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2011年2月16日 第7回重篤副作用総合対策検討会 議事録

医薬食品局安全対策課

○日時

平成23年2月16日(水)18:00~


○場所

共用第7会議室


○議題

重篤副作用疾患別対応マニュアルについて

○議事

○事務局 定刻となりましたので、第7回重篤副作用総合対策検討会を開催いたします。本日ご出席の委員の方々におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。本検討会は公開で行うこととしておりますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただいておりますので、マスコミ関係者の方々におかれましては、ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。
 前回の検討会以降、委員の交代がございましたので、新任の委員の先生方のご紹介をさせていただきます。社団法人日本医師会常任理事の高杉敬久先生です。財団法人日本医薬情報センター理事の秋野けい子先生です。
 続きまして、本日の会議の出席状況です。金澤委員、林委員から、ご欠席の連絡をいただいております。また、本マニュアルの作成に当たり、社団法人日本病院薬剤師会でワーキンググループを開催し、マニュアル案を事前検討していただいております。日本病院薬剤師会の林先生が本日欠席されておりますので、社団法人日本病院薬剤師会から、東邦大学医療センター大森病院薬剤部部長補佐の飯久保尚先生に参考人としてお越しいただいております。それから、本日ご検討いただく、重篤副作用疾患別対応マニュアルの作成にご協力賜りました関係学会の先生方に、参考人としてご同席いただくこととなっております。
 続いて、前回の検討会後に事務局に人事異動がございましたので、紹介させていただきます。安全対策課長の俵木です。安全対策課長補佐の広瀬です。私、事務局の岡本です。よろしくお願いいたします。
 議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。以後の進行は座長の松本先生にお願いいたします。
○松本座長 事務局から資料の確認をお願いいたします。
○事務局 重篤副作用総合対策検討会の議事次第、配付資料を参考に、資料の確認をさせていただきます。資料1-1、薬物性味覚障害のマニュアル(案)、資料1-2が低血糖のマニュアル(案)、資料1-3が小児の急性脳症のマニュアル(案)、資料1-4が急性散在性脊髄炎のマニュアル(案)、資料1-5が無菌性髄膜炎のマニュアル(案)、資料1-6が卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のマニュアル(案)、資料1-7が角膜混濁のマニュアル(案)、資料1-8が出血性膀胱炎のマニュアル(案)、資料1-9が特発性大腿骨頭壊死症のマニュアル(案)、資料1-10が急性腎盂腎炎のマニュアル(案)、資料1-11が腫瘍崩壊症候群のマニュアル(案)、資料1-12が腎性尿崩症のマニュアル(案)、資料2「今後の重篤副作用疾患別対応マニュアルの今後の取扱い」、参考資料1「重篤副作用疾患別対応マニュアル作成状況」以上でございます。足りないもの、落丁などがございましたら、お申し出いただければと思います。
○松本座長 議事を進めます。資料1として、12疾患のマニュアル(案)が配付されています。事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 12疾患のマニュアル(案)の説明の前に、本検討に至るまでのマニュアル(案)の作成手順について、簡単に説明させていただきます。厚生労働省の委託により、関係学会のマニュアル作成委員会でマニュアル(案)をご作成いただいた後、検討会開催の前に社団法人日本病院薬剤師会のワーキンググループで、学会でご作成いただいたマニュアル(案)について、薬剤師の先生方の立場から事前にご検討いただいております。その結果について、関係学会に確認したものを本日の検討会でご検討いただく形になっておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、薬物性味覚障害のマニュアル(案)について、概要を説明いたします。資料1-1の5、6頁をご覧ください。薬を飲んだことによって味を感じなくなる、あるいは一部の味が低下する味覚障害が起こることがあり、薬物性味覚障害と呼ばれます。高齢者に多く見られ、原因薬剤としては、降圧剤、消化性潰瘍治療薬、抗うつ薬、抗菌薬、抗がん剤などがあります。症状としては、「味を感じにくい」「嫌な味がする」「食べ物の味が変わった」「食事がおいしくなくなった」などの自覚症状が見られます。イラストは7頁にありまして、まずい、味を感じないといったことをイラストとして表現しております。概要については以上です。なお、本マニュアルを作成いただいた日本口腔科学会より、東京医科歯科大学大学院顎顔面外科学教授の天笠先生に参考人としてご出席いただいております。事務局からは以上です。
○松本座長 天笠先生から、補足がありましたらお願いいたします。
○天笠参考人 いまご説明いただきましたように、薬剤性味覚障害、薬物による副作用としての味覚障害についてまとめさせていただきました。最初に「患者の皆様へ」ということで、ご覧のように書いております。特に、黄色の枠に入っておりますが、「甘い」「塩からい」「酸っぱい」「苦い」などの味がわからないことを味覚障害といいます。何らかの薬を飲んだことによって味覚障害が起こることがあり、高齢者に多く見られ、薬剤性味覚障害と呼ばれます。もし薬を飲んで次のような症状が出た場合は、医師あるいは薬剤師に相談してください。「味を感じにくい」「嫌な味がする」「食べ物の味が変わった」「食事がおいしくなくなった」というようなことでございます。
 味覚障害についての説明は、ここに書いてあるとおりですが、味覚障害について、患者への説明と早期発見、早期対応については6頁です。また、8頁に「医療関係者の皆様へ」として、早期発見と早期対応のポイントについて、先ほどの患者のものと同じようではありますが、詳細に記載させていただきました。早期に認められる症状について丸1から丸6まで書いてあります。例えば丸6で、すべてこれが味覚障害に通じるかというと、必ずしもそうではありませんが、その誘因となり得るものとしてあげています。丸1から丸5はよくあることで、丸6は参考ということです。そのほか、副作用の好発時期、患者側のリスク、これらについても、どのようなものがあるか、誘因となる疾患などについては丸3・丸4が薬剤の種類の数で書いています。そのほか、推定原因医薬品、医療関係者の対応のポイント等を細かく書いております。
 副作用の概要は先ほどと同じ内容ですが、味覚障害についての記載を一般的なもので書いております。自覚症状、他覚症状としてあります。また、検査については10頁にあるとおりで、ご覧のような検査を行うということです。そのほか、発症機序については、11頁に簡単に記載しています。また、大事なのは副作用の判別基準で、3として書いております。12頁には、判別が必要な疾患と判別法、これらについての特徴あるいは鑑別すべき内容を具体的に記載しました。また、13頁は治療方法について書いていますが、これがすべてではございませんので、このような治療が通常なされるということです。
 典型的な症例につきまして、14頁に2例ほど書いてあります。1例目は、ステロイドのデキサメタゾン軟膏による味覚障害と思われるものです。2例目は、記載の吸入薬によって起こった事例です。あとは引用文献・資料で、16頁の表1、添付文書に苦味の記載がある薬剤、17頁の表2、添付文書に味覚障害・味覚異常の記載のある薬剤が掲載してあり、たくさんの薬があります。最後のほうには、参考1として副作用報告件数、また28頁にも国際医薬用語集日本語版における主な関連用語一覧ということで記載させていただいております。委員の先生方、また薬剤師会の先生方には、ご協力をいただきましてありがとうございます。
○松本座長 委員の先生方から、何かご意見はございますか。
○戸田委員 13頁の治療方法の丸2に亜鉛剤の補給とありまして、処方例の2番目に、硫酸亜鉛とあります。これは亜鉛量23mgとなっていますが、硫酸亜鉛としては何mgになるのでしょうか。それと、これは1回量なのか1日量なのでしょうか。
○天笠参考人 硫酸亜鉛量としては、いま私の手元にはございません。記憶が定かであれば、亜鉛量23mgを1日に3回服用することとしていたつもりです。いま私の手元に正確な記載がありませんので。
○戸田委員 1回量を書いたほうがわかりやすいと思います。
○天笠参考人 そうですね。
○戸田委員 もう1つは、亜鉛量として23mgとしないで、硫酸亜鉛としていくらで、その中で亜鉛量は23mgと書いておかないと、実際に使うときに困ると思います。
○松本座長 その辺は確認した上でと。
○天笠参考人 ごもっともなご指摘でございまして、ありがとうございます。そのようにしたいと思います。
○笠原委員 もともとのマニュアルの選び方の問題なのかもしれないのですが、薬剤性の味覚障害は本当に重篤なものかという判断が難しいのですが、いちばん最後の添付文書に、苦味であるとか、味覚障害・味覚異常があると。薬の添付文書はそうだろうと思うのですが、この中で抗がん剤などのように粘膜障害があって、対応が取れなくて重篤になるようなケースはあると思うのですが、味覚障害で重篤な障害になるようなケースでは、何か判定の基準があったほうが、判断し易いと思いますが。これは単なる文書の羅列になっていると思うのですが、いかがでしょうか。
○天笠参考人 重篤という言葉そのものが、先生ご指摘のように急性にくる重篤もございますが、実際には、味覚異常、味覚脱出、錯味などにしても、患者にとっては重篤で重大なものという判断です。ここでは、薬剤性味覚障害という形では、軽度なものから高度なものまで網羅していないと対応に苦慮することになると思います。実際に味を感じなくなってしまう人もかなりおります。味覚障害が徐々に発症して、最後には味覚が完全におかしくなるということになりますと、重篤と判断してもよろしいと考えます。なお、味覚異常が軽度か高度かについては検査法があります。
○市川委員 6頁の「患者の皆様へ」の味覚障害の説明で、上から4行目に「全く味を感じないもの」として、「味覚脱出」という言葉を使用されているのですが、医療関係者も「味覚脱出」という言葉は使われていなくて、「味覚消失」「無味症」という言葉を使われています。おそらく味覚脱出は味がわかりにくいという意味合いかと思うのですが、ここで言われているのは、「味が全くしない」なので、味覚消失のほうが適切なのかなと思います。
○天笠参考人 ご指摘のとおり、「味覚消失」としたいと思います。
○市川委員 あと同じところの下から2行目に、「亜鉛キレート作用」とありますが、患者からしまして、ご理解いただけるのかなというのがあります。例えば「ミネラルを包み込む作用」とか、少しオブラートに包んだような書き方のほうがよろしいかと思いました。
○天笠参考人 ご指摘ありがとうございます。私たちもこの「亜鉛キレート作用」については議論があったのですが、適切な言葉が出てこなかったものですから、このまま書かせていただきました。ご指摘のとおりにしたいと思います。
○市川委員 例えばですが、「ミネラルを包み込む作用」とか。
○上田委員 ミネラルというとすべてのミネラルが入ってしまいますので、「亜鉛の働きを抑制する作用のある薬」とか、そういうほうがいいのではないでしょうか。
○天笠参考人 亜鉛キレート作用の後ろに、「亜鉛の吸収を抑制する」などを、括弧で入れるということではいかがでしょうか。医学用語と合致させるには難しいところがあるものですから、括弧で入れさせていただくというのはいかがでしょうか。
○松本座長 一般の人が読むわけですから、いちばん適切な言葉を工夫して入れていただければと思います。その辺は事務局と相談してください。
