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2011年7月15日 第8回今後のパートタイム労働対策に関する研究会 議事録

雇用均等・児童家庭局 短時間・在宅労働課

○日時

平成23年7月15日(金)10:00~12:00


○場所

中央労働委員会612号室(6階)


○出席者

委員

浅倉委員、今野委員、黒澤委員、権丈委員、佐藤委員、水町委員、山川委員

厚生労働省

小宮山副大臣、高井雇用均等・児童家庭局長、石井雇用均等・児童家庭局審議官、吉本雇用均等政策課長、塚崎職業家庭両立課長、
吉永短時間・在宅労働課長、大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長、藤原短時間・在宅労働課長補佐、
酒光政策統括官(労働担当)労働政策担当参事官、飯田政策統括官(労働担当)労働政策担当参事官室長補佐

○議題

(1)「雇用形態による均等処遇についての研究会」報告書について
(2)研究会におけるこれまでの主な御意見
(3)その他

○議事

○今野委員 時間は早いのですが、お揃いですので始めたいと思います。今日は、第8回の研究会です。
 本日の議題ですが、「雇用形態による均等処遇についての研究会」の報告書が出ましたので、それについて事務局から説明をお願いして、議論したいと思います。それでは、よろしくお願いします。
○酒光政策統括官労働政策担当参事官 労働政策担当参事官の酒光です。どうぞよろしくお願いします。資料1をご覧ください。「雇用形態による均等処遇についての研究会」報告書です。表紙にありますように、JILPTに置かせていただいた研究会なのですが、私どもも全面的に参加して協力させていただきました。この研究会は、ご専門の先生方が大変多い中で説明するのはなかなか冷や汗ものなのですが、事務局の代表として報告をさせていただきたいと思います。
 まず、背景を説明させていただきます。報告書前書きのローマ数字の1頁をご覧いただきながらお聞きいただければと思います。このパートタイム労働の研究会でもいろいろとご検討いただいていると思いますが、非正規労働者がパートに限らず増加している中で、雇用が不安定、処遇が低いなど、正規・非正規の二極化構造が社会問題化しています。そういった中で、両者の均等待遇のあり方について、日本に比べて特にEUなどで均等待遇法制が進んでいることもありますので、そうしたところの法制や運用実態について整理をして、日本においてこの問題を考えるうえで、どのような示唆があるかについて検討したものです。
 検討体制ですが、ローマ数字10頁に委員名簿がありますが、東京大学の荒木先生を座長のほか、各国の法制のご専門の方、あるいは労働経済、人事労務管理がご専門の方にお入りいただいて、それぞれご報告いただきながらご議論いただきました。
 次の所に、研究会の開催経過がありますが、昨年の9月から10回ほど開催していまして、第5回目にはこの研究会の委員の水町委員にもご報告をいただきまして、大変参考にさせていただきました。ありがとうございます。また、研究会の報告書の最後のほうに参考文献がありますが、浅倉先生のご本なども、特にイギリス法制などを研究するにあたって参考にさせていただきました。そういった形で、10回にわたって各国法制について検討しましたが、そのまま目次を見ていただきますと、全体の報告書の構成は2部構成になっています。2部のほうで、EU各国の法制の実態あるいは運用の実態等があります。こちらについて押さえたうえで、それを整理する形で1部を取りまとめました。今日は、1部を中心に報告したいと思います。その1部の内容の概要が、ローマ数字の2頁以降からありますので、それに基づいて報告したいと思います。
 第1章は、非正規労働者の現状や議論の背景です。委員の方は、それぞれご案内だと思いますが、一応資料も付けてありますので、簡単にご報告させていただければと思います。90頁以降に図表が付いているかと思います。よくご覧いただいている図表だと思いますが、例えば91頁ですと、既に非正規労働者の方が3分の1を占めるに至ってきており、3分の1を超えて、34.3%になっています。それから92頁をご覧いただきますと、非正規労働者の方の中でも常雇といわれている部分が増えてきている。この辺りは統計調査上の問題もいろいろあるのではないかというご指摘も、佐藤委員から従前よりお聞きしています。
 94頁は、パートや有期において勤続期間が長期化していて、3年を超える方も相当いらっしゃる、10年を超える方も1割ぐらいいるというようなことがありました。このように、勤続年数の長期化・基幹化が進んでいます。また、95、96頁をご覧いただきますと、非正規労働者は、従前イメージ的には女性のセカンダリーな稼得者が中心だったのかなというイメージがありますが、既に男性も増えていますし、若い人でもかなり増えているというようなデータがあります。
98頁は、非正規の雇用形態の中ではパートが未だにいちばん多いことは間違いないのですが、契約社員・嘱託の方等も相当増えてきている、あるいは派遣の方も増えているというような状況です。そのように、大変非正規の方が増えていますが、労働条件を見ますと108頁に賃金のカーブがありますが、正社員の方に比べて正社員以外、あるいは短時間労働者、派遣労働者に、若いうちはあまり給料の差がないのですが、3、40代になるとかなり給料の差が出ています。
 109頁、年間所得でみますと、パート・アルバイトの方は100万円程度の方が非常に多くて、正規の方は300万円以上の方が多いというようなデータになっています。また、賃金以外の労働条件でみますと、111、112頁に教育訓練の状況がありますが、いずれも正規・非正規の方を比べますと、非正規の方は教育訓練を受けている方が少ない状況にあります。113頁は福利厚生という面で、やはり正規の方と非正規の方でかなり適用の割合に差があると。法定の福利費においても、これは制度的なものもありますが差がありますし、法定外の福利費、あるいはさまざまな手当、賞与においても、相当適用状況に差があるということです。こういった状況を踏まえて、114頁をご覧ください。正規の方と非正規の方がどのようなことで、職場に不満をもっているかです。正規の方が不満をもっているのは、労働時間や休日になりますが、それ以外は大体非正規の方のほうが不満が多いのですが、特に差が大きいのは、雇用の安定性において差が大きい。あるいは福利厚生や教育訓練。雇用が不安定だとか福利厚生が少ないとか、教育訓練をあまり受けられないというところでの不満が、正規と非正規の方で差が大きいというようなデータがあります。
 次に報告書概要のローマ数字2頁に移ってください。そのような常用雇用や基幹化が進んでいる、あるいは非正規の方の属性もいろいろと変わってきている中で、正規・非正規の差が新成長戦略でも課題になって挙げられてきています。こういった処遇の差は合理的なのかとか納得がいくかといったことが、非常に重要な課題になってきています。
 そこで、第2章が、今回の報告の中心となります。EUにおける法制の概要あるいは運用の実態等を整理して、日本に当てはめてどうかを検討しました。こういった問題を考えるうえで、正規と非正規の方で「同一(価値)労働同一賃金」あるいは「均等待遇」など、いろいろな言い回しが使われていまして、特に一般の方においては概念整理が必ずしも十分でないという状況があります。それから、特に同一(価値)労働同一賃金あるいは均等待遇は、もともと男女の問題でも先行して議論されてきた経緯もありますので、そういったものとの関係も併せて検討することで、理解が深まるのではないかというようなことです。それで、各国の法制が第2部で具体的に書いてありますが、検討した結果を踏まえて整理したのが、(1)から(4)までの考え方です。
 (1)は、人権保障に係る「均等待遇原則」です。これは、この報告では差別的取扱いの禁止原則だということで整理をしています。この趣旨は、目的の面からいえば、人権保障の観点から行うものであって、事由としては性別や人種といった個人では変えることができないもの、あるいは宗教や信条といった基本的な人権としてその選択の自由が認められているもの、こういったものを理由として、賃金はもちろんですが、それ以外の労働条件も含めて、差別的取扱いをしてはならないというものであるという考え方だということです。この大きな特徴は、両面的規制だということで、例えば男女でいえば男性を女性より優遇するのもいけないのですが、逆に女性を男性より優遇することもいけない。いわゆる逆差別はしてはいけないというのが基本的な考え方です。
 なお、原則として、真に職務上の必要性がある場合、あるいはポジティブ・アクションの場合だけのみ例外的に許されるということなので、ポジティブ・アクションだけは例外で、それ以外は、基本的には差別、逆差別いずれも禁止されるというような考え方だろうということです。
 2番目は、雇用形態についての均等待遇はどのように考えたらいいかということです。これも、差別禁止ということで語られることも多いわけですが、その内容はやはり人権保障に係るものとは若干違うのではないかということです。これは、おそらく雇用形態は、もともと当事者が契約という形で合意をして決めるということもありますので、その選択の柔軟性と、もう1つは、だからといってあまり差があってもおかしいでしょうという公正性といったもののバランスを取らなければいけないことから出ているのかなと思われます。雇用形態に係る「均等待遇原則」は、この見出しにも書いてありますように、不利益取扱いの禁止原則という形で整理できるのではないかと考えています。これは目的の面からいいますと、まずはパートや有期や派遣といった雇用形態の違いで不利益を被っているだろうと。非正規労働者の処遇が一般的に低いことに着目しまして、その処遇改善を図るという観点から、雇用形態の違いを理由として、賃金を含む労働条件全般について不利益に取り扱ってはいけないというようなルールということであります。この特徴としては、ここには片面的規制だと書いてあります。要するに、非正規の方を不利に扱ってはいけないですが、有利に扱うことは許されるという考え方です。また、その雇用形態を理由にして差をつけるということについて、人権保障の場合ですと、ほとんど認められないのですが、こちらのほうは客観的(合理的)な理由があれば、異なる取扱いは認められ得るということです。
 次に、「同一(価値)労働と同一賃金原則」とはどのように考えたらいいかです。これは少なくともEUにおいては、人権保障の面、いわゆる男女を中心とした人権保障の観点から行われている規制です。先ほどの(1)(2)でいえば、(1)の人権保障に係る「均等待遇原則」の範疇で、その賃金に関する一原則である、下位規範であろうということで整理をしています。そういうことですので、(1)と同様、両面的な規制であります。また、「同一(価値)労働同一賃金原則」については、もともと同一労働同一賃金だけでは男女に職種の違いが生じている場合に男女の差をなかなか是正できないことから、職種が違う場合であっても是正できるようにということで、同一価値労働に比較対象が拡大されてきた経緯があります。
