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2012年2月20日 第4回 障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成24年2月20日(月)15:00~17:00


○場所

中央合同庁舎第5号館専用21会議室


○出席者

【委員】 今野座長、阿部委員、海東委員、川崎委員、杉山委員、田川委員、田中伸明委員、田中正博委員、野中委員、丸物委員、八木原委員


【事務局】 中沖高齢・障害者雇用対策部長、山田障害者雇用対策課長、田窪主任障害者雇用専門官、鈴木障害者雇用専門官、秋場地域就労支援室長補佐、西川障害者雇用対策課長補佐


○議題

1.これまでの論点整理
2.障害者雇用促進制度における障害者の範囲について

○議事

○今野座長
 時間になりましたので、第4回「障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会」を開催いたします。今日、田中(正)委員が30分ほど遅れられます。阿部委員もまだいらっしゃっていませんが、追い追いいらっしゃると思います。
 それでは議事に入る前に、前回もお願いしたことですが、会議進行についてお願いしたいことがございます。ご発言をされる場合には、発言者は必ず挙手をしていただきます。私が指名させていただきますので、発言する際には氏名を名乗っていただくということで進めたいと思いますので、よろしくお願いします。
 本日の議題ですが、お手元の議事次第にありますように2つあります。1つは、これまでここで議論していただいたことを事務局に整理していただきましたが、その整理に基づいて、さらにこういうことを加えたい、あるいはこういう修正をしたいとかの議論をしていただいて論点整理をしたいと思います。その論点整理をした上ですが、今日はとりあえず論点の中の1.「障害者雇用促進制度における障害者の範囲」について議論をしていただきたいと思っております。それではまずこれまでの論点整理について事務局から、作業をしていただきましたので説明をお願いします。
○地域就労支援室長補佐
 本研究会の資料1をご覧ください。本研究会の第1回から第3回まででいただいたご意見の一覧になっております。主に、第2回、第3回で7団体プラス2機関に対しましてヒアリングを行いましたので、そこでいただいた資料とそのご発言が中心となっております。大項目としましては、ヒアリングを行った5項目で分類し、その中で、さらに小項目に分類してまとめました。また、団体名につきましては略称で記載し、各委員のご発言につきましては、委員名(第何回)という形で入れております。それではまず、これまでどのようなご意見があったかについて、それぞれ、かいつまんでご説明させていただきます。
 『1.障害者雇用促進制度における障害者の範囲について』ですが、改正障害者基本法との関係、障害別についてのご意見、確認方法と留意点についてご意見をいただきました。
 まず、『改正障害者基本法との関係』です。1つ目の○、ほぼすべての団体から「改正障害者基本法の考え方に則るべき」とご意見をいただいたことに加えまして、2つ目の○「職業生活上の制限を受ける状態に基づいて障害認定を行うべき」。3つ目の○「障害者手帳を持っていない発達障害者や難病などの方についても職業上の困難がある場合は現行でも広く対象にしている」というご意見をいただいております。また、次のカテゴリーで『その他障害』についてですが、「明文化されていないためはっきりしていないところはあるかもしれない」。また、ハローワークや職業センターでは「その他障害についても多くの利用がある」とのご意見をいただきました。
 続きまして、障害別にいろいろとご意見をいただきました。2頁です。『発達障害』につきましては、「基本法の定義と同様に精神障害(発達障害者も含む)とし、発達障害者についても明記し、本制度の対象であることを明確化していただきたい」とのご意見がありました。『難病』につきましては、1つ目の○「手帳がなくても障害者雇用促進制度の対象の範囲としていただきたい」。3つ目の○「疾患の特性や症状を抱えている「困難」には大きな差があり、また、年齢・性別・発症の時期や状況によっても抱える困難が異なるため、何々病だからと決めるのではなく、日常生活や社会生活において困難を有し、支援を必要とする者を対象にすべき」とのご意見がありました。
 次のカテゴリーにまいります。『確認方法・留意点』としましては、2つ目の○「就労に関する能力の可否を手帳や診断書のみを基準とすることには限界があると考える。専門職の意見書なども含めて考えてはどうか。個々人が社会生活において働く上で障壁となることがある場合の全てに支援メニューが提供されるべき」とのご意見がありました。3つ目の○「障害者の範囲を広げることにより、受皿となる企業との関係において、圧迫感にならないような視点をもって検討していくべき」とのご意見がありました。
 3頁、カテゴリー『2.障害者雇用促進制度における障害者の範囲を就労の困難さに視点を置いて見直すことについて』どのように考えるかです。小項目としましては、『見直すことについて』、『就労の困難さの多様性』。また、その『基準や判定システム』についてご意見をいただいたところです。
 まず、『見直すことについて』の全般的なご意見としまして多くの団体から、「就労の困難さに視点を置くということは大事な視点であり、賛成」とのご意見がありました。6つ目の○「障害者手帳は就労の困難さを直接的に示すものではないものの、一定の明確な基準となっている。これを見直すというよりは、就労の困難さの視点を加えていくという観点が必要ではないか」とのご意見がありました。
 次の小カテゴリーとして『就労の困難さの多様性』です。多くの団体から、「ご本人の障害の状態、ニーズ、生活環境、受入れ企業の環境や理解、ノウハウの程度、社会情勢など、さまざまな要因によって困難性は個々人でさまざまである」とのご意見がありました。
 次に4頁、『基準・判断のシステム』としましては、1つ目の○「そのように個々人によって非常に違うため、まず個人の把握が十分なされないといけないのではないか」という意見がありました。2つ目と3つ目の○ですが、「極めて個別性の高いものであるため、基準の設定というのは非常に難しい課題であろう」とのご意見がありました。6つ目の○「就労の困難さや必要となる支援は、誰かが認定するというものではなく、本人とのやりとりの中で合意形成されていくもので、そのプロセスは時間がかかる」とのご意見がありました。7つ目の○「発達障害」につきましては、「その障害特性から職業的困難度の判定というのが非常に難しく、職業センターなど、身近な機関において職業的困難度を基準とした「障害」を判定する仕組みを開発することが必要」とのご意見がありました。
 5頁、大きなカテゴリー『3.雇用率制度における障害者の範囲(雇用義務の対象範囲)について」どのように考えるか。まず小カテゴリーとしましては、『改正障害者基本法との関係』、『合理的配慮との関係』、『義務の対象を拡大した場合の雇用率の引上げ』、『対象の拡大に伴う留意点』、『義務の対象として精神障害者や発達障害者、難病』、また『雇用率以外の支援の充実』についてご意見があったところです。
 最初に『改正障害者基本法との関係』です。1つ目の○「改正障害者基本法の障害者の定義に基づいて雇用義務化を検討すべきであるが、対象範囲については明確な根拠を基に検討しなければならない」。2つ目の○「もし障害者の範囲が基本法に従うとすると、かなり範囲が広がることが考えられる」。3つ目の○「最終的な目標としては改正法の対象となるすべての方が雇用義務の対象となることを検討すべきであるが、その前提としてこちらに書かれているような多くの面での整備が必要であり、相当程度の移行期間や柔軟かつ弾力的な施策の実施が必要」とのご意見がありました。
 小カテゴリー2つ目『合理的配慮との関係』としましては、1つ目の○「合理的配慮と機会均等という位置付けで対にした条件整備と、障害者のための優先制度に関しては、バランスを考えた上で在り方を検討する必要がある」。2つ目の○「優先制度を活用して条件が整った方については、枠組みから卒業できる方もいるという視点が必要ではないか」。3つ目の○「雇用義務という仕組みの在り方と、それに伴う合理的配慮をどの程度かけていくかということを考えるべき」といったご意見がありました。
 6頁『雇用義務の対象拡大に伴う、雇用率の引上げ』については多くの団体から、「対象の拡大に際しては雇用率の引上げを行うべき」であり、また、「明確な根拠をもとに検討すべき」とのご意見がありました。
 『対象の拡大に当たっての留意点』としては、1つ目の○「既に就労している人の数合わせにならないように」。「これまで職業生活を送っていた人が就労の機会を失うことのないように」といったご意見。3つ目の○「生きがいのある就労に結び付くように」。4つ目の○「企業側の努力に負うばかりではなく、支援機関の充実が図られなければならない」。6つ目の○「経済情勢が厳しいことなどから、雇用義務とする対象範囲を拡大する時期については熟慮が必要」とのご意見がありました。
 7頁『雇用率カウント・義務化の効果』としましては、「知的障害者の義務化や、精神障害者の雇用率カウントによって就労支援施策が進み、雇用機会が拡大した」とのご意見がありました。
 次のカテゴリーにまいります。「精神障害者」につきましては、多くの団体から「雇用義務の対象に入れるべき」とのご意見がありました。8つ目の○「精神障害者を対象の範囲に入れることについては異論はないが、企業を取り巻く現在の状況を鑑み、時期については熟考が必要」とのご意見がありました。
