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2011年10月20日 第26回がん対策推進協議会議事録

健康局総務課がん対策推進室

○日時

平成23年10月20日(木)
13:00~16:00           


○場所

全国都市会館 3階 第一会議室
(東京都千代田区平河町2-4-2)


○議題

1 開  会
  健康局長あいさつ

2 議  題
(1)化学療法、ドラック・ラグについて(報告)
(2)在宅医療、チーム医療について

3 意見聴取
・がん登録について
 がん登録の現状と問題点(現場の視点から)(岡本参考人)
 わが国のがん登録の課題と今後の体制について(祖父江参考人)


○議事

出席委員:門田会長、天野会長代理、上田委員、江口委員、嘉山委員、川越委員、北岡委員、田村委員、中沢委員、花井委員、原委員、保坂委員、本田委員、前原委員、眞島委員、松本委員
参考人 :岡本参考人、祖父江参考人、畑参考人

○がん対策推進室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第26回「がん対策推進協議会」を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 事務局で健康局がん対策推進室長の鷲見でございます。よろしくお願いいたします。
 初めに本日の委員の出欠状況でございますが、中川委員、前川委員、松月委員及び野田委員からは、事前に御欠席との御連絡を受けております。また、江口委員より開催時間に遅れるとの連絡を受けております。
 がん対策推進協議会の委員定数20名に対しまして、本日は16名の委員の方に御出席いただくこととなりますので、議事運営に必要な定数に達していることを御報告申し上げます。
 なお、事務局には厚生労働省医政局指導課在宅医療推進室のほか、文部科学省より出席をいただいております。
 また、本日は日本医師会のがん地域連携クリティカルパスへの取組みについて、日本医師会公衆衛生・がん対策委員会副委員長、地域連携クリティカルパスへの取り組みワーキンググループリーダー北海道医師会副会長の畑様。
 がん登録についての意見聴取として、神奈川県立がんセンター臨床研究所がん予防・情報学部部長の岡本様、独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部長の祖父江様を参考人としてお呼びしており、後ほど御意見をいただくこととしております。
 それでは、初めに外山健康局長よりごあいさつさせていただきます。
○健康局長 本日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。第26回がん対策推進協議会の開催に当たりまして、一言ごあいさつ申し上げます。
 平成19年6月に作成されました、がん対策推進基本計画の見直しに向けた議論につきましては、御多用中にもかかわらず、委員の皆様の御協力をいただき誠にありがとうございます。これまでがん診療連携拠点病院、相談支援、緩和ケア、小児がん、がん教育、がん医療などについて、非常に重要な御意見をちょうだいいたしました。
 本日は、在宅医療、チーム医療に関する議論、更にがん登録について参考人の皆様からヒアリングさせていただく予定としております。がん登録につきましては、これまで地域がん登録及び院内がん登録により、我が国の罹患率、生存率など基礎的かつ重要な統計を作成しておりますが、すべての患者が登録されていない、あるいは予後の調査が難しいなど幾つか課題があり、これらの課題を解決するため、更にはがん登録の推進を通じました放射線治療や化学療法等の均てん化につきまして、どのような施策が必要か、委員の皆様からもがん登録に関して、前向きに踏み込んだ御意見をいただけるものと期待しているところでございます。
 また、後ほど事務局からも説明させますけれども、平成24年度の概算要求及び要望額につきましては、415億円、対前年度120%となっております。予算の作成に当たりましては、当協議会からいただいた御意見を踏まえまして、更にがん対策推進基本計画の見直しは平成24年度春ではございますけれども、小児がん対策といった新たに重点的に取り組むべき点についても予算に取り込んでおります。
 これまでがん対策につきましては、その重要性を踏まえ、組織体制面においても強化が必要であるとの御指摘をいただいておりました。このため厚生労働省としても、健康局全体の組織体制を見直し、がん対策を強化する組織体制を確立することといたしまして、平成24年度において、がん対策推進室と生活習慣病対策室を統合し、がん・健康対策課(仮称)を設置することについて検討を行っております。詳細につきましては、年末の再編成後にお示しできると見込んでおります。
 今後とも皆様方の御意見を大いに参考にいたしまして、がん対策のさらなる拡充を図ってまいりたいと考えておりますので、御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
○がん対策推進室長 それでは、以後の進行につきましては、門田会長にお願いいたします。会長、よろしくお願いいたします。
○門田会長 皆さん、こんにちは。門田でございます。本日もよろしくお願いいたします。
 ただいま局長のお話を伺っても、室から課に昇格する可能性のお話をいただきまして、非常に心強く思います。私たちは来年の年度が明けてからよりも、今から人がほしいというのが正直なところでございますが、すばらしい方向にいけばと思っております。期待しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、ただいまより今日の協議会に入りたいと思いますが、本日は前回集中審議してまいりました化学療法あるいはドラッグ・ラグについて、委員の皆さんからいろんな御意見をいただきました。それを事務局と一緒にまとめてきておりますので、報告させていただく。
 続きまして、在宅医療、チーム医療につきましては、前回ヒアリングをさせていただいております。また、本日はそのときにも話題になりましたけれども、日本医師会でがん地域連携クリティカルパスについて取り組んできていただいておりますが、その御報告を畑参考人からしていただくことになっております。そして、先ほど局長のごあいさつの中にありましたけれども、本日はがん登録について参考人の皆様から御意見を聞かせていただく予定になっております。
 このところずっと長時間にわたっておりますが、本日も協力をよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、事務局、資料の確認をお願いいたします。
○がん対策推進室長 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 資料1「がん対策推進協議会委員名簿」。
 資料2「化学療法、ドラッグ・ラグに関する委員からの意見のまとめ」。
 資料3「在宅資料・チーム医療に関する委員からの意見のまとめ」。
 資料4「畑参考人提出資料」。
 資料5「岡本参考人提出資料」。
 資料6「祖父江参考人提出資料」。
 参考資料1「がん登録について」。
 参考資料2「がん対策の推進について(平成24年度概算要求・要望額)」
 天野会長代理、花井委員、前川委員、眞島委員、松本委員提出資料。
 川越委員提出資料。
 また、祖父江参考人より配付資料としまして「がん対策を推進するために必要ながん登録に関する提言」という冊子をお配りさせていただいております。
 以上、資料の過不足等がございましたら、事務局にお申し出ください。
○門田会長 よろしいでしょうか。皆さん問題ございませんか。
 ないようでございましたら、早速、議題(1)に入りたいと思います。化学療法、ドラッグ・ラグに関する意見についてということで、前回いろいろと御意見をいただきました。その後、委員の皆さんからちょうだいいたしました御意見を事務局と私でとりまとめさせていただいておりますのが、資料2でございます。これにつきまして、事務局より報告をしてもらいたいと思います。よろしくお願いします。
○事務局(松田) それでは、事務局から資料2「化学療法、ドラッグ・ラグに関する委員からの意見のまとめ」について、説明をさせていただきます。
 前回、協議会で提出させていただいた資料から修正のあった部分を主に説明させていただきます。修正箇所は赤字で示しております。
 「1.化学療法」についてですが、1ページの「(1)化学療法に携わる人材の育成」から説明させていただきます。
 上から2つ目の項目からですが、日本の大学には小児科学という講座しかないため、大学での小児の血液腫瘍医の育成が不安定。小児血液腫瘍学の独立した講座の設置が必要という御意見をいただきました。
 2ページに移りまして「(3)化学療法に対する患者の理解向上」ですが、上から2つ目の項目をごらんください。再発転移後の化学療法は、必ずしも治癒にはつながらないことを理解していない患者がいる。患者はインフォームド・コンセントで詳しい説明を受け、しっかり理解することが大切。医師も患者が理解できるよう、説明することが重要という御意見をいただきました。
 続きまして「2.ドラッグ・ラグ」の説明に移ります。
 「(1)ドラッグ・ラグ全般に関すること」ですが、3ページ目に移りまして、上から2つ目の項目をごらんください。米国NIHの倫理規定では、臨床試験(治験)を行う際に、合理的理由がない限りマイノリティを除外してはならないという項目があり、我が国にも導入してほしいという意見をいただきました。
 「(2)未承認薬の取扱いについて」ですが、がん対策推進基本計画中間報告書の中で、未承認薬の審査ラグは縮まったものの、申請ラグは開く傾向にあると書かれている。こうした事実を協議会でも認識しないと、未承認薬のドラッグ・ラグは解消しないという御意見をいただきました。
 「(3)適用外薬の取扱いについて」ですが、適用外薬の解消には、明確なルールの下に保険適用に関して判断する。透明性の高い審査機関の構築が重要であるとの指摘があることから、その具体的なプロセスを検討することという御意見をいただきました。
 「(4)ドラッグ・ラグ解消に向けた臨床研究のあり方について」ですが、上から2つ目の項目を見てください。日欧米同時承認を可能とする国際共同臨床試験に日本が参加できないなどの問題が残っていることから、未承認薬のドラッグ・ラグ解消について、取り組むべき課題は残っていると考えるとの御意見をいただきました。
 5ページ目に移ります。上から2つ目の項目になります。薬剤開発は、企業、研究機関に委ねられているが、希少疾患などはなかなか進まないのが実情。米国のFDAやHCIのように、厚労省やPMDAなどからも主体的な提案をしてほしい。また、医師主導治験は臨床現場の医師には非現実的で、厚労省自らが実施することも検討してはどうかという御意見をいただきました。
 6ページ目に移ります。「(7)デバイス・ラグについて」ですが、ドラッグ・ラグだけではなく、診断・治療機器を含めたデバイス・ラグも基本計画に記載すべき。欧米の中古市場にあるような機器が日本では薬事を取得したばかりということもある。
 次にロボット手術や内視鏡手術のデバイスの導入では、日本は諸外国に比べてはるかに遅れている。診断・治療機器を含めたデバイス・ラグの問題を基本計画に入れるべき。
 医療機器の承認について、最終的に承認された医療機器の承認までの過程を検証し、承認の一層の迅速化を図るために、研究開発機関や医療機器メーカーの開発体制を指導し、また、開発された医療機器の審査体制を必要な人材育成も含めて強化する必要がある。
 我が国発の薬剤やデバイスの開発を推進するための一層の体制強化が必要。医療機器製造業界や研究開発機関を後押しするような問題を基本計画に入れてほしいという御意見をちょうだいいたしました。
 7ページ目に移ります。「(8)コンパッショネート・ユース制度の導入」です。
 上から3つ目の項目をごらんください。極めてまれな疾患では、適応症を有する薬剤が皆無であるといった状況が必ず出現するため、柔軟性をもった制度構築が必要という御意見をいただきました。
 「(9)協議会・基本計画におけるドラッグ・ラグの取扱いについて」ですが、4つ目の項目です。ドラッグ・ラグをがん対策推進基本計画の重点項目の対象にするべき。
 8ページ目に移らせていただきます。一番上ですが、薬がほしいというのは、患者を預かる医師の切実な願いでもある。命の長さが貧富によって決まるという状況は現場としては耐えられない。
 1つ飛ばしまして、3つ目の項目です。次の5年間でドラッグ・ラグに対する成果を出すために、検討すべき具体的な内容を基本計画に記載するとともに、ドラッグ・ラグを化学療法と分けて独立した章項目とし、支持療法の適応外についても記載するべき。
 医薬品副作用被害救済制度が、今回のドラッグ・ラグ解消を目的とした整備の中で、エビデンスに基づく使用であれば、適応外使用でも救済制度の対象とすべきであるということを次回基本計画に明記すること。
 社会全体としてドラッグ・ラグ解消に努めることを次期基本計画に明記すること。
 ドラッグ・ラグ=悪との印象があるが、厚労省は医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議などで検討しており、公知申請も可能。抗がん剤は予想できないことも起き得る可能性がある。すべての患者の益を考えると、基本計画の重点項目に入れない方がいいのではと考えるという御意見をいただいております。
 「(10)次期基本計画へ記載すべき数値目標」ですが、日本発の画期的抗がん剤の開発に数値目標を設定する。例えば3年間で10成分をファースト・イン・ヒューマン試験から第1相試験、5年間で5成分を第?相試験。
 日本発の治療薬開発を促進させるために、現在、高度医療評価制度においては、ファースト・イン・ヒューマンの治療研究は医師主導治験で行うこととなっており除外されているが、GMP基準、GLPに対応しており、ICH基準を満たしておれば除外規定から外し、高度医療制度の一連として取り扱うべく諸般の整備を2年以内に確立すること。
 希少がんに対する未承認薬の治験外治療アクセスを可能とする制度を導入すること。2年以内に薬事法改正も含め諸般の整備。
 適応外使用の認可整備を3年以内に整備すること。
 コンパッショネート・ユースの要望に対して2年以内に解決すべく諸般の整備を急ぐこと。
 個人輸入薬品の副作用報告制度を2年以内に確立することという御意見をいただきました。
 事務局からの説明は以上になります。
○門田会長 ありがとうございました。
 前回の集中審議と文章によって提出していただいたものをまとめさせていただいたものが、今、御紹介したものでございます。
 更に追加することは何かございますでしょうか。どうぞ。
○天野会長代理 ありがとうございます。
 ここにも書かせていただいたんですが、ドラッグ・ラグにつきましては、前回でも多くの委員の皆様から重点項目とすべき、かつ章立ても別立てとしてほしいという意見が出たと認識をしておりますが、そこのところは是非基本計画を書き込む際にお願いしたいということが1点です。
 あと、私からの意見の補足になりますが、今後5年間で成果を出すために、具体的に何を検討するのかということについても、基本計画の書き込みの際に是非記載していただければと思っております。
 例えば昨日開催されました、厚生労働省の厚生科学審議会の医薬品等制度改正検討部会でも、繰り返しコンパッショネート・ユースについての議論が出ていまして、それについては勿論拙速で決めることができない内容であると理解しておりますので、何らかの検討会などが立ち上がるかと思いますが、そういった検討会を立ち上げるなどの形で、具体的に何を検討していくのかということについても、是非記載していただければと思います。それはコンパッショネート・ユースに限らず、いわゆる55年通知的なものの検討であるとか、適応外薬の解消であるとか、そういった項目について、何を5年間で検討していくのかということについても、是非記載をお願いできればと思っております。
○門田会長 ありがとうございました。
 内容を更に具体的にわかりやすくという御意見でございます。これをこれから中期計画の文章の検討のときに話題とし、検討していかなければならないと思いますが、皆さん御意見はその方向性で多分一緒ではないかと思います。
 そのほかに何かございますか。嘉山委員、どうぞ。
○嘉山委員 ドラッグ・ラグに関しては、私も意見を会議で言わせていただきまして、これを解消しなければいけないのは当然のことなんですが、日本の今の社会の考え方の中で、これを進めるために一番大事なのは、ちょっと青臭い話になるんですけれども、哲学なんです。
 それはどういうことかといいますと、ここにも上田先生がファースト・イン・ヒューマンとお書きになっていますが、今の日本の国民がきちっと腹を据えて耐えられるような文化を一緒につくっていかないと、ファースト・イン・ヒューマンというのは、まだ海のものとも山のものともわからないものを、どなたかが飲むんです。あるいは注射される。それで全部が効果があるわけではない。ですから、ファースト・イン・ヒューマンは大変なんですけれども、国民と医療人が一緒にこういうものを育ていく文化をつくると同時に、この協議会からそういうことは大事であるという意見を発信していただければと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 非常に重要なポイントを御指摘していただいたと思います。ただできたものを使うというのではなしに、開発の段階に自分たちがどう参画していくのか。特にこれはある患者さんでなければ入っていけないわけですから、利用と同時にそういうところの参画、文化として定着すべき内容を織り込むというすばらしい御意見をいただきました。
 本田委員、どうぞ。
○本田委員 私は前回欠席をさせていただいてしまったもので、ドラッグ・ラグに関して意見を述べていないんですけれども、ここに書いている以外に、先ほどの天野会長代理、嘉山委員のお話は、私は大変賛成です。
 ドラッグ・ラグの問題、デバイス・ラグも含むかと思いますけれども、そういう問題をきちんと重点項目にしていただくことも大事だと思いますし、それを更に一歩進めて、嘉山委員がおっしゃったような文化を醸成していくためには、臨床試験とは何かとか、今、使っているお薬はどうやってできてきているのか、今後どうやったら副作用などがわかってくるのかなど、そういうそもそものことを学ぶ場とか情報を提供する場も大変重要だと思います。
