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2011年7月14日 第1回非正規雇用のビジョンに関する懇談会議事録

職業安定局派遣・有期労働対策部企画課

○日時

平成23年6月23日(木)
15:00~17:00


○場所

厚生労働省省議室


○出席者

荒木委員 小杉委員 佐藤委員 柴田委員 諏訪委員 清家委員 樋口委員 横溝委員


○議題

(1) 議論の進め方について
(2) 「非正規雇用」を取り巻く現状と論点について
(3) その他

○議事

○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 ただいまから「第1回非正規雇用のビジョンに関する懇談会」を開催させていただきます。私、職業安定局派遣・有期労働対策部企画課長の土屋と申します。よろしくお願いいたします。座長が選任されるまでの間、私のほうで進行を務めさせていただきます。はじめに森山職業安定局長より、本懇談会の開催に当たりましてご挨拶を申し上げます。
○森山職業安定局長 職業安定局長の森山でございます。一言ご挨拶を述べさせていただきます。
 皆様方にはこの度、大変お忙しい中、非正規雇用のビジョンに関する懇談会の委員をお引き受けくださいまして、本当にありがとうございます。また、本日は大変お忙しい中お集まりいただきまして、重ねて御礼を申し上げる次第でございます。
 改めて申し上げるまでもなく、パート労働者、あるいは派遣労働者、あるいは有期契約労働者といった非正規労働者は全体として増加傾向にございまして、後ほどの詳しい資料でまたご説明させていただきますが、また皆様にはご案内のとおりでございますが、2010年には全労働者の約34%に当たる1,755万人が非正規労働者になっております。この問題につきましては、これまでさまざまな雇用の安定あるいは処遇の改善等々におきまして私ども、いろいろな対策、またそれぞれの態様に基づく対策というものを講じてきておりますが、共通する問題点が多いということ、そういった課題に対応するために横断的に取り組むことが求められているという状況であると考えているところでございます。
 そこでこの懇談会では、大変広い範囲でございますが、非正規労働者の問題点あるいは課題、あるいは基本姿勢、あるいは施策の方向性、こういう問題につきまして横断的に幅広くご議論いただきまして、できますならば、この年末に向けて非正規労働者対策についての総合的な理念を示す非正規雇用ビジョンというものの策定を願ってはと思っているところでございます。各委員の皆様におかれましては、大変お忙しいところでございますが、ご見識を活かしたそれぞれの専門的な見地からの幅広いご意見をいただきまして、こういう問題につきましてのご議論等を進めていただければと思うところです。簡単ではございますが、そういうことをお願い申し上げまして冒頭のご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 それでは、報道関係の方の頭撮りはここまでとさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 続きまして、本日は第1回ですので、まず本研究会の設置要綱についてご説明させていただきます。お手元の資料1をご覧いただければと存じます。本懇談会の設置の趣旨です。いま局長からもご挨拶を申し上げたとおりですが、非正規労働者が増加傾向にある中で、非正規の方の雇用の安定、処遇の改善に向けて公正な待遇の確保に横断的に取り組むことが求められているという現状の中でこの懇談会におきましては、非正規労働者の呼称や態様を問わずに、広く「非正規雇用」を対象としまして、雇用の安定あるいは処遇の改善といった観点から必要な施策の方向性を理念として示す「非正規雇用ビジョン」を策定するということを趣旨としましてお集まりいただいた次第です。
 検討事項としましては、これもいま局長から申し上げたとおりですが、非正規雇用をめぐる問題点や課題、この問題への基本的な対応の姿勢、非正規雇用に関する施策の方向性などにつきましてご議論いただきたいと思っております。
 懇談会の運営です。この懇談会は、職業安定局長からお願いを申し上げましてお集まりいただいている次第です。懇談会の座長につきましては、お集まりいただいている皆様方の互選により選出するということにさせていただきたいと思います。この懇談会の庶務につきましては、私ども企画課で担当させていただいております。また、開催の期間ですが、今日が第1回ということで、また第2回を7月14日にご予定をお願いしております。その後、秋にも引き続きご審議をいただいて、年末にはこの非正規ビジョンをまとめるという形で進めさせていただければと思っているところです。設置要綱のご説明は以上です。
 続きまして、お集まりいただきました委員の皆様方のご紹介をさせていただきたいと思います。恐縮ですが、ご紹介をさせていただいた際に皆様方には一言ご挨拶をいただければと存じます。名簿を資料2としてお付けしております。ご覧いただきながらと思います。まず、荒木尚志委員でございます。
○荒木委員 東京大学で労働法を担当しております荒木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 次に、小杉礼子委員でございます。
○小杉委員 労働政策研究・研修機構、小杉と申します。主に若い人の働き方、教育との接続というようなことをやっております。よろしくお願いいたします。
○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 次に、佐藤博樹委員でございます。
○佐藤委員 佐藤です。今は、東京大学大学院の情報学環の所属で、社会科学研究所から学内出向で所属が変わりました。専門は人事管理で、企業の人材活用を勉強しています。よろしくお願いいたします。
○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 次に、柴田裕子委員でございます。
○柴田委員 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの政策研究事業本部という、特に中央官庁の皆様からお仕事をいただいているところの業務企画室長をしております。どうぞよろしくお願いいたします。
○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 次に、諏訪康雄委員でございます。
○諏訪委員 法政大学の諏訪でございます。大学院では雇用政策プログラムを担当いたしております。よろしくお願いいたします。
○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 次に、清家篤委員でございます。
○清家委員 慶應大学の清家でございます。専門は労働経済学で、主に高齢者の雇用の問題を研究していますが、この間まで鈴木課長のところで柴田さんと一緒に派遣労働などの非正規雇用のこともやっていましたので、ここでまた少し議論させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 次に、樋口美雄委員でございます。
○樋口委員 慶應大学の樋口でございます。授業では経済政策、計量経済学といったものを担当しております。どうぞよろしくお願いいたします。
○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 次に、宮本太郎委員でございますが、本日は欠席とのご連絡をいただいております。次に、横溝正子委員でございます。
○横溝委員 弁護士の横溝正子と申します。私は、労働関係では約6年間、中央労働委員会の公益委員をしておりました。それから、去年まで8年間、日弁連の労働法制委員長というのをしておりましたが、何分、皆さんのような学者さんとか、実務経験の豊富な方と違いますので、勉強しながら一生懸命に務めを果たしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 今回は、以上、9名の方にお願いしているところでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 続きまして、要綱に従いまして座長の選任に入らせていただきたいと思います。先ほどご説明いたしました要綱の3(2)によりまして、この懇談会の座長は参集者の皆様方の互選により選出をすることとしております。事務局としましては樋口委員にお願いしたいと考えておりますが、皆様、いかがでございましょうか。
                 (異議なし)
○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 では、異議なしということでいただきましたので本懇談会の座長を樋口委員にお願い申し上げたいと思います。それでは、大変恐縮でございますが、樋口座長、席をお移りいただきまして、これからの議事進行についてよろしくお願い申し上げます。
○座長(樋口) 円滑な議事に努めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。まず議事の公開について申合せをしておきたいと考えておりますので、事務局から説明をお願いいたします。
○宮本企画官 では、資料3に基づきましてご説明いたします。「議事の公開について」です。懇談会は、原則公開とする。ただし、以下に該当する場合であって、座長が非公開で妥当であると判断した場合には、非公開とする。
