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2012年2月21日 平成23年度第2回化学物質のリスク評価に係る企画検討会 議事録
労働基準局安全衛生部化学物質対策課
○日時
平成24年2月21日(火)14:00~16:00
○場所
経済産業省別館11階 共用1111会議室
○議事
○瀧ヶ平化学物質評価室長補佐 皆様お集まりですので始めさせていただきます。本日は、大変お忙しい中ご参集いただきまして誠にありがとうございます。ただいまより第2回「化学物質のリスク評価に係る企画検討会」を開催させていただきます。堀口委員は、都合により急遽ご欠席です。以降の議事進行は櫻井座長にお願いいたします。
○櫻井座長 議事進行を務めます。どうぞよろしくお願いいたします。最初に事務局から本日の議事予定と、資料の確認をお願いいたします。
○瀧ヶ平化学物質評価室長補佐 議事次第と、裏面に資料一覧を付けておりますので、見ながら確認をお願いいたします。本日の議事の1番目は「ナノ物質に係るリスク評価の方針について」の報告、2番目は「がん原性試験対象物質選定について(フィージビリティテストの対象物質選定)」、3番目は「平成23年度化学物質のリスク評価の状況について」です。
資料1「ナノマテリアルのリスク評価の方針(平成23年12月「化学物質のリスク評価検討会」とりまとめ)」、資料2-1「がん原性試験対象物質(フィージビリティテスト対象物質)の選定方針(案)」、資料2-2「がん原性試験に係るフィージビリティテスト対象物質の選定における専門家からの意見聴取の結果等(その1)」、資料2-3「がん原性試験に係るフィージビリティテストの対象物質の選定における専門家からの意見聴取の結果等(その2)」、資料2-4「構造活性相関検討結果等」、資料2-5「主要なナノマテリアルの発がん性等に関する情報」、資料3「平成23年度のリスク評価実施状況について」、資料4「平成23年度リスクコミュニケーションの実施状況」です。
参考資料1として、平成23年6月29日に化学物質のリスク評価に係る企画検討会(第1回)で検討していただきました、「職場における健康障害防止のためのナノマテリアルのリスク評価について」です。参考資料2「国が実施するがん原性試験について」、参考資料3「がん原性試験対象物質の選定の考え方」、参考資料4「平成21年度~平成22年度の選定方針・選定作業」です。
○櫻井座長 本日の議事に入ります。最初の議題の「ナノ物質に係るリスク評価の方針について」を事務局から説明をお願いいたします。
○松井化学物質評価室長 資料1です。ナノマテリアルについては、昨年6月の本検討会で今後のリスク評価の対象物質を選んでいただくときに、ナノマテリアルについても対象として検討すべきということを決めていただきました。ただし具体的な実施方法については、ナノマテリアルについてはほかの物質と異なるいろいろな技術的なリスク評価上の問題点もあるということで、実際にリスク評価を行っていただいておりますリスク評価検討会のほうに、リスク評価の手法の問題点、あるいは対象物質の候補などを検討していただき、まとめていただいて、この企画検討会に返していただくということで決めていただきました。そのときの資料は参考資料1に付けておりますので、必要に応じてご覧いただければと思います。
資料1の上のほうですが、こういうことを受け、昨年10月から11月にかけて、名古屋先生に座長をしていただいております「リスク評価検討会」で検討を行っていただき、資料1のとおり取りまとめていただきました。なお検討に当たっては、ナノマテリアルの検討ということで、有害性に詳しい専門家として、産業技術総合研究所と、国立医薬品食品衛生研究所から1名ずつ、ナノマテリアルの有害性に詳しい専門家に加わっていただき、検討していただきました。
また3回の検討会のうち、第3回検討会において、ナノマテリアルを製造・取扱いをされている関係業界ということで、ナノテクノロジービジネス推進協議会と、テイカ株式会社から、それぞれ業界の関係者にご出席いただき、実際の事業者におけるリスク管理の状況やご意見を伺いました。昨年6月に、本企画検討会でご検討いただいたときに、3項目をリスク評価検討会で検討していただくことにしておりました。
1「ナノマテリアルのリスク評価手法について」は、リスク評価手法における留意事項と、当面用いるべき妥当な手法を、3頁と4頁に別表としてまとめております。3頁の上の欄で「留意すべき項目」として、1は有害性及びばく露評価のための測定方法です。これはどういうことかというと、通常問題になるナノマテリアルというのは固体の物質ですので、重量濃度1m3当たり何ミリグラムということで評価しております。ナノマテリアルの場合は、同じ物質でも粒子が小さくなると有害性が異なってくるのではないかという指摘があります。実際に酸化チタンでは、粒子の小さいほうが動物実験で動物の肺に入ったときに、炎症が強く現れるという実験結果が報告されています。そういたしますと、同じ重量でも粒子の大きさによって有害性が異なってくるので、重量濃度だけを指標にすると不十分ではないかという議論があります。
「留意すべき内容」のところに書いてあるように、こういう場合は重量濃度に加えて、粒子の表面積や粒子の数を基準とすることが適当な場合があると言われております。「表面積」と書いているのは、同じ体積の物質でも、一塊のときと、それをどんどん砕いていくと、どんどん表面積が大きくなっていきます。固体の物質ですので、表面積が大きくなると、ほかのいろいろな物質と接する機会が大きくなるということで、表面積が増えると反応速度が速くなります。反応活性が高くなるということで、ナノマテリアルに限らず表面積が大きくなると反応活性が大きくなります。特にナノマテリアルの場合は非常に小さな粒子ですので、表面積が非常に大きくなります。まだ確立した理論というわけではないかと思いますが、カーボンナノチューブとか酸化チタンでは、単位体積当たりの表面積と有害性が相関関係を示すことがあるという試験結果も報告されています。
こういったことに関し、「当面用いるべき妥当な手法」の1.に基本的な考え方を整理しております。有害性に関する情報で、動物試験の結果などは重量濃度を基準として有害性の試験結果が出ておりますので、こういうものを比較する場合にはやはり重量濃度を用いる必要があります。先ほどの話の関係でいくと、酸化チタンのナノ粒子の同じ製品であれば重量濃度で比較することが合理的であるということもありますので、評価の一次的な基準としては原則重量濃度を用いる。2.として、ただしさらに詳細なリスク評価を行うに当たって、必要な場合には表面積や個数濃度を基準とした評価を行うということでまとめております。3.として、このために必要な、いろいろな表面積や個数濃度、粒子サイズの分布等に関する情報も収集が必要だということです。
2は「同じ種類のナノマテリアルの中の有害性の違い」です。同じ種類のナノマテリアルであっても、結晶の構造が違ったり、粒子の形が違ったり、いろいろな相違によって有害性が違うことが報告されております。これは留意すべきであろうということです。「当面用いるべき妥当な手法」ということで、1.にあるように、1種類のナノマテリアルの中でも、相当有害性の違いを考慮すべきと言われているものがあります。
酸化チタンでは結晶の構造で、触媒でよく用いられているアナターゼ型のものと、化粧品などに用いられているルチル型のものでは、少し有害性が違うのではないかという報告があります。カーボンナノチューブについては、単にグラフェンが単層の構造でチューブになっているものと、何重もの構造でチューブになっているもの。フラーレンは通常は水には溶けないのですけれども、これを水に溶けるようにしたもの。こういうもので有害性の違いが指摘されておりますので、このように相当程度異なると考えられるものは、グループ分けして配慮する必要があるだろうということです。
2.として、そのグループ分けした中にもいろいろな製品によって有害性が異なるわけですけれども、あまりに細分化していると実際的ではないので、やはりリスク評価ですから有害性の高いものに着目して、全体の評価に役立てることが重要だろうとまとめております。3.として、こういうことがあるので、さまざまな結晶構造とか粒子の形状、あるいは化学的な修飾が行われているものは、情報収集をして整理をすることが挙げられております。
