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2011年6月17日 第5回厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会議事録

健康局疾病対策課

○日時

平成23年6月17日(金)14:00~16:00


○場所

厚生労働省 本館17階 専用21会議室


○出席者

栗山 真理子 (特定非営利活動法人アレルギー児を支える全国ネットアラジーポット専務理事)
水田 祥代 (九州大学名誉教授、福岡歯科大学客員教授)
谷口 正実 ((独)国立病院機構相模原病院外来部長)
宮坂 信之 (東京医科歯科大学医学部膠原病リウマチ内科教授)
山中 朋子 (青森県健康福祉部医師確保対策監)
横田 俊平 (横浜市立大学大学院医学研究科教授)

○議題

1 リウマチ・アレルギー対策委員会報告書について
2 その他

○議事


○中川課長補佐 ただいまから、第5回「厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の委員の出席状況と本委員会の委員のご紹介をさせていただきます。本日は今村委員、洪委員、河野委員、辻委員、戸山委員、山本委員から欠席のご連絡をいただいております。
 健康局長の外山より一言ご挨拶申し上げます。
○外山健康局長 「厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会」の開催に当たって、一言ご挨拶を申し上げます。
 委員の先生方におかれましては、ご多用中にもかかわらず、お集まりいただき厚く御礼申し上げます。本委員会は、平成14年度に第1回目が開催され、平成17年度には「リウマチ・アレルギー対策委員会報告書」が取りまとめられました。この報告書をもとに、「リウマチ対策の方向性等」と「アレルギー疾患対策の方向性等」を策定し、自治体に通知してまいりました。
 この方向性等は5年程度を目途に策定されていたため、平成22年度から新たな方向性を策定するため、委員会により作業班が参集され、議論を重ねていただきました。委員または班員の皆様方のご見識に基づくご検討により、国民のために有益な対策が導き出されたものと思います。
 本日は、作業班で取りまとめられた報告書をもとに、「リウマチ・アレルギー対策委員会報告書」が取りまとめられ、リウマチ対策、アレルギー疾患対策のより一層の推進、強いては国民の健康の増進に寄与することを期待し、私の挨拶とさせていただきます。
○中川課長補佐 ありがとうございました。以後の議次進行を水田委員長にお願いしたいと存じます。水田委員長、よろしくお願いいたします。
○水田委員長 ご紹介いただきました水田です。前回ちょっと体調を壊しまして休ませていただきました。宮坂先生には大変お世話になりました。
 リウマチ、アレルギーは前回平成17年の時も、私は委員長をさせていただいて、いいものができたと思っていましたが、あっという間に5年間過ぎました。勉強と言いますか、そういう研究とか治療法とかがいろいろ進んでいて、患者さんも増えて、特に私は小児外科医ですので、アレルギーに関しては、子供たちがいろいろなことで増えていっているなと思っています。
 いろいろな治療法ができていても、それを受ける側には、まだちょっと格差があるのではないかなと、普通の病院と大学の差がありますし、すべての患者さんにその成果がいくようなやり方をしていかないと、大変なのではないかなと思っています。どうぞ、今度いい報告書が出ますので、それでまた、もっともっと進んでいくのではないかと思っています。どうぞ、よろしくお願いいたします。
 議事に入る前に事務局か資料の説明をお願いいたします。
○中川課長補佐 事務局より資料の確認をさせていただきます。「議事次第」「リウマチ・アレルギー対策委員会名簿」「座席表」となっています。そのあとに、資料1として「リウマチ対策の見直しによる主なポイント」、資料2として「アレルギー疾患対策の見直しによる主なポイント」、資料3として「リウマチ・アレルギー対策委員会報告書(案)」です。
 参考資料1としては「厚生科学審議会運営規程」、参考資料2として「リウマチ・アレルギー対策委員会開催要項」、参考資料3として「リウマチ・アレルギー対策委員会報告書(平成17年10月)」、参考資料4として「リウマチ対策の方向性等(平成17年10月31日付)」、参考資料5として「アレルギー疾患対策の方向性等」として平成17年10月31日付のものが付いています。以上でございます。
 過不足がありましたら、事務局までお申し出ください。
○水田委員長 早速議事に入りたいと思います。資料1から3について事務局より説明をお願いいたします。
○中川課長補佐 資料1をご覧ください。昨年度から作業班によりリウマチ対策の見直しを行ってきましたが、その主なポイントをこちらにまとめています。資料2をご覧ください。こちらも同じく、昨年から作業班によりアレルギー疾患対策の見直しを行ってきました。その主なポイントをまとめたものです。資料3をご覧ください。こちらは作業班により策定された報告書を取りまとめたものとなっています。
 表紙を開けていただくと目次がありますが、次の頁に「はじめに」として、これまでの経緯と本報告書を取りまとめるまでの経緯を記述しています。そのあとリウマチ対策とアレルギー対策の二部構成となっています。リウマチ対策については、リウマチ対策作業班の班長でもあられる宮坂委員よりご説明をいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
○宮坂委員 リウマチ対策についてご説明いたします。2頁をご覧ください。「リウマチ対策の現状と課題」として、アのところに我が国のリウマチの患者数は、一般に約70万人ないし80万人と言われているけれども、十分には把握されていないと、実態がまだよく分かっていないということを指摘しています。
 イの部分の3番目のパラグラフで「しかし」以下です。近年リウマチの早期診断・早期治療が可能となり、メトトレキサートや生物学的製剤の治療薬の効果的な選択により、リウマチの診療が飛躍的な進展を遂げたということ、新規にリウマチを発症した患者さんでは、早期から積極的な治療をすることで、リウマチの関節破壊の完全な阻止が期待できる、そういう治療方法が確立されつつあるということを指摘しています。
