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2011年9月30日 第2回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会
医政局総務課医療安全推進室
○日時
平成23年9月30日(金)
○場所
専用第15会議室
○出席者
会議メンバー(五十音順)
飯田修平 (練馬総合病院病院長) |
岩井宜子 (専修大学法科大学院教授) |
貝谷伸 (全国健康保険協会理事) |
加藤良夫 (栄法律事務所弁護士) |
里見進 (東北大学病院病院長) |
椎名正樹 (健康保険組合連合会参与) |
高杉敬久 (日本医師会常任理事) |
豊田郁子 (新葛飾病院セーフティーマネージャー) |
宮澤潤 (宮澤潤法律事務所弁護士) |
山本和彦 (一橋大学大学院法学研究科教授) |
吉川和夫 (東京都副知事) |
参考人
堀川俊一 (高知市健康福祉部理事) |
オブザーバー
警察庁 |
法務省 |
文部科学省 |
国土交通省 |
公益財団法人日本医療機能評価機構 |
一般社団法人日本医療安全調査機構 |
厚生労働省
大谷泰夫 (医政局長) |
唐澤剛 (大臣官房審議官(医療保険・医政担当)) |
池永敏康 (医政局総務課長) |
木村博承 (大臣官房総務課参事官(医療安全担当)) |
宮本哲也 (医政局総務課医療安全推進室長) |
田原克志 (医政局医事課長) |
鈴木建一 (保険局総務課医療費適正化対策推進室長) |
○議題
(1)我が国の無過失補償制度関連の現状について(その2)
(2)諸外国の無過失補償制度関連の概況について
(3)構成員提出資料に関するヒアリング
(4)その他
○配布資料
資料1 | 第1回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会議事録 |
資料2 | 労働者災害補償保険制度について |
資料3 | 自動車損害賠償保障制度について |
資料4 | 諸外国における無過失補償制度等について |
資料5 | 日本病院団体協議会「診療行為に関連した死因究明制度に係るワーキンググループ」報告書等について(飯田構成員提出資料) |
資料6 | 「医療事故無過失補償制度」の創設と基本的な枠組みに関する意見書等について(加藤構成員提出資料) |
資料7 | 医療事故調査制度の創設に向けた基本的提言について(高杉構成員提出資料) |
参考資料 | 医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会開催要綱 |
○議事
○医療安全推進室長 定刻になりましたので、ただいまから第2回「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」を開催させていただきます。本日はご多用の中、当検討会にご出席いただきまして誠にありがとうございます。本日の出欠状況ですが、有賀構成員、印南構成員、遠藤構成員、松月構成員からご欠席の連絡をいただいております。
事務局で出席者に変更がありましたので紹介させていただきます。保険局総務課医療費適正化対策推進室長の鈴木です。厚生労働大臣政務官の交代があり、9月5日付で藤田一枝厚生労働大臣政務官が就任しております。本日は公務のため欠席しております。以降の進行は里見座長にお願いいたします。
○里見座長 第2回の医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会を開催いたします。第1回のときには、開催前に雷鳴が轟き、かなり波乱の幕開けですという挨拶をしましたら、いくつかの報道機関にそっくりそのまま波乱の幕開けと書かれてしまいました。本日は晴れていますから、穏やかな良い会合が開けるのではないかと期待しています。それにしても、これだけ人が集まりますとかなりものものしい雰囲気ですね。無過失補償制度はあったほうがいいだろう、というのは皆さん代わらないと思いますので、本日も実りある討論をお願いいたします。ただ、本日も結論を絞るということではなくて、各法制の考え方や、ある種の勉強といいますか、制度等についての勉強をしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
会議を始めるにあたって確認しておきますが、本日は4名の構成員が欠席です。それから岡崎構成員の代理として、高知市健康福祉部健康推進担当の堀川理事が出席しております。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
○医療安全推進室長 本日は、資料1から資料7までお配りしております。資料1は前回の議事録です。構成員の皆様には、既にご確認いただいたものということで、ホームページにも掲載しておりますが、もし内容等に問題がありましたら、終了後にお知らせください。資料1第1回検討会議事録、資料2「労働者災害補償保険制度について」、資料3「自動車損害賠償保障制度について」、資料4「諸外国における無過失補償制度等について」です。資料5は、飯田構成員からご提出いただいた資料です。資料6は、加藤構成員よりご提出いただいた資料です。資料7は、高杉構成員よりご提出いただいた資料です。
○里見座長 議事に入ります。前回は、これまでの医療安全に対する取組み等について、それから無過失補償制度に近いのではないかということで、医薬品の救済制度、予防接種に関する健康被害の救済制度、産科領域での補償制度等について説明をしていただきました。
本日は、更に加えていくつかの点で説明をしていただきます。1つはかなり近いのではないかと思いますけれども、労災に関するもの、それから自動車等の自賠責についてのものについての説明をしていただきます。その後、諸外国の無過失補償制度についての説明をしていただきます。その後、構成員3名の方々から是非ご提案したいというお話がありますので、そのことについてお話をしていただいて、これらを基にしてディスカッションをして、我々の認識のレベルを同じにしようと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
議題1「我が国の無過失補償制度関連の現状について」と「諸外国の無過失補償制度関連の概況について」の2つを続けて説明をしていただきます。議題1に関して、労災関連の補償保険制度についての説明をお願いいたします。
○労働基準局労災補償部労災管理課 厚生労働省労働基準局労災管理課の飯田です。本日はよろしくお願いいたします。資料2で「労働者災害補償保険制度について」です。1頁に「労働者災害補償保険制度の概要」という資料に、「背景・趣旨」とあります。労働者災害補償保険制度については、労働者災害補償保険法という法律があります。この法律に基づいて、労働者の業務災害、こちらは労働者が実際に働いていたときに怪我をした、あるいは病気をされたという意味です。付け加えて通勤災害ですが、通勤災害については家から職場へ通うときに、例えば交通事故に遭ったというようなものです。そういう保険事故が起きた場合に対し、迅速かつ公正な保護をするために、いろいろな保険給付を行うというのが基本のスキームです。
その後に、「あわせて被災労働者の社会復帰の促進、被災労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図ること」と書いてありますが、これはこちらの法律の付帯事業ということで、こういう事業をやることによって、労災事故の発生を防ぎ、災害の給付のほうも減らしていこうという形で、併せて本体給付と付帯給付をやっているという仕組みです。
労働者の行政の考え方を簡単にご説明させていただきます。労働者は、使用者と雇用契約を結んで働いているわけですが、歴史的な経緯を見ても、やはり使用者の立場のほうが強いこともありますので、一般に司法上の原則である契約自由の原則、あるいは過失責任の原則をそのまま適用すると、最終的に労働者の保護に欠ける結果になることがあります。このため、労働者の行政においては、この契約自由の原則、過失責任の原則を修正している状況があります。今回ご説明させていただきます「労働者災害補償保険制度」は、過失責任原則を修正し、事業主が雇っている労働者が、仕事の関係で怪我をされた、病気をされた、あるいは不幸にして亡くなられたような場合については、その会社のほうが無過失補償責任制度という形で補償しなくてはいけないと。かつ、そのまま放っておくとどうしても会社の規模によっては、労働者にきちんと補償できない可能性もありますので、こちらのほうを強制保険という形で、原則すべての事業、すべての労働者に適用になる強制保険にすることにより、事業主の無過失補償責任をきちんと担保する仕組みです。
仕組みを簡単にご説明いたしますと、いまご説明いたしましたように、基本的に労働者を使用するすべての事業に適用して、かつ労働者も労働者であれば、例えば労働時間が何時間だろうと基本的にすべて適用になる制度です。イメージ的には適用単位というのがあるのですが、事業所単位で適用する保険です。例えばコンビニが1カ所あったら、そこで1つの労災保険の適用の単位という形になっております。建設工事などの限られた所はそこの工事現場が1つの事業という形で適用しております。費用のほうは、いま申し上げましたように当然事業主の無過失補償責任制度を担保するものですので、基本的にはすべて事業主が保険料という形で国のほうにお支払いいただき、その保険料を原資に国のほうが必要な保険給付を行う制度です。
「主な保険給付」ですが、こちらの労災保険のほうは、基本的に労働者が仕事をしている際に怪我をした、負傷した、その後に病気になった疾病の場合、その後不幸にも障害をもった場合、その後にお亡くなりになった場合と、全部で4つの保険事故があります。このうち療養(補償)給付と、休業(補償)給付については怪我をした、あるいは病気をした場合の保険給付です。具体的に療養給付については、必要な療養給付といっても、要は医療の原物給付を行うということです。
休業給付については、怪我をしたり、病気になった関係で仕事に行けない場合、当然その間は給料が出なくなってしまいますので、その部分を給料の60%と書いてありますが、これは1日にいただける賃金の60%を担保しているものです。その後、負傷や病気の関係で、最終的に障害が残ってしまった場合については、障害(補償)給付という形で年金、あるいは一時金を支給する。その後、被災労働者が不幸にして亡くなられた場合については、遺族に年金又は一時金の支給をしているというのが大きな仕組みです。
