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2011年7月1日 第11回社会保障審議会人口部会 議事録

○日時

平成23年7月1日(金)15:00~17:01


○場所

三田共用会議所大会議室(3階)


○出席者

委員

阿藤 誠委員 稲葉 寿委員 大林 千一委員
加藤 久和委員 鬼頭 宏委員 佐々木 政治委員
白波瀬 佐和子委員 鈴木 隆雄委員 津谷 典子委員
林 徹委員 林 寛子委員 廣松 毅委員
山田 篤裕委員

事務局等

大塚厚生労働副大臣 小林厚生労働大臣政務官
香取政策統括官(社会保障担当) 伊奈川参事官(社会保障担当)
朝川政策企画官 木村社会保障担当参事官室長補佐
小野人口動態・保健統計課長 三上総務省国勢統計課長
高橋社人研副所長 金子社人研人口動向研究部長

○議題

1 部会長選出及び部会長代理指名について
2 人口部会について
3 報告聴取
 ・ 平成22年人口動態統計月報年計(概数)の概況
 ・ 平成22年国勢調査抽出速報と今後の公表予定
4 将来人口推計とは‐その役割と仕組み‐

○配布資料

資料1-1人口部会員名簿
資料1-2社会保障審議会関係法令・規則
資料2人口部会の今後のスケジュールについて
資料3-1平成22年人口動態統計月報年計(概数)の概況
資料3-2平成22年国勢調査抽出速報と今後の公表予定
資料4将来人口推計とは —その役割と仕組み—

○議事

議事

○朝川政策企画官
 それでは、定刻になりましたので、ただいまから「第11回社会保障審議会人口部会」を開会いたします。
 私は社会保障担当政策企画官の朝川でございます。部会長選出までの間、議事進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 委員の皆様におかれましては、御多忙の折、お集まりいただき御礼申し上げます。
 本日は、大塚副大臣及び小林政務官が出席しております。小林政務官におかれましては、4時過ぎに所用により退席させていただきます。
 それでは、まず、大塚副大臣からごあいさつさせていただきます。

○大塚副大臣
 御紹介いただきました副大臣を務めさせていただいております、大塚耕平でございます。
 本日は、第11回の社会保障審議会人口部会に、先生方には御多忙の中、お集まりをいただきまして、本当にどうもありがとうございます。
 平成22年度の国勢調査の結果が先般発表されたわけでございますが、その一方で、御承知のとおり、昨日、政府与党で社会保障と税の一体改革について、とりあえずの方向感というものがまとまりました。
 これまでも社会保障改革は喫緊の課題と言われながら、もう十数年来続いているような気がいたしますけれども、本当に重要な局面を迎えつつあるなと思っております。そういう中での今回の人口推計は、今まで以上に重い意味を持ってまいると思いますので、委員の先生方におかれましては、是非御尽力を賜りたいと思っております。
 また、今、始まる前に社人研の方に伺いましたところ、市町村別の人口推計も大体、全国ベースの推計に1年遅れで行われていると聞かせていただきました。マクロベースの全国の推計とともに、できれば市町村、地域ごとの推計がこれまでの地域の社会資本投資と平仄がとれているのかどうかというようなこともチェックをしてまいりませんと社会保障の財源全体に影響すると思いますので、そういったことについても政治サイドの私どもも関心を持って取り組んでまいりますが、是非、当部会においても多角的な観点から御指導をいただきたいと思っております。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

○朝川政策企画官
 それでは、審議に入ります前に委員の御紹介を申し上げますので、一言ごあいさつをお願いいたします。
 まず、阿藤誠委員。早稲田大学人間科学学術院特任教授でいらっしゃいます。

○阿藤委員
 阿藤でございます。よろしくお願いします。

○朝川政策企画官
 稲葉寿委員。東京大学大学院数理科学研究科准教授でいらっしゃいます。

○稲葉委員
 稲葉です。よろしくお願いいたします。

○朝川政策企画官
 大林千一委員。帝京大学経済学部教授でいらっしゃいます。

○大林委員
 大林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○朝川政策企画官
 加藤久和委員。明治大学政治経済学部教授でいらっしゃいます。

○加藤委員
 加藤です。どうぞよろしくお願いいたします。

○朝川政策企画官
 鬼頭宏委員。上智大学経済学部教授でいらっしゃいます。

○鬼頭委員
 鬼頭でございます。歴史人口学の立場から大局的に検討させていただきます。

○朝川政策企画官
 佐々木政治委員。社団法人日本年金数理人会理事長でいらっしゃいます。

○佐々木委員
 佐々木でございます。今、社会保障審議会の年金数理部会もやっておりますので、そのことを含めてやらせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○朝川政策企画官
 白波瀬佐和子委員。東京大学大学院人文社会系研究科教授でいらっしゃいます。

○白波瀬委員
 白波瀬です。よろしくお願いいたします。

○朝川政策企画官
 鈴木隆雄委員。独立行政法人国立長寿医療センター研究所長でいらっしゃいます。

○鈴木委員
 鈴木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○朝川政策企画官
 津谷典子委員。慶應義塾大学経済学部教授でいらっしゃいます。

○津谷委員
 津谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○朝川政策企画官
 林徹委員。長崎大学経済学部教授でいらっしゃいます。

○林(徹)委員
 林と申します。よろしくお願いします。

○朝川政策企画官
 林寛子委員。中日新聞編集局次長でいらっしゃいます。

○林(寛)委員
 中日新聞の林です。名簿を見ましたら、研究者の方、専門家の多い中で、私ちょっと毛色が変わっているなと改めて思いましたけれども、生活者の立場で参加させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○朝川政策企画官
 廣松毅委員。東京大学名誉教授、情報セキュリティ大学院大学教授でいらっしゃいます。

○廣松委員
 廣松でございます。よろしくお願いします。申し訳ありませんが、本日、先約がございまして中座をさせていただきますが、よろしくお願いいたします。

○朝川政策企画官
 山田篤裕委員。慶應義塾大学経済学部准教授でいらっしゃいます。

○山田委員
 山田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○朝川政策企画官
 また、本日は御欠席との連絡をいただいておりますが、宮城悦子横浜市立大学附属病院准教授化学療法センター長にも委員をお願いしております。
 また、幹事といたしまして関係省庁の方々にも御出席いただいております。
 次に、厚生労働省の事務局を紹介させていただきます。
 政策統括官の香取は遅れてまいります。
 次に、社会保障担当参事官の伊奈川でございます。

○伊奈川参事官
 伊奈川でございます。

○朝川政策企画官
 大臣官房統計情報部の小野人口動態・保健統計課長。

○小野人口動態・保健統計課長
 小野でございます。

○朝川政策企画官
 国立社会保障・人口問題研究所の高橋副所長。

○高橋副所長
 高橋です。よろしくお願いいたします。

○朝川政策企画官
 金子人口動向研究部長。

○金子人口動向研究部長
 金子です。

○朝川政策企画官
 また、本日は総務省より国勢調査抽出速報の説明のため、三上国勢統計課長にお越しいただいております。

○三上総務省国勢統計課長
 三上でございます。

○朝川政策企画官
 それでは、議事に移ります。
 お手元の資料1-2の4ページ目をお開きいただきますと、社会保障審議会令がございます。その第6条第3項にありますように、部会長は部会に属する社会保障審議会の委員の互選により選出することとされております。本人口部会におきましては、白波瀬委員と津谷委員の2名の社会保障審議会委員がいらっしゃいますが、あらかじめお二方で御相談いただきましたところ、津谷委員が適当との結論に達しましたので、本人口部会では、津谷委員に部会長をお願いしたいと思います。
 津谷委員には、部会長席へ御移動をお願いいたします。

(津谷委員、部会長席へ移動)

○朝川政策企画官
 それでは、以降の議事運営につきましては、津谷部会長にお願いいたします。

○津谷部会長
 部会長に御推挙いただきました津谷でございます。委員の皆様方の御協力を得まして、円滑な運営に努めてまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 社会保障審議会令によりますと「部会長のほかに、部会長が部会長代理を指名すること」となっております。そこで、この部会長代理には、阿藤委員にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。

(阿藤委員、部会長代理席へ移動)

○阿藤部会長代理
 部会長より御指名いただきました、阿藤でございます。部会長とともに、委員の皆様方の御協力を得まして円滑な運営に努めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

○津谷部会長
 本日は、この新しい部会メンバーになりまして、第1回目の会合でございます。そこでまず、人口部会再開の趣旨及び今後のスケジュールなどにつきまして事務局から御説明をお願いいたします。

○伊奈川参事官
 今後のスケジュールの関係でございますけれども、お手元に資料2「人口部会の今後のスケジュールについて」という資料がございます。
 そちらを1枚めくっていただきますと、1枚紙で今後のスケジュールの案が入っておりますので、これで御説明をさせていただきたいと思います。
 この部会につきましては、今後の人口推計をにらんで開催させていただくわけでございますけれども、人口推計については御承知のように、国勢調査に併せまして、5年に1回の周期で行ってきているところでございます。今回の推計につきましては、冒頭書いてございますけれども、年明けをめどにできるだけ早期に推計結果を取りまとめるといったようなことで進めていくという前提で、大体月1回ぐらい開催をしますと、年明けまでに5回といったような感じになるかと思います。
 本日が第11回、これまで過去2回の推計につきましても大体5回開いてきておりますので、今回たまたまですけれども、切れのいい11回ということでございます。11回につきましては、既にお手元の議事次第にありますようなことで、これから人口動態統計あるいは国勢調査の抽出速報等について説明をしていただきまして、その後、次回以降につなげるということで、「将来人口推計とは-その役割と仕組み-」について説明をし、御議論いただくことになっております。
 その上で、次回につきましては、将来人口推計の方法と検証で、これまでの人口推計の検証ということで、推計と実績といったようなことについてやっていただくようなことになろうかと思っております。
 その次、第13回でございますけれども、新推計の基本的考え方の1回目ということでございます。
 その上で、23年10月予定と書いてございますけれども、そのぐらいの時期に国勢調査の基本集計が公表されるということを前提といたしまして、第14回において新推計の基本的考え方と仮定設定ということで総括審議をお願いできればと考えております。
 第15回は、社会保障人口問題研究所が行います人口推計の結果について、御議論いただくということで考えている次第でございます。
 以上でございます。

