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2011年9月26日 第25回がん対策推進協議会議事録

健康局総務課がん対策推進室

○日時

平成23年9月26日(月)
16:00~19:00           


○場所

厚生労働省 12階 専用第15・16会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

1 開  会

2 議  題
(1)がんの手術、放射線療法に関する意見について(報告)
(2)化学療法、ドラック・ラグについて

3 意見聴取
 ・在宅医療・チーム医療について
  ア.在宅医療の現状と課題について(医政局指導課在宅医療推進室)
  イ.在宅緩和ケアの実情と課題について(大岩参考人)
  ウ.在宅緩和ケア(在宅医療)の普及に向けて(末永参考人)
  エ.がん医療におけるチーム医療について(梅田参考人)


○議事

出席委員:門田会長、天野会長代理、上田委員、江口委員、川越委員、北岡委員、中川委員、中沢委員、野田委員、花井委員、原委員、保坂委員、前川委員、前原委員、眞島委員、松月委員、松本委員
参考人 :末永参考人、大岩参考人、梅田参考人

○鷲見がん対策推進室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第25回がん対策推進協議会を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局で、健康局がん対策推進室長の鷲見でございます。よろしくお願いいたします。
 初めに、本日の委員の出欠状況でございますが、田村委員、本田委員、嘉山委員からは、事前に御欠席との連絡を受けております。
 がん対策推進協議会の委員定数20名に対しまして、本日は17名の委員の方に御出席いただくことになりますので、議事運営に必要な定員数に達することを御報告申し上げます。
 なお、事務局には厚生労働省のほか、文部科学省及び経済産業省より出席をいただいております。
 また、本日は、在宅医療及びチーム医療に関する意見聴取としまして、医療法人社団修生会さくさべ坂通り診療所院長の大岩様、総合病院山口赤十字病院副院長の末永様、まだいらっしゃっておりませんが、緩和ケアパートナーズ代表取締役の梅田様を参考人としてお呼びしており、後ほど御意見をいただくこととしております。
 それでは、以後の進行につきましては門田会長にお願いいたします。会長、よろしくお願いいたします。
○門田会長 門田でございます。今回も18名の御出席をいただくということで喜んでおります。当初は回数が増えていくのでどうなるかと心配しておりましたが、非常に多くの委員の皆さんに出席していただいております。本日も長丁場になるかもわかりませんが、是非、御協力をよろしくお願いしたいと思います。
 本日は、前回がん対策推進協議会で集中審議を行いました、がんと手術、放射線療法に関して各委員の皆さんからの意見をいただき取りまとめておりますので、それを報告させていただきます。
 また、化学療法、ドラッグ・ラグにつきましては、前回、参考人の方から御意見をいただいて、それに基づき委員の皆さんから事前にいただきました御意見をまとめておりますので、本日、集中審議としてやらせていただきたいと思います。
 なお、集中審議に際しましては、各委員の皆さんから提出された資料もございますけれども、審議のときに手を挙げていただいて、そのときに御使用していただきたいと思っております。
 そして、その後、本日は次回に集中審議をしたいと思っております、在宅医療、チーム医療について、参考人の方から御説明いただきたいと思っております。
 今までのところ、いつも30分、45分と延長しておりますので、今日も要領よく進めてまいりたいと思いますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局より資料の確認を行ってください。
○鷲見がん対策推進室長 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 まず、資料1としまして、がん対策推進協議会委員名簿。
 資料2「がんの手術・放射線療法に関する委員からの意見のまとめ」。
 資料3「化学療法、ドラッグ・ラグに関する委員からのまとめ」。
 資料4「在宅医療の現状と課題」。
 資料5、大岩参考人提出資料。
 資料6、末永参考人提出資料。
 資料7、梅田参考人提出資料。
 川越委員提出資料として、1、2がございます。
 また、有志一同提出資料として「ドラッグ・ラグ問題解決に向けての意見書」が提出されております。
 以上、資料の過不足等がございましたら、事務局にお申し出ください。
○門田会長 皆さん、よろしゅうございますか。
 それでは、議題に入りたいと思います。初めに議題1、がんの手術、放射線療法に関する意見についてということで、前回集中審議していただきましたけれども、皆さんからいただきました、御意見を事務局と私とで取りまとめさせていただきました。事務局より報告してもらいたいと思います。よろしくお願いします。
○事務局(松田) それでは、事務局の方から資料2「がんの手術・放射線療法に関する委員からの意見のまとめ」について説明をさせていただきます。
 前回協議会で提出させていただいた資料から追加のあった部分を主に説明させていただきます。修正箇所は赤字で示しております。
 まず「1.手術療法」についてですが、1ページ目の(1)外科医の不足から説明させていただきます。
 上から5つ目の項目からですが、手術の待機期間が長い理由は、外科医不足だけでなく、手術枠や麻酔科医の不足が問題。
 外科医が手術に専念できる環境を整備することが必要で、仕事の効率化を図る必要がある。非効率が外科医志望の減少につながっている。
 外科医の不足は問題だが、麻酔科医、病理医なども重要である。
 医師不足の問題は、がん診療業務の分担・連携を考慮した対策を実行する必要があり、単に各診療分野における現行の診療形態を前提にするのではなく、効率的な診療業務を想定して、医師のリソース配分を見直す必要があるとの御意見をいただきました。
 外科医の数がただ多ければいいというものではない、高度な治療については集約化をするという視点も必要。
 また、「がんプロフェッショナル養成プラン」により、基本計画の重点項目にかかわる医師、コメディカルの育成は進められているが、手術療法は重点項目でないために育成が遅れている。重点項目に手術療法を入れるべき。
 外科医は「がんプロフェッショナル養成プラン」の実施前から減少傾向であり、本施策以外の要因も調査すべき。また、第三者機関を設置して、各専門医制度を評価し、専門医を育成する施設の体制を適切に評価することで、その施設・プログラムで研修できる若手医師の数が自然と決まり、結果として、適正な各専門領域の医師数が決定されることになるのではないか。
 現状100を超える学会が、それぞれ専門医制度のもと専門医を認定しており、国民は勿論、医療者にもわかりにくい。専門医の質を担保する機構を機能させることは極めて重要である。
 専門医の数は、医学部教育及び初期研修という一連の教育とともに考える必要があり、専門医の数そのものを決めることには反対である。
 学生は自分にどのような利点があるかどうかを考えて進路を選択する。外科医は増やすべきと考えるが、専門医の適切な数は医学教育全体の中で考えるべきである。
 新臨床研修制度により、外科医を目指す研修医は大都市圏に集中し、地域の将来を担う若い外科医の不足が深刻化していることが大きな問題である。
 不足しているのは最も社会のニーズの多い消化器外科医であり、消化器手術の大部分ががんの手術である。
 消化器外科のみならず、婦人科や泌尿器科など多くの悪性疾患を扱う診療科でもがんを専門にした外科医は大いに不足しており、広く腫瘍外科医が不足しているという言い方も可能である。
 外科治療は最低4人が必要なチーム医療であり、外科医の数が多く必要なのは当然という御意見をいただきました。
 続きまして、(2)外科医の役割についてです。
 外科医の負担軽減のため、化学療法は内科医が行うということを基本計画に書き込んではどうか。
 外科医と内科医の化学療法の成績を比較すれば、自ずと役割は分担されるはず。協議会で外科医の仕事の範囲を決める必要はない。
 多くの消化器内科医は、がん化学療法には興味を示さない。腫瘍内科医不足が外科医に負担をかけている。
 化学療法は、がん薬物療法を専門とする医師が中心に行うという役割分担がある程度求められていくだろうが、機械的な役割分担にならないよう医師がチームとして責任を持って1人の患者を診察するという姿勢を徹底してほしい。
 乳がんの治療で多く見られるように、外科治療と化学療法を主治医である外科医が行い、患者と一体となって長いスパンの治療を続けていくケースもある。柔軟な役割分担を検討する必要があると考える。
 化学療法に関しては、周術期は術後の病態を熟知した外科医が取り組み、進行・再発がんは内科医が取り組むのがよいのではないか。
 化学療法を外科医がやるか、内科医がやるかというよりも、その病院の機能としてきっちりとした抗がん剤治療が提供できることが必要であり、役割を規定する必要はないのではないか。
 がん治療が細分化されてくると、がんの治療全体を統括できる医師が必要となるが、外科治療も併せて抗がん剤治療が理解できることで、治療計画などの戦略が立てやすい。これまでは外科医がこのような役割を担ってきた。
 腫瘍内科医を増やしたからといって、地域の病院に定着するとは限らず、現在の医療資源の中で役割の再分担を考えるのも一つの方法である。
 腫瘍外科医はがんの手術を行う器械ではなく、がん治療全体をコーディネートする役割を担うもの。
 術後切除標本などでは、若い外科医がリンパ節の提出や標本の整理などを担ってきたため、より的確な病期分類などが行われてきたという歴史があるが、病理医や検査技師などがその役割を分担することができると考えるといった御意見をいただいております。
 続きまして、(3)外科医療の均てん化、外科医の育成について、上から4つ目の項目を見ていただきたいのですが、地域連携パスの均てん化を進めれば、がん医療全体の均てん化が進むのではないかとの御意見をいただいております。
 続きまして「2.放射線療法」について説明させていただきます。
 (1)放射線医の不足についてですが、3つ目の項目からごらんください。放射線治療の業務増加と高精度に対応するため、専門の診療放射線技師の養成が必要。
 医療安全の観点から、放射線治療装置1台当たり複数の診療放射線技師の配備が必要との御意見をいただいております。
 (2)患者への情報提供についてですが、放射線治療を治療の選択肢として提示することが大切。
 治療の選択肢を提示することが大切。患者の治療の選択肢についてはキャンサーボードが担うべきであるが、現実には機能していない。
 外科治療か放射線治療か、選択肢を示した上で患者の希望に沿った治療を行うことが必要。
 外科治療と放射線治療を比較した得失を患者に示すことが必要という御意見をいただきました。
 (3)ITの活用についてですが、2つ目の項目をごらんください。
 放射線治療にはIT技術によるサポートは欠かせない。放射線治療に関するITネットワークを構築してはどうかという御意見をいただきました。
 (4)放射線医の育成についてですが、7ページの4つ目の項目からごらんください。
 研修医や医学生に放射線治療学の意義ややりがいが伝わっていない。
 放射線治療医の不足も問題だが、質の担保も必要という御意見をいただきました。
 (5)放射線治療機器の整備についてですが、重粒子線治療機器は日本だと20台弱ぐらいでよいだろう。患者さんも短期間治療のために整備された施設へ行けばよく、重粒子線治療はセンター化すべき。
 小児がんと同様、放射線療法も均てん化と集約化の議論があり、重粒子線治療についてはある程度センター化すべき。
 重粒子線治療、陽子線治療について、医療保険の適用を認めるべきという御意見をいただきました。
 (6)医学物理士についてですが、医学物理士は国家資格ではないため、政府の文書等に文言として入りにくい。
 医学物理士には診療報酬の手当がなく、院内にポジションがないため、博士号取得後の仕事がないという御意見をいただきました。
 (7)その他についてですが、患者・家族の中には専門医という言葉すら知らない人も多く、情報に振り回され、自分の状況に合った治療法や医師を見誤るケースもある。専門医や医療機関の治療実績などをわかりやすく情報提供するための基準づくりに取り組むこと。
 RI内用療法に用いる線源としての薬剤に関する医療費を放射線治療の枠内で扱うべきであるという御意見をいただきました。
 事務局からは以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 前回、集中審議をし、またその後、委員の皆さんからの御意見をいただいて、こういう形でまとめさせていただきました。そして、皆さんに前もって見ていただいておりまして大体網羅されていると思っておりますが、どなたか追加、そのほかございますか。
 中川委員どうぞ。
○中川委員 言葉の問題なんですが、「放射線医」という表現がありますが、放射線科の医師というのは放射線診断と放射線治療がありますので、これがわかるように放射線治療医あるいは放射線腫瘍医という言い方をおとりいただいた方がいいのかもしれません。これは前回の基本計画との言葉上の整合性をとっていただければと思います。
 それから、8ページの(6)医学物理士なんですが、ここに記載されている2つの文章は妥当だと思うんですけれども、海外と比べて医学物理士の数、認知度が非常に低いということを加えておいた方がいいのではないかという気がいたします。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 放射線治療医と診断医はわかりやすいんですが、もう一つ、腫瘍医ですか。
○中川委員 放射線治療の医師のことを放射線治療医と言ったり、放射線腫瘍医と言ったりします。
○門田会長 どちらでもいいんですか。
○中川委員 腫瘍医と我々は言っているんですが、世間では放射線治療医という方が認知度が高いかもしれません。前回の基本計画との言葉上の整合性がとれれば、それでいいと思います。「放射線医」という言い方はちょっとどうかなと思います。
○門田会長 わかりました。ほかのものとの整合性もありますけれども、今のお話ですと「診断医」と比べると「治療医」と言う方が、流れとすればあるのかと思いますが、周辺を見てですけれども、一応今のところそういうふうに使い分けるということでよろしいですか。
 それから、8ページの(6)はこの2つの文章ではなくて。
○中川委員 いえ、この2つの文章ですと、医学物理士について大まかな文言がなさ過ぎて唐突な感じを与えますので、私もその意見をしたと思うんですが、医学物理士が足りないと、医師を支える工学・理工学の専門家が足りないということを明確にここに加えていただいた方がわかりやすいということです。
○門田会長 事務局よろしいですか。
○鷲見がん対策推進室長 今の視点を踏まえて、その2点を修正したもので最終版とさせていただければと思います。
○門田会長 そのほかいかがですか。上田委員どうぞ。
○上田委員 今、放射線治療が話題になっていますから、7ページと8ページ、要は重粒子線をセンター化すべきだということですが、これは中川委員にタームはもう少し整理してほしいんですけれども、要するに、粒子線治療全体、陽子線、重粒子線、それから、中性子がまた始まってくると思います。こういうものに関して専門性、施設の整備維持の費用の増大から考えても、いわゆるセンター化すべきであるということを全体を包括して書かれた方がいいんじゃないかと思いますが、その辺御意見をお願いします。
○中川委員 それは重粒子という言葉ではなくて、粒子線全体をということですね。それはそうかもしれません。例えば、7ページの最後で「重粒子治療機器」という言い方をしていますが、これは陽子線あるいはBNCTを含むかどうかといった。
○野田委員 どうかというか決めてしまわないと。含むのか含まないのか、中川先生の意見はどちらですか。
○中川委員 これは難しいんですよ。というのは、陽子線と重粒子線とはかなりコストが違います。私が医者になったときコバルト60というのがありましたけれども、これが今はほとんどないわけです。世代交代が起こっていますので、今のX線のリニアックが陽子に取って代わる可能性もある。ですから、そこはやや難しいところがあります。
○野田委員 基本的には重粒子に絞り込んだ方が、今、上田先生がBNCTを出されましたが、BNCT、中性子のことはここでは余りディスカッションされていないし、重粒子治療に関してはセンター化というように絞った方が、逆に言うと、中川先生は粒子線に限ってセンター化という言葉は適当ではないと今おっしゃっているわけですよね。つまり、陽子線に関して結論が出ないだろうということですよね。だから、重粒子線の集約化というのは必要とうたうということでいいんじゃないですか。
○中川委員 重粒子について集約化が必要なのは全く正しいと思います。陽子については、ややそういう傾向があるのは確かなんですけれども。
○門田会長 では、今回の文章は重粒子線に限定した形でセンター化の方向ということでよろしゅうございますか。ありがとうございました。
 審議官どうぞ。
○麦谷大臣官房審議官(がん対策担当) 嘉山先生がおられないので、中川先生に聞くしかないんですが、センター化とおっしゃいますが、民間で買うのを制限するということですか。民間で買いたいと言ったら、おまえだめだと言うんですか。
