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2011年7月29日 第9回今後のパートタイム労働対策に関する研究会  議事録

雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課

○日時

平成23年7月29日(金)16:00~18:00


○場所

厚生労働省専用第23会議室


○出席者

委員

浅倉委員、今野委員、権丈委員、佐藤委員、水町委員、山川委員

厚生労働省

小宮山副大臣、高井雇用均等・児童家庭局長、石井雇用均等・児童家庭局審議官、吉本雇用均等政策課長、
吉永短時間・在宅労働課長、大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長、藤原短時間・在宅労働課長補佐

○議題

(1)報告書(案)について
(2)その他

○議事

○今野座長 ただいまから、第9回「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」を開催いたします。本日は黒澤委員が欠席です。議題に入ります。「報告書(案)」について事務局から説明をお願いいたします。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 「報告書(案)」について、資料1-2をご説明させていただきます。
 資料1-2を1枚めくりまして「目次」です。2部構成にしておりまして、第1の「総論」では、パートタイム労働をめぐる現状、基本的考え方、課題、検討に当たっての留意事項。第2で「今後のパートタイム労働対策」という構成をとっております。
 1頁、2頁は「はじめに」ということで、今回の研究会を立ち上げるまでの経緯等について書いております。
 3頁の第1の1「パートタイム労働をめぐる現状」の(1)は非正規労働者全体についての現状です。1つ目の○は、非正規労働者が増加しているということで、2010年には34.3%まで上昇しています。(1)の2つ目の○は、非正規労働者の中でも、パートの占める割合が48%と非常に大きくなっています。3つ目の○で、非正規労働者を性別で見ると、男性は契約社員・嘱託が多くなっています。女性はパート・アルバイトを占める者がいちばん多いという状況です。
 非正規労働全体を見た上で、(2)パートタイム労働の現状ということです。(2)の1番目の○は、パートタイム労働者は、2010年に1,414万人となっていて、趨勢として増加しています。雇用者総数に占めるパートタイム労働者の割合は、2010年に26.6%です。
 4頁で、「パートタイム労働者の分布」のいちばん上の○では、業種別の分布、規模別の分布なども見ております。規模別では、小規模の所にもパートタイム労働者が多いことがわかります。2つ目の○で、パートタイム労働者の属性を年齢別に見ると、男性は高齢者層が4割を超え、若年者が3割を超えるという状況です。女性は35~54歳ぐらいの層が約半数を占めている状況です。
 いちばん下の○は、「パートタイム労働者の賃金」です。年齢が高くなっても賃金が大きく上昇していません。5頁で、パートタイム労働者については勤続年数が長くなっても、時間当たり賃金はあまり上昇しない状況にあります。
 真ん中は、「パートタイム労働者の組織率」です。組織率は少しずつ上昇して、現在は5.6%になっています。前回ご説明いたしましたが、事業所にパートタイム労働者がいる労働組合のうち、パートタイム労働者に関して何らかの取組をしていると回答した労働組合は2010年には47.1%と、2005年の調査よりも増加しています。
 (3)は第1回研究会でご説明いたしました、パートタイム労働法の施行状況です。
 6頁のいちばん上の○は、改正パートタイム労働法の施行に伴い、6割を超える事業所が雇用管理の見直しを「実施した」となっております。その具体的な内容としては、労働条件通知書で特定事項を明示するようにした事業所が最も多く、次に正社員と短時間労働者の職務内容の区分を明確にした事業所も一定数あります。
 6頁のいちばん下の「第8条関連」で、7頁に移って、事業所において最も人数が多い職種に就いているパートタイム労働者を対象として調査しておりますが、正社員と職務がほとんど同じ短時間労働者がいる事業所は24.4%になっています。上から3つ目の○で、一方でパートタイム労働者個人調査では、「職務が同じ正社員がいる」とした者は15.9%、「責任の重さは違うが、同じ業務の正社員がいる」と回答した者は約4割になっています。これらについて、その半数が「正社員より賃金水準は低いが納得している」とする一方で、28.1%が「正社員より賃金水準は低く納得していない」状況にあります。
 7頁のいちばん下の○で8頁にかけて、パートタイム労働法第8条の3要件に該当する短時間労働者が、この調査においては、パートタイム労働者総数に占める割合は0.1%という結果でした。
 「第9条関連」について、いちばん上の○は、事業主がパートタイム労働者の賃金を決定する際に考慮する要素として、「能力、経験」「職務の内容」が、「地域での賃金相場」を上回っているという効果も一定見られると考えられます。
 「第10条関連」では、8頁のいちばん下の○で、パートタイム労働者に対して、日常的業務を通じた計画的な教育訓練(OJT)、入職時のガイダンス、職務遂行に必要な能力を付与する教育訓練は、正社員に比べると実施率は低くなっていますが、一定程度実施されているかと考えられます。9頁で、キャリアアップのための教育訓練(Off-JT)は、正社員に対する実施率が約6割であるのに対し、パートタイム労働者は17.6%にとどまっている状況です。
 「第12条関連」の正社員転換の関係は義務規定ではありますが、実際に正社員転換の推進措置を実施している事業所は48.6%と約半分にとどまっています。第12条のいちばん上の○の「また」のところですが、過去3年間の正社員への転換状況を見ますと、転換実績が実際にあった事業所は、実施している事業所のうち39.9%と約4割です。下から2つ目の○で、正社員への転換推進措置に当たり、フルタイムの有期契約労働者、短時間正社員という中間形態を設けている事業所も36.8%ありました。
 10頁で第13条の説明義務の関係です。改正パートタイム労働法施行後2年間、パートタイム労働者から処遇に係る説明を求められたことがある事業所は約2割です。このうち、求められた内容を説明している事業所は98.5%です。一方で、短時間労働者が、現在の会社や仕事に不満・不安を持つかということですが、4割弱の方が「ない」としている一方で、約6割の方が「ある」としています。その不満・不安の内容は多い順に、賃金が安い・雇用が不安定・正社員になれない・有休が取りにくいといったこととなっております。
 短時間労働者を雇用する理由は、人件費が安い、簡単な仕事というのが事業所側の理由としてあります。パートタイム労働者個人のほうでいうと、11頁で、パートタイム労働を選択した理由として、自分の都合のよい時間に働きたいというものが最も多い。一方で、家庭の事情で正社員としては働けない、就業調整ができる、正社員として採用されなかったという理由もあります。上から2つ目の○で、今後の働き方については、引き続き短時間労働者を続けたいが約7割、一方、正社員になりたいが2割弱となっています。上から4つ目の○で、就業調整をしている方は約25%で、その理由は税・社会保険といった制度との関係という理由が多くなっています。
 11頁、都道府県労働局雇用均等室における指導状況です。パートタイム労働関係の相談は、12頁のいちばん上を見ると、いちばん直近の平成22年度の相談件数は6,307件、事業主からの相談が43.9%、パートタイム労働者からの相談が35.8%となっています。
 12頁の指導状況については、指導状況の○の真ん中ぐらいに、平成22年度の数字で1万2,590事業所に対して報告徴収を行い、1万1,157事業所に対して2万6,091件の是正指導を行っています。いちばん下の○で、是正指導の内容としては、「通常の労働者への転換」と、「労働条件の文書交付等」に関するものが多くなっています。
 13頁は、パートタイム労働法に基づく「紛争解決援助」の実績です。これは、平成20年度から平成22年度の3カ年の合計です。労働局長による紛争解決援助の申立件数は3年間で14件でした。調停については、平成20年度に3件の申請がありました。
 パートタイム労働をめぐる諸制度として、「諸外国のパートタイム労働法制」について(4)で書いております。日本のパートタイム労働対策の在り方を検討する上で、EU諸国等のパートタイム労働法制の検討は有意義であるということで入れております。他方、賃金制度などは日本とEU諸国では違いますので、日本の雇用関係との違いを考慮した上で参考にすることは非常に重要ではないかと考えております。
 EUの1997年パートタイム労働指令についてです。指令の内容については14頁です。「待遇」に関してはいちばん上の○のように、「雇用条件に関して、パートタイム労働者は、パートタイムで労働するというだけの理由では、客観的な根拠によって正当化されない限り、比較可能なフルタイム労働者よりも不利な取扱いを受けないものとする」という内容になっております。そして適切な場合には、時間比例の原則を適用することが待遇については定められております。
 下のほうで、「パートタイム労働とフルタイム労働との間の転換」については、15頁で相互転換の希望であるとか、適宜その情報提供をすることを事業主が考慮すべきであるとされております。ただし運用の状況は、パートタイム労働指令に基づく新たな判例はまだほとんどない状況です。
 EU諸国におけるパートタイム労働法制ということでは、先ほどのEUのパートタイム労働指令を国内法化する形で、各国においてもパートタイム労働に関する法制が制定されております。
 「待遇」については、先ほどのEU指令と同じような形で、パートタイム労働を理由として、比較可能なフルタイム労働者と比べて、合理的な理由のない限り不利益な取扱いをしてはならないという法制が多くなっているかと思います。16頁の上の○で、履行確保手段も司法上の救済、行政機関による監督、行政型ADRによる紛争処理等があるということです。
 17頁では、EUのパートタイム労働指令にもありましたように、EU諸国の中には「パートタイム労働とフルタイム労働との間の転換」についても規定を設けている国もあります。いちばん下の「納得性」の関係では、書面により説明を求めることができ、その書面が訴訟における証拠として認められる例もあるということです。以上が「現状」です。
 2「検討に当たっての基本的な考え方」です。(1)パートタイム労働者が能力を発揮する社会です。既に見ましたように、パートタイム労働者がかなり増えている一方で、19頁の「また」の段落のように、パートタイム労働者の活用の進んでいる業種においては、基幹的役割を担うパートタイム労働者も存在しているということで、日本経済を支える労働力として、パートタイム労働者は引き続き重要である。他方、1で見ましたように、まだ待偶については通常の労働者との間に格差があるのではないか。また不満・不安を持つパートタイム労働者も相当程度存在しているということではないかと思います。
