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2011年12月16日 第2回 看護師国家試験における母国語・英語での試験とコミュニケーション能力試験の併用の適否に関する検討会

医政局看護課

○日時

日 時:平成23年12月16日(金)10:00~12:00


○場所

場 所:厚生労働省専用第18~20会議室(17階)


○出席者

小川忍委員 (日本看護協会常任理事)
奥島美夏委員 (天理大学国際学部地域文化学科准教授)
加納繁照委員 (日本医療法人協会副会長)
讃井暢子委員 (日本経済団体連合会常務理事)
戸塚規子委員 (京都橘大学看護学部教授)
中山洋子委員 (福島県立医科大学看護学部教授)
伊藤彰久代理 (日本労働組合総連合会総合政策局)
藤川謙二委員 (日本医師会常任理事)
山崎學委員 (日本精神科病院協会会長)
渡辺俊介委員 (国際医療福祉大学大学院教授)

○議題

1)関係団体からのヒアリング
 財団法人日本インドネシア協会(西田達雄 参考人)
 ガルーダ・サポーターズ(星さとる参考人)
2)厚生労働省ホームページを通じた意見募集について
3)その他

○議事

○中山座長
 定刻になりました。今日は欠席の委員の先生方が少し多いのですが、ただいまより、第2回「看護師国家試験における母国語・英語での試験とコミュニケーション能力試験の併用の適否に関する検討会」を開催いたします。それでは事務局のほうから、委員および今日プレゼンテーションに来ていただいている参考人の方の出席状況等と、資料の確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○河原課長補佐
 まず本日は、尾形委員、木村委員、熊谷委員、花井委員、林正委員の5名の委員からご欠席とのご連絡をいただいています。なお、花井委員の代理として、日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長の伊藤彰久参考人にご出席いただいておりますので、ご了承ください。
 また、本日は、関係団体のご意見をお伺いするために、経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者の支援等を行っている2つの団体から参考人としてご出席いただいておりますので、ご紹介させていただきます。まず、財団法人日本インドネシア協会参与の西田達雄参考人です。続きまして、ガルーダ・サポーターズ共同代表の星さとる参考人です。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして配付資料の確認をさせていただきます。お手元に第2回の議事次第がありますが、それに続いて資料を5種類、参考資料を1種類置かせていただいています。資料1が「第1回検討会における委員の主な御意見」という2枚ものの資料です。こちらは、先週の検討会からの時間的な制約もありまして、事務局の責任において作成させていただいたものです。続きまして、資料2は「関係団体からのヒアリング資料」です。インドネシア協会からは特に資料の提出はありませんでしたが、ガルーダ・サポーターズから提出資料がありました。資料3は「経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者の受入れと看護師国家試験の概要について(追加資料)」と題している5頁までの資料です。資料4は、奥島委員からご提出いただいた「インドネシア・フィリピンの看護教育・資格制度・海外派遣の概要」と題した24頁までの資料です。資料5は「看護師国家試験における母国語・英語での試験とコミュニケーション能力試験の併用の適否に関するご意見の募集について(案)」という4頁ものの資料です。最後に、参考資料です。こちらも奥島委員から提出いただいた9頁までの資料です。もし不足する資料、乱丁、落丁等がございましたら、事務局にお申し出いただければと思います。資料の確認は以上です。
○中山座長
 どうもありがとうございました。資料1は前回の皆さんの意見をまとめたものです。これは事務局のほうでまとめたものですので、何かございましたら事務局のほうまでお申し出いただきたいと思います。今日は関係団体のヒアリングということで、お忙しい中をご出席いただいております。本当にありがとうございます。短い時間で恐縮なのですが、どうぞよろしくお願いいたします。また、委員の先生方、前回と同じように活発なご議論をよろしくお願いいたします。
 それでは、最初の議事である「関係団体からのヒアリング」に入りたいと思います。各団体におかれましては、お1人ずつ参考人の席に来ていただきまして、ご意見を伺いたいと思います。時間も限られていますので、大変恐縮なのですが、1団体につき全体で15分、ご説明は8分程度とお願いしています。意見を聞いたあと、看護師国家試験における母国語・英語での試験とコミュニケーション能力試験の併用の適否に限らせていただき、質疑応答をしていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、まず、日本インドネシア協会参与の西田さんからのプレゼンテーションをお願いいたします。西田さん、どうぞよろしくお願いいたします。
               (西田参考人着席)
○西田参考人
 西田です。この機会を与えていただきまして、ありがとうございます。いまお話のように、時間が限られておりますので、まず(1)当協会につきまして、そして(2)設問に対するコメント、(3)として、当協会として厚生労働省および本日ご出席の検討会の委員の方へのお願いという3点でお話申し上げたいと思います。
 1番。日本インドネシア協会は、昭和32年、大阪にて設立されまして、その後東京本部に長年にわたり日本・インドネシア関係の強化を目指して幅広い活動を行っており、企業を中心とする法人会員および個人会員からなっております。会長は福田康夫衆議院議員が務めておられ、首相在任中を除いて、すでに10年近い会長の任にありまして、本日の議題の本件(EPA来日看護師・介護福祉士候補者受入)につきましても、大変強い関心をお持ちでございます。
 設問に対するコメントに入らせていただきますが、試験言語について、まず英語を選択することを可能にするのは大変結構だと思うのですが、コミュニケーション能力のチェックとして、日本語試験やその能力のハードルを高くすることなく普通の会話が成り立つものでよいと思っております。英語については、したがって、選択されるような方式にされてはどうかということでございます。インドネシア語につきましては、実は、本年5月20日付で、当協会として各大臣宛に要望書を提出しておりまして、今年行われました第100回の国家試験問題から難解用語を抽出して添付しております。本日配付することは許されないとは思いますが、とりあえずコピーを持ってきております。当時の細川厚生労働大臣をはじめ、政府関連の6大臣に手渡した要望書の中に、今年行われた国家試験の難解用語の例として1頁にまとめております。これがベースでインドネシア語への翻訳を考えておられるのであれば、これは全く不可能だと思います。私もインドネシア語は少々勉強した立場でもありますが、ほかの専門家の方に聞いても、この難解な用語をインドネシア語にすることは到底不可能でございます。この用語に関連しまして、もうすでに議論が終わっているとは聞いておりますが、試験用語をこの時代にふさわしい日本語へと徹底的に容易にするなど、普通の日本語への再度の見直しをしていただきたいと強くお願いしておきたいと思います。ご存じのとおり、非漢字国から来日しております彼らには、ハンディキャップを持っておる者として、もう1つは、試験時間を、現在の午前・午後の2時間40分を3時間に延長することや、できれば別試験会場を設けてやっていただくなどの配慮をお願いしたいと思っております。コミュニケーション能力とは、聞く能力が主であろうかと思いますが、医療・介護現場では、いままで習ったのとは違って、日本語ですから、主語などがなくて出てくるような口語体となって、彼らが戸惑うこともあろうかと思われますが、その上達にはやはり時間がかかります。我々の海外での生活を見てみましても、その国の言葉に慣れるには相当時間もかかってきております。
 時間がありませんので、この辺にしまして、3番、最後にお願いを申し上げたいと思います。インドネシアと日本の関係は、ご承知のとおり、戦後、〔官〕〔民〕ともに営々として築いてきた、きわめて良好な日尼関係が維持されております。本件を含むEPAの成果が両国にさらなるプラスとなるように、強く強く望んでおるところでございます。逆に言えば、その逆の事態が惹起することを大変心配しておるのでございます。また、日本の優れた看護技術が、広く海外、とりわけインドネシア、フィリピン、ベトナムなどASEAN諸国に紹介され、本邦の看護関連組織や関連する教育機関が、これからASEAN諸国との間で活発な交流がスタートして、さらなる相互理解が進むことを、私は心から願っております。
 もう1つ。本件にかかわる関連支出経費、これは予算その他あろうかと思いますが、きわめて巨額に上がっており、費用対効果の点から見ても、本件十分なる成果が上がっているとは言い難く、今後、ベトナムなどからもやってくると聞いております。こういった中で、国や政府として一定規模の受入れ枠を決めて、その達成のために諸政策が講じられるべきであると我々は考えております。簡単ですが、以上です。
○中山座長
 ありがとうございました。ただいま、インドネシア協会の西田さんのほうからご意見をいただいたのですが、ご質問はございますでしょうか。
○渡辺委員
 ありがとうございました。おたくの協会では、確かに日本とインドネシア、日本とASEANとの活発な人事交流、特に看護が重要なことはわかるのですが、基本的なスタンスとして、日本で国家試験に受かった看護師がまたインドネシアに戻って活躍したいということなのか、日本での看護技術、医療技術を学んで、習得して、そういう交流をインドネシアおよびASEANとやりたいということなのか、どちらのスタンスなのですか。正式に国家試験を何が何でも取らせろと。そしてまたインドネシアに戻ると。いまの話ではちょっとわかりにくかったので、そこをちょっと教えてください。
○西田参考人
 当然、日本で働くことが前提で本件を受け入れているわけですから、1つはそれがあると思います。それから、もう1つは、こういう国際化の時代ですので、日本の医療・看護技術がASEAN各国に普及されることが必要だと。それがためには、こちらである一定期間働いて、あるいは、合格しなくても、インドネシアに帰った人たちが、また向こうで彼らは彼らなりに働いて、日本のいいところを紹介していくというようなことも、大いに期待しているわけでございます。ですから、両方期待しています。
○中山座長
 渡辺委員、よろしいですか。
○渡辺委員
 両方を期待しているのは、わかりました。それと、言葉をいちいち詰めるようで恐縮なのですが、試験は英語での選択があってもいいと思うが、コミュニケーション能力は普通の会話が成り立つものでいい、というご発言をなさいましたね。試験は英語という選択があってもいいと思うがというところが、よくわからないのですが、国家試験はどのようなものが望ましいとお考えなのでしょうか。
○西田参考人
 いまの日本語での国家試験と、選択として英語を受けたいという人は、フィリピンなどの場合は特に英語になるのではないかと思ったりします。ただしそのときに、英語での試験で合格点をとっても、当然、日本語によるコミュニケーションはチェックしなければいけないと思うのです。そのときに、例えば日本語1級、2級というような設定をされて、そこで逆に言えば、受かった人をハードルで振り落としていくというようなことがあっては、いかがなものかと思っているわけです。その辺のレベルはどの辺がいいかというのは、ちょっと私は判断しにくいようなところはありますが。
 私がいちばん申し上げたいのは、ここにコピーを20部ほどとってきましたが、こんな難解な用語は、私自身学がないのですが、私が読めない。理解はできなくても読めないというのは、難解用語が検討されたあと、今年の2月20日の試験で今なお行われているというのは、やはりおかしいのではないかと皆さんも思われるのではないかと思います。
