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2011年1月27日 第8回「多様な形態による正社員」に関する研究会

職業安定局派遣・有期労働対策部企画課

○日時

平成23年1月27日(金)16:00~18:00


○場所

専用第13会議室


○出席者

佐藤座長 島貫委員 武石委員 橋本委員 久本委員


○議題

(1)アンケート調査の結果について
(2)ヒアリング調査の結果について

○議事

○佐藤座長 ただいまから、第8回「多様な形態による正社員」に関する研究会を始めます。本日は、あとで津田政務官にご出席いただけることになっていますので、よろしくお願いいたします。
 本日の議題に入りたいと思います。本日は、アンケート調査の結果とヒアリング調査の結果についてご検討いただくことになっています。まず最初に事務局から、議題との関係を含めて今後、どういうふうにこの研究会は議論していくかのスケジュールをご説明いただければと思います。よろしくお願いします。
○派遣・有期労働対策部企画課長補佐 お手元にお配りしている資料に、参考資料3があるかと思います。「とりまとめに向けて」という資料で、1枚めくった「スケジュール表修正案」の裏をご覧ください。この研究会の第7回の昨年12月14日に、アンケート調査の結果とヒアリング調査の結果についてご検討いただきましたが、残すところあと2回と考えていて、本日第8回で、アンケート調査の結果の取りまとめと、ヒアリング調査の結果の取りまとめをお願いしたいと考えております。その結果を受けて、それを素材として、※に書いてありますように、2月8日と9日に予定している労働局における事業主向けセミナーを行いたいと思っています。そのあとの第9回の研究会で、研究会としての議論のまとめを行うスケジュールで考えています。
 「とりまとめに向けて」の1.「好事例集について」です。これまでも何回かご説明しましたが、好事例集の構成について改めてご説明しますと、基本的な構成は、1本文(研究会での議論のまとめ)と、3、4に書いてあるようなヒアリングの好事例、アンケート調査の結果概要を考えております。今日ご議論いただくこととしておりますのは、3と4に加えて2をご用意しています。これはヒアリングの好事例を基に、好事例というのは企業ごとの事例ということでしたが、各企業に共通する要素がありますので、要素ごとに活用のポイントというものをご用意して、それを事例集に盛り込んではどうかと考えております。これは次回、研究会としてのまとめを行っていただこうとしていますが、そのつなぎという意味も込めまして、そういったものを作成してはどうかということで考えております。したがいまして、本日は2、3、4についてご検討をお願いしたいと考えていて、取りまとめていただいて、それを素材として事業主セミナーにつなげていきたいと考えております。以上です。
○佐藤座長 ただいま今後の進め方を想定して、今日の議論は何が大事かをご説明いただきましたが、よろしいですか。
 それでは、まず最初にアンケート調査結果、企業と従業員調査の両方がありますが、前回の議論を踏まえてコーディング、新しくデータの見直しをしていただきましたので、そのことと、今回の企業アンケート調査と従業員アンケート調査は両方リンクできる、どういうことかというと、従業員調査の回答者と、その従業員が勤務している企業を結び付けることができます。もちろん、全部の企業が従業員調査に協力していただいているわけではありませんので限定したサンプルになりますが、企業調査とその企業に勤めている従業員の回答がリンクできるものについてはリンクしていただいた結果、「紐付け分析」としていますが、それについても初めて説明させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○小曽根コンサルタント(みずほ情報総研(株)) お手元に資料1をご用意ください。資料1は「企業アンケート調査結果概要」ということで、ご報告差し上げているものとなります。前回の研究会から新たに5つほど集計表を足していますので、そちらについてご報告差し上げます。
 資料1の32頁をご覧ください。こちらは31頁から続いていますが、「非正社員からいわゆる正社員への転換制度・慣行・実績」についての集計となります。32頁の上の図表33-3-1です。これは何を追加したかと申し上げますと、基幹的な非正社員の比率別にこういった制度があるかどうかを集計した結果になります。基幹的非正社員というのは、正社員と同じような仕事をする非正社員で、その方が非正社員の全体の何パーセント程度を占めるかということで3つほどカテゴリーを作っております。0~10%未満、10~50%未満、50~100%という3つの軸を用いました。この調査結果の表をご覧いただいてもおわかりになると思いますが、基幹的非正社員の比率が高くなるほど、登用制度・慣行と実績等も多くなっているというきれいな結果が出ております。
 その下の図表33-3-2、これが続きまして33頁に図表33-3-3と33-3-4があります。これについては、基幹的非正社員比率の別にNを用意した上で、その中を多様な正社員区分がある企業とない企業の2つの軸に分けて、こういった制度があるかどうかを見たものになります。こちらをご覧いただくと、基幹的非正社員の比率が変わっても、非正社員からいわゆる正社員への登用制度の比率は、多様な正社員区分があるなしで変わらないといったような傾向が出ております。
 最後にもう1つ足したものが、34頁の下の図表34-2になります。今度は非正社員から多様な正社員への転換制度があるかどうかで、こちらも先ほどと同じように基幹的非正社員の比率の軸を立てて、3つで見ています。これを見ると、いちばん左の、登用制度と実績の両方があるというのが、0~10%と10~50%ではそれほど変わらないのですが、50~100%だと3割弱ぐらいはあるという結果が出ております。いまご説明した5つが新しく足した集計になっております。
○佐藤座長 どうしましょうか。従業員もやっていただいて、紐付けをそのあとにしましょうか。では、従業員のほうも修正があれば。
○加藤次長(みずほ情報総研(株)) 従業員のほうは、データを整理したのが大きい影響がありまして、1つは週あたりの所定労働時間が9時間以下と答えているのは常識的にはおかしいだろうということで、これを5倍にする操作をしています。このケースについては、週あたりの残業時間についても、5倍にするという処理をしています。このようにデータを直した上で、今度は論理矛盾があるデータというのを排除しようということで、例えば短時間勤務制であるという回答になっているにもかかわらず、所定労働時間が35時間以上あるようなものについてはこれを外す。あるいは時間外がないことになっていると答えているにもかかわらず、時間外が入っているデータを除く操作をしました。
 お手元の資料2、調査結果の2頁をご覧いただきたいのですが、左側の円グラフで多様な正社員がいま2,795名となっていますが、データをいまのような形で整理をしたことによって、前回お持ちしたものに比べて114名減っております。特に、右側の限定の種類別については、労働時間の見直しをした関係で、労働時間限定Aは前回90名が今回31名に激減をしております。さらに、時間外がないという労働時間限定Bは前回307名が今回82名ということで、当初先生方もご議論されていたとおり、労働時間限定というのは極めて少数であることがここで確認をされたということです。全体のデータについては以上です。
 そのほかに、前回ご指摘がありましたところで、新たに分析をし直したところがあります。お手元のデータの38頁は、前回からあるものです。どういうことかというと、38頁以降の分析というのは勤務地限定、職種限定、労働時間限定の別に、給与とか昇進・昇格などの許容できる水準の別に、さらに転換の希望率がどう違っているかを聞いているということで非常にわかりづらかったのですが、先生方のご指摘がありまして、転換を希望している方がどういう条件だったら許容できるのかというのを見たほうが、より意義があるだろうということでしたので、そもそも転換希望者が許容しうる処遇水準がどうなのかというのを、正社員、基幹的非正社員、その他非正社員の別に見ていったというのが29頁からです。
 29頁にあるのは、「勤務地限定正社員」に転換してもいいよと言っている方が、どれぐらいの条件であったら転換してもいいのでしょうかというのを、「現在」と「近い将来」の別に見ているということです。ご覧いただくとわかるとおり、いま「いわゆる正社員」は、一般の正社員、転勤があるような正社員と同じ条件を希望するというのが半数以上になりますが、「基幹的非正社員」「その他非正社員」になるにつれて、この比率が下がっていく。これは「現在」も、「近い将来」もそんなに変わりません。
 30頁では、「昇進・昇格の上限」については、どれぐらいの差が許容できるのかを聞いていますが、「給与」に比べて、転勤がある人と同じと答える割合が若干高くなるということです。さらに31頁は、「教育訓練の機会」についてはどうですかと聞くと、多少、基幹的非正社員、その他非正社員になると下がっていく傾向はありますが、大部分の方は転勤のある正社員と同じぐらいであることを希望している。32頁の「雇用保障の程度」になると、さらに同じレベルでの保障を希望されている方が多くなる傾向があります。いま見てまいりましたのは、「勤務地限定正社員」に転換することを希望している方についてですが、その次の「職種限定正社員」に転換することを希望している方についても概ね傾向は同じで、現在と将来ではそんなに差がない。それから基幹的非正社員、その他非正社員となるにつれて、限定のない方との差が多少はあってもいいというか、同じでなければならないと答える比率が少しずつ下がっていく。ただ、「昇進・昇格の上限」あるいは「雇用保障の程度」となるにつれて、同じ程度を希望する方が増えていることがおわかりになるかと思います。36頁は、「労働時間限定正社員」についてです。こちらは「時間当たりの給与水準」「昇進・昇格の上限」の2つについてのみ聞いていますが、傾向としては概ね同様です。「紐付け以外」は、ここまでです。
