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2011年7月20日 第17回政策評価に関する有識者会議議事録

○日時

平成23年7月20日(水)9:00~13:00


○場所

専用第23会議室


○出席者

   高橋座長、渥美委員、梅田委員、河北委員、菊池委員、篠原委員、團野委員、野川委員、福田委員、山田委員


○議事

(以下、議事録)
 
○高橋座長
 定刻となりましたので、ただいまより「第17回政策評価に関する有識者会議」を開催いたします。委員の皆様におかれましては大変お忙しい中、早朝よりご参集いただきましてありがとうございます。本日の委員の出欠状況ですが、阿部委員、川本委員、堀田委員、本田委員、森田委員が欠席です。開会に先立ちまして、今回より新たに着任されました委員の方々のご紹介をお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 今回より新たに5人の方々に有識者会議の委員となっていただいておりますので、50音順にご紹介いたします。まず、渥美委員ですが、少々遅れております。次に、河北委員です。團野委員です。福田委員です。山田委員です。以上5名の方々です。

○高橋座長
 開会に当たりまして、八田政策評価審議官よりご挨拶をお願いいたします。

○政策評価審議官
 おはようございます。審議官の八田でございます。本日はご多忙の中、また悪天候の中をご参集いただきまして、誠にありがとうございます。今回から新たにこの有識者会議に加わっていただきました方々に対しまして、まずもってお礼申し上げます。
 さて、これまでも私どもからメールなどで少しご説明していると思いますが、昨年8月にこの場を行いましたときには、昨年度に行った政策評価についてご意見をいただきました。その後、当時の長妻大臣にご報告いたしましたときに、政策評価のやり方などについてはこの際見直しをしてはどうかというご指示をいただきました。その指示に従い、検討を重ねまして、今年の春ごろまでに長妻前大臣や、現在の細川大臣にご説明いたしまして、おおむねご了解いただいた政策評価見直しの内容は、以下の3点です。
 後ほど評価官からもご説明いたしますが、1点目は政策体系の見直しです。それまでは厚生労働省設置法に沿った政策体系としておりましたが、長妻前大臣が設定し、細川大臣が継承された厚生労働省の組織目標に沿った政策体系に基づき、評価をしていこうということです。
 2点目は、有識者の皆様のお力をさらにお借りすることによりまして、評価の質の向上を図ろうということです。それまでは、実績評価で申し上げますと予算書の項に対応し、71個ある施策中目標のうち、毎年度その半分程度について実績評価書を作成するのですが、この場で皆様方からご意見をいただくのは、そのうちの数個程度だけでした。これを改めまして、作成した実績評価書はすべて皆様にご覧いただき、ご意見を賜わろうということで、見ていただく皆様の増員をお願いし、さらには3つのワーキンググループで議論していただこうということになりました。
 3点目は、政策評価の重点化と効率化です。これまでの実績評価では、個別事業の運用面の評価から事業等の集合体である政策の有効性や効率性の評価まで、非常に幅広い内容を評価の対象としておりました。また、先ほど申し上げましたとおり、毎年度おおむね半分ずつ、したがって平均して2年に1回は評価を実施しておりましたので、毎年度の実績評価書は積み重ねると大変大部なものになってしまいまして、ホームページ等でも公開しておりますが、読みやすいものとはなかなか言えない状態であり、事務的にも膨大な作業を要するものとなっておりました。
 一方、政権交代があり、発足した行政刷新会議の決定によって、平成22年度からは全事業を対象とした「行政事業レビュー」というのが行われております。一部は公開の場で行っております。そこで、すべての個別事業の運用面の評価は、毎年度行われる予定の行政事業レビューで対応しようと。そして、政策評価としての実績評価は事業等の集合体である政策の有効性や効率性について、3年ないし5年ごとに評価することによって政策評価の対象の重点化と効率化が図られ、その結果として少しでも読みやすい評価書になるのではないか、また事務作業の効率化も図れるのではないかと考えたわけです。
 当初、今年の3月下旬にこの場に皆様にご参集いただきまして、このような考え方や今後の政策評価の進め方についてご意見をいただいた上で、第2期基本計画の改定をいたしまして、平成22年度の事務事業を最初とする今年度の政策評価の作業に入っていきたいと考えておりました。ところが、ご承知のとおり、3月11日に東日本大震災と福島県における原子力発電所の事故が発生いたしまして、状況はすべて一変したわけです。始めは交通事情もなかなか厳しく、厚生労働省はもとより、政府全体として震災や原発事故への対応にまずは全力を上げるということで、当初予定していた3月下旬の会議は中止せざるを得なくなりました。したがって、第2期基本計画の改定については、私どものほうで既に決定させていただいております。また、当初計画しておりましたワーキンググループでの議論という構想も、このような状況ですので、皆様には大変申し訳ないのですが、来年度の評価からやっていきたいと考えておりますので、この点ご理解を賜わりたいと存じます。
 このようなことで、本日はいま申し上げました第2期基本計画の改定についてきちんとご説明した後に、今年度の評価として6つの実績評価書及び9項目の総合評価書についてご説明しまして、ご意見をいただきたいと考えております。時間が結構かかりますが、何卒よろしくお願いいたします。

○高橋座長
 議事次第をご覧いただくとお分かりのとおり、「厚生労働省における政策評価に関する基本計画の改定について」の説明をいただいた上で、2番目として、平成23年度に実施する政策評価として6つの議題が掲げてありますが、6つのテーマについて議論していただき、その上で平成23年度に実施する9つの総合評価について事務局から説明していただくという手順ですので、よろしくお願いいたします。まず、第1の議題である「厚生労働省における政策評価に関する基本計画(第2期)の改定について」の説明を事務局よりお願いいたします。

○政策評価官
 政策評価官の篠原と申します。お手元の資料1-1に基づき、説明いたします。政策評価を実施するに当たりまして、法律上、基本計画を定めて実施することになっており、それが3年から5年ごとで、厚生労働省の場合は5年で作成しておりまして、現在は第2期の基本計画期間です。「平成19~23年度」と書いてありますが、正確には平成22年度の事業の評価を平成23年の本日に行う評価、つまり、平成22年度の事業を平成23年度に入って評価を行うところまでが第2期基本計画となります。ですから、平成23年度の事業を平成24年度に評価するというところになると、第3期基本計画に入っていくことになります。現在は第2期基本計画のいちばん最後というタイミングです。
 基本計画には何が定めてあるかと言いますと、政策体系の大枠として基本目標、施策大目標、施策中目標があり、施策中目標は予算書の項に対応しておりまして、基本的にこの単位で評価書を作成することになっております。基本計画を受けて実施計画があるのですが、こちらは毎年度策定をして、小目標や指標・目標値などのより細かいものを策定しております。この辺については、実は3月の会議でご相談、ご議論をしていただく予定だったのですが、震災等の事情で3月の会議ができなかったため、厚生労働省のほうで基本計画と実施計画の変更を既にさせていただきました。メール等でご連絡いたしましたが、そういうことでございます。
 具体的にどう変えたかということですが、冒頭の審議官からの挨拶にもあったように、資料1-2の「政策評価の見直し」をご覧いただくと、まず政策体系を見直しました。政策体系の基本目標、大目標、中目標ですが、そもそも厚生労働省設置法には厚生労働省の使命などが書かれてあって、それをそのまま並べ、網羅的という意味では体系立っていたのです。政権交代があって、長妻前大臣のときから厚生労働省の組織目標を定めることになり、組織目標に沿った形で目標体系を改めることといたしました。後ろから3枚目に、枠の中に入った形で、改めて整理しております。組織目標に書いてあるものを基本的にそのまま引き移した形で使命なり、基本目標なりがあります。また、大目標のレベルでは組織目標を大筋網羅しております。
 さらに、その下の中目標に沿った形で整理しております。中目標については、先ほど言ったように予算書の項と一致しているという原則は基本的にそのままですが、例えば制度を作るとか、こういう検討をしようなどといった予算とは関係ない目標もありますので、それら予算書の項とは対応しないものが別途存在するという形になっております。予算書の項と対応しているものについては、従来どおり実績評価という形で実施いたします。項と対応していないものについては、9つある総合評価という形で対応することとしております。以上が政策体系の見直しです。
 資料1-2に戻りまして、政策評価の見直しの2点目は、評価の質の向上です。有識者の方にしっかり見ていただこうということです。昨年は労災の関係と医薬品の関係の2種類で、中身を見ていただくというよりは評価の仕方についていろいろアドバイスをいただくといったやり方をしておりましたが、逆にしっかり見ていただいたほうがいいのではないかということで、評価書を作ったものについては基本的にすべて有識者会議で議論していただくことにしたいということです。ただ、全員にすべてを見ていただくというわけにもいきませんので、メンバーを増員し、3つのワーキンググループに分かれて、それぞれ評価書をしっかり見ていただくという形に変えました。当初ワーキンググループは6月ぐらいと説明しておりましたが、震災等もあってそうはいかなくなり、震災等の業務を優先せざるを得ないところもあって、評価書の作成についても評価書自体の数を絞ったことから、本日1日だけとなったわけです。そういったことで評価の質を向上しよう、有識者の関与を拡充しようということです。また、政務にはあまり見ていただいていなかったのですが、大臣にもきちんとご覧いただくこととしております。
 3つ目は、評価の重点化・効率的な実施ということです。重点化については、従来2年に1回評価書を作成し、評価書を作成しない場合は指標だけを把握するというモニタリングの形で実施しておりました。ただ、先ほども述べたように、中目標と予算の項が対応しておりまして、予算の項は結構大きな政策単位ですので、1年や2年でそれほど変わるものではないことから、2年に一度も必要ではないのではないかということがありました。もう1つ、昨年から行政事業レビューが始まったので、個別事業については全部レビューでやると。昨年もやりましたが、今年も実施する予定になっておりますので、そことの重複があるのではないかということもあって、今後は個別事業についての評価は行政事業レビューで対応することとし、政策評価は個別事業ではなく、事業を組み合わせた結果、うまくいっているのかどうかを3年から5年に一度、スパンを長くして評価することとしております。そのような意味では、政策評価の評価書を作るものを絞り込むという形に変更しております。
 さらに、様式そのものもできるだけ簡略化することで、従来は膨大な紙の束だったものを薄くしております。総務省も標準的な様式を変更しておりまして、それによって量的にだいぶ減っているということです。これからご覧いただく評価書は、総務省が示した標準的なものに従った形で作成しております。説明は以上です。

○高橋座長
 いろいろな意味でだいぶ様子が変わった感じがありますが、ご質問等があればお願いいたします。

○篠原委員
 政策評価の法律ができて約10年ぐらい経って、かなりいろいろと改定して良くなってきたなという気がいたしますが、欧米では既に監査が始まっているのです。当然、官の場合は予算という監査のないものがありますから、政策評価をやらない限り、何かよくわからないという前提があると思うのです。今これをどう改定しても、監査の対象にはならない。というのは、この法律ができるときに、我々公認会計士はいろいろと検討したのですが、金額だけではなくて数値データが入ってきていないので、予算だけではどうにもならない。事業仕分けなどいろいろと聞くと、いわゆる原価の中身が全然わからないのです。今ある部局で、国や独法の業務フローや原価を把握するための何かをやろうとしているのですが、やはりその方向に進まないと、欧米には追いつかない。仮にこの監査をやるとしたら、私は30年かかると思っています。なぜなら、これではできないからです。ですから、今これを言われると困るなという気持で言っているのですが、将来それが要るという方向で行かないと、突然要ることに決まってしまったら、グチャグチャになってしまうという気がするのです。やはり、監査に耐えられると言いますか、現場もそのような視点が要るのではないか。ちょっと変な質問かなという気がしないでもないのですが、どうでしょうか。

○政策評価官
 政策もいろいろありまして、わかりやすいものもあるのです。例えば国土交通省が公共事業として道路を作るなどといったものについては、きっちり数字の評価をやっているのだと思います。厚生労働省の場合は医療にしろ、福祉にしろ、雇用にしろ、費用対効果云々というところではないところもあって、監査という話は難しいところがあるのも事実ですが、篠原委員が言われるとおり、政策評価というのは作文でいいのか、数字がなくていいのかと言われると、そうではなく、客観的に、できるだけ指標を示してということですので、方向としてはそちらを目指さなければいけないし、そちらに向いていくのだろうと思います。総務省のほうの政策評価も10年経ちましたので、いろいろと見直しをしていて、その一環として様式を改めたわけですが、それ以外にもいろいろ工夫しているようですので、そういった方向に進むのではないかと思っております。

○篠原委員
 もう1点よろしいですか。いろいろと政策体系が作られていますが、横串と言うのでしょうか、私は厚生労働省のコンプライアンスの委員を2つやっているのですが、最近、いわゆる情報公開とか、横串の部分の評価は政策にはないのでしょうか。例えばパワハラ、セクハラなど全員に共通する部分のチェックも要るのではないかという気がしているのですが、各省庁はこんなところはやっていないのですか。

○政策評価官
 先ほどの厚生労働省の使命と基本目標をご覧いただくと、大きなところで使命があって、基本目標があります。従来、基本目標は設置法を引っ張ってきたために縦割りになっていたのですが、今回は組織目標から来ているので、必ずも縦割りにはなっていないのです。先ほど言われたコンプライアンスのような話ですが、イコールではありませんが、下の基本目標?、?、?辺りは「役所文化を変え、信用される厚生労働省になる」ということで、「奢り」を一掃しようとか、コスト削減・ムダ排除、新しい人事システムなどといった形で、縦割りでない要素がだいぶ入ってきております。

○高橋座長
 私の日本語感覚から言うと、ちょっとどうなのかなという表現というか、これは記録にとどめない感想ですが、それこそ日本語文化に反逆するような文言の使い方があるのが気になります。ただ、これはいかんともしがたい方向からの話のようですので、感想にとどめておきます。

○梅田委員
 今回の見直しの概要は、全体的には各府省の流れとして理解はいたします。ただ、今後出てくるであろう課題という意味で指摘すると、3番目の評価の重点化・効率的な実施のところで、行政事業レビューと分けるというのは全体的にそうなっているからいいのですが、行政事業レビューの概要が動き出したばかりで、見えないところがあるのです。ただ、予算案を作成するというか、予算との連携というか、先ほど篠原委員が言われた決算、監査、次の予算という観点がかなり強い行政事業レビューだと思います。完全に分けて、政策評価はここに書いてあるとおりで当面いいと思うのですが、これからこの様式で説明されて議論があるわけですが、事業を分けたところで、どれぐらい政策評価として説明がなされ得るかについては、個人的には非常に疑問ですし、できるかなと思うのです。
 有効性と効率性は一体のものですが、どちらかと言うと政策評価は有効性のほうが主で、行政事業レビューは効率性が主と言えども、有効性も関係してくるのです。粗く言うと、政策評価は有効性が主で、細かい効率性は行政事業レビューで見るということですが、有効性と効率性は相互に関連するところもあるから、それが一体となって今まで政策評価としてやっていて、10年経ったところでいろいろ課題が出てきたことはわかるし、評価書も簡単な形にしろという指示が総務省からあったのだと思います。これから議論するからいいのですが、まだ分かりにくいということになるだろうと思うのです。私は次の課題が見えるので、指摘だけさせていただきます。そのことを念頭に置いて、行政事業レビューとの連携というのは切り分けたという説明でしたが、本来は1本のものだということを十分意識してやってほしいのです。ただ、それに伴う問題点は必ず出てくるであろうと思っているということで、指摘だけにとどめておきます。

○高橋座長
 全体の構造の中でそれぞれがどのような機能連関をしているのかが、そのときどきで変わってくるようなところもあるから、篠原委員が言われたとおり、かなり一貫性を持ってやらなければいけないし、それをどのように担保するかというのはなかなか難しいテーマだと思いながら伺っておりましたが、時間の関係もあるので、むしろ今日は各論のほうをやらせていただきたいと思います。議題(2)は「平成23年度に実施する政策評価について」ですが、テーマ選定についての説明を事務局よりお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 例年の有識者会議では、社会や経済情勢を鑑み、ご議論いただくテーマを確定していたところですが、今年から客観性の確保や多様な意見の反映を図りたいということから、先ほども少し説明いたしましたが、実績評価書についてはすべてこの会議にかけさせていただき、委員の皆様方のご意見を賜りたいと考えております。

○高橋座長
 まず、?の労働条件の確保と改善を図るというテーマについて、担当課から10分以内で説明していただき、15分程度の質疑というやり方で進めたいと思います。テーマごとに説明者が変わりますので、お含みおきいただきたいと思います。まず、労働基準局からお願いいたします。