 最近はがんに関連する各種学会で、そういう場を少しずつ提供されているかとは思いますけれども、まだがんの患者会のリーダーのほんの一部にしかそういう情報は提供されていないと思います。それを国民的に提供していくために、例えば重点項目の中にドラッグ・ラグ、デバイス・ラグの解消を入れるならば、教育、情報提供も1つの柱になるのではないかと思うので、意見として出したいと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 皆さんほぼ同じような御意見ですが、非常に重要なポイントで、どちらかというと、今までは結果としてのものを急ぐことが強く強調されたような嫌いがありますけれども、その基のところです。嘉山先生の言う哲学、このごろがんと哲学がくっ付いてきておりますが、非常に重要なポイントの御指摘だと思います。皆さんそうだと思います。よろしゅうございますか。
 今の内容は追加をすべきでしょう。事務局でまた少しお願いしたいと思います。
○事務局(松田) 事務局です。
 意見をつけ加えて、門田会長と相談の上、最終のとりまとめにさせていただきたいと思います。
○門田会長 そういうことで、この件につきましては、ひとまずここで置かせていただいて、これはまとめということです。最終的には、今、話題になっておりますように、基本計画を書いていくときに、今のディスカッションを参考にしていくということです。
 本田委員、簡潔にお願いします。
○本田委員 済みません。1点だけです。別に否定するものではないんですけれども、8ページの真ん中辺りで、医薬品副作用被害救済制度に関して、これこれを明記することという御意見がありますが、私、抗がん剤等副作用救済の検討会の委員もさせていただいているんですが、今まさに議論しているところなので、その経過を見つつということを添えさせていただきたいと思います。
○門田会長 よろしいですか。ありがとうございました。
 この件につきましては、こういう形で一部修正させていただいたものを事務局と一緒に見させていただいて、ファイナルとしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして、議題「(2)在宅医療、チーム医療について」に移りたいと思いますが、前回ヒアリングさせていただきまして、いろいろな御意見をいただきました。前回はまだ医師会のものがまとまっていないということでございまして、本日は最初に畑参考人よりお話をしていただいて、そして、前回のヒアリングの後からいただいた御意見も含めて、ディスカッションをしていきたいと思います。
 それでは、畑先生、よろしくお願いいたします。
○畑参考人 日本医師会の中に公衆衛生・がん対策委員会というものがございまして、その中に地域連携クリティカルパスへの取り組みワーキンググループというものが今年初めてつくられまして、今年5月に全国的な調査が行われました。今日は時間の関係もございますので、その調査を中心にお話をしたいと思います。
 13ページをごらんください。日本医師会の都道府県医師会に対するアンケート調査でございます。
 医師会内にがん対策推進のための事業専任部署の有無について、これはなしというのが結構多いんでございます。
 ?ですが、都道府県にがん地域連携クリパスのためのがん診療連携協議会のような組織があるか。がん診療連携協議会は、都道府県がん診療連携拠点病院、行政、医師会が参加しているわけでございますが、このうちあると答えたのは94%で、ほとんどの都道府県医師会ではがん診療連携協議会を持っているということでございます。
 ?につきましては、各がんについて、各地域連携クリパスを現在実践しているかということでございますが、5大がんである胃がん、肺がん、肝がん、大腸がん、乳がんにつきましては、約70%から80%実施をしているという状況でございます。
 ?、がん地域連携クリパスに参加しているがん診療連携拠点病院及びそれに準ずる基幹病院数は幾つあるかという問題でございます。全国的には388ございますが、参加しているところは348でございまして、90%がパスに参加しているということでございます。
 ?、がん地域連携クリパスに参加している地域の医療機関数は幾つあるか、何パーセントぐらいかという問いでございますが、最も連携医療機関数が多かったのは、東京都の2,128か所、16%に当たります。連携医療機関率が最も高かったのは、福井県の206か所、38.1%でございます。
 その他、クリパス実践上の問題点、課題につきましては、医師会に関すること、がん診療連携拠点病院に関すること、地域の医療機関に関すること、患者に関すること、行政に関すること、さまざまな意見がございますが、時間の関係で省略させていただきたいと思います。
 16ページでございますが、がん地域連携クリパス発行状況です。これは本委員会の委員が所属している10の都道府県についてのみ調査を行いました。そうしましたところ、胃がん、大腸がん、乳がんにつきましては、パス導入が多かったんですが、肺がん、肝がんにつきましては、パス導入が非常に少なかったということがございまして、がん種によってはパスの導入のしやすさが異なるかもしれない。これはこれから検討していかなければいけない問題だと思っております。
 発行枚数も1件当たり12枚から1,004枚とばらつきがございまして、発行状況に大きく差が見られました。
 最も発行枚数の多かったEです。Eというのは都道府県の名前を隠したものでございますが、13病院中6病院がパスを発行しておらず、a病院、b病院の2病院がほとんどのパスを発行している状況でございます。
 17ページです。a病院とb病院を合わせまして95%となります。
 それから、2番目に多い736枚のパスを発行しているD都道府県では、21病院中では18病院でパスを発行していましたが、1病院が全体の52%を占めるパスを発行しておりまして、ここでも病院間の偏りが見られております。
 アンケート調査のまとめになりますが、18ページでございます。5大がんにつきましては、ほぼ70%を超える都道府県で地域連携クリパスが実施されており、約90%のがん診療連携拠点病院がパスに参加をしている状況でございます。
 準ずる病院の数は、がん診療連携拠点病院より少なく、今後の認定が1つの課題であろうと思われます。連携医療機関は、各都道府県で平均12.6%が参加をしておりますが、連携医療機関の充実も課題であると思われます。
 がん地域連携クリパスの問題点や課題として、がん診療連携拠点病院に医師会・地域医療機関に対する支援・協力を求める声や、厚生局への届出要件の緩和、全国統一パスの作成を求める声がございます。
 パスの発行につきましては、都道府県によって発行枚数にかなりのばらつきがあり、同じ県内の病院でも偏りが見られ、全国的な普及にはまだ課題が多いことが推察されました。
 また、一部で懸念されているような患者囲い込みにならないよう、医師会が参加して適切な連携体制を整備するとともに、がん診療連携拠点病院、医師会、行政による住民・患者さんらに対するパスの広報・啓発が必要であると考えております。
 今の結論とダブりますが、一番最後の27ページになります。「13.今後の課題」でございますが、1つは、日本医師会ワーキンググループの調査結果から、都道府県の温度差がかなり存在しておりまして、がん診療連携拠点病院、行政、都道府県医師会の3者のスクラム、足並みをそろえることが必須であると思われます。
 (2)です。パス作成につきましては、全国統一共有パスを作成することが理想的でございますが、既に先行している地域がかなりございまして、共有パスをこれからつくることは困難であると思われます。在宅医療や緩和医療を取り込むパスも必要であろうと思いますが、これは医療資源によって決定されますので、何とも言えないと思います。
 (3)です。5大がんすべてを対象とするのは、容易なことではございません。例えば乳腺のみに特化した症例数の多い病院が増加しており、単がん対象でも可とすることが望ましいのではないかと考えております。
 (4)です。厚労省では二次医療圏にほぼ1か所のがん診療連携拠点病院の策定を考えておりますが、二次医療圏は、現在、全国に349か所ございます。388か所の拠点病院が指定されておりますが、二次医療圏で指定されていないところが70か所ぐらいあるわけです。そういう意味で、指定要件の緩和が望ましいと考えております。
 (5)です。クリパス診療報酬要件の策定の緩和が望ましいということでございます。例えばがんで検査入院し、病理結果が出る前に退院した患者さんの場合、外来での算定ができません。入院期間が短縮している現在、外来における保険算定を可能にすべきであろうと考えております。
 ?でございますが、計画策定病院または連携医療機関の追加変更ごとに、計画策定病院・連携医療機関ともに厚生局に届出を再提出せねばならず、事務処理の煩雑さにつながっておりまして、要件緩和が必要であると考えております。
 (6)です。医師不足、地域偏在、診療科の偏在に加え、化学療法医、放射線治療医、緩和ケア医、在宅ターミナルケア医などの専門医の不足解消がございますので、その不足解消が必要であろうと思われます。
 (7)でございますが、クリパスに関する診療報酬の引き上げのみならず、診療報酬全体のり引き上げをすることによって、医療機関のモチベーションの増加につながり、クリパスが盛んになっていくと考えております。
 最後になりますが、限られた人、物などの医療資源の活用の点からいきましても、がん地域連携クリパスの推進は極めて大切であると考えております。
 以上でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 今の段階で調査をしていただいた、がん診療連携拠点病院から見れば、結構取り入れているけれども、逆に相手側の病院のパーセントを見れば、非常に少ないということなんですか。先生がおっしゃられた約90%が連携拠点病院へ参加しているが、連携医療機関が12.6%であるということは、そういうことなんですね。
○畑参考人 これはほかのページに書いてあります。
○門田会長 18ページのアンケート調査のまとめの最初のところに書いてあります。
○畑参考人 10ページをごらんになってほしいんですが「8.各立場のメリット・デメリット」とございます。
 デメリットのところに、地域診療所とございまして、多くの診療所ではクリパスというものになじみがない。
 使用可能な薬剤の種類などに限りがある。
 血液検査に時間がかかる。
 多数のクリパスに対応しなければならない。
 再発や転移の見逃しなどのリスクを負うため、参加にためらいを覚える。
 こういう立場ございまして、手挙げがまだ少ないというのが現状でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 委員の皆さん、何か御質問ございますか。保坂先生、どうぞ。
○保坂委員 今、門田会長がおっしゃったところの補足でございますけれども、今の制度は1病院対1医療機関で、5大がんすべて別々な届出をしなければならないということで、例えば東京の医療機関などは拠点病院もたくさんあるわけです。その拠点病院それぞれとやりますという届出を厚生局に出さなければならないという非常に煩雑な部分があって、東京は一応共通のものをつくっているんですけれども、共通のものをつくっていないところでは、それぞれの病院ごとに内容が違うこともございまして、クリティカルパスをつくることは大切なんですが、現実に運用していくためには非常に難しい。
 先ほど出ていましたけれども、地域によって、たくさん出しているところもあるんですが、出している病院は一部の病院であるという現状なので、これから導入していくところもあるし、普及していくんでしょうが、今の時点でこれをこのままやってもかなり難しいのではないかということについて、本日、皆さんに知っていただければと思いました。
○門田会長 ありがとうございました。
 よくわかりました。問題点がそういうところにあるということです。
 本田委員、どうぞ。
○本田委員 質問をさせていただきたいと思います。そういうことまでとっていらっしゃらないのかもしれないので、もしわかればなんですが、1つは、拠点病院側が約90%の参加に対して、連携医療機関側は都道府県平均で12.6%と書いてあります。どこかの県だけでも結構なんですが、連携医療機関というのは、診療所だけではなくて、本来はがん診療の一部を担っているような、ベッドを持つような中小病院とか、そういういろんな医療機関が本来は連携することを患者さんたちは求めてきたんだと思うんですけれども、そういう割合別まではとれていないのか。これは診療所という数字なんでしょうか。
○畑参考人 本来は200床以下及び診療所となっていますが、割合のあれはとっておりません。
○本田委員 もう一点なんですけれども、連携している数値の時期というのは、例えば7月ぐらいの乳がん学会のときにも、そういう連携パスのシンポジウムがあったんですが、結局、発表があるのは診療報酬がついている初期治療の後に、連携パスをもってして診療所に移るとか、診てもらうという連携の部分ばかりで、そのほかの多面的な連携の部分は一切発表がなくて、傍聴に来ていた患者団体の方から、もともと患者たちが法をつくるときに求めた連携の図とはまだほど遠いんだけれどもという声があったんですが、その辺もまだここの調査の中にはないんですね。
○畑参考人 ないです。
○門田会長 そのほかどなたか御意見ございますか。
 19ページに松本委員の関係しているおれんじの会がありますけれども、これは今のような話で、患者さんあるいは家族からの意見を調べられたもので、何か御発言ございますか。
○畑参考人 患者さんの意向を知ることは非常に大切なわけです。今のところ余り資料がございませんので、愛媛おれんじの会の資料をお借りしたんですが、患者さん自身も病診連携を知らない方が50%を超えていらっしゃる。ただし、病診連携につきましては、よいと思うが70%に上っておりますので、今後、各診療所に対する啓発、患者さんに対する啓発を行えば、がん診療クリパスは広がっていくのではないかと考えております。
○門田会長 松本委員、どうぞ。
○松本委員 私どもが大分前に調査をしたものだったんですけれども、このような結果を御活用いただきましたことにお礼を申し上げます。ありがとうございます。
 ただ、私どもがこの調査から申し上げたかったことの1つは、23ページの一番下に「11-4 患者・家族が望む連携のために」ということで5つの見出しを出しておりますが、「(4)ツールに頼らず“ことば”を使って」ということをあえて書かせていただいております。確かにパスが整備されて、円滑な連携がされることは、患者・家族にとってメリットはありますけれども、ツールばかりが先行しているという印象を私どもは受けておりまして、ツールがあるために説明を省くであるとか、そういったことがあっては本末転倒だと思っておりますので、私どもはやはりちゃんと血の通った連携をしていただきたい。私どもの患者・家族の顔を見て、医療者同士が顔を合わせるような連携をしてほしいということを、この調査から申し上げたかったということを一言申し添えさせていただきます。ありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。
 そのほか、この件についてどなたか御意見ございますでしょうか。嘉山委員、どうぞ。
○嘉山委員 がんセンターでも中央病院と柏の両方で地域連携をやっているんですけれども、今の皆さんの御意見ですべて集約しています。やはり地域でつくり上げていかないと、顔が見えないんです。特に東京ですと、病院がたくさんありますから、電話1本でお願いしますというわけにいかない。ですから、これは我々医療人あるいは患者さんにも加わっていただいて、努力するしかないんです。
 今、日本のがんの患者さんの一番の問題は不安なんです。うちの医師でも、自分の親御さんががんになった場合、次にどうなるんだろうか。急性期で手術が終わって、放射線、化学療法をやって次はどうなるんだろうか。日本の患者さんは次が見えないんです。ですから、そういう意味で、このパスは非常に大事なんです。
 今、松本委員がおっしゃったような非常に心のこもったものができれば、患者さんも家族もすごく安心する。これをつくるためには、やはりフェース・トゥ・フェース、ヒューマンリレーションシップが一番大事です。そういう意味で、各地域の医師会が大きな役割を果たすと思います。
 それから、今日、川越先生がいらっしゃいますけれども、最終的には在宅までいかなければならないので、そういうことも含めた形の努力、うちでは年に2回やっているんですけれども、そういうことを医師会と大きな急性期の病院でやってつくり上げるしかないんです。法律でぽんとやっても、今、松本委員がおっしゃったように、心が通わなければ患者さんのためのパスではなくなるので、私はそういう集まりの頻度を多くしなさい、回数を多くしなさい、ヒューマンリレーションシップでつくり上げていきなさいということを盛り込むことを提案します。
○門田会長 ありがとうございました。
 眞島委員、どうぞ。
○眞島委員 今、嘉山委員がおっしゃったことに賛成です。この中にがん診療連携拠点病院、行政、都道府県医師会の3者のスクラムと書いてありますけれども、医師会の役割は非常に大きいのではないかと思います。中でもクリティカルパスが成功している都道府県がありまして、そういうところは医師会の会長が非常に熱心にされています。これは単純にがん拠点病院からシームレスに患者さんを診療所までケアするだけではなくて、前向きに、例えば入り口の部分でも医師会の先生方と拠点病院の専門医の先生方が協力することによって、微小がんの拾い上げに成功しているといった成功事例もありますので、さまざまな面から医師会の先生方の熱意というものは非常に重要ではないかと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 田村委員、どうぞ。
○田村委員 医療機関からの意見なんですけれども、我々も2年ぐらい前からクリティカルパスを始めていますが、まだ1期の患者さんが対象なので、なかなか動いておりませんけれども、今はラーニングタイムで、今から学びながら進めていく形になろうと思います。