○佐藤座長 従業員調査のほうで労働時間を見直したというのは、かなり労働時間が短い人がいたのですが、週の所定労働時間を書いていただくにもかかわらず、7.5時間とか8時間とか9時間ぐらいにすごく集まっていたということで、ほかのデータを見直したときに、たぶんこれは1日あたりを間違えて記入していると判断できる人が結構多かったので、その分、週に置き直す形にした。企業調査でも、所定労働時間が短い短時間勤務の社員はそんなに多くはなかったので、もちろん育児・介護とかはあるわけですが、それと対応するような結果になったということです。あとは勤務地限定なり職種限定、希望する人に合わせて処遇の希望を聞くという見直しにしていただきました。いかがでしょうか。そういう意味で、今回は就業規則上、勤務地を限定していないとか職種を限定していないとか、残業をさせることがあるとしている人を「いわゆる正社員」にしたわけですが、それ以外に限定ありの人を見ると、労働時間の限定は現状で言うとそんなに多くない。正社員でも限定があるのは勤務地の話と職種で、労働時間はフルタイムで残業もある形だということが確認できたということかと思います。いかがでしょうか。いいですか。
 では、企業調査と従業員調査の両方の回答があって、同じ会社の社員をつなげられるデータの分析をしていただきました。ですから、企業がどういう制度を導入していて、今度はその企業に働いている社員が、例えば企業が勤務地限定を導入し、現状の処遇差がどうなっているのかと、企業がどう考えているかをリンクできるようなことになっていますので、それについてご報告いただければと思います。
○小曽根コンサルタント 紐付け分析結果については、資料2の従業員調査の後ろに、<参考>として47頁以降にお付けしております。いま佐藤先生からもご説明いただきましたが、分析の手順ということでここにまとめておりますので、簡単にご説明を差し上げます。回答があった企業について、その企業に所属する従業員からも回答があった場合、これら双方を抽出して「紐付け分析」を行っております。ですので、企業票か従業員票のどちらかしかなかった場合は、紐付け分析の対象からは除外しております。このとき、各企業が保有する雇用区分は企業調査側の、従業員各自の雇用区分は従業員調査側の定義に基づく従業員本人の自己申請になっています。また、従業員が自身に適用される規約等を正確に認識していないといったことも想像されますので、「たとえば」以下に書いていますが、企業側が正社員区分しかないよと言っているにもかかわらず、その企業の従業員からは自分は職種限定正社員だといったような回答が見受けられる場合もあります。こういった企業側と従業員側の雇用区分の齟齬が生じているケースが、いくつか見られています。
 こういったものをいかにデータクリーニングするかという分析の指針は、48頁に記載しています。いま申し上げたようなケースは、分析対象から除外することが妥当であろうということから、まずデータクリーニングの方法として2つの方針を立てました。1つ目は、「企業が保有する雇用区分」を大前提としようということ。2つ目は、「従業員本人の回答に基づく自身の雇用区分」が「企業が保有する雇用区分」に含まれない場合は、当該従業員のほうは無効とする処理を行いました。この処理を行った結果、企業票も従業員票も両方とも残った紐付け分析の対象となる企業は、企業数としては1,327社、従業員としては2,860人が対象に残りました。そもそもの企業アンケート調査の有効回答社数が1,987社ですから、だいぶいい割合で残っているなというところです。また、従業員数も紙調査のベースでいくと有効な分析対象が5,000人になりましたので、半数以上は残っているという対象数になっております。
 その内訳を示したものが48頁の表になります。「紐付け分析対象」の企業数が1,327社で、従業員数が2,860人です。まず企業側を大前提としていますので、「制度上、当該区分がある企業数」ということで書いていますが、「いわゆる正社員区分」がある企業が1,327社中976社、「多様な正社員区分」がある企業が670社。その内訳を見たものですが、職種限定が561社、時間限定Aが39社、時間限定Bが57社、勤務地限定が298社。これが今回の対象となっております。その隣に「運用状況」が書いてありますが、これは従業員自身が自分が何の区分かと言ったところを基にしていて、自分が「いわゆる正社員」だよとお答えになられている方が888人いらっしゃいます。その888人が所属されている企業数が607社になっております。これと同じように、自分は「多様な正社員」だと言っている方が421人いらして、その方が所属する企業が287社といった分布になっております。
 こちらの対象を用いて分析した結果が49頁以降になっております。49頁の(1)です。「自身が許容できる処遇の下で、多様な正社員として働く希望」があるかどうかになります。まず限定の種類別で見ています。A.「勤務地限定」です。「いわゆる正社員」が勤務地限定正社員になりたいかどうかという希望比率を見ていますが、図表のとおり、いわゆる正社員がどういった企業に所属しているかで軸を設けております。このときの軸が、いわゆる正社員区分のみの企業に所属しているいわゆる正社員なのか、あるいは勤務地限定区分が既にある企業で働いているいわゆる正社員か、また勤務地限定以外の多様な正社員区分がある企業で働いているいわゆる正社員かで分けて見ております。この結果、右をご覧いただきますと、勤務地限定区分あり企業の所属者は勤務地限定区分の多様な正社員として働く希望が45%ですが、いわゆる正社員区分のみの企業所属者だったり勤務地限定以外の多様な正社員区分あり企業所属者であると5割程度という結果が出ております。これを見てみると、もしかすると、もう勤務地限定区分がある企業に勤めていれば、既に勤務地限定のほうに動いているので、いわゆる正社員としてそのまま働きたいという希望があるのかなといったようなところが推測できます。
 次に、「非正社員」がどうかを見た結果が50頁の上の図表になります。こちらについても先ほどの企業調査と同じように、「基幹的非正社員」であるか「その他非正社員」であるかに分けて分析しています。この結果をご覧いただきますと、基幹的非正社員はどういった企業に所属していても、それほど変わらないのかなというところがありますが、一方で、その他非正社員の場合には、既に勤務地限定区分がある企業所属者は若干ほかよりも低くなっている傾向が、現在に限ってではありますが出ています。
 その下の、B.「職種限定」の場合はどうかです。これも先ほどの勤務地限定と同じように、企業がどういった区分を持っているかということで見ておりますが、「いわゆる正社員」の場合が50頁です。こちらをご覧いただくと、職種限定区分が既にある企業所属者だと3割ちょっとということですが、いわゆる正社員区分のみの企業所属者の場合は4割を超えているところがあるので、これも先ほどの勤務地限定と同じような傾向が見られています。
 51頁の上です。これは、「基幹的非正社員」と「その他非正社員」の別に、職種限定正社員を希望する比率を見ています。これについては、基幹的非正社員ではどこの企業に所属していても、ほぼ変わらない傾向が見えています。その他非正社員については、職種限定区分あり以外の多様な正社員区分がある企業所属者は若干低くなっている傾向が見られています。
 同じことを、C.「時間限定」において51頁に分析しています。これも、正社員区分のみの企業と時間限定区分が既にある企業というのは同じような比率ですが、時間限定以外の場合はそれから若干低くなっている傾向が見られています。52頁は非正社員の別に見ていますが、これについてもそれほど大きな差はないかなという結果になっております。
 53頁以降に他の分析結果を載せています。(2)は、「企業」と「従業員」との間の、多様な正社員の『時間当たりの給与水準のあり方』に対する意識を見ています。この分析は少し複雑になっておりますが、企業票の設問では当該区分がある場合には、給与水準はどうなのかといった実態を聞いています。その区分がない場合には導入するという仮定の下で、そのあり方を問うています。こういったことの考え方を前提としているので、働き方に限定のない正社員と比較した際のあり方になりますので、今回これ以降の集計対象企業は、「いわゆる正社員」区分を保有する企業のみに限定して集計を行っております。
 その下に表の見方を文章で書いていますが、実際に表をご覧いただきながら見ていただいたほうがよりわかりやすいかと思うので、54頁の上の図表をご確認ください。こちらは「勤務地限定」の表になっています。図表のいちばん上は「本問集計対象企業全体」ということで、これは先ほど申し上げた、いわゆる正社員区分を保有する企業のみの976社です。その中で、勤務地限定区分がある企業か・ない企業かをまず大きく分けています。勤務地限定区分がある企業が上の4つの段になりますが、1つ目が、企業側が同水準でいいよと思っているのが26社、1割程度低いが59社、2割程度低いが47社、3割程度以上低いが15社という分布になっています。例えば、勤務地限定区分あり企業の「同水準」の26社の下に17.7という数字が書いてありますが、これは勤務地限定区分あり企業の、ここに出ている26社と59社と47社と15社を足した147社の中で、26社が17.7%を占めるといったようにご覧いただければと思います。
 表をご覧いただきますと、横については従業員がどう考えているかになります。勤務地限定区分あり企業で、同水準だという実態を持っている企業の26社に働く84人が、いったいどういう水準であれば働いてもいいかということを見ていったのが84の内訳で、横に24、34、19といった結果に表として整理してあります。横でご覧いただいたときに、従業員の意識がいちばん高い比率で出ているところに青い網掛けをしてあります。また、少し見づらいのですが、太枠で囲ってあるところが斜めに右下のほうに行っているかと思いますが、これは企業が考える水準と従業員が考える水準が同じということです。これが表の見方になっておりまして、これ以降はこういうふうにご覧いただければと思います。
