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2011年11月2日 第27回がん対策推進協議会議事録

健康局総務課がん対策推進室

○日時

平成23年11月2日(水)
14:00~18:00           


○場所

厚生労働省 18階 専用第22会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

1 開  会

2 議  題
 (1)がん研究専門委員会からの報告について
 (2)在宅医療、チーム医療について(報告)
 (3)がん登録について

3 意見聴取
 ・サバイバーシップ・経済負担について
  サバイバーシップと経済的負担~患者が抱える社会的な痛み~(桜井参考人)
 ・就労支援について 
  がん患者・家族の就労問題について(高橋参考人)
 ・がん予防・検診について
  我が国の乳がん検診~MMG検診の現状と問題点~(園尾参考人)
  地域でのがん検診の取り組みの実情について(中山参考人)
  たばこ対策について(健康局総務課生活習慣病対策室)


○議事

出席委員:門田会長、天野会長代理、上田委員、江口委員、嘉山委員、川越委員、北岡委員、田村委員、中川委員、野田委員、花井委員、原委員、保坂委員、本田委員、前川委員、前原委員、眞島委員、松月委員、松本委員
参考人 :園尾参考人、桜井参考人、中山参考人、高橋参考人

○鷲見がん対策推進室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第27回がん対策推進協議会を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 事務局で健康局がん対策推進室長の鷲見でございます。
 初めに、本日の委員の出欠状況でございますが、中沢委員からは事前に御欠席との連絡を受けております。
 また、嘉山委員、江口委員、本田委員より開催時間に遅れるとの連絡を受けております。
 がん対策推進協議会の委員定数20名に対しまして、本日は19名の委員の方に御出席いただくことになりますので、議事運営に必要な定足数に達していることを御報告申し上げます。
 なお、事務局には厚生労働省のほか、文部科学省より出席をいただいております。
 また、本日はサバイバーシップ・経済負担について、特定非営利法人ホーププロジェクト理事長の桜井様。就労支援について、獨協医科大学公衆衛生学准教授の高橋様。がん予防・検診について、川崎医科大学附属病院乳腺甲状腺外科部長の園尾様。大阪府立成人病センターがん予防情報センター疫学課長の中山様を参考人としてお呼びしており、後ほど御意見をいただくこととしております。
 それでは、以後の進行につきましては、門田会長にお願いいたします。会長よろしくお願いいたします。
○門田会長 門田でございます。
 本日も、19名の方に出席していただけるということで非常に喜んでおります。特に本日は、前も御案内しておりますけれども、多分内容的に4時間ぐらいかかるのではないかという非常に長丁場で、集中力を保ちながら頑張りたいと思いますので、是非、御協力よろしくお願いしたいと思います。
 本日は、がん研究専門委員会の最終的な報告書をとりまとめていただいておりますので、その御報告をしていただきます。
 また、前回の協議会で集中審議を行いました在宅医療、チーム医療について各委員の方から御意見をいただき、それをとりまとめたものを御報告させていただきます。
 それから、がん登録につきましては、前回参考人の方々から御意見を聞かせていただいたところですので、本日まとめたものを基に集中審議を行いたいと思います。
 それから、次回の集中審議のために本日、サバイバーシップ・経済負担、就労問題、がんの予防・検診等について参考人の方々の御意見を聞かせていただくことにしております。
 本当に盛りだくさんでございますので、是非、進行の御協力をよろしくお願いしたいと思います。
○天野会長代理 済みません、議事に入る前に1点、私から。本日、午前中に国会の方で参議院の代表質問が行われていまして、公明党の荒木きよひろ議員から野田首相に対して、小児がんの対策に関しての質問があったと聞いております。野田首相からその対策について答弁があったということで、趣旨としまして、小児がんは小児の病死原因の第1位でありながら、これまでのがん対策全体の中では子どもへの配慮が必ずしも十分ではないとの指摘があったところでありますと。現在、厚生労働省のがん対策推進協議会において、がん対策推進基本計画の見直しが進められておりますが、その中でも小児がん拠点病院の整備や相談体制の確立の必要性が議論されていますと。御指摘も踏まえまして、次期がん対策推進基本計画や平成24年度の予算編成過程において、小児がん対策を着実に進めていきますという大変力強いメッセージをいただいておりますので、私も小児がん専門委員会の委員の1人としまして、是非、小児がん対策の推進につきましては、首相から答弁いただいたとおり、大変ありがたいことでございますので、是非推進をしていただきたいということをこの場で申し上げさせていただきたいと思います。失礼しました。
○門田会長 ありがとうございました。中央の審議の中でそういう言葉が出たということは非常によかったと思います。
 では、予定どおり進めたいと思います。では、事務局から資料の御確認をお願いします。
○鷲見がん対策推進室長 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 資料1 がん対策推進協議会委員名簿
 資料2 ~今後のがん研究のあり方について(案)~
 資料3 在宅医療、チーム医療に関する委員からの意見のまとめ
 資料4 がん登録に関する委員からの意見のまとめ
 資料5 桜井参考人提出資料
 資料6 高橋参考人提出資料
 資料7 園尾参考人提出資料
 資料8 中山参考人提出資料
 資料9 たばこ対策について
 参考資料 がん検診について
 以上、資料の過不足等ございましたら、事務局にお申し出ください。
○門田会長 いかがでしょうか、大丈夫でしょうか。特に問題ないようでしたら、本日の議論に入りたいと思います。
 それでは、先ほど御案内いたしましたけれども、初めに議題1、がん研究専門委員会からの御報告を野田委員にやっていただきたいと思います。
○野田委員 ありがとうございます。資料2をごらんください。7月の協議会にそこまでの途中経過報告ということで、専門委員会による課題の洗い出しと、それに対する対策についてという資料をお示しいたしました。その場所で、嘉山先生からまとめ方についての御指摘をいただき、それから、臨床研究の最前線に立っておられる田村先生、前原先生から研究の取り組みの個々の部分について御指摘をいただきました。その後、患者委員の方々からとりまとめということで、これに対する問題点もいただきました。
 そういった御意見をいただき、更に、当日の議事録を見ていろいろな方から各委員に指摘が入りまして、それを受けて内容を再チェックした上で新たなとりまとめと。基本的に骨子は変わっておりませんが、とりまとめの形が変わって報告書となったと御理解いただければと思います。
 今回の報告書について簡単に御報告をいたします。
 最初の3ページに「1.はじめに」という項目がありますが、一番最初に現在のがん対策推進基本計画によるがん研究の取り組みについて書いてございます。
 3ページ、「2.がん研究の現状」ということで、そういう取り組みについて行われているものを、がん研究の現状ということで、最初にパラグラフに現在の国内のがん研究に対する公的支援は、この3省庁を初めとする複数の省庁で行われているんだと。更に、実際の企画、立案、実施に当たっては、総合科学技術会議の評価あるいはイノベーション会議の評価等が行われる。そういうマルチな形で評価が行われているというようなことが書いてあります。
 第2パラグラフですけれども、こういうがん研究支援体制は非常に多様性を持って強いんだけれども、時に全体像を見えにくくしている。中でも、患者さんたちに対して、がん研究の全体像が理解しにくい形になっていることは問題であるということを書いてございます。
 もう一つ、がん研究は公的支援のみでは行えないということが書いてあります。すなわち、企業を初めとする民間のがん研究の推進も、将来のがん医療にとっては非常に重要だけれども、近年日本ではバイオベンチャーの起業が大きく減少し、更に、製薬企業の中に研究開発機能を海外に移す会社も出てくるなど、民間での研究開発力の低下が懸念されるということで、今後のがん対策に関しては、こういう民間に対する対策も必要であるということが書いてあります。
 4ページはこの間も御説明いたしました、このとりまとめをした過程の御説明ですので省かせていただきます。
 いよいよ5ページから「2 取り組むべき課題」という部分になります。ここは一つ一つ御説明させていただきます。
 この取り組むべき課題の骨子は、多くのものが前回皆様に御提出いたしました課題、そして、それに対する施策と合致するものです。ただ、あのときの協議会の先生方の意見を踏まえて、よりがん対策に、そして、患者さんの目に見えやすいものにがん研究の今後の施策をするために、とりまとめのまとめ方を大きく変えてあります。「本項では、がん研究を、その成果が患者および国民の手に届けられる形により、(1)今がんで苦しむ患者に有効で安全ながん医療を届けるためのがん研究、(2)明日のがん患者のための新たながん診断・治療法を開発するがん研究、(3)将来のがん患者を生まないためのがん研究に分類し、各々のがん研究推進における課題と、それを克服するため、今後5年間に実施しすべき施策について述べる。また、社会におけるがん研究のあるべき姿を明確にすることが、今後のがん研究推進にとって重要であるとの認識のもと、(4)社会とがん研究の関係に関する課題と実施すべき施策についても述べる」と設けて、この4項に分類してあります。
 以下、その項目ごとにとりまとめの御説明をさせていただければと思います。
 まず「1.今がんで苦しむ患者に有効で安全ながん医療を届けるためのがん研究」ということで総論が載っております。現在のがん対策基本計画でも、臨床的に重要度の高いがん研究の実施がまずうたわれております。そして、取り組むべき施策として、治験・臨床研究の推進が挙げられています。その結果、実施拠点の整備・強化等には進展が見られて、最も重要な課題であるドラッグラグの解消に関しても一定の成果が得られていると。しかし、希少がんなどを中心に現在も多くの領域でドラッグラグが依然存在しており、これらを解消するためには、国内の治験・臨床研究の更なる推進、法整備を含む臨床研究の制度面の改革、専門職人材の育成など、各種の施策を積極的に実施し、充実した治験・臨床研究の推進体制を整備する必要があるということが書いてあります。これが概要になります。
 そして、以下5~7ページにわたって(1)(2)(3)と3項目を立ててとりまとめをしております。
 「(1)ドラッグラグ解消の加速に向けた臨床研究推進体制の整備」ということで、現状は上とそれほど変わりませんので省かせていただきますが、6ページの「(取り組むべき施策)」のために、取り組むべき課題をここにまとめてあります。重要ですので、ここは読ませていただきます。
 (取り組むべき施策)
   安全で効果的ながん治療薬を速やかにがん患者に届けるため、我が国のがんの臨床試験を統合・調整する新たな機関を設置し、国全体の臨床研究の戦略構築や臨床試験の効率化を図るとともに、規制当局や保険支払い側とも連動して、新たな承認申請の枠組み構築を目指す必要がある。具体的には、質の高い会研究者主導臨床試験の結果を適応拡大の承認申請データとして使用可能とする制度、あるいは、保険支払い側がこれを審査し事実上保険償還を認める制度の構築が必要である。特に、希少がんなどでの適応拡大試験や審査・承認の遅れによるドラッグラグは、今がんに苦しむ患者にとって最も切実な問題の一つであると同時に、次の新薬治験参加の遅れによる新たなドラッグラグを発生させることから、早急な制度構築が必要である。
 この内容も大方は前の資料にも載っておりますけれども、ドラッグラグの解釈の点など新しい文言が若干加わっております。
   適応拡大試験では、海外先進国と同様に治験届に準じた届け出を行った上でICH-GCP準拠とすることを目標に公的資金による試験実施体制整備及び支援や法整備を進めるべきであり、国と企業との間での薬剤供与やデータ受け渡し等に関する枠組みの整備も必要である。また、臨床試験グループに対しても基盤整備のための選択的投資を行い、その臨床試験の質と成果に対して厳正な評価を行うことで、より効率的な試験の推進を行う必要がある。
 最後は人材育成の部分が書いてあります。
 更に「(2)わが国からの新薬開発を目指した臨床研究の推進」ということで、現状と課題については、基本的には前と書いてあったものと大きな違いはございません。
 (取り組むべき施策)
   世界基準のfirst-in-human試験を行える施設や第1相試験終了後の未承認薬を用いた研究者主導臨床試験を行うことができる施設に対し集中的に基盤整備の財政的支援を行ない、世界最先端の開発拠点を構築し、国内外企業やアカデミア・ベンチャー企業からの新薬導入や投資を呼び込む必要がある。また、これらの拠点に対しては公的支援により薬事部門強化を行い、研究者主導未承認薬試験においてもICH-GCPに準拠した試験が実施可能な体制の整備が必須である。
 さて、(3)は新たな部分ですけれども、今の患者さんに治療を届けるためには、やはり外科治療・放射線治療の臨床試験の推進が強調されるべきであるという意見がありまして、それで(3)が加わっています。
 前半は外科治療や放射線治療の臨床試験というものを推進すべきであるということが書いてありますし、後半部分ですけれども「さらに、実際のがん患者の治療に当たっては、薬物療法を含めた集学的治療法の選択が非常に重要となるが、現在の臨床試験・臨床研究支援の枠組みにおいては、効果的な集学的治療の確立に関する臨床研究推進の支援が大きく不足している」ということで、「(取り組むべき施策)」にも、既存の臨床試験ネットワークによる臨床試験の枠組みを工夫することで、集学的治療部分にもっと財政的支援を強化するべきであるという、機器に関する臨床試験の部分ですが、こういうことを書いています。
 次に「2.明日のがん患者のための新たながん診断・治療法を開発するがん研究」ということで書いてございます。
 ここには4つの項立てがあります。「(1)がん特性の理解とそれに基づく革新的がん診断・治療法の創出に向けた基礎研究の推進」となっています。これは前回の課題にも述べられていたように、8ページの「(取り組むべき施策)」として、研究成果に対する透明性の高い評価制度を確立・維持しながら、先端的生命科学部などの関連する分野への文部科学省科学研究補助金等による支援を一層充実させるとともに、がんの基礎研究に対する公的支援を強化することで、基礎研究の国際的優位性を維持することが大事であると書いていて、その後ろに、中でも次世代がん医療の開発につながる各種シーズの探索を強力に推進して、それらががん患者の手元に届くまでの道筋を見据えた基礎研究・橋渡し研究を重点的に支援する必要があると。特に、革新的薬品開発に向けた分子標的探索、がんの生存率を飛躍的に向上させることが可能な早期診断バイオマーカー開発、そして、放射線治療機器開発に向けた基礎研究などに焦点を当てて推進をすべきであるということが書いてあります。
 一番最後のパラグラフには、がんのゲノム・エピゲノム情報は、今後の新規分子標的の発見と新薬開発、更に、個別化治療の確立などに必須の情報なので、国際的にも競争の激しい分野となっている。そのため、速やかに日本人のがんの公的バイオバンクとゲノム・エピゲノム解析拠点を国内に整備して、得られる情報を基にデータベースを国家規模で構築する必要があると。このデータベースは、広く開かれたがん研究者が使える形にすべきであるということが述べられております。
 次に「(2)次世代がん医療の速やかな開発を目指す橋渡し研究の推進」です。
 「(現状及び課題)」にもありますが、橋渡し研究に関しては近年、各省庁を中心に力を入れた支援が行われているわけですが、今後の社会で求められるがん医療の変革を明確に視野に入れれば、現在の国内のがんTR研究は質的にも量的にもいまだ大きく不足していると言わざるを得ないと書いてあります。
 「(取り組むべき施策)」として、アカデミア創薬やアカデミア発医療機器開発の強化を目指して、出口を見据えた評価を厳正に行い、有望と思われるシーズに対して重点的かつ長期的な研究支援を行う必要があると書いてあります。加えて、ベンチャー企業も含めたTRに対して薬事面などの支援を行うコンサルタント体制の構築等、アカデミアTRに対する支援体制を整備・強化する必要があると書いてあります。
 (3)は、先ほどの臨床研究でも出てきましたが、次世代への医療機器開発ということです。ここは簡単に読みます。
 (現状及び課題)
   現在の日本は、医療機器、特に治療機器に関しては大幅な輸入超過になっており、がん医療においても、近年、その発展が目覚ましい放射線治療でも、X線外部照射装置は、その殆どが輸入されている。加えて、現在の日本では、未だデバイス・ラグが解消されておらず、先進的治療機器による最新のがん治療を日本の患者に速やかに届けるためには、日本発のがん治療機器を開発することが必要である。
 ということで「(取り組むべき施策)」が書いてあります。1~4で幾つかのエリアが書いてありますが、大事なポイントは最初の2行、先端科学技術あるいは先進的医療技術の面でも日本が優位性を有する分野に焦点を絞って、国民のニーズが高い医療技術を対象として、その開発を重点的に推進すべきであろうということが書いてあります。その分野として1~4までが示されております。
 もう一つ重要な点が後半に書いてありまして、医療機器開発が創薬などと違う部分は、改善・改良型の開発プロセスが重要であるということを踏まえて、オープンイノベーションを可能とする医療機器開発のためのPRあるいは臨床研究拠点の整備を進めるべきであるということが書いてあります。これが現在足りないのではないかという主張がかなり強くされています。具体的には、がんの高度標準化治療が行われている実際の施設に企業やアカデミアが利用できる医療機器開発プラットフォームを整備し、そこで探索的臨床研究やPOC取得のための臨床試験の効率的な推進を継続的に支援すべきであろうということが書いてあります。
 一番最後は、やはり人材の問題です。
 最後の(4)ですが、今回全く新しく入った項目です。現在がん研究は、がん対策に貢献することを目指して行われているんですけれども、今のがん対策が例えば10年後、20年後の大きながんの実態変化に対応できているんだろうかということがありました。ということで、対応できるのかできないのか、あるいは対応するためには何が必要なのかというのも政策科学として研究を進めるべきであろうということが述べられています。
 そのために「(取り組むべき施策)」として「将来の日本の状況を見据えて」以下ずっと書いてありますが、基本としては、超高齢化社会におけるがん医療提供体制の最適化や、がんになっても安心して暮らせる社会構築の検討などの政策科学を始めるべきだと。ただし、始めるに当たって重要なのは、こうした前向きの政策科学の推進には、がん医療を初めとする現在のがん対策の効果に関する高精度のエビデンス収集が必須であると。中でも、現在はがん登録の整備と拡充が喫緊の課題であろうと。エビデンス収集ということです。
 そのほかに、一番下の2行に必要なことが書いてありますが、これが新しく加わった項目です。
 次の11ページをごらんください。「3.将来のがん患者を生まないためのがん研究」ということで、基本的にはがん予防というものが中心になっています。
 項目立てとして(1)(2)(3)と3つがありますが、「(1)がん予防法の確立に向けたがん研究の推進」という部分が、今回新たに項目立てとして加わっています。これは、基本的には前の問題点の抽出がどちらかというと公衆衛生研究や政策科学に偏っていたものですから、指摘として、いわゆる基礎研究から始まるような予防のエビデンスというもののストラテジーに関する議論が必要であるということで言われています。
 「(取り組むべき施策)」として、新たながん患者の発生を予測し、効果的な予防政策を構築するためには、まず、従来の疫学的研究による発がん要因の検出力とその妥当性及び動物モデルによる検証実験の意義に関して、再評価をすべきではないかと言っています。加えて、予防のエビデンスをもたらす各種の研究手法を用いて、新たな発がん要因の同定と発がん機構の解明は引き続き重要で、今こそ放射線・化学物質等への長期低レベル曝露による健康被害に関する実験的臨床研究及び大規模な疫学研究を強力に推進すべきであるということが書かれています。これは時期の問題がかなり影響しています。
 そして、(2)公衆衛生研究ということで、「(現状及び課題)」は前も述べましたので、個人情報を使ったリンケージというのが必要だけれども、それがなかなかいかないということで、公衆衛生研究はどちらかというと制度面のことが書いてあります。
 「(取り組むべき施策)」として、がんの実態把握と医療情報の整備を推進するには、公的統計や行政資料の研究利用を可能とすることが必須であると。個人情報の保護と適正なバランスを保ちつつ、公的統計や行政資料を個人情報を用いた個人単位のリンケージに使用するための法的な枠組みを整備する必要があると。その他、制度のことが書いてあります。公衆衛生研究推進のための制度面の改善が是非とも必要であるということが書いてあります。
 「(3)政策研究・ガイドライン」ということで、特に括弧して「予防・検診に関する」と絞り込んでおりますが、政策研究においても公的統計・行政資料の研究利用における障壁の問題があります。研究者と研究統括機能の不足などの問題も共通にございます。また、がん対策の現状からのニーズに基づいて優先的な研究費配分が行われていない、それが結果としてがん対策の推進の遅れにつながっているということで、「(取り組むべき施策)」として、政策研究として、1がん検診の精度管理、受診率向上施策に関する研究、2がん予防の実践に関する研究、3がん診療の質評価に関する研究、4患者の療養生活や就職支援などのための患者コホート研究などについて、がん対策上の必要を考えた議論により優先順位づけを行い、優先的な研究費配分を検討する必要があるということが書いてあります。これが政策研究というところです。
 最後に4番目の項目ですが、かなり広いものが包括されていますが「4.がん研究と社会」ということで書いてあります。中には(1)~(4)までのポイントがありますが、お互いにそれほどリンクしていないものもありますので、一つ一つお話しいたします。
 「(1)国民そしてがん患者とがん研究の研究」ということで、これは繰り返しになりますが、現状でがん研究の領域は、がん対策のほかの領域に比して、市民や患者に対する情報提供や広報活動が大きく遅れており、我が国のがん研究推進状況の全容や、各がん研究推進事業の具体的な目的や成果について、国民に対してわかりやすく透明性の高い説明が十分になされているとは言えない。中でも、治験や臨床試験に関する情報の開示や広報活動が不十分なため、患者への臨床試験へのアクセスを困難なものとしている点は大きな問題であると書いてあります。
 「(取り組むべき施策)」として書いてありますが、情報公開の推進に関するものが言われています。
 「(2)がん研究の推進体制」です。基本的に現状として、複数の省庁によるがん研究に対する公的支援の推進によって、我が国のがん研究が多様性を維持している点は高く評価できると。ただし、各省庁により支援されるがん研究の推進全体を統括調整する組織が存在せず、関係省庁相互の連携も十分とは言えないため、戦略的ながん研究推進という視点に乏しいのは問題であるということが書いてあります。
 「(取り組むべき施策)」として、各省庁が独自の視点を持ってがん研究を推進する体制は、排気量の大きいエンジンが幾つかついているということですので、これは維持しながら、国内すべてのがん研究の推進状況を俯瞰して、連携を促進するような機能を持つ組織が必要であるということが書かれています。
 「(3)がん研究を担う人材の育成」です。あらゆるがん研究の分野で人材の不足がありますが、これは数的な不足というよりも質的な不足、つまり国内では研究支援のための専門職人材に対するコストが大きく不足して、人材育成システムも整備されていないと。つまり、専門職人材が大きく不足していると。研究者のみにて研究が行われる時代ではないということが書いてあります。
 「(取り組むべき施策)」として、多様ながん研究の推進に必須な各種の専門職のために、安定したポストを国内に創出することが急務であるということが書かれています。
 (4)が倫理審査の整備の必要性です。
 最後に「3 おわりに」ということで、基本的にもう一回今の流れをまとめてあります。どういう流れでこれが書かれているかが第1パラグラフ。