 8頁『精神障害者の雇用を取り巻く状況』としましては、「平成18年度に雇用率カウントになってから求職者や就職者が増え、企業における理解度も高まり、支援や助成金制度が充実してきた」とのご意見がありました。
 続いて『発達障害』については、先の精神障害者に関するご意見の中にも「精神障害者(発達障害者含む)」ということでいくつか含まれていたものもあったのですが、発達障害独自の視点としましては、2つ目の○「発達障害者の雇用に関する配慮の必要性は、手帳や医師の診断書とは異なるものであると思うので、独自に判定基準を設けて、対象となる人・ならない人を判定する必要があるのではないか」とのご意見がありました。
 『難病』につきましては、9頁、「病気や障害を問わず支援を必要とする人を対象にすべきだと思うが、制度を運営するとなると、どういう基準を設けるかということになる、医療による診断だけではなく、福祉や介護との連携によりどういう支援が必要かを判断し、制度の利用に結び付けるのがよいのではないか」といったご意見がありました。
 最後に『雇用率以外の支援の充実』としましては、2つ目の○「雇用率の対象とならない対象者向けの施策の充実が必要」、3つ目の○「雇用率を引き上げることだけでは解決しない、病気の理解や環境づくりが必要」といったご意見がありました。
 10頁、大きなカテゴリーの4つ目『4.雇用率制度におけるダブルカウントや特例子会社の取扱い』についてどのように考えるかにまいります。
 最初に、ダブルカウント制、特例子会社、両方に跨る意見としましては、『全般』としましたが、例えば、1つ目と3つ目の○にあるとおり、「知的障害者や就労に困難度が高い重度障害者の雇用を促進するために機能しているという面がある」という点や、「雇用率制度によって障害者雇用は確実に進展された」といった評価をいただいている一方で、「数合わせや障害者だけを集める雇用形態には問題があるとの指摘もある」。5つ目の○「改めて見直しが必要」。8つ目の○「見直しの際には調査や研究が必要で、時間がかかるものと見込まれる」といったご意見がありました。
 『重度障害者・ダブルカウント』につきましては、2つ目の○「ダブルカウントについては、重度障害者の雇用を促進する利点があるものの、障害当事者からすると半人前に扱われているように感じる」。3つ目の○「雇用者側からすれば、軽度の障害者を2名雇うほうが利点があると考える雇用者もいる」といったご意見もありました。
 11頁、1つ目と3つ目の○ですが、「カウントのルールが手帳ベースになっているため、生活面の障害と職業面の障害の程度のずれが生じている例もある」。6つ目の○「あまり雇用が進んでいない障害種別だとダブルカウントの対象をもう少し考えるべきではないか」。1つ目の○に戻りますが、「手帳や医師の所見に加え、就労支援に係る個別支援計画やアセスメントに基づいて職業的重度判定を行う手法の検討が必要では」、といった重度の基準に関するご意見をいくつかいただいております。
 12頁、『特例子会社』につきましては、2つ目の○「障害者の雇用促進に貢献しており、特に知的障害者の雇用促進になっている」。3つ目の○「ただし、精神障害者への対応は難しいような気がしている。支援人材の充実が必要なのでは」。7つ目の○「大企業向きの施策である」。6つ目の○「有効な場合と、障害者を企業から隠してしまいかねない面があるので、両面からの検証が必要である。また、一般就労者との交流なども必要だと考える」。9個目と10個目の○「ノウハウを社会に還元していくことができるのではないか」といったご意見をいただいております。
 最後に、13頁以降は、『5その他」としましてさまざまなご意見をいただいたものを並べております。カテゴリーとしましては、『雇用継続(全般)』、『精神障害者の雇用継続について』、『事業所の理解や意識啓発について』、『生活支援や福祉・医療との連携について』、『個別性や個別支援計画について』、『ジョブコーチや中小企業について。障害別の支援制度について』、『職場実習の促進。20時間未満の短時間雇用について』、『新たな職域開拓や多様な働き方』、『企業のマネジメント』、『合理的配慮との関係』、『障害基礎年金』、『障害別の状況や課題』についてご意見をいただいております。
 時間の関係で簡単にご説明させていただきますと、『雇用継続(全般)』に関しましては、「就職の点ばかりに視点を置くのではなく、雇用の継続と安定についての施策も合わせて検討が必要である」。また、『精神障害者の雇用継続』に関しましては、2つ目の○「就職件数は増えたが、離職が多いと言われており、継続雇用、安定のためにさらなる支援が必要」。3つ目の○「定着支援がシステム化されていくことはとても重要。特に企業の支援者と、外部の支援機関がうまく波長を合わせて、障害のある方を支援していくシステムがしっかり出来れば雇用継続は可能だと思う」。5つ目の○「精神障害者は不安定なところがあるが、それを何回か切り抜けていけば安定し、力を出していけると思っている。仕事の中でそうした波を何回か切り抜けていくと病状がよくなることを実感している」などのご意見をいただいております。
 14頁にまいります。『事業所の理解と意識啓発』については、「障害を正しく理解する啓発事業が必要である」ということ。7つ目の○「制度を使ったとしても、利用されないと意味がないので、そういった制度の普及啓発も必要なのではないか」といったご意見をいただいております。
 15頁、『生活支援と福祉・医療との連携』です。1つ目の○「就労というのは、就労だけで個別に動いてはおらず、生活というのがその前提にある」。2つ目の○「就労、福祉、保健、医療等との領域の横断的、総合的支援が求められ、その実現のためのコーディネートの充実が求められる」など。10個目の○「精神障害者の関係では、地域において精神障害者の就労支援機関があまりない」といったご意見や、最後の○「精神障害者の就労支援は難しいと言われるけれども、やってみるとそんなに難しくなくて、初めから諦めてしまったり、本気で就労支援をしていないところもあるのではないか」といったご意見をいただいております。
 16頁、『個別性や個別支援計画』についてです。「個別支援計画については、当事者だけではなく、関係機関、全てが同じ視線を共有できるという大切な役割がある」こと。4つ目の○「障害種別ごとの対策を立てずにもっと個別性を重視したほうがよいのではないか」といったご意見をいただいております。
 17頁、個別性の続きです。「個別という話は企業においても実感する。障害者だからということではなくて、一般の従業員も含めて個別のマネジメントが重要なのではないか」といったご意見をいただいております。
 『ジョブコーチ』については、「障害別の専門性のあるジョブコーチがもっと増えたらよいのではないか」といったご意見をいただいております。
 『中小企業支援』に関しましては、「施策が大企業向きなので、もっと中小企業を支援するような仕組みが必要ではないか」といったご意見をいただいております。
 『障害別の支援制度』としましては、「精神障害者については、とにかくマンパワーが必要であること。一人ひとりに応じた施策が必要である」といったご意見や、18頁、『発達障害者』に関しては、「発達障害の診断のみで受けることができる支援制度を充実してほしい」。「地域センターで行っている発達障害者に関する専門的支援を全国のすべての地域センターでやってほしい」。『難病』については、「難開金」だけではなくてステップアップ雇用奨励金を難病者にも適用させてほしい」。『その他の支援制度』としましては、「いろいろと企業のインセンティブを高める施策として、職場実習を受け入れる企業や、福祉施設に作業を提供している事業所、週20時間未満の雇用をしている事業所など、雇用に向けて前向きに取り組んでいるような所を何か評価する施策は考えられないか」といったご意見や、4つ目の○「震災の影響といって障害者雇用が見失われてはいけないので、より積極的に頑張ってほしい」といったご意見をいただいております。
 『職場実習の促進』としましては、「現在、職場実習の受け入れ企業は、熱意とボランティアでやっているところがあるので、そういった企業に対する何らかの評価が必要なのではないか」。19頁、『短時間雇用』ということで、「週20時間未満の雇用に対して何らかの評価があればいいのではないか」。『職域開拓』としましては、「最近、従前よりも業種が多様化していて、特にパソコンの導入などで知的や精神の人たちも十分な機会が与えられるようになったので、さらに第一次産業とか芸術文化活動など、また新たな分野での職域開拓も必要なのではないか」。『多様な働き方』としましては、「雇用だけではなく、自営業に対する支援」や、20頁、「段階的な就労体系の場を広げていくような仕組みも必要なのではないか」といったことです。『企業のマネジメント』に関しましては、「障害者だけではなく、健常者も含めて社員の不安定就労化にいかに対応していくかというのが企業の大きな問題となっており、障害者の問題もその中の1つだと考えられる。どういったチームメンバーを入れるかというだけではなくて、どういうふうにマネジメントをしていくのかということが重要である」といったご意見をいただいております。
 21頁、『障害別の状況・課題』ということで、身体障害者に関しては、例えば、「身体障害者全体というのではなくて障害の種別や等級別など、これを十分配慮した雇用制度にしていったほうがいいのではないか」。21頁、精神障害者に関しては、雇用率のカウントになってからだいぶ、いろいろと進んできたといったような話、モデル事業を実施した際のご経験からのご意見。23頁、難病に関しましては、疾患別によって困難性などが非常に違うといった調査結果のご紹介などをいただいているところです。
