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2011年7月19日 第5回緩和ケア専門委員会議事録

健康局総務課がん対策推進室

○日時

平成23年7月19日(火)13:00~16:00


○場所

三田共用会議所 3階 C・D・E会議室


○議題

【参考人意見聴取】
 1 患者家族の視点から見た緩和ケアについて(原参考人)
 2 緩和ケアの質の評価の現状について(宮下参考人)

【議  題】
 1 治療の初期段階からの緩和ケアの実施について(継続議題)
 2 緩和ケアの質の評価の現状について


○議事

出席委員:江口委員長、大西委員、志真委員、東口委員、前川委員、余宮委員
参考人 :川越参考人、中川参考人、松月参考人、原参考人、宮下参考人


○がん対策推進室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより「第5回がん対策推進協議会緩和ケア専門委員会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。事務局のがん対策推進室長、鈴木でございます。よろしくお願いいたします。
 初めに、本日の出欠状況でございますが、秋山専門委員、丸口専門委員におかれましては、御都合により御欠席との連絡を受けております。
 また、前川委員と今回来ていただきます原参考人の方は、飛行機の関係で若干遅れているということで御連絡を受けております。
 また、東口委員、中川参考人につきましては後ほど出席されるということになります。
 本日は、参考人を除く委員定数8名に対しまして6名の委員の方に出席いただいておりますので、議事運営に必要な定数に達していることを御報告申し上げます。
 本日は、原参考人、それから宮下参考人も御参加いただきまして、後ほど御意見をいただく予定としております。
 それでは、以後の進行につきましては江口委員長によろしくお願いいたします。
○江口委員長 どうも皆様、ひどい足元の悪い中をお集まりいただきましてありがとうございます。延期のこともちらっと頭をよぎったんですけれども、何せ時間的な限りがかなり迫っているということがありますので、今日お集まりいただいて、この前の第4回のがん対策専門委員会の続きをやりたいということで企画させていただきました。また、開催時間が若干前後しましたことをおわびいたします。
 今日は、この前の第4回に続いて、がんの比較的早期からの緩和ケアということで、この前、積み残しのものがかなりいろいろありまして、特にこの前あちらこちらで地域の連携とか、それから各々の役割といったことの議論の中から、やはり教育研修といったような問題がどこにでも出てくる。しかも、多職種で出てくるというふうなことがありまして、この前、参考人から看護の部門でのいろいろな取組みなども御紹介いただきましたけれども、そういうことも踏まえて今日は更に続けて議論を、特に教育研修、あるいはアウトカム評価とか、そういったことに関しても議論を深めていきたいと考えています。
 今日は、ただいまが御紹介ありましたように、原一佳参考人が来られる予定であります。それから、もう来られておりますけれども、宮下光令参考人からアウトカム評価等々のことについてお話いただけるということになっております。
 それから、この前、私の宿題というか、大西委員にお願いしたことがありますので、そういったこの前の続きのことについて早速始めたいと思います。
 まず、資料の確認をお願いしたいと思います。
○がん対策推進室長 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 資料につきましては、議事次第、それから資料の1が名簿となっておりまして、以下、資料2「各委員からの意見書」、資料3「大西委員提出資料」、資料4「志真委員提出資料」、資料5「丸口委員提出資料」、資料6「宮下参考人提出資料」となっております。
 また、別途、本日でございますが、机上配布といたしまして前川委員からの提出資料を1枚、裏表になっているものですが、それを付けさせていただいております。
 以上、資料の過不足等がございましたら事務局の方にお申出いただきたいと思います。
 以上です。
○江口委員長 ただいま前川委員と、それから原参考人がお着きになりました。本当に足元の悪い中をお越しいただきましてありがとうございます。お着きになったばかりなので、少しお休みいただいて後ほどお話をいただきたいと思います。
 それでは、この前の続きということもありますので、まずは大西委員の方から資料のことについて、あるいはこの前のことについてちょっと解説していただけますか。時間は、10分ぐらいで。
○大西委員 それでは、資料3にそのまま移行してよろしいでしょうか。
○江口委員長 はい。
○大西委員 前回、江口委員長の方から宿題をいただいておりましたので、それに関して御報告させていただきます。
 前回からの課題といたしましては、精神的な問題に対応する必要性をもう一度検討するということと、もう一点が、がん医療における心の問題に対する現状とその取組みだと思います。
 パワーポイントの資料を持ってまいりましたので、まず見ていただければと思います。右下にちょっと薄いですが、番号が振ってありますので、そこを御参考にしながら見ていただければと思います。
 まず、「精神心理的ケア」といたしまして、どういうことをするのが大事かというと3点ございます。まず、「的確な情報提供」ですね。患者さんに対して情報提供すること。それから「情緒的な支援」をしっかり行うこと。それから、専門的な支援を必要としているか、それをアセスメントすることですね。それから、必要に応じて私ども専門家が提供するということになっております。
 3枚目を見ていただきますと、「患者・家族のための精神心理的サポート」は、このように大体、大きく見ると4段階に分かれております。これを見ていただければわかります。「一般的なニーズ」から「複雑なニーズ」まで、多様なものになっていることはごらんいただけるかと思います。
 4番目のスライドを見ていただけばわかるんですが、これは日本医療政策機構がまとめたものです。がん患者さんの不満ですね。これは、精神的サポートの不足が一番多いというふうに言われております。
 5番目を見ていただきたいと思います。5番目も同じ日本医療政策機構の調査で、これは患者さんが求めているものですが、これもやはり精神的なサポートが多いということが言われております。
 それから6番目、これは厚生省の班研究だと思うんですけれども、「がんと社会学」に関する合同研究班では、患者さんの悩みで一番多いのが下から2番目、「落ち込みや不安や恐怖などの精神的なこと」がございます。
 それから、悩みのほかにニーズ、どのようなことを必要としているか。これは7枚目のスライドに出ておりますが、ニーズは精神的なもの、非常に不安が多いわけですね。こういう現状を踏まえまして、どうして精神科医がそういうがん医療の現場に参加しなければならないのかということ。これは英国のガイドラインでNICEのガイドラインから引用してきましたけれども、一番の問題としては、緩和ケアの領域において精神とか心理学的な症状がしばしば同定されていないという現状がございます。それのために、幾ら精神科的な問題があってもアクセスができないという現状が起きています。
 ここは強調しておかなければいけないところだと思うんですけれども、緩和ケアと精神的ケアが分離してしまっている英国においては、精神医学的な評価を受けられる施設が45%程度にとどまっていて、連携ができないという事態が生じているわけです。これは、ゆゆしき事態ではないかと思います。このような事態は避けなければいけないと痛感しております。
 次のスライド、9枚目に移っていただきたいんですが、「診断・治療期からの精神心理的サポート」です。「早期からの緩和ケア」、患者さんの家族の希望は、がんが治ること、生きること。家族の不安は、治療で治るのかなど、5点、さまざまなことがございます。
 それから、「早期からの緩和ケアとは」です。これはどういうものかと言うと、やはり望ましい支援は患者さんたち、家族の不安があるわけですから、今まで見ていただいたところでわかりますように、望ましい支援としては「的確な情報提供」、それから「情緒的支援」、「治療の確実な遂行を支援」するわけですね。特にせん妄とかうつ病になってしまいましては、患者さんの的確な治療ができません。
 それから、第1回目でしたか、中川参考人の方から早期からの緩和ケアで生存率が伸びたという御発表をしていただきました。そこにも実際に論文を見ていただくとわかるんですが、精神科医が2名介入されておりまして、やはり精神的なケアも必要だということがそこで強調されているものだと思っております。
 これに対して現状はいかがか。11枚目ですが、実はまだ不十分なところがあります。情緒的な支援、例えば2番目、「メディカルスタッフへの精神症状に関する啓発が不十分」ですし、うつ病、せん妄などの精神医学的な問題の見落としがあります。特にせん妄に関しては低活動型せん妄と言って、おとなしいタイプのせん妄の見落としが多いことは言わずと知れた事実でございます。
 それから「的確な情報提供」のところですが、相談支援センターですね。そこにまだ十分に機能していないと思います。これはやはり相談員に対する研修の不足、サポートプログラムとか教育プログラムがないのが現状ではないでしょうか。
 11枚目の状況を考慮に入れて今後行うことは、精神心理的なケアの向上のためには「的確な情報提供」、特に相談員が実施する標準的アセスメント方法を確立する。それから、相談員に対する心理的ケア研修の実施、ここは必ず精神科医がやらなければならないところだと思います。それから、私どもとしては医師に対する精神心理的ケアに対する知識の提供を行いたいと思っております。それから、看護師・薬剤師などメディカルスタッフの精神心理的ケアに関する知識の提供、専門家から提供できればと思っております。
 13枚目に移っていただきたいんですが、がん対策の基本計画と現在提供しているプログラムを一覧表として挙げております。「がん患者・家族に対する心のケアを行う医療従事者の育成」に対しましては、精神科医に対してeラーニング、看護師に対しては精神腫瘍学ポケットガイド、緩和ケアチームも同様です。それから、医師に対しては緩和ケアの研修会とか、医学生とか初期研修プログラム、心のケアセミナーを行っております。PT・OTなどに対しては、がんのリハビリテーション研修なども行う予定でございます。
 これを見ていただくとわかるんですが、まだ実際は本のレベルが多いです。日本でサイコオンコロジーの教科書はまだ確立していないので、私どもとしてはまず本をつくることを重点的にさせていただいています。その上で、今テキストができた段階で、今後はオン・ザ・ジョブ・トレーニングないしは研修会などで皆様によりよいものを提供していければと思っております。
 次に、16枚目に移っていただければと思います。ここからがまた宿題になっていたところなんですが、人数面のこと、精神腫瘍はどれぐらいいるのかということはなかなか把握できていないんですが、いろいろと調べてまいりました。
 やはり指導者研修会の修了者数というのは一つの目安になるかと思います。修了者数は482名おります。2011年、今年の3月の段階で500人弱、緩和ケアの指導者は1,110人、これに比べるとやはり半数弱という数が言えますが、ここで見逃してはいけないのは精神科1科で482人いるわけですね。ほかの科は内科、外科、産婦人科と、いろいろな科を合わせて1,100人いるわけですから、精神科医はかなり孤軍奮闘しているんじゃないかなと、この数を見ると実は思っております。少ないというだけでは表すことはできず、割合から言うと非常に多いと思います。
 総合病院精神医学会という学会がございまして、レジデントも入っているんですが、そこの会員1,700名を含めますと、精神科医で総合病院に勤務する3.5人に1人はこの精神腫瘍学の指導者研修会を終えている。これはかなり終えている率は高いんじゃないかと思います。
 それから、18枚目を見ていただければと思います。「緩和ケアチーム医師の配置」、これはがん集学的治療研究財団の報告書から取ってきました。従属数を見ていただきますと、青いラインを見ていただくと、平成21年度で身体科の医師は地域の拠点病院で41%なんですが、精神科医の方が逆に従属数がありまして、65%従属されております。それから、都道府県の拠点病院だと身体面の方が78%、都道府県の方は精神科が84%従属しています。
 緩和ケアチームは、精神科医がいないからできないという話がよく上がります。私もよくうわさでは聞くんですが、実際にこれを見ると精神科医がいないからパリアティブケアチームができないのではなくて、専従医師の配置が少ないんじゃないかということもこの表から言えると思います。
 それから、次の19枚目を見ていただければわかりますように、緩和ケアチームの診療加算届出なしのところを見ていただきますと、右側を見ていただければ、常勤は実は73%勤務しているんですね。常勤の精神科医は、緩和ケア診療加算の届出がない施設でも73%は常勤がおります。ですから、かなりの数の従属はされているのではないでしょうか。
 それから、「必要数の推定」というところを見てみました。これは20枚目を見ていただきたいんですが、8割に疼痛があります。40%にせん妄、30%に重度の不安というのが症状として出てまいりますので、これを計算いたしますと大体終末期の専門的な症状の緩和は約100例、精神科的なアセスメントは約200例には1つの病院で必要だろう。それで考えてみたんですが、都道府県のがん拠点病院では50名以上必要、それからがん診療拠点病院では少なくとも1人は必要だろうということが挙げられます。
 今、私が代表理事を務めております日本サイコオンコロジー学会では医師が200名、精神科医が200名ございます。ですから、ある程度の数は従属しているとは言えるのではないでしょうか。でも、それでもまだまだ足りないという御意見が出ているのも事実です。ですから、私どもとしては精神腫瘍の育成に力を注がなければなりません。
 私どもとしては、若い先生たちがきたときに、少なくとも年に10人はつくらなければいけないなと思っています。大学院としては、最近になって岡山大学、名古屋市立大学、それから埼玉医科大学は精神腫瘍学の専門医が教授になっています。ですから、この3つは少なくとも精神腫瘍はこれからいろいろレジデントとして取っていけるコースが出てくるでしょう。
 それから、「コンサルテーション精神科医の技能研修」です。技能研修では、研修会として日本総合病院精神医学会の研修会に私どもが共催しております。それから、短期研修としては国立がん研究センターでも行っているというのが現状です。
 以上、宿題報告をさせていただきました。どうもありがとうございます。
○江口委員長 ありがとうございました。サイコオンコロジストが非常に不足しているのではないかというようなこの前の議論がありまして、それで実際の研修とか、その修了者の目標、数値目標、その理由とか、そういったようなものを解説していただくということで今日お話いただいたわけです。
 この16枚目のスライドの「緩和ケア指導者1,100人」というのは、一般の身体症状のということですね。
○大西委員 そうです。身体症状の方です。我々はどうしても科の専門上、1つの科でやらざるを得ないので、やはり精神医学を修めるにはかなりの時間がかかりますので、1つの科でやってもちょっと不利なところではあるんですが、1つの科ではかなり頑張っているんじゃないかなと思うんです。
