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2011年9月30日 労働政策審議会安全衛生分科会議事録

労働基準局安全衛生部

○日時

平成23年9月30日(金)


○場所

厚生労働省専用12会議室


○出席者

委員:五十音順、敬称略

相澤好治、明石祐二、浅井紀子、犬飼米男、小野真理子、小畑明、日下部治、新谷信幸、高橋信雄、谷口元、角田透、土橋律、冨高裕子、縄野徳弘、古市良洋、三浦武男、三柴丈典

事務局

宮野甚一 (安全衛生部長)
高崎真一 (計画課長)
田中正晴 (安全課長)
椎葉茂樹 (労働衛生課長)
半田有通 (化学物質対策課長)

○議題

(1)東電福島第一原発作業員の長期健康管理に関する検討会報告書について
(2)東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針(案)について
(3)「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令案要綱」について(諮問)
(4)その他

○議事

○相澤分科会長 おはようございます。参加される委員が全員参加されておりますので、
第54回の労働政策審議会安全衛生分科会を開始したいと思います。よろしくお願いいた
します。本日は、大山委員、瀬戸委員、中村委員、中田委員が欠席されています。
 議事に入ります前に、委員の交代がありましたので、紹介させていただきます。労働代
表の高橋委員が退任されまして、全日本運輸産業労働組合連合会中央書記長の小畑明委員
が就任されましたので、よろしくお願いいたします。一言お願いします。

○小畑委員 ご紹介いただきました小畑でございます。よろしくお願いいたします。

○相澤分科会長 また、事務局におきましては、安全衛生部長と労働衛生課長に異動がご
ざいましたので、どうぞ一言ご挨拶をお願いいたします。

○宮野安全衛生部長 安全衛生部長を拝命いたしました宮野でございます。よろしくお願
いいたします。

○椎葉労働衛生課長 労働衛生課長を拝命しました椎葉でございます。よろしくお願いい
たします。

○相澤分科会長 どうもありがとうございました。それでは、議事に入ります。本日の議
題は、東京電力福島第一原子力発電所事故の事態収束のため緊急作業に従事していただい
ております労働者の、長期的な健康管理に関するものです。緊急作業に従事した労働者の
長期的健康管理については、本年5月17日に公表されました、いわゆる政府の工程表に
おきまして、データベースの構築による長期的な健康管理を行うこととされているところ
です。
 1点目の議題につきましては、データベースを構築する必要な項目、健康診断等離職後
を含めた長期的な健康管理の在り方等について、専門家の先生方に検討していただいたと
ころですが、報告がまとまりましたので、内容についてご報告させていただきます。2点
目、3点目の議題につきましては、政府の工程表で示されたデータベースの構築による長
期的な健康管理を適切に実施するため、厚生労働省から指針案および改正奨励案が示され
ましたので、ご審議をいただきたいと思います。最初に、東電福島第一原発作業員の長期
健康管理に関する検討会報告書について、事務局からご説明をお願いします。