 資料2です。このように色々なご意見をいただいたところですが、これまでのご意見を踏まえまして、また本研究会の当初の目的を鑑みまして、今後の主な論点としまして提案させていただきます。
 『1.障害者雇用促進制度における障害者の範囲について』です。
 「(1)障害者雇用促進制度における障害者の範囲についてどのように考えるか」、また、特にご意見も多かったところですが、「いわゆるその他障害の方々についてどのように考えるか」。
 「(2)障害者雇用促進制度における障害者の範囲を就労の困難さに視点を置いて見直すことについてどのように考えるか」。言い換えますと、「障害者雇用促進法第2条の障害者は就労の困難さに視点が置かれたものとなっているか)といったことです。
 『2.雇用率制度における障害者の範囲等について』。
 「(1)雇用義務制度の趣旨・目的を踏まえ、雇用率制度における障害者の範囲をどのように考えるか」。雇用義務というのは、本来、企業には採用の自由があるところを雇用促進のために義務を課しているもので、ある意味規制のような要素がありますが、その障害者雇用の義務の対象範囲を与えるに当たって押さえるべき視点は何かということをまずご議論いただきたいと思っております。その上で、「(2)雇用義務の対象範囲についてご意見が多かった精神障害者を雇用義務の対象とすることについて、どのように考えるか」。平成16年の研究会報告書では、将来的には義務の対象にすべきであるが、まずは雇用促進を、ということで平成18年度から特例的に雇用率の対象としてきたところですが、それをどのように考えるか、また、仮に「雇用義務の対象とする場合に、その範囲、確認方法というのはどのようにすべきであるか」といったことについてご議論いただきたいと思っております。
 「(3)その他、雇用義務の対象とする範囲や確認方法等についてどのように考えるか。また、その対象とならない障害者の雇用促進のためにどのような施策が必要か」ということについてもご議論いただきたいと思っております。
 最後に『3.雇用率制度に関するその他の論点』です。「(1)重度障害者の範囲についてどのように考えるか。ダブルカウント制について積極的差別是正措置として、引き続き存続することとして良いか。また、存続させる場合に改善すべきことはあるか」。「(2)特例子会社について積極的差別是正措置として、引き続き存続することとして良いか。また、存続させる場合に改善すべきことはあるか」についてご議論いただきたいと思っております。
 『(3)その他』、例として「派遣労働者の取扱い等の雇用率制度における取扱いの見直し等」を挙げております。これは、特にヒアリングではご意見はありませんでしたが、平成17年の法改正の付帯決議において「派遣労働者としての障害者の雇用について障害者雇用の促進を図る観点からその実情を含め検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」とされ、平成20年の法改正のときには「現時点では派遣労働者に対する障害者の理解やニーズの動向を見極める必要がある」とされたものですが、現在の状況について改めてご意見を賜りたいと思っております。
 なお、今回、資料1で5に分類させていただきました『福祉と医療との連携』や『雇用継続のための支援の在り方』、『合理的配慮との関係』など、たくさんご意見をいただいたところですが、並行して行っております「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応のあり方に関する研究会」と「地域の就労支援のあり方に関する研究会」において主に議論をすることになっておりますので、いただいたご意見についてはそちらで参考にさせていただくこととし、本研究会においては、当初の目的である障害者の範囲や雇用率制度を中心にご議論いただければと思っております。もちろん、そういった主な論点に関して必要な支援策や連携などについてご意見をいただくことまで制限しているわけではなく、まずは障害者の範囲や雇用率制度を中心にご議論いただきたいと思っております。以上です。
○今野座長
 ありがとうございました。それではご意見、ご質問をいただきたいのですが、いま説明していただいた資料の2がここで、何を議論しようかという一番の骨格になるのですから、資料2の論点でいいかどうか、あるいはここを修正すべきだ、あるいはこれは追加すべきだということを中心に議論をいただいて、それをもう一度整理させていただいて論点を確定してから議論していきたいと、そんな段取りで考えております。ご意見、ご質問をお願いいたします。これでよろしいでしょうか。
 では、次回以降の研究会でもいいですが、特別に論点があったらその都度加えることにして、とりあえず、この進行計画表に従っていくということでよろしいでしょうか。
                  (了承)
○今野座長
 それでは、今日はこの論点に従って「1.の障害者雇用促進制度における障害者の範囲」について議論をしていただきたいと思います。
 そこで、それについての事務局の説明を最初にしていただき、議論をしていただきたいと思います。
○地域就労支援室長補佐
 資料3について説明させていただきます。参考資料1、2、3として今までの研究会でも出しておりました、障害者雇用促進法における「障害者」の範囲や義務の対象、障害種別にみた障害者雇用支援施策の適用範囲、また他の法律における障害者等の定義について添付しておりますので、そちらも適宜ご参照をお願いいたします。
 それでは資料3の説明に入ります。平成22年の6月に閣議決定「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」において、障害者雇用促進制度における「障害者」の範囲について就労の困難さに視点を置いて見直すことについて検討し、平成24年度内を目途にその結論を得るということが、本研究会の出発点となっていることを確認したいと思います。
 まず、論点1として、(1)、(2)とありますが、『(1)範囲についてどのように考えるか。特にその他障害の方についてどのように考えるか』ということです。
 先ほどもご説明させていただきましたけれども、ヒアリングにおける主な意見としては、『改正障害者基本法との関係』として、「改正基本法の障害者の定義に基づいて考えるべき」といったご意見や、またその定義と「同様に(発達障害も含む)として発達障害者も明記すべき」、また、その具体的な案文もいたただいているところです。
 難病に関しましては、「疾患の特性により、症状や障害及び抱える「困難」は大変大きな差異があって一概に、難病の就労支援というのはこうあるべきと定義するのは難しい。何々病と決めるのではなく、日常生活や社会において困難を有し、支援を必要とする者を対象にするべき」といったご意見をいただいております。
 『その他障害』につきましては、1つ目の○で「職リハという観点では、手帳を持っていないけれど職業上の困難さがある方については、法律でも広い対象としている。現在もきめ細やかな相談や必要に応じた支援メニューを活用した支援を実施しており、現行の範囲でよいのではないか。ただし、明文化されていないため、はっきりしていないところはあるかもしれない」、といったご意見をいただいております。
 『発達障害』については、「精神障害者保健福祉手帳取得していなくても、必要な支援を受けられるようにすべき」。『難病』に関しても、「手帳を交付されてない難病の方も、障害者の範囲とすべき」、といったご意見をいただいております。
 2頁、「医療モデルによる障害や疾患の羅列ではなく、個々人が社会生活において働く上で障壁となることがある場合の全てに、国のサービスとして提供できる支援メニューが提供されるべき」。「就労の可否を、手帳や診断のみを基準とする方は限界があるので、専門職の意見書なども含めて考えてはどうかという案もあり、それも含めて検討すべき」。最後に、「障害者の範囲を広げることにより、受皿となる企業との関係において圧迫感にならないような視点をもって、検討していくべき」とのご意見をいただいております。
 参考1として参考資料1や3にもかかわってきますが、障害者の定義として現行の障害者の雇用促進等に関する法律では、「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者を言う」と定義しています。また参考2は、ハローワークにおいては、現在どのように障害者であることを確認をしているかといいますと、「身体障害者、知的障害者、精神障害者に関しては基本的には手帳であったり、診断書で確認させていただいております。それ以外の方については、医師の診断書や意見書等がある方については、それを参考とさせていただき、障害者の要件に該当するか否かを個別具体的に確認する」こととしているところです。
 『(2)障害者雇用促進制度における障害者の範囲を就労の困難さに視点を置いて見直すことについてどのように考えるか。』は2つの問いに分けました。マル1障害者雇用促進法における障害者の範囲は、就労の困難さに視点が置かれたものになっているか。マル2就労の困難さに、どのような基準や判定方法が考えられるか。また仮に判定をする場合の課題は何か、としております。こちらにつきましては別紙の「医学モデル」と「社会モデル」について、きちんとした定義はありませんが他の資料からの抜粋を示したものです。