○江口委員長 それから、その下の指導者研修会を修了した精神科の先生方というのは482人ですけれども、これは必ずしもサイコオンコロジー専門の先生ということではない。
○大西委員 そうですね。サイコオンコロジーもやるんですけれども、そのほかにリエゾン精神医学というものがありまして、例えば身体科一般ですね。
 例えば、心臓血管外科でせん妄が起きたときに診る先生たちがいますよね。そういうふうに一般身体、がんじゃないときでも診る先生たちがいますので、そういうときにはリエゾン精神科医はいます。
○江口委員長 普段の勤務としては精神科も診ていて、普通の精神科も診ていて、そして今回は研修会を修了したという方もこれに含まれているわけですか。
○大西委員 含まれてはいると思います。
○江口委員長 サイコオンコロジー専門の先生ですか。
○大西委員 専門だけというのは、なかなかまだ。
○江口委員長 わかりました。
 何かこの場で御質問とかありますか。どうぞ。
○余宮委員 意見というよりも要望なんですけれども、いろいろなサイコオンコロジーの先生とおつき合いが臨床上ありますが、精神科の先生ががんについて余りにも理解が低過ぎて、どうにもこうにもがん患者さんの全体的なケアになかなかつながりにくいという現状をしばしば体験し、またいろいろなところからも聞くので、これから育てていくことが大切だと思います。その中で是非精神科の先生が、緩和ケアチームや、緩和ケア病棟を、ある一定の期間、大西先生も緩和ケア病棟でやられていた経験があるのですごく優れた精神科の先生だと思うんですけれども、そういった研修の期間が非常に大事だなと思います。
 緩和ケアの医師とよいコミュニケーションをとっていくためにも、がんの患者さんの精神症状を適切に見ていくためにも、がん患者さんの身体の部分をある程度研修を受ける必要があるのかなというふうに思います。是非そういうことも御検討いただけると、よりよい協力を築いていけると思います。
○大西委員 そうですね。お互いに交流していくのがいいと思うんです。私も緩和ケア病棟を4年経験しましたけれども、やはりすごく得るものが大きかったと思っています。その中で、私たちは精神腫瘍学の提供、身体の先生は身体腫瘍の提供、お互いに提供していけばよりよいものになっていくので、お互いにそういうことができてくればいいですね。ありがとうございます。
○江口委員長 では、どうぞ。
○川越参考人 10ページの19枚のスライドを見ましてちょっと私は驚いたんですけれども、実際は届出をしているところと届出をしていないところで、届出をしていないところが2倍くらい多いということですよね。
 だけど、精神科医は常勤として73%いると。
○大西委員 いるんです。
○川越参考人 ですから、今までは加算など取られなかったという理由の1つに精神科医がいないということを盛んに言われてきたんですけれども、これは別の原因がやはりあるということになるんでしょうか。何かその辺のスペキュレーションでいいんですけれども、もしわかれば教えていただきたいと思います。
○大西委員 私もよくわからないんです。どうしてこういうことが起きているんでしょうか。我々は、いつも不足だということをとにかく言われていたので、そんなに不足しているかなというので調べてみると、実は不足していないんですね。だから、ほかのところに要因があるんですね。
 それは精神科医の問題があるかもしれないし、それから病院として身体の先生がいないとか、どちらかになるんですね。それで、精神科の先生が我々のところでは興味がなくて、おれは嫌だと言っている先生が逆にいるかもしれませんね。身体科の先生で、おれは嫌だと言っている人もいるかもしれないし。
○江口委員長 これは、その施設に精神科医がいるということと、それから実際にその人がやっているかどうかということは別ですよね。
○大西委員 ここは、体の科と身体科の両方の医師に問題がある。看護に問題があることはあるかというと、それはないですよね。
○江口委員長 これは、がん室の方で何か統計的な実績チェックはされていますか。
○大西委員 これは、多分だれかが問題なんですね。
○事務局 具体的な問題の原因というところの把握はしておりませんけれども、少なくとも緩和ケア加算を届け出る場合の要件としては医師が専従でなければならないということになっていて、がん診療連携拠点病院における指定要件というところでは、専従とまではなっていなくて専任でよい。その違いが大きいのではないかというふうに考えられます。
○江口委員長 この集計の場合には今、私がちょっと言ったように、施設に精神科医がいるということと、それからその人が緩和ケアの患者を診ているということとはイコールではないんですね。
○大西委員 これは、精神科医だけの問題じゃないと思うんですね。これは、専従とそちらの問題じゃないかと逆に思うんですけれども。
○江口委員長 でも、集計の事実として。
○志真委員 これはストラクチャー調査の一環でやられたことなんですけれども、看護師に関しては専従緩和ケアチームの専従看護師はもう80%を超えております。医師に関して、特にこの地域の場合には40%台、これは今、大西委員が御指摘のように精神科医だけの問題ではないということも事実です。
 例えば、外科のドクターで月・水・金の午前中は手術をしています。でも、火・木・土の午後は緩和ケアチームの仕事をしていますとかという人はたくさんいますので、恐らく精神科医も同じようなことがあって、ずっと精神科の外来をやっているけれども、緩和ケアチームの仕事には一部しか対応できないよとか、そういう全体としての、特に医師のマンパワーが地域のレベルで非常に不足しているという現状だと思うんですね。そのために加算が取れないということですので、やはりこれは精神科医だけの問題ではないというふうに理解した方がいいと思います。
○江口委員長 松月参考人、どうぞ。
○松月参考人 まず、私が以前勤務していましたところは精神科医はおりましたけれども、非常に精神科医は多忙なんですね。院内のリエゾンも、それから勿論、精神疾患の患者さんも、緩和ケアのいろいろなアドバイスはいただけるんですけれども、加算を取る要件のようなお仕事はなかなかしていただけないという病院の事情がございましたので。
 でも、御自分の専門外だったんですけれども、非常に熱心で、やはり精神科の医師がいるというのは違うなというのは実感いたしました。
 それと、看護の領域ではリエゾン精神看護専門看護師というのがいるんですが、先生の方でそういう方と連携をとっているとか、そういうことは何かあるんですか。
○大西委員 私も余りお会いしたことがないんです。ほとんどお会いしたことがないので、逆にそういうところとの連携を強めていければと思うんですけれども、実は私は本当に立ち話程度しかないです。
○志真委員 それは、私はございます。私の病院はリエゾン精神の専門の看護師がおりまして、彼女も緩和ケアチームの仕事に関わっていまして、正直申し上げて非常に取扱いの難しい精神症状以外はリエゾン精神看護のレベルというか、そこでほとんど解決がつきます。
 薬物療法については、精神科医にちょっとコンサルテーションを彼女がしてくれればアドバイスが返ってくるということですので、そういうシステムをつくって、何層かにわたってつくっていけば、精神科医の負担もそれほど大きいものではないんですけれども、実際まだ何人いるかというレベルですよね。
○大西委員 日本に一体、何人いるんですか。
○松月参考人 100人はいないと思います。
○大西委員 たしか、いないですよね。
○志真委員 今、リエゾン精神看護の分野でも、私が言うのも変なんですけれども、つまりリエゾン精神看護の役割という専門看護師の役割をどうするかというのですごく検討しているんですね。私も、その材料提供みたいなことをしています。
 ですから、彼女たちもこういった分野に積極的に関わりたいという意向はあるようですので、この前もちょっと話題になりましたけれども、認定看護師、専門看護師ということを考える場合に、がん領域だけではなくてそういった精神関係の専門看護師も、私は非常に大切なマンパワーとして考えていっていいと思います。
○江口委員長 理想的なことを言えば、そういういろいろな専門職が関係するのがいいと思うんですけれども、ここで少なくともこの専門委員会が話題にしなければいけないこととしては、優先度からいくとそういうトップクラスのメンバーではなくて、やはり全国どこでもある程度のことがきっちり緩和ケアについてできるというところからの発想でいきたいと思うんです。
 そうなると、先生のところでは確かにそういうリエゾンナースが活躍しているかもしれないけれども、そういう人を先につくるというのは非常に数も少ないし、それから専門的なことをどうやっていくかというようなバックグラウンドの構築も非常に大きなものになってくると思うので、実際は現実的に緩和ケアチームで、全国で動いているというところで、そういうところのナースなり、それから精神科医なり、あるいは身体症状ドクターなり、そういうような人たちのスタッフのマンパワーのこととか、それから例えばその専従化を全部やるんだと、スタッフを増やすんだったらどういうことをしたらいいのかとか、あるいは増やす必要があるかとか、そういうような議論に持っていきたいと思うんです。
 中川参考人、どうぞ。
○中川参考人 これは、大西先生を始めとするサイコオンコロジーの先生方にお願いしたいのですが、確かに私どもの東大病院でも、最も精神科の先生にお世話になるのはせん妄みたいです。これは多くの施設でそうかもしれません。東大ですと、チームが診る患者さんの8割方がせん妄を起こしています。
 ただ、大西委員が御指摘になられましたが、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンの去年の8月19日の、非小細胞性肺がんで早期からの心のケアをすることで延命効果が2.7か月でしたか、大変重要な論文だと思っていまして、第1回目の委員会でも私が紹介いたしましたが、早期からの心のケアというか、この議題の1の「初期段階からの緩和ケアの実施」ということにもつながるんですが、ここにおいてもサイコオンコロジーの先生方に是非もっとやっていただきたい。比較的終末期に登場されるケース、我々の依頼の仕方もあるんだろうと思うんですが、この辺は考えていくことですね。
○大西委員 そうですね。我々もそれは痛感しております。
 実は、私どもはどちらかと言うと併診を受ける科なんですね。ですから、実際にかなりたっているなというときはあります。せん妄とうつ病は多いですけれども、うつ病もかなり引っ張っちゃったなというケースがあったり、せん妄も引っ張っちゃっているケースがありますので、実際にそこをどうつなげていくか。
 精神科はつなぎにくいということもありますから、何とか私どもの方もそこは考えていければと思いますが、確かに早期から参加した方が我々もやりやすいんです。
○中川参考人 是非よろしくお願いいたします。
○大西委員 ありがとうございます。
○江口委員長 それでは、大西委員の資料でサイコオンコロジー学会がどういうようなことを考えているか。特に今後の研修の方針とか、それから現状の問題点等々についてディスカッションできたと思います。
 今日は参考人の方をお招きしているので、それでは山口県から来られた原一佳参考人についてお話を聞きたいと思います。
 原参考人は画家をしておられますけれども、実際には御家族の看病、療養をされた経験もあるということで、今日お願いしたことは患者・家族の視点から見た緩和ケアについてということで、ちょっと時間が限られて恐縮なんですけれども、15分ぐらいでお願いできればと思います。
○原参考人 山口県から参りました原と申します。
 突然こういうところに出させていただくことになりまして、普段から用意があるわけではありませんので、日ごろ私が感じたり、思っていたことを急遽まとめてみてお話することにいたします。何かの御参考になればと思っております。
 まず、緩和ケアということなんですけれども、医療そのものが最初から最後まで緩和ケアの塊ではないかと私は思っているわけです。ですから、この部分だけは緩和ケアというふうにわざわざ言わなければならない現状があるわけですからあえて言っているわけでしょうけれども、病気が見つかったその瞬間から医療イコール緩和ケアではないかというのが、まず第1の私の認識であります。
 ですから、その中にすべてが包括されてくるということを最初に申し上げておきたいと思います。やはりそれはいろいろなところで言いますけれども、俗に先手必勝と言いますか、そういうような形で、後手に回ってしまっていわゆる終末期の緩和ケアというのではなくて、できる限り最新最良の医療を受けられるような形になれればというふうに思っております。
 特に、終末期の緩和ケアに関しては、医療としての緩和ケアが一体どこまでできるのかということで、私は勝手なことを申しますけれども、ある一定の緩和ケアまでいった場合に、それ以上の医療ができない状況に陥るのではないかと思うんです。それは、ある一定の致死量を超えるに値するだけの薬物の投与を可能にする。すなわち、安楽死という問題をある程度その中に含めて言及していくような議論を起こしていっておかなければ、最終的なところにおいて医療としてはもうできないということでギブアップするだけであって、あとは今、お話になられていたような感じの精神的なケアだけというか、精神論にすぎない形になって、医療はもう万歳してしまうという形になるのではないかと思っています。
 私は、ひとつ安楽死の部分というものもこの緩和ケアの中に取り入れた形での議論が、そう簡単に答えが出る問題ではないにしても、日ごろからそういうことがその中に含まれるような議論がなされていくべきではないかと思っております。
 次は、具体的な私のことなんですけれども、当然、日々、現場の方々は労を惜しまずに奮闘されていらっしゃるわけでありますから、それについてはもう今ここで言うべきではなくて、その反対の不足不満の部分を言うのが本日の私の仕事だろうと思って、大変お聞き苦しいことがあると思いますが、それを話させていただきたいと思います。
 まず私自身のがんのキャリアですけれども、これは2008年9月25日からです。いろいろとその年の夏に重なることが多くてやや過労ぎみになりまして、25日の夜10時ごろに自宅で倒れまして緊急入院をいたしました。そのときに諸検査を受けた結果、肺がんだろうということで、その先生から「放置すればもう1年ぐらいしかもたないよ」というふうに言われたんですけれども、その専門医にかかるということは私の家内が治療を受けたその病院なわけで、家内はそこで死亡しているんですね。それで、はなはだ私の中では信用度の薄い病院だったものですから、娘は同席していましたけれども、だれにも言うなということで放っておいたんです。
 そのまま放っておいて、何ともなく過ごしていたわけなんですけれども、翌年の2009年の6月に初孫ができまして、女手がないものですから、仕事の合間をぬってぼちぼちということもなく、かなりハードに家事一切をやっていたわけですが、急に右肺に異常を感じるようになりまして、初めてちょっと不安というものを感じました。
 それで再度検査を受けた結果、肺線がんに間違いないということで、治療を受けろということで、私もこのまま野放しにしておいて満身創痍になって最期は激痛になって死ぬのは嫌だなと思って、じわじわと少しずつ弱めながら死なせてもらおうかと思って治療を受けることにしたわけでございます。
 それぐらい強い不信感を持っていたということがこれからお話することになるんですけれども、家内が急性骨髄性の白血病でその4年前に死亡しているわけです。そのとき、私は4か月ほとんど付きっ切りで看病しながら見ていたときに、そういう不信感が起こってしまったということなんです。
