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2011年6月17日 第7回今後のパートタイム労働対策に関する研究会 議事録

雇用均等・児童家庭局 短時間・在宅労働課

○日時

平成23年6月17日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第14会議室(12階)


○出席者

委員

浅倉委員、今野委員、権丈委員、佐藤委員、水町委員、山川委員

厚生労働省

石井雇用均等・児童家庭局審議官、田河総務課長、塚崎職業家庭両立課長、吉永短時間・在宅労働課長、大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長、藤原短時間・在宅労働課長補佐

○議題

(1)通常の労働者への転換の推進等
(2)その他

○議事

○今野座長 まだ水町委員がいらしておりませんが、時間ですので始めたいと思います。今日は第7回の研究会です。本日は黒澤委員がご欠席です。本日の議題は議事次第にありますように、通常の労働者への転換の推進等について議論をしていただきたいと思います。最初に事務局から説明をしていただいて、それから議論をしたいと思います。
○藤原短時間・在宅労働課長補佐 本日の議題は、「通常の労働者への転換の推進等」ということで、資料3では「通常の労働者への転換に係る論点」、資料4では「多様な形態による正社員に係る論点」をご説明します。
 まず資料3です。四角で囲った論点を2つ挙げております。こちらは資料1の研究会で議論していただく論点(案)に載せてあるものを、そのまま引っ張っております。1つ目が現行の通常の労働者への転換の推進措置で、下に具体的なパートタイム労働法の条文を引いております。パートタイム労働法上、こういった措置を取るようにということで、1つ目、事業主が通常の労働者を募集する場合の、パートタイム労働者への周知、2つ目、事業主が通常の労働者の配置を新たに行う場合の、パートタイム労働者に対する配置希望の申出機会の付与、3つ目、通常の労働者への転換のための試験制度の創設を使用者側に義務づけておりますが、これについてどのように考えるべきかということを挙げております。こちらの措置についてこれで十分か、後ほど実績などもご説明いたしますが、そういったものを踏まえてこれをより向上させていくためには、どういったことが考えられるかということが、1つの論点として挙げられるかと思います。
 2つ目が、通常の労働者よりも柔軟な働き方のまま、雇用の安定を望むパートタイム労働者に対応するため、勤務地の限定又は職種の限定がかかっている無期労働契約へ転換することについて、どのように考えるべきかということです。今のいわゆる正社員の方というのは、どこにでも転勤があるだろうと。そういった方とは若干違うけれども、雇用の安定が確保されるような形態の労働者への転換を、パートタイム労働法上どう考えるべきか、というのを挙げております。
 次の頁で、実態についてご説明いたします。下のほうに書いてありますが、平成18年の「パートタイム労働者総合実態調査」と、平成22年に労働政策研究・研修機構によってまとめられた「短時間労働者実態調査」を比較しております。これは第1回の研究会の資料の中にも載せているものです。まず、短時間労働者から正社員への転換推進措置の実施状況です。平成18年と22年は大体同じぐらいです。平成22年ですと48.6%の事業所において、短時間労働者から正社員への転換推進措置が取られていました。
 その内訳を見ますと下にありますように、正社員を募集する場合、その募集内容を短時間労働者に周知しているというのが51%で、いちばん多くなっております。正社員のポストを社内で公募する場合に、応募の機会を与えるというのが38.5%、正社員への転換のための試験制度というのが45.6%ありました。その他として、正社員になるために必要な教育訓練などを実施するというのも措置として考えられますが、そういったものが10.7%あるという状況でした。
 次の頁です。実際にどれぐらいの方がパートタイム労働者から正社員に転換しているかです。平成18年のデータは過去5年間、平成22年のデータは過去3年間の実績を見ております。平成22年のほうでご説明いたしますと、過去3年間に短時間労働者を正社員に転換させた実績の有無別事業所の割合ということで、措置があり、かつ実際に転換があった所が39.9%、約4割です。また、過去3年間に、短時間労働者のうち、転換により正社員になった方の割合を見ますと、いちばん左側の0~5%未満がいちばん多くなっており、30%ぐらいです。その次の5~10%が16.9%ということで、その次の10~20%と大体同じぐらいの割合で転換の実績があります。
 次の頁では、正社員転換推進措置の内容別転換実績を取っております。これは応募者のうち、どれぐらい転換したかを示しております。下に5つの棒が並んでおりますが、2番目からが実際の措置に対応したものです。「募集内容を短時間労働者に周知している」は、49.9%が実績がないということでいちばん多くなっています。ただ、80%以上が次に多いという実績が出ております。そのほかの措置についても傾向は大体似ており、応募者に占める転換者の割合で「実績なし」というのがいちばん多く、次に、80%以上の確率で転換しているというのがこの表から見て取れると思います。
 5頁では、正社員転換推進措置を実施する上での支障について聞いております。支障があるかないかを尋ねたところ、「ある」と答えた所が3割でした。その支障の内容については右にありますように、いちばん多いのが3つ目の「正社員としてのポストが少ない」ということで、43.3%ありました。2番目が「正社員に転換するには能力が不足している」です。あとは、短時間労働者は時間外労働が困難である、転勤ができないといった理由が並んでおります。
 次の頁です。この後で正社員転換推進措置の中間形態をご説明いたしますが、その参考として、中間形態として考えられる「短時間正社員」についてご説明いたします。短時間正社員というのは、正規型のフルタイムの労働者と比較して、その所定労働時間(所定労働日数)が短い正規型の労働者ということで、期間の定めのない労働契約を締結している者、時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が、同種のフルタイムの正規型の労働者と同等であること、この2つを要件として挙げております。こちらについては「短時間労働者対策基本方針」において、その推進を目指していくことになっております。いまの資料の2つ目の○で、制度導入の目標値を掲げております。「仕事と生活の調和推進のための行動指針」の中で、2020年までに29%ということが掲げられています。
 この実績が7頁にあります。正社員転換推進措置を実施している事業所において、正社員に転換する前の形態を設けているかどうかを聞いております。設けている所が36.8%あります。その内訳を見ますと、フルタイム有期契約社員がいちばん多くて8割を超えておりますが、短時間正社員というのも1割ぐらいあります。それとは別に短時間正社員制度を実施しているか、導入しているかを聞いたところ、「制度として導入されている」という事業所と、「制度としてはないけれども、実際に運用している」と回答した事業所の割合が33.6%あります。どういった理由で利用することができるかを、右に挙げております。育児と介護がかなり高くなっておりますが、病気をした方が復帰して、職場に慣れていくために使う「傷病からの復帰」や「正社員以外からの転換」というのもあります。ここにパートタイム労働者からの転換も入るかと思います。そういった理由で短時間正社員制度が利用されているという実態が、こちらからわかります。
 9頁からは正社員転換及び短時間正社員への転換の事例について、簡単なポンチ絵でご説明いたします。6つの例があります。1つ目が、株式会社で小売業をしている所の例です。労働者数が大体1,100人で、そのうちパートが8割です。このペーパーを作ったのが2、3年ぐらい前ですので、この数はあくまでも規模感とか、パートがどれぐらいいる事業所かという感触をつかむためのもので、参考として捉えていただければと思います。
 こちらには正社員と共通の職能資格等級制度というものがあります。まず、職能資格等級制度によってパートの方が昇級していって、一定のところに行きますと正社員登用とか、管理職に登用できる制度になっております。真ん中にP1等級からP5等級というパートタイム労働者用の職能資格等級制度があります。左にありますように、こういった等級の間を2年から3年、それぞれの級に在級して年1回の人事考課で一定の成績を取る、試験に合格する、指定されている講座を修了するといったことをもって、どんどん級が上がっていきます。
 P4等級に行ったときに、そこが正社員登用制度とリンクしており、P4等級以上の者で人事考課で評価がA以上付くと、そのまま正社員になることができる制度です。この制度には左にありますように、教育訓練というものがかなり重要になっています。この事業所には全従業員を対象とした能力開発制度があるということで、通信教育講座の受講や研修のセミナーなどを、かなり頻繁に積極的に開いています。
 正社員転換の2つ目の例は信用金庫です。労働者数は約3,000人で、パート率は先ほどと比べるとかなり低く、13.5%ぐらいです。図の真ん中辺に短期パート、長期パートというのがあります。パートタイム労働者を20時間未満働く短期パートと、かなり長く所定労働時間働いて、社会保険などにも加入する長期パートに分けています。まず、短期パートの方が経験を積んで長期パートになります。その後、長期パートで3年以上勤続して人事考課で一定の基準以上の成績を修めて、時間外労働が可能で、かつ所属長の推薦がある場合には、上級パートになることができます。上級パートは月給制になるので、そこで1つ大きく変わります。
 上級パートからさらに正社員登用ということで、上に矢印が延びておりますが、もう1つの制度があります。こちらにも別の基準があって、正社員になるためには上級パートとして2年間働きます。こちらにいくつか書いておりますが、こういったことをクリアした場合に正社員登用ということで、矢印がちょっと折れ曲がって上のJ-4の資格等級の所につながっております。パートから上級パートを経て正社員になった方というのは、J-4の等級から始まります。こちらは大学の初任給よりも高く、一定の格付けの正社員としてその後も働いていくことができるという仕組みになっております。