右脇の「基本データ」ということでいろいろな数字が書かれていますが、基本的にこちらは強制保険という形で、推計値ではありますが、大体事業所単位で97%ぐらいは労災保険に入っていただいています。いずれにしても無手続の事業場をなくすために、年金機構と協力するなどして、無手続事業のほうの一掃の保護に努めている状況です。
2頁では、簡単に保険料の考え方をご説明させていただきます。いままでご説明いたしましたように、労災保険は労働者が労災に遭った場合の補償です。それでは労災保険制度はどういう逸失利益を補填するものかというと、1点目は労働者が事故で怪我をしたりした場合の療養とか医療の関係の部分。2点目は、働けなくなった、稼得能力を失った逸失利益もありますのでそこを補填する。3点目は、労働者に養われていたご遺族の方が、本来労働者がご存命であれば受けられたような扶養利益が失われた場合に補填する。その療養の部分、稼得能力の部分、逸失利益の部分、扶養利益の部分を指しているわけですが、これをそのように考えると、基本的に労働者が働いていた賃金で、普通だったら面倒を見ていただけるものがなくなったということです。
2頁の左側の「財源」のところに、保険料というのがあり、こちらの考え方についても基本的には賃金総額に保険料率を掛ける。簡単に言うと、会社があれば、そこの会社で事業所単位で、大体1年間でこれぐらい給料が支払われるという概算を出していただきます。それに、その事業所に属する事業、業種ごとに保険料率が異なりますので、この保険料率を掛けていただいた上で、保険料という形で概算で支払っていただきます。その後1年後に清算をするという形で、それが順繰り順繰りに返って、事業主に負担をしていただいている状況です。後ほど保険料率の詳しい話はさせていただきます。
3頁と4頁は、具体的な労災保険法に基づく保険給付の水準についての資料です。左側に「保険給付の種類」とあり、その後に「支給事由」「保険給付の内容」とあります。いちばん右側に「特別支給金の内容」とありますが、こちらは本体の保険給付に加え、更に上乗せをするような観点でやっているものです。簡単に申し上げますと、いちばん最初の左側の「療養補償給付」「療養給付」「休業給付」については、労働者が仕事上、あるいは通勤の際に怪我をした場合には医療の提供を基本的に原物給付で行うものです。
2つ目の「休業(補償)給付」については、労働者が仕事、あるいは通勤で怪我をして仕事ができなくなった場合に、「給付基礎日額」と書いてありますが、これは大体1日当たりの賃金額の6割ぐらいを国のほうから支給する形のものです。
その下は「障害(補償)給付」です。障害の補償給付については、障害の程度によって、重い方については年金を支払い、比較的軽い方については一時金を支払うという形で、障害補償年金と障害補償一時金があります。その下は遺族の補償についてですが、遺族についても遺族補償年金が支払われます。基本的に遺族補償年金を受けられるような方は、まさに亡くなられた労働者がご存命のときに、生計を一緒にしていた、即ち扶養利益を受ける資格のある方が対象となっております。その後の順番については、普通の厚生年金と同じような形で、配偶者、子、父母孫等々という順番になっております。一時金については、扶養利益を受ける資格はなかったのですが、一応ご遺族である方に対しては一時金を支給するという形です。
4頁は「葬祭料」ということで、亡くなられた際の葬祭料の支給です。「傷病補償年金」、「傷病年金」については、仕事や通勤が原因で怪我をした後、病院等で療養されると思いますが、その療養が1年6ヶ月を経過してもまだ完治しないような場合、症状が固定されないような場合には、年金を支給し、生活をバックアップするものです。そのほか、労災が原因で介護が必要になった方については「介護補償給付」、「二次健康診断等給付」ということで、長時間労働等業務の過重がかかる中で、現在の労働者の心臓疾患等が増すこともありますので、そういうことを事前に防ぐためにも、二次健康診断等給付を行っています。
いままで申し上げたことは、基本的に本体給付の部分で、最低限の部分です。それ以外に「特別支給金」という形で、上乗せの措置をしております。簡単に例を申し上げますと、3頁の「障害(補償)給付」の障害補償年金の部分ですが、こちらは保険給付の内容については、基本的に年金という形で、給付基礎日額の313日分から131日分となっております。つまり、1日の賃金の60%に当たる額を日数分いただいているということです。
その後の「特別支給金」の内容を見ますと、障害特別支給金と、障害特別年金があります。特別支給金については、1日の60%の賃金分しか見てあげていないこともありますので、その上乗せの意味で特別支給金を出しています。障害特別年金については、1日当たり60%の賃金額を出す場合にボーナスは含まれておりません。ただ、一方で日本の賃金体系を見ますと、ボーナスがほかの国は出ていることもありますので、こちらのほうはボーナスを加味した形で障害特別年金を出しているということです。
なお、これらの給付水準について、労働関係の水準では国際労働機関(ILO)が労働者の保護に当たっての条約、あるいは勧告を定め、国際的な水準を作っております。我が国の労働者災害補償金制度は、こういう水準以上のものとなっております。
5頁は、実際に労災保険料が集まった後、どのような形でお金が流れているかの数字です。平成21年度は、労災保険料で集まったのが大体1兆2,000億円を、?労災保険給付等ということで大体8,614億円。細かい保険事故別の内容については、後でご覧いただければと思いますが、簡単に申しますと負傷疾病の部分で大体4割、障害で3割、死亡で3割というイメージでよろしいかと思います。それ以外に社会復帰促進等事業ということで、先ほどの付帯事業の面。その他ということで、労災保険の業務を行うための費用等を取っております。そのほかには翌年度への繰越しということで2,000億円程度取っております。労災保険のほうがショートしないように、いつも危険を見てある程度お金を積んでいる状況です。
6頁で料率の考え方として、基本的に事業所単位で労災保険を適用するわけです。当然やっている事業の内容によって、労災が起きる危険性や確率は違うわけですので、基本的には業種別にそのリスクに応じて料率を作っているということです。7頁に、事業の種類に応じた労災保険料率のリストを付けております。
率の設定の基本的な考え方は、6頁の四角の枠です。業務災害分、非業務災害分等々とあります。業務災害分については、短期給付と長期給付とあります。短期給付は短い給付で、長期給付は年金たる給付です。短期給付については、基本的に3年間でかかるものについて、収入と支出が均衡するように率を作っています。一方で長期給付分については、事故が発生した段階で、将来にかかる費用を見込んで、すべて徴収する形でやっております。そのために、労災保険の関係の会計では、長期給付するための積立金が会計の中に溜まっている形になっております。保険料率のほうは2.4、1.6、0.6、1.1、0.3と右脇に書いてありますが、これは下のほうにありますように、平均の労災保険料率が5.4/1000、0.54%です。これを内容別に分けると2.4、1.6、0.6、1.1、0.3という形になります。以上で説明は終わらせていただきます。
○里見座長 次に、資料3「自動車損害賠償保障制度について」を、国土交通省のほうから説明をお願いいたします。
○国土交通省自動車局保障制度参事官室 国土交通省自動車局保障制度参事官室の中村です。今般、本検討会にお招きいただきましてありがとうございます。厚生労働省の事務局からは、事前に自賠責制度について、特に過失に関係する部分について中心に説明していただきたいという依頼を受けております。過失に関係する部分についてはもちろん触れさせていただきますけれども、その前に制度全般について把握する必要がありますので、若干前置きが長くなるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
1頁の「クルマ社会の光と影」ですが、ご承知のとおり自動車は、現代社会において日々の生活の足として最も身近な乗物であるほか、あらゆる産業の基盤インフラとして欠かすことのできない、いわば光のような存在であると考えられます。
一方、近年減少傾向にあるとはいえ、自動車事故により、依然として多くの死者や負傷者が生じており、影の部分を有しています。自賠責制度では、自動車の持つ光の力で、影の部分をなんとか支えたいという考えに基づいて創設されたものです。クルマ社会の自動車ユーザーによる支え合いの仕組みを作って、この仕組みに参加しない者による、自動車の運転は許さないという制度を作り出しております。つまり、自賠責保険に加入しなければ、車検を受ける資格がない、いわば強制保険のような制度を法律によって作り出しております。
この仕組みの大きな特徴としては、自動車ユーザーが支払う保険料が原資となっていることが挙げられます。制度の運用に当たっては、政府は相当な関与をしていて、政府としての事故被害者への救済等の政策も実施しておりますが、このような取組みも含め、税金は一切投入せずに制度が運用されております。自動車ユーザーは、もちろん一国民として税金や医療保険料等の義務的な経費の負担もしております。その上で自賠責を払っていることになりますので、そういう税金や保険料に基づく公共サービスを享受することに加えて、いわば上乗せとして自賠責の恩恵を受けることになります。したがって、こちらの資料に書いてあります公共サービスの上に乗っているイメージで捉えていただければと思います。
2頁は、「自賠責制度の成立の時代背景」等についてです。自賠責保険の歴史は意外に古くて、戦後の急速な自動車の発展と、それに伴う自動車事故の激増を背景に、事故被害者に対する救済を果たす必要性から、昭和20年代後半から議論が重ねられ、昭和30年に自賠法、正式には自動車損害賠償保障法が成立して公布されました。時期を見ますと、政府の主要な社会保障制度の整備時期ともほぼ重なっています。
3頁は、「自賠責保険と任意保険」の違いについてです。自動車保険には、強制保険である自賠責保険のほかに、任意保険があります。自賠責保険は、すべての自動車ユーザーに参加していただく必要があるため、必要最低限の補償内容となっております。このため、自賠責保険の対象は、まず人身事故に限られますし、あとは他者である加害者に損害を受けた被害者に限ることにしております。例えば、死亡の場合でも3,000万円、障害の場合でも120万円というように、被害者の症状に応じて上限額が決められております。したがって、任意保険にあるような対物保険だとか、対人無制限といった補償はありません。また人身事故であっても、自損事故については自賠責の対象になることはありません。