 そういった経緯で、かつ雇用形態については、少なくともEUにおいては直接的に同一(価値)労働同一賃金原則を適用はしていないだろうと。そして、また同一(価値)労働同一賃金原則の場合は、先ほどの人権保障に係る均等待遇原則と同じですが、間接差別も認められるということです。ただ、間接差別の場合については、客観的な合理的理由があれば、差をつけることについては認められる。直接差別の場合は、先ほど申し上げたようにほとんど認められないのですが、間接差別は客観的(合理的)であること、これは使用者側が立証しなければいけないわけですが、使用者側が立証すれば認められるということです。
 ヨーロッパの例などを見ますと、そういった理由として認められ得るものとしては、勤続年数や学歴、資格、勤務成績、技能、生産性、この辺りは労働の質かなと思います。そのほかでいえば、移動可能性、労働市場の状況、こういったものも、使用者が理由を説明できれば認められるケースがあります。このうち、勤続年数については、労働の質に関係する部分ですが、少なくともEUにおいては、勤続年数が長い人に高い給料を払うことが当然のこととして、事業主は立証しなくてもいいとなっています。逆に、勤務時間や就業場所の変更、いわゆる残業ができるとか転勤ができるといったことを理由に差をつける場合は、それが職務の遂行に必要であることが立証できれば、差をつける客観的(合理的)な理由になるだろうということです。
 以上は、同一(価値)労働同一賃金原則で、男女を中心とした人権保障についての原則ということで説明をさせていただきました。では、雇用形態の違いを理由とした場合の賃金に係る格差を是正する、不合理な差を禁止する原則はどのように考えたらいいか。これは、先ほどの(1)(2)で言えば、(2)の雇用形態に係る「均等待遇原則」の考え方で対処をされていると考えられます。より具体的に言いますと、基本的には格差を問題にするので比較対象者がいるわけですが、パートであればフルタイマー、有期の方であれば無期契約の方といったものを比較するわけです。基本的には、同一労働に従事しているというのが基本です。特に、職務関連給付、要するに賃金の基本的な部分については、同一の労働に従事する者と比較するのが原則であると。ですから、通常は異なる職種間での比較はしないということです。また、先ほどの同一(価値)労働同一賃金原則と似ていますが、勤続年数や学歴、資格等に応じて、賃金に差をつけるということは客観的(合理的)な理由になり得ると考えられています。一方、食事手当など職務に関連しない給付は特にどういう仕事をやっているかとは直接関係しない給付ですので、比較対象者と同一労働であることまでは要請されないということです。職務関連給付、職務関連以外の給付いずれもそうですが、客観的(合理的)な理由がないといった場合については、比例原則、パートタイムであれば労働時間に比例した給付、あるいは有期の方や勤続年数が違う場合は、勤続期間に比例した給付が原則になります。労働時間や勤続期間に関係ないような給付については、全面的に給付するという傾向があります。また、一般的には間接差別は、雇用形態については言われないということです。
 ローマ数字5頁の「一方」からは、パートタイム法8条との関係を若干付言していますが、パート法8条の考え方と通じるところと通じないところがあるかと思います。パート法8条の考え方を、こういう考え方からもう1回見直してみますと、パート法8条の「均等待遇原則」というのは、まず給付の性質や目的を議論する前に、職務の同一性だけではなくて、人材活用の仕組みや無期についての同一性を満たす場合に、通常の労働者と同じだから差別的取扱いをしてはいけないということで、この雇用形態による不利益取扱いの禁止の考え方と、若干違う所があるのではないかと理解をしています。
 (5)は、まとめです。大体重なっている所が多いので、ざっと説明します。繰り返しになりますが、「同一(価値)労働同一賃金原則」は、男女を中心とした人権保障の観点から言われていて、雇用形態について直接は言われない。EUにおいても、雇用形態における均等待遇原則は、1つは職務関連の給付については少なくとも同一職務内で比較をするのが基本です。それから、間接差別については通常言われない。給付の性質にもよりますが、勤続期間や学歴、資格などは、差をつける場合の客観的な理由として認められ得る。これは当然ながら、事業主が立証しなければならないことになります。
 日本に置き換えてみますと、大体日本でもこういったことが理由でパートと正規の差がついている場合が多いかと思います。特にパート法との関係でいいますと、人材活用の仕組みが明示的に出されています。ローマ数字6頁の最後の○の所ですが、そういった人材活用の仕組みは、こういう理由の雇用形態に係る均等待遇原則だとどのように考えたらいいかですが、雇用形態によって人材活用の仕組みが違うから差をつけることが合理的かどうかを争われた事例はEUでは調べた限りどうもないようです。それに近いものとして、男女「同一(価値)労働同一賃金の原則」の関係では、例えば就業場所の変更ができるかできないか、あるいはキャリアコースが違うといったことが合理的な理由であるときちんと立証できれば、客観的な合理的な理由として認められることがあるということですので、日本的な意味での人材活用の仕組みも、そういった意味では合理的な理由として認められ得る可能性があるのではないかと考えています。以上が、主に法制面での整理をしたものです。
 最後に、2番で、こういったことを踏まえて、特に日本において正規・非正規間の処遇格差が不合理な場合に、それをどのように是正していくかという仕組みづくりで、示唆となる点をまとめています。ここでは、皆さんのほうが私よりも詳しいかと思いますが、EUでは非正規という言い方はあまりしないと思いますが、いずれにしてもかなり働き方、人材活用の仕組みや職務が、EUと日本の正規・非正規ではだいぶ違うのだろう。やや類型的に書きますと、EUでは職種、職務給が中心、これは非正規の方も正規の方も同じような仕事をしていれば、基本給について、大体そのような同じ職務給体制、同じ協約賃金が適用されることが多いと考えられています。そういったことから、あまり正規と非正規で基本給が違うという争いは多くはないと思われます。逆にいいますと、日本では正規と非正規で、そういった基本給部分から違うと。それはなぜ違うか。日本の場合は正規の方はどちらかというと人材活用、長期的に雇用していくという観点から職能をベースにした給与体系になっています。非正規の方は、現在の職務に応じた給与ということで職務給与体系になっていて、給与体系から違うということで、非常に難しいのです。EUでは、基本給のところは比較的揃っているので、それ以外の手当や雇止めといったところでの争いは比較的多いのですが、日本ではベースの部分からかなり違います。
 不利益取扱いの禁止原則は、例えば日本で導入して運用する場合には、どういったことで客観的(合理的)な理由とするかとか、今後いろいろと経験を経るとかガイドラインを作ることが必要になるのかもしれませんが、そういった手続が必要で、EUなどに比べると難しい面があるだろうと思います。ただ、EUでも社会が複雑になってきて、働き方もいろいろと複雑になってきています。スウェーデンなどは、協約賃金だったものが個別企業ごとの賃金決定になってきつつありまして、そういった中で法律で一律に直接規制する、ここでは実体規制という言い方をしていますが、それだけではなかなか効果を上げるには十分ではない面もあるのではないかということで、併せて、当事者間でそういった格差を是正していくという手続規制というものも活用されています。イギリスや、スウェーデンなどでは、積極的に活用されていると理解しています。
 こういうことを考えますと、実体規制と併せまして、日本においても個別企業で正規や非正規の方の処遇の差の実態がどうかを把握して、それに対して労使が是正に向けた取組を行っていくことで、正規と非正規の処遇の差の改善を図っていく、あるいは納得性の向上を図っていくことが大切で、それは公正にも資するでしょうし、企業にとっても生産性の向上に資するのではないかと思います。
 ローマ数字の8頁の上のほうの○ですが、そういったことをやる前提として、処遇の差の実態を把握するということがあるかと思います。処遇の差の実態をも把握すると同時に、職務の把握も必要だと考えられますので、この職務の差を把握するうえでは、職業分析や職務評価の活用も考えられると思います。日本においては、企業によって、その辺の出来具合が違っていて、そもそも賃金表ですら定かでないというような企業もたくさんある中で、一律に導入するというのは難しいのかもしれませんが、大企業や一定の企業では現状でもしっかりやっている部分はありますし、役割に応じた職務給体制をしっかり整備している所もあります。そういったことを踏まえて、企業の実情に応じて、職務分析や職務評価を行っていくことは、有効性があるのではないかと思います。正規・非正規間の処遇の差の納得性の向上や処遇の改善にも資するのではないかというようなことを提案しています。
 もう1つ申し上げていますのは、(2)です。正社員への移行や多様な正社員に係る環境整備等です。先ほど申し上げましたように、雇用形態に関する不利益取扱いの禁止ですと、基本的には同じ職務の人同士を基本給においては比較するというのがベースですので、以前からもそうですし、最近特にそうだと思いますが、正規の方と非正規の方で職務分離が発生しているとなりますと、これだけでは是正には十分ではないと考えられます。そういった場合においては、非正規の方が正規に移行していくルートをつくる。最近、正規になれなくて非正規になっている方はかなり増えてきていますので、そういった方には正規に移行できるようなキャリアアップを支援していく。あるいは、正規のような長時間労働はできないが、短時間で高度な仕事だったらできますというような方もたくさんいらっしゃいますので、そういう方に対しては多様な正社員というものもあり得るのではないか。そういったことも、併せて検討していったらいいのではないかということです。
 それから、正規・非正規の労働条件という面では、これは国の責任でもあるわけですが、税や社会保障制度が必ずしも雇用形態に対して中立的になっていない現状が影響していますので、併せて雇用形態に中立的な税・社会保障制度の検討が必要だろうと。これは、先日出されました社会保障改革の成案でも言われている内容です。
 以上、いろいろと申し上げさせていただきましたが、「おわりに」の所はいま大体説明したことをもう1回繰り返しているので、あえて説明は省略させていただきます。この研究会では、だいぶご議論されている内容が多かったと思いますが、報告をさせていただきました。
○今野座長 皆さんからご質問、ご意見があればお願いいたします。
○浅倉委員 コンパクトにまとめていただいているので理解しやすい報告書だと思います。質問をさせていただきたいのですが、この報告書では、人権保障に係る均等待遇原則と、雇用形態に係る均等待遇原則を区分して、一方を差別的取扱い禁止原則として、もう一方を不利益取扱い禁止原則としております。その違いは、要するに両面性か、片面性かという区分けをしていると思うのですが、障害とか年齢を理由とする差別という、いわゆる古典的ではない新しい差別というものは、一体どちらに区分けされるのかという議論がされたのかどうかをお伺いしたいと思います。