 おおむね病院の清掃に関して言いますと、業者に委託していますものですからはなはだ手抜きが多くて、患者自身、またはその患者の家族とかがそれを補っているのが実情なわけです。
 白血病棟ですから御自慢の無菌室があるわけですが、その無菌室に前後3回、家内は抗がん剤治療を受ける間に入ることになったわけです。1回目と2回目のときは私も気が付かなかったんですが、11月の3回目のときにちょっと寒くなっていたもので、北側の部屋で二重にカーテンがなっていて、その厚いカーテンを閉めようと思ったら、カーテンの折り目の透き間のところにほこりとかびが付着して大変な状況になっているんですね。ちょっと動かしたらぼろぼろっと落ちそうなぐらいの状況になっているわけです。
 これはと思って、とにかく動かさずにおいて、翌朝、看護師が来て、何で寒いのに閉めないんですかと言うから、これを見てごらんよと言ったらびっくりして、それですぐに取り替えましょうということで取り替えるのは取り替えたわけです。
 だけれども、そういう状態になるまでに1日、2日、3日、3か月とか、そういう期間じゃない。相当の年月がたっていたんじゃないかというような感じなんですね。ですから、それを管理しているのは一体だれなのかということも含めて、患者は今まで何人も入っているわけで、2週間単位ぐらいで大体入りますね、長い場合は20日ぐらいとか、3週間ぐらいとかですが、だれも今まで言わなかったということですね。
 それぐらい、やはり患者は先生を恐れるというか、要らないことを言って先生ににらまれたらかなわないと思ってだれも言わなかったんでしょうね。私は、言ったわけですよ。これは一体どうだと。そういう経緯があって、これはとても信用できないなという面がありました。
 それからもう一つ、ほとんど白血球がゼロ状態になっていて、しかも何が原因かはわかりませんけれども、風邪をもらってしまって、それが元でいわゆる肺炎を併発して、それで4日の間に感染症で死亡したという経緯があるんです。しかも、肺炎であるにもかかわらず、私の耳にごちょごちょと聞こえてきたことがどうも政治絡みの感じで、何かだれかを優先して入れないといけないような状況があるみたいな感じで、無菌室から普通の一般の個室に移しまして、それで死亡した。それで、大変な不信感を持ってしまったわけです。
 と言いましても、地方の場合に、ではどこの病院に行けばいいかと言われましても、そんなに選択肢がたくさんあるわけではありませんし、家からも近いし、楽だからそこでいいやと思ってそこの治療を受けることになったわけです。
 これからは私自身の体験になりますけれども、ほんのささいなことばかりなのでお恥ずかしいんですが、例えば副作用で夜中に体ががたがた震えるくらの高熱が出て、ナースコールを押して汗びっしょりになってがたがた震えていました。それで座薬を入れようということになったんですけれども、看護師さんが帰った後、何か変だなと思ったらちゃんと入っていないんですよね。あとは自分で入れたわけですけれども、そういう単純なことが的確にできない。こういうほんのささいなことがいっぱい積み重なってきて、不信感につながっていくわけなんです。
 あとはそういう卑近な例ばかりしかありませんけれども、口内炎がちょっとできたんですね。そんなひどくはないんですけれどもできて、朝にうがい薬として私には食事のときに持ってくるようになっているけれど、これを持ってこない。言わないと持ってこない。持ってくるときもあるし、持ってこないときもある。そんな状況だとか、具体的にその2つを今、思い出しました。
 それから、これは具体的には私自身のことではないんですけれども、これも副作用のせいだろうと思うんですが、夕食後にしゃっくりが止まらなくなりまして、消灯時間の9時がきても止まらずに出るものですから、同室の人に悪いと思ってロビーの方でごろごろしていたんです。
 そうしたら、11時半ごろに手術が終わったらしい外科の先生が帰ってきた。この先生のことは知っておりますけれども、某先生と言っておきます。その先生が当直の先生と話すことが耳に入ったんですけれども、こういうふうに言うんです。今日は、8個だった。ああ、大変疲れたと。
 最初は、8個という意味がよくわからなかったんですね。どういう意味かと言いますと、今日は患者が8人だったという意味なんですね。それを1個、2個と言うんです。仲間うちではそれがジョークとして通っているような感じで1個、2個と言う。私じゃなかったからいいけれども、聞いたその本人は実験台のモルモットみたいな数え方をされて、はなはだ患者の人格を無視した非常に劣悪な、医師としては評価できない医師だと私は非常に激怒しております。そういう経験があって、ますます信頼感を失っていく一方なのであります。
 それで、これがその緩和ケアとどう関係があるかということを私が勝手に説明いたしますと、医師とその患者のいわゆる大きな信頼関係がなければ、これは何ごとでもそうですけれども、うまくいくわけがないんですね。幾ら一方だけが頑張っても、こちらが不信感で聞いていたのでは、先生方が本当に誠意を持って言われても、初めから不信を持って本当かという感じで聞かれたのでは無駄な労力ばかりで、本当に有効な成果を挙げることは難しいと思うんですね。
 ですから、そういう意味では抽象的な言い方になりますけれども、やはり患者の側から言えば、医療に携わる方々の医療のみならず、もっと大きな人間的なというか、人格としての向上はやはり目指さなければならない。はなはだこういうことを言わなければならないというのは恥ずかしいことですよ。本当に最低レベルの話をしなければならないという、それぐらい中には不適正な医師がいらっしゃるということですね。それは、ちょっとびっくりしたことです。具体的には、そういうことぐらいです。
 それから、これは私の希望と言いますか、こういう場ですからあえて申し上げさせていただきたいんですが、がん治療に関してどうしても医療費の高額化ということがあります。ですから、新薬などをできるだけ速やかな保険医療の適用内に持っていけるようにしていただくと幸いだと思います。
 以上です。ありがとうございました。終わります。
○江口委員長 ありがとうございます。貴重な御意見だったと思うんですけれども、委員の方々、あるいは参考人の方々でどなたかコメントなりをどうぞ。
○志真委員 今お聞きした話は、実は1980年代にイギリスで同じような指摘がされて、やはり当時のイギリスもひどかったんですね、建物は古いし、医師たちはちゃんとした患者に対する教育も受けていないし、それから海外の医師がたくさんイギリスは入ってきています。それから、海外の看護師もたくさん入ってきています。だから、いわゆる医学の研究のレベルではなくて、臨床のレベルが先進国より落ちてしまうという現実があって、やはりこれは非常に大きな問題になっていたんですね。
 その後、政権が変わってブレア政権になって、まず医療を何とかしなければいけないという政策が打ち出されて、さっきちょっと大西委員が言われたNICE、ナイス、これは要するに非常に優れた臨床的なレベルというのをどうやって全国の病院に広げていくのか。その優れた臨床的な内容というのは実は今、原さんが指摘されたようなことなんですね。
 その基本的なコミュニケーションスキルですとか、患者さんに対する尊敬の念というか、それから信頼関係をどうやってつくっていくか。そのときに、イギリスが注目したのがホスピス緩和ケアだったんです。それを、医療の中に取り込んでいく。そこで行われていることを医療の1つの臨床的な実践に結び付けていくという政策をとったんですね。
 特に最近、私どもが非常に注目しているのは、2008年から始まったエンド・オブ・ライフ・ストラテジーという、これは人生の最後のところに焦点を当てた国家的な戦略なんですけれども、これもやはりがんはある程度改善してきたけれども、ほかの疾患は亡くなる過程での対応が非常に遅れている。そういうことが明らかになって始められたものだというふうに聞いています。
 ですから、今、指摘されたことは、原さんは非常に医療関係者にとって恥ずかしいことですよねと言われて、全くそのとおりだと思いますし、そこのところをやはりこれから日本でも変えていかなくちゃいけない。そのときに多分、役に立つであろうことがホスピス緩和ケアで実践されたり、行われてきた。
 それは病気のおしまいの方のケアですけれども、それをもっと早い時期から提供していくということが、多分イギリスの経験に学べばですね。日本は勿論、日本のやり方があってしかるべきだと私は思いますけれども、しかし、それが非常に参考になりますし、今、言われたことは、私はその当時のイギリスで言われたことと全く同じことだなと思ってお聞きしていました。
 ですから、決して今それが特別に問題なわけではなくて、やはり医療というのはそういうふうに何か具体的に手を打たなければ、要するに患者さんが望むような方向にはなかなか進んでいかないというのが実際のところだと思うんですね。ですから、とても今日の御指摘はよかったと私は思います。
○江口委員長 中川委員、どうぞ。
○中川参考人 原さんが最初におっしゃった、緩和ケアというのは医療の基本であるというのはまさにそのとおりなんですね。そもそも今、日本などで行われている西洋医学というものの出発点はやはり修道院などでのケアだったはずであって、例えば放射線が発見されたのは1895年ですから、ごく最近、100年余りなんですね。麻酔がかけられるようになったのは華岡青洲のころですから、実はがんの治療というのは最近になってようやく成立し始めたものであって、根本的にはそのケアというものが医療の根幹であるということは全くおっしゃるとおりです。
 そのことが象徴的にがんにおいて言われるんですが、原さんがおっしゃったように、なぜ取り立ててがんの領域で言うかということも全くそのとおりであります。例えば、緩和ケア診療加算ががんとエイズにだけ特化されているということにも非常に象徴されると思うんですが、逆に言うと志真委員がおっしゃったように、患者さんの力を借りて緩和ケアというものをがんの領域で確立していくことを通して我が国における医療全体を変えていければと思った次第です。
 そういう意味では、大変重要な指摘をいただいたと思って感謝を申し上げます。以上です。
○江口委員長 私も同じようなことを考えているんですけれども、ただ、もう一つ、これはやはりいろいろな組織とかいろいろな体制の中であり得ることだと思うんですが、やはり建前があって、あるいは倫理観があって、あるいは理想があってというところで、それが実際に現場でどれだけ実践されているかということですね。勿論、例えば日本内科学会とか、いろいろなところで、医者はこうあるべしというふうなことは必ず教えているし、国家試験にも出ているしということで、医学生も勿論、学んでいるわけですね。あるいは、最近ではロールプレイなどと言って、実際に患者役の人が出てきてそういう人に対してどういう接遇をするかとか、そういうことまで教育としてはやられています。私たちが医学生のころは、そういうことは一切なかったんですけれども。
 ですから、そういう意味での今の接遇とか、あるいは倫理観といったことに対する教育的な配慮というのはある程度はされている。だけど、それがやはり日常の診療の中で現場に生かし切れていない。あるいは、そういうものを単に学んだだけで実際に身についていないというような医療スタッフがやはり出てきてしまう。
 そうすると、医学生とか、あるいは看護学生とか、そういうところの段階だけではなくて、卒業後に実際の臨床の現場でそういうことをやはり教育していかなければいけないし、皆、自覚を持っていかなければいけない。私も今そういうことに関する担当を医療機関の中でやらされているものですから、本当に今、御指摘のあったようなことは毎日毎日つくづく感じているところであります。
 ですから、私自身は今お話を聞いていて、これは緩和のことだけでもないし、がんのことだけでもないし、やはり医療全般にわたってこういうことの患者の視点というのはすごく大事だなと思うんです。
 そういう意味で、今日のお話はすごくためになったと思います。一層、私たちの力でこれを改善していかなければいけないなというふうに感じました。ありがとうございます。
○東口委員 台風の影響でちょっと遅れまして申し訳ございませんでした。
 私は大学病院で緩和ケアをやっておりますが、年間700人ぐらいのがんの患者さんを1つの講座で2か所の病院で診させてもらっております。その中で、多くの初診で来られる患者さんたちの話をよく聞くと、原さんが言われたとおりのことをほとんどの人が私たちに話をされます。ほとんど全部、不信感の塊で、緩和ケアは病気の面でも最後かもしれないんですが、そういう言い方は違うと思うんですけれども、ターミナルとすれば、患者さんの家族を癒せる最後のとりでだと自分たちは思っています。
 ですから、患者さんや家族のサイドに立ってみて、その視点で見たときに、本当に原さんの今のお話は申し訳ないと思いますし、すごい恥ですし、緩和ケアなんかやめてしまった方がいいかなと、はっきり言います。オーバーかもしれませんが、私はそんなことだったら医者を辞めた方がいいかなと思うような恥ずかしさです。
 では、なぜそんなことになっているかというと、私は難しいことはよくわかりませんけれども、多分ドクターにしても、がん治療はよく手術ができましたよねと頭をなでられて、化学療法がよく効きましたよねと頭をなでられる。でも、カーテンのかびを取ったからといって褒めてくれないんですね。まずかびを取った人を褒めて、それでなおかつがん治療がうまくいった人を褒めなければ、私が言いたいのは評価の仕方が悪い。そういう根本的な医学教育かもしれませんけれども、それをやはりやらないとだめです。
 もう一つ言いますと、今、私は副院長もしていますが、副院長の立場から事務的に聞いていますと、やばいな、これは大変だ、とにかく人を使って毎日のようにチェックしなきゃと。そのためにはお金も要りますし、日本の今の医療体制でそれは十分できますかと管理者側から言うと、ちょっとごまかしておけ。3日に1回でいい。いや、1週間に1回でいい。半年に1回でいい。
 でも、私たちは少なくとも1か月に1回、要するにカーテンのああいうものを全部チェンジするようなシステムをつくりました。でも、それでもやはり30日目に来た人はほこりが付いているというわけです。毎日できない。
 そういう日本の持っている医療の非常にぎりぎりのラインというのもあるんですが、やはり気持ちが大事で、ナースの方もそう思うと思う。私らもそう思う。長と付く者はやはりそこからで、デパートへ行っても見るのはトイレの中とか、その隅ですよね。私は緩和というか、医療はそこからやらないといけないと思っているんですが、自分ではなかなかできません。ですから、教育を一生懸命やろうとしている。でも、やはりできません。本当に申し訳ないですが、100%できません。
 最近はやっている、野球のマネージャーがドラッカーを読んだらというような、あれを私は初めて読んだときびっくりしました。医者は、これを絶対に読まなければいかんよなと。だって、顧客というのは明確にお客様ですよね。患者様は100%顧客対象になるし、家族の方も顧客対象です。でも、間違っているというか、違うというか、弱い患者様、弱った患者様が顧客であって、患者様とか、その家族という普通の方ではないということを、あれを読んで思えるかということで、今、私は医局員の中でそういう話をしています。そういうことは緩和ケアというのをはるかに超えていると思うんですが、基本的にそういうモラルをもう一回考え直すきっかけになる御発言かなと。
