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2011年7月19日 第5回ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会  議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成23年7月19日(火)
15:30~18:00


○場所

厚生労働省 専用第23会議室 (中央合同庁舎第5号館 19階)


○出席者

(委員)

永井座長 福井座長代理
小幡委員 高芝委員 辰井委員 玉起委員 堤委員
徳永委員 藤原(靜)委員 藤原(康)委員 前田委員
増井委員 武藤委員 山縣委員 横野委員

(事務局)

文部科学省: 戸渡審議官 渡辺安全対策官 岩田室長補佐
厚生労働省: 矢島技術総括審議官 尾崎研究企画官 田中課長補佐
経済産業省: 長部課長補佐

○議題

(1)ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しの検討
(2)その他

○配布資料

資料1ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しにあたっての検討事項(案)
参考資料1三省委員会委員名簿
参考資料2ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針

○議事

○尾崎研究企画官(厚生労働省) 
 定刻になりましたので、ただいまから「文部科学省ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会(第5回)」「厚生労働省ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会(第5回)」「経済産業省個人遺伝情報保護小委員会(第16回)」を合同で開催します。委員の皆様にはお忙しい中、お集まりいただきお礼を申し上げます。本日は鎌谷委員、知野委員、栗山委員、俣野委員がご欠席です。また、藤原靜雄委員が遅れる旨のご連絡をいただいています。
 まず、配付資料の確認をします。1枚紙で議事次第と配付資料を記載したものがありますので、ご覧ください。配付資料として資料1「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しにあたっての検討事項(案)」、参考資料1「三省委員会委員名簿」、参考資料2「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」があります。その他、委員の先生の机上には、委員資料1及び委員資料2という形でファイルを2冊ご用意しています。以上ですが、不備等がありましたら、事務局までお知らせください。
○永井座長 
 早速、議事に入ります。前回の委員会において、個別の検討事項について意見交換を行いましたが、今回も引き続いてそれらの個別の検討事項についての意見交換を進めたいと思います。前回の委員会において、いただいたご意見を踏まえて事務局と相談の上、「ゲノム指針の見直しにあたっての検討事項(案)」を再度整理しました。今回の資料において、「見直しの方向性(案)」の項目が新たに付け加わっています。具体的な指針改正にあたっての方向性について、これらを基にして議論を行いたいと思います。資料1の検討事項を一通りご議論いただいたあとに、最後にまとめて全体的な議論としたいと思います。
 また、前回に引き続いて委員の皆様には、検討事項を一通り議論することにしていますが、時間の制約がありますのでポイントを絞って、ご発言、ご意見等は簡潔にお願いしたいと思います。ご協力をお願いします。また、ご発言に当たりましては今後の指針改正にあたって、より具体的に議論を行いたいと思いますので、ゲノム指針のどの部分をどのように修正すればよいかを含めて、できましたらご意見をいただければと思います。
 では、時間がありません。大体1項目5分から10分程度になりますが、最初の課題の遺伝情報と個人情報の関係の整理について、事務局からご説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 資料1の1頁をご覧ください。「1 遺伝情報と個人情報の関係の整理について」です。検討のポイントの次に、今回新たに「見直しの方向性(案)」を記載しています。すべての説明は、基本的には見直しの方向性(案)について説明していきたいと考えています。
 「氏名、生年月日等の個人識別情報が付されていない遺伝情報については、その遺伝情報そのものにより特定の個人を識別することができることとはならないため、遺伝情報であっても、連結不可能匿名化又は連結可能匿名化して研究を行う機関において対応表を保有していない場合については、個人情報に該当しないことをゲノム指針のQ&Aに記載することとしてはどうか。ただし、単一遺伝子疾患等の遺伝情報の場合には、診療情報等と照合することにより個人を特定できる可能性もあるため、その取扱いについては十分留意することをQ&Aに併せて記載することとしてはどうか」です。ここの部分は、遺伝情報が個人情報に該当するかどうかをQ&Aでより明確にしていこうというところで、方向性を書いています。以上です。
○永井座長 
 いかがですか。ただいまの点について、ご質問、ご意見をいただけますか。
○堤委員 
 いまご提案がありましたように、Q&Aをうまく使っていただきますと、全体的に本文の中に書き込めないことであっても、最初から説明用に入れておいていただいたほうがよろしいかなと思います。あとでもQ&Aでというのが出てくると思いますので、是非ここをうまく使っていただければと考えました。ここにお書きいただいている内容は、これでよろしいのではないかなと考えました。以上です。
○永井座長 
 ありがとうございます。ほかにいかがですか。
○山縣委員 
 私も、基本的にこれでいいと思います。「ただし」の部分が記載されているところがいいと思いますが、その中に「単一遺伝子疾患等」の「等」がとても重要で、今後いろいろな遺伝子を扱う診療が増えてきた場合に、確かに世の中にいろいろと個人情報が付いた形で存在していくことは十分考えられてきていて、そういう意味でもこういうことで診療録と照合することにより、個人を同定する可能性もあるようなことは非常に重要な記載だと思います。以上です。
○高芝委員 
 私もこれと同意見ですが、言葉の問題として、見直し方向(案)の最初の段落の3行目は、「連結不可能匿名化又は連結可能匿名化して云々」とつながっているように読めますが、内容的には、「連結不可能匿名化した場合、又は連結可能匿名化して研究を行う機関において対応表を保有していない場合」、国語の問題ですが、そこを明確にした方がよいと思いました。以上です。
○永井座長 
 これは書き方の問題になりますね。
○武藤委員 
 いまの見直しの方向性の第2段落の「ただし」以下ですが、ご趣旨は理解していますが、ここに「単一遺伝子疾患等の」という例示の仕方をするのがいいかどうかは若干疑問があります。「希少な疾患の場合」や「何々の場合には」というのがなくても意味は通じるところがあるかと思いますので、個人を特定しやすい条件にあるような疾患のことが想定されるような文言であればよろしいかと思います。わざわざ単一遺伝子疾患と書かなくてもいいのではないかという意見です。以上です。
○永井座長 
 これも書き方の問題と考えてよろしいですね。ほかにいかがですか。
○福井副座長 
 私も文言のことで恐縮ですが、2行目の「個人を識別することができることとはならない」という持って回った言い方よりも、「できない」とした方がよいのではないでしょうか。「ことができない」とすると、何か問題があるのでしょうか。
○永井座長 
 2行目ですね。いかがですか。必ずしもという意味が入るのでしょうか。
○福井副座長 
 そういう感じはします。
○永井座長 
 「特定の個人を必ずしも識別できないため」なのか、どうでしょうか。そう書くと、また問題が出てきますか。
○福井副座長 
 おそらく希少疾患が含まれるからだとは思いますが、持って回ったように聞こえるものですから、検討していただければ。
○尾崎研究企画官 
 「〈現行の〉」最初の○をみていただくと、括弧書きで「できるものを含む」とか、いろいろなことが書いてあったりするので、その辺を踏まえて遠回りに書いたのかもしれませんので、またQ&Aを作ったときに先生方には見ていただくことにしたいと思います。
○増井委員 
 見直しの方向性の部分ですが、最初の部分は遺伝情報と個人情報の関係が書いてあって、後半の部分では遺伝情報という話は出てきますが、診療情報等と照合することによりという形で、診療情報の個人識別性の話がここに入っています。そのあたりの整合性は取られたほうがいいかなと思いました。もし遺伝情報にだけフォーカスを当てるのでしたらばと思います。
○永井座長 
 いかがですか。
○高芝委員 
 ご意見の趣旨を正確に理解しているかどうかは分かりませんが、ここの文脈は、診療情報などと一緒になると、遺伝情報が特定の個人を識別できるようになるのでという趣旨だと思いますが、それでよろしいでしょうか。
○増井委員 
 ということは、診療情報に遺伝情報が書かれている場合というようなことを想定されているということですね。
○高芝委員 
 遺伝情報とプラス診療情報があって、合わせるという趣旨だと読めると思いますが、いかがでしょうか。
○横野委員 
 確認ですが、いまの部分というのは前の部分を受けて、たとえ氏名や生年月日等の個人情報が付されていなかったとしても、診療情報等と照合することによりという理解でよろしいですか。
○尾崎研究企画官 
 一応、横野先生が言われたようなつもりで書いているものです。
○増井委員 
 そうだとすると、最初の「ただし」のあとの部分の「単一遺伝子疾患等の遺伝情報の場合には」と、わざわざ書く必要がなくなる気はします。先ほどの武藤委員の話から言うならば、希少性があるような場合にはというようなことに近くなるような気がします。
○永井座長 
 その辺は、少し書き方を工夫していただけますか。もしよろしければ、次にまいりたいと思います。
 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究の業務委託の要件について」です。まず、事務局からご説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 4頁をご覧ください。「ヒトゲノム・遺伝子解析研究の業務委託の要件について」です。見直しの方向性(案)を見てください。「ヒトゲノム・遺伝子解析研究の業務を外部の機関に委託する場合、受託機関における試料等や遺伝情報の適切な取扱いを担保するため、委託の範囲を越えた利用の禁止、受託者以外の者への試料等の提供の禁止、知り得た情報の守秘義務、委託業務終了後の試料等の廃棄・返却等、受託者が遵守すべき事項について、受託者との契約等により担保することをゲノム指針又は細則に記載することとしてはどうか」ということです。現在の指針は、いま述べたような項目についてはあまり明確に書かれていなかったので、業務委託の要件についてはここに書かれてあるような項目を、指針又は細則に具体的に記載したいということです。以上です。
○永井座長 
 いかがですか。
○堤委員 
 この点は、見直しの方向性で示していただいた内容が具体的に書いていただいていますので、ご提案いただいたような形で細則にきちんと書き込んでいただければ、非常にすっきりするのではないかなと考えました。以上です。
○藤原(靜)委員 
 私もこれで結構だと思いますが、なお念のために1点だけ。委託者を選定する場合についての要件は、通常の経産省等のガイドライン、厚労省のガイドラインに従う前提でよろしいのですか。これは委託の要件ですよね。どういう人を選ぶかという話は出てこないのかという質問です。
○永井座長 
 どういう人に委託してよいのかという要件についてということですか。
○藤原(靜)委員 
 そうです。それは、もう前提となっているということでよろしいのですか。
○堤委員 
 経産省のガイドラインに沿ってやっている所を選ぶという認識は、逆にないのではないかなと思っています。
○藤原(靜)委員 
 経産省と申し上げたのではなくて、どこかのガイドラインとか何らかの指針等に基づいてやる、という前提になっているのかという質問です。特定のガイドラインと言っているのではないのです。ここには受けたほうの義務だけが書いてあるのですが、どんな人を選んでいいかというのが全く書いていないのでという意味です。
○堤委員 
 そこはないのだと思います。
○永井委員 