 1つ目、個人に関する情報を保護する必要がある。2つ目、特定の個人等にかかわる専門的事項を審議するため、公開すると外部からの圧力や干渉等の影響を受けること等により、率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるとともに、委員の適切な選考が困難となるおそれがある。3つ目、公開することにより、市場に影響を及ぼすなど、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある。4つ目、公開することにより、特定の者に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある。上記の?から?につきましては、厚生労働省が定める「審議会等会合の公開に関する指針」における審議会等会合の公開に関する考え方に準拠するものです。
○座長 ただいま説明がありましたような公開方法で進めてまいりたいと思いますが、何かご意見、ご質問がございましたらお願いいたします。よろしければ、ただいまの資料3に沿って議事を公開にしていきたいということですが、よろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○座長 ありがとうございます。それではそのように計らせていただきます。本日の次の議題ですが、「『非正規雇用』を取り巻く現状と論点について」議論に移りたいと思います。まず事務局から、資料4から8までについて一括して説明のほどお願いします。
○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 まず、お手元の資料4をご覧いただければと思います。本懇談会におきましては、先ほどご説明いたしました懇談会の設置要綱あるいは局長の挨拶で申し上げました懇談会の趣旨に沿って自由にご議論をお願いしたいと思っておりますが、今回、議論の初回ということで、初回に当たりまして、ご議論いただく際のご参考として、事務局として論点と考えられる点を整理いたしまして資料をご用意させていただいた次第でございます。そういった趣旨からこの資料をご参照いただきながらご議論いただければと思っております。
 まず「非正規雇用ビジョン」の名称自体ですが、このあとの論点の中にも出てまいりますように、「非正規雇用」をどういう呼称で呼んでいくことが適当かということの議論も含めてご議論いただく予定ですし、また内容も、どういった方向性といったことについてもこれからの議論です。そういった意味で、今後の議論に応じましてビジョンの名称の変更ということは十分にあるということで考えさせていただいているところです。その上で、四角の中ですが、ここは要綱にも記載させていただいたところですが、ビジョンの策定、ご議論に当たりましては、パート、アルバイトあるいは契約社員・嘱託、派遣労働者といったような名称を問わずに広く非正規雇用を対象としてご議論いただければと思っております。その上で、雇用の安定あるいは処遇の改善といった観点から公正な待遇の確保に必要な施策の在り方を理念として示すということを大きな前提としてご議論いただければと思っているところです。こういった点に立ちまして、このあと、具体的な論点として考えられるものを大きく4つ掲げさせていただいております。
 まず第1点は、そもそも非正規雇用とは何かということで概念の整理ということです。非正規雇用につきましては非正規雇用と正規雇用、そういった対比の中で位置づけられているものでもありますし、また、そういった中で議論がなされているものですが、まず第1に正規雇用と非正規雇用とを分けるものをどのように考えるかということです。また、典型的なものとしてこれまでも捉えられてきたような正規労働者のイメージ、正規労働者像と、今後政策論を考えていくに当たりまして念頭に置くべき正規労働者像といったもので違いがあるのかどうかといった点もご議論いただくべき点ではないかと思っております。その際に正規雇用、非正規雇用を分ける考慮要素として私どもが考えられるものとして掲げさせていただいたのが下の?から?です。
 労働契約の期間の定めの有無、所定労働時間の長短の問題、直接雇用か間接雇用かといったような問題、長期雇用慣行を前提とした待遇や雇用管理の体系となっているかどうかというような問題、勤務地や業務内容の限定があるかどうかというような問題、こういった点が正規雇用、非正規雇用とを分けていく考慮要素として考えられるものになるのではないかということです。
 それから(2)としまして、(1)の点にも関連しますが、ワーク・ライフ・バランスやディーセント・ワークといった観点から、これまで典型的なものとして捉えられていた正規労働者と非正規労働者との中間に位置するような雇用形態というものについてどのような位置づけを考えていくべきかという点があろうかと思います。
 さらに(3)としまして、「非正規労働者」あるいは「非正規雇用」というような呼称、呼び方が適当かどうか、あるいはどのような呼び方が考えられるのかということもまたご議論いただければと思っております。以上、1つ目の概念整理の点です。
 2つ目の点としまして、非正規雇用をめぐる問題点や課題の整理ということです。これまでも私ども、厚生労働省としていろいろな態様ごとに施策の推進を図っていく中で非正規雇用をめぐる問題点、課題の観点としては雇用の安定性あるいは処遇、職業キャリアの形成、セーフティネットといったような観点があるということで、そこからいろいろな施策に取り組んでいるところですが、今般、この場で横断的なご議論をいただくということに当たりまして改めてこれらの観点から、あるいはこれらの観点以外にもさまざまな観点があり得ようかと思います。そういった観点からどのような問題点や課題が非正規をめぐって見られるかという点をご議論いただければということです。
 次に3つ目の項目としまして、非正規雇用をめぐる問題への基本的な姿勢、2の問題点や課題を踏まえた取組みの基本姿勢についてです。ここのところでは、1つの考え方としてこういったことが立ち得るのではないかということでまず最初の4行を書かせていただいております。価値観やその生活様式が多様化する中で企業が必要とする人材も多様化している。そういった中でどのような働き方であっても働くことが報われる社会あるいは公正な見返りが得られるような社会、そういったものを築くことが重要ではないかという1つの考え方が立ち得るのではないかという中で、非正規雇用についてどのように対応していくべきか、向き合っていくべきかというような論点があり得るのではないかということです。
 大きな4つ目の論点としましては、非正規雇用に関する施策の方向性ということで項目のみ書かせていただいております。以上、1、2、3のご議論を踏まえつつ、施策の方向性についてもご議論いただければということです。非常に簡単でしたが、論点についての説明は以上です。また、引き続き資料5以降のデータ等のご説明をさせていただきます。
○宮本企画官 続きまして、資料5「非正規労働者データ資料」につきましてご説明申し上げます。
 1枚おめくりいただきますと、まず「我が国の雇用構造」についての資料です。3頁目は我が国の人口の推移です。右のほうを見ていただきますと、2055年には9,000万人を割り込み、高齢化率は40%を超えるという推計が出ております。
 1枚おめくりいただきまして5頁です。1-2としまして、新規高校卒業者の求人・求職状況の推移が示されております。また1枚おめくりいただけますでしょうか。左側にありますのが新規大学卒業者の就職状況の推移です。右側にありますのがフリーター・ニートの推移です。左側のグラフがフリーターの数の推移です。ピーク時が217万人で、平成22年には183万人となっております。右側がニートの数の推移です。平成14年以降、60万人台の水準で推移しております。
 1枚おめくりいただきますと、左側の資料が女性の年齢別就業率です。日本の特徴としまして、黒いラインですが、M字のカーブを描いているという現状です。右側が高齢者の就業率です。欧米諸国と比べると、特に男性で高水準という状況です。
 1枚おめくりいただけますでしょうか。2としまして「非正規労働者数の推移と勤続年数等」です。11頁から12頁にかけまして、非正規労働者の定義等があります。上の括弧の中は、枠内に法令上の非正規労働者の取扱いについての記載があります。下の段から12頁にかけまして、主な統計調査における非正規労働者の定義としまして、パート労働者やアルバイトといった非正規労働者の方の定義が、それぞれ記載してあります。12頁も引き続き定義が書いてあります。
 13頁です。右側のほうです。正規労働者と非正規労働者の推移です。いちばん右側の棒グラフですが、平成10年には、非正規労働者は1,775万人、すべての労働者に占める割合が34.3%に達しております。
 14頁をおめくりいただけますでしょうか。左側のグラフが正規労働者と非正規労働者の推移です。いちばん上の青いラインが正規雇用者(男性)で、81%まで低下しております。下のほうにあります紫色の点線が非正規雇用者(女性)で、2010年には53.8%と、過半数を超える状況です。右側が非正規労働者の年齢別の状況です。若年層において急増しているという状況が見て取れます。
 16頁が今の資料の男女別のものです。右側、17頁ですが、契約期間別の正規労働者と非正規労働者の推移です。2007年、紫色の部分を見ていただきますとわかりますように、常雇の非正規労働者が非常に増加しているという現状が見て取れます。
