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2011年5月30日 「生活保護制度に関する国と地方の協議」議事録

社会・援護局

○日時

平成23年5月30日(月)17:00~17:45


○場所

厚生労働省12階専用第15会議室


○出席者

【厚生労働省】

細川厚生労働大臣
大塚厚生労働副大臣
岡本厚生労働大臣政務官

【地方代表】

石川県知事
大阪市長
広島県坂町長

○議題

生活保護制度について

○議事

○清水社会・援護局長 定刻となりましたので、ただいまから「生活保護制度に関する国と地方の協議」の場を開催いたします。私、社会・援護局長の清水でございます。
 本日は、大変お忙しい中、皆様方にお集まりいただきましてありがとうございます。お願いでございますが、本日の終了は5時45分となってございます。効率的な会議運営に御協力を賜ればと思ってございます。
 それでは、本日の出席者を御紹介させていただきます。まず、谷本石川県知事でいらっしゃいます。
○谷本石川県知事 谷本でございます。
○清水社会・援護局長 次に、平松大阪市長でいらっしゃいます。
○平松大阪市長 平松です。よろしくお願いします。
○清水社会・援護局長 次に、吉田広島県坂町長でいらっしゃいます。
○吉田広島県坂町長 吉田でございます。よろしくお願いいたします。
○清水社会・援護局長 厚生労働省側でございますけれども、細川厚生労働大臣でございます。
 厚生労働副大臣の大塚でございます。
 厚生労働大臣政務官の岡本が少し遅れております。恐縮でございます。
 まず、会議の冒頭、細川厚生労働大臣から御挨拶させていただければと思います。大臣よろしくお願いいたします。
○細川厚生労働大臣 それでは、私の方から一言御挨拶を申し上げます。今日はお三方の皆さんには大変お忙しいところ、また遠いところをお出かけいただきましてありがとうございます。この会議の趣旨なども申し上げながら、御挨拶をさせていただきたいと思います。
 皆様方におかれましては、生活保護行政をはじめ、社会保障施策の第一線で御尽力いただき、深く感謝申し上げます。また、東日本大震災に伴いまして、被災者や被災自治体支援につきましても大変な御努力をいただきまして、深く感謝申し上げる次第でございます。
最初に、協議の開催の趣旨につきまして私の方から申し上げます。現在、直近の生活保護の受給者は約200万人と、過去最大であった戦後直後の水準に迫る勢いでございます。また、震災による増加も考えられます。更に、近年、医療扶助や貧困ビジネス等をめぐる不正事案も大変多く、制度に対する信頼を揺るがしつつあります。
このような現状に対して、昨年10月には指定都市市長会から、11月には全国市長会の皆さんから、制度改革に向けました具体的な提案もいただいたところでございます。私どもも、今月12日の社会保障改革に関する集中検討会議におきまして、社会保障に関する厚生労働省案の提示をさせていただいたところでございます。更に、23日の集中検討会議におきまして、生活保護制度の見直しや具体的な対策につきましては、国と地方の協議で検討をすることを提案させていただいたところでございます。
 今回の協議は、過去の協議と違うところでございます。これまで過去2回、国と地方の協議が開催をされました。平成17年には、国庫負担の割合の見直しを中心に議論をいたしました。また、平成21年には生活保護の運用面の見直しを中心に議論をいたしました。今回の協議は、現下の喫緊の課題に対する地方の皆様の御提案を踏まえて、制度改正も視野に入れた協議であり、これまでとは一線を画すものと考えております。
 協議に当たりまして、4つの検討課題を提案させていただきます。1つ目の課題は、生活保護受給者に対する就労、自立支援でございます。近年、失業者の増大等を受けまして、特に稼働能力、働くことができる能力を有する生活保護受給者が急増している状況でございます。失業などによりまして、生活保護を受給する状況に至ったとしても、早期に生活保護から自立できるような、受給直後から集中的かつ効果的な自立就労支援が必要でございます。そのため、国と自治体とが連携して計画的、組織的に自立就労支援に取り組む仕組みや、受給者の就労インセンティブを高める仕組みについて検討できないかと考えているところでございます。加えて、子どもの貧困解消に向けた学習支援等が全国的に導入できないかにつきましても、この場で御議論をいただきたいと考えております。