 しかし、一方では、過去にリウマチを発症して、関節機能の破壊を来してしまった患者さんでは、日常生活が制限されていて、機能回復のための技術革新が求められるということを指摘しています。
 ウ以下で「主なリウマチ対策の経緯」を示してあります。3頁のところまでありますが、先ほどのお話にありました平成17年にこのリウマチ対策の方向性が出ました。我が国の特徴ですが、平成8年からはリウマチ科が、専門医性とは関係なく、自由標榜になっているということを指摘しています。(イ)地方公共団体におけるリウマチ対策です。これは残念ながら、まだ十分ではないということです。(ウ)我が国のリウマチに対する専門医医療のことを書いてありますが、リウマチの専門医が非常に多様で、日本リウマチ学会、これはいま私が理事長をしている所ですが、平成23年現在では指導医が800余名、専門医が4,000余名います。それとは全く別に日本整形外科学会が認定リウマチ医制度をもっていて、これが5,000余名います。それから、リウマチ財団というまた別の組織が3,000余名の登録医をもっているという実態があります。
 「リウマチに関する研究」です。平成12年から国立相模原病院、現在の国立病院機構相模原病院に臨床研究センターが開設されています。平成16年からは理研の免疫・アレルギー科学総合研究センターで、ここに書いてあるような研究が行われているという現状が書いてあります。
 「医療の提供等に関する課題」です。(ア)リウマチ患者の状況です。リウマチ友の会日本最大の患者さんの集団です。リウマチ友の会の調査では、平成21年、まだ行われたばかりですが、ここでは診療に対する満足度が44.3%に過ぎない。自助具を使用している患者さんは59.8%、手術を受けた患者さんは42%ということで、先ほど述べてきた治療法の進歩がある一方で、まだ現実には患者さんが取り残されている可能性があるということを指摘しています。
 「リウマチ診療における課題」です。リウマチの早期診断が可能になり、メトトレキサート、さらには生物学的製剤を使うという方法、さらには人工関節の技術も進歩をしたということで、寝たきり患者さんは減少したことを指摘しています。世界的には、抗リウマチ薬、特にメトトレキサートを用いた早期かつ積極的な治療が推奨されるようになってきています。しかし、我が国では、十分に対応できていないことが5頁の頭に書いてあります。
 その理由としては、一つは、このメトトレキサートという薬は、使用するに当たっては専門的知識が必要で、なかなか開業医の先生には難しいという点、さらに加えて、この生物学的製剤は高価であるということもありますが、それ以上に副作用として感染症が起きてきますので、このリスクマネジメントに専門的な知識を有するということで、まだ一般にはそれほど普及をしていない、さらに、この医療というのは、都道府県間で遍在がある、専門医制度が統一されていない、診療拠点となる病院が少ないということを指摘しました。
 (イ)治療法の安全性評価ですが、我が国で生物学的製剤を使ってみて分かったことは、感染症が増加するということで、特にこのうちニューモシスチス肺炎とか、間質性肺炎というのは、我が国独特の感染症、合併症です。生物学的製剤以外でも、レフルノミドとメトトレキサート、タクロリムス、これも我が国では間質性肺炎が非常に多くて、これが生命予後を左右する重篤な有害事象となっているという点、生物学的製剤をはじめとする新薬の導入は遅いということをここで指摘をしておきます。
 (ウ)患者実態把握のところでは、先ほども述べましたが、リウマチの発症率、有病率、発症年齢、機能予後、生命予後などの疫学的なデータが未だに十分にない。これは、日本が世界と比べて非常に弱い点です。これがないので、なかなか世界と闘えないというところは、どうしても今後の研究で充実させていかなければいけない。医療機関の連携も先ほど申し上げました。
 6頁のところで、医師及びコメディカルのさらなる資質の向上として書いてあります。先ほどのように革新的な医療の進歩に医師がついていけない、あるいは看護師がまだそれにフォローできない、医師とコメディカルとの連携も必要なのだけれども、まだ今後の課題であることを指摘しています。6頁の下のほう、最後から2つ目のパラグラフのところで、「継続的に多くの機関が活用できる患者データベース等を用いて、より効率的に患者情報を収集すべきである」、「病因・病態研究解明を通じてさらに新規治療法の開発を目指すべき」ということを指摘しています。ここはやっぱり日本がまだ足りないということです。
 7頁にいきまして、リウマチ対策の今後のとりあえずの最終的目標として、最初のところに、「国のリウマチ対策の目標としては、リウマチに関する予防法や根治的治療法を確立するとともに、各地域の医療提供体制の実情に応じた連携体制を整備することにより、国民の安心・安全な生活の実現を図ることにある」としました。
 当面の目標としては、この3番目のパラグラフのところに、以前は不治の病とされていたリウマチを「寛解導入が可能な疾患」にすることを目指していく。このため、最新の知見に基づいた診療ガイドラインの改訂等を用いて最新の診療水準を普及すること。あるいは失われた関節機能を改善をさせることを目的とする医療の提供、あるいはリウマチに係る適切な医療情報を得られるような体制の構築を目的とした情報提供・相談体制の確保、関節の破壊を阻止するための治療法の確立や関節破壊に伴う日常生活の活動性の低下の改善を目的とした研究開発及び医薬品等開発の推進に取り組むことが重要であるとしました。
 国と地方公共団体の役割分担ですが、この7頁のいちばん下のパラグラフのところで、国と地方公共団体における役割分担の下、患者団体とさまざまな団体とが連携をしてリウマチ対策を推進していくことが必要であるということを指摘しました。当面の方向性として、医療の提供の中では、先ほどからメトトレキサートや、生物学的製剤を使うべきであるということを言いましたが、4行目、5行目あたりのところで、今後はリウマチが強く疑われる患者、進行性かつ活動性の高いリウマチ患者、高齢かつ合併症などの生命予後上のリスク因子を有するリウマチ患者、これらの方は早期に専門医療の可能な医療機関を受診するべきである。そして、リウマチによる関節破壊を阻止することが必要である。一方、既に治療方針が確定した、こういった患者さんについては、リウマチ診療に必要な基本的な知識、技術をもつかかりつけ医によって治療を継続するように、こういった病診連携あるいは病病連携体制が構築されることも必要である。それから、もう既に病気になってしまって、活動性が落ちてしまった患者さんには、その重症化を阻止するような試み、あるいは人工関節を中心とする外科的治療、総合的な理学的療法によって関節機能の改善を目指すというようなリウマチ治療の提供を行うことも重要であるということを指摘しました。