?労働基準局

○労働基準局労働条件政策課長補佐
 労働基準局労働条件政策課の西村と申します。資料2の1頁、中目標?-2-1「労働条件の確保・改善を図る」について説明いたします。この施策については労働基準局の監督課、労働条件政策課、さらには賃金時間室の3つの組織がそれぞれ推進しておりますが、私からまとめて説明したいと思います。労働条件確保・改善の施策は、様式にもあるように3つの施策小目標を達成することを柱として実施しております。1つ目は、労働基準法等に基づき、労働時間、最低賃金等の法定労働条件の履行確保を図るため、全国の労働基準監督署の労働基準監督官によって事業場の監督指導等を行っております。
 2つ目は、増加している個別労働紛争の未然の防止あるいは早期解決を図るため、労働者等に対して労働契約法等の労働関係法令の教育、情報提供等を実施し、労働契約に関するルールの周知を図っているところです。3つ目は、最低賃金法により、地域や産業の状況に応じて最低賃金額を設定し、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善を図ることとしております。このため、最低賃金制度の周知を図るとともに、その履行確保を図っているところです。
 次に、それぞれの施策の概要について説明いたします。4頁からパワーポイントの資料を用意しておりますのでご覧ください。1つ目は、「労働基準監督機関が目指すもの」と題しております。ご案内のとおり、労働基準監督機関の使命は、憲法に基づき、最低労働条件を定めた労働基準法あるいは労働安全衛生法等の労働基準関係法令の履行確保を図り、もって働く人々の労働条件の確保を図るということです。現在、全国に約400万の事業場、そこには約5,240万人が働いております。働く方々の労働条件の確保、改善については、労働基準監督機関による最低労働条件を定める労働基準法等の実効の確保が基本です。このため、国直轄の監督実施体制を敷いております。すなわち、本省、本省の指揮下に47の都道府県労働局を置き、労働局の指揮監督下に321の労働基準監督署を配置するという体制を採っております。この体制で個々の事業場に対する監督指導を実施しているところです。
 本省、労働局、さらに労働基準監督署の役割は、それぞれ資料右側中ほどに記してあるとおりですが、本省においては労働基準法などの労働条件の最低基準の策定、ポツの5つ目にあるように、全国斉一の監督指導の指示、少し前に問題となった「名ばかり管理職」などについて、全国一斉の指示を出したりしております。さらに、最後のポツにあるように、「労働基準監督官制度」、本日は労働基準監督官の二次試験が全国で実施されておりますが、この制度の運用などを行っております。
 また、47労働局においては、ポツの1つ目にあるように、監督署に対する年間監督計画の作成方針の指示というものがあります。監督指導の対象は1人でも労働者を使用する事業場です。対象となる事業場は400万にも及び、これらをつぶさに監督指導することは全く不可能ですので、いかに効果的、効率的に監督指導を実施するかが肝要です。このため、各都道府県の産業構造、各都道府県ごとの労働条件履行確保上の課題に応じた監督指導の計画を策定することとしております。計画を策定するための方針を策定したり、あるいは審査といったことを労働局が行っているところです。
 また、労働基準監督署においては、策定した計画に基づき、労働基準監督官をして監督指導を実施しておりまして、法違反の是正指導を行っているところです。このほか、労働基準監督署では重大・悪質な労働基準関係法令違反の事案を送検したり、労働者からの申告を受け付けたり、さらには就業規則や「36協定」の受理・指導などを行っております。
 今回、施策の測定指標として賃金不払残業の防止について指導を行い、是正され、支払われた金額を挙げております。以前からこの指標を掲げておりますが、この指標については事業場への監督指導の結果、労働基準法令違反が認められるものについては、それを確実に是正するよう的確に指導を行っており、有効な取組みを実施しているものと考えております。効率性についても、前年度までの監督指導等の実績から問題があると考えられる事業場に対して、先ほど言いましたように計画的に監督指導を実施しているほか、労働者からの申告により把握した事業場に監督を実施するなど、限られた人員で効率的に監督指導を実施しているところです。今後においても一層効果的、かつ効率的な運営を行っていきたいと考えております。
 2つ目は資料5頁、「労使に対する労働契約法等の周知徹底」ということです。ご案内のとおり、平成20年3月に労働契約の基本的なルールを定めた労働契約法が施行されております。これまで厚生労働省においては同法の内容について、一般国民への広報活動あるいは中小企業事業主等へのセミナーの実施などにより、これらの周知を行ってきたところですが、近年の厳しい経済情勢等を背景に、労働条件の変更に係る労使間のトラブルが多発している状況でして、事業主のみならず、働く方々に対しても労働契約法の内容を周知することが肝要と考えられるところです。このため、平成22年度においては民間のコンサルタント会社に委託し、労働契約法等に関する労働者向けのセミナーを実施いたしました。昨年度は47都道府県において、各県2回から4回に分けてセミナーを実施し、合計約4,900名の参加を見たところです。
 今年度においては一般労働者向けセミナーに加え、資料のいちばん下にあるように就職内定者などの就職前の学生を対象として、いわゆる内定切りや試用期間、自宅待機といったもののルールについても周知を図っていきたいと考えております。測定指標としては、労働契約法セミナーの参加者のうち、理解が進んだと考える人の割合というものを掲げております。平成22年度から労働者向けセミナーを始めておりますが、アンケートにより95%の方から「参考となった」「まあまあ参考となった」といった回答をいただいております。平成23年度においては、これよりもさらに上回る評価が得られるようにしていきたいと思っております。今後においては、労働契約法などの周知、セミナーは継続していく必要があると考えておりますが、その実施に当たってはセミナーの内容を適宜見直すなどの改善を図りながら実施していきたいと思っております。
 3つ目は資料6頁、「最低賃金制度及び最低賃金額の周知徹底」です。ご案内のとおり、最低賃金制度は国が法的強制力を持って賃金の最低額を定め、使用者にその金額以上の賃金を支払わせようとする制度です。最低賃金制度がセーフティネットとして有効に機能するためには、何よりも最低賃金制度あるいは改定される最低賃金額を、労使をはじめ国民全般に広く周知することが極めて重要です。このため、私どもではポスターやリーフレット等を作成し、新聞広告や主要駅でのポスター掲示等、あるいは本省及び各労働局のホームページ等、さまざまな手法を活用して周知しているところです。
 また、特に効果のある広報媒体として市町村が発行する広報誌があり、多くの方が目を通しております。各労働局においてはさまざまな広報手段に加えて、全市町村に最低賃金額等の掲載を依頼しているところです。このため、測定指標として市町村広報誌への最低賃金制度の掲載割合を掲げております。平成22年度は93.2%という状況でしたが、今後においても引き続き効果的、効率的な周知に努めていきたいと思っております。簡単ですが、説明は以上です。ご審議のほど、よろしくお願いいたします。

○高橋座長
 それでは質疑をお願いいたします。

○篠原委員
 政策のstratifyというか、層別化する必要があるのではないかという気がするのです。実は私の娘の出た大学は撮影関係でして、非常に小さい所に務めたのですが、仕事としてはおもしろいのですが、毎日帰宅が12時ぐらいで、当然残業代は出ません。もう嫌だと言って、派遣で新橋にある大企業に行ったら、もう天国で、夜は友達としょっちゅう飲んだり、習い事もできるわけです。ワーク・ライフ・バランスのシンポジウムを聞くと天国の話ですが、大企業と小さい所と明らかに政策を変えないといけないのではないかと思います。小さい所はパワーがあるし、将来の日本を担うような所は変に規制してはいけないのですが、聞いていると、やはりまずい面がいろいろと見える、最低限こういうところはという部分が見えるのです。大企業とは違うなと思いますから、一括は無理ではないかなという気がするのですが、その辺は検討されているのでしょうか。小さい所の実態はわかっていないのではないかという気がしているのですが、いかがですか。

○労働基準局監督課長補佐
 労働基準法というのは最低基準ですから、皆さんに守っていただく必要がありますが、ご指摘のとおり、大企業と中小企業とでは周知と言いますか、そこで働く方々と使用者の双方が法律についての知識をあまり持っていなかったりすることもありますし、業種によっては事業場を造ってはまた廃止してと目まぐるしく、展開が早い業態があったりという問題意識を持っております。また、労働条件上の問題を抱える小規模な小売業、飲食店などの事業場に対して、集まっていただいた上で法令の丁寧な説明会を実施したあとに、企業の賃金台帳などを見せていただき、これは法令違反ですなどといったことを個別に指導することを昨年度から試行的に実施しております。これを今年度からは全国でやることとしておりまして、ご指摘いただいたことにも意を払いながらやっていきたいと考えております。

○労働基準局労働条件政策課長補佐
 蛇足ですが、先生のご指摘はごもっともなことだと思っております。2つ目で説明した労働契約法等の周知についても、平成22年度は働く人を対象にやっておりますが、平成21年度については中小企業事業主を対象としてやっておりました。やはり、大きな事業場であればそれぞれ能力がありますが、自分たちで解決できない中小企業事業主を対象として、平成21年度まではこのようなセミナー事業等を開催しておりました。今後においても、ご指摘を含めて検討していきたいと思います。

○高橋座長
 その他何かあればお願いいたします。

○福田委員
 専門外でこの会に初めて出たものですから、評価指標について2つお尋ねいたします。1つは、評価指標1の「是正されて支払われた金額」について、評価の指標と考えたときに、多ければいいというものでもないと思いますし、難しいかもしれませんが、この数字からどう判断しようとしているのでしょうか。もう1点は、指標3の「広報誌への掲載割合」について、平成23年度だけが目標値になっていて、過去にもない低いレベルの80%です。なぜ、実績よりも低いものを設定しているのでしょうか。もし、他のメディア等へのことを考えるのであれば、それも指標として挙げなくてはいけないような気がするのです。ほかの評価書にあまりない、今までにない低い値を目標にするのはなぜかと疑問に思います。

○労働基準局監督課長補佐
 評価の指標の1つ目の賃金不払残業、いわゆるサービス残業に対しての指導を行いまして、是正された金額で1事案が100万円以上のものを集計したものですが、ご指摘のとおり、こういったものはゼロになるのがいちばん望ましいところです。他方、サービス残業の推移を見ると、平成21年度は減っておりますが、その評価として、減ったことを額面どおり受け取っていいかどうかというところもあります。実は平成20年度196億円が、平成21年度には116億円に減っているのです。この背景を説明いたしますと、そもそも厳しい経済情勢もあって時間外労働自体が減っており、平成20年度から21年度は7.6%と約8%ほど減っておりますし、事案を見ると、大規模な企業で1,000万円以上の割増賃金の不払いがあったのは平成20年度で240企業、平成21年度は162企業と32.5%減っております。そういったことをどのように評価するかは非常に難しいのですが、これを1つの指標として、労働基準監督行政としてはサービス残業に対してこういった対策を打っていて、目に見えるものと言いますか、数値化すればこういったものになるということです。取締行政なものですから、摘発して多ければ多いほどいいというものではない中で、目に見える形で数字をお示しし、我々もその数字をいろいろ分析することとして設定しております。

○労働基準局労働条件政策課賃金時間室副主任中央賃金指導官
 指標3の市町村広報誌への最低賃金の掲載割合の目標を80%としていることについてですが、市町村の広報誌は地域の使用者あるいは労働者だけではなく、国民一般に広くお知らせするという観点から、非常に効果的であると考えております。そのようなことがあって全数掲載を目指しているのですが、市町村の広報誌の紙面の関係等から、常に掲載していただくわけにはなかなかいかないことも多々ありまして、その都度文書や職員が足を運んで掲載依頼を行っております。平成18年度82.1%、平成20年度83%と上がっていますが、これでも相当精力的にやった結果として80%をようやく超えているわけです。平成22年度辺りは93%と大変なご協力をいただいているわけですが、やはり8割は確保するように努めていきたいということで、この目標を立てております。

○高橋座長
 それでは野川委員、山田委員、菊池委員、河北委員の順にそれぞれ簡明にお願いいたします。時間の関係がありますので、発言をしていただいて、最後にまとめて回答していただくという形でお願いいたします。

○野川委員
 単純な質問ですが、現在、労働基準監督官は全国で何人おりますか。

○労働基準局監督課長補佐
 全国の労働基準監督署に配置されている監督官は、2010年の数字で3,135人です。

○野川委員
 この政策設定は基本的に隔靴掻痒というか、率直に言って、ちょっと甘いと思っております。と言いますのは、労働基準監督行政を通じて労働条件の確保を図るわけですから、いろいろなやり方で履行確保は考えられるからです。今ある労働基準監督署の機能を強化したり、有効な実施を通じて労働条件の確保を図るとすると、明らかなのは現在の労働基準監督署も労働基準監督官も、対象とする事業所や労働者に比べると絶望的に少ないということです。そもそも321労働基準監督署で400万以上の事業所ですから、1万数千の事業所を1つの監督署で担い、司法警察官としての職務を担う労働基準監督官は3,000人ちょっとにしか過ぎない、その3,000人ちょっとで5,240万人の労働者を守るなどということはまず無理なので、労働基準監督行政を通じて行うのであれば、まずは量的な規模の拡大は必須だと思います。
 先ほど質問があったように、私も労働法などをやっているお蔭で、いろいろなセミナーでお話した後に質問を受けたり、日常生活の中で、先生、こういうことがあるのですというごく素朴な質問を、本当に末端で働いている人たちからいろいろと受けます。その人たちは労働基準法も何も知らない、知らないから、自分の勤めている所の人間をやっつけてやろうとかではなくて、素朴に、単なる事実として淡々と言ってくるのですが、その内容はほとんど絶望的です。そもそも有給休暇が権利としてあることも、休憩時間が権利としてあることも何も知らない、そのようなものはプレゼントされるものだと思っているのです。
 要するに、使用者の胸先三寸でこき使われて、追い出されてもしようがないのだけれども、それでも何とかしたいのだがどうしたらいいか、といった質問の仕方です。5,240万労働者の、おそらく5,000万人は自分たちが守られている法律も、労働基準監督署の存在も知らないと思います。なぜならば、こういうものがあると言うと、皆さん驚くからです。政策として労働基準監督署を通じた労働条件の履行確保を掲げるのであれば、その大前提である機能の強化を正面に掲げないと、この政策の達成度は低くならざるを得ないでしょう。たとえば先ほど質問にあったように、賃金不払いで指導を行っても、そもそも賃金不払残業で指導を行った対象となる事業所は、賃金不払事業所のおそらく1%にも満たないと思いますから、その点からの見直しをして、初めて政策に値するものではないか。これにはどうしても予算がかかってきますから政治的なマターでもあるかもしれませんが、その原点が、ここに示されたような政策を考えたことによって見逃されていくような方向に行ってはいけないのではないかと思います。

○高橋座長
 いつも議論になっている大文字の政策評価と小文字の政策評価、政策評価法に従った政策評価の話と、かなりファンダメンタルなレーゾンデートルの話とをどう整理しながらここで扱うか。そこに関わるとちょっと大変な議論ではあったけれども、この問題に対する感覚をお持ちの上で、自分たちの政策評価をどうするかがあるかなというのがコメントの趣旨だと思います。これだけでも1時間半ぐらいかかってしまうので、山田委員からポイントを一言ずつお願いいたします。

○山田委員
 私の質問は2点あって、指標3に関するものです。指標3は最低賃金法により、地域や産業の状況に応じて賃金の最低額を設定し、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善を図ることに絡めた指標だと思うのですが、市町村広報誌への掲載割合、しかも80%と低く設定していることでどれぐらいの効果があるかが見えにくいので、もう少しダイレクトな指標を考えられないのかというのが1点目です。
 2点目としては集計中という指標1もありますが、仮に経済の先行きが良くなければ、残業も減ってこうした数値も低くなっていく、指標2については前年度と同じ、指標3については落として設定している中で、予算について見直しの上増額とされております。増額する根拠については聞き漏らしたかもしれませんが、説明の中ではわかりにくかったので、再度お伺いできればと思います。

○高橋座長
 時間の関係もありますので、まとめてということで菊池委員からお願いいたします。

○菊池委員
 各委員の質問と重なるのがあるのですが、先ほど梅田委員が言われたことに関係して、行政事業レビューをやらせていただいた関係から、どうやって切り分けるのかがちょっとイメージできないし、それが本当にいいことなのかという疑問があるのです。例えば、先ほど福田委員からあった指標1の116億円減っているというのはどうしてか、何件指導が入っているのか。もし、ほかの業務で半減していたとしたら、実績値も半減するのはやむを得ない、当然という面もあります。経済の状況が原因かどうかは分析できないですし、それは事業の運用面なので行政事業レビューでやるのだから、ここでは出しませんという意図があって、このような指標だけが出ているのか。1つは、どのぐらい指導が入っているのかということをお聞きしたいのですが、どうも行政事業レビューとの兼ね合いが非常に難しいという感想を持っています。私は政策評価の専門家ではありませんが、これまでは政策評価の専門の先生方が、どちらかと言うと政策評価の手法のあり方といったことを一生懸命議論し、それによって改善されてきた面があるように思うのですが、これだけ人数も増やして中身をきちんと議論しますという体制になった段階であれば、まさにこの政策評価の中で、かなり突っ込んだ議論ができるのではないか。さらに、運用面はここではやりませんと言われると、非常に難しいなと、まず指標の評価の仕方のところで考え込んでしまったわけです。

○河北委員
 座長は我々は中目標の評価をすると言われたのですが、それとは全く違う話をしたいと思います。400万事業所で5,000数百万人を同じような基準をもって監督をするという仕組みの問題ですが、これは法律に則って、国直轄の機関としていくつかのものが配置されていて、まさに、国の出先機関になっているわけです。本省の役割と地方自治体の役割をもう少しきちっと整理して、仕事を地方自治体に委託したほうが、労働は地域の特性というものもありますから、そこの仕組みを変えていくことも考えていいのではないかというのが1つあります。国民に契約概念といったものを子どものころからきちっと教育することが大切ではないかと思います。

○高橋座長
 團野委員、お立場から一言お願いいたします。

○團野委員
 簡単にお話いたします。連合で総合労働を担当していますので、どうしても一言申し上げたいと思います。施策展開の施策の中身と、結果として測定指標をどのように設定していくかという関わりをもう少し議論しておかなければいけないのではないかと思います。例えば、全労働者5,200万人のうち、1,700万人強が非正規になっている、しかしながら、事業は届出制になっていて、ある平米さえあれば事業展開できる、このようになっています。しかもそこでは社会保険の適用を受けていない労働者が現実にいる。そういった状況をどのように変えていくのか切り口を少し変えて、例えば正規雇用で労働基準法をいかに守るかという施策の展開と同時に、増えている非正規の人たちをどのように正規化し、保護していくかという視線で、施策をどう展開していくか、そして指標としてはどのように考えていくのか、そのような切り口が今必要になってきているのではないかと思います。
 先ほど山田委員も言われたように、最低賃金についても、この数年間で相当上がってきて、4年間で57円、全国平均は730円まで上がってきました。やっとこさという感じで、昨日もここで中央最低賃金審議会を朝11時半までやりましたが、現状は生活できないのです。生活保護水準より低いということで、後ほど施策もありますが、生活できるレベルまでどう上げていくかが愁眉の課題ではないかと思います。ここは使用者側と全く見解が違いますので何とも言えないのですが、測定指標としては、例えば未満率というのがあって、1.5、1.6%で違反している企業がどのぐらいあるかを示した数字ですが、そのような直截的な数字がいいかどうかわかりませんけれども、そのようなものも含めて測定指標の設定ということで切り口を少し変えて、施策展開との関わりを考えるべきではないかと思います。

