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2011年9月15日 第10回今後のパートタイム労働対策に関する研究会 議事録

雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課

○日時

平成23年9月15日(木)16時00分~17時30分


○場所

厚生労働省専用第21会議室


○出席者

委員

浅倉委員、今野委員、権丈委員、佐藤委員、水町委員、山川委員

厚生労働省

小宮山副大臣、藤田政務官、高井雇用均等・児童家庭局長、石井雇用均等・児童家庭局審議官、伊藤総務課長、吉本雇用均等政策課長、
吉永短時間・在宅労働課長、大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長、藤原短時間・在宅労働課長補佐

○議題

(1)報告書(案)について
(2)その他

○議事

○今野座長 それでは、時間ですので、「第10回今後のパートタイム労働対策に関する研究会」を開催いたします。本日は、黒澤委員がご欠席です。また、藤田厚生労働大臣政務官がご出席ですので、最初にご挨拶をいただいてから議論をしたいと思います。よろしくお願いします。
○藤田政務官 会議の冒頭に失礼いたします。このたび、大臣政務官を務めさせていただくことになりました衆議院の藤田一枝でございます。小宮山大臣とは、かねてから男女共同参画の推進に向けた取組みについて、一緒にいろいろと活動をさせていただいてまいりました。また、先日まで党の「働き方改革ワーキングチーム」の主査も務めさせていただいておりまして、ワーク・ライフ・バランスの実現や均等待遇の実現に向けた議論も重ねてきたところです。これからも、先生方には是非ともご指導を賜りますようにお願いを申し上げたいと思います。
 改めまして、本日は第10回の研究会にお忙しい中ご出席をいただきまして、誠にありがとうございました。いよいよ最終段階と伺っておりますが、これまで9回にわたってさまざまな角度から熱心なご議論を重ねていただきましたことに、心から感謝を申し上げます。非正規雇用の増大という中で、雇用形態の違いによる格差が大変顕著になってきておりますし、一方ではパート労働者に対する社会保険の適用拡大の検討も進んできています。そういう意味では大変難しい局面ですが、是非ともパート労働が働く者にとっても、また企業の側にとっても有益な制度となりますように、皆様方のご意見の取りまとめを是非ともよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
○今野座長 ありがとうございました。今日は小宮山大臣があとからいらっしゃいますので、お知らせをしておきます。
 それでは、議題に入ります。報告書(案)について事務局から説明をしていただいて、議論をしたいと思います。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 資料1-1として、修正の溶け込んだ概要と、修正を赤で入れたものがあるかと思います。また、資料1-2ということで報告書本体、修正をすべて溶け込ませた黒いものと、修正を赤で入れたものがあるかと思います。資料1-2(修正入り)と書かれている資料でご説明します。
 これは前回(7月29日)事務局より報告書の案をご提出し、先生方からご意見を頂戴しました。ご意見と、その後に追加的にいただいたご意見を踏まえて修正したものです。修正部分は赤字としています。全体について改めて簡単にご説明しつつ、その中で前回からの修正、赤字部分についても併せてご説明したいと思います。
 資料1-2(修正入り)をご覧ください。1枚めくると、「目次」ですが、全体の構成については第1「総論」のところで現状、基本的考え方、課題、留意点として、第2のところで論点ごとの「今後のパートタイム労働対策」とするということで、この構成については特に変更はありません。第1「総論」の2の「検討にあたっての基本的な考え方」のところで、1つパラグラフを追加している部分がありますが、これは後ほど改めてご説明します。
 1頁です。「はじめに」ですが、これまでの研究会の開催までの経緯などです。平成5年にパート法が制定され、平成19年に改正され、平成20年4月1日から施行されていると。この平成19年の改正の際に、施行3年を経過した場合に見直しを検討するという規定があること、「新成長戦略」、これは昨年6月18日に閣議決定されておりますが、その中でも2011年度に実施すべき事項として、パートタイム労働法の施行状況を踏まえた見直しの検討があります。
 また、前回のご意見を踏まえて、第3次男女共同参画基本計画、これは昨年12月の閣議決定ですが、ここにもパートについての記述があるということで、今回引用しております。これらを踏まえて、2月より研究会を開催してきており、今日が10回目ということです。
 2頁です。委員のご意見を踏まえ、2つ目のパラグラフですが、パートタイム労働者の働き・貢献に見合った待遇を確保することが、社会の公正という観点から重要であるということで、「社会の公正」という点を入れてほしいとのご意見を踏まえて記述しております。併せて、短時間労働がワーク・ライフ・バランスを実現しやすい働き方であるという点も書いております。こういったことを踏まえて、パートタイム労働者が均等な待遇を得て、高い意欲を持ち続け、その能力を有効に発揮することは高い経営パフォーマンスの確保、ひいては日本経済の持続的発展にとって重要であるとの先生方からの意見を踏まえ、文言を精査しております。
 なお書きのところは、有期労働契約に係る施策の方向性についての検討ですが、ここは8月に労働条件分科会で「議論の中間的な整理」が公表されたということで、時点修正をしている部分です。
 3頁の第1「総論」です。総論1「パートタイム労働をめぐる現状」ですが、ここはご指摘を踏まえ、非正規の現状については削除して、ポイントを絞ってパートタイム労働の現状から書き始めるという形にしております。(1)「パートタイム労働の現状」ということでパートタイム労働者数の推移、これはご承知のとおり、パートタイム労働者が趨勢として増加しているということです。ここもご指摘を踏まえ、パートタイム労働者に占める男女のそれぞれの比率を追加しております。これが3頁のいちばん下の赤字となっております。
