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2011年5月20日 第5回今後のパートタイム労働対策に関する研究会 議事録

雇用均等・児童家庭局 短時間・在宅労働課

○日時

平成23年5月20日(金)13:00~15:00


○場所

厚生労働省 専用第12会議室(12階)


○出席者

委員

浅倉委員、今野委員、権丈委員、佐藤委員、水町委員、山川委員

ヒアリング対象者

禿 あや美 氏 (跡見学園女子大学マネジメント学部マネジメント学科准教授)
山本 紳也 氏 (筑波大学大学院ビジネス科学研究科国際経営プロフェッショナル専攻客員教授)

厚生労働省

小宮山副大臣、高井雇用均等・児童家庭局長、石井雇用均等・児童家庭局審議官、
田河総務課長、吉本雇用均等政策課長、塚崎職業家庭両立課長、吉永短時間・在宅労働課長、
大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長、藤原短時間・在宅労働課長補佐

○議題

(1)通常の労働者との間の待遇2、納得性2(職務評価)
(2)その他

○議事

○今野座長 ただいまから、第5回「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」を開催いたします。本日は、小宮山副大臣がご出席でございます。本日の議題に入ります。本日は「通常の労働者との間の待遇、納得性」のテーマの第2回として、「職務評価」について事務局からの説明と、2名の職務評価の専門家のヒアリングをいたします。まず、事務局から説明をお願いいたします。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 事務局から資料の説明をさせていただきます。資料1は前回お出ししたものと同じです。「研究会で議論していただく論点」ということで、本日は2枚目にあります「職務評価」に着目し、専門家からのヒアリングを踏まえてご議論いただきます。資料2は、「これまでの主なご意見」ということで、時系列で取りまとめておりますので、議論のご参考にしていただければと思います。
 資料3をご説明させていただきます。お手元に「職務分析・職務評価実施マニュアル」という冊子を置かせていただきました。これは、平成19年のパートタイム労働法改正時の参議院厚生労働委員会の附帯決議を踏まえ、平成21年度に、厚生労働省の委託事業として作成したものです。職務分析・職務評価について、専門の人事部門を持たないような、非常に小さな企業においても分かりやすいマニュアルにしたいという考え方に基づいて作成したものです。
 簡単に内容をご説明させていただきます。6頁のところで、そもそも職務分析とは何かということです。これはご案内のとおり、職務の情報を集めて整理し、職務の内容を明確にするということ。職務評価というのは、それを踏まえて職務の大きさを、他の職務と比べて明確にする作業であるということです。
 7頁では、このパート対策の中で「職務分析・職務評価を実施すると、どのようなメリットがあるか」ということです。パート社員と正社員の職務が同じか、異なるかを明確にでき、職務というのは待遇を決定する要素の1つですので、その要素の1つである職務を明らかにすることで、公正な待遇を確保し、それがパートタイム労働者の納得性を高めることにつながるのではないか、というメリットを7頁で書いております。
 具体的な職務分析・職務評価の実施方法については、マニュアルの10頁と11頁をご覧ください。このマニュアルの中では、いちばん簡単な方法として、パートタイム労働法に基づく職務分析・職務評価について10頁と11頁で全体を解説しています。左側は、いわゆる職務分析ということで、まず「職務の情報を収集すること」がステップ1-1、ステップ1-2としてその「職務の情報を整理する」。パートタイム労働法は、職務を、「業務の内容」と「責任の程度」と整理しておりますが、まず業務の内容をどのように取り出すのかというときの視点を3つ挙げております。責任の程度を判断するときの要素として、「権限」「役割の範囲」「トラブル発生時や緊急時の対応」「成果への期待の程度」を掲げております。
 このように職務の情報を収集して整理したものを、11頁のようにまずパート社員と正社員の業務の内容を取り出して、実質的に同じかどうかを見る。実質的に同じであれば、次に責任の程度を比較する。先ほどの考慮要素に基づき、著しく異なっているかどうかというところで判断する。パートタイム労働法に基づくと、こういう形になるという全体像が10頁と11頁です。
 12頁と13頁は、職務の情報の収集の仕方の留意点を簡単に記したものです。14頁と15頁は、業務の内容の取り出し方の留意点です。取り出した結果を、16頁に例えばということで例として挙げております。17頁は、責任の程度をどういう要素で取り出したらいいのかを説明しております。
 18頁以下で、実際にパート社員と正社員の職務を比較するということで、具体例として19頁、20頁、21頁で挙げております。例えば20頁では、パート社員Cさんと、正社員Dさんの業務を取り出す。業務の内容と、その取り扱う対象範囲を取り出す。それを見て、実質的に同じかどうかを判断する。さらに責任の程度について、先ほど申し上げましたそれぞれの視点ごとに、同じか違うかを比較する。こうして、パート社員の職務と正社員の職務を全体として比較するという、最も簡単なやり方の職務分析・職務評価というものを、パートタイム労働法に基づいて説明したものです。
 一方、職務評価についてはさまざまな方法があります。29頁のいちばん上に「単純比較法」とあり、社内の職務を1対1で、全体として比較をして、大きさが同じか異なるかというものを比較する最も簡単な方法で、先ほどご説明したものです。
 もう少し詳細に職務分析・職務評価をする方法があります。3つ目に「要素比較法」、4つ目に「要素別点数法」とありますが、これは職務を要素に分解し、その要素ごとに職務の大きさを判断していくものです。簡単な解説を30頁以降に付けております。例えば、職務を構成する要素として30頁に3つ挙げております。1つ目は「必要な知識や技能の水準」、2つ目は「問題解決の難しさ」、3つ目は「求められる成果の大きさ」です。
 31頁では、さらにこの3つの要素を細分化するということで、「必要な知識や技能の水準」をさらに2つに分け、それぞれの主要な要素を全体で6つに分けています。「必要な知識や技能の水準」をレベルA「専門的な知識が求められるもの」からレベルD「その日のうちに身につくもの」に定義し、その職務によって「必要な知識や技能の水準」は一体どのぐらいのものかということでA、B、C、Dというランクをつけます。
 ある職務の大きさを、32頁で判定しております。3つの大きな要素をさらに細かく6つの要素にして、その6つの要素それぞれが先ほど定義したレベルのどこに当てはまるかをそれぞれ拾い、この32頁で挙げた例では、レベルCがいちばん多くなっていますので、全体としてレベルCと判定する。このような「要素比較法」というやり方もあります。レベルA、B、C、Dとしているところを100点、80点、40点という形で点数にして、その点数を足し上げていく「要素別点数法」というのも職務評価のやり方の1つとしてあります。厚生労働省で作ったマニュアルについては、簡単ではありますが以上のとおりです。
 職務分析・職務評価については、ILOでも2008年にガイドブックを出しております。それを、本日は資料4として付けておりますので、簡単にご説明させていただきます。実際のILOのガイドブックは非常に大部なものですが、これはILOの駐日事務所がまとめたものです。ILO「平等な賃金実現のためのジェンダー中立的な職務評価」では、ステップ1からステップ8まで分けて解説されています。
 1頁のステップ1は「ガイドブックの意味と目的」です。ILOの100号条約、これは同一価値の労働に対しては、性別による区別を行うことなく、同等の報酬を与えなければならないことを定めた条約であると書いてあります。この100号条約の履行を確保する1つのやり方として、このようなガイドブックが作られています。実際にこれを書かれた方は3頁の下から3行目にありますように、カナダのモントリオール大学の学者の先生です。第2回研究会で諸外国の法制として、カナダのオンタリオ州のペイ・エクイティ法をご紹介いたしましたが、そのようなものと通ずるものがあるとご理解いただければと思います。
 実際に職務分析・職務評価を行うやり方は5頁です。職務分析・職務評価を行うには、ここでは「ステップ2 ペイ・エクイティ委員会の設置」と書いてありますが、労使の共同参加による委員会であるペイ・エクイティ委員会をまず設置することが効果的であるとされています。冒頭に申し上げましたように、この職務評価は男女の賃金格差の縮小を目的としておりますので、5頁の真ん中に「ペイ・エクイティ委員会の構成」と書いてありますが、直接的なかかわりを持つ女性労働者がメンバーとして入って重要な役割を果たすようにするべきであると説明されています。
 6頁の下のほうに「運営のルール」とあります。委員については一定の保護等が与えられるべきだと書いてあります。6頁の下から2行目に、大企業がこのガイドブックに基づく職務分析・職務評価を行った場合、仮に1週間に2、3時間の作業をするとして、ステップ1からステップ5のプロセスには2年程度かかると書いてあります。8つのステップのうちの5つのステップということで、職務の情報を集める、職務分析だけでも2年程度はかかるということです。
 具体的な職務分析・職務評価のプロセスをさらに進めると、7頁のステップ3で、委員会を設置した上で、次に行うことは企業内でどういう職種を比較対象とするかという、職務の選択方法を説明しています。上から4行目の、このガイドブックの目的から、女性が支配的な職務の賃金水準と男性が支配的な職務の賃金水準とを比較するということで、女性の支配的な職務、男性の支配的な職務を選び出していくことが第一歩になるということです。
 選ぶときの視点が8頁、9頁で3つの要素が書かれています。「職務に占める性別比率」「従業員構成の歴史」「固定観念」です。
 実際にどのように評価するかということですが、10頁のステップ4です。職務評価方法としては10頁の下に4つの大きな要素が出ております。1つ目は「知識・技能」、2つ目は「負担」、3つ目は「責任」、4つ目は「労働条件」の4つを大きな基本要因とする。これは、カナダのオンタリオ州のペイ・エクイティ法や、アメリカの同一賃金法と同じような要素です。
 11頁では、この4つの基本要素を、さらにいくつかの二次的な要因に分解します。11頁の2つ目のパラグラフの1行目ですが、10から16の二次要因に分解するとよいとされています。先に22頁をご覧ください。22頁の表7.1で、「知識・技能」「負担」「責任」「労働条件」の主要な要因をさらに、例えば「知識・技能」のところを見ますと、「職務知識」「コミュニケーション」「身体的スキル」という3つの細かい要素に分けていき、全体で11の要素に分けられているという例がガイドブックでは挙げられています。
 このように細かくレベルを分けますが、15頁に戻りまして、それぞれの二次要因をさらにレベルに分けます。22頁の中に「身体的スキル」という二次要因がありましたが、15頁の真ん中にありますように「身体的技能」についても、職務によってレベル1「特に必要ない」ものから、レベル5「高度な正確さとスピードが必要」なものまでのレベルに分けることが次の作業になっています。