○中山座長
 ありがとうございます。ほかに何かございますか。
○加納委員
 いまの難解用語を、是非とも回覧させていただけたらと思うのですが。
○中山座長
 配付可能でしたらお願いします。
○西田参考人
 はい。17部ほど持ってきていますので。
○中山座長
 わかりました。それでは、配付をしていただくことにします。
○山崎委員
 先ほどの試験時間の問題ですが、試験時間を長くすることに私も賛成です。彼女たちにとっては外国語のわけですよね。外国語と母国語と同じ時間でやるというのはやはりかわいそうだと思うので、試験時間を少なくとも1時間ぐらい長くしてやるということは、私は賛成す。
○加納委員
 同じく、試験時間に関しましては、うちの子たちに聞きましても、やはり延ばしていただきたいということがいちばんの願望だと言っていましたので、これは何とかならないかなと。今回も議論したかったのですが、今回は例の英語と母国語について議論する場ですから、ここで議論する場なのかどうかわからないのですが、是非ともよろしくお願いしたいと思います。
○中山座長
 わかりました。試験時間のことはメモしておきます。いま西田さんから話されたことによると、インドネシア語での受験ということはインドネシア協会としてはあまり希望していない。英語でいいと考えていいのでしょうか。
○西田参考人
 希望しないというより、いま配っているような言葉をベースにして、それをインドネシア語に翻訳などできません。
○中山座長
 インドネシア語では難しいということですね。
○西田参考人
 できません。現在の国家試験の日本語をベースにして、それを単純に翻訳するなど、とてもできません。
○中山座長
 これは言語の問題と、それから文化の問題も入っているのでしょうか。完全に言語的な問題で難しいということなのでしょうか。
○西田参考人
 多少、医療技術の工程などもあると思いますし、そういう問題もあるかと思いますが、私がとりあえず申し上げているのは、インドネシア語にはそんな難しい日本語を訳するような言葉はございません。
○戸塚委員
 いまの翻訳できないというお話ですが、それはインドネシアの医療関係の方がそうおっしゃっていることなのですか。これを拝見しますと、かなり医療用語や看護用語が多いので、我々は仕事の上では普通に使う。インドネシアの方が国家試験に受かって日本で看護や診療介助を行う場合にも、使う用語になるのです。それは普通に私たちが使っているものなのですが、できないとおっしゃるのは、一般の方がご覧になってのお話なのか、インドネシアの医療関係者が言っていらっしゃることか、その辺を知りたいと思いました。
○西田参考人
 一般のインドネシア語の先生方がおっしゃっておられることです。ご指摘の点は、インドネシア語といっても相当英語から導入されたりしていて、例えばレプテーションというのをレプターシーと言ったりしますので、そういう言葉に変えていくと、そういうことで現在使われているような言葉は医療の場合でもあろうかと思いますが、それにしても、いまお話したような言葉は、とてもインドネシア語に訳せないと思います。
○中山座長
 わかりました。
○讃井委員
 いまのに関連しているのですが、この間いただいた資料を見ていましたら、政府のほうの措置の中で、過去問についてインドネシア語と英語に直していらっしゃるというようなことがあったかと思うのですが、いまご指摘のあったようなところはどのようにクリアをされていらっしゃるのか。特に問題なくインドネシア語に訳していらっしゃるのか、そこだけ確認させていただければと思います。
○中山座長
 事務局のほう、わかりますか。インドネシア語に国家試験を訳したことありますか。
○玉川看護職員確保対策官
 一部のテキスト等については訳しております。ただ、その精度がどこまでかというのは、厳密なところでは検証しておりません。私どもが聞いていますのは、学習支援事業の中で、集合研修という形で、研修生を一堂に集めて、いままでの試験問題の講習といいますか、解説などをするような機会があると聞いています。そのときの通訳をやっていただく方の力量によってかなり理解度が違うということも聞いています。どれだけ定訳があるかということについては、このあと現地の事情についてお詳しい委員からプレゼンテーションがあると思いますので、そこでご確認いただければと思います。
○中山座長
 わかりました。
○西田参考人
 1つだけ。福井県で働いている彼女からの手紙なのですが、1年ちょっとぐらいの間で、きれいな日本語を書いてくるわけなのです。彼らも一生懸命勉強しているわけなのです。是非彼らを落胆させるようなことがあってはならないと私は強く思っておりますので、よろしくお願いします。
○中山座長
 今日は、どうもありがとうございました。
○西田参考人
 ありがとうございました。
○山崎委員
 今までの試験問題で、どの問題ができなかったかというのは、調査はしているのですか。つまり、漢字が難しくて読めなくて落ちたのではないのかという検証というのは、やってあるのですか。
○中山座長
 要するに、どこができなかったかということですね。
○山崎委員
 そうです。漢字が難しくてできなかったのではないかというのを、きちんと検証しているのでしょうか。そういう問題について問題の出し方を変えるというような工夫というのはしているのでしょうか。
○玉川看護職員確保対策官
 それを調べるには、個別の受験生に対して、どういう理由で間違えたかという自己の評価をお聞きしないとわからないと思うのですが、そういうものを統計的にとったことというのは、いままではございません。
○山崎委員
 そうではなくて、海外の受験生が間違えた問題は、どこが間違っていたのかという最低限の分析は行っているのでしょうか。
○玉川看護職員確保対策官
 国家試験については、合否を判定するという目的で採点が行われていますので、そうした形での個別の集計ということはしておりません。
○山崎委員
 そういうことをしないで次の試験でまた同じことをやるというのは、かわいそうだと思います。
○西田参考人
 いまの点で。今日お見えになっていませんが、海外技術者研修協会、日本での日本語研修を受け持たれたAOTSさんは、フォローアップを大変しっかりやっておられますので、AOTSさんに聞いていただければ、ある程度いまのご指摘の返事が出るのではないかと思います。
○中山座長
 もう一方聞いてから発言していただくということでいいでしょうか。プレゼンテーションで同じ問題が指摘されるかもしれませんので、よろしくお願いいたします。
               (西田参考人退席)
○中山座長
 次が、ガルーダ・サポーターズで、いろいろな形でサポーターをしてくださっているのだと思います。星さん、よろしくお願いいたします。
○星(さ)参考人
 座長、ご紹介ありがとうございます。紹介いただきましたガルーダ・サポーターズ共同代表で、政策提言を担当しております星さとると申します。今日はお時間をいただきましてありがとうございます。タイマーを持ってきたので、それを使わせていただきます。大変限られた時間ですので、お話させていただくのは、そもそも想定すべき新しい試験方式の中身の話、その前提として現行方式のどこに問題があるのかという辺りに集中させていただきます。前回も傍聴させていただいて、いろいろな委員さんのご意見に対して、私どもの意見はかなり反対の意見も多いのですが、ペーパーで出させていただいております。今日時間がない分はペーパーで補ってご参照いただければと思います。
 本日配付いただいています資料2が私どもの提出させていただいた資料、意見書です。私ども自身の振った頁数でこれからご説明いたします。
 ガルーダ・サポーターズの紹介等は大胆に省かせていただきまして、今日皆さんに是非理解していただきたいと思っていることからお話します。
 今日ご配付されていますパブコメの原案を拝見しますと、まるで新方式にすると合格者の日本語能力が下がるということが完全に前提になって作成されていますが、これはアンケートを取るときの学問の初歩ですが、いわゆるバイアスを掛けまくった、あり得ないパブコメになっています。この委員会でどういう方式なら、最も理想的と考えられるかという原案をお作りになって、その上で賛否を諮るということをなさるべきだと思います。日本語コミュニケーション能力の確認試験といっても、どんなものを想定するか、おそらく皆さん委員さんお一人ひとり聞きますと、全然違うことを考えていらっしゃると思います。私どもが今日提案する内容と同じことを考えていらっしゃる方はいないかもしれません。是非、私どものこの提案を参考にしていただいて、いい案を作成していただければと思います。
 つきましては、3頁目の4番、まずマクロな話からいいますと、やはり今日の日本国内の状況と国際状況を考え合わせますと、EPAを積み上げていくということが非常に重要で、これを政策転換することはあり得ないと思います。そうすると、上限数とか、受入方法は、是非、我が国のほうで決定していきたいと思いますが、前提にせざるを得ないと思います。受入れ方法の改善方法としては、4番の4、准看護師という意見もありますが、これはおそらく筋が違うと思います。
 6頁の5番、環境変化の留意ということですが先ほど試験時間の延長というのが出ましたが、これは是非昨年までの間にやっていただきたかった。もういまこの段階でそれを言っても、もう政策課題アジェンダとしては、歴史的後方工法になってしまっている、いまこれを打ち出しても、おそらく関係者は納得しない。早くやるべきでした。そうすると、同じことが今回の母国語国試に関してもおそらく起こり得ます。ここできちんと対応しておかないと、次に出てくるのは、相互承認、あるいは合格ラインの設定を別個に設定という案が出てきてしまうと思うのです。こういう内容に比べれば、今回の案のほうが非常に穏健です。TPPなどを考えても、こちらであれば医師に波及することは歯止めがききます。
 7頁です。ここからだんだん実質的な受入れ方法の問題になります。8番です。現在の状態はほぼ実質的に破綻状態です。8頁に数字データがありますが、受入希望施設がどんどん減少しています。これでは早晩見直しをせざるを得なくなります。実施プロセスについてはこの頁の下のほうに問題点を列記しています。一言で集約しますと、現行の試験方式で合格させてあげる教育・学習メソッドはないということです。日本国内でこれを支援できる体制はおそらくない。既存のメソッドでは活用できるものはないです。
 9頁です。特に問題は漢字です。漢字というのは表意文字でして、読みというのには2つあります。音に結び付ける読みと意味を取る読みです。文章ベースの国試を受かるには形から意味へだけ行ってしまえば早いのです。限られた年数ですと、こちらのほうの学習ルートのほうが合格しやすいのですが、そうすると、音と結び付かないので、実務の現場に入ってからかえって問題を起こします。ところが、音の読みを一生懸命に真面目に勉強をしていますと、今度は、年数のうちに国試の合格点に到達しない。いまの受入方式ですと、どっちを取るのだということになってしまうのです。
 そうすると、13頁に私どもが考えた現行問題の試験方式の問題点と、案をお示ししてあります。左側が現行の試験方式です。ここではいくつものことを同時に確認しようとしています。看護に関する知識体系を理解しているかという確認、日本の試験方式に対応できるか、さらにある一定の時間内に正確に日本語を読む、漢字仮名混じり文である日本語を読むという能力。このスピードまで要求するのはこれは酷だということです。試験時間の延長を私どもや諸団体も求めてきましたが、一向に聞き入れていただけなかった。そうすると、次に出てくるのが、こうやって切り分けましょうという話になってしまうのです。コミュニケーション能力というのは右側、別に口頭だけは指しません。日本語でコミュニケーションと言ったときに、絶対に読み・書きが入ると思うのですが、皆さんいかがでしょうか。読み・書き・聞き・話す、これ全部入ります。「正確に読む」の部分をこちらにもってきて、それから専門用語、先ほど対応関係の話がありましたが、公定訳を確定して、こちらの試験のほうで時間をかけてきちんと対応関係が頭の中に入っているかどうか確認する。しかもそのほかに日本できちんと患者さんに対応するということができるには、日本的な言語外のコミュニケーション能力なども確認するということが考えられます。