○津谷部会長
 ただいま御説明のありましたスケジュール(案)など、これでよろしゅうございますでしょうか。

(「はい」と声あり)

○津谷部会長
 ありがとうございました。
 それでは、今後のスケジュールにつきましては、説明のとおりといたしたいと思います。
 では、引き続きまして、人口に関する調査結果などについての報告の聴取を2点行いたいと思います。
 まず、第1点目といたしまして「平成22年人口動態統計月報年計の概況」につきまして、統計情報部の小野人口動態・保健統計課長に、そして第2点目といたしまして、「平成22年国勢調査抽出速報」を総務省の三上国勢統計課長より御説明いただきたいと思います。
 では、まず、小野課長、お願いいたします。

○小野人口動態・保健統計課長
 人口動態・保健統計課の小野でございます。改めてよろしくお願い申し上げます。
 私の方からは、6月1日に公表いたしました統計資料を用いまして近年の人口動態の概況について説明いたします。
 資料番号3-1「平成22年人口動態統計月報年計(概数)の概況」をごらんください。
1ページ、ここではこの統計の性格などについて簡単に触れたいと思います。
 まず「2 調査の対象及び客体」でございますが、戸籍法などにより届けられた出生、死亡などの全数を対象としております。
 次に、人口動態の統計の資料にはどのようなものがあるか紹介いたします。3つの四角で囲った部分に御注目ください。
 一番左が速報でありまして、作成された調査票の枚数を公表しています。
 真ん中が月報でありまして、毎月の概数を公表しています。
 その中に破線で囲った部分がございますが、これは月報の計数の平成22年の年間合計であるとともに、年間合計値を基礎計数として合計特殊出生率などの算出を行ったものであり、本日説明するものでございます。
 なお、一番右に年報の囲みがありますけれども、月報の計数に訂正報告などを加えて、修正を加えた確定数として、通常9月に確定公表しております。
 2ページ、3ページ、結果の概要でございますが、出生数や死亡数などの前年からの増減の状況をまとめているものです。それぞれの事象の中長期的動向につきましては4ページ以降にございますので、4ページにお進みください。
 4ページ、出生の動向でございます。図1でございますが、長期的な動向をごらんいただきますと、昭和46年~49年の第2次ベビーブームには200万人を超える出生がございましたが、以降、減少傾向となっております。
 表2-1は近年の母の年齢別に見た出生数ですが、対前年増減をごらんいただきますと、35歳未満で減少、35歳以上で増加となっています。
 35歳未満で減少している背景には、35歳未満の女性人口の減少がございます。この人口の状況につきましては、巻末の54ページになりますが、マル4の表でごらんいただけます。30~34歳の年齢階級で前年に比べ14万人減少しているというような状況がごらんいただけます。
 恐縮ですが、また5ページにお戻りいただきたいと思います。
 表3は、第1子出生時の平均年齢ですが、後にごらんいただく平均初婚年齢と同様、年々上昇しておりまして、30歳目前となっています。
6ページ、7ページ、合計特殊出生率の動向です。
 7ページの図2で長期的な動向をごらんいただきますと、第2次ベビーブームの後、昭和50年に2.00を下回ってからは低下傾向でしたが、平成18年以降は上昇傾向となっています。
 また、このグラフでは、母の年齢階級別の内訳も示しておりますが、これをごらんいただきますと、昭和50年以降の合計特殊出生率の低下傾向の主な原因は、20歳代を中心とした出生率の低下にあったわけですが、平成17年ごろ以降は20代の出生率はほぼ一定であるのに対し、30代の出生率が上昇するという傾向にあり、この結果、平成18年以降、合計特殊出生率は上昇傾向にあるということがわかります。ただし、合計特殊出生率の上昇率ほどには出生数は増加していないということに御注意ください。
 例えば表4-1の右上にありますように、平成21年~22年にかけて合計特殊出生率は0.02上昇いたしました。率にして1.6%の上昇です。一方、出生数の方は、5ページの表2-1の右上にありますように、1,271人の増加、率にしてプラス0.1%の増加にとどまっています。
 この合計特殊出生率プラス1.6%と出生数プラス0.1%の増加率の差は、54ページのマル4の表でごらんいただいたような女性人口の減少、特に出生率の高い年齢における女性人口の減少によるものでございます。
 8ページ、死亡の動向でございます。
 図4で長期的な動向をごらんいただきますと、昭和50年代後半から増加傾向となっており、平成22年は戦後最大の死亡数を記録しております。なお、棒グラフは年齢別にパターン分けされておりますが、昭和50年代後半から75歳以上の高齢者の死亡が増加しているのがごらんいただけます。この背景には、勿論、人口の高齢化がございます。
 11ページ、図6でございますけれども、主な死因別、死亡原因別に見た死亡率の年次推移ですが、人口の高齢化に伴い、悪性新生物や心疾患が増加傾向となっております。
 以上、出生と死亡の動向をごらんいただきましたが、両者の差である自然増減数の動向についてもごらんいただきたいと思います。
 21ページ、これは年次推移を示したものですが、左から出生数、死亡数とありまして、一番右に自然増減数を掲げてございます。自然増減数と言いますのは、御案内のとおり、出生数から死亡数を引いたものですが、平成17年に死亡数が出生数を上回り、自然増減数が初めてマイナスになりました。
 平成18年以降、合計特殊出生率は上昇傾向にありますが、先ほども申しましたように、女性人口が減少しているために出生数の増加傾向までにはなかなかつながっておりません。一方、人口の高齢化により死亡数は増加する傾向にありますことから、自然増減数の減少幅が拡大しており、平成22年には初めてマイナス10万人を超えたところでございます。
 14ページ、婚姻の動向でございます。
 図9で長期的な動向をごらんいただきますと、昭和40年代後半には100万組を超えておりましたが、その後、減少傾向となりまして、平成18年以降は70万組強の水準で増減を繰り返していましたが、平成22年は21年に引き続き減少しました。
 15ページの図10でございますが、初婚の妻の年齢別の状況を示しています。全体的に年齢の高い方にシフトしているのがごらんいただけます。
 これに伴い、表10-1では、平均初婚年齢も上昇しているのがごらんいただけます。
 表9は、年齢別の妻の初婚率ですけれども、傾向として20代で低下する一方、30歳で上昇しています。
 16ページ、離婚の動向でございます。図11で長期的な動向をごらんいただきますと、平成14年をピークに減少傾向となっております。
 私からは以上でございます。