 課題の2つ目は、医療扶助と住宅扶助等の適正化でございます。医療扶助費は、保護費全体の約半分を占めておりまして、約1.5兆円に達しております。レセプト1件当たりの医療扶助費は一般の国民健康保険等と大きな違いはありませんけれども、生活保護受給者は受診率が高く、その結果一人当たりの医療費も高い状況となっております。また、受給者に不必要な医療を提供して、死に至らしめた奈良の山本病院事件等もありました。更に、向精神薬の大量入手、不正転売などの不正事件も多いところでございます。生活保護の受給者を劣悪な住居に囲い込んで、保護費を搾取するいわゆる貧困ビジネスも頻発をいたしているところでございます。このため、医療扶助につきましては受給者に適正受診の意識を促すための工夫を検討する必要がございます。更に、国と自治体が連携して、医療扶助の内容分析や適正化を図るための取組みの導入の検討もできないかとも考えておるところでございます。
 また、住宅扶助の現物給付の拡大、貧困ビジネスに対する規制なども議論をいただきたいと考えております。
 課題の3つ目は、生活保護費の適正支給の確保でございます。不正受給対策を徹底するためには、適正支給を確保する自治体の事務の在り方の検討が必要でございます。収入資産等の調査、照会事務が円滑に実施できる仕組みの導入が効果的ではないかと考えております。
また、指定医療機関に関する許認可の見直し、不正受給者に対する厳罰強化等の議論をしていただきたいと考えております。
 課題の4つ目は、第2のセーフティネットと生活保護の関係整理でございます。今国会で求職者支援法が成立いたしました。本年10月から施行されます。求職者支援制度をはじめ、第2のセーフティネットによりまして、生活保護に至らないためにはどのような効果的な支援が実施できるか、検討する必要があります。更に生活保護受給者になっても求職者支援制度を実効ある形で活用するためにはどんな方法があるか。ハローワークと福祉事務所の連携も含めて議論をいただきたいと考えております。
 課題はそのほかにもありますが、まずはこれらの喫緊の課題に対して当面取組むべき実効ある対策を講じることが必要であると考えております。
 なお、現行の生活保護基準については、基礎年金とのバランスなど様々な御意見がございます。現在、社会保障審議会の専門の部会で検証作業を進めておりまして、その結果を踏まえて国民の理解が得られるよう、基準の在り方など検討していることを申し添えておきたいと思います。
 今後の進め方でございますけれども、提案を申し上げたいと思います。資料2です。今後の進め方を御覧いただきたいと思いますが、今後は厚生労働省と地方自治体の事務レベルで検討を重ねまして、より詳細な現状分析や論点整理を行いたいと考えております。8月ごろを目途に、また皆様方にお集まりいただいて、本協議の意見のとりまとめと考えているところでございます。なお、社会保障改革案との関係でありますけれども、先ほど申し上げましたとおり、現在、政府におきまして社会保障改革案のとりまとめに向けた検討が進められております。このため、当案も見据えながら本協議におきましては、現場の皆様の御意見をいただき、8月を目途により具体的な対策をまとめたい、このように考えております。
 大体、以上でございます。皆様におかれましても、この会合の円滑な運営に御協力をいただき、よろしくお願いをしたいと思っております。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
○清水社会・援護局長 大臣、ありがとうございます。冒頭、本日御出席予定でございました高知市長のことをお伝えするのが漏れておりました。恐縮でございます。高知市長におかれましては、台風被害への対応のため、本日やむなく御欠席でございます。御了承ください。
 少し遅れてまいりましたけれども、厚生労働大臣政務官の岡本でございます。
○岡本厚生労働大臣政務官 よろしくお願いします。
○清水社会・援護局長 次に、本来ですと資料3で生活保護の現状等を私の方から御説明申し上げる予定でございます。先ほど大臣の御説明などのバックデータのようなものが入ってございますが、時間の関係もございますので、資料3の説明は省略させていただきまして、早速、意見交換に移らせていただきたいと思います。
順番としましては、お座りいただいております、石川県知事、大阪市長、坂町長の順でお願いしたいと思います。大変恐縮でございますが、各々の方々3分程度、あるいは長くても5分くらいで収めていただいて、お願いできればと思います。
 早速、谷本知事様、よろしくお願いいたします。
