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2012年1月30日 第15回社会保障審議会人口部会 議事録

○日時

平成24年1月30日(火)10:00~12:00


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

委員

阿藤 誠委員 稲葉 寿委員 大林 千一委員
加藤 久和委員 鬼頭 宏委員 白波瀬 佐和子委員
鈴木 隆雄委員 津谷 典子部会長 林 徹委員
林 寛子委員 廣松 毅委員 山田 篤裕委員

事務局

香取政策統括官(社会保障担当) 武田参事官(社会保障担当)
朝川政策企画官 鈴木社会保障担当参事官室長補佐
高橋社人研副所長 金子社人研人口動向研究部長

○配布資料

資料1日本の将来推計人口(平成24年1月推計)
資料2日本の将来推計人口(平成24年1月推計)推計手法と仮定設定に関する説明資料

○議事

○津谷部会長
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第15回「社会保障審議会人口部会」を開会いたします。
 本日は、佐々木委員及び宮城委員が御欠席との御連絡をいただいております。
 それでは、早速、議事に移りたいと思います。
 これまで、当人口部会では、国立社会保障・人口問題研究所が実施する将来人口推計の前提等につきまして、昨年の7月から4回にわたり審議をしてまいりました。このたび、国立社会保障・人口問題研究所の方で将来人口の推計の最新結果がまとまったとのことでございますので、本日はこの推計結果の報告を受けたいと思います。
 それでは、早速「日本の将来推計人口」につきまして、社人研の金子部長から御説明をお願いいたします。