 あったほうがよろしいということですか。
○堤委員 
 それがあって、きちんと縛るのがいいのかどうかは私もそういう委託したことがないので、ほかに委託された先生方がいらっしゃればお答えください。
○徳永委員 
 たぶん委託者にはいろいろな形の機関があり得ます。例えば希少疾患だと、日本の中でどこの大学のどの研究室しか解析できないというような解析もありますし、もっと一般的ないわゆる検査会社の場合もありますし、それぞれの研究者が実際に目的の解析を日常的にされているグループであるかどうかというのを判断しながら委託先を決めていると思います。したがいまして、クオリティーコントロールのような何か一般的な基準というものが、特に大学関係の研究機関、グループの場合は必ずしもありません。ですから、委託の際の基準を文書化するのはなかなか難しいことかなと、現実問題としてはそのように思います。
○藤原(靜)委員 
 民間事業者では、事業者がどういう委託先を選定するかについては基準がありますので、いまのように特定の大学の特定の研究室しかできないというのは仕方がないというか、信頼してのことであると思いますが、検査会社等がたくさんあるとかテスト会社がたくさんある場合に、そのテスト会社も一定の水準に、クオリティーあるいはいろいろな法令遵守が担保されているほうが望ましいと思いましたので、責任があるのかなという関心からの質問だったのです。
○増井委員 
 いまの点ですが、海外への委託というのがこれから出てくるし、いまもあるわけですが、その場合はどうなのかというのがいまの話を聞いて気になる点はあります。随分受託でいろいろとやってくれる所はありますが、そういう所は何か基準は。きっとないですよね。
○永井座長 
 委託あるいは受託に当たって、このガイドラインを遵守することということを当事者同士が交わすのは、当然必要になるわけですよね。それでは不十分かどうかということになりますが。
○増井委員 
 私が疑問に思ったのは、ここの部分の細則のきちんと書かれたものだけでいいのか、あるいはもう少し何か国際的にやる場合の準拠できるものがあるのかどうかという点です。国内で研究者間でしたら、確かに信頼関係で、ほかのやり取りをするのに委託・受託という形を取る場合があるのだと思いますが、海外の研究者間の場合にはそれでやるのでしょうけれども、いろいろとやってくれる所が増えているので、その間とのやり取りのときにどうするかということを何か書いておく必要があるのか、あるいはこれで十分なのか、どうなのでしょうか。
○徳永委員 
 私が知っている範囲だと、委託先の検査のクオリティーがどうだというようなことを数値のようなもので示し、一定の基準に合致するかを判断するようなことは一般にはしていないと思います。いま申しましたように海外に委託するような場合も、大学研究機関であると、この疾患のこの遺伝子の解析はあそこが中心にやっているから、そこに委託する。あるいは治験で、海外の検査会社に委託している場合がよく見られますが、それは我々が日本にいても、ある程度名前を聞いたことがあるような検査会社が選ばれている場合が多いです。しかし、その際に何か基準があって、そこに則っているかどうかを判断した上で委託しているかについては、私の知っている範囲ではあまりされていないように思います。
○増井委員 
 どうもありがとうございます。これだけあれば、そこから広がらないので十分なプロテクションになると思いますので。
○徳永委員 
 あるいは少し、十分な実績を持つ委託先を選んだ上でというような種類の文言を入れるかどうかです。
○永井座長 
 このガイドラインを遵守できる所を選びなさいということを書いてもよいかもしれません。あるいはQ&Aでの対応かもしれませんが。
○堤委員 
 契約を実際に結ぶときですと、受託側としては委託元に対してゲノム指針に則って採取した試料を提供してくださいと条文に示しておきたいと考えます。また、受託するほうとしたら先ほど出ていたように、経済産業省のガイドラインに沿った形で受託しますという文言が載るようにするということは、契約書を作るときに検討される内容ではないかなと思いますので、例示するのはこの程度でも十分ではないかなと思います。
○永井座長 
 藤原先生、いかがですか。
○藤原(靜)委員 
 問題を広げる気はなかったのですが、先ほどご質問があったように実は民間でも国際間はなかなか難しい問題になっていまして、制度が違うのでそれぞれ認証制度をどうするかというようなことを議論しています。この場合、契約等により担保するということで、そこにきちんと盛り込んでいただけるならそれで結構だと思います。申し上げたかったのは、性善説で投げっぱなしにして、いわゆる丸投げで管理監督の意識がないと、委託というのはそこで大きな問題が生ずることがあるという趣旨です。
○永井座長 
 よろしいですか。次の課題に参ります。3「倫理審査委員会の構成について」、事務局から説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 3「倫理審査委員会の構成について」、資料1の6頁を見てください。見直しの方向性(案)としては、「臨床研究指針や疫学指針との整合性を整理する観点から、倫理審査委員会の構成については、倫理・法律を含む人文・社会科学面の有識者、自然科学面の有識者及び一般の立場の者から構成され、外部委員を含まなければならないこと。男女両性で構成されることとしてはどうか。ただし、外部委員については1名のみの場合は」、ここに書いてあるようなことなどが予想されるため、「複数名を置くことを要件とすることとしてはどうか」としています。以上です。
○永井座長 
 ただいまの点について、いかがですか。
○尾崎研究企画官 
特に栗山先生は、倫理審査委員会については、ほかの2つの指針を本指針に併せるほうがいいのではないかというご意見を前回述べられていたこともありまして、ただ本日は急にご欠席という状況にありますので、その辺は情報提供をさせていただきたいと思います。我々の案としては、「ただし」のところで臨床研究指針や疫学指針よりも、もう少し縛る条件を付けているとしての案を出しています。
○永井座長 
 つまり、外部委員を複数名置くというところですね。
○尾崎研究企画官 
 そうです。
○永井座長 
 ただいまのご説明について、いかがですか。
○辰井委員 
 これでもあり得るかなとは思いますが、これまでゲノム指針に従った倫理審査を行うために、各機関が非常に苦労をしてきましたので、いったいどういう理由づけでこれほどドラスチックに変えられるかについては、少し検討が必要かと思います。
○永井座長 
 いかがですか。いままで倫理委員会に参加されてきた先生、藤原先生いかがですか。
○藤原(康)委員 
 理由を述べよというのであれば、倫理指針と医学指針も改善してきて、医療現場の臨床試験の方法論に対する理解が以前よりも進んだし、倫理に関する理解というか、それに対する尊重の度合も以前に比べたら増してきて、昔よりもかなり全体の研究の質は上がっていると思います。だから、それを事細かに決めるよりも、もう少し柔軟な姿勢で世の中が適正に動くようになってきたというのでは駄目ですか。昔は、そんなのをきちんと決めておかないとやらない人たちが多かったと思いますが、いまはきちんとしている人が増えてきたというのが実態で、実態に合わせた変更ですというのでは、一般の委員の先生には理解してもらえないところがありますか。
○永井座長 
 あとは、開催が非常に困難だったという印象はお持ちですか。
○藤原(康)委員 
委員の改選時期に、どういう方々にお願いするかというのをいつも苦労しているのは実態としてあると思います。それから、その場で外部委員の方々に半数というのは、かなりきついところがあります。私のような単科の病院というか、大学病院のように複数の学部がないような所で、いろいろな方面の方を私の築地のキャンパス以外から呼んできて、それが半数を占めるというのは実態としては難しいと思います。
○永井座長 
 ほかにご意見はありますか。辰井委員、いかがですか。
○辰井委員 
 これまで外部委員がすごく重視されていたのが、なぜだったのかということではないかと思います。現在、外部委員をたくさん揃えてやるのが大変だということもよくわかりますし、倫理審査でそもそも外部委員を置くことが必ずしも厳格にという趣旨ではなくて、ゲノムの場合にはいろいろ考慮しなければいけないから外部委員が必要だということであったのだとすれば、いま藤原先生がおっしゃったことというのは必ずしも理由にならないですし、そこがゲノムに関する知識が成熟してきて、必ずしも多数の外部委員が必要ないという認識なのかどうかといったことであろうと思います。なかなか、ここで意見の一致を見るのが難しいテーマであるということは承知しています。
○増井委員 
 我々の所は、難病の研究資源バンクというのをやっていて、委員を選ぶときにどう選ぶかというのは随分悩みました。もちろん、ゲノム指針対応で選ぶというのが1点と、患者への説明責任が果たせるような形態を取らなくてはいけない。希少疾患の場合、特にいろいろと問題点が出てくる可能性があるのでというのがあったので、いろいろ考えた結果、一般市民と言われる人たちを3名お願いして、そこで行われるそれぞれの倫理審査の性質も含めて、外部に対して説明ができるような範囲で考えるべきことに属するのだろうと。ただ、複数名というのは最低限外部委員の場合には必要でしょうし、本当のことを言うとこの中でも一般市民は、栗山委員のカテゴリーに入る人は栗山委員だけということもあるわけですが、そのあたりのバランスなどは、それぞれの倫理委員会で責任を持って決すべきことになってくることを示しているのだと思います。
○横野委員 
 今日の検討事項の最後のほうにありますが、研究者や倫理委員会のメンバーに対して教育や研修をするというのを新たに入れようという話がありますので、例えばそこでいろいろな立場の方からご意見を伺うとか、そういったところをきちんとやっていただくことと併せて考えるといいかもしれないと考えました。
○永井座長 
 何頁の議題ですか。
○尾崎研究企画官 
 38頁です。
○永井座長 
 ここと併せて議論したほうがよろしいのではないかということですか。
○横野委員 
 単に倫理委員会の構成だけで片づく問題ではなくて、いろいろな形で倫理性の担保をしていく必要があると思いますので、その手段として今回新たにこれが加わることになると言えるのではないかと思います。
○永井座長 
 いかがですか。そしたら、最後のところで一緒にもう一度この点については議論したいと思います。
 次は遺伝カウンセリングについて、ご説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 4「遺伝カウンセリング」について説明します。資料の8頁をご覧ください。見直しの方向性(案)ですが、「今後もヒトゲノム・遺伝子解析研究の過程において、必要に応じて、提供者等が遺伝カウンセリングを受けられるよう配慮することが重要であり、現行の遺伝カウンセリングに関する規定を維持することとしてはどうか」ということです。資料にはこれ以降に参照条文ということで、いまのゲノム指針の遺伝カウンセリング関係の項目を、8頁から9頁にかけて指針及び細則については示しています。それも併せてご覧ください。以上です。
○永井座長 
 この点について、いかがですか。特に変えないということですね。
○堤委員 
 前回もそうでしたし、福島先生からもご提案のあった内容ですので、ここはよろしいかなと思います。逆に武藤委員からご指摘がありましたが、9頁の説明文書に記載する細則で、「単一遺伝子疾患等の場合は」という言葉があちこちに結構出てきていますが、先ほどのお話ですと、これは全体に見直したほうがいいということで、遺伝カウンセリングの話とずれますが、それをもう1回確認したいと思います。
○永井座長 
 これも全体を統一したほうがよろしいように思います。
○尾崎研究企画官 
 今後、指針とか細則とかについては、議論に基づいて文章に落としていきますので、そのときにこの点も留意していきたいと思います。
○永井座長 
 ほかにご意見はありませんか。よろしいですか。この件はここまでにしたいと思います。