○谷本石川県知事 また、久方ぶりに生活保護の国と地方の協議の場をこういう形でセットしていただいたことでありますので、まずはお礼を申し上げたいと思いますが、一番最初に大臣も触れてございましたが、東日本大震災で、私どもも厚労省からの要請を受けまして、被災地の方へいろんな御支援をさせていただいておりますけれども、死者、行方不明者が3万人近く、まだ11万人以上の方が避難所での生活をしておられることでありますから、恐らくこれから相当の生活困窮者が出てくるのではないか、生活保護に至るケースも増えていくのではないか、阪神大震災でも同じ傾向があったと我々お聞きをいたしております。そういった意味では、是非経済的な支援は勿論でありますけれども、住宅とか雇用の確保を通じて、被災者の方々ができる限り生活保護に陥ることがないように、生活再建が果たせるように、万全を期していただきたい。このことをまずお願いをしておきたいと思います。
その上で、今回の震災に伴いまして、生活保護の受給者がこれから時間が経ってくると激増するということになってきますと、被災地の自治体にとっては相当大きな財政負担となってまいりますので、過重なものにならないように御配慮をお願いしたいと、このことをまずは申し上げておきたいと思います。
そして、私ども今、お話がございましたように、就労支援のことについてお手元にペーパーを1枚用意させていただいております。そのペーパーをごらんになりながら、逐次説明をさせていただきたいと思います。実は我々、国の出先機関の原則廃止にかかりますアクションプランの実現に向けまして、石川県を含めて41の都道府県からハローワークの地方移管の提案を行っておるところでございます。この提案が実現されれば、例えば生活保護に陥る前のボーダーライン層でありますとか、生活保護受給者の就労促進を通じて、生活保護の適正化にも大きく寄与できるのではないかと考えておりますので、資料に沿って提案の概要について御説明を申し上げたいと思います。
大臣からもお話がございました保護世帯数、平成7年度を底にしまして増加を続けております。この15年間の間に約2.3倍。世帯別に見ていきますと、高齢者世帯とか母子世帯、障害者世帯が約2倍の伸びでありますけれども、その他の世帯が5倍と異常な伸びを示しております。働く能力のあるその他の世帯の増加の背景、これはいろいろとあるんでしょうけれども、長引く経済の低迷はもとよりでありますけれども、雇用が流動化している、非正規労働者の増加が進んだことに加えてリーマンショック以降の日本経済の急激な悪化などによりまして、離職を余儀なくされた方々が生活保護に陥っていると私は思うわけであります。
こういう状況の中で、生活保護は最後のセーフティネットでありますので、生活保護の適正化を考える上でまず講ずるべきは、生活保護に陥る前のボーダーライン層を雇用でしっかり支える仕組みが是非必要だと、大臣が今、おっしゃったとおりだと思います。そのためには、非正規労働者に対する被用者保険の適用拡大と同時に、雇用保険の対象にならない求職者に対して職業訓練の機会、その間、必要な生活を支援する第2のセーフティネット、大臣がおっしゃったとおりでありますが、この充実を図り、一旦離職をしてもできるだけスムーズに労働市場への復帰を図ることができる雇用環境の整備が大事だと思います。
また、生活保護に陥ってしまった稼働年齢層への対応でありますけれども、できるだけ早期に集中的な就労支援を行いまして、速やかな自立の促進を図ることが大変大事だと思うわけであります。
しかしながら、これまで県や市の福祉事務所におきます就労支援、これは生活保護受給者の生活指導全般を担当するケースワーカーが行います一般的な就労指導、あるいはハローワークの紹介等にとどまっているケースが多かったことも事実だろうと思います。平成17年度から、ハローワークとの連携による就労支援事業が開始をされております。平成21年度には、支援対象者のうち約5割が就労に至っておるということでありますけれども、この支援対象者は早期の自立が見込まれる者に限定をされておりますし、就労可能と考えられますその他の世帯とか母子世帯約27万世帯ございますけれども、そのわずか5%に過ぎない、ごくわずかな人しか対象になっていないところに問題があると思います。
今年度から国の方でも、福祉事務所とハローワークが協定を締結して目標を共有することによって、就労支援事業の充実を図ることになっておるわけでありますが、就労意欲の低い受給者に対する就労意欲の喚起の取組みも含めまして、より幅広い連携が私は必要ではないかと思うわけであります。