 4頁です。この辺りは、パートタイム労働の現状として、パートタイム労働者の分布、いちばん上の○のパラグラフでは業種別の分布、規模別の分布、2つ目の○では年齢別の分布などを書いております。2つ目の○のいちばん下ですが、パートタイム労働者の勤続年数です。平均勤続年数が男性について延びていると書いておりますが、ご指摘を踏まえ、また、勤続年数の分布ですが、5年以上のパートタイム労働者の割合が2010年には男性が24.5%、女性が39.2%ということも追加しております。
 5頁です。パートタイム労働者の賃金の記述ですが、賃金のパラグラフのいちばん最後の一般労働者とパートタイム労働者の賃金の格差の推移の書きぶりで、2002年以降、格差が「改善」と書いておりましたが、より客観的な記述ということで、「縮小」と修正しております。次に、「パートタイム労働者の組織率」ですが、この辺りは文言の修正などをしております。
 6頁です。(2)「パートタイム労働法の施行状況」です。(独)労働政策研究・研修機構が「短時間労働者実態調査」を昨年実施しました。改正パートタイム労働法の施行後2年間の状況を調査した結果です。簡単におさらいをしますと、改正パートタイム労働法の施行に伴う雇用管理等の見直しの状況ですが、改正パートタイム労働法の施行に伴って、6割以上の事業所が雇用管理等の見直しを「実施した」と回答しています。第6条「労働条件の文書交付」ですが、短時間労働者の雇入れ時に労働条件を明示している事業所は97.3%、書面等を交付しているものがそのうち89.5%と、かなりの実施率になっていると思います。
 7頁です。第8条関連で、文言の整理をしておりますが、短時間労働者の人数が最も多い職種に就いている短時間労働者のうち、正社員と職務がほとんど同じ短時間労働者がいる事業所は24.4%となっております。一方で、下から2つ目の○ですが、短時間労働者本人の調査で、「職務が同じ正社員がいる」と回答したパートタイム労働者は15.9%、「責任の重さは違うが、同じ業務の正社員がいる」と回答したパートタイム労働者は38.9%となっております。それを合計すると55%近くになりますが、それらの短時間労働者のうち、正社員と比較した自らの賃金水準について、半分以上の方が「正社員より賃金水準は低いが、納得している」とする一方で、28.1%の方が「正社員より賃金水準は低く、納得していない」という回答もありました。
 8頁です。最初の○ですが、この調査においてパートタイム労働法第8条の3要件、「職務が同じ」「人材活用が同じ」「無期契約労働である」に該当する短時間労働者を調査しましたが、これについては短時間労働者総数に占める割合が0.1%ということです。
 また、第9条関係、いわゆる均衡待遇です。1つ目の○ですが、短時間労働者の賃金を決定する際の考慮要素としては、「能力、経験」「職務の内容」が「地域での賃金相場」を上回っているというパート法の効果も見えるのではないかと思います。2つ目の○手当及び各種制度の実施状況ですが、通勤手当等は正社員、短時間労働者ともに実施している割合が高い。正社員のみに実施している制度としては、退職金、役職手当、家族手当、住宅手当などとなっており、住宅手当をご指摘を踏まえて追加しております。また、定期的な昇給、人事評価・考課についての実施状況も、ご指摘を踏まえてここに新たに追加しております。
 9頁です。第10条の関係で教育訓練ですが、これは実態調査の結果、パートタイム労働者が従事する職務に必要な導入訓練は一定程度実施されている一方で、「キャリアアップのための教育訓練」は、正社員の6割に対して、パートタイムはまだ17.6%にとどまっている状況です。
 第12条、正社員への転換推進措置です。「実施している」事業所は48.6%にとどまっているということです。
 10頁です。第13条、説明義務の関係です。第13条では、パートタイム労働者が説明を求めた場合に、事業主が説明しなければならないということになっておりますが、1つ目の○で、改正パートタイム労働法の施行後2年間に、短時間労働者から待遇に係る説明を「求められたことがある」事業所は22.3%にとどまっているということです。また、次の○ですが、現在の会社や仕事に対する不満・不安について、37.6%の短時間労働者が「ない」としている一方で、59%の短時間労働者が「ある」としているということです。その内容については、多い順に「賃金が安い」「雇用が不安定」「正社員になれない」などとなっております。その他事業所調査ですが、短時間労働者を雇用している理由は、多い順に「人件費が割安なため(労務コストの効率化)」「簡単な仕事内容のため」「1日の忙しい時間帯に対処するため」などが続いております。
 11頁です。個人調査ですが、2つ目の○短時間労働者を選択した理由としては、「自分の都合の良い時間(日)に働きたいから」「勤務時間・日数が短いから」「家庭の事情(育児・介護等)で正社員として働けないから」「就業調整(年収や労働時間の調整)ができるから」という順番になっております。次の○今後の働き方として、「短時間労働者を続けたい」が約7割、「正社員になりたい」は2割弱です。1つ○を飛ばして、短時間労働者のうち「就業調整をしている」割合は25%でした。
 都道府県労働局雇用均等室による指導状況ですが、相談件数については、いちばん上の○にありますように、平成22年度の相談件数は6,307件、事業主からの相談が4割を超えて、パートタイム労働者からの相談が約4割弱ということです。
 均等室における指導状況ですが、12~13頁に記述しているとおりの数値となっております。是正指導の内容としては、13頁の上から2つ目の○ですが、「通常の労働者への転換」「労働条件の文書交付等」に関するものが多くなっております。紛争解決援助ですが、平成20年から平成22年度の紛争解決援助の申立件数は3年間で14件にとどまっております。調停は平成20年度に3件あって、これがすべてになっております。