 第2パラグラフの一番最後ですが、基礎研究から臨床研究まで一連の研究推進強化のための施策など、まさに多岐にわたるけれども、次期がん対策推進基本計画には、これらの施策が盛り込まれることが重要であると考えているということを書いてございます。
 3つ目のパラグラフですけれども、中でも、研究事業の実施から評価までの情報公開を進めて、公的支援による研究の公正性を担保して、特に臨床研究へのがん患者の参画を促進するという施策は大変重要であって、必ずがん対策推進基本計画に書き込まれるべきであろうということです。
 第4パラグラフとして、がん対策推進の形として、関係省庁をつなぐ情報収集やあるいは事業推進の調整などを行う組織が必要であろうということ、これで初めて国としての戦略的な研究推進ができるのではないかと書いてあります。
 一番最後ですけれども、前回のがん対策基本計画作成時と違うのは、もう走ってたがん研究推進のマスタープランである10か年総合戦略が終了するということがありますので、その後を考えれば、今回のがん対策推進基本計画はその基盤となるべきものですので、その意味でもこれは重要であるということが書かれてあります。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 前回のと内容的には余り変わっていないということでございましたけれども、整理の仕方は大幅に変わってきて、この協議会にふさわしい形になってきているような気がいたしましたが、御発言は何かございますか。
 天野委員どうぞ。
○天野会長代理 ありがとうございます、2点ございます。
 まず、1点目なんですが、前回の協議会でも申し上げたかと思うんですけれども、例えば、HTLV-1ウイルスのように日本人特有、もしくは日本人に多いがんの研究については、日本発の研究が行われない限りは日本の患者さんが救われることはないわけでして、海外からの治療薬に頼るわけにはいかないと。例えば、成人T細胞白血病に対してはCCR-4抗体などの国内発の創薬とかが行われているところだと思うんですが、そういった日本人特有のがんや日本人に多いがんに対する研究の重点的な取り組みについても是非。ありましたか。
○野田委員 済みません、あったのが消えてしまっていますね。これには欠けています。
○天野会長代理 是非、それは日本の患者さんを救うために一文入れていただければというのが1点でございます。
○野田委員 2の中に入れるということでよろしいでしょうか。
○天野会長代理 はい、是非お願いします。それが1点目でございます。
 2点目は質問になるんですが、8ページの中で日本人のがんの公的バイオバンクとゲノム・エピゲノム解析拠点の整備を国家規模で構築するということが書かれていると思うんですが、これについては現時点でどういった体制になっていて、がん研究の専門委員会の方では具体的にどういった施設を想定して、こういったことを書かれているのかについて、もし、議論があったのであれば教えていただきたいのですけれども。
○野田委員 現時点では、こういうものに当たるようなものはない。ただし、そういうものに対する計画はあって、今いろいろなところで動いているというのは聞いています。なので、私たちとしては世界で戦うための機能を持ったものがバイオバンクとしては少数だけれども複数、それから解析拠点は、例えば5か所とか6か所ぐらいの、そういう機能をある程度持っているところがその責務を担って、得られるデータは常に公開するという原則においてデータベースをつくっていくと。つまり、国家の財産としてのデータベースをつくるという意図で書かれていて、具体的な場所等については、いろいろ動いているということは聞いていますが、それについてどれを支援するとか、どれがというようなディスカッションは出ていません。
○門田会長 嘉山委員どうぞ。
○嘉山委員 今の天野委員の御質問に補足をいたします。科学技術会議がゲノムコホートに関してはもうやらなければならないということを決定していまして、この10月から始まりました。全部で8つの組織から大学も含めまして応募があって、1か所だけがんセンターが幸いに選ばれたんですか、本庶先生から非常に厳しい内容のチェックがかかって、それはなぜかというと、単にがんセンターのゲノムコホートの創設ではなくて、オールジャパンにすると。まず、そのモデルケースとして3年間やってごらんなさいと。現実には、野田先生は御存じだと思いますが、実際にゲノムコホートが動いているのは山形大学のコホート、これは文部科学省の21世紀グローバルから始まって、その後またグローバルをとっているんですが、あとは名古屋大学がやっている名古屋地区のグローバルと。あと、計画はありますけれども、実際に住民からゲノムをとって、それをコホートとして研究しているところはありません。現在の状況はそういうところです。今の天野委員の御質問にお答えします。
○野田委員 ということなので、まさに今、嘉山先生がおっしゃったことは、その枠組みの中のものだと思います。
 7月からこれを書き直しているうちに、むしろそっちの方が進んでいるので、ここに余り具体性は持たせていませんけれども、国家規模のものであると同時に、国のすべての研究者のものであるというものをつくることが大事だという意識です。
○嘉山委員 だから、今言ったように、国のモデル化のものであってがんセンターのものではないんです。あとは九州大学の久山町の昔からのオオマエ先生がおやりになっているのと我々は組んでいますので、それがオールジャパンになると思っています。
○門田会長 そのほかありますか。前原委員どうぞ。
○前原委員 14ページの「(4)がん研究に関する倫理審査」で1つ質問です。現在、いろいろな臨床研究を推進する上で、各施設、各大学に倫理審査委員会がありまして、一つ大きな研究の足かせになっているのが、各倫理委員会での考え方の違いです。例えば、学会主導でいろいろな臨床研究を企画して、各大学にお願いして倫理審査委員会にかかったとしても、大学によって考え方が全く違うので、それが非常に大きな足かせとなっている。すなわち、「(取り組むべき施策)」の中で、中核的な研究組織における倫理委員会等の判断事例のデータベース化はいいと思うんですが、現在、申請する側はしっかりと研修して、教育してというようなことになっています。しかし、審査する側の教育や研修が全く文言になっていないと私は認識しています。それによって臨床研究推進の大きなブレーキとなっている気がいたしますので、そこも是非クローズアップしていただきたいと思います。
○野田委員 今、前原先生が言われたように、そこは大きな問題だということはよくわかっているんですが、結局、書かれているのは先生がおっしゃった3行なんですね。これがいわゆる平準化。平準化と言うと言葉はあれですけれども、ちゃんと高いレベルでの平準化ですが、そこに今おっしゃるようなものをもう少し加えるのは可能だと思います。
 ただ、もう一つ踏み込めなかったのが、セントラルIRBを強く推進するということまで書き込むべきかどうかといったときに、かえって施設を限定させることになって、今の段階ではまだということで、ちょっととまっているのが一つ。それから、3省庁の共通指針が今まさにまとまろうとしているので、それとそごがないようにというところがもう一つあります。
○門田会長 眞島委員どうぞ。
○眞島委員 今回は前回のレポートと違いまして、今、明日、将来、社会とがん研究と非常にわかりやすくまとめていただき、ありがとうございます。特に、今ドラッグラグに苦しんでいる患者さんにとってみれば「1.今がんで苦しむ患者に有効で安全ながん医療を届けるためのがん研究」とまとめていただきまして、更に突っ込んで早急な制度構築が必要であるというところまで書いていただきまして、大変ありがたいと思います。
 新しく追加されました9ページですけれども、実は私どもがドラッグラグの問題で話をしますと必ず言われますのが、そんなに患者さんのためにドラッグラグでお薬の承認を進めていったら、日本のがん医療はパンクしますよという話です。実は欧米ではHTA(Health Technology Assessment)のような薬剤、医療機器を含む医療技術の評価活動が行われておりまして、そこにもがん患者団体が参画しています。がん医療をよりよいものにしたいという思いは欧米の皆さんも同じですけれども、そこにはコスト的な負担もあるので、費用対効果も考えながら医療改革を進めています。是非ここに書かれておりますことが、そのような取り組みへと進展していくことを切に願います。
 それから、13ページでございます。「(1)国民そしてがん患者とがん研究の関係」なんですけれども、公的な研究機関と関連学会が連携して、臨床試験情報の開示、公開を促進することが非常に大切だと思います。もう一つ重要なポイントがあります。関連学会が診療ガイドラインをつくっていますが、例えば、NCCAガイドラインを読みますと、まず第1選択肢として提示されたら、臨床研究を考慮してくださいと書かれてあります。理由は、最後の手段として臨床試験を考慮する患者さんがたくさんいますが、残念ながらその段階ですと先生方がいかに努力されても、患者さんはなかなか臨床試験に入れないという現状があります。MDアンダーソンの上野先生も指摘されていますが、その段階ではだめなんだと。ですから、ガイドラインで第1選択肢から臨床研究を考慮する事の大切さをうたう必要があるということを先生は話されておりました。やはり日本でも同じように臨床試験を前進させるためにも、各学会の先生方と一緒になって臨床研究を選択肢のひとつとしてガイドラインに盛り込むという取り組みもお願いできればと思っております。
 それから、最後ですけれども15ページ、日本のがん研究は今まで患者さんからしてみれば非常にブラックボックス的な存在で、シーズから論文までなのでしょうか、というような疑いもあったかと思うんですけれども、今回はこのレポートの中でシーズからベッドサイドまでと、患者さんのところまで届けるんだと明確にうたわれたことは大変ありがたいことだと思います。それから、こちらの4パラグラフ目に書かれてあります、情報収集と公開及び事業の推進の調整を行う組織の設立がこれに当たると書かれていますが、この組織とは、どのようなイメージでしょうか。教えていただけますか。
○野田委員 具体的なイメージという、例えば、省庁的にどういう場所だというのはさほど具体的には考えていません。ただ、まさにここに書いてありますように、関係省庁がそれぞれ企画立案したところから、それが本当に患者さんのところまで届いているのかというところまでの情報を一括して把握できる組織であり、なるべく公正にそれを見られる組織であって、更にそれに対して必要な連携を促すことができるような組織というものを考えています。
 そこには当然、各ステークホルダーの代表者が入って、加えて、ある程度継続的・持続的にこの組織が機能することが大事であろうという2点です。
○眞島委員 わかりました、ありがとうございました。
○門田会長 ほかによろしいでしょうか。
 上田委員どうぞ。
○上田委員 今の15ページの各省庁の研究事業に関する新たな組織、眞島委員の質問ですけれども、最後の全部をまとめたときに省庁間の協働というのは当然いろいろなところで出てくると思いますが、この研究のところで一つ強調しておいてほしいのは、いろいろな施策を提言したときに、人材育成からはじまり、具体的なTR、それから、がん登録をはじめ、いろいろと省庁間の問題が出てきますね。個々のいろいろなところで研究の部分からも必ず文部科学省や厚生労働省、経済産業省との連携が要るということを各論の中にももう少し明記された方が、総論のときに最後には書くとは思うのですけれども、いつも最後の総論に書いて結果的には何も動かないというのが今の日本の省庁間の協力なんですね。ですから、その辺りをもう少し各論できちんと、ここは省庁間がどういう風に協力しないといけないということを明確に、いろいろな箇所で考えていただければいいのかなと思いました。
 第2点としましては、あえてこの中で政策的なことをきちんと研究するという文言があったかと思うんです。12ページ、これは例の個人情報保護などに関してもきちんとした法的な枠組みを考えるべきだということを書いていらっしゃいます。そうすると、研究のところで法的な問題としてこのほかにも、例えば、がん登録があります。がん登録は物すごく大事だと書いてあるけれども、前回も努力目標であったし、条例化をする必要があるのかどうかとか、そういうことを各論として言うべきかどうか。私も言うべきだとはっきり言うにはまだ躊躇はするんですが、今のがん登録が完全にできない、完全にできなかったら将来の研究はないと書いているわけですから、その辺を少し結びつける言葉をもう一歩踏み込むことはいかがなものかという2点を教えてください。
○野田委員 省庁間協力に関しては全体としてのあれなので、どうしてもここへ来てしまっていますけれども、今先生がおっしゃったように、これをパラグラフ、パラグラフ取り出されて使われるときのために、本当に必要だと思うところには書き込むというのはできると思いますし、必要だと思います。
 それから、後ろの部分ですけれども、がん登録に関するところは、また委員に戻して法整備を書き込んでいいかということがあれば、それで書き込むかどうかはできます。ただ、見ていただいてわかるように、非常に微妙な文言が並んでいる、いわゆる体制の整備等をもう一回、今、法整備が必要かどうかということで見直すということもちょっとやってみますが、そこにがん登録も一つのアイテムとして委員に投げかけてみて、その結論で考えたいと思います。
○門田会長 保坂委員どうぞ。
○保坂委員 この会の運営の仕方に対する疑問といいますか、がん研究の専門委員会の報告書の中で、今がん登録の話が出ましたが、この中でも扱うし、協議会の方でもがん登録についてはこの間からテーマになっています。ですから、その辺をどういうふうに扱われるのか、今、野田委員が専門委員会に戻して考えますというようなことをおっしゃいましたけれども、そこで考えることなのか、あるいはがん登録については別の項目でやっているので、そっちでやるから特に専門委員会ではこれ以上突っ込まないのかという。
○野田委員 そうではないと思います、両方だと思います。これは、がん研究のための形として、今回どれだけ取り入れるかわかりませんが、研究推進してがん対策に貢献するための視点からは何が必要かというのはこれで残りますので、それにとってがん登録はどこまでなんだという意見の最終的なものはここに書き込みたいと思います。ただし、それが協議会としてがん登録全体をいろいろな角度から見てどうあるべきかというのを決めるものの単なる一つのデターミナントにすぎないので、それは両方が、こちらはこちらとしてそこで一応区切りをつけておかなければいけないのでやりたいと思いますし、それですべてがん登録が決まるとは全く思っていません。なので、それは協議会の方の取り上げ方、協議会の会長ががん登録をどういう形で決めていくかという、そっちにかかってくると思います。
○門田会長 ちょっと一回整理させていただきたいんですが、今までもやってきていますように、専門委員会は専門委員会のディスカッションをまとめたものとしてここに出していただいているという位置づけになっています。そして、それを参考に我々が協議会として基本計画を書くときにどういう形で取り上げていくかと。本日、集中審議いたしますがん登録については、協議会として今やっています。
○保坂委員 そうですと、この協議会の場で専門委員会の出してきた案を、あそこはこうだ、ここはこうだといじることに何となく違和感があるので。
○野田委員 ありがとうございます、その違和感は当然だと思います。ただ、今回前の2つの委員会の報告と違うのは、私が中間報告として抽出された課題と施策に関して皆さんにある程度投げて、その会場で、あるいはその後もメールで随分いただきましたので、その中で委員と話し合って取り入られるものは取り入れてあるので、そこについての御意見をいただくという感じであって、委員会でまとめましたけれども、さあここでまたやりましょうというものではないつもりです。
○門田会長 それでは、皆さんまだほかに御意見はあるかもわかりませんが、位置づけはあえて専門委員会の報告がここに上がってきていると。これから今度、基本計画を書くときにどこをピックアップしどうするかというのは、これからここの仕事になりますので、部分的な書き方の内容において今日出ていた幾つかのことについては、専門委員会の委員長として修正はかけていただくことにしても、大筋については前回出していただいて、あのときに問題になったのは、研究者ばかりの専門委員会ですので患者目線が入った方がいいんじゃないか、これはたしか嘉山委員の御意見だったと思いますけれども、そこでいただいたので、ここまで形の上では大幅な修正をしていただいたということでございますので、あとは微調整の意見があればということで扱っていきたいと思いますし、大体出てきたんじゃないかと思いますので。
 嘉山委員どうぞ。
○嘉山委員 野田先生に患者さんの目線でということでお願いして直っていて、今、門田先生がおっしゃったとおりだと思いますが、皆さん希少がんのことを初め、非常に大事なことをおっしゃっていたんですね。大きく分けるとドラッグラグ、デバイスラグを何とかしようというのと、もう一つは全く新しい薬をどうやってつくっていくか、あるいは新しい機械をどうやってつくっていくかということですね。あと、法律の改正をどうするということなんですが、実は1990年にメディカルイノベーション会議ができたんです、がんについてもできたんです。ところが、その成果は抗がん剤が1つできただけで、あとは全部失敗です。そのときも大量のお金が使われました。
 ですから、1つだけ書き加えてほしいんですけれども、眞島先生がおっしゃったように、がんセンターではすべての治験はオープンにしているんです。ですから、どんどん入ってきます、先生が言うのは全く正しい。ただし、創薬にしてファースト・イン・ヒューマンにしても、国民が一緒に我々とやってくれないと一つも進まないんですよ。1990年代も同じように夢のような計画案はできたんです。ですから、今日いらしている患者さんの代表が国民に対して医療側と国民がともに、産業とは言いません、医療を育てていくという、文化を育てるということを1行書き入れていただけると、これが進むんですよ。それがない限り、これは絵に描いた餅になりかねない。餅と言うと野田君が怒るといけないから。そこを門田先生、入れていただきたいと思います。
 あと、エーシックスに関しては昨日もフランス大使館で仏日のカンファレンスをやったんですけれども、やはりグローバル化の社会になっていて、エーシックスがゲノムをどうやって扱うかということは世界的に考えなければいけない時代に今はなっているんですね。ですから、そのことは先生も御存じのように、文部科学省で永井良三さんが国民から意見を得るという最後まで来ているので、そういうものも参考にして、エーシックスのことは書き加えていただきたいと思います。あそこで例えば、包括同意なんてという言葉がなくなってしまうと、日本では先生がお書きになったものは全部ストップしますから。
 ですから、国民が一緒に協力して、対立軸ではなくて協働でやっていきましょうということと、文化をつくろうということと、エーシックスの問題に関しては国際的な問題になるので、そこは文部科学省の永井さんと相談されて整合性をとった方がいいと思います。そうすると、これが生きてくると思います。
○外山健康局長 御参考までですけれども、ほかの専門委員会であります小児がんと緩和ケアにつきましては、一応、最終報告があった後、各委員から追加の意見も出ておりますので、それを巻末につけるような形でとりまとめているということでございまして、この専門委員会で最終的な何か意志を決定するということではありませんけれども、一方で、そこで出た意見というのはこれから非常に重要だという形で、他の小児がんと緩和ケアもそういう形になっておりますので、今いただいた意見については追加もあっていいと思いますけれども、巻末にまたつけるような形で次回に報告して、皆さんに見ていただいたらいいのではないかと思っております。
○門田会長 ありがとうございました。
 基本的には部分的に今、修正のきくところ、幾つかのことは野田先生の方で変えていただくと。更に何かがあるものについては、ほかのものと同じような形で、この報告とは別個に意見として追加するということにさせていただいてよろしいですか。
 今、嘉山先生がおっしゃられたのは非常に重要なポイントだと思いますし、終わりのところの真ん中辺りに、臨床研究へのがん患者の参画を促進する施策ということでさらっと書いてあるところを、もう少し積極的な参加、育てるというような内容に切り替わることは余り大きな問題はないでしょうし、それから、倫理の問題については確かに全体的な問題と言えばそのとおりだと思いますので、それはほかとの状況を見て、場合によれば追加という形にして、今回は一旦終わりにしたいと思います。
 では、天野委員、簡単にお願いします。
○天野会長代理 今の嘉山委員の御指摘はごもっともだと思いまして、実は前回のがん対策推進基本計画でも先ほどと同じような文言は既にあって、「がん患者及び国民は、がんに関する治験及び臨床研究の意義を理解し、積極的に参加すること」という文言は入っていたんですが、いきなり「参加すること」というふうに言われても、先ほど眞島委員からもあったようにブラックボックスであったりとか、国民に理解がない、文化がないところで参加をすることと言われもなかなか参加は厳しいと思いますので、そこをより透明化した上で一緒につくり上げていくという趣旨で文章を書き加えていただけると助かります。
○嘉山委員 そのときには多分がんセンターは治験のことなんて1行もホームページに書いていなかったと思うんですが、今だったら入り口が見えますから、それを書き加えたらいいんじゃないかと思います。各病院、各大学でやっている治験がどういうことであるということをホームページに書き加えれば、患者さんに入り口が見えますから、そうすれば今、先生がおっしゃったようなことは解決すると思います。
○門田会長 先ほど申しましたように、部分的に今のまとめ案を野田委員長の立場として変更できる範囲内のことをしていただくということ、そのほかについては事務局で出てきた意見を整理して、それに追加したものを残しておくということですね。いつも申しますけれども、これはこの次にやります基本計画の中にどう織り込むかというところが一番重要になってきますので、一応今出していただいたものはそういう形で整理しておくことにしたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
 では、次に進みたいと思います。議題2、在宅医療、チーム医療についてということで、前回集中審議を行っていただきました。その後、委員の皆さんから文章でも御意見をいただいておりますので、それを事務局と一緒にまとめておりますので、事務局から報告してもらたいと思います。お願いします。
○事務局(松田) それでは、事務局から資料3「在宅医療、チーム医療に関する委員からの意見のまとめ」について説明させていただきます。前回、協議会で提出させていただいた資料から、修正のあった部分を主に説明させていただきます。修正箇所は赤字で示しております。
 まず「1.在宅医療」についてですが「(1)在宅医療の提供体制について」から説明させていただきます。上から2つ目の項目ですが、拠点病院またはそれに準ずる病院が存在しない2次医療圏では、診療所てはなく一般病院でも「かかりつけ医」の機能を充実させることが必要。
 在宅緩和ケアの位置づけを明確にすることが必要。拠点病院とかかりつけ医を結びつける中間的機能を地域システムとして明確化してはどうか。
 患者視点に立った在宅緩和ケアの普及の鍵は、在宅緩和ケアの専門診療所を普及することである。
 がん患者と非がん患者は平均年齢や在宅ケアの期間が異なるほか、医療依存度も異なる。したがって、がん患者の在宅ケアは1現場の負担が重くなる、2在宅ケアの受け皿が見つからない、3片手間にケアを実施すると高品質なケアを提供できない、4専門でない先生がかかわると医療経済上むだが出るなどの理由から、非がん患者とは区別して対応する必要がある。
 緩和ケアはだれにでもできるものではなく、専門診療所の整備を推進することが重要。
 3ページの上から2つ目の項目ですが、緩和ケア研修の参加者からは、一般かかりつけ医の認識が十分ではないとの意見があり、緩和ケア研修だけでは目的を達成するまでに相当時間を要する。例えば、医師会主催での研修を行うことなどの取り組みが必要ではないか。
 在宅緩和ケアも含めた地域連携を充実させるために、医療関係者だけでなく多職種の関係者が定期的に会合する地域内連携会議を設置するべき。この会議は、現実に動いているリソースを活用し、地域における現場責任者ないし現場指導者によって構成されるものとする。役職上の上級職のみで構成される会議では、形骸化して現場の活動にブレーキがかかってしまう。
 がん患者を対象とした地域連携相談支援センターを設置すること。ただし、疾病ごとに設置すると組織が重複して関係者の負担が増えたり、患者側も疾病ごとの支援センターにアクセスしなければならないなど混乱する可能性がある。現在その地域で動いている人的リソースやネットワークを活用しつつ、不足しているリソースを充実させる必要があるとの御意見をいただいております。
