ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(点検評価部会)> 第3回労働政策審議会点検評価部会議事録




2011年8月3日 第3回 労働政策審議会点検評価部会 議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成23年8月3日(水)
16時00分~18時00分


○場所

厚生労働省職業安定局第1会議室(12階)


○出席者

【公益代表委員】

勝間委員、清家部会長、樋口委員、宮本委員

【労働者代表委員】

金子委員、北田委員、新谷委員、山河委員

【使用者代表委員】

荻野委員、小谷野委員、坂田委員、田中委員

【事務局】

岡崎官房長、伊澤統計情報部長、前田労働基準局総務課長、宮川職業安定局総務課長、
桑田大臣官房審議官(職業能力開発担当)、吉本雇用均等政策課長、
中野政策統括官(労働担当)、棚橋政策評価審議官、酒光労働政策担当参事官

○議題

(1)部会長の選出及び部会長代理の指名について
(2)2010年度の年度評価について
(3)各分科会における2011年度目標の設定について
(4)その他

○議事

○酒光労働政策担当参事官 ただいまから、第3回「労働政策審議会点検評価部会」を開催いたします。私は労働政策担当参事官の酒光でございます。どうぞよろしくお願いいたします。今回は4月に委員改選が行われましたので、部会長が選出されるまでの間、議事進行を務めさせていただきます。
 4月27日付けで委員の改選がありました。資料1をご覧ください。多くの委員は再任されたわけですが、新たに委員に就任された方をご紹介したいと思います。使用者代表で、埼玉県中小企業団体中央会理事の小谷野委員です。

○小谷野委員 こんにちは。埼玉県中小企業団体中央会の理事をしております小谷野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○酒光労働政策担当参事官 本日は米倉委員、小俣委員、川崎委員の3名がご欠席です。労働政策審議会令第9条において、委員全体の3分の2以上の出席、または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされております。いずれも数を上回っており、定足数を満たしておりますのでご報告申し上げます。なお、勝間委員はご都合により17時40分ぐらいにご退室されると伺っておりますので、あらかじめ申し上げておきます。
 それでは議事に入ります。第1の議題は「部会長の選出及び部会長代理の指名について」です。部会長については労働政策審議会令第7条第6項の規定により、部会に属する公益を代表する本審の委員から選挙されることになっております。したがって、この部会での労働政策審議会本審の公益委員は、清家委員ということになりますので、引き続き清家委員に部会長をお願いしたいと思いますので、ご報告をさせていただきます。それでは清家部会長、この後の議事進行をよろしくお願いしたいと思います。

○清家部会長 引き続き部会長を務めさせていただきます。部会の円滑な運営にご協力をよろしくお願いいたします。それでは議事に入ります。本日の議題は、第1に「部会長の選出及び部会長代理の指名について」、第2に「2010年度の年度評価について」、第3に「各分科会における2011年度目標の設定について」、第4に「その他」となっております。
 まず第1の議題です。部会長はすでに選出されておりますので、部会長代理の指名を行います。部会長代理は労働政策審議会令第7条第8項の規定により、部会長に事故があったときにその職務を代理するとされており、これを部会長が指名することとされております。そこで、恐縮ではございますけれど私のほうから、部会長代理には引き続き樋口委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 次に議題2について、事務局からご説明をお願いいたします。

○酒光労働政策担当参事官 議題2は「2010年度の年度評価について」ということで、この点検評価部会の初めての年度評価となりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず資料の構成についてご説明申し上げます。資料2が点検評価部会の2010年度の評価の素案として、事務局がたたき台として用意したものです。総論と各項目の点検評価の案が記載してあります。
 資料3はそれぞれの評価事項を評価シートにしたものです。基本的には自己評価になっておりますけれども、目次にありますように「ハローワークにおける職業紹介等」から、7項目をシート化したものです。「ハローワークにおける職業紹介等」で申し上げますと、最初に数値の達成状況について、数値をまとめたものを記載しているのが1頁です。2頁に「2010年度目標設定における考え方」ということで、目標を設定したときの考え方について記載しております。3頁に「施策実施状況」ということで、2010年度に行った施策を2009年度と対比しながら記載しております。4頁に「2010年度の施策実施状況に係る分析」ということで、今回の点検評価の中心となるべき事項について記載しております。最後の5頁が「施策の達成状況を踏まえた評価及び今後の方針」を書いております。PDCAの考え方に基づき、厚生労働省において自己評価を行ったものです。
 資料4については前々回の最初の点検評価部会で、この評価の内容については国民の意見も伺うべきではないかというご指摘をいただいて、第2回の点検評価部会で中間評価を行いました。それについて、5月16日からホームページを通じて意見募集を行ったということです。全体で36名から複数のご意見をいただきました。一つひとつの説明は省略いたしますが、それぞれの項目でいいご意見をいただいたと思っており、日ごろの行政運営に活かしていきたいと思っております。同じく資料4の最後です。ディーセント・ワークについてだけ39件と多いのです。この多くの部分は、受動喫煙に関する事項のご意見をいただいているということで数が多くなっております。
 資料5は「2020年に向けた就業率の推移」です。もともと点検評価部会の評価のベースとなる新成長戦略では、全体の就業率及び若者、女性、高齢者の就業率の2010年度の目標を設定しております。その進捗状況についてまとめております。全体の就業率は、2020年度までに80%に引き上げるということです。2010年度の実績は74.6%、2011年度はこれまでのところ74.7%という状況です。なお、2011年度については3月以降、岩手、宮城、福島県は震災の影響で調査ができておりませんので、それを除く数値になっております。資料6は後ほどご説明いたします。
 参考資料1は、新成長戦略及び雇用戦略対話で記載した「2020年度までの目標」をまとめたものです。参考2は、それに基づく中期的な政策の方向をまとめたものです。参考3は、2010年度の目標を一覧にしたもので、資料3に載っているのと同じものです。
 続いて、年度評価の進め方についてご説明いたします。資料3の各項目については委員の皆様からご指摘をいただきました。いただいたご指摘は本日の資料3の各項目に、「点検評価部会委員の意見」というものがブランクでありますので、そちらに記載したいと思っております。また、各項目についてのご指摘あるいは全体のご指摘をいただいて、部会としての年度評価を取りまとめることとしたいと思っております。資料2をたたき台として準備しておりますので、これを修正する形で年度評価としたいと考えております。
 なお、本日は「意見記入用紙」というものをお配りしております。部会でご意見をいただいたものは、そのまま私どものほうでメモを起こして反映させていきたいと考えておりますけれども、時間の関係で言い切れなかった部分などは、こちらに記入して残していただくなり、8月10日ぐらいまでにいただければ、私どものほうでそれを反映させていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○清家部会長 ただいま年度評価の進め方について、事務局からご説明がありましたが、いまご説明のあったような進め方でよろしいでしょうか。

                 (異議なし)

○清家部会長 では、そのようにさせていただきます。それではこの年度評価(案)について、委員の皆様方からご議論をいただきたいと思いますが、内容が多岐にわたりますので、全体を大きく4つに分けて、順次ご議論いただければと思います。最初は「総論」の部分及び「ハローワークにおける職業紹介等」について、事務局からご説明をお願いいたします。

○酒光労働政策担当参事官 主として資料2に基づいてご説明させていただき、適宜資料3の該当部分をご参照いただければと思います。
 まず、資料2の1頁の総論部分です。この部分は点検評価を行う上で、いろいろな前提条件を想定して目標を設定しておりますけれども、さらにそのベースとなる経済情勢、雇用情勢の見通し等についてご説明いたします。
 (1)が2010年度の目標を設定する上でベースとなった部分です。「経済情勢」については平成22年度の「経済見通し」をベースとしております。詳しい説明は省略いたしますが、具体的には実質成長率1.4%、名目成長率0.4%という目標を設定しておりました。「雇用・失業情勢」についても同じく、平成22年度「経済見通し」に基づいており、完全失業率5.3%、雇用者数0.3%ということで、完全失業率はやや高止まりという想定をしておりました。
 続いて2頁をご覧ください。(2)は実際の2010年度の経済情勢の実績です。「経済情勢」については経済対策を累次にわたって行ったことで、自律性は弱いながらも次第に持ち直してきて、2010年度の成長率で見ますと、実質成長率2.3%、名目成長率0.4%ということで、実質成長率は「経済見通し」より高い水準になりました。「雇用・失業情勢」についても、厳しいながらも持ち直しということで、完全失業率5.0%、雇用者数5,238万人ということで13万人増です。率にしますと0.2%ですけれども、いずれも前年度比で改善しております。なお、[3]にありますように、今回は2010年度の評価ということで2011年3月までですけれども、2011年の3月に東日本大震災が発生して、生産活動の停滞あるいは先行き不安の拡大をもたらし、今後についても電力供給の制約等が懸念されているところです。
 (3)は2010年度労働政策の実施状況です。2010年6月に閣議決定した「新成長戦略」に基づき、名目成長率3%、実質成長率2%ということで、工程表に基づいて施策を進めております。雇用分野でも参考資料2にある「雇用・人材戦略」に基づき、若者・女性・高齢者・障害者の就労促進、あるいは「トランポリン型社会」の構築、ディーセント・ワークの実現について取り組んでおります。
 また、2010年度の対策としては「3段構えの経済対策」ということで、9月に予備費に基づくステップ1の対策、10月に補正予算に基づくステップ2の対策を行っております。特に雇用・労働対策においては、新卒者雇用対策あるいは地域の雇用創造対策に重点を置いて対策を講じたところです。東日本大震災の対応としては、年度は跨りますけれども、4月に「『日本はひとつ』しごとプロジェクト」ということでそのフェーズ1、あるいは第1次補正予算に基づくフェーズ2の対策を講じて、雇用創出・雇用下支えを図っているところです。以上が総論部分です。
 続いてハローワークの職業紹介の状況についてご説明いたします。4頁をご覧ください。[1]は「ハローワークにおける職業紹介等」です。資料3の評価シートで見ますと1頁以降にあります。正社員の求人数については、求人開拓推進員の大幅増員により求人開拓を行ったので、前年度比15.1%、数にして297万人ということで、目標を大きく上回るものとなりました。
 就職率と求人充足率については、それぞれ分子は就職者数で同じですが、就職率の場合は分母が新規求職者数、求人充足率は新規求人数ということになります。まず分子となる就職数です。求人開拓により求人が増えたこと、あるいは訓練修了者に対する担当者制で就職支援をやったことの積み重ねで、就職件数も当初見込みより1.5%増え、就職率も概ね目標どおりとなりました。なお、求人充足率については、就職は増えたのですけれども求人の増加ほどではなかったということで、目標を下回りました。
 続いて、雇用保険受給者の早期再就職割合です。これは雇用保険の受給者が受給期間を3分の2以上、90日の給付期間のある方ですと60日を残して就職した場合、これについてもきめ細かな就職支援等をやったことで、前年度比で3.5%増の24.9%の就職ということになり、目標を上回る水準となりました。
 続いて、その「きめ細かな支援」の1つである就職支援プログラム事業についてです。これは「就職支援ナビゲーター」という方が、担当者制で濃密な支援を行うものです。この就職支援ナビゲーターを250人増員したことで、開始者数及び就職率とも目標を設定しており、いずれも目標を上回ったということです。
 続いて、生活保護受給者等就労支援事業です。自治体の支援要請に基づき就労可能な生活保護受給者について、担当者による就職を促進していくものです。担当の就職支援ナビゲーターも大幅に増員しており、支援対象者も大幅に増えております。また、目標としては就職率を設定しております。5頁にありますように、就職率も59.6%ということで、ほぼ目標どおりです。
 そのほかに心の健康相談、ハローワーク利用者の満足度、広報の満足度といったものも目標として設定しております。これらも、いずれも目標を上回る成果を上げたということです。
 以上、[1]のまとめとしてイタリックで書いております。ハローワークにおける職業紹介に係る指標については、概ね目標を達成しておりますけれども、求人開拓による求人の伸びと比較しますと、就職件数の伸びがやや少なかったということで、引き続ききめ細かな就職支援でマッチングを図っていく必要があるのではないかと。いずれにしても、こちらは事務局で仮にまとめたたたき台で、そういうまとめでいかがかということで書いております。