 私は個人的ですけれども、是非ともそのことを自分の講座はまず最初の一歩として進めていきたいと思っています。ただ、これを国のレベルでどうしてくれるかというのは、私はわかりません。是非とも皆さんのお力添えが欲しいと思います。お願いします。
○原参考人 別に意見ではありませんけれども、これはもう医療だけじゃなくてやはりその専門家という立場の方々の皆の一つの使命感ですよね。その使命感が、非常に希薄になっているんじゃないかと私は思うんです。これがきちんとあれば、いろいろなことがそこから自己発見できてくるというか、そうすればその問題が露呈してくるわけでしょう。そうすると、それを改良する具体的な道筋が見えてくるということだと思うんです。
 だから、専門ばかという言葉があるように、専門家というのはどうしてもいつの間にか鈍麻してしまうんですね。特に毎日、日々そういう患者というか、死に直面するような現場にいてやはり鈍麻せざるを得ない。そうしなければ、またそういう専門家ではあり得ないという部分もあるでしょうけれども、やはり鈍麻していいものじゃなくて、改めてその使命感というものに、要するに原点に立ち返ればいいということだと思いますね。私はそう思います。
○江口委員長 ありがとうございます。今、そういう医療者側の利害というか、理念というか、そういったものに重点を置いたお話だったと思うんですけれども、もう一つはそういうものを補強するという意味で、例えばがん関係で言えば相談支援室とか、患者相談室とか、そういうようなところ、あるいは言葉は悪いんですけれども、患者サービスといったようなところですね。そういう機能というのが非常に進んでいる病院もあるんですね。だけど、それが全く行われていないところもある。それこそ形だけつくって動いていないところもある。
 こういうところというのは、さっき東口委員が言われたように、なかなか収益に結び付かないんですよね。けれども、やはり医療の機能としてはそういうものが備わったものでないとなかなかうまくいかないということですね。それは勿論、個々の医療者の気概とか何とかということは必要で、当然前提としてあるわけです。なければいけないわけですけれども、それだけでもなお漏れるところはたくさんあるかもしれない。
 そういうところのある程度の補強として、そういう患者さんが気が付いたところとか、患者さんがこうしてほしいところとか、いろいろなことについて、やはり医療機関なりその地域の医療なり連携なりでカバーできるような仕組みにして、しかもある程度そういうものは組織として基盤がないとできないものですから、そういうものも注目してつくっていかなければいけないんじゃないかという気はいたします。
 話は尽きないんですけれども、こればかりやっているわけにいかないので、どうも原参考人ありがとうございました。どうぞこのままここでお聞きになって、御意見があれば御発言いただいて結構ですから、よろしくお願いしたいと思います。
 それで、お手元に資料2があります。各委員からの意見で、これは前回のものをそのまま付けてあるものなのですが、前回御欠席の委員の御意見も私が代読させていただいてお話ししたのですが、まだ意を尽くせないところもあるかと思います。
 今日、特に意見交換したかったところは、この前もちょっとお話ししたように教育とか研修とか、しかもそれが地域連携に関したものですから、多職種にわたってそういうふうなところのことをお話いただきたくて、順序が逆になりましたけれども、大西委員からの資料の提出というのもそういうところの一環として出していただいたということです。
 話の取っ掛かりとして、前川さんからこの前のことを簡単に口頭でお話いただけますか。要するに今、行われている研修会を見学されてきたということです。
○前川委員 1枚紙で裏表あって、昨日、突然ですが、発言をしたいと思ってお願いしたんですけれども、一昨日とその前の日の2日間、緩和ケア研修会が地域でありました。
 行政の方とかが2日間ずっとついて現場で聞くということは余りないのではないかなと思います。また患者会とかでも聞かれる方もおられるかと思います。地域によっても質の高いところ、またそうでないところがあると思いますけれども、質の高い緩和ケアの実現を願って2日間、最初から最後まで見学させていただきましたので、ちょっと報告させてください。
 2日間で病院内の医師が6名、ほかの総合病院の医師が2名、開業医さんが4名、そのうち60代後半以上の方が3名、主催者側の病院の看護師5名、医師会病院看護師5名、その他4名、薬剤師1名だったんですけれども、プログラムで緩和ケア概論とか消化器症状とかは、ただ資料をずっと読むだけなんですね。
 聞いている方もじっと読んでいて、どうしてこういうふうになるんだろうなと思っていました。精神科の先生が話された、裏面の真ん中辺りですが、M‐7bのせん妄のところは精神腫瘍学に全く詳しくない気配の精神科医でして、その病院に週1回だけ来ている精神科医でした。読みながら、私はよくわからないんだよねというようなことをぽろっぽろっと言葉の端々に言われるんですね。
 その前のM-6bの消化器症状、これはその病院の外科の先生なんですけれども、緩和ケアが全くわかっていないという評判の先生で、それも読むだけ。そして、どう教えていいかわからないとか、ぼそっと言ったり、うつ状態の部分では自分は精神科ではないからわからないとか、そういうことをぽろっぽろっと言いながら、ただ読むだけというような状態でした。
 ただ、呼吸困難の場合の先生は、医療現場でやはり自分がされているので、相手にきちんと伝わるんですね。前回、教科書を読むだけでは先生によって違いますよねと私は発言したんですけれども、やはり呼吸困難の担当の方は自分がされているから私たちにもよくわかりました。
 そういう感じで、結構資料を読むだけの研修会もあるということを感じました。
「総括」と書いていますけれども、「緩和ケア研修」という画期的な試みが、地域によっても差があると思いますけれども、あるところでは形骸化している実態を見たような気がして、非常に残念な思いがしました。あくまでも本当に全体像のうちの一つとして皆様に御検討というか、御理解いただければと思って2日間見学してきました。右の方に提案は書いてありますけれども、読んでください。以上です。
○江口委員長 ありがとうございます。御報告のとおりで、それを否定するものではないんですが、やはり今後のことを考えて教育研修とか、確かに実績としては一万何千人修了証を発行できるというふうにできたということもありますし、それは決してそういうようなことをすべて否定するわけではないと思うんですけれども、今後どうしたらいいかということは我々の使命だと思いますので、委員の先生方で是非、何かこれに対して御発言いただきたいと思います。どうぞ。
○志真委員 この緩和ケア研修の全体的なことに責任を持っている者として、こういう状況があるということは幾つかの研修会で聞いております。私どももそういう意味では危機感を持ってこの間、進めてきております。
 ただ、前川委員も「研究会協力医師の中には、「緩和ケア指導者研修会」修了者ではない医師の存在もあるのではないかと思えた」と書いておられます。そのとおりなんです。企画責任者というのは、これは指導者研修会をちゃんと修了しているということが条件で明示されているんですが、その企画責任者がお願いする協力者の方は必ずしも指導者研修会を終えていなくても、その企画責任者の方が適当である。こういう講義をしてくれるのにこの人はふさわしいというふうに判断すればお願いすることができるということになっておりますので、指導者研修会を修了していなくても、こういう講義を担当することは十分に今の研修会の構造ですとあり得るということになります。それが1点です。
 もう一つは、私どもが今、力を入れていますのは、指導者研修会ではやはり教え方、研修、要するに教育スキルですね。教育スキルをちゃんと身につけてほしい。内容を十分理解することは当然だから、内容を理解するだけではなくて、それをどういうふうに研修会の参加者に伝えてプレゼンテーションするか、わかりやすくプレゼンテーションするかということを指導者研修会で教えるというふうに、大体2年目ぐらいから教育内容を変えてきております。
 ですから、中身を理解するのは当然で、例えば先ほど精神科の先生の中で、自分はよくわからないが、というふうなことを言われながら教えられたということなんですが、実は精神腫瘍の研修会も最初はやはり内容を伝えることに終始していたんですね。ですから、どうやって教えるかということについては、最初の指導者研修会を受けた方は多分、十分教育を受けておられない方もいらっしゃると思います。その点も指摘がありまして、2年目からはどう教えるかというところに焦点を当てて指導者を育成するという形に今してきております。
 ここでよく話題になるんですけれども、緩和ケア研修会を教える人たちは決して緩和ケアの専門医でもなければ専門家でもないんですね。指導者の人たちは、皆それぞれ自分たちの診療領域というのを持っているわけです。呼吸器とか消化器とか、外科とか内科とか、放射線科の先生もいますし、その中で緩和ケアについて関心があり、それをやはり周りに広めていかなくちゃいけないと思っている人たちが指導者として今1,000人ぐらいで、精神科の方も500人ぐらい増えてきているということですので、この方たちがイコール専門家ではないんです。
 でも、我々はとても大事だと思っているんですね。例えば、さっき大西先生が報告されましたけれども、最初に精神腫瘍の研修会に出る精神科医は、いいところ100人じゃないかと思っていたんですね。それで、実際指導者に応募する方がとても少ない時期もあったんですね。でも、じわじわとだんだん広がっていって今の数までになってきているんです。
 そういう意味では、教育というのは非常に時間がかかるし、それから指導者を育てるということにもやはりある一定の時間が必要だと思っていまして、ここで御指摘のことは恐らく大なり小なりいろいろな研修会でこういうことが問題になっているだろうと思っていますので、今後引き続き指導者をどう育てていくかということと、それから前川委員が御指摘のように、内容を分けるというようなことも是非検討していきたいと思っています。
○江口委員長 あえて志真先生だからこういう意見を出しますけれども、余り答えになっていないと思うんです。今までやってきたことがどうだというのは、それは努力として認める。だけど、現実にこういうような状況であるということで、これは事実を誤認しているわけではないわけですね。やはりこういうのもちゃんと見られてきたということなので、だからこういうことに対してどういうふうに改善できるかというのは、もう次の回からの問題です。そうですよね。
 だから、その教育に時間がかかるのは勿論なんだけれども、それから指導者講習会でちゃんと教え方を学んだ人たちがまたネズミ算式にだんだん増えていって、そういう人たちに全国でこういう講習会をやってもらう。これも最初から私たちがシナリオに書いてきたことですね。
 だけど、少なくとも実際に行われている講習会のクオリティを評価するというのは最初から言われていたことで、それに対して例えば最初のころは教える人も少なかったので、実際にその場に何人か、2人ずつぐらいたしか行っていましたよね。中央と言ったら言い方は悪いけれども、要するに緩和医療学会のこういうプログラムを主体的に担っていた人たちの中から何人かで実際にその場に行って、確かにこういうことが行われているというふうなことをやる。それは、一つのクオリティコントロールにはなっていたわけですね。
 だけど、それを全国あちこちでやり出したから、なかなかそれに対応できなくなっているということですけれども、決してそれをまたやれということではないですが、とにかく次の回からやる講習会でどういうふうに変えていったらいいのか。あるいは、これはこのままではもう変わらないんですかということが今、問われているんだと思います。
 だから、それに対してやはりちゃんと答えていただきたいと思います。
○志真委員 1つは、やはり開催指針を見直さないとだめです。今の開催指針ではだめです。
 それから、標準プログラムも前川委員が御提案されているように、基本的なものとちょっとアドバンスなものというふうに標準プログラムを組み替えないとだめだというふうに思っております。
 それからもう一つは、これは今ほぼ開発が終わったんですけれども、ピースクエスチョン88という、要するに実際にこの研修会を受けて、何がどう変わったのかということを受けた医師たちに前後でちゃんと問うて、そしてクオリティを評価するというプロジェクトを今、私ども進めております。実際にそれは今、部分的にまだトライアルの段階ですけれども、具体的に使えるようになれば、今後新しい開催指針の下で受講者に対してそういう質の評価に参加していただくというようなことは今、計画をしております。
 ですから、恐らく受講者もこういうクオリティの研修会では受ける意味がないと多分、思うと思うんですよね。だから、その点についてはそういう形でフィードバックをいただいて、そしてそれを各都道府県なり拠点病院なりにお返しして、やはりここは改善してくださいということを具体的に指摘していく。
 ですから、そういう機能も含めた運営の仕方をしていかないと、今もアンケートは取っているんです。前後で受講者にいいか、悪いかということについて、研修会自体の中身がどうかということについてのアンケートは取っているんですけれども、そのアンケートが十分まだ生かされていないですし、具体的に教育内容のどこが問題なのかということについてのそういう評価もまだされていないので、次のステップはそこではないかと私は思っています。
○江口委員長 今の「私ども」というのは、具体的にはどこですか。
○志真委員 厚生労働省の委託を受けている緩和医療学会ということです。
○江口委員長 どうぞ、川越参考人。
○川越参考人 前川委員が昨日ですか、行かれて。
○前川委員 一昨日です。
○川越参考人 一昨日ですか。以前、同じようなことをおっしゃられたので、聞いていてまた今回もわざわざ行って確かめられたということにまず敬意を表したいと思っております。
 ただ、問題は、前と今とで変わっていないじゃないかという多分、感想だと思うんですけれども。
○前川委員 前回は、2日間のうちの1日しか行かなかったんですね。だから、全体像が見えなかった。それと、主催者が去年行ったのは医師会で、緩和ケアの末永先生という緩和ケア専門の先生が主催されていて、聞いていて本当に良く理解できました。最初の緩和ケアの目的とか、そういうことをご自分の言葉でお話されるとやはり相手に通じる。それで、今回は2日間、見学をしました。
○川越参考人 それで、問題は、志真先生も非常に苦労されてこのことで教材の立派なものをつくられた。今、足りなかったのは、教え方のところは十分伝わっていなかったと言いますが、そこのところをやっていなかったからということで、しかも教える人は必ずしも緩和ケア医療に携わっていないということで、それを問題点として挙げられていたと思うんですけれども、前川委員が感じられたことは、多分参加した人、あるいは受講した人の心に響かなかったということじゃないかと思うんです。
 これは教育としては最も大きな問題で、どんなに教材がよくできていてもそこに携わる、あるいは関係するものが内容的に響いてこないと言ったら、やはり教育としては根本的に見直す必要があるんじゃないかということを思っております。
 私は、ここから先は今、前川委員がおっしゃられた、現場でやっている先生の話というのは非常にある意味で響いたというような話で、私はそのことだと思うんですね。やはりこういう緩和ケアの教育というのは、現場でやっている方の声が十分届かないと、そういう心に響いてこないんじゃないかなということを常日ごろ感じておりますので、学問的には確かに大学病院とか、そういうところにいる人間と比べたら劣るかもしれませんけれども、現場に関してはちゃんとした発言ができる。そういう声を、やはりこの中に盛り込むような形を考えていただきたいと思っております。
