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2011年11月21日 医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループ(第3回) 議事録

○日時

平成23年11月21日(月)14:00~16:00


○場所

厚生労働省専用第23会議室(19階)


○議事

○臨床研修指導官
 ただいまから「医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループ」を開催いたします。本日は、先生方にはご多忙のところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。今回は議題となっております臨床研修病院の指導・管理体制に関連しまして、日本歯科大学附属病院 客員教授 齋藤宣彦先生に参考人としてお越しいただいております。また、本日は文部科学省医学教育課から村田課長にお越しいただいております。以降の議事運営につきましては座長にお願いいたします。堀田先生、よろしくお願いいたします。

○堀田座長
 皆さん、こんにちは。本日は全員にご出席いただきまして、大変ありがとうございます。ただいまから議事を進めてまいりたいと思います。まず最初に、資料の確認を事務局からお願いいたします。

○臨床研修指導官
 それでは資料の確認をさせていただきます。まず、本日の議事次第です。後ろに名簿と座席表が付いております。続きまして、ヒアリング資料としまして「医師の初期臨床研修到達目標達成度評価に関する研究(齋藤宣彦先生提出資料)」となっております。続きまして委員提出資料。田中雄二郎委員提出資料の「オンライン卒後臨床研修評価システム」。続きまして、事務局提出資料1としまして「臨床研修病院の指導管理体制」。続きまして、事務局提出資料2「臨床病院における研修医の処遇」。続きまして、事務局提出資料3「臨床研修の修了状況」。最後に、事務局提出参考資料「受療行動調査を用いた 医師に対する患者の意識の変化の分析」。以上、資料は6点となっております。不足資料等がございましたら、事務局にお申し付けください

○堀田座長
 ありがとうございました。それでは議事に入りたいと思います。本日は臨床研修に関する管理体制及び評価方法についてということになります。まず、議題1「臨床研修病院の指導・管理体制について」事務局からの説明をお願いします。

○医師臨床研修推進室長
 お手元の資料、事務局提出資料1をご覧いただけますでしょうか。臨床研修病院の指導管理体制ということでおまとめしているものです。最初の何頁かは、先生方に申すまでもなく、臨床研修制度を俯瞰した全体的な制度の概要についてまとめたものです。
 資料1-1「組織体制」は、医師法あるいは医師法の該当条文に基づく省令、その省令の施行についての施行通知、この3点を根拠としまして組織体制が定められております。研修プログラムの作成やプログラム間の調整、あるいは統括管理を行う研修管理委員会の下で、プログラム責任者、臨床研修指導医あるいは上級医が研修医に対して指導や報告、連絡、相談を行うという体制で動いております。
 資料1-2です。「臨床研修病院群の概要」と書いておりますが、これは、真ん中に「基幹型」とございますが、基幹型臨床研修病院を中心にしまして協力型の臨床研修病院、臨床研修協力施設といった各施設が緊密な連携体制の下に臨床研修を進めているところです。次の頁になりますが、これらの臨床研修病院群を例えばA型、B型、C型と3類型に分けてみますと、A型につきましては、基幹型と協力型と臨床研修協力施設、3つの病院や施設が協力の下に研修を行っている場合。これが圧倒的多数で、942病院がこれに該当いたします。B型としまして、基幹型と協力型が連携して研修を進める形。これが26病院です。それ以外のC型としまして、基幹型と臨床研修協力施設。この組合せもありまして、58病院に上っているところです。
 資料1-3です。臨床研修を行う病院の体制につきまして書いておりますが、新制度と旧制度で研修を実施した各医師の先生方を対象に選択肢を複数回答していただいて、改善すべき点、良かった点は何だったかというのを選んでいただいた結果です。
 まず、1-3の部分は大学病院で研修を受けた研修医の場合です。ご覧いただきますと、例えば旧制度の改善すべき点のトップには「研修プログラムが充実していなかった」ということを挙げられておりますが、これが新制度になりますと無くなりまして、代わりに改善すべき点のトップには「多くの診療科をローテートするため深く学べなかった」という感想が聞かれております。ただし、この新制度の右側をご覧いただきますと、良かった点の3点目ですが、「多くの診療科をローテート出来た」ということをよかった点として挙げられております。これは、同じようにローテートする診療科の数が多かったとしても、研修医によって、それぞれ、捉え方はさまざまであることが窺えるかと考えております。
 次の頁にまいりますと、同じ質問について臨床研修病院で研修をした医師についてです。左下ですが、旧制度の改善すべき点の3番目に、2つ並んでおります。「研修プログラムが充実していなかった」「臨床研修後の進路が整っていなかった」という感想が2割以上に上っておりましたが、これが新制度になりますと無くなりました。1番、2番、数の割合の多い2つの項目は変わりませんが、右側の良かった点の新制度のほうをご覧いただきますと、特に目に付きますのが、2番目「診療科同士の垣根が低かった」というような感想が良かった点として挙げられているのが目に付くところです。
 次の頁にまいります。資料1-4です。臨床病理検討会(CPC)の開催状況です。これは上にコメントを記述しておりますが、病床規模が大きくなるほど、CPCの実施回数が多くなるということです。これは、主に右側の病床数に応じた平均開催回数をご覧いただきますと、199~600床以上。だんだん右にいくに従って開催回数は多くなってまいります。ただ、一方で小規模の病院においても一定程度のCPCは実施しておりまして、これは基準がありますので当然のことではありますが、199以下の病床数の病院でも平均、年間に2.1回CPCが開催されているということです。
 次の頁、資料1-5です。指導医講習会の現況ということです。まず、全体的な制度についてまとめております。趣旨としましては、「臨床研修指導医の資質の向上及び臨床研修を行う病院・施設における適切な指導体制の確保に資することを目的とする」ということです。期間としては、講習時間は16時間以上、かつ原則2泊3日以上ということで開催されております。いちばん下に書いてありますように、「指導医講習会の修了者に対しては修了証書が交付される」ということになっております。
 具体的に、開催回数、延べ人数をグラフにしたものが次の頁の資料1-5です。一見してM字になっておりますが、赤が修了者数、青が講習会の開催回数です。平成15年から平成22年までの経緯を見てみた場合に、平成16年度にまず急激に増えている。これは新制度の導入のときです。それから一時落ち着きましたが、平成20年から研修医5人に対して1人の指導医が義務化された時期で、この時期にやはり急に増えております。そのあと、また落ち着く傾向にあります。いちばん上にコメントが書いてありますように、現在までに講習会は延べで1,309回開催されまして、講習会の修了者数は、延べ4万3,701人に上っております。資料1につきまして、事務局からの説明は以上です。

○堀田座長
 ただいまの資料1につきましてご質問あるいはコメントがあれば各委員からいただきたいと思いますが、いかがでしょうか、概ね、こんなところだろうという感じのデータになっているかと思いますが。旧制度から新制度に変わったため、改善すべき点というのが少しずつ変わっているという状況です。CPCの回数ですが、これは、病院規模によって違うというのは剖検数も違うということが反映しているのですかね。今はCPCは必ずしも剖検例に限らなくていいということになっていますね。

○清水主査
 ちょっと聞き取りづらかったのですが。

○堀田座長
 CPCの開催件数が病院の規模によって随分違うというデータは、剖検数と関係しているのかどうかということなのです。

○清水主査
 剖検数についてはこちらではデータはまとめてはいないのですが。

○堀田座長
 把握していない。

○清水主査
 はい。

○医師臨床研修推進室長
 座長、すみません、1点訂正がございます。先ほどの説明で、資料1-5ですが、指導医講習会の現況の[2]で、先ほど平成21年から研修医5人に対して1人の指導医が義務化ということは、平成22年の話でして、平成20年は、指導医の要件として指導医講習会が義務化された年になります。失礼いたしました。

○堀田座長
 わかりました。いずれにしても、新しい制度ではその変更に伴って回数も修了者数も増えたということですね。よろしいでしょうか。CPCの回数は、例えば指導としては、最低は何回という指導になっておりましたか。

○清水主査
 概ね年に1回ということを目安としております。

○堀田座長
 最低ラインとして、年に1回はする。

○清水主査
 はい。

○堀田座長
 わかりました。よろしいでしょうか。何かご意見は。これについては特に大きな問題はないかと思いますが、こういうことを前提にして、次に入りたいと思います。

○今村委員
 ちょっといいですか。

○堀田座長
 はい。

○今村委員
 CPCの表の表わし方ですが、0~1が231というのは、1年で見ていなくて、2年間で1回で1年では0.5回があるからと、そういう意味ですか。つまり、ゼロか1かというのは全く意味が違うと思うのです。

○清水主査
 はい、これは違います。表示が悪かったのですが、1年間のうちに0回または1回ということで230病院が計上しているということになっております。

○今村委員
 ですから、ゼロか1というのは意味がまるで違うわけです。年間1回が望ましいと言っているのをゼロと1を一緒に入れるというのはちょっと表としていかがなものかと思ったので伺ったのですけれども。

○清水主査
 承知しました。

○医師臨床研修推進室長
 失礼いたしました。ゼロと1はある・ないの違いがありますので、先生がおっしゃるとおりですので、次回の会議でもゼロと1を分けた表を用意してご案内したいと。

○堀田座長
 ゼロの場合は指導対象になるのですね。

○医師臨床研修推進室長
 指導というか、基準をクリアしていないものですから、場合によっては取り消し得る状態になるかと。

○堀田座長
 それは一緒にしてはいけないのでは、というのが今村先生のご意見ですね。ありがとうございます。

○医師臨床研修専門官
 ゼロというものも、REISといって臨床研修病院のデータを私どものほうで持っているのですが、その中での記載内容をまとめたものでして、記入漏れといったものもゼロの中には、ほとんど入っていると思われます。

○医師臨床研修推進室長
 事務局からはその点も含めて整理して、再提出させていただきます。

○堀田座長
 わかりました。ほかによろしいでしょうか。それでは次の資料。もう次の資料に入っていいですか。今日は、参考人として齋藤宣彦先生にお越しいただいております。臨床研修医の評価方法に関連しての先生のご研究を発表していただきます。齋藤先生、よろしくお願いいたします。