 以下、情報提供体制あるいは研究開発等の推進ですが、8頁の下のリウマチ体策の具体的な方策として、「リウマチの治療に必要な医療体制の確立」として、最初の○のところで、診療ガイドラインの改訂を行うこと、そして、その普及において、地域の診療レベルの不均衡の是正を図ることが必要であるとして、その下のパラグラフのところで、「診断から寛解導入に至るまでの時期や著しい増悪時、さらには急速進行の高リスク群あるいは重症難治例には、専門的な対応をするリウマチ診療の専門機能を有する医療機関が行う」と、これに対して病状の安定している患者さんあるいは寛解導入後で治療が決まったもの、これは身近かなかかりつけ医が診療をする。このすみ分けができるであろう、ただし、その下に指摘をしてありますが、先ほど地域の医療の不均衡の問題があると言いましたが、ここでは、「専門医療機関等を支援できる集学的な診療体制を有している病院を都道府県に1箇所程度確保するというような医療連携体制」、いわゆる拠点病院に当たるようなものを作って、重症例であるとか手のかかるもの、難しい例をそこで、そうでないものはかかりつけ医の所でやるということがあってもいいであろうと。その下の「地方公共団体では、これはリハビリテーションを行うような環境の確保を行うことが必要である」ということを言っております。
 9頁の下で、「早期発見・早期治療の方向性」として、10頁のところに触れていますが、上から3行目に「Window of Opportunity」という言葉が書いてあります。これは早期から積極的に治療を始めると寛解に入りやすい、その時期を「Window of opportunity」と言っているわけです。こういった概念を紹介し、その重要性を指摘しています。
 欧米を中心としてこの新しいリウマチの分類基準ができ、早期のリウマチの診断ができるようになりました。それによって早期診断・早期治療が可能であるということから、治療の目標としては、寛解を目指すべきである、そして、寛解という状態を定義するためには、この下に書いてあります「総合的疾患活動性指標」、これは「DAS28」、「DAS」というのは「Disease Activity Score」。これを用いてその目標到達まで治療をするといった活動を「Treat-to-Target」、略して「T2T」と呼ぶのですが、このTreat-to-Targetをやることが必要です。これはもう欧米ではいま浸透しているわけですが、日本でも、この早期診断・早期治療をして、寛解を目指して治療をするTreat-to-Targetが必要であることを指摘しました。
 10頁の「人材育成」のところでは、かかりつけ医の育成、次の頁に専門医の育成のことが書いてあります。専門医も、先ほど申し上げたように、いまは非常に不均一ですが、いろいろなレベルの専門医がいるわけですが、これは我が国にとっては非常に不幸なことで、患者さんがどこに行ったらいいか分からないのです。そのためには、やはりリウマチ専門に診療する医師の基準や認定を一つにして統一していくことが望ましいということを指摘しました。医師以外の医療従事者に対しても、これはリウマチに関しては特に重要で、保健師、看護師、薬剤師、理学療法士らのスキルアップといったことをやる必要がありますし、診療の効率化を図るために、12頁では、ガイドライン及びクリニカルパスのことを指摘しています。その下、「情報提供体制・相談体制」はいま少しずつ行われているわけです。ホームページあるいはパンフレットを使ってやるということです。
 13頁で、「相談体制」のところでは、「リウマチ・アレルギー相談員養成研修会」のことに触れています。これはいま実際に動いているわけです。これをさらに活用していく。真ん中では、「新薬の開発に当たっては、より効果的、効率的な研究推進体制を構築する」と、指摘しています。リウマチの場合には、かなり研究推進体制がうまくいっていて、成果も出ていると思いますが、さらにこれを進めるべきであると。
 「当面、成果を達成すべき研究分野」、13頁の下のところですが、14頁の頭に書いてありますが、まず、関節破壊の阻止を目指そう。そのためにここに4つの目標が書いてあります。もう一つ、長期的目標をもって達成すべき分野としては、「関節リウマチの予防法と根治的な治療法の確立」です。以下に例が書いてあります。こういったことを行っていくべきであると。「医薬品等の開発促進」があります。いま日本に入って来ている生物学的製剤は、導入が大体5年欧米に比べると遅いのです。ですから、そういう意味で、新薬開発の促進、承認も含めて、早くやらなければという点が一つあります。
 生物学的製剤の副作用の話をしていますが、これはいずれもまだ短期的な副作用です。日本は、生物学的製剤は市販後全例調査が義務づけられて、短期安全性は非常によくわかってきており、その結果、日本の特有の、例えばニューモシスチス肺炎とか間質性肺炎の問題が分かったわけですが、これから我々がやっていかなければいけないのは、この薬の長期安全性です。これはTNFαの働きを抑える、あるいはIL-6の働きを抑えると、その結果として免疫系を抑えますので、長期安全性としては、例えば発がんとかそういった問題が出て来る可能性があります。ですから、こういったことについても検討していく必要があると思います。
 最後に、15頁ですが、これらの施策については、定期的に評価をする。その評価の結果を、またフィードバックしていくという持続的なサイクルが必要であることを最後に謳って対策としています。以上です。
○水田委員長 ありがとうございました。ただいまのご説明につきまして、ご質問ございますか。よろしいですか。それではアレルギー対策についてにまいります。アレルギー疾患対策作業班の班長であられる谷口先生、お願いいたします。
○谷口委員 アレルギー疾患対策の見直しをやらせていただいたわけですが、資料2のカラーのA4の横長のものが、ポイントを的確に書いていただいたので、その順に沿ってご説明したいと思います。