 4ページ目に移りまして「(3)在宅医療に関する情報提供について」、2つ目の項目です。保健所は地域の医師会に関する情報を持っており、拠点病院よりも小回りがきく可能性がある。地域を巡回できる保健師の存在も大きい。拠点病院、保健所のネットワークを結合させて、情報発信する方法はあるのではないかとの御意見をいただきました。
 「(4)介護保険に関連して」、2つ目の項目ですが、国は、調査結果を踏まえ、末期がん患者の介護認定の迅速化とがん患者の実情にあった要介護認定が行われるように制度の改正に向けて検討を行うなど、必要な施策を講ずること。早急に都道府県並びに市区町村の介護保険担当課、また関係機関に対し、適切な要介護認定及び介護サービスの提供を行うことの周知徹底を図り、改善のための協議を図ること。
 がん対策推進協議会は、がん患者と家族が質の高い在宅療養を送ることができるよう、関連する審議会や協議会、検討会などに対し、がん患者が介護サービスを迅速かつ適切に受けられるよう医療と介護の連携強化に向けた意見を提出すること。
 都道府県並びに市区町村等地方公共団体は、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、地域の特性に応じた施策を策定し実施を行うこと。
 医師等関係者は、がん患者が迅速かつ適切な介護サービスを受けられるよう問題の改善を図り、保険者や関係機関との連携を行うこと。
 事務連絡「末期がん等の方への要介護認定等における留意事項について」の受け止め方が自治体によって異なる。重みのある通達にすべきではないか。
 介護認定に必要な事務職員の人数が限られており、市町村の現場の負担が大きい。高齢者の介護を社会全体で支えるためにできたサービスをがん患者にそのまま当てはめていくことに限界がある。アセスメント項目や認定までのプロセスを簡単にするなど見直しが必要ではないかとの御意見をいただいております。
 「(5)地域連携クリティカルパスについて」ですが、現行の制度は1病院対1医療機関で別々の届出をしなければならず、都心の医療機関などはそれぞれの拠点病院との届出が必要となるなど、非常に煩雑な運用となっている。大切なことだと理解しているが、現行制度を継続することは難しいのではないか。
 厚生局への施設届出は極めて煩雑。福岡県では県医師会・拠点病院が協力して県下統一連携リストをつくったが、その更新方法などに問題があり、現行制度の拡大は困難。厚生局の作業も大変であり、ひいてはパスの拡大を妨げるのではないか。退院時にしか算定できないのは明らかに不都合。更に、拠点病院に準ずるという規定はあいまいである。拠点病院以外の専門施設でも、一定の基準を満たせば点数がとれるようにしてほしい。
 地域連携クリティカルパスというツールだけが先行して、患者への説明が省略されるようでは本末転倒。コミュニケーションを中心とした血の通った地域連携をしていただきたい。
 患者の一番の不安は次に自分の受ける治療が見えないことであり、医療機関同士のコミュニケーションが十分とれている地域連携クリティカルパスの存在は患者に安心感を与える。医師会と急性期病院でつくり上げるしかなく、協議会としては両者の集まりの回数やかかわりを増やすべきであることを提案したい。
 拠点病院の医師とかかりつけ医の一対一の関係に基づく説明によるボトムアップと、中規模な説明会、大規模な説明会など、あらゆる方策を講じないと地域連携クリティカルパスの周知徹底は難しい。同時に、一般市民・県民への認識づけも必要。マスメディアへの働きかけを協議会として行っていかないといけない。実情をよく認識した第一線の医療者による研究班を組織して全国の情報を集めたり、現場に即した提案ができるようにした方がいいのではないか。
 地域連携クリティカルパスが成功している地域では、医師会が活躍しているケースが多く、医師会の役割や医師会の先生の熱意は重要である。
 地域連携クリティカルパスの拡充には、地域連携室の充実が重要。地域連携室を充実させるための議論や補助金なども必要。
 地域連携のコーディネーターの養成が必要。できれば、地域全体で活動ができるシステムが望ましい。各施設に配置するためには補助が必要であるし、教育研修も行わなれなければならない。
 神奈川県では、医師会や拠点病院の先生を中心に、5大がんにおける地域連携クリティカルパスの標準的なフォーマットを作成し、開業医のリストアップや在宅医療支援診療所や緩和ケアを実施している医療機関に対して連携をお願いしている。各地でもこのような取り組みが必要であり、神奈川県がモデルの一つになるのではないかとの御意見をいただきました。
 なお「2.チーム医療」につきましては、各委員会からの追加の意見出しはございませんでした。
 事務局からの説明は以上になります。
○門田会長 ありがとうございました。前回の集中審議並びに皆さんからいただいた御意見をまとめさせていただきました。
 そういった意味で、できるだけ網羅的に拾い上げるという形でこうしていますが、まだ更に追加する必要があるという御意見がございましたらお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 保坂委員どうぞ。
○保坂委員 5ページの上から2段目でございますけれども、「医師等関係者は、がん患者の迅速かつ」云々という文章がございますが、「医師等関係者」というのは非常に漠然としていて、「医師等関係者」というのが行政も国も含んでということになれば問題の改善を図ることができると思うんですけれども、いわゆる診療している医師という意味で「医師等関係者」と書かれているとすると、なかなか難しいというか、どういうことをイメージされているのかよくわからないので、このことについて御説明いただければと思います。
○門田会長 天野委員どうぞ。
○天野会長代理 まず、2つのことがあると思っていまして、1つは、例えば、医療保険を使うのか、介護保険を使うのかといった問題が、がん患者さんのいわゆる終末期のときは非常に問題になってくることがありまして、そういった情報については、いわゆるメディカルスタッフの方々から情報提供いただける場合も多いかと思うんですが、医師を含めたメディカルスタッフの方がそういった情報提供が十分でないために、必要なサービスが受けられないといった問題があるということがありますので、そういったことについて医療者の方からも介護サービスが受けられるように情報提供などをまず行っていただきたいという点がございます。
 2点目が、保坂委員のおっしゃっていたことに近いと思うんですが、医師等関係者ということは、医療関係者の方々が保険者やその他行政ともこういった介護サービスを適切に受けられるために、必要な改善に向けた取り組みを行っていただきたいという趣旨でございまして、両方の意味があるということで御理解いただければと思っております。
○保坂委員 別に分けていただければ、医師等の治療に当たる方の話ですね。そういう方が十分な法律の知識とかそういうことを情報提供していただきたいということはよろしいかと思うんですけれども、制度そのものを変えるための働きかけをするというのであれば、「医師等関係者」ではなくて、患者さんが主だと思うので国民すべてがといいますか、そこのところを医師等関係者に求めるというのは、ちょっと視点が違うと思いますので、情報提供のことは是非言っていただきたいんですが、そういう制度を変えることを実際に現場で患者さんを診ている人たちにやってくださいとおっしゃるのは、ちょっと違うと私は思うので、このことについて少し考えを変えていただければと思います。
○天野会長代理 「問題の改善を図り」というところにかかってしまっているのが多分、若干誤解を招くような表現になってしまっていると思いますので、連携を行っていただくということについては恐らく依存はないのかなと思いますので、「問題の改善を図り」という文のかかり方を変えたいなと思います。
○保坂委員 関係機関との連携を行うことについては全く依存はないんですけれども、保険者と連携しなさいということを現場の医療者に言われても全く違うので、もし、患者さんたちがそういうことを求められているとすれば、それは違うということを御理解いただきたいと思います。
○天野会長代理 御指摘に従いまして、ここの表現は考えさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
○門田会長 そのほかいかがでしょうか。
 川越委員どうぞ。
○川越委員 保坂先生がおっしゃるとおりで、ここの問題は病院から患者さんが家に帰るときに在宅でどういう対応をするか、ここのラグが起きるのは、医者がさぼっているということよりも、病院から介護のケアマネジャーの方に患者さんが紹介されていくような仕組みになっていることがありますので、介護の方にまずいってしまって、そこで時間が経って、どうしようもなくなって医療者につながってくるのが現場では実は多いんですね。ですから、私は医者ですけれども、悪者にされるとちょっと心外だなというか、もうちょっと書き方を変えていただきたいと思います。これは問題があることは間違いないので、我々の現場の感覚で言うと、福祉が入ったために医療につながるのが遅くなるという、現実にはそっちの方がはるかに多いんです。
○天野会長代理 多分「医師等」という書き方が誤解を招いているのだと思います。「医療関係者」とか、いずれにせよ医師を悪者にしているという意図は毛頭ないということだけは重ねて申し上げさせていただきます。
○門田会長 この件については、一度検討し直して事務局に連絡をいただいて修正させてください。
 そのほかいかがでしょうか。本田委員どうぞ。
○本田委員 在宅医療、チーム医療ということだったので、どうかなと思っていたんですけれども、6ページの「(5)地域連携クリティカルパスについて」という中で、私の考えと似たような御意見もあるので、後でまた文言として出させていただきたいと思っているんですけれども、どうしても拠点病院と診療所、拠点病院もしくはそれに各都道府県でつくっている準ずる病院と診療所ということしか触れらていないので、連携パスという中では、がんの診療をしている中小病院もしくは緩和的なこともやっている中小病院等もあるので、在宅医療という項目だったから出していないのですけれども、連携クリティカルパスという意味では中小病院も含んだ連携を考えていただきたいということをすごく思っていますので、追加をさせてください。面的にやるべきだということを出したいと思います。
○門田会長 それは出していただければと思いますが、期限はありますか。
○鷲見がん対策推進室長 一応、今日報告という形ではありますが、今の本田委員からのお話と、先ほど天野委員から修正をいただけるということで、この点については修正したもの含めて最終版という形にさせていただければと思います。
○保坂委員 今、本田委員がおっしゃったことはもっともなことなんですけれども、今の「(5)地域連携クリティカルパスについて」というのは、現行行われていることについての問題点という意見でしたので、もっと広い意味での地域連携クリティカルパスを使うのかは別にして、そういうものをつくるべきだというふうに内容を変えていくべきではないかということは本田委員のおっしゃるとおりなので、そういうことをどこかに加えていただけるとありがたいと思います。
○門田会長 嘉山委員どうぞ。
○嘉山委員 前回、税と社会保障の答申が出ましたので、それを受けまして、介護と中医協、医療の方の議論をしたんですが、全くかみ合わないんですよ。今日問題になっているようなことが出てしまうんですね。介護の方は医療者もいなければ患者さんもいなくて、ほとんど経済学者なんですよ。それでかみ合わないんですね。その結果がもうすぐ出ますので、問題点が浮かび上がってきますからそれも見て、局長に私がお渡ししますので、それでもう一度修正をかけていただければと思います。
○門田会長 それは、この集中審議の段階のまとめを残しておくということで、基本計画を書き込むときにそれを入れてということでよろしいですか。
○嘉山委員 結構です。ただ、合同の委員会を歴史上初めてやったんですけれども、ここにも関係することが出ていますので、先生がおっしゃるとおりで結構ですが、入れた方がいいと思います。
○門田会長 そのほかいかがでしょうか。
 中川委員どうぞ。
○中川委員 これは再確認なんですが、8ページに私の意見としてチーム医療の多職種の問題があるわけなんですが、例えば放射線治療、これは緩和ケアもそうなんですが特にアメリカに行くと本当に多数の立場の方がチーム医療に加わっているわけですね。ただ、日本で医師と看護師、放射線技師等、国家資格に事実上限られてしまっている。緩和ケアの現場などでは欧米では宗教者が一緒に入ってきたり、ボランティアもそうなんですけれども、根本的な考え方として国家資格であるということが、とりわけ診療報酬上必要であるのかどうか。これはむしろ事務局にお尋ねするべきかもしれないんですけれども、ここを確認させていただけますでしょうか。チーム医療における資格の問題ですね。
○鷲見がん対策推進室長 これについては私の方で調べて、また次回以降に回答させていただきたいと思います。
○嘉山委員 中医協委員なので、私が答えるのが一番適当だと思うんですけれども、国家資格でない人がいる職種でもちゃんと保険点数を出しています。ですから、全部が国家資格がなければだめだということではありません。
○中川委員 ありがとうございました。大変勇気づけられます。
○門田会長 それでは、この件につきましては、先ほど出ました2点について少し修正させていただくということで、ほかのものにつきましては、基本計画を書き込むときまでに、その資料に基づいてやっていくという扱いにさせていただきたいと思います。よろしゅうございますか。ありがとうございました。
 それでは、次に、がん登録については前回ヒアリングさせていただいております。そのときの御意見を事務局でまとめてもらっていますのが資料4です。この資料4について、事務局から説明をさせていただきます。では、よろしくお願いします。
○事務局(松田) それでは、事務局から資料4「がん登録に関する委員からの意見のまとめ」について説明させていただきます。
 まず「1.がん登録の必要性」についてごらんください。
 国民にとっては臓器、院内、地域がん登録の順で直接的に利益が出る。一方、行政にとっては政策立案のために地域がん登録は不可欠。
 東日本大震災に伴う原子力災害に対する漠然とした健康不安を持っている中、政府ががんに関する基礎的なデータを持っていないことが将来大きな禍根を残すと懸念される。こういった視点からも、がん登録推進の必要性について考える必要がある。
 がん登録はがん対策の基礎や評価となるデータとして不可欠。がん検診の評価にとっても不可欠だが、現行のがん登録にはがん検診を評価できるデータが十分にそろっていないことが問題。予防から予後までの必要な施策とその効果を検証し、優先課題の解決や地域間格差の是正、更なるがん検診の質の向上を目指すためにがん登録は必要。特に、地域がん登録は全国の市町村レベルでの実態や課題をつかみ、地域間に共通の課題から国レベルでの施策に範囲することで地域間格差を解消していけるメリットがある。現状では、地域がん登録は義務化されていないが、次期5年間の計画見直しのときには検討いただきたいという御意見をいただきました。
 「2.がん登録に対する国民の理解の促進」についてですが、自分たちの罹患情報が後の患者の役に立つことを患者に説明すれば、がん登録の理解は必ず得られる。
 がん登録の法制化について国民の理解を得るには、がん登録が国民にもたらす利益を示すことが必要。
 がん登録の必要性を次期基本計画の中で国民に訴えていくことは重要。
 がん登録は非常に重要。出版物やウェブサイトを通じた広報活動により、国民の理解を得るとともに、国の取り組みを国民に発信していくことが大切。広報活動についても協議会の中で議論するべき。
 がん登録の重要性に関する市民啓発策は、一般市民、病院受診者・検診受診者、がん患者・家族のように対象の関心レベルに応じた啓発方法を推進すべきといった御意見をいただきました。
 「3.がん登録の登録項目」ですが、地域がん登録の項目は、政策立案に必要な項目だけでよく、細かい項目は必要ない。
 がん登録の目的を明確にした上で、現場への負担も考慮し、登録項目を策定すべきという御意見をいただきました。
 「4.がん登録と個人情報保護との関係」ですが、現状、各自治体の長も個人情報保護の観点から、がん登録の情報を外に出したがらない。
 がん登録は必要だが、個人情報管理を担保することも重要。
 院内、地域がん登録に際して、自治体ごとに個人情報保護に関する対応が異なっている。がん登録における例外規定に関しては、全国の自治体に対して十分に周知する必要があるという御意見をいただきました。
 「5.がん登録のデータ収集における問題点」ですが、届出票、死亡票を集めるに当たっては、紙ベースで収集することで多大な負担をかけることになっている。電子媒体でデータ収集ができるようなシステムの開発が必要ではないか。
 地域がん登録の届出の提出が義務ではないため、医療機関の協力が得られにくい。届出票の謝金を支払わない県では、DPC対象病院以外には届出のメリットはないという御意見をいただきました。
 「6.がん登録の法制化の必要性」ですが、各がん登録の登録率に関する具体的な目標設定や、がん登録推進の上で予算補助と法制化のどちらを優先するかなどを明確にすることが大切。
 地域がん登録は、がん対策の基礎となるデータの把握・分析のためには不可欠な事業である。都道府県によっては住基ネットの活用により情報の把握を行っているところもあるが、自県以外に居住するがん患者の情報が確認できないなど、その取り組みにも限界がある。全国統一の体制を構築するためには、地域がん登録の法制化が必要と考える。
 拒否者の情報をあえて登録しにくいという意見がある。また、欠落が多い場合のデータの精度上の問題、未告知者への対応、同意手続の医療機関の負担等を考えると、法的整備は必要。
 欧米では、幼児の急性リンパ性白血病が一貫して増加していると言われているが、我が国では全く不明である。法制化によって悉皆登録が担保されたデータベースがなければ、今後の医療ニーズの予測、発症予防のための研究も行うことができないという御意見をいただいております。
 最後に「7.その他」ですが、がん登録の情報を継続して更新するため、がん登録を地域連携クリティカルパスと一体化する仕組みを現在検討している。
 小児がんのような希少がんは悉皆登録が最低限必要だが、同時に、臓器がん登録による情報も重要。そのため、地域がん登録と臓器がん登録を連結させる仕組みも検討してほしい。また、希少がんについては臓器がん登録も国の事業として実施されることが望ましいという御意見をいただきました。
 事務局からの説明は以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、本日の集中審議を行いたいと思います。御意見をおっしゃっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 松本委員どうぞ。
○松本委員 ありがとうございます。2点申し上げたいと思います。
 まず1つなんですけれども、これは実際にがん登録を行っている病院の関係者の方から御意見をいただきました。登録実務者の地位向上ということがなければ、なかなかこの精度は上がっていかないのではないかということがありました。ですから、登録の重要性というのはどなたからも異存はないことですけれども、それを進めるために実務者の地位向上についてどうするのかという一言を計画の中に盛り込むべきではないかと思っております。これが1点です。
 もう一点は、現在の患者にどういう利益があるのかを前回の協議会でお尋ねいただきました。そのことについていろいろ考えてみたんですけれども、今すぐに役立つことというのはなかなか思いつかなかったんですけれども、例えば、病院によっては院内がん登録の情報を一般の人にわかりやすい形でホームページ上で公開しているところがあります。それを見たからといって、即病院選びの基準になったりとか、患者の安心情報につながるのかというところまではわかりませんけれども、そういった形での情報公開が何らかの形で患者の役に立つのかもしれないと思っております。
 例えば、四国がんセンターでは来年度、一般向けのセミナーを計画しているという情報も聞いておりますので、そういった意味で、今の患者さんに役立つ使い方というのを考えていくことはあるのかと思います。
 ただ、ここで一つ重要なのは、私たちはどうしても表面に出てきた数字だけに振り回されてしまいがちですので、登録で公開されている数字の読み方というものも併せて、私どもも一緒に勉強していく必要があるのではないかと思っております。
 以上です。ありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。
 そのほかいかがでしょうか。天野委員どうぞ。
○天野会長代理 3点ございます。まず、1点目でございますが、今の松本委員の御指摘はごもっともだと思いました。患者さんのために役立つがん登録とはということから見ますと、例えば、地域がん登録から算出されます医療機関別の診療件数や生存率のデータ、これは国立がん研究センターも以前公表して、メディア等でも大きく取り上げられていましたが、そういったがん医療の現状や均てん化の進捗に資するための情報提供というのが、患者さんや一般の方に直結してくる情報だと思いますので、この際、先ほど松本委員からもあったように、がん登録に従事している方、例えば、非常勤の方が今は多いと聞いていますが、それですと継続的な精度管理であるとか、登録の事務の継続は難しいと。今、国立がん研究センターでも研修を実施していますが、まさに相談支援センターにおける相談員と同じ問題なんですけれども、定着率が高くないと。そうすると、研修を実施しても変わってしまって、結果としていつまで経っても習熟した方が生まれないという問題があるやに聞いていますので、その点は是非改善していただきたいというのが1点です。
 2点目ですが、これも国民にある意味直結してくる問題ですが、がん検診と地域がん登録データをリンクさせるということについてなんですが、リンクさせる仕組みについて障壁がもしあるのであれば、例えば、厚生労働省から指針といった形で照合が可能になるような制度上の対応を是非お願いしたいと思っております。
 3点目ですが、前回の協議会でも出ました、がん登録の法制化の必要性です。例えば、がん検診に関しては漠然としたことではありますが、いわゆる検診受診率50%という数値目標が設定されていましたが、例えば、がん登録についても、どこまで徹底してやるのかという問題が当然出てくるかと思います。例えば、数値目標を設定してこれだけやるということであれば、場合によっては法制化も必要になってくると思いますし、また、現行の法制度で対応部分もあると前回、事務局から御説明をいただきましたが、その中でもまだ足りていない部分があるやに聞いておりまして、例えば、住民基本台帳法に基づく本人確認情報の利用につきましても、そこにがん登録が入っていないということで、住民基本台帳のデータを利用した予後追跡を行うことが困難であるという指摘があるように聞いていますので、その辺りについても、現行の法制度や通達の中で可能なものがあれば、その改正や対応も是非お願いしたいと思っております。
○門田会長 ありがとうございました。
 今のことで事務局から何か情報はありますか。
○鷲見がん対策推進室長 特に事務局からはございませんけれども、がん登録につきましては、先ほど天野委員からお話がありました制度自体の信用性につきましては、幾つか指標を私どもでつくって、がん登録自体、例えば、地域がん登録の制度自体について何パーセント以下だったら望ましいとか、そういうものはつくっております。
○門田会長 ある程度もう少し、今、天野委員が疑問に思っておられる辺り、一つ一つ詰めてデータを重ねていかないと話がまた漠然としてきますね。この登録のところがどういう形にしろ、改めてまた基本計画で書き込んでいかなければならないですね。そのときまでに、ある程度そういうところを整理したものが必要になるかと思いますが。
 そのほかいかがでしょうか。中川委員どうぞ。
○中川委員 3ページの真ん中、患者本人の同意の問題なんですが、同意をとると物すごくバイアスがかかってしまいます。例えば、全身状態の悪い患者さんはやはり登録しにくいわけですし、ここは本人同意なしのがん登録という形にしないと、大きくつまずく可能性がある。
 もう一つ、天野委員がおっしゃったがん登録とがん検診のリンク、まさにリンクのキーは住民番号ですね。例えば、私は、がん室の鈴木前室長らと韓国に行ったときは、完全に社会保障番号みたいなものをキーにそこがつながっているんですね。ですから、がん検診の精度管理が結局がん登録によってできる。あるいは、保健所に行くと地域の住民の中でがん検診をやっていない方のリストがすぐ出てくる。こういうところを考えると、そういった社会保障番号等の個人認識番号という議論をしていく必要があるだろうと思っています。
○門田会長 嘉山委員どうぞ。