○津谷部会長
 小野課長、ありがとうございました。
 では、次に、総務省の三上課長、お願いいたします。

○三上総務省国勢統計課長
 総務省統計局国勢統計課の三上と申します。よろしくお願いいたします。
 今回このような形で説明の機会をちょうだいしましたこと、また、日ごろから国勢調査あるいは人口推計など統計局の人口統計を御利用いただいていることに、まず御礼申し上げます。
 一昨日、平成22年国勢調査抽出速報集計の結果を公表いたしました。本日それを御説明します。
 資料3-2を1枚おめくりいただきまして、平成22年国勢調査の実施状況という紙がございます。内容の説明に入ります前に、こちらを御説明申し上げます。
 今回、平成22年国勢調査でございます。平成17年の国勢調査は、個人情報保護法の施行直後ということもあり、大変厳しい環境の中で行われたものですから、我々としても取組方法等を改善する必要があるだろうということで、22年においては新しい調査方法を導入いたしました。
 1つ目は、封入提出方式を全面導入するということでございます。国勢調査の場合、各世帯を調査員の方が回って調査票を配付し、回収するというのが主だった回収方法であったわけですけれども、今回は調査員の方が回収する際に、世帯の方が調査票を封筒に入れて、封をして提出するという方法を全面的に導入いたしました。17年のときも封をすることはできたのですが、これは任意であったということであります。それを全面的に封入を原則としたということであります。調査員の方は提出されたその場で調査票を確認することはしないということで、世帯の方の個人情報の保護の意識に配慮した方法ということでございます。
 2番目の○は、郵送提出方法を導入したということでございます。調査員の方の日中の活動時間帯ではなかなか会えないような方もございますし、調査員の方が訪ねてくるときに家にいるとは限らないというような方も多いものですから、提出する世帯の方の便宜を考えて、郵送でも出せるようにしたということでございます。
 それから、東京都をモデル地域としてインターネットでも回答できるようにしたということで、東京都においては上記3つの方式から、それ以外のところでも調査員の方に封入して提出するか、あるいは郵送で提出するという2つの方式から任意にお選びいただけるようにしたということであります。
 真ん中の四角は調査環境を整備するための取組でございます。2つ目の○にございますとおり、従来、国勢調査の実施に際して世帯の方から照会がたくさんありました。それらは市町村に行ったり、都道府県に行ったり、あるいは国に来ておりましたが、今回国勢調査としては初めてコールセンターを設けて一括して対処したということであります。
 調査票が封入して提出されるということになりますと、そこにしっかり書き込まれているのかというようなこともありますので、記入に不備があるような場合は世帯の方に市町村から問い合わせをしたり、あるいは市町村が手元で持っている行政情報などを使って補記するといった取組も進めております。
 以上のような結果といたしまして、一番下の四角にございますとおり、概況としては大きな事故等もなく、国民の幅広い理解あるいは関係団体、例えばオートロックマンションを管理するような団体ですとか、そういったところの御協力も相まって、総じて順調に実施できたのではないかと考えております。
 提出方法の内訳については暫定的なものでございますけれども、2つ目の○にあるような状況になっております。コールセンターにおきましても100万件近い問い合わせに対応したとところでございます。
 国勢調査のそもそもの目的ですとか、調査の流れ等は裏面に(参考)として添付してございます。ごらんいただければと思います。
 それでは、先に進みます。その次についている「要約」という資料は、主に報道用に全体の結果から抽出したものでございます。この審議の場にはやや簡素にすぎるかと思いますので、更におめくりいただいて「平成22年国勢調査 抽出速報集計結果 結果の概要」という、全体四十数ページ、統計表まで入れると六十数ページの資料をごらんいただければと思います。
 まず、1枚おめくりいただきまして、表紙の裏、結果の解説が始まる前に「抽出速報集計とは」あるいは「結果の推定方法」等を書いてございます。
 国勢調査では、調査票を6,000万枚近く最終的には機械で読み込んで集計してまいりますが、すべての調査項目をデータとしてきちんと確認して、数字として公表するには非常に時間がかかります。抽出速報集計と申しますのは、1%の調査票を抽出いたしまして、その1%の調査票に基づいて全体を推定するといったようなものでございます。したがいまして、その抽出する際の標本誤差等がありまして、後日、本年10月以降、100%の調査票を集計した結果が順次出てくるわけですけれども、その数字とは必ずしも一致しないものであると御理解いただければと思います。
 では、中身の方に入ります。
 「第1部 結果の解説」、1ページの数値の見方の下の行に御注目いただければと思います。今回のこの結果の中で割合を用いて表示しているものがございますが、これは特に注記をしていない限りは、分母から不詳を除いて算出しておりますので、その点を御注意いただければと思います。
 3ページ、まず「? 人口の構造」でございます。今回の抽出速報集計ですが、総人口という意味では、2月25日に公表した人口速報集計の結果をベンチマークとして使っております。そういう意味で、総人口は速報の結果と同じになるというものでございます。5年前と比べますと、わずかながらではありますけれども、少し増えた感じになっています。総体として見れば横ばいと言っていいようなレベルです。男女別には男性がやや少なく、これは平均寿命の関係と思います。
 4ページは、日本人、外国人の別でございます。この段階では日本人か日本人以外かということで表の中にお示ししております。普通に考えますと、総人口から日本人を除けば、これは外国人なのかということになりますが、そうではなくて、日本人と総人口の差には外国人と、調査票からはどちらともわからない不詳の数が入っております。不詳の中には当然、外国人の方もいらっしゃるでしょうし、日本人として不詳になってしまった方もいらっしゃると思いますので、その点を御注意いただければと思います。
 ですので、日本人の数としては5ページの表?-1-2の真ん中辺り「うち日本人」のところ、マイナス38と3万8,000人減と出ていますが、これはこの集計の抽出率及びそこから計算される誤差から言えば、確報ではプラスマイナスの符号が反転するぐらいの非常にわずかな減少であるということで、ここは横ばいで推移しているということを表記しております。
 5ページ下の方に進みまして、年齢別の人口でございます。65歳以上人口は引き続き増加ということで、全人口に占める割合、これは不詳を除いて計算していますけれども、23.1%ということです。新聞等々でも話題になったとおり、国連の資料から比較できる中では最も高い水準になってございます。15歳~64歳人口、15歳未満人口は引き続き低下ということでございます。
 6ページ、これは1点御注意をいただきたいと思いますけれども、表?-2-1の左側の方に「実数」という欄がありまして、その中に各年齢区分がございます。その右側、ちょうど中央寄りに「不詳」という欄がございます。
 「不詳」の欄を見ると、前回は48万強でしたけれども、今回123万ぐらいになったということで、この部分の増加を我々は気にしております。これは現在人口推計などでも取り扱いをどうするかという部分を今、検討しております。国勢調査では、若い人の捕捉が難しい、あるいはそこからたくさん不詳が出ているのではないかというような問題もあり、従来のように年齢別の割合を使って比例的に配分すると、高齢者に結果として多く積んでしまうという問題点もあろうかと思っています。どういう按分方法がより実態に近い推計になるのかといった辺りを現在検討しておりまして、最終的にどういう方法になるにしても、将来推計人口との作業につながる非常に重要なものだと考えております。こちらにいらっしゃる社人研の関係者の方々とも十分に情報交換しながら今後の作業を進めてまいりたいと思います。
 少し飛ばしますけれども、配偶関係ということで11ページ~12ページにお進みください。
 国勢調査での配偶関係というのは、法的あるいは制度的な届出の有無にかかわらず、実態ベースで調べております。
 中段にあります表?-3-1では、未婚の構成比が17年~22年のポイントでは少し減ったように見えていますけれども、先ほどから人口動態統計の御説明の中でもありましたが、若年層の人口のボリュームといったようなものが影響しているような部分でございますので、その後ろ、12ページをごらんいただければと思います。
 これは年齢階級別、男女別に配偶関係を見たものでございます。左が男、右が女で、トレンドを見やすくするために10年刻みでとってございます。これを見ますと、おおむねすべての年齢層で未婚を示す線が上の方に持ち上がっているのがごらんいただけるかと思います。
 女性では、特に12年~22年、最近の10年間では、30代~40代前半の辺りの数字の盛り上がりが大きくなっているということが言えると思いますし、それに対応する形で有配偶の部分が減ってきているということであります。平成2年~12年に比べますとややペースダウンした感じはありますけれども、引き続きそういった傾向は進展していると言ってよろしいかと思います。
 将来的な人口の推計に多分、影響が大きいだろうと思われる女性の20代~30代前半あるいは後半ぐらいまでのところを見ますと、平成2年~22年の間で20%ポイント近く未婚が増え、それに対応する形で有配偶が減少しているといったようなことが、下の表?-3-2からごらんいただけると思います。
 「4 教育」ですけれども、図?-4-1をごらんいただきますとおり、引き続き高学歴化というか、最終卒業学校が「短大・高専」あるいは「大学・大学院」の女性の占める割合が大きくなっております。平成12年は大体2つ合わせて4人に1人ぐらいが「短大・高専」ないし「大学・大学院」でありましたけれども、今回22年はそこが大体3人に1人ぐらいの割合になっているという状況でございます。
 17ページ、中段右側ですが、女性の労働力率のグラフでございます。これはよく知られているM字カーブと言われるものです。男女雇用機会均等法が61年4月施行ということで、その直前の昭和60年をとっているのですが、それと17年、22年とを比較しております。
 17年~22年にかけては、M字が全体として台形により近くなっているんですが、へこみが浅くなったということと、M字カーブの谷が30代前半から35~39歳のところに移ってきたという動きが見られ、先ほど人口動態統計の中で出てきたような動きとも一致する部分であります。
 昭和60年と17年を詳細に比較分析しますと、25歳~44歳までの労働力率の上昇というのは、未婚の労働力の拡大が寄与しているという分析が得られております。こういった傾向は引き続き続いているのではないかと思われます。
 18ページの下段、今回の国勢調査では、雇用者についての従業上の地位をもう少し詳細に把握するために、正規社員であるか、あるいはパート・アルバイトなのか、派遣なのかという区分を新たにとることといたしました。
 表?-2-2でごらんいただきますとおり、男女で正社員なのか、非正規なのかという辺りの違いはかなり顕著に出ていまして、男性の場合は8割以上が正規職員・従業員ですけれども、女性の場合は約半数、49.9%がパート・アルバイトとなっており、この辺りは1つの注目のポイントかと思われます。
 19ページには年齢階層別のデータがありますけれども、割合で見ますと、女性の方は、40歳~44歳よりも上の年齢階層では、正規社員よりもパート・アルバイト等々が多くなってくるといったような状況がごらんいただけます。
 最後に、今後の公表予定について御説明申し上げます。今後の公表予定は、同じ資料の42ページをごらんください。
 42ページの上から2段目にあるのが、ただいま御説明申し上げた抽出速報集計でございます。この次の公表は、人口とか世帯とかそういった辺りの全数集計になる「人口等基本集計」というものでございまして、10月中の公表を予定しております。※を付して欄外に注記しておりますとおり、今回の震災あるいは復興のためのデータにお役立ていただけるのではないかと考え、全国分よりも早目に被災3県分を公表する予定でございます。
 私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

○津谷部会長
 三上課長、ありがとうございました。
 それでは、これまでの御説明につきまして御質問等ございましたら、どうぞ御自由にお願いいたします。
 阿藤部会長代理、どうぞ。

○阿藤部会長代理
 ありがとうございました。動態統計の方ですが、これは毎回そうですけれども、いわゆる日本人ベースの率が発表されていますが、徐々に外国人も増えているので、それを含めた数字とか、あるいは外国人の率はどうだとか、その辺りはどういう機会に発表されるのでしょうかというのが1つ。
 国勢調査の方ですが、先ほど年齢不詳というのが今回、相当増えているという話がありました。年齢ですら増えているということは、例えば我々が非常に重視している配偶関係などになりますと、更に大きな不詳が予想されるんですが、それによって随分、未婚化の動向などの水準が違ってくるのかなという危惧が若干あるんですけれども、その辺はどう考えたらよろしいでしょうか。

○津谷部会長
 小野課長、どうぞ。

○小野人口動態・保健統計課長
 外国人の日本における人口動態統計はどうなのかというお尋ねと存じます。これは毎年出すことにはなっていないんですけれども、何年かごとに外国人の部分を含めて報告書をまとめ、公表しております。次回の予定はまだ決まっておりませんが、従来そのようにしております。

○津谷部会長
 課長、どうぞ。

○三上総務省国勢統計課長
 配偶関係の部分の不詳につきましては、11ページの表?-3-1でごらんいただけます。前回と今回を比較して倍とは行きませんけれども、かなり増えているということで、阿藤先生の御懸念の点があろうかと思います。不詳については、可能な部分はいろいろな形で、世帯に確認したり、補記してみたりしますが、今回、封入提出を全面導入したことで、調査員の方がその場で記入漏れを確認しなくなっております。調査票が市町村に届いてしまうと、審査の場面ではそこまで手が及ばないというようなこともございます。今回はできる限りのベストエフォートで取り組むしかないと思いますけれども、この先の国勢調査まで見据えて対応を考えていきたいと思います。

○津谷部会長
 ありがとうございました。
 鬼頭委員、どうぞ。

○鬼頭委員
 冒頭で御説明をいただいたときに、割に提出率がよかったというようなお話だったんですが、私が授業で調べたときに、まず大体、男子学生のひとり暮らしで実家から離れて学校に来ているものの中に、住民基本台帳の登録を変えていないのが結構いると。さらに国勢調査票を出したかと聞いたときも、用紙が来なかったとか、出していないというのが結構いるわけです。
 私も今年はこれを大分危惧していたんですが、案に相違して割によかったようなお話だったんですが、そもそも配った枚数と戻った枚数の率とか、その推移というのは確かめられているんでしょうか。