○江口委員長 これはよろしいですか。委員の方々の共通の要望ですね。
 それから、今の御発表の中に、職種によって、要するに医師の出席は少ないですか。そんなこともありましたけれども、ちょっとあれですか。
○前川委員 今回の場合は、もっと早い時期に募集をかけたそうなんですけれども、参加者、応募する人が少なくて実施できなかった。それで7月16、17日になったらしいんですけれども、医師が少ないから何か対象がぼやけてしまって、本当に締まりのないというか、ただ研修を行ったよという、すごくきつい言葉なんですけれども、皆さんというか、ある先生などは右の方に書いていますけれども、早口で読むだけでは何もならないよねと帰りながらおっしゃっていたりしました。
 それぞれが質問する場がないから、それぞれの気持ちが言えないんですよね。だから、帰りにぽろっと言われたりしたと思うんですけれども、そういうのもあればいいかなと、質問とか感想とかを紙ではなくて言葉でというふうに感じました。
○江口委員長 プログラムの構成はいろいろ改良点があると思うんですけれども、参加者の職種や何かのことについて何か委員から御意見はありますか。
○志真委員 いいですか。
○江口委員長 先生ばかりだとあれですので、ほかの委員の方々はいかがですか。
○東口委員 ちょっと観点が変わるかもしれません。私は今、愛知県と三重県の緩和ケア研修はかなり一生懸命、仲間と共にやっています。かなりうざっこい男なので、根本的にきちんとやらないと気が済みません。
 だから、もし一人でも満足していない方がおられたら自分はものすごく責め苦を食うような、ですからよかったよねと言ってもらって当たり前みたいな研修会であってほしいし、志真先生が最初に組まれて私も先生に教えてもらったときはそんな雰囲気だったんですよね。
 すみません。文句を言うわけじゃないですけれども、その人たちが行っていて、途中でがん拠点病院で何とかかんとかという話になって沈下された時点で、あるいは県の関わりがあって、今、先生が言われましたけれども、だんだんと最初ありきの人たちがいなくなっていった感がすごく強いです。
 今お話を聞いていて、すごく私はびっくりしています。私たちのところではあり得ないと思っています。もしそれだったら、医者は絶対に次から来ないですよ。全く来ない。それは意味ないですから、やはりそういうのだったらやったらいけないと今、私は心に思っているんですね。
 ただ、むしろ医師がやっていてナースの方も一緒に聞きたいわと言って集まって多職種が集まるならば成功ですね。だから、志真先生が苦労してやっていたことをいろいろな中で悪くしているというか、自分も含めてかもしれません。
 ただ、何を今やるべきかと言えば、多分もう一度、県の中で、本当に言い方は悪いですけれども、政策的なことにとらわれずにボランティア的な気持ちで緩和ケアをやっている人たちにもう一回力を借していただいて、まとめてもう一回見直すことをしないと、しかも一つずつの病院にやはり先生が言われたように何らかのチェックをした方がいいかなと。私がずっと自分でするのは嫌ですけれども、それは多分、先生が組織力を持ってみえるので、声さえかければできると私は思うんです。
 すみません。システム的な話はできませんけれども、現場ではいつも悶々とそう思っています。
 もう一つの問題点は、それをやっていくとだんだんとこれはボランティア的なものですから、一生懸命やっていた人たちがなかなか手を挙げないものですから、同じ人が何回も来るんです。その人たちは本当によく頑張っていて、やはりやりがいを持って見えると思うんです。ですから、申し訳ないですけれども、現段階はごめんなさいで頑張っていただくというのが一つの方法かなと。時間が流れればそうやって人が集まってきますので、次の世代、次の世代が出てくるかなと、私はちょっと期待的に見ているんですけれども、すみません、先生、そういうことです。
○大西委員 私も、せん妄のところを聞いてびっくりいたしました。これは精神科医ならばだれでも自分の言葉で説明できるのは当たり前だと私も今まで思っていたんですが、申し訳ございません。これは本当におわび申し上げます。
 私どもの方もやはり精神腫瘍学の指導者の方々で、もし困ったときにはリストがありますので、そこに呼びかけていただければ、必ずそういう者がどこかから日本じゅう来るようなシステムがありますので、よろしければそういうものを使っていただければと開催者の方にお伝えください。
○前川委員 わかりました。ありがとうございます。
○江口委員長 これはそういう形もいいんですけれども、やはり国全体としてそのシステムというか、体制としてそういうようなことが、例えば精神腫瘍学会の専門チームに研修会のやり方でどうしたらいいかとか、そういうものがいくとか、何かそういうような仕組みをつくっておかないと。
○前川委員 今は、義務となってやっているような気がするんですね。義務だからやる。だから、例えば精神科の先生に、先生お願いしますよ、話してくださいよという感じで。先生がその時間だけ来て話されているんじゃないかなという気がするんですけれども、義務ではなくて拠点病院では必ずするようになっていると思うんですが、それから主催者もしようがなくやっているというようなことをおっしゃっているんですね。ですから、もうちょっと現実を行政というか、厚労省の方たちにみていただきたいと思っています。
○健康局長 局長ですけれども、今、前川さんの方から研修会に参加したという御発言があって、それを基にしてお話されていますが、今1例の話をもって全体を推し量っておりますけれども、私どもの方でどういった状況にあるのか。また、専門の先生ともよく相談をしながら至急評価させていただきまして、余りゆっくりできる話でもありませんので、私どもの評価したものをこの委員会にお出ししますので、その上でまた至急、善後策について御検討していただきたいと思っております。
○江口委員長 前川委員からは重要な御指摘があったと思うんですね。それで、たとえ一部かもしれないけれども、そういうことが現実的にあるということであれば、これはやはり全体の底上げということを考えなければいけないと思いますので、是非それは具体的にどういうふうな状況になっているかは事務局の方で調べていただいて、それを参考にまた議論を積み重ねていきたいと思います。
 では、どうぞ。
○中川参考人 今、前川委員から義務になっていると。そこで、土日を完全につぶしてというのはやはり医師にとっては間違いなく負担はあるんです。
 ちなみに、東大病院で結構いい研修をやっているつもりなので是非見にきていただきたいと思うんですが、やはりそのインセンティブも要ると思うんですね。前川委員のあの御提案にもありますけれども、今は研修会の受講医師が1人院内にいればがん疼痛緩和指導管理料が加算されるわけですね。こうなると、病院経営者にとっても正直言って、そうすると例えば講師を呼ぶにしても旅費は余り払えないとか、すべて絡んできてしまうんですね。したがって、やはりこういうインセンティブも高めるような診療報酬上の見直しも御検討いただきたいと思います。
○江口委員長 あとは、これは先ほどちょっと言いかけたんですけれども、医師は医師で私はやはり教育研修をこういう形でもやらなければいけないと思うんですね。だけど、その場合に勿論、教育内容としては看護師さんも共通の問題として受けなければいけないと思うんですけれども、やはり医師、看護師両方にインフォメーションを流すと圧倒的に看護師さんが来るんですよね。その辺の対応策というのは何かありますか。
 というのは、ロールプレイとか何とかも組み込みますから、人数的にはそんなにたくさんの人が一度には受けられないんですよ。せいぜい今やっているのは、多くて30人から40人ですね。
○松月参考人 看護師の場合は、救急の蘇生の方法でよく使っているACLSとかBLSとか、ああいう仕組みが比較的ナースの中では浸透しやすいので、きちんとした理論的な教科書と、それからそれを進めるためのインストラクター研修ですね。
 それをやっていくと比較的院内でも、例えば、700人、1,000人規模の病院であっても、きちんとしたプログラムとカリキュラムの内容があると、比較的浸透の仕方は、高度なものをいくのはなかなか難しいかもしれませんが、基本的なものをいくのであれば一つの工夫だと思いますが、チームを組んでやるときにナースの役割というのは必ずあるわけですから、その役割を取る人は、あなたにはこういうインストラクターのあれを与えますよみたいな形で与えると、それを自分の役割と感じてやる人というのは比較的多いので、そういう意味ではうちでも拠点病院だったのでやっていましたけれども、非常にナースたちはそれに参加してお手伝いをするんですね。
 自分が受講生でないんですが、いろいろなお手伝いをする。それをやりながら、非常に知識レベルが上がっていたということは非常に経験をしております。ですので、スタッフとして使うとか、そういう形も一つの方法かと思いました。
○江口委員長 これは、それこそ志真委員、いかがですか。
○志真委員 今、言われた形でかなり全国的に用いられていると思います。看護師さんがやはり加わってくることによって教育、要するにスタッフ側に非常にいい影響があるということはわかっていまして、それはそういうふうにできるようになっていますけれども、応募のことについて言うと、看護師さんがやはり学びたい。そして、一つの看護師としてのスキルを高めるためにこれは必要なんだというモチベーションが高いんですね。
 一応、緩和医療学会としては今、看護師を対象にしたエルネックジェイという別のプログラムを提供しようということで昨年度から取り組んできておりますので、私はできれば看護師さんに対してはこのエルネックジェイを拠点病院では基本的にそういう研修を受けていただく。それで、エルネックジェイのトレーナーというのが今300人ぐらい全国で育ってきておりますので、これをもうちょっと活用していっていただければ、恐らくお互いに協力し合うように、看護師は看護師の教育プログラムを持って、医師は医師の教育プログラムを持って、でもそれぞれがスタッフとして協力し合うというような、そういう関係ができるのではないかと思います。
 それから、受講医師をどうするかという問題なんですけれども、今、中川参考人の方から一つのインセンティブということも提案がございました。これも是非検討していただきたいと思うんですが、もう一つ、実はこれは一例で申し上げるのはあれなんですけれども、これも厚労省にできれば同時に調査していただきたいと思っているんですが、拠点病院でも医師の受講率が低いということが、私の所属しております茨城県の調査でわかっております。ですから、これもやはり何とかしなくちゃいけない。
 ちなみに、簡単に数字を挙げますと、茨城県では最低が15%です。拠点病院の医師の受講率の最低ラインが15%、最高のところが55%です。やはり拠点病院であれば、拠点病院の医師の50%以上は、勿論、前川委員が提案されていますように、そこの施設責任者も含めて50%以上はやはり受講していただくというような、それは義務化だから自発性が損なわれるんじゃないかという御指摘もあるかもしれませんけれども、私は両方が必要だと思います。自発性も必要だし、熱意も必要です。
 でも、自発性と熱意だけに頼っていたのでは教育は進まない。やはり義務教育というか、ある程度義務化して、そしてその中で底上げを図っていくという考え方を取らないとなかなか難しい。
 それから、先ほど中川参考人が言われましたように、医師の本来業務とは別に土日をつぶしてこの仕事を皆さんやっておられるんですね。正直言って、私も今ほとんど1年間、週末は幾つかの例外を除いて研修会が入っております。ですから、そういう現状で皆、一生懸命やっているということがありますので、ボランタリーな気持ちと、それからある程度制度的にきちんと対応するということと、両方がやはり必要じゃないかと思います。
○江口委員長 これは2回目の教育のところでも出てきたんだけれども、あそこではたしかもっと進んだ意見が出て、要するにデューティーとして医師には受けさせる。そうしないと、とてもじゃないけれども、最初の基本目標のすべてのがん診療に携わる医師が基本的な緩和ケアについての素養を身につけるということは不可能であるというふうなことはかなりここでディスカッションもされえているんですね。それで、今の志真委員の話を聞くと、何かトーンダウンしているんですよね。この専門委員会としてはそれでいいのかということがやはりちょっと気になるんです。
 それで、先ほども松月参考人からACLSの話が出たんだけれども、あれは今は本当に浸透しています。全国津々浦々であれを受けないと認定医の資格が取れないんですよ。それが条件になっちゃっているんです。だから、皆とにかく受けるんです。しかも、それはある程度必要のあることなんですね。どんな医者でも、一生に何回かは救急の場面に立ち会うことになる。
 でも、緩和は立ち会わないかというと、そんなことはないです。やはり、緩和も医者になった以上はどこかで立ち会う。あるいは身内にそういう人が出てくるということなので、これは発想をがらっと変えて勿論、今までの看護師さん用にはエルネックとか何とかというような今までのプランを全部やめる必要は全くないし、それを開発して踏襲していくことはいいと思うんですけれども、それと同時に、要するに携わる医師全員がやるというふうな理念に立てば、何か別な方策というのをここでもう一個提案しなければいけないんじゃないかと思うんだけれども、それはどうですか。
○東口委員 おっしゃるとおりなんですが、私自身、今1,500床のところで2,000人近く医者がいる中で仕事をしていますが、本当に困るというのは、セクショナリズムはやはり恥ずかしながらどこでもあります。ですから、例えばがんに携わる医者は全員受けるという病院長の下にやっているんですが、嫌だとか、教授自ら来ないとか、そんなことはいっぱいあるんですね。
 もっと言うと、若い先生に、先生、どうだと、一人ずつ歩いて私は頼みに行くんですけれども、私はがんしませんからと、ぽんとけってくるのでやはり腹が立ちますよね。研修医は絶対に1、2年のうちに受けさせるぐらい100%ということで、私はここでは権限が何もないので皆さんにお願いです。ルーチンと言うならば、せめてそれぐらいはしてほしい。
 勿論、今からその手を打たなければ、それこそ早期からの緩和ケアなんて難しいですよ。ある程度、年齢のたった人にもう一回やれと言われても、もう一度やるんですかと。私は、プログラムの流れは絶対にいいと思っています。先生のつくられたものはすばらしいと思っている。だけど、それを本当にきちんと活かす方法としてそういう策を練ってほしい。絶対そういうのが欲しいです。
 すみません。トーンダウンしているかもわかりませんけれども。
○江口委員長 それで、たしか臨床研修医の教育の中でこのカリキュラムを入れるのを必須化するというふうなことも御意見としては出てきていたと思うんです。
 ただ、臨床研修医というのは、あれは厚生局でしたか。
○事務局 医政局です。
○江口委員長 そういうところで、何かバッティングするようなことというのはあり得るんですか。例えば、土日を講習会に出させる。講習会の間は業務ができないことになりますから、そういうような何かあれはあるんですか。
 急に言われてもあれかもしれないから、そういうこともちょっと調べていただければと思いますけれども。