○飯田政策統括官労働政策担当参事官室長補佐 いまの質問の新しい差別禁止事由については、研究会で十分に議論はしておりません。あくまで雇用形態に係る均等待遇原則の法的性格を明らかにする観点で、性別や人種などの古典的な差別禁止事由と比較して整理した形です。もともとこの研究会の目的が雇用形態ですので、その辺りは十分議論されておりません。
○浅倉委員 片面的か両面的かで区分けされるときに、障害などはかなり片面的なものなので、このような区分けそのものが絶対的なものかどうかというところに少し疑問を持ったのです。
○飯田政策統括官労働政策担当参事官室長補佐 そこは、「原則として」という文言が報告書に入っております。
○浅倉委員 わかりました。もう1つは意見に近いかもしれません。この研究会の中の議論というのはたしかに理解しやすいとは思うのですが、疑問もあります。例えばパート労働者の救済は、EUでは男女差別の禁止アプローチでほとんどの解決がなされているという分析があります。また、EU諸国では非正規の基本給を巡る争いが少ない。なぜかと言うと、職種・職務給が中心で、それが非正規にも協約賃金が適用されているからで、そもそも紛争は少ないという分析がされていて、それなりに説明されていると思うのです。しかし、だからこそと申しましょうか、日本ではそれに比べてどうすべきかという議論がどのようになされたのか、というところに興味があるわけです。日本では「男女差別の禁止」である労働基準法第4条がそれほどうまく機能せず、ましてそれが間接差別を禁止しているとも解釈されていないので、EUの1つの有効な法的な原則が、日本では活用されていません。男女間ではそもそも賃金に関する間接差別禁止規定が立法化されていないところが問題です。それから、欧州と比べてもう1つの解決方法である職種・職務給を中心とする協約賃金というのもない、ということです。
 ヨーロッパ諸国を参考にするときに、ヨーロッパではこうなっているという議論を前提に、日本と社会的な環境が異なるからそれをただちに日本に導入はできないという結論にすぐなりがちですが、しかしそうではなくて、日本では社会的な環境が異なるからこそ、むしろ立法化が必要であるという方向性で議論しないといけないのではないか。そうしなければ、ヨーロッパを参考にする場合はいい議論にならないのではないかというのが私の意見です。その辺りは研究会全体の方向性としてはどのように出されているのでしょうか。それを伺いたいと思います。
○酒光政策統括官労働政策担当参事官 研究会は報告の分量などを見ればわかると思うのですが、各国の分析をした上で整理をしていくことを中心にやっておりますので、どのように日本の法制を改善していくかという議論は、まだ不十分だと思っております。ここで出た議論としては、均等処遇なりの法制はこのような考え方ができるし、参考になり得るのではないかという一方で、それだけで処遇格差を完全になくすことは難しい。そういったことを考えていくと、「労使での取組」とここで書いてあるのは、まさに労使での取組を何とか進めていくことで実態を近付けていかなければいけないのではないかという議論だったのかなと思います。
○小宮山副大臣 均等処遇の研究会には出られるだけ出ていたのですが、当初からお願いしていたのは、もちろん学者の皆様の学問的な研究ではあるけれども、実態としてそうした差別がなくなるような形に機能できるような結論を是非まとめてくださいということです。ただ、最初に酒光からもお話したように、正規・非正規の扱いというか、日本はその構造が違うので、そこのところが研究会のレベルではなかなか乗り越えられていない。いま言っていただいたように、各国の例を基にして、何が差別禁止で何が不利益取扱い禁止かという整理はかなりできている。現場で女性たちが差別禁止を何とかしてほしいと言っている中でも、「同一価値労働同一賃金」、「同一労働同一賃金」とか「均等待遇」など整理されないままに使っている部分が整理できたのかなと思っています。ここでこのように整理されたものが法改正に結びつくよう、このパートの研究会などで上手に使っていただいて、こちらも努力いたしますが、是非ご活用いただければいいなという私の思いがあります。この研究会で法改正に向けて、これもご活用いただきながら少しでも実態が良くなるようなところに踏み込んでいただければと思います。
○今野座長 その他、何かあればお願いいたします。
○水町委員 質問というよりも感想と意見ですが、1つは今の人権に関する差別禁止か雇用形態に基づく政策的な要請からくる不利益取扱いという片面適正化というのは、各国でいろいろな議論があって、ドイツも最初はパートについては差別的取扱い禁止という人権的な議論を踏まえながら、最終的には不利益取扱い禁止にきているのです。EU全体で共通のルールを作ろうというときの整理の仕方として、差し当たって人種を含めての性や、さらに年齢とか障害、性的指向も含めて人権の枠組みで、合理的理由の存否はあるにしても差別的取扱いで、雇用形態については、また別に不利益取扱い禁止として位置づけるとなっているので、そう単純ではないが、差し当たり、EUではそのように整理されていることを前提に、報告書としてはきれいにまとめられているかなという気がいたします。
 そこからいくつかあるのですが、1つは、やはり日本とでは前提が違うということです。まず、2つに分けられているとすれば、差別的取扱い禁止で「同一労働同一賃金」とか「同一(価値)労働同一賃金」とかポジティブ・アクションなどいろいろなものが今、進められていることを、これはパート研とは違うかもしれませんが、均等法改正やこれから出てくるであろう障害者差別や年齢差別に対するアプローチについて十分活かせるような対応を、一方ではお願いしたいというのが1つあります。
 もう1つ、パート研での議論からいくと、ヨーロッパのものをそのまま持ってきて、「同一(価値)労働同一賃金」は人権のほうだからこちらでは扱わないとそのまま行くかと言うと、前提がちょっと違う。ヨーロッパは産業レベルの労働協約などで職務給に近い賃金制度が導入されているから、賃金表を同じに適用すれば基本給の差はフルでもパートでも、無期でも有期でもできないために、実態としては起こらないので、ほぼ福利厚生に関する差として出てきているのです。ですから、雇用形態については同一(価値)労働同一賃金のようなものは議論されなくてもいいという前提の整理がなされているのですが、日本ではまさに基本給が大きく違うとか、違いは理由があるからいいとしても、バランスが取れているかどうかという議論がこれまで1つの大きな課題だったので、そこを政策的にどうアプローチするか。
 先ほどご紹介のあったローマ数字8頁では、個別企業の取組で職務分析・職務評価制度というのが出ていますが、法政策と言うよりも、各企業で頑張ってくださいねといった感じの位置づけになってきます。方向性としてはこれでいいと思うのですが、かつ、これを政策的にどのように組み込んでいって、促していくかという視点も、ヨーロッパの先端的な知見を日本的に政策に盛り込むとしたら、どのようにあるか。例えば、これまで議論してきたアクションプランをどう推進し、個別企業に対して政策的に促すという方向として位置づけることも、日本の問題の核心に迫っていくためには重要なところではないかという気はいたします。
 もう1つ、ローマ数字の7頁から8頁にかけては「個別企業の労使による」と書いてあるのですが、ヨーロッパでも個別企業における具体的な取組で、労使の話し合いを重視する、重視しないという話がありますが、その大前提としてヨーロッパには産業レベルの賃金制度という、産業レベルの労使できちんとした基盤ができていて、その下で個別にどう柔軟に対応しようかという話があるのです。日本も法政策で形式的にがんじがらめにやるというのではなく、労使の話し合いをしようという場合には、単純に個別企業に任せるというだけではなくて、企業を越えたレベルの労使の話し合いという基盤を作った上で、個別の企業でも話し合ってくださいということが大切かなと思います。また、最近では派遣労働者の取扱いについて労使が話し合いをして、共通宣言のようなものを出して問題に取り組もうということで、個別企業では対応できないようなものについては、企業を越えて労使で話し合うということも、特にこの雇用形態を通じては非常に重要な視点になってきます。この研究会においては、個別企業も大切だが、労使というときは必ずしも個別の企業で切り分けないで、より広く見ていく視点も大切かなという気がいたしました。
○今野座長 その他、いかがでしょうか。
○権丈委員 研究会報告書は大変勉強になりました。ありがとうございます。報告書の「正社員への移行や多様な正社員に係る環境整備等の取組」についてです。お話いただいた賃金体系や人材活用のほかに、一定期間働いた非正規労働者を無期雇用に転換するということについてはご議論されたでしょうか。ヨーロッパでも国による違いはありますが、ヨーロッパに比べて日本では、非正規労働が固定化されやすく、そのことが、賃金等の他の労働条件の低さとともに、正規、非正規の大きな待遇格差につながっています。その辺りについて議論がされていれば教えて下さい。
○酒光政策統括官労働政策担当参事官 細かく突っ込んではいないのですが、例えば非正社員から正社員への移行支援をするという中には、そのようなことも入り得るのではないかと思います。それを法的なルールでやるのかどうかなどといったところまでは議論はしておりません。先ほどの説明とやや重なるかもしれませんが、正規と非正規でかなり差がある中で、かつ正規になりたいという非正規の方もかなりいるので、そこへのルートを付けていくというのは大事なことではないか。その手段として、いま言われたような手段もあり得るだろうと思います。
○権丈委員 外国の事例について、そうした制度や取組がどの程度効果的かということの検証はされていますか。
○飯田政策統括官労働政策担当参事官室長補佐 この研究会の表題が均等処遇についての研究会となっておりますので、基本的に内容規制を中心に議論しております。
○黒澤委員 いまの労使の取組について、先ほど水町委員から企業を越えたレベルの基盤を作る必要があるという話がありましたが、こちらの委員会では非正社員の声をどうやって反映するかという、現状の日本における非正社員の代表制というものが、組合ということでなかなか担保できていない、確保できていない状況でどのような議論がなされたのか、お伺いできればと思います。
○酒光政策統括官労働政策担当参事官 非常に大切な問題です。いま言われたのは、労使で話し合うというときに、例えば今の組合が正規中心であるならば、あまり労使の話をしてもしようがないのではないかということだと思います。当然、その辺は今後検討していかなければいけない課題だと思っております。例えば労使の代表をどう選ぶかなどの問題があるということに対する議論は少し出たと思いますが、具体的にどうやっていくか、代表をどのように選んでいくかといったところまでの突っ込んだ議論はしていないということです。ただ、当然のことながら、非正規の方にとって何らかの形で代表性が担保できないといけないだろうということは言われていると思います。