○清家部会長 ただいま酒光参事官から報告書案、評価案の「総論」と、「ハローワークにおける職業紹介等」についてのご説明をいただきました。皆様方からご質問、ご意見をお受けしたいと思いますので、どうぞご自由にお願いいたします。

○新谷委員 ハローワークにかかわる目標については、数字から見れば概ね達成したという評価になっています。ただ1点、求人の充足率が目標に達していないということでした。今ほどのご説明の中では、新規の求人数は伸びたけれども、求職者とのマッチングの伸びがそれに達しなかったということでした。
 そこでお聞きしたいのは、分析としては分母と分子の関係だけでいまご説明があったのですけれども、もう少し突っ込んで、なぜマッチングがうまくいかなかったのか。新規に伸びた求人の中身として、例えば正社員求人の求人数は出ているのですが、我々としては質の高い求人が伸びればいちばんいいわけです。ただ、この新規の求人数というのは、期間の定めのない求人と4か月以上の有期雇用の求人との合算値ということもありますので、その辺の分析を教えていただきたい。質の高い雇用は増えたけれどマッチングしなかったのか、それとも有期雇用が増えて求職者がそちらに行かなかったからうまくマッチングが成立しなかったのか、その辺でもう少し突っ込んだ分析を教えていただきたいというのが1点です。
 もう1点は、資料2の4頁の下に「生活保護受給者等就労支援事業について」というのがあります。これについてもご報告いただいて、概ね目標達成ということでした。これは本当によかったと思います。一方で最近言われているのが、リーマンショッック以降、失業者の中に占める長期失業者の率が非常に増えていて、これが課題となりつつあると、いろいろな所で言われております。この長期失業者の対策について、どのように進めていくのか。この目標値にはなっていないのですけれども、この辺について取組の方針があればお聞かせいただきたいと思っております。

○清家部会長 それでは宮川総務課長。

○宮川職業安定局総務課長 まず、1点目の就職率及び求人充足率の関係です。この両方の数字が、その年その年の景気の動きと一定の関係を持った動きを過去に見せております。就職率と申しますのは、資料3の1頁の※1にありますように、分母が新規求職者数、分子が就職件数です。※3にありますように、求人充足率というのは新規求人数を分母として、充足数を分子にいたします。こういう関係ですので、景気がよくなると当然のことながら就職件数が上がっていき、景気が悪くなると下がるという動き。充足率は逆に新規求人数を分母にして埋まった求人を見ますので、景気が悪くなると分母が、新規に求人が減っていきます。そういう両者の関係で申しますと、大体の傾向としては景気がよくなると就職率が上がって充足率が下がる、景気が悪くなると充足率が上がって就職率が下がる。こういう動きが比較的過去から安定した関係になっていると言われているところです。
 新規求人数はそれなりのものを確保しながら、充足率というのはなかなか。もちろん景気がある程度よくなっていくという関係で、もともとの目標設定自体も、資料3の1頁の2009年度実績をご覧いただきますと、就職率23.7%、求人充足率32.5%となっています。おそらく景気がよくなるであろうということで、就職率を引き上げ、求人充足率については下げるという形でセットしたわけです。こういう関係ですので、ある程度想定されたところであろうかとは思いつつも、[4]の正社員求人数も前年度実績以上という目標で、2010年度はそれを上回る形でできたにもかかわらず、なかなかそういうものがマッチングできなかったところについては、1つには正社員求人の中身にも、条件的な面でまだまだいろいろな問題点が潜んでいるのではなかろうかと。
 それはさらにいろいろ分析していかなければならない点ではありますが、1つにはやはり資格の問題があります。介護や医療関係、その他、さまざま増えている求人の一定の部分については、やはりある程度の経験も含めて資格もなければ結び付かない。ですから求人は増えているけれども、そういうところがあるのではなかろうかというのが大きな問題点です。この辺りは、おそらく私どもの行政及び能力開発行政等がタイアップした形で、今回、今年の10月1日から施行される、生活費を支給しながら職業訓練を行うという求職者支援制度をうまく活用しながら、求職者に対するマッチングをうまく進めていく必要性があるのではないかと考えているところです。
 それから、長期失業者のお話がありました。詳しい数字は持っておりませんが、長期失業者の数は確かに増えております。私どもとしても長期失業者対策が傾向的に非常に増えているということは、何らかの形で職業安定行政の面からのテコ入れというか、強化をしていくべきだろうと思います。また現在、平成24年度予算を検討中ですけれども、その中でも長期失業者対策を強化していく必要性があろうかと考えております。長期失業者と申しますと、大体1年以上という形で整理されています。そうすると当然のことながら、雇用保険は出ていない。そういう中で、雇用保険が出ない方に対してもマッチングを進めていく、就職を進めていくためには、生活給付と併せた教育訓練がでる求職者支援制度を、どのように活用していくかというのがまず1点です。
 さらに言えば、年長フリーター等も含めて、ある程度長い期間仕事に就いていないということは、仕事に就くための訓練の前の準備のようなものも必要な方々がおられるのではないかと思います。そういう意味で、就職前の準備活動的なものに、私どもの行政としても少し力を入れていく必要があるのではなかろうかと考えているところです。

○新谷委員 ありがとうございました。1点目のご答弁の中にありましたように、うまくマッチングしなかった要因の1つに、資格が要る求人があったのではないかという分析をいただいたわけです。まさしく、これがいま進めようとしている求職者支援法と、非常に密接に絡んでくると思うのです。ですから、やはり要因の分析をきちんとしていただいて、労働行政についても立体的に対策を打っていただくとよろしいのではないかと思っております。それは長期失業者もやはり同じだと思っています。求職活動を諦めてしまった方に手を差し延べて、希望を与えて訓練をやっていただいて、もう一度就労意欲を持っていただくということですので、目標には入っておりませんけれども、この点も是非、きっちりとした対応をお願いしたいと思っております。

○勝間委員 2頁目の「経済情勢」の中で、2点書き加えていただきたいことがあるのです。ここでは徐々に持ち直しているというように、いいことが書いてあるのですが、実際に雇用情勢により影響を与えているのは、デフレと円高の点だと考えております。1点目は、デフレの長期化による正社員採用の抑制傾向というのは明記すべきではないかと。2点目は、円高による海外への雇用流出は100万人単位と言われています。これも実際にどのぐらいあったのか、定量化できているかどうかは分かりませんけれども、この2点をやはり景気が緩やかに回復しているにもかかわらず、日本の国内における雇用の創出が難しくなっている理由として明記すべきではないかということを提案します。

○清家部会長 では、事務局からお願いいたします。

○酒光労働政策担当参事官 いまのご指摘を踏まえて、案文などを精査して考えたいと思います。

○勝間委員 申し上げたいのは、いろいろな雇用情勢の中で厚生労働省管轄でできることと、外部環境でできないこともあるので、外部環境も併せて改善してほしいというメッセージを出したいということです。

○酒光労働政策担当参事官 わかりました。

○田中委員 いまご指摘の点に関連します。2頁の(3)にあるように、新成長戦略に基づいて、いろいろな目標設定がされているわけですから、これにデフレが非常に影響して、結局、目標達成が出来たのか出来なかったのかが問題となります。その要因が、デフレによって名目成長率が下がって、目標達成ができなかったという可能性もあるわけですから、その辺は勝間委員のおっしゃるように、ある程度書き込んだほうがいいのではないかと思っております。先ほどハローワークのときにも、成長の見通しを踏まえた上でいろいろな目標設定をしているとおっしゃっていますので、それが最終的に2010年度の点検評価部会での評価にかかわってくるのではないかと思っています。

○清家部会長 事務局からよろしいですか。

○酒光労働政策担当参事官 いまの勝間委員のご意見と併せて、何らかの形で反映させるように文章を考えたいと思います。

○新谷委員 いま勝間委員にご発言いただいたことは、非常に重要な指摘だと思っています。生産移転をはじめとする雇用流出の問題は、どこかできちんとした分析が要るのではないかと思うのです。実はいま、厚生労働省の労働基準局の中でも有期労働契約法制の審議をやっています。この中でも使用者側から、労働規制を強化すると雇用流出が起こるというご発言もあったりします。また、外務省で委員をやっている会議の中でも、外務省から、外国人の単純労働力を入れないと雇用流出が起こるという指摘もなぜかあったりして、我々が何か一言言うと、工場が海外に行くということを言われるのです。しかし、検証に基づくきちんとした要因分析をどこかでやっておくことが必要ではないかと思います。厚生労働省が中心になってやっていただくとは思いますけれども、今後の日本経済のあり方なり、我が国の競争力を考えたときに、あるいは雇用というものを考えたときに、どこかできちんとした分析をお願いしたいと思います。本件とは離れますけれども。

○清家部会長 事務局から何かお答えはありますか。

○酒光労働政策担当参事官 いまのは良いご指摘で、どこをどういう体制でやるかも含めて検討してみたいと思います。

○小谷野委員 資料2の4頁の生活保護受給者等就労支援事業について、「就労経験や就労意欲が乏しい者等に対する支援要請が多かった」ということが書いてあります。これはハローワークにとって大変重要な役割ではないかと思っております。若い人たちに働くことの意義をしっかり教育していただくことが、大変重要だと思っております。それについては教育という問題にもかかわってまいりますので、厚生労働省だけでなくて文部科学省、地方自治体等とも十分連携して、この問題に対応することが必要ではないかと思っております。その辺の連携を是非よろしくお願いしたいと思います。

○宮川職業安定局総務課長 後のテーマにある学卒対策、若者対策も含めてということになると思いますいまご指摘のあった「働く」ということについて、教育面からのさまざまなアプローチ、サポートについて、私どもと文部科学省との連携強化というのは、大変重要な指摘だと思います。今後、施策を進めていく上でその点に配慮した上で行っていきたいと考えております。

○清家部会長 ほかにいかがですか。

○田中委員 4頁のハローワークです。先ほど新谷委員も、生活保護受給者等の点をご指摘されましたけれども、ここもそうですが、いろいろなナビゲーターを増員することによって、前年から比べるとかなり実績が上がっているという分析になっております。例えば就職支援ナビゲーター等です。ですから施策の方向性としては、基本的にきめ細かな支援を行うという意味では、増員の方向できめ細かくやるか、もう1つはナビゲーター一人ひとりの効率を上げていくという2つの方向があると思うのです。とりあえず、増員していくことが当面考えられると思うのですが、点検評価部会としてその先にあるものは、やはりそういう分析ではなかろうかというのが第1点目に指摘したいことです。
 2点目は質問です。雇用保険受給者の早期再就職割合については目標をかなり達成したと、個票の分析にも書いてありますね。ただ、再就職手当の効果というのは、どの程度目標達成に効果があったかという分析がないので、どうお考えなのかというのを伺いたいと思います。

