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2011年9月29日 薬事・食品衛生審議会薬事分科会議事録

医薬食品局

○日時

平成23年9月29日


○場所

厚生労働省専用第15・16会議室


○出席者

出席委員(19名):五十音順 敬省略

 飯 島 正 文、 五十嵐   隆、 大 野 泰 雄、 笠 貫   宏、

 木 津 純 子、 黒 木 由美子、 高 橋 孝 喜、 竹 内 正 弘、

 土 屋 文 人、○永 井 良 三、 中 川 俊 男、 長 野 哲 雄、

 西 島 正 弘、 橋 田   充、 本 田 佳 子、 松 井   陽、

◎望 月 正 隆、 望 月 眞 弓、 吉 田 茂 昭

(注)◎薬事分科会長 ○薬事分科会長代理

欠席委員(5名):五十音順 敬省略

 明 石 博 臣、 井 部 俊 子、  小 幡 純 子、 倉 根 一 郎、

 宗 林 さおり

行政機関出席者

 木 倉 敬 之  (医薬食品局長)

 平 山 佳 伸  (大臣官房審議官)

 宮 本 真 司 (総務課長)

 赤 川 治 郎 (審査管理課長)

 中井川   誠 (監視指導・麻薬対策課長)

 鳥 居 陽 一 (副作用被害対策室長)

 上 野 康 博 (医薬情報室長)

 浅 沼 一 成 (医療機器審査管理室長)

 佐 藤 大 作 (監視指導室長)

 長谷部 和 久 (化学物質安全対策室長)