○椎葉労働衛生課長 それでは、ご説明させていただきます。資料1をご覧いただきたい
と思います。1枚目は、東電福島第一原発作業員の長期健康管理に関する検討会の報告書
です。まず、1番目の検討の背景です。3月11日に発生しました東日本大震災による東京
電力福島第一原子力発電所事故の事態収束に向けまして、多くの労働者が緊急作業に従事
しているところです。作業が長期化している中、通常の放射線業務とは異なる環境の下で、
緊急性の高い作業に従事していることによりまして、心身の長期的な健康に不安を感じて
いることや、放射線の被ばくにより中長期的に健康障害の発生リスクが高まるということ
が懸念されております。こういった労働者に対しまして、長期的な健康管理を行うことが
必要となっているわけです。また、原子力災害対策本部においては、5月17日に当面の
取組方針を取りまとめています。この中では、一刻も早い事態収束に取り組むことと、ま
た、特に作業員の長期的な健康管理のために、緊急作業に従事したすべての作業員の離職
後を含めて、長期的に被ばく線量等を追跡できるデータベースを構築し、長期的な健康管
理を行うことが示されたところです。
 こうした状況を踏まえて、厚労省におきましては、去る6月27日に検討会を設置しま
した。2つのミッションがあります。まず1つ目は、データベースを構築するに当たって
の必要な項目、2つ目は、健康診断等、離職後も含めた長期的な健康管理の在り方につい
て検討を行ったところです。
 資料の10頁に参集者の名簿があります。相澤先生に座長をやっていただいています。
11頁は、6月27日に第1回を開催し、9月21日の第4回まで、3カ月間、4回にわたっ
て検討したものです。
 1頁にお戻りください。2番目の基本的な方針です。3つほど基本的な方針を取りまと
めています。まず1つ目は、緊急作業に従事した労働者は、離職後も含め自らの健康状態
を経年的に把握する、そして、必要な健康相談や保健指導を受け、適切な健康管理を行う
ことができるようなデータベースを作るべしということです。そのデータベースは、被ば
く線量が大事ですが、これ以外でも、健康状態に関する情報を登録できるとともに、労働
者ご本人が自らの情報を参照できる仕組みとするということです。
 2つ目は、緊急作業に従事した労働者の長期的な健康管理を行うためには、この作業に
従事したことによる健康への不安を抱えているということです。また、被ばく線量の増加
に応じ健康障害の発生のリスクは高まるということから、一定の被ばく線量を超えた労働
者に対しては、原則事業者が被ばく線量に応じた検査等を実施することが適当であるとい
うことです。
 3つ目は、離職後についても適切に健康管理が行われるよう、国が離職者を対象とした
健康相談窓口を設置すると。そして、医師や保健師による健康指導の機会を提供し、また、
一定の被ばく線量を超えた方についても被ばく線量に応じた検査等を実施することが適当
であるとされています。
 こういった基本的な方針の下、データベースの構築です。まず項目ですが、データベー
スにおいて管理する情報については、先ほども言いましたが、今後の長期的な健康管理に
活用するということで、次の個人識別情報、これは、ID番号や氏名、所属、事業所、住
所等が含まれます。緊急作業に従事する前や作業従事中、従事後の被ばく線量や従事中の
作業内容の情報、また、健康診断結果等の情報、健康相談・保健指導等の情報、その他、
健康管理に必要な、例えば生活習慣等の情報です。こういった情報について、以下の情報
については事業者のほうから提出を求めるということです。それは、個人識別情報や作業
に従事している間の被ばく線量や作業内容、作業に従事している間に受けられた各種の健
康診断の結果です。なお、必要に応じて、財団法人放射線影響協会のほうで被ばく線量登
録管理制度、手帳制度がありまして、こういった制度にかかわる労働者の情報についても、
労働者の同意を得て活用できるようにすることが望ましいということです。
 データベースの項目ですが、7頁の表1でデータベースの項目を示しています。まず1
番目は、先ほどご説明した個人識別情報、氏名、生年月日、性別等です。2番目が、作
業・被ばく線量の情報です。3つ目が、健康相談・保健指導等の情報です。次頁、健康診
断・検査情報です。これには、先ほども言いましたが、生活習慣も含まれて、喫煙などの
情報なども入っています。9頁に補足の説明資料があります。
 3頁にお戻りください。データベースの項目については先ほど説明したとおりですが、
適宜見直しを行えるものとするということです。この項目ですが、労働安全衛生法に基づ
く定期健康診断のように、法令に基づいて定期的に実施される項目と、任意で実施される
項目の両者が含まれているものです。被ばく線量に応じた検査や、日常診療の一環として
行われた検査など、労働者の方が任意に受けた検査の結果等についても、同意を得て登録
できるようにしているところです。
 このデータベースで管理される情報ですが、将来、一定の条件の下、疫学調査等に活用
される場合も想定していまして、その場合については、適切な調査計画に基づき実施され
るべきだということです。また、必要な同意ですが、可能な限り、このデータベースを登
録されたことを通知する際などに包括的に行うことが望ましいとされています。
 続きまして、データの参照です。特に、労働者本人が被ばく線量を含めた自らの情報を
参照することができるというのがポイントですが、これにつきましては、個人情報の保護
の観点から、ご本人が窓口で参照するということです。また、現在、全国各地から緊急作
業に従事されている労働者がいるということを踏まえまして、利便性を考慮し、一定数の
窓口を全国に設置することとするということです。そして、データベースの参照に当たり
ましては、本人確認から円滑かつ適切に行われるよう、登録証を交付するということです。
さらに、被ばく線量に応じた検査を実施する場合、過去の結果や線量を容易に確認できる
手帳の交付を行うということです。
 4頁は、離職後も含めた長期的な健康管理の在り方です。まず、基本的な考え方を3つ
示しています。第1パラグラフは、線量に応じた検査の対象者のことを言っています。ま
ず、緊急作業従事者においては、電離則に基づく放射線業務従事者の1年間の被ばく限度
が50ミリシーベルトでして、これを超えて被ばくした労働者がおられます。また、さら
に、電離則に基づく緊急作業時における従来の被ばく限度が100ミリシーベルトで、これ
を超えて被ばくした労働者もいるということから、こういった被ばく線量の増加に伴う健
康障害の発生が懸念されているところです。このため、現時点での医学的な見解を踏まえ
まして、被ばく線量に応じた検査等の実施が必要であると。また、安定ヨウ素剤の使用等
についても留意すべきだということです。
 次のポイントです。先にも述べましたが、通常の放射線業務とは異なる環境下で緊急性
の高い作業に従事したこと自体により、労働者が心身の長期的な健康に不安を感じること
が想定されるということです。そのため、現に事業者に雇用されていない労働者や、事業
者による通常の健康管理が行われていない方すべてに対し、被ばくした線量にかかわらず、
国が健康相談窓口を設けまして、医師や保健師による保健指導の機会を提供するというこ
とです。
 次の基本的な考え方ですが、緊急作業時の企業に継続して雇用される労働者や、緊急作
業や放射線業務に現に従事している労働者に対する被ばく線量に応じた検査については、
原則事業者が実施すべきですが、中小企業において放射線業務に従事しなくなった方や、
放射線業務を行い企業に転職した方につきましては、事業者が通常の健康管理を行います
が、国が被ばく線量に応じた検査の機会を提供することが適当であるということです。そ
して、こういった検査につきましては、あらかじめ十分説明しておくことが望ましいとい
うことです。
 (2)は、具体的な健康管理の項目です。アは、緊急作業における被ばく線量にかかわら
ず対象とするものです。?ですが、通常の業務とは異なる環境の下で作業をやったという
ことですので、こういった精神面への影響に対するケアを含めた通常の健康管理を事業場
において行うということです。なお、離職者および放射線業務を行わない企業へ転職した
方については、これらを対象にして国が健康相談窓口を設けるとともに、医師、保健師に
よる保健指導の機会を提供するということです。?ですが、国またはその他適切な実施主
体が実施する健康管理に関する取組みについては、案内を行い、参加者を募ることにして
います。これらの取組みは調査研究の場合ですが、準備面にも配慮し、適切な手続を経た
上で、その趣旨等について対象者に十分に周知することが必要だということになっていま
す。
 次に、50ミリシーベルトを超えた方を対象とする検査の項目ですが、年1回、一般的
な健康診断の項目に加えて眼の検査を受診できる機会を設けることとしています。この検
査の内容ですが、細隙灯顕微鏡による検査を行うということです。これについては、標準
化された方法により、水晶体の写真を撮影することが望ましいとされています。そして、
ウの100ミリシーベルトを超えた方ですが、年1回、甲状腺の検査とがん検診を受診でき
る機会を設けることとしています。甲状腺の検査ですが、採血による甲状腺刺激ホルモン
やfree T3、free T4の検査を実施するということです。これらの検査の結果、被ばく線量
等から医師が必要と認めた場合においては、頚部の超音波検査を実施することになります。
???は、胃がん、大腸がん、肺がんの具体的な項目です。?ですが、1年以内に1回、
白血球百分率の検査を実施することが望ましいとされています。これについては、既存の
検診の中で合わせて実施することが適当であるとされています。
 3番目は、定期的な見直しです。いまご説明しました健康管理の具体的な実施項目事項
については、医学的知見の進歩や検査内容の変化が想定されるということから、3年後を
目処に見直しを行うということです。
 5は、データベースの管理、健康診断等の事務を行う主体です。繰返しになりますが、
長期的に適切な健康管理を行うために、労働者の被ばく線量のみならず、健康情報が継続
的かつ長期的にデータベースに反映される仕組みというのが大事です。そして、離職前に
かかる情報は事業者から提出を求めるとともに、離職後の健康診断結果等については、可
能な限り労働者の方々の負担が少ないように情報がデータベースに反映されることが必要
であるとされています。こういったことから、このデータベースの管理や被ばく線量に応
じた検査の事務を行う主体ですが、継続的かつ長期的に、特に10年、20年、30年と続く
わけですが、こういった長期的な業務を遂行することが可能であり、またデータの参照・
照会に対応できる一定数の窓口を全国に保有し、被ばく線量に応じた検査を実施する機関
と密接に連携できることが必容です。このため、これらの条件を兼ね備えた機関に行わせ
ることが適当であるとしています。なお、被ばく線量に応じた検査ですが、この実施機関
を選定する際には、地域の医療体制の実情に合わせて適切な機関を選定することが望まし
いとされているところです。
 以上、ご説明させていただきましたが、もう1つ、参考資料1というのがあります。こ
れは、いまご説明させていただきました検討会の報告書を、事務局で、わかりやすく1枚
のポンチ絵にまとめたものです。これも参照していただければと思います。上のほうでデ
ータベースをきちんと整備し、個人識別等の情報を提出していただき、厚生労働省のほう
ではしっかりと管理をすると。そして、具体的な健康管理ですが、すべての作業従事者に
ついては登録証を交付し、法令に基づく検診や、メンタルヘルスケアを含めた健康相談、
健康指導を実施すると。それから、50ミリシーベルトを超えた方については、白内障に
関する眼の検査を実施し、100ミリシーベルトを超える方については、甲状腺の検査やが
ん検診を実施すると。それから、費用ですが、事業者が負担をしていただくと。ただし、
50ミリシーベルトを超える方については、転職したあとに放射線業務に就いていない場
合や、中小企業のみですが、緊急作業時の企業に継続して雇用されているか、放射線業務
に従事していない場合、それから、現に事業者に雇用されていない場合については、国が
費用負担をするということです。以上です。

○相澤分科会長 はい、ありがとうございました。それではただいまのご説明に対して、
ご質問等をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○眞部委員 2点要望させていただきたいと思います。いまこの瞬間も福島原発の現場で
は、多くの方が事故の収束に向けて懸命な作業を行っているわけですが、これらの皆さん
方の労働安全対策について、事業者だけではなくて、是非、国としても全力を挙げて取り
組んでいただきたいというのが1点目です。
 2点目については、データベースの構築の問題です。我々が従事している交通産業にお
いても、浪江にあるバスの営業所が閉鎖されまして、数十人にわたる組合員が、本社のあ
るいわき市に統合されまして、若い組合員、とりわけ小さい子どもさんがいる組合員の皆
さんが、やはり被ばくの恐れから退職をされるという、半数以上の方が退職されるという
ような状況も報告されています。
 そういった意味で、現場で作業し、日々被ばく量が増加しているという状況の中で、こ
うした方々が将来のがん等の恐れという大変強いものがあるわけですが、そうした意味で
も皆さん方の被ばく線量の管理、あるいは健康管理をしっかりやっていただきたいという、
そのためのデータベースの構築が必要不可欠だと思っているところです。
 ただ、3月の事故から6月まで作業された従事者の皆さんの中から、まだ、どれだけ被
ばくされたのか、その線量が報告されていない方が243人、連絡先不明者が65人いると
いうお話も聞いているところで、こうした皆さん方に対する徹底した調査を実施して、緊
急作業に従事した皆さんに、こうした漏れがないように、是非全力で取り組んでいただき
たいということを、この2点を要望させていただきます。

○相澤分科会長 はい、ご要望ですが、計画課長どうぞ。

○高崎計画課長 野田新総理の施政方針演説においても、この現場で作業されている方々
のことについて触れられておりましたが、この緊急作業に従事されている方の健康管理に
ついては、まさに国が責任を持ってやっていくという覚悟でして、今日もいろいろお諮り
させていただいているということです。
 線量について所在不明等によって、先月の段階で65名の方が行方不明ということです
が、その後、関係者のご協力もいただきまして、その数はまた減っているようですが、い
ずれにしましても、そういう作業者がゼロになるようにこれからも引き続き努力をしてい
きたいと思いますし、データベースについて国としてしっかり取り組むということについ
ては、まさにそういうことでやっていきたいということです。