○山川委員 大変よく整理されていると思います。訴訟上の話で、条文の組立てにも関係いたしますが、同一労働であるということは、立証責任の分配としては原告側に属するということです。しかし、職務関連給付ではそうだけれども、職務関連給付でないものについては、同一労働の立証は必ずしも要求されていないということですと、より上位の規範を考えると、同一労働が原告側の主張や立証責任に属するとは厳密には言えないのではないか。つまり、上位規範のレベルでは比較が可能であること自体が立証責任の対象となり、その具体的な中身として、訴訟上は間接事実ですが、ある場合には同一労働が原告側の主張立証責任になるということでよいかどうか。
 逆に、抗弁と書いてあるときもあるのですが、ある事実につき原告側が主張立証責任を負い、かつ、その反対の事実が被告側の立証責任になるということは、その事実が存在するかどうかわからない場合が立証責任の問題になるわけですから、論理的にあり得ないわけです。ということは、場合によって実際上の立証の負担が原告側に行ったり、被告側に行ったりするということなのか。仮に条文を作り直すことになった場合に、同一労働という要件をどちら側の立証責任に属するものとして書き込むか。客観的・合理的な理由があるという事実を根拠づける要素が同一労働でないということであるとするのか、あるいは同一労働であるということを、原告側のまず立証すべき要件として書くのか、あるいはそういうことはそもそも書かないで、もっと下位規範レベルの話として柔軟にやれるようにするのか。その辺りについて、果たしてそんなマニアックな議論がEU諸国であったかどうかもわからないのですが、何らかの議論はあったのでしょうか。
○今野座長 何かありましたか。ご本人もマニアックだとおっしゃられていますから。
○酒光政策統括官労働政策担当参事官 私よりも水町先生や浅倉先生のほうがお詳しいのではないかと思います。本来は同一労働だということを言わないといけないと思うのですが、職務に関連しない給付については、仕事に関係ないのだから、仕事について言う必要はないのではないかということになっているのではないかと思うのです。ただ、私は法律の専門家ではないので迂闊なことは言えないと思っております。
○水町委員 条文の構成ですと、例えばパートの場合は比較可能なフルタイム労働者とか、比較可能な期間の定めのない労働者に対し、客観的な理由のない限り、不利益取扱いをしてはならないとなっています。比較可能な労働者に対して不利益な取扱いを受けていることが一応立証責任になっていて、それに対して会社側が反証として、客観的理由があったのでこれは違法ではないということになって、「比較可能な」の中に職務関連給付、つまり基本給であれば、職務が同じ労働者と比べて不利益を受けていることを立証することになっているのですが、職務給でなければ、同じ社員なのに、我々は食事手当をもらっていない、昼休みの時間は同じように受けているのに、我々だけは受けていないというので、一般のフルタイム労働者に比べて食事手当をもらっていないことを立証することが想定されていますが、比較可能なフルタイム労働者や通常の労働者の立証が、裁判上はほとんどなされないようになってきているのです。そこが杜撰で、結局、客観的理由があるかどうかにかなり吸収されてしまい、いろいろなことを会社が反証して言っていけというような、個別の裁判を見ると事実上はそのような状況になっているかなという気がします。
○山川委員 ここでは同一労働の立証責任が原告側にあるということになっていますが、おそらく以前の話からすると、今のお話は、職務関連給付や基本給についての訴訟があまりないからで、職務関連給付以外の手当ですと、「比較可能な」という要件は原則として満たしてしまうという取扱いになり、給付の内容との関連により異なることになっている。逆に言うと、同一労働かどうかというのは、究極的な立証責任のレベルというよりは、解釈上の下位の規範として整理されるということですね。
○水町委員 条文で同一労働という要件を入れているのは、私の知る限りはないです。
○山川委員 日本でも労基法第4条などは同じことですよね。
○水町委員 8条を入れていますけれども。
○山川委員 そうですね。裁判所での指針と言えばそうかもしれませんが、下位の規範レベルのところで同一労働が出てきて、職務給付に関して言えば、同一労働が実際上は要件のようなことになっている、そんな整理でよろしいでしょうか。
○水町委員 いいと思います。
○今野座長 その他、何かあればお願いいたします。日本流に言うと、ヨーロッパの場合は均等という問題はあるが、均衡という問題はないということですね。なぜだろうかという非常に単純な疑問ですが。
○酒光政策統括官労働政策担当参事官 問題にしている給付なり何なりがあって、それが同じかどうかを取りあえず議論するということなので、均等ということになってしまうのでしょうね。
○今野座長 働いているパート労働者にとっていちばんわかりやすい状況は、職域が分離している場合ですね。いわゆる正社員と分離していて、同じ仕事をしているフルタイマーはいない。しかし、やはり私の賃金は低過ぎるわ、低過ぎるぞという不満が出ない、結局そういうことですよね。
○酒光政策統括官労働政策担当参事官 場合によってはそこに比較対象者はいないけれども、もし人がいたとしたら、この賃金はもらえるはずだという、仮想比較対象者を認めるかどうかなどといった議論はあるだろうとは思います。
○今野座長 均衡と言う以上は、いなくてもいいわけですよね。職域分離されていて、賃金差があり、その差がいくら何でもひどすぎるという訴えがないということですね。訴えの前に、そんなに不満がないということでしょうか。
○水町委員 基本給については同一の賃金表を適用することが前提になっているので、日本でバランス、均衡と言う場合は基本給です。しかし、そこの議論がヨーロッパでは起きにくいのです。
○今野座長 それは協約賃金があって全労働者をカバーしているから、あり得るとしたら、そういう理屈ですね。
○水町委員 はい。
○今野座長 しかし、何かもう1つ、協約賃金の実効性が全体的に落ちてきているというのが我々の認識です。ということは、ドリフトして、もっと高めにフルタイマーがいるかもしれないというのはあり得るわけです。そういうことがあり得るのに、大きな不満にはなっていないのだなとちょっと思ったのです。
○水町委員 それが訴訟の形態として、基本給プラスアルファの手当と言われているものが各企業ごとに増えてきているので、フリンジベネフィットと言われるような手当の部分に関して、上げる、上げないという訴訟がかなり増えてきているのです。そこでは合理的な理由があるかどうか。合理的な理由がなければ、全員に同じように全額支給か、時間比例支給をしなさい、合理的理由がある場合は、上げる、上げないでいいですよという、オールオアナッシングの議論で今までは裁けているということではないでしょうか。
○今野座長 ついでにもう1つ。協約賃金外の人たちもいるわけですが、そのような人たちの中では、このような問題で紛争は起きないですか。つまり、パートでも比較的高度なプロフェッショナルでやっている人というのは協約賃金外です。ドイツの例で言うと、タリフはあるが、タリフの外の人、例えば日本の総合職に近い人たちというのはタリフ外ですから、この制約は受けていないですよね。私はそのように思っていたのですが、そうではないですか。ですから、そこには協約賃金というのはあるのかなと思っていたのです。
○水町委員 管理職や高給の職員についても基本的に労働協約があって。
○今野座長 別にあるわけですね、失礼しました。
○山川委員 今の点に関して、半分質問で半分意見です。裁判規範上は、たぶんオールオアナッシングで、均衡という概念は入っていない。アメリカなどでも入っていないのですが、裁判規範以外のところで何らかの対処がなされていないか。つまり、男女の問題ですが平等賃金レビューとか、その他いろいろと先ほど来問題になっている自主的な取組の中で、そういった不均衡問題を改善しようという取組があるかどうかです。逆に、意見になるかもしれませんが、もし、裁判で実現するのがやりにくいという面があるとしたら、そういった形での改善というのもあり得るかなという感じがいたします。
○水町委員 それこそ労使交渉で納得できるかどうかの判断で、ただしドイツのように、正社員組合で派遣はほとんど入っていないとなると、組合自体の正当性があるかというところで問題になってきているということではないでしょうか。
○今野座長 佐藤さん、いいですか。これについてはこの辺でよろしいでしょうか。あまり長く引きとめていろいろな質問をしても、気の毒ですから。
○今野座長 最初の議題はこの辺で終わります。ありがとうございました。
 次の議題に移ります。お手元の議事次第にありますように「研究会におけるこれまでの主要な御意見」が議題になっていますので、それを事務局から説明してください。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 議題2に関して資料を説明します。「『今後のパートタイム労働対策に関する研究会』報告書骨子(案)」について、本日は、先生方に構成の確認と不足する点などについてご指摘いただければと考えています。
 資料2を簡単に説明します。まず「はじめに」を書き、その後に「第1 総論」ということで、第1の1「パートタイム労働をめぐる現状」として、研究会の第1回、2回でご説明しましたパートタイム労働の現状と法律の施行状況について記述することを考えています。第1の2「パートタイム労働の課題」として、論点の項目に沿って課題を記述したいと考えています。
 「(1)通常の労働者との間の待遇の異同」の、1つめ、差別的取扱いの禁止について、第8条の対象となるパートタイム労働者が少ないのではないかということと、第8条の3要件が法の本来の趣旨から離れて、企業のネガティブ・チェックリストとして機能している可能性を記述することを考えています。2つめ、均衡待遇の確保、現在の第9条の関係ですが、パートタイム労働者の賃金の決定にあたって地場の賃金より、職務の内容などを勘案して賃金を決定しているという施行状況調査の結果もありましたので、一定の効果は見られると考えていますが、他方で賃金についてまだ不満・不安を持つパートタイム労働者も一定程度存在することもあり、更なる均衡待遇の推進を図る必要があるのではないか、ということです。
 (2)待遇に関する納得性の向上。現在のパート法第13条はパートタイム労働者の求めを要件として、求めがあった場合に、その待遇を決定する要素について事業主が説明するということになっています。一方、パートタイム労働者は、契約上の地位の弱さから、実際には法律に基づいて事業主に説明を求めることが必ずしも容易ではないと考えられている点や、パートタイム労働者の納得性をより一層向上させる必要があるのではないかということです。