○三上総務省国勢統計課長
 お尋ねのような数字はないですけれども、男子学生がちゃんと捕捉されているのかという点について、単身の方とか学生とかは従来アプローチが難しいと言われている人たちですけれども、御自身で調査票を出されないとしても、調査員の方が担当の調査区内を回って、人が住んでいることが確認できれば、国勢調査の調べ方のルールとして聞き取り調査をやっていまして、性別とか世帯の人員ですとか、そういった基本的なところは押さえるようになっています。本人が出さなくても、必ずしも漏れているということではない仕組みになっております。
 住民基本台帳上の登録がどこでされているかということと、調査員の方が捕捉する実態とは直接結びついておりませんで、もともと住民票を登録してあっても住んでいない方ではカウントされず、届出の有無にかかわらず本当に住んでいる方でカウントされる、これが国勢調査の仕組みでございます。

○津谷部会長
 よろしいでしょうか。
 では、加藤委員、どうぞ。

○加藤委員
 人口動態統計の出生順位別の出生数の件でお伺いしたいんですが、今回、出生率が少し上がった中を見ると、2子、3子以上が少し増えているということがよく言われていますが、例えば最近の傾向として、2子、3子以上が出生数を若干持ち上げているのかどうなのか。その辺は統計的に何かわかるところはあるんでしょうか。その点を少し教えていただければと思います。

○小野人口動態・保健統計課長
 資料の5ページに表2-2がございまして、これに出生順位別の毎年毎年の数を掲げてございます。その右側に対前年増減がございますが、例えば22年を21年と比べますと、全体で1,271人増えておりますが、第2子はプラス137、第3子以上は4,138ということで、21年~22年にかけては2子以上の出生の増加が全体の増加に影響しているということになります。

○加藤委員
 ここではなくて、もう少し過去を見たときに、出生数に対する2子、3子の寄与というか、コントリビューションとか、そういったものについて何か見解というか、そういうものがあれば。もしなければまた後で、次回以降で構わないんですけれども。

○小野人口動態・保健統計課長
 出生数ではないんですが、合計特殊出生率ベースで第1子と第2子以降に分けて長期的に見ていきますと、第1子の変動よりも第2子以降の変動幅の方が大きくなっております。

○津谷部会長
 よろしいでしょうか。
 では、白波瀬委員、どうぞ。

○白波瀬委員
 2つほど質問させてください。
 1点は、人口動態に関連したことで、先ほど加藤委員からご質問があったところの上にある表2-1について確認です。ここで母親年齢が34歳までの出生数が下がったとおっしゃいましたが、女性人口の減少による、つまり分母としての女性人口が減ったことに伴って出生数が少なくなった、と理解でよろしいんですね。

○小野人口動態・保健統計課長
 はい、全くそのとおりです。

○白波瀬委員
 2点目は国勢調査についての質問です。調査法を工夫され、回収率を上げる御努力をされている点に敬意を表します。ただ、時系列的に過去の結果と比較をする場合、調査方法の違いについて、結果の解釈を行う際に注意が必要だと思います。そこで、今回の3つの方法の利用にあたって、何らかの偏りがあるのでしょうか。例えば、インターネットによる回答が若年層に偏るといったことは、現時点でもわかりますでしょうか。

○三上総務省国勢統計課長
 新しい調査方法を導入するに当たりましては、試験調査を何回かやって、統計的に過去との連続がとらえられなくなるようなことはないということを確認した上でやっています。今後、更に実際に出てきたものを分析したいと思います。
 インターネット回答につきましては、インターネット回答をしていただいた後に簡単なアンケート画面を用意しまして、そこで何歳代の方ですかとか、幾つかアンケートをしてみました。その結果によると、我々が事前に思っていたほどは若者だけが使っているということでもなくて、高齢の方でもお使いいただいています。
 紙の調査票は、A4の1枚の中に4人分を書くような、文字も非常に細かいもので、これは高齢者の方には文字が小さ過ぎるというようなお叱りもいただいています。文字を拡大した拡大調査票も用意しているのですが、十分には浸透していないようです。こういう状況の中、インターネットはブラウザで利用者の方が文字を拡大できますので、むしろ高齢者に優しいのではないかというような御意見もいただいています。
 今回、東京都に限って導入しましたけれども、5年後どういう規模でやっていくかという辺りは、御利用いただいた方の特性とか意見を分析しながら今後考えてまいりたいと思います。

○津谷部会長
 よろしいでしょうか。そのほか御質問ございませんでしょうか。
 では、大林委員、どうぞ。

○大林委員
 国勢調査について1点だけ教えてほしいです。今回、不詳が増えたということで、もしかするとそれはいろいろと調査方法を変えたことに由来する部分もあるいはあるのかもしれませんけれども、そういった中で、いただいたものからだけではよくわからないのですが、例えば配偶関係の不詳の出方の年齢パターンについて、過去と違うようなことがあるのかどうかとか、そういったことについてもし何か御知見がございましたら教えていただきたいと思います。

○三上総務省国勢統計課長
 この抽出速報の段階では、それぞれの背景に踏み込んだような分析は時間的にも難しいところもございますので、今後、今いただいたような問題意識を我々も持ちながら、分析を進めてまいりたいと思います。

○津谷部会長
 それでは、よろしゅうございますでしょうか。
 では、次に「将来人口推計とは-その役割と仕組み-」につきまして、国立社会保障・人口問題研究所の金子人口動向研究部長より御説明をお願いしたいと思います。