○齋藤参考人
 齋藤でございます。この場に参上する機会をお与えいただきまして、ありがとうございました。平成21年度の仕事ですので、些か古うございます。それから、このスライドにありますように、大滝先生、村岡先生が今日いらっしゃっていますので私なんかの年寄りが出しゃばるのも些かと思いますが、代表者でしたので私がご説明を申し上げることにいたします。
 この調査の目的は、臨床研修の到達目標について各病院では到達度をどうやって評価しているかを知ることにあります。
 基幹型は、当時1,059病院ありまして、そこの研修のプログラム責任者、プログラムが複数ある場合は、その病院の代表お一方に質問票をお送りいたしまして、平成21年3月に研修を修了した研修医に対して達成度評価をどうやっているかを記入いただきました。。質問項目の細かいところは省きますが、「達成度の総括評価の方法はどうやっていますか」、「いつ評価をなさいましたか」、あるいは、「その測定者はどなたですか」という質問です。それから、「修了認定できなかった研修医はどのくらいいますか」、「総括評価の結果をどう利用しましたか」ということも、質問に加えています。それから、「研修医に対して事前にこういう評価をしますよということをきちんと言ってくださったか」、あるいは、「指導医に対しても同様に言ってくださったか」という質問が6項目と7項目。それから、研修の到達目標のところで「行動目標」「経験目標」とありますが、「行動目標」のところは、例えば患者-医師関係、問題対応能力、あるいは安全管理、医療の社会性などは、その達成度が測りにくいテーマです、それを各病院ではどうやって評価してくださっているかということを伺ったわけです。それから、「経験目標」のところでも同じですが、測りにくそうな項目、例えば、医療面接がどうだったか、医療記録がどうだったか、レポートがどうだったか、予防医療、地域医療なども各病院がどうやって測定されたのかです。ご承知のように、総括的評価というのは合否評価ですから、かなり厳しい評価です。「経験目標」のところでただ単に経験しましたというようなお答えで済んでしまうような項目は、意識的に質問項目から省きました。
 回答は、78.4%の病院からいただきました。回収率としてはたいそう良かったように思います。その結果を、いろいろな方向から切ってみました。例えば、大学病院か大学病院でないかという切り方もしてみましたが、それは、あまり意味がなっかとので今回はお示ししません。ここでは、病床数別に、200床未満、200床から400床、400床から600床、600床以上に分けてお示しいたします。
 総括評価の方法としてはどういう方法が多かったかというと、一言でいうと、レポートあるいはサマリーによる評価が多いのです。ただし、このレポートというのもどういうレポートかは、実際にオンサイトビジットしているわけではありませんが、随分いろいろなレポートがあるはずです。次いでObservation Record(観察記録)、が多いです。それから田中先生の開発されたEPOC、これがその次に利用者が多く、あとは、研修手帳や口頭試問でやっていらっしゃるところもあります。また、研修医に対してOSCEをやっていらっしゃるところも僅かながらありました。
 では、どなたが評価をされたのかということです。何でもかんでも指導医のところに持っていく傾向があると存じますが、指導医が評価をしました、プログラム責任者がやりました、院長、病院長、研修委員長がやりました、上級医がやりました、あるいは自己評価もあります、というところです。これは後ほど申し上げますが、項目によってもかなり違ってまいります。修了認定については、これは厚労省からの調査がかかっておりますのでここでは申し上げないでおこうと思っていますが、こういう具合にそれぞれにありましたというところです。
 修了認定されなかった理由。もちろん妊娠・出産・育児は多いですが、病気と、修了レベルに達していないというもの。ここが問題ではなかろうかと思います。
 次に、研修医に対して総括的に「こういうことを評価しますよ」ということを事前にきちんと周知していたかどうか。これはかなり問題になることだと思います。つまり、200床未満の病院では、7割しか事前提示していないのです。病院の規模が大きくなるに従って、そこはきちんとやっていました。同じように指導医に対して同様に周知していたか、指導医が評価法を知っていないということは大変なことです。200床から400床あるいは600床ぐらいまでに至るところまでは、指導医に評価法がきちんと伝えられていないということで、これは困ったことだと思います。
 次に、評価の難しそうな問題です。
まず、患者-医師関係。これで指導医に対する負担がいかに大きいかということがわかります。看護師さんによる評価は大変有効な評価ですが、あまりご利用になっていない。それから、患者-医師関係ですから、患者さんや患者さんのご家族、あるいはそういういろいろな問題を扱う事務、あるいは看護以外のコメディカルの方々、そういった方々からの評価がかなり意味のあることだろうと思ってこの質問を投げてみましたが、残念ながら、それほど大きな比重ではなかったということがわかります。
 チーム医療。チーム医療こそ、むしろ指導医よりもチームを形成するコメディカルスに評価をしていただくことが大切ではないかと思いますが、どうも、いつも多数の指導医が出てまいります。これで指導医がますますお忙しくなってしまっているのではなかろうかと推測いたします。
 次に問題対応能力。これも実は、問題対応能力というのは一体何かということが、それぞれ、指導医の先生がおわかりになっているかどうかという問題もあると思います。いずれにしても、指導医の負担が極めて大きいということがわかります。
 安全管理。安全管理は、本来、安全管理委員会のメンバーやリスクマネージャーの方々がしっかり評価してくださることを期待いたしました。しかしながら、残念なことに、そういう方々からの評価がまだまだ十分ではないように思います。
 ケースプレゼンテーションですが、これは指導医、上級医、あるいは、院内のいろいろなカンファレンスであればもちろんプログラム責任者、あるいは診療部長、医師の方々、あるいは看護師の方々からの評価があってしかるべきだと思います。
 医療の社会性。これは実は難しいです。指導医養成講習会に参りまして「医療の社会性についてのプログラムを立ててみてください」と申し上げますと、参加者の指導医のキャンディデートの方々は「その項目、一体何だっけ」とおっしゃいます。ですから、余計、評価も難しくなります。実はあそこには4項目きちんと載っています。法規のこと、保険のこと、お薬による有害事象等のことなどが入っているはずです。これは医療の社会性という言葉を、もう少し翻訳したほうがいいのかなと思いました。
 次は医療面接です。医療面接の評価というのもコメディカルスあるいは患者さんや患者さんのご家族、模擬患者さん、そういったところからのフィードバックが有効ではなかろうかと思いますが、そこにまで至っていないということです。
 医療記録、診療録ですが、これは診療録管理士の方々が「内容についてはなかなか評価ができない」と書いていらっしゃるところがありました。つまり、提出したかしないかというのは診療録管理士がきちんとチェックをなさるようですが、その内容については、なかなかわかりにくい部分があるのだそうです。
 次に「経験すべき症状・病態・疾患」のレポートというのがあります。これは、どなたが評価をしているかというと、指導医とプログラム責任者がやっていらっしゃるというのですが、このレポートについては後ほどちょっと申し上げますが、何をもってレポートと言うべきかというところが、若干不透明です。
 予防医療。予防医療のところは、やはりここでも指導医が断トツで出ていますが、ここで注目すべきは、他施設のドクターの方々に評価をしていただくことが大切ではなかろうかと思います。保健師さんあるいは住民の方々からの評価もよいと思います。コミュニティ・ベースド・ホスピタルという言葉がありますように、もっと他施設のドクター、あるいは保健師さん、あるいは住民の方々、そういう方々からの評価がなければいけないことではないかと思います。
 同じように地域医療もそうです。ただ、地域医療で非常に注目すべきは地方の行政の方々が評価者に入ってくださっていたということは、素晴らしいと思いますし、同じように他施設の医師の方々が指導医とほとんど同じぐらい評価に携わっていてくださった。つまり、裏返して言えば、他施設の方々には、指導医の資格を持っていただいてどんどん評価をしていただかなければならないだろうと推察いたしました。もちろん、保健師、看護師の方々も出番が多いはずです。
 というわけで、大急ぎで申し上げましたが、達成度の総括評価の8割はレポートでやっているというわけです。ただ、レポートというのもいろいろありまして、内科の認定医を取るための症例の記録がありますが、あの書式を真似て使っているというところもありますし、極めて短いといいますか、ごく簡単なサマリーで終わらせているところもあるようです。かつてこの臨床研修が必修化になる前に必修化準備調査検討委員会というのがありまして、私もそのメンバーで、実は「オンサイトビジットでなければわからんぞ」という委員の先生の発言がございまして、いくつかの病院に行ってみましたが確かにおっしゃるとおりで、これは実際にレポートの頁を繰ってみないとわからないです。岩崎栄先生のところの機構の評価でも病院に伺いましたが、ああいうところに出てくるレポートというのは、優等生のレポートしか出てきません。ですからその辺は、なお、さらに調査をする必要があるだろうと思います。それから、田中先生のEPOCです。これは、大学病院では非常に有用であるとおっしゃっているところが多くございます。一般病院の方々の利用率がちょっと少ないのですが、実際には、詳しすぎて大変だというようなご意見がいくつかございます。これは、後ほど田中先生からまたいろいろお話があると考えます。
 それから、修了認定できなかった研修医さんは一定割合であるのですが、この方々がどうなったかというのは、実は各研修病院では追跡されていません。ですから、これは難しい問題ではありますが、追跡をする必要があろうかと思っています。
 また、研修開始時に研修医や指導医に「うちの病院では総括評価をこうやりますよ」と示していない病院が若干ある。これはアンフェアです。
 次に、評価者としては指導医が9割ですが、それをしますから指導医が大変だという声が指導医養成講習会でフィードバックされてくるわけです。
 それから、大学病院では医師以外の職種による評価が比較的少ない。むしろ小さな病院のほうがいろいろな方が評価に加わって病院全体でもって研修医をみていこうという、そういうニュアンスが感じられました。
行動目標の評価しにくいところ。患者-医師関係、チーム医療、問題対応能力云々ですが、ここは、評価方法で何か目安を示してくれないかというコメントをお書きになっている病院がいくつかございました。
 レポートについて、書式を定めてあるのが6割です。推奨される書式案の提示を期待するという声があります。これは、ポートフォリオみたいなものがよろしいのではないかと個人的には考えます。ただ、実際にやりますと、ポートフォリオはチェックする側は非常に大変で、極めて厚いバインダーが必要になってまいります。ただし、それもポートフォリオに何を入れるかということを考えますと、そう苦痛ではなかろうと思っています。レポートの書式を上から定めて「こう書きなさい」というのは、あまり良くない、その病院のオートノミーに任せるのも1つの方法ではなかろうかと思いますし、症例のサマリーをしっかり書いてくだされば、それで立派なレポートになるだろうと思っています。また、地域医療の先生方の評価への参画がもっとあってよろしいのではなかろうかと思います。大急ぎで申し上げましたが、以上でございます。ありがとうございました。