このように、自賠責の保険料については安価に抑える必要があり、我々の世界ではノーロス・ノープロフィットの原則と呼んでいますが、基本的には保険料収入の総額と、支払い保険金の総額に差は設けない。つまり、運用するのは保険会社なのですけれども、保険会社が自賠責保険では儲けられないような仕組みになっています。
4頁は、「自動車損害賠償保障制度の概要」についてです。資料には、オレンジの枠の中に5点ほど挙げておりますが、特に肝心なところは最初の2点になろうかと思います。1点目は、自動車事故においては、民法上の不法行為の特例がまず設けられております。具体的に申しますと、民法上損害賠償請求を行う場合には、請求する側、つまり被害者が加害者の故意・過失について立証責任を負うこととされております。本検討会において取り扱っておられる医療事故においても当てはまることだと思いますが、一私人である被害者が立証責任を負うことは極めて大きな負担となり、民法上のこの原則をそのまま当てはめた場合には、自動車事故の被害者の救済を十分に図ることはできなくなるおそれがあります。
そこで特例として、過失の立証責任というものの転換を図っております。つまり自動車事故の場合には、被害者が加害者の故意・過失を立証するのではなくて、加害者が、自分自身に過失がなかったことを証明しない限り、加害者は被害者に対する損害賠償を負うという仕組みを作っております。
2点目は繰り返しになりますが、「自賠責保険への強制加入等」についてです。1点目で説明した立証責任の転換が図られたとしても、加害者に十分な資力がなければ、被害者の救済という制度の目的を達成することができません。そこで自賠責保険を強制加入の保険とし、保険に加入しなければ車検を受けることができないという形でこれを担保しております。そのほか被害者の保護、賠償問題の迅速な解決の観点から、加害者からだけではなくて、被害者から保険会社への保険金の直接請求も可能としております。
そのほかの3つについて説明します。3点目の「保険金の支払い適正化」については、政府による支払い基準の策定を行っております。同じような症状であるにもかからず、支払われる保険金額が異なるのはまずいので、そういう公平性の観点から基準をしっかりと作っていて、この基準に従って保険会社が支払いをすることになっております。特に死亡や、後遺障害等の重要事案については、事後的に政府として支払いの内容をチェックする仕組みも設けられております。
4点目の「政府保障事業」については、ひき逃げや無保険車による事故に遭うことも十分考えられます。このような場合には、保険金の支払いという形で被害者の救済を図ることはできません。そのために、加害者に代わって政府が補償金を支払うという制度も設けられております。
5つ目は、「保険金だけでは救われない被害者の救済等」についてです。これは、保険料の収入から、保険金の支払いまでの間に、一時的に発生することになる積立金がありますので、こちらの運用益を活用し、重度後遺障害者に対する介護料の支払いであるとか、遷延性意識障害、俗に言う植物状態の被害者を受け入れる療護センターの運営などを行っております。
5頁は、お金の大まかな流れについて示した絵です。現在の制度では、保険契約者である自動車ユーザーの支払う保険料は保険会社に入り、事故が発生した場合には保険会社から保険金が被害者に対して支払われるという流れが基本となっております。なお、これだけでは先ほど申し上げました、政府保障事業、ひき逃げ・無保険車の被害者に対する補償といった施策ができなくなりますので、保険料の一部が付加金という形で政府が受け取ることになっております。
また、平成13年に自賠法が改正されましたが、その以前はどうなっていたかというと、政府再保険という形で、保険料の6割を政府に再度保険会社から納入してもらい、それで保険金を支払うときも、その6割を政府が負担するということをやっていました。なぜ再保険をやっていたかというと、ほかの再保険制度を導入しているものと同様に、保険会社のリスクヘッジという観点から、そのようなことをやっていたのですけれども、平成13年ごろに規制改革の要望等があり、現在は保険会社が直接受け取って支払うことをやっています。
6頁は、「自賠責保険制度における我が国と諸外国の主な違い」について記載しております。若干細かいので、詳細については資料として読んでいただくことといたします。諸外国と大きく異なる点として、まず政府が積極的に関与している点、つまり車検とリンクさせていて、強制保険としているところです。これは国際的にはかなりユニークな制度と言えるのではないかと思います。しかし、このような制度とすることで、無保険車の割合を大きく減らすことが可能となっていて、世界に誇れる制度と言えるのではないかと考えております。
7頁も繰り返しになりますが、我が国の自賠制度は、いかに被害者の救済を図るかということを考えて作られております。先ほど説明した挙証責任の転換だとか、強制加入についての具体的な条文は第3条、第5条に書かれております。
8頁は、自動車保険について世界では無過失責任制度を採用している国も一部ありますが、我が国では純粋な意味での無過失責任制度は採用しておりません。無過失責任制度としてしまうと、加害者に責任のない事故や、自損事故についてまで支払いの対象となってしまい、低廉な保険料を維持することができなくなるおそれがあることや、あとは「当たり屋」のような詐欺的な行為が頻発するおそれがありますので、加害者側の過失が全くないような場合には支払いの対象としておりません。
ただその代わりと言ってはなんなのですが、被害者の救済を十分に図ることができるように、「重過失減額制度」を採用しています。通常の不法行為における損害賠償額の過失相殺よりも、被害者に対して大きく有利な制度となっています。例えば、損害額が100万円で、被害者側の過失が7割、加害者側が3割といったような場合、通常であれば30万円ということになるのですが、自賠責保険制度では、ここに書いてある図のような関係になっていて、2割しか減額されないので、したがって80万円が支払われるという考え方を導入しております。
9頁の支払い状況等についてです。保険金の支払い状況については、左側にある自動車事故の発生はここ数年大きく減少していて、死者数も激減といったところなのですが、保険金の支払いについてはほぼ横ばいといった状況にあります。これは、死者数は減少しているものの、自動車の性能の向上等があって、後遺障害を有する被害者は減らずに、むしろ増えているという状況があります。被害者の請求意識も上がってきたこともあろうかと考えております。
最後に契約から保険金が支払われるまでの流れを簡潔に記載しております。本日は触れる時間がありませんでしたが、お金を扱うというものである以上、障害の認定、つまり保険金の額に争いが生じることも十分にあります。最終的には裁判になるのですが、裁判による前に、いわゆる裁判外機関、ADR機関として学識経験者等の有識者による審査が行われる紛争処理機関も設けております。これによって、被害者の救済の迅速化を図ることを目指しております。大変駆け足でしたけれども、以上で説明は終わらせていただきます。
○里見座長 次に議題2の「諸外国の無過失補償制度関連の概況について」ということで、資料4の説明をお願いいたします。
○大臣官房参事官(医療安全担当) 資料4「諸外国における無過失補償制度等について」のご説明をさせていただきます。1頁をご覧ください。現在諸外国においては、いくつかの国において既に無過失補償制度を導入して運営している国々があります。今回は、その中でも私どもが情報をある程度文献等から読み取れるフランス、スウェーデン、デンマーク、ニュージーランドの4カ国を例として挙げさせていただきました。1頁はその全体の取りまとめです。後ほど全体としての総括的なお話をさせていただきます。
なお、この資料については、当検討会に必要な情報が十分に得られているものが少ないということ、また記述が資料によって若干異なっているものもありますので、今回は私どもが調べた参考文献を明示して、それに沿った記述をさせていただいております。したがって、曖昧な部分も若干ありますことをあらかじめお断りさせていただきます。
2頁でまずフランスからご説明させていただきます。フランスにおいては、医療分野における患者保障制度として、最も近直に導入されたのがこの救済制度です。その制度骨子は、過失原則を保持する一方で、国民連帯の下に、重大な医療事故については、いわゆる無過失補償を行うことにより、被害者の早期救済と、それに関連する紛争を可能な限り和解的に解決することにあるとされております。
本制度の運営は資料の中にも出てまいりますけれども、裁定などを行う紛争処理手続機関という形でCRCIと呼ばれる地方医療事故損害調停委員会、ONIAMと呼ばれる補償の窓口となる国立医療事故補償公社、医療の専門性を高めて各地方委員会の裁定の均性を配慮することを目的としたCNAMと呼ばれる医療事故全国委員会を設置し、それぞれの役割を担わせているのが特徴です。
この主たる財源については、疾病保険金庫からの拠出金が主ですけれども、それ以外にも若干予防接種による被害救済のための国の基金、あるいは事後的な補償公社に払い戻される費用などが含まれていますが、そういうもので運営されております。
補償の流れですが、まず真ん中のあたりで上から下に眺めていただければと思いますが、医療事故等が発生し、患者側から補償の請求をする場合には、事故発生から10年以内に、先ほど申しましたCRCIと呼ばれる、フランス全土に23カ所存在している委員会に申請します。このCRCIで、医療事故における事実関係、及び過失の有無等を鑑定し、最終的に見解を示すことになっております。この事実関係を調べる際には、医療機関はCRCIの調査に協力義務の規定があり、必要な記録をすべて提出しなければなりません。
鑑定のところでは鑑定人を指名するわけですが、それは左の真ん中ぐらいにあるCNAMという医療事故全国委員会に鑑定人のリストがあり、そこから中立・公正な者、即ち当事者の親戚同士であるかないかとか、同じ大学関係者であるかないかとか、そういうことを調べて、関係のない中立な者を鑑定人として指名し、合議制で6カ月以内に、損害に関する事実関係、原因、損害の程度及び範囲等について鑑定報告書を作成することになっています。