 3つ目は、正社員の転換に関して国家資格のようなものが要件となっている例として挙げております。社会福祉法人で労働者は114人、パートタイム労働者は大体半分強となっております。こちらでは非常勤職員に対して5つの格付けを設けており、それぞれステップアップしていくときに人事評価とチェックシートによる評価をして、必要な基準を満たした場合に上がっていくことができます。4級をご覧ください。社会福祉法人ということもかなり関係があると思いますが、介護福祉士や社会福祉士といった資格を満たしていて常勤の希望のある方に、正社員への登用の道を開いているという例です。
 12頁、通常の労働者への転換の最後の例です。こちらは「旅館業」とありますが、ホテルです。労働者数は100名ぐらいで、パートタイム労働者は大体6割です。こちらの株式会社については、就業規則にパートタイム労働者の人事評価規程というものを設けております。左側にありますが、こちらもパートタイム労働者を5等級に区分しています。成績評価、能力評価、就業評価という評価によって、年に1回評価いたします。真ん中に正社員転換制度というのがあります。広く社内の職員に通知をして、勤続1年以上の契約社員又はパートタイム労働者で能力があると認められる方については、審査を経て正社員になることができます。黄色でマルで囲っていますが、正社員登用の際に、当該事業所のほかに、労働者の希望するグループ内会社に配置されることがあります。規模としてはあまり大きくなくて、ポストが足りないということもあるかもしれませんが、外に出て行って正社員になる道を開いている例として挙げております。
 13頁からは短時間正社員への転換事例として、2例挙げております。1つ目は製造業です。「制度導入の目的」をご覧いただきますと、多様な雇用形態を実現する、良質な人材の確保等といろいろありますが、女性で育児などの責任もありながら働いている方が多かったので、そういった方に引き続き働いてもらいたいということで、こういった制度を導入した経緯があるようです。
 まず、正社員への転換です。こちらの短時間正社員というのは、「ショートタイム社員」と呼ばれており、真ん中にいくつかその実態が書いてあります。給与はフルタイムの社員の月給を時間割で支給します。労働時間は一定の範囲で設定ができるということで、単日勤務なども可能です。福利厚生はフルタイム社員と同等のものが与えられて、年次有給休暇も労働基準法の規定により比例付与、社会保険も適用となっております。パートタイマーからショートタイム社員への転換というのが、左の水色の所にあります。3年以上パートタイマーとして働いている方が転換にエントリーでき、「上司評価」「筆記試験・適性試験」「部門長面接」「役員の最終確認」といった基準を満たした場合にショートタイム社員になることができます。「毎年10月1日付けで転換」と書いてある下に、「2007年に169名が転換」とありますが、対象になる方が175名ぐらいだったということで、かなりの方が転換したということが書かれておりました。
 ショートタイム社員はずっと短時間正社員でいるわけではなくて、フルタイムへの転換の機会もさらに開かれています。bにありますように、ショートタイム社員からフルタイム社員に転換する際の要件としては、本人が希望した場合でショートタイム社員として1年以上経験があること。これによりショートタイム社員からフルタイム社員になった場合には、今度はcで、ワーク・ライフ・バランスの推進という観点から、ショートタイム社員とフルタイム社員の間を自由に行き来できるような仕組みになっています。こちらも本人が希望する場合で一定の所定労働時間ですが、取得理由や取得期間というのは限定しないで制度を利用することができる仕組みになっております。
 最後の頁が、短時間正社員への転換事例の2例目です。こちらは小売業、スーパーマーケットです。労働者数は約1万1,700人で、パートタイム労働者が大体8割です。背景にありますのは、やはり労働力人口が減っているとか、職員の定着率が悪いということもあって、人材の安定確保、活力をアップする、モチベーションを高めるという目的を持って短時間正社員制度を導入した事例です。従来は正社員と嘱託と一般的なパート・アルバイトというように分かれていたのですが、新制度の中では4つの職を設けています。真ん中の正社員にM職、G職、S職というのがあります。M職はマネジメントスタッフということで、管理職です。G職はゼネラルスタッフということで、役職候補や総合職的な要素を備えた職です。S職というのが新しく作ったセレクトスタッフで、専門的な技術などを持ちながら、一定の職種でやっていくような層です。
 図のいちばん下のA職というのは、これまでパートやアルバイトの区分になっておりました。上に矢印が延びておりますが、A職の人がパートのときと同じ時間数、例えば1日5時間働いていた方でも、転換基準週4日、1日5時間の勤務形態で1年以上の勤務実績があって、店長の推薦などがあり、かつ登用試験に合格すると短時間勤務の正社員ということでS職、G職で働くことができます。こちらは短時間勤務ですので、自分で時間なり日数を選択することができて、待遇などはフルタイムの正社員と同様です。
 こちらからbの所で、フルタイムの正社員になる道というのもあります。同じように左の所に転換基準が書いてあります。こういった基準を満たした場合にフルタイムになっていくことができるという仕組みになっております。フルタイムの正社員と短時間勤務の正社員の間は、bの矢印が両方に向いており、流動的に行ったり来たりすることができる仕組みとなっております。資料3については以上です。
 続いて資料4の説明をいたします。こちらは「多様な形態による正社員に係る論点」として挙げております。1つ目の四角は、資料3の中でも挙げていた論点を再掲しておりますが、通常の労働者への転換よりも柔軟な働き方のまま、雇用の安定を望むパートタイム労働者に対応するために、勤務地限定又は職種限定で無期労働契約である労働者に転換することについて、どのように考えるべきかということで、下に論点を少しブレークダウンしております。
 「短時間労働者実態調査」によりますと、パートタイム労働者の中には雇用の安定に対する志向が強い。他方、柔軟な働き方のまま働いていきたいといったニーズがあることも見て取れます。データとして下に2つ書いております。こういった実態があることを踏まえた上で、2つ目の○にありますように、正社員とパートタイム労働者の間の処遇がかなり大きく異なる場合に、正社員化を進めていくことは、使用者にとってもパートタイム労働者自身にとっても困難を伴う場合があるのではないかということで、パートタイム労働法上、中間的な形態としての「多様な形態による正社員」への転換というものを、どのように位置づけていけばよいかというのが1つの論点になるのではないかと思います。
 最後に、多様な形態による正社員というのは、一定の限定はあるものの、無期労働契約です。こういった人たちの雇用保障をどのように考えるべきかということで、1つ論点を挙げております。次の頁を参考に見ていただければと思います。多様な形態による正社員については、いま省内の職業安定局のほうで、「多様な形態による正社員」に関する研究会を開催しているところで、佐藤先生に座長に就任していただいております。問題意識としてはこちらも、正社員と非正規社員の間の待遇が大きく異なるままに正社員化を進めていくことは難しいのではないか、他方、正社員にとってもワーク・ライフ・バランスの観点から、多様な働き方ということで少し違う中間形態と言いますか、多様な形態による正社員のあり方を考えていってはどうかということで、本年の3月から研究会を開催しており、いま3回目まで開催されたところです。
 4頁に、そちらでの論点を挙げております。こちらは第2回の研究会で示されたものです。さまざまなものがありますが、どういった実態があるか、それを進めていくためにどういったことを検討していくべきか、最後に、行政の取組としてどういったことをやっていくべきかということを検討の論点(案)として挙げていますので、紹介させていただきました。
 多様な形態による正社員に関して、これまで挙げられてきた提言を6頁で簡単にまとめております。分量が多いので、最初の2つのみご紹介いたします。特に1つ目です。雇用政策研究会の報告書ということで、昨年の7月に出されたものです。多様な正社員に関しては、「提言」の所で太字にしております。多様な正社員というのは、従来の正社員でも非正規労働者でもない、正規・非正規労働者の中間に位置する雇用形態です。そういった形態を労使が選択し得るような環境の整備が望まれるのではないか、ということが掲げられております。具体的には職種限定や勤務地限定といったことがあります。
 こういった提言をする理由は、真ん中にあります。多様な正社員という形態の中には、いまは有期契約労働者として働いている方が、契約期間の定めのない雇用契約に移行することができることで、細切れの雇用を防止するといったことがあるのではないか、正規雇用へステップアップしていくための1つの手段になり得るのではないか、企業にとっても事業所が閉鎖される等の異常事態の際に雇用調整できる余地を残しつつも、キャリア形成の実施などによって、中長期的に戦力としてそういった労働者を使うことが可能になるのではないかということが挙げられております。懸念される点として、整理解雇等における法的地位といったものがあり、今後整理していく必要があると書かれております。有期契約労働研究会の報告書も同じように、こういった形態について環境整備を検討することが必要ではないかということが、提言として挙げられたところです。
 次の頁は割愛して、多様な形態による正社員ということで、地域限定正社員の例を2つご紹介いたします。1例目は卸売業です。制度導入の背景をご覧ください。出店の拡大に伴ってサービスの向上が必要になってきた、正社員になることを希望して優秀な人材が他社に出ていく、若干給料が下がっても正社員になりたいという希望がある、従来の正社員には全国転勤があったために、優秀な方でも正社員はやめておこうという人がいたので、勤務地限定というものを考えたそうです。
 真ん中の四角に、地域限定正社員制度の導入というのがあります。まず、パートタイム労働などで働いている方が面接をして一定の要件を満たしますと、左側にある地域限定の正社員になることができます。こちらについては期間の定めがなくて、月給で給料が支払われ、転居を伴う異動がない。通勤は大体1時間から1時間半圏内になります。登用としては、初級店長までの登用があります。制度の特徴は、右側の四角にあります。これまでは店長に登用されることが、正社員になるための1つの要件になっていたのですが、新しい制度の中ではそれが若干緩和されて、正社員への道が開けたということです。それと、転勤ということでためらっていた労働者がいたので、転勤が正社員の壁でなくなったということが挙げられます。※に書いておりますが、約2万人のパート・アルバイトの方がいたうち、2,000人ぐらいが地域限定正社員になりました。ピンクの所にその効果などを書いておりますが、そこは割愛いたします。