 18頁です。雇用形態別の正規労働者と非正規労働者の推移です。2010年のグラフ、いちばん右側のものを見ていただきますとおわかりになりますように、契約社員・嘱託が増加しているという状況です。右側のグラフです。これは従業員の規模別、雇用形態別雇用者数です。いちばん上が1,000人以上の大企業でして、そこの右側のほう、黄色い部分とやや白っぽい部分ですが、派遣社員が黄色い部分、契約社員・嘱託が白っぽい部分ですが、大企業ほどこういった方々が多い。逆に、中小企業のほうを見ていただきますと、緑色の部分ですが、パートが多いという状況です。
 おめくりいただきまして20頁です。左側のグラフが年齢階層別の勤続年数の推移、これは全労働者です。右側のグラフが、学卒後同一企業に継続勤務する労働者の割合です。近年、若年層では低下しておりますが、45歳以上では上昇している傾向があります。
 次に22頁です。正規・非正規別の継続就業期間別労働者割合です。上のグラフが正規労働者、右側のやや白っぽい部分が10年以上の部分です。10年以上の者が半数を占めております。非正規、下のグラフですが、ブルーの部分と紫の部分が3年未満のものです。3年未満が約半分、緑色の部分が3年から4年、黄色い部分が5年から9年です。こういったものが半分を占めているということですが、いちばん右の白い部分、これは10年以上ですが、こういった方々も約2割を占めているという状況です。右側が雇用期間の定めのある労働者の勤続年数別の労働者割合です。オレンジの部分が10年以上の勤続年数の方ですが、平成22年には約2割という状況になっております。
 おめくりいただきまして24頁です。これはパートと派遣労働者についての通算勤続年数です。パートとしての勤続年数が10年を超える人の割合、これはオレンジの部分ですが、3割を超えております。また5年を超えるもの、これはオレンジの部分に白い部分を足したものですが、約6割に上っております。右側の資料は短時間労働者の契約期間です。これは事業所調査です。左側の円グラフが期間の定めの有無です。期間の定めが「ある」と回答した事業所が85.9%です。右側の棒グラフは、それぞれ、1回当たりの契約期間、契約の更新状況、最も多い実際の更新回数について示した資料です。
 おめくりいただきまして左側の資料です。これは今の同じ調査の個人調査です。大体、同じ傾向が見て取れると思います。右側の資料は派遣労働者の派遣元との契約期間です。これは少し見にくい資料ですが、登録型の派遣労働者の場合は、「1か月を超え3か月以下」という方が29.4%で最も多く、常用雇用型の方につきましては、下のほうにありますが、「期間の定めはない」とされる方が32.3%と最も多くなっております。
 おめくりいただきまして28頁です。これは雇用形態別の有配偶率の比較でして、非正規従業員では正規従業員に比べ有配偶率が低い状況です。
 続きまして、「非正規雇用に関する考え方」です。30頁をおめくりください。非正規労働者の活用に関する企業の意識です。赤丸で囲っておりますが、労務コストの削減のために非正規社員を活用している企業が多いという状況です。右側は企業で非正規労働者を活用する上での問題点です。赤枠で囲っておりますが、「良質な人材の確保」や「仕事に対する責任感」を掲げる事業所の割合が多くなっております。
 続きまして32頁です。今度は非正規労働者が非正規という働き方を選んだ理由です。赤枠で囲っておりますが、多い回答としましては「自分の都合のよい時間に働けるから」「家計の補助、学費等を得たいから」です。3つ目の赤枠としまして「正社員として働ける会社がなかったから」。これは、前回調査に比べて増加が多かったということで赤枠で囲んでおります。
 右側の資料が雇用形態別の非正規労働者を選んだ理由です。右のいちばん上に点線で囲ってあります「専門的な資格・技能を活かせるから」、これは契約社員がお答えになった割合が多いものです。2つ目の赤枠「自分の都合のよい時間に働けるから」、次の枠の「家計の補助、学費等を得たいから」、これはパートタイム労働者に多かった回答です。いちばん下の「正社員として働ける会社がなかったから」、これは派遣、契約社員に多かった回答です。
 続きまして34頁です。不本意就業の現状です。左側が正社員として働ける会社がなかった者の割合、右側が他の就業形態に変わりたいとする者の割合です。左側の正社員として働ける会社が少なかった者の割合、これは1999年から2007年に14%から18.9%に増加しております。また契約社員と派遣労働者につきましては、2007年では、それぞれ、3割を超える状況になっております。他の就業形態に変わりたいとする者の割合は、合計ですが、2007年には30.6%に達しております。35頁の資料は、非正規労働者のうち正社員になりたい者の割合です。平成19年には22.5%に増加しております。
 続きまして36頁です。正社員になりたい理由です。赤い枠で囲っておりますが、「正社員のほうが雇用が安定しているから」「より多くの収入を得たいから」が大きな理由です。37頁は、契約社員につきましてイメージが湧きにくいというご指摘がございましたので、契約社員の男女の割合、常雇か臨時か日雇かの割合、実際に契約社員の方がどういう仕事に就かれているかを示したものです。男性につきましてはいちばん右側の生産労務、女性につきましては真ん中の事務に就かれている方が多いという結果です。
 続きまして3-8、現在の職場での満足度です。特徴的なところを赤の点線で示しておりますが、下のほうの雇用の安定性、福利厚生、教育訓練・能力開発のあり方につきましては正社員の方の満足度が高いのですが、上のほうの労働時間・休日等の労働条件につきましては、正社員以外の方の満足度のほうが高いという状況です。
 続きまして、「処遇等」についての資料です。40頁と41頁は雇用形態別の賃金カーブです。41頁をご覧いただきますと、正社員のほうでは賃金カーブが右上がりですが、非正規の労働者の方につきましては、ほぼすべての世代で正社員の給与を下回っておりまして、年齢による変化も少ない状況が見て取れます。
 1枚おめくりいただきまして42頁です。これは一般労働者、短時間労働者以外の労働者ですが、所定内給与額別労働者割合の推移です。右側が雇用形態別年間所得の分布です。非正規労働者の方は、正規労働者よりも年間所得の分布のピークが低い位置にあります。特にパート・アルバイトの9割は、年間所得、200万円未満となっております。
 1枚おめくりいただきまして44頁です。左側の資料が勤続年数別所定内給与額の推移です。これは雇用期間の定めが有る方のものです。右側が男性大卒者の所定内給与額です。賃金は勤続年数とともに上昇いたしますが、近年はそのカーブが緩やかになっております。
 1枚おめくりいただきまして46頁です。教育訓練の実施状況です。左側のグラフがOJT、右側がOFF-JTの実施事業所割合です。いずれにつきましても、正社員に対する実施率が正社員以外に対する実施率よりも高くなっております。右側の資料が非正規労働者に適用される制度で、適用される各種制度割合は正社員に比べて非正社員は大きく下回っているということです。特に退職金制度、賞与支給制度、自己啓発援助制度につきましての差が大きい状況です。
 続きまして48頁です。左側が総実労働時間の推移です。右側が正社員と非正規労働者の労働時間です。正社員と非正規労働者の労働時間を比較いたしますと、所定内労働時間、これは青い部分ですが、これで3時間、超過実労働時間で2時間、これは白い部分ですが、この時間ほど正社員のほうが長いという状況です。
 続きまして50頁です。雇用形態別の労働時間を示したものです。いちばん上の正規の職員・従業員につきましては、オレンジ部分とやや白っぽい部分が40時間以上の部分でして、40時間以上が約8割を占めております。パート・アルバイトにつきましては、真ん中、紫の部分、これは15時間から29時間ですが、この15時間から29時間のものが約4割で最も多いという状況です。派遣労働者、契約社員・嘱託につきましては、白っぽい部分より右側ですが、週40時間から48時間で働く者が4割で最も多くなっております。右側が週の労働時間が60時間以上の者の割合です。平成22年で約1割となっておりますが、30代男性につきましては、下の表のいちばん右側ですが、平成22年で153万人・18.7%と依然として高い水準です。
 1枚おめくりいただきまして52頁です。正規・非正規労働者の増減です。景気の変動に応じてどのような増減があったかを示しております。これを見ていただきますと、90年代半ば以降の景気後退期では青いグラフの正規労働者の方が減少する一方で、赤いラインの非正規労働者の方が増加しております。ただ、今回の景気後退期では、正規労働者、非正規労働者、ともに減少しております。特にリーマンショックの直後は非正規労働者の減少幅が大きい状況です。右側の53頁の資料は雇用調整の実施方法別事業所割合の推移です。今次の景気後退期では、緑色のラインの派遣労働者の削減、青いラインの「臨時・季節、パートタイム労働者の再契約停止・解雇」の割合が高かったということが見て取れると思います。
 続きまして、54頁以降は「転職・正社員転換」についての資料です。55頁は転職率の推移でして、近年、各年齢層で転職率は上昇しているという状況です。
 1枚おめくりいただきまして56頁です。これは非正規労働者の転職状況と転職理由についての資料です。左側の円グラフが、前職が非正規で過去5年以内に転職した者の現職の雇用形態別割合で、26.5%の方が正規の労働者となっております。非正規労働者の方が転職を希望した理由としましては右の棒グラフでして、「収入が少ない」「一時的についた仕事だから」ということが理由として多く挙げられております。右側の資料は有期契約から無期契約への転職状況の推移です。青い棒グラフが男性、白い棒グラフが女性です。過去5年間において事業所内で有期契約から無期契約に切り替えられた者は、男女とも、概ね6~7万人で推移しております。