○金子人口動向研究部長
 ありがとうございました。今、部会長の方から仰せがありましたとおり、本部会におきまして長らく御審議をいただきました新たな日本の将来推計人口、この結果がまとまりましたので、御報告をさせていただきます。
 お手元には2種類の資料を配付させていただいております。1番と書いたもの、冊子となっているものでございます。それから、2番と記しましたスライド図表をまとめたものでございます。順に説明させていただきますけれども、まず冊子の資料の方をごらんください。
 表紙に目次を示してございます。内容は、1としまして、日本の将来推計人口の紹介、2としまして、推計結果概要の記述、3、推計方法の概要、そして最後に、主要な結果の図表をまとめてございます。順に要点をかいつまんで御紹介させていただきます。
 1枚めくりまして1ページをお開きください。中ほどに、「日本の将来推計人口について」、簡単な紹介がございます。既に御案内のとおりでございますけれども、日本の将来推計人口とは、全国の将来の出生、死亡並びに国際人口移動につきまして仮定を設け、これらに基づいてわが国の将来の人口規模並びに年齢構成等の推移につきまして推計を行ったものでございます。
 推計の対象は、外国人を含めまして、日本に常住する総人口といたしておりまして、これは国勢調査の対象と同一の定義でございます。今回の推計の期間は、平成22年、2010年の国勢調査を出発点といたしまして、50年間、2060年までとなっております。各年につきましては、10月1日時点の人口に関する推計となります。
 また、参考推計といたしまして、その後更に50年間、2110年までの人口を計算いたしまして付してございます。また、将来の出生、死亡に関しましては、その推移につきまして不確実性がございますことから、出生、死亡それぞれに、中位仮定のほかに、高位、低位の仮定によって一定の幅を与えまして、結果の将来の人口の推移につきまして、一定幅を与えることで見通していくということにいたしております。したがいまして、出生、死亡それぞれ3仮定の組み合わせで、全体で9通りの推計を行ってございます。これは、前回、平成18年1月推計と同様でございますが、お手元の冊子の方には死亡仮定中位を固定した出生3仮定の結果、それと、今度は出生の仮定を中位に固定した死亡3仮定の結果というものを中心にして掲載しております。
 それでは、推計結果についての御説明に移らせていただきます。主な結果につきましては、冊子の11ページの方にまとめてございますので、こちらをごらんください。こちらのページの表でございますけれども、これは全9通りの推計のうち、一般に用いられることの多い3つの推計の結果をまとめてございます。すなわち、表頭にごらんいただけますとおり、死亡中位仮定に対して、出生中位、高位、低位の3仮定を組み合わせた3つの推計結果でございます。各仮定につきましては、また後ほど御説明をいたしたいと思います。
ここでは、この表の一番左の列になります出生中位、死亡中位の仮定に基づく推計について見ていきたいと存じます。まず、総人口でございますけれども、平成22年、2010年の実績値、1億2,806万人を基点といたしまして、平成42年、2030年には、1億1,662万人となりまして、推計期間の最終年に当たります平成72年、西暦2060年には8,674万人になると推計されております。
 この間に1億人を下回る年次が2048年ということになってございます。日本の総人口は、今後、ごらんいただきましたように、一貫して減少いたしまして、2010年から2060年までの50年間で、差し引きしますと、4,132万人の減少ということになります。これは当初の人口の割合にいたしますと、32.3%の減少ということが見込まれてございます。
 この表では、前回推計の結果が一番右の列に示されておりますけれども、例えば前回推計の最終年である2055年について、今回推計との違いを見ますと、前回、8,993万人に対しまして、今回、9,193万人となっておりまして、今回は若干多目の人口推移となっているということがわかります。その理由は、後で述べますが、主に出生仮定の改定などによるものでございます。
 ただし、前回の推計の2055年の人口に相当する、今回の推計での到達年次というものを見てみますと、2年おくれの2057年となっておりまして、また、先ほど申し上げました1億人を下回る年次につきましても、前回、2046年から、今回、2048年と2年おくれということになっておりまして、人口減少に関しましてはその程度の進行のペースであるということになります。
 次に、その下にまいりまして年少人口について見てみますと、基点となります2010年の1,684万人より一貫して減少いたしまして、2060年には791万人となってございます。これは、当初人口から893万人の減、割合にいたしまして53.0%の減少でございます。年少人口は、この50年間で半減以上の縮小を経験するという結果になってございます。
 また、年少人口の総人口に占める割合も、13.1%から9.1%にまで縮小するという結果になっております。ただし、前回推計と比較いたしますと、年少人口の減少のペースは少し緩和されております。
 次に、生産年齢人口でございますけれども、2010年の8,173万人から、2060年の4,418万人まで、こちらも一貫して減少してまいります。減少幅は、3,755万人、割合で45.9%の減ということになりますので、こちらも半減に迫る減少ということになってございます。総人口に占める割合は、当初の63.8%から50.9%へと縮小いたします。
 最後に老年人口、すなわち65歳以上人口でございます。2010年の2,948万人から、2060年には3,464万人と、こちらは増加を示してございます。ただし、老年人口につきましては、今後増えてまいりますが、表にはちょっと示してないのですが、2042年に3,878万人でピークを迎えまして、それ以降は総人口とともに減少に向かうというアップダウンを示します。2060年には、その結果として3,464万人になるということになります。このピーク時の2042年の老年人口は、当初の2010年の人口よりも930万人多くて、割合にして31.5%の増加を最大として示します。
 また、同時に示してあります、一般に高齢化率と呼ばれております老年人口割合につきましてですが、2010年に23.0%から一貫して増加してまいりまして、先ほども申しました老年人口がピークを迎える2042年には36.8%、そして、推計最終年の2060年には39.9%となっております。したがいまして、老年人口割合の方は、この推計期間を通して増加していく見込みということになってございます。
以上、人口推移の詳細につきまして、各年の数字を15ページの方に掲載しております。
 それから、グラフを19ページ以降にお示ししてございます。19ページをごらんいただきますと、上の図1-1、こちらに総人口の推移を出生高位・低位の仮定の結果も併せてお示ししてございます。また、前回推計の結果を破線として示してございますので、その違いをごらんいただけるかと存じます。ごらんのとおり、人口の推移自体につきましては、結果としては、前回と比較してそれほど大きな変更とはなっていないように思います。
 その下、図1-2でございますけれども、こちらは老年人口割合の推移を示してございます。実はこの図には誤植がございまして、図の一番右に、文字で、上から高位、中位、低位とごらんいただけるかと思いますが、これは高位と低位の位置が間違っておりまして、上から低位、中位、高位の順が正しいものとなります。大変申し訳ございません。正誤表の方にも掲載してございますけれども、訂正してごらんいただきたいと思います。こちらの図でも前回推計の結果を破線で示してございます。
 それから、1ページおめくりいただきまして20ページの方には、年齢3区分の人口につきまして、上の図では実数の推移、下の図では割合の推移として示してございます。こちらでは、年少人口の減少と老年人口の増加というものの対比がごらんいただけるかと存じます。
 その隣のページ、図1-5といたしまして、人口ピラミッドの変遷を示してございます。一番上の2010年時点の図でございますが、いわゆる団塊の世代、それから団塊ジュニア世代と呼ばれるような世代、人口規模の大きい世代がいまだ生産年齢人口にあります。したがって、中ほどが比較的肉厚のピラミッドとなってございます。
これが、その下にございます2030年の図になりますと、50歳周辺よりも下の年齢、これが少子化時代以降に生まれた世代ということになりますが、したがいまして、かなり細ってまいります。裾野の方ですけれども、20歳より下が3つに分岐しておりますけれども、これは出生3仮定に対応した推計結果の違いをあらわしておりまして、内側から、低位推計、中位推計、高位推計となってございます。
 一番下の2060年の人口ピラミッドですけれども、まず第一に、全体の面積が縮小しているということがありまして、人口減少が進んでいるということを示しております。また、生産年齢人口、年少人口を通して、下の方向へ行くほど、すなわち、若い年齢ほど人口が縮小した形状をしているということがわかるかと存じます。
それから、老年人口の領域を見ますと、人口規模の大きい団塊ジュニア世代、これがちょうど男女の生存率の差が大きくなります80歳代にかかっていることから、ピラミッドにも、この男女差が反映いたしまして、少し左右非対称の形となってきております。これは、前回の2055年ではここまで明瞭には出ていなかった特徴ではないかと思います。
 以上が推計の結果の概略でございますが、これ以外の仮定の組み合わせによります推計につきましては、まず、25ページ以降に死亡3仮定の違いを反映いたしました推計の結果を掲載してございます。
 また、全9通りの比較というものも31ページ以降に示してございます。
 更に、2061年以降の参考推計につきましては、45ページ以降に掲載してございます。いずれも主要なものを抜粋して掲載しておりまして、更に詳細な表、一番詳しいものは1年ごとの男女・年齢(各歳)別の人口ということになろうかと思いますが、そういった詳細な推計結果につきましては、私どもの社人研のホームページの方に既に掲載されていると思います。ちょっと確認していませんけれども、この部会の開始と同時に掲載しているということになっておりますので、詳細につきましてはそちらを御参照いただければと存じます。
 さて次に、推計結果の前提となります仮定設定について概略を御説明させていただきたいと存じます。ここからは資料2の方、「推計手法と仮定設定に関する説明資料」とありますスライド図表の方を用いて御説明いたしたいと思います。
表紙をめくりまして2ページは推計の枠組みと基準人口について記述してございます。
 3ページには、基準人口の姿ということで、2010年の人口ピラミッドを示してございます。
 次の4ページに、推計の仮定として用いるデータの一覧を示してございます。
 また、5ページには、出生、死亡、国際人口移動それぞれの仮定の考え方の概略を示してございます。
 以下、それぞれの仮定設定につきまして、図表を見ながら要点をかいつまんで御説明させていただきます。
 まず、6ページ、「出生の仮定」でございますけれども、こちらの方に枠組みを示してございます。参照コーホートは、2010年時点で15歳となる世代、1995年生まれの世代といたしまして、同年に出生過程を完了いたしました1960年生まれの世代から、この参照コーホート、95年生まれの世代までの出生行動を実績値により精査をいたしました。
 7ページの方には、この分析の対象といたしました幾つかの出生力要因につきまして示してございます。基本的にはコーホート合計特殊出生率というものが、今、申し上げましたコーホートを中心に必要となるものでございますが、それらは、そこにお示しをしました要因を分析することによって得ていくものでございます。
 次の8ページの方には、それらの要因の実績推移に基づきます今後の動向に関する見方と、結果として得られました参照コーホートの指標値をまとめてございます。
 参照コーホートの平均初婚年齢というのは右から3つ目の列に示してございますが、28.2歳ということになりまして、これは同時に示してございます前回推計の仮定とほぼ同じでございます。
 また、生涯未婚率、その下でございますが、20.1%でございまして、前回推計と同じコーホートで比較しますと、3.5ポイントほど低くなってございます。これは、2006年以降に見られた30歳代での初婚率の増加というものによって、生涯未婚率の推移を見直した結果でございます。生涯未婚率の上昇自体は今後も進むのでございますけれども、前回の推計の仮定と比較しますと、それよりはやや緩やかに進むという結果になったものでございます。
 その下に当たりますけれども、夫婦の完結出生力につきましては、晩婚化に伴う低下と、それ以外の結婚後の行動による低下に分けて推計してございますが、結果といたしまして、参照コーホートで夫婦完結出生児数は1.74人となってございます。前回と比較しますと、同じコーホートで0.04人増えているということになっております。これは、2006年以降に見られました、主に30歳代半ばから40歳代にかけての夫婦の出生率の増加によって見直した結果でございます。
 そうは言いましても、夫婦の出生力の低下は今後も進行を見込んでおります。前回仮定した低下よりは、やや緩やかに進むと見てございます。
 その下の離死別再婚効果につきましても、近年、離婚率の上昇が一段落しておることなどを踏まえまして、前回推計と比較しますと、ごくわずかですが、改善いたしております。
 全体的にそのような状況になっておりますけれども、次の9ページの方には、女性の初婚に関する投影の様子が図示されております。
 左の図が年齢別累積初婚率の実績値を描いたものでございまして、これを対数ガンマモデル等による投影を経まして、右側の1995年生まれの参照コーホートまでの推計したものが得られてございます。これによりまして、参照コーホートに至る平均初婚年齢並びに生涯未婚率が決まってまいります。
 次の10ページ、こちらは夫婦の完結出生児数の投影の様子を示した図でございます。図の上方の期待夫婦完結出生児数として示しました推移が、晩婚化に伴う夫婦完結出生児数の低下を示す数字でございます。これに対してドットで示しました実績値、これを見ますと、1960年生まれ世代以降、このラインを下回っているのがごらんいただけるかと思いますが、これが結婚後の出生行動が低調となってきている部分でございます。この行動変化の趨勢を投影いたしますと、図にあります中位の推移となってまいりました。更に、その可能性の範囲を調べましたところ、ごらんの高位、低位の推移となってございます。
 なお、この図では、前回の推計の仮定を破線で示してございますので、違いがごらんいただけるかと存じます。
次の11ページには、離婚、再婚を初めといたします配偶関係の違いによる出生率への影響を数値化しました離死別再婚効果係数の実績値と、それから参照コーホートの仮定値が示されております。これは出生動向基本調査から得られたさまざまな配偶関係のパターンにつきまして平均出生児数を参照いたしまして、これと配偶関係の推計をもとにしまして算出したもので、結果といたしまして、0.983という、前回よりわずかに高い数値になりました。
 前回推計とはちょっと状況が異なりまして、離婚率の上昇が、前回は著しい上昇の傾向の延長にあったわけでございますけれども、その後、離婚率の上昇が一段落しておりまして、この離死別再婚効果係数の変動幅につきましても、今後、それほど大きくないと見られるところから、今回につきましては、この離死別再婚効果係数の推移につきまして、出生3仮定について基本的に共通のものを用いるということにいたしました。
 ただし、小さな調整によりまして、数値は、この3仮定によってわずかに違う部分がございます。
 次の12ページには、以上で見ました参照コーホートの各要因の仮定値を表にいたしたものと、それからこのコーホートの生涯の出生児数の分布をその下の方に示してございます。これによりますと、95年生まれの女性コーホートでは、中位仮定では、生涯結婚しない割合が、先ほど見たように、20.1%、それから生涯子どもを生まない割合というのが35.6%ということになってございます。
 次の13ページの方には、これらの総括的な図になりますけれども、コーホート累積出生率の実績値と仮定値の推移が描かれております。幾つかの年齢時点での出生率の推移が描かれておりますけれども、一番上の推移、これがコーホート合計特殊出生率の推移ということになってございます。
 また、ドットで示したものが実績値でございまして、そこから伸びている実線が今回の仮定値ということになります。それから、破線としまして前回の仮定値も示してございますので、その違いというのがごらんいただけるかと思います。
 前回と比較しますと、一番上のコーホート合計特殊出生率につきましては、やや高目に推移するということがごらんいただけるかと思います。ただ、一方で、コーホートごとの推移が反転するとか、若いコーホートの方が出生率が高まるというような推移になっていないということに御注意をいただきたいと思います。今回の出生仮定は、前回の仮定に比べますとペースは緩やかとなっておりますけれども、低下していく傾向は変わらないということでございます。
最近5年ほどの期間出生率の上昇から、少子化傾向が反転したのではという見方も聞かれるところでございますけれども、そうした動向の背後にありますコーホートの出生率の基調を見る限り、必ずしもそうではなく、少子化のペースが、前回の仮定で見込んだよりはやや緩んだと、そういった見方になります。
 次のページには、幾つかのコーホートの年齢別出生率の実績値と推計モデルの当てはまりの様子を示してございます。これらを見る限り、そういった当てはまりに関しては問題はないと認識しております。
 次の15ページでございますけれども、これは今回、直近の年次におきます出生率の不確実性をとらえるために、実績値の変動幅を測定いたしまして、最新年の実績データに含まれる変動というものの可能性を、高位仮定、低位仮定に反映させるという手続をいたしておりまして、それについて説明した図でございます。これは前回、推計直後の出生率がV字型の反転をするという経験をいたしましたので、そういったことから、直近の不確実性というものもきちんと評価して表現していくという観点から導入いたしました。
 次の16ページの方に、最終的に得られました年次別の合計特殊出生率の仮定の推移というものがございます。破線で前回の仮定を重ねてございますので、今回、それと比較しますと、まず出発点が高くなっておりますほか、長期的な仮定につきましても、3仮定とも前回よりもやや高く推移するという仮定になってございます。
 なお、直近のところに、3仮定とも切れ込みのような変動がごらんいただけるかと存じますが、これは東日本大震災の影響を加味したものでございまして、主として2012年における低下としてとらえられてございます。
 出生仮定につきましては以上といたしまして、次に死亡仮定の設定について御説明いたします。
 17ページは、死亡仮定の枠組みとモデルの記述をいたしております。
 18ページの方に、手法の基礎となりますリー・カーター・モデルというものを示してございます。これは既に御案内のことと思いますが、死亡率の将来推計法としましては国際的に標準的に用いられているものでございまして、その次の19ページに、このモデルを日本のデータに適用した結果が、パラメータのパターン、時系列変化というものとして示されております。
 左の図は、死亡率の標準的な年齢パターンと死亡率の低下の年齢パターンを示しております。横軸が年齢となっておりまして、ごらんいただいているグラフが年齢パターンということになります。
それから右の図の方は、横軸は年次となっておりまして、このパラメータ、ktとありますけれども、これは死亡レベルをあらわす指標でございまして、その時系列推移が変動幅とともに描かれております。低下をしていくという傾向がごらんいただけるかと思います。
通常ですと、これらのパラメータを用いたリー・カーター・モデルというものだけで死亡率の推計が行われるわけでございますけれども、わが国の場合には世界最高水準の平均寿命というものをもちまして、死亡率の変化についても特有の現象が見られておりますので、特別な方法を追加する必要がございます。
 すなわち、20ページの方に示しましたように、右の方に模式図として、横軸が年齢、縦軸が対数死亡率ということで、死亡率の年齢パターンで描かれておりますけれども、通常ですと、死亡率曲線は下の方向に低下していくというのが普通でございまして、それがリー・カーター・モデルの考え方なのですが、これに加えまして、右方向へのシフトというものが、日本では、あるいは非常に低死亡の国々では観察されておりまして、これは、解釈いたしますと、単に同じ年齢で死亡率が下がっていくということだけではなくて、一部、老化の過程が遅延しているという見方に対応する変化と考えられておりますけれども、そういった変化が顕著にあらわれてきているということですので、こういったものを取り入れないと、日本の場合、うまく年齢別の死亡率が表現できないということになります。
 21ページの左の図でございますけれども、こちらは1970年から2010年までの年齢別の死亡率、実績値の低下を描いたものでございます。横軸が年齢で、年齢パターンを、最新年次を基準にすることによってよりわかりやすく変化をあらわしたものですが、このようにあらわしますと、曲線が過去から現在に向かって平行移動的に低下してきているというのがごらんいただけるかと思いますが、これを表現したのがリー・カーター・モデルでございます。
 しかし、よく見ますと、年齢パターンの高齢部分の方が少し右の方に動いて、低くなりながら、少しこのピークが右の方に動いているようにごらんいただけると思いますが、これが先ほど言いましたシフトの影響でございまして、わが国の推計では、右の図に示しましたように、平行移動だけではなくて、年齢パターンの右方向へのシフトを表現できる修正リー・カーター・モデルというものを開発いたしまして用いているところでございます。
 次の22ページの図は、そのシフト量の年次変化を示したグラフでございます。
 併せまして、23ページのグラフの方は、実績におきます各年次の年齢別の、今見ましたシフト量をベクトルの角度で示したものでございます。
 次の24ページにまいりますと、そういったいろいろな分析を経まして、今後の死亡動向についての見方と、そこから出てきました、設定されました中位仮定の平均寿命、あるいは各種指標を示してございます。
 その結果といたしまして、次の25ページでございますけれども、死亡仮定によります平均寿命の推移というものを示してございます。前回の仮定がここでも破線で示されておりますので比較ができますけれども、ごらんいただけますように、中位に関しましては、事実上ほとんど同等と見えます。詳細に見ますと、男女ともごくわずかに高目の推移となっておりますけれども、ほぼ前回同様の推移ということになっております。
 ただ、新たに得られました実績値が前回の仮定値の推移に非常に近かったために、若干不確実性というものの低下といいますか、見直しをしまして、わずかに高位、低位の幅が縮小してございます。
なお、ここでも、直近のところ、2010年を表す縦線のすぐわきに切れ込みがごらんいただけますが、これは2011年における東日本大震災の影響を反映させたものでございます。
 死亡仮定については以上でございます。
 次に、国際人口移動の仮定でございますが、26ページの方に仮定設定の基本的な考え方をお示ししております。こちらでは日本人と外国人を別に推計いたしまして、まず、日本人の方でございますけれども、近年の平均的男女・年齢(各歳)別入国超過率が継続するものとするということでございます。具体的には、2004年から2009年の間の入国超過率の年齢別の平均値を平滑化したものを用いているということになります。また、東日本大震災の影響につきましては、日本人の国際人口移動への影響というのは明瞭な変動が見られておりませんことから、将来推計の仮定にはこれを反映させませんでした。
 一方、外国人の国際人口移動につきましては、過去の入国超過数の動向、増加してくる傾向がございますが、この長期的な趨勢に従うというような考え方で仮定を設定いたしました。
 また一方で、直近におきまして、世界同時不況並びに東日本大震災の影響による変動というものを考慮しまして、短期的に出国超過という現象、その効果を見込むことといたしました。
 それぞれにつきまして、その次のページから説明いたします。まず27ページが日本人の国際人口移動に関する年齢別の入国超過率でございますが、左側が近年の実績値でございます。これをもとにしてモデル化をしました仮定値が右側の上下にございます。上が男性、下が女性ということになります。これを一定として将来の仮定として用いているということでございます。
 それから、次の28ページの方が国際人口移動の仮定でございまして、左側に過去の入国超過数の推移を描いておりますが、実績値を見ますと、大きく変動いたしながらも、一定の趨勢を持って変化しているように見られます。ただし、直近のところにおきまして、2009年には世界同時不況の影響と見られます出国超過が見られまして、それが回復基調にあったところが、2011年には、東日本大震災の影響ということで、また出国超過が大きく見られております。
ただし、その後の月別の推移など調べまして、比較的早い回復の傾向を示しておりますことから、2013年には長期的な傾向に回帰するというような仮定にいたしております。
 右側の2つの年齢別のグラフでございますが、これはその入国超過数がどのような年齢分布を持って発生しているかということを与えるための、入国超過外国人の年齢分布ということになります。
 最後に1つ、これまで余りはっきりと説明する機会がありませんでしたが、もう一つだけ、非常に小さな要因ということになりますけれども、国籍の異動、すなわち日本国籍を有する日本人に外国人が帰化する、あるいは日本人がそこから離脱するということも現象としてございます。日本人、外国人の人口動態を分ける観点からは、前回推計から適用しておりますけれども、年齢別の国籍異動というものを調べまして、これを推計に適用してございます。
 年間の純異動数にしますと、下の方に注がございますけれども、2004年から2010年の年平均で見ますと、1万5,487人というような規模の異動がございます。
 以上が今回の推計の結果及び仮定値の説明でございます。