 その中で、私たちの病院で一番難しいのは、地域連携室の充実だと思います。患者さんの受け入れ、病院側の受け入れ、こちらからの発信、それをつなぐ役割をする地域連携室が充実していかないといけないと思います。その充実に関する議論も必要ですし、何らかの補助金のようなものも必要ではないかと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 そのほかにいかがですか。中沢委員、どうぞ。
○中沢委員 神奈川県におきましても、県の医師会の先生や拠点病院の先生方を中心に、5大がんの基本的なクリティカルパスのフォーマットをつくっていただきました。それを基に開業の先生で継続的に治療を行ってくださる先生などのリストアップを始め、少しずつ、今、広がってきているところでございますけれども、今後はそれぞれ二次医療圏ごとに拠点病院がございますので、その中で、継続的な治療をしていただける医療機関、在宅療養支援診療所、更には緩和ケア病棟を持っているようなところとの連携のネットワークをつくっていただけるような形でお願いを始めているところですが、今後、各地域で患者さんのための最良な医療を行うに当たっては必要なシステムではないかという形で考えております。そこら辺のところは、理想といいますか、あるべき姿という形で考える必要があると思っています。
○門田会長 ありがとうございました。
 そのほかにどうでしょうか。
 在宅、チーム医療ということ、今の話も関係してきますので、次に進むといいますか、前回ヒアリングさせていただいたもの、その後、御意見いただいたものをまとめておりますので、それを事務局から一度報告させていただいて、それを踏まえて、今のことに続けての御意見があっても構いませんので、そちらの方で御発言いただきたいと思いますので、次に移ります。
 それでは、お願いします。
○事務局(松田) それでは、事務局から資料3「在宅医療、チーム医療に関する委員からの意見のまとめ」について、説明させていただきます。
 「1.在宅医療」についてですが「(1)在宅医療の提供体制について」から説明させていただきます。
 拠点病院などでがんの初期治療を受けた場合、その後、地域のかかりつけ医となる医師を見つめることが難しい。患者・家族が適切なかかりつけ医を探す手助けとなるような、地域の医療資源に関する情報の収集と公開が求められる。
 在宅緩和ケアは、専門的な知識と家族へのケアも含め総合的な医療の提供が必要であることから、それらに精通した医療施設を核として整備を進めてはどうか。核となる医療施設は、地域での人材育成やネットワークづくりにも取り組むこととする。
 化学療法等の治療中に地域のかかりつけ医にも通院する際、病院の担当医とかかりつけ医のどちらが主治医かということを明確にしておくことが重要である。
 がん患者のかかりつけ医が必ずしも緩和ケアに習熟してはいないため、底上げが必要である。
 在宅緩和ケアについては、例えば拠点在宅支援センターといった施設を全国的に整備するといったことは、医療経済や患者のニーズを踏まえると困難である。財政的にも、医療資源を考えても、一定の地域に一定の患者さんの需要がなければ、在宅緩和ケア専門診療所の運営は成立しない。現実には地域の医療機関、いわゆるかかりつけ医が連携する取組みを進めることが大切。
 2行飛ばしまして、地域での在宅医療は、熱意のある開業医と地域にある社会資源で支えられているのが実態。現状の在宅緩和ケアの質を少しでも向上させるためには、在宅医療を行っている医者や関係職種が燃え尽きることがなく、地域医療を継続できる支援ネットワークの構築、相談支援できる機関や必要な研修を受けることができる仕組みが必要ではないか。
 在宅での緩和ケアを選択できる機会を増やすには、熱意のある医師だけに頼っている今の体制では、その医師がいなくなければ継続できない状態に陥る。特に家族介護力の低下が進んでいる状況下で、住み慣れた在宅を選択できる体制をつくる必要がある。
 24時間往診してくれる医者と、24時間看護や介護をサポート可能とすること。緊急時の入院受け入れやレスパイト入院が可能になるように、今ある制度や体制の見直しが必要。特に病院診療所連携及び診療所間の連携などにより、24時間体制で在宅のがん患者を往診してくれる医療機関の確保や必要な支援体制を整備できるような仕組みが必要。
 小児も在宅緩和ケアのニーズが存在するが、受けてもらえる施設が少ない。成人のみならず、小児も診ることのできる体制を整備してほしいという御意見をいただいております。
 「(2)在宅医療の質の評価について」ですが、患者の声を調査することは困難であるが、家族・遺族の声を聞くことは可能ではないか。受け手側のニーズ、満足度を反映しながら、在宅緩和ケアの質の向上を図る必要がある。
 米国では在宅緩和ケアの専門チームが関わると、患者・家族の満足度が高くなるという大規模な調査結果があるが、日本ではこのような調査結果はなく、緩和ケア専門チームの基準が存在しないため検討が難しい。
 遺族に対する調査は、米国では死亡に関するデータベースが整備されているため容易である。日本では、現在、遺族調査の妥当性を検証しており、例えば戦略研究では代表的な4つの地域で緩和ケアのプログラムの介入試験を実施しているといった御意見をいただいております。
 「(3)在宅医療に関する情報提供について」ですが、在宅緩和ケアに関する情報は、都道府県が詳細を把握するのが理想だが、不可能に近い。小回りのきく市町村で情報提供を行うべきではないかとの御意見をいただきました。
 「(4)介護保険に関連して」ですが、事務連絡である末期がん等の方への要介護認定等における留意事項についてが地域に周知されておらず、対応に差があるのではないか。
 がん患者の場合、介護との進行が早く、例えば要支援1、2であった患者が要介護に移行する場合は、地域包括支援センターでマネジメントされていたサービスが、管轄が変わることで現場では問題が生じている。2行飛ばしまして、具体的には地域包括支援センターと次に担当する予定の居宅介護支援事業所のケアマネージャーのそれぞれが患者に関わることになるが、医療者としては介護保険サービスの依頼や報告先をどちらにすればよいかなどの混乱が生じている。
 次の項目に移りまして、介護保険の対象外となっている40歳未満の患者は、離職や減給などに直面している場合がある。更に家庭内で在宅療養に十分な介護力を確保することが困難である。40歳未満の患者の療養支援に対して、何らかの対応が必要といった御意見をいただきました。
 続きまして「2.チーム治療」を説明させていただきます。
 「(1)チーム医療に対する患者、家族の理解の促進」ですが、チーム医療がどのように行われているか患者側には見えにくい。また、がん治療を行うすべての病院でチーム医療が導入されているわけではない。患者が公平にチーム医療のメリットを受けられる制度や体制の整備を更に進めてほしい。
 4ページ目に移りまして、チーム医療の普及と充実のためには、患者もチーム医療の一員として、チーム医療そのものを理解する必要がある。患者に知ってもらうことでチーム医療が促進されるのではないか。
 チーム医療で多職種が関わることはメリットも多いと期待するが、患者・家族にとって、だれに頼ればいいのか司令塔がわからなくなり混乱することがないように、取組みが必要との御意見をいただきました。
 「(2)チーム医療を担う医療従事者の整備の必要性」ですが、医学物理士や臨床心理士は国家資格ではなく、診療報酬上の手当もないため、他職種によるチーム医療が進んでいない。
 チーム医療の患者へのメリットは言うまでもないが、医師にとっても負荷が軽くなる点を強調すべき。また、チーム医療への専門看護師の配置は数が少なく困難な面があり、認定看護師を増やすといったことも考慮すべき。
 認定看護師を取得する際には、一時臨床を離れなければならず、病院にとっても負担が大きい。
 認定看護師を増やすことも大切だが、志のある看護師が臨床で働きながら大学院で学ぶことができるよう、病院が協力をする。専門看護師が増えることによって、院内で看護師への教育的役割を果たすことができる。それがチーム医療にもつながっていくのではないか。
 チーム医療では、多職種間のチーム医療と病院・地域間のチーム医療の2つのチームが有機的に機能する必要がある。いずれのチームにおいても、専門性の高い看護師の活用は有用。
 がん看護に関する複数領域の認定看護師とがん専門看護師を地域と協働して派遣し、専門性の高い高度な看護ケア活動を提案する。患者にとって専門性の高い看護ケアを継続的に受けることができるシステムである。そのことにより、患者のいわゆるがん難民化の防止も可能となる。
 更に地域での活動は、拠点病院に集約されている知が具体的で実践的な形で地域に伝播する効果がある。がんプロ名でのがん教育と融合すれば、現実的ながん医療の均てん化に資するという御意見をいただきました。
 「(3)その他」ですが、New England Journal of Medicineに掲載された論文のとおり、早期からの緩和ケアチームの介入とその効果に期待しているという御意見をいただきました。
 事務局からの説明は以上となります。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、御審議をお願いしたいと思います。
 天野会長代理、どうぞ。
○天野会長代理 ありがとうございます。
 参考資料の方で「天野委員、花井委員、前川委員、眞島委員、松本委員 提出資料」という形で「がん患者に対する介護保険の適正化に向けての意見書」を提出させていただいておりますので、そちらをごらんいただければと思います。
 前回の協議会でも指摘をさせていただきましたが、平成22年4月にがん患者団体からの要望を受ける形で、厚労省の老健局より、各都道府県と市区町村の介護保険担当課に対して、末期がん等の方への要介護認定等における留意事項についてであるとか、10月に末期がん等の方への福祉用具貸与の取扱等についてなどの通知がされていたところですが、通知後の適切な運用について実情が把握されていなかったということがありました。
 今般、私たちは、介護保険に携わるすべての保険者を対象として行われたアンケート結果(別紙1)、また末期がん患者の認定状況調査(別紙2)、これらの報告を手にする機会がございまして、その結果明らかになったこととしまして、全国の保険者の通知後の対応にばらつきがあること、迅速化を阻む要因に主治医意見書の提出の遅れや記載の不備があること、申請時点でがん末期と判断することが困難であること、要支援及び要介護1となり福祉用具貸与のできない例外申請が26%の保険者であったこと、さまざまな問題があることが明らかになりまして、通知が出たにもかかわらず、まだがん患者が迅速並びに適正に介護サービスを受けることができない現状が明らかになっております。
 その適正化のために、以下の4つのお願いをさせていただきたいと思っております。
 1つ目は、調査結果を踏まえた上で、末期がん患者の介護認定の迅速化とがん患者の実情に合った要介護認定が行われるよう、必要な施策を講じていただきたいということがございます。特にがん患者が介護保険を適用するに当たりまして、終末期の場合、病状が急速に悪化していくことが、介護認定において問題が生じているということについては、まだ根本的な解決には至っていないと理解しておりますので、この点には是非適正な改善のための協議をお願いしたいということでございます。
 2点目としましては、こうした問題を解決するために、厚労省のがん対策推進協議会としても、必要な意見を提出していただきたいということがございます。
 3点目としましては、特に市区町村等の地方公共団体並びに都道府県においては、国との連携を図りつつではございますが、地域の特性に応じた施策を是非実施していただきたいということ。
 4つ目としましては、医師等関係者の皆様におかれましても、がん患者が介護サービスを受けるに当たっての意見書の提出などについて、問題がある場合には是非改善を図っていただいて、必要な連携を行っていただきたいということがございます。
 私どもからの意見は以上でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 いろいろと施策をやられている割にはうまくいっていないところもあるので、もう少しということですが、これは、今、何か動きはございますか。
○がん対策推進室長 事務局より少し御説明をさせていただきます。ちょうど、今、天野会長代理から意見書が提出されました件につきまして、1点御報告させていただきたいと思います。今日、資料としてはお配りしておりませんが、口頭で御説明させていただきます。
 10月18日、2日前でございますけれども、厚生労働省老健局老人保健課の方から事務連絡が出ておりまして、末期がん等の方への迅速な要介護認定等の実施についてということで、調査を行った結果について報告をするとともに、更に迅速な認定に向けた取組みを進めるよう市町村にお願いをした事務連絡が出ております。
 具体的な調査結果をごく簡単に御説明させていただきますけれども、平成22年度の老人保健健康増進等事業というものの中で、財団法人日本公衆衛生協会が末期がん患者の認定状況調査というものを行っております。こちらにつきましては、介護保険全保険者に対するアンケート調査でして、22年5月から10月までの半年間という形で調査を行っております。
 その結果、4,682人分のデータを解析してお示ししているところでございまして、この調査結果によりますと、例えば保険者調査の結果、申請から二次判定までの日数が20日を超えている保険者が86.6%、またこの中で30日を超えている保険者が38%ありました。
 認定調査につきましては、申請後5日以内に実施している保険者が27.7%であったり、6~10日で実施している保険者は50.2%だったこと。
 また、調査から二次判定までの状況を見ると、20日を超えている保険者が半数近くの47.8%であったという結果が示されております。
 申請から二次判定までの平均日数は28.9日であって、実は19.4%の方が二次判定前に亡くなっていたという結果も示しております。
 そうした調査結果を示しながら、最終的に事務連絡のまとめといたしましては、末期がんの方に対する要介護認定について、認定調査の迅速化は多くの保険者において取り組んでいただいていますが、申請後二次判定までは多くの保険者において一定の日数を要しており、迅速な二次判定に向けた取組みが引き続き重要と考えられます。また、末期がんの方については、申請後短期間で亡くなる方が一定程度存在するため、市町村等において、末期がんの方に対する迅速な要介護認定等を行えるよう、関係機関との連携体制の構築や暫定ケアプランの適切な活用といった取組みが重要となります。引き続き末期がんの方に対する適切な要介護認定等の実施に御協力いただきますよう、お願いしますということでございます。
 先ほども天野会長代理から少しお話がございましたが、昨年4月には市町村等に対して、老人保健課から要介護認定の実施について周知するとともに、昨年10月にも福祉用具の貸与の柔軟な対応について可能だということの事務連絡を出しております。
 また、今回の事務連絡におきまして、調査結果を示すとともに、要介護認定に向けた取組みについて再度お願いするということで出しておりまして、引き続き末期がん患者等に対する迅速な要介護認定等の実施について、市町村の認定担当者等へ周知、研修等を充実していきたいということでございました。
 がん対策推進室としましては、こうした情報というか、各部局において行われている状況について、引き続きこうした形で把握して御紹介するとともに、必要に応じてこうした動きについてフォローアップしていきたいと考えております。
 以上でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 天野会長代理、何かございますか。
○天野会長代理 ありがとうございます。2点ございます。
 1点は、厚生労働省においても、迅速化について必要だという認識をしていただいているということで、各市区町村においても御努力いただいていることはわかりましたが、実情として、まだ迅速化につながっていないのではないかということです。
 あと、先ほども申し上げましたが、がん患者というのは一般の介護を必要とする方とかなり違っている容態がございますので、それに応じた対応が具体的に事務連絡の中であるのかということについて、まだ足りない面があるのではないかと思いましたので、その辺りについては、引き続き御努力をお願いしたいということが1点ございます。
 2点目ですが、介護の話とは若干離れますが、今、他の部局とも連携をしていただいているということで、大変ありがたいことだと思っておりますが、がん領域に関しましては、先ほども少し申し上げましたが、幾つか関連する審議会等があるかと思っております。例えば先ほども申し上げましたように、薬事制度に関する部会であるとか、明日は抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会も開催されると聞き及んでおります。ほかにも社保審の医療部会とか医療保険部会で、それぞれ医療提供体制であるとか、高額療養費制度についても引き続き審議されているところだと思うんですが、例えば明日の検討会などについては、まさにがんの患者さんやがんの医療に非常に密接に関連してくる検討会であると認識しているんですが、そういったことについて、検討状況であるとか、引き続き今回のように協議会の場において共有いただければと思っております。
 私からは以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 川越委員、どうぞ。
○川越委員 重要な話なので現場のことを報告させていただきたいと思います。
 今の介護認定の問題というのは、歴史的にみるとそもそも介護保険の中にがん患者が後で入ってきたということがあって、いろんなひずみが出てきて、現場は非常にやりにくいということがまずあります。これは我々がやりにくいということだけではなくて、結果的には患者さん・家族の方が非常に不利益を被るということで、私個人の考え方としては、やはり介護保険そのものを見直していただきたいということがございます。
 それはさておきまして、運用面で対応するということで、私が1つ気になっているのは、昨年4月のものはたしか課長通達だったのではないでしょうか。つまり自治体によっては非常に軽く受け止めているところがあるんです。具体的にいいますと、区によってとらえ方が全然違っています。あるところは通達をきっちりと取り入れて、末期がん患者の順番をトップにどんどんもってくるところもありますし、割と軽くとって、介護保険をできるだけ使わせたくないために、こんな意地悪をしているのではないかと思うようなものもあるんです。ですから、老健局からせっかくいい通達を出して、運用面で解決しようということであれば、もっと重みをもった通達にしていただきたいというのが現場からの意見です。