○事務局 厚生労働省の医政局で臨床研修の制度について所管しておりまして、緩和ケアについてこのような議論になっておりますので担当とも話はしているんですけれども、今、人の看取りに関しましては臨床研修の必須項目として学ぶことになっておりますが、かなりその必須となっている内容は絞られた中身になっておりますので、それ以外のところはいかに臨床研修指定病院で工夫してやっていただくかというふうなことで医政局側をサポートするような立場にあるようですが、引き続き情報を収集してまいります。
○江口委員長 そうすると、一度そういう担当の方にここに来ていただいて、いろいろこちらの要望をお話するというようなことも可能ですか。
○がん対策推進室長 多分それはできると思います。
○川越参考人 この間のお話の中で、その学生教育の中にもっと落としていくことができるんじゃないかという議論があったと思うんですけれども、その点についてもやはりどの辺まで話がいっているのかということをちょっと聞いてみたい。全部、研修医の段階で内容そのものをやるか。多分、志真先生の方でも考えていらっしゃると思うんですけれども、学校教育はその辺のことも含めてディスカッションしていただいたらありがたいです。
○江口委員長 これは医学部教育になると文科省ですよね。
○大西委員 埼玉医大でサイコオンコロジーを私はやっているんですね。3年生からやっていて、4年生で2コマ持っていますけれども、よく覚えてくれていますね。
○江口委員長 全国で医学教育の中に何コマか入れているところはたくさんあるんですよ。けれども、これは制度的なものとか、あるいはそういう話がどこまでいっているかということを担当の部署の行政の方にお聞きするということですけれども、それは可能ですか。
○健康課長 可能です。可能というか、今のがんの緩和ケアの研修会の義務化をどういうふうにかませるのか。臨床研修制度の中でそれをシフトすべきかという御意見があるのであれば、それに対して現行制度の中でどの程度でき得るのか、でき得ないのかということを説明することは可能です。
 ですから、次回すべしいうことであれば連れてきてさせますけれども、そういう戦略がいいのか。それとも、最終的にこの会の意見としてどうあろうが書くかとか、いろいろなほかにも項目があるものですから、物の進め方としてもしそれを重点的に次回取り上げられるレベルであれば準備させますし、それから文科省にも要請して必要に応じて重点的に御説明することは可能です。
 ただ、この進め方としてのやり方ですね。ほかの項目との強弱と言いますか、重みの問題もありますので、それはいかようにでもいたします。
○江口委員長 私の認識では、少なくとも臨床研修医のことに関しては度々ここで出ている話だと思いますので、この専門委員会としてはそういう何らかの形で踏み込むというのは共通の認識だというふうに理解しているんです。ですから、現時点でお呼びしてヒアリングをするということになれば、もう少し我々の聞きたいところをまとめるということは勿論やるわけですけれども、それでよろしいですね。一度、そういうことをお聞きするということになりますね。
 医学教育に関しては、どうでしょうか。まだ私は必ずしもこの専門委員会の中で意見を十分に煮詰めていないと思うんですけれども。
 それから、先ほど大西委員の言われたような、各医学部とか医療機関で教育されているかという話について言えば、例えば私たちのところでも腫瘍学の講義というのは20コマありますし、それから臨床研修医も既に研修会に参加しつつあるんです。だけど、まだ少数なので問題にはなっていませんけれども、全員を入れるということになったらまたそれはかなりいろいろなことがネックになってくると思いますので。
○健康課長 今の緩和ケアの臨床研修の必須化も一つの政策選択だと思いますし、私は全部は聞いておりませんけれども、この緩和ケアの幾つか、2けたぐらいに及ぶ政策選択というか、変更の論点があるかと思いますが、この緩和ケアの専門委員会の後の回数ですね。ですから、例えば10個ならば10個、本当にレポートをまとめる前に現状について吟味をするべきという立場に立てば、今の臨床研修のみならず保険の問題であるとか、さまざまな問題がございますね。それについてもし御指示があれば同様に、ちょっと今の趣旨と違いますけれども、時間が余りないように思われますので、いかようにでも手配いたしますので。
○江口委員長 ありがとうございます。それから、たしか学会の認定資格、受験資格や何かにこういうもの、緩和ケアの研修会の受講修了というのを入れるとか、そういうことも言われていましたね。
○志真委員 それはもう実際に進んでおりまして、がん治療医の認定の更新要件には今年度からなるということになっておりますので、それは学会と学会とのやり取りの間で専門医の受講、受験要件とか更新要件の中に、がん関係の学会には是非お願いをするという方向で今、進んでいます。
○江口委員長 そうすると、これは研修とか教育のことでずっと議論は続いていまして、そのつもりでやっているんですけれども、もしがん治療認定機構の受験資格になるとすると、実際には毎回2,000人から3,000人ぐらい受けますよね。主に外科系の科の人たちが多く受けているんですけれども、それに対して研修会などの対応が十分にできるのかどうかということと、それからさっきお話があったような、要するに研修会というのは形はやっても内容をどう保証するかというふうなことに関して、やはり対応を今、緩和医療学会でやっているのであれば、それを引き受けているのであれば、そういうことへの対応をきちんと世の中に公表していかなければいけないと思いますけれども、その点はどうですか。
○志真委員 まず量的な面で、例えば研修医に必須化になったときに対応できるかという問題なんですけれども、指導者を継続的につくっていくということが重要だと思いますし、それで年間7,000人から8,000人ぐらいの臨床研修医が出ますので、それに対してきちんと研修の機会が提供できるような体制をつくっていく必要があると思います。
 今のところ緩和医療学会としては1,500まで指導者研修会、指導者が登録できましたので、3,000ぐらいの指導者を当面の目標として継続して養成していきたい。サイコオンコロジー学会についてもこの前、話し合いを持ちまして、なかなか1,000という数字は難しいけれども、800ぐらいは何とか達成したいというようなことになっております。マンパワー的に臨床研修の医師が全部必須化されたときに、受講できるようなシステムは何とか整えられるのではないかと思っています。
○江口委員長 先ほどの話で、言葉じりをとらえるわけじゃないですけれども、いまだに志真先生が毎週、毎週その研修のことであちこちに出たりとか、そういうようなことは恐らく代替わりして、もっともっと多くの人たちがそういう役割をなすような形に持っていかないと、とてもそういう形で全国で研修会を開催するとかということになると対応できなくなるんですね。
 だから、そういう意味でベーシックなところでどういうプログラムでやっていくのかということはできるだけはっきりさせていただいた方がいいと思うんです。
○川越参考人 ピースの問題がやはりいろいろなところで問題があるということの認識は多分、皆さん共通していると思います。今、厚労省の方で調査と言いますか、評価はいつごろできるんですか。もしそれがあったんだったら、やはり早く我々も知りたい。問題が確かに前川さんの1つのところの意見ということになるとどうしても偏りますので、それがもし期限がわかったら、この期間内にわかりますか。
○がん対策推進室長 早急に対応と言いますか、調査させていただきたいと思いますけれども、いつまでにというのは、ちょっとまだすみません。
○健康課長 逆に言うと、幾らいい調査をしても時間が過ぎれば間抜けな調査になってしまうから、例えば2週間ぐらいですね。それで、完璧な調査というのはまた追ってやるかもしれないけれども、要するに役に立っているか、立っていないか、ちゃんとやられているかどうかですね。それがどうもかなりの割合で及んでいるようだということぐらいわかればいいんじゃないか。
それから、さっき言った拠点病院の医師ですらどのぐらいの割合やっているかとか、もう少し具体的に御相談しますけれども、概括的なものと精緻なものとをちょっと分けて、精緻なものはもう少し時間をかけなければいけないと思いますけれども、精緻なものを恐らくするのであれば数か月かかると思います。そうしますと、この議論は終わってしまいますので、2段階に分けてやったらどうかと思っています。
○川越参考人 是非、お願いしたいと思います。
○江口委員長 松月参考人、お願いします。
○松月参考人 今の議論は、前川委員が出された初心者用の研修プログラムに入るのか、それともサイコオンコロジーで学ぶ高度なものに入るんですか。
○江口委員長 この研修会は、初心者ですね。基本的なところです。
○松月参考人 初心者ですね。そうすると、この高度なものというのはプログラムにはないんですか。
○志真委員 高度という意味がどういうことかはあれですけれども、今、標準プログラムとして走っているものは、私どもは基本的に卒後2年、3年ぐらいの医師が身につけておくべき基本的な知識ということで提供しております。
 今、追加モジュールというのを昨年度から試験的に走らせております。これを私どもはエンド・オブ・ライフケアと呼んでおりますけれども、例えば先ほど原参考人がちょっと言われましたが、亡くなっていくプロセスにどういうふうにコミュニケーションしていくのかといったような問題も含めて、それを高度と言えば高度になるわけですけれども、要するにエンド・オブ・ライフケアも含んだ形でのプログラムというか、モジュールは現在、既にでき上がっております。
 ただ、それも入れますと2日間では終わらない。4日間ぐらいかかるプログラムになりますので、これを多分コアな部分と同時に実施するのは実際上現実的ではない。ですから、前川委員が言われましたように、臨床研修医も含めてコアな部分は提供しましょう。更にそれにプラス、もっと緩和ケアについて全体的に学びたいという場合にはもうちょっとアドバンスのモジュールを提供しましょうというところまでできております。
○松月参考人 そうすると、ちょっとわからないので教えていただきたいんですが、大西委員が御説明いただいた2ページのところに精神心理的サポートの表がございます。その3のスライドですね。上から2つ目のピア・サポートプログラム、自助グループ、サポートプログラムというのがあるんですが、これはもう実際のものがオーソライズされたものがあるんでしょうか。
○大西委員 ここはまだ不十分ですね。つまり、相談支援体制レベルできちんとやらなければいけない。ここは実は欠けているんです。まだまだ私どもが欠けているというか、不十分なところだと思いますので、私どもは今後ここにしっかり介入していかないといけないなと思っています。
○松月参考人 看護師から見ていますと、身体的なものも心理的なものも一緒にミックスして私たちはケアをしますので、何か2つプログラムがあると考えていいんですか。かなりミックスされていますよね。
○志真委員 1つです。
○松月参考人 1つでよろしいんですよね。
○志真委員 ピースは身体だけではありません。コミュニケーションも心理社会的なアセスメントもそこに入っております。
○松月参考人 そういうふうに認識してよろしいですね。そうすると、例えば一般的なナース、または専門看護師、認定看護師ではないけれども、非常に関心があって今、緩和ケア、または外科の病棟、内科の病棟、血液内科の病棟にいるようなナースたちというのはほとんどがんの患者さんばかり扱います。または、訪問看護ステーションでも今そういう患者さんを扱っていますね。そういう人たち向けのプログラムというのは、まだないんですね。先ほどのエルネックジェイというのは、そういうことを見越してつくってあるプログラムだと認識してよろしいんですね。
○志真委員 そうです。エルネックジェイのコアカリキュラムは、要するに緩和ケアを専門としない看護師さんに提供するものです。
 それで、今後、例えば訪問とか、そういうセッティングごと、療養場所ごとに追加していくモジュールというのを日本緩和医療学会の看護師たちが今つくり始めているという状況です。
○松月参考人 進行形でそれができてくれば、例えば病院の中だけではなく、地域のそういう拠点みたいなところで、施設ではなく、患者さんの身近なところで提供することは可能になるということですね。
○志真委員 そうです。それは勿論コアのところをやっていただかないと困るんです。訪問看護師さんは、コアは受けない。訪問看護の部分だけを受けるというのでは困るので、コアのところをちゃんと勉強していただいて、それに訪問看護の部分とか、緩和ケア病院の部分とか、チームの部分とか、幾つかセッティングごとに違うモジュールをつくるという計画です。
○松月参考人 わかりました。
○江口委員長 これは同時進行系ですけれども、やはり看護協会の方にもそういう情報は定期的に流しておかないと、今みたいな御質問が、恐らく松月参考人はここに出ているからそれがわかるのであって、日本看護協会のほとんどの執行部の方々はそれを知らないわけですね。だから、そういう意味ではやはり自分たちだけでつくるという話ではなくて、外に常にリアルタイムで出していくということが必要になると思います。
 大分、時間があれしましたけれども、もう一つ、先ほどのことにこだわりますが、ACLSのようなことで、あれは今テキストができているんですね。あのテキストが全部の医師に配布されているんですよ。そういうようなものというのは、これは考えないんですか。基本的な緩和ケアの、今あるのはバインダーの統一的なレジュメですよね。
○志真委員 ちゃんとテキストはあります。先生も入られた日本医師会が監修しているがん緩和ケアガイドブックというのが基本テキストです。
○江口委員長 あれは日本医師会のものでしょう。でも、それだけじゃなくて、もっと簡単な実際の、要するに基本的な緩和ケアのところですよ。そうすると、例えば1年目の研修医から全部研修ができるというふうな形のもので、しかもこれだけは覚えておきなさいという。
○志真委員 それがあれなんです。
○江口委員長 あれは、分厚いですよ。
○志真委員 がん緩和ケアガイドブックというのは、その基本的なことをまとめたもので、今年度それの見直しを今、日本医師会に提案しているので、その中で更に内容的に洗練されていくというふうには思いますが、我々としては現在使っているテキストは本当に最低限のことなので、そのことはやはり理解していただきたいと思っていますし、もっとダイジェストしろということになれば、先ほど原参考人が言われましたような事柄も含めて伝えていくためには、あの程度は私は必要じゃないかと思っていますので。
○江口委員長 一度、ACLSの最近のテキストブックを見てください。非常に簡単に書いてありまして、これだけは絶対に覚えておけというものです。だから、ああいう形のもっと取っ付きやすいものがあれば、私はまた認識が変わってくると思うし、それを基にあちこちで講習会をやる。それは、別に2日間びっちりやるとか何とかじゃなくてもできると思うんですね。
 それから、院内でもそういうことをやっていける人がどんどん出てくるということになるので、むしろそういうストラテジーというのも検討に値するものではないかと思います。
○大西委員 松月参考人、私どもがつくっている精神腫瘍学のクイック・リファレンスのポケットガイドをごらんになったことはありますか。
 まだないですよね。今度、持ってまいりますので、皆さんにどんな内容か、また御吟味していただければと思います。
○江口委員長 ちょっと時間が過ぎましたが、もしよろしければここでちょっとお休みを入れたいんですけれども、よろしいですか。
 あの時計で10分から再開したいと思います。そして、宮下参考人のお話をお聞きしたいと思います。