○金子人口動向研究部長
 金子でございます。推計方法の説明などを担当させていただきます。非常に困難な時期に際しまして、この国の将来構想の基礎となります将来人口推計を担当させていただきますことで、非常に身の引き締まる思いをしておるところでございます。改めてどうぞよろしくお願いいたします。
 将来人口推計の概要につきましては、先ほども伊奈川参事官の方からございましたので、繰り返しません。また、先ほど大塚副大臣の方からも御紹介がありましたけれども、私どもでは全国人口を対象とした将来推計に加えまして、地域を対象とした推計、これは都道府県と市区町村のものがございますが、これをやっております。更に、全国と地域の世帯数を対象としました推計を順次実施をしていく予定でございます。これらは全国人口推計と整合的に行われるものでございますので、本部会の御審議はこれら後続の推計にも反映させていただきたいと存じます。
 今回は、新推計検討の最初の御審議となりますので、私どもの方からはその基本的な役割と仕組みということについて御説明をさせていただきます。
 スライドを用意してきたのですけれども、お手元の資料がよくできていますので、こちらの資料で御説明をさせていただきます。
 1ページ、こちらは我が国の歴史的な人口推移でございます。日本の人口の歴史的推移につきましては、こちらにおいでの鬼頭委員の御研究によるところが多いものでございます。
 我が国は島国という性質上、人口の出入りが比較的少ないものですから、さながら人口の実験室のような状況でございます。その中で、近代に至りまして、明治期以降、人口転換という多産多死から少産少死への、言ってみれば人類史上の普遍的な転換過程を通しまして、ごらんのように急速な人口増加を経験したわけでございます。
 実績の部分は黒いグラフで示したところでございます。先ほど国勢調査の御報告をいただいた中にもございましたとおり、現在は1億2,800万余りということで、歴史上で最も多くの人々が日本列島に暮らしているということになります。
 問題は今後ですけれども、こうした過去の人口推移から仮にフリーハンドで将来像を描くとどうなるかということを考えてみました。3通り描いてありますけれども、増えるとするとオレンジ色の一番上のもの、こんな感じだろうかと。あるいは古典的な人口転換理論に従いますと真ん中の緑色の静止人口ということになりますけれども、こういった推移になるはずでございます。しかしながら、私などは今後、人口が減少していくということは存じておりますので、私が人口をフリーハンドで描くとするとピンク色のような感じに描くと自然に感じるわけでございます。
 しかしながら、2ページ、社人研が平成18年に行いました将来人口推計におきましては、こちらに示しましたような推移になってございます。これは参考推計と呼ばれる100年後までの推計を含めたものでございますけれども、これを見ますと、将来人口推計はいかにも冷徹なものであるということを感じる次第でございます。
 私などの日常的な感覚であるとか、あるいは漠然とした希望であるとか、そういったものは見事に打ち砕いてくれるというのが、こういう将来推計の大きな役割の1つなのかもしれないと感じる次第であります。
 3ページ、こちらは明治期~21世紀を通しての人口と年齢構成の推移を拡大した図でございます。人口減少とともに、地層のように描かれておりますけれども、年齢構成の変化、いわゆる少子高齢化が進行するということがごらんいただけると思います。
 年齢構成の変化をより明瞭に示しますものが、次の人口ピラミッドでございます。左上の1955年のものから右下の2055年のものまで100年間の変化を示してございます。
 1955年に見られます、言ってみれば人類社会が有史以来維持をしてまいりました山型の人口ピラミッドが、この100年間ですっかりと逆三角形に変貌していく姿をごらんいただけるとか思います。我々は極めて特異な時代にきているのではないかという考えを持つ次第でございます。ちなみにこの100年間を通して生存をして、この変化を経験する人の数は、推計によりますと63万人ということになります。
 さて、こうした将来人口推計は国の将来像について一定のイメージをもたらしてくれまして、私たちが現在、歴史上非常に大きな転換点にいるということを知らしめているわけでございますけれども、そのような将来人口推計に求められるもの、あるいは目指すべき方向といったものを少し考えてみたいと存じます。
 5ページ、将来人口推計というものは非常に広範な分野において利用されているものでございますので、特定の意図や希望とかそういったものを含んだものはだめでございまして、客観的、中立的なものであることが最大の要件になるということであります。そうした恣意的な要素を排するためには、まず正確なデータに基づきまして、客観的な指標を用いて推計を行うことが求められると思います。
 また、将来というものは不確定でありまして、不確実であります。科学的に将来の社会というものを定量的に正確に描くという方法を、我々は現在、持ち得ておりません。なぜならば、第1に現在、人間が行える測定と使える手法の不完全性ということが挙げられます。
 そして、何よりも第2の方ですけれども、将来の出来事すべてというものを我々は把握することができないという事実がございます。今般の震災の例を挙げるまでもなく、我々は明日起こることもわからないということが多うございます。未来は、そうした出来事によって変わっていくものと考えられます。
 それでは、どうするのかということでございますけれども、恐らく人間にできることは現状で求め得る最良のデータと最良の手法を組み合わせて、客観的な推計を行うということに尽きるのではないかと考えております。ただし、そのために何が最良であるか見極めて実施をする高い専門性と、またそれ以上に、選択や結果について、一般に対して、わかりやすく伝える説明責任が最も重要になってくると考えております。
 6ページ、少々脇にそれるかもしれないのですけれども、ここでそもそも科学的な予測というものが何かということに踏み込んで考えてみたいと思います。
 まず、未来というものは科学的な測定の対象か否か。言い換えれば、統計的推定の対象かどうかということを考えてみますと、未来というものは単にわからないというだけではなくて、現在はまだ存在していないと考える立場からは、それは推定の対象とはなり得ないだろうということが言えます。
 それでは、科学的な予測と呼んでいるものは一体何かと考えますと、それは人間が持ち得た科学的な因果モデルです。これに対して観測をした初期値(条件)を代入して得られるシミュレーションの結果にすぎないのではないか。つまり、予測というのは決して未来を測定することではなくて、模擬実験の一種であろうと考えることができるわけであります。
 そのことは自然科学でも社会科学でも、同じでございます。ただ、自然科学における例えば天体の軌道の予測などがよく的中するのは、恐らく関与する要素の数が少なくて、測定とモデルの精度が決めて高くできるからということにほかならない。すなわち程度の問題と考えるわけでございます。
 しかし、自然を対象とした予測と社会を対象とした予測には、決定的な違いがあると思います。それが「3.二種類の科学的予測」という部分にあるのですけれども、自然を対象とした予測は対象を人間が制御することができないという意味で、ここでは申し上げております。
 この例としまして、天気予報を取り上げておりますけれども、昨今のように梅雨の日の朝、その日の午後に雨が降るかどうかという予報が必要なのは、出かける前に傘を持参するか否かという対処を事前に行うことが目的のすべてであると考えられます。
 一方、予測対象が社会である場合には、その対象に対して働きかけるということも予測の目的の1つとなります。仮に望ましくない予測が得られた場合には、これに備えるだけではなくて、むしろ望ましくない将来を変えるような行動をするということ、それも社会科学における予測の目的の1つと言えるのではないかと思います。
 したがいまして「4.社会科学における予測の目的」は、将来実現する状況を言い当てるということよりも、現在の状況と趨勢が続いた場合に帰結する状況を示して、我々が現在、行うべき行動についての指針を提供することにあるということになります。
 現在の状況と趨勢が続いた場合に帰結する状況を示すということを指して、我々は投影と呼んでございます。この投影は、現在の状況に含まれる問題点を将来というスクリーンに拡大して映し出しまして、見やすくするという働きがある。将来人口推計におきましても、全面的にこの投影の考え方に基づいて、行うべきものとこれまで考えております。
 7ページ、そもそも将来人口推計は英語で申しますと、Population projectionと呼ばれておりまして、直訳すれば、まさに人口投影と呼ばれるものでございます。
 各国の機関が実施する公的な将来人口推計というものにつきましては、多くの場合、その前提となる出生・死亡・移動などの仮定につきましても、過去の推移や傾向を将来に投影する方法をとっております。
 8ページ、こちらは代表的な投影の方法を示してございますけれども、1番目の関数あてはめ法は、現在は余り見られません。
 2番目のコーホート変化率法は、同一コーホートの2時点間における人口の変化率を調べまして、将来この年齢における変化率が一定で推移するということを仮定して、推計する方法でございます。ただ、この変化率というものがブラックボックスのようなものでございまして、死亡や移動、そういった変動要因が個別に扱えないといううらみがございます。
 そこで3番目のコーホート要因法になりますと、コーホートに基づきながら変動要因、すなわち出生・死亡・移動ごとに将来の変動を仮定できる方法でございます。それぞれの動態要因につきまして、先ほど御報告がありましたとおり、我が国のように、詳細な人口統計が得られる場合には、最も信頼できる方法と評価をされております。
 このコーホート要因法による人口推計の計算手順でございますけれども、9ページに「当年の人口」という灰色の部分がございますが、翌年になりますと、隣の箱に示されますようにそれぞれ1歳、歳を取ります。
 ただし、その間に死亡と人口移動を経験しますので、そのことを示したのが右側の上の黄色い箱でございます。X歳からX+1歳になる間に、死亡と国際人口移動を経験いたします。その際に年齢別生存率が死亡の発生をつかさどっております。日本への出入りについては、国際人口移動の仮定が働きます。これによって、翌年の1歳以上のすべての年齢の人口が計算できることになります。ただし、0歳の人口だけは別の方法が必要となります。
 0歳につきましては、左の箱の中の下の方に書いてありますけれども、15~49歳の再生産年齢にある女性の延べ人口を先ほどの推計から持ってきまして、これに仮定された年齢別出生率をかけることで、出生数が求められます。
 この様子は右側の下の黄色い箱の中で示してございます。まず、女性の延べ人口と出生率を年齢ごとにかけ合わせて、結果を合計することによって、出生数が求められます。その後、新たに生まれた人口に対して死亡と国際人口移動を差し引きすることによって、0歳の人口が求められるということです。これで翌年の人口が求められましたので、これを1年ごとに繰り返すことで、将来の人口が決まってまいります。この計算手順は、実際の人口の動きに即した自然な計算方法ではないかと思います。
 10ページ、左側をごらんいただきますと、人口推計に必要となりますのは、出発点となる人口を別にすれば、まず?として、将来の出生動向に関する仮定でございます。これには女性の年齢別出生率と出生性比がございます。
 次に死亡に関する仮定として、男女・年齢別生存率がございます。
 もう一つ、将来の国際人口移動に関する仮定が必要になってまいります。
 問題は、これらの将来の言わば人口行動をどのように仮定設定するかということでございますけれども、これに投影の考え方を適応するということになります。
 右側のグラフは、投影のイメージを表す模式図でございます。年次的な変動をしている指標、あるいはパラメータの実測推移に対して最新のモデルを当てはめて、これを将来に向けて投影することによって、仮定設定が行われます。
 11ページ、実際の例として、出生率の例を示しております。コーホートの年齢ごとの出生率に注目をして行います。この図は、横軸が生まれ年で示した女性のコーホートを示していまして、縦軸は累積出生率。言い換えれば、年齢とともにどんどん増えていく平均子ども数を表しています。
 グラフでは右にいくほど、すなわち若いコーホートになるほど同じ年齢での平均子ども数が減少しているということがわかると思います。ただし、この破線の部分はこれから実現される、達成される部分でございまして、すなわち投影を用いた推計値に当たります。これは前回の推計の例を挙げておりますけれども、このように出生率の仮定設定も投影の考え方に基づいて行われております。
12ページ、先ほど来コーホートという言葉が盛んに出てきますけれども、なぜ将来推計では、例えば出生率についてコーホートを使うのかということについて、簡単に御説明をしたいと思います。図示しましたのはスウェーデンの例でございます。これで顕著に見られますように年々測定される合計特殊出生率、これはコーホートのものと区別するために期間合計特殊出生率と呼んでおりますけれども、こちらの方は非常に変動をしやすい。しかし、その背景にありますコーホートの生涯の平均出生子ども数に当たりますコーホート合計特殊出生率というのは、非常に安定的に推移していることが見られます。一般的にこういうことが見られます。
 なぜ年々の出生率が変動しやすいか。一言で申し上げますと、妊娠、出産というのは個人にとって時期を遅らせたり早めたりするという調節の仕方がしやすいので、年々の出生率はその年ごとの条件によって大きく変動することがあるのですけれども、実は生涯の子ども数は、遅らせても早めても同じでございます。生涯の子ども数は出生のタイミング調整の影響を受けにくいということから、安定した推移を示すことになります。
 最終的に人口を決めていくのは生涯の子ども数の変化ですので、年次の変動しやすい指標を使うよりは、コーホートの指標を使うことにしております。
 次のスライドが、同様のことを日本について描いたものでございます。日本の場合には66年の丙午という顕著な例がございますけれども、それ以外にも出生タイミング調整による両方の出生率の乖離が見られてございます。
 次のスライドで投影の話に戻りますが、こちらは出生率の仮定設定についての説明でございます。こちらでは死亡ではリー・カーターモデルという手法をベースとしておりますけれども、その中の死亡水準の年次推移をつかさどるKtというパラメータがございますが、これの実績値の推移に基づきまして将来を投影している様子が左の図でごらんいただけます。これが決まりますと、このモデルによりまして右の図に示しますように年齢別の死亡率に展開をされまして、その年次推移が決まっていく。推計されていくことになります。
 15ページ、もう一つの人口変動要因、国際人口移動なのですが、こちらでは外国人の入国超過数を例としてごらんいただきたいと思います。実績値をモデルによって投影している様子でございます。ただし、実際の投影は相手の国ごとに行われておりまして、実を言いますとこの図というのは、それらを総合した結果でございます。このように国際人口移動についても投影という考え方で行っております。
 以上が投影に基づく将来人口推計の方法の概略だったのですけれども、最後に社会経済の変化と人口推計の関係について、少しだけ考えてみたいと思います。
 将来人口推計は世の中の動きとどのように関連しているのか、あるいはなぜさまざまな社会経済の指標を人口推計に取り入れないのかという御指摘がございます。当然の疑問と思いますけれども、まず第一に、人口推計では社会経済の動きを取り入れていないと考えるのは実は誤りでございます。それらは出生率、死亡率、人口移動といった人口統計指標に敏感に反映されているものでございますから、これを用いた人口推計も社会経済の動きを反映していることになります。
 ここに示しました図では左に人口の変動の機構を示しておりまして、右に社会経済の変化を示しております。人口というものは直接には出生か死亡か人口移動の3つ以外のことで変わることはありません。ですから社会経済要因が人口に影響するとすれば、必ず出生か死亡か人口移動のどれかを媒介して、影響を及ぼしていることになるわけであります。
 若干具体的な例として17ページをごらんいただきたいのですが、出生仮定の例で御説明をしたいと思います。出生に用いるコーホート合計特殊出生率は上の箱の中にございますように、結婚する女性の割合と夫婦の子ども数、離婚・死別の効果のかけ算となっております。更に平均初婚年齢が結婚する女性の割合と、夫婦の子ども数の両方に影響を与える構造になってございます。
 下の箱をごらんいただきますと、それらの各要素を取り巻く社会経済要因の例を挙げてあります。実はこのリストは長く続くわけでございまして、ここではごく一部を例示しているだけでございます。これら多数の要因の効果は、結局は観測された各々の人口統計指標の値に総合的に反映されていると考えられます。ひいては推計される将来の人口にも反映されると考えております。
 それでも社会経済要因の変化をもっと明示的に人口推計に取り込む選択もあろうかと思うのですが、それは2つの理由から困難であろうと判断をしております。
 第一には社会経済状況の見通しや政策効果は非常に多岐にわたっておりますので、それらの相互作用までも含めたモデルというものは恐らく複雑になり過ぎまして、現在の技術では扱いが困難と思われます。
 ちなみに一部の要因だけを取り上げることも可能かもしれませんけれども、そうした場合にはその選択に恣意性が問われることになろうかと思います。
 第二の理由ですけれども、社会経済要因を将来人口推計に取り入れるためには、人口推計が対象としているような長期のたとえば50年といった期間について、社会経済要因の将来を見通すことが前提として必要となってまいります。それは恐らく人口指標の推計以上に困難な作業であろうと考えられるわけであります。
 そうしたことから諸外国における将来人口推計でも社会経済状況の見通し、あるいは政策効果などを明示的に推計値に取り入れているという例はございません。
 説明は以上でございますけれども、19ページはそれらのまとめでございます。ちょっと時間が押していますのでこちらは省略しまして、最後に参考資料といたしまして、各国の最新の将来人口推計の期間と仮定設定などの要約を示してございます。
 私からの御説明は以上でございます。