○相澤分科会長 はい、よろしいですか。では古市委員どうぞ。

○古市委員 いまのご意見に近い話ですが、4頁にその事業者に雇用されていない者がい
るという、そういう認識があったり、事業者による通常の健康管理が行われていない者が
いるという、そういう認識があるということは大変結構なことなのですが、この事業に従
事している人は、非常にたくさんの割合で建設の作業に従事している人が多いわけです。
建設業では雇用されずに働くという働き方が非常にいま日常的に大量にありまして、事業
者に雇用されていない者が、この作業に従事しているという、少しいるということではな
くて、非常にたくさんいるということでして、離職したあとも、しっかり健康管理をやっ
ていくのですよという考え方は大変結構なのですが、いまお話がありましたように、連絡
がとれないという、そういうことにすぐなります。課長は行方不明とおっしゃいましたが、
厚生労働省が知らないだけで、本人は行方不明などという認識は全然ないわけでして、こ
の通知をしたときに、住所を移動していれば通知が返ってくるということが考えられるわ
けですが、そういったところの追跡といいますか、きちんと連絡がとれるようにできる方
法、しっかり履行が確保される手段をどのように考えておられるのか、教えていただけれ
ばありがたいと思います。

○高崎計画課長 後ほど私どもとしてどういう形でこの対策を進めていくかについてはご
説明させていただく予定ですが、いまの点についてももちろん事業者に雇われている間に
ついては事業者を経由して把握していくということですが、その後、別に移られるとか、
そういう方については基本的には通知文という形でやるということですし、それについて、
そういう意味では労働者、作業員の方にもご協力いただかないといけないということだろ
うと思います。例えば転居するなり、変わるということであれば、それについてご連絡を
いただくということでフォローしていくという、そういうことについては万全を期してい
きたく思いますが、いかんせん、作業員の方のデータベースにご協力いただかないと、返
事がこないとなってしまう。あるいは所在変更されないままにどこかへ行って、追跡でき
ないということになってしまいますと、私どもとしても困ってしまいますので、その辺は
注意喚起、協力要請等も合わせてやりつつも、検討してやるべきことはしっかりやってい
きたいと思います。
○相澤分科会長 よろしいですか、はい、どうぞ。

○古市委員 いまのご答弁をお聞きしますと、もちろんそういう危険な作業に携わった本
人が協力をするということは、本当は当たり前のことなのですが、そういうことを前提に
して、仕組みを作ってしまうと、本人が連絡してくるであろうということを前提にしてく
ると、有効に機能しなくなるということを、私は非常に強く懸念しますので、本人が連絡
をしてこなかったときに、どういうように連絡を取れるようにするかということについて
は、相当よく考えていただいて、事前に手当てをしておかないと、仕組みは作ったけれど
も、十分有効に機能しないということになり兼ねませんので、そこは是非、検討をお願い
したいと思います。

○相澤分科会長 ご要望ですので、よろしくお願いします。ほかには、三浦委員どうぞ。

○三浦委員 建設業会として国が被ばくデータを管理すること、また健康相談の窓口の設
置、継続的な健康診断については、いずれも望ましい方向であり実施すべきと考えており
ます。
 その中でお聞きしたいのですが、福島第一原発という形の中で、いま3キロメートル以
内について登録センターについてやられていると聞いているのですが、それ以外の放射線
業務以外の作業者の管理も一応同様とするのかどうか、する場合はその範囲はどのように
考えられているのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
 あと、該当作業従事者であって、既に離職されている方も対象とするのかどうか、この
辺も教えていただきたい。それと、現在、先ほど言いましたが、財団法人放射線影響協会
で放射線従事者の中央登録センターに情報集約されているという形になっていますが、こ
の放射線業務の従事者の中で、今後、これを国が一元に管理するという形になったときに、
両方で重複するような、それだけはちょっとやめていただきたい。どちらか1つで一元管
理していただけるようなシステムにしていただきたい。
 それと現在、東京電力への報告とまた別に、監督署にも毎月被ばく量の報告を求められ
ているという形の中で、今後は国が管理されるということであれば、もう報告をする必要
がないのかどうか、その辺もちょっと教えていただきたいと思います。

○高崎計画課長 対象者については今回のデータベースについては、福島第一原発の緊急
作業に従事されている方ですので、基本的には原発の外でいろいろ作業されている方につ
いては対象としては考えていない。中だけです。中だけといっても、例えばそこに作業員
を運ぶためにバスを運行されている方とか、そういう方も対象になりますが、要するに基
本的に福島第一原発内の事故収束のために作業をされている方ということです。離職者に
ついてはもちろん対象にしているということです。
 あと、放射線放管手帳との関係ですが、そういうご指摘です。あちらは民間の、国から
見ますと文科省の認可している法人ではありますが、取組み自体は公的なものではなくて、
民間ベースのものです。ただ、我々は先ほど冒頭に申し上げましたように、国としてきち
っと責任があるということで、そういう意味で民間ベースの取組みにお願いするというこ
とではなくて、国として責任を持ってやるということで私どもは考えておりますが、その
ときに放管手帳をどうされるか、民間の取組みの話ですので、国としては例えばやめろと
か、国でやるからもういいとか、そういうことにはなりませんので、そこは国としてやる
ということを前提に、どういうように公益法人の、むしろ私どもとして活用はさせていた
だくのですが、全部をうちが引き取って、何もしないかどうかということについては、民
間の団体がお決めになるという話だろうと思います。
 届け出についてはご案内のとおり、福島第一原発においては建設作業に従事されている
方は非常にたくさん入っておられまして、まさに下請け構造の中でされていますので、
個々の下請け会社から報告をいただくということよりも、むしろ元請けのほうに責任を持
って出していただくということのほうが確実なものですから、いまそういう形でやってい
ます。
 あとでご説明しますが、今後、法的に手当てすることによって、いわば法定上の義務と
して提出していただく主体は事業者ですので、そういう意味では個々の事業者が国に対し
て、監督者に対して提出していただくことになりますが、そこを確実に実施するための手
法ツールとして、引き続き元請けに責任を持っていただいてやっていたほうが、下請けな
らどんどん中小、零細になってまいりますので、事務処理能力ということについても一定
限度ですので、そこは法令上の報告主体は個々の事業者なのですが、情報を確実に国とし
て認定していただくための手法として、元請けを通じてやらせていただくということにつ
いては、引き続きやっていきたいと考えておりますが、それは東電経由ということではな
くて、個々の元請けから出していただくということになろうかと思います。

○相澤分科会長 三浦委員よろしいでしょうか。

○三浦委員 はい。

○相澤分科会長 では日下部委員どうぞ。

○日下部委員 この制度自体検討されたことについては、大変素晴らしいことで是非やっ
ていただきたいと思いますが、3点だけお伺いしたいと思います。まず、2頁のところで、
個人識別情報、それから研究作業事業前といわれますが、いろいろ報道ですと海外の装置
を導入したりしていますと、当然外国籍の方も含まれるということが十分想定されると思
います。この個人の識別のところで国籍情報の問題はどういう議論をされたのかというこ
とと、作業前の情報が、外国籍の方がどれほど正確に把握できるかという辺りが、どんな
ご議論があったか、それをお伺いしたい。
 実施体制に関しては、3頁のデータの参照のところで数行目のところに、一定数の窓口
と書いていますが、大体具体的にどのぐらいのところで、何箇所ぐらい、どういう施設を
使っておやりになるかというご議論が当然あったと思いますので、それをお伺いしたい。
加えて実施可能性という点では、5頁のイのところの?というのがありますが、水晶体の
写真とありますが、望ましいというところがありまして、ということは、これはなかなか
読み方が難しくて、実施が各機関でできるかできないかということなのか、あるいは標準
化された方法というのを統一化するのが難しいのか、こういう実施体制の問題があると思
います。
 6頁目のところで、5番ですが、特にご説明された課長のお話を伺うと、かなり長期に
わたる。そうすると、この制度を導入して実施をしていく上で、行政コストは一体どのぐ
らいかかるのかというような試算についてありましたら、お教えいただきたいと思います。

○高崎計画課長 外国人の方については国籍も問うということです。現状どのぐらいの方
が入っておられたかというと、手元にデータがありませんので、次の機会にでもご報告さ
せていただきたいと思います。窓口については緊急作業に従事されている方は全国から応
援でも来られてきていますし、元の住所に帰っておられるということですので、当然福島
なり、被災3県に限らず、そういう緊急作業におられるような都道府県については窓口を
置いていくという考え方です。逆にそういう作業者がおられないにもかかわらず置く必要
はないわけですので、そういう意味では都道府県全県に窓口を置くという考え方ではなく
て、必要に応じた窓口は置いていくという考え方です。

○椎葉労働衛生課長 眼の検査ですが、細隙灯の顕微鏡による検査は大体ほとんどの眼科
の医療機関でできますが、水晶体の写真を撮影する所はすべてできるわけではないので、
その点についてはそういう方法でできる所でやっていただくということになるかと思いま
す。
 予算の話でしたが、これ関連で、データベースの構築に二次補正予算で8,900万円を計
上しています。三次補正でデータベースの運用で1億7,200万円を要求中でして、来年度
の平成24年度の当初予算においては、データベース運用で6億2,100万円をいま要求中
です。