 このような格差については、パートタイム労働者と通常の労働者との間で、20頁のいちばん上のように、職務、働き方や待遇の決定方法が異なることが1つの理由ではないかと考えられます。ただ、こういう状況の中ですが、真ん中ぐらいの「既に人口減少社会となり、今後、ますます労働力供給が制約される日本において『全員参加型社会』を実現するためには、パートタイム労働者も含めた女性の就業の拡大が最重要課題となっている。このため、さまざまな事情により就業時間に制約のある者が従事しやすい働き方として、また、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすい働き方として、パートタイム労働の積極的な活用が非常に重要であり、その中で、パートタイム労働者の均等待遇を目指していくことが必要である」。こういうことで、「パートタイム労働者一人一人が、キャリアの見通しを持ち、均等な待遇を得て、高い意欲を持ち続け、その能力を有効に発揮することにより、企業においても生産性が向上し高い経営パフォーマンスが生み出され、ひいては日本経済の持続的発展がもたらされるような仕組みを目指すことが重要である」ということで、基本的な考え方として書かせていただきました。
 21頁で(2)基本的な考え方の2つ目です。パートタイム労働者の就業実態、企業の雇用管理制度は非常に多様でありますので、そういう多様性を十分考慮する必要があるだろうということを(2)で書いております。
 22頁で、3「パートタイム労働の課題」としてはどういうことがあるかということです。(1)通常の労働者との間の待遇の異同ということで、イとして「差別的取扱いの禁止」、これは現行法の第8条の関係です。第8条においては、通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者について、差別的取扱いを禁止しております。その場合の「通常の労働者と同視すべき」であるかどうかを判断するに当たり、日本の雇用システムがある程度長期の雇用を想定して人材育成を行っているとともに、待遇が決定されているということで、長期的な観点も無視できないということもありますので、3要件として職務の内容が同一であること、人材活用が同一であること、無期契約かどうかを要件としております。
 ただ先ほどご説明しましたように、対象となっているパートタイム労働者が少なくなっていて、今後、第8条の規定を活用してパートタイム労働者の待遇を改善することは、期待できない状況となっているのではないかと考えられます。その少なくなっている要因は、パートタイム労働者と通常の労働者の職務内容を明確に区分することも考えられるかと思いますが、日本の雇用慣行の下で、この3要件が合理性を有しているのか、企業のネガティブ・チェックリストになっているのかということも含め、3要件の在り方について検討する必要があると考えられますので課題として取り出しております。
 ロは現行法の第9条、均衡待遇のところです。1でご説明しましたように、第9条についても一定の効果はあると考えております。一方でパートタイム労働者が、特に賃金に対して不満・不安を持っていること、第9条に関する均等室における指導も一定程度実施しているところですので、更にその待遇改善を推進する方策について検討する必要があるのではないかと考えられます。
 (2)は待遇に関する納得性の向上ということで、現行法の第13条の関係です。第13条についても、効果は一定程度あったのではないかと考えておりますが、他方で実際に説明を求められた事業主が2割程度になっているということで、いちばん下の「このため」のパラグラフで、パートタイム労働者が、事業主から安心して十分な説明を受けられるように、「パートタイム労働者からの求め」という、こういう要件が必要であるかどうかも含めて検討する必要があるのではないかと考えられるとしています。
 (3)は教育訓練で、現行法の第10条の関係です。先ほども見ましたように、職務遂行に必要な能力を付与する教育訓練は一定程度行われていますが、キャリア形成のための教育訓練については、必ずしも十分に行われていないのではないかと考えられます。24頁で、パートタイム労働者にとって、キャリア形成の機会が十分得られないということは、働くインセンティブも阻害されるということ、そして待遇改善の機会も得られず、待遇の格差を是正することも難しくなるのではないかということで、キャリア形成の促進について検討する必要があると考えられるとしております。
 (4)は通常の労働者への転換の推進で、現行法の第12条です。先ほどもご説明しましたように、まだ実際に実施している事業所が半数ということですので、更なる推進が必要と思われます。また、パートタイム労働者は非常に多様な就業実態、意識も多様であって、雇用の安定を志向する一方で、さまざまな事情により、勤務時間や日数が柔軟な働き方を自ら選択しているところもあると思いますので、こういうニーズに応える方策があるかどうかについて検討する必要があると考えられます。
 (5)パートタイム労働法の実効性の確保というのは、現行法の第16条の関係です。現在、法違反を把握した場合に助言・指導・勧告により是正を図っておりますが、長期間にわたり是正されない事案も見られます。特に第8条や第9条については、事業所のさまざまな実態を把握する必要がありますが、協力が得られない場合もあるということで、更に何らかの方策を検討する必要があるかないかということで課題を挙げております。
 ロは実効性の関係で、「紛争解決援助」です。利用実績は先ほどもご説明しましたように少なくなっておりますが、これについては現在義務規定に係る紛争のみを対象としていることも理由の1つではないかと考えられますので、この点も含めて在り方について検討する必要があるとしております。
 課題の(6)その他の「税制、社会保険制度等関連制度」のところで、4人に1人のパートタイム労働者が就業調整を行っているということです。先ほどご説明しましたように、その理由も社会保険制度・税制の適用に伴う負担がありました。手取り収入がかえって減少してしまうことと、事業主のほうの制度の適用に伴う負担の増加を懸念することもあるのではないかと考えられます。
 25頁の下から2行目で、税制上の配偶者控除については、制度としては世帯の収入の逆転現象は解消されていると考えられますが、以前研究会に資料を出しましたように、事業主が支給する家族手当等が、配偶者の所得要件を税制上の103万円と同じにするといった企業の手当制度も就業調整に関連しているのではないかと思われます。就業調整は、パートタイム労働者にとって一定の経済合理性を有するとも考えられますが、単に手取り収入が減少することだけではなくて、適用になれば負担に応じてより手厚い保険給付を得ることができる側面もあるわけです。また、就業調整によって、パートタイム労働者の能力発揮の機会や、待遇の改善の機会といったものも阻害されているのではないかということで課題として書いています。
 27頁、28頁については、4「検討に当たっての留意事項」で4つ挙げております。1つ目は、「有期労働契約の在り方の検討との整合性確保」です。有期労働契約に関しては、研究会の取りまとめが昨年9月に行われ、昨年10月以降は労働政策審議会労働条件分科会において検討されています。パートタイム労働者の多くが、有期労働契約で雇用されておりますので、パートタイム労働対策の在り方については、有期労働契約の在り方の検討と整合性を図りつつ検討する必要があると考えております。なお、「有期労働契約研究会報告書」においても、パートタイム労働法制との相互関係に留意が必要であるとか、パートタイム労働法の枠組みを参考ということが書かれています。
 留意事項の2つ目は、「比較法の視点に基づく検討」です。パートタイム労働の在り方については、EU指令や、その国内法化等による各国の法制を踏まえる必要もあると思います。他方、アメリカのように契約自由の原則ということで、特に雇用形態に基づく不利益取扱いを禁止していないような国もあるということです。日本の制度を検討するに当たっても、諸外国の法制を踏まえる必要があると考えております。同時に、27頁のいちばん下の行のように、比較法の視点に基づき検討するに当たっては、各国の法制度の背後にある考え方、賃金制度、社会保障制度といったものの相違にも十分留意しつつ、比較法の視点に基づいて検討する必要があるだろうと考えております。
 3つ目の留意事項としては、「社会保障・税一体改革成案」との関係です。7月1日に「社会保障・税一体改革成案」が閣議報告されております。成案の中の「就労促進」の項目に「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を図る」ということが盛り込まれております。パートタイム労働法の見直しについては、社会保障と税の一体改革の具体化の1つとして行われるべきものであると考えております。
 留意事項の4つ目は、「東日本大震災が企業に与える影響」です。大震災の影響は非常に大きいものとなっておりますので、大震災が全国各地における企業活動や、国民生活に支障を及ぼしている点についても考慮の上、パートタイム労働対策の検討に当たる必要があるだろうと考えております。以上が「総論」です。
 第2「今後のパートタイム労働対策」ということで29頁以下です。第2においては、第1で見てきた事項に留意し、今後の選択肢を整理します。選択肢については、当面の課題として措置すべきもの、中長期的な課題とすべきもの、法律による対応が必要なもの、ガイドライン等の実行上の対応により可能なものといったさまざまなものがありますし、また選択肢同士が並立し得るもの、しないもの等もあり、組合せは多岐にわたると考えられます。ただし、この報告書においてはそういったことにとらわれず、考えられる選択肢を幅広く整理するということで考え方を書いております。
 まず待遇の関係で(1)均等待遇の確保です。均等待遇については、イの考え方として、各国の法制を踏まえますと、同一労働同一賃金と、雇用形態を理由とする合理的な理由のない不利益取扱いを禁止する方法の2つがあるのかと考えております。それを前提に、今後の我が国の法制、均等待遇の在り方について検討する必要があると思っております。
 30頁のロ「今後の在り方」です。今後の在り方の1つめとして、現行法第8条の「3要件の在り方とパートタイム労働者であることを理由とする合理的な理由のない不利益取扱いの禁止」です。1つ目の○で、3要件の在り方については、この研究会において、「人材活用の仕組み・運用等が同一であること」を満たすのは困難であって、「職務の内容が同一であること」の要件のみでよいのではないかというご意見もありました。他方、長期的な観点から、日本の雇用慣行では待遇が決められているということで、「人材活用の仕組み・運用等が同一であること」との要件のみでよいのではないかというご意見もありました。「また」のパラグラフで、賃金制度の違いを考慮せずに、すべての事業主に対して一律に3要件を適用していることが問題ではないかというご意見もありました。3要件の3つ目の無期要件について、有期労働契約の在り方に関する議論の状況も見つつ検討することが必要ではないかというご意見もありました。
 さらに第8条のパートタイム労働法の見直しに当たっては、第8条の規定を活用したパートタイム労働者の待遇の改善の実効を上げていくためには、その適用範囲を広げていくことを検討すべきではないか。その際には第8条の3要件がネガティブ・チェックリストとして機能しているのではないかという懸念に対応する観点からは、事業主はパートタイム労働者であることを理由として、合理的な理由なく不利益な取扱いをしてはならない、という法制をとることが適当ではないかというご意見もありました。
 このいちばん最後のご意見については、その「合理的な理由」が明らかではないために、かえって紛争が増大するのではないかという指摘もありました。そのため、合理的な理由の考慮要素となり得るものについて、一定の例をガイドラインにおいて示す、そして行政指導による履行確保も併せて実施することが適当ではないかというご意見もありました。この合理的な理由として、EU諸国においても、雇用形態に係る不利益取扱い禁止原則においては、勤続年数、学歴、資格、職業格付けといったものが合理的理由になっている。また、EU諸国の「同一(価値)労働同一賃金原則」においては、労働時間や就業場所の変更にどれだけ対応できるかという点、あるいはキャリアコースなどが考慮されていることを踏まえると、日本の雇用システムにおける合理的な理由の考慮要素というものも幅広く考えられるのではないかというご意見もありました。こういうご意見も踏まえ、今後第8条を十分議論する必要があるだろうと考えられます。