その鑑定報告書を受け、CRCIの委員会の中で、より大所高所から議論をし、「過失」か「無過失」かの見解を提示するということです。ただし、この見解自体に強制力はありませんが、後述するように非常に尊重されていて、大半がこの見解に従った形で動いていきます。過失の場合には、過失責任がとられていて、医療民事責任保険という形で、保険会社から賠償が患者側に提示されます。無過失の場合には、無過失原理に則り、ONIAMという公社のほうから、補償額の提示がされます。患者がそれを承諾した場合には、それで終わりますが、もし拒否した場合には、民事裁判としてその額の不服を申し立てるという流れとなっていきます。
この特徴は、それぞれ法定で処理期間が定まっていて、申請を受け付け、そして見解を示すまでが6カ月以内、そしてONIAMあるいは保険会社が患者側に支払える額を提示するまでが4カ月以内、そして患者がそれを拒否するか承諾するかが1カ月以内に行われることになっています。従前の裁判ですと数年かかっていたものが、このような期間で処理されていく現在の形が2002年からスタートしています。
なお、CRCIのところで見解を出す作業の過程の中で非常に重大なケース、例えば明らかに故意で行っているものだとか、非常に著しく医療の水準から逸脱したような事例については、警察のほうにその情報が行くこともあるという話です。なお、この補償ないし賠償の額ですけれども、特に予算で書いているのは、無過失補償のほうですが、2009年の予算は日本円で約148億円、支出が約94億円というデータがあります。これがフランスの例です。
次に3頁のスウェーデンです。スウェーデンでの補償の構築については、1975年頃からの歴史があえいます。後で申しますが、スウェーデンはニュージーランドとは違って、医療に特化した補償制度です。特にスウェーデンではランスティング、日本でいうと県に当たるわけですが、医療サービスは大半が県に権限が集中していますので、その県を中心とした制度構築になっています。ただし、成立当初は、あくまで任意保険事業として位置づけられておりましたが、1997年からは、医療提供者すべてが加入する強制保険制度になっております。
補償申請の流れは、先ほどと同じように真ん中の縦の上から下への流れとなっております。自治体医療事故保険会社(LOF)に患者は申請します。申請がありますと、医療機関から情報提供してもらい、審査をして、患者・遺族のほうに通知するという流れは、先ほどと大きな違いはありませんが、その処理期間が8カ月以内になっております。現在のところ8カ月で終わったのは全体の8割ぐらいで、残りの2割はそれより少しオーバーしているという情報もあります。しかしながら、もし、患者が不服であれば、国に設置されている患者不服審査委員会に申し出ることにより、不服審査委員会がLOFに勧告いたします。この勧告自体は強制力はありませんが、非常に尊重されて運用されています。これが補償関連の流れです。
一方、左側は別の流れで、国の保健福祉法に基づく重大な医療事故については、医療機関が報告する義務がありますので保険福祉庁に報告します。その内容によって、処分する必要があるものについては、国に設置された保健医療責任委員会で、医師、看護師等の懲戒等の要否を判断して対応していく流れになっております。
さらに、左の上の部分ですが、それぞれのランスティングに患者委員会が設けられているので、ここに苦情を持ち込むと、この委員会から医療機関に働きかけをきめ細かく行っていくという運用がなされているのがスウェーデンの特色です。
次に、4頁をご覧ください。デンマークです。デンマークについては、1980年代に多くの訴訟がありました。患者が医師の過失や過誤を証明しなければならないということで、治療上の医療過誤を証明することは困難な場合が多かったことを踏まえ、現在の制度の体系化ができています。
保証については真ん中の上から下の流れで、患者・遺族が医療事故等保証を求める場合には、患者保証協会が当たります。この患者保証協会というのは、保険会社が集まった団体で、さらにそれに地方自治体なども加わったような形で組織されているものですが、この協会で審査、そして決定という流れになります。不服の場合には、患者訴願委員会に不服請求することになります。こういう流れも、先ほど来の説明とほぼ似通ったものです。
左側のほうは、原因究明、再発防止の流れです。こちらでは、患者安全法という別の法律に基づいて、不適切事例があった場合には、地方自治体に報告する義務があり、それを用いて最終的には国の全国医療委員会に報告して、そこで国は提言を医療機関に行います。
苦情については左上です。患者または遺族は、患者苦情委員会のほうに申し出ますが、ここは懲罰を与える権限はありませんけれども、非常に重大なケースについては刑事訴追のような働きかけをしていくこともやっていると聞いています。
ニュージーランドについてですが、もともとは労働災害による補償と交通事故による被害補償を統一する形で、1972年に制度が作られました。その後、医療に関連する事象により発生した事案に対する補償が明確な形で、1992年から取り入れて現在の形になっております。その財源は主に雇用者保険料や一般財源から構築されていて、申請の中ではポンチ絵にありますように、真ん中の上から下に流れるわけですけれども、いきなり患者・遺族から事故補償公団に申請するのではなくて、申請したい場合は医療機関に受診して、患者・遺族は医療機関を通じて補償の申請を行うというところが、先ほどまでのものとは少し異なっております。
先ほどまでの他の例については、補償制度の流れをとるか、あるいは裁判所に訴えて訴訟としてやっていくかは選択の自由があるわけですが、ニュージーランドについては医療事故によって人身障害が生じた場合、懲罰的損害賠償を求める場合の訴え以外は、民事訴訟の提起は禁じられているのが特徴です。
最後に各国全体を見わたすために、1頁に戻っていただたいと思います。それぞれ1970年代ぐらいから2000年にかけてこのような制度が欧米諸国、あるいはニュージーランドで作られてきています。財源は、主に疾病保険、地方自治体からの地方税、あるいはデンマークのような病院団体による強制保険制度による財源確保、ニュージーランドの政府拠出といったさまざまな財源の取り方があります。
補償対象の範囲については、フランスのように明確に無過失のみに補償するといったものから、スウェーデン、デンマーク、ニュージーランドといった無過失・過失に問わず補償していくといったものまで。訴訟についてもフランス、スウェーデンについては制限はなくて、デンマークは一部ですが、ニュージーランドのように制限のあるもの。原因究明の取組みについても、合議制の中で鑑定人が行うものから、各医療機関がそれぞれ自発的にやっていくものまで、様々な制度の形態があります。私からは以上です。
○里見座長 資料2から資料4までを説明していただきましたが、一括してご質問等をして、内容を掘り下げていただければと思います。
○飯田構成員 最後の諸外国の制度ですけれども、非常に詳しくお調べいただきましてありがとうございました。一部説明がありましたけれどもわからないところがあります。データを強制的に出させるとか任意とかいろいろあると思うのですが、その区別と、医療機関に対する任意・強制、あるいは個人に対する任意・強制、その結果を警察に出すか出さないか、それを訴訟に用いていいかどうかをわかるようにしていただけるとありがたいと思います。
○大臣官房参事官(医療安全担当) 今回調べたデータでは、その辺りの情報はないか、あるいは希薄だったものですから記載しておりませんが、また調べてみてその辺りのことについて解ったところがあれば提出させていただきます。
○飯田構成員 お願いいたします。
○椎名構成員 いちばん最後の諸外国のケースに関していくつか教えてください。医療に関する風土とか文化、あるいは医療制度について、当然我が国との違いがあると思います。お尋ねしたいことは、諸外国における制度の背景とか目的はどういうものだったのかということ。例えば医療事故とか訴訟が頻発した、あるいは医療の現場が萎縮したといったことがあったのかどうか。また、その制度がスタートした後、その結果どのような変化や効果があったのか。例えば医療事故が減ったり、苦情とか訴訟が減ったりしたのかどうか、ということを教えていただければと思います。
○大臣官房参事官(医療安全担当) 個別に見ると、各国でそれぞれ少しずつ違いはあるわけですが、総論的にはどの国においても、医療紛争が多発し、裁判事態になり、その裁判の年数が比較的長くかかるということで患者の方々も困り、また医療機関のほうも裁判の訴訟案件が増えていくということでより多くの対応をしていかなければならないという背景の中で各国の制度が設けられてきています。比較的ニュージーランドが先発しています。ニュージーランドは、そもそも自動車事故、労災補償といった範囲の補償の中で、当初は医療というものはなかったわけですが、先ほど申しましたように、医療分野のニーズが増えてきたということで医療を入れていきました。
先ほどの説明では金額的なことは申しませんでしたけれども、社会保障制度が発達している国においては、その制度に上乗せを図るということで、ニュージーランドでは社会保障制度を主たる制度として、それに無過失補償制度が補足的に上乗せになっているといった感じになっています。したがって、無過失補償制度ではその支払う額も少なくなっています。デンマークやスウェーデンも社会保障制度がしっかりしている国ですので、そういう意味ではニュージーランド、スウェーデン、デンマークといった国は、大同小異といった感じがいたします。フランスは2002年からということで、他の国々の良いところ、悪いところをよく見ながら、補償、医療への苦情、原因究明と再発防止それぞれ制度設計を苦心してやっているような感じがいたします。
○椎名構成員 もう少し各国の実態、あるいは制度を導入した結果どういう変化や効果が起きたのか、その辺もよく調べていただければと思います。
○里見座長 私から1点財源に関してですけれども、スウェーデン、デンマーク、ニュージーランドはそれぞれ地方公共団体が出したり、病院団体が強制保険に入ったり、政府が拠出金を出したりというのはわかるのですが、フランスの疾病保険金庫からの一般交付金というのが、もし我が国で適用するとすればどういう形の財源になるのでしょうか。
○大臣官房審議官 私がお話をしていいのかどうかわかりませんけれども、疾病金庫ですから、通常だと医療保険の保険者ということになります。先ほど椎名さんからもお話がありましたように、各国の医療制度が違います。特にアクセスの仕組みが全然違いますので、スウェーデン、デンマークは、まずGPの先生に診てもらうという仕組みです。そのまま自由に、病院に自分でかかるという仕組みにはならないわけですので、そういう背景も少し研究させていただきたいと思います。