○日下部委員 ありがとうございました。

○相澤分科会長 ほかにはいかがでしょうか。

○浅井委員 私が1点心配しておりますのは、日本は先進国でありながら、まだまだ病気
や仕事の内容に対する人権侵害、差別、偏見が本当に痛ましい形で存在しています。そう
いう日本の風土がある中で、データベース化をする、連絡をお願いするということになり
ますと、今度一人ひとりの人間の立場に立ってみますと、仕事に従事したことをあえて伏
せたいと。だから連絡したくないという形で連絡を断っていらっしゃる方があるのではな
いか。また、データベース化されていくことによって、自分の今後の人生がどうなってい
くのだろうかということに対して、いわゆる二次的災害で不安を感じて、あえて対応に躊
躇される方がいらっしゃるのではないかと非常に危惧しています。病気であるとか、携わ
った仕事によって、差別や偏見がないように、まずはそのことをきちんと徹底しないと、
なかなか連絡を取れない状態でおきたいとか、データベース化をできたら避けたいという
形に、心情的にいくことのないように、配慮ができたらと切望しています。

○相澤分科会長 ご要望ですが。

○高崎計画課長 ご指摘の点、重要だと思います。私どももこのデータベースに入ってい
る情報はまさに個人情報そのものですので、当然これについて照会できるのはご本人だけ
ということでして、それについて外部に漏れることがないように徹底していきたいと思っ
ております。

○相澤分科会長 よろしいですか。ほかにはいかがでしょうか。

○角田委員 簡潔に説明されているので、参考資料の4についてお尋ねしたいと思います。
事業者にデータの提出を求めるということになっていますが、例えば報告書の4ページに
がん検診で消化管と肺があり、肺については報告書の8ページの第一表にCT検査が示さ
れています。健康診断の項目とされていないものでもあります。そうしますと、事業者が
そのデータを把握することができにくいということがあるのではないでしょうか。個人情
報保護法に定めがあると思いますが、他の法制度からの求めがあれば、データの管理者に
提出を求めることができるということになっていたと思いますが、電離則に基づいて、そ
うしたことに基づいて医療機関が記録して保管している資料等の提出を求めることができ
ると解釈してよろしいのでしょうか。

○高崎計画課長 ご本人の同意を得た上で、医療機関から提出いただくということはあろ
うかと思います。そういう場合はご本人のご判断が必要だとは思います。

○角田委員 そうしますと、データベースのカラムとして枠は設けられていますが、デー
タが収集できないこともある、ということでよろしいのでしょうか。

○高崎計画課長 項目として挙がっていますが、マックス、こういう項目として情報とし
て登録できるようにしておくということです。検査機関なり病院によってメニューも違う
でしょうし、人間ドック等の場合についてはより広くなるということもある。ですので、
この今回の検討会の報告書というのは、結局入れるシステムの中に入れる場所がないと、
一旦できる人たちをシステムで追加していくことができなくなりますので、マックスです
が、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんといって、すべての項目が埋まるということを想定し
ているものではなくて、もちろん個人識別情報ですとか、法令に基づく検査項目について
はきちんと受けていただくことになりますので、そこは埋まるでしょうけれども、任意の
部分については人によって情報が入っていたり入っていなかったりするということも想定
した上、マックスはこれだけのデータベースとしての用意をしているということです。

○角田委員 わかりました。あと、費用負担ということについてですが、先ほど被爆線量
管理に関して元請けとか下請けというお話がありましたが、例えば労働者の派遣にかかわ
る制度では、派遣元と派遣先で有害な作業については派遣先のほうで健康管理を行うこと
になっているわけですが、これは業務の契約がどのようになっているかによるのでしょう
が、また請負ということもありうるので難しいかもしれませんが、発注者のほうに有害な
作業をさせるという前提があるわけですから、さまざまな費用負担、健康の管理に関する
費用負担のことについての配慮や検討などについてはどのようになっているのでしょうか。

○高崎計画課長 そのようなご意見もあろうかと思いますが、安全衛生法においては労働
者の安全衛生について責任を持っていただくというのは、その雇用主たる事業者という背
景になっていますし、それが適当だと思っておりますので、派遣労働者のことについては
派遣元、派遣先に一定の責任分担はしていますが、そういう意味での事業者に責任を負っ
ていただくということでして、肯定的なもの、あるいは国としての制度設計についてはそ
こでやっていくということです。
 それを前提としつつ、いわゆる民間なり、業者間のいろいろな取組みの中で、一部元請
けが負担されていたこともあろうかと思いますが、我々国サイドとしては、それぞれ事業
者の方にお願いをする。ただ、一定で事業者の方にお願いすることが適当でないものにつ
いては国が肩代わりするというのが今回の検討会報告書のご報告ですし、私どもの国基法
を示しているスキームとなっているということです。

○角田委員 胸部CTのようなものは大変経費のかかる検査ですが、ほかにも経費のかか
る検査があると思うのです。そういうものについての例えば離職なさったとか、不心得な
事業者がきちんと実施していなかったとか、そういう場合、やはり国が負担するというよ
うなことになるのでしょうか。

○高崎計画課長 負担すべき事業者でいる方については、事業者にやっていただくという
ことで、事業者にその履行を求めていくということで、国が負担するという考えではあり
ません。

○角田委員 ありがとうございます。

○相澤分科会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

○高橋委員 そういうばく露を受けた人の長期的な観察と、疫学的な要件にも供せられる
ような枠組みを作られたということは大変評価できると思います。それで、大変細かい質
問なのですが、5頁のウのところにの3番、4番で、検査項目がありますが、胃がん検診
をやりまして、例えば胃のエックス線透視を受けました。そうすると、異常所見があった
場合には内視鏡で診るというのが一般的だと思うのですが、これ「又は」となっています
が、そういうツーステップを進んだ場合でも、内視鏡検査まで費用負担してやると。例え
ば中小の人だったら国が負担しますというお考えなのか、それともう1つ、その下の大腸
がんですが、これも便潜血をやりますと、いきおい内視鏡で精査するということになると
思いますが、そういう精密検査とか二次検診検査ですが、そういったことも含めて実施す
る。そしてデータベースにも取り込むということで考えていらっしゃるのかどうかという
ことをお聞きしたいと思います。

○椎葉労働衛生課長 精密検査については、対象に含まれていないということです。

○高橋委員 一般的な健康診断の枠組みと同様と考えてよろしいわけですね。

○相澤分科会長 ほかにはよろしいですか。それではまた後で、もしお気付きの点があり
ましたらお願いしまして、続きまして、東電福島第一原発における緊急作業従事者等の健
康の保持増進のための指針(案)についてご説明をお願いいたします。

○高崎計画課長 ご挨拶が遅れましたが、計画課長の高崎でございます。安全衛生制度に
関する法令等を担当しております。前回の審議会は欠席させていただきましたので、初め
ての方もいらっしゃろうかと思いますが、よろしくお願いいたします。
 それでは私から説明しますが、参考資料の2をご覧ください。先ほどは労働衛生課長よ
りご説明申し上げました検討会の報告書を受けまして、厚生労働省として今回の福島第一
原発における緊急作業従事者の長期的な健康管理というものをやっていくスキームを考え
た全体像が、この参考資料の2ということです。
 例えば事業者が提出していただく項目等については検討会の報告書の内容でやっていく
ということですが、この全体像を実施するにあたり、法令上の手当てをしなければならな
いものが2つあります。1つは事業者と厚生労働省の間の右向きの矢印の所に書いてあり
ますが、こういう情報をきちんと国に責任を持って提出していただかなければならないと
いうことです。これはお願いしますとか、できたら出してくださいねということだけでし
て、義務としてきちんと担保しなければならないということなので、罰則付きですがそこ
の報告義務をかけるために今回電離則を改正して、ここを確実に国に情報提供していただ
くための手当てをするというのが1つどうしても必要になってきます。これがないと回り
ません。
 もう1つ、先ほどの検討会報告書の中にありましたとおり、健康診断をするとか、眼の
検査をする、がん検査をするということを事業者にお願いをするのですが、これも単なる
任意のお願いで、パンフレット等でお願いしますというものではなくて、きちんと法的に
位置づけて、法律上に基づいて国としてきちんと指導していくという体系が必要になりま
す。そのために事業者から緊急作業従事者への下矢印の所に書いてあるとおり、そういう
ようなことをきちんと事業者に立ってやってくださいということを、法令的に手当てする
ために指針を今回制定させていただき、この指針については労働安全衛生法上、厚生労働
大臣による指導権限も既にありますので、その権限に基づいて実施を求めていくというこ
とになります。
 あと、厚生労働省からいちばん右に出ています離職された方については、これは国が変
わってそういうことをやるということについても、きちんと対外的にも明らかにするとい
う意味で、そういう国としての取組みについてもこの指針の中に位置づけたいということ
で、まずはいま申し上げた指針の制定と電離則の改正というこの2つをお願いしたいとい
うことで、今日ご説明させていただくということです。
 まず、指針からいきたいと思いますが、お手元に資料としてお配りしておりますので、
まずは読み上げさせていただいた上で、ご説明させていただきたいと思います。