 均等待遇の今後の在り方の2つめ、フルタイム有期契約労働者です。第8条の適用範囲が限られているのではないか、これを広げていくこととしてはどうかという観点からすると、現行のパートタイム労働法の施行状況を見ますと、パートタイム労働法が現行では適用されていないフルタイムの有期契約労働者に関する相談が、雇用均等室のほうに一定件数挙がっているところです。こういうこともあり、前回のパートタイム労働法の改正の際の附帯決議においても、いわゆるフルタイムパートについても、本法の趣旨が考慮されるべきであることを広く周知することとされていたところです。
 また32頁のいちばん下のほうで、「有期労働契約研究会報告書」においても、有期契約労働者の待遇について問題があるのではないかということも指摘されているところです。現在、労働条件分科会で議論されているところです。
 33頁では、こういうことも踏まえて、パートタイム労働者と同様に雇用管理の改善が必要である、いわゆるフルタイムパートと言われるような、フルタイムの有期契約労働者について、パートタイム労働法の適用対象の拡大の可否の視点から検討することが重要ではないかと考えられます。また、有期労働契約の在り方に関する議論を見極めつつ、検討する必要があると考えられるとしております。
 待遇の関係で、(2)均等待遇の対象とならないパートタイム労働者の待遇改善です。待遇について取扱いを異にすることに合理的な理由があるパートタイム労働者の待遇改善についてどう考えるかということです。現行の第9条については、まだ課題があるということです。33頁の(2)の2つ目の○で、パートタイム労働法第9条の努力義務を義務化してはどうかというご意見もありました。ただ、一方で賃金制度についてはさまざまなご意見をいただいたところですが、通常の労働者と、パートタイム労働者については、内部労働市場と外部労働市場とは賃金の決定方法が違う。また、そういった企業において複数の賃金制度が存在することは認めざるを得ないだろうというご意見もありました。
 33頁のいちばん下のパラグラフで、パートタイム労働者と通常の労働者の均衡賃金の決め方として、通常の労働者と同視すべき、均等待遇とすべきパートタイム労働者の賃金と、パートタイム労働者の採用時は市場の賃金であるということで、ここを結んだ賃金制度にするということは考えられるのではないかというご意見もありました。こういうことを踏まえて第9条を検討する必要があると思います。
 34頁の「また」で始まる、○の付いているパラグラフで、先ほど賃金制度を異なえることについては合理性はあるが、賃金制度を違うものにするときの説明責任は事業主側にあるのではないか。例えば、通勤手当や忌引きについては、パートタイム労働者と通常の労働者の取扱いを違える場合、その理由を説明できるかどうか吟味することは重要であるというご意見もありました。
 こういうことを前提に、「今後の在り方」として34頁の真ん中のロで書いてあります。第9条第1項ですが、現行は通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者の職務の内容、職務の成果といった要素を勘案し、職務関連賃金を決定するように努めるという形にされています。事業主が行うべき内容が必ずしも明確ではないという考え方もとれると思います。他方で賃金制度や雇用管理の取組というのは、個々の事業所ごとに非常に多様でありますので、そういう待遇改善の在り方について、法律で一律の基準を設けることには限界があるのではないかというご意見もありました。
 このため、パートタイム労働者の待遇を一層改善するためには、個々の事業所ごとに、雇用管理の取組やパートタイム労働者のニーズ等の実情に応じ、事業主が自主的にパートタイム労働者の雇用管理の改善等を計画的に進めることが重要ではないかというご意見がありました。
 この場合に、例えば次世代育成支援対策推進法の枠組みを参考に、厚生労働大臣が指針を定め、そして35頁のように、事業主が行動計画を策定することが考えられるのではないかと思います。行動計画の具体的な内容としては、パートタイム労働者の賃金水準の改善であったり、パートタイム労働者の賃金制度の見直しであったり、個々の事業所の実情に応じた幅広いものを認めることが考えられるのではないか。
 35頁のいまの○のいちばん最後のところで、現在、次世代育成支援対策推進法の枠組みに関し、認定を受けた事業主が雇用促進税制の適用を受けられるということもありますので、こういうものを参考に、パートタイム労働者の雇用管理の改善のための行動計画を策定した事業主に対しても、一定のインセンティブを付与することが適当ではないかと考えられます。
 35頁のハの「留意点」です。これは第8条について、仮に合理的な理由のない不利益取扱いを禁止する法制をとる場合の第9条の在り方について、検討する必要があるのではないか、ということで留意点として挙げています。
 36頁は(3)職務評価です。「職務評価の考え方」として、パートタイム労働者と通常の労働者との間において、均等・均衡待遇の確保を更に進めるため、職務分析・職務評価が非常に重要であるという考え方があります。このため、本研究会においてお二人の専門家からヒアリングを実施いたしました。
 そのヒアリングの内容については37頁でまとめさせていただきました。37頁の○の付いた段落ですが、通常の労働者とパートタイム労働者のそれぞれの職務評価点が明らかになり、その職務評価点に見合った賃金を計算することができ、その差に応じた賃金を支払うことができるという見解が示されました。また、裁判などのツールになるのではないかといったご意見もありました。一方で、職務評価は単一の賃金体系を企業に要請するものではない。また、企業にとっての職務の序列を決めるものであって、得点に比例して賃金の水準を必ずしも決めるものではないというご意見もありました。
 38頁では、このヒアリングの中で賃金体系というものは、職務給、職能給とさまざまな組合せであり、職務評価の結果というのは、その職務給の部分に反映されるのだろうというご意見もありました。また、職務評価のプロセスを企業において明示することで、労使で共有することにより、待遇についての議論が進むことが期待されるというご意見もありました。また、裁判のときに合理性を合理性についての立証について使えるのではないかというご意見もありました。
 38頁は、職務評価の「今後の在り方」です。こういう特性を踏まえると、職務評価を義務付けるというよりは、むしろ事業主がニーズや実情に応じて職務評価制度を導入する。そして、労使間で職務評価のプロセスや結果を共有し、これを踏まえて通常の労働者とパートタイム労働者の間の待遇について議論を進めることを促していくことが、1つの方向性として考えられるのではないかということで、事業主が定める行動計画の中において、職務評価を具体的な取組のメニューとして位置付けることにより、職務評価制度の導入を促していくことが考えられるのではないかと思います。39頁のハの「留意点」のすぐ上で、現在の厚生労働省の職務分析・職務評価実施マニュアルを改訂することも必要ではないかと考えられるとしています。
 「留意点」のところは、職務評価の結果、就業規則の変更の点について書かせていただいております。
 40頁は、2「待遇に関する納得性の向上」です。ロの「今後の在り方」の1つ目の○は、パートタイム労働者が説明を求めやすくする方策として、仮に現行の規定に加えて、例えばその説明を求めたことを理由とする不利益取扱いの禁止を法律に規定することが考えられると思います。
 40頁の3つ目の○は、このパートタイム労働者からの求めを仮に外して、求めにかかわらずとした場合ですが、そういう場合であっても説明を一定義務付けるというよりは、むしろ事業所ごとの実情に応じ、柔軟なコミュニケーションを集団的労使関係の中で行うことができるような枠組みを設けることが重要ではないかというご意見もありました。
 41頁で、現在パートタイム労働者の労働組合組織率が低いということもありますので、ドイツやフランスの制度を参考に、通常の労働者、パートタイム労働者、事業主を構成員として、パートタイム労働者の待遇等について調査審議し、事業主に対して意見を述べることを目的とする労使委員会を設置することが適当ではないかとの考え方もあります。この点については、一般的に労使委員会の枠組みが構築されていないことがありますので、パートタイム労働者については引き続き検討が必要になるのではないかと考えております。
 43頁で3「教育訓練」です。教育訓練のイの考え方の2つ目の○のポツのいちばん上ですが、教育訓練というのは、将来パートタイム労働者をどのように活用しようかという経営戦略に応じて行われるものであるというご意見がありました。2つ目のポツでは、パートタイム労働者は通常の労働者と異なって、労働契約の締結時点に、事業主と将来のキャリアの見通しについて合意していないことがあるので、ここが合意できるような仕掛けが必要ではないかというご意見などがありました。
 43頁のロ「今後の在り方」として、パートタイム労働者に対するキャリア形成のための教育訓練、これは経営戦略に応じて行われることを踏まえると、これも一律の基準を設けて義務付けるよりは、むしろ44頁のように行動計画の中で、パートタイム労働者のキャリアの見通しを整備する。それに応じてパートタイム労働者に計画的に教育訓練を実施するという形で、更にそこにインセンティブを付与して誘導していくことが考えられるのではないかと思います。
 44頁の「また」で始まる真ん中ぐらいの段落ですが、パートタイム労働者を含めた非正規労働者に対する職業訓練について、生産性の向上にはつながっているが、賃金の上昇には結び付いていないという調査結果もありました。このため、職業訓練を通して得られた経験・能力を評価しやすい仕組みを普及させる。即ちジョブ・カード制度、職業能力評価基準、キャリア段位制度といったものの普及促進が重要ではないかというご意見もありました。
 45頁は、4「通常の労働者への転換の推進」です。イの考え方のいちばん下の段落も、研究会の中で議論がありましたように、好事例・調査を見ますと、やはりパートタイム労働者を活用しようという経営戦略をとる事業主の下では、通常の労働者への転換が促進される傾向が見られるため、これを踏まえた対応を考える必要があるということです。
 ロ「今後の在り方」では、短時間正社員というのが、パートタイム労働者のニーズにかなうケースが多いと思いますが、残念ながら日本の賃金制度や働き方の特性に応じて、通常の労働者以外から短時間正社員に転換する事例は現在のところ少ない状況にあります。
 また、46頁の「いずれにしても」の段落のように、まずはフルタイムの通常の労働者の働き方を変えて、労働時間を短くすることが重要かと考えられます。こういうことも踏まえて、フルタイムの通常の労働者の長時間労働の是正を図りつつ、パートタイム労働者の能力を有効に発揮させる観点から、事業主自らが行動計画を作成し、その中に、教育訓練などと一体として、転換の措置を定める。そういった計画を作成することを促進するというアプローチが考えられるのではないかということです。
 46頁の(2)の転換の関係で、「勤務地限定」「職種限定」の無期労働契約です。これは中間的な働き方として、47頁に移って「雇用政策研究会報告書」や「有期労働契約研究会報告書」においても、提言されていることを踏まえて検討する必要があると考えられます。