○津谷部会長
 金子部長、ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして御質問などございましたらお手をお挙げください。お願いいたします。
 加藤委員、どうぞ。

○加藤委員
 どうも説明ありがとうございました。非常に丁寧に、よくわかりました。
1点だけ先に、中身だけ教えていただきたいのですが、今回の老年人口の数を見ますと、中位の中位なのですけれども、2055年で3,626万人ということで、前回の3,646万人よりも減ってきて、全体的な高齢比率は下がるのですけれども、平均寿命が延びているのに対して老年人口が前回の推計よりも減っているというのはなぜなのでしょう。その点だけわからなかったので教えていただければと思います。

○津谷部会長
 金子部長、お願いいたします。

○金子人口動向研究部長
 これは実は国際人口移動の影響でございまして、特に日本人、先ほど御説明いたしました年齢別の入国超過率でございますけれども、今回の仮定に用いました直近の年次におきましては、やや出国が多いパターンになっておりまして、これによりまして、老年人口は、少し減ってきているということになります。

○津谷部会長
 よろしいでしょうか。
 そのほか、御質問、御意見などございませんでしょうか。
 では、まず白波瀬委員、それから阿藤委員、お願いいたします。

○白波瀬委員
 大変詳しい説明をありがとうございました。いろんなところで改善の工夫をされたということがよくわかりました。
 基本的な質問です。ここでは変動幅というのが一番気になっています。不確実性というところで、私が聞き漏らしたかもしれないのですけれども、死亡の場合は99%の変動幅で算出されたということですが、同じく99%で出生の方も変動幅を出されたと理解してよろしいでしょうか。これが1点目の質問です。