(午後3時00分休憩)
(午後3時10分再開)

○江口委員長 それでは、お待たせしました。宮下参考人、資料についてお話をいただきたいと思いますが、再三この委員会の中で意見として評価のことが非常に大事であるということが出たのですが、これはなかなか具体的な評価の問題というものが今まで取り上げられなくて、今回もその評価に関してどういうものがあるか。どういう種類のものを評価しなければいけないかというふうなことから、東北大学大学院で緩和ケアの分野でいろいろな質の評価の研究を行っている宮下先生にお願いしました。よろしくお願いします。
○宮下参考人 東北大学の宮下と申します。よろしくお願いします。
 私はもともと看護師で、医療者の立場からこの質の評価というものにずっと取り組んできたんですけれども、ちょうど去年、妹を子宮がんで亡くしまして、拠点病院に紹介されて緩和ケア病棟にも紹介されましたが、結局最期は家で看取ったという感じで、いろいろな立場で遺族にもなってがん医療を見ることができまして、やはり患者さんの声ですとか遺族の声、家族の声を聞くことはすごく大切だなというふうに感じています。
 本日は、「緩和ケアの質の評価の現状」ということで、特に緩和ケアの質を国レベル、または病院レベルで経時的にモニタリングしていって、緩和ケアの水準が上がった、下がったということをどういうふうにして見ていったらいいかということと、それをするのはやはりかなり大変なことで、なかなか難しい問題があるということをお話ししたいと思います。
 2ページ目にいきます。「医療の質の評価」という話が出ると常にここから説明されるんですけれども、「Donabedianの枠組み」というものがあります。医療の質を3つに分けていて、1つ目が構造、ストラクチャーという部分で、望ましい設備や体制があるか。2つ目がプロセス、望ましいとされていることがされているかということです。例えば、痛みがある患者さんに麻薬が処方されるといった望ましいということがされているかです。それで、アウトカム、結果です。望ましい結果が出ているかです。これは、先ほどの例で言えば患者さんの痛みが取れているかということです。
 こういう3つの段階で評価されます。今日の話はこれに沿って話すわけではないんですけれども、頭に入れておいていただくといいかと思います。
 その次の3枚目のスライドですけれども、「緩和ケアの質の評価の難しさ」、10年余りこの研究をやっておりますが、やはりかなり緩和ケアの質の評価というのは難しいです。
 1番目に挙がってくるのが、まず患者さんや家族からのデータの取得が困難であるケースが非常に多い。特にこれは終末期において顕著なんですけれども、終末期でなくても痛みを抱えているですとか、心理的にも身体的にもつらい状況、苦痛がある状況ですと、やはりデータが取れない。アンケートなどにも記入できない。状態が悪い患者さんにそれを無理やりお願いするわけにも、当然倫理的にいかないでしょう。
 もう一つは、「調査の方法論上の問題」です。患者さんは、病院の中でもいろいろな科に点在しています。いろいろ科に入院していて、病院全体として評価していかないといけない。1つの施設に集中しているわけではなくて、拠点病院ですとか一般病院、緩和ケア病棟、在宅、さまざまな療養場所にいる患者さんをどう評価していったらいいか。どこで評価するかによって結果が変わってくる。
 あとは、「緩和ケアを評価するべき患者」さんを同定する。要するに、外来の患者さんすべてについて評価すればいいのか。それとも、痛みがある人について評価すればいいのか。がんを持った全患者さんに評価するのか。例えば、ある程度再発、転移のある患者さんに評価するべきか。そういった緩和ケアの評価として対象にすべき患者さんを同定するのが難しい。
 また、仮にある指標で評価したときに、それは「本当にケアの質を反映しているか」ということを検証することが難しいということがあります。
 最後に、海外では死亡小票を利用した遺族調査などが行われているんですが、日本ではそれが統計の目的外使用上できないですとか、政府統計でこれにすぐ使えるものが余りないということがあります。
 4枚目のスライドの方にいかせていただきます。遺族調査から先にお話をさせていただくんですけれども、これは歴史的に緩和ケアは終末期ケアから日本でも発展してきた部分がありますし、海外でも国内でも遺族調査が一番方法論的にかなり確立していて、そして広く用いられているという点で遺族調査からお話をさせてもらいます。
 これは、アメリカの死亡小票を利用した、要するにお亡くなりになった患者さんの死亡小票、役所にあるデータを基に遺族に電話なり手紙なりをして行った調査です。ここでちょっと見にくいスライドですけれども、最後のところですね。一番下のところはエクセレントと言われている割合で、要するにケアが非常によかったと答えた割合は、左からちょっとかいつまんで説明しますと、普通の在宅ケア施設では47%くらい、在宅ホスピスでは70%くらい、老人ホームのようなところでは40%くらい、病院では50%くらいだったというふうなデータです。
 アメリカだとこういうふうな死亡小票を利用した遺族調査というものができるのですが、日本では厚労省にもいろいろ問合せをしたんですけれども、目的外使用になってしまうので死亡小票は調査には使えないと言われてしまって、なかなか難しいです。
 日本で遺族調査と言うと幾つか評価指標の方がつくられています。これは以前の志真班というものでつくった評価指標ですが、1つ目が「遺族による緩和ケアの構造・プロセスの評価」というもので、例えば医師の対応ですとか看護師の対応、精神的な配慮、設備ですとか費用ですとか、そういった望ましいことが行われているかということを遺族の目から評価します。これがCESと言われている尺度です。
 それで、次のページにいきまして6ページ目は遺族による緩和ケアの今度はアウトカムの尺度です。患者さんが、痛みがなく過ごせた。体の苦痛がなく過ごせたですとか、望んだ場所で過ごせた。医師を信頼できた。そういうふうな最終的なアウトカムになるようなものは、このGDIという指標で評価するのが標準的になっています。
 次のページにいきましてカラーのスライドですけれども、日本で非常に大規模な遺族調査、J‐HOPE studyというのが2007年から2008年に行われました。これは、がん拠点病院の56施設と、緩和ケア病棟の100施設、在宅ケア施設の14施設に御協力いただいて行ったのですけれども、これでトータルとして8,000人の遺族から回収しています。それで、これは「からだの苦痛がなく過ごせた」という項目で、はいと答えた人の割合ですが、がん拠点病院では50%しかいない。残りの50%の人は、体の苦痛が結構あったというふうに答えているということで、これはやはり数字としては今まだ日本のがん医療の水準は不十分であろうと考えています。緩和ケア病棟ではこの数字は拠点病院より良くて80%くらい、在宅ケア施設は少し下がるんですけれども73%という数字です。
 日本におけるこの遺族調査の特徴は何かというと、ただ調べるだけではなくてこれらの各施設の数値を、全体の結果はこうです、あなたの施設の結果はこうです。そして、自由回答ではこういう記述がありましたということをそれぞれの施設にフィードバックしています。そして、施設で質を改善するためにこの資料を使って取り組んでくださいというふうに働きかけています。それ以上に実際に改善されたかのチェックなどはなかなかできないんですけれども、ただ調査をするだけではなく、その結果の患者さんの声、ご遺族の声というものをその病院に匿名化した上できちんと届けるというふうな形で遺族調査の方を行ってきました。これは、数年に1回行っています。
 それで、次のページにいって、日本における遺族調査の問題点です。
 1つは、やはり遺族にどうしても心理的な負担があるということです。調査自体がそれほどつらいもの、調査自体がすごく嫌なわけではなくても、そのときのことを思い出すというのは遺族にとってはやはりかなりいろいろな思いがありますので、かなりつらい思い出で涙を流しながら回答してくださる方は少なくないです。
 回収率は50%から70%で、なかなか100%にはなりません。
 代理評価ですので、本当に患者さんが受けたケアの評価なのか、それとも家族の評価かというと、そこは少し怪しいところがある。
 コストがかかり、調査実施機関の負担も結構大きい。参加施設や病棟は、どうしても日本じゅうの病院で一斉にやりましょうというわけにはなかなかいかず、こちらからお願いして参加してくれる病院だけになるので、かなり限られた病院で、うちは自信がないなというところはやはり参加してこないです。そういうふうな限界がある。
 施設内でもやはり全員に送れるわけではなくて、この人にこのアンケートを送ったらしんどいだろうという患者さんは送らないわけです。そうすると、施設内でのサンプリングも悪く言えばいい人だけに送ってしまえばいい結果が返ってくるという感じで、そこをこちらから管理することはなかなかできないという問題があります。
 もし施設を限らず、日本の現状をちゃんと把握しようと思ったら、遺族調査という視点から見ると、死亡小票からのランダムな調査をせざるを得ないのですが、なかなか制度上難しいということがあります。
 その次に、では患者さんに対する調査です。本当に知りたいのは患者さんですね。海外のデータを示しますが、実は海外でも余り患者さんに関しては国レベルの統計というのはほとんどありません。これは数少ない先行研究で、カナダのオンタリオ州での取組みについてスライドにしてきました。オンタリオ州では、Cancer System Quality Indexという取組みが行われていて、病院ですとかがんセンターの外来患者さんに郵送調査をしているらしいんですね。ホームページからの情報なので、余り細かいところまで私も把握していないのですが、ケアに対する満足度をいろいろな形で聞いています。
 郵送調査なので回収率は60%程度になってしまうのですが、毎年同じやり方をしていると経年変化がある程度見えてくるということで、経年変化というのはこの右側にあるカラーの図がだんだんよくなっていたり、余り変わらなかったりというそれぞれの項目になっています。
 では、患者調査を日本でどうしていこうかというと、まずはどういう項目を調べるかということから検討します。次の10ページ目は評価指標で、先ほどの遺族調査と同様にまずは構造プロセスという意味でどのようなケア、望ましいとされているケアが行われているのかということを遺族用につくったCESという尺度を厚生労働研究班で改変して、患者さん用の尺度というものを作成しました。ほぼ同じようなものです。
 その次のページにいきますと、今度はアウトカムですね。痛みがないですとか、苦痛がない。医師が信頼できる。こういったことを評価する尺度としては、先ほどGDIというものがあったんですけれども、それを改変したものを研究班で作成しています。
 もう一つ、その次の12ページにいきます。やはり症状評価というのは非常に重要で、特に治療期にある患者さんにとっては症状を評価することが非常に重要なんですけれども、ここにあるのはEORTC-QLQ-C15PALというもので、これは世界的に最も広く使われているQOLの調査票です。QOLというのは生活の質を評価する調査票で、特に薬物の臨床試験などで使われている、世界的に最もよく使われているものは30項目ですが、これは15項目です。30項目はちょっと多いので、15項目に減らした緩和ケアバージョンですね。パリアティブのパルを取って15PALと言われています。これを日本語訳されたものがありましたので、それの信頼性、妥当性の方も厚生労働研究班で検証済みです。このような感じで患者調査に関しては、道具はそろったという感じです。
 次のページにいきますと、では患者さんに対する調査をするときの問題点は何かというと、やはり同じく心身ともに脆弱な患者さんが多い。痛みを抱えていたり、いろいろな苦痛、精神的な苦痛を抱えていたりする。そういう人が何人いるかを知りたいんだけれども、そういう人に限ってなかなか調査ができない。
 それで、参加施設や病棟は限定される。
 施設内でサンプリングの管理は難しいです。外来で調査すると、外来の人というのはサバイバーというか、フォローアップの人が多いですね。治療を終えて、手術などをしてフォローアップした人が多い。そうすると、苦痛がある人というのはそんなに多くない。今度は外来化学療法室に行くと、これはかなり苦痛を持っている人がいる。それで、入院の人はもっと多いですね。どこで調査をするかでかなり数字が変わってきてしまいます。
 こういったことで、なかなか患者さんに関しては困難が多く、緩和ケアの評価を目的とした全国的な患者調査というのは国内ではいまだに実施されていません。私たちの研究班でもかなり取り組もうと検討はしてみたのですが、なかなか病院側も受け入れてくれず、今のところ行っていません。
 厚労科研で「がん性疼痛治療の施設成績を評価する指標の妥当性研究」という研究班がありまして、そこで疼痛に限り、もしかすると今後患者アウトカムの測定方法が提案されてくるかもしれません。
 では、緩和ケアをどう定義するかは難しく、緩和ケアはがんになったときからのものだと思いますけれども、緩和ケアという言葉を使わずにがん医療における療養生活の評価ということで、私が主任研究者をしている研究班がありますので、それを少し紹介させていただきたいと思います。
 がん対策推進基本計画には全体目標の(2)として、「すべてのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の維持向上」という言葉が掲げられています。しかし、これに関しては今まで少なくとも数値的には評価をされてきませんでした。
 そこで、平成22年から厚労科研でそこに示しましたような、「がん対策に資するがん患者の療養生活の質の評価方法の確立に関する研究」班というものができました。そこで、私が主任研究者をしております。この研究班としては緩和ケアというのではないのですが、がん患者さんの療養生活の質をきちんと測っていこうということで、どういう方法を考えたかというと、政府統計で受療行動調査という調査があります。入院調査と外来調査ですが、それと別に患者調査というものがあって、そこで病名がわかるんです。がんという病名がわかるので、このデータをリンケージすることによってがん患者さんの療養生活の質を評価するというふうに考えました。
 それで、受療行動調査を行っている統計情報部の方と交渉いたしまして、がん患者さんの療養生活の質を評価するに値する項目というものを平成23年から新規で追加しています。
 その追加した項目が、その次の15ページです。ここにある体の苦痛ですとか痛み、あとは気持ちのつらさですね。こういった項目を受療行動調査に新たに追加して、受療行動調査という患者さんに対する調査ですが、これを使って調査をしてがん患者さんの苦痛を評価していく。それで、全体的な療養生活の質を見ていく。
 その次のページには、これは前回の調査からある項目についてですけれども、病院に対する満足度ですね。例えば、上から4番目の項目は「痛みなどのからだの症状をやわらげる対応に満足していますか」、5番目は「精神的なケアに満足していますか」、こういった満足度を聞いていく。
 その次の17ページ目には、「医師からの説明と対話」というものがあります。これも非常に重要な項目だと思いますので、医師からの説明などがわかったか。よくわからなかった。そして、自分の気持ちが伝えられたか。そういったことをこのがん医療の評価にしていこうと思っています。
 同時に、今度は18ページに書きましたのは、今まで緩和ケアのケアプロセスの評価指標というものはつくっていましたけれども、緩和ケアに限らずがん医療全体を評価しようということで、今までつくったものを少し改変して新しくつくったものが医療者とのコミュニケーションというものと、あとは副作用、合併症等への対応という項目を含めて新しい評価尺度をつくりました。ここまでが、緩和ケアの患者調査に関するものです。
 次が、緩和ケアの提供の機能、これは構造と言えば構造なんですけれども、それについての調査を少し御紹介します。
 最初は大西先生の資料にも出た医療水準調査という調査なんですけれども、次のページをめくりますと、これは結果の抜粋です。大西先生の資料に出ていたのは、この7番のところと9番のところだったと思います。7番のところは専従の医師が配置されている割合、9番のところが常勤の精神症状の緩和に携わる医師が配置されている割合、これは拠点病院におけるがん医療の水準を毎年経年的に調査しようということで、19年から21年まで行われました。
 それで、これを見ますと大体3年間のうちにかなり充実はしてきたというのが全体的な総括です。ただし、このような病院の体制の調査というものは比較的簡単にできて、今でも継続されて行われている部分があるんですけれども、ではこの体制がそろっているから本当に患者さんにいいケアが行われ、患者さんは満足しているかというのはわからない。ケアの質を本当に反映しているかというのは、今のところは未検証ということになっています。
 ちょっと時間がないので早目に進めますけれども、次のスライドは要するに患者調査、遺族調査ということで、患者さんに負担をかけるアプローチを私たちはいろいろ考えてきました。が、できれば患者さんに負担をかけずに既存のデータから質が求められればいいということで、これは診療記録、カルテをきちんと見て、カルテに書くべきことが書いてあるかということを調べる方法が海外でも国内でも提案されています。
 これは国内でもやったんですけれども、なかなかうまくいかない。調査に時間がかかり過ぎてしまう。緩和ケアの対象となる患者さんは非常に個別性が強くて、カルテだけで患者さんのことを全部見ようとすると1人見るだけでも大変時間がかかるんです。それで、日本では実用的ではないということになりました。
 次の22ページ目にいって、米国で最近非常によく行われているのは、医療費の支払いデータを使ってそこから出せる指標を出していく。例えば、死亡1か月前に化学療法をしていたら、それは緩和ケアがちゃんと行われていないということです。ICUに入院したり救急外来に来ていたら緩和ケアが十分に行われていないということです。
 このアプローチは、まず日本では支払いデータベースをうまく使うのはちょっと難しいので、まだほとんど検討されていないということと、あとはアメリカでこの提案されている指標も、本当にこれで日本のがん患者さんの生活の質を表せるのか。緩和ケアの質を表せるのかということについては未検討です。
 そういうことで、最後にまとめますと、患者調査と遺族調査をするための信頼性・妥当性を有するようなアンケート用紙のようなものは、ここ数年の研究班でほぼ作成されました。
 しかし、実際に全国や施設の代表性を有するような調査、経年的にきちんと見ていこうという調査を行うには多くの問題があり、妥当な調査実施自体が難しい。
 患者さん、家族に負担をかけない質の指標というものはいまだに研究段階である。
 やはり患者さん、御遺族の声を真摯に聞くということは非常に重要だと思うんです。そういった面で、質の評価というのは重要な課題だと思いますが、国内外では少なくとも経年的に評価していく方法論としては確立したものはないというのが現状です。
 以上です。
○江口委員長 ありがとうございました。親というか、この専門委員会の親の協議会の方でもいろいろな委員から、緩和ケアだけではなくていろいろなところのクオリティ・インディケーターをはっきりと出して、そしてそれによって評価しながら次の計画の立案に生かしていくべきだというようなことが再三出ているんですけれども、緩和ケア一つを取っても今日、宮下参考人がお話になったような現状であるということだと思います。