 最後の頁、58頁です。正社員転換制度の導入と転換実績の状況です。左側のグラフが正社員転換制度を導入している事業所の割合です。青が「ある」、白が「なし」です。有期契約労働者、パートにつきましては、制度を導入している割合が多いですが、派遣労働者については、「なし」が多いという状況です。右側の資料が実際に実績があるかどうかのグラフです。以上が資料5です。
 続きまして、資料6「非正規雇用に関する施策」につきましてご説明申し上げます。2頁目をお開きください。左側のほうに「非正規労働者の課題と対応」とあります。これは、現段階で事務局としまして非正規労働者についての課題と対応をまとめたものです。
 まず課題としましては、非正規労働者につきましては正規労働者と比較して、1つ目としまして「解雇や期間満了による雇い止めなどにより雇用調整の対象とされやすい」、2つ目としまして「賃金が低い」、3つ目としまして「企業内で職業訓練の機会を得て職業能力を高める機会が乏しい」などの問題があるとしております。
 対応としましては4つ。1つ目としまして「正社員就職、正社員転換の支援」、2つ目としまして「キャリア形成支援の推進」、3つ目としまして「均等・均衡待遇の促進」、4つ目としまして「セーフティネットの強化」、これらによりまして、希望しても正社員になれない非正規労働者の数の減少につなげていくということで整理しております。3頁目以降は個別の施策についての資料ですので、説明は割愛させていただきます。
 続きまして、資料7「非正規雇用に関する雇用形態別の検討状況」です。まず「有期労働契約」です。3頁目にありますように、現在、労働政策審議会労働条件分科会でご検討いただいているところです。今後は平成23年12月ごろに議論の取りまとめをすると伺っております。
 次に「パートタイム労働」についてです。9頁をお開きください。そこにありますように、パートタイム労働につきましては、「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」において検討をいただいております。検討状況につきましては右下の「検討状況」にある状況でして、本年夏ごろを目処に取りまとめ予定と伺っております。
 最後に「派遣労働」です。11頁をお開きください。現在、改正法を国会に提出しておりまして、継続審議中ということになっております。資料7につきましては以上です。
 最後に資料8ですが、これは社会保障改革に関する集中検討会議に厚生労働省から提出した資料です。内容が大部ですので、説明につきましては割愛させていただきます。ご説明は以上です。
○座長 皆さんに十分議論していただくために時間を取ろうということで、簡単に説明をお願いしました。もし何かご質問、ご意見がありましたら、まずはただいま説明いただきましたものについてご質問をお願いします。
○佐藤委員 資料5のデータのことで、今回、非正規なり正規雇用の呼称等についても少し議論しようということなので、既存のデータのことを少し確認だけしておいたほうがいいかと思いました。たぶん皆さんはご存じかと思うのですが、17頁で就調の雇用契約期間で臨時、日雇、常雇というのを使われたり、呼称でのパートやアルバイトというのがあるのですが、17頁の注で「『常雇』とは1年超の雇用契約で雇われている者、又は期間の定めのない雇用契約で雇われている者」と書かれているのですが、調査票や調査対象者が調査票に記入するときの記入上の参考資料にはこういうふうに定義されていない。臨時と日雇の定義しかないのです。臨時と日雇の定義が書いてあるけれど常雇の定義はない調査票とインストラクション。
 つまり、記入者は、臨時と日雇、ですから臨時は1か月を超えて1年まででしたか、日雇が1か月までとは書かれていて、常雇の定義はないのです。たぶん回答者は、臨時と日雇を読んで、それに当てはまらない人が常雇に付けている可能性が高い。そうすると、可能性としては雇用期間に定めのない人だけでなく、雇用契約2年、3年の有期契約もあるかもわからない。
 ただ、後ろのほうの今回の資料でも雇用契約期間の調査を見ると、基準法の改正が2004年にありましたが、2年、3年契約は増えてないので、たぶんこれはそれほどいないでしょう。たぶん多いのは、無期の人と、もう1つは雇用期間の定めのわからない人。無回答はそれほど多くないので、わからない人が付けている可能性と、もう1つは1年など有期の契約なのだけれどもずっと更新されていて、自分は確かに1年の契約だが更新されているというような人がここに付けている可能性がある。
 ですから、17頁を見ていただくと、常雇だけはほとんど変化ないのです。だから、常雇イコール無期と考えると、雇用期間の定めなしを正社員とすると、正社員は全然変化していないことになります。これだけ見ると。常雇はそれほどほとんど変わってない。ですから、もしいまの雇用形態の変化、ほかのデータを見ると、常雇が全部無期の雇用契約とは考えにくいので、おそらくわからない人、ほかの調査で見ると、雇用契約期間はわからない人が調査をすると結構いるので、ただそれはそれほど多くないので、たぶん更新型の有期の人が、常雇を選択していると考えられます。
 ですから、参考資料の注の書き方だけを見ると、このように調査票に説明されていると思ってしまうので、そこは注意したほうがいいというのが1つです。
 もう1つは、呼称ですが、11頁に、呼称で就業形態を聴くときのが、これも就調で見ると、調査票なり記入上の手引きに書かれているのは、派遣労働者の定義しかないのです。派遣労働者だけはこのように書かれているのですが、ほかは一切、例えば契約社員について定義は書かれていません。調査員の手引きにはあるそうです。ですから、調査員に聞かない限りこの説明は受けないことになります。報告書の解説には説明がありますが調査票にはないのです。
 インストラクションとしては、派遣についてだけはこう書いてあるのでわかるので、当てはまるものがない場合は勤務先の呼称で近いとあなたが思うものを付けてください、と書かれているのが正しい理解なのです。ですので、37頁の契約社員は、実はこのように専門的職種と言われて答えた人はほとんどいないはずです。ですから、契約社員には、自分を契約社員と思って付けた人が付けていると思います。ほかの選択肢を見ると、たぶんフルタイム有期で、嘱託はたぶん定年後の人が付けている可能性があるのです。
 例えば、自動車産業の期間工などは、パート、アルバイトや嘱託にも当てはまらないため、契約社員を選択している可能性がある。契約社員は、専門的職種と定義して調査しているわけではないので、調査票あるいは調査の説明から見る限りそうなので、その辺はお互いに共有していたほうがいいかと思います。
○座長 事務局から何かありますか。
○宮本企画官 いまいただきましたご指摘を踏まえまして整理します。
○座長 統計によって非正規と言おうか一般労働者以外の所は、わりとまちまちな扱いをしているので、今回、統一する方向で検討に入っています。ただ、これには間に合わないと思いますができる状況だと思います。
 ほかに何かありますか。それでは、説明についてご質問がないようでしたら、引き続き皆様からいろいろな定義の問題もありましたし、政策の問題もありましたし、皆様の関心事ということもあるかと思います。今日は1回目ということでありますので、幅広く皆様からご意見、ご質問を受けたいと思いますが、いかがですか。
○清家委員 2点あるのですが、1つは非正規労働というもの、例えばこの中にあるパート、臨時、派遣というのは、まさに資料4の論点にあるように、労使双方の都合によって増えてきたという部分があるのですが、その労使双方の都合で増えてきた部分については、例えば条件が著しく不公正であるとかいうようなことを別とすれば、あまり政策的な介入をする根拠もないように思うのです。しかし1つだけ労使双方の都合ではなくて、政策的に非正規雇用を増やしてきた部分があるわけです。
 それが配られた資料5でいえば47頁に非常にはっきり出ているわけですけれども、非正規雇用に適用される制度ということの中で、例えば臨時的雇用者やパートタイム労働者は、雇用保険、健康保険、厚生年金の加入率が著しく低いわけです。例えば、社員は雇用保険が99.2%、健康保険が99.7%、厚生年金が98.7%ですが、臨時的雇用者、パートタイム労働者はそれらが極端に低くなっているわけです。
 雇用保険については先の間の改正で少し適用範囲を広げましたので、たぶんもう少し範囲は広がっていると思いますが、いずれにしてもこれは、とくに国の健康保険制度や厚生年金制度などが、雇い主に対して、こういう雇い方をするとお得ですと言っているわけです。つまり、臨時やパートで雇えば、健康保険に入れなくてもよい、厚生年金に入れなくてもよい、あるいはある程度までは雇用保険に入れなくてもよい。つまり、雇い主負担はそこで免れるわけですので、そういう面で国の制度が明らかに非正規雇用を、少なくとも雇い主に対しては勧めているわけです。したがって、どの程度そういうことが非正規雇用を増やすことに貢献したかについての分析が必要だと思います。
 特に分析するまでもなく1つ言えるのは、厚生年金については、厚生年金の適用範囲を拡大しようという度に業界団体などは猛反対しますから、たぶんきちんと分析しなくてもこれが影響していることは間違いないと思います。つまり、厚生年金の適用にならないから、パートなどで雇いたいと思っている雇い主がいっぱいいることは間違いない。
