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2010年7月30日 第5回子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議   議事録

雇用均等・児童家庭局母子保健課

○日時

平成22年7月30日(金)10:30~12:00


○場所

中央合同庁舎第7号館 共用会議室2(904号室)


○出席者

委員

柳澤座長、青山委員、今村委員、奥山委員、丸山委員、南委員

厚生労働省

宮嵜母子保健課長、森岡母子保健課長補佐、堀内母子保健課長補佐
杉上虐待防止対策室長、荒川精神・障害保健課対策官
日詰精神・障害保健課 発達障害対策専門官、北村精神障害保健課長補佐、前田医政局政策医療課長補佐(代:澤田)

○議題

1.開会
2.議題
 (1) 子どもの心の診療体制に関する調査の結果について
 (2) 子どもの心の診療拠点病院機構推進事業に対する意見について
 (3) その他
3.閉会

○配布資料

資料1どもの心の診療拠点病院機構推進事業有識者会議資料(奥山委員提出資料)
資料2子どもの心の診療体制アンケート調査結果
資料3子どもの心の診療拠点病院機構推進事業の事業内容(平成22年)
資料4子どもの心の診療拠点病院機構推進事業に対する意見の中間的な整理(案)
  
参考1「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」開催要綱
参考2母子保健医療対策等総合支援事業実施要綱(抄)
参考3子どもの心の診療拠点病院機構推進事業実施自治体一覧

○議事

○宮嵜母子保健課長
 おはようございます。定刻となりましたので、ただ今から第5回「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」を開催いたします。本日はお忙しい中、また大変暑い中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。この部屋も空調を効かせておりますけれども、大変暑くなっていますので楽にしていただければと思います。
 本日は、渋谷委員、神尾委員、齋藤委員からご欠席の連絡をいただいております。
 それでは、これからの議事進行につきましては柳澤座長にお願いいたします。よろしくお願い申し上げます。

○柳澤座長
 それでは早速ですが、議事を進めさせていただきます。本日も活発なご議論をよろしくお願い申し上げます。
 まず、本日の議題に入ります前に、事務局からお手元にお配りしております資料のご確認をお願いいたします。

○森岡母子保健課長補佐
 それでは、資料の確認をさせていただきます。お手元にお配りしております資料ですけれども、最初に議事次第の紙、次に配布資料一覧、座席図がございます。それから資料1として奥山委員から提出していただいております「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業有識者会議資料」がございます。資料2として「子どもの心の診療体制アンケート調査結果」、資料3として「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業の事業内容(平成22年)」、資料4として「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業に対する意見の中間的な整理(案)」がございます。それから、参考資料として3種類ございまして、参考1として「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」開催要綱、参考2として「母子保健医療対策等総合支援事業実施要綱(抄)」、参考3として「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業実施自治体一覧」がございます。資料の不足がございましたら、事務局までお願いいたします。
 また、委員のお手元に配布しておりますけれども、前回の会議の議事録(案)がございます。事前に各委員からご意見をいただいておりますが、再度ご確認いただきまして修正がありましたら1週間を目途に事務局までお願いいたします。これが終わりましたらホームページに公開させていただきます。
 カメラ撮影につきましては、ここまでとさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。以上でございます。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。議事録案の対応をよろしくお願い申し上げます。
 それでは、議事に入りたいと思います。前回までの会議においては、拠点病院事業を実施している都府県から、取組の具体的な状況についてご発表いただきました。また、拠点病院事業に関するアンケート調査の結果について一部ご報告がありました。本日の会議では、拠点病院事業に関するアンケート調査のうち、残りの患者調査の結果の報告と、拠点病院事業のこれまでの意見の整理について、議論を進めていきたいと思います。
 早速ですが、本日の議題の一つ目「子どもの心の診療体制に関する調査の結果について」に入りたいと思います。拠点病院事業に関するアンケート調査は自治体調査、医療機関調査、患者調査の3本立てでできておりまして、自治体調査、医療機関調査は母子保健課、患者調査は奥山委員が研究代表者を務めておられる厚生労働科学研究において進められています。
 まず、奥山委員から患者調査の結果についてご説明をお願いいたします。

