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2011年7月5日 第4回国立病院・労災病院等の在り方を考える検討会議事録

医政局国立病院課国立病院機構管理室

○日時

平成23年7月5日 17:00~19:00


○場所

中央労働委員会講堂 労働委員会会館7階


○議題

1 国立病院機構と労働者健康福祉機構の業務の在り方について
2 その他

○議事

○相川座長 ただいまから「第4回国立病院・労災病院等の在り方を考える検討会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、またお暑い中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日は、岩村委員がご欠席、また、渡辺委員から先ほどご連絡がありまして、急遽欠席ということになりました。また、工藤委員が遅れて参加ということになっています。
 本日の議題は、お手元の議事次第にあるとおりです。1として「国立病院機構と労働者健康福祉機構の業務の在り方」、2として「その他」となっていますので、これについてご審議をいただきたいと思います。まずは事務局から資料の説明ですが、先般から宿題として委員の方々から要請のありましたデータも含めて資料ができていますので、資料の説明をお願いします。
○宇口国立病院機構管理室長 それでは、国立病院機構の資料1から説明をさせていただきます。1頁です。前回もお示ししましたとおり、国立病院機構の運営費交付金ですが、初年度、平成16年度の520億円から平成23年度は362億円まで、右肩下がりの減少という傾向で推移しています。それから、過去債務、国の機関の退職金、共済のブルーの部分についても、この状況です。それから、病院に投下される赤の部分ですが、初年度の77億円から平成23年度では43億円ということで、おおむね半減という状況です。
 続きまして、2頁です。ここも先般ご説明したとおりです。平成16年度の初年度こそ総収支でマイナス16億円でしたが、その後ずっと黒字基調、右肩上がりで黒字を増やしているという状況です。2頁の上のところで平成21年度までの状況をご報告していますが、6月30日に本省も国立病院機構から決算説明を受けていまして、平成22年度決算において495億円の黒字であり、赤字病院、黒字病院の数も黒字123、赤字20と聞いています。そういう状況のご報告をさせていただきます。
 3頁です。先般もお話した中の政策医療の代表例ですが、重心と筋ジスについての若干の説明の補足ペーパーです。いちばん上にありますように、重心、筋ジスについては、医療の点数だけではなく、児童福祉法に基づく給付、措置費等があります。背景のところで、いまの状況ですが、医師・看護師の確保に苦慮していまして、国立病院機構の医師のピークも35~39歳というところですが、重心に至っては、いま50~54歳、筋ジスでも40~49歳というところです。看護師についても確保が非常に喫緊の課題です。取組ですが、医師の場合では初期の研修において重心、筋ジスのプログラムの中に組み入れたような研修を実施する。看護師の場合においても、それらの研修領域において入れ込む。それから、ブロックにおける人事交流での対応等々をさせていただいているところです。
 4頁です。前回、青森病院の結核で経営的な話をさせていただきましたが、今回は、重心と筋ジスについて資料で追加させていただいています。石川病院の例ですが、重心40床について平成19年度においても39.6%という病床利用率と。しかしながら、ピンクのところですが、医療の点数ということになりますと、相当長期の患者さんばかりですので赤字は否めないというところです。それで、ピンクとグリーンの間の白いところに措置費がありまして、現在においては、冒頭お話したように、措置費というものをいただいている関係で、グリーンのところのトータルで、単体でも黒字になるという状況です。
 平成19年度においては、重心の6,500万円の黒字が病院全体で9,500万円の赤字ということですので、上にありますように、200床近い石川病院の一般ベッド自体が赤字であったと。ところが、平成20年度においては、9,400万円の重心の黒字と足せば病院全体で1,200万円の黒字になり、最終的に、平成21年度には、重心の1億2,900万円に対して一般病棟でも7,000万円ぐらいの黒字を出しているので、トータル1億9,100万円の利益という状況になり、一般病棟のほうもどんどん経営改善が進んでいるという状況です。
 5頁です。今度は旭川医療センターでの筋ジスの例です。先ほどと同じように、病床利用率はほとんど満杯に近い状況です。それから、ピンクの部分については、やはり患者さんが長期ですから赤字は否めないと。それから、グリーンとピンクの間の、今度は介護サービス費という名目ですが、それをオンされていますので、トータル、グリーンのところでは黒ですよと。しかしながら、これも先ほどと同じように、平成19年度においては5,300万円の黒字が、病院トータルで4,500万円ということですから、一般ベッドのほうで1,000万円ぐらい食っている勘定になります。平成21年度においては、6,200万円に対して病院全体は9,400万円ということですから、病院の一般ベッドのほうも黒字を出しているという状況に推移しているというご報告です。
 6頁です。新谷先生からもありましたが、個別病院の説明が足りずに、今回付け加えさせていただいています。国立病院機構の全病院のベッド数と病院特性を一表にして配らせていただいています。いま机上配付しましたものは、ここではお示しできませんでしたが、カテゴリー別でも表を作ったらどうかというご指摘を踏まえて作らせていただいて、今日配付させていただきました。それが10頁まで続いています。
 11頁です。相川座長から、国立病院機構の病院群における労災比率ということでしたので、11頁、12頁で、国立病院機構の労災状況を入院、外来で示させていただいています。個別で見ますと、村山医療センターは、国立病院機構が誇る整形のメッカです。せき損センターを持っていまして、3.88%という労災病院並みの率は出しているところです。立川の災害医療センターも1.43%ということです。個別に見れば、近畿中央胸部のじん肺の部分で2.27%というのがありますが、トータル0.51、0.53%ということで、労災病院のオールアベレージから比べると、ちょっとゼロが違う率になってしまうのかなという状況です。
○秋月課長補佐 続きまして、13頁です。前々回の検討会において、機構全体で共通して使っているシステムがあるのかというご照会がありましたので、「HOSPnet」という総合情報ネットワークシステムをご紹介させていただいています。こちらは、国立病院機構で、機構本部、ブロック事務所、病院、厚労省、ハンセン病療養所を専用線でつないでいるものです。これを用いまして、財務・会計システム、人事・給与システム等の業務支援システムのほか、以前にもご紹介させていただきました医療安全情報システム、診療情報データシステムといったものが稼働しています。
 14頁です。これは、ご参考までに、現在のシステムの導入状況ということで、電子カルテ、オーダリングシステム、部門システム、医事会計システムといったものがそれぞれの病院でどの程度導入されているかということをお示ししています。それが16頁までありまして、16頁の右下に、国立病院機構での合計数を示しています。
 17頁です。国立病院機構の業務については、これまでもいろいろご紹介させていただきましたが、(1)にありますように、国立病院機構では政府が企画立案した医療政策の実施主体としての役割を果たしているということが挙げられると思います。 (2)ですが、昔の話ではありますが、例えば結核が「国民病」であった当時、結核患者の治療等を一手に担ってきたのも国立療養所であったということ。それから、(3)ですが、医療観察法に基づく「指定入院医療機関」についても、当初は国立病院機構の病院が中心でした。これは、左下のグラフを見ていただくとわかりますように、平成17年、制度創設当時は、国立病院、これは国立精神・神経医療研究センターを含んだ値であるのですが、その占める割合が100%ということで、その後、2年経ってから自治体病院が加わりました。このように、医療観察制度の導入・推進に当たり、国立病院機構が果たしてきた役割は大きいのではないかと考えています。
 18頁です。災害や新型インフルエンザなどの健康危機に対する対応については、これまでも東日本大震災をはじめご紹介させていただいていますが、もう1点追加をさせていただきたいと思っています。それが、例に示してありますとおり、東日本大震災における福島県の放射線スクリーニング班の派遣です。これは、原発事故の発生後に住民の間で放射線に対する不安が高まりまして、そのスクリーニング検査へのニーズが非常に多くありました。左下にありますように、福島県から首相官邸、厚労省を通じて国立病院機構に依頼がありまして、他団体に先駆けて迅速に派遣をさせていただきました。これは、右下のグラフを見ていただくとわかりますように、3月15日、これは水素爆発が起こった直後だったのですが、そのときに国立病院機構から7チーム、全体に占める割合でいうと64%ということで、その後も16日、17日は6チーム、割合で43%、35%ということで、大きな割合を占めておりました。
 19頁です。医師の育成についても臨床研修を通じて取り組んでいます。その特徴に関しては、緑の枠に記載してありますとおり、重心、筋ジス、結核などのセーフティネット領域、144病院のネットワークを活用した施設間の共同プログラムといったものが特徴として挙げられるかと思います。そして、青枠のところですが、初期臨床研修、現在144病院のうち53病院が基幹型、116病院が協力型として指定されています。また、専修医制度についても、各専門診療科において数多くの施設がありますので、各お医者さんのキャリアプランをもとに施設の選択が可能になっています。平成21年度に受け入れた研修医数が714名、平成21年度に受け入れた専修医数が802名ということで、これらの数については平成22年度もほぼ横ばいということになっています。