○高橋座長
 お答えできにくい大質問もいろいろあったのですが、私も今のことについてちょっとコメントしたいと思います。やはり、測定指標の選び方と問題の大きさというか、そこら辺にかなりギャップがあるなという感じがあります。政策評価ということを考える上では、その辺の議論はもう少ししていただかないといけないかなと。今日お出しになられた議論は、この測定指標では到底表れようがない深く、広い問題があります。根っこの問題で、労働基準監督署の監督官はこれでいいのかみたいなことは、昨今の流れというか、そういうことができないことによって政策の停滞があるのではないかという指摘もありましたから、これは大問題のほうの政策ですが、この場からいっても、測定指標が問題に肉薄しているのか、有識者会議として申し上げるべきかなり大きい問題である、そのような指摘がこの問題に即して言えばあったのではないかと思っております。予定時間をだいぶオーバーしておりますので、縮めてご回答をお願いしたいと思います。回答しづらい話もあるような気がいたしますので、コメントでも結構です。

○労働基準局労働条件政策課賃金時間室副主任中央賃金指導官
 1点だけ、山田委員の最低賃金制度の広報について、市町村広報誌だけではなく、例えば新聞広告、ウェブサイトなどいろいろあると思うのですが、広報誌は無料で掲載していただけるので、コスト的にいちばんやりやすいわけです。もちろん、新聞広告やウェブサイトといった辺りも今できる範囲ではやっていますが、そのときどきの予算の状況によって削減されたりといったことがありますので、現在は市町村広報誌をいちばんに取り上げてやっているということです。

○労働基準局監督課長補佐
 菊池委員からご質問いただいた監督実施件数ですが、定期的な監督と災害時に監督に行くことと、一度監督に行って、きちんと直っているかどうかを見に行くことと、申告監督と言って、労働者から労働基準法違反の所で働いているという申告を受けて行く監督とをすべて合わせて、平成22年は17万4,533件実施しております。

○高橋座長
 ありがとうございました。大変な課題であるということの現れかと思います。いろいろな角度からご意見をいただきました。あと5つ残っておりますので、もう時間もありませんので、すみませんご苦労さまです。メインテーブルの入れ替えをお願いします。

?雇用均等・児童家庭局

○高橋座長
 それでは次の議題、「児童虐待防止や配偶者による暴力被害者等への支援策を充実する」というテーマについて、ご説明をお願いいたします。

○雇用均等・児童家庭局総務課虐待防止対策室長
 雇用均等・児童家庭局の虐待防止対策室長の杉上です。また、子どもの施設の関係を所管しています家庭福祉課長の高橋、それから母子世帯等の対策をやっております竹林が同席しております。時間の関係もありますので私が一括してご説明申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
 実績評価書の7頁以降となっております。またポンチ絵については後ろのほうに付けておりますが、適宜いったり来たりすると時間の関係がありますので、まず実績評価書のポイントをご説明した上でポンチ絵の説明ということでやらせていただきたいと思います。
 施策目標は座長からご紹介ありました「児童虐待防止」それから「配偶者による暴力被害者等への支援」ということで、いわゆるドメスティック・バイオレンス(DV)と言われるものです。施策の概要に目標を3つ掲げさせていただいております。1つ目は児童虐待の発生予防から早期発見・早期対応の体制を充実することです。虐待については毎年増えている状況にあります。その中でやはり早めに見つけて早めに対応するというのが重要かと思っております。
 2つ目は虐待を受けた子どもの保護・支援のための体制を整備すること。早めに対応するといっても保護者から引き離すべき子どもが現におります。正直なところ手遅れになったケースもあるわけで、そうした者の保護・支援をしっかりしていくということで、この2つは虐待問題として密接に繋がっているということです。
 3つ目はDVの対策、体制を整備するということです。施策の背景・枠組みのところですが、児童虐待への対応について、まず12年に児童虐待防止法が出来ております。これは従前は児童福祉法という戦後すぐに出来た法律の中で要保護児童、いわゆる保護者がいない児童であるとか、保護者に監護させることが不適当な児童というような対策でやってきたわけですが、12年に虐待の社会問題化等々により、特別な法律が議員立法によって出来たということで、16年、19年に改正されています。また、ここに書いておりませんが、今国会において「民法等の一部を改正する法律案」が成立しております。これについては、民法における親権制度と児童福祉法の関連部分について改正をしております。そうした中、先ほど言った早期に見つけて早期対応という部分でいうと、市町村の役割が重要ではないかと我々は思っており、そういったことをここに書かせていただいております。内容についてはまた後ほどご説明したいと思っております。
 DVについても同様で、これは夫からの暴力等々これも社会問題化して、13年に法律が出来たということで、子どもとか女性、いわゆる社会的に弱い立場の人をどうやって守っていくかというのがこの施策の大きな柱となっているわけです。予算額は23年度877億という大変大きな数字になっています。大きくいうと、子どものための施設に対する運営費の助成が大体830億程度で大部分を占めています。児童相談所とか婦人相談所という名称を聞いたことが各委員にもおありかと思いますけれど、国と地方の役割の中で一般財源化して交付税の世界になっており、そういった数字はこの中に入っておりません。
 重要施策ということで「子ども・子育てビジョン」が22年1月に制定されております。「子ども・子育てビジョン」は、保育所の整備、放課後児童クラブの整備が大きな柱になるわけですが、我々の子どもを担当している課としては、支援の必要な子どもの対策が重要だと思っております。そうした意味からこのビジョンの中にも関係部分として書かせていただいておりますけれども、子どもの虐待防止に関連したような指標がいくつか目標値として設定されており、それに向かって我々は努力しております。
 具体的に測定指標として5つを掲げています。1点目は子どもを守る地域ネットワークの専門職員を配置している市町村の割合です。後ほどポンチ絵でご説明いたしますが、市町村において虐待対応をやっていただく中で、設置率については9割を超えていますが、なかなか市町村の力が弱いということで、ここの指標としてはいろいろな指標の出し方があると思うのですが、外形的にわかる専門職の配置ということで目標値を26年80.0%としております。
 2、3、4については虐待を受けたお子さんをはじめとして、ご両親がいないお子さん等々、先ほど申した子どもの施設となるわけですが、例えば指標4で、「里親」という言葉があります。これは施設ではなくて、ご家庭でお預かりいただくという制度です。大きな施設について、いま申し上げたとおり虐待を受けたお子さん、あるいはそれ以外にもちょっとした障害があるお子さんといった、お子さんの多様化という言葉がいいのかどうかわかりませんけれども、いろいろなお子さんがいるということで、なるべく可能な限り家庭的な環境におくことが、まず施設をそういうようにもっていくことが必要ではないかということで、小規模グループケア、あるいは地域での小規模児童養護施設として、簡単にいうと、ケア単位を小さくしていくということについて箇所数の目標値を設けて、それを目指しているというのが2、3番です。
 4番は里親委託の実施率の向上で、目標値16.0%となっています。これはいま申し上げました保護を要するお子さんには、里親というのが非常にいいのではないかというように我々は考えております。施設が絶対駄目という気は全くありませんけれども、欧米との比較でいうと、制度自体が異なる部分があるので単純に比較はできないのですが、アメリカでいうと8割程度が里親で、イギリスは6割程度、こういったものと比較してもあまりにも低いということで、これを誘導していくということです。
 5番は配偶者からの暴力、被害者からの来所相談件数で、数の問題を指標で入れさせていただいております。DVについては、なかなか相談しにくいという面もありますので、この指標については前年を上回るという設定をさせていただいております。
 次の8頁は、いま説明したものの有効性の評価ということで、1から5については数字的には上がってきているということです。評価の総括では、それぞれ数字としては上がっているのですが、まだまだ課題があると我々は思っております。市町村での虐待対策は申したとおり設置数だけではなくて、機能を見ていく必要があると。それから子どもの施設等での処遇ということで、これ以外にも家庭的な環境におくというようなこと、あるいは入っておられるお子さんが多様になっていることについて対応していく必要があるということ。またDVについても同様に、同伴された子どもの保護をどう考えるかとか、いろいろな課題があると考えております。これら一朝一夕で解決するものではないのですが、そういったものについて対応していくという考え方でやらせていただいています。
 次の9頁は虐待防止のシステムで、いま市町村と児童相談所の二層構造という形になっています。これは虐待相談対応件数の増加等に伴い、児童相談所だけでは対応しきれないという部分、あるいは虐待に至るまでのケース等を身近な市町村で対応していくという考え方でこうなっているわけです。ここの市町村の機能の充実が必要だと考えており、これを図式で示しております。
 10頁のネットワークは、関係機関が連携して、個別個別のケースについて対応していくということです。
 11頁は施設の小規模化と家庭的な養護の推進とで、先ほど申し上げたものが上の箱の中の、施設から小規模のグループケア、地域小規模児童養護施設といったものに進めていくことが必要ではないかと考えています。先ほど里親等委託率ということを申しました、下の箱の真ん中に、分母がここに書いてある数字のお子さんの数、分子が里親+ファミリーホーム、これが10.8%になっていますが、これをもう少し進めたいと考えております。
 最後に12頁の、DV被害者の自立支援への取組みとして、被害を受けた女性に対して適切に保護・支援をして自立に向けてやっていくということで、関係機関等いろいろあるわけですが、そういったものと連携を取りながらやらせていただいております。
○高橋座長
 ありがとうございました。委員の皆様からいまのご説明についてご意見をいただけたらと思います。

○渥美委員
 ご説明いただいてありがとうございました。私自身が18年前からずっと地域で週末に子ども会の活動をやってまいりました。1,800人ぐらい子どもと出会ってきて、虐待を受けている子が増えているというのを実感しています。あるお子さんに関しては、完全にネグレクトされているので、児童相談所に繋いでいまは施設にいます。そうした活動の中で感じてきた問題について、いまなさろうとしている施策の方向性というのは正しいと思っています。
 一方で、ちょっとご質問があるのですが、里親は典型ですけれども、家庭的な環境でという大きな方向性は正しいと思ってはいるのですが、一方でご案内かと思いますけれども、先日、性的虐待が起きていますし、そもそも小規模化というのは、目が届きにくくなるという要素もあって、性的虐待に関しては論外だと思うのですが、一度傷ついた子どもを更に傷つけるようなことですから。
 ただ、傷ついている子どもたちは虚言癖がある子もいますから、その申告どおり受け止めていいのかは微妙な問題でもあるので、今後小規模化を進めていくに当たって、そうした問題、小児性愛者が混ざるリスクはゼロではないと思いますので、どうしたらそれをヘッジできるかをずっと考えてきています。子ども専門に活動をしている方の中には、そういう性癖をもっている人は、子どもと一緒にいる環境においていたら必ず目の動きとかで、この人はちょっと、というようにわかるというような、学童とかで活動している人たちにはそう言っている人もいます。そうではなくて隠そうと思えばいくらでもポーズはつくれるという人もいます。ですから事後の対応以前に、事前に申告があった段階でのふるい落とす方法と、事故で被害が起こってしまったときにそれが真実かどうかをどう見極めるのか。こういうのは1件でも2件でも起きてしまうと、なさろうとしている施策の方向性が大きく傷ついてしまう、信用性が損なわれることだと思いますので、そこら辺をどのようにお考えかを教えていただければと思います。

○雇用均等・児童家庭局家庭福祉課長
 里親とか施設も小規模化をしていくと、おっしゃるような懸念が非常にあります。しかしながら小規模化を進めていかなければいけないということです。ではどうすればいいかということですけれども、1つは研修です。里親も以前は里親の情熱だけでやっていたのですが、いまは里親研修として、養育里親研修を1週間ぐらいやっております。それから定期的に研修をやるということもしています。
 もう1つはチームで仕事をするということです。小規模化してグループホームになるとそこだけでということで里親が閉鎖的になったりします。やはり施設全体で総合チェックといいますか、一人ひとりのワーカーを孤立化させないような風通しの良い組織運営があります。
 もう1つは子どもが意見表明をできるような環境が大事です。いろいろな疑問を言えるとか、言わないで無理して、言うと追い出される心配で言わないというのがいちばんいけないので、そういうような環境づくりと取組みで、できるだけ困ったことが起きないような努力をしております。

○河北委員
 私も子どもの心のケアというのは非常に関心をもっております。我が国で絶対的に足りないのは専門的なカウンセラーだと思います。市町村への専門者の配置というのはまだ60%ぐらいと書いてありますけれども、そんなものではないと思います。チャイルドアビューズと、子どものころに虐待をされた子どもは、自分が大人になって子どもを産んで、それをまた繰り返していくというような悪循環がありますから、一生涯専門的なカウンセリングを受けていくということが非常に大切なことなので、そこの施策をもっと充実させることは絶対的に必要だと思います。

○菊池委員
 2点あります。この指標についてですが、施策の目標、そして小目標との関係で体制整備ということなのですが、小規模化は賛成ですけれども、全体としての虐待を受けた子どもの支援体制の整備という目標との関係でいうと、指標としては小規模グループを増やしていきますというだけではなく、そもそも児童養護施設等も含めた養護児童全体の処遇がどうなっているのか。直近の児童養護施設の子どもの数は書いてありますけれども、それは増えているのか減っているのかというのは指標としてはないので、小目標、目標、施策目標との関係での適切な指標がもっとほしいなという感じがします。
 それとの関係でいうと、DVと児童虐待も重なっているということで、例えばこれもあとの資料には出ていますが、母子生活支援施設とか乳児院とか、母子生活支援施設も大半がいまDVのお母さんと子どもであると。でもたぶん母子生活支援施設の数は減っていますよね。そういうのをどう評価するのかとか。だから全体としての施策目標との関係でいまの現実の個別の施策はどうなっているのかは、これだけの5つの指標では見えないと思うので、もうちょっと工夫していただけないかというようなことが率直なところです。

○野川委員
 では1点。事前の予防と事後のケアによってこの政策は達成されると思いますが、そのバランスが必ずしもよくないと思うのは、事後のケアについては極めてきめ細かく提供されておりますが、事前については徴候が見えてからの対応になるのではないかということです。例えば専門職員の配置も、何かあるようだという信号が見えてからの対応という気がするのです。ほかの指標の2から5までは基本的には実際に起こってからそれの拡大を防ぐとか、あるいは救済ケアをするということに役立ちますが、本来の防止ということを考えたときに、この最後にあります例えば内閣府の「子ども・子育てビジョン」などとの連携が課題となるでしょう。
 児童虐待が起こりやすい家庭というのは、類型としてある特徴が見られることがよく言われております。特に母子家庭で、そこに母親のボーイフレンドが入ってくる場合が、1つの大きな類型となることは明らかですから、そういう意味で児童虐待が起こりやすい家庭類型にどのような防止の対応ができるかを、まさに内閣府等の関係部署と連携して、ある政策としてこちらができることを立てるということは可能ではないかと思いますので、そのバランスをもう少し考えていただければと思います。

○高橋座長
 ありがとうございます。いまのいくつかのご質問についてお願いします。

○雇用均等・児童家庭局家庭福祉課長
 まず1つは心のケアについての施設のあり方です。今後は親子分離をして施設内で子どもをケアするだけではなくて、その地域の家庭に復帰したあとや、施設に入る前とかそこの地域を見る施設として、心理療法担当職員や、心のケアをできるような職員の配置、あるいは家庭復帰したあと大きくなってからの、実家的な機能など、そういう面での頼れる施設変えていかなければいけないと、こういうような、今年の課題と将来像を議論してまいりましたけれども、そういう方向感を思っております。
 それから施設の全体像は見えないということですが、確かにこの指標は絞った指標であり、全体像は見えにくいかと思います。児童養護施設でいえば近年数は増えておりまして、以前平成13年に551箇所がいまは587箇所で、610箇所まで増やす目標を持っておりますが、数は増やした上で1箇所当たりのサイズは小さく、家庭的養護を増やしながらという意味で、全体図としては非常に、いろいろな指標が必要なのですが、その中で家庭的養護という典型的な指標を選ばせていただいたということです。
 DV、母子生活支援施設ということで、母子生活支援施設がいま減っているのは、以前は貧困母子に住む場所を提供するという役割が多くて、戦後しばらくの間は600箇所ぐらいあったのが段々減ってきています。いまはDVのための緊急避難場所に位置づけが変わってきて、そういうようなことで活用している施設はかなり利用率が高いと。ただ従来型の住む場所の提供施設となると、むしろ公営住宅のほうがいいとかということで、非常に利用率が低い施設もあると。そういう意味で、役割の入れ換えにきちんと追いついていくように、そういう方向感をもってやっていきたいと思っております。

○雇用均等・児童家庭局総務課虐待防止対策室長
 まず、心理職の関係です。いま高橋課長の方から施設での話をされました。私の方どもは児童相談所あるいは市町村という関連で申しますと、市町村に心理の専門職がいるかというと、それはなかなかおりません。ここの考え方ですが、市町村中心と申し上げましたが、何でもかんでも市町村とは考えてはおらず、難しいケース、長期的にケアするケースは児童相談所のかかわりが必要だと思っております。児童相談所に児童心理司がいるわけですが、直近の数字でいうと、全国に200余の児童相談所に1,162人で、少しずつではありますが人数は増えているという状況です。
 もう1点、虐待の生じるリスクということです。これはなかなか正直難しい問題かと思います。すべての虐待について原因等について検証しているわけではありませんけれども、死亡事例について、社会保障制度審議会の中に専門委員会を設けて、検証という形でやっていただいております。その中でリスク要因というのが、今回はお出ししていませんが、いくつか入っています。そのときに問題なのが、1つが当てはまれば必ず虐待が起こるかというと、そんなことはなくて、いくつもの要素がかみ合うということ。決めつけるということがいいのか悪いのかの問題もありまして、なかなか難しい問題かなというのが正直言って、委員の質問をお聞きして思ったところです。お答えになっていないかもしれませんけれども以上です。

○高橋座長
 ありがとうございます。このテーマは大変深くて広い話です。このテーマは先ほどのテーマと違いまして、市町村のネットワーク、それから児童相談所のネットワークという多元的なネットワークの中で施策を評価するという、大変難しいテーマであろうかと思っておりますので、今日のご意見をまた参考にしてバージョンアップをしていただければというようなお願いということで、このセッションを終わらせていただきたいと思います。どうもご苦労さまでした。

?医政局

○高橋座長
 それでは、「医療需要に見合った医療従事者を確保する」というテーマで、担当の課から10分以内でご説明をお願いして、その後15分程度ということでよろしくお願いします。