○嘉山委員 松本委員と天野委員から、がん登録を実際にやっている人たちの地位向上等々のお話がありましたが、がんセンターが去年から非常勤を常勤化しましたので、先生のお話は私が行く前の話だとしていただきたいと思います。がんセンターは、きちんと常勤化して10億円の人件費を去年1年間で上げました。
 すべて解決するのは、今、先生がおっしゃったとおりなんですね。韓国と同じように番号を使って一気にやらない限り、うちの祖父江先生が何年かけて努力してやったって、数パーセントも上がらないんですからね。これは根本的なドラスティックな改革が必要だと思います。ですから、さっき天野委員がおっしゃったように、書いてあるけれども弱いというのはそこが根っこなんですよ。民主党が今、社会保障番号を国民の健康のためだったらば使ってもいいのではないかという議論を始めていますから、この協議会としては法制化を目指すべきだということを書き込めば、いろいろな細かいことは全部解決してしまうと思っています。
 事実、全国都道府県がん拠点病院の連合会としては、大臣がいらっしゃらなかったので外山局長にお渡しして、法制化してくれというお願いをいたしました。ですから、そういうお願いはいいのではないかと。法制化してくださいと、これを進めない限り、祖父江君が幾ら脳みそを使ってもなかなかうまくいかないと思います。今の先生の御意見に賛成です。
○門田会長 花井委員どうぞ。
○花井委員 一人一人の患者さんにがん登録の必要性をプレゼンテーションし、コンセンサスを図るということは、非常に患者目線に立った、患者さんの立場に配慮したすばらしい方法だとは思いますけれども、今でもしなければいけない説明、患者さんが求めているサービスが、物理的な側面から十分にできていない現状というのもあるように思います。そこへこの作業が入ってくるということは、本当に医療機関であるとか行政の窓口であるとか、すごく疲弊してしまって、そのことで受ける患者さんの影響というのも私は少し感じました。
 それから、今の患者さんのメリットを考えていかないとという御意見もあるようですけれども、このがん登録がもたらす国民的利益の大きさを考えると、果たして今の患者さんのメリットを考え提示していくことがどこまで必要なのかなと私は思います。実際に、相談支援の現場などで、がんの治療体験者が患者さんの相談を受けるその背景、プロセスには、やはり自分たちのがんの体験を新たにかかった患者さんのために生かしたいという奉仕の精神があると思うんですね。がん体験をした方ならば、このことはわかってくださると思いますし、今のメリットということに余りこだわる必要はないのではないかと患者団体としての立場から私個人は思いました。
○門田会長 ありがとうございました。
 保坂委員どうぞ。
○保坂委員 がん登録を法制化するということには私も賛成です。ただし、社会保障番号といいますか、国民総背番号制というものですべてのデータを一元的に管理するといいますか、収集するということは、ここでがんの患者さんたちにお聞きしたいんですけれども、それがどういうふうに使われるかわからない。例えば、いろいろこれからお話しするお仕事の問題等もありますけれども、どこでどう使われるかの保証がない中で、すべての健康情報、その人の疾病の情報を一元的に登録するというシステムが、今のいろいろなITを使ったシステムを見ていても、必ず情報漏えいとかいろいろなことが起きてくるので、その安全性をどう担保するかも考えて、社会保障番号を全面的に取り入れることについての議論をされた方がいいと思います。がん登録については、個人についていろいろ悪いことに利用されないような仕組みができると思うので、がん登録を法制化することは全く賛成ですけれども、ほかのこともすべてとなると、今後ゲノム情報とかそういうものも出てくるわけです。個人のゲノム情報も全部登録されていて、どこかから入ってきて見られてしまうということも絶対に考えていかないといけないので、そこはワンクッション置いていただきたいと思っています。
○門田会長 ありがとうございました。
 基本的に、皆さん登録の法制化の方向には御異論なさそうに思いますが、ただし、どういうふうにしていくかという過程には非常に大きなハードルがあるということだと思います。今政府がやっている税と社会保障の件についても、個人情報が漏れないのかということを十分行うという、必ず横でそういうことを言いながらやっていますね。しかし、一方で、いろいろな情報入ってきて崩れていっているということもありますから、不安材料は不安材料ですが、しかし、そこは基本的にはある程度方向性を決めるというか、我々がどちらを求めるかということは必要かなという気がしますが。
 田村委員どうぞ。
○田村委員 私は、ソーシャルセキュリティナンバーを是非導入すべきだという立場からお話ししたいと思いますけれども、それは年金の問題とか福祉のいろいろな問題の中で多分議論が進んできていることですし、それから、がんの登録においてもいろいろな形で使われて、将来の施策に利用されるということで、是非取り組むべき事柄だと思います。
 個人情報については、勿論、最大級保証するということで話を進めるしかなくて、我々が持っている個人情報はほとんどないに等しいと理解していますので、本当にどこまで議論してそこを詰めていくのかは、これからの話だと思います。
○門田会長 川越委員どうぞ。
○川越委員 この問題は、前回も私は発言できなかったんですけれども、大事な問題だなと考えておりました。是非、行政にお伺いしたいんですけれども、いわゆる総背番号制と申しますか、これは今、国レベルでどういう話になっているか、わかる範囲で結構ですけれども、あるいはこの場で言っていいというような、情報があったら教えていただきたいんですが。
○鷲見がん対策推進室長 この問題につきましては、また次回以降きちんと調べて、状況について確認をした上で回答させていただきたいと思います。
○門田会長 そのほかございますか。前川委員どうぞ。
○前川委員 がん登録の法制化は本当に必要だと思います。現状、がん患者さんと、今がんと向き合っている方たちは、がん登録とか余り思っていらっしゃらないと思います。自然にがん登録されているのかなとか、そのぐらいの感じですので、本当に個人情報とか大変難しい問題があると思いますけれども、是非、法制化していただければと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 眞島委員どうぞ。
○眞島委員 先ほど田村委員からお話がありました個人情報保護の観点なんですけれども、実はがん研究をやっている研究所では遺伝性腫瘍患者のゲノム情報も扱っています。アメリカなどでは、例えば、裁判所から開示請求の書類が届いたとしても、個人のゲノム情報は開示されることなく、保護されるという法整備も進んでいます。やはり患者にしてみれば、その辺りは非常に不安な材料だと思いますので、それも含めてのがん研究の研究所を保護するための法整備が必要ではないかと思います。
○門田会長 ありがとうございました。そのほかいかかでしょうか。
 嘉山委員どうぞ。
○嘉山委員 日本の国民がこういうものに非常にナーバスになるのは、皆さん御存じように日本の刑法は罰則が非常に軽いんですよ。アメリカだと個人情報を出せば禁固50年とかになるんですけれども、日本ですと罰金幾らで済んでしまうんですよ。ですから、非常に軽く扱ってしまうんでしょうね、どうしても。その辺の文化の違いがあるのだと思います。この辺も法務省なりがどう考えているかという部分を含めてやらないと、簡単には進まないと思います。
 あと、がんだけというのも難しいと思うので、健康だったら全部いいよと。ただし、健康だと保坂先生がおっしゃるように、この家系は糖尿病家系だからというと、いろいろな問題が起きますね。ですから、やはりペナルティは今回は厳しくというようなことをやれば、国民の方も安心するのではないかと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、予定も少し遅れていますので、この辺りで一旦打ち切って、あと御意見があれば、今までのように改めて文書で御意見を出していただくということにしたいと思います。この件につきましては11月11日までに事務局まで出していただいて、次回までにそれを含めてまとめさせていただき、提示させていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
 それでは、これからあとは先ほど言いましたように、参考人の皆様方に御報告していただきますが、その前に10分間の休憩をとりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

(休 憩)

○門田会長 それでは、本日の意見聴取ということでやらせていただきたいと思います。本日は、サバイバーシップと経済負担、就労問題、がん予防・検診ということで予定しておりますけれども、まず最初に、サバイバーシップと経済負担ということで、患者が抱える社会的な痛みにつきまして、桜井参考人から御説明していただきたいと思います。御質問はその次の高橋参考人からの御報告と2つを聞いたところで受けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、桜井参考人、よろしくお願いします。
○桜井参考人 このたびは、このような貴重な機会をいただきまして誠にありがとうございます。NPO法人HOPEプロジェクトの桜井と申します。
 自身は7年前、37歳で乳がんを経験しております。今回はキャンサー・サバイバーシップと経済的な負担ということでお話しさせていただきます。
 これまで、がん対策推進協議会においては、第1期患者委員であった金子明美さんが患者の社会的な痛みについて訴えてこられました。金子さんの意志を継いだ患者委員一同からも、2010年に協議会へ意見書が提出されたことを覚えていらっしゃる委員、関係者の方も多いかと思います。
 また、今ここにいる患者委員の皆様におかれましても、社会的な痛みに関する御経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。本日は、私もそうした患者の1人として声を届けさせていただきたいと思っております。
 まず、私の資料ですが、各スライドの画面右下に数字を振ってございます。私の説明で用いるページ数につきましては、こらちの右下の数字を追って見ていただければと思います。
 では、2ページをごらんください。キャンサー・サバイバーシップというものですが、これは1986年にNCCS(米国がん経験者連合)という団体が打ち出した新しいがん生存の概念と言われているものです。1980年代のアメリカでは、がんイコール死、がん経験者は犠牲者であるというような見方がされ、多くの社会的な偏見にさらされてきました。そこでQOLの確保や家族を含めた地域支援、偏見のない社会、がん研究の普及などを目的に、がんと診断されたときからその生を全うするまでの過程を、いかにその人らしく生き抜いたかを重視したサバイバーシップという思想が生まれました。これは小児がんにおいても大変重要な考え方になっております。
 次に3ページをごらんください。個人に対しては「サバイバー」という言葉があります。これは生き残りという言葉ではございません。NCCSでは、その定義を家族、友人、ケアに当たる人々なども影響を受けるので、彼らもサバイバーに含まれるべきであるとしています。ゆえに、本日この協議会に参加されている方も皆サバイバーであり、この協議会自体が私はサバイバーシップの場であると考えております。
 4ページをごらんください。近年がん医療は画期的に進歩しました。この結果、部位による差はありますが、全がんの5年相対生存率は54%にもなっております。また、小児がんにおいては80%です。この結果、2015年には一度はがん診断を受けて生存している人が530万人にもなると言われております。このように、がんは死の病から慢性疾患となり、社会の中でどう生きるかということが新しい課題となってきております。
 予後の厳しいがんにおいても、またどう生きるかということは非常に重要な問題だと考えます。
 海外での事例を紹介したいと思います。5ページをごらんください。アメリカでは、がん経験者の長期的なフォローを目的としたキャンサー・サバイバーシップ・クリニックといった施設も各地で誕生しています。
 また、こういった書籍が医療政策を検討するような機関から出ております。この中には既に経済的な問題、就労の問題が章の中に入っております。こうやって、がん対策の中に社会的な問題も既に入って検討が行われているのが現状でございます。
 6ページに移らせていただきまして、これはASCOという学会です。こちらでも数年前からサバイバーズケアもしくはサバイバーシップといったセッションが組まれまして、患者の社会的な痛みについても積極的に議論が交わされております。ここで用いている図は今年のASCOで用いられたものですが、科学療法を受けた乳がん患者さんの失業率が有意に高かったというスタディの結果です。しかしながら、ソフト、ハードを含めた働く環境整備があれば、その差は縮まるというようなことが明らかになっております。
 7ページをごらんください。こうした考えは世界へ広がり、イタリアやアメリカなどでがん経験者の働く権利を守る法制度まで成立しているというのが、今の世界の潮流になっております。
 9ページをごらんください。がん経験者の家族は4つの痛みに直面します。特に近年大きくなってきているのが、社会的な痛みと言われる部分になります。
 10ページのように、がん経験者の悩みというのは時間とともに変化しますが、就労や経済的負担などの社会的な痛みというのは、診断直後よりは後からやってくるということがわかっております。
 11ページをごらんください。全がん罹患者数のうち20~69歳までで考えますと、約半数の方が就労可能年齢で罹患していることがわかります。ここで2010年に行った私どもの調査結果を紹介させていただきます。
 13ページをごらんください。まずは雇用継続に関する状況です。就労者におきましては3人に1人は解雇・離職など仕事に影響を受けていることがわかりました。2008年、2009年にも同じような内容の調査を実施しましたが、結果は全く同じでした。アメリカでも同じ結果が出ております。
 14ページ、定期的な収入があった20~69歳に限りますと、約7割の方、年収は4割減少しているという現状も明らかになりました。
 15ページをごらんください。こちらは個人事業主の方の状況になります。事業へ影響があったと回答した方は72%、17%が銀行を含めた取引先との関係にも影響が及んでいます。会社が傾けば、社員とその家族も影響を受けることは必至です。
 16ページです。この結果、治療方法を変更あるいは中止した方というのが全体の8~9%になっております。仕事の切れ目は金の切れ目、そして、金の切れ目が命の切れ目、残念ながら、これが日本の現状となっているのが今の事実になっています。
 17ページをごらんください。これは50代の男性の肺がん患者さんの例です。診断を受け休職、復職後は降格人事になりました。年収が半減、会社からは早期希望退職の肩たたきに遭い、退職をいたしました。しかしながら、病気を受けての就職活動というのは年齢的にも非常に厳しい現実が待っていました。結果、治療費と収入が逆転するような現状が起こりました。お子さんを抱えた経済困窮の中で私どもの方に声が寄せられたというのが現状です。
 私自身、同じような経験をしておりますが、退職の決断というのはある意味、がんの診断よりも非常に大きなショックでした。
 18ページをごらんください。「病気の人いらない」。声に出さない声を拾うことも、私はとても大切なのではないかと考えております。
 19ページは、高額療養費制度に関しての最近の動向です。現在、社会保障審議会医療保険部会で議論がされておりますが、これに対してこの協議会から、あるいはコンシューマーである患者が声を届ける機会というのはないのでしょうか。
 20ページは、社会保障・税一体改革成案の資料です。ここでは5つの重点事項の一つとして、就労促進というものが挙がっております。この中で全員参加型社会、ディーセントワークというものの実現が挙げられております。しかしながら、こういった議論の中にがんは全く入れておりません。障がい者の議論の中にもがんは含まれておりません。また、日本の雇用戦略の中にも、がんは入っていないのが現状です。
 22ページにまいります。これは次期基本計画策定に関して望むことです。本年は基本計画の見直しという大変重要な年を迎えております。この社会的な痛みの緩和について、更に重要な問題になってくることは目に見えています。小児がんにおいては長い入院生活に伴う家族の二重生活、あるいは働き世代においては仕事と治療の両立のほか、親の介護なども加わっているケースもあります。是非5年先のがん医療を見据え、がん経験者・家族が直面する就労、経済的負担という社会的な痛みの解決へ向けた協議会としての姿勢を是非、私は刻み込んでいただきたいと切に願っております。
 23ページをごらんください。厚生労働省として、小児がんを含めたがん経験者・家族の社会的な痛みの緩和ついて、ここに記載した具体的な事項について是非、他部門との調整や議論、意見提案などが起きる場所を設置していただきたいと心から願っております。こうした関連部会、審議会の中に私たちの声を送りたいと思っております。
 例えば、雇用創出、障がい者認定の議論等々があります。高次脳機能障害等々に関しましては、ここにいらっしゃいます嘉山委員が大変お詳しいと思っております。高次まで達しない障害を抱える小児がんの患者さんは多数ございます。また、雇用制限を受けざるを得ない後遺症を抱える患者さんもたくさんいます。また、中川委員等におきましては、実践され、御尽力もされておりますが、例えば、金曜日の夜間診療ですとか、病院側にも工夫していただきたいこともあります。他にも、こういったことに取り組んでいる委員の先生方も、この中にはたくさんいらっしゃると思っております。
 また現在、検診率・受診率の向上についても議論がされておりますが、働き盛りのがん経験者は企業においても必要な人財なんですね。材料ではないです、財源なんです。国民の半分を支える時代というのが2030年、2050年には到来する日本です。早期発見・早期治療と併せて、見つかった後にもその人らしく働ける職場環境づくりというものが大変重要になってきます。そのためには是非、職域でのがん啓発活動、がん教育も私は重要だと思っております。是非、法の狭間の障害者と呼ばれることのないよう、こういった議論の場、道を開いていただきたいと思います。
 24ページ、障害者総合福祉法、骨格提言素案の終わりにある文章です。「ある社会がその構成員のいくらかの人々を閉め出すような場合、それは弱くもろい社会である」と書いてあります。人にとっての幸せとは社会とつながり、生きがいを持つということです。義務と責務を果たし、社会を活性化する一構成員として、がん患者も働きたいのです。それがサバイバーシップが訴える思想だと私は思います。
 25ページ、最後になります。がんは2人に1人が罹患する国民病です。1人の患者には1つの家族があります。がんと関係のない人生を送る国民は今おりません。がんになっても安心して暮らせる社会の構築へ向けて、今、私たちにできることはたくさんあります。他人事ではなく、是非、自分事としてこの問題を考え、これまでの患者委員が訴えてきたことを受け継いでいただき、議論を検討していただきたいと切に願っております。
 以上です。本日はありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。すばらしい御発表をいただきました。
 それでは、引き続きまして、高橋参考人から、がん患者・家族の就労問題について、今も出ておりましたけれども、お話ししていただきたいと思います。
○高橋参考人 獨協医科大学公衆衛生学講座の高橋都でございます。今日はよろしくお願いいたします。
 私の資料は、資料6でございます。 
桜井参考人の後に話をさせていただけて、とてもよかったと思っております。ありがとうございます。今、桜井さんの方から大変詳しいお話がございましたように、生産年齢人口15~64歳の新規がん罹患数は、今大体25万人に達しようとしております。それだけ毎年新たに生産年齢人口の方ががんに罹患しております。
 がんと就労に関する国内の状況ですが、私はサバイバーシップ研究をずっとこの20年ほどやっておりますが、この3~4年で驚くほどの動きがございました。ただ、残念ながら研究論文としての発信は少ないのですけれども、これから非常に多くなってくると思います。
 国内の先行研究では、ただいま桜井さんからのお話にありましたように、いろいろなアンケートが実は患者団体を中心にしてされております。大ざっぱに言いますと、どの研究でも4割ほどの患者さんが収入減に直面しているというデータが出ております。
 がん診断を受けた日本人の5年生存率ですけれども、すべてのがんを合わせたデータですと54%を超えております。8割を超えているのが、甲状腺、精巣、乳がん。7割まで下げても喉頭、膀胱、子宮体がん、子宮頸がんが入ります。しかし、日本の一般市民のイメージはいかがでしょうか。大きな違いがございます。
 3ページは、私どもの厚労科研で今年実施したネット調査です。対象者はがん既往歴のない一般市民で、性別、年齢、居住地を国勢調査準拠でランダムサンプリングをして、平均年令は50歳ほどの方々ですけれども、「すべてのがん」の図を見ていただければわかりますが、正規分布に近い形になっています。
 次のページをごらんください。乳がん、精巣がんという8割以上の5年生存率があるがんについても、一般市民の5年生存率イメージというのは、これだけばらけております。これらのがんの5年生存率も50~60%なんでしょう、というのが一般市民の理解です。
 膵臓がん、甲状腺がんについても、同様に疫学的な事実と乖離があり、がんのサバイバーはこのような一般市民の認識の中で社会復帰をしなくてはいけないというのが現実でございます。
 死に直結する病気としてのがんから、長く付き合う慢性病としてのがんに認識を変えなくてはいけない時代になっているわけです。
 アメリカは実は一歩進んでおりまして、先ほど桜井さんが上げてくださいました本『From Cancer Patient to Cancer Survivor』という本ですけれども、INSTITUTE OF MEDICINEが出した報告書です。国家レベルから草の根の関連組織の連携を具体的に提言しておりまして、特に取り組むべきトピックに就労問題が挙げられております。サバイバーシップ関連の学会でも、本当にこの2~3年で一気に演題、論文が多くなってまいりました。就労と関連して、特に検討課題として挙げられているものがいくつかあります。就労が困難ながんサバイバーはどのような方たちなのか。就労を阻んでいるものは何か。それから、就労と一口に言いますが、同じ職場に復職する場合、継続就労する場合、そして一旦辞めた後に新規就労場所を探す場合で全く文脈が異なります。
 次に法的問題です。私どもの研究班では隔月に勉強会を開いておりまして、そこで障害者雇用についての勉強会をやりましたときに、障害者手帳を持って障害者雇用を促進している方々が、「どうして日本の患者は法的にこんなに丸腰なんですか」「ここまで何も守ってくれる法律がないんですね」とおっしゃったことが非常に印象的でした。
 また、がんと就労に関する検討課題を考える場合には、がんの特色、ほかの障害や慢性疾患との比較検討も必要になってまいります。
 就労を考えるときには、さまざまなステークホルダーがいらっしゃいます。患者本人、家族、雇用主、産業保健スタッフ、治療医などの登場人物がおられます。それぞれが不正確ながんイメージにかなり振り回されているところがございます。御本人・御家族は迷惑をかけたくない、無理をしないで生きていこうなどの意見から、早まった退職判断や自己犠牲をなさることがあります。会社側も前の方に働けないだろう、辞めたいならしようがないという安易なあきらめに走ることが大変多くみかけられます。
 産業保健スタッフですが、日本人の就労者で産業医がいる事業所に働いているのは1割もおりません。9割以上は産業医がいない現場で働いております。しかも雇用関係が前提ですから、新規就活者あるいは非正規雇用者と産業医は接点がございません。
 治療医ですが、患者の就労に向けた助言が必ずしも自らの仕事の一部だとは認識されておりません。「無理をしないで仕事を辞めようと思う」と患者さんから言われれば「まあそうですね、無理をしない方がいいですね」というふうな会話になることが多うございます。
 私どもの研究班では人事担当のヒアリングをさせていただきましたが、そこでは病名や病状、個人情報をどこまでつかめばよいのか、、本人の就労パフォーマンスに波があるときの対応、同僚の不公平感への対応、そして、企業はボランティアではないので、その活動の質の維持と従業員の支援のバランスに苦慮しているという本音がいろいろ聞かれました。ただ、そこで強く感じましたのは、企業はサポートを求めているということです。決して冷徹なばかりではないという印象を強く持ちました。
 欲しい支援として、他業種の活動の内容、困難事例の相談窓口、主治医とコミュニケーションをとる具体策、対応Q&A集、人事向け勉強会などが挙げられまして、私どもの研究班では是非そこに対応して、具体的な支援策を立ち上げていきたいと思っております。