○中川委員 それは、だめだとは言えないと思うんですね。ただ、例えば粒子線治療の施設の研究グループなどがあるわけなんです。そういった中で、無制限にこういった施設が増えてしまうことについてのある程度の検討あるいは学会内部での勧告といったものはあっていいのではないかと私は思います。例えば、強度変調放射線治療と重粒子線治療による前立腺がんの放射線治療の成績はほとんど同じです。しかし、費用は3倍違います。ですから、保険収載を考えるならば、やはりある程度適正な配置ということを念頭に置いて議論すべきであることは間違いないと思います。個別に制限はできないとしても。
○野田委員 麦谷さんのおっしゃるように、制限をしようということではなくて、そういう集約化を例えば、よく省庁の方がやられるように呼び水を出すことで集約化を進めるとか、そういう集約化は必ずしも制限をすることだけで達成されるものではないのではないかと思うので、そういう意味合いがここには入っているんじゃないかと思います。
○門田会長 麦谷審議官どうぞ。
○麦谷大臣官房審議官(がん対策担当) ちょっと荒唐無稽ですが、山のように重粒子線をつくらせて普及させれば単価が下がるんじゃないですか。しかも、均てん化すると言っているんだから、全国に500台ぐらい普及させれば1台の単価が下がるし、点数も低くなりますよ。
○中川委員 それは無理です。
○門田会長 今日は、いよいよまとめの段階に入っていますので、麦谷審議官、それは置いてください、よろしいでしょうか。申し訳ないんですが、一応皆さんの意向は、こういうものについてはセンター化すると。今まで分散という部分という部分もあるかもわからない、均てん化という部分もあるかもわからないけれども、内容によったら集中化と分散とをどうやっていくかという中の重粒子線については、集中の方を重点化するということで、センター化という形でこのようにまとめさせていただいているということでいきたいと思います。よろしゅうございますか。では、そのようにさせていただきます。
 この件につきましては、今の修正を事務局でやってもらって、一応こういう形で今回まとめ、そして、基本計画を今から書き込むときに、これを参考にさせていただくことにしたいと思いますが、それでよろしゅうございますか。では、そのようにさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、続きまして、議題2、化学療法、ドラッグ・ラグについて、前回の協議会で各参考人及び行政の担当者から御意見をいただきました内容について、委員の皆さんからも御意見を出していただきました。それを取りまとめたものがこういう形になっていますが、この説明をしていただき、集中審議をしたいと思います。では、事務局お願いします。
○事務局(秋月) それでは、事務局から資料3「化学療法、ドラッグ・ラグに関する委員からのまとめ」について御説明させていただきます。
 「1.化学療法」ですが、まず1つ目ですけれども、腫瘍内科講座の設置を進めるべきである、また、病院にがん診療部の設置を推進することで、学生の教育や専門家の育成が進むと。また、そのための予算を確保し、専任のポジションを確保することが必要であるという御意見をいただきました。
 2つ目が、がんのチーム医療については、各医療従事者が何を担当するかということは各人の適正や能力もあるので、そういうことを決める必要はないのではないか。
 また、腫瘍内科講座や臨床腫瘍講座がなければ、若手医師や学生は自分のキャリアパスとして選択することはできないのではないか。
 病院内の横のつながりを構築するために、病院に化学療法部、腫瘍センターなどを設置し、更に人材育成を進めるため、臓器別講座ではなく腫瘍内科等の講座をつくる必要があるのではないか。
 がんの化学療法は血液の分野が先導してきたということもありますので、まずは血液腫瘍内科講座の構築を進めてはどうか。
 腫瘍内科などの講座設置を求めていく必要があるのではないか。病院に化学療法部または、がんセンターの設置を促すことはできないか。
 腫瘍内科医を内科医のキャリアパスの中で明確に位置づけることが必要。
 就労世代や育児世代の患者が社会や家庭で自身の役割を果たしつつ、無理なく化学療法を続けるため、夜間や休日に外来化学療法を受療できることが必要ではないかという御意見をいただきました。
 それから、化学療法の副作用への誤解が依然として根強く、治療の阻害要因となっていると。がん化学療法について、短時間で正しい理解を得られるようなDVDなどを制作し、治療を予定する患者に周知を図ることが必要ではないか。
 次に「2.ドラッグ・ラグ」についてですが、まず、未承認薬だけではなく、適用外薬を保険診療で使えないことが患者にとって大きな問題となっていると。この2つの問題を分けて議論する必要があるということを次期がん対策推進基本計画の中に明記すべきであると。
 それから、がん対策推進計画の中間報告においては、日米における新薬の上市期間の差をドラッグ・ラグとし、平成18年度の2.4年から平成20年度に2.2年へ短縮したと評価していると。ただ、この数字は一部の新薬のみを評価し、適応外薬の問題を含んでいないため、患者や医療者を苦しめている実態を表してはいない。適応外薬を含めた数値目標・評価の在り方を検討し、見直すべきである。
 未承認薬のドラッグ・ラグへの対応については、治験・臨床試験の推進に加え、早期探索的臨床研究などが始まっており、今後、進捗状況を明らかにするように求め、評価する必要があると。また同時に、被験者保護の徹底、国民・患者への情報提供の在り方の検討、コンパッショネート・ユース制度の創設などを担当部局へ求めていく必要があるのではないか。
 それから、諸外国のように、薬事承認とは別に一定の評価のある医薬品を保険診療で利用できる新たな仕組みを検討する必要があるのではないか。現在の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議で諸外国の後追いを続ける方法や、55年通知の活用では限界があると。新たな仕組みをつくらないと、適応外薬のドラッグ・ラグはなくならないとした有識者の言葉を重く受け止め、がん患者・医療者の視点で強く提言するべきであると。
 また、本協議会の発足の経緯を踏まえてドラッグ・ラグの解消にかかわる問題についても、中医協を含めた各種審議会や、治験・臨床試験等に関する検討会などへ積極的に意見を出すべきである。
 がん対策推進基本計画において、未承認薬のみならず適応外薬にかかわるドラッグ・ラグについての状況を明らかにするとともに、その数値目標を定める。
 次が、コンパッショネート・ユース制度の導入を行うこと。
 それから、がん化学療法に伴う貧血へのESAの使用、これは前回のヒアリングで触れられていた点ですけれども、この使用は認められておらず、世界に後れを取っている。臨床医の関心は貧血以外の副作用にあり、貧血に関しては実情が把握されておらず、今後、学会において調査を行っていくこと。
 それから、ドラッグ・ラグの問題は悪化しているのではないか。毎年ガイドラインが改訂され、そこに収載される多くの新しい抗がん剤をスムーズに承認するシステムを整備しないと、ドラッグ・ラグはより深刻化するのではないかという御指摘がありました。
 それから、がんに対して薬剤使用の適応があっても保険は適応されていない点を議論する場が必要。未承認薬の問題を解決するためには、企業が薬剤開発をしやすくするシステムが必要であり、例えば、企業と学会と国立がんセンターが共同して、薬剤開発室といった組織をつくり、開発までの意思決定を速やかにできるよう進めてはどうか。
 適応外薬に関しては内外の知見に基づいて適応症以外の有用性が明らかになった際に、速やかな承認に必要な施策を行うとともに、薬事承認と保険償還とを一体とする現行制度の改正を検討すること。
 それから、国際共同臨床試験についですが、例えば、多剤併用療法による国際共同臨床試験などにおいては、適応外薬があるために日本が試験に参加できていないという事態が生じているという御指摘がありました。
 それから、緩和ケアについてですが、制吐剤など支持療法は患者の苦痛を緩和するものであり、審査を優先することが必要。緩和ケアの薬の多くは適応外であるが、安全性の問題、または民間療法とみなされないためにも公知のエビデンスとなるような臨床試験を進めることが重要という御指摘がありました。
 それから、根本的には制度の問題があることから、これを解決するためには薬の開発プロセスも含め、国民を教育し、国民が理解することが必要。
 そして、小児適応薬の不足も含めて、膨大な数の薬剤についての検討が必要。患者救済を目的とした早期承認の拡大が必要だが、不利益が伴うことの理解も必要である。
 新たな治験活性化5カ年計画の進捗状況に関して、中間的な解析であっても本計画による改善状況について分析・評価する必要がある。
 適応外薬・未承認薬に関する問題について、がん対策基本計画の骨子に具体的に書き込むべきであると。
 前にもありましたが、未承認薬、適応外薬、それぞれに対しての対策が必要である。
 米国や欧州では、必ずしもすべての医薬品がFDAやEMAの承認を受けているわけではない。FDA承認年からPMDAの承認年を差し引いた数字だけでドラッグ・ラグ解消に向かっているとは言えない。公的保険で償還されている医薬品が多くあり、海外の患者が恩恵を受けていることを考えなくてはいけない。
 ドラッグ・ラグについては、化学療法の推進とひとくくりにするのではなく、しっかりと項目を立てて計画をつくることが必要なのではないか。
 がん対策推進協議会としてドラッグ・ラグ解消について計画を打ち出し、関連する審議会や協議会などに対して意見を出していく必要がある。
 各種がんのガイドラインに記載されていても、適応外という治療薬がある。55年通知の限界も考え、透明性のある組織を構築し、保険適用に関して学会などと協力の上、責任を持って取り組んでいくことが必要なのではないか。
 国際共同治験、国際共同研究に日本が参加しようとしても、比較対象となる治療薬の適応を有していないため参加が難しいという声もある。質の高い臨床試験を行う場合には、治療薬を保険適用にするなど何らかの対策が必要ではないか。
 次が、今、存在する患者に有効で安全な治療薬を届けるという観点を持ち勿論、?相・?相試験について、今後どのようにして取り組んでいくかという点を本協議会で補足する必要があるのではないか。
 日本初の臨床試験が海外に認められるケースも多いが、日本ではその評価、薬事承認に用いられることは極めて低いと。臨床試験の質を上げていくためにも、質の高い臨床試験を行った際には、薬事承認にデータが用いられるようにするなど、インセンティブが必要ではないか。
 最後ですが、多くの支持療法薬が現在、適応外使用されている現状では、患者の痛みや副作用のつらさに適切に対処できるとは言えない。また、支払基金で保険適用が認められる、認められないで受けられる治療の格差が生じないよう意見を出す必要があるのではないかという御意見をちょうだいいたしました。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 これが前回のヒアリングの後、委員の皆さんから出していただいた内容でございます。そういう意味で、まだラフな形のものですので、ダブりその他もございますが、皆さんに御意見をちょうだいしたいと思います。できるだけ多くの皆さんにいただきたいと思いますので、1回の発言を2分ぐらいまでにということを前提にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 松本委員どうぞ。
○松本委員 患者委員から資料を提出させていただいておりますので、そちらを使って御説明させていただきます。推進協議会委員有志一同提出資料をごらんください。
 前回の皆様からの意見と重複するところもあるんですけれども、この問題は私たちの命にかかわる問題であり、私たち先を行った多くの患者さんたちが声を上げて、がん対策基本法が制定されたということもありますので、あえてここで強調させていただきます。
 この意見書の中ほどより下の部分、「記」とされている部分について特に申し上げます。
 まず、ドラッグ・ラグについて重点的取り組みの対象施策としていただきたいということを申し上げます。このドラッグ・ラグは、私たちの先輩患者たち、また、私たちがその解消を求めて活動を続けている命にかかわる切実な問題であるということです。すべてのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の維持・向上の実現を目指して、これを是非、重点的取り組みの対象施策としていただきたいということを訴えさせていただきます。これまでは化学療法の枠の中にドラッグ・ラグが含まれていましたけれども、そうではなくて別立てとしていただきたいということを強く要求いたします。
 次に、具体的な対策として幾つか挙げさせていただきました。未承認薬と適応外薬について問題を整理して、それぞれ分けて対策を検討していただきたいということです。
 次に、がん対策推進協議会としてドラッグ・ラグ、特に適応外薬の問題解消に向けて関連する審議会や協議会などに対してプロセスの改革を求める意見を提出していただきたいということです。
 次に、適応外薬の問題についてです。これはガイドラインを策定する学会などと協力して、明確なルールのもとに保険適用に関して判断する透明性の高い審査機関の構築が重要であるという指摘が、前回も専門の参考人の方々から御意見をちょうだいいたしましたので、その具体的なプロセスを検討し、明確にしていくことをお願いしたいと思います。
 そして、コンパッショネート・ユース制度を確立することについても申し上げたいと思っております。
 以上について意見を申し上げさせていただきました。重複しましたけれども、ありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。先ほどの内容にもほとんど含まれていると思いますが、あえてはっきりとということですね。
 眞島委員どうぞ。
○眞島委員 ドラッグ・ラグイコール未承認薬プラス適応外薬の問題と書かれていますけれども、国民目線で見るとちょっとわかりづらいのかなと思いますので補足させていただきます。
 抗がん剤のライフサイクルを考えますと、まず最初に、患者数の多いがんで適応症をとります。それが未承認薬と言われているものです。それから、ほかのがんで適応症をとりながら市場を拡大していくという傾向があります。例えば、ゲムシタビンの場合ですと、まず日本では肺がんで承認されまして、それに続きまして膵臓がん、更に胆道がん、尿路上皮がん、再発乳がん、そして、卵巣がんと適応症が追加されていきました。エルロチニブも同じように、やはり肺がん、膵臓がんという形で承認されていったわけです。最初の適応症をとる段階で起こるドラッグラグ(未承認薬問題)という観点からゲムシタビンを見てみますと、ドラッグ・ラグはわずか1年しかありません。ところが、それから次の適応症を獲得するためにどれくらい時間がかかったかというと、4年もかかっています。同じようにエルロチニブも最初の承認のときはドラッグラグ3年でしたけれども、その次の適応症追加には5年8か月とラグは拡大しています。我々が、がん対策推進協議会の中で推進計画を考えるときにまず最初の第一歩でしかない未承認薬問題だけを取り上げて、数値目標を出しているというのでは、2段目、3段目、4段目とどんどんお薬が市場で拡大していって、さまざまながん患者さんに使われている部分が欠落してしまうということがありますので、是非これからの対策の中には未承認薬問題とともに適応外薬問題も含めて、一緒に計画を立てていただきたいと思っております。ありがとうございました。
○門田会長 ありがとうございました。
 天野委員どうぞ。
○天野会長代理 今、眞島委員から御指摘があったように、まず未承認薬だけではなく適応外薬についてしっかり入れ込んでいただき、かつ、これは難しい面があるかもしれませんが、具体的な数値目標を未承認薬と同様に設定していただきたいというのが一つあります。実際どういうふうに基本計画に書き込むのかということにつきましても、現在、先ほどもあったように化学療法の中に含まれていますが、問題として非常に大きながん治療全体にかかわってくる問題ですので、独立した章立てに是非していただきたいという気持ちがございます。
 また、書き込んでいただく際に、実際には期間が非常にかかるような内容があります。例えば、コンパッショネート・ユース制度であるとか、コンペンディアなど保険診療下で適応外使用を可能な仕組みにするということについては、勿論、時間がかかることですので、基本計画にどのように書き込むかについてですが、この5年の間に確実に検討のレールに乗せていただいて、5年の間に何らかの成果を出していただくということを是非、方向性として書き込んでいただきたいと思っております。
 それから、抗がん剤だけということになっていますが、これは重ねて申し上げますが、支持療法薬についてのいわゆる適応外の問題は非常に深刻なものがございますので、これについても是非、記載が必要だと感じております。
 以上でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 中川委員どうぞ。
○中川委員 ドラッグ・ラグの問題は前回も少し指摘したように、実は非常に根の深い問題だと思っています。日本の医療の根本的な問題がここに非常に顕在化してきている。医療費の問題ともかかわります。
 もう一つ、ドラッグ・ラグという言葉とともに、デバイス・ラグということも非常に重要でして、我々のように医療機器が診療上不可欠な者にとって、診断機器あるいは治療機器も当然そうなんですが、欧米の中古市場で使われているようなマシンを実は日本の薬事を取得したばかりの機器が、欧米だと中古市場に相当するようなものであるということもままあります。このことは一般国民及び患者さんには、やや見えにくいところなんですけれども、極論すれば欧米であれば診断されていた患者さんが早期に診断されないという可能性もありますので、是非ドラッグ・ラグとともにデバイス・ラグのことも含めて、場合によっては別な項目立てということも大いに検討していいのかなという気がいたします。
○門田会長 上田委員どうぞ。


