体重について、単産の児に限り妊娠期間別に集計を行った結果をお示しいたします。参考資料に掲載されている表に関してですが、1ページ目の表1、2ページ目の表2-1、3ページ目の表2-2の3表が今回お示しする特別集計の結果になります。4ページ以降は参考ということで、既に平成22年人口動態統計確定数として厚生労働省のホームページに掲載されているものの中から表4.24、表4.25は男女で分かれています。このデータを基に今回の特別集計のデータとの関係上、一部抜粋しました。主に年次推移の年次のところを抜粋した形で参考までに掲載しております。
 それでは、1ページ目の表1にお戻りいただきます。こちらの表は参考でお示ししている表4.24の妊娠期間別の中で早期、正期、過期と三つのカテゴリーになっておりますが、それぞれのカテゴリーごとの出生時の平均体重を単産の児に限って集計した結果をお示ししております。単純集計までですので、ご覧いただいている値のとおりです。
 次に2ページ目3ページ目ですが、こちらに関しては参考の表4.25です。5ページと6ページの「性・出生時の体重別にみた年次別出生数・百分率及び平均体重」について単産の児に限って集計した結果でございますが、恐れ入りますが、表2-1と表2-2のタイトルに正期産に限ってさらにやっておりますので「正期産」という文言を加えてみていただければと思います。こちらの統計で正期産として指しているのが妊娠満37~41週までの間のデータに限り男女別に単産のデータに限って集計した結果を1980年以降2010年までの5年おきのデータを抽出して集計した結果になっております。あくまで単純集計した結果ですので今後、もう少し細かく分析して見ていく予定でございます。以上でございます。

○多田座長
 ありがとうございます。今後さらに検討されるということですけれども、大変興味あるデータだと思います。先ほどの正期産の体重の問題も表1にはかなりはっきりと出てきているようでございますし、他にもこれについてコメントあるいはご意見をいただければ今後検討してくださるということなので、何かあればここで出していただきたいと思います。

○松田構成員
 4ページの表4.24ですけれども、下の方が妊娠週数を細分されているのですが、妊娠22週未満、22~23、24~27とあって36~39となっているので、36までが早期産ですよね。そうすると、34、35、36の妊娠週数の出生がレートプレタームという概念が非常に注目されていますので、例えばここを28~33としておいて、34~36と一括されると非常に傾向がわかってよろしいのではないかと思います。34~36がレートプレタームといってだんだんと脚光を浴びつつある問題です。

○板橋構成員
 表1ですけれども、正期産児の出生体重が下がってきているのはよくわかりますが、先ほどの横山構成員のデータのように週数のピークが少しずつ若い方にずれていないかどうかを確認しておく必要があるのではないかと思います。海外でも東京都のデータ(周産期センターだけのデータ)でも、出生数のピークの在胎週数が最近は40週から39週にシフトしています。ほんの数日のシフトでも出生体重はかなりずれます。これに産科的介入がどの程度影響しているのかということについても、出生体重が小さくなったというばかりではなくて、はっきりさせておく必要があります。例えばたばこを吸うなどいろいろなソーシャルなファクターはあったとしても、それが同じ週数で体重を減らしているのか、単にそのために早い時期により1日2日出産が早くなって体重が下がっているのかという見極めというのも今後の妊婦への指導を含めていうと非常に重要になってきます。そういう評価も可能であればしていただくとよいと思います。
 それから、先ほど言ったlate pretermの件です。早産の中で7割近くをlate pretermが占めています。これはいつも思いますが、公表されている母子保健統計ではlate pretermが識別しにくい在胎週数の分け方になっています。Late pretermがどれだけ増えているかということは、ぜひ知っておかなければいけないことですので、今後配慮していただければと考えています。

○多田座長
 他に、ございますでしょうか。

○田中構成員
 今、板橋構成員がおっしゃったことは本当に私も同感ですが、表1を見た場合に体重が減ったから、感覚的には体重がどんどん減ってくると悪い方向かと一般の人は受けると思います。でも、私は必ずしも悪いと思わないです。この誤差範囲で下がるのであれば、極端に3.何?であったものが1.何?になると問題ですが、これと周産期の死亡率などいろいろなものとの絡みから見て、100g、200gぐらい減ってもこれが日本人の一番適した体重かもしれないという考えも私は捨てずに、果たして何が一番良いのかというところから見ていくと、出生の週数が左に前倒しになってきている。母体の年齢はやや右よりになっている。いろいろなものが絡んでいると思いますから、その結果として周産期医療に問題を起こさないということが最終結論であれば、多少減っても、そんなに驚かずにやればよいという考えで検討したいと思います。

○多田座長
 よろしいでしょうか。吉池構成員、どうぞ。

○吉池構成員
 表1などを見ると、2005年と2010年はほとんど変わりがなく、減少傾向がどこかのところで止まりつつあるのかもしれないと考えたときに、もう少し、例えば2000年から2005年の間ですとか、2010年の先も随時追えるような形にした方がよいのではないかと思います。ちょうど「健やか親子21」も含め、2000年半ばぐらいで一生懸命やっていた時期の成果かもしれません。その辺をうまく見られるようにしておくとよいと思います。

○多田座長
 私も先ほど横山構成員が2000年と2010年の比較をしておられた表1を見せていただいても、その前からおりてくるトレンドを反映するのに、過去のもっと前の年度の分析はできるのでしょうか。もしできれば、今度の政府の研究会などでそちらの方も一つ教えていただけると、2010年と2000年は大きく違わないけれども、その前から見ると何が変わってきたのかというのがもう少し見える気がします。