 14頁です。(3)諸外国のパートタイム労働法制ですが、1997年、EUのパートタイム労働指令についてご紹介しました。この指令の中の待遇に関する規定としては、「雇用条件に関して、パートタイム労働者は、パートタイムで労働するというだけの理由では、客観的な根拠によって正当化されない限り、比較可能なフルタイム労働者よりも不利な取扱いを受けないものとする」となっております。
 15頁です。パートタイム労働とフルタイム労働との間の転換についても、EU指令の中には規定が含まれております。
 16~17頁ですが、EU指令の国内法化ということで、各国でパートタイム労働法制を制定しています。18頁までが諸外国の状況です。
 19頁です。「検討に当たっての基本的考え方」ということで、ここは先生方のご指摘を踏まえ、(1)として、パートタイム労働者の公正な待遇の確保というパラグラフを追加しました。ここでは、1で見たとおり、雇用者総数に占めるパートタイム労働者の割合は4分の1に達している、また、質的にも基幹的役割を担うパートタイム労働者も存在しているということで、日本経済を支える労働力としてパートタイム労働者は引き続き重要である。一方で、パートタイム労働者の待遇については、年齢や勤続年数にかかわらず賃金はほとんど変わらない、また、手当や教育訓練の実施率についても、依然として格差があるということです。
 さらに、こういうことから、ここでは「仕事」を「待遇」に修正し、文言を精査しておりますが、待遇に対して不満・不安を持つパートタイム労働者も相当程度存在している。こういった待遇の格差については、職務、働き方、待遇の決定方法が異なることが1つの理由と考えられるとしております。「即ち」のところで少し詳しく書いておりますが、このような日本の雇用システムの特徴を踏まえながらも、パートタイム労働者についても働き・貢献に見合った公正な待遇を実現するため、平成20年4月からすでに施行されたパートタイム労働法では、通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者について差別的取扱いを禁止するとともに、その他のパートタイム労働者については、通常の労働者とも均衡の取れた待遇確保に努めるよう事業主に求めているということで、現行のパートタイム労働法の趣旨を改めて書いております。
 しかし、通常の労働者とパートタイム労働者の間に、依然として待遇の格差が存在する。そういう中で、パートタイム労働者も含めて労働者の働き・貢献に見合った公正な待遇をより一層確保していくことは、社会の公正という観点から極めて重要であるという基本的考え方、「社会の公正という観点」を追加しております。
 (2)「パートタイム労働者が能力を発揮する社会」ですが、これは人口減少社会の中で全員参加型社会の実現に向けて、若者、女性、高齢者等々の就労を希望する者の支援を進めることが重要な課題となっているということで、文言の精査などもしております。一方、短時間労働は、さまざまな事情により就業時間に制約のある者が従事しやすい働き方として、また、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすい働き方として位置づけることができる。したがって、パートタイム労働者が能力を十分に発揮できるような条件を整備しつつ、その積極的な活用をしていくことは、女性や高齢者の就業拡大にもつながることが期待される。その条件整備として、パートタイム労働者の均衡待遇の確保を一層促進していくとともに、均等待遇を目指していくことが必要である。これまでのご意見を踏まえて文言も精査しながら、整理して書いております。
 (3)「パートタイム労働者の多様な就業実態や企業の雇用管理制度を踏まえた対応」です。ここは文言の精査をしつつ、22頁ですが、委員のご指摘を踏まえて、「なお、女性労働者については、いろいろな事情からパートタイム労働しか選択できなかった者も存在している」という記述についても追加をしております。このパラグラフの最後のまとめとしては、パートタイム労働者や通常の労働者それぞれの多様な就業実態、企業の雇用管理も多様であるという実態を踏まえて、きめ細かく対応できる方策を検討する必要があるということを、基本的な考え方の3つ目として挙げております。
 23頁です。3「パートタイム労働の課題」です。(1)のイの「差別的取扱いの禁止」ですが、冒頭の4行には現行の第8条の趣旨を追加しております。また、文言の整理なども少しずつしており、いちばん最後のパラグラフからですが、3要件に該当するパートタイム労働者は、実態調査によると、調査対象パートタイム労働者の0.1%となっていて、今後第8条の雇用管理の改善を進める余地は小さいということで、ここも文言を整理しております。このように3要件を満たすパートタイム労働者が少ないのは、企業において法律を遵守するために職務内容を明確に区分したり、「雇用処遇制度を改善するなど」という文言を追加しておりますが、上記要件に即して差別的取扱い禁止対象となるパートタイム労働者の活用の解消を図っていることもその要因と考えられるということで、文言を適宜補足し、より適正な記述にしております。
 このような現状を踏まえ、日本の雇用慣行のもと、上記3要件がパートタイム労働者の均等待遇の確保を図る手段としての合理性を有しているか、単に企業のネガティブチェックリストとして機能しているのではないか、また、あらゆる待遇につき一律に3要件が不可欠となるのかなどの点を含めて、在り方について検討する必要があるということです。ロの「均衡待遇の確保」、第9条ですが、一層の待遇改善を推進する方策について検討する必要があるということで、以前と同様の書きぶりとしております。
 (2)「待遇に関する納得性の向上」ですが、25頁で、過去2年間実際に説明を求められた事業主が2割程度ということもありますので、納得性を一層向上させる方策を検討する必要があるということで、文言の整理をしております。教育訓練も、パートタイム労働者のキャリア形成が不十分ではないかということで、教育訓練とキャリア形成の文言を整理しつつ、前回と同じような形で残しております。
