ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医薬・生活衛生局が実施する検討会等> 抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会> 第2回抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会議事録




2011年9月6日 第2回抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会 議事録

○日時

平成23年9月6日(火) 18:00~20:00


○場所

厚生労働省12階 専用第12会議室


○議事

○森嶌座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第2回「抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会」を開催させていただきます。
 本日は、皆様にはお忙しい中、また、突然の雨で、私も雨にぬれましたけれども、御出席いただきましてありがとうございます。
 本日は、委員全員に御出席いただいております。
 本日は、前回の議論を踏まえまして、お手元の議事次第にございますとおり、最初に、抗がん剤医療の現状や、諸外国の類似制度等につきまして、事務局の説明も踏まえまして御議論をいただきまして、委員の皆様の認識を共有していただきたいと考えております。
 その後、本検討会において今後検討を要する論点と、ヒアリングを実施することについて御検討いただきたいということにしておりますので、よろしくお願いいたします。
 議事に入ります前に、事務局の方で人事異動があったということでございますので、事務局の方から御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 それでは、御紹介させていただきます。
 木倉医薬食品局長です。
 宮本総務課長です。
 鳥井医薬品副作用被害対策室長です。
 渡邊安全使用推進室長です。
 私、医薬品副作用被害対策室の牧野と申します。どうぞよろしくお願いします。
 済みません、ここでカメラは退室をお願いします。
(報道関係者退室)
○森嶌座長 それでは、資料の確認をお願いいたします。事務局から御説明いただきたいと思います。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 お手持ちの資料を御確認いただきたいと思います。
 まず、議事次第、名簿、座席表がございます。
 その後、資料1-1「がんの治療」。
 資料1-2が、1枚紙で「抗がん剤使用者数等」。
 資料1-3が、海外の制度の資料でございます。
 資料2-1「検討の論点(案)」。
 資料2-2「関係者への影響の可能性について(議論のたたき台)」、1枚紙です。
 資料2-3「ヒアリングの実施について(案)」。
 資料2-4「スケジュール(案)」でございます。
 参考資料1が、周知の取組みで、1枚紙です。
 参考資料2が、「患者が抗がん剤医療を理解して受けられるようにするための取組」。
 参考資料3が、「副作用被害の判定について」。
 参考資料4が、無過失補償制度の検討会の開催要綱等となっております。
 最後に、齊藤委員からの提出資料が付いております。
 不足がございましたら、お知らせください。
○森嶌座長 よろしいですか。
 よろしいですね。
 それでは、本日の議題に入らせていただきます。
 まず、1つ目の議題としまして、「抗がん剤医療の現状等」について御議論いただきたいと思いますが、最初に事務局から資料の説明を受けた後、特に医学・薬学を専門とされている委員の方から、補足説明があればお願いしたいと思います。その後に、皆様から御意見を伺うことにしたいと思いますので、まず、事務局から資料の説明をよろしくお願いいたします。
○堀医薬品医療機器総合機構安全第二部調査役 よろしくお願いいたします。私の方から、恐縮ではございますけれども、少々駆け足とはなりますが、がんの治療全体について概略を御説明したいと思います。
 資料をごらんになっていただいて、1枚目ですけれども、まずがんとは何かということですが、正常な細胞は、細胞の増殖や分裂が制御されているために、増え過ぎないようになっておりますが、がんは、この制御が外れ、どんどん増殖するということで、進行に伴い、体の異なる場所に転移したり、臓器の境を越えて浸潤することによって、最初にがんが起きた場所にとどまらなくなる特徴を持っています。がんは、進行すると死に至る病気であって、日本人の死因のトップを占めているということは既に御存じのとおりと思います。
 次のがんの病期ですけれども、これはがんと診断が付いた場合に、治療法を決めるに当たりまして、まず大事なことが、がんの状態を知ることになります。このがんの状態を示す指標の一つとして、病期(ステージ)という言葉がよく出てきます。これは、大まかには0~?期に分かれるTNM分類を用いている場合が多く、がんがどれぐらいの大きさか、リンパ節にどこまで転移しているか、別の臓器に転移しているかを評価して決定されていきます。IV期に近いほど、がんが広範囲に広がっている、すなわち進行している状況であることを示しています。
 次をめくっていただきまして、これは実際の例示ということでお出ししているのですけれども、例えば肺がんの方ですと、このTNM分類、がんのステージがT、N、Mといった状態の複雑な組み合わせによって病期が規定されていることがおわかりになるかと思います。
 次の大腸がんの例ですけれども、これは同じTNM分類であっても、勿論、がんの種類によって中身が異なっているという例示で出させていただいております。
 その次ですが、ここからがんの治療について御説明します。がんの治療は、大ざっぱに分けますと、局所療法と全身療法になります。
 がんは、早期で原発巣、すなわちがんが最初にできた場所にとどまっている場合には、がん細胞を体内から取り除くことで治癒を望むことは可能です。このような場合に行われるものが局所療法で、外科療法、すなわち手術が一般的です。がんの種類や広がり具合によっては放射線療法が選択されることもあります。局所療法で、がんを取り切れた場合には治癒することもありますが、残念ながら再発することもあります。なお、症状の軽減を目的として局所療法を行うこともあります。
 一方、例えば白血病のような全身性のがんとか、既に進行しているがんの場合では、がん細胞は全身に散らばっているため、通常、局所療法はできず、全身療法の対象となります。残念ながら、がん患者さんのほとんどはがんを取り切って治癒することは不可能な状態であり、こちらのグループに入っていきます。全身療法の中には、がん細胞の増殖を防ぐ薬物療法がありますが、このがんそのものへの治療のほかに、例えば吐き気どめを使ったり、G-CFSという薬を使って白血球を増やしたりなどの支持療法とか、がんの痛みに対して痛みどめを使うなどの緩和医療という治療も必要に応じて行われていきます。
 そして、個別の患者さんにおいては、がんの種類や病期、患者さんの体力、いわゆるパフォーマンスステータスといったものとか、年齢、臓器機能などを含めて総合的に判断し、治療を選ぶことになります。
 次は、具体的な例として、肺がんの場合に行う治療の目安です。この図をごらんになっておわかりになるとおり、局所治療として、?A期までは手術の可能性が、?B期までは放射線治療の可能性があることが示されています。
 時間の関係上、一つひとつ詳しくお話しできませんが、図の注釈にございますとおり、手術を選択できた場合でも、手術後の再発防止目的で薬物療法を行う場合とか、?A 期、?B 期にありますように、放射線治療と薬物治療を組み合わせて行うようなこともあります。一方、?期になりますと、局所治療の選択はもはやなく、全身療法である薬物療法や緩和医療が選択肢となっています。
 その次は、もう一つ別の事例として大腸がんですけれども、大腸がんでは先ほどと少し違いまして、?期でも手術治療への矢印があると思います。これは遠隔転移があっても、がんが手術で取り切れる範囲内に収まっていると判断された場合には手術する場合もあるからなんですが、一方、同じ?期でも、手術では取り切れない範囲に広がっていると判断された場合などは、残念ながら現状では手術で治療を望むことはできません。
 このように、同じ?期というステージであっても、がんの種類によって治療が異なったり、同じがんの中においても、個別の状態に応じて治療が異なるため、がんの治療が非常に複雑なものとなっている部分でございます。
 次に薬物療法ですが、この薬物療法を大まかに分けると、この4つに分類されているものが多いです。
 殺細胞性の薬剤とは、昔から用いられてきた薬剤でして、ここに挙げたような種類があります。がんだけではなく、正常の細胞にも作用して破壊するため、脱毛や吐き気、白血球が減るといった副作用が起こります。
 分子標的薬剤とは、比較的最近出てきた薬剤で、がん細胞が持つ分子を標的にした薬です。しかしながら、がん細胞以外にも悪影響を及ぼすこともあって、副作用をゼロにはできないことがわかってきていますし、むしろ従来型の薬剤と比べて少し特徴の違う副作用が出てきていることもわかってきました。
 ホルモン療法剤としては、例えば乳がんでの抗エストロゲン剤とか、免疫療法としては腎がんで行うインターフェロンなどがあります。
 通常、殺細胞性の薬剤あるいは殺細胞性の薬剤と分子標的薬剤を抗がん剤と呼んでいることが多いようです。
 ページをめくっていただきまして、薬物療法の効果ですけれども、残念ながら、薬物療法によって期待できる効果としては、がんの進行を遅らせて命を延ばす延命や、がんを縮小すること、あるいはがんによる苦痛を減らすことになります。
 薬物療法によって、治癒する場合や長期の延命が得られる場合もありますが、ごく一部であるのが現実になります。
 また、得られる効果は、がんの種類によっても違い、患者さんの個別の状態によっても違ってきます。個別の患者さんにおいて得られる効果を治療前に完全に予測することは困難でして、やってみないとわからないのが現在の実情になります。また、仮に薬物療法によってがんの進行を遅らせることができたとしても、その薬剤が永遠に効くわけではなく、がんが進行・悪化する日が来ます。その場合には、効果のなくなった薬を使用しても副作用が強く、体への負担が大きいため、違う薬剤を検討することが一般的です。
 一方、がんの薬物療法の副作用ですが、副作用の少ない薬物療法の開発や副作用を予防する薬などの開発が行われてきた結果、以前よりは副作用を軽くできるようになり、入院ではなく外来での通院治療でできる場合も増えてきました。
 しかしながら、命に関わる副作用が出て死亡することもあり、たとえ分子標的薬とはいっても、一般的な薬と比べれば、副作用は高頻度かつ重症と言えます。
 その他、例えばシスプラチンの難聴とか、パクリタキセルのしびれなどのように、直接、命には関わらないけれども、その患者さんの生活の質に大きく関わってくる副作用もあります。したがいまして、がんの薬物療法の特徴として、一般的な薬と比べると効果が少なく、副作用が多いということがあると思われます。
 ここまで総論ですが、次からは実際の治療での効果や副作用について幾つか例示したいと思います。
 まず、これは例えば進行した肺がんの患者さんに初めて薬物療法を行う場合ですが、ここに示した4つの治療法は、いわゆる標準治療、行うべき治療方法の中に入っていきます。
 この試験は、この4つの治療を比較した臨床試験ですが、標準治療とはいえども、がんが小さくなる人の割合はどれぐらいかというと3割ぐらい、1年生存率が50%程度、2年生存率は25%程度であります。
 また、副作用として骨髄抑制、すなわち白血球、血小板といった血液の細胞が減少することに加えて、各薬剤に特徴的な副作用が現れています。
 この試験では、治療に関連する死亡例は、1%程度で報告されています。
 具体的な薬物療法のスケジュールをお示ししますと、例えばこの論文の中で使われているカルボプラチンとパクリタキセルという併用療法を行う場合ですが、図にありますとおり、1日目に両方の薬剤を点滴して、その後は20日間休薬となります。この期間は何もしないわけではなくて、副作用の出方やがんの進行度合いを見ながら経過を見ることになります。このようにして、何日間かを1サイクルとして区切り、投与を繰り返していく方法ががんの薬物療法として一般的になります。
 ページをめくっていただきますと、こちらは治療後の生存に関する結果がわかる図となります。治療の開始から時間が経つにつれて生存者が減り、曲線が落ちていきます。1年後のところでは、約4~5割の方が死亡されていることがわかります。
 実際に、進行肺がんの患者さんに薬物療法を行う際には、このような試験の結果を踏まえて、その時点での最適な標準的治療を把握しておく必要が出てくるわけですが、その標準的治療というのが刻々と更新されておりますので、それを念頭に置いて治療を選ぶ必要があります。
 加えて、個別の患者においては、副作用にその患者さんが耐えられるかどうかの判断など、細やかな判断が必要になりますし、もっと言えば、薬物療法よりも優先してやるべき治療がその時点で存在しないかということも判断が必要で、いろいろなことを踏まえて実際の治療方法が決定されると思います。
 もう一つ、別の例を出しますが、こちらは進行大腸がん患者に、初めて薬物療法を行う場合です。
 この4つの治療法を比較する臨床試験の結果ですが、骨髄抑制などの一般的な副作用のほかに、ベバシズマブという分子標的治療薬を併用した患者群では、消化管穿孔、つまり消化管に穴があくとか、血栓症ができるとか、そういった従来型の薬剤とは異なる副作用も出ています。
 この試験で、治療に関連する死亡としては、2%程度が報告されていることが公表されています。
 ページをめくっていただきますと、投与スケジュールですが、先ほどと同じように、3週間を1サイクルとしまして、ここに示したような方法でお薬を使っていきます。先ほどの肺がんの場合と同様、休薬期間には副作用、がんの状態を観察して、副作用が出て、治療が継続できない場合とか、がんが進行・悪化する場合までは、治療を繰り返していくことになります。また、この試験では最大16サイクルまでとしていますが、この試験に限らず、最大投与サイクル数がほぼ決まっている薬物治療もあります。
 次の小さい図が、字が小さくて恐縮ですが、副作用の例をお示ししています。このGrade3以上というのは、ある基準に基づいて判断した場合の重症度が高いものになりますが、それに限定した場合であっても、このような高い割合で副作用が発現していることがおわかりになるかと思います。
 ページをめくっていただきますと、この治療をやった場合の生存に関する結果になります。この臨床試験で行っている治療は、いずれも?期の大腸がんの患者さんの場合に行う標準治療であると言えますけれども、この黒い太枠で囲った部分にあるとおり、どの治療を行っても、生存期間の中央値が大体19~21か月程度が現実になります。それでも大腸がんの薬物療法は、このような臨床試験の積み重ねによって進歩を遂げてきまして、生存期間は昔よりはずっと延長してきたところです。