 これを試験時間として1つの時間で確認するのはとうてい実質平等とは言えません。平等に反するということでしたら、これは正義に反するということであります。
 すみません、時間が終わってしまいました。少し延長してよろしいですか。では、14頁に私どもの運営委員の星夕子という者が日本語教師で看護師、保健師なのですが、コミュニケーション能力の試験と学習方法について作成した案がありますのでご参照ください。
 医療事故に関しては16頁、前回ご報告のあったヒヤリ・ハット事例を分析させていただきますと、6件中5件は口頭のコミュニケーションの問題です。文書ではありません。現行の試験方式ですと、これは防止できない可能性があります。なぜならば、現行の試験方式は口頭の能力を確認していないからです。どうしていまの方式のほうが安全だと言えるのか理解できません。
 ということで、まとめますと、就労しながら、しかも一定の制限年数で母国語でない、しかも漢字仮名混じり文、表意文字である漢字というものが入っている試験を、同一の試験時間でクリアしなさいと、これは実質平等に反する状態でして、なおかつ、むしろ必要な能力の確認が現行方式ですとすべて行われていません。これは患者の安全、看護の質の確保のためには、むしろ新方式に切り換えたほうがいいはずです。候補者のためというよりも患者のためです。これを強調させていただいて一旦終わりとさせていただきたいと思います。
○中山座長
 星さんどうもありがとうございました。先ほどの続きの質問の方もいるかと思いますが、星さんに何かご質問がありましたらお願いします。
○渡辺委員
 基本的に新方式というのは結局どれを指すのですか。
○星(さ)参考人
 私どもが考える新方式と言いますのは2つの図です。
○渡辺委員
 13、14ということですか。
○星(さ)参考人
 はい。
○渡辺委員
 もう少し具体的に新方式を。
○星(さ)参考人
 補足説明をします。13のほうは私からさせていただいたほうがいいと思うのですが、14をご希望でしたら座長のご許可をいただければ星夕子のほうにやらせていただきますが。
○中山座長
 はい、星夕子さん、どうぞお願いいたします。
○星(さ)参考人
 まず、13頁です。コミュニケーション能力試験のほうを主に説明します。
○渡辺委員
 その前にこの13頁のほうは1つわかりにくいのは、左側は現行方式だとおっしゃったでしょう。
○星(さ)参考人
 はい。
○渡辺委員
 確かにそうだと。そして右側が新方式。
○星(さ)参考人
 ごめんなさい、右上は新方式の片方です。新方式のうちのいわゆるコミュニケーション試験と言われる片方で。
○渡辺委員
 新方式のコミュニケーション能力だけを言っているわけですね。
○星(さ)参考人
 はい。左側の図は、3つの要素のうち、いちばん上の、「速く正確に日本語を読む能力」の下に1本線が入っているかと思います。一定の制限時間内で確認するのは下の2つだけでいいのではないかと。これは母国公用語と、先ほど難しい日本語の問題が出てきましたが、インドネシアにしろフィリピンにしろ、専門用語の多くは英語とかラテン語由来の単語で教育も行われていると聞いています。ですから、おそらくインドネシア語ではなくて、ラテン語とか英語であるのだと思います。もともと母国で行われている教育で使われている言葉を使えばいいと思いますので、対応関係は専門の世界についてはきっとそれなりにあると理解しています。
 左側では、母国公用語を使って、知識体系、概念同士の関係は理解できているかどうかを確認する。一部、新しい知識も必要になります。例えばフィリピンですと、周産期がメインだったりすると聞いていますが、日本ではやはり高齢化ですので、そちらのほうとか精神疾患の関係の部分は知識強化していただかなければいけないと思いますが、基本的には看護である以上、ベースはほとんど共通しているはずです。逆に言いますと、この方式で合格できないのであれば、それは知識がどうなのだということで、次に相互承認論が出てきたときにその実証データがあれば、それはこういう状況だからということで、逆に使えるというものでもあります。
○中山座長
 それでは次にもう1つのほうの図14の説明をお願いします。
○星(夕)参考人
 14頁の上の図をご覧ください。まず強化能力として看護師免許取得のための基礎能力ということで専門知識のほうになります。下のほうが日本語能力で、日本語能力を3つに分けています。上のほうは読解、聴解、文字と文法ということで、既にある試験方式としては日本語能力試験ということで、ガルーダからはN2ではどうかということで提案させていただいています。
 学習方法としては国内外における日本語教育専門機関での日本語講座の受講ということでこれは可能です。
 次にコミュニケーションのほうなのですが、コミュニケーションを測る方法としてはまだ確立されたものがありませんで、右に書いております試験が参考にできる方法です。日本語会話力測定テストというのは、これはアルクが作ったものですが、上海でビジネスコミュニケーションの能力を測る方法として採用されています。
 下のACTFL-OPIというのは試験というよりは、客観的な言語能力を測る方法として提示しておりまして、OPIの方法ではフリーの口頭でのコミュニケーション能力とロールプレイで能力を測ります。△にしてあるのは、まだ欠損している部分もありまして、そのロールプレイの場面として医療・看護・介護福祉の場面を入れて使えば、応用できるのではないかというところで△にしています。
 最後にケア・コミュニケーション検定というのがありますが、これは日本人を対象にした検定で、医療・介護福祉の場面を想定したコミュニケーション能力の検定です。こちらは口頭表現能力を測定するのですが、質問に対して選択肢があり、どれが適当かということで回答するもので、実際に話すものではありません。ただ、シラバス等で活用することは可能かと思います。
 学習方法として真ん中に挙げておりますが、日本語講座の受講、医療現場を想定した会話練習、OJTでのコミュニケーション実践ということで、どのように勉強するかというのを示しております
最後に看護・医療用語としては、医療現場頻出語の語彙集というのを整備して、試験方法としては口頭・文字の両面で日本語、インドネシア語、英語で互換をテストするというものです。
○星(さ)参考人
 最後の部分を補足させていただきますと、先ほどの専門用語の公定訳の問題ですが、いまこの時点でもう受け入れていますので、本当はもうすでにこの時点でなければおかしいのだと思うのです。ですから実質上はある程度AOTSさんとか頑張って作っていると思うのですが、もしない部分があるとしたら、すぐ公定訳を確定させる必要があると思います。
○中山座長
 ありがとうございました。そうすると確認ですが、ガルーダ・サポーターズの提案というのは、いまの国家試験とは全く別なかたち、いわゆる日本人がやっているものとは別なものを作る、そのシステムを作るということでいいのでしょうか。
 国家試験そのものも日本人用のものと、インドネシア、フィリピンの方々用のものと別々にするという発想なのでしょうか。
○星(さ)参考人
 すみません、説明を省略してしまいました。12頁をご覧ください。こちらの下に図があります。第2次政策提言で発表させていただいたものです。私どもの考え方はEPA受験者に関しては選択制です。第1陣、第2陣、もう第1陣は間に合わないのだろうと思いますが、早くから勉強している人たちは、いまからだったら日本語にしてくれたほうがいいやという方もいると思います。これからもいるでしょう。これを選択した人は選択させてあげる。インドネシア語がいい、英語がいいという人はそちらを選択させてあげる。ちなみに、この英語については、私どもは英語を特別視しておりません。フィリピンの候補者がいるから英語です。
 こちらの新方式を選択した人については、法律を変えるのか、告示を変えるのかいろいろと方法はあると思いますが、知識確認とコミュニケーション能力確認の両方セットで看護師国家試験であるという法整備をするということです。
○中山座長
 ありがとうございました。それではほかにご質問をどうぞ。
○伊藤代理
 患者の安全の観点からの新しい提案でしたので、そういう意味で非常に興味深くお聞きしました。その中で、おっしゃるとおり、聞く・話すというところの能力を確認するということの大事さというのは非常によく理解できるところなのですが、ご提案ですと、その聞く・話すを含めた日本語を早く正確に読む能力を移してくるということですが、そうすると、もしコミュニケーション試験で専門的な用語等の対応関係を確認するという部分が移ってくると、ここをどれだけ丁寧にやるかということで、いまの試験をそのまま日本語で受けるのと近くなってくるということになると思うのです。それはどの程度でいいとお考えなのか。また、日本語の試験が現行の国家試験と変わらなくては意味がないので、緩めるということですと、それをその後研修とか、何らかの形でフォローするというのをどう考えていらっしゃるのか。今回の試験ですと、日本語で受けた試験を受けた人の能力と、この新しい方式で出てくる方の能力というのが同等ではなくなるような気がするのですが、それでいて同じ看護師だという根拠は、どのような考え方でこういう別の試験を立てるというお考えなのかというところを、少し丁寧に教えていただければと思います。
○星(さ)参考人
 ありがとうございます。漏れていたらご指摘ください。まず、新設部分、コミュニケーションのほうをあまりハードルを高くすると、結果的に合格率は変わらないのではないかというご懸念ですが、それは私も思います。ただ1つ、大きく違うのは、試験の制限時間に関して、単純に言って、もう一枠使えばいまよりは長い時間で確認できるわけです。こちらの図の右側の下に注記を書かせていただきましたが、2倍の制限時間と書いてあるのは象徴的に表現しているだけで、出題量に合わせて制限時間は柔軟に設定すればいいのではないかと思います。
 出題量は例えば、いまこの場で考えた案ですが、もう1つの理解度確認試験、日本語版でいえば国試に出てくるある重要単語が、大体1回の試験で何語ぐらいあるのか。そのくらいの個数を核に問題として出すというようなことを1つの目処とすることが考えられます。
 これには重要語彙の幅を確定しておく必要がありますが、介護福祉士の支援の世界では既に静岡県で過去問から抽出した重要頻出語彙808語プラス日本語の3級、4級の語彙ですべてを説明する、参考書を作るというようなところまで取組みがなされています。やはり受け入れるのであれば、こういう単語の重要度の確定など、受け入れる側の工夫努力がなされないと成功しないと思います。
 能力が変わってくるということですが、これは候補者に対して厳しいコメントですが、いまの方式のほうが能力は違っていると思います。なぜかと言いますと、日本で育った人たちについては、いまの試験方式は、このコミュニケーション部分の能力は試験しなくても本人は持っているのは当然だという前提なのだと思うのです。実際、ほとんどの人がある程度まではあると思います。最近の看護学校の入学者は漢字を教えるところからやらなければいけない人たちが増えているとも聞いていますが、基本的にはある程度はある。
 ところが、EPAの受験者はそれを前提にできないのだと思います。そうするとそこを確認しないと、同じであるとは言えないの。いまの方式だと、むしろ能力がずれているのではないかという、逆転の発想です。
○中山座長
 ありがとうございました。
○山崎委員
 5頁の下ですが、4番のところに准看護師としての受入れ案についてというのがありますが、正当業務という違法性阻却事由がなければ刑事違反になってしまうとか、労働市場は二重化してしまうということはわかるのですが、実際的にこの国家試験を合格しないと帰されてしまうわけです。したがって、准看護師の試験を受験させて、一応准看護師として就労できる場を与えておいて、その間に勉強して看護師の国家試験の受験するチャンスを増やしてあげたらどうかというのが、この前の検討会の発言の趣旨であって、必ずしもそのままずっと、将来准看として定着して働かせるということを考えていないので、取らなければ帰られてしまうのだから、もう少し修学できる時間を与えてあげたいというのが趣旨なので、ちょっとこれは表現が違うかなと思います。
○星(さ)参考人