○毛利労働衛生課調査官 労働衛生課調査官の毛利でございます。資料2を読み上げさせ
ていただきます。
(資料2を読み上げ)

○高崎計画課長 指針の中身については、いま読み上げさせていただいたとおりでござい
まして、報告書の内容を反映したものになっています。参考資料3を見ていただければと
思います。参考資料3に安全衛生法における位置づけについて説明した資料を付けていま
すので、ご説明いたします。この指針は、真ん中の枠にありますとおり安全衛生法第七十
条の二に基づいて定めるものです。「厚生労働大臣は、第六十九条第一項の事業者が講ず
べき健康の保持増進のための措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指
針を公表するものとする」となっています。この規定に基づいて公表するものですが、こ
の七十条の二には第二項があり、「厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその
団体に対し、必要な指導等を行うことができる」とあり、ここに指導の根拠規定があるわ
けです。この規定に基づいて実施を確保していきたいと考えているところです。
 加えて、安全衛生法上には七十一条という規定があり、ここに「国は、健康診断の実施
の促進、その他の必要な援助に努めるものとする。中小企業に対し、特別な配慮をする」
という規定があり、この規定に基づいて、先ほど言ったような一定の緊急作業従事者の
方々については、国が直接支援していくということで考えて、いま必要な予算を要求中と
いうことです。指針の説明は以上です。

○相澤分科会長 ありがとうございました。ただいまのご説明に対して、ご質問等をお願
いいたします。

○冨高委員 電機連合の冨高と申します。前回から委員交替していますけれども、今回か
ら出席となりますので、よろしくお願いします。私のほうからは意見と、2点ほど質問さ
せていただきたいと思います。まずご説明いただきましたけれども、原発の作業現場にお
いては五重とも六重とも言われている重層構造の管理体制となっている中で、今回、ご説
明いただいたような緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針というものを、具体
的に定めることは大変重要だと考えています。また今回のこういった指針を、是非、しっ
かり徹底していただきたいと考えています。またご説明いただいた中に、検査結果の報告
については労働者の同意を得た上での報告となっていますので、是非、事業者のみならず、
労働者に対する意識づけというものも、しっかり行っていく必要があると考えています。
いずれにしても、対象となる労働者の被ばく線量、そして健康管理からの漏れが絶対あっ
てはならないと考えていますので、是非、徹底した指導をお願いしたいと思います。
 2点質問ですが、いまご説明いただいた中の第2の長期的健康管理のための取組の中で、
今回の具体的な健康診断というところで質問させていただきたいのですが、緊急作業に従
事した放射線の実効線量について、50ミリシーベルト、100ミリシーベルトを基準に検査
内容を分けていますけれども、まず1点目の質問としては、この50ミリシーベルト、100
ミリシーベルトの基準を設定した考え方、そしてもう1点は、現段階で、この対象となる
労働者がどれだけいらっしゃるのかというところについて、お伺いしたいと思います。

○椎葉労働衛生課長 50ミリシーベルト、100ミリシーベルトの根拠ですけれども、先ほ
ど報告させていただいた資料1の報告書の4頁で、4の(1)の基本的な考え方の第1パラ
グラフの中にありますが、50ミリシーベルトは、電離則に基づく放射線業務従事者の1
年間の被ばく限度が50ミリシーベルトとなっています。その下に、緊急被ばく時におけ
る従来の被ばく限度が100ミリシーベルトとありますが、この2つの数字が根拠となった
ところです。これを超えている方の数ですが、9月20日付のものですと、100ミリシーベ
ルトを超えた方が99名です。50ミリシーベルトを超えた方が、先ほどの99名を足して
408名です。

○高崎計画課長 若干、補足します。そういう50ミリシーベルト、100ミリシーベルト
の法定的な位置づけがありますけれども、それに加えて、もちろん50ミリシーベルトを
超えた方について眼に白内障等の障害が出る恐れが高いという医学的知見とか、あるいは
100ミリシーベルトを超えた方について、がんの発生率で有意な差が出るという医学的知
見に基づいていることは言うまでもありません。

○相澤分科会長 よろしいですか。日下部委員、どうぞ。

○日下部委員 先ほども報告書のところでご質問させていただいたのですが、一定数の窓
口というお話がありました。この指針を見ると、従事者本人が出頭しないと何も手続等、
あるいは健康診断もできないということになると、窓口の数というのは相当大きな問題で
すよね。例えば離職した後だと、いまだったら東日本のほうに集中するのかもしれません
が、長期にわたってかなり全国に散らばることは十分想定されます。そうすると一定数の
窓口というのが、ある程度限定的に県に最低限、1つぐらいあるということをお考えなの
か、そのあたりをしないと、すべて本人が出頭するというシステムでは機能しなくなる可
能性もある気がしますが、その辺はいかがですか。

○高崎計画課長 基本的には都道府県に1カ所という想定です。ただ、例えばの話、沖縄
には誰もいらっしゃらないということであれば、そういう意味で置かない県もあろうかと
思います。基本的には都道府県に少なくとも1カ所は置いていくという考え方です。

○日下部委員 わかりました。

○相澤分科会長 犬飼委員から、どうぞ。

○犬飼委員 質問が1つと意見が2つです。質問は、今回の指針の趣旨として、健康障害
の発生が懸念されるから、検査等、適切な長期健康管理を実施する必要があるというのが
趣旨ですが、残念ながら第2のところのがん検診等の実施のところにいくと、(1)で50ミ
リシーベルトから100ミリシーベルトの方は「当該者が希望する場合には」とあります。
ということは、希望しなかったら受けないということになってしまいます。検討会の報告
でも、「被ばく線量に応じた検査等の実施が必要である」と言い切っているのです。とい
うことは、ここで「当該者が希望する場合には」というのは、非常にトーンが落ちている
ような気がします。
 それと検討会のほうでは、例えば50ミリシーベルトを超えた場合、年1回、一般健康
診断の項目に加え、眼の検査を実施できるとなっていますが、こちらでは「おおむね1年
ごとに1回」と、ここでも何かトーンが落ちている感じがします。やっていただくなら
50ミリシーベルトから100ミリシーベルトを超える場合でも、当該者が希望する場合に
はとなっていますので、趣旨から少し弱くなっているのではないか。希望しなかったら、
やらないということになってしまったのでは、事業主の責任ということに対しても非常に
薄くなることが懸念されるというのが1点です。
 意見ですが、当分科会で震災直後において放射線審議会の妥当という答申のもとに、
100ミリシーベルトから250ミリシーベルトへ引き上げましたね。私も当分科会に出てい
て、緊急的で事後報告で仕方がなかったということはありましたけれども、その一翼を担
っているというか、関係した者として非常に忸怩たる思いがあるわけです。なぜ250ミリ
シーベルトに上げなければならなかったのか。それは緊急避難的で止むなしであり、事後
報告ですから致し方ないですけれども、細川前厚労大臣も8月30日の閣議決定後の記者
会見で、被ばく線量の上限については被ばく線量の状況を確認、関係省庁と調整した上で、
この秋には一定の結論を出さねばならない、とご発言になっています。とすると、いまの
報道を見ると、私は切迫感というか緊迫感というか、工程表の第2ステップに入っている
わけですから、報道を信用して見る限り、水素爆発も含めてそんなに切迫感がないと思っ
ているわけです。とすれば、できるだけ早期に震災前の100ミリシーベルトというところ
に落とすべきだと強く思っていますので、そのことをできるだけ早く、そういう措置がと
られるよう、これは厚労省単独ではできないことですし対外的なことがありますけれども、
厚労省としては是非、労働者を守る立場で、そのような対処をお願いしたいということで
す。
 これは、まだまだ相当時間がかかると思います。ローテーションも含めて作業経験が少
ない多くの労働者が、今後も携わるわけです。そういうことを思えば、今後、冬場に向か
ってまた大変な作業になると思いますが、是非、安全管理体制を再徹底していただいて、
携わる労働者の安全衛生対策に万全を期していただくことを、お願いしたいと思います。