 1つ目は、ICFであり、これまでWHOでは障害分類として1980年にICDの補助として発表したWHO国際障害分類ICIDHを用いてきましが、2001年に新たにICFが採択されました。これはもともとは身体の障害プラス生活機能障害で分類していたところ、それに加えて環境因子という観点を加えたものとなっております。「医学モデル」では、障害という現象を個人の問題としてとらえ、病気・外傷やその他の健康状態から直接的に生じるものであって、専門職にある治療や医療を必要とするものとみております。一方で「社会モデル」は、障害を主として社会によってつくられた問題であるとみなしているため、社会が障害をつくっているということでベクトルの方向が逆になっています。ですので、ICFではこれらの対立する2つのモデルの統合をしましょうという観点で作られたものであり、生活機能のさまざまな観点の統合をはかる上で、「生物・心理・社会的」アプローチを用いていることが特徴になっております。
 また、障害者制度推進会議の「第一次意見」として出された資料からの抜粋です。「医学モデル」と「社会モデル」について説明があり、「医学モデルとはこれまで心身の機能・構造上の「損傷」と社会生活における不利や困難としての「障害」を同一視していた。また、障害を個人に内在する属性ととらえて、障害の克服のための取組は、もっぱら個人の適応努力によるものととらえる考え方であった」ということです。一方で「「社会モデル」とは損傷と障害とを明確に区別して、障害を個人の外部に存在する種々の社会的障壁によって構築されたものとしてとらえる考え方である。社会的障壁の除去・改変によって、障害の解消を目指すことが可能だと認識するものであって、障壁の解消にむけての取組の責任を障害者個人ではなく、社会の側に見いだす考え方である」とされているところです。
 3頁に戻ります。『障害者の雇用促進法における障害者の範囲は、就労の困難さに視点が置かれたものとなっているか』ですが、ヒアリングにおける主な意見としては、「大事な視点であり、賛成である。職業生活における継続的で相当な制限を受ける状態を下に、障害認定を受けるべきである。障害者にとっては、いかなる『場面』でどのような「支援」が必要とされるのか、その「支援」の大きさを考慮して決めるべき」といったご意見や、「個々の特性が生かされるよう、まずは個人の把握が必要である」といったご意見。3つ目の○「就労の困難さというのはさまざまな障害の特性やニーズ、受け入れ側の企業の状況等体制等により異なるため、極めて個別性が高いものである」。4つ目の○「手帳というものは就労の困難さを直接的に示すものではないが、一定の明確な基準になっているものではないか。現行の手帳準拠の考え方は有用であり、それを見直すというよりは就労の困難さを視点を加えていく観点が必要である」。6つ目の○「就労の困難さは非常に多様であって、就労の時点、継続の時点等で考えていく必要がある」。8つ目の○「発達障害については、社会性やコミュニケーション面など障害の判定が難しいという特性があり、雇用が進まない現状がある」。9つ目の○「難病については、疾患によって症状や抱えている困難等大きな差異があるので、これらの配慮については疾病の種類や年齢、性別等によって違いも大きく、その理解と配慮が必要である」といったご意見をいただいているところです。
 4頁、『マル2就労の困難さについて、どのような基準や判定方法が考えられるか、また仮に判定する場合の課題は何か」ということで、1つ目の○「個人の把握が十分なされないといけない」というご意見。また2つ目の○「就労の困難さの視点は重要であるが、障害特性や職種と個々人の困難性はさまざまで、かつ、受け入れ環境も多用化している。手帳等による確認に替えて就労困難性で判断する場合、就労困難さをどのように捉え、どのように誰が判断するかという課題が生じる。ハローワークでは、手帳にかかわらず、個々の障害の特性や適正と個々の職場環境を含む求人条件について調整しながら職業相談を実施しており、個々の求職者の就労困難性に視点をおいている」。また、3つ目の○職業センターからは、「就労の困難さやその必要な支援というのは誰かが認定するというものではなく、本人とのやりとりの中で合意形成していくものではないかと考えており、そのプロセスが非常に大切である。4つ目の○発達障害に関しましては非常に障害の現れ方が極めて多様で、社会性やコミュニケーション面など障害の判定が難しいという特性をもっていることから、そのような特性のある発達障害のある方の支援を判定していくためには、地域障害者職業センター等で職業的困難度を基準とした障害を判定する仕組みの開発が必要」といったご意見をいただいております。説明は以上です。
○今野座長
 ありがとうございました。それでは議論をしていただきたいと思います。資料3では1頁が(1)、3頁が(2)になっています。折角分けてあるので、順番に議論していければと思います。最初に、(1)についていかがでしょうか。
○田中(伸)委員
 日本盲人連合会の田中です。障害の範囲の部分ですけれども、先ほどご説明いただいたように、雇用促進法の条文を見ますと、「いくつかの障害があるため」という平仮名5文字が入っています。この5文字が医学モデルを表しているということになっております。改正前の障害者基準法の障害の範囲の定義も、この「があるため」という言葉が入っていて、医学モデルに準拠しているのではないかという話になっていました。これが改正になっています。したがって雇用促進法での議論においても、この「があるため」という言葉をどうしていくのかという点が、1つの大きな具体的な議論の点になるのではないかと思っています。
 もう1点は、定義規定を見ますと「長期にわたり」とか「相当な制限」、あるいは「著しく困難」というように、評価概念が結構入っているのです。これをこのままにして現場の判断に任せるのか、ある程度、政令下で少し具体的な基準を定めていくのか、ガイドラインみたいなものを作るのか、その辺りが少し問題になるのかなという印象を持っています。
○今野座長
 ほかにはいかがでしょうか。
○川崎委員
 今おっしゃった意見に大変賛同いたします。とりあえず範囲としては、改正障害者基本法の範囲ですけれども、雇用促進法においては就労ということが要になってきます。やはりガイドラインみたいなものが必要かと思います。それをどのような形で持っていくか疑問に思っております。
○今野座長
 これは私の日本語能力の問題なのか。先ほどおっしゃった「職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」というのは、違うことを言っているのですか。ここはどういう解釈になっているのですか。あまり気にしていないのですか。
○障害者雇用対策課長補佐
 「職業生活に相当の制限を受け」か、「職業生活を営むことが著しく困難な者」と言っていますから、職業生活を営む上で相当な支障を受ける人か、それ自体が著しく困難ということです。おそらく相当の制限を受ける人よりも、「著しく困難な」の方が、いわゆる「重度障害」と言われているような人を想定しているのではないかと思います。重度障害をお持ちの方であっても、障害者雇用促進法の対象になっているということを明確にしているのだと思います。
 先ほどの田中委員からのご指摘のように、「長期にわたる」と言ったときの長期さとはどれぐらいを言うのか、「相当の制限」とはどのレベル以上の相当さを言うのか、「著しく」と言ったときの著しさとはどこのレベルを言うのかというのは、非常に難しい問題だと思います。先ほど秋場からご説明させていただいたように、現行の制度自体は資料3の2頁の参考2、「ハローワークにおける障害者であることの確認」に書いてあるよう、実際に現場レベルでは、「相当な」とか「著しく」とか「長期にわたり」というものを、まずは医師の診断書や意見書などをお持ちの方であれば、それをもって。それから、職業生活上の困難性というのがどれぐらい生じているのかということを確認していきます。具体的に何をもって確認していくのかと言えば、例えばその方のこれまでの職歴や生活面での困難さを、個別に相談しながら判断していく。おそらく、それがヒアリングの中でいわれた合意形成プロセスが重要というお話であり、基準を一律に作るのはどうかというご意見が、たしかあったかと思います。
○今野座長
 資料としては、資料3の4頁の○の3つ目の下2行ですよね。
○障害者雇用対策課長補佐
 そうです。就労の困難さにはさまざまなものが絡み合っているということで、一律にガイドラインや基準をもって、ここが相当の制限だとか、ここが長期だとやってしまうと、逆に障害のインペアメント上の程度は軽いかもしれないけれども、就職がなかなかうまくいかないとか、これまでも就職したけれども、なかなか継続しないといった方が排除されてしまうので、そこは現場では、いわばファジーな取り方をしています。逆にそれは合意というか、個々人の就労の困難さというものを対面で判断していく中でやっているのが現行制度です。
○今野座長
 そうすると、障害者雇用の促進等に係る法律の第2条、「職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」というのは、先ほどの説明によると、結局は相当以上は全部拾いますということになりますね。極端なことを言うと、「又は」は要らないですね。「職業生活に相当以上の制限を受ける」とやれば、実質的に同じということになりますか。待ってください。制限を受けて困難になるわけですか。まあ、いいや。やめます。ほかに意見をどうぞ。
○野中委員
 いまの所を確認します。「職業生活に相当の制限を受け」が、仕事をしている上での制限を意味していて、後半は職業生活自体を営むことができない、一切できないというニュアンスを持っているわけでしょう?