○議事

○総務課長 それでは定刻となりましたので、ただ今から薬事・食品衛生審議会薬事分科会を開催いたします。
 当分科会委員数24名のうち、御出席の御連絡をいただいている委員の皆様は19名、1名遅れておりますので、現在ここに18名の委員の方々に御出席をいただいております。定足数に達しておりますことを報告いたします。
 はじめに、事務局の人事異動がございましたので、御紹介させていただきます。
 医薬食品局長の木倉でございます。
 審査管理課長の赤川でございます。
 監視指導・麻薬対策課長の中井川でございます。
 監視指導室長の佐藤でございます。
 医療機器審査管理室長の浅沼でございます。
 医薬情報室長の上野でございます。
 医薬品副作用被害対策室長の鳥井でございますが、現在別の会議に出席しており、遅れてまいります。
 申し遅れましたが、私は総務課長の宮本でございます。
 では、望月分科会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○望月(正)分科会長 それでは始めます。最初に事務局から配付資料の確認をお願いします。
○事務局 事務局より資料の確認をさせていただきます。なお、カメラ撮りはここまでとさせていただきますので、報道関係者の皆様は御退室ください。
 資料の確認をお願いいたします。審議事項につきましては、資料1-1~1-3です。報告事項につきましては、資料2~13となっております。なお、本日その他事項の資料15を配付しております。
 その他の当日配付資料ですが、資料14「競合品目・競合企業リスト」、議事次第、座席表、委員名簿をお配りしております。また、文書報告の資料は既に先生方に送付しておりますが、お手元には参考までに「文書報告一覧」を配付しております。不足の資料はございませんでしょうか。
 続きまして、審議参加に関する御報告をいたします。申請資料作成に関与した委員ですが、該当委員はいらっしゃいません。
 また、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業について、資料14として配付させていただいておりますが、その選定理由等を説明させていただきます。こちらは関係部会で報告した内容となっております。
 エポジン注シリンジ24000及び同注36000の競合品目選定理由については、本申請品目は、エポエチン ベータ(遺伝子組換え)を有効成分とする遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤であり、効能・効果は「治癒切除不能な固形がん患者におけるがん化学療法に伴う貧血」です。この効能での同様の既承認薬はありませんが、申請中であるネスプを競合品目として挙げております。競合品目に係る説明は以上です。
○望月(正)分科会長 今の事務局からの説明について、特段の御意見はございますか。よろしいですか。
 それでは、本分科会における審議の際の申合せ事項については、競合品目・競合企業の妥当性も含め、了解を得たものとします。
 続いて、委員からの申出状況について報告をお願いいたします。
○事務局 各委員からの申出状況について報告させていただきます。議題1「医薬品エポジン注シリンジ」については、退室委員はいらっしゃいません。議決に参加しない委員は、五十嵐委員、高橋委員です。以上です。
○望月(正)分科会長 それでは、議題1に入りたいと思います。
 審議事項議題1、資料1「医薬品エポジン注シリンジ24000及び同注36000の製造販売承認の可否について」です。
 本品目は、「薬事分科会における確認事項」第3項に基づき、医薬品第二部会での審議結果を踏まえ、慎重に審議する必要があるとの部会の意見に基づき、薬事分科会にて審議を行うこととなっております。はじめに部会での審議結果等を御報告いただいたのち、当分科会で審議をいたします。
 それでは、医薬品第二部会長の吉田委員から御説明いただきたいと思います 。
○吉田委員 エポジン注シリンジについて、医薬品第二部会における審議の概要を説明申し上げます。
 今般、本剤は、「治癒切除不能な固形がん患者におけるがん化学療法に伴う貧血」に対する効能追加を目的として申請されました。
 がん化学療法に伴う貧血につきましては、抗悪性腫瘍剤による骨髄抑制やエリスロポエチンの産生部位である腎臓への毒性等により生じると考えられており、現在、我が国では、がん化学療法に伴う貧血に対する治療として、赤血球輸血が行われております。
 本剤につきましては、去る6月13日に開催された医薬品第二部会において審議し、申請者である中外製薬株式会社からも部会で説明を受けました。本剤のリスクや使用に向けた要望を踏まえ、種々議論いたしましたが、資料1-1の「部会審議結果報告書」にありますとおり、次の点から、本剤を承認することは適切でないとの判断に至りました。
 理由の1.です。「治癒切除不能な固形がん患者におけるがん化学療法に伴う貧血」に対しては、赤血球輸血以外の治療選択肢の開発への期待があることは認識しております。
 2.一方で、赤血球造血刺激因子(ESA)製剤の投与により、がん患者では生命予後の悪化、腫瘍増殖の促進という極めて重要なリスクの懸念が報告されており、現時点では、投与対象患者をHb濃度等で限定するなどの厳重な管理を行ってもこのリスクを回避できることは示されておりません。
 3.本剤は、固形がん患者において、延命効果、腫瘍増殖の抑制等を目的とするがん化学療法と併用されるにもかかわらず、現時点では、生命予後の悪化及び腫瘍増殖の促進を引き起こす懸念があり、同意を経て使用が可能ではないかとの意見もありましたが、最終的には薬事法第14条第2項第3号のロ(その効能・効果、又は性能に比して著しく有害な作用を有することにより医薬品等として使用価値がないと認められる)に該当すると判断いたしました。
 4.現時点での承認は困難でありますが、今後、赤血球造血刺激因子製剤の当該効能に対する情報の追加も踏まえつつ、現在進行中の臨床試験などによる新たなエビデンスの追加を待って、再度の検討が期待されております。
 以上、本剤の概要を説明申し上げましたが、事務局から、もう少し詳しい説明をお願いしたいと思います。
○望月(正)分科会長 ありがとうございました。では、事務局の方から補足等の説明をお願いいたします。
○事務局 資料1-1、資料1-2、資料1-3に基づいて、エポジン注シリンジの審査概要について、追加で御説明いたします。
 先ほど吉田委員から御説明いただいたとおり、6月13日に開催された医薬品第二部会において、本日お配りしている資料1-2、申請者である中外製薬株式会社の資料に基づいて、中外製薬株式会社の説明の場を設けると共に、参考人として、国立がん研究センター中央病院の島田安博先生に御出席いただき、御審議いただいたところです。
 本剤については、海外では市販されておりませんが、米国、欧州等では、他の赤血球造血刺激因子製剤が、同様の治療薬として承認されているところです。
 本件申請に当たって、申請者からは臨床試験成績として、国内で実施された第III相試験が提出されております。資料1-1で御説明させていただきますが、第III相試験における有効性については、資料1-1の審査報告書の7ページの下から10行目以降に示しますように、主要評価項目である理論輸血率の推定値として、本剤群では10%、プラセボ群では56.4%であり、本剤の輸血を回避するという当初の目的は達成されたと判断されております。
 安全性については、同じく審査報告書の9ページの下から11行目以降に示しますように、既承認の適応で本剤使用時に注意すべき有害事象として知られている高血圧、高血圧性脳症、脳出血、血栓塞栓症、虚血性心疾患等に対して、がん化学療法に伴う貧血患者に使用する場合においても留意する必要はあるものの、忍容可能と判断されております。
 しかしながら、審査報告書の12ページの下から5行目以降に示しますように、類薬の赤血球造血刺激因子製剤について、がん患者における生命予後悪化及び腫瘍増殖促進のリスクがあるという報告が複数されております。
 特に主要な評価の資料として、Cochrane Database of Systematic Reviewsにおいて、患者レベルでの大規模かつ詳細なメタアナリシスが行われておりまして、審査報告書13ページの中ごろの表で、がん患者全体では死亡ハザード比の推定値が1.17となっており、赤血球造血刺激因子製剤は、がん患者の死亡率を上昇させると結論されております。
 また、がん化学療法施行例のみの部分集団解析も行われておりまして、こちらは死亡ハザード比の推定値は1.10となっております。がん患者全体での解析に比べて死亡率の上昇は明確ではないものの、がん化学療法施行例においても、赤血球造血刺激因子製剤を使用した場合の死亡リスクの上昇は否定できないと結論されております。これらの赤血球造血刺激因子製剤による生命予後悪化等の知見を踏まえ、欧米では、審査報告書24ページ7行目以降に示しますように、規制当局の指示に基づき、日本の添付文書の警告欄に相当する「Black boxed warnings」などに、これら製剤の使用により生存期間の短縮や腫瘍増殖促進等のリスクが認められることや、治療が期待される患者は投与対象としないこと等の追記・改訂が行われてきております。
 審査報告書の14ページの中ほどに記載がありますが、米国では2010年2月以降、赤血球造血刺激因子製剤の使用のためのリスク評価、軽減プログラム(REMS)の下で使用が義務付けられるなど、厳格な使用制限が設定されている状況です。
 申請者は、審査報告書の15ページの11行目以降示したヘモグロビン濃度に関する投与規定の設定を中心とする対策を講じることで、生命予後に及ぼすリスクを最小限にできると説明しておりますが、審査報告書の15ページの下から2行目以降ですが、申請者の主張に対して、現在得られている知見からは、ヘモグロビン濃度に関する投与規定の設定のみでは生命予後の悪化、生存期間の短縮及び腫瘍増殖促進に関するリスクが回避できるかは明らかではなく、現時点ではベネフィットがリスクを上回るような患者集団や使用方法は特定できないと判断しております。