○門田会長 ありがとうございました。
○がん対策推進室長 1点事実確認でございますが、昨年4月に出されましたもの、また10月に出されたものについては、老人保健課からの事務連絡という形で、各都道府県及び市町村に御連絡しているところでございます。
○門田会長 こういうものに重みを出してというのは、どういうことが考えられるんですか。
○がん対策推進室長 そうした御意見があったということについては、担当部局にお伝えさせていただきたいと思います。
○健康局長 今の通知というのは事務連絡ですから、事務連絡ではなくて、行政にちゃんと通達するであるとか、それを課長よりも上位の局長にするとか、次官にするであるとか、そういう話だと思います。
○門田会長 我々とすれば、ここの協議会でこういうことが話題になり、それが局長からどこかに出ていくんですか。
○健康局長 先ほど天野会長代理からもありましたけれども、局を越えた話題につきましては、がん対策推進本部というものがありまして、それが計画の見直しで動き出し始めておりまして、幹事会というものがあります。そこに各課が集まっておりますので、そこだと日常的に情報共有をしてまいりますので、今日の御意見につきましても、即反映させたいと思います。提供したいと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 早速、そういうふうに動いていただけるということです。
 北岡委員、どうぞ。
○北岡委員 私もかつてケアマネージャーをした経験があります。今は現場から離れていますけれども、市町村の担当でいくと、市町村で認定者数がどれだけ上がってくるかという認定者数も違いますし、人口規模によっては事務の人数も違います。事務の人数が違うのに、事務的な処理の工程は全部一緒なので、現場の市町村によってはすごい大変なこともあるので、その辺の解消もしないと難しいと思います。
 あと、介護保険のサービスをがん患者さんが利用できることは、すごい大事なことだと思いますが、同じプロセスで、ほかの高齢者に対してのケアというか、そこのサービスを充実させるための制度と同じような仕組みとか、同じようなプロセスで認定していくことに限界があると思いますので、そこの見直しが必要だと思いました。
○門田会長 ありがとうございました。
 そのほかにいかがでしょうか。
 先ほど天野会長代理から、幾つかの審議会のところで、我々に関係しそうな情報がいろいろある場合には、ここで何らかの形で情報を共有できるようにお願いしたいという御意見がありましたけれども、これは皆さんも同じ考えだと思いますので、是非検討していただきたいと思います。
○がん対策推進室長 事務局で検討させていただきます。
○健康局長 ついでにいいますと、厚生労働省は大臣以下、政務三役、各局長が毎週集まって幹部会議をやっています。その中で、私でありますれば、がん対策推進協議会のことについてはイの一番に報告して、いつ、こういうテーマでやるということを必ず毎週報告します。各局長たちも関連することがあれば、必ずこういう審議会でこういうことをやると言っていますので、そういったレベルから、形としてはやっております。ですから、言われたからどうのこうのではなくて、既にやっていると申し上げたいと思います。
○門田会長 本田委員、どうぞ。
○本田委員 局長の心強い発言に大変うれしく思うんですけれども、そういう取組みがされていることを、是非我々も共有させていただきたいという思いなんです。中の幹事会で話したことというよりは、ほかの審議会などで議論されていて、そこで取り上げられているようなもので、我々の協議会に関係するようなものは、ほかの審議会や検討会などを傍聴していても、例えば高額療養費の制度は、今、保険部会でどのように議論されているかとか、関係があったりすることが多いですので、是非がんの協議会にもその辺をよろしくお願いしますということだと私は思っています。よろしくお願いします。
○門田会長 委員の皆さんはそういうことで、もう少しいろんな情報をここの場で共有できたらということです。やり方はいろいろあろうかと思いますので、事務局で考えていただきたいということで、よろしゅうございますか。ありがとうございました。
 そのほかに御意見いかがでしょうか。川越委員、どうぞ。
○川越委員 在宅緩和ケアの関連で、前回、資料を準備していたんですけれども、説明する機会がなかったので、前回のものを読んでいただいたという前提で、私から短く話をさせてください。
 今日出した資料は、前回出した資料と同じなんですけれども、3ページ目の?とつけたところです。一番最後のページです。ここに見直しに関して現場の考え方をまとめさせていただきました。このとおりなんですけれども、患者視点に立った在宅緩和ケアの普及というのは、ちょっと大上段に構えていますが、ある意味で国策上の至上課題だと思っています。
 次に、いろんな力を結集していかなければいけないわけですが、現在、制度とか仕組みとしてないものは、緩和医療を専門とした診療所がないということなんです。制度的には何の保障もない状況でやっているということでございます。
 見直しのポイントで大きく1、2とあります。1つ目は、がんと非がんを区別する、そういう制度にするということです。。今の介護認定の問題などは、まさにそれに関わってくるわけですが、何が違うかというのは、前回の資料に出しましたけれども、1つはがんの方は平均年齢が15歳も若く、在宅ケアの期間はほぼ2か月、それに対して非がんはその10倍の期間です。
 今回データは出さなかったんですけれども、最近、仲間からデータをいただきまして出した資料がございます。がんの方と非がんの方はどのぐらい往診の頻度が違うか。つまりどのくらい緊急に呼ばれることがあるのかというデータがあります。これは1か月のデータで、がんの方は188名の集計ですけれども、往診が1人1日あたり平均0.03回、非がんの方は535名の集計ですが、がんの方の10分の1で0.003回。がんの方は理論的にも予測されますが、やはり非常に医療依存度が高い。ですから、我々医療者が関わらなければいけない頻度が高い。そういうものが数字として表れております。つまりこれはがんと非がんとは違うものとしてやっていかないと、政策上あるいは経済上も無駄になるのではないかと思っております。
 「2.地域緩和ケアの普及のため」の説明になりますけれども、がんと非がんを区別をしなければいけない。その後に具体的にいろんなことが書いてありますけれども、何で区別しなければいけないのかという話をして、私の説明を終わりたいと思います。
 1つは、区別しないことにより、現場は非常に不自由な形でサービスを提供しているということがあります。現場の医療者あるいは介護者にとっても負担が増加していることがあります。それは結果的にがん患者が不利益を被ることになっているわけです。それが第1点です。
 2つ目は、がん患者の在宅の受け皿がない。つまり末期がん患者の在宅ケアを積極的に行おうとする医者がなかなか見つけられないということがございます。これは墨田区の医師会でも調査したんですけれども、末期がんの方の在宅ケアに関わろうという方は5%弱なんです。実際に一度やったら、もう懲り懲りだとその後は断る方が非常に多いということで、それは何とかしなければいけないという問題があります。ですから、区別しなければいけないというのはそういうことでございます。非がんに関しては、受け皿がないということはございません。
 3つ目は、末期がん患者は、片手間にやられるケアですと、高品質のケアが受けられない。つまりがんの方は比較的若く、短い経過で亡くなるし、医療依存度が高いので、他の診療の片手間のケアでは高品質のケアが受けられないということがあります。
 4つ目として、医療経済上にどうしても無駄が生じてくるということです。例えば、専門でない先生が関わりますと、バックアップが別途必要にになってきます。在宅で最期まで対応できる専門チームが関わった方が質的にも経済的にも非常に良い効果がある。その点でもがんと非がんを区別しなければいけないということがあると思います。
 2つ目のところは、具体的に整備指標、評価指標、整備目標をこういうふうにしたらどうかということを書かせていただきました。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 松本委員、どうぞ。
○松本委員 ありがとうございます。
 川越先生から御指摘がありましたように、緩和ケアの専門診療所というものが必要ではないかという御意見に私も強く賛成させていただきます。患者の視点に立った見方がとても大事だということは、紛れもない事実だと思うんですけれども、患者というのは、不安を持っているんだということが先ほど嘉山先生からも御指摘がありました。不安の最たるものは、病院での治療から在宅へ移るときではないかと思っています。それは病気のステージにかかわらずだと思っております。私どものところで御相談を受ける場合にも、それが非常に多い。
 私どもの調査では、いわゆるかかりつけ医を持たない方が半数ぐらいはいらっしゃいますので、今まで全く人間関係がないかかりつけの先生をこれから探してやっていかなければいけないときに、私たち患者・家族が選ぶ基準は何になるかというと、やはりどれだけたくさんのがん患者さんを診ている診療所かどうかということが、1つの基準になるのは当然だと思います。私どもが手術やいろいろな治療をするときに、症例数の多い病院を選ぶのと同じように、在宅を選ぶときにもそれが1つの指標になるのは当然のことだろうと思っております。
 私たちが一番ほしいのは安心です。安心の材料の1つになるのは、高い技術、専門的な知識を持っていることだろうと思います。在宅療養支援診療所は全国にたくさんあります。前回の参考人の方からの資料にもあったんですけれども、70%もの診療所の先生が24時間体制は負担だとお答えになっていらっしゃる。負担だと思っている先生のところにかかりたいと思う患者は、余りいないのではないかと思っております。ですから、そういった意味でも、ある程度特化をされた専門の診療所が地域の核になって、そこが囲い込みをするということでは決してなくて、そこが実践とともに地域での教育や人材の育成まで担っていく。そして、だんだんと地域のレベルが上がっていくことが重要ではないかと思っております。
 ありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。
 花井委員、どうぞ。
○花井委員 松本委員の意見に関連してなんですけれども、松本さんがおっしゃったように、在宅療養診療所を選ぶ指標がないんです。
 もう4~5年前ですが、私たちは愛知県全域に向かって、在宅療養、がん患者さんの緩和ケアを担える診療所がどれだけあるかという調査いたしました。例えば24時間体制で行けるのか、疼痛緩和にしてもWHO方式に基づいてできるのかどうか、連携している訪問看護ステーションはどれだけあって、実績はどれだけあるのかという調査をいたしましたけれども、1年かかりで、この調査で私たちNPOはすっかり疲弊をしてしまった。やはりこういうことは県とか市などでやっていただいて、その情報をリリースしていくことが必要だと思います。
 また、私どもの調査の中でも、麻薬医を持っていらっしゃらないのに、積極的にがん患者を受け入れていくと回答なさった診療所もありまして、我々のような患者支援をする立場からはそれが非常に心配になりました。
 最近、病院の緩和ケアの専門医とお話する機会があって、患者さんの在宅への移行に向けて、どのような意見を持っているかお聞きしましたところ、やはり熱意と高い技術、患者さんの多様なニーズに対応していくような体制を持った診療所、もしくは在宅医に在宅療養を担っていただけるかどうかというのは、今の段階ではときの運だというお言葉がありまして、少し驚きました。大切なターミナル期、人生の締めくくりの日数、それがたとえ数日であっても、ときの運で支配されるような過ごし方、療養、ケアを受けなければならないことは、非常に不公平であり悲しいことだと思います。
 緩和ケアというのは、だれでもできるものではありませんし、高い技術と真摯な姿勢、熱意が必要なものだと思っておりますので、川越先生の専門診療所、松本さんの御意見、そうしたことを今後推進していく必要はすごく重いというか、大きな意味を持っていると思います。
 ありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。
 全くおっしゃられるとおりだと思います。
 話の途中なんですが、あるものを求めるのではなくて、やはり我々がつくり上げていくという教育の面も強調したいです。一緒に育てていくということもね。
 川越先生、どうぞ。
○川越委員 エールをいただいて、本当にありがとうございます。
 やはりこれしかないのではないかと、現場をやっておりまして考えております。これで全部できるというのは勿論不可能ですから、既存の開業の先生方がやっているものを我々がバックアップする形ができればいいと思っております。
 先ほどございました患者さんの不安という点ですが、やはり今まで信頼して、ある意味で全部委ねていた治療医から見放されるというのは、すごくつらいことなんです。ですから、そこの連携、先ほどちょっと議論になりましたけれども、パスの問題と同時に、新たな信頼関係を新しい診療所の医師とどうやってつくっていくかという問題がございます。
 今、私がやっている取組みの一つは、治療病院での治療が終わった方に、通院段階で早めに診療所にバトンタッチしていただくということです。つまり我々のところで外来通院を受け入れるということです。そうしますと、患者さんとの連携というか心が通じますし、実はしばらく外来通院した後の在宅の期間が短くなるんです。1週間などになります。しかも、満足度が非常に高いということがあります。最近そういうことをやっておりまして感じることは、診療所での緩和医療の外来機能というものも、そういうところで充実するべきではないかと考えております。
○門田会長 ありがとうございました。
 保坂委員、どうぞ。
○保坂委員 在宅の緩和ケアの専門のところもあり、その他をサポートしてくれる地域の診療所もありということが理想かもしれません。都心部のかなり人口の多いところではそういうことが成り立つわけですけれども、地方はどうするんでしょうかということになって、余りにもこのことを声高に言ってしまうと、全くそういうものがない地域、でき得ない地域が日本全国にはかなりあると思います。本当はそういうところにも専門のところがあった方がいいのかもしれませんけれども、医療資源等との関係ででき得ないと思いますので、その辺のことも考えて仕組みをつくってく必要があります。ある地域ではできるが、それ以外の地域ではできないという格差が出てくるのではないかと思います。
 先ほどの話では、がんになる方はかかりつけ医がいない方が多いとおっしゃいましたが、もともと地域で顔を見る関係の医師がいることも多いかと思いますので、やはりもともと地域で一般の診療をしている先生にもこのことに関わっていただくということを常に言っていないと、ある専門の人たちだけがこれに携わるんだということになって、そうすると、それ以外の方が自分たちはやらなくていいんだということになります。みんなすごくやりたいわけではない可能性が強いわけです。とても大変だから、やりたいわけではないけれども、必要とされるから自分たちも協力しようという方たちが参加しなくなってしまえば、日本全国のがん患者さんにとってはマイナスになる。そういう側面を是非考えて、この協議会としても案を出していただきたいと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 確かに地域によっていろんな状況がありますけれども、地域なりにいろんなバリエーションが出てくることはやむを得ないので、幅広い案が必要だということだと思います。
 松本委員、どうぞ。
○松本委員 たびたび済みません。
 保坂先生が御指摘なさった点は、本当にそのとおりだと思っております。地域格差がますます進むのではないかという懸念は、まさにそのとおりだと思います。
 1つ例を御紹介します。私が住んでおります愛媛でこういう例がありました。非常に地域の医療資源が乏しくて、在宅で診てくださる先生がいないところがあったんですけれども、ある開業の先生が中心になってやってみたいと手を挙げてくださったんです。それはなぜかというと、県庁所在地にある1つの医療機関が専門の仕組みを発揮して、大変症例数が多く頑張っていらっしゃる。こういう先生がいて、いろいろ教えてもらえて、バックアップをしていただけるのであれば、医療資源の乏しいところでも自分を頼ってくれる患者さんがいるから頑張ってみたいと手を挙げてくださいました。それを知った地域の医師会が、医師会としてもバックアップしようということで、今、新たな動きが愛媛で起こっております。現実を見れば、もしかしたらこういうケースはレアケースなのかもしれませんけれども、そういう動きが今後起こってくる可能性もあるということを申し上げさせていただきました。
 ありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。
 そういう形でいろいろと動きつつあるということで、それぞれの場所で起こり得るわけです。それをどういう形でジェネラライズするというか、案として書いていくのか、これからまたそれを考えていかなければいかぬと思います。
 そのほかにいかがでしょうか。そうしましたら、一応ここまでで審議を打ち切ります。
 まだ発言できなかったこともあるかと思いますので、いつものように、文書で提出していただくことにさせていただきたいと思います。余り時間もないんですが、ずっと立て込んでございますので、一応事務局とすれば25日までに御意見をちょうだいできればということです。申し訳ないんですが、御協力をよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、予定より少し早目に進んでおりますが、ここで10分間の休憩をとります。後ろの時計で14時40分まで休憩をとりたいと思います。14時40分にはまた集まっていただきたいと思います。しばらく休憩いたします。