○堀田座長
 齋藤先生、どうもありがとうございました。それでは、ただいまの齋藤先生のご発表に何かコメントやご質問はありますでしょうか。これは、平成21年度の終了にあたって、その指導医に対する調査ということです。

○齋藤参考人
 病院の責任者にこの質問書を出していますから、責任者の方々がお書きになったということになっています。実際は事務方が書いていらっしゃるのもあるのではないかとは思いますが、そこまではわかりません。

○堀田座長
 ありがとうございます。これは、どなたが評価に関与したかは、何か項目があってそれを選ぶようになっているのですか、複数回答でもよいとか。

○齋藤参考人
 そうです。こちらからこういう方々はやっていましたかという質問を投げていますから、それでご回答をいただいたわけです。

○堀田座長
 印象からいきますと、この総括評価というのは、終了認定に直接関わると理解してよろしいのですか。

○齋藤参考人
 そうです。もっと簡単な言葉で言えば、合否判定です。

○堀田座長
 総合判定というような。

○齋藤参考人
 はい。

○堀田座長
 なるほど。そうしますと、先ほどの、到達目標達成を何で見るかという話ですと、観察記録かレポートサマリーということが圧倒的に多いですね。後で発表していただきますが、EPOCが、これも併用しているかどうかという話なんですね。

○齋藤参考人
 EPOCについては、実は、病院によって随分受取り方が違うと言いますか、これは大変な手の掛かる評価だとおっしゃっている病院もありますし、いや、これは大変いい、素晴らしいというご意見の方もありました。

○堀田座長
 その点は後でまた、田中先生のほうからご報告いただくとして、その他の点で何かありますでしょうか。

○今村委員
 まず1点教えていただきたいのです。地域医療についての結果、非常に興味があるところで先生のお話を伺ったのですが、これはまだ地域保健が入っているときなのでしょうか。

○齋藤参考人
 そうです、この時代はまだ言葉が残っています。

○今村委員
 それで、その地方自治体職員や保健師さんがあるというのは、保健所研修みたいなものでの評価が入っているからなのかなと、ちょっと思っているのですが。

○齋藤参考人
 はい、当然それはあると思います。

○今村委員
 それからもう1点、他施設の医師というのは、地域医療の中で、診療所と、あるいは小さな他の施設も含めてだと思うのですが、診療所の指導医の先生のお話を伺うと、自分が自ら総括的な評価をするということに対して非常に困難を感じるということで、どういう評価方法を使って他施設の医師が評価されているかという、そのクロスみたいな結果があるのでしょうか。

○齋藤参考人
 いえ、評価項目、評価マニュアル、評価表がきちんと整っているかどうかという、レーティングスケールを使うにしても、その3点セットがそろっているかまでは調査してありません。

○今村委員
 わかりました。

○齋藤参考人
 ですから、地域の先生方が評価をしてくださったのですが、その方々が指導医養成講習会に出ていてくださる方であれば割にすんなりと、そこはしていただけると思っていますが、そこまではわからないです。

○今村委員
 わかりました。ただ、いま先生がおっしゃったように、指導医講習会に出ている先生から、なかなか評価が難しいというお話があったものですから、お伺いしました。

○齋藤参考人
 そうですか、はい、ありがとうございます。

○今村委員
 すみません、ありがとうございました。

○堀田座長
 いかがでしょう、ほかの方、ご意見。

○岡村委員
 1つよろしいでしょうか、先生。ほかにということなので。終了認定されなかった研修医についてお聞きしたいのです。1つは、終了認定されなくて、その後、別の研修施設にいて最終的には終了認定を受けていたかどうかということと、もう1つは、病気というのがありますが、私の個人的な感覚では、おそらくそういう精神的な問題ではないかと思うのですが、その辺の何か、もう少し詳しい分析はあるのでしょうか。

○齋藤参考人
 いいえ、そこまでは追跡していません。これは、次のステップではそういうことまで追っ掛けなければいけないと思いますし、メンタルな問題は確かに多いですが、そこまでは今回の調査では入っていません。

○堀田座長
 いまの点は、事務局のこの提出資料3のところの「臨床病院における研修医の修了状況」というところにありますが、いまはどうしましょうか。後でまたでいいですか。

○医師臨床研修推進室長
 そのほかのことについては、また、また後で。

○堀田座長
 では、中断もしくは未終了の問題については後の議題で出てまいりますので、よろしくお願いします。その他いかがでしょうか。齋藤先生のいまのお考えでは、やはり、多職種の方にこの総括評価に参加してもらったほうが、フェアに評価ができるというお考えに基づいているのですね。

○齋藤参考人
 そうです。指導養成講習会では、俗に360度評価でいろいろな人から評価してくださいと申し上げていますが、こうやって蓋を開けてみると、どうやら何でもかんでも指導医のところへ持っていってしまっているというのが現状だろうと思います。

○堀田座長
患者家族から評価を受けるということはほとんどないということは、どうなのですか。実際は、これ期待しているのでしょうか。

○齋藤参考人
 難しいのは、例えば、患者さんからクレームがきたとします。それは、どういうルートで上がって研修医にフィードバックされているかまではわからないです。

○堀田座長
 だから、総括評価にいきなりそういう意見が直接関わるかどうかということは、難しいようにも思うのですが、いかがでしょうか。

○齋藤参考人
 結局、例えば、そういう問題が起きた場合に、それをどのくらいの重みとして総括評価に加えているかというところは測れないものですから、わかりません。

○堀田座長
 片岡先生、その辺は何か、実際のところはどうでしょう。総括評価を何ですべきかというのか、誰がすべきかという点について。

○片岡委員
 そうですね、各ブロックごとの認定に関しては、様々な職種から評価を頂くということは可能ですが、修了認定という2年間全体の総括評価となると、360度評価は2年間を通した評価が行いにくいという点で難しいのではないかという現場の意見はあろうかと思います。ただし、個々のブロックに関して、研修医に直接関わった人の評価を可能な限り多方面から集めるというのは望ましい方策だと思います。

○齋藤参考人
 項目として、共通臨床研修目標という、2年間にわたって、例えば、患者-医師関係だとか、問題対応能力というのは、これは2年間のものであると。片や、地域医療みたいなものは、あるインターバルで、分野と言いますが、分野でもって評価をなさるということですから、その総合的なことは、最終的にはやはり、研修管理委員長なり、病院の責任者のところへ行くことだろうと思っています。

○堀田座長
 そうですね。だから、最終的な合否判定というのは、もちろん研修管理委員会でやるわけですね。ですから、それに至るまでの評価を、どこからどのように集めてくるかという話で、先生がおっしゃるように、ブロックごとでたぶん関与する人が違ってくると、そういう話ですね。よろしいでしょうか。はい、ありがとうございました。では、ひとまず、これはここまでにしまして、齋藤先生どうもありがとうございました。
 続きまして、田中先生のEPOCに関しての「卒後の臨床研修評価システム」についてお話をいただきます。