 以上、機構における審査結果を踏まえて、部会で御審議をいただいたところです。部会での御意見を紹介させていただきますと、「死亡リスクの懸念が晴れるまでは、国として承認すべきではないのではないか」、「輸血以外の選択肢が必要ではないか」、「患者の同意を得て使用することは可能ではないか」という御意見もございました。また、「本剤のリスクと輸血のリスクとの比較をすべきではないか」という御意見があった一方で、「直接の比較可能な臨床試験成績は得られておらず、比較は難しいのではないか」といった御意見もございました。こういった様々な御意見、御議論をいただいたところです。最終的には、現時点で得られているデータからは、承認することは適切ではないということで、先ほど吉田委員から御説明いただいた部会審議結果報告書をおまとめいただいたところです。
 その後ですが、6月27日から1か月間、部会における審議結果を踏まえ、エポジン注の効能追加の承認可否について、意見募集を実施しております。その結果を資料1-3としてまとめさせていただいております
 期間中に、9件の御意見をいただいております。そのうち承認すべきでないとするものが2件、承認すべきとするものが7件という結果でした。
 事務局としましては、いただいた御意見において、新たなデータや論点等を示されておらず、医薬品第二部会において議論を尽くしていただいた範囲内に収まるものと考えております。
 最後になりますが、資料1-1の冒頭の審議結果報告書の4.ということでおまとめいただいたとおり、部会における審議の中で、現時点における承認は困難なものの、今後に向けて情報の追加、現在海外で第III相試験が実施されているということで、そういったものの結果など、新たな知見の追加を待って再度の検討が期待されるといった御意見をいただいたことを最後に御報告させていただきます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○望月(正)分科会長 ありがとうございました。ただ今の説明につきまして御意見、御質問はございませんか。
○高橋委員 少し長くなりますが、要点を整理してあらかじめ意見を準備してまいりました。お付き合いください。
 本件の適応拡大について、最終的な判断は薬事法第14条第2項第3号のロに該当するので適切ではないということでして、すなわち、その効能・効果、又は性能に比して著しく有害な作用を有することにより、医薬品として使用価値がないと認められる時に該当するということです。簡単に言えば、薬剤の承認に際して、リスクとベネフィットを比較し、使用価値が無いと断じているということです。
 エポジン注の適応拡大を承認しないことにより失われるべきベネフィット、その効能・効果、又は性能をどのように正しく認識されているかを確認したいと思いますし、ベネフィットに比して承認した場合のリスク、著しく有害な作用を有することの根拠がどれほど確かなものであるかということを是非お示しいただきたいというのが総論です。
 そもそもエリスロポエチンは、既に広く腎性貧血患者あるいは貯血式自己血輸血に関して適応承認されて20年以上の使用実績があるものです。全くの新薬というわけではありませんし、有効性及び安全性は評価されております。また、世界の大多数の国では、がん患者に対する治療薬として使用されているものです。
 そして、今回の審査と先ほど申しました腎性貧血や自己血輸血の時の審査というのが、少しずれていると思うのですが、本来は同じことでして、使用目的、審査、適応承認の考え方は、あくまでも貧血に対する赤血球輸血の回避、代替療法という位置付けであって然るべきですし、承認されている項目に関しても、血栓症、腫瘍増殖のリスクも当然検討の上で承認され、又実際の使用後も重大なリスクがあったと報告されていないため、ここまで広く使われているわけです。
 そのような意味で、がん化学療法時の貧血に対する適応拡大も基本的には同様の考え方で審査すべきではないかと思います。つまり、新規の抗がん剤の申請審査と異なって、生命予後の改善を目的とした薬剤ではなくて、貧血に対するQOL改善の薬剤であり、広く本邦での使用実績もあって、今回の適応に関する世界的に承認されているという実績も踏まえた議論がなされるべきではないかと考えております。
 今回の審査過程を細かく拝見しますと、抗がん剤の審査に精通した担当者が審査した結果、生命予後への悪影響があるかないかということを薬剤のベネフィットに対して、著しく重大視した結果、このようなことになったのではないかと思います。
 先ほど事務局から御説明がありましたが、がん患者に対しての相対リスクが高い、あるいは化学療法時のがん患者に限っても、多少比率は小さくなるけれども高いという説明がありましたが、それ以外にも適応基準外のヘモグロビンレベルをかなり高い設定で使用している患者も含めているためにこのようになるのであって、それを絞り込めば生命予後リスクが忍容でき、そのリスクはほとんど無いということが一方で言われているのですが、生命予後への悪影響の懸念を非常に重大視し、ベネフィットに比して著しく有害な作用であると断じていることを少し奇異に感じます。
 完全には否定できないと言われている長期的予後に及ぼす可能性ですが、少なくとも、今回の審査結果報告書にあるように、ベネフィットに比して著しく有害な作用を有するということは、科学的な判断とは言えないのではないでしょうか。
 第1項に、「治療切除不能な固形がん患者におけるがん化学療法に伴う貧血に対しては、赤血球輸血以外の治療選択肢の開発への期待があることは認識している」とありますが、承認しない場合の重大な影響は認識されているのでしょうか。輸血以外の有効な選択肢を承認しない場合も、輸血療法が確立しているのでカバーできると考えているとすれば、インフォームド・コンセント、インフォームド・チョイス、患者の選択権という理念から逸脱しており、極端に言えば、患者の意向を一方的に無視した考え方と言わざるを得ません。
 輸血に伴うリスクが一方で語られていないのですが、輸血に関しては、通常は肝炎等のウイルス感染症伝播、あるいは免疫学的な副作用の問題が有名で、対策は順調に進んでいますが、完全には否定できません。生命予後リスクに関して重大なことは、古くから輸血に伴ってがん再発を促進する悪影響が危惧されておりますが、今回の比較という意味では、輸血療法とエリスロポエチンの使用に関して、十分に比較はされたのでしょうか。一方で、輸血に伴うリスクというのは全く無視して良いのでしょうか。
 また、平成15年に安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律というのが施行されまして、医療従事者にも適正な輸血療法の実践が求められております。そして、輸血の代替の提示も含む、輸血に関するインフォームド・コンセントの取得が重視されていますが、今回のような患者サイドからの要望も強いエリスロポエチンの適応拡大が、我が国でなぜ認められないのでしょうか。さらに言えば、ほかの腎不全患者では認められており、手術に際して自己血採血をするがん患者も一部含まれると思いますが、そのような方には認められているものが、このようながん化学療法の方には認められないという根拠をどのように説明するのか、非常に難しい部分があると思います。
 そのようなことで、がん化学療法時の貧血に対する対応として、赤血球輸血に加えて、エリスロポエチンの使用を選択肢として加えるべきではないかと思います。今回のように、生命予後の影響が不明であるという理由で適応拡大を却下するというのは、少なくとも長期的には妥当とは言い難く、むしろ輸血療法と同様、リスク・ベネフィット、代替療法などを明示したインフォームド・コンセントを義務付け、又、相当数の市販後調査を義務付けて承認すべきであると私は考えます。
 今回の審議結果で、先ほど御紹介がありましたように、第4項の「再度の検討が期待される」というのは、大いに期待される内容です。ただ、今回の審査の在り方のように、QOL改善という本剤の本来の趣旨から逸脱し過ぎて、生命予後のリスク、それが正確にゼロリスクにならないと承認し難く、得られるベネフィットに比べて、それが著しく有害な作用であるという考え方では難しいのではないかと思います。
 そのような意味で、文中の「新たなエビデンスの追加」という後に、例えば「既存データの再解析を含む」などと入れて、現時点で既に得られているデータの再解析なども積極的に新たなエビデンスに含めて、もう1回適切かつ実際的な審査判断が早急に行われるようにすべきだと思います。
 がん化学療法を実際に行っている先生方に聞きますと、従来に比べてかなり薬剤の効能が進んだ反面、貧血に陥て苦しむ患者が多いと聞いております。そして、その多くの方はQOLが随分低下しますが、輸血による大きな悪影響を恐れてなかなか輸血に応じません。結果として、本来の化学療法が実行できないか、あるいは説得して実行するのだけれども、非常に苦しむということを聞いております。
 それなので、選択肢として十分にリスクとベネフィットを勘案し、主治医と患者が選択できるようにすることが正しいのではないかと思います。今回の審査で適切ではないという判断がなされましたが、最終的に再審査を迅速にしていただきたいというのが私の結論です。以上です。
○望月(正)分科会長 いろいろな問題点を提起されましたが、これは部会でも議論なされたことかと思います。吉田委員からお願いします。
○吉田委員 今、高橋委員がおっしゃったことは、部会の中でも議論されました。私個人の意見ということではなく、問題を整理する意味で、議論がどう行われたかを紹介します。
 まず、どうしてがんの場合だけ特別扱いなのかというと、がんに対しては本剤が腫瘍増殖の方向に働くという懸念が、実験データをはじめ、様々なデータによって示されており、がんにエポジンを使う場合は、原病に悪化に気をつけなくてはいけないということが前提にあります。