○上田委員 この文章は教科書的には非常によくできていると思うんですよね。このこと
は眞島さんやいろいろな方が長年検討してきたことだと思うんです。これで今何が問題か
というと、未承認薬のファースト・イン・ヒューマンにおける規制当局の決め方と、適応
外薬剤の規制当局の決め方が十分整理されておらず、なかなか総論から一歩踏み出せない一つの問題があるということだと思うんです。
 私は、今回この推進協議会として提言すべきは、規制当局としての産官学に患者・市民
団体を入れた委員会で、天野委員の発言のように3年ではこう、5年ではこうという到達目標をつくるという一歩踏み込んだものを委員会で検討して、具体案をつくることという言葉がないと、今までどおり文言としては美しいが、結果的には進まないという今のジレンマがまた続くのではないかという懸念があります。その辺りいかに書き込むかは難しい問題なんですが、そういう提言の仕方もあるのではないかと思います。
○門田会長 非常に重要なポイントですよね。表のところよりも、そこがなぜそうなっているか、その中の制度をどうするかという辺りを書き込むというのは確かに何とかしたいですね。
 ほかにいかがでしょうか。原委員どうぞ。
○原委員 この資料に限定した話ではないんですが、今、上田委員がおっしゃったのは非常に重要なことだと思うんです。ずっと皆さんこういうことをおっしゃってきて、進まない理由は何なのかと。どこかでブロックがかかっているのか、あるいは企業側の責任なのか、その辺りの考え方を大きく変えないと、一気に解決というのは難しいのではないかと思います。
 私の立場からだと、どうしても子どもの薬という話になるんですが、ここで希少疾患あるいは単に治療選択肢のない患者に関しては、コンパッショネート・ユースということが書いてありますが、一番の問題は利益にならない対象に対する薬剤をどのように開発していくかという辺りの絵ですね。いわゆる、オーファンドラッグというシステムはありますが、それも必ずしもうまく動いていない。ですから、一度うまく動いていない理由を明確に整理して、それぞれの問題点についてどういう対策が考えられるのか。これはどなたが整理するのがいいのかよくわかりませんが、それがないといつまでもお題目だけ唱えていても前に進まないのではないかと思います。
 ちなみに、NIHの倫理規定というのを先日勉強していたんですが、その中に臨床試験あるいは治験という言葉がいいかもしれませんけれども、行う際はすべての人たちを含まなければならないというのがあります。そこでやっとわかったんですが、すなわち小児だとか、あるいは人種的マイノリティとかそういう人たちを除いてはいけない。そういう人たちを除いていくと、ただでさえ少ないマイノリティの人たちのデータがどんどん出なくなるという規定があります。そういう人たちを外す場合は、除外する明確な理由がないと除外してはならないと。これで米国では、ほとんどの薬剤に対して承認適応を取るということが義務づけられている、義務と言っていいかどうかよくわかりませんが、理由であるということがよくわかりました。こういう考え方というのは是非、我が国でも基本的なコンセプトとして採用していただければと思います。
○門田会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 天野委員どうぞ。
○天野会長代理 先ほどの上田委員の具体的に検討する枠組みをつくるべきだという御指摘に関連して、今日は審査管理課の方に来ていただいていますので、そういった枠組みをつくることが医薬食品局として検討できないのかということを是非お聞きしたいと思ったんですけれども、いかがでしょうか。
○医薬食品局審査管理課(宮田) 医薬食品局審査管理課でございます。今いろいろな意見がたくさんありましたが、非常に難しい問題だとは思っております。まず1つは、いわゆるコンパッショネート・ユースの問題ですとか、オーファン制度が不十分であるという部分につきましては、今ちょうど厚生科学審議会で薬事法を改正する委員会が開かれておりまして、来年の通常国会に向けてどういったことが必要かということがまさに議論されているところでございます。いわゆるアクセス制度の創設でございますとか、オーファン制度の拡充あるいは小児領域等のなかなか開発につながらない部分をどのように促していくかといったところも、まさに検討されているところでございますので、その部分については議論の結果について、また情報提供できればと思っております。
 更に、未承認薬、適応外薬の問題は因数分解してみると難しい問題は相当あろうと思いますけれども、PMDA側の体制につきましては、人員を拡大して審査期間も短縮してきているという状況でございますが、何分、申請ラグ、いかに企業に着手させていくかといったところは、最近、医政局の研究開発振興課の方でも早期・探索的臨床試験拠点整備といったところが開始されまして、その部分を我々規制側としてもどのように受け止めていくかという部分は強化していかなければならない課題だと考えております。
 まさに上田委員のような先生が学会側にたくさんいらっしゃると、いろいろな新薬の開発も進んでいくとは思いますし、そういったところを、厚労省としても応援していく必要があると感じます。
 適応外薬については、保険局が今日はいないので何とも申し上げられないんですけれども、いわゆる保険ラグの問題が最後に出てきます。この部分につきましては、皆保険制度の中で国民的議論が必要と思われますので、その部分については引き続き議論していく部分であろうとは思っております。
 以上です。
○天野会長代理 御教示ありがとうございます。今、御指摘いただいた中で、薬事法の制度改正検討部会は私も傍聴させていただいているんですが、いわゆる薬害被害の救済ということも同時に議論されていますし、確かにコンパッショネート・ユースの話は出てきてはいるんですが、今御指摘があったように、例えば、小児の適応外の問題ははっきり言って全然上がってきていないと私は記憶しているんですね。個々のPMDAであるとか、個々の審議会では、それぞれで意欲的な取り組みをしているんだけれども、全体を俯瞰して推進していくというところが欠けているというのが、ドラッグ・ラグ解消において恐らく一番の大きな問題だと感じていて、その辺りで何か対策があるのかが聞きたかったというのが一つなんです。今現時点でないのであれば、それをつくるということを基本計画の中に盛り込んでもいいのではないかと私は考えておりますので、その辺りは是非、御検討いただきたいと思っております。
○医薬食品局審査管理課(宮田) 基本的には、厚生労働省の中で税と社会保障一体改革という議論があって、その中にもいわゆる医療、介護あるいは子育て以外にも重点的に推進していくべき施策として、いわゆる医療のイノベーションについても触れられておりまして、その部分につきましては省として医薬食品局だけでもなくて、いわゆる厚労省全体としての取り組みについて示されておりますし、それにつきましては政府・与党案として盛り込まれているところでございますので、今いただいた小児の点につきましても引き続き検討してまいりたいと思っていますし、また、いろいろと御意見もいただければと思っております。
○門田会長 なかなか難しいというか、天野委員がおっしゃるように、細分化されている世界の中で考えてもなかなか解決策がないので、何とかもう少し大きなところで骨組みができないかということなんですけれども、今、厚労省全体として云々ということも、どこか突破口というのは何か考えられることがあるのでしょうか、局長。
○外山健康局長 今ここで審査管理課が答弁することはできないと思います。ここは国会ではないので御提言は御提言としていただきますけれども、今直ちにそういった機関をつくれるかは答えられません。持ち帰らせていただきますが、お聞きしたところ、まさにそういうことを主担当でやるために医薬食品局があるのであって、何でもかんでも束ねる特別な機関があればいいという感じではないと思いますが、持ち帰らせていただきます。
○門田会長 少し難しいようですが、協議会とすればそういう方向性を希望するということはいいんですかね。実際にどう具体化するかは別としても。一つの我々が当面ぶつかっているところを解決するには、何かそういう方向のものをという表現ですね。
○外山健康局長 がん対策推進協議会として受け手の立場、患者の立場ということで、統一的な取扱いをするところが必要だという御意見は、当然この協議会として主張すべき事柄でありまして、それは当然承らせていただくということですけれども、直ちにそれに対応して、この場でそういう機関をつくるとかつくれないと申し上げることはできないと。
○門田会長 ありがとうございました。
 そのほかいかがでしょうか。原委員どうぞ。
○原委員 国の薬害開発についてのかかわりですが、例えば、今は全部、企業あるいは大学等の研究機関にすべて委ねられているわけですけれども、例えば、希少疾患に限りませんが、いろいろな薬剤あるいは新規物質のスクリーニング等に関しては、なかなか世間に投げていても進まないのではないか。ですから、一定レベル最低限やっていかないといけないことは、国の研究機関等で政策的あるいは事業としてできるような体制を構築していただいた方がいいのではないかと思います。
 それと、適応外のことですが、とある抗がん剤について新たな有効性が海外からどんどん出てくるということですが、そういった際に、厚労省あるいはPMDA、どこかわかりませんが、そういうところからこういうものについて検討を始めるということを主体的に提案していただく。我々がものを言っていかないとなかなか進まないことも多いように思うんですが、そうではなくて、例えば、アメリカのFDAだとか、あるいはNCIのように、そういった機関が主体性を持ってリードしていただくことも必要なのではないかと思います。
 あと、希少疾患に対する薬ですが、従来の枠組みであれば医師主導の治験をやりなさいということなんですが、現実問題少ない人員でそういうことができるわけもなく、現実的にはこういうことは厚生労働省主導の治験やそういう枠組みも今後は考えられないかなと思います。こういったことも協議会からの提案として盛り込んでいただけるといいのではないかと思います。
○医薬食品局審査管理課(宮田) 原委員おっしゃるとおり、小児の領域でなかなか医師主導治験が進まないという声は非常にたくさんありまして、その部分につきましては、我々もより努力しなければいけないと。その中で、今、医政局の事業で成育医療研究センターに特定領域治験等連携基盤というのが置かれまして、そこが窓口となって治験の取りまとめを行うというような整備事業が行われていますので、医薬食品局としてはその部分の成果を審査側として生かして、より迅速に成果が進んでいくように努力してまいりたいと思っております。
○門田会長 そのほかいかがでしょうか。前原委員どうぞ。
○前原委員 ドラッグ・ラグに関しまして、先ほど中川委員からも意見が出ておりましたが、是非デバイス・ラグという文言も入れていただきたいと思います。例えば、外科の領域であればロボット手術等の導入は世界に比べて、そしてまた、アジアの中でも中国あるいは韓国、台湾等に比べても、はるかに日本は遅れているという現状があります。そういう中で、ドラッグ・ラグだけではなくて、さまざまな機器、それは治療機器と同時に診断機器もさまざまありますけれども、そういうものも包括した形での文言を是非入れていただきたい。
 もう一点強調したいのは、現在使われている薬剤あるいは機器にしても、ほとんどが欧米での開発です。現実、そこで使われているさまざまな精密機器は我が国のものが多いとも聞きますけれども、機械で言えば。薬剤等、分子標的薬は、ほとんど欧米からの導入品でありまして、我が国発のドラッグあるいはデバイスを開発・推進するような体制づくりも重要ではないかと思います。このままでは、すべてのものが欧米に押しつぶされてしまうような現状ではないかと思いますので、是非産業界の活動を推進するような文言も入れていただければと思います。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 今イノベーション室そのほかで、テーマとしてはいろいろ考えてもらっているはずなんですよね。その具体化というのがなかなか。
 野田委員どうぞ。
○野田委員 先ほどの原先生の3つの提言の一番最初の、国としての開発のパスウェイづくりというかサポートに関しては、医療イノベーション室から一応、創薬支援機構というものが出ています。それがどこまで現実的になっているかわかりませんが、そういう仕組みの在り方と前原先生の言われた出口として日本発のものをより患者さんに早く届けるべきだという2つのポイントに関しては、ダブりますけれども、一応、研究の方にも同じように書き込みをするつもりでいます。
○門田会長 眞島委員どうぞ。
○眞島委員 今のに関連するんですけれども、以前ドラッグ・ラグの話があったときに、第?相、第?相試験も含め、患者さんに迅速に新しいお薬を届けるための体制について、がん研究専門委員会としてはどのような取り組みが可能なのかという質問があったと思うんですが、その点に関しては今度取りまとめされます報告書の中に入るという理解でよろしいでしょうか。
○野田委員 そういうことで出てきます。ちょっと気を付けないといけないのが、横のパスウェイと縦切りを考えたときに、第?相、第?相というと今あるものをいかに早く臨床試験に乗せて有効な結果を出すかというポイントであって、結局今あるものの中の日本のフラッグが立っているものがどれだけあるかということがちょっと関係してくるんですね。なので、区別はいたしますが、第?相、第?相の対応の仕方あるいは研究の立ち位置と、前原先生の言われたように、もう少し長いパスウェイで強化して、そういうものを支える体制を日本につくるべきだというのは、両方一応入ってくる予定です。
○門田会長 麦谷審議官どうぞ。
○麦谷大臣官房審議官(がん対策担当) 行政技術的にちょっと整理させていただきたいと思います。この後しなければいけない仕事を。資料3がちょっとちゃんこ鍋になっていますので、先ほどの有志の資料が非常によくできていたと思うんですが、構造的には2つしか問題はなくて、1つは、承認のラグ、それから、適応外使用のラグと2つのドラッグ・ラグがあると。前者の承認のラグは、先ほど患者団体の方が言われたように、ほとんどないんですね。これは特例承認制度が平成18年にできて、行政制度的にはこれ以上できませんので、もうないと。何があるかというと、適応外使用のときに、つまり承認はありませんから、適応外使用のときにお金が支払われない、このラグだと思うんです。つまり、お金のことを言わなければ使っていいんですから、医療は制限されていませんので、薬さえ承認されていれば、その薬をどのがんに使おうといいわけで、しかし、適応外のがんに使った場合に保険から支払わないというお金のラグなんですね、今話しているのは。そこしか残っていないんですよ。そのマネーラグを解消するには、それを保険で払うしかない。そういうことを言われているんだと思います。保険で払うにはどうしたらいいかというと、それを保険で払ってもいいということをオーソライズする仕組みがあればいいんです。それは法律でもいいし、通知でもいいし、委員会でもいいんですよ。どれにしますかということをある意味決めて政府に言うと。私どもは、仕事としてこれをやれと言われればやりますから、決めてもらった方がいいですよね。
○門田会長 そうすると、ここでもうその方向性、可能性が出てくるわけですか。
○野田委員 今のにそのまま乗ってしまうと、前半の部分の前置きのようにおっしゃっているから、ふっといってしまうけれども、承認のラグはないということで眞島さん、いいんですか。ここに書いてある幾つものものは、もう関係ないぞと審議官はおっしゃっているんですよ。患者さん団体の前半部分は前半部分として、まず時間を何分か使ってでも、ちゃんと話をした方がいい。
 後半の今大事なのはこれではないかというのを更に審議官が整理された部分に関してはもう少し突っ込んで、本当にここで方法論まで入れるのかどうかというのがありますけれども、皆さんは方法論まで入れとおっしゃっているわけですね。前半部分はいいんですか。
○眞島委員 前半部分はゼロ年、確かにそれはこの対策の目標値だったと思うんですけれども、実際に数値的に上がってきたのは2.3年でした。そういう実態がございますので、ゼロに向けて御努力は継続してやっていただきたいなという点は確認したいと思います。
○麦谷大臣官房審議官(がん対策担当) それは物理的にはゼロにはなりませんよ。特定承認制度というのは、先進国で承認されたものを資料とか治験の状況を商量して日本で承認するわけですから、日本人を対象にされていない場合は、日本人を100人とかまたやりますよ。あるいは子どもが対象になっている場合は子どもをやらなければいけないし、それはゼロにはなりません。1年とか2年にはなるかもしれませんが、ゼロにはとてもなりません。
○野田委員 ゼロになるかならないかの問題よりも、今ここで意見がずれているのは、努力は尽くされているんだと、つまり、ここからするべき努力、少なくとも計画で書くほどの努力はもうないよと審議官がおっしゃっているのはいいんですかと言っているんです。ゼロになるということを書くとか書かないとかの問題ではないし、ゼロにならないのはわかります。
○眞島委員 例えば、国際共同治験の話が先ほど天野委員から出ましたけれども、まさにそれこそがドラッグ・ラグ解消の道であるというお話がたしか出ていたと思いますが、実際にそのようなチャンスもありました。例えば、ある薬剤について日本が国際共同治験に参加できるというチャンスはあったんですけれども、実際にどういう話になったかというと、日本は臨床試験のコストが高い、時間がかかるなど、さまざまな理由からジャパン・パッシングがそこで起こってしまったという現象がありますので、まだまだいろいろな意味で問題解決に向けてさまざまな施策がとれるのではないかと実際には感じております。
○医薬食品局審査管理課(宮田) 眞島委員のおっしゃっていることは、基本的には審査のところでグローバル対応を含め、より強化すべきと認識しております。それにつきましては、来年度の予算要求を含め、どういった点で強化すべきかという部分を十分に検討してまいりたいと思っておりますし、一方で、医政局の研究開発振興課でも今、治験5カ年計画に続いた、ポスト5カ年計画といったものもされておりまして、その中で当然コスト等の部分も議論になるだろうと思っております。医薬食品局としては更に有効性・安全性等の評価体制をきっちり強化した上で進めていくという部分については、推進していく必要があるだろうと思っています。
 もう一点、薬事制度と保険制度の一対一の対応というのは、結局は保険償還するためには有効性・安全性のエビデンスが必要といったところで、これまで薬害等の薬事審査の中でそれを評価してきたわけでございますけれども、そこから外すということはそれに代わるものをどこかに求めるということになりますので、その部分についても国民で議論を図っていくという趣旨かと理解しております。
 あとは、創薬支援機構も医療イノベーション会議からそういったものが出てきて、その中で厚生労働省としても当然対応すべきものと思っておりますけれども、一方で、イノベーション会議等で製薬業界の団体がそういう部分については民間の負荷にならないようにすべきであるといった意見もありますので、その中でどのようにして産官学の連携するシステムを構築するかといった部分については、引き続き検討していきたいと思っております。
 あとは、日本から革新的医薬品・医療機器を生み出すべきであるという前原委員の御指摘でございますけれども、先日の東北の3次補正含めて、日本から医療機器を生み出すといったことにつきましても、まさに3次補正予算案に組み込まれておりまして、その部分は経済産業省とも連携した上で進めていくといったところも盛り込まれております。
○門田会長 天野委員どうぞ。
○天野会長代理 未承認薬の問題について一言だけ申し上げると、この協議会で出された中間報告の中で、厚生労働省側から出していただいた資料の中で、審査ラグは縮んでいると。ただし、申請ラグはむしろ開く傾向が見られるというところがあったと認識していますので、申請ラグはなぜ開いているのか。例えば、日本が海外で承認された薬を導入されるに当たってバイパスされているという事実があるわけです。それが結局、患者さんの不利益につながっている。それが国際共同臨床試験にも参加できない、これは適応外薬の問題もそうなんですが、そこについては厚生労働省の所管ではないということはあり得ないと思いますので、この協議会でもそこはしっかり認識していかないと、未承認薬の問題は解消には向かわないと思っております。
○門田会長 そうすると、麦谷審議官の2つの点の前半の方については、なお努力する必要があるということで、後半の件については、実際どこでどうするか、法律で決めるかあるいはこの協議会で決めるかとおっしゃられたんですが、そういうことで可能性があるんですか。
○麦谷大臣官房審議官(がん対策担当) ありません。これは本当に適用外だけれども有効だといった抗がん剤でも薬でもいいですが、話を簡単にするためにデバイス・ラグの話は頭から除いてくださいね。例えば、腎がんの適応があった抗がん剤が実は肺がんにも効くので使いたいと、使って保険で償還されたいといったものがどれくらいあるかが問題なんですよ。したがって、実際はそれは個別に解決できると、それが行政技術的には一番簡単です。つまり、皆さんが経験されているドラッグ・ラグの例をその都度、その都度言ってもらって、その都度、その都度解決していくと。保険で払うということです。それが現実的には行政的には一番簡単です。
○外山健康局長 今、審議官から審査ラグはないであるとか、あるいは保険の問題についていろいろ答弁していますけれども、今がん対策推進協議会に求めているものは、いろいろ分析して御意見を伺う段階であって、手順としては年末になるか来年の頭になるかわかりませんが、いただいた御意見を踏まえて厚生労働大臣として健康局のみならず保険局も含め、更には文科省、経産省の関係省庁も含めて、がん対策推進基本計画の案をこういう形でどうかというふうに、がん対策推進協議会の意見をまとめて聞くという段階で初めて全体を見渡した意見を言う形になりますので、今の段階でさっき統一的な機関はできないとかいろいろ答弁しましたけれども、その時々の反応は必要なんですが、今この段階で厚生労働大臣として、あるいは政府全体として判断しているととらないでいただきたいと思っています。議論を先に進めていただきたいと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 我々ができる、できないではなくて、我々の協議会としての方向性、基本的な考え方、基本計画を出すというディスカッションをするということで、少し置きましょう。
 そうしたら、ドラッグ・ラグについてディスカッションを幾つかしてもらいましたけれども、そのほか何か漏れていること、あるいは追加しておく必要があることはございますか。デバイス・ラグは加えさせていただきたいと思いますが。
 野田委員どうぞ。
○野田委員 患者さんたちが強く求めている、がん対策基本計画でドラッグ・ラグを単一項目にすべきだという点に関しては、どういう結論になったんでしょうか。ドラッグ・ラグを化学療法から分けて、がん対策基本計画の1つの項目とすべきということですよね。それに対する意見はどうなったのかということだけは、まとめておいた方がいいと思います。
○門田会長 いかがでしょうか。多くの方が皆さん賛成の方向で、外出しということが強く言われて、それ以外の意見は聞いておりませんが、いかがでしょう。よろしいですか。また書くときに全体のバランスとかいろいろ出てくると思いますけれども、今のディスカッションの方向性はそういうことでよろしゅうございますか。
 それでは、この件につきまして今日発言された方、まだ発言されていない方もいらっしゃいますが、いつものように御意見を事務局に寄せていただきたいと思います。事務局でそれを整理してもらって、次回までに一度まとめたものを皆さんに送っていただいて、また意見をちょうだいするという形で、今までどおりの形で進めていきたいと思います。この件につきましては、よろしゅうございますか。
 ありがとうございました。それでは、この件につきましては後ほど事務局から、いつまでにという辺りはおっしゃっていただくことにして、次の議題に入りたいんですが、予定よりちょっと早めですが、10分間の休憩をとりたいと思います。5時25分になりましたら始めたいと思います。