 まず、いま宮坂先生からもお話がありましたが、アレルギー疾患というのは非常に多い疾患ですが、どのぐらい患者がいるのか、意外にも全くわかっていません。現在では花粉症もよくわかっていないわけですが、2008年、2009年、2010年に厚生科学研究などで、成人喘息、小児喘息ともに、ここ20年で3倍前後に増えています。小児に関しては2.5倍ぐらい増えているということで急速に増えてきていることが判明しております。それはかなり正確な調査で、国際的な評価に耐える方法でやっておりますので増えてきます。ただし、欧米に比べると、その頻度は喘息に関しては、まだ半分ぐらいですので、これからも10年、20年急激に増える傾向が続くものと推定しています。
 また、アレルギー疾患は、国民の3分の1は罹患していると以前からよく言われていたわですが、これも正確なデータはあまりありませんで、ごく最近のデータでは、花粉症の患者は2人に1人に近いというか、40%を超えており、複数の報告が通年性のアレルギー鼻炎プラス花粉症を合わせて頻度としますと、47%という数字が最近出てきております。したがって、喘息、花粉症ともに急激に増えてきており、国民の4割、もしくは5割近くが罹患する国民病として、ほぼ間違いなくなってきたわけです。
 その急激に増加している状態が、食物アレルギーあるいはアトピー性皮膚炎ではどうかというのは、なかなか大規模な疫学調査がなく、よくわかっていませんが、アトピー性皮膚炎に関しては少し横這い、もしくは頭打ち。食物アレルギーに関してはかなり増えているだろうという小規模のデータはあるが、大規模なデータはないということで、やはり疫学研究というのは対策を打つ上で国民の健康を守るためにも非常に基礎となる大事なデータであり、国際比較も必要だと思いますし、場合によっては地域差の検討も必要だと思っております。今後も厚生科学研究などでしっかりしたデータ、経年的な変化を出す必要があるという意見でまとまっております。
 新たな課題の発生としては、増えているという問題があるわけですが、以前から喘息死が、日本はまだ多いということで問題なっております。かなり急速に増えて欧米レベルに下がってまいったわけですが、昨日、去年の速報が出て、2,100人程度ということで、一昨年に比べて6%減ったというデータが出てきました。ただし、全体の減り方から見ると、頭打ち現象が出ている印象があります。やはり喘息死の問題というのは大きいということは依然として言えるかと思います。
 もう1つは、花粉症、喘息が非常に増えているということです。それから、アレルギーのガイドラインは1990年代前半から非常にいいものが出て、改訂を繰り返しているわけですが、これまでも指摘されていますが、いいものができていながら、一般には十分に普及していない。患者、一般クリニックベースに普及していないということが依然問題として挙げられています。
 もう1つ、新たに今回加わったのは、喘息の治療薬が1990年代から非常に良くなって、吸入ステロイドが非常によく効いて、はっきりしてきたのは、それにもかかわらず治らない、発作を繰り返す患者、入退院を繰り返す患者が、全喘息患者の5%、大病院ですと10%程度いらっしゃる。そういう方が喘息医療費の50%を占めることがわかってきました。また、治らないということも非常に問題であることは当然ですので、そういう難治性のアレルギー疾患に対する治療、対策が、今後世界的にも非常に注目されているわけですが、確立すべきことだろうと考えています。
 そこで、報告書の内容に入るわけですが、3つの柱としていつも決まっているのは、医療の提供、情報提供・相談体制、3番目に研究開発等の推進となっています。医療の情報の提供に関しては、喘息死ゼロ作戦のより一層の推進は当然です。ただし、頭打ち現象があり、どうして頭打ち現象が起きているか、実態の解明ができていないことが問題かと思っています。それから、高齢者喘息は減っていないことも大きな課題です。
 診療ガイドラインの改訂ですが、これは良いガイドラインができています。ただ評判が、いま一歩悪いということはないのですが、100何頁と非常に厚いものになっていますので、ミニマムエッセンスを作って、見開き頁ぐらいで患者、GPの方にも理解できるようなものは既にありますが、より一層普及して目に付きやすい状態にすべきだろうと方策を考えています。
 医療従事者の育成の強化の点です。これは以前から指摘されていますが、アレルギー専門医が、患者の数に比べると非常に少ない。具体的に言いますと、専門医にかかっている喘息の患者は1~2%ぐらいで、90数パーセントの患者は非専門医にかかっています。その数を考えますと、たとえ2倍に増やしても専門医にかかれない患者のほうが圧倒的に多いわけです。
 ということで、やはりGPの先生方、あるいはGPの先生方以外に、いま吸入ステロイドが非常に有効です。その有効性を担保する、確保するためには吸入指導がいちばんのポイントになっています。したがって、場合によっては薬剤師の資格、指導をしていただけるシステムなどを作る必要があるのではないか。もちろん看護師、保健師の指導体制も強化できればいい。すなわち医師だけ、専門医だけを短期間に増やすことには限界がありますので、そういう周りの部分を強化して、特に吸入指導ができるような体制、日常の指導が保健師、看護師にできるような体制が必要だろうというまとめをいたしました。
 それから、情報提供に関しては、以前から指摘されている自己管理がうまくできればいいわけですが、それを一層促進することと、いままでも情報提供の体制を確保しよう、相談体制を確保しようとなっていたわけです。具体的な問題点としては地域の自治体での相談体制、情報提供体制などに非常に格差があるという問題点のご指摘をいただいています。それを何とか底上げする、あるいは均一化することは難しいとは思いますが、しっかり自治体でもやっていただくための方策が、あとでも少し述べますが、チェック体制というと失礼になりますが、そういうものも必要ではないかということで挙げております。
 3番目の研究開発などの推進は、アレルギー疾患が非常に増えていることに対しての予防、治療、対応ということは大切ですが、これは国際的なテーマで、非常に難しいテーマになるかと思います。そこで、そういう予防、治療に対する対応以外に、当面のいちばん問題点は、難治性疾患群に対する対応・治療をより強化する必要があるだろうということと、アレルギー疾患が増えていると言っても、非常に軽い方が6割以上だということもわかっています。