○津谷部会長
 では、金子部長、お答えをお願いいたします。

○金子人口動向研究部長
 ありがとうございます。死亡の推移につきましては比較的確度が高く、一定方向にこれまで進んでおりますので、主に不確実性の原因としましては、測定誤差といいますか、基本的には年次変動があります。そういったものを含めて、インフルエンザがはやったりとか、そういう不測の事態が多少の変動を招いていると。それをとらえる意味から、モデルからの実績値の隔たりを測定しまして、これの変動幅、99%を用いて、パラメータの方を使うわけですけれども、行っておりますが、一方、出生の方に関しましては、これからの世代の結婚や出産の行動が変化するということが非常に大きく変動に働いておりまして、これはなかなか確率分布として得ることが難しいものでございます。
 したがいまして、どのようにその幅を得ているかということでございますけれども、先ほど御説明の中で出てきました幾つかの要因というのがございます。平均初婚年齢、生涯未婚率、夫婦完結出生児数、また、実を言うと夫婦完結出生児数などは2つか3つぐらいの要素に分けられるのですけれども、それらにつきまして個別に変動、実績値の投影をいたすときに幅を持って投影するということを行いまして、それぞれについて幅をつける、それぞれの組み合わせによって最も出生率が高くなる組み合わせというものを高位、それから低くなるものを低位というような形で、あり得る幅の範囲ということで設定しているものでございまして、残念ながら、確率的にはなかなかこの幅が求まってこないということでございます。

○津谷部会長
 この御説明でよろしいでしょうか。
死亡率は、経済学用語で言います外生的な要因というものにより多くを決定されます。つまり、死亡率は代表的な外生変数である年齢の関数ですけれども、出生力は人間の選択行動、つまり恣意的な行動である傾向が非常に強いということで、大変多くの要因を加味される必要があったということで、御苦労なさったのではないかなと思います。
 では、阿藤委員、どうぞよろしくお願いします。

○阿藤委員
 御丁寧な説明をありがとうございました。
全くマイナーな質問なのですけれども、資料2の13ページに、コーホート出生率の今後の推移というのがあるのですが、いわゆる団塊ジュニアが、今回、40歳代直前に今までと違った行動をしたという御説明がありました。もう一つは、いわゆる少子化対策の中で、団塊ジュニアが結構話題になったというか、政策のターゲットとして議論があったように思うのですが、その点で、グラフをじっと眺めれば数字はわかるのでしょうけれども、団塊ジュニアは、例えば仮に1970年から75年とすると、その間のコーホートの完結出生率は結局何人になるのか、もしお手元に数字があったら教えていただきたいのです。

○津谷部会長
 金子部長、よろしいでしょうか。

○金子人口動向研究部長
 まだきちんとした形でそこのところはまとめてございませんが、例えば1970年生まれでは、手元の集計では1.44、それから75年につきましては1.39というような数字になってございます。

○津谷部会長
 よろしいでしょうか。
70年生まれのコーホートTFRは1.44ということですので。
 では、そのほか、もし御質問、御意見ございましたらお願いいたします。
 鬼頭委員、どうぞ。

○鬼頭委員
 非常に慎重かつ堅実な推計方法だったなと思っております。金子部長にお伺いしたいというよりも、ちょっと意見が2つあるのですが。1つは、今回の結果が、わずかな変化である、あるいは、減少傾向がわずかながらマイルドになるという非常に控え目な御発言でした。確かに人口が1億を切るのが、前回の推計ですと2046年だったと思います。今回、2048年ですから、そんなに大して違いはない。しかし、推計されたデータを見ますと、2055年に、前回よりも、887万人ぐらい多く推計されていますね。それから、2105年でも150万ぐらい多く推計されている。これは必ずしも小さくないのではないだろうかと思うのですね。
 そこから1つ質問なのですが、今、阿藤委員からも御質問があったのですが、もし団塊ジュニア世代が政策、対策のターゲットにされて、そこで頑張ったのだというようなこと、あるいは駆け込みの出産というのがあったのかもしれないということですが、その後、余り若い世代に影響していかないのではないかという印象を受けるのです。ただ、2005年から出生率が上昇傾向にあると。1割ぐらい上がったわけですね。これは、今回御報告された推計方法、非常に堅実ですから、それは全く否定するつもりはないのですけれども、その出生率の上昇が今後も上昇していくということのためには、若い人たちの行動変容が必要になってくると思うのですね。
 この推計結果が何かほんのわずかな出生率の上昇であっても、出生中位と高位の仮定とでは将来の推計に、2060年時点で800万から900万の差を生みますよということはかなり大きな意味を持っていると思うのです。それを若い世代に対して、あるいは政策に反映できないだろうかなというのが1つです。研究部長というお立場では、そういうことまでは踏み込めないのかもしれませんが、その行動変容というのは期待できないのかというのが1つですね。
 それからもう一点は、それと関連するのですけれども、これも、この推計の委員会であれこれ言うことではないのかもしれませんけれども、もし1970年の水準、合計特殊出生率が2.1を超えていたわけですけれども、この水準に近づけていくためには何が必要かということです。今後も、生涯未婚率が増大していくという傾向をもし認めるとすれば、今回の推計では、95年コーホートは20%だったと思いますが、それをゼロにすることはできないわけですから、結婚するかしないかライフコースの多様性を認めていくことになる。その場合に、結婚された方たちがどういう出生行動をとる必要があるか、何人生むか、あるいは、3人の人が何%で、2人の人は何%で、4人以上は何%かという、こういうことを具体的に、この推計結果と別に示唆するという、数字を示すということが国民の行動変容に何か影響を及ぼすのではないかと思うのです。これは推計された立場からすればちょっと踏み込んでいるかもしれませんが、もし可能であれば御見解をいただきたいと思います。

○津谷部会長
 鬼頭委員、済みません。一番最初のポイントについての御確認ですが、これは前回の推計の中位仮定の2055年の人口についてでございますか。

○鬼頭委員
 そうです。

○津谷部会長
 それと今回の中位仮定による2055年の人口でしょうか。

○鬼頭委員
 はい。

○津谷部会長
 それでしたら、200万人の差となるかと思いますが。

○鬼頭委員
 もしかしたら表の見間違いかもしれません。

○津谷部会長
 済みません。ちょっと確認でございます。金子部長、お答えになれる範囲でよろしくお願いいたします。

○金子人口動向研究部長
 ありがとうございました。推計を踏まえた政策的な行動への提言というようなポイントだったと思いますが、これはなかなか難しくて、そもそも出生率が変動していく原因、細かな変動、大きな変動についての原因というもの自体が、我々、しっかりと把握したという認識でありませんで、このようにすると出生率が上がるとか下がるとか、それをすることがいいか悪いかも含めて、なかなかそういったことについて発言できる資格がないなと思っております。
 ただ、勿論、おっしゃられたことは非常に大切なことでございまして、できる限り、そういった施策に資する推計結果、仮定等のかみ砕いた解釈であるとか、それに付随する数値、ライフコースの多様性とおっしゃいましたけれども、そういったものの数値を明らかにしていくということ、これは是非やっていきたいと思いまして、前回の推計の後に、我々、解説版と呼んでいるのですが、解説をした報告書を1つつくりました。初めてそういったものをつくりましたので、それほど十分なものではなかったかもしれないのですけれども、そういった中で、できるだけその意味というものを解説していきたいと思っております。

○鬼頭委員
 ありがとうございました。踏み込んだ質問で、大変申し訳ないと思っております。

○津谷部会長
 よろしいでしょうか。
 では、香取統括官、お願いいたします。

○香取政策統括官
 今の御質問ですが、若干政府側からというか、行政側から御答弁しますと、前回の人口推計の際に、この人口部会に、これは御記憶の先生方もいらっしゃるかもしれませんが、特別な部会を用意しまして、当時、少子化対策の目標とする出生率はどの位なのかというのをつくれとかいう話がありまして、勿論、そういうものはつくれないわけですが、当時、いろいろな政策をすることによって、どのような出生率の影響なり回復が見込めるかというような御議論を実はしていただきまして、そのときに特別部会の方で御報告いただいています。
 新聞等でもありましたが、今回の推計にもありますように、未婚率と生涯完結出生児数ということで、さまざまな世論調査等、動向調査等から、希望する方がすべて結婚ができると。つまり、結婚したいと思う方が、結婚するに当たってのさまざまな障害がなくて、皆さんが結婚できると。完結出生児数も、欲しいと思う子どもが皆さんが生めるという前提で仮定計算をしたときの理論値ということで、たしか、当時、1.75という数字をお示ししたかと思います。
 そのときに、同様に、出生にかかわるさまざまな行動に与えている社会的な障壁といいますか、阻害要因というものを分析して、政策の立場からすると、それをできるだけ除いていくということで、当時、第1子、第2子、第3子と分けて御議論をして、第1子に関しては、婚姻、若い人の、非正規その他、そういった結婚の前提となる経済条件の整備ということが言われ、第2子に関しては、実は育児休業その他、第1子出産後の支援策、当時の議論だと、1人目を生んだ後、育てるのに、例えば女性の方が非常に苦労すると、男性の協力がないと、あるいは就労との関係で問題が生じるということになると、2子目が二の足を踏むということで、1子目については経済条件、2子目はさまざまな両立支援策、3子目以降に関しては、子どもの教育や養育についての経済的支援というのが大きな阻害要因になっているということで、実はこの3つを、これは勿論、非常にざっくりとしたお話ですけれども、そういったことを念頭に置きながら、その後の少子化対策、子ども・子育て対策を組み立てるということで、その後さまざまな議論をして、育児休業法の改正、子ども手当法等々、今回の新システムにまで至っているということで、前回推計のときに出した特別部会の報告を一つのよすがにしながら、さまざまな施策の組み立てを行っているということでございます。