 5「遺伝情報の開示について」です。説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 遺伝情報の開示については、資料の10頁です。見直しの方向性(案)としては10頁の下から11頁にかけてで、10頁は前回にいろいろな議論があったかと思いますが、この案としては「提供者の権利を尊重して、引き続き、提供者が自らの遺伝情報の開示を希望している場合には、開示することを原則としてはどうか」というのが1点です。その次の「ただし」は開示しない例外規定で、「遺伝子解析の結果得られる遺伝情報については精度や確実性に欠ける場合があり、遺伝情報の開示により場合によっては提供者の誤解を招くおそれがあることも踏まえて」、11頁の上にポツが3つありますが、ここに書いてあるような場合については、「その全部又は一部を開示しないことができるとしてはどうか」ということです。特に2つ目のポツですが、「当該遺伝情報がその人の健康状態等を評価するための情報としての精度や確実性に欠けており、開示することにより提供者や血縁者の誤解を招くおそれや精神的負担になり得るおそれがあり」、この条件についても、いままでこうした記載は特段なかったわけですが、こういったことも付け加えて、こういう場合には開示しないことができるということにしてはどうかということです。
 11頁の「また」以降をみてください。2番目に申しましたプラスアルファした事項について、インフォームド・コンセントのときに確認する事項であることを確実に書いたらどうかということです。さらに、いちばん下の段落については、「同意を受けることを前提として、遺伝情報の開示について開示をしないことについて同意を受けているにもかかわらず、当該提供者が事後に開示を希望した場合についての細則は削除することとしてはどうか」ということです。ここでいう細則とは、11頁の見直しの方向性(案)のあとの点線で囲んでいる参照条文の中のいちばん下から2番目ぐらいの「遺伝情報の開示に関する細則」を言っています。以上です。
○永井座長 
 いかがですか。
○山縣委員 
 いままでの議論をよく整理していただいて、こういう形になるのかなという気がします。ただ1点、ポチの遺伝情報提供をすることにより云々、その権利、利益を害するおそれとか、こういう場合には開示しないことができるということを誰がどこで決めるのかということは、こういうところには必要ないのか、それとも細則なので倫理委員会等で改めてこういった点の開示が求められて、開示するかしないかについてどこかで検討するといったような文言が必要なのかに関しては、いまこれを見る限りでは抜けているのかなという気がします。
○尾崎研究企画官 
 1つの考え方は、インフォームド・コンセントの文章については研究の前に研究計画と同時に倫理審査委員会の検討にかかっているという理解もできると思います。最終的には、条文での確認が要ると考えていますが、いまの項目でも、確実に倫理審査委員会で評価するというか、検討するというふうに理解できるのではないかと思っています。
○山縣委員 
 別に倫理委員会でなくてもいいと思います。こういう研究組織の中で開示に関して検討する場を設けて、そこで決めてやるのだということが研究計画の中や倫理委員会のそういうことを承認を得ることが必要なのか、これは誰がそこで決めるのかみたいなことが明確でないと難しいかなと思っただけです。
○辰井委員 
 いま、以前からここにいくつかの項目が含まれているという話がありましたが、私としては研究で得られることが予定されているデータに関してということで議論をさせていただきます。その上でそうだとすると、こうしたここに挙げられているような諸々の要件がある場合は、開示してはいけないというのが当然だと思いますので、「開示しないことができる」という書き方は非常に弱いと思います。開示しないことができるではなくて、開示してはならないのだということになりますと、結局その情報に関しては開示するべき場合と開示しないべき場合があることになりますから、開示することが原則だというのは書きすぎだと思います。前回も、いろいろな先生方からご意見が出ていましたが、具体的にというようなことでしたので少し考えますと、原則を決めないで配慮事項のみを定める。それで山縣先生がいまおっしゃったように、いろいろなことを検討してこういう手続で決めてくださいということを定めるだけにするか、少し場合分けをして、単一遺伝子疾患の有無がはっきりわかるような場合は知らせなければいけないけれども、そうでないときはいろいろ考えて決めてください、というようにするぐらいの選択肢ではないかと考えています。
○高芝委員 
 このタイトルは、遺伝情報の開示という項目がタイトルになっているわけですが、遺伝情報の中には個人情報に該当する場合と、該当しない場合の両方が含まれていると思います。個人情報に該当する遺伝情報については、個人情報ですから、適用除外云々という議論もありますが、個人情報に当たる限りは開示をすることになるでしょう。ここで言っているのは、個人情報に当たらない遺伝情報についてのルールという理解をしていますが、それでよろしいのでしょうかというのが1つ。ただ、その場合でも、基本的には可能な限り、原則開示をしていく方向がありがたいと思っています。以上です。
○渡辺安全対策官(文部科学省) 
 いまの点は、遺伝情報の開示については遺伝情報一般で述べています。もし、仮にこの遺伝情報が個人情報に該当する場合には、現行のゲノム指針、参考資料2の12頁に研究を行う機関の長の責務として、個人情報の開示の規定がありますので、当然12頁の(23)の規定に従うことになります。もし高芝先生のような、この遺伝情報が個人情報に当たる場合の扱いと混同することを避けるのであれば、例えば遺伝情報の開示のところに個人情報に該当する場合には、こういった規定に従うことを細則なり注なりで設けるというのは必要かもしれないと思います。
○高芝委員 
 個人情報に当たる場合と当たらない場合があるという理解が全員で共通であればいいと思いますが、そこら辺が初めて読まれた方などが分かりにくいケースがあり得るとしたら、今お話いただいたように、どこかに説明文書、補足を足していただけると大変ありがたいと思います。
○堤委員 
 先ほど辰井委員から整理してお話いただきましたが、原則として開示しなければならないという言葉が非常に強く感じまして、提供者が希望している場合には開示することも可能であるとか、そこをもう少し書き方を変えていただくべきではないかなと思います。何度も申し上げているとおり、「原則開示」という言葉にどうしてもいつも引っ張られてしまう。ですから極端なことを申し上げると、「原則非開示」と言ってほしいですと言わざるを得ない。それは、いままでの経緯でそんなことは申し上げませんでしたが、「原則開示」の文言が強すぎるので、十分検討していただきたいと思います。
 高芝先生がおっしゃられました個人情報に相当するか、しないかに関しては、それよりはあくまでもここで言う情報というのは、前回横野委員がおっしゃっていたと思いますが研究成果として得られた結果、研究成果をどう試料提供者に返していくのかという切り口で整理していただいたほうがいいのかなと思ったりはしていますが、いかがですか。
○藤原(靜)委員 
 前回何度も申し上げましたので繰り返しませんが、私はこの原案の線、先ほどの高芝委員の御意見でよろしいのではないかと思います。成果であれ何であれ、個人情報は個人情報ですので、法の権利を指針で破るというのは無理ではないかと思います。もちろん、遺伝子情報が個人情報に当たらない場合は、ここでの整理でいいと思います。また、ここにポツが入って前回の議論をまとめていただいたので、私はこれでいいのかなと思います。
 もう1つは、先ほどご議論がありましたが、こういうものを読むと、あるいはいまのこの場での議論を伺っていると、紛争になったときの話はどこかにあるのだろうかという気がいつもします。実態としてどのぐらい紛争があるかはわかりませんが、先ほどのご質問のおそれの認定をいったい誰がするのか。開示、非開示を最終的に決めるのはどこか。その枠組みが既にこの世界でほぼ出来上がっているのであれば余計な質問ですが、どうもここの規定の読み方についてはそれぞれ立場が違うようですので、立場が違うということはおそらく被験者、患者の中でも立場が違うということだろうと思います。そうであるとすると、トラブルを予想した何らかの措置をしておいたほうが運用は楽ではないかという気はしますが、いかがですか。トラブルというか、意見が合わないときと言い換えますが。
○辰井委員 
 少し話を戻してしまい恐縮ですが、どうも話が噛み合わない感じがする理由がどこにあるかを考えますに、見直しの方向性のこの文章だけを見せていただくと、自らの遺伝情報の開示を希望している場合には、開示することを原則というのは極めて妥当なように思います。しかし実際には、その個人の遺伝情報なのかどうかがわからない情報が多数出てきて、多くの場合、その人の資料を何らかの形で解析して得られたデータというのは遺伝情報であるとみんなが思ってしまいますので、それを返すのはまずいという話だろうと思います。ですから、その個人の遺伝情報であるということの確実な情報があるのであれば、それは確かに返すことが原則かもしれない。しかし、研究現場で出てくる情報というのは、そういうものではないことが多いことが問題ではないかと思います。
○永井座長 
 つまり、まだ間違いがたくさんあったり、再構成が十分にできていないとか。
○辰井委員 
 そうです。
○増井委員 
 いまのフォローアップですが、実際に精度や確実性に欠けるという言い方になっていますが、ここの部分にはいくつかの層があって、ものの取り違いの話と解析方法の正確さ、あるいは確度の問題、それからその持つ科学的な意味や医療的な意味の問題という、いくつかの層があると思います。そのことについてQ&Aででもいいですが、何らかの判断をするときの助けになるような枠を提供したほうがいいのではないかなと思います。そうでないと、いろいろなところでただただ混乱を増してしまうような気がします。
○堤委員 
 いま増井先生がおっしゃったとおりだと思います。書き方としてデリケートなところもありますし、いろいろな場面があるよということです。要するに、研究でやったデータが駄目だと言っているわけではなくて、もう少し違う視点から評価する必要があるのではないでしょうかということで、分析的妥当性というのが1つありますし、実際に医療に応用できるかどうかということでいえば、でいえば、臨床的妥当性とか臨床的有用性という視点から見てもということも含めて、少し丁寧に書いたほうがいいのかなと思いました。それが1点です。
 もう1つは、原則開示の問題で提供者の権利をということが出てきていることは理解しますが、逆に見直しの方向性の11頁の括弧の中で削除するところがありますが、本当に削除してしまって大丈夫なのかなと思います。逆に被験者の権利云々といっているときに、あとで開示してくれと言われて、それは開示できませんという立場としてはこれはこれで非常に明確になっていますが、そこのバランスがこれでうまく取れているのかなというのが心配になります。書き方としては、さっぱりしすぎているのではないか。『「あなたは情報は要らないと言ったじゃないですか」と言い切れますよ』というスタンスははっきりしていますが、ちょっとそこが強すぎないかなと余計なことを心配してしまいます。
○高芝委員 
 この部分は、前回の議事録で拝見しましたが、皆さんのお話を伺っていて、提供者本人の方から見た視点からすると、本人が提供しているので、それは仮に個人情報に当たらない遺伝情報であっても、開示を希望したときは開示提供してあげた方がいいのではないか。それを原則にして、ただ例外として、があるときは除外するケースがあっても、それはバランスを取る上でよろしいですねというイメージを持っているものですから、この原案に賛成したいと思っています。他方、「返す」という言葉が個人的には気になっていて、「返す」というのは、一旦受け取ったものを返すということですから、受け取った研究者の視点から見て、受け取ったものを戻す、戻さないという発想になっていると考えられ、発想が噛み合わなくなるになっていると思います。私自身は、本人から見た視点の方が、より適切ではないかなという意見を持っていることが1点です。
 それとの関係で、今お話がありましたように、最後の削除のところ。本人の視点から見た場合には、一旦放棄してもやはり知りたいとなった場合は、希望を尊重してあげることが適切ではないかという意見を持っています。以上です。
○武藤委員 
 私は原則のところを逃げてしまいますが、考えがまとまっていません。ただ、OECDのガイドラインのほうでは研究結果を個別に提供するときについては、研究者の責務としてきちんといろいろなことを考慮して開示しなさいということが書かれていまして、考慮して開示するという責務を課してもいいのではないかと思います。このままですと原則開示ということで、何か闇雲に返そうとする研究者をまま見かけますが、OECDガイドラインはかなり慎重に、どういったことを考慮しなければいけない。その方針を明確にせよということを求めていて、私はそのスタンスは提供者の保護という観点から見ても賛同する立場にありますので、原則についてはもし、いろいろな経緯でこのままということであっても、少なくとも研究者に方針を十分考慮しなければいけないことは、どこかに課していただきたいと思っています。以上です。