 したがって、それについてどう考えるかです。つまり、労使双方が決められた市場のルールのもとでどのような働き方をするかは、それはある面でいえば自由なわけですが、明らかに国が雇用保険、健康保険、年金保険という制度面で、こういう働き方をお勧めの働き方として勧めているわけですから、そこをどう考えるか、どのように評価するか、場合によれば政策的にどのような対応をするかは必ず議論しないと、一般の労使に対してあれこれ、ああせよ、こうせよと言っている政府が、どうなのですかということは、まず議論としてあると思いますので、そこはきちんと整理する必要があると思います。
 もう1つは、資料4の2頁の3で「どのような働き方であっても、働くことが報われる社会、公正な見返りを得られるような社会を築くことが重要ではないか」と、これは一般論として当然ですが、こういう中からよく非正規雇用の議論をするときに出てくるのが、同一価値労働同一賃金という考え方です。これは昔から議論のある問題で、是非ここでも議論をしていただきたいと思うのは、要するに同じ仕事をしていたら同じ賃金のはずだというのが、昔からそう言われていたのだけれども、実はそれはそうではなくていいのだと言ったのが、例えばベッカーといった人たちの考え方だったわけです。
 同じ仕事、つまりアメリカで新古典派の限界生産力命題に対して制度派労働経済学者たちが「同じ仕事をしていても賃金が全然違うではないか。これはおかしい」と言ったのに対して、ベッカーが「いや、そうではないのだ。同じ仕事をしていても賃金は変わって良いのだ」と。それは長期雇用を前提とすると、要するにかけがえのない労働者については、投資をしているときは賃金が安くなるし、そのあとは賃金が高くなることがありますと、そういう話です。
 したがって、同一価値労働同一賃金は、本当に尽き詰めて言うと、同じ仕事をしている人はみんな同じ賃金だということは、そういう労働者はみんな自由に取替えが利くのだということになるわけです。同じ仕事をしている人はいくらでも取替えが利いて、同じ賃金で雇うことができる。
 そういう考え方と、実はかけがえのない労働者という考え方は、本来は相容れないはずなのです。しかし、一方でディーセント・ワークとか言って、かけがえのない労働者的な考え方を言いながら、一方ではいくらでも替えが利く同一価値労働同一賃金という考え方を言うのは、私はもともと少し矛盾があるのではないかと思っています。その辺をどういうふうにバランス、これはバランスの問題だと思うのですが、バランスさせるかということがもう1つ大きな論点になるのではないかと思います。
○座長 いまの点でもほかの点でも結構ですので、いかがですか。
○荒木委員 清家先生から非常に重要なご指摘がありましたので、関連するお話をしたいと思います。最初の点は、制度が中立的でないことが非正規雇用を生んでいるのではないかと。そのことには完全に同意した上でさらに留意すべき点として、非正規雇用の話をする場合には、非正規雇用と正規雇用の格差を議論するわけですが、労働市場全体を見る場合には、正規雇用、非正規雇用のほかに、無業・失業の方がおられ、非正規雇用と正規雇用の格差の問題と同時に、無業・失業状態からどうやって雇用につなげるかという視点も重要だと思います。
 そのために現在、非正規雇用は非常に固定的で、なかなか正規になれない、2極化している。したがって、不安定な非正規雇用から正規雇用につなげていくにはどうするかは、重要な課題だと思います。それと同時に、無業・失業の方をどうやって労働市場、雇用につなげるかも、非常に重要な視点だと思います。そのためには非正規雇用がある意味では無業・失業状態の人が雇用に結びつきやすい雇用形態として活用する、そういう視点も必要なのではないかというのが第1点です。
 もう1点、同一価値労働同一賃金のお話がありました。法律でも盛んに同一労働同一賃金という議論はされるのですが、しかしそれは、男女差別についての同一労働同一賃金、あるいは同一価値労働同一賃金という議論であり、雇用形態による差別について、同一労働同一賃金とか、同一価値労働同一賃金といった法律上のルールがあるかというと、これは調べているところですが、どうもそういうものではないのではないか。性別とか人種など人権的な事柄を理由とする同一労働同一賃金はありますが、雇用形態差別についてはそれとは違う議論、むしろ不利益取扱いを禁止するルールの枠組で議論しているのではないかという気がしています。その点も少し議論しながら確認したほうがいいかと思います。
○座長 荒木委員のおっしゃった第1点の無業・失業から雇用へどうつなげていくかという中における非正規雇用の果たす役割という話がありましたが、これは日本の貧困率の特徴としてよく言われるのが、無業世帯の貧困率は必ずしも海外と比べて特段高いわけではないと。むしろ就業している世帯員のいる家計において貧困率が高いという特徴が最近明らかになってきているかと思います。
 特にダイナミックな動きで見ると、そういった人たちが、例えばある年、貧困という層に入っていると、その状態が長期にわたって続くと。例えば、ホッピングしていくという人たちが少なくともそれほど多くないという統計も出てきたりして、その問題と絡めていうと、非正規の固定化という状況があるのではないかと。
 ヨーロッパにおいても、テンポラリーワーカーとかパートタイムワーカーはいるわけですが、その状態が数年にわたって続くという比率は総体的に少ないということを考えてみると、例えば1ステップ、最初のステップとしては、無業という状況から非正規といいますか、有期であるとかということで入っても、そのあとまたホッピングしていくというような、正規に転換していくという状況が、どうも日本では少ないようだという問題も含めて考えていかなければいけないのかと、荒木先生のお話を聞きながら感じました。
○小杉委員 私の研究している若者のキャリアの問題が、まさにいま樋口先生のおっしゃったその部分で、最初の非正規に入るタイミングもまた日本の特徴の1つとして、いつ生まれたかが決定的な要因になってしまうというところです。景気の悪い時期にたまたま学校の卒業時期を迎えることが、そのあとの非正規の確率を高めるし、そのまま非正規に長くいる確率を高めると、そういう日本型の雇用の特徴です。新規学卒一括にかなりウエイトをかけた採用をしている。その結果キャリアが十分でない若者たちにとっては、次の機会がなかなか見つからないという非正規と正規の固定化と、最初の入口がかなり固定的な状況がある。この2つのことが大きいのではないかと思います。
 ここに「雇用形態にかかわらず公正な見返り」という話が出ていますが、たぶん公正さは、見返りというだけではなくて、最初の雇用を得る機会の公正さと、そのあと能力開発の機会の公正さ、そういうことまで全部含めて公正さを考えなくてはならなくて、その場合には雇用だけの問題ではなくて、学校教育との接続とか、いま学校教育も含めた職業能力開発の機会とか、そういうものとの関係においても公正さを担保する社会的な仕組み、そういうものも非正規問題については考えなくてはいけないのではないかと思います。
○佐藤委員 今回、正規、非正規とか、呼称をどうするかという議論があるというので、そのことで。あと概念的整理という議論があるのですが、有効な概念整理は、たぶん目的に応じてどう概念を整理するかであって、先に概念整理をするわけではなくて、何のために整理するかというのがすごく大事だと思うのです。
 私は、労働市場に流通する情報として、例えば企業が求人したり、求職者が仕事を探すときに、いろいろな働き方を見るときに、パートとか、アルバイトとか、契約社員といったものが、これは共通に理解されないと問題だろうと思います。つまり、雇う場合も仕事を探す場合も、労働市場に流通している情報が、例えば働き方、雇用形態なりは、共通理解ができていないところはきちっと整理したほうがいいかと思っています。
 ですから、概念整理といったときに、労働市場での受給調整のときに、特に企業が雇うとき、ある働く者が仕事を探すときに、どういう労働条件のある働き方かというのがわかるような呼称が大事です。もちろん、雇ったあと企業がどう呼ぶかは別ですが。ただし、いまも企業は非正社員や正社員という用語は社内では使ってないわけで、正社員就業規則などはないわけです。社員就業規則か職員就業規則なのです。ただ、企業が人を雇うときとか、求職者が仕事を探すときに、これはパートと言って行ってみたら、そのパートと自分が思っていたのと違うということが起きないようにするのは結構大事です。そういう意味でも整理の必要性があると思っています。
 そうすると、どういう呼称がいいのかというと、雇用契約期間が無期か有期かがわかるということです。できれば、有期であれば更新があるかどうか。もう1つは時間、フルかパートか。たぶんこの組合せです。ですから、例えばパート募集といったときに、これは短時間であればいいわけです。ですから、例えば期間工募集といったときに、フルタイムに使うように整理するなどです。たとえば、パート社員とかフルタイム社員といったときに、これは基本的に有期で、パート社員といったときは短時間で、フルタイム社員といったときはフルタイムという整理をするとかです。
 ですから、職安でパートといったときに、あるいは求人情報誌などはパートと出ていますが、これはたぶん扱っている会社で中身が違うのです。労働市場に流通する働き方の呼称として整理していくことが大事です。そうしないと、先ほど就調でも契約社員という言葉がたぶん人によって受け止め方が相当違うわけです。あの中に生産現場の期間工もいれば、たぶん有期契約のエンジニアなどの人が答えていたりするわけです。そこが共通になるような呼称が整理できるといいです。