○田中委員
 それでは、資料に基づきまして、ご説明させていただきます。私は、EPOC運営委員会の委員長もしていますので、そういう立場からお話をさせていただきます。
 EPOCはオンライン卒後臨床研修評価システムの英語、Evaluation system of Postgraduate Clinical Training Systemの略です。いま2つのモデルがあります。もともと東京大学にありますUMIN(umin)というサーバーにアクセスして、研修医、指導医、それからプログラム管理者、研修統括部門がアクセスすることで使う、いま流行の言葉で言うと、クラウドという言葉になるわけです。使用料金は2年間で研修医1人当たり2,000円です。データが無期限に保存されるのが、手帳に比べると紛失の恐れがないという点もいい点だと思います。もともとStandard EPOCと称するものがありまして、これがローテーションごとの評価でしたので、先ほど齋藤先生のお話にありましたように、非常に煩雑だと、つまり、ローテーションが変わる度に全部入れ直すというシステムでしたので。最近はそれのご批判に応えて、今年度から2年間全体で評価していくという、Minimum EPOCというものも作られています。EPOCは、自己評価と指導医評価による二本立てなのですが、ここで、実際にインターネットでやってみます。
 実際にGoogleで検索しますと、こういうトップページが出てきますので、それで実際にやってみると。サンプル用のがありますので、それでご覧いただきます。研修医のところをクリックするとこんなものが出てくるというわけです。これはユーミンミライさんというサンプル名の研修医です。研修医が自分で入力しようとすると、こういう画面が出てきて、これは、厚生労働省が定めた研修目標すべてがここに載っていますので、出来たと思えばbですし、まだまだと思えばcですし、もう十分だと思えばaだと、こういう感じになります。こういった項目をずっと入れていって、登録するとして、そうしたら今度は誰に評価してもらうかということで、指導医のリストがありますので、その指導医の中で自分がこのことを評価してもらえると思う指導医を選んでボタンを押す。そうしますと、最終的には評価依頼を行うというボタンを押しますと、メールでその指導医に評価依頼が行きます。
 それがこの次の資料、資料で言いますと評価依頼の5頁目にありますが、入れましたので評価をお願いしますというメールが飛びます。指導医は、ここにありますように、そこにURLが付いていますので、そこを押せばインターネットでその研修の頁に飛ぶと、そういうことになっています。いまのは研修医の側から見たEPOCですが、Minimum EPOCですが、基本的にはStandard EPOCも同じ形で、ただ、そのローテーションごとに入れ直すか、だんだん消えていくかと、そんな違いがあります。先ほどのに戻りますが、指導医が評価したものを研修医は見ることもできまして、Minimum EPOCはaになった項目は自動的に消えていくという形になりますので、消えていない限りはまだ十分できるとは言われていないとなります。Standard EPOCのほうは、aとかbとかcとかを指導医が入れた項目が横に出てくる形で見ることができます。
 いまのが、研修医の側から見たものですが、指導体制評価とか、管理部門から見たものがどう見えるかということを実際にご覧いただきます。EPOCのトップ頁に戻ります。管理部門はこういった感じで出てきます。これは実際には私の大学の管理部門の頁ですが、例えば、2009年の研修を終了した場合の評価集計というのを見てみますと、これはローテーションのある内科ですが、ここをご覧いただけますように、20名の研修医がこの内科をローテーションして、指導項目について、それぞれ満足がA、どちらかと言えば満足がBですが、ここを見てみますと、考え方の指導というところでは、1人はあまり満足していなかったということはわかりますし、総合評価もそんなふうになっていることがわかります。未というのは、これは入力してくれなかった人です。それで、ここにフリーフォーマットで意見が書いてあります。例えば、指導医にに相談しやすい雰囲気だったとか、改善してほしい点では医員と研修医が1対1でペアを組んでいるけれども、メリットもあればデメリットもあったということが書いてあって、それを基に、我々は研修のシステムを改善するといったことができるようになっています。
 これがいま2009年ですが、例えば、2011年になりますと、同じように、まだ一部の研修しか回っていない代わりに、そのホットな情報が得られますので、もう少し何とかしてほしいなんていうコメントがあれば、それに対してその診療科に働きかけたりするといったようなことができるようになっています。そのほかに、研修医の全体の動向を見ることもできます。いま、2010年の研修医は2年目に入っています。ですから、どこまで研修が進んでいるかというのは、我々も責任がありますので見る必要があります。その研修目標がどれぐらい達成されているかというのは、一覧で見ることができます。これは、各研修ごとにどこまで達成されているか、例えば、この研修医はおそらく全く入力していないのだろうと思います。それで、次の研修医は、あと半年残っていますが、必修項目でまだ1つ達成していない項目があるということがわかります。そうしますと、研修項目、この人がどの程度研修しているかということを別の形で見ることができます。
 因みに、この場面はもちろん研修医も自分で見ることができまして、自分の達成度がどれぐらいなのかというのは、今日現在の達成度を見ることができます。このように、例えば経験が求められる疾患でも、B項目というのは外来で経験するということがありますから、7項目まだ足りないということがわかります。その足りないリストもここに出てきます。例えば、結膜の充血を経験していない、妊娠分娩はまだ、男性生殖器疾患もまだ、角結膜炎、緑内症、中耳炎もまだ、それから、入院して経験すべきものとしての統合失調症もまだ経験していないということがわかります。そうすると、今度はこの研修医があとどこを回るかということがこの一覧表で出てきます。そうしますと、例えば、この研修医はちょうど現在産婦人科を回っているので分娩は未経験でしたが、これはもう大丈夫ということがわかりますし、結膜炎とか中耳炎というプライマリーケアの病気は、この後診療所に出ますので、そこでたぶん回れるだろう。入院して統合失調症を診るというのが残っていましたが、これも、最後に精神科をローテートすることになっていますので、それも達成可能であろうと、研修医自身もこれを見ながら安心できるし、我々も安心しているということで、もしこれが難しければローテーションの組み直しなどをやるということが実際にできるとなっています。先ほど齋藤先生からお話がありましたコメディカルな評価というのがありますが、当院ではコメディカルな評価は今年度から実施していますので、今年度の研修医でちょっと見てみます。この研修医を選んでみますと、この研修医のコメディカル評価を見てみますと、問題が多いというのが師長の評価で1つありました。問題が多いのというもののコメントを見てみますと、報告しても放置されることが多く、指示を出すのが遅すぎる、患者さんの家族への対応は親切、丁寧だと。ただこれは、1年目研修医の最初のローテーションのところですので、次のローテーションに移ると大分改善していまして、指示の出し方もスムーズになっていると、やや慌ててしまう傾向があるがいつも一生懸命ということで、我々もこれだったら介入しなくてもいいのではないかといったようなことが見られると言えます。こういったことがリアルタイムでできることがEPOCのいいところとなります。いま実際にもうご覧いただいているところで、かなり進みましたが、あとは、こういうもので、環境評価、福利厚生とか、そういったことも見られます。これが実際には、EPOCの場合は、福利厚生施設が、例えば、医科歯科大学もそうですが、いくつかの協力病院や、いくつかの診療所、あるいは、そういった施設と一緒にやっている場合に、それが終了した年度で言いますと、協力病院の評価はどうかということはすべて見られます。ですから、一望の下にこうやって、食事、宿舎はまあまあ評判はよかったと、ただ、インターネットなどの設備についてはちょっと不満があったようだとか、そういったようなことがわかりますし、例えば、診療所までいくと、実際に我々もそこに行ってお話を聞くということもなかなかできなかったりしますので、こういうのを見て研修医の声を聞いて、これは指導評価ですが、十分指導も受けていて、コメントでも、いろいろ教えてもらったということが書いてあって、よかったということです。どの程度真面目に書いているかというのがありまして、土曜日の昼お腹が空いたとか書いてありますが、概ねは真面目に書いてくれています。それで環境評価のところで、この診療所の環境の評価はどうかということなのですが、こういったのも見て、宿舎というのは、実はこの診療所は泊まり込みで1カ月間行く形になっていますので、その評価も入っていて、我々も1カ月泊まり込みで出していても大丈夫だろうということが考えられるわけです。それから、プログラム評価というのもできまして、例えば、医科歯科大学のプログラム評価ですが、こんな感じで、このときは人に勧められるかというのに対し、勧められると答えてくれた人は18人ですが、勧められないと答えてくれた人も4人いて、なぜ勧められないかの理由がいっぱい書かれていますが、これが、2008年ぐらいになって、改善しているかどうかということを我々は見ることができまして、勧められないのが減ったというのが良かったということで、少しは改善してきたのかなと思っていますが、まだ、いろいろな問題点が指摘されているので、それに則って改善をしていくといったことができます。これは、実施施設についての経年比較ができるということですが、資料の12枚目になります。こういうような統計解析も四半期ごとにやっていまして、全国データと自分の病院のデータがアクセスできます。それをエクセルにまとめると、例えば、これが全国平均の小規模の達成率と医科歯科大学の達成率を表わしたものですが、全国平均よりは上回っているということが言えるということで、いろいろ改善する余地はありますが、経験率に関しては、いまのところ実施施設でいいのかなとか言って、そういうことはできます。先ほど、お見せしてしまいましたが、研修記録が随時ありますので、研修医はどこまで進んだかを見られ、我々も研修医がどこまで研修を進めているかが見ることができます。
 これはお配りしてあるハンドアウトの14頁になりますでしょうか。利用状況です。こちらにありますように、ちょっと減り気味なのですが、大体4,800人、5,000人近い人、つまり6割の研修医が使っています。施設は、齋藤先生がおっしゃいましたように、大学はほとんど、そして、一般研修病院も350ぐらいですか、使っていただいています。ただ、いろいろ問題点も指摘されていまして、国立大学の附属病院長会議で開発されているにもかかわらず、国立大学でも使っていないところが、この表で見ていただきますと、新潟大学、神戸大学、琉球大学、滋賀大学とありますが、最初から使っていない滋賀大学と新潟大学、それから、途中で止めた神戸大学でヒアリングをしました。琉球大学は申込みが遅れたというだけでしたのでヒアリングはしませんでした。そうしますと、その次の頁にありますが、EPOCを利用しない理由としては、入力が煩雑、これはもうあちこちから声が聞こえてきますので、その批判に応えて、ローテーションごとに入力するのではなくて、全体として2年間で1回経験すればいいという形で済むようなMinimum EPOCを作りました。それから、診療科に関連のない項目も入力が必要というのですが、これは、実は、入力項目は追加できるようになっていますので、これはちょっと我々の情報提供不足ということだと思います。また、リアルタイムで入力できないということなのですが、これに関しては、いま私は現実にポケットWiFiでインターネットにアクセスしてご覧いただいているわけですので、時代がこういう時代ですので、それに対しては、いまはスマートフォンが普及してきて、可能になってきているのではないかと思っています。それから、管理部門では、これが独自な評価項目が設定できないということについてはご覧の通り可能です。それから、入力データは研修指導に活用されなかったということですが、これはそのとおりで、実は、このEPOCというのは膨大なデータが蓄積されますので、もちろんそのまま指導医も見ることはできますが、やはり何らかの整理をして見られるようにする必要があるということがあって、それは、むしろ研修管理部門がどれぐらいこれを活用するかということになるのではないかなと思います。私個人としましては、制度設計の段階で、研修医評価とかプログラム評価、そういう制度評価が十分考慮される必要があって、是非、今度の制度設計の見直しのときに、こういう4,000人以上の人が使っている、5,000人近い研修医が使っている方法なので、活用していただいて、研修医個人の評価やプログラム評価に使うだけではなくて、全国集計とかができます。例えば、どれくらいの規模の病院だったらどれくらいの達成度になるのかとか、どれくらいの満足度になるのかとか、いろいろな切り口で分析ができるはずですので、研修医評価項目について検討することも含めて、是非活用していただけたらと思っています。ご清聴ありがとうございました。

○堀田座長
 ただいまの、田中先生のご発表にご質問とかコメントをいただけますか。EPOCは、大学を中心にほとんどの所で採用されているのですが、一般病院でなかなか普及しない理由が何かは聞いていませんか。一般病院での調査は特にやっていないのですか。

○田中委員
 実際に使っている所にはアンケートを取っているのですが、使っていない所にはアンケートは取れないのでなかなか難しいです。使っている所でも、使いづらいという声はよく伺います。その最も多い理由は先ほどお話しましたように、項目数が多すぎるということです。項目数が多すぎるといっても、これは厚生労働省の定めた項目数なのでなんともしようがないということです。
 ただ、ローテーションごとに入れ直すというところがまた問題だと思うのです。いまのStandard EPOCでは、それをしなくてもいいという運用も認めています。それから指導医が、入れるのは面倒くさいというのがあります。指導医が入れなくても、ポートフォリオとして記録されるような仕組みにもできています。他方で、指導医が入れないなどというのはあり得ないとか、ローテーションごとに入れなければ意味がないというご意見もありますので、両方の可能性を残しているためにかえって使いにくいという評価だと思うのです。Minimum EPOCというのは機能を制限することで少し使いやすくなるのではないかということで、そういうのを新しく今年から発足させています。その評判はまだわからないです。