 関係者の情報共有の連携という意味では、ここにあるように、患者さん・御家族を中心として、さまざまなステークホルダーがいます。御本人・御家族も就労、治療方針に対しての情報収集力、そして、関係者への説明力の強化が必須になってくると思います。支援は自動的に天から落ちてくるものではなく、支援を引き出すための御本人・御家族の説明責任が必要になってくると思います。ただ、それを御本人・御家族だけの自助努力に任せるのではなく、そこで効率的にきちんとした情報共有がなされるための方策が必要だと思います。
 私どものプロジェクトでは、現状を把握し、支援リソースを開発して評価し、普及啓発まで持っていこうと考えております。そこで提言を幾つかさせていただきます。
 ステークホルダーの情報共有の推進です。啓発活動、教材作成、セミナーの実施に是非予算をつけていただきたいと思います。これはとてもニーズがあるところです。
 それから、これも非常に大事ですが、がんになっても働ける方はたくさんおられます。求められる就労パフォーマンスレベルを十分達成できるにもかかわらず、がんであるということだけで理不尽な差別を受けている方が数多くおられます。ですから、現在すぐに行うべきものとして、人事労務担当者を初めとしたステークホルダーが活用できる教材の作成、それから、事業所が利用できる個別相談窓口の設置、産保スタッフが配備されていない事業所への産業保健師などの派遣、これは中小企業向けの産保センターなどとの連携で、今からすぐにでもできることだと思います。これは法改正を要しないアイデアだと思います。
 次に、やはり長期的に見ますと、がん患者を今のように法的に丸腰のままでいさせてはいけないと思います。障害者差別禁止法に準じるものの制定が必要だと思います。実は、国連障害者権利条約、日本は2007年に署名をしましたが、批准はまだでございます。この権利条約の中では、一時的にパフォーマンスが下がった、機能低下を来した方も皆障害者に含められておりますので、当然がん患者も障害者の定義に入ります。例えば、アメリカ、イギリス、各国の障害者差別禁止法にも一時的に機能低下を来したがん患者も入っております。
 これだけ多くの日本人が就労年齢でがんになるときに、これを福祉的視点だけで対応することには限界があるのではないかと思います。就労可能者が不当な差別を受けないための法的保護が必要ではないでしょうか。
 そして、その場合がん患者を特別扱いするというよりも、ほかにもいろいろ働きづらさを抱えている人々の一部として位置づけることが必要だと思います。
 公正な能力の評価は適切な配慮を前提としますし、そのような配慮は社会的な責務と考えます。
 次のJAN(Job Accommodation Network)というのは、アメリカの合理的配慮に対する組織の例ですけれども、具体的に事業主や患者さん・御家族からの相談を受け付けております。一朝一夕でこのようなすばらしい組織が立ち上がったわけではありませんが、国外には実際にこのような支援窓口があるということです。
 新規就職時も大きな問題です。厚労省が「公正な採用選考について」という指導を出していますけれども、そこに「応募者の適正と能力に無関係の健康問題に関する質問を就職面接の場で避けるように」ということを明記していただきたいと思います。本籍や応募者の思想について質問してはならないというのは明文化してありますが、健康問題に関しては明文化がございません。それを入れるべきではないでしょうか。
 最後に、日本人のがんイメージ、これだけ医学的事実とそごがあるということを考えますと、長期的ながんイメージの改善の推進が必要になってくると思います。そのためには、先日のがん治療学会でも出ましたけれども、学校現場におけるがん教育も長期的に本気で考えていかなければいけないと思います。
 以上でございます。どうもありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。
 ここでお二方に対しての御質問を受けたいと思います。天野委員どうぞ。
○天野会長代理 ありがとうございます。私自身も27歳でリンパ腫を発症しまして、抗がん剤治療等の副作用で心毒性であるとか、間質性肺炎の急性増悪であるとか、あと、ステロイド剤の大量投与に伴う左目の失明とか、見た目ではわからないかもしれませんが、いわゆる内部障害というものを負って復職した経験がございまして、そうすると、職場で理解していただくことが非常に困難だと。何でそんなに疲れやすいんだとか、何でそんなに体力がないんだというようなことを場合によっては言われているような、私と同世代の患者さんはたくさんいらっしゃったと記憶しておりますので、今のお二方の話を本当に胸が詰まるような思いで伺っておりました。まず、桜井さんに2点質問がございます。
 1点ですが、桜井さんのスライドの中で、海外の法制度の状況について説明がありましたが、具体的にどういった内容なのかを御教示いただければというのが1点。
 2点目ががん教育、これは高橋先生からも指摘がありましたが、非常に重要だということですが、職場におけるがん教育というか、がん啓発についてはどういったことが考えられるのかについて教えていただければというのが桜井参考人への質問です。
 高橋参考人については、中長期的には法的ながん患者が丸腰という状態を改善すべきということで、例えば、障害者差別禁止法ということが提案されていましたが、その中で雇用者による合理的配慮の義務づけということがありました。これについて具体的にどういった内容になるのかについて教えていただければと思います。
○門田会長 では、桜井さん。
○桜井参考人 ありがとうございます。まず1点目の法制度関係ですが、今春アメリカに行きまして、向こうの労働省でこの法案等々についての詳しい解説を受けてきました。ADA法とFMLA法。FMLA法というのは、家族・医療休暇法のことです。この制度について詳しい解説を受けてきました。無給ですが、1時間単位でも取得することができ、なおかつ、法の利用者に対する差別待遇の禁止、あと、元の社会的地位の保証や被雇用者としての権利が大変守られています。これも当初はがんは入っておりませんでした。ところが、訴訟が増えましたので、ここ数年でがんも法律の中に入るようになりました。
 それから、小児がんにおいては現在、春に米国の10か所以上のサバイバーシップ・クリニックへ行きましたが、この中でも小児がんの長期的なフォローアップ、治療だけではなくて治した後にどうするかという問題の対応も法制度と併せて社会的な資源としても整理されております。
 こういったことに対して日本はどうなんだろうと考えたときに、やはり通院に有給休暇を使って行くというのが現状でして、これが足りなくなった場合には欠勤になってしまう。欠勤が重なると解雇理由の一つにもなってきます。、もっとフレキシブルな働き方を企業側に進め、かつ、そうした制度を持つ企業に対して何らかのインセンティブを与えることが重要だと思っています。
 例えば、スウェーデンでは1年以上の休職者を雇用した場合に、税金の優遇措置を企業が受けられます。こういった制度のバックアップというものを行政側もやっていかないと、この問題の解決に関しては限界があると考えています。
 2点目は、がん教育です。これは、中川委員からも議論の中でもずっと出てきておりますけれども、やはり私たちの2008年に行った調査の中で、3人に2人が同僚や上司の理解が必要と答えています。それがないと仕事の継続に不安を感じるというようなことが挙げられておりました。がん教育、企業検診にと併せて、がんになっても安心して働ける環境も整えることという両輪が大変重要なのではないかと思っております。
 実際、私のところにもいろいろなはがきが来ています。読ませていただきます。「先日、市の検診でがんの疑いがありと言われ、精密検査を行いました。自分の年を考えた場合、会社側から退職を判断されることもあり得るのではと思い、また、ローンも返済中でしたので、それ以上の診断を受けておりません」という手紙が来ています。やはり見つけただけではなくて、その後も安心できる環境づくりというのが私は非常に重要だと思い、それが職域でのがん教育、がん啓発というようなことになると思っています。
 以上です。ありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。
 高橋参考人お願いします。
○高橋参考人 合理的配慮という考え方についてですが、これはADAの中の一番の骨子の考え方で、ADAに限らず何らかの働きづらさを持っている方に対する配慮についての中心的な考え方です。
 どういうことかといいますと、その人の職能能力を障害があるというベースラインで判断するのではなくて、会社から適切な範囲の配慮を得て、その人の就労者としての能力があがった段階で判断しようという考え方です。そして、そこに単なる配慮ではなくて、合理的、リーズナブルと英語では言いますが、それがなぜリーズナブルかといいますと、その配慮を会社が提供することで、会社の経営が傾いてしまうようでは困るわけです。なので、その会社にとって現実的に対応できる範囲の配慮は提供するべきであるというのが合理的配慮という考え方です。
 ただ、漠然とそう言われても、どこまでの配慮が適切なのかというのは、その配慮を求める本人も、あるいは雇用側も非常に迷います。そこで、先ほどのJANのような組織が前例を教えたり、おたくのような経営状況だとここまでがリーズナブルと考えられるでしょう、というような相談業務を通じて具体的に個別に対応しているということです。
○門田会長 ありがとうございました。
 松本委員どうぞ。
○松本委員 まず、桜井参考人にお尋ねしたいと思います。先ほどの桜井参考人の発言を聞いておりまして、私自身は33歳のときにがんになりました。半年近い入院を経てやっと職場に戻ったときに、まず上司に言われたことが「もういいよ」という一言でした。あのときの悔しさというのがよみがえってまいりました。そういったことで桜井参考人が先頭を走って、私たちの痛みを訴えてくださっているということに、まず、敬意を表します。
 桜井参考人からは基本計画に盛り込むべきことと、その後の対策について明確に分けてお示しをいただきました。その後の対策のことでお尋ねしたいのですが、スライドの23枚目に、別の協議の場を設けて今後検討していく必要があると書いてありますけれども、あえて別の協議の場を盛り込む必要性について教えてください。そして、それが必要であるならば、基本計画に何らかのそれに関する文言を盛り込んだ方がいいのかどうかを教えてください。これが桜井参考人への質問です。
 もう一つは、高橋参考人の先ほどの御発言に関して、資料の7ページの「関係者の情報共有と連携」というところで、がん患者・家族は情報収集力と説明力を持つ必要があるという御発言がありました。それはごもっともで、私どももやはり口に出して言うべきことは言わなければならないとは思っております。けれども、残念ながらそれができない、どうしても顔を上げられない時期というのがあります。私もそうでした、言えない時期がありました。ですから、そういった弱さを覚えている人たちをきちんと支援していく仕組みというのも是非考えていかなければいけない。先ほどの高橋参考人のお言葉をあえてもう一度申し上げさせていただきました。
 恐れ入りますが、桜井参考人に先ほどの質問をお願いいたします。
○桜井参考人 ありがとうございます。まず、ここで私が言っている場ですが、働くというようなことに関しますと、国の雇用戦略を考えている場所、あるいは労働の方、福祉の方、経済の方といった審議会が多数開かれております。この中で、是非議論をしていただきたいんです。がん患者も含めてほしいんです。例えば、障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言ということで、平成23年8月30日にも障害者の対象者の範囲も検討されています。この中に慢性疾患というような言葉が入っていますが、がんがこういう議論に全く入れていません。ですので、是非こういう議論の中に、がんも入れて、さまざまな疾病を含めての議論の場に参加していきたいと希望しております。私が言っております場というのは、そういうものになります。
 それから、今年は基本計画、大変重要な時期を迎えていると思います。是非5年を振り返ったものではなくて、5年先を見据えたものであってほしいと本当に思っています。5年後にはどうなっているのかというと、先ほどの私のプレゼンテーションの中でもお話をさせていただきましたけれども、一度はがんの診断を受けたがん経験者というのが530万人にもなります。したがって社会的な痛みの解決策を計画中に刻むことは外せないと思っています。現在のがん対策基本計画を読みますと、「療養生活」という言葉はあるんですけれども「社会生活」という言葉は入っていません。社会的な死というのは私たちにとっては死と同じ意味をなします。社会とつながっていたいんです。ですので、言葉では「療養生活」に加えて、例えば「小児がんも含めての就労や経済的な負担を初めとした社会的問題の解決に向けた対策に取り組む」ですとか、そういった具体的な言葉を是非盛り込んでいただきたいと希望します。
 以上です。
○門田会長 高橋参考人お願いします。
○高橋参考人 今の桜井さんの御発言に全面的に賛同いたします。
 加えて、説明責任についてですけれども、これはあえて「説明責任」という言葉を使いましたが、松本委員の御指摘にありますように、現実にいかにそれが難しいかということは、本当にこの場にいらっしゃる方々は皆さん理解されていると思います。ただ、やはりそこを乗り越えていかないといけないと思うんですね。例えば、ADAなどの差別禁止法などで、とても強調されておりますのは、法律で守られる以上は働けるということが前提であると。働けないけれども優しくされているではなくて、しっかり働いている、だけれども、しっかり働けるのに理不尽に差別を受けるのは許せない、そういう前提なんですね。ですから、合理的な配慮がなされても期待された就労のパフォーマンスが実現できなかったときには、やはり退職勧告などがなされます。それは働くという意味を考えますと、そういうことなんだろうなと思います。
 ですから、やはり働くことの厳しさなどは理解した上でやっていかなくてはいけないのですけれども、それにしても理不尽に差別をされている状況がいかに多いか。そこは日本国内の状況を是正していかなくてはいけないと思います。
 それから、説明責任が求められるのは御本人・御家族だけではありません。人事労務担当者、辞めたいと思っている人が辞めることで、どれほどの権利を喪失するかということをきちんと人事労務担当者は御本人に説明しているでしょうか。実際はしておりません。そういう人事労務担当の対応に対する教育も必要だと思います。
 ヒアリングで非常に印象的だったのですが、職場のメンタルヘルスについてはこの数年非常に試みが進みました。あれは職場に非常に役立ったという前向きな評価が多く聞かれました。似たように、がんについても自分たちは勉強したいんだという声がありましたことを申し添えたいと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 花井委員どうぞ。
○花井委員 ありがとうございます。私の地域でのことをお話しして就労問題を皆さんに訴えたいと思いますが、20代の男性のまさにサバイバーです。転移もしました、小康状態を保って治りやすい精巣がんであるので、このままいってくれればいいなとみんなが期待しています。彼は大学時代に発症しまして、経済学部だったのを福祉学の方に転向しました。そして、ピアサポート活動をしながら自分も研さんを積み、このたびある病院にMSWとして勤務することができました。治療体験、がん体験すべて余すところなく病院に告げて、どうかなと思いましたら、君のがん体験を患者さんのために生かしてくれと採用になったということです。すべての病院がこのようなお考えなのかどうかわかりませんけれども、この快挙といいますか、非常に喜ぶとともに、まだまだがんであることをすべてカミングアウトして企業に採用されるというのは難しいのではないかとも思っています。
 桜井さんの資料にありました9ページの「病気の人いらない」という非常につらい事例でございますけれども、この人は普通に仕事をしているのにこういうふうに退職勧奨されたということですね。こういう事例は、がん患者さんとかかわる場では本当にたくさんあるんですね。枚挙にいとまがないと言った方がいいと思います。それはなぜなのかというと、やはり患者さんの方で治療の影響で体力・気力をなくしてしまう場合もあるかと思いますが、多くの場合は職場であるとか、社会・地域において、がん患者さんということが非常に誤解と偏見を持たれたままだということなんですね。
 ある私の地域の老人クラブの会長さんは、すごく遠い病院で手術を受けました。がんであることを知られたくない、老人クラブで集まるとだれかが休む、がんだと。次に集まったときは危ないらしいと。次に来たときには、もうだめらしいという話になっていくということなんですよ。風説の流布といいますか、誤解が誤解を生んでこういうことになっているというのが全国津々浦々いろいろなところであると思います。ですから、就労の問題とサバイバーシップの問題とは分けて考えることはできないわけなんです。
 それでも、まず最初に、サバイバーシップという考え方の普及ではないかと思います。先ほど、高橋参考人から法律に守られる以上はというのがありましたけれども、いろいろな就労支援がもしかしたらこれから法制化が考えられていくのかもしれませんが、私たちがん患者・家族が、がんだよということを公表して、つらい出来事もあるかもしれませんけれども、一緒に治療参加・社会参加、制度に向かって働きかけていくということが大切だと思うんですが、桜井さん、いかがでしょうか。まず、このサバイバーシップの普及だと私は思いますが。
○桜井参考人 おっしゃるとおりです。私もそう思います。私自身も、復職して、最初に言われたことは、がんは切って治る病気だと言われました。なぜ休むの?なぜ通院するの?というようなことを言われました。最終的には、工程が立たない人間は要らないと言われました。17年間勤めた会社からこういうことを言われて本当にショックでした。がんは切って終わりではないのです。その後は心の痛みなど、さまざまな痛みを抱えます。やはり職域でのがん教育というのは、私は非常に重要だと思います。法制度をつくっていくことはとても大変だと思います。まずできることとしては、こういった職域でのがん教育を検診と併せて普及していくということが非常に重要だと思います。がんに対して理解を得て、労働環境の整備ですとか、あるいは就業規則の運用を工夫するといった部分が広がっていくといいのではないかと思っています。
 特に、小児においては社会に出る瞬間からこの問題に直面するわけで、ローンが組めないですとか、履歴書が書けないですとか、書類選考は通っても面接で落とされてしまうというような課題もあります。是非こういう職場でのがん理解と同時に、働く患者を支えるピアによるサポート、相談支援といったものも今後は必要ではないかと思っております。
○門田会長 江口委員どうぞ。
○江口委員 ありがとうございます。キャンサー・サバイバーシップの問題は非常に大事だと思いますし、先ほど参考人が言われた療養生活の中で社会生活について、今まで私たち医療者としては「療養生活」で一括して言葉をくくってしまったことは反省されます。ただし、サバイバーシップの問題はこれを発展させていこうとすると、例えば、地域の行政とか地域の企業あるいは我々医療機関とか、どういうふうにこの先取り組んでいったらいいかというのは、まだ見えなよいうなところが非常に多いと思うんです。今日の参考人の方々のお話であった、例えば、相談窓口とかそういうものにしても、具体的にどういうことをやっていく、あるいはどういうスタッフが担うというところ、あるいは例えば国がやるべきものはどこまでか、どういう範囲なのかといったような、まだまだ見えない部分がたくさんあると思うので教えていただきたいんですけれども、例えば、今までのあるいは参考人が関与しているところでは、実際に相談窓口として有機的に動いているところがあるかどうかと、先ほど研究論文でエビデンスが少ないということを言われました。研究論文という言葉でなくてもいいんですが、こういうものはアンケート調査だけではなくて、ある地域である程度のところはうまく動いているところがあれば、そういうところがどういう状況で動いているのかといったようなことをもし御存じであれば教えていただきたいと思います。
○門田会長 高橋参考人どうぞ。
○高橋参考人 まずは、うまく動いているところですけれども、これは企業単位でうまく動いている、グッドプラクティスの事例を今集めております。それと同時に、御本人や御家族が具体的にどのような困難に直面して、どういうふうに工夫していったかという事例を数百単位で集めている途中でございます。
 それから、論文についてですが、今までの論文、海外の文献などを見ますと、やはり国のがん登録のデータを基にして、疫学的にフォローしている例が多いです。そういう意味でも、がん登録の話はここにもつながっていきます。
 それから、現在の相談窓口ですが、がんと就労ということに対して、公の組織でしっかり相談を受けているというところを私はまだ存じません。ただ、個別のNPOとしての活動あるいは株式会社としての活動としては、それこそ桜井さんたちが中心になって立ち上げられて、活発に今、御努力なさっているところです。
 また、既に診療連携拠点病院の相談支援センターがありますので、一つの可能性としては、そこの相談員の方々の就労に関する支援力のアップです。相談員の方々からも直接私どもの研究班に、そういうセンターで使える資料をつくってくれ、あるいはセンターの相談員向けの勉強会をしてくれという御要望が届いておりますので、是非そこはやりたいと思います。
 もう一つは、中小企業の健康増進に向けた産保センターですけれども、そこの保健師さんなど、あるいは産業医の先生方と連携するのも一法だと思っております。どのような可能性があるのかということも含めて、今、広く御意見をいただいているところです。
○門田会長 桜井参考人どうぞ。
○桜井参考人 私も高橋先生と同じ意見です。もう一つ追加で、職を失って一番最初に行く場所はハローワークです。独立行政法人労働政策研究研修機構から「これからの雇用戦略」という、わかりやすい雇用人口確保のための戦略図があります。そこには、高齢者の就業支援があります。それから、女性の就業支援があります。ニートの方の就業支援があります。しかし、疾病が入っていません。これらの人たちはこういうところに行くと相談窓口があり、それから、キャリアチェンジをするための職業訓練を受けられるんですけれども、がん患者さんはここに行っても相談も受けられない、新たなキャリアチェンジをしなくてはいけない場合も、そういったトレーニングの場にも参加できないというのが現状です。やはり一番最初にハローワークの場所においても、こういった相談機能を持つことが必要だと思っています。病院内に置くことが必ずしも的確かどうかというは、私はちょっとわかりません。
○門田会長 ありがとうございました。
 眞島委員どうぞ。
○眞島委員 今の就労の問題の中で、特に障害者差別禁止法の制定、ADAに関してのお話がございました。その後で、Job Accommodation Networkのお話もあったかと思います。今この日本の現状において、このような法整備に向けてロードマップを書くとしたら、どのようなロードマップが描けるのか、お二人から教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。
○門田会長 桜井参考人どうぞ。
○桜井参考人 ロードマップとしては、障がい者として認定されないたくさんの子どもたちがいます。ぎりぎりのところで障がい者枠に入れないという患者さんが非常に多いのですけれども、この認定をしている審議会、そういうところにちょっとずつ、がんもこんなことで大変なんだよという種をまいていくことが非常に大切だと思っております。議論にも入れないから、皆さんはそういう人たちがいるという存在すらわからないのですね。ですので、そういう議論を盛り込んでやっていくことがとても大切だと思っています。私たちも医療消費者から納税者になるということ、そういう視点からも経済界の方に訴えていきたいなと考えます。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、高橋参考人どうぞ。
○高橋参考人 場というのは、特に法律をつくるということについては、いろいろなステークホルダーの方々のお考えの調整が必要になってくるものだと思いますけれども、一つ障害者差別禁止法については、障害者制度改革推進会議なども走っていると思います。ただ、その中で、やはりがんの当事者の方が会議に入っていらっしゃらないと思うんですが、私がここでとても危惧しますのは、何か一つの法律をつくろうとしたときに、パイの取り合いにならないようにということですね。難病はここまで入った、だけれども、これにがんが入ると、がん患者の数は多いだけに、まとまるものもまとまらないぞ、ということになってきかねないと思うんです。結局、働きづらさということでくくって国としての施策を考えるという視点が大事ではないでしょうか。