 すなわち非常に裾野の広い疾患で、頂点の重症の方はいますが、絶対数としては軽症の方がほとんどである。ただ、その軽症の方を放っておいていいのかというと、軽症の方から大発作の入院、死亡例が見られるということが問題点です。ですから、超軽症例の方、普段医療施設にかからないような方に対しての情報提供にも関わるのですが、いかにしてミニマムエッセンスをうまく作って、情報提供するかということを進める必要があるだろうと提言させていただいた形になっています。
 そういうところが概略ですが、先ほど少し述べたことで、根治的な治療、あるいは予防法に関しては、現在、欧州でかなり広まっている減感作療法が残念ながら、日本のアレルギー学会でもまだ力不足で普及が非常に悪い、まだ治験がボツボツとやられている段階で、従来の皮下注射の減感作療法が唯一の根治療法とされていて、非常に効果があるわけですが、保険点数が少ないとか、面倒だということもあって、根治療法がいちばん普及していないという残念な状況にあるのが日本のアレルギー医療かと思います。その辺の普及も非常に大事だと思っています。
 最後の施策の評価などで、いままでは地方自治体で数年に1度アンケート調査をして、「どういう指導体制を行っておられますか」ということが、厚生労働省の方から質問されていたわけですが、均一化というか底上げというか、1年に1回そういうことをアンケート調査をして、なるべく各地方自治体で熱意を持って取り込んでいただく。特に相談体制を強化していただくことも必要だろうと意見の一致を得ています。かなり概略的な説明で恐縮ですが、以上です。
○水田委員長 ありがとうございました。ただいまの説明に対してご質問はありませんか。2人の先生に伺いたいのですが、疫学調査ができていないということは、何が問題でできていないのですか。
○宮坂委員 どこの国でもそうだと思いますが、いままでは疫学調査ということはあまり重んじていなかったのです。厚労科研費でも、非常に小さなポピュレーションを対象としていて、横断的にいくつかの施設を集めてやるような試みが全くされていなかった。たとえそれがされても厚労科研費は3年で終わってしまいますから、終わるとそこでそのデータは引き継がれない、あるいは死んでしまうということがあったと思います。これは、それを日本の国民の宝になるようなデータですから、ある程度国がそういうことをサポートして継続的にやれるような仕組みを準備しなければいけないだろうと私は思っています。
 いま結局できないので、私なども厚労科研の研究班で3年やらせていただいて、いまは別の所からお金を集めてデータベースが潰れないように一生懸命支えているのです。しかし、諸外国は、特にEUはそこは非常に優れていて、国レベルで、あるいは保険にリンクをさせてやっている。あるいは人口統計を集めるような所とリンクをさせているので、国としての動きになっています。その点、日本は残念ながらできていないのです。
○水田委員長 これは患者を登録制にすれば。
○宮坂委員 その難しいのは、患者が登録するだけでは駄目で、ドクターがそのデータベースに患者データをちゃんと定期的に入れていかなければいけないのです。しかし、それはドクターにとっては入れなければいけないインセンティブは何もありません。忙しい日常診療の中で6カ月ごとにそのデータをずっとインプットしていく。そうすると、どうしても忘れますから、忘れているのを事務局が「あなたは忘れていますよ」と全部送らなければいけない。それが100人ならできるのですが、1,000人、5,000人、1万人となったときには、その事務局機能というのは結構大変になります。そうすると、きちんとした仕組みを最初から作っておかないと途中でみんな潰れてしまう。いままでやろうとしてもうまくいっていないのは、そういうところにもあったのです。
○水田委員長 是非そういうのを作っていただきたいですね。アレルギーも一緒ですね。
○谷口委員 宮坂先生がおっしゃったこととほぼ同じですが、私自身もいま疫学調査に厚生労働科学とか、そのほかで関わっているものですから、非常にハードルが高いというか、いろいろな壁があって、非常にやりにくいなと実感しております。
 1つは、ヨーロッパがすごく進んでいるという、非常に驚くべきデータが1990年代から集まっているデータが、いまコフォートですごくいいのが出てきています。その真似を日本でやろうというのはものすごくコストと労力が要るので国が主導でやらないと絶対無理だと思っています。すなわち、大事な調査ですが、コスト、労力、年月がすごく要る調査だと思います。
 もう1つは、疫学研究というのは非常に地味で、厚生労働科学研究で出したとしても、おそらく学術的な評価があまり高く得られなかったというのが、いままでの問題点だと思います。
 もう1つは、成人の調査をしていますと、いま非常に個人情報の保護ということが前面に出て調査がなかなかできない。いちばん肝心な、例えば日本ですと国民健康保険のレセプトを使わせていただくと結構大切なデータが出せると思うのですが、それも調査させてもらえない。どうしてなのだろうといつも思うのですが、そういうこともできない。例えば、カナダですと、どんどんレセプトベースでの調査のいいのがたくさん出てきています。そういうことは日本でも可能なのにできない。その辺が非常に難しいと思っています。
 ただ、やってみますと、かなりパワー、エネルギーが要るのと、お金もかかるので国として重要な研究の位置づけだということで、継続してほかの研究ももちろん大事ですが、疫学というのは別部門としてずっと継続性を持って一つひとつの疾患を追っていく。日本人の発症因子、難治化因子、寛解を妨げる因子は何なのかということをはっきり言い切る必要があると思っています。
○栗山委員 ちょっと教えていただきたいと思います。いまレセプトは使えないとおっしゃいましたが、つい最近レセプトはこういうことに使えるようになりましたよねというのが1つです。
 あとは医療の研究分野というのは、個人情報保護法とは一歩違う所にあると理解しておりますが、いかがでしょうか。まず私たち患者にとっては、そういうデータがなくて、何の議論が始まるのだろうという、すごく単純な疑問を持っています。データのない所からは議論は始まらないはずではないかと思っています。アレルギーの場合は幸か不幸か、それだけで終わってはいけないとは思いますが、エコチルというのもありますので、是非そういうものとリンクしながら、まずはデータを出していただきたい、それから検討していただきたいと思っています。
○水田委員長 全くそうだと思います。