 次に問題になるのは申請適応です。切除不能な固形がん患者におけるがん化学療法に伴う貧血は、がん種を問わず、さらに、どんな状態でも良いということです。例えば、緩和目的ということであれば、また別の話になると思いますが、申請のままですと、どのような使われ方をしても良いということを保障することになりますので、適応の範囲が明確でなくなるということが一つの理由です。
 それから、第III相試験がいくつかあるのですが、試験のクオリティーが充分ではないという問題も一つあります。早い話、委員間のディスカッションを煎じ詰めると、エビデンスを取るか懸念を取るかということになりましたが、エビデンスを取りたいという人に対しては、エビデンスのレベルは信用ならないという声もあり、懸念を主張される方の中には、そのような懸念がある以上は、絶対に承認してはいけないという極論に近いことをおっしゃる方もありで、議論は平行線をたどりました。最終的には意見を集約する形で、今海外でエビデンスが積まれているところでもあり、これからいくつか分かることもあるので、「エビデンスが懸念を上回る事態を確認する、あるいは適応症をもう少し狭める等、様々な可能性によって、次の芽は出るかもしれない」ということで将来に回答を含めることにしました。
○望月(正)分科会長 ほかの委員の先生方、御意見がございましたらお願いいたします。
○竹内委員 私はこれを読ませていただいて、部会の判断には賛同しておりました。資料1-2では、企業の方からエビデンスという形で様々に解析され、メタ解析も行われてはいるのですが、余りにもその解析がお粗末過ぎ、Risk and Benefit、実際どのような患者に対してリスクとベネフィットがあるのかというPMDAからの問いかけに対して、全く答えていません。いろいろな統計解析ができるにもかかわらず、全く解析結果の報告は提出されておらず、ただ単に単純な統計解析結果が提出され違いが無いことから、エポジンを使用しても良いという結論になっています。これだけ日本で臨床試験が実施されており、データもきちんとあります。ですが、エビデンスに関しては懸念があり、それを企業の方がエビデンスとして、どのような患者層にRisk and Benefitがあるのかを解析し、議論の場に提出していただき、高橋先生がおっしゃられましたように、臨床的に意義があるのかをしっかりと議論された上での今後の方針の意見であれば分かります。しかし、全くそのようなエビデンス無しに企業が申請し、資料を提出してきております。これを読んだ後に、エポジンに関してニュー・イングランド・ジャーナルで非常に大きな試験結果が報告されています。そこで、どのような患者に良いのか、どのような使い方をしなければいけないのかといった議論がなされているのですが、今回企業から提出された資料の中には、その内容が全く触れられておりませんので、私は憤りを感じました。企業の方々は患者に対して臨床試験を多数実施し、そのデータに対して適切な解析又は懸念事項を問い掛けたのにもかかわらず、このような資料を作成していただけなかったことについて懸念があります。そのようなことを考え、提出された報告書を評価し、統計学者的な論点、エビデンスから考慮しますと、Risk and Benefitに関するエビデンスを企業の方から全く出していただいていないので、このような部会の結果になって当然だと思っております。
○望月(正)分科会長 先ほど高橋委員が述べられましたが、既存データの再解析もきちんと行うべきであるという御意見でしょうか。
○竹内委員 様々な統計解析があり、不随する様々な懸念事項もあります。それを実施していただいて、どのような懸念事項があり、その結果がどうして臨床的に良いのかという議論であれば分かるのですが、全くそのようなことは議論されておらず、審査報告書にも書いてありますが、『Lancet』で公表された論文では、Cochraneを中心として解析は実施しておりますが、その結果も本件に関しては適切であるとは私は思っておりません。『Lancet』に出てきたデータセットと実際に日本で実施された五つの臨床試験の違いがありますので、そこの違いを考えていただいて、申請者にはしっかりと説明していただく義務があると思います。
○笠貫委員 私は、患者にとっての立場が第1の基礎にあるべきだと思います。そうしますと、がん、特に治癒切除不能な固形がんという患者の薬物治療の目標がどこにあるのかというと、生命予後の改善とQOLの改善のどちらも議論されるべき重要な問題です。
 QOLという言葉は、もともとがんの末期の患者から出てきたコンセプトです。先ほどの生命予後に悪いという問題とQOLの問題を議論した時、その出発点がまず十分に理解されていないのではないかというのが1点です。
 2点目は、竹内委員から御指摘されたように、現在あるエビデンスを十分に提供していなかったとしたら、そこは審査過程の問題であって、なぜそこで十分に提供されなかったのでしょうか。竹内委員が言われたように、十分なデータが出ていないのなら、もう一度審査をきちんと早急に行うべきだと思います。がん患者の貧血で苦しんでいる人たちのQOLをどう改善するかという問題は放置できない問題です。エビデンスが無かったのであれば、竹内先生の疑問に対してきちんと答えるべきであり、会社が申請しなかったという問題は、審査過程で議論されるべきことで、薬事分科会の前に行うべきだという感じがします。
 3点目は、エビデンスをどうとらえるかということですが、エビデンスには限界があります。メタ解析も、エビデンスとして最高にレベルが高いメと言われても、そこに議論が生じるということで絶対的なものではないということです。
 そこの中で意思決定をする時に何を大事にするのか、先ほどのQOLか生命予後かという問題もあるのですが、もう一つは、今パブリック・コメントになっているリスクマネジメントプランの問題と実際のマネジメントの問題です。
 REMS(リスク評価・リスク緩和戦略)は2007年にアメリカで導入され、厳しい監視対策とリスク低減化のプランが求められています。日本では、パブリック・コメントで出されていますが、リスク低減化を薬事法改正で行っていく途中の過程であり、もう方向性は見えています。リスク低減化の策としては、施設基準制限、医師制限、研修プログラム、全症例登録、患者同意、教育の問題といった条件です。そのようなところから、日本で、リスク低減化の措置をパブリック・コメント中のリスクマネジメントのプランできちんと行えば、申請が通る問題ではないかと思います。
 日本でもREMSと同じようなリスク低減措置を行えば通るはずなのに、なぜ通らないのでしょうか。REMSは2007年ですが、ヨーロッパでは2008年に既にリスク低減化の措置が行われているので、ヨーロッパではどうであるのか、比較評価をした上で、日本でもリスク低減化において、企業の申請のどこに問題があるのかを整理し、どのように改善させたら良いのかということを議論し、治癒切除不能ながんの患者で貧血によりQOLが著しく低下している人に対して、早くこの薬を選択できるようにすべきではないかと思います。
 そういったことでは、最初に御意見があったように、先ほどの議論と同じようなデータの問題、リスクマネジメントの問題、いろいろな条件を付けたとしても、早急に認める方向で検討すべきだと思います。
○望月(正)分科会長 現段階では、ここの報告にあるようなものでやむを得ないという考えでよろしいですか。
○笠貫委員 先ほど竹内委員が出されたように、なぜ不完全なデータで議論されたのかを明確にしてほしいということです。
 2点目は、アメリカのREMSではリスクマネジメントをすれば認可をしていますが、日本ではリスクマネジメントをきちんとするという条件が議論された上でノーだったのか、その根拠が示されなければ、ここで議論がしにくいのではないかと思います。
○望月(正)分科会長 審査の方から御意見はございますか。
○事務局 事務局から御説明させていただきます。笠貫先生から御指摘がありましたが、患者のことを考えて、対象としてQOL、あるいは生命予後をどう考えるのかという御質問に関してですが、まず今回の申請について、資料1-1「審査報告書」の3ページを御覧ください。申請の効能・効果としては、「治癒切除不能な固形がん患者におけるがん化学療法に伴う貧血」ということで、そもそもの申請が、末期のQOLを大事にしなければならない患者ということではなく、治癒切除不能な固形がんをお持ちで、化学療法に伴う貧血に陥っている患者を対象ということで、むしろ申請は広くて、生命予後も十分に考慮しなければならない方を含めた申請ということでして、こういうものに対して、どのように考えるかという中で、やはり生命予後を重大に見るべきということで、今回の評価をさせていただいたところです。
 RMPの観点ですが、少し事実関係の補足をさせていただきます。アメリカに関しては、こういった懸念が生じる以前の時代に承認が行われておりまして、その後判明した事実に対して、種々対策が取られてきたという経緯があります。
 この中で御指摘のように、治癒の期待できない患者ということで、QOLに絞ったようなことも実施しておりますし、ヘモグロビン濃度などに関するリスク管理方策も規定されてきたところです。
 いくつかの解析の中で、ヘモグロビン濃度について層別をすると、比較的低い段階から投与する場合、予後に影響が無いのではないかという解析もありますが、今日は提示しておりませんが、『Lancet』などには、そのような解析をしても結果的にヘモグロビン濃度が予後に影響する因子とならなかったという報告もありまして、必ずしも欧米で取られている安全管理策が最終的に予後を保護することにつながるかが分からないところもありました。
 この辺りについては、審査報告書にも記載をさせていただいておりますが、特にそのような状況の中で、こういった目的の臨床試験、検証的な結果も無いということから、使用を限ったところで、予後悪化等のリスクがどうなのか不明であるという状況です。
 こういった中で、今回少なくとも今得られている状況からは、承認は困難であろうということです。再度になりますが、現在海外でもそういったことを考えつつの試験も実施されておりますので、そのようなものも待ちながら、再度検討をしていきたいと考えているところです。