 もう一つ、別の事例で、こちらは術後補助療法の例になります。術後補助療法という治療は、局所療法である手術や放射線治療後に、がんの再発予防目的で行う薬物療法のことになります。
 全部の患者さんで行うわけではなく、乳がんなどの一部の患者さんにおいて、再発する危険が高い場合に実施されることがあります。
 例えば大腸がんの場合ですと、原則として?期の患者さんにおいては、手術後であっても再発する危険が高いとして術後補助療法が行われることがあります。
 手術後の大腸がん患者で、ここに示す2つの治療法を比較する試験の結果、治療中の死亡として報告されている割合は0.5%となります。
 ページをめくっていただきますと、また字の小さい表で恐縮ですが、これは発現率10%以上の有害事象として公開されています。これは有害事象ですので、治療との関連性についての情報は収集されておりませんが、このままの表現で今日のスライドでは掲載させていただいております。いずれにしましても、このような割合で、このような事象が発現することになります。
 この治療をやった結果ですけれど、術後補助療法であっても、これは添付文書よりの抜粋ですが、6年後の生存率を見ますと、?期で手術をして、その後に術後補助療法をやった場合、生存しておられる方は6年後で約7割程度という数値になります。
 ページをめくっていただきまして、最後のスライドになりますけれども、今までお話ししてきたようながんの薬物療法の特徴やがんの特徴を考えますと、実際の臨床においても、薬物療法後の死亡と薬物療法との関連を判断する上では、判断が難しい場合が多いと想定されます。
 なお、さきに治療に関連する死亡の具体的な割合として、1%、2%という数値をお出ししていますが、治療に関連した死亡という定義とか基準といったものは一般的には恐らくないと思いますので、個別に検討した場合に治療に関連した死亡と判断されたのが、さきの臨床試験ではそれぞれ1%、2%という数値であると思われます。判断が難しい理由の例として、ここに示すようなことが考えられますが、薬物療法の効果がなく、がんが進行・悪化している場合などの状況が考えられます。
 2つ目について若干補足しますと、がんには、がんがあるということだけではなくて、がんという病気そのものによって起こりやすい合併症があります。例えば白血病や骨髄腫などの血液のがんでは、免疫力が落ちているため、もともと感染症の危険はありますし、例えば肺がんでは、がんの部位によっては肺炎や喀血などを起こしやすい状況にあります。
 このような方にがんの薬物療法を行って感染症や肺炎が起きた場合に、がんのせいなのか、薬物療法のせいなのか、あるいはどちらが主な原因なのかを判断することは日常臨床においてもよく遭遇する難しい事柄ではないかと想定されます。
 以上、大変駆け足で恐縮ですが、説明を終わらせていただきます。御議論の方をお願い申し上げます。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 続きまして、私の方から資料1-2以下を説明させていただきます。
 資料1-2は「抗がん剤使用者数等」で、救済制度の議論のために必要な基礎的データを集めて参考に提示するものでございます。現時点では、実は検討に十分なデータが得られたところまで言えなくて、今回、経過報告的になることを御容赦いただきたいと思います。
 まず、がん患者数ですけれども、これに関するデータとしては2つ掲げさせていただきたいと思います。
 1つは、地域がん登録全国推計による69.4万人という数字でございます。この定義は、一定の期間、1年間に新たにがんと診断された数を全国でどれぐらいあったかを推計したものです。
 もう一つは、151.8万人という数字がありますが、これは患者調査という政府統計から出してきた数でございまして、これはある1日において継続的な医療を受けているがん患者の数を推計したもので、切り方が違うので、これだけ数字が違うということになっております。
 次に、抗がん剤の使用率のデータですけれども、これもなかなか既存統計はございませんで、今回、事務局の方で30.1%という試算値を出しております。この出し方は、JMDCレセプトデータベースという健保組合のデータベースを使いまして仮に計算した数値になります。ただ、計算方法等の欄に※で書いておりますけれども、データの制約が若干ございまして、出来高診療のみのデータであるとか、あるいは健保組合のデータのため、就業者の年齢層が中心なので、高齢者について余り正確な情報が得られないということもありまして、現在、別の推計方法についても検討しているところでございます。
 3番が、この1番と2番をかけ合わせた、単純な抗がん剤の使用者数の推計になりますが、20.9万人から45.7万人になるということでございます。
 最後に、4番の副作用の発現頻度ですが、これも抗がん剤全体で平均的な数字がございませんで、済みませんが、裏の方の別添をごらんいただきたいと思います。
 別添の下の注1をごらんいただきたいと思うんですけれども、過去5年程度の抗がん剤の全例調査が実施されたケースにつきまして機械的に、副作用がどれぐらい起こったのか、あるいは死亡がどれぐらい起こったのかというパーセンテージを並べてみたものでございます。全例調査自体が医薬品の中でもかなり限定的でございますので、本当に一つの例ということで見ていただきたいと思います。
 まず、全副作用の発生の状況ですけれども、一番低い例でもアバスチンの58.9%から、一番高い例でもスーテントの97.4%ということで、かなり高い発生率でございます。
 それから、重篤またはGrade3以上の副作用になりますが、これはカウントの仕方が若干違う部分もありますけれども、一番低いものではサレドの9.9%からマイロターグの78.9%というような数字がございます。
 一番右側の、当該医薬品との関連が否定できない死亡、いわゆる副作用死の数字ですけれども、先ほど資料1-1の方でも1%、2%という例示がありましたが、ほかの医薬品、抗がん剤を見てみましても、一番上の9.8%という数字がありますけれども、ほかをごらんいただきますと、大体1%から3%の間の数字が多くなっております。なかなか平均的な数字は出せないんですが、一つの参考にしていただければと思います。
 次に、資料1-3の「海外における医薬品の副作用被害救済について」を続けて説明させていただきたいと思います。これにつきましては、事務局の方で各国の日本国大使館を通じましていろいろ調べた結果を御報告させていただきたいと思います。
 結論から言いますと、フランス、スウェーデン、ドイツでは、医薬品の副作用被害救済に関する制度が、形は違うんですけれども、何らかあった。一方でアメリカ、イギリスではなかったということになります。
 このうち、フランスから順次説明していきたいと思いますが、フランスは医療事故被害者公的補償制度という、いわゆる医療の無過失補償の一環として医薬品の副作用被害も救済しているという仕組みがございます。
 2つ目の○になりますけれども、対象はすべての医薬品ということで、形式的には抗がん剤も対象になり得るということになります。ただし、「患者の当初の健康状態からみて異常な結果でない」健康被害は救済対象外となりまして、がんの事例でいきますと、当初の健康状態はがんということが当然考慮されるのが1つと、この「異常な結果でない」という解釈なんですが、この「異常な」というのは副作用の頻度の問題だという回答をもらっております。したがいまして、抗がん剤のように避けられないような副作用を持つことによる健康被害は、原則として補償の対象とならないという状況のようでございます。実際に救済された事例があるかというところまでは調べ切れていないんですけれども、抗がん剤副作用の救済はなかなかできない仕組みと考えられます。
 スウェーデンは、任意加入の保険制度がありまして、これは製薬会社が保険制度に加入していれば抗がん剤であっても形式的には対象となり得るということで、実際にもスウェーデンの医薬品販売の98%が加入しているということになっております。
 これにつきましても、対象は、「健康被害が予想される治療結果と比して不均衡、かつ、その種類や程度が当然には予見されない範囲」となっております。この不均衡とか、当然には予見されないというところで、実はがんのケースはかなり厳しく判定されておりまして、がんのように、治療しなければ死んでしまうようなケースについては、一般的には補償困難という回答でございました。
 唯一補償されたケースが、これは保険制度の運営会社の回答ですけれども、がん治療のためのタモキシフェンというホルモン剤の投与によって脳卒中となり後遺症が残ったケースでございます。ちなみにタモキシフェンというのは、日本の医薬品の救済制度では既に救済対象になっている医薬品でございます。
 次に、ドイツですけれども、対象となる健康被害は未知の副作用に限るとなっておりまして、いわゆる添付文書に書いてあるような副作用は救済の対象とならないというところで、救済の仕組みはあるんですけれども、日本とかなり救済の範囲が違う状況になっております。
 資料1-3の最後のページをごらんいただきたいんですが、制度がある国で簡単な比較表をつくってみました。
 2番目の救済対象の欄をごらんいただきたいんですけれども、ドイツは未知の副作用のみというところが日本とかなり違う形になっております。
 次の欄ですけれども、日本は特定の医薬品を対象外とするような切り方をしているのに対しまして、フランス、スウェーデンでは医薬品による除外はしていないんですが、健康被害の様態によって除外しているという形で、切り口は違うんですけれども、抗がん剤の副作用の被害の救済はなかなかできていない状況かと思います。
 欄を1つ飛ばしまして、給付水準のところですが、日本ではいわゆる定額給付、見舞金的性格のものでございますけれども、フランス、スウェーデン、ドイツでは、どちらかというと損害賠償のような考え方で給付を決めているということでございます。
 一番下の欄の損害賠償請求権ですが、日本では消滅しない、要は損害賠償と両方請求できるような形になっておりますけれども、ほかの国では訴訟と代替的な仕組みになっておりまして、補償を受けた時点で消滅、あるいはドイツは訴訟そのものなんですが、かなり民事損害賠償的な色彩が強い制度になっております。そういう違いがあるということを御認識いただければと思います。
 資料1-3の説明は以上ですけれども、補足で参考資料をざっと御説明させていただきたいと思います。
 参考資料1は、前回の検討会で、医薬品の救済制度がそもそもPRされていないのではないかという御指摘がありましたので、参考までに周知の取組みを掲載させていただきました。時間の関係で、説明は省かせていただきま。
 参考資料2ですが、これも前回の検討会で、救済制度の議論の前に、医者や患者間の信頼関係の構築とか情報共有が重要という御指摘がありましたので、国の取組みなどを列挙させていただきました。これも説明は省略させていただきますけれども、御参考までに見ていただければと思います。
 参考資料3ですが、これも前回の検討会で、医薬品の副作用被害を判定する際に、適正・不適性の判定が非常に難しいのではないか、あるいは抗がん剤を対象としたときに、標準治療しかできない治療になるのではないかという御指摘もあったので、御参考までに、今の副作用被害の判定をどういうふうにやっているかというのを付けたものでございます。御存じの方も多いのかもしれないですけれども、適正目的の判断、適正使用の判断のところで下線を引いておりますけれども、機械的に、例えば承認を受けた効能・効果の範囲内であるかだけではなくて、具体的事例に即して、臨床医学、薬理学、薬学等の学問水準に照らして個別判断ということを、現在でもしております。もし抗がん剤を対象としていく場合には、当然、また難しい問題は出てくると思いますけれども、こういう判定実態であることを御認識いただければと思います。
 最後に、参考資料4の方に行きたいと思いますが、これは最近の動きとして、医療の無過失補償制度の在り方に関する検討会というものが先月26日に第1回会合が開かれました。検討範囲としては、無過失補償の水準、範囲と、再発防止の辺りを検討していくことになっております。まだ1回目ということで、大きな方向性が出ているわけではないんですけれども、御存じいただければと思って御紹介させていただきました。
 資料の説明は以上になります。よろしくお願いします。
○森嶌座長 これまでの説明につきまして、御質問はございましょうか。
○中田委員 御説明いただきまして、かなり速いスピードだったので必ずしもよく理解していないと思うんですが、恐らく死亡率2%とか1%というお話をされていたんですけれども、がんですといろんな部位があると思うんですが、部位によって大体そのぐらいだと思ってもよろしいんでしょうか。
 もう一つ、ステージがいろいろ、IからIVまであるというお話もされていたんですが、そのステージによっても、余りそういうものは関係なしに1~2%ぐらいだというふうに思ってもいいのか。それとも、たまたま出てきた例が2つだけであって、実際はどうか、よくわからないというふうに、大体の見当をつける意味で、それはどちらというふうに考えたらよろしいんですか。
○堀医薬品医療機器総合機構安全第二部調査役 教科書的には、ここに書いてあるような引用文献の中などを見ますと、がんの薬物療法を行うような患者さんの対象で薬物療法を行った場合に、治療に関連した死亡として大体1%とか2%という数字が記載しています。
 先ほど、資料1-1の全例調査の結果の一覧表もお見せしたかと思うのですけれども、そこでは因果関係が否定できない死亡という切り口にはなりますが、そこで因果関係が否定できない死亡ではないかと判断された例は若干、がんによってばらつきはあります。
○中田委員 わかりました。
 そうすると、資料1-2で「3.抗がん剤の使用者数」で、このままかければ20万人とか45万人ということで、倍ほどの差はありますけれども、出てきているんですが、例えばこれに20万人で1%とすると2,000人という感じになりますが、2%だと4,000人ということ。それから、45万人の方ですと4,500人とか9,000人とかになりますけれども、大体、今のデータからの推計からすればそのぐらいだと考えてよろしいんですか。
 たしか、前回いただいた資料で、現在の制度で対象者といいますか、実際に救済制度で救済されている方が1,000人弱ぐらいだったと思うんですが、その数が例えば2倍から10倍と言うと随分差がありますけれども、そのぐらいの範囲になりそうだ。例えば何万人とか何十万人とか、そこまでばかでかくなることは勿論ないということなんでしょうか。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 先ほども説明しましたとおり、抗がん剤の使用率など、計算の基礎となる数字がまだきちんと出ていない状況なので、推測で言えば、今、おっしゃったような2,000人からという数字になると思いますが、確かに現在の救済者数、900人程度なんですけれども、これに比べるとかなり大きな数字が副作用死だけでも出てくることは言えると思います。