更には、自立の促進の観点からもう一段ギアチェンジをさせた取組みとして、例えば稼働年齢層が生活保護を申請する際や、受給期間中においてはハローワークでの就労支援を受けることを制度的に位置づけるとか、6年前、平成17年のときも申し上げさせていただいたんですが、生活保護の更新制度などを導入してはどうかと御提案をさせていただいんですが、生活保護の位置づけを考えるとなかなか難しいと話もございましたが、例えば生活保護受給者に対して、期間を限定して強力な就労支援を集中的に実施する。これは更新制度の代替みたいな措置だと思いますが、そういったことを検討することも重要ではないかと思うわけであります。
こうした点を踏まえまして、石川県としてはハローワークの地方移管の提案の中で、県や市の福祉事務所に職業紹介用端末を設置して、ハローワークコーナーを設けると同時に、職業紹介を行う職員や相談員を配置することによりまして、福祉事務所における福祉雇用政策の一体的な実施を提案させていただいております。この提案が仮に実現すれば、自治体の指揮の下で、福祉事務所においてボーダーライン層の相談者や生活保護受給者に対しまして、就労意欲の喚起から、現在、国で行っている職業相談、紹介等まで一貫した就労支援が可能になるんではないか。加えて県では、企業誘致などの雇用創出に資する産業施策、あるいは職業能力開発などの雇用施策も今、行っておるわけでありますので、こうした施策と組み合わせることによりまして、これまで以上に地域の実情に合った就労支援策を一体的に提供することが可能になるのではないかと思います。そういった意味では、生活保護受給者の就労促進に大きな効果があると考えておりまして、雇用を通じて生活保護の適正化にも大きく寄与するのではないかと思うわけであります。
以上、石川県の提案の概要でございますが、生活保護の適正化については、あらゆる選択肢を検討していくことが私は大事だと思います。福祉と雇用政策の一体的な提供の実現の観点から、是非大臣にもこの提案の趣旨を御理解いただきたいと思う次第であります。
そして、今後の協議の進め方でありますけれども、細川大臣の発言にありましたように、地方の意見を踏まえて生活保護制度の見直しに向けた検討を行うということでありますので、事務レベルで生活保護行政の現場における課題を十分に精査して、具体的な見直しの内容を検討した上で、再度本日のメンバーでとりまとめに向けた協議を行うということであれば、私はいいのではないか思う次第であります。また、事務レベル協議では、恐らく本日議論となった主な検討項目以外にも、今回の協議の場の趣旨に合った議論をしていただければよいのではないかと思う次第でございます。私、平成17年の協議からずっと出ております。平成17年の協議は誠に不毛な議論でございました。国と地方の不信感を増幅させるだけの協議でありましたので、当時は国庫負担割合を引き下げる、そして保護事務の設定権限を地方に移譲するというとんでもない提案が出てきて、11回ほど協議しましたけれども、最後はけんか別れのようなことになってしまいました。やはり福祉サービスは、国と地方の信頼関係が前提でないと内容のある福祉サービスは提供できないのではないかと思うわけでありますので、生活保護は法定受託事務であると、この基本的な枠組みは維持をしていただきたい、国庫負担の引き下げは今回は課題にはしないと今、お話がございましたので、その点を踏まえてこれから中身のある協議になっていけばと思う次第であります。どうぞよろしくお願いいたします。
○清水社会・援護局長 ありがとうございました。続きまして平松市長様、よろしくお願いいたします。
○平松大阪市長 平松でございます。実は先ほど課題4点挙げていただいたんですが、これは持ち時間外ということで、課題4点では、今、谷本知事もおっしゃっていただいたことなんですが、今日のハイレベル会合を設けていただいたことを心からうれしく思っておりますし、この間大阪市、全国の自治体に声をかけながら、今の制度の抱える矛盾点とか具体的な問題点をさまざまな具体例を挙げながら、全国市長会あるいは我々の政令市長会を通じて要望を挙げさせていただきました。こういう形で4つの課題を具体的にやろうと、制度の改正に向けた動きをとっていただくことに関しては大賛成でありますし、ありがたいと思っておりますが、もう一点、何と申しましても全額国庫負担というものをしっかりととらえていただいて、これこそが国民等しくみんなの合意の上で弱い人を助ける制度であることを堂々と言える形にしていただきたい。勿論、8月のハイレベル会合で意見をとりまとめるところに間に合おうとなんて思っておりません。しかし、検討課題としては中長期的であれ、しっかりとそれを見据えた議論をしていただく。今、谷本知事おっしゃっていただいたように、国庫負担の割合のどうのこうのという議論ではなく、もともと国が弱い人を助ける。しかし、勤労の義務もあるんだよということに基づく制度であるということで、これは時間外の意見として言わせていただきます。