 9頁の取組事例の2つ目に移ります。こちらも地域限定の無期社員です。背景としては一時期、有期契約社員を活用する一方で、正社員の数を極力抑制したことがあったそうです。その際にサービスの質が落ちてしまったり、スタッフが辞めてしまったりということがあったので、そうではなくて有期契約社員の正社員化を進めていこうということで、制度を導入したということです。いちばん左の「パートタイム/フルタイム 有期契約社員(Bメイト)」という所に、「資格」があります。このAMレベルという店長代理レベルに属する人に対して、ルートの1というのがあります。エリア社員のエリア店長を希望するBメイトということで、地域限定正社員への道が開かれており、面接などを受けて一定の基準をクリアしますと、地域限定の正社員ということで、こちらも通勤1時間圏内ぐらいの店舗間異動のみの無期社員となっております。
 エリア社員の待遇の所をご覧ください。時間についてはいま申し上げましたが、店舗が確保できない場合は、転居を伴う異動を打診されることもあるという契約になっています。月給などはパートタイム労働者として働いていたときなどに比べますと、時給換算で200円程度上がったと。全国転勤があるようなナショナル社員との月給差は2万円ぐらいで、賞与は評価に応じてということで、平均的には大体7割程度もらえることになっております。
 次の頁から判例を4つほどご紹介したいと思います。こちらは、多様な形態による正社員に関する研究会の中で報告のあった裁判です。1つ目が、勤務地限定の裁判例であるエールフランス事件です。こちらは勤務地の限定があった労働者に対して転勤の命令をして、従わなかったために解雇したという話です。事案の概要です。フランスに本社を置くYが、「雇用地は東京、配属先はY日本支社」という限定を付けて、期間の定めのない雇用契約により雇用された者がXです。Yのほうで外国人従業員、この場合、日本人も外国人従業員ということで、パリ移籍の方針を採るため、昭和48年12月31日をもって雇用契約を終了させる旨の解雇予告の意思表示、及び昭和49年1月1日発行の契約で、「雇用地をパリに移し、配属先をY本社とする」という新しい雇用契約の申し入れを行いました。それに対してXが承諾の回答をしなかったので、YがXを解雇したということです。
 これは高裁の判決において、本件解雇は権利濫用であるとして無効となっております。本件解雇予告の意思表示は、恰もパリへの配置転換命令に対する承諾を解除条件とする解雇予告に等しく、これに応じない場合には解雇予告と同一に論ずることに相当することになる。この場合、雇用契約において東京ベースであるというように明示されて契約されていたわけですが、このように配置場所が明定されている場合には、使用者は当該労働者の同意なくしてこれを配転しえないと。したがって特段の事情がない限り、使用者がこのような配転命令を発してこれに従わない労働者を、そのために予告解雇にするということは、解雇権の濫用であると判断されたものです。
 12頁も勤務地限定に関するものとして挙げている東亜ペイント事件です。しかし先ほどとは異なり、勤務地の限定の合意はなかったもので、そもそも配転命令の定めがあった雇用契約に関するものです。事案の概要です。Yは大阪に本店を置き、全国に事業所や営業所を持つ会社で、その就業規則の中に「業務の都合により異動を命ずることがあり、社員は正当な理由なしに拒否できない」という条項が定められていました。実態としても頻繁に転勤が行われてきたと。
 Xは営業担当者ということで、勤務地を限定することなくYに採用されて、入社から8年間、ずっと大阪近辺の勤務をしていました。このようなXに対してYが名古屋営業所への転勤を内示して、実際に転勤命令をしたけれどもXが拒否をしたと。Xはこれ以前にも、ほかの所への転勤命令の内示も拒否していました。Yはこの転勤命令拒否が就業規則所定の懲解事由に該当するということで、Yを懲戒解雇したという事案です。一審と二審は、このような転勤命令は権利濫用であり無効と判断したわけですが、最高裁判決では、本件転勤命令は権利濫用には当たらないということで、原審を破棄・差戻しました。
 最高裁判決の概要をご覧ください。1つ目ですが、労働協約及び就業規則に転勤を命ずることができる旨の定めがあって、実際に転勤の実態があった場合で、かつ入社時にXについては勤務地の限定の合意がなかった場合、使用者は個別的同意なしに労働者の勤務地を決定することができると。その上で、それは無制約に行使できるものではなくて、3つ目のポツにありますように、業務上の必要性があっても、当該転勤命令がほかの不当な動機・目的によってなされたものである場合、もしくは労働者に対する不利益が通常甘受すべき程度を著しく超えるようなものである場合は、権利の濫用になるという判断枠組みを示しました。
 これに沿って本件を判断したところ、4つ目のポツにありますように、業務上の必要性といったものは余人をもって替え難いほどのものである必要はないとか、本件転勤命令には業務上の必要が優に存したものということができると。他方、Xの家族状況ですが、それほど不当に重い不利益ではないということで、本件配転命令については権利濫用には当たらないという判断をしたものです。
 次の頁が職種限定に関するもので、日産自動車村山工場事件です。こちらは事案の概要にありますように、XらはYの工場において機械工として就労してきた者です。期間にはかなりの個人差がありますが、28年10カ月ぐらいから、短い者で17年ぐらいでした。YはXらが働いていた工場にあった車軸製造部門をB工場に移管して、A工場では新しく小型乗用車を製造することにしました。それで機械工として採用したXをコンベアラインに配置換えをしたため、Xらが機械工の地位にあることの確認と、これが不法行為であるということで損害賠償を求めた事例です。
 最高裁判決の概要を見ていただきますと、10数年から20数年にわたって機械工として就労してきたとしても、この事実から直ちに機械工に限定する旨の合意が成立したとはいえないこと、2つ目のポツにありますように、個別的に本件配転命令について労働者の事情を考慮したものではないけれども、異動対象者全員について一斉にほかの部門に配置換えしたことについては、経営上の判断として不合理とはいえないこと、最後に、配転対象者の中には長年機械工として働いてきた者がいることを考えても、本件の労働者配転命令は権利濫用には当たらないというところで判断されたものです。最後の例もまた勤務地限定ですので、こちらは割愛いたします。
 続けてその他の論点です。具体的には明示しておりませんでしたが、パートタイム労働者の働き方に影響を与えうるものということで、税制と社会保険制度について取り上げたいと思います。こちらについてはこれまでの議論の中で、委員の先生方からもご発言のあったことや、労使関係者からもお話いただいたものであり、論点として取り上げました。簡単に現在の仕組みと、今後検討することになろう論点について触れたいと思います。1頁から3頁までは現行の所得税における配偶者控除・配偶者特別控除の仕組みと、短時間労働者への年金や健康保険の適用の要件についてなので割愛いたします。4頁をご覧ください。
 こちらは「短時間労働者実態調査」の中で、社会保険や雇用保険適用に関して見たものです。最初の雇用保険の加入状況ですが、週の所定労働時間が20時間で、30日以上の雇用見込みというのが要件になっております。加入している割合が大体71%あります。厚生年金の加入状況は、通常の就労者の4分の3以上の所定労働時間で、130万円以上の年収がある場合です。合計で大体39.2%が、本人が被保険者となっており、配偶者が加入しているものが大体3割弱あります。健康保険も状況は似ています。
 5頁に就業調整の有無及び就業調整をしている理由ということで、2つのグラフを並べております。これは平成18年と22年の調査の比較です。傾向としてはいずれも2割ちょっとが、就業調整をしています。その理由も傾向は大体似ており、いちばん高いものが「所得税の非課税限度額を超えてしまうので」という理由です。次に高いものとしては、「一定額(130万円)を超えると自分自身が被保険者になってしまう」というのが挙げられているという状況です。6頁はそれを男女で取ったものですが、こちらは割愛いたします。
 7頁は「就労条件総合調査」から、家族手当の導入状況について見たものです。上から3番目ですが、どれぐらいの事業所で家族手当に入っているかです。平成22年ですと、大体64.8%ありました。本社の労働者が30人以上いる企業ですが、6割強の所で家族手当を導入しています。10頁は家族手当などがあるかないかです。こちらは調査が変わって古いのですが、平成13年の「雇用システムに関するアンケート調査」を使っております。11頁をご覧ください。家族手当などがある場合に、どういった基準でそれを支給しているかです。1つ目のグラフですが、配偶者手当の支給に対して収入制限のある所が61.5%あります。その収入制限の基準を見たところ、78.4%の事業所が103万円を基準としています。13.9%の事業所が130万円を基準としていることが出ております。少し新しい2005年の労務行政研究所の調査においても、大体似たような支給制限の基準についてのデータが出ています。
 12頁が年収と手取り額の関係です。こちらは短いスパンで、例えば年収と手取り額というものを、保険制度や税との関係で絡めてみるとどういったことになるかを整理しております。まず注をご覧ください。この表はいろいろな仮定を置いて推計した短期的な年収と手取りの関係についてのものですが、社会保険は加入して保険料を納めることで将来的な給付があるものですから、こちらの表だけで就業調整に対する影響を正確には分析し切れないということに留意してご覧いただければと思います。各種推計の前提は、※に書いておりますので割愛いたします。
 年収と手取り額で、ポイントになるものについてご説明したいと思います。まず100万円の所です。こちらには税の負担はありません。週所定労働時間のところで雇用保険料がかかってくる層があります。正社員の4分の3以上の週所定労働時間ですと、社会保険料が発生します。こちらは健康保険料と厚生年金保険料で計算をしておりますが、それが大体14万円ぐらいかかってきます。
 次に、129万円と130万円の所をご覧ください。129万円の手取りの所を見ていただきますと、大体123万円になります。こちらは本人の社会保険の加入はありませんので、税と雇用保険料を払った額です。1万円多く稼いで130万円の年収になると、国民年金保険と国民健康保険に加入しますので、それぞれ18万円、8万円の負担がかかってきます。いちばん右の手取り額を見ていただきますと、130万円の所が大体102万円ということで、129万円のときの手取り額から20万円ぐらい下がります。
 次に、123万円ぐらいの手取りの水準になるには、どれぐらいの年収が必要かについては、160万円の所をご覧いただきますと、手取り額が124万9,000円です。年収が160万円のほうが少し多くなりますが、160万円稼ぐと、国民健康保険料等の負担のないときと同じぐらいの手取りになることが分かります。税や社会保険については、今まさに改革中ということで、少し資料をお付けしております。