○今野座長
 そちらのほうですか。
○野中委員
 おそらく。私は作った身ではありませんが、そういうように解釈できます。しかし現在の価値観では、後半の文章をつくること自身が問題かもしれません。どのように重くても、どのような障害を持っていたとしても、合理的配慮の下で就労は可能なのだという点が欠けてしまうので、この後半が問題かもしれないと考えればいいのではないでしょうか。つまり、前半だけで済むのではないでしょうか。
○今野座長
 この文面の前半の意味というのは、職業生活を営むことが困難ではない人でも制限を受けていることがあり得る、そういう趣旨ですか。
○野中委員
 職業生活に合理的な配慮がないためにということです。私も軽い障害を持っていて、非常に困難をきたすけれども、それを職場は配慮しないわけです。ですから、そういうことも含めて合理的な配慮がないための制限ということではないでしょうか。
 もう1つ付け加えます。基本的に議論を明確にしたいのです。障害の規定と働けることの規定は違うのです。ここのところを全員が理解してもらわないと、話がややこしくなります。クリーブランド判決というのがアメリカでありました。障害であるために障害者年金をもらうということは一般的な障害判定であって、障害者年金をもらっていても就労は可能だというのが合理的配慮の考え方です。就労できるできないということと、障害があるないということは別の判定の問題なので、別の判定システムを作らないとおかしな話になってしまうのです。
○今野座長
 結局、今日の論点の(2)はそういうことですよね。次の論点ですが。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。もしご意見があったら、また後から言っていただいて、あまり仕切らないで(2)もまとめてやってしまいますか。では(2)も含めて、何でも結構ですのでお願いします。
 私の勉強のために教えてほしいと思います。5頁の別紙の「障害者制度改革の推進のための基本的な方向」では、損傷と障害という概念に分けているのです。損傷はいいです。例えば身体に障害を持っていたら、これは損傷ですよね。職場に段差がありますよね。これを「障害」と言っている。しかし考えてみると、身体的な損傷と段差があることの総合として働きにくさが出てくるのです。これが障害ではないかとも思うのですが。この障害はどちらのことを言っているのか。私の言っている意味をわかってくれましたか。この障害は何か曖昧な概念だなと思って読んでいたのです。どちらを言っているのだろう。
 最終的には働きにくさとか働きやすさだから、それを「障害」と言うのではないか。身体的というか医学的な損傷と、社会における条件があると、ここでは条件のほうを「障害」と言っているけれども、その両方を合わせた結果として働きにくさの障害というのがあるのではないですか。ですから、これはどちらかなと思ったのです。この報告書はそういうことをあまり考えていないのですか。書いた人たちがいないから、誰に聞いてもしょうがないですか。
○障害者雇用対策課長
 おそらく、これはある特定の事象を医学モデルで説明できる部分と、社会モデルで説明できる部分が背反になっているという発想にはなっていないと思います。よく「医学モデルから社会モデルへ」と言ってしまいますけれども、それは結局両方の要素が絡み合っているので、たぶん社会モデルに全面移行すればOKという話ではないと思います。アプローチの仕方として両方の要素が絡み合っていることを自覚せずすべてを個人に帰着させるのはよくないということで、あえて医学モデル的なアプローチと社会モデル的なアプローチは別のものですということを強調しています。個々にいろいろ起こる事象が医学モデルに起因します、社会モデルに起因します、という話ではないのではないかと思います。
○今野座長
 ここでいちばん重要なのは、障害者雇用促進法の言葉で言うと、相当の制限を受けている状態をどうにかしたいわけですよね。職業生活における相当の制限が、たぶん最終的な障害なのです。それを起こす原因系が医学的な原因と、もう1つは社会的な原因と両方あるということですよね。ここで考えるのは、就労における制限をどうにかしようということだから、どちらかということはあり得ないと思っているのです。いずれにしても、いま言った3つのことをきちんと区別して議論しなければいけないとすると、コンセプトとしては損傷と障害だけでは1個足りないのですが、こんな理屈の話はやめましょうか。
○阿部委員
 つまり、いわゆるインペアメントがある。階段があればインペアメントは障害になるけれども、ある場合には階段部分をスロープにすることで、インペアメントがあっても使えるようにする努力を企業でしているわけですよね。
○今野座長
 そうですよね。その場合、資料3の「障害者制度改革の推進のための基本的な方向」に書いてある「障害」というのは、階段のことを言っているのですか。
○阿部委員
 階段があって、そこが移動できないということを言っているのではないですか。しかし、それは雇用支援のさまざまな工夫によって、なくすことはできますよね。
○今野座長
 ですから階段があると働けなくなってしまうわけですよね。
○阿部委員
 支援がなければ。
○今野座長
 支援がないということを前提にすると。そうすると結果としてのいちばん重要な変数は、働けないというか、働きにくいということですよね。
○阿部委員
 何も手当をしなければです。
○野中委員
 今のことを明確にします。障害物と障害されていることの2つが、日本語では「障害」になってしまっていて、法律上もその2つの意味がごちゃ混ぜに入ってしまっているのでこんがらがっているのです。「障害物」と「障害されていること」というing形が、同じ言葉になってしまっているわけです。
○今野座長
 そうですね。その場合、障害物ということもありますし、障害の制度ということもあるし、障害になる価値観とか、いろいろあると思います。ほかにいかがでしょうか。
○野中委員
 もう少し話をわかりやすくするために、私はいつも就職することと結婚することは一緒だというたとえを使っています。結婚は相手によって決まるものですし、就職も相手によって決まるものです。だから、結婚してはいけないなどと誰も決められないし、就職してはいけないとも決められないけれども、相手がいないと結婚できないし、相手がいないと就職できないのだから、そこで相互に工夫をする必要があるのではないかという話です。ですから障害であることと、結婚をしたり仕事をするということは、相手によって困る問題は違ってくるわけです。工夫しなくてはならない問題が変わってくるので、相手によってそこの判定というものが必要になってくるのではないかということです。
○今野座長
 同じようなことですが、今回のこの論点で私がずっと気になったキーコンセプトは多様性です。みんな違うということです。みんなが違うことを前提に、例えば論点(2)の4頁などはその典型です。それを判定するのはどうやるのだろうかと。ここは非常に難しいところですよね。
○野中委員
 それも明らかにしておきたい。判定する基準を作るのか、判定する人を基準にするのか、ここが違うわけです。医師の診断について法律で定めると、とんでもない複雑な法律になってしまうので、医師という存在を法的に認めて、医師が判断したものはOKですと法的に認める。専門職としてその人を信用するわけですよね。それと同じように就職できるできない、どこが不足であるということを判断する専門的な人であったり、チームであったり、組織であったりすることを法的に保証すれば、個々の複雑さの問題は、その人たちに任せればいいわけです。
○阿部委員
 この(2)の就労の困難さと、職業生活の困難さというのは同じなのかなと思うのです。就労はできるけれども、ほかの要因で職業生活が維持できないと。例えば、ある方の場合は金銭管理がうまくいかない。働くことはできるけれども、金銭管理ができないことが本人の意識の中とか、いろいろなことが複雑な要因となって、就労生活に集中できないということもありますよね。ですから(2)は就労の困難さもあるけれども、職業生活を維持する困難さというほうが、すごく大きな意味なのかなと思いながら、私自身がわからなくなったので、どなたかにその辺を解決していただきたくてお話しました。
○川崎委員
 解決はわかりませんけれども、やはり就労の困難さの中に、その人の生活全部が入ってくると思うのです。ただ仕事をする上での困難さだけではなく、日常生活のことも全部含めて、やはり就労が困難になる。特に精神はそうです。その場合に、いままでは就労の困難さに関して、本人とのやり取りの中で合意形成をして、就労を決めていくということでした。確かに合意形成をするプロセスは非常に大切ですが、そういう専門を、いまはハローワークでやっているわけですよね。
 そういう専門職の人がいま多様性というのがありましたけれども、それぞれの障害特性をしっかりと理解した上で、合意形成を持っていく必要があると思うのです。その辺のマンパワーの充実なども必要かなと思います。何となくある基準と言いますか、何もない上で合意だけで決められるものかなというのがクエスチョンです。医師の意見書などがあればいいのですけれども、これからはそれがなくても就労できるようにしたいと言っているわけですので、その辺の決め手みたいなものを合意形成のところで、どのような過程で決めていくかというのが、私にはわからなくて質問しました。