○今村委員
 先ほどの齋藤先生のプレゼンテーションの中に、EPOCを使って総括的評価をされているというのが17.8%というのが出ていました。田中先生のお話だと、研修医が指導医を指定して評価をしてくださいということで、依頼を出さないと指導医の評価は出てこないわけです。指導するに当たっては、その指導の方法と、誰が評価者になるかということをあらかじめ明示しておくことが必要であるということだそうです。そうだとすると、先ほどの看護師さんが評価するというようなものも、あらかじめ研修医はその看護師さんが評価者になるということをわかった上で指定しているのか、それとも看護師さんのほうが、そういうことは本人にわからないうちに評価しているのか、その辺がよくわからなかったのです。

○田中委員
 評価の依頼を出すというプロセスで相手を選ぶということであって、Standard EPOCでは完全に評価者をこちらのほうで割りつけてしまいますので、研修医が評価者を選ぶことはしないです。総括評価として明示しているかどうかというのも、これは完全にEPOCそのものではなくて運用の問題になります。私たちの所では、コメディカル評価は、去年からEPOCの上でできるようになっていたのですが、研修会指示に明示していなかったので、今年の研修医から、オリエンテーションのときに「あなたたちの評価は指導医だけではなくて、病棟師長も行う」と言いました。ただ、それは運用上の問題です。

○今村委員
 運用で、多職種の方たちが評価できるようにEPOCの中に組み込むことは十分できるということですか。

○田中委員
 コメディカルというのは看護師に限りませんので、登録さえすればできます。実際に私たちの所では、ナースにしか頼んでいないのですけれども、病院によっては検査技師などに頼んでいる所もあります。

○堀田座長
 その場合にも、指導医とは別に、誰かに依頼して、評価してもらいたいかを登録するわけではないのですね、ただの割りつけになるのですか。

○田中委員
 登録します、それで割りつけします。割りつけしないで、代理入力という方法をとることもできます。

○堀田座長
 総括評価をEPOCだけでやっていることもあるのですか。

○田中委員
 私の所はそうです。これは、レポートも全部加味されています。レポートは、指導医がOKを出したものでないと掲載されないようになっていますので、それも含めて評価ということになります。

○堀田座長
 なんとなく目標を設定して、お互いにそれをインターラクティブにフェース・ツー・フェースで話をして評価をして、また次の目標を決めてみたいなやり方が、アナログ的ですけれども一般的にはされている所が多いような気がするのです。それとの整合性というのか、その辺はEPOCだけでそれが達成できるのかどうかという点はどうでしょうか。

○田中委員
 研修医宛のメモがあって、そこにアナログ的なコメントを書いて研修医に伝えることはできます。ただ、私の大学ではほとんどそれは活用されていません。できるとは言っているのですけれども、実際にはなかなかそこまではやっていないです。普段接している指導医は、その指導現場の中ではそういうことを伝えていると思いますけれども、記録に残る形ではやっていないです。

○岡留委員
 研修病院が1,000病院あって、しかもこれを使っているのはほんのごく一部です。これは、制度的にはこれ以上広がらないのではないですか。私たちの臨床研修委員たちに聞くと、煩雑すぎる、こんな忙しいときにリアルタイムでそんなのは絶対にできないと言います。その辺を何か考えないと、これ以上展開も発展も望めないのではないですか。一般病院から言わせていただくとそういうことになります。勤務医の処遇ではとても。大学は階層別になっていて、きちんとシステムが作られていますから動きやすいのですが、一般病院はそうはいかないです。すべてを自分でやらないといけないので、その辺の配慮をしていかないと、制度的にこれ以上の展開は望めないです。データも非常に不十分なものになるだろうと思うのです。

○田中委員
 確かに、これを見ていただきますと、施設数は380ぐらいです。施設は全部で1,000を超えています。そうすると4割にも満たないとも言えます。そういう声もあったのでMinimum EPOCという、それは考えてみれば手帳でやったものをチェックしていくようなものなので、回ってくる度に全部チェックし直すことに比べると負担は少ないのかと思うのです。
 入力するのに、いちいちパソコンに向かわなければいけないというのが、いままでは大変だというのがありました。病棟にパソコンなどないという話もありました。このようになってきたので、だいぶ違うのかなとは思うのです。それは、病院の実情を知らない人間の言うことだと言われるとそうなってしまうかもしれません。EPOCの運営委員には、第一線の地域の地方病院の先生にも委員に入っていただいて、いろいろご意見もいただいています。それで、先生がご心配のような向きが改善されれば広まるかもしれません。

○岡留委員
 制度的には非常にいいと思うのですが、研修手帳で手いっぱいの所があります。それをデータとして入れるにはクラークが必要になりますし、いろいろな問題を包含しているのではないかと思うのです。

○堀田座長
 この件について、神野先生はいかがですか。

○神野委員
 直近はわかりませんけれども、ヒーヒー言いながらEPOCをやっていると思います。いまクラークの話もありましたけれども、研修事務局あるいは医療クラークの所で代行入力を使うことで少し広がるのではないかと思いますが、それをどう手当てするかというのは、先生がおっしゃるとおり問題だと思います。

○堀田座長
 大滝先生はいかがですか。

○大滝委員
 私は田中先生の下でEPOCにも少し関わらせていただいています。EPOCの大きなメリットの1つは、データが極めて安全確実に確保されるということです。今回の震災でも、いろいろな資料が研修病院で失われて、研修をどうやって続けるかが問題になったと伺っています。そういう意味で、このEPOCはUMINといういわばクラウドで、データベースを月2回でしたでしょうか、北海道にバックアップを送って、どんなことがあってもデータを確保できる体制にあります。今後、研修の内容を担保していくときに、記録がとても大事になります。研修した項目をどのようにして記録するかということと、どこからでもその研修記録にアクセスできて、しかもそれが確実に記録として残されるということとは少し分けて考えていく必要があると思います。
 いまはちょうど移行期で、スマートフォンとか携帯端末でこういうデータの処理ができるように、ようやくなってきているところです。私もいろいろ提案したり、ご意見を伺ったりしてきました。本学でも事務担当がEPOCにかなり詳しくなって、自分たちなりの資料として作り込んでいます。使い勝手については、今後さらに改良を重ねていけば、改善される見通しがあると思います。
 私がEPOCの機能で重要だと思うのは、いつ、誰が、どんな研修をしたか、ほかの人にもすぐ見せることができることだと思っています。EPOCに限らず、そういうシステムを作っていかないと、この制度の信頼性というか、客観性というか、どんな研修をしたか他の人が知りたいときに、お示しできる体制を作る必要があると思います。

○堀田座長
 確かに物差しが、わりと均一で、しかも記録性があるということでないと、客観的にある病院と別の病院とで、どういう研修評価をしているのかというのがバラバラになってしまう。それはそれでいいというふうに極端に言う人もいるかもしれないのだけれども、国のレベルでやっている仕事なので、そういう一貫性あるいは共通性を保証していくのは非常に大事だと思います。
 これを一般病院でも使えるようにどのように普及していくか。1つはEPOCそのものをもう少し使いやすくするという工夫もあるでしょうけれども、そういうものを動かすための院内の仕組みを確保していない所も結構あると思うのです。大学では、研修担当の専任の教員だとか、教授ポストを持っている所もありますが、一般病院では大抵がどこかの診療科の医長がそれをやっているということで、実際にはインフラのギャップがかなりあると思います。片岡先生はどうですか。

○片岡委員
 岡山大学でもEPOCをずっと使っているのですが、平成22年度からタスキ掛けをかなり多彩に行うようになり、例えば1人の研修医が2カ所、3カ所の地域の病院に行くような形になったときに、EPOCにどのように反映するかということは議論になりました。結局のところ、協力型病院などからEPOCと同じ内容の評価票を紙ベースで返送いただいて、大学の事務の方が代行入力するという形でなんとか行っています。
 研修の場が多彩になった場合、評価方法がバラバラになると一元的に評価できないという問題があります。単一の施設で研修を行うときよりも、複数の施設で研修を行うときに、共通の基準で評価できるという点において、一層EPOCの良さが発揮されるともいえます。 田中先生にいま見せていただいて、EPOCの応用範囲の広さを再認識し、我々の所もまだ活用しきれていない部分があると思いました。一方、指導医からはオンライン以外のフィードバックも必要ではないかということで、我々はEPOCと指導医からの紙ベースのフィードバックシートを併用しています。

○堀田座長
 ほかの所でもそうですか。先ほど田中先生は、EPOCで総括的に評価しているという話だったのですけれども、大滝先生の所はどうですか。

○大滝委員
 東京医大では、EPOCのシステムをベースにしていますけれども、そのほかにも独自のいろいろな評価用のシートを使っています。研修医には、年に最低2回ヒアリングを全員に行っています。それは指導医、事務方、場合によってはナースも入って、EPOCなどを通して集まっている情報を、みんなで見ながら今後の研修をどうしていくか話し合うのを年2回やっております。

○堀田座長
 岡村先生の所はいかがですか。

○岡村委員
 私の所ではEPOCを使っていないです。国立大学ではないので反映されていないのですけれども、田中先生の発表を聞いていて、うまく使えばすごく有用だと思うのです。ただ、我々の所の研修センター長に聞いても、入力が煩雑だとか、指導医の負担が多いということをよく言っていましたので、帰ってからいろいろ相談したいと思います。
 研修医とか指導医にしても、臨床研修制度だけではなくて、ほかにも外科専門医制度で自分の経験を入力しないといけないとか、学会のデータベースの入力だとか、臨床研修以外でいろいろな入力作業に追われることが多いものですから、ある程度簡素化して、できる限り多くの人が短い時間で利用できるようなシステムに変えていっていただいたら、田中先生の発表を聞いていて、これは上手に利用しなければいけないのではないかと思いました。

○堀田座長
 そうですね。岡部先生、いままでの議論を聞いていて、EPOC一部の大学、とくに、国立大学中心の評価方法なのですけれども、これを全国的に一般病院も含めて使うようにするために何か工夫というか、こんなことはどうだというのは、いままでのご意見を聞いていていかがですか。

○岡部委員
 ご意見を聞いていて、そういうことはかなり難しそうだという印象がしましたが、評価ですので、いろいろな目的に使えるようなデータが蓄積されるのだと思います。研修医を評価するという意味と、研修システム自体が全国的にどういう状態であるのかということ、個々の病院のそれぞれの育成したい研修医と、現状のシステムが合っているのかというような評価もできると思います。
 主に大学病院中心ですけれども、こういうシステムができているということは非常に重要だと思いますから、更に田中先生に頑張っていただいて、これを使っていろいろな解析が可能であると。これを導入すれば非常に良いことがあるのだということがわかってくれば、さらに利用は増えるのではないかと思います。まず使ってみて、メリットがあるということを示すのが重要ではないかと、お話を聞いていて思いました。