 資料7、8は、社会保障改革に関する集中検討会議に厚生労働省が提出した年金と医療の改革に関する資料です。この中で年金と医療保険について、短時間労働者への適用拡大ということが謳われております。まだ具体的なところは出ておりませんが、今後検討していくということになっております。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 資料6について、補足して説明いたします。資料6は、就業調整が週所定労働時間数や時間当たり賃金額にどういう影響を与えるかについて推計した結果です。配偶者のある女性で、かつ時間給のパートタイム労働者を対象とし、そのうち、就業調整を行っている方と就業調整を行っていない方について、週所定労働時間と時間当たり賃金額がどのぐらい違うのかということを、先行研究の分析枠組みということで以前、樋口先生がおやりになった推計を、さらに神谷先生が論文を書いていらっしゃいますが、それと同じ枠組みで、JILPTの短時間労働者実態調査のデータを使って分析いたしました。
 その結果、真ん中辺りに表で付けております。職種や年齢、勤続年数、地域、企業規模といった影響をすべて除去して、就業調整を行っているパートタイム労働者の週所定労働時間は、就業調整を行っていないパートタイム労働者の週所定労働時間より約22%短くなっていることが明らかになりました。また、時間当たり賃金額で見ますと、就業調整を行っていると、時間当たり賃金額も6%少なくなっています。就業調整は労働時間が減るというのはもちろんのこと、時間当たり賃金額についても抑制の効果があるということが、この推計から分かりました。
 ちなみに資料の1頁の点線から下に、「参考」があります。これは1990年(平成2年)と1995年(平成7年)のデータで、神谷先生が行われた研究の分析結果です。ここでも週所定労働時間が2割から3割減っているということです。時間当たり賃金額も、就業調整を行っている方のほうが少なくなっている、賃金抑制効果もあります。さらに、賞与について見ますと、就業調整を行っている方は、行っていない方よりも2分の1ぐらいになっているということで、特に賞与の抑制効果が大きいことが、神谷先生の分析からも分かります。資料6の2頁、3頁は、具体的な推計の式や、実際の説明変数といった推計の方法について、少し詳しく書いたものです。
○今野座長 あとは自由に議論していただければと思います。
○佐藤委員 質問で、資料3の7頁の下の「短時間正社員制度の導入状況」です。これは平成22年の調査なので、資料の「参考」の所で厚生労働省がいっている短時間正社員というのは、一応、目的を問わずということで、育児・介護以外も含めてといっているわけですが、7頁の調査のときというのは、育介法が改正された後なのですか、前なのですか。短時間勤務の措置義務が入ると、これは育児目的のものもここに入っているから、この調査は法改正の前なのですか。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 はい。育介法改正の前の、平成22年4月1日時点での調査です。ただ、先行して育児・介護のための短時間勤務措置を持っている事業所もあると思いますし、正社員についての短時間勤務であれば、回答したのかなと思います。
○佐藤委員 ここでいう下のほうの調査は、育児目的の短時間勤務でも、短時間正社員として調査しているということですね。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 それは当然入ってきていると思います。
○佐藤委員 そうですね。上とはちょっと違うということですね。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 はい。
○水町委員 それぞれについて、いくつか申し上げたいことがあるのですが、差し当たり通常の労働者への転換についてです。いま佐藤先生がおっしゃった7頁の所で、感想としては、短時間正社員制度は、育児・介護・高齢や、傷病からの復帰が比較的多く、そもそも正社員だった人が、何らかの理由で短時間になるというので、正社員以外からの転換は11.8%と、かなり少ない。短時間正社員制度がどういう目的で使われているかというと、いまのところ正社員を一時的に短い時間で使うというところがそうなのだなと思いました。
 この研究会の方向性に関して、2つ申し上げたいと思います。いちばんわかりやすいのは、13頁の株式会社(製造業)の転換事例というのがあって、この表が面白いなと思ったのです。ここで正社員転換とか、通常の労働者への転換ということの中で考えるときに、大きく2つの違うものが入ってきているので、この2つをきちんと分けて議論したほうがいいし、かつあまり正社員転換とか短時間正社員という名前などにこだわらずに、もう少し足腰をしっかり前向きに進んでいくための、あまり技巧的ではない、システムとしてどう動かしていくかという形での制度設計をしたほうがいいのではないかと思うのです。
 2つの側面というのは、1つはパートタイマーからショートタイム社員という、まさに正社員への転換という点なのですが、これはこれまでのパート法の中でも、3つのうち1つをとりなさいという形でやってきたものなのです。正社員に転換すること自体が目的というわけではなくて、むしろちゃんとこれまでキャリアアップの機会とか職業訓練の機会がなかった人に、職業訓練なり、キャリアアップのルートをきちんと作っていって、正社員になったら逆にやらなければいけないいろいろなことがあって、それを望んでいるかどうかはまた別の話になるので、正社員転換という言葉で何でも正社員にしてしまうというよりも、ちゃんと職業訓練をして、キャリアアップしていけるルートを作るというのを、前回お話した行動計画みたいなものでやっていく。行動計画の中身については、これまでやって、比較的実績が上がっていそうな3つの措置というのも、3つのうちどれか1つを必ずとりなさいというよりも、実態に合わせてキャリアアップのためのルートを作っていくという観点から、それぞれアクションプランの中で考えてくださいねという方向でやっていくのがいいというのが1つ目の意見です。
 もう1つは、非正社員を正社員に上げるということとはまた違って、労働時間の選択をフレキシブルにするという意味で、フルとパートの間の相互転換をやりやすくするというのが、13頁の図でいうと、cとbの間の「ワーク・ライフ・バランスの推進」というので、これは正社員も非正社員も両方入るかもしれませんが、短時間の人が場合によってはフルタイムに行き、フルタイムの人が場合によっては短時間に行きという意味で、フルタイムとパートタイムの間の相互転換で、ヨーロッパでいう相互転換というのは、まさにここなのです。
 そういう意味で、フルとパートの相互転換のサポートを法的にどう図っていくか。幸い育児・介護休業法で短時間勤務制度ができたので、それを実際に運用している企業では、少なくともフルタイムをパートタイムに移動させる制度の枠組みみたいなものは用意されていると思いますので、その制度の枠組みを参考にしながら、フルタイムの人が一時パートに来たり、短時間の人が一時フルタイムにしたりという制度を政策的に、育児目的だけではなくて、より一般にどう広げていくかという観点から、そういう視野も入れて、パートタイム労働法の中に政策的に入れ込んでいくべきなのではないかという気がします。この2つをごちゃごちゃにすると、何かわけがわからなくなるので、2つのものが違うので、条文としてもまた別のものだという形で位置づけていくことが大切かなと思います。以上です。
○権丈委員 いまの水町先生のお話のように、私も、パートタイム労働者から通常の労働者への転換には2つの観点があると考えております。1つは、パートタイム労働者の多くが現在非正規労働者であることからくる正社員転換で、もう1つは、パートタイム労働が短時間労働であることからくるもので、労働時間の相互転換、つまり、フルタイムとパートタイムの間の相互転換の可能性という観点です。これらは、ワーク・ライフ・バランスや今後の労働力の有効活用という面でも非常に重要だと思っております。今日の事務局からのご説明にもありましたように、パートタイム労働者から正社員への転換というのは容易ではないわけですので、中間形態である「多様な正社員」の実情などを、佐藤先生にお伺いしたいと思っているところです。
○山川委員 2点あります。1つは考え方の整理ですが、多様な正社員ということを考える場合と、いわゆる純粋な正社員転換を考える場合の視点が、労働者のニーズとの関係もあって、若干異なるかもしれません。いわゆる純粋な正社員転換を考える場合には、雇用の安定というファクターと、キャリアアップという先ほど水町先生が言われたファクターがあって、双方を一気に実現するものではないか。それから、無期転換のみということですと、雇用の安定に重点を置いている考え方ではないか。それで無期からさらにキャリアアップするという観点から、例えばそのためのトレーニングとか支援などを行うことが考えられます。
 もし、段階的、あるいは中間的な対応を考えるとすると、趣旨が雇用の安定のほうなのか、あるいはキャリアアップのほうなのか、両方なのかという整理がちょっと必要かなと思います。特にキャリアアップのほうでは、いろいろ支援などが必要になりますし、雇用の安定のほうでは、どの程度の雇用の安定が図られるのかということが問題になるかと思います。
 あとは質問で、これは事務局というよりも、むしろ今野先生とか佐藤先生にお伺いすることかもしれませんが、正社員転換措置は措置義務だから、本当は対象企業は正社員転換制度自体を持っていないといけないのですが、その比率はあまり高くはないですね。転換実績の点もそうなのですが、それはなぜなのかという点です。前回問題になりましたキャリアラダーということとの関連で、正社員に転換をする場合には、単にいま存在するパート労働者の方を正社員として扱うだけで済む簡単なことなのか、それとももっといろいろ人事規程とか人事システムを改めることが必要になるのでしょうか。ポストがないというのは、単純に雇用の総量という点からポストがないのか、あるいはコストがかかるという発想なのか、制度的に行き場がないというか、パートタイマーを正社員として位置づける制度的な枠がないということなのでしょうか。ちょっと表現がうまく人事管理的に使えないのですけれども、そういう単なる正社員としてしまえば済む問題なのか、もっといろいろな人事制度に手直しをする必要があるのか。その辺りをどなたでも結構ですが、教えていただければと思います。
○今野座長 どなたでもいいというから、佐藤さん。