○高崎計画課長 労働者の同意を噛ませているということについては、例えば、がん検診
と言っても新たな被ばくを伴うものもあります。もともと被ばくしている方々ですので、
ご本人が、もうこれ以上の被ばくは望まないということであれば、それをあえて、ご本人
の意思に反してまで検査を強要することまでは考えないというか、そこまでは適当でない
だろうという考えで、基本的には労働者の方の同意を得た上でということですので、その
意味では同意を得なければしないということではなく、基本的には検査するのですが、そ
のときにご本人が辞退されるということであれば、その意思を尊重するという考え方で、
こういう規定になっているということです。そういう意味では機会を提供して、受けるか
どうかはご本人が決めると。受けていただきたいと思いますし、受けていただける方がほ
とんどだと思いますが、どうしても固辞されるということであれば、それを義務としてご
りごりと受診を強要することはしないということです。

○椎葉労働衛生課長 補足させていただきます。資料1の報告書の4頁で、(1)の基本的
な考え方のいちばん最後のパラグラフで「なお」のところの最後から4行目、「国が被ば
く線量に応じた検査等の機会を提供することが適当である」とあります。そして「これら
の検査にあたっては、検査内容及び必要性等について、対象となる労働者等に対し、あら
かじめ十分説明しておくことが望ましい」ということで、これを踏まえたものです。

○高崎計画課長 あとご意見のほうですが、緊急作業時の被ばく線量の上限を従来の100
ミリシーベルトから250ミリシーベルトに上げたことについて、その際に審議会に対して
事後的な報告になったことについては、誠に申し訳なかったと思っているところです。ご
意見をいただいた250ミリシーベルトについて100ミリシーベルトに引き下げるというこ
とは、まさに細川前大臣も申し上げているとおり、私どもとしても基本的には緊急作業の
非常事態として250ミリシーベルトになっているわけですから、その事情がなければ100
ミリシーベルトに戻すということは当然です。作業員の健康なり安全を守るという厚生労
働省の立場としてそうしていきたいと思っていて、現在、前大臣のご指示等も踏まえて、
その作業をしているということです。
 あと未経験者の方なども入って来るということで、私どもも全く同じ問題意識を持って
います。作業に対する教育については、もう既に繰り返し東北電力及び協力企業に対して
も指導してきていますし、その実施状況についても現地まで行って確認等もしていますが、
そのあたりについてきちっとやっていきたいと思っています。また冬場になってきますと
インフルエンザという問題もありますので、熱中症対策を夏にやっていましたけれども、
そういう気候の変化に応じて適切な措置を、きちっと遅滞なく実施していきたいと思って
います。

○犬飼委員 ちょっとスタンスがわからないですね。計画課長は、是非事業者にはやって
ほしい。しかし、それは本人の被ばくのこともあるので、希望しなければそれはいいんで
すよと、そういうスタンスがわからない。衛生課長の話だと、国は機会を提供するだけな
んだと。機会を提供すると言っているのだから、受けたい人がいたら、その機会を提供す
るだけなんですよと。何か先ほどまでの議論だと事業主さんにちゃんとやっていただいて、
中小はお金がないだろうから、国のほうで応援して健康診断をやらせるという厚労省の強
い思いを私は感じたのです。しかし、いまのは機会を設けるだけだと。もし計画課長さん
の思いがある言葉をがん検診に当てはめるのだったら、事業主は健康診断を行うと。ただ
し、本人が希望しない場合はその限りではないならわかるのです。この言葉をまともに受
けた事業主は、当該者が希望する場合にはと言っているから、「希望しないんだね、じゃ、
やらないよ」ということになってしまうのではないですか。

○椎葉労働衛生課長 これについて私の説明が足りなかったと思いますが、実は検討会の
中で、例えば若い方に一律にがん検診をやっていいだろうかという議論もあり、適正な年
齢にならないと検診をやっても効果がない。むしろ害のほうがあるということもあり、そ
ういったことも含めてのもので、決して弱気になってということではなく、あくまでも専
門家のご意見を踏まえた対応だということです。

○犬飼委員 だったら、この日本語はおかしいと思いますね。「当該者が希望する場合に
は」というこの日本語は変だと思いますよ。それは例外的に、被ばくも含めて本人が希望
しないということならわかるのです。この日本語からいったら、希望する場合だけ受けさ
せてあげるよと思うでしょう、この日本語は。原則は、事業者は健康診断を行う必要があ
るというのが基本にあって、強制的ではないよという思いはわかるのです。これ日本語的
におかしいでしょう、この日本語は。

○高崎計画課長 いまの表現に別にこだわるつもりはないのですが、あまり。

○犬飼委員 いや、大体そうなのです。事業主が見て、当該者が希望する場合にと言った
ら、希望しなかったら受けさせないですよ。そんなもの、言わなきゃ。大体、いまから周
知すると言っているのだから、危険性も含めて予め対象となる労働者に対して十分説明し
ておく必要があるというのだから、事業主はちゃんと説明して、今後の長期的なこともあ
るし、あなたたちも心配なんでしょう。ちゃんと受けることができますよということをち
ゃんと説明して、原則はやるということでしょう。それは違いないでしょう。じゃ、この
日本語はおかしいです。「希望する場合には」という日本語はおかしいです、これは絶対
に。

○高崎計画課長 受診勧奨はもちろんしますし、通知もします。

○犬飼委員 それは十分わかっています。

○高崎計画課長 事業者を通じて受けてください、あなたは対象者ですということもしま
すので、基本的にご本人が希望しない場合はともかく、受けさせていただくということで
すので、そういうふうなつもりで書いていますが、ちょっと工夫してみます。

○犬飼委員 読みやすい文章にしてほしいですね。まず読んじゃったら、都合のいいほう
にしか読まないのですから。金がかかることは嫌だというのが、大体、事業主なのですか
ら。特殊健康診断で先ほどの角田委員ではないけど、とても金がかかるんですよという話
になったら、まず敬遠するでしょう。

○高崎計画課長 ただ、指針に基づいて、当然お願いするだけでなく、行政として70条
の2の第2項にありますとおり、事業主あるいはその団体に対して強力に指導していくと
いうことですから。

○犬飼委員 だから指導するのだったら、この文章はないです。

○高崎計画課長 そういうご指摘もありましたし、指針については行政の責任で作成させ
ていただくという形になっていますので。

○犬飼委員 何かいい表現がほかにあるでしょう。健康診断だったら事業主は受けさせな
ければならないと、当該本人が希望しない場合はこの限りではないとか書き様があるので
す。だから受ける側がわかりやすい文章にしてくださいと言っているのですよ、課長のそ
ういう思いがあるなら。

○高崎計画課長 わかりました。ご趣旨は承りましたので。

○相澤分科会長 浅井委員から何かご意見があるようです。

○浅井委員 いまの犬飼委員のご発言と計画課長さんのご発言を聞いていて、客観的な立
場で思ったのですが、労働者側の代表の皆さんの言いたいことは、たぶん私も客観的な立
場としては産業界の陰の部分も、たくさん心の内を聞かされて生きてまいりましたので思
うのは、希望する場合はという形にしてしまうと、暗黙のうちに断るように追い詰められ
る可能性があることを危惧されているのではないか。そのときに、もしここの表現として、
「当該者が検査を希望する場合には」というのを取ってしまって、「超える者については
検査を実施する。ただし、当該者が検査を希望しない場合は検査を辞退できる」と付帯的
に付ければいいのですが、最初に「希望する場合は検査を実施する」と言ってしまうと、
事業者側は人事の問題も関わってくるものですから、暗黙の圧力というのがあって、何と
なく雇われている人間というのは弱気な立場に立って、ここで希望しないほうが上司から
の受けがいいかなと、そういう追い詰められるようなことがあったら非常に痛ましいこと
ではないかということを、おっしゃりたいのではないかと思ったのです。

○高崎計画課長 私も、そういうことを懸念されるご意見としては承りましたので。

○相澤分科会長 少し考慮していただけるということですね。

○市川委員 是非、それはお願いをしたいと思います。加えて先ほど角田委員がおっしゃ
った派遣労働者に係るのですが、参考資料2でいくところの事業者は、派遣会社がここに
含まれるというか、派遣労働者として福島第一に派遣されて仕事をした方の場合について
は、派遣会社が健康診断等々をすると。あるいは次の電離則の改正でいくと報告義務があ
ると、そういうことになるわけですか。

○高崎計画課長 実態として、派遣労働者の方が緊急作業に従事されているということは、
事態として把握していることはないのですが、もしいらっしゃるとすれば、それは派遣法
の中に位置づけられている特例規定に基づきまして、一般健康診断で言えば派遣元、特殊
健康診断等で言えば派遣先に義務がかかっていますので、それぞれに報告を求めている形
になります。