○堀田座長
 本日聞いていて、なるほどそういうこともできるのかと納得しました。いまの点について、横田先生はいかがですか。

○横田委員
 私も使っていましたけれども、なかなか複雑で難しいと思っていました。評価の目が人によって違いますので、そういうものを統一するのも難しいなと。物差しの尺度が違うと、評価も全く変わってきてしまうので、その辺りはどうやってフィードバックして整合性を図っていくのかというのを、いつも疑問に思っていました。

○堀田座長
 これは、運用のためのガイドラインというようなものも併用しているのですか。

○田中委員
 あります。ホームページに載せてありますが、どれぐらい活用されているか。Minimum EPOCというのが、いまのこちらの議論ではぴったりで、おそらくそれを入力できない人は紙ベースにして事務の人が入れるみたいな形が最も簡単な方法だと思います。それができるためのマニュアルはないので、それは作りたいと思います。

○堀田座長
 皆さんの大体のご意見では、せっかく客観性と記録性がきちんと残るシステムがあるのなら、もう少し使いやすくして、一般病院でも使えるような改良を考えるということだと思います。おそらく、評価方法ははほとんどの病院をカバーするということでないと、なかなか客観データとして解析できないことになりますので、是非ともEPOCをどのように一般病院にも活用できるようにするかということを、引き続き田中先生にはご検討いただきたいと思います。

○神野委員
 臨床研修制度そのものは国の制度ですので、ここでこの話が上がってきた心というのは、国の制度に乗る以上は必須化しろ、というような方向性に行かすべきなのかどうかという話なのです。

○堀田座長
 ここで言い切るのは難しいと思いますが、どうせやるのなら大部分をカバーしないと、全体のシステムにはならないと思うのです。私個人的には、できれば必須化できればと思っていますが、反論はあるかもしれません。

○神野委員
 いま、いろいろと改良を重ねているということですので、田中先生の所のプロジェクトではなくて、もし90%の人がOKを出すものであるのならば、国の制度としてやって、その上で情報はある程度公開していただく。その情報を、いろいろな研究者や各臨床研修病院がベンチマークに使えるような仕組みになればよろしいのかと思います。

○堀田座長
 国のほうでも、これを義務化するというところまで考えているのでしょうか。

○医師臨床研修推進室長
 私どもとしては、どういう趣旨で臨床研修制度があって、これをどういう観点で評価して修了させるかという意味での制度化を中心に、当然責任を持って考えていかなければいけないのですが、それをどういう形で実現するのかについてはいろいろあっていいのだと思うのです。いろいろなやり方がある中で、どれが効率的で、合理的なのかについては、運用の部分ではないかと考えております。そこまでも私どもが規定してしまうことが本当にいいのかどうかというのは若干にわかには判断がつかないものですから、ご意見を賜ったので、私どもも検討していきたいと考えております。

○堀田座長
 現状はそうでしょうね。できるだけこれが共通で使えるような形で改良を重ねていただきたいというのが、この場での結論かと思います。

○今村委員
 本筋から外れるのですけれども、田中先生、データのバックアップはどこかで取られているのでしょうか。

○田中委員
 先ほど大滝先生もおっしゃいましたけれども、週1回か2回バックアップを、以前は北海道でしたが、今は九州に送っています。ですから、東京で大地震があっても、九州で同時に大地震がない限り大丈夫だということです。

○堀田座長
 次に、議題1の(2)「臨床研修病院における研修医の処遇について」を事務局から説明をお願いいたします。

○医師臨床研修推進室長
 事務局提出資料2「臨床病院における研修医の処遇」です。資料2-1「臨床研修医の推計年収」の[1]です。これは表にしておりますけれども、この額、推計年収については研修医の業務量、あるいは通勤経路、家族構成にかかわらず決まって支払わられる給与、即ち月給です。月給という場合、それにプラスして賞与も含んでおりますが、超過勤務手当等々は含まれておりません。
 集計方法は、平成23年度に臨床研修の実施を予定していた全国の基幹型病院の推計年収の平均を算出しております。こういう予定であるということを聴取したものです。具体的に見てまいりますと1年次、2年次かつ大学病院、臨床研修病院で分けて見た場合の平均値です。1年次の平均値、大学病院の場合は年収307万円ちょっと、臨床研修病院の場合は年収451万円ということで1.5倍程度の開きがあります。2年次になると、その開きがまたさらに312万円と502万円ということです。参考までに最大値と最小値を挙げております。最小値は1年次の大学病院で184万2,000円、最大値は2年次の臨床研修病院で1,000万円を超える年収になっています。
 下に参考として別表で、民間の医師の方々の平均給与を入れております。この中で、研修医に該当する年齢層は、2番目の28歳以上32歳未満が61万円ちょっとということです。平成22年に臨床研修部会で720万円前後が妥当な額ではないかということで、その720万円を超える部分については、平成23年度から臨床研修の補助金を一定程度、具体的には1割を削減しております。それが※3で書いてあるものです。下限はどのぐらいが妥当なのかについては、過去に臨床研修制度導入時の有識者会議が平成15年度にありました。同年齢の医療関係の専門職、例えば薬剤師さんあるいは看護師さんの収入を踏まえ、年収360万円程度の水準が目安とされていました。
 その辺りを念頭に置いて次の頁はグラフにしたものです。一見して320万円から720万円の辺りに収斂しているように窺えます。もちろん極端に少ないもの、極端に多いものが一部あります。
 次の頁は、都道府県別にその推計年収を分けたものです。一般的には都市部、即ち人口の多い都道府県が安くて、地方のほうが高いようなイメージがありますが、そういう傾向は全体的にあります。東日本が高い傾向で、西日本が安い傾向にあるというのは一般論としてありますが、一部例外もあります。例えば京都府、愛知県は都市部の京都市や名古屋を抱えているにもかかわらず、わりと高い傾向が出ています。地方では九州は非常に安い額です。いちばん多い推計年収の部分が青森県や秋田県です。
 次の頁で資料2-2「研修医の宿舎と住宅手当」について調べたものです。平均月額ということで整理しております。コメントに書いておりますが、臨床研修病院では、大学病院よりも宿舎あるいは住宅手当が充実しています。具体的にはグラフをご覧いただきますと、左側が大学病院で、右側が研修病院です。左側の大学病院で見ますと、宿舎数がゼロの所、これは宿舎を用意していないということですが、そういう病院が全体で38病院あり、そのうちの7病院は住宅手当が支給されていて、その平均額は2万4,600円です。右側の研修病院のほうでは、宿舎数がゼロの所が260以上あるのですが、このうちの199病院については住宅手当が出されていて、平均額は3万5,100円となっております。
 次の頁は「研修医の当直日数」を調べたものです。これは月の平均回数です。概ね大学病院も臨床研修病院も同様の傾向で、月に3回又は4回当直しています。下に実数を入れておりますが、最多帯は月4回です。これは、大学病院も臨床研修病院も同様です。これも、データとしては月に7回以上、あるいは1回も当直をしていない病院もいくつか見られます。
 資料2-4は、先ほど田中先生からご案内がありました、EPOCの全国データを集計したもののうち、処遇に関わる部分についてこちらでご案内させていただきます。この頁は4,000名分のデータを集計したということで、EPOC全体の概要をお示ししたものです。具体的なデータは次の頁です。研修施設に対する満足度ということで、研修医の側から見て、どの程度満足したか、許容範囲内であったか、不満だったかというのを、食事、宿舎、机・ロッカー等々の項目ごとに整理したものです。どの項目においても、概ねこの中で青の「満足」、黄緑の「許容範囲内」というのが8割から9割強という結果になっております。
次の頁は研修環境に対する満足度を、同じ対象について聴いたものです。左上の休暇・休養の取得状況の色分けについては、研修期間を通じて満足、あるいは許容範囲内であれば青、不満を感じる診療科が1つでもあれば赤の不満というデータです。研修、休暇が8割近く、研修医間の連携状況、指導医間の連携状況、コメディカルからの支援については、それぞれ8割から9割の方々が「満足」もしくは「許容範囲内」と答えております。資料2についての説明は以上です。

○堀田座長
 研修医の処遇の実態というか、全体像がここに現れているのですが、意外に処遇にはばらつきがあるのだなという印象です。ご質問やコメントがありましたらお願いいたします。

○田中委員
 研修医宿舎ですけれども、大学病院の115というのは、分院も全部入ってということになりますか。

○清水主査
 分院も含んでおります。

○田中委員
 全部含んで115の病院があって、それでこの数が出ているということですね。

○清水主査
 はい。

○田中委員
 そうすると、大学はかなり厳しいということになりますね。

○堀田座長
 年収に関しては、最初に(1)で書いてありますように、決まって支払われる給与ということで、この中には当直料は入らないということですね。

○医師臨床研修推進室長
 入りません。

○堀田座長
 時間外とか当直料は入らないと。

○医師臨床研修推進室長
 はい、固定給のみです。

○岡留委員
 資料2-1で、臨床研修病院の中で最大955万円というのがあります。こういうグループというのは研修をさせているのか、実働として働き手として見ているのか、その辺の研修に対する姿勢を窺えるようなデータはないのですか。窺い知れないような事情があるのかどうか。研修医がかわいそうな気もするのです。

○医師臨床研修推進室長
 データとしては、聴き方としてはその研修医が実質的な労働者として回っているのか、それとも本当に研修を受ける身分として教えられる立場として、専らそういう状況なのかというところまでは調査しておりません。いずれにしても外形的に研修医でいて、その病院で研修を受けていると。その中での処遇という聴き方ですので、さらに深く勤務形態等々までは調査はできておりません。

○岡留委員
 私は福岡県ですけれども、いろいろな風聞があって、研修をさせていないのではないか、病院経営の一端として900万円ぐらいのところで激しくこき使っているのではないかという風聞も聞こえてきます。臨床研修制度を逆手に取っているところがあるのです。こういう自己矛盾を抱えているということも、ある程度認識しておかないといけないのかと思います。