 失礼しました。ただ、ここに書いていない懸念をお話しますと、准看になれば看護業務はできてしまいます。そうすると、下手をすると第2の研修生技能実習生制度的に、建て前としては看護師試験に受かるためにいるけれども、実際としては受入れ施設としては働いてもらえるのだったらこのままでいいねということになりかねないなという懸念は感じています。
○中山座長
 藤川委員どうぞ。
○藤川委員
 これは看護師の問題だけではなくて、海外で働く場合に、医師の場合であっても企業でも、グローバルになってくると会社内を英語にするとかそういう努力をしているわけです。やはり自分たちが利益を得ようと思うならば、まず努力をする。自分のレベルよりもワンランク、ツーランク上の世界にいこうとするときは、やはり修学をする、勉強をする、語学のコミュニケーション能力を身につけるわけです。グローバルと言えばグローバルに耐えられるだけの相手の国の文化や言語をマスターするというのは常識です。TPPやEPAがどうであれのこうのの前に、まず相手の国でお世話になるならば、相手の国に対する礼儀作法があります。その礼儀を無視して、我々はEPAだから構ってもらうのが当然だという甘えの考え方はありえません。これは十分国としても予算まで組んで、日本語の研修を自国でもやってもらおうという、この日本人の優しい仁の心まず理解していただき、感謝をしていただくということが最優先です。そのサービスを受けて医療事故を起こさないためにコミュニケーション能力のレベルをきちんとチェックしようとする件は国としての、憲法上守られた日本人の基本的人権を守る責務です。それを国が放棄した途端にその国の存在はありません。国としては外国の問題の前に、まず日本国憲法に則って、日本国民の安全を守る、生命を守るというのが最優先です。それができなければ国家としての独立はありません。だから、まず外国の医療文化というものに接してもらうときには、まずしっかりその基本的なコミュニケーション能力は絶対に必要です。患者さんたちは日本人ですから、老人であれ子どもであれ、サービスを受ける側が英語を話すとか、インドネシア語を話すことはあり得ないし、そういう努力をする必要がないのです。
 サービスをする側は徹底的に海外に出て行くときも大企業であれば英語を勉強していくのです。コミュニケーション能力をつけないと基本的に通用しないからです。日本語で中国に行っても、アメリカに行っても、そこの中国の文化、アメリカの文化に通用しないから仕事にならないわけです。そういう点では、物を売るわけではないですから、生命を預かる以上は、そこの医療文化に入るときにはまず見だしなみであり、礼儀であり、作法です。それを抜きにして契約がどうであれ、TPPがどうであれ、経済的にどうであれ、通用しません。その基本を忘れたら日本の国家は成り立ちません。
○中山座長
 ありがとうございました。戸塚委員が発言があるようですが、奥島委員のプレゼンテーションのときにしていただくことにします。日本インドネシア協会の西田さん、ガルーダ・サボーターズの星さんお二人に来ていただきまして、本当にありがとうございました。参考にして私たちの討論を深めていきたいと思います。。
 それではヒアリングを一旦ここで終了とさせていただきます。今日プレゼンテーションに来ていただいた方、後ろの席のほうに戻っていただき、事務局から前回から宿題の資料を用意してもらっていますので、そのことについて説明していただいて、奥島委員からもう1つのプレゼンテーションにいきたいと思います。
                (星参考人退席)
○玉川看護職員確保対策官
 それでは前回の検討会において追加的に説明を求められた事項がいくつかございましたので、本日の資料3を用いてご説明いたします。
1頁です。インドネシアとフィリピンの看護教育事情等については、この後奥島委員からご報告いただく予定ですが、インドネシアについては、4年制の看護大学を卒業された方と、3年制の看護学校を卒業された方いずれもが、看護師の候補者となることができることとなっています。インドネシア人の候補者のうち第1陣から第4陣まで合計した入国者数は363名ですが、このうち4年制の看護大学卒業者は全体の16.8%を占めている状態です。修学状況と国家試験の結果の関係ですが、第100回の看護師国家試験において、インドネシアの第1陣全体の合格率は14.3%で、これは前回ご報告したところですが、これを4年制の看護大学卒業者だけで見ますと、18人中6名の方が合格されており、合格率は33.3%に達しています。
 前回の検討会の参考へ資料14で、「経済連携協定(EPA)に基づく看護師、介護福祉士候補者の受入れ等についての基本的な方針」をお付けしましたが、その中でも中長期的には現地の主要看護大学等における日本語及び日本の看護、介護事情等の教育の実施を目指すこととされており、こうした取組みも契機となって、優秀な候補者の受入れにつなげていきたいと期待しているところです。
 なお、フィリピンについては、すべて4年制の看護大学の卒業者となっています。
 続いて、本日の資料3の2頁です。前回の検討会において第五次看護職員需給見通し、第六次の需給見通しの達成状況についてのお尋ねがありました。第五次の需給見通しですが、平成12年末に策定されたもので、これは実人員ベースでまとめられているものです。期間の当初の平成13年の段階の需要見通しが約121万7,000人、供給見通しが118万1,000人のところを実際の就業者数が約118万8,000人、見通し期間の終期は平成17年の需要見通しが約130万6,000人、供給見通しが約130万1,000人のところを実際の就業者数は約130万8,000人と、いずれも実際の就業者数は供給の見通しを上回っている状態です。
 3頁です。第六次の看護職員需給見通しが平成17年末に策定されています。こちらは常勤換算ベースでまとめられたもので、期間の当初、平成18年ですと、需要見通しが約131万4,000人、供給見通しが127万2,000人のところ、統計が実人員ベースで取っていますので、その実際の就業者数が約133万3,000人、これは「衛生行政報告例」における実人員と常勤換算の就業者数の比率で推計した数字が124万6,000人、平成21年の需要見通しは138万4,000人、供給見通しは135万6,000人のところを、実人員ベースで143万4,000人で、これも比率で推計した結果が、約132万5,000人が常勤換算の数字となっております。こちらについては、いずれも実際の就業者数が供給見通しを下回る結果となっております。
 この結果については、第七次の看護職員需給見通しに関する検討会の報告書の中で、第六次看護職員需給見通しにおいては策定過程の途中において、常勤換算による算定が導入されることになったことから、各施設に対する調査等において、実人員と常勤換算に関する十分な把握ができなかったこと等が影響していると分析をされています。
 4頁です。前回の検討会において、中期的な推計に関して、「税と社会保障の一体改革成案」が言及されています。税と社会保障改革成案の別紙に、「社会保障改革の具体策工程及び費用試算」というものがあり、この中で医療・介護等で上記の重点化に伴うマンパワー増況(2,400億円程度)という項目があり、医療・介護従事者2011年462万人程度から、2025年に704万~739万人程度(1.6倍程度)という記載があります。この試算の基となっている推定結果が、本年6月2日の社会保障改革に関する集中検討会議第10回の参考資料1-2、「医療・介護に係る長期推計」として公表されておりまして、このうち、マンパワー必要量の関係の資料だけを資料3の4頁、5頁で載せています。この改革シナリオというのは、病院病床機能の分化、強化と連携として、急性期病院への医療資源の集中等による亜急性期、慢性期医療の機能強化等による入院医療の機能強化、精神保健医療の改革、医師の偏在是正、地域間、診療科間の偏在の是正、予防対策の強化等を内容とするものです。
 4頁がパターン1で、5頁がパターン2と両パターンありますが、パターン2は急性期医療を、さらに高度急性期、一般急性期、軽度急性期の3つに区分し、パターン1よりも一般急性期の対象を絞り込んだもので、機能強化と分化と強化を図ったものという説明になっています。
 いずれにしろ、これらの表というのは、人数が実人員ベースで推計されて作成されています。第七次の看護職員需給見通しに関する検討会でも指摘されているところですが、長期の推計においては、今後の制度改革の進展によって、医療提供体制の機能分化はどのようになされるか等の要素が非常に大きな影響をもたらすものとなっており、ご覧のように現状等への最少で172万人からパターン1の改革シナリオの205万人までの幅のあるものとなっています。
 なお、直近の現在の看護職員の新規の資格取得者は約4万7,000人ほどおりまして、前回の参考資料2で示したとおり、対前年度の増加数は約3万7,000人ということなので、かなりの努力が必要とされるものの、不可能なマンパワー推計とは言えないと考えています。
 前回の検討会の資料2-15頁に関し、EPA以外の受験資格認定者の出身国についてのお尋ねがありました。本日の資料には添付していませんが、平成20年度から平成22年度までの3年間に、外国の看護師学校養成所を卒業し、または外国において看護師免許を得た者として、個別に看護師国家試験受験資格認定を受けた者は183名に達しています。これは免許の取得国別に見ると、どの国で看護教育を受けたかとほぼ同義と考えられますが、中国の方が全体の62%で、韓国と台湾を加えると68%に達する状況です。すなわち認定の3人に2人というのは中国か韓国か台湾で看護師免許を取られた方になります。
 他方、中国に次いで多いのが米国で20%、次がオーストラリアで9%となっており、両国を合わせて29%ですが、これについては日本の方でこれらの国の看護大学に留学されて現地で資格を取った方がほとんどだと思われます。
 なお、国籍ベースでのお尋ねもありましたが、これについては途中で日本に帰化されたり、逆に外国に帰化されている方も少なくないといったことから、免許の取得国別で見る方が適当かと考えております。
 また、いま申し上げた数字ですが、受験資格認定というのは、一旦それを受けますと、その年の試験が不合格でも、次年度以降でも引き続き看護師の国家試験を受験することができますので、年度ごとの受験者数等と記載したのは、前回の検討会の資料2の15頁の人数の総計等とは一致するものではありません。
 EPA看護師候補者の看護師国家試験の平均点や件数分布等についてのお尋ねがありました。こちらで取扱いについての検討をさせていただきましたが、国家試験の成績については国家試験の合否判定を行うために使用されるもので、厳重な機密保持と慎重な取扱いが求められていることから、合否判定以外での目的の使用はできないということです。
 また、専ら合否判定を目的としているということで、平均点及び点数分布等に関する統計的なデータも作成していないので、その点についてご理解をお願いいたします。
 外国の方で日本の看護師学校養成所を卒業して、看護師の国家試験を受験した場合の合格率についてのお尋ねもありました。確認したところ、看護師国家試験の受験手続きの際には、戸籍等の本人の国籍を示す資料の提出を求めていないということなので、外国人留学生に特化した看護師国家試験の合確率を出すことはできないということでした。
○中山座長
 ありがとうございました。ちなみに先ほどの183名で、外国の方の合格率は大体どのぐらいの数字をいっているのですか。
○玉川看護職員確保対策官 前回の資料にありますように、個別の認定で取られた方等のトータルの合格率ですが、平成21年第98回が80%、平成22年99回が81.7%、平成23年第100回が88.4%というのがEPA以外の受験資格認定者の状況です。
○中山座長
 ありがとうございました。宿題の部分を報告していただきました。需給見通し等、皆さんからご発言したいことはたくさんあるかと思いますが、時間の関係もありますので、奥島委員からのインドネシア及びフィリピンの看護教育制度等についてのご報告をいただき、全体討論の中で、発言していただくことにしたいと思いますので、奥島委員よろしいでしょうか。
○奥島委員
 はい。
○中山座長
 よろしくお願いいたします。
○奥島委員
 