○高橋委員 非常に重大な議論がなされていると思いますが、大事なことは海外の治験を待ちながら判断することになると、数年、場合によっては10年ぐらいかかるということです。そのくらい延ばすかどうかという判断をもう一度すべきではないでしょうか。確かに統計的な問題もあるでしょうし、考え方の整理もきちんと行うべきだと思いますが、ニーズはどこまでつかめているのでしょうか。私が先ほど申し上げたような、輸血に関する懸念に関しては全く触れられていませんが、それに比べてエリスロポエチンの懸念ばかり述べられています。それを患者に説明するのは、難しいのではないかと思います。
 笠貫先生がおっしゃられたように、どのようにしたら懸念とベネフィットのバランスを取って判断できるか、その検討を急ぐべきだと思いますし、それには時間の要素も重視していただければありがたいと思います。
 QOLの話が出ましたが、緩和療法に至る末期の状態のQOLの問題でしょうけれども、かなり長期にわたる化学療法を施行されている患者が多くなってきており、貧血で苦しんでいる方が多いわけです。そうすると、生活上の制限が非常に強くなります。単に生命予後というのではなく、ある程度QOLの保たれた予後も重視すべきなのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○望月(正)分科会長 ほかの先生方、御意見はございますか。
○笠貫委員 先ほどのお答に対して納得いかないと思うことの一つとして、広すぎる適応で申請されてきたという理由ならば、その申請で出てきた時、相談あるいは審査のプロセスの中で、現実に非常に苦しんでいる患者さんがいて、QOLの問題が大事だとされた時に、適応をどのようにするのかも議論すべきことであって、適応が広すぎるので駄目だという議論は、患者のための議論にならないのではないかというのが1点です。
 もう一つは、今も御指摘になったように、最終的には患者の選択の中で、貧血に対して輸血と薬との選択の自由を今ここで制限するだけの根拠があるのかどうかということです。層別化を図ることによって、ある程度どうしたら良いかという知恵を出すべきことであり、ノーということではないと思います。
 こういったリスクが分かる前に、REMSでのリスク低減化により認めているとしたら、FDAも慎重に、かつ早急に検討しているはずだと思います。そのデータがどうなのかお伺いしたいところです。
 さらに、REMSで重要リスクとして書いてあり、そうだとしたら、ヨーロッパでも2008年にREMSと同じ考え方が出されているので、ヨーロッパではどうなのかを教えていただきたいと思います。
 FDAがREMSで承認し、その後に新しい重要なリスクとして出てきた場合、どのように対応するのかも載っているはずですし、ヨーロッパではそれに対して、リスク・マネジメントプランとしてどのような対応をとっているのかを教えていただきたいと思います。
○望月(正)分科会長 事務局からお答えできますか。
○事務局 まず、欧州では安全管理対策REMSについて、アメリカと同様のプログラムは実施されていないとのことです。添付文書では、米国と同様、治癒が望めないような患者さん向けであり、添付文書の改訂等が行われて使用に関して制限がかかっているという状況です。
○吉田委員 適応の話で混乱させてしまったようなので、追加させてください。今回の申請では、がん化学療法に伴う貧血に対する適応を取りたいということなので、がん種は問わないことになっています。がん種は問わないというのは、どんながんでも使えるというように解釈されます。そうすると、胃癌にも使えますし、大腸癌にも使えます。がん患者が貧血になるという場合、病態によっても貧血になるわけです。下血や吐血や喀血からの貧血です。それから、実際には病態からの出血なのか、抗がん剤による貧血なのか、因果関係が評価しにくい場合もあります。そういった病態による貧血と薬による貧血と二つがあり得る時、あらゆるがんを対象にすると、本当に本薬の適応になるのかどうかは判断しきれない場合も少なくないのです。
 けれども、申請側としてもこのような方法の申請しかできません。例えば、病態による出血を除くとすると、それをどのように判断するのかといった話になってしまい、企業側も大変だろうと思いますが、結局は、このようなくくり方しかできません。けれども、承認された場合、使う側としては、病態による出血もあり、抗がん剤による貧血もあり、先ほど言ったように化学療法は適応にならなくても、慢性的な貧血に対する緩和が必要な患者もいて、QOLを上げるという選択肢にしてもいろいろ出てくると思います。
 企業としては、これが一番広く使えるし、使いやすいだろうということで、多分この様な申請内容になったのだと思いますが、その意味合いが余りにも広くて様々な解釈ができてしまい、かえってヘモグロビンを上げることによって出血を誘引したり、血栓を誘引したりすることもあるだろうというような懸念まで、話がどんどん広がってしまいます。この辺をもう少し整理しなければ、この適応でどれだけのエビデンスレベルがあったらというように評価しようとすると、エビデンスの方がまだ懸念を越えていないという御意見の方が多かったということだと思います。
○望月(正)分科会長 ありがとうございます。今回の申請に対しては、やむを得ない決定であるという御意見ですか。
○笠貫委員 私は、アメリカとヨーロッパで承認されているから、日本で無理に認めなさいという意味で言っているのではありません。現実に、アメリカ、ヨーロッパ、世界において、がんで抗がん剤を使っている患者が貧血で、著しいQOLの低下がある人にこういった輸血若しくは薬を選びますかというインフォームド・チョイスの機会をここで失わせて良いのかということはやはり疑問です。
 吉田委員が言われたように、非常に複雑なファクターが沢山あって、薬の問題、病態の問題ということも十分理解できますし、そのような意味で今回の資料では不十分ということから、もう1回早急に調査をして審査をしていただくのはやむを得ないという気持もありますが、これはエビデンスというものだけでは解決されない問題に来ているのだろうと思います。実際に苦しんでいる層別化された患者のところで、インフォームド・チョイスを持つことを与えられるのかという判断をどのようなプロセスを経て決めていくのかということだと思います。部会でも、苦しんだということは理解できますが、パブリック・コメントで出てきたことに、答えられていますかというと答えられないぐらい重い問題が存在するのではないでしょうか。これ以上言いませんが、輸血のみで本当に苦しんでいる患者を救える治療法を日本でどうできるのかということです。
 先ほど分からなかったのは、ヨーロッパでは2008年にリスク低減化システムが作られていますが、それが実施されていないのはどうしてかということを調査していただきたいと思います。
 それから、REMSがその後どうなっているのかも調べていただきたいと思います。日本の患者だけがそれで苦しんでいるという不公平な問題が生じるので、そこは調べる際にきちんとしていただきたいと思います。
 先ほど竹内委員が御指摘になったことで、私は不勉強で知らないものがありましたが、それを開示し早急に説明できるようにしていただいて、この薬が、より早く患者のインフォームド・チョイスに入るように進める形を出していただきたいと思います。エビデンスが揃ってから再度考えるという話では、先ほども出たように、何年後になるか分からないということになりかねないと思います。
○吉田委員 新しいエビデンスといっても、必ずしも臨床試験でなくても良く、サブセット解析でも良いですし、実験成績なりで新しい事実が分かればその時点で対応すれば良いのであって、今出された資料では判断できないということに過ぎません。例えば、今までのサブセットアナリシスをもう1回やり直す、又はもう1回別の視点から組み合わせてみる等、そういったことでも十分新しいエビデンスは得られるかもしれませんし、申請の方向を整理して緩和の方に持っていくのも一つの考え方であるように思います。とにかく、今のままですと、腫瘍増殖因子として働くかもしれないエポジンをがんの患者の治療に使うのは難しいという方向にどうしてもなってしまいます。
 個人的な意見ですが、例えば形成外科の領域で増殖因子を使った再生組織などが今世の中にでてきていますが、がん患者に用いる場合には、増悪の懸念があるという理由で使えないということがあります。それと同じで、基本的にがん細胞に対して刺激的に働くかもしれないという薬をがん治療に使うとなると、動物実験でも良いのですが、何かそういった頼りになるような指針がないと、その1歩が進みにくいという感覚はどうしても拭えないのではないでしょうか。個人の責任で使用するというのも一つの考え方だと思いますが、そのようなことをもう少し検討していただければと思います。
○望月(正)分科会長 ありがとうございます。非常に説得力ある御意見だと思います。パブリック・コメントについても、その内容と全く同じことが第二部会の議論の中に出てきているということです。それらを全部含めた結果、ただ今吉田委員が言われたような形で、審議報告書の理由1.~4.のうち、特に4.の現時点での承認は困難であるけれども、いろいろな意味を含めた新たなエビデンスの追加を待って、再度の検討が期待される、ということはある意味だと前向きな意見だと思います。再度の検討の可能性を無くそうという意見はどこにも出ていないので、現時点では医薬品第二部会の審議結果をそのまま受け入れるのが最適かと思います。いかがですか。
○高橋委員 今の望月先生の御意見に賛成です。吉田先生が言われた適応をどのように絞り込むかに関しても、病態を詳らかにすることが難しくても、ほかの方法で輸血回避ができないケースには使うということです。それに関して、どのくらい詳らかにできるのかは難しいですが、効果が全然得られない場合には中止するようなことで絞り込むだけでも随分違うと思います。
