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2012年3月19日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 議事録

○日時

平成24年3月19日
10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎5号館17階 
専用第18,19,20会議室


○議事

○松岡監視安全課長補佐 それでは、定刻になりましたので「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会」を開会いたします。
 開会に当たりまして、三浦食品安全部長からごあいさつを申し上げます。
○三浦食品安全部長 おはようございます。食品安全部長でございます。
 本日は大変お忙しい中、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、委員の皆様方におかれましては、日ごろより食品衛生行政の推進に格別の御理解と御協力をいただいていることを重ねて御礼を申し上げたいと思います。
 この食中毒部会におきましては、昨年4月、6月、7月に乳肉水産食品部会との合同で、3回開催されたところでございます。4月には、病因物質不明食中毒について提言をまとめるために御審議をいただいております。また、6月、7月には4月に発生いたしました腸管出血性大腸菌による広域散発食中毒事例の原因として考えられました、生食用食肉の規格基準について御審議をいただいております。
 生食用食肉の規格基準につきましては、昨年10月1日に施行されているところでございまして、監視・指導を徹底していくことによりまして、食中毒発生予防に対する効果を期待しているところでございます。
 本日は、昨年の食中毒発生状況。昨年4月に飲食チェーン店で発生いたしました腸管出血性大腸菌食中毒事件を総括するための報告のほか、昨年4月の部会で提言をいただきました、病因物質不明食中毒事例について提言の中で今後の課題とされた事項についての調査・研究結果などを御報告させていただきたいと考えております。
 最後になりますが、食中毒の発生拡大防止対策の更なる充実に向けまして、専門の立場から忌憚のない御意見を賜りますようお願い申し上げまして、私のあいさつとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○松岡監視安全課長補佐 ありがとうございました。
 報道機関等の方は、頭撮りはここまでとさせていただきますので、御退室の方よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○松岡監視安全課長補佐 それでは、事務局から説明させていただきます。監視安全課の松岡でございます。
 昨年7月の人事異動に伴いまして、事務局の加地監視安全課長が滝本監視安全課長に変更となっております。よろしくお願いします。
 今回は参考人として、富山県衛生研究所の佐多先生、国立医薬品食品衛生研究所の大西先生、国立感染症研究所の岡部先生、八幡先生に来ていただいております。
 本日の部会は、16名の委員のうち西渕委員、今村委員、賀来委員、小澤委員の4名の委員が欠席ということでございますけれども、12名の御出席ということなので、薬事・食品衛生審議会の規定に基づき、成立していることを御報告いたします。
 国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部長の山本先生に部会長をお願いしておりますので、本日の議事進行は山本部会長にお願いしたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。
○山本部会長 おはようございます。山本です。
 それでは、早速議事に入りたいと思いますが、初めに事務局で配付資料の確認をお願いします。
○松岡監視安全課長補佐 それでは、事務局から説明させていただきます。
 資料1「平成23年食中毒発生状況」
 資料2-1「飲食チェーン店における腸管出血性大腸菌食中毒事例について(報告)」
 資料2-2「富山県を中心に北陸地方で発生した腸管出血性大腸菌集団食中毒事例途中報告(2)」
 資料2-3「EHEC/O111食中毒事例 菌分離状況と性状解析」
 資料3-1「Kudoa septempunctata及びSarcocystis fayeri食中毒について」
 資料3-2「原因不明食中毒の原因微生物」
 資料3-3「ヒラメの喫食量と発症」
 資料3-4「Kudoaによる食中毒防止のための対応状況」
 参考資料1「腸管出血性大腸菌O157による広域散発食中毒について」
 参考資料2「生食用食肉の規格基準の設定」
 過不足等ございましたら、事務局にお申し出いただければと思います。
○山本部会長 過不足等ありますでしょうか。
 それでは、議事に入りたいと思います。議事次第によりますと、今回は、平成23年食中毒発生状況の報告、昨年4月に発生した飲食チェーン店での腸管出血性大腸菌食中毒事例の調査結果報告、Kudoa septempunctata及びSarcocystis fayeriによる食中毒についてということで、3つの議題があります。

 平成23年食中毒発生状況については、報告をいただいた後で御質問をお願いいたします。まず、食中毒発生状況について、事務局から報告をお願いいたします。
○松岡監視安全課長補佐 それでは、資料1に基づきまして御説明させていただきます。
 まず、1ページ目をごらんください。年次別の食中毒発生状況、一番下が平成23年となっております。
 平成23年の事件数は1,062件、22年から192件の減となっております。次に患者数でございますが、2万1,616名、22年と比較しますと4,356名の減となっておりますので、事件数、患者数ともに減少しております。
 死者数でございます。平成21年、22年では0名でございましたが、23年は11名となっております。1事件当たりの患者数は20.4人、10万人当たりの罹患率は17.0人という数字でございます。
 次に、2ページをごらんください。年次別食中毒事件数と患者数をグラフで表しております。事件数でございますが、平成10年をピークに減少傾向にございます。下の患者数の方でございますけれども、13年以降は2万~4万人の間で推移しております。
 次に、3~6ページでございます。21~23年の3年間分の都道府県別の食中毒発生状況を整理しております。3ページ目の富山県の死者数が5名となっているのは、本日の議題2で御報告します、飲食チェーン店における腸管出血性大腸菌食中毒事件によるもので、富山県に一括計上したものでございます。
 次に、7ページに移らせていただきます。患者規模別発生状況については、過去3年間分をグラフにして示しております。1事件当たり1~10名の事件が最も多くなっております。患者数が多いほど事件数が少ないという例年どおりの傾向を示しております。
 次に8ページをごらんください。年齢階級別食中毒患者数のグラフでございます。特に大きな変化はなく、20~50代の年齢層が多いという傾向でございます。
 次に9ページでございます。患者数500名以上の食中毒でございますが、3件発生しております。サルモネラ・エンテリティディス1件、ウェルシュ菌1件、ノロウイルス1件となっており、原因施設は給食施設、その他、仕出屋となっております。
 1のサルモネラ・エンテリティディスによる事例は、昨年4月の食中毒部会において報告した集団給食施設の事例でございます。2のウェルシュ菌の事例は、矯正施設で発生した事例でございます。
 次に、死者の出た食中毒事例は7件発生しておりまして、腸管出血性大腸菌7名、サルモネラ菌3名、動物性自然毒はフグでございますけれども、1名となっております。
 10~13ページにつきましては、月別の発生状況について、平成21年~23年の3年間分を整理しております。10ページの上段に事件数と患者数の一覧を掲載しておりますので、こちらをごらんください。
 23年の事件数につきましては9月が139件と最も多く、次いで6月111件、12月が101件となっております。また、23年の患者数につきましては12月が4,290名と最も多く、2月が3,076名、9月が1,984名となっており、冬場の患者数が多い状況になっております。
 患者数につきましても、23年は21、22年と比較し、全体的に少ない傾向でございます。
 続きまして14~17ページでございますけれども、ここまで説明しました月別の発生状況を病因物質別に整理したグラフでございます。
 14ページをごらんください。事件数の発生状況を中心に説明をさせていただきますが、23年におきましても、例年と同様夏場には細菌性の食中毒が多く、冬場にはウイルス性の食中毒が多く発生する状況が見られております。また、9月、10月にはその他の食中毒が多く発生しております。
 続きまして、15ページをごらんください。病因物質別の月別患者数につきまして、2人以上の事例を上段、1人事例を下段に示しております。2人以上の事例につきましては全体と同様の傾向となっておりますが、1人事例におきましては細菌性食中毒や自然毒によるものが主体となっております。
 次に、18ページをごらんください。原因施設別の発生状況の表でございますけれども。一番左に原因施設の種類、その次に事件数を示しております。事件数で見てみますと、最も多いのは飲食店の640件、次いで差はちょっと広がっておりますが、家庭、旅館、仕出屋、事業場の順となっております。これら上位5施設で全体の81%を占めております。
 それから、患者数でございますけれども、飲食店が1万46名と最も多く、次いで仕出屋、学校、旅館、事業場の順番となっておりまして、これら上位5施設で全体の85%を占めております。
 19~22ページにつきましては、原因施設別の数字をグラフにしたものでございます。飲食店での発生事件数がやや増加傾向でございます。
 次に23ページに移らせていただきます。原因食品別の発生状況を示した表でございます。最も多いものがその他の486件、次いで魚介類、肉類及びその加工品、複合調理食品、野菜及びその加工品の順となっておりまして、それら上位5品目で全体の77%を占めております。
 それから、患者数につきましてもその他が一番多く1万1,626名、次いで複合調理食品、魚介類、肉類及びその加工品、菓子類の順になっておりまして、これら5品目で全体の89%を占めております。
 24~27ページにつきましては、これらをグラフに示したものでございます。
 次に28ページに移らせていただきます。病因物質別発生状況の表でございますけれども、事件数で最も多いものはカンピロバクター・ジェジュニ/コリで336件、次いでノロウイルスの296件、その他、サルモネラ属菌、植物性自然毒の順となっておりまして、これら5つの病因物質で全体の77%を占めております。その他はいわゆる寄生虫によるもので、アニサキスによるもの、昨年食中毒の原因として取り扱うことになったKudoa septempunctata、Sarcocystis fayeriによるものでございます。
 患者数で見ますとノロウイルスは8,619名、サルモネラ属菌が3,068名、次いでウェルシュ菌、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ、病原大腸菌の順となっておりまして、これらの5つの病因物質で患者数全体の82%を占めております。
 29~32ページは、主な病因物質別の数字をグラフで示したものでございます。
 33、34ページは病因物質の中の細菌の部分をピックアップして整理したグラフでございます。動向は例年と大きな変化はございませんが、カンピロバクターを除きまして、細菌性食中毒の事件数は年々減少傾向にあることが示されております。
 次に35ページ以降のグラフでございますけれども、主な病因物質別に見た原因食品別及び原因施設別の事件数及び患者数の年次推移のデータとなっております。
 49ページでございます。腸管出血性大腸菌を含む病原大腸菌による飲食店の患者数が、平成22年と比較して増加しております。
 次に53ページでございます。ウェルシュ菌によるもので、その他が急増しておりますが、これは先ほど申しました矯正施設による発生事例でございます。
 59ページでございます。カンピロバクターによる原因施設別の事件数でございますけれども、飲食店によるものが219件で、平成20年に次いで多いという結果になっております。
 61ページは、原因施設別カンピロバクター患者数でございますけれども、飲食店が1,885名で、平成20年に次いで多いという結果になっております。