 (3)教育訓練です。現在の第10条の関係ですが、パートタイム労働者に対する教育訓練の実施率は通常の労働者よりもかなり低くなっており、パートタイム労働者のキャリア形成を促進していく必要があるのではないか、ということです。(4)通常の労働者への転換の推進です。現在、転換推進措置は約半数の事業所で実施されていますが、さらに推進していく必要があるということです。併せて、パートタイム労働者は、勤務時間や日数が柔軟な雇用形態、働き方を自ら選択している状況もあり、そのニーズを踏まえた方策の必要性があるかどうか、ということです。
 (5)パートタイム労働法の実効性の確保です。(6)その他ということで、税制、社会保険制度等関連制度についての課題を採り上げます。
 第1の3として、検討にあたっての留意事項ということですが、パートタイム労働者の実態を十分に踏まえる必要があるということ、有期労働契約の在り方について、労働政策審議会労働条件分科会で議論がなされているところですが、パートタイム労働者の相当数が有期労働契約であり、そちらの検討と整合性を確保する必要があることを考えています。
 本年3月の東日本大震災が企業にかなりの影響を与えているという点も、留意事項の一つと考えています。
 第2の「今後のパートタイム労働対策」についてです。
 1「通常の労働者との間の待遇の異同」(1)差別的取扱いの禁止です。第8条の対象となるパートタイム労働者が少ないということであり、現行法の3要件のあり方、あるいはEU指令や、それを踏まえたEU諸国等の法制にあるようなパートタイム労働者であることを理由とした合理的な理由のない不利益取扱いを禁止する法制も含め、適用範囲の拡大の検討について、盛り込んでいくことを考えています。
 (2)均衡待遇の確保です。第9条の規定の実効性を確保し、規定を強化するためには、例えばいまの努力義務規定を義務規定化するのか、その場合の課題、あるいは、むしろ事業所内のさまざまな実態を踏まえ、事業主が雇用管理改善に向けて、自主的に、行動計画を策定し、それを推進していく方策の検討について盛り込んでいくことを考えているところです。(3)職務評価の関係ですが、専門家の方に対して行ったヒアリングの結果を整理して盛り込んでいきたいと考えています。また、職務評価制度の導入促進とその活用、課題などについて盛り込んでいくことを考えています。
 2「待遇に関する納得性の向上」です。現在の「パートタイム労働者からの求め」という要件を維持したままパートタイム労働者の納得性を向上させる方策があるか、あるいは「パートタイム労働者からの求め」にかかわらず、集団的労使関係の枠組みを活用することにより、パートタイム労働者の納得性を向上させる方策の検討が必要かについて盛り込んでいくことを考えています。
 「教育訓練」について、先生方から、教育訓練そのものが目的というよりも、むしろパートタイム労働者をどのように活用しようかという経営戦略を採ることによって、パートタイム労働者のキャリア・ラダーを整備し、それに応じた教育訓練を実施するといった順序ではないかというご意見がありました。そういったことを推進する方策の検討について書き込むことを検討しています。
 4「通常の労働者への転換の推進」について、3つに分け、1つは通常の労働者への転換の推進について、パートタイム労働者を活用するという経営戦略がまずあって、キャリア・ラダーを整備し、教育訓練と一体として、通常の労働者への転換が最終的にあるといった仕組みを促進する方策の検討について盛り込んでいくことを考えています。
 多様な正社員、「勤務地限定正社員」や「職務限定正社員」について、雇用保障のあり方に留意した上でパートタイム労働法における位置づけの検討について盛り込んでいくことを考えています。
 パートタイム労働とフルタイム労働との間の相互転換について、通常の労働者への転換とは趣旨が異なると考えていますが、EU指令やそれを受けてEU諸国の法制にはあり、パートタイム労働とフルタイム労働との間の相互転換を促進する方策の検討について盛り込んでいくことを考えています。5は「パートタイム労働法の実効性の確保」です。
 6「その他」(1)ですが、これまで先生方からご指摘いただきましたパートタイム労働法の対象でもなく、有期労働契約の検討の対象でもない、フルタイム無期契約労働者の取扱いについても、何らか盛り込めればと考えています。
 (2)税制、社会保険制度等の関連制度ということで、就業調整がパートタイム労働者の能力の発揮、待遇改善の機会を阻害しているということ、賃金の上昇を抑制し、労働市場における賃金決定機能を歪めていることについて盛り込んでいければと考えています。簡単ですが、骨子は以上です。
 資料3は「研究会で議論していただく論点(案)」、資料4は「これまでの主な御意見」です。
 最後に資料5ですが、以前に先生方からパートタイム労働者の待遇の改善について、労働組合がどのように取り組んでいるのかとのご指摘がありました。6月末に公表されました労働組合活動実態調査という5年に1回の調査ですが、この結果を資料5として付けています。パートタイム労働者に組合加入資格があり、かつ、組合員がいる労働組合ですと、パートタイム労働者に関する取組「あり」が、96.5%です。具体的には労働条件、処遇の改善要求や、相談窓口の設置、アンケート等での実態把握、組合加入の勧誘活動等の取組をしているということです。
○今野座長 ありがとうございました。全体の進め方ですが、ようやく報告書のまとめの段階に入ってきました。今日は初回ですので、骨子(案)を出していただきましたので、今日はこれについて皆さんに自由に意見を言っていただいて、それを踏まえて原案を作っていただくという手順でいきたいと思います。したがって、全体的には仕切りませんので、勝手にどんどんやってください。
○佐藤委員 資料2の2頁の「今後のパートタイム労働対策」の1の(1)と(3)に関わって、考えていることを少しお話したいと思います。先ほどの報告書でも、例えばヨーロッパであれば職種別の労働市場があり、職務給があるという中で、同一労働同一賃金とか同一(価値)労働同一賃金という議論が出てきているという話でしたが、その関係で職務評価のところで、ILOの職務評価のガイドラインの説明がありました。あれは男女の賃金差別だったと思いますが、基本的には男性、女性が同じような職務給が適用されている。パートではフルとパートについて同じような職務給が適用されているけれど、職務給をやっていく背景にある職務評価をしていくところの、職務評価のポイントの配分が女性に不利であったり、パートに不利であったりということが起きているとすれば、これは問題なので、そういうことが起きないように、例えばパートの代表を入れたり女性の代表を入れて、あるいは現場がわかるような職務評価のポイントを作って評価するという話だと思うのです。
 そういうものを考えると、男女ですが、基本的にはフルとパートに置き換えれば両方とも職務給は適用されているという前提で、その適用されている職務給の背景にある職務評価がパートに不利な職務評価になると、これは問題だという議論だと思うのです。それを踏まえると、日本でそれを考えたときに、日本でもフルタイマーとパートタイマーで仕事給なり職務給が適用され、かつそれが両方とも同じ給与体系の合理的な場合、ILOが言ったようなそこでの仕事給なり職務給を設計する前提としての職務評価のときの、それが女性なりパートに不利になっていないかどうかということをやるのは、当然合理的だと思うのです。
 問題なのは、フルとパートが職能給であると。パートの上のほうが、パートとフルが職能資格、職能等級で重ねたりするものが出てきています。こういう場合の職務評価といったときに、職務の価値を評価しろというのではないだろうと。この場合何をやるべきかというと、パートとフルに適用されている職能等級の背景にある職務遂行能力の評価がパートに不利になっていないかどうかということだと思うのです。それをやらなければいけないと思うのです。日本でも職能資格制度を作るときには、職務調査でも同じように言うのですが、仕事に求められる職務遂行能力を評価し、これをまとめて等級を作り、これをパートなりの働いている人の等級に張り付けるのです。そういう賃金制度が合理的な場合やるべきことは、その等級制度を作るときの職務遂行能力が女性なりパートなりに不利になっているかどうか、これをきちんとやるべきだと思うのです。ですから、職務評価と言ったときに、フルとパートに、つまり仕事給なり職務給を適用することが合理的な場合はILO型の職務調査あるいは職務評価、これは私もそうだと思います。他方、フルとパートに両方とも職能等級制度を導入するのが合理的な場合にやらなければいけないのは、その職務遂行能力の評価の仕方が女性やパートに不利になっていないか。よくあるのは、パートで職務等級制度で3級となったときに、もう少し見直すと社員の1級になるという議論は日本でもあるだろうと思っていて、そういう職務評価はあり得るだろうと思います。問題なのは、フルタイムは職能等級制度で、パートが仕事給・職務給にするのが合理的であるという場合もあるわけです。これを認めるか認めないかということもあるだろうと思うのです。この領域についてどうするかというところはいずれも当てはまらなくて、仕事の価値を評価しろとか、それぞれ共通の土俵でというのは、ここは出てこないだろうと。もともと賃金制度を異にする合理性がある場合は、それぞれが合理的であるかどうかという議論をすべきだと思っています。
 そのことで3要件なのですが、2つめの「人材活用の仕組みや運用等が同じ」かどうかということで、雇用契約とか雇用形態の名称に関わらず、フルタイムとパートタイムが実際上同じような人材活用を行うと。その結果として、例えば両方とも仕事をベースにした配置なり活用が行われ、職務給にしなければいけないという場合になったときに、初めて1つめの「業務の内容及び責任が同じ」が出てくる。つまり、同じ仕事なのか、同一労働なのか同一価値なのかというのは1が出てくるのです。同じように職務をベースにして活用していて、当然仕事給を適用するのが望ましいということがあったときに、次に1つめが出てくるのです。同じ仕事に就いているのか、あるいは仕事が違っても同じ価値なのかという議論が出てくるのかなと思います。
 問題なのは、人材活用の仕組みと言ったときに、仕事をベースにせず、職能をベースに活用しているということがあります。つまり、パートタイムもフルタイムも職務遂行能力で、自由に配置し、ローテーションもありです。賃金は就いている仕事で決まるわけではなくて、本人の能力で決めるということをパートについてもやっている。このときどうするかというと、1の「業務の内容及び責任が同じ」はなくていいと、2の「人材活用の仕組みや運用等が同じ」だけだというのが私の考えなのです。つまり、仕事が違っても活用の仕方がパートもフルも同じようにローテーションをし、能力で評価しているとすれば、1の条件がなくてもフルとパートについて基本的に同じ賃金制度を適用することが求められる。そういう意味で、2の人材活用がすごく同じで、2が仕事ベースで活用されていれば1が出てくると。仕事ベースではなくて職能ベースで活用していれば、2だけでいい。2の条件が同じであれば、社員もそうです。同じ資格等級制度を適用し、パートにも、つまりフルタイムに同じ能力の人がいなくても、等級を設計して適用することが大事なのかなと思っています。