 がんに対する腫瘍増殖に関する影響というのは、先ほど申しましたが、腎性貧血の時や自己血輸血の時も相当議論されて、動物実験のデータが出されていて問題無いということになったわけです。ただ、極端な使い方をすると、簡単に言えばFeeding Arterryが血流量が増え、二次的に腫瘍も成長組織も非常に増えやすくなることは容易に予想できますが、直接的な影響は無いのではないかというのが私の考えです。
 血栓症に関しては、もちろん手術に伴う使い方ですので、自己血の際にも相当議論されているし、極端にヘモグロビンを上げなければ大きな問題は起こらないということで、相当絞り込む努力はしていますが、吉田先生がおっしゃったもう少し絞り込む努力というのを課して、それも一つの新しい考え方として4.の事項に該当するとして判断していただければ良いのではないかと思います。
○望月(正)分科会長 ありがとうございます。
○笠貫委員 4.の新たなエビデンスの解釈の仕方は、理解します。しかし、先ほどのREMSの考え方は、今日本でパブリック・コメントを行っているリスク低減化の問題必ずカップルしてくる話だと思います。絶対的な答えは出ないと思っていますが、エビデンスレベルの枠を越え、国として承認する時、すべてを患者に任せるわけにはいきませんから、そのリスク低減化の措置をどのようにするのかという観点からエビデンスとRMP(Risk Management Plan)を検討することを付け加えていただければと思います。
○望月(正)分科会長 ありがとうございます。申請者に本日の議論を伝えるということで、分科会としてはこの段階でのエポジン注シリンジについては、不認可とせざるを得ないと思います。そのような形で議決にいきたいと思いますが、よろしいですか。
○高橋委員 もう一点あります。エリスロポエチン製剤全体での議論で、今回のエポジン注に関して承認できないとなっているわけです。再検討が必要だということで結論付けられると思いますが、同様の申請を出されているので、次回の再検討の時には両者合同というか、効能も目的もほとんど同じですし、自己血輸血に関する承認の時には、本剤が製剤と同様な効能が認められるから承認するという結論になったと記憶しています。「形式的に、これとこれは違う」、「外国で使われているものをそのまま輸入したものではない」といったような議論は、余り生産的ではないと思います。
○望月(正)分科会長 その点は、よくPMDAから御指導いただいて進めるということで良いと思います。その他、特段の御異議が無ければ、議決に入りたいと思います。
 五十嵐委員、高橋委員におかれましては、寄付金等に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。後ろに用意してある席にお移りいただけますでしょうか。
 部会の報告を踏まえ、当分科会としても本品目について、「製造販売承認を不可とする」旨、議決したいと思いますがよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。御異議無しと認めます。それでは、薬事・食品衛生審議会規程第3条第1項の規定に基づき、当分科会の議決をもって審議会の議決とし、厚生労働大臣に答申することといたします。
 答申書の文案その他の取扱いについては、私に御一任いただいてよろしいでしょうか。
 それではそのようにさせていただきます。ありがとうございました。
 続いて、これより報告事項に入らせていただきます。御担当の部会ごとに区切って報告をいただくこととしますので、まずは、副作用・感染等被害判定第一部会及び判定第二部会の関係の議題2から、簡単に説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題2、資料2「副作用・感染等被害判定結果について」報告いたします。
 資料2を御覧ください。平成23年6月~平成23年8月までに開催された、判定第一部会及び判定第二部会の結果について御報告します。資料は3回分をまとめたものをお示しし、その後ろに各部会の判定結果をお示ししています。
 1ページ、「判定結果(まとめ)」に沿って御報告します。副作用被害判定については、新規274件、継続27件、現況55件の計356件について御審議いただきました。結果は、支給決定することが適当と考えられるものが316件あり、その内訳は請求どおり支給決定するもの168件等です。また、不支給決定することが適当と考えられるものは35件あり、その内訳は、疾病、障害又は死亡が医薬品の副作用により発現したと認められないため、不支給とすることが適当である14件等です。感染被害判定については2件御審議いただいています。結果は、請求期間の一部について支給決定するもの1件です。以上、副作用感染等被害判定第一及び第二部会の結果の報告です。
○望月(正)分科会長 ありがとうございました。副作用・感染等被害判定部会長の飯島委員から追加の御発言等ございますか。
○飯島委員 特にありません。
○望月(正)分科会長 委員の方々から、御意見、御質問はございませんか。
○望月(眞)委員 資料をきちんと読めていないかもしれませんが、5ページの8、原因医薬品名がサーバリックス、副作用名が「発熱」で支給対象になった背景というか理由を教えてください。従来にない副作用名である気がしたのでお願いします。
○事務局 簡単に御説明しますと、確かに「発熱」というのは、どうなのかなという感じなのですが、資料を確認しますと副作用の健康被害のところに「発熱」以外に付けられるものが無くて、なおかつ入院相当の医療も行われているということで、確かに先生がおっしゃるように違和感は事務局としても分かりますが、これ以上の名前を付けられないというのが現状で、このような名前を付けさせていただいています。余り説明になっていなくて申し訳ないです。
○望月(眞)委員 入院相当の必要性があったもので、名称的には「発熱」としか整理ができなかったという理解でよろしいですか。
○飯島委員 そのとおりです。
○望月(眞)委員 もう1点あります。以前からメルカゾールというお薬による無顆粒球症については、救済される場合と救済されない場合があるという整理が行われていて、時々議論に上っていたのですが、今回17ページの95と96に関しては不適正使用ということで不支給という判定で、15ページの64の症例ですと支給されるという整理があり、これは多分背景が異なるのだと思いますが、そこを一つお聞きしたいと思います。
 それから、ほかにも無顆粒球症を起こす薬剤がいくつかあって、そちらはほとんど不支給という例が無く、支給になっています。ここは、どのような違いがあったのかということを教えていただきたいと思います。
○事務局 その件については、事務局から御説明します。まず、今御指摘のありました17ページの95のメルカゾールについては、7月12日に開始されて、8月2日に血液検査が実施され、その時血球の異常は無かったのですが、それ以降42日間、白血球分画を含めた血液検査を実施していなくて、添付文書の警告の項に記載している検査の間隔を守られていないということで不適正という判定をしています。
 96については、5月27日にメルカゾールを増量し、それ以降4か月間1回も検査をしていないということから添付文書に書いてあることが守られていないということで、不適正という判定がなされています。そのほか支給されている事例は、判定部会としては不適正とまでは言えないという結論になっていて支給されていて、基本的には、添付文書を守られているかどうかが重要なポイントではあるということで判定されています。
○望月(眞)委員 従来からそこが議論になっていた点だと思いますので、今回も結局はそこで不適正使用という整理になったということがよく分かりました。かなり前から、繰り返しこのような事象が何回も起こっていることを考えると、添付文書自体の守らなければいけないことの徹底が、上手く行われていない可能性があると思わざるを得ないと思いまして、今回たまたま添付文書のことを制度改正部会でも議論されているので、その位置付けも含めて行政の方にも考えていただきたい事項だと思います。
○安全対策課長 御指摘ありがとうございます。このメルカゾールの血液障害については、警告も設けられて注意喚起がずっと続けられてきていますが、望月先生の御指摘のとおり、今回も不適正使用の救済事例があったということで、企業に対して、これまでの報告、副作用の発現状況については、今精査もしていて、改めてもう一度積極的な情報伝達の方法が無いか検討を進めています。
○望月(正)分科会長 ただ今、御指摘のあった添付文書の在り方についてはいかがですか。
○安全対策課長 それも含めて、検討したいと思います。
○望月(正)分科会長 ほかに、どなたか御意見はありますか。
 それでは、本件について御確認いただいたものとします。続いて、医薬品第一、第二部会の関係の議題3~8について、説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題3、資料3「医薬品プロイメンド点滴静注用150mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」説明いたします。
 本剤は、既承認のアプレピタントのプロドラックで、選択的NK1受容体拮抗薬であり、抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)の投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)の効能・効果となっています。本剤は、本年7月29日に開催された医薬品第一部会において御審議いただき、承認して差し支えない旨の結論をいただいたもので、9月26日に承認しました。
 報告事項議題4、資料4「医薬品イムセラカプセル0.5mg及びジレニアカプセル0.5mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」報告いたします。