3は、有害性試験と実際の労働現場での空気中での状態ということがあります。有害性試験では、ナノマテリアルは粒子が小さいので、それに起因する有害性があるだろうということで、できるだけ小さい粒子で実験動物にばく露することが行われております。ただ先ほど申しましたように、表面積も大きいし、普通の物質よりもくっ付きやすいことがありますので、凝集して存在しようとする性質があります。実験をやる方はくっ付かないように、できるだけ小さく、いろいろな方法を用いて動物にばく露しているということがあるのに対し、労働現場では、当然そのようなことは行われていないので、凝集して大きな塊になって空気中にある場合がほとんどです。両者で存在の形が違うではないかということがあるのです。「当面用いるべき妥当な手法」ということで、粒子が小さいほうが有害性が大きい可能性があると一般には言われていますが、そちらは有害性が高いほうということで、実際のばく露の濃度なりと比較すれば、安全側に見られるのではないかと考えられるのではないか。
4の「その他有害性評価に当たって留意すべき事項」で、1.から3.については、個別のリスク評価に当たって注意を行うとされております。1.は、ナノマテリアルの粒子が非常に小さいので、嗅覚の神経から直接脳に入る場合があるということが、酸化マンガンなどで指摘されておりますので、神経毒性が問題になる物質については注意が必要だということです。
2.の不溶性のナノマテリアルの肺毒性がいろいろな所で指摘されております。リスク評価に当たってのエンドポイントとして、肺の炎症反応で見ている実験結果、あるいはそれを用いたばく露許容濃度の提案等があります。これについては、肺の炎症を伴わない場合にも注意が必要であるという指摘がありました。
3.として、長期のばく露、吸入ばく露試験はまだあまりデータがないので、亜慢性の試験からヒトへの外挿をしている例が、今のところ先進的な成果ではそうなっています。そういう活用の限界というのは、発がん性のある物質については少し配慮する必要があるのではないかという指摘がありました。
5の「その他ばく露評価に当たって留意すべき事項」についても、今後のばく露実態調査に当たって配慮していくべきということです。1.として、ナノ粒子の大きさのものは、空気中にもとからいろいろ存在しますし、炭素系のナノ粒子などもたくさんあるということで、バックグラウンドとして存在するものの区別が困難であるということが留意事項としてあります。
2.として、いまナノマテリアルの測定の試験研究を行っている方からご指摘がありましたが、事業者から、公表に制限がかかる場合もあるので少し試験研究の障害になっているということがありました。これは、直接ばく露実態調査でこれからやることについて関係があるかどうかわからないのですが、そういうことも配慮が必要であるというご指摘がありました。
1頁に戻りまして、こういうことを配慮して、今後リスク評価をやっていきますが、2番目として、リスク評価の対象物質の候補を挙げていただくということで検討していただいております。
(1)の酸化チタンは、この企画検討会において、既に酸化チタンという物質そのもので選定していただいております。これはIARCの発がん性区分の2Bであることから選定をしていただいています。酸化チタンの中に、ナノサイズのものが化粧品や触媒で使われていて、それが昨今かなり注目されてきていることがあります。この酸化チタンの中でナノサイズのものについても、リスク評価が必要だろうということで、リスク評価検討会のほうでナノサイズのものを含めて、既に今年度から少し準備を始めていただいております。具体的には委託調査で測定法と、有害性評価書案の作成を今年度から始めています。平成24年度以降に、ナノサイズのもののばく露実態調査等を実施し、リスク評価を進めていくということです。これはリスク評価検討会のほうで既に動いています。
次のカーボンブラック以下が、新たにリスク評価の物質として選んではどうかというリスク評価検討会のほうからの提案です。(2)カーボンブラックについては、IARCの発がん性評価において、グループ2Bに既に区分されていること。製造・取扱いにもかなり歴史がありますので、リスク評価の対象として平成24年度に測定法の検討や有害性評価書案の作成を行うこととしてはどうかということです。カーボンブラックについては、昨年6月の企画検討会において、これはナノマテリアルなのかどうかというお話も若干ありましたけれども、国際的な動向からいっても、いまの厚生労働省の通達の定義から申しましても、ナノサイズの一次粒子が凝集しているものはナノマテリアルであるということで整理をしてきております。昨年10月にEUの欧州委員会で勧告が出されておりますが、この定義もやはり凝集したものは一次粒子がナノサイズであればナノマテリアルということで整理されております。一次粒子がほとんどナノサイズであるカーボンブラックはナノマテリアルということで扱っております。
(3)のカーボンナノチューブについては、動物実験で一部発がん性を指摘するような実験結果があります。一定程度の製造・取扱い量が出てきている。さらに今後の用途の拡大も考えられるということで、リスク評価の対象とすべきであろう。具体的には厚生労働省の委託の事業で、カーボンナノチューブの発がん性の吸入ばく露試験を行っています。日本バイオアッセイ研究センターのほうで、今年度13週間の吸入ばく露試験を行っています。平成24年度、平成25年度の2カ年で、長期の吸入ばく露試験を行う予定です。この試験結果が出たら、すぐにリスク評価ができるように、平成24年度から準備を始めることがよいのではないかという提案をいただいております。
(4)のフラーレン及び銀です。フラーレンについては、現時点では製造・取扱い量がそんなに多くはないのですが、今後の技術開発の進展により、いろいろな用途で活用が見込まれていること。金属のうち銀について、金属単体の代表として何か選んでリスク評価をしたほうがいいのではないかということで、代表的な銀を選んで、フラーレンと銀についても今後リスク評価の対象とすべきであろうということです。
(5)として、その他のナノマテリアルについても、製造・取扱量が比較的多いものについては、継続して有害性情報の収集などを実施すべきであろうということで、こちらは対象物質の候補を挙げていただいております。
3番は、リスク評価を今後行っていくこととしたとして、労働基準局のほうのリスク評価は、労働安全衛生法に基づく制度的な規制が必要かどうかという検討を行っていただく根拠になるものですので、結論を得るまでにじっくりリスク評価を行うということがあります。通常3、4年かかっておりますので、その期間において事業者がどのような対応をしていっていただくのがよいかということで、現行は平成21年3月に労働基準局長名で出しました、予防的対応を基本にした通達があります。これをどうするかということですが、この期間において、事業者が適切にリスク管理が行えるように、作業環境管理の基準となる気中濃度、濃度の測定方法、局所排気装置の性能の基準などについては、リスク評価の途中段階において適当であると判断されるものは、行政指導通達などを通じて事業者に示しておくことが必要だろうという指摘をいただいております。
(2)として、先ほど話が出ましたが、欧州委員会のナノマテリアルの定義の中で、粒子の大きさの比率に基準が設けられているわけですが、今後、行政指導通達の範囲について、こういう比率についても検討すべきであろうと。これは、まだEUの欧州委員会の勧告などを背景に、製品のナノマテリアルの粒径分布の測定などもいま検討が始められている段階ですので、今後、労働現場の管理においてもそういうことが必要であろうということです。
(3)は、今回の企画検討会から投げられた課題に直接関係するものではないのですが、先ほど申し上げましたように、事業者サイドからもご意見をいただいており、特記すべき意見を2つ挙げております。1.は事業者からなのですが、ナノマテリアルはなんとなく漠然として危険であるというイメージがあるので、有害性がないことも証明するようなことが何かできないのかということです。有害性試験の方法に関する基準のようなものがあると、対応しやすいという指摘がありました。
2.として、これは現行の労働基準局長通達の中身の話ですが、作業環境の管理に当たって、先ほど申し上げましたように、ナノマテリアルは空気中では凝集して存在しているので、通常の粉じん計で測っても一定程度は管理の役に立つと整理しております。それで十分かどうかという指摘もありましたので、さらにより良い管理を行うためには、CPCで1ミクロン以下のものを補完的に測定して、補完的に作業管理に役立てることも、より適切な作業管理には有効であるという指摘がありました。
5頁と6頁は参考です。5頁にいま申し上げたようなことで、リスク評価を行った場合に想定されるスケジュールが表になっております。酸化チタンについては、平成24年度に初期評価のばく露実態調査をやったとして、必要であれば平成25年度に詳細評価を行って、平成26年度にリスク評価の取りまとめを行う。必要な場合には健康障害防止措置の検討を行って、さらにその上で必要であれば制度的な規制が平成27年度ぐらいかな、ということが想定されています。カーボンブラック以下は少しずつずれて、それに続くようなことになるのかなと。これは想定スケジュールということで、理解の参考ですが整理しております。資料1の説明は以上です。