(休  憩)

○門田会長 まだ帰ってきておられない方もおりますが、時間ですので、次に進みたいと思います。
 本日はがん登録という非常に重要なお話で、3人の方にお話をしていただく予定にしております。3人の皆さんのお話を伺って、まとめて質問をしていくというやり方でやりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず最初ですが「がん登録の現状と問題点-現場の視点から—」ということで、神奈川県立がんセンター臨床研究所がん予防・情報学部の岡本参考人にお願いしております。よろしくお願いいたします。
○岡本参考人 神奈川の岡本でございます。今日こういう報告の場をつくっていただきまして、ありがとうございます。
 資料5でお話をしていきますので、参考にしてください。
 資料5でございますけれども、患者さんのデータといいますのは、昔からドクターが診療録あるいはカルテというものに記載しておりましたので、記録自身はずっとできているわけでございますが、それを組織的に利用しようというお話が出てきたのが戦後でございます。
 私が調べましたところによりますと、がんについて調べられましたのは、ここにありますように、昭和45年、胃がんの集計をやろうということで、胃がんのグループが臓器別がん登録という形で治療成績を行おうということで開始しておられます。
 それに基づきまして、胃がんだけではなくて、病院内でもやろうということで、院内がん登録が昭和48年に開始されました。
 その後、罹患率あるいはきちっとした生存率を出したいということで、地域がん登録が始まったような歴史経過がございます。
 2ページにいっていただきまして、がん登録といいますと、今、申しました臓器別がん登録、院内がん登録、地域がん登録がございますので、それぞれ特徴といいますか、皆様方にお話するのにわかりやすく表にまとめさせていただきました。
 地域がん登録の特徴といいますのは、対象人口、私たちはポピュレーションアットリスクといいますけれども、人口の中で何人がんになったかということがはっきりわかるということでございます。院内がん登録、臓器別がん登録はそれができないということでございます。
 追跡調査に関しましては、国の許可をいただきまして、地域がん登録は可能でございますけれども、そのほかはやや困難であろうということ。
 罹患率、死亡率、生存率は、地域がん登録のみです。
 院内、臓器別のがん登録に関しましては、治療効果あるいは医療技術評価に使われるのがメインでございます。
 最終的にがん対策の評価としましては、私どもは地域がん登録が重要であろうかと思っております。
 下の表でございますけれども、これは臓器別がん登録の状況です。ちょっと古いデータでございますけれども、こういう部位でそれぞれの学会の先生方はやられておりまして、参加施設、黄色いところでございますが、全国すべての施設が参加しているわけでございません。
 一番右端でございますけれども、推定のがん患者さんの何パーセントぐらいをフォローアップしているかということでございますが、やはり20%前後でございます。
 3ページにまいりまして、院内がん登録でございます。院内がん登録の代表としましては、全国がん(成人病)センター協議会というものがございまして、こちらでがん診療施設の整備拡充を目指しまして、ハード面、ソフト面を向上させるということで、研究班ができております。
 この中で、院内がん登録を充実させて医療評価をしていこう、がん評価をしようということで開始されているわけですけれども、昔は表のような各病院で作表していただいたものを集めて評価をしていたんですが、これではだめだということで、十数年前から個別データを集めるような形で集計をして、今、全国がん登録のデータとして評価して、個別データを集めました結果をインターネット等で公表する形まで進んでおれます。
 下の地域がん登録は、最初、宮城県、岡山県で実態調査が始まりまして、その後、広島、長崎の被爆者のフォローということで、地域がん登録が開始され、その後、各県で地域がん登録が開始されております。
 神奈川県も昭和40年代に開始をしておりまして、この後、老健法、健康増進法あるいはがん対策基本法によってがん登録が各県で行われまして、後でお話される祖父江先生の資料によると、現在では44都道府県が開始しています。
 4ページでございますけれども、これは神奈川県の地域がん登録の歴史でございます。いちいち説明すると大変でございますが、最初は国立がんセンターの疫学部長でした平山雄先生が疫学研究として実態調査を3年されて、その後、県が介入しまして、医師会とともに地域がん登録という形をとらせていただいております。
 そのシステムは下の図でございますけれども、神奈川県が神奈川県医師会に依頼しまして、神奈川県医師会が県内だけでございますが、医療機関に届出をお願いしまして、その資料が中央登録室へ集まってまいりまして、それを集計するという形で動いております。
 もう一点は、市町村から保健所に集まりました死亡小票ですが、厚生労働省の許可をいただきまして、死亡票のすべてを中央登録室で集めているという状況でございます。
 5ページでございますけれども、こういう資料を一括入力いたしまして、同一人の確認という照合作業をやりまして、それぞれのファイルをつくりまして、最終的に集計を出すという形で行っております。
 神奈川県の届出がどうなっているかということでございますが、5ページの下でございます。届出に関しての平成21年のデータでございます。
 神奈川県の病院から5万2,282件の届出がございましたけれども、次を見ていただきますと、届出をしていただいた施設が79施設でございまして、神奈川県の全施設347、精神科を除いて300からしますと、26.3%の届出でございます。
 診療所にもお願いしているんですけれども、6,372施設ございますが、届出をいただいたのは118件、いわゆる1.9%でございます。
 国立がんセンターから4,500件余り、他のがん登録から25件、出張採録という形で私どもが病院へお邪魔してカルテを閲覧させていただいて集めたものが2,800ということで、平成21年は5万7,000強のデータを集めて処理しております。
 6ページの上で見ていただきますと、経年的に増加しております。矢印をしておりますけれども、ある年からシステムを改善しまして、漢字入力ができるようになりまして、少し楽になりましたが、現在増加中でございます。スタッフはほとんど変わらずに、このような形でデータ数が増大していくという形でございます。
 集めたデータの登録の精度はどうかということでございますけれども、毎年集計をいたしまして、病院から届出をしていただかなかったもので、死亡からがんとわかったものを私どもはDCOを呼んでおりまして、これが少なければ少ないほど精度がよいということでございますが、神奈川県は25%程度です。私どもは一生懸命努力をしているんですが、限界にきているようなところでございます。これがなぜかということは、後で御説明いたします。
 7ページでございますけれども、神奈川県の特色としまして、地理的なものでございますが、死亡診断書を調べさせていただきますと、県内の医療機関で死亡届が出たものは92.8%、いわゆる93%ぐらいは県内でございますが、あとはすべて県外の死亡届でございます。つまり県外から死亡があるものは、神奈川県内では把握できないことになります。
 それをもう少し詳しくしたものが下の図でございますけれども、例えば神奈川県の川崎あるいは相模原でございますが、東京での病院の死亡が高い。一番高いところで30%ぐらいは東京の病院で死亡されています。
 片や静岡に行く方ですが、箱根町あるいは湯河原という静岡に接したところでございますけれども、そちらは静岡の病院で亡くなる方が多く、やはり高いところで30%ぐらいあるということでございます。
 こういうデータは神奈川県には入ってこないということでございます。
 神奈川県の位置を見ますと、御承知だと思いますけれども、東京に隣接しておりまして、静岡に近いということです。山梨とは丹沢山系ということで山がございますので、行き来が不都合でございますけれども、静岡、東京には行けるということでございます。
 そのほか、東京の周りには、埼玉、群馬、栃木、茨木、千葉とございまして、各地域がん登録もやはり東京に患者さんが流れるということで、そこは私どもが把握できないということでございます。
 届出があった患者さんが御存命かどうかということの追跡調査を行いますけれども、それは追跡調査の対象のところでございます。下の表でございますけれども、平成16年の患者さんにつきましては、3万4,000人の患者さんのうち1万6,000人を追跡いたしますが、県外への転出ということで448名いらっしゃいます。448名分を県外転出で追跡調査をさせていただくんですけれども、調査の許可が得られないところもございまして、なかなかうまくいかないところがございます。
 もうちょっと時間をいただきますが、申し訳ございません。
 9ページは地域がん登録の実施県の実態でございますけれども、これは人口規模で分けてみました。100万以下、100万から200万、200万から300万、300万以上の人口のところで見ますと、医療関係者の地域がん登録にタッチしている方、事務でタッチしている方は、100万以下では1人もいらっしゃらないということなんです。皆さん兼務でやるということです。
 200万以下のところでも医療関係者は0.53、300万でも0.41、300万以上の人口のところでも医療関係者のスタッフは1名でございまして、事務の方がほとんどだということでございます。
 こういう状況でございます。
 それから、県が地域がん登録のお金を出しているということで、人口別に見たものでございますけれども、非常にばらばらであるということでございます。
 人口別の人件費の割合をすべて合算したものを資料として出しました。これも人口別に見ますと、こういう開きがあるということでございます。
 以上、いろいろお話してきましたけれども、私どもの地域がん登録の現状は、年々罹患率、がん死亡者の増加が見られるということでございます。
 生存率の上昇もございますので、キャンサーサバイバーが増加するということ。これは再発の方あるいは二次がん、三次がんが出てくるということで、そういう方は観察する必要があるだろうということです。以上のことをまとめますと、
 現在、登録要員・スタッフの増員が望めない。
 1人当たりの作業量が増加。
 県内すべての医療機関の協力が得られていない。
 患者さんは県境を越えて受けられるということで、他府県の医療機関の協力体制は今のところありません。
 追跡調査に協力が得られない病院があるということでございます。
 生存率がよくなりますと、追跡調査の対象者が年々増えてまいりますので、生存率をきちんと出すためには追跡調査をきちんとしてやりたいと思っております。
 対応策でございますけれども、がん罹患数当たりの経費や登録要員・スタッフの確保をどうにかしたいということ。
 医療機関における患者登録の日常業務化を推進していただきたいということ。
 他府県の医療機関からの登録もOKになるようなことをしていただきたいということ。
 追跡調査を是非許可していただきたいのと、速やかな対応、例えば住基ネットの活用などを推進していただければと思っております。
 以上の点から、地域がん登録の法制化を是非進めていただければと思っているわけです。
 御報告は以上でございますけれども、最後に3月11日の東日本大地震、福島原発事故による被災者の方々へお見舞い申し上げたいと思いますが、この被災によるストレスや放射線の被曝による健康障害は数年先、数十年先に症状として表われる可能性が高いと言われておりますので、長期的なフォローが必要と思われます。そこで、私ども地域がん登録では、そのお手伝いが可能ですので、是非関係の市町村あるいは県、国の方で活用を御検討いただきたいと思っております。
 以上でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 神奈川県を中心に、今まで御努力されていることを示していただきました。また、最後には他府県に対しても協力をするということをおっしゃっていただきました。
 申し訳ございませんが、まとめてディスカッションさせていただくことにいたしまして、次は国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部の祖父江先生からお願いしたいと思います。
○祖父江参考人 国立がん研究センターの祖父江です。こういう報告の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 私の資料は資料6、別途配付していただいたベージュ色の冊子です。
 ベージュ色の冊子の方は、研究班の報告書ですけれども、がん登録の専門家が集まって、これまでの経緯、現状を分析して課題を取り上げ、それぞれの解決策を考えていってまとめた提言です。これはかなりかっちり書いてあると思います。時間がないので詳細は説明しませんけれども、後でお読みになってください。
 資料6ですけれども、下の図をごらんください。がん登録といっても、今の岡本先生の説明にあったように、かなり多くの人が関係しておられまして、その関連をまとめたものです。一番上のところに中小病院、拠点病院、拠点以外の専門病院とか、病院の関係の方々をすべて集める形での県の地域がん登録、拠点病院の中には院内がん登録があります。県のがん登録をまとめる形でNPO地域がん登録全国協議会、あるいは拠点の院内がん登録をまとめる形での拠点病院連絡協議会がん登録部会というものもあります。データを国立がん研究センターに送っていただき、それを厚労省が使うという形の関連図です。
 一方で、臓器がん登録あるいは小児がん登録は学会が主催をして、今、一般社団法人でNational Clinical Databaseという動きも外科の先生方を中心に行われています。それをとりまとめるといいますか、関連づける研究班が厚労科研あるいは国がんの研究開発費の中でがん登録関係の研究班が幾つかあります。
 私の立場は、国立がん研究センターの中で地域がん登録、院内がん登録を担当する部局がありますので、それを担当することと、幾つかの研究班の主任研究者を務めているという立場で御報告をいたします。
 岡本先生にこれまでの経緯ですとか、地域がん登録の地方の実態を報告していただきましたので、ごく直近の状況と課題とこれからの体制に触れたいと思います。
 私が関係している地域がん登録、院内がん登録に関しては、ここ10年ぐらいでかなり進んだところがあると思います。特に地域がん登録については、実施県がここ数年で12県増えています。それまでは30県ぐらいで20~30年推移していましたので、この動きというのはかなり急激なものだと思います。環境として整備されてきたこともありますが、最後の一押しとして非常によく効いたのが、DPCの地域医療指数の中に地域がん登録への参画というものが含まれた。これが決定的に効いています。新しく開始をした県がここ数年増えたということです。DPCの中にこういうものが適切かということはありますけれども、現状で届出義務化というものがありませんので、こういうことは地域がん登録の方からは役立っている点であります。
 45県でやっていますけれども、実際にデータが集まっているのは32県程度。その中で質がある程度保たれているといいますか、一定レベルの質以上のところが15県程度ということで、これらを用いて全国罹患数を推定し、更に標準化を進めるということで、データベースシステムを開発して、29県で導入していただいています。
 院内がん登録に関しては、拠点病院で実施をすることになっておりますので、実施をしていただき、2008年診断例データについては357施設からデータを収集しています。これを本年施設別の集計という形で公表しています。
 標準ソフトに関しては、国立がんセンターで開発したものを無料配付しています。200施設以上で利用していただいています。
 それから、実務担当者の研修を2007年から始めて、これまでに約3,000人の方が初級者研修を修了しているということで、各施設1名を専任でということに関しては、数の意味では十分な数になっているということであります。
 進歩はしているんですけれども、それでも課題というものがありまして、地域がん登録に関しては、まだ登録精度の低い県があります。把握漏れをなくすということが必要です。
 標準化を推進する。これは比較できるデータをつくる、提供するという意味ですけれども、それが必要です。
 データの利用がまだ少ない。指標を計算して使う、外部ファイルと照合して使うことが必要です。
 院内がん登録に関しては、登録項目の中に必須項目、標準項目という不具合がありますので、それを整備することも必要ですし、地域がん登録との共通項目化ということで、作業の効率化を図ることが必要です。
 がん登録担当者、実務担当者の質を向上させるということは、これから数から質へということが課題でありまして、これは地域がん登録へのデータを提供する際に、電子データでそのまま利用するためには、院内がん登録のデータの質が高いことが必須であります。大前提になります。
 それから、診療の質評価指標の測定ですが、均てん化の度合いがどの程度であるかを確認するための指標の質の測定に展開をしていきたいということが課題であります。
 臓器がん登録、小児がん登録に関しては、他のがん登録との連携の促進。無駄を省きつつ、かつ自由度を確保するということで、研究としての側面が強いがん登録ですので、そういうことが必要であろう。
 一方で、4つのがん登録に関して共通の課題としては、予後調査の問題があります。これを効率化・円滑化する必要があって、そのためには電子化された個人情報付きの既存のデータ、住基ネットですとか、人口動態統計の有効活用を促進することが必要になるかと思います。
 それから、国際連携です。がん登録をやっているのは何も日本だけではなくて、諸外国でかなりうまくやっている国がいっぱいあります。そういうところの好事例を学ぶことが必要ですし、諸外国と十分に比較性のあるデータを提供することが必要になります。
 これが現状と課題です。
 ここからはどうするかということですけれども、この辺りから私のアイデアもあるので、その辺りでお聞きいただきたいと思いますが、基本的な考え方としては、できるだけ無駄を省く。質を高くするんですけれども、できるだけローコストでやることが必要になりますから、そのためには既存データをできるだけ有効に活用する。重複作業を回避する。項目を共通化して、できるだけ電子データで扱い、ITを強力に推進することが必要かと思います。ただ、重複作業といっても、すべてを1つの作業にまとめてしまってフレキシブルでないのもまた問題になる。その辺は十分柔軟に対応する必要があるかもしれません。
 これは大原則ですけれども、全体を通じて一定のレベルの質を確保する。国際的な水準でいきますと、地域がん登録は、DCOでは10%以下、病理診断のある例の割合が80%以上、こういったものがグローバルスタンダードですから、そういう意味での質を確保することが必要になります。これは主にデータを集める段階であります。今、新しく始めた県等、資源が十分ではないところがありますので、これを支援する仕組みが必要ですし、その上に立って精度を保つための仕組みが別途必要になります。これは標準が何かを決定する仕組み、決定した標準のやり方を広げていくための研修という仕組み、実際集まったデータで検証する仕組みが必要になります。こういう標準化ですとか、みんなが同じことをするという作業を余りに徹底してしまうと、また全体の活力が下がるといいますか、新しい取組みが抑制的になるという点もあります。