 47頁のロ「今後の在り方」です。「勤務地限定」「職種限定」の無期契約労働者においては、パートタイム労働者のニーズに対応するのではないか。また無期労働契約となることから、雇用が安定すると考えられる一方で、事業所の閉鎖や職種の廃止の際の雇用保障の在り方については整理が必要であると指摘されております。本研究会においては、こういう方の解雇については、解雇権濫用法理の4要件が柔軟に適用されるのではないかというご意見もあったところですが、いずれにしても今後、関連判例の内容の整理が必要であると考えられます。
 48頁で、正社員転換と関連して(3)パートタイム労働とフルタイム労働との間の相互転換です。既にご説明いたしましたように、EUのパートタイム労働指令や、EU諸国の法制においては相互転換について定められているところです。ロ「今後の在り方」については、パートタイム労働のメリットを広げるものであって、多様な働き方を選択できる環境づくりの1つとして、ワーク・ライフ・バランスの観点からも有効と考えられます。
 一方で、日本はまだ通常の労働者とパートタイム労働者との間の待遇の格差がありますので、まずはそちらの格差を是正することが必要であって、その状況を見極めつつ、相互転換の実現を目指していくことが考えられるとしております。
 5「パートタイム労働法の実効性の確保」です。(1)事業主に対する報告徴収、勧告等です。これは他法の規定例も参考に、勧告に従わなかった場合におけるその旨の公表等を検討することが考えられるとしております。(2)紛争解決援助については、対象範囲を努力義務規定に広げることも考えられるのではないかとしております。
 (3)その他として、法の実現手段については、法違反に対する刑事制裁、私法上の権利義務の設定・実現を通じた民事上の紛争解決、行政指導等さまざまな手法があると考えられますが、EU諸国における動向も踏まえると、実体規制を通じた法違反による事後救済だけではなくて、手続規制の活用、具体的には既に申し上げております、事業主による自主的な行動計画の策定の促進というもので、パートタイム労働者全体の待遇の改善を図るアプローチも重要になると考えられるのではないかと記しております。
 6「その他」です。(1)はフルタイム無期契約労働者の取扱いです。フルタイムの無期契約労働者、通常の労働者を除く方々ですが、この方々については雇用の安定のところでは一定の保護が図られていると思いますが、長期的な観点からは待遇が決定されていないということで、パートタイム労働者と同様に、雇用管理の改善を図る必要がある場合が考えられると思います。有期労働契約の検討及びパートタイム労働法の対象となっていないフルタイムの無期契約労働者について、実態を踏まえて保護が図られるよう検討すべきであるとの意見がありました。
 (2)税制、社会保険制度等関連制度ですが、「社会保障・税の一体改革」の中で、非正規雇用者の将来の年金権の確立等のために、厚生年金制度及び健康保険制度の適用拡大が現在検討されております。働き方に中立的な税・社会保険制度の構築を早急に図ることが必要であると考えられます。企業における家族手当の在り方等についても、改善を図ることが期待されるということです。
 簡単ですが、以上で報告書の説明は終わらせていただきます。
○今野座長 ありがとうございました。それではご意見・ご質問をお願いしたいと思います。一応こちらの考えている段取りとしては、今日ザーッと意見をいただいて、修正すべき点がもしあれば修正をして、それで次回の研究会で成案が出来ればいいかなと考えております。
○浅倉委員 とても多岐にわたってしまうのですが、ほかの方の時間を奪ってしまうといけないので、途中で阻止していただいて結構です。
 最初の「はじめに」のところなのですが、2頁の1段落、「本研究会としては」というところです。そもそもこの研究会では、なるべく大きな風呂敷を広げようと言ったのに、経営パフォーマンスのことだけが書かれているので、加えていただきたい。経営パフォーマンスのみならず、社会の公正という観点とか、労働市場にとっても望ましいとか、そういうことをもっと入れていただければと思います。「短時間労働者に働きと貢献に見合った待遇を確保することが、社会の公正という観点から見て重要であり、労働市場にとっても望ましい」というのは、以前から労働政策審議会の雇用均等分科会でも繰り返し指摘されていますので、そういうことも入れ込んでいただければと思います。
 さらにより大きな観点といえば、やはり男女共同参画という観点もぜひ入れていただきたいと思います。ちょうど今野先生も佐藤先生も男女共同参画のほうに関与していらっしゃいますので、第三次の男女共同参画基本計画のほうには、正規と非正規の格差が男女格差の一因になっている、という問題も指摘されていますので、そういう観点からも、非正規雇用の雇用環境の整備に向けた一層の取組が必要だ、と指摘されていることなどを踏まえていただければと思います。
 3頁の1(2)の「パートタイム労働の現状」のところです。男女別のことが書いてありますが、女性の雇用者に占める割合が43.0%ということと同時に、パート全体の女性比率が非常に高いということも書いておいていただければと思います。そうすれば、パート対策が女性の能力活用でもあるという観点が入ってくるのではないかと思います。
 4頁ですが、2つ目の○の最後のほうで、平均勤続年数なのですが、5年以上のパートの割合が、女性では35.8%、男性では21.7%になっているという統計が既に出されています。この辺りがパート労働者の不満の根拠になっていると思いますので、それも指摘していただければと思います。このような細かいことでよろしいですか。
○今野座長 いいですよ、どんどん言ってください。
○浅倉委員 5頁ですが、「パートタイム労働者の組織率」の直前の文章ですが、賃金格差の問題が書いてあります。2010年には男性が54.7%、女性が70.1%ということなのですが、これはそもそも女性の一般労働者の賃金が低いからであって、70.1%が男性よりもよいかのように受け取られては困ります。それがわかるように書いていただければと思います。
 13頁になりますが、「諸外国のパートタイム労働法制」との比較について、(4)の1つ目の○ですが、「日本の雇用関係との違いを考慮することが重要である」と書いてあります。おっしゃるとおりだと思うのですが、それと同時に、私も発言したことですが、EU法では「男女同一価値労働同一賃金原則」に基づく訴訟や、間接差別の法理などを通じて救済が行われているので、そこに全般的に法制度上の違いがあるということも書き込んでいただければと思います。このことは、27頁(2)の「比較法の視点に基づく検討」でも同じ指摘ができると思います。
 19頁の下から2、3行目のところですが、「仕事に対して不満・不安を持つパートタイム労働者も相当程度存在している」という書き方なのですが、ただ単に仕事に対して不満・不安を持つだけではなくて、パートタイム労働という就業形態であるだけで、きちんとその評価がなされない、働き・貢献に見合った待遇が受けられないというところに不満を持つ方が多いので、その辺りも少し注意して書いていただければと思います。
 21頁の(2)、パートタイム労働者の多様な就業実態や企業の雇用管理制度等を踏まえた対応の部分ですが、ここにも女性の問題をもう少し書いていただきたいと思います。たとえば22頁の4行目、「パートタイム労働者の現状に対する意識は多様である」とあり、そのとおりではあるのですが、女性の場合は、出産によって一旦労働市場を離れますと、再就職の機会がパートしかない場合が多いので、本人の望む望まざるにかかわらず、キャリア中断によって生涯賃金が非常に低下してしまうという問題があるので、その辺りがとても問題である、それに対する対応が必要だということも、是非書いていただければと思います。
 22頁ですが、「差別的取扱いの禁止」の3要件のところを丁寧に書いていただいていると思いますけれども、やはりこの差別的取扱いの禁止の考え方そのものを強調していただきたい。そもそもパート法では、パート労働者であろうが通常の労働者であろうが、できるかぎり働きや貢献に見合った処遇をする、すなわち、就業の実態等を考慮して差別的取扱いを禁止する効果的な措置を進める必要がある、という合意が、この研究会ではあったと思うのです。したがって、就業の実態に合わないような差別的取扱いをもっときちんと禁止できるような方策を考えるべきだというところは、合意できていたと思います。だからこそ、就業の実態を考慮する前にそもそもパートと通常の労働者を比較不能にしてしまうような3要件を設定することが、法の意義を減殺することになるのではないか、そこをもう少し書いていただければという気がしております。
 28頁(4)「東日本大震災が企業に与える影響」。これはこういうふうに書くしかないとも思うのですが、だからこそパート労働者の意欲と能力を活用することがとても重要だと私は考えます。そういう意見もあったということを添書にしていただければありがたいとは思います。
 27頁から28頁にかけて「検討に当たっての留意事項」として(1)(2)(3)(4)としか挙がっていないのですが、やはりここも男女共同参画の基本計画にも述べられていることが重要です。これも留意事項になると思いますので、これも書き込む必要があろうかと思います。
 29頁の考え方の整理です。イ「均等待遇の考え方」というところですが、「同一労働同一賃金」という考え方を、日本の現行のパートタイム労働法が前提としているというのですが、果たしてそれでいいのかなと思います。ここは皆さんのご意見を伺いたい。私としては、「同一労働」だけでは比較できないのだという考え方によってパートタイム労働法は出来上がっているのではないかと思います。現行法は、比較すべき対象を厳格に限定した上でやっているのだという書き方にしたほうが、正確なのではないかなという気がいたします。
 31頁の一つ目の○の「合理的な理由」についてなのですが、まず「事業主にとって、何が合理的な理由に当たるか等の判断を行うことが難しい」とあるのですが、まず、「合理的な理由」は、事業主が決めるものではないということが前提ですので、これは「法的な合理性」であることをはっきりさせて欲しいと思います。もっとも、そのほかにここの書き方はどうしたらいいかというのは、私もあまりアイディアがないのですが、ここではパート問題が女性の問題であるということにやはりもっと注意を払っていただき、間接差別に該当するようなものはそもそも合理的な理由に当たらないということを、注意深く書いていただければいいと思います。
 少し飛んで49頁ですが、(3)その他のところで、紛争解決援助については、もう少し議論をしたほうがよかったなと、あとで反省しました。いま意見を言わせていただきます。(3)のその他の1つ目の○ですが、法の実現手段については、これこれありますと書いて、すぐに「しかしながら」として、事後救済だけではなくというふうに言ってしまっています。これでは、事後救済に重きを置いていないような受け止め方がされないかと、不安に思っています。といいますのも、パート労働者個人が救済申立てをするということはとても難しいので、できる限り立場の弱いパートにとっては負担が少ないような形での事後救済がもっと必要ではないかというふうに考えるからなのです。
 例えば、これは現状でも否定されているわけではないと思うのですが、労使関係に熟知した委員が関与している労働委員会における個別労働関係紛争の調整手続とか、労働審判手続などにおいて、パート関連紛争をもっと扱ってもらえればより良いのではないかと思います。うまく入れ込めるかどうか検討事項ですが、そのような意見があったということを書いていただければと思います。長くなってすみません。よろしくお願いいたします。
○今野座長 いまおっしゃられた中で、皆さんの意見を聞きたいというのがありましたね。
○浅倉委員 同一労働同一賃金、29頁です。どうなのでしょうか。このような整理でいいのかどうかです。