 そういう意味で、先ほどのヨーロッパの仕組みをどう適用するかで、基本的にはヨーロッパ型の職務をベースにした活用になったときは、当然職務をベースにした評価の仕方がパートの不利になっていないかどうか、あるいは同じ仕事かどうかを見ていくし、フルとパートを職能をベースにした活用が合理的になっていれば、雇用名称に関わらず同じ賃金にする、つまり職能をベースにした賃金制度にし、かつその等級制度なり職務遂行能力の評価の仕方がパートに不利になっていないかどうかを見ていくのが、人事管理の立場からすると合理的なのかなと思っております。
○今野座長 いまの佐藤さんの議論の前提で、両方とも職能給を採っている場合、人材活用だけ見ればいいので、1の仕事は見なくていいという話ですね。そのときの前提は、同じ職能資格に格付けされているという前提ですね。
○佐藤委員 そうです。基本的にはパートもフルも職能資格制度を入れていれば、つまりフル・パートしかやっていない仕事についても、そこに従事している人の格付けもしているわけですね。そうすると、その格付けが適切かどうかという議論をすればいいという話です。
○今野座長 いずれにしても、その場合は、仕事でなくて能力で適正な格付けをしているということは入るのですね。
○佐藤委員 もちろん、そうです。
○今野座長 ということは、単純に言うと、同じような能力であるということを認定さえしておけば、活用が同じかどうかを見ればいいということになるので、佐藤さんの意見だと、パート法でいくと、1が仕事から能力に変換したと考えれば一緒だということですね。
○佐藤委員 「同一労働同一賃金」、「同一(価値)労働同一賃金」、もう1つは「同一能力同一賃金」ですね。そちらの原則というのが、その場合、つまり人材活用の仕組みが職能をベースにしている場合の判定の基準は、「同一能力同一賃金」という基準で見ているかどうかということです。ですから、偶然フルタイムがいなくても、フルタイムにパートと同じような能力を持っている人がいれば、そう格付けされるわけです。それが日本での考え方としてはいちばん、そういう部分もあると。
○今野座長 それでいくと起こりそうな紛争は、同じ能力かどうかが争われますね。
○佐藤委員 そうですね。職務遂行能力評価の基準がパートや女性に不利でないかどうかということと、その基準に照らして、Aさんというパートの評価が会社は3だと言ったけれど、本人は2だと、こういうことが問題になってくる。
○今野座長 さらに言うと、想像ですが、仕事より少し抽象的な変数を扱うので、判定するのが面倒かもしれませんね。
○佐藤委員 ただ、仕事についても同じで、同じかどうかについてそう簡単ではないので。
○今野座長 簡単ではないですが、仕事は見えている部分が相対的に大きいので。ほかにありますか。
○浅倉委員 佐藤先生に質問ですが、職能で評価するパートがいるとすると、なぜ片方が正社員で片方がパートなのかという、そこが説明がつかないように思うのです。つまり、企業が人材活用の仕組みの中で、こちらは正社員、こちらはパートと区分けするわけです。能力が同じだったら同じに扱うという原則があればいいけれど、そうではなくて、そもそも入り口を違えて別個に採用しているので、そうすると、なぜ片方をパートにしているのかという、人材活用の仕組みとしてどのような理由があるのか。
○佐藤委員 具体的な意味で、この場合は短時間という意味でパートを使っています。例えば、入り口は違うけれど、勤続5年とか8年になって一等等級になると、実際上フルタイムとパートを同じ等級で括っている会社があります、同じ資格等級で。フルタイムの社員というとパートの社員と同じと、このようなイメージです。唯一違うのは、雇用契約のところは片方がフルで片方は短時間かつ有期ということです。なぜ無期にできないかという議論はあると思いますが、処遇は一緒です。
○浅倉委員 つまり、いままで議論していた短時間正社員というイメージではないでしょうか。
○佐藤委員 均等にするということは、これでも均等、同じ職務で評価しないと、職務給にしないと均等にならないかどうかではなくて、職能給をベースにした均等というのはこういうことではないかと言っているわけです。
○今野座長 浅倉さんの質問はそういう論点ではなくて、パートもフルも、正社員もパートも職能資格制度、職能給でいくのだったら分けておく必要はないのではないかという話ですね。均等問題とは違う話ですね。
○佐藤委員 同じ賃金制度を適用するという点では、人事制度上同じ雇用区分で分けていないのです。
○浅倉委員 そういうパートができれば。
○佐藤委員 均等にしなければいけないと分けてはいけないということですから、同じ雇用区分にしろという趣旨で、時間だけです。そのときに、仕事ベースだけでしか作れないのかどうかということであって、仕事ベースで作る作り方もあるし、職能ベースで作る作り方もあるのではないかというだけの話です。
○今野座長 たぶん、浅倉さんの質問に対する企業側の回答は、ここで私が何度も言っていますが、最初から将来のキャリアを伸ばそうということを前提に約束をして採る人と、結果的にキャリアが伸びる人とは契約が違うと。そこで分けているという理屈だと思います。だから、結果的に得た能力が、伸ばすことを前提にして伸びた正社員の能力とたまたま一緒だったら、それは同一賃金にしましょうというのが佐藤さんのご意見で、結果は一緒でも、そこに行くまでのプロセスが違うので、社員は別区分にしますというのが企業の理屈だろうと思います。
○権丈委員 佐藤先生のお話に関して、少し基本的なことを確認させていただきたいのですが、フルタイムやパートで職務給が適用される人たちと、そうではない人たちというのは大体どれくらいいるのかはわかりますか。
○佐藤委員 実際上は、フルタイムの人も職能給だけとか職務給だけとか、組合せなわけです。パートで言うと、キャリアが若いほうは割合仕事ベースが高くなっています。活用している所は、グレードが高くなっていくと職能給部分が増えてくる。配置というか、仕事の範囲が広がったりということですから、異動できるとか応援できるということは仕事ベースでは決められませんから、大体職能給ベースになってくるのです。そうすると、社員のところと重なってくる。社員は比較的初めから職能給。社員は上のほうに行くと仕事給化していくのです。上のほうにいって課長になると、ポストでお金を払うみたいになってくるのです。そういう意味で、単純に1:0ではない。わかりやすく1:0で説明しただけで、実は重なっているので、構成が職能給部分と仕事給部分で、そのウエイトが変わってくるのです。
○今野座長 そんな統計はありません。私の感覚でいくと、圧倒的に多いのは職能給・職務給型です。それでだんだんパートの活用が進むと、少なくなってきますが職能給・職能給型、さらに少なくて職務給・職務給型。大体そんな分布かなという感じです。いずれにしても、後者2つは同じ格付け制度と賃金制度をとっていますから、パートの活用が進んでいることが前提だと思います。でも、ほとんどは職能・職務型だと思います。統計はないです。わかりません。
○山川委員 直接いまの内容に関係するわけではありませんが、報告書の骨子の構成の関係で、第1の総論の1が現状、2が課題で、その後すぐに各条文の課題に入っているわけです。課題というには、一定の評価の前提みたいなものがあると思われるのですが、たぶん、この間にいま議論になっていたような、そもそも人事管理としてパートタイマーの方たち、あるいはその労働力をどのように活用するかという議論がここにある必要があるのではないかと思います。それについては、各企業に任せればいいかどうかという問題もあって、そこは有効活用というか、公益的な、何らかの政府としての取組の必要性があるとか、あるいは格差問題にどう対応するとか、そういった基本的な視点というか、理念が盛り込まれていた方がよさそうです。ただ、ここで結論がすべて自動的に決まってしまうようなことだと、あとの記述の意味がなくなるので、いろいろな見解があるという前提のもとで、現状と課題の間に、人事管理、経済学、法律など、いろいろな意味での総論的な視点を加えたほうがいいのかなという感じがします。
 また、比較法について、せっかく専門の先生方がいろいろな議論をして、JILPTの報告書もあるので、どう組み込むかはいろいろあって、まとめて書くか、あるいは個別的な所に入れるかは検討する必要があるとは思いますが、どこかに書いた方が良いと思います。
 いまの議論との関係ですが、正社員とは何かという問題は、3要件の中身の話でもあるし、あるいは格差の合理的理由の中身の議論にもなるかもしれないのですが、いまのところパートタイム労働法8条の3要件が正社員の代替変数というか、そういうものとして取り扱われているような気がするのですが、それでよいかどうか。これからまた議論をするのも難しいかもしれませんが、これは有期労働契約の話でも出てくるので、検討する必要があるかもしれません。
○佐藤委員 全部パートと考えるかですね。
○山川委員 正社員とは何か、先ほど座長が言われた、将来のキャリアも見越した計画の下で契約を締結しているような人ということかもしれませんが、よく有期契約だとリスクプレミアムが付くから、高い給料で雇うべきだという話になりますが、現実は逆ですね。それは理念的な意味での契約内容が違うということなのかもしれませんが、要は正社員とは何かということをどこで書くのか、書くとすれば、いま議論になっているのは3要件の話かもしれませんが、賃金制度との絡みでも問題になりますね。その辺りを、結論が出るかどうかわかりませんが、盛り込んではいかがかと思います。
○水町委員 いまの点は、先ほどの山川先生の話から言うと、この法律やこの研究会は、職務給制度にしろとか、職能給制度にしろとか、年功給制度にしろということを求めているわけではなくて、いろいろな賃金制度がある中で変なことをするなとか、合理的理由のない不利益取扱いをするなということです。これは職務給制度だから仕事に合った賃金になっているかとか、職能給制度だから能力に見合った賃金になっているかというのは、先ほどの言葉でいうと下位規範みたいなもので、法的な用語で、ヨーロッパの用語で言うと比較可能なフルタイム労働者とか比較可能な労働者に対し、合理的な理由のない不利益取扱いをしてはいけないという、比較可能性か合理的理由の中かどちらかに入り込んでくる問題です。それは給付の内容によっても違うし、企業の方針によっても違うので、そういうものを受け入れられるような要件として、どの会社にも当てはまり得る、どの労働者にも当てはまり得る要件にして、それは具体的な当てはめの問題で対応できるような、要件としてどの会社にも当てはまるはずのない3要件を要件として立てていることが、いろいろな所で問題になってきているので、そこをもう少し大きな風呂敷にしながら、ただし具体的な議論はその条文の中でできるような基盤を作って対応するというのが、これまでの研究会の中でおおむね合意が得られている中身ではないかという気がします。
○佐藤委員 水町委員がおっしゃったのは、3要件も全部外すというよりは、比較可能な労働者がいるかいないかだけでということですね。
○水町委員 いるかいないかだし、いたとした場合に、合理的な理由をちゃんと説明して納得していただいているかということです。もちろん会社によっても違うし、給付の内容によっても違ってくるので、個別的に当てはめていくしかない。