○辰井委員 
 一言だけ付け加えます。OECDのガイドラインの場合、いろいろと考慮した上で開示するか、しないかの方針を決めなさいというものですので、そこのところが重要ではないかと思います。つまり、その慎重な立場というのは、返すことが常に良いというわけではないことを前提にしていると思います。
○藤原(靜)委員 
 確認ですが、11頁にポツが3つあります。権利利益を害するおそれ。2つ目のポツは、精神的負担になり得るおそれがあり、かつインフォームド・コンセントを受けている場合という理解で書かれている文章ですよね。
○渡辺安全対策官
 現行のゲノム指針については、11頁の参照条文の11の(1)にあるように、「ただし」のところで「提供者又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがあり、開示しないことについて提供者にインフォームド・コンセントを受けている場合には」となっていまして、この「おそれがあり」に11頁の上でいうと「若しくは」というところに、精度や確実性に欠けており、精神的負担になり得るおそれがあることを加えるというイメージです。
○藤原(靜)委員 
 私の質問は武藤委員のご発言と関係しますが、武藤委員のご発言の考慮要素は上2つのポツであると思います。その上2つのポツを考慮した結果、これはおそれがあると思ったときにインフォームド・コンセントの要件は、ここではなければならないのです。しかし、おそれがあるとわかったときにどう判断するかは、ひとつ難しい問題かなと思ったので、そのあたりのところで先ほど来、辰井委員のご議論もあるのかなと思ったので、この作り方を確認したところです。
○前田委員 
前回も少し申しましたが、「原則開示」に対しても問題点が指摘される、また、「原則非開示」に対しても問題点が指摘される、このような状況にあるのであれば、指針が、どちらかを原則として示すことは好ましいことではない、といえるのではないかと思います。したがいまして、次のような考え方もできるのではないかと思います。つまり、研究者側が開示するかしないかを決
めて、研究者は、インフォームド・コンセントを取得しようとする際に、そのことを参加者(候補者)に丁寧に説明する、そして、その研究に参加するかしないかについては、判断能力のある参加者(候補者)に任せる、このことを原則とするのも1つではないかと思います。いかがでしょうか。
○永井座長 
 それは、よろしいのではないでしょうか。
○堤委員 
 いま前田委員におっしゃっていただいて、旧来より申し上げているとおりで、データを被験者に戻すというか開示するということであれば、それは医療として扱っていただかないとまずいのではないかなと思いますが、その点はいかがですか。医療ではないと定義するのでしょうか。というか、日本医学会のガイドラインで、受口はできていますよというのを何回か申し上げてきていますが、そこに受け渡しをすることはもう一度確認しておきたいなと思います。研究者であり、医師であり、主治医でありという立場もあるかと思いますし、純粋な研究者もあり得る。こういう、いろいろな場面があると思います。それを一緒くたにしてはいけないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○増井委員 
 いまのことですが、そういうように分かれれば簡単ですが、ファーマコージェネイティクスのデータのクリニカルバリディティーを調べるような臨床研究のことを考えると、研究段階でありながら、かつ治療的介入のデータとして検査結果というか研究結果を使うわけです。そういう場面もあります。その状態を考えると、これはどういう形でやるので、きちんと本人に戻しますということが明確でないと、この場合は難しいわけです。ほかの研究の場合はどうかというと、バルクで解析をするので、個人に戻すことは目的にしていないとか、随分場合が違うことを少し書いたほうがいいのかなと。Q&Aでいいと思いますが。
○堤委員 
 そうであれば前田委員が言っていただいたような整理をしておいて、原則全部開示ですよという誤解は避けていただいたほうが良いと思います。開示に当たってはこういう場合であればこのこと、こういう場合であればこのことというのもあり得ることですよねと。それを理解した上で開示する、もしくは戻すか戻さないかについて検討してくださいと言いたいですよという姿勢が、この指針にはなければいけないのではないかと思います。いかがですか。
○増井委員 
 いまのご意見に賛成ですし、前田委員からの提案あるいは辰井委員からの提案は、重要な点だと思います。
○永井座長 
 具体性という意味で、どこをどう変えることになりますか。書き振りが問題になるかと思います。
○堤委員 
 参照条文の11の(1)の「提供者が自らの遺伝情報の開示を希望している場合には、原則として開示しなければならない」というところを例えば、遺伝情報の開示を希望している場合には、開示することも可能である。その場面についてはどうだというのを細則で書いておくとか、もう少しいい提案が辰井委員からあるかもわかりませんので、ちょっと助けていただいて。
○辰井委員 
 いまの「希望している場合には」という書き振り自体は返すことが原則になっている書き振りですので、その研究成果として何を主語にしたらいいかがよくわかりませんが、その情報に関しての開示するか、しないかの方針は、いろいろなことを考慮して決めなければならないみたいな、方針をきちんと検討された上で決定しなければならない。そのことについては、インフォームド・コンセントを取らなければならないというタイプの条文を作ることになるのではないかと思います。
○藤原(靜)委員 
 1つ確認してよろしいですか。先ほどの堤委員のようなお話は、こういう本人の側から見た細則が出てきたもともとの原理を否定しようというお考え方ですか。私には、時計の針を戻そうとしているように見えます。
○堤委員 
 そうではありません。これは研究対象が変わってきたことが、そうさせているとご理解いただいたほうがよろしいかと思います。この三省指針ができたころの単一遺伝子疾患を対象としたヒトゲノム・遺伝子解析研究であれば、それは単一遺伝子疾患に関わる原因遺伝子を調べようとするのであれば、原因がわかれば返すという流れは、私は至って妥当だと思います。けれども、例えば以前に徳永先生にご紹介いただいたような多因子疾患とか、研究対象がいろいろな分野にわたってきていて、その中でそういうデータも含めて原則開示に乗ってしまって、全部開示するというのは逆に言うとうまくデータそのものもコントロールできていないような気がします。そういう意味で、不確実性があるようなデータ、リスクが1.2倍とか1.3倍になるようなものまで、どんどん返していかなければいけないのですかという疑問が起きているからこそ、原則開示というのはやめておいたほうがいいのではないですかということをずっと申しています。
○藤原(靜)委員 
 それだからこそ、ここに今回ただし書き、例外の場合が入ったので、それで問題ないのかなと思います。
○堤委員 
 申し訳ありません。ただし書きというのは、そもそもただし書きが付いていまして、原則開示だけが飛び跳ねているような状況自体がそもそもおかしかったのですが、あえてここをもう一度整理しなければいけないというのはそういう状況も踏まえて、冷静に本来の姿に引き戻して、もともとあるような形にすべきではないかなと思っています。
○徳永委員 
 実際の研究もしている人間ですが、原則開示になりますと、開示した結果が間違っている可能性がある程度あったときに、研究のために試料を提供していただいた方に解析された遺伝情報を開示する、お返しすることが原則になりますと、間違って送った結果を開示することの危険性というのをなるべく抑えなければいけないという、先ほど堤委員が医療ではないですかということを言われましたが、それにやや近い意識を持たざるを得ません。研究をしているときに考えていることは、患者さんの試料をいただいて、100人、200人を調べていて、例えば健康な人の特徴とどこが違うかというのを一人ひとりの方についてというより患者の集団として考え、比較する健康な人の集団と、どういうところが違うかを統計的手法を使って分析している場合が多いのです。あるいは、家族発症の病気についても、何人かの発症した方の分析結果で共通するところはどこか。そして、発症していない方と違うところはどこか調べるわけです。それで、小幡先生のご発言もありましたが、数千とか場合によっては万という候補が出てきたものをいろいろ工夫して絞り込んで、最終的に1個残る、何個残るということで報告するわけですが、それに加えて開示ということになると、それまでの絞り込みの過程で十分に詳細には解析していないデータも合わせてご報告するという、研究とはもう1つ違う義務が生じるように感じます。
○藤原(靜)委員 
 そのようなときのために、今日2つ目のポツが入ってきたのではないでしょうか。ですから、いま先生がおっしゃったような懸念は、いまのところで、事務局の整理で封じられていると思うので、この案でいけるのかなと思ったのです。原理原則を変えるか変えないかは、どうもどちらの方向からものを見ているかが違うようですので、そこは繰り返しませんが、いまのようなご懸念は封じられると思います。もう1つ、前田先生のご提案は大変魅力的ですが、この分野における力関係とか、参加が双方の自由意思できちんとできているという前提が成り立つと、前田先生の見解は成り立つのだろうなと思いますが、治療の側面が入ってきたときに、参加するのもしないのも自由ですよというのを、患者側が選択できるという土壌があるかどうかがわからないので、賛否は留保せざるを得ないなと思っています。
○辰井委員 
 私のほうは若干繰り返しますが、原則がこうと決まっていて、ただし書きで例外があるからそれでOKかというと、おそらくそうではないと思います。それは、研究デザインに応じて返すことが望ましい研究デザインもあれば、返すことが望ましくない研究デザインもあるとすると、前者の研究デザインでは返すことが原則だし、後者の研究デザインでは返さないことが原則であるべきだということだと思います。いろいろな場合があって、どちらが望ましい場合もあるということですから、どちらかを原則にしてしまうのは少し舌足らずであって、そこは研究デザインに応じて考えてくださいという形にしておくほうがよいのではないかと思います。
○永井座長 
 正確さの問題もありますね。ある程度正確で、研究者もある程度の自信が出てきたところで返したほうがいいようには思います。最初にサーッとシークエンスした段階で開示してほしいと言われたときに、そういう粗なデータでも開示しないといけないのかという問題は研究者から出てくると思いますが、その辺はどうですか。デザインの問題と精度の問題。ほかの臨床研究のガイドラインでは、例えばいろいろ血清のサンプルを測ったりとかがありますが、そういう結果についてはどうなっていますか。
○武藤委員 
 これに該当する記述がないと思います。個別にどう結果をお返しするかは論じられていない。
○横野委員 
 最初のほうで辰井委員からも言及がありましたが、ここで遺伝情報の開示とはなっていますが、基本的には遺伝情報に関わる研究の結果、得られたデータと考えるべきだと思います。ただ、そこで前提とされていたことというのが精度であるとか、それが臨床上どういう意味を持つのかといったことが、この指針ができた当初と比べて随分変わってきている面があるのだろうと考えます。そうであれば、いろいろなバリエーションがあり得るのであれば、一律な方針を決めるよりは個別に応じた対応ができるような形にしたほうが、より丁寧なものになるのではないかなと考えます。
○藤原(靜)委員 
 もう一言よろしいですか。個別の対応と個別の要素だけではなく、実際に運用がどちらに行くかまで考えてルールは作るべきではないですか。個別の対応でということになれば、このデザインによればこれは開示しないというのが独り歩きし出すかもしれませんよね。ルールを作るときは、そこまで責任を持ってルールを作るべきではないでしょうか。
○堤委員 
 そういう意味で、いま整理をしたほうがいいと申し上げているのではないかなと思います。
○藤原(靜)委員 
 原理原則を決めておいて、辰井委員の言われるように実は例外は原則になる場合があるといっても、その研究デザインでは例外が原則として運用されているというバリエーションが出るだけのことで、当たり前のことだと思います。原則が原則として運用される場合と、例外のほうが原則となっている場合、その両方があり得ますと。それだけのことではないのでしょうか。