○市川委員 もう1点ですが、24頁の表の上から4行目に、ニューキノロン系抗菌剤を列記していただいているのですが、ガチフロキサシン水和物は、2008年9月末に低血糖と高血糖による意識障害の問題で、点眼薬はありますが、経口剤は販売を中止していまして、欧米も発売を中止しています。ここで言われているのは点眼薬のことではなく、内服を想定されていると思うのですが、添付文書はもう存在しないので、削除されたらどうかなと思います。
○松本座長 削除しますか。
○上田委員 低血糖のところにも症例で入っていますので、歴史的なものになるかもしれませんが、入れておいたほうがよろしいのではないでしょうか。
○市川委員 17頁の表2のタイトルが馴染まないと思います。
○天笠参考人 括弧をして過去に記載があったものを含むという形にすれば、残すことはできると思います。歴史的意味も含めて知らせるということであれば、そのような形で修正をさせていただければと思います。
○松本座長 実際には存在しないけれども、記録として残すこと自体は悪いことではないと思います。
○市川委員 わかりました。
○飯島委員 24頁ですが、抗真菌剤が上から6行目にあって、下から3行目に抗真菌剤があって、上の欄にグリセオフルビンがあります。これは、現在全世界的に全くないわけです。これも歴史的にあったとするならそれでもいいですが、これは現在では全世界的にございません。抗真菌剤を2つに分けている理由がないと。
○松本座長 これは一括したほうがいいですね。
○天笠参考人 もう1回おっしゃっていただけますか。
○飯島委員 現在グリセオフルビンが生産されておりません。
○天笠参考人 わかりました。
○岩田委員 細かいことですが、「剤」とか「薬」とか、いろいろな使い方をしているので、たしか以前にも問題になって、できるだけ統一しようとなっていたのではないかと思いますが、これは滅茶苦茶ですね。
○松本座長 そうですね。具体的には8、9、11頁で、「剤」と「薬」が滅茶苦茶になっているので、「薬」に統一していただければと思います。
○天笠参考人 ご指摘のとおり、「薬」に統一したいと思います。ただ、後ろの表に関しては難しいところがありまして、もともと添付文書に書いてあるものですから、こちらを直すのは難しいかなと思います。ご指摘のように私達も心配して、薬剤師の先生方にご指導いただけるものと思っておりまして。申し訳ありません。
○松本座長 飯島先生、何かよいサジェスチョンはありますか。これはまとめるのはまとめるとしても、グリセオフルビンをカットするのはどうしますか。
○安全対策課長 もうないということであれば、削除させていただければと思います。
○天笠参考人 置いておく意味がないのであれば。
○松本座長 置いておく意味はないですね。これはカットして、上と下を一緒にするということで。
○天笠参考人 わかりました。
○秋野委員 16頁の表の下から3行目に「血圧降下剤」、その次に「中枢性鎮咳剤α2刺激剤」とありまして、グアナベンズがあるのですが、グアナベンズの適応症は本態性高血圧症だけだと思いますので、ここの「鎮咳剤」というのは削除してもよろしいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。これが1点です。それから17頁で、字の間違いです。「その他の泌尿生殖」の「泌」が「に」になっています。
 3点目は、21頁の上のほうに止血剤という分類がありまして、そこの中に薬効分類でいう339のもの、219、332が、全部一緒になっているのですが、ここは止血剤としてまとめてよろしいのでしょうか。
○天笠参考人 前半の内容についてはよく理解いたしましたが。
○松本座長 まず、16頁の「中枢性鎮咳剤」の「鎮咳剤」を消すということですか。
○秋野委員 はい。これは「中枢性α2刺激剤」だけでもよろしいのかと思います。
○松本座長 それで通用すればですが、正式にはどうなのですか。
○秋野委員 薬効分類からいくと、中枢性α2刺激剤で通用しているかと思います。
○松本座長 確かに聞かないですね。これはまた調整してカットすればいいですね。次は何でしたか。
○秋野委員 その次の17頁は単なるミスプリントで、「その他のに尿」と書いてあるのが「泌尿」です。
 3点目が、21頁の上から4行目の止血剤という分類の中に、薬効分類でいう、339、219、332が1つにまとまっているのですが、止血剤としてのまとめ方でよろしいのでしょうか。
○安全使用推進室長 この辺りは薬剤の名称、薬効群の書きぶりなど細かい部分になってきましたので、これを口腔科学会の先生方にまたお尋ねするのも難しい話だと思いますので、日本病院薬剤師会に今日の指摘を持って帰っていただいて、整理をしていただいて、事務局と調整させてていただければと思いますが、いかがでしょうか。
○松本座長 飯久保先生のほうで検討していただければと思いますが、天笠先生はそれでよろしいですか。
○天笠参考人 よろしくお願いいたします。
○松本座長 細かい点で、14頁に「軽快化」とありまして、この先生の癖だと思うのですが、日本語としては「軽快」でいいのではないかと思います。
○天笠参考人 はい。
○松本座長 あと11頁で「阻害」という言葉が使われていますが、これもカットするか「障害」なのですが、カットしていいと思います。
○天笠参考人 その辺の言葉についても、事務局と相談してきれいにしたいと思います。
○松本座長 このマニュアルは、先ほどの細かい点を直せば問題ないと思いますが、了承してよろしいでしょうか。ありがとうございました。続いて低血糖のマニュアルについて説明をお願いいたします。
○事務局 資料1-2の5頁~7頁をご覧ください。インスリンの注射、経口糖尿病薬を服用している場合に、血中のブドウ糖濃度が下がりすぎる低血糖が見られます。糖尿病薬のみならず抗不整脈薬などを服用した場合にも起こることがあります。症状としては、血糖値が60-70mg/dL未満になると、「冷や汗が出る」「気持ちが悪くなる」「動悸がする」「手足が震える」「ふらつく」「頭が痛い」などの交感神経症状が出現いたします。さらに、血糖値が30mg/dL未満になると、「ぼんやりする、うとうとしている、呂律が回らない、意識がなくなる」等、中枢神経症状が出現いたします。中枢神経症状が数時間以上続くと、稀に脳の重大な後遺症や生命の危機を生じることがあります。イラストは7頁に3つ載せています。頭痛、手足の震え、意識がなくなるを表しています。概要は以上です。
 なお、本マニュアルを作成いただきました日本糖尿病学会より、東京女子医科大学准教授の佐倉先生に参考人としてご出席いただいております。事務局からは以上です。
○松本座長 佐倉先生から補足がありましたらお願いいたします。
○佐倉参考人 「患者の皆様へ」のところは、いま事務局から説明していただいたとおりです。
 「医療関係者の皆様へ」は、1は同じなのですが、特に低血糖はインスリン、これは本来治療に使う主作用が効きすぎて起きるのですが、臨床の現場では、圧倒的にインスリンによる低血糖が多いので、それを項目として分けて、次に経口糖尿病治療薬による低血糖で、これも本来の作用が強く出すぎて起きるものですが、この2つは別個に分けさせていただいて、あとの薬物による低血糖はそれほど頻度は多くないので、まとめて書かせていただきました。(4)が患者側のリスク因子、(5)が投薬上のリスク因子です。
 副作用の概要については、自覚症状は患者向けに書いたところを、やや専門的に書いてみました。3の副作用の判定基準は、血糖を測るのがほとんどすべてと言っていいと思いますが、その前に、疑うことも重要であるということを書きました。13頁の4は、薬による低血糖と判別が必要な疾患として、低血糖が起きるような疾患について列記いたしました。15頁、5の治療法としては、最初には緊急の対応が必要であるということで、その対応法を書いています。16頁は、薬物の中止あるいは減量です。1回低血糖を起こした方は反復して起こしやすいので、2回目以降の予防をどうするかについて書いています。
 17頁6の典型的な症例ですが、1つは経口糖尿病薬のナテグリニド、症例2はコハク酸ジベンゾリンという不整脈薬、症例3はレボフロキサシンという抗菌薬について文献から取ってきました。20頁以降は薬の名前が出ていますが、これは先ほどと同じで、ガチフロキサシン等はもうなくなっていますし、21頁のGLP-1受動体作動薬にリラグルチドと書いてありますが、この2月にエキセナチドという新しい薬物も承認されましたので、それも加えたほうがいいかと思います。私からは以上です。
○松本座長 委員の先生方から、ご意見はございますでしょうか。
○岩田委員 10頁の副作用の概要の自覚症状に、「中枢神経系の機能低下による症状が現れる前に、交感神経刺激作用による云々」とありまして、これはそれでいいと思うのですが、「交感神経症状」と書いてあるのは極めて不適切だと思うので、これはないほうがいいと思います。この中で交感神経症状と言えるものは、いらだち、手足の震え、動悸ぐらいで、あとのものは交感神経と直接には関係のないものです。
○佐倉参考人 そこは削除させていただきます。
○岩田委員 もう1つ同じようなことなのですが、中枢神経系についても、これが全部中枢神経かどうか。頭痛も、中枢神経の病気で起こることはまずないです。普通は、頭痛というのは周りの血管などで起こりますから、むしろこれは交感神経の症状である可能性もあるし、これがないほうがいいのではないかと思います。理屈としては、上のほうは確かなのですが、書いてあるものはおかしいと思います。
○松本座長 一般的にはこういう分け方をするのですか。
○佐倉参考人 最初に血糖が60、70と、比較的軽度の低血糖の場合は、体がそれに対する防衛反応として、グルカゴンとかエピネフリンが分泌されて、それによる症状として、我々はよく交感神経症状と呼んでしまうわけです。
 それから、より重篤な低血糖、具体的には血糖が30mg/dL未満程度になると、脳の機能が落ちてくるための症状が出てきて、それについて、一般的に我々は中枢神経症状と呼んでいますので、こう書かせていただきましたが。
○岩田委員 言っていらっしゃることの意味はわかりますが、それは間違いなのです。それは言っていらっしゃるだけであって。私から見ると、例えば空腹感というのは、交感神経系には何もセンサーはありません。空腹感を感じているのは視床下部そのもので、中枢神経です。それから、頭痛というのは中枢神経に原因があって起こることは、まずありません。ですから、これは中枢神経症状でないことは間違いないのです。
 そういうことで、書かれるのは構わないのだけれども、このように書かれてしまうと、これを何も知らない人が読みますと、頭痛が起こっただけで中枢神経症状というのは、きついですよ。みんなこれは脳がおかしくなったと思ってしまうけれども、頭痛というのは脳が健全だから起こるのであって、中枢神経がおかしくなったら頭痛なんてないですよ。そういうことになってしまうと困るので、具体的にお書きになるのは、ないほうがいいと思います。理屈として交感神経と言っていいのか、アドレナリンの分泌もあるし、液性の因子もあると思うので、交感神経だけだとは思いませんが、それまで含んでいる意味で、交感神経刺激作用による症状が認められるというのはいいと思うのですが、具体的に書かれたものはそうではないと思うので、それでは困るという話です。後ろの他覚症状は比較的いいのですが、自覚症状があまりにも離れているので、ここは切ってしまっていいのではないかと思います。
○松本座長 「以下のような前駆症状が見られる」ぐらいの程度で含めるということですかね。
○岩田委員 それでいいと思います。
○松本座長 自覚症状なので軽い気持ちで書きたいところなのですが、その辺は検討してください。
○佐倉参考人 はい。ここはあまり分けないで、症状だけを並べるようにいたします。
○市川委員 2点コメントです。7頁は患者向けの説明内容になっているので、2行目のα-グルコシダーゼ阻害薬のところを、例えば括弧書きで、「食後過血糖改善薬」とか、もう少し噛み砕いた記載を併記されたらどうかと思いました。
