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2011年8月31日 生活保護制度に関する国と地方の協議(事務会合)第6回議事要旨

社会・援護局

○日時

平成23年8月31日(水)


○議事

○ これまでの議論の整理について意見交換。

○ 厚生労働省及び地方自治体からの主な発言は以下のとおり。

・議論の進め方について

<地方自治体発言>
○ 今までの議論の中で、国の意見と地方の意見が一致している事項と一致していない事項を整理した上で議論を進めていくべき。

<厚生労働省発言>
○ 本日は、どの事項で意見が一致し、どの事項で一致していないかを確認しながら議論していきたい。

○ 対策によっては早期実現が困難なものもあるが、生活保護制度をよりよいものにしていこうという姿勢は、国と地方双方において一致していると考えている。このため、これまでの議論の経過も踏まえながら議論していきたい。ただし、制度の抱える喫緊の課題に対して、ある程度の段階で一定の結論を出す必要があることは御理解いただきたい。

【課題1】生活保護受給者に対する自立・就労支援及び第2のセーフティネットとの関係整理について

1.基本的な考え方

<地方自治体発言>
○ 生活保護制度のあり方に関して、自治体としてもここ数年で予算が激増している中で国としての5年後、10年後のビジョンを示してほしい。高齢化により、年金以外の所得がない方が増えていく中で、単に就労支援についてのみ議論すればよいということではない。

○ 税と社会保障の一体改革においては、生活保護制度の見直しに関して、この協議や生活保護基準部会で検討するとあり、社会保障全体の中から切り離された印象がある。
 社会保障全体の中でどうしていくかということが示されないと議論が難しい。

○ 特に国と地方の議論における失業者への雇用関係の部分については、現況では就労指導も含めてケースワーカーの仕事になっている。障害・傷病を抱えている方などの支援は、生活保護制度としての対応は当然であるが、リーマンショック等で失業した方は、基本的に生活保護の範疇として想定されていないと考えている。第2のセーフティネットである求職者支援制度で支給される給付金と住宅手当との併給や、ナビゲーターの増員ができれば、ケースワーカーの負担を減らすといったことができるのではないか。

○ それぞれの制度の目標があることはわかるが、結果的に失業者が増えていることは事実であり、現にリーマンショックの後、生活保護受給者のうち高齢者よりも稼動年齢層が増えている。求職者支援制度ができたことで、生活保護受給者が減るとは思えない。労働施策では就労意欲がある求職者を対象にしているということだが、一方、結果的に就労支援の対象から漏れてしまう人は全て生活保護で受けざるを得ないのが現状である。これは国の制度設計上の課題があるのではないか。

○ 住宅手当について、厚生労働省としては継続して実施していく考えがあるのかを示していただきたい。

○ これまで雇用施策が努力されてきたことはわかるが、最後のセーフティネットの方がメリットがある現状では、生活困窮者は第2のセーフティネットを選ばない。求職者支援制度については、生活保護よりもメリットを付けないといけないという意見を述べてきた。

○ 住宅手当の申請窓口は地方自治体であり、就労支援の窓口はハローワークとバラバラだったことが住宅手当受給者の就労率が低いことの原因ではないか。

○ 住宅手当と貸付を同時に利用している人は多いと思う。住宅手当をなくしてしまうと、生活保護に至る人が増える。これは第2のセーフティネットのあり方としてどうなのか。

○ 就労意欲がない人を労働市場に復帰させるために、第2のセーフティネットとして何ができるのか。

○ 就労意欲がない方に対して、ハローワークで具体的に何ができるのか示してほしい。

○ リーマンショック後、その他の世帯が激増しているのは事実である。厚労省の労働部局や福祉部局でも様々な手立てをしているにも関わらず、その他の世帯が増えている状況をどうするのか議論するのがこの協議だと思っている。
 もともと就職活動をしたことがなく、何のスキルも持たないような人に訓練を行うという話だと思うが、支給される金額が10万円であればどうしても生活保護に流れてしまうのではないか。

○ 法律はすでに成立しており、求職者支援制度を所与のものとして、どのような対策が考えられるかを協議するのがこの場であったと思う。今の段階で、求職者支援制度そのものの改正を求めるのは難しいと考えている。
 ただし、この協議において、最後のセーフティネットである生活保護の実務を担う地方側から、第2のセーフティネットのあり方への不満が提示されていることを踏まえれば、セーフティネット全体の中で、求職者支援制度がどのような制度であるべきか、について、社会保障全体の視点から、別途、社会保障審議会等で議論されるべきではないか。

○ ハローワークと福祉事務所が近接している自治体もあり、ハローワークで仕事がなければ、その足で福祉事務所に生活相談に行くという状況にある。そうした方々が就労意欲のない方かと言えば、必ずしもそうではない。どうして就労意欲がある人が失業後そのまま福祉事務所に行くことになるのかという問題が解決していない。労働部局は目の前の人が就職しなくても最終的な責任を負わないが、生活保護は最後のセーフティネットであり責任を逃れることはできない。このまま就労意欲のある方々が生活保護に至る状況が続けば、日本全体が沈んでしまうという危機感がある。労働サイドなのか福祉サイドなのかはさておき、国として別のセーフティネットを整備していくつもりはないのか。

○ 求職者支援制度は、貯金などが一定程度あり、自分で訓練を頑張ろうという人には有効かもしれないが、その間の生活を支えるような資金や援助してくれるものがない人については有効ではないと考える。

○ 失業者というものを労働部局は狭く捉えており、福祉部局は広めに見ているということだと考えるが、結果的に保護率が増えている現実は受け止めてほしい。求職者支援制度に続く次の手を打たないと、現場の対策は追いついていかないし、本来労働力となるべき方が労働力とならないことは国全体のためにならない。20代の方への支援と40代の方への支援は異なると思う。それらの点について、もっと踏み込んで検討してもらいたい。求職者支援制度の対象にならない方も含め、失業者に対しては国が雇用対策で支援していくことを明確にしてほしい。

○ 就労意欲がそこまで大きくない方についても、働ける方については一義的に国が対策を取るべきという考え方を前提に、それを踏まえて現実的にどうするかという二段構えの考え方が必要。

○ 就労意欲の有無は被保護者本人の主観の問題ではないか。生活保護の世界では、稼動能力がありながら不活用の人たちについては、まず生保の対象にはならない。就労意欲が減退するまでには過程があり、その間に求職者支援法以外でも第二第三の手を打っていくという認識が必要。

○ 単純化すれば、能力はあり、就労意欲もあるが、求職者支援制度を利用したくはないという方に対する第2のセーフティネットを構築できないか。

○ 5年も10年も雇用部局の制度で支援してほしいと言っているわけではない。雇用保険が切れれば生活保護というのは今までもそうだった。稼働能力のある人が生活保護に至った時点で徐々に就労意欲が減退し、結果的にトランポリンとしての機能が低下していく傾向がある。また、就労支援は半年から1年が勝負だと言われている。生活保護では有期の保護は法制度上難しいわけなので、一定期間支援する第2のセーフティネットの構築を、制度として作ってほしい。

○ 就労意欲がないと言って福祉事務所に来る人はいない。就労意欲がある人は第2のセーフティネットで支えるということを明らかにしてくれないと現場は先が見えない。

○ リーマンショック後、ハローワークに行っても仕事がないという人が増加した。そうした方は、基本的に就労意欲がある。そうした方が生活保護に至らないようにするのが第2のセーフティネットである。いかにも生活保護の前にたくさんのセーフティネットがあるかのようだが、これが生活保護への落層防止になっていない。現状非正規雇用が4割程度いて、容易に職を失ってしまう。こうした方はすぐには就職できない。そのような場合に、直ちに生活保護に至らないようにする仕組みが必要。生活保護を受けるということは、資産を全て失ったということ。いざ就職して普通に生活しようとしてもなかなかできない。こうならないような仕組みを労働サイドでどうにかしてほしい。訓練をすることが主で、給付金が従である考え方を転換して、きちんと生活を支援したうえで、訓練をうけてもらうという考え方にできないか。

○ これまでの基金訓練を評価していないわけではないが、一方、働きたいが働けない人が生活保護に至っていることは事実。就労意欲がある方に対する次の手立てを講じないと立ち行かなくなる。その現状を認識してもらわないと議論できない。

○ 求職者支援制度については第2のセーフティネットと位置づけられているが、就労意欲がある方を全て受け止められていない。失業して直ちに生活保護に至るのではなく、その前で支えられる場面があると思うので、第2のセーフティネットの拡充をお願いしたい。

○ ここ数年の被保護者の増加は異常である。これまでやってきたことについては、評価している。しかし、次の手をうっていただきたい。

○ 求職者支援制度で救われる人は、自分である程度生活費を賄えるようなバネを持っている人である。自分で全くバネをもっていない人は、現状では生活保護にどんどん流れ込んでいる状態。そういった人に求職者支援制度があるといっても状況は変わらない。現状で他に考えがないのはわかっているが、国が何かしらの検討をしますと宣言していただけないと地方は納得できない。

○ このまま議論を継続してもまとまらないと考える。この間の議論における自治体の意見に対する厚生労働省の見解をいったんまとめて示していただきたい。

<厚生労働省発言>
○ 福祉事務所とハローワークでどういった役割分担をしていくかがポイントである。失業者については、基本的に国が主体となって、雇用保険、職業紹介、職業訓練等の雇用施策を講じ、併せて、生活に困窮する場合には、住居・生活支援等の福祉施策によりこれを支え、このような施策を講じてもなお生活に困窮する方々について、最後のセーフティネットである生活保護制度により生活を保障するものであると考えている。

○ 地方側意見にもある通り、今後社会保障費は増えてくる。その財源をどうするかということで、税と社会保障の一体改革について6月に成案を出した。その中で貧困対策については、セーフティネット機能の強化について記載している。
 今後生活保護制度だけではなく、求職者支援制度などの第2のセーフティネット施策について考えていかないといけない。現在の生活保護制度の状況を考えると、求職者支援制度などと連携し、働けない人などを対象とする本来の生活保護制度の姿に戻す方策を考えるべきである。そういったことから、この協議では就労支援の強化を議論しているところである。

○ 求職者支援制度については、財政面の問題など様々な課題がある。求職者支援制度が満点ではないとの意見もあるが、制度がなかった段階よりは前進しており、そうしたセーフティネットを充実していくことが重要。長期的に検討すべきことは時間をかけてやるべきだが、速やかに実施できることは迅速に対応すべきである。

○ 生活保護以外の社会保障制度でやるべきことをやった後に、それでも生活に困窮する場合は、生活保護で受け止めざるを得ないという考え方。所得保障制度や就労支援など、それぞれの専門分野でも審議会や検討会を立ち上げて議論を始めたところである。

○ 今までの議論では、失業者のうち就労意欲がある方はハローワークで対応し、就労意欲がない方は福祉事務所で対応するということだった。

○ 職を失えば全員が「失業者」であると考える方もいるかもしれないが、例えば「失業率」は、求職活動を行っている人を分子とし労働力人口で除して算出することに見られるとおり、雇用政策の前提は求職者の支援である。その前提を転換し、就労意欲のない方までも対象とすることは難しい。福祉事務所において就労支援員の拡充など様々な取組をしていただき、その上でハローワークでは、福祉事務所と連携する「福祉から就労」支援事業にも取り組んでいる。福祉事務所で困っている部分については、雇用政策の中で最大限の協力を行っているつもりである。

○ 就労意欲の判断については、相対的な面がある。従前の「生活保護受給者等就労支援事業」の中で、就労意欲の判断を過度に厳格に行っていた部分があったので、そのことについては「福祉から就労」支援事業では見直しを実施した。
 失業者に対しては、基本的に国が主体となって支援を行うべきと考えている。就労によって、長期的に見れば経済的にも自立がなされるが、その場合であっても、当面の生活支援は必要である。雇用施策については、それぞれの制度ごとの目的沿って対象者の要件が決められており、失業者であれば全員対象となるわけではないことを御理解いただきたい。

○ 住宅手当については、まず2つの点から検証が必要である。1つ目は、住宅手当の受給者数は昨夏をピークに相当減ってきており、震災以後も当初見込んだ数ほどにはなっていないということ。2つ目は、受給者の就職率が3割程度にとどまっているということ。以上から、住宅手当が当初の目的どおりに機能しているとは必ずしもいえない状況である。一方で、10月1日に求職者支援制度が施行される。これまで住宅手当でカバーされていた人が求職者支援制度でどこまでカバーできるかを検証する必要がある。その検証において、求職者支援制度で相当程度カバーされ、就職率も上がっていくということがわかれば、住宅手当の役割は徐々に縮小されていくのではないか。

○ リーマンショックを期に、雇用施策は拡大して実施してきた。雇用保険でカバーできない求職者を支援する制度とした基金訓練が創設され、その後継として恒久制度たる求職者支援制度が創設された。また、雇用保険の適用範囲も拡大し、第1のセーフティネットも第2のセーフティネットも拡充した。この結果、相当な数の人が生活保護受給に至らなかったものと考えている。
 働く意欲がない人に対しては、ハローワークと福祉事務所とが連携してどうにか就労意欲をもってもらい就労につなげていくというのが「福祉から就労」支援事業である。ハローワークと福祉事務所のどちらかのみで対応すべきという話ではなく、両者で協力して実施していくべきと考えている。

○ 「福祉から就労」支援事業について、昨年度までは「生活保護受給者等支援事業」として約2万1千人を対象とし、その中で就職した方は約1万3千人だった。今年後からは、ナビゲーターも430人から700人に増員し、事業の対象者数も大幅増加を目指しているところである。

○ 求職者支援制度の給付金の額については、何度も地方側から御指摘いただいており、この金額が様々な手続きを経て決まったことを説明してきた。今回申し上げたいのは、同制度の目的は、就職活動に必要となる訓練を無料で受けられるということにあること、その訓練に打ち込めるようにするために10万円を支給しているということ、である。制度の趣旨目的自体が異なるため、金額のみをもって生活保護制度と比較する議論はできないことを理解していただきたい。

○ バラバラになっている就労支援や住宅支援の施策メニューをまとめて紹介できるようにする趣旨で、ハローワークに住居・生活支援アドバイザーを260人程度配置しており、支援を必要としている方へのオーダーメイド支援ができる体制を整備してきた。

○ 住宅手当を直ちになくすと言っているわけではない。住宅手当の予算措置は現在は23年度までだが、24年度も継続実施できるよう財政当局と調整中である。しかし、求職者支援制度が始まる本年10月1日以降の検証が必要だという趣旨である。

○ 就労意欲があるかないかが判然としないグレーゾーンの人についても、ハローワークが厳格に判断せずに、支援対象としていくことが必要である。

○ 求職者支援制度は、10万円の給付金を支給することを主目的とする制度ではなく、無料で訓練を受講できるということが制度の主目的である。

○ 今後の第二のセーフティネットのあり方について、社会保障全体のなかで議論していくべきというご意見は国としても理解できる。

○ 我々の考える雇用施策の限界は認めていただいた上で、雇用施策の範疇から漏れている人がいて、それをどうしていくのかという問題提起として受け止めている。

○ 稼働能力があれば就労意欲がなくとも雇用施策の対象とすべきという議論であれば、これまでの「失業者」の考え方、雇用政策の考え方を根本的に変えるものであり、ここで議論しきれる内容ではない。現実にどういう対策を取れるかについて議論すべき。

○ 就労意欲について固定的に捉えるべきものではないことは認識している。福祉事務所での支援から求職者支援制度につながる場合もあろうし、「福祉から就労」支援事業の過程の中で意欲向上が図られ求職者支援制度の活用につながる場合もあり得る。

○ 働きたいけど働けない人をどうするかというのが雇用施策であり、それに乗ってくれば支援できるし、そうでなければ支援できない。雇用保険も求職者支援制度も同様の考え方に基づいている。

○ 就労意欲がある生活保護受給者は当然ハローワークの支援対象となる。求職者支援制度の対象とも成り得るし、それ以外の支援メニューもある。
 生活保護に一旦至るとなかなか脱却できないということは理解している。例えば、住宅手当受給の段階でハローワークの就労支援の対象とするなど、生活保護に至る前の段階での取組はありうる。

○ 求職者支援制度によって、就労意欲のある方への対応はできていると考えている。基金訓練の就職実績は7割であるが、これは決して容易に達成できているものではない。

○ 失業者が直ちに生活保護に落ちないように求職者支援制度を創設したのであり、雇用施策で講じ得る施策は全て講じている。現時点ではこれ以上できることはないと考えている。

○ 求職者支援制度の運用上の工夫はできると思う。しかし、単純にお金を渡すという施策は雇用政策のフィールドではできない。雇用保険から漏れる方については、求職者支援制度を作ったことで対応できている。

○ 仕事をしたいがなかなか見つからない、その間訓練を受けたいが、訓練中の生活をどうにかしてほしいという方のために求職者支援制度を用意した。求職者支援制度の訓練を受けてスキルを身につけても、就職率100%を達成することは極めて困難。それをあくまで100%になるまでは全て雇用政策の責任だということであれば、これまで国において審議会などで議論してきた雇用政策の範疇を超える話である。


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