○堤委員 
 そうであれば、なおさらここに原則開示ということだけが載っていることのほうがおかしいと思います。
○藤原(靜)委員 
 ただし書きが載っているではないですか。
○堤委員 
 ただし書きは載っていますが、そうではなくて、原則開示が独り歩きをしているというのは何回か申し上げているとおりで、それがいまのおかしな実態なのです。そこまで読まない人が多いから、こんなことになっているのではないですかという意見をよく聞きます。
○藤原(靜)委員 
 では、それは関係者にきちんと読んでもらって、周知するようにすべきだということにはならないのですか。
○堤委員 
 それは、おっしゃるとおりだと思います。ただし、原則開示ということだけは見直すべきだというのは、私の強い主張です。
○藤原(靜)委員 
 それはわかりましたので、私もこれ以上、主張は繰り返しません。
○永井座長 
 いずれにしても、遺伝情報という言葉の意味も、どのくらい確度のあるものを言っているのかというのは少し議論が必要だと思います。極めてクルードで、正しいかどうかもわからないものまで遺伝情報と言えるかどうか。その言葉も含めて、もう少しここは議論したいと思います。デザインの問題もありますし、あと書き振りですね。最初に原則をポッと置いていくのか、その例外事項を後に書くのか、少しまだ議論が残っているように思います。ここで5分間休憩に入りたいと思います。
                  (休憩)
○永井座長 
 再開します。次は6の「既存試料等の利用について」です。ご説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 6「既存試料等の利用について」です。資料の14頁をお開きください。見直しの方向性の案としては、「研究を行う機関において保存されている既存の試料等の取扱いについて、よりわかりやすく整理する観点から、臨床研究指針や疫学指針を参考にしつつ、現行のA群試料等、B群試料等、C群試料等の区分も含め、手続き・要件について見直しを行うこととしてはどうか」というところです。
 現在の指針においては、「A群、B群、C群について、どう扱うか」という記載になっているところですが、見直し(案)として、この14頁の上のほうにある○に「一方」とあるような、現在の臨床研究指針や疫学指針の記載のパターンに整理したらどうかという意味です。
 続いての方向性としては、より細かいの取扱いということになります。14頁の下から2行目になりますが、「提供者の同意を尊重して、既存の試料をヒトゲノム・遺伝子解析研究において利用する場合は、その利用について同意を受けることを原則としてはどうか」というところです。また、15頁の上にいきまして、「当該同意を受けることができない場合には、一定の要件について、倫理審査委員会の承認を得て、研究を行う機関の長の許可を受けたときは、当該試料等を利用することができることとしてはどうか」というところです。その次にいきまして、「連結可能匿名化されている既存の試料等を同意の範囲を超えてヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用する場合には、試料等の利用目的を含む情報を提供者に通知し、又は公開していることを要件とすることとしてはどうか」というところです。
 ここに書いてある記載のパターンとしては、14頁のいちばん最初の○の「一方」にあるような、臨床研究指針や疫学指針の記載の流れで書く、ただ要件については、先程説明したような要件をわかるような形に整理するということです。
○永井座長 
 いかがでしょうか。公開というのは、どの程度のことを考えておられるのでしょうか。
○渡辺安全対策官 
 ここもご議論いただきたいと思うのですが、現行のゲノム指針におきましては、例えばB群試料のイの場合、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究の目的を提供者に通知し、又は公表した場合」という言い方になっています。ですから、提供者に通知するか、ホームページ等などで公表するということかと思います。
 ただ、他方14頁の上にある臨床研究指針や疫学指針においては、?のアでは、「試料等の利用目的を含む情報を公開していること」と書かれていますので、この場合にはホームページなどで利用目的を情報公開するということではないかということで、現行の臨床研究指針や疫学指針とゲノム指針において、それぞれすでに取扱いは違っているのではないか思っています。
○永井座長 
 いかがでしょうか。例えば提供者と連絡が取れないような場合には、ホームページでこういうことをしていますということを掲示することでも、もちろん倫理委員会の了解の下に、そういう対応でもよろしいということですね。
○渡辺安全対策官
 はい。
○永井座長 
 いかがでしょうか。
○山縣委員 
 2回目の委員会でもお話しましたが、いま研究の形態というのが、いわゆるコホート研究になっていて、長期にわたって大量のご協力の方々を追跡していく調査のときに、研究計画というのは、必ずしも完璧に全部できないようなものというのがあって、そのときに最初のインフォームド・コンセントでは、例えばゲノムの研究はその中に含まれるのだけれども、どのような遺伝子を調べる、どのようなことをやるということが十分に書き込まれないために、現行の指針ではゲノムの倫理委員会にかけることができなくて、疫学研究としてかけた場合に何が問題になってくるかというと、それをあとからBにして、ゲノムの研究もできるというような、一見、ご本人には将来ゲノムの研究をやるという説明はきちんとしているのですが、端から見るとそれは欺瞞のようで、そういう形であれば、いつでもゲノムの研究の倫理指針を通っていないので、それが通るような形と思われてしまって、決してそうではない、同意を得てはいるのですが、そういうことがこれまであって、今回このように書かれていることによって、ゲノムの研究をやる場合にどの指針で通すのかということが、例えばこれだとどちらになるのか、まだはっきりしないかなと。方向性としては、これでいいと思うのです。ですから、将来的にこういうことをやるというのは決まっていて、あとでご本人に対して、このような研究をやっているということを何らかの形で通知して、そこで撤回ができる機会を与えることが原則としてあって、それでいいと思うのですが、いまお話したような研究をヒトゲノム・遺伝子解析の倫理審査委員会にかけることができるのかできないのかということに関しては、どうなりますか。まだそこの部分は不明確なような気がして。
○永井座長 
 疫学研究で収集したサンプル。
○山縣委員 
 はい。サンプルにしかならないということになるのか、それとも最初からこういうことを前提にして、きちんと遺伝子解析の倫理指針に基づいた審査をすることができるのか。
○永井座長 
 あとからゲノムの研究が入ってくれば、疫学研究ガイドラインとゲノム研究ガイドラインの両方を満たさないといけないということになりませんか。
○山縣委員 
 現行ではゲノムの倫理審査委員会でということで、疫学研究、臨床研究に基本的には含むような形で審査されることが多いと思うのですが。つまり何を言いたいかと言いますと、疫学研究の倫理審査委員会で通しておいて、あとからこういうことをすれば遺伝子解析ができるのだと誤解されないかということです。いままでも、B群、C群というのは、比較的そのような形で、倫理審査委員会にかけても、最初にそれを通っていないのだから、あとからこういうことをしてもなかなか難しいのではないかとして、倫理委員会を通っていないケースが多いように思うのですが。
○永井座長 
 それは倫理委員会の承認を得なければ、そのサンプルは扱えないわけですね。ですから、1度は倫理委員会を通さないといけないということになりませんか。
○山縣委員 
 もちろんそうです。もちろんそうなのですが、基本的な考え方として、先にサンプルだけを集めておいて、あとからそれを遺伝子も解析すると一般的に見られてしまうようなことがあってはいけない。そうではないのだということをきちんと担保する方法はどこにあるのだろうというような、実際にその研究を私はやっていてすごく思うところなのです。
 2回目の委員会のときにもお話をしましたが、その部分がここでどう担保されるのか、もしくはそれは担保されなくて、仕方ないのだとなるのかというところを、委員としてもですし、実際に研究する立場、もしくは倫理審査委員会の委員をする立場として、そういう問題をどのように本質的に考えればいいのかということについて、整理しておいたほうがいいと思います。
○永井座長 
 いかがでしょうか。
○堤委員 
 私は至ってシンプルに考えておりまして、疫学で集めた試料をゲノム解析するのであれば、ゲノムの指針に沿った形で研究計画を作り直せばいいのではないか。
 もう1つの側面としては、例えば先生にご紹介いただいたエコチルであれば再同意の問題が出てくると思います。それをなおかつ難しくするのは、生まれる前に研究が始まっているということであれば、その子が10歳になったり15歳になったりということであれば、なおさら再同意するのかしないのかということが、非常に問題になってくるのではないか。少なくとも、疫学で始めてゲノム研究をやるのであれば、ゲノムの審査は受けるべきではないかなと考えますが、いかがでしょうか。
○山縣委員 
 全くおっしゃるとおりで、いまそのようにしているわけですが、そのときの再同意の問題を倫理委員会としてどう考えるか。基本的にゲノムの研究の場合に同意が取れるのであれば、再同意に基本的になっているような書き振りだと思うのですが、そういうことが現実問題として必要なのかどうか、そういうことです。
○堤委員 
 いま事務局から示していただいている、通知とか公開をすれば、このあとに出てくるのは、再同意は要らないと読むのかなと思ってしまうわけですよね。それはちょっといきすぎではないかと思います。
○永井座長 
 これは倫理審査委員会の承認を得て、そのステージに進むわけですから、きちんと出し直しということだと思いますが。
○辰井委員 
 山縣先生がおっしゃっているのは、ほぼ将来遺伝子解析をやることは見込みに入っているにもかかわらず、当初は単なる疫学研究として通し、あとでこれに従ってゲノム研究をやるということが、これでは可能になるけれども、それが妥当かどうかというご趣旨でしょうか。
○永井座長 
 ゲノムを使うか使わないかわからないにしても、取っておくということ自体に実は問題があって、それはゲノムのガイドラインをきちんと遵守して集めないといけないのではないでしょうか。
○山縣委員 
 例えば研究計画として、そこの部分が追加調査としての可能性を残していたり、例えばいま予算が1年とか数年の単位で、研究というのが10年のときに、少なくとも最初の5年、いま予算がほぼ確定している中では、その計画を入れることができないので、研究計画書の中で具体的なことを入れられないので予算が入っていないわけです。つまり、これまでではあまりなかったような、長期にわたる大規模のコホート研究というのは、そういう問題を含んでいる。だけれどもサンプルとしてはそこで採っておかないと、そういった長期にわたる研究はできません。ですから、これはある意味では研究費というものの在り方、研究計画そのものの中に予算もないものを入れることは難しいといった、本当に現実的な、目の前にある問題ではあります。
○高芝委員 
 A群は別として、B群とC群の利用目的を広げて使えるかという論点については、スキームとしてはこの指針では3つしか示していないと思います。1つは同意のスキームです。もう1つは、個人情報ではなくすスキームです。現在は、連結不可能匿名化がこれに当ります。もう1つが、法律を意識して、法律の適用除外に当たる場合です。このスキームで、B群、C群は作られていて、ほかの2つの指針も同じように作られているのだろうと思いますので、このスキームを、例えば倫理審査委員会を通したからそういうスキームからもっと緩やかなものにしていいとか、そういう議論にはならないだろうと思います。
 ただ、今回の提案で私自身はそういう方向でいいのではないかと思っていますが、個人情報から外す部分について、連結不可能匿名化だけのところを、連結可能匿名化であっても対応表を持っていない場合も含まれるように、これを広げるというか、それも個人情報ではない場合ということで明確にするということは、それはそれでよろしいのではないかと思っています。
 その関係で、15頁の上から5行目に、「連結可能匿名化されている既存の試料等」と書いてあるのですが、これは対応表が手元にある場合も含んでいるとすると、広がりすぎではないかと。連結可能匿名化されていて、対応表が当該機関にない場合ではないかという気もするので、あとで検討いただければと思います。