○医師臨床研修推進室長
 いずれにしても研修医は当然病院にいて研修を受けるという、その研修の内容がまさに臨床研修ですので、労働基準法的な労働者であるのと、医師法等に言う研修医であるという立場は密接に結び付いた1人として帰属しているものですから、それらの方々について個別にどの部分が研修部分で、どの部分が労働者としての部分なのかと切り分けるのはなかなか難しいのではないかと思います。
 ただ、そうは申し上げながら、極端に研修プログラムを無視したような形で、見た感じが一方的に働かせているだけだとか、逆にプログラムの外形的なものだけで、実際には臨床に実践的に全然携われるような形にしていないというような両極端な部分は問題であろうと思うのです。通常はそのどちらかというのが、密接に結び付いた部分が多いと思いますので、そこまで私どもで調査をして分明するというのは、いまのところちょっと難しいのかなという感覚です。

○神野委員
 関連です。950万円とか1,000万円というのはびっくりするわけですけれども、これは最大値なのです。資料2-1の図で見ると大した数はなくて、920万円超も2病院だけですし、720万円超辺りでも大した数がないです。もちろんこれは非公開にしなければいけないと思いますが、大した数ではないので、一体どういう背景の病院かというのは調べる気になれば調べられると思うのです。それが、次に出てくるような中断とかのトラブル、あるいはメンタルな病気の原因になっていないかぐらいのことは、この群で調べても研修医のためになる話ではないかと思います。

○清水主査
 年収720万円以上の病院については、合計で10病院になります。そのうち5病院が地方部の市町村立病院になります。さらに厚生連1病院、医療法人1病院、都道府県立1病院で、残りの2病院に関しては特殊な病院となっております。

○田中委員
 資料2-1の3頁を見ますと、都道府県別の平均年収が出ています。もちろん例外はありますけれども、医師不足の県の病院が一般的には高いようです。少しでもお金を出して来てほしいのかもしれないし、先生がおっしゃるみたいに、医師不足で大変なのでお金を出すから働いてくださいということなのかもしれないです。いずれにしても医師不足の県が非常に高い値になっているようです。

○堀田座長
 医師の数は西高東低で、平均年収は逆に東高西低になっているという反比例の関係があります。

○今村委員
 給与が高い所ほど、岡留先生がおっしゃったようなことがあり得るとすれば、研修医は、自分が研修医としてちゃんと研修を受けられていないということを、自分から申し出て、それを訂正していただくようなことができる仕組みになっているのかどうか、あるいは厚生労働省として、そういう病院にきちんと指導ができるような体制になっているのかどうかについて教えてください。

○医師臨床研修推進室長
 研修制度全般について、研修医が不満であるとか、何か被害を受けたという問題については、まずその病院の研修管理委員会がありますからその中に上げていただくということが1つあります。それでは解決にならないということであれば、厚生労働省の地方厚生局のほうで適宜相談できる窓口の体制が整っておりますので、電話で連絡を付けていただいて、相談をしていただくことは可能な仕組みになっています。

○今村委員
 研修医がそれをよく知っているかどうかということも含めていかがでしょうか。

○医師臨床研修推進室長
 その辺りのことは、私どもから行政文書として通知で各地方の厚生局に出しております。厚生局に相談ができるということについては、厚生労働省のホームページにも一応記載はあります。

○岡留委員
 ただ、100%研修医性善説でいくとおかしいのがあります。中にはふざけたやつがいます。室長も知っていると思うのですけれども、ドクターとして不的確なのが0.23%ないし1%弱ぐらいいるという話が必ず出てきます。そういう連中をどこでチェックして、どこで振り落とすかということ、これは国の仕事ではないかと思うのです。
 そういう連中をうまく使っていて、その網の目をかいくぐっている連中もいる。病院団体の中でも、そういうのはいっぱい話が出てきます。100人研修医がいたら、100人がみんな正しい性善説、「あなたはいいねえ、本当に研修を受けたいんだね」、これは違うのです、何人かはおかしいのがいるのです。お金を稼ごうなどというふざけた連中が。

○堀田座長
 研修医の問題もありますけれども、それを受け入れる病院の姿勢もひとつあって、そういう所が研修指定病院としてちゃんと機能している病院なのかどうかということが問題です。

○岡留委員
 それもあります。

○神野委員
 具体的な話は別にして、私どもは研修中断者の受入を経験しています。そのときには厚生局も跨いでいましたので、大変な手続というを経験しました。確かに、私どもの目から見たら前の研修病院は、先ほど先生がおっしゃったような過酷な労働条件だったので、「これはおかしいよ、私の所で受け入れてやるから」と言ったまでは良かったのですが、そこからはトラブルが非常に大きくなって、なかなか解決につながらないというか、時間がかかってしまうという事例があります。
 これは病院側、研修医側両方の話で、いいかどうかわかりませんけれども、いわゆる裁定委員会というか、病院側からのクレームも、あるいは研修医側からのクレームもここで受け入れて、ここで検討するような仕組みが、これからはもっともっと必要になってくるような気がするのです。

○岡留委員
 日医はそういうのを持っているのではないですか。

○今村委員
 臨床研修のシステムではなくて、日医会員の裁定委員会というのはあります。

○堀田座長
 ただいまのことについては、修了状況のところで、また次にデータがありますのでそこで議論したいと思います。いまの処遇についてはよろしいでしょうか。こういう現状だということで、是正すべき点もあるようには思いますが、よろしければ次の修了状況の議題に移ります。

○医師臨床研修推進室長
 事務局提出資料3「臨床研修の修了状況」です。資料3-1で「中断の状況」です。平成18年度から4年間について、大学病院と臨床研修病院別で、中断の経験をしているかどうかということでまとめたものです。下の注に書いてありますけれども、各年度における4月現在の受入実績が研修医受入実績Aです。中断者数については、研修病院から地方厚生局に報告があった人数をベースにしております。その結果はいちばん右下で4年間平均全体で1.3%の研修医が中断を経験しています。経年変化、あるいは大学病院と臨床研修病院での大きな違いはありません、全体的に1.3%程度が中断を経験しているようです。
 次の頁に「中断の理由」を調べたものがあります。いちばん多いのが病気療養ということで、半分近くの中断者の理由になっております。その次は研修内容への不満が10%、妊娠・出産・育児が8%、家族等の介護が6%、研修体制の不備が2%、その他が27%です。
 これを大学病院と臨床研修病院で分けてみた場合のデータが次の頁です。傾向としては似たような傾向にありますが、臨床研修病院に比べて、大学病院のほうは病気療養の割合が若干高いです。一方、研修内容への不満については赤で示しているところですが、逆に臨床研修病院のほうが若干高いです。
 次の頁に、「中断者の研修再開状況」をまとめております。そもそも中断ということについては、その後再開することを前提とした手続です。全体として見た場合に、右側の表のいちばん右下で、全体のうち62%が中断者のうち再開しています。中断理由ごとに見ていきますと、病院療養で中断した研修医については60%、研修内容への不満、あるいは研修体制の不備を理由に中断した研修医の85~86%が再開しています。妊娠・出産・育児、家族等の介護については70%前後の方々が中断を再開しています。
 次の頁は「未修了者の状況」です。こちらも先ほどと同様で、研修病院から地方厚生局に報告があった人数です。いちばん右下で、過去4年間の平均で1.0%の研修医が未修了と評価されております。これは、大学病院と臨床研修病院で若干開きがあります。大学病院のほうの計のところを見ますと1.4%、臨床研修病院については0.7%ということで、パーセントにして倍近く大学病院のほうが未修了と評価されている割合が高いということです。
 次の頁は、「未修了の理由」です。ほとんどの場合、研修の実施期間が休止期間としての上限である90日を超えてしまって、研修の実施期間が満たないという理由で83%です。それ以外に目標の達成度が満たないが7%。臨床医としての適性が不適性であるが10%です。
 これを、大学病院と臨床研修病院で分けたものが次の頁です。これも大体似たような傾向ではありますが、どちらかというと大学病院のほうは、オレンジ色で書いた部分ですが、臨床医としての適性に問題があるということで未修了になっている割合が高い。一方、臨床研修病院のほうは、目標達成に到達していないということで未修了になっている割合が高いということです。資料3については以上です。

○堀田座長
 資料3についてご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。先ほどの未修了、再開、中断といった問題がここに現れています。

○神野委員
 先ほど申しましたように、とにかくいろいろな理由があります。訴え出るときに、例えば研修医側からの不満が、病院側からは研修の目標に達していないというときに、研修医がそれを納得できないときにどう訴えればいいのかというときに、助ける手立ては何かないものかと思ってしまうのです。厚生局に訴えればいいというのが先ほどのお答えでしたね。

○医師臨床研修推進室長
 もう少し具体的に申し上げますと、平成21年6月に厚生労働省から各地方の厚生局に対して、事務連絡という形で通知文書を出しております。タイトルとしては、「長期にわたる休止の場合の取扱いについて」となっています。その中の1つに、地方厚生局における相談体制ということで、この場合は休止についてですが、臨床研修を長期にわたって休止する場合の手続に関する問合せ、あるいは研修医からの相談の受付というのは、地方厚生局のほうで適宜行っていて、情報提供も行っていることを明記しております。
 ただ、先ほどもご意見がありましたように、これが研修医の側からよくわかるような形になっているのかどうかについては、若干疑義があろうかと思いますので、今後私どもとしても検討していきたいと思っております。

○堀田座長
 これは、厚生局を通じて収集した修了を認めなかった例なのですが、先ほどの齋藤先生のデータの研修責任者に対するアンケート調査として出てきたものと数字がちょっと違いますが、その辺を説明していただけますか。

○医師臨床研修推進室長
 同じ未修了についての調査ですが、齋藤先生からご案内いただいた中身と、私どもと項目は同じです。ただ齋藤先生のほうは各研修病院に対して直接聴取をされているのに対し、私どものほうは年次が4年間にわたっての累積であるということと、先ほど来申し上げているように、各研修病院から地方厚生局に報告があったものを累積したものですので、その辺りで全く同じデータ結果にはなっていないところがあります。

○堀田座長
 そういうことで、数字的に少し違いがあるのはそんな理由です。齋藤先生から何かありますか。

○齋藤委員
 難しいのは、実際の研修医からの情報ではないということだろうと思います。厚生局から調べても、研修責任者に調べても、結局上からのお話になってしまっているということだけだろうと思います。