○津谷部会長
 香取統括官、ありがとうございました。今期の第1回の人口部会でも当時の大塚副大臣から当部会でも政策提言をしてほしいというお話があったのですが、やはりこの部会の主なミッションは政策提言をすることではなく、そのためのできる限り正確かつ有用性の高い統計データ、つまり客観的根拠となるものを示していくというものであると私どもお話しした覚えがあります。その方向で、社人研の方でも、将来人口推計は大変テクニカルなものでございますけれども、その方法と結果をできる限りかみ砕いて、わかりやすく、御説明をいただいていると理解しております。
 では、まず山田委員、それから廣松委員、そして鈴木委員とお願いいたします。

○山田委員
 年末年始の非常にタイトなスケジュールの中で非常に精緻な推計結果をこのように出していただきまして、本当にお疲れさまでした。誠にありがとうございました。私は実は団塊ジュニアに属する世代なのですけれども、コメントとしては2つあります。
 1点目は、鬼頭委員や、今の香取統括官のお話とも関連しますけれども、例えば冊子体の19ページを見ますと、前回に比べて老年人口比率がごくわずかに低かったり、年少人口比率がわずかに高くなったりしているわけです。この部会は政策を提言するところではないということについてはまさにそのとおりだと思いますけれども、私が非常に懸念していますのは、何となく高齢化のスピードがちょっと緩まったような、そんな印象を持たれるとか、あとは、合計特殊出生率が改善したということで、何かそうした少子高齢化のスピードが弱まったような印象を持たれるということで、特に政策の改革のスピードがおくれてしまう、手綱が緩んでしまう、ということを非常に懸念しております。
 ですから、解説版を御作成になる時には-これは一般の方々に理解していただくためのコミュニケーションツールとして非常に重要なものだと理解いたしますけれども-その中で、是非、これは別に高齢化のスピードが遅くなったわけでも何でもないと。むしろ高齢化のスピードが非常に早く進んでいっているということは確かですし、また、出生動向基本調査で-これが前4回の部会の中で私には一番ショッキングな数字でしたけれども-とうとう夫婦の完結出生児数が2を切ったということについても、もっと強調して、決して政策改革の手綱を緩めていい数字ではないよ、ということを強調していただきたいとお願いしたいと思います。
 コメントの2ですけれども、これは、今回というよりも、今後の課題の一つとして考えていただきたいということですけれども、ベースとなっている基準人口で、今回、国勢調査の不詳について、委員の方々からもいろいろと御意見が出されたところであります。前回の基準人口をつくる際の不詳の案分の仕方と今回の不詳の案分の仕方が変わっているということもまた聞いております。
 国籍不詳、もしくは年齢不詳で、100万人のオーダーで不詳が出ていますので、この案分の仕方、もしくはどのように割り振りを、メリハリをつけていくかというところで、こうした推計結果に何らかの差が出てくるのか。その差が小さければいいのですけれども、ある程度無視できないものであれば、こうした人口推計というのは、別の注意の仕方をもって見なくてはいけない、ということになりますので、そういった振れというのがどれぐらい大きいのかというのを、今後の課題として、もしできましたら見ていただきたい、というのが私のコメントです。

○津谷部会長
 ありがとうございます。2060年には日本人口の約4割が老年人口というのは動かないわけですので、5人に2人が65歳以上という大変な高齢化社会になる、実はもう既に我が国は世界一の高齢化社会ですけれども、またそれがさらに進んでいくということですが、2点目につきまして、もしお答えになれましたら、金子部長、お願いできますか。

○金子人口動向研究部長
 必ずしも、案分の仕方等によってその違いがどうなっているかというのは、現在のところ確認しておりませんので、大変重要なポイントだと認識いたしましたので、また、その解説版の方でそういったことも挑戦してみようと思いました。

○津谷部会長
 済みません、部長、この関連で1つだけお伺いしてよろしいでしょうか。この資料を見せていただきますと、国籍と年齢の不詳の比例案分をなさっているということを以前に御説明をいただきまして、その際世帯の居住形態によってある程度調整をなさるということであったかと思うのですが、配偶関係の不詳、これは出生力の推計に影響があるかと思うのですが、それについても比例案分をなさっているのでしょうか。

○金子人口動向研究部長
 それにつきましては、推計の仮定で用いています配偶関係につきましては、主に初婚、未婚の違いですけれども、すべて人口動態統計を世代ごとに積み上げるということによって得ております。ですから、ここで出てきている生涯未婚率でありますとか平均初婚年齢というのは、そういった動態を積み上げた結果としての配偶関係構造をあらわしておりまして、少なくともこの2回ばかりに関しては、国勢調査の配偶関係別人口というのはあくまでも参考として使っているのみでございます。

○津谷部会長
 ありがとうございました。では、廣松委員、お願いいたします。

○廣松委員
 まず、最初にこの推計作業をやっていただきました社会保障・人口問題研究所の方々に心から敬意を表したいと思います。
 最初手を挙げましたのは、先ほど鬼頭委員からの御質問というか、御意見の中でありました点についてだったのですが、もう政策統括官の方から詳しく特別部会のことに関してお話しいただきましたので、それには触れないことにします。私も、今回の全体の大きな投影図を眺めて、確かに少し人口の減少の速度は弱まった。弱まったと言うべきかどうかちょっと微妙なところかもしれませんが、ただ、前回の推計を公表しましたときにもちょっと言ったことですが、私はどうしても、年少人口の推計割合の減少が、大変気になります。
 例えば11ページの一覧表の中で、平成18年のときの中位推計と、今回の例えば中位推計を見ても、ほとんど変わらないのですね。752万に対して791万。年少人口、0~14歳の人口はほとんど動いてないというか、変動していない。その点については、先ほど何人かの方からもご意見がありましたが、この部会の役目、ミッションということよりも、政策として、その点をやはり十分考えていかなければいけないと思います。
 それともう一つは、当然それにかかわることですが、資料2の12枚目のところで、中位の1995年生まれの方の無子が35.6%、3分の1以上が無子という状況も、やはり大変大きな問題だろうと思います。その点も今後考えていくべきであろうと思います。
 今回、こういう形で推計結果を出していただき、今までこの部会で我々が議論してきた結果としてこうなったわけですから、これからも我々の役目として、先ほど金子部長から発言もございましたが、解説等が出た段階で、もっと一般に、今回の推計作業の結果の解釈とか、いろいろ広く意見を言うということが求められると思います。
 とりあえず感想です。以上です。

○津谷部会長
 ありがとうございました。先ほどの御意見で、何か、金子部長、つけ加えられることございますか。よろしいですか。
では、鈴木委員、お願いいたします。

○鈴木委員
 これだけの詳細なデータ等、適切なモデルを組み合わせておつくりいただいた点、御努力にお礼を申し上げたいと思います。
 私が1点だけ、コメントいたします。平均寿命の推移の部分で、先ほど、資料2のパワーポイント資料の20ページ、高齢者死亡率の線形差分モデルのところで、模式図があって、今の高齢者の場合に、金子部長の御説明ですと、一部、老化の過程が遅延したことによって右ずれを起こしていると。それを考慮するということが、多分、21ページの左側の実数の推計値から見ると非常によく説明ができるのではないかということで、私も、これは本当にそのとおりだと思うのです。
 ただ、これが2060年までの長期推計のときに、本当にこの老化の遅延に基づく右ずれ、要するに高齢の死亡率が後送りされるという現象が本当に続くかどうかという点に少し私は疑問を、正直言って、持っております。今の、例えば団塊の世代、あるいは1950年生まれのコーホートというのは確かにこういった老化の遅延現象があるし、これを非常によく説明していると思うのですけれども、例えば2060年ごろに仮に60歳とかになってくるような、2000年後生まれのコーホートの方々が同じ生命力というのでしょうか、強さというのでしょうか、そういったものを本当に持ち得るのかどうかという点だと思うのですね。
 これだけの長い推計で、50年後の推計ですから難しく、私もわかりませんけれども、単純にリニアに上がるのではなくて、どこかで変曲点があるのかとも思います。ただし、それを示すパラメータというのが一体何なのか、それを推計するパラメータが一体何なのかというのもちょっと私にはわからないのですけれども、その辺りはどのようにお考えになられたのかなと思います。