○奥山委員
 ありがとうございます。では、簡単に患者調査の結果について、のお話をさせていただきたいと思います。前回、簡単にご説明させていただいたのですが、皆さまもあまり覚えていらっしゃらないと思いますので、簡単に復習させていただきます。
 まず、全国で子どもの心の専門診療のできる病院16個所にお願いいたしました。なるべく全国に散らばるようにとお願いして、こちらで調査させていただきました。病院に調査票を配付いたしまして患者に調査をお願いし、それを郵送して頂いて回収してどのような形で受診したかを調べさせていただきました。
 最初のスライドは去年の結果ですけれども、最初に何か症状に気付く年齢が平均5歳くらいです。これは全部の病気が対象です。その中の7割ぐらいの方が子どもの心の症状に気付いた時にどこに相談してよいかわからないという答えでした。そして、専門病院にたどり着いた子どもたちの8割以上の方々が教育相談、児童相談所、保健所のようなところのどこかの相談機関には相談されていて、最終的に子どもの心の専門診療が出来る病院にたどり着くまでが大体2年半ぐらいということです。たどり着いた方々に関して言うと、診療への満足度は非常に高くて生活困難度の改善も非常に良いという状況でした。今年は、本事業の評価をしようということで、平成22年1~3月に初診の患者さんだけに同じような調査をさせていただきました。専門病院受診までの時期あるいはどこに相談すればよいのか迷ったかどうかというところに焦点を当てて調査をさせていただきました。今回の分析ですけれども、受診までの期間に関してみますと、拠点病院も非拠点病院も有意差はほとんどなくて、あまり変わりないということです。ただ、症状に気付いたときにどこに相談すればよいか困ったという割合を見てみますと、は拠点病院以外のところに比べて拠点病院の方は有意に下がっていました。つまり受診先に迷わないという形になっています。ただし、気付いた時期がいつごろなのか、つまり気付いた時期が拠点病院の事業を始める前であれば拠点病院の事業の効果とは判断できないものですから、拠点病院の事業は2008年10月ぐらいから開始されていますので、気付いた時期が2008年10月以降とした場合を比較してみますと、先ほどよりもさらに69.5%~58.1%ということで有意に困らないといいますか、システムができてきてどこへ行けばよいかということが比較的すぐにわかってきている。そして、さらにそれを4月以降とした場合で見ると、さらに下がっているということで、やはり拠点病院の事業をしているところの方が啓発ができてきて、症状に気づいてから受診先に関しては、あまり困らずにわかるようになってきているということがいえるのではないかと思います。受診までの期間というのは、それほど変わっていません。結論は、症状に気付いてから専門機関を受診するまでの期間を短くするというわけではないのですけれども、症状に気づいたときにどこに相談すればよいか困っている人の割合は有意に低下していました。拠点病院事業が症状に気付いてからの円滑な相談を促している可能性があるだろうと考えられました。これが評価の部分でございます。
 もう一つは、先ほどのスライドでは全部の精神障害をまとめて最初にお示ししたので、自閉症スペクトラム障害に限ってみると、一体どのような要素があるのかということで再分析してみました。自閉症スペクトラム障害に関しては、やはり育てにくさということが出てくるということがありまして、悪循環にならないうちに早期にその傾向があるということをお伝えして、子どもにあった養育をしていくということが現在一番求められていることでございます。つまり、早期診断が重要であるということです。症状に気付いてから早期に専門病院を受診して診断を受けることが望ましいだろうという想定の下、どのような要因がその期間に影響しているかということを分析させていただきました。方法は、最初の年に調査したものに関して再分析しました。自閉症スペクトラム障害として自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群、という診断名になっていた方々だけでN数が1513ということでございます。結果は、やはり平均の症状への気付きが4.7歳ということで、これ自体が少し遅めではないかという気がします。ですから、もっと啓発が必要かと思いますけれども、68%がどこに相談すればよいかで困っているということで、これは全体とほとんど同じですけれども、90%以上の方々がまず医療機関、教育相談所、児童相談所、保健所などの相談機関に相談されています。ところがそこから子どもの専門病院受診の際、照会に拠って受診されているのが半数以下でした。半数強が紹介状なし、そして最初から自ら受診という方もおられて、紹介されてくる紹介率が少し悪いという結果でございます。症状に気付いてから専門病院で受診するまでの時間と関連する項目ですけれども、年齢が小さいほど長いというのは当たり前かもしれません。父親と同居するほど短いというのはどういう意味かよくわからないのですけれども、父親の方が専門病院好きなのかもしれないということはあります。年上のきょうだいと同居するほど短いとか、年下のきょうだいと同居するほど長い。それから、発達の遅れがあるほど短いというのは、症状に気付きやすいので当然のことだと思います。他人とのかかわりの問題があるほど長かったり、いろいろ他のことで悩むのかもしれないと思います。不登校があるとやはり受診までに時間が掛かるということがあるのかもしれません。あるいは不登校に至るほど発見が遅いのでこじれている可能性があるかもしれません。相談の困難感があるほど長いというのは当然だと思います。そのような中で最もオッズ比が高かったものは他機関を通じて特に紹介なしという方が長いです。つまり、他の機関受診を続けているが紹介されずに自ら受診するということが症状に気付いて受診するまでの期間を長引かせているという結果でした。
 関連しない項目はこのようなことです。母親・父親の学歴はあまり関連しておりません。
 結論は、自閉症スペクトラム障害の場合に、受診までの経緯として、症状に気付いたときにどこに相談してよいかわからず、近くの医療機関等に相談したが、紹介なしで専門病院を受信している場合に一番長いという結果でした。要するに相談機関に行くところまでは何とかなっているのかもしれないのですが、そこからどのように専門機関を受診するかのシステムをつくることが求められているのだろうと思います。ですから、どのような症状の場合に専門機関を受診するよう紹介すべきかというガイドラインのようなものを作成することが必要になってくるだろうと思います。それから、先ほど言いましたように、4.7歳というのは症状への気づきもやはり少し遅いのではないかと思いますので、早期の気付きを高めるということも今後は必要になってくるのではないかということが結論でございます。以上でございます。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。大変示唆に富んだ研究の結果の発表だったと思います。一つのまとまった調査の発表ですので、何かご意見・ご質問があればお聞きしておいた方が良いかと思います。いかがでしょうか。
 私から少しよろしいですか。心の問題に気付かれるのが平均5歳ということで、その時点で7割がどこに相談すればよいか困っている。その心の問題に気付くのは家族が自ら気付くのか、あるいは乳幼児健診のような場で気付くのか、あるいは他のことで小児科の外来を受診して、そこで指摘されるのか。その辺の違いはわかりますか。

○奥山委員
 それはまだ分析していないのですけれども、やはり家族が気付くことが一番多いです。平均が5歳になっているのは、もちろん小さいときに気付く方もいらっしゃるのですけれども、不登校など、もう少し大きくなられてから気付いて病院に行って発達障害といわれることもありますので、かなり年齢幅が広いということがいえると思います。

○今村委員
 よろしいですか。

○柳澤座長
 どうぞ。

○今村委員
 プリミティブな質問かもしれませんけれども、早期発見をしたときのナチュラルヒストリーと中等度以上に重症化した場合の治り具合と、そのまま見たときのナチュラルヒストリーは相当違うのですか。早期発見というは相当意義があることなのですか。

○奥山委員
 それに関してはこの研究ではないのですけれども、私どもの病院で発達障害を専門にやっておられる先生が、合併症があることでどれぐらい違うか。つまり、もともと発達障害なのですけれども、それに「うつ」や行為障害、不登校などが加わることでどのように違うかを見たのですけれども、早くに受診されている方の方が合併症が少ないです。後から受診される方の方が合併症が多い、あるいは合併症での受診が多くなるということがあるので、やはりなるべく早く見つけてあげて良いかかわりを持ってあげることで合併症を防ぐということが発達障害の場合は非常に重要だと考えられていると思います。

○今村委員
 要するに早ければ早いほど、診断することに意義があると考えて良いわけですね。

○奥山委員
 はい。どうしても行動が理解できないと親の養育ということも、症状であるにもかかわらずそれに対して叱るとか怒るということが繰り返されてしまって悪循環になってみたり、あるいは症状に気付かれないで学校に行っていじめに遭うというようなことで合併症が発症することが結構ありますので、やはりなるべく早く見つけてその子どもに合った養育をしてあげることが、残念ながら今病気を何らかの形で治せない状況にあっては、社会適応を促すという意味ではそこが一番重要なところだと思います。