○佐藤委員 直接お答えになるかどうかわかりませんが、13頁の絵でショートタイム社員、つまり短時間で無期で、つまり、現状で言えば、水町さんが言われたようにフルタイムのほうからすると一時的に、いまの法律では育児で、ある期間、限定的に移るというものは、法律上もそうできていますし、企業としても現状のいわゆる正社員のいろいろな雇用のシステム等の中で、ある程度導入できる。ただ、問題はショートタイム社員が常にいるが、同時にその人がずっと定年まで短時間を選べるというショートタイム正社員を入れるのは、現行の雇用システムを考えるとなかなか難しい。たぶんそこだと思うのです。一定期間だけ移って、また戻るという無期の正社員のシステムは、ある程度微調整で入れられると思うのですが、大事なのはこれをずっと恒常的に置けるかどうかというと、ほかのところを相当いじらないと、あるいは特定の短時間の人がたくさん活用できるような業種などというように、限定される可能性があるかなと思います。
 パートからの転換も、たぶんここが問題になるのは、普通考えているのはパートの人からすれば柔軟な働き方でというと、恒常的にという意味ですよね。ここがなかなか。そういう意味で、一時的に移って、またフルに戻るという、何年かという限定があればいいと思うのですが、そうではないとすると、パートの人に柔軟な働き方として、特に時間面で、移ったらずっと定年まで短時間でというのが結構難しい面がある。そういう意味で、いくつか導入している所もあるのですが、短時間をたくさん活用していたりとか、業種の特性とか、あるいはフルタイムの人の処遇もかなり変えて、職務給的にしているとかですね。つまり、導入する条件がある所が導入しているかなというのが1つです。
 ですから、難しいのは、パートタイマーとして、変わると無期になるわけですね。パートで有期で更新していても、更新型の有期でも、処遇のほうが均衡・均等がきちんとできて、キャリアラダーもきちんとできると。そうすると、何が違うかというと、無期になるか、有期か。有期でも、更新の条件とか雇入れの要件が、きちんと合理的なものとして設定されていれば、本人にとって何が違うのかということはあると思います。ですから、パートタイマーの人の処遇改善とかキャリアアップといったときに、いわゆる無期の短時間正社員が唯一の道かというと、これをあらゆる業種によって、現状でいうとなかなか難しい。かなりドラスティックになります。
 もう1つの道は、有期なのだけれども、処遇はきちんと均衡・均等をやり、かつ有期だけれども、更新のルールなどをきちんとやられて、何回で雇止めとか、きちんと更新はしていくのですが、しない場合の条件をきちんとしておく。ショートタイム社員を無期にした場合も、雇用調整のときのルールをどうするかとか、基本的に同じなわけですね。ですから、両方考える必要があるかなと思います。ショートタイム社員、恒常的な短時間勤務を作れなくはないのですが、現状の正社員の時間の柔軟性を前提にした雇用保障などがあるので、かなりドラスティックに変えないと、あるいは特定の業種しか難しいかなと。一時的はできるのですけれども。ですから、フルからパートの一時的というのは、目的を広げて、育児・介護に広げるということは、今度は進めていかないといけないと思うのですが、なかなか難しい。
 もう1つ、パートタイマーとして、キャリアアップなり処遇改善で、有期契約のほうでどう議論するかわかりませんが、有期だけれども、もう少しきちんと本人にとっても予測可能性があって、企業からすれば、合理的にある程度、雇止めできるような、そこをきちんとやっていくというのも処遇改善に結び付くということで、やはり同時に議論したほうがいいかなと。
 ですから、パートからフルタイムへの転換というのは、もちろんあっていいのです。フルタイムのほうの転換は現時点でもあるわけです。行ったあと、特定の事情で、一時的にショートにするというのは、もちろん現行でもあるわけです。というような印象です。
○今野座長 追加をしたいのですが、企業がパートの人をなるべく活用しよう、しかも、例えば単純作業ではなくて、係長ぐらいまで活用するぞとか、さらにいけば、課長ぐらいまで活用するぞという活用戦略を作ると、自動的にキャリアラダーは作らざるをえなくなる。そういうキャリアラダーができると、無理しなくても「この辺は正社員転換のポジションね」と、決まってくる。ですから、一部調査でもあると思いますが、人材育成というか、パートをどの程度使うかによって、キャリアラダーも1つの人事制度なので、それが決まって、そうすると正社員との関連が出てくるというものです。調査でも、上位の職位までパートを使っているような会社ほど、キャリアをきちんと作って、正社員転換も多い。たぶんそういうことになっていると思います。
○佐藤委員 いまのは、フルタイム正社員への転換ですか。
○今野座長 そうです。もう1つだけ言うと、いまフルタイム正社員への転換がしにくいというのは、現状の正社員はいつでも残業できるようになっていることがすごく大きいと思うのです。フルタイム正社員のほうの働き方、もちろん残業があってもいいのですが、事前に予測できなくて、いつでも残業できるように待機しろというのでは私は無理だと思います。やはりフルタイム正社員で広い意味でのワーク・ライフ・バランス、働き方の改革が進んでくると、もちろんショートタイム社員というのはあっていいと思うのですが、パートの人もフルタイムの転換がしやすくなるとは思っているのです。
○山川委員 そうしますと、何か鶏と卵みたいな感じもしてこなくもないのですが、活用することができるようになれば、価値としての重要性が高まる。逆にキャリアラダーというのは単に形式面の話ではなくて、自然に修正されるといいますか、修正はわりとやりやすくなるという感じでしょうか。
○今野座長 鶏か卵かではなくて、出発点はあくまでもどれだけ使いたいと思っているかです。そうすると、極端なことを言うのですが、パートの人は定型的な業務で、単純業務をいつまでもやっていればいいやと思えば、キャリアラダーなんか作りませんよ。そうしたら、正社員転換はしないです。企業は、パートの人たちを活用したほうが組織効率も上がるし、生産性も上がるというように考えれば、そういう人事戦略をとって、それに合わせた人事制度を作って、転換の仕組みもそんなに難しくないです。ですから、今日の資料3に正社員転換の事例が、いくつかありましたよね。大体、制度は似ているでしょう。細かいことは別にして、大体こうなるのです。そういう意味では、今度パートの人たちにやる気があって、能力があるということであれば、その人たちを企業としては活用しない手はないだろう。では、活用しようかということになると、こういう制度整備に入っていくということになる。
○山川委員 価値と人事戦略が基本にあるということですね。
○今野座長 そうですね。人事から言うと、そうなる話なのです。
○浅倉委員 13頁の図でいくと、パートタイマーとショートタイム社員というものの入口は全然違うのですね。入り口は違うけれども両者はそれ以外に何が本当に違うのか、ということをはっきりさせなければならないと思います。1つはっきりしたのは、雇用期間が有期かどうかが違うだろうということです。しかし、パートタイマーの雇用保障がしっかりなされなければ、実際にはかなり長期の試用期間的な意味を持ってしまうので、ショートタイム社員になるまでに要求が何も言えなくなってしまうことになります。そんな制度として悪用されないようにしないといけないということが重要ではないでしょうか。さらに、パートタイマーはパートタイマーなのだけれども、均衡処遇、あるいは均等待遇、それはきちんと保障していかなければいけないのだろうと思うのです。パートタイマーになってから勤続3年以上という条件、これはたまたまの事例だと思うのですが、その条件が満たされてショートタイム社員として働くという道を選択すれば、期間の定めのない雇用になるということは一見して好条件のようにみえますが、今申し上げたように3年間何も言えない労働者を作らないようにしなければならない。その辺が1つ問題点だと思います。
 もう1つは、佐藤先生がおっしゃったように、フルタイム社員もきちんとワーク・ライフ・バランスを考慮していかなければいけないということです。ショートタイム社員だけがワーク・ライフ・バランスではなくて、フルタイム社員の中でもワーク・ライフ・バランスを実現するということですね。フルタイム社員のままでワーク・ライフ・バランスを実現していくということも、同時に平行して考えていかなければいけないだろうと思います。
 さらにもう1つ言えば、次の資料4に行ってしまいますが、多様な形態による正社員の勤務地限定というところにも、同じような問題点をちょっと感じています。勤務地限定正社員か、勤務地無限定かというように分けると、何か勤務地限定社員だけが配置転換に歯止めが掛けられるようなイメージができすぎないでしょうか。いまはワーク・ライフ・バランスとか、男女雇用機会均等法の第7条の間接差別の禁止規定がありますので、もう既に法制度上、複線型の人事管理制度で、安易に転勤要件を課してはいけないという合意が、かなり社会的な合意になりつつあると思うのですね。そうすると、現状のフルタイム・正社員にそういう網が掛かっているときに、あえて多様な雇用形態といって、別枠を作ってしまうと、もちろんそういう意図ではないだろうということはよくわかるのですが、それが悪用されかねない。つまり、勤務地無限定社員には、転勤に関する歯止めは全くなくてよいのかという議論になりかねないので、そこが非常に気になるところです。
 理想的なことを言うと、勤務地限定・無限定というように、社員の地位として固定化しないで、使用者がある一定期間に労働者に転勤を提案して、労働者がその都度、転勤する、しないを同意するというようなやり方がとれないものでしょうか。労働者としては転勤に関わって一定の地位を固定するのではなく、ライフサイクルの中で、一定の期間は転勤を選び取る、あるいは選び取らない、そういうやり方です。なかなか企業としては難しいかもしれないけれども、その都度合意を探っていく方法が残るような仕組みを、雇用管理としても追求していくというほうが、むしろ理想的なのではないかという気がいたします。私の意見です。
○佐藤委員 社内公募型の人事のシステムは1つの選択であって、社内公募型であれば、今度は採用から始まって、全部変わってくるわけですね。この事業所のこの職種で採用します。異動も空いたら手を挙げてくださいとして、異動させる。職種がなくなったら辞めてくださいというルールにならないといけないわけです。それで、雇用保障は従来の異動型の正社員というシステムは作れないと思うのです。社内公募で全部異動させるというシステムは、できなくはないのですが、ただそれは他の人事処遇制度を大幅に変える必要がある。新しくできた企業は作りうると思うのです。うちは社内公募型でやりますと。私はそれは全然否定しないのですが、ただ全部が変えられるかというと、それはかなり大きな変更ではないかと思います。