 私どもは、前回も申し上げましたように看護学の専門ではありませんので、どちらかというと研究者として、又は中立の立場として情報提供のためにここに呼ばれていると理解しています。
 本日の私の情報提供をするという任務は、お配りしてあるプレゼンテーションのパワーポイントの資料になります。最初の6枚はあまり重要ではないので、ざっと飛ばしてまいります。私の報告は短いので、皆さんのいちばんお知りになりたいとおっしゃられていた1.インドネシア・フィリピンの疾病構造、教育制度が日本とどう違っているか。2.インドネシア・フィリピンにおける移住労働、海外派遣がどうなっているのかの実状。受入国の中で、日本というのは大体どの辺のスタンスというか、位置づけイメージにあるのか。3.は私の意見とか、看護師国家試験に関する直接の意見というよりも、その前にいろいろ改善すべき点があるのでこれもご参考にということです。1.と2.を中心に話してまいります。
 1.のインドネシアとフィリピンの医療保険の現状というのは、私よりも人口学の先生方のほうがよくご存じだと思いますが、人口の増加減少と疾病構造というのは密な関係にありまして、第1相から第3相まで大きく分けることができると言われています。低開発・発展途上国、人口爆発期にある国、社会というのは、感染症が圧倒的に多いということで、第2相は、そこから人口がある程度安定期に入ると、その間しばらくは発展が、例えば日本とか、1990年代から発展したのは、東アジアニースと言われる国々のように経済発展を遂げるわけです。そのときに出てくるのは生活習慣病、慢性疾患と言われるもので、癌とか心臓病とか脳梗塞のようなものが多いと言われています。
 第3相は少子高齢化・減少期にある、日本もついにここに入って加速していると言われていますが、老人退行性の疾患が中心になってくるので、例えば医療保健制度とか福祉が重要になってくると言われています。欧米や日本が第3相であるのに対して、中国やこの本の中ではインドネシアとかマレーシアが中心となって分析されていたようですが、ASEAN諸国というのは第2相にあるところが多い。ただし、中国にしろインドネシアにしろ、広大な国、人口大国では農村部とか貧困層というのが非常に大きいので、そこは第1相のほうが取り残されている。全体的に日本と比べますと、医療・福祉制度というのがそこまで手が回らないので不備が多い。それから、農村部と都市部ではインフラも人材も技術も格差がある。せっかくお金を投じて、都市部などで育てた医師や看護師が都市部以外には行きたがらないとか、海外に輸出することなどが挙げられると言われています。健康指標については、ご覧になっていただければと思います。そういう状態ですので、フィリピンとインドネシアの保健医療人材の現状は厳しいものがありまして、Aのフィリピンは人口1万人対率で、Bは10万人対率とデータがずれますが、どちらにしろ医師がまず極端に少ないこと。それから、医師というのは都市部、首都圏の儲かる所にしか行かないです。ですから農村部というのは非常に人手が不足していて、看護師や助産師、農村の資格のない助産師たちが代わりにそれを支えている状況です。病院も偏在が甚だしくて、本当の急性期の末期の方しか入院できないし、多くは保健所に頼っている現状である。だから病床が、まずそんなにないことが挙げられます。
 7枚目のスライドです。そういうわけで、フィリピンとインドネシアにおける看護師は、比較的学歴は最近は必要になってきていますし、特に農村部では医師に代わる重要なキーパーソンですから、ステータスも高い。フィリピンとインドネシアは男性の看護師が多いです。それから、感染症や母子保健、農村医療というのを中心的にやらざるを得ない状況にありますので、私たちの求めている成人看護とか老年看護とは違う分野のほうが得意分野であることが多いです。もう1つ重要なことは、人材不足ですので慢性期疾患の患者もお金持ちであれば結構病院に入れますが、ほとんどは家族介護、看護・付き添いの人を雇ったりして、病室にそういう人たちがザワザワと出たり入ったりしているので、衛生上はあまりよろしくないですが、看護師は再生産労働の底辺に当たる部分はやらない。それができない人は自宅療養、要するに寝かされて、死ぬのを待つ人も少なくないわけです。という状況が、両国の看護教育の現状にも反映されています。それが8頁です。
 全体にフィリピンのほうが20世紀の初めにアメリカ植民地になってから、すぐ看護学校がアメリカスタンダードでできまして、アメリカに昔から移住労働が多かったこともあり、カリキュラム、資格制度、養成期間の規定等が厳しくて、アメリカ水準なのが必ずしも後進国でいいとは限りませんが、整備は進んでいるほうである。ただし、フィリピンでもインドネシアと同じように母子保健や急性期看護が中心で、もう1つ、学校の規制は厳しいですが、質的なばらつきがあり、インフラがないとか人手が来ないということで、特に地方部では大きい。これは、どちらの国にとっても大きな悩みであります。
 学校教育の課程について時々誤解があるようですが、フィリピンというのはジュニアとシニアのハイスクールが合わせて4年制になっていて、大学ではその分、長めに教養課程をやります。だから、大体4大卒以上ですが、石川先生の論文によると3年制のコースもあるということです。EPAではフィリピンから4年制の人しか来られないようですが、実態はいろいろだということです。インドネシアは日本と同じように6・3・3制です。大学は専門の単科大とか短期大学は3年、看護専門学校も3年ですが、現在は学士号を取るためには一般の4年制に合わせて職業プログラムというのが1年、2005年ぐらいから導入されて、5年かかっています。これを見ておわかりだと思いますが、フィリピン、インドネシアというのは、まず教育の層がさまざまですし、国内でもかなりばらつきがあって、英語で教育している非常に優秀な大学もあれば、全然そういうことができないで、なんとなく卒業して認定で看護師になっている所もあって、非常に問題だと思っています。
 フィリピンの看護教育というのは9枚目ですが、米国スタンダードで資格制度も大体似ていることと、とにかく出稼ぎを奨励している国なので、看護師や医師が出稼ぎに行くことを国がコントロールできない状況にあります。「出稼ぎというのは私たちの権利である」と国民が言えば、「そうですか。では、どうぞ」と言うしかないので、その辺がフィリピンの特殊な事情です。米国の試験を受けるための専門の予備校もたくさんありまして、行きやすい状況になっていますし、米国にしろ日本にしろ老年社会ですから、2009年のカリキュラム改正で慢性期看護などがだいぶ入ってきたというか、視点が取り入れられたということも言われているそうです。
 これに対して、インドネシアの看護教育でフィリピンと大きく違うところは、インドネシアでも受験というのは、特に国立は大学に入る人数制限が厳しいので大変ですが、それ以外の所であまり受験戦争は中学・高校のレベルでも、良い私立の一部の学校を除けばない。それから、学校の偏差値も一応ないことになっているか公開していないので、偏差値別でどこかに集中することはないということです。学校によってレベルの差が大きいし、中には金儲けのために開いたという塾みたいな所もありまして、かつ看護師や医師も2006年までは国家試験がなかったものですから、標準化・スクリーニングは難しい状況にあります。標準化・スクリーニングはフィリピンの国内でも同じようですが、フィリピンのほうがスタンダードは相対的に高いとお考えいただければいいかなと思います。
 従来、インドネシアの場合は資格制度がないのが、フィリピンといちばん異なっていて、看護高専卒でも看護師に保健省から自動的に認定されてしまうことが続いていましたが、これは問題でしょうとWHOにいろいろ指導を受けまして、カリキュラムを少しずつ引き上げ、2002年からは職業教育課程のことをディプロマと申しますが、ディプロマ3年以上と学士・修士・博士のみが看護師の免許を取れることになりました。したがって、それ以下の方々も働けますが、看護職員という扱いになっています。つまり正規の看護師、正看という言い方をすると誤解があるかもしれませんが、統計上使われているのでお許しいただき、正看と言われる人たちがインドネシアに多いというのは日本から見れば素晴らしいことに見えますが、実際は学歴上の差が大きいし、良い大学とそうでない大学では、同じ学士でも雲泥の差であるという違いがあります。11頁のインドネシアの資格制度はそのとおりですので見ていただければと思いますが、このように急激に引き上げてきたので国民の教育レベルが追いつかないところと、医師は2006年から医師法と医師国家試験が成立したのに、看護師法は国会でずっとストップされていて、いまに至るまで批准されていないので、看護師試験ができない。看護師はメーデーになるとワーッとデモをやっていますが、なかなか難しいということです。
 これに関してインドネシア看護師協会も、ただ待っているだけでは駄目だということで、国試モデルとしてのコンピテンシー試験を何年か前から始めていて、EPAの選抜や、ほかに中東でいくつかバイラテラルの関係を結んでいる国にも看護師を送り出しているので、そこでも実施しているし、2010年ぐらいから海外渡航者に義務化することを謳っています。ただし、実際に徹底されているかどうかはまた別な話で、これが難しいところです。12頁はコンピテンシー試験がなかなか普及しないことと、コンピテンシー試験は国際看護協会の基準を使っていて、非常に高いレベルだと自負していらっしゃいますが、それが日本のニーズに必ずしもマッチしているかというと、なかなかマッチしていない。例えば高度な医療とかハイケアといったところに比重が結構あるようで、老年看護とかホスピスという観点はあまりないようです。その要素も考えなければいけません。
 ちなみにEPAでは、第3陣から初めて国家試験について、きちんとオリエンテーションを国内でやりました。だから、第1陣、第2陣は試験を受けなければいけなかったっけ?というレベルから始めていますので、それを一緒にジャッジするのは可哀想ですし、候補者にも情報に格差があったということです。第3陣が、本国で選抜を受けるに当たってオリエンテーションを受けましたが、コンピテンシー試験というのはこういうものだというイロハから始まり、設問は180問で3時間で回答。約半数は外科看護と急性看護ですよと。老年看護はその中には含まれていなかったということなので、これがそのまま日本で通用するかどうかということは考えないといけないと思います。
 だんだん時間が押してきたので13頁目は飛ばしますが、インドネシアのコンピテンシー試験が、いかに日本人にとってできない、難しいもので不可解なものであるか。いかにインドネシア人も、同じように日本の試験を見ているかがこの例からわかればいいと思います。例えば、「薬のラベルがはっきり読めない時、あなたは誰に聞きますか」「日本では、そういう薬は使いません」となってしまいますが、インドネシアではそのとき、指令系統は誰になるかということまで、当然第三世界ですから一応決まっていなければいけないということで出しています。第3問のデング熱も日本人の看護師たちに見てもらったのですが、デング熱のグレード3というのを知らない方は、どれを回答していいかがよくわからないということでした。これと逆のことがインドネシア人の候補、フィリピン人の候補に感じられていると思っていただければつかめるかなと思います。
 残りの時間で、2.を簡単に説明します。14頁、フィリピンとインドネシアにおいては、どんな移住労働があるかということですが、フィリピンのほうは佐藤千鶴子という、アジア経済研究所の先生の非常に優秀な報告書がたくさんありますので、それをご覧になっていただきたいです。世界最大の看護師の輸出国で、8割以上が海外で働いているということ。送り出しは、その制度として完備は一応され、もちろん賄賂などは一部ありますが、インドネシアに比べれば素晴らしいです。ただ、人材流出の抑止力がないということです。海外の需給が変動すると、雇用先がなくなって仕事にあぶれてしまって、フィリピンの国内で何万人も溜まってしまうという問題を抱えています。
 人気渡航国は、いちばん給料の高い米国でフィリピンから行きやすいということもありますが、1996年以降は伸び悩んでいて、サウジアラビアが最大の受入国になっています。年間、大体1万2,000人から1万4,000人が行っているのに比べれば、インドネシアはこの20年ぐらいでやっと累計が1万人とか2万人。これは保健省派遣ですから、労働移住省からのあっせん業者を通してやる移住労働を入れれば何十万人にもなりますが、累計1万人という保健省の実績に比べると、フィリピンは立派なものだと思います。