 実際に集計結果としてどうだったかということですが、まず54頁の上の「勤務地限定」です。「勤務地限定区分あり企業」の実態では、1、2割程度低い水準というところがいちばん多くなっていますが、従業員の意識としては皆さん1割程度低い水準だと考えていることが、よくわかるかと思います。また、これについて面白いところで、勤務地限定区分あり企業をご覧いただきますと、企業側が同水準といった高い水準に考えている所に働く従業員は、自分たちも高いほうがいいなと考えていますが、企業側が例えば3割程度以上低い水準と考えていると、働いている従業員もどちらかというと低めでもいいといったような、斜めに枠と同じような動きで意識の結果が出ている傾向が見られています。
 54頁の下の「職種限定」についても、企業がどのように考えているか、また実態であったとしても、従業員の方々が皆、1割程度低い水準だと考えている所が多くなっています。これも職種限定区分あり企業をご覧いただくと、先ほどの勤務地限定と同じように、企業が考える水準と同じように従業員側は考えている傾向が若干見られる結果になっています。
 55頁のC.「時間限定」になります。N数は、時間限定区分あり企業が非常に少なくなっておりますので、あくまでも参考ということで掲載しております。
 56頁の(3)は、『昇進・昇格のあり方』に対する意識差を見たものになります。上の表の「勤務地限定」については、企業側が考えるものと従業員が考えるものが一致している割合が高くなっていて、「同水準」だという企業では、同水準になれば働くよという従業員が多い結果になっています。一方で、その下の「職種限定」の場合には、従業員は企業の実態によらず、「上限あり」と答えている傾向が見られています。これと同じようなことが、57頁の「時間限定」にも言えます。企業側が「同水準」と考えていても、従業員側は上限ありと考えるところも多くなっている結果が出ています。
 58頁の(4)『教育訓練の機会』に対する意識については、「勤務地限定」のみしか設問が設定されていませんが、こちらを見てみると、同水準と考えている企業が、いま限定区分がある・なしに関わらず高くなっていますし、また従業員側も同水準であるという答えが非常に高くなっている傾向が見られています。59頁の(5)『事業所閉鎖等の際の人事上の取り扱い』は、「勤務地限定」と「職種限定」のみの設問になっていますが、これも先ほどの教育訓練の機会と同じように、従業員側が皆同じというように振れているのがよく見えるところと、企業側も同じとする比率が8割、9割と高くなっている傾向が見られております。以上が、紐付け分析結果の報告になります。
○佐藤座長 これはなかなか読み方が難しいのですけれども、49頁を見ていただくと、1つは、いわゆる正社員区分のみ。これは、勤務地限定とか職種限定がなくて、転勤がありますよとか、いろいろな仕事をやっていただきますとか、残業もありますという、そういう社員の人について、限定があるとすればそれを希望しますかというのを見ると、結構多いと。勤務地限定は6割が希望するし、職種も4割、時間限定がちょっとぐらい。いちばん多いのは勤務地限定ですね。あとは、職種も4割、時間限定もという、まずそれが1つです。それで、限定がある所は、それぞれ希望が少なくなる。多分、限定された雇用区分がある所の社員はそちらに移れているので、転勤や職種の異動があるという人は、それを選んでいる人が結構多いのが1つわかるということです。
 あと、54頁以降の所は、限定したときの処遇のあり方についていうと、雇用保障とか教育訓練を同じようにしてくださいと、企業もそう考えているし、働く人もそう思っているのだけれども、処遇などは意外に、1割ぐらいが多い。ただ、企業の考えている、例えば、2、3割低くやっている所はそう思っている企業もあるので。多分これは、賃金について一律にどのぐらいと言えなくて、企業の置かれた状況とか、例えば、異動の範囲がどのぐらいとかはかなり違うと思うので、ですから、外から1割がいいとか2割がいいとかはなかなか言えなくて、3割でも労使で合意できている所もあれば、労使で話し合って、同じというところで合意されている場合もあるということで、かなり幅があるというような気がしました。ですから、どういうようなものがいいというよりかは、多分、個々の事業はかなり違うのかもしれない。企業がおかれた状況とか、事業展開の範囲とか、そういう意味で納得できる範囲はかなり幅があるのかなと。54頁の欄から見ると、平均的には1割ぐらいですけれどね。そういうのが個人的な感想ですが、いかがでしょうか。
○久本委員 私も大体そういうふうに読みましたので、違ったところはどこだろうとちょっと考えていたのですけれど。やはり、雇用保障に関する感覚がものすごく強いというのが正直なところですし、教育訓練に関してもやはり、そこで差をつけることに対しては非常にネガティブな感覚を企業もかなり持っていると思いますし、日本の労働者、もしくは労使関係というのはそういうものかなという気がしました。
 賃金については、読み方なのですが、正直、従業員のほうはかなりばらけてるという感じがしました。イメージとしては、いままとめられたように、1割程度というのが何となく平均的な相場ですが、多様性が結構ありそうで。事例のほうも読んだのですが、あまり差をつけないという。差のつけ方は。賃金よりは昇進のところで差がつくのですね。そういうふうな形になるので、そこはいろいろなパターンがあるのだろうという気がしましたね。だから、その辺では佐藤さんの見解とまったく同じです。あまり新味がないのですが。
○佐藤座長 いかがでしょうか。橋本さんとか。なかなか見にくい、すぐ読むと、ちょっと読みにくいデータですけれども。
 雇用保障もいわゆる正社員と同じというよりは、考え方が一緒という。例えば、ここはなかなかわかりませんが、調整する場合は当然、合理性が必要だろうし、働いている人との納得性も大事だろうし、そういうことで同じという感覚だと。具体的な適用、結果が同じになるかどうか、ここは読み方がなかなか難しいです。
○久本委員 ここはかなり微妙だと思いますね。すごく難しい。まさに古典的に、事業所採用か本社採用かというのがあるわけです。実際は、工場なども閉鎖したら、ほとんど辞めるのですね。大体7、8割は辞めますね。だから、実際には違いが出ると思います。しかし、それを制度的に区別することに対する拒否感というか、それがものすごく強いと思います。だから、この辺の扱いをどう書くかは、むしろ報告書でこの数字をどう解釈するかを注意しないと危いと思います。
○佐藤座長 いまのはすごく大事で、やはり社員の人も、結果として、会社があちらに異動するならば雇用しますよと言っても、なかなかそちらを希望しない。ただ、初めからそういうオファーをしませんと言われることについての抵抗は非常に強い可能性があると思います。
○久本委員 まったくそうですね。
○佐藤座長 だから、そこの書き方というか、整理の仕方が大事かと思います。
○久本委員 だから、単純に同じだというふうにはなかなか書けないかもしれません。難しいです。
○佐藤座長 やはり雇用保障についても、何しろ考えてほしいというのはすごく強いと思います。
○久本委員 それはそうです。
○佐藤座長 ただ、そこが結果的に同じように自分もそれに乗れるかどうかとか、やれるかどうかというのはまた別の話です。
○久本委員 別の話ですね。
○佐藤座長 よろしいですか。全体として見ると、「いわゆる正社員」になるのかはなかなか難しいですけれど、もともと1社1事業所みたいなのは結構あるわけで、もともと転勤がない企業に働いている方もいるわけですが、今回は一応、1社1事業所でも事業所を増やせば転勤が出てくるわけで、そういう意味では1社1事業所でも制度的には転勤がある前提で採用したり、職種もそんなにたくさん種類がないにしても、いろいろな仕事が出てきたときには異動があることを前提で採用したり、あと、残業がそんなに多いわけではないが、残業させることもあるとしているような所は「いわゆる正社員」にしたわけです。そういうのが確かに非常に多いにしても、勤務地なり職種に限定が出てきていることが1つ。時間についての硬直性というのは日本の場合の特性かもわかりませんけれど、時間はなかなか柔軟化していないですが、勤務地や業務についてはかなり変わってきているかと。ただ、働いている社員数からすると、区分は多様化していても、圧倒的にいわゆる正社員の類型で働いている人数が多いのが1つわかったかと思います。
 あと、社員のほうの希望としては、いわゆる正社員の人で、特に勤務地限定、次に職種限定、時間限定と。特に勤務地限定についての希望が結構多いという結果が少しわかったかと思います。いろいろわかったことがあると思いますけれど。
○久本委員 そうですね。特に勤務地限定に関しては、いまはいいが、将来的には希望するという人は結構いたというのが発見で。いまのところはやれるが、将来的にはやれない、5年10年経ったらもう動きたくないという人が結構多いと、その辺の人たちが割と多いことがわかったのではないかと思います。
○佐藤座長 島貫さん、武石さん、何かありますか。いいですか。では、大変な調査で、難しい、新しい、実態がなかなかよくわからないことを明らかにする調査をやっていただいて、データもいろいろ整理していただいたので、多分これでデータ確定とできると思います。どうもありがとうございました。
 次に、ヒアリングですね。実態として、社員についても雇用区分の多元化が進んできているわけですが、それがどんなふうになっているかについての事例があまり知られていないので、今回の事例調査で、どのような実態があるのかを調べていただきましたので、それについて、前回もご説明いただきましたが、その後の修正等を踏まえてご説明いただければと思います。
○加藤次長 それでは、資料3をご覧ください。いまこちらに11社の事例がありますが、1社だけ微調整が入る可能性がありますが、ほぼ確定です。
○佐藤座長 まだ企業の了解が得られていないのですね。