○中田委員 わかりました。
○森嶌座長 よろしゅうございますか。
 ほかにございましょうか。
 どうぞ。
○檀委員 最初に、がんの治療ということで概略をお話しいただきましたが、大体、大まかなところは合っていると思うんですけれども、ただ補足しておきたいんですが、その中に薬物療法の効果というところがありましたけれども、治癒する場合があるのはごく一部、長期の延命が得られるのはごく一部、それから、現状ではやってみないと効果がわからないと記載されて、説明されていましたが、こういうものを医者以外の人が聞いていますと、極めてがんの医療はこんなに希望がないもので、いいかげんなことをやっているのかと思われるかもしれません。
 これも、ほかのページにも書いてありましたが、がんの種類によって非常に違いまして、例えばいわゆる血液のがんと言われている白血病とか悪性リンパ腫とか、そういうような領域では最近の進歩は非常に大きくて、大ざっぱに言いますと、悪性リンパ腫は4割ぐらいは治りますし、急性白血病も4割から5割ぐらいは治る時代ですから、がんの種類によって大分違うので、すべてのがんの印象をこういうふうに持たれると少し違うのかなと思います。
 それから、白血病の中でも慢性骨髄性白血病という疾患は、少し前まではほとんど全例死亡していましたけれども、現在は、分子標的薬が出てからは、その薬を続けていられる患者さんはほぼ9割、治癒と同じかもしれませんけれども、長期にずっと生存するというデータになっていますから、がんの種類によって違うんだということも御理解いただいた方がいいかなと思います。
○森嶌座長 もう補足の御説明をいただいておりますけれども、ほかに、御質問も結構ですが、医学・薬学の方で何か補足、御意見がありましたら、お願いいたします。
 それでは、中村委員どうぞ。
○中村委員 補足と質問があるんですけれども、補足に関しては、術前化学療法の話は全然出てきていないんですが、手術の前に治療してがんを小さくするというのもかなり広がってきていますので、少なくとも、それは配慮する必要があると思います。
 それから先ほども、やってみないと効果はわからないという点について触れられましたけれども、明らかに分子標的治療薬の場合にはターゲットを選んで薬を使うことが行われて、その場合には非常に治療効果も高いわけですから、昔の抗がん剤の考え方ではなくて、例えばFDAのホームページなどを見ると、この薬を使う場合には、このバイオマーカーを調べなさいというリストがかなり載っているわけで、それに沿ってやると、やってみないと効果はわからないというレベルではなくて、かなり治療効果が高いものが出てきていますので、それを加えていただきたいということ。
 もう一つ、この資料1-2の裏側ですけれども、古い抗がん剤といいますか、非常に毒性の高い抗がん剤に関するデータは余りないんでしょうか。かなり新しい分子標的治療薬に限られているように思います。
○広瀬安全対策課長補佐 そこのところなんですけれども、現在、副作用とかの情報からでは、自発報告という形になりますので、死亡の報告とかが来ましても、結局、その母集団がわからずに、死亡率とか副作用の率が出ないことがございまして、そういったことをデータとして出すために全例調査のようなものを、きちんとデザインされた試験の中で調査されたものを、一応、このような形でまとめさせていただいたため、比較的、最近承認されたものが、この資料の中に載っかることになってしまったということだと思います。
○中村委員 もう一点、抗がん剤を使っている患者さんの推計なんですけれども、例えば、この20.9万人という数字を考えると、昨年度ですと、がんで亡くなっている患者さんは35万人おられるわけですね。そうすると、半分強ぐらいしか薬物療法を受けていないという印象は、少し少ないのではないかなという印象を持っているんですけれども、前にも一度申し上げたことがありますが、それは祖父江先生、何かございますか。
○森嶌座長 先生、よろしいですか。
○祖父江委員 患者数のカウントの仕方で、69万4,000人と書いてあるのは初回診断の数ですので、初回治療を受ける人の数と想定されます。
 一方で、151万人というのは再発の方も含んでの数ですので、当然多くなるわけですが、抗がん剤を使う患者さんの数としては、やはり150万人の方が適切かと思います。
 これ以外に、有病者数も計算しますけれども、それは罹患数と生存率を掛け算して、例えば5年前に診断された人が5年生存率何%で、今、生きている方、4年前に診断された罹患数かける4年生存率でと累積していって、現在生存されているがん患者さん、5年以内に診断されたがん患者さんという意味でいきますと、180万人ぐらいになります。ですから、大体、このぐらいのレベルの方が治療を受けているというので、それほど外れていないと思います。
○中村委員 今のお答えは、45万人の方が近いであろうということですか。
○祖父江委員 はい、そういうことです。
○森嶌座長 ほかにございましょうか。
 どうぞ。
○中田委員 今の関連なんですが、私もがんの患者数については、この間にあるかどうかはわかりませんけれども、患者調査の方が精度から言って恐らく近いだろうと思っていますが、地域がん登録は、ある意味ではボランタリーにやっている制度ですし、協力度みたいなものも地域によって違うということがあると思いますので、統一的に調べられている患者調査による方が、ぴったりいっているかどうかは勿論わかりませんが、恐らく近いだろうと思います。
○森嶌座長 どうぞ。
○祖父江委員 正確さという意味で漏れがあるというのは確かにそうなんですけれども、70万人というのは、全国のうち比較的精度の高い地域がん登録が行われている10~15県のデータを使って推計した値です。実測ではありません。不正確かと言われると、多少は漏れてはいると思いますけれども、そんなに不正確ではないと思います。
○中田委員 ただ、これだけ違っているとね。
○祖父江委員 違うのは、原理的に違うんです。これは再発の方が含まれていませんので、違うものをはかっていると思ってください。
○森嶌座長 どうぞ、本田委員。
○本田委員 専門家ではないので、単純な質問をさせていただきたいんですけれども、1つは進行がんの例ということで、資料1-1で書いてある、治療に関連する死亡は1~2%という表現の、この治療に関連する死亡というのは、抗がん剤とか何とかというわけではなくて、いろんなお薬を使っていらっしゃいますね。そういうものも全部含めて治療に関連すると判断できるという意味なのかということが1つ。
 それが、抗がん剤によるもので見ているのかということが1つ。
 あと、先ほど中村委員も質問されていましたけれども、資料1-2の裏の方の当該薬品との関連が否定できない死亡ということで、最新のお薬のことが出ていますけれども、この数値と既存の抗がん剤、いわゆる古いタイプの抗がん剤はこれよりも高くなる傾向があるんですか。低いものなんですか。それとも、全くわからない感じなのかを教えてもらいたいんです。
○堀医薬品医療機器総合機構安全第二部調査役 資料1-1に関してのお答えから申し上げますと、このスライドでは論文から引用する形で御説明させていただいています。それで、肺がんの患者さんの場合の4群比較の試験では、論文ベースになるのですけれども、治療に関連した死亡ということで報告されているのが、このパーセントという数値しかないので、それ以上のお答えは難しいですが、ただ、論文から読むには、この肺がんに行う4つの治療法それぞれについて、担当の医師が治療に関連した死亡だと判断した例を集めるとこういった数字になるということが論文でも公表されています。
 2つ目の大腸がんの方ですが、こちらは審査報告書より抜粋というふうに書かせていただいておりますとおり、これはベバシズマブの承認に関わるときの資料です。この中では、そういった位置づけの試験ということもありまして、主にはベバシズマブに関連したということになるとは思いますが、いずれにしても、恐らくおっしゃっているのが、治療というものが、全部ひっくるめたというよりは、いわゆる薬物療法を行って、薬物療法と関連がありそうだと担当の人が判断したものが恐らくこの数字だろうと思います。
 別添のこちらの表の方ですが、そこに関する数値はわからないというのが御回答になるとは思うのですけれども、ただ、こちらについては関連が否定できない死亡という書き方で公表されているものを拾っていきますので、否定できないということになりますと、治療に関連する死亡よりも更に広い範囲であることは恐らく想定されますので、そこの切る基準が厳密に全部一緒というわけではないと思います。
○森嶌座長 この段階でどうぞ御意見をと言っても、特に専門家でない方に御意見をといってもなかなか難しいかもしれません。私などは、この段階で意見を言えと言われても困りますが、この後、ヒアリングなどを行いますので、今の段階で多少見当違いの御意見をおっしゃってもかまいませんので、まだ時間がございますので、論点とも絡んで、御意見あるいは御質問を、御自由に御発言いただければと思います。
 藤村委員、どうぞ。
○藤村委員 質問になっているのかどうかも自信がないんですが、薬の承認を得られる場合に一番重視される効用はどういう点なのかということなんです。
 先ほど来、効果がどの程度か。一方では余り期待できない、他方ではそうでもないということが言われているものですから、頭の中に漠然とそういう疑問があります。これは先々、ヒアリングの段階で自分自身が整理して考え方をまとめていきたいと思っている点ではあるんですけれども、今日あらかじめ、もし考え方のきっかけでもいただければと思いまして質問しました。
○森嶌座長 特に臨床の、医療関係の方に伺った方がいいのかもしれません。
○檀委員 それは新薬の開発試験に関することですから、そちらに携わっている本職はPMDAですので、そちらの方からお話しいただいた方がいいと思います。
○広瀬安全対策課長補佐 事務局の方からお話しさせていただきたいと思いますけれども、恐らく審査のときに重視される効用の部分も、がん腫とか薬剤の性質とかによっても大分異なってくると思われますし、理想的には血液がんのようにかなり高い割合で治癒が望まれるような、抗がん剤であればそういうレベルが新しい薬を承認する際のメルクマールとなってくるんでしょうし、一方で余り好ましくない、成績のよくないようなものについては、例えば1週間とか2週間とか、極端な話ですけれども、そういう製造期間の延長が認められたものでも、臨床上メリットがあるようなことになれば承認されてくるのかなというところはあるかと思いますけれども、補足をいただいてもいいですか。
○森嶌座長 今の藤村先生の御質問は、新薬を承認するかどうかだけではなくて、臨床で投薬するかどうかという、むしろそちらの。
○藤村委員 両方入るんだと思います。
○森嶌座長 私は、新薬を承認するかどうかという問題もあるけれども、投薬するときに、臨床の先生方がやってみなければわからないというときに、ある患者について副作用がでるかどうかをどういうふうにして判断をされるかということについて、私は藤村先生と、弁護士はやっていませんが同じ法律を専門にしているので、似たような質問をさせていただきます。
 どうぞ。
○檀委員 あるがんに対する化学療法を始めるときには、我々は全然、やってみないとわからないとか、そんないいかげんなことでやっているわけではないので、それぞれのがんの、世界各国から治療ガイドラインのようなものがいろいろ出ているんです。例えば、米国NCCNからガイドラインがすべてのがん腫について出ています。そういうものの最初に診断したときの治療、初期の治療に関しては大体、そういう標準治療はあって、その治療をやれば、非常に多数例での臨床試験の結果から何十%ぐらいが奏功します。それから、副作用は何%ぐらいですという臨床試験の結果の論文がたくさん出ていますので、そういうものを、エビデンスをよりどころにして、この治療法を選びますというようなことでやっているわけです。
○森嶌座長 どうぞ。
○長谷川委員 がん腫によって異なることは先ほど檀委員が述べられたとおりですが、肺がんの領域では、薬剤開発において1つの薬で腫瘍縮小する効果が15~20%以上であれば効果がある薬剤と評価されます。その後、従来の薬に併用し、従来の標準的な2剤併用療法より5%、10%でも生存や腫瘍縮小効果が改善すれば新しい治療法として世に出てきます。つまり、単剤で高い効果を示すことが絶対的条件ではないと理解していただくとよいと考えます。
 「やってみないとわからない」という表現について、その真意は、肺がん領域を例にとれば、標準的な治療法による腫瘍縮小効果が30%~ 40%であるため、1人の患者さんを目の前にしたとき、この患者さんが腫瘍縮小を示す30~40%に含まれるのか、効果がない残りの60~70%に入るのかは治療前に予測ができません。この意味で、「やってみないとわからない」ということになります。
 一方、イレッサとかタルセバについては、この数年間に、肺がんのある遺伝子変異を有する患者さんに高い効果を示すことが解ってきました。この患者群では、タルセバとかイレッサの治療により70~80%の腫瘍縮小効果を示します。ある程度効果はありますが、それでも残りの30%に入るか、70~80%に入るのかは、治療してみないとわからないという御理解をいただくことが必要であると思います。
 このように、抗がん剤治療は、確率の前提に治療するということを理解していただくことに加え、抗がん剤特性として薬剤用量の安全域が狭いという特徴あります。抗がん剤は患者さんに副作用のでない最大限の量を投与するのが原則となっています。従来のやり方では、ある投与量で3人治療し2人以上の毒性が出現し始める限界用量を最大耐量とし、一段階少ない下の量を推奨用量として患者さんに投与します。
 このように、患者さんに毒性が出ない1つ手前の量で治療薬の投与量が決められてきていますので、抗がん剤以外の薬と投与量決定の仕方が違うことを理解していただき、その毒性を前提としてお薬の量が決められていることを知っていただくと良いかと思います。
○森嶌座長 どうぞ。
○北澤委員 北澤です。
 私も素人的な質問をしたいんですけれども、今、長谷川先生が、イレッサやタルセバの場合に、例えば遺伝子変異のある場合、7割ぐらい効くと言われたんですけれども、その効くというのは、今、何を指しているんでしょうか。いわゆる医療者、特に抗がん剤の専門家の言われる「効く」と、ごく一般的な、私も含めてですが、普通の人がとらえる「効く」というのが少し違うのではないかという気もするんですけれども、その辺り、補足説明をお願いします。
○長谷川委員 効果ということですが、これは治療薬の開発において難しい問題を含んでいます。1つの薬が本当に効くというのは、患者さん全体の生存率がどこまで伸びるかというのが患者さんにとって一番メリットがありますが、薬剤開発の段階では、最初から長期生存を見ることができないので、腫瘍がもとの状態から比較して治療によりどれくらい小さくなったかというところで効果判定をします。このような効果の評価により薬剤は最初に開発されていきます。