○宮川職業安定局総務課長 まず、1点目のナビゲーターの増員ということです。このナビゲーター制度については、言うなれば担当者制で、濃密に職業指導なり職業紹介なりをやっていくという意味で、非常に効果のある施策ではなかろうかと思っております。いま田中委員からご指摘がありましたように、単に増員するだけではなくて、今後はさらにその人たちの仕事の内容の価値をどうやって高めていくのか、効率的にやっていくのかと。そのための手法として、さまざまな成功事例やいろいろな取組事例を共通化、基盤化していって、マニュアル化できるものはマニュアル化し、いろいろな面での研修なり何なりをやっていって、より効果的、効率的なものを図っていくことが、今後必要になってくるのではなかろうかと考えております。
 2番目の雇用保険受給者の早期再就職割合の件ですが、実はこの対象者となるのが、まさに再就職手当の対象者と同じ形になっております。私どもとしては、仕組みとして早期再就職していただいた方の再就職手当という制度が、かなり充実された形でいま行っており、今月1日から施行された新しい制度の充実が図られたところです。ですから私どもは、再就職手当というものは相当強力に機能しているのではないかと考えているところです。

○宮本委員 先ほど勝間委員から、外部環境の話が出ました。この問題で狭義の雇用政策以外の経済要因をどういうように踏まえるかというのは、言わばこの点検評価部会の懸案であったように思うのです。実は今日も同時間帯に成長戦略実現会議が開かれて、清家部会長も私もこちらに出ることを選択しました。そこはそこで成長戦略を作っている、あるいは評価をしているわけです。
 この労政審の点検評価部会というのは、労政審各分科会の作った目標を点検評価するのが原則だと思います。ただ、各部会には成長戦略を踏まえて計画を作っている所もあると思います。したがって、他方においては社会保証の改革にも取り組まれていて、やむを得ないこととはいえ、成長と雇用と社会保障がバラバラに計画を立てて動いている面があります。おそらく、その要にあるのは雇用だと思うのです。そういう意味で、点検評価部会がいかに総合的な視野を持っていくか、そして労働政策、雇用政策に出来ることと出来ないこと、あるいは責任関係というものをどこまで示すかというのが問われます。そこが前文での書きぶりではないかと思うのです。
 少し大きな話になってしまいますけれども、EUでは2003年まで成長戦略と雇用の計画と社会保障の計画を、OMC(Open Method for Coordination)というもので各国が計画を立てて、それをEUの委員会が評価するという形でやってきました。ところが、やはりこれでもバラバラになるということで、2003年からはストリームライン、一体化ということを始めました。成長戦略と雇用の計画と社会保障の計画の総合レポートを各国に書かせて、評価のサイクルも3年ごとに合わせて提出させ、これをEU委員会が評価していくという形に切り換えたわけです。同時に評価の指標になるインジケーターも、その連関が見えるようなインジケーターを作っていくと。例えば、経済成長率と可処分所得の相関を示す数値とか、有職者の中での貧困率を示す数値というような形で、成長と雇用、雇用と貧困社会保障の相関を示すようなデータ、インジケーターを作って、それでEU委員会が評価をしていくという方向に舵を切ったわけです。
 これを日本ですぐに実行するのはなかなか難しいと思いますけれども、やはりそれぞれが少しずつ相互乗入れをしていくことで連関を示していくことが、非常に重要ではないかと思いました。まずはこの点検評価部会から、その辺りを少し目的意識的に、視野を広げていくという書きぶりが求められるのではないかと思います。

○酒光労働政策担当参事官 大変重いご指摘をいただきまして、ありがとうございます。もともと点検評価部会の目標は、成長戦略に書かれた2020年の目標をベースとして、各年度に落とし込んで作っているもので、一応意識しながら作っているつもりです。そのあとも社会保障改革などがあり、その辺は事務局としてもなるべく整合的になるように注意してやっております。また点検評価部会の書きぶり等については、どういう形で書いたらうまく書けるかというのは、今すぐには思い浮かびませんけれども、ご指摘いただいたようなことは、なお一層そういった観点を持って、できる限り反映させていくような方向で考えていきたいと思います。

○樋口委員 いまのご指摘はもっともだろうと思います。ただ、この労働政策評価ということに関して、どこまでそれを書いていくのかというのは、また別の議論があるかと思います。やはり気になるのは、この項目の立て方が各部局に沿って、あるいは各部会に沿ってというものになっていて、そこにどう横ぐしを刺すかというのが、最後のところでも必要になってくるのではないでしょうか。例えば、いまの話ですとハローワークにおける求人開拓、職業紹介というところで止まっているわけですが、ご議論を聞いていますと、能力開発をどうするのかというところも関連してくるわけです。
 先ほど新谷委員から、長期の失業者が増えてきているので、これに対する評価をどうするかというお話がありました。それに対して宮川総務課長は、「基金訓練にシフトしている人たちがかなりある」と言われました。基金訓練の受講者については何パーセントが失業給付期間が切れてシフトして来ている人なのか、何パーセントが全く失業給付の受給の資格がなく、最初から非正規であったり自営であったり、あるいは新規という形で入ってきている人かという統計があると思うのです。私も見たことがあるのですが、大体37、38%、4割弱ずつになっていたかと思うのです。では、今度その人たちはシフトしたあと、再就職という形でどうなっていくのか。その中でもやはり再就職の早期化ということが必要になってくるだろうと思います。それはあとの能力開発の評価で出てくるところもありますが、1本の流れの中で、ハローワークの職業紹介から能力開発を経てどこまで再就職していっているのか。これは数値目標ではなかなか立てにくいものなので、文章でも結構です。それをここの部会ではどういうように統括的に評価したのかというところを、どこかで設けてもらえればと思います。
 ついでに、先ほど新谷さんが言われた5頁の取りまとめの「就職件数の伸びが小幅に止まっていることから」というところで、そのあとすぐに「きめ細かな」という話になっているわけです。やはりここには「その要因を十分検討し」とか、「十分分析し、それに対応した政策というものが必要だろう」というのを入れておいたほうが、私はよろしいのではないかと思います。

○宮川職業安定局総務課長 ご指摘ありがとうございます。書き方については後ほどよく相談させていただきます。10月1日以降、求職者支援制度という新しい制度の中で大きな課題となるのが、訓練が終わった後どうやってその方々を就職させていくかというところが大きなポイントです。そのためにはまず訓練の設定から、この人たちを選ぶところ、訓練期間中のフォロー、そして訓練後の就職という一連の動きの中で、ハローワークがどういう形でそれにコミットしていくかということです。当然コミットしていかなければならない。
 その中で、再就職された方が一体どういう所に再就職してという、まさに数字だけではない分析というものがあります。もしかしたら、これには現場レベルのものもあるし、その現場レベルのものを集めた形での全体としての政策のあり方、運用のあり方を考えるべき分析というのが、今後は必要になってくるであろうかと思います。いま樋口委員がおっしゃった、その要因を分析してという形でのご指摘というのは、非常に重要な点だと思っております。

○清家部会長 よろしいですか。またこちらに戻るということは当然ありますが、ほかの項目もありますので、少し先を説明していただきたいと思います。それでは全体を4つに分けた2つ目の部分になるかと思います。「若者の就労促進」「女性の就業率の向上」「高齢者就労促進」、さらに「障害者就労促進」の部分について、事務局からご説明をお願いします。

○酒光労働政策担当参事官 それでは[2]から[5]までをまとめてご説明いたします。[2]が「若者の就労促進」です。資料3の個票シートで言いますと6頁以降です。まず、新規高卒者内定率です。就職環境が厳しいということで、目標についてもやや厳しめの目標を立てておりましたけれども、ジョブサポーターの増員とか、経済対策として新規学卒者対策をかなり強化したこともあり、前年同期比では改善したということです。
 正規雇用に結び付いたフリーターの数も、年度実績24万4,000人ということで、目標を上回る実績を上げたところです。これらの要因としては、ハローワークにおけるきめ細かな職業相談・職業紹介等が有効ではなかったかと考えております。
 また、若年者試行雇用事業(トライアル雇用)についても、人数や目標を設定しておりますけれども、常用雇用移行率も概ね目標どおりです。開始者数については6万9,000人と、目標値を大幅に上回るということで、かなり力を入れた取組をした効果が現れたのではないかと思っております。
 若者のところのまとめとしては、2010年度に実施された経済対策に基づく取組により、一定の成果が見られたと考えておりますけれども、新卒者、若年者については2011年度も非常に厳しい状況が想定されておりますので、引き続き関係者間で連携して、マッチングを図っていくことが必要ではないかと考えております。
 続いて「女性の就業率の向上」です。資料3のシートで申し上げますと9頁です。男性の育児休業取得率が1.38%ということで、前年度比で減少しております。目標が3%ですから、目標に比べても低いという状況です。その要因ですが、職場に迷惑がかかるということで男性が育児休業を取得しない中で、男性の育休については社会的機運の醸成や職場環境の整備がまだ十分に進んでいない、ということがひとつ考えられます。育児・介護休業法の改正法を2010年度6月に施行して、男性の育休の取得促進のための施策をかなり盛り込んだわけですけれども、この調査時点が2010年10月ということもあり、まだその効果が十分反映されていなかったのではないかと考えられます。
 続いて育児休業期間中、3歳までの育児のための短時間勤務制度の普及率です。これは同じく改正育児・介護休業法で制度の導入の義務化が図られたこともあり、助成金等も活用されたことで、前年度比で6.7%増加して、目標を上回る実績を上げたと考えております。
 続いて男女機会均等の観点からのポジティブ・アクションの取組企業割合です。2007年度が20.7%のところ、2009年度までは30.2%ということでかなり増えたのですけれども、2010年度については28.1%ということで、やや足踏みをしました。要因としては、個別の企業によって違うと思いますが、各企業において、男女均等の取扱いはもう十分ではないかということで、実態把握があまりされていないのではないか。あるいは中小企業においてはまだポジティブ・アクションの意義・必要性、ノウハウ・情報不足といったことが考えられます。
 マザーズハローワークの事業については、拠点の拡充等を行ったり、事例集を取りまとめて支援ノウハウの向上に努めたりしたこと、あるいは出張セミナーを積極的に開催したことにより、重点支援対象者の数や就職率については、目標を上回る実績を上げたと考えております。
 以上、女性のところをまとめますと、特に男性の育児休業取得率が下がっていることで、上昇していない要因をよく分析して、今後の取組を強化する必要があるのではないかと。ポジティブ・アクションに取り組む企業の割合についても同じように減少しているので、その要因の分析を行って、取組の強化をする必要があるのではないかと考えます。
 [4]が「高齢者就労促進」です。資料3で言いますと13頁です。このうち数字が出ているのが、中高年齢者試行雇用事業(トライアル雇用事業)です。これは別の実習型雇用支援事業を選ぶ者もあるかと考えて、利用者数についてはやや控え目の目標を立てたわけです。実際には半年間で目標を達成したということで、目標の倍近い実績を上げました。また常用雇用の移行についても78.1%ということで、大きく上回ったところです。
 ただし高齢者については、「希望者全員が65歳まで働ける企業の割合」や「『70歳まで働ける企業』の割合」といった、非常に大事な指標が今回はまだ間に合っておりませんので、これらについてはその実績が出た時点で、改めて評価を行うのが適切ではないかと考えます。
 続いてこのセクションの最後、「障害者就労促進」です。個票のシートで言いますと15頁です。ハローワークにおける障害者の就職率は18.2%ということで、目標を上回りました。特に就職率の分子である就職件数がだいぶ伸びて、5万2,931件です。中でも精神障害者の就職件数がかなり伸びていて、初めて知的障害者の就職件数を上回りました。要因としては、企業におけるCSRなどによる意識変化、あるいは関係機関と連携したチーム支援といったものが効果を上げたのではないかと考えております。障害者のトライアル雇用事業(試行雇用事業)についても、開始者数、常用雇用移行率等、目標を上回る成果を上げたと考えております。
 障害者のまとめとしては、障害者の就労促進については目標を上回っており、引き続き障害者の特性に応じたきめ細かな就職支援や、関係機関との連携による施策の推進が必要だろうと。なお、障害者関係のもう1つ重要な指標として、障害者の雇用率達成企業の割合がありますが、これはまだ数値が出ておりませんので、これについては出た時点で評価を行っていただくのが適切だろうと考えます。