○医政局医事課長補佐
 医政局医事課の飯田と申します。よろしくお願いします。施策目標として、「医療需要に見合った医療従事者を確保する」ということで、小目標に「女性医師・看護師等の離職防止、復職支援を図ること」ということで、それを柱にしています。
 以下、後ろに付けているパワーポイントでご説明させていただきます。医師不足問題については、近年この問題が顕在化しまして、この会議においても2年前に重点施策として、医師不足問題ということでご議論いただいています。
 医療従事者の確保については、2010年に閣議決定された、ここに載せている新成長戦略においても、医療提供体制に関する今後の需要予測を踏まえたグランドデザインを策定するということで、その医療提供体制の重要な要素の1つとして、マンパワーを含むということで書かれています。
 2頁目ですが、民主党のマニフェストにおいても、「地域の医師不足解消に向けて、医師を1.5倍に増やすことを目標に、医学部学生を増やします。それから看護師など医療従事者の増員に、引き続き取り組みます」ということで、掲げられています。
 また、3頁目ですが、看護職員の確保については法律で定められていまして、「国と地方公共団体がその確保を推進することに努めなければならない」とされていまして、これらの規定に基づいて看護師確保対策を行っています。
 本日ご議論いただく施策につきましては、医師不足と一口に言いましても、医師の総数の問題から、それをどう配分して、医療提供体制を構築していくかという、地域偏在や診療科偏在の問題等、様々な問題があります。本日ご議論いただく施策としては、医師の総数を主眼にしていまして、医師を養成し、養成した医師を定着させて、また離職した医師を復職させることで、医師確保を図るということを、施策として掲げています。
 まず医師不足対策につきましては、ご案内のとおり医療提供体制の構築の中で、様々な対策を行っていますが、養成の部分については医師不足の高まりを受けて、平成20年度から医学部入学定員の増員を段階的に実施しています。それで平成23年度の定員は、去年度から77名増ということで、8,923名となっています。
 次は4頁目になりますが、その中でも全医師数に占める女性医師の割合が増加傾向にあります。平成20年時点で、およそ18%を占めるということ。また、医学部の入学者に占める女性の割合も、約3分の1となっています。
 女性医師については、医師として就業している割合については次の5頁になりますが、医学部の卒業後、年々減少傾向をたどりまして、卒後10年から20年にかけて女性医師の減少幅が大きくなっています。いわゆるM字カーブの現象が現れています。
 これについては出産・育児により離職していることが、その要因の1つと考えられますので、この時期の未就業の女性医師に対して、引き続き離職防止や復職支援を図っていくことで、医師確保に繋げていくということが重要になってくると考えています。
 この女性医師確保について、ここに事業を2つ掲げています。6頁と7頁になりますが、まず1つ目に女性医師支援センター事業ということで、日本医師会に委託して、平成19年に開設しました女性医師バンクという所で、再就業を希望する女性医師の離職相談と就業あっせん、これは職業安定法に基づくあっせんをしています。合わせて下の再就業講習会事業ということで、女子学生のキャリア継続への講習などを行っています。
 7頁目にもう1つの事業ですが、これは都道府県への補助事業でして、都道府県に相談窓口を設置して、育児や勤務時間などの悩みに対して助言を行っています。合わせて下の★の所になりますが、都道府県から病院に依頼して、再就業を希望する医師に対しての実地研修を行うとか、病院内での勤務環境の整備についての支援などを行っています。
 続いて8頁の看護師確保対策ですが、看護職員については就業数を見ていただきますと、増加し続けています。高齢化に伴い、需要も伸びていまして、第7次看護職員需給見通しに関する検討会が昨年12月の検討会で、平成23年から27年まで、新たな需給見通しをとりまとめていまして、平成23年に140.4万人に対して、平成27年には150.5万人と、およそ10万人の増加が見込まれています。看護職員についても、引き続き確保のための対策が必要だということです。
 確保対策として9頁になりますが、これはその確保対策の1つです。ニーズに合う看護師を養成して定着させ、再就職をするということが、看護師の確保対策になってまいりますが、その再就職の支援の部分についての事業です。
 このナースセンター事業については、日本看護協会が事業主体となりまして、平成5年から開始しています。都道府県のナースセンターと連携して、離職した潜在看護職員の再就業を実現しています。このように、医療従事者として養成した人材を離職させない、また、辞めてしまっても復職を支援することで、人材を確保するということの施策を説明しました。
 測定指標としては、実績評価書に4つ載せています。主にこれは医師数、看護師数の推移になっていまして、厚労省の統計情報部で三師調査、医師、歯科医師、薬剤師調査というものを2年に1回行っていますが、この数で施策の効果が図られたかどうかを見ています。測定の効果の結果としては、就業医師数、病院勤務医師数、就業女性医師数、また看護職員数とも増加しているということになっています。
 今後の方向性として、女性医師の離職防止と復職支援については、いままでも都道府県に対して意見・要望の調査、また、厚労省内に出来ましたアフターサービス推進室と連携して、ヒアリングなどを行っていますので、その結果を見ながら、現場のニーズに応じた施策を展開していきたいと考えています。
 また、看護職員についても需給見通しが出ましたので、それに基づいて着実に看護師確保を実現してまいりたいと考えています。以上です。

○高橋座長
 ありがとうございます。これも大変大きなテーマですが、委員の皆様から、いまのプレゼンにご意見を伺います。

○河北委員
 このために呼ばれたのだろうと思いますので、私は約30年、こういうことを専門にやってきたのですが、まず厚労省の施策は、基本的にかなり間違っています。それで、間違っていないところは、既存の人たちに、いかに有効に現場で働いてもらうかというところが大切だと思うのです。
 それで絶対数の問題よりも、偏在の問題ですよね。偏在の問題で、地域別偏在と科別の偏在というのはよく言われていますが、業態別偏在が言われていないのです。業態別偏在というのは、勤務医として勤務を続けるか、あるいは自分で診療所を開業してしまうかというところですが、診療所の数は、全国では決して不足していない。ただ、これも地域別の偏在があるということは、あるのだろうと思います。
 やはり施策の中心は、1つは家庭医を育ててこなかったこと。これは日本医師会の責任です。日本医師会が絶対的に家庭医というものを育てることに反対した。かかりつけ医という何の根拠もない言葉を使ったことに、まず1つは問題があって、家庭医をきちんと養成することが、地域別偏在を是正することに繋がっていくのだろうと思っています。
 それから2つ目ですが、看護師の問題は、いま大学にかなり看護師が集中してしまっている。それで7対1を、さらに日本看護協会は5対1に変えていきたいということを言っていますが、そんなことをしたら地域の中核病院は総崩れになってしまうということで、できましたら7対1、あるいは5対1、あるいはICUやCCUに集中的に看護師がいるという所は、病棟別の施策に切り替える。ですから、いま病院単位で7対1という施策がありますが、病棟別にすることが大切だろうと思います。
 それから看護師のことに関して、特定看護師ですが、もっと看護師の規制緩和をして、看護師にも判断の責任を持たせて、管理責任を持たせる。その代わりに、管理をするけれども、看護師のもとにいろいろな仕事ができるような規制緩和と、看護師の専門性を高めることが大切だろうと思います。
 そしてもう1つ、業態別偏在に関しては勤務医が足りない。診療所の問題というのは、絶対数は足りているわけですから、勤務医の勤務環境を変えることが非常に大切であって、勤務医が生涯勤務を続けたいというような環境作りをすることであって、これは女性医師の問題だけではないと思いますので、是非そこは重点的に政策を集中していただきたいと思います。

○山田委員
 同じく私も身近に勤務医が何人かおりますが、やはり過重な労働というのは、統計データを取ってみても明らかです。こうした過重な労働というものが、もし勤務医の離職に繋がっているのだとすれば、過重な労働をいかに減らすか。特に宿直などを通じた、何十時間も連続した勤務というのは、若いうちは何とかなるかもしれませんが、ある程度の年齢に達したら、なかなか難しいところもありますので、そうした指標も、もし離職に結びついているというのであれば、結びついていると思いますが、この指標に含められたらいかがかなと考えます。

○福田委員
 私も2点お話したいのですが、1つはそもそも施策目標が「医療需要に見合った医療提供者の確保」ということなので、医療需要のほうをどう考えるかで、いま河北委員からもありましたが、そもそも需要との関係で見るときに、その地域とか、専門家とか、業態とか、そういうものについて入っていないというのは、とても気になりました。
 もう1点は指標についてですが、医師数自体、あるいは女性の医師数自体が増加する、これはいいことだと思うのですが、目標値の設定について、前回調査時以上というのは、あまりにも低いのではないかという気がします。
 いろいろな対策をとって、もちろん増やさなくてはいけないのですが、例えば医師を1.5倍とか、看護師をあと5年のうちに10万人増やすという目標からいくと、このペースでは全然無理なわけで、一方で医学部定員を増やしたとしても、もちろん教育年限がありますから、すぐに医者が増えるわけではないので、目標値はこの書式からいうと仕方ないのかもしれないのですが、もう少し将来的にこういう計画で増やす、いまはこの段階なのだという、つまりいまの段階で施策としてとっている医学部定員の増加などは、この範囲内では反映されない、目標値や実績値に反映されないのだと思うので、そこはもっと先のこの時点で反映されるのだというのがわかるようなものも、少し入れていただけるといいのではないか。
 ただ、それでも前年以上という目標で、しかも後ろのほうの「それに基づく」と有効性としては、前回調査から増えているからいいのだというのは、ちょっと目標が低いのではないかという印象を持ちますが、いかがでしょうか。

○河北委員
 医師数1.5倍というのは、私は絶対反対です。これは将来、大変な問題を起こしてしまうということで、自分たちの養成能力を1.5倍にするということではなくて、いちばん簡単なことは海外の資格者をどのように受け入れるかということで、これは調整可能なのです。不足しているときには海外から引き受けて、余ってきたら門戸を閉じるということで調整できるわけですから、日本の国内で医師の養成数を1.5倍にするということは、将来的に非常に大きな問題を引き起こすことになりますから、私は絶対に反対です。

○高橋座長
 医療政策の全体のフレームワークに対する、かなり厳しいご意見をいただいて、その中でこの評価をどうするかという。

○篠原委員
 これは就業医者数の統計をとっていますが、勤務形態がいろいろあるということは、時間でやるべきではないかと思います。例えば大学病院の医者は、研究もやるし、教育もやるし、医者としての診療もやりますよね。あるいは1週間に1日か2日しか働かないから、医者数では実態がよく見えないのではないかという。だから時間数の統計が、ちょっと大変なのですが。
 それともう1点、私は親戚に83歳のおばあさんがいるのですが、3年前に旦那が亡くなって、これからきちんと病院にかかろうと言ったら、医者から何と言われたかというと、もう加齢だからあきらめてくださいと。
 私は実はスポーツトレーナーの訓練を受けていますので、やっていると80代でも、こんなにすごい生命力があるのかと感じますので、やはり80代の医者が診ないとわからないのではないか。というのは、若い人が診たって想像できないよと。そういう意味では、やはり年代に合わせた治療というのはいるな、ということでは、年寄りの活用というのは、私はあり得るのではないかという気がしています。

○野川委員
 医療需要が極めて多様化しています。そこで昔よく言われたパラメディカルスタッフのことがポイントとなるように思います。もちろん医師と看護師中心ですが、放射線技師、臨床検査技師、カウンセラー等、そういうものとの配置との関係で、その中心である医師、看護職員の増加を考えるという視点をもう少し出していただかないと、医療需要というのは医者と看護師だけの対応と見られがちなので、医療需要に見合った、医療需要の多様化ということに即した内容にしていただければと思います。

○渥美委員
 私はワーク・ライフ・バランスの研究者で、いろいろな業界を見ていますが、やはり医師、特に先ほど河北委員がおっしゃったように、勤務医の苛酷な就労環境というのは、すごく目立ちます。
 特に看護白書など、いろいろなベストプラクティスで取り上げられている女性医師活用で、大阪厚生年金病院など有名な所もありますが、私はいつもそういうのを見ていて、海外のベスプラが全然紹介されていないのが、もっと海外のベスプラを研究すると、もっと打開策があるのではないかと思います。
 イギリスはフィナンシャルタイムズとかサンデータイムズが半期に1回、企業を含めたあらゆる組織のワーク・ライフ・バランスのランキングというのを発表していて、2007年上半期の英国ナンバーワンが王立病院で、私はそれが面白いと思ってヒアリングに行きました。それで、いろいろなことをやっています。例えば女性医師活躍でITツールを使って、自宅にいても現場の医師を指示するということが遠隔医療に繋がって、その仕組み、枠組み自体を、いま他の医療機関へのコンサルで展開していて、ビジネスに繋げていたり、あとは先ほど河北委員もおっしゃっていましたが、外国籍の医師活用だったり、いろいろな形でもっと就労環境を改善できないかということを取り組んだ結果、従業員評価を入れたランキングなので、従業員がうちの病院は働きやすい組織だというところでナンバーワンになっているのです。
 ですから海外では、そんなに数が多いわけではないのですが、かなり女性が多い職場、看護師が多い職場で、取り組まざるを得ないという中で実際にやってきて、成果を上げている所がありますので、そういうのをもう少し展開すると、上の経営陣の方々の意識も変わるかなと思います。以上です。

○高橋座長
 ありがとうございます。プレゼンについては、女性医師、看護師等の離職防止、復職支援と、施策小目標の1に絞り込んでやっておられるのですが、やはりどうしても施策目標ベースと医療需要という大変コンプレックスなシステムの議論との連関で評価をしないと、どうもわからないというのが、基本的な委員の皆様からの質問の趣旨ということは、やはり個々の小目標になってしまいますと、その既存のルーティンのパフォーマンスをどう評価するかということになってしまうのですが、医療需要そのものの大目標から見ると、これは文字どおり1つの小目標であって、相互作用がものすごくあるので、そこら辺の配慮をした施策評価を、この評価をするにしても、そういう全体像との関係で評価しないと、本当の評価にならないのではないかというのが、かなり厳しい委員の皆様の共通の認識ではないかと理解した上で、ちょっとレスポンスをお願いします。

○医政局医事課長補佐
 ご指摘のように、まず医療需要をどう見込むかというところが、いちばん難しい部分でして、数年に一度、医師については需要見込みを厚労省でもやっていますし、昨年の9月ですが、各病院にどのくらいの医師が必要かということで、必要医師実態調査というものを行っています。
 また、先ほど野川委員からご指摘いただきましたが、チーム医療の効果といいますか、他の職種の方にやってもらうことによって、どのくらい医師や看護師の業務を効率化できるかということの効果も踏まえて、医療需要を見込んでいきたいと思っていまして、ご指摘いただいた点については、こちらとしても需要見込みのところで、これから検討していきたいと思っています。
 それから、業態別の偏在という部分についても、いまちょうど同じ時間に医療部会をやっているのですが、その中で病院と診療所の役割ということを議論していまして、医療提供体制全体についてどのように構築していくかという大きな議論は、そちらでまさにご指摘の部分をやっているところです。
 それから座長がご指摘のように、この「医療需要に見合った医療従事者を確保する」という大きな施策目標の中で柱としているのは、確かに女性医師、看護師等の離職防止という、かなり狭い部分ですので、他の施策との関連性も考慮した上で、評価をしてまいりたいと思っています。以上です。

○高橋座長
 どうしても手元に全体の政策の評価の体系表を持っていないので、他にどういう項目があったかというのが記憶にないのですが、やはり相互関連の中で個別政策を、政策評価法の趣旨に従って評価するということと、それから全体の大きな政策どうこうというか、これは先ほどのここの議論を、ずっと前から大文字の政策評価と、小文字の政策評価と、とりあえず切り分けて、全体の政策のデザインだとか、組み換えだとかというのは、かなり大きな議論ですが、ここで政策評価をする場合は、個々の施策目標体系に応じた、個々の推進部局の個別評価をどう議論するかという、そのテーマとの交錯がいつも起こらざるを得ない。ましてや非常に政策全体が流動的になって、環境条件が変われば変わるほど、既存の評価方法に対して、どうしてもいろいろな議論を出さざるを得ませんし、国と、ましてや主体が多様化しているとすれば、余計にそこら辺の議論がどうしても出てこざるを得ないという、そこら辺のことがいつも政策評価のこの議論をするとき、悩みながらずっとやってきたという、そんなことですが、まさにいまのテーマは、その試金石のようなテーマだったと思っているので、いろいろ課題は、これからまた議論を積み重ねなければいけないと思っています。
 それでは時間がまいりましたので、だいぶ押していますが、引き続き次ということで、入れ替わりをお願いします。ご苦労さまでした。

?健康局

○高橋座長 
 事務局と相談しますが、「難病対策、ハンセン病対策、エイズ対策を推進する」についてのプレゼンと質疑応答をしてから、少し休憩をいたします。27頁からお願いします。