○津谷部会長
 金子部長、ありがとうございました。
 もし、ただいまの御説明につきまして何か御質問等ございましたら、どうぞ御自由にお願いいたします。

○佐々木委員
 2ページ目で人口の歴史的な推移のところ、これは前回の18年の推計でやれば人口が3分の1ぐらいになるということで、これを見て確かに大変だなと改めて思ったんです。今回出生率が多少増えていますので、もう少しなだらかと思うんですけれども、200年間で3倍に増えて3分の1というのは、相当社会保障も社会の仕組みもドラスティックに変えないと、やっていけないなというのは改めて思ったんですが、歴史的にこういう推移をたどった国とか集団があれば教えていただきたいというのが質問です。

○金子人口動向研究部長
 これは私が答えるよりも専門の方がいらっしゃるので大変答えにくいのですが、いわゆる近代国家といいますか、そういう状況ではまだここまでのはっきりした人口推移を示した例は余りないと思いますが、例えばロシアでは死亡率が先進国としては極めて高く推移をしておりまして、その出生率も非常に低いということで、日本に先駆けて人口減少をしております。東ヨーロッパの国々でも幾つかの国では既に人口減少が始まっております。
 それ以外の先進国では、いわゆる旧西側といいますか、そういった国と日本を比べますと、日本はやはり早めに人口減少に突入している。かつ、将来的な見通しもかなり厳しいものであることは言えると思います。

○津谷部会長
 阿藤部会長代理、どうぞ。

○阿藤部会長代理
 全くマイナーな質問なんですけれども、13ページの期間とコーホートの数字で、コーホートの50歳以上と、その後は40~45なんでしょうか。45~49ということはないのですか。

○金子人口動向研究部長
 そうですね。ありがとうございます。45~49でございます。

○津谷部会長
 では、14枚目のスライドの部分の50歳以上の右側ですね。
 鬼頭委員、その次に白波瀬委員、お願いいたします。

○鬼頭委員
 前回、私もこの推計の部会に参加させていただいて、つぶさに進め方を見て非常に禁欲的であるなということで感心して、これ以上のものは多分出せないだろうと思ったんです。
しかし、前回までは30年間出生率が落ちてくるというトレンドの中で見ていったのですけれども、今度は過去の5年間に出生率がまた上がり始めていますね。これをトレンドで見ていったときに、どのぐらいの変化が起きそうなのかということは、これからあと2か月の楽しみだと思うんです。
 もう一つは、プロジェクションの予測の目的が6ページにありますが、現在行うべき行動についての指針を提供することになっています。推計そのものは冊子の方では前回だと55年までの推計値と、2105年までの参考値が出ていますけれども、出生率がいつどういうふうに上がっていったら人口はどこまでいくのか、あるいは静止人口に入れるのかどうかということについては、余り表に出ていないと思うんです。目標値として出生率をこのペースで上げていったら、この時期に置き換え水準に届きますよ、そのときに最終的に人口はどのぐらいになるんですよということが、どこかで示されてもいいのかなと思うんですが、そういうことはこの本体の作業からは外れるでしょうか。

○金子人口動向研究部長
 それでは、2つ目の質問にお答えをしたいと思いますけれども、全国の推計につきましては前回、出生3仮定(高中低)、死亡3仮定(高中低)をかけまして、9通りの推計を最初の公表として出しております。その後、参考としていただくために人口置換水準に出生率が戻った場合という仮定あるいは閉鎖人口、要するに国際人口移動が全くなかった場合といった幾つかのバリエーションにつきまして推計を行ったものを、後続として出しておりまして、報告書あるいはホームページ等で扱っております。
 それ以外の推計、いろいろな仮定に基づく推計もあり得ると思いますけれども、それらにつきましては目標として設定したり、あるいは希望として設定したり、いろいろな目的があるでしょうから、そういう恣意的な部分が入ってくるとなりますと、その目的に合わせてシミュレーションとしてやるということになろうかと思います。
 ちなみに、前回の推計の後に国民の希望が実現をしたらどういう人口になるかというのを、これは私どもではないのですけれども、厚労省として推計したものがございます。そういった形でいろいろな目的に合わせてシミュレーションとしての人口推計はやることが可能であると思います。

○津谷部会長
 ありがとうございました。
では、白波瀬委員、どうぞ。

○白波瀬委員
 大変詳しい説明をありがとうございました。何のための人口推計かというお話につきまして、確認させてください。これは人口推計にあってかなり中核的でかつ非常に重要な点だと思います。先ほどのお話の後半で、将来人口推計を社会経済的要因との関係から御説明をされましたが、その根拠について確認をさせてください。
人口の将来推計を実施する場合、現時点の人口が初期値となるわけで、その意味で現時点の人口構成の背景にある社会経済的要因を考慮することは重要ですが、人口推計の目的として、それらの社会経済的要因に関する政策評価は区別して進めるべきではないかというのが、私の個人的意見だからです。
人口構成が出生、死亡、国際移動といった3つの要因から成り立っていて、その要因がさまざまな社会経済的な要因と密接な関係にあります。さらに社会経済的要因は多様な社会的制度との関連の中で成り立っていますので、そこでは政策効果を評価することも可能になるかもしれません。ただ、人口推計を実施するにあたって、現時点での人口構成を直接的、間接的に規定する社会経済的要因の背景にある諸政策の効果評価を同時に行おうとすると、そこに混乱がおこるのではないかと思うのです。少し乱暴に聞こえるかもしれないのですが、人口推計は現在の人口の背景にある社会経済的要因への評価とは独立して進めるべきと考えます。人口推計の目的が、10年後の観測値をどの程度正確に言い当てたかではない、ということはよく理解しましたし、実際にそうだと思うのです。
繰り返しになりますが、人口の将来推計を実施するにあって、社会経済的要因の影響を無視することはできないと思いますが、社会経済的要因の背景にあるさまざまな政策効果の評価を同時に実施することの混乱は避けなければならないと考えます。例えば、現在の年金制度の問題を論じるにあたって、制度設計にあたって拠り所とした人口推計が「正確でなかった」ことを問題の原因とすることは望ましくなく、それは制度設計そのものが間違っていたと考えるからです。言い換えれば、現在ある諸制度の評価をするにあたって、人口推計の制度を最終的な原因とするのは正しくないと思います。
そこで、国立社会保障・人口問題研究所の方から、人口推計を実施するにあたっての社会経済的要因をどのように捉えているかについてのお考えを再度確認させていただきたいと思います。質問が長くなりまして、すみません。

○津谷部会長
 金子部長、どうぞ。

○金子人口動向研究部長
 直接的には非常によくあるお問い合わせとして、例えば雇用状況が悪くなっていることが結婚に影響を与えて、出生率を下げているとすれば、そういったものを直接人口推計に反映をさせないのかというようなお問い合わせが多いということでございます。実際に当たったかどうかということにつきましては、一つの推計の役割としまして、実際の推移が推計の推移と違ってきた場合に、そこに原因があるわけでございますから、いち早くそれに気が付くということがございます。そういった形で直近のところの当たる、外れるということには、それ自体に意味があるというようには考えます。
 ですから、結局その当たった、外れたと言えるのはなぜかというと、その基準になる推計があるからでありまして、それがなかったら世の中がどう進んでいるのかという議論がなかなかできないわけです。そういったことが一つあります。
 将来の社会を制度設計していく基礎となっているという点についても、何か基準をつくらなければいけない。現在の状況を反映した将来像を描いて、それを一つの基準として考える。勿論、不確実でありますから、ある程度の幅を持って考えるということですね。ただし、それ以上のことは恐らく我々はできない。ただし、我々は例えば30年後、40年後まで傍観をしているわけではございません。5年ごとに推計を見直し、どこが違っていたのか、それにどう対処すべきかということを5年ごとに考えていくという一つのきっかけになると考えております。