 もう1つは、そのときに非正社員とか、非典型行為が問題になるのは、その呼び方にマイナスのイメージがある。だから、いわゆる正規雇用とか、典型行為ではない非正規とか非典型といったときに、その働き方にマイナスのラベリングがされない呼称にする。それは派遣労働者とかパート社員というほうが非正規というよりかはずっといいと思うのですが、マイナスのラベリングをされないようなそのときの整理はすごく大事かと思います。
 マイナスのラベリングをされてしまうと、例えばフリーターもそうですが、非正規の仕事についてしまうと、例えば雇用が不安定で能力開発の機会がなくて、低賃金で、ですから確かにそれは政策上改善すべきとなるのですが、ただ全部にそれが当てはまるわけではないです。実際上はフリーターの仕事に就いていても、能力開発の機会があり、正社員にトランスファーされる準備ができている人もいるわけですので、あまりマイナスのラベリングがされなくて、能力開発はないとか、処遇が低いのだとか、不安定だとなってしまわない呼称も同時に考えていただければと思います。
 もう1つ、清家先生、政策的な対応で非正規が増えているのではないかと言われました。このときに大事なのは、60歳以降のところで、男性について言うと、若年で非正規が増えているのと60歳以上で増えている部分です。定年後の再雇用勤務延長で増えている絶対的な数としてはすごく多くて、今後もここは増えていくわけです。ですから、初期キャリア、中期キャリアのところの非正規の問題と、定年後の非正規の問題を少し分けて見ていくのが結構大事かと思います。
○横溝委員 呼称の問題ですが、引き続いて呼び水に呼ばれたように申し上げますが、非正規雇用というと、何か本当にアウトローみたいな感じがして、昔からこれは何とかならないのかと思ったのです。古典的には常用工とか、臨時工とか、大昔はあったようですが、いま非正規雇用ビジョンといってパート、アルバイト、契約社員、嘱託、派遣、労働者を1つの括りとしてここでビジョンをつくるとすれば、いま佐藤先生のおっしゃったマイナスイメージではなくて、もう少しいい名前、名は体を表すと言いますので、もう少し明るいもっといい名前を、ここだけではなく、インターネットとか何かで募集するとか、どうなのでしょう、もう少しいい名前が、そちらにいらっしゃる方々でも発想を変えて、いい名前があればと思うのですが。
 それで私も昨日あたりから一生懸命何かいい名前はないかと思ったのですが、結局、賃金とか、処遇に不公正さがあるのです。結局、これをするというのは、富の分配というか成果の分配において不公正さがあるから、それを何とか公正なものにして、賃金も大事、処遇も、そして働きやすい、公正感のある働く場にしようというのがねらいだと思いますので、何かいい名前はないでしょうか。
 それで、処遇が少し限定されてしまっているから、処遇限定社員というのもまだまだマイナスイメージがあると思ったり、では選択勤務というとまた自ら選択するような感じになってしまってという感じで、なかなかいい名前が浮かばないのですが、この際それこそ皆さんの知恵を集めていい名前を考えてみようではありませんか。
 もう1つ、根本は同一価値労働同一賃金に帰すると思うのですが、同一価値富の分配、成果の分配というので、それを同一価値労働同一賃金というのが、先ほど荒木先生がおっしゃったようにとても難しい。私は昔、20年ぐらい前に同一価値労働同一賃金の話をしたときに、ある労働組合関係の方からパートとそうでないフルタイムのときの話が出たときに、組合関係の方が、それはパート、アルバイトの人が低いに決まっている。要するに企業に対する、会社に対するロイヤリティーが違う、生涯貢献する、従属するというのが違うのだから、それは単位時間あたりのが違うのは当たり前だというように言われたので、えーっと思った感覚があるのです。結局、そういうものは根底にあるのかな。だから、同一価値をどう見るかはさんざん議論の行われていることですが、根本のそれをどう見るか、いろいろな付録が付くにしても合理的な説明が付くものを我々が仕分けできて、それで合意点ができればという気がしています。
○座長 名前、呼称が、ある意味では企業における身分を示しているところがある。それが非正規という言葉に体現されているのではないかというお話ですかね。
○柴田委員 私もお二人の意見と全く同じことをずっと思っていまして、非正規というのは何に対して非正規なのかと思っていました。会社が法律に則った正しい働き方をさせてない、つまり正しく雇ってないので非正規なのか、あるいは社員が正しい働きをしてない非正規なのか。そういうイメージが非正規の中にあって、それがあたかも違法な働き方の想像をする感じで、結果として、非正規と言われている人たちは労働基準法の枠外で働いてもいいイメージを持っている気がしていました。
 パート、アルバイトもパートタイム労働法があるために、基本になっているのは労働基準法の枠外のイメージで捉えられていて、あたかも労働基準法で守られていない労働者のように見られているような気がします。私は法律家ではないので少し乱暴なことを言うかもしれませんが、パートやその他非正規といわれる労働者全員に対して労働基準法の網が掛かっているのだぞということをもう少し明確にしたほうがよいのではないかと思います。
 佐藤先生がおっしゃったようにパートという働き方がどういう働き方とか、嘱託であるとか、アルバイトであるとか、契約であるとかも、みんな会社の都合によって勝手に定義を付けていますので、そのときにどの法律を適用するかも、勝手に解釈しいいように理解していたりしているように思います。乱暴な言い方ですが、いままでのパート、アルバイトとか、嘱託とか、契約社員とか、そういう定義を1回全部崩して、むしろ労働基準法の中で定義されている条件によってそれぞれが、例えば時間が短時間の場合には適用除外で例外を設けるみたいな感じで少し整理していかないと、複雑になり過ぎていると思っていました。
 法律家の方に申し訳ないのですが、よくわからないので少し暴言を吐きました。
○佐藤委員 呼称のことで少し整理しなくてはいけないのは、まず企業が人を雇用したり処遇するときに使っている呼称というのがあります。この呼称について言うと、正社員とか非正社員というのはまず使ってないです。要するに企業は「うちの非正社員が」などと普通は使ってなくて、「正社員」も普通は使ってないです。社員とか職員であったり、あるいはそこの会社の、私たちが非正規という人についても、一応その会社の呼び方があります。そういう意味では、別に正規、非正規というのは企業内で使われているわけではない。個別の呼称がある。
 もう1つは、今度は求人で出ていったときです。あるいはもう1つは、そういう企業が使っている雇用をまとめて整理するときに、政策上あるいは研究者が非正社員とか非正規と使っているのです。ある面では統計であったりとか。ですから、多様な呼び方のものを、大きく雇用期間の定めなしでフルタイムで働く人を正規とすると、実際上はそれ以外にいろいろな働き方があるわけです。有期、更新がある人、ない人、あるいは時間がフルのスパーンと。これを全部まとめて何かで言おうといったときに、これを非正規と呼んだり、非正社員と言っているだけの話なのです。ですから、たぶんここの呼称をどうするというのがあると思うのです。
 もう1つは、全体として政策なり研究上議論するときの呼び方としてどうするかということが2番目です。もう1つは、今度はここの企業が求人を出すときに、社内ではそう使ってないのだけれども、外にわかるように出すときの標準的な労働市場での共通の呼び名みたいなのがもう1個あってもいいのかと思うのです。それは一応整理したほうがいいかと思います。
○座長 よくパート法というか短時間労働法で労働時間の短い人が対象であって、いわゆる偽装パートは守備範囲ではないと、むしろ一般の労働基準法なりが。ただ、問題は現に、そこにあったり偽装パートのところにあったりするわけで、その問題をどうするかが残っているということだと思うのです。
○佐藤委員 その疑似パートも研究者が言うだけであって、つまり就調のパートに○を付けた人の中に時間の長い人がいるということですよね、いちばん、データ的に出てくるのは。パートと答えているのだけれども、フルタイム。ただ、パートで短時間労働者ですかと聴いているのではないのですよね。つまり、研究者がパート、イコール短時間労働者と思っているだけで。
○座長 労調・就調はいくつかのカテゴリーを分けていて、労働時間で聴いているのと、企業において何と呼ばれていますかと聴いているのと、いくつかあるわけです。その中で労働時間は40時間ですと。ただ、会社では呼称としてパートと呼ばれていますと。
○佐藤委員 ただ、パート、イコール短時間労働者と回答者は思ってないわけです。研究者が思っているだけで、全然矛盾ではないと私は思っている。つまり、短時間労働者ですかと聴いて、答えていて、時間が長いわけではないのです。パートと聴いているだけなのです。変な言い方ですが、日本で言うパートというのは、そういう意味で、世の中で流通しているのは決して「短時間労働者」ではないというのが私の理解です。
○座長 ただ、法律はそうなっているのでというところです。
○佐藤委員 法律はもちろんそうです。呼称の話について、こだわっているだけです。
○座長 もう1つ佐藤さんが冒頭におっしゃった常用労働者のところで、ここで言うと非正規常用が増えていますという中で、雇用契約について十分把握していない、本人がわかってない。それが故に常用のところに入っているのではないかと。それについては、たぶん総務省で研究会で実際にいろいろ調査したのがあって、特に問題になったのは、1年から3年に有期の契約期間が延びたときに、この2年、3年の人たちをどこに分類するのだということが議論になって、そのときに調査したと思うのです。選択肢の中に契約期間1年とか、半年とか並んでいる中に「わからない」と。その「わからない」というのがあまりにも多かったのは事実としてある。パーセントを公表していると思います。だから、そこの問題がまた1つあるということだと思います。