○山本副座長 諸外国の制度の点で、スウェーデンとデンマークなのですが、1頁の補償対象範囲のところで、過失の有無についてスウェーデン、デンマークは問わないという整理になっています。その上の欄を見ると、スウェーデンの場合には十分な経験を積んだ医師であれば回避することができた障害となっており、デンマークについてもほぼ同じようなことが書かれています。これを見ると、なんとなく回避することができた障害なので、過失だけが対象になっているように見えるのですが、ここをもう少し説明していただけますか。
○大臣官房参事官(医療安全担当) おっしゃるとおりで、フランスの場合には有過失か無過失かを分けて、無過失のほうに公的な資金を投入して補償する。一方、スウェーデンの場合には、十分に経験を積んだ医師よりも劣った医療行為をした場合に補償する。この辺りは有過失部分に対して補償することになります。グレーゾーンになっていて、したがって実質的に無過失の部分も取り込んでいるという意味で、無過失のところが入ってくる。したがって、結論から言うと、有過失が主、無過失が従のような形の制度になっていると考えられると思います。
○里見座長 これをやっていると尽きないと思います。これは、何回か後にも議論するときには基本的な枠組みとして、諸外国にこういう制度があるというのは十分認識した上でやりたいと思いますので、ちょっと前に進ませてください。議題3に移ります。これは構成員が提出した資料に関することです。今回どなたから何かご提案はありますかとお伺いしたところ、3名の皆さんから資料の提出がありました。本日は飯田構成員、加藤構成員、高杉構成員にご説明をいただきます。3人続けて説明をしていただいた後に討議をしたいと思います。最初に飯田先生からお願いいたします。
○飯田構成員 医療現場で我々のやっていること、考えていることがご理解いただけないのか、あるいは先入観なのかわかりませんけれども、第1回のときに印南構成員から、我々としては受け入れ難い発言があったものですから、私は前回発言しました。そのときは資料を持っておりませんでしたので、主にそれを補足するための資料と、病院団体あるいは病院がいま何をやっているか、いままで何をやってきたかという概要をお話いたします。
最初の頁は、日本病院団体協議会の診療行為に関する検討会の議事録の一部です。私も検討委員会の委員に入って議論をしておりました。第3回のときに議論した一部、議題2をここに書いております。厚労省の佐々木様の発言が書いてあります。これに関してはお読みいただければと思います。
その次の頁は、3頁に書いてある『航空機事故の過失理論(改訂版)』という素晴らしい本があります。それを読んで、この著者の池内様をお呼びして発言いただいて議論をしようということで、第4回の協議会にお呼びして、そのときの池内様の発言と議題の概要がここに書いてあります。極めて重要なことがあります。この前も発言しましたし、産科医療補償制度でも私は発言しております。日本は航空機事故もそうであるように、医療に関してもかなり取扱いが異なっているということです。それでは私たちは実際に医療を安心して行えない。
安心・安全というのは、患者に対しても当然です。私たち医療従事者も安心・安全に医療を提供したいと思っておりますが、こういう状況ではなかなか安心して医療ができない。ましてや「緊張が足りない」などと言われてしまいますと、とてもこれ以上はやっていられない。前回も発言いたしましたように、精神疾患の職員が非常に多くて、ますます過緊張で、そうでなくても今も緊張して非常に困っています。それはもともとそういう素因のある方もいらっしゃるし、環境もあります。
よく「感情労働」という言葉が使われます。私たちの仕事は非常に肉体的・精神的な負荷が常にかかっており、これ以上はもう無理です。それを何とか仕組みで解決してくれとお願いしておりますが、前回までの診療報酬改訂は連続医療費削減で、「質を上げろ」「安全を確保せよ」と言われて、なかなかできない状況で、そのために「病院崩壊」ということを言われております。私も「病院崩壊」という言葉は大嫌いでした。しかし、ここ数年は使うことにいたしました。細かい内容に関しては改めて説明申し上げません。もし必要があれば、また次回にでも詳しく議論していただければと思います。
やはり過失に対してどう考えるかです。特にいま、交通事故の話が出ました。医療事故を交通事故と対比して、よく自賠責の業務上過失云々ということが言われますが、それはちょっと違うのです。交通事故でも航空機事故と、普通のいちばん多い自家用車を含めた自動車事故とではかなり違う。医療も航空機事故と病院の医療を対比して、自動車事故と診療所の医療を対比しています。どちらが良い悪いというのではないのです。要するに病院や航空機事故というのは、組織要因が非常に大きいのです。複雑なシステムであるということです。特に複雑というのは、航空機とか病院というハードだけではなくて、業務の運用自体が非常に複雑です。特に医療は、航空機事故以上に並列した処理がたくさんあり、変更があります。そういう中で交通事故も、病院も、診療所も、共通点はヒューマンエラーが直接要因になるということです。ただ、ヒューマンエラーというのは、その背景にある組織要因が非常に大きいということをご理解いただきたいというのがこの趣旨です。
4頁はWHOで医療事故のときにどうするかというもので、その翻訳が5頁にあります。全部は読みませんが、ガイドラインとして報告システムに、どういう特徴のあるものが有効であるかということで、第1に刑事罰は問わない、秘匿、独立性、専門家の分析、タイムリーな報告云々と、ここに書いてあります。やはりこういうことを踏まえて仕組みをつくっていただきたいと思っています。
6頁は、もう2年半前に事故調、安全調ということが議論されたときに、私ども全日本病院協会として、かなり時間をかけて議論をしてまとめたものです。現在、その後の社会の動きを踏まえて、また新しい考え方をまとめている最中です。まだ確定版が出ておりませんので、少し古いものですが、基本的な考え方は同じです。常に申し上げていることは、責任追及、原因究明は非常に大事ですけれども、事故の原因究明・再発防止と責任追及の仕組みは分けてほしいということを申し上げています。先ほどの諸外国云々の質問も、そういう趣旨で質問いたしました。
そして8頁に資料が書いてあります。これは第三者に対する議論ですから、いまは具体的な議論になっておりませんので、文案そのものはまた変更が必要だと思います。これに対して私たちは、やはりきちんと信頼を回復するための取組みをつくろうということでやっております。私たちはただ隠すとか逃げるとか、何でもかんでも免責にせよということではありません。故意や重大な過失に関しては、訴えても罰則を課すことも当然です。しかし、そうでないわからないものに関しては、まず原因究明、再発防止に努めてほしいのです。
そのために、私どもの病院で事故報告書を出させるときは、「これは処罰に使わないから正直に答えろ」と言って職員に出させるわけです。それを裁判に使う、罰則に使うということであれば、それでは正しい情報、あるいは必要な情報が入ってこないということになりますので、結果として事故の原因究明あるいは再発防止には抑制がかかると思います。
12頁にその要点が書いてあります。患者あるいは家族との関係が大事だということで、私どもも患者やいろいろな団体の方と議論をして、今まできております。
13頁は、平成21年に医療安全調査会に関するシンポジウムで、全日病の会長が発言したものをまとめたものです。これも全日病で議論したものです。その中に絵が描いてあります。
16頁は、原因究明と個人の懲罰ということです。いきなり理想的なものはできないだろうから、過渡期には上の図のような仕組みをつくり、段階を置いて下にいこうと考えております。私たちの言っている事故調というのは、処罰まで含むということです。これは言葉の定義ですが、事故の原因究明、再発防止にかかるものは安全調査会ということで、事故調とは分けて考えております。医師法21条に関してはいろいろ問題がありますので、これは解釈が不適切ではないかと考えております。広尾病院事件の最高裁判決も出ておりますが、それに対して納得し難いということだけは申し上げておきます。それから、医療界は緊張が足りないということがあったので、私たちはこんな努力をして、ちゃんとやっていますということを示すために書いております。
18頁ですが、最初は4病院団体協議会で私が企画して、委員長としていろいろな活動をしていますが、安全管理者養成講習会を立ち上げました。それから数年経って、それぞれの病院団体でやろうということになりましたので、現在は全日本病院協会と、日本医療法人協会と両方の共催でやっております。これは今年度のプログラムです。土・日、土・日の計4日間が講義です。その後の土・日2日間が演習です。要するに、座学だけをやってもしようがないので、安全を確保するためには演習をやろうということで、根本原因分析(RCA)と故障モード影響解析(FMEA)を1日ずつ、2日間演習をやります。その演習をやるための基礎の講座として講義があります。
いろいろな団体でいろいろな講習会をやっておりますが、私どもの特徴は、ただ事故防止、安全確保といってもできないのはわかっておりますので、まずは品質管理の考え方や手法を用いて、継続的な医療の質向上から、組織的な改善から質を上げて、結果として医療事故を減らす、安全を確保するという考え方です。講師も品質管理の実務者・研究者、医療の実務者・研究者に来ていただいています。制度に関しては厚労省の医療安全推進室長様に講義をお願いしています。19頁以降にそのことを書いております。患者団体としてはCOMLの方から講義をいただいております。
27頁です。安全に関するいろいろな講習をやっておりますが、これは今年、東京大学の医療安全管理学講座の安全支援センターの職員、あるいは病院の職員に対する講義をした時のレジュメです。このようなことを頻回にやっております。先ほども申し上げましたように、医療の質向上が大事だと。そのためには総合的質経営、トータルクオリティーマネージメント(TQM)、品質管理の考え方を用いてやらなければ駄目だということです。27頁の上の右側のテキストブックは、私たちの講義のテキストを再構成して作ったものです。これは第2版で、昨年作った教科書です。
それから28頁です。いろいろな事故が起こるけれども、これらは全部、質の問題である、組織管理の質の問題であるということです。よく「航空機事故に学べ」とか、「電力に学べ」と言っておりますが、医療も同じで、どちらが優れているということではないと考えております。