○佐倉参考人 そのほうがよければと思います。食後過血糖改善薬というのも。
○市川委員 言い切ってしまうとまずいですか。
○佐倉参考人 構わないのですが、患者様がどちらがわかりやすいかが。
○松本座長 これは患者さんも知っているのではないですか。いまは説明するから、知らないということはないかな。
○佐倉参考人 薬の名前そのものを書いてしまえば、もっとわかりやすいのですが。
○松本座長 大丈夫ではないですかね。
○市川委員 わかりました。もう1点は、8頁の上から3行目に、血糖値が60-70mg/dL未満になると、ここだけなぜか「自律神経症状」という言葉を使われていまして、ほかは「交感神経症状」なのですが、何か意味はあるのでしょうか。
○佐倉参考人 意味はありません。ほかと揃えて「交感神経」といたします。
○市川委員 9頁の真ん中の辺りに「ガチフロキサシン」とあるのですが、例えば出血性膀胱炎のマニュアルには、「何年何月現在発売中止」というように、括弧書きで併記されていまして、それを参考にさせていただくならば、ガチフロキサシンも括弧書きで、「何年何月現在発売中止」と書いていただけるとと思います。
○松本座長 その辺も考慮してください。
○佐倉参考人 そうさせていただきます。
○岩田委員 いまのところですが、「自律神経症状」を「交感神経」とするということでしたが、私は「自律神経症状」のほうがいいと思います。ただ、交感神経の症状かどうかはわからないものもあって、自律神経の症状であることは間違いないです。脳の中で起こったとしても、脳の中の自律神経症状が起こるわけで、交感神経の症状ではないと先ほどは言ったので、ここは「自律神経症状」のほうがいいように思います。サイエンティフィックには。
○佐倉参考人 全面的に「自律神経症状」と。
○岩田委員 それはどちらでもいいですが、使い慣れている言葉があるだろうから、それを崩して困るところもあるから、それはどちらでもいいと思います。ここの場所に限っては、交感神経と限定してしまうよりは、自律神経と書いておいたほうがいいのではないかと思います。
○池田委員 重篤な低血糖で意識障害がいきなりボンときた、特にお酒を飲んだあとなどにきて、いちばん大事なのは低血糖かどうかを疑うことがすごく大事なわけですが、疑うまでに時間のかかる医療機関もないことはないのです。
 そういう面では、糖尿病学会としては、インスリンを打っている患者、経口糖尿病薬を飲んでいるリスクの高い人たちには、何らかの指導をしている、インスリン注射をしていることを携帯させて、医師側がすぐに気がつくという。場合によっては、意識障害があって、すぐにCTに行ったりする。そんなことをしなくても低血糖に気がつけばすぐにわかるのです。結構そういうことを目の当たりにしたことがあるのです。本当は「いろは」なのですが、意外に盲点になったりすることはあると思うのですが、いかがでしょうか。
○佐倉参考人 処方をするときに、患者様ご本人には、低血糖については十分に指導します。ただ、注意をしていても、低血糖が起きるのは避けられない、特にインスリンを打っている方は、ほとんどは軽症ですが90%ぐらいは低血糖を起こしています。私の印象ですと、1割以上は重症の低血糖を経験しています。そういうときにご本人は意識がなくなってしまうので、そのときに家でならば家族の方が対処できるのですが、外で起きたときは難しいです。
○池田委員 外で倒れたときに、担ぎ込まれてすぐにわかることが非常に重要なのです。
○佐倉参考人 できるだけ糖尿病の手帳とか、「私はインスリンを打っています」ということを携帯はしていただいていますが、なかなか見つけられないと思いますので。
○池田委員 そのようなことを記載しておいたほうがいいのかなと思いました。
○犬伏委員 「認知症と間違えられる」という言葉がたくさん出てくるのですが、低血糖なのか認知症を発症しているのかを早期発見するのには他覚症状がいちばん大切なのかなと思いましたが、認知症に間違えられるような行動、異常行動とだけで書かれるだけではなく具体的な他覚症状を書いて頂けたらと思うのですが。
○松本座長 糖尿病の治療中という前提の下でいかないと、一般的な症状でいくと、とてもではないけれども、ここで書ききれないのではないかと思うのです。一応ここに書いてあるのは糖尿病の治療を前提として、こういうことが起こったということを言っているわけです。
○佐倉参考人 特に、インスリンと経口糖尿病薬がそのとおりで、もちろんそれ以外の薬でも稀に起きると思います。
○松本座長 そういう、起こしそうなものを飲んでいる場合も含まれるでしょうが。
○犬伏委員 早期発見ということと。
○松本座長 一般論的に認知症との区別ということになりますと、これは厳しいかなと思います。
○佐倉参考人 いまのご心配は、認知症との鑑別という点はそんなには問題にならないです。むしろ私たちが現場で見ていて、認知症の人に糖尿病がないわけではないので、糖尿病を持っている方はたくさんいるのです。そういう人たちの場合に、低血糖が見逃されやすいのです。そう言っては悪いのですが、普段からおかしいですから。それだから、それをどうやって見つけるかというのが大事な問題ですが、それを間違えるということはまずないです。
○松本座長 そういうことですね。ほかにございませんか。いくつか指摘をいただきましたが、その点を訂正していただければ、このマニュアルそのものはお認めいただけるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○上田委員 21頁ですが、これは発売前に書いているのでDPP-4阻害薬はもう1年ぐらい使われて、低血糖なども出ていますから、その辺ちょっとコメントをいただくと、これから治療の主流になり得る薬ですから、この辺をちょっと記入しておいていただけるといいと思います。
○佐倉参考人 ありがとうございます。
○松本座長 これはよろしいでしょうか。ありがとうございました。続いて小児の急性脳症のマニュアル(案)について、説明をお願いいたします。
○事務局 小児の急性脳症のマニュアル(案)について、概要を説明いたします。資料1-3の5、6頁をご覧ください。アスピリンなどの解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬を含むかぜ薬、キサンチン製剤などの他、抗てんかん薬により、小児の急性脳症が起こる場合があります。急性脳症は脳の急激な浮腫(むくみ)によって生じる意識障害、けいれんなどが見られる、脳にとって危険な状態です。
 症状としては、黒目が上に上がって意識がなくなり、体と手足が突っ張った状態となるようなけいれんが持続したり、けいれんの状態が終わってもずっとぐったりしていることがあります。イラストは7頁に、白目を剥いてけいれんしている状態の子どもを表現したものを付けています。概要については以上です。
 なお、本マニュアルを作成いただいた日本小児神経学会より、埼玉医科大学小児科学教授の山内先生に参考人としてご出席いただいております。事務局からが以上です。
○松本座長 山内先生、補足がありましたらお願いいたします。
○山内参考人 お配りしている資料の中で、特に患者様のご家族、特に若いご両親に対してわかりやすいマニュアルを作らなければいけないということで、黄色の括弧の中にある記載について、わかりやすい表現にさせていただきました。けいれんといっても、必ずしも即脳症というわけではなくて、5分以上止まらない場合、あるいは止まったあとに意識がない、いつもと違った意味不明な言動云々という形で、わかりやすい表現にさせていただきました。
 医療関係者の皆様については、早期発見が大事なのですが、特に9頁の(4)について、早期に認識する症状として記載させていただいております。その他、9頁から副作用の概要について、それぞれの薬剤について、検査あるいは画像についての所見、機序について、12頁からは副作用の判別基準などについて記載させていただき、最後に治療方法ということで13頁に記載しています。これはジクロフェナクナトリウムによる急性脳症の1例ということで、表示しています。以上です。
○松本座長 委員の先生方からご意見はございますでしょうか。
○岩田委員 14頁の画像ですが、これは非常にきれいな画像だと思いますが、BのT2を見ると、frontalのwatershed areaとか、後ろのほうの左側、それから右の後ろの後頭葉、頭頂葉間のwatershedの所に、high signalとかがあって、必ずしも浮腫だけではない可能性がある気がします。ただ、写真がきれいなので、できたら、その辺はコメントを入れておいたほうが、最初の「急性脳症は浮腫である」という定義からいったときに、これは浮腫像ではないような気もするので、その辺を入れておいたほうがいいのかなと思います。
○松本座長 そうですね。その辺はできれば。ほかにございませんか。
○戸田委員 17頁の副作用報告件数を見ると、ワクチンがかなり多いのです。平成20年度ではインフルエンザHAワクチンです。平成21年度では、テオフィリン以外はほとんどワクチンです。ところが、「医療関係者の皆様へ」では、ワクチンについては全然触れていないのですが、これは理由があるのですか。
○山内参考人 報告されたものをリストアップすると、こういう形になってしまうのですが、これも日本小児神経学会で検討しまして、ワクチンとしての急性脳症の報告というのは、逆に言えば学術的にはないのです。おそらくこれはADEMと言って、次に議題となっている急性散在性脳脊髄炎との関連が強いのではないか。それを脳症として報告になったのではないかと判断しまして、今回あえて、参考資料としては提示いたしましたが、脳症としては直接因果関係ははっきりしないということで。
○安全使用推進室長 参考1は薬事法に基づく報告ということでいただいているものなので、この段階では必ずしも因果関係を評価しているものではなくて、単なる報告ベースできているものを参考情報として挙げさせていただいております。そこは注意事項の2)で記載しているのですが、そこをきちんと文字で読まないとわかりにくい部分がありますので、その辺りをもう少しわかりやすく工夫をさせていただいたほうがよろしいかなと思っております。
○松本座長 そうですね。その辺はよろしくお願いいたします。
○市川委員 8頁の「医療関係者の皆様へ」の真ん中から下の辺りに、テオフィリンの関与に関していろいろと記述いただいています。「テオフィリンの関与が強く示唆されると考えられるため、本マニュアルの目的を鑑みて取り上げることが適切であると考えられる」という件があるのですが、ここは「強く示唆されると考えられる。」でよくないでしょうか。ちょっと回りくどいというか、ほかのマニュアルとトーンが。
○山内参考人 そこら辺の日本語の表現というのは難しいところがありまして、日本小児神経学会とアレルギーを専門とされる先生方、もちろん我々の委員の中にはアレルギーの専門の方を入れさせていただいているのですが、総合的にディスカッションしまして、アレルギーの先生はテオフィリンは関係ないのではないかという意見があったり、その辺はいろいろと紆余曲折した結果、このようなわかりにくい表現になってしまっているのですが、ここは削除したほうがいいということであれば。
○市川委員 事情がわからなかったものでお聞きした次第で、そういったご事情があるということであれば私は。
○松本座長 何とかこれで意味はわかるので、こちらでも構わないのではないかと思うのですが。
○市川委員 あともう1点は、12頁の真ん中からちょっと上の辺りに、カルシニューリン阻害薬のことがありまして、作用機序で「放射線照射や骨髄移植、感染、肝障害、感染症など」とあるのですが、ここは「感染」と「感染症」はあえて使い分けられているのでしょうか。
 もう1つは、そこから3行下に、グリセオールの記述で「また上記の一部先天代謝異常症では」とあって、この「上記の一部」というのが、通して読んでいると、どれを指しているのかがわからなかったので、ご教授いただければと思いました。
○山内参考人 まず、感染か感染症かどうかについては、私はよくわかりません。感染のほうがよければ変更させていただきます。違いについては私はわかりませんので、ご指導いただきたいと思います。