 私の方から、今日は指定都市長会の推薦をいただいて代表してこの場に参加させていただいております。今、大阪市は18人に1人の生活保護受給者の数になっています。全国一受給者が多い都市でございまして、ゆえに生活保護制度の矛盾や問題点をどこよりもよく把握している、この協議の場におきましても大阪市の実例を具体的にお示ししながら、制度の抜本的改革に向けて取組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 最初に、東日本大震災の被災者の支援について一言申し上げます。今年の3月には、指定都市市長会として緊急要請を行ったところでございます。今回の震災は国政にも影響を与える大きな問題でございます。国の総力を挙げた対策が必要不可欠でございます。被災者のみならず、震災の影響による雇用不安などを原因とした生活困窮者の増加が想定される中、まずは国におかれては実効ある支援策を講じていただきたい。その上で震災をきっかけとして想定される生活保護申請の増加に対応するためにも、財源問題も含めた生活保護制度全体の抜本的改革、これこそが喫緊の課題であると思っております。早急に進めていただきたいと思っております。
 指定都市市長会提案につきましては、去年大臣にも御要望申し上げたところでございます。配布資料に示しておりますので、この場での説明は省かせていただきますけれども、制度ができて以来60年も抜本的な改革が行われていない生活保護制度は、間違いなく制度疲労を起こしています。年金や最低賃金との不整合などの問題が国民の不公平感であるとか、あるいはモラルハザードを招いていると考えています。生活保護制度は、働ける人は基本的に就労による自立を前提とする制度でございます。高齢者の生活は別の制度で支えるべきですし、雇用のセーフティネットが整備されていないために、本来雇用、労働施策で対応すべき稼働可能層まで生活保護で支えなければならないことが問題であると思います。
国におかれましては、第2のセーフティネットとして求職者支援制度を法制化されましたけれども、生活保護に優先する制度として位置づけるなど、実効あるものにしていただきたいと思います。そして、働くことができる人には働いていただくためにも、雇用、労働施策の充実はもとより、指定都市市長会提案でもお示ししました期間を定めた強力かつ集中的な就労支援や、ボランティア等の社会的自立を支援するプログラムへの参加の義務づけなどについて、具体的に検討をいただきたいと思います。
 また、生活保護制度そのものが善意を前提とする制度であるために、先ほど大臣もお触れいただきました貧困ビジネス、過剰診療、更には生活保護を目的に外国から入国されるということなど、制度を悪用したいと思っている人たちに対して有効な対抗手段がないことが不正を招いている側面があると思っております。国において具体的な基準や指針の策定、必要に応じて法改正などの措置を講じていただきたいとお願い申し上げる次第です。
 そして、この協議の場で検討される内容について1点意見を申し上げますと、震災の影響もあり難しいという事情はあると思いますが、是非全額国庫負担でお願いしたいと、その方向性も課題に入れていただきたいと先ほど申し上げました。財源の問題についても、中長期的な視野に立って迅速に検討に着手していただきたいと強く要望させていただきたいと思います。
 今、国において社会保障改革を進めようとされております。自治体の意見を十分に反映していただきたいと思います。この国難ともいうべき東日本大震災を背景に、より一層増していると考える社会保障の重要性、この制度の全般の再構築に迅速に取組んでいただきたいと思います。
 最後に、大阪市の実例を御紹介しますと、この生活保護制度は我が国の在り方、国民の在り方に関わる重要な問題であると考えています。そして、一番生活保護受給者が多い市であるからこそ具体的な実例を積み重ね、更には全国の生活保護に問題を抱えておられる市と協力してデータを集めてまいりました。実例の御紹介としましては、医療機関調査により判明した医療扶助の課題を配布資料に記載しております。一番最後のページになると思いますが、後ほどごらんいただければと思います。本当に多くの矛盾を抱えています。国民の不公平感、モラルハザードを招いていると言われるこの制度をこのままにしておくことは、もはや許されないと思っておりますので、我々は今年2月に大阪市の議会で生活保護特区のモデル実施の提案を行うことを表明しております。生活保護制度の矛盾をどこよりも多く抱えている都市だからこそ、全国に先駆けて今日の社会経済情勢に合った生活保護行政を実施できると自負しております。