 しかし、患者さんにとって最終的にメリットがあるのは、全生存期間が延長することです。臨床研究では、この点が課題になっており、腫瘍縮小が生存期間の延長にどのように寄与するかは、さらに研究が必要であると考えています。
○北澤委員 確認ですけれども、それでは、先ほどの7割というのは、腫瘍縮小効果が見られたのが7割という意味と理解してよろしいわけですか。
○長谷川委員 はい。
 ただ、イレッサにつきましては、その後、臨床研究が進み、これまで進行肺がん患者さんの平均生存期間が約11~12ヵ月でしたが、遺伝子変異のある患者さんは約20か月になりました。ほぼ2倍の生存期間になり肺がん領域では非常に重要な薬剤になったと考えています。
○森嶌座長 どうぞ。
○中村委員 やってみないとわからないというのは、個人の患者さんで見ればそのとおりだと思うんです。それで、今のエビデンスというのは、例えば1,000人と1,000人で、Aという薬とBという薬を比較しながら、どちらのお薬の方がより治療効果が高いかという形で選ばれてきたわけですけれども、個々の治療法とか治療薬にとってみれば、基本的には目の前に座っている患者さんにはやってみないとわからないという言葉しか言えないんだと思います。
 今、長谷川先生は7割とおっしゃいましたけれども、以前から比べれば確かに確率は高くなってきましたが、あくまでそれは確率の問題で、一人ひとりの患者さんにとってみれば、やってみないとわからない。副作用も同じように、やってみないとわからないのは酒と同じような原理で、やはり飲んでみないと、赤くなるか、どきどきするか、倒れるかわからない。基本的には、一つひとつの薬にとっても、どのような形で体の中で解毒されて出ていくかというのはかなり個人差があるわけですから、その個人差までやってみないとわからない状況が続いているので、このような形で1%あるいは2%の人に不幸な事象が起こるというのは、やはり人間の多様性を考えれば避けられないわけです。
 その避けられないことを前提に、それでは、その不幸なことが起こった場合に我々がどう対処すべきなのかというのが、多分、ここの場で議論されるべきだと思いますけれども、予測できる副作用もだんだん増えてきましたが、基本的にはやってみないとわからないようなケースをどう考えていくのかということだと私は思っています。
○森嶌座長 どうぞ。
○遠藤委員 先ほど長谷川先生のお話にもありましたけれども、やはり従来の殺細胞性の抗がん剤などは副作用がかなり強いので、実際の治療は、効果を最大限に求めながら副作用をできるだけ抑えるという治療をしなければいけなくなってきますし、分子標的薬ですと、患者さんのQOLを著しく低下するような、例えば皮膚障害とかすごいものが出てしまって、そういう副作用で中断すると抗がん剤による治療効果も出ないし、次のステージに移ってしまう場合もあります。
 ですので、がんの治療は、できるだけ副作用の対策を取りながら治療を続けていかないとまずいですし、副作用の対策が十分取られていると、副作用の発生もある程度抑えられる場合もあります。ただ治療だけやってしまうと副作用がどんどん先に出てしまって中断されることがあります。
 今回、この検討会は副作用の救済制度についてですので、救済制度をつくることもすごく大事なんですけれども、やはりがん治療をしっかり上手にやっていく方法もある程度考えていかないと思います。がん治療は非常に難しいですし、先ほど標準治療の話も出てきましたけれども、すべてが標準治療で行われているわけではありません。
 その辺を十分考えていかないと、制度をつくればいいというだけでは何か違うような気がします。薬剤師は副作用ができるだけ発生しないようにしていくところを担っていこうと考えていますので、そういうものも併せて検討していただければと思っています。
○森嶌座長 それでは、倉田委員どうぞ。
○倉田委員 先ほど中村委員が、術前化学療法のことも配慮する必要があるとおっしゃっていたんですが、教えていただけますか。
○中村委員 例示として、進行がんの場合と手術の後の再発予防の2項目について紹介されたので、最近は手術の前に化学療法をやることもあるので、当然、検討する場合にはそういうものも配慮して考えてみるべきではないかということで、実際、抗がん剤は手術の前にも使われている例がありますということを紹介しただけのことです。
○森嶌座長 よろしいですか。
○倉田委員 はい、わかりました。ありがとうございます。
○森嶌座長 それでは、齊藤委員どうぞ。
○齊藤委員 医学の専門でない者から、抗がん剤の効果に関してもう少し具体的な感覚を知りたいので、今日は事務局の方から配られた資料1-1の18ページに進行がんの効果に関しての臨床実験が出ています。私、統計は読めるんですけれども、この数字を見たとき、やはりびっくりしたのは、生存期間に関して、プラセボ群とアバスチン群が700ぐらいのサンプルがあって、プラセボ群が19.9か月の生存期間で、当該抗がん剤を化学療法に加えてやったのが21.22か月で、ハザード比が89%で、ここでPバリューが7.69%という、これは自然科学の実験で言うと余りにも高い、普通は5%とか1%とかを下回るぐらいの数字でないと、この薬が有意に効いているとは判断できないと思うんですが、こうした抗がん剤が出てきたときに、大体このぐらいの相場で効果があると判断されているのか、たまたま、この文章が出てきたものがこの程度で限界的な効果だったのかというのが知りたいんです。
○森嶌座長 これはどなたに。
 どうぞ。
○長谷川委員 有効性を何で判断するのかは、議論のあるところですが、この研究の無増悪生存期間は、P値において優位差が出ています。
 これは国外の試験でしたか、国内の試験でしたか。
○堀医薬品医療機器総合機構安全第二部調査役 これは海外の試験です。
○長谷川委員 何が患者さんにとってメリットがあるかについてですが、アバスチンの肺がん領域における結果は、腫瘍縮小効果は明らかですが、全生存期間の延長は明確でありません。増悪期間が少なくとも延長することは、患者さんにとっては良好な期間が長くなることであり、メリットがあると考えれば有意差があると考えるということだと思います。
○堀医薬品医療機器総合機構安全第二部調査役 済みません、資料1-1ということで補足させていただきますと、このアバスチンを選んでいる理由は、大腸がんという非常に数の多いがんの患者さんで、しかも非常によく知られている薬なので取ってきたところなのですけれども、厳密の話をしますと、実際にはプライマリーとして評価されているのは、この無増悪生存期間の方になりますので、そちらの方を見ると、統計的には一応、差がついているということになって、審査報告書でも議論しているところです。ただ、時間の都合上、細かいところまで御説明している時間がなかったので、生存期間の方を黒枠で囲っていますが、プライマリーとしては無増悪生存期間を見ています。
 それで、生存期間の方に関しては、最初の治療をやった後に効果がなかった場合は別の治療に変えている場合もあるので、なかなか見方としては、この数分ではし尽くせないぐらいの議論で、いろいろ論点はあるところですけれども、ここの試験に関しては、この無増悪生存期間がプライマリーであったことは申し添えます。
○森嶌座長 どうぞ。
○本田委員 今の件について、患者という立場から、がん治療の現実を知っていただくためにも、少しずれるかもしれませんけれども、何点か申し上げたいと思っています。
 先ほどの、これで差があるのかという考え方、例えば2か月生存期間が延びることの中央値に意味があるのかといった場合に、患者にとっては、先ほどから言っている、やってみないとわからないというものがありまして、これは中央値であって、自分がどれだけ延びるのかがまたわからないということで、やりたいという判断をする患者も一定割合でいる現実があります。
 それで、先ほどの投与の判断というのはどのように医師がするのかということで、医師の判断は当然、まず基本にあるんですけれども、その上で患者の生き方の考え方がそれに加味されて、全身状態が余りにも悪くて、投与することで逆に早く亡くなるかもしれないというのが、患者自身、家族自身には基本的に判断がなかなか難しいんだと思うんです。ドクターはわかるのかもしれませんけれども、そういう際に、試してみないと死ねないとか、試してみないと、自分の生き方としてはチャレンジしたいとか、そういう考え方も、多くはないかもしれませんけれども、一定数いる中で、投与する判断が患者のそういう意思みたいなものにも左右されている場合があるのではないかというのも、この制度を考える際で、一つの医療のぎりぎりのところでのがん医療の現状を是非知っていただきたいと思って発言させていただきました。
○森嶌座長 ほかにいかがでしょうか。
 伺っているといろいろと、疑問というよりもだんだん、あれも考えられる、これも考えられるという、今のところそういう状態ですけれども、話を伺っているうちに整理をしていきたいと思いますが、ほかに何かございましょうか。次の議題に進んでもよろしいでしょうか。
 どうぞ。
○北澤委員 今の生存の話も大変興味があるんですけれども、資料1-2の抗がん剤の使用率が30.1%で、レセプトデータベースに基づく推計ということなんですが、これは健保組合のデータから推計されているということなんですけれども、これを日本人全体に当てはめた場合は、30.1%よりも多くなりそうなのか、少なくなりそうかについて、祖父江先生どうなんでしょうか。
○祖父江委員 これは何とも言えませんが、もう少しほかのデータソースも当たってみたらいいと思います。DPCのデータとか、あるいは今、拠点病院の院内がん登録の全国集計もありますので、複数のデータを当たってみて確認するということで今日は御勘弁ください。
○北澤委員 といいますのは、この3.の使用者数は結局30.1%をかけているので、ここの率が違っていたら、数も全然違うかなと思っただけなんです。
○森嶌座長 これ自身はかなり機械的な操作ですからね。
 どうぞ。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 済みません、齊藤先生から補足資料が出ているので、もしよろしければお願いします。
○森嶌座長 あるいは今の段階では適当ではないかもしれませんけれども、齊藤先生から御意見が出ていますので、齊藤先生お願いできますか。
○齊藤委員 それでは、最後の資料のところに少しだけメモを書いたんですが、私も医療の専門ではないですし、特に副作用をこうむった方や患者の方々の心情とか、いろいろと拝察しなくてはいけないことはたくさんあると思いますけれども、純粋に救済制度を考えた場合に抗がん剤の対象とするのは、やはりいろんな意味で慎重であった方がいいのではないかと思って、理由を3点挙げました。
 抗がん剤の便益とリスクは非常に緊張関係にある中で、必ずしもリスクを取るのに比した便益があるかどうかがなかなか事前には判断できないような治療方法自体は、これは科学の進展ですから、さまざまなトライアルをしなくてはいけないと思うんですが、それと、こういう救済制度が対象とするかどうかというのはまったく別問題で、通常、何か救済の対象とする場合、緩やかにでも何か失われる利益があって、その利益を補償して補っていく側面があるんです。
 こうしたリスクを伴う、患者にとっても、先ほども意見が出ましたが、非常に人生の挑戦と言ってもいいようなトライアルをしているところに、そのことによって、例えば不幸にしてお亡くなりになられたときに、その治療を取らなかった場合と取った場合でどれだけ何かが失われているのかというのは判断が難しいと思うんです。そうした失われた利益が明確に見えないようなときに、そこに制度が手当てをするということは、やはり少し慎重であった方がいいと思います。
 2番目なんですけれども、今の先生方のお話を聞いていても感じたんですが、抗がん剤治療自体が日々進歩していて、さまざまなトライアルをしていって、その中でいい薬ができていく、患者さんにとっても便益が発見的に進行していくというのが多分、特に進行がんに対しての抗がん剤の実態だと思うんですけれども、これが一旦、制度に組み込まれると、例えば死亡遺族の一時金とか年金には支払いの要件みたいなものがかなり厳格に決められたときに、この厳格に決められること自体が医療の現場の実験的な側面をかえって縛ってしまわないのか。そのことを懸念したお医者様の方で、未知への挑戦という側面に関して萎縮医療的なことが出てきてしまうのではないかという心配もあります。
 要するに、制度の対象となるということは、ある意味で公的な規制が強化されることになりますから、そのことと、この医療の健全な発展が、コンフリクトが起きないのかどうかが心配です。
 3番目は、この抗がん剤の救済よりは論点が広いんですけれども、やはり制度をつくるときに非常に重要だと思うのは、制度をつくるときの情報的基盤が余りにもなさ過ぎて、当該制度を設定すると、今回の場合、このままですと製薬会社が費用負担者になりますけれども、こういう制度を導入したときに、費用負担者が合理的にどのぐらい負担が生じるのかが、今も議論でもありましたけれども、なかなか合理的な予測が難しいと思います。
 がん登録制度も、先進国に比べればかなり遅れた状態ですし、レセプトデータのデータベース化がいろんな事情から遅れていて、抗がん剤の処方の実態みたいなことがなかなか客観的に把握できていない状態で、特に日本の医療に関するマイクロのデータは非常に欠如している中で、こうした制度を組み立てることによって費用対効果の合理的な推測ができないままにやると、もしかすると費用負担者にとって過度な負担になって、既存の制度自体もうまく機能しなくなってしまうこともあると思います。
 こうしたことを考えると、今の段階で抗がん剤を対象とするのは少し慎重であった方がいいのではないかと思いました。
 以上です。
○森嶌座長 ありがとうございます。
 この御意見については、もう少し後の段階で、ヒアリングなどを済ませた段階で、もう一度、齊藤先生から出していただいて検討した方がよいかと思いますけれども、今の段階で齊藤先生の御意見を伺ったということにしておきたいと思います。今の段階で、ここはこうではないか、ああではないかということを議論するのは少し早過ぎると思いますので、御意見をいただいたということにしたいと思います。
 ほかに御質問等はございましょうか。
 それでは、どうぞ。
○北澤委員 もう一つ、海外の制度について今日もいろいろ、フランス、スウェーデン、ドイツの制度について説明していただいたんですが、説明の限りでは、この国々でも抗がん剤については、なかなか対象とするのは難しいという理解でよろしいんですか。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 そうですね。済みません、個別の事例で全く救済していないかというところまでは把握はできなかったんですけれども、大使館とのやりとりを通じて把握した限りでは、相当難しいのではないかというところを御報告させていただきました。