 それから、先天代謝異常症については、いま資料がなくて、どれを指すのかというのははっきりと申し上げられないので、どれを指すのかについては、はっきりとした表現に記載を直すべきという気がします。
○松本座長 そうですね。その辺はまたあとで検討していただければと思います。
○上田委員 患者の家族の皆様への6頁ですが、「急性脳症とは」というところで、この辺に「熱性けいれん」という言葉が入ってくると、わりと理解が。このひきつけというのは、どちらかというと熱性けいれんと考えてよろしいのでしょうか。
○山内参考人 黄色い枠で書いてある。
○上田委員 いや、6頁の「急性脳症とは」の4行目からで、「お子様が急に熱が出た時に」というところで、「1-4歳ぐらいのお子さんは『ひきつけ』を起こしやすく」とありまして、この「ひきつけ」はどのように考えたらよろしいですか。
○山内参考人 「ひきつけ」というのは非学術的な表現だと思いますが、熱性けいれんのほうが一般の方々にとってわかりやすければ、熱性けいれんとするのですが。
○上田委員 私は医者なのですが、子どもを診るときに、ああ、熱性けいれんだというふうに父親としては考えますね。母親もそうですが。
○岩田委員 熱性けいれんでないほうがいいのではないでしょうか。熱性けいれんは発熱が起こるときにワーッと出ますが、この小児の急性脳症は、必ずしも発熱のときに起こるとは限らないので、むしろそのあとでお薬を使ったあとに起こることが多いので、無熱の状態で起こることもありますので、「熱性けいれん」と書くと、かえって間違えるのではないでしょうか。
○上田委員 一般論では熱性けいれんですよね。そういうものではなくて、5、6分以上続くときは危ないという文書ですよね。
○松本座長 そうですね。上田先生がおっしゃるのもわかりますが、このままのほうが誤解が少ないですかね。長く続いた場合に注意しろと言っているから、熱性けいれんと入れると、かえって。どうですかね。このままのほうがいいかもしれませんね。いかがですか、上田先生。
○上田委員 パッとこれを見てしまうと、ひきつけを起こしたら脳症だと。時間のことをあまり気にしないで、ひきつけを起こしたら急性脳症だということで動いてしまうのではないかなと。
○松本座長 これを全体的に読めばつながるから、これで。
○上田委員 わかりました。
○松本座長 ほかにございませんか。いまの点を修正した上で了承したいと思いますが、よろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。続きまして、急性散在性脳脊髄炎のマニュアル(案)の説明をお願いいたします。
○事務局 資料1-4の5、6頁をご覧ください。ワクチン接種後に急性散在性脳脊髄炎が起こる場合があります。急性散在性脳脊髄炎は神経線維を覆っている髄鞘が自己免疫等により破壊され、脱髄という現象が起こる疾患です。症状としては、ワクチン接種後1~4週間以内に発症することが多く、「発熱」「頭痛」「意識が混濁する」「手足が動きにくい」などがございます。イラストは7頁に、頭痛と手足が動きにくいをあげています。
 なお、本マニュアルと無菌性髄膜炎のマニュアルをご作成いただいた日本神経学会から、大森赤十字病院副病院長の中瀬先生に参考人としてご出席いただいております。事務局からは以上です。
○松本座長 中瀬先生、補足はございますか。
○中瀬参考人 最初に一般向けが書いてあります。症状等に関しては、急性散在性脳脊髄炎ですので、神経症状、中枢神経系の症状、いろいろなタイプのものが出ますので、その辺りを広範に書いてあります。ワクチン接種との関連が重要だと、ポイントのところで書いています。
 そのあと医療関係者の方々のところに書いてあるのですが、発症機序等の詳細のところは、まだ未確定の部分も多いので、割愛して、原因と発症頻度等について書かせていただきました。臨床症状、判別基準等について書いてありますが、治療方法に関しては、エビデンスのある治療方法等は、症例数は少ないのですが、おそらくステロイドの大量療法が有効であろうと考えられて、行われていることが書いてあります。
 典型的な症例概要のところですが、この時期で調べてみて、なかなか使える症例がなかったので、このような症例を出してきたのですが、古い症例で、その中で多発性硬化症との鑑別のところが、時間経過のところで単相性であることでADEMのところに入れてあるのですが、そこでも書かれているように、接種後であり初回発作であった可能性は完全には除外できないという症例です。
 あと、作ったのが古いところがありましたので、副作用報告の医薬品等のところで書かれている一覧に記載されている薬品の種類が少ないことがあります。検討して加えるべきものを加えたいと思います。
○松本座長 委員の先生方から、ご意見はございますでしょうか。
○岩田委員 これは意見というよりも、ADEMは子どもが多いのです。ですから、山内先生にもご意見をいただいて、これで子どもに通用するものでしょうか。
○山内参考人 今日初めて資料をもらったもので、詳細には見ていないものですから、すぐにコメントはできないのですが、例えば症例については小児科でかなり多く経験していますし、豊富でございますので、もしよろしければ、時間が許すのであれば小児神経学会としてもご協力させていただきます。
○岩田委員 是非やっていただきたいと思います。中瀬先生も随分苦労してお出しになっていらっしゃるけれども、実際に子どものものは脊髄は少ないです。脳が圧倒的に多くて全然違いますので、是非そういう症例を1例でも入れておいていただいて、連絡して、そのほうがいいと思います。
○松本座長 可能であれば、そうしていただければいちばんいいです。
○山内参考人 あとでご連絡いただければと思います。
○松本座長 お願いいたします。
○岩田委員 これはワクチン以外はあまり触れなくてもいいのですか。
○松本座長 ワクチン以外は。
○岩田委員 わりとありますよね。
○松本座長 報告はあるようなのですが、ワクチンが。
○安全使用推進室長 インターフェロンとか免疫抑制剤もございます。
○池田委員 免疫抑制剤は結構あるように思うのですが。ちょっと触れておいたほうがいいかなと思ったのですが、どうですか。機序は違うのではないかと思うのですが、診断はADEMと付いてしまうのではないでしょうか。違いますか。岩田先生にお伺いするのがいいかと思いますが。
○岩田委員 難しい問題だと思うのです。確かに病態としては、よく似たようなことが起こることは確かなのですが、機序の点で少し違う部分を考えているので、もし入れるのでしたら、機序をもう少し細かく入れなければいけないです。
 あえて時間の問題で言わなかったのですが、病態発生に脱髄のことが書いてありますが、実際にお子さんのADEMなどは、むしろ浮腫の要因とか、血管に関する要因のほうが大きいし、非常に急性の劇症の脳炎などは本当に出血性のものを起こします。だから、いろいろなものがあるので、そういう病態を少し膨らませるとすると、当然池田先生がご指摘のようなものも入ってくると思います。
○松本座長 このマニュアルはワクチンに焦点を合わせたという形で持っていっておいたほうが。
○岩田委員 ワクチンものとか入れれば。
○松本座長 その辺はまた検討して。
○安全使用推進室長 特に小児の症例が多くなってまいりますので事務的に小児の学会に依頼するような必要があれば、こちらに言っていただければ、事務的にも対処いたしますので、よろしくお願いいたします。
○松本座長 そうですね。神経内科的なものは9頁にありますが、髄液の量に関してはミリ立方でいくのですか。
○岩田委員 こういう書き方をしますね。
○松本座長 マイクロリットルでは駄目ですか。
○岩田委員 駄目ではないですが、こういう書き方が多いです。
○松本座長 髄液はよくミリ立方でいきますね。
○岩田委員 伝統的にこういう書き方が多いです。
○松本座長 先生、いかがですか。
○山内参考人 岩田先生のお言葉なのですが、我々は先生のマイクロリットルのほうが。
○松本座長 マイクロリットルに統一したほうが無難かもしれませんね。
○岩田委員 算盤でやっているものですから、どうしても血算のときのことが抜けなくて。
○松本座長 よろしいでしょうか。これはこのまま了承していただけますか。
○安全使用推進室長 一応、このままご了承いただいた形で、また改めて小児の学会に照会させていただきます。
○松本座長 あれば小児の症例を入れる形で、このまま了承いただいてよろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。ありがとうございました。
○安全使用推進室長 マニュアルを修正したものを座長に確認させていただくということで、お預りいただけると助かるのですが、よろしゅうございますでしょうか。
○松本座長 そうですね。そのようにさせていただきます。続いて無菌性髄膜炎のマニュアル(案)について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 それでは無菌性髄膜炎のマニュアル(案)について、概要をご説明いたします。資料1-5の5、6頁をご覧ください。解熱鎮痛薬、抗生物質などの薬、おたふくかぜなどのワクチンにより起こる場合があり髄膜に炎症が生じる髄膜炎のうち、髄膜培養で細菌・真菌が検出されないものを無菌性髄膜炎と言います。症状としては、「発熱(40℃ぐらいの高熱)」「頭痛」「気分が悪い」「吐き気」「うなじがこわばり固くなって首を前に曲げにくい」などです。イラストは7頁に、発熱、頭痛、吐き気を表現したものを載せています。概要については以上です。なお、本マニュアルも日本神経学会に作成いただきました。事務局より以上です。
○松本座長 中瀬先生、お願いします。
○中瀬参考人 このマニュアルも苦労したところがあるのですが、ご判断をお願いしたいと思います。最初のほうは無菌性髄膜炎という形で、患者あるいは家族の皆さんというところで書いています。医療関係者のところですが、副作用の概要等で特に強調したところは、非ステロイド性抗炎症薬のところで生じることがありますので、臨床上、特に区別が付けにくい報告例がかなりあったことを強調して書いてあります。特に多形核白血球優位の細胞増多を示す場合があるということで、リンパ球性の髄膜炎でない症例があることを強調して書きました。
 判定の基準としては、とにかく髄膜炎の方があれば服薬している薬剤のところで、不必要なものは早急に中止するというところを、ひとつの判定基準あるいは推奨するやり方として書きました。鑑別診断等について書いてあるのですが、ここで特に強調して書いたのは、検査所見・臨床症状から鑑別するのがかなり困難な症例があり、典型的症例で3例出してあるのですが、薬剤師会編のところから引用させていただきました。その中で症例を診ただけで確実に薬の副作用であると言い切れるのを、臨床症状とか経過で区別が付かないというわけですから、逆に言うとチャレンジテストをやっているような症例、つまり症例-2のイブプロフェンを飲んで良くなり、また飲んで悪くなったという症例だけが、ある意味で言えば典型例という形になっています。ただ、そういうケースだけを出してしまっていいのかというところで、2例をそのまま出してありますけれども、ご判断いただけたらと思います。
○松本座長 ありがとうございました。委員の先生方からお願いします。
○岩田委員 是非直していただきたいのですが、用語が間違っていて、6頁ですけれども、「脳や脊髄は軟膜」でなく「柔膜」です。pia materというのは柔膜、柔道の柔です。その次の「髄膜」と書いてあるのはくも膜です。柔膜・くも膜・硬膜の3つを合わせて髄膜と呼びます。2行目の「髄膜は様々な原因で」というのは「軟膜」なのです。日本では髄膜炎と呼んでいますけれども、正式には軟膜炎なのです。leptomeningitisというのが本当の名前です。それは解剖学的に間違った用語なので是非直していただきたい。
○松本座長 それは確かに、一般の人向けとしても直していただいたほうがいいかもしれません。先生、よろしいですか。