 26頁です。「通常の労働者への転換の推進」ですが、ここもまだ実際に転換推進措置を実施している事業所が約半数にすぎないということもありますので、さらなる推進が必要ということで、文言の精査をしております。また、(5)のイの「事業主に対する報告徴収、勧告等」ですが、さらに法の遵守を求める方策について検討する必要があるということで、前回のものに文言の精査をしております。ロの「紛争解決援助」ですが、先ほど見ましたように、紛争解決援助の利用実績が少なくなっております。この理由としては、26頁のいちばん下の行の「義務規定に係る紛争のみを対象としていること」と、27頁のいちばん上の行の「さらなる周知が必要である」というもう1つの理由も書き加えたところです。このため、パートタイム労働法の実効性をより一層確保するためには、これらの課題を踏まえた紛争解決援助の在り方について検討する必要があるという形で、少し文言を精査しております。
 (6)「その他」税制、社会保険制度等関連制度です。ここは、就業調整を行っているパートタイム労働者が依然としているということですが、就業調整は、パートタイム労働者の職業能力を発揮する機会を阻害するとともに、賃金の上昇が抑制され、パートタイム労働者の待遇改善をも阻害しているのではないかという課題があるということで、文言の精査をしつつ従前の書きぶりを残しております。
 29頁です。4「検討に当たっての留意事項」です。(1)「有期労働契約の在り方の検討との整合性確保」ですが、ここは先ほども申し上げたように、有期の検討について労働条件分科会で8月に議論の中間的な整理が公表されておりますので、その時点修正をしております。
 (2)「比較法の視点に基づく検討」です。これについては、委員のご指摘を踏まえ、アメリカでは契約自由の原則から雇用形態に基づく不利益取扱いは禁止されていないということですが、その背景についても併せて記述をしております。
 30頁です。(3)「社会保障・税一体改革成案」の後ろに、第3次男女共同参画基本計画ということで、はじめにのところでもご説明したパートタイム労働に関する閣議決定として、社会保障・税一体改革成案と併せて、委員のご指摘も踏まえて追加しております。
 (4)「東日本大震災が企業に与える影響」ということで留意事項として挙げましたが、31頁のなお書きで、委員のご指摘を踏まえ、「なお、この点に関し、このような厳しい社会経済情勢だからこそ、パートタイム労働者の意欲と能力を活用することが重要である」との意見があったということを追加しております。
 32頁以降は、第2「今後のパートタイム労働対策」について書いております。第2のところは、考えられる選択肢を幅広く整理したものであることを最初に書いております。論点1の通常の労働者との間の待遇の異同、(1)均等待遇の確保、イの均等待遇の考え方ですが、パートタイム労働者に対する均等待遇を確保するための法的対応ということで、前回日本の法制とEU諸国の法制について書いておりましたが、言葉が少し足らないのではないかというご指摘がありましたので、特に日本ですが、「通常の労働者と同視すべき」パートタイム労働者、即ち3要件に該当する者であるかどうかを厳格にとらえ、同視すべき場合には事業所の人事制度や賃金制度・給付内容の如何にかかわらず、例外なく差別的取扱いを禁止し、通常の労働者との間で同一性の要件を満たす場合に、賃金を含む待遇全般について同一に取り扱わなければならないという方法を取っていると、文言を補っております。
 34頁以降は、第8条の均等待遇に関する今後の在り方です。ロの「今後の在り方」の1つめ、3要件の在り方とパートタイム労働者であることを理由とする合理的な理由のない不利益取扱いの禁止ですが、○は職務の内容が同一という要件のみではないかという意見、「人材活用の仕組み・運用が同一であること」の要件のみでよいのではないかというご意見もあったこと、また、無期労働契約であることの要件については、有期労働契約の在り方に関する議論の状況も読みつつ検討することが必要と考えられるとしております。「さらに」以降のパラグラフですが、その適用範囲を広げていくことを検討すべきであり、事業主はパートタイム労働者であることを理由として、合理的な理由なく不利益な取扱いをしてはならないという法制をとることが適当ではないかとの意見もあったということで、文言の精査をしております。
 35頁ですが、ご指摘を踏まえて少し文言を追加しています。この場合に、合理的な理由は個別の事案で判断されるということで、かえって紛争が増大するのではないかということに加えて、行政指導を行うことが困難な場合も生じるのではないかという前回のご意見を踏まえて追加をしております。「合理的な理由」の考慮要素となり得るものについては、一定の例をガイドラインで示すこととして、行政指導等による履行確保の際に利用するとともに、司法手続で参考とされることを期待するということで、ご意見を踏まえて修正しております。この合理的理由の考慮要素を検討するにあたって、なお書きですが、間接差別を構成する要件との関係に留意する必要があるとの前回のご意見を踏まえて追加しております。
 いちばん下の「また」のところですが、立証責任等についての記述を追加しております。また、通常の労働者との間で「同一性要件」を満たす場合に、同一待遇を求める法制とパートタイム労働であることを理由とする「合理的な理由」のない不利益取扱いを禁止する法制を比較した場合、前者の同一性要件の判断と後者の合理的な理由の判断は一定程度重複すると考えられるということで、前者の要件の一部又は全部の不充足を、給付内容に応じて合理的な理由の根拠と見ることもできるため、両者の法制は連続性を持ち得るとの意見がありました。一方で、同一性要件、合理的な理由の各構成要素の立証責任の分配について、これは前者の法制の下ではパートタイム労働者が訴訟提起した場合には、労働者側が3つの同一性要件を満たす事実を立証して、事業主がこれに対する反証を行うこととなる。一方で、後者の法制でも、給付内容に応じ労働者側が比較可能性の立証を行い、使用者側が合理的な理由の根拠となる事実を立証することとなるということで、立証責任の一部が転換されるにすぎないと考えられるが、いずれにしても立証責任の在り方も整理する必要があるとの意見がありました。さらに職務関連給付と職務関連給付以外の給付ごとに、要件の在り方や時間比例原則を適用するかどうかについて検討する必要があるとのご意見もありましたので、追加しております。