○森嶌座長 昔の話なんですけれども、前に、この医薬品副作用救済制度の創設のとき、そして、その後は私は直接関わっていないんですが、改正するときにも大使館等を通じて外国の制度をかなりしっかり調べています。抗がん剤について、先ほどの牧野さんの説明でありましたようになっているのでしょうか。フランスは実際のところ、対象となっているが、結果的に外されているというお話がありましたけれども、実際、そうなのかどうかについて、10月か11月ぐらいまでに、在日の大使館を通じてでも、きちんと調べて確認していただけますか。
○鳥井医薬品副作用被害対策室長 そこは極力、そうさせていただきたいと思います。
○森嶌座長 よろしくお願いいたします。
 どうぞ。
○中田委員 先ほどの齊藤先生の論点の3番目に関連してなんですが、データの関係ですけれども、一般的に新しい制度を設計するときには勿論、正確なデータの把握は非常に重要だと思いますが、一般論で言えば、制度発足前にそれに合ったデータは通常はなかなか入手し得ない。あと、通常は制度が始まってからデータを収集可能になる。制度に沿ったデータが必要になります。そういうことが1点です。
 それから、データというものは制度ができますと、その制度に対するリアクションみたいなものがありますので、制度発足前のデータが幾ら正確でも、必ずしもそうなるかどうかというのはわからないということもありますので、余りにいいかげんに言うと変ですが、制度をやっている中でデータが蓄積されていくという考え方もあるのではないかと1つ思います。
 それから、私は年金の関係の仕事をしているんですが、年金などですと、新しい項目を入れるときに大体このぐらいで抑えられそうだというミニマムを見て、もう一つ、マキシマムを見て、その範囲が余りに広いとまずいですが、ある程度の幅なら大体このぐらいになるだろうということで制度をやってみるということもありますので、きちんとしたデータがないから絶対だめだということには必ずしもならないのではないかと思います。
 以上です。
○森嶌座長 データがなければこういう制度をつくれないということでないことはおっしゃるとおりで、他方で、中田先生が言われたように、制度がないとなかなか、制度に関連するデータはありません。予測をしても、制度が発足してみると、予測データは、いろんな推定とか一定の係数をかけて出してくるものですから、大体外れるんです。だから、集める必要はないというのではなくて、予測データの結果はある程度のめどとして考えるほかありません。
 それから、今、おっしゃったように、上限と下限を決めても大体どちらかにぶれてきますので、現実には、発足する段階で、ある程度のところで考える。
 どうぞ。
○齊藤委員 私の趣旨は少し違っていて、推測すべきデータの誤差を言っているのではなくて、既に実態として、どういう抗がん剤治療がなされていて、そもそもどういう段階に応じたがん患者の方々の数がどの程度あるかに関しては、実態がわからなければ制度を組み立てることができませんし、今回のように一部の経済主体に負担を求めるものになりますから、そのときに、余りに合理的な予測ができない状態の中で制度設計をすること自体がよくないのではないかということです。
○森嶌座長 おっしゃることはよくわかります。ただ、先ほどの69.4万人、151.8万人のでもわかるように、これは祖父江先生も、大体、この辺でしょうとおっしゃいましたけれども、この辺である程度のデータと言えるかどうかをこれから議論するということだと思います。
 それから、拠出を求める場合でも、ここからどういう形で、これもまだ議論していませんけれども、例えば死亡について給付金を出す、あるいは一定の期間、生存なさっているとすれば、障害給付について、どういう給付をするかによ
っても拠出額は変わってきます。
 先ほどから生存期間がどれぐらいかもわかっていないわけですから、そういうようなものをギリギリ細かい議論をしてみても、きちんとしたデータが揃っているとは言えない段階です。私が後ほどまた議論いたしましょうと言ったのはそういうことなんですけれども、制度設計する段階になれば、その段階でまた、どの程度のデータで制度設計ができるのかということも議論させていただきたいと思っております。先生のおっしゃったことは十分理解しているつもりであります。
 今日のところはこういうことで、事務局の議事次第では、19時半ぐらいまでで次の議題に移るというのが私の手元にありますので、次の議題に移らせていただいてよろしゅうございましょうか。(「はい」と声あり)
○森嶌座長 それでは、2つ目の議題に入らせていただきます。「2 検討の論点及びヒアリングの実施について」でありますが、これは論点そのものの中身を議論するとか、ヒアリングの中身を議論するということではなくて、今後、どういう論点についてやっていくか、それから、ヒアリングをどういう形でやっていくかということについて御検討いただきたいということでございます。
 前回の議論を踏まえまして、今後、検討すべき論点案を事務局に整理していただきました。これについて御意見をいただきたいということでございます。また、今後、関係者へヒアリングを実施していくことが必要だと考えておりますが、このヒアリングの実施についても御意見をいただきたいということでございますので、事務局の方から説明をいただきたいと思います。
 それでは、よろしくお願いします。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 それでは、資料2-1から資料2-4までまとめて説明させていただきます。
 まず、資料2-1の「検討の論点(案)」ですけれども、前回の検討会でも論点例という形で出したんですが、若干、そのリバイス版ということで、前回の議論を踏まえまして修正をさせていただきました。これに付け加えるべき論点、あるいはその他御意見があればお願いしたいと思います。
 まず、抗がん剤の副作用被害救済をどのように考えるかということでございます。これは前回も出しておりますけれども、新たに救済する場合、その必要性をどう考えるか。その背景として、抗がん剤とほかの医薬品の違いについて。それから、現行制度の考え方に対する評価。4つ目のポツとして、仮に救済するとした場合に、救済の範囲についてどう考えるか。これは現行制度が、疾病、障害、死亡に対して補償しておりますけれども、抗がん剤の場合も同じようにやるべきかどうかというようなことでございます。
 2点目として、関係者の行動にどのような影響を与えるかということでございます。
 3点目として、抗がん剤の副作用被害を、救済する場合にどのように判定するかというのも1つ念頭に置いておく必要があるかと思います。具体的には因果関係と適正使用の判断でございますけれども、運用段階で非常に難しくなって制度が回らないことにならないように、どういう判定をするかということも、ある程度検討しておく必要があるかと思います。
 それから、給付と負担についてどのように考えるかということでございます。
 その他として、これは抗がん剤以外にも除外医薬品はありますので、抗がん剤の検討があらかた終わった後で、その並びでどう考えるかということも検討していく必要があるかと思っております。
 この論点の2点目の、関係者の行動への影響の補足資料として、資料2-2になりますけれども、「関係者への影響の可能性について(議論のたたき台)」、これは事務局の方で、多少、前回の御議論なども参考にしながら整理したものでございます。
 まず、関係者として、製薬企業、医療関係者、患者・家族があると思います。
 製薬企業については、影響として、上の2つの○ですけれども、新薬の開発意欲に対してプラスの影響、マイナスの影響があるのではないかということが考えられます。また、制度をつくることによって負担増が生じますので、これが中長期的に薬の価格に転嫁される可能性がないかということを考慮する必要があるかと思います。
 医療関係者ですけれども、これは患者との間の信頼関係に影響がないかということが考えられます。それから、抗がん剤を使用する、しないという判断にこの制度が影響を与えないかも考えていく必要があるのではないかと思われます。
 患者・家族の欄でございますが、上の2つの○は、訴訟提起については、増える方向もあるし、減る方向もあるのではないか。制度のつくり方にもよるかと思いますが、両方考える必要があるのではないかということでございます。それから、補償があるという安心感から安易な抗がん剤使用の選択を招く可能性がないかも考慮しなければならない。それから、抗がん剤副作用により死亡した患者と、それ以外の患者、副作用死か否かわからない方もそれなりにいらっしゃいます。それから、抗がん剤治療を選択しなかった患者との間に不公平が生じる可能性がないかという、制度をつくったことによる影響を考えながら議論する必要があるかと思われます。
 議論のたたき台としてごらんいただければと思っております。
 あと、資料2-3と資料2-4について続けて説明させていただきます。
 ヒアリングの実施についてでございますけれども、ヒアリング対象としては大きく分けて3グループ、製薬企業団体と患者団体等、それから、医療関係者、それぞれ1~3団体ずつ選んで実施していきたいと思っております。
 ヒアリング内容としては、検討の論点と同じような内容で、現状のお考えを聞いていきたいということを考えております。これについても御意見をいただければと思います。
 最後に資料2-4ですが、今後のスケジュールでございます。
 本日は第2回検討会ですけれども、その後、資料には9月下旬からとなっておりますが、日程調整の結果、10月にならざるを得ないと思っていますけれども、10月中にヒアリングを実施したいと思っております。その後、議論の整理をいたしまして、12月にはとりまとめというところにつきましては前回と変更ございません。
 スケジュールについては以上でございます。
○森嶌座長 ありがとうございました。
 