○津谷部会長
 では、金子部長、お願いいたします。

○金子人口動向研究部長
 ありがとうございます。大変重要な点かと思いますし、将来的に寿命がどこまで延びるだろうかという問題に集約できるかと思うのですけれども、これは、学界としても、学説としても、平均寿命が100歳を超えるよという主張から、いや、そこまでは延びないのだという主張から、今のところ、結論は出ていないという状況でございまして、私どものこの推計におきましては、こういったリー・カーター的な死亡率の変化が続くだろうというよりも、ほかにこれといったよりどころも持ちませんし、実績値に基づく非常に中立的な推計となっておりますので、これを採用しているということでございまして、我々自身が老化の過程の遅延が何十年続くとか、あるいはすぐに収束するとか、そういう考えを持っているわけではございません。
 したがいまして、そういった、学説を反映するというのはこの推計にはなじまないところがございまして、機械的と言われてしまうかもしれないのですけれども、今のところ、実績値を投影するということで、こうであれば人口はこうなっていくであろうという構図で推計しているということでございます。
 申し訳ございません。余り実質的な答えになっていないかもしれません。

○津谷部会長
 よろしいでしょうか。
では、阿藤委員お願いいたします。

○阿藤委員
 先ほど山田委員から、この推計の結果が、前回に比べて、高齢化率が若干下がる、人口は若干多目に出るということで、そのことをもって、世間がやや楽観視する、政策の遅れにつながってはマイナスだというご意見がありました。、そういう面は勿論あるわけですが、私は、この推計の結果を最初見たときには、むしろ、少し驚きました。それは、出生率が、この5年間ぐらい、V字回復をしているというところを見ると、一般の方、政策担当者、行政の人が、このまま上昇を続けるのではないかという期待感を持って見ていたのではないかと思うのですね。
 ところが、案に相違して、むしろ出生率は腰折れして、そんな甘いものではない。短期的には上がったけれども、コーホートの出生率のいろんな要素で眺めてみると、やはり傾向的には下がってきていて、団塊ジュニアの後の世代もそれほど高い数字にはならないということをこの推計は示しています。その点を見ると、ショッキングというか、特に政策をやっていらっしゃる方から見ると、そうなのかという感じを持ったのではないかなと思います。それほど日本の少子化状況は厳しいのだということを逆にこの推計から感じ取れるというのが、私のちょっと付け加えたいコメントです。

○津谷部会長
 ありがとうございました。では、加藤委員、お願いいたします。

○加藤委員
 2点ほど。実は山田委員と阿藤委員と同じようなことを言おうかと思ったのですけれども、1つは、高齢化比率が少し低下したといっても、実は参考推計なんかを見ると、これは2060年で切るから39.9%なのですが、それ以降、2080年まで、参考推計ですが、ずうっと高齢化はまだまだ進んでいくと。ですから、決して安心できることではないのだということはやはり強調すべきなのかなというのが1点目です。
 それと2点目は、先ほどの質問とも絡むのですけれども、高齢化の人口の数そのものに対して、平均寿命の影響よりも、もしかすると、今後、国際人口移動みたいなものが結構影響してくるだろう。勿論、高齢化比率は、少子化が改善すれば改善するわけですけれども、しかしながら、数のことを考えていくと、国際人口移動ということも重要になってくるだろうと。これはちょっと超越的なコメントかもしれませんが、今、3×3でやっていらっしゃいますけれども、実は今後、国際人口移動はもうちょっと重要な局面が出てくるだろうと。
 そうなってくると、27というのはなかなか厳しいのかもしれませんが、今後は、もしかすると国際人口移動についてもある程度想定というものを少し考えていかないと、高齢化の問題、高齢化比率の問題を議論するときの一つの要素として重要になってくるのではないかと思っております。
 以上、2点です。

○津谷部会長
 ありがとうございます。金子部長、何かつけ加えるコメントなどございますか。

○金子人口動向研究部長
 ありがとうございました。その移動の仮定の違いによる人口の推移の違いというものを見る目的で、これまでやっているものにつきましては、封鎖人口との比較というのを一応公表いたしております。今回につきましては、やはり解説の部分で、国際人口移動についても、いわば高位、低位に準ずるような幅を設定して、それらの違いによる国際人口移動の影響の大きさというものを評価したいと計画しておりまして、大変それに対してエンカレッジするような御意見をいただきまして、ありがたいと思っております。

○津谷部会長
 ありがとうございます。
ちなみに、たしかオーストラリアでは3×3×3と合計27通りの将来推計をやっていたと思います。当然、オーストラリアは移民や国際人口移動が大変多い国ですから、そこまでわが国は現在いっていなくても、今後の検討課題になるであろうということでございます。そのほか、御意見、御質問ございますでしょうか。
 では、1つ私から質問させていただいてよろしいでしょうか。先ほどからいろいろな委員の方々からお話が出ておりますが、今回の推計結果が前回よりも若干悲観的でなくなったため、ここで安心しないでほしいというメッセージを出していくことが大変大切だという御意見が相次いでおります。16ページには今までのピリオド合計特殊出生率の実績値と今後の将来仮定値の高位、中位、低位が示されていると理解いたします。この中の高位の仮定についてですが、前回もそうなのですが、今回の推計では非常にはっきりと1.5を超えて回復して安定するという方向性が示されているかと思います。
それにひきかえ、先ほど阿藤委員の方からも御指摘ありましたが、中位仮定では、今後合計特殊出生率は若干上がるけれども、その後、頭打ちというか、横ばいになっていくと予想されているかと思います。国際的に見て、この女性1人当りの合計特殊出生率が1.5というのはある意味の分水嶺のような感じがしております。
 「低出生率の罠」仮説というものがございまして、これは学説のひとつであり、将来推計にいろいろな学説を反映させることはできないというのは当然承知しておりますが、この仮説によると、低い出生率が更なる低い出生率を引き起こすということが示唆されています。先進諸国の出生率の変化を比較すると、相当の期間、ピリオド合計特殊出生率が1.5を割り込んで推移した国で、その後、1.5を目覚ましく超えて、はっきりとした回復基調を示している国は、今のところありません。
 イタリアでも少し回復してきているようですので、これは今後どうなっていくかわかりません。ただ、先ほどの白波瀬委員の御質問へのお答えで、いろんなパラメータを組み合わせて、出生動向基本調査の結果などを用いて、一番高くなる組み合わせと一番低くなる組み合わせで高位と低位という幅を設定されたということでございましたが、この高位の設定をなさったときに、どのように組み合わせてこの結果が出てきているのかということについて、もしできましたらここでお教えいただければと思います。香取政策統括官の方からも先ほどお話ありましたが、出生率がもしこの1.5を大きく超えて回復できるとするならば、どういう要因があって、どういうシナリオが描けるのかということをお聞きできればと思います。お願いいたします。

○金子人口動向研究部長
 ありがとうございました。一つの資料は、冊子の方、資料1の12ページの中ほどに出生仮定の要約の表がございまして、こちらの中に、中位とともに、高位、低位のそれぞれの出生要因についての設定値というのがごらんいただけます。具体的にはこちらをごらんいただければと。
 それから、部会の資料の方にもうちょっと詳しく示したものが、図表資料の、こちらも同じ12ページの上に、ほぼ同じものですけれども、より専門的な数値も含めました表を載せております。具体的には、こういった高位、低位についての幅が出てきているということになります。
 1つ大きいのは、生涯未婚率、今後の若い世代の家族形成、すなわち、初婚の在り方、かなり不確実性が高いと思うのですけれども、この幅ですね。高位の場合には、生涯未婚率14.7%、それから低位の場合には26.2%と、この辺りはかなり大きく最終的な幅、長期的な幅に影響してまいります。
 それとともに、結婚後の子どもの生み方、これが高位では1.91、低位では1.57ということでございますから、これもダイレクトに長期的な推移に影響してくるということでございます。当たり前のことになりますけれども、やはり家族形成に対して今後どの程度家族形成がしやすい社会になるのかどうかということが大きくこの生涯未婚率の違いに反映されてまいりますし、また、子育て支援でありますとか男女共同参画の推進といったこと、あるいはそういったことを含めて、いわゆる仕事と子育ての両立、もっと包括的に言うと、ワーク・ライフ・バランスの確保というものがこの夫婦完結出生児数の方に大きくかかわってくるのではないかと思います。そのような形で見ていただければと思います。