○今野座長 そうすると、比較対象者はどう予測すればいいのでしょうか。
○水町委員 給付によって違うということを行政が情報提供したり、ガイドラインを作ったり、その中でヨーロッパの議論もあるし、それを日本に当てはめるとこうなるということを、これまでも一定の議論をしてきましたし、それは基本は労使で話し合っていただいて、労使の話合いだけでわからないような所には適切な情報提供ガイドラインをして、給付ごとにきちんと理由のあるものにしていってくださいとお願いするしかないですね。ヨーロッパは、試行錯誤の中でそれをやってきていまに到達しているので。
○今野座長 これは、いまの3要件というのは、特に活用のところは、日本の企業の実態を踏まえたという感じがするので。
○佐藤委員 たぶん、水町さんがおっしゃったのは、人材活用の仕組みが違うと、かなりの場合比較対象労働者がいないという話になるので、日本の文脈で言えばそれに近いのではないかという気がします。比較対象労働者と言ったときに、先ほど言ったように人材活用の仕組みが同じというのが1つの枠組みで、すべてをカバーできるかどうかは別です。ただ、賃金制度の作り方によってくると思いますし、生活関連の場合はまた違ってくるので。
○水町委員 その具体的理論はわかるのですが、条文の作り方として、人材活用の仕組みと運用みたいなものが要件として残ると、職務給制度をとっている企業にもこれを適用しなければいけないのかとか、通勤手当や食事手当についても、キャリアが違うから、キャリアのない人たちには全部あげないということで、みんなが納得できる制度になるかというと、たぶんそうではないので、8条は適用要件全部ですから、そういうものにも対応できるような条文に仕込んでおかないと、いままでと同じ問題が起こるのではないかと思います。
 合理的理由として、人材活用の仕組みが下位規範として残ることはもちろん重要なことで、日本的なことだと思いますが、それもちゃんと理由をもって説明しておかなければいけないということだと思います。
○山川委員 いまのお話との関係で、下位規範として人材活用の仕組み的なものを残すとすると、その内容をどうするかは、先ほどから議論のあるとおりですが、もう1つはその下位規範の示し方の問題があります。ガイドラインみたいなものは先ほどの予測可能性という点からすると何かはあったほうがいい。そこは実効性確保とも関わりがあって、ヨーロッパは基本的に裁判規範です。日本の場合はそうではなくて、個人的には裁判規範的な色彩を強めたほうがいいと思っていますが、パート労働者については少額紛争が多いですし、訴えがそんなに激増するとも思えないし、訴えを増やせばそれですべてよいかという問題もありますので、行政の役割をどう考えるかを、いまある条文とは別としても、予測可能性の確保みたいな観点から議論してはどうかと思います。
 もう1つは別の話ですが、改善行動計画が均衡待遇のところだけに出ていますが、教育訓練もこれに関連しますし、正社員転換とか納得性もそうかもしれませんので、もう少し労使の関与のもとでの実質的な行動計画ということがいろいろな所で出てきてもよいのではないか。それは実効性確保の1つの内容というか、裁判と行政指導のほか、自主的な仕組みを推進するための施策も実効性確保の1つだということで、もう少し行動計画のようなものの位置づけがいろいろな所で出てくるほうがいいのかなという感じがします。
○水町委員 私も全く同じことを言おうと思っていたのですが、ここの案だと、2頁の(5)が中身のない空白になっていて、3頁のゴシックの5も表題だけになっていて、ここがどうなるのかなと不安を覚えたのです。1つは山川先生と同じで、第2のゴシック1の(2)の「自主的な行動計画策定」のところだけにアクションプランを限らずに、教育訓練や通常の労働者への転換の推進、もちろん(1)の差別的取扱いというか、不利益取扱いの禁止に変えておくかどうかは別ですが、そこにも含めて広く入れられるようにしておいたほうがいいというのが1つです。
 それが、結局はパートタイム労働法の実効性確保につながってくると思いますので、2頁の(5)では「第16条、第21条・22条」と書いてありますが、いまの法律が予定しているのは個別労働紛争解決法、労働局でやっている労働局長によるあっせん・調停とは別に、育児・介護休業法やパート法についてはそれと似たようなものを別で作るということで、この条文であっせん・調停をやっていることになっていますね。その枠組みで改正パート法以降どれぐらい実態が変わって、実効性が上がってきたのかを少し整理して、一般人として言えば、改正パート法ができたからパートの処遇とかパートの活用が急に上がったという印象はないので、それだけでは必ずしも十分ではないという評価になるのかもしれませんが、数字を見た上でどれぐらい機能しているのか、課題はどうなのかをそこで明らかにした上で、先ほど山川先生がおっしゃったように、ヨーロッパの比較で見ても労使がどう取り組むか、労使が取り組むことに対して行政がどうサポートして、適合性、違法性は最終的に裁判所がどうチェックをするかというように、労使当事者と行政と司法が適切に組み合わせながら政策を進めていかないと、この問題は根本的に解決しないと思います。
 いまの行政による実効性確保については、効果も上がっているけれど、それだけでは限界があるというのを課題のところできちんと分析していただいて、3頁の5の「パートタイム労働法の実効性の確保」のところでは、労使がきちんと自主的に取り組むことを広く行動計画として打ち出しながら、行政がそれに対して合理的理由の中身やガイドライン的なものを、適切に情報提供やサポートをしながら、最終的にそれでも法律違反、いまの8条違反みたいなことがあれば、これは裁判所がチェックをして、違法なものを適法なものに正していくことを、政策として全体的に進めていくということを、5の中で打ち出していただいて、その具体的な中身についてはさらにその後の政策的な議論につなげていくということでいいと思います。そういう方向性を大きく出してほしいという気がします。
○佐藤委員 今日は少し広めでいいということなので、先ほど小宮山副大臣がおっしゃったように、もう少しパートで働いている人たちの不満なり処遇の改善ができるようにと、私もそうだと思うのです。もちろん賃金のこともありますが、賃金で言うと賞与の問題、あるいは生活関連手当のところが結構大きいわけです。職務関連は、当然、ない人についてあげるとか、パートにもボーナスをという話になりますが、生活関連手当についてどう考えるかで、これは社員に合わせろという議論も出がちなわけです。
 確かに水町さんがおっしゃったように、賃金制度を職務給にしろとか職能給にするというのは、そういうことを法律でやるわけではないというのはそうなのですが、例えば生活関連手当について配偶者手当をなくして、その財源をパートの賞与にすると。財源をどう確保するかということで、社会的に見れば、これは合理的な取組だと思うのですが、社員からすれば不利益取扱いという議論が出てきてしまう。この辺りをどう議論するか。どれが望ましいというメッセージを出さないにしても、先ほどの税制・社会保険制度みたいなことも含めて、基本的に生活関連の部分は職務関連に移していくという方向かなという気もするのですが、どうしても社員の生活関連手当をなくして、この財源をパートにということはなかなかできない。こういうことをどうするかですが、実態としてそこがいちばん大きな問題だと思うのです。財源をどうやって作るか。合理的な作り方だと思うけれど、社員の立場からすれば不利益変更ではないかという議論が出てきて動かせないで、他方でパートにも生活関連手当を出すのが、それは1つの賃金制度だと言えなくはないけれど、それがいいのかなという気もします。感想です。
○今野座長 難しそうですね。
○水町委員 どう書くかは別にしても、生活関連手当を正社員だけに出していて、パートにはあげていないことが合理的理由のないまま放置されると、違法になる可能性が出てきますが、どれをどう変えるかどうかは基本的に労使の話合いなので、労使の話合いに基づいて対応してくださいということが大切です。その中で、就業規則の不利益変更等も考えると、きちんと話合いをして賃金原資を一定にしながら組み替えることは違法ではない、合理的だと考えられることが多いということが法的には言えそうですが、それをこの中で書き込むかどうかは微妙な問題だと思います。
○小宮山副大臣 事務方が作っているのに、私が文句を言ってはいけませんが、この中で「均衡」としか書いていないところに、いまのパートが不利益だという不満があると思うのです。ですから、パートとして働いている場合、均等はあり得ないのかどうかということです。それは先ほどの職場を限定したり、職種を限定したり、勤務地限定の正社員というように、「正社員」と付かなければ均等にはなり得ないのかどうかということなのだと思うのです。
 そうなると、どうしてもヨーロッパとは違って、処遇の形態が違うわけなので、そこが難しいところなのですが、いつまでもパートは均衡だけだと言っていると、これはイクオリティとエクイティの話で、エクイティだけと言うとイスラムの国の差別と同じような感じもしてしまうので、そこが半歩でも一歩でも踏み込めるといいなと。これはまとめようとしている方向より1歩も2歩も出るのかもしれませんが、できれば芽出しぐらいはしていただけると嬉しいと個人的に思います。
○今野座長 いまの法律でも、先ほどの3要件を満たした均等ということを言っているわけですね。今日の資料でも、1頁の2の(1)の1つめがそこに当たる部分ですね。現状の把握としては、「対象となるパートタイム労働者が少ないこと」ということが1つの問題点になっていて、それを踏まえてどうにかしなければいけないという書き方になっているのですが、そのときに少ないことが何で問題なのかということも考えておく必要がある。整理できませんが、ここの定義、つまり3要件自身が悪いと言っているのか、3要件は良いけれど、3要件を表現するときの内容のコンテンツがあまり適切でないと言っているのか。職務の同一性と言っても、それはこのように見たほうがいいという、コンテンツが入っているわけです。あるいは活用の仕方と言っても、その内容は表現するコンテンツが悪いのか。
 例えば、この変数自身が悪くないという話になると、別に少ないことは問題ではないという話になる。それよりも、実際には、基本に戻るとパートの処遇がきちんと改善されていないことが問題なのです。少ないことが問題ではないのです。それを元に帰って、まだ整理ができていませんが、もう少し考えたほうがいいかなと思います。
○浅倉委員 議論がごちゃごちゃになってくるのですが、そうではなくて、パートの処遇が悪いというのは、要するに差別的取扱いがされているから悪いわけですね。差別的取扱いを禁止する際に、いまの場合だとほとんど適用から排除されているフルタイム無期契約労働者の程度にならなければ、この3要件に該当しないということなのではないでしょうか。たとえパートと呼称されていたとしても、フルタイム無期契約労働者ぐらいにならないと、正社員と同等な扱いが受けられないような3要件がここに並べられているので、問題なのです。