 ですから、第3番目に挙げました先進的な取組みをサポートするということが、別途必要で、これは特にデータを使う段階に必要だと思っています。質の高いデータが集まれば、みんながそれぞれ勝手に使うのかというと、そうでもありません。使う作業というのは相当頭が要ります。それは無理やり使わせるというか、きちんと例を示して、使い方を示していかなければ、皆さん恐らく使わないと思います。ここのところにもきちんとした仕組みが必要で、研究的と書いていますけれども、研究と事業的なところをうまく組み合わせて、こういう活動を支援する必要がある。特にミクロデータの使用権限ですとか、研究費等の支援が必要であろうということであります。
 「無駄を省く」のところの共通化の一例として、下の段に書いてあります院内がん登録、地域がん登録に関しては、院内がん登録の不具合を調整した上で、地域がん登録を院内がん登録のサブセットとして定義をして抜き出せば、そこから地域がん登録の項目が出せるという項目定義を新しく提案させていただくために、今、下地をつくっています。ただ、これも臓器がん登録ですとか、あるいはDPCの様式等の項目との調整が更に必要かもしれません。
 最後のページですけれども、この辺りは夢的なところも含めての話ですが、上の段に病院群が載っています。結び付ける矢印の種類としては、実線がデータとして個人情報ありのもの、点線が個人情報なしのものです。
 それで見ていただくと、中小病院、拠点病院、拠点以外の専門病院から、県の地域がん登録に個人情報ありの形でデータを集めてもらっておりまして、それをまとめた形で罹患のデータとして集約し、それを地域がん登録全国集計として国立がんセンターに送っていただいています。拠点病院に関しては、院内がん登録全国集計として国立がんセンターに送っていただいています。
 診療科データベースという、臨床の先生方が主体となって行うような情報収集の形のものから臓器がん登録、あるいは小児がん登録のデータを収集している状況にあります。
 提案としては、県の地域がん登録に関して、精度向上あるいは効率化を進めるためには、?と書いていますが、ナショナルレセプトデータベース、病理検査機関等の資料を電子化された形で、がんかどうかということのきっかけとなるケースファインディングの資料を集め、それを基に中小病院・診療所に対する個人を特定した臨床情報の問い合わせをすることで、中小病院・診療所からのがん患者さんのデータの収集を効率化する。ここを押さえると、がん登録の精度が恐らく上がるであろう。ここが未知数のところです。現在、院内がん登録から県の地域がん登録へのデータ提出は、ほとんど紙ベースでやられていますので、これを電子化することを促進したい。
 電子データによる人口動態統計ということで、?のところですが、電子化された形での利用申請、利用許可をしていただくような形が望ましいということです。
 それから、全国予後調査センターというものを考えました。これは個人情報付きの住民基本台帳情報を電子化された形といいますか、住基ネットのようなもので、全国をカバーする形で情報の調査をするということなんですが、これは県のがん登録で行われたもので、残った生存不明者のみを調査するのか、あるいは最初からするのかというところは、今、割と幅をもたせて考えています。予後調査センターを設置することで、地域がん登録、院内がん登録、拠点病院、拠点以外の専門病院を通じて、臓器がん登録、小児がん登録あるいはNational Clinical Databaseにもこのメリットがあるであろう。すべてのがん登録の予後に関しては、こういう取組みをすることでメリットが得られるものと思います。
 赤字で書いているのは、それぞれのがん登録が指標として計算できるものなんですけれども、こういうものを計算することで、がん登録を役に立たせることになります。
 例えば地域がん登録全国集計のところに書いてある指標は、主に政策決定、政策立案者に利用していただくことを意識しています。
 院内がん登録全国集計に関してですが、施設別の集計ですとか、生存率あるいは診療質評価指標といったものは、医療関係者の方、患者さんの方々に利用していただくということを直接的には考えています。
 ですけれども、すべての指標というのは、政策、医療の質に関わり、最終的には国民、患者さんのために役に立つデータになるんだろうと思っています。
 ちょっと時間をオーバーして済みません。以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 国立がん研究センターでやっておる作業から、御自分の思いのお話をいただきました。また後ほどディスカッションしたいと思います。
 それでは、最後に事務局から説明していただくものは参考資料1です。お願いします。○事務局(秋月) それでは「がん登録について」ということで、参考資料1を用いて説明させていただきます。
 スライドの2枚目ですけれども「がん登録の体制」ということで、現在の状況を簡単に絵にいたしました。先ほど説明がございましたように、10月時点で45道府県1市が実施しております。この1市というのは、広島になっております。
 左下に小さく書いておりますが、現在、実施していないところは東京と宮崎なんですけれども、東京については平成24年7月、宮崎についても平成24年度中に開始を予定しているということで、平成24年度中には全都道府県において実施される予定です。
 右の枠ですけれども、左に患者さんの絵がありますが、この方が病院を受診して、がんの診断あるいはがんの治療を受けたときに、そこでまず院内がん登録がされる。一部の登録データというのは、臓器がん登録へ登録されますが、院内がん登録においてある程度データが集積された際には、それが地域がん登録へ登録されます。
 地域がん登録の重要な役目というのが予後調査、その方が生きているか、お亡くなりになったかということなんですが、現在は人口動態死亡統計あるいは住民基本台帳から、その方の予後の調査を行っております。ここには簡単に矢印で示しておりますが、人口動態統計については、統計法、住民基本台帳については住民基本台帳法というもので利用の制限がかけられておりますので、必ずしも簡単にアクセスできるわけではなく、ある一定の手続が必要となります。
 地域がん登録で集められた情報については、がんセンターのがん対策情報センターへデータを提供していただくことになっており、がんセンターにおいて罹患率、死亡者数、そういった基礎的な情報の解析等を行って公表しているところです。
 3枚目のスライドでございますが、これも先ほど御説明がありましたので、赤字を中心に説明させていただきます。
 地域がん登録の現状のところですけれども、現在45道府県1市ということで、大体5割の患者さんが登録されております。
 院内がん登録については、2008年で359施設から登録があり、全国の大体6割の患者さんが登録をされております。
 その他のところです。地域がん登録の根拠なんですが、これは後ほど説明いたしますが、健康増進法の第16条に基づき実施されており、また平成22年度よりDPCの昨日評価係数に地域がん登録が含まれております。
 院内がん登録のその他のところですが、院内がん登録については、がん診療連携拠点病院の指定要件に院内がん登録の実施及び地域がん登録への協力が含まれております。
 4枚目のスライドでございますが「地域がん登録の根拠となる法令及び通知」になっています。健康増進法第16条で、国民の生活習慣とがんとの相関関係を明らかにするため、生活習慣病の発生の状況の把握に努めなければならないということが書かれています。主語が国及び地方公共団体ですけれども、この2者に対して努力義務ということになっております。
 その下の施行令の第2条で、法第16条の政令で定める生活習慣病は、がん及び循環器病とするとされております。
 また、その下の健康増進法等の施行についてという通知ですが、その中でも地域がん登録事業を具体的に示しております。
 5枚目のスライドでございますが、がん登録に関する部分について、がん対策基本法の中でどのように記載されているかと申しますと、第17条の第2項で、国及び地方公共団体は、がん患者のがんの罹患、転帰その他の状況を把握し、分析するための取組みを支援するために必要な施策を講ずるものとするとされております。
 また、がん対策基本法がつくられたときの附帯決議の中でも、16番にがん登録については、がん罹患者数・罹患率などの疫学的研究、がん検診の評価、がん医療の評価に不可欠の制度であり、院内がん登録制度、地域がん登録制度のさらなる推進と登録精度の向上並びに個人情報の保護を徹底するための措置について、本法成立後、検討を行い、所要の措置を講ずることとされております。
 6枚目のスライドですが、簡単なグラフでございますけれども、これが地域がん登録の実施都道府県数になっています。見てわかりますように、ずっと30前後で推移をしていたわけですが、2010年の後で増えているのは、DPCの影響によるものではないかと考えられます。
 2012年には、予定ではありますが、47都道府県において実施される予定です。
 7枚目のスライドでございますが、実際にがん登録がどのように使われているかということを、地域がん登録全国協議会のホームページから幾つか抜粋いたしました。
 小さい字で恐縮ですが、1つ目が長崎市における子宮頸がんの動向ということで、長崎市のデータを用いて、特に25~34歳という若い方に浸潤がんの増加傾向が見られたということで、長崎の方では若年者に絞った対策が必要であるということが明らかになりました。
 2つ目ですが、大阪府の肝がんの地理的分布ですが、1行目から読みますと、大阪府内の肝がんの罹患率を市区町村別に詳細に分析した。そうしたらところ、地域格差が見出され、罹患率と市区町村別の献血者におけるC型肝炎ウイルス保有率との強い相関がみられたということで、住民検診にHCV抗体検査を導入して、一般住民の中にいるHCV保有者を早期に見出し、適切な医療につなぐ対策が講じられるようになったということです。この場合ですと、がん登録の情報を献血者の方のHCVの保有率というデータと結び付けて解析を行ったということでございます。
 3つ目、4つ目は、がんの検診等のデータと結び付けて解析したものですが、宮城県においては、胃の集団検診における内視鏡による二次精検の精度の検討ということで、内視鏡検査において、専門医によるダブルチェックを行うことが重要だということがわかったということです。
 4番目は大阪府のものですが、胃がん検診の医学的評価の研究でも、胃がん健診により、胃がんの死亡は減少することが確認されたということで、検診データを活用しております。
 5つ目ですが、これは中皮腫の死亡症例数の将来予測ということで、今後30年間に3万人以上の中皮腫死亡が発生すること等を示したということで、中皮腫の対策について長期的な救済システムの必要性が示唆された。
 こうした形で、現在がん登録あるいはほかのデータも活用しながら、利活用を進めていただいているところです。
 8枚目のスライドですが、これは平成21年9月に内閣府が行ったがん対策に関する世論調査でございますが、左ががん登録の認知度です。がん登録を知っている方は14%と非常に少ないのが現状です。
 一方、がん登録について概要を説明した後に、その必要性を問いますと、がん登録が必要だと回答した方は74%ということで、概要をしっかり説明すれば、その必要性というのは多くの方に認識していただけるものと考えております。
 9枚目でございますが「全国がん罹患率の推計」なんですけれども、先ほど祖父江先生から御説明がございましたように、現在は比較的精度がよい地域がん登録を集めて、そこから推計値という形で算出をしております。
 精度といたしましては、後ほど説明いたしますが、DCOが25%未満、あるいはDCNが30%未満、IM比というものが1.5以上、こういった指標を用いて精度の高いところを選んでいるということでございます。
 10枚目でございますが、諸外国の地域がん登録の状況を表にいたしました。これは研究班で示されたものの一部の情報を更新したものです。
 左の列がアメリカ、カナダ、イギリスといった主に欧米の各国を並べておりますが、医療機関の報告義務、国の調査権限ということでいいますと、義務をかけたり、あるいは国に調査権限を与えたりということで、ここはばらつきが見られる。
 違反した場合の制裁というのも、一部のところで罰金を科しているところがあるんですが、おおむねそれほど厳しい罰則は科していないのが現状です。
 患者への説明の要否というものも、多くのところで不要としております。
 患者の同意についても、一部拒否権を認めているところがございますが、多くのところで不要となっています。
 登録情報の顕名・匿名についても、顕名で扱われている。
 本人の開示請求については、多くのところで開示請求可となっております。
 医療機関への予後情報の提供ですが、ここは少しばらつきがあるんですが、多くのところで提供しているという結果になっております。
 11枚目のスライドでございますが、がん登録の精度指標について、簡単に御説明いたします。
 先ほど申し上げたDCN、Death Certificate Notificationということなんですが、これは登録されていなくて、死亡票で初めてがんの罹患が把握され、登録されたものの割合です。なので、少ない方がいい。
 DOC、Death Certificate Onlyというものは、登録票がなく、死亡票からがんの罹患が把握された者のうち、医療機関へのさかのぼり調査によってもわからなかった方の割合です。
 IM比というのは、罹患数と死亡数との比ですので、登録の完全制が低い、つまり登録数が少なくなりますと、IM比というのは低くなります。
 12枚目のスライドですが、これが地域がん登録のDCNを道府県別に見たものです。30%未満というところが12県ございますが、全体を見てわかりますように、非常にばらつきがあるというのが現状でございます。
 一方、IARCからとったデータによりますと、これはいいところ、悪いところがいろいろあるんですが、一部の地域では数パーセントということで、精度のよいデータを得ております。
 13枚目のスライドですが、地域がん登録のDCOについても、地域でかなりばらつきがあるということで、日本では25%未満を1つの基準としてとっておりますが、IARCの最も質の高いグループに分類されるには、これが10%以下である必要がございます。
 14枚目のスライドですが、IM比です。これもばらつきが見られるということでございます。
 いろいろ話が飛んで恐縮ですが、15枚目のスライドが「地域がん登録の標準登録票項目(25項目)」となっています。現在、地域がん登録の手引きというものがございまして、その中で示されている25項目です。
 16枚目が「院内がん登録の必須項目(22項目)」ということで、これは健康局の総務課長通知という形で示されているものです。
 若干複雑なんですが、院内がん登録には、これとは別に標準登録票項目というものが研究班から示されておりまして、ほぼ院内がん登録の必須項目をカバーするような形の49項目ではあるんですが、若干異なる部分もございます。そこが先ほど祖父江先生が御指摘になった一部項目の不一致というところでして、この点ついては、早目に改善をしたいと考えております。
 最後に個人情報の保護について御説明をさせていただきたいんですが、がん登録と個人情報保護がどこで関係をするかといいますと、まず利用目的による制限ということで、第16条に個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで取り扱ってはならないということが規定されているんですが、この例外として幾つか規定されております。
 その中の1つ、第3項第3号に公衆衛生の向上または児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときということで、ここに例外が規定されております。
 それから、第23条に第三者提供の制限がございますが、これも同じく公衆衛生の向上の理由のときには、第三者へ同意なく提供してよいということが法律で決まっております。
 19枚目は、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律なんですが、大体内容としては似たような話でございますので、説明は省略いたします。
 20枚目なんですが、こうした個人情報保護について法律がございますが、解釈について平成16年に通知が出されております。健康増進法第16条に基づく地域がん登録事業において、民間の医療機関が国または地方公共団体へ診療情報を提供する場合は、個人情報の保護に関する法律の利用目的による制限及び第三者提供の制限の適用除外の事例に該当するということで、地域がん登録事業というのは、個人情報保護の適用除外であることを通知で示しているのが現状です。
 2番目は、がん登録事業において、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律についてです。
 3番目は、独立行政法人ということで、内容は同じになっております。
 最後でございますが、医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドラインというものが、厚労省から平成16年に出されております。
 この中でも1の(2)利用目的による制限の例外ということで、がん登録は本人の同意を得なくても提供してよいということが示されております。
 第三者への提供についても、同様でございます。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、以上お三方の御説明に対して御質問をお願いしたいと思います。
 天野会長代理、どうぞ。
○天野会長代理 お三方から貴重な御説明をいただきまして、ありがとうございます。
 私からは2点ございます。
 1点目でございますが、岡本先生の最後の御説明でもあったように、がん登録の法制化についてです。実は先日ある記者の方とちょっとお話をしていまして、福島で今般原子力発電所の事故がございまして、低線量被曝によるがん患者さんの増加に対する不安が一般にある中で、実際にがんの患者さんというのは、現在どれぐらい全国にいて、それぞれの地域ごとにどれぐらいいるのかということを知りたいということでお話をされまして、私から正確ながんの患者さんの数は多分だれも知らない、推計値は勿論あるけれどもということを申し上げたところ、大変驚かれていました。私の住んでいる、またはその記者の方も住んでいる東京都についてもがん登録はなくて、1,300万人分の地域がん登録がごっそり抜けている。現状あるがん登録でも約5割程度しか補足できていないということを申し上げたところ、大変驚かれていて、一般の方はほとんど知らないだろうということをおっしゃっていました。
 先ほど御発表の中で、がん登録の概要を説明した後に説明を問うと、7割程度の方が必要だろうとお答えをされたということも併せて、実際にがん患者さんの数がわかっていないというのは、諸外国と比べても極めて特異な状況にあると思っています。例えば実際に把握する際に、予後調査ができないとか、そういった声は現場の方々から多数上がっていると聞いているんですが、そうなってくると、がん登録の法制化が視野に入ってくるかとは思います。
 先ほど岡本先生からは必要だという御指摘をいただきましたが、祖父江先生はがん登録の法制化について、例えば祖父江先生の研究班であるとか、もしくは国立がん研究センターの方でそういったがん登録の法制化についての検討もしくは必要性などについて、何かお考えがあれば是非お聞かせいただきたいというのが1点です。
 2点目なんですが、がん登録というのは、実際にがんにかかってしまったがんの患者さんにとってどのようなメリットがあるのかということを考えますと、予後調査が非常に重要になってくると思っています。生存率であるとか、もしくは治療成績がわかることが非常に重要であろう。
 先ほど祖父江先生から全国予後調査センターについての構想の指摘をいただいたんですが、予後調査というのは、現状どの程度の精度を持ってできているのかということについて、もう少し詳しくお二方の先生から教えていただければと思います。