 20頁です。地域医療の貢献ということで、これは以前にもご紹介させていただいたのですが、地域医療支援病院については現在45病院が認定されています。また、(2)医療計画の策定等へも積極的に関与しているところです。(3)医師・看護師の地域偏在の改善への貢献についてですが、?については新しい情報がありましたので、説明させていただきます。地域の公的病院等に継続的に医師・看護師を派遣という点についてですが、延べ232の機構病院から延べ831の自治体病院、診療所、公的病院、民間病院といったところに対して、平成22年度実績で延べ2万5,026人・日の医師を派遣しています。それから、長崎医療センターについては、離島での医師確保というところが課題になっていますので、長崎県の島嶼部への病院へ一定期間の医師・看護師を派遣しています。あとは、国立ハンセン病療養所への派遣、国立病院機構内の医師・看護師不足地域への派遣を実施しています。
 21頁です。政策課題克服に資する研究の強化ということで、緑の四角の中にその意義をお示ししています。1つ目が、基盤整備を含む大規模な資金投下が必要な研究、そして、政策的課題を克服すべく、国立病院機構での実施が効率的かつ効果的な研究、さらに、数多くの症例数を基に大規模かつ継続的に実施する研究、こうしたものが挙げられるかと思います。下の青い枠にその事例をいくつかご紹介させていただいています。1つ目が、EBM推進のための大規模臨床研究事業ということで、その一例として、Clostridium difficileという感染症による下痢症の発生状況と発生予防に関する研究を記載させていただいています。
 あと、健康危機発生時のワクチン政策の決定に寄与ということで、新型インフルエンザが流行した際に、国内でその新型インフルエンザワクチンの接種に向けた有効性・安全性に関する臨床試験、これは2万人規模ですが、それを迅速に実施しました。そして、医師主導治験については、新型インフルエンザも含まれるのですが、季節性のインフルエンザワクチンの小児臨床試験、それから、パーキンソン病に合併する精神症状に対する治療の有用性に関する比較試験を行っています。最後に、臨床評価指標の作成ということで、これは機構が独自に取り組んできた課題でもありますが、厚生労働省の「医療の質の評価・公表等推進事業」にも参加しまして、指標の作成、算出結果の公表、さらに計測マニュアル等も併せてホームページで公開をしています。
 22頁です。これは前々回の検討会のときにも同じものをお示ししていますが、治験等の実績ということで、ご参考までにお示ししました。
○宇口国立病院機構管理室長 最後の23頁からは、国立病院機構の当面の課題ということです。再度おさらいになると思いますが、(1)のところで、公経済負担と過去債務のあり方、公務員共済をめぐる退職OBの積立金不足や基礎年金2分の1の公経済負担と言っている部分の負担のあり方については、今後とも財務省当局と調整していく必要があるということです。それから、(2)の運営費交付金ですが、これも、もはや平成23年度の運営費交付金の診療における部分というのは災害の備蓄という2億円だけになっているということでして、日本最大の公的最大手でセーフティネットを担っている国立病院機構にとってそういう状態が本当にいいのかどうかと。運営費交付金というのはどういうものに対して付けていただくお金なのでしょうかという議論も、併せて財務省とやっていかないと駄目かなと思っています。
 (3)ですが、国立病院機構は財投ということで整備に莫大な金を借りていまして、まだ5,000億円強の借金が残っている状況です。経営的にも弱者の政策医療を進めなければいけないというのがミッションでありますが、経営的に黒字を続けなければ病院全体が動きませんので、たちまち立ち往生になってきます。ですから、今後も、現場の取組としましては、費用の節減、経営効率を高めるということで黒字基調を続けていかないといけないという状況です。
 (4)(5)ですが、昨年、国立病院機構に対する事業仕分け上におけるペナルティというかジャッジというかは、なかなか厳しいものがありました。誤解の部分も若干あるのではないかと思っているのですが、これらの投資計画がなっていないなどという部分をどうやって払拭していくかという部分や、非公務員化に向けて、これも非公務員化だけというのはたやすいですが、冒頭から言っていますとおり、国家公務員共済をめぐる取扱いを決着しないまま非公務員化ということもできませんので、そういった国立病院機構内の課題を早急に整理し、解決していく必要があるということです。
○相川座長 次は労働者健康福祉機構の業務の在り方について説明していただくのですが、質問や議論に関しては、その説明が終わってからにしたいと思います。今回は国立病院あるいは労災病院を単独に検討するというよりは、それらを大きな目で見て、どのような連携が必要か、どのようにしていくかといったことも含めて検討していきたいので、引き続き資料2の説明をお願いいたします。
○木暮労災管理課長 資料2は「労働者健康福祉機構の業務の在り方」です。1頁ですが、前回説明した労災病院が提供すべき政策的医療の5つの柱に沿って課題などを説明したいと思います。2頁の「労災疾病に係る調査研究」は、労災病院グループにおいては、研究のみに携わっている医者はおらず、基本的には診療しながら時間外その他を活用して研究しているということです。また、研究の内容は、まさに臨床研究であり、例えば大学の医学部でやるような動物実験などは行っていないということです。「労災疾病に係る調査研究」は前回説明したように、労災そのもの、特に怪我の関係は減少傾向ですが、職業性疾病については低下の状況にはありませんし、一方で作業関連疾患の問題、あるいは定期健康診断結果の有所見率の上昇といった健康問題を含め、労働者の健康を取り巻く状況は依然として課題が多い状況です。
 このような中にあって労災病院グループとしては、真ん中の「調査研究の対象」の?にあるように、いわゆる従来型の労働災害である振動病、騒音性難聴などの類の話と、?にある社会問題化している新しい問題としてメンタルヘルス、アスベスト等、大きく2つの分野について研究を行っております。その下にある「課題等」は、いま行っている研究をどのように見るかということで、研究課題について優先度、重要度が明確になっているかどうか、あるいは研究分野間で参加する病院や人数が違っていますが、このような活用程度の差をどのように考えるべきか。また、診療業務と兼務する形で100人、予算8億円の研究を行っておりますが、これで十分かどうか、このような課題があると思っております。
 3頁は「今後強化すべき取組例」を若干まとめておりますが、記載のアスベスト、メンタルヘルス、過労死などの重要な分野については、やはり大きな山として研究をしていくべきではないかという問題意識を持っております。一方、いわゆる従来型の労災疾病については、労災病院グループ以外に研究を担う機関がない、あるいは後継者もなかなかいないという中で、労災病院グループがその研究をきちんと承継していく人をつくりながら、その火を絶やさないようにしていくという相反する2つの課題を持っているわけです。
 こういった重要と思われる研究分野のうち、右から2つ目の「治療と就労の両立支援」ですが、例えばがんの治療と就労をどのように両立支援していくか、いわゆる狭い意味での労災疾病以外の課題についても、既に労働者健康福祉機構は長年にわたって取り組んできた実績があり、このような分野についても効果的な取組をしていく必要があると考えております。
 したがって、特に治療と就労の両立支援については、他の公的病院や民間病院も含めた幅広なネットワークを使って研究していくという方向性も1つあろうかと思っております。一方で、先ほど述べたような従来型の労災疾病については、労災病院グループの中の然るべき拠点でやっていく、このようなことではないかと思っております。研究体制の強化についても課題があると考えております。
 4頁は、労災病院の行っている医療の1つの特徴であるリハビリテーション、早期職場復帰に向けた医療の関係です。労災医療の特徴として、職場復帰を目指すということを何十年もやってきましたが、平成も10年代になると、さまざまな診療報酬の改定が行われたことや、労災病院グループが独立行政法人になって国の予算も減り、黒字経営を目指すことを厳しく求められたという2つの状況から、私どもとしては労災病院群のリハビリテーション機能が低下してきているのではないかという懸念を持っているところです。特に、リハビリテーションの場合はチームによるリハが必要となり、多くの人員を配置しても、それが必ずしも診療報酬で診られないとなると、赤字になりがちです。一方、労災病院群は急速に急性期病院化しており、在院日数も14.何日となってきておりまして、この辺を今後どのように考えていくかという問題があると思います。また、先ほど言ったような労災疾病以外についても、職場復帰をにらんで治療していくという取組について、どう進めていくかが課題になっております。
 5頁は被災労働者の早期職場復帰、あるいは被災労働者に限らず、病気の方の職場復帰を目指した治療、診療といったものを労災病院グループが担う政策的医療の1つと考えていただき、診療報酬の如何にかかわらず、重点として実施していくという考え方も1つあるのではないかということです。これは経営との関係で難しい問題も多いですが、1つの政策的な考え方としてはあり得ると思っております。リハビリ機能の強化、メディカルソーシャルワーカーなどチームによるリハビリテーションも推進していただきたいと思っておりますし、産業医等との連携によって、より効果的なリハビリテーションを行っていただきたいと思っております。