○永井座長 
 この点について、事務局から何か意見はございますか。
○渡辺安全対策官
 14頁の臨床研究指針や疫学指針と全く同じにするというのであれば、確かに?のように連結不可能匿名化と、連結可能匿名化であって、対応表を有していない場合を全く同じ扱いにする、そういった形にまでしていいかということがご議論になるかと思います。
 現行のゲノム指針のB群においては、連結不可能匿名化と可能匿名化という形で分けておりますので、個人情報保護の観点もありますが、可能匿名化であるか、不可能匿名化であるかの意義をご議論いただければと思います。
○永井座長 
 この点についていかがでしょうか。
○増井委員 
倫理委員会での議論の中では、ときどきこの部分が非常に混乱した議論になりまして、実質連結可能匿名化で、その機関に対応表がない場合は、実質的には連結不可能匿名化と同じではないかという議論がよくされるのです。言葉の定義の問題で、連結可能匿名化の試料ではあるけれども、実際には個人情報ではないという形の考え方をするのです。ですから、その2つを分ける意味がどこまであるかということだと思うのです。
 現行のですと、同じ機関内で対応表を有している場合もどうするかということが書いてあるので、結局対応表の管理の問題に帰すことができるのだと思っています。そこが1点です。その点はよろしいですか。
○高芝委員 
 今の増井委員のご意見ですが、この指針では個人情報の定義として、連結可能匿名化をしていて対応表がなければ個人情報としないということですよね。定義の問題なので、そこと安全管理の問題は分けた方が分かりやすいのではないかと思います。
○永井座長 
 何と何を分けるということですか。
○高芝委員 
 この指針でいう個人情報該当性の問題と、セキュリティの問題です。対応表を安全管理の下できちんと管理するというのは大事なことで、それはそのとおりだと思うのですが、定義の問題と安全管理の問題は場面が違うのではないかという趣旨です。
○増井委員 
 いまの問題ですが、実際に臨床研究指針ではその2つを引っくるめて、匿名化という新しいカテゴリーを指針の中に導入しているわけです。それはどういう根拠であったのかと考えていくと、実質的に取扱いとして、あるいは安全管理措置の問題として、同等に取り扱えるという予想があったからだと考えています。
 もう1つは、海外でもそういう形での取扱いをするところが多いということもありまして、その2つの間は同等、倫理委員会の中ではごちゃごちゃにになって、話がよくわからなくなるときもあるのですが、それぐらい実態として非常に近いということは言えるのだと思っております。
○永井座長 
 確かに、定義と扱いの問題というのは慎重に議論したほうがよろしいかもしれませんね。特に対応表の管理の問題をどうするかというのは、どこかでまとめて議論しておいたほうがいいと思います。よろしいでしょうか。この件はここまでとします。
 次が「試料等の収集・分譲の在り方について」です。ご説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 7つ目の課題で、「試料等の収集・分譲の在り方について」です。資料の19頁以降に記載しているもので、見直しの方向性(案)としては20頁です。「いわゆる『バンク』については、様々な形態が考えられることから、臨床研究指針や疫学指針を参考にしつつ、『研究を行う機関』がほかの『研究を行う機関』に、試料等を提供する場合、他の研究を行う機関から試料等の提供を受けて研究を行う場合の要件・手続きを整理することとしてはどうか」。「バンク」については、いろいろな定義、形態があるので、ここに書いてあるようにな行為に注目して、要件を整理したらどうかということです。最初の段落は、試料等の提供を受けて研究を行う場合も含めた場合を、まず整理することとしてはどうかということです。
 2番目にいきますと、「他の研究を行う機関から試料等の提供を受け、他の研究を行う機関に試料等を分譲を行う機関については、『試料等の収集・分譲を行う機関』と定義し、ヒトゲノム・遺伝子解析を行う機関及び試料等の提供が行われる機関とともに、『研究を行う機関』に含めることとしてはどうか」。また、「その上で、『研究を行う機関』が保存している試料等を他の『研究を行う機関』に提供する際合に、連結可能匿名化の状態で提供することを可能とすることとしてはどうか」ということです。これについては、現在この指針において、「バンク」として定義されているところは、連結不可能匿名化で提供されることを大前提にしていますが、連結可能匿名化の状況でもできるとすると。その条件として、いままでは連結不可能匿名化だったので、いろいろな情報管理の規定は、いわゆる「研究を行う機関」にかかっていたが、バンクにはかかっていない。そこで、同じような情報管理の措置をバンクにもかけるために、「研究を行う機関」に含めるというところが、2つ目、3つ目のところで書いてあります。
 また、「他の研究を行う機関から連結可能匿名化されている既存の試料等の提供を受けてヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用する場合には」、撤回の機会を適切に確保する観点から、「試料等の利用目的を含む情報を公開していることを要件としてはどうか」としています。
 最後のところは、「試料等の取扱いの要件に加えて、遺伝情報等の研究に用いる情報の取扱いの要件を整理することとしてはどうか」としており、何をプラスアルファするかとかをご議論していただければということで書いているものです。
○永井座長  
 いかがでしょうか。
○藤原(靜)委員 
 確認ですが、バンクについての要件は、「試料等の利用目的を含む情報を公開していること」だけでいいということでしょうか。先ほどのB群、C群等については、まだ「提供者に通知し、又は公開」ということで、通知要件がありましたが、バンクはそれも落ちるということ。それは、そもそもあまり意味がないからということでしょうか。
○増井委員 
 すみません、質問の意味がわからなかったので、もう一度お願いできますか。
○藤原(靜)委員 
 20頁の方向性の括弧の中の下から3行目は「試料等の利用目的を含む情報を公開していること」が要件となっています。15頁の二重括弧の中の下から2行目は、「提供者に通知し、又は公開している」となっていて、これは「提供者に通知」という文言が入っていますよね。この差が、バンクの場合に出る理由を、現場のこと、研究がわかっていないので教えていただきたいという趣旨です。
○渡辺安全対策官 
 補足いたします。ここもまさにご議論いただきたいところでして、バンクとして想定されるのが、資料1の27頁から28頁にあるように、試料等を提供者から提供を受けて、それが研究実施されて、そのあとほかの研究機関に移っていくというプロセスをイメージさせていただいています。
 既存試料をほかの研究に使う場合について、この絵でいうと27頁のいちばん下にありますように、研究実施機関なりがほかの研究に使うということで、わりと提供者に近いという形になります。ただ、いわゆるバンクということで想定しているものは、28頁にありますように、そういったほかの研究機関からもらってきた試料をさらにほかの研究機関へ提供するということになります。ですから、この場合に提供者への通知までを求めることができるかも含めて、いまの段階では若干文言は変えておりますが、ご議論いただければと思っています。
○増井委員 
 いまの2つのことを含めてなのですが、最終的に28頁のいちばん右から2番目にあるような、ヒト細胞・遺伝子・組織バンクというものが、果たして提供者の個人情報を持つかということなのです。普通の場合には、一次的に試料を集められる先生方のところ、試料等が提供を行われる機関のところで個人情報が止まっているものですから、我々がやっているような細胞バンク、遺伝子バンクあるいは難病資源バンクは個人情報を持っていないので、通知は明確にできません。それを個人情報までバンクが持つようになるのかどうかというのは、1つの議論ではあるのですが、バンクの機能としてそれが必要な場合ももちろんあります。特に、ここで言いますと、それぞれの提供した試料を集めていらっしゃる機関があるわけですが、そこの先生方が異動された場合に、連結可能匿名化といっても、対応表あるいは対応表の基になるような情報が失われてしまう場合があります。そういうことも含めて考えると、本当はバンクが個人情報まで持っていたほうがいいのかなという議論をする場合もあります。それをどうするのかというのが、今回の議論に相応しいかどうかは別として、現実の問題としては、個人に通知はバンクからはできないというのが、いまの実情です。
 もちろん、それがずっと戻って行って、27頁の研究実施機関になると、この場合に研究実施機関に試料提供を行う機関の情報が移ってくる場合もありますので、少し微妙なのですが、原則としては、いちばん最初のところで連結可能匿名化をしてもらって、ものが動くという形で研究も行われて。
○永井座長 
 今回の改定で、対応表があれば連結可能でも可能ということになるわけですね。
○増井委員 
 はい。
○永井座長 
 そういう場合には、通知しようと思えば通知できることになるわけですが。
○増井委員 
 その場合には、我々から元のほうへお願いをして、お願いをして行くわけです。ですから我々からお願いをするか、あるいは向こうが応えてくれるかというだけの話になります。ただ、バンクとしては直接的には動けないということです。
○小幡委員 
 増井先生のご意見はよくわかるし、バンクの運営上は個人情報を持っていないほうが運営は楽です。それはたしかなのですが、今後のことを考えると、またUKバイオバンクを考えると、統合、統合で行われて、また私たちのところも退官された先生たちが、「この試料を預ってください」と依頼します。そのときに、その先生の貴重な試料を私たちが適正に預って、さらに今後の研究に発展させるためには、個人情報を持って、かつ必要であれば通知もするということは、「バンク」という名前をここで使わないにしても、それは責務ではないでしょうか。だから、仕事は確かに増えますが、それは適正に運営するための1つの必要な手立てだと思っています。
○藤原(靜)委員 
 伺った趣旨はいまのようなところにありまして、連結可能匿名化と対応表というものが、どのように移転していくかという問題が1つあるのと、もう1つは、試料が転々と流通していくので、それで通知が実際上は不可能になるような場面を考えておられるような気がしたのですが、この間からのご説明ですと、バンクの機能というものは、そういう場面に留まらないのではないかという気がしました。そうするとここで通知が落ちた理由が少し違ってくるのかなと思ったので、確認をさせていただいたということです。
○永井座長 
 ですから、対応表があって、通知しようと思えば通知できる場合には、通知したほうがいいというご意見ですよね。
○藤原(靜)委員 
 どのぐらいの手間暇かということは1つあると思います。本当に転々、流通していて大変な場合もあるかもしれませんが、前々回でしたか、バンクは将来かなり集約されて、そこでいろいろなことができるようになってくるのだというお話があったと思うのですが、そうであるとすると、通知が必要な場合もあるのかなと、その程度のことですが。
○小幡委員 
 そのとおりだと思います。私たちはそれも責務だと思っています。ただし、利用の仕方というのは、バンク自身は実際は決められなくて、バンクの利用者が使うわけです。その方たちには、そこには対応表は渡さないことになると思われるのです。そうすると、バンクの責務はますます重くなる。その辺の運用は、皆さんと考えていく必要があると思います。バンクの責務はある、でもそれを利用する人の責務はどうするのかというのも、考えておく必要があると思います。
○増井委員 
 原理的には本当に小幡先生のおっしゃるとおりの話になっています。ただ、実際に自分たちに渡ってきた個人情報がどこまで使えるものなのか、退官された先生の集められていたものというのは、非常に古いものが多いです。そういうものを集めているピークというのは、40代から50代ぐらいにかけてなのですが、60代、そうすると、10数年、20年も経った個人情報をいただいて、それで通知をするとなると、通知をどこまでの精度で行うかによって、莫大なお金がかかるという問題があります。実際にInternational Cancer Genom Consortiumなどで再同意を取っていますと、whole genom sequenceをするために再同意を取っていますと。1カ月に4件ぐらい取れましたというようなレベルです。数千検体を我々が預かるということがあるわけですが、そのときに1カ月に4件、それも随分と手間とお金をかけてという形で、通知というのはなかなかしんどいです。もちろん、機械的に、いただいた情報に従って出すということはありますが、それはただの無駄にしか過ぎないという考え方もあるわけです。