○中川課長補佐 先ほどのデータベースの件に関してですが、特にレセプトデータについては、現在、電子化の流れが起こっています。電子化の流れに合わせて、現在どのように研究として使っていくか、どのような形で使っていくかということは議論されているところで、おそらくそちらの議論のほうで、今後研究として使えるようになっていくのではないかと考えております。
○宮坂委員 ただ、レセプト病名というのは、あくまでもレセプト病名であって、本当の病名ではない場合もいくらでもあるわけですよね。ですから、そのデータは必ずしも信頼できない。でも、そこがしっかりしていないと、確実に例えばリウマチならリウマチという人が入ってこないと駄目ですが、レセプトを見て、必ずしもそういうものではないですよね。
○中川課長補佐 そちらの問題は、保険症病名の記載の問題であるとか、あれはいくらの医療費を請求するかという請求ベースでの話になってきて、それは研究とは違う話になってしまいますが、その辺の運用上の問題というのは非常に大きなものとしてあるとは思います。そこは保険としての議論をしなければいけないところだと考えます。
○水田委員長 患者のプライバシーの問題とか、いろいろあります。私は小児外科医ですが、小児外科で赤ちゃんのときに病気をした人のフォローアップができないのです。昔は本籍で照合ができたのですが、いまはカルテに本籍は絶対に書かないことになっているので、調べようがないのです。そうすると、その方たちがずっと重症で大きくなっても病院に来られる方はずっとフォローできるのですが、そうではない人たちが、いまどうしているかということになると、調べたいと思っても、全然わからないままということです。
 そのような面から考えても、患者にも協力が欲しいし、お金もかかる人もいるということは、確かにそれはそうですが、それを国でももう少しこういうことはしなければいけないと。ごくごく当たり前の病気になってきているような感じでも、新しい病気ばかりではなくて、していただけたらと思います。ほかにご意見はありませんか。
○山中委員 地域医療のことですが、病診連携あるいは病病連携を進めていくというのは、大変重要なことだと思っております。例えば、医療計画の中で、がんとか、4疾病というので、いま都道府県がいろいろな対策を、連携を進めておりますが、やはり連携を取るためには情報を共有したり、ガイドラインをもって医療の標準化というので、全体的な底上げができるという点では大変有効な手段だと思っています。
 その際に、例えば糖尿病などですと、罹患率がわかりませんから、連携がうまくいっているか、あるいは治療がうまくいっているかという評価をするに当たっては、例えば人工透析に新たになった人の数や視力障害になった人の数などで評価するわけです。アレルギーについてもリウマチについても裾野の広い疾患については、どういうところで評価するかを提示していただければ、私どもももう少し取り組みやすくなりますし、評価ができれば地域の先生方もやりがいが出てくるのだと思いますので、そういったところでアドバイスをいただければと思います。
○宮坂委員 リウマチの場合、1つの切り口としては先ほど私が言いましたが、いま友の会のデータを見ると、昨年現在でも手術を受けたことがある方が50%います。結局早期発見、早期治療がうまくいかなければ、その方は関節が壊れて人工関節置換術に行くわけです。ですから、そこに行った人がどのぐらいいるかというのが目安です。世界的には人工関節置換術に行く人は本当にマイノリティーになっているのですが、まだ日本ではそうではありません。特に友の会というのは比較的、病気が重い方が中心に入っているせいもあるのですが、その比率は世界的に見ると、驚くほど高いのです。
 もう1つは、手術まで行かなくても先ほど私は寛解ということを申し上げましたが、寛解というのは基本的に症状・徴候のない状態を言うわけです。いまは発症早期でなくても10年経った方でも適切な治療をすると、30~40%寛解に入ります。早期から積極的にやると50%入ると言われています。ところが、友の会のデータを見ますと、それが5%なのです。ですから、寛解導入率がどのぐらいで、どの物差しを使って寛解を見るかによりますが、寛解導入率も1つの目安になります。もっと進んだところでは先ほど申し上げたような手術でもなります。ですから、そのいくつかの指標があるのだろうと思います。
○横田委員 先ほどの疾患登録とか実際のところ、どのぐらいの患者がいるのかということを、1つ考えてみますと、私は小児科医ですが、小児科の一分野に周産期医療というのがあります。未熟児を扱うのが主な仕事です。欧米からすると倍ありますが、日本の未熟児というのは今は10%です。10%とはいえ、全体としては少ないもので、周産期センターに赤ちゃんが集められるのです。その周産期センターをつなぐと、いま我が国でどのぐらいの未熟児が生まれているか、どういう疾患を持っているか、それに対してどういう治療が行われているかということを、周産期をやっているドクターがネットワークを作ってボンボン情報が飛ぶようになっています。
 面白いのは情報を集めて、それが戻ってくるのですが、戻ってきた情報に自分の病院のポイントがされているのです。例えば、未熟児を収容して何パーセント亡くなったかなどとやると、スケールができます。そうすると、自分たちの病院がどこかというのがわかるようなものがフィードバックされてくる。それはなぜかとそれぞれの病院が考えると、次にいいほうに走っていくということがあるのです。
 何を言いたいかと言いますと、そういう少ない病気にある方法でそういうことができる。疾患登録もできるし、病態の解析もできていく。ところが、アレルギーとかリウマチは成人の場合には非常に患者が多い。それから診断の問題も関わる。したがって、そういうものの場合の数の推計学とか、ある種の方法論を変えた形でやる。方法論を探し込む、検討するサブグループが必要ではないかと思います。厚生労働省の方に何とかせいと言っても、なかなか難しいだろうと思いますし、そういう専門家が集まることで数が多ければ多いなりの方法論で疾患の数を確定していくことができるのではないかと思います。幸い子どものリウマチに関しては、専門医も少ないのですが、患者も大人から比べれば随分少ないと想定されるので、先ほどの周産期の例と同じように、私たち自身でネットワークを作ることが可能だろうと思っていて、いまそちらに動いています。