○中瀬参考人 はい。
○松本座長 ほかにございませんか。
○森田委員 細かいことで恐縮ですが、同じ6頁の下から4行目で「培養されてこない」というのは、「培養しても見つからない」としたほうが、わかりやすいのではないかと思います。
○松本座長 その辺、わかりやすいように訂正してください。
○中瀬参考人 訂正させていただきます。
○松本座長 ほかにございませんか。これは先ほどのと同じように、11頁、12頁はマイクロリットルに単位を統一していただければと思います。
○中瀬参考人 症例を残すことは、これでよろしいですか。
○松本座長 それは今のところ、岩田先生、どうですか。
○上田委員 1つだけ、この3症例は薬でチャレンジして、免疫学的なものも含んで髄膜炎が発症したということで、典型的な薬剤性のものだと思いますが、もう1つの薬剤性としては、免疫が完全に落ちてウイルスが出てきて発症するという形も結構ありますよね。ですから、それも1例ぐらい入れておいたほうがという感じがしますが、その辺はどうでしょうか。要するに後ろに出てくる症例がワクチンとかそういうもので、そのウイルスがいて炎症を起こしているということが考えられる症例が多いですね、免疫抑制剤とか。これはウイルスは関係しないけど、ウイルスが関係した髄膜炎も起こるよということもあったほうがいいのではないかと思いますが、どうでしょうか。その辺、私の狭い考えかもしれませんけれども。
○中瀬参考人 そういう症例を、ここで扱うような薬剤性の無菌性髄膜炎というふうに言っていいということで、よろしいのでしょうか。もしそうでなければ敢えて入れることはないのではないかと思いますけれども。
○松本座長 これは先生、このままでいいのではないでしょうか。
○上田委員 急性腎盂腎炎などで薬剤性と言っているのは、完全に免疫機能が落ちて発症しているものですよね。それを考えると。
○松本座長 そうか、先生はそれを書いておられますね。
○上田委員 2つのパターンがあると思います。純然に薬剤だけの原因というと、このすべての重篤副作用というのは、かなり多くのものが脱落していきます。
○松本座長 確かに、腎盂腎炎に免疫抑制剤を使って感染を起こしているというのがあるので、それを薬物性の副作用に入れるのであれば、確かに上田先生のおっしゃるのも一理あるのです。
○戸田委員 薬物性の副作用に入れるのは、私はおかしいという気がしているし、これにウイルスを入れるとますますおかしくなるので、私はやるべきではないと思います。
○上田委員 でも重篤副作用には、そういうウイルス感染症があるということでいっぱい出ています。
○戸田委員 では抗がん剤による副作用も、感染症も全部入れてしまうわけですか。
○松本座長 それは先生、B型肝炎のでも同じですよ。結局、劇症化するような場合も似たような機序になるので。
○戸田委員 あれは、要するにB型肝炎でも無症候性で、あるいは全く治ったときに症例に免疫抑制剤を使うと再活性化するという、あれは副作用とは。
○松本座長 それをやると、また延々と結論が出ませんので、ちょっとこれは。
○戸田委員 劇症化したのは、薬物によって起きてきたのではないのです。ウイルスが活性化されたせいであって。
○松本座長 ウイルスを活性化させるという条件が、1つのあれになる。
○中瀬参考人 もしよろしければ、別のカテゴリーを立てるなり何なりでやっていただければありがたいと思います。
○松本座長 これ、どうしますか。一応、飯久保先生のところと相談した上で、そういう症例を入れるかどうかを決めていただけますか。ここで結論を出すのは結構難しいので、もし最終的に先生方が見たいということであれば、書類で回す形を取らせていただきたいと思います。
○岩田委員 いいと思いますが、スペスィフィシィティがどのくらいあるかです。例えば過敏症症候群なんかの場合は非常にスペスィフィックな反応が起こるから、薬剤性と言えますが、一般的に免疫のほうの変化が起こって、何が起こっても構わないという状態だとすると、スペスィフィシィティがないから薬剤性というのは、かなり疑問だと思います。免疫が変化したということはいいのだろうと思いますが、それ以上に何かそれでたまたまくっついたとすると、スペスィフィシィティがどうかなと思って。ここは薬剤被害の補償の問題も出てきますし、そうするとスペスィフィシィティというのを、部会で私自身はかなり主張していましたので、そこが崩れてくるなという感じはします。
○松本座長 その辺に関しては事務局から何かありますか。
○安全使用推進室長 最近の添付文書の副作用症例などを見ますと、先ほど再活性化のお話がありましたが、スペスィフィシィティが割と低いものであっても、薬剤が誘因しているものについては副作用に記載する傾向があり、だいぶその辺は広めに最近は副作用として書いているのが現状です。そこは今日、ご議論いただいた点も踏まえて学会のほうにお持ち帰りいただいて、そういった典型例を追加していただけるかどうか、またご議論いただければと思いますけれども、いかがでしょうか。
○松本座長 中瀬先生、それでよろしいですか。一応、検討していただくと。
○中瀬参考人 できれば、このままでさせていただきたいというのが。
○松本座長 そのままでもいいと思いますけれども。
○中瀬参考人 上田先生がよろしければ。
○上田委員 ということであれば結構です。
○松本座長 一応、また回してもらって、皆さんの了承を得ていただければと思います。中瀬先生、ありがとうございました。続きまして、卵巣過剰刺激症候群のマニュアル(案)について説明をお願いします。
○事務局 それでは卵巣過剰刺激症候群のマニュアル(案)について、概要を説明します。資料1-6の5、6頁をご覧ください。不妊治療に用いられる排卵誘発薬により、卵胞が過剰に刺激され、卵巣がふくれ上がり、お腹や胸に水がたまるなどの症状が起こることを卵巣過剰刺激症候群と呼びます。重症例では、腎不全や血栓症など様々な合併症を引き起こすことがあります。症状としては、「おなかが張る」「吐き気がする」「急に体重が増える」「尿量が減る」などの自覚症状があります。イラストは6頁に、おなかが張る、吐き気がするなどを表現したものを記載しています。概要については以上です。なお、本マニュアルを作成いただいた日本産婦人科学会から、東京大学医学部産科婦人科学講座准教授の矢野先生に参考人としてご出席いただいています。事務局からは以上です。
○松本座長 ありがとうございます。矢野先生、補足がございましたらお願いします。
○矢野参考人 不妊治療に用いる排卵誘発剤ですが、これがよく用いられるようになったのは昭和の終わりから平成1桁台のころです。それによるかなりの副作用で、実際、6、7人ぐらい亡くなられ、脳血栓症による片麻痺の方も多数出て、裁判例も多く厚労省にもご迷惑をかけていたかと思いますが、この10年ぐらい、以下に書いてありますように、今回、マニュアルを厚労省に合わせて我々も更に改訂して会員に周知し、最近では亡くなるといった重症例はほとんどなくなってきているわけです。大体、軽症か中等症止まりになっています。
 8頁で医療関係者に特に教育的にやっていることとして、まず病態生理ですが、ゴナドトロピン製剤という排卵誘発剤による血管透過性の亢進によって、腹水と胸水が溜まるということです。それを早く察知して対応するということになります。特に最近では体外受精-胚移植が盛んになっていて、クリニックレベルで多数行われています。8頁の表1にありますように、何かあった場合は、私どものような高次医療機関に早く送ってくれるようにということで簡単な基準を設け、こうなったらすぐ送るようにとしています。9頁で表2の入院管理です。大体は外来で診ていくわけですが、入院管理を考慮する基準を設け、腹水や胸水の状態とか、腫れた卵巣の大きさとか、血液が濃縮して血栓症ができやすいので血管濃縮とか、これらについての基準を設けています。
 海外でもいろいろありましたが、10頁にありますように、我々の学会でも重症度分類が簡単にわかるように設けて治療に当たります。現在のところ大体は軽症か中等症止まりで、重症例に入った場合でも管理が上手になり、亡くなるようなことは、この10年ぐらいはなくなっているかと思います。11頁はOHSSの管理で、どのドクターが診てもわかりやすいようにアルゴリズムを作りました。治療法も書いてあります。特によく言っているのは、12頁にありますように、排卵誘発剤をできるだけ低用量で緩徐に投与していきなさいと指導しています。これを行うとあまり副作用が起きない。OHSSは発生しません。排卵誘発剤のゴナドトロピン製剤は、従来は中国の閉経後婦人の尿から由来するものを使っていたのですが、現在はリコンビナントのものに置き換わってきていて、いま中国産のものは減ってアルゼンチン人の婦人のものが少しあります。
 そんなような状況で、特に20頁で注意喚起していますが、血栓症のことが最も問題です。今までのデータをまとめると、表6にありますように動脈血栓を注意しないといけないのです。hCG投与後とありますが、hCGは排卵誘発法の最後にLHサージを起こし確実に排卵させるために注射するものです。OHSSがhCG投与後11日目、12日目で早く起きてしまい、これが最も重症化しているものですから、できるだけ早く副作用を察知することが大事なので注意喚起しているところです。表7にあるとおり、血栓性素因にはこういうものがありますということも周知しています。体外受精-胚移植がクリニックで行われていますが、なるべく副作用の初期のうちに高次医療機関に送ってくださいということで、この副作用は将来的には歴史的なものになると思います。でも中等症、軽症程度はあると思いますので、ゼロにはならないかもしれません。以上です。
○松本座長 ありがとうございました。委員の先生方からご意見がございますか。
○秋野委員 細かなことで申し訳ないのですが、9頁、10頁に表2と表3があって、表2の自覚症状で「腹部緊満を伴う」というのは、腹水のほうになる文章ではないのでしょうか。というのは、表3のほうだと胸水、腹水のところに「腹部全体の腹水」とかありますので。
○矢野参考人 表2の。
○秋野委員 表2と表3のところです。1行目の「腹部緊満を伴う」というのは腹水にかかる文章なのかなと、表3を見て思ったものですからお聞きました。
○松本座長 確かに表2のほうは少し整理が必要だと思います。表3のほうが、どちらかというとわかりやすいですね。
○秋野委員 合わせたら、よろしいのではないでしょうか。
○矢野参考人 ちょっとここは。
○秋野委員 2つがくっついているような感じがしました。表3であればよくわかりますので。
○松本座長 そうですね、表3のほうがわかりやすい。表2のほうはコンマが抜けていたり。
○秋野委員 そうですね。嘔吐の後のコンマとか、呼吸困難で1つ区切りが付くのかなという気がします。
○矢野参考人 そうですね。これの改訂版があって直しているのですが、これは直っていなかったですね。確かに中ポチがなかったり、すみません。
○松本座長 その辺を直してもらえば。腹部緊満と腹部膨満は比較的似たようなものですが、両方書いても構わない。改訂のには自覚症状に両方とも入っていますか。
○矢野参考人 そうですね。
○松本座長 腹部緊満、膨満、嘔気・嘔吐、腹痛、呼吸困難、これはどちらでも。
○秋野委員 表3であれば、よくわかると思います。
○矢野参考人 表3のほうが新しく改訂したほうです。表2は古いのを使ってしまいました。
○松本座長 ほかにございませんか。
○池田委員 16頁で対象患者の血栓性素因ですが、「欧米で頻度が高い活性化プロテインC(APC)抵抗性は極めて少ない」というのは、日本ではないのです。
○矢野参考人 そうです。
○池田委員 極めて少ないではなくて、ないのです。だから「報告がない」と書いてしまうか、「極めて少ない」は「ない」と書くか。ないとは言えないですけれどもね。
○矢野参考人 今後、あるかもしれないと、そのぐらいの感じで。
○池田委員 「報告がない」と言っておいてもいいのではないですか。
○矢野参考人 わかりました。現時点ではないと。
○松本座長 それは正しいほうの表現を使っていただければと思います。