30頁でも、やはり医療の質というのは組織の質であるということを言っております。特に強調したいのは、病院業務にはどういう特徴があるかということを、是非医療機関以外の方にご理解いただきたいと思います。この辺はよく認識していただければと思います。私たちは言い訳に使っているのではなく、このように複雑であるから、なおさら注意しなければいけないと考えております。細かい話は全部飛ばしますが、安全のためにはいろいろな質の向上が大事だということです。
35頁には前回も申し上げた安全とリスクの定義があります。安全というのは、受入れ不可能なリスクがないことです。逆に言うと、受容可能なリスクです、社会が何を受容するかということです。それから、リスクの定義も変わったということもご理解いただければと思います。
40頁、41頁は産科医療の補償制度、あるいは第1回の検討会の紹介を『全日病ニュース』でしたということです。以上です。
○里見座長 それでは次に進ませていただきます。加藤先生、ご説明をお願いいたします。
○加藤構成員 資料6をご覧ください。日弁連がこれまでに意見書を出したり、人権大会で宣言をしたりした内容をお話させていただきます。
まず、これはもう本になっておりますけれども、資料6の1頁の下から5行目ぐらいに、日弁連内の人権擁護委員会が「医療事故被害者の人権と救済」というものを発表して、無過失補償の問題に触れています。これが2001年(平成13年)のことです。この1頁の医療事故無過失補償制度の創設と基本的な枠組みに関する意見書というのは、2007年の3月に日弁連として意見書を採択して発表しているものです。時代背景としては、産科医療における無過失補償制度の枠組みが検討されているときに、こうした意見書を出させていただいたということです。
基本的な考え方ですが、資料6の3頁をご覧いただきたいと思います。上から7行目ぐらいに「医療事故の被害者の願い」というのが書いてあります。現状回復というのは、元の状態に戻してほしいという意味です。それから真相究明、反省・謝罪、再発防止、損害賠償というこの「5つの願い」を、医療事故の被害を受けた方というのは持っているということが書いてあります。特に無過失補償制度の検討に当たっては、医療事故の被害者が単に金銭的な補償だけを求めているのではなくて、真相究明、再発防止を強く願っているということを踏まえておきたいと思います。どういうことかと言いますと、真相が曖昧にされたり、また同じような事故が繰り返されたりするということは、例えば子どもさんを亡くしたときを想像していただければおわかりかと思います。その子どもさんの真相が曖昧にされ、また同じようなことが起きるということでは、とてもやり切れないという気持が生ずるわけです。要するに亡くなった人、重大な被害を受けた人の尊厳を害することになるというように受けとめていただければ、理解しやすいかと思います。
この意見書ですけれども、意見の趣旨というのは資料6の1頁にありますように、国に対して要望する部分は、「国は、『被害者の救済』と『医療の安全と質の向上』を目的として」、「医療事故無過失補償制度」の創設をしてほしい、その補償制度には基本的にこういう枠組み、制度設計がなされるべきだということが書いてあります。迅速・公正かつ適切な補償がなされること、医療事故を十分に調査して、事故原因を究明し、同種事故の再発防止策を策定すること、そして調査結果と再発防止策などについて、医療事故の当事者らにきちんと報告をするとともに、可能な限り公表していく、そういう運用のためには、市民らが参加する第三者機関を創設してほしいということです。意見書についての詳しいことは、また読んでおいていただければと思います。
16頁は、2008年10月に富山で人権大会が開かれた折に、「安全で質の高い医療を受ける権利の実現に関する宣言」をしました。この宣言が成立するためには、日弁連の理事会等で十分に議論をされ、大会当日において会場で採択されて決定していくわけです。この中で、安全で質の高い医療を受ける権利があるということを前提にして、17頁の4番目に医師や看護師などの不足の解消、医師などの労働条件の改善といった医療体制の充実のために、十分な予算措置を講じて、安全で質の高い医療を提供するにふさわしい人的・物的な医療提供体制を整備することを求めつつ、医療事故の被害に関しては3番目にありますように、迅速、公正かつ適切に救済するために、無過失補償制度などを整備するということが書いてあります。
その上の所には、医療事故を調査して、事故に至った経緯や原因を明らかにし、当事者に説明するとともに、再発防止や医療の安全に活かすために、医療事故調査制度というものをきちんと整備すると。それぞれの医療機関において院内事故調査がきちんとなされるようにするための施策というものが必要だということと、国が医師などの医療従事者の他、患者の立場を代表する者や法律家などで構成される、公正で中立的な第三者調査機関を設置することを、日弁連の意思として宣言させていただいております。
資料の26頁、27頁をご覧いただきたいと思います。これは「患者主体の医療を目指し安全で質の高い医療の実現を!」ということで、ある意味、政策実現のために国会議員に働きかける資料として、日弁連が作成したものです。冒頭に「患者の権利法の制定を!」ということを書いております。基本的な政策を考えていくときに、患者の権利法というものがその基礎理念、公共政策をつくっていく上での最も大事な基盤を提示するという意味で、私たちは患者の権利法が制定されるべきであると考えております。今年も10月に高松で人権大会を開きます。これが主たるテーマの1つとなってシンポジウムが開催され、人権大会で決議がなされる予定です。
27頁をご覧ください。基本的に安全で質の高い医療を受ける権利というものを、国家は国民に対して補償していく責務があると思います。無過失補償制度というものが左側の車の両輪の1つとして描かれております。医療事故が起きたときに無過失補償制度できちんと被害補償を迅速、公正かつ適切に補償していくことが必要であると同時に、右のほうに医療事故調査制度というものがなければならない。これは両方ともが車の両輪ということで、前回の第1回検討会においても私のほうから、「車の両輪」という言葉を使わせていただきました。こういう医療事故調査制度があり、再発防止をするためにどういうことが事故の原因や背景にあったのか真実を明らかにして、再発防止策、過ちから学ぶとか教訓を引き出すとか、いろいろなことが可能になってくるという意味で、事故というものをきちんと受けとめて分析し、質の向上、安全で質の高い医療を受ける権利に貢献していくという制度設計が、誠に大切だということを考えるわけです。
先ほど来、事故の件数ということが、労災事故の報告あるいは交通事故の報告でありましたけれども、医療事故の件数というのが一体具体的に何件起きているのか。例えば、我が国では医療事故で何人の人が亡くなっているのかという把握は、当然さまざまな政策を立てていく上で、基礎的な数値として必要になってくるだろうと考えます。しかし残念なことに、そういう事故の件数をきちんと把握する部署がこれまでありませんでした。その事故というものをきちんと把握する、どこでどのようなことが起きているかというのを、まず網羅的に把握するということが、いろいろな安全対策等を策定していく上において、基本中の基本になるだろうと考えます。そういう意味では事故の報告制度といったものがより充実したと言いましょうか、内実のあるものとして制度上、確立していく必要があるだろうと考えております。
あと、先ほど椎名構成員から外国のことに関連してご質問があったことに、少し加えさせていただきます。私は随分前ですけれども、ニュージーランドにこのシステムを勉強するために出向いたことがあります。当時、ACCという機関に行き、その中心的な担当者からお話を伺いました。「ACC」という文字が、たぶんこの文献関連を調べると出てくると思います。Accident Compensation Cooperationの頭文字だったかと思います。
どうしてこういう制度をつくったのかというお話をしたときに、国の責務として国民の安全を守るためだと。例えば子どもさんが危険な頑具で遊んでいてけがをしたら、この無過失補償制度があることによって、その事実が国家にすぐに伝わる。そのことによって同じような被害を防ぐことができるというお話を聞いたことが、とても印象的でした。つまり、1つの事例を見てその原因や背景を調べることによって、危険な頑具を子どもたちから切り離す、市場から回収するということが、こういうシステムの中でできるという説明をされていたことが印象的だったことを付け加えて、私のプレゼンを終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
○里見座長 ありがとうございました。続きまして高杉先生、お願いいたします。
○高杉構成員 日本医師会の高杉です。資料7に揃えてあります。医療事故に対応する議論というのは、医師法21条の改正の問題も含めて、患者団体、法曹界、政界、マスコミも包含した大きな社会的な問題として、「医療安全調査委員会の設置法案(仮称)大綱案」にまとめられて、大変なエネルギーが投入されたにもかかわらず、政権交代ということでストップしてしまいました。日本医師会はこの議論を不毛に終わらせずに、未来につなげるものとして答申をまとめました。最初の頁に、答申の委員会の名簿が載っております。寺岡委員長から始まって、山口徹先生までおられます。この委員会は、大綱案を議論した医師会のメンバーまで含まれています。今回、いままでの議論を不毛にすることなく、未来につなげるものとして、あえて新しい展開を考えようということで旧メンバーと新メンバーを加え議論をして答申にまとめました。
2頁をご覧ください。医療事故の真の原因究明と再発防止に努めていくためには、我々医療界がきちんと医師の職業規範あるいは自己規律、社会的責務において、当然のことながら原因を究明し、再発を防止する制度を自立的に構築・運営することが大切です。医療事故は刑事司法の問題としない、やむを得ず刑事司法になっている今の実情を何とか変えていきたいと、私たちは思っています。当然、第三者性が担保され、社会から受け入れられる制度でなくてはならない。
4番目に、治療を受ける人が行動する道を閉ざすのではなく、医療者と受療者の信頼関係が構築されるようなものにしたいし、いい医療環境に繋がるようなことを目標としております。したがって先ほど飯田先生がご発表された内容と、大きく変わるところはございません。医療はこれからも頑張るし、これまでも頑張ってきました。ただ、ご不満に思われている国民全体の医療不信を、何とか建設的に変えていきたいと思っております。