○今村委員
 わかりました。

○柳澤座長
 ありがとうございました。
 どうぞ。

○南委員
 単なる書き方の問題だと思いますけれども、一般にこの資料が出たときに、やはり「発症」という言葉で平均5歳や4.7歳というと、少し誤解を招かないかと気になるのです。恐らく「気付き」とか「問題の顕在化」などの表現の方が良いのではないかと思います。

○奥山委員
 ありがとうございます。そのとおりだと思います。

○柳澤座長
 おっしゃるとおりだと思います。他にございますか。
 それでは、奥山委員の発表はこれでひとまず置いて、前回の会議で自治体調査、医療機関調査について、そのときにすべてのモデル事業の都道府県からのデータがそろっていなかったということがあって、すべてのアンケート調査を回収、集計した結果を報告するようにという意見がありました。先に回収後の集計結果について、母子保健課から説明した後に、もう一度質疑・応答の機会をとりたいと思います。母子保健課から集計結果について説明をお願いいたします。

○森岡母子保健課長補佐
 それでは、子どもの心の診療体制アンケート調査結果ということで前回ご説明したのですけれども、未提出の自治体があったということで、提出分を合わせて集計いたしましたので、簡単にご紹介いたします。
 資料2に沿って説明いたします。資料2-?からです。全都道府県を対象としたアンケート調査結果ですけれども、二つの県から提出がありました。一つは拠点病院事業を実施している自治体、もう一つは実施していない自治体でありました。結果は、医療計画に診療体制確保に関する記述があるかというところは、大体30%弱のところで何らかの医療計画等の記述があるということでございます。次に2ページ目ですけれども、子どもの心の診療を必要とする小児の入院治療機能を持つ医療機関ですけれども、47自治体中31の自治体で医療機関があると答えておりました。病院の種類は総合病院が、そのうちの半分ぐらい、精神科単科病院が大体27%(4分の1)となっています。病院の開設者は、その他の公立病院、私立病院が大体3分の1弱ずつとなっています。子どもの心の診療に専従する医師ですけれども、「いない」と答えているところがやはり多くて58%、「いる」と答えているところが42%、「いる」と答えている自治体の医師の数は平均5人弱という状況になっておりました。3ページ目からがそれぞれの診療連携、医療従事者、医師の研修事業、それから普及啓発・情報提供事業に沿ってそれぞれ事業を実施しているかどうか全都道府県に聞いておりますが、ここについては実施自治体の方が事業を実施していない自治体の方が割合としては、行っている割合が多くなっています。
 主なところですけれども、6ページ目ですが子どもの心の診療体制を整備することを困難にしているものは何だと考えますかというところでは、子どもの心の診療に携わる専門医が不足していると答える自治体が非常に多く23自治体という結果になっています。
 次に、資料2-?ですが、実施自治体に事業の内容について問い合わせをしております。ここも二つの県から回答がありました。山梨県は、この事業を開始したのが2009年10月からということで、このアンケート調査では2009年9月以前の事項について聞いていますので実績なしということになっております。診療連携の状況ですけれども、医療機関から相談を受けた件数については1年間で大体16件弱ということになっております。医療機関以外の保健福祉関係機関から相談を受けた件数は1年間で85件程度となっております。次の8ページですけれども、連携会議を開催した回数は1年間で大体28回となっております。診療関係者研修事業ですけれども、内容につきましては8~9ページに記載しているとおりでございます。普及啓発・情報提供事業の実施体制は9ページから書いてまして、ホームページを作成している自治体は11自治体のうち8自治体でした。ポスターについては6自治体、リーフレットを作成し配布している自治体が8自治体という状況になっています。
 次に、資料2-?です。ここからは拠点病院の方の調査結果について記載しております。ここについては、1県から提出がありまして、これを加えてカウントしております。診療拠点病院の体制ですけれども、病床数については36床ぐらい。精神科の常勤医師数については小児科よりも多くて7.5人ぐらい。小児科の常勤医師数は4.5人ぐらい。平均ですけれどもこのような状況になっております。小児の心の診療に従事している常勤医師数については平均で4人余りという状況になります。12ページに進みまして、診療拠点病院の診療実態についてというところですが、紹介率が平均で48%ぐらい、逆紹介率が平均で18%弱という状況になっておりました。13ページにまいりまして、後期研修医の採用の状況ですけれども、ここも11自治体のうち2自治体ということで、少し低くなっておりました。簡単には以上でございます。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。これは大部分のところは前回の会議でも報告いただいたところですが、全都道府県についての実態調査、それから事業を実施している自治体についての調査、そして事業を実施している自治体の拠点病院を対象にした調査ということを全体にわたってご説明いただいたところですが、今の説明と先ほどの奥山委員からのご報告の全体を合わせて何かご意見・ご質問がございましたらお願いします。

○今村委員
 よろしいですか。

○柳澤座長
 どうぞ。

○今村委員
 前回もお尋ねしたかもしれませんけれども、やはり子どもの心の診療体制が非常に不備だということの大きな原因は専門医の不足であると指摘されています。これが断然多いということですけれども、それでは専門医というのが結局のところどれぐらい必要なのかということと、専門医を養成するというのは自治体も頑張っておられるようですし、恐らく学会としても専門医会としても努力しておられると思いますけれども、その養成というものについて、行政と学会あるいは専門医の方々はどのようにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。ただ今の今村委員からのご質問に対して事務局あるいは奥山委員からそれぞれお願いします。

○森岡母子保健課長補佐
 事務局からですけれども、平成19年3月に子どもの心の診療医の養成に関する検討会報告書というものを出しておりまして、そのときに専門医の数を集計しております。子どもの心の診療に専門的に携わる医師、ピラミッドの先端の部分になると理解していただければと思いますけれども、その数が大体70人弱ということになっています。その次に子どもの心の診療を定期的に行っている小児科医は、ピラミッドの真ん中の部分ですけれども約1,500人。そのような状況になっております。ここについては地域別で集計をしているわけではありませんので、不足の状況というものがなかなか見えにくくなっているとは思っています。今回、アンケート調査をしたのですけれども、子どもの心の診療に専従する医師がいますかという質問を入院機能がある医療機関に聞くと、大体5人弱ということ。いると答えているのが大体50%弱で、しかもいる数が5人弱ということで、やはり全体的に見ても全国的に見てもかなり不足している状況が示唆されていると思っています。今後は地域別に患者の発生の状況などと併せて細かく医師の不足数を分析していく必要があると思っておりまして、そこについては母子保健課と、それから関係学会の意見を聞きながら研究のデザインとしてどういうものが適当かを今後、検討していきたいと思っています。