 どのようにしていくか、実情によるわけですが、この先個人情報保護法が変わって、個人の登録番号みたいなものができれば、もう少し簡単になるかもしれませんが、どのようになっていくかというのは、具体的に考えると実務者としては頭の痛い問題だということはご理解をいただきたいと思います。
○藤原(靜)委員 
 私が申し上げたのは、不可能なことをやれという趣旨でも、多大なコストを掛けろという趣旨でもありませんで、15頁は「提供者に通知し、又は公開」と書いてあるので、これも通知が難しければ公開で足りるわけですので、バンクの機能、状況によって使い分けが可能になるのであれば、20頁と15頁で、どうして差を付ける必要があるのかなという話です。どちらもしないという場合もあると思いますが。
○永井座長 
 同じ書き振りにしておいたほうがいいだろうということと、それから通知は必須ではないということですね。
○増井委員 
 それならば、そのような形にしていただければと思うのですが、例えば今回の震災のときの遺体を探す捜査をどこで打ち切るかを決めかねている状態を考えるときに、どこで線を引くのかというのは、倫理委員会の中でどこで収まるかというのがすごく怖いという思いもあります。それだけは申し上げておきたいと思います。
○永井座長 
 ほかにご意見はございますか。よろしければ次の議題に進みます。次はインフォームド・コンセントです。事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 インフォームド・コンセントに関しての検討課題です。1つ目は29頁です。まずは在り方です。見直しの方向性(案)を見ていただきますと、「将来のあらゆる研究における利用に関するインフォームド・コンセント(いわゆる包括同意)に基づき、『同意が得られている』として、試料等をヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用することについては」、これまでの検討からすると「社会の理解を得ることは困難であると考えられるため、また臨床研究指針や疫学指針と同様に、認められないこととし、その旨をQ&Aに記載することとしてはどうか」というところです。ここは「将来のあらゆる研究」ということなので、白紙委任を想定しているものです。
 「他方、研究の現場において、将来の研究の進展を想定して、弾力的なインフォームド・コンセントを取得することができることをより明確にするため、試料等の提供を受ける時点では特定されない将来のヒトゲノム・遺伝子解析研究に使用される可能性がある場合にそのことについて同意を得ることをヒトゲノム指針又は細則に規定することとしてはどうか」。
 もう1つは、「また、他の研究機関に試料等を提供し」、その他の研究機関において、「将来的に、試料等の提供を受ける時点では特定されない様々なヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用する可能性がある場合には、そのことについてインフォームド・コンセントを受けることを指針又は細則により明確にすることとしてはどうか」ということです。
 先ほどインフォームド・コンセント(包括同意)といったあとの、29頁から30頁にかけての項目では、試料等の提供を受けた研究機関で使う場合、試料等をほかの機関からバンク等が提供を受けて、そのバンク等の試料を使って他の研究機関がやる場合などについて、ここの記載の内容を明確にすることとしてはどうかということです。
 最後に、「研究の進展に対応して、研究デザインなどが多様化してきていることを踏まえ、ゲノム指針の細則におけるインフォームド・コンセントの説明文書に記載すべき事項について、必要な見直しを行うこととしてはどうか」としています。これについては30頁の参照条文で、波線で囲まれている部分の真ん中辺りに、「説明文書の記載に関する細則」というのがあり30頁から31頁にかけて書いてありますが、ここの項目についても、必要な見直しを行うという案です。
○永井座長 
 ただいまのご説明に対して、いかがでしょうか。
○辰井委員 
 この部分は一読して実はよくわからなかったのですが、このあとに、この時点では特定されない将来の研究に使用される可能性がある場合に、そのことについて同意を得るというのは、包括同意とは違うのですか。
○渡辺安全対策官 
 包括同意といったときに、定義がどうなるかというのは様々な意見があると思いますが、ここの見直しの方向性では、前段の「あらゆる研究における利用に関するインフォームド・コンセント」ということで、これをいわゆる包括同意ということとして考えております。
 「他方」のところで書いているのは、いわゆる白紙委任のような形ではないけれども、将来こういうような方向性でゲノム研究を行うというような形で、若干幅が広いというか、ブロードな同意というか、そういったものをイメージしております。
○辰井委員 
 依然としてわからないのですが、後段はバンクのようなものを想定しているように思え、一時的な使用目的についてはかなり詳細に、従来一般に理解されているとおり、具体的な研究目的を提示して、それで同意を取得しなければならないが、それをあとに使う可能性がありますということに関しては、非常にブロードでも構わないということを明確にするという趣旨だということでしょうか。
○渡辺安全対策官 
 そこもご議論いただきたいと思うのですが、現行のゲノム指針のような形で、目的、方法、そういったものについて文書による同意を得るということが書かれておりますので、そういった限定的なインフォームド・コンセントというものは必要なのだと。ただ、バンクだけには限りませんが、将来的にほかの研究に使用する場合には、そういったことを認めるということもありますし、そもそも最初のインフォームド・コンセントのところから、よりブロードなところを取っていいかと。そこら辺も含めてご議論いただければと思います。
○永井座長 
 包括的同意というのは、初めから1次利用を明確に書いていない場合が、包括利用ということですか。改定案というのは、1次利用はかなり書いてあって、それ以外に追加として将来的に利用の可能性があることについて、同意を得てほしいという。
○渡辺安全対策官 
 見直しの方向性の案としましては、いわゆる包括同意というところで、何でもかんでも使っていい同意というのは認められないのではないかと。「他方」というところで書いていますのは、最初に一次的な同意を取った上、将来的にもう少し発展させて使いたいということを見越した、ブロードなというイメージです。
○永井座長 
 いかがでしょうか。
○藤原(靜)委員 
 これは倫理審査委員会とはどういう関係になるのですか。
○渡辺安全対策官 
 研究計画を認める際の倫理審査委員会において、最終的にそれを認めるかどうかをご議論いただくことになっております。
○藤原(靜)委員 
 そうだとすると、倫理審査委員会は困るかなという点で、私も辰井委員と同じ感じです。例えば包括同意ではなくて、現在考えられるものを、Aからずっと個別に利用目的を列挙して、将来はこういうものが考えられそうだと。その他、これに関連してもこれが考えられそうだというものを一つひとつ書いてあるというのは、どうなりますか。先ほど座長が言われましたが、どういうものを包括同意と言うかという議論です。もし倫理審査委員会で使うのだとすると、お困りになるかなという感じを私も受けました。
○武藤委員 
 私もちょっとわからなかったので確認なのですが、最初の見直しの方向性の案の1段落目は、最初にインフォームド・コンセントをお願いするときに、よくわからないけれども、将来いろいろな研究をやるからお願いしますというのは、なしですという原則をおっしゃっているという理解ですよね。つまり、通常は最初の具体的な研究計画のお願いがあって、運用されているものだと、その次に今後もできれば保存させてもらいたいと。倫理審査委員会にお諮りしたいけれども、まだ計画を立てていないのでいまは言えないけれどもというようなものは、いまは通常運用されているので、そこにもかかってくるとなると、だいぶ現状と変わってきてしまうと思うので、そこを確認させてください。
○渡辺安全対策官 
 現状で、臨床研究指針のQ&Aなどに書かれているのは、研究の目的を明確にしないで取るようなものは同意として認められないという趣旨が書いてありますので、そういったものは臨床研究指針や疫学指針と同様に認められないということを、シンプルに書いたということで、まだそこまで個別具体的に想定して書いているわけではございません。
○増井委員 
 ここに書いてあるのを見ますと、普通にわりあいと具体的な研究倫理審査の書類を書いて、ものを集めてきて、そのあと使いたければ、全部B群仕様にして、スキームに従って使っていくということで、そういうことでものが済むと考えてもよろしいでしょうか。要するに、最初のインフォームド・コンセントはちゃんとしたものでなければいけない、具体的なものでなければいけないと。それで、集まってきたものに対して、そのあとどうしてもこういう方向に使いたい、先ほどの山縣委員のお話もありましたけれども、研究費が付いた、やるぞということになったときに、それは全部B群仕様にして、使えるようにするというスキームがあるわけですから、わざわざこういうことを言う必要もないという考え方も成り立つということで、理解をしていいのでしょうか。
○辰井委員 
 意見として申し上げます。現行のゲノム指針の運用についての現場からの意見というか、やや困っているということは、少しインフォームド・コンセントの要請が細かいところにわたりすぎていると、一般に理解されすぎているところであって、そういたしますと、そこは少しジェネラルなものでもいいのだということをQ&Aなりで示すことが、いちばん大切なことではないかと思います。もちろん、最初に何をやるか全くわかっていなくてということで同意を取るのは駄目だということは当然ですが、例えばどの遺伝子を調べるとか、そこまではわからない場合があると。この疾患に対して、こういう研究をやりますと。そのくらいの枠組みで同意を取ることは構わないことを明らかにし、「はい」というのが妥当ではないかと思います。
 このように、当初から想定される2次利用について、2次利用の可能性があると言っておけば大丈夫ということを何も言う必要はないと思います。
○山縣委員 
 そこは難しいところで、どのように運用するか。先ほどの意見はまさにそうで、研究計画の中、それから試料を集めるときに、まだ研究計画がしっかりしてないのに試料を集めること自体が問題だというのが、いまの基本的な考え方なのですが、それはいま採っておかないと駄目だと。研究計画の中に、しっかりとどのようなものをいつ調べるというところまでは決まっていないといったもののときに、例えばこういうブロードなコンセントというのは1つありかなという気はします。
 つまり、これは将来遺伝子研究をやるのですと、やるのだけれども、いまお話をできるところはそこまでで、その代わり計画が決まったらきちんとお知らせして、それについて同意の撤回がきちんとできるような機会は与えるという形で、ゲノムの倫理指針を通すということが可能であれば、この研究、例えば先ほどお話したような研究というのは、単なる疫学研究で、それをあとからやるよりは、一般的にきちんとした説明なり、世間に向けても、研究の在り方みたいなものを示す意味では、いいのではないかというのが先ほどの趣旨であり、いまのこれに対する賛成の1つの意見です。
○小幡委員 
 前回か前々回に申し上げたのですが、研究というのは決して閉鎖系ではない。ですから、試料を使って発表をして、そのときは特定の目的です。その結果を見て、別の研究者が、これをやったら素晴らしい結果ができるに違いないと思ったら、それを可能にする道を開いておかないと、知識の積上げも、成果の積上げもできませんので、是非そういう形に直していただければと思います。
 現在の指針ですと、そこの研究機関もしくは研究者の研究で終わってしまう場合が非常に多くて、そうでないと通さない、外には出せない、研究の追認もできませんし、そういう形は研究としてはあり得ない方向になっていると思います。これは臨床とか検査とは違うということを、どこかに明確に明示しておく必要があると思います。
○高芝委員 