○清家部会長 ただいまの説明の内容についてご意見、ご質問をお願いいたします。

○坂田委員 「女性の就業率の向上」についてです。数値目標を立てて、それに向けてチャレンジしているわけですから、まず第1の関心事は、それをクリアできたかどうかです。次はどのぐらい到達できたかということだと思うのです。この項目の中で特に男性の育児休業取得率に関しては、乖離の幅が非常に大きいということと、さらに後退しているということをやはり重く受けとめるべきではないかと考えます。
 乖離幅の大きいところは十分な分析を行うということが、別のところに書いてあったと思います。男性の育児休業の問題についても、確かに行数を多く割いていろいろなことを書いてはいるのですけれども、これを見ますと、詰まるところ社会的機運の醸成であるということです。それしか言っていないのではないかという気もするわけです。こういう状態で、いろいろな法改正があってその効果がまだだという分析になっておりますけれども、それについても今回後退したことについての説明が不十分だと思います。
 各企業が法に則っていろいろな施策を考えたり、職場に対して男性の育児休業に関してプロモーションを打ったりしているわけですから、そこのところのプラスの評価も是非お願いします。この辺りをよくよく考えた説明でないと、企業に無力感だけが残るので是非お願いしたいと思います。

○勝間委員 横ぐし不足というのは、まさしくおっしゃるとおりです。実は、私は男女共同参画会議の委員でもあり、女性と経済のワーキンググループの副座長を務めております。そこでもなぜ女性の就労が進まないかという話について延々と議論をしていて、丸1冊報告書もあるので、是非お目通しいただきたいと思います。
 これにはいろいろな理由があります。例えば、この中では指標として丸々、いろいろなものが抜けているのですよ。ここにある指標というのは全部結果指標であって、アウトプット指標であって、インプット指標がほとんどないのです。例えば、インプット指標としてどんなものが挙げられるかと言いますと、なぜ女性の就労が進まないかというと、教育格差があります。いわゆる高学歴と言うのですか、高等教育を受けた男女比の割合というのが、日本は先進国比でビリに近いくらい低いのです。したがって就職機会のスキルがないので、なかなかないということです。
 男女の賃金格差も、先進国の中でいちばん高いです。したがって男性が休むと家計が破綻してしまうので休みにくいという理由もあります。あるいは長時間労働者比率のほうは、ディーセント・ワークのほうに60時間以上というのがありますが、実際に週40時間以上働くと、共働き、特に子どもを持って育てる場合はきつくなりますので、週40時間以上働いている人数の割合みたいなものがないと、これも男性や女性の就業参画が進まない。
 また、女性にとって特に男女差があるのが正社員比率です。当然、正社員のほうが収入が高いので、男性のほうがなかなか育休を取らないということがあります。このようなさまざまなインプットにかかわる因果関係を用いる指標目標が、ほとんどないのですよ。男女共同参画会議では随分いろいろな指標を作っていますので、そちらとの連携をどうするかということについて、是非1つのテーマとして掲げてみたいと思います。もし、ご興味があれば全部2時間ぐらいお話できますので、よろしくお願いします。

○金子委員 同じく[3]の「女性の就業率の向上」についてで、とりわけ男性の育児休業取得率のところです。先ほどの坂田委員と全く同感です。前回、この部会でも意見を申し上げたところですけれども、イクメン等、社会的にいろいろ広めていくような取組は重々理解はしているものの、数字的になかなか上がらないというのは非常に残念です。
 5頁のいちばん下に、「職場に迷惑がかかると考え育児休業を取得しない男性が多い」という記載があります。2008年に内閣府でやったワーク・ライフ・バランスに関する意識調査を見ますと、男性の希望する観点として、仕事と家庭、もしくは仕事と家庭と個人社会生活といったところを優先したいということを希望する方が、全部合わせますと過半数を超えているような数値になっていますし、希望と現実とのギャップを感じている人は8割を超えているという数値も出ています。こういった実態も踏まえながら、今後に向けた対策等を是非お願いできればと考えております。

○北田委員 女性の分野ということで関連して、ポジティブ・アクションの部分です。やはり男性の育休取得同様、こちらも数値で言うと前年度から減少しています。趨勢的に上昇しているにもかかわらず前年度を割っているというのは、大変な課題ではないかと考えております。分析でも、昨年から減少している要因について分析を行い、取組を強化する必要があるというのは、まさしくそのとおりで、こちらについてもより詳しい分析が必要ではないかと感じております。
 特にポジティブ・アクションについては、昨年決定された政府の第3次男女共同参画基本計画の中でも、雇用分野での女性の参画拡大を図ることというのが喫緊の課題とされております。もちろん雇用の数もそうですが、女性の管理職への登用でも重要かと考えております。しかし現状では、例えば課長職相当以上の女性の割合はわずか6.5%というデータもあり、民間企業におけるポジティブ・アクションの推進というのは、非常に重要と考えております。ポジティブ・アクションというのは、単に女性を優遇するというものではなくて、企業の業績向上や多用な意見を取り入れるという、ポジティブ・アクションの正しい意義や必要性というものをしっかり認識して、ポジティブ・アクションの推進に向けて、より効果的な取組を行うべきと考えております。

○吉本雇用均等政策課長 まず男性の育休取得率についてですが、ここ数年の趨勢を見ると、少しずつではありますが、傾向としては上がってきているというのがありますけれども、おっしゃるとおり目標に対して、まだまだ乖離が大きいというところで、私どもとしても非常にもどかしく思っているところが現状です。
 もともとこの目標設定の考え方としては、男性の中で機会があれば是非取ってみたいという希望が7%以上あるというので、そういった方々について、きちっと取っていただけるようにすることを、1つの根拠として考えているわけです。そのためにはさまざまな要因がかかわってくると思いますが、アンケート調査等を見ると、職場の雰囲気が取りにくいことを挙げる人がいちばん多くなっているということで、今回の分析の中ではそれを主な例示として挙げています。もちろん、それ以外にも、勝間委員からありました所得が減少する問題、あるいは雰囲気だけでなく職場に迷惑がかかる、実際の代替要員の確保の難しさという問題もありますので、そうした多面的な要因を一つひとつ改善していく努力が必要かなと思っています。
 1つ制度的なことで申し上げると、育児・介護休業法が改正され、昨年の6月末から父親が少しでも取りやすくするようにということで、「パパ・ママ育休プラス」といって、原則的には1歳までの間に取得していただくわけですが、父母共に取る場合には1歳2か月までの間取れるようにする。あるいは母親のほうが産後休業を取っている間に男性が育休を取った場合には、再度、その後にまた取得できるといったように、少しでも取りやすくすることは制度的にも取り組んでいます。ただ、それについては昨年の6月ということで、今回の調査時点が、その前年度に配偶者が出産した人の中で調査時点である10月までに育休を開始した人ということから、改正の効果が十分に出るには至らないタイミングだったとも考えているところです。
 仕事と家庭の両立を図りたいと思っている人が非常に多いというのは、そのとおりであり、そういった職場の雰囲気あるいは慣行も含めて直していくために「イクメンプロジェクト」というのがありますが、これも本格的にやり始めたのは昨年の6月以降です。そういう意味では、更にこれにも力を入れて具体的な効果が上げられるようにしてまいりたいと思います。
 勝間委員からありましたご指摘については、非常に重要なご意見だと思います。現在の目標については、労政審各分科会で主にその分科会が所掌する範囲の中で、把握できる指標について掲げているというのが現実のところかと思います。ただ、背景になるさまざまな指標がそれ以外にもあるということですので、それにつきましては今後の検討課題とさせていただければと思います。勝間委員のワーキンググループの報告書もよく勉強させていただきたいと思います。
 大きな2点目のポジティブ・アクションについてです。これも趨勢的には少しずつ取り組む企業が増えていると、データは見られると思っていますけれども、景気が少し良くなってきたとはいえ、経済環境がよくない中でポジティブ・アクションのメリットは、必ずしもすぐに何か業績に結び付くものばかりではないと思います。そういった意味で、なかなかすぐに取り組む状況にはなっていなかったと分析しています。特に中小企業などでは、ポジティブ・アクションとは何かから始まり、具体的に何をやればいいのか、何がいいことなのか。その辺がまだまだ理解されていませんので、その辺の周知です。それからやるとなったときの具体的なノウハウ、何から取りかかったらいいのかということもありますので、中小企業については、特にきめ細かくコンサルティングするようなサービスもやりながらやっています。以上です。

○清家部会長 坂田委員、勝間委員、金子委員、北田委員、よろしいですか。では坂田委員、どうぞ。

○坂田委員 いま、勝間委員と吉本課長のお話をお聞きすると、「女性の就業率の向上」という大項目に対し、[1]の男性の育児休業取得率ということで、これは目玉の指標ということだと思いますが、これを目標として取り上げる前に、クリアすべきものがまだまだたくさんあるのだから、それが先だというふうに私としては理解できます。企業の中でこういった育児休業に関する制度を作ったり、実際、職場とやり取りをすることを行っている立場としては皮膚感覚に非常に合うと思います。

○吉本雇用均等政策課長 育児休業に関する目標は、ここでの単年度評価のみならず、子ども・子育てビジョン、あるいは新成長戦略そのものに書かれていることも、ご理解いただきたいと思います。

○坂田委員 それは十分理解しているつもりです。

○勝間委員 私は育休取得率は是非このまま置いておくべきだと思います。ただ最終的にアウトプットであって、それの背景というものの指標をここに掲げないまでも、分析上必要ではないか。それに対して労働政策として何ができるかについて、もっと議論したほうがいいのではないかという意見です。例えば長時間労働規制で、長時間労働がすべてのボトルネックになっているというのが、この女性の就労に対する私たちの意見ですので。