 インドネシアの場合は、断片的に送り出しの機会はあるが、なかなか安定して送り出せないということと、その他、経路が確立されていないことなどがありまして、バイラテラルの関係を好みます。どんなバイラテラルの関係があるかというと、主にクウェート、サウジ、マレーシア、そして最近日本ということで、保健省としてはイギリス側の1990年代の終わりからワーッと受け入れたときに、自分たちも送り出したいということで、わざわざ海外派遣部門というのを作って英語の教育をあちこちで始めたのですが、これは最終的には個人の国家試験にかかっていますので、全国から200人とか300人の優秀な看護師を集めて3カ月トレーニングを施して、その中からさらに30人から50人ぐらいの優秀な英語のできる人を選んで、米国試験向けに特訓をするというプログラムがありますが、せいぜい受かるのは年に5人から10人ぐらいでなかなかうまくいかないし、受かっても一発で受かるわけではないので、保健省に報告がないということもあるそうです。
 それに対して、クウェート、サウジ、マレーシアはコンピテンシー試験はありますが、国家試験ではないので英語で試験をやって、向こうの保健省が来て、保健省の作った問題をするそうです。それに受かった人が行けるということで英語でやっています。マレーシアはインドネシアと言語が同じですから、2003年からコンピテンシー試験を免除されて、面接だけでも十分やっていけることになっています。日本は、厚生労働省の外郭団体JICWELSさんがやっていますが、これはコンピテンシー試験ではなくてまだ性格診断ですよね。能力試験ではないですよね。いまの状況はよくわかりませんが、そういうことで始まっています。その後に、国家試験を各自で受けなさいというスキームが、ほかの国と違っています。
 そのほか、オーストラリアのシスタースクールに留学という制度もありますが、これはあとで言うように頓挫していて、なかなか難しい感じです。各いろいろな国に行ける条件を彼らがどう見ているかというのは、インドネシア人のケースで比べてみますと、まず月給を皆さんは最初に見られますが、米国とかカナダに比べると、日本というのは大体その中間、3番手、4番手ぐらいの位置にありまして、クウェートと大体同じぐらいの給与だねということが看護学校などで認識されていますが、クウェートの場合、国立ですと一時帰国費用が出るとか、車とかマンションが支給されるという特典がありまして、そうなると日本に行くのは得なのかというためらいがある人もいるようです。全員ではありません。
 そのほかの特色。いま言ったクウェートのようなパッケージ的な特典があるかどうかですが、北米の場合は長く住むための権利というのを取得しやすい。英国は2005年以降はJICWELSさんと同じようなナショナルボードみたいな機関がスカウトしていたのですが、財政的に破綻してやめてしまったのですが、それまでは資格試験なしで英語の研修、看護導入研修みたいなものをやるということだったので、資格試験がないなら自分も行けるわという「ノリ」があったようです。実際は英語がとても厳しくて、帰される人も多かったです。サウジやクウェートは、いま言ったような特典がたくさん国公立の病院には付きますので、私立はそんなに良くない条件もありますが、イスラム教徒ですと人気があったりもします。最後に、日本はどうかというと、日本は申請から渡航、日本語研修までが全部政府持ちであるところが大きい要素になっていて、「飛行機代を払わなくていいんだったら、行きたい」という「ノリ」があるので、もちろん受験のことも知らないわけではないですが、二の次なのかなという感じがします。
 多様な来日動機のところです。以上のような条件を見ながら個々に自分の戦略を選ぶわけですが、欧米に行きたいけれども英語の資格要件が非常に高くて、特にスピーキングやリスニングができないことから断念して、よその国に行く人が多い。例えば中東です。それから、イスラムの発祥地である中東には憧れるけれども、行動がいろいろと抑制されるとか治安が怖いということで、アジアのほうが無難だろうという判断もあるようです。それから先進国とか製造業の国とかアニメとか浜崎あゆみとか、そういうものに憧れている人たちもいるし、家族が日本に行ってくれたほうが嬉しいというので、家族の期待を背負ってきている人もいらっしゃいます。
 実際に候補者たちの話を聞いていますと、英語のプログラムで一生懸命頑張っていたけれども、何回も試験に落ちたので、「日本の募集にとりあえず行ってみなさい。また考えたらいいじゃないの」と言われたり、出稼ぎに行って、家族を養おうと思ったのですが、成績が悪いのでオーストラリア留学は落とされ、中東派遣にも試験に落ちということで、そのときたまたま日本の募集があったとか。無論、こういう人ばかりではないですよ。成績の良い人もいますが、一方でそういう選択があった。それに対して、3番目のもう少し良い事例では、実力至上主義の新設病院が2000年以降に地方分権化でたくさんできたのですが、海外の技術をどんどん学びなさいということで、フィリピンに研修に行かせている病院の例です。フィリピンに行って国家試験を受けると、それは米国スタンダードなので米国の試験も受かりやすくなるということで、米国試験を取るためにまずフィリピンで国家資格を取る人たちもいるのですが、事例の候補者は結局米国の渡航ができなかった。お金が高すぎるとか書類が多すぎて、自分では揃えきれないということで日本にとりあえず来たということも聞いています。もちろん、最初から日本しか興味ありませんという非常に優秀な人たちもいるし、出稼ぎにしか興味がありませんという人もいて、これらの事例だけで判断されては困りますが、さまざまな背景があります。
 最後に、今後のEPAの課題ですが、駆け足の情報で恐縮ですが、送り出し諸国側にも改善点はいろいろあると思っていて、まず日本の国家試験に耐える人材、と言ったら誤解があるかもしれませんが、日本の国家試験をやりたいという意思を持ってくる人材を要求すべきだと思います。これは学歴の差があって、合格率にも響いていますよということを前回言いました。というのはマッチングの情報を向こうで手に入れることができたので、第2陣と第3陣は誰が応募して、誰が落ちた、受かったというのは大体わかっています。それを見ると国試の合格率では学士が有利ですが、マッチングでは意外と不利になっています。男性が多かったからということも理由の1つありまして、高学歴者には男性が多く、男性はいずれ保健省の役人などになるので、その前にキャリアを付けるために海外に行っておこうとか、いずれ病院の経営者になってやるという見通しを立ててからいらっしゃる方が多いので、高学歴者に男性が多くなる傾向がややあります。それは、2010年の「歴史評論」という論文に表を出しているので、詳しいところは見ていただきたいのですが、残念ながらマッチングでは男性がほとんど落とされました。といっても、非常に優秀な学士をリクルートするだけでがいいというものでもなく、まず日本の雇用主側もよく考えて人材を選ぶことが必要ですし、ディプロマだけでも病院の中で研修をたくさん受けた優秀な方々もこれまでの合格者16人のうちの半分いらっしゃいますので、学歴だけではないところもきちんと評価することが必要です。こうしたことが日本側の受入れのスキームに響いてくることは後で申します。
 ただ、優良な人材を要求するということは、インドネシアで病院や保健省で中心的になって活躍している人たちを引き抜くということですから、フィリピンあるいはイギリスに人が流れた南アとかアフリカ諸国が大統領を通じて「日本は人材を盗んでいる。私たちが公費で育てた人たちを横取りしている」とイギリスに対して声明を出したことがあるのですが、日本も言われるかもしれないことは、一応念頭に置くほうがいいのかなと思います。
 第2点は、いま申しましたように本国でコンピテンシー試験が既に行われていますので、EPAの選抜でも第1選抜ではやっていますので、これがすでに母国語試験ではないかなという気がします。もちろん疾病構造が違うので、日本は日本の疾病構造を母国語でやりたいということかもしれませんが、そうであればコンピテンシー試験を向こう側でどうするのか自体も考えなければいけないと思います。
 第3点は、これは直接関係ないように見えるかもしれませんが、看護はナショナルボードという看護のノウハウがないボードを通して、日本はいまEPAを受け入れていますが、少なくとも看護については保健省と直接やり取りをするほうが、いろいろとバイアスがかからなくていい。ナショナルボードには、都合の悪いことを隠したりする傾向が少しあります。例えば募集の際に「国家試験は大丈夫だよ。とりあえず日本に行きなさい」ということを言いますが、「いや、それは困ります」という日本とのやり取りも裏でいろいろありまして、これは1つ阻害されている要件かなと思っています。
 一方、日本側の改善点として、EPAスキームを見直すというのは私もいくつかの点では賛成です。インドネシアの2次選抜で、例えば性格診断という非常に主観的な診断をやっていますが、これはこれまでの学業とかコンピテンシー試験の成績とかを全部加味して、マッチング面接をできるようにしたらどうだろうと。病院によっては、学歴だけではなく性格とかこれまでのキャリアのユニークさとか、いろいろなところを見るわけですから、この際隠さないほうがいいのでは。しかも、向こうに提携している看護学校や施設を持っている日本の経営者たちは、情報を隠して無作為にマッチングするといっても、ほとんど全員顔見知りなのです。それはずるいと思っています。不公平であるというのは良くないと思っています。
 日本側の2点目ですが、受入れ機関の学習支援計画の第一次については向こうで見せてもらったのですが、空白が多いところもありまして、病院はわりときちんとやっていて、介護施設に4割ぐらい「自習」としか書いていないところがあって、これは問題だなと思いました。事前に内容を精査するべきですし、受入れ先を増やしたいというお気持はわかりますが、明らかに駄目な機関はお断りするか、モニタリングを強化するべきだと思っています。
 日本側で既に改善されたと言われている国家試験ですが、奥田さんの2011年の論文を参考資料の中に入れていますように、さらにこれから断続的に国家試験の日本語の部分も改正していく必要があると思います。先ほど、どんな試験で落ちやすいのか、難しいのかを調べた結果はあるのですかというご質問がありましたが、いくつかの日本人のサポーターとかNPOでは既にそういうことの連絡をこの1、2年、研究会やワークショップを通じてやっていて、そこでは在宅看護とか日本語の表現のこういうところがみんな駄目だったということを言っていますので、そういう団体からのヒアリングも必要かなと思っています。最後に、看護学の再教育の徹底も必要です。これは日本語だけではなくて、保健制度や看護関係の法規をインドネシアではほとんど勉強する機会がありませんので、こういったところはゼロからやらなければいけないし、日本語でやるしかないのだろうなという気がします。
 最後に3枚残りましたが、これは見ていただければと思います。パッケージとしての日本就労を別に商業ベースというわけではないですがアピールすることも必要ですし、受入れ送り出しのコストを誰が負担するかまでをきちんとデザインしないといけません。理念的なスキームというのはいくつも考えられますが、誰がそのコストを負担するのかとなると、なかなか実現しない案が多いのではないかと思っています。日本で最近、そういうことをクリアしようと、先ほど話に出た准看護師の資格をとりあえず取ってということをやっていますが、准看護師をなくそうという方々にとっては良くない制度でしょうし、奨学金をあとで返させる、あるいは御礼奉公で換えるということであれば、経営者にとってはとても助かるということで、いろいろな見方ができるのではないかと思います。いずれにせよ、そこまでをきちんとデザインして、お互いに案を持ち寄るというのが建設的な会議ではないかと思います。以上、長くなりましたが終わらせていただきます。○中山座長
 ありがとうございました。短い時間でたくさんのことをお願いしていますので、時間がなくて本当に申し訳ありませんでした。
 引き続きまして、戸塚委員にはずっと待たせていますので、戸塚先生からインドネシア・フィリピンの看護について、コメントがあればしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○戸塚委員