○柳澤座長
 今、報告いただいたのは平成17、18年当時の検討会での、集計の数、それからまた、ただ今のアンケートの結果、そういうことを踏まえての現場の数ですけれども、今村委員が尋ねられたのは望ましいというか、どれぐらいのところを目標として設定すべきなのかと、そういうことかと受け取りました。そういった点も含めて、奥山委員どうですか。

○奥山委員
 実はその委員会においてもどれぐらい必要なのかとさんざん言われたのですけれども、実際は非常に難しいのです。なぜかといいますと、例えば発症率だけで見ればADHDだけでも5%ですから、ものすごい数の子どもが発症しているので、その全部に専門医がお付き合いするとなると小児科医の数と同じぐらいいないとどうしようもないということになります。ただ、とてもそこまでを目標値にしたら、対応しきれないと思っております。だからこそ、このシステムをつくって、軽いうちには保健師でも対応ができる。しかし重症になってくる場合、あるいは的確な診断を付けるに当たっては専門医が必要であろうということになるのですけれども、ではどれぐらい必要かというのが、システムもできていない中でどれぐらい必要かというのがなかなか難しいということになると思います。単に病院ということだけでいえば、数百人の専門医がいればシステムが整い、何とか病院にだけ専門医がいればよいということであれば行くのではないか。それにも全然到達していないので、まずはとにかくシステムをつくる、増やしてみることをやってみて考えようというのが、そのときの考え方だったと思います。

○柳澤座長
 先ほどの三角形のてっぺん部分の専ら子どもの心の診療に従事している、特に専門的な病院で入院治療に従事している医師が現状では70人ぐらい。それが必要数としては、今、奥山委員が言われたような数百人というレベルという印象を持っているということだろうと思います。

○今村委員
 ほとんどの診療科において、専門医の不足はいわれているのです。だからこそ、コメディカルとの協力といいますか、そういうものが必要だと思う。とても子どもの心の診療の専門医を何百人のレベルで、あるいは何千人のレベルでやっていくのは不可能ですから、そこのところは、システムをきちんとして他の医療関係者との協力がどうしても不可欠になってくると思います。そのためには、やはりしっかりした数が出てこなければいけないのではないかと考えています。

○柳澤座長
 ありがとうございました。他にございますでしょうか。よろしいでしょうか。宮嵜母子保健課長、どうぞ。

○宮嵜母子保健課長
 先ほどの奥山委員の発表の中で、教えていただければと思ったのですけれど。拠点病院事業を始めるようになってから、どこに相談すればよいかで困っている人の割合は有意に下がっているのではないかということで、一定の意味があるのではないかというご指摘がありました。それに関連して、一般的に考えると、そのように困る人が減っているということは、専門医療機関に行き着く時間も短くなるのではないかと思っていたのですけれども、そちらの方はあまり短くなる効果がなかったという内容だったと思います。まだ、いろいろ調査しなければわからないことも多いと思いますけれども、今の時点で奥山委員はどういうことが要素として考えられるか、あれば教えていただければと思います。

○奥山委員
 これは研究班でもかなりディスカッションしたのですけれども、平均2.4年が長過ぎると見るべきなのか、ちょうどよいと見るべきなのかという意見はあったのです。ただ、実際に紹介されてきちんと来ることが重要だと思いますけれども、ここでは紹介されないで自分で困って行く方が多いところが、まだ問題だろうと思っています。ですから、内容を見てみないといけない。同じ長さであっても、どういう形でその時間になっているのかを、もう少し細かく見ていかなければならないだろうというのが一つです。
 もう一つは、拠点病院事業が始まってまだ1年余りの段階での調査ですので、そこまで有効に働いている形になっていない可能性はあります。つまり、事業以前に気付いた方が今受診していることが多いわけですから、もう少し先まで見ていく必要があると思います。今年も同じ調査をする予定になっていますので、それを見てどれぐらい変化があるかどうかを見なければならないし、先ほど言いました同じ2.4年でも、紹介されて行っているのかどうか、そこを注目しなければいけないと今は思っております。
 ついでに、意見ですけれども、12ページに示していただいたものでも、先ほど今村委員からもおっしゃっていただきましたように、専門医が非常に少ないということは有効活用が必要なわけで、そうだとすると、やはり紹介率と逆紹介率が上がらないと有効活用にならないと思います。それが紹介率が50%を切っていることと、逆紹介率はさらに非常に少ないということですので、やはりここはもう少し整備していかなければいけないと感じてお話を伺いました。

○柳澤座長
 よろしいでしょうか。
 それでは、次の議題に進みたいと思います。議題の二つ目「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業に対する意見について」に入りたいと思います。まず、事務局から拠点病院事業の平成22年の実施状況、また、子どもの心の診療等の普及啓発についてご説明いただいて、その上で意見の取りまとめに向けて拠点病院事業の現状の確認をしたいと思います。それでは、事務局から説明をお願いします。