○清家部会長 金子委員、北田委員、よろしいですか。では樋口委員、どうぞ。

○樋口委員 いまいくつかの項目がある中で、女性の就業に関する項目が、ほかに比べて総じて厳しい結果になっている印象を持ちます。問題は、それをどう今後につなげていくかというところで、個々の施策についての対応というのもあるでしょうし、また個々の企業あるいは労使それぞれが、意識改革を含めて進めていくこともあると思います。
 これは、はっきりした根拠を持って言っているわけではないですが、女性の雇用促進について推進力が薄れてきている、弱くなってきている感じがします。ここでの評価を分析することも当然必要なわけですが、その分析の結果を受けて、どういうふうに政策に反映していくのか。そこの大きな問題としてリソースの問題があるのではないか。これだけ予算制約が厳しい中において、その配分をどうするのかも重要なテーマになってくるわけです。
 これは私の実感で、根拠があって言っているわけではないですが、何となく女性に関する予算のところが、大幅に削減されてきていることがあったりします。そこのところを補強するところまで持っていかないと、ローリングモデルとしてつながっていかないのではないか。評価のところで終わるということでは、本来の目的を達成していないわけですから、政策の運用まで含めてその効果をどう考えていくか。政策のやり方もあると思います。あるいは運用の仕方もあると思いますが、もう1つ重要なのはリソースのところになってくるわけですから、ここでの結果をそこにどう反映させていくのかは、是非、厚労省の中でご議論いただきたいと思います。これを書けということではないですが、そういったところも重要ではないかと思っています。

○清家部会長 これは酒光参事官、どうぞ。

○酒光労働政策担当参事官 今年の予算編成がどうなるか、先行きがまだわからないところがありますけれども、省内での議論をやっているところですので、そういった議論に活かしていければと思っています。

○清家部会長 宮本委員、どうぞ。

○宮本委員 1点は、今まで議論になっている女性の就労について、私も男女共同参画会議の委員ですので、一言、申し上げると同時に、併せて高齢者と障害者のほうにも移っても構わないですか。

○清家部会長 はい。

○宮本委員 まず女性の就労については、これまで議論されてきたことの繰り返しにもなるかと思いますが、先ほどの外部環境の話と同時に、この点検評価部会では、ここで目標を実現することが経済にどうフィードバックしていくかについても、書きぶりの中である程度押さえていいのではないか。女性の就労がこの経済状況の中でなかなか進まない背景には、優先度があまり上がってきていない。しかし、ゴールドマンサックスのレポートもありますけれども、結局、日本の場合、ウーマノミックス(Womenomics)というか、女性の就労が進むこと、M字型雇用の底が上がることが、GDPの潜在成長率を0.3%ずつ上げていくことになるのだというレポートが、かなり有力なものとして出ているわけです。その辺りを含めて、目標が実現することの意味をはっきり書いていく。あるいは、いくつかのポジティブな、ある意味で女性の就労と企業の成長を連携させたケースなどを、少しコラム的に書いていくとか、いくつか工夫があってもいいのかなと思います。
 先ほど、女性管理職が6%という話が出ましたが、いちばん管理職の割合が少ないのは霞ヶ関で2.2%です。ちょっと空気を冷たくしてしまいましたが、是非、その辺りも含めて目標の実現をしていく必要があるのではないか。厚労省は多いです。
 それから高齢者と障害者の雇用については、質的評価の基準として雇用主体というか、おそらくいま社会的企業で、NPOや協同組合やある種のミッションを掲げる企業が、障害者や高齢者については雇用の吸収をしているのではないかと思います。もちろん、そこで実現している雇用の質も問題ですが、いう所の新しい公共というのは、この分野で大きな役割を果たしているというのは、おそらく明らかでしょうから、この雇用の主体についての分析を、是非、入れ込んでいただけないかとも思います。
 先ほど部会長もおっしゃった政策へのフィードバックに関して、障害者就労促進が一定程度進んでいるのは、障害者自立支援法の評判が悪くて、現政権はこれを総合福祉法等に置き換えるという議論をしているわけですが、就労移行に関しては自立支援法は重要なフレームをたくさん持っているわけです。場合によっては自立支援法の積極的な影響というのも、ここに見出せるのかもしれないとなると、そこはきちっと維持していく必要もあると思いますから、その点を含めて、政策へのメッセージという点で分析を進めていただきたいと思います。

○清家部会長 宮川総務課長、どうぞ。

○宮川職業安定局総務課長 高齢者雇用対策、障害者雇用対策について、いま、宮本委員からお話がありました。NPOとか、いわゆる社会的企業と呼ばれているものが新しくどんどん出てきている。一方で、障害者雇用あるいは高齢者の雇用についても、それぞれ障害者雇用率なり高齢者の雇用確保措置ということで、すべての企業にやっていただく形のものを、1つメインストリームとして今まで取り組んできたものですので、そういう取組と、そういう新しい動きも踏まえた形で、主体を含めた分析がどこまでできるか、いろいろ考えてみたいと思います。

○酒光労働政策担当参事官 前段のところは女性の話でしたが、全体にかかわるお話だと思いますので私から申し上げます。女性の就労促進が経済にどうフィードバックしていくかは、非常に大事なお話だと思います。これは点検評価部会という形なので、あまりそういうことは書いていないのですが、私どもは常にそういうことも重視というか頭の中に入れていて、今回も例えば「社会保障税の一体改革」などの議論の中で、そういった観点ですね、就労促進というのは個人の生活を支えるだけでなく、経済や社会保障財源を支えていく意味でも非常に重要であるという観点を盛り込んでいます。今後も行政の推進について、そういう観点を維持していきたいと思っています。また、いろいろな好事例については、例えば女性の関係でも白書や好事例集を作っていますので、そういったものの普及をやっていきたいと思っています。

○荻野委員 私からは若者の話についてよろしいでしょうか。細かい話ですが、分科会で設定された目標については、こういうことでよろしいと思いますけれども、少し補足的に教えていただきたいことがあります。1つは、フリーターを正規雇用に多数結び付けているという成果を挙げていますけれども、フリーター数を約半減という雇用戦略対話の目標達成に向けての取組で、かつて217万人で124万人を目指している。これがいま現在、どのくらいの数字になっているのか。新たにフリーターになる人よりも、フリーターから脱する人のほうが多いのかということを、1つ教えてほしいと思います。
 もう1つ教えていただきたいのですが、新規高卒者内定率95.2%というのは、これは高校だから年度末の就職希望者に対する内定者の比率になっているかと思います。よく言われますけれども、就職希望を取り下げてしまう人、本当は就職希望だけど難しそうだから専門学校に行くという人も、たぶんいると思います。例えば10月時点での就職希望者に対する年度末での内定者の比率も、厳密にいい数字かどうかわかりませんが、参考にはなると思いますので、そういったもので就職を諦めている人がどれぐらいいるのかを見ることができるのではないかと思います。
 女性の話でついでに言わせていただくと、細かい話ですが、評価のまとめの文章の中に男性の育児休業が取得しにくいということで、「職場に迷惑がかかると考え育児休業を取得しない男性が多い」というのは、たぶん調査結果等から言って事実なのだろうと思いますけれども、この書き方ですと、では女性は迷惑がかからないと思っているのかとなって、これは女性に対して失礼であることもさることながら、そう考えると何か本当に取れない理由というのは、つかみきれていないのではないか。これは答えるときに周囲の納得を得られやすい答えなので、こう答えるけれども、本当の理由は別のところにあるのではないかという気もします。あまりこれはお書きにならないほうがよろしいのではないかと、個人的には思います。これは意見です。わかりましたら、若者のほうを教えていただければと思います。

○宮川職業安定局総務課長 まずフリーター数ですが、平成15年の217万人をピークにして、平成20年まで5年連続で実は減少していましたけれども、平成21年から増加に転じてしまい、平成22年には183万人となっています。その中で、いわゆる年長フリーターという25~34歳の層の増加が顕著になっている形です。例えば平成21年から22年にかけて年長フリーターは6万人増えていますが、一方で15~24歳のフリーターは1万人減という状況で、いま荻野委員からお話がありましたように、新成長戦略で2020年度までにピーク時の227万人を半減させるという目標でいい方向で動いていたのが、ここ1~2年、足踏みどころかまた増えかけている。しかも年長フリーターが増えているところに、ある意味での危機感というか、考えなければならない点があるのではないか。
 この年長フリーターの方は、さらに35~39歳の層も増えてくる形になってくるであろうということで、こういう方々に対する対策が、今後、力を入れていく点であり、かつ新規学卒者の方の対策、特にここ1~2年、大卒を中心に非常に厳しい状況の中で、私どもが特に力を入れているのは、こういう形でのフリーターなり、将来、年長フリーターにならないようにするための対策として、いまの時点で学卒対策をきちっとやっていくべきであろうと。この2点を重点に置く必要があると考えています。
 あと高卒の関係の数字ですが、いま言われましたように、この数字は2~3か月に1回ずつ数字を追っていき、最終的に目標にしているのは年度末の数字です。ですから年度末の方々が、そのまま放ったらかしにされるのかというと、そういうわけではありません。そういう形で対応はしていますが、10月ごろに希望を持った方が、どういう形になったかを統計上取れるかどうかは、検討させていただきたいと思います。統計上ちょっと難しいのではないかと思われるところもあるのですが、そういうものがどういうふうに把握できるのか、あるいは分析できるのかは検討課題とさせていただきたいと思います。

○清家部会長 吉本課長から、お答えいただきます。

○吉本雇用均等政策課長 1点、男性の育休の話がありましたので、先ほども簡単にご紹介したのですが、一応、ここに「職場に迷惑がかかる」と書いているのは、アンケート調査があって、それを見ると、男性についてはこれを挙げる方が相当多いということで、それについて「取得する必要性を感じなかった」とか、「家計への影響」といったものがあるわけですが、これを主要な要因として、要因の分析というところですので書かせていただいているところです。これに特定されない書き方の工夫があれば、させていただきたいと思います。

○清家部会長 荻野委員、よろしいですか。

○荻野委員 はい。

○清家部会長 お待たせしました小谷野委員、どうぞ。

○小谷野委員 若者の就労促進のところで、資料3の6頁の「若年者試行雇用事業の開始者数」が、目標に対して大変素晴らしい数字を上げているということで、単純な感想ですけれども、ちょっと目標が低すぎたのではないかというふうにも見受けられるところです。大変いい事業だと思いますし、またフリーターを正規雇用に向けるということで、ここも重要かと思いますので、もう少し高めの目標設定が必要かと思いますので、よろしくお願いいたします。

○清家部会長 宮川総務課長、どうぞ。

○宮川職業安定局総務課長 一応、その時点では、もしかしたら固めの数字を挙げてしまったのかもしれませんが、志は高く持っていきたいと思います。よろしくお願いします。

○清家部会長 よろしいですか。まだ少しあるかと思いますが、またここの部分に戻ることもありますので、少し時間が押していますから、次に「人材育成」について事務局からご説明をお願いいたします。