○櫻井座長 ただいまの説明内容についてご質問、ご意見がありましたらご発言ください。
○藤冨委員 基本的な質問なのですが、今回の化学物質のリスク評価検討会のご説明をいただいたわけですが、経産省のほうで「ナノ物質の管理に関する検討会」も同時に走っていると思うのです。この両方の検討会の位置づけの差異を教えてください。
○松井化学物質評価室長 いま経済産業省のほうで検討会が開かれているのは、環境中への放出を通じたヒトの健康への影響ということです。化審法の範疇に当たります。私どもが検討しているのは、労働現場でのばく露での健康への影響ということで、まさに労働安全衛生法の範疇です。
○藤冨委員 相互の検討会で視点が異なることがよくわかりました。両検討会で連携が図られるようにお願いいたします。今回、こちらのナノ物質の評価については、皆さんご存じのとおり、今後幅広い分野でイノベーションをもたらすことが期待されている反面、非常に小さくて安全性等について不明な点も多いことから、我々としては第2のアスベストにならないように、国として万全を期すべきだと考えております。
その上で、いまご説明いただきました2頁の3の(1)のところの結論を得るまでの時間、参考資料1のところで具体的なスケジュール、これは想定ということで、この2つについてのご説明をいただきました。いま、これは年度で区切られていて、年度ごとの予算であったり、人的あるいは施設状況などもあり、こういうスケジュール感になっていると思うのです。かなり関心も高いことから、このスケジュールをもっと早めることができないのかに関して教えてください。
○松井化学物質評価室長 これについては、リスク検討会の委員の先生いかがでしょうか。
○名古屋委員 これは、初期評価からリスクの流れが決まっていますので、ナノを取り扱う事業場から曝露等に関する情報を集め、集められた情報から初期リスク評価を行う事業場を選定し、選定された事業場で曝露濃度測定を行い、そのばく露濃度と評価値を比較して、さらにリスク評価が必要な場合は詳細リスク評価に進むルールが出来ています。そのため、初期リスク評価の結果が出てこないと、先に進めません。チタンに関して曝露濃度と評価値の結果によっては、初期評価で終わってしまうかもしれないので、そこのところは出てみないとわからないということです。
○藤冨委員 わかりました。そういう意味では、2頁の3の(1)のところに記載のあるとおり、「リスク評価の終了を待たずに、厚生労働省の行政指導通達等を通じて、事業者に示す」というのはまさにそのとおりであると考えております。安全衛生はとかく労災が発生したあと、事後的に対応することが多い中で、一歩先んじた対応ができればと考えております。
もう1点は、今回の基準とか測定方法の展開に当たっては、現場で取り扱う個人の認識によって、取り扱い方も大きく異なることが考えられますので、最終的には監督官庁による十分な周知・指導の徹底等が必要だと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○櫻井座長 ありがとうございました。そのほかにはいかがでしょうか。
○吉田委員 リスク評価はこの流れに従ってやるとして、作業者の保護具の有効性の検討は別途どこかで行われますか。それとも、既にナノ材料に関しては、こういう保護具であれば必ず使えるというのがあって、そういうところの検討は要らないのかどうかを教えてください。
○松井化学物質評価室長 先ほど申し上げた現行の労働基準局長通達では、呼吸用保護具については、捕集効率が99.9%以上のものを使ってくださいということでお願いしております。というのは、ナノマテリアルは捕集効率が95%とかそれ以下のものでは、想定されている性能よりも少し抜けて入ってしまう試験データもありますので、そういう観点から99.9%以上の捕集効率のものを選択してくださいということでお願いしております。今後、呼吸用保護具の技術開発の進歩もありますので、もう少し低い捕集効率でもよくなるかもしれませんが、現行ではそういうことでお願いをしております。
○名古屋委員 あと1点は、厚生科研を貰っていて、その中でマスクのナノ粒子に対する捕集効率の研究を行っています。その結果を見ていると、試験方法によって違うのですが、メカニカルフィルターだけなのですが、捕集効率に関して、0.3が一番捕集効率が悪いと言われているのは、0.3より小さい粒子は拡散効果で捕集されるだろうと言われています。でも実際に研究してみると、80%の捕集効率の防じんマスクですと0.3の捕集効率が一番悪く、0.3より小さな粒子になると捕集効率は良くなるのです。つまり、0.3より小さいところは80%のマスクでも取れていますので、少し緩くしても大丈夫かと思っています。試験方法によって違うのでなんとも言えませんけれども、今年と来年もう1年やって、試験方法は出てくるのではないかと思います。
○山口委員 いまの点の補足ですけれども、日本は半導体産業が発達したお蔭で、クリーンルームに関する技術が非常に発達しております。HEPA・ULPA等、フィルターに関しても素材的な面から非常に技術がありますので、はっきりした有害性がわかれば、こういう保護具に対しての適用も期待されると思いますので、いま言ったような形でそんなに遅れずに行けるのではないかと予測しています。現行では0.3ミクロン以下のサイズの管理をしていますので、そういう意味では十分な素地はあると考えております。
○櫻井座長 もう1つは、指定防護係数で、電動ファン付きを使ったり、それも予防的対応の内容として出ています。マスクについては着々と検討が進んでいます。
○清水委員 マスクに関係するかもしれないのですけれども、ナノ粒子の測定機器の開発状態はどうなのでしょうか。これは名古屋先生の所かもしれませんけれども、凝集していることが多いかもしれませんけれども、かなりミクロな状態で、混合した状態であるかもしれません。あるいは粒子径の分布を調べるとか、その辺の開発状態はどうなのですか。
○名古屋委員 値段が高いだけで、例えば粒度分布を見たければ1,000万円とか2,000万円する機械があれば測れます。ただ、現場へ持っていけるかというと、なかなか持っていけません。いま私が厚生科研の中で行っているのは、現状の粒子よりも小さいナノ粒子の領域まで計測できる相対濃度計の開発を行っています。そのほうが、ナノ専用の測定器より、もっと使いやすいもので、作業者が使える測定器があったほうがいいのではないかということで、厚生科研の委託費で開発しています。ないわけではなくて、すべて高い機械ばかりなので、それを一般の労働現場にすぐ下ろせるかというと、なかなか下ろせないというのが現状だと思います。
○山口委員 いまもクリーンルームのモニター用にありますけれども、確かに名古屋先生がおっしゃったように非常に高価です。ただ粒度分布を、正確に0.3からさらに細かいところまでどの程度正確に測れるか、というところはちょっと難しい部分がまだあるかもしれません。
○名古屋委員 10ナノまでは正確に測れる機械があります。ただ、一般的に現場へ持っていくのはCPCです。CPCは、計測の際粒子にアルコールを付けて粒径を大きくして、その粒子を計測して、個数濃度で表す測定器です。粒子そのものが小さくなると、散乱光は小さくなってしまうと散乱しませんので測れないので、アルコールを入れて凝集させて、それを測っていて、それを換算していって粒度分布に当てるという形の測定法になっています。
○櫻井座長 ほかによろしいでしょうか。よろしいようでしたら、リスク評価の対象とする物質については、ただいまの報告は方針として既に取りまとめられていたものですが、その報告にあるように酸化チタンは継続してナノサイズのものもリスク評価を進めていただく。順次カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン及び銀については、報告にあるスケジュールに沿って、今後のリスク評価を進めていただくということでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○櫻井座長 ご異議はないということですので、リスク評価の対象とするナノマテリアルについては、リスク評価検討会の報告どおりといたします。
次に議題2の「がん原性試験対象物質選定について(フィージビリティテスト対象物質選定)」についてを、事務局から説明をお願いいたします。