○加藤次長 1社だけ最終調整がありますが他は了解を得られています。それから、前回から事例の番号が変わっています。何故かというと、この後ご説明があるかと思いますが、ポイント、串刺しのほうで、出てくる順番に並べ変えたという関係で、前回と番号が変わっています。
 その他の修正点ですが、お手元の事例01をご覧ください。クレジットカード業A社と書いてありますように、産業分類ではなくて、具体的な事業がイメージできるようにしました。これはホームページで標榜している業種名等を書いて、事例先の企業の確認を取っています。ただ、1社だけなのですが、ヒアリング先のご意向で、業種を書くと会社がほぼ特定されるという所があって、そこだけはサービス業という産業分類にしています。
 それから、2番目に変えた点が、所在エリアという所が、本社所在地ではなくて事業展開しているエリアを表示しています。前は本社を書いていたのですが、全国でやっているかどうかがわかるようにしています。それから、設立年とか制度導入時期はいままで細かい年数が書いてあったのですが、これは年代の表記、何十年代ということに変えています。
○佐藤座長 ここは企業が特定できないようにですね。
○加藤次長 そうですね。
○佐藤座長 大体わかればいいだろうということで。
○加藤次長 資本金の欄はなくしたというのが4点目です。それから、本文のほうに入って、概要以下なのですが、まず「制度名称等」というタイトルにしています。これは、多様な正社員の名前を「何とか制度」としている場合としていない場合がありますので、「制度名称等」として、中身としては、多様な正社員の区分を列記するような形をとっています。
 6点目ですが、制度適用人数は、企業の労務構成がはっきりわかったほうが、どんな企業なのか、どういう背景なのかもわかるだろうということで、今回、確認のタイミングで細かく聞いて、全部埋めています。
 変更点の大きな7点目ですが、これは全体を通してなのですが、雇用区分間の異動、ステップアップというのもあるのかもしれませんが、異動の態様であるとか、あるいは雇用区分間の処遇の違いの背景とか考え方がわかるように留意をして、見直しをしたり、各社の確認をとったりしています。そういうことで、でき上がったのがここにある11事例です。中身については各社との調整で、微妙に表現が変わったりとかいうことがありますが、基本的に前回お出ししたものと大きくは変わっていません。
○佐藤座長 制度名なども、企業によっては制度名を聞くとその企業がわかってしまうようなものは一般的なものを示した。つまり、その固有の名前に意味があるわけではなくて、中身が他の企業も参考になる、それは修正させていただいています。
○加藤次長 そうです。
○佐藤座長 これは、いま読んでいただくのもあれですが、かなりわかりやすいようにはまとめていただいていると思います。
○加藤次長 実際にどういう事例があったかというのは、横串をまとめる際に、それぞれポイントの下に、会社名というか、事例名を表示するような形になっていますので、そちらのほうでもご確認いただけるかと思います。
○佐藤座長 どうしますか。もう少し説明していただきますか。
○久本委員 確認なのですけど。遠方事業所というのは、転居をともなう距離の事業所があるという意味ですね。
○加藤次長 そういう意味です。
○久本委員 わかりました。送っていただいたのをバーッと見たのですが、非常によくまとまっていて、特段足りないというのをあまり感じなかったです。
○加藤次長 ちなみに、こちらには全部で11事例企業がありますが、1つの事例企業の中に複数の多様な正社員コースを持っていることもあるので、正社員コースでいうと17、18となります。また、それらはすべてのコースが何らかの形で勤務地限定があって、それに加えて、職種限定がある場合、部分的には労働時間限定を兼ねているような場合がありますが、大層はやはり勤務地限定というのが傾向として見てとれます。
○佐藤座長 いろいろなタイプがあって、有期契約の人を雇用期間の定めなしに転換するために作った例とか、ある面で今回の労働契約法制なども先取りしているような、販売でしたね、そんな例とかあるので、結構参考になるのではないかと思います。そういう取組みが何社かあったのではないですか。
○加藤次長 そうですね。
○佐藤座長 有期の人を無期にするようなので作ったというのは。
○加藤次長 いまの例でいくと、事例04の送迎バス等運行業などもそうですし、事例07の不動産業などでもそういうことをやっていました。
○佐藤座長 そうですね。
○加藤次長 単純に、小売業だけではなくて、そういう所でも取組みが見られています。
○佐藤座長 前にここでヒアリングをした企業などはそうですね。ああいうようなものが他にも結構あるというのが今回のインタビューでわかったかと思います。
 これまでの議論を踏まえて、研究会報告を次回ぐらいに議論すると思いますが、これは、それの後ろに事例としてつくことになります。ですから、こういうものを踏まえて、今日はこれを少し横に整理していただいたものをご説明いただきますが、その後ろにつくという形ですね。
○加藤次長 はい。
○佐藤座長 そういうものだということです。細かい点はここで全部見れないと思うので。よろしいですか。各企業が自社の雇用処遇制度を見直すときに参考にしていただけるものということで。人事制度がなかなか難しいのは、他の企業がやっているのをそのまま導入すればうまくいくというものでもないので、こういうものを参考にしながら、自社に合うものを労使で作っていただくというような、参考ということになるかと思いますが。
 よろしいですか。もし何かお気づきの点があれば。一応、基本的にこれで。まだ企業から了解を得ていないものがあったりするということですので、表現等が多少変わるかもしれませんが、これでほぼ確定とさせていただければと思います。
 多分、この事例の前に、もう少し横にわかりやすく、これだけではなく他にも事例調査をやっていますので、企業全体として紹介して、10でしたか。
○加藤次長 11です。
○佐藤座長 それ以外にもヒアリングしていますから、それも含めて、少し横に論点を整理していただいた資料を作っていただいているので、それについてご説明いただければと思います。
○派遣・有期労働対策部企画課長補佐 それでは、資料4「多様な形態による正社員の活用に当たってのポイント」というもので用意している資料です。いま座長からお話がありましたように、資料3で、各企業の事例があり、各企業でいろいろな取組みをやっていますが、それに共通するような取組みとしてどのようなものがあるのかという観点からポイントを整理したものです。簡単にいいますと、どういう目的で多様な正社員を活用しているのかといった点、それから活用する場合に、どういう点に気をつけていけばいいのかというような、留意事項といいますか、そういった点について整理しています。
 1つ目ですが、「制度導入の目的」です。大別すると3つあるということで、1人材確保・定着目的型、2合理的人員配置目的型、3非正社員の活用・登用型、という区分ができるのではないかということです。1人材確保・定着目的型というのは、事例でいうと事例01をベースに考えているのですが、例えば働く人のニーズに合わせて異動の範囲を限定するということで、優秀な人材の確保・定着を図ろうとする取組みが見られます。
 それから、2合理的人員配置目的型ということで、働く人のニーズに合わせつつ、その異動範囲を特定し、それによって企業側が要員配置を効果的・効率的にできるようにするということで、合理的に人員を配置することを目的とした活用の仕方という目的があります。
 3非正社員登用目的型ということで、こちらは基幹的な労働力となっている非正社員に対して、この区分を設けることで、安定的な雇用、それから魅力的な処遇を提供するという目的で、この区分を導入しているというような事例がありました。
 続きまして、2頁目です。こういう目的で導入された多様な正社員の区分について、活用する場合にどういった点に気をつければいいのかというので、いくつかの項目ごとに整理しています。1つ目が、2「非正社員からのステップアップ」というような活用の仕方でして、多様な形態による正社員を導入して、非正社員から正社員へのステップアップにつなげていくような取組みが見られています。それから、非正社員から多様な形態による正社員にステップアップした後、そこでとどまらずに、さらに、多様な形態の正社員からいわゆる典型的な正社員にも転換できる形にしているような事例が見られました。そういうことで、非正社員、多様な正社員、いわゆる正社員というような形でのルートを明確化して、ステップアップできるようにしていくという事例があります。
 3点目ですが、「正社員区分間の相互転換」です。多様な正社員という区分を設けた場合、特定の労働者がその区分に固定化してしまうようなことは望ましくないのではないかということで、本人のニーズ、例えば、ワーク・ライフ・バランスの観点から、あるときには多様な正社員を選択し、あるときにはまた典型的な正社員に転換しというような形で、正社員区分間の相互転換を可能としている仕組みがありました。そうしたことが、結果として企業の人材確保だったり、定着といったようなことにもつながっていくということです。実際の事例でいうと、ここにありますように、年1回、社員の申請で転換を認めている例とか、昇格のタイミングで転換を認めているもの、一定の年齢となった際に希望に応じて転換を認めているものという形で、正社員区分間の相互の転換を可能としている取組みがありました。