○矢野参考人 現時点ではありません。
○松本座長 ほかにございませんか。よろしいですか。それでは先ほどの点を訂正していただいて、了承していただければと思います。よろしいでしょうか。矢野先生、ありがとうございました。続きまして、角膜混濁のマニュアル(案)ついて説明をお願いします。
○事務局 角膜混濁のマニュアル(案)ついて、概要を説明します。資料1-7の5、6頁をご覧ください。角膜混濁は点眼薬、アミオダロン等の一部内服薬で生じることがあり、「くろめ」にあたる角膜が混濁し、白く濁ったようになり、目のかすみを感じるようになる疾病です。症状としては、「目のかすみ」「充血」「異物感」「まぶしさ」などの自覚症状があり、発現するまでの時間は、早いもので数日、遅いもので1ヶ月以上経ってからの場合があります。イラストは7頁に、目がかすむ、異物感、充血を表現したものを載せています。概要については以上です。なお、本マニュアルを作成いただいた日本眼科学会より、国立病院機構東京医療センター感覚器センター視覚研究部部長の山田先生に、参考人としてご出席いただいています。事務局からは以上です。
○松本座長 ありがとうございました。山田先生、補足がございましたらお願いします。
○山田参考人 よろしくお願いします。角膜混濁というのは、いわゆるくろめの混濁のことですから、ひどくなれば肉眼でもわかるようになるはずです。ただ、そうなると非常に重篤な状態ですので、症状としては、「目のかすみ」「充血」「異物感」「まぶしさ」といった、比較的初発症状と思われるようなものを挙げています。また「医療関係者の皆様へ」に関しては、この角膜混濁の原因になるものとして、大きく点眼薬によるものと内服薬によるものがありますので、その2つに分けて示しています。後ろの典型的症例概要も、1例は点眼薬によるもの、もう1例は内服薬によるものという形で提示しています。
○松本座長 ありがとうございました。委員の先生方からご意見はございますか。
○飯島委員 スティーブンス・ジョンソン症候群で、この角膜混濁が起こるということで、この辺の書きぶりがちょっと混乱しているというか、11頁の判別が必要な疾患と判別方法で、「スティーブンス・ジョンソン症候群については当該マニュアルを参照」と書いてあり、9頁に「風邪薬云々などではスティーブンス・ジョンソン症候群云々」と書いていますが、これは別症のことを言っておられるのだと思います。スティーブンス・ジョンソンで角膜にきている混濁ではないですね。点眼薬あるいは内服薬で起こっている角膜混濁のことですね。
○山田参考人 そうです。これは、どういうふうにスティーブンス・ジョンソンについて扱うかを検討していただいて、結局、ここからは外すことになったのでしたか。それともこのスティーブンス・ジョンソンも入れて、別項でということになったのでしたか、どちらですか。
○飯島委員 発症機序が違うというか起こり方が違いますので、ここに一括して書くのか、それとも全然別にするのか、そこだけ示していただければと思います。11頁ではそちらのマニュアルを見なさいと書いてあるでしょう。
○安全使用推進室長 ちょっと整理がよくなかったようで申し訳ありません。
○飯島委員 ちょっと整理していただけませんかというお願いです。
○安全使用推進室長 別にしたほうがよろしいということのようですので、別に切り分けさせていただこうと思います。
○松本座長 そうですね。別になるような形に調整していただくことで、いいと思います。よろしいでしょうか。
○市川委員 9頁だけでなく9カ所あるのですが、テガフール・ギメラシル・オテラシル(ティーエスワン)とあります。一応、マニュアルを作成するルールとしては一般名表記にすることにしているので、成分名を書けば特定はできますけれども、括弧書き9カ所全部を削除していただければと思います。何か理由があるのでしょうか。
○山田参考人 ティーエスワンを削除するということですか。
○松本座長 これは今まで統一した見解があるのでしょうから、それに沿って、どちらにするか決めていただければいいと思います。それでいいですね。今までのと同一にしていただければと思います。
○安全使用推進室長 今までは一般名で記載しています。ただ、この場合、一般名が非常に長い、わかりにくいという部分で、おそらく括弧でティーエスワンと書いたのかもしれないということで、識別性の点から少しご検討いただいて、これで一般名でわかるということであれば通常のルールどおり、削っていただいて構わないと思いますけれども。
○松本座長 そうですね、それでいいと思います。ほかに。
○上田委員 もしスティーブンス・ジョンソンは除くといった場合には、充血などの症状は減ってくるということになりますか。
○山田参考人 例えばこのティーエスワンの角膜障害の場合にも、充血というのはひとつの重要な症状になりますので、スティーブンス・ジョンソンだけが充血するわけではありません。
○上田委員 この漫画は、そのまま活きるということ。
○山田参考人 そう思います。
○上田委員 それがちょっと気になったので、ちょっと。
○岩田委員 漫画ですが、その下の「目がかすむ」という漫画は、目がかすんでいるのではなくて複視みたいに見えるのです。普通、目がかすむというのを我々が漫画で描くときは、2なら2という数字を書いて、それがぼけたように周りを描くのが多いです。これだとちょっと。
○松本座長 これ、どうですか。描き直せるならぼけたような形に。
○山田参考人 描き直します。
○岩田委員 物がぼけたように描いたほうがいい。これだと複視になる。
○上田委員 同じことですが、充血のところに何かギラギラと赤い線を入れると充血っぽくなります。これだと最初、何なのかなと思って。
○松本座長 これはもう1回検討してもらって。
○安全使用推進室長 これまでもイラストの描き直しは、よくこの検討会でご議論いただいておりますので、そこは対処させていただきたいと思います。
○松本座長 お願いします。それから最終的には1つだけなのですが、9、10、11頁に「異型」「異形」という言葉があり、「型」と「形」の両方を使われていますけれども、「形」のほうが正しいのではないかと思いますので、そちらに統一されたほうがいいと思います。「異形」のほうです。
○山田参考人 了解しました。
○松本座長 ほかにございませんか。よろしいようでしたら、先ほどのスティーブンス・ジョンソンとは別という枠立てにして新たに、これはこのまま、そういうふうにするということでお認めいただいて、よろしいですね。
○飯島委員 鑑別等に入っていますから、この部分を活かせばいいわけです。
○松本座長 それから先ほどの細かい点を直していただいて、お認めいただいてよろしいですか。了承されたものとさせていただきます。山田先生、ありがとうございました。次に出血性膀胱炎のマニュアル(案)について説明をお願いします。
○事務局 それでは出血性膀胱炎のマニュアル(案)について、概要を説明いたします。資料1-8の5、6頁をご覧ください。出血性膀胱炎は膀胱の粘膜に何らかの原因による炎症が生じた膀胱炎のうち、尿に赤味を帯びる血尿などの出血を伴うものを言い、ウイルス、細菌、放射線などの原因のほか、抗がん薬、免疫抑制薬、抗アレルギー薬、抗生物質や漢方薬でも起こることがあります。症状としては、「尿が赤味を帯びる」「尿の回数が増える」「排尿時に痛みがある」「尿が残っている感じがする」などがあります。イラストは7頁に、尿の回数が増える、排尿時に痛みがある、尿が赤味を帯びるなどを表現したものを記載しています。概要については以上です。なお本マニュアルを作成いただいた日本泌尿器科学会より、筑波大学大学院人間総合科学研究科腎泌尿器科・男性機能科学准教授の島居先生に、参考人としてご出席いただいています。事務局からは以上です。
○松本座長 ありがとうございました。島居先生、補足がございましたらお願いします。
○島居参考人 よろしくお願いします。この出血性膀胱炎は、最近では薬剤によるものはやや減少しているというのが事実のようですが、患者さん向けには、一般的な膀胱炎の話から出血性膀胱炎というものを導入として記載してありますので、前半のほうは一般的細菌性の膀胱炎も含めた記載になっています。その反面、医療関係者の方へのものについては、通常の細菌感染による急性膀胱炎の悪化した出血性膀胱炎は除外することを最初に明記して、主に鑑別診断として最近多い放射線性のもの、あるいはウイルス性のもの等を鑑別する方法、それから代表的なシクロホスファミド系の出血性膀胱炎の機序等についても記載していますが、実際にはシクロホスファミドによるものも、中和剤であるメスナを使用するようになってから、ほとんど発症していないということのようですので、実際の症例提示がやや古いケースになっている点は、ご了承いただきたいと思います。
○松本座長 ありがとうございました。委員の先生方からご意見がございますか。
○高杉委員 18頁で丸7のホルマリンで止血をするところの4行目、「タンパクを加水分解」と書いてありますが、ホルマリンはタンパク加水分解ではなく、「タンパクを変性させる」と言うほうがいいと思います。18頁の下から3行目、「ホルマリンは膀胱を固定する」と書いてありますが、これは物理的に固定するようなイメージになってしまいますので、「膀胱の内壁化、膀胱の粘膜を固定する」としたほうが、よろしいと思います。
○島居参考人 了解しました。
○松本座長 そうですね。
○島居参考人 2カ所ですね。
○岩田委員 7頁の3番目の絵は意味がよくわからないので、私ならトイレを上から覗き込んだ図にして、中の溜まっている所を赤くします。
○松本座長 これも少し工夫したものを付けていただければと思います。ほかにございませんか。これは結構よくできていると思いますので、これでよろしいかと思いますが、了承していただけますか。
○森田委員 9頁の表1ですが、医薬品のところに「免疫剤」とあります。これは「免疫抑制剤」ですね。
○島居参考人 ご指摘されると思っていまして、免疫抑制薬のことと思うのですが、これは実は原文の英語の論文の表を訳す形でここに記載したところ、抑制という言葉が入っていない言葉だったので、ここは確認と言いますか、多少意訳した形で免疫抑制剤のほうがわかりやすいということであれば、そのようにさせていただきます。原文の論文とはちょっと違う表になって、日本語化すること自体が違うと思いますけれども。
○松本座長 日本で免疫剤という言葉はありますか。
○上田委員 賦活剤はありますから、抑制剤という形にしたほうが。
○松本座長 では日本であるもののほうがいいと思うので、それは「免疫抑制剤」。
○島居参考人 「免疫抑制剤」ということで。
○松本座長 ほかに、よろしいですか。
○飯島委員 これが意味している免疫剤というのは、トラニラストですね、違いますか。トラニラストはどこに入ってくるでしょうか。これが免疫剤の意味かと思ったのです。トラニラストはいちばん有名ですけれども、酸性の抗ア剤ですね。それがここだと免疫剤のところに入ってくるのかなと思って聞いていたのですが、要するに抗ア剤です。森田先生のほうです。
○森田委員 トラニラストというのは、日本だけではないですね。外国でも少しは使われているかもしれませんが、これは外国の文献から取ったのですね。そうするとトラニラストは記載されていないかもしれない。日本中心に使われた。
○島居参考人 どれがどの薬剤というのはわからない。確認はさせていただきますが。
○松本座長 確認して正しいほうを使っていただければと思います。薬の裏打ちがあればいちばんいいのですが、確認できなければ「免疫剤」と訳すよりも「免疫抑制剤」と、日本で使われているようにしていただければと思います。
○飯島委員 参考1の表を見れば、トラニラストがいちばん多いということでわかるのですが、本文中では。
○秋野委員 免疫抑制剤ですね。6頁とか7頁のあたり、あるいは8頁には「免疫抑制薬」という言葉が出てきますので、「免疫抑制剤」でいいのかなと思いながら読んでいました。
○飯島委員 でもトラニラストは免疫抑制剤ではないですね。
○森田委員 メディエーター遊離抑制剤です。
○飯島委員 そうですね。
○島居参考人 抗アレルギー薬のひとつですか?