○大淵有害性調査機関査察官 資料2-1、資料2-2、資料2-3、資料2-4、資料2-5と、関連する参考資料2、参考資料3、参考資料4です。本日先生方に検討していただく事項について、最初に背景等について説明させていただきます。
参考資料2「国が実施するがん原性試験について」ということで、昨年度の検討会でもこの資料を使わせていただいておりますが、もう一度簡単にご説明させていただきます。厚生労働省においては、労働安全衛生法第57条の5の規定に基づき、化学物質による労働者の健康障害防止のために、化学物質について国自らがん原性試験を実施しております。国のがん原性試験の結果、その物質が労働者にがんを生ずるおそれがあると判断された場合には、厚生労働大臣がその物質に関する健康障害の防止の指針を公表するということも、安全衛生法第28条第3項で決まっています。
こういう試験なのですが、実際の試験の関係のスキームについては別紙1ということで、いまご覧いただいている資料の次の頁です。平成24年度から作業がスタートする場合を想定したスケジュール間です。動物を使う試験は2週間試験、13週間試験、その後のがん原性試験が動物を使った試験です。動物を使う試験では現在吸入試験を行っておりますけれども、その吸入試験を行う前に、その化学物質が実際に吸入試験を行うことができるかどうかということを動物を使わずに行う実験があって、それを「フィージビリティテスト」と呼んでおります。これは、吸入試験のときには、試験のガスを一定の濃度で安定的に発生させる必要がありますので、これが実際に可能かどうかを確認するためのテストをフィージビリティテストと呼んでおります。それを最初の年に行います。そのフィージビリティテストが済んだ物質の中から、実際に次の動物を使った試験の対象物質を選んでいく流れになっております。
こちらの企画検討会においては、フィージビリティテストを行う物質を選んでいただく作業を昨年度も先生方に行っていただいておりますが、今回もそれをお願いすることになります。なお、フィージビリティテストが終わった物質の中から、さらに実際の動物を使った試験に進むかどうかというのを検討するための検討会のほうは、企画検討会とは別に、リスク評価の中の「有害性評価小検討会」がありますので、そちらのほうで次のステップの物質選定をやっていただいております。
これまでの試験の実施状況、また行政対応の状況等については別紙2です。いちばん左に試験の報告の年度が書いてあります。それから物質名、試験は「吸入試験」と「経口投与試験」と分けて書いてあります。行政対応、がん指針を出したものについては、その指針を公示した時期、それから試験結果によっては発がん性がなかった、あるいは発がん性が示唆されたけれども指針を出すに至らなかったものについては、そういう情報を記載しております。
最近のところでは、試験結果の報告年度のところで平成15年以降のところで、平成15年から平成18年にかけて報告された物質について、昨年10月に指針の公示を8物質について行っております。これ以降も試験の終わったものから順次、有害性評価の小検討会でデータの評価をしていただき、指針を作成するに当たっては、「健康障害防止措置に係る検討会」で指針の内容等についてご議論いただくスキームとなっております。
フィージビリティテストに関しては、次の頁の別紙3で「フィージビリティテスト実施済み物質」ということで、フィージビリティテストは済んでいて、まだ動物の試験のほうには進んでいないような物質ということでここに記しております。酢酸エチルから7番の1,3,5-トリス云々のところまであります。先日2月7日に開催した第2回有害性評価小検討会において、これら7物質の中から1物質を選んでいただき、3番のメタクリル酸ブチルが、平成24年度からのがん原性試験の対象物質ということで選定されております。このような形で、物質の選定から行政対応等のスキームがあります。
がん原性試験を実施する物質の選び方については、以前の検討会の中でご議論いただいており、参考資料3、参考資料4となります。どういう物質について試験対象物質に選ぶべきかについては、参考資料3にあるように、平成22年1月の企画検討会で取りまとめをしていただきました。このときに挙げていただいた条件というのが、1のところで、今後のがん原性試験の候補物質についてどのように選んでいくか。1番目のリストアップとして、(1)労働安全衛生法上、新規化学物質の届出がされて、その中で変異原性試験で強度の変異原性が認められたような物質。(2)既存化学物質の中でGHS分類で発がん性の区分が「区分外」となっているような物質で、国際機関等での発がん性のランク付けがここに書いてあるような状況になっているような物質を、いちばん大きなグルーピングとして、候補としてリストアップします。そういった物質の中から、製造量、用途、ばく露しやすいかどうかということも加味し、優先試験の物質を選んでまいります。
そういうことで選ばれた中から、さらに優先順位の高いものを選んでいくということで、3の「専門的知見を有する方の意見(エキスパート・ジャッジメント)」を取ったり、あるいは構造活性相関の解析をして、発がん性があると予想されるようなものを優先的にやっていきましょうということも、このときにまとめていただきました。
この考え方を踏まえて、実際に行った作業が参考資料4です。平成21年度から平成22年度にかけて、平成23年度にフィージビリティテストを行う物質についての選定作業をやっていただきました。最終的に選ばれたのは、昨年1月25日の企画検討会で2物質を選んでいただき、「2-ブロモプロパン」「1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン」の2物質を選んでいただきました。
この2物質を選んでいただく流れとして、1番として参考資料3にあった選定の考え方に従い、約1,000物質をリストアップということがあります。2番は、その約1,000物質の中から参考資料3の考え方に従って358物質を優先試験物質ということでリストアップいたしました。その358物質について第3段階として、構造活性相関の解析を行っております。構造活性相関ではエームス試験、染色体異常試験、がん原性試験について解析を行っております。4番として、エキスパート・ジャッジメントの聴取ということで、専門家2名からご意見を聴取いたしました。その結果を踏まえて5段階目として、専門家の意見をまとめたリストを作成し、その中から2物質を選定したということです。
このエキスパート・ジャッジメントによってリストアップされた物質が資料2-2、資料2-3です。2人の先生からご意見をいただきましたので、それぞれを1種類の資料としてまとめさせていただきました。資料2-2については全部で15物質、A1からA15まで挙げていただきました。さらにこの中でも、特に優先度が高いものを、資料2-2の裏側の4物質を挙げていただきました。資料2-3のほうでは、主として代謝物の観点から選んでいただいた物質で、B1からB3まで3物質あります。
平成23年1月の検討会においては、これら計18物質についてご議論いただきました。その中で最終的に選ばれたのが資料2-2で書いてあるA1の物質、A13の物質が前年度の検討会で選んでいただいた物質です。以上が昨年度の検討までで行っていただいた作業です。
続いて今回の検討会で先生方にご検討いただく事項について、ご説明させていただきます。資料2-1「がん原性試験対象物質(フィージビリティテスト対象物質)の選定方針(案)」ということですが、平成24年度にフィージビリティテストを行うべき物質を選定していただきます。今回は大きく2つのグループに分けてご検討をお願いいたします。1は「ナノマテリアル以外の物質」、2は「ナノマテリアル」ということで、それぞれから1物質を選んでいただきたいと考えております。
1番の「ナノマテリアル以外の物質」から説明をさせていただきます。先ほどご覧いただきました資料2-2、資料2-3、エキスパート・ジャッジメントで選んでいただきました物質の中で、前回選ばれなかった物質の中から1物質を選定していただきたいと考えております。後ほどの説明となりますナノマテリアルの関係については、粉状物質が選ばれることになりますので、このナノマテリアル以外の物質、ここでは「通常の化学物質」と書いてありますが、こちらについては常温で気体あるいは液体の物質を選びたいと考えております。
そういう考え方からいくと、資料2-2の15物質については既に2物質が選ばれていますので、13物質の中から常温で気体あるいは液体の物質をリストアップすると、気体についてはA2の「弗化ビニリデン」、液体のものについてはA5の「塩化ベンゾイル」、A6の「2-ビニルピリジン」、A7の「m-トルイジン」、A10の「ブチルアルデヒド」、A12の「2,3-ジクロロ-1-プロパノール」という6物質が候補として考えられます。資料2-3の3物質を見ますと、こちらはいずれも固体の物質ということで、今回の候補にはこの中のものは挙がってまいりません。