 本剤はスフィンゴシン1-リン酸受容体に対するアンタゴニストであり、多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制の効能・効果となっています。本剤については、本年8月26日に開催された医薬品第一部会において御審議いただき、全症例の使用成績調査を承認条件として付すことにより、承認して差し支えない旨の結論をいただいたもので、9月26日に承認しました。
 報告事項議題5、資料5「医薬品フェソロデックス筋注250mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」報告いたします。
 本剤は抗エストロゲン剤であり、閉経後乳癌の効能・効果となっています。本剤についても、本年8月25日に開催された医薬品第二部会において御審議いただき、承認して差し支えない旨の結論をいただいたもので、9月26日に承認しました。
 報告事項議題6、資料6「医薬品テラビック錠250mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」報告いたします。
 本剤は、HCV NS3-4Aセリンプロテアーゼ阻害剤です。セログループ1(ジェノタイプI(1a)又はII(1b))のC型慢性肝炎におけるウィルス血症の改善の効能・効果となっています。本剤は、本年8月25日に開催された医薬品第二部会において御審議いただき、全症例の使用成績調査を承認条件として付すことにより、承認して差し支えない旨の結論をいただいたもので、9月26日に承認しました。
 なお、事前に飯島委員より本件SJS、DIHS等の頻度が高く、緊急入院対応が必要なことから、日本皮膚科学会の臨床研修指定施設との連携について義務付けるべきと考えるが、会社への指導はどのようになっているのかとの質問をいただいています。御指摘のように、本剤投与に伴う皮膚症状、皮膚障害については、重要な副作用と考えており、皮膚症状が万一重症化した場合は、緊急対応が可能な医療施設に在籍する皮膚科専門医と迅速に連携することが重要であると考えています。したがいまして、本剤の使用に際して、このような皮膚科専門医との連携を確認した場合に本剤を納入するように、企業に指導しています。この点については、学会の先生方の御意見も伺いつつ、適切に対応するよう指導していきたいと考えています。
 報告事項議題7、資料7「医薬品イラリス皮下注用150mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」報告いたします。
 本剤は、ヒト型抗ヒトインターロイキン-1β、モノクローナル抗体であり、クリオピリン関連周期性症候群、家族性寒冷自己炎症症候群、マックル・ウェルズ症候群、新生児期発症多臓器系炎症性疾患の効能・効果となっています。本剤については、8月25日に開催された医薬品第二部会において御審議いただき、全症例の使用成績調査及び、その中で感染症等の発現を含めた長期投与時の安全性及び有効性について、十分に検討することを承認条件として付すことにより、承認して差し支えない旨の結論をいただいたもので、9月26日に承認しました。
 報告事項議題8、資料8「希少疾病用医薬品の指定について(カフェインクエン酸塩、ruxolitinib、オファツムマブ(遺伝子組換え)、テトラベナジン、リオシグアト、ヘミン、及びBIBF 1120)」報告いたします。
 2ページに一覧があります。医薬品の名称は上からカフェインクエン酸塩、ruxolitinib、オファツムマブ(遺伝子組換え)、テトラベナジン、リオシグアト、ヘミン、及びBIBF 1120です。予定される効能・効果は、それぞれ上からですが、早産・低出生体重児における原発性無呼吸(未熟児無呼吸発作)、骨髄線維症、慢性リンパ性白血病、ハンチントン病に伴う舞踏運動、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、急性ポルフィリン症の発作及び特発性肺線維症となっています。これらの品目については、本年の7月~8月までに開催された医薬品第一部会、第二部会で御審議いただき、希少疾病用医薬品として指定することで差し支えないとの答申をいただいて、それぞれ一覧に記載した日付にて指定しました。説明は以上です。
○望月(正)分科会長 ありがとうございました。医薬品第一部会長の松井委員から追加の御発言等ございますか。
○松井委員 特にありません。
○望月(正)分科会長 医薬品第二部会長の吉田委員から追加の御発言等ございますか。
○吉田委員 特にありません。
○望月(正)分科会長 委員の方々から、御意見、御質問はございませんか。特に無いようでございます。それでは、本件について御確認いただいたものとします。続いて、医療機器・体外診断薬部会の関係の議題9・10について、説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題9、資料9「医療機器『クリオシールディスポーザブルキット』及び『クリオシールCS-1』の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」報告いたします。
 こちらは、旭化成クラレメディカル株式会社から申請されていたクリオシールディスポーザブルキットとクリオシールCS-1です。こちらは、患者の血漿から生体組織接着剤の成分ですが、これをクリオプレシピテートとトロンビン液を滅菌閉鎖回路内で自動的に調整するものです。3ページに外観図があります。上の写真は、血漿処理ユニットCP-3です。ここに患者が自己血で持ってきた血漿を青い部分に入れて、下側のクリオシールCS-1という機械の青いところにはめ込んで、血漿を急速に冷凍し、またそれを解凍することによってクリオプレシピテートを調整する機械です。見開きの左側2ページの使用目的、効能・効果は、貯血式自己血輸血のために採血した患者を対象とし、自己血漿由来の生体組織接着剤を調整する際に、血液成分を滅菌状態で分離・採取するために使用する。生体組織接着剤については、組織の接着・閉鎖に使用するというものです。こちらの審議の結果は、再審査期間は3年として承認することが適当ということで答申をいただいて、本年8月31日付で承認しています。
 報告事項議題10、資料10は「医療機器『バルベルト 緑内障 インプラント』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」報告いたします。
 エイエムオー・ジャパン株式会社から申請されていたバルベルト 緑内障 インプラントです。資料を1枚めくると外観として、シリコンチューブにこういった盤が付いていて、緑内障患者で眼圧が高い方の中の水を抜くことによって眼圧を下げる機器です。使用目的は1ページの5ですが、本品は、既存療法に奏効しない難治性の緑内障の患者に対し、眼圧下降を目的に房水を眼内から排出するために、埋植して使用するものです。こちらは薬物療法や線維柱帯切除術等、一般的に行われている緑内障の他の治療に奏効されない最後の段階という形で使われる機器です。
 こちらの審議結果は、承認条件として二ついただいています。本品を用いた治療に対する十分な知識・経験を有する医師が、適応を遵守し、講習の受講等により、本品の操作に関する十分な技能や手技に伴う合併症等に関する十分な知識を得た上で、本品が用いられるよう、必要な措置を講じること。2として、再審査期間中の本品使用症例の全例について、使用成績調査を行うという二つの条件を付した上で、再審査期間3年として承認することが適当との答申をいただいて、8月31日付で承認をしています。なお、こちらは医療機器の検討会でも、医療ニーズが高い品目として選定されていたものです。以上です。
○望月(正)分科会長 ありがとうございます。医療機器・体外診断薬部会長の笠貫委員から追加の御発言等ございますか。
○笠貫委員 特にありません。
○望月(正)分科会長 委員の方々から、御意見、御質問はございませんか。特にないということでございます。
 それでは、本件について御確認いただいたものとします。続いて、日本薬局方部会の関係の議題11について、説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題11、資料11「第十七改正日本薬局方作成基本方針について」報告いたします。
 本件は、平成23年7月13日に開催した日本薬局方部会において御審議いただいたものです。日本薬局方は、本年3月24日に第十六改正日本薬局方を告示しており、全面改正を5年ごとに行っています。そこで、次回の第十七改正に向けて作成基本方針を御検討いただきました。
 作成基本方針の内容は、「1.日本薬局方の役割と性格」として、公的・公共・公開の医薬品品質規範書であることが示されていて、「2.作成方針」として、2枚目に記載している5本の柱を定め、作成を推進することとされています。この作成基本方針については、7月の部会で御了承いただいた後、パブリック・コメントを実施し、9月13日付での事務連絡を発出し、周知しています。説明は以上です。
○望月(正)分科会長 ありがとうございました。日本薬局方部会長の橋田委員から追加の御発言等ございますか。
○橋田委員 特にありません。
○望月(正)分科会長 委員の方々から、御意見、御質問はございますか。よろしいでしょうか。
 特に無いようでございます。それでは、本件について御確認いただいたものとします。続いて、医薬品等安全対策部会の関係の議題12について、説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題12、資料12「一般用医薬品のリスク区分の見直しについて」報告いたします。
 一般用医薬品については、リスクに応じて第1類から第3類の三つのリスク区分に分類し販売規制を行っており、製造販売後調査の終了時等に見直しを行っています。