○浅倉委員 ドラスティックにいうと、社内公募型になるということですね。
○佐藤委員 そうすれば、仕事がなくなったら辞めてくださいと。異動しなければ処遇は上がりませんよと、こういうことですね。
○浅倉委員 はい。
○佐藤委員 私はそれは1つの選択だと思います。
○浅倉委員 現在の判例などを読むと、必ずしも社内公募ではないし、理想的なものとしても、必ずしも社内公募制にすべきだとも考えていません。ただ、現在の問題は、業務命令という形で転勤命令が出て、それを拒否すると、いきなり処分みたいな形になってしまうので、その間に合意されるようなシステム化ができないかなということなのです。公募型までいくと、確かに大変かと思います。
○佐藤委員 いまの転勤というのは、やはり企業にとっても本人にとっても、すごくコストがかかるのは事実なのです。だんだん減ってきますが、例えば金融関係で、2年とか3年で異動させるというのは、本当に必要な転勤か、私は見直さなければいけないと思っています。ですから、いまある転勤のすべてが、本当に業務上必要か、あるいは人材育成上必要かというのは、それは同時にやっていかなければいけないと思っています。
○水町委員 資料4のほうに入ったので、そっちでもいいですか。いま浅倉先生がおっしゃっていたように、限定社員の反対による無限定社員については、均等法上の間接差別に当たらないように気を付けなければいけないとか、無限定といっても、労働時間は何時間働かせていいとか、どこでも何でも理由なく配転してもいいというわけではないので、その点については同時にきちんと考えなければいけないということは、おっしゃるとおりだと思います。それを前提としながら、2点あります。
 勤務地限定とか職種限定の具体的な中身については、企業の中でいろいろなパターンがありうるということで、多様な選択肢を提示するのは、人事管理の中で行っていただければいいと思うのですが、法的に何が問題になるかというのは2点です。1つは、勤務地の幅が違うとか、職種の幅が違うときの処遇・待遇のバランスのとり方。具体的には均衡待遇で、何かが違うときにどのぐらいの幅を持たせることがバランスのとれたものになるかという議論を1つしなければいけないけれども、これはもう前回、前々回に話していますので、繰り返しません。その中で議論されたことを、ここでも当てはめればいいと思います。
 もう1つがここの中にも出てきています雇用保障なのです。雇用保障で、資料の最後のほうに4つ判例が出ていますが、これはちょっと筋違いの判例が多くて、最初の3つは配転の事例なのです。配転を命じることができるかどうか。配転が適法であれば解雇できるとか、配転が適法でなければ解雇できないというのは配転そのものの問題で、むしろ最後のシンガポール・デベロップメント銀行事件大阪地判みたいな、これはまさに解雇の問題です。勤務地が限定されたり、職種が限定されたときに、勤務地とか職種がなくなったときに解雇できるかという問題が、より直截に問題になってきて、これは結局、整理解雇の法理の要件を満たしていないので、解雇権濫用にはならなくて有効と判断していますが、この判決以外にも、これまで裁判例の蓄積があります。
 私はほかの所で研究の一環として調べたことがあるのですが、これまでの裁判例に照らしてみると、こういう勤務地限定とか職種限定の限定されたものがなくなったときの解雇については、整理解雇の四要件をそのまま適用しているもののほうが少ないのです。整理解雇の四要件そのままではなくて、その中で重要なものを当てはめていって、結論としては、よほど変なことをしていなければ、解雇を有効としたものが、これまでの裁判例では多いのです。なので、これまでの裁判例を下級審裁判例まで視野を広げていろいろ調べていくと、アドホックな判決なので、これまでの蓄積の中でいろいろなことを言われていますが、その中で少し整理すると、まさに正社員の典型的な整理解雇の場合と違って、職種限定とか勤務地限定社員のもとがなくなったときの解雇については、法的にどうアプローチするか、厳格な整理解雇法理が適用されているわけではないということの整理を少しして、これからみんなの合意を得ながら、新しいルールとして定式化していくとすれば、法律改正するかどうかは別にしても、こういうルールになっていますということが明らかになれば、1つの成果です。
 先ほどの均衡待遇、バランスのとり方とか雇用保障のあり方というので、大体こうなっていますということが明らかになれば、会社も安心して多様な社員制度を使って対応できるという安心を与えてあげれば、あとは企業の中で工夫してやってくださいということになるのかなという気がします。これから裁判例の分析などの作業がきちんとされることを期待しています。
○今野座長 それは事務局にもう一度、判例を整理してこいという宿題が1つですね。
○水町委員 でも、これは違う研究会なので、違う研究会でやってもらえばいい。
○今野座長 向こうでやってくださいということですか。
○水町委員 そうです。これは佐藤先生が別の所でやってくださいと。
○佐藤委員 いまのはすごく大事で、いまみたいなところが整理されれば、これは法律上の話ではないので、企業がリスクをどう考えるかで判断すれば、私は先ほど言ったショートタイム社員みたいなものを作れる所はかなりあると思う。そこをかなり危惧している企業が多いのは事実ですね。
○水町委員 社会保険で、特にパートにかかわるところで適用拡大ということが言われていて、いま30時間の壁と130万円の壁というのが、具体的な改革案としては、おそらく30時間を20時間にして、130万円を半分の65万円にするという案が、前の法律案はそうでしたし、今回ももしかしたらその適用拡大の中で出てくるかもしれません。私の意見としては、20時間、65万円にしても、結局その中で就業調整の可能性は残るので、ドイツもかなり低いラインですが、法改正のときにそこで就業調整が起こったということが言われています。就業調整の問題を根本的に解決しようと思うのであれば、労働時間数にかかわらず、遍く加入義務を課すということが大切なのではないかという意見があったということを、どこかに残しておいていただければ結構です。以上です。
○浅倉委員 折角ですので、就業調整についてなのですが、私も少なくとも20時間の所まで引き下げたほうがいいという意見なのです。社会保険が適用されれば保険料は確かに、賃金から控除されますが、結果的には本人の年金とか、健康保険に跳ね返ることですから、それを単なる目前の収入の減少としてだけ評価するのではなく、やはり本人のライフサイクルの中で、将来的には跳ね返ってくるものだと思います。そういう意味では、できる限り多くの人が社会保険に加入できるような形をとっていくほうが筋であると思います。よろしくお願いします。
 もう1つ、家族手当については資料5の10頁とか11頁にあります。結局、いま収入の制限が税法上はなくなっても、どうしても雇用調整をする人が多いというのは、やはり企業の家族手当の影響ですよね。とりわけ家族手当については、扶養手当として一概にすべてひっくるめないで、少なくとも配偶者手当については、廃止すべきではないでしょうか。これは以前、水町さんと一緒に私も参加した、厚生労働省の男女間の賃金格差研究会においても、かなり思い切って、配偶者手当については廃止する方向がよろしいという意見を出した覚えがあります。ですので、扶養手当すべてというわけではありませんが、配偶者手当は、もはやかなり時代遅れだと思います。
○今野座長 難しいということですか。
○水町委員 ここの研究会自体かどうかわかりませんが、表を見てみると71.1%から64.8%に、5年間で減っていますよね。
○今野座長 配偶者手当ですか。
○水町委員 資料5の7頁です。減っていますし、その中でも配偶者手当は、もしかしたら先進的な大企業では減らして基本給に回すとかいう動きがあるように聞いていますので、そういうことを考えながら間接差別の効果が大きいとすれば、均等法の間接差別の4番目としてそれを入れるという議論を、佐藤先生、そっちの研究会とかもしあれば、記憶にとどめておいてそちらで言っていただければ。
○佐藤委員 これは実際上、正直言って労使関係上、一気になくすのは、企業のほうは実際はなくしたいと思っていても、組合が反対します。実際上、育児のほうに移している企業が結構多い。一気になくさないで、まずは子供のほうに付け替えている。つまり、財源としては、人件費としては取っておいて、配偶者の部分を子供に移すというような変更です。育児支援のほうに移しながら、徐々に変えていくというような取組。これは比率だけではなくて、かなり中身が変わってきているのかなと思っています。
○今野座長 先進的な大企業、よくわからないのですけれども。
○水町委員 新聞の一面を飾るような企業。
○今野座長 佐藤さんの言われたようなことはありますが、たぶんもっとトレンドとして大きいのは、マネージャーからは全部取る。マネージャーは、もうこれをなくす。ただし組合員は残す。佐藤さんのいま出たのは組合員の中の話ですので、特にマネージャークラスは、だんだん年俸制的になっていますから、つまり仕事と成果で払うという方向になっているので、そうすると論理的に合わないので、これを外していく。これについてのトレンドかな。組合員については佐藤さんの言われたとおりで、労使関係上の問題がいろいろありますので、会社がやりたいと思っても少しずつということだと思います。ほかにいかがですか。
○権丈委員 他の先生方と重なるのですが、今回の資料5の12頁の「年収と手取り額の関係について」を見ながら、社会保険料の支払いは、将来的に本人のメリットになる面もあるわけですが、年収が上昇するとここまでドラスティックに手取りが減少してしまうのであれば、就業調整をするのもやむをえない状況にあることを再確認しました。ここの辺りは是非、社会保険のほうで全体的に検討して変更していただきたいという、こちらからの要望を入れておいていただければと思います。
 それから、少し戻りますが、通常の労働者への転換について、佐藤先生から、恒常的なパートタイムというか、短時間正社員というのは非常に難しいというお話を伺ったことに関連してです。フルタイムの正社員のほうをの残業時間を減らして労働時間を短くしていくことも1つですが、それに加えて、やはり短時間労働へのニーズがあるとすると、そうしたニーズに対応できるよう、短時間でも雇用保障のついた働き方を提供することをエンカレッジするような仕組みが必要ではないかと思います。均衡・均等も重要ですが、加えて安定した雇用の見通しが立てば、キャリアアップも付いてくる部分もあると思いますので、その辺りも是非進めていくような形にまとめられるようにできればと思っております。
○佐藤委員 適用拡大していても、就業調整は確かに残ると思うのですが、20時間までしてしまうと、いまのパートの労働時間分布を見ると、企業側も20時間程度の雇用機会がどの程度作れるかというと、結構難しい。確かに就業調整は残るとは思うのですが、全体の量としては少なくなるかなと思います。