こういう6物質の中から、先生方にご検討いただくわけですが、その際にこれらの物質についてもう少し詳しい情報を取りまとめたものが資料2-4です。資料2-4は、資料2-2で書いてある15物質について構造活性相関、あるいは実際の試験の結果、生産量等の情報、用途情報、物性の情報ということで融点・沸点・蒸気圧等の情報、それから発がん性の評価、あるいはがん原性試験の情報云々が書いてあります。
かなり細かい字になっておりますので、この資料については拡大したものが3頁から6頁まで主立った情報が付いております。これからの説明は、拡大した3頁以降の資料をご覧ください。ご検討いただく物質については、いちばん左側の欄に★を付けておりますので、そのものについて簡単に順次ご紹介させていただきます。
A2の「弗化ビニリデン」は、生産量等の情報として1,000t~1万t未満、用途としてはフッソゴム・フッソ樹脂原料です。がん原性等の情報については、ラットで52週間の強制経口投与の試験があるようですが、必ずしも十分な試験ではないという情報です。変異原性については、ガス状の物質での試験をやられたものがありますが、24時間ばく露で弱い陽性が出ているという情報があります。NTPでは13週試験を終えているけれども、報告書は出さないというコメントもあります。
A5の「塩化ベンゾイル」です。生産量は1,000t~1万tのレベルで、用途は有機過酸化物原料・染料原料、有機合成原料です。がん原性試験の関係では、マウスの皮膚塗布試験の報があり、皮膚と肺の腫瘍が有意ではないが増加したということがあります。変異原性の関係の情報では、ほとんどの微生物の試験では陰性の報告があるけれども、加水分解の可能性が指摘され、結論づけられないということです。
A6の「2-ビニルピリジン」です。生産量等は1,500t、用途は自動車タイヤコード接着剤用樹脂・医薬・界面活性剤用合成原料です。変異原性関係の情報としては、微生物の試験で陽性、染色体異常試験で陽性ということです。染色体異常試験では、D20値が0.0064とかなり強い陽性を示しております。
A7の「m-トルイジン」です。数百トンレベルの生産量等で、有機合成原料という用途があります。がん原性の情報では、ラット、マウスの混餌試験で、雄マウスの低用量群でのみ肝臓腫瘍の発生が増加したという情報があります。変異原性関係の情報では、微生物の試験、ラット肝細胞の不定期DNA合成試験とも陰性という情報があります。
A10の「ブチルアルデヒド」です。こちらは輸出ということですが4,000t余ということで、用途は合成樹脂原料、2-エチルヘキシルアルコール原料、ゴム加硫促進剤という用途があります。がん原性の情報については、ヒトへの影響において、ブチルアルデヒドのばく露は、労働者における気道上皮のがんと、高温での処理に関する肺がんに関係しているかもしれないが、他の反応性の高いアルデヒド類のばく露可能性もあり、ブチルアルデヒド単独の反応かは不明であるという情報があります。変異原性関係の情報は、微生物の試験のほうで、最大比活性値が1,000以上、染色体異常試験のほうで陽性で、D20が0.021という情報があります。備考のところですが、NTPは13週試験を終えているが報告書は出さないという情報があります。
A12の「2,3-ジクロロ-1-プロパノール」です。こちらは、生産量に関する情報はありません。用途は、トルエンジアミン原料、火薬中間体、染料中間体という情報があります。変異原性の情報については、微生物を用いた試験について陽性という情報があります。
6物質について関係する情報は以上です。ここまでが「ナノマテリアル以外の物質」に関係する資料です。続いて本日議論していただくもののうち、ナノマテリアルの関係の議論についても続けて説明させていただきます。私から資料2-1の説明をさせていただき、その後に松井室長から資料2-5の説明をさせていただきます。
資料2-1に戻りまして、「ナノマテリアル」の関係の選定の方針です。先ほど、ナノマテリアルのリスク評価の関係の説明を松井室長からいたしましたが、カーボンナノチューブについては、平成24年度から平成25年度に、2年間の吸入ばく露を国のほうで実施する予定があります。カーボンナノチューブのほうは繊維状の物質になりますので、今回は繊維状以外のものを選ぼうということです。
(2)動物試験等により発がん性に関連する情報がある物質の中で、長期の吸入ばく露試験の情報が十分でないものを選定するということです。これのための主要なナノマテリアルの発がん性等に関する情報は、資料2-5のとおりです。以下については松井室長から説明させていただきます。
○松井化学物質評価室長 資料2-5をご覧ください。いまの説明で、今回は繊維状以外の形状のもので、発がん性に関する情報のあるもののうち、長期の吸入ばく露試験による情報が十分でないものを選んではどうかという提案をしましたが、実際ナノマテリアルの発がん性に関する情報はそんなに多くありません。1~2頁に、我々の入手できた範囲ですが、ある程度幅広にナノマテリアルの発がん性に関する情報を整理しました。
「酸化チタン」については、2年間の吸入ばく露試験が1995年に行われた1件だけあり、これで腫瘍の増加がみられております。これは酸化チタンの主な結晶型として、触媒などに使われるアナターゼ型と化粧品などに使われるルチル型がありますが、アナターゼ型が80%の製品を使って試験をされております。それ以外に、気管内投与試験で腫瘍の増加を認めたという報告があります。これも主に先ほどのアナターゼ型を主とした製品を使っております。詳しくは3頁以下に整理しておりますので、必要に応じて見ていただければと思います。
右の欄ですが、製造・輸入量については、2008年度の推計でナノマテリアルの酸化チタンは950tぐらい、うちアナターゼ型が150t、ルチル型が800tという推定量になっております。
「カーボンブラック」ですが、これについては例外的に発がん性に関する疫学調査、動物試験の情報がかなりあって、ヒトの疫学調査については肺がんの発生等とばく露との関係を認めた報告が複数ある一方で、関係が認められなかったという報告もあります。IARCの評価で、ヒトに関しては不完全な証拠であると整理されております。長期の吸入ばく露試験も複数あり、ラットで腫瘍の発生の増加を認めた報告が複数あります。これを基に、IARCでは動物実験では確かな証拠があるということで、結果として発がん性の区分として2Bと整理しており、カーボンブラックについては相当な情報があるということです。
「カーボンナノチューブ」については、先ほどご説明しましたように、委託試験で長期吸入ばく露試験を予定しており、今回は対象物質の候補としなくてもよいのではないかという提案です。
「フラーレン」については、特に腹腔内投与試験で陰性の結果が出ております。一方、非常に新しいもので論文発表はされていないのですが、学会のポスター発表で、発がん性の物質を先に投与しておいて、そのあとにフラーレンを肺内に噴霧して腫瘍の発生を増加させたという報告があります。
「銀」以下については、発がん性に関する情報はあまり得られておりません。「シリカ」については、筋肉内と皮下に埋め込んだ結果が1例入手できておりますが、特に影響がなかったという報告がされております。資料2-5については以上です。
○櫻井座長 資料2-1が「選定方針(案)」となっておりますが、まず、この選定方針がこれでよろしいかどうか、何かコメント、ご質問等がありましたらご発言をお願いします。「ナノマテリアル以外の物質」から1つ、「ナノマテリアル」から1つをそれぞれ選んではどうかと。ナノマテリアル以外では、常温で気体または液体の物質を選ぶ。ナノマテリアルについては、ただいまご説明があったとおり、今回は繊維状以外の粉じんのもので、しかも長期の吸入ばく露試験による情報が、発がん性について、懸念があるけれど十分ではないものを選定するという方向性です。もしよろしければ、その線でいきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○櫻井座長 それでは、特にご異存がないということで、妥当な方針ということになりますので、ナノマテリアル以外の物質とナノマテリアルそれぞれについて順次決めていきたいと思います。順番としては、資料2-1の順番で、ナノマテリアル以外の物質からお決めいただきたいと思います。常温で気体または液体の物質となると、資料2-2の★の付いているもので、気体が1つ、液体が5つあります。それの内容を少し拡大プリントしたものが資料2-4の3頁からになります。