 3頁目で、4「処遇や能力開発機会等の均等・均衡」です。ここは多様な正社員区分と典型的ないわゆる正社員区分との間の賃金制度、それから賃金水準の均等・均衡を考慮するという取組みが見られています。事例でいうと事例10、労働時間を選択できるようにしている企業で、労働時間限定の区分ですが、時間給ベースで「同一職務同一賃金」という考え方を徹底しているもの、それから勤務地限定の場合に、基本給は同じだが、どこで働いているのかといったことに注目して、勤務地手当を不支給または半額支給としているもの、年齢給・資格給は同じだけれども、特定能力の開発中心という特性に合わせて、職能給だけ若干の差異を設けているものという形で、限定の具合に応じた均等・均衡を図っている取組みが見られています。正社員の区分間の賃金制度・賃金水準を決める際に、労使の話合いによって合理的な差を設定している取組みが見られており、事例でいうと事例08ですが、労働組合からの意見を受けて、限定の程度に応じた賃金水準を設定しています。昇進・昇格、それから能力開発についても、基本的には賃金と同様でして、労使の話合いを基本として、正社員区分間の均等・均衡への配慮を行っている事例があります。ここで挙げている事例では、勤務地限定の場合に、昇進・昇格・教育訓練機会とも同様の取り扱いをしている事例とか、あとは合理的な範囲で異なる取り扱いとしているもので、転換を柔軟に認めている例とか、そういうような形で、差が起きる場合でも労使の話合いの下に合理的な範囲に設定しているという取組みがございました。
 次の頁で、5番目の「事業所閉鎖時等の対応」です。これは、いまも調査のところで話がありましたけれども、例えば、勤務地限定の場合に、事業所が閉鎖された場合にどうするのかですが、事例を見てみると、ここでは各企業が結構悩んでいる部分ということのようですが、事例08の例でいうと、事業所閉鎖時に異動可能な雇用区分への転換を促す、次に、それでも駄目なら近隣の関連会社の事業所を斡旋する、それでも無理だったら解雇となるけれども、事業所再開時に優先的に声をかけるということで、きめ細かい対応をしている事例がありました。職種限定の場合についても、その職種の仕事がなくなった場合に、職務の変更を申し入れることを想定しているということで、いずれのケースについても雇用機会の安定確保に努力している取組みが見られています。
 6番目は「従業員尊重のアプローチ」です。これは多くの事例に共通している取組みと言っていいと思いますが、労使双方が納得できる仕組みにするということ。制度を円滑に運営していくという観点からも重要ということで、労働組合や社員からの要望を受けてそもそも区分を設けている例もありましたし、労働組合を交えて、どういう制度とする動きが必要かという検討を行っているもの、区分を導入するときに、個々の従業員に対する丁寧な説明会をやっている、というような取組みが挙げられています。
 最後、7番目です。こうした活用を通じてどういったメリットがあったのか、他方で、いまどういう課題があるのかです。メリットとしては、これは各企業、おそらくどういう目的で導入しているのかによっても変わってくるのではないかと思います。例えば、事例03でいいますと、ライフプランに沿った働き方が可能な仕組みということで人材が定着したということ、そういう制度、仕組みがあることで採用時にその企業を選ぶということで、人材獲得にも有利に働くということ、非正社員から正社員へのステップアップということで優秀な人材の確保・活用が図られているもの、ワークライフバランスの実現に資するというもの、女性の活用が進んでいるというようなメリット、それから地元志向が強い社員が多い所で、勤務地限定をやることでモチベーションが向上したということで、いろいろなメリットが指摘されています。
 課題としましては、新たな区分を設けることで複雑になるということで、いわゆる正社員と多様な正社員区分との「棲み分け」、それから、いくつもの区分を設けることによって、社員の希望と会社のニーズとが合わなくなる場面もあるということで、こういった点が課題点として指摘されていまして、これらの課題を解決することを通じて、より有効な仕組みとしていくことが期待されるとしております。
○佐藤座長 この研究会報告の全体の狙いというのは、既に正社員の雇用区分の多元化を進めている所について、課題があればそれを見直すときの参考になったり、特に非正規から正規への転換を進めるときに、これまでいわゆる正社員の区分しかない所が、限定型の正社員を転換して中間型として入れる。そういう所が、労使で議論するときに参考になるようなものを提供する。この上に報告書の文章が乗るわけですけれども、これまでの事例とアンケート調査やヒアリングを踏まえて、論点をわかりやすく考えるときのチェックポイント的にまとめてもらったのがこれです。
 いろいろ論点はあるかと思うのですけれども、主要な論点がこういう形の整理でいいかどうかということ、それぞれのまとめ方です。まとめ方のところは、例えば4のところを見ていただくと、基本的に上の文章のところは、今回の事例の11だけではなくて、もっとたくさんの事例を見ながら、かつアンケートを見ながら上の文章があって、つまり賃金水準や制度をどう作るかということの論点が上にあるわけです。その例としていくつかあるということで、下には全部が入っているわけではないのです。大事なのは、このまとめが上をカバーしているかどうかなのです。
 もう少しこういうものを入れておいたほうが、つまりアンケートを見たりほかの事例を見たときに、そういうものを念頭に置きながら、賃金制度・水準の考え方はこれでいいかどうか、というように読んでいただきたいのです。何を言いたいかというと、下の事例のまとめとしてあるのではなくてという意味です。賃金制度や水準についての議論の仕方が、アンケートとか、この研究会での議論とか、事例を見て、大体これで十分満たしているかどうか。それの例として下があるというような考え方で読んでいただくとありがたいかなと思います。普通の、事例から一般化するのとはちょっと違う整理の仕方なのですが、ご理解いただけますか。
 ですから、アンケート等も踏まえながら、例えば昇進・昇格、能力開発であれば、この点が落ちているということであれば入れるという形で議論していただければと思います。制度導入の目的、これはアンケートでも聞いていたりします。非正規からのステップアップとか。正規、非正規は、いわゆる非正規ビジョンの議論、そこは同時並行でいかないからしょうがないか、いいのですかね、有期契約社員とかいろいろあり得るわけですが、それはどうするのだろうか。とりあえずはこうしておきますか。
○派遣・有期労働対策部企画課長 趣旨を取り違えているかもしれないのですが、これはこの形でいいと思っております。
○佐藤座長 雇用期間の定めなし・フルタイム社員とか、有期契約社員という言い方もあり得ますが、とりあえずはいいですかね。そこがちょっとわからないので。
○派遣・有期労働対策部企画課長 ビジョンのほうの話がまだこれからなものですから。
○佐藤座長 どうなるかわからないですしね。まず1、2、3ぐらいのところまでであればお願いいたします。1頁、2頁の辺りで「制度導入の目的」「非正規からのステップアップ」「正社員区分間の相互転換」の辺りの論点で、これはもうちょっと加えたほうがいいとか、この辺がちょっとわかりにくいということがあればお願いいたします。
○橋本委員 あまりこだわりませんが、2の「合理的人員配置目的型」というのはあまりイメージが湧かないのです。事例02のB社が挙がっていたので読んでみました。正社員なのだけれども、異動を断る従業員が出てきたので、新制度を創設という経緯があったのでそういうことかもしれないのですが、タイムリーに要員配置を行うというのだったら、逆に勤務地限定は、非限定でないとどんどん異動させられないので、異動の範囲を限定する新制度がなぜタイムリーな要員配置に役立つのかがわからなくて、ちょっと混乱してしまいました。
○佐藤座長 辞令を出してから「いやだよ」と言うのではなくて、たぶん事前にわかるようにという趣旨なのかな。橋本先生がわかりにくいようだったら少し考えてもいいと思うのです。たぶん趣旨は、雇用区分から異動があるにしても、ある時期当面私は転勤したくありません、私は転勤してもいいですということがわかる情報があるほうが、企業としては人事異動の計画が立てやすいという趣旨かと私は読んだのですけれども、ただ書き方を直したほうがよければ。
○橋本委員 いいです、こだわりません。
○佐藤座長 たぶん、趣旨は異動範囲が事前に把握できるような雇用区分を設定してみたいな感じなのだろうね。橋本先生がわかりにくいということであれば、わかりにくい方が多いと思うので、趣旨がそうであれば、趣旨に合うように考えますか。
○久本委員 1と2がなかなか区別しづらいところがあります。
○橋本委員 それもそうなのです。
○佐藤座長 そうなのです。だから1つの制度に複数の目的があるので、たぶん事例01も02もあったりする可能性はあります。なかなか単純には分かれないのかと思います。1の文章は少し直してください。表でも結構ですけれども、裏側はいかがですか。
○久本委員 同じところで、どのように導入しましたかというのがアンケートのほうであります。そうすると、ワーク・ライフ・バランスの実現のためにみたいのがあります。そうすると、導入の目的自体は、むしろそこのデータを使ってやったほうが、分析というよりは本文との関係ではわかりやすい。定着のためというのもありました。企業アンケートのほうで、なぜこれを導入しましたかという設問があって、それに対する答えがありました。
○佐藤座長 ワーク・ライフ・バランスは結構多かったです。
○久本委員 結構多かったという記憶があるのですけれども。
○小曽根コンサルタント 資料1の9頁です。
○久本委員 項目8だと、優秀な人材を確保するため、定着を図るため、ワーク・ライフ・バランス支援のために、賃金節約もありますが、例えば8とか9の辺りに対応させて、ここの目的に書いたほうが、企業はなぜ入れたのですかといったときに、ここで聞いているわけですから。
○佐藤座長 1の人材確保、定着、ワーク・ライフ・バランス支援と書いてしまって、事例はなくてもいいのです。この事例だけだと引っ張られている可能性があるのです。事例01はそうかもわからないのです。だから、1をもうちょっと広げたほうがいいというのが、久本さんのご指摘なのです。事例だけではなくて、アンケートも含めて書いておいたほうがいいだろうというご提案なのです。
○久本委員 ワーク・ライフ・バランス支援のためというのはあると思うのです。
○佐藤座長 でも1を分けるか、入れちゃう。
○久本委員 どう分けるかは微妙なのです。
○佐藤座長 入れてしまってもいいのではないか。
○久本委員 入れてしまってもいいかもしれません。微妙ですけれども。ここを組み込んだ形でちょっと。