○今野座長 この場合、ここでいう同一労働というのは、活用の仕方も含めて同一労働と言っているのですね。ここはそういうことですよね。
○浅倉委員 はい、そうです。そういう意味をこめて使っているのならこの表現でよいのでしょうが。
○今野座長 おっしゃられることは、この同一労働というのをもう少し厳格に現行では定義しているので、そこをちゃんと書いたほうが、わかるように書いたほうがいいのではないかと、そういう趣旨ですね。
○浅倉委員 はい。諸外国の例を紹介するときに、同一労働、類似労働、それを根拠としてという書き方をしていますので、その同一労働、類似労働という考え方と、ここでの同一労働というのは少し違うのではないかという気がしますので。
○今野座長 それはいいですよね。そこは問題ないですよ。もう少しわかりやすくというか正確に書けということですね。
○水町委員 要は同一労働というよりも同一キャリアのほうが、要件として大きいのですね。だから同一労働に加え、期間の定めのない労働契約であることや、人事異動の有無や範囲が同一であることを求める制度になっているということなのですが。「同一労働同一賃金の考え方を前提とし」というと、ちょっと認識が簡略化しすぎているかなと。
○今野座長 そうですね。そこは修正すればいいのではないですか。
○山川委員 たぶんこれは各国の法制を踏まえるということであったため、まとめ方が難しくなっていると思うのですが、確かにこれだとちよっと簡単すぎて。要は一定の同一性要件を満たす場合に同一に扱わなければならない、抽象的に言えばですね。その同一性を同一労働とするか、キャリアの同一性とするか、3要件とするかということにすれば、抽象的ですが、一応各国の法制をまとめることにはなるのかなと思います。書き方はいろいろあると思うのですけど。
○水町委員 ただし各国の法制を踏まえると、いま男女間の平等の問題ではありますが、パートの問題とか有期の問題で同一労働同一賃金を正面からとっている国はないですね。これ全体として、法制の客観的な理解として誤解のないような表現にしておいたほうがいいかなと思います。
○今野座長 なるほど、ではヨーロッパなどは何て書くのですか、一言でパッと書くと。
○山川委員 むしろ各国の法制というのは、各国の関連する法制ということで、男女差別の問題も含めるとみたいな感じです。日本のパートタイム労働法はどちらかというと、男女差別法制に近いような書き方になっているので、そこも入れた比較のほうがわかりやすいかなと思うのです。
○今野座長 では、いずれにしてもそこは少し変更していただくということで。ほかについては最後の点ですが、いちばん負担の少ない事後救済の方法があったほうがいいという話ですね。
○浅倉委員 そうです。
○今野座長 労働委員会とか労働審判でというのは、いまは使えないのですか。
○浅倉委員 使えるのです。
○今野座長 今でも使えるのですよね。
○浅倉委員 労働審判はどうなのでしょう。
○山川委員 使えるんです。あまり選ばれてないというか、弁護士を付ける必要が労働審判はあることが多いのではないかという感じです。
○水町委員 使えるんですが、8条が射程がほぼ0.1%あるかどうかなので、8条がかかることは実際上ほとんどないし、9条がバランスをとるように努めるということなので、これは法的に強制できるかどうかというのがわからない。8条も9条もいずれも労働委員会にかかっても、労働審判にかかってもほとんど機能しない制度になっているので、もし8条、9条の規定の在り方を変えれば、こういうふうに労働委員会における紛争解決とか、労働審判における紛争解決において活かせるものにする。そういう意味では、事後的救済としての制度も利用可能な、そういう形の実効性は高めることにつながり得るかもしれません。そういう観点でガイドラインを作れば、そういうときに裁判官も、あ、こういうガイドラインがあるのだといって、では、それに基づいて少し解釈をしようかというふうになるかもしれないですね。
○今野座長 その8条、9条で、それが変わって事後救済がやりやすくなったというか、要するに今の話は、もともとそんな人はいないという話でしょう。だからそこはいるようになったときに、事後救済をしようとしたときに、現在の労働委員会とか労働審判制度では、少しやりにくいのではないかという問題提起だと思うのですが、その辺はどうなのですか。
○水町委員 特にやりにくいということはないと思います。ルールをはっきり決めてくれれば、事案に応じて紛争解決ができるというのが労働委員会とか労働審判のいいところなので。個別の事案に即した解釈をするといったら、解釈の基になるものがいまはよくわからないし、適用していいのかどうかもわからないという状況なので、適用していいですよ、そのときに参考にすべき基準とか、例になるのはこういうものですよというふうに、きちんと提示できれば、では、それに基づいて個別の事案で解釈しましょうという方向になり得るとは思うのです。
○今野座長 もしそうだとすると、ここで書く必要はないということですか。いま49、50頁、要するにおおもとが問題なので、事後救済制度の問題ではないということをいま言っているわけですよね。
○水町委員 まさにここに書くべきだと私は思いますけど。
○今野座長 では、おおもとが変われば起こるから、事後救済制度として労働委員会とか労働審判も。
○浅倉委員 それとも現状分析のところで書いていただいてもいいのでしょうか。現状ではほとんどない、現実には取り扱われていないので、なぜかというところを少し書いていただければ、それも問題提起にはなると思うのです。いまはともかく、せっかくあるのに使っていないというのではなくて。
○今野座長 その問題というのがおおもとの問題なのか、事後救済の問題なのかということを、少しはっきりしたいということです。
○水町委員 これ両方で、おおもとを作るときに、事後救済で理解できるような制度にしておくことが必要ですし。
○今野座長 そういう書き方ですね。
○水町委員 そういう意味です。そういう意味で大本は書いて、でもこれを行政指導などでやりますよというのではなくて、きちんと裁判所とか労働委員会という行政委員会の中でも利用可能なものとして、そういう意味ではアクションプランと行政とか司法制度を含めた総合的な救済実効性確保の方向性に進むべきだとか、進むことが考えられるとか、そういうふうに。
○今野座長 私がお聞きしたのは、この制度そのものを何か変えなければいけないかなということは書かなくていいということですね。はい、わかりました。あとはいろいろご意見がありましたが、大体対応可かなというふうに思ってお聞きしたのですが、何かコメントしておくことがありますか。
○吉永短時間・在宅労働課長 かなりいろいろな箇所について御指摘をいただきましたが、ちょっと工夫して、ご相談させていただければと思います。
○今野座長 そのほかにいかがでしょうか。
○佐藤委員 あまり大したことではないのですが、いままで議論していなかったのですが、19頁の「通常の労働者」なのです。これは19頁の注73のところで、「通常の労働者」というのは正規型の労働者がいる場合はその正規型の労働者のことをいって、その正規型というのは無期だけではなくて、長期雇用を前提とし、賞与、退職、定期昇給・昇格があるということで、かなり特定の社員像を考えたのですね。そうすると、例えば後ろのほうの現行のパートタイム労働者の通常の労働者への転換ということを考えると、例えば中小企業などであまりこういう制度がない所で無期にしたのは、通常の労働者への転換ではないということになるのですか。何かここは通常の労働者への転換制度といったときに、こういう正規型の労働者への転換を求めているのか、そこがちょっと。
 例えば51頁の上から3行目、「通常の労働者を除くフルタイム無期契約労働者」と書いてあって、これは無期だけど通常の労働者というのは、たぶんこれは、ここでいう正規型の労働者を考えた。通常の労働者を除くだから。その特定の長期雇用関係を前提、無期で、無期というだけではなくて企業が長期の人材活用を考えて、例えば長期の人的投資をし、スキルが上がれば給与も上げてみたいなものを除くフルタイム、これの改善と書いてあると、通常の労働者への転換制度といったときには、そういう労働者に転換していきたいと読むのかなという気にはなったのです。
 つまり、フルタイム無期の人にもいろいろな処遇の人がいるわけですよ。もちろんこちらの改善というのはあるわけです。私はそれを否定するわけではなくて、単に雇用が長期というだけで、企業が長期の視点で人的ケアをしない。通常の労働者でもキャリア労働ではない人もいるわけで、こちらで改善しなければいけないというのはよくわかるのですが、そのときに、この通常の労働者というのが単に無期というだけではなくて、きちんと処遇する。きちんとというのは変ですね、一定のそれを言うということになっているのですか、そこがあれっと思ったので。
○今野座長 何となく想定している人はそういうことです。
○佐藤委員 そういうことでしょう。そうすると通常の労働者の転換といったときに、単に無期。会社の社員についてキャリア・ラダーもそんなになくて、退職金も賞与もない。だけど無期ですよという会社はありますよね。そこにパートを転換しても駄目なのね、そういうことになるのですか。通常の労働者への転換にならないという理解ですか。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 現行制度では、通常の労働者への転換を目指すというのは、無期化だけでなく、パートタイム労働者より待遇も改善されることを目指すということになっています。
○佐藤委員 そうすると、つまりフルタイムの無期の労働者についても、処遇改善をしろということです、ある面では。そうしないと通常の労働者はできない、通常の労働者がいないわけで、単に無期の労働者がいるだけ。
○今野座長 全員無期というケースを想定しているわけですか。
○佐藤委員 いやいや、有期のパートがいて、無期がいるのだけれども、ここでいう通常労働者。たぶん51頁はそれを考えているのですね。通常の労働者を除くフルタイム契約の労働者は、そういう理解でいいのですか、そこはあまり議論していなかったので。
○今野座長 通常労働者の想定しているのは、そういう人なのですよ。長期雇用で何か。
○佐藤委員 長期雇用だけではないの。キャリアがあって、そういう人を想定していて。
○今野座長 ちょっと整理しないと。
○佐藤委員 そうすると通常労働者への転換制度といっても、単に無期にするだけでは駄目なのですねという話です。
○今野座長 想定しているのはそうですよね。でもそうではなくて、キャリアのないところに転換するという意味は単に無期になったということ。
○佐藤委員 だからきちんと無期の人も人事管理していないとか、会社を想定すると結構中小にいけばありますよ。特にパートで働いている人の39%が29人以下。だから実際多いわけですよ。そうすると変な話、ここでいう通常労働者はいないということになる会社もある。
○今野座長 そういうことを想定しているのでしょう。
○佐藤委員 そういうふうに考えていいのですかという話なのです。
○今野座長 そうすると。1つの典型的な例としては、正社員に転換します。転換しましたが、正社員それ自身がここでいう通常労働者ではないという状況を想定しているわけですね。
○佐藤委員 そう考えているのかなと。通常の労働者がこういうふうに定義されているので、ちょっと気になったと思って。これは別に法律に書かれているわけではないのですか。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 現行制度は単なる無期よりも、正社員として、さらに長期のキャリア見通しがあって、待遇が上がっていくことを想定しています。もちろんそこはケース・バイ・ケースで、実際に事業主を指導する場合には、雇用管理区分がいくつかあり、パートではない、正社員として扱われている無期の労働者がいる場合に、その無期の労働者の待遇を改善しなさいという指導まではしていません。ただし、目指すべきところとしては、通常の労働者として、無期契約であり、長期的な観点から待遇が決定される労働者を想定しています。