まず国において改革を進めていただき、制度の矛盾問題点の実例に関しては、今後も大阪市からどんどん実務者レベルの会合でもお出ししてまいりますし、場合によっては大阪市を特区としたモデル実施をやらせていただくことも我々考えておりますので、是非具体的な制度改革を進めていただきたい、このように思います。
 お時間取りました。済みません、ありがとうございます。
○清水社会・援護局長 ありがとうございました。
 それでは、坂町長様、よろしくお願いいたします。
○吉田広島県坂町長 広島県町村会の会長をいたしております、坂町長でございます。町村会の代表として本日は出席をさせていただきました。よろしくお願いいたします。
 先ほどから、縷縷東日本大震災のお話がございましたけれども、全国町村会では藤原会長を中心に関係者の方々が各省庁の方にも対応の要望を行っておりますので、この件につきましては割愛をさせていただきたいと思います。
 福祉事務所につきましては、全国に約940の町村がございますが、その中で40の町村にも満たない状況で福祉事務所は開設をされております。全体の5%にも満たないものでございますのが、特にその中で広島県、島根県が福祉事務所を開設しておる町村が非常に多くなっております。そういう中で我が町のことを中心として、4つの課題について述べさせていただきたいと思います。
 まずは、中山間地域およびその周辺の地域におきましては、就労の場そのものが少ないことから、就労の機会に恵まれないケースがございます。つきましては国家的な雇用施策、就労の創造などと一体となった社会保障制度全般の見直しを行わなければ、根本的解決とはならないと考えております。これは生活保護受給者に対する就労、自立支援についてでございます。
 また、雇用施策の充実が図られたということになりましても、中山間地域及びその周辺地域に及ばない場合には、そのような地域では人口流出が進み、就労の場及び機会がますますなくなるといった悪循環に陥るおそれもあると考えております。そういう面で十分な配慮が必要であると思っております。これらのことが実施をされて初めて、我々のような中山間地域及びその周辺地域の町にある福祉事務所の生活保護受給者に対する就労、自立支援につながってくると考えておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 先ほど申し上げた雇用情勢の中で、就労阻害要因の把握と就労指導の徹底を当初の重点項目として我々も取組んでいるところであります。その結果、就労を開始した方が我が町では5名ございます。現在、48世帯が生活保護を受けて、68名がその対象となっておりますけれども、そういう状況の中で、いわゆる自立して生活保護を廃止した世帯が2世帯、約16.7%に達しております。国におかれましては、就労支援プログラムの策定を推進するとともに、就労支援員の配置も要請されておる状況でございますが、例えば就労支援員の配置にについては、現在はその他120世帯に対して就労支援員1名以上でございますけれども、坂町の場合、その他世帯が10世帯でございます。そういうことにも是非とも御配慮をいただきたいと思います。
 また、昨年7月に生活保護受給者等の就労支援事業地域協議会が開催をされ、査察指導員、ケースワーカーが参加をいたしました。毎年、本事業につきましては参加割当て人数、母子世帯、その他世帯の割合を案分の目安が定められております。このため、小規模福祉事務所にあっては年間1名と最少人数しか参加ができない状況にございます。併せて、国において職業安定所の就労支援ナビゲーターの増員はなされておりますが、更なる増員によりまして、対象となる者が漏れなく参加できるような体制整備が必要であると考えております。
 2番目の医療扶助や住宅扶助等の適正化でございますけれども、医療扶助につきましては、坂町では平成21年度の診療報酬明細書の総枚数は828枚でございます。月平均83枚でございました。レセプト点検に関しては、資格点検のほか、診療日数、初診再診など内容点検を実施しております。特に移送費の支出があるものにつきましては、移送費の日数との照合を重点的に実施いたしております。
 こういうことをどんどん実施をしていただければ効率が向上するのではないかと期待を持っておるところでございます。また、そのほか就労、自立支援及び生活保護適正化にかかる地方に対する国の支援につきましても、1事業10万円未満、合計30万円となっておりますけれども、小さな福祉事務所のケースもあります。もう少しきめ細かな事業単位の配慮がいただければと思っておるところでございます。