 次は63ページでございます。原因施設別ノロウイルス事件数は、例年どおりその他によるものが多い。原因施設については、飲食店によるものが多いという結果でございます。ただ、18年、22年に比較すると少なくなっております。
 65ページの原因食品別ノロウイルス患者数でございます。その他、複合調理食品という順でございますけれども、平成18、19、21、22年に比較して少なくなっております。
 原因施設別ノロウイルス患者数につきましては、例年どおり飲食店、仕出屋、旅館の順でございますが、18年、22年に比較して少ないという傾向でございます。
 以上、事務局からの説明を終わらせていただきます。
○山本部会長 ありがとうございました。
 先ほど私は言い間違えましたけれども、平成23年です。年度ではないですね。
○松岡監視安全課長補佐 年度ではございません。23年の1~12月でございます。
○山本部会長 失礼しました。ただいまの平成23年の食中毒発生状況に関する御説明に関しまして、御意見・御質問はございますでしょうか。
 渡邉先生、どうぞ。
○渡邉委員 9ページ目です。23年は死者の出た食中毒が7件あるということですけれども、もしわかればどういう年齢の方が亡くなっているか、年齢か何かをここに入れておいていただくと参考になるのではないかと思います。
 もう一つ、28ページ目のカンピロバクターは、事件数の割に患者数が少ないような気がするんですけれども、これは1事例が事件数の中に入っている統計なんですか。その辺のクリアランスをお願いいたします。
○山本部会長 今、年齢について事務局から報告できますか。
○松岡監視安全課長補佐 一個一個の事件の表になりますので、現在は持ち合わせておりません。
○山本部会長 それでは、後ほどお知らせいただければと思いますので、よろしくお願いします。
○松岡監視安全課長補佐 1人事例も含んでおります。どちらかというと飲食店でもお酒を飲むところで、1事件当たり数名というケースが多いのが、カンピロバクターの特徴となっております。
○渡邉委員 名前を言ってしまうとあれですけれども、昔からカンピロバクター1例が出てくるのは広島で、非常に興味を持ってやられて、関心度が高いところから出てくる数字だと思うんですが、ほかの疾患は1名がない中でカンピロだけ1名を入れてしまうと、統計上バイアスがかかってしまうのではないかと思うんです。
 いわゆるカンピロは、どちらかというと広域で多数の事例が少ないということで、ちょっと偏りが出るような統計になってしまうのではないかと思うので、その辺の統計のとり方はどういうふうに考えればいいのでしょうか。
○山本部会長 事務局から何か。
○温泉川食中毒被害情報管理室長 少し御説明させていただきます。
 カンピロバクターの事例でございますけれども、確かに1人事例もかなり含まれておりますが、カンピロバクターは事件数に比較して患者数が少ないというのが全体的な傾向でございまして、菌の性状からして環境中で弱いということなので、環境中に放置をしておくとどんどん菌数が下がっていくということで、1事例当たりのカンピロバクターの患者数は少ないということが全体的な傾向であるかと思っております。
 それから、1人事例によってバイアスがかかるかということについてですけれども、平成9年ぐらいから1人事例をかなり取り上げていただいている自治体があります。それについては先生がおっしゃったように、どうしてもバイアスがかかってくるということもありまして、2人以上の事例と1人の事例を分けさせていただいております。
 あと、カンピロバクターの場合は発症まで少し時間がかかりますので、原因食品を特定するのは全体的に難しくなっているということがあるのも事実かと思っております。 以上でございます。
○山本部会長 よろしいですか。
○渡邉委員 なぜ私がこれを質問しているかというと、食品安全委員会でカンピロバクターのリスク解析をやったんです。そのときに実際の日本の数が、延べの数としてべらぼうの数が出てくるんです。1億人ぐらい出ているんです。それと実際のこの数との差が余りにも大き過ぎてしまうので、言い方は悪いですけれども、どっちを信用していいのか。つまりサーベイランスの根本的な問題があるのではないかということが、ちょっと議論された経緯があります。
 本来正しいデータをとるためには、ある意味においてはアクティブサーベイランスをやる必要があるのではないかと思うんです。ある特定の地域、特定の期間を決めておいて、そこでどのぐらい出るかということを見ないと、正確な数字は出ないと思います。これはカンピロバクターだけではない問題だと思うんですけれども、出てくる数字に余りにも差があると、それが表に出たときに外国から、日本の体系はどうなっているんだと言われてしまうのではないかというのがちょっと心配なんです。その一つの大きなイグザンプルとしてカンピロバクターが挙がっているので、今、私はちょっと難しい立場で発言していますけれども、食品安全委員会のデータとこちらのデータの食い違いが余りにも大き過ぎた場合に、それをどう調整したらいいのかというのは、ちょっと悩ましい問題なので、厚労省としてもちょっと考えていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。
○山本部会長 統計のとり方によって、いろいろデータがばらついてくるのは当然あります。アクティブサーベイランスという提言もありましたので、今後その辺も含めてやり方の検討をしていただければと思います。
 小西先生、どうぞ。
○小西委員 1つ提案させていただきたいんですけれども、28ページにございます、病因物質別発生状況というところの御説明で、細菌、ウイルス、化学物質、自然毒、その他、不明という項目分けがされておりますが、その他の中に寄生虫性の食中毒が入っている。アニサキス、クドア、ザルコを含めて68事件数があるというお話でした。この68事件数というのは、サルモネラ属菌と同等ぐらいの数でありまして、その他というくくりにするよりは、寄生虫性食中毒という独立の項目をつくっておいた方がよろしいのではないかということが1つ提案したいことでございます。
 このことによって、近年、寄生虫性の食中毒が増加していることを正確に把握して、予防対策にもつなげられますし、生食の危険性ということも喚起できるのではないかと思うので、1つ御提案させていただきたいと思います。
○山本部会長 ありがとうございました。
 寄生虫に関して、事務局から何か御意見はございますか。
○滝本監視安全課長 昨年から、クドアとかザルコも食中毒として報告をいただくようになりまして、先ほど説明がありましたように、クドアだけでも30件以上の報告がなされているということ、それから過去もノロウイルスはこういう個別の形で取ってなかった経緯もございまして、食中毒の変遷、状況に応じてそういった改正も検討しなければいけないのかなと考えております。
 具体的には、都道府県から厚生労働省に対する報告、その調査票を改正しなければいけませんけれども、その必要性があるということであれば、その改正も検討していきたいと考えております。
○山本部会長 それに関しまして、部会でそういう合意が得られれば改正へ向けて進めていただけるということでよろしいんですか。
○滝本監視安全課長 そうですね。部会でそういう御指摘があったということも踏まえて、検討したいと考えております。
○山本部会長 では、前向きに検討していただきたいと思います。よろしくお願いします。
 ほかにございますか。
○石川委員 私もこの統計といいますか、実際に現場なんかで使える、信頼できるような数字になっているかどうかということを考えますと、やはり集団発生というところでの報告事例を中心に扱っている以上は、私はなかなか難しいのではないかと思います。
 カンピロバクターもそうかもしれませんけれども、特にノロウイルスなんかは相当数が現場で発生していて、それが報告されていない。施設なんかで集団で発生した場合は別ですけれども、家庭内あるいは1人、2人の発生はほとんど報告されてないことがあるので、年間の食中毒発生数の推移というのは、例えばなれてきてしまうとほとんど報告がなかったりということも含めて考えなければいけないので、相当難しい評価がされなければいけないのではないかと思うわけです。
 そうしますと、先ほどどなたかが御懸念されていた、日本の食中毒の対策というのはこんなもんかみたいなことを言われかねないと思いますので、私は事例の吸い上げというのを定点なり小数でもきちんとやっていく公衆衛生行政が、必要なのではないかと思います。
 以上です。
○山本部会長 ありがとうございます。
 谷口委員、どうぞ。
○谷口委員 いわゆるサーベイランスは、イベントベースのサーベイランスとインジケーターベースのサーベイランスに分けられると思うんですが、これはイベントベースのサーベイランスですので、本来これによって統計が云々というものではないんです。
 統計学的にどうこうしようというのであれば、インジケーターベースドサーベイランスという考え方によってデザインされなければならないので、これが対応をメインの目的としたイベントベースドサーベイランスである以上は、これでどうこうとはなかなか言えないと思います。これは対応のためのサーベイランスですから、もうそれはそれでいいと思うんですが、インジケーターが必要であれば、別のサーベイランスをデザインしないと議論はできないと思いますし、逆にインジケーターにしてしまうと対応が遅れることもございますので、これは全体的な食品媒介感染症の対策の戦略の中で、2つを考えていただくべきだろうと思います。
 以上です。
○山本部会長 ありがとうございました。貴重な御意見だと思います。
 実際に見ていますと、細菌性食中毒そのものの数も減ってきているわけですから、これまでにサルモネラにしても、腸炎ビブリオにしても、対策を取ってきた効果がある程度出ているのではないかと見ているんですが、そうは言ってもノロウイルス、カンピロバクターが減ってこない。その辺のところの対策が、今後の難しいところだと思います。
 特に腸管出血性大腸菌については、感染者の数と食中毒事例の数が大きく違うという問題もずっと残っておりますので、その辺のところをどうするかということについては、今後の検討課題かなとは思います。
 ほかにございますか。特にないようでしたら、次に進みたいと思います。
 昨年4月に発生した、飲食チェーン店の腸管出血性大腸菌食中毒事例の調査結果報告について、概要の説明を事務局からお願いいたします。
○松岡監視安全課長補佐 それでは、再び事務局の方で説明させていただきます。
 資料2-1でございます。「飲食チェーン店における腸管出血性大腸菌食中毒の発生について」ということで、1~2ページは厚生労働省作成のものでございます。
 ここに書いておりますように、4県にまたがって発生したもので、飲食チェーン店の事件ということで有症者数は181名、死者は5名ということでございます。
 次のページでございます。厚生労働省の対応等について書いておりますが、今回ここに載せておりませんが、昨年10月に通しました生食用の食肉の規格基準については、参考資料2として整理しております。それ以外の緊急監視等について、ここに書いております。
 3ページ目からは、富山県の報告をベースにした資料でございます。概要については、発生日時が4月19日以降ということで、発生場所が富山県の砺波市ほかということでございます。原因食品等については、ユッケということになっております。病因物質は腸管出血性大腸菌のO111とO157ということでございます。
 発生の探知等については3ページ目にございますように、4月26日から27、28日と相次いで富山県内での報告があったということで、それが同じ系列の飲食店の業者であったということでございます。
 その後の?にございますように、症例定義を23年4月に利用し以下の4つの症状のどれかがあった者ということで、調査を開始したということでございます。
 次に、4ページでございます。1~4歳から70歳まで、かなりの年齢層の方に患者が分布しているという状況でございます。
 次の図2でございます。発生日でございますけれども、4月25日~27日に多いという報告でございます。
 5ページでございますけれども、この表は各店の利用者と患者数等について整理したものでございまして、1万人以上の人が利用してこれだけの患者数ということになります。死者が発生しましたのは、砺波店と福井のお店の2店ということでございます。
 潜伏期については、3日以内が一番多いということになっております。
 6ページでございますけれども、症状としましては下痢が一番多く、93%の方に起きているということでございまして、次いで腹痛ということでございます。
 7ページでございます。原因の食材等についてでございますけれども、北陸地方の16店舗、神奈川県内の4店舗ということで分けて記載しておりますが、共通の食材として入っているところと、分かれてやっているものがあるということでございます。ユッケ用の食肉等については、共通であったということでございます。