 もう1つは、企業とすれば、いまご存じのように130万円なり103万の所に、いまだに年末になると休んだり、賞与は要らないなどという人が出てきたりするので、そういう意味では企業からすれば人事管理上のコストは相当下がる。一部残るにしても、かなりの程度そこから外れますから、そういう意味では企業からしても、確かに負担は増えますが、人事管理上のコスト、あるいは逆に長く働きたいという人も出てくると思うので、短くしようという人と長く働こうという人が出てくると思うので、全体で少しプラスマイナスを考えたほうがいいかなと思います。
 もう1つは、年金と健保で、厚生年金が適用拡大になれば、当然くっついて健康保険のほうも。ここが結構難しいなというところで、健康保険のほうは短期ですね。基本的に保険料は収入によりますが、給付は変わらないわけです。そうすると、今度、女性のパートが組合健保に入り、フルタイムの夫が失業すると、扶養になるわけです。それをそっち側が見るというような仕組みを前提とした場合、だから、3号と同じような問題が起きてきて、それをそのままにしておいてやると、年金のことしか議論しないで、健康保険のほうも同時に議論しないとなかなか難しいなというのを、テイクノートしていただけるとありがたいです。組合健保は結構大変なことになるかなと思っています。あと、いま国民健康保険に入っている所が全部、こっちに移ってくる感じですね。
○水町委員 いまの点で、年金の問題は、税方式にすれば基本的な保険料をそこから取るとかいうのと全く同じ問題が、健康保険にも当てはまるので、それは基礎保険料は個別に払わせるのか、それとも税金で賄う、現物給付で賄うのかという話は、社会保障制度全体として議論していくべき問題。でも、最終的には中立的な制度に収斂させていくべきで、大きな制度改革の中でそういうのを埋め込んでいくのが大切かなというのが私の意見です。
 もう1つ、20時間にすればこれはOKだろうという意見も一方であるのですが、いまの働き方を前提にすれば、20時間に下げたら、大体そこまでやれないだろうということは言われていますが、実際20時間にしたら、午前シフトと午後シフトに分けて、ほかの所で午後は働いていいからという分け方をする所が必ず出てきて、実際、飲食業などではそのような区分けをして、法改正を乗り切ろうという動きが、前の法律案のときにあったのです。なので、結局同じようなことが起こるので、そういういたちごっこをやるよりは、もっと根本的にきちんと議論しないと、問題の本質は何も変わらないまま終わるのではないかという危惧が私はあります。
○今野座長 全体的には違う所で議論してという話が多かったですけれども。
○水町委員 そうですね。それはそうです。
○山川委員 理論的な方向性は特に異存ないのですが、この研究会との関係では何のためにこれを議論しているかというと、要するに就業機会の拡大という点です。ただ、それだけだと研究会の本当のテーマとはちょっと別のような感じもします。重要であることは間違いないのですけれども。
○今野座長 ですから、テイクノート。
○山川委員 報告書を書くときは、位置づけを明らかにしておくほうがいいと思います。
○佐藤委員 ただ、やはり先ほどのキャリアラダーを作るということは、当然、時給が上がっていくわけです。現状でいうと、労働時間が短くなるというので、本当はもうちょっと働きたい。そこはいままでもパートの方のキャリアアップなり、能力開発を制度的に阻害していたところなので、その辺はきちんとまた。何度も何度も同じことですけれども。
○水町委員 具体的に制度的な選択肢を、ああしてくれ、こうしてくれと書くよりも、そういう「働き方を阻害しないような、中立的な税制・社会保障制度にすることが望ましい」というぐらいに書き込めばいいのではないですか。
○今野座長 ほかにいかがですか。私からちょっと質問していいですか。水町さんがいちばん最初に、正社員と短時間正社員との間の行き来みたいなもので、労働時間選択の柔軟性ということが基本的に重要なので、これを法的に支援する仕掛けは考えなければいけないという趣旨の話があったのですが、「何考えているの」と聞きたかったのです。
○水町委員 具体的に外国でやられているのは、情報提供ですね。転換義務まで課している国は、私の知る限りにはほとんどなくて、フルタイムポストが空いたときには「空きましたよ」とか、パートなのだけれども、フルタイムに移りたい人は「移りたいですよ」というように、お互いに情報を提供し合って、ポストがあるときには情報を提供して、ほかに応募してくる人もいるかもしれないけれども、その応募の中で誰をそこのポストに就けるかは人事権なのですが、そういう情報提供をお互いやって、なるべく優先権とか、優先的に辿り着けるようなことを社内の中でしてくださいねという情報提供義務を外国では課していて、それはパートからフルもそうだし、フルからパートもそうです。最終的な決定は、やはり会社の人事権なので、それを制度的にサポートしていくことが、広い意味での労働時間選択とかライフスタイルの柔軟性につながっていくというのが、外国のパート法の中で1つ言われていることです。
○今野座長 なるほど。それともう1つ、いいですか。先ほど勤務地限定社員とか職種限定社員の雇用保障の面で、仕事や場所がなくなったときの解雇の問題をおっしゃっていて、変なことをしなければ、大体解雇は有効になっていると。この「変なこと」というのは、例えばどういうことですか。
○水町委員 人選自体が。例えば10人いる事業場がなくなった、だけど、その中で3人は残して7人を解雇したという場合に、「何で3人残して7人を解雇したの。その説明はちゃんとしているの」とか、それともこの10人のポストをなくしたときに、「これって本当は経営上、合理的な理由でこの事業場をなくしたのではなくて、この人たちを辞めさせたいから辞めさせたんじゃないの」と、そういう観点からのチェックは入るのですが、ステレオタイプの四要件をガチガチに適用して、「やはり1個満たしていなかったから、解雇無効だよね」という判断は、あまりなされていない。
○佐藤委員 そうすると、2番目の一応4つあるうちの解雇回避努力義務の所が、例えば事業所限定で配置転換して、そういう所は2番目に外れると。当然、合理的な理由があるかどうかとか。
○水町委員 事案によっていろいろなのですが、体力があって、ほかにも近場に事業場があるような所では、「配転の打診はしたの」ということをチェックするのもあるので、4個のうちどれを取るかは結構バラバラなのですが、4個フルセットで全部チェックしているというのは、逆にあまりないという感じです。そういうところをきちんとまとめるというよりも、「そういう柔軟な判断がなされながら、常識的な判断をこれまで裁判例もしてきているんだよ。だから、びっくりすることないですよ」ということを言っておけばいいのかなということです。
○今野座長 それともう1つ、どなたでもいいのですが、勤務地限定社員を新たに考えなければいけないみたいな議論が、何となく雰囲気としてありますが、昔からメーカーは、工場労働者の人は実質上、勤務地限定でやっていたので、別に新しいことではないではないかと思うのですが、その辺は、そういうことと、いま問題になっていることはどう違うのですか。
○佐藤委員 事実上、大手の製造業でも、例えば現場の作業員は高卒で地元で採用し、基本的にはよほどの大きな事業所の再編みたいな限りは、転勤がなくてやってきたわけです。ただ、問題なのは、就業規則にはそうは書いていないわけです。「転勤させることがある」と書いてあるわけです。たぶんそこだと思うのです。そのように就業規則上と実態とが違っていた、ある面では運用でやっていた。ですから、実際上、大きなリストラなどがあるときは、異動させることをやってきたわけです。もしやるとすれば、就業規則上に、例えば「転勤させることがある」というような規程がなくなる。
○今野座長 でも、何か実務を考えると、勤務地限定社員でやっても、「そこの勤務地がないからクビよ」というようには、なかなか言いにくくて、「どこかほかにもあるから、ちょっと行ってみない」という努力はしますよね。そうすると、就業規則に書いてあろうが、なかろうが、あまり変わらないのではないかという気がする。昔からやっていることだなと、そんな感じがしたということです。
○山川委員 1つは、現在の状況の下でパート労働者、あるいは契約社員についての、あまりに大きい格差を解消するために、移動を促進するという観点から、そのような職種といいますか、ポストを明らかにするということで、いまその議論が盛んになっているのかなという感じはあります。その場合、勤務地を限定しても、実際には配転の打診などがなされることがあって、それはそれで考慮されると思いますが、一律に全く打診をしなくてよいとか、ここまでしなくてはいけないなどということでは割り切れないので、総合判断となって、しかし勤務地を限定されていない場合とは違いがありうるだろうなという感じはあります。あるいは、勤務地が限定されていない場合の特色は、転勤命令違反というものがありえて、懲戒処分もできる。その辺がやはり違うところかなと思います。
○今野座長 そうか、そこは違うのですね。もう1つ、私の感想なのですが、先ほどから出ていた正社員の中で、正社員から短時間正社員というのと、パートの人から短時間正社員へというのがあった。これらを実現する制度を設計しようかと思ったときに、キャリアラダーを作るとか、そういうことはあるのですが、その前に入口が違うというのをどう考慮するかということが問題になる。つまり、極端な例を言うと、パートの人が入ったときに、そういう制度はないと思いますが、すぐに短時間正社員に移行可能な制度を作り、正社員のほうも短時間正社員に移行できるとする。このように制度を作ってしまった場合に、入口が違うから、同じでいいのかという議論が必ず出てくるので、制度を作るとき、そこもちょっと考慮しなければいけないかなと。入口が違う。
 人事制度上でいうと、前回も言いましたが、正社員の場合は長期でキャリアを作りましょうという契約で入っているが、パートの方は長期でキャリアが形成されることもあるが、それは事後契約みたいなものです。正社員は事前契約でやっています。そこが基本的に違うので、そこも考慮して、仕組みを実際は考えなければいけないだろうなと、何となく皆さんの意見を聞いていて思いました。ほかに何かありますか。
○権丈委員 先ほど水町先生が言われた外国でのフルタイムとパートタイムの転換の話についての補足です。ご承知の通り、EU指令にフルタイムとパートタイムの転換の努力を促す規定があり、多くの国は確かに水町先生がおっしゃったように、わりと控えめな対応をしていますが、以前にお話したオランダではもう一歩進めた対応をしており、労働時間の変更の希望を一定条件下で認めています。つまり、オランダでは、労働時間調整法により、従業員10人以上の企業において、1年以上継続勤務している等の要件を満たす労働者は、労働時間の変更を請求でき、企業側は業務に重大な支障がある場合を除き認めることになっています。実際に労働時間を変更できる制度は普及していて、パートタイム労働が様々な分野で可能になっています。日本の現状を考えると、今すぐそうしたところまではいかないと思いますが、将来的には、フルタイムから労働時間を短くしてパートタイム勤務をしたり、逆に短時間からフルタイムにしたりという労働時間の双方向の変更について考えてもよいわけで、それを示唆する方向性を提示できるとよいと思っております。