○健康局疾病対策課長 
 疾病対策課です。どうぞよろしくお願いいたします。27頁、今日ご説明しますのは、難病対策、ハンセン病対策、エイズ対策です。施策の背景・枠組みで、まず難病対策は、昭和47年10月の難病対策要綱を踏まえて難病の定義は、原因が不明であって、治療法が未確立、かつ後遺症を残すおそれが少なくない疾患。経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず、介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担が大きい疾患に対していろいろな施策を実行しています。
 具体的には29頁の横の図です。いまの難病の定義に対して、まず難病の研究、難病の医療、難病の保健・福祉という分野別の対策を行っています。それぞれ簡単なご説明ですが、難病の研究はまさに研究事業を推進しているということで、研究の補助を行っているものです。難病の医療は、今回いちばん関係があるのは、?の医療費の自己負担の軽減、これは特定疾患治療研究事業で、患者さんの医療費の補助を行っています。そのほか難病の保健・福祉ということで、相談支援センターあるいは福祉的なサービスの居宅支援事業を行っています。この?について30頁、これが特定疾患治療研究事業、いわゆる難病の医療費助成の概要です。これについては実施主体は都道府県で、3.事業の内容は国が患者の医療費の2分の1を負担します。都道府県と国とが半分ずつの事業です。患者の自己負担は所得と治療状況に応じて、段階的な一部負担をお願いしています。
 対象の疾患は現在、臨床調査研究分野、いわゆる難病指定といわれるものですが、130疾患が選ばれていますが、その中から学識経験者から成る特定疾患対策懇談会の意見を聞いて、56の疾患が対象となって、医療費の補助を行っています。臨床調査研究分野の選び方は、下の参考に書いてある内容で、130疾患でここに書いてある定義で疾患を選んでいる状況です。
 27頁に戻ります。次にハンセン病に関してです。ハンセン病対策についてはハンセン病問題の早期かつ全面的解決に向けての平成13年の内閣総理大臣談話、またハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律及びハンセン病問題の解決の促進に関する法律ということで、これらの法律に基づき国はハンセン病及びハンセン病対策の歴史に関する知識の普及啓発による差別・偏見の解消、元患者の名誉回復等を図ることとされております。
 ハンセン病施策の全体像について簡単にご説明します。31頁、ハンセン病の施策は大きく分けて3つの柱立てがなされております。1が謝罪・名誉回復措置。これはシンポジウムを開催する、あるいは中学校にパンフレットを配布する。次に国立ハンセン病資料館の運営、これが評価の項目と関係している事項です。あるいは追悼の日に関する経費等があります。社会復帰・社会生活支援の項目は、療養所を退所した方に対する給与金の支給。あるいは非入所者に対する給与金の支給を行っております。3が在園保障ということで、これは現在国立及び私立ハンセン病療養所において入所者に対する必要な療養を実施する他、ハンセン病療養所の施設の整備を実施しています。こういう3本柱で行っており、評価の項目については、謝罪・名誉回復、ハンセン病資料館の運営に関する項目が挙げられております。
 27頁に戻り、エイズに関しては後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針において、エイズの発生の予防及びまん延の防止を図るため、国、地方公共団体、医療関係者及びNGO等が連携して、エイズに関する正しい知識の普及啓発及び教育、保健所等における検査相談体制の充実、患者等に対する人権を尊重した良質かつ適切な医療の提供等の施策を行うとされております。33頁が現在のエイズ予防指針に基づく3本柱です。具体的に普及啓発及び教育の中身では、国が中心となる施策として、基本的な情報、正しい知識の提供、普及啓発手法の開発、マニュアルの作成。地方自治体が中心となる施策に関しては個別施策層に対する普及啓発ということで、青少年、同性愛者への対応。また2として検査相談体制の充実、こちらが評価の項目と関係する事項になっております。国が中心となるものについては、HIV検査普及週間を6月に創設する。検査手法の開発、検査相談手法マニュアルの作成。地方自治体が中心となるものに関しては、利便性の高い検査体制の構築、これは平日夜間・休日あるいは迅速検査等。年間検査計画の策定と検査相談の実施。3番目の柱立てとしては、医療提供体制の再構築、これは国が中心となるものとして外来チーム医療の定着。病診連携のあり方。地方自治体が中心となるものについては、中核拠点病院の整備をはじめとした都道府県内の医療体制の確保。連絡協議会の設置による病院間の連携支援といったものを施策として行っているのが現状です。
 27頁に戻り、予算については施策の予算額・執行額等に示したとおりです。
 測定の指標として、いちばん下に示しておりますが、指標1は特定疾患治療研究事業の受給者証交付件数で、これは難病医療費の助成を受けている患者さんの数になりますが、前年度以上ということで、平成18年度から22年度までこのようになっており、平成21年度が最新の値で約68万人が受給者証をお持ちになっております。
 指標2、ハンセン病資料館の入館者の数は、平成19年度からリニューアルオープンしておりますので、そちらからの数字を示しております。平成22年度が22,000人でこれは前年度以上という目標になっているので、平成20年度は若干増加しておりますが、その後は下がってまた増えてきている状況です。
 指標3は保健所等におけるHIV抗体検査件数で、前年以上という目標値が定められていますが、平成20年度まで増加しておりましたが、平成21年度、22年度と2万件ということで、減少となっております。
 28頁、有効性の評価に関しては、難病について受給者証の件数は年々増加しており、こういうことにより医療の普及・確立、患者の医療費の負担軽減ということで有効であると考えております。ハンセン病の資料館については、資料館の中で収集・展示をするだけではなく、元患者の方々の体験談等をお話いただくことで、取組みを行っており、これらのことにより普及啓発、差別・偏見の解消、名誉回復を図る上で有効だと考えております。またHIVについては、高い受検率、検査をしていただくことで早期発見、早期治療に繋がるということで、発生の蔓延防止に有効であると考えております。
 効率性については、特定疾患、難病については希少疾患ですので、一定の症例数を確保して治療研究に役立てることで、有効であると考えております。またハンセン病資料館については、こういう中核の施設を持つことで、効率よく事業が展開できると考えています。HIVの抗体検査についても、受検率の向上、匿名無料で行っており、感染の拡大防止に有効であると考えております。
 評価の総括は、難病については医療費の負担軽減あるいは医療の確立、普及という点で、重要な施策と考えておりますが、他方、この事業については、多くの疾患が対象疾患に入れてほしいという拡大の要望がある一方、超過負担の問題があります。これは国が2分の1のお金を出すことになっておりますが、現在都道府県が超過負担をする状況で、国は総事業の4分の1しかお金を出していない状況です。そういう課題もありますので、省内に「新たな難治性疾患対策の在り方検討チーム」を設けて、制度を横断的に検討しており、引き続き本事業を実施していきたいと考えております。
 ハンセン病については、ハンセン病問題の解決の促進に関する法律において、国の隔離政策に起因して、ハンセン病の患者であった者等が受けた身体及び財産に関わる被害その他の社会全般にわたる被害の回復には、未解決の多くの問題が残されているということで、そういう問題を解決するには偏見・差別のない社会の位置づけに向けて真摯に取り組んでいく必要があります。そういう点で資料館等の普及啓発事業は、非常に有効であると考えております。
 またHIVの検査体制については、早期発見・早期治療の観点で非常に重要であるということで、現在エイズ予防指針についても、5年で見直すということで、現在見直し作業を進めており、検査・相談体制の在り方についても、必要に応じて見直しを行い、本事業を実施していきたいと考えております。以上でございます。

○高橋座長 
 いかがでしょうか、委員の皆さまからご意見、ご質問をどうぞ。

○河北委員
 いくつかありますが、ハンセン病に関してはいちばんの問題は、人権を無視した法律がずっと引き続き施行されていたことが問題なので、この22年度の話ではないのですが、そういう科学的な根拠に基づいてらい予防法が廃止されなかったところに問題があるわけですから、ほかの疾患に関しても、それを参考にして今後も科学的根拠に基づいた施策が取られることが大切なのだろうと思います。ほかの国でらい予防法が廃止されていながら、日本だけが数十年間それを引き継いできてしまったところに問題があるわけです。だからこういう後の対応が必要になってきてしまったということなので、これはもう仕方がないと思います。ですから教育事業として、基本的人権に関して、やはりこういうことがあったということを国民に知らせていくことは、是非続けていっていただきたいと思います。
 それからエイズ予防法は、エイズの対策はほかの国に比べて我が国が突出して感染者数が未だに増え続けているのはなぜなのでしょうか。ほかの国は例えば、当時、私は1992年、1993年辺りでエイズの対策の対応をしたのですが、そのときにいちばん問題になっていた例えばタイとか、いくつかの国がありましたが、そういう所でも感染者の数は減ってきたわけです。ところが我が国だけは増え続けている原因は一体何なのでしょうか。

○高橋座長
 これはかなり重要な施策の評価の前提になるご質問なので、お答えください。

○健康局疾病対策課長
 特にHIVに関しては、諸外国では減少傾向にありますが、現状のいちばん新しい平成22年の報告で、HIVの新規が1,075、エイズの新規が469ということで、特にエイズについては過去最多と。併せて1,544件でこれは過去2位の値になっているというのが、数字としての現状です。これに関してはさまざまな考え方があると思いますが、まず1点は、個別施策と一般施策という考え方がありますが、いままでの施策的なものとしては、一般対策としてのエイズ対策に重きが置かれていたという現状があります。現在多くの発症を見ると、個別施策と言いますか、例えば同性愛者、あるいは今後そういうことが課題になるかもしれませんが、薬物の関係がございますので、そういうことに一定の政策的な重みをつけて今後実施していく必要があると考えております。それについては、現在検討している予防指針の中でもご意見をいただいており、反映をしていきたいと考えております。

○河北委員
 ということはほかの国はそれが達成されていると考えていいわけですか。我が国だけが達成されていない。

○健康局疾病対策課長
 ほかの国の増え方の数と日本の増え方の数が、かなりオーダーが違うということはあるかもしれませんが、日本では今後そういうことが重要になると考えております。

○高橋座長
 これは事務局にお伺いしたいのですが、いまのHIVもそうですし、特定疾患もそうですが、基礎的指標がないとわかりにくいです。一応ここに抗体検査の数が出ていますが、そのベースにあるのは累計の患者さんと毎年発見される患者さん、これは施策の基礎指標なのだけれども、ハンセン病はもちろんそれぞれの基礎数値はたぶんあるはずだし、難病はもっとそうです。その辺の記載の測定指標と基礎数値の関係はどうだったかと、昔に議論したような気がするのですが、何だかよくわからない。この実績評価表だけを見ていると、その辺のことがとても曖昧になっていて、測定指標だけポンポンと出ていて、それが本当に当たらずも遠からずと、先ほども隔靴掻痒というご発言もありましたが、その辺の関係はどのようにしていましたか。

○政策評価官
 例えばいまの難病、ハンセン病、HIVの関係では、28頁の下にある「参考・関連資料等」とあり、ホームページだけ書いてありますが、最終的にはこの実績評価書はすべてホームページに掲載されて、関連資料の所は必ずリンクしている。そこにいくと基礎資料集だけではないのですが、そこに飛んで見られるようになります。最終的な出来上がりの形はそういう形になっています。最初からこういうものをすべて打ち出して付けると、紙の厚さにしてこのようなものが出来てしまうので、本日はこの実績評価書とポンチ絵の説明になっております。出来上がりの姿はこういう基本的な所にリンクで飛べるような形で公表されます。

○高橋座長
 いわゆる指標体系、政策評価のための指標体系の議論はそれぞれの政策分野で相当整備されているもの、されないものがあるので、統一はできないのは承知の上なのですが、やはりその辺のことがわかりやすいという意味でどうなのかという議論が、冒頭の説明では国民にわかりやすく説明するという意味で、いろいろ議論がありそうです。このハンセン病、難病だけではない、すべていままでのプレゼンの共通のテーマかなと改めて思っています。少し気になりましたので申し上げておきたいと思います。ほかに何かございますか。

○福田委員
 私もこれらの対策はとても重要だと思いますが、評価のやり方としては少し不足しているのではないかと思います。先ほども座長がおっしゃいましたが、指標を見ると、例えば指標2でハンセン病資料館の入館者数とあり、後ろで評価されているとおり、これはある程度増えていくほうが普及啓発にはいいと思いますが、ただここに来られる方は限られていると思いますので、お話を伺っていてももっと広くこういういろいろな広報活動等は正しい知識を伝えるということでやられていると思うので、もっとほかの指標があるのではないか。あるいはHIVについても、これはあくまでも抗体検査の数、早期発見のためということだと思うのですが、より重要なのはもっとその手前での感染予防だと思います。やはりこれも伺っているといろいろとされていると思いますので、もっといろいろな指標が考えられるのではないかと思います。ご質問としては、実はここには3つしか挙げられていませんが、課内ではもっといろいろな評価の指標等を挙げられているのでしょうか。

○高橋座長
 何か回答はありますか。

○健康局疾病対策課長
 例えばハンセン病では、これは入館者という書き方をしていますが、来ていただくだけではなく、元患者さん等の協力も得て、外へ出掛けて行って、説明をしていただくという取組みもしています。バスを借り上げて来ていただくなど、そういう意味で資料館を広く活用していただくという趣旨のことは行っております。
 HIVに関しては、先ほどお話したように、検査と普及啓発と医療がありますので、例えば都道府県の中核拠点病院などでの取組みを進めるなど都道府県で空白地帯があれば、そこを埋めていただくなど、そういう取組みもしており、そういう数も一つの指標にはなるかと考えております。河北委員からも最初にご指摘がありましたように、発生動向調査も一つの指標になりますので、そういうものと組み合わせて考える必要があると考えております。

○福田委員
 なるべく数値化できるようなものは指標を考えられたらいいのではないかと思います。

○河北委員
 中核拠点病院の整備というのは、私が担当していた1993年から1997、1998年までと、いまとではどのくらい変わってきているのですか。変わってきているというよりも、もう一般的な慢性疾患として捉えてしまっているのか、それともHIVに感染ということは、かなり専門的にまだ担当するドクター、あるいは看護師等の配置が必要になっているのかどうかを教えていただきたいです。

○健康局疾病対策課長
 まず、体制については現在国立国際医療研究センターの中にACCという大きなセンターがあります。そのほかに全国を8ブロックに分けてブロックの拠点病院が8ブロック14箇所置いてあります。そのほかに都道府県の中にエイズ治療拠点病院がありましたが、平成18年に中核拠点病院を設けて、さらにきめ細かくやっていこうということで設けられた制度です。エイズの現状は、HAART療法が出来た1996、1997年以降どちらかというと急性で亡くなられるというよりは、むしろ長期に病態が続くというように、いままでの社会の認識とは変わってきております。ですから長期療養に関する課題も、大きな課題として挙がってきております。それに取り組むための医療体制のあり方をいま考えております。

○高橋座長
 政策評価の場合は、やはりいま大変大事なことをおっしゃったのですが、ニーズの構造が変わったときに、政策がレスポンスできるかというのは、ここの場なのかは別としても、かなり重要な課題だと思っています。取りわけ医療の場合はその辺が環境変化が激しいだけに、評価のあり方をどう考えるかはなかなか大変なテーマだと思います。これはむしろ次年度以降ワーキンググループでそれぞれの専門的な検討、評価書を読む段階でまたその議論が出てくるのかなと思いながら、お話を承っておりました。

○菊池委員
 1点だけ教えていただきたいのです。難病の関係で、4要素の中で発生機序がある程度解明され、治療方法が見つかる。それによりここから外れるという、要するに出口がある事業なのかどうかを教えていただきたいです。減らないとすると指標1で対象者数がどんどん増えていくのは、これはプラスで、政策評価としてはマイナスではないということになります。そこを教えていただきたいです。ただ仮に対象外となるとしても、現状の医療保険制度のもとでは、高額療養費のもとでは、1、2、3は当てはまらないけれども、4要件の4に当たる方は結局一般である月50万円以上の自己負担額で、難病に指定されるとかなり軽減されるのです。そこの格差が非常に大きいので、たぶんここから対象外となると、それはそれで非常に医療負担の面で大きな問題になって、その辺の政策のつなぎ目というか、その辺がうまくできていないのではないかと思うのです。その辺りはどうでしょうか。

○健康局疾病対策課長
 難病の患者さんというのは、医療にかかるというだけではなくて、例えば福祉サービスを使いたいということが出てくる。そうすると障害の手帳がなければ使えない方も出てこられるけれども、それを我々としては難病も福祉の事業でサポートしていくということがあります。さらに難病の患者さんが、例えば週3日は調子が悪いけれども、2日ぐらいだったら働けるというと、それは労働担当の部局で雇用の助成金のようなものを出していただいて、雇用を何とか難病の患者さんでサポートしたいと。同じように難病に関しては、先ほど委員がご指摘のように、普通の医療制度とどのように制度の方向性を一致させるか、難病という切り口でさまざまな制度が関わってきますので、そういう観点から先ほどご説明したように、省内に副大臣をトップとする新たな難病の検討のチームを設けて、制度の横断的な検討を進めているのが現状です。

○河北委員
 HIVとエイズの発症者に関する医療費の自己負担は、誰がどのくらい負担しているのでしたか。これは自己負担に関してはかなり補助が出ていましたか。HIV感染というのは、単なる性感染症の1つだと思っているのですが、そのことに関して、例えばHIVの感染者あるいはエイズの発症者に関する医療費というのは、国が負担をしているということはないでしょうね。