○森岡母子保健課長補佐
 それでは資料3に沿って説明をしていきます。資料3は、母子保健医療対策等総合支援事業というものがあるのですけれども、その補助金の申請のときに母子保健課に各自治体から平成22年の拠点病院事業の計画について提出があったものを集めたものです。平成21年は11の自治体ですけれども、平成22年から一つの自治体が補助金は利用しないということで、10自治体分の記載をしております。1ページ目から簡単に説明をしていきます。東京都の事業内容ですけれども、拠点病院が都立小児総合医療センター、旧梅ヶ丘病院になります。内容の書いてある様式ですけれども、それぞれ診療支援事業、研修事業、普及啓発・情報提供事業という3種類の事業があり、その三つに分けて記載しております。簡単に東京都の内容について説明していきますと、診療支援事業ですが、特に都内の医療従事者を招いて連絡会を開催したり、児童相談所と定期の連絡会を開催しているということです。研修事業ですけれども、医療機関向けの研修講座を開催しておりますし、保育機関向けの研修講座についても開催しているということでした。また、幼稚園や保育所の職員の実習を受入れたりしているとの記載がございます。普及啓発・情報提供事業ですけれども、ホームページで情報提供するとともに、都民向けにシンポジウムも年1回開催しているということでした。
 次に2ページ目ですけれども、神奈川県立こども医療センターを中心とした神奈川県の拠点病院事業の内容について説明していきます。診療支援事業ですけれども、ここについては地域の医療機関から受診相談を電話で受けている。それから、チームで出張して医学支援を医療機関、関係機関に行っている。これは年間50回ぐらい出張しているということでした。多職種で連携の会議も開いて、検討事例が生じた場合はその検討を行っているということで、年間13回の連携会議を開催しています。研修事業ですけれども、医師を対象とした研修会、保健福祉教育関係者を対象とした研修会を開催しております。普及啓発事業については、公開講座を開催したり、関係機関向けにホームページを利用して事業内容の情報提供をしております。
 3ページ目ですけれども、山梨県の拠点病院事業の内容についてご紹介します。拠点病院は山梨県立北病院・精神保健福祉センター・中央児童相談所が三つで拠点病院を形成しております。診療支援事業ですけれども、関係機関と支援連携会議を開いているとか、支援関係者によるで合同の事例の検討会を開催しているということでありました。研修事業については、児童精神科医のスキルアップ研修を行ったり、県立北病院に後期の臨床研修医が2名いるのですけれども、その指導を行っています。また、子どもの心の診療関係者への専門研修を実施したり、医療従事者以外の保育士、教員等への研修も行っているということでした。普及啓発事業については、心の問題に関する情報をホームページに掲載したり、シンポジウムを年1回開催しているという状況でございます。
 4ページ目ですけれども、石川県の拠点病院事業の内容についてご紹介します。拠点病院ですけれども、ここも複数で形成しておりまして、金沢大学附属病院子どものこころの診療科、独立行政法人国立病院機構医王病院、石川県立高松病院の三つで拠点病院を形成しています。診療支援事業ですけれども、特に相談窓口の機能の強化を図っているということで、相談窓口を開いて保健部門、教育部門、福祉部門の相談に対して専門的な助言を実施しているということでした。また、適切な機関へつなぐコーディネート機能についても確立を図っているということでした。また、地域の医療機関から寄せられる困難事例に対して診療支援・助言指導も行っているということです。研修事業につきましては、高度な専門機関へ派遣して研修を行っているということで、国立成育医療センターなどに派遣を行っているということです。また、自助グループの実践者の研修会を開いたり、派遣研修を行っているということでした。普及啓発事業ですけれども、啓発リーフレットを作成し、適宜更新しているという状況でございます。
 次に5ページ目ですけれども、静岡県の拠点病院事業の内容についてご紹介します。拠点病院は静岡県立こども病院です。診療支援事業については、地域の医療機関からの相談を受けた事例に対して診療支援を行うとか、地域の保健福祉関係機関から受けた相談について医学的な支援を行っているということでした。また保健所や児童相談所、福祉施設、教育委員会等の多機関が参加した連携会議を開催しているということです。診療関係者の研修事業ですけれども、ここも先進的・専門的医療機関へ派遣をしている。また、そちらから講師を招いて研修を実施しているという状況でした。また、医療従事者以外に保健福祉関係機関等の職員に対する講習会も実施しています。普及啓発・情報提供事業ですけれども、ホームページを利用して情報を提供している。また、チラシを作成して関係機関へモデル事業の内容についての周知を図っているということです。
 6ページにまいりまして、三重県の事業の内容について説明いたします。拠点病院ですけれども、三重県立小児心療センターあすなろ学園が拠点病院として挙がっています。診療支援事業ですけれども、児童相談所へ医師を派遣したり、児童自立支援施設、特別支援学校に医師を派遣したりしています。また、一部の県内の地域でのサテライト診療を実施しているということです。研修事業ですけれども、小児科医師や精神科医師に対する研修を実施したり、教員・幼稚園教諭・保育士に対する研修会を実施したりしているという状況です。普及啓発事業についてはシンポジウムを開催しているということでした。
 7ページの大阪府の事業の内容についてご紹介します。拠点病院は大阪府立精神医療センター松心園です。診療支援事業としては、児童相談所、学校教師等のカンファレンスを実施しているということでした。研修事業については、講演会を開催しておりまして、年間5回ですが教育委員会と共催で講演会を実施して研修を実施しているという状況です。普及啓発の内容については事業報告書を作成しているということでした。
 次に8ページ目ですけれども、鳥取県の事業の内容についてご紹介します。拠点病院は鳥取大学医学部附属病院です。診療支援事業については、地域の保健福祉関係機関の支援ネットワークの構築に努めているということです。また、事例検討会も開いていて、医師や臨床心理士が児童福祉施設に出向いて事例検討会を開催しているということでした。研修事業については、医師に対する研修・養成など。今後は子どもの心の診療医育成後期研修コースの設置を検討しているということです。また、保健師や保育士によるペアレントトレーニングができるように指導者養成もしていくということです。普及啓発事業ですけれども、市民フォーラムを開催したり、ホームページを作成したり、リーフレットを作成して配布しているという状況です。
 9ページ目ですけれども、長崎県の事業の内容についてご紹介をいたします。拠点病院は長崎大学病院、長崎県立こども医療福祉センター、長崎県精神医療センター、カメリア大村共立病院という四つの機関から拠点病院を形成している状況です。診療支援事業については、拠点病院群の職員の研修を行ったり調査研究を拠点病院群の中で行っているという状況です。研修事業については研修会を開催しておりまして、医療関係者や教育・行政職員、地域のケアワーカーを招いて研修会を開催しているという状況です。また、研修医の研修についても取り組んでおりまして、長崎大学病院の研修にリンクした子どもの心の診療医の養成を行っていくということです。普及啓発については啓発パンフレットを作成して配布したりホームページを更新したりしているという状況です。
 次に10ページ目です。佐賀県の事業の内容についてご紹介します。拠点病院については国立病院機構肥前精神医療センターが拠点病院となっております。診療支援事業については相談窓口を医療センターに開設したり、虐待等を受けた子どもの一時保護委託入院を実施したりしています。また、児童相談所や学校から紹介された児童を外来診療料で受け入れたりしている状況です。また、発達障害支援センターやNPO、佐賀大学小児科と連携した診療支援を行っているということでした。研修事業については、一般開業医を対象にしたレベルアップの研修を行ったり、小児科・精神科医療を経験した医師に対して2年程度の実地研修を実施して専門性の向上を図ったりしているということです。また、医師以外にも保健師、保育士、教員等に対して実地研修を実施しているということでした。普及啓発の状況については、シンポジウムを開いて普及啓発に努めているという状況です。以上でございます。