3頁をご覧ください。その基本的な考え方として、医療にはどうしても不確実性が残ります。絶対に安全ということはありません。しかしながら、安心して医療を受けられる社会をつくるのは我々の努めですし、プロフェッショナル・オートノミーによる自浄作用の観点から構築するということを、大きな柱にしております。そのいちばんの元になるのは、やはり院内での「医療事故調査」と、さらに医療界、医学界が一体となって組織運営する「第三者的機関」を設立し、これで我々の目的を果たすということを謳っております。すべての医療機関に院内事故調査委員会を設置する。それも迅速に、真実を隠すことなくというのが大切なポイントであり、常時、医療の安全を文化にするような考え方で安全を進めていくことが、いちばんの基本になろうと思います。これは第1段階(first stage)と称しています。毎日毎日起こるいろいろなトラブルを、きちんきちんと解決していっても、なお抜けるエラーを防いでいくことが大切だろうということが基本的考え方です。
第2段階としては院内の委員、院外の外部委員を混ぜたセカンドステージの院内事故調査委員会です。ここでは病理解剖もAiも取り入れた分析を踏まえて、委員長に報告する。委員長は再発防止策を含め、再教育に努め、医療の質の向上に努める。これは先ほど飯田先生がおっしゃったこととほぼ一緒です。システムのエラーを個人の責任には問わない、医療関連死を警察に届けない、我々がきちんと調査をして答えるとしています。小規模診療所においても医療安全を徹底し、もしこういう事態に至れば、地区医師会あるいは大学、県医師会が応援体制をつくって、一定の基準を持つ院内事故調査委員会をきちんと構築していくということです。
5頁の3番、医療界、医学界が一体的に組織・運営する「第三者的機関」による医療事故調査を行う。これは、いわゆる院内事故調査委員会のセカンドステージが機能限界のときに登場するもので、国の組織として立ち上げたいと思っております。もちろんAiあるいは解剖は自院の目でなく、他の人の目を入れ、公平・公正なものにしていくということです。
4番目として、医師法21条の改正を行う。医療行為に関連した死亡は警察には届けない。入口では応召義務で刑事に問われ、出口ではその結果で刑事に問われる、これでは医療を安心して提供できません。その辺をきちんと整理していきたいということです。もちろん患者さんの悩みには、事故調査委員会でも真剣に答えるわけですが、それ以外にも患者さんが相談する場所を設ける。当然、ADRも視野に入れます。現実には茨城県医師会の中立的なADRの取組みが、非常に注目されております。日本医師会がやっている医師賠償責任問題も成果をあげています。では無責のときはどうなのか。この人たちを救う道も探していきたいと思っております。
この委員会は、無過失医療補償制度をつくるための検討会という名を打っておりますが、そこに至るには相当大きなハードルがいくつもあるだろうと考えます。医師会の答申として患者救済制度を創るということを、希望としてここに掲げてあります。医療側が厳しい自律体制を明示しながら、未来へ向けた新しい事故調査制度をつくっていかなければ、無過失補償制度にも救済制度にもつながらないと考えております。これはまだ荒削りではありますけれども、皆さんの意見を聞きながら、さらに精度の高いものに提言をまとめていきたいと思っております。
先般、7月23日に大きな医療刑事事件問題、“無過失事件学ぶ”というシンポジウムを開催しました。大きな反響をを呼びましたが、結果としては無罪になりましたが、この刑事司法の手段は決して医療安全の充実にはつながらないことを証明いたしました。又さらに9月23日には、Aiに関するシンポジウムも行いました。いろいろな手段で事故究明に向かいながら、わかりやすい説明で納得と同意のできる医療を繰り広げていきたいという思いで、この答申書をまとめました。以上で説明を終わりとします。
○里見座長 ありがとうございました。お三方の説明に対しては、いろいろご質問等があると思います。どうぞ、ホットな議論をお願いいたします。
高杉先生もおっしゃったように、高杉先生と飯田先生は基本的な考え方がかなり似ているということでした。加藤先生は若干違うのかもしれません。ただ、加藤先生のお示しになった27頁の図を見ておりますと、無過失補償制度と医療事故調査制度というものが両輪であると。この医療事故調査に関しては院内事故調査委員会というものを設立して、その上に第三者の委員会をつくると。これは中身の構成とか、そういうものに関してはたぶん異論があろうかと思いますけれども、基本的な骨格としては、高杉先生が提案されたこととほぼ同じだと理解してよろしいですか。
○加藤構成員 医療事故調査制度の中の院内事故調査制度に関しては、日弁連の人権シンポジウムなどでも、いろいろと検討して、日弁連としてのガイドラインを一応示させていただいております。その中に外部委員をきちんと入れ、公正を期するということなどが入っております。日医のほうがどこまで、どのような仕組みで院内事故調査を進めていくのかという辺りは、また聞かせていただきたいと思っております。第三者機関に関しては、厚労省のほうで検討会がもたれ、医療安全調査委員会構想というものがあります。そこで相当の時間をかけてディスカッションしてきたわけですので、その成果と言いましょうか、その到達点というものを大切にして進んでいただければと、私自身は思っております。
○高杉構成員 現在もモデル事業が進行中です。そのモデル事業にケチを付けるわけではないのですけれども、スピードがあまりにも遅いですし、あまりにもハードルが高い。その辺でもっといい仕組みが必要と考えます。答申書でこれはファーストステージ、セカンドステージと分けてありますが、第三者性が要るようなときには、セカンドステージの院内事故調査委員会を、もうすでに特定機能病院などはやられていると思いますが、それをある程度のレベルまで下げてでもやりたい。その辺の仕組みが、これからの検討課題だろうと考えます。中小病院あるいは診療所レベルでも、起こるときには起こるこの場合は県医師会、地区医師会、あるいは大学、基幹病院が応援してつくるということを考えていきたいと思います。
○飯田構成員 現在、厚生科研費で医療事故発生後の院内調査のあり方に関する研究というのをやっております。ちょうど今、全日病の会員病院全部と、全日病とは別に、全国の病院を2,000ぐらい選んで調査し集計しております。その中で院内事故調査委員会をどうやって運営しているかを調査しております。その中の、いくつかの病院にヒアリングに行く予定です。固有名詞は出さないという条件でやりますので、かなり面白いデータが出るだろうと考えています。それを参考にすれば小さな病院でもできるようにと考えています大きな病院はできるのですが、民間の小さな病院では自力ではできません。医師会でもいいので、病院団体がそれをどう支援できるかということも含めて、これから検討しようと思っています。
○里見座長 モデル事業で医療事故の調査というものが入って、全国組織でやって、たぶん150件を超えた数が俎上に乗っていると思います。確かにいい制度だとは思いますけれども、やはり高杉先生がおっしゃったように、どうしても時間がかかって、今後全国展開をしたときに全部を中央で処理するというのは、なかなか難しい点があろうかという印象は私も持っております。その意味でもっと迅速に、なおかつ簡便にやって、しかも当事者である院内で原因を究明するという文化をつくる意味でも、こういう制度に変わっていくことが、これからは必要かと思っております。ただ、小さな病院ではなかなか大変ですので、そこには医師会や学会等の関与が当然あって然るべきです。医師会の提案に関しても、かなり前向きに捉えられる雰囲気はあるような気がいたします。三名の先生方以外からもどうぞ。
○宮澤構成員 いままでのお話というのは、再発防止と原因究明のほうに行っているわけです。本体の無過失補償のほうに、少し話を戻したいのです。無過失補償の問題になると、加藤先生からも少しお話がありましたように、医療事故の死亡者数というのは以前、国立保健医療科学院で交通事故の3倍ぐらいということでした。当時、交通事故が大体8,000人死亡で、ほぼ3倍ぐらいではないかと。これは過失・無過失を問わずということで発表されていて実数はわからないので、この実数をこれから調査していくことができればいいかなと思っています。それと、医療事故の件数そのものをどのようにして把握していくか。これは日本医師会や医療団体のほうで事故扱いにしているものがどの程度あるのか、医療機能評価機構のほうに届けられている事故とか、そういう実数を確認していく必要があるのではないかと。
また、補償の点に関しては保険会社に医療事故として届けられて、どの程度の保険給付で総額、年間どのぐらいかかっているのかという実際的な数字を確認していくというのは、これから制度を設計していく上では、非常に重要なことになるかと思います。この実数がどの程度出てくるのかというのは、これからの調査の内容等によるかと思いますけれども、その具体的な内容を確認していくというのが、今後必要なことではないかと思います。
○里見座長 この辺については、どなたかお答えできますか。実数の把握などは実際にされているのですか。
○椎名構成員 その辺は行政の仕事ではないかと思います。行政がきちんと現段階で集められる限りの情報を集めて、こういった所に是非提示していただきたいと思います。
○医療安全推進室長 関連する部分で統計のあるものについては、次回以降、ご提供するように努めたいと思います。不明な点もございますので、そこはご承知いただきたいと思います。そういった中で私どもも努力していきたいと思います。
○里見座長 たぶん「医療事故」という名称で、では、どういうものを「事故」と言うのだという話から入らないと、医療側と別な側では見解が違っていると。大きくこれも全部入れてしまえというものと、いやいや、事故という定義ではこうだというような違いは、結構出てくると思います。その辺も含めて次回以降に提示いただければと思います。是非準備をお願いいたします。ほかにどなたかありませんか。
○豊田構成員 話を戻してしまうのですが、高杉構成員と飯田構成員としては、無過失補償制度は原因究明と再発防止を切り離してやることがいいと思われている。それで切り離したときに、原因究明は院内で事故調査をするというのを主に進めていくことが理想だというお考えということでよろしいでしょうか。
○飯田構成員 私が申し上げているのは、無過失補償制度のあり方にはいろいろ問題があるので、私は産科医療補償制度でもいろいろ議論したのです。無過失補償制度自体は素晴らしい仕組みだし、必要ですが、そこで出た結果を責任追及に使えるようになっているので、それが問題だと言っているのです。そうすると、原因究明も抑制されてしまうし、再発防止もできなくなる。だから責任追及には使わないということが前提です。責任追及の仕組みは、別につくった方がいいのです。