○酒光労働政策担当参事官 「人材育成」についてご説明します。資料2で言いますと7頁、資料3で言いますと17頁になります。人材育成では主に能力開発の関係ですが、公共職業訓練については、受講者数が16万5,000人ということで、前年に比べて減っていて目標からも落ちていることになります。要因ですが、現在、公共訓練について民間への委託訓練がかなり多いですけれども、従来、雇用・能力開発機構が行っていたものを、都道府県が行うような形に移行しています。その中で都道府県の委託訓練が、まだ十分増えていないことが影響している状況です。また就職率ですが、施設内訓練、公共職業訓練施設での訓練については78.3%で、目標より若干低くなりました。民間への委託訓練については60.9%で、これも目標より下回った状況です。
 続いて緊急人材育成支援事業です。これは先ほど樋口委員からお話がありましたけれども、雇用保険を受給していない方を主に対象にした訓練です。この受講者については2009年度の申込者の数をベースとして目標設定していましたが、15万人という目標に対して29万人の実績で、目標を大きく上回ったということです。この要因としては、訓練コースの開拓が進んだとか、あるいはハローワークを通じて周知広報をかなりやりましたので、こういったことが効果を上げたのではないかと考えています。就職率も69.2%ということで、目標よりかなり高い水準になったと考えています。
 次に資料2の8頁でジョブ・カードです。ジョブ・カードの取得者ですが、新規取得者は22万4,000人ということで、目標の25万人は達成できませんでしたけれども、かなり増えたという状況です。要因ですが、地域のジョブ・カードセンターにおける普及活動、あるいはキャリア形成促進助成金の効果が、かなりあったのではないかと考えています。また年度後半には様式の簡素化も図り、より取りやすい形にしたことがあります。今後も引き続き認知度を引き上げることが必要かと思います。
 自己啓発の関係で、自己啓発の労働者の割合は正社員と非正社員それぞれ目標設定していますが、企業の自己啓発支援というのも非常に厳しい経済情勢の中でなかなか増えないこともあり、数値は横ばいということで目標の水準を下回っている状況です。なお、このほかサポートステーションという、若者、ニートの関係の方々を就職に結び付ける支援の目標もあるのですが、これは6か月後の実績を測るということで、まだ結果は出ていません。
 人材育成のところのまとめですが、緊急人材育成支援事業については、受講者数・就職率ともかなり成果を上げたと考えています。またジョブ・カードの取得者については、目標がかなり高かった中で目標の水準には及びませんでしたが、前年度比では大幅に増加したということで成果を上げたと考えています。一方、公共職業訓練の委託訓練については、受講者数・就職率も減少しているということで、その要因の分析を行って対策を検討すべきではないかと考えます。また自己啓発を行っている労働者の割合について、目標と実績の乖離がかなり大きいこともありますので、要因を分析するとともに、必要に応じて施策や目標の在り方についても検討してはどうかと考えます。以上です。

○清家部会長 ただいまご説明いただきました人材育成の部分について、ご意見、ご質問をお願いいたします。新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 ジョブ・カードですが、資料2の8頁のところにその記述があり、3行目から「22.4万人と目標の25万人の達成には至らなかったものの、前年度比で6.1万人増加した」という記述があります。一方、資料3の19頁の?に「22.4万人と増加したものの、目標未達成となっている」という記述があります。同じことを、どう見るかということなのでしょうけれども、あまりにも書きぶりが違うのではないかと思っています。目標が25万人という数字に対して、未達であったということで統一をするべきではないか。そうしないと、次の年度に向けての取組の姿勢にもかかわってくると思いますので、これは資料3の書きぶりに統一をして記述をするべきではないかと思います。
 それと、この政策目標はジョブ・カード取得者だけなのですが、確かに新成長戦略では2020年までに300万人取得が目標に掲げられていて、それでを年度ごとに割り振るとこういった数字になるのでしょうけれども、ジョブ・カードはツールだと思います。ジョブ・カードというツールを使って就職困難者を就職に結び付けるとか、より高い質の就職に結び付ける、あるいは定着に結び付ける、こういったものが政策効果ではないかと思いますので、もちろん、そのための取得者数の目標はわかるのですが、そういった、より良い就職に対する効果みたいなところの何らかの分析をしておかないと、単に数だけを追い駆けていくというのでは、ちょっと違うのではないかという感じもします。その辺も何かあればお聞きしたいと思います。以上です。

○清家部会長 それでは桑田審議官、お願いいたします。

○桑田大臣官房審議官 能開局でございます。2点ご指摘がございました。1点目の総論のところの書きぶりと、後ろのほうの書きぶりが違うのではないかというところで、総論のほうの書きぶりについては皆様方のご判断に委ねたいと思っていますので、そこは目標未達ということであれば、そういったことで我々もそれは重要だと思っていますので、きちっと受け止めたいと思います。
 それから、ジョブ・カード取得者のみの目標になっているが、ジョブ・カードはむしろツールなので、ツールとしてどの程度効果を上げたかを、きちっと分析する必要があるのではないかというご指摘です。ご指摘はそのとおりだと思っていますので、1つは、ジョブ・カードが実際にどの程度使われているかといったところを、私どもとしてもきちっと情報収集に努めて、分析をしてみたいと考えているところです。
 あと1つ申し上げると、ジョブ・カードと就職ということに関して、昨年来の事業仕分けを受けてのジョブ・カードの見直しの中で、その当時で言うと例えば基金訓練、それから10月1日以降を視野に入れると求職者支援訓練の対象者についても、漏れなくジョブ・カード交付の対象にしようといったことで、求職者支援訓練で実際に就職率がどうなったかは、ある意味、それはジョブ・カードがどの程度効果的に活用されたかと結構裏腹の関係が出てくる気がしています。そういった意味で、先ほどからご議論されているような、いくつか個別に項目がありますけれども実はそれの相互連関が重要だというのは、まさにそのとおりで、いまのような例も、もしかしたらそういった例の1つとして考えていくべきという気もしていますので、一言、補足させていただきます。

○清家部会長 新谷委員、よろしいですか。ほかにご質問はございますか。金子委員、どうぞ。

○金子委員 資料2の8頁の自己啓発を行っている労働者の割合のところですが、資料3で言うと17頁のところに具体的な数値が載っています。これで見ると、正社員で目標が50%に対して実績が41.7%、非正社員でいうと30%に対して18.4%ということで、双方ともに目標を下回っているのは資料2の記載のとおりです。さらに見ると、非正社員のほうの目標に対する未達率というか乖離率が大きいというのが、ここで認識できるところかと思っています。
 ここでの論点ではないのかもしれませんが、非正規の本質的な問題の1つとして、希望していながらも非正規という雇用形態から脱しえない、固定化するというのがひとつ問題点ではないかという問題意識もあります。そういう意味では、そもそも非正規のほうが低くていいのかという問題点は一方であるのかもしれませんが、少なくともこの評価をするに当たっては、そういった記載というか、評価としてはしっかり触れるべきではないかと思っていますので、是非、ご検討いただければと思っています。

○清家部会長 桑田審議官、どうぞ。

○桑田大臣官房審議官 確かに正社員と非正社員で目標自体が50%、30%と、そもそも下がるということ自体、いかがなものかというご議論があるのかもしれませんが、なぜそうなっているかというのを更に遡ると、例えば17頁の上にある自己啓発を行っている労働者の割合が、正社員は70%、非正社員は50%と長期の目標としてセットされていますので、それが原点にあるということです。
 なぜ50%、70%という数字がセットされたか、その考え方にまで遡って申し上げると、これは私どもの能力開発基本調査がありますが、いわゆる労働者の方々に対するアンケート調査の中で、これからの職業生活設計を自分で考えていきたいかどうか問うている項目があり、そこで「自分で職業生活設計を考えていきたい」と「どちらかといえば自分で職業生活設計を考えていきたい」の合計が、正社員では約7割、非正社員では約5割ですので、その個人のニーズをできれば充足してほしいと。そのために7割、5割の意欲のある方々に、きちっと自己啓発を行うような環境を整えることができればいいなという思いで、70、50とセットしているところで、そもそも、そこに差がある分です。
 そういった中で今回、数字がなかなか上がってこないというのは、先ほどの総論の説明にありましたように、リーマンショック以降、企業のほうでも正社員、非正社員に対してサポートする事業所の割合が減ってみたり、サポートするにしても平均額が減ってみたりというところから、なかなか抜け出せないところに原因があるのが1つです。
 もう1つは、個人の側のニーズとしても、先ほどの能力開発基本調査によると、例えば平成20年度は、正社員で「自分で職業生活を考えていきたい」という割合が33.1%だったのが、直近の22年度調査だと、その割合自体が29.3%に減っているのです。同様に正社員以外について見ると、20年度調査で28.9%だったのが、今回調査で22.2%と6%減っています。そういった中で、この目標をどうやって達成するかは我々も本当に悩んでいる部分です。そうは言っても、ご指摘のとおり正社員と非正社員のそもそもの本質的問題を考えると、非正社員の方についてもきちっとサポートしていくことは、それはそれで非常に重要な課題だと思いますから、そういったことも考えながら検討を進めていきたいと思っています。以上です。

○清家部会長 勝間委員、どうぞ。

○勝間委員 能力開発基本調査の原票を見ると、図14にありますが、結局、正社員にしろ非正社員にしろ、平成20年度に比べて自己啓発の支援事業数が激減しているわけです。平成20年度は80%あったものが、平成22年度は62%にまで減っている。すなわち、この自己啓発の関連について、どれだけ企業のほうに余裕があるかというところにかかわってきますので、その差分について公的な支出を行ってまでこの指標を達成するのか、あるいは、そもそも自己啓発を促す事業数のほうを目的にするのか、それは議論が必要ではないかと思います。事業数のサポートなしにしてこの数字だけが独り歩きしても、たぶんこの先も減っていくばかりではないかと思います。

○清家部会長 荻野委員、どうぞ。

○荻野委員 私から2点、ジョブ・カードと自己啓発についてです。ジョブ・カードについて1つ教えていただきたいのは、先ほどと同じで、ジョブ・カードの取得者数300万人に対して、いまストックでどのくらい発行されているのかと、これはわからないかもしれませんが、アクティブに使われているジョブ・カードはどのくらいあるか。要するに求職状態で使われているジョブ・カードが、どのくらいあるか教えていただきたいと思います。目標自体は、これからまだストックを積み増していく段階なので新規取得者でいいと思いますし、ジョブ・カードはここに300万人とありますが、本当に失業者数よりも多いくらい発行されて、中途採用の面接に来る人はほとんど持っている。それを見ると何となく相場として、このくらいなら結構いけるなとわかるところまで普及させなければいけないと思いますから、しばらくはこういうフォローになってくると思いますが、とりあえず途中経過として、そこがどうなっているか知りたいということで、わかれば教えていただきたいと思います。
 もう1つ、自己啓発を行っている労働者について、いま非常にご苦労の筋をお聞きしたので申し上げにくいのですが、「企業がOFF-JTや自己啓発支援に支出した費用の労働者の一人当たりの平均額が、ほぼ横ばいであること等が一因と推測される」というのは、事実として誠にそのとおりだと思います。ただ、我々としてみれば、労働者の自己啓発に対する公的支出は結構減らされているという思いもあり、少し不公平ではないか。実際に書くかどうかは別として、一言だけ愚痴を申し上げさせていただきます。