 (2)の喫食状況調査でございますけれども、お店で自ら肉を焼いて食べる形態ということで、喫食調査の統計学的検索では患者の96%がユッケを喫食したということで、オッズ比が一番高いということでございます。なお、砺波店では焼レバーのオッズ比も高い傾向でございました。
 次に7ページの下側、食材の汚染状況調査でございますけれども、横浜市内の店舗に残されていた未開封のユッケ用の肉から、Vero毒素非産生性のO111を検出しております。それ以外の食材等からは、有意な病原体の検出はなかったということでございます。なお、患者24名からは毒素非産生のO111を検出しております。未開封のユッケ用の食肉と患者の遺伝子パターンが一致したということから、原因食品をユッケとしております。
 8ページでございます。肉の入手経路でございますけれども、和牛のもも肉はほとんどが経産牛で、関東のある屠畜場で解体されたものでございまして、これが特注品として、北陸の方には宅急便、神奈川県内には卸売業者が直送していたということでございます。なお、生食用の表示はなかったという結果でございます。
 次の卸売業者での処理等については(3)に書いておりますが、ここでの記録については、どのロットをいつ出荷したという記録は適切についてなかったということで、このお店についても生食用食肉の衛生基準、平成10年の通達に基づく加工もしていなかったということでございます。ここについては、自治体が調査をしたところ、食中毒起因菌は陰性であったという結果でございます。
 次に9ページでございます。原因となった飲食チェーン店の状況でございますけれども、マニュアルはあったということでございまして、取扱いについては店が決めたマニュアルどおりにやっていたということでございます。まないたについてはユッケ専用でございましたけれども、包丁についてはまちまちの対応であったということ、また、消毒方法についても、75度のもので洗浄した後は、アルコール噴霧をして消毒したということであります。なお、衛生基準に明記されたようなトリミングの作業もやっていないという結果でございます。
 次に、9ページの(5)に書いてあります汚染経路の追及でございますけれども、ユッケ用肉のロット管理がほとんどされていないということもありまして、患者がどのユッケ用肉を食したかというのは、非常に困難を極めたということでございます。
 10ページにまいります。20店舗のうち、患者の発生は一部の店舗に限られているということから、特定の原料肉が原因物質に汚染されたと推定されておりますけれども、食肉の卸のお店における材料からも出ないということで、汚染経路は不明ということでございます。
 あとは補足の資料等でございまして、次は13ページまで飛びます。事件発生の要因等については、考察の中に出てきています。
 横浜でのお店の保管状況でございます。「3 事件発生の要因」の真ん中ぐらいにございますけれども、店舗に残されていたユッケ用肉について記載がございます。厚さ1cm程度の薄い肉がロール上に巻かれて包装されており、生食用食肉の衛生基準に基づいたトリミング等の処理はしていないということでございます。
 以上、事務局からは少々端折った説明になりますけれども、資料の説明を終わらせていただきます。
○山本部会長 ありがとうございました。
 質問は、次の岡部先生と佐多先生の御説明の後で行いたいと思いますので、飲食チェーン店での腸管出血性大腸菌食中毒事例について、岡部先生、佐多先生の順で御担当の分野をそれぞれ5分程度で御説明をお願いいたします。
○岡部参考人 感染研の岡部です。座ったままで失礼します。
 お手元の資料では、資料2-2にこれからお示しするファイルの図があります。一部抜けていますけれども、それは途中で御説明します。
 私たちは最初に県の方からの要請、その後は隣の佐多先生を班長とする研究班ができまして、その中での経過ということでお話をしたいと思うんですけれども、そこにありますように、平成23年6月のときにも最初の状況で御説明してあるので、一部それと重複するところがあります。
(PP)
 これが全体の地図ですけれども、関東地方、北陸地方にそのチェーン店があって、そこで患者発生があるということですが、そのほかにも北陸の富山から行かれた方が、仙台あるいは大阪での発症ということもございます。
(PP)
 県が発表している181例は、すべてを含んで県が収集した数ですけれども、O111が陽性だった患者さんが85人おられましたので、その方についての発症日、その他をスライドに示してあります。
 これは県の発表と同じようなパターンになっていますけれども、スライドでわかりますように、4月25日、26日を中心にして多くの方が発症して、青色のような色ですけれども、B店というところに一番多く集中していますが、幾つかの店にばらけているということもごらんいただけると思います。
(PP)
 喫食日ですけれども、4月23日のところにピークがあると思います。その後、患者さんが少なくなり、更にユッケ販売の自粛あるいは全店舗営業自粛というところでは、もう既に患者さんの発症がなくなっている状態はわかると思います。
 途中ですけれども、一番上のところに数値は確定値ではない等のため、今後多少入れ替わりがあるかもしれないことは御承知ください。
(PP)
 これは喫食と発症のリスクということで、発症した人と発症していない人で、その喫食状況にどういうリスクがあるかというものを示してあります。
 左側の方にOR、オッズ比というのがありますけれども、ユッケのオッズ比が非常に高い。それから、ちょうど表の真ん中「盛岡冷麺」の次のところに「O111陽性のみ」「ユッケ」と書いてあります。幾つかオッズ比として関連がありそうなものも見えますけれども、圧倒的にユッケを食べたことがリスクファクターであったことがおわかりいただけると思います。
(PP)
 これは研究班が立ち上がってからですけれども、佐多先生、神奈川衛研の所長を代表者として、臨床グループと疫学グループと細菌グループに分けて、その後の研究調査が行われました。
 私たちは疫学部門です。スライドに医療機関が示してありますが、富山県、福井県、中には仙台、大阪の病院も含まれています。横浜もありますけれども、非常に広いところで患者さんがそれぞれ知っているところといいますか、それぞれのところに入院をしたり転床したりしている患者さんもあるので、各医療機関の御協力をいただいて臨床症状を集めることを行いました。
 更に、画像所見は専門家のコンサルトをいただかなければいけないので、例えばそこにありますように国立生育医療研究センター、頭部については亀田病院の小児科、順天堂小児科あるいは徳大の放射線科といった各専門家の御意見をいただきながら、全体像をつかむことを行いました。
(PP)
 これは調査対象の内訳です。喫食者または接触者のうち記録のある者は942例ということなんですけれども、その中でだんだん絞っていきまして、左側の下の方でブルーになっていますが、O111陽性例88例、喫食者、喫食・接触ともあり特定不可1例、あるいは接触者2例となっていますが、最終的にHUSの診断例は32例、更に追加症例として2例、喫食をしているけれどもHUS(溶血性尿毒症症候群)を起こさなかった方が51例、その指標を持ちながら、どういう特徴があるかということも調査をしました。
(PP)
 これは年齢区分で重症の典型例ですけれども、HUSを起こした人が赤っぽい色、薄いグリーンで書いてありますのがHUSを起こしていない人ですけれども、15~19歳にピークがあるということがおわかりいただけます。うんと右側の高齢者の方になりますと、パーセントで言えば100%発症ですけれども、数が少なかったということもあります。
(PP)
 潜伏期間は、先ほどの県あるいは厚労省の発表と同じように、HUSを起こす起こさないにかかわらず、3日ぐらいが潜伏期間であることがわかります。
(PP)
 小児例が左側、右側が成人例で16歳以上としてありますけれども、その中でのHUSの発症状況について赤っぽい色の方が女性、ブルーの方が男性ですが、ごらんのように男女差が見られるのは成人例であります。死亡例を黄色く囲ってありますけれども、やはり死亡例は小児の方に多かった。3例と2例に分かれますが、そのような特徴がありました。
(PP)
 小児例と成人例における腎障害をブルーの色で、脳症の方を赤っぽい色で書いてあります。左側の2つが男女の子ども、右側の2つが成人での男女となっておりまして、成人例の方では男女差が出ている。しかし、小児の方では男女差が余り出てないことがおわかりいただけます。
(PP)
 更に、HUS(溶血性尿毒症症候群)を起こした者について、割合をブルーの色で示してあります。割合から言うと、HUSを起こしているのは右側の成人の女性の方が多いことが言えると思いますが、それぞれこのような状況になります。
(PP)
 更に、大腸菌感染症として発症してからHUS(溶血性尿毒症症候群)を発症するまでのいろいろな症状の流れを見ているんですけれども、左から右に向けて、最初の黄色っぽい暖色系で書いてありますけれども、CTあるいはエコーであるとか、画像診断で上行~横行結腸の壁肥厚が見られて、それから尿たんぱくが出てきて、幾つかの検査所見に異常が出てくるとHISの疑いの症状になりますけれども、上の紫色で囲ってありますが、その時点で脳症発症の可能性が疑われることもあります。
 HUSが確定に至ってくるわけですけれども、その手前で何とか早く診断ができないかということで、現在幾つかの指標を用いて症例定義が出せないかということをやっております。
(PP)
 次は症例定義の案でありまして、このスライドは委員だけにしかお配りしてないと思います。というのは、これはまだあくまで案であって、学会とかの御意見もいただかなくてはいけないと思うんですが、従来から溶血性貧血あるいは血小板減少、腎機能障害というのはHUSの重要な一つの定義になるわけですけれども、血小板減少は従来よりもちょっと高めの15万ぐらいであるとか、ドイツのO104アウトブレイクにおけるHUSの診断も参考にして、ブルーのところで幾つか、今回の症例の中からインジケーターとしてなるようなもの、こんなことが言えるのではないかということを示しております。
 今後は専門家の御意見もいただきながら、今後HUSが出た場合、更に重症例が出た場合の参考にしていただければと思って研究を進めております。
 以上です。
○山本部会長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして佐多先生、お願いします。
○佐多参考人 富山県の衛生研究所の佐多と申します。
 この事例は、昨年4月末から始まったものでありますけれども、8月から研究班として立ち上がりまして、およそ100人を超える方の御協力をいただきまして進めてまいりました。今、やっと報告書をまとめている状況でありますが、その中の菌の関係についてまとめてお話させていただきます。
 資料2-3に「~菌分離状況と性状解析~」ということで、4枚のスライドにまとめてあります。
(PP)
 1枚目のスライドは、左側の棒グラフと表を主に見ていただければいいんですが、ちょっと込み入ったスライドで申し訳ありません。この棒グラフの縦軸は患者さんの数でありまして、黄色が有症者、赤がHUSという重症例のものであります。そこに星印をつけてあるのは、亡くなった例であります。
 横軸の方は、下に表があります。腸管出血性大腸菌の血清型と毒素型によって、15グループに分けております。その下に、それぞれの具体的な数字が表になって書いてあります。横軸が15グループの菌が分離されたものに対して、上に患者数をカウントして書いてあるということになります。ここの数字では県の報告が181名ですので、その方々から分離された総数636株について、こういうふうにまとめてあるということになります。
 ごらんのように、一番左側に高い患者数が出ています。これは合計102名に当たりますが、その上にHUSの患者さんが14名乗っております。この方たちは、血清型O111とO157のいずれも分離できなかったというものであります。ちょっと奇異に感じるかもしれませんが、その点については後でまた御説明します。
 次に患者数が多かったのは、真ん中辺りにあります。これはO111のVero毒素がないものが24名ということになります。ここでも亡くなられた方が1人。
 それから、左から3つ目のカラムのところに15名の患者さんの数がありまして、ここで3名の方が亡くなられていることになります。すなわち、ここではO111のVero毒素のVT2が取れているというグループの中に、こういう患者さんがいるということになります。ただ、一番の多かった分、次の分、いずれもO111が取れなかったりVero毒素がないものが、そういう患者さんが示していたということになります。