(休  憩)

○門田会長 それでは、協議会を再開したいと思います。
 本日は、在宅医療とチーム医療ということで意見聴取をさせていただくことにしております。まず、在宅医療について説明をお願いしたいと思いますが、お三方にお願いしております。すべての説明を終えていただいてディスカッションを進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。また、説明していただく皆さんには大変申し訳ございませんけれども、一応10分程度ということでお願いしておりますので、時間厳守をお願いしたいと思います。
 まず初めに、在宅医療の現状と課題についてということで、医政局指導課在宅医療推進室より御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○医政局指導課在宅医療推進室(福原) 医政局指導課在宅医療推進室長の福原でございます。私の方からは在宅医療の現状と課題について、医療計画の話題を盛り込みながら御説明させていただきます。
 スライドの説明は右下の小さい方の数字を読み上げますので、よろしくお願いいたします。
 まず、1ページ目、人口ピラミッドの変化でございますが、2005年では3人が1人の高齢者を支える構造になっております。それが2030年には1.7人で1人、2055年には1.2人で1人を支える構造となってまいります。
 2ページ目をごらんください。都道府県別の65歳以上人口の増加率でございますが、ピンク色の折れ線グラフが増加率、赤が2008年65歳以上人口、青が2025年65歳以上人口でございまして、増加率の高い方から低い方へ左から順に47都道府県を並べてございます。1位が沖縄ではございますが、その次が埼玉、千葉、神奈川と大都市において増加率が著しいことが明らかとなっております。
 3ページですが、死亡数についても今後どんどん増えてまいりまして、2040年にピークを迎え166万人。
 4ページ目でございますが、死亡場所については1950年代に8割が自宅で亡くなられておりましたが、1970年代に逆転いたしまして、現状では8割弱の方が病院で亡くなられております。
 5ページ目、終末期医療に関する調査の結果でございますが、一般国民及び医療福祉従事者ともに7~8割の方が終末期医療に関心があるということ。また、全体の6割の方が可能な限り自宅で療養したいと答えております。
 6ページ目でございます。また、一方で、6割以上の方が最期まで自宅での療養は困難と考えております。その理由として赤の囲みでございますが、介護してくれる家族に負担がかかるですとか、あるいは急変したときの対応に不安があると回答しております。
 9ページ目、在宅療養支援診療所についてでございますが、こちらは24時間在宅医療を提供する診療所でございます。平成18年に創設されまして、平成22年7月1日現在で1万2,487件届出がございます。その要件につきましては、24時間の連絡を受ける体制があり、また、24時間で往診、訪問看護あるいは急変時の緊急入院を受け入れる体制を確保していること。また、医療・介護の連携を担当するケアマネ等と連携していること等がございます。
 10ページ目は、その推移でございます。平成18年以降順調に増加しておりますけれども、右のグラフで点線で囲んでおりますが、約半数程度しか看取りを行っていないという問題もございます。
 11ページ目、都道府県ごとのばらつきもございます。
 12ページ目です。また、支援診療所医師の24時間体制の負担が多うございまして、特に、1人体制、2人体制のところはその負担が顕著に出ております。
 13ページ目でございますが、在宅療養支援病院につきましては、平成20年に創設されまして331件の届出がございますが、内容につきましては診療所と同じような要件でございます。
 14ページ目をごらんください。平成21~22年に大きく伸びておりますが、このときには要件が緩和されまして、平成21年までは200床未満であり、かつ、4km以内に診療所のない病院でございましたが、平成22年度からは200床未満もしくは4km以内に診療所のない病院と緩和されまして、大きく伸びております。また、こちらも半数程度しか看取りを行っていないという問題がございます。
 15ページ目でございますが、訪問看護につきましては、訪問看護サービス利用者及びステーション数が横ばいでございます。
 16ページ目でございます。訪問看護事業所の規模別状況でございますけれども、5人未満の小規模な事業所が約6割を占めていると。また、規模の小さいところほど職員一人当たりの訪問看護件数が少ないというデータが出ております。
 17ページ目でございますが、規模が小さいほどオンコールの負担が大きいと。また、右のグラフですが、規模が小さいほど収支の状況が悪いというデータが出ております。
 19ページ目、在宅歯科診療の背景でございます。80歳以上の高齢者233人へのアンケートの結果です。生きがいを感じるときは、孫など家族との団らんのときであるとか、友人・知人と食事・雑談しているときといった、高齢者のQOLと口腔は関係が深いというデータが出ております。
 20ページでございますが、在宅歯科診療の現状として在宅医療の主治医が連携を必要とした診療科は歯科が一番多いと。また、その内容は入れ歯、歯周病、虫歯であるという内容でございます。
 21ページ目でございますが、在宅医療における薬局・薬剤師の役割と現状でございます。平成20年6月に示されました「安心と希望の医療確保ビジョン」において、薬局について在宅医療への方向性が示されております。右下でございますが、勤務薬剤師数別の薬局数ということで、3人未満の薬局が全体の7割弱という、やはり小規模なところが多いというデータが出ております。
 22ページ目、薬局・薬剤師の緩和ケアの取り組み状況でございます。まず、薬局での医療用麻薬の取扱いについて、免許を有している施設は76.7%。また、麻薬の在庫を有している施設は61.5%ですが、一方で、有している施設の中で麻薬調剤、経口麻薬製剤の調剤を行っているところは53.6%。注射麻薬製剤の調剤は0.6%となっています。また、麻薬の配達について、経口についての配達は15.1%、注射については0.7%という状況でございます。
 また、月平均麻薬処方の処方箋枚数でございますが、1枚未満が53.8%。また、右の円グラフですが、デットストックも多い、これも一つの問題でございます。
 また、下の棒グラフでございますが、医療用麻薬を使用しているがん患者への対応について、どうしていいかわからないことがあるですとか、あるいは、がん患者への対応について困っていることとして、死を前にした患者への対応方法であるとか、患者への精神的サポートといったところについて困っているという結果が出ております。
 23ページ目でございますが、NICUから在宅医療への移行の阻害要因として、まず、長期人工換気患者の中で在宅医療適応ありの方が61%で、退院できない理由としては、家族の受入れ不良、家族の希望なし、家庭環境といったものが挙げられております。
 続きまして26ページには、社会保障改革に関する集中検討会議の中で厚生労働省が示しました医療・介護の提供体制の将来像の例が示されております。
 28ページ目をごらんください。医療計画における在宅医療の位置づけを示しております。こちらは4疾病5事業の中に在宅を6事業目で入れたらどうかという意見もあるところでございますが、それについては医療法の第30条の4、赤の6でございますが、既に医療法の中に在宅医療が明記されていると。ここに記載されておりませんが、実は4で4疾病、5で5事業が記されておりまして、そういう意味では4疾病5事業と同格あるいは特出しで位置づけられていると。
 また、平成19年7月20日付、医政局長通知でございますが、この中でも在宅医療について、しっかり計画を記すようにと現状でも示されているということでございます。
 29ページは法令等の整理のペーパーでございますが、医療計画に関しましては、法律のほか大臣告示、局長通知、課長通知とございますけれども、法律と局長通知では位置づけがされております。しかしながら、疾病または事業ごとの医療体制について、課長通知でございますが、これに基づいて都道府県は計画を立てているところでございますけれども、この中に4疾病5事業が入っているけれども、在宅が入っていないという現状がございますので、現状では課長通知と同格の通知を示すことによって在宅医療についても同じレベルの計画を立てるように今、そういう方向で調整しているところでございます。
 30ページ目でございますが、現状で各都道府県で在宅医療に関する医療計画、数値目標等を列挙したものでございまして、例えば、熊本などでは数値目標にまで踏み込んで計画が立てられているところでございます。
 31ページは全体的な状況を定量的に示したものでございますが、縦軸が都道府県数、白の棒グラフが医療計画の中で在宅医療について記載されているもの、青の棒グラフが数値目標にまで踏み込んで記載されているものでございまして、地域連携パスの導入ですとか、地域医療支援病院の整備については、約半分ぐらいの都道府県において医療計画の中で示されているという状況でございます。
 最後に、今後のスケジュールでございますが、現在、医政局の方で医療計画の見直し等に関する検討会が進められているところでございます。今年の年末ぐらいまでに4疾病5事業プラス精神、在宅の指針をお示しすると。それを踏まえて、平成24年度に都道府県が次期医療計画を策定し、平成25年度から次期医療計画の実施という流れで考えております。
 私からは以上でございます。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、在宅緩和ケアの実情と課題ということで、医療法人社団修生会さくさべ坂通り診療所院長の大岩参考人よりお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○大岩参考人 千葉市で在宅緩和ケアの診療をしている大岩でございます。
 まず、資料についてですけれども、資料5の中に3つあります。1つは、パワーポイントの資料でプレゼンテーション用です。もう一つは、本年3月に千葉県のがん対策審議会の資料として提出したものに若干の修正を加えまして、がん対策推進計画について緩和ケアの視点から感じたことを書いたものです。それから、もう一つは、PCC連絡協議会というのを昨年、在宅緩和ケアの診療を行っている診療所を中心に発足したんですが、その中で在宅緩和ケアの基準を定めていこうということで、その試案を載せております。なお、PCCというのはPalliative Care Clinic(緩和ケア診療所)の略で、在宅緩和ケア専門委員会の報告書にある在宅緩和ケアを提供する専門の診療所に相当すると御理解いただいて、以後はPCCという表現をさせていただきます。
 報告の内容は、私どもの診療所の診療の内容についてと、がんの在宅医療の課題、それから、対策の3つについて話をしろということでしたので、それに基づいて話をさせていただきます。
 まず、時間の関係で少し飛ばしまして、スライド5をごらんいただきます。私たちの診療の基本的なスタンスを示したものですが、その骨子は医師と看護師が一体となったチームケアを24時間365日提供しているということです。マネジメントナースを置きまして、あらゆるコーディネートを行います。それから、訪問看護師は完全受け持ち制で私どもはやっております。
 次に、スライド7をごらんいただきます。私どもの診療所の診療実績です。2001年に開設しまして、以後10年間の診療実績を示したものです。最近は、ほぼ年間100名前後のがんの終末期患者さんを拝見して、ほぼ同数の患者さんを自宅で看取っています。
 次に、スライド8をごらんいただきます。どういう活動をしているかということを羅列的に書いたものですが、その中で千葉県在宅医懇話会あるいはPCCの連絡協議会について簡単に触れていきたいと思います。
 スライド9をごらんいただきます。千葉県在宅医懇話会を2006年に立ち上げました。(て、)当時は在宅緩和ケアというのはほとんど知られていませんで、在宅緩和ケア、在宅ホスピスって何という時代でしたから、それを少し広めるために、とにかく開業の先生に1人でも多く参加していただくということでした。当時まだ千葉県がんセンターが緩和ケア病棟を開設して日が浅かったこともあって、一緒になって準備をして発足したという会です。
 スライド10です。PCC連絡協議会の目的と構成を会則の中から引用したもので、ごらんいただければと思います。現在会員数は22施設です。
 次に、がん在宅緩和ケアの課題に入りたいと思います。スライド12をごらんください。まずは、今日私がプレゼンテーションする目的は、在宅緩和ケアを提供する専門の診療所、つまりPCCを中心としたシステム構築というものに合理性があるんだということを明らかにできればと思います。
 基本的に、非がんの在宅とがんの在宅は、実際のプログラム提供は全く違うものであるということを私どものスタンスとしております。
 スライド13をごらんください。1つの前提として在宅死の話をご理解していただく必要があります。在宅死の意義については賛否両論あるんですけれども、私自身は在宅緩和ケアのシステムの実効を上げるためにも、提供したケアの質を評価するためにも、在宅の看取り率を明確にしておくことは欠かせないと考えています。これは同時に、家にいたいと願う患者さんの希望をかなえた割合だと読み替えていただいてもいいと思います。
 スライド14をごらんください。論点と書いてありますが、一応念頭に置いておいていただきたいことは、現在行われているかかりつけ医を中心とする医師会あるいは病院主導の在宅緩和ケアのシステムについてどう考えるか。これで成果が上がっているのだろうか、あるいは成果が十分ではないにしても、今後成果が期待できるようなベースがつくれてきているのだろうかという問題があります。
 それから、こういう話をするとしばしば言われるのは、PCCはかかりつけ医と敵対するのではないかという問題があります。
 それから、拠点病院と競合するのではないか。あるいはPCCというのはどういう基準なんだといういろいろな問題があると思いますが、それについて少し念頭に置きながら、千葉県の在宅緩和ケアの実情をお示しして話を進めていきたいと思います。
 スライド15をお願いします。千葉県がんセンターとの連携から考えるというのは、先ほど申し上げましたが、千葉県がんセンターの緩和ケアチームとは、がん対策基本法が施行されるまでは在宅医の懇話会を通して、千葉市あるいは県の在宅緩和ケアの広がりのために現場サイドで連携してきました。今回はそのデータを基にして報告します。
 スライド16をごらんください。左下のCH診療所の数字のオーダーが違っています。起点がマイナス10になっていますが、本来はほかと同じように0から60までのオーダーです。
 まず、千葉県がんセンターの在宅移行は以前はほぼゼロでしたけれども、2006年の在宅医懇話会から連携が始まって少しずつ数が増えてきました。グラフは該当期間に一度でも1年間で連携数が20症例を超えたものをA群としました。そのA群の診療所は3か所です。
 右上のKU診療所を見ていただきますと、これは在宅医懇話会をきっかけに在宅緩和ケアを始めましたけれども、連携患者数は大体20例強、在宅死率は50%前後でずっと推移して、ほとんど変化がありません。
 CH診療所は2008年までは連携数が増えていますが、連携数が増えると在宅死率が低下しています。2010年以降は担当医師の退職により連携数は激減して、2名あるいは3名ということで在宅緩和ケアの体制がなくなってしまいました。
 スライド17、エクセルの表そのままで恐縮ですけれども、この中でB群、C群と分けました。B群は黄色で示していますが、一度でも1年間の連携の患者数が5例から19例であったもので、C~Iまでの6診療所です。整理が悪くてB群にHが入っていますが、HはC群です。C群は緑で示していますが、1年間の連携の患者数が4人以下のものです、JからZおよびHの18診療所です。2008~2011年8月までの在宅死率と連携数を見てみますと、B群は2008年が13例、2009年が37例、2010年が35例、2011年は8月末で14例です。在宅死率がそれぞれ50%、38%、52%、36%です。C群は2008年がゼロで、その翌年から15例、15例、22例となっていますが、在宅死率は2009年が18%、翌年が38%でした。本年は8月末までに22例ありますが、今のところ在宅死率はゼロです。
 B群、C群は合わせて24診療所あります。この両群の連携数を全部総計すると99例で、平均の在宅死亡数は42例。これを4年で割って年平均の連携数を出して、少し多めに15例としても、2009年の千葉市全体のがん死亡2,171名の2%を占めるにすぎないんですね。ちなみに、千葉市の在宅支援診療は現在47です。これをごらんいただいてわかるように、がんセンターの現場サイドではものすごい努力をして患者さんを診療所につないでいくんですが、限られたところしかつなげません。連携できたとしても、連携先の診療所が質の高いケアを提供して、受け入れる患者さんの数が増えていくという傾向が見られません。
 次のスライド18は、そのことをまとめてあります。A群は連携数が多くて在宅死率は比較的高いんですが、KU診療所、CH診療所を見ておわかり頂けると思いますが、連携数の多いことが在宅死率の向上に結びついていません。その理由は、医師と看護師が一体型のチームケアを提供しているわけではないし、どういう目標でやっていくのかということを共有できているわけではないということが考えられます。其れとは別に、先ほど申し上げたような事情でCH診療所の連携数が極端に減り、在宅緩和ケアを提供する継続性に問題があることが明らかになったことは、医師個人の意欲のみに依拠しているという危うさを示していると言えます。
 例えば、私のところもそうですけれども、私自身が診療できなくなると、年間100名の患者さんが千葉市ではどういうふうに対応できるかが問題になります。現状ではほとんどの患者さんは、関わる診療所を見つけられないで、病院で最期をむかえるという事態になります。