 平成23年7月29日開催の医薬品等安全対策部会において、製造販売調査が終了した品目等、表の3成分について見直しが行われ、表のとおり答申をいただきました。また、新販売制度が施行され一定期間が経過したことから、リスク区分の全体の見直しを昨年度から開始しており、今般生薬製剤について見直しを行いました。その結果について5ページを御覧ください。上の図は、生薬成分等の見直しの結果であり、第2類医薬品が245成分から177成分に、第3類医薬品が408成分から428成分になりました。この結果を生薬製剤に当てはめた時、下の図のとおり、第2類医薬品が845製剤から675製剤に、第3類医薬品が185製剤から355製剤になりました。なお、現在告示の変更等、必要な手続を行っています。以上です。
○望月(正)分科会長 ありがとうございました。医薬品等安全対策部会長の五十嵐委員から追加の御発言等ございますか。
○五十嵐委員 特にありません。
○望月(正)分科会長 ありがとうございます。委員の方々から、御意見、御質問はございませんか。よろしいでしょうか。
 それでは、特に無いということですので、本件について御確認いただいたものとします。続いて、指定薬物部会の関係の議題13について、説明をお願いします。
○事務局 議題13、「指定薬物の指定について」報告いたします。
 資料13を御覧ください。麻薬に類似した違法ドラッグ、いわゆる脱法ドラッグの乱用が社会問題化しております。これに対応するために、平成18年の薬事法改正により、指定薬物の制度が設けられております。4枚目に薬事法の抜粋がありますが、「指定薬物」とは、薬事法第2条第14項において、中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物として、厚生労働大臣が指定薬物部会の薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて指定をするものとしています。法律上は、このような乱用のおそれのある物質について、指定薬物に指定することにより製造、輸入、販売、授与及び販売の用途に供するための貯蔵、陳列等が禁止されることになります。本年8月2日に平成23年度第1回指定薬物部会が開催されて、資料13に記載されている九つの物質について指定薬物に指定することの可否の御審議をいただきました。
 審議の結果は、中枢神経系への作用を有する蓋然性が高く、また新たに国内において流通が認められ、乱用された場合、保健衛生上の危害が発生する恐れがあるとして、指定薬物として指定することが適当であるとの御意見をいただいています。また、本件9物質の指定薬物への指定については、パブリック・コメント、WTO通報等必要な手続を経て、9月20日に厚生労働省令改正を行っています。ちょうど1か月後の10月20日から規制が始まる予定となっています。以上です。
○望月(正)分科会長 ありがとうございました。部会長である私からは、特に補足する点はございません。
 委員の方々から、御意見、御質問はございませんか。
○黒木委員 質問ですが、指定薬物に様々な合成カンナビノイド類が指定されていると思いますが、中毒情報センターにはいわゆる合法ハーブとして販売されているものによる健康被害の問い合わせが急増しています。アメリカの中毒センター連合でも、今年に入ってかなり急増しているとニュースに出ています。こうした健康被害ですが、大麻に近い中毒ではなくて、中毒センターで把握しているものでは痙攣や散瞳やショック状態等もあり、かなりの頻度で頻脈も見られます。実際に人の健康被害が起こった時に対応している部署等で症例情報を収集しているのであれば、どのように収集しているのかについても教えていただきたいと思います。試買調査をしていると思いますが、この合成カンナビノイド以外に入っているものとして、学会報告ではカフェインが検出されたといった報告もあります。そちらの点について御存じでしたら教えてください。
○事務局 ただ今御質問のありました違法ドラッグの中で、合法ハーブと呼ばれて販売をされている商品について、委員御指摘のとおり国若しくは都道府県において試買調査などをして、分析等を行っています。今回指定をした薬物の中の六つが合成カンナビノイドと言われているものですが、最近の分析結果ですと単一の成分というよりは、いくつかの物質が複数分析されるという結果も見られています。また、個々の物質の有害性、毒性については、実はこの物質がどのような作用を起こすのかというところは、世界的にもまだよく分かっていません。このため、合成ハーブと称する商品についても健康被害が発生するおそれがあるというところで検出された成分については指定薬物として幅広く指定しています。
 実際に、健康被害が起きた場合にどのようなルートで情報が入るのかということですが、特に救急の先生方から、このような商品でこのような事例があったけれども、どうなのでしょうかという照会が都道府県に寄せられることがありますが、そういった場合、商品が手に入れば直ちに都道府県の衛生研究所や必要であれば国立医薬品食品衛生研究所に送っていただいて、分析をするといったことで対応をしているのが現状です。
○黒木委員 商品そのものであれば国立医薬品食品衛生研究所等で分析してくださる場合もあるようですが、生体試料に関しては分析が難しかったり、警察が持っていって分析結果が分からない等の面もあるようです。今のところ商品でなければ難しいのでしょうか。病院の先生が連絡すれば、生体試料も受け付けてくださるような機関はありますか。
○事務局 具体的に生体試料を各都道府県の衛生研究所に持ち込まれたというお話は我々も聞いてはいませんが、実際に含有される物質がある程度見込まれていれば、その対応というのは可能かもしれません。しかし、実態上、何が入っているのかがよく分からないことに加え、生体試料となると分析の実態は難しいところもあるのではないかと考えています。
○望月(正)分科会長 生体試料というと、国立医薬品食品衛生研究所の範囲外になりますか。
○大野委員 一般的に義務として行うことはないと思います。ただ、大学と協同研究という形でプランを組み、生体試料であれば倫理委員会の審査を通さなければいけませんので、それに通った上で行っているという事例はあります。
○黒木委員 いわゆる合法ハーブに関しては、若年様の使用が非常に増えています。10代、20代の患者の問合せが増えていますので、大麻の中枢神経作用だけではなく、実際に入っているものは成分的には分かりませんが、頻脈、散瞳、ショック、痙攣等の症状が強いということを国としても知っていただければと思います。中毒センターとしては、いつでも協力できる体制がありますのでお問合せいただければと思います。
○望月(正)分科会長 ありがとうございました。部会としても、問題点として把握していきたいと思います。ほかには御意見、御質問はありますか。よろしいでしょうか。
 それでは、この件については御確認いただいたものとします。本日の議題はすべて終了いたしました。事務局の方から、ほかに何かありますか。
○事務局 議題その他ですが、当日付資料として、資料15「6年制薬学教育について」を配付しています。また、併せてパンフレットも配布しています。そちらについて、簡単に御説明申し上げたいと思います。
 既に御案内かと思いますが、薬学教育の見直しが平成18年に行われています。今までの4年制から6年制課程の薬剤師教育、4年制課程の創薬研究者をはじめとした人材養成に分かれています。1枚おめくりいただき、「薬剤師養成のための薬学教育の改善・充実」ということで、薬学部は従来の4年制から6年制になり2年間延びましたが、その中に実務実習の大幅延長ということで22週間の実務実習が加えられています。これは昨年度から行っていて、今年も今現在進行中ですが、平成24年3月に新しい薬学教育を受けた方々が御卒業される予定です。「平成22年度から開始された長期実務実習の状況」ということで、下の平成22年度実務状況でこのような形の方々が今受けられてきて、来年の国家試験なりを受けていただく予定となっています。以上、参考までに御説明申し上げました。
○望月(正)分科会長 ありがとうございました。委員の方々から、御意見、御質問はございませんか。ただ今説明にありましたように、6年制の薬学教育学生が最終年度6年生になりまして、来年の4月には新しい薬剤師として出発することになりました。その制度の立ち上げ、その他について笠貫先生に多大のお世話になったことを感謝しています。パンフレットは日本私立薬科大協会で作成し、記事の中には笠貫先生も入っておられます。パンフレットが非常に好評で、手許に無くなってしまったので、改めて事務局に資料を作っていただきました。ただ今説明にありましたように、4年間で薬剤師として世の中に出てきた私どもの時代と違いまして、6年かけて医療人としての薬剤師、要するに、1年生で入った時から医療人であるという意識を持たせ、6年かけ、その結果が出る薬剤師がこの4月から卒業してくるということです。同時に、4年制の課程では今までは研究三昧ということができなかったのですが、今度は薬剤師国家試験やその他実務実習等がありませんので、薬学の研究に邁進して、今は修士2年生になっています。そのような6年制の薬学部薬学科、4年制の薬科学科とその上の2年の修士課程を出た学生が来年の4月には揃って新しい薬剤師、新しい薬学研究者として巣立っていきます。ここにいらっしゃる医学関係者を主にしたみなさんに、これからの薬剤師にどうぞ期待を込めて見ていただきたい、ということを私が宣伝して良いのかは分かりませんが、どうぞよろしくお願いします。
 よろしいでしょうか。事務局の方から他に何かありますか。
 次回の薬事分科会は12月21日午後1時30分からを予定しております。それではこれで薬事分科会を閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。


(了)

備考
この会議は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 総務課薬事審議会係 彦坂(内線2785)

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