○飯島委員 そうですね。
○秋野委員 刺激のほう。
○山田参考人 本文中にはトラニラスト、抗アレルギー薬として、例えば11頁の上から5行目あたりです。ただ、表をどうするかはご判断いただければと思います。
○松本座長 これは飯久保先生、また調整してみて、どれを言っているか決めて、その言葉にしていただければと思います。
○飯島委員 免疫調整薬というのは使われていたと思いますけどね。
○飯久保参考人 相談させていただいて。
○松本座長 裏打ちがあるみたいだから、それで確認していただければと思います。ほかにございませんか。よろしいですか。先ほどの点を修正した上で了承したいと思いますが、よろしいですか。島居先生、ありがとうございました。続きまして、特発性大腿骨頭壊死症のマニュアル(案)について説明をお願いします。
○事務局 それでは特発性大腿骨頭壊死症のマニュアル(案)について、概要を説明します。資料1-9の5、6頁をご覧ください。特発性大腿骨頭壊死症とは、股関節を構成している大腿骨頭の一部が血流の低下により壊死に至った状態で、骨壊死に至った部分が潰れることにより痛みが出現します。骨壊死に至る原因としては、ステロイド薬使用やアルコールの多飲が指摘されています。症状としては、「大腿骨の付け根あたりに痛みがある」「膝あるいは臀部あたりに痛みがある」です。イスラトは7頁に、大腿骨の付け根あたりに痛みがある、膝あるいは臀部あたりに痛みがある、をあげています。概要については以上です。なお本マニュアルを作成いただいた日本整形外科学会より、九州大学大学院医学研究院整形外科講師の山本先生に参考人としてご出席いただいています。事務局からは以上です。
○松本座長 ありがとうございました。山本先生、補足がありましたらお願いします。
○山本参考人 よろしくお願いします。この特発性大腿骨頭壊死症は厚生労働省の難治性疾患にも指定されていて、それが昭和50年に指定されていますから、37年間にわたり研究が進んでいます。したがって、診断・治療に関してはかなり確立されていて、世界のトップレベルと考えられます。ただ、いまのトピックは、なぜ壊死に陥るのかというところで、これは世界的な課題となっています。その中で、ステロイド、アルコールが関係していることがわかってきています。ただ、本当にステロイドの副作用なのかというところで、まだ不確定なところがあるのも事実です。今回、このような依頼をいただいたとき、日整会としても多少の驚きと戸惑いと、また一部の先生からは、よくここまで踏み込んでいただいたという意見もありました。その点でこのマニュアルの中に、副作用と呼ぶかどうか不明ですという文章が2カ所ぐらい出てきているのは、以上のような背景があるためとご了解いただければと思います。よろしくお願いします。
○松本座長 ありがとうございました。委員の先生方からご意見はございますか。これは時間がないので1つだけ、特発性と言うと原因不明なので非常に微妙なところがあります。この副作用マニュアルの表題は「特発性」を取って、「大腿骨頭壊死症」では駄目なのですか。
○山本参考人 一般的に定義として、特発性というのは原因不明というのは御指摘のとおりです。一方で外傷後に大腿骨頭壊死が起こることもあります。例えば頚部骨折で大腿骨の付け根が折れた後に、大腿骨頭壊死が起こることがありますから、一般的に大腿骨頭壊死と言ってしまうと、外傷性まで含めてしまうことになります。そのため、ある意味で副作用という観点からも外れてしまう点がありますので、「患者の皆様へ」といういちばん最初の黄色のところでも、あえて「股関節脱臼や大腿骨頚部骨折後などの外傷とは関係がないものを」と書いています。
○松本座長 大変微妙ですね、確かにおっしゃるとおりかもしれません。この辺、委員の先生方、何かご意見はございますか。特発性と言ってしまうと、薬剤性の副作用に関して議論しているのと少しニュアンスが異なってくるものですから、この文章を読んでみると苦心の跡がうかがえますけれども、このままこれを副作用名として持って行った場合に、いかがなのでしょうか。委員の先生方、よろしいですか。ご意見はございませんか。
○笠原委員 単なるミスだと思いますが、16頁の上から2行目の「表3」というのは、この中にはなくて、たぶん「図2」だと思います。
○山本参考人 すみません。
○松本座長 細かい点で、引用文献の数値が大文字になっているところが結構ありますので、これは小文字に整理していただければと思います。内容的に何かほかにございますか。
○上田委員 いま、一般に、特発性大腿骨頭壊死症と整形の学会ではおっしゃっているわけですね。
○山本参考人 日整会の用語集にも、この特発性骨壊死という形で登録されています。表2の分類には入っていないのですが、参考2ですか、ICHの国際医療分類には大腿骨頭無腐性壊死症になっています。そこのギャップもあって参考2の表の記載のところには一部、文中に大腿骨頭壊死症と呼ばれていますという文章を付け加えています。
○松本座長 いかがでしょうか。
○安全使用推進室長 これまでも特発性を付ける、付けないという部分において、過去の前例を見ると、実は特発性が付いているものはありません。特に血液領域ではITPなんかも特発性を付けずに副作用名として、薬との関係でマニュアルをご覧になるので、おそらくそこは自明でわかるだろうということで、これまでも付けていないものが圧倒的に多いのです。このあたりは他領域に影響がないかどうか私も気になるところがあります。もし池田先生から何かございましたら。
○池田委員 特発性血小板減少性紫斑病というのは、難病に指定されていますね。血小板減少性紫斑病というので、たしか血液の領域は重篤副作用マニュアルを作ったのです。特発性大腿骨頭壊死症と言うと、難病としてひとつのカテゴリーとしてあるのです。ですから先生も言われたように、血小板減少性紫斑病と少し違うのです。同じ理解ではないような気がします。日整会で特発性大腿骨頭壊死症をここに持って来たというところで、私自身は、もう少しステロイドというのはダイレクトに因果関係があると思っていましたから、それだったら特発性はやめてしまって大腿骨頭壊死症で、それでステロイドとすればいいのかなと思ったのですが、先生方の研究班では、ステロイドは関連性はかなり強いけれども、因果関係そのものにはまだ疑義があるというお立場ですか。そこが私はニュアンスが違っていたのです。
○山本参考人 。本文中にもありますが、飲んだ人と飲まない人を比べると、飲んだ人は骨壊死発生のリスクが20倍高いということは判明しています。
○池田委員 そうですね。ですからそういう面から言えば、まず間違いないと思います。
○山本参考人 まず間違いないだろうということですけれども、ただ確定とまでは言えないのが現状と思います。
○池田委員 実際にはステロイドを飲んでいて、特発性大腿骨頭壊死症で難病に指定されている方がいるというか、そういう格好になっていますよね。ですから、そこのところが血液の場合とは少し違うかなと思います。
○山本参考人 これをステロイドの副作用だと完全に言ってしまうと、実際の臨床の場ではステロイドというのは多領域にわたってかなりの頻度で使われているため、混乱を来す可能性もありますので、学会としてもこのような記載にいたしました。
○松本座長 整形外科学会から出してこられているわけですし、それで特発性を付けるということであれば、これは問題提起もひとつあるわけですから、このままにしますか。
○安全使用推進室長 特に内科領域等々、いまの状況が違うということで混乱がないということであれば、特段、ここはこのご提案のとおりでよろしいのではないかと思います。
○松本座長 そうですね。中にいろいろと書いてありますし、問題点があることはわかるわけですから、このまま学会のとおりにいきますか。よろしいでしょうか。それでは先ほどの点を少し訂正した上で了承していただくということで、よろしいですか。山本先生、ありがとうございました。最後に3つ残っていますが、上田先生が全部関係されていますので一緒に説明させていただきます。よろしくお願いします。
○事務局 簡単に3つの疾患について、事務局よりご説明させていただきます。まず急性腎盂腎炎のマニュアル(案)についてご説明します。資料1-10の5~7頁をご覧ください。急性腎盂腎炎は尿路に起こる細菌感染症の一種であり、膀胱で増えた細菌が尿管を通して腎盂まで達して発病します。医薬品により免疫力が低下し、細菌感染症が起こりやすくなる可能性があります。免疫力を低下させる薬として免疫抑制薬、抗がん薬、インフリキシマブなどの抗TNFα生物学的製剤があります。症状としては、「寒気」「ふるえ」「発熱」「わき腹や腰の痛み」など全身症状が強く出ます。特に「寒気」「ふるえ」「発熱」「わき腹や腰の痛み」については早期より出現します。イラストは8頁に、寒気、ふるえ、発熱、わき腹や腰の痛みを記載しています。
 次に腫瘍崩壊症候群についてご説明します。資料1-11の5~7頁をご覧ください。悪性腫瘍の治療時に腫瘍が急速に死滅することにより生じる腫瘍崩壊症候群は、体内の尿酸の増加、電解質のバランスが崩れる、腎臓からの尿の産生が減少するなどの異常が出現します。通常、治療開始後12~72時間以内に起きてきますので、本マニュアルでは、この期間に尿量が減ったと気づいたら、医師、看護師、薬剤師に知らせるよう注意喚起を行っています。しかしながら、本副作用は患者さんが初期症状を自覚して早期発見することが難しいため、水分摂取などの予防法に加え、「血液検査」「尿検査」「尿量測定」などで副作用を的確に把握することが必要です。イラストは8頁に血液検査、水分摂取など、予防が大切であることを表現しています。
 最後に腎性尿崩症についてご説明します。資料1-12の5、6頁をご覧ください。腎性尿崩症は1日の尿量が3リットル以上に増加する疾病で、多尿に伴いのどの渇きや飲水の増加を認め、医薬品により起こる場合があります。原因医薬品としては躁状態治療薬、抗リウマチ薬などが知られており、原因と考えられる医薬品の服用後、数日から1年後に発症することが多いのですが、数年以上経ってから起こることもあります。症状としては、「尿量の著しい増加」「激しい口渇」「多飲」があります。イラストは6頁に、尿量の著しい増加、激しい口渇、多飲を表現したものを載せています。概要は以上です。なお、これら3つのマニュアルにつきましては日本腎臓学会に作成いただき、同学会の上田委員にもご協力いただいています。事務局からは以上です。
○松本座長 ありがとうございました。上田先生、補足がありましたらお願いします。
○上田委員 間接的に免疫機能が落ちて腎盂腎炎ということで、この副作用に挙がってきたのは抗TNFα生物学的製剤によって、たしか64人の方が敗血症で亡くなったところから、これが出てきたと思います。そういうことでいろいろな免疫抑制剤、抗がん剤で結局、敗血症になる原因というのは呼吸器系と消化管系、それと尿路系がほとんどだと思います。ですから、これが特別副作用に挙がってきたというのは、ちょっと奇異な感じが最初はしましたけれども、指定されていましたから、こういうことで急性腎盂腎炎という形で副作用として挙げています。まずそれが、先ほどの議論の弁解になるわけです。
 一般の急性腎盂腎炎という形での副作用を挙げて、あとインフリキシマブで挙げた症例を典型的な症例として出しています。この方は敗血症で亡くなるということはなく、2回、それほど重症なものでないですけれども急性腎盂腎炎になり、途中、2回目でインフリキシマブの使用を中止したという経過です。以上、簡単ですが急性腎盂腎炎ということで、これは抗TNFα剤を意識して書きました。ですから、抗がん剤とかはあまり重視しないでということで書きました。
 次の腫瘍崩壊症候群は、ここにありますように効果があるから起きる副作用だということを強調しました。それに対して予防が大切ということで、患者さんの自覚症状を待っていると手遅れというか、かなり進行してしまうので予防が大切ということを強調し、水分を多く摂るとか、アロプリノール、アルカリ製剤、あと最近はこれがよく使われて、この辺は池田先生にお聞きしたいのですが、ラスブリカーゼという薬を、ある程度この腫瘍崩壊症候群に使います。これは尿酸の分解酵素で、タンパク製剤なのであまり長期間使えないのですが、そういう薬があることを示しました。医療関係者の方にお伝えするのも同じような形で書きました。
 次は腎性尿崩症ですが、いちばん多いのは、躁状態に対する薬として炭酸リチウム製剤が連想されますけれども、3リットル以上の尿量ということで、このような形で書きました。非常に簡単ですが以上です。