 それにつきましては、次のスライドになります。
(PP)
 感染症法でこういう菌が取れなかったときについては、血清抗体を調べることによって診断ができるという基準がございます。それに基づきまして、集められるだけの血清を集めまして、O111に対するHUSへの抗体の陽性率をまとめたのが、このグラフになります。
 2つ目のところに、分離菌EHECが取れなかった、マイナスと書いてあるカラムがありますけれども、そこを見ていただきますと、22名の患者さんの血清を調べまして、O111のウイルス抗体が陽性だった方は16人、70%をちょっと超えた者が陽性になったということです。
 次のカラム、HUSの患者さんでは12例が調べられて、12例とも陽性。非HUSの患者さんでは、血便があった分の方に高い陽性率を示したということになります。
 一番下の計の横を見ていただきますと、調べられた患者さんの中で、結果的にO111のLPSの抗体が陽性だったものが、結構高く見られたということになります。
 O157も取れた患者さんがおられるわけですが、いずれも抗体価は低く、ほとんどがO111に対する抗体価を示したということで、便から菌が取れなかった患者さんのほとんどがO111によるものだと考えられ、かつ、重症化を示したHUSとか血便がある中では、O111が有意であったという結果が得られました。
 更に、5検体だけですけれども、血便を次世代シークエンサーによってメタゲノム解析をいたしますと、左側に検体番号が5つ振ってあります。O111が取れたもの、菌が分離できなかったもの、O157が取れたもの、両方が取れたもの、そういう便がありますが、それについて調べますと、赤いO111のDNAを取れたものが5例全部にあるということ。それから、O157はあったとしても、リード数から言うと非常に少ないという結果がありましたので、検便として調べた中には、菌が取れなくても便の中にはこういうDNAが存在したということから、O111が主要な病原体になったと考えてもいいのではないかと考えられます。
(PP)
 最後のスライドですが、4つ目のところにマイトマイシンCでプロファージを誘導する場合の実験の結果を示してあります。青い方はO157、赤いのがO111であります。濁度が縦軸で、横軸はマイトマイシンCを入れた後の時間になります。ですから、O111の方がO157に比べて濁度が下がっていく。要するに、溶菌しているらしい。
 右の棒グラフですが、溶菌に伴ってO111の毒素が産生されていく傾向があると見てとれます。
 ということからすると、今回の事例の中で多くの患者さんから菌が取れなかったり、あるいはVero毒素のない菌が取れたりする理由は、現在のまとめというところに書いておきましたが、恐らくは毒素産生と溶菌現象が関連しているのではないかと考えられるということが、今のところの結論になっております。
 すなわち、大腸菌はそれぞれVero毒素の遺伝子を持ったまま増殖していって、毒素が産生されて、血便が出て、重症化するとHUSということになるわけですが、今回便のところから菌が取れずに消えているにもかかわらず重症化をした患者さんが多く、かつ、死亡者が多かった理由は、こういうことが推定できるのではないかということが現在のところのまとめでありまして、今後はまたこの辺からもう少し追跡をしていきたいと考えております。
 簡単ですが、以上でございます。
○山本部会長 ありがとうございました。
 それでは、事務局の御説明、岡部先生、佐多先生の御説明について御質問がありましたらどうぞ。
○渡邉委員 仲間内で質問をしているみたいなことになるとあれですけれども、佐多先生、このケースに関して、便中のVTの毒素は調べられてないんですか。
○佐多参考人 いろいろな先生にお聞きしたところ、国内ではVTの測定系がきちんと動いているところがほとんどないんです。一部市販のキットが見つかったので、少数例について血便中の毒素をELISA法ではかりました。たくさんはかってないんですけれども、毒素陽性だったということは得ていますが、ほんのわずかな例しか調べてないので、これからもう少し調べないといけないと思っています。
○山本部会長 では、谷口先生どうぞ。
○谷口委員 ありがとうございました。
 まず岡部先生、最後にHUSの症例定義案というのがございますが、ドイツではHUS自体が感染症法の届出対象疾患ですから定義があるわけですけれども、こういう定義を案として出されているということは、今後日本でもHUSのサーベイランスというのを考えてのことでしょうかというのが一点。
 もしそうであれば、常に感染症は確定診断の間に報告が遅れて、報告が来たときにはもう既に広がっているというのはドイツのO104でも言われていて、ドイツでは、いわゆる血性下痢サーベイランスというのを始めたところがあります。つまり、より早く探知するために確定例のサーベイランスではなくて、血性下痢の段階で報告してもらうということをやりましたけれども、サーベイランスのことであれば、是非とも血性下痢サーベイランスのような、より早く探知できるようなことも一緒に考えていただければと思うんですが、いかがでしょうか。
○岡部参考人 ありがとうございました。
 これもちょっと身内みたいな話のやりとりですけれども、もともと感染症法でやっているのはどちらかというと症例の探知であって、それに対する対応を早くするということは、残念ながら視点に置かれてないというか、それでやるのは無理であると思います。
 ここで定義として案を出しているのは、あくまで早期検知を目的としているので、感染症法による届出の中には、今は含まれていないと思います。ですから、これから臨床の先生方に多く提案するような形にして、とにかく早く患者さんを見つけてキュアにもっていくことが目的ですけれども、今後できれば早く検知をして、早く対応するような形のサーベイランス、今、先生がおっしゃったようなものにしていくのが理想ではないかと思います。あるいは感染症法でやるのが難しいとしても、何らかの早い検知を行うことに結びつけていけば一番いい。今回の事例が生きてくるのではないかと思います。
○山本部会長 寺嶋先生、今のことに関してですか。
○寺嶋委員 ちょっと関連しています。
○山本部会長 では、先に渡邉先生、どうぞ。
○渡邉委員 今回の事例で、HUSもさることながら脳症が非常に多いですね。今回HUSをメインに統計をとっていますけれども、HUSよりも脳症が先に現れた事例があるのかというのがまず一つです。
○岡部参考人 それが、症例定義と書いてある表の1つ上の「EHEC発症からHUS発症までの流れ」の部分ですけれども、HUS疑いの時点で脳症が起きているというのはあります。ただ、結果から見てみると脳症を起こした方も先に脳症症状ですけれども、HUSに一致するような症状が出ています。ただ、脳症だからということでHUSを外れてしまうと治療の方向性が変わってくる可能性があるので、このことは十分に考慮していかなければいけないだろうと思います。
○渡邉委員 食品の委員会とはちょっと話が違ってしまうかもしれないんですけれども、HUSから脳症になるという誤解があると非常にまずいので、脳症は脳症でインディペンデントの事象である可能性があると思うんです。我々の仲間との実験結果では、例えばウサギにVero毒素を投与すると、Vero毒素自身が脳に行って、脳でいろいろな障害を起こしてしまうという動物実験の結果が出ているので、腎臓へのダイレクトなアタックとは別個に脳に行く可能性があると思います。
 それで、佐多先生に病理学者としてお伺いしたいんですけれども、今回の剖検例で脳組織について、Vero毒素の抗原が脳にあるかどうかを調べられたかどうかということと、サイトカインのプロファイルがどうなっているのか。血中でもいいですけれども、特に脳組織等におけるサイトカインプロファイルがどうなっているのか。それと、脳症をHUSの後の脳症と考えるのではなくて、むしろVero毒素による、サイトカイン流出によるサイトカイン脳症みたいな考え方はどうなのか。その辺のところを、病理学者としての先生の意見を聞かせていただければと思います。
○佐多参考人 そこは非常に興味があって、今回の事例はHUSと脳症が非常に高い頻度で出現したという特徴がございます。それで亡くなった方も5人と多いということで、そのパソジェネシスについては非常に大きな興味があると思うし、そこが明らかにならないと次の患者が助からないという問題があると思います。
 毒素については、剖検例は4例得られておりまして、その方について毒素の抗原を調べるとか、そういうことをやったんですけれども、残念なことに毒素の抗原が血管内皮だとか腎臓だとか、そういうところに出た症例はございませんで、その検出というのは非常に難しいものがある。過去の剖検例の報告が2~3例あるんですけれども、今、批判的な目で見ると、その前の症例の報告が本当に正しかったかどうかというのは、若干疑問に思っているところです。
 これは非常に短い経過であれ、何らかの形で病気が起きているわけなので、そういう病原因子が解剖学的な場所にあってもおかしくないと思うんですが、同時に血清抗体が非常に高く、非常に早期から上がっていることから考えると、多分イムノコンプレックスみたいなものをつくっているのではないかというふうにも考えられて、マスクされている可能性があるということで、その辺についても検討はしているんですけれども、なかなか見つからないというのが現状で、その毒素がパソジェネシスに積極的に関わっていたというのは考えられるんですが、証拠が得られてないというのが現状です。
 サイトカインについては、いわゆるインフルエンザ脳症と似たような形で起きているのではないかという考え方があって、特に金沢大学の小児科の先生方に積極的に調べていただきました。
 いろいろなサイトカインが上がっていることは事実で、確かにHUSの発症と同時あるいは脳症の発症と同時に、IL-6を初めとするサイトカインが上がっているという事実はわかっていますけれども、どういうサイトカインがこのパソジェネシスに絡んでいたかという特定までは至ってない。恐らく全体に上がっていたということが、関係するのではないかと思われます。
 ということで、今回の事例は恐らくサイトカインが高く産生されて、それに伴って起きる脳症の可能性が非常に高いと考えられていて、したがって、臨床的にHUSの発症と脳症はほぼ同時に起きている。あるいは症状を見てとるときに、どっちが先かというのがわからないぐらいにしてHUSと脳症が起きているというのが、今回の事例の特徴だったと考えます。
 ですから、そのときに治療が問題になるわけですが、HUSの治療というと腎の透析とか、そういう話になっていきますが、脳症の治療はステロイドパルスになりますので、そういう違う治療がそこに絡んできて患者の救命につながっていきますので、今後はこの2つのポイントを逃さない形の対応が非常に大事になる。そうしないと、また似たような事例が起きてしまうのではないかと考えられます。
○山本部会長 今の関連事項ですね。
○岡部参考人 堺のO157以来、患者さんの届け入れとか、そういうものについて感染症法の改正のきっかけになって、大きく動いてサーベイランスというものが重視されたんですけれども、今回の場合は先ほどお示ししましたように、1つの病院ではせいぜい1例とかで、確かに一部の病院ではたくさんの患者さんを診るんですけれども、そういう患者情報のシェアというのは非常に重要になってきて、富山の方ではネットワークづくりをして、各病院間で情報の共有を速やかにやるということが立ち上がったわけですけれども、こういう事例のときには、そういうネットワークづくりをすぐにやっていかないと、いわゆる法律の届けだけではうまくいかない部分があるのではないかと思います。臨床側の協力も勿論必要ですけれども、そういうサーベイランスの変化ということは、今後十分に考えていかなければいけない事例だと思います。
○山本部会長 関連事項ですか。
○石川委員 ちょっと違います。今の関連でディスカッションをするんだったらどうぞ。
○山本部会長 感染症法での動きに加えて、やはり食中毒の探知という問題がありますので、今後はそことの連携もうまく取っていかないと、EHECに関しては、今までの食中毒事例の対策と感染症での対策とはずれている感じも受けますので、その辺を協議していっていただければと思います。
 寺嶋先生は菌のことですか。ちょっと寺嶋先生からどうぞ。
○寺嶋委員 探知に若干関係するかもしれないんですが、佐多先生にちょっとお伺いしたいんです。O111のLPS抗体の探知ですけれども、分離菌が出ない患者さんの血清で7割ぐらい抗体価が上がっているんですけれども、残りの3割で出ない方というのは分離時期というか、発症の時期とか、血清を取った時期によって出たり出なかったりということになっているんですか。