 6頁は「メンタルヘルス、過労死予防など産業保健の実践」の関係です。労働者のストレスは非常に大きな問題になっており、労災認定件数も増えているわけですが、4つ目の○にあるように、産業医を選任しなければいけない50人以上の事業所においても、選任率は75%という現状があります。また、産業医ならば、すべてメンタルヘルス対策ができるかと言うと、必ずしもそうではなく、地域的、質的なミスマッチ、不足の問題があると認識しております。労災病院グループにおいては、従来から予防医療活動として9カ所の予防医療センターを設けて活動してきたわけですが、これを時代背景に合わせてどのように組み立ててやっていくか、ニーズに応えていくかが課題の1つと認識しているところです。
 7頁は労災病院グループのメンタルヘルス対策です。いままでの労災の中心は整形外科や、じん肺・アスベストを中心とした呼吸器といった分野であり、そういったものについては幅広いネットワークを持っておりますが、メンタルヘルス分野について、すべての労災病院が強いかと言うと、必ずしもそうではないということがあります。したがって、このような分野についてある程度強化していく取組をやっていただきたいと考えておりますし、また、その中で現在実施しているさまざまな産業保健活動についても充実させていただきたいと考えております。
 8頁は、労災の業務上外の決定におけるエビデンスの提供です。必ずしも労災病院グループだけというわけではありませんが、最近労災認定を巡る裁判として、労災認定の裁判はもとより、民事訴訟の裁判も非常に増えております。そのような中、非常に専門的な意見が求められる場面もあるわけですが、人材が全国的に必ずしも十分でないという問題があると認識しておりまして、私どもとしては、労災病院グループに専門的な人材の育成確保をお願いしたいと考えているところです。
 9頁は、特に需要のある分野です。精神疾患、脳・心、アスベストといった分野の専門医についてはきちんと育成していただき、専門的、中立的、第三者的な立場でエビデンスを示すという役割を果たしていただきたいということです。一方、労災病院の設置場所が特に太平洋側に偏っているという問題があります。労災病院が存在しない地域において、さまざまなエビデンスの提供が十分行われないというのでは問題ですので、例えばブロック別なり、県別に担当の労災病院を指定して、全国一律にある程度のサービスを提供できるようにならないかと思っております。
 10頁は「研究成果の普及・研修」の関係です。現在、労災疾病に係るモデル医療などについては、ホームページや症例検討会により普及に努めていただいておりますが、そもそも情報発信力が十分かどうかということもありますし、特に全国に均てん化しているかということが1つの課題になっていると認識しております。例えば、現在アスベストについては、確実な救済を求めるために、労災保険法だけでなく、石綿救済法という特別な法律を設けてやっておりますが、医療機関がアスベスト由来であることを患者さんにきちんと伝えなかったりすることから、労災申請になかなか至らない、あるいは時効を過ぎてから気付くといったケースが生じております。
 また、従来型の労災には振動障害がありますが、従来は林業で多く発生したため、労災病院グループの米子、愛媛といった所で対応しておりましたが、最近の振動障害の現状を見ると、建設業の機械で発生するものが多いことから、むしろ都会で対応しなければいけないという課題があるわけです。ただ、建設業に従事している方が振動障害になることが、多くの医療機関に知られるまでに至っていないということがあって、一種の空白のようなものがあると認識しております。労災の考え方は行政の裏表として、全国一律にきちんと救っていくということがありますので、労災病院がない地域についても対応していただくようお願いできないかという考え方があります。また、福島第一原発への医師派遣が8月分まで決まりましたので、12頁に参考資料として付けております。
 14頁は経営の関係の現状と問題点です。前回説明いたしましたので、現状と問題点だけを羅列してあります。労災病院グループにおいては単年度収支の収益力が脆弱でして、平成22年度にようやく単年度黒字となりましたが、赤字病院のほうが多く、収益力が非常に脆弱である中、多額の繰越欠損金があるということです。また、前回の検討会で渡辺委員が指摘されたのですが、厚生年金基金の運営についても将来的な課題があり得るということです。病院運営については無借金ですが、建設・設備投資は中長期的な在り方についてどう考えていくかという問題があると思っております。
 このような課題に対応していく中にあって、黒字経営を確立していくことが重要でして、収入対策として7対1看護という上位基準を取っていくとか、支出対策としては後発医薬品の問題、その他いろいろありますが、いずれにしても地域医療と政策医療のバランスを考えながらやらなければいけない難しさを抱えているということです。こうした中、閣議決定事項である平成28年度までに繰越欠損金を解消するという課題があります。その他給与、退職金、国費に依存しない経営体制、中長期的な投資の在り方といった課題があります。
 15頁は厚生年金基金の概要が書いてありますが、労働関係法人の厚生年金基金という形で、労働関係の独立行政法人その他26団体が加入している基金です。概念図にあるように、基本部分5.5%、加算部分4.75%で設計されております。予定利率にある年金資産運用の期待収益率は2.5%ですが、これについては必ずしも2.5%は回らず、サブプライムローン破綻の影響として特別損失を計上しているという現状があります。
 16頁は「労災病院のガバナンス」の関係です。独立行政法人労働者健康福祉機構という団体としては、労災病院事業が9割方を占めますが、未払賃金立替払事業をはじめとして、労働施策を実施しております。このような労働施策については、国からもらった予算を執行するため、必ずしも収入が見込めるわけではないので、病院事業と運営手法の考え方は全く異なる形で行っております。これを1つの法人でやっているということで、財務諸表上も病院事業の経営内容が見えにくいという現状があります。
 また、労災病院グループについては、本部人件費、労災看護学校の運営などのグループ共通経費を運営費交付金の形で措置しております。こうした現状を踏まえて、今後病院事業について、よりわかりやすく、透明化を図った経営管理にしていく必要があるのではないかということです。一方、間接部門については経費を削減していき、むしろ研究あるいは教育普及といった政策的なものに、国の予算を投下していくという構造転換を図っていく必要があるということです。また、そうした中でも政策医療、経営改革を推進するため、本部と病院はどのような役割分担を持ってやるかということも、経営の在り方として考えていく必要があると考えております。
 17頁以下は前回の宿題です。まず、労災と一般患者の医療損益の比較ですが、これについては岩見沢の北海道中央労災病院と、美唄の北海道中央労災病院せき損センターの例を書いております。入院だけ取り出して岩見沢の例を申し上げますと、労災医療については赤字であり、これを一般医療の黒字で埋めております。19頁には最新の労災患者数の推移が出ております。前回、労災患者の割合と経営の赤字・黒字は必ずしもリンクしていないのではないかという話がありまして、香川労災病院の例が引き合いに出されたわけです。右側に香川労災病院の平成22年度の労災患者の比率が11.4%とあって、確かに高いのですが、内訳をご覧いただくと、香川労災病院における入院患者に占める労災比率は2.2%で、必ずしも高くはないのです。
 前回以来ご説明しているように、労災患者の場合は入院日数が長くなることによって赤字になっているので、入院患者の中で労災患者が占める割合がどれだけ高いかということが赤字にかなり利いている、そのようなことが1つ言えると思っております。また、なぜ香川だけ突出して高いのか、これについてはいろいろと調べている最中ではありますが、地域の他の病院の配置等の関係があるのではないか。丸亀監督署や観音寺監督署の管内の他の病院に、対応できる病院がなかなかないという現状があると聞いているところです。
 20頁は、労災病院グループは重心、筋ジスなどについてどのような取組をしているかということですが、そのような分野は基本的に全く対応しておらず、国立病院機構と状況を並べた表にしております。
 資料3はこれまでの主な議論で、第1回から第3回までの議論について整理したものです。実際にいただいたさまざまなご発言の中に質問的なものもありましたので、まとめ方に若干苦慮いたしましたが、これだけ抜き出しております。まず、国立病院・労災病院共通のものとしては、財務状況のほか、患者や病院の視点等も入れて総合的に考えるべきであるという指摘がありました。また、医療は政策医療だけでは成り立たず、一般医療が政策医療を下支えする形で全体として機能しているという指摘もありました。また、個別病院はともかく、両機構のネットワークの統合は、両者の機能を十分認識した上でないと議論できないという指摘がありました。また、ヒアリングや現地視察も行うべきといった指摘もありました。
 2頁の国立病院については、先ほど言ったような公経済負担、整理資源の問題についての指摘がありました。また、国立病院機構として、災害対策などさまざまな大きな役割を果たしているところですが、その経費をすべて自己財源に措置した場合の負担は大きいのではないかという指摘もありました。また、病院ということを考えると、地域の医療との関係と切り離しては議論できないということもありました。また、民営化するか独法に止まるかという問題がありましたが、これは国立病院機構のミッションをどう考えるかという問題であり、現在は独法の仕組みの下で国の要請等に応じて機動的に動けていることを含め、全体的に考えるべきであるということでした。