 16頁では、そうした準備をした上で、職務に関して情報収集するということで、質問票を作成し、その質問票を従業員に説明する作業がステップ5です。
 17頁のステップ6で、集まった職務についての結果を分析します。まず19頁の表をご覧ください。19頁の表では、このガイドブックでは、上半分に男性の多い職務として、「現場監督」「プログラム・アナリスト」といった4つの職務が挙げられています。下には、「会計士」「コンピューター・グラフィック技術者」という女性の多い職種が挙げられています。
 これを、先ほどの二次要因に分けて、さらにその二次要因ごとにレベルが何点かを付けていきます。例えば男性職の「現場監督」では、「職務知識」は3点、「コミュニケーション」については3点という形で点数を付けていきます。
 このマニュアルに特徴的なところは、男性職と女性職について、それぞれの要素ごとに平均点を出して、女性の点数が低いときには、このレベルの定義をもう一度見直す。即ち、会計士の身体的負担が1となっているのは本当に1なのか、本当は2ではないか、3ではないかという議論をして、女性の職務のほうが不当に点数が低くならないように委員会で議論をします。
 このようにして、各職務についてレベルを判定した上で、さらに21頁以降で実際に職務に点数を付けていく作業がステップ7で行われます。点数を付けるに当たり、22頁の細かな要素についても、企業にとって何が重要かということで、そのウエイトを付ける作業があります。表7.1では「知識・技能」が32%、「負担」が19%という形でウエイトが付けられております。
 24頁の最初の2行で、このウエイトは、賃金に直接的な影響を持つため、企業の目標及びそれを特徴付ける職務と密接に関連するようにする。例えば、ソフトウェアを開発する企業では、「分析スキル」に高いウエイトが置かれる。デイケアセンターでは「人への責任基準」が最も重要と書いてあり、このウエイトは企業ごとに決めるということです。22頁の表7.1は、ウエイトを付けた上、それを1,000点という点数に換算した表です。
 25頁では、全体が1,000点となるように、二次要因ごとにレベルごとに、例えば職務・知識はウエイトが12%でしたので、レベルの最高が120点になります。それから等間隔に点数を振り分けてレベル1が24、レベル2が48という形で、一般的な点数の表に換算した表が表7.5です。
 26頁で、例として秘書の職務の点数をどのように付けるかということで挙げられております。これは、それぞれの職務について、それぞれの要因ごとにレベルがどこかということを委員会が決定し、25頁の表に合わせて点数を足し上げていくと、この秘書の職務は340.5点となります。
 27頁では、点数をある程度大括りにして、表7.8ですが同じグループに入れば同じ価値と判断することになっております。
 最後に28頁のステップ8です。ここでは、職務の価値に点数を付けた上で、実際に賃金の格差を調整するという最後のステップ8です。ここでは1行目にありますように、同一価値の職務に対しては、賃金を同等にするという考え方で、賃金を調整する必要があります。ここまでで、ILOの言う職務分析・職務評価が終了ということです。雑駁ですが、資料の説明は以上です。
○今野座長 何かご質問がありましたらお願いいたします。
○権丈委員 確認なのですが、ILOの職務評価資料の10頁で4つの基本評価要因のところで、厚労省の職務評価実施マニュアルでは3つなのですがとご説明いただきました。ILOの評価要因と厚労省のものとの違いはどのように理解すればよろしいでしょうか。厚労省のほうは、中小企業でもあまり負担なくできるよう簡便性に配慮されて作られており、時期的にも早かったのかと思いますが、いかがでしょうか。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 考え方としてはそんなに遠くないのかと思っています。委託事業で、職務評価の専門家と相談しながら、厚労省のマニュアルを作ったところです。企業によってさまざまな要素の取り出し方があると思います。厚労省のマニュアルでは、例えばということで3つ挙げております。「必要な知識や技能の水準」というのは仕事のインプットのところです。これはILO、カナダのオンタリオ州などでも共通してあります。「問題解決の難しさ」というのは、仕事をしているプロセスの難しさということです。これはILOの要素で言えば「負担」と重なってくる部分かと思います。「求められる成果の大きさ」というのは「結果」ということで、これはILOでいうと2とか3と重なってくる部分かと思います。
○浅倉委員 いまの質問と関連するのですが、厚労省の資料の29頁には、第2章で説明しているのは「単純比較法」なのだが、他にも要素比較法とか、要素別点数法というやり方もあります、と書かれています。では、その中で単純比較法にした理由についてご説明いただけますか。
○大隈短時間・在宅労働課均衡待遇推進室長 マニュアルの構成に関し、単純比較法が最初に来ている理由についてのご質問かと思います。いまはパートタイム労働法で第8条の3要件として「職務」「人材活用」「契約期間」があります。パートタイム労働者が第8条該当者か、第9条該当者かというときに、まず職務を見るということで、その職務についての判断基準は施行現場で示しているものですが、そこの認識も周知も足りていない部分もあるのかと思います。また、基本的に分かりやすいマニュアルを作りたいということで、パートタイム労働法に基づく、正社員とパート社員の職務を大づかみで捉える方法をまず理解していただくところから始めることが、効果的と考え、こういう構成を採っております。
○今野座長 事務局の話はこの辺にいたしまして、次は専門家にお話を伺います。本日はお二人にお願いしております。跡見学園女子大学マネジメント学部准教授の禿あや美さんからお願いいたします。予定としては15分ぐらい話をしていただいて、議論は15分といたします。いつものことですけれども、時間は柔軟に考えていますので、その都度考えていきたいと思います。
○禿氏 跡見学園女子大学の禿でございます。本日は、このような機会を与えてくださいまして誠にありがとうございました。本日は、私も参加したペイ・エクイティ科研費研究会が行った職務分析・職務評価調査についてご説明いたします。これは、先ほどご説明のあった、ILOの職務評価に関するガイドラインに概ね則ったような形の調査です。本日は、その調査結果に基づいて、調査の結果わかったこと、そして現在のパートタイム労働法、特に『職務分析・職務評価マニュアル』のことなどについて、どのような課題点が浮かび上がるかについてご説明させていただきます。
 レジュメの最初のところをご覧ください。このような研究会を設けた問題意識として3つあります。まず一つ目として、現在は、雇用形態が多様化し続けており、正社員も多様化の必要性があり、そしてまた非正社員もどんどん多様化している中で、その処遇格差の合理性をどこで推し測ることができるかということで、「横串」を通すためにも、やはり職務というものが1つの大きな根拠になるのではないかという考え方が1つあります。
 そして、パートタイム労働法の趣旨に則った、「働きに見合った公正な処遇」を具体的な制度として構想できないかどうかということも重要です。そのような「働きに見合った公正な処遇」を整備するということは、今後の社会や経済の発展にとって必要不可欠であるという、その社会政策における近年の研究の到達点からも申し上げても職務分析・職務評価が重要なのではないかと考え、取り組んでまいりました。
 私どもの研究会は、社会政策グループと労働法グループの共同プロジェクトで、内容は多岐にわたります。既に書籍にもなっておりますので、本日のご報告で、もし足らない点がありましたらそちらをご覧いただければと思います。私は、主に小売業の調査を担当いたしました。小売業といいますのは、正社員とパートの比較ですので、ここの研究会の趣旨にも沿ったご報告ができるのではないかと考えております。
 レジュメの2の「職務分析・職務評価調査の概要」をご覧ください。私どもは、「知識・技能」「責任」「負担」「労働環境」の4つの側面から職務を評価し、客観的な点数として、職務の価値を算出する「得点要素法」、あるいは「要素別点数法」とも呼ばれたりいたしますが、そのような方式で行いました。
 調査はさまざま行いましたが、まず小売業3社の労使双方のご協力がいただけました。このような職務評価点を算出するというのは、特に会社側のご協力をいただけないのではないかと懸念しておりましたが、快く引き受けていただきました。このような職務分析・職務評価に対する社会の関心の高さが窺えるのではないかと思います。インタビュー調査、意識調査等々を行いましたが、3つ目の職務評価調査が中心の調査になっております。それに併せて、私どもの調査のやり方が、現場の方の実態に合っているのかということなども心配でしたので、事前にも事後にも調査をさせていただきましたが、概ね問題なしと、非常に前向きな積極的なご評価をいただいたと思っております。
 評価の対象としたのは、店舗の7部門の正社員と、管理的な役割を担っている役付パート、一般パートの方々にアンケート調査を直接配布して評価をしていただく方式をとらせていただきました。
 レジュメの表1から、具体的にどのような調査を行ったのかをご報告させていただきます。これは職務項目のリストと申しまして、職務分析として店舗の中でどのような職務が実際になされているかをリストアップしてまいりました。インタビューや各社の人事制度の資料を拝見し、さらに中央職業能力開発協会が公表している職業能力評価基準にも、職務のリストなどが挙がっておりますので、そのようなものを参考にしながら作成いたしました。
 外国の職務分析・職務評価ですと、このように事細かに職務を1つずつピックアップする必要はなく、グレードで一括して職務評価をいたしますが、私どもは日本の現状を把握しようということで、比較的細かく、しかし細かすぎず、ちょうどよいぐらいの分量の職務項目をリストアップすることに心がけました。
 そのような職務に対して、どのような評価基準で点数を付けるかというのが表2の「職務評価ツール」です。左のほうに4大ファクターとして、「仕事によってもたらされる負担」「知識・技能」「責任」「労働環境」という、先ほどの室長のご説明にもありましたILOでも述べられていた要素に、サブファクターとして12個、これは小売業の店舗の労働を評価するのに適当であろうと、アンケート調査やインタビューなどに基づき、我々研究会のメンバーが議論して設定いたしました。
 その12のファクターにウエイトを付けていくわけですが、インタビューの中でも「知識・技能」というのが、仕事をする上ではベースであるという現場の方のご意見がありましたので、「知識・技能」に32%。そして日本の企業は責任を重視されますので「責任」に30%、「負担」に20%、「労働環境」に18%というウエイトを付け、それぞれのサブファクターで配点をし、レベルごとに点数を付けていくことをいたしました。