○佐多参考人 残り3割の方についての解析は、余りそれ以上詳しく調べてないというか、つい2週間ぐらい前にまとまったので、もう少し追求をしないといけないとは思いますが、はっきりはわかりません。
○寺嶋委員 一般的に、感染してから数日程度はしないと抗体価が上がりませんので、先ほどの脳症の話ではありませんけれども、極めて初期に探知とか、そういうことで考えると、抗体価でというのはなかなか難しいかなと思ったので、残りの方がどういう状況かなというのをちょっとお聞きしたかったんです。ありがとうございました。
○山本部会長 どうぞ。
○佐多参考人 もう少し調べることはやりますけれども、今までにわかっている抗体の上がりは、大体3日ぐらいで上がっているということで、IgM抗体としては非常に早く上がるのと同じような格好になるとわかっています。だから、3日以内というか、経たないとわからないという言い方の方が正しいかもしれませんが、IgG抗体とは違って非常に早い時期に上がることは確かです。
○山本部会長 それでは、石川先生どうぞ。
○石川委員 私は臨床的な話なんですが、私自身も小児科医で、二十何年前にHUSを5例ほど自分で診たことがあるんです。岡部先生にお聞きしたいんですけれども、今回のHUSに対しての発生の比率を挙げられたわけですが、こういうことはどんどん多くなってきているのかどうなのかという傾向です。たしか三十数年前、まだHUSの原因がわからないときにアルゼンチンか何かで2,000人ぐらいの発生があって、HUSというのは下痢が前に伴うものだという話があったときもあったと思うんですけれども、歴史の変遷の中でO157だけではなくて、病原性大腸菌とHUSとの関連で増えてきているのかどうなのか。ということは、臨床の人間にとっては、警戒しなければいけないかどうかということになると思うんですけれども、その点が一点。
 あと、成人の死亡例がいっぱいあるということは初めて知ったんですけれども、子どもの尿たんぱくは、例えば下痢に伴う病気とか、そういうもので頻繁にプラスになってきたりすることもあるので、最初の兆候ということにはなかなかならない。だから、最初の兆候はどういうふうに見つけたらいいのか、今後研究で教えていただきたいと思っております。
○山本部会長 岡部先生、どうぞ。
○岡部参考人 かなり臨床的な話になってくるんですけれども、O157だけではなくていろいろな菌で出てくる。菌の変化ということもあるので、一概に腸管出血性大腸菌感染症が増えて重くなっているのかどうかということは、ちょっと言いにくいのではないかと思います。菌的な部分については、佐多先生を初めとする研究グループが調査をしています。
 それから、ドイツでもそうですけれども、今回は大人で多かった。やはり食習慣とか食べているものの背景や何かによっても随分違うので、必ずしも一律に言えないのではないかと思います。そして、これも菌と人の関係があるので、私としてはまだ十分解決し切れてない部分だと思います。
 それから、早く見つけるということは、先ほどの尿たんぱくもそうなんですけれども、スライドにあります例の症例定義の上の方ですが、画像で見ていくと早めにHUSの兆候があるかなという状況にはありますけれども、これですべて進んでいくわけではないので、鑑別診断としての検査の画像を早く見るということも、キーポイントではないかと思います。
○山本部会長 ありがとうございました。
 谷口委員、どうぞ。
○谷口委員 同時期に起こったドイツのO104のHUSの発症率は、たしか18%ぐらいだった。通常の大体5%前後からすると、ものすごく高い。しかも、食材を食べた人の年齢分布は普段と変わらないのに、普段は小児でHUSが多いのにもかかわらず、やはりドイツのO104では成人の女性が多かった。これがなぜだろうかということに関して、論文がでていますが、インチミンとVT2aの病原性への役割の観点から議論が行われています。
○谷口委員 通常のEHECはインチミンを持つわけですが、今回のドイツでのO104はインチミンを持っていませんでした。ある論文ではインチミンが、成人と小児における病原性の違いに関連しているのではないか、つまりインチミンをもつ通常のEHECでは小児に病原性が高く、今回それが無かったため小児におけるHUSが少なかったことに繋がっているのではないか、またVT2aと病原性との関連についてなどの議論が報告されていました。今回HUSの発症率はドイツの例よりも更に高いですね。
 そういった場合に、今のお話だと、現状では溶菌が容易に起こったので、ベロ毒素のリリースが高かったためと考えてみえるんでしょうか。あるいは溶菌が高かったために、把握されていない患者さんがたくさんいるので、分母がアンダーエスティメートになっていると考えてみえるんでしょうか。もし、御意見がありましたらお伺いしたいと思います。
○山本部会長 では、佐多先生どうぞ。
○佐多参考人 どうしてこんなに多くの重症の患者さんと亡くなった方が多かったのか、大人にも出たのか、その辺は明らかにしないといけないんですけれども、菌側の原因があるんだろうと思うんですが、今現在、通常で調べられるようなデータからは、はっきりしたことが言えないんです。わからない。通常は、検便の検体の中の菌を調べれば、大体の推測は全部できたわけですけれども、今回はみんな溶けてしまっていないからできない。そこは大きな病原性に関わっている、非常に大事なポイントだろうということは推測できます。ただ、今のところそれ以上はできないので、ちょっとわからない。
 母数の問題は確かにあると思いますが、それを超えても重症は多かったと感じております。
 ちょっと煮え切らないようで申し訳ないです。
○山本部会長 ありがとうございました。野田先生。
○野田委員 時間も押していますので手短に聞きますけれども、今の件に関連して、O111がO157と比較して溶菌しやすいというデータは、菌株は今回の事例だけのものを使われたのでしょうか。ほかの菌株でも同様の傾向があるのか、そこを聞きたいのですが。
○佐多参考人 レファレンスには、いろいろな株を使っております。ただ、今回使ったO111の方が溶菌の程度が高いという結果が出ています。
○山本部会長 よろしいでしょうか。
 それでは、この議題につきましてはこの辺で締めたいと思います。
 それでは、3つ目の議題としてKudoa septempunctata, Sarcocystis fayeriについて事務局より概要を説明いただいた後に、大西先生、八幡先生、水産庁の順で、それぞれ5分程度ずつで御報告をお願いいたします。
○松岡監視安全課長補佐 それでは、事務局から説明させていただきます。
 資料3-1「Kudoa septempunctata及びSarcocystis fayeri食中毒について」でございます。
 1ページ目はグラフ等が載っておりますけれども、先に昨年以降のことということで、2ページ以降を簡単に説明させていただきます。
 昨年の4月25日の当部会において御審議をいただきまして、当時は病因物質不明の有症事例ということで、多くの先生方を参考人としていただきまして、ここで御議論をいただきました。
 3ページ以降にございますように、そこで食中毒部会と乳肉水産食品部会を同時開催いたしまして、そこで先生方から御提言をいただいたということでございます。
 2ページに戻りまして、今後それを基に、当該寄生虫を起因と考えられる有症事例が報告された場合には、食中毒事例として扱うようにということで、自治体にも通達を出したところでございます。
 もう一度1ページ目に戻りまして、それ以降の食中毒事例の報告数でございます。Kudoa septempunctataによるものが33件ということでありまして、9月に報告のピークを迎えているということでございます。Sarcocystis fayeriにつきましては2件あったということでございますけれども、この提言にもございますように、生産県で、失活に凍結手段が有効ということで、業者等に指導されたということもありまして、その2件の報告以降、発生はないという状況でございます。
 資料は12ページまで行きます。厚生労働省の方はその提言を受けた後に、2つの病原体、Kudoa septempunctataとSarcocystis fayeriについて、食中毒の原因とする際に、自治体で残品であるとか、そういうものを調査するために検査法を通達しております。
 12ページがKudoa septempunctataの検査法ということで、7月11日に自治体に通達しているということで、一応PCRと鏡検法を併用した方法を示しております。
 18、19ページには、検査法のフローチャートを示しております。これも自治体に示しております。
 次に20ページでございますが、Sarcocystis fayeriにつきましても、国立衛研等の協力を得まして、8月23日に検査法を示しています。同じくPCRに基づくものと顕微鏡による鏡検法を併用した方法を示しておりまして、自治体で原因究明を行うようにしているということでございます。
 簡単でございますが、事務局からは以上の説明で終わらせていただきます。
○山本部会長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして大西先生、よろしくお願いいたします。
○大西参考人 国立薬品食品衛生研究所の大西です。
 我々の研究班では、Kudoa septempunctataとSarcocystis fayeriの病原発症機構の解析を行っております。これまでKudoaがヒラメを原因食とした食中毒として同定された経緯につきましては、今、追加資料としてお配りいたしました、英語の論文の方に詳しくまとめてありますので御参考ください。
 それでは、これまでわかっていることについて御報告いたします。
(PP)
 いわゆる原因不明食中毒の原因微生物なんですが、ヒラメの生食を原因とした場合はKudoa septempunctata、写真左の花びら状の寄生虫です。それから、馬肉の生食を原因とする食中毒の原因微生物としては、Sarcocystis fayeriがそれぞれ原因微生物であるということが同定されてきました。つまり、いわゆる原因不明食中毒と呼ばれる食中毒は、寄生虫性の食中毒であるということがわかりました。
 まず、今までわかっているKudoaの方の発症機構について御説明いたします。大変申し訳ありませんが、ここからは配付資料に載ってないスライドが出てきますので、よろしくお願いいたします。
(PP)
 これはkudoaの胞子を人の腸管細胞に感染させたときのものです。真ん中の方にあります花びら状のものがKudoaの胞子です。背景が人の腸管細胞になっております。人の腸管細胞にKudoaの胞子を感染させますと、この胞子から矢印にありますような丸い細胞が2つ放出されるのがわかりました。
 これは恐らくKudoaの本来の宿主であります、ゴカイやイトミミズの腸管に感染したときに放出されると考えられている、胞子原形質と呼ばれる細胞であると、今のところ考えております。この胞子原形質が人の腸管細胞に感染させたときにだけ、このように出てきますので、この胞子原形質が何らかの病原性のかぎを握っているのではないかと考えて、更に研究を行いました。
(PP)
 これは電子顕微鏡で観察した胞子と胞子原形質です。上側の丸い大きな細胞が、先ほどから見ていただいています花びら状のKudoaの胞子です。その下側の方に黒い丸い細胞が出ていますが、これは先ほど見ていただきました胞子原形質になります。右側の帯状の細胞が人の腸管細胞になります。このように人の腸管細胞に感染させますと、このように胞子原形質が胞子から放出されます。
(PP)
 やがて、この胞子原形質がこのようにアメーバ状の形をとることがわかりました。この胞子原形質は非常に運動性に富んでおります。
(PP)
 更に感染が進んでいきますと、このように胞子原形質の方から細胞骨格が集中して、針のように腸管細胞に食い込んでいくのがわかりました。
(PP)
 ちょっとわかりにくいかもしれませんが、最終的にこのようにアメーバ状の胞子原形質が腸管細胞の中に食い込んでいっております。腸管細胞がこれですので、この大きさに比べまして、胞子原形質が非常に巨大であるということがおわかりいただけるかと思います。この胞子原形質が、このように腸管細胞にどんどん侵入していくことがわかりました。
(PP)
 これは走査電顕で見たものですが、これはKudoaの胞子になります。
(PP)
 やがて中央の上の方にあります丸い胞子から、先ほど見ていただきましたアメーバ状の胞子原形質が飛び出していきます。このように非常に大きな細胞で、擬足をたくさん出しております。ところどころ擬足の下の方に、腸管細胞に穴が開いているのがおわかりいただけるかと思います。
(PP)
 上から見ていただくと更によくわかりますが、このようにアメーバ、胞子原形質は腸管細胞上に非常に大きな穴を開けつつ、細胞の中へと侵入していくことがわかりました。