 ただ、この3要件の中でも職務の内容や責任については、パート労働者が実態として働いているので、その働き方を客観的に見ることで、それは本人の努力等で獲得できる要件、変化する要件だといえると思うのです。ところが、人材活用の仕組みと運用は、企業の側の意思が入っているので、活用しようという意思が企業の側にない限りは、パートタイマーがいくら努力してもクリアできない条件です。それを前提として入れていることが問題だと思います。たとえ指針に落としたとしても、落とし方が極めて難しいと思います。
○今野座長 アングルは違いますが、私の言いたかったことと同じことをおっしゃっていて、少ないことが問題ではないのです。つまり、先ほど言った均等対象者の定義が問題なのです。だから、どこまで戻って議論するのかという話です。
○浅倉委員 定義の問題だから少なくなるのではないでしょうか。
○今野座長 それは結果の問題で、定義が悪くても、多ければいいのかという話になってしまうので。
○水町委員 実態に見合った処遇になっていないことが、結局当事者の不満として大きく現れ、大きな政策的に、正規も非正規も合わせて能力を活用して、より生産性の高い社会を作っていこうという方向性に反すると。その1つとして多い、少ないという話があるかもしれないけれど、何かが多い、少ないというよりも、満足度が高くないところがこういうところに出てきているのは、実態に合った処遇がされていないのではないかと。その実態に合った処遇が、ここの3要件とか下位規範と言われているものでいいのかという話ではないでしょうか。
○今野座長 いずれにしても、ここをガラッと変えようと思ったら、いろいろなことを考えなければいけないので、私もあまり整理はできていませんが、少し感じたことをお話させていただきました。
○権丈委員 資料2の3頁の「通常の労働者への転換の推進」についてです。前回の議論も踏まえて、(1)だけでなく、(2)や(3)を入れていただいてよかったと思います。(2)の見出しが「多様な正社員」となっていますが、この部分を「無期労働契約への転換の推進」などのようにしていただけないかと思います。目的は現状からの改善にありますが、現実には、パートから通常の労働者への転換は難しく、短時間労働者がかならずしも正社員への転換を希望しているわけではない中で、雇用の安定や待遇改善の方向性が示せると思います。
 「多様な正社員」という用語には、労働者の間での分断や待遇の低い正社員というイメージもあるようですので、それが前面に出ない表現にしていただいた方がよいように思います。実際には、「多様な正社員」で議論されているような職種や勤務地を限定した正社員等について、雇用保障のあり方も踏まえて検討する形になり、見出しの変更になりますが、お願いします。
○黒澤委員 全体的なことで、パートタイム労働法の実効性の確保がいちばん重要なことで、いままでそれに集中して論議があったと思うのですが、報告書を書くにあたって気づいたことというか、お願いが2点あります。1つは3頁ですが、教育訓練で、これも経営戦略をとってという、戦略として民間の企業内での取組を促進させていくことは非常に重要なのですが、そもそもパートタイマーの人たちは市場で動く度合いが非常に高い、流動性が高い人たちだと。その市場でのパートタイマーの置かれている状況が、競争市場とはほど遠いところにあるという認識は大変重要であって、それを教育訓練のところで言いましたが、現状のところでもきちんと踏まえる必要がある。だからこそ、企業内での取組を促進させるだけでなく、市場での彼らの地位向上にも、ここではパートタイムの労働対策として書いてあるので、今回の労働法と直接関わるところではないのですが、そういったことをきちんと明記していただければと思います。
 そこで関わってくるのが、以前から私が申し上げているような、市場の整備という観点でジョブカードやキャリア段位などの構築が一方であり、他方ではそういったものを企業に有効に活用してもらうための方策として、政策的な関与が必要である旨を明記していただきたいということが1点です。
 もう1つは、1頁に「パートタイム労働の課題」ということでいろいろ書いてありますが、(4)で「パートタイムの労働者のニーズを踏まえた」という書きぶりなのですが、フルタイムで働いている人々の中でも、勤務時間や日数の柔軟な働き方を希望する方々が少なくないわけです。そういったところを考えますと、現実にフルタイムの人々の、特に30代の労働強化の実態や今後のますますの高齢化社会を考えると、そのワーク・ライフ・バランスのとれる働き方、特に同一人物におけるライフサイクルを通して、その時々のニーズで柔軟に働き方を変えながらキャリアを継続できる社会を目指すといったことが非常に重要なので、「パートタイム労働者のニーズを踏まえた」という書き方ではなくて、すべての人々の柔軟な働き方をサポートしていくような方向性、特にパートタイムではこういったニーズがあるという形で、是非書いていただければと思います。そういった全体的なトーンについても気をつけて書いていただければと思います。
○今野座長 ほかにいかがですか。
○水町委員 先ほど小宮山副大臣がおっしゃったことの、ここの中に込められている意味なのですが、2頁の第2の1の(1)と(2)の中で、結局どのような方向性を打ち出すかというところに係ってきていると私は認識しています。これまでの3要件だと絶対的な要件なので、そもそも入口がかなり狭い。これを合理的な理由のない不利益取扱いの禁止という一般原則に書き替えることによって、少なくとも理由がないような福利厚生や諸手当の差別といった不利益取扱に理由を付けなさいと、理由がなければ出さなければいけないというところから変わってくると思いますし、基本給についてもちゃんと説明していなければこれに当てはまると。ただ、基本給については職能給なり職務給なり何か理由があれば、合理的な理由でクリアされることになりますが、そうなると日本固有の均衡というバランスの話になってきて、バランスについては放っておいても難しい。かと言って、裁判所で何割と要請で決めるのも難しいので、自主的なアクションプランを作って、これをほかの措置とも関連付けて、労使で自主的にどう促していくか。職務分析や職務評価制度を政策的に法の中に入れ込んでいって、自主的な努力の中に入れ込んでいって促していけば、均等という意味での不利益取扱い禁止と、均衡も政策的なバックアップの中で進めていくことになり得るのではないかと思います。そのあとの書きぶり、方向性をこの研究会でどれぐらい示せるかにかかってくるのではないかという気はしております。
○今野座長 いま水町さんが「均等」と言われるときの「均等」の判断基準は、何を考えていましたか。
○水町委員 合理的理由のない不利益取扱いです。
○今野座長 そうなのですが、合理的な理由とは何なのだろうと。
○水町委員 職務給であれば職務が違うかどうか、職能給であれば職能が違うかどうか、勤続給であれば勤続年数が違うかどうかが理由になるけれど、それが実態を伴うちゃんとした制度になっているかどうかをチェックするということです。それは企業によっていろいろ違うし、給付によってもいろいろ違う。
○今野座長 そうなのですが、職務給をとっていれば同じ仕事という意味ですね。
○水町委員 そうです。
○今野座長 職能給をとっていれば同じ能力ということですね。
○水町委員 職能給でおよそ正社員・非正社員と分けていても、非正社員の中にも勤続年数が非常に高くて、実態として職能があると言えるような人が、形式的な職能給制度の適用によって違う取扱いをされていれば、その場合は合理的理由がないとされるかもしれませんね。
○今野座長 もう1つ、先ほど言った日本の多くの職能給・職務給の場合はどうするのか。
○水町委員 それは企業がどのように説明をして、納得を得るような説明が当事者とかに、裁判になったときには裁判官を納得させられるか。合理的理由の立証責任は、ヨーロッパの例で言うと会社側にありますので、その立証に成功するかどうかにかかってくると思います。
○今野座長 これはよくわからないのですが、3要件がこういう形で出てきたのは、そんなことをいろいろ考えてこういう要件になってきたのではないのか。つまり、職能給・職務給タイプ。
○水町委員 考えたのですが、およそ全部に適用される、全企業にどの給与体系をとっているかにかかわらず、すべての企業に、すべての給付に対してその3要件を課すとしてしまったので、ほとんど使われなかったと。それは合理的理由の中身として個別具体的に判断するという条文に変えることで、企業の制度のあり方や給付の性質に応じた合理的な取扱いに促していくと。
○今野座長 そうすると、先ほど佐藤さんもおっしゃっていたことですが、3要件のいちばん最初の仕事の同一性あるいは能力の同一性だけあればいいということを想定しているのでしょうか。
○水町委員 うちは基本給を仕事と能力の両方で量って支給していますよと言われて、それは1つの賃金制度として公序良俗違反とか違法ではありませんよね、と言って、会社が言っている理由に従ってきちんと扱いがなされていれば、それは合理的理由ありとして、違法なものではない。
○今野座長 そのときに、活用をどうするか。それも合理的な理由に入るわけですか。
○水町委員 きちんとそれで運用していれば、キャリアコースの違いはフランスでも客観的理由になると言われています。ただ、言っているだけではなくて、運用もきちんとしていないといけない。
○今野座長 もちろん、それはちゃんとやっていることが前提の議論で。そうすると、結果的にはいまの議論とあまり変わらないかな。
○水町委員 それは基本給をとって説明しているところですよ。それ以外の諸手当のところで、いろいろな問題で、いまの実際の労使のパートの処遇の改善というのは諸手当その他福利厚生から始まっていますから、そちらのほうこそちゃんと話し合って均していって。
○今野座長 そうすると、水町さんの議論は、もう少し整理しなければいけませんが、3要件そのものというより、給付の形態によってちゃんと変えろというほうにポイントがあるように聞こえてきましたね。
○水町委員 そうですね。
○今野座長 それも影響が大きいですね。
○水町委員 影響が大きいからやらないか、影響が大きいからきちんと基盤を整えながら前進していくかという選択だと思います。
○今野座長 わかりました。ほかにありますか。よろしいでしょうか。
 それでは、時間になりましたので、今日いろいろ意見をいただきましたので、それをもう一度整理していただいて、報告書の原案の原案を次回までに事務局に用意していただいて、また議論をしたいと思います。今日はこれで終わりますが、ほかに何かありますか。
○藤原短時間・在宅労働課長補佐 次回の日程ですが、7月29日(金)午後4時から6時までとなっております。場所は厚生労働省19階専用第23会議室です。よろしくお願いいたします。
○今野座長 それでは、終わります。ありがとうございました。


(了)

雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課

電話: 03-5253-1111(内7875)

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