 36頁です。合理的な理由に係る事業主の予測可能性の確保ですが、その際には労使間のコミュニケーションの在り方、行政の関与の在り方、司法手続を踏まえた私法上の効力の設定といったものを十分に議論する必要があるということで、ご意見を踏まえて追記しております。
 2つめ、フルタイム有期契約労働者ですが、37頁に時点修正をした部分があります。真ん中の○のパラグラフですが、いわゆる「フルタイムパート」というのは一般にはあまり使われないということで、削除しております。フルタイム有期契約労働者の有期のところについて、「実質的に期間の定めがないと見られるものを含め」を加えました。
 (2)「均等待遇の対象とならないパートタイム労働者の待遇改善」ですが、37頁は文言の精査をしております。いずれにしても、第9条の規定の実効性を確保しつつ、より一層の待遇改善の実現を進めていくことが課題となっているということです。
 38頁です。この赤字については、基本的には文言の整理です。
 39頁です。ロの「今後の在り方」ですが、基本的に従前の考え方を踏襲しつつ、企業ごとに雇用管理等の取組みが多様であるということで、法律等で一律の基準を設けるというよりは、むしろ自主的にパートタイム労働者の雇用管理の改善を計画的に進めることが重要であるとの意見があった、としております。「ポジティブ・アクション」と書いた部分については、紛れのない一般的な用語として「積極的改善措置」と直しております。
 40頁です。(3)「職務評価」です。イの「職務評価の考え方」については、基本的には文言の精査をしております。
 43頁です。委員のご指摘を踏まえ、「また、職務分析・職務評価の結果に基づき、通常の労働者とパートタイム労働者の待遇を決定している場合には、合理的な理由の有無を判断する際の1つの考慮要素とすることも考えられる」との書きぶりにしております。
 職務評価の今後の在り方ですが、ここも日本の現状を丁寧に説明し、中小規模の企業を含めた事業主に広範に義務づけることは適当ではなくということを、「困難であり」という記述にしております。44頁は、文言をより適正なものに精査した部分です。
 46頁です。2「待遇に関する納得性の向上」ですが、今後の在り方については、従前とほぼ同じです。
 47頁です。今後の納得性の在り方として労使委員会についてのご意見があったことに言及した部分ですが、調査審議というよりは、むしろ協議ではないかというご意見がありましたので、「協議する」と修正しております。
 49頁です、教育訓練の考え方については文言の整理をした部分です。
 50頁です。教育訓練についての今後の在り方ですが、「事業主にインセンティブを与えるような政策的な手法について検討することが必要である」との文言を補っております。2つ目の○ですが、教育訓練については行動計画に定めるということと、2つ目の○で「職業訓練を通して得られた経験・能力を評価しやすい仕組みを普及させる必要がある」としておりますが、さらに51頁で、労働者本人に対する支援と併せて、訓練には外部性が伴うことから、職業訓練を提供する企業への政策的支援も継続させる必要があるということも、委員のご指摘を踏まえて追加しました。
 52頁です。4「通常の労働者への転換の推進」の今後の在り方ですが、53頁の赤字で4行削除したところがあります。ここは短時間正社員制度導入の難しさについての記述ですが、前後の書きぶりと趣旨が重複する部分がありますので削ったということです。
 (2)「勤務地限定」「職種限定」の無期労働契約についてですが、今後も判例の内容等の整理が必要であるとしております。また、55頁の(3)「相互転換」ですが、ここは文言の修正だけをして、まずは両者の間の待遇の格差の是正が必要であるということで、以前のとおりとしております。
 56頁です。パートタイム労働法の実効性の確保ですが、(3)としてその他のところを追記しております。57頁ですが、前回の意見を踏まえ、なお書きでパートタイム労働者に関する紛争については、労働審判制度、都道府県労働委員会による個別労働紛争解決制度で、パートの問題が積極的に取り扱われることを期待すると追加しております。
 58頁です。その他の部分については、文言の整理をしております。以上です。
○今野座長 ありがとうございました。それでは、前回の研究会でいただいた意見と研究会の後に皆さんからいただいた意見を踏まえて、事務局に修正をしていただいて相談しながら、今日は最終段階だろうと思っておりますので、最終段階の案を作っていただきました。最終段階ですので、少し丁寧に説明をしていただきました。
 それでは、皆さんからご意見、ご質問をいただければと思います。いかがでしょうか。
○山川委員 特に何もなければ、単純な語句の修正の問題ですが、見え消し版の54頁、見え消しでないほうは49頁です。ロの「今後の在り方」の2段落目で、「解雇権濫用法理の4要件」とありますが、これは解雇権濫用法理の下位の法理である整理解雇法理の4要件ですので、内容に全く影響のないことですが、ご訂正いただければと思います。
○今野座長 「整理解雇濫用法理」ということですか。
○山川委員 「整理解雇法理」というのが普通かと思います。
○今野座長 もう一度確認しますと、49頁のロの「今後の在り方」の第2段落目の上から3行目で、「解雇権濫用法理」を「整理解雇法理」に変更すると。
○山川委員 はい。
○今野座長 ほかにいかがでしょうか。感想でも結構ですが。
○水町委員 特に修正希望はありませんし、これまでの9回の会議と前回のことも踏まえて、かなり具体的なことも盛り込んでいただきました。私は労働省の時代からパート研みたいなものは3回目で、今回がいちばん前向きな報告書になったのではないかという気がして、感謝しております。現行のパート法は、基本的に型にはまった枠組みというか、ステレオタイプな正社員像とかパートタイム労働者像を前提にしながら、行政が主導してどのように状況を改善できるかということが若干あったのですが、今回はあまりステレオタイプではなくて、もう少しきめ細かく見ながら、労使の意見を反映させながら柔軟に進めていくことが、今回の報告書の大きな方向性としてありました。これがもし具体的に法律改正につながっていって、うまい制度になれば、実態を大きく変えていく制度になるのではないかという点が重要で、そういうことを盛り込んでいただいて大変感謝しております。