○門田会長 ありがとうございました。確かにそうですね。
 では、本田委員どうぞ。
○本田委員 端的な質問で恐縮なんですけれども、まず、高橋参考人に日本人のがんのイメージの調査というのはとても面白いと思うんですが、このグラフの読み方がよくわからないので、それを教えてほしいということと、がんのイメージがあるからこそ、さまざまな課題が出ているのではないかと感じるんですね。よくこの協議会でも話題になるような、がんという病気の持つ意味がだんだん変わってきた、状態が変わってきたという事実と、そういうことをちゃんとわかって、がんについて正しく理解してもらうという文化をつくっていくというようなことがとても大事だと思うんですけれども、桜井参考人には例えば、海外ではサバイバーズシップ・デーみたいな、患者さんたちがさまざまな医療機関や医療者や行政と一緒に、国を挙げての場合もあるでしょうし、地域でやっている場合もあるようですけれども、そういうことで啓発活動みたいなことに自らが立ち上がってやっているという例があると思うんですけれども、日本でのそういう可能性みたいなことも是非御意見をいただければと思います。
○高橋参考人 まず、グラフの読み方ですが、済みません。4ページをごらんください。乳がんを例にとります。縦軸は回答者の数、横軸は、本当に済みません、これでは見えないですね、一つ一つの目盛りが10%です。縦に赤い線が引いてありますのが5年生存率、乳がんの場合には5年生存率が85%ですから85%のところに線を引いてあります。ですから、本来乳がんの5年生存率を一般市民が正しく理解していれば、この赤い線の近くに棒グラフが集まるはずなんです。ですけれども、これだけ多くの人たちが赤い線の左側、つまり悲観的な5年生存率のイメージで回答しているという見方です。よろしいでしょうか。ほかのがんも、すべて赤い縦線が正解です。
○門田会長 桜井参考人どうぞ。
○桜井参考人 では、短めに。キャンサー・サバイバーズシップ・デーですが、アメリカではたくさんの団体が統一行動日をやっています。そのままずばり、「ナショナル・キャンサー・サバイバーズ・デー」というものがあります。開催日は6月の第1日曜日です。今年は6月5日に行われ、2012年は6月3日になるとホームページに掲げられておりました。
 このほか、例えば、ランス・アームストロング財団では、彼が告知を受けた10月3日を統一行動日としてうたっています。そういう日がたくさんあります。ですので、これはみんな著作権を有してライセンスを持ってやっていますので、私たち日本でも、やるのであれば、日本版の日を設定していく方法もあります。このホームページの中に非常に面白い記述があるのですけれども、「親も同僚もお隣近所もあなた自身もサバイバーになる可能性があるのに、早期発見や治療の進歩だけでなく、急性期の人も中長期的な人も、がん経験者が直面する心や体、仕事、経済などさまざまな課題がまだまだ残っている。是非それを知ってみんなで解決していこう」というメッセージがあります。そういうちゃんとした考え方、哲学を組んだ上で、そういう統一行動日を設けることはいいのではないかと思います。
 それ以上に重要なことは、やはり基本計画をつくっていく上で、だれでもサバイバーになるんだという哲学を持って基本計画を考えていくということが非常に重要なのだと思っています。ですので、5年経ったからがんは治った、がん経験者ではないということではなく、「がん経験者・家族のために」というような一文を是非入れていただきたいと思っております。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 田村委員どうぞ。
○田村委員 キャンサー・サバイバーシップが非常に重要だということは、日常我々は診療の中で毎日経験していることなんですけれども、一方で、キャンサー・サバイバーの方たちの、今、患者さんたちを診ている中での大きな問題は、糖尿病とか脳卒中を合併したとか心筋梗塞を合併した、そういういわゆるノンコミニカルディジーズが、この間UNサミットでも提言されましたけれども、そういう枠組みの中でやはりサバイバーシップを少し広げてある程度考えていく必要があるんじゃないかと思っています。
 高橋参考人にお伺いしたんですけれども、がん以外でサバイバーシップについて調査されたことがあるかどうかということと、将来的にキャンサー・サバイバーとそのほかのノンコミニカルディジーズのサバイバーの方たちとの接点はないのか、すなわち共同戦線を張れないのかということです。
○高橋参考人 実はサバイバーという言葉をだれに使うかということにつきましては、さまざまな議論があります。キャンサー・サバイバーという表現はかなり一般化してきましたが、アメリカでは揺り戻し的な意見もありまして、脳卒中サバイバーとか心筋梗塞サバイバーとは言わないじゃないか、なのに、なぜキャンサー・サバイバーとキャンサーにだけサバイバーをつけるんだという違和感の表明などもあります。ただ、やはり語感、ニュアンスとしては、単にペイシェントとして治療を受けるという語感ではなくて、自分の人生に前向きに取り組むというニュアンスがあります。あと、少なくともアメリカの政策あるいは研究論文の中では全体的に「ペイシェント」という言葉から「サバイバー」という表現にシフトしている印象がありますので、これは異論・反論はあるにせよ定着していくのだろうなと思っております。
 ほかのがん以外の方々、大きなことを乗り越えた方々、乗り越えつつある方々との共同戦線は十分にあり得ると思います。そのときに、やはりパイの取り合いにならないということが一つと、お互いの共通点、相違点を非常に冷静に考え合うこと、そこが重要なのではないかと思います。がん種が異なるがん患者会の中の協働アクションにも通じることです。それこそがんは慢性疾患になっていくわけですから、慢性疾患領域の活動で蓄積されたことをがん領域が学ぶ、逆に、がんの成果を慢性疾患に還元するという協働は非常に大事だと思います。
○門田会長 中川委員どうぞ。
○中川委員 私は、江戸川区のある病院をお手伝いしているんですが、そこでは夜10時まで放射線治療をやってもらっています。それは、今、高齢男性もかなり働くんですね。特に、前立腺がんなどは通院でできるわけですけれども、がんと言っただけで雇用の問題になってくる。ですから、会社にがんと言わずに夜やってくれと、そういうニーズが物すごく強いんですね。ですから、私も雇用の問題あるいは就労の問題に非常に関心を持っています。とりわけ桜井参考人のスライドの11は、私もよく使うグラフなんですが、54歳までの若い世代では、女性の方がはるかにがんが多いわけです。30歳代では3倍です。これは乳がん、子宮頸がんが若い世代にあるからですが、女性の社会進出に伴ってこの部分が非常に重要になる。男性が55歳から抜いてくるわけですけれども、今後やはり定年の延長という問題があります。
 したがって、今後、会社の中での、あるいは就労層のがん対策が非常に重要になってきて、この中でとりわけ会社でのがん検診、企業アクションという形で私も少し関与していますが、この中で桜井参考人がおっしゃったような、検診だけではなく会社に対する啓発は高橋参考人のデータでよくわかります。認識のそごがあるわけですので、この辺をセットでやっていく必要があるのではないかと思います。
 それから、天野委員ががん治療によって少し肉体的な影響を受けた、これは私も臨床医ですからよくわかるんですが、例えば、がん患者さんに関する死生観調査を私はやっているんですけれども、これは簡単に言うと一段格上の方になります。例えば、生きる意義などが非常によく感じられておられますし、つまり、会社から見たら仮にそういう肉体的な問題があったとしても、非常に重要なリソースであることは間違いないです。ですから、是非、基本計画の見直しの中にこの就労の問題を入れていただきたい。現行の基本計画の初めの部分ですけれども、がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会をつくる、この中で、とりわけ就労の問題を今後是非、入れていただきたいと思います。
 以上です。
○門田会長 花井委員どうぞ。
○花井委員 中川委員の意見に患者団体として本当に共感を覚え、賛成いたします。私は先日、がん治療学会にスカラーシップで参加させていただきまして、その中でも桜井参考人が、がんと就労について今日のようなお話をなさいましたときに、非常に印象的だったのが、桜井参考人が大きな800とか600というN値を示されて、がんになったことで退職勧告であるとか、勧奨されている人がこんなにたくさんいるということに対して、聴講席の医師が1人、2人とマイクに立たれて、私たちは治療の現場でそういう話は全く聞いていないと、そんなことがあるのが信じられないとおっしゃいました。それがいいとか悪いということではなくて、高橋参考人の資料の6ページにありますように、ステークホルダーの問題として、治療医は患者の就労に向けた助言を必ずしも自らの仕事と考えていない。そして、患者・家族に就労関連の相談相手と考えられていない、これは当然だと思うんですね。職場の関係者とお話をする機会もないと思います。「先生、私これで首にされそうなんですけれども」「よしよし、それじゃあ僕が上司に掛け合ってあげよう」みたいなことができるような状況ではないんですね。御存じなくて当然ですし、患者さんもお話しにならないと思います。でも、ステークホルダー全体が重要な問題を共有していくということは誠に必要なことだと思うんです。医師がこの問題を御理解いただくことで、先ほど桜井参考人もおっしゃいましたし、私も化学療法の中で提案をいたしましたが、中川委員がやっていらっしゃるように、夜間の治療ということも考えられなければいけないと議論が発展していくと思います。
 今日、野田委員の御発表の中で、私は欣喜雀躍いたしましたのが10ページの一番最後にある「心理・社会学的研究等についても強力に推進する必要がある」ということで「強力」という文言を入れていただきました。この社会学的研究等というのが何を指すのかということは、ここには書かれておりませんけれども、是非この社会学的研究にがんの就労の問題、サバイバーシップの問題も入れていただきまして、議論が尽きぬ問題でございますので、何か別に考えられる、議論をするような場が設けられることを強く望んでいます。
 ありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。
 いつもあれなんですが、参考人の方に来ていただいますので、参考人に直接質問の形の御意見をお願いしたいと思います。
○保坂委員 お二人の参考人のお話は大変ためになるお話でしたが、一つは、がん患者さん、あるいはがんサバイバーの就労について、今後どういうふうにしていったらいいかというときに、本当は2つに分けて考えた方がいいんじゃないかとお話を聞いていて思いました。というのは、不当な差別といいますか偏見に基づいて、がんであるから、もうだめであるというような形で仕事ができなくなる場合と、現実に企業においての効率性が落ちるというような、非常に冷たい言葉で言うとそういうことでだめな場合の2つに分けて考えていかないと、何が何でも全部一緒にとすると話がうまくいかないと私は感じているんですが、その点について、お二方はどう思われているかということと、もう一つは、いろいろな法律をつくっていくというお話にまで発展していくんじゃないかと思いますけれども、その場合に今の日本の社会の中で非正規雇用の人が圧倒的に多いということ。非正規雇用の人にはいわゆる普通の法律をつくっても、その人たちはカバーされないわけですね。ですから、その辺のことも考えて進める事が必要であると思うんですけれども、その点どう思われているか。
 それから、高橋参考人からは9ページで産保センターを利用したらいいんじゃないかというお話がございましたけれども、今言った正規雇用の人が多いところというのは当然、産業医も持っているような、自分のところで産業保健スタッフを持っているようなところですけれども、それを持っていないような小さな企業に働いていた方のサポートをどうしていくかというところで、実は産業保健センターも国がどんどん予算を削っていて、現状何もできない状態といいますか、やっている方たちの本当に犠牲的な熱意に支えられている部分があるのですが、そこに何かを持っていくとすれば、やはりそこに予算をつけるようなことも考えていかないといけないと私は思っているんですが、その辺について高橋参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
○桜井参考人 おっしゃるとおりだと思います。私は偏見やスティグマに関する問題、あと現実の法制度の改正は別だと思っています。言い方は悪いのですが、「合わせ技一本」だと思っています。両方をやらないとだめだと思っています。
 それから、非正規雇用の問題については、松本委員の方でたしか調査をされておりました。そこでもたしか数字としてかなり浮き彫りになっておりましたので、よろしければデータをいただければと思うんですが。
○松本委員 では、済みません、口を差し挟ませていただきます。
 私どもが愛媛でやりました、がん患者満足度調査の中で、罹患後の就労について尋ねておりまして、派遣・パートの方々は自主的に転職または退職した人が40%、勤務先から転職・退職を余儀なくされた人が10%、つまり半数の人は罹患によって職を失っています。月収の面でいきますと、治療前を100とした場合に、派遣・パートの方々は20、つまり20%しか収入が得られなくなっている、8割減という現実があります。非常に厳しいということです。
○桜井参考人 ありがとうございます。
○門田会長 では、高橋参考人お願いします。
○高橋参考人 企業としての責務、ビジョンと、就労者の福祉の両立というのは企業文化にもよりますが、大変重要な問題だと思います。先ほども申したんですけれども、やはり今不当に差別されている人が多いということで、その不当な差別の是正は喫緊の課題だと思います。それは不当ですので。それこそ桜井さんは本当によく御存じだと思うんですけれども、労基法はどこにあるのというような状況が世の中にはたくさん生まれております。先ほども申しましたが、ちょっとした配慮で働ける、あるいはアクティブな治療が終わった後には前と同じように、あるいは前以上に働けるような体調を持っている方が、がんだというだけで排除されるという状況はあってはならない。これは不当な差別だということだけではなくて、日本の産業についても非常に大きな損失だと思います。
 それから、非正規雇用にどういうふうに対応するかということについては、本当に大きな問題だと思います。特に、非正規雇用で働いている女性の問題とも絡んでくると思います。どういうカバーの仕方があるのかという正解は現時点では持ち合わせておりません。ですけれども、それは本当に考えなくてはいけないことだと思っております。
 それから、産保センターの方ですが、確かに予算が削られております。産保センターというのは非常にいい窓口で、あと、そこに働いている方々の意識も大変高いです。なので、予算が削られているというのは非常に残念な状況です。では、産保センター以外の例えば学会とか、職能団体などで何かをやるかということを考えたときに、長続きさせるためには、やはり働く産業保健スタッフへの報酬がちゃんと保証された上で、重要な仕事として認識されるのが大事だと思うんです。ですから、産保センターの活用については、これが非常にいい場所であるという理解に基づいて前向きに御検討をいただければと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 では、簡潔にお願いします。
○嘉山委員 簡潔というより、先生がまとめていただければ一番いいんですが、なかなか先生にまとめていただけないので、まとめさせていただきます。
 桜井さんががんちでお話しになったときに、私は脳外科なので、そういう人もいるし、そうでない人もいると。問題は、きちんと分けなさいと言っていたんですね。それは、どこまでいっても問題は尽きないんですよ、社会の問題ですから。でも、最初のキックオフとして、先生が出した6ページに問題点がすべて書いてあるんですね。企業側も勿論、企業活動が落ちるようであれば非常に困るわけです。それもボランティアでやるわけにはいきませんから。ただし、ちゃんと働けるのに、少なくとも働けるのに、がんだというだけで不当な扱いを受けたらだめだよというのをまずキックオフにして、その次に、例えば、私は脳外科なので精神神経障害がある人は、今企業は法律で何パーセントか雇わなければいけないんですよ。そういうところまで持っていくことを順番にやっていたんですよ。最初から全部やろうとしても無理なので、少なくとも元気なのに、企業にとっても貢献できるのに、がんというだけで不当な扱いをするのはだめだよという法律の創設をお願いするというのが、私たちの最初のステップだと思うんです。全部は無理だと思います。でないと、がんで働けなくなったとしても企業は雇えと言われたら、今度は社会がひっくり返ってしまいますから、順便にやっていくしかないと思うんです。いかがでしょうか。
○高橋参考人 そう思います。私は、やはり働くということの意味、働いたことの対価として報酬を受けるわけですから、何らかの働きづらさを抱えたから自動的に保護せよというのはおかしいと。おかしいという言い方は変かもしれませんが、そこは考えた方がいいと思います。
 もちろん、例えば、脳腫瘍で認知機能が落ちたというときに、小児がん領域でも作業所のような形でジョブトレーニングをしようとしている試みもございます。ただ、嘉山先生がおっしゃったこと、まずキックオフは働ける人の不当な差別をなくすということ、そこは賛同いたします。
○門田会長 ありがとうございました。
 申し訳ありませんが、これで最後にしたいと思います。本田委員どうぞ。
○本田委員 今の議論の中で1つだけ是非考えていただきたいのは、特に、女性の乳がんとか若い30代、40代の方に多いんですけれども、女性の場合は結構肩たたきなどが多いことと、術後補助療法などで、その後通院をしばらくした後には普通に働けるはずなんだけれども、その期間、結構定期的に休んで治療に行かざるを得ない。そういう人たちも基本的にはちゃんと働けるんですから、そういうことも一応不当なんだという理解にしていただきたいなと思います。
○門田会長 もう時間が相当過ぎてきましたので、とにかく質問として聞きたいことがあればお聞きいたしますけれども、そうでなければディスカッションは次回の集中審議でやりたいと思います。よろしゅうございますか。どうしてもということがあれば受けますが。
 それでは、この件はここにおきまして、次のがん予防・検診の方に移りたいと思います。
 では、まず最初に、園尾参考人から乳がん検診について御報告をいただきたいと思います。その後、中山参考人、それから、事務局からと続けて御説明していただいて質問を受けたいと思います。
 では、園尾先生お願いいたします。
○園尾参考人 川崎医大の園尾でございます。本日は、このような機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。
 それでは、早速始めたいと思います。資料7をごらんください。最初の2枚は今回の報告のサマリーでございますので、後でごらんください。
 それでは、3ページ目をごらんください。私がお話ししますのは、我が国の乳がん検診、マンモグラフィ検診の現状と問題点ということでございます。
 下段には、我が国の乳がん検診の推移を書いています。1987年に視触診検診が開始され、30歳以上に毎年行われてきました。しかしながら、十分な効果がないため2000年にマンモグラフィ視触診併用検診が50歳以上に導入され、2年ごとに行われるようになりました。更に2004年には40歳以上に拡大されて今日に至っております。
 4ページ目の上の図は、日本乳癌学会の診療ガイドラインです。このガイドラインでは、視触診単独による乳がん検診は推奨グレードDということでお勧めできないということになっております。
 下段がその根拠でございます。視触診検診では十分な死亡率減少効果がないという結果が出ております。
 5ページ目の上の図は、2004年に出されたマンモグラフィ併用乳がん検診のガイドラインです。先ほどと同じように40歳代以上に視触診、マンモグラフィ併用の検診を2年ごとに行うというものでございます。
 下段は、乳癌学会のガイドラインですが、50歳以上に対するマンモグラフィ検診は推奨グレードA、強く勧めるというグレードに入っています。
 6ページ目の上段に示しますように、40歳代のマンモグラフィ検診は推奨グレードBということで勧められるということになっております。
 下段は、欧米のマンモグラフィ検診における乳がん死亡率の減少効果を示したものです。マンモグラフィの検診群と対照群を無作為に比較した試験です。7つのトライアルのメタアナシリスの結果、50歳以上、40歳代ともにマンモグラフィの検診は有意な死亡率の減少効果が見られております。
 7ページ目の上段は、米国におけるマンモグラフィ検診における感度と特異度を示したものです。これは米国のBCSC(The Breast Cancer Surveillance Consortium)という、がん登録とか病理登録とリンケージされた組織で作成された、60万人をベースとしたデータです。
 乳がん検診の感度、すなわちがんをがんとして正しく拾い上げる感度は84.1%でございます。一方、がんでないものをがんでないとする特異度が90.4%で良好でございます。
 しかしながら、下段に示すように、年齢別に見ますと40歳代の感度はやや低く、特に40歳代前半では73.6%と低い値です。
 8ページ目の上段に、本邦のマンモグラフィ検診の成績と欧米の成績が示されております。徳島、宮城、茨城のデータが出ていますが、ともに95%を超える良好な感度を示しており、一番右に示す欧米の成績と同等以上の成績が出ております。
 下段は、宮城県における乳がん検診の年齢別の精度を見たものです。40歳代の感度は71.4%で、50歳以上と比較してやや低い値を示しております。
 一方、特異度にはそれほど大きな差はありませんでした。
 9ページ目の上段には同じことが示されております。すなわち40歳代の感度は71%であり、40歳代では3割の乳がんが発見できないということです。これは先ほどの欧米のデータでも同じような数値が認められています。
 下段はその理由であります。日本人はマンモグラフィで高濃度乳房が多いと言われております。宮城県のデータを見ますと、マンモグラフィで透過性が低い、すなわちマンモグラフィで白く写ってしまって、がんが隠れてしまうという高濃度乳房が40歳代で明らかに多く、7割近くを占めております。また、50歳代では26%、60歳代は12%と、こちらは低いという状況です。これが40歳代の乳がん発見の感度が悪くなる原因です。
 10ページ目の上段ですが、2007年2月の朝日新聞に「マンモグラフィ併用でも」「乳がん『見落とし』40歳代3割」と書かれております。この表現は、写っているものを医師が見落としたと誤解される表現であり、正しくは見落としではなくて、もともと写っていないので「40歳代では限界がある」という方が正しいと考えます。
 下段は同じく朝日新聞の昨年2月の記事です。タイトルに「米の勧告『40代女性にマンモ推奨しない』」「乳がん検診日本どうする 罹患率ピークは40代後半」と書かれております。この内容ですが、2009年11月に米国の予防医学専門委員会が、40歳代の女性に対してはマンモグラフィの検診は利益より不利益の方が大きいので推奨しないという発表をしました。その理由として、40歳代ではマンモグラフィ検診による利益である乳がん死亡率の減少効果は認められるものの、不利益として、偽陽性率が高いことなどを指摘しています。すなわち引っかけ過ぎの率が高く、精密検診機関での不必要な検査が増えるなどの不利益が50歳以上と比較して大きいので、40歳代のマンモグラフィ検診を推奨しないということを発表しております。
 これに対して、米国の対がん協会とか放射線医学会、米国の議会は引き続き検診を進めると発表しました。また、日本でも引き続き検診を進めることになりました。その理由はそこに書いてありますが、詳細は次のページで説明いたします。
 11ページ目をごらんください。詳細が示されております。上のグラフで示すように、日本では米国と比較して、40歳代の罹患比率が相対的に高くて、40歳代の人が多いので、現実に40歳代で死亡率の減少効果があるという事実は非常に重要なことで、これは重く受け止める必要があるということです。
 また、下の表に示すように、1人の乳がん死を防ぐのに必要な検診受診者数は40歳代、50歳代については日本と米国では大差がありません。しかし、60歳代は日本が2倍近く多い人数です。この60歳代と40歳代の値を見ますと、米国の方が相対的に40歳代の効率が悪いということになります。
 このような理由で、日本では40歳代のマンモグラフィ検診を継続することになりました。しかしながら、この時点では我が国の40歳代のマンモグラフィ検診の不利益に関するデータがありませんでした。