○松本座長 ありがとうございました。委員の先生方からご意見はございますか。
○岩田委員 これ、どこで言おうかと思って、いちばん最後ですので言いますけど、全体に書くときに数字と単位の間を半角あけてほしいのです。そうしないと非常に見にくい。特にICとかなっていると、それが1なのか何なのかわかりません。普通、必ず数字と単位の間は半角あけるというのが原則ですから、これはすべてのマニュアルに共通です。
○秋野委員 最初に腎性尿崩症ですが、この英語名がNephrogenic diabetesで終わっていますけれども、14頁を見るとNephrogenic diabetes insipidusですので、diabetesで終わらないで、尿崩症ですからinsipidusが入るのではないでしょうか。
○上田委員 わかりました。
○秋野委員 もう1つは腫瘍崩壊症候群の9頁ですが、下から4行目にいきなり「TLS」という略語が出てきます。医療関係者ですからわかると思いますが、10頁に腫瘍崩壊症候群(Tumor lysis syndrome:TLS)とありますね。どこかでこの略を1回、紹介しておいたほうがよろしいのではないかと思いました。
○上田委員 ありがとうございます。
○松本座長 それはそうですね。
○池田委員 先ほどの問題の急性腎盂腎炎ですが、もちろん抗リウマチ薬のTNFαというのはよくわかりますけれども、これは細菌性の感染症ですから何か違和感があって、細菌性の感染症だったら当然、この薬であればほかの臓器の細菌感染症もみんな入ってしまうわけです。そうすると、呼吸器の感染症も入れておかなければおかしいという話になって、なぜ腎盂腎炎だけを取り上げたのか私自身もしっくりしない。これはやめたほうがいいのではないか。
○戸田委員 そうですね、おかしいと思うのです。どうして急性腎盂腎炎を取り上げたのか。結局、免疫機能が落ちるわけでしょう。そうすると肺炎も起きていいわけだし、ここにTNFα製剤にしたって結核もかなりあるわけです。そう考えると結核も入れなければいけないし、肺炎も入れなければいけないし全部入れなければいけない。だから臓器の感染症を全部入れなければおかしいです。
○池田委員 私も戸田先生と全く同じで、抗TNFαが感染症を起こしやすいことを注意喚起しなければいけないのは当然ですが、おそらく使っている人たちはみんな知っているわけで、何も急性腎盂腎炎だけ気を付けなければいけないという話ではないから、ちょっとどうかなと思います。
○松本座長 書いたほうも、かなり度胸が要るところですけれども、問題提起という意味でも、一応、入れて書いていただいたわけだから。
○上田委員 感染症の中では、あまり死なないからいいのかなと。肺炎とかなくて、これが出てきた時に抗TNFα製剤のことが新聞に載ったり、何で今まで敗血症で死んだとか、それがたしか64という症例数が頭にあるのですが、それをカバーするためにということがあると私は理解したのです。
○池田委員 急性腎盂腎炎は治療も比較的すんなりいくわけです。それよりも戸田先生が言われたように、結核などのほうが圧倒的に問題になっていて、これは知らないで結核の患者さんをやっていてほかの人に移すとか、そっちのほうが大きな問題になるので、むしろ私は、そういう考えならば結核を取り上げたほうがという気がします。ですから、あまりしっくりしないですね。
○飯島委員 現実には肺炎とか、そちらのほうがよほど多いわけです。
○上田委員 書いた人間が、そうだそうだと言ってはいけないのですが。
○松本座長 違和感は確かにあるのですが、一応、ここまできて学会に頼んで作ったわけでしょう。ここで没にするというのもね。
○上田委員 よろしいですよ、これは私が中心になって書きましたから。
○松本座長 その辺、また先生のほうとも検討していただければいいと思います。少し今までのと外れているのは間違いないのですけれども。
○安全使用推進室長 これを取り上げたのは、先ほど上田委員からもご紹介がありましたように副作用症例の集積とか、そういう現象論のほうからきているものがあって、そういう副作用報告という面から見た部分でのこれまでの歴史的経緯の中で、これが挙がってきたという状況です。ただ、一方で、全体的にこういったTNFα等で起こる感染症という、もう少しそちらのほうに目を向けた視点でのマニュアルが必要ということであれば、敢えてこれにこだわる必要はないのかなと思っていますので、それはまた上田先生のほうと。せっかく依頼させていただいた学会との関係もありますし、お持ち帰りいただいてご検討いただき、もしそういう趣旨であれば、これについて廃案にしていただくことについては差し支えないと思っています。
○上田委員 私も皆さんを説得するあれはありますけれども。
○飯島委員 このマニュアルは従来、出口のほうの話をしたわけです。起こった副作用についての話であって、いまの話で抗TNFα製剤による感染症ということになると、このマニュアルの趣旨とちょっと切り口が違う。ただ、逆に言うと、そのほうが本当はわかりやすい気がしますので、その辺のところをもう1回、ご検討願ったらいかがかなと私は考えます。
○安全使用推進室長 おっしゃるとおりで、何でこういうスタイルになっているかというと、患者さんを含めていろいろと副作用に気付いていただきたいというところから、もともとの発想はきています。それで、いま申し上げたように現象論のほうから話が入っていっている切り口があるというところを、ご理解いただければと思っています。
○岩田委員 確認したいことがあるのですが、このマニュアルを作ることと副作用被害補償の関係というのは、どういうふうになっているのですか。
○松本座長 薬の被害のほうは、また副作用被害のほうの判断になる。
○岩田委員 ですから、ここに書くということは、被害の補償につながるものだと主張される可能性はないのですかということです。
○上田委員 先ほどの特発性は。
○岩田委員 副作用被害の補償になっています。
○上田委員 救済していますか。
○岩田委員 ええ、しています。
○安全使用推進室長 大腿骨頭壊死は相当事例、救済させていただいています。
○岩田委員 その辺のところの態度をしっかりしておかないと、これをここでやってしまうと、今までの副作用被害のところの根底のところにかかってくる可能性がある。何を言われるかわからないですから。
○松本座長 岩田先生、これは逆の面もありまして、副作用被害救済のほうも疑わしいものを救ったために、すべてが関係するという形のあれもあるのです。かなり幅広く副作用救済をしていますので因果関係が。
○岩田委員 私が言ったのは、ここに書かれている薬は全部、起こってもしようがないものなのです。TNFαにしても免疫抑制薬にしても、これで起こったものは副作用被害の対象にはなっていないのです。そういう意味で重篤副作用をやるとすると、そういう被害対象になっていないものを全部挙げなければいけないとなると、抗がん薬で起こってくる副作用は全部書かないといけないことになってしまうから、それはまずいのではないかと、私が言ったのはそういう意見です。
○安全使用推進室長 現行の制度の中で受忍になっているものは当然あって、その受忍になっているものの副作用についても、このマニュアルの中ではこれまで触れてしまってきている部分があります。
○岩田委員 そうなのです。それでちょっと、ここも受忍もいいところです。これはほとんどの薬が受忍の薬ですね。
○安全使用推進室長 そうですね。
○飯島委員 腫瘍崩壊症、これは薬理作用ですから、まさにご指摘のとおりだと思います。判定する現場でも非常に混乱が起こるだろうとは考えます。
○安全使用推進室長 ただ、一方で、これを使って判定してくださいということをお願いしているわけでは決してありませんし、受忍のものはあくまで受忍というのが現状の考え方ですので、これと直接、副作用被害救済の判定のほうを結び付けないようにということは、我々のほうでも少し留意して対応したいと思っています。
○松本座長 そうですね。それぞれに別個の立場でいかないと、結び付けるとなると大変複雑なことになるのではないかと思います。かなり微妙な点がいっぱいあります。
○戸田委員 腫瘍崩壊症候群ですが、11頁の表1でカリウム6.0mmol/L以上、または6.0mg/dL以上となっていますね。これはおかしいのではないか。ミリグラムとすると234mgにしなければいけないと思いますが、どうですか。カリウムの原子量は39.1ですから、それを掛けたら200いくつになるはずです。これは取ったほうがいいのではないかと思います。いま、mg/dLでやるなんてほとんどないでしょう。
○松本座長 ほかにございませんか。一応、この急性腎盂腎炎の取扱いを除いて、2つのものに関しては了承させていただいてよろしいですか。急性腎盂腎炎も形としては悪くないわけですし、あとはどうするかだけになりますので、この辺は関係学会と事務局と先生で相談して決めていただければと思います。それでは事務局から今後の予定について説明してください。
○事務局 今後の予定等について説明します。本日、ご審議いただいたマニュアルについては必要な修正等の作業を行った上で、厚生労働省及び医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載させていただくとともに、学会等へも情報提供させていただきたいと思っています。
 参考資料1をご覧ください。これが各マニュアルの作成状況の一覧表になっています。この中で黄色いカラムで示しているものが、本日ご検討いただいたものとなっています。昨年度までに公表していた63疾患と、本日ご検討いただいた11について、1つペンディングになっていますが、これを合わせて74疾患について完成したことになります。ありがとうございました。
○松本座長 続きまして、議題(2)その他について事務局からお願いします。
○事務局 続きまして議題2ですが、資料2をご覧ください。「今後の重篤副作用疾患別対応マニュアルの取扱いについて」です。本事業ですけれども、予算上は本年度で最終年度となっています。既に作成したマニュアルの来年度以降の取扱いについてですが、資料2にありますように、例えば参考資料1のところは薬事法第77条の4に基づく副作用報告の件数ですし、参考2のICH国際医薬品用語集日本語版は定期的に更新等が必要と考えています。また新薬の承認によって副作用の治療環境が異なってきた場合や、新たな治験等が生じたためマニュアルの内容に変更が必要となった場合には、マニュアル本編の修正が必要かと思います。これについては、必要なときに各学会の方にご協力をお願いすることになるかと思いますので、よろしくお願いします。
 最後になりましたが、先生方にご協力いただいて進めてきましたこの事業も本年度で最後になるということで、先生方にはこのマニュアルの作成にあたり、ご指導、ご鞭撻を賜りましたことを心より感謝申し上げます。最後に安全対策課長の俵木より、ご挨拶をさせていただきます。
○安全対策課長 安全対策課の俵木でございます。今日はこんな時間になってしまいまして最後まで大変ありがとうございました。この事業は平成16年度に予算要求して、平成17年度から5年間続けてきていただいた事業でございます。いまの平山審議官が当時、安全対策課長のときに、副作用を早く見つけて早く対応を取っていくということで、起こったことから見つけていく。患者さんに第一発見者になってもらおうという発想から始まった事業でございます。75の疾患について作ってきていただきまして大変ありがとうございました。また来年度からは、いまご説明しましたように必要に応じて改訂をして続けていきたいと思っていますので、またいろいろな場面でお世話になるかもしれませんけれども、引き続きよろしくお願いしたいと思います。大変ありがとうございました。
○松本座長 課長が言われましたように、私が聞いたところでは、この重篤副作用検討会は副作用の発生機序を明らかにするとか、そういうことも含めてやるということも入っていますので、今後にもつなげていただきたいと思っています。ありがとうございました。それでは本日の議題はすべて終了しました。本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

医薬食品局安全対策課
(電話)03-5253-1111

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