 これは感想ですが、特に重要だと思う点が2点と、もう1つやや残念だと思う点と、併せて3点あります。1つは、概要版のほうがわかりやすいのですが、特に今回大きな前進だと思うのは、5頁の(2)の行動計画(アクションプラン)を実際の企業・事業所で作っていただいて、(2)の2段落目にあるように、パートタイム労働者の賃金水準の改善や賃金制度の見直し、教育訓練の実施、転換の推進など、ほとんどパートに関わる課題を事業所の中で話し合って行動計画を進めてくれと。それについては、下の段落にありますように、「雇用促進税制が本年度導入されたことを踏まえ」ということで、税制等も踏まえながら、政府としてしっかりインセンティブを与えて進めていこうという方向性が出されたのは、非常にいいことだと思います。併せて、(3)の職務評価についても、6頁の上から10行目にありますように、「事業主が定めるパートタイム労働者の雇用管理の改善等のための行動計画で、職務評価を具体的な取組のメニューの一つとして位置付けることが考えられる」ということで、いわゆる同一労働・同一賃金とか職務評価が行動計画の中に位置付けられて、職務評価、同一労働・同一賃金を1つの指標として、実態を具体的に変えていくものに位置付けられたことは、重要な前進ではないかというのが1点です。
 2点目は、それを支える基盤ですが、6頁の下から8行目の「集団的労使関係の在り方について考慮する必要があり」というところで、「事業主、通常の労働者及びパートタイム労働者を構成員とし、パートタイム労働者の待遇等について協議する労使委員会を設置することが適当ではないかとの考え方がある」と。これは「考え方がある」となっていて、実際制度化する場合には、どうやって正社員とパートタイム労働者が両方公正に代表されるような制度にするのかという具体的な制度化の技術的な問題は若干残っていますが、こういう労使委員会を作って、各事業所で労使が話し合う場を法的に位置付けようということがここでも明らかにされていて、報告書でここまで書けたというのは非常に大きなことだと思います。
 最後にもう1点、4頁ですが、私が残念だと思っているところです。均等待遇の確保がこの研究会の中でも大きな課題だったのですが、これが3論併記、4論併記というか、両論併記というのは聞いたことがありますが、具体的には「意見がある」「意見がある」「意見があった」と並列して書かれています。具体的には、1番目の○で「『職務の内容が同一であること』のみでよいではないかという意見」とか「『人材活用の仕組み・運用等が同一であること』の要件のみでよいではないかという意見」、3番目に「賃金制度の違いを考慮せず、全ての事業主に対し、一律に3要件を適用していることが問題ではないかという意見もあった」と、ここで3つ意見が出ています。この3番目の意見は次の段落につながっていて、一律に3要件を求めているところが問題なので、さらにの段落のいちばん下で「合理的な理由なく不利益な取扱いをしてはならないとする法制を採ることが適当ではないかとの意見があった」ということで、大きく見ると1番目の意見と2番目の意見と3番と4番を併せた意見の3つが併記して書かれているということです。
 ここは1つの方向性を示せなかったのは残念な気はしますが、これまでの研究会の議事録や、この報告書もこのあとの部分になると、合理的な理由のない不利益取扱いの禁止の法制を採る場合はこういう検討が必要だと、それを採る場合の想定をたくさん書いてあって、議論の大きな流れとしては合理的理由のない不利益取扱いをしてはならないという法制が、その合理的な理由の中で労使の話合いをどう組み込んでいくか、その合理的理由の有無について、最終的には裁判所の判断に任せるというヨーロッパの法制も参考にしながら、日本でも法制化できるのではないかということについて、これまでの研究会でかなり時間を取って議論をしてきましたので、そういうことである程度共通の認識はあるのではないかということも、よく報告書やこれまでの議事録を読んでいただければわかるかなという気もします。この法制自体は、非常に抽象的で、合理的理由のない不利益取扱いの禁止という何を言っているかよくわからないような原則になっていますが、逆に言えば抽象的であるからこそ、現場の労使で実態に合ったきめの細かい対応を可能にするということで、ヨーロッパの大きな流れの中でもそういう形で、法制をある程度現場の意見と柔軟性を持たせながら法原則を作っていこうという動きになっているところとも軌を一にしていますし、こういうことが報告書の中で、3論併記の1つではありますが、かなり有力な意見として盛り込めたことは、結論としては大きな前進ではないかと思います。
○浅倉委員 水町先生のご意見に喚起されましたので、少し意見を述べます。私もこれまでにも何度もご意見を申し上げてきましたが、ほとんどのことを取り入れていただいて、ありがたく思っております。ただ、この報告書の性格上、どうしても個々の意見が併記されている部分が多いので、自分の感想を交えて3点だけ指摘をさせていただきます。
 資料1-1の修正入りの概要版ですが、1頁の(2)の「パートタイム労働者が能力を発揮する社会」で、「ワーク・ライフ・バランスを実現しやすい働き方」という表示が出てきます。当初の書き方では、どう読んでもパートタイム労働者がワーク・ライフ・バランスを実現しやすい働き方であるとしか読めなかったので、修正をお願いしました。修正後をよく読んでいただくと、下から4行目ですが、短時間労働はワーク・ライフ・バランスを実現しやすい働き方であるという書き方になっています。パートタイム労働が、とはなっておりません。ぜひ読む方はそこを読みとっていただきたいと思います。パートだからワーク・ライフ・バランスが確保されるという認識は、私は誤りだと思っています。