 下段が、その後、我が国で行われた40歳代の乳がん検診の不利益に関する実態調査で、昨年の日本乳癌検診学会で発表されたものです。マンモグラフィ検診の不利益に関して、特に重要な偽陽性(引っかけ過ぎ)とそれに伴う精査として追加画像診断、それから、切ったりあるいは針でとったりする生検が検討されています。これは日本の代表的な5つの県の集計で、全体の総受診者の母数が14万4,800人とかなり大きなデータの成績であることをつけ加えておきます。
 12ページ目の上段でございます。
 これは米国と日本の年齢別の検診結果を示したものですが、黒の数字は米国のBCSCの調査結果です。一方、日本のデータは赤字で示しています。これらの数値は1,000人検診すると仮定しての人数です。マンモグラフィ偽陽性率は40歳代において米国、日本それぞれ97.8%と96.2%で、日本と米国はほぼ同じ数値でした。一方、その他の年齢では日本が低い値です。
 更に、追加画像診断や生検の数は40歳代を含めて日本が米国より良好な成績でした。
 また、40歳代の検診発見乳がんの数も、日本では米国より多く、良好な成績でした。
 下段の表は、年齢別のマンモグラフィの偽陽性率、つまり、検診での見落としを米国と宮城県で比較したものです。40歳代を含め、どの年齢層でも宮城県の偽陽性率が低く良好な成績でした。
 13ページ目上段に不利益のまとめを書いています。不利益と考えられる偽陽性、追加画像診断及び生検は、40歳代で最も高率でしたが、米国の成績よりどの年齢層でも下回っておりました。
 したがって米国と比べて日本の乳がん検診は不利益が少なく、効果は同等かそれ以上と考えられます。
 下段ですが、以上より、日本では40歳代のマンモグラフィ検診を継続する方針となりました。しかし、がんが3割発見できないという点は問題です。
 そこで、14ページ目の上段に示すように、第3次対がん総合戦略研究事業がん戦略研究課題として、40歳代における超音波検診の有用性検証が立ち上げられました。
 具体的には下段の図に示しますように、40歳代の女性10万人を対象として大規模な無作為比較試験が平成18年度に立ち上げられました。すなわち、従来のマンモグラフィ検診群とこれに超音波検診を加える群を無作為に比較する研究です。
 平成19~22年度までに、既に両群合計7万6,000人以上がエントリーされており、平成24年度でデータ収集を終了し、平成26年度にプライマリーエンドポイントである検診の感度・特異度が発表されます。また、平成27年度以降に累積進行がん罹患率が出る予定です。
 15ページ目ですが、この研究に参加している団体が42団体ございます。
 下段には超音波検診の今後の課題を示しました。標準化ということと、精度管理の2つが重要です。標準化としては、カテゴリー分類の検証が必要です。現在は超音波検査のガイドラインによるカテゴリー分類に従って検診が行われておりますが、その検証が必要です。それから、23に示す実際の検診データの分析が今後必要です。
 また、精度管理としては、特に2の検診に携わる医師と技師の教育と育成が重要です。また、4の中央精度管理委員会の設置も重要です。
 16ページ目です。現在、医師・技師の教育研修のために、乳房超音波講習会を日本乳腺・甲状腺超音波診断会議が主体で行っております。過去合計80回行っており、約3,700名が受講して、合格率は約30%です。したがって、現在約1,000名の合格者がいるという状況です。
 下段には、超音波講習会の現状を書いています。医師・技師はまだまだ不足しており1,000人程度ですので、とりあえず1万人を目標に増やしていきたいと思います。
 また、講習会実施のマンパワー不足の問題があります。すなわち超音波診断会議のメンバーだけでは、マンパワー不足です。それから、経費不足の問題があります。これは講習会が超音波診断会議の会員の会費で賄われているような状況でございます。また現在、マンモグラフィは精度管理中央委員会で講習会や精度管理がきちんとやられておりますけれども、超音波検診もこれと統合した中央委員会の構築に向かって準備中です。
 最後にまとめでございます。乳がん死亡率低減へ向けて「有効な検診」を「正しく」「多くの人に」ということです。40歳代ではマンモグラフィ検診の感度が低い。40歳代は罹患率が高く、超音波検診の有効性の評価の結果が待たれます。正しい検診というのは、きちんと精度管理された検診ということです。
 多くの人にということが今大きな問題になっております。受診率50%以上を目指しておりますが、現在のところは16%くらいでとどまっているという現状です。
 以上です、ありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、中山参考人から検診の取り組みの実情について、よろしくお願いいたします。
○中山参考人 よろしくお願いいたします。大阪府のがん検診部会長を務めさせていただいております、中山でございます。
 私の資料は資料8をごらんになっていただければよろしいんですが、先ほど園尾参考人がお話しなりましたようなエビデンスの科学的なお話ではなくて、検診の現場で一体どういう現実があるのかという、かなり悲惨な話を少しさせていただきたいと思います。
 私ども大阪府では、がん検診の独自の取り組みとしまして受診率対策に関しましては、Call-Recall Systemの導入という形で、対象者を特定した個別受診勧奨を推奨する。そして、精度管理対策としては、既にやっておりますけれども、精度管理指標やチェックリストの達成率のランキングをとりまして、それをホームページ上で公開するようなことをしております。
 しかし、実際に現場の担当者からの質問・意見は極めて多様ですし、机の上では一体何をやっているのかさっぱりわからないということで、大阪府の役人とともに、市町村や検診実施機関の訪問調査を行って、いろいろなことがわかってきたところでございます。
 受診率向上のバリアという話ですが、基本的には健康増進法に基づく市町村の検診対象者というのが、職場で健診を受ける機会がないというあいまいな書き方でございますので、一体だれが対象者なのか明確ではないということなんです。問題は、広報という形で検診を受診勧奨するというのが一般的なんですが、エビデンス的に言いますと、やはりだれそれあてに郵送とか電話で、あなた受診しなさいという形の方が必ず受診率が上がるというのが確立しておりますので、それをしなければならない。しかし、市町村がどういう対象者の名簿を持っているかといいますと、1つは市町国保というものがございますので、これ対象者とまずは定義して、ここに強く受診勧奨してはどうかということを市町村にアプローチしております。ただし、これに対しては税金を払っているのはみんな同じだという観点で、住民全体に受診勧奨を個別に行った市町村もあるのですけれども、逆に、職場で受けているのに手紙を送るというのは税金のむだ遣いというクレームが5%以上も来たということで辟易したという市町村もございます。
 実際に個々の人を対象に受診勧奨しろと言った場合に何が問題だったかといいますと、検診を担当するのは市町村保健センターというところが、がん検診を担当しております。市町村の中にある国保というところは特定検診を担当しております。これは部署が違うということで壁がございまして、保健センターでは特定検診の受診勧奨に同じようにがん検診の受診勧奨をしてほしいと申し込むんですけれども、壁がございまして、こういうことはできない、個人情報保護があってということが同じ市町村内部でも行われているようです。
 それから、国保の方では別に人間ドック補助というのをしているんですが、これが全く内容がわかりません。同じがん検診のようなことをされている場合もあるようですけれども、これが検診の市町村がやっている実績の中には全く上がってこないということでございまして、非常にむだなことが行われている事実が明らかになりました。
 少し話が変わりますが、受診率を上げろという話は非常にたくさんの方からお聞きしますけれども、実際に上げられるかどうかというのはキャパシティの問題がございます。特に、マンモグラフィはキャパシティがないないという話があるんですが、先日調べました大阪府の調査で、マンモグラフィ検診実施機関がどのくらいあるのかというのを大阪府の医療機関を対象に行いました。太字になっていますのが1か月辺り100件ですから、年間大体1,000件以上行う検診機関でございまして、斜めになっているのがそれ以下で、少なくとも月で50件以上やっているというところでございます。ごらんになっておわかりになると思いますが、大阪市に非常に偏在しております。周辺地域、特に南部におきましては全く検診実施機関というのがありません。箱の数字は検診の対象者数で、南の方も非常に多くの人口を抱えているんですけれども、検診を受けにいこうにしても検診実施機関がないと。マンモグラフィの検診車は大阪市に偏在しているので、それが行くにしても非常に時間がかかるので、なかなか回数は行けない。
 米国のテキサス州のデータなんですけれども、テキサス州でも似たような状態がありまして、大都市の周辺に確かに検診実施機関は集中します。しかし、その周辺部におきましては、マンモグラフィ検診車を置いている施設を配備するということを行いまして、そういう対応はしていますけれども、やはりアメリカでも検診実施機関が近くにない場合は受診率が非常に低いということになりますので、今後は受診を増やすには医療機関が一体どうなっているのかという調査を行って、それを計画的に配備していくこともしていかなければならないと思います。
 実際には、調査をやる前は全くわからなかったんですけれども、かなり偏在していまして、周辺部には全く医療機関がない。大阪でも医療崩壊が進んでいますので、周辺地域の方は検診を受けられないという環境にございます。
 1つの考え方としては、周辺地域の住民が都市部に行って、例えば、大阪市内で検診を受けたらどうかという話がありまして、無料クーポンのときにこのような動きがあったんですが、ここで問題があったこととしましては、検診単価が市町村別にばらばらに設定されているということがございまして、同じ市に住んでいる人が別の市で受けたときには違う値段を払わなければいけないというようなことがございました。これはなかなか統一が困難でした。
 それから、検診に係る書類を統一するということがございまして、滋賀県では医療圏が少ないこともあり、全県内で統一されたみたいですが、大阪は多くてとても無理だと考えております。
 そこで、我々は全市町村で検診のデータベースの統一が図れないかということも検討したんですけれども、この情報管理システムというのは行き届いてはいますが、ほかの母子保健なり特定検診などと一つのセットになっておりますので、これをいじるのだけはやめてほしいという話がありまして、なかなか難しいというところがございました。
 精度管理というのは、受診率や陽性件率とかそういう数字の話が多いんですが、これはなかなか実際何のことかわからないということなので、私たちで実際、検診実施機関を訪問してみました。あるマンモグラフィの検診実施機関ですけれども、非常に撮影のフィルムが悪くて、精密検査医療機関にフィルムを持っていった場合に、全く読めない、ポジショニングが悪い、ほこりが入っている、そういうようなクレームがございまして、精検医療機関の複数の医師たちが書面でクレームを出したというようなこともございますが、担当者に渡って放射線技師長に伝わったんですけれども、そこでなくなってしまった。実際に訪問しましたが、幹部職員たちもそんなクレームが上がっているなんて数年間一切知らなかったというような事実がございます。これは病院に併設された検診実施機関だったんですけれども、病院ではクレーム対応という形はマニュアル化されていたんですが、検診という場面になると全くそういうシステムが組まれていなかったという、非常に情けないお話でございます。
 このような訪問調査等を国の指針、チェックリスト等によりますと、都道府県が行うべきであるという話だったんですけれども、恐らく私どもがやったのが日本で初めてだと思いますが、実際にわかったことといいますのは、調査する側の課題としましては、法的な権限がないということです。衛生検査所の場合は臨床検査技師等に関する法律で、こういうものが裏付けはされているんですが、検診に関しましては何も書かれないということですので、指導というのではなくて御協力をお願いするということでしたので、もし断られた場合には、すぐそこで引き下がるしかないというような状態でございました。
 それから、検診実施機関で一体何があったのか、なぜこういうふうに放置されていたのかといいますと、1つは中小検診機関は人手不足でございまして、非常勤医師と非常勤技師で賄っているということがございますから、その人たちが顔を合わす機会が全くない、私たちは雇われている身ということなので、施設内で意見が言いにくい、伝えにくいということでした。実際に検診の撮影をしていたのは非常勤技師でございまして、1人も精度管理中央委員会の認定は取っていなかったというようなことでございます。
 少し話は変わりますが、医療機関個別方式というものがございます。集団方式で検診を行うのはなかなか難しいので、受診者数を増やす上ではこの方式がどうしても必要だと思っていますが、やはり参入可能要件というのが定められていないということでして、ある大きな市に関しましては、大腸がん検診の実施機関として、小児科、耳鼻科というのがアプライされていまして、そういうリストが市民に配られています。こういうところですと、実際に精密検査、どこの医療機関に紹介すべきか自体も御存じないというような状態でして、さすがに小児科で大腸がんを受けられる方は余りいないとは思いますが、非常に医療機関としても心配だろうと思います。
 郡市区医師会の組織が小さいですので、担当理事の方というのがなかなか医師会員への指導力が発揮できないということがございます。6ページの下にございますのは成功例ということでございますが、例えば、肺がん検診への参入必須条件として、フィルムコンテストでの合格でありますとか、年一度の精度管理研修会に出席しない限りは絶対に参入させないというような強硬な姿勢をとっている医師会もございます。
 ここでは、大腸がん検診のシステムとして検査キットを医師会で完全に統一しまして、陽性例には精密検査医療機関一覧、紹介状、精密検査結果報告書などがカルテに自動的にセットされますので、その方が来た場合に医師は即座に内視鏡の予約を夜9時までできるという、非常にきっちりとしたシステムができていますので、高い精密検査受診率を誇ることができるということなので、こういったシステムの成功例を広めていくことが医療機関個別方式では必須ではないかと考えます。
 最後ですが、がん検診に関する課題と提言ですが、私がいろいろな大阪府内の市町村あるいは和歌山等も行きましたけれども、現場でお聞きする声と、市町村会、首長会などでもお話をさせていただきましたけれども、受診率を上げることは皆さん賛成とおっしゃいますが、実際に予算を取るというところでは全くできない。やろうにも医療機関が足りないというようなお話でございます。やはり、小さな市町村単位での運営というのは非常に限界でして、老人保健法時代にパッチワークで対策が行われていますが、大幅な改革は期待できないと思います。
 それから、今日は市町村の検診の話ばかりをしました。それから、職場の話というのは、やはり大企業での健保組合に関しましては人間ドックを提供するなり、がん検診というのはそれなりに提供されていると思いますが、中小企業に勤めておられる方、特に、協会健保というところでは、恐らくがん検診などはほとんど行われていないのではないかと思います。これは実際にデータがなくて、これから測定していくべきでしょうけれども、やはりそういう方に仕事を休んで市町村の検診を受けてもらうということ自体が相当難しいですので、やはり抜本的に国民全体に広く検診を受けていただくためには、実施主体を保険者にする等の抜本的対策が必要ではないかと思います。
 それから、今のシステムをそのまま行っていくという形でやることに関しましては、精度管理が非常に大事です。私は大阪府におりまして、そういう検診のことがわかる人間がおりますけれども、なかなかそういう人間が都道府県にいないというところでは、外部評価機関をつくって、病院評価機構と同じようなシステムが必要で、立入検査というのがやはり必要ではないかと感じます。
 また、医療機関におきましては、地区医師会レベルで精度管理委員会、あるいは2次医療圏でそういうものを設けて、きちんとした精度管理のシステムをつくらないと、今のような枠組みがあいまいで、ばらばらという形では、なかなか抜本的な対策にはつながらないと思っております。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、たばこ対策についてということで、生活習慣病対策室から御説明をお願いします。
○野田生活習慣病対策室長 資料9でございます。生活習慣病対策室長の野田でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、喫煙率の状況について示させていただいております。我が国の喫煙率、左側のグラフでございますが、下に1999~2009年のスケールがございますが、このグラフを見ていただきますと、2002~2003年にかけて上昇しておりますが、下にございますように、2003年に若干調査方法が変わりましたので、そこから上がった状態から下がっていくというグラフになっております。
 男性につきましては、1999年においては49.2%、女性においては10.3%ということでございまして、2009年の段階では男性が38.2%、女性が10.9%、総数では23.4%ということになっております。ちなみに2003~2009年にかけての減少率で見ますと、男性でおおむね9%弱、女性の方は横ばいでございまして、トータルとして四・数パーセントの減少というトレンドでございます。
 未成年の方でございますけれども、1996年からの図になっておりますが、中学生、高校生、男女とも、男子が2けたでありましたものが1けたになって、それもかなり小さい数字になっております。女子の方はもともと男子より少ないですが、高校生でも2けたでありましたものが、1けた、かなり低いところになっております。
 次に、法律面からの対応でございます。健康増進法上第25条において受動喫煙の防止規定がございます。これに基づきまして、健康局長から現在、公共の場においては原則として全面禁煙を目指すという通知を出しております。やむを得ない場合には分煙での対応を認めるということになっております。
 法律が施行された当時におきましては、施設内を全面禁煙とする方法と分煙する方法があって、全面禁煙を目指すというところまで踏み込んでいなかったということでございます。
 次は予定でございますが、国会に提出予定の労働安全衛生法の一部を改正する法律案についての説明でございます。左が現状と課題、右が改正の方針ということで、3段になっておりますが、1番目メンタルヘルスの関係、2番目がアスファルトの関係ということでございますが、3段目におきまして、たばこの規制関係の改正案が書かれているところでございます。
 現状、事業所における取り組みは十分でないといったこと、それから、受動喫煙を受けている労働者がいるといったことを踏まえて、原則全面禁煙または空間分煙を義務化するというような改正を予定しているところでございます。
 ちょっと前後して大変恐縮ですが、実はたばこの規制につきましては、平成17年2月にたばこ規制に関する世界保健機関枠組み条約が発効したといったことに基づいて進められてきているということです。実は、この条約につきましては1996年、平成8年ごろからWHOの中において準備決議等が行われて用意されてきたという経緯の中で発効したということでございます。
 こうした流れの中で、左側が健康増進法上の対応、がん対策基本法上の対応ということで細かく書いておりまして、平成12年3月におきましては、健康増進法ができる前でございましたが、健康日本21という国民健康づくり運動の対策の中におきまして、たばこ関係で知識の普及、未成年者喫煙防止、受動喫煙の防止、禁煙支援に係る目標を定めまして、現在平成24年度まででございますが、この運動が続いているということでございます。
 平成15年5月に先ほど御説明いたしました健康増進法が施行されて、受動喫煙防止規定が盛り込まれたと。
 平成18年6月に、がん対策基本法が成立して、その付帯決議の中におきまして、喫煙が健康に及ぼす影響に関する啓発・知識の普及を図るほか、喫煙者の減少に向け、たばこに関するあらゆる健康増進施策を総合的に実施することになっておりまして、平成19年6月においては、がん対策推進基本計画が策定されているという流れでございます。
 一方、ほかの条約の関係で現在、国において実施されていることが右側に列挙しているものでございまして、広告規制の強化、たばこパッケージの注意文書の改正、禁煙治療への保険適用、TSAPOの全国導入、それから、先ほど御説明しました健康局長通知。それから、昨年10月におきましては、税制上の対応としまして、たばこ税の大幅増税をしているところでございます。一番下につきましては、国会提出予定ということで先ほど御説明しました労働安全衛生法の関係でございます。
 健康日本21、今御説明しましたものの中で、具体的にたばこにつきましてどのようになっているかというのが次の図でございます。これまでも国民健康づくり対策を進めてきたわけでございますが、たばこに関して具体的な目標値を持って進めましたのが、第3次国民運動からでございます。たばこにつきましては、先ほど御説明しましたような知識の普及、未成年の喫煙をなくす、公共の場における分煙の徹底等、それから、禁煙支援のプログラムの普及、これらについておのおの数値目標が定められております。
 また、ここに書いておりませんが、参考の指標としてやめたい人がやめるというものが盛り込まれております。ただ、これにつきましては数値は示されてございません。
 なお、健康日本21につきましては、先般10月初めに最終評価報告書が出まして、これにつきまして14日において審議会の地域保健健康増進栄養部会が開かれまして、今後平成25年度からの新しいプランについて検討していくこととしております。
 その辺を含めまして最後に4ページ目をごらんいただきますと、今後がん、健康対策を一体的に進めていくという流れの中におきまして、たばこを含めた予防面から一体的なプランを立てていくといったことが重要であるわけでございます。
 目的にございますけれども、危険因子の面から見れば、たばこ・食生活ほか共通指標もあるということでございまして、がん対策基本法、健康増進法、もともと法律、健康増進法は告示でございますが、基本的な方針と書かれているものでございますけれども、これに基づく都道府県計画におきましては調和規定が設けられております。したがいまして、がん対策推進協議会と厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会が連携・協力しながら、たばこの予防に係る目標等について策定していくという流れで進めていくということを示した図でございます。
 がん対策基本法の方は平成24年6月の閣議決定ということでございますが、健康増進法は平成24年6月ごろに大臣告示ということで、実際の運動は平成25年4月からスタートということで、今後のスケジュールをお示しいたしました。
 以上でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、今御説明いただきましたお三方の御説明内容についての質問をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 前原委員どうぞ。
○前原委員 がん検診、がん予防につきまして、非常に詳細な御報告をいただきまして、ありがとうございました。
 園尾先生にお尋ねしたいんですが、がん検診をする医師側の実情というものについて、例えば、福岡県で言えば、乳がん検診をする医師の8割は、外科医が本来の診療の片手間に忙しい中でやっています。そして、現実そういう中で2次検診にかかった患者さんを診る施設は、将来的に乳がんの専門医がいる施設になるだろうと。そうしますと、乳がん専門医は全国で800人とか900人しかいないし、現実、福岡県においてもそういう施設に検診で疑いと言われた患者さんが集中して、本来の乳がんの診療をするどころか、2次検診のためにかなり時間が割かれている。特に今回40代の検診の方の状況が出ましたけれども、そういう方は結局、病変がないとしても2次病変として検出されて、病院に殺到して、結局、乳がん専門医が本来の医療ができず嫌になって辞めるという病院もあるということをお聞きしたことがあります。検診率の上昇とともに、検診をする医師側の支援・整備が非常に重要ではないかと思っています。しかし、今まで検診の領域で一度も議論されてこなかったように私は思います。乳がん学会の代表として、先生のお考えをお聞きしたいと思います。