(PP)
 これは共焦点レーザー顕微鏡の写真になりますが、赤い帯が人の腸管細胞層の断面になります。その上に乗っている弱い緑色のものがKudoaの胞子になります。明るい緑色が胞子原形質になります。これはKudoaを人の腸管細胞に感染させてから1時間後の写真になりますが、このように1時間後で既にKudoaの胞子原形質は、腸管細胞の基底膜側に達することができるということがわかりました。非常に早い侵入性を持っております。このことは、Kudoaによる食中毒の潜伏期間が非常に短いことと、よく一致していると思われます。
(PP)
 このKudoaの病原性についてまとめますと、Kudoaが腸管細胞に感染しますと、Kudoaの胞子から胞子原形質、アメーバ状の細胞が放出されます。このアメーバ状の細胞が腸管細胞へと侵入していき、その過程で腸管細胞に達して障害を起こし、それが下痢につながると考えております。ただ、幸いなことというわけではありませんが、この胞子原形質は人の腸管に感染してから大体4時間程度で死滅し始めます。
 これは推測なんですが、恐らくもともとKudoaはヒラメに寄生している寄生虫で海水に適合しておりますので、海水と人の体との浸透圧の差で、人の細胞の中では長く生きていけないんだろうと考えております。この辺りはよく似た寄生虫の食中毒であります、赤痢アメーバなどとは大きく違うところだと思います。
 Kudoaに関しては以上です。
(PP)
 次にSarcocystisに関して、これまでわかってきたことを御報告いたします。
 ザルコシスティスですが、一番左側の写真にありますように、馬肉の中にひものような形、脂肪となかなか見分けがつきにくいような形で馬肉の中にシストが入っております。真ん中の写真が、そのシストを取り出したものになります。このように蛇状のにょろにょろとした長い細胞になっております。このシストの中に、たくさん何かが詰まっているような感じが見られるかと思いますが、これが右側の写真にありますようなブラディゾイトと呼ばれる小虫が、たくさんシストの中に詰まっております。それを拡大したものが左下のものです。こういうブラディゾイトは三日月状の細胞になっております。
 これまで、ウサギのループテストを用いてザルコシスティスの病原性を調べた結果、シストを含む馬肉の抽出物をウサギの腸管に接種することによって、下痢と同様の症状を起こすことができるとわかりました。
 更に、このシストの中で何が原因かということを調べていったところ、シストの構成たんぱく質のうちの15kDaの分子量を持つたんぱく質が、ウサギに対して下痢症状を起こすことができるとわかりました。
(PP)
 ザルコシスティスの病原性ですが、このように馬肉とともにシストが取り込まれ、胃の中でブラディゾイトを放出します。それから、ここはまだちょっと明らかになってないんですが、そのブラディゾイト中の15kDaが何らかのメカニズムで腸管組織を攻撃し、下痢症状が引き起こされるのではないかと考えております。
 以上です。
○山本部会長 ありがとうございます。
 それでは、続きまして八幡先生からお願いいたします。
○八幡参考人 国立感染症研究所感染症情報センターの八幡の方から、「ヒラメの喫食量と発症」ということでお話させていただきたいと思います。
(PP)
 今回、私の方で使用しましたデータとしましては、一昨年から昨年に発生しましたヒラメを喫食したクドアによる食中毒の事例を基に解析をいたしました。
 方法としましては、クドアの胞子数とヒラメの喫食量により、どれぐらいの量を摂取しているのかという推定をしてみたり、昨年度お話をさせていただきました閾値との比較をさせていただきました。
(PP)
 まず、ヒラメの喫食量なんですけれども、2010年の事例、2011年の事例で比較をしてみました。
 上の段に2つあります。どちらともなんですが、喫食をする量がかなりまちまちであるという状況であります。例えば2010年の事例は1事例なんですけれども、ケースとコントロールがとれていますので、ケースの方とコントロールの方の中央値を比較してみますと、ケースの方が66.7グラム、コントロールが77.5グラムです。あと、範囲を見ますと、非常に広くてケースの方が33.3~300.0グラム、一方の対象のコントロールの方に関しましては20~300グラムということで、かなりバラエティーに富んでおります。また、それを20グラムずつぐらいにバーチャートをつくってみますと、このようにでこぼこしていて、例えばある一定の正規分布をするようなことを示さない状況でした。
 2011年に発生しました事例に関しましても34事例あるんですけれども、その中の事例のヒラメの喫食量の中央値を算出してみたところ25.1グラムで、範囲としまして11.3~88グラムということで、喫食量にある特徴というか、正規分布をするようなものではなく、分布を仮定できないような状況であるということが見られました。
 続きまして、胞子数についてなんですけれども、2010年度の事例に関しましてはかなりサンプル数が取れておりまして、かなり幅広い胞子数が取れていますが、大体103~106までの間のものです。
 2011年の事例に関しましては、105レベル~108レベルまでの間ということで、108レベルのところは1事例ということになります。
(PP)
 ドーズレスポンス的な部分として、ヒラメの喫食量と症状を呈する潜伏期の時間、下痢の回数で見てみました。これは2010年のデータなんですけれども、ヒラメの喫食量と潜伏期を見てみますと、ヒラメの喫食量が多いと潜伏期が短く、ヒラメの喫食量が少ないと潜伏期が長いことがわかりました。
 潜伏期なんですけれども、中央値は5時間ということで、これまで見てきたデータで大体5時間、ちょっとずれても4時間半とか5時間半ぐらいの間で、大体5時間ぐらいが中央値だろうと考えられます。
 あと、範囲に関しましても、かなり症例定義が甘い状況でやっていました。この事例に関してもそうなんですけれども、3時間半~19時間となっています。2011年の事例の中で症例定義をきつくしてみた事例が1つあるんですけれども、その中で見ますと3~8時間ぐらいの間ということで、その事例の中には12時間か15時間という方が1人いらっしゃったんですけれども、発熱の方を取っていたのでその方を除くと8時間ということで、3~8時間ぐらいの間というのもだんだん絞れてきた感じです。食中毒の調査の症例定義はちょっと甘い部分がありますので、それを少しきつくすると、少し潜伏期の時間が短くなってくるのではないかということも考えております。
 続きまして下痢の回数なんですけれども、こちらの方は3名ほど、200~300グラムぐらい大量に食べている方がおりまして、外れ値として外して解析をしております。ちょっと有意ではないですが、こちらの方も喫食量が多いと下痢の回数が多くなる傾向が見られるということで、やはり喫食量との関連はあるのかなということを考えておりました。
(PP)
 続きまして、喫食量と発症というところを事例ごとに見てきました。2011年の事例になります。胞子の数をカウントしている事例から見ておりますが、最初の胞子数と中央値、最大値ということで見ております。
 最初に最小値のところ、9.4×105の個数があるヒラメの胞子数のものですけれども、その隣に60グラム、70グラムと書いてありますが、栄養士さんにヒラメをお刺身として食べるときに大体どれぐらいの量を食べるのかということをお伺いしたところ、資料に基づいて算出すると、大体60~70グラムだろうということをお伺いしましたので、ヒラメのみを刺身として食べた場合ということに限定されますけれども、そのためのクドアの摂取量はどうなのかというところを見てみました。
 そうしますと、最小値のところは5.6×107個と6.6×107個ということでありましたが、その下に88.0とありますけれども、この値は実際に事例で食べた方の量ということで、8.3×107となります。88グラムだと、実は昨年度推定をさせていただきました7.2×107のレベルを超えているということで、やはり発症しているということなんですけれども、もしかすると、70グラムぐらいの量を食べていれば、発症してなかったのかもしれないということを考えられる事例でした。
 続きまして中央値のところですけれども、中央値はグラム当たり1.1×107個あるんですが、こちらの方のKudoaの摂取量を算出してみますと、6.6×108~7.7×108ということで、昨年度に算出いたしました7.2×107個を上回っている状況でありました。それから最大値に関しましても同様ということで、かなり大量だということが考えられました。
 ちなみに、昨年度算出しました7.2×107個を食べるにはということで、最小値の33.3グラムの量でどれぐらいのKudoaの胞子数があれば7.2になるかというのを算出したのが、2.2×106で、最大値だと2.4×105という状況ですので、これを考えますと食べる量とKudoaの胞子数がグラム当たりどれぐらい含まれているかというところの汚染具合が発症と関わりがあるのではないかということがここで考えられました。
(PP)
 以上をまとめますと、ヒラメの個体差で汚染度が変わってくるということ。喫食量に関しましても、その人個人の食べる量であったり、事例で出される量によって異なってくることが考えられます。
 それから、Kudoaの汚染度が高いものを食べていれば少量でも発症するという事例が幾つも見られました。Kudoaの汚染度が低くてもたくさん食べている方は発症しているということで、先ほども申し上げましたとおり、Kudoaの胞子数と食べている量が発症に関連することが考えられます。ドーズレスポンスとしても量が多ければ潜伏期が短く、下痢の回数が多くなるということ。
 以上から考えますと、公衆衛生上の対策としましては、Kudoaの胞子数の汚染度が低いようなヒラメの流通が今後重要ではないかと考えられました。
 以上で私の発表を終わります。
○山本部会長 ありがとうございました。
 それでは、最後に水産庁から中毒防止のための対応状況の御説明をお願いいたします。
○早乙女水産庁課長補佐 水産庁栽培養殖課の早乙女と申します
 「Kudoaによる食中毒の防止のための対応状況」ということで、資料3-4で御説明させていただきます。
(PP)
 まず、これですけれども、今、全国でヒラメの養殖がどのぐらい行われているのかというものをとりまとめたものでございまして、全国の生産量が約4,000トン、このうちここに書きました5県で全体の8割が生産されているということで、養殖ヒラメの生産は西日本を中心に行われているということになります。
 それ以外のところでは22県で生産が行われていますが、数量的には665トンということで、少量があちこちでつくられている部分もあるというのが、今のヒラメ養殖の実態でございます。
(PP)
 昨年、部会の方でKudoaの防止に関する提言をいただきまして、私どもの方では、まず各都道府県を通じまして、養殖場での感染実態の調査を行いました。その結果なんですが、養殖場の中でKudoaがヒラメに感染していることがありそうだというところは、非常に限定された場所のようです。そこで種苗が生産された場合、その種苗が新たな養殖場に行って、そこで飼育されて出荷されるときにKudoaが寄生したヒラメとして出荷されるということで、Kudoaが寄生したヒラメが広がるのは、その種苗を介して広がることが想定されるというのが昨年の調査結果でございました。ここはまだ単年度の結果でございますので、今後もフォローしていく必要がございますけれども、Kudoaというものの生態から考えると、やはり感染している地域は非常に風土的なものが強い可能性は想定されます。
 これと同時に種苗で感染する部分が非常に大きいということがありましたので、まずKudoaが寄生している種苗を養殖場で使わない、持ち込まないということで、東京大学の横山先生が開発されたPCR法を用いて種苗の検査を行い、Kudoaが寄生している種苗は養殖に用いないことを徹底するようにいたしました。一部の養殖業者の中では自主的にPCR検査を実施しているところもございます。
 ちなみに、その検査の中で飼育しているヒラメにKudoaの寄生が確認された養殖場の方では感染魚の出荷を自粛するということで、都道府県との指導の中で取組みを行っております。
 それから、提言の中でヒラメ飼育環境の清浄化ということがございます。これについては、まだ残念ながら養殖場においてKudoaがどのようにヒラメに寄生していくのかというメカニズムはまだよくわかっておりません。ただ、幾つか実験を行った中で、感染魚と非感染魚を同居して飼育すること、あるいは非感染魚に対してKudoaの肉を入れたえさを給餌した経口投与の試験、これらを行った結果、非感染魚が新たにKudoaに感染する事例は見られませんでした。