 日本では、雇用形態上のパートは単なる短時間労働者ではなくて、非正規です。そこで、非正規雇用こそワーク・ライフ・バランスが実現しにくい労働者であるという認識が、ここでの表現には反映されていると思います。非正規の人は低賃金ですから、1つの仕事では食べていけず、複数のパート労働を掛け持ちしているというシングルマザーもいるわけです。そういうことを理解すれば、本当にパート労働者がワーク・ライフ・バランスを確保するためには、パートという雇用形態を増やすのではなく、パート労働者の処遇を引き上げるということがなければならない、そういう意味をこめて修正していただいたものです。それが第1点目です。
 第2点目は、先ほど水町さんがおっしゃったこととほぼ同じなのですが、パートタイム労働法第8条の均等待遇の確保、これで言うと4頁の3要件の問題です。確かに何論か併記されているのですが、よく読んでいくと、どの辺りが強調されたのかがわかっていただけるようにも思います。これから先、どのような立法政策が取られるかは審議会に委ねることになると思いますが、そのときには、合理的な理由についての議論がなされていくことになると思います。これについては、かなりこの研究会でも議論が交されたのですが、私がいまでも気になっていることは、合理性については、企業が経営上必要と考える合理性ということではなく、法的な合理性であるということをもう少しきちんと意見として反映できればよかったと、反省しているところです。もちろん、企業が経営上必要と考える合理性を無視はできませんが、それは1つの要素にすぎなくて、法的な規範としての合理性、それを決める中心には客観的に目に見える職務の内容があるのだと思います。できればそういう法的規範としての合理性という考え方を反映させながら、報告書を読んでいただきたいと思っております。
 もう少しいえば、つまり、企業が想定している潜在的な労働者の能力で合理性を判断するのではないということです。すでに2007年改正のパート労働法が想定していることなのですが、働き・貢献による評価が重要で、どのような就業形態であっても、個々人の働き・貢献によって待遇が決まっていく社会、それが、日本がこれから先目指す社会なのだという発想が大切です。すでにパート労働法はこのような考え方を持っていたと思いますので、その延長線上での「合理的な理由」だということを、是非読み取っていただきたいと思っております。
 3つ目に指摘しておきたいことは、具体的に報告書のどこというわけではありませんが、何度も何度も諸外国との比較ということでこの研究会でも議論があったと思います。EU諸国では職務給が中心で、正規、非正規いずれについても産業別に設定されている協約賃金が適用されるということです。しかし、その認識を共有しながらも、「だからEU諸国では、同一価値労働・同一賃金原則とか均等待遇原則は立法化しやすい」という理解をするだけでは不足であると思います。その反対に、日本では無理、という発想にとらわれてしまうのはおかしい、ということを強調したいと考えます。むしろ日本では、そういう横断的な労働協約がないために、かえって立法化が非常に不可欠な課題であるという見方を、外国法との比較ではしなければならないと思っております。横断的協約に頼ることができないからこそ、日本では規範を定立することがこれほど重要であると考えます。そういう意識を持って、この報告書も読んでいただきたいと思います。以上のような感想を持ちました。
○権丈委員 先ほど浅倉先生に最初の点としてお話しいただいた、修正入りの資料1-1「パートタイム労働者が能力を発揮する社会」の部分です。この点を「検討に当たっての基本的考え方」として明記していただいてよかったと思っております。これまでお話させていただいたことですが、良質の短時間の雇用機会を創出することは、現在パートタイムで働いている人だけではなくて、フルタイムで働いている人や就業していない人も含めすべての人にとって、働き方の選択肢を増やし、能力を発揮するチャンスを広げるといったメリットがあります。パートタイム労働者の待遇改善は、一時点においてワーク・ライフ・バランスが取りやすい働き方ができるかどうかだけではなく、生涯にわたってライフステージに応じて働き方を変えながら、能力を発揮し、ステップアップをしていく環境を整えるという意味でも非常に重要になります。こうした点を意識しながら議論してきましたが、報告書ではすぐにはわからないかもしれませんし、実際に進めていくには、人々の意識を変えていくことが大切になりますので、繰り返しになりますがもう一度強調させていただきました。
○佐藤委員 1つだけ、先ほど政務官が言われたように、パート労働法の改正と併せて、いま年金のパートへの適用拡大が議論されていて、これまでパート労働法のできる前からできた後にもいろいろ関わってきたのですが、パート労働法だけでやれる部分にはかなり限界があって、先ほどのパートの方の能力開発とか、処遇の改善とか、もちろん企業の中で一生懸命やっている所もあるわけです。ただ、他方で外の制度が制約になっているということが相当ありましたので、今回のパート法の改正と併せて、いろいろ難しい点もありますが、パート労働者への年金、医療保険の適用拡大を是非進めていただければというお願いです。
○山川委員 この報告書、特に「今後のパートタイム労働対策」という見え消し版の32頁では、いままでお話に出ましたように、考えられる選択肢を幅広く整理するということになっていますが、ただ、機械的にこう読める選択肢であるという感じにはあまりなっていなくて、「意見がある」ということがある意味で選択肢という意味を込めて書かれているのかなと思います。そのほかにも「考えられる」という表現もあって、この報告書は、選択肢を割とフリーに考え方として示している部分があって、その意味では若干お役所らしくないような感じがします。さはさりながら、選択肢という場合でも、単に突き離す選択肢ではなくて、この道を行く場合にはこういう問題が生じて、検討する事項はこれだけありますということを、先ほど水町先生がおっしゃったようにかなり詳しく述べている。その点でも面白いところがあるのではないかと思っております。そういう読み方も、今後審議会等で検討されていくのかと思いますが、そのように割とフレキシブルな読み方も可能なのかなという感じはしております。