 労災病院については、何と言っても累積欠損金をすべて解消するために、相当の努力が必要であり、ここについてはよく検討すべきであるということでした。また、労災病院の患者の95%を占める一般患者についても政策医療、政策的な取組をしているが、その取組をどのように位置づけるのかという指摘もありました。それから3番目は、労災病院ごとの患者比率の問題、行政参画する労災病院の医師数をもう少し高めるべきではないかという指摘もありました。
○宇口国立病院機構管理室長 あと1点、机上配付の「人件費率の比較」という2枚紙は、先般、高橋先生からの宿題です。1頁で国立病院と労災病院の人件費率を、平成16年度から22年度まで示しております。国立病院機構を申し上げますと、平成16年度の医業収益6,826億円に対して、平成22年度は8,152億円まで高めております。職員数は4万6,000人でスタートしておりますが、現在は5万1,000人を超えており、5,000人近い人員増があって人件費は真水で増えております。しかし、それを上回る医業収益があることから、53.8%という人件費率が平成20年度には50.7%と、人件費率的には好転しております。労災病院についても仕組みは同じで、同様のことが起こっております。
 次頁はラスパイレスということで、独立行政法人全体にかけられている、国家公務員の人事院の給与表との比較です。これは公表ベースの資料ですので、平成22年度は6月30日に既に公表しております。国立病院は厚生労働省直営店からの独法化ですので、人事院の俸給表に基づいた職員がすべてでした。医師については確保手当等々がありますので、現在は人事院の医療職(一)よりも高い所にあります。ただ、看護・事務・技能職についてはスタートが100でしたから、年功序列になっている一般職の給与カーブについては初年度から是正したので、現在は100を下回る水準となっております。
 一方、労災病院については、ご承知のとおり、独法改革第2弾として特殊法人から独法化したグループですので、民間時代の給与がスタートにならざるを得ません。そのため全然状況は違いますが、ラスパイレスということでかぶせてしまうと、医師については国病と同じような水準ではないかと思いますが、ナース、事務、技能については高い所に出てしまうという状況です。状況のみ資料で説明いたしました。
○相川座長 ただいま事務局より説明がありましたが、説明や資料を踏まえつつ、皆様からのご意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
○夏目委員 いくつかあるのですが、まず国立病院について2点ほど質問いたします。第1点は18頁で、例の震災における国立病院機構の努力についてですが、大変リスクの大きい仕事を一生懸命されていることに敬意を表します。ただ、「即座に対応可能な」と赤字にしてあって、これは国立病院機構だからこそできるのだ、やれるのだというニュアンスがあるのだろうと思いますが、言ってみれば、一定の取り決めをある一定の機関、そうしたことができる能力のある機関と事前にしておけば、緊急事態ですから政府としては国立病院機構のほうが動かしやすい、独立行政法人だから動かしやすいという、言葉は悪いですが、楽に動かせるという意味ではいいのかもしれませんが、きちんとした契約、取り決めさえ事前に決めておけば、他の機関でもそのようなことは可能なわけだと思います。国立病院が独立行政法人になったにもかかわらず、国の要請でこれを臨機応変に便宜的に使うということは、国立病院機構の本来の自主性を尊重するという意味では、このような形であまり強調されるべきではないのではないかという感じがいたしました。他の団体に先駆けると言っても、最初、機関としては他からも行っているし、最後のほうは国立病院機構も頑張ってはいますが、13%とか15%で、この仕事も他の機関の方が一生懸命頑張っているのだろうと思うのです。緊急時にどのような対応をするか事前にきちんと取り決めておけば、他の機関であっても対応は可能ではないかというのが質問であり、意見です。
 もう1つは24頁で、知らなくて誠に申し訳ないのですが、行政刷新会議の事業仕分けにおいて、設備投資計画あるいは償還計画、キャッシュ計画を策定し、第三者のチェックを受けろといった指摘を受けたと書かれてあります。私も関与しているのですが、償還計画やキャッシュの計画というのはきちんと出されているし、たしか借入金の計画とか資金計画は評価委員会の意見を聞いた上で、大臣が認めるという仕組みになっていたのではないでしょうか。第三者のチェックを受けるというのは、どのような意味か。償還計画など基本的なところが大臣から認可されればいいのではないか。第三者のチェックというのは個別の計画として、いつ、どこの病院の何を直すか、建て替えるかということまで第三者がチェックしろという指摘ですか。
○相川座長 最初のことに関しては他の委員の方々からも意見があると思いますので、まず、あとのことについて室長から説明していただきたいと思います。
○宇口国立病院機構管理室長 夏目先生には国立病院評価委員会の部会をずっとやっていただいておりますのでご承知のことと思いますが、国立病院機構は春先に事業仕分けを受け、その後刷新から呼ばれて、運営費交付金とブロック事務所について秋口にも2回目の仕分けを受けたのです。その際、政務三役と機構本部からは理事長、副理事長が同席の上、ヒアリングというかディスカッションに臨んだわけです。当日の機構側の説明等々が、そのときの委員の先生になかなか理解していただけなかったかなと思いますし、当然私どもも参加いたしまして、岡本政務官からも一生懸命説明したのですが、刷新会議の結果としてこのような指摘を受けたというのは事実ですから、役所としてはそれを放置するわけにはいかないのです。ご承知のとおり、正直言いまして、我々も納得しているわけではありませんが、説明を求め、第三者のチェックと言われておりますから、きちっとやっているということを世の中に返さないといけない、そのような状況があります。
○相川座長 この件についてはよろしいですか。
○夏目委員 はい。
○相川座長 夏目委員の最初のご意見は、18頁にある東日本大震災における福島県への放射線スクリーニング班の派遣は、非常に迅速に対応し、初期には国立病院機構のチームが活躍したということであったが、このように福島県から首相官邸を通して厚生労働省に行き、国立病院機構に依頼があったことに関する対応はどうすべきか、将来的にもどうすべきかということでよろしいですか。それとも、そういうことは必要ではないということでしょうか。
○夏目委員 いいえ、私は大変敬意を表しますし、大事な仕事をきちんとやっていただいたことは非常にいいことだと思っております。要するに、事前にきちんとルールを決めておけば、何も国立病院機構だけがやれる仕事ではなくて、他の機関であってもきちんとできるのではないか、そのような能力を持った機関もあるだろう、それだけです。
○相川座長 事前に取り決めがあれば、独立行政法人ですから、ここだけがやるようなこともないだろうというご意見ですが、他の委員の方から何かご意見があればお願いいたします。このときは日赤でも何人かチームが出たのでしょうか。日赤はひとつの機能として災害救護事業を行っているかと思いますが、放射線サーベイランスチームとしてはいかがですか。
○山田委員 日赤の場合、いわゆる避難所の救護班という形で入りましたので、最初の24時間で47班を出しております。避難所に入っている人たちは既にサーベイランスが終わった人で、安全な人たちと言われておりましたから、我々自身がスクリーニングをやるということはありませんでした。
○相川座長 今のことについて事務局からご意見があればお願いいたします。
○秋月課長補佐 補足ですが、首相官邸に福島県から依頼がありましたので、通常であれば厚生労働省のみならず、大学病院ということでは文部科学省など他の省にも依頼は行っていたと認識しております。最初はほかにもチームが入っていたということですが、私の知る限り、文科省所管の独法である放医研や、第三次被爆医療機関である広島大学といった放射線に対する特別なミッションを持っている施設が派遣をしていたと記憶しております。そこに早い段階で国立病院機構から派遣したということです。確かに、3月18日ぐらいからは他の大学病院や病院からも派遣がありましたので割合としては減っているのですが、そうした場合、国立病院機構としては他のニーズというか、足りないところを見つけて、仮に他の病院で補えるのであれば、そこに出すというよりも、どこが足りないかをいち速く見つけて派遣していくことをミッションとして考えております。
○宇口国立病院機構管理室長 夏目先生のご意見もそうなのですが、官邸から厚生労働大臣に指示があるというのは、当然私どもの役所のミッションですし、日赤と同様、国立病院機構法には厚生労働大臣は緊急時に命令することができるという条文があるのです。1回目の爆発が12日で、最初のチームが14日に到着しています。震災当時の3~4日は、時間が経つのを忘れてやっておりましたので、移動時間を入れると、どのタイミングで出発のゴーサイン、要請をかけたかまではここには出ておりませんが、早いタイミングで、間髪入れずに機動的に動かせる部隊、もともと厚生労働省直結の職員というか施設でしたから、夏目先生が言われたように独立行政法人になって、ある意味の自立は当然できていると思うのですが、そこが機構本部サイドだけで見た場合と、所管している厚生労働省の立場から見た場合とでなかなか難しいところがあるのです。今日の議論ということでは全くなく、1,000年に1回の有事かもしれませんが、今回は3月14日に既に出ておりましたし、同日2回目の爆発が起こったときには、現地の医療機関を含め、放射線の医師を確保することは相当難儀な状況が本省にありましたので、ここは国立病院機構に出動要請をかけざるを得なかったですし、当然のごとく速やかにレスポンスしていただいたというのが事実です。