なお、既にエキスパート・ジャッジメントとして、1つの選択案としては、資料2-2の裏側に特に優先すべき物質としてA2の「弗化ビニリデン」とA12の「2,3-ジクロロ-1-プロパノール」が挙げてあります。それでいいと、そのうちのどちらかを選ぶということでも結構ですし、資料2-4の3~6頁を直接ご覧になって、どちらかといえばこれのほうがリスクが大きいのではないかというご意見があれば、それも頂戴したいと思います。資料2-4の中で、生産量や沸点、あるいは変異原性の情報辺りがポイントになるようにも思うのですが。変異原性に関しては、いつも清水先生にご意見を賜っておりますが、今回これを見て、例えばA10の「ブチルアルデヒド」などは最大比活性値が1,000以上とか、D20が0.021とか。
○清水委員 もう1つ、A6の「2-ビニルピリジン」というのは、微生物ではそれほど強くない。陽性は陽性ですが強くないのですが、ほ乳類の細胞になるとめちゃくちゃに強いのです。
○櫻井座長 0.0064ですよね。
○清水委員 ものすごく強いということで、動物細胞に対しては強い発がん性を示すのかなという気もしないではないのですが。
○櫻井座長 先生は、A10よりはA6のほうが問題だと考えていらっしゃると。
○清水委員 はい。A10は、特徴的なのは微生物で103以上ですが、ほ乳類では倍数体なのです。行動異常がないので、これは特徴的ですね。ただ、生産量が全くわからない。
○櫻井座長 A6とA10を比べたとき懸念がより大きいといえば、どちらかといえばA6とお考えですか。
○清水委員 アルデヒド類は、化学構造的には非常に生物活性が高いですからね。危険性はアルデヒドのほうが高いのではないかという気はします。
○櫻井座長 しかも、沸点が74.8℃で、蒸気圧が111mmHgというのは、非常にリスクが高そうに思われるのですが。
○清水委員 化学構造的には、ちょっといやらしい構造ですね。
○櫻井座長 あらかじめこの2つかなと最初思っていたエキスパート・ジャッジメントから来ているもので、それも1つの判断だと思いますが、A2の「弗化ビニリデン」がガス体であるということで、ガスなので非常にばく露しやすい。
○清水委員 はい。ただ、変異原性試験では非常に濃度を濃くしないと出てこないので、それがちょっと。
○櫻井座長 変異原性は、相当高濃度でやっとという感じですね。生産量も多いし、気体だからばく露の可能性は高いけれど、変異原性からいくと、先ほどのA6とかA10に比べると懸念は少ないですね。
○櫻井座長 これはいつごろの実験データなのですかね、ガス状物質の試験は。バイオアッセイでやったわけではないのですね。
○櫻井座長 A2ですか。わかりませんが。
○清水委員 NTPが13週試験をして報告を出さないというのは、何か理由があるのですか。
○櫻井座長 報告を出さないというのは、どういう意味なのでしょうか。
○大淵有害性調査機関査察官 把握していなくて申し訳ございません。
○櫻井座長 もう1つ、あらかじめ選ばれていたと思われるのがA12「2,3-ジクロロ-1-プロパノール」、粘性のある液体です。これは変異原性がどれぐらい強いかわからないのですが、蒸気圧もそこそこですね。ばく露の危険性はあるかもしれないけれど、生産量も書いていないのでわからない。そのほか、何かお気づきの点がありましたらお願いします。
○山口委員 ある程度生産量のあるものもやらないと、こういう結果があるわけですので、労働の安全衛生上の貢献を考えると、一定の生産のわかったものがよろしいかと思います。しかも、ばく露の危険性を考えると、私もブチルアルデヒドか弗化ビニリデンだと。ここがなぜ結果を出さないとしているのか、両方入っていますが、理由はよくわかりませんが、この2つのどちらかがいいのではないかと。
○櫻井座長 そうですね、これよりむしろ弗化ビニリデンと2,3-ジクロロ-1-プロパノールを特に優先すべき物質とした根拠は、それなりの考えがあってのことかと思いますが。
○清水委員 エキスパート・ジャッジメントが2つに絞り込んだ理由は、何かあるのですか。
○大淵有害性調査機関査察官 エキスパート・ジャッジメントのときの理由としては、資料2-2の後ろに書いてありますが、A1~A15についてがん原性が既知である化学物質の構造の類似性を考慮すると、ということで選んでいただいております。
○櫻井座長 それは、資料2-4のたくさん書いてあるDEREXとかMCASとかという構造活性相関の情報を重視しているのだろうと思うのです。
○宮川委員 エキスパート・ジャッジメントで構造活性相関を調べたというのは、変異原性の強さを予測されたのでしょうか、それとも発がん物質としての予測をされたのでしょうか。資料2-2の裏面の書きぶりからするとその辺がわからないのですが、がん原性が既知である物質の類似で発がん性の予測をして、その結果から出てきたのがこの4つという理解でよろしいのでしょうか。
○櫻井座長 両方あるようですね。資料2-4のいちばん上に、左がエームス試験、染色体異常試験、がん原性試験と書いて、それぞれその下にDEREXとかMCASとかAworksとか書いてありますから、一応、構造活性相関としては両方計算はされているようですね。
これを見ますと、確かに弗化ビニリデンと2,3-ジクロロ-1-プロパノールは構造活性相関でプラスになっている部分が多いのです。それで選ばれたのかなと思うのですが。ただ、実測値として変異原性が示されている、それを重視するとすれば、今ここで議論しているような話になるのではないかという気がするのです。A10の「ブチルアルデヒド」などは、既に変異原性の情報として明確にこういう数字が出ているわけですから、いちばん気になるなと率直に思ったのです。
○宮川委員 そうしますと、発がん性まで含めた予測をされているわけですが、発がん性のこの3種類の構造活性相関のソフトの予測の精度というか、その辺はいかがなのでしょうか。変異原性の話は以前どこかで聞いたことがあるような気がするのですが、発がん性そのものの予測の精度は私は存じ上げないものですから、どの程度参考になるかが少し気になります。詳しいことがわからなければ結構ですが、専門家の方からラフなコメントでもいいので、全体としてどの程度正確な予測ができるのかという辺りはいかがでしょうか。
○櫻井座長 確かに、ブチルアルデヒドはがん原性試験で構造活性相関は陰性になっているのです。エームスと染色体は、判定としてはそれぞれ陽性にはなっていますが、がん原性は陰性になっています。どちらを採るかですね。
○宮川委員 この表の見方は、試験結果というのはコンピュータの予測の結果ではなくて実際の試験結果のことで、その隣にあるのがコンピュータの予測ですよね。そうすると、あまり当たっていないような気がするのです。
○山口委員 それは前もお聞きしたときに、ソフトによって多少違いがあると、そんなに完璧ではないというお答えだったような気がします。だけど、こういうデータを積み重ねてソフトの改善にもつながるということもあるので、きちんとこういうものを参考にしましょうという話だったと私は理解しています。
○宮川委員 たしか3種類のソフトを使ってそれぞれ合計してやると、7割とか8割とかという話を、変異原性では聞いたような気がするのですが、がんについては全く記憶にないものですから。
○櫻井座長 変異原性は、エームスも染色体異常試験もブチルアルデヒドについては当たっていないということですよね。だから、がん原性の予測も当たっていないと考えていいわけです。生のデータを重視するとすれば、ブチルアルデヒドが問題だという結論でよろしいですか。
○山口委員 そうですね。ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの有害性は聞いていたので、さらにブチルと構造が伸びてきたときにどうなのかと。
○櫻井座長 使用量というか、生産・使用量も輸出が4,470で、生産量は書いていないのですが、輸出しているぐらいですから当然あるわけですよね。
○山口委員 と思います。それと、弗化ビニリデン、どちらかでいいと思いますが、確かにこれまでのデータから言うと、ブチルアルデヒドがその近辺の構造のものをさらに類推する意味でも参考にはなると思いますので。
○櫻井座長 それでいきましょうか。名古屋先生、よろしいですか。
○名古屋委員 よいと思います。
○櫻井座長 それでは、そのように結論させていただきます。ありがとうございました。「ナノマテリアル以外」の物質につきましては、A10の「ブチルアルデヒド」とさせていただきます。
次に「ナノマテリアル」に移ります。ナノマテリアルについては、先ほどご説明がありましたように、まず「酸化チタン」か「フラーレン」かになるということですが、そこはよろしいでしょうか。どちらかを選ぶのはなかなか難しいと思いますが、皆様のご意見をいただきたいと思います。