○市川委員 派遣労働者というのは、いろいろな所でこぼれがちになる存在で、原発の作
業でも普通の建設現場でもそうですが、重層的に請負していますけれども、請負だと言い
つつ、実は派遣という形態で労働者がそこに入っていることがよくあります。実際、働い
ていらっしゃる方々自身も、自分は派遣労働者なのか請負なのかもわからないという実態
が現場ではあります。たぶん原発の作業についてもそれが推察されるわけで、そういうと
ころも加えて派遣会社に対しても徹底をしていただかないといけないと思います。普通の
仕事をしている方々でも、派遣労働者は一般の健康診断も受けていないケースが多いので
す。というのは、派遣法では派遣されている期間がイコール雇用期間となっていますので、
例えばこっちで3カ月派遣された、あっちで1カ月派遣された、間が入ったというと、派
遣会社が雇用している期間というのは常にとても短いのです。そのことによって一般の健
康診断も逃れている。一般の健康診断を受けられないというケースが非常に多いので、こ
の場合は一般の健康診断を受けていないのも当然問題ですが、さらに深刻な問題ですから、
この審議会ではありませんけれども、場合によっては派遣事業者に対する指針の中に入れ
るとか、需給部会のほうに係るのでここは結論は出せないかもしれませんが、派遣事業者
に対しての指導の中にこれを含めていただくとか、そのぐらいのことを少しご検討いただ
けないかと思います。

○高崎計画課長 そういうご意見があったということについては、安定局の担当部局にお
伝えしたいと思います。もちろん、ご案内のとおり労働法というのは形ではなく実態とし
て派遣であれば派遣だし、実態として請負であれば請負ということで、その実態に即して
やりますので、仮に派遣という形であれば派遣法に基づいて適切に措置されなければなら
ないわけです。その安全衛生に関係する健康診断等の項目については、それに基づいて指
導しているという形になりますから、そうしたいと思っています。いずれにしても、いま
延べで1万8,000人ぐらいの方が緊急作業に従事された、あるいは今もされているのです
が、そのうち99.6%の方について完全に所在を把握していますので、そういう意味では
安易に限られた世界の話です。我々として確かにゼロになっていないことについては、こ
れからも努力してまいりますけれども、相当の把握率で押さえているわけですから、そこ
ら辺については漏れがないように徹底することはできると思います。全国に散ってしまっ
ているという話ではありませんので、そこはきちっとやっていきたいと思います。

○相澤分科会長 よろしいですか。古市委員はよろしいですか。

○古市委員 4頁ですが、特定緊急作業従事者等の被ばく線量等記録手帳の発行を、本人
が申請をして交付を受けることができるという書きぶりになっています。先ほどの議論と
同じで、要するに手帳を手に入れることができる機会を提供するんですよと、こういうこ
となのでしょうか。こういう書きぶりだと、せっかく作った制度をしっかり機能させると
いう意味では、本人が申請をすれば手帳を手に入れられるけれども、申請しなければ手帳
は手に入らないということになるので、これはどんなものだろうかという気がいたします。

○高崎計画課長 基本的には、こういうベネフィットと言いますか、国としてのいろいろ
な支援を受けるということであれば、申請していただくということが何と言うか、別に実
態として交付したくないということは全くありませんので、ただ、それはご本人確認とい
う意味でも一度は行っていただき、免許証なり何なり個人を識別するもので確認して、交
付いたしませんということはないと思いますけれども、騙ってということがあってもいけ
ませんし、普通、こういうものは申請ですので、決して発行を渋りたいということではあ
りませんから、そこら辺はそういうことがないように、もちろん通知もしますし催促もし
ます。まだ交付を受けていない方がいれば、所在等はもう把握しているわけですから、そ
このところでやってまいりますので、そういう意味での弊害等はないようにしています。

○古市委員 感想ですけれども、役所は申請をさせるという考え方がどうしてもあるのだ
と思います。申請主義で非常に具合の悪いことが例えば年金などで大量に発生していて、
本人の申請がなかったから無年金になったということがいっぱい起こっています。それは
まずいなということで制度改正がいろいろ行われているわけですから、この制度を有効に
機能させていくと、せっかくこういう仕組みを作るので、その履行の確保を十分図るいち
ばんいい方法と、こういうふうに物を考えていただくのがいいのではないかと私は思いま
す。

○高崎計画課長 考えは全く同じですし、対象者は500数十人がリストとしてありますの
で、そういうことがないようにきちっとやっていきます。

○小畑委員 1頁の2.がん検診等の実施の(1)と2頁の(2)(3)で、それぞれの文章の末尾
が「望ましい」の3連発になっています。これは確認ですが、基本的にやらなかったらし
ようがないよと、やらなくてもいいよということで理解していいかというのが確認です。
それと質問ですが、これはこの場で質問すべきことではないだろうなというのは百も承知
しつつ、初参加ということでご容赦いただきたいのですが、今回、こういう形で長期にわ
たって国が責任を持って健康管理をしていく。これは非常にありがたいなと思っています
が、不幸にして将来的にこれから数年先、多くの方にがんが発症したという状況になった
ときに、国はそういった人たちに補償するという考えがあるのかどうか。あくまでも国が
やるのは、この法律に基づいた健康管理をするだけだというのはわかるのですが、そうい
う事態になったときに、これはあくまでも個人の話なので健康保険でやってくれ、場合に
よっては労災でやってくれと。あるいは今回は生活慣習のチェックもしますから、あなた
が発症したのは原子力の事故ではなくて、たばこの吸いすぎですよねとなって自己責任と
いう形になるのか、その辺のところ答えられる範囲で答えていただければ、よろしくお願
いします。

○椎葉労働衛生課長 最初の「望ましい」という用語の使い方ですが、具体的に申します
と資料1の4頁で、(1)の基本的な考え方のいちばん最後の「あらかじめ十分説明してお
くことが望ましい」は、指針案の2頁の(3)の「十分説明することが望ましい」の部分に
相当するところです。(2)の白血球の話は、報告書の6頁のいちばん上の「1年ごとに1
回、白血球数及び白血球百分率の検査を実施することが望ましい」から引いています。2
頁のいちばん上の白内障についても、報告書の5頁のイの?で「水晶体の写真を撮影する
ことが望ましい」ということで、報告書でいただいたものをすべてそのままスライドして
記載しているところです。
 実際、こういうデータベースに載った方が、将来、がんが生じた場合のことですが、こ
れは、おそらくこのデータベースを利用して労災申請などをされるのではないかと思いま
すが、そのときには現行の労災の基準に基づいて判断されるものだと考えています。

○小野委員 先ほどの希望するという部分と少し関連すると思いますが、目に付いたのは
4頁の下で「国は、当該検査に要する費用の全部又は一部を援助することができる」とい
う書きぶりです。この書き方ですと、要するに検査項目については、これらを検査するこ
とが望ましいなので一部という書きぶりになっているのか。費用負担があると検査は受け
ませんということが起こりやすいと思いますので、その辺について確認しておきたいと思
います。
 もう1点は、窓口を全国にというお話がありましたけれども、ものすごく遠い所に引き
籠もってしまった場合に、例えば窓口や病院に行くときの旅費が、検査と同じぐらいかか
ってしまうことがあると思います。だから受けませんという可能性もあると思いますが、
その辺についてはどのようにお考えかお聞かせいただければと思います。

○椎葉労働衛生課長 検診の費用ですが、「全部又は一部を援助することができる」とい
う書きぶりは、国が限度額を設け、この限度額以内であれば全部、これを超える場合は一
部ということをしています。というのも、受ける医療機関によっては額が違う場合があり
ますので基準額を設けるということで、これまで国がやってきたことですけれども、基本
的にはご本人の費用負担はないようにするということです。2つ目の検診の際の旅費です
が、これは旅費も含めて支給することを考えているところですし、そういう要求をしてい
るところです。

○相澤分科会長 ほかには、犬飼委員、どうぞ。

○犬飼委員 食い下がって申し訳ないですが、小畑委員は納得されたようですけれども、
2頁の(3)です。「事業者は、上記(1)及び(2)の検査を実施するにあたって、あらかじめ、
受診者に対して十分に説明することが望ましい」と書いてありますが、これはあくまでも
検討会の報告を参考にされたわけです。厚労省のスタンスとして、患者と医者の関係にし
たって説明する義務がありますよね。だからこれくらいはできるでしょう。受診者に対す
る検査内容と必要性について、受診者に対して十分説明する必要がある。そのぐらいのこ
とはできるでしょう。上の望ましいは妥協するにしても、受診者に対して説明することが
望ましいなんていうのは、おそらく現代に至ってこの言葉はないでしょう。これは厚労省
の強い意思で、検討会は望ましいにして、厚労省の考え方としては受診者に対しては説明
する必要があると、医者と患者の関係から言ってもそうだと思いますから、公益側の委員
の先生に聞いてもらってもわかりますが、私はそう思います。