○津谷部会長
 副大臣、どうぞ。

○大塚副大臣
 大変核心に迫る御議論をしていただいているので、ちょっと口を挟ませていただきたくなりましたけれども、冒頭、今までの人口推計作業にも増して、一段と重要な局面であると申し上げさせていただきました。そのことを含めて4点ほど私なりの問題意識と問題提起を述べさせていただきますので、また残された時間で御議論をいただければと思います。
 社人研の資料の6ページで、予測の目的はというお話がありました。そもそも英語を直訳すると人口推計ではなくて、人口動態投影だという話がありました。そうであるならば、今は1点目のお話をさせていただいているんですが、例えば今回、先生方の御指導や御決断によって、人口推計という表現を変えることも可能なんです。
それはどういうことかと言いますと、これまで人口推計というものが予測なのか、あるいはまさしく投影なのかが国民一般にははっきりしない中で、ほぼ100%近い国民の皆さんは推計は予測であると思っているんです。そうすると、これらの人口動態、これまでは推計と言っていたものの情報の伝搬によって、国民の皆さんの期待形成を通じて、行動パターンに影響を与えている可能性があると私は思っています。特に若年世代の行動パターンに何がしか期待形成を通じて影響を与えている可能性を否定できないなと思っておりますので、それはそのことを通じて、例えばコーホートの特性の変化もすごいスピートで起きるわけですから、一体この作業は何なのかをそこまで最初から真剣に御議論をいただいているということで安心をいたしましたが、本当に推計という言葉を使い続けていていいんだろうかということも是非一度、御議論をいただけるとありがたいというのが1点であります。
2点目は、冒頭、総務省の方にいろいろと御質問があったことは、国勢調査が客観性とか有意性の面で本当に担保されているのかという観点で御質問があったと思います。そのことは社人研の人口推計でも同じことが言えて、是非今回の投影作業においては、客観性とか有意性の観点で、こういう点には注意を要するというような留意点をより明確に明示された上での結論を出していただいた方が1点目の、つまりこれは予測ではなくて投影であるという観点からすると、より客観性を担保できるのではないかというのが2点目です。
3点目は2点目のこととも1点目のこととも関係があるんですけれども、これまで5年ごとに推計してきたんですが、過去の推計とその後の実績との乖離がもしあるとすれば、やはりそういうことに対する評価を述べていただかないといけない局面なのではないかという気がいたしております。このことに関して言うと、この推計作業に関わってくださった先生方は意外に国会での審議はお耳に入っていないケースが多いと思うんですけれども、意外に人口推計のことは国会で議論をされていまして、先ほど部長が恣意的とか恣意性という言葉をお使いになっていますけれども、これは恣意的なのではないかということは国会でも随分議論をされているわけであります。そういうことを考えますと、評価にもチャレンジしていただけないか。これが3点目です。
最後に4点目です。当然これは投影作業なので、政策的インプリケーションを生み出すものではないんですが、1点目で申し上げたように、この結果が公表されることで国民の皆さんに期待形成とか行動パターンに影響を与えている可能性がありますので、やはり政策的に留意すべき点とかがもしあれば、そこはマンデートの範囲外であることを明示していただいた上で、しかし、言っていただいてもいい局面ではないか。
例えば社人研の資料の2ページで、たった200年くらいの間に3倍になって、また3分の1に減るという。特にこの100年の間ですと、変化率で言うとドラスティックな変化が起きているんですが、例えばこの200年の間に一気に3倍になるその人口や地域社会の構造に合わせて、社会インフラを増やしていったわけですね。そして、今その増やしてしまった社会インフラを今後、維持管理しようということにコストを費やそうとしているわけであります。
しかし、これが200年間でもし3分の1になるのだとすれば、一体それはどういう意味を持つのかということは、人口問題を御専門にされる立場からマンデートの範囲外であると言いつつも、はっきり何かサジェスチョンをしていただいた方がいいのではないか。わかりやすく申し上げれば、例えば国土交通省が認可をしているダムのこれから建設する数は、あと150個あるわけであります。例えばそれが1つの例でありますけれども、ほかにも社会インフラはいっぱいあるわけでありまして、そういうことを何がしかの御専門の立場から御指摘をいただかないと、今度は社会保障の方の財源にも当然影響を与えてきます。というようなこともありまして、4点目は政策的に人口動態の観点から政策当局が配慮しなければいけない点は何かということを最終的な報告の中で付言していただいてもいいのかもしれないなというようなことであります。
以上、4点ほど今回の作業を始めていただくに当たって、たまたまこの時点で政府の担当としております私の立場から、この問題意識を述べさせていただきましたので、是非議論の中で多少なりともお考えいただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

○津谷部会長
 副大臣、ありがとうございました。長期的、短期的、いろいろなことがございますけれども、これについてもこの部会で審議をさせていただきまして、話し合い、何らかの結論を出していきたいと思っております。
 加藤委員、どうぞ。

○加藤委員
 今、大塚副大臣のお話とも関連するんですが、私が言うのも変なんですが、例えば人口推計に対して、経済社会要因というものを大事にしなければいけないという議論が今まで幾らでもありました。しかし、よくよく考えてみると、それに対して、なぜそういうことを言うかというと、人口推計に対して、それが将来のプロジェクションであるということの理解がないということでの批判が今まで相当あったわけだと思います。その意味で言うと、副大臣がおっしゃるような形で、投影という形にはっきりさせた方が物事ははっきりするのではないかということだと思います。
それを踏まえて提案というか、考えていただきたいことは、例えば将来のプロジェクションということになれば、パラメータを将来に対して伸ばすということになると思いますが、今までその伸ばし方として3×3という形でのシナリオで伸ばされていると思いますが、多分今の時代を考えていくと、パラメータの設定の段階において、ある程度その不確実性みたいなものを入れた上での置き方、例えば1つの例ですが、将来は1.3になると言っても現実には誤差があるので、ある程度モンテカルロ的なシミュレーションを含めながら考えていくという方法もあるのではないか。逆に言えば、そういうことをやった方がプロジェクションという意味合いが強くなってくるのかなというのが1点目。
もう一つはこれは先走るのかもしれないのですが、3×3だけではなくて、これからもしかすると第三の要素としての移動についても、もう少しシナリオといいますか、考え方をある程度幅広いパターンを考えていく必要があるのではないかと考えました。
以上、2点です。

○津谷部会長
 金子部長、何かコメントはございますか。

○金子人口動向研究部長
 ありがとうございました。パラメータの不確実性を明示的に考慮すべきであるということでございまして、実を言うと前回の推計におきまして、死亡についてはそれを試みております。先ほど説明いたしましたKtというパラメータですけれども、これが当然、測定誤差等を含んだ変動がピリオド的に、すなわち年次的にございます。この変動をとらえまして、不確実性の分布と考えて、実を言いますと死亡の高位、低位というのは、これを使って導き出しているということでございます。今後、出生についても、そういったことができないかということを検討していきたいと考えているところでございます。

○津谷部会長
 ありがとうございます。
 鬼頭委員、どうぞ。

○鬼頭委員
 今、加藤委員から移動の話が出てきましたが、出生率と同じように、移動についても今年は非常に難しい局面だと思います。いろいろあるうちで、特にこの震災の影響というのがあると思います。
 この場合には、私、阪神・淡路大震災のときは知りませんのですが、その影響を何らか考慮した、何通りかのシミュレーションというのは必要になるのかなと思うんですけれども、そこについてお考えがあるんでしょうか。

○津谷部会長
 金子部長、どうぞ。

○金子人口動向研究部長
 震災の影響につきましては、今後、検討を重ねていきたいと思います。まだ、データの方もほとんどない状態ですので、データ等を収集しつつ検討していきたいということがあります。1つ申し上げられるのは、例えば出生率、死亡率、移動もそうですが、30年、40年というスパンの中長期的な推計をするということが人口推計の性質でございまして、その場合、先ほども何回か出てきましたけれども、コーホートというものを基準にしております。
 そうしました場合に、日本人は、この難しい時期を過ごしているわけですが、コーホートの最終的な子どもの数に影響があるかどうかといったことがポイントになりますので、そういう観点からすると、一時的なかなり大きな変動をどう扱うかというのは大変難しいですけれども、30年、40年となりますと、その辺が少し薄らいでくるのではないかというような感じを持っております。

○津谷部会長
 そのほか、もし御意見がございましたら。
 林委員、どうぞ。

○林(寛)委員
 私は今日、初めて、この会議に出ておりますので、今、いろいろと御説明を伺って、人口推計とはどのように行われているのかということがおおむねわかったかなと思います。
 それで、1ページ目、2ページ目の、こういう日本人口の歴史的推移というようなグラフを見て、おおっと思うんですけれども、古墳・飛鳥時代からということで、大変ばっくりしていて、ただ、日本列島という限られた島国だから、こういうようなグラフも描けるかなと思うんです。
 それで、少し聞いてみたいのは、このような人口のグラフは、地球レベルでといいますか、世界の、例えば五大陸レベルでこういうようなものが調べられているのか、国連などでそういうような数字、あるいは調査などをしているのか、限られた資源の中で、環境を守りつつ、地球としてどうやっていこうかというふうにみんな関心が向いているときだと思いますので、その辺、関心を持って聞いてみたいんです。

○津谷部会長
 どなたがよろしいでしょうか。
 それでは、高橋副所長どうぞ。

○高橋副所長
 世界の人口推計は、今年の5月に2010年ベースの世界人口予測が国連から発表されています。それで、1950年以降について、それぞれの国別の人口推計を公表しておりまして、詳細なデータがございます。
 まずは、そういう世界人口に関しては、国連の人口部が詳細な情報を公開していますので、それらに基づいて、我々もそれらを参考にして、人口推計等に活用しています。

○林(寛)委員
 済みません、この歴史的推移という、大分、昔の方までさかのぼってというのはわかるんでしょうか。

○高橋副所長
 研究者によっては、過去の歴史的な世界人口の趨勢について研究した例はございますけれども、勿論、近代統計以前の推計というのは、あくまでもそれは、例えば人口増加率を、ある一定の仮定をして、過去にさかのぼるといった推計はございます。
 しかしながら、正確な人口というのは日本にもないわけで、1つは鬼頭先生の御研究の中にあるのですけれども、享保6年、日本については江戸時代の将軍吉宗の時代から人口統計がつくられていて、人口はございます。世界人口に関しては、あくまでも推計、予測に関するものでございます。