○健康局疾病対策課長
 薬害エイズについては、特定疾病ということで。

○河北委員
 透析などと同じ扱いですね。

○健康局疾病対策課長
 はい、そうです。

○河北委員
 ほかの感染者に関してはそういうことはないのですか。

○健康局疾病対策課長
 我々はその補助制度は持っておりません。

○河北委員
 ないわけですね。

○高橋座長
 ありがとうございました。時間の関係もあり、それではこのセッションはこれで終わります。休憩は5分とします。

?医薬食品局

○高橋座長
 それでは再開してもよろしいですか。引き続き「麻薬・覚せい剤等の乱用を防止する」という目標についての実績評価書のご説明を担当課からお願いします。

○医薬食品局監視指導・麻薬対策課長
 35頁の施策目標としては麻薬・覚せい剤などの乱用防止ですが、小目標ではこうした麻薬・覚せい剤の不正流通の遮断の推進と共に、医療用途の麻薬・向精神薬の適正流通の確保がまず、挙げられます。第2点では麻薬・覚せい剤等の乱用防止の啓発の推進です。第3点はのちほどご説明しますが違法ドラッグ、いわゆる脱法ドラッグの取締りの推進です。
 40頁ですが、これは最近の麻薬・覚せい剤の検挙人員の推移で、大体いま年間約1万5,000人が検挙されているということで非常に高水準です。政府全体としては薬物乱用防止五ケ年戦略を立てておりまして、41頁ですが、現在第3次で平成20年8月に策定されたものです。4つの目標があります。第1点目は未然防止で教育とか予防啓発などのもの、2番目では薬物依存・中毒者などの関連で再乱用対策、3番目が取締りの徹底、4番目が水際対策などで、私どもはこの政府の立てた五ケ年戦略、それから昨年、加速化プランが立てられておりますが、こういったものに基づいて各省庁が一丸となって薬物対策について総合的な対策を行っているところです。
 厚生労働省としては35頁に戻りますが、第1点としては、その目標にも書いてあります薬物の不正流通の遮断の観点から取締りの徹底を図ると共に、医療機関や薬局などでの医療用の麻薬・向精神薬の適正化への推進を図っています。それから薬物乱用を未然に防止する観点から薬物乱用の危険性の啓発をしています。さらに麻薬・覚せい剤などの使用のきっかけとなるような違法ドラッグの不正流通を遮断するために薬事法を改正して、指定薬物の制度を設けまして、その取締りの徹底を図っているところです。根拠法令はそこに記載のとおりです。
 予算の関連としては平成22年度を例にしますと、約13億5,000万円ですが、この内のかなりの部分があへんの確保で、実際には予算上は11億円で、執行上は10億円ぐらいがこのあへんのインドからの購入経費に当たりますので、残りの額が啓発関係の麻薬・覚せい剤対策になります。このほか、ここに記載はありませんが麻薬取締部の取締りの関係で、これは各地方厚生局に麻薬取締部があり、地方厚生局の計上になっていますので、これについては記載がありません。
 次に35頁の下ですが、測定指標で私どもは薬物事犯の検挙人数と主な薬物の押収数を挙げています。乱用防止の直接的な評価の指標はなかなか難しいものですが、こういった検挙者数、押収数は薬物乱用の実態のある程度の反映で、もちろん検挙者数そのものは氷山の一角になります。特に大麻についてはかなり水面下で多いということで、ある程度の指標の形で使わせていただいているところです。目標値はなかなか難しいのですが、徹底した取締りをすれば当然、検挙者人員数なども増えてきますし、また啓発などを一生懸命に推進していけば人員数も減少するということで、なかなか目標値は設定できないということで設定はしていません。
 36頁で、まず施策小目標の不正流通の遮断の関係は先ほど申しました約1万5,000人の薬物乱用の検挙をしまして、覚せい剤約310?などの薬物を押収しました。私どもとしてはその中身を非常に重要視しており、特に薬物供給の密売人、具体的に言いますと暴力団とかあるいは外国人グループ、イラン人、最近ではナイジェリア人などもいますが、こういった組織の壊滅、あるいは上位組織を叩くのは非常に重要ということで平成22年についてもそこに記載のような形で暴力団、それからイラン人、ベトナム人などの関連について摘発をしたところです。
 それから医療機関の適正管理の観点ですが、地方自治体と協力しながら医療機関、薬局等への立入などを行って適正管理の指導をしていまして、これも非常に麻薬とか向精神薬の不正流出防止を図る上で有効だったと考えています。
 それからあへんの関係については毎年、各製造業者に対して調査を行っていまして、必要な量を把握すると共に、これについては毎年、国が一元的にインドから購入をしており、これについてもしっかり管理することで乱用や不正流通防止で重要なことだったと考えています。
 次に施策小目標の2ですが、乱用防止の推進の観点です。44頁以降で、全ての小学校6年生の保護者、それから高校3年生に対しては、平成22年度で約229万部の啓発資料を配布していますし、また青少年を中心とした一般国民への啓発なども図っているところです。先ほどの40頁のいちばん下の欄に未成年者の検挙者数が挙がっていますが、近年は少しずつ下がっておりまして、広報活動の一定程度の効果が期待できると考えています。それから再乱用防止対策の推進の関係では、各ブロックで薬物中毒対策連絡会議を開いていまして、その中でいろいろな薬物依存に関する情報とか相談について意見交換を行う形にしていますし、また家族で薬物依存の人を持ったときにどういった対応をすればいいかというものについては「家族読本」を作成して必要なところに配布をすることで、こういった観点からも再乱用防止を推進するうえで有効な施策と評価できると考えています。
 施策目標の3ですが、これは46頁で薬物についていちばん厳しいのが麻薬で、これは譲受、施用、所持なども厳しく規制されているわけです。先ほど申しました違法ドラッグについては人体への摂取を標榜しないで「お香ですよ」とか「ビデオクリーナーですよ」という形で、麻薬として厚生省に定められていない物質でちょっと形を変えたようなものが入っていて、そういったものを乱用することが非常に問題化されています。これについては従来、薬事法の中でも無承認の無許可医薬品で取締りをしていたわけですが、これも人体への摂取を標榜しないとなかなか取り締まることが難しい状況がありまして、平成19年4月から施行の薬事法を改正しまして新たに指定薬物制度を設けました。私どもはこの中で国の買上調査を行いまして、こういったいわゆる脱法ドラッグが流通している場合には、問題があるものについては買上を行いまして新たに指定薬物として指定をして薬事法の中で管理をするような対応をしています。これによって指定薬物の不正流通の防止を図りたいと思っています。
 効率性の観点では、施策目標の1ですが、最近はインターネットを使った非対面の密売などが増えているということで、全国の麻薬取締部に指示をしまして、一元的な情報収集の管理をして、重複した調査が行われないようにすると共に必要なものに対しては調査に入りますし、インターネットには載っていますが実際にはほとんど動きがないようなものについては削除をするということで平成22年度には42人を検挙しまして、また29件の削除をする実績をあげています。
 また、不正取引傾向が強い向精神薬についても集中的な診療施設への立入検査を平成22年度で約500施設で行い、約100件ぐらいで軽微な問題についての指示を行いました。また、不正譲渡で5名を検挙しました。
 それから小目標2の乱用防止の推進の関係については、平成22年度の行政事業レビュー公開プロセスに取り上げられまして、この中で関係省庁との類似のものについての見直しをするべきとのご意見をいただき、その観点から見直しをしまして、中学1年生に配布していた啓発読本は作成をしないなどの作業をしました。
 それから施策小目標3の違法ドラッグにつきましては新たに指定されたものについては関係取締機関の警察とか税関とか、あるいは海上保安庁などに情報供与することで効率的な運用を図っています。
 37頁の評価の総括ですが、組織の部分の壊滅とか、あるいは上部の部分をできるだけ捕まえるとの観点からは、先ほど言いましたように暴力団、あるいはイラン人等の密売組織の摘発で不正流通の遮断を行いましたし、また立入検査についても先ほど申したような形で医療関係者に適正管理の意識を高めることができたことで不正流通の防止の面で一定の効果があったものと考えています。
 それから薬物乱用防止に関する啓発とか再乱用防止の趣旨をさらに進めて、潜在的、あるいは現に乱用している需要層の減少への寄与。違法ドラッグ対策についても指定薬物を指定しておくことで不正流通の防止を図ってきたところです。一方、最近の薬物事犯については、こうした組織の密売事犯に加えて、先ほど言いましたようにインターネットを利用した非対面の密売など、より複雑で巧妙化しておりますし、国内では大規模な大麻の不正栽培なども増えていること、また覚せい剤についても最近、若干増加をしているということで、こういったものについてはさらに関係省庁と捜査協力、情報交換などの連携を進めながら麻薬取締官の増員とか、その他、取締対策の充実強化を図ることが必要と考えています。
 乱用防止の普及の関係については、未成年の薬物事犯の減少傾向で一定の効果をあげていると思いますが、先ほど言いました事業評価レビューの中で単に配りっぱなしにしていてはまずいということで、浸透度調査でこういった啓発読本などがどのような形で使われているか、あるいは内容に対するご意見などをいただくようなアンケート調査を本年度は実施することにしております。また薬物乱用に手を染める可能性が高い集団、ハイリスクグループですが、こういった者へのアプローチなどについてもさらに効果的な形で進めることでより有効、かつ効率的な啓発活動の充実強化をしていく必要があると考えています。
 再乱用防止対策は、この40頁にも書いてありますが、覚せい剤が約8割の検挙者数を占めていますが、再犯者が約6割を占めており、政府においてはこの再乱用防止は非常に重要な施策にしています。
 そういったことで、私ども麻薬取締部で初犯者に対する再乱用防止に対する対応の検討を進めているところです。違法ドラッグ対策についても引き続きしっかり監視し、法の目を逃れるような形で構造式をぐるぐる変えるようなものがイタチごっこの形になっていますが、一杯出てきておりますので、その指定をすることと同時に現在、薬事法の改正を検討していますが、この中でこういった麻薬取締官などが直接、指定薬物の取締りを行えるような体制の検討もしているところです。以上です。

○高橋座長
 ありがとうございました。それではいまのご報告に対するご質問、ご意見等があれば述べてください。

○河北委員
 国際的に見て、我が国のこういった施策はどのぐらい評価されるものなのですか。

○医薬食品局監視指導・麻薬対策課長
 ここには記載していませんが、主要な薬物の生涯経験率を国際的に調査しております。例えば、日本の場合には大麻については15歳から64歳までの生涯で1.4%ぐらいの生涯経験率ですが、アメリカとかドイツ、フランス、イタリアなどでは大体30~40%、覚せい剤については日本の場合には0.3%ぐらいが生涯で経験すると推測されていますが、一番高いイギリスで約12%、アメリカで5%、フランスでは1.4%で、日本は非常に低い状況にあります。

○高橋座長
 ありがとうございました。これは非常に重要な評価指標だなと思いつつ伺いました。これ、いろいろな要因がありますが。

○福田委員
 私もこれは重要な取組みで、基本的に成果があがっていると思うのですが、評価の仕方としてちょっとコメントさせていただきたいと思います。指標化するのはやはり難しくて、検挙人数とか押収量で目標は設定できないとの説明はそのとおりだと思うのです。ただ、それを元に例えば有効性の評価とか解釈をしていくときに、ちょっとうがった見方かもしれないのですが、例えば全体としては検挙人数等は減っていない、むしろ増えているようなところもあって、それはそれで活動を一生懸命にやっているから有効なのだと。未成年についてはむしろ、その指標は減ってるので対策が効果があったと。つまり、指標としてこれを挙げると、増えても減ってもどっちも有効とあとから解釈できる気がちょっとしてしまうのですが、そもそもこれらの指標をどう解釈をしていくみたいな方針を先に決められているのですか。例えば、目標として明確に書くのは難しいかもしれませんが、こういうのはまだまだ検挙が足らないのだからもうちょっと増やさなければいけない、だから増員が必要なのだという方針とかは作られているということなのでしょうか。

○医薬食品局監視指導・麻薬対策課長
 これは当局の優先順位もありますけれども、先ほどちょっと口頭で説明しましたが大麻などについてはかなり水面下の乱用者が多いのです。私どもは2年に1回、国立精神・神経医療研究センターの先生にお願いして調査をしてるのですが、やはり大麻などは非常に多いということで、先ほど言った検挙者の数値はあくまでも非常に限られた指標で、例えば検挙者は少ないけれども大麻自身はかなり広まっていると私たちは認識しております。そういう面でここの指標には挙げていませんが、そういった形での調査も引き続きしているところです。

○福田委員
 未成年者についてはそれはないと。未成年者についてはやはり減っていくほうがいいと。

○医薬食品局監視指導・麻薬対策課長
 未成年者も大麻などについてはかなり広がっていると思いますし、やはり学校の先生などに聞きますと、身近でそういう経験をした人が非常にいると聞いておりますので、私どもはこの検挙者数そのものだけで安心しているわけではないのですが、ただ覚せい剤とか、そういうハードなものを全体で考えれば、未成年に対してはかなり効果的にされていると認識しています。
 それから、これは私どもの省庁ではないのですが、文科省では大きな教育制度が変わったときに薬物に対する調査をかなり網羅的に抽出して調査をしていまして、それを見ると確実に「薬物というのは絶対に駄目だ」ということに対する意識が上がってきておりまして、私どもの啓発普及だけではなくて文科省においても薬物乱用防止もやっておりますし、私どももそれに協力してキャラバンカーなどもやっていますけれども、そういう効果が出てきているのだと思っています。

○河北委員
 麻薬取締官、それから取締員という方たちは根拠法というのはこの法律全てに関して対応できる人たちなのか。その権限、あるいは、例えば警察官が兼任しているのかどうかをちょっと教えていただきたいのですが。

○医薬食品局監視指導・麻薬対策課長
 麻薬取締官は地方厚生局に麻薬取締部がありまして、昔の麻薬取締官事務所ですが、これはいま、定員が268人います。麻薬及び向精神薬取締法の中で、法律の中で薬物4法とそれから特例法について、特別司法警察職員としての権限を持っています。取締員は都道府県知事が指定するのですが大体、数人程度ですけれども、薬物事犯があった場合には、麻薬取締部と都道府県が協力して取締りに当たる形になっています。

○河北委員
 警官と同等ぐらいの。

○医薬食品局監視指導・麻薬対策課長
 特別司法警察職員としての、例えば銃の携行とか逮捕権だとか、そういうことも含めてあります。

○河北委員
 全国でその百何十人からの数になるわけですね。

○医薬食品局監視指導・麻薬対策課長
 268人が麻薬取締官で、それから取締員が140人ぐらいいます。

○高橋座長
 非常に潜在しがちなものを政策効果をどうあげるかという、これも大変政策評価の試金石のようなテーマだったかと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、この件はこれでということで。どうもありがとうございました。
 それでは、これは最後のテーマですが、「年金制度改革の道筋をつけ、国民に信頼される公的年金制度を構築する」というテーマで年金局のほうから。


○政策評価官
 年金局の説明者が少し遅れておりますので、次の議題を先にやらせていただいてよろしいですか。

○高橋座長
 それではどうぞ。それでは梅田委員からご発言を。

○梅田委員
 というのは、私、最初に今回の様式の切替えで一体どうなるのかなという心配というのか課題を申し上げたのですが、いままでの5つの報告ないしここにおける議論を聞いていて、こうすればまだ使いものになるかなというところがちょっと見えてきたというか、私としてはですね。それだから政策評価官室の方向けにというか、今後、こういう指導をしていただければ今回の切替えでもまだ使いものになるようになるのではないかというポイントが大体見えてきました。それを申し上げたいと思うのですが、いいですか。
 様式で順番にいきますと、「施策の背景」のところの書き方で、今の課題というか。要するに、環境変化を踏まえて、いま何が課題だということの記入が不足なのです。つまり、平板に書いてあるというか、根拠法令だとか、ただ単に分掌事務を書いているみたいな記述が多いのですが、これはそもそもここの「施策の背景」のところが今の課題を明確に書くように指導していただきたい。
 というのは今の課題がここで明確になれば、先ほど来いろいろ議論されている測定指標にベーシックな測定指標が入ってもいいわけですが、今の課題に対してお金を使って政策を打つ、事業を打つわけですから、ベーシックなというか、測定指標がずっときているからそれをただなぞっているだけではなしに、今の課題を解決しようと思ってお金を使ったら、では、どの数字を見ていたら成果があったかなかったかがわかる数字、先ほど来の議論でも重要なものが随分抜けているのではないかという思いが個々にあるわけですが。だから、それはなぜなのかと思っていたら、やはり「施策の背景」のところの書き方があまりにも一般的なのです。ここの表題、「施策の背景」というのは一般的なあれなので、今の課題というか、括弧書きでもいいから本当は今、ナウの課題を特記するぐらいにしないと。行政ですから伝統的な課題ももちろんあるわけです、伝統的というか、20年来、30年来続いているような課題もあるのですが。実績評価を毎年やる意味は今の課題に対してどう応えたかということなので、ここの書き方が、まずスタートがあれなのだなという感じがします。
 測定指標に移りますと、昔のアウトカム・アウトプットの議論は随分したからもう繰り返しませんが、測定指標はもっともっとたくさん書いていいと。これは別に、2枚、3枚といってもどうも制限がなさそうですからどんどん増やせるので、要らなくなったら消せばいいのであって。測定指標というのは評価のために置くわけですから、必要な測定指標はどんどん置いて、要らなければ削ればいいんだというぐらいのフレキシブルな指導をやっていただきたいと思うのです。
 測定指標がそのように置かれれば次の評価ですね。評価で各資料を見ていて思ったのは、ここの欄は過去の評価なのです。つまり、今だと平成22年度の評価なのです。ところが、記述する人によって去年がどうだったかということよりも、何かこの施策は有効ですとか、一般論の中で。だから、この辺はもっともっと厳しく指導しないと。実績評価というのは毎年やる原則で、それは平成22年度の事業が有効だったかどうか、どの程度有効だったかどうかをここに記述するわけですから、各スタンスが根本的に全然違う評価。ありましたよね、何か、一般論としてこの施策は有効ですとか。そんなぼけたような書き方をしていては駄目だというように指導して。
 喋り方がちょっとくどいですが、ここは非常に重要なので、有効性の評価をきちんと書けるかどうかが実績評価のポイントなのです。だから、きちんと書いている評価表もあったように思います。思いますが、全部が全部ではないです。だから、ここに必ず事業が出てくるのですね。一般論で有効性は評価できなくて、こういうことをやったことが、つまり事業ですよね、こういうことをやったから有効性が上がった、成果が上がったというように、やはり事業の記述がどうしても出てこざるを得ないのです。こんなものは一般論です。施策全般に200億円を使ったから有効性が上がりましたなどという説明は説明責任を果たしていないわけで、やはりここに必ず事業の記述が出てくるのです。きちんと書けている評価表はやはりそういう書き方がしてありました、ある程度、この事業をやってこう効果があったとか。そういう指導をしていただきたいと思います。
 それから効率性は、最初に私が申し上げたとおり、行政事業レビューへかなりの部分がいくという前提というか、行政事業レビューはまだ未発達というか未成熟というか、まだまだ本物ではないというか、全貌がまだ見えてこない中でしょうがないのですが、将来的にはやはり効率性の評価のところで。行政事業レビューを引合いに出して書いている評価表もありました。行政事業レビューで、こうであってこうしたという評価表を書いた実例もありました。だから、必ずこういう書き方になるはずですね。行政事業レビュー、今あれは数字の一覧表でしょう、はっきり言って。去年の行政事業レビューは本当に数字の一覧表ではないですか。
○政策評価官
 去年のレビューはまさに予算の執行状況。



○梅田委員
 今年の行政事業レビューは何かきちんと書いているのですか。

○政策評価官
 いや、今年はこれからなのですが。

○梅田委員
 これからですよね。

○政策評価官
 はい。

○梅田委員
 だから、いままでの行政事業レビューはただ一覧表の数字が書いてあるだけで、あんなもので何が効率性を証明できるんだと私は思っていましたが、今年は書くのですね。