 レベルについては、今回は現場の方に直接自分でアンケートに答えていただくという調査の性格上、わかりやすさ、間違いがないように付けていただくことが大事でしたので、あまり細かいレベルの設定はいたしませんでした。基本的にレベルは3段階、そしてインタビュー等で特に重視された、仕事関連の知識・技能についてはレベル4で設定しております。この点数は、最高点が1,000点になるように設定し、それぞれに割り振ってまいりますが、その設計ですと最低点は340点になると思います。このような点数というのは、答えていただく際には一切提示いたしませんで、私どもが調査結果を集計するときに用いるのがこの点数表になります。
 アンケートにはどのような説明を載せたかを示したものが表3です。各評価要素の説明と、あとはそのレベルごとの説明を載せてあります。こちらの全文については、本日は委員の先生方のみ配付ということにさせていただきました、「同一価値労働同一賃金原則の実施システム」という書籍の92頁から93頁に全文がありますので、そちらでご確認いただければと思います。このような道具立てで調査を行いましたけれども、点数については、私どもの研究会では3パターンで出してみました。詳しくはレジュメにある通り、1つ目は、職務項目ごとの評価点を出すということです。それを具体的に申しますと表1の職務項目一つひとつごとに点数を出していくやり方です。この職務項目の仕事を担当されている方にのみ点数を付けていただくやり方です。
 それとは別に、担当している職務全般を念頭に置きながら、具体的には「あなたの担当している仕事全般についてお伺いいたします」という問いかけで、表3にあるレベルで、それぞれレベルがどれであるかということで○を付けていただくという、仕事全般の職務評価という点数2のやり方も採用いたしました。これは、通常欧米等でやられている職務分析・職務評価のやり方であるグレードごとに、大雑把に点数を出すというやり方の考え方を踏襲したものです。
 さらに、「主に担当している職務は何ですか」という質問もしておりますので、そのうち主に担当しているとの回答の高かった上位5職務のみピックアップし、それの平均点を出すという点数の算出方法もしております。それが点数3になります。点数2というのは、本研究会が日本においては初めて行った手法ですが、通常広く世間で言われている表1に沿ったような細かい職務点数を出さなければいけないのではないかという誤解を解くといいますか、細かい職務設定をしなくても点数の算出はできることを明らかにできたのではないかと考えております。この3パターンの点数を算出いたしましたが、その点数の、正社員とパートの比率にはそれほど大きな変動はなく、それぞれ同じような比で結果が出てきたことは申し添えておきたいと思います。
 実際に職務評価点としては、仕事全般の点数を用いますと、正社員は755.5点、管理職のパートは698.6点、一般のパートは586.2点という職務評価点が算出され、比は100対92.5対77.6です。実際に受け取っている賃金についても同様にアンケートで調査いたしましたので、それに基づいて計算いたしますと、職務評価点に見合った賃金、ボーナス込みの場合は、管理職のパートは1,991円、一般のパートは1,671円と計算することができます。ボーナスを含まない時給でも同様に計算することができます。
 このように職務評価点が明らかになるわけですが、このような調査を行いますと、このような点数だけではなくて、さまざまな現場におけるデータを分析することができるというのが、この職務分析・職務評価の興味深い点であると思います。その詳細は省略いたしますが、レジュメの3頁の図1は、それぞれの雇用形態で、どのような得点の幅で仕事を担当しているのかをまとめたものです。正社員も得点の低いものから高いものまで幅広く担当されていて、正社員、役付パート、一般パートの序列もあることがわかるかと思います。このような差に応じた賃金を支払うことができるのが、職務分析・職務評価の重要な点だと思います。色が付いているところは、多くの職務項目が、その得点帯に集まったという、その中心となる得点帯を色付けしております。
 レジュメの4頁の表4はドライ部門で、正社員と役付パートの職務の分担状況とか、それぞれの職務項目ごとの点数などが出てまいります。このような詳細なデータも、それぞれの部門で出すことができます。図2では、その12の職務評価ファクターごとに、それぞれの雇用形態の方が、どのレベルで回答したのかを図示したものです。
 また、5頁の表5は、回答の平均値ではなくて、最頻値と申しまして、どのレベルに回答がそれぞれ集中したのかという観点からまとめたものです。正社員は、仕事関連の知識・技能にレベル3に回答する方が多く、役付パートもレベル3、一般パートはレベル2であるというふうに、この表中にある数字はレベルを示しております。これをざっと見ますと、正社員、役付パート、一般パートすべてで同じレベルに回答が集まっているものもあり、特に正社員と役付パートでは、同じ回答のレベルに一致されていることがかなりあるということが分かります。
 注意深く見ますと、どのようなところで差が付きやすいかというと、「責任」の「人員管理」と、「利益目標の実現に対する責任」のところで、正社員とパートでは差が付きやすいことがわかります。そして労働環境の「転居を伴う転勤可能性」では明確に正社員と役付パートでは差が付きやすいことがわかります。現在のパートタイム労働法のマニュアルにあるような、「責任」や「転居・転勤」、言い換えれば「人材活用の仕組み」ですけれども、そういうものを重視するというのは、パートにとって不利になりやすいようなものが、評価ファクターとして採用されている、現行の基準には偏りがあるとも申し上げられるのではないかと考えております。
 ところで転居・転勤については、職務そのものに根ざしていない、要するに転居することが仕事であるということはあり得ないので、職務に根ざさない職務評価要素であるので、このようなものを入れるのはおかしいのではないかというご批判もあるのですが、私どもは、あえて日本の雇用慣行を考慮した形で職務評価を行えるということを説明するためにも、このような日本オリジナルの職務評価要素をあえて挿入して職務評価点を出してみたということがあります。
 例えば、2頁の表2のところで、「転居転勤」のレベルは3段階の0点、30点、60点ということになっていますが、現状の正社員とパートの賃金格差100対ほぼ50というものを、この転居・転勤のみで説明しようとすると、この点数の配点は、レベル2に400点とか、レベル3に500点とか600点の点数を付けていかないと、そのような差が出てこないということになってしまうと思います。これは、不当に転居・転勤を重視しているとも言えるのではないかとも考えております。
 以上が調査内容のご報告ですが、この結果から今後、どのような使い方ができるのかということで1点だけ申し上げます。レジュメ6頁の4の(1)をご覧ください。このような職務分析・職務評価というのは、行ったからといって、何か職務給を絶対にやらなければいけないなど、そういう単一の賃金体系を企業に要請するものではないということです。これは、単に序列、あるいは尺度を明らかにするようなものであります。その職務分析・職務評価の活用方法も、さまざまなパターンが考えられると思います。
 その1つ目は、紛争解決のツール、ガイドラインの設定などのときに用いる。裁判など紛争が起きたときの、職務の同一性を推し測るときの評価に採用するというやり方もあります。そして、ベンチマーク職務のチェックツールということで、例えば企業が作成する、イギリスのような平等賃金レビューなどを作成する場合の、バランスを推し測る指標のような、チェックツールの1つとして、企業に使っていただくことも可能ではないかと考えます。
 3つ目は、企業内の総合的な賃金制度の改定のツールということです。こちらは非常に総合的で時間もかかるものです。3つ目のみに適用できるものではなく、1つ目や2つ目のような簡便なやり方でも活用できるのではないかということが、私どもの研究会を通じてわかったことです。その他、レジュメにはいろいろ書いてありますが、ご質問がありました際に、補足でご説明させていただければと思います。以上です。
○今野座長 ありがとうございました。ご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
○佐藤委員 どうもありがとうございました。職務の価値を評価して、それを活用するというのはすごく大事になってきています。それは正規、非正規の格差ということだけではなく、正社員の賃金制度の設計でも大事だと思いますので、それを押さえた上でいくつか質問させていただきます。4頁で、職務の価値を評価して、現状の賃金の格差がどうかを出されています。職務の価値を評価しても、賃金水準が適切かどうかというのはわからなくて、格差だけですよね。これは考え方であって、正社員をベースにして、パートをもう一度計算し直したのだけれども、パートをベースにして、正社員が高すぎるという議論もできるわけです。つまり、賃金水準の適正さについて議論するには、何か望ましい賃金水準をどこかから持ってこなければいけない。例えば、入口のところで労働の種類が決まるのが正しいとしてやると正社員が高すぎるという議論になり得るので、その辺はどうするのかというのが1つ目の質問です。
 2つ目は6頁のところで、今回のような職務分析・職務評価は、別にその企業に職務給なり仕事給を導入することを求めるものではないと。3)の後ろのほうで、職務評価のみで処遇を決めなくてもいいし、その職務評価を賃金のどの部分に反映するかも別個検討する。大事なのは、別個検討するという部分だと思うのです。賃金体系というのは、総額人件費を、一人ひとりの社員にどう配分するかという仕組みなわけですが、大きく4つあります。1つは、仕事の価値に応じて賃金を分けるというやり方、今回の職務評価はそうだと思います。この場合は、仕事に給与がくっ付いているわけです。プログラマーが10万円、SEが20万円と仕事にお金が付いている。2つ目は、社員の能力を測定して、能力のほうに給与を付ける職能給です。3つ目はアウトプット、どういう成果を出したかという成果にお金を付ける。4つ目はもうないですけれども、属人給で勤続年数とか、家族の数で給与を決める。大きくこの4つがあります。
 今回は職務の価値を測定して、それで給与を決めるということなわけです。この場合はプログラマーが10万円だとすると、もちろん能力を見るわけですので、プログラマーAという仕事をやれる能力がなければ駄目ですけれども、それを上回るSEの人がプログラマーをやっても10万円は10万円なのです。つまり、仕事のほうに給与が付いている。職能給というのは、SEの人が20万円で、プログラマーについても20万円払いますという仕組みなのです。ここが賃金体系の選択の話です。
 実態は、仕事のみで給与を決めているわけでもないし、能力だけで決めているわけではなくて、実は組み合わせになっているわけです。若いころは、割合職能給的な能力開発をベースにしていて、中キャリアになると割合就いている仕事で決める。もう少し責任のある職務に就くとアウトプットで決める。そうしたときに大事なのは、正社員とパートと同じ仕事をやっていても、賃金制度の設計の仕方が違うところが常に問題になっているわけです。確かに職務分析をして結果が出てくるのですけれども、問題なのはその分をどの程度考慮するかというところだと思うのです。ですから、ここで職務評価のみで決定しなくてもいいですよとか、賃金体系の決定はいろいろありますよと言ったときにここがたぶん問題になるのです。