○清家部会長 勝間委員、荻野委員からのご指摘について、桑田審議官、お願いします。

○桑田大臣官房審議官 ジョブ・カードの累計ですが、直近の数値で23年度の5月までの累計で48万9,585です。実際にこのジョブ・カードが、どのようにアクティブに使われているかについては、申し訳ございませんけれども、そのようなデータは私どもで把握しきれていなくてお答えできません。ただ、先ほども言いましたけれども、今後は例えば基金訓練や求職者支援訓練で、いわゆるそういった方々は求職者ですから、職に就いていない方に実際の労働市場でそういったものを使っていただくという意味で、アクティブな部分が増えてくるというふうには考えています。
 あと先ほどの自己啓発のほうですが、確かに勝間委員のおっしゃるとおり、リーマンショック以降、そもそも企業サイドが、正規職員あるいは非正規職員に対する自己啓発支援をする余力がなくなったことは数字的にも出ていて、ここにも若干載っていますけれども、そういった中で、私どもが持っている政策ツールとして何ができるかというと、企業が自己啓発しようとする職員に対して支援することを計画的にやる場合に、申請があれば助成する制度がありますので、そういった制度を地道にPRしていく。あと先ほど、個人が自己啓発を行うための支援はどうかという話がありましたが、それは別途、教育訓練給付の世界で、そこは総額的には出ますか。

○宮川職業安定局総務課長 先ほど荻野委員からありましたように、雇用保険財政が厳しい状況であった平成15年以降、それまで8割であったものを現在は2割ないし4割、額も制限して支給がある程度抑制されている状況はあります。一方で、初回で使える方については、本来3年間の期間が必要なものについて被保険者期間1年でいいなど、改善策も行っている現状です。

○清家部会長 樋口委員、どうぞ。

○樋口委員 自己啓発を希望している人たちの比率が下がっているというお話がありました。そのベースになっているのは能力開発基本調査で、割とこの調査は、意識に関しては微妙な動きをこれまでもしてきた調査だろうと思います。ときどき理解できないようなジャンプアップをしてみたりということがありました。
 意識の調査というのは、統計の調査票自身をかなり慎重に作成し、分析していかないと、まさに若干のワーディングであるとか、あるいは質問の置いている位置によって結果は変わってくるわけです。それを無視して上がった下がったと言っても、本当に上がったのか、誤差の範囲なのかわからないところがあります。この統計を今後、厚労省でちゃんと使っていくということであれば、時系列の比較可能な形を必ず考えていかないと、その時、その時によってワーディングが変わってみたり、あるいはクエスチョネアーの順番が変わってみたりというのは好ましくないと思います。これは評価とはまた別かもしれませんが、そこについては慎重な配慮を、今後していく必要があるのではないかと思います。これはお願いです。
 もう1つは、能力開発で公的職業訓練の受講者数が思ったよりも少ない。その要因として、都道府県への委託訓練の受講者が大きな原因になっていると、ここまではっきりしているわけです。要は国のほうは能力開発機構を中心に、かなりの実績が上がっているのにもかかわらず、それがうまくいかないことについてどう評価していくのか。あるいは数値が今は全部合わせた数値になっているわけですが、これを分解していくなりすることが必要ではないか。主体が県に移行することによって、そういう問題が起こっている。過渡期であるためにそうであるのだったら致し方ない面もありますが、それが今後も続くとなったときに、地方分権の在り方についても、考えていかなければならない面が出てくる可能性があると思います。

○清家部会長 では桑田審議官、どうぞ。

○桑田大臣官房審議官 調査の設計については非常に貴重なご示唆だと思いますので、十分心して考えていきたいと思います。2点目も極めて重要なご指摘で、時間が押していますけれども、重要なご指摘ですので丁寧に説明させていただきたいと思います。おっしゃるとおり公共職業訓練、例えば離職者訓練22万が数字的にも全然達成されていないということですが、いま樋口委員からご示唆があったように、それをいくつかのカテゴリーに分けて分析するとどうかということで申し上げると、カテゴリーというのは、おっしゃったように国・地方の役割分担という観点から国・都道府県という整理、もう1つの軸としては官民の役割分担ということから、公的な直営と民間委託という2つの軸でやると、4つのマトリックスができるわけです。そのマトリックスの数字に着目すると、要は都道府県の委託訓練という箱が低い。つまり全体計画が22万人で実績が16万5,307人ですから、差引きすると5万4,693人足りないということですが、いまの都道府県の委託訓練という箱だけに着目すると、計画が14万1,226人に対して実績が8万3,831人で5万7,395人足りない。いわばここが独り負けというか、そこが足を引っ張っている。逆にほかの箱は大体達成している状況が、まずわかります。
 そうした上で、なぜそうなのかと考えてみると、ここにも書いていますが、これまで機構がやっていた委託訓練を、21年度から段階的に都道府県に移すことを現にやってきています。その結果、確かに都道府県が担うべき対象者が大幅に増加し、都道府県の実施体制の整備がなかなか進んでないところは、我々も率直に受け止めざるを得ないと思っています。そういったことから1つの対応方法としては、23年度の予算上の委託費の措置ですが、その中で人件費分を上積みしてあります。その結果、都道府県もそれだけ充実した体制を整えていただくということと、その中で特に都道府県にも巡回支援指導員ということで、それぞれ事業所を回る指導員の方も充実していただくことによって、よりきめ細かな対応をしていただくことをお願いしています。
 それが1つですが、それだけではなく、それ以外に地域ごとにニーズに合った人材育成をしないと、結局、就職できないことになります。そういったことから考えると、1つは地域訓練協議会で地域ごとに訓練計画を議論していただきますから、その中で地域のニーズをきちっと汲み取る。あるいは、より実務者レベルできちっとワーキングをやる。
 もう1つ重要なのは、都道府県一括の離職者訓練の委託訓練は、就職率が59%ぐらいです。ただ、それは都道府県によってかなりばらつきがあります。高い所は7割ぐらいの所があります。低い所では5割に満たない所があります。そういったことから我々としては、特に就職率がよくない所について、これも各都道府県なりに努力していただいているとは思いますが、我々も一緒に協力して都道府県ごとの特によくない所の状況をきちっと分析し、都道府県ごとに何をやったらいいか、お互いに知恵出しすることで少しでも引き上げたい。いずれにしても、今後、都道府県の委託訓練のウエイトがどんどん増えていき、ここが要になると思っていますので、いまのようなことで進めていきたいと思っています。

○清家部会長 お待たせしました田中委員、どうぞ。

○田中委員 8頁の評価の案については、私はこのとおりだと思っていますが、いま話題になっている自己啓発のところについて、まさに「目標と実績の乖離が大きいことから、その要因を分析すると共に、必要に応じて施策や目標の在り方について検討すべきである」という表現になっていますが、この部分にだけ初めて出てくる表現です。1年目で非常に目立った項目なので、評価はこれでよろしいかと思いますが、2年目以降、1年、2年と一生懸命やってきたけれども、ほかの項目でも同じように目標と実績の乖離が広がっている、または目標に達しないとなった場合に、この表現を使っていかざるを得なくなるのではないかというのが、私の懸念です。この辺の表現は、点検評価部会としての今後の課題ということで認識させていただきたいと思っています。

○清家部会長 わかりました。それは、そのような認識でよろしいですか。

○酒光労働政策担当参事官 まさに、そういったことも含めて、この点検評価部会でご議論いただくということだと思いますので、今後の課題というふうにさせていただければと思います。

○清家部会長 それでは恐縮ですが、次にディーセント・ワークについてご説明いただき、それから今日は実はもう1つ、2011年度目標の設定という議題があります。これを今からの残りの時間で行うことになりますので、ご協力をよろしくお願いいたします。

○酒光労働政策担当参事官 それではディーセント・ワークについて説明し、ついでみたいな感じになって申し訳ないですが、資料6についても簡単にご説明します。ディーセント・ワークにつきましてはいくつかの指標がありますが、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は趨勢的に減少してきたところではありますけれども、2010年は前年比で増加になりました。目標は前年と同じ水準になっていましたので、前年より増えたということになります。
 増加の要因ですが、2009年の労働時間が大変短かったことの反動増が考えられます。もともと労働時間という面では、生産が増えると長くなる傾向があることが反映したものだろうと考えられます。
 労働災害ですが、労働災害も趨勢的に減少していて、2008年に比べると2010年は9.7%減少しているわけですが、2009~2010年だけ見ると1.9%増となっています。2009年は景気の影響もあって、労災の発生件数がかなり減少したことの反動の増加と考えられます。
 さらに業種の分析をしますと、従来から多かった製造業、建設業は減少しているわけですが、その反面、小売や社会福祉・介護といった第3次産業が増加しているということで、こういった事業所での安全衛生管理が、まだまだ足りない面があるのではないかと考えています。
 「メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合」及び「受動喫煙のない職場の実現」については、ここだけやや定性的な目標で、それぞれ対策について検討を行って労政審で議論することになっていました。これについては労政審の議論を踏まえ、実際に厚労大臣に対して建議が行われたということです。このほか年次有給休暇の取得率も目標として設定されていますが、これはまだ数字が出ていません。
 以上まとめとして、労働時間及び労働災害の発生件数については、景気回復により増加する傾向が見られるという面はあるのですが、目標達成に向けて引き続きの努力が必要だと考えています。また、業種別の動向など景気以外の要因についても分析を進め、対策を実施していく必要があると考えます。
 時間の関係もありますので、資料6も併せてご説明します。資料6は2011年度の目標です。表としては各項目と2010年度の年度目標、2010年度の実績、ここは先ほどの資料3の数字と基本的に同じですが、それと2011年度の目標です。それぞれの分科会で議論していて、今後の景気の動向、あるいは予算、施策といったものの変化を踏まえて目標を立てたところですが、個別の目標についてはご説明しません。項目については概ね2010年度から踏襲していますが、変わったところだけ申し上げると、若者のところについては、「学卒ジョブサポーターによる支援」と「新卒応援ハローワーク」の利用者数について、新たに目標を設定しています。
 2頁で障害者雇用の関係です。障害者雇用分科会においては、障害者の就職率を目標にしていたのですが、これを就職件数に改めたのと、精神障害者に対する対策としてトータルサポーターの相談支援による成果目標を、目標として新たに設定しているところです。以上、時間の関係で併せてご説明をいたしました。

○清家部会長 ありがとうございました。ただいまの報告書の最後の部分、すなわちディーセント・ワークの部分と、2011年度の目標設定についての部分と併せてご議論いただきたいと思います。山河委員、どうぞ。

○山河委員 ディーセント・ワーク、資料2の8頁ですが、週労働時間60時間以上の雇用者の割合の表記について、まとめも含めて、説明の中では「反動増」という言葉もありましたけれども、景気の影響が第1であるという表現が強く表現されています。資料3の今後の施策といったところを見ると、ここについては「健康障害の防止に向けた取組」という表現もされているわけですので、長時間労働に対する、いわゆる景気だけの影響で上がり下がりではなく、少し定性的な観点からの表記についてもしていく必要があるのではないかと考えています。また、ここのところは先ほど資料4の国民の皆様からのご意見でも、長時間労働については関心が出されているところですので、その辺の中身についてもう少し精査いただければと思います。
 その下の労働災害発生件数ですが、これはこれで趨勢としてはそのとおりですし、中間でも確認させていただきましたけれども、昨年夏の猛暑等の影響があるということで、第3次産業中心に政策もやられているということです。表現的には問題はないのでしょうけれども、気になるのは資料3の24頁で、中ほどの「社会福祉・介護事業対策についても」という表現の中に、「危険予知活動や腰痛対策を含めた」という今後の対策の方針があります。介護事業において腰痛は職業病みたいな位置づけがあり、介護事業にとっては欠かせない労働災害ですので、そういった職業病的なものについては優先的に撲滅させていくといった、強い働きかけの表記なども必要ではないか。そういうことも含めて第3次産業に対する対策の観点では、そういう表記をしていただければと思っているところです。よろしくお願いします。