○政策評価官
 今年は書く‥‥。

○梅田委員
 そうすると、そこの記述をかなりやはり重要なところだけここへ引用すればいい、引用というか関連付けて書くように指導。これはまだ事業レビューが完成されていないので今後ですが、たぶんそうなると思うのです。それで有効性の評価とか効率性の評価へいきまして、それで評価の総括をしてもらうわけですが、ここで表題にあるように、「現状分析」と「今後の方向性」を明確に分けて書くように指導していただきたい。現にそのように書いてある評価表もありました。つまり、ぐじゃぐじゃに書くから何が「今後の方向性」なんだ、全くわからない記述が多いと言うと失礼ですが、ごじゃごじゃに書くとそうなってしまうのです。だから、「現状分析」というか、今の時点での記述と今後こうしたいという「今後の方向性」を分けて書いたほうが、ちゃんと分けて書いてある評価表もありましたが、きちんとなります。
 なぜそういうことを言うかというと、「今後の方向性」が明確に書ければ。今回、そこから新たに予算と税制改正と機構改革という欄がどちらかというと明確に加わったわけです。だから、明確に書いていないがためにそこのつながりが見えてこないわけです。上で総括されていて増額と来る。何が増額なのかと、何なんだよ、これはという感じがするのです。だから、「現状分析」と「今後の方向性」を分けて書けば、「今後の方向性」で方向性が出て、それが予算としてどうなるんだとか、機構としてどうだ、定員としてどうだとか、税制改正はどうなるんだという筋道を追えば、まだこの評価表はモノになるかなというか、議論のネタになる可能性は大いにあるなという思いがいたします。加わった予算のところのあれですが、これは総務省が示した様式どおりですね。

○政策評価官
 はい。

○梅田委員
 この中には、廃止は別として、内容の見直しと予算額のプラスマイナスという2つの要素が組み合わさって書かれているのですね。これはすごく理解しにくいというか、わかりにくい表現がしてあって、これは総務省が示しているのでしょうがないのですが。この実例でも、機構定員については「増員」と書いてその内容が書かれていますよね、こういうところを増やしたいとか。増員とか機構改革については、結局、内容を書かないとわからないわけで、説明にならないわけです。要するに、これを読んだ国民がわからないです。だから、機構と定員は書かれていますよ。私は、これは個人的見解ですが、予算のところの内容の見直しと、これは2つの要素が絡まった表現なのですが、金額のプラスマイナス。現状維持は説明は要らないと思いますが、プラスだとかマイナスだとか内容を見直すと言うのなら、メモ書きでも何でもいいですが、何を見直すんだということぐらい書かないと国民に対する説明責任は全然果たされなくて、余計。ただでさえ「こんなもの、使いものにならない」と言われている政策評価のこの表がもっと悪くなるような感じがして私は非常に悲しいというか、非常に心配です。だから、これは見解ですが、どうせ機構定員について内容を書いているわけですから現状維持以外は書くというように指導すべきだと思います。これは意見です。
 そして、「参考・関連資料」のところにこのようにホームページのあれがいっぱい載っているというのは非常にいいことですね。今は実績評価書をホームページでほとんど公表しています。それで、専門的に議論したい人はこれを見ればいいわけですから、これは非常にいいと思います。前の評価書にもあったかもしれないですが、これはすごくいいことです。ただし、さっきのように、ここにあるからここは要らない、ここにその数字が載っているから頭のところの測定指標に数字を掲げていなくてもいいという論理は、それは。大事なものはダブッてでも必ず測定指標に書くべきであって、その他の測定指標、数字はこの関連の資料に載っていますよという順番にしないとおかしいです。
 もう1つは、行政事業レビューをここに挙げている評価書と何の記載もない評価表があります。いま、行政事業レビューがまだまだヒヨコみたいなものです、たぶん。これは今の時点ではしょうがないかもしれないですが、行政事業レビューときちんと分けてやるというのならば、今後は全シート、行政事業レビューの引用は必ずするようにして。しかも行政事業レビューで書いてある内容と評価書の、特に効率性のところだと思いますが、効率性のところの記述がきちんと連関しているというか、リンクしていれば使いものになるというか、行政事業レビューと実績評価を分けてやりますという今回の改正、これは各部署全部ということなのですが、まだモノになるかなと。私、ちょっと長くなりましたが、政策評価を始めた人間としてただでさえ、繰り返しますが、使いものにならない政策評価と言われているものが今回の改正によってさらに使いものにならない、「もう止めてしまえ」と言われかねないなと思って最初、ちょっと発言したのですが、5つの報告を聞いていて、このように書くように指導してもらえるとよくなるのではないかなと思いましたので申し上げました。

○高橋座長
 ありがとうございます。今の梅田委員の発言は、事務局としては少し整理をしていただいて、改善方向みたいなメモを作って、後ほど委員にご確認をいただくような作業を是非。非常に大事なご発言をいただきましてありがとうございました。それでは、引き続き年金局の。

○政策評価官
 一言だけです。私どもも、総務省の政策評価担当といろいろ意見交換をする場もありますので、本日のものはきちんと議事録も起きますから先生のお考えもしっかりお伝えしますし、今回、様式も変わったばかりなのでいろいろご指摘が、ほかのところからもあろうかと思いますので、よく検討させていただきます。

○高橋座長
 ありがとうございます。それでは年金局総務課長、よろしくお願いします。

?年金局

○年金局総務課長
 年金局の総務課長でございます。お手元の資料の今日の6番、「年金制度改革」ということで、資料2の47頁以降でご説明させていただきたいと思います。
 47頁以降に実績評価書様式に基づきましてまず記載し、そのあと、51頁以降に「公的年金制度について」ということで概略、制度の現状等をご説明させていただいております。実績評価書様式にありますように、基本的な施策目標名が「年金制度改革に道筋をつけて国民に信頼される制度を構築する」でして、これが大きな目標になっております。「施策の概要」としましては3つの目標、新たな年金制度の制度設計を進める、現行の公的年金制度の改善も図っていく、それと、これと密接に関連しますが、国際化というものがあります。例えば、最近であれば、中国のほうで外国人にも社会保険は適用していくんだと、では、そういうときの保険料負担はどうなるんだと、こういうことは今後、国際化の進展を図る相互互恵の関係においても非常に重要な対策であろうと思っておりまして、この3つへの対応を図るということを目標に掲げさせていただいております。
 51頁をお開きいただきまして、公的年金制度のご説明を若干させていただこうかと存じます。公的年金制度は、基本的には現在の高齢者に対する年金給付を現役世代が支払う保険料、いわゆる賦課方式で賄うという、世代の支え合いという考え方で成り立っております。今後、いろいろな新しい制度はこれからまだまだ議論が続くわけですが、52頁にありますように、現行の年金制度は基本的にすべての国民が現役時はすべて被保険者となって、高齢期となれば基礎年金の給付を受けることとなっています。即ち、今から50年前に皆保険・皆年金ということですべての国民が何らかの形、ある意味、業態によって若干違いはありますが、いずれかの公的年金制度に入るということになっております。特に自営業者の方は第1号被保険者ということで約2,000万人、サラリーマンの方々が4,000万人弱被保険者になっておりまして、さらに第3号被保険者、具体的には第2号被保険者の被扶養配偶者というものが第3号ということで、こういう形で被保険者が区分されています。さらに、サラリーマンについては報酬比例の年金の給付を基礎年金に加えて受けるということで2階建て等になっているということです。
 53頁に現行の第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の区分が載っております。現在の被保険者数は、真ん中の6,874万人が平成22年度末のもので、受給権者数が3,700万人、約4,000万人弱の方々が受給を受けられているということです。基礎年金分に相当する国民年金が大体、年金額、一人あたりの平均で5.4万円。40年間、フルで納めれば6万5,000円余りということになりますが、期間の違いもあり、平均で5.4万円です。上乗せの報酬比例の部分の老齢厚生年金が実態上は16万円余りということになっております。これについては、年金の保険料が高齢化の進展に伴ってどんどん上がっていくということでしたが、平成16年の改正によりまして基本的には平成29年度以降は国民年金保険料あるいは保険料率を固定化するということで、現在は段階的に引き上げているところです。それ以降につきましては、少子化、高齢化等々の要素を加味して額を定めていく方式になるということです。
 保険料収入は、現在、平成23年度予算ベースでは32兆円余り、国庫負担、これは基礎年金の2分の1を国庫で負担するということでして、11兆円余り、給付費全体では、上乗せ分も含めまして51兆円余りを予定しております。一方、積立金は将来、100年後には1年分程度になるということで今後取り崩していくということになります。現時点では128兆円余りの積立金がありまして、実際には、GPIFといいます独立行政法人に管理・運用を任せている部分が116兆円余りということです。これが基本的な構造です。
 こういう年金制度が、現在、いろいろ制度の見直しというように言われておりますが、それにつきましては54頁にあります。基本的に、1961年の皆保険制度より50年経過し、さまざまな社会的な変化があるといわれています。
 1つは、加入者が変化をしてきたこと。特に国民年金の第1号被保険者は自営業者のための制度と言われておりましたが、非正規雇用者が非常に増えているというような実態にもなっております。2つ目に、雇用、就労あるいは人生の選択に逆に影響をいろいろ与えているというようなことも指摘されております。3つ目に、低年金・無年金者が実際上存在する。未納期間がある等々で低年金・無年金の方がいらっしゃる。さらに、給付と負担の関係がわかりにくい等々、あるいは官民格差、あるいは制度が破綻するのではないかという不安・誤解、こういったものから制度への不信・不安というものも言われているところです。さらに長期的な持続可能性。基礎年金国庫負担財源は、今年度も特別な財源を探して2分の1を手当したということです。一次補正で復興財源に手当し、今後、今年度中にこの手当を私どもも求めていかなければいけないということです。そういう意味では、恒久財源というものが確保されていないというのが1つの大きな課題です。今後それについても、先般の社会保障制度と税の一体改革の中でも恒久財源というものが強く言われておりますので、これは確保していく必要があるなどがあります。それから、こういう問題について今後、課題としてやっていかなければならないということがあります。あと、積立金の運用、社会保障協定につきましては、説明は割愛させていただきます。
 戻りまして、実績の評価についてご説明させていただきます。「施策の背景・枠組み」はただいま申し上げたとおりです。予算につきましてご覧いただきますと、平成22年度予算が4億6,963万2,000円、実際の執行率が2億604万円余りということになっています。平成21年度を見ていただきますと、2億1,000万円余りの予算で1億3,000万円程度の執行の状況ということです。これは企画制度部門ですから、例えば法案を出す場合の費用が計上されていたり、調査の費用が計上されていたりして、検討の状況に応じて執行状況に違いが生じるということです。平成22年度につきましては、新制度への研究で調査をいろいろ行うとしています。例えば市町村における調査を行う等々の予算を計上したところですが、平成22年度中に予算の要求時のときよりも実施に当たってはいろいろ調査の効率化を図りまして、例えばシステム開発をしなくても既存のものをうまく使えないか等々、改めて精査をいたしました。調査をきちんと行ったわけですが、システム開発をしなくても済むような工夫をしたりいたしましたので、結果におきましては2億円余りの執行ですんだということです。
 次に内閣の重要施策ということです。これまでも協定については新成長戦略に関連しています。また新年金制度につきましては、昨年の6月29日に総理を座長とする閣僚の検討会の方で「簡素で公平な新たな年金制度を創設する必要がある」等の7つの原則が示され、12月14日に社会保障改革の推進という閣議決定が行われ、その後、今年の6月30日に税と社会保障の一体改革の成案が政府与党で決定された、という経過になっております。その上で、平成22年度中、私どもはどのような形で取り組んだのかといいますと1つは指標1にありますように「新たな年金制度創設に向けた議論を行うための論点整理」ということでしたので、平成22年度中におきましては、厚生労働省の本部が平成22年12月28日に設置されまして、社会保障改革に関する集中検討会議に提出する厚生労働省案の作成に向けて検討を行いました。実際、厚生労働省案が集中検討会議に出されたのは平成23年5月12日ということになりましたが、これは年度内、それに向けての検討を行ったということです。平成23年度以降につきましては6月30日に新たな一体改革の成案が出たところですので、確定して、それらを踏まえながら今後の作業を進めていくということになろうかと思います。
 2つ目に「制度の改善に向けた企画立案」ということです。平成21年度は例えば国民年金の遡り納付のできる期間を時限的に、現行、2年間遡って納付できるものを将来の無年金・低年金対策ということで3年間の時限に限り10年間まで遡って納めることができる、あるいは企業年金の改善をするといったようなことの法案を提出しておりますが、これは現在、継続審議中ということで、まだ成立には至っておりません。平成22年度は、これに加えまして先ほどの社会保障集中検討会議の中で現行制度の改善というもの、最低保障機能の強化等々をやっていくということを提案し、それについては成案の中に盛り込まれているということです。社会保障協定につきましては、毎年、少なくとも1カ国以上協定を結んでいくということで努力をしており、平成22年度は2カ国、平成23年度以降もそのような目標を立てていこうというようにしております。
 次の頁にありますが、「評価結果と今後の方向性」です。有効性の評価につきましては、1つ目の○ですが、いま縷々述べましたように厚生労働省の検討本部での論点整理等の具体化に努めたということで、最終的にそれらが6月30日の政府与党の案に反映されているということです。それから、先ほど申しましたように所得把握調査についても、新年金制度を検討する際には所得の分布などをきちんと把握していかなければいけないということもありますので、平成22年度はきちんと調査を行い、平成23年度以降は集計・分析を行う等々、海外調査、新年金制度に向けての財政計算システムの基本設計等々を着実に行っております。それから、年金積立金運用につきましては有識者会議を設けまして、そこで法人の運用目標あるいはガバナンスについてご議論いただきまして、昨年の12月に一定の提言をいただいたということです。もちろん運用等につきましては両論併記ということもありましたが、今後、年金制度改革あるいは独法制度改革の中でこれらを反映していくという予定にしております。
 社会保障協定につきましては、平成22年度はスペインとアイルランドと協定を発効し、現時点では12カ国とで協定が発効し、今後、協定を結んでいくあるいは協議という国がまだあります。一定の推計を用いますと、経済効果が約700億円ぐらいです。要するに、二重の負担をしなければならないといったようなことが解消されております。また、結果的には向こうのほうが期間が通算されないために外国での年金がもらえないというようなことも解消されているということですので、今後、一層推進していかなければいけないと。特に中国は日本企業が非常に多く出ておりますので、ここは十分な協議を急いでやっていかなければいけないと思っております。
 「効率性の評価」ということですが、基本的には本部の計画に沿って、業務部門といいますのはいわゆる日本年金機構などを抱えている部署で、こういった現場の公的年金の運営・実務といったようなところ、あるいは他部局と連携を図って作業を進めてまいったところです。2段目は先ほど申し上げたとおりですし、3段目も、社会保障協定につきまして例えば予備協議を含めまして相手国政府とも15回の協議を行ったり、精力的に取り組んだところです。
 「評価の総括」ということです。以上のとおり、新たな年金制度の制度設計や現行制度の改善の検討については、着実に進展を図ったと言えるのではないかと思っております。年金積立金管理運用独法の運営の在り方につきましても一定の提言をいただきましたので、今後、年金制度改革あるいは独法改革の中で改正を行うことを予定しておりますし、社会保障協定は、いま申しました中国とか、さらにインドとか、こういったところも含めて、引き続き協議を進めていきたいということです。平成22年度については、いま申し上げたとおり、年金制度改革に向けて一定の成果が得られたのではないかと考えております。
 評価結果の反映の方向性、予算につきましては現状維持という表現をさせていただきました。これは、例えば調査で要らなくなったものは当然なくすと、しかし、社会保障協定など、着実にやらなければいけないものは一定程度要求します、という趣旨での現状維持ですので、必ずしも去年と同額と、そういう趣旨ではありません。必要な見直しは行う上で現状維持ということです。
 機構・定員につきましても、今後、事業運営のほうに必要な組織体制の整備を図る、あるいは定員の要求をしていくということです。以上でございます。

○高橋座長
 ありがとうございました。それではご意見、ご質問をよろしくお願いいたします。

○山田委員
 いまご報告いただいた内容に関するコメントというよりも、実績評価書はこれからどうするのかという、先ほどの梅田委員のご発言とも関連しますが。我々はこうした数値目標を立てられないような例えば企画・立案とか協定を結ぶといったものを一体どうやって評価していったらいいのかというのは、これはコメントに過ぎませんが、非常に難しい問題を抱えていると思います。これをこの様式にそのまま無理矢理載せてしまうのか、それとも別途何か方策を考えるのかというのは、これからの検討課題として考えていかなくてはならないと感じました。

○高橋座長
 梅田委員、今のご意見に何かレスポンスはありますか。

○梅田委員
 原則は、これは予算が。これは4億円ですか。

○年金局総務課長
 はい。

○梅田委員
 4億円か5億円ですよね。だから、これだけの税金を使ってやる限りは実績評価をすべきであるというのは、原則はそうです。目標が立てられないと言いますが、何をもって立てられないということになるのか、一般論ですが。今回の改正で測定指標という、総務省はこれを考えたのでしょう。成果指標とも活動指標とも何とも言わずに測定指標という抽象指標にしてしまったということは、とにかく考えるために参考となる指標は何でもいいよというか、何でもいいよと言うとおかしいですが、一時はアウトカムをものすごく強調、最初のころはアウトカムを強調したのですが、アウトカムだけ、アウトカムはもちろん大事でそれが抜けていたらおかしいのですが、実はアウトプットレベルなりも必要なのです。アウトカムからアウトプットまで、全部必要なのです、アウトカムだけではなくて。そういう意味でたぶん測定指標という書き方をしたので、実際やっている現場の実務の状況を言うと、その範囲の中で何らかの目標というのは立つはずなのです。4億、5億を使っている以上は立てるべきであるというのは私の個人的見解というか、実際はそれなりに目標を立てて有効性をきちんと見るという姿勢というのか、そういうものがあるべきだと私は思います。

○高橋座長
 年金のこの場合は執行残が結構多くて執行率が低いのですが。要するに、特別会計は巨大なのが一方であって、これは年金局としての管理経費みたいなものですよね。その性質別にはどういうタイプの支出が。