○堀田座長
EPOCだとそれがわかりますか。

○田中委員
 EPOCには、指導医間だけでやり取りするメモも作りました。この研修医はちょっと注意したほうがいいというような話で、これを研修医が見ることはできないです。

○堀田座長
 EPOCの中でやり取りがあるのですか。

○田中委員
 そのプログラムの中だけです。だから、よその大学とか、よその病院とのやり取りはできません。例えば、医科歯科大学のプログラムの中で、医科歯科大学附属病院と協力病院との間で見ることはできますし、前のローテーションと、次のローテーションの間で、指導医の情報を共有したほうがいいだろうと、そういう研修医もいるので、そういうのを後から作った次第です。

○今村委員
 先ほど、岡村先生から病気療養の中のメンタルのお話がありましたが、厚生労働省として病気療養の中のメンタルの問題によるものが特定できているのかどうかということが1点です。
 それから、先ほど室長から、研修医の労働者性というお話がありましたが、基本的には病院の中全体のメンタルヘルス対策というか、日本医師会でも勤務医の健康状態をチェックしたときに、一般の先生のメンタルにも問題が多いというデータが出ています。労働安全衛生の中で、事業所としての病院がどういう体制で、働いている方たちのメンタルヘルス対策をとっているかという、そもそもそこが問題になっているので、研修医独自の問題としてこういう問題を考えるのかどうか。病院の中の体制がしっかりしていれば、その中の1つとして研修医もその中で取り入れればよいと思うのです。その辺について厚生労働省の考え方を教えてください。

○医師臨床研修推進室長
 最初のご質問の、病気療養と先ほど書いていた部分の病気の内容なのですが、これは各病院から地方厚生局に来る報告の内容で、詳しくその病名や病気の内容を記述しているものもあれば、病気ということだけを記述して報告が上がってくるものもありますので、どこまでを記述しなければいけないかまでは決めていません。中には、メンタルということを明記した所もありますが、全体がわからないのでそこまで精緻にはチェックできておりませんので、メンタルの割合等々はわかりません。
 2つ目は先生がおっしゃったように、研修医も当然ですけれども、指導する側も病院全体の事業所としてのメンタルヘルスケア、あるいは事業所としての適性という問題については大変重要な課題だと思っております。ここのデータとしては、研修医制度に限定をして議論をしている前提がありますので、その中で研修医についてはどういう大きな制度の下で、どういう形でメンタルヘルスケアをしていかなければいけないか、という観点では問題になり得るかと思っておりますが、ただそこまで私どもも現段階では検討はしておりません。

○堀田座長
 今後の課題ですね。

○医師臨床研修専門官
 齋藤先生のデータと、当方のデータの違いについて補足させていただきます。齋藤先生の調査は、施設のプログラム責任者に対してお訊きになっておりますので、施設を1とカウントしているのに対して、当方では何人という人単位で数えています。
 理由についても、齋藤先生のほうでは、妊娠・出産・育児とか病気といった内訳を訊いていただいているのですが、私どものほうでは研修実施期間の不足という形で一括りになってしまっています。その中にいろいろ入り込んでいて、それで一見違うデータに見えてしまうかもしれません。

○堀田座長
 そのような違いがあっての、それぞれのデータだということをご勘案いただきたいと思います。最後に「その他」の受療行動の調査で、医師に対する患者の意識の変化についての分析の説明を事務局からお願いいたします。

○医師臨床研修推進室長
 今回の議題の直接の関係ではありませんが、前回のワーキンググループで、患者の側から見た満足度というのが非常に重要だというご議論を賜りましたので、私どもで調査をしている受療行動調査の中にその関連が出てまいりますので、是非これを機会に参考資料としてご案内したいと考えております。
 受療行動調査は、一般病院を利用する患者(外来・入院)を対象として、無作為に抽出した一般病院500施設を利用する患者さんを対象にしております。3年に1度実施しているものです。
 具体的には次の頁で、病院ごとにいろいろ数は記入しておりますが、有効回答数は全部で15万件以上です。次の頁で、その方々について入院患者の診療や、治療内容に対する満足度ということで、いちばん下で、受けている診療・治療内容に満足していますかという聴き方をした結果です。平成8年から3年毎に経緯を見ますと、青が満足、赤が普通、黄緑が不満、その他となります。年を追うごとに少しずつ満足、あるいは普通の割合が増えてきているのがわかります。次の頁は、医師への話しやすさ、対話についての満足度です。平成8年から平成20年まで、満足あるいは普通の割合が少しずつ増えてきています。
 これを病院の種別、規模ごとに見たのが次の頁とさらにその次の頁です。特定機能病院はコンスタントに、平成8年から平成20年まで満足度が上がってきています。大病院・中病院・小病院についても、平成14年に若干減がありますけれども、概ね平成8年から平成20年までの間は割合が高まってきております。医師への話しやすさ、対話についての満足度も大体同様の傾向です。
 いちばん最後の頁は、この調査とは別に医療施設調査をやっております。先ほど対象になっていた病院それぞれが、研修医がいたか、いなかったかというのを把握できるようになっておりますので、これとのクロスで集計をしたものを参考に付けております。左側の入院患者の診療・治療内容についての満足度について、研修医がある場合とない場合ということで、研修医がある場合が、ない場合に比べて満足度が高い傾向にあります。右側の話しやすさ、対話についての満足度についても、研修医がある場合のほうが、ない場合に比べて満足あるいは普通の割合が高い傾向があります。ただし、これについては因果関係は立証されておりませんので、研修医がいるから、いたから高かったというところまでの調査結果は出ておりません。その点だけご認識いただければと思います。

○堀田座長
 同じ項目を、同じ時期に調査したということですね。

○医師臨床研修推進室長
 はい。

○堀田座長
 そういうことで、経年変化が一応比較できるということです。かなりの数の患者さんを対象にしていると思います。このデータからは患者さんからの評価が次第によくなっていることは大変喜ばしいというか、良いことだと思いますが、何かコメントはありますか。

○岡留委員
 研修指定病院のほうが、広い意味では漠然としていますけれども、モチベーションがやや高いのではないですか。若い連中が入ってくると、自分らも勉強しなければいけないし、病院のクオリティを上げるためには何が必要か、チーム医療なのかとかいろいろなことが考えさせられるのではないでしょうか。

○横田委員
 ちょっと危惧されるのは、研修指定病院ではない病院の医療の質が落ちていっているのではないか、という捉え方はできないのでしょうか。そこが非常に問題だと思うのです。中小病院です。

○岡留委員
 先生がおっしゃるように、それが問題になっています。

○堀田座長
 このデータは、あくまで因果関係を示すものではないということなのですが、確かに研修医がいる病院はそれなりの努力をしないと、研修医に受け入れられないことがありますので、その意味ではある程度の関連はあるかもしれません。

○片岡委員
 実際に地域医療の研修先の先生方からも、研修医が来ることによって、「いまの教育はこうなっているのだという現状を知ることができた」いう御意見や、OSCE世代の研修医がきちんと自己紹介をして診療を始める姿をみて、「自らの接遇の在り方を見直した」というような御意見がありました。仮に研修病院でなくとも、地域医療研修などを通じて、研修医あるいは若手医師が何らかの形でローテーションを行うことは大事なのではないかと思いました。

○大滝委員
 大学でも同じような傾向が見られます。研修必修化と、モデル・コア・カリキュラムや共用試験OSCEがほぼ同時期に導入されました。その内容については、型にはめるという悪い見方もあると思います。しかし、たとえば私は「患者さんに挨拶しなさい」などというトレーニングは受けずに研修に入りましたが、今はごく当たり前のこととして、学生にそのような教育が行われています。私の知っている教員でも、学生にそういう指導をするようになったから、自分も患者さんに挨拶をするようになったという人もいます。この時期に、そういうことが同時に起きていると思います。

○神野委員
 あとは指導医教育が非常にできています。いままでの指導医は基本的な社会性などというのは勉強したことがなかったのですけれども、臨床研修病院になったことで、指導医セミナーになって2泊3日やって、そこで改めて見つめ直していただいたのもこれの効果ではないかと思います。

○堀田座長
 今村先生、こういうデータを見てどうですか。

○今村委員
 全くおっしゃるとおりだと思います。私も指導医の講習会に出て、改めて、教えることは学ぶことということで大変教えられることが多いという実感は持っています。患者さんにしても、高齢者の患者さんは若い先生に診てもらいたいというか、若い先生に診てもらうとうれしいという気持もあるので、若干そのような満足度もあるかなと思いました。

○堀田座長
 いずれにしても、これは研修医制度導入による直接の影響というものではなくて、受療行動全体としてで、いまの医療に対してどう思うかという話です。その点を勘案した上でも、こういうことは悪くない、思った以上に評価していただいている部分もあるのと思いました。

○田中委員
 本日いろいろな数値を見せていただいたのですけれども、これは実際にそういうデータが取れるかどうかということで、無理だったら仕方がないのですけれども、臨床研修が必修化された後、修了者が医籍に登録することは決まっているわけです。年毎に何人登録したかを統計として出して、それが修了者とあまりギャップがあるようだったらそれは問題です。ここでは数字を議論するというお話もありましたので、次回にでも。
 もう1つは、大学のプログラムで研修している人数が、今年は過去最低になったと聞いています。つまり、いつも出てくるような研修開始の前の年か何かのデータは出てくるのですけれども、もっと前はもっと大学に多かったような気がするのです。過去10年間ぐらいの、大学で研修した研修医の数と、それ以外の病院、その数が出ることによって何がわかるかというと、いかに大学が不人気になったかということがわかると思います。逆に、それがどのぐらい医療構造にインパクトを与えたかということもわかると思いますので、そのデータをもし出せるのであれば出していただきたいと思います。

○堀田座長
 もう少し遡ってということですが。

○医師臨床研修推進室長
 お調べをして、また改めてご案内いたします。

○堀田座長
 次回わかったところでお願いいたします。事務局から今後の予定等をお願いいたします。

○臨床研修指導官
 今後の開催日程ですが、次回は1月を予定しております。詳細が決まりましたら、後日改めてご案内させていただきます。

○堀田座長
 本日はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省医政局医事課
医師臨床研修推進室

直通電話: 03-3595-2275

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