○柳澤座長
 ありがとうございました。平成22年度の推進事業を実施している10の都府県における事業内容を今それぞれご説明いただいたわけですが、何かご意見・ご質問がございますでしょうか。昨年度までは11の都府県でしたけれども、そこから岡山県が抜けたということで、10の都府県。

○今村委員
 よろしいでしょうか。

○柳澤座長
 どうぞ。

○今村委員
 少し視点は違うのですけれども、この診療科の収支状況はどうなのでしょう。多分この診療内容からして赤字ということになるのではないだろうかと思います。民間の法人があまり参入していないところをみると、多分そうなのだろうと思います。自治体病院なり国立病院なり大学病院がやっているところですけれども、それぞれが今は全部独立採算のような感じでなかなか税を注ぎ込んでやろうということにならないし、事業をすればするほど赤字が拡大するということになれば、子どもの心の診療は非常に大事なのに、インセンティブが湧かないという状況になるので、そこのところがどういう状況になっているのか。

○柳澤座長
 今の今村委員からのご質問について、事務局から何かありますか。

○森岡母子保健課長補佐
 診療科の収支状況については、この事業とは別に診療報酬などの部分で手当てをしていく必要があるのではないかと考えています。この3月の改定で、子どもの心の関係の診療報酬については、十分ではないかもしれませんが加算が付いたと聞いております。ただ、その詳しい内容は持ち合わせていないので、ここではご紹介が難しいです。

○今村委員
 診療報酬だけでは多分対応できないと思います。やはり、ある意味の補助事業というか、こういうものをやっていかなければこの事業の充実は恐らくできないと思います。財政的に決まった枠がある中で、ここにだけ重点的に診療報酬を配分することは多分非常に難しいことだと思います。やはり行政全体の理解あるいは逆に言うと国民全体の理解が必要だろうと思います。

○柳澤座長
 この事業を現在実施している10の自治体に対しては、支援事業としての予算がなにがしか付いているわけですけれども、これを全国的な制度としていく。今、今村委員がおっしゃったようなことが非常に重要になってくると思います。奥山委員いかがでしょうか。

○奥山委員
 おっしゃるとおり、診療報酬としても赤字は赤字です。ただ、先ほど出てきたように、多少診療報酬としても改定はしていっているのですけれども、全然追いつかない、焼け石に水という部分もあると思います。かつて、だいぶ前ですけれども、良いところで40円稼ぐのに100円かかるという状況だといわれていたので、今は少し良くなったとしても少し良くなった程度です。それに加えて、子どもの精神的な問題を預るときに、やはり発達させるということが必要になってきますので、保育士など、そこに必要なコメディカルの方々が非常に多いのが一つ。それから、非常に重症な小学校の高学年から中学校ぐらいの思春期の子どもになってきますと、かなり行動化が激しいものですから、それに対応する設備も必要になってくるということになります。例えばある病院で、そういう方々を私立の精神科の医師が受け入れようとなって受け入れたときにはもうボロボロになってしまうとか、そういったことも聞いておりますので、やはりその方面での設備等も必要になってくる。ということで、今村委員がおっしゃったように、かなり特殊な面は多いのではないか思います。

○柳澤座長
 それから、この事業の中で研修に関するところ、研修事業というのは非常に重要な部分だと思いますけれども、その中で特に専門的な医師を養成するという観点で後期研修やレジデント研修がこの中にもところどころ出てきますが、初期臨床研修の後の小児科あるいは精神科の専門研修、これは通常3年間やっているわけです。ここで言っているのは、それに加えて数年間、さらにサブスペシャリティとしての専門研修ということなのかどうか、もし情報があれば、その辺のところを。

○森岡母子保健課長補佐
 この事業の内容を読む限りでは、ここはそういう後期の臨床研修医の部分の受入れのところを担当していて、それより上の専門の部分まではまだ対応しきれていないのではないかと思っています。

○奥山委員
 少しお話を伺った範囲で言うと、例えば静岡県などはどちらかというと精神科の研修を終わった方がさらに研修するところで、実はここに研修として挙がってはいないのですけれども、この事業をやるということで研修医を少し増やしたりされているようです。非常に特殊な形といいますか、独創的なのは、長崎県の方々が小児科と精神科を研修し、児童精神科を研修できるような、その三つを同時に研修できるようなプログラムを立ち上げてくださっているとか、いろいろな工夫がなされていると思います。

○柳澤座長
 これは個人的な意見ですけれども、そういう専門の医師を養成していく上では、今奥山委員が言われたようなコースが各地で、あるいは制度的に整備されていくことは非常に重要ではないかと思います。他に、ございませんでしょうか。
 それでは、先に進みたいと思います。前回の会議で事務局から説明がありましたように、拠点病院事業は平成22年度末まで続くということで、現時点での事業に対する意見をここで整理しておきたいということのようです。それについて、事務局から資料4を基に説明をお願いいたします。

○森岡母子保健課長補佐
 それでは事務局から資料4に沿って説明をしていきます。これまでに推進事業に対して意見をいただいておりますけれども、ここではその中間的な整理をさせていただきたいと思っています。資料4の内容について読み上げさせていただきます。