○園尾参考人 乳がんの診療ですけれども、今は専門医が全国で900人ぐらいしかいないなかで、そこへ殺到するという現状があり、本当に厳しい外来診療が行われているのが現状です。乳腺専門医は毎年100人ぐらい増えており、10数年でやっと約900人になりました。これからも増やしていきますが、幸い、乳腺外科を選ぶ人は増えており、外科医の中では乳腺外科医がだんだん増えているという現状がありますが、確かに日常の診療でも結構大変だという状況があります。その上で、いわゆる2次検診、精密検診機関として皆さん来られるわけですけれども、なかなか大変です。夜中まで外来をやっている乳腺専門医もたくさんいるという現状を何とかしないといけないと思っております。ただ、かといって、検診で要精査といわれた人がどこに行ってもいいというわけではありません。誤診の悲劇が起こります。精密検診機関の基準に関して、日本乳癌検診学会と日本乳癌学会が共同で指針を出していまして、乳腺の専門医あるいは認定医が常勤していることを条件の一つに入れています。そこが2次検診の施設として適当だということをホームページでも公表しています。おととしこの基準ができたのですが、同時に専門医も増やしていかざるを得ないということになります。
 今後、検診で要精検となった人をしっかり受け止められる施設がを増やすことがこれから必要です。そうしないと、これから受診率がもし増えたときには、なかなか対応し切れないという大きな問題があるかと思います。乳腺専門医の増加対策と要精査機関の充実がこれからの大きな課題であると思います。
○門田会長 保坂委員どうぞ。
○保坂委員 時間がない中でたくさんあるんですけれども、まず、園尾参考人のお話でございますが、11ページに「乳がんの日米年代別罹患率」というグラフがございますが、下の「1人の乳がん死を防ぐのに必要な検診受診者数」というところで、日本が40歳代は米国と大差なし、年齢別の差が少ないと書いてあるんですが、左側の表の数字を見ますとそのようには読めないんですけれども、数字が間違っているのか、何か特殊な読み方があるのか。年齢別の差が日本の方が米国より少ないという感じは受けませんし、それから、60歳代は人数の差があると思うんですが、40歳代も50歳代も差がないと思うんですが、右側につけた説明が理解できなかったということで、その質問がまず1点。
 中山参考人の方でございますけれども、まず3ページの「マンモグラフィ検診実施機関の都市部への偏在」の中で、検診実施機関の数等が入っているんですが、もし地域のことを考えないで、大阪府全体として2次医療圏ごとの検診対象者数に見合うだけの検診ができる数があるのか、もしわかったら教えていただきたいということ。
 それから、5ページの「病院に併設された検診実施機関であった話」というところで、精度管理がされていなかったというお話があるんですが、検診実施機関がいわゆる精中委の施設側の基準を満たしていないところも検診実施機関になっているところがあるんでしょうかという質問が一つ。
 それから、6ページで大腸がん検診実施機関として小児科や耳鼻科等がアプライしていて、それはどこに紹介すべきかわからないんじゃないかということでございますが、これは検診実施機関に対して精密検査の実施機関はここですから、こういうところに紹介してくださいということをお知らせしているのが普通の市町村だと思いますが、そういうことは大阪ではないのでしょうかということ。
 最後のところで、予算規模が少ないということで、小さな市町村は難しいということですが、小さな市町村でなくても全体の予算に対して検診の占める予算の割合が高くなるとなかなか難しいので、小さな市町村単位であるからではなくて、がん検診に取っている予算がそもそも検診50%になったら到底足りないような予算しか市町村で組めていないところが大きな問題ではないかと私は思っているんですけれども、その点いかがでしようか。
 たくさんあって済みません、よろしくお願いします。
○園尾参考人 年代別の罹患率というところですが、先ほどお話ししましたけれども、日本人の乳房というのは特に脂肪が少なくて高濃度乳房と言いまして、なかなか発見が難しいのではないかと推測できます。もう一つ、アメリカの乳がんの発生率は日本より3~4倍高いわけですね。そうしますと、この数値が、日本人ではもっと高い2,000人に1人とかそれ以上とか、そういう結果になるのではないかとか、そういうことも考えられたのですが、実際はアメリカとほとんど差がなかったということでございます。
 それから、60歳代と40歳代を比べますと、日本の方がその差が少なくて、40歳代ですぐこれはだめだというようなデータにはなっていないということでございます。
 アメリカのデータでも、40歳代は確かに死亡率が低下しているわけですね。今の状況でも低下していますので、それを重く見た方がいいのだろうということで、実際に見ると40歳代で150人ぐらいの差ですので、ほとんど差がない。予測よりは差が少なかったということでございます。よろしゅうございましょうか。
○保坂委員 予測より少なかったということですね、わかりました。
○園尾参考人 実際の数値も、,700と1,600ですから、ほとんど差がないという状況でございます。
○門田会長 では、続きまして、中山参考人お願いします。
○中山参考人 幾つかございますが、マンモグラフィの実施機関の偏在については、まだデータは生煮えの状態なんですけれども、全く足りません。今で対象者人口の10%をカバーするのがやっとでございます。ほかの臓器はもっと詳しく調べているものがあるんですけれども、40歳以上の人口を対象にして2次医療圏別に見ますと、大阪市は45%カバーできますが、周辺都市の2次医療圏では5%しかないというような実態がわかりまして、50%は全く無理だという結論に達したことがございます。
 それから、5ページの検診実施機関の話ですけれども、市町村で行っている検診の場合には契約を結ぶ際には施設認定とかの認定書が交わされているところでございますので、この施設も施設認定は取っておられます。ただ、実際に認定を取っていない人間を働かせていたということでございます。うわさで聞く程度でございますが、職域で行っているマンモグラフィに関しましては、全くそういうルールはございませんので、施設認定も全然取っていない、それから、勿論撮影のやつも取っていないという人がやっているところがたくさんあるという話は伺っています。
 それから、6ページの個別方式のところで、精密検査医療機関のリストが配られているはずだということでございますが、ございません。私どもの方から配付しましょうかというお話を各郡市区医師会に今しているところでございます。特に、大腸がん無料クーポンの件で拡大する可能性がございますので、今リストを調べたところでございまして、それを配付しようかというところでございますが、必要性を理解いただくのがなかなか難しいところでございます。
 それから、予算の話でございますけれども、やはり50%の受診率を達成するための予算は全く取れない。ですから、首長さん方にお話をしても、実際に上げるという話にはなりますが、50%というような話になりますと、皆さん何もおっしゃられないようなことになりまして、具体的なアクションというのが今まで全くないというところでございますから、やはり現実的なところでは少しずつ上げていくということしかできないのかなというところでありまして、予算の問題もありますし、マンパワーの問題もありますので、そう簡単に受診率を上げるというのは手品ではないですので、できないというのが現実のところかなと思っております。
 以上です。
○嘉山委員 よろしいですか。検診制度は多分、患者さんの代表の方はなかなか御理解しにくいと思うんですね。まず、日本の制度は欧米と全然違うんです。そのことを前提にしゃべらないと、ハウツーものばっかりしゃべっていることになるので、まず前提から。このがん対策推進協議会として国に何を言うかということはきちんとフォーカスを絞らないと、精度を上げましょうということ言ってもしようがないので。
 現在、日本では3つの主催者がやっています。1つは市町村、もう一つは組合です。要するに、公務員の組合とか、あとは個人です。これをどういうふうに言うかというと、市町村がやっているのは対策型と言いまして、協会健保ですとか組合健保、共済組合等々のいわゆる保険組合がやっているのは任意型です。あと、我々が個人で時々受けるがん検診も任意型です。こういうように大きく3つに分かれているので、それは全部主体が違って、お金の出方も違って、大企業であればたくさん受けられるし、中小企業の組合であれば少ししか受けられないと。市町村によっても一般財源として入っているので、首長さんが検診に使わなければ、そんなに検診は上がってこないと。ですから、まず、制度設計をきちんと一本化しろと、お二人の先生はおっしゃっているんですけれども、主催者が3つあるということは日本国民が平等にできないので、これを一本化したらどうかということを提案したいと思います。
 それから、もう一つは、欧米ではどういうことが始まっているかというと、要するに制度的なんです、国がやるんですよ。例えば、乳がんの場合は大体バルト三国のうち2か国以外、あと、オーストリアの一部がやっていないだけで、あとヨーロッパはほとんど全部が組織型です、国が全部やっています。そういうふうにやると、今先生方がおっしゃったいろいろな悩みが全部解決できる。精度も解決できるし、そういうことをがん対策推進協議会から言うべきだと思います。
 それから、乳がんを選んだのは非常にいいことで、検診の最終エンドポイントは何かと言えば、早期発見なんです。早期発見は、がんセンターではどうなっているのか調べてみたら、圧倒的に胃がん、大腸がん、肺がん、いろいろな細かいディスカッションはあるんですけれども、日本が早期発見をしています。欧米と比べて圧勝です。ただ、乳がんだけが早期発見できていないんですよ。多分、先ほど中川先生がおっしゃったように、一般の診療の先生方が普通の日常の診療の中で検針業務をやってしまっているんです。ですから、日本は胃がんでも、肺がんでも非常に早期に発見されているんです。ですから、検診が上がらなくてもエンドポイントがいいのは当たり前なんです。ただ、乳がんは多分、女性がちょっとしたことでは余り病院に行かないんじゃないかと思うんですね。多分、がんが原因でお腹が痛くても病院に行って、そこで精査するので、それで発見されているんです。ですから、乳がんだけはきちんと国家レベルで進めていかなければだめだということを提案したいと思います。それが結論でいいんじゃないですか、それ以外にない。
○門田会長 ありがとうございます。
 今日は4時間の長丁場ということで、もう既に終わる時間になってしまいましたので、15分まで延長させていただきます。できるだけ協力していただいて、参考人に対する質問を主にしていただきたいと思います。
 天野委員どうぞ。
○天野会長代理 質問3点でございます。
 まず、中山参考人に2点ございます。1点目が、Call-Recall Systemを大阪府で導入しようとしているということで、WHOのがん検診受診率向上にエビデンスがあると言われているものは実は少なくて、その1つがCall-Recall Systemだと思っているんですけれども、それがなかなかうまくいかないということにおいて、国の施策というか、国の対策としてどういったことがあれば、それが少しでも助けになるかということをお聞きしたいとです。
 2点目が、今、嘉山委員からもありましたが、がん検診の制度上の問題ということで、一般財源化されたこと、地方交付税交付金に賄われていることと、あともう一つ、がん検診と特定検診の関係ということも、やはりがん検診受診率向上において非常に問題になっているということを聞いていますので、その辺りについて、現場のお立場から制度上の問題についてどういうことがあり得るかを教えていただければと思います。
 あと、3点目が、生活習慣病対策室の方にお聞きしたいんですけれども、先ほどたばこの規制に関する世界保健機関枠組み条約の対応状況についてお話しいただいたんですけれども、大枠でお話しいただいたと思うんですが、FCTCの細かい条項とかガイドラインが多々あると思うんですけれども、それぞれの個別の条項の対応状況については把握されているのかと。勿論されているとは思うんですが、されているのであれば是非、次回の協議会に個別の条項の対応状況について教えていただければということで、これは希望と質問です。
 以上です。
○門田会長 では、中山参考人お願いします。
○中山参考人 Call-Recall Systemは導入なんですけれども、無料クーポン事業と絡めまして、既に小規模なものは大阪府内の3市でやっていまして、5~10%の受診率向上は確認されています。ただ、これを普及するに当たって問題だったのは、結局はお金が足りないと。つまらないことですが郵送料の話というところが一つございます。それから、勿論、受診した場合どれだけ検診のコストがあるかという話もございますので、郵送料のお話を何とかしていただくこと、それから、やはり対象者の問題、住民全体とするのか、国保になるのかというようなところもありますので、どうしてもハイリクスというか、絞ってやったらいかがですかというようなことを提案していただたい、ある年齢層に限ってやったらどうですかということを是非提案していただきたいと思います。
 それから、制度上の問題ですが、特に特定検診が開始されまして市町村のやられている検診というのは、おおむね5~10%ぐらい下がったようなところがございまして、非常に困っております。受診者にも話を聞きましたけれども、やはり特定検診は近くの病院で、がん検診は保健センターでということで二分化されたことは非常に面倒くさいと。2回も食事を抜いて行かなければならないということはとても大変だということをいっぱい聞いておりまして、その変が受けられなくなった問題でございます。特に落ち込んだのは健保の被扶養者の方で、奥様方が私はどこに受けにいったらいいのかわからないということで、宙に浮いてしまったところがございますので、そういう方々が市町村の検診に戻ってきていただけるような策を是非考えて、キャンペーン等を張っていただきたいと思っております。
○門田会長 今日答えられますか。簡単にお願いします。
○野田生活習慣病対策室長 恐縮でございますが、次回にお答えいたします。
○門田会長 では、園尾参考人お願いします。
○園尾参考人 受診率が非常に低いのですけれども、これを改善する一つの策ですが、実は岡山県でも夜間や休日に検診をやっている市町村があるのですが、そこは受診率が非常に高いのです。ですから、いろいろな検診機関があると思うのですが、手を挙げていただいて夜間、例えば、18~21時までとか、休日にやっていただけると人が来るのではないかと思うのです。その際に、夜間手当といいますか、夜間でやってくれるところは市町村がその施設に支払う検診料を高めに設定するとか、そういうことをすればもう少し受診率は上がるのではないかと考えられます。
 といいますのは、働く女性が多いので、どうしても決められたときに昼間に行けないという大きな問題があって、そういう面で夜間にやってくれるところに手を挙げていただいて、そういうところは少し検診料を多めにするとか、そういう自治体の工夫や国の指導があってもよいのではないかと思います。
○門田会長 ありがとうございます。
 田村委員どうぞ。
○田村委員 園尾参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほど前原委員から2次検診の医師が少ないということ、それから、検診医も少ないということなので、現在認定されている検診医の中で放射線科医と外科医の内訳がもしわかりましたら教えていただきたいのと、最初のスクリーニングの段階で、自動で画像を読み取るような装置の開発はどうなのかということと、技師では無理なのかなということですね。すぐれた技師さんはたくさんいらっしゃると思いますので、読影を専門にするような技師が出てもいいのではないかと思うんですけれども、そういったところはいかがでしょうか。
○園尾参考人 検診に携わる医師の分布ですけれども、各自治体で大分違うと思うんですが、岡山県の場合は外科医が4割5分ぐらいですか。その次に内科医が意外と多いんですね。それが3分の1ぐらい。これは人間ドックにかかわっている内科医が加わっていると。放射線科の医師は非常に少ないという現状でございます。今は実は内科の先生に視触診に加わっていただいているんですね。画像の方は、どこかで撮っていただくというところをつくらざるを得ないという状況です。
○田村委員 済みません、そこは非常に重要なポイントなんですが、もう一つ読影するところはどうでしょうか。
○園尾参考人 全国で1万1,000人ぐらい読影の認定医がいるんですけれども、各県でかなり分布の差があるんですね。積極的なところは自分のところでいろいろな講習会を開いて、実は2日間缶詰めで講習をやって最後に試験をやって、A、B、C、Dの判定をしてA、Bが合格というようなことで、今70%ぐらい通っているんでしょうか。それを何回も何回もやっている自治体は、いわゆる読影認定医の数が多いんです。
 それから、もう一つ、撮影の認定技師も同じようなことをやっていますが、全国に1万1,000人いて、大体マンモグラフィについては全体的には充足されているのではないかと考えているんですが、10年間でそういう形になってきたんですけれども、今でもまだ年間100人ぐらいは増えていっているという現状です。
 それから、事務員と技師さんがおれば夜間でもそういう場所があれば撮影はできると思います。そういうふうにすれば、医者が一々そこへ行かなくてもいいんじゃないかと。視触診は今はどうしてもやるような形になっていますので、それは近くのかかりつけ医にかかって、あとマンモグラフィはどこか夜間でやってくれるところに行くというような、そこには技師さんだけがおればいいという、極端に言うとそんな感じでもできるんじゃないかと思っています。というのは、マンモグラフィを撮ることはちゃんと資格さえ取っておれば、特別大きなトラブルが起こることはそうないと思いますので、そういう方向も一つあるのではないかと思います。
○門田会長 中川委員どうぞ。
○中川委員 園尾参考人にお伺いしたいんですが、16ページの乳腺・甲状腺というところなんですが、甲状腺についても検診を推進されるというお立場なのか。というのは、韓国で今、がん検診受診率が56%くらいです。韓国女性のがんで一番多いのは今、甲状腺がんです。それは乳がん検診とセットで、特に人間ドックで行われる。日本では11位ぐらいですね。潜在的な甲状腺がんというのは60歳ぐらいになると、ほぼ全員持っていますから過剰診断の可能性がある。これは福島でも私は大変心配していまして、チェルノブイリで実際に小児甲状腺がんが増えたわけですけれども、これは成人で検査すれば福島では確実に甲状腺がんが急増します。
○園尾参考人 この診断会議のは、もともとは精密検査をやる研究をしようということで集まっているんですが、最近になりまして乳腺については将来的に超音波検診が始まるかもしれないということで、乳がん検診部会というのができて、そこで今いろいろな講習会をやったりして、来るべき日に備えようということでやっていますが、先生がおっしゃるように甲状腺については調べるといっぱい出てくるということです。
 それから、大体今の状態でも生存率は95%という状況ですから、早く見つけてもそれほど意味がないと言うといけないんですが、そこへお金を一生懸命かけることはないのではないかと。今回図らずも福島の原発問題が出てきまして、実はこの乳腺・甲状腺の超音波のメンバーが、そこの考案メンバーになっております。そういうことで社会貢献が今できているという状況になってきております。
○中川委員 いやいや、福島で甲状腺の検診をどんどんやったら大変なことになります。
○園尾参考人 今のベースでどのくらいあるか見つけておいて将来しないといけないということで、この間から甲状腺学会とか、あるいは日本甲状腺外科学会とかそういうメンバーが検診に次々に行っておりますけれども、現在、確かにいっぱい見つかるのではないかと思います。それがいかに増えてくるかというのが問題ということです。
○門田会長 では、眞島委員で最後にしたいと思います。
○眞島委員 園尾参考人にお伺いしたいんですが、11ページの上の表でございますが、「1人の乳がん死を防ぐのに必要な検診受信者数」、これはある意味、検診の効率に関して表していると思うんですけれども、実はアメリカでは40代の乳がん患者さんに対しては、マンモグラフィは推奨できないという判断があったと思います。ただ単純に検診の効率だけの話ではなくて、偽陽性の問題、過剰診断の問題も含めての判断だったと思うのです。実は私も偽陽性の検査結果で被害にあった者でありまして、大変な社会的ダメージも受けましたし、不安な状態になった経験があります。実は下のページにあります乳がん検診の偽陽性に関してですけれども、アメリカの方のレポートでは今の偽陽性率であれば、10回検診を受けると半分の患者さんは乳がんがないにもかかわらず乳がんと診断され、そのうち20%の患者さんは生検を受けてしまう。要するに、正常な乳房を持っているにもかかわらず、そこで生検というダメージを受け、経済的な負担も負い、また、精神的なダメージもあるんだということが言われています。その辺りのこともあり、アメリカでは見直しを進めているのだと思いますが、日本の患者さんは偽陽性に関して余り知らないのではないかと思いますが、これについてはどういう教育が施されているのでしょうか。
○園尾参考人 先ほどお示ししましたけれども、10人に1人ぐらい下手をすると引っかかってしまうという現状があるわけです。ただ、早期に発見したいという気持ちが患者さんにもあるものですから、そういう面では余りクレームが出ないです。ただ、不安感は非常に持ってこられるので、そこのところのしっかりしたアナウンス、これで引っかかったらがんだということでなくて、一応これは大きく引っかけているんだということを理解していただいて受けていただく、これは乳がんの検診学会でもそういうふうにアナウンスするようにしております。
○眞島委員 偽陽性に関してインフォームド・コンセントの中でお話するというのは多分ありかと思いますが、それに関してはいかがでしょうか。
○園尾参考人 ホームページとかそういうところでしかやっていないので、やはり市町村、各自治体にこういうことを周知していただくと。各県に恐らく生活習慣病のがん対策の協議会があると思いますので、そこの乳がん部会でしっかりアナウンスすることが必要かと思います。
○眞島委員 ありがとうございました。
 最後に1つ事務局にお願いしたいんですけれども、先ほど嘉山委員から胃がん、大腸がん、肺がんは日本では圧勝しているというお話がありまして、乳がんはちょっと厳しい状況にあるというお話がありました。この辺りの比較対象できるデータがありましたら、是非御提示いただきたいのと、それから、1人当たり検診するのにかかるコスト、その辺りもあれば非常に参考になるかと思いますので、是非ひとつよろしくお願いいたします。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。お約束の時間も回ってしまいました。まだ質問もあるかと思いますが、もしどうしても聞きたいということがあれば、事務局に言って参考人の先生方にお答えいただけたらと思いますが。途中で切るので、もし質問が出てきたらそういうことにさせていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますか。先生方も誠に申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日はこれで終わりにしたいと思います。次回は、この続きの集中審議をやりたいということと、がん登録のまとめを皆さんと見ていただきたいと思っております。
 それから、ヒアリングですが、がん対策指標が非常に重要だということでテーマにしていますが、今回、皆様方にお尋ねしたヒアリングする方のお名前が出ませんでしたので、事務局と相談して今のところ数人お願いすることを考えておりますので、そういう形で次回はヒアリングさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から連絡事項があったらお願いします。
○鷲見がん対策推進室長 次回開催は11月21日を予定しております。今回ヒアリングを行いました件、また、冒頭野田先生からお話がありました研究の報告書に対しまして、もし御意見がございましたら、11月11日までに書面にて提出していただきますようお願いいたします。このほか御提出、御説明されたい資料につきましても、同様に11日までに事務局に御提出いただければと思います。
 あと、1枚机上配付資料で、前回会議のときに保坂先生から御質問のありました原子力の関係の中性子の治療につきまして、福島県に395億円置くという予算要求が経産省から出されていることにつきまして調べておくようにという御指示がございましたので、関連資料としてお配りしておりますので、ごらんになっていただければと思います。
 以上でございます。
○門田会長 では、4時間を更に20分以上も超過してしまいまして、どうも済みませんでした。どうもありがとうございました。




(了)
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