 もう出ていると思いますが、B群の試料、つまり医学的研究ということで同意を受けていて、あとで遺伝子の検査に使う場合には、同意を取り直すというのが原則になっていて、それは事後的な同意の取り直しというスキームになっているのですね。これに対して、今ここで議論をしているのは、事前に同意を取る取り方として、ピンポイントに狭いところで同意を取るやり方だけではなくて、利用目的の特定の仕方には、ピンポイントから、ここでいう白紙委任まで幅があって、グラデーションがあるのではないかということだよ思います。
 その範囲で、ある部分、こういう研究という性格上、現時点では特定できないという性格もあるので、それも踏まえて、できるだけ特定をする方法はないかということで模索するというのは、私はいいことではないかと思っています。
 ただ、これをそのまま放置しておくと、藤原先生の言われるように、倫理審査委員会でその都度考えるというのは大変なことと思いますので、その意味では、ここにも書いていただいているとおり、指針で書けるのか、細則に書けるのかということはありますが、代表的な例、参考になる例は、きちんと押さえておいていただくことが重要だと思います。こういう方向で行くときは、その点はよろしくお願いしたいと思います。
○藤原(康)委員 
 お手元の資料の32頁の「ヒトゲノム研究に関する基本原則について」というところで、科学技術会議の生命倫理委員会が平成12年ぐらいに出した答申だと思いますが、そこに包括的同意のことが結構書いてありまして、ここはいま皆さんが議論している「包括同意」とは違って、「包括的同意」ということで、「的」が入っています。そこが事務局が考えているスタンスと同じで、いわゆるみんなが認めたくない包括同意というのは、無条件な同意だと思います。取ったら何に使うかわかりませんが、とにかく下さいというような、無条件同意と言ってもいいと思いますが、それはいけませんというのはわかっていて、その代わり、この科学技術会議の2段目に書いてあるような、「その時点において予想される具体的研究目標を明らかにしつつ、説明がなされている」という、その時点である程度リーズナブルな使用目的がはっきりしていれば、それを使う場合の同意、これを「包括的同意」と言われたのだと思います。それだったらいいのではないですかというのが、この時点の議論だと思うので、今回そのように全体が変わっていくのであれば、無条件同意は駄目だけれども、ある程度の使い方、将来はゲノムに使うかもしれませんが、いいですねというような感じの同意があれば、OKですという流れに変わっていくので、私はいいと思います。事実私どもの病院でも、いわゆる包括的同意に近い形のものをやっておりますが、9割近い方々に同意していただいていますので、いまの社会の趨勢にも合っていますし、今回その目的でゲノム指針をしっかりと書き直すという方向でいくのは、私はいいと思います。
○増井委員 
 先ほど小幡委員からお話のあったことですが、バンクなどをやっていると、我々が持っているものが、これまで全く思いもしなかった利用法が出てくるというのは、ものすごい進歩なのです。それはここの2段落目の範囲にはとても入らないような、そういうものもあり得るわけです。そういうことを1つ考えておいていただきたいと思います。それが1つです。
 それから、判断をするというときに、どの程度の包括性を許すのかという問題です。それから、コラボレータによって、我々はこちらの方向で集めたのだけれども、コラボレータはこちらの方向から見ているということで、本当に違った形のコンセントで、もともとは本当は持っていなければいけないというような場合もあります。異なったエリアの共同研究が大事になってきていますので、その辺りを支えるというのが、2番目の「できるのかどうか」というのは、できそうな気もするし、「等」などを使ってやるのかなとか、いろいろと考えますが、いずれにしても、なかなか難しいということを、ご理解いただければと思います。
 それから、包括同意というのは自由に使うことなのか、白紙委任なのかというと、そうではなくて、実際には研究計画に対する倫理審査があって、倫理審査は機関によって違うのですが、年度ごとの報告、終了報告を出す形になっています。そういうことを考えると、白紙委任と言われるほど自由に使っているわけではないというのはご理解いただけないかなと思います。
○横野委員 
 先ほど山縣委員からお話があったような、いまある程度の想定はしているけれども完全には具体化できないので、その部分は別にしておいて、あとでB群として処理するというようなことは、私は望ましくないことであるように思いますので、これで対応できるのであれば、私はいいと思います。
 ただ、いままでもいろいろと話があったように、運用の仕方がどうなるのかが予測できない部分が非常に出てくる可能性があると思いますので、例えば既存試料の利用との関係で、ここでの同意がどう評価されるのか、運用の細かい部分について議論をしておく必要があるのではないかと思います。
○山縣委員 
 全くそのとおりです。ですから、もしここに書くとすると、具体化したときに、例えば少なくとも倫理委員会でそういったものを審議するということが必要なのかどうなのかという点、ゲノム研究と言っても広いので、それについて具体化したときに、その辺りについて1回審議をするなりといったポイントが必要かどうかに関しては、考えてもいいかなと思います。
○永井座長 
 どう使うかが非常に重要であるということで、これはまた次回以降に、叩き台がさらに煮詰まってきたところで議論したいと思います。
 次に「その他の検討事項」です。ご説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 その他の検討事項の前に、「インフォームド・コンセントの撤回への対応について」の説明をさせていただきます。33頁をご覧ください。見直しの方向性(案)としましては、先ほど来議論がありますが、6番目の「既存試料等の利用について」、7番目の「試料等の収集・分譲の在り方について」の見直しの方向性は、かなり意見交換がなされているので、それらの方向性を踏まえて検討するというところにさせていただいたということです。基本的には、試料の扱いをどうするのか、出てきた実験データの扱いをどうするのかを決めていかなければいけないと考えています。
 36頁をご覧ください。履行補助者の要件については、見直しの方向性(案)を見ていただきますと、「試料等の提供者又は代諾者等から合意を受けることを含めて行わせる場合の履行補助者の要件について」、「インフォームド・コンセントの業務に習熟しており、かつ契約において守秘義務が担保されている者であれば認めることとしてはどうか」というものです。
 38頁が「その他の検討事項」です。先ほどもありましたが、「研究者等及び倫理審査委員会の委員に対する教育・研修」ということで、見直しの方向性としては、ここの?から?のようなことを、ゲノム指針に規定するということです。
○永井座長 
 まずインフォームド・コンセントの撤回への対応は、具体的には何をポイントにしているわけですか。
○尾崎研究企画官 
 6と7について、いろいろと議論がありましたが、それらの項目をはっきりしてから、もう一度確認せざるを得ないのかなというところです。それと、前回もありましたが試料をどうするのか、情報をどうするか、最初の同意をどうとるのかが課題としてあると考えています。
○永井座長 
 これはもう少し先にいって議論ということになりますね。
 36頁の履行補助者の守秘義務の問題ですが、履行補助者というのは、具体的にはどのようなイメージでしょうか。コーディネータさんとか、そういう方のことを言っているわけですか。
○渡辺安全対策官 
 はい。
○武藤委員 
 コーディネータの中でも、ここでいう履行補助者というのは、試料提供機関以外に所属している者のみを指しています。研究を実施する責任者では以外の者でという意味ではなくて、6が引用されていないのでわからないのですが、10のインフォームド・コンセントの(6)では、試料提供機関に所属している者で、研究者以外の者が規定されていて、そちらに対しては法的な守秘義務については書かれていないのですが、試料提供機関以外に所属している者については、それを課しているのが現行の指針です。
 それをこの方向性の案によれば、契約で担保されるのであれば、法的な守秘義務まで課さなくてもよいのではないかということですよね。
○永井座長 
 そういうことでよろしいのでしょうか。
○渡辺安全対策官 
 はい。
○永井座長 
 いかがでしょうか。
○山縣委員 
 この案がとてもよくて、具体的には、例えば大学で雇用したリサーチコーディネータがよその病院に行ってインフォームド・コンセントをを取る場合に、その人は病院の所属ではなくて大学の所属だけれども、こういう法律により、業務上知り得た秘密の漏洩は禁じられている者でなくてもできるとなってくれば、きちんと訓練を受けられた人なので、そういうことが具体的に可能になってくると。実務上、非常に重要なことだと思います。
○永井座長 
 この点についてよろしいでしょうか。これは問題ないということで整理させていただきます。
 最後のその他事項で、教育・研修についてですが、これはいかがでしょうか。どういう教育・研修をするか、内容を担保するかということが問題になると思います。
○武藤委員 
 今回のご提案については、臨床研究の指針に書かれている内容に添わせてくださったと理解しております。それを、もう一歩いま永井先生がおっしゃったような点に踏み込みますと、この指針だけでなくて、ほかの指針でもそうなのですが、原則を逸脱したものについて、倫理審査委員会で検討して対応しなさいというのが、あちこちにあるのです。先ほどの既存試料の取扱いでもそうです。そういったことをどう考えていけばいいのかということが、研修においてはすごく重要な点で、もし可能なのであれば、この指針の使い勝手という点でも、この委員の研修のコーナーに、例えばこういったことというので、散逸している原則を逸脱したいろいろな例をまとめていただいて、こういった点を特に重視して研修すべきだと書いていただくと、研修を企画する者は非常にやりやすいし、そこしか読まない倫理審査委員会の事務局もたくさんありますので、便利だと思います。
○前田委員 
 私自身は、倫理教育を受ける対象として、倫理審査委員会の委員を含めることに賛成です。そこで、武藤委員にお尋ねでございますが、海外では、どのような内容について、どの程度教育しているのか、教育の状況等をご存じあれば、教えてください。
○武藤委員 
 全部は無理ですが、例えばWHOが作っているSilver Bookという本があって、それではIRBの委員はこういった観点のことを理解していなければいけないというものが結構書かれていますし、アメリカのIRBハンドブックなどにも書かれています。ただ、アメリカのIRBは連邦でいろいろな規則が決まっていることがありますので、ちょっとまた違うかもしれませんが。
○前田委員 
 ありがとうございました。
○永井座長 
 本文にそういう内容を書かなくても、先ほどのQ&Aのようなところで例示するというのもよろしいように思いますが。
○増井委員
 審査の判例集のようなものがあるといいのです。実際に守秘義務がかかっているものですから、いろいろと悩んだときに、ほかの人にそう簡単には相談ができないこともありますので、実際にはモデルケースのようなものをいろいろな角度から分析したような、先ほどの武藤委員からの話というのは、そういうものも含んでいるのだと思うのです。そういうものが出来てくると、倫理委員会での議論がもう少し収束するかなと。収束すること自身がいいわけでもないのですが、そのような判例集を作ることはできないですかね。Q&Aの拡大だとは思うのですが。
○永井座長 
 どうでしょうか。
○渡辺安全対策官 
 いまの点というのはゲノム指針だけではなくて、臨床研究指針や疫学指針なども含めてということになりますので、総合科学技術会議の生命倫理調査会などで調査を行ったと聞いております。今後そういったことを踏まえて、倫理審査委員会の在り方を検討いただくことが望まれるかなと思います。
○永井座長 
 学術団体が自主的にやるべきことだろうと思いますが。そのほかにご意見はございませんか。よろしいでしょうか。
 時間になりましたので、本日はここまでとしたいと思います。事務局から、その他連絡事項等はございますか。
○尾崎研究企画官 
 次回の日程については、8月9日(火)の2時から4時半に開催させていただく予定となっております。委員の皆様には改めて開催場所等についてご連絡申し上げますので、よろしくお願いいたします。
 委員資料1、委員資料2は、そのまま置いて行っていただきますようにお願いいたします。
○永井座長 
 本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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