 それと関連してですが、14頁に宮坂先生にまとめていただいた最後の議論に「生物学的製剤の長期的な副作用に関しては、明らかにされていないことに留意することが重要である」という点は、以前から何度も申し上げていることですが、こ辺は非常に重要なことです。病気が治る可能性のある薬剤がたくさん出てきたということが、先ほどから言われていますが、いまは治ったかもしれない。しかし、10年後、20年後に発がんする、あるいは自己免疫疾患にかかる。これでは何の意味もないので、むしろこの辺に関してのメーカーと医療機関、厚労省とのタッグを組んだ調査を何とか作り上げていきたいということを要望したいのです。
 成人で生物学的製剤の導入の平均年齢が57歳で、子どもは15歳です。そうすると、その間が40年間ロスがあるわけで、この40年間を子どもは生きなければいけないわけですから、そのハンディを子どもが負うわけです。だから、子どもこそ、こういう部分が非常に重要なのではないか。メーカーもどこまでのデータを出してくれるか云々というところについては、まだまだ不明確なところもあります。
 それから、これは予算が1年ということで、いま日本は動いているわけですが、10年、20年、30年のスパンで見ていかなければならないものですので、そういう部分についてのご考慮をいただいた行政、厚労省、小児科医、メーカーとの、いわばコンソーシングみたいなものを作るような方向を出していただけないかということをお願いしたいと思います。
○水田委員長 ありがとうございます。大変貴重なご意見でした。
○難波疾病対策課長 私も正確には情報を持っていないのですが、医薬局、PMDAがそういった点ではデータベースを作るということで、いま実際に話が進んでいますので、そういうものといかに時間との連携をとるかということが我々としてはポイントだと考えています。
○宮坂委員 PMDAが作るのはいいのですが、それはあくまで生物学的製剤を使われている人だけを集めてやるのです。そのときに生物学的製剤を使っていない患者と比べなければいけないので、両方集めないと実はできませんね。ですから、そういう配慮は今後必要だろうと思います。
 それから繰り返しになるかもしれませんが、こういう疫学研究というのは、結果が出てくるのに5年、10年かかります。そこに関わる研究者と数は非常に多い。そうすると、いまのようにインパクトファクターとか論文の数で勝負をする世の中になると、疫学研究をやっている人たちは研究費も取れない、勝ち残れない。それから若い人たちはそこへ行っても研究費が取れない、勝ち残れないと思うとやらないのです。ですから、これは国がここをちゃんとプロモーションしないと動かないと思います。
○水田委員長 それはご存じだと思いますが、福岡の九大でやっていた久山の研究です。あそこは最初のころはあんなことをやってもなどと言って、田舎に行くのは嫌だと言って、医局員も行きたがらなかったという噂もあるのですが、いまではそれが40年のデータになっています。やはり積み重ねという大事な分野だというのは本当に大事にしないといけないので、是非厚労省からもいろいろご指導いただけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。ほかにご意見はありませんか。
○栗山委員 たぶん細かい中には入っているのではないかと思いますが、折角こうやって作業班を立ち上げてくださって、いろいろな検討やこうするといいかもしれない、ああするといいかもしれないという意見が出たところで、本当にこれに沿ってやってみて、その結果どうだったのだろうという見直しを5年ごとではなく、とりあえず1年やってみてどうだった、2年やってみてどうだったと。5年間同じことをするのではなく、もう少しここの所はこうしたほうがいいのかもしれないというのを短期で見ていただけないかと思います。ただ、こういう会議を開くのにお金がかかるということもあるのだろうと思いますので、お願いばかりはできませんが、委員で集まることで必ずしもお金のかからない方法での委員会にも協力していきたいと思いますので、是非そういう見直しを、負担も多いと思いますが、まめにしていただけたらと思います。
 あとは、今回の委員会はちょうど3月11日にあるはずのものが災害でキャンセルになって実現できませんでした。災害という大きな試練の下で長期慢性疾患リウマチもアレルギーも、その中で本当に多くの方々が声も上げられずに被災地で苦しまれたということがあると思います。是非その経験を何かの例で活かしていただきたい。この中には入っていませんが、例えば災害地での備蓄や災害支援の連絡方法などでの提言をさせていただけたらありがたいと思いました。
 それから、私は小児のほうで仕事をしておりますので、喘息においては喘息死というのは1つの大きな評価だと思いますが、子どもたちにとっては1日の3分の1を過ごす学校というか、教育現場がすごく大きな生活の場になっており、そこでの安心・安全な生活がまだ全くとは言いませんが、守られていない現状があります。厚生労働省は保育のほうだけかもしれませんが、是非文科省のアレルギーの対応のところなどは厚生労働省から技官が行っていらっしゃると思いますので、連携をとって、学校現場でのアレルギーの対応についても検討をしていっていただければと思います。
 実は私の所に、つい2日前に食物アレルギーのある子どもを学校に預けているのですが、ということで連絡がありました。給食の時間はそばに付いているようにという校長先生からの指導があって、何箇月も給食をずっとそばで見守っているそうです。折角の文科省、厚労省のアレルギーの取組みが現場で活かされるような方法を、皆さんと一緒に考えていければと思っています。
 もう1つは、厚生労働省の科研費で作られているアレルギーのセルフケアなどもここにも書いていただいていますが、広く使われるために、またご支援をいただければと思います。
○水田委員長 ありがとうございました、ほかにありますか。確かに子どものことも難しいですね。教育のほうは、こういうのを専門にする専門医はどんどん増えていますか。
○宮坂委員 増えています。ただ、先ほど指摘しましたが、例えばリウマチ学会と整形外科学会と財団とが全く別の制度を持っているというのは、患者にとっては非常にわかりにくいシステムになっています。いま日本専門医制度機構が、できるだけ1つにしようとしていますので、ドクター側がその気にならないといけないと思います。
○水田委員長 それでは、ほかにご意見がないようでしたら、参考資料は説明はしないので読んでいただくということですね。