 それから、B群、C群の連携数、在宅死率の推移はがん終末期の患者さんを自宅でみる負担が大きく、連携の継続がより困難になってきている可能性を示しています。つまり、かかりつけ医、医師会中心に在宅緩和ケアの制度設計をこれ以上進めていくのは現状ではかなり無理だと考えています。私はかかりつけ医、医師会ががん終末期患者さんの在宅療養に関わることを否定しているわけではありません。かかりつけ医、医師会を基軸とした制度設計は無理で、現実的な施策にならないと考えています。私自身も医師会の会員ですけれども、医師会の内部に入っていてもそういう実感を持ちます。
 スライド20の千葉県全体の在宅死率の年次推移を見てください。これは千葉県、千葉市、市川市、松戸市、市原市とありますが、上の方にいっている折れ線グラフは千葉市、市川市、松戸市、市原市です。この4つが千葉県の在宅死率を上回っています。
 スライド21は、千葉市だけに限って見ますと、私どもの診療所ができて関わる患者さんが多くになるにしたがって千葉市の在宅死率が増えています。さらに在宅医懇話会を通して現場の連携が進むにつれて、その延長上に在宅死率の増加がより確実になっているという傾向がおわかりいただけると思います。
 スライド22です。今まで見てきてはっきりしたことは、在宅死率が高いのはPCCに相当する診療所がある地域です。千葉市がしかり、市原市がしかり。両方とも年間100~150名以上の患者さんを自宅で看取る診療所があります。市川市、松戸市は都市部ということもあって、在宅診療が非常に盛んな地域で、多数のがん終末期の患者さんをみる診療所が複数あります。これは全国の都道府県の在宅死率の上位ランキングを見ても、やはり同じ傾向があります。ただ問題は、先ほども申し上げましたが、意欲のあるチームあるいはPCCの継続性の保証が必要で、このままでは今のままの体制が維持できるかどうかも怪しいということになります。
 そのことに関連して、がん対策推進計画の中で拠点病院中心という施策が余りにも厚く進んでいたために、在宅緩和ケアの整備が非常に遅れたという結果があります。その原因の一つに在宅緩和ケアのグランドデザインを明確にしないまま、がんの終末期患者さんの病院回帰の道筋の強化を行ってきたことをあげることができます。この1つの例が緩和ケアのパスです。これは何かあったら病院に戻るという道筋で、在宅で最期まで療養したいという患者さんの希望をかなえるという道筋ではないです。
 次に、スライド24をごらんいただきます。今申し上げたような課題を克服して、具体的対策をどのように考えたらいいかということです。はじめに行うべきことは、資料に加えましたけれども、緩和ケアの概念の再構築、がん対策推進基本計画の緩和ケアのキーワードが治療の初期段階からの緩和ケア、がん終末期の緩和ケア、切れ目のない緩和ケアの言葉の定義があいまいで、それぞれの関係についての概念構築が不充分だという印象があります。ですから、施策を改めていくためには緩和ケアの概念の再構築が必要だと考えています。
 それから、在宅緩和ケアの基準というものを基本的なところだけでいいですから、明確にする必要があります。
 何といっても人材育成のプログラムが必要です。在宅の現場ではPCCを中心にと考えていった場合には、核になる在宅医の養成が必要ですが、1つの地域でそれほど多い人数は必要ありません。ただ、そういう意思を持って人材を育成していかないとできません。現実に、千葉市ではこの5年間で新たな在宅緩和ケアの核になる人材の創出はありませんでした。
 スライド25を見てください。提言をする前のまとめですけれども、結論的にはPCCの活用が非常に重要だと思います。既存の医療システムを前提に、拠点病院主導でかかりつけ医を対象としたシステム構築を目指して、幾ら努力しても、恐らく成果は上がらないだろうと考えています。今日見ていただいた千葉市の現状というのは、千葉市が特殊だというものではありません。
 先ほどのスライドでお示しした論点についてですが、本日の報告の結果からすると、かかりつけ医を中心とする医師会、病院主導の在宅緩和ケアのシステム構築は、将来につながる成果は上がっていないと言わざるを得ないし、このままでは将来の期待もできません。
 PCCを基軸にしたときにかかりつけ医とのかかわりはどうかという問題については、地域の役割分担をきちんとすることができれば、かかりつけ医はむしろメリットの方が大きいのだろうと考えています。PCCの拠点病院との関わりについては、競合とか云々のレベルではなくて、連携が必要であるし、役割の明確化が必要だと思います。基準については、連絡協議会で整理して発信したいと思っています。
 スライド26をごらんください。これはPCCを中心にした地域の連携試案ということで、私が千葉県のがん対策審議会で提案したものです。真ん中の下の方にPCCと地域在宅緩和ケア支援センターを1つの円の中に置いています。これはPCCと地域在宅緩和ケア支援センターを運営面で一本化してシステムの基軸とすることが一つの方法ではないかということです。右の方にかかりつけ医との連携とありますが、かかりつけ医とPCCの連携を深めることが重要です。現状のままではかかりつけ医と開業医である在宅緩和ケア専門の診療所との診診連携は非常に難しいので、ここに何らかのインセンティブをつけて進んでいくようにすることが必要だろうと思います。その上で、診診連携を拠点病院、中核病院が支えるという概念を構築することが要請されます。ここにお示しした方向が自宅に最後までいたいという患者さんの希望をかなえる一つの道だろうと考えています。一つのアイデアとして提案しました。 スライド27です。在宅緩和ケアの現場には基軸が必要ということを申し上げましたが、今、日本の各地域には基軸候補となる在宅緩和ケアの診療所が育ってきています。
 スライド28はPCC連絡協議会の会員を対象にアンケートの結果を示したものですが、全国的にもこれだけの診療所の広がりがあります。勿論、アンケートの対象になっていない診療所も掘り起こせば、恐らくまだまだあるだろうと考えています。
 最後のスライド29です。提言という形で書きましたが、在宅緩和ケアの充実には現状の是認ではなくて、医療のパラダイムシフトであるという認識が必要です。すなわち第一には、在宅緩和ケアというのは、今までの問題解決は病院でよかったんだけれども、在宅緩和ケアでの問題解決の場は病院ではなくて在宅なんだという方向の転換。第二には、緩和ケアというのは、どんなにいい医療、いいケアを提供しても患者さんは結果として亡くなっていくということです。今まで我々が習ってきた医療は生を目指していく医療。それと明らかに方向が違う、そういう意味で在宅緩和ケアのシステム構築は2つの大きなパラダイムシフトを伴うという認識をして、地域に基盤を置いた新たな医療形態の創造をする必要があるだろうと考えています。
 緩和ケアの専門診療所を在宅緩和ケアの基軸にしたシステムを構築することを強く提言したいと思います。
 このようなPCCの創出ができると、その地域はかなりの広範囲で状況が変わるし、地域緩和ケアの構築に大きく前進する可能性が大きいといえます。
 最後にお断りをしたいのは、今回は在宅緩和ケアの診療所を基軸にするというお話をしましたので、訪問看護ステーションやほかの職種のかかわりについては触れなかったことを御理解いただきたいと思います。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 確かに我々は病院中心の見方をしているのが、本当にパラダイムシフトという感じを受けました。ありがとうございました。
 それでは最後に、在宅緩和ケアの普及に向けてについて、総合病院山口赤十字病院副院長の末永参考人にお願いしたいと思います。
○末永参考人 山口赤十字病院の末永です。私は、山口というローカルなところで、病院は475床で、緩和ケア病棟25床を持ち、がん拠点病院をしております。対象人口は山口市の約20万人で、2つの医師会が所属し、がん拠点としては35万人以上の対象人口としている地域です。非常にローカルな場所です。
 今日、私がお話しします内容は、ホスピス緩和ケアの歩みの中の、山口市在宅緩和ケア推進事業2003年、それから、2007年から厚労省が進められました在宅緩和ケア推進事業に対応して行いましたアンケート調査、そして、日本ホスピス緩和協会が全国の施設で在宅が困難事例、最終的に在宅が難しくなった118例を集めまして分析した結果を基にまとめをしたいと思います。
 平成19年度の死亡場所ですが、山口市で亡くなられた方が1,758人で、自宅での死亡が203人ということです。がんの死亡が山口県は4,465人で、山口市が498人です。平成19年度、その498人のうち山口赤十字病院の緩和ケア病棟で亡くなられた方が192人、山口赤十字病院緩和ケア科の在宅での看取りが38人、そして、山口市の市内の先生方が看取ったのが18人で合計248人となり、がんの患者さんに関しては49%前後がホスピスあるいは緩和ケアのもとで看取っているという現状があります。
 赤十字病院で平成13~23年度まで、がん患者さんを対象にした在宅緩和ケアを行いました。在宅緩和ケアを行いました患者が総計557人で、亡くなられた方が379人です。そのうち自宅での看取りが264人です。大体私が担当しまして70%は自宅で看取ってきたという経緯があります。
 現在、私のもとで一緒にやっていた同僚が市内に往診クリニック専門の在宅を始めまして、それが昨年、今年と大体30名前後自宅で看取るようになりました。私のところと合わせて60名前後は在宅で看取っているということになります。それに緩和ケア病棟がバックアップして、多くの患者さんを診ているというのが現状です。
 次に、山口市在宅緩和ケア推進事業の概要を述べます。この事業は平成15年より開始しました。いずれの地域でも認知症の患者、長期療養を必要とする患者に対応して行われている地域ケア連絡協議会があると思います。山口市でも山口・吉南地区地域ケア連絡会議の中の専門部会として山口市在宅緩和ケア推進会議を立ち上げ、在宅緩和ケア推進事業を行政が主体としてやってきました。その内容が、がんの終末期の方を対象として、在宅緩和ケアにかかわる関係機関の連携システムの構築、相談機能の確保並びに福祉サービスの充実を図ること、そして、最後まで自分が望む生活の場で安心して有意義な生活を送ることを目的として、その事業内容を展開してきた次第です。
 その中の一つとして、在宅緩和ケア支援センターを委嘱を受けまして赤十字病院の中に設置しました。相談支援、医療・福祉サービスの調整、代行申請あるいは訪問看護ステーション専門従事者の研修会、あるいは専門従事者の相談支援等々を行ってきました。それから、一般市民への啓発は公開講座を年1回、並びに在宅緩和ケア便りの発行を年2回、患者会「蕗のとう」を毎月行なっています、 平成15年度というのは、まだ介護保険制度で60歳以下の人は認められていないような時代に既に行政が入ってやったというのが、全国で先駆けてやったケースです。その中の福祉サービス事業を見ていただきまして、特徴的なのは年齢制限がないということです。介護保険は今40歳制限があります。先日も39歳の乳がんの骨転移の人、骨破壊があって痛くて動けなくて在宅で診ていくときにも、市の事業を最優先して福祉サービスを導入しました。40歳になってから介護認定も使えるようになって、介護保険に基づくサービスを入れました。それから、すべてが1割負担でのサービスです。これは全国どこにもない事業展開で小回りがとてもききます。
 そして、そのサービス提供の流れを次に示してあります。この流れは在宅介護支援センター、居宅介護支援事業所、診療所の先生、病院の地域連携室、そういうところを全部窓口にして相談に乗れますよということにしているんですけれども、今はほとんどが福祉サービスの提供はケアマネージャーさんが早期に情報を仕入れて行政の方に伝えて、その日のうちにでもそういう支援が受けられるようなシステムを構築して前倒しでやっています。その後に介護保険とか障害者サービスが受けられるものと切り替えていくということをやっております。
 次に、山口県在宅緩和ケア推進事業を厚生労働省の指導のもとにやりまして、平成20年度山口県すべての1,109診療所にアンケート調査をいたしました。そのときに回答いただきましたのが431診療所で、このうち在宅緩和ケアを行って協力しますという181診療所をガイドブックにまとめました。2次医療圏(8医療圏あります)ごとに分類して診療所を掲載しました。掲載しました項目はスタッフ、訪問可能な地域、併設事業、在宅療養支援診療所の届け出、24時体制がとれているか、在宅医療の実施状況、主に連携している医療機関名、主に連携している訪問看護ステーションの名前、そのほかの訪問介護サービス、訪問入浴サービス。在宅で可能な医療処置、協力できる専門分野などを診療所ごとに記載してあります。これを3,000冊刷りまして、すべての2次医療圏の行政並びにがん拠点病院あるいはこれに参加してくださる診療所にお配りしています。
 これにより、在宅をおこなう医療機関がわかります。この結果、2次医療圏ごとに非常に温度差がありということです。在宅緩和ケアをおこなう診療機関が少なく在宅緩和ケアの診療が受けられない二次医療権もあります。それから、先ほどPCCの話が出ましたけれども、1つの医療圏に1人の先生で20~30人の在宅緩和ケアの患者を診られる医療機関が2つか3つあれば、その地域の2次医療圏あるいは1つの市町村単位で結構在宅で診ていけるだろうということがあります。
 これは受け手側のデータ分析ですけれども、次の年に県内の勤務している医師、がんを扱う医師がどういう時点で在宅を提供しているかをアンケートしました。
山口県内の病院に勤務し、がん治療に携わっている医師63施設、905名を対象にアンケート調査をしました。アンケート回収は305件、回収率は24.30%でした。
 その次にありますように、在宅緩和ケアを実施している病院は43%です。がん拠点病院や緩和ケア病棟のある病院というのが在宅緩和ケアをしているということです。
 では、在宅緩和ケアをおこなう診療所と連携しているようなドクターはどういう治療をしているかというと、手術、抗がん剤、放射線、ホルモン療法、免疫療法などの集学的治療を全部やりながら、がんにかかわっている割合の図です。
 そのうちの在宅緩和ケアを実施している医者は、圧倒的に病院で看取る人が多いんですけれども、在宅で看取る人はほとんどいないということになります。
 では、どの時点で在宅緩和ケアを病院の医師が勧めているかというと、外来治療中から勧めているが32%、外来通院が困難になってからが36%、看取りに近くなってからが14%ですから、大体通院できなくなってからが50%以上で、遅い時期に在宅を勧めているということです。
 それから、勧めた背景としては、本人・家族の希望が42%で、院内に緩和ケアや訪問看護があるというのが15%です。在宅緩和ケアを積極的に行う診療所を知っているが22%、地域の診療所・訪問看護等との連携がとれていたが16%ということになります。、本人・家族の希望に沿って在宅を勧めることが一番多いということです。
 そのうち、約65%は近隣のかかりつけ医や他の在宅医へ依頼するということになります。自ら訪問診療を行ったのは17%という割合です。病院の勤務医は在宅医との連携状況は、ほとんどが急変時のバックアップとして位置づけており、自分たちは協力しているということになります。
 では、在宅緩和ケア実施後最後はどこで過ごされるかとの質問に、再入院となったのが62%、在宅で看取りまでが31%です。再入院になる理由としては、本人・家族の不安が強い8%、家族の介護疲れが8%、在宅医では対応できないことがありが25%、病状の悪化で緊急入院が21%です。ですから、再入院となったのが在宅で最期まで看取るものの倍くらいという現状であるということです。
 では、勤務医の先生が在宅緩和ケアを勧めなかった理由として、在宅緩和ケアがあることを知らなかったが10%。本人・家族の希望がなかったが43%。希望はあったが介護力がないが8%。診療機関と連携がとれなかったが6%。訪問看護と連携がとれなかったが3%ということです。在宅では緩和ケアは無理だと考えたというのが3%ぐらいあるということです。
 では今後、ここは推進会議なので、がんに特化した話をしますけれども、やはり地域の連携が大事で、在宅緩和ケアを行っている診療機関の情報提供とか、コーディネーターが必要ではないかという症例が出ています。
 次は、日本ホスピス緩和ケア協会が、在宅で緩和ケアを行ったけれども実際に途中で入院になってしまった、あるいは在宅できなくなった118症例を全国から集めまして分析した結果、次のようなことがわかりました。在宅療養支援診療所をしている医師から、在宅療養の継続、こういう条件があれば継続できるだろうというのが夜間の付き添い介護士制度。それから、24時間対応の訪問診療訪問看護。それから、がん末期患者への在宅ホスピス緩和ケア対応の小規模多機能施設が必要、レスパイトケアとかそういうものをやらないと、家族の疲労が強くなるだろうということです。やはり一番の問題は、夜間の介護の不安に対して、夜間のコール対応の介護士派遣が可能になることです。デイホスピスの通所ケアの充実。現在のデイホスピスは条件が厳しくなかなか広まっていかないということがありますので、このあたりの敷居を低くする事が必要です。
 訪問看護ステーションは、どういうものがあると継続できるかというと、夜間付き添い看護師制度、特別な関係に当たる医療機関・訪問看護ステーションの同日算定の緩和。医療機関と訪問看護ステーションが同日に入っても算定できるということ。長時間訪問加算の名算定にターミナルの訪問看護を追加・回数う制限の廃止。要するにALSなどと同じようにターミナル患者の訪問看護も長時間入れるようにしてほしいし、回数の制限もないようにしてほしいということです。それから、夜間などコール対応介護士の派遣と複数訪問看護加算週1回のみの回数制限の廃止。
 ケアマネージャーさんからは介護保険の訪問調査の迅速化、これは通達が出ていますけれども、なかなか下まで下りていないということです。終末期のがんは要介護度2以上の介護認定にしてほしいということです。