 私からは以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 まず祖父江先生からお願いします。
○祖父江参考人 法制化ということに関しては、私も岡本先生と同様にそれは必要であると思っています。
 中身としては、まず第一に今は県の単独事業になっていますけれども、地域がん登録を国の事業としてきちんと位置づけるということ。それから、医療機関、病理検査機関等に届出義務を課すということ。第3点は一番重要なんですけれども、既存の個人情報付きのデータ、特に電子化された形で利用する権限を与えていただくこと、この3つが重要な点だと思っています。
 第1点はそれでいいですか。
○門田会長 嘉山先生、その件についての意見ですか。どうぞ。
○嘉山委員 私は祖父江君の上司に当たります。
 法制化のことに関しては、みんななぜうんと言わないかというと、今、天野会長代理が国民はがんに関しての情報をだれも知らないとおっしゃいましたが、実はがんだけではなくて、ほかのデータも知らないんです。国全部のデータを知るということは大変なことなんです。それを国民に納得してもらうためには、国民にベネフィットがあるということを我々がきちんと提示する説明責任があるんです。そうでないと、個人情報がかなり入ってきますから、簡単にはいきません。それが一番最初に祖父江君と会ったときに感じたことです。何のためにがん登録するのかということをきちっと国民に提示しなければだめだ。それは患者さんに返っていくんだ、フィードハックするんだという事例をもって、先ほど厚労省から出てきましたけれども、それを提示して初めて納得していただける。
 だからといって何もしていないのではなくて、全がん協、つまり昔の成人病センター、今はがんの拠点病院になっていますけれども、そこの代表として、去年、総理大臣と厚生労働大臣あてにこれは法制化すべきだということを出しました。あと、都道府県がん拠点病院の代表も、両方とも私も役割柄会長をしておりますので、法制化のことは国に対してきちんと申し入れをしています。ただし、そのときに国民にいかにそのことが大事かを理解していただくことが大事だと思っています。
○門田会長 ありがとうございました。
 祖父江先生、その次の点をお願いします。
○祖父江参考人 予後調査についてですけれども、冊子を見ていただくと、現状があります。地域がん登録に関しては14ページです。
 頭で覚えていることをいいますと、地域がん登録に関しては、予後調査がきちんとできているところはかなり少ないです。ですから、地域ベースの生存率が計算できているところは6~7県ぐらいです。
 まずは死亡の情報に関して、がんだけではなくて、全部の死亡に関してのデータをきちんと個人ごとにまとめて照合するという作業、5年経った段階で生存しているのかどうかを確認する作業を住民票でもってしますけれども、それが必要なんですが、住民票による確認ができている県は3県だけです。山形、福井、大阪です。ですので、地域がん登録でも予後調査というのは、全県についてはできていないですし、できていると言っているところでも住民票照会まではすべてできていないところがあります。
 院内がん登録については、19ページにあります。拠点病院についても生存確認調査が外部照会としてできているのは、真ん中辺りのですけれども26%でして、残りのところは、今、予後調査をしていない段階にあります。今年予後調査を支援する事業を国の予算で認めていただき、国立がんセンターに依頼をしていただいて、各県1~4施設ぐらいいっていただいて、そこに関しては支援をしています。ですから、拠点病院についてもその程度しかまだ予後調査の経験がないという状況にあります。
○門田会長 岡本先生、何かございますか。
○岡本参考人 神奈川でございますけれども、神奈川では追跡調査は2年前から住民票照会もやっております。神奈川でずっと今までやっていますのは、国が集計しています人口動態の死亡データを県に買っていただきまして、それによってコンピュータ上ですべて照合して、死亡の確認を行う作業をしています。ただし、国の死亡データには個人データはありませんので、最終的に照合するには死亡票のコピーをいただいておりますので、手作業で照合することが必要になってきますので、非常に膨大な作業になります。神奈川では住民票の照会は5年前からやり始めておりまして、ただ、それが先ほど申しましたように、市町村によりましては拒否をするところもありますので、なかなかうまくいっていないというのが実情でございます。
 もう一点、言い忘れたかもしれませんけれども、神奈川県では神奈川県の医師会さんにお願いしているんですが、東京都あるいは静岡県の医師会にはお願いしておりませんので、そこからデータは全く上がってこないということであります。ちょうど神奈川県の真ん中に町田市というものがございますが、そこのデータが実はいろんなところから上がってくるんですけれども、東京都ががん登録をしておりませんので、そのデータはすべて廃棄するわけです。非常にもったいないとは思うんですけれども、とっていても仕方がありませんので、今は廃棄しております。そういった県をまたがっていくことも、今、地域がん登録では非常に問題になっておりますので、そこら辺も皆様方で協議していただければと思っております。
○門田会長 外山局長、どうぞ。
○健康局長 がん登録に関しては、法律がないのではなくて、健康増進法がある。なおかつ個人情報保護法についても、例外規定で法律を定めているし、局長通知で更に入念的にやっている。
 がん登録の目的というのは、政策立案だったり評価であったりする。今、努力義務規定があって、実際よければ各市町村でも協力するはずなのに、やらないという現状があるわけです。もしそこを立法、強制力でもってやろうとするときには、どうしてそこまでの必然性が必要なのかという辺りが争点になると思います。つまり政策立案、50%ぐらいでもいいではないかということがあるかもしれない。
 嘉山先生もおっしゃいましたけれども、がん登録をやることによって、今、生きている人の御利益、登録した人への御利益、確かに標準治療ということで間接話法みたいな形で還元されるのかもしれませんが、より直接的な利益はないんでしょうか。
○門田会長 嘉山先生、今日は参考人に来ていただいた方の意見をお聞きしたいと思います。
○嘉山委員 今、局長がおっしゃったことが一番大事で、私が言っているのは、登録した患者さんにあなたが受けている医療はとんでもない医療ではなくて、きちっと国際標準医療ですということを検証しましょうと彼に言っているんですけれども、なかなか彼が改良させないんです。それが患者さんにとっては一番のベネフィットだと思います。それを付けるべきなんです。
 あと、局長がおっしゃったのは、上田先生も多分同じ意見だと思うんですけれども、国民がそこまで理解していないので、各首長さんが結果を出したがらないんです。なぜかというと、個人情報を出したと誤解されるといけない。次の選挙がありますからね。ですから、先ほどお話したように、患者さんにベネフィットがありますということを国民が理解すれば、先ほど局長がおっしゃったように全部出てくるんです。やれるんです。その辺を含めて、あのときは要望書を局長さんに渡しました。
○門田会長 この件について、後ほど患者委員の方々に患者さんの立場で御意見を伺いたいと思いますので、お願いいたします。
 上田先生、どうぞ。
○上田委員 がん登録は3種類あると思います。地域がん登録、院内がん登録、臓器別がん登録です。直截的に患者さんにというのは逆で、臓器別、院内、地域がんの順番にベネフィットがある。そこら辺を通して考えないと、単に地域がんだけのことを言えば、今度は政策をつくるのに役に立つ。ですから、厚労省としては一番大事で、実際問題小児がんに今度お金を入れるとか、何々にお金を入れる場合にこれがなくてできるはずがないということが1つあると思います。ただ、患者さんのベネフィットからいくと、やはり臓器別とか院内があります。
 そこで祖父江先生にお聞きしたいのは、あなたが一生懸命努力して、今日もすごくいいペーパーをつくってきて、それに対してずっと応援してきたつもりなんだけれども、逆の質問をすると、臓器がん登録したり、院内がん登録をしている患者さんや病院は、すべて地域がん登録をしているかどうかというのが第1の質問です。
 第2の質問は、地域でいろんな施策を考えるのに、今日、厚労省からいいデータが出ていたと思いますけれども、現状は50%登録で、拠点で6割である。これで意味があるのか、ないのか。あなたの目標というか、我々の目標はどこへ設定すべきか。これをクリアーにしておくことががん対策で一番大事なことで、そのためにどうするか。
 もう一点いいますと、電カルの使用後になってぐっと上ってきたと思うんです。愛知県も名古屋市などは電カルを全部入れることによって、急激に九十何パーセントになって、大きな病院が全部登録できるようになった。それでいいんだったら、電カルを先に入れたら早いのか。逆にいうと、電カルを使っていないところで落ちるのは、50%登録の中に何パーセントあって、そういうことを補助することの方が先なのか、法制化が先なのかとか、そういうことをそろそろこの会である程度クリアーにしておくことが大事ではないか。我々の立場から、これが重要であるということは十分にわかっていると思います。
 それから、個人情報保護法に関しましては、今、嘉山先生からお話あったようなことが現実の地域の市町村であるということに関しては、最大限の注意はしておかないといけないだろう。それをどうするかという点は、共通の問題だと理解しています。
○門田会長 祖父江先生、どうぞ。
○祖父江参考人 第1番目は、地域がん、院内がん、臓器がんで、どの程度の患者さんをカバーしているのかということでしょうか。地域がん登録というのは、本来の目的上、すべてのがん患者さんをカバーする必要があります。院内がん登録、臓器がん登録は、その必要はありません。
 院内がん登録に関しては、拠点病院の中での登録をきちんとする。恐らくそれは拠点病院の指定のやり方にもよると思いますけれども、7割、8割だと思います。
 臓器がん登録に関しては、学会の目的にもよりますけれども、悉皆性を求めるところもあれば、一部の専門病院のデータのみについて詳細なデータを集めて目的を果たすところもあると思います。ですから、一概にすべてというわけではないと思います。
 今の地域がん登録の登録割合が50%であるというのは、よくありません。これは100%を目指すというか、できるだけ90%を目指す。
 院内がん登録が6割というのは、指定のやり方であって、7割、8割にとどまることもあるでしょうし、それは指定のやり方によって違います。ただ、院内がん登録は、その病院の中での患者さんの登録率は100%を目指さなければだめです。そのためにケースファインディングの工夫をするとか、あるいは検証をすることもある意味必要だと思います。
 それから、電子カルテを導入したから院内がん登録が完璧にできるかというと、それは違います。そのために院内がん登録の実務担当者を置くことで、情報の整理をする過程を必須としているわけです。自動的にお医者さんが書いたデータがそのまま院内がん登録に抽出されるとは思っていません。それは恐らくお医者さんの教育にかかっているので、割と時間がかかる問題だと思います。短期的には院内がん登録の実務担当者の方の教育をすることで質を上げるのが、一番効果的かと思います。
○上田委員 もう一点だけ追加で、祖父江先生はこれまでずっと班会議で、3つのことに関しての共通項、私はいつも先生に質問していたと思うんですけれども、地域がん登録と院内がん登録と臓器がん登録のサーフェス、表紙を共通にして、どこからでもアクセスできるシステムを是非構築してほしいとずっとお願いしてきたと思うんですが、今日もまだそこのところははっきりおっしゃってくれていないんですけれども、その辺はどうなんでしょうか。
○祖父江参考人 院内がん登録と地域がん登録に関しては、そこはサブセット化することで、先生の要求を満たしていると思います。臓器がん登録に関しては、十分な話し合いができていませんし、National Clinical Databaseの方々ともうちょっと話をしないとだめだと思っています。今日の発表の中では、そこのところをあれしたということは、お詫びします。
○門田会長 眞島委員、どうぞ。
○眞島委員 先ほど来から国民の理解が必要だということがでているかと思うんですけれども、がん登録というのは、国のがん対策を進める上で非常に大きな歯車の1つだと思います。ただ、残念ながら、今までの中で日本のがん対策についての広報に関する予算とか、さまざまな国民の理解を深めるための広報手段に関しての論議はなかったかと思います。
 ですから、これから5か年計画を立てるに当たっては、以前アニュアルレポートという話をしましたけれども、もっと国民に訴えるようなメディアを使って、出版物を出すとか、もう少しウェブサイトを充実させるとか、さまざまな仕組みを使って国民に訴えていくことでもってがん登録の理解をしていただくことが重要なのではないかと思います。
 やはり患者さんからしてみれば、国がこれだけがん患者さんのためにしてあげているんだという、その実績を数値で見せていただくことは非常に重要だと思います。ただ、残念ながら、今は調べてもなかなかその数値が出てこない。例えば大阪は非常に頑張っていて、さまざまなデータがありますけれども、ほかの県にいくとないというのは、不安材料ではないかと思いますので、是非その辺りの施策をここの協議会でも話して、前向きに取り組んでいただければと思います。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 花井委員、どうぞ。
○花井委員 私も眞島さんに関連してなんですけれども、がん登録を進めていただく意義の大きさというのは、国民が知ることによって必ず理解してくれると思っています。
 例えば私たちの団体は、がんのピアサポートを活動の柱として行っておりますけれども、がんのピアサポーターになる方々というのは、自分たちの体験が他の人のために役立つこと、それによって自分たちのつらいだけだったがん体験も無駄とは思えない、無駄ではないと思えるようになったという言葉をほとんどの皆さんがおっしゃるわけなんです。
 自分たちのがん登録が、後の患者さんのために役立つ、日本のがん医療の向上、研究の向上に役に立つということをきちっと理解してくださればというよりも、理解するような手法で、例えば眞島さんがおっしゃったようにメディアを使って、その他いろいろ手法があるかと思いますが、必ず理解は得られるし、それ自体が患者さんのベネフィットだと思います。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 本田委員、どうぞ。
○本田委員 一応メディアの1人でもあるんですけれども、メディアといっても記者たちは、特にがんとか医療とかを担当していない人間は、ほとんどがん登録の存在とか意味はわかりませんし、先ほど天野会長代理がおっしゃったように、そんな数字がわからないのかという話になるんだと現実に思います。
 私自身、がん登録の記事などを書いた際に、デスクといろいろやりとりする中で、これは何ですかという話から始まります。説明すると、確かにそのデスクも一国民ですからわかってくれるんですけれども、あえてここで1つだけ懸念ということで申し上げたいと思います。私は必要だと思っているんですけれども、懸念ということで、そのデスクが言ったことが心に残っています。年金記録のときに、そういうものを見られる立場の人たちが、例えばタレントとか有名人のものを垣間見てしまったりした事件がありましたね。ああいうことがないように、そういうことが表に出ないようにする担保も必要なのではないかと言われたのがとても印象に残っているので、そういうことも考えながら進めていくことが必要だと感じました。
○門田会長 今、患者経験者にお話をしていただいているんですが、先ほど後ほどお伺いしたいと言いましたけれども、今のお話でデスクは多分がん患者さんではなないわけですね。
○本田委員 一般の人です。
○門田会長 がん患者さんの立場での御意見とすれば、意外と健康人とがん患者さんでは受け取り方が違うと日ごろの診療から感じることがあるんですけれども、松本さん、実際に登録の辺りは患者の立場からどうでしょうか。
○松本委員 ありがとうございます。
 私どもの会でも一度がん登録という言葉が出たことがあるんですけれども、ほとんど全員が知りませんでした。それは何ぞやということになって、その場にいた医療者が簡単に説明をしたら、それは要るということにはなったんです。
 例えば交通事故で亡くなる方々への対策というのは非常に充実していて、この交差点で何人が亡くなっていて、その年齢構成がこうだからこういう対策をしなければいけない、そこまでされている。年間1万人を切って、今8,000人とか9,000人が亡くなるものに対してそういう取組みがあるのに、32万人もの命を奪う病気に対して、数もわからない、どこでどういうふうになっているのかもわからないというのは、非常に不安だということです。経験すればわかるんですけれども、一般の元気な方にとってみれば難しさがあると思います。
 先ほど眞島委員がおっしゃいましたけれども、国民に訴えていくというところは、計画の中で私たちの立場としてやっていかなければいけないことではないかと思いました。
○門田会長 ありがとうございました。
 どうぞ。
○嘉山委員 がん登録に対する問題点が大体出尽くしたと思うんですけれども、これはドラスティックに変えない限り、ここまで祖父江先生のような頭脳がやってきても進んでいないんです。ドラスティックな変化はやはり必要です。
 私も大学で登録を若い人にやってもらってきましたけれども、登録をやっている人も意味がわからない。ベネフィットもない。患者さんにも今のところベネフィットがない。知ることは大事だと思うんですが、そのほかの直接的なベネフィットはない。間接的にはありますけれどもね。ですから、だれもベネフィットがないことを進めようとしている。これは無理がある。やはり入り口から変えていかなければいけない。
 今、川越先生とも話したんですけれども、登録をすればベネフィットがあるということがわかれば、がんになった瞬間に、患者さんから登録してくださいということを言い出すと思います。
 更に厚生労働省が出した中身は、先ほど上田先生もおっしゃいましたが、細か過ぎるんです。登録する方としては、こんな細かいことは必要ないんです。大きくは政策立案を国家がするときに、そこから患者さんに直接いきます。あとの学会、例えば治療法を変えるとか、そういう学会で登録するような中身はまた別にすれば、全例のがん登録にすごく近づいていくのではないかと思いますので、もうちょっと考える時間をいただければと思います。今回の予算の中にはそれが入っていないんですが、我々としてもまだ知恵が出ません。ただ、がん登録を進めてくださいということを、ここで明記していただければいいと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 1つ非常に積極的な御意見をいただいたので、あえて祖父江先生に質問したいんですが、今、がん登録という単語でディスカッションしているんですけれども、一方でワクチンを打つ、あるいは検診をしているが、受診率もよくわからないとか、そういうことになって、がんになって登録ということだけでいいのか。その前の段階の何かまでしていく必要があるのか、その辺りの御意見はいかがですか。
○祖父江参考人 ワクチンの対象者、実際に受けた人、検診でも同じように対象者、実際に検診を受けた人のデータをきちんと個人別に管理して集める作業は、市町村に委ねるのではなく、もうちょっと上位のレベルまでいった方が私はいいと思っています。