 もう一つが、養殖場における出荷前のモニタリング検査を行うということが提言の中にございました。これにつきましての検査の方法ですけれども、それぞれの養殖場や県の水産関係の部局でも検査ができるような、簡易的な検査方法を開発する必要があるだろうということで、定性的なPCR法のほかに検鏡検査で検査できる方法を開発いたしまして、昨年秋に各県に通知しております。
 各県ではこの検査方法をもって、養殖業者の方々に対してKudoa及びその防除技術に関する研修会あるいは巡回指導を実施しております。
 更に、検査が自分のところではできないというケースもございますので、民間検査機関の方で、このPCR検査もしくは検鏡検査の方を受託するということで、既に開始しております。
 以上がこれまでの状況ですけれども、今後Kudoaの食中毒をどのように防止していくかということで、次のスライドです。
(PP)
 先ほど申し上げました、提言に沿った3つのことが原則なんですが、まずは養殖場にKudoaを持ち込まないことの対策として、養殖場に種苗を導入する際には、PCR法を用いて感染の有無を確認していくことを徹底していく。更に養殖場では飼育管理を効率化するために、魚のサイズごとに選別という作業をしたりする場合があるわけですけれども、これを行いますと、ある種苗の分でKudoaが感染した場合、そのロットが広がってしまうことがありますので、飼育に当たってはその種苗来歴によるロット管理というものを徹底していく。これによって万が一Kudoaの感染が見つかったロットについては、処分ないしは加熱・冷凍用に供することで、そうでない群と感染群との仕分けが簡単になっていくと考えております。
 更に、養殖場の中ではKudoaを寄生させないことが非常に重要なポイントではあるんですが、現在のところはまだKudoaの寄生メカニズムがわかっておりません。ここにつきましては我々の方でも研究予算を確保いたしまして、Kudoaの生活環あるいは寄生メカニズムの解明、それに基づく感染防除対策というものを技術開発して実施していく予定でございます。
 それから、いわゆる食中毒防止につきましては、ここが一番重要なんですが、Kudoaが寄生したヒラメを流通させないことで、これにつきましては各養殖場の方で、出荷前にモニタリング検査を行っていく方法で指導していく予定にしております。ここは今年開発いたしました検鏡法による簡易的な検査法によって、ヒラメの肉の中にKudoaが寄生しているかどうかということが確認できますので、ロットごとに検鏡検査を行って、もしKudoaが確認された場合には、そのロットについては冷凍もしくは加熱用とすることを徹底することで対応することにしております。
 以上の中でKudoaによる食中毒というものを防止していくことを進めていきたいと考えております。先ほどのKudoaの事例の中で発生件数が非常に多いのが夏から秋にかけて、特に秋口に件数が非常に増えてくるようですので、これらの指導を徹底することで何とかその件数を減らすというか、出さないように持っていきたいと考えております。
○山本部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に関しまして質問はございますでしょうか。
 中村先生、どうぞ。
○中村委員 八幡先生に1点確認させていただきたいんですが、2010年事例でヒラメの喫食量を症例と対象に分けて示されておりますけれども、この症例というのは食べて症状が出た人たち、対象は出なかった人たちということでよろしいんでしょうか。
○八幡参考人 一緒に食べた御家族、親戚、友人というような食べた人たちの間で症例と対象と分けて検査をさせていただきました。
○中村委員 症状の有無でということですね。
○八幡参考人 症状のない人をコントロールということにしています。
○中村委員 ありがとうございます。
○山本部会長 では、石川先生どうぞ。
○石川委員 資料3-1で御発表いただいた食中毒の発生状況で、Kudoaが意外にすごく多いことにびっくりしたんですけれども、昨年の議論で、生で食べてなるべく長い時間冷蔵にしたり冷凍にすればどうのこうのというのがあったと思うんですけれども、その辺のところは何で予防策の中に入ってないんですか。
○早乙女水産庁課長補佐 失礼いたしました。加熱・冷凍につきましては、我々の方で検査方法を通知するときに、同時に同じように対策を取るように徹底しております。
ただ、Kudoaの発生件数が統計数字の中にございますが、我々もまだ把握できない部分が実はございまして、先ほどヒラメの生産量は約4,000トンと申し上げましたけれども、これと同数以上のものが海外から日本の中に入ってきております。
 これは厚生労働省さんの方での追跡の状況だと思うんですけれども、いわゆる国内産のもの以外にもKudoaの寄生によるものがどうもありそうだということがございます。
○石川委員 だから、養殖場をきれいにするとかいうことは昨年も指摘されているわけなんですけれども、そうではなくて保存方法だとか、実際に食中毒が起こる手前の段階で防ぐことができる方法、この間は、1時間以上ではまだ生きているかもしれないけれども、4時間以上だと死んでいるかもしれないということが、推測で言われているわけですね。おすし屋さんに聞いても、締めてから6時間以上が一番おいしいんですと皆さんが言っているんだから、もしそれがわかっていたら、啓発としては締めて6時間以上冷蔵しておきなさいとか、冷凍しておきなさいという指導を出すべきだと私は思うんです。人々が食中毒を発症しないように、何かほかの予防の手段を提案した方がいいのではないかと思っているんですけれども、いかがでしょうか。
○山本部会長 事務局、よろしいですか。
○滝本監視安全課長 これは流通段階ということになりますので、厚生労働省の対策ということになろうかと思います。冷凍すればこういった寄生虫については死滅するということがわかっておりますのでそういう対策が取れるんですが、ヒラメの場合は冷凍するという手段は、刺身で食べる、あるいはおすしで食べるということを前提にすると、予防策の決め手として打ち出すのはなかなか難しい。そうであれば生産段階できちんときれいにしていただいたものを流通させていただくことを主な対策として打ち立てる必要があるのではないか。
 一方、馬肉については冷凍手段を取ることによって、こういったものが防止できるのではないかと考えております。
○石川委員 だけれども、今は輸入もあるとおっしゃっているわけです。これだけ発生数があるんですから、そうではなくて流通のところ、我々の口に入ってくるところまでで、何か勧告みたいなものをした方がいいのではないかと思うんですけれども、どうでしょう。
○山本部会長 輸入品についての検査というのは、どこがやることになりますか。厚生労働省ですか。
○道野輸入食品安全対策室長 今の議論は、販売の前に凍らせばいいではないかという議論だと思うんですけれども、輸入の方ということの御質問なのでお答えいたします。
 輸入に関しては、主要な輸出国に対して私どもの方から、ここの食中毒部会でも報告された内容について情報提供をして、やはり養殖段階でモニタリングをする体制を整備してくれということで要請しております。また、食中毒に関したと考えられるような養殖場からの輸入というのは、恐らく輸出国側の判断だと思いますけれども、その後の輸入実績というのは見られていない。とまっているという対応は取っております。
 ただ、どちらにしても、それはあくまでも、今の水産庁さんが御説明になったようなことについて、輸出国段階で同じようにやってほしいということの議論の中での話であります。
○山本部会長 水産庁、どうぞ。
○早乙女水産庁課長補佐 冷蔵によってKudoaの失活ということは、昨年の結果の場合にはまだ確認がされていなかったかと思います。現在の生産現場の対応といたしましては、先ほど来の定性的な検査の中でKudoaが発見されたものについては、生食、生鮮食には回さない。加熱加工用もしくは冷凍として扱うということで指導しております。現実には養殖ヒラメというのは生食用の出荷が中心でございますので、冷凍とか加工になりますと、結局在庫としてとまってしまうというのが事実かと思います。
○山本部会長 八幡先生、どうぞ。
○八幡参考人 2010年の症例対象研究をした上でのデータで論文に書いている途中のものなんですけれども、冷蔵した方のオッズが0.53で95%信頼区間が0.29~0.97ということで、予防の方に有意に働くというデータを持っております。この事例から考えますと、冷蔵というのは有効な手段ではないかと考えます。
 また、一方で保存時間というものも取っておりまして、保存時間に関しましては症例の中央値が18.3時間で対象の保存時間は26.0時間ということで、これも有意に差がありまして、保存時間が長いと冷蔵の効果があるのではないかという推察ができるんですけれども、そういったデータは持っております。
 以上です。
○山本部会長 ヒラメをおろしてすぐに食べるということは、昔からやられてなかったようなことが、今、やられているからというのもあるのかもしれませんが、もう少し検討が必要かなという気がいたします。
 どなたかおわかりだったら教えてほしいんですけれども、Kudoaというのは一旦ついてしまうとヒラメの中でずっと生き続けているものなんでしょうか。ある時期に落ちるということはないんですか。
○早乙女水産庁課長補佐 水産庁でございます。
 私どもが研究グループの方からお聞きしているのでは、Kudoaがヒラメの中に入った場合には、それが抜けることはないようです。本体の寿命まで生き続けるということのようです。
○山本部会長 ありがとうございました。
 益子先生、どうぞ
○益子委員 水産庁の方にお聞きしたいんですけれども、先ほどの御説明の中で風土的要素が強いというお話でしたけれども、流行感染地というか、そういうところが限定されているのであれば、そこの養殖を控えるということはあると思うんですけれども、いかがですか。
○早乙女水産庁課長補佐 水産庁でございます
 調査が昨年1年ですので、そこで限定するというのはちょっと危険があるのかなと考えておりますが、やはりここでしか発生しないというものであれば、例えば種苗の供給みたいなものについては見直す必要があると思いますし、もう一つはKudoaというものがヒラメ固有のものではありませんので、そこには全く入れないということ。それと、今のような選択も併せて対策を検討していく必要があるかと考えております。
 これは今年も調査を行ってまいりますので、その中で結果を出していきたいと考えております。
○山本部会長 よろしいですか。
 どうぞ。
○工藤委員 ちょっとお尋ねしたいんですけれども、水産庁の食中毒防止対策はいろいろありますが、例えばこういった情報が、今日は傍聴の方もいらっしゃいますし、マスコミに、どのように出るかによって、消費者への影響というのは避けられません。原因不明の食中毒、ヒラメというのは昨年から、報道でもありましたから、頭に入っている方もいらっしゃるんです。ですから、例えば今、市場、スーパー等で販売しているものが汚染されていないものかどうかというのを確認できるすべがあるのかとか、またこれからそれが整うのかといったところなども、直接購入する消費者側としては必要ではないかと思います。し、このままだといたずらに不安をあおってしまうというか、もう少しはっきりと情報を出した方がいいのかなという気がいたします。
○山本部会長 水産庁、どうぞ。
○早乙女水産庁課長補佐 そのとおりだと思います。とりあえず、昨年は情報の少ない中で、まずKudoaが寄生しているヒラメを出さないということを大前提として対策を講じてまいりました。今回、この場でいろいろ御報告いただきましたように、Kudoaの濃度の問題ですとか、先ほど冷蔵でも効果があるかもしれないというお話がありましたので、この辺りにつきましては厚労省さんの研究グループの方々ともっと情報交換をしていきながらより具体的な対策をしていきたいと考えておりますが、まず我々生産を担当しているものとしては、Kudoaが寄生しているもの、疑わしいものをとにかく流通させないという方向の取組みや評価をしていきたいと考えております。
○山本部会長 厚生労働省としてはモニタリング検査とか、そういうものはどういうふうにされる予定がありますか。
○道野輸入食品安全対策室長 今日いろいろと研究された成果の御説明があったんですけれども、要はヒラメの可食部の段階でそういう検査をして、一定レベルを超えるものはリスクがあるというのか、我々で言えば、そういう法律に抵触する判断がある程度できるのかどうか。
 例えば腸管出血性大腸菌の場合もそうですし、リステリアのものとか、そういったものが出た食品については検査に回されて、ある程度検出されたものは排除されるということも、行政対応としてはあるわけですけれども、今の時点のいろいろな知見を踏まえて、この問題で可能性があるのかどうかということについて、御教示いただければと思います。