 それから、薬剤師さんは休日夜間対応の訪問薬局の整備。あるいは調剤薬局間の連携ということと、医療用麻薬の偏見を取り除くということです。
 最期に、以上のようなことを踏まえて在宅緩和ケア普及のための保険改定へ望むことは在宅患者訪問看護・指導料の長時間訪問加算の算定要件に、在宅で終末期ケアを行っている者を追加すること、末期の悪性腫瘍・神経難病等の特掲診療料の施設基準等に規定された疾患の患者に対する特別な関係に当たる医療機関および訪問看護ステーションからの訪問に関する同日日の算定の緩和、介護保険非適応になっている40歳未満のがん患者に対し、医療保険を用いた、訪問看護‥訪問介護一体型制度の新設。がん末期患者は要介護2以上の認定を原則にして欲しい、要介護のがん患者さんは直前まで自立です。要介護認定が下りた時点で亡くなっている方が圧倒的に多くて、38%の人は申請さえしていないというのが現状ですので、こういうことがないようにしてほしい。
 それから、家族の安心のためにも夜間付き添いおよび夜間休日オンコール対応可能な介護福祉士‥ホームヘルパー制度の新設。 それから、がん末期患者に対応できるレスパイトケアのためのショートステイや小規模多機能制度、これは医療が入らなければがん末期の人はほとんど診られないということがありますので、従来の小規模多機能では難しいということです。
 まとめといたしまして、これから60万人近いがん末期の患者さんたちが専門的な緩和治療(トータルケア)を必要とします。、それゆえ、在宅でがん患者を専門的に診療している診療所や訪問看護ステーションは、やはり専門的高度な機能を持った在宅医療施設として裏づけることが必要ではないかと。
 もう一つ、病院での外来化学療法は非常に進歩してきています。病院でギリギリまでがん治療をやられているわけでして、そのときに在宅緩和ケアという情報が全然届かなければ、患者さんたちは最期は主治医のもとで病院で亡くなるというシステムの中に組み込まれてしまっていきます。がん治療中からかかりつけ医と連携を強めるべきだろうと思います。
 それから、がん患者さんは終末期に急激な変化を伴います。ですから、そういう判断・技術を必要とするため医師、訪問看護師、特にケアマネージャーさんはそういうものに精通した教育が要るだろうと思います。ケアマネージャーさんはいろいろなバックグラウンドの資格でなっておられて、医療がわからない人がたくさんおられます。こういう人たちは、がんの終末期の変化についていけないということが現実にありますので、そういうケアマネージャーさんたちの教育が要るだろうと思います。
 それから、先ほど言いましたレスパイトケアを提供できるようなデイホスピスの整備、余り敷居が高くて進んでいません。名前だけがあって、ほとんど実際にはなされていないのが現状です。
 それから、都道府県のがん対策推進協議会の中には、こういう在宅をやるドクターや訪問看護ステーションのメンバーを入れることが必要です。
 それと、私が山口でやってきたことを思いますと、厚労省から県に指示が下りまして県のもとでいろいろな施策をされますけれども、本当はもっと小回りがきく市町村単位で、顔の見える形で一つ一つの施策をしていくことがとても大事ではないかと思っています。
 それから、今後、在宅に限らす終の棲家となる福祉施設あるいは老健、特老、有料老人ホームで看取っていかなければいけないと考えます。それ故、そこで担当する先生方には、やはり緩和ケアをしっかり身につけておいてもらわないといけないだろうと思います。
以上のようなことを具体的なケースからこういう提言をさせていただきたいました。これをたたき台にしてお考えになっていただけたらと思っております。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 アンケート調査の詳細な報告までしていただきました。ここまでお三方のお話を伺いました。本日は、説明いただいたものにつきまして委員の皆さんから御質問をいただいて、次回の集中審議に移りたいと思いますので、疑問の点、そのほか御質問をお願いしたいと思います。
 天野委員どうぞ。
○天野会長代理 貴重な御発表をいただきましてありがとうございます。
 最後に末永先生から、特に介護保険のことについて幾つか御指摘があったかと思います。御承知のとおり、昨年4月に厚生労働省老健局から介護保険のいわゆる末期がんの患者さんに対する適用において、迅速かつ弾力的な運用をするようにという趣旨の通達が都道府県や市町村に対して出されたと承知しているんですが、それが出された後、実際に現場として改善されたという感覚があるのかを1点お聞きしたいのと、それを受ける形で老健局ではないんですが、医政局の方にもコメントをいただければと思います。
○末永参考人 実際には介護認定が早くなっていると思いますが、これも地域差があるだろうと思います。即座に実行してくださるところとそうでない市町村があると思います。私のところでは市の事業もありますので非常にスピーディーだと思っております。
○医政局指導課在宅医療推進室(福原) 末期がん患者さんの認定を迅速に行うことは非常に重要なことだと思います。所管が老健局なので医政局は所管ではないんですけれども、そういった観点でしっかりフォローアップする必要があると思います。
○天野会長代理 私が聞き及んでいる限りは、今、地域差があるという御指摘があったかと思うんですけれども、やはり地域によって通達が十分反映されていないのではないかという指摘も聞き及んでいますし、そもそも通達に限らず介護保険の医療と介護の一体化という面から、がん患者の支援においてまだまだ不十分な点があるという御指摘も多数あったと思いますので、その辺りは恐らく制度改正が必要になってくる部分なのかなと、聞いておりまして感じた次第です。
 以上です。
○門田会長 松本委員どうぞ。
○松本委員 末永さんに1つ伺いたいと思います。まとめの中で、病院でのがん治療中の患者も地域のかかりつけ医をつくり、早期より連携することが必要であるという御意見があったんですけれども、私どもがかかわっている患者さんを見ていますと、がんが見つかったのはほとんど拠点病院で、そのまま治療を始めている。そこから地域のかかりつけ医をつくるというのはなかなか難しいんですが、どういうふうにしていけばいいかという何か御意見がありましたら教えてください。
○末永参考人 皆さんも専門の方ばかりですけれども、臨床がんとして見つかるのに十数年経っています。それから、臨床がんとして治療が開始されるというのが現状だろうと思います。そうなって治療をやって5割近くの人は治癒という方向に向きますけれども、5割近くの方は治癒の方向に向かないと思います。治癒しない方のそれからのがん治療というのはほとんどが緩和医療だし、緩和治療だと思っています。その際には、自己決定と生活と、延命ではなく、よりよく生きるという3つの視点が必ず要るだろうと思っています。その中でがんの治療を受けるということは、診断と治療だけを患者さんたちや御家族が説明を受けられると、それは必ず治る方向性の意識となります。ですから、自分の生活の視点を持ちながら、どういう治療を受けていくかという自己決定、その中で化学療法をしながらでも、本来のかかりつけ医で他の疾患などは診てもらっていると思います。例えば高血圧や糖尿病などはかかりつけ医との連携は必要です。あるいは、クリティカルパスを早めにつくって、がんの治療を受けながらでも、かかりつけ医の先生が往診対応ができるようなこと、夜の不安がないようしてあげること、そういうことは必要ではないかということです。がんだけの病気ではなくて、その人はまだほかにたくさん病気を持っておられたりしてそれへの対応にかかりつけ医との連携が必要と思います。
○門田会長 よろしいでしょうか。花井委員どうぞ。
○花井委員 地域でがん患者サポートに取り組む立場としまして、もうそろそろ在宅緩和ケアの量の整備と質の向上、第三者評価のようなものが進んでいってほしいと思っている時期でもあります。例えば、在宅が本当に患者や家族にとって最良・最善の方法なのかということもあります。例えば、この資料の中にも60%の方が最期は家でという調査結果がありますけれども、それはあくまで在宅を受ける前の想定としての調査だったと思うんです。例えば、今のお二方の参考人のお取り組みは、どれも非常に緻密で温かくてすばらしいお取り組みだと思いますけれども、やはり末永先生のところもいろいろな職種の声をすくい上げる実態調査をしていらっしゃいます。けれども、この在宅の領域においては残念ながらケアの受け手の声は聞きにくいというか、聞けないという状況があります。ほとんどがお亡くなりになるので。けれども、家族の声は聞けると思うんです。そういった受け手側の声やニーズ、満足度を反映していかないと、なかなか患者・家族にとってよりよい質の向上というところに結びついていかないと思うんですね。
 大岩参考人にお聞きしたいんですが、大岩さんのところでは遺族による評価、グリーフケアを兼ねてという項目がプレゼンテーションのスライドの中にありました。このグリーフケアによる遺族の評価の中でどんな評価があったのか、恐らく多くは感謝の言葉であったと思います。けれども、もし、そうでない評価があった場合にそれはどのような評価だったのか、そして、どう対応されたのか。もし、改善に結びついていったような具体的な例があれば教えていただけないでしょうか。
○大岩参考人 遺族による評価というのは実はとても難しいんですね。ちょっと御質問の趣旨と離れる話をするかもしれませんけれども、1つは、御遺族が我々といろいろな意味で対応してくださるというのは、それなりに診療所に対していい感触を持っている人が多い。そうでない人たちは余りコンタクトをとらない。その部分について我々は全く知ることができないというのが現実です。そういう中で、ごく一部の御家族は大変だったと言われる方がいらっしゃることは確かですけれども、そういう御家族は非常に少ないです。やはり家で最期まで見てよかったと言う方がほとんどです。
 それから、私は遺族に対する評価とここに書きましたけれども、実は遺族の評価と患者さん本人の評価というのは全く違います。これは恐らく皆さんが考えている以上に違います。ですから、遺族評価を緩和ケアの評価とするのには非常に慎重な配慮が必要だと思います。では、患者さんの評価はどうするかということは、今言われたように、患者さんは亡くなっていきますから非常に難しいです。
 話が長くなりますので簡単に在宅緩和ケアについてだけ申し上げます。在宅緩和ケアの場合には、一番単純で、しかも、質を非常に忠実に反映するものが在宅死率です。どういうことかといいますと、多くの人は家にいることが不安で不安でしようがないです。特に、日本の医療の状況を考えると病院信仰が非常に強いですから、何かあったら病院だという患者さん・ご家族が圧倒的に多いです。在宅緩和ケアを受けていても、何かあったらやっぱり無理だよと思いながら自宅で療養している人が多いです。そのような患者さん・ご家族の思いに対して、我々は、むしろ家にいることの方が穏やかで落ち着いていられるんだよということを日常のケアの中で実感して貰えるようにしていきます。その結果として自宅にいられるわけですね。端的に言うと、家にいて不安が解消されない人は入院します。ですから、自宅で最期までいられるということは、言葉として非常に難しい表現ですけれども、家にいてそれなりに落ち着けている状態だと理解しています。そういう意味では、ケアの質の端的な表現として私は在宅死率というものが非常に重要だと考えています。
○花井委員 ありがとうございました。
○門田会長 川越委員どうぞ。
○川越委員 お二方、貴重なお話ありがとうございました。大岩先生は仲間で一緒にやっているのでよくわかっているんですが、末永先生も日ごろ考えているようなことを表現してくださって本当にありがたいなと思っています。
 参考人に対しての質問というより、ちょっと補足的な話で2~3追加させていただきたいと思います。1つは、天野委員から出ていた介護認定の早さがどうか。これは現場では多分、通達が出る前よりは早くなったという認識はあると思います。ただし問題は、がんは症状の進みが早いので、介護認定されてからもどんどん要介護度が増えてしまうんですね。一番問題なのは、ちょっと細かい話で恐縮なんですけれども、要支援1、2というのが大体がん患者の場合は最初に出てしまいます。ところが、途中からあっという間に要介護状態になりまして、区分変更の申請をします。要支援1、2というのは地域包括支援センターの管轄になっていますが、要介護1以上は管轄が事業所のケアマネに替わります。ですから、実際現場はそこでものすごく無駄といいますか、特にケアマネを決めたりしているとき、サービスを入れるスピードが間に合わないというような問題が出てきています。これは何とかしていただきたいなと思っております。
 それから、松本委員から出ていました化学療法、病院でやっている治療を在宅と一緒に連携してやるというとき、それをどうするかという話だったと思います。確かにおっしゃるように、在宅のかかりつけ医をその段階で探すというのは非常に難しいと思います。我々の診療所では、嘉山先生のがんセンター、あるいは墨東病院と化学療法の協力をすることがあるんです。そのときは、やはり2週間に1回とか患者さんに我々の外来に来ていただいて、がんセンターなどの治療を受けるという格好をとっていますが、このとき大事なのは、どちらが主治医となるかということをしっかり決めておくことです。そうしないと、例えば患者さんが主治医である病院の治療中のことを連携先の在宅の診療所にぶつけてこられることもあります。こういうちょっとしたことが混乱のもとになるので、主治医をどうするかということを決めておかないと問題になると思います。
 それから、評価の問題ですけれども、私の資料を説明してもよろしいでしょうか。
○門田会長 簡潔にお願いします。
○川越委員 患者・家族の評価の問題ということで、私の資料として用意させていただいた12ページのスライド17になります。評価というのは実は非常に難しくて、日本でもやろうとしたんですができなかったということで、アメリカの資料を引用しております。つまり、在宅ケアはちゃんとした専門チームがやったら質が高いんだよということを表した大規模な調査のデータです。この資料では在宅1、2と分けられていて、1は一般的な在宅ケアのチーム、2はいわゆる在宅ホスピスケアチームで、それぞれがかかわったときにどうなるか。それをナーシングホームとか、あるいは病院で最期を迎えられた方の患者と家族の声を聞いて満足度を調べています。結果的には、これはオッズ比で見ておりますけれども、緩和ケアの専門チームがかかわった場合は患者さん、家族の方の満足度が高いと。つまり、専門チームでは高品質のケアが保証されています、ということを表していると思います。ですから、先ほど大岩さんの説明でもおっしゃっていましたけれども、これは我々の現場感覚と非常に合うデータですが、残念ながら日本ではまだそこまでのデータが出ていないということが言えると思います。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 そのほか何かございますか。江口委員どうぞ。
○江口委員 今の遺族調査の追加なんですけれども、米国などではデータベースがしっかりしているんですよね。だから逆に、例えば、どこでどういう方がお亡くなりになってというところからリストアップしたりということで調査できるんですけれども、日本の場合はそういう調査がなかなか難しいので、かなり手間がかかってしまうということと、例えば、1つの県の中でそういうものを全部把握しようとすると膨大な作業になってしまうということがあります。幾つかの研究班があって、試験的な意味も、研究的な意味も含めて遺族調査の妥当性などを検証するということは行われています。
 今実際には、例えば、戦略研究などでは代表的な4つの地域で遺族調査を、緩和ケアの方法を投入する前と後とでどのように変わったかについて検討している最中です。ですから、遺族調査自身が遺族の評価というのがそのまますぐ出てくるということではないということを今の段階ではお知りおきいただきたいということです。
 それから、先ほど松本委員のかかりつけ医ですけれども、確かに、今、治療で実際に抗がん剤などで通院している方、あるいは放射線治療とか手術後の経過観察で通院している方が数からすると一番多いと思います。ですから、そういう方が実際に早期からあるいは診療の最初のころから、こういう緩和ケアについて実際に知識の豊富な先生に診ていただくということは非常に大事なことだと思うんです。実際には、恐らくこれも地域でさまざまですけれども、一番自然なのは、例えば、かかりつけで発見された開業の先生と専門病院とでやりとりしながら、患者さんはふだんはかかりつけの先生にもかかっているということはある程度行われていると思います。ただし、そういうかかりつけの先生が緩和ケアを習熟されているというわけでもないので、そういう全体の底上げもしなければいけないところだし、そういう先生は今のところは御自分でわからないところがあれば拠点病院の先生、主治医の先生に問い合わせるといったことをこまめにやっているところではうまくいっているということだと思います。こういうものの底上げに、これからは取り組んでいかなければいけないと思っています。
○門田会長 前川委員どうぞ。すみません、時間が押していますので2分以内でお願いします。
○前川委員 そう言われると、もう言えません。
○門田会長 いえいえ、そうおっしゃらずに。
○前川委員 1分で済ませます。末永先生の資料の15ページの8番、2次医療圏ですべての保険環境福祉事務所において積極的に行うという、患者としてはどこへ相談していけばいいか、がん拠点病院のがん相談支援センターがありますけれども、意外とそういう細かいところをつかんでいない。そして、県もつかんでいない。だから、小回りのきく市町村でこういう相談できるところを是非つくってほしいなというのを末永先生のお話を聞きながら思いました。
○門田会長 ありがとうございました。
 保坂委員どうぞ。