○津谷部会長
 ありがとうございました。先ほどから、参照コーホートと呼ばれている1995年生まれコーホート、つまり、2010年に15歳の女性の標準的な姿がここには示されているわけですが、最後のものはピリオドですので、ちょっと違ってくるかと思います。
 ただ、お話を伺っておりまして、やはり生涯未婚率、これは50歳以上の未婚者割合ですが、これが余り大きく落ち込まないようにすることが今後の出生率低下に歯止めをかける上で重要になるということかと思います。女性の生涯未婚率は、2010年時点で大ざっぱに言って10%、つまり1割ぐらいですけれども、できれば、今後、この増加のスピードが余り早くないということがまた非常に大切であるということかと思います。このためには、結婚したい方に家庭を持っていただくということ、そしてさらに、家庭を持った後の夫婦の完結出生力が落ち込まないこと、つまり夫婦の出生力も影響が大きいということかと思います。これは、ある意味人口学的常識であり、当たり前と言えば当たり前なのですが、出生率はこの2つの要因の組み合わせですので、やはりこの両方に対して広く多面的かつ包括的な政策支援をしていただくということが肝要かなと考えます。そのほか何かコメント、御質問ございますでしょうか。
 では、鬼頭委員、それから白波瀬委員、お願いいたします。

○鬼頭委員
 どうも私の不注意なところがありまして、先ほどもちょっと間違えまして、部会長から確認があったのにちゃんとそこで図表を見なかったのですが、訂正させていただきますが、多少将来人口、減り方、緩目に推計されたということですが、先ほど申し上げたのは表の見間違えで、高位推計と前回の中位推計の、突き合わせをやっておりまして、今回の中位推計と前回の中位推計ですと、部会長のご指摘どおりほぼ200万の差となります。不注意で、大変申し訳ございません。
 それと、今言われたように、この推計を通して何がどう変わればどうなるかということを、これはこの推計の後の話ですが、今、部会長おっしゃられたように、よくわかるようにかみ砕いて説明していただけると非常にいいのかなと思いました。
 これは訂正と感想でございます。どうも失礼いたしました。

○津谷部会長
 ありがとうございました。では、白波瀬委員、お願いいたします。

○白波瀬委員
 ありがとうございます。1点目は、確認という意味でお尋ねしたいということと、2点目はコメントです。
 1点目は震災に関する影響ということなのですけれども、今回の結果を見る限り、一時点的には何らかの影響があるかもしれないけれども、全体としては、日本の将来人口を考えるに当たっては大きく変更を強いられることはないだろうと理解しました。その一時点的でも予想される影響というのは、多分、国際移動のところではないかと思うのですけれども、それでよろしいでしょうか。これが1点目の確認であります。
 2点目はコメントなのですけれども、これは本部会の開催当初から時折議論されているように、人口推計の捉え方について基本的スタンスとも関係していまして、繰り返しになりますが、人口推計ということ自体、現在までの実態、あるいは人々の行動様式をベースとして将来を投影しているわけですから、ある意味では、現時点の政策上の問題というか実際の現状と政策との間の齟齬を明らかにしているともいえます。逆説的ですが、この点が人口推計の大きな意味でもあると思うのです。
 そういう意味で、この数値をもって将来に向かっての政策を立案し、特に財政的予想をたてていくわけですから、推計の意味は大きいと思います。ただ、高齢化率の速度が多少減速したからといって、日本における高齢者福祉が重要である点に違いはないわけですから、人口推計結果をもって、少子高齢社会への本格的な政策展開の重要性が左右されるべきではないと思います。
 以上でございます。

○津谷部会長
 ありがとうございます。そのほか、御質問、御意見ございませんでしょうか。
 大林委員、どうぞ。

○大林委員
 大変精緻な方法に基づく詳細な結果、ありがとうございました。
私も、加藤委員がおっしゃった国際人口移動の影響の大きさと、それが今後どうなっていくのかということに関心があるのですが、それに関連して、例えばこれから50年間の人口の変動に対する、外国人の寄与分がどの程度あるのか、その辺がもし今後の検討課題、研究課題として何かおありになるということであれば、教えていただきたいと思います。それから、私、聞き違えたかもしれませんけれども、先程、封鎖人口の仮定の場合の数字も出すとおっしゃったように思いましたが、勿論、そういう数字があれば、それとの比較で、ある程度のことはわかると思うのですけれども、封鎖人口の仮定による推計も出されるのか確認させていただければと思います。

○津谷部会長
 先ほどの白波瀬委員の第1点目の確認ですが、東日本大震災の影響がやはり国際人口移動に一番大きく出ているのかということと、そして大林委員の御質問、御意見につきましても、お答えございましたら、金子部長、お願いいたします。

○金子人口動向研究部長
 今回の推計の前提として見込んだ震災の影響としては、やはり国際人口移動の影響が、短期的ではございますが、一番大きいと考えています。ただ、今回の推計に盛り込んだ影響というのは、あくまでも、今、我々がデータとして把握し得た範囲、これの投影という形での範囲でございまして、今後、こういったものが日本人のマインドであるとか、長期的に経済、その他も含めて影響していくということは、個人的にも非常に感じるものがございます。皆様もそれぞれいろいろお感じになっていると思うのですけれども、そういったものは今回の推計には盛り込むことができませんでした。それは、本当にどういう形で出るかというのは今後見ていきたいと考えております。
 それから、大林委員の方からいただきました外国人の寄与ということでございますが、まず1つ、封鎖人口による推計というものについて、これまでも行ってまいりましたので、今回も行う予定に入ってございます。そういった結果からも、外国人の寄与、国際人口移動の寄与というのは見られるわけでございますけれども、今回もう少し踏み込んで、先ほども申し上げましたけれども、国際人口移動のシナリオを少し用意しまして、比較するというところまでやりたいと思っております。ちょっと先になりますけれども、加藤委員にもご指摘いただきましたが、皆様、委員の方々の国際人口移動に関する今後の重要性という観点は非常に強く感じましたので、是非やっていきたいと思います。

○津谷部会長
 ありがとうございます。先ほどからお話に出ております封鎖人口と申しますのは、国際人口移動がゼロであると仮定をした場合に、つまり、言いかえれば、国際人口移動がなかった場合の人口を指しており、国際人口移動がなければ将来人口推計の結果がどうなっていくのかを推計して比較するということで、これは今までもなさっていらっしゃるわけですが、今後はもう少し国際人口移動にいろいろな仮定を加えて推計をやってみたいというお話であったかなと思います。そのほか、御質問、御意見ございませんでしょうか。
 では、稲葉委員、どうぞお願いいたします。

○稲葉委員
 国際人口移動の話が出たので、私、あえて言うほどのあれでもないのですけれども、ほかの出生のモデルなんかと比べると、成熟度に差があるというか、そういう感じが初めからしていて、ないものねだりかもしれないのですけれども、超過数とかにロジスティックを当てはめるとかいうのは、非常に筋が悪いというか、相性が悪いというか、そういう気がいたしまして、つまり、本当の発生の率とかいうものは、これはなかなか国際移動ではわからないのですけれども、それに近づける努力というか、そういうことが何かできないかなという気はいたします。ですから、実際にイベントが発生するポピュレーションに対する発生率というのに何か近づけられないかなという気はいたします。
 それともう一つですけれども、出生の方は非常にコーホートを基本にして考えてやられて、それは皆さん合意だと思うのですが、死亡の方は、これはスパンが3倍も広がるので仕方がないとはいえ、ピリオドのモデルでそれをつくっているという感じがいたしまして、これも、ある意味で実験的な話ですけれども、そのコーホート的な見方、世代生命表みたいなものをこの推計をもとにして何か構成してみるとか、そのようにして、金子先生の立場からすると、個体のライフサイクルの再構成に基づいて人口を組み上げるということですので、そういう観点からすると、統一的に、だから、個体のコーホートに沿ってのライフサイクルを出生も死亡も構成してみて、どういうことになっているのかというのを見てみるというのはちょっといいのではないかという気がいたしました。
 以上でございます。

○津谷部会長
 ありがとうございました。金子部長、何かお答え、御意見ございますでしょうか。

○金子人口動向研究部長
 国際人口移動のモデルにつきましては、確かにわが国では比較的簡素なモデルをこれまでも使ってまいりました。今、稲葉委員の方からの御指摘では、その発生の母集団というものを特定して、その発生率というものをモデル化するということでございますけれども、要するに、外国人が日本に入ってくる場合の母集団というと、外国にいる外国人ということになりますので、非常に特定が難しいという面がございます。
 ただ、勿論、それにつきましてもいろいろモデルがございます。1つ考えられるのは、日本と出入りが非常に密であるという主要な国をモデル化するというのは1つですし、もう一つ、ジョエル・コーエンが提案しているもので、すべての国、相手国の出入りを線形モデルで全部やってしまう、相手国の人口規模を用いてやるという、何か壮大なものがありまして、結構うまくいっているような結果を拝見したことがあるのですけれども、やはりそういう先端的なモデルも今後は検討すべきなのかなと考えております。
 それから、死亡のコーホートモデル化という点につきましては、全くおっしゃるとおりで、すべてコーホートについてライフサイクルを構成した上で、それを人口に翻訳するという形が整合的なものだと思いますけれども、死亡については、非常にピリオド的な測定と投影がうまくいっているという側面がございます。ですから、現在では、逆に、この推計を行ったピリオドの死亡率からコーホートを構成いたしまして、この推計の仮定はどういうライフコースを意味しているのだろうかというものを計算いたしまして、これも前回の解説版の方に示してございますけれども、そういう見方をとっている段階でございます。勿論、将来的にはそういった整合的なモデルも検討してみたいと思います。