○高崎計画課長 確かに検査内容や、その必要性等についてということですので、受診者
に対して十分説明するというふうにしたいと思います。

○相澤分科会長 ほかには、いかがでしょうか。よろしいですか。

○角田委員 資料2の指針(案)ですけれども、指定緊急作業というのが第1の趣旨の3
行目に書いてあります。これは人数が先ほどのお話ですと500人ぐらいの人数が定まって
いるということは、指定緊急作業とはこういうものだとお決めになっているわけですね。

○高崎計画課長 1行目に書いていますとおり、3月11日に発生した東日本大震災による
東京電力福島第一原子力発電所の緊急作業に従事された方ということで、そういう意味で
はその方たちを対象にする指針ということです。ただ、500人ではなくて、先ほど言いま
したとおり延べで大体1万8,000人ぐらいの人が、いま従事されていますし、今後も増え
ていくと思います。それが数十万というオーダーにはならないと思いますし、数万という
オーダーでしょうけれども、そういう人たちを対象にしている指針ということです。もち
ろん、そういうことがあってはいけないと思いますが、再び地震等があって同じような事
態が生じた場合は、それについて追加することはあると思いますが、いまの時点で日本に
おいて指針を定めて健康管理しなければならない事象としては、福島第一原発に限られて
いますので、そこを対象にした指針ということです。

○角田委員 先ほどの計画課長さんのご説明の中で、作業員をバスに乗せて運んだ運転手
さんも含まれる趣旨のご発言だったと思います。網羅できるイメージで安心できるのです
が、そのあたりがいちばん肝になる感じがしております。よろしくお願いしたいと思いま
す。
 あと特定緊急作業ですか、ある一定限度を超えた被ばくのほうですけれども、これにつ
いて特定緊急作業従事者等と「等」という言葉が入っているわけで、これは推定みたいな
ことも含めて考えているのでしょうか。それとも何かのときにカバーできるようなことも
趣旨の中に織り込まれているということで、よろしいのでしょうか。

○高崎計画課長 「等」は、従事者でいま従事していない人も含めるという意味で「等」
としています。あくまで緊急作業が対象ですから。

○角田委員 わかりました。

○明石委員 緊急作業時の被ばく線量の問題ですが、厚生労働省で検討されているという
ことでそれは結構だと思いますが、報道だけではなかなかわからないところがありますの
で、是非、現場をよく見て検討していただくようにしていただきたいと思います。

○高崎計画課長 もちろん、今までもそうしてまいりましたし、私ども厚生労働省の中に
対策室も設けています。福島には現地の支部も設けていて、そこに職員が常駐していて定
期的にJヴィレッジに入ったり、必要に応じてF1にも入ったりしていますので、そうい
うことで、きちっと実態を把握した上で必要な対策を講じていきたいと考えています。

○相澤分科会長 誤字のことですが、2頁の四角の検査のところのアで「採血による甲状
腺ホルモン」と書いてあります。これは報告書には「甲状腺刺激ホルモン」とありますの
でTSHですね、これをちょっと。

○高崎計画課長 すみません、ご指摘、ありがとうございます。

○相澤分科会長 ほかにはよろしいですか。大変熱心にご討議いただきまして、ありがと
うございました。続きまして「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令案要綱」に
ついて、今回、厚生労働大臣から労働政策審議会長宛、正式に諮問の手続がありましたの
で、当分科会において審議をすることといたします。事務局から説明をお願いします。

○高崎計画課長 説明の前に読み上げます。

○毛利労働衛生課調査官 
(資料3を読み上げ)

○高崎計画課長 諮問している要綱は以上のとおりですが、これについても参考資料4に
図式化したものを用意していますので、そちらに基づいてご説明したいと思います。この
諮問された省令は、電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令で、これによって措置
しようと思っているのは、ここに書いとてあるとおりで、今回の福島第一原発における緊
急作業に従事している労働者、あるいはした労働者について、その労働者を使用する事業
者に対し、ここにあるような項目及び頻度で厚生労働省のほうにきちっと報告を出してい
ただくということです。
 具体的に申し上げると、一般健康診断結果あるいは臨時健康診断結果については、法令
で定めている頻度に応じて年に1回又は半年に1回出していただきます。臨時健康診断は
臨時ですので随時出していただきます。電離放射線に基づく健康診断については半年に1
回やることになっていますので、半年に1回出していただきます。それ以外の線量データ、
個人識別情報等々については、報告書という形で出していただきます。緊急作業従事者に
ついては、いまも協力ベースという形で出していただいているとおり、1カ月ごとに出し
ていただきますし、緊急作業から離れて通常の放射線業務に就かれている場合については、
3カ月ごとに出していただくことで考えているものです。なお施行の日からこれで行いま
すけれども、過去の分については特例が定められていて、線量等については10月末日、
健康診断結果については大部なものになりますので11月末日で、まとめて出していただ
きます。それ以降はこの頻度で出していただくことを義務化するものです。以上です。

○相澤分科会長 ありがとうございました。ただいまの説明に対して質問等、よろしくお
願いします。

○小畑委員 国が責任を持って被ばく線量を管理する。これは非常に大事なことであるし、
事業者にその報告を義務づけた、これは大変意義深いなというふうに思っています。そこ
で質問ですが、この事業者の報告が遅れた場合、これはどんなふうな形で措置をされるの
かを伺いたいと思います。

○高崎計画課長 安全衛生法あるいは電離放射線障害防止規則に限らず、こういうことを
きちっとやってもらうための規定ですので、遅れた場合については督促するなり出すよう
に指導する形になりますが、最終的にどうしても従っていただけない場合については、先
ほど言いましたとおり罰金が付いていますので、それで刑罰をかける形になります。逆に
言えば、そういうことをもって指導していくということです。

○相澤分科会長 よろしいですね。ほかにはいかがでしょうか。

○市川委員 この電離則の改定は結構なのですが、全体を通して今回、福島第一の問題で
は非常に大変で、特に多くの労働者の皆さんの被ばくという犠牲を払って、いま収束に当
たっているわけですけれども、データベースを構築する、あるいは長期的な健康管理も国
として責任を持ってやるということを、しっかりとやっていただきたい。あってはならな
いことですけれども、万が一、今後もこのような悲惨な事態があった場合に備えて、次は
こんなことがないように、この犠牲の上に立った今回の貴重な経験をきちんと分析してい
ただいて、安全衛生でも基本だと思いますが、安全だという前提ではなく、安全ではない
という前提の中で考えていくことが重要だと思いますので、是非、この貴重な尊い皆さん
の犠牲の上に成り立ったデータベースなり、これまでの対応がどうであったかということ
を次に活かす機会と捉えて、今後はこのようなことがないように国として万全を期してい
ただきたい。
 もう1つ、原子力行政は経産省、文科省、厚労省と分かれていて、先ほど犬飼委員も言
われた100ミリシーベルトを250ミリシーベルトにしたというのも、放射線審議会という
別の場です。その審議会に労働安全衛生の専門家がいなかったことも、連合としては残念
に思っているところがありますので、その体制も含めて命と健康を守るのは厚生労働省の
使命だと思いますから、本来、厚生労働省がきちんと、そういうことは全部まとめてやっ
ていただきたいぐらいの思いです。以前の審議会でも申し上げたと思いますが、今後に備
えてきちんと検証を検討していただきたいという要望です。

○相澤分科会長 よろしいですか。

○高崎計画課長 まさに、おっしゃるとおりだろうと思います。作業員の健康なり安全を
守るというミッションは保安院にも文科省にもなくて、一義的にはそれは厚生労働省が一
元的に担当していますので、もちろん彼らが考えていないという意味ではありませんが、
彼らが守るべき法益と我々とは違いますから、そこは今までもそうですし、今からも厚生
労働省が責任を持ってその責務を果たしていくということです。

○相澤分科会長 ほかには、いかがでしょうか。よろしいですか。それでは「電離放射線
障害防止規則の一部を改正する省令案要綱」について、当分科会として妥当と認めるとい
うことでよろしいでしょうか。

                  (異議なし)

○相澤分科会長 ありがとうございます。それでは事務局から連絡事項をお願いします。

○高崎計画課長 次回の日程ですが、また追って連絡させていただきたいと思いますので、
よろしくお願いします。

○相澤分科会長 本日の分科会はこれで終了いたしますが、議事録の署名につきましては、
労働者代表は谷口委員、よろしいでしょうか。使用者代表は三浦委員にお願いしたいと思
います。よろしくお願いします。長時間にわたりまして熱心なご討議をいただきまして、
ありがとうございました。これで終了いたします。


(了)

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