○今野座長 趣旨としてそういうことにしないと意味がないですね。いった先はやはり駄目だというのでは。
○佐藤委員 パートタイム労働法は、フルタイムの人もちゃんと処遇改善をしなさいという法律なのかと思っています。やらなければいけないところもたくさんあると思うのです。
○今野座長 まあ間接的にはそういうことです。
○佐藤委員 そういう趣旨でいいのですかという話です。
○石井雇用均等・児童家庭局審議官 佐藤委員のご指摘はまさに鋭いところを突いていらっしゃると思うのです。パート法を作った当時の時代背景を考えたときに、そのときにはいわゆる正規型という方々がしっかりいたわけで、そうした時代にこの法律は作られたわけです。しかし、雇用管理がその後変化してきていますので、今の目で見ますと、いみじくも佐藤先生がおっしゃったように、フルセットの正規労働者の人もいるかもしれないけれども、そもそもそういう人がいない中小企業も実はあり得るわけです。
 そのときにここを硬直的に解していくのが果たして適当かどうかというのは、また1つ議論があると思うのです。やはりフルセットの方がもしいれば、そこに転換しなければ転換したことにならないというふうには解釈するのだと思いますが、そもそもそこまでフルセットの方がいなかったからといって、それを通常の労働者と捉えないという言葉で解していくのは、私はちょっとどうかなというように思います。ここは事務方で打ち合わせもできておりませんので、あとで相談をしたいと思います。
○小宮山副大臣 ここで均等待遇ということを入れておいてほしいと思います。社会保障の改革の中に就労を入れて、ディーセント・ワークを盛りこんでいることからしても、先ほど佐藤委員がおっしゃったように、正規労働者のほうも良くしたいということもあるわけなのです。いま石井審議官が申し上げたように、全部外してしまうというわけではありませんが、せっかくこのパートタイム労働法を変えようというときには、理想かもしれませんが、均等を目指して。やはり軸足の置き方はそちらに置いておいたほうがいいのではないかとは思いますが、どうでしょうか。
○今野座長 何となくまだ整理できてない。変なふうに書くと余計また混乱しそうだな。もう少し整理したほうがいいですかね。
○佐藤委員 私ちょっと気になったのは、石井さんが言われたように、いわゆる正規型のほうも例えば退職金がない、賞与なども年俸制度の人が出てきたりとか、仕事給的だとフラットですよね。給与は高くても定期昇給などはないわけですよ。だからこのイメージに合わない、いわゆる正規型も増えてきているということを考えたほうがいいかなということだけなのです。副大臣が言われたように、私もフルタイムの改善ということは、当然必要と思っているのです。これは法律の中身ではないので考えたらいいかなと思います。
○今野座長 いわゆる大企業だったら、年俸制が出ようがそれは問題ないですよ。年俸制だって別に職務が上がっていけばキャリアも給与も上がるので。すると、中小企業でそういう会社があるのですかね。
○小宮山副大臣 これは解釈なので、その目指すべきところはベースに置きながら、この解釈をもう少し現状に合ったように書き替えるのがいいのかもしれません。
○今野座長 それが難しい。
○小宮山副大臣 難しいですか。
○水町委員 何回か前の研究会でもこのような議論があって、もともと正社員があって、今の制度だと、応募するときに情報提供をしろとか、正社員転換の試験をしろとか、雇用機会が変わる、新しいポストを作ったときにはそれを情報提供しろという、3つのうちのどれか1つを取れば、この通常の労働者に転換となるという、これも何か1つのステレオタイプの押し付けなのですよ。看板は通常の労働者への転換でもいいかもしれませんが、ここで目指すべきなのは、例えば雇用が不安定な人が雇用を安定的になりたいというのも1つの近道になっているし、それよりも結局職業訓練をかなり長期ではなくて、正社員並みでないとしても短期とか、短時間の人でも職業訓練をきちんと受けて、キャリア・ラダーで待遇が変わっていくような方向に進めていくというのも1つの転換の在り方で。
 だからあまり押し付けのステレオタイプの制度、法律の条文にするのではなくて、そういう意味でも待遇の改善と合わせて行動計画を作って、労使の実態に合ったような推進をするという話をして。そういう意味ではあまりこれまでの条文の構成に、看板は一緒だとしても中身としては前進するというように、実態の中で前に進める方法はいろいろあり得るので、労使の話合いに基づきながら前に進めていく。正社員も多様だけれども、非正規の変え方も多様なので、そういうふうに進めていくというニュアンスになればいいかなと思ったのですが、これを読んでみると、どこをどう直したらいいのか。何か独り相撲をとっているような作文になっているような気もするのです。
○今野座長 私が先ほど言ったように、真面目に考えると複雑になってきて余計わかりにくくなってしまうのではないかという気がするのです。その心配はあるなと。いま言われたのは、キャリア・ラダーを作って、キャリアをきちんと積めるようにして、それは教育までセットとしてという話はパートの中の世界で作るということなので、これを今度正社員というか通常の労働者に転換をするというときは、相手先が問題ですよね。相手先はいろいろですよね、ということですね。
○水町委員 逆に相手先をあまりてっぺんの所にして、できないものを「やれ」と言うより、相手先もいろいろあるので、できることを少しずつしていって、キャリア・ラダーも上に伸びていくというような。
○今野座長 それでいいのですけれども、その人たちの総称を何と言うかという話です。
○水町委員 「通常の労働者への転換」ということで看板はいいと思いますよ。中身はいろいろなやり方があるので、なるべく実効的に実態を変えるようにしていきましょうということでいいと思うのです。
○山川委員 その意味ではあまり現行の解釈にこだわる必要もないというか、それをいろいろ広げようという議論があるので、むしろ通達への言及はあってもなくても、あまり変わらないのではないかという感じがします。新しいルートをいろいろ作るというのが、研究会の議論だったような気がします。
○浅倉委員 この際、通常の労働者の定義を変えるべきではないでしょうか。新しい法律になったら、当然通達の定義も変わると思うのです。そうしたほうが議論としては生産的ではないかという気がします。これは比較対象ですよね。パートタイム労働者の差別はいけないと言ったり、均衡に処遇しなければいけないと言ったときの比較対象者を、一応「通常の労働者」という概念で括っているわけです。
○吉永短時間・在宅労働課長 この場合の整理は、正規型がいる場合の通常の労働者の考え方を整理したものになっております。もちろん正規型がいる場合については、正規型は処遇がいいはずですから、引き上げていこうという考え方に立っております。その上で佐藤先生がおっしゃったような中小企業で見た場合に、いまでも正社員とパートの賃金差があまりない、1割ぐらいしかないような世界で、無期になって若干上がるというのが、正規型への転換ということになるのかもしれません。そういう中で、比較対象の正規型がいない場合は、比較対象となるべきフルタイムの労働者のような形で見ていくというのが、通達上の考え方になっております。少しでもより良いものと比べて上げていくという発想に立ったものです。
 その上でもう1つ申しますと、今回の報告書の原案の中で、パートタイム労働法の中にフルタイムパートもその対象として入れていったほうがよいのではないか、という記載をさせていただいております。その場合、通常の労働者との違いというものをきちんと考えていかなければいけないという視点で、正社員とは何かという辺りを非常に詰めて考えていかなければなりません。そういう意味で、そこは通達の変更になるのか、法律上位置付けるのかということにはなりますが、いずれにしても今回の見直しを進めるに当たって、この辺りもきちんと整理していく必要があるのではないかと考えております。
○今野座長 いずれにしても、ちょっと考えてみますか。ほかにいかがですか。
○権丈委員 まずは、最初の現状のところです。
○今野座長 何頁ですか。
○権丈委員 3頁からの「パートタイム労働をめぐる現状」です。ここでは、「非正規労働者の現状」から始めて、「パートタイム労働の現状」に進んでいますが、パートタイム労働の報告書なので、パートタイム労働から入ったらどうかと思います。
○今野座長 非正規とパートに、だんだん絞って行っているのでしょ。
○権丈委員 非正規から徐々に絞って「パート」に焦点をあてるという意図はわかります。ただ、この順番で困るのは、ここで扱うパートタイム労働の範囲が、非正規労働者の中の「パート」だけとする印象を与えてしまうことです。例えば、3頁には、「パート」が非正規労働者の48%と書いてありますが、労働時間からみると「アルバイト」の多くも、短時間労働者に該当するはずです。パートタイム労働法では、短時間労働者を、1週間の所定労働時間が通常の労働者より短い労働者と定義しています。統計により定義は異なりますが、パートタイム労働者の基本的なデータとして、労働力調査による週労働時間が35時間未満の者を用いることが多かったと思います。この点を検討いただければと思います。
○今野座長 読みやすさですね。
○権丈委員 そうです。内容を変更するというわけではないです。
 他に細かな点ですが、5頁の「パートタイム労働者の組織率」の少し上の部分です。先ほど浅倉先生のご指摘もありましたが、ここで「女性は70.1%だったものが、2002年には格差が拡大し、・・・、以後は改善する傾向が続いており」ということで、「改善」という評価がされています。しかし格差が「縮小」したとは言えるけれども、「改善」かどうかは確認していないので、この点を変更していただければと思います。
○今野座長 いいのではないですか。
○権丈委員 これは、セレクションの問題があると思います。特に男性の場合には、賃金格差の縮小が、若い層に比べて比較的賃金が高い高年齢者層が増えたことによる部分が大きいと考えられます。そうすると、それは労働条件が改善したからではなく、単に労働者の構成が変わったから起こったわけですので、「改善」とはいえないわけです。
○今野座長 無味乾燥に「縮小」としておきますか。
○権丈委員 はい、「縮小」ということでお願いします。細かいところですみません。
 それから、19頁からの「検討に当たっての基本的考え方」です。今回、(1)「パートタイム労働者が能力を発揮する社会」と(2)「パートタイム労働者の多様な就業実態や企業の雇用管理制度等を踏まえた対応」の2つの点をあげていただき、重要な点がバランスよく整理された形になり、良かったと思います。ただ、(1)の見出しを見て、パートタイム労働者が能力を発揮するというポジティブなイメージが論じられるのかと期待しましたが、読んでいくと現状の分析が長く、ポジティブな面はかなり限られているという印象です。できれば、20頁の「既に人口減少社会となり」という辺りを、もう少し強調して、見出しのいう「パートタイム労働者が能力を発揮する社会」を描いていただけないかと思います。
 労働力供給の制約で「全員参加型社会」を実現するという部分では、女性の活用に合わせて、高年齢者等の活用の機会にもなるかと思いますので、その点も触れておいて下さい。また、現在、政策目標として就業率向上も掲げられており、それについてもパートタイム労働の活用は役立つはずですので、そういったところにも触れていただければと思います。関連して、可能であれば、現状分析かどこかに、日本全体の人口減少の状況や労働力率のデータなどを付け加えていただけると、日本全体の将来を考えた検討がされたことが示されるかと思います。