 あまり時間がないようですので、掻い摘んで申し上げたいと思います。まず看護教育の点ですが、カリキュラムの卒業要件の単位というのは、フィリピンは日本より163単位で多うございますし、実習も多い。ただ、インドネシアは日本の130単位に比べて110~120と多少少なめであることと、実習も少ないですが演習が非常に多いという特徴があるかと思います。ただ、そういう中でどういうふうに具体的に教えているかという部分の資料がまだありませんで、私も最近は見ていませんが、日本に留学してくるインドネシアの看護師、あるいは青年海外協力隊の人たちの活動の中から推測すると、日本は一人ひとりの教科書を持つというのは当たり前になっていますが、教科書は教員が持っていて、学生はノートをとる。そのノートとインターネットがかなり普及してきているようで、そういうもので学習を深めていくところが多いのではないかと推測されます。
 就業を始めてからですが、いまはいくつかの制度がありますが、就業している看護師の資格別の割合を見ると、インドネシア看護大学のセチワチ教授のデータの中に、インドネシアの看護協会の2005年の調べがあります。6割はSPKというハイスクールレベルの方たちで、D3というディプロマの方たち以上の学歴の方たちが、いま日本に来ていると思いますが39%。それからS1という大学卒は2%強ぐらいの状況ですので、日本に見える方でS1卒業生が少ないことは、こういうところからわかるかなと思います。S1の学士の教育というのは1998年ぐらいからだと思いますが、数もまだ少ない状況があります。
 インドネシアの看護協会が認定試験にかなり積極的になって、いろいろな状況があるのだと思いますが、国がなかなか国家試験の必要を認めないところから、看護協会が認定試験を始めたようですが、これは奥島先生のお話の中で具体例なども出ていますので省かせていただきます。
 先ほどのガルーダの方のときにコメントをさせていただこうかなと思ったのですが、EPAの方たちの国家試験の仕方、いま日本である国家試験の仕方、外国籍を持って日本で国家試験を受ける方がおられるわけですね。ですから、外国籍の方ということで考えれば、EPAでいらっしゃる方も個人で受ける方も、そういう状況からいえば同じことになりますので、ある程度政策的なことはもちろん加味されるとは思いますが、国家試験の仕方というのを変えるときには差別化につながらないように、気をつけていかなければいけないのではないかと思いましたので、発言させていただきたいなと思ったのが先ほどの手を挙げたところです。簡単ですが、補足をさせていただきました。
○中山座長
 ありがとうございました。全体状況、よく見えるようになってきたと思います。藤川委員、そのあと小川委員お願いします。
○藤川委員
 奥島委員に感謝いたします。本来は厚労省が、国として調査をして早く出さなくてはいけないデータをこれまで出さなかったため、非常に現場の状況がわからなかったわけです。インドネシアの状況、フィリピンの状況、今後はベトナムも来ますが、いまはもう皆さん聞かれたから十分わかったと思いますが、看護のレベル、医療レベルが低いだけではなくて、絶対数が医師も看護師もこれだけ足りないというところで、さらに日本がどんどん連れてきて永住させるようなことは、まずあり得ない。短期間教育をして、インドネシア・フィリピンの国民のために優秀な人材を戻してやることがたいせつであるということです。
 日本が戦前植民地政策をやったのは、以前の植民地から解放することが目的だった。戦後反省をして、いま何をやっているかといったら、ODAとかさまざまな財政支援をやっています。それだけではなくて、優れた医療文化、医療人材を再教育して送り込む。これは、ものすごく友好関係につながっていくと思います。受入れ側も半永久的にその医療機関に就職させて、看護師不足を補填するなどというレベルのことは改めて、フィリピン・インドネシアの国民の医療をしっかり我々もバックアップする先進国としての自覚を持って、対応していかないといけないと思います。これは非常に良いデータですので、日本医師会としても医療界としても、全面的に活用させていただきたいと思います。
○小川委員
 あまり時間もないようですが、これまでは難解と言われる専門用語があるということで言われていますが、先ほどチラッと見させていただきましたが、それほど我々にとっては難解でもなく、医療従事者であれば通常理解できる言葉だと思います。看護師国家試験だけ簡単にすれば、医療従事者との共通言語である専門用語が使えなくなるわけですので、日本人の医療従事者同士のコミュニケーションが阻害されてしまうわけです。看護師国家試験だけ論じるのではなくて、専門用語の問題は医療従事者全体の問題として考えないといけないわけですので、場合によっては、このコミュニケーション能力試験をやることになれば医療従事者全体の課題として検討すべき課題ではないかと思います。
 また、よく日本語能力が障壁になっているとか、障害者と同じように手話通訳を入れたり時間延長するということが言われるわけですが、外国人看護師候補生が障害者かというとそうではなくて、その国ではきちんと働くことができるわけですので、障害者と同列に論じるのは無理があると思います。漢字というのは重要で、意味があるわけです。また、音だけでは確認できないことを漢字で確認をするということで、人の名前もそうですが「佐藤さん」「加藤さん」という名前は、漢字で一応確認したり、「小野さん」とか「大野さん」は音だと似ていて間違えやすいですが、漢字で確認をすれば患者の取り違えも起きないわけですし、そういう意味では日本語の国家試験を課して、なおかつコミュニケーション能力試験まで行えば医療安全ということにはなるかもしれませんが、これも先ほどN1試験を受けた方の80%を超える方々が、88%の方々もそうですが、国家試験を受けている、合格していることから考えると、コミュニケーション能力試験まで行うのかどうかも議論になるのだと思います。いちばん大事なのは、国家試験に合格してから現場で医療事故が起きないような支援をしていくことこそ、私は大事なことだと思っています。それは私の意見です。
 奥島先生に質問です。コンピテンシー試験に老年看護の出題がないということもありましたが、日本では介護保険制度があったり高齢化が問題になっている。もちろんアジアの国々でも高齢化が問題になってきていて、非常に関心が高いわけですが、日本語の国家試験を母国語に訳すときに、老年看護学とか在宅看護論の試験をインドネシア語に訳することができるのかとか、そういった言葉があるのかどうかをお聞かせいただきたいです。
○奥島委員
 困りましたね。言語の専門家ではないですが、概念というものがないものに関しては訳することはできますが、ただ訳しただけではわからないので、結局時間をかけて教育することが必要になってきます。特に法律とか、インドネシアというのはそういった面での整備が、いまやっと行われつつあるところで、日弁連が司法協力といって、あちらの裁判の制度の援助をしたりもしていますが、翻訳を直訳的にすることはできますが、それだけでは十分ではないということです。それから、もちろん英語を使って、英語にはこういう制度があるので、これと似たようなものだよという比喩として例を上げつつ、理解させていくことはできますが、そうなれば事前の教育が重要になってくるということですので、国家試験を変える以前に看護の再教育が重要になってくる。それをしさえすれば、学歴が低くても十分受かる人たちはたくさんいると思っています。
○讃井委員
 奥島委員からの今後のEPAの課題ということで、あらゆる角度からの検討が必要だというのはまさしくそうだと思います。前回私も質問させていただいて、今年の試験で若干合格率が上がったことについてどういうことなのでしょうかと伺ったら、さまざまな要素が寄与しているので要因分析は難しいという回答をいただきました。まさしく相乗効果で若干は上がったのだということですので、できる努力は何でもやってみたほうがいいと思います。
 例えば日本語試験における表記をさらに改善するとか、年に複数回試験を行うとか、教育の段階で母国でやってこなかった部分について、きちんとサポートできるようなことをやるとか、何より大切なのは日本語の能力の向上、日本語研修の充実ということだと思います。そういう総合的な施策の結果として、合格率を上げていくことがとても重要だと思うわけですが、それを言った上で私どもに与えられている課題の試験のあり方について言えば、国家試験の目的というのは看護に関する知識や技能を持っているかどうかを判断するものだと思います。候補者は、出身国で看護師の資格を取って実務もやっているわけで、それなのに日本の試験に合格できないというのは知識とか技能を問う前に、日本語のところでハードルが高くなっているのではないかと思うわけです。総合的な施策は必要であるけれども、選択肢の1つとしては母国語や英語による試験というのを認める。ただし、前回もたくさんの方から看護の業務において日本語のコミュニケーション能力とか、看護記録を付けることが大変重要なのだというお話があって、それも納得がいくことですから、純粋に知識や技能を測るのは母国語・英語でやるけれども、さらに業務に必要な日本語についてはコミュニケーション能力試験を課すのがよろしいのではないかと思います。
 前回、非常に印象深かったのは、加納委員からの発言で候補者を受け入れている病院が大変な労力とお金を割いて研修をされているということでした。もちろん病院もそうでしょうし、いらしている候補者自身が大変な努力、負担を抱えてやっているわけです。そして、国としてもさまざまな施策をするために予算を講じている。それは、すなわち国民の税金ですから、いろいろな方々の努力を無にしたくないと思うわけで、この負担、努力を水泡に帰することがないように合格率を上げていって、きちんとした資格を取っていただく、そして就労していただくことがよろしいのではないかと思う次第です。EPAというのは国と国との約束ですので、その目的は候補者を何人入れればいいということで済むのではないと思います。その先に、日本に入ってきて就労することまで睨んでのお約束だと思います。もともとのEPAの目的というのは2国間の友好とか協力を進めるということですが、いまのようなままでこの制度が頓挫してしまいますと無に帰すだけではなくて、両国関係あるいは国民感情といった意味で、ネガティブな効果を生んでしまうのではないかということを憂うわけです。その帰結として選択肢の1つとしては、いま検討の対象になっている母国語・英語の試験と、併せて日本語のコミュニケーション能力の試験を入れるべきだと考える次第です。
○山崎委員
 先ほどの小川委員の試験時間を延ばすというのは、受験者を障害者扱いにするので好ましくないというお話だったようですが、そういうのは論理のすり替えであって、おかしいと思います。例えばこの試験の難解用語例を見ても、109番の問題は、私も読めない漢字があって、いま藤川委員に教わったのですが、冷罨法は私も読めなかったです。したがって、こういう漢字というのをそんなに彼らに押しつけるのは可哀想だと思う。これは心情論もありますが、せっかくモチベーションを持って勉強したくて来ている生徒に対して、もう少し温かく迎えて試験の環境を作ってあげたほうがいいと思います。
 また、臨床の受入れ病院は、いまものすごく減っています。私の所も1回、インドネシア人を採用して少し様子を見ようと思っていたら、厚労省の担当課長から電話がかかってきて、「病院が全然なくて困ってるんだけど、先生の病院で何人か採ってくれ」ということで、また次のを採って次のも採っているというので、病院が好きで手を挙げているのではなくて、実は厚労省も、ものすごく受入れ病院にお願いするのに困っているというのが現状です。もう1つは、この資格を取った人がどうかというと、インドネシア人で合格した生徒が、もうインドネシアに帰りたいという人が出てきている現状もあります。したがって、この問題というのはもう少し長期的に考えなければいけないのと、先ほどもお話にありましたが、先週やって今週やって、報告書というのは何か最初から消化するための検討会をやってもあまり意味がなくて、勘ぐれば最初からこの検討会の報告書ができてしまっていて、それを何か追認するような消化する検討会のような気がしてしょうがないのです。どうせこういう問題を検討するならば、半年とか回数を多くして、きちんと検討しないと意味がないと思います。
○中山座長 ありがとうございました。小川委員から一言と、伊藤委員も短い時間でお願いします。
○小川委員
 いろいろと難しい議論をしていますが、話は簡単で、そもそも日本語の能力を審査もしないで受け入れていることが問題なわけです。そこの問題を考えないといけないということです。
○伊藤代理
 奥島委員に質問します。先ほどイギリスの例で母国の人材を横取りしたという批判をされたというようなご説明があったかと思いますが、EPAにおいても、そういうような可能性というか、そういう意味でおっしゃったのか、何か想定されることがあるのかを教えていただければと思います。
○奥島委員
 