 売場主任の正社員とパートがいたときに、正社員の売場主任は職能給でやっていて、パートは職務給という場合、これについてどうするかです。価値は同じでした、でも違う。そのときの説明の仕方として、社員のほうは仕事を変わっていきます。ですからいまの職務ではなくて、能力のほうで測定します。それが良いのか悪いのか、その辺の判断についてどう考えられるのかというのが2つ目の質問です。
○禿氏 ご質問ありがとうございます。これは序列を決めるだけで、水準を決めるものではないというのはおっしゃるとおりであります。そもそも、職務分析・職務評価を何のためにやるのかということから考えて、ILOでも、カナダのオンタリオ州のペイ・エクイティ法にも、高くなったほうを下げる説明に使ってはいけないという条文等があると思います。政策ですので、何のためにやるのかというところを見誤ってしまうと、ちょっと変な議論になってしまうかもしれないということは注意が必要であるということは、先生のご指摘のとおりだと思います。
 そのように職務分析・職務評価によって賃金を変えていく場合に、実際にアメリカで行われたこととしては、急激にこのやり方で賃金の是正をしようとすると、一時的に雇用が失われるなど問題が生じるのですが、緩やかというか、長期的に賃金を是正する、期間を長く置いてちょっとずつ改定をし続けるようなものですと、雇用量にもほとんど影響はなく、平等な賃金のほうにもどんどん改善が進んだという研究もあります。そのような配慮は必要だと思いますけれども、不可能ではないと考えております。
 先生からご質問のありました、仕事量、能力、成果、いまはない属人給と、そのようないろいろな賃金制度の下において、このようなものをどう考えるかということなのですが、職務分析・職務評価で、先ほどのILOのご説明でもありましたとおり、最後にグレードを得点の幅を100点範囲でグレード1、グレード2、グレード3というように設定していくというように、何も点数の1点単位で賃金の序列を決めろということではなくて、やはりグレードというレンジ、幅はあるわけです。そのレンジの幅の中で、それに加えて働きぶりや査定によって、賃金のプラスマイナスを決めていくということも、制度上設計することは可能だと思います。
 要するに、いちばん最初のベースの部分で、バランスが取れているかどうかを確認するために、まず職務のところに注目して、ベースの妥当性を職務評価によって決め、その上下幅のレンジについては査定や企業内の労使の交渉などについて、いろいろ設定することは可能であると考えております。
○佐藤委員 職務給でも、大括り化していくというのは、仕事が変わると給与が変わるわけです。ですから大括り化して、異動しても給与を下げないようにするのですが、ただしこれは職務給なのです。上のグレードの人が、下のグレードに来れば、いくら大括りにしても移れば給与は下がるのです。ですから、グレードを大括りにしても職能給とは違うのです。
○山川委員 いろいろ活用の可能性が窺われて興味深くお伺いしました。質問は2つあって、評価に当たってのファクターとウエイトの問題です。レジュメの5頁の「転居転勤」のところで、「人材活用の仕組み」と書かれているのですが、パートタイム労働法第8条は、人材活用の仕組みの中では、勤務場所の変更は転勤の一種と、職務内容の変更というのを挙げています。職務内容の変更というのを、ファクターとして取り上げておられるかどうか。もし取り上げていないのだったらなぜか、もし取り上げられたら結論が変わり得るか。この職務内容の変更の位置付けが1点目です。
 2点目ですが、要素のウエイトでかなり決まるのかなという感じがするのです。これは、客観的に正しいウエイト付け、真実としてのウエイト付けというのがあり得るかどうか。端的に言うと、経営戦略上、うちの会社はこうなのですと、だからこのウエイトをこれだけ高めますということが可能かどうか、そのことをお伺いします。
○禿氏 ご質問ありがとうございます。職務の変更というのは、職務評価のファクターとは想定できないと思います。要するに職務そのものを評価するのに、その職務が変更するという要素で評価するのはちょっと無理だと思います。
○山川委員 そうすると、職務評価と賃金の関連付けは、職務の変更が賃金に影響を与えるとしても、職務評価以外によってその賃金を決定する場合に考慮すべきだと、そういうロジックになるのでしょうか。
○禿氏 そうです。あとは実際の賃金体系にする場合には、職務の大括り化がありますので、職務が変更してもグレードが変わらない場合は、賃金も変わらない、あるいはレンジの中で上げていくことも可能ですので、職務評価そのものと、賃金制度をどう作るかということは別に考えることができるかと思います。
 客観的なウエイト付けというのは、科学的に導けるものではありませんので、当該企業の事情や、労使の合意に基づいて設定することが基本です。ILOのほうでも、このウエイトについてはかなりの幅で記述しており、たとえば10%から20%の間とか、そのような設定をしているのは、その会社の事情によってウエイトを変更するものであるという前提があるのだと思います。
 ちなみに私どもも、この評価ファクターが正しいかどうかというのは非常に気にいたしまして、事後調査でもかなり聴きました。特に責任というものをもっとウエイトを上げてもいいのではないかとか、さまざまな質問もしてみましたが、それはこのままで全然違和感がないと正社員の方が言っていました。また、責任よりも、むしろ負担のウエイトはもっと上げたほうがいいのではないかとか、そのような答えでした。現在の労働環境からしても、負担は現場で非常に増えていますので、負担のウエイトを増やしてほしいというご意見がありました。
 レジュメの5頁で負担の要素を見ますと、負担というのは正社員とパートで差がほとんどない要素です。もし負担のウエイトを上げた場合に、正社員とパートの差が広がるとか、縮むということにはあまり影響がないのかと考えております。
○山川委員 コメントになってしまうかもしれませんけれども、そうすると、必ずしも客観的に正しいウエイト付けがないとしても、そういうプロセスを明示化することにより、その企業ないし事業所においてはどういう要素が重視されているかが、表現がよくないかもしれませんがいわば白日の下にさらされ、それが社内で共有できて、そのこと自体からいろいろ議論が進むという位置付けも期待できるという理解でよろしいでしょうか。
○禿氏 おっしゃるとおりだと思います。
○水町委員 2点お伺いします。1つは、ターゲットとなる賃金とか給付の範囲なのですが、この中でボーナスを含む、含まないという話がありました。基本的に職務分析・職務評価というのは職務関連給付、特に基本給などの職務関連給付に射程を絞ったものなのか、それ以外に通勤手当、住宅ローンを貸すとか貸さない、休憩室を利用させるとか諸々いろいろな給付がありますが、差し当たり職務関連給付をターゲットにしたものなのかということが1つ目です。
 2つ目は、法的に見た場合のインプリケーションなのですが、ここで合理性があるかどうかで横串を刺すというのと同じような考え方で、合理的理由がない不利益取扱いを禁止しようという法的な原則があった場合の、その合理性判断、特に職務関連給付に関する合理性の判断として、こういう取組みを行っていて、最終的なポイントの差に近い賃金の給付を行っていれば、合理性がありと考える、その合理性の判断の1つの要素として位置付ければ、法的な枠組みの中にも取り組みやすいというふうに理解してよろしいかというのが2つ目です。
○禿氏 ご質問ありがとうございます。先生のおっしゃるとおり、どの賃金に適用するかというのは重要な点で、私どももやはり職務に関連しているものであるというように想定はしております。ですが、日本の企業は基本給と言ったり、何かさまざまな名称で給与の言葉を使われますので、とりあえず基本給ということでまずは計算し、かつボーナスというものを取り入れたらどうなるかということで、いろいろな試算の下でこのボーナス込みの時給も算出したということです。基本的には職務関連の給付で、このような職務評価点に基づく賃金の尺度というか、序列のバランスを考えることが基本であると考えております。
 あと合理性という点で言うと、先生のおっしゃるとおり、職務の同一性のことを推し測る合理性の基準の1つとして、このように現場の方も納得し得るようなものをつくることが重要で、そして分析的な評価要素を用いて算出したものは裁判等においても合理性がある、ないという判断をする場合の重要な説明の要素になると考えております。
○権丈委員 2点ございます。1点は、先ほどの山川先生のお話とも関連する点です。禿先生には、賃金制度と職務評価は1対1ではないということをうかがいました。労働力の需給バランスに基づく賃金差、企業にとって容易に調達できる労働力であるために低賃金であるといったことは、職務評価とは別のところで決まると考えて、よろしいでしょうか。
○禿氏 はい、おっしゃるとおりだと思います。
○権丈委員 もう1点は、大まかな話なのですが、今回は労使の協力のもとで調査されたということでしたので、調査後、職務評価の点数と、それに見合った賃金かどうかという調査結果を労使にお伝えしたことと思います。そのときの労使の反応はいかがだったのかをお伺いできればと思います。
○禿氏 率直にご意見をいただいたのは、役付パートさんと正社員の方は100対92.5ではなく、100対100ぐらいではないか、むしろもっと差は小さいはずだというご意見はありました。正社員の方もパートの方も両方、このような点数の結果がでましたが、「本当にそう思いますか」と伺いましたが、本当にそう思う、現実を反映していると思うということでした。また、こういう結果を踏まえて労組が何も対策を打たないというのは、やはり問題があるのではないかとも発言されていたため、それだけ説得力がある結果であると、そのときは思ってくださったようで、非常に前向きに、かつ真剣に受け止めていただいたと私たちは思っております。それは私どもも予想以上のご反応でしたので非常に驚き、なおかつ私どもが設定した評価要素などの信憑性というか、正当性というものを感じ取っていただけたのかなと解釈をいたしました。
○浅倉委員 今回はたまたまスーパーのパートと正社員の方の比較をされたのですが、禿さんのご専門的な立場から見て、このようなやり方がスーパー以外にもどの程度普遍化できそうかについて、ご意見はどうでしょうか。つまり、ほかの分野にも応用できるという感触をお持ちだったかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
○禿氏 普遍化という点で言うと、もちろんすごく馴染みにくい業界も、もしかしたらあるかもしれませんが、しかし、私の率直な感触としてはいろいろな業界でできるのではないかと思っております。特にパートの方が多くいらっしゃるのは飲食店とかホテルですが、そのような業界、ホテルはちょっと業務が多様ですが、特に飲食店の多くはチェーンストア化されていますので、標準化、仕事内容をかなり現場でリストアップもされていて、職務にしたがってどういう人を配置するかということもかなり整理がなされていると思います。そのような業界ですと、それほど大きな負担もなくできるかと思います。