○保坂委員 お二人のお話は大変、私自身ためになったんですけれども、末永先生の方は地域のかかりつけ医ですとか、いろいろな医療機関に協力を求めて全体的にその地域でつくっていくということで、とてもよく理解できました。大岩先生のところでよくわからないことがあったのですが、13ページのスライド25にも書いてあるんですけれども、先生の定義の中でかかりつけ医というのが一体何なのかということがわからないんです。かかりつけ医というものはいるんだけれども、PCCというのが緩和ケアについてはすべてやるというようなプレゼンテーションだったように思うんですが、先生の考えていらっしゃるかかりつけ医というのは何だか教えていただきたいんですが。
○大岩参考人 かかりつけ医というのは、今回については厳密な定義をしているわけではなくて、通常の外来診療をやっている開業医という意味づけで考えていただければいいと思います。その中には勿論、在宅に関心を持って在宅医療に積極的にかかわる開業医を含めての話です。現在は、在宅に熱心に関わっている開業の先生たちを中心にシステム構築がすすめられている。しかし残念ながら、それではがんの終末期の在宅医療の構築はできないし、将来の問題を解決する方向にはいかないのではないかということを千葉市の実績をお示ししてお話したわけです。
○末永参考人 私も同じような考えです。ずっとやっていますけれども、大体私のところでも6人ぐらいの先生は在宅緩和ケアをやられますが、それでも1年間で2~3人の在宅での看取りだと思います。先ほど述べました在宅専門のクリニックを開かれた先生は在宅での看取りが30人あり、そのうちの29人ががんでしたといわれました。今では地域の先生方から、あるいは病院から患者さんの紹介があります。専門の往診を主体とされた先生中心に地域の先生方との間でにネットが組めていくようです。そういう核になるのは、今、大岩先生が言われたような診療所があって、地域ネットが組めていけると思います。
全ての医療機関が必ずしも均等に在宅で最期までがん患者さんの変化についていけないと思いますし、多くの診療機関はそれはされないですね。そこはしっかり踏まえておかないと、すべてが総花的にできるかというとできないだろうというのが私の意見です。
○門田会長 保坂委員、簡単にお願いします。
○保坂委員 簡単に申し上げますと、拠点病院のような拠点在宅支援センターみたいなもので、これから全国にそれを展開することを目指していくのかどうかということについては、いろいろな医療経済的な問題もあるし、患者さんのニーズもあるし、非常に難しい。1つの提案としてはいいと思いますけれども、実際に実現するのは非常に難しいように感じました。私の感想です。
○大岩参考人 よろしいですか。やはり地域差もあるし、チームの事情もありますから、この問題はすべてを同じ形でやるというのは非常に難しいと思います。というのは、今までにない医療形態を創造するということだと思うんですね。今までの医療改革というのは、言ってみれば病院のバージョンアップをすることでかなり解決されましたけれども、この在宅の問題は拠点病院を中心にして、幾ら病院の緩和ケアに関するバージョンアップをしても在宅の問題を解決する道筋にはつながらないということが認識の前提にありますので、そういうことを担える診療所が基軸になってモデル的に診療のシステムをつくっていく。それを全国に可能な範囲で広げていくという考え方です。
 それから、もう一点追加させていただきたいのは、PCCの考え方というのは先ほど申し上げたように、かかりつけ医と競合するわけではありません。私が一番大事にしていることは、患者さんの希望をかなえるということです。患者さんが御自宅で最期までいたいという希望をかなえることです。今のシステムですと、開業の先生が患者さんを御自宅で診て、これ以上在宅の継続が困難だというときには、いわゆるバックベッドと称して病院に入院ということになります。その段階で患者さんの希望がかなえられないということです。そのバックベッドに相当する在宅の受け皿があることが必要だろうと思います。そうすることで、地域において患者さんが、ある先生が診て在宅での療養の継続が困難だったときには、それを更に引き受けられる診療所があれば、それは患者さんの希望をかなえることになる。これは同時に、かかりつけの先生という言葉で許していただきますが、かかりつけの先生にとっても、がん終末期の患者さんの療養を引き受ける意味では、はっきり言うと気持ちが楽になる。大変だったらば近くの地域のPCCに頼めると。そういう意味で、お互いの連携が非常にうまくいって患者さんの希望がかなえられると考えています。
○門田会長 質問はシンプルにお願いします。
○保坂委員 私が申し上げたのは、この協議会としてそういう方向を目指すような、そういったものを増やしていくということをこの協議会として提言していくのかについて、皆さんの御意見をお伺いしたかったということです。
○門田会長 わかりました。これは次の集中審議のときにお願いします。
 どうしても今日、参考人として出てきていただいている方に質問事項として質問したいことは残っていますか。シンプルにお願いしますね。
○江口委員 在宅の希望の患者さんもよろしいんですけれども、在宅が実質できない患者さんがおられるんですね。というのは、身寄りがないとか、実際に身寄りがあっても面倒を見るのを断られるとか、あるいは物理的に在宅の場所がないとか。そういう方々は、例えば、今日もお二人の参考人は実際にどのくらいごらんになっているかと、そういう方に対してどういう対応をされるかについて、その2つをお聞きしたいと思います。
○大岩参考人 今、言われたことについては、独居の患者さんという理解をさせていただくと、独居の患者さんががんになって在宅で最期まで療養することに、全く問題はないと考えています。本日はデータを用意していないので、人数は正確に把握しておりませんが、私のところでは独居だからという理由で診療をお断りすることはありません。独居であっても全く問題なく、ほとんどの患者さんが最期まで御自宅で療養できます。これから独居の患者さん、本当に身寄りのない患者さんが非常に増えてきますけれども、そういう患者さんがどういう形で療養していくかということについても、やはりPCCを在宅緩和ケアの基軸にしていかないと対応ができないのではないかと考えています。
○末永参考人 今日言いました在宅療養支援診療所、訪問看護ステーション、ヘルパー、ケアマネージャーの連携で可能だと考えます。夜間コールがあって、それに対応できるというシステム、要するに、ヘルパーさんたちが夜でも回って行けるシステム。そうすることを地域ネットでケアマネージャーさんが立案すると同時に、訪問看護ステーションを中心に行えば独居で幾らでも看取っていけます。私も何人も看取ってきました、今日述べましたようなことが解決できれば、家で診ていけますということをお話ししたかったわけです。
○門田会長 申し訳ないんですが、在宅についてはここで置きたいと思いますが、よろしゅうございますか。それでは、参考人の皆様、どうもありがとうございました。
 引き続きまして、がん医療におけるチーム医療についてということで、株式会社緩和ケアパートナーズ代表取締役の梅田さんにお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○梅田参考人 よろしくお願いします。資料7をごらください。
 私自身は、昭和大学病院の緩和ケアチームに2000年からかかわってきました。そこでのチーム医療のことと、現在は乳がんを専門にやっているクリニックでチーム医療をさせていただいていますので、そこでの経験を踏まえてチーム医療についての課題や考え方について概観を述べさせていただきたいと思っております。
 チーム医療についての定義を2枚目のスライドに挙げております。皆さん専門家なので言う必要はないかと思うんですけれども、あえてもう一度、私の持論になるかもしれないんですが、チーム医療を提供することで、いかに患者さんたちのケアがよくなるのか、質がよくなるのかについて確認をしたいと思って、次の文言を入れております。患者さんの独自性や自律性が理解できないで、専門家の価値の押しつけを回避する方法としてチームが必要だと思っております。先ほど終末期の在宅医療の話についてディスカッションされていたんですけれども、実は終末期になってからだけ何か患者さんたちが選択しなければいけないとか、急にQOLが問われるということではなくて、最初の診断時から患者さんは治療を選んでいきます。どういう療養をしていくかということを選んでいくんですけれども、そのときから複数の専門家なりサポーターがかかわることによって、患者さんが言葉にできなかったことや、言っていいかどうかわからなかったことが可能になるだろうと思っているんですけれども、どうも場面が変わるときばかりがチーム医療で、何か治療があるときには、まだまだ単科の医師と患者のやりとりで決まっていく場面も多いのではないかと思っています。なので、患者さんたちの主体性、自律性を高めていくためにも、チームで活動する、チームで1人の意見に偏った方向性にならないようにしていくことが重要だろうと思っております。
 チーム医療がやりやすくなってきたなと思っているのは、昨今のガイドラインの普及にあるかと思っております。昔は、手探りでがん医療が行われていた時代もあったかと思うのですが、そのころは看護師として意見を挟もうと思っても、なかなか基準となるものがなかったので、それがいいのか悪いのかもなかなか言えなかったんですけれども、最近はガイドラインを基準として標準医療を提供してくださるお医者さんが増えてきたということと、それについての知識を患者さんたちもお持ちになってきていますので、その軸に沿ったずれのところでいろいろな話し合いが患者さんともしやすくなっているなと思っております。
 2ページ目は今更ですけれども、チーム医療については学際的、多職種的と表現されるところなんですが、多分チームメンバーがどうまとまるかというのは、さまざまな部門、さまざま場所で異なっているので、なかなか1つの考えに絞ることは難しいだろうと思っています。ただ、だからこそチーム医療をコーディネートする立場の者が明確にいる必要があると思っておりまして、その点については、私は10年がんの専門看護師として活動してきましておりますけれども、やはり看護が担う部分が大きいのではないかと思っております。
 次のスライドですが、なぜチーム医療が必要なのかということで、あえて今日はデータを一つ一つ出してはこなかったんですが、医療が高度化した、細分化したということや、治療が長期化してきている、がんの治療成績がよくなってきているということもしかりだと思います。
 そして、慢性疾患と高齢化というのは今がんの患者さんのサポートをしていて、特にがんの専門看護師のところに相談が来るのは複雑なケースなんですけれども、がんがあるだけという方はそんなに悩むことはありませんで、やはり高齢化施設にいらっしゃる方のがんだとか、他の慢性疾患を持ちながらのがんという方が増えてきていると、おのずとがんの専門家だけではない医師や、がんの専門家ではない施設のスタッフとのチームもやっていかなければならないというのが現状かと思っております。
 また、患者さん方の多様性というのも膨れてきているといいますか、いい傾向だと思いますけれども、いろいろなニーズを示しながら医療を受けていたきいという方も増えてきています。
 そして、ケアとキュア、先ほどもパラダイムシフトが必要だという話が出てきていますが、治療だけでは患者さんたちは満足しない、よいがん医療が受けられないということが明確になってきていますので、それ以外のケアの手、もっと患者さんたちが手が届くようなシステムづくりが必要なのだろうと思っております。
 もう一つ、ICFの概念と示しておりますが、これも患者さんたちがお求めになっている医療の在り方として考える一つの起爆剤になろうと思うんですけれども、身体的機能、身体的構造についての今までの医療、医学的なアプローチだけでは、がんが治った後も、もしくは治らないときも、なかなか生活が立て直せないということが今大きな問題なのだろうと思っているんですが、健康の定義を広げて考えていく時点から、今のチームメンバーの成員の過不足をもう一度ディスカッションしていただければと思っております。
 3ページ目については、恐らくがん治療学会のeラーニングでも紹介されているんですが、MDアンダーソンの上野先生が企画されておりますチームオンコロジーで使われている概念を紹介させていただきたいと思います。
 ここにいるメンバー、医療の専門職もですが、恐らくここで言われているチームA、科学に基づく実践を行っている医師、看護師、薬剤師などに代表されるEBMの実践を担う人の中のチーム医療のことも大事なんですけれども、先ほど申し上げましたように、ケアの部分や患者さんたちのQOLを上げていく、患者さんたちの主体性を高めていくという上では、実はチームBやチームCの存在がとても重要だと思っております。しかし、現在ではチームAのチーム医療もままならないというところもあったりして、なかなかそれ以外の専門職とチームメンバーが交わるというのは難しいんですけれども、ケース、ケースによってはだんだん宗教家の方を交えた試行をしていきたいという方も出てきたりしているのが現状ですし、あとチームCと書いてあるところは、地域のリソースなんですが、きちんと患者さん方が声を大きく、どういう医療を受けたいとか、医療についての評価を提示していただくということも、よいチーム医療が進んでいくための枠ではないかと思っています。チームAの中も大事ですが、どのようなチームメンバー、どのような専門家がより主体的な自立をした患者さんたちの選択のために必要なのかを、是非、御検討いただければと思っております。
 次に、チーム医療の構造ということで、これは介入研究を考えていくときに、どういうインプットがあって、どういう過程をたどって、どういうアウトカムを出すのかということを整理するものなんですが、がん患者さん、医療者、組織という視点で整理しております。アウトカムに挙げたものについて、それと、過程に挙げているいろいろなカンファレンスをやることだとか、キャンサーボードをすることが本当にしっかりつながっているのかどうかは今後検証していかないと、チーム医療という形ばかりが走っていってしまうことよって、逆にコスト高の医療を患者さんたちが受けて、満足しないということにつながらないかということを懸念しております。
 諸外国のものなので日本の現状と合わないかもしれませんけれども、チーム医療をされたことでの実証されている論文を紹介しておきたいと思います。
 早期からの緩和ケアチームの介入ということで、実際にここでどういうことが既存のがん治療チームに対して早期からの緩和ケアとして付加されているかというと、少なくとも月に1回外来で緩和ケアチームのメンバーが会うことだとか、追加の介入は患者や腫瘍科医、緩和ケアの提供者が随意で行うことだとか、ニーズをキャッチしながらフォローしていかれた結果、長期間の緩和ケアが介入したケースについては生存期間が延びたという結果が出ています。
 ここでは、複数の医療者がかかわることによって患者さんの意見がたくさん聞けたのではないかということや、違う視点からキュアだけではなくて、ケアの視点からかかわるということの意義が実証された結果ではなかったかと思っております。
 次に、同じような研究ですけれども、看護師の介入について挙げられております。看護師のやっている介入の中で特徴的なことは、ケースマネージメントを行うだとか、教育、励まし、セルフマネージメント、エンパワーメントということを組まれた精神的・教育的介入を継続して行っていたということで、うつ傾向が下がることだとか、QOLが上がるということが証明されているんですけれども、このケースマネージメントと言われた中に、先ほどから議題に上がっておりました治療期からの介入の必要性だとか、診療科の医師と地域のクリニックの先生という、うまくつながったり、患者さんがコーディネーションできる場合にはそういうサポートは必要ないかもしれないんですが、遠慮しながらお医者さん同士に本当のことが言えない患者さんがおられる中では、第三者がコーディネーションをやっていくことによって、よりそれぞれの専門家のお医者さんの技術が生きるのではないかと思っております。
 日本についてのデータを御紹介したかったんですけれども、実はなかなかないというのが現状でして、専門看護師が実際にいろいろな病院に入って活動した結果、どういう成果を挙げているかということが紹介された文献を幾つか挙げてみました。
 ここの中でチームの調整だとか、医療チーム全体への信頼の回復などが挙がっているんですけれども、このことからも看護師のもともとの役割ですが、患者さんがよりよい専門家に囲まれて、よい治療を受けていかれるための間をとるような、コーディネーションするような機能が専門看護師によって果たせるようになってきているという一つの例として御理解いただけないかと思って提示させていただいております。
 次に、がん患者が勇気づけられた他者の言動、これは闘病記から上がってきたもので、どういうことで患者さんが勇気づけられたかということが整理されていて、その次に、がん患者さんが勇気づけられた他者の言動ということで整理されています。この中で、がん患者さん同士のサポートが合計30と上がってきているのは、やはり交流を深めていかなければ、患者さん自身すべてが医療者だけでサポートできるわけではないということの証のように思うんですけれども、逆に、それ以外がここに看護師はちらっと上がってきていますが、実際に患者さんが励ましを求めていかれる先というのが配偶者や家族、知人、勤務先という形になっている、ここの選択肢をもっと増やしていくとか、求めていなくても利用できるようになっていくといいなと思っております。
 私自身の今の乳腺クリニックでのチーム医療の実際の御紹介をさせていただきたいと思います。都心部に位置します年間100件ぐらいのオペをしている乳腺クリニックなんですけれども、そこには腫瘍内科と診断医、オペをするお医者さんもいます。薬剤師、看護師、そして私が専門看護師として参加しているのと、週に2回体験者のスモールミーティングが行われている体制です。