 縷縷いろいろございますけれども、時間がないようであります。特にセーフティネットの関係につきましては、具体的には求職活動にかかる経費の支給、交通費などの支給や、面接をするための経費、靴や洋服の購入費などを支給するなど対象者の負担の軽減を図ることが重要ではないかと思っております。そうした中で、特に我々は小さい町村であるからこそ隅々まで対応ができる、配慮ができる、そして生活保護の不正受給なども防げる状況もできているのではないかと思っております。本町におきましては不正受給等は一切ございません。そういう中で町村の思いも是非とも汲んでいただきまして、この生活保護制度が更に充実した方向へ進むように、国当局の御尽力をよろしくお願いいたす次第でございます。
○清水社会・援護局長 ありがとうございます。本日御欠席の岡?高知市長様からは、資料5において、資料を提出いただいてございます。詳しくは説明できませんけれども、やはり高知市におかれましても、その他の世帯を中心に生活保護受給者が増加しているといった内容でございます。地方の御三方から20分強にわたり御意見を賜りましたので、厚生労働省政務三役の方から御意見はございますでしょうか。あるいは3分ほどの短い時間でございますけれども、地方側と厚生労働省政務三役との間で自由な御発言をお願いしたいと思います。
○大塚厚生労働副大臣 本日はお忙しいところを本当にどうもありがとうございました。
 それぞれから御発言いただきましたように、生活保護制度、セーフティネットとしては必要であることは我々も重々認識をしつつも、その他の制度との整合性の面で構造的な問題を抱え、また、その問題がかなり限界的な状況に達している認識でございますので、是非県や市町村の実情を忌憚なく私どもあるいは事務方にお伝えいただきまして、8月には成案を得られるように御協力を賜わりたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
○清水社会・援護局長 平松大阪市長様、どうぞ。
○平松大阪市長 自立、就労支援は非常に大事な、特にその他世帯が増えつつあると、それも逆に言いますと都市の性格であるとか、本当に求人側の思いとかそれぞれ違うわけですから、逆に任せてみる、かなり細かいところをハローワークだけではなくて、谷本知事もおっしゃっておりましたけれども、その自治体の持っている特質をどれだけ理解して運用できるかはその自治体が一番よくわかっているわけですから、かなりの融通をできる形で組んでいただく方が我々としてはありがたいと思うんです。
○谷本石川県知事 恐らく今の生活保護制度は最低限の生活を保障すると同時に、たしか自立の助長も同じ柱で上がっていたはずですね。だけれども、どちらかというと最低限の生活を保障する方にウェートが置かれ過ぎていて、気がついたら、副大臣おっしゃったように他の制度との間でアンバランスが生じてきているところがありますから、6年前は我々は極端な提案でしたけれども、生活保護制度の更新制度みたいなものを導入することがあってもいいのではないかと、5年間時間を限定してやるけれども、その間に一生懸命就労支援をやって、それでもできない人は生活保護から出て行ってくれと言いませんけれども、そういうことをある程度やっていかないとなかなか自立助長の側面が生かされないのではないかと、そのために余り選択肢を限定しない方が私はいいのではないかと思います。いろんな雇用の方策については自治体もいろんな方策をやってきていますから、自立を助長するところに少し光を当ててやっていくと。
○清水社会・援護局長 大塚厚生労働副大臣、どうぞ。
○大塚厚生労働副大臣 そういう意味では、勿論、生活保護から抜け出していただいて自立をしていただくことが目標でありますので、市長からも知事からもお話がありました就労支援の部分、厚生労働省の労働担当部局も一生懸命やっておりますが、しかし、就労支援の考え方が果たして画一的になり過ぎていないか、就労というときに職業であるとか職種であるとか、労働について少しこれまでと違う考え方を工夫してみる必要はないかと、そういうことも併せて御提言いただければと思います。
○清水社会・援護局長 ありがとうございました。司会の不手際で自由論議の時間が少なくなりました。申し訳ございません。
 お手元にあります資料1と2を御覧いただきたいと思います。資料1は本日の会議の設置の趣旨ペーパーでございます。この趣旨どおりに開催したいということを御確認いただきたい。また、資料2について、先ほど大臣からの挨拶の中で触れさせていただきましたけれども、検討課題、今後の進め方を