 また、先行研究で商社とか、あるいは裁判にもなりましたが、ホワイトカラーの職務についても、同様の手法で職務分析・職務評価を行ったという例もありますので、ホワイトカラーだからできないということもないのかなと考えております。むしろできない業界はどこかというご質問ですと、お答えに苦労するというか、むしろ多くの産業でできるのではないかというのが正直な感想です。
○今野座長 質問していいですか。先ほどもちょっと質問がありましたが、職務評価点の点数と実際の賃金水準との問題なのですが、先ほど職務評価点というのは一種の職務序列を決めているとおっしゃられた。そうすると、ここは実は賃金と対応させようとすると非常に幅がある言い方で、機械的に言うと、点数の差が賃金差に反映されなければいけないという考え方と、単に順番しか決めていないという考え方がありますよね、序列。ですから、点数が高いのは低いよりか上だと、それしか決めていない。そうすると、そこで賃金水準を決めるのは、企業の戦略性、市場でもいいのですが、すごく幅をもって決められるというので、全然違いますよね。この辺はどうですか。まだ2つ質問があるのですが、1個ずつ。それはどうお考えですか。
○禿氏 職務分析・職務評価でも、ご説明のあったいろいろなやり方があり、単純比較法とか分類法とかいろいろあるのですが、結局、外国では長年の職務分析・職務評価の結果、そのような点数などを付けず、単に分類するだけ、単に序列を付けるだけという職務評価は、あまり客観的でもなく、偏見とかそういうものが入りやすいので、もし裁判などが起こった場合には、そのような分析的でない職務評価を行っている場合には証拠とならないという、そのような国もありますので、結局はこのような点数をつけるやり方を採用する事になるとは思うのですが。
○今野座長 こういうやり方でいいのです。それで、点数が付いたときのその点数の意味なのです。その点数というのは、単なる職務の重要度の順番を決めているだけ、その判断にのみ使えるというのと、もう1つはその点数に沿って、賃金がぴったり比例的に動かなければいけないという判断と、幅としてはあるわけです。これによって、賃金制度に与える影響がだいぶ違いますよね。その辺はどうかなと思ったのです。
○禿氏 お答えになっているか、ちょっとわからないのですが、ぴったり決めるというのは1点の範囲で決めるとかいうことではないですよね。
○今野座長 100点対50点は、賃金は2対1でなければいけないというのは、もうぴったりというものです。順番だったら、100点対50点だったら、100点は100円、50点は1円でも、2円でも、3円でも、4円でも、5円でも、99円でもいいと、順番だからそうなりますよね。その辺はどうお考えかなと思ったのです。
○禿氏 それは点数を出すということは、やはりその点数に沿った比例賃金を支払うという考えになると思います。
○今野座長 そうすると、今度もう1つ、それと関係があるかもしれないのですが、今日の資料の6頁のいちばん上の所で、「単一の賃金体系を企業に要請するものではない」とおっしゃられるのですが、いまおっしゃられることを強く言うと、賃金体系を強制するのです。つまり、幅がないから、職務評価で決めたら、点数が決まったらそれに沿って賃金を決めろということですから、それは賃金体系は1つしかあり得ない。
 もう1つ、紛争解決ツールで使って、例えば企業が訴えられたときに、職務評価点が同じなのに、賃金が違うのはおかしい、差別だと言われたら、企業はどうしたって賃金体系を変えざるを得なくて、いま言った判断基準に合わせて賃金体系を変えざるを得ないので、実質には単一の賃金体系を企業に要請するものにはならないのではないかと思うのです。
 もし職務評価が全体の評価の中の1ファクターであるというのだったら、いちばん最初の「単一の賃金体系を企業に要請するものではない」というのも理解できるのですが、職務評価点を強い評価基準だとしてしまうと、結局、企業には単一の賃金体系を要請することになると、ちょっと思ったのですが、どうでしょうか。
○禿氏 先ほど水町先生のご質問でも触れさせていただきましたが、この職務評価点ですべての賃金項目を決めるということは、私どもも考えておりませんで、やはり基本給とか職務に関連した賃金ということで考えております。このような職務評価制度を実際に導入している国々で、すべての企業の賃金体系がすべて職務給とはとても思えませんので、単一の賃金体系というのは職務給ということだと思うのですが、それを要請するとは言えないのではないかと、現実に起きている実態からして、そうは言えないのではないかと思います。
○今野座長 最後で、しつこいようですが、賃金にはいろいろな賃金項目がありますが、広い意味での職務関連賃金が基本給で、やはりいちばん構成比率が大きいのです。極端に言うと、ほかの手当は小さいからどうでもいい。そうすると、そこを単一で要求することは、実質的には全体を1つで要求することに近くなってしまうかなと思うのです。
○佐藤委員 基本給でも職務で決めている部分が6割で、職能で3割と、こうなっているならいいのです。ここの部分をいまの職務ポイントの系列6割分をというならいいのですが、基本給の数字を全部リンクしろというと、今野先生が言われたみたいに全部、職務給体系にしろということになってしまうので、たぶんそこはちょっと説明。
○今野座長 私がお聞きしているのは、単一の賃金体系でいけと書いていただけると、私はすごくすっきりするのですが、これはそのように要請するものではないと柔軟に書かれたので、私が先ほど言ったことと、職務評価の点数は賃金水準にリンクしろと強くおっしゃっているので、両方考えるとやはり単一の賃金体系を要求されているので、論理的に合わないかなとちょっと思ったものですから。もういいですよ、私の感想ですので。
○浅倉委員 たぶんいまのところは、禿さんにお聞きするのではなくて、この研究会の中で方向を出すべき分野だと思うのです。参考の事例として挙げていただいたのですが、こういうやり方をすれば、1つの合理的な職務の価値が評価できるという証拠を出していただいたので、それを法制度的にどのように取り入れていくかというのは内部の議論になると思いますので。
○水町委員 簡単に私の印象では3つぐらいの遊びがあって、1つは職務関連給付にするか、それ以外の給付にするか。職務関連給付にしたとしても、構成要素のポイントをどうするかで、能力を重くするか、狭い意味での職務を重くするかは労使の話合いとか企業の運用で決めればいいし、仮にそれを決めたあともインターバルがあるので、インターバルを狭くすれば1つの賃金体系を推し進めることになるけれども、インターバルをどのぐらいにするかというのも、企業の中の判断でやれば、二重、三重に柔軟性を持たせることができるけれども、それも含めてやっていきましょうということなのかなと思いました。
○今野座長 あまりそういうことを言ってしまうと、今日、発表していただいたのに失礼かなと私は思ったのです。なぜかというと、そういうことはここでいう職務関連手当、さらに職務評価に基づく賃金要素をどんどん減らせと言っているのです、いまのお二人は。
○水町委員 労使の話合いで、最先端でやっている国でもそんなにギチギチでやっていませんよということ。
○浅倉委員 ベースが何かという議論だと思うのですよね。
○小宮山副大臣 使える大きな要素としてこれを使いながら、あと運用上柔軟にやればいいのです。だから、その基準としては、おそらく単一体系を要請するものとしてこれをやりながら、それの使い方は企業ごとにやればいいということではないですか。
○今野座長 そうおっしゃられたのですね。ただ、佐藤さんの意見は違うベースがあると言っているのです。つまり、職務評価点がベースだという考え方もあるけれども、職能もベースだと。つまり、そういう意味ではベースというのはほかに選択肢があるだろうというのが佐藤さんの意見なのです。だから、いろいろなことをみんな言っているなと思って話を聞いていたのです。
○山川委員 研究会としての議論になってしまうのですが、例えば職務評価の結果、このウエイト付けがおかしいという資料が訴訟で提出されたら、これは違法ではないかという判断の1つの要素になって、それに対して会社側が、うちではこんな基準で明確に、例えば能力、職能というものを入れていますという主張立証をすることにより反証ができるかをダイナミックなプロセスの中で考えていけるのかなと思います。逆に会社側が、きちんと別の基準、要素で考慮していますということを主張立証できないとしたら、不利な心証になるとか、そんな感じかなと思います。
○今野座長 私はそれを聞いているのです、それでいいのと。だって、折角これだけ研究されて、やはり職能ベースだとおっしゃられているのに。
○禿氏 どうお答えすればいいかわからないのですが、現在のパート法の枠組みですと、ちょっとでも要件が違ったら比較すらしないという極端なことになっているので、それよりは、このような職務評価手法を用いることによって、職務内容が少し違っていたとしても、職務の価値に比例したものとして、賃金差を合理的に判定するというやり方に変え得るということは申し上げたいと思います。現在のものは非常に極端すぎて、むしろパートの処遇を低める手助けになってしまっているおそれがある、ということは申し上げたいと思います。
○今野座長 言いたいことを言いまして、すみませんね。質問するのは楽ですからね。圧倒的に時間オーバーしまして、失礼いたしました。禿さんのお話と議論は終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
 続きまして、筑波大学大学院ビジネス科学研究科客員教授の山本紳也さんにお願いしたいと思います。時間はフレキシブルですから、一応15分でお願いします。
○山本氏 もうすでにかなり活発な議論がされましたので、私が話すことがあまりなくなったなという印象です。私はいまご紹介いただきましたように、筑波大学の社会人ビジネススクールで客員教授をやっているのですが、実はそちらの教員としてというのはまだ4年ぐらいであり、20年ほど人事関係のコンサルティングをずっといまもやってきております。その経歴の中で、ちょうどバブル崩壊後の1990年の前半に、こういった欧米のジョブ・グレーディング、職務等級的な考え方を日本に入れるということを、研究しながらやっていたということがあります。今日は、その経緯で呼ばれたと思っています。したがって、私の場合には先ほどの禿先生とは違いまして、私のいままでの経験の中からの見知といいますか、私の見てきたところ、考えをお示しして、ご参考になればと思っております。
 今日の話は、簡単にパワーポイント、スライドにまとめておりますので、そちらに沿ってお話します。まずスライド3です。こちらはもういままさに議論されていたところで、この頁はまとめみたいな形になっています。改めて、職務評価について自問自答したのを書かせていただいております。まず、ありきたりの話ですが、会社組織にはビジネス戦略というのがあって、それを達成するために組織ができます。組織ができた中で、当然そこには役割分担が存在します。その役割分担ができたところで、それぞれのポジション役割というのが、どういう重みがあるのか。ここで「職責(役割責任)」と書いてありますが、これを測るのが職務評価であり、その結果を職務等級という形で表します。ここまでは、まさに先ほど佐藤先生がおっしゃっていたように、あくまで仕事の話です。それに対して、それをやる人が付いてきますというのが右端にあって、そのためには、この仕事を任せるためには、どういう能力、ここでは「スキル・コンピテンシー」と書いてありますが、そういったものや、それだけではなかなか言葉にできない経験的なものが、たぶん要件としては入ってくるのだろうと思います。