○佐藤座長 どこに入るのですか、アンケートを見ると多いではないですか、これだとどこに入るのですかと言われたときにというのはあると思います。武石さんどうですか。それとも別に起こしますか。
○武石委員 最近制度を導入した所は、ワーク・ライフ・バランスという言葉が出てきたのでそう言っていますけれども、昔はそういうことは言わないので。
○佐藤座長 昔は地元定着が多かったね。
○武石委員 そうなのです。1の中に入りそうな気がします。
○佐藤座長 それでは人材確保、定着、社員のワーク・ライフ・バランス確保。「型」というのは要るのかな。人材確保、定着、ワーク・ライフ・バランス支援、合理的人員配置、非正社員登用だけでもいいのかもわからない。そうすると1の中の文章は広げなければ駄目。先ほどの私の説明であれば、事例は全部の事例でなくてもいいわけです。趣旨の中の事例がすべてなければいけないわけではなくて。
○派遣・有期労働対策部企画課長 あえて「型」という必要はないので。
○佐藤座長 ないよね。重なっている場合もあるからね。人材確保、定着、ワーク・ライフ・バランス支援というふうにして、合理的人員配置とか、非正社員登用というので、趣旨は重なっている場合もあるとか、複数あることがわかるような文章にしたほうが実態に合っているかもしれないです。もし事例のほうの11の中にあれば、事例02とか事例04とか入れてもいいと思いますが、なければないでいいと思います。アンケートのほうでは明らかにあるので。何度も言うとおり、あくまでも書いたもの全部の事例があるわけではない。上は全体の考え方の整理で、当てはまる事例のいくつかが例事的にあるという整理だと考えていただければと思います。それでは「ワーク・ライフ・バランス」を入れることにいたします。
 裏はいいですか、非正規からのステップアップ。今回も特に基幹的な非正社員の人はかなり転換ニーズがあって。いまよりも雇用が安定し、もちろん賃金がいわゆる正社員と同じにならなくてもかなり改善するので、という希望が結構高かったのです。実際上事例ではかなりあったということだと思います。もちろん非正規、有期の方から一気にいわゆる正社員に転換してもいいわけで、ただ転換しやすさという点で、まず限定型を入れて、その後ここでは次にいわゆる正社員という書き方になっています。一気にいわゆる正社員に行くのは書いてないだけで、当然それはあるという前提です。そこはいいですよね、いわゆる正社員のは書かなくてもね。今回の議論で言えばね。
○久本委員 はい。
○佐藤座長 3は、半年ごとに転換はなかなか難しいにしても、キャリアの中でライフステージが変わって転換希望があって、もちろん転換先の雇用区分の働き方ができなければ困るわけですけれども、それができれば転換はできるような形にするというのが3です。ここで「ワーク・ライフ・バランス」が出てくるのですね。両方にあってもいいでしょうね。
○武石委員 3「正社員区分間の相互転換」のところで、「例えば」というので、こういう例もあるのですけれども、あとは育成とか昇進の上限みたいなものをあまり限定しないほうが、相互転換はしやすいと思うのです。アンケートでも、限定していても幅広い能力を習得させる企業が結構多かったりするので、転換をスムーズにするための人事管理面でのポイントは書けるといいかなという気がしました。
○佐藤座長 どうしますか。昇進のほうにもかかわるわけですが、雇用区分ごとに昇進の上限を設定するという考え方も、まだ少なくはないです。天井を外して、ただ当然、仕事によってはある程度異動しないと能力が付かないという点で、あまり異動しないと昇進が平均して遅れると。もちろん異動しなくても能力を付けられる人は上がっていけるようなというふうにしたほうがいいのではないかということだと思うのです。それは私もそうだと思うのです。どう書くかなのです、どこに入れますか。たぶん、そのほうが転換はしやすくなります。
○武石委員 昇格・異動のほうだと、違いを合理的にしましょうというニュアンスが強いような気がするのです。転換のしやすさのためには、あまりいろいろな壁を作らないほうがいいという、こっちに書いたほうがいいのかなと思います。
○佐藤座長 どのように書きますか。業務限定型は業務が違うからなのだけれども、異動の範囲みたいなのを限定したときに、その異動の範囲と業務の範囲、たぶん異動の範囲によって業務の範囲が固定化されるかどうかということとも関係するのです。だから、そこはある程度分けないと。やれる人がいれば、異動の範囲と関係ないという考え方にするかどうかです。どうしますか。昇進の上限や、教育訓練機会の提供など、区分間の転換を阻害しないような業務範囲の限定とか、昇進の限定にしなさいというような書き方ですか。
○武石委員 阻害しないようにというのはそうですよね。
○久本委員 例えば、企業アンケートの25頁の図表29の2番目の「仕事内容や職種の変更に応じられること」というのは、上司のときは当然なのだけれども、そう考えると本人が仕事内容や職種の変更に応じられる能力があるのであれば、本人の希望に応じて転換を可能にするというぐらいに。本人にそういう能力とか意欲があるのであれば、それに応じてできるだけ企業のほうも門戸を開く、というような書き方かのほうがいいのではないか。昇格というような感じはやめたほうがいいのではないかという気がします。
 実際にその仕事ができると企業が思った、本人もそれをやりたいというのであれば、それができるというような可能性を高くする、というような言い方のほうがいいのではないかという気がしました。
○佐藤座長 そうすると、武石先生が言われたような、昇進の上限の話は、昇進・昇格論に書きますか。雇用区分間に応じて上限を設定することについては、結構合理的に必要だみたいなことをできるだけ外れる方向に持っていけば、こっちはいいわけです。
○武石委員 そうなのです。
○佐藤座長 そっちの書き方、外しておけば。
○久本委員 能力があればというふうに書いておけば外れるのです。
○佐藤座長 後ろのほうは、能力があるにもかかわらずここまでしか行けません、というような昇進・昇格にしてはいけないということなのでしょう。
○武石委員 そうです。
○佐藤座長 よくあったのは、店長になるためには、ある程度異動できなければいけませんと。異動はできないのだけれども、店長になれる能力があるという人のときにどうするかという話です。これは異動のこととは関係ないですよと、店長になる能力があるかないかで判断しなさいというような考え方です。
○久本委員 そうです。
○武石委員 転勤ができるとか、できないが昇格に不可欠の条件となる。別にそこが絶対条件ではないのに、絶対条件のように考えてしまうというところが問題です。
○佐藤座長 それは、後ろのほうに書きますか。
○武石委員 後ろでも、書きやすいほうに書けばいいのですが。
○佐藤座長 ここは久本先生が言われたように書いて、後ろの昇進・昇格の作り方のところに書きますか。
○久本委員 能力があればいいではないかという書き方で、ここはサラッと流したほうがいいのではないでしょうか。
○佐藤座長 ここはね。希望する雇用区分の人材要件に合う、希望したら、それに合うと判断できれば転換できるようにしなさいという話だよね。
○久本委員 そうです、そういうことです。
○佐藤座長 こっち側は今度は雇用区分ではなくて昇進の上限なのです。
○武石委員 そうです。
○佐藤座長 雇用区分ごとに、例えば異動できる、できないとかで昇進の上限を設定するということが、ただ業務上何かあり得るかもわからない。職種限定というのは、当然定義上の上限ができてしまうから。
○武石委員 そうです。
○久本委員 そういうことです。
○佐藤座長 それはいいのだよね。
○久本委員 それはいいと思います。
○佐藤座長 そうすると、3のほうはどう書けばいいですか。
○久本委員 だから、そこの言葉を使えばいいのではないかということで、応じられるのであればできるようにやるという。
○佐藤座長 転換を希望する正社員区分の人材要件とか、働き方を希望したり、それができる条件があれば転換を認めるみたいな。
○久本委員 能力のある場合はでしょうね。
○佐藤座長 確かにここは難しいです。希望すれば認めるわけではないのです。それはなかなか難しいような気がします。
○久本委員 上司の推薦は当然。
○佐藤座長 いやいや希望というか、希望するといっても、行った先の仕事ができなければ困るわけだから。
○久本委員 だから、できるという前提ですよ。この人なら仕事ができるということであればということです。
○佐藤座長 これは、希望すればできるみたいな書き方になっています。
○久本委員 それはちょっと違う、それはあり得ない。
○佐藤座長 転換をする正社員区分の人材要件を充足できる能力がある場合は認めなさいという話、書き方は。
○久本委員 転換だから両方あるからね。だから、家庭生活の観点からもう移りたくないという転換もあるわけだから、個人の生活という、だから両方書いたほうがいいのです。文面はいますぐには思い浮かばないのですけれども、何かそういうのを書いたらいいのではないでしょうか。
○派遣・有期労働対策部企画課長 事務局から言うのもなになのですが、「例えば」のところに、現在は「本人の希望に応じて正社員区分間の転換を可能とする」と書いてありますけれども、たぶん「希望・能力」ぐらいにすれば、いまのご趣旨はある程度反映されるかと思います。
○佐藤座長 それでいいですね、本人の希望と能力でいいよね。
○派遣・有期労働対策部企画課長 わずか2文字なのですけれども。
○久本委員 なるほど、そのほうがいい。
○佐藤座長 そうしましょう。そうしておいて、「賃金制度・水準」を議論しますが、「昇進・昇格」はどうしますか。これは「固定化」なのだけれども、一応これは広くは読めるのだけれども、はっきりしたほうがいいという話ですよね。「とりわけキャリアの上限については」みたいにどこかへ書きますか。「昇進・昇格の上限を設定する場合は」。