検討の論点で、先ほど事務局の方からもございましたように、一応、事務局の方で前回の御議論も含めて整理していただいておりますけれども、これからヒアリングも含めて、議論の進展に従って、これ以外の論点も付け加える、あるいは場合によっては、私も今、読んでいて、論点が一体、何を意味しているのか、必ずしもはっきりわからない場合もありますので、それをもう少し明確にしなければならないかもしれません。その意味で今日は、何かお気づきの点があれば、御意見をいただきたいと思います。
 それから、ヒアリングの実施については、スケジュールの点で何かおありかもしれませんけれども、特になければ、こういうことでやらせていただくということでいかがでしょうか。特に検討の論点について、お考えがあれば付け加えていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 どうぞ。
○中村委員 前回も申し上げたかもしれませんけれども、患者さんの置かれている状況は、アーリーステージなのか、本当に進行がんなのか。まさにリスクとベネフィットの問題を挙げられましたが、進行がんで、あるいは再発がんで、抗がん剤治療を受けなければほぼ確実に死へ向かっていく状況の患者さんと、手術の後で、抗がん剤治療をしなくても再発しないかもしれない、でも、抗がん剤治療を受けようという患者さんでは、かなり置かれた状況も違いますし、リスクとベネフィットの考え方も明らかに違ってくると思います。
 もう一つは、薬の関連の度合いを判定する際においても、手術の後で抗がん剤治療を受けられる場合と、本当に進行がんで全身状態が悪いような状況下で抗がん剤治療を受けられる患者さんでは、関連の見極めの難しさはかなり違ってくると思いますので、恐らくここに座っておられる方は、みんな違う条件設定の下にいろいろ意見を言っておられるんだと思いますけれども、少なくとも、進行がんでほかに治療法がない場合なのか、あるいは術前とか術後で再発予防する場合なのかで、やはり患者さん自身のリスクとベネフィットのとらえ方も大きく違うと思いますので、少なくとも判定の容易なのか、難しいのかも含めて、そこを切り分けた上での論点を検討される方がわかりやすいのではないかと思います。
○森嶌座長 どういう形で論点に入れるのかは少し難しいと思いますが、医薬品の救済制度発足当時を入れたときに抗がん剤が入らなかったのは、当時の考え方としては、がんは進行がんというものとしては最初から考えていたものですから、そうだとすると、当然、死に至る患者に対する抗がん剤の投与ですから、何か月かの延命のための投薬中に副作用があるとしても、それに対して、救済制度を作るのは、ほかの医薬品の副作用の救済とは違うのではないか、という考え方でした。そのために格別の制度をつくるのは制度を複雑化するという考え方でした。はなはだ患者さんには申し訳ないけれども、抗がん剤は対象としないことにしたのです。
 けれども、この間の話で、今、中村先生がおっしゃったように、進行がんの場合と、そうでない場合とでは考え方を変えなければならないと思いますので、抗がん剤を制度に入れるかどうかというのは、また議論は別ですが、少なくとも、進行がんに対する投与の場合と、そうでない場合とではかなり違いますので、論点としてどういう形で分けるのか少し難しいとは思いますけれども、制度設計をする場合にはその問題をきちんと分けて議論しないと、違ったことをイメージしながら議論してしまうことになりますので、今度は、少し整理をしていただきたいと思います。
 ほかに何かございましょうか。
 檀先生、どうぞ。
○檀委員 検討の論点と書いてある、この中のことなんですが、前回の検討会で、私は総論として、こういう制度があった方がいいのではないかと申し上げました。それは総論的なことで、方向性としてはあった方がいいのではないかということだったんですけれども、勿論、それを実現するためにはさまざまな、大きな、クリアーしなければいけないバリアは幾つもあると思います。各論としては、そういう問題があると思います。
 幾つかありますけれども、最も大きい重要なのは、検討の論点にも書いてありますが、この制度ができると、抗がん剤使用の医療側が委縮を招く可能性という、医療関係者に対する影響がないかどうかという、これを是非とも検討しなければいけないと思うんですけれども、現行の医薬品副作用被害救済制度では、救済することの重要な強い条件の一つが適正使用であるということがありますね。ただ、この抗がん剤の場合には、適正使用かどうかという判断が極めて難しくて、先ほども申し上げましたけれども、最初の段階のがんであれば、標準治療というのは大体みんな、どこの施設でも同じようなことをやっていますから、それに大きく外れていなければ不適正とは言えないかもしれません。
 しかし、実際、問題としては、2度目、3度目の再発の患者さんなどは、そういう患者さんに対する治療は全く決まっていませんで、それはどうしているかといいますと、それと同じような条件の患者さん、同じような疾患で、同じような年齢で、同じような臓器障害を持っていてという患者さんに使ったという、海外、世界中からの報告を集めてきて、そういう場合にはこの方法がいいのではないかというようなものを探し出してきて、勿論、それを患者さんや御家族に説明して、インフォームド・コンセントを得た上でそういう治療をやっているのが現状です。
 ですから、そういう場合には全く、適正か否かという判断はできるようなものではありませんので、そこのところへ、この新しい抗がん剤の救済制度に適正使用という項目を持ってくると、明らかにがんに対する医療の委縮を招く危険性はあると思います。この治療をやれば、もしかするとこの患者さんには非常にメリットがあるのではないかという可能性を強く感じて、考えてやっている場合が実際は多いわけですけれども、それがそういう方法で副作用が不幸にして出た場合、この救済制度にかかってきたら、そういう条項があれば、それは適正ではないのではないかと言われるかもしれないですね。ですから、極論すれば、その条項をこういうがんの救済制度には持ち込まないとか、そういうことを考えないと、いろいろ悪影響は出る可能性はあると思います。
 あとは、ここにも書いてありますけれども、有害事象の中で、本当にがんの副作用なのか、がんの末期の病態の一部なのかという判断ができるかどうか、そこの辺りも、本当にその領域の医療の専門家を呼んできて判定してもらわないとなかなか難しいですね。
 あとは、経済的な面もありますけれども、副作用の中のどこまでを救済するのか、その線引きも十分検討する必要があると思います。従来の抗がん剤では、白血球や血小板が減るとか貧血になるのはほぼ全例ですから、勿論、そんなものをこの救済の対象にするわけにはいかないわけですから、死亡した場合だけとか、重篤な後遺症が残った場合とか、そういうような線引きに関する検討も是非とも必要であろうと思います。
○森嶌座長 ありがとうございました。
 