 こちらの能力を見て、これで人をどこの仕事に張り付けるかを決めます。こちらの人のほうを重視して見ていくのが能力評価であり、職能資格を中心とした能力等級的な考え方なのでしょう。私自身もコンサルタントですから、こういうことを指導しながらお金をもらっているわけなのですが、決してどちらの考えや制度が良い、悪いとか、どっちでなくてはいけないという考えは、持っていません。
 ただ、もう十分議論されたように、ここの需給バランスで金額が決まってきますので、賃金は職務で決まるのですか、人で決まるのですかというのは、簡単に答えがないのではないかとは思っています。あとこれがいちばん難しいところなのですが、誰でもが転職するのが当たり前の香港やシンガポールに行くと、放っておいてもAさん、Bさんの市場価格は存在するわけですね。ところが、日本のように大手企業ではまだ9割方が終身雇用ですという所には、実態として、はやはり市場価格原理の影響が非常に薄くて、この需給で決まるという考え方が存在しなくなってしまうというところが、基本的に日本とその他の国の違いだと思っています。
 4頁は、先生方を前にマクロ経済の1頁目みたいな絵を描いても仕方がないのですが、ここで何が言いたいかというのは、こういう言い方をするとよくないかもしれませんが、人にも物と同じように需給バランスによる市場価格というのが存在するということ。また、このグラフもどのポジションにも通じる汎用的なものではないですというのが、市場が存在するときの常識なわけです。各ポジションごとにこのグラフが存在します。代表的なファクターが右側に書いていますが、例えば下からいくと、たとえアメリカであっても、ノースカロライナの片田舎とニューヨークで、「場所」が違うと同じはずがないわけです。「業界」というのは、例えば人事部長でも、その業界の知識がないと、できる、できないという話もあれば、ビジネスとしてのコスト構造も違えばということも存在しますので、やはり違うだろうと。いちばん上の「職種」というのは、ここは需給バランスが違ってきますから、当然職種によって違います。
 それに加えて、上から2番目の「職責・難易度」という職務評価できる要素があり、他にもっと細かい要素はあると思うのですが、こういった条件でこのグラフができてきます。したがって、社内で見たときに、あるいは同じ職務評価ツールを使ったときに、同一職務等級は同一価値ですかと聞かれると、価値という言葉は使い方が難しいのですが、その職務評価ツールを作ったときの概念と理念に基づいて評価をしていれば、同一価値ですと言っていいと思うのです。ただ、それが同一賃金かというのは全然別の議論です。それはこのグラフが一つひとつ違うからというところは、まず明確にしておかなければいけないだろうと思います。
 先ほど申し上げましたが、私は1990年代前半に、日本に出て来ている所だけではなく、欧米の職務評価ツールを出しているコンサルティング会社にいろいろなものを調べたことがあります。ただ、中身全部がオープンになっていないものもありましたが、そのときに大体大まかに言うと、こういった代表的な項目で評価要素がなっているということは、ざくっと書いております。ですから、先ほどからご説明があったものの中で言うと、ちょっと切り口が違いますが、難易度、難しさと能力要件みたいなものは2番のほうで、責任の大きさは1番のほうかと。
 それから、私は先ほどの議論を伺うまで忘れていたのですが、そのころ20年近く前にいろいろ見ていたとき悩んだのが、仕事の環境要素です。先ほどのILOのものもそうでしたし、禿先生の研究の中にも入ってきましたが、この仕事の環境要素が評価軸から何か徐々に消えていっているタイミングだなと感じた覚えはあります。しっかり覚えていないのですが、古いものは結構、身体的な大変さみたいなものも項目に入っていたのですが、新しく出てきたものはそれが消えていると。だから、かなりホワイトカラー用になってきているのかなと思った印象を、いまちょっと思い出しております。
 もう1つ難しいのは、先ほどの議論の中でも出ており、禿先生も最後のところでかなり悩んでいるというお話をおっしゃっていましたが、ウエイトの置き方ですね。これでどうにでもなるという話は、正直言ってありますね。これはもちろんパートとフルタイムという意味だけではなくて、私が実際にコンサルティングをやっている場面で、こういうものを使ってやると常に出てくるのは、研究開発系の人たちは難易度とか能力項目のウエイトを上げろと言うわけです。上のマネージメントの人たちは、責任の大きさのウエイトを上げろと言うわけです。この辺のところは、どっちが良い、悪いとか正しいか間違っているかの議論ではないと思います。
 先ほどご質問が出ていました、このウエイトの置き方に対して「何か客観的な絶対的なものがあるのですか」というと、論理的に説明できるものはないように思います。これは私が言うのも何ですが、歴史で言うと、ご存じで聞かれたことがあると思うのですが、こういうものをきっちりと体系化して、商売として形にしてきたのはヘイというところです。ヘイグループが1950年代に作って出てきたのだと思います。当初より、そこのところは共通、汎用的なウエイトがかかっていました。世の中的にそのあといっぱいできてきた、アメリカとかヨーロッパにある小さいコンサルティング会社でやっているこういうものは、私の理解では元ヘイの人がやっているというのが圧倒的に多いです。その人たちが何をやっているかというと、単一のウエイトではなくて会社や業種に合わせますという方法論が、80年代、90年代ぐらいにいっぱい出てきました。
 私の個人的見解では、いちばんの理由はそのウエイトを決めるのは、とてつもなく難しいということ。「今日から職務評価のコンサルティング始めます」と、簡単にできるというものでないということ。もう1つは、市場のニーズとしてやはりうちの会社はA社、B社とは違うと。うちの考え方を入れてほしいというニーズがあったところに、ヘイにいたコンサルタントが飛び出したときに、そこに自分でやれるニーズがあるということで、ウエイトは会社と一緒に考えて決めましょうという方法論が出てきたというように、私自身は理解しています。
 ヘイだとか、マーサーがやっているものとか、いくつか固定ウエイトで、これがグローバルスタンダードですというようにやっていますが、あれは中身は計算で出ている部分と、マトリックスに経験則から出てきた数字が入っていて、計算式では全然出ていないものとが両方ミックスになっています。それは両者とも基本的にいろいろな国でいろいろな業種でやってきた統計的な結果として、こういうウエイトになったのですという説明しかない。「それは本当ですか。どうやったのですか」と聞いても、その辺にいるコンサルタントは中身は誰もわからないという状況になっているということです。それがいま世の中的に使われているものの実態だとは思います。ですから、これは良い、悪いは別ですが、このような職務評価で評価されるのは、あるスタンダードに基づいた業務執行におけるポジションの価値であって、それ以外の要素は基本的に入っていないと理解する必要があります。
 その結果をどのように使いますかというと、これはもう話をされているかと思います。「序列」という言葉が先ほど先生から出ていましたが、序列管理と、当然、労働市場との競争力検証ということで、賃金水準のを決定に用いられます。
しかし、このベンチマークの活用においては難しいなと思うことがあります。資料の下に書いたのですが、責任の大きさの測り方については、いろいろな項目がありますが、業務結果、業績などに、どれだけの影響力を持つかのような見方というのは、これはビジネスにおいては絶対に重要なわけです。ところが、何が重要か、どこに重要ポイントを置くかというのは、やはり会社によって違う。会社の価値観が入らないはずはないので、みんな同じツールを使えば一緒かというと、私はそこはクエスチョンマークだと実は思ってはいます。これも良い、悪いではないと思います。
例えば人事で考えると、すべて人事権を本社の人事部が持っていて、誰をどこに動かすのも全部、人事部長のハンコがないと動かせない会社もあれば、そんなのは現場で全部決まって、人事部長は事後承認だけ、「ああ、そうなのね」と言っている会社もあると。これは良い、悪いではなくて、会社の考え方です。でも、人事部長が裁量権、決定権を持っている会社は、人事部長の責任の大きさが大きいはずなのです。そういうものがこういう評価に入ってくることは、必ずあります。このような職務評価の結果として市場賃金はいくらだというのを決めている欧米では、A社とB社とで評価の中身が違うのに、同じ点数だからいくらという見方をしていいのか、それで課題は出てこないのかというのは、私も答えを持っていないところです。
 次の頁に日本の特殊性ということを書かせていただいております。もうここまでに話しておりますが、圧倒的にここに書いているところが、ベースの違いだと思うのです。使い方としては、等級の使い方はいままで言っていますように、外部労働市場とのベンチマークツールとして賃金を決めるのに使うということと、内部ということでは、やはり社内の異動だとか、特に最近はグローバルで異動させるときに、やはりこういうものがあったほうがいいという考え方は、欧米企業でも使い勝手がいいというところはあるのだと思っています。
 ただ、6頁の下に書いているのが、いちばんの違いというか、難しさで、普通、日本以外の諸外国では、労働市場が活性化している所では外部競争力の検証に使われるのに対し、日本の場合には、少なくとも私がコンサルティングをしてきている限り、ほとんどが内部の公平性の検証ツールです。同じものを使っていても、根本的に目的が違っているというのはすごく感じます。そうすると、外部労働市場の場合には当然、人事部長も経理部長も営業部長も10点ですと付いたところで、外部労働市場でそこは需給バランスがそれぞれ先ほどのグラフが違いますから、人事部長は1,000万円だけれども、営業部長は1,200万円ですねというのは、等級ではなくて市場価格として出てくるわけです。ところが、内部市場で、内部の考え方でそこの分配をしようと思うと、これは10点だったら1,000万円ですと決めればいい話なのであって、それが通っている。そこが根本的に違います。
 私が今回のお話を受けたときに悩んだのは、会社によってまず違うというのは、1つ絶対にあるということ。それから、一般論で言うと、基本的にはたぶんずっと同じ会社で働く前提でいるだろう正社員の方と、やはり何だかんだ言っても、正社員よりは労働市場を意識しているだろうパートというところというのが、個人から見ても会社から見ても、そこの見方は違うのではないか。そこの整合性をとるのはすごく難しいなとは思いました。それはパートだけではありません。いちばん下に書いてありますように、専門性が高い人というのはそうです。新興国に技術者が引き抜かれる可能性がある部署は、これを考えなくてはいけない。ですから、1万人の会社でも数百人はそれを考えなくてはいけなくて、残りの9,000何百人は社内の公平性だけ考えていけばいいというのが、いまの日本の会社のマネジメントの難しいところだと思います。