○夏目委員 そのこと自体は全く異論はないのですが、常々思っているのは、独立行政法人という形で自立させたにもかかわらず、あるときは国の機関だから有無を言わさずやりなさい、あるときは独立行政法人なのだから、もう少し自主性を持ってきちんとやりなさいという、状況によって考え方が変わるということです。これは独立行政法人側の人間として、理事長として大変つらいのではないかという気がいつもしているので、ついつい余分なことを申し上げた次第です。独立行政法人という形で独立したのであれば、そこを尊重していかなければ、理事長以下経営陣としては、先ほどの設備投資計画の指摘も含めて、少し問題があるのではないかと考えております。
○相川座長 その他何かあればお願いいたします。
○新谷委員 何点か申し上げたいと思います。今日いただいた国立病院の資料と労災病院の資料に共通しているのですが、医業利益について見たとき、例えば労災病院ならば、労災医療と一般医療において収益格差が出ていて、労災医療の赤字部分を一般医療で補填している状況の説明がありました。また、国立病院の資料を見ても、例えば青森の結核病棟において、一般病床の収益で結核病床の赤字を埋めているという収益構造があったと思います。政策医療に対する国としての財源の投入を考えたときに、一般医療で政策医療の赤字を補填するという構造をどう考えるかというのは、今回の検討においても重要なポイントだと思います。政策医療に対しては国が何らかの財政支援を診療報酬とは別の形で考えておかないと、一般病床から収益を上げて、政策医療の赤字を補填するという構造を再検討することが必要ではないかと感じたというのが1点です。
 もう1つは前々回お願いして、144病院の病院特性の一覧をいただき、また本日は席上配付でグルーピングをした参考資料もいただきました。国立病院144、労災病院30という非常に大きなネットワークがあるわけですが、今後このネットワークの在り方を具体的に検討する際は、全国の医療圏ごとの病床の過不足、当該医療機関が果たしている役割などに照らして、その一つひとつについて必要性の分析をすることが重要ではないかと思います。そうした分析を行った上で、医療提供体制の確保に支障を来たさないことを前提に、各医療機関の在り方について検討するべきではないかと思います。
 併せて、今日いただいた資料の20頁に、「都道府県の医療計画の策定に関与」という記述もありますが、多くの都道府県において医療計画の策定が行われるのは、第6次の計画がスタートする2013年からと聞いております。各都道府県の医療計画の策定のタイミングと同期をとらないと、このネットワークを改編する際に、各都道府県の安定的な医療体制の提供に支障を来たす可能性もありますので、その部分も念頭に置いておく必要があることを指摘したいと思います。
 最後に、今日いただいた資料の13頁に、ネットワークの話がありまして、業務支援系のシステムの他に、医療の安全情報システムや診療情報データベース等に関するシステムが稼働しているという記述がありました。これは国立病院の144のネットワークの中で閉じたシステムで動いているのでしょうが、厚生労働省所管の病院のリソースを考えたときに、例えば労災病院の30のネットワークとの関係でいくと、こういったシステムを相互利用することによって効率化が図れるかどうか。医療のデータベースということであれば、前回も指摘したように、労災病院も症例の収集やデータベースの構築をしている、電子化していると伺いましたから、こういったものを相互利用するということについて、どのように考えていくのか。医学の進歩に大きく貢献すると思っておりますので、ネットワークの相互利用をどう考えていくかということも指摘しておきたいと思います。
○相川座長 ありがとうございました。いま3つのご指摘あるいはご意見をいただいたと思いますが、いちばん最初の政策医療に関しては一般の医療で補填するのではなくて、国がそのものをサポートしなければいけないというような趣旨だったと思います。これは、この検討会のテーマでも非常に重要なことですので、委員の方々からもご意見を聞きたいと思います。まず2と3について事務局からお話をいただき、また委員の先生からもお話があったあと、最初のことは少し時間を取って検討したいと思いますが、そのような進行の仕方でよろしいですか。そのようにさせていただいて、2、3について室長からお願いします。
○宇口国立病院機構管理室長 各都道府県が定める地域医療計画の策定の際に、国立病院機構の再編成というのは世に公表していまして、現在まだ残っているというのは平成25年度の香川小児、善通寺だけです。それ以外、現在国立病院機構サイドで公表している縮減計画はありません。ですから、都道府県が地域の医療ベッドを策定するときに、最大手のパブリックの病院として国立病院機構のベッドがあるというのが前提にまずあって、その次は県立があって市町村の病院と日赤や済生会などの公的があって、民間病院とかのこういう状況になって、二次医療圏ごとに病床過剰か不足地域なのかという議論になってくると思います。
 1回目、2回目の議論にもありましたように、個別の国立病院というのは歴史が長いものですから、個々病院の議論をやり出すと非常に細かいところまでいってしまいますが、今回のテーマというのは大きく国立病院グループが持っているこのネットワークと、労災さんが持っているグループのネットワーク同士を合わせるのか否かという議論でやっていかないと、1つ1つまでいくとどうかなというお話もあったものですから、こういう表にさせていただいています。そこから先は現状だけを言うと、地域医療計画等についてはそういう手順で都道府県は考えていただいていると思っています。
 ネットワークの件については、当然うちのほうはナショナルセンターやハンセン病療養所、旧国立グループというのがつながっているわけですが、木暮課長にも聞きますが労災グループに30の病院のネットワークがもし現在あるということであれば、機械的にドッキングするなり、うちのほうを30病院のほうに設置することは物理的には可能だと思っています。ただ、運用の仕方やどういうルールでやっていくかというのは当然、両団体で決めたりやっていかないといけないと思いますが、構造的にはご指摘のとおり、物理的には可能だと思います。
○相川座長 ネットワークについては、ほかに委員の方々から何かご発言はありますか。よろしければ最初の件ですが、この検討会の皆様の意見をまとめる中でも非常に重要なことだと思っています。政策医療に関しては、既に過去3回にわたって説明がありまして、特に国立病院に関しては重症心身障害児(者)、筋ジストロフィー、結核などの政策医療、また労災病院に関しても今日少しご説明がありましたが、以前からあるものと新たに登場したような労災というものもありまして、これに関する費用負担をどのようにするべきかが論点だと思います。これに関しては、委員の方々からご意見をお聞きしたいと思います。山田委員、どうぞ。
○山田委員 前回と今回を合わせて、国病のほうからは前回TBでは一般診療のほうから回さないと、収益が上がらないという話がありました。ただ、今回のデータは逆で、診療報酬上ではマイナスだけれども、実際には給付費や措置費が出ていることによってこちらのほうは黒字になって、それが一般診療のほうを助けているという話になっていますので、これは政策医療全体にわたって本当にプラスになっているのか、なっていないのか、全部のデータがないと、なかなか比較検討が難しいのではないかと思います。もちろん、私は政策医療は当然国がやるべき医療であって、赤字覚悟で国立病院機構がやるのであれば、そこにそれなりのきちんとした援助が出るべきであると考えていますが、もう少し詳しいデータがほしいと思います。
○相川座長 政策医療全体でなく、政策医療によってはかなり自立というか採算が取れている分もあるし、そうでない分があるということですね。4頁の給付費及び措置費について、具体的に説明していただけますか。
○宇口国立病院機構管理室長 現在、措置費については経過措置期間であり、従前よりいただいているレベルがまず維持できていますが、今後の展開如何、経過措置の期限が平成23年度ですので、今年度、厚生労働省の障害保健福祉部なり、施策としてどういうふうに方向づけていくのか。流れだけでいきますと、経過措置が今年で切れるということですから、いままで適用されていたレベルの資料で載せている部分の額が18歳以上の患者が多いものですから、来年度以降は相当その額が変わってくるのかなと。そうなったときは、いまはまだ誰もそこは読めないのですが、重心・筋ジスの場合にトータルで、グリーンのところがプラスで止まるのかマイナスなのかというのは、今日の時点ではまだわかりません。
○相川座長 仮にこれがなくなることになると、また元のように政策医療のあるものに関しては、単独ですると赤字になってしまうということですね。
○宇口国立病院機構管理室長 前回の青森の結核の場合は医療法の制約があって、病棟に隙間があっても結核患者以外の患者は入れられないという物理的な話があって、空床にせざるを得ない。そこに法律的な無駄が発生していて、わかりやすい不採算の例ですが、例えば山田先生もやっておられる救命救急というか救急医療ですね。そういうところはスポットで見れば不採算はまず間違いないですが、病院全体のときに救命救急センターなり救急セクションが、本当にその急性期病院の中で不採算なのかなというと、逆の意味でいくと急性期の患者がいちばんそこから入ってくるということですから、その辺の分析は正直、細かい部門別の原価計算まで国立病院機構がレベル的にできているのであれば資料提出はできますが、1回目のとき、2回目のときにもお話したように、まだそこまで細かく部門別の原価計算までできていないので、本当の意味での不採算を数値で表せるのはデータ的にしんどいところが正直なところです。