 特に、22ページのものなどは非常に無理があると思うんですけれども、例えば「最後の化学療法から死亡までの期間」というのは、これが短ければ緩和ケアはできていないというふうなことですか。
○宮下参考人 そうです。
○江口委員長 でも、これは疾患によっても随分違いますよね。それこそ白血病と、それから普通の固形がんとでも違うし、それから救急外来への搬送の頻度とかと言っても、それはやはり病気のあれによっても違うということで、こういう指標が果たして日本にすぐに導入できるかというと、これはむしろ医療費とか、そういう面での医療経済的なことの分析とか、そういう方に生かされることになるんじゃないかという気がします。
 それはともかくとして、委員の方々、あるいはほかの参考人の方で何か御意見、今のブリーフィングに対してございますか。いかがでしょうか。
 では、川越参考人どうぞ。
○川越参考人 宮下先生がずっとこのことに精力を注いでいらっしゃるということは、本当にいつも敬服しながら拝見しておりました。
 ただ、私が感じることは、こういう質の評価が本当の医療、ちょっとおっしゃっていましたけれども、我々はこういう施策とか、そういうことに踏み込んだ議論ということを考えているわけですが、そういうところにどういう格好で戻ってくるのか。つまり、何のための質の評価というものをしっかり持っておかないと、単に学問的なことで終わったらいけないなということを感じております。
 ですから、これをどういう具合に政策の中にフィードバックしていくかというようなことについて、先生のお考えをお聞きしたいと思います。
○宮下参考人 やはり、1つは政策評価だと思います。政策評価をして5年後、10年後にどこが上がってどこが上がらない。どこが弱いというところを明らかにする。ただ、その方法論はなかなか今の時点では確立したものは出せないというのが私の意見です。
 もう一つは、自己評価というか、病院や診療所が自分で自分を見直す。セルフチェックをするということですね。それは、例えば医療機能評価などでも満足度調査を義務づけていて、あれは別にその結果で評価するということではなくて、自分の施設をきちんと見直そうという取組みをしていることを評価するのだと思います。そういった目的でされていくとしたら、今までつくられているような調査票などを用いてできるというふうに考えています。
○川越参考人 そうだとすると、今ずっとやってこられたことの中で、例えば指標間、アウトカム評価でしたか。解釈の中で結局、最終的にアウトカムを何に持ってくるかという問題はありますけれども、それはさて置いて、ストラクチャーとかプロセスが本当にどういうものがいいのかというようなことに踏み込んだ話を検討するという理解でよろしいのでしょうか。
 つまり、要するにあるストラクチャー、あるプロセスを取ったときには満足度が高いとか、アウトカムでいいものが出た、悪いものが出た。多分そういう格好になると思うんですけれども、そのことが実際にどういう具合に我々の現場の方に戻ってくるのかということですね。そのことはいかがでしょうか。
○宮下参考人 それは、研究としてはあり得るというふうに考えています。例えばホスピス、緩和ケア病棟等では以前からそういう研究が行われていて、要するにこの遺族調査の結果と、例えば医師、看護師数ですとか、そういったようなものをクロスさせて、看護師数が多い方が遺族の評価が高い。たしか夜勤の看護師数が多い方が遺族の評価は高い。そういったような結果で、今後政策に反映し得る結果は出てきています。
 ただ、一般病院ですとか全国的なものになると、なかなかそれに足るだけのデータが今のところ収集されていないというのが現状です。
○川越参考人 これで最後にしますけれども、「日本における緩和ケアに関する遺族調査」、これはカラーのものでがん拠点病院が50%というかなり詳しい説明をされたものです。
○江口委員長 7ページですね。
○川越参考人 そうですね。7ページのところの表ですね。がん拠点病院は、要するに苦痛の痛みの緩和が5割だった。それに対してPCUが8割だった。在宅緩和ケアをやっているところでは73%だった。
 この表をどういう具合に読むかという問題に例えば関係してくると思うんですけれども、これでいくとやはり緩和ケア病棟が非常にいいじゃないか。ちょっとここから先になるといろいろな問題が入ってくるんですけれども、ですから緩和ケア病棟をもっともっと増やす方向に進んだらいいという短絡的な考え方をしてしまうんですが、そういうことが許されるのかということが1つです。
 それからもう一つは、前に私のところにも協力してほしいという話があったときに、実はちょっと慎重で、最終的にはお断りしたんです。在宅ケア施設の292、これは14施設やっているということで、実はこの在宅ケア施設というものがどこかに指摘がありましたけれども、さまざまなんですね。がん拠点病院とか緩和ケア病棟には一定の基準といいますか、施設基準がありますけれども、在宅緩和ケアをやっている。これは在宅ケアになっておりますけれども、ただ、ストラクチャーとしては非常にあいまいなものなので、これをひとまとめにしてやるということに対して、私はまずいということを申し上げて参加しなかったんですけれども、このところの問題ですね。
 つまり、このばらばらのものを一つのこういう在宅ケア施設というようなものでまとめるのが果たして適当なのかどうかということ、これは今後の日本の施策にも関係すると思いますので、是非コメントを2つの点でお願いしたいと思います。
○宮下参考人 在宅ケアに関してはおっしゃるとおりです。基準がないので線の引きようがない。このときに行った施設は、比較的しっかりした施設にお願いして、多くが緩和ケア病棟で経験された医師が開いている在宅ケア施設でした。
 ただ、多分、川越先生のところに依頼がいったのは去年やった調査で、それは日本ホスピス緩和ケア協会の会員施設で依頼をしたので、ちょっと違うことになります。在宅ケアは本当に難しいです。これを見て、緩和ケア病棟を増やすべきだというふうな議論はやはり当然できないと考えています。
○江口委員長 ほかにいかがですか。
 それでは、志真委員から、志真委員の出された意見も含めて、ちょっとまとめて簡単にお願いします。
○志真委員 まず、宮下参考人の発表の中で日本ホスピス緩和ケア協会は3回、遺族調査というものを受けておりまして、それぞれの施設に先ほども言われたように数値と、それから自由記載がフィードバックされております。私どもが所属している施設でもそういう指摘がありまして、基本的にはそのスタッフ全員でそれを見て、自由記載にはさまざまなことが書かれていますので、自らの施設の在り方を振り返って、どこをどう直していったらいいのかというような形で利用しております。
 ですから、これを例えばがん拠点とか在宅とかと比較するというよりは、それぞれが遺族から指摘されたこと、遺族の評価を受け止めて、どう自分たちのケアを改善していくのかということを考える一つの材料というふうに私は思っておりますし、日本ホスピス緩和ケア協会の加盟施設について言えば、この3年の間に全体としてはケアのレベル、オーバーオールですね。全体的なケアの評価は高くなってきていると思いますので、これはそれぞれの、例えば拠点は拠点、在宅は在宅で経年的にやっていくことによって、全体の評価が高くなってきているかどうかということがわかるのではないかと思います。
 それで、私が今日出した意見書は第1回に出した意見書に多少補充をしたものなんですが、今日宮下参考人から私の提案の基本的な緩和ケアの評価に関する調査については、受療調査という形ではありますけれども、ある程度そういうことが実現する方向ではないかというふうに思います。
 それで、私が今日新たに提案したのは、全国的なレベルで専門的な緩和ケアと呼ばれているホスピス緩和ケア病棟、緩和ケアチーム、それから在宅緩和ケアといったものの質をこれから評価していくためには、やはり専門施設それぞれが患者さんの登録システムというものを持って、しっかり患者さんを同定した上でそういう評価をすることが必要ではないか。
 国際的には、一番登録システムの整っているイギリスではそこにありますような数字が示されております。それで、ホスピス緩和ケアの領域についても、全体としての今ストラクチャーやプロセスに関するデータというものは、ホスピス緩和ケア協会が経年的に調べている、これ以上のものは残念ながらないというのが現状であります。
 例えば、緩和ケアチームがコンサルテーションを受けた、担当した患者さんは年間にどれぐらいいますかと聞かれても、だれもわからない。それから、例えば全国的に在宅緩和ケアを受けた患者さんがどれくらいいますか。どんなケアを受けているんですかと聞かれてもだれもわからないというのが現状なんです。ホスピス緩和ケアについて言えば、年間、今、患者さんとして受けている人は、入院は例えば2009年度ですと2万9,794名、退院した方は2万9,607名ということで、大体こんなようなデータがわかる。これも本当に最低限だと思っているんですね。
 ですから、やはり専門的な緩和ケアのレベルを評価するには、そういういわゆるレジストリーというか、登録制度といったものを今後考えていく必要があるのではないか。それも、できれば全国的なレベルでの登録制度といったものが必要ではないかと思います。これはがん登録の問題もなかなかいろいろな問題があって解決がついていないわけですけれども、緩和ケアに関してはそういった方向で新たなレジストリー制度というものをやはり考えていく必要があるのではないかという提案です。
○宮下参考人 専門的な緩和ケアについては、今日はしゃべらなかったんですけれども、専門的な緩和ケアの登録に関して、行うこと自体は悪いとは思わないですし、日本は専門緩和ケアを受けている人は少ないという現状があるので、それは悪くないと思います。もう少し増えた方がいいとは思いますが、まずは専門的緩和ケアをどこで区切るのかは難しいですし、例えば志真先生がホスピスで患者さんを診たらそれはレジストリーされるけれども、隣の病院に転職して志真先生が診たらその患者さんは受けたことにはならないというふうにきっと今の区切り方ではなってしまう。
 それではやはりおかしいと思うのと、やはり本当はすべてのがん医療に関わる医師のレベルが向上することが目標なので、目標としては専門的緩和ケアの数を増やすことだけではないんだろうとは思います。
○江口委員長 ありがとうございます。ほかの委員や参考人の意見が少し欲しいんですけれども、この辺の話は余り今まではディスカッションしていなかった部分なんですね。ほかにあればいかがですか。
 余宮委員、今の調査とかレジストリーについてはいかがですか。
○余宮委員 平成23年受療行動調査というものは患者さんすべてに対して、つまりがん患者さんを同定できる形で苦痛や医師との信頼関係に関するアンケート調査をやるということなんでしょうか。
○宮下参考人 受療行動調査というのは以前から行われて、厚労省が3年おきに行っている調査で、病院をサンプリングして、その病院で外来患者さんと入院患者さんについてある1日の全数を行う調査です。
 それで、受療行動調査だけだと病名情報がないんです。実は全く同時に患者調査というものが行われていて、それは個々の患者さんの病名情報があるので、そこで氏名と年齢でデータをリンケージしてがん患者さんだけを抽出するということが技術的に可能です。
○余宮委員 この調査は拠点病院で、何月何日という一点を決めて横断的に行われるということですよね。
○宮下参考人 はい。
○余宮委員 こういう調査があると、がん治療医の先生たちの、原さんが今日言われたようなことについても医師の診療とか内容に満足していますかとか、医師も評価される機会があってフィードバックされる機会があったらよい効果をもたらすと思います。
○志真委員 フィードバックはされないんでしょう。
○宮下参考人 フィードバックは施設別にある程度しています。 しかし、受療行動調査自体、全施設が対象なわけではなくて、5%の施設がサンプリングされて行います。大きい施設はもっとサンプリング率が高いですが日本の全ての病院でこのような調査が行われ結果がフィードバックされるという訳ではないのです。
○江口委員長 平均的な動きというか、実際に向上しているかどうかとか、そういう点での大雑把な把握はできますよね。だから、前向きのレジストリーというのは、これは膨大な経済的な裏付けがないとできないし、何のためのあれかというのはいまひとつ議論が足りないところがあると思うんですけれども、抽出したサンプリングの調査で緩和ケアの内容とか、そういったものに関しての調査、バイアニュアルとか、そういう定期的な調査というものは期限を切ってある程度はやる必要があるのかもしれない。そうすると、全国的なレベルの改善があるかどうかということはわかるかもしれません。
○志真委員 さっき川越参考人が言われたように、何のためにするのかということはこういう評価をいつも意識していないといけないと思うんです。それで、やはり政策的なり、あるいは何か短期的にこういうことをやったらどうなったかという側面はあると思うんです。実際にそこに人もお金も投入してやるわけですから、それはそのとおりだと思います。
 それで、先ほど私が提案した専門緩和ケアについてのレジストリーというようなことについても、例えばただ専門緩和ケアの数を増やせばいい。例えば緩和ケアベッドを増やす、緩和ケアチームを増やすということではなくて、適正な必要な数というものをやはり考えていく。長期的に考えていくためには、やはりそういう方法が私は必要ではないか。そういう方法である一定の数をレジストリーしていって、その実態を把握していけば、適正な数とか、例えば緩和ケア病棟は全国で幾つ必要なのか。この地域にどれだけ必要なのか。在宅の専門緩和ケアチームはどれだけ必要なんだというようなことは、そういう評価を通じて検証されていくのではないかと思うんです。
 ですから、要するに2つの政策的短期的な評価ということと、長期的な国としての整えるべき医療体制ということの両方がこういう評価を通じて検証されていくというふうに私は考えています。
○江口委員長 ほかに、どうぞ。
○川越参考人 志真委員の意見に、私は全く同感です。それと関連して、4ページの資料ですね。米国において調査したらこうこうこうだったという中で、在宅ケアですね。在宅ケアをやっているんだけれども、ナーシングサービスという、この一番上の欄のところですが、ナーシングサービスを受けたところとホスピスケアを受けたところで満足度が2倍とは言いませんが、かなり違っているというデータが出ていますね。
 それで、ここのところはちょっと私の知識で理解しているんですけれども、つまりホスピスケアというのはメディケアがホスピスとして認定したところが提供している在宅ホームケアということで、そうじゃないいわゆるそういう認定を受けていないでやっているところではこういう結果になったという理解でよろしいのでしょうか。
○宮下参考人 私も制度に関しては余り詳しくないのですが、恐らくそうだと思います。メディケアの枠組みでのホスピス給付だと思います。
○川越参考人 そうだとしますと、我々が今、議論していることの根本に立ち返るような問題なんですけれども、在宅ホスピスケアというか、ホームケアというのは宮下参考人もおっしゃっていましたが、それがどういう実態なのか。ちょっと難しいというようなことは指摘されておりましたね。
 それで、それがアメリカの場合はやはり在宅ホスピスをやっている施設というものの制度認定がきっちりされているんですね。つまり、スタンダードといいますか、基準がですね。ですから、そこにはある意味でストラクチャープロセスというところまで含めて一定のやり方をやっている。それがなされているところとなされていないところでこういう差が出たよという評価ができると思うんです。
 では、かえって我々のところを考えたときには、そういうストラクチャーとかプロセスというものがまるでない。ただ、家でケアを受けたかということで、そういう意味でばらばらになっているということをひとつやはり長期的に考えていかなければいけない。つまり、最終的には患者さんにいいケアを提供するということが目的ですので、そのためにはやはりこういうストラクチャープロセスというものをある意味で将来的にきっちりしておくということですね。そういうことを検討しなければいけないのではないかということを感じました。ちょっと感想ですけれども。
○江口委員長 御指摘のことは大変重要なことですね。それで、実際に何かの調査をして、どういうグループはどうだという話をするには、そのグループの定義がないといけないわけですから、そういう意味でもこれはもし定期的な調査をやって緩和ケアの質を上げる、あるいは評価するということであれば、当然そういうふうな仕組みも考えて調査していかなければいけないということだと思います。
 ちょっと時間が迫ってきたので、この評価のところの議論は、今日は宮下参考人の今までの現状についてブリーフィングをしていただくということで、その目的は達成できたんですけれども、我々の専門委員会の中での議論は少し不完全燃焼の部分があるかもしれません。
 ですが、ここで今日は打ち切らせていただいて、そして今日、今までの中でかなり具体的なところも出てきましたけれども、同時に事務局の方への宿題と、それからもしほかの担当者へのヒアリングをするのであればそれの内容的なことを、事前の質問事項などについてこちらでまとめなければいけないということがあると思うので、そういう作業が残されていると思います。
 それで、次回は8月4日になりますね。本当に回数がだんだん厳しくなってくるんですけれども、評価のことについてもしもう少し何か付け加えて御意見を聞くということであれば、その時間を取りたいことと、今日ちょっと出ていましたホスピスとか緩和ケア病棟の話がこの前、役割で一応は触れているんですけれども、ちょっと欠けている。まだ不足している部分もあるかなというような気がしますので、今までの早期からの診療のところ、緩和ケアのところで落ちているようなところを含めて議論したいと思います。
 もう実際には報告書のこともありますので、かなり具体的なところの素案をまとめるということを8月4日までに事務局と相談して私の方で少し話を進めたいと思いますので、また御連絡がいくと思います。毎回そういうふうなお話で、なかなか御連絡がいかないのがあれなんですけれども、今回はやりたいと思います。
 それから、来週ですか、協議会がありますね。ですから、来週の協議会には今までのところの議論の中でピックアップして報告するということでよろしいですか。
○がん対策推進室長 門田会長からも言われておりますが、ごくごく簡単でいいのでという話でございますので、よろしくお願いします。
○江口委員長 それでは、今日のところはこれで終わりにしたいと思います。
 事務局の方から何か報告があればどうぞ。
○がん対策推進室長 特にございません。
 次回の件につきましては、時間と場所が決まりましたらまた御連絡します。
○江口委員長 一応8月4日と考えていいですね。
 では、皆さん、気をつけてお帰りください。どうもありがとうございました。


(了)
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健康局総務課がん対策推進室

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