○山本部会長 このKudoaを検査することで流通から排除していけるというか、確率的な問題があると思うんですけれども、何かその辺で参考人の先生から御意見。野田先生、どうぞ。
○野田委員 今の議論に関連するんですけれども、今後の対策として一番厳しい規制としては規格をつくることだと思うんですが、現段階で八幡先生のデータで感染発症量について大体はめどがついていますが、もう少しエビデンスがしっかりした状況になったときに、厚労省としては、規格までつくることを考えているのかどうかということをお聞きしたいと思います。
○森口基準審査課長 まだそこまでは。議論を見ながら、必要があれば最後はそういう形もあり得るかもしれませんけれども、どういうふうにするか、まだ先生方の御意見をいろいろ聞きたいと思っています。
○山本部会長 発症胞子数等が明らかになってきて、それ以下に抑えればいいんだということであれば規格ということも考えられるでしょうけれども、今の段階では見つかったときの6条違反ということにはなると思います。
○森口基準審査課長 検査法とかも含めてセットができないと規格がつくれませんので、今の段階では、まだすぐにつくれるという段階ではないのかなと考えております。
○小西委員 今のお話に関連してですけれども、規格基準の場合は数値、検査法が重要だということは当然なんですが、Kudoa septempunctataの場合にほかの微生物と違うことは、養殖場のロットにおいて均一に感染しているわけではないということです。、感染率が高いか低いかというのはある程度のサンプル数を持ってくればわかるんですが、1尾すごく高いものがあったとしても、それはサンプル数の検査結果からはわからないわけなんです。高いものが食中毒を起こすということで、低いものに関しては、今のところ食中毒は起こっておりませんので、その見極めに規格基準が適当かどうかというのは議論すべきところだと思います。
 ですから、現実的には6条違反で検査法を行って、どこかで検査をして、検出される場合には排除していくということから始めていくのが、対策としては一番とりやすいのではないかと思っておりまして、検査法に関しても、今、動いております検査法というのはPCR法と顕微鏡法と2つがありますけれども、PCRで検査する場合には定量検査法を使っておりまして、大体105以上の胞子数があればチェックできるようになっておりますので、先ほど八幡先生からの推定汚染量、発症量から考えると、それほどぶれた値ではないのではないかと考えます。
○山本部会長 どうぞ。
○道野輸入食品安全対策室長 先ほど私が申し上げたリステリアの例とかも基本的には6条違反の判断ということで検査をやっておるわけなので、今の小西先生の御意見は検討したいと思うんですが、例えば105個のKudoaがあった場合に健康被害が必ず起きるのか、それともほかの要因もあるのかというところはどうなんでしょう。要するに、食品衛生法の6条の判断というのはかなりそういった危険性というか、蓋然性がかなり高いものということで判断していかなければいけないですけれども、こういったものについては勿論関係のところ、外国も含めてきちんと説明していかなければならないということを考えた場合に、その辺の考え方の整理というのはうまくできるでしょうか。
○小西委員 そうですね。八幡先生のデータからいきますと、昨年の結果から107個あれば健康被害が出る可能性が高いことが示唆されておりまして、それは人でやっていますので、もし安全係数を考えるとすると10倍ほどを考えたら適当だと思います。そうなると106程度が、道野さんがおっしゃるような根拠のある数字に一番近い数字になるかと思います。ですから、105、線を引くかどうかというのは、一つもう一度考えないといけないかもしれないです。
○山本部会長 どうぞ。
○道野輸入食品安全対策室長 余り規制のことであれをしても難しいところがあるんですけれども、その105なり、それぐらいのレベルのものというのは実はたくさん出回っていて、食中毒を起こすのは非常に限られているものなのか、それともそれぐらいのものが流通していた場合はかなりの確率で食中毒事件が起きているのかというのはいかがでしょうか。
○小西委員 私たちがやっております実態調査と言っていいかどうかはわかりませんけれども、Kudoaの感染が見られる養殖場からヒラメを定期的にいただいて、ずっとはかっていたことがありますが、105以上出るというのが頻度として非常に低いと言えます。ですから、105以上あると健康被害を引き起こす可能性は高くなるということは言えると思います。
○山本部会長 八幡先生、どうぞ。
○八幡参考人 先ほど示しましたデータからなんですけれども、最小値だと105個のオーダーだということで、それをたくさん食べるか、そうでないかというところが線引きになると思うんですけれども、仮にたくさん食べてしまうということを考えますと、105個もあり得ると考えられるのではないかとなりますので、安全係数をかけるのであれば107個から想定すると100倍ぐらいがいいのかなと、その辺の議論がどうなるかはわからないですけれども、そういうことを思ったりもします。
○山本部会長 大西先生、どうぞ。
○大西参考人 以前、市販のヒラメからKudoaが検出されるかどうかを見たことがあるんですが、食中毒の事例の残品からは、ほぼコンスタントに106とか107のKudoaが出てきますが、市販品からはKudoaは検出することができませんでした。
○山本部会長 滝本課長、どうぞ。
○滝本監視安全課長 食中毒事例については、昨年から残品を調べていただいて、その摂食量とKudoaの胞子数を報告してもらっておりますので、その辺りのデータについては、今後も引き続き収集したいと考えております。そういったデータも参照しながら、方向性を決めていっていただければと思っております。
○山本部会長 渡邉先生、どうぞ。
○渡邉委員 一つは、ほかのいろいろなものと比べた場合に、平均的な摂取量が107というのはかなり多いということと、今度は逆に、ほかのバクテリアとかいろいろなものと比べた場合に潜伏期が短いですね。メカニズム的には、例えば生きたものが胃を通って小腸に行ったときに、この期間だと1セルがアタックしたときに増殖できないですね。それで、腸管の粘膜の中に貫徹した段階で症状が起きてしまう。そのインバギネーションするアタック率というのは、普通は菌なんかでもそうですけれども、インベージョンをするにしても、菌に対してアタック率というのはかなり低いんですね。Kudoaの場合はどのぐらいのパーセンテージで腸管にアタックすると推測されるのか。
 また、いろいろな疾患がそうですけれども、一般的に胃液を通ったときには大体pH2ぐらいですので、そこで死んでしまう可能性が高いわけですけれども、Kudoaに関しての耐酸性というのはどういう状況なのか。疫学的なデータからすると間違いはないと思うんだけれども、メカニズム的な、総合的なことから考えて本当にKudoaだけで説明できるのかどうか、その辺を学問的な意味で教えてほしいと思います。
○大西参考人 まず、メカニズムの方ですが、今はKudoaの細胞に侵入する、恐らくそれが下痢の原因になっていると考えております。
 先ほどお示ししましたKudoaの胞子原形質と呼ばれるアメーバ状の細胞ですが、あれが腸管細胞の中に侵入するわけですが、胞子原形質は非常に細胞骨格に富んでおりまして、それを使って運動しておりますので、細胞骨格の重合を阻害するような薬剤を投与しますと、胞子原形質が細胞の中に侵入できなくなるんです。その状態で病原性を見たところ、下痢状態を引き起こすことはできませんでした。ですので、明らかに胞子原形質の細胞侵入が、この病気につながっているということが言えると思います。
○山本部会長 時間はいいですか。
○渡邉委員 根本的な問題と絡むのではないかと思うんで、Caco-2に感染した場合に、パーセル当たりどのぐらいが先ほどのような形態を示すのか。
○大西参考人 詳細に細胞の数を振ったケースですと、大体1対1で症状を起こすことができます。それ以下ですと、極端に病原性が落ちる状態になります。
○山本部会長 1対1だとかなり多くないと。
○大西参考人 発症に必要な胞子数はかなりの量が必要だと思います。
○渡邉委員 普通は、例えばほかのシゲラとかサルモネラとかを考えた場合に、MOIはかなり高いんですね。この場合もMOIが高いあれですか。
○大西参考人 はい。
○渡邉委員 MOIは1でかかってしまうんですか。
○大西参考人 1以下ですと、逆に病原性が非常に弱くなります。
○山本部会長 それでは、この議論はまた後でフロアの方でやっていただければと思います。
 Kudoaの対策は、とりあえずは水産庁の方で、出さないという対策でいっていただけるのが、今のところは一番早いかなという気がいたしております。
 その後は、モニタリングをするかしないかという問題はありますが、輸入食品については少し検討を加えていただいて、実際の流通食品ということになりますと、コストとの関係も考えていきますとそこまでの問題があるのかなという気もいたします。ですから、生産段階での規制がきっちりと動いてくれば、国内流通品についての話は割と片付いてくるのかなと思います。私の感想めいたものですけれども、あとは輸入食品の対策ということかと思います。
 ちょっと時間が延びてしまって申し訳ありません。この議題についてはこれでよろしいでしょうか。
○石川委員 そうしましたら、例えば昨年の6月8日の何らかの意見みたいなものが、Kudoaでは出るということですか、待っていてよろしいんですか。傍聴している方もいらっしゃると思うんですけれども、食の安全性の問題ですので、これだけの食中毒事例があると言っておきながら、軽いから大丈夫、いろいろと対策を打っているので、今のところは軽いけれども起こる可能性があるという感じになるのかもしれないんですけれども、いろいろな言い方で少し発しないといけないのではないかと思うんです。その辺はいかがなんでしょうか。
○山本部会長 事務局で何か情報発信。
○滝本監視安全課長 それはまさに部会の方で御議論をいただいて、部会の提言として発する必要があるということであれば、おまとめいただければと考えております。
○山本部会長 石川先生としては、去年以降の話として。
○石川委員 昨年も言ったんですけれども、症状は軽いといっても病弱な方、幼弱な方にはどういうことが起こるかがわからないので、一応消費者の方にはそれなりの伝え方をしないといけないのではないかと思うんです。いろいろと努力しているというのは、今、お聞きしてわかるんですけれども、今年の8~9月も結果を開けてみたらこのぐらいあったとかいうと、ちょっとまずいのではないかと思うんですね。
○山本部会長 そうしますと、対策としては、一つは周知徹底させるということがあると思いますので、ホームページ等でもQ&Aは一応つくってあったのでしたか。
○松岡監視安全課長補佐 はい。昨年の提言を受けた後に、昨年の時点でのQ&Aは厚生労働省ホームページにアップデートしております。
○山本部会長 そうしましたら、各自治体に対して啓発活動を強化するようにというような何かを発出していただければ、一つは注意喚起になるのかなということでございまして、あとの具体的な対策というのは、今のところでは生産段階の対策が一番急がれているのかなという気がいたします。
 ほかに何か対策として御提言があれば承ります。
 それでは、その2つをとにかく進めていただくということで、水産庁の方には生産段階、厚生労働省の方には啓発通知を各自治体にしていただいて強化するということにしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、この議題についてはこれで終わりにしたいと思います。大変時間が過ぎてしまったんですけれども、事務局から何かございますか。
○松岡監視安全課長補佐 先ほど資料1において、渡邉委員からの御質問がありました死者数の年齢分布でございますけれども、委員の配布のとおり1欄加えさせていただきました。説明はどういたしましょうか。
○山本部会長 これは読んでいただくということで結構かと思います。
○松岡監視安全課長補佐 こちらから追加資料等、ほかにはございません。
○山本部会長 ありがとうございました。
 大変時間が延びてしまって申し訳ございませんでした。それでは、これで食中毒部会を終了させていただきます。ありがとうございました。


(了)
<監視安全課食中毒被害情報管理室>
室長補佐 松岡: (内線)4239
係長 石丸: (内線)4240
(直通)03-3595-2337

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