 次はスライド7ですが、ここは今までにお話しました内容になっています。パートと言ったときにどうなのかというのを私なりに書いています。ただし、私はパートの世界も法的な面からも決して専門ではありませんので、そこは差し引いてお考えください。パートの3要件と言われるもので、厳密に言うと職務分析・職務評価という切り口で出てくるのは、1の職務そのものを問うている所はまさにマッチングしているのですが、異動を含めての働き方だとか、雇用形態、その条件のあり方を考えると、これは職務評価の要素にはたぶん入っていないものだと思います。
 私のいままでの20年の経験で、あまりパートの給与をどうすれば良いかという相談はなかったのですが、役員報酬の相談で似た悩みはあります。どういうガバナンス形態が良いかは別問題ですが、例えばアメリカの典型的な形のように、ほとんどオフィサーで執行の責任者という人はボードメンバーではありませんと。執行責任だけであれば、職務評価、職務等級で測れるわけです。ところが、ボードメンバーというのは全く違う責任ですので、これは職務要件の要素には入ってこないのです。日本の場合には、その前に会社法に則った委任契約と労働雇用契約という根本的な違いという特殊性もあります。ですから、そこで法的な意味合いだとか責任なども違ってくるので、同じ職務評価で測れるわけがないということだと理解しています。ですから、従業員のいちばん上の部長がいくらで、その上の従業員扱いの執行役員がいくらで、その上の取締役執行役員がいくらでというのを同じ軸で測っていくというのは、説明がつかないのではないですかという話はよくしています。
 そのほかということで、他にも色々書いていますが、これは先ほどお話しました。会社にとっての職務価値と市場にとっての価値というのは異なるものです。日本のほうが典型的にこの状況が見えるわけですが、別に日本だけではなくて、それは欧米でも同じです。ほかへ行っても、うちの会社は何を重視する会社だと、その考え方を入れたいと思えば、A社、B社というのとは違う見方で等級、グレーディングは出来上がるわけです。
 ところが、労働市場というものが存在する限り、何か同じ軸でベンチマークをとらないと、人材のマネージメントができない。そのためにこういったものが使われているということであるのだと思います。ですから、何等級だからいくらという決め方は、欧米とかほかの国にはないのです。それは雇用契約の形が違うということもありますが、会社が一方的に等級で報酬を決めていたら、採りたい人が採れないとか、良い人を確保できないということが存在します。
 この後の資料は私は何か書こうと思って、自分で何も書けませんでした。ただ、課題としては、こんなことは私が言うまでもないですが、パートという方も正社員になりたい方と、パートという雇用形態を自分から選択していらっしゃる方というのをどう区別するのか、しないのかというのは、ぼやっとは思ったということがあります。あとは正社員の登用というところでは、何が違うのかわかりかねます。これは先ほどの禿先生のものでも、比較論で90何パーセントがいいかどうかという話は出ていましたが、何か軸はあったほうがいいのだろうなとは思います。
 それと併せて、パートタイムの育成の課題ですが、この辺は私はどうしても20年間、経営者にお金をもらってコンサルティングをしているので、そっちサイドの見方になるのかもしれませんが、これはやはり戦略というかポリシーというか、考え方の問題でしょうし、また決めるのは市場でしょうと。やはり良い人に育ってほしい、きっちり仕事をしてほしいと思ったら、教育をしなくてはいけないし、教育しなかったら、そういう人が居着いてくれないという、これは市場の話です。そういう市場を目指すのであれば、それをどうやって仕掛けていけばいいかというのは、当然議論としてあるのだろう。ただ、そこまで入ってくると私の専門外だなというのが正直なところです。
 あとは参考資料として付けてきていますが、先ほどの議論の中でちょっとお話があったのでお話したいのが、10頁のグラフです。10頁、9頁はちょっと過激な部分もあるのですが、10年ぐらい前のコンサルティングでやったときのほぼ実データです。10頁のグラフは、横軸に職務等級を取っています。赤のプロットしているのが、ある日本企業のある1つの工場で、どのぐらいの職務の重さの等級の人がいくらもらっているかをプロットしたもので、リグレッションを取ったのがこの赤いグラフです。紺の3つの線は市場と書いていますが、実はこれが外資系なのです。海外ではなくて日本なのですが、外資系企業の報酬のグラフです。
 そうすると、やはり外資系は指数カーブを描いていて、日本の企業はある程度比例分布的に直線だというのは、いまは変わってきている部分もあると思うのですが、やはり一般論としてはあると思います。このときに内部労働市場、要は内部の公平性だけを見ていると、この赤い線から上に飛び出した人たちが高すぎて、赤い線より低い人たちで若くて優秀な良いポジションに就いている人をどうやって上げるかという議論になるのですが、外部労働市場を意識すると、このグラフを見て、この赤い線に合わせるのは、右側の高い職務の人は余り意味がないのです。外部労働市場を気にしなくてはいけない人とかポジションであれば、赤ではなくてブルーとの比較をしなくてはいけない。
 何か押し問答になりますが、じゃあこれはブルーに合わせればいいのかというと、これはコスト高になるだけで、そんなことをしなくても、みんな自分の会社が好きで、最後まで働こうと思っている人にそんなことをする必要は全くないわけです。と言ってはいけないかもしれませんね。たぶん経営としてはそうだと思います。日本に来た外国人などに時々聞かれます。「日本の証券会社よりもアメリカの証券会社のインベストメントバンキング、投資銀行などをやっているような所は、何倍も給料をもらっているよね。日本のビッグネームの金融の従業員の給料を何で上げないんだ」と聞かれるのです。「答えは簡単じゃない。だって辞めないからだよ」と私は答えます。ですから、良い、悪いではなくて、これはやはり市場の原理というのが強いのだろうと思います。あまり役に立っているかどうかわからないのですが、私のほうから準備してきたものは以上です。
○今野座長 ありがとうございました。それでは、またご質問・ご意見をお願いします。
○山川委員 2つありますが、先ほどの禿先生へのご質問とも共通して、仕事の内容の変更は職務評価の対象にならないという点です。山本先生も、雇用形態に関して、転勤とか職務内容の変更は職務評価の問題ではないという趣旨のことを、たしかパートタイム労働法の働き方は対象外であるという所でお書きなのです。日本のいわゆる正社員との賃金格差を考える場合によく主張されていることは、転勤や職務内容の変更など、いろいろなプロセスを通じて幹部候補生として養成しているということです。それは、要するに職務分析・職務評価とは別に切り離して賃金決定の要因として考えるのか、あるいは何とかして職務分析なり職務評価の中に取り込むことはできないのか、というのが第1点です。
 第2点は、参考の9頁とか10頁は、特に内部公平性の観点から、これを企業の中で見たらいろいろ物議を醸すだろうなという感じがするのです。これは企業のヒアリングのときに聞いたほうがよかったのかもしれませんが、こういう職務評価を通じて、先ほど白日の下にさらすと言いましたが、職務の価値と賃金の差や序列が明らかになることは、ご経験から言って企業は嫌なのでしょうか。そういうことはあまり明らかにしたくないと思っているかどうか。
○山本氏 2つ目のはちょっと難しいなと思いつつ、1つ目のは転勤、場所の異動だけではなくて、全然違う仕事にポンと行くと、個人にしてみれば慣れていなかった所でゼロから始めると、結果が出せない分マイナスだということになると思う。そういうことだと思うのです。これは別の議論かなと思います。あくまで職務評価・職務等級という考え方を使うか、使わないか、どう使うかという議論は別ですが、いまの存在している職務評価の考え方からいくと、先ほど先生からもお話があったように、誰がやろうと職務にグレードとお金が付いているわけです。何か会社的な言い方ですが、全然いままで経験のない人をそこに付けるということはそれだけ生産性が落ちて、それで職務給であれば同じ給与を払わなくてはいけないので、会社はそんなことをするかと、こっちが進んでいくとそういう議論になってくるわけです。それがいいかどうかは別ですけれども。ただ、いま日本の市場で私がいろいろなクライアントさんと付き合っていてあるのは、やはり正社員の中でもそこの区別を付けていなかった所は、地域社員というのをいまさらながら入れたいというところができてきています。
 もう1つは、これも会社によると思うのですが、転勤するものだと言われているのだけれども、実はきっちり統計を取ってみると、転勤している人が何人いる、何パーセントいるという話を考えると、どちらかというとそれが条件でなくて、どちらかというと転勤する人のほうが特殊なのかもしれないという議論もあります。そこは、もし何か別枠を作りたいのであれば、やはり別に考えるべきものだと思います。実際にこういった等級を付けて、白日の下にさらすということ。白日の下にさらすということ自体、日本企業はあまりしないかもしれないですが、どう受け止められるか。難しいですね。
 最初に申し上げましたが、私は別に好きでも嫌いでも、賛成でも反対でもないのですが、よく言うこととしては2つありまして、まず絶対ブロードバンド的な考え方にしないときついと。武田さんみたいにシングルレートといって、何等級だといくらと決めていらっしゃる所もありますが、やはり特殊だと思うのです。脱線しますが、余談で言うと、ああいった製薬業界は技術とか品質保証とか製造とかというところは、だいぶ作りが違いますので、研究開発と営業とで間があまりなかったりしますので、専門性の乖離で、そこで人の行き来がほとんどないのでああいうことができると思います。電機・自動車とは全然違います。
 よく私が言うのは、10年前、20年前に、1990年代にこういうことをバーッと入れ出したときは、絶対に意味があったと思うのです。それは成長が止まったときに、年齢とともに給与が上がっていくということの歯止め、これは悪い意味ではなくて、実態に合った歯止めをかけるために、職務という概念でその歯止めの基準を作るというのは、1つの考え方として私は間違っていないと思います。ただ、やはり外の労働市場との行き来がない中で、仕事が変わると給料が変わりますという考え方は、従業員数百人の会社ではきついです。正直言って、人事が機能しなくなります。中小企業を対象にしてお話されている所で言うのも何ですけれども、かなり注意が必要です。
 私は大企業には枠にはめるという意味で良い作りだと思うのですが、それを真似してそこの関連会社が同じような制度を入れますといったときには、「ちょっと待ってください、ゆっくり考えましょう」というスタンスは通常とります。「人事が回らなくなりますよ」という言い方をします。ただ、職務の考え方が悪いと言っているわけではないのですが、動けるポジション数が少ないと運用上きつくなります。ですから、その辺が見えると、要は自分はもう上のポジションはあまりなくて、職務が落ちるしかないというのが見えると、みんな絶対に反対をします。ただ、大企業の場合には、組合も何となく反対はするけれども、流れとして仕方ないかなという部分は結構あるのかなという気はします。
 ある某大手、日本のトップメーカーの組合のトップの方とお話したときに、「グローバルで戦っていくためには、成果主義であり、こういう考え方が必要で、信賞必罰の人事というのは入れなくてはいけないと思う。私もそうしないと絶対に駄目だと思う。でも、下にいっぱい下請、孫請がいるんだよな。そこが難しいところなんだよな」とおっしゃっていたことを思い出しました。