 例えば県の単位で個人レベルでの情報を集めますと、検診受診者のデータとがん登録のデータを照合することで、フォールス・ネガティブ、見落としの人が何人いるのかもわかりますし、制度管理に直接つながる。なので、こういうがん登録のデータを個人情報付きで管理するとともに、個人レベルでのデータをきちんと管理することで、対策の効果を評価していくことは非常に重要なことだと思います。ただ、個人情報をきちんと管理することが大前提にはなります。
○門田会長 上田委員、どうぞ。
○上田委員 個人情報は物すごく問題になっていると思います。厚労省で例の例外措置に対してどういうふうにやるかということで、安全管理措置委員会か何かがあるのではないかと思うんですけれども、そこで道しるべが出るのか、出ないのか。その辺はどうなっているんですか。それと連動したな話だと思います。
○祖父江参考人 がん登録の安全管理措置に関しては、研究班の方で検討を進めています。がん登録に関しての安全管理措置のマニュアルをつくって、現状に即した最低限守るべきことも定めて、今、その実態把握もしています。ですから、数年前に比べると、がん登録の安全管理措置については、割ときちんとしたことが言える状況になっています。
○健康局長 会長が言っている話は、例えば子宮頸がんのワクチンをやっていますけれども、あれなども本当はフォローすればいいんですが、公衆衛生行政は森羅万象そういう分野があります。ですから、税と社会保障の一体改革と番号制の話を、今、同時並行でやっていますけれども、その中の1つの代表例、利益の1つとして、がん登録も出ています。ただ、そうしますと、もっと大きく支配されるというか、知られるという側と利益との関係というのは、大きな議論になるので、今回は手堅くここだけで進めるのが一番いいのではないかと思います。
○門田会長 局長の意見を聞きました。
 天野さん、どうぞ。
○天野会長代理 ありがとうございます。
 私が福島の原子力発電所の低線量被曝による話を申し上げたんですが、そういうことを言われたのはその記者の方だけではなくて、私が協議会の委員をやっていることを知っているのか、知らないのかは知りませんが、いわゆる健常である方からそういった不安が寄せられていることがあります。
 例えば今までがん登録が日本ではないという話を仮に私が健常である方にしても、だから何ですかとか、個人情報保護はどうなるんだという指摘がほとんどだったんですが、やはり福島の事故があってから、勿論これがどうなるかはだれにもわからないと思うんですが、5年、10年経ったときに、がんの患者さんがもしかしたら増えるのではないかという漠然とした不安を多くの方が感じている中で、日本国の政府は、それに対しての基礎的なデータを持ち合わせていないということは、将来大きな禍根を残すのではないかと感じています。
 この協議会では、そういった低線量被曝に対する話というのは勿論テーマに挙がってこないので、そういったことは議論にはなりませんが、一般の方はがんというものに関して漠然とした不安を抱えていて、それに対するデータが今この国にないことについては、この協議会の委員の皆さんも是非認識していただいて、ここで議論が挙がってこない、データがないままで果たしていいのか。将来に禍根を残さないのかという視点からも是非考えていただきたいと思っております。
○門田会長 ありがとうございました。非常に重要なことだと思います。
 局長、何かありますか。
○健康局長 全くデータがないわけではなくて、あらゆる疾病については患者調査とか、何十年も続いている厚生労働行政の基礎的な調査や統計はあるんです。ただ、それではカバーし切れない、もっと上乗せして突き進んでいく必然性があるから、こういう議論になっているんですけれども、我が国の将来のがんの在り方について、今、10年先がわからないという状況ではありません。ただ、今の水準よりもっとよくするために、さらなる登録なり統計をどうとるかという話だと私は思っています。
○門田会長 わかりました。
 川越委員、どうぞ。
○川越委員 先ほどから質問しようかと思っていたんですけれども、漏れなく、効率よくということで、これは物議を醸すと思って黙っていました。今、総背番号制というのが国でどういうふうになっているのかについて、局長さんがかなり説明してくださったので、その質問は下げたいと思います。
 1つ、祖父江先生にお願いしたいというか、危惧していることは、登録が複雑過ぎるというか、私も委員になって理解しようとしたんですけれども、やはり理解できない。自分がもし臨床医として登録のことを書かされたら、とてもではないけれども、ノイローゼになるという感じの内容でした。登録というのは目的があるわけで、今、我々がほしいのは、こういう治療を受けた方がこうなって、今、どうなっているかということなんです。これは先ほどから何回も出ていますけれども、登録の目的を明確にしていただいて、それに見合ったデータ、とりあえず一番ほしいのはそういうところなんです。ここにあった転移がこうなってとか、そういうことよりも、その辺のデータをまず手頃に、しかも、信頼を持って手にすることができるようなものをつくっていただきたいということを思っておりました。
○祖父江参考人 目的に応じてというところが重要だと思うんですけれども、地域がん登録というのは、全例を把握することが一番の目的なので、川越先生がおっしゃるように複雑な情報は集めていません。非常に簡単な二十数項目だけしか集めていません。
 一方で、臓器がん登録の先生方は、非常に複雑だというか、多項目にわたる情報を集めて詳細な解析をする。これは悉皆性を求めずというところもあるので、目的に応じて複雑さ、単純さ、悉皆性をどの程度確保するかというところをちゃんと見極めて行うことが必要なんだと思います。
○門田会長 どうぞ。
○川越委員 診療拠点病院にDPCをとったりするときに必要だという話があったように思うんですけれども、それは複雑なものではなくて、簡単なものですか。
○祖父江参考人 そうです。DPCで要求しているのは、地域がん登録への参画ですから、非常に簡単なものです。
 拠点病院に関しては、今、標準項目を適用しようとしていますが、50項目ぐらいあります。
○門田会長 保坂委員、どうぞ。
○保坂委員 ここのお話の中で、将来的には全国共通のがん登録になるんだと思うんですけれども、現時点で地域がん登録は都道府県別にやっていて、いろんな医療機関で届けるわけですが、患者さんはいろんなところへ行くわけです。そうすると、どの時点のものをがん登録としているのか。今、共通番号がついているわけではないので、どの時点でのものを登録されたと考えるのか。
 今日、神奈川県のお話を聞きまして、私はもととも神奈川県で診療をしていたんですけれども、診療所にも登録してという紙が来るんですが、ここで登録したときに、紹介した病院で治療するわけだけれども、二重に登録することになるのかという疑問を思っていました。例えば県をまたいで患者さんが行った場合、今、東京はがん登録がないんですけれども、神奈川で診断をして、東京の病院で治療を受ける場合には、県が違うわけですから、両方でカウントされてしまう。そういうことは、今のところはどうなっているんでしょうか。
○祖父江参考人 幾つか質問があるんですけれども、まずがん登録が扱う情報は、初回診断治療のときの情報だけです。再発のときの情報は登録していません。これは世界的にもそうです。初回診断治療のときと、最終の予後しか相手にできていません。本当は再発のところもしたいんですけれども、やはり手間がかかるということです。
 それから、患者さん1人に対して、その人をどこでカウントするかに関しては、居住地でカウントします。診断された医療機関の所在地ではありません。地域がん登録の場合はそうなります。院内がん登録は、勿論医療機関としてカウントします。だから、そこはずれが生じてきます。
 今、地域がん登録側で、他府県に存在している医療機関で、自分の県の住民が診断された場合はどうなるのかというと、神奈川県の場合ですと、国立がんセンターからは情報をもらうけれども、ほかのところからはもらえないということが間々起きています。
 例えば東京都でがん登録を開始した場合、恐らく60%ぐらいが東京都の居住者で、40%ぐらいが他府県、近隣の県の居住者になるので、その情報を地域がん登録としてどう扱うのか何ですけれども、理想的には東京都の医療機関で受けた他府県在住者の情報を、他府県の地域がん登録に提供する形をシステマチックにとれたらいいんでが、そこのところが東京都との交渉事ではあります。
 もうちょっと考えを進めれば、県という単位でやるところに無駄が多少あるので、広域でがん登録を行う。首都圏がん登録、近々県がん登録ということも効率をなすためには必要なのかもしれません。
○門田会長 済みません。定刻を回りましたので、簡単にお願いします。
○嘉山委員 これでは問題はまだ全然解決していないんです。これから考えていることは、彼が考えているわけではないんですけれども、クリティカルパスもまだ進んではいないんですが、パスにこれをくっ付けるんです。今、ほかの連中と考えているんですが、パスにくっ付けると個人なんです。ですから、付いて回るんです。再発しようが、どういう治療を受けていようが、ずっと個人の情報として患者さんが持っていくということで、将来的なことになりますけれども、どこかでぽっとやると、今、ITがありますので、ほとんどの情報をつかめるということを計画しています。
○門田会長 先ほど申しましたが、10分を回りました。どうしてもお二人の先生に質問があればお受けしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。ほかのディスカッションは次回に集中審議としてやりたいと思いますが、よろしゅうございますか。
 がん登録のヒアリングは、これで打ち切りとさせていただきます。
 参考人の先生方、どうもありがとうございました。
 それでは、最後になりますが、事務局より今回の概算要求の要望額についての御説明をお願いしたいと思います。
○がん対策推進室長 それでは、ごく簡単に、参考資料2に基づきまして、御説明させていただきたいと思います。
 冒頭、局長から申し上げさせていただきましたが、対前年度120%ということで、415億円で概算要求を提出させていただいております。
 1枚目の資料でございますけれども、既存の事業を継続すべきはするということに加えまして、新規としまして、2の(2)にございます在宅緩和ケア地域連携事業を3.6億円が入っております。
 これにつきましては、がん診療連携拠点病院が都道府県と連携しまして、二次医療圏内の在宅療養支援を行う医療機関の協力リストを作成するとともに、同圏内の在宅緩和ケアを専門とする医師などと協力して、在宅療養支援を行う医師等に対して、在宅緩和ケアに関する知識と技術の研修を実施する必要として3.6億円を入れております。
 「5.がんに関する研究の推進」でございますけれども、30億円新たに要求しているところでございます。
 こちらにつきましては、抗がん剤を始めとするがん治療薬につきまして、臨床での実用化を目的に前臨床試験や臨床試験の国際基準に準じた質の高いがん臨床試験を強力に推進するということで、要求しております。
 更に冒頭局長からのあいさつで申し上げましたが、小児がん対策は非常に重要な案件としまして、今回7億円新たに要求しております。小児がん拠点病院の機能強化事業ということで5億円、小児がんは非常に特殊な状況でございますので、そうしたものに関する緩和ケアということで0.4億円、こんな形で新たに要求をしております。
 トータルしまして、415億円という形で概算要求をさせていただいております。
 あと、もう一つ、冒頭申し上げましたけれども、がん対策推進室及び生活習慣病対策室を併せて、がん・健康対策課という形で現在調整を行っているところでございます。
 以上でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 簡潔にお願いします。
○天野課長代理 今の御説明で2点だけ確認させてください。
 1点目なんですが、がん診療連携拠点病院の機能強化事業費が昨年度より減額になっています。これは勿論シーリング等のいろいろな事情があるんですが、各地の医療機関の方々とお会いすると、何で減らされていくんだ、協議会委員として何をやっているんだということをしょっちゅう言われます。それについて、大変恐縮ですが、御説明をいただければというのが1点です。
 もう一点は、今、お話がありました2つの室を統合して課にするというお話があったと 思うんですが、現在それぞれの課が何人いらっしゃって、統合後の課になったときに何名になる予定なのかということを、是非御教示いただければと思います。
 今、がん対策推進室は8名だと認識しているんですが、それが統合後何人程度になるのか。例えば肝炎などは40名前後いらっしゃると聞いたことがあります。ほかの課と比較するわけではないんですが、がん対策の推進を願う者として、1人でも多くの室員の方がいらっしゃればと思っておりますので、その辺りについてお聞かせいただければと思います。
○健康局長 後段の組織の話ですが、人数はまだわかりません。ただ、生活習慣とがんの問題は非感染症ということで、国際的にも一体的にやる戦略ですから、国際的にもちゃんとやるし、省内のハイレベルな交渉事や、こういった皆さんからいただいた意見を実現しなければいけない立場でありますから、増員についてはこれから努力して、できる限りきちっとした課にしたいと思います。今、ここで何人にするとかは申し上げられませんけれども、一生懸命やります。
○医政局指導課在宅医療推進室 予算の関係につきまして、お答えさせていただきます。
 がん診療連携拠点病院機能強化事業でございますけれども、これにつきましては、事務的な経費の部分、あとは申請をいただいて、毎年交付決定等を行っておるところでございますが、その基準単価等について、内容を精査した上で、適正な単価の形を基本といたしまして、単価を若干減額させた部分で減額という形になっております。決して機能全体を縮小しているものではありません。
 以上です。
○門田会長 簡単にお願いします。
○保坂委員 本日予算の御説明をいただきましたけれども、がん対策のための概算要求が415億円という中で、確実なものではございませんが、今日、経産省の方がいらしていないので、経産省がいらしていたらちょうどいいと思っていたんですが、第三次補正予算で40~50億円を陽子線治療施設導入などの実績がある郡山市の総合南東北病院に転移がんの治療拠点の研究棟を新設して、臨床試験などに取り組む予算を付けたという新聞報道がありました。これは勿論がんの患者さんにとってすばらしいことではありますが、今いるがんの患者さんたちに直接役に立つことではないことに、このような多額の予算が国として付けられるのであれば、これを是非こちらの予算に回していただきたいと強く思っております。
 もう一つの問題点は、これは国内の方だけではなくて、海外からの方も対象にするような拠点をつくりたいということもあるようでございますので、厚生労働省として、このことについて十分に知った上で、もし問題点があれば、問題点をきちっと指摘していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○健康局長 まだ概算要求の段階ですから、次回、答えます。
○門田会長 わかりました。
 本田委員、どうぞ。これが最後です。
○本田委員 予算のことではなくて、今後の日程的なことを教えていただきたいんですけれども、全体として年内に計画案の文章を完成させて、年を明けるとパブリック・コメントになるようなことを、以前表みたいな形で見せていただいたと思っているんですが、もしもそれが正しいとすると、あと2か月しかない中で、文案とかはどうされるんですか。今の各論の議論はとても大事だと思いますけれども、どう書くのかというのが結局一番大事なことになってくるんですが、それはいつごろ出されて、どれぐらい議論できるのかという目安を教えていただきたいと思います。
○門田会長 局長、どうぞ。
○健康局長 それこそ会長と御相談ですけれども、最初は年内にはと言っていたんですが、我々が法律に基づいてやるのは、各省の素案を出すときです。一応政府の意見ですから、各省の意見を聞いた上で、皆さんの意見を聞くという形になっていますので、これだけいろんな御要望があって、年内にという形では無理だと思います。
 ただ、そうはいっても、いっぱいたまってきてしまっていますので、今後、御相談ですけれども、今までたまった分を途中で素案という形で、我々から次の次ぐらいに返させていただきまして、同時並行で、今、残っているものを片付けていく。最後にもう一度たまった段階でやらないと、全部ためてからということになりますと、間に合わないのではないかと思っています。
 そんなことで、また会長とよく相談しながら、結果的にある程度の素案という形でまとまって出すのは、やはり来年の1月に入ってからにならざるを得ないのではないかと思っております。
○門田会長 おっしゃられるとおりで、今、ここの中でまとめのディスカッションをしていて、基本計画のディスカッションは1つもしていないわけですから、骨子ができ次第、局長がおっしゃるように、全部一遍にというのは難しいし、こちらも大変なんだと思いますので、区分けして出してもらう。そして、その後、ディスカッションして、ファイナルはファイナル、今、おっしゃられたような形でいくしか仕方がないと思いますので、基本的に、今、説明していただいたようにやりませんか。よろしゅうございますか。ありがとうございました。
 それでは、本日はこれで終わりまして、次回は11月2日になります。
 そこで御相談というか、お願いなんですけれども、今のところ、次回はがん研究専門委員会の報告書も出てきますし、ヒアリングの方も検診、予防、経済負担、サバイバーシップ、就労支援ということで、非常に盛りだくさんになっているんです。一応帰りの切符そのほかがあると思いますので、次回は4時間ということで準備させていただきたいと思います。今、お聞きのように、時間がせっぱ詰まっていますので、14時から18時までということで、次回はさせていただきます。だからといって、早く終わればそれにこしたことはないんですが、一応そういうことで、往復のことを考えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 検診につきましては、川崎医大の園尾教授、大阪府立成人病センターの中山さん、サバイバーシップにつきましては、キャンサーソリューションズの桜井さん、就労支援につきましては、独協医科大学の高橋さんにお願いしているということでございます。その数だけでも大変でございますが、そういう形で進めさせていただきたいと思います。
 私からは以上です。
 事務局、お願いします。
○がん対策推進室長 先ほど会長からお話がありましたように、次回開催は11月2日を予定しております。
 今回ヒアリングを行いましたがん登録につきまして、あらかじめ各委員より御意見をいただくこととしておりますので、10月25日までに書面にて提出していただきますよう御協力をお願いいたします。
 このほか、御提出・御説明されたい資料がある場合につきましても、同様に25日までに事務局へ提出していただきたいと思います。
 また、次々回のがん対策の指標についてですけれども、事務局としまして、研究班などもございますので、そうしたお話をさせていただきながら、もし参考人として別途呼びたいということでありましたら、10月25日までに事務局まで御連絡いただきますよう、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○門田会長 それでは、長いこと、どうもありがとうございました。これで終わります。


(了)
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健康局総務課がん対策推進室

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