○今野座長 お役所に原案を書いていただきましたが、内容について責任を持っているのは我々なので。ほかにありますか。
 私から一言。私の専門の人事管理の観点から。人事管理の基本原則は能力と貢献と処遇を合わせることで、高い能力を持っている人には高い貢献をしてもらって、いっぱい払うと。このトライアングルを螺旋的に上に上げて、それで経営パフォーマンスを上げていくというのが人事の基本原則なのです。
 今回でも、働きと貢献に見合って処遇しましょうということですが、そのときに問題なのは、貢献とは何だろうかです。法制化するときにその辺が問題になる。一例を挙げると、少し極端な例ですが、同じ会社でAさんとBさんがいて、AさんとBさんは同じ仕事をしています。例えば、同じ機械を運転しています。ところが、AさんはA事業部にいて、BさんはB事業部にいます。そうすると、作っている製品と相手にしている市場が違うので、その人の仕事の付加価値は違うということがよくあるのです。したがって、貢献というのは実際は非常に難しい。
 もう1つは、アメリカの例などを挙げると、80年代か90年代以降、賃金はVariable Payだと言う方が出てきました。それは同じ仕事をしていても、市場の状況によって価値が違う、つまりある市場環境の下では100円の価値を持つけれど、ある市場環境の下では80円になるのではないかということを前提にしている。したがって、賃金は100円のケースもあるし80円のケースもあるというのがVariable Payなのです。あるいは、ご存じの方も多いと思いますが、同じようなことですが、職務給もだんだんブロードバンディングしてきているので、同じバンドの中で賃金は大きく変化するということです。これも一種のVariable Payの1つなのですが、そうすると、貢献をどう図るかは非常に難しい。ここをどう決めるかによって、企業の人事管理はがらっと変わるのです。ですから、今後法制化をされるときには、この辺が重要な議論のポイントになると思いますが、ここをどう考えるかはきちんと議論をしていただければというのが私の最後の感想です。今回の報告書みたいに抽象的に書いているうちはいいのですが、具体的にどうしようということを考えると難しい。そういう点では、法制化については私の役割ではなくラッキーだったかなと思っております。是非、そういう点もきちんと議論をしていただければと思います。
 ほかに何かご意見はありますか。今日、この報告書を大臣にお渡ししたいと思うのですが、山川さんから修正がありましたので、もう一度確認します。資料1-2の報告書(案)の49頁で、「整理解雇」について修正がありました。こうさせていただけますか。今日用意された報告書を事務局に手書きで直していただいて、最終的に私がチェックするということで。「整理解雇法理」ですね。それでお渡ししましょう。
(大臣到着)
○今野座長 よろしいですか。それでは、小宮山大臣がいらっしゃいましたので、報告書をお渡ししたいと思います。先ほど手直しがあり一部修正があります。そこが手書きになっております。手書きは49頁です。
○小宮山大臣 わかりました。ありがとうございます。
○今野座長 それでは、最後に小宮山大臣から一言ご挨拶をいただければと思います。
○小宮山大臣 どうもお疲れさまでした。また、今日は国会の関係上、お待たせをして申し訳ありませんでした。今年2月に第1回の研究会を開きまして、10回にわたって皆様には本当に闊達なご議論をいただきまして、心から感謝を申し上げます。私もこの研究会には8回出席をしましたので、皆勤ではありませんが、出席で落第はしないかなという感じはいたします。毎回専門的な皆様のご議論の中で、私も昔を思い出しまして、楽しく知的な時間を過させていただいたと感謝を申し上げたいと思います。また、ヒアリングで労使関係や職務評価の専門家からお話を伺って議論が深められたことも、大変よかったと思っています。
 私自身の話を最初に申し上げたのですが、平成4年7月から開催されたパートタイム労働問題に関する研究会に委員として、当時はNHKにいましたが、参加をさせていただき、その結論が平成5年のパートタイム労働法の制定に結びついたと思っています。また、平成19年の法改正時には、民主党の責任者の1人としてパートタイム労働法の改正案(対案)を、今日参加させていただいている、このたび政務官になりました藤田議員とともに作って提出しました。そして、本日、今後のパートタイム労働対策に関する研究会の報告書を取りまとめていただき、それを私が大臣として、藤田さんが政務官として受け取らせていただくのも、いろいろご縁のあることだと感無量なものがあります。
 報告書の中では、パートタイム労働者の均等待遇の確保、職務評価の導入促進などのアイディアを盛り込んでいただきまして、感謝を申し上げます。7月1日には「社会保障・税一体改革成案」が閣議報告されましたが、この成案では社会保障関係の検討報告書で初めて「就労促進」の項目を入れ、その中ではディーセントワーク=働きがいのある人間らしい仕事の実現を図るということが挙げられています。パートタイム労働法の見直し、これはパートタイム労働者への社会保険の適用拡大や配偶者控除の見直しなど、公平な社会の仕組み作りと併せて、社会保障と税の一体改革の具体化の1つとして、責任を持ってしっかりと取り組んでいきたいと思っています。
 今後はこの報告書を受け、労働政策審議会で議論をさらに深めていくことになります。パートタイム労働者の均等待遇の実現のため、パートタイム労働法のよりよい見直しを行いたいと思っていますので、委員の皆様には今後もまたいろいろなご縁があるかと思いますが、今後ともご指導・ご鞭撻をいただきますように心からお願いを申し上げます。本当にありがとうございました。
○今野座長 10回の研究会にわたって活発な議論をしていただきましてありがとうございました。それでは、これで終わりたいと思います。


(了)

雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課

電話: 03-5253-1111(内7875)

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