○清家委員 最初ですから少しこの根本的な問題を議論しても良いと思うのですが、1つはこういう考え方があるわけです。つまり、世の中にいろいろな働き方があります。我々が政策的に何か対応しなくてはいけないのは何かというと、例えば最低賃金が守られているかどうか、極端な長時間労働が行われないか、安全衛生がきちんと担保されているかどうか。つまり、働き方はどうであれ、最低限の労働市場のルール、あるいは労働者の保護が行われているかどうかがある。
 従って1つの考え方は、まさに柴田さんが言われたように労働基準法の世界でいいではないですかということから言えば、別にどのような雇われ方であろうと、そういった労働者の尊厳が損なわれないようにするルールがきちんと守られていればそれでいいので、取り立ててパートだけ何かするとか、あるいは、いわゆる非正規雇用だけ何かするというのはおかしいのではないですか、という考え方です。
 一方で、それはそうなのだけれども、こういう塊のところにいろいろな問題があるので、例えばパート労働とか、派遣労働とか、そういう雇われ方の塊でいろいろ問題があるので、そこに特別な派遣法とか、短時間労働法とかが要るのではないですかと、そういう考え方もあるわけです。
 それは両方とも正しいのだけれども、1つ、こういうことを議論するときの問題は、前者のような立場に立つと、例えば非正規雇用ビジョンといったものを、もし作ってそれが確立されたら、それは非正規雇用という働き方がここにあって、固定化されてしまう。つまり非正規雇用というもの、要するに非正規雇用ビジョンというのは、何か非正規雇用というのはこういうものだということをはっきりさせるという意味では、そういう働き方をある意味固定化させる。本来はどのような働き方でもみんな同じ正しい働き方のはずなのに、こういう働き方、こういう働き方がありますと固定化させることにもなるかもしれないわけです。
 ですから、こういうビジョンを出すのはもちろんいいと思うのですけれども、そもそも考え方として最終的には非正規法のようなものをつくるかどうか、すでに派遣法とパート法はあるのだけれども、そういう働き方は別に本来の労基法とか、最賃法とか、安衛法とかいうものがあって、労働者がきちんと守られているのに、またわざわざ屋上屋を架すかどうかは分かりませんけれども、そういう対処法をつくる必要があるのかどうかについても、そもそも論としてはあるかと思います。
○荒木委員 非正規雇用全般として何かをすべきかという議論になると、おっしゃるとおりだと思うのです。我々はやはり気をつけなければいけないのは、今回の研究会は横断的に見るというのがすごく大事な視点だと思うのですが、同時に、非正規というのは非常に多様であるという点です。パートが抱えている問題と有期労働契約が抱えている問題と派遣が抱えている問題はそれぞれに違う。例えば、なるべく正規化をしたほうがいいと言う場合、有期契約から無期の契約に移って雇用を安定させたほうがいいということについて、大方それはそうかなと思うのですが、ではパートで働いている人をフルタイムに替えろとなるかというと、それは全然労働者のニーズに合っていないわけです。したがって、非正規雇用のどの部分がどう問題なのかということをきちんと切り分けてその対策を考えるということが大事で、非正規全体をいわば望ましくない雇用として全体に網を掛けるというのは、むしろ必要な対策がかえって取られないことになりかねない。多様性があるということを十分踏まえるべきだと思います。
 今日の呼称の話に絡めて申しますと、資料4の1で概念整理というのがあるのですが、我々法律家から見ますと、いわゆる非正規雇用と把握されているものは???だけでありまして、もうそういう意味では概念的には非常にクリアーなのです。つまり、無期契約であるかないかと。期間雇用、有期だということであればその点で非正規となる。それから、フルタイムに対してはパートタイム。直接雇用に対して間接雇用である派遣と。典型労働なり標準労働というものではない人を上位概念として、仮に非正規雇用なり非典型雇用なり、最近英語ではスタンダード、ノンスタンダードと言うようですが、非標準雇用というだけの話でありまして、その非標準なり非典型の中で抱えている問題はみんな違うということを捉えて議論することが大事かなと思います。それに対して?とか?というのは、法律の話とは違ってきまして、「長期雇用慣行を前提とした」ということだと、では、長期雇用慣行とは何ですかということを決めないことには概念定義はできません。それから、勤務地や業務内容の限定、これは無期でフルタイムで直接雇用の方でも勤務地限定や業務内容限定の方はどんどん出てきております。こういう概念を持ち込むと、その人が持っている正社員概念を前提にそれと違う人ということになり、それでは普遍的な議論ができなくなってしまうのかなという気がいたしました。
○座長 これは佐藤さんが後半で関連してくるのではないかと思いますが、この?、どうですか。
○佐藤委員 私は基本的に荒木さんが言われるとおりだと思います。?とか?というのは、スタンダード、標準雇用なりいわゆる典型雇用の中の類型化の話なのです、?と?は。従来の典型的な、いわゆる正社員という人たちの中もかなり多様化してきているという議論が?とか?なのです。ただ、法律上それについて議論しているわけではないということはそのとおりで。ですから、?と?というのは、例えば、ワーク・ライフ・バランスの話とか、あるいは、広い意味での正規、非正規の間のトランジッションを円滑化するという議論で?とか?という議論が出てきたので、そういう意味では???の議論とは異質な部分です。非正規の多様化の話ではなく、正規のほうの多様化というような議論で出てきているということで、それは法律上の有期、無期とか、時間の長短とかの分類ではないという理解です。
○座長 ただ、法律上はあれですが、雇用保障の強さの議論として出てきているという面もありますね。
○佐藤委員 そういう意味では、従来の様々な雇用調整のときの、が想定していた、法律上判例等々が想定していた、いわゆる典型雇用というものが多様化してくることによって、法律自体かどうかわかりませんが、従来のその判例等が前提としていた典型雇用が変わってくることによって、その辺も議論が必要かというようなことに、議論がつながっていく点かなと思います。
○小杉委員 私が申し上げようと思ったことも似たようなことで、やはりフルタイムで期限に定めがなくて直接雇用という、いわゆる伝統的な、みんなの頭の中にある雇用の在り方で、かつこれが家計の主たる男性であって、新卒で採用されてと、そういう諸々が付いた雇用の典型というモデル、ここから入らない、その課題をいろいろ考えるという意味で、そういう意味で非正規雇用というだけであって、名称云々は私はどうでもいいような気がしているのです。これまでの制度、慣行等々で守られてきた人とそうでない人というところがあって、そうでない人に対しての対応が十分であるのか、漏れがないかということを考えるということが大事ではないかなと思っています。
 それからもう1つだけついでに申し上げたいのは、先ほど、年齢によって高齢者の問題と別に考えるというお話がありましたが、それはそれで確かなのですが、仕事、雇用の在り方というのは、それぞれの人生の中のどういうポジションにいるかによって意味が違うわけですね、女性と男性で意味が違ったり、先ほどの話もありますが、そういう意味が違うということにどれだけ関与するのかなというのはちょっと疑問に思うのです。家族という単位でものを考えるべき時代ではなくなったと私は思うのですが、そういう中で雇用ということと人生の中のその雇用の意味がどうかということとはちょっと切り離して考えたほうがいいのかなと思います。
○柴田委員 ちょっと逆になってしまうかもしれませんが、清家先生が最初におっしゃったように、こういういろいろな働き方が労使双方の都合で増えてきたという良いほうの面にスポットを当てながら、だけれども、政策的にきちんと守るべきところは守るというスタンスに立つのがよいのではないかと思います。資料4の1の(2)の「ワーク・ライフ・バランスとディーセント・ワークの観点から」「ディーセント・ワークビジョン」とか、プラスの面を出すような名前で、非正規といわれている多様な働き方のよい面を評価する価値観を育てていくのがいいのかなといまのお話を聞いて思いました。
○座長 私がちょっと気になっている1つは、先ほど資料の中にもいくつか出てきたのですが、自分の都合がよいので、そういう時間で働けるから非正規というかパートを選びましたという人たちが相対的に減ってきている。むしろ、非正規労働者なのだけれど正社員になりたいという、そういう雇用機会がないために、正社員になれなかったために非正規というものが増えている。労働市場で調整されているのだと言えばそれまでなのですが、その比率したものがやはりここの10年で倍ぐらいになってきている。雇用形態の多様化という問題と、もう1つ逆に、ほかになれない、あるいは、そちらの選択肢が狭められてきている、結果として残りのものを選択したというか、選択せざるを得なかったという状況がある。これをどう評価するのか。ただ、一方で、荒木さんがおっしゃったような無業というものを選択するのではなくて、それでも非正規という働き方を選択しているではないかという問題も片方であるわけです。雇用機会がないよりはあったほうがいいという現状といったものもあるわけで、そこのバランスの問題というのをどう考えていくかということで、雇用の中だけで議論をするとその視点というのが落ちてしまう可能性があって、無業との、あるいは失業を合わせて考えていかないとこの問題というのは解決しない可能性がある。