○今野座長
 普通、経済学はこう言うと思うのです。将来、どういうことが起こるか分からない不確実性が大きいときには、最初にお互いに約束はできないですよね。したがって将来何か起きたときに、どういうように解決していくかという手続を決めておくことが重要だということになる。この場合で言うと、すごく多様ですから、最終的にどうしたらいいかというのは、なかなか事前に決められないので、手続をどうしたらいいかということを決めておくことが重要である。したがって、先ほど野中委員が言われたのは、手続の中の一側面であるというように、たぶん経済学の人たちは言うだろうと思うのです。これを企業などで言うと雇用契約です。あなたに将来、何の仕事をしてもらって、いくら払うからとは、事前には決められないのです。例えば勤続10年経ったらどうしようかということを、その都度相談しながら決めるような契約にしてあるというのは、そういうことだと思うのです。それとちょっと似ている。そうすると、理屈で言うと非常に多様であればあるほど、手続をどうするかということが非常に重要になってくるかと思います。
 もう1つは、就労の困難さと職業生活の困難さについてです。就労の困難さを、我々がいちばんどうにかしたいものですよね。その原因系がいろいろあるわけです。その原因系の1つの変数として、例えば会社に通えないということが職業生活の困難さに入りますよね。そうすると「就労の困難さ」と言ったときに、ここはどこまで考えるかです。極端なことを言うと、生活がグチャグチャで食べてもいないとか、体力もなくなってしまっているといったら、それも就労の困難さの1つの原因系ですけれども、ここはそこまで考えるのかどうかということです。そこにはたぶん、いろいろなグレーゾーンがあると思うのです。
○阿部委員
 現行では「職業生活の困難さ」と言っていますが、就労の困難さというのは、もっと狭い意味になってしまうのではないかという心配でお話しました。川崎委員のご指摘のように、「それも含んで就労の困難さと言うのです」と言われれば、そうかもしれないけれども、一般的には職業生活の困難さと就労の困難さというのは、就労はできても継続できないということもすごく問題になっているわけだから、職業生活の困難さのほうが、いま私たちが考えていくべきかなと私は思ってしまったのです。その辺ですよね。
○野中委員
 だから就労能力というものの定義を、正確にしていくべきです。就労能力というのは、いちばん上に作業能力というものが出てきて、作業能力のあるなしが判定されて、その作業能力を発揮するためには、職業生活能力というものがきちんとできていないといけない、職業生活能力ができるためには、日常生活能力がきちんとできていないといけない、日常生活能力ができるためには、疾病や障害とうまく付き合えるだけの能力がないといけないというように、段階論的になっているわけです。それぞれの踏み台が崩れていると、その上位部分が無効になってしまうのです。ですから、そういうように順序よく考えていったらいかがでしょうか。
○阿部委員
 いまの野中委員のご指摘はそのとおりだと思います。それが今度は就労の困難さとなると、作業能力の困難さと解釈されないかという心配で、先ほどから言っているわけです。
○野中委員
 そういうことで職業の困難さというのは、それぞれの段階で出てくる。障害というのはそれぞれの段階で起こってきますので、そういうように総合的に判断しないと見つからないということです。結婚もそうです。顔の問題なのか、料理の腕の問題なのか、わからないわけですよね。そういうようにいくつもの側面で評価していかないと、その人の職業生活が困難なのかどうかがわからない。
○今野座長
 私が少し気にしているのは、そういうように職業生活の困難さを広く捉えるのはいいのですが、どこまでがここの対象範囲かということです。つまり、日常生活能力に関するところはここではないだろうとか、そこはきちんと切り分けておかないといけない。そうしないと議論があっちに行ったりこっちに行ったりしますから。作業能力はたぶんここに関係しますよね。グレーゾーンが職業生活能力かな。
○野中委員
 基本的には職業生活能力の判定をしていただきたいわけです。
○今野座長
 では、そこから上ですね。
○野中委員
 はい。特にここの場合は、精神障害について言っておきたいのです。就労させることを医師が邪魔するのです。医師の診断をもらわないと就労できなくなってしまう。医師は病気と薬の使い方は判断できるけれども、就労できるかどうかは判断できないのに、医師の判断を求めて、医師が「駄目だ」と言うから就労できないとみなされてしまうのです。それが精神障害の障害なのです。そこのところをぶち破っていただかないと、精神障害者は就労できません。もしも就労させたくなかったら、「主治医の許可をもらいなさい」と言えば、それでおしまいですから。そうすると、医師からのブロックがかかってしまうのです。そういう意味では医師がどう言おうが、職業生活能力を判断してほしいのです。疾病性は医師に任せても構わないけれども、職業生活能力だけは職業の専門家に判断していただきたいですね。
○今野座長
 ほかにいかがでしょうか。
○杉山委員
 連合の杉山です。いまは(2)のほうがメインになっていて、(1)で、あえて言わなかったのですけれども、コメントとしては各ヒアリングから出されている中身で、基本的にほとんど違和感ないということだけは申し上げておきます。
 (2)の就労の困難さという話ですが、先ほど野中委員がおっしゃったことにほとんど賛成で、よく理解できるわけです。その上で(2)に来て、ヒアリングの中身を見ても総論は賛成だけれども、具体的には非常に難しいという歇後でみんな終わっていて、その状態でどうやって基準と判定方法を作るのかというのは、相当難しいわけです。参考書がない限り、なかなか判断できません。そこで、事務局にご相談するか、この場で解決できればということで申し上げます。まず就労の困難さというものを、いろいろ考えれば考えるほどよく分からないのです。条約の原文上はどういう書き方をされているのか、それを結構正確に訳して「就労の困難さ」という言葉を使っているのか、この出どころを少し教えていただきたいのです。
 あと、これは問題提起になるかもしれないのですけれども、先ほど出た基準判定方法ではなくて、野中委員が言っていた手続に近い、判定する人の公正さを担保して、それに委ねるというのがいい考えかと思うのです。ただ、その際には相手があるということで、結婚に例えられました。就労の困難さの定義にもよるのでしょうけれども、例えばAという会社だと就労の困難さは低いけれども、地理的な問題や作業の問題などいろいろあって、Bという会社では就労の困難さが高いと。では、それは本当に公正手続だけでクリアできるものなのか、それが実際にリアリティーのあるものなのかどうか。ここと違う研究会の中では、ヨーロッパの実例等も調べられていると承知していますので、そういう仕組みが使われている実例があるのか、もしくは同じような中身で対応をいろいろ工夫しているはずですので、その辺の例があれば少し出していただくと。その例を横にしながら、この議論をさせていただいたほうがいいかなと思っています。
○障害者雇用対策課長
 A社、B社で違うかどうかという話で、社会モデルになれば違うというのは、ある種当然のことだと思います。各国の状況について言うと、よく社会モデルは、どこどこの国で使われているというような話があるのですが、制度と実態にはかなりズレが起きているというのが現状だと思うのです。そこら辺をどこまできちんとトレースできるかはわかりませんが、手探りでやるよりは、もしそういったものがあればそれも参照したほうがいいというのはごもっともな話ですので、そこは確認させていただきます。
 就労の困難さに依拠することは、言葉だけで見ると、それはごもっともですねという話ですけれども、実際にどうするかということを考え出すと、突如としていろいろな壁が生じてくる話です。我々としては基本的に理念の整理をして終わりという話にはできないので、実際に現場でそういったことを念頭に置くのであれば、どういう形で置くかというところまでたどり着かないと、実際の行政としては意味のないことになってしまうと思います。ですから、その辺りも意識しつつ、もう少し参考にできるような材料を探して、また議論できるような形にしたいと思います。
○障害者雇用対策課長補佐
 杉山委員から、そもそも「就労の困難さ」という言葉がどうやってできたのかというご質問がありました。資料3の1頁のいちばん上に、閣議決定を載せております。この閣議決定の中で、「就労の困難さ」と書いてあるというのが正直なところです。この閣議決定は当然障害者権利条約に批准するためということで、条約上はどうなっているかということがご質問だと思います。