○今野座長 水町さん、何かありますか。
○水町委員 制度的な選択肢としては、情報提供義務で、最終的な決定権は企業に与えるという制度もあるし、育児・介護休業法の短時間勤務制度というのは、もうこれは義務づけなのです。希望した人は、そこに短時間勤務にしなければいけないという義務づけの制度もあるし、それが育児目的の場合はより強い要請が働いて、その他の要請の場合はどこまでにするかという中で、制度的な設計をすればいいのかなという気がします。どこまで一般的な話として言えるかというのは、もう少し議論したほうがいいと思います。
 それと今野先生がおっしゃった短時間正社員制度というのは、やはり2つの側面があると。入口が違う人を同じ短時間正社員制度で、同じ枠に入れようとすると、やはり無理が出てくるので、例えば非常にグレードの高い、管理職でも特殊な能力のあるような人たちで短時間になる人と、非正規として入ってきて、少しずつ上がっていって、短時間正社員に入った人というのは、おそらく位置づけも違ってくるし、1つの概念では捉えきれないのです。そういう意味では、キャリアアップして正社員に近付いていくというルートの結果、短時間正社員になった人と、フルタイムで正社員の人が一時パートタイムになっているというのは、1つの概念で捉えられていますが、そこには違うものも入りうるし、そういう企業の選択肢はきちんと重視しながら、制度設計を2つのレベルに分けてやらなければいけないというのは、今野先生がおっしゃったとおり、私も同感です。
○今野座長 たぶんそういう制度設計もありうるし、1つで上手にやる制度設計もありうる。いろいろありうるかなと思います。
○佐藤委員 いまオランダのというお話があったのですが、資料3の13頁で、この会社のフルタイム社員の賃金制度がどうなっているかわかりませんが、現状の短時間勤務の措置義務で使うときどうなっているかというと、フルタイム社員が職能資格制度で職能給だと、基本的には等級は変わらないわけですね。短時間にしても、同じ資格等級で、基本的に月例給を時間比例にするということです。問題は、パートがこっちへ行くときです。だから、こっちは割合、職務給的な時間給。これがこっちに乗るときはどうするかで、もしそれで行き来できるようにするとなると、パートを乗せた場合もショートタイム正社員も、いまみたいなケースで言えば、職能資格制度で職能給にするしかないわけですね。その辺のところでいうと、移るときの転換というのは、今野先生が言われたようにかなりジャンプしたいと、変えないと難しい。ですから、フルタイム正社員がオランダで言えば、こっちも職務給です。だから、問題はないのだけれども、日本はその辺がかなり問題になります。フルタイムからショートのときは、現状で言えば、フルタイムの人事処遇制度をそのままにして基本的に時間比例。パートからこっちに移るときは、もし同じ制度にすると、たぶんその場合で言えば職能資格制度のどこかに格付けてやるというような、そこの制度設計をやらなければいけなくなってくる。
○山川委員 フルタイムからショートタイムに移る場合は短時間化のところに焦点があって、パートタイムが短時間正社員に移る場合には正社員化の所に焦点があるから、その行き着く先が同じか違うかという問題もありますが、同じだとしたらどちらを見るかという問題かなと思います。
○権丈委員 いまの点についてですが、確かに正社員から短時間化した短時間正社員と、パートからのとでは、現状ではかなり距離があり、特に今後広範囲のパートを対象としていく場合、正社員が短時間化した場合と同じように取り扱うのは難しいだろうと思います。
○今野座長 いまのところ別枠にしてしまっていますという。
○権丈委員 そうですね。パートの中で、フルタイムの正社員ではなく、短い労働時間で働きたいと考えている人達が相当いるとすると、短時間正社員という選択肢が広がるとよいように思いますが、現在は、パートから正社員になる壁が非常に高くて、長い時間をかけてキャリアアップして辿り着くというようになっています。パートから短時間正社員への道筋を整えていくことは重要です。ただ、現実に、短時間正社員を拡張するには、パートからの短時間正社員よりは、むしろ正社員が短時間勤務できるようにしていく形で増やすほうが自然だろうと思います。そうした形で、正社員の短時間勤務が広がっていくと、将来的には、家庭の事情などでフルタイムで働くのが難しくなった場合には、短時間正社員に収まっていくと思います。
 他方で、現在パートで働く人々は、待遇が低いとか、将来が見えないといった問題を抱えているわけですので、その処遇を考えていく必要があります。パートから短時間正社員になるには大きな壁があるとすれば、正社員ではなくても雇用保障のある働き方を提供するという方法もあると思います。ただしその場合の問題点として、そうした中間的制度がなければ短時間正社員になれそうだったパートタイム労働者が、制度があるために労働条件が若干悪い所にとどまってしまう可能性もあります。そこをどう考えるかという辺りについては、先生方のお考えをお伺いしたいと思います。
○浅倉委員 先ほども言ったのですが、やはりパートタイマーとショートタイム社員の区分けが問題と思います。いまの問題もそうなのですよね。短時間正社員の制度がなくたって、正社員化する人はしていくと言われれば、パートはパートで非常に低処遇で、いくら働いても上がっていかないという不満はそのままになってしまいます。転換しやすいショートタイム社員の形態を作るのも大事ですが、やはりパートタイマーとして、この「ショートタイム社員」のような「フルタイム社員時の月給を時間割で支給」という給与制をとることが本来のあり方だと思います。このような給与にいかに近付けていけるのか、福利厚生も通常の労働者と同様の待遇をというのも当たり前のことなのでそこを強化しようという議論がスタート地点だと思うのです。ですので、ショートタイム社員という形態さえ作ればいいというものではないと思います。すなわち転換さえすればいいというものでもないということが1つです。
 もう1つは、先ほど水町さんの議論を聞いていて、いろいろと整理しなければいけないことが多いなと思いました。それは勤務地限定の正社員という制度の中の雇用保障問題です。つまり限定された勤務地以外に配置転換できるポストがないという場合に生じる問題について、です。そういうデメリットが伴うことは、あらかじめ勤務地限定正社員を雇用するときの説明義務ですよね。これは非常にデメリットが大きいことですので、選択肢を提供するときの周知義務になると思います。そこの配転法理そのものを変えなければならないという議論は、労働法学会でも随分やっていますが、最高裁判決は容易には変わりません。いまの最高裁の法理のままでいくとすれば、雇用形態の多様化の推進の中でやはり勤務地限定の社員をつくるということに伴うデメリットが結構あるのだな、という気がいたします。
○今野座長 特に短時間正社員の、佐藤さんの言い方でいうと恒常的な短時間正社員、それも行き来が可能ということになると、人事管理上、日本の企業で最大の問題の1つはつぎのことになります。日本の企業というのは仕事を作っていくときに、個々人に仕事を配分するわけですが、それをジグソーパズルの絵に喩えると、大体の所にピースを置くと社員が柔軟に対応してくれて、全体の絵を作ってくれるという人材配置政策をとっている。短時間正社員が多くなると、ピースの形が固定的になるのです。そうなると固定したピースを組み合わせて、全体の絵をどうやって作るのかということが問題になるので、仕事のやり方とかマネージメントが基本的に変わる。そこが大きな問題になります。こうした問題の解決策のいちばん悪いパターンは、例えば短時間正社員を配置するとピースの形が変わらないからどうしても穴が空いてしまうので、フルタイム社員がその穴を全部埋めるということになる。外食の店長の労働時間がものすごく伸びるというのはそういうことなのです。アメリカとかヨーロッパというのは仕事の作り方が違うのでやりやすいのですが、日本の場合はここをどうするかというのが最大の問題です。ここをうまいこと考えないと、賃金等の人事制度をいくらいじったって限界があるかなと、そういう感想です。そのように私は思っているのですけれども。
○水町委員 育児・介護休業法で短時間勤務制度が義務づけられたので、その中でたくさん短時間勤務を選択している女性の多い企業などで、どうやって成功しているか、失敗しているかというのを少し調べてみると。
○今野座長 それは私の知っている限りでは、いちばん先端で進んでいる企業ほど、先ほど言いましたように、残った正社員に負荷が掛かっているということなのです。短時間の社員が少なければ、あまり負荷はないのですが、短時間の社員が多いというのが先進企業だとすると、余計そういう負荷が生まれる。だから、短時間正社員を増やすとその下のプラットホームの仕事の作り方を変えていかないと問題が解決しない。これが基本的な問題かと思うのです。そことの関係でいつも人事制度を考えなければいけないかなと思います。
○佐藤委員 いま短時間勤務のモデル事業を別の所でやっているのですが、私が企業の人に言っているのは、フルタイムの働き方を変えないと、みんな短時間勤務のほうへ入ってきてしまう。これがいちばん困るのです。もちろん必要なのです。だから、必要な人は移ればいいのですが、フルタイムの働き方で、基本的にはワーク・ライフの両立ができることを進めていくということ。一時的に来て、できるだけ早くまた戻る、戻れるようにしていくようにしないと。現状でいうと相当変えていかなければいけないし、あるいは現状でやると、そういう人が増えてくるとフルタイムの人にかかるというのは間違いないのです。そういう意味ではフルタイムの人の働き方を変えて、もちろん制度としてきちんと入れて、基本的には一時的に来て戻る、戻れるという働き方にしていかないと、現状で持たないかなということですね。
○今野座長 ですから、そういう選択肢もあるし、仕事の作り方を変えてしまうという選択肢もありますよね。だから、今後考えなければいけない。ということで、今日はこの辺で終わりにさせていただければと思います。ありがとうございました。


(了)

雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課

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