 もう1つ、ここでは非正規雇用ビジョンですからいいのかもしれませんが、最近多様化の中でボランティアの話であるとか、あるいは、請負、個人請負という問題というのも増えてきていて、そこもある意味ではいままでとは違った新しい働き方、新しいというのはいいかどうかはクォーテーション付きで言ったほうがいいと思いますが、そういった問題については考えていく必要があるのかないのかというところも提起されるところかなと。要は自営業になっている、そうすると、もちろん社会保険の雇用主負担であるとか、そういったところというのもないわけですから、そこまで含めてどう考えるかと。
○諏訪委員 皆様のおっしゃるとおりだろうと思います。私はこういうパート等の非正規雇用の問題にかかわったのはもう25年以上前のときで、それと全く同じ議論をしているのですね、いまでも。定義ができないのも一緒です。ですから、それは、考えようによっては定義が非常に困難な問題で、なぜならば、逃げ水のようにどんどん変わっていってしまうからです。いわゆる非正規の中が多様化しているのはよろしくないという考え方が1つありますが、逆に言えば、正規のほうがかなり硬直的だから非正規のところに多様化が起きているのかもしれない。いずれにせよ、概念はできるだけ整理をしたほうがいいと思いますし、それから、清家先生もおっしゃっていたような、国が公的に隠れた補助金を出すようなやり方ですね、これもずっともう20何年前から指摘されているわけですが、こういう社会保険料その他の問題について非正規側で雇ったほうが得だという、こういう中立的でない政策はきわめて不適切ではないかと考えます。これももう本当に四半世紀前から議論をしてきております。
 それで、ちょっと気になるのは、こういう概念整理は、したがって、政策の基本の方向とか、あるいは、今後の政策展開に関する部分で再整理を絶えずしていくというのはとても大事ですが、最終的には定義し切れないのだろうなと思います。例えば、パートタイムの労働時間をフルタイムの人の5分の4だったらそうするとか、いろいろなこういうことをやった国の立法もあるのですが、そうするとたちまち限界域から実務が逃げていってしまうのです。1分だけ増やすとか、姑息な方法が出てきて、法的にはちょっと対応ができなくなっていくという、問題がありますので、やはり、それぞれの政策、あるいは法政策ごとに定義を部分的、断片的にでもしていかざるを得ないのではないかという気がいたしています。ただ、全体のやはり方向ははっきりとさせたほうがやはりよくて、法的にはこうである、あるいは人事管理的に言えばきっと?というのは非常に重要なのだろうと思います。資料4の1の(1)の?ですが、長期雇用志向で雇っているのか、それとも短期雇用型で雇っているのかというのは、これがいろいろなものに大きく影響していることはもう間違いないだろうと思います。
 それで、この呼称の点で言えば、擬似パートとかいう言葉を言ったのは自分だったなというのを思い出したのですが、あまり明るい名前を付けても横溝先生のおっしゃるとおりで、現実があまり明るくなければ名前のイメージは必ず変わっていってしまうわけです。例えば、フリーターという名前を作ったリクルートの方は明るくしようと思ってやったのですが、いまや暗いイメージですし、別の現象で言えば、長屋というのがよくないのでアパートという名前に変えたけど、実態が木賃アパートなら結局はアパートというのはいいイメージがなくて、マンションとか、レジデンスとかいろいろな名前に変わっていくのと同じです。同じことが起こるだけではないかという気がしていますので、むしろ、我々は、今度非正規の部分だけ見ないでともかく全体を見て議論しますよという、その中には当然無業、失業の問題も含めて考えなければいけませんし、それから、もう1つは、そう考えるとさまざまな人的資源というのでしょうか、人材の、社会としては最大限活用ですし、個人としては二度とない人生における自分なりに納得のいく生き方ができるかどうかということで、非正規型になるとそれが非常に制約されていくことが私は極めて問題だと思っています。したがって、能力開発の部分ですね、是非この中でも議論をしていただきたいと思います。ただし、能力開発というのは狭い意味での教育訓練だけではないのです。現実に能力が開発するのは仕事に就いて、そして自分が持っている力よりちょっと背伸びするような問題を処理していく中で人は力がついていく。この機会が非正規型という人たちにはすごく限られているので、単に狭い意味での教育訓練をすればいいというわけではないというのがいちばん難しいところだと思います。一種の機会均等なのですが、中長期的なキャリア展開に向けての機会均等と支援という、こういう概念をどうやって入れていくことができるかが大事かなと思っています。
○座長 ありがとうございました。ほかにどうでしょう。
○横溝委員 先ほど荒木先生が典型、非典型とおっしゃって、ああそういえば菅野先生が一時そういうことをおっしゃっていたかなという気がしているのですが、これ、どちらかといえば非典型というほうが非正規よりいいかなという気がするのですが。ただ、非正規、非正規というのがみんなアウトローみたいで嫌だ嫌だと言いながらも長年使われているのですね、結構、ひとまとめにして。というのは、正しく処遇されていないということが根底にあって、やはり非正規と使いたがるのでしょうか。どうも、何で非正規というのが結構長い間アウトローみたいで嫌だ、何かいい呼称がないかと言いながら、典型という名前を学者の方が示してもそれもすぐあまり使われないでまた非正規に戻ってしまうというのは、皆さんの心の中にやはり正統に処遇されていない非正だというのがあって使われている、いまふっと思ったのですが、何かいい名前がないでしょうかねと思う。
 それで、ちょっと余談になってしまいますが、皆さん、パート裁判官はご存知ですか。非常勤裁判官のことです。つい最近できたのですが、それを法律上は調停官という名前にしているのです。裁判官というのは、身分保障がものすごく強くて、10年間も身分保障があり、辞めさせるのは国会の裁判官弾劾法に基づくそれでなければ辞めさせられないのです。この調停官というのは、5年以上弁護士をやった人が家庭裁判所の裁判官、審判官、裁判官と同じことをやる、だけど任期は2年で、それで条文上も「非常勤とする」と書いてあるのです。1週間に1回ぐらい行くのです。初めはその実態でパート裁判官とか非常勤裁判官と言っていたのですが、いま調停官というので割合に条文の言葉ができて、非常勤であって2年の保障はあるけれども、時間も1週間に1回ぐらい、その代わり朝から晩までとか、だけど裁判官と同じような審判機能をもち、調停委員とか書記官のことも裁判官と同じように指示できるという、そういう新しい職務が最近、最近といってももうちょっと経ちますが、できたのです。だから、何かそういうふうに発想を変えた名前にして、それで、できるだけいろいろな態様をまとめてそれを何とか処遇するということが、折角この機ができたのですからしてみたいなという気はしますが。
○座長 今日は、年金とかあるいは保険関係、社会保険関係のことについて、非正規と正規でどうパーセントが違うかとかいう扱いが統計として提示されていたのですが、このほかにも、社会保険以外のもので何か非正規の場合は適用除外になるとかいうような法制度上、あるいは政府が決めている何かのものであるということはどうなのでしょう。例えば、パートの残業時間については、所定内というか、一般労働者の労働時間の中であれば割増率を払わないでいいわけですよね。あるいは、有給休暇についての扱いであるとか、そのようなところについて、あるいは通勤手当の、実態としてかなり違っている通勤手当について、パートについては支給しないというようなところも実態としてはかなりあるわけですが。
○土屋派遣・有期労働対策部企画課長 確かに、いまご指摘があった労働時間のところの扱い、所定外のところの扱いとかでその差が出てくる部分というのはあるかもしれませんが、ちょっと今回、あまりそこの法制度の面での対応の違いというのをきちんと整理をした資料をお出しできていませんので、いまのご指摘を踏まえて改めて広く制度を眺めてみて、私どものほうで把握できる範囲でそこを整理してもう一度お出しをさせていただいて、またご議論をいただければと思います。
○座長 もしないようでしたら、そろそろ時間もということですので、本日はこのあたりにしたいと思っています。いろいろな貴重なご意見、ご指摘を受けまして、まず、問題の整理から、特に非正規雇用ビジョンというものの適宜についてもご議論いただきましたので、これについても含めて事務局と相談し、まとめてどうするかということについて決めていきたいと思います。本日の議事につきましては、非公開に該当する特段の理由もありませんので、議事録を公開としたいと考えますが、よろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○座長 はい、ありがとうございます。それではそのように扱わせていただきます。では、次回の日程等について事務局からお願いします。
○宮本企画官 第2回の懇談会は、7月14日木曜日、16時半から場所は本日と同じく省議室を予定しております。事務局からは以上でございます。
○座長 それでは、本日の懇談会は以上で終了します。どうもお忙しい中ありがとうございました。


(了)

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