 権利条約上の仮訳を見ますと、「障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な障害を有する者であって、様々な障壁との相互作用により他の者と平等に社会に完全かつ効果的に参加することを妨げられることのある者」と訳してあります。当然権利条約自体、雇用や就労だけを書いてあるのではないので、「就労の困難さ」という言葉が明示的には出てこないのです。おそらく想定しているのは、前段部分で「長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な障害を有する者であって」と言って、ここでまずインペアメント(損傷)の概念を定義して、その後の「様々な障壁との相互作用により」で、就労で言うところの就労の困難さを示しているのではないかと思います。ここが「社会モデル」と言われるところの考え方だと思うのです。
 ただ、医学モデルと社会モデルの違いのところで今野先生からお話があったように、実態としては障害者基本法もそうですけれども、機能的な損傷だけをもって「何々ができない」という形で障害を据えていました。それは個人的な問題で、身体的な、感覚的な欠損が何かをできない原因としていた考え方を、そうではなくて社会的な何らかのもの、例えば段差があることが問題であって、その人個人に何らかの問題があるのではなくて、段差を構成させている社会に問題があると考えるのが社会モデルなのです。ただ座長もおっしゃったように、障害を持っているという、損傷があることと社会的な困難というのは、実は相互的に関係してくるもので、どちらだけをもって障害者というか、障害というかは、言えないのではないかというお話ではなかったかと思うのです。
 基本法上も、これは第1回目だったと思いますが、座長からもそういうお話がありました。障害者基本法ですから、資料3の○の2つ目だと思います。○の1つ目が権利条約の仮訳文になっており、2つ目に障害者基本法2条の定義を置いております。障害者というのは、1号で定義があります。「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、その他の心身の機能の障害が有る者であって、障害及び社会的障壁により」ということで、この「及び」の解釈が、障害がなくても障害者になり得るのかどうかというお話を、たしか1回目の議論でしたと思います。そのときに回答したのは、障害によって相当な制限を受ける者と、障害と社会的障壁によって相当な制限を受ける者と、社会的障壁だけの者と3パターンいるのではないかというお話だったと思うのです。しかし、そうではなくて、障害だけの方と障害と社会的障壁の方ということでお話をして、そこでまさに障害者というものが定義されるのではないかということでした。
 おそらく医学モデルと社会モデルという対立軸で考えてしまうと、見方が全く逆になってしまいます。個人に帰結するのが医学モデルだけれども、社会の問題に帰結するのが社会モデルだと言うと、社会モデル・医学モデルという定義がない中で、いま言われている社会モデルというのはもうちょっと範囲が広くて、全く医学モデル的な考え方を取らないというのが本当にあり得るのかというと、そこは先ほど課長から説明したように、現実的にそれができるのかどうかと。先ほどから基準とかガイドラインなどのお話が出ていますけれども、それをどう捉えていくかというのが、現実的な困難さになってくると思うのです。そこを含めて、経済学では手続がという座長のお話もありました。そういったところをどうしっかり担保していくかも含めて、ここでは議論いただきたいと思います。
○今野座長
 先ほどの野中委員の議論は、さらに1変数あるわけです。今ここで議論している変数は、医学的な意味で損傷があることと段差があるという問題です。それで潜在的に就労困難度は高いだろうと思っているけれども、それはプロがちゃんと評価しないといけないという変数が、また1個入るのです。総合的な就労の困難度はどの程度かということについては、医師に聞いてもわからないという話だったので、またそこに1つ変数を入れないと、最終的な就労の困難さには行き着きませんというのが、先ほどの議論でしたよね。ですから1個変数が増えている。「そこは手続だ」と言ってしまえばそれでもいいのですが。
○野中委員
 モデルがほしいということで発言します。私はイギリスへ留学していましたが、イギリスでは、疾病については医師が病気か病気でないかを判断して薬を出します。障害については3段階に分けるのですが、それはケアマネジメントチームが決めます。決めるのは自治体が決めるのですけれども、ケアマネジメントチームのケアマネージャーが中級だというように申請書を書いたら、ほとんどケアマネの言うとおりに決定されますので、実際上はケアマネが決めているわけです。障害の程度を決めているのは医師ではないのです。さらに、その人が「仕事をしたい」と言う場合には、日本のハローワークに近い組織があって、就労についてはそこの人が決めるわけです。ですから、あくまでも決めることについての人材を法的に保障しているのであって、事細かに条文が決められているわけではない。その手続がしっかりしているということなのでしょう。
○今野座長
 ほかの事例なども考えると、多様であればあるほど、手続的な対応でいかざるを得ないのです。そのときに「これ」という確定した基準は設定できないので、せいぜいできるとしたら、事例をずっと蓄積していって、それを参考にするということです。もう1つあり得るのは、トラブルが起きたときに苦情処理の仕組みを手続的につくっておくということになると思うのです。そうすると、判定基準も「これ」というのではなくて、あまりイメージはないのですけれども、モデル例と言いますか、典型事例みたいなものを出すという感じになってくるのですかね。
○野中委員
 障害というのは複合的なものです。ですから軽い身体障害であったとしても、その家がひどく貧しくて高校にも行けないと、肉体労働しかできなくて、ますます就労できないということになる。しかしお金があって東大に行くと、国の官僚にもなれたりする。身体障害という損傷だけではなくて、その背景にある経済力みたいなものもひどく影響しているということで、いつでも我々国民がカムバックできる、トランポリン型社会保障があればすばらしい。
 私はいま、内閣府でパーソナルサポートサービスの委員もやっております。いまもホームレスの方々や生活保護を受けている人々の中に、知的障害や精神障害の方がいっぱいいらっしゃるわけです。そういう方々は障害だけの問題ではなくて、障害プラスほかの社会的な不利の問題を抱えてしまったために、就労できていないわけです。その問題を解決すると、障害だけの対策よりもはるかに容易に就労することができる。ですから就労は複合的な問題であって、いつでもカムバックできる、リベンジできるようにするためには、やはり規定され過ぎてしまうと困るのではないでしょうか。具体的に「こういう項目が障害であって」「こういう項目が重度であって」と言われてしまうと、それは話が違う。お金さえあれば、重くても仕事ができてしまうし、場合によっては口で絵を描いて何億円も収入が出てしまったりするというように、いろいろな形で変化するわけです。
○八木原委員
 就労の困難さについてです。阿部委員がおっしゃったように、確かに就職するときと継続してつないでいくときの変化というのは、常に変わってきますよね。そういったときに思うのは、そこの中に、例えばトライアル雇用のように、1カ月単位で見直しをしたり、そこをサポートしたりするということを丁寧に扱っていく。そういった一つひとつの段階を経てということでは、ちょっと違うのかもしれませんけれども、野中委員がおっしゃった手続ということです。その段階で一つひとつ丁寧なチェックというか、一緒に話合いをしながらというのは、あって然るべきだと思っています。そのためには誰がということで制度でくっきりと、ここからここまでということはあり得ないと思うので、その中に専門家が入っていく。それは企業の中にいらっしゃる方かもしれない。その人と外の支援機関とが連携を組んでという辺りが上手になっていかないと、難しいかなと思いました。
○今野座長
 先ほどから話し合うプロセスが重要だということになって、そこでハローワークが登場するのです。しかし、よく考えてみると、話し合うのは働きたいと思っている障害者と企業です。ただハローワークは真ん中に入っているだけです。ですからトライアル雇用というのは、働きたいと思っている障害者と企業が話し合う手続の1つの重要な選択肢であると思います。それをハローワークが真ん中に入ってサポートしているということですから。
○八木原委員
 ハローワークも確かにそうですけれども、障害のある方に、日常的な生活のリズムや対人スキルの改善を支援をされている支援機関のスタッフの方も、間に入っていかれたほうがいいと思うのです。そうしないと職業生活を通した生活全般の課題が見えてこないし、就労という働く部分だけに限定された形で見られてしまうということでは、障害者に不利な部分が出てくるのではないかと思います。そういう意味ではチームを組んで、しっかりとフォローしていくという体制づくりが必要だと思うのです。
○今野座長
 ほかにいかがでしょうか。
○杉山委員
 いままでの議論をまた雑ぜ返してはいけないとは思っているのですが。先ほどお願いしたものを次回以降出していただいて議論をする。問題提起というわけではないのですけれども、就労の困難さで手続論にするにしても、先ほど今野先生がおっしゃっていた「変数」という言葉で言えば、相手が代われば変数もまたガラッと変わるというのは大きなものがあります。A社とB社で、変われば変わるものだとおっしゃっていました。ただ、それが今回のこのテーマと、ここで扱う議題ではないかもしれないのですけれども、たぶん合理的配慮とダイレクトに付いてきていて、ここでの定義の仕様によっては、就労の困難さは合理的配慮の合理性が、どう問われるかにつながっていくような気もしています。その辺をどう交通整理するのか。