○相川座長 新谷委員のご意見の中で、例えば国立病院の政策医療に関しては代表的な政策医療の結核、重心、ジストロフィーに関して、それぞれ病院の事例としては出ているけれども、全体的にももう少し、それぞれを分けて出したらどうかと、山田先生もおっしゃったように、そういうご意見でしょうか。資料としては、大体こういうことでわかっていますね。
○新谷委員 今日いただいた資料もありますし、前回の青森の結核のものもいただいています。別の法律に基づいて、実績に給付費などが加算されてやっと黒字になっている状況がこの事例でもわかりますので、本当はそういう形でいいのかどうかを論議したらいかがかということです。
○相川座長 資料は大体よろしいようですが、委員の方々から政策医療をどうしていくか、費用負担をどうしていくかについてご意見をいただきたいと思います。工藤先生どうぞ。
○工藤委員 政策医療の赤字を一般医療の黒字でカバーするという考え方そのものは、やめなければいけないだろうと、はっきりしていると思いますが、先ほど来、委員の先生方からもお話があったように、重症心身障害、筋ジストロフィー、結核それぞれ、おそらくみんな違います。だから、それぞれについて分析をきちんとしないと対応できないだろうと思いますが、結核に限って申し上げますと、平成22年4月の診療報酬改定に当たって、国立病院機構と結核予防会で分析をしました。その結果、大体国立病院機構では結核患者は1日あたり約1万円の赤字が発生します。結核予防会のほうは私どもの病院ですが60床ありますが、病床利用率が95%、在院日数が55日と全国平均から見ると、かなりしっかり運営されているわけですが、それでも年間1億3,500万円ぐらいの赤字が出ます。1床あたりにすると毎日6,500円の赤字が出ます。
 1つの問題は補助金等々によって、政策医療で赤字の部分をカバーするというのがありますが、もう1つは結核医療に関しては診療報酬そのものを改めるということがあるだろうと思います。ご承知のように医療法上、結核病床と一般病床というのは区分されていますので、実際にはその入院基本料なり何なりというのは全く違うわけです。ここのところをどうするのかというのがあります。
 例えば、いま包括医療としてのDPCがあります。DPCは一般医療に対して行われますが、ここに呼吸器の結核という1つの枝が明記されています。もしこれが適用されると、現実には赤字にたぶんならないのではないかというぐらいの高い点数が付いています。なぜ、これが結核病床でない一般病床の中のDPCで、こういう枝があるかといいますと、現実には患者は入っているわけです。東京都立の最大の感染症病床を持っている病院でいいますと、過去6年間に207名の結核患者が入院しています。これが現実に年間30~40人、800床ぐらいの規模になりますと発生するわけです。これは最初から結核とわかっているわけではなくて、胃の手術をやっていたら結核が出てきたとか、白血病の治療中に結核が出てきたとか、いろいろなことで発生するわけです。それから肺炎として紹介されたけれども、それは結核だったということで発生するわけですが、これは一般病床の中の感染症病床に入るわけです。そうなりますと、これは一般病床の規定になりますし、さらに感染症管理加算が付くことになりますので、ここではあまり赤字は発生していません。ただ、これを今度は結核専門病院、結核病床に患者を移送しますと、途端に赤字になる。そういうふうに診療報酬上も、二重構造というかダブルスタンダードといったようなものが現に存在します。こういった診療報酬上のいろいろな問題も、手を入れなければならないだろうと思います。
 総括的に言えば政策医療の部分の赤字を一般医療の黒字でカバーするというのは、一般医療が本当に黒字が生まれるような現在の診療報酬の体系であればよろしいですが、必ずしも黒字を生むのは大変なわけです。ですから、政策医療は政策医療で、きちんと対応するというのが基本ではないかということを申し上げたい。以上です。
○相川座長 ありがとうございました。高橋委員、お願いします。
○高橋委員 ただいまの政策医療の議論ですが、労災の機構のほうに関して申し上げますと、諸取り組みはもともとは経営者が負担している労災保険のお金を財源にして、進めているということですので、その中の主要な期待感としては労働事故由来の障害、もう1つはオキュペーショナルな要因が絡む疾病に関することになります。そういうことに関する研究、リハビリ、勤労するための手助けということへの出費については、経営サイドからはクレームがなく、むしろ期待感が大きいです。そして相応の費用を割いてもよろしいのではないかという意見が多数です。一方の国立病院ですが、今回の議論に出ていますとおり、国レベルで必要な従来の流れを引きずってやっていただいていることがたくさんあると思います。特異な疾病の重症者や、ほかの施設では手に負えない、フォローできないことへの対応が歴然としてあると思います。したがって、そういったそれぞれに期待される機能の見極めが極めて大事なことで、先程、座長がおっしゃったとおりだと思います。
 それの財源、負担をどうするかは、片やいままでは税金、一方は労災財源ということでしたので、それの負担の仕方というか在り方についても、この会の検討の中で整理できたらいいと思います。以上です。
○相川座長 ありがとうございました。大変貴重なご意見です。相澤委員どうぞ。
○相澤委員 いまの件ですが、原則的には政策医療に対しては国が支払うべきだと思いますが、それをずっと長い間やりますと、なんとなくもたれ合いみたいなところが出てきますし、経営的なインセンティブや医療従事者のインセンティブも低下する可能性がありますので、ある一定期間政策医療で国が払って、あとは民間に放出していくとか、先ほどの精神科の医療観察法でもありましたが、ずっとやるのではなくて、ある期間だけ重点的にやるといったような形のほうが望ましいのではないかなと思います。
○相川座長 ほかにご意見はいかがですか。定義からまた入らなければいけませんが、現在提示されている政策医療では資料がありますので、いろいろご意見をいただけると思います。
 座長ですが、臨床医として意見を言わせていただきます。いま、収支の点でお話がありましたが、いくつか資料が出ていました政策医療に従事する医師、看護師、その他の医療チームに関しても、ある疾患ではあまり医師が興味を持ってくれないということもあって、その専門家を育てていくことがなかなか難しいという医療も政策医療の中にはあります。そうなりますと医療のレベルが低下することにもなるので、単に政策医療の部分で国のお金を補填して経営が成り立つということだけではなくて、さらに広く医療提供する者をどのようにサポートしていくか。特に若い医師、看護師たちが積極的に専門分野に入っていけるようなことも考えていかないと、なかなか難しいことがあるかと思います。これもまた、いま相澤委員がおっしゃったように、ある期間その辺のところをかなりインテンシブに政策的に押し進めて、その政策医療の質を維持する、継続していくことも必要かと思います。以上、1人の委員として発言させていただきました。
 先ほどの新谷委員のご発言に関して、大体委員の方々のご意見を聞くことができたと思います。これは、将来この検討会が意見をまとめていくときに、場合によってはもう一度戻って、またご意見を聞きたいと思いますが、今回の委員会ではその件に関しては、これでよろしいですか。
                 (異議なし)
○相川座長 ありがとうございました。そのほかに、何かご意見はありますか。相澤委員どうぞ。
○相澤委員 労災病院の議論がなかったので、少し質問と意見を述べたいと思います。今回、国立病院と労災病院の資料を拝見しますと、労災病院のほうは調査研究のことに非常に力を入れておられて、それも大事なことだと思います。現在、13分野の研究が進んでいまして、このご意見ですと3頁あたりに強化すべき取組例ということで、アスベストとかメンタルヘルスとかが挙げられています。13分野ではこれ以外にも、粉じんのじん肺とか女性労働のこととかいろいろありまして、それについても評価委員会で評価をしているわけです。また、どういった内容であるかということも検討される委員会がありますので、ここで提案された項目を今後中心にやるという提案だと思いますが、この委員会で決めるということではないのかなと思いますので、これ以外のテーマについても検討すべきではないかなと思っています。そういった意味で出されたのか。あとでご意見をいただきたいと思います。
 もう1つは、リハビリテーションにかなり力を入れているということです。これも、先ほどの勤労者が職場に復帰するという、広い意味でのリハビリテーションは非常に大事なことだと思いますが、それだけの労災病院の中でリハビリテーションを重点的にやっていって、経営的に成り立つかどうかとか、すべての労災病院がやらなければいけないのか、今後どの辺までこれを進めていくかをお考えになっているかも質問として聞きたいなと思っています。
○相川座長 これは、労災管理課長からご意見はありますか。
○木暮労災管理課長 まず研究について申し上げますと、若干口頭で申し上げましたように、研究課題ごとに確かに状況はいろいろ違っていますので、一律にこの1枚の紙でどうだということではありません。従来型の研究は3頁のいちばん下にありますように、むしろ組織的に労災病院グループとしてきちんと継続して、次の世代にバトンタッチしていく。あまり大きな光が当たらない場合であっても、その灯を絶やさないという課題があるのかなと感じていますが、いずれにしても、いまあるものをなくすというスタンスでこの紙を作ったわけではないことにご理解をいただきたいと思います。
○相川座長 よろしいですか。ほかにいまの点、あるいはほかの新しい件で。