○浅倉委員 いくつかおうかがいしたいのですが、まず仕事の環境要素が徐々に消えているというお話がありました。そのときにホワイトカラー化しているとおっしゃったのですが、ホワイトカラー化すれば、先ほどの禿さんの評価要素にあったように、身体的な環境ではなくて精神的な環境がより重視されていって、そういうものが評価点に加わっていってもよいのではないかという感じもしたのです。そういう変化のようなものが見えてくるのではないかというのが1つです。
 2点目はウエイトの話です。たしかに企業がえいやと裁量で決めている実態かもしれません。それをできるだけ従業員の合意も取り入れて、労使ができる限り納得いくようなプロセスを作り上げることについては、どのように評価されるでしょうか。ご意見があれば、是非伺いたいと思います。とりあえずその2点でお願いします。
○山本氏 環境の要素がホワイトカラー化していると、ぽろっと言ってしまいましたが、実態はよくわからないのです。ただ、20年前を思い出して、欧米のコンサルタントと議論したときに、環境要素はブルーだろうがホワイトだろうが、手当で決めればいいものであって、等級の中に突っ込むと無理があるのではないかという議論があったことは覚えています。ただし、それは身体的なものの話でした。これは実はホワイトでもあって、原発関連業務でもそうかもしれませんが、耐久試験をずっとマイナス何十℃の所でやっている人だとかもあったりするので、そういう議論をしたのは覚えています。
 いま先生がおっしゃった精神的なというところですよね。すみません。これは私はあまり考えたことがなかったです。面白い観点だし、これを議論すると結構大きな問題にもなるのだろうなというのは、いま改めて気付いたので興味はあるのですが、ちょっと私としては、今は答えを持っていません。
 それから、ウエイトの話ですが、私も実際にコンサルティングをする場面は、日本企業さんというのが圧倒的に多く、しかも日本でしか経験がありませんが、10年前、大企業等がみんなこういう考え方を入れたときにどうしていたかというと、基本的にいろいろな意見は出るのですが、「これがグローバルスタンダードなんだよ」と押し切っていたのが、たぶん実態だったかなと思います。それを何か掲げていたように思います。
 ただ、プロセスとして我々がどういう方法をとったかというと、これはやはりそんな簡単なウルトラCはありません。いちばん結果として良かったなと思う方法を説明します。これはすごく時間がかかりましたが、各職場とか、いろいろなグループ単位で、まず部長さん相手に説明会を開いて自分のスタッフのポジションについて評価して等級を付けてきてもらって、全部書き出してもらいます。それを一緒に仕事をする、関係する部署の人たちが集まって、あれは何でこういう点数なのかと評価会議のような議論をします。当然要素ごとですから、要素で何でこのポジションは高いのだ、低いのだみたいなことをやって、その説明を部長ができないと落ちていくみたいなことをやりました。もちろん100%というわけでもありませんが、理解度が高まって、納得度が高まったということがあったかなと思います。ただ、なかなか難しいですね。
○水町委員 6頁で外部市場向けと社内労働市場向けという所があるのですが、これは日本以外と日本と書いてありますが、私の認識ではおそらく外部労働市場向けはアメリカで、禿さんがお話されたようなイギリス、スウェーデン、カナダなどは、企業の中で比較しようというように使われているツールなので、もしかしたら外部労働市場向けはアメリカで、アメリカ的なやり方以外のやり方では、社内労働市場の中での調整のツールとして使われているという理解でいいのかなというのが1つです。
 実際、社内労働市場で調整するという社内での比較に使うときに、先ほどのポイントとかウエイトが裁量で付けられるとか、いかようにも付けられるという話なのですが、外部労働市場向けだと結局、外部の市場の中で検証できるので、比較的妥当な線に最後は落ち着くのかと思います。社内労働市場向けだと、検証というか、そのシステム自体が公正・妥当で行われているかという検証が、例えば依頼した人とか、お金を出していた人の気持がなるべくこもるようになってしまうと、結局そのシステム自体は持たなくなってしまうのです。運用する中で、このようにすれば長持ちするとか、内部労働市場向けでも機能するという工夫が何かありましたら、教えていただきたいと思います。
○山本氏 まず、欧米はどうかという話ですが、実はあまり面白い話がなかったので今日入れなかったのですが、この課題をいただいて、アメリカとイギリスとフランスとオランダとドイツの人に、電話とかメールで聞いてみました。ただ、同僚ですので、どうしても我々がコンサルティングフィーをもらってやっている所は大企業のホワイトカラーのコンサルが多いので、そこだとヨーロッパも結局外部を意識していることは間違いないのだろうと思います。
 皆さんご存じのとおり、EUでは基本的にパートだからと報酬を変えることは、法的に変えてはいけないというのがありますので、そこはちゃんとやっているのだけれども、やはりどういう仕事に就けさせるかというところは、必ずしも公平にフェアにやれているかどうかわからないのでという話はありました。だから、同じ等級だったら同じ給与というのはやっているのだけれども、完全かは疑問という話はヨーロッパなどでは出ていました。欧米はそこの違いよりも、やはり先ほどエグゼンプト、ノンエグゼンプトの違いのほうが大きいという話は出ていましたが、その通りだと思います。
 先ほどのご質問のお答えになっていないのですが、私もそれほど詳しくありませんが、確かに米国のほうが外部労働市場の意識は高いというのはあるかもしれません。それは離職率の違いとか、そういうのはあるかもしれないと思いますが、詳しくはちょっとわからないです。
 それから、社内の比較でよく、見る対象が社内の労働市場だったときにというのは、確かに偏ったものになってしまうとまずいので、それは私も意識します。ただ、先ほども申し上げたように、日本でコンサルティングをしていると、外部労働市場ではなくて、内部の公平性のためにということであって、そうすると内部の価値観がきっちりと浸透しているところ、あるいはその価値観を浸透させるためにこれを使うのであれば、偏っていていいという考え方もあるのです。それが通りやすいのは、やはりまだ創業者社長がいるような会社で、絶対的な指導者のいる所ではそういう議論が勝つということが私の経験上は多いかと思います。ただ、そのときに次にここでプロパーで上がって来られた方が社長になったときに、それで続けていけるかというと、「そこは私は保証しないですよ」という言い方をする感じはありますね。結局我々も、何が公平かと頼るところというと、グローバルのスタンダードで使うときはこういうウエイト付けですというものしかないので、それとの比較論で話をするということしか、いままでしてきてはいないです。
○佐藤委員 3頁の職務等級と能力等級の所で、職務等級のほうは禿さんの報告で、基本的にはその仕事に必要な能力も当然見るわけです。能力等級のほうが、先ほどの山川さんの議論にかかわるのですが、例えば原価管理の職務等級のポイントがあったとき、能力のほうの等級を見るときに、Aさんの原価管理をやる能力というように見るのと、その人が過去に資金調達をやっていたと。そうすると、原価管理しかやってこなかった人と資金調達と原価管理をやってきた人。つまり、能力等級のほうは、これまで経験した仕事の範囲とか、能力等級の作り方はいろいろあり得ると思うのです。先ほどの異動可能性というと、過去にどういう仕事を経験してきたか、違う仕事に移ったときに、例えばいまは原価管理で採用するのですが、この人が資金調達もやっていれば、資金調達に移す可能性はあるわけです。能力の幅は広いわけです。能力等級の作り方が、日本の場合はかなり広くとっているわけですが、海外でこういうように議論するときの能力等級は、特定の業務の能力の等級と考えるのか、その辺をちょっと教えていただきたいのですけれども。
○山本氏 正直言いまして、いわゆる日本的、職能的な、「能力等級だね、これは」というものを、私はあまり海外のもので見たことがないですね。日本の職能もコンピテンシーも、会社によって定義がまちまちになってしまっているので、言葉で説明というのはなかなか難しいような気はします。でも、やはり欧米の場合は、少なくとも私が見ているところでは、等級ではなくても、能力評価というものにしても、バリューとかウェイというような顧客意識だとかそういう行動意識のようなものをのけてしまうと、基本的にはそのポジション、やっている仕事にリンクしたようなものしか見ていないなとは思います。ただ、それが良いか悪いかとか、それがどう機能するかはまた違う、別の議論だとは思います。
○権丈委員 パートは、基本的に対象外というか、同じ尺度ではできないということだったと思います。それは、非正規のパートと正社員では、人材活用の仕方が異なるため、共通の尺度では論じられないということでよろしいでしょうか。関連して、パートタイム労働法では、労働時間が通常の労働者より短い者を対象にしていますが、日本ではまだ少ない、短時間正社員のような正社員であればパートタイムで働いたとしても、フルタイムの正社員と同じ尺度を用いて評価できると考えても、よろしいですか。
○山本氏 難しいですが、私も自分がどこの立ち位置に立つかによって全然違ってくる気もするのです。でも、やはり数日前ヨーロッパの連中と話していて、本当に同じ条件で同じ仕事をやっていて、ただ時間の違いだけで、それだけでその分だけの給料が違うというのは正論だよなと、とても納得しました。私自身は、そこはすごく納得感がありました。ただ、それは本当に同じウエイトの仕事、同じ条件の仕事かというところがセットなのだと思うのです。ですから、そこがセットであれば、一緒であるべきなのだと思います。ただ、それを一緒にすべきかどうかは、また別の議論だと思います。
 要は正社員とパートとで、同じ仕事を同じ条件でしていれば、時給は一緒であるべきだというのは、全くそれは正論だと思います。それは私は全然異論ないです。ただ、パートと正社員で同じ仕事を与えるのか、あるいはそこに差を、やっている業務だけではなくて、先ほどの働き方だとか、制約条件だとか、いろいろなものを付ける。その違いを付けるか付けないかというのはまた別の議論で、私もさらに勉強が必要です。
○今野座長 もう時間なのです。本当は質問したかったのですが私もちょっと我慢をして、山本さんもそうですし、前の禿さんもそうですが、長い時間、大変ありがとうございました。本当はもっと短く終わる予定だったのですが、私の責任もあって、いっぱい議論をさせていただきまして、大変勉強になりました。お二人一緒にありがとうございました。時間ですので、今日はここまでとさせていただきます。次回の日程を事務局からお願いします。
○藤原短時間・在宅労働課長補佐 次回第6回ですが、6月3日の13時から15時、場所はこの場所になっております。専用第12会議室です。よろしくお願いいたします。
○今野座長 次回はそういうことです。それでは、ありがとうございました。終わります。


(了)

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