インドネシア政府の代表者関係は、EPAへできるだけ送り出したいので、そういうことは言わないのですが、保健省の中でも意見が分かれていることと、看護学校の先生たちはどうしても看護師候補、看護生たちを中心に考えますので、「うちの手塩にかけて育てた子どもたちを日本が取っていった」と言うこともあるでしょう。
 問題がもう1つありまして、看護師の資格で近年学歴要件が急に引き上げられたので、学士の青田買いというのがいまインドネシアでここ何年か激しくなっています。それで、自分の病院の付属看護学校で育てたのに、全部よその病院に取られたという例も首都圏ではこの2、3年激しくなっていて、そうなるとEPAに行っている場合ではないでしょうということを言いたくなる人たちもいるわけです。ただ、それは看護師協会も保健省も公的な表明としては言わないです。内部ではいろいろな人の意見があって、それが日本にあまり伝わってこないで国内に留まっている状況です。

○中山座長
 藤川委員、加納委員で終わりにしたいと思います。
○藤川委員
 解決策としては、厚労省が日本語の教育を自国で受けられるように来年度予算も組んでいるわけです。そういうことを地道に努力をして、まず日本語能力、コミュニケーション能力をしっかり付けていく。試験をすればいいというものではありません。レベルを下げた試験をしても意味がない、現場では通用しませんので、まず日本語の能力を付ける。母国で日本語の勉強をするというのを国が予算を付けて来年度にやるわけですから、そういう手続に踏んでやることと、いまさっき情報があったように看護のレベルが低いですから、受ける人たちの看護レベルを向こうでも上げて、できるだけ優秀な人を受けさせないと通りません。その辺はインドネシアと日本と協力をして、先進国に行くならばそれなりの勉強をしっかりしてもらってきて、もちろん自分の国で看護師が足らないということならば戻してあげることが大事だと思います。いま言われたように、日本でも7対1看護で大病院がみんな吸い上げたわけですから、同じことがフィリピンでもインドネシアでも起こっているということです。そこに外国から看護師を奪い取るということは、たとえEPAであっても道を間違えるときは、反対することは当然あり得ることです。
○加納委員 いまの議論に関しては、先生のおっしゃるとおりだと思いますが、現実的にいま日本で働きたいと思って来ている看護師、頑張ろうとしている子たちも来ているわけなので、この子たちに関しては少しでも、去年は英語面も付けたりとかもやっていただいたのですが、今年はまた何かやってもいいのではないかなと思います。そういう前向きなことも議論していただきたいかなと思います。その中には議論されている時間の問題、ガルーダ・サポーターズの方もずっとおっしゃっていたという話ですが、私もうちの子たちに聞くと、30分でもいいから長くしてほしいということは言われてまいりましたし、そのことによって、ある程度日本語でやらなければいけないことを理解しながら、そういった答えを出してくれていることを見たら、来年度の試験に関しては我々の議論の結果、一歩前進したぞということを何か見せていけたらなと思います。
○中山座長
 ありがとうございました。前向きな意見を出していただきましたので、今日の討論はここまでにします。
 もう1つ残っています。「厚生労働省ホームページを通じた意見募集について」です。いままでの流れからいくと、あまり評判が良くないものになりそうですが、このことのご説明をしていただき、どうするかについて決めて今日は終わりにしたいと思います。
○河原課長補佐
 資料5に基づいて、厚生労働省ホームページを通じた意見募集(案)についてご説明します。3、4頁です。質問項目は3つ考えています。質問1は、回答者と医療・看護サービスとの関わりです。
 質問2は、この検討会のテーマである看護師国家試験における母国語あるいは英語での試験と、コミュニケーション能力試験の併用についてどう考えるかという選択肢です。誤解を生じそうなので補足をしますが、1つ目の選択肢は「母国語・英語による看護専門科目試験と日本語によるコミュニケーション能力試験を併用した国家試験を実施すべき」。ここで言っているのは、公用語としての英語を含む母国語という考え方で、例えばインドネシア人にとってのインドネシア語、フィリピン人にとっての英語という意味で、その人の母国語にまで対応したものとすべきというのが1つ目の選択肢。2つ目の「英語による専門科目試験と日本語によるコミュニケーション能力試験を併用した国家試験を実施すべき」で言っている英語というのは、母国語の個別対応までは実現可能性等の観点からは、なかなか難しかろうと思いますが、国際共通語としての英語ではあり得るのではないかという選択肢です。3つ目は、「現行どおり日本語のみによる国家試験とすべき」。
 質問3-?は、前の質問で母国語あるいは国際共通語としての英語による試験と日本語によるコミュニケーション能力試験の併用を適とお考えになる方に、そう考える理由は何かといった選択肢を自由記述も含めてお尋ねするものです。質問3-?は、逆に現行どおり日本語のみによる試験とすべき、つまり併用は否と考える方に対して、そう考える理由は何かをお尋ねする質問です。以上のような質問項目を現時点では考えております。
○中山座長
 藤川委員どうぞ。
○藤川委員
 国民に意見を聞くのはいいですが、考える材料が必要です。この問題だけで解けといっても医療関係者もわかりませんので、今日の資料を情報公開していただいて、インターネットに載せて、それをきちんと見ていただくことが大切ですね。その上で、我々の委員と同じぐらいの知識を持って判断しないとできないです。それは一般の国民であれ、医療関係者であれ一緒です。たぶん医療関係者ぐらいしか答えないと思いますが、その医療関係者であっても情報が偏っていますので、ホームページに載せて、これを参考にしながらこの問題を解いてくれというとすべきです。ヒアリングに来た方々も一生懸命に努力されていますから、その方々の意見も載せていいと思います。全然問題ないと思います。反対意見、賛成意見の両方を載せて判断してもらったらいいのではないですか。
○河原課長補佐
 これについてお答えします。2頁に書きましたが、もちろん参考資料といったものはホームページ上に掲載するときにお載せします。また、この検討会は公開でやっていますし、資料も公開ですので、現に第1回の検討会については資料もホームページに載せています。議事録も整え次第、先生方にご確認いただき次第載せていくことになります。よって、本日の第2回の検討会の資料も当然後日載せることになりますので、それを踏まえて。
○渡辺委員
 いまの藤川委員のご意見に全く賛成だけれども、このままだったら3頁の質問に、ある意味ではいちばん重要な答えとして、特にメディア関係からいえば、この場合だったら普通の人なら3を選んでしまう。前提なしにね。それから、コミュニケーション能力というのもわかりにくい。3番目だけは、なぜかコミュニケーション能力は入っていないのです。そこもわかりにくい。藤川委員のおっしゃったこともそうだけれども、前提というか、いきなりこれをパッと聞かれたらよくわからないから3となりかねないから、それも含めて前段でもう少し丁寧な説明というか、こういう姿にしたいと思いますよという前提として、先ほどおっしゃった前述も含めて丁寧な聞き方をしないと、この質問の仕方は乱暴です。
○讃井委員
 私も、設問の仕方とか回答の選択肢の書きぶりで気になるところがありまして、4頁のいちばん上です。質問3-?に1.2.3.とありますが、「たとえ日本語能力が不足していても」というのが書かれているわけです。これでは、どの程度不足しているのかが、全くわからないわけです。例えば「一定の日本語能力を担保した上で」とか、何か書きぶりがあるのではないかと思います。
○中山座長
 私も昨日見せていただいた段階で、ここが引っかかりました。先ほど言ったようにバイアスがかかって、これは選ばないだろうというものです。誰が見ても、日本語能力が不足していたら医療の場では困るに決まっているので、これは選ばないということになっる。その辺も含めて、時間はあまりないようですので、先生方には気になることはFAXあるいはメール等で送っていただき、私と事務局とでもう少し詰めて、いま言った資料もきちんと付け、またバイアスがかからないような表現で皆さんが選んでいただけるような形にして出したいと思いますが、いかがでしょうか。先生たちにも疑問の点は、お電話なりで確認をしていただきます。用語についてもカルテはカルテでいいのかとか、いろいろなことが気になっています。
○藤川委員
 質問、意見を聞く方は決まっているのですか。対象はアトランダムですか。
○玉川看護職員確保対策官
 これは国民全般でホームページで。その代わり、どういう方がご回答いただいたかが質問の1でありますので、医療看護のサービス従事者、医療機関に勤めていらっしゃる方、患者又は家族で。
○藤川委員
 その辺で情報公開するわけですね。
○玉川看護職員確保対策官
 それも含めて、資料をまとめることとしています。
○中山座長
 今日も出ましたようにパブリックコメントというよりも、こういうものについて関心を持っていただき、社会一般の方々がどんな意見を持っているかということを知るということですよね。私たちのほうから何も出していませんので、パブリックコメントをいただく形ではなくて、こういう問題に皆さんに関心を持ってもらい、そしてどういう問題があるかを皆のほうからフィードバックしてもらって、この検討会に反映させるということでいいのでしょうか。座長としては、そのように理解していましたが。
○玉川看護職員確保対策官 そうです。
○中山座長
 ですから、来たものはこの検討会にもフィードバックされることになるかと思いますが。
○加納委員
 これに関係ない話になってしまいますが、先ほど山崎委員から、今回国家試験を通られた方々の動向というのは、ある程度把握されているのでしょうか。1人は確かに結婚のために帰られたというのは聞いていますが、もし、そういったものがお分かりであったら次回でも結構ですが、提示していただけたら参考になるかなと思います。
○中山座長
 国家試験の問題と情報公開の問題ですから、微妙な問題もあるかもしれませんが出せるだけは出していただくように、事務局には努力をしていただきたいと思います。もし、出せる情報がその点でありましたら、次回の検討会のときにお願いできればと思います。
○讃井委員
 もう1つ資料でお願いですが、日本以外の国で看護師を外国から受け入れている所の試験の制度というか、国家試験を受けさせて、さらに言語の能力を聞いている所もありますし、さまざまだと思いますが、言語能力のテストはどの程度のレベルのものかというのを何か情報がありましたら、示していただきたいなと思います。
○中山座長
 わかりました。その辺もできる範囲で資料を作る形でよろしいでしょうか。
○玉川看護職員確保対策官
 情報が集まる範囲で、おまとめしたいと思います。
○中山座長
 時間が過ぎてしまいましたので事務局に返します。次回以降の日程についてとお知らせがあると思いますので、どうぞよろしくお願いします。
○河原課長補佐
 まず、いまお話がありましたように国民への意見募集については急ぎ、座長を中心に再調整をして、極力、年内に意見募集を開始したいと思います。
 次回の検討会の日程については、後日改めて調整をさせていただきますが、第1回のスケジュール案でお示ししたとおり2月上旬ないし中旬を目処で開催することを想定しておりますので、よろしくお願いします。
○中山座長
 ありがとうございました。少し時間が延びてしまい、大変申し訳ありませんでした。皆さんからいろいろな意見をいただきましたので、次回以降これを反映して良い案を出したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 今日は、どうもご協力をありがとうございました。


(了)

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