○夏目委員 いまの質問に関連しますが、例の4頁の早期職場復帰、リハビリの話ですが、職場復帰は本人や家族にとっても、あるいは企業にとっても極めて重要で、最重要の課題と書かれているとおりだと思います。そこで、いろいろな状況と課題等が整理されていますが、こういう課題を整理するためにはインセンティブがなければ物事は動かないので、そのインセンティブは何なのかと考えれば、ここに書いてありますが診療報酬で十分に見てやるか、それが予算上の理由やいろいろな諸条件で仮にできないのであれば、独立行政法人なので評価委員会で評価をする、定性的な評価という意味も込めて、そこをきちんとしてやれば前へ進むのではないかという考えを持つのですが、いかがでしょうか。
○相川座長 事務局からの意見はどうですか。
○木暮労災管理課長 診療報酬の面で申し上げますと、確かに診療報酬の全体の枠がありますので、前回の改定においては労災の診療報酬においても、総合リハビリテーションという形での点数付けができなかったという過去の経緯があります。そういう手法だけでなくて独法の評価もあるではないかというご示唆をいただきましたので、そこはきちんとミッションを与えて評価をしていく中で、好循環で回っていくようにということも我々としては考えていきたいと思っています。
○相川座長 よろしいですか。新谷委員どうぞ。
○新谷委員 いまのところにも関連しますが、もともと労災病院というのは、労働災害に伴う傷病に対する医療を提供することを中心とする病院としてできてきたわけですが、果たしてきた役割は非常に大きいと思っています。今後取組を強化するべき事例として書かれている中で、3頁に治療と就労の両立支援が書かれてあって、今後これが非常に重要なポイントだと思っています。日本の人口が1億3,000万人、就業者が6,200万人いて、6,200万人のうち、勤労者と呼ばれる方が5,500万人おられるわけです。国立病院の144のネットワークで患者になっている方にも、勤労者がたくさんいるわけです。前回申し上げたように、労災病院というのは就労とか職業というところと医療の結節点だと思っていまして、ですから治療と就労の両立支援という考え方が労災病院にはあって、非常に重要なポイントだと思いますが、勤労者が病気をして職業から離れる、あるいは、病気、けがをしたけれども、就労を続けられるような両立支援という考え方を144の国立病院のネットワークの中でも、共有できないのかというところを申し上げたいと思います。
 今日いただいた資料の中でも、20頁は政策医療との関係で労災病院とはネットワークが交わらないという形の資料になっていますが、治療と就労の両立支援は本当に共通で取り組めるテーマではないかと思いますので、どうやってネットワークをお互いに生かしていくかという視点で是非検討いただければと思っています。以上です。
○相川座長 労災の事務局から何かありますか。よろしいですか。これは、また非常に重要なご意見だと思います。ありがとうございます。そのほかにいかがですか。高橋委員。
○高橋委員 2点あります。1つは、机上配付していただきました人件費率の比較は、リクエストに応えていただきましてありがとうございました。大体の状況はわかったので確認したいのですが、これは実払い賃金でしょうか。残業代とか、そういったことも含めての数字だと思ってよろしいでしょうか。それとも、スタンダードな基準ということでしょうか。
○宇口国立病院機構管理室長 お答えします。人件費には給与、賞与、退職給付費用、法定福利費用すべてが入ったものです。
○高橋委員 わかりました。ありがとうございます。
 もう1点は労災病院の関係でお聞きします。研究のことが先ほど来話題になっていますが、これに関して8頁に的確と思われる記載があります。そこの○の3つ目です。労災に関して「的確な意見書を提出できないと、医学経験則に反した判決が出るおそれ」という表記です。しばしば経営側で話題になるのは、特に最近のメンタル系の疾患、作業関連疾患と言われる脳・心疾患に関する労災の判断です。労災に認定されるといろいろな療養給付金や休業給付金等が100%支給されます。ところが、労災に認定されないと、全くその財源からはゼロ給付であるということです。それが問題視されますと、結局、民事ということになりまして、労災でどう扱われたというのが論点になります。
 そこで研究部門に期待したいことですが、いま申し上げたような疾患が起こる機序を考えますと、その関連要因がたくさんあると思います。少なくとも業務上のことだけでうつ病になったとか、脳卒中を起こしたということは稀で、さまざまな要因が絡んでいます。それの寄与度に応じた補償体系の在り方というものを考えていただけませんでしょうか。医学的な経験や科学の進展を踏まえて考えていただければ、もう少しリーズナブルに扱えるようになるのではないかと思います。したがって、この観点の研究を進めていただけたらありがたいと思います。
○相川座長 ほかにありますか。
○木暮労災管理課長 いわゆる過労死分野については、私どももいまの研究で十分なのかどうかという問題意識は持っていますので、そこら辺は臨床しながらという研究ということで、いまの体制でいいのかという問題もありますので、この検討会のご議論も踏まえて検討していきたいと思っています。
○相川座長 いまの関連で質問です。例えば、いま過労死の研究ということで、実際には動物実験ができるはずがありませんので、それぞれの症例について個々に見て、更にマクロで見るというようなことで研究をしていくには、当然医師なりそのほかの方々が研究に関与するわけですが、そのときも医師の研究の時間も、超過勤務もあるかもしれませんが、労災病院の人件費で払っている。そのほかに、別の機構から研究費として、その研究に対していろいろな費用をサポートするとなっているわけですか。労災病院が負担する分はどうなっていますか。
○木暮労災管理課長 実際上の考え方としては、1日8時間勤務をすると仮定した場合に、6時間診療に当てて2時間研究すると、2時間分の給与は国の研究費の中から出していいという時間按分で、人件費を国の運営費交付金の中から当てている出し方です。
○相川座長 具体的にそのように処理をして、労災病院の人件費もいま50%ちょっとになっていますが、その処理をした結果の人件費比率が50.数パーセントということですか。
○木暮労災管理課長 そういうことです。
○相川座長 ほかにいかがですか。山田委員どうぞ。
○山田委員 医師臨床研修のことでお伺いしたいのですが、国立病院機構の19頁で、セーフティネット領域の施設間の共同プログラムを行っているということですが、これは初期臨床研修の段階ですか。後期臨床研修でおやりになられているのですか。
○秋月課長補佐 初期臨床研修も含めてです。結核、重心といった施設を持っている所であれば、それが初期臨床研修の中に組み込まれるような形で研修を行っているということです。
○山田委員 なかなか専門医が少ないということも伺いますので、後期臨床研修の中で各病院がプログラムをいろいろとお持ちになっていらっしゃると思いますが、その中で政策医療に関するプログラムというのはコースがいくつかありますか。
○秋月課長補佐 プログラムは各病院によって相当違いますが、病院によっては筋ジストロフィーや希少な疾患を診られるということをひとつアピールする点として、宣伝というか広告をしている病院もあります。
○山田委員 労災病院のほうにお伺いします。労災病院としては、臨床研修のシステムに病院は全部入られているのですか。先ほど、国病のほうは独立型がいくつという数字が出ていましたが、労災のほうの数字が見つからなかったものですから。
○労働者健康福祉機構 機構の理事の金井です。今回もオブザーバー参加をさせていただいています。前回お配りした資料のいちばん最後にあります。これを見ますと、ほとんどの病院が臨床研修病院として、基幹型もしくは協力型で対応している。ただ、特殊性のある道央せき損センターについては、協力型になっていないということです。基本的には、ほとんどがなっている状況です。
○山田委員 専門医が足りないという所がありますので、後期臨床研修の中でそれぞれに応じた、アスベストなり労災疾病に関してのプログラムをお作りになられて、専門医を作られるような方向性は頑張っていらっしゃるのでしょうか。
○労働者健康福祉機構 基本的に、各労災病院のほうで後期臨床研修医の研修プログラムについては策定をして、当然各学会の認定医や指導医が取れるようなものに対応している状況です。
○山田委員 そういう形で、労災なら労災、国立病院機構なら病院機構の中で教育をしていただかないと、なかなかそれぞれの専門医が育っていかないだろうと思いますので、その辺は是非強力な体制をお願いしたいと思います。
○労働者健康福祉機構 わかりました。
○相川座長 よろしいですか。先ほどの私の発言とも関連しているかと思いますが、医師を養成するということです。ほかにいかがですか。夏目委員どうぞ。
○夏目委員 今日、席上配付された資料の給与水準の比較のところで先ほど説明がありましたが、どう見ても看護師と事務技術職員は、国病と労災病院では相当の差がある。これは説明があったように、生まれ育ちの違いなのだということがほとんどすべての理由なのか、それ以外に何か特別な理由があるのかどうかが1点目。
 2点目は、対公務員指数ということで、公務員との関係でそれぞれ取っておられますが、ナショナルセンター、がんセンター等が公務員から外れたと思います。そうすると、ほとんど公務員の世界で、医師や看護師が少なくなっているのではないかと思いますが、母数が適正なのかどうかはどうでしょうか。
○宇口国立病院機構管理室長 夏目先生のご指摘のとおり、まず人事院の現在の医療職(一)や医療職(三)の母数は、圧倒的に国立病院グループがまず抜け、ご指摘のナショナルセンターグループも去年4月に抜けていますから、いま本当に国立直営店の医療機関の数というのは相当萎んでいるので、客体としていかがかというのは正直あります。それは、人事院さんのほうが検討すべき問題かと思います。
 それと、前段の私がご説明した経緯以外に何かあるかということですが、国立病院機構のほうはご承知のとおり、言った100から出発して、改革も評価委員会で先生もご承知のとおりだと思いますので、そのまま素直な数値がこの資料に反映されているものと思っています。