○年金局総務課長
 いま座長がおっしゃいましたように、実際に何兆円という給付をするのは、全部特別会計のほうで管理しておりますし、それに必要な例えば日本年金機構を運営する経費やオンラインシステムを動かす経費などは、すべて特別会計の中に入っております。ここは、旧社会保険庁の話で考えれば旧年金局といいましょうか、まさに制度部門だけですので、実際上やっておりますのは、大きなものとしましては、例えば将来の年金の推移の計算をするためのシステムという、そういうシステム設計をしたり維持したりという経費。それ以外は社会保障協定を結ぶための外国旅費等の経費というものがほとんどです。
 今回、平成22年度にどんと積んでおりますのは、例えば所得把握をすると言っても我々が持っておりますのは、年金をいくら給付しているかというのはありますが、どういう所得形態かと。新年金制度を作るに当たってすべての人が1つの制度になったときに、その最低保障機能を考えた場合、対象者はどういう所得状態なのかということになりますので、そういう所得把握の、市町村に対していろいろデータをいただく等の、経費を組んで、それの分析のためのシステム開発を平成22年度は組んだということです。しかし、システム開発は、ほかでいろいろ工夫したらそこまでのものは要らないということが明確になった、それはもう使わないと、また、調査の仕方も、非常に簡便な方法でほかの調査と併せてやれないかというような工夫もしましたので、ここに入っているのは調査経費だとか印刷経費だとか、あるいはシステムの維持費だとか開発費だとか、そういうものです。

○高橋座長
 実績評価書の読み方で、それこそ国民がわかりやすくという話なので、その辺の性質がなかなか理解していただけなくて。これは、言ってみれば設計料みたいなものですよね。ところが、ほかは本体の建設費まで入っているような予算もあるので、その辺の理解がなかなか行きとどかないので、読みやすくするという作業ではなかなか大変だなと思いながらそんな質問を。ほかに何かありますか。

○篠原委員
 評価書で一切出てこないのは働いた人の時間です。日本はおかしいなと思うのは、我々、会計事務所で、欧米だと、ある仕事をやれと言うと、「これは300時間使いなさい」とか。我々はたしか年間2,000何時間だから、トータルしてやると。ところが、日本の場合は有能な人なんてガチャガチャやるから、実質、働いていないという感じが多いのです。公務員がどのくらい働いたか、外部の人がどのぐらい働いたかというのは、やはり取っておいたほうがいいのではないかという気がします。
 もう1点、年金積立金管理運用独法、私、契約関係でちょっと関わっているのですが。いわゆる独法、今度改定されてある種の規定以外にいろいろとやらなくてはいけないというのは整理されているのですが、そういうものは把握しているのでしょうか。というより年金の運用、いままでの独法ではちょっと変わっているし、今後また変わったときに、やはりこの部分は組み込まないと年金運用ではまずいよと、ガバナンスの問題とか、そういう部分の分析というのですか、把握はされているのでしょうか。

○年金局総務課長
 後段について申しますと、先ほど提言があったということで申し上げましたように、今の独法形態は理事長が全部決めるということになっています。実際上、制度上は理事長1人に非常勤の理事が1人、監事が2名という構造ですから、本当にこれでガバナンスがうまくいくのかと。いままで、中で運用委員会などを作ったりして工夫はしてきているのですが、先ほどの提言の中に例えば合議制で運用の内容を決めるというような、例えば複数の理事が必要だとか、そのようなご提言もいただいています。こういう財政運用の独法も単に管理すればいいんだということよりももう少し機微に応じた対応が必要だろうからそういう決定ができる組織に変わる、そういったことは今後制度改革の中でもきちんと言っていかなければいけないと思っています。
 それから、働く時間についてはなかなか申し上げにくいのですが、職員が必ず手順を踏まなければいけないものは相当時間がかかります。正直申し上げて、残業時間はかなり多いのだろうと思っております。それがすべてこの中にきれいに書けるかどうかというのはまたいろいろ精査をしなければいけないのかなと思いますが、管理職と違って職員はよく働いているということだろうと思います。

○高橋座長
 ありがとうございます。それでは時間も予定。それでは一言、どうぞ。

○野川委員
 全部についてです。今日、これで6つお聞きしました。これは政策評価官室への要望ですが、この評価様式、6枚見ました。すべての評価様式について、すべて空欄の箇所が1つありますね。それが学識経験を有する者の知見の活用です。これは、6つの評価書、すべてで空欄です。資料1-3の政策体系の「厚生労働省における政策評価に関する基本計画」の中では第8のところにきちんと「学識経験を有する者の知見の活用に関する事項」とありますが、6つ評価書を読んで1つもないというのはやはりかなりの問題だということになるので、ここのあり方を根本的に考え直していただきたいと思います。

○高橋座長
 ありがとうございます、これは年金局へではない質問ですが。全体として、審議会の活用の話とここで言う実績評価での活用の話はどうもレベルがいろいろあって、その辺がつかみきれていないというか、整理がいっていないようなということなのかなと思いつつ伺いました。とりあえず年金局のほうはこれで終わりです。ご苦労様でした。

○政策評価官
 今の学識経験を有する者の知見の活用というところですが、昨年は各局で学識経験者の意見を聞いていただいて、ちゃんと聞いてもらったと書いてあったのです。今回は各局でそれぞれというよりは、本当の頭にあったのは、本来は震災がなければ6月にワーキンググループを開催させていただいて、そこでご意見を聞いて、聞きましたよということを。6月にワーキンググループを開いて、7月に総会でそれをフォローするというようなことでご説明申し上げていましたが、今年はこういった状況になってしまいましたのでこの部分は今も書いていなくて、あえて言えば、本日、ご意見を伺ったというところが最終的には記載できるという、そういう整理のつもりだったのですが、今回、たまたまワーキンググループという形がとれなかったので、ここは現時点では空欄になっております。

○高橋座長
 よろしいでしょうか。それでは、実績評価についてはこれで終わりです。最後の議題が「平成23年度実施の総合評価書について」です。よろしくお願いいたします。

 ○政策評価官
 政策評価の中に事業評価と実績評価と総合評価とありまして、実績評価が大体メインです。本日ご覧いただいた評価書がありまして、評価書を作っていないものにつきましては、お手元に参考という形で「モニタリング結果報告書」というのがあります。それは今回の指標を把握して整理したということで、実績評価書を作ったものとモニタリングのみに留めたものとを併せて公表するということです。冒頭で申し上げましたように実績評価書は、従来は2年に1回、あとはモニタリングという形でやっておりましたが、今後、3年から5年に1回ぐらいにして、その代わり、実績評価書を作ったものはすべて有識者会議に、少なくともワーキンググループにお諮りすると、そんな形になります。
 それとは別に総合評価というのがあります。総合評価は、その時々のテーマを決めて、様式とか指標とか、そういう形ではなくて、現状ないし問題点を明らかにして今後どうするかというようなことを評価しようというものです。従来は、例えば介護保険とか、そういった制度改正のときに行っているというのが通常でした。今回、総合評価について9つ行ったものは、冒頭で申し上げましたが、厚生労働省の組織目標をベースに目標体系を作りまして、それを大目標、中目標に整理していきました。中目標については、基本的に予算書の項と一致しているということです。その項と一致している。つまり、予算と完全にリンクしているものについては、実績評価ないしモニタリングの評価ということですべてお示ししたと。組織目標から来ているので予算とリンクしていない目標が出てきてしまったところ、そこは今回総合評価という形で整理しておりまして、それが9つあるということです。
 時間の関係もありますので、その内容をかいつまんでご説明いたします。資料3-1をご覧いただきたいと思います。実際に作りました評価書は2枚めくっていただいた資料3-2以下にあります。そこは適宜参照していただくとしまして、その中にどんなことが書いてあるかというのを資料3-1に沿ってご説明させていただきます。
 まず1番目、「ナショナルミニマムの基準の設定に向けた検討」というのが目標にありました。これに対してどんなことをやったかというのが、平成22年度につきましては、ナショナルミニマム研究会というものを設けましてそこで10回開催して、中間報告というところまでいっております。これはナショナルミニマム、最低生活の基準ということになりますが、単に最低生活費というだけではなくて社会との関わりとか、そういったことまでを含めて考えるべきだとか、「福祉から就労へ」という流れがありますが、生活保護になってもまた就労支援で社会参加に戻るとか、そういった趣旨の中間報告が取りまとまっております。その考え方は社会保障・税一体改革の厚労省案にも反映されております。今後の方向としましては、貧困格差を測る指標の検証、最低生活費の分析手法等の研究、こういったものについて検討を進めるということになっております。
 2番目、「求職者支援制度を創設する」ということですが、ここは従来の総合評価的に評価が行われております。新しい求職者支援法が、先日国会を通過して成立して10月に施行されるという段階まできたということですが、評価の内容としては、緊急措置として実施されたものを恒久的な制度にしようということです。雇用保険を受給できない人が生活保護にならないように職業訓練を行っていただいて当座の生活支援のための給付を行うという制度を作るときに、その緊急対応の実績はしっかり評価して、なおかつ生活保護との関係も整理したと。当然、こういう雇用施策ですから、公労使の三者構成のところでしっかり合意を得たと、そういったことも評価されております。今後の方向性としては、しっかり準備をし、また、見直し規定もあるので今後の施行状況を随時把握しながら検討していくということになっております。
 その次が「格差や貧困等の経済損失額を明らかにし、社会保障財源に対する考え方を示す」の関係です。これは先ほど申し上げましたナショナルミニマム研究会の中で実際に経済損失額、ここもなかなか難しいのですが、職業訓練を実施して就労した場合と職業訓練を受けずに生活保護を受給し続けた場合、こういったときの行政経費の差をシナリオに基づいて推計したと。最大で1億円になるというような結果が出ております。そういう推計を行っております。今後、社会保障・税一体改革の中では貧困対策も取り上げられておりますので、そこに示された工程に沿って改革を進めていくということになっております。
 1枚めくっていただいて、次の「規制改革、地方分権の推進、『新しい公共』の実現に向けた取組」です。規制改革については6月18日の閣議決定、「規制・制度改革に係る対処方針について」があります。これはグリーンイノベーションとライフイノベーションと、それ以外にもあるのですが、厚労省の関係ですとライフイノベーション。その中で「ドラッグラグ等の更なる解消」、それから、先ほども議論がありましたが「特定看護師の検討」、そういったことを持っております。地方分権の関係では、補助金一括交付金化の中で水道施設整備費補助を交付金に含める方針を決定していると。「新しい公共」ということでは、厚労省として貧困・困窮者の「絆」再生事業。これは仕事も家もなくなったような方にどうするかというような、そうしたところにNPO等と連携してというような事業ですが、そういったことに取り組んでいるということです。この辺りも、社会保障・税一体改革の議論の中で「普遍的・分権的・多元的なサービス供給体制」ということが1つの方向として掲げられておりまして、今後、こういった方向の線に従って改革を実現していきたいということです。
 その次が「未来への投資として、産業育成や雇用創出に繋がる政策を立案、実行すること」です。ここのところは新成長戦略の関係ですが、医療、介護、子育て支援、求職者支援、そういった取組を進めたということです。これも、新成長戦略の工程あるいは社会保障・税一体改革の工程に従って社会保障と経済成長の好循環の実現に向けて取り組んでいきたいということです。
 3頁ですが、「国民と向き合う行政の実現」です。まず1つは「国民の皆様の声」ということを。これは厚労省のホームページで募集をしておりまして、それについて厚労省で業務改善を行った場合にはその業務改善結果を公表しているということ。それから、「わかりやすい文書支援室、アフターサービス推進室というのを設置いたしまして、まず、一般のパンフレットや報道発表資料といったものについては一般の方から見てもわかりやすい文書に変えるという、そういった専門家に来ていただいているということ。それから、民間目線で制度が本当にうまくいっているのかどうかをチェックしていただいて改善を提言していただく、そういった人に来ていただいているということです。今後の方向性としては、より制度・業務の改善に繋がる仕組みに持っていきたいということです。
 その次が「厚労省の推進する施策を厚労省内自ら実施すること」です。職場の子育て応援プログラムとか、そういったことで厚労省の中でもワーク・ライフ・バランスの推進、男性職員の育児休業取得の促進、献血の推進、こういった取組を行ったということで、今後とも、それは推進していくということです。
 4頁目ですが、「省内事業仕分けの実施」です。省内事業仕分け、平成22年は春と秋に、特に独立行政法人や公益法人の事業について、行政刷新会議のものとは別に省内での事業仕分けというのを実施しております。それから、独立行政法人・公益法人等整理合理化委員会というのも設置いたしまして、昨年、報告書を取りまとめております。今後、春は震災の関係もあって今年は実施できておりませんが、秋以降、フォローアップや中長期的な事務事業の見直しなどを目的に実施していきたいということです。
 最後ですが、「人事評価制度の実施及び職員の能力向上」です。これは、人事評価のあり方についてプロジェクトチームを設置して議論を行いましたが、その中にいろいろ課題があったのですが、その提言の中で、組織目標の策定、個人の業績評価の中の目標設定、研修の見直しといった取組を行っておりまして、今後、そういったことの定着あるいは改善を進めていきたいということになっております。説明は以上です。

○高橋座長
 ありがとうございました。総合評価書についての概要のご説明をいただきました。ただいまのご説明についてご意見、ご質問等があれば、よろしくお願いいたします。

○梅田委員
 これはやらなければいけないのですか。私の頭の中にあった総合評価書の概念とは天と地のごとく違うので、やらなくて済むのならやらないほうがいいのではないかと。正直な意見は、こういう中途半端な評価書を公表することによってまたぼろくそに言われる。こういう例があるのですか。

○政策評価官
 いいえ、これは今年初めてですし、最初に申し上げましたように、組織目標という形で入れたものですから。

○梅田委員
 中途半端すぎてまたぼろくそに言われるネタに必ずなると、私はこの世界に15年付き合っていますので必ず言われるなと。こっちはまだモノになるし、このモニタリングなどは、これはこれでいいですよ。総合評価でこんな。発言を止めます。意見です。

○高橋座長
 私も、位置づけが何だかよくわからないなと思いつつ伺っていたのですが。

○篠原委員
 総合評価というより、「国民に向かう行政の実現」とか「厚労省の推進する施策を厚労省内で自ら実施する」というのはいちばん最後の「人事評価制度の実施及び職員の能力向上」に関係すると思うのですが、厚生労働省はいわゆるPDCAを推進すると。そうすると、私が質問したかったのは、本当にこの施策が回っているのですかと、どこかで目詰りしていませんかと。それと、きちんと回すには、3Sといってsensitivityとsenseとspeedが要ると。そうすると、いちばん欠けているのはsenseの部分で、実施する人たちが政策評価を何でやっているか、その部分がかなり欠けているから書き方とかいろいろなものが出てきているなと。この辺の問題意識というのはどうなのでしょうかね、個々には挙がっているなという気はするのですが。

○政策評価官
 今回お話がありました総合評価に関しては、総合評価と言われているものとはちょっと違うのではないかというのはおっしゃるとおりです。従来の総合評価に近いのは、この中で言うと?-2-1の求職者支援制度の創設みたいなものですが、それ以外は。とにかく組織目標に合わせたと。目標を掲げたところで。特にこれは先ほど申し上げましたように、ただ「求職者支援制度を創設しましょう」と言ったら、これは今年限りの目標なわけですね、創設されてしまいましたから。ということで、このタイミングで目標にしておいて何もないというのも。とにかく、「評価しなければいけないのですか」というお話がありましたが、目標に立てた以上はこういうことになりましたというのを、組織目標も公表していますのでその結果についても公表したいと。確かに政策評価の一環かどうかというのは、本当にそうなのかというのは微妙なところがありますが、そういうことでやっているということです。あと、政策評価の進め方についてはいろいろご指摘を賜りましたので、いろいろ反省もしていきたいと思っております。

○團野委員
 感じたまま、1点だけ申し上げたいと思います。2頁のいちばん最後のところですが、「未来への投資として、産業育成や雇用創出に繋がる政策を立案、実行すること」という総合評価の部分です。19頁にも書いてありますが、どうしても厚生労働省の所管の中でしか考えていない。これはしょうがないのだろうと思うのですが、医療、介護、子育て、新しい職業訓練の分野でと。これは、厚生労働省の分野でしかお聞きすることができないのですが、新成長戦略で考えれば、医療、介護もあれば、環境、エネルギーもあれば、観光分野もあれば、農林水産業の緑地化もあれば。新しい成長分野をどうしても育成しなければいけないというのはそれだけ広がりがあるわけで、その中で産業育成と雇用創出という形で考えていくときに厚生労働省だけの所管ではなくて横の連携をどうとるかというのがどうしても必要だろうと、単なる職業訓練では駄目だと。ですから、今後の新しい人材をどう育成していくのかということも含めた積極的な雇用労働政策を今後厚生労働省としてどう考えるかという一大テーマではないのかなと思っています。ここはちょっと大上段に振りかぶりすぎかもしれませんが、少しそういう受け止めを持っていただかないといけないのではないのかなと。
 復興構想会議の検討部会の中でもそういう議論がありまして、厚生労働省には今後その基軸省庁としての中心的な役割を担ってほしい、でも、それにしては将来的な考え方とか認識が少し不足しているのではないか、というのは部員一同の意見です。そういう意見もありましたので、しょうがないという部分もありながら、それはわかっているつもりですが、そういう転換期に来ているのではないのかなという感じがいたしました。これは受け止めだけです。

○高橋座長
 時間の関係で閉めなければいけないかなと思いつつですが。出された議論をもう一度再整理していただいて総合評価書のこれからの作り方について再度ご検討をいただいたほうがよさそうだというのが委員の皆様のご発言の趣旨ですので、それを踏まえて。それから、最後のご発言は非常に重要なご発言で、政策評価が個別官庁の政策評価ということで出発していますが、それこそ、現実はそうではなくなりはじめているという非常に難しい課題があるという、そういうご指摘。経済産業省も社会保障のあり方をやる時代になってしまいましたから、やはり相互に。私が関係している住宅などだと、国交省と厚労省の共管で住まい法みたいなものが出来てきているとか、そういう重複の、ハイブリッド型の政策課題について政策評価というのはこれから結構課題になるテーマでもあると思っております。そんなわけで、これからの検討について今日のご意見を踏まえて作業をしていただくということで閉めて、事務局にこれからの予定等を含めてお返しします。

○政策評価官
 次回については、また別途連絡させていただきます。

○高橋座長
 ワーキンググループのほうの作業は来年度から始まるわけですね。

○政策評価審議官
 はい、そうです。

○高橋座長
 ということですので、次回についてはまた改めて事務局からご連絡があろうかと思います。不手際でだいぶ時間が押してしまいましたが、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
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