○武石委員 ここの書き方が、「キャリア管理について、異動の範囲や担当業務の違い等に応じて異なる取り扱いとする場合は」というように、「異なる取り扱いをする場合」に限定して書いてしまっていますので、その前に大原則みたいなものをまず指摘すべきです。不必要な制限を付けることによって、能力の発揮ができないようなことがないように、まずそこの大原則を言ったほうがよいです。
○佐藤座長 どうしますか。まず教育訓練について言うと、これを業務限定にするかどうかではあるけれども、就いている業務に必要な教育訓練をしなければまずいです。もう1つは、キャリアがあるとすれば、いまの仕事だけではなくて、その区分ごとのキャリアラダーを上がっていける教育訓練をしないといけないです。ただ、そのキャリアの上限があれば、それを超える教育訓練をしろというのは、普通は企業からするとなかなか難しいです。そのときのキャリアの上限の設定の仕方ですね。
○武石委員 そうです。
○佐藤座長 それが異動する、しないみたいな、この仕事をやれるということに関係ないような設定をするのも問題だということなのです。それをどう書くかです。これは、広く読めば書いてあるのですが、それとも1行ぐらい加えますか。たぶん、問題になるのは勤務地限定の場合です。
○武石委員 勤務地限定の場合ですよね。
○佐藤座長 勤務地限定なので、キャリアの上限を限定する場合というか。どうするかな。上限を設定するなと書くのもなかなか。
○久本委員 そんな言葉は書かないほうがいいと思います。
○佐藤座長 難しいかもしれないですね。
○武石委員 アンケートでは、同水準という所が多いのです。勤務地限定は同水準は違うか。
○久本委員 能力開発に差は付けていないです。
○佐藤座長 上限は結構あったのではないですか。
○武石委員 上限はあります。教育訓練の機会は同水準が。
○小曽根コンサルタント 18頁です。
○佐藤座長 やはり、勤務地限定が多いのです。これは難しいですね。意外にそれが労使で話し合った合意点だったりする可能性もあります。その代わり賃金に差を付けないとか、セットの場合もあります。
○久本委員 どこで差を付けるかという。
○佐藤座長 だから、それは駄目だというのを書くのも結構難しいかもしれません。
○武石委員 駄目だというのは難しいと思うのですけれども、不必要な、必要以上の制限を付けている可能性があるということなのですけれども。
○佐藤座長 そうなのです。私の感触だと、流通などで勤務地限定で入ったときに、本当に自分の住んでいる所から通える範囲内のお店だけなどというと、売場主任になるわけなのです。ブロックで異動のときには店長までとかというのも結構あったのです。ただ、最近はそれをなくし始めて、やはりモチベーション上ここまでしか行けないというと、能力開発のモチベーションも落ちますし、実態は異動しなくても、もちろん比率的には少なくなりますけれども、店長をやれる能力のある人が出てきたりということで外すのが出てきています。私もそうだと思うのです、だからどう書くかです。初めに会社も一方的に導入したわけではなくて、労使で話し合って入れた。だけどやってみたら経営側にとってもマイナスになるということで変えてきた。だから変化の方向はそうだと思うので、それをどう書くかなのです。
○久本委員 この文章しか仕方ないかもしれないですね。そういう意味では、下手に上限がどうこうと書かないほうがいい。
○佐藤座長 確かに難しいですね。
○派遣・有期労働対策部企画課長 余計なことかもしれないのですけれども、たぶん最初の2行で、「異なる取り扱いとする場合は」と決めつけてしまっているのにすごく違和感を持っているようなので、やや緩和するという程度の話なのですけれども、「異なる取り扱いを検討する場合も」とかぐらいにするとか。
○久本委員 なるほど。
○派遣・有期労働対策部企画課長 その後は「均等・均衡」とか、「固定化が生じない」というので、いま言ったようなご趣旨を読んでいただく。これも、また完璧な解決方策ではないのですけれども。
○佐藤座長 限定するのはやむを得ないのだけれども、結果的にできる人が出てきたときに、その人に機会を与えないようにするのをやめろという考え方なのです。
○久本委員 そういうことです。
○佐藤座長 全く同じように教育訓練しろとか、それはなかなか難しいです。でも、結果的にできる人も出てきてしまったときに、その人に機会を与えろという趣旨なのです。それを書くのはなかなか難しいです。
○久本委員 ただ、ここは「仕組みを整備する」と書いてあります。運用でやりましょうという話とは違うのです。「仕組みを整備する」というのはちょっと固いです。「仕組みを考える」ぐらいにしますか。
○佐藤座長 固定化というのと、ここに書くかだよね。「不合理なキャリアの上限」とか書きますか。後ろのほうで書いてあるのは、区分間の固定なのです。「区分ごとの昇進の上限があまり合理的でないようなことが起きないように」ということを後ろのほうに書くかです。特定の正社員区分への固定化とか、各正社員区分における、あまり合理的でないキャリアの上限が生じないようにという言い方はできるかもわからないです。後ろのほうに書くということです。「特定の正社員区分への固定化や、各区分内の不合理なキャリアの上限が生じないように」というような書き方をするかどうかです。でも、そう書いてしまったら、これは何のことかと言われますね。
○久本委員 何のことだか一層わからないという感じになる。
○佐藤座長 後ろがつながらないか。「正社員区分間での転換の仕組み」というふうにはつながっていかなくなりますね。もっと書きますか。「転換の仕組みを整備したり」の後ろにもう1つ入れますか。
○久本委員 文章が長い。
○佐藤座長 長いね、これ一文なのだね。
○佐藤座長 「均衡に配慮する」で切りますか。それで「さらに」とかでつなげて、文章を2つに切りますか。「配慮すること」というふうにしますか。「同時に」はやめて、「また転換を整備したり、各正社員区分のキャリアの上限が」何だろうな。「キャリアの上限を合理的なものにすること」とかにしますか。
○久本委員 「均等・均衡」があるので、何か二重に言っているような感じがします。
○武石委員 そういうことは言っているのです。
○佐藤座長 言っているね。
○武石委員 ちゃんと読めば言っているのですけれども。「異なる取り扱い」のほうが前面に出てしまっているので、そこが気になるのです。
○佐藤座長 そうです。同じにできるものは同じにしておいたほうがいいという話でしょう。
○武石委員 そうなのです。
○佐藤座長 全部異なるのがいいみたいなイメージで捉えないようにということですね。
○武石委員 そうなのです。同じにできるところもあるでしょうと。
○佐藤座長 しようがないか。
○武石委員 ちょっと考えてみて、駄目だったらもうこれで。
○久本委員 考えてもらって。
○佐藤座長 基本的には入っていると。ただ、もうちょっと表に出そうと。
○武石委員 はい。
○佐藤座長 「賃金制度・水準」のところはいかがですか。これがなかなか難しいのは、業務限定型になると、たぶん職務給的な要素が高くなったりとか、そういう意味では違う可能性があるわけです。いわゆる正社員が職能給的で、いまでも専門職の契約社員などはまさに業務でみたいになりますので、ここは一律にこういう賃金制度とも書けないです。
○久本委員 だから難しいです。
○佐藤座長 例えば同じ職能給でも、その水準は1割がいいとも書けないわけです。確かに全体で見れば1割低いようなのがあるのだけれども、結構幅があるので、そういう意味ではたぶん労使の話合いがすごく大事になります。3割でも結構合理性がある場合、納得性がある場合もあるし、同じにしなければいけない場合もあるので、水準についてはここかなということなのですけれども。一応、制度と水準と両方入れて、本当は分けて議論しなければいけないのかと思います。
○久本委員 これ以上書けないと思います。
○佐藤座長 時間限定であれば、同じ区分の中であれば、たぶん時間比例ということになります。
○久本委員 まあ、それはそうです。
○佐藤座長 いいですか。次に、先ほどの難しい事業所限定のケースがあって、実態としては。ただ、ここは企業も基本的には同じような考え方で、従業員もそれを希望しているのは、その中で雇用区分の違いによった、例えばもともと転勤させるというのと、ただ転勤の機会をオファーするというのが、例えば事業所限定で、本人が行かないという場合はしようがないわけなので、そのような感じです。ここもなかなか難しいです。いいでしょうかね。そういう意味で6は基本的に全体にかかわっていることを特出しで書いたという感じではあります。
 最後のところは導入の目的とも対応するわけです。そういう意味では人材の確保、定着、ワーク・ライフ・バランス、女性の活用もここで出てきます。目的は男女別だけれども、結果的に女性の活用の成果も書いたほうがいいですね。あまり目的には書かないほうがいいかもしれないです。これは男女別なくでやって、結果的に女性にプラスだったというほうがいいかもしれないです。
○久本委員 必ずしも「女性にプラス」とは書かなくてもいいのではないかと思います。
○佐藤座長 確かにそれも考え方としてはあるけれども。
○久本委員 私は「女性に」というのはあまり思っていないので。
○佐藤座長 どう思いますか、ここは「活用」ですね。
○久本委員 このアンケート結果を見ても、男女比というのは大体フィフティ・フィフティなのです。男性が半分ぐらいいるのです。だから男女問わずなのです。別に女性のためなどということは書く必要ないと思っています。男性のためだと考えたほうがむしろいいです。
○佐藤座長 どうですか、確かに目的のところにはなくて、ここだけ出てくるというのも。女性活用というのも、最近はあまり「活用」というのは使わなくなってきています。
○武石委員 「多様な人材の活躍・推進」とか何か、そういう言い方をすると。
○佐藤座長 どうしますか。それは目的のほうにもそれを入れる、入りますか、アンケートの中に出てきていますか。
○久本委員 回答者の属性を見たらわかるわけで、多様な正社員の45%は男性です。5割弱が男性で、5割強が女性です。ある意味でいわゆる正社員は男性が7割以上いるわけですけれども、多用な正社員というのはフィフティフィフティなのです。だから、これを女性のための制度などと考える必要は全くなくて、男女両方のための制度と考えたほうがいいわけです。