私どもは安全調査委員会と事故調査委員会というように分けて、事故調査委員会のほうは届出義務を課すと、基本的人権の問題がありますからできませんけれども、責任追及も罰則もあって構わないと思うのです。安全調査委員会のほうで罰則まで持っていくと、ちゃんとした報告制度は機能しません。処罰しないということで職員に「正直に書け」と言って、かなり詳細に書かせますから。それを処罰に使うとなったら書きませんから、結果として原因究明ができなります。明らかな故意や重大な過失に関しては、報告されなくてもある程度わかりますから、それはもう当然届出義務があるだろうし、院内でも処罰します。
それから、事故調査に関しては院内でできるものは院内でやりますけれども、それで問題があるとすれば絵に描いたように、別の所へ届け出てそこで議論しようということです。その中では団体として、あるいは組織としてペナルティーと言うと言いすぎですけれども、教育など、いろいろな制限をかける仕組みをつくってはどうかということを提案しているわけです。
○豊田構成員 この図でいくと、悪質と思われるものはそうだと思うのですけれども、悪質とは言えないのではないかというものがほとんどだと思うのです。
○飯田構成員 それに関しては、いま提示したようにいろいろな手法を私たちは知っていますから、それをきちんと使って原因をちゃんと追及しようと。個人を責めないとは約束できません。明らかな重過失や故意は駄目ですけれども、そうでないものに関しては処罰はしないことが原則です。組織の直接の要因としては、ヒューマンエラーがほとんどです。それは環境とか仕組みとか、いろいろなことがありますので、まずは元を正しましょうということが趣旨なのです。
○豊田構成員 院内からということですか。
○飯田構成員 院内としても組織としてもです。ですから私たちは、病院団体としても教育研修もやっていますし、いろいろなことをやっているわけです。それから、院内事故調査委員会のつくり方とか指導とか、いろいろなこともこれからつくっていこうと思っているわけです。
○高杉構成員 あえて触れていませんけれども、では過失か無過失かということで分けられるのかということになります。そのときに罪を問うのか問わないのか。いままでは仕方なしに訴訟という手段に走らざるを得なかった医療の結果を、そうではない解決の仕方があるのではないかと考えたい。それは「無過失補償制度」という名前ではなく、私は逆に言ったら「補償制度」か、「救済制度」だと、いろいろな解決の仕方があるだろうと思います。その辺は事故調査委員会できちんと認めて、患者さんと話し合った上での解決方法がいろいろと出てくると思います。それを罪咎に問うのではなく、話合いの中で解決できたり、ADRが登場することもあるでしょう、又、あるいは、きちんと説明をしたら納得されたという場合もあるでしょう。これはいろいろなケースケースがあると思います。一挙に「無過失補償制度」と言うと、片一方で安全につながらないような、飯田先生のおっしゃったような、防止につながらない恐れも、私自身もその感覚は持っております。
○宮澤構成員 少し法的責任の問題に話がきているかと思うのです。法的責任という場合、当然のことながら刑事責任もありますし、民事責任もありますし、行政上の責任もあります。医療事故に関しては、どういう形で責任を問うのが適切なのかということを考えなければいけないと思います。刑事責任というのは基本的に刑罰を課されて、場合によっては刑務所に行くことになるわけですけれども、医療事故に関しては、そういう刑罰によって抑制できるのかということになります。実は、刑罰によって抑制できるというのは、悪いことをしているという意識があるというのが前提になるので、それは刑務所に行くからやめようということになるのですが、医療事故の場合、多くが過失です。どういう形での過失なのか。本人のヒューマンエラーもあるかもしれませんし、システム上のエラーもあるかもしれない。そういうことを考えると、刑事上の責任という形でやるのが適切なのかというのは、今後の問題になってくるのではないかと思います。
特に民事上の責任という形での損害賠償と、無過失の補償という形で、経済的・精神的な補償がなされる部分、そういう形でいいのではないか、あるいは医師法の中で、医道審議会の中で医師の資格の停止・剥奪ということもありますので、そういう形で対応していく。医療事故をどういう形で対応していくのが最も適切なのかということを考えるのが、この段階かと思います。
例えば、民事法でいきますと失火責任法というのがあります。失火責任法というのは、故意と重過失が損害賠償の対象になって、軽過失は基本的に損害賠償の対象にはならないという法律なのです。それを政策的な目的でどのようにしたらいいのか。例えば失火責任法ですと、日本には木造家屋が多くて、出火の場合は本人もほとんど財産を失っているということもあって、軽過失の場合、全部責任を負わせるというのは適切ではないのではないかという立法政策的な考慮の下に、そういう判断が行われている。
医療事故の場合も立法的な判断の中で、医療事故を防止していくにはどのような形の刑罰をもって臨むのがいちばん適正なのかということを、これから考えていくべきではないかと。被害者補償という制度の中で、一方で被害者、医療の患者さん側の補償を考えていくとともに、事故のリピーター等もあるかと思いますけれども、医療というのはどのようにしたら再発が防止できるのか、防止していくのか、どのような形で行うのが最も適しているのかということを、これから議論していく。おそらく飯田先生のお話も、そこら辺の観点からのお話だと私は理解しています。
○里見座長 第1回の会議で私も少し危惧を感じていたのは、この両方が走っていくと、議論が行ったり来たりするだろうなと思ったことです。今日も無過失補償制度の話をやってみたり、医療事故調査の話になったりと、かなり混乱した意見になりました。この中で議論を闘わせて、特に医療事故調査の関連で前回の大綱案等が出たときに、医療界を大きく2つに分けたのは、結果を刑事罰に問うか問わないかということが大きな議論になったと思います。いまお聞きしますと、刑事罰に問う話というのは必要ないのではないかと言いますか。別の処罰をどういうようにするかはわかりませんけれども、医療というのは刑事罰にはそぐわないのではないかという意見が、今ここら辺では大きくなりつつあるのではないかという気がいたします。その辺は加藤先生、何かご意見はありますか。
○加藤構成員 いろいろな医療事故を見てきた場合に、非常に問題のあるケースもあるし、悪質なものもある。その後の対応も悪いと。しかし何が何でも一切刑事免責だということには、たぶん国民は賛同しないだろうと私は思っております。問題は、どういうように住分けをするかです。相当な時間を費やし、警察庁やいろいろな所とも協議をしながら作っていったのが、大綱案だろうと思います。そういうときの議論、あるいは民事の損害賠償をどうするかという問題についても、宮澤構成員等が参加された産科無過失補償の制度を議論する中で、相当ディスカッションされているはずです。そういうものの成果はきちんと踏まえて、その上に立ってこの検討会を進めていただければと私は希望します。
○里見座長 ほかにご意見はありますか。
○大臣官房審議官 この問題についてはだいぶ長く、特に専門家の皆様の間でご議論が進んできたのですけれども、先ほど外国のデータもご覧いただいたように、それぞれの国の医療制度やシステムというのはオリジナルですので、やはり日本に合った仕組みをつくっていただくことが重要だと思うのです。特に日本の場合はフリーアクセスで、どんな医療機関でも行っていいという仕組みです。イギリスなどに、そんな仕組みはないわけです。普通はGPで見てもらって、半年くらい待っていると、それでどの病院にかかるということが自ずから決まってしまうわけです。
それから、別に病院・診療所の肩を持つわけではありませんけれども、日本の診療所はかなり重装備です。行ってCTを撮ってくれる診療所など、世界中ほとんどないわけです。ただ、そういう医療はある面でお金がかかっていて、非効率だという意見もあります。日本の医療にはそういう特徴があると。また、病院も民間の病院というのが非常に多く、世界で最も多いと言われているというのがシステムにあります。そういう背景の中でご議論いただいて、日本の医療のよい面を国民の皆さんに理解してもらいながら、ご議論していただければいいのではないかと。
○里見座長 あっという間に時間が過ぎてしまいました。第2回もまた勉強会ということでした。その他ということで、事務局から何かありますか。
○医療安全推進室長 今後の進め方にかかわる部分です。構成員の皆様で、この検討会でご紹介したい資料などがございましたら、ご紹介いただきたいと思っております。こちらは10月7日までに私どもにお知らせいただければ、次回に紹介させていただきたいと思います。また、この場でご意見を伺ったほうがいいような団体や有識者がございましたら、同じように10月7日までにご推薦いただければ、検討させていただきたいと思っております。
○高杉構成員 日程が非常に間際になって催促されワイワイと忙しいので、少し余裕を持った日程の組み方はできないでしょうか。やはり欠席の先生は少ないほうがいいですし、参加しやすい決定をお願いいたします。
○医療安全推進室長 大変申し訳ございません。日程については構成員の皆様方も、大変お忙しい中決めさせていただいておりまして、なるべく早くお知らせしたいと思っておりますが、ご不便をおかけしております。次回の日程ですけれども、10月24日の月曜日、10時からさせていただきたく、お願いしたいと思います。
○里見座長 第3回までは決まっており、10月の議論になります。確かにかなりタイトなスケジュールになっています。私もなかなか大変だなと思っております。第3回はもう1回構成員の中から、もしくは推薦をして、どこのこういう方のお話を聞いたほうが、皆さんの知識も含めて共通の認識になるだろうということがありましたら、事務局のほうにお願いします。
○飯田構成員 今日ご紹介いたしました池内宏様を推薦します。
○里見座長 航空機事故の過失理論。それ以外の方でもありましたら、どうぞ事務局にお申し出いただきたいと思います。進んでいるのか下がっているのかよくわかりませんけれども、また次回以降も是非、活発なご討議をお願いしたいと思います。それでは、どうもありがとうございました。
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