○今野座長 ほかにいかがですか。
○山川委員 細かいところはいろいろあるのですけれども、1つは20頁の下から2段落目で基本的な方向性というか、理念が示されていて、前回要望したところが実現されて大変結構だと思うのですが、検討の中身のあとのほうでは、8条と9条の両方が出ています。ですから「均等待遇を目指していく」の前に、例えば「均衡処遇を確保するとともに」とか、「促進するとともに」というように、8条も9条も両方検討課題になっているということを示してはいかがかと思います。
○今野座長 現在は「均等待遇」になっておりますか。
○山川委員 「を目指していく」とありますが、その前に9条の検討という意味で、「均衡処遇の一層の確保」とか「促進」とか、そのような感じではどうかと思いますが、お任せします。
 あとはやや内容にかかわることです。30頁の本文のいちばん下の段落の「さらに」の辺りかと思います。立証責任の話をそれなりにしたと思うのですが、趣旨としては入っているのですが、あまり明確には書かれていないように思います。例えば、現行法の3要件の全部又は一部は合理的理由のほうに裏返して、つまり3要件の全部又は一部がないことを合理的な理由のほうに整理するという選択肢も考えられると思います。その場合は立証責任が違うことになるので、その辺りを整理する。つまり現行法の職務の内容と人材活用の仕組みというのは、ある意味で連続的なものですが、立証責任が違うので、その在り方等について整理する必要があるということを加えていただければと思います。
 あとは、これまで「雇用形態差別」と言ってきたのですが、ヨーロッパ等でも別に雇用形態差別という条文があるわけではないですよね。パート差別の禁止規定、又は有期と派遣が一緒になっていて、それらを理由とする差別の禁止規定かということです。仮に条文を変える場合に、雇用形態という要件を入れるのかどうか、それともやはり短時間労働者で考えていくのか。その場合、「短時間労働者」と書いてしまうと、フルタイムパートが入らなくなります。もし現実に条文を考える場合に、雇用形態差別そのものを条文化できるのか。これは報告書に入れなくてもいいのかもしれませんけれども、今後の課題としてどこかに書けるかもしれません。具体的な要件の書き方をどうするかについて、フルタイムパートなどの問題を考えるに当たっては検討が必要になるということが、もし書けるのでしたら、どこかに入れていただければと思います。
○水町委員 最後の点は先ほど課長さんが、フルタイムパートも適用範囲に含めて法改正を考える可能性もある、検討するとおっしゃっていました。そうなるとパートタイム労働を理由とする不利益取扱いの禁止ではなくて、雇用形態を理由とする不利益取扱いの禁止ということになってくるのですか。
○今野座長 今度そうなると、その場合の雇用形態というのは何を言っているかですね。
○水町委員 通常の労働者とは雇用形態が異なることということになって、通常の労働者の定義に戻ってくるのです。
○今野座長 そうすると、ほかにないか。思い付かないけれども、何かいろいろなものが入りそうですね。
○水町委員 ヨーロッパではパート、有期、派遣までで、更に業務処理請負みたいなものをどうしようかという話にはなってくるのですが。
○山川委員 あるいは一般職、総合職とかも雇用形態ですよね。
○今野座長 広く言ってしまえばそうなりますよね。
○水町委員 選択肢としては定義を広げて、理由も短時間労働ではなくて雇用形態とすることも考えられる。この法の射程は、やはり短時間労働を射程としながら、フルタイムパートについてはその法意や趣旨を援用して、公序良俗違反の解釈などで対応するということも。おそらく今まで我々は、そういう理解で考えてきたのです。
○山川委員 そうですけれども、それは裁判所だけしかできない可能性が高い。呼称パートみたいなものをうまく書き込めればいいのかもしれないのですけれども。今ごろになってこういう論点を出すのは、ちょっと遅いかもしれませんが。
○今野座長 「雇用形態差別」と言うと、例えば総合職と一般職というお話をしましたけれども、メーカーの場合、ホワイトカラーと現業系で賃金が違うといったことだってありますよね。
○山川委員 非常に悩ましいです。
○佐藤委員 32頁に「フルタイム有期」というのがありますね。しかし中には「フルタイムパート」と書いてある。これは国会の附帯決議か何かの文章を引いていると思うのです。ここが難しいのは、呼称でも企業が「フルタイム」のことを「パート」と使っているような所は、そんなにないわけですよ。これは研究者がそういう言葉を作ってしまっただけの話です。ですから非正規ですね。フルタイム有期ですよ。名前として「パート」というのを使っている所はそんなになくて、使っていてもパートを短時間で使っているわけではないですよ。パートと使っているのです。企業はパートタイマーと使っているわけではないのです。
 「パート募集」というのは、別に短時間で使っているわけではないじゃないですか。そこは研究者が「パート」と言うから短時間だと思っているだけの話であって、世の中で流通しているパートというのは、別に短時間ではないわけです。たぶん主婦に来てほしいと思うと「パート募集」と書いているのです。「短時間の人募集」とやっているわけではなかったりすることが結構多いのです。ここに「フルタイム有期」と書くのが、やはりフルタイム有期の処遇改善ということだとは思うのですけれども。そこを雇用形態とやるのか、フルタイム有期で限定するかということはあるとは思うのです。
○山川委員 たぶん狙いとしては、イメージはわりと一致していると思うのです。いわゆる非正規ですか。
○佐藤委員 そうです。
○山川委員 その書き方でしょうかね。
○今野座長 広げてしまうと、有期は全部入りますよね。
○佐藤委員 そうです。例えばメーカーの製造業、自動車の期間工などがそうです。フルタイムで有期です。
○今野座長 あるいは契約社員など、フルタイム有期はいっぱいいるよね。あと、嘱託もフルタイム有期はいっぱいいますよね。そこまで全部入れると何か。
○水町委員 雇用形態を理由とするとなると、射程には入ってきますね。ですから合理的理由の説明が、より複雑なものにはなります。
○今野座長 そうですね。難しいな。例えばフルタイム有期でも嘱託の人と、比較的年齢の中堅層のパートの人とでは、キャリアの組み方などが全然違いますよね。会社が期待していることも全然違うし、働き方も違いますよね。これは宿題ですね。どうやって整理しようか。これをフルタイム有期まで引き出すと。
○佐藤委員 しかし、ここでの議論はパートと通常の労働者の均等なり均衡の考え方を、フルタイムの有期の人にも適用しようということなので、別に嘱託と期間工が違っても構わないわけです。嘱託の人と比較し得る人が通常いれば、この考え方でやってくれということだけなので、それは私は構わないと思います。ですからフルフル同士についても、フルとパートの均衡なり均等の考え方を適用して、処遇改善をしてくださいという話だと思うのです。
○今野座長 では、おまけに書いておくわけですね。
○水町委員 これは有期をどう対応するかということにかかわってきます。
○佐藤委員 実際は有期のほうなのです。
○水町委員 有期がまた別の法律等できちんと措置されて、こちらは「短時間労働者」と言って、中身は連続性のあるものというようにすればいいのですけれども、有期が前に進まないのだったら、こちらの射程を広げていかなければいけないのではないかという話にもなるかもしれないので、もうちょっと中間報告を見て。
○今野座長 難しいな。何となく我々がイメージでパートと思っている人の中には、実際にはかなりフルがいるのです。通常の労働者と同視できるようなパートタイマーが0.1%と書いてありますけれども、フルにしたらその0.1%が、もっとグッと広がる可能性があるのですよね。
○佐藤委員 もしくは有期のほうがカバーできるのなら、こちらは単に時間の長短による差別禁止になって、パートタイム労働法がもっと小さくなりますね。有期のほうでかなりやってくれてしまうと。
○水町委員 ですから実際上は重なってやるしかないのです。
○佐藤委員 そうだと思うけれども。
○今野座長 しかし先に決めてしまったほうが決めてしまうよ。
○山川委員 そこは調整していくことになろうかと思います。
○水町委員 我々のスタンスとしては、例えば「合理的理由のない不利益取扱いの禁止」と言うときは、有期も念頭に置きながら議論をしてきたけれども、では法律の射程をどうするかという見方になると、あとは実効性確保の措置とのかかわりも出てきます。行政は法律の定義次第でしか動けないのですけれども、裁判所は類推適用とか、法の趣旨に照らした解釈ができるので、裁判規範をより明確にしていくという意味では、そんなにこだわらなくてもいいかもしれないですね。
○今野座長 わかりました。
○水町委員 いくつかよろしいですか。最初は質問です。13頁の「紛争解決援助」、パート法21条、22条のところです。これは前回、少しお話して補充していただいたところだと思います。都道府県労働局長による紛争解決援助の申立件数が14件というのは、かなり少ないと思うのです。パート法に基づく行政の紛争解決援助と、労働局長が一般に個別紛争解決促進法でやっているものと、育児・介護休業法に基づくこれと類似した制度の数の増減で言うと、パートはやはり圧倒的に少ないのか、少ないとすればその原因はどこにあるのかというのが素朴な疑問です。もし何か理由があるとすれば、今後の教訓として書いておいたほうがいいのではないかという気がします。これは質問です。
 あとは意見です。15頁の前の頁から続くEUの「1997年パートタイム労働指令」の運用の実態というのが、15頁の真ん中にあります。この1997年の指令に基づく新たな判例はほとんどない状況であると言うと、指令は作ったけれども、判例はないという誤解を生む可能性があります。男女間の同一労働同一賃金という判例はほぼ確立しているので、最近は間接差別という判例はないけれども、この「1997年パートタイム労働指令」に基づいて国内法化された各国の法律に関する各国の中での判例は、その後もたくさん積み上げられているのです。ここだけ見ると、もうそんなものはないのかと思われます。そういう誤解がないような形で書いていただければと思います。
○浅倉委員 むしろ男女間のほうが判例はあるのではないですか。注60を見ると、男女均等待遇指令の間接差別条項により判例が確立されている、とありますので、男女間のほうは判例はたくさんあるのだと思います。
○水町委員 最初の間接差別というのは、もしかしたらこのあとはなくなったかもしれませんけれども、純粋に男女間というのはありますね。そこをあまり誤解されないように、きちんと書いたほうがよろしいのではないかと思います。
 31頁の「この点に関し」から始まる文の2段落目に、このような問題点を踏まえ、「合理的な理由」の考慮要素となり得るものについて一定の例をガイドラインにおいて示すこととし、行政指導等による履行確保を併せて実施することが適当と書いてあるのですが、行政指導というのは、本当にこれまでもうまくいっているのか。行政指導がいいかどうかというのは、「意見もあった」と言っても誰の意見だかよくわかりません。むしろ「このガイドラインにおいて示すことが考えられるのではないか」ぐらいにして、本当に行政指導のほうがいいのか、もし、これもガイドライン、例示であって裁判等ほかの手段の実効性確保にも利用できるようなものにするということであれば、これまで「行政指導等」ということではあまり聞いていないので、実効性確保のやり方として、そういう表現にしていただければと思いました。