○木暮労災管理課長 労災病院グループの場合は、昨年の夏に賃金カーブを寝せるという改定の労使交渉が妥結したということですので、その状況はまだ反映されていない数字が表に出ているということです。
○相川座長 夏目先生、これは格差が多少ありますが、先生のご意見では、この程度の格差はアクセタブルで了解できるのか、近づけるべきなのか、何かありますか。
○夏目委員 客観的に見れば、国立病院の看護師と労災病院の看護師にこれだけ差が生じていると、どちらを直すのがいいのかはよくわかりませんが、少し格差がありすぎるのではないかなという感じがします。
○相川座長 業務内容に関しては、それぞれわかりにくいかもしれませんが、ほぼ同じと考えてよろしいですか。例えば労災のほうが特別なリスクがあるとか、特別忙しいとか、そういうはっきりしたことはなさそうですか。そのようなご意見として伺っていくということです。そのほかにいかがですか。
 今日欠席の委員から発言したいということで、私自身もそのとおりだと思いますので、私が代理というか私の意見としても発言します。細かいことですが、欠席の委員がご指摘になったのは、参考ということで病院そのもののことではないですが、15頁の「労働関係法人厚生年金基金の概要」の概念図の中の加算部分と基本部分の予定利率が、4.75%、5.5%というのは民間としてはあり得ないので、予定利率が随分高いのではないかというご意見もありました。私も同じように考えていますので、2人の委員の意見として発言しておきます。これは管理課長としても、なかなか答えにくいところだと思いますが。
○木暮労災管理課長 民間の企業においても、その厚生年金基金の扱いについて大変お悩みの企業も多いということは十分承知しています。行政として、直接これにどうこうということよりも、客観的な状況については経営者としてのご判断が、適切なときに適切な方法でなされることを期待することを申し上げたいと思っています。
○相川座長 ありがとうございます。本日欠席の方がこの資料を前もってご覧になって、そのような意見もあったということで、発言させていただきました。
 そのほかにいかがですか。新谷委員。
○新谷委員 今日の資料に関することでなくてもよろしいですか。
○相川座長 結構です。
○新谷委員 今日は4回目ということで、国立病院と労働者健康福祉機構の業務の在り方について論議をしました。1回目にいただいた資料の中で、次回のスケジュールとしては論点と課題を論議することになっていたと思います。次回の論点の中で、検討会のタイトルを見ると「国立病院・労災病院等」と入っています。この「等」というのはよく見てみると、この検討会の親委員会である合理化検討委員会の中で指摘をされているように、RFOも含めて、244の厚生労働省所管の病院のネットワークの在り方をどうするかということの指摘が最初にあって、この「等」が付いていたと思います。RFOのほうが譲渡も含めてまだ処理の途中だということは十分承知をしていますが、この検討会の検討事項として挙げられているのは、244のネットワークの在り方についてどうするかということです。私は1回目のときに欠席したものですからご指摘があれば申し訳ないのですが、次回は国立病院と労災病院以外も含めた244の病院ネットワークの在り方についてどうするかも、検討の論点として必要ではないかと思います。特に244も全国に病院があって、それをプロットしていったときに、かなり重複感とか過疎があるということがたぶんわかると思いますので、地図でプロットしたデータを出していただくとか、そんな工夫をして244の病院ネットワークの在り方についても是非検討するべきではないかなと思います。以上です。
○相川座長 わかりました。これは座長としても、まず現時点でどのように対応していくかについて説明を。室長お願いします。
○宇口国立病院機構管理室長 いまの新谷先生のご指摘のとおりの流れですが、先般6月24日、議員立法ですが、これは、決着がついていませんでした現在の社会保険病院、厚生年金病院が売却ということで、RFOに国から出資されています。RFOは現状でいくと、来年の9月30日までの期限しかありませんでしたが、今般6月24日に議員立法で法律が成立しまして、その時限の撤廃、それから3年以内に受皿法人を作るということで、やっと進んでいます。去年の北沢委員会での議論のときには、現民主党政権が公約で地域医療機能推進機構というのを作るという前提での議論でしたので、このRFOの社会保険と厚生年金の病院群も独法という前提があってのお話だと思います。現状においてお話しますと、6月24日の法律成立を踏まえ、年金局においては新たな機構への改組までの間、RFOの設置目的に沿って譲渡の取組を進めていく。売払いも当然進めていく。それと、新たな機構をどのような組織として設置するかという検討も現在スタートを切ったというところで、現時点で申しますとどれぐらいの規模の法人グループになるか、また、今あるすべての厚生年金と社会保険病院がそのままということのないような話を年金局はしていますので、これまでの過程でどういう病院が譲渡されるかは不明です。ですから新谷先生が言ったとおりの検討となるべきではあるのですが、本省として座長にお願いしたのは、まず決まっている国立病院と労災病院について、各々のグループがネットワークを組んでいますから、これの統合なのか、2つが別々であるのがいいのか、何が国民のためにいいのかという議論でお願いできればと思っています。
○相川座長 いま事務局が説明したとおりで、私もそのように進めたいと思っていますが、法律ができてから10日ほどしか経っていませんので、このあとの厚生年金病院、社会保険病院がどのような形に行くかということが具体的に見えてくる。それを私どもは常に観察しつつ、この検討会の期限の中にそれを含めて報告書に出せるのか、それともその具体性がまだはっきりしない場合には、国立病院と労災病院について当面報告書を出し、また厚生年金病院あるいは社会保険病院についても、どのような考え方で将来的に進めていこうかということは書けると思いますが、具体的なことは現時点ではなかなかできませんので、常に進捗状況を見ながらこの検討会でも検討していきたいと思っていますが、よろしいですか。ほかの委員の先生方も、そのような方向でよろしいですか。どのぐらいのスピードで、これが出てくるかも現時点ではまだ見当がついていないということですが、常にそれを視野に入れて検討を進めていく。そのようにさせていただきたいと思います。重要なご指摘をありがとうございました。
 そろそろ時間も参っていますが、あと数件、どうぞ。
○夏目委員 今後のスケジュールに関してのお願いですが、今日それぞれの機構の本部、経営陣からお話を聞くのかなと思ったらそうではなかったので、是非これから論点整理等を進めて、ある段階でそれぞれの機構の本部の経営陣の方々からもヒアリングをしたらどうかと考えますが、座長のほうでご検討いただければと思います。
○相川座長 まず委員の先生方は、そのようなご意見についてどうですか。いつかの段階で、そのようなことも議題に入れたいというご意見ですね。わかりました。それについても検討させていただきます。
 それから、本日の資料3が皆様のお手元にあると思います。先ほど一部は労災管理課長が読み上げてくれましたが、大体いままでの主な議論を整理しますと、このようなことになってくるわけですが、こちらの整理でこれは全く違うというようなご意見がありましたら、事務局のほうに次回までに伝えてください。この時点までは、大体このような議論をしたということですので、よろしくお願いします。
 時間が迫ってまいりましたので、今回の議論はこれまでとさせていただきまして、このスケジュールについてご相談したいと思います。先ほどの夏目委員の議題の提出もありましたが、また先般、現地を訪れて病院を見たらどうかというご意見もありました。そのようなことを含めまして、かなりいくつか具体的に状況がわかってきましたので、次回はもしお許しいただければ病院事業の運営状況等を踏まえまして、それぞれいくつかの病院に現地で訪問して、視察という言葉でよろしいのかどうか、現状を見るということを行った上で、第5回に予定していた論点の課題、ヒアリング事項の整理と進みたいと思っています。8月の会議で病院を訪問する、その次に整理ということにしたいと思います。よろしいですか。
                 (異議なし)
○相川座長 ありがとうございます。そのように委員からご賛同を得ましたので、次回は病院を訪問するということですが、具体的にどの病院を訪問するか、また日程調整も含めて事務局と、対象病院の訪問先についてもご意見をいただくことになりますが、最終的には座長に一任いただいて、どこを訪問するかということを決めさせていただいてよろしいですか。是非、積極的に事務局に対象病院についてもご意見をいただきたいと思います。よろしいですか。
                 (異議なし)
○相川座長 ありがとうございます。大体そのようなことです。あと数分残っていますが、これからの進め方あるいは資料等についてですが、先ほど新谷委員から1つ追加の資料というデータがありましたね。よろしくお願いします。ほかにご発言はよろしいですか。
 本日は大変お忙しいところ、ありがとうございました。次回の病院視察については、先ほど申し上げたように、日程等の調整をさせていただきますのでよろしくお願いします。本日はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

 医政局国立病院課国立病院機構管理室
  運営管理係 竹内・荒井(内線2635)
 労働基準局労災補償部労災管理課
  企画調整係 宮下・谷(内線5437)
 (代表) 03(5253)1111

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