(1) 平成20年度から平成22年度までの予定で開始された「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業」(以下、「推進事業」という。)について、助言、評価等を実施するために設置された、子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」では、子どもの心の診療体制整備の状況について、推進事業を実施している11の都府県からの聴き取りや都道府県等に対するアンケート調査(平成21年11月~平成22年1月)を実施し、厚生労働科学研究奥山班(『子どもの心の診療に関する診療体制確保、専門的人材育成に関する研究、平成20年度~)の協力を得て、推進事業の評価について検討した。
(2) 推進事業を実施している自治体からの聴き取り調査では、それぞれの自治体にお
いて拠点医療機関を中心として、地域の医療機関の診療支援や福祉・教育機関への専門医師の派遣等の診療連携の実施、開業小児科医や開業精神科医、医療従事者等に対する研修や講習会の実施、一般住民が参加できる講演会の開催や、子どもの心の診療に関するパンフレット等の作成による普及啓発を進めていることが紹介された。
(3) アンケート調査の結果からは、推進事業を実施している自治体では、実施してい
ない自治体と比べて、子どもの心の問題についての診療支援体制整備や保健・福祉関係機関との連携会議の開催等の支援体制の整備、ポスター等を使用した普及啓発が進んでいることが判明した。
(4) 奥山班が実施した患者の保護者に対する調査では、推進事業の実施前後および実
施有無で比べたところ、症状に気付いたときにどこに相談してよいか困った患者の割合は、推進事業を実施している自治体において、実施前と比べて実施後で減少していることが判明した。また、拠点病院を受診するまでの期間については顕著な変化が見られなかったが、詳細な要因等を含めた調査の実施を検討する必要がある。
(5) 有識者会議に提示されたこれまでの結果から、推進事業は、地域の診療連携や地域の診療関係者の研修等による地域の子どもの心の診療体制整備に寄与するとともに、患者の相談すべき医療機関等について適切な情報提供が行われていることが推測される等、地域の子どもの心の診療体制の構築のために重要な役割を果たしていると推測される。
(6) 従って、地域の子どもの心の診療体制が構築され、安定してその機能を発揮できるよう、全ての都道府県で効果的に推進事業を実施できるような仕組みの導入を検討すべきであり、自治体は、この仕組みを活用して積極的に、子どもの心の診療体制の構築、維持に努めるべきである。
(7) なお、推進事業を全国的に実施する際には、関係学会・団体等による専門医師育成の取組と連携して推進していくことが必要である。

 以上です。

○柳澤座長
 この有識者会議における議論を現時点でといいますか、中間的にこのように箇条書きで(7)までに取りまとめていただいたということですが、この内容について、ご意見いかがでしょうか。
 これを現時点で有識者会議として発表するということに、どのような意義があるのかということも少し説明していただいた方が良いと思いますが、どうでしょうか。

○森岡課長補佐
 この拠点病院事業は今年度末までのモデル事業ということになっております。それで、今後どういう事業を継続するとか、そういうことが考えられると思いますが、そういうところの予算的な部分について、この意見を踏まえて検討していきたいというのが事務局側の事情でございます。

○柳澤座長
 箇条書きに記されている取りまとめについて、何かお気付きの点などがありましたら、どうぞ。

○青山委員
 私は学校ですけれど、特に先ほどの発表の中で発達障害について約5%ぐらいの子どもに見られるということがあったと思いますが、確かに学校においては発達障害かなとに思われる子どもがいるわけです。既にその子どもたちは保育園や幼稚園でも「もしかしたら、そうかもしれない」ということで引き継がれて、学校の方でも行動を見ていて「やはり、そうかな」と思っていても、その子どもたちを医療機関に診せることが非常に難しいわけです。
 例えば医療機関にやっと診せたとしても、今度は医療機関がもしかしたらこれは異常かもしれないし異常ではないかもしれないということで、その後の診療が中断されることもあるわけです。そうすると、やはりドクターに対しての研修も大事だと思うし、それからなかなか医療機関まで行かないたくさんの子どもたちをどう救っていくかということも大事な問題なのではないかと思います。
 それで、これが中間的な整理ということでありましたが、私は特に(6)については非常にこの診療体制の構築は、どの都道府県でもやっていただけるようなことも大事ではないかと思います。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。学校の立場で、特に(6)に書かれていることが非常に重要な意味があると。ぜひ、これを全国的なものにしていっていただきたいというご意見だったと思いますが、どうでしょうか。

○丸山委員
 今村委員の質問に先ほど奥山委員がお答えになったいわゆるADHDが5%と。それで我々児童相談所から見て、いわゆる親から分離して保護所で診断をするという段階で医学的な診断、心理学的な診断をする中で、やはりかなりADHD樣症状、いわゆる衝動性、それから注意障害という子どもがかなり多い。これは私どものドクターも今年の春アメリカへ行ってきて、やはり就学前に早期発見をして、いわゆる早期に医療移行することの評価というものはアメリカでは出始めてきているということからすると、奥山委員の最後のクロージングのところのASDのところにいわゆる早期診断における早期発見という部分での母子保健事業、いわゆる3歳児健診というようなものが、かなり必要になってくるのではないか。その段階で早期発見をして、まさにそこからどうつなげるかという難しさはあるにしても、何はともあれ早期発見をする。これは保護者が気付くというよりも逆に言えば保護者が加害者の場合もございますので、そういう部分での子どもの早期発見をするということはやはり、かなり必要であろうと思います。そのための母子保健事業の必要性が出てくるだろうと思います。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。南委員からもございますか。

○南委員
 全体的に非常に手堅く書かれているのですが、やはり進めている県とそうでない県の差を明瞭にするということは、データベースでは、(3)の実施していない自治体と比べたらこのようなことがあるというくらいに書くにとどまってしまうと思います。全県でやるべきことなのですから、それをもう一歩踏み込んで書いた方が良いと思います。そうしないと、事業仕分けなどで切られてしまう可能性もある。先ほど今村委員もおっしゃいましたが専門医がどの領域でも必要なのだと明言しないと。医療は誰にでも必要なので、なぜこの分野だけ、という不毛な議論になっていってしまう可能性があります。少子化対策が大事だといわれている中で喫緊のことであり、子どもにとっての1年、2年は発達の過程では大変長い時間なわけですから、3年モデル事業をやっている県がある一方、やっていない県で育ってしまう子どももあるという危機感を持った書きぶりにした方が良いのではないかと思いました。