○難波疾病対策課長 栗山さんからお話があったように、施策の評価というのは、いまの先生方のお話もそうですが、世の中の動きや学問の進歩で、次は5年後ですということにはならないような時代だと思います。どのぐらいの頻度かは別として、ある程度のスパンで会議を開催しながら、軌道修正が必要なものについては検討するということは、我々も当然やっていきたいと思います。
 それと折角災害のことでご発言いただきましたので、もしそういった内容で何か活かせるものがありましたら、ご提言いただけましたらと私どもは考えておりますので、よろしくお願いします。
○栗山委員 ありがとうございます。いま患者と専門医と企業の方々も入ったメーリングリストでそういうものを作ろうと動いております。そんなに時間がかかるものではないと思います。学会が中心になって動いておりますので、出来次第ご提案させていただければと思います。
○宮坂委員 どういう方法で。
○栗山委員 それはどういう方法かは、お役所のほうに。
○外山健康局長 この委員会を通さなくても、日常的な役所の機能として受けますので、ご提言いただければ。
○水田委員長 これはどこまで行くのですか。どこまでというか、この報告書、ガイドラインが指標が県に下ろされるのですよね。県からどのような情報が伝わるのかということを知りたいのですが。
○難波疾病対策課長 参考資料の4と5に当たるものかと思いますが、前回はいただいた報告書の中からエッセンスというか、ある程度行政的な文章に直したというか、行政的文書に著したものを、それぞれの方向性等ということで都道府県等、関係学会、関係団体あてということで、もちろん報告書を付けてご紹介させていただいたということです。今回も同じような手続を考えております。
○水田委員長 言っては悪いのですが、それを読む人と読まない人がいるということが問題ですよね。そこがどこまで伝わるかということが。といって送ったほうは「ちゃんと読んだね」とはなかなか言いにくいということもありますから。そうすると、そこでちゃんと受け取って、そちらのほうに向くということがない限り、医療格差は続くと思います。先生方が一生懸命なさって、いいものができて、アップ・ツー・デートのことが出ていても、それに耳を塞ぐような医療人がいると、どうしようもないなと思います。これがもう少しうまく伝わらないかなと私は思います。
○難波疾病対策課長 特に私どもは研修事業をもっておりまして、研修医の養成をやっております。そういうときにももちろん紹介させていただきますし、あるいは主管課長会議のようなものもやりますので、そういったときにも紹介させていただきますので、あらゆるそういった機会を通じて伝えていきたいと思います。
○水田委員長 よろしくお願いいたします。
○宮坂委員 確認ですが、難波課長がご紹介された参考資料4、5は平成17年度の分ですよね。ですから、今度はこれに見合ったものが新たにできるということですね。
○難波疾病対策課長 そうです、そのとおりです。
○水田委員長 ほかにご意見はありますか。
○栗山委員 参考資料4、5のようなものを作るときに、今回私が感じている前回との大きな違いは、関係団体の中に患者団体という言葉を入れていただいたことが1つと、研修対象として、前にもありましたが、医師が必要だということを医師会の先生方にも強くご理解いただいて、医師会として対応していくと言っていただいたことがありますので、是非この参考資料を出すときのまとめの中に、そういう言葉を使っていただければと思います。
○外山健康局長 いま団体からお話がありましたが、参考資料4と5のような形で出すわけですが、本当はというか、リウマチとアレルギー対策委員会というのは、厚生科学審議会疾病対策部会の中の委員会で、正式には疾病対策部会の決定になります。疾病対策部会の決定というのは厚生科学審議会の中で部会の決定が厚生科学審議会の決定とみなすことができて、我々は諮問するというよりも、部会自身の意見具申として厚生労働大臣に意見具申するような形で、それを受けて我々が何かするというのが本当の手順を踏んだプロセスです。
 しかし、これだけ専門的にやられているので、この委員会のご提言を踏まえて、それで行政としておくという話なのです。そうすると、そのままこの委員会の報告書を全部添付文書にするかというと、それは単なる紹介になるので、ずるいやり方かもしれませんが、噛み砕いた形で付ける。したがって、これは既に委員会から受けた報告ですが、行政文書になっているということです。
 なおかつ、付いていませんが、この上に「鑑」という公文を付けますので、その公文に今回の改革の趣旨を書きます。ですから、いまおっしゃったような、あるいはこういうことを津々浦々まで関係者にちゃんと周知するように、そういった今回の改定の趣旨と、我々が意図とするところというか、そういうことを十分鑑に付けて徹底させたいと思います。
○水田委員長 ほかに何かご意見はありませんか。よろしいでしょうか。それでは、この委員会の議論はこれで終わりにさせていただきます。報告書は私のほうで預からせていただきまして、最終的にとりまとめたものを事務局に送らせていただきます。また、本日欠席の委員もいらっしゃいますので、欠席の委員も含めて、この内容の報告書にもう少し付け加えたいことがありましたら、6月28日までに事務局へご連絡いただきたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。それでは、事務局から今後の予定等について説明をお願いします。
○中川課長補佐 本日はありがとうございました。先ほど水田委員長からもお話がありましたように、委員長のほうでとりまとめさせていただきました報告書は後日、委員長より事務局にいただきまして、各委員の先生方に送付させていただきます。この報告書がまとまったあとには、報告書を基に「リウマチ対策の方向性等」「アレルギー疾患対策の方向性等」を作成したいと考えております。よろしくお願いします。
○水田委員長 それでは、これにて厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会を閉会いたします。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省健康局疾病対策課

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内線: 2982・2359

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