○津谷部会長
 ありがとうございました。その他、御質問ありませんでしょうか。
どうぞ、林委員。

○林(寛)委員
 感想です。この人口部会、ニュートラルな性質というか、政策提言がミッションではないということを部会長さんもおっしゃっておられましたけれども、そのわりには、皆さん、委員の方々、現状を非常に厳しく見ていらっしゃって、政策に反映してほしいということを強く言っていらっしゃって、感銘を受けました。
 私自身も、子どもが欲しいと思ったら、子どもが生めるような財政的なバックグラウンド、あるいは子どもをもう一人生んで育てたいと思ったときには、そうしたことが可能になる育児支援というようなものがますます必要だと思いますし、そうした政策を今後とも続けていただきたいと思っております。
 ただ、この21ページの人口ピラミッドの変化というのをまじまじと眺めているときに、その一番下の2060年、人口ピラミッドと言えない形になっていますけれども、を見ておりまして、このときの社会はそんなに不幸せな社会なのかなあと考えると、そうでもないのかもしれないなという気もいたします。団塊の世代という大きなグロスがあって、そのことに私たちは非常に数字の上で圧倒されて、影響を受けているのではないかと。非常に大きな人数があったがゆえに、それ以降の世代が非常に少なく、小さく見えて、それがより危機感をもたらしているのかもしれないなという印象も持ちます。高齢化の世の中というのは、みんな長生きできて、人口が多少少なくなっても、それだけ過度な競争がない社会かもしれないなと。
また、今こうやって子どもを生み育てやすくするという政策が効いてくるのには時間がかかりますので、また10年後ぐらいに、人口推計をするときには、この夫婦完結出生児数というのが1.5を超えているかもしれないなというような気もいたします。
 それからまた、希望を感じられる社会であるかどうかということも、こういうことに関係してくるかなとも思いますと、余りこのピラミッドを見て悲観的にならないことも大事ではないかなあというような感想を持ちました。
 改めて、ここに参加していらっしゃる委員の皆様方がよりよい未来へ向けて非常に強い思いを持っていらっしゃるということも大きな希望なのではないかなと心強く思いました。
 感想です。以上です。

○津谷部会長
 ありがとうございました。そのほか、御質問、御意見ございませんでしょうか。
 では、もし林徹委員、何か御意見ございましたら。

○林(徹)委員
 統計データや確率分布に基づいて予測されているということで、わかるのですけれども、私、人口問題については素人なので、簡単に質問させていただくと、東日本大震災の件は反映されていることはよくわかったのですけれども、つい最近、4年以内にどうのこうの、7割の確率でというのを前提にすると、そうすると、この推計というのは、3割、つまり、地震が来ないという前提に立っているのかなと簡単に読んでしまうのですけれども、それでいいのかどうか。素人が見たときに、つまり、ああいう7割というのはウソでというふうに読んでいいのかなと。それを教えてください。

○津谷部会長
 金子部長、お願いできますでしょうか。

○金子人口動向研究部長
 ありがとうございました。これはかなり将来推計の本質的な問題にかかわる部分だと認識します。今後この社会でどういったことが起こっていくのか、恐らく、長い年月をとれば、また、今言われているような地震でありますとか、そういったものもほぼ確実に起こってくるようなこともあろうかと思います。ただ、それがいつ起きるか、それがどの程度、人口、あるいは私たちの生活に影響を及ぼすのか、どこで起きるか、そういったことがわからないわけですね。それは震災等の天変地異にかかわらず、経済的な問題でも、国際関係でも、存在する問題でございます。
 ただ、将来人口推計の本質的な点は、現在の状況がこのまま推移をしたならば、一体将来にスクリーンを置いて見た場合にどうなっているであろうかというものを見て、現在の行動、我々はどうしたらいいのかということの指針とするために行っているものであります。したがいまして、実際には何年かごとにいろいろな出来事を経験して修正するということが入ってくるわけでございますけれども、それは決して将来が当たらなかったからやり直さなければいけないのだということではございませんで、あくまでも、今、我々が直近のところで何を行動すべきかということに対しての指針として、現在の社会のこのあるがままの姿を、その趨勢に従って将来というスクリーンに投影していると、そういう考えでやっております。
 したがいまして、天災をはじめ個々の出来事というのは、あるいは、もっと言えば、今後あり得るだろう政策的な、少子化対策にせよ、いろいろな対策というものは取り入れてございません。それはすべてそういう考え方に基づくものでございます。

○津谷部会長
 どうぞ。

○林(徹)委員
 もう一つ疑問に思っていたのは、コーホートというのは、言いかえれば世代ということで言えると思うのですけれども、日本の人口ということなのでこういう集計でいいのかもわからないですけれども、地域差ですとか、先ほどライフコースというお話が出たので、それとかかわると思うのですけれども、何らかの偏りがあるのではないか。それを示せば、先ほど部会長からお話があった、高位とか中位のシナリオというのですか、そこと結びつけて解釈なり何なりできるのではないかなという気がしたのですけれども、そういったデータというか、資料がなぜ提出されないのか、ちょっと不思議だなと、そういう疑問です。

○津谷部会長
 金子部長、お願いいたします。

○金子人口動向研究部長
 それも非常に的を射た御質問かと思いますが、これにつきましては、私どもの研究所では、この全国推計というものを行った後に、地域の都道府県、あるいは市区町村の将来推計というものをこれまで行ってきております。地域差の影響というのは、そういった推計の中でデータとともに反映されてくるものでございます。勿論、逆にそういった地域差の変化を全国の推移に反映させていくということ、これはこれまで余り明示的には行ってきておりませんので、今後、地域推計のチーム、事業とも連携を深めましてやっていきたいと感じております。

○津谷部会長
 よろしいでしょうか。
何かそのほか御質問、御意見ございませんでしょうか。
それでは、あと若干時間が残っておりますけれども、御質問、御意見は出尽くしたようですので、今回の質疑、審議はこれまでにさせていただきたいと思います。
 昨年の7月以降、委員の皆様の御協力を得まして、今回の平成24年1月将来人口推計の審議を無事に終えることができました。委員の皆様、そして推計を担当してくださいました金子部長、そして高橋副所長を初めとする国立社会保障・人口問題研究所の研究スタッフの皆様に深く御礼を申し上げます。大変効率的かつ効果的な審議ができたかと思います。これも皆様の御尽力のおかげと思っております。部会長として、ここに厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
 それでは最後に、事務局より何か御発言、御連絡ございませんでしょうか。

○香取政策統括官
 本来ですと政務がごあいさつすべきところでございますが、本日、参議院の本会議がございまして、政務が出席かないませんので、私の方からごあいさつを申し上げます。
 昨年7月以来4回にわたりまして御審議いただきまして、本日こういった形で人口推計、お示しすることができました。部会長初め各委員の御尽力、御協力には深く感謝いたしたいと思います。
 人口推計は、御議論ありましたように、大変技術的かつ専門的なものでございますが、一方で、大変国民的な関心も高い。あるいは、精緻化等々、政策担当者の間でも非常に関心の高いものでございます。
 人口推計といいますと、すぐに年金との関係ということが従来議論されてきたわけですけれども、最近は、今日の御議論でもありますように、むしろ少子化対策、あるいは社会保障全体、あるいは人口、生産年齢人口等々から、日本の経済、社会の将来像といったものにかかわるものとして大変国民的にも関心が高くなっているものでございます。
 人口推計そのものは回を重ねるごとに精緻なものになっておりまして、今日御説明ありましたように、大変技術的にも精緻なものになっているわけでございますけれども、それだけに、そういったデータ、人口推計の結果のインプリケーションといいますか、先ほど金子部長からもお話がありましたが、現状を見て将来を投影する。その中から現状の政策としていただけるヒントをいただき、導き出せるものを導きして政策に反映していくということで、政策担当者側としても、正確に人口推計を理解して、その科学的知見を政策に反映させるということをしていかなければならないと思っております。
 と同時に、今日、この時間で公表いたしましたので、本日の昼のニュース、あるいは夕刊等々で報道もされると思いますけれども、同時に、国民各位にも正確にこれを理解していただく。政策担当者の立場からすると、大分改善をいたしましたので、何といいますか、頑張ると改善するということで、元気が出るというか、やれば何とかなるかなという部分もあるわけですけれども、他方、今日御議論ありましたように、大きなトレンドは変わっておりませんので、そういったものを正確にお伝えし、それをさまざまな形で政策にも反映させるということで、引き続き尽力してまいりたいと思います。
 重ねて、部会長以下、委員の皆様方の御尽力、御協力に感謝いたしまして、事務局側からのごあいさつにします。どうもありがとうございました。

○津谷部会長
 香取統括官、ありがとうございました。
それでは、これで閉会いたしたいと思います。ありがとうございました。


(了)
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