○横山構成員
 データがあれば同様の分析は可能ですので、利用申請した上で使うことはできると思います。

○多田座長
 これは人口動態統計だと思いますが、乳幼児発育調査の過去のデータは残っているので分析していただけるのですか。

○横山構成員
 過去のデータは残っているはずですので、それも同様に利用申請して同様の分析は可能だと思います。

○多田座長
 私は2000年と2010年だけでいろいろやっていてもあまり出ないものが、もし出てくればよいと思いました。それから、田中先生がおっしゃったのは、私はもっともだと思いますが、ただ、37週と39週・40週では赤ちゃんを見ていると違います。マチュリティが全然違うので、反応も随分違いますし、昔ルブシェンコが体重と在胎でメッシュをつくって死亡率を出しましたが、今後はあのような考え方で少し研究していく必要があるのではないかと思っています。産婦人科の先生も誘発を非常に多くされる先生のところで、ここは少し早いのが多いというと、その後は出生体重が変わったりしますので、かなり動く問題だと思います。そうすると、表1は標準的ですが、もう少し細かいものを分析するのには、この体重割りでよいのかどうか。これも検討していただき、早産の方を見るのであれば37週未満では駄目だと思いますし、後の方だとむしろ39週40週ぐらいでまとめていただいた方が、かえって正確になるのではないかという気もします。その辺はまたいろいろご検討いただければと思います。
 他に、ございますでしょうか。これから研究もしてくださるし、あるいは、専門官の今のお話でもこれから検討されるということなので、ぜひこの辺をよく分析していただけるとありがたいと思います。もともと赤ちゃんの死亡に関しては死亡診断書に非常に細かいことが載るようになってから、何日目で亡くなっているかなど随分いろいろな分析ができるのではないかと思っていますが、出生体重も今後細かい分析ができるとよいと思っていましたので、ぜひ活用して分析していただければと思います。
 他に、何かご希望・ご意見はありますか。

○板橋構成員
 先ほど田中先生がおっしゃったように、帝王切開や分娩誘発など産科医の介入がはいるときに、イメージとして36~37週辺りは多分成熟しているというイメージがまだまだあると思います。そのイメージが変わってくれば、恐らく介入の時期も母体適応や胎児適応を除けばもっと後ろになる可能性があるだろうと思います。そうすると、出生体重のトレンドが変化し、それがここに反映されると思います。ただ、現状でlate pretermや37週、38週、39週のアウトカムが、例えば脳性麻痺であったり、発達障害であったり、そういったアウトカムについては詳細な情報がないため、大雑把にこの辺りにくれば成熟しているから分娩にしましょうというのがこれまでずっと続いています。諸外国から報告されているように、39週だとこれを境に脳性麻痺の発生率が変化するといった情報があれば、今後介入時期も変わってくる可能性があります。

○田中構成員
 先生がおっしゃったとおりで、今は37週は正期産としているから、どうしても36週の6日で出すよりは、明日帝王切開しようということになるわけです。実は37週であれば、まだもう少しやった方がよい。38週の方がよいということを暗黙の了解が得られれば、産婦人科の医師は38週にもっていこうとすると思います。これによって、かなり変わってくると思います。今はバックに訴訟というものが控えていますから、どうしても37週まで、38週までもたせて何か起きたらどうしようということで、保身に走ることもありますので、その辺のところは学問的とは違いますが、本当に子どもの領域から見て37週よりも38週の方が良いということであれば、定義も変えるか何かしなければいけないと思います。

○多田座長
 確かにそのとおりだと思います。そういう基礎資料にするためにも、この参考資料のところでまとめていただいた、こういう分析が生きてくると思いますので、そういう意味での解析に耐えるように細かく取っておいていただくと後でいろいろな分析ができるのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。
 他に、ございますか。これからまた、いろいろな分析をしていただかないといけないと思いますが、過去の分析からずっとやってくださっています加藤構成員は何かございますか。

○加藤構成員
 過去は昭和55年から電子データはございますので、許可が下りれば使用可能だと思います。

○多田座長
 他に、ございますでしょうか。少し早いですけれども、いただいた時間にならなくてもご意見がなければ、各構成員からいろいろ意見を出していただきましたので、それを事務局で勘案しながら、今後とも取りまとめていただければ幸いだと思います。この乳幼児発育調査は10年に1回でございますので、この次にはまた構成員が決められてここで議論されると思いますが、10年前のことを忘れてしまっていると思いますので、今この調査の上から、ぜひこの次はこういうことを検討していただいたらと今もいろいろご意見をいただきましたが、他にあれば最後にいただきたいと思います。いかがでしょうか。今回ここで出た問題についても、引き続き研究班あるいは厚生労働科学研究でも検討してくださるということでございますので、これを生かしていただければ幸いだと思います。
 そういうことで、もしご意見がなければ、この2年間お忙しい中をご参加いただきまして大変濃密なご意見をいただきましたことを感謝したいと思います。それでは、これで事務局に後をお任せしたいと思います。最後に事務局からお願いします。

○泉母子保健課長
 どうもありがとうございました。足かけ2年にわたりまして、この乳幼児身体発育調査のためにご検討いただいてまいりました。おかげさまで調査が無事に終わりまして解析もできて母子健康手帳に反映されることになりましたし、また、今日は次につながる貴重なご意見をたくさんいただきましたので、この会自体は今日で終わりでございますけれども、来年度の研究班などを含めて、引き続き赤ちゃんの体重の問題、小児の発達の問題については母子保健課としても取り組んでまいりたいと思います。長きに渡りまして、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

雇用均等・児童家庭局母子保健課
栄養専門官 芳賀(内7934)
(代表)03(5253)1111

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