○名古屋委員 1点お聞きしますが、酸化チタンもフラーレンもNEDOでかなり実験をやっていますね。20億という莫大なお金をかけてやっていますね。そこと、ここと、どうつながってくるのか。折角やられて、濃度も全部出されているのと、ここと、そこがどうつながってくるのか、よくわからないのです。
○松井化学物質評価室長 実は、吸入ばく露試験の肺毒性などの試験を相当やられておりますが、発がん性についてはまだこちらでやる余地が相当あるかと思います。
○櫻井座長 発がん性の試験は、ここでサマライズされていますように、酸化チタンの2年間の吸入ばく露試験は1つしかないのです。もちろん、フラーレンについては全然ないということです。酸化チタンのほうは1つあって、それはアナターゼ型が80%、ルチル型が20%だから、主としてアナターゼ型を見ているということです。ルチル型のほうが生産・使用量は多いのですね。
○山口委員 これは化粧品等で使われているということですね。かなり実績があって、たぶん企業でも確認してやっているでしょうから。
○櫻井座長 資料2-5の3頁ですが、「酸化チタン」で左側がアナターゼ型の2年間、右側はやはり2年ばく露を見ていると。
○松井化学物質評価室長 こちらは少し粒子が大きい材料を使っておりまして、ルチル型で陽性の結果が出ているものがあります。ただ、ナノサイズのものはないということです。
○櫻井座長 ナノではないのですね。片方は一次粒径が15~40nmで、ルチル型は200nmぐらいだと思いますが。
○松井化学物質評価室長 資料に必ずしも明確に粒径は書いていないのですが、右上のほうは84%が吸入性粒子であると書かれています。
○櫻井座長 しかも、これはいわゆるナノではないけれど、粗大粒子ではなくてその中間の、UltrafineではなくてFine particleですね。
○松井化学物質評価室長 そうです。サブミクロンというのでしょうか。酸化チタンは大きい粒子も100nmオーダーの、1ミクロンいくのは非常に少ないような粒子ですので、大きくてもナノには近い大きさですね。
○櫻井座長 左側はばく露が10mg/m3で陽性の結果になって、右側は250mg/m3で陽性の結果が出ていると。デュポンの研究者の方々のデータでも、気管内注入実験でルチル型はアナターゼ型よりは少し毒性が弱いと。3頁のデータを見てもある程度予測はできますが。そういう状況ではあるけれど、ルチル型のナノ粒子についての直接のデータは不足していることは事実ですね。
フラーレンは14~15頁なのですが、特に15頁がいちばん最近の2012年の日本毒性病理学会のデータで、F344ラットに発がん物質であるジイソプロパノールニトロソアミンをまず飲水投与したあとで、フラーレンを2週間置きに21回肺内噴霧したところ、右に書いてあるように腫瘍またはがんの発生個体が増えているのです。
○山口委員 これは、基本的にはこの物質が発がん性というのではなくて、発がん性を増進するというデータですよね。
○櫻井座長 そういうデータですよね。プロモーターである可能性があると。
○山口委員 今回の試験は、あくまでも促進するという部分を調べるのではなくて、発がん性そのものを試験するわけですよね。
○櫻井座長 やるとしたら、発がん性そのものを調べるということですよね。
○吉田委員 フラーレンは、いまのところ製造量が非常に少ないということもありますし、先ほどのご説明でも修飾して水に溶ける機能を持たせるような材料も作られるとかと聞いていますので、フラーレンそのものなのか修飾したものが今後使われていくのかが、いまひとつ不明な状態なのかなという感じを持ちますので、それだったら今すぐにフラーレンについて発がん性の試験をするよりは、少し時期を見て情報を集めてからやったほうがいいかなと思います。
○宮川委員 フラーレンについてですが、いまお話がありましたように、比較的使用量が少ないことと、おそらく使われるに当たってはいろいろな修飾をしたものが使われるので、どの辺りをターゲットにするかということもあるので、比較の問題としてはフラーレンは低くなるのかなという気がします。
ただ、2酸化チタンの場合、ルチルとアナターゼのどちらをやるかと。おそらく、明らかに毒性が強いのはアナターゼなので、そこをやるべきだという考え方と、そちらについては少なくとも1つは実験があるから、より毒性の低いルチルをやって、安全であること、ネガティブであることを確かめるという見方でやるという考え方もあると思います。いずれの場合も、現にあるアナターゼ型の実験に対しての批判は、肺の炎症が起きるような肺に過負荷の状態で起きるものであって、低いところでというのは必ずしもわからないということですので、もしやるとすると、肺に過負荷の状態が起きないような低いところをきちんと見るような実験が必要なのかなと思います。
そういう意味では、アナターゼ型のものについていまのデータが十分かと言うと、その辺りが足りないと思いますので、そこをきちんと見るという意味では、アナターゼのチタンを見ることは意味があると思います。また、あまり高濃度でやって、結局肺に負荷がかかったのだと言われてしまっては、また価値が1つ減弱されてしまうと思いますので、その辺は考慮すべきだと思います。
もう1つ、カーボンブラックが出ていませんが、カーボンブラックについては、発がん性があるという相当の証拠があるとみなして少しあとのほうに置くのか。あるいは、これは非常に使っている量が多いので、私はこれはこれで少し考えてみる必要があるのではないかと思うのですが、疫学等があるのでもういいかという見方なのでしょうか。その辺が少しわからないのですが、私としてはアナターゼの2酸化チタンの低い濃度が気になるとともに、カーボンブラックについては確実なデータを求めるのがよろしいかなという気もします。
○山口委員 確認ですが、カーボンブラックの中のナノサイズのものに関して製造量はないのですよね。
○松井化学物質評価室長 そうですね。
○吉田委員 これはカーボンブラックそのものですね。
○松井化学物質評価室長 カーボンブラックの疫学調査は、詳細に取り扱っていたものはわからないのですが、資料の11~12頁を見ると、動物実験の概要があります。最初の1994年の実験ですが、試料がPrintex90ということで、一次粒径15nm、次の1995年の実験は同じ製品ですね。12頁の、これも1995年の試験ですが、これは一次粒径が記載されていない状況です。
○山口委員 カーボンブラックに準ずるものとして、環境省が去年か一昨年PM2.5と基準を作ったと思いますが、あのときも、サイズが小さくても有害性が、日本においては、はっきりしないと。アメリカで有害性が出たと、ヨーロッパはそうでもないという結果が出ていますので、やるのはいいのですが、本当にナノサイズのことに関してできるのであればいいのですが、きちんとした評価ができるのかというところがまだ心配なところです。
そうすると、吸着しているカーボンブラックの表面に付いているものの状態とか、いろいろな影響があるという知見が出ているのです。ですから、テストする場合にどういったカーボンブラックなのか、サイズの問題、表面の状態、吸着しているものの状態などをきちんと評価できた上でやらないと、何もかも同じというわけではないと思いますので、その辺りも含めて検討して、必要であればやるのはよろしいかと思います。
○松井化学物質評価室長 先ほどの私の説明では、カーボンブラックの発がん性に関する情報はほかのものに比べてはあると申し上げたのですが、これが不完全であるというお話があればと思うのですが。
○宮川委員 小さなサイズのものについて、データがもしきれいに抜き出せていないのだとすると。
○松井化学物質評価室長 ただ、試験材料としてのカーボンブラックは、11頁に2つありますが、これについては一次粒径がはっきり記載されていて、この試料自体もいろいろな所で使われているものですので、これ自体はそんなに紛れはないのかなと。どんな状態でばく露させたかという問題は、先ほどの山口委員のお話のようにあるかとは思いますが。
○櫻井座長 これを見ると、割合明確に思われますね。表面に吸着しているものがいろいろあるかもしれないという懸念も、資料としてPrintex90というものがあって、どういうものかわかりませんが、割合純粋なカーボンブラックだとすれば。ただし、ばく露量は多いです。いわゆる低毒性、低溶解性の粒子状物質の典型ですね。だから、繰り返しても同じようなことになると思うのです。低いばく露レベルだと、たぶん出ないと思います。その辺りを確認するということもあるかもしれない。これはばく露のレベルは1段階しかやっていないでしょう。そういうところが弱いですね。やってもらえますか。