 補助療法をする場合の流れとしては、勿論どういうケースでどういう治療をしていくのかという事前カンファレンスと、医師、看護師、がん専門看護師、薬剤師で行っていますが、診療前の面接を専門看護師としてさせていただいています。患者さんが治療についてどういう心構えをされているのかとか、治療について熟知されている方もいれば、予備知識を入れておかないと医師の説明がわからないという方もおられるので、その準備をするという診察前の面接をさせていただいていて、そこで今日難しい話ができる状況なのかどうかのスクリーニングもさせていただいたり、乳腺なのでお一人で話を聞きに来られる方がおられますので、家族と一緒に聞いた方がいいのかどうかもそこでスクリーニングしながら、その状況を踏まえて医師の診察につなげるような体制をとっております。
 また、同時に体験者のスモールミーティングにも参加されたりしますので、そこでうまく協調されればいいんですけれども、できない場合のフォローアップや、もしくはスモールミーティングで積み残しの課題があれば、またこちらに宿題が飛んでくることもあったりしまして、そういう形で大きなチームではありませんが、個々少ないメンバーでやっているということもありますけれども、それぞれの役割を生かしながらチームを組んでおります。
 そして、薬剤師からは準備が整ったところで、しっかり薬剤の説明をするという体制でやっているんですが、幾つか拾えなかった問題が拾えてきたなと思っております。ちょうど先日、抗がん剤中に妊娠をされた患者さんがおられました。妊娠をしたので抗がん剤はやめるという選択をされている御本人と、抗がん剤中なので妊娠をあきらめるという選択をされている御主人との間にちょうど私が立つことになったんですけれども、結局、クリニックの医療チームだけでは経験も少ないということもあるので、あえて抗がん剤を妊娠中も提供している施設で再度セカンドオピニオンを受けてきてもらって、その結果を聞いた上で、結局中絶をするという選択をされたんですが、メンバーが増えるとか患者さんの声を聞く人が増えることによって、見過ごされがちな意見を取り上げていただけたのではないかと思っております。患者さん自身は泣いていたり、不安でおられるので、自分はもう少し産める可能性を考えたいということを言えないでおられたところの代弁が、看護師としてできたかなとは思っております。
 まとめです。チーム医療の課題として4つ挙げさせていただいております。患者主体の医療であることを再認識してほしいということです。チームで組んでいるのがチーム医療ではないということです。そして、EBMが進んできておりますが、実はEBMで解決できることはそんなに多くありませんで、それにのっとっていかない場合のチームの求心力とていいますか、まとまりというのがとても重要になっていきます。
 そして、チームの構成はたくさんいればいいというわけではなくて、アウトカムとコストにどう見合うかというところでは、看護師が安価というのは自分としては寂しい限りですが、140万人からの看護師が全国で活動しているので、そういう人たちの手をもう少し活用することによって、ベーシックなクオリティを上げていくことができないかと思っております。
 各専門職の責任ある行動というのを最後に挙げておりますけれども、実は看護職自体ががん医療についてまだ特化して学習するというのが進んでいませんが、既に250人のがん専門看護師が全国で活動を始めていたりします。ただ、その活用についてまだ積極的に進められていなくて、がんではない患者さんのサポートをしている率も少なくないと思っております。時代を早く変えていくためにも、そういうスタッフの起用が前向きに進むような計画が盛り込まれることを願っております。
 以上です。
○門田会長 ありがとうございました。
 予定の時間を回っておりますが、15分延長させていただいて、先ほども申しましたが、質問を中心に出していただいて、ディスカッションは次回に回していただきたいと思います。どうぞ委員の方、御質問をお願いいたします。
 花井委員どうぞ。
○花井委員 がん患者と家族の団体でございます。今日は大変参考になるお話をありがとうございました。私たち患者側の意見からしますと、チーム医療が面として図としてまだまだなかなか理解しにくいなというのがあります。例えば、今日の手術、放射線治療の意見の取りまとめの中にもあるんですけれども、やはり外科治療と放射線治療を比較した上で、そのリスクとベネフィットを患者に示すことが必要ではないか、こういう御意見が出るのも、やはりそれが現場でうまくいっていないと、これは患者さんの声としてもあります。そういう中で、どのようにチーム医療が進んでいるのかというのが、先ほど申し上げたように、なかなか見えにくい。それは治療を受けてから始まるのか、治療前から始まっているのか。そして、専門看護師として病院での経験も豊富におありになるかと思いますけれども、今の御勤務のクリニックのチーム医療と拠点病院などの大規模な病院でのチーム医療には違いというのがあるんでしょうか。また、特徴としてもあるんでしょうか。そこを少し教えていただけないでしょうか。
○梅田参考人 違います。大病院の場合とクリニックの場合には、同じ看護師といってもいろいろな種類の看護師が何百名といる施設と、ここのクリニックには一般の看護師とがんの専門看護師の2種類しかいないですから、意思の疎通が図りやすいので、多職種から理解されやすいということがあろうかと思います。ただ、大病院の場合には逆に質が担保していきやすいだとか、治療の前か後かで、いつチーム医療が始まるのかということですけれども、やはりチーム医療というか、もともとのつながりがあった上で治療計画は話し合われるとスムーズにいこうかと思いますが、その理解がないで、ただただ依頼をするという形の連携がまだまだ多いことが、患者さんを不安にさせている要因ではないかと思っているんですが、そこは是正していけるだろうと思っています。最近のいろいろなお医者さん同士の絡みを持たないといけないということが、がん対策推進基本計画の中にも入っていたりするので、そういう場が持たれるようになることで、チーム医療は大きな病院でも進んできている、連携が取りやすくなっているという印象は持っていますが、まだまだ患者さんには届いていないのかもしれないなと思います。
○花井委員 1点先ほど御質問申し上げましたチーム医療の精神とか機能というのは、治療の前から、つまり、治療方法を提示されるようなところから始まるのか、それとも治療を受けてから始まるのかという考え方に関してはどうなんでしょうか。
○梅田参考人 前から常にあるものだろうと思います。質問の意図を私がわかっていないかもしれないですが。
○花井委員 なかなか治療の判断とか治療法の提示のところから患者にとって選択肢がスムーズに示されていないという現状があると思うんですね。もし、チーム医療の精神や機能というものが、そういう時点から発揮されていれば、こういうことはないのではないかと思ったんです。
○梅田参考人 そうですね。ただ、そういうつもりというか、つながりの中で他の専門職の機能をどれくらい知っているかということがチームとしてつながれるかどうかだと思いますので、それは初めてつながるケースもあれば、連携したことがあるケースもあったりすると、機能は1回1回違ってくるのかもしれないなと思いますけれども。
○花井委員 ありがとうございました。わかりにくい質問で申し訳ありませんでした。
○門田会長 眞島委員どうぞ。
○眞島委員 これは以前もこの協議会で話されたことなんですけれども、4ページ目に書いてあります早期からの緩和ケアチームの介入とその延命効果に関して、『The New England Journal of Medicine』に出ていますが、がん患者さんも是非期待するところではあると思うんです。
 それから、一番後ろに出ていました応援するという言葉、これは進行がんの患者さんにとってもうれしいことで、是非是非こういうチーム医療を受けたいという患者さんが大勢いらっしゃると思うんです。あるべき姿として、チーム医療が日本全国津々浦々のがん拠点病院に完備されているというのを100点とすると、現状はどのくらいいっているんでしょうか、何点ぐらいをおつけになりますか。個人的な見解で結構です。
○梅田参考人 私が点数をつけていいのかということはありますが、東京で活動していて、多少地方にも行きますけれども、30点いっていないかとは思っています。
○眞島委員 ありがとうございます。
○門田会長 ほかにございますか。中川委員どうぞ。
○中川委員 私は、緩和ケアチームにもずっとかかわってきたんですが、特に緩和ケアにおいて一番大事なのはナースだと思うんです。そういう点では大変重要な御発表だったと思いますが、花井委員の御質問に関して、現場から見ますと、最初から多職種でかかわることは基本的にないです。少なくとも私のいるところではなくて、そのことはセカンドオピニオンを阻害している要因の一つかもしれません。
 ナースが大事だというのは重々わかるんですが、多職種というキーワードの中では、特にアメリカでは、それこそニューイングランドの成果などには、ナース以外のさまざまな職種がかかわるわけですが、国家公務員でほとんどないわけですね。放射線治療の分野では医学物理士などもそうなんですが、これをこういった緩和ケアの領域でどうしていくのかということについて御意見がもしあればいただきたいのですが。
○梅田参考人 多分、緩和ケアの領域でのチーム医療と、今の放射線のいろいろな技師。
○中川委員 いえいえ、緩和ケアでいいんですけれども。
○梅田参考人 コストとの絡みがとても大事だろうと思っていますが、がん拠点病院でもたくさんがんのケースを診ている施設から、割合が低いところがあったりすると、チームメンバーとしてそろえて効果を上げるかどうかも差が出てくるので、がんセンターのようなところと地方のがん拠点病院とが同じメンバーがいればいいというものではないと思いますが、私自身が考えているのは、そういう人たちがどこにいるのかが都道府県の中で明確になっていて、必要なときにコンサルテーションが頼めるような体制が組まれていくことこそが均てん化につながるのではないかと思っています。私自身も今、がんの専門看護師で東京におりますけれども、結局はがんの専門看護師がいない地方の病院でコンサルテーションを頼まれることがあったりするので、中で何かやっていくだけではなくて、外づけのリソースを活用するようなシステムができていくことによって、チームメンバーはおのずと広がっていくことができるだろうと思っています。
○中川委員 報酬という言葉が出て、それは確かに重要だと思うんですね。例えば、緩和ケアチームの中ではナースの存在というのは診療報酬上に組み込まれていますが、例えば、臨床心理士などが費用化されない。そうすると結局、多職種といっても医師、ナース、せいぜい薬剤師にとどまる。これは本当の意味での多職種ではないと思っています。
 それから、もう一つナースについて言うならば、やはり認定看護師も放射線治療に関しても認定看護師がいるんですが、大変な努力をして取っても反映されない。そうすると、結局ほかの仕事をやらざるを得ない。この辺は是非今後、多職種ということについて議論する必要があるのではないかと思いました。
○門田会長 ありがとうございました。
 それでは、川越委員どうぞ。
○川越委員 貴重なお話をありがとうございました。理念とかがどういうことをやっていらっしゃるというのはよくわかったんですけれども、30点という非常に厳しい点数をつけられたんですが、現場で何が問題なのか、チーム医療ということでなぜ30点というのをつけられたのか。制度的にこういうことを改革したらいいんじゃないかとか、そういう定言的なものがあったら教えていただきたいと思います。
○梅田参考人 うまくいっている場面もたくさん見ています。特に私がチームをつながせていただいているのは、圧倒的に多いのは在宅と病院をつなぐというところなんですけれども、お医者さんたちが圧倒的に時間を使うことができないので、地域の先生が何を聞きたいのかがわからないということと、主治医が何を伝えたいかがわからないというところでうまくコミュニケーションがとれない、時間がとれないということがあって、それができないとつながれないチーム医療では、もう無理なんだろうなと思っていまして、その間をナースがとらせていただけるようになった方が、情報が円滑に行き来するのではないかと思ったりするところです。若いお医者さんは比較的いろいろな専門家の意見を聞きたがられますけれども、経験を積まれたお医者さんたちは複雑にすることを拒まれることがとても多いような気がしていますので、そこをいろいろな科のお医者さんがかかわったり、いろいろな職種がかかわることで複雑にならないんだということをいかに見せようかと努力しなければいけないことが結構看護師としてはあったりするので辛口になってしまったような気がしますが、うまくつなげるとか、患者さんが幸せになるんだということがわかれば、経験を積まれたお医者さんたちも在宅の先生にうまく手紙を書いてくださったりということはあったりするので、これはもっとナースの努力で点数を上げていけるのだろうと思っています。30点は辛かったんですかね、すみません。
○門田会長 原先生、簡単にお願いします。
○原委員 患者さんのメリットは当然のことなんですが、もう一つ大きな点として、医療者、特に医師自体が楽になるというメリットはもっと強調してもいいんじゃないかと思います。例えば、終末期ケアなどしているときは、我々は特に小児ですので、担当医・主治医が1人で引き受けないといけないというシチュエーションが非常に多かったわけです。そうすると、非常に心身ともに疲れ果てるわけですが、そこにいろいろな職種、心理職だとかナースという人たちが入ってくれることによって精神的に随分楽になる。だから、お互いが楽になるという言い方はちょっとおかしいかもしれないけれども、お互いの許容量が上がるということをもっと強調されて、こういう多職種チームをつくっていくということを訴えられるのがいいんじゃないかなと。
 あともう一点は、なかなか心理職がいないので、やはり看護師の仕事は非常に重要だと思うんですよね。専門看護師というのは大学院まで行ってとなると、途中からはなかなか難しい。ですから、現実的なところで認定看護師をもっと増やして活用していくとか、そういう看護の世界の方から、看護協会とかそういうところからもどんどん教育をしていっていただきたい。しょせん看護師さんも人に依存するわけですよね。それは我々の世界もそうですけれども、お互いに高めていくという努力をしていっていただけたらと思います。
○門田会長 ありがとうございました。
 簡単にお願いします。
○天野会長代理 私も患者として10年前にチーム医療の先端とでも言うべき移植病棟で血液内科医や化学療法、認定看護師、薬剤師、栄養士、MSW、多職種の中でチーム医療を受ける経験がございまして、明らかに一般の病棟よりも患者にとってはいいということはよくわかっているんですが、その中で特に化学療法認定看護師が大きな役割を果たしていたと思っているんですけれども、実際に今出ているように、養成について実際にそうなると医療現場を離れなければいけない、それは病院にとって非常に負担が大きい。なので、そもそもそこに参加することができないという声をたくさん聞くんですが、その辺りについて何か制度的な改善点とか要望があれば聞かせていただきたいんですけれども。
○梅田参考人 看護職が専門職だと思えば学習をあえて積むことについて躊躇する必要はないのではないかと思っています。ただ、病院に結構そういう機会をつくってもらえているというのは、逆に看護の業界は恵まれているように思うところもありますが、地域格差が大きいです。なので、専門看護師、認定看護師がたくさんいるところについては、教育機関があるところではたくさん養成されていますけれども、教育機関がないところで養成が進まないという現状があったりするので、地方の格差をどう埋めていくかというのは、授業料の免除なり地方と是正するものがあると、地方の看護師が学習する機会にたくさん当たることができるのではないかと思っています。
○門田会長 予定した時間が来ましたので、今日はこれで終わりにしたいんですが、今までのように今日の参考の方々の御意見を我々が聞かせていただいて、改めて今回のテーマについて考えた内容で、特に御発言があれば事務局まで届けていただくと。それについてまた集中審議して、改めてブラッシュアップするという形でやっていきますので、その点よろしくお願いいたします。
 それでは、本日はここまでといたしますが、次回は化学療法とドラッグ・ラグについてまとめる案を出したいと思います。それからまた、在宅医療とチーム医療に関する集中審議を行うと。そのときに保坂先生から、医師会で公衆衛生がん対策委員会のがん地域連携クリニカルパスの取り組みワーキングで結論が出るということで、少し御発表いただいてから集中審議に入るという形でやらせていただきたいと思います。
 それから、一つアナウンスなんですが、次にがん予防あるいはがん検診ということを予定しておったわけですが、がん登録を先にやらせていただきたいと思っております。それで、がん登録についてどなたか説明していただける方があれば推薦していただきたいと思います。それは9月30日までに何とかお寄せいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 本日はこれで終わりたいと思いますが、事務局から何かアナウンスはありますか。
○鷲見がん対策推進室長 ありがとうございます。次回開催は10月20日を予定しております。本日、集中審議いただきました化学療法とドラッグ・ラグにつきまして、またヒアリングを行いました在宅医療、チーム医療につきましての意見でございますが、10月9日までに書面にて事務局まで提出していただきますよう御協力をお願いしたいと思います。
 また、このほか御提出・御説明されたい資料がある場合につきましても、同日10月9日までに事務局へ御提出くださいますよう、お願いいたします。
 以上でございます。
○門田会長 以上で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。


(了)
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健康局総務課がん対策推進室

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