普通の医薬品の場合の適正使用は、普通は添付書類に書いてあるというんですけれども、今の檀先生のお話ですと、がん治療の場合は、おっしゃったようなものは、まさに適正使用ではないかという気がします。適正使用でないというのは、本来ならば使うべきでないところで使ったというものだと思います。
 ですから、適正使用という言葉を使うかどうかは別として、どういう要件で絞るのか。つまり、ここに書いてありますけれども、安易な使用をして、そして、それが本来使うべきでないところで副作用を起こしたというときに、それを救済の対象にするかどうかというのが一つの切り方だと思います。
 ここで議論するつもりはありませんけれども、極端な話、かぜでお医者さんが抗がん剤を投与して、仮に副作用で亡くなったというときに。これで救済するかといいますと、そういうわけにはいきませんので、今のお話はまさにお医者さんとしては、なすべきことをなさったと私は思っておりますけれども、これは後ほど議論いたします。
 どうぞ。
○齊藤委員 適正使用なんですけれども、考え方として、こういう公的な制度の中に、ある私的な合意で行われているものを置くと、やはり何らかの形で基準とか給付の要件を決めていかないと制度が回らなくなると思うんです。もし、そのことが難しくて、かえってそういう判断や要件を入れることで現場の柔軟性をそいでしまうのであれば、そういう規制の対象にならないような形で、つまり対象にしないことも一つの合理的な選択ではないかと思うんです。
○森嶌座長 それこそ経済学の用語ですけれども、この要件を適用するためにその作業(運用)の手間、アドミニストレーション・コストが高くなるんだったら、そういう制度はつくらない方がいいということのもあると思いますが、この問題は、後ほど議論するということで、今の御議論は一応テークノートしておいてください。
 ほかに何か、今の時点で論点はございましょうか。
 どうぞ。
○本田委員 今までの御意見、全く納得しているんですけれども、プラスで少しだけ意見として、医師の委縮ということは、ここの患者の欄に書いていないんですけれども、患者にとっては大きな治療の選択肢の縮小とかにつながることも論点として入れていただきたいということ。
 あと、この論点(案)の3つ目の○のところなんですが、「どのように判定するか」とありますけれども、そもそも判定できるのかというのも我々素人にもわかるような、何かそういうことがきっちり示せるのかどうか。例えば先ほどの資料で、がん治療の説明の際に治療関連死は1~2%とありましたけれども、あれは治験ですね。治験となると、かなり厳密に、たくさんの人が関わって副作用をチェックしていますね。実際の臨床の現場と治験とは、また少し違う部分があるかと思うんですが、その辺の現実性をやはりちゃんと聞きたいと思っています。
 それで、今、このヒアリングのところは、また後でなんですか。今、意見を言ってもいいですか。
○森嶌座長 どうぞ。
○本田委員 そういう意味でも、このヒアリング対象の医療関係者として、やはり臨床でばりばり患者さんを見ている先生に来ていただいて、質問とかができるように人選をしていただきたいなというのが1つです。
 もう一つは、製薬企業の方なんですけれども、例えばどういう人を、どういう範囲で、制度化するとした場合に救済するかという際に、今の制度だったら製薬企業さんの拠出によるみたいなことになるのかと思うんですが、その際に、実際に御発言できるのかどうかはわかりませんけれども、どの程度なら製薬企業として持ちこたえられるけれども、こうなるとさすがに厳しいとか、そういうことなどを聞けるような、抗がん剤をつくっていらっしゃる企業の方にも勿論来ていただけるんですねという、その辺、具体的な質問とかができることが私は希望としてあるんですけれども、団体としてですか。
○森嶌座長 
 