 あと、野中先生がご存じだったら教えていただきたいと思います。イギリスのケアマネジメントチームとか、イギリス版ハローワークがあったというときに、実際に就労したとして、そこには多分、必要な合理的配慮がされるはずです。合理的配慮というのは、やはり企業の経営体力もあるでしょうし、人材、規模、地域、いろいろなものが加味されているのです。
 いちばん現実的なのは、そこで働いている経営者と働いている従業員と障害者を交えてそこで協議をして、いちばんいい到達点を求めるというのが、いちばん現実的な話ではないかと。「階段をなくせ」と言われても、すべての所から階段をなくすことはできない。どこまでなくしたらいちばん負担が少なくなって効果が上がるかという議論をしなければいけない。そのときに就労の困難さの部分のチームと、企業内のいわゆる合理性判断と言うのですか、継続性を促進するための仕組みというのは、どういう絡み方をするのでしょうか。例えば、先ほど八木原さんがおっしゃっていたように、外のケアマネジメントチームが企業内の、そういう判断をする所に入ってきて、そこでそういう議論をするのか、そうではなく、それはそれでアドバイスとしては聞くけれども、中は中で個別でやるのか。もしその辺がおわかりだったら、少し教えていただければと思います。
○野中委員
 イギリスの人たちの考え方は日本と随分違います。契約したことしかやらないし、契約がすべてです。ですからケアマネジメントチームは対人サービス、医療保健はやりますが、就労はやりません。就労の担当者が企業と調整します。企業との調整で済むので、日本のように一緒に働いている人たちがやっかみで、「あの人は働いていないのにお金を持っていく」という話は一切ないです。対企業交渉だけなのです。その辺が非常にシンプルでやりやすい。日本はそれでは済まないと思います。同僚たちの不満の問題が、もう少し合理的な配慮としての因子を増やしてしまう。ナチュラルサポートとして、同僚たちがプラスに働くときもあるけれども、マイナスに働いてしまうときもあります。
 では、公的にどのぐらいまでが合理的な配慮の枠組みなのかというと、契約概念で動いているイギリスと、もっと情緒的なものが入っている日本とでは、だいぶ違うのではないかと思います。
○今野座長
 少し整理したいのです。今ここでお話になっていたことは、企業と障害者のマッチングとか、仕事にどう就くかということについて議論をしたのですけれども、ここの本来のテーマは、障害者雇用促進制度の範囲をどこまで入れるか、という基準をどうするかということです。この点についてはいかがですか。
○田中(伸)委員
 今野先生のご指摘ですけれども、いまの議論を聞いていると、雇用促進制度における障害の範囲の定義規定には、障害となる原因の部分をしっかり明記する。先ほど事務局の西川さんから説明があったように、機能障害の部分と環境の部分の2つが原因となって、職業生活に相当な制限を受ける場合や、著しく困難な場合が出てくるのです。
 つまり、改正された障害者基本法の定義規定と似たようになるのですが、機能障害の部分と環境の部分が原因になりますというのをしっかり定めて、その後、野中先生などがご指摘になっていた、どのレベルの問題であるのか、その評価を誰がするのか、環境整備をどういう手続でやるのかというところは、定義規定に入り切らないのではないかという感じがしています。これは私の考えです。
○障害者雇用対策課長
 概念整理も重要だと思うのですが、基本的にはいまの枠組みで制度の対象から落ちる人がないようにするために、どうしたらいいかというところに、ときどき立ち戻っていけばと思います。最終的に法律でどう書くかという話は結果論だと思います。そこで漏れ落としてはいけない考え方は何なのかということではないかと思います。
 合理的配慮の問題は、社会的障壁の話とも連動してくる話です。これについては障害者制度改革推進会議の差別禁止部会も近々、中間整理をされるように聞いています。合理的配慮(国内法へ)の落込み方というのは日本だけではなくて、各国とも非常に悩ましい問題として取り上げています。その辺りの整理も横目で見つつ。ただ基本はこの枠組みの中で本来、制度として救っていかなければいけないような人が、落ちないようにするためにはどうしたらいいかというところに、ときどき具体の話も頭に浮かべつつ戻っていく話かなという気がしています。
○今野座長
 先ほど田中さんが言われた機能障害のほうはいいのですけれども、環境障害を考慮に入れて。法律の言葉で言うと、相当の制約があるかどうかを判断するときに、環境障害はどうやるのだろうと思っていたのです。
○田中(伸)委員
 そこは問題だと思います。どの範囲にするかということで、通勤の困難性をどう入れるかというところがあります。雇用促進法という法律の性格を考えると、職場環境の整備なのかなという感じを私は持っています。通勤の部分は、別の制度で手当てをするほうがいいのではないかという印象を持っています。
○野中委員
 職場環境の問題を定義するのもいいのですが、例えば偏見を持たれている精神障害などですと、そこのチャンスを得られないというところに、いちばんの障害、障壁を持っています。そこのチャンスを広げてあげないと就労に到達できない。ですから可能な限り、チャンスを認めていくという規定にしていただくとありがたいと思います。
○今野座長
 たぶん田中委員は、そこまで職場環境と考えていらっしゃるような気がするのです。
○田中(伸)委員
 そうです。
○今野座長
 ほかにいかがでしょうか。
○杉山委員
 先ほどの野中先生の説明を聞いていて、例えば経済力の問題、教育の問題というところには、非常に大きな問題があります。たぶん就労の困難さというのは、培ってきた、蓄積されたものが結構大きく影響していて、これも間違ないわけです。
 ただ、少し整理していただければと思うのが、差別禁止部会というのがあって、基本的に全般で規定をして、定めるものが議論されているわけです。ここではあくまでも雇用・就労に限って話をしましょうといったときに、切って切れるものかどうかというのは、いま発言しながらも難しいと思うのです。やはり1回どこかで整理しておかないといけない。
 では、どこまで含めるかというのは、先ほどの概念定義ではないのですけれども、1回整理していただいたほうがいいかと思います。会社の入口から出口までで区切ってやるのか、それとも家の玄関から考えるのか、大胆に言えばそういう整理ですよね。そこをしていただく。差別禁止部会かどうかはわかりませんが、ここは差別禁止部会で総枠的にやるという位置づけがはっきりすれば、今後の議論はしやすいかなと思います。少しお願い的な発言になります。
○今野座長
 今おっしゃった例から言うと、玄関からはここの対象ではないと思います。先ほどの野中委員の例で言うと、家庭がリッチだったので、東大へ行った障害者の人がいたけれども、お金がなかったので学歴があまり高くなくて、例えば肉体労働にしか就けない人がいたとする。そうすると、ここの役割は、たぶん東大を出てきた人がいますというところから始まります。それまでにいろいろな理由があったとしても、教育水準があまり高くなくても、その範囲内でどういう仕事ができるのかというところから始まる。具体的にグレーゾーンはいっぱいあると思いますが、基本はそこだと思います。その前はほかの所でやってくださいという切分けだと私は思っているのです。そうでないと、ここは大変なことになりますので、その辺で限定させていただければと思います。
 今日は論点をめぐった議論の第1回目ですので、私も慣れないところがありました。したがって、今日の論点で言い残したことがありましたら、また次の機会に言っていただいても結構です。また、最後に全体でというような場はつくりたいと思います。
○阿部委員
 ここは障害の範囲と雇用率ですけれども、ほかの研究会というか、合理的配慮、地域の就労支援など、同時に行っている研究会の経過状況について次回に教えていただければと思います。
○障害者雇用対策課長
 ほかの研究会も同じような形で、総括をするようにしておりますので、それが本研究会にフィードバックできるような形に。逆に第一研究会の議論を第二、第三にフィードバックしていくということもしようと思っています。次回にするかどうかは分かりませんけれども、研究会の途中段階で必ずさせていただきます。
○今野座長
 よろしいでしょうか。それでは、今日はこの辺で終了したいと思います。次回の日程について、事務局からお願いします。
○地域就労支援室長補佐
 次回は第5回ということで、3月14日の水曜日、10~12時の開催です。本日ご議論いただいた論点1について改めて整理をして、もう1回ご議論いただくことと、できれば2つ目の論点である「雇用率制度における障害者の範囲等について」も、今日のような導入の部分をやりたいと思っております。場所は未定ですので、決まり次第ご連絡いたします。
○今野座長
 ありがとうございました。これで終わります。


(了)

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