○清家部会長 わかりました。これは前田総務課長、どうぞ。

○前田労働基準局総務課長 まず週労働時間60時間以上の雇用者割合のところですが、数値自体については、どうしても短期的に景気という要因が一部あったということで、こういった表現になっています。ただ、ご指摘があったように過労死などの健康障害にもかかわる問題ですので、その辺、どういうふうに表記するかは相談させていただきます。
 労働災害発生について、特に社会福祉・介護の関係ですが、これは認可という問題もかかわります。非常に数が最近は増えているということはありますが、認可をしている都道府県とも連携して、特に新しく設立された事業所を対象に個別に指導なども行っています。業種別の動向ということで、そのようなことも含めて書いているのですが、特に8頁辺りに職業病対策の観点も含めて検討させていただきたいと思います。

○清家部会長 山河委員、よろしいですか。

○山河委員 はい。

○清家部会長 では新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 2011年度の目標のほうに入っていいですか。

○清家部会長 どうぞ。

○新谷委員 簡潔に3つ申し上げます。1つは、資料6の1頁の上から4つ目の枠で「学卒ジョブサポーターによる支援」です。これは6月の職業安定分科会で論議させていただいて、数値目標を大幅に引き上げていただき、意欲のある数値目標を作っていただいたと思っています。是非、これの達成に向けてご努力をお願いしたいというのが1点です。
 もう1点は、3頁にある職業能力開発分科会の目標です。これは先ほどの2010年度の実績とも関係するのですが、資料3の17頁です。あとで見ておいていただきたいと思いますが、これの就職率の表記で、委託訓練が62.4%に対して基金訓練が69.2%ということは、誰が、どう見ても基金訓練のほうが上だというふうに見えてしまうのですが、実際は算出の基準が違うはずなのです。資料3の17頁に何も表記がなくて、誰が見てもミスリードしてしまいます。ここは回収率が入っていますから、揃えないと本当にこれだけ独り歩きして、基金訓練はこんなに高くて委託訓練はこんなに低いのかとなります。これは職業能力開発分科会の中でも何回も申し上げたのですが、全然反映されないので、ここは是非注意をしておきたいと思います。もう1つ聞きたいのは、それの関係で2011年度の目標が、基金訓練は半年間ですけれども、69.2%の2010年度実績に対して60%と低いので、これは何だろうというのが1つです。
 最後に、これは要望ですが、目標は分科会別にまとめてありますけれども、分科会のないところの目標設定について検討していただきたい点があります。それは労政行政に対する目標設定です。中央省庁の再編前には労政局があって、労政行政は非常にお金もかけてやっておられたのですが、最近、労政行政は地方にお金も出てきませんし、特に地方の労政行政がかなり傷んでいるのではないかと思っています。それが個別労働紛争の増加する要因になっているのではないか。個別労働紛争の点をどういうのように減らしていくのか。労政行政という立場で例えば労働者教育として、かつて地方でセミナーや相談窓口もやっていたわけですから、その辺の指標をどういうのように立てていくのかを、是非検討していただきたいと思います。以上です。

○清家部会長 それでは宮川課長、どうぞ。

○宮川職業安定局総務課長 まず学卒ジョブサポーターと新卒応援ハローワークについて。職業安定分科会で提出させていただいた際には、学卒ジョブサポーターによる支援の正社員就職者数が3万5,000人、新卒応援ハローワークの正社員就職者数が3万人以上という形で出させていただいたわけです。その数字自身は、ある程度実績をベースにしながら、特別対策でいろいろ問題があるところについて数字を剥がしていった、ある意味、固めの数字を出させていただいたところですが、先ほどありましたように分科会でのご議論を踏まえ、今回お示ししたような形での数字にさせていただきました。かなり高めの数字ではあろうかと思いますが、いろいろ努力したいと思っています。

○清家部会長 桑田審議官、どうぞ。

○桑田大臣官房審議官 基金訓練等の目標の設定の在り方、あるいは計算式の在り方について、確かにおっしゃるとおり、これについては5月の分科会でご議論いただき、そのときにもそういったご議論をいただきました。ただ、そのときには求職者支援訓練の法律ができるか、できないかぐらいのときだったので、求職者支援訓練の目標の計算式あるいは目標値は、そのときにご議論いただくに至らなかったので、そういった意味でここには載っていません。そういうプロセスの関係があります。
 計算式については、就職率の目標値の計算式と公共職業訓練の目標値の計算式が、若干異なっています。それは訓練の特質によるものですが、それを知らずにこれを見ると、おかしいという誤解を招くのは、おっしゃるとおりだと思います。そこで求職者支援訓練の目標についてどう考えたかというと、その後、能開分科会でも6月にご議論いただいたのですが、ここはいま新谷委員がおっしゃったようなことも踏まえ、求職者支援訓練は基礎コースの訓練と、実践力まで一貫して身に付ける2つのコースに分かれますけれども、実践コースのほうについては、求職者支援訓練の実践コースの目標の計算式と、公共職業訓練の目標の計算式と合わせました。そういったことで10月以降は、実践訓練の部分と公共職業訓練の比較は、きちっとできるような比較可能性が確保されました。ちなみに、それの目標値は70%です。
 基礎コースのほうは、逆に他の公共職業訓練の連続受講が有りですので、若干、そこは式は変えています。それで60%という目標を既にご議論いただき、ある意味、内々にセットされていますので、そこは手続上の話ですけれども、今後、こういったところに反映させていくことは十分に相談させていただきながら、やっていきたいと思っています。

○清家部会長 では労政のことについて、お願いします。

○酒光労働政策担当参事官 労政の関係につきましては非常に重要な要素ですし、ある意味、労働政策全体にかかわるお話で、あらゆる労働行政をやっている者が、そういう思いでやっているところでございます。具体的な目標設定をどうするかという話につきましては、特に集団的労使関係の指標というのは、なかなか労使自治の観点もあって目標設定は難しいのですが、いま、ご指摘にあった個別労働紛争関係の指標については既に一部、例えば処理期間の短縮といったものについては、もう1つ別の事業評価のところで今やっていますので、それにつきましては、そういった形で取り組んでいきたいと思っています。

○清家部会長 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 1点、先ほどのご答弁の中で基金訓練の2010年度の実績ですが、2010年度の実績は旧の算式を使っているはずなので回収率がこれは入っていない。ここがミスリードしてしまうところなので、委託訓練62.4%に対して基金訓練69.2%ということは、こっち基金訓練のほうが高いと見えてしまいますから、そこのところを注意して書かないままでいくとミスリードすると思います。

○清家部会長 その辺は、またお願いします。よろしいですか。どうしてもということであればどうぞ。

○坂田委員 資料2のまとめのところで、自己啓発のところと男性の育児休業取得率に関して、目標に対する達成率という意味ではどちらも同じように5割いかないと。大幅に未達であるにもかかわらず、その後の書きぶりが大幅に違う。自己啓発のほうがプライオリティが低いと読めてしまう気もしますので、本当にそれでいいのかということは、きちんと説明なり検討なりがあったほうがいいのではないかと思います。決して男性の育児休業取得のプライオリティが低いと言っているわけではないですが、ちょっとこの不整合が気になるということ。
 もう1つ、書きぶりの問題ですが、自己啓発に関しては企業の支出が横ばいなので結果も横ばいと結び付けています。先ほどの議論の中では、いろいろな要素があるということが明らかになっているわけですから、殊更に企業が出さないからこうだという書きぶりは、ちょっと気になります。同じように週60時間以上働いている人の問題に関して、企業の理解が十分に深まっていなかったという辺りも、少し書き方の問題で、それも要因の1つとしてあるかとは思いますが、あまりそれだけフォーカスされると、企業の代表としてはやや引っ掛かるなと思います。

○清家部会長 その辺は、今日、出ましたご議論を踏まえて、少しバランスの取れるような形に書き直していただいて、また委員の先生方に見ていただき、それでいいかチェックをしていただくということで、よろしいでしょうか。

○酒光労働政策担当参事官 はい、わかりました。強いて言いますと、男性の育休取得率のほうは、制度面ではその後もかなり改善してきています。そういうことを念頭に置きながら書いている面がありますが、自己啓発のほうは対策のほうがそんなに変わっていないということもあるので、こういう書き方になっているということだと思います。いま、おっしゃったことはよくわかりますので検討したいと思います。

○清家部会長 いま、坂田委員が言われたこと、それから先ほど荻野委員が指摘された部分についても、少し書きぶりを変えていただいて委員に見ていただき、あとはお任せいただくという形でよろしいですか。
 皆様、いろいろご予定がある中で時間をオーバーしてしまいまして恐縮です。大変貴重なご意見をたくさんいただけたかと思います。いまも少し申しましたが、資料3の各項目については、委員の皆様からのご指摘を資料3の各項目の点検評価部会委員の意見の欄に記載させていただき、この指摘を踏まえて、いま申しましたように資料2をたたき台として修正するということで、部会としての年度評価としたいと思います。いま申しましたようにその書きぶり等については、また最終原案を事務局から各委員に持ち回りでご覧いただいて、ご了解をいただくことにさせていただきたいと思います。
 今日は時間が押して、ここで終わらざるを得ませんが、各委員におかれましては本日ご指摘の点以外にも、ご意見がたぶんあるかと思いますので、来週の8月10日までに、お盆休みの前までということでしょうか、事務局まで追加でご提出をお願いしたいと思います。それらのご意見も踏まえて私と事務局で相談して、年度評価として取りまとめたいと思いますが、作った段階のものを、先ほど言いましたように皆様にご覧いただきたいということです。また取りまとめました年度評価につきましては、事務局のほうで労働政策審議会の本審あるいは関連する分科会にご報告いただいて、今後の施策実施のために活用いただくとともに、厚生労働省のホームページに掲載して、広く一般の方々からの意見を募集していきたいと思っています。またこの指標については、今日いただいたご意見も踏まえて、最終的には各分科会のほうでお決めいただくということで、よろしいでしょうか。2011年度の目標ですね。

○酒光労働政策担当参事官 2011年度の目標は、概ねすべての分科会でご議論いただいています。

○清家部会長 わかりました。それでは、そういうことで取りまとめさせていただきたいと思います。時間を10分ほどオーバーしてしまいましたが、よろしくお願いいたします。最後に本日の会議に関する議事録について、労働政策審議会運営規程第6条により、部会長のほか2名の委員に署名をいただくこととなっています。つきましては労働者委員の北田委員、使用者委員の小谷野委員、お二人に署名委員になっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。本日はお暑い中、また長時間にわたってありがとうございました。議事は以上で終了いたします。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付労働政策担当参事官室
総務係(内線7717)

代表番号: 03(5253)1111

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(点検評価部会)> 第3回労働政策審議会点検評価部会議事録

ページの先頭へ戻る