○柳澤座長
 この中間的に整理を書くという場合の書きぶりというものについてのご意見をいただいたところです。今村委員どうぞ。

○今村委員
 今後どうやっていくかということについて、(6)と(7)ということになろうかと思います。自治体の取組は非常に当然重要ですが、私ども日本医師会の立場としてといいますか、この事業というものを(7)に書いてありますように学会や専門医団体と一緒になって専門の医師を養成していくということが具体的な、あるいは実現可能なやり方だろうと思います。ですから、専門医は全国で70人ぐらいしかいないということで、その先生方をずっと活用しながら専門の医師を養成していかなければならないとなると、今後の推進の事業は専門の医師の不足を解消するということが一番大事であると結論されているわけですから、ではこの現実に踏まえて、次の2年間あるいは3年間にどのような取組方をすれば良いのかということを、ぜひ次の検討課題にしていただきたいと思います。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。他に、何かございますでしょうか。
 これをどのように修正する必要性があるか、あるいは書きぶりといったことに関して、何かご意見があればぜひ承りたいと思います。またはこういったことも追加してもらいたいというようなこともありましたら、お願いしたいと思います。
 よろしいでしょうか。表現などに関して修正する必要があると思われる部分につきましては、私と事務局で協議の上、整理し、また委員に情報提供することにしたいと思います。それでよろしいでしょうか。何か、他にございますか。
 それでは、そういうことで最終的な取りまとめにしたいと思います。
 現在の事業は今年度限り、今年度末までということで、その最終的な報告というものも作られ、そしてこれは中間的な報告ということでよろしいでしょうか。

○森岡母子保健課長補佐
 今まで発表していただいた内容をまとめて、今後の参考になるようなものをまとめたいと思っています。

○柳澤座長
 よろしいでしょうか。
 まだ時間もありますので、他に何かございますでしょうか。

○南委員
 先ほど少し言い落としたのですが、これに先立つ検討会で先ほど奥山委員もおっしゃいましたように、一体どれぐらいの人数の医師が必要なのかという議論を重ねました。その概略が示されれば、と思います。
 今、専門医の不足も自治体ごとには深刻ですが、それと同時にやはり最初に医師にかかるのが4歳、5歳では遅すぎるということが問題なわけです。いかに早期に介入できるか、先ほど丸山委員もおっしゃいましたが、やはり育児という親と子が密室状態にいるところにいかに社会が介入できるか、先ほどの教育の話もありましたが、学校がどの程度、「強制力」という言葉はあまり使いたくないのですが、専門の医師に診せた方がいいですよと助言できるかというところが実は大問題なのではないのでしょうか。だとすると、早期発見を促してシステムに乗せる重要性を、やはりもう少し政治にもわかってわかっていただかないといけないのではないかと思います。

○柳澤座長
 ただ今、南委員から非常に重要なご指摘、ご意見をいただいたと思います。そういうことも最終的な報告には、ぜひ加えていかないといけないと思います。

○奥山委員
 今の南委員のお話に関してと、先ほどの青山委員のお話に関してですが、拠点病院の事業をやっておられる皆さまがやってくださったことを聞くと、結構出前をやっておられるのです。例えば学校への出前であったり、養護施設や社会的養護の方々への出前ができることによって、こうすれば自分たちも対応できるのだという部分が広がったり、あるいは逆にこうなったら本当に病院へ連れて行かなければいけないのだということが例えば施設の方々に伝わったり。それが養護施設などの施設の中にいるとわからない部分があるわけです。それをどう見たらよいのかというのが伝わる部分が結構大きかったように思います。
 ですから、この事業の一つの成果としてはそういう部分もあるのではないかと思います。単に「待ち」の医療だけで、おっしゃるとおり誰かが気が付いたら来るのを待つというだけではなく、保健や教育・福祉に入り込んでいくことによって、そこを変えていくというようなこともこの事業の一つの成果ではないかと思います。

○柳澤座長
 どうもありがとうございました。
 青山委員、どうぞ。

○青山委員
 今、介入ということがありましたが、学校が医療機関に受診するように話をするのは非常に難しいのです。保護者との関係がまずくなることもあるのですけれど、もちろん学校的にやることもあるのですが、その前にもしかしたら出ているわけですから、3歳児健診などでわかったら、その辺りからやっていってもらえたら良いと思います。行政から入った方が保護者の方は納得するということはあると思います。やはり学校に入ってからとなりますと、「今まで何ともなく普通に生活できたのに、なぜ今さら」ということと「自分の子を異常とするのか」ということもありますので、やはり早く発見して早く医療機関に乗せることが大事なことではないかと思います。

○柳澤座長
 ありがとうございました。他に、何かありますでしょうか。
 それでは、これで今日のご議論は終わることにして、事務局から今後の予定等についてご説明いただきたいと思います。

○森岡母子保健課長補佐
 次回の第6回の会議については年度内の開催を予定しております。追って委員の皆さま方の日程調整をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

○柳澤座長
 それでは、本日は大変活発なご議論をいただきましてありがとうございました。少し時間を残してしまった点が私としては残念ですが、これで今日の有識者会議を終わることにいたしまして、事務局にお返ししたいと思います。どうもありがとうございました。課長、何かありましたら、どうぞ。

○宮嵜母子保健課長
 本日は大変活発にご議論いただきましてありがとうございました。3年間のモデル事業ですので、今年度末までにこの事業の評価という一定の形を出していくというのは当然のことですが、ただ、それが出てから平成23年度はどうしようかという話だと、少し行政の予算の仕組みや流れだと間に合わないというかタイミングがずれる部分があるので、先生方お忙しいところ恐縮ですが、この時期にある程度、現時点で今後どう考えたらよいかというご意見をいただけたらということで今日は資料4を中心にご議論いただきました。
 健診等の母子保健事業なども活用しての早期発見のための取組をもっと強調した方が良いのではないか。あるいは全国でやるべきとは書いてあるが、もっと喫緊の課題であるということを強調した方が良いのではないか。あるいは今後こうやっていくとは書いてあるが、この2~3年で具体的にどういったことをやっていった方が良いかというものを書いた方が良いなど、いろいろとご意見をいただきました。この時点で書き込めることと最終的に3年間の最後のところで書き込むところは先ほどありましたが座長とご相談させていただいて、この事業を今年度しっかりと進めていきたいと思いますし、将来に発展させていく方向で検討していけたらと思っていますので、引き続きご指導賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。今日は本当にありがとうございました。


(了)
<照会先>

雇用均等・児童家庭局母子保健課

母子保健係: (内線7938)

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