○津谷部会長
 若干付け加えますと、歴史をどこまでさかのぼるか、どこからを人類の歴史の開始とするかということ自体について合意がないわけですけれども、世界人口の歴史的推計として、恐らく最もよくアメリカなどで使われているものに、デビッド・ヤオキーという人口学者の推計があります。その推計は、世界人口を石器時代ぐらいまでさかのぼっていますが、世界人口は産業革命が起こった18世紀後半を境として、ロケットが上に噴射されるような形で急激に増加を始めました。それまでは世界人口は停滞もしくは微々たる増加を長い間続けていたのですが、その後急増に転じたわけです。そして現在世界人口は、恐らくちょうど、そのピークぐらいのところにあり、これからどうなっていくかという軌道修正のちょうど潮目にいるように思います。
 もし、その資料にご興味がおありでしたら、御連絡いただければと思います。

○林(寛)委員
 ありがとうございます。
 世界人口の、この国連の出しているものを参考にいただければと思います。お願いします。

○津谷部会長
 その他、いかがでしょうか。
 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員
 やはり私は、今回で2回目なんですけれども、この人口推計の技術的なというんでしょうか、あるいはサイエンティフィックな側面というのは、ある意味では非常に確立していると思って、これが多分、推計にしても、あるいは投影にしても、100年先のことはわかりませんが、5年、10年ぐらいのスパンで見ると、恐らくそんなに大きなずれもないでしょうし、また、今までも大きなずれはなかったんだろう。ですから、そういう意味で、非常にベーシックなそういう部分でのものは確立したように、私は素人で、専門ではないけれども、そう思っています。
 やはり難しいのは、何のためにやるかという議論になってしまうと思うんです。先ほど副大臣が4番目に、いろんなそういう政策的に使わざるを得ない部分というのはどうしても出てくるので、そこに対する提言を盛り込んでもいいのではないかというサジェスチョンをいただいたと思うんですが、その場合に、例えば人口全体では減るんですけれども、高齢者人口は相対的に増えるわけです。
 しかし、高齢者人口といっても、それでは、高齢者というくくりの中で、比較的若い高齢者と、年を取った高齢者、後期高齢者という、余りいい言い方ではないという方もいらっしゃいますけれども、私は後期高齢者と普通に言っていて、この方々が急増していくんです。そうすると、政策提言ということまで視点に入れたことを、多分、この場である程度、議論しようとすると、単純な、きちんと確立された推計方法にプラス、質的なというんでしょうか、単純に量的な問題だけではなくて、増えている内容とか、減っている内容とか、それがどういう意味を持つのかとか、そこにまで切り込まないと、とてもできない話なのかな。
 それがここの審議会のミッションであるかどうかというのは、やはり非常に難しいという気がいたします。それは、例えば高齢者人口1つ取ってもそうですし、例えば死亡者数もこれから急増していきます。今、年間にざっと120万人亡くなっていますけれども、これが160万人とも、170万人ともなります。そうすると、一体、死亡する50万人の増加を今のままの医療の制度の中でいいのかどうかということは、当然、これは50万人増えるわけですから、推計でわかるわけですから、そこに政策的な意味合いを持たせた形でやろうとしますと、物すごく大きなほかの要因とか、それから、一体、だれが、どこで、どう死ぬのかという、極めて重要な問題を、ここである程度、話をせざるを得ないのではないか、そんな気がするんです。そこまで突っ込めるのかどうかという辺りは、正直言って、少し難しいのかなという気はいたします。

○津谷部会長
 副大臣、どうぞ。

○大塚副大臣
 あくまで問題提起と申し上げましたので、そういうことも含めて御議論いただければありがたいということですので、まさしく、今、そうして御質問いただいて、本当に感謝を申し上げたいと思います。
 当然、5年、10年先は、より推計、予測の色彩が強く、先生がおっしゃるように、かなり確度の高いものだと思います。そういう中で、5年、10年というスパンの中での政策的インプリケーションを述べようとすると、当然、ここでコンセンサスができなくてはいけませんので、センシティブなところまで入り込むというのは、それはマンデートでもないし、また、難しいと私も思います。
 ただ、もし可能であるならば、コンセンサスの得られる範囲で、当然、後期高齢者の皆さんが増えるのは、みんな何となくわかっているわけでありますけれども、そうすると、それに対応した政策的行動が必要かもしれないという程度のことは言えるかもしれませんし、あるいは先ほど私が引用させていただいた2ページの、こういう100年とか200年スパンでの国民の皆さんに対するメッセージというのは、より余り神経を使わずにざくっとおっしゃっていただける部分ではないかという気もいたします。
 いずれにしても、最後にもう一度機会があったら申し上げようと思っていたんですが、鈴木先生から御質問いただいたので、ここで述べさせていただきますと、要は、この人口動態投影、あるいは推計作業というのは、まさしく何であってというのは、先ほど何回も皆さんも言っておられますけれども、そして、この推計された結果は可変的なのかどうかということを国民の皆さんにお伝えいただきたいんです。
 つまり、5年、10年というスパンでは余り可変性はないと思います。しかし、30年スパン、つまり1世代単位で言うと、私は多少、可変的な部分があるのではないかと思っていて、したがって、そこを可変的ではないんだという伝わり方を、今、多分、相当していますので、先ほど申し上げましたが、実は国民の皆さんの期待形成に影響を与えている可能性があるという気が何となくいたしておりまして、定量的に何かデータで検証したわけではありませんので、断定はいたしませんけれども、そういうような趣旨でありますので、必ずやってくださいという意味ではありませんので、是非、引き続き御議論いただければと思います。

○津谷部会長
 それでは、もう時間がないので、これを最後にいたします。

○白波瀬委員
 いいです。

○津谷部会長
 申し訳ありません。
 一応、最後に少しだけ、人口将来推計つまりプロジェクションについて整理をさせていただきますと、推計にはいろいろなものがありますが、先ほどからのお話にあるように、将来推計と言っておりますものは将来投影です。将来人口推計は実は大変テクニカルな作業でございまして、それにはコーホート率と期間率の差など、一般の方々にはわかりにくい部分があるかと思いますが、基本的には、将来人口推計は直近の人口の静態、つまり、性・年齢別の人口の実測値、今回これは2010年の国勢調査の結果になりますが、それを使って3つの人口動態、先ほどから金子部長が御説明になっております、人口の変動を直接起こす3大要因、つまり死亡、出生、移動をプロジェクト、つまりシミュレートしまして、最終的には、将来の人口の静態、つまり、将来の性・年齢別人口を将来投影していくというふうな作業になってくるかと思います。
 先ほど少しお話がありました社会経済的な要因についてですが、実は私は将来人口推計の審議に参加させて頂くのは今回が3回目でして、過去10回の会合にすべて参加しております。そのときによく言われましたのは、将来人口推計は社会経済的な要因を全く考えていないのではないかということでした。どうして今回金子部長がここで社会経済的要因について御説明なさったのかという白波瀬委員からの御質問について私が推測しますに、人口推計にも間接的ではあるけれども社会経済的な要因は考慮されているということではないかと思います。つまり、この3つの人口動態、つまり出生、死亡、移動に社会経済的な背景や要因が関わっているわけで、それらは勘案されています。ただ、社会経済的な要因の影響を直接的に推計しろという御意見に関しては、やはりそうではなくて、人口動態の要因として、そこから推計をしていきたいという御説明であったと私は理解しております。
 ただ、副大臣がおっしゃいましたように、実はプロジェクションはプレディクションではありません。皆さん、プロジェクションはプレディクションだと思っておられて、その結果外れたとか、どれぐらい誤差が生じているという見解がでてきていると思います。当然、推計にはある程度の誤差は出てくるわけですが、同時に、推計が全く外れてしまっては、これはやる意味がないわけでして、政府を含め社会を維持・運営していくためには、必ず何らかの将来的な設計図、シナリオというものが必要になってきますし、具体的な数値が必要になってまいります。何らかの数値的な根拠をできる限り客観的に、かつ精緻に、そして、先ほど副大臣がおっしゃいました恣意性、言い換えれば不確実性の幅がどれぐらいのものであるのかを具体的にお示しすることが重要であると考えます。先ほど申しましたように将来人口推計は大変テクニカルなものですが、一般国民の皆様にこれをわかっていただくように、私たちも説明していく責任が今まで以上にあると理解しております。
 そして、政策的なことについても、政策提言をすることは本部会の使命ではないと私は思いますが、ただ、人口の将来推計の結果や手法の政策的なインプリケーションについては、今後の審議でさせていただきたいと思っております。
 もし、その他、何かコメント・御意見がございましたら、お願いいたします。
 よろしいでしょうか。
 それでは、最後に、どうぞ。

○鬼頭委員
 今、部会長がおっしゃられた最後の部分は、とても大事だと思うんです。ただ、我々がどこまで、それに携わるかというのは疑問があります。日本の人口というのは、過去、何度も、多過ぎると言われたり、少な過ぎるとずっと言われ続けてきた。その都度、その都度、だれも適当だということを言わなかった。
 私の印象では、心理的影響なのでしょうか、日本人はある目標が示されると、案外、その方向に乗っかってしまう部分がある。具体的に言いますと、ジャーナリズムの役割はものすごく大きいんです。ですから、我々は非常に厳格に、科学的に、本当に禁欲的な推計だと思っているんですが、これがどういうふうに伝わるかというのはとても大事で、将来の暗い予想だけを強調して、そうなったらもうだめだねと若い人に思わせてはだめなんですよ。
 そうならないようにするためには、林委員には是非、正確に伝えていただきたいし、今日、傍聴に来ていらっしゃるジャーナリストの方々にも、ここがこう変われば、こう変わる可能性があるんだということも是非、伝えていっていただければいいと思います。

○津谷部会長
 この部会の委員の方々にも、その意味でも、広報も含めまして、御協力と御助力をお願いしたいと思っております。
 それでは、もう時間がまいりましたので、本日の審議はこれまでにさせていただきたいと思います。
 本日は長時間にわたりまして、熱心かつ活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。
 なお、次回の開催日程につきましては、改めて事務局より委員の方々に日程の調整をお願いいたしますので、皆様に御連絡させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 副大臣、本当に今日は長時間ありがとうございました。

○大塚副大臣
 どうもありがとうございました。

○津谷部会長
 それから、御説明にいらした府省の方も、本当にどうもありがとうございました。


(了)
<<照会先>>

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代): 03(5253)1111 内線7707、7774
直): 03(3595)2159

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