○山口委員 組成の問題ではなくて、サイズとか構造とか表面の状態とか、そういったものをきちんと調べた上でやらないと、単にこのサイズという大まかなことだと、正しい判定ができないような気がするのです。種類が状態等で非常に変わりますので、そこができるのであれば、特にある程度多いものがこの辺りだというのがわかれば、やっていただくのがよろしいのかなと思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。
○櫻井座長 1年のフィージビリティテストでそこまでたどり着くかどうか、相当難しいですね。やる価値はあるのですが。
○山口委員 難しい気がしますので、私は先ほど宮川委員がおっしゃったように、もう1つの酸化チタン。あれは1つの安全が出たら出たできちんとわかるという意味で、やるのは結構かなと。酸化チタンそのものはいろいろな所で、食料品にも使われていますし、薬のコーティング剤にも使われていますし、材料としてはたくさんの実績があるわけです。粉体で、しかも小さいときに有害性が出ると。しかも、構造とかいろいろなケースはある程度わかっているわけです。ですから、もう少し有害性のあるもの、ないものをはっきりさせるという意味では非常に意味がありますし、材料としても酸化チタンは今後いろいろな面で、特に触媒作用のあるものを含めて有用性がありますので、非常に意味があるものかなと思います。
○名古屋委員 私も酸化チタンのほうがいいかなと思います。カーボンブラックは、例えば実験したときに、我々はそれでなくても、外に出たときにディーゼルとかそういう形でカーボンブラックにばく露しているわけです。そうすると、そこは特別識別できるわけではないから、ここはそれではなくて、チタンはこれから化粧品等に使われていて、粒子も細かいですし、そこはきちんとわかっているほうがいいのかなと。酸化チタンのほうがはるかに重要かなと思います。
○櫻井座長 そうすると、宮川委員がおっしゃったアナターゼ型とルチル型を両方やると。
○山口委員 本当は2つやって比較したほうが面白いですよね。違いを調べられますからね。
○櫻井座長 両方並行してやるのがいいのでしょうね。
○名古屋委員 結晶の温度の差と、片方は顔料に使うのと光触媒に使うのとで用途が違うので、どちらを使うかということだと思うのです。
○山口委員 まずは生産量が多いものを、きちんと明確にすることのほうがよろしいような気がします。量が少ないということは、労働者のばく露量も、ばく露される労働者も少ないでしょうし。
○宮川委員 1つどこかで見たところでは、アナターゼのほうは塗料に入れて噴霧で使っているのです。そこで実際に労働者が塗料を塗るという写真を見たことがありますので。ルチルが化粧品の原料等だとすると、製造工程では大体扱われている所もあるのかなと。どちらも労働者のばく露の機会がないとは言えないという気はしますが、生産量から言えば圧倒的にルチルですね。ルチルのうんと低いところで出ないことを確認すると。ただし、今ないナノサイズのほうでやれば新しいデータが出ると思いますし、悩ましいところですが、アナターゼも今ある吸入のものは1ドースなので、そういうところも問題があると思います。
○名古屋委員 構造活性は、たぶんアナターゼのほうが強いと思うのです。化学物質の分解はルチルよりアナターゼがはるかに分解しますから。
○櫻井座長 ルチルが1番安定型と聞いております。だから、活性はアナターゼよりもルチルのほうが低いのです。
○吉田委員 そうすると、アナターゼ型の低いところでやって、それがどちらかといえば毒性が強いということであれば、それを基にルチル型も設定するのもありなのかなと思います。
○櫻井座長 アナターゼを優先して、低い濃度をきちんと調べる。
○吉田委員 というのも1つかなと思うのですが。
○山口委員 それもありますね。こちらが白と出れば、こちらはますます白ですし、黒と出ればここからある程度の類推をすると。こちらを固めておくのか、確かにどちらもありで。
○宮川委員 たぶん、吸入ではなくて気管内投与等の実験であれば、アナターゼとルチルを比べて、どの程度のドースが違えば同じぐらいの影響が出たというデータがあったと思いますので、もし影響が片方で出たときには、そこから類推ができるというデータは得られる気はします。
○櫻井座長 事務局はいかがですか。
○松井化学物質評価室長 特段こちらで是非にということではありませんので、この検討会で選んでいただくということです。
○櫻井座長 生産量が違うとはいえ、毒性の強いほうからきちんと調べると。アナターゼの知見も十分ではないから、まずそこをしっかり押さえるというご意見が強いと考えてよろしいでしょうか。
(異議なし)
○櫻井座長 それでは、結論としてアナターゼ型をフィージビリティテストにかけることにいたします。どうもありがとうございました。
時間が少なくなりましたが、次の議題「平成23年度化学物質リスク評価の状況について」ご説明をお願いします。
○瀧ヶ平化学物質評価室長補佐 資料3と資料4です。折角お集まりですので、現段階での「平成23年度のリスク評価の状況について」ご報告をします。これにつきましては、年度が明けて改めて平成23年度の実績と平成24年度のリスク評価の方針案についてご説明します。
企画検討会ですが、昨年6月29日に開催し、先ほどありましたナノの話やリスク評価の候補物質の選定をしていただきました。選定いただいた15物質については、昨年12月28日に告示をしております。平成24年1年間の作業状況について、来年の1~3月にご報告いただくことにしております。現在、平成24年1~3月にも報告をいただいているのですが、これは一昨年に告示をしたものです。リスクコミュニケーションについては資料4でご説明します。
「化学物質のリスク評価検討会」ですが、5月から6月にかけて検討会を実施し、「化学物質のリスク評価検討会報告書」を公表しております。これに先立ち「有害性評価小検討会」「ばく露評価小検討会」を開催しております。10月から11月にかけて、先ほどのナノの関係で検討をしていただいております。10月18日に、「がん原性試験結果の評価」「国が行う生殖毒性試験の対象物質の選定」について、並びに今月の17日に「国が行う生殖毒性試験の対象物質についての報告」ということで検討しております。
「化学物質の健康障害防止措置に係る検討会」ですが、これも10月から11月にかけて検討していただき、検討会の報告書を公表しております。中身は後ろにありますが、「リスク評価結果(13物質)」について詳細リスク評価、初期リスク評価を実施しております。詳細リスク評価の結果、インジウム及びその化合物、エチルベンゼン、コバルト及びその化合物について健康障害防止措置の検討に進んだことと、酸化チタンから4-ビニル-1-シクロヘキセンまでについては、詳細リスク評価へ移行してデータを追加してから、リスク評価検討会でさらに詳細評価を行うことにしております。
下のほうが健康措置の検討です。これについても12月21日に内容を公表しております。中身としては、インジウム及びその化合物について、エチルベンゼン、コバルト及びその化合物についての措置の提言ということで、現在、関係政省令の改正の準備をしております。
資料4です。リスクコミュニケーションですが、既に2回開催しております。昨年9月28日に、大阪で圓藤先生、日本塗料工業会の常務、新日鐵からも来ていただき、約60人でしたが、開催しております。また、10月5日に東京でインジウム関係で大前先生、田中先生、住友金属の担当の方に出席いただいてリスクコミュニケーションをしております。3月5日に、東京で健康措置の内容について名古屋委員、安衛研の菅野先生に来ていただいて、リスクコミュニケーションをする予定にしております。以上です。
○櫻井座長 何かご質問、ご意見ありましたらお願いします。
○山口委員 今回、東京で2回開いたということですが、大体東京で2回。
○瀧ヶ平化学物質評価室長補佐 そうです。お客様がたくさんいらっしゃられるということもあり。
○櫻井座長 ほかには特にございませんか。それでは、ただいまのご説明の流れを受けて、引き続き化学物質のリスク評価について円滑に進めていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。最後に、事務局から何かありますか。
○瀧ヶ平化学物質評価室長補佐 今後の予定ですが、年度明けに企画検討会を開催したいと思います。日程調整等よろしくお願いいたします。
○櫻井座長 その折は、また皆様よろしくお願いいたします。それでは、ちょうど時間になりましたので、閉会とさせていただきます。今日はどうもありがとうございました。
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