こういうところに団体の代表として来られると 正直なお話をしていただけるかどうかわかりませんが、事務局としては今の本田委員のお話は検討してください。

○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 そうですね。今の御意見を踏まえて、また検討したいと思います。
○森嶌座長 ほかに何かございましょうか。
 どうぞ。
○山口委員 ヒアリング対象の関係で関連してということですけれども、患者団体等ということについても、これも例えば患者のステージによっても考え方の違いとか、あるいは不幸にして亡くなられた後の御遺族と、今、実際に闘われている患者の方で考え方がかなり違う感じがいたしますので、できればこの患者団体についても、一くくりというよりは、できれば複数、多くの人の御意見がいただければと考えておりますので、お願いします。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 これにつきましても、御意見を踏まえて、また検討させていただきます。
○森嶌座長 大分時間が迫っておりますけれども、ほかにございましょうか。
 どうぞ。
○長谷川委員 資料の追加をしていただいたらどうかと考えますのは、がん治療全体を一括して議論が進んでいますが、がん腫によって、抗がん剤の対象になる患者さんも異なります。均一にがん治療を議論すると人により思い描く内容も異なると思います。
 もし可能であれば、統計の中で、どのがん腫がどれくらいの数であり、進行がんとして治療対象になる患者さんはがん腫によりどれくらい存在するかというデータがありますと、日本全体のがんの状況をイメージしやすくなるのではないかと思います。
○祖父江委員 実情を言いますと、初発の患者さんの情報は割とあるんです。今の地域がん登録、院内がん登録は初発の方々の登録を中心にやっていますので、まだ、そこの段階での治療方針といいますか、標準治療に関しては割と適用も正確に行くと思うんですが、問題はやはり、再発の患者さんに関しての統計は非常に遅れているといいますか、全世界的に見ても正確な統計というのは余り取られていないです。
 結局、最初に診断されたときの情報と、それから、結局亡くなったのかという最後の情報と、ここの2点しかほとんど得られていないので、再発の情報に関してはかなり推測という域を出ないと思います。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 できるだけ探してみます。
○森嶌座長 どうぞ。
○中田委員 2点ほど資料の要望をしたいと思うんです。
 1つは、現在、被害救済制度というものがあって、対象医薬品については報告制度があるわけですけれども、抗がん剤については全く報告されていないんでしょうか。もしくは報告されてあれば、そのまま使えるかどうかはわかりませんが、ある程度、規模のイメージがわかるので、もし、そういうものがあれば資料を提出していただきたいというのが1点です。
 もう一つ、先ほど御意見が出ていましたけれども、医薬品産業への影響も一応、今の個人的な感じでは、全体の規模に対して非常に額が小さいのでほとんど影響がないと思いますけれども、一応チェックという意味で、医薬品の市場規模、抗がん剤の市場規模、量とか金額とかを教えていただきたいと思います。
 それで、先ほどのお話に絡めれば、製薬企業の利益率みたいなものもわかれば、医薬品産業に直接、そんなに大きな影響はないのか、ある程度影響が出るのかとか、そういったことがわかるので、そういった資料もお願いできればと思います。
 以上です。
○森嶌座長 最後の資料はどうですか。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 済みません、探してみないと。
○森嶌座長 全体はともかくとして、それもわかればお願いいたします。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 済みません、副作用報告制度の中で抗がん剤がというのは第1回の資料にも若干載っておりまして、皆様のお手元にはないかと思いますけれども、平成21年度の副作用報告の中で、抗がん剤による死亡公表数が1,003件というデータも御紹介させていただいておりますので、また不足等がありましたらおっしゃっていただければと思います。
○森嶌座長 副作用報告というのは全部出ることになっていますから、あるはずです。
 それでは、ほかにございましょうか。
 どうぞ。
○藤村委員 中村委員にお尋ねしたいんですけれども、現行の救済制度で対象になっている病気と同じような扱いができるといいますか、今、頭の中で整理できないんですけれども、そういうがん腫としてはこういうものがあるというのは言えるんですか。
 現行の救済制度で対象になっている病気、例えば難治性のてんかんとかそんなものが対象になっていますね。それと同視できるようながんの種類といいますか、そういう観点から論ずること自体が無理なんですか。
○中村委員 今、おっしゃられた論点では難しいと思いますが、ただ、本当に再発リスクは低いけれども、抗がん剤治療を受けるというような場合での難治性疾患に対してのリスクを取るというのでは同列視できるかもしれないんですが、もともと抗がん剤は、分子標的治療薬といっても副作用のレベルはほかの薬に比べて高いですから、そこはかなり、個々の例もあって一概に言うのは難しいと思いますけれども、本来、分子標的治療薬というものは副作用は少ないと言われて登場してきたんですが、どうもそうでもないみたいだというので、やはりある程度のリスクは考えて治療を受けないといけないというのが実情だと思います。
○藤村委員 そうすると、やはりがんという病態は全く、現行の救済制度の対象になっている病態とは分けて考えなければいけないということは変わりないわけですか。
○中村委員 それは、もっと臨床の専門家の先生方が、長谷川先生とか、たくさんおられます。
○藤村委員 つまり、救済制度というのは、今、副作用を問題にしているんですけれども、広く言えば、病気に対しての全体の救済という側面もあるわけですね。ですから、そういう対象として許容できる病態と、そうでない病態とということで、観点・視点を変えることが適当なのか、どうなのか、意味があることなのか、ないのか、その辺が漠然と頭の中にあるものですからね。
○檀委員 少しお話が難し過ぎて、なかなかお答えにくいですけれども、長谷川先生、何かわかりますか。
○長谷川委員 この点が、まさに議論の論点であると思います。座長の森嶌先生が、現在の薬剤副作用救済制度の発足時に、抗がん剤を除外することになった議論を御紹介いただきましたが、この点について時代を経てもう一度検討する事であろうかと思います。患者さんの病気自体が、多くは治癒するか、もしくは比較的、長期生存が得られる慢性の病気と、進行がんという着実に進行して、予後が悪く有効な治療法がない中で、抗がん剤治療をどういうふうに取り扱うかをまさに議論していく必要があります。非常に難しい論点だと思います。
○森嶌座長 これはヒアリング、それから、特に先ほど本田委員からもありましたけれども、臨床の先生などから伺いながら議論をしていきたいと思います。私にもまだ、前に議論したときとは大分違うということは認識できましたが、それでは、組み込んでもいいぐらいなことになっているのか、やはり仮に組み込むとしても違った仕組みとして同じ中の別棟にするのか、それとも依然として救済制度にはなじまないのかというような、まだこれから議論していかなければならないと考えております。
 それでは、時間が過ぎましたので、この後はおしまいということでよろしいんでしたか。
 どうぞ。
○牧野医薬品副作用被害対策室調整官 済みません、次回の日程だけ御紹介させていただきます。
 昨日、皆様に御連絡させていただきましたけれども、一応、仮置きではありますが、10月3日月曜日の17時30分からということにさせていただきたいと思っております。
 ただ、ヒアリング予定者等の調整の状況によって、時間帯については変わる可能性もありますので、また御連絡させていただきます。
○森嶌座長 この検討会は夜学、二部学校みたいなところですけれども、よろしくお願いいたします。
○鳥井医薬品副作用被害対策室長 それから、今日御要望いただきました資料等につきましては、できるだけ次回以降でそろえたいと思いますが、検討の論点につきましては、少し修正したものをeメール等で送らせていただきますので、その際にコメントがあれば教えていただければと思います。
○森嶌座長 それでは、次回からヒアリングということになりますね。
○鳥井医薬品副作用被害対策室長 決まりましたら、また御連絡いたします。
○森嶌座長 それでは、長時間にわたりまして、熱心に御議論いただきましてありがとうございました。
 本日はこれで終了させていただきます。


(了)

<連絡先>
厚生労働省医薬食品局総務課
医薬品副作用被害対策室
TEL 03-5253-1111(内線2718)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医薬・生活衛生局が実施する検討会等> 抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会> 第2回抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会議事録

ページの先頭へ戻る