○佐藤座長 そうすると、ワーク・ライフ・バランスの実現みたいなことのほうがいいと。
○久本委員 そうです、まさしくそちらのほうが適切だと思っています。
○派遣・有期労働対策部企画課長 役所の立場としては、最近「全員参加」という言葉の中で、女性のM字カーブをなんとかして上げようという発想があります。政務の意向もありますので私どもとしては女性ということをどこかに入れておきたいという気持はあります。
○佐藤座長 目的はそうではないけれども、結果的に女性の就業率に貢献するという趣旨にしなければいけない。
○派遣・有期労働対策部企画課長 はい、促進というぐらいなのですけれども、何か入れさせていただけるとありがたいかと。ちょっと僭越なのですけれども。
○佐藤座長 どうですか。
○久本委員 でも、個人的には、アルバイトで増えて、アルバイトとパートでM字カーブの底が上がったら、それで問題は解決なのかという議論だと思うのです。
○派遣・有期労働対策部企画課長 たぶん想定しているのは、いくつか好事例みたいな中で、育児・家庭との両立みたいな文脈の中で、多様な働き方を選択できるということで、辞めなくて済んだという報告があったのが、1つこういう書き方につながっています。
○佐藤座長 それがワーク・ライフ・バランスの実現という。
○派遣・有期労働対策部企画課長 そこで読めていると言われればそのとおりなのですけれども。
○佐藤座長 「男女のワーク・ライフ・バランスの実現」という。
○派遣・有期労働対策部企画課長 それでもいいかもしれないです。
○久本委員 でも女性ばかり見て、男性はフルタイムで残業ばかりしていていいのかということを考えないと、結局、育児は全部妻がやればいいのだということが前提ですよね。私は、その考え方はおかしいのではないかと思っているのです。そういう意味では、育児も男性もちゃんと見なければいけないので、そのような観点からすると、あまり「女性活用」と言わないほうがいいのではないかと思っています。
○佐藤座長 橋本さんや政務官のご意見も伺いたいと思います。
○津田政務官 久本先生がおっしゃるように、本来は男性とか女性という問題ではないわけです。それぞれの働き方というのは、女性はこうだとか、男性はこうだというようなことはないわけです。筋論からすれば、「女性」と限定して言う言い方はいかがなものかという気はします。そこは、課長はそのように言っていますけれども、本来のあるべき議論でいいのではないでしょうか。
○佐藤座長 目的のほうには書いてないので、そういう意味でここは「男女のワーク・ライフ・バランスの実現」と書きますか。「女性のみならず男性」でもいいけれども。「女性のみならず男性のワーク・ライフ・バランスの実現」と書こうか。
○久本委員 いや「男女の」でいいのではないですか。
○佐藤座長 それでは「男女のワーク・ライフ・バランスの実現」と。これは結果のほうだからね。目的は女性どうこうではないから。結果としてみれば、女性だけではなくて男性もということで、「男女」ということで。
○久本委員 はい。
○佐藤座長 何かあったら津田政務官にお願いして。議論は聞いていただいているので。課題は、確かにプラスと、人事管理上難しい面が出てくるのは事実なのです。全体を見ていかがですか。目的の1のところに「ワーク・ライフ・バランス」が入るようにと。その後ろにも出ていましたから、やはり入れたほうがいいですね。効果のほうに「ワーク・ライフ・バランス」があるので、1のほうにも入れようということ。あとは「昇進・昇格」に趣旨は入っているけれども、ちょっと書き加えるか、これでいいかということを、武石さんのほうでご提案していただいて。また、皆さんにも伺いますけれども。
○武石委員 ちょっと考えたのですけれども、「昇進・昇格」のところの「昇進・昇格、教育訓練といったキャリア管理について」の次に、後ろの「特定の正社員区分への固定化が生じないような制度を整備し、円滑な転換につながるようにすることが重要」と、それをまず言って、それで「異動の範囲や異なる取り扱いとする場合には均等・均衡に配慮する」という、その2つに分けてはどうでしょうか。
○佐藤座長 いまの点は事務局もわかりますか。
○派遣・有期労働対策部企画課長 はい。
○佐藤座長 それでいいよね。確かにそのほうがはっきりする。まず、固定化しないように設計しろと先に言ってしまうということですね。
○武石委員 はい。
○佐藤座長 分ける場合は合理性がなければ駄目だと。そのほうがいいかもしれない、はっきりする。
○武石委員 合理性があって、均等・均衡への配慮をする。文章を整理していただいて、その2つに分けるということで。
○佐藤座長 そうしましょう、いいアイディアだ。3の「本人の希望や能力に応じて」というように「能力」を入れるということで、当然、希望すれば移れるわけではなくて。
○久本委員 そうです。
○佐藤座長 先ほどのもそうですよね。ここまでというような、能力があれば当然店長にもなれるように。もちろん異動は、店長になる育成に必要な部分はあると思うのです。それは10人のうち1人しかなれない可能性でなくても、全員がなれない、能力がなくなるわけではないので、そこがわかるような形に書く。初めから頭を付けるわけではなくてということです。
○派遣・有期労働対策部企画課長 はい。
○佐藤座長 全体に何かありますか。
○武石委員 事業所閉鎖のところの読み方なのですが、「最大限努力」というのが、何に努力するのか。雇用機会の安定確保についての努力なのか均衡に努力するのですか。均衡の努力だったらいいと思うのですけれども、安定確保について最大限努力しろと言われると、ちょっときついかなという気がするのです。ここの読み方がちょっと。
○佐藤座長 正直言って、安定確保も違う可能性があります。ここはどうですか、均衡について最大限努力するのでしょうね。
○武石委員 均衡についてとか、明確に言ったほうがいいのではないか。何に努力するのかちょっと読みにくいところがあります。
○佐藤座長 これだと、均衡が図られるよう、均衡を図るような最大限の努力なの。事務局はどう書いたの。
○派遣・有期労働対策部企画課長 均衡が図られるように。
○武石委員 雇用機会の安定確保について、これを素直に読めば均衡努力なのでしょうか。
○佐藤座長 均衡が図られるよう努力を最大限お願いしますと。
○久本委員 「雇用機会の安定確保について」の後に「、」を打って、「図られるよう、」の「、」を取る。
○佐藤座長 そうだな、そのほうがいいね。
○武石委員 そのほうがいいです。
○佐藤座長 何か役所的と言うと怒られてしまうけれども。
○佐藤座長 今までの議論を踏まえたもので、直していただいたものを一応皆さんに見ていただく形にしたいと思います。全然変えないというわけではなくて、原則これで確定ですね。ただ、いまみたいなことがあれば、全然変えないと決めてしまうのがいいのかどうか。まだ全部の報告書のイメージがわからないから、一応確定というのでいいですか。一切動かさないというわけにもいかないでしょう。
○久本委員 微調整がある。
○佐藤座長 多少の微調整がある。
○派遣・有期労働対策部企画課長 2月の事業主セミナーで、これを素材として活用する予定です。
○佐藤座長 そのときに何と言うかです。本日の研究会の日付で配るという考え方もあります。
○派遣・有期労働対策部企画課長 この日に提出した資料という。
○佐藤座長 そのものとして配るというのはどうだろうか。
○派遣・有期労働対策部企画課長 いいのではないですか。
○佐藤座長 だから、嘘ではないわけです。でもそんなに変わらないと思うのです。ただ、正直言って、これは全部ができているわけではないから、どうですかね、本日の研究会の日付で議論したもので、多少変わることがあると書く必要はないけれども、本日の日付で出すというのはどうですか。
○派遣・有期労働対策部企画課長 我々としては全く問題ありません。
○佐藤座長 東京労働局も、土日を使って千何百人分の資料を自分たちでコピーするという話を聞いてしまうと、あまりたくさんの資料を配ってやるのはかわいそうかなという気がしています。土日やると言っていたので、極端に言えば、ホームページに載っていますからというぐらいでもいいかなという気がしないでもないのです。1時間の講演ですよね。だから、その辺はそういう話を聞いたので。それでは、本日の日付で配るなり、参考にするなりを踏まえてということで、東京は私で、関西は久本先生が講演をやるということです。まだ報告書が確定していないので、一応こういう議論をしていますということで、多少我々の個人的な意見も入るような形でやらざるを得ないと思うので、その辺ご了解いただければと思います。これを使いながらだけれども、研究会ではこうなりましたという話はできないので、その辺はご了解いただければと思います。それでいいのですよね。
○派遣・有期労働対策部企画課長 はい。
○佐藤座長 政務官のほうから、全体についてもし何かあれば。
○津田政務官 十分に納得した内容でした。
○佐藤座長 ありがとうございます。やはり、我々としては聞いていていただくのは非常にありがたいことなのです。結果だけが出ると、ちょっとわかりにくいところがありますので。どうもありがとうございました。アンケートは基本的に確定ということで、事例は企業の了解等もありますので、それで確定するということ。ここのポイントについても、基本的には先ほどの手直しでほぼ確定で、たぶん変更はないと思います。もしかしたら順序の入れ替えとか、報告書の段階でそういうことは起き得る可能性があります。そういう意味では、本日確定したものと整理させていただければと思います。それでは、事務局から今後の日程等について説明をお願いいたします。
○派遣・有期労働対策部企画課長 次回の研究会の日程、場所については調整の上、改めてご連絡をさせていただきます。
○佐藤座長 少し早いのですが、これで終わりにさせていただきます。政務官にはおいでいただきましてありがとうございました。
○津田政務官 ありがとうございました。


(了)

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