 併せて31頁の下から32頁の上の行、「『合理的な理由』に係る事業主の予測可能性の確保や行政の関与の在り方等」も、もう少し行政の関与の在り方が具体的にわかればいいのですが。むしろ労使の話合いを促す方法などを通じた予測可能性を高める方法について書いて、行政の関与というのは、ガイドラインを示すことが1つの役割かもしれませんが、「行政の関与の在り方」と言うと、また行政指導でやっていこうというニュアンスにも取られかねないので、そこら辺の表現を少しご検討いただければと思います。
 33頁から34頁です。これは先ほどの議論とも少し重なります。33頁の真ん中の「この点に関し」の○の2段目に、「一方、通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者については」とか、下から3行目にも「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者の均等賃金」と書いてあります。この「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」というのは現行法の定義ですけれども、これで果たしていいのか、それともその次に書いてある「待遇の差を設ける合理的な理由」が考えられるようなものがいいのか。合理的な理由がない場合はちゃんと均等にしなさい、合理的な理由がある場合は今度はバランスの問題になるというのが、読んでわかりやすい形で書いたほうがいいのではないかという気がしました。
 34頁のいちばん上の○の「また」というところです。これは8条の関係で、果たして9条の議論でここまでいくかどうかです。職務関連給付、例えば基本給で仕事やキャリアが違うので合理的な理由があるからバランスの問題にしましょう、という話は成り立ち得るかもしれませんが、その他の忌引きや通金手当についてもバランスを取りましょうという議論は、これまで一切してきていないのです。これはバランスの問題なのか、その前の均等の問題なのかというのもあるので、この1段については要検討という気がします。
 職務分析・職務評価について、「法律等で企業に一律に強制することは適当ではないのではないかとの意見があった」というのが、38頁の3段落目に書いてあります。そして「今後の在り方」の2、3行目にも、「事業主に職務分析・職務評価を義務付けることは適当ではなく」と書いてあるのですが、ちょっと強すぎる気がしています。例えば浅倉先生が最初におっしゃった目的のところで、就業の実態に合った公正な評価をするためには、こういうものも1つの方法なので、今すぐ全事業主に「強制しろ」と言うのは早急かもしれませんが、あまり強く書きすぎて、日本にはこういうものは合わないというように捉えられかねないのは、あまりよいことではないのではないかと思っています。
 逆に36頁の上、9条のバランスの取り方、均衡の留意点のところでは、行動計画に基づき取組を行っている場合には考慮要素とすると書いてあります。バランスの1つの取り方として、行動計画の中で職務分析・職務評価みたいな方法で自主的な取組を進めている場合には、政策的にそれを促していったり、合理的理由の存否において肯定的に評価できるとか、そういう書き方でこちらに入れ込んでいったほうが、これまでの研究会の議論にも合うのではないかという気がしました。
 41頁の上から5行目ぐらい、「ドイツの事業所委員会やフランスの従業員代表制度を参考に」というところで、「パートタイム労働者の待遇等について調査審議し、事業主に対し意見を述べることを目的とする労使委員会」と書いてあるのですが、もし労使委員会にするとすれば、使用者の代表も半数は入っているので、意見を述べると言うよりも、例えば「その方向性等について協議をする」という表現になるのではないかという気がしました。労働者だけで構成しているものであれば、意見を聞いて意見を述べるということで、ベクトルが一方になります。しかし労使委員会ということであれば、双方で協議するというニュアンスに近くなるのではないかという気がしましたので、そこら辺もご検討いただければと思います。ほかは、ほかの先生方が言われたことと共通する部分が多いので省略します。
○今野座長 ほかにはいかがですか。
○山川委員 31頁の行政指導の点です。私も裁判規範としての性格があるものについては、より明確にするという方向ではあるのですが、行政指導も組み合わせる価値はまだあると思っています。ただ、ガイドラインは両方に使えます。別に行政指導のためだけではない。その前の段落辺りに、紛争が増大するということのほかに、「行政指導の性質上、実施がやりにくくなる」ということは書きにくいかもしれませんけれども、「実施が難しい場面が生じる」とか、そういうことを前の段落のほうに、合理的な理由という形で書く場合の1つの問題点として書くのは構わないのではないかと思います。
○水町委員 何か「行政指導」と書くと、一律の基準を決めて、どの企業にもこれで指導しますというものになりがちで、ガイドラインの例示という趣旨とは反する側面があります。
○今野座長 ニュアンスとして、行政指導というのはそんなに強いのですか。
○山川委員 ケースによっていろいろ違うのではないですか。
○今野座長 いろいろあると思うのですけれども。
○水町委員 ただ行政指導のためには、ちゃんとカッチリしたものを。例示で行政指導をするということを、これまでやったことはありますか。
○今野座長 例えばガイドラインを事業主に提示するとか、実際にどうしたらいいかわからないという事業主からの相談に対して、「では、こんな方法もあるのではないか」と言うのも行政指導ではないですか。そういう緩いものまで入っていると思っているのですが。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 例えば、フルタイム有期契約労働者については、指針の中で「パートタイム労働法の趣旨が考慮されるべきである」という規定があり、指針に基づいて、事業主に対しフルタイム有期契約労働者についても公正な待遇を講じて下さいというような指導というか、助言というか、そういうことはしております。
○水町委員 情報提供であればいいのですけれども、「指導」と言うと、「では何と何をすればいいんですか。マニュアルを、チェックリストを作ってください」と言われるので、そうではないように。
○今野座長 では、これをもう少しソフトにすればいいわけですね。
○水町委員 もし「行政」というのを残すのであれば、裁判規範としても使える指針になるということも併せて、行政と司法を併せて入れていただければいいと思います。
○今野座長 わかりました。ほかにありますか。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 先ほど水町先生からご質問があったと思いますので。
○今野座長 そうですね。13頁でしたか。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 紛争解決援助についてですが、均等法等に比べ、パートタイム労働法に基づく件数が、最も少なくなっています。おそらくパートタイム労働者というのは、名前を出して申し立てるというのはなかなか難しい状況にあるのではないかと考えられます。それが1つです。
 それから報告書の中でも書いていますように、義務規定だけを対象にしていますので、8条の該当者と考え申し立てたところ、3要件に該当せず9条該当者となった場合に、そこで打ち切り、個別労働紛争解決制度の利用を勧奨することにしていますから、その2点があるのではないかと考えています。
 行政指導については、この報告書の中にも書いていますとおり、9条なども含めて、一定件数の指導は上げておりますので、必ずしも行政指導が実効的ではないのではないかということについては、均等室において種々努力をしているところです。
○水町委員 原因の点では、おそらく2番目の8条、9条の構造でなかなかそこまでたどり着かないという理由が私は大きいと思います。パートだから名前を出しにくいという話もありましたけれども、一般の労働局でやっている個別労働紛争解決援助のほうは、むしろ正社員よりもパートや派遣といった非正規のほうが、労働人口に照らした相談の比率は多いのです。パートの枠内での相談が少ないというのは、8条、9条の構造上、なかなか実効性のある指導というか、援助がしにくくなっているのではないかと私は思います。
○吉永短時間・在宅労働課長 パートタイム労働法は平成20年から施行していますけれども、施行当初はほかの例でも調停などはそれほど件数が出ていないという状況でした。まだ定着していないというのが、かなり大きなウエイトを占めているというのが正直なところだろうと思っております。
○今野座長 よろしいですか。もう1つやらなければいけないことがありました。労働条件分科会における有期労働契約の在り方についての検討状況について、事務局からお話を聞きたいと思います。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 資料3に付けております。有期労働契約の在り方についての現在の検討状況について、ご参考として資料を付けさせていただいております。7月21日に労働条件分科会で提出された資料を付けております。有期労働契約については、昨年の10月から検討が開始されておりますが、各論点については一通りの検討を終えました。さまざまな労使の方からの意見はありますが、これまでの議論を一旦整理した上で、更に検討を進めることが適当であろうということで、中間的な整理を取りまとめて、今後公表することとしているところです。事務局案として出されたものですけれども、21日には座長預かりという形になっており、現在文言について調整をして、今後公表することになっております。
 パートと関係するところは、9頁以下の「契約期間中の処遇や雇用管理等」です。まず9頁の3の(1)均等・均衡待遇です。アの現状の認識としては、労働契約法第3条第2項やパートタイム労働法について書かれております。イの「労使の意見」について労働側からは、有期契約労働者について、契約期間の定めを理由として、合理的な理由のない差別的取扱い又は不利益取扱いを禁止する旨の規定を、私法上の効果を持つものとして規定してはどうかという意見が出ています。一方で使用者側からは、誰と何を比較したらいいのかというのを明らかにするのがなかなか難しいのではないかという意見がありました。ウの「今後の検討における留意点」では、まだ今後も議論の必要があろうということになっております。
 11頁は「正社員への転換の推進」です。ここもイで、労働者側の意見としては、より積極的な取組が必要、一方で正社員概念の多様化については疑問であるという意見になっております。使用者側のほうは、勤務地限定といったものが有意義ではないかとか、正社員についても意見が出ているようです。ウの「今後の検討における留意点」では、引き続き検討が必要となっております。
 まだ文言は調整していますが、いまは中間的な整理をするということで、有期労働契約のほうも検討されているところです。パートと有期は非常に重複する部分もありますので、有期のほうの動きを見ながら検討していきたいと思っております。
○今野座長 何かご質問はありますか。よろしいですか。それでは、今日いただいた議論を踏まえて修正して、次回、できれば成案にしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。それでは次回の日程についてお願いします。
○藤原短時間・在宅労働課長補佐 次回は9月2日の金曜日、午前10時から12時を予定しております。場所については現在調整中ですので、決まり次第ご連絡いたします。よろしくお願いいたします。
○今野座長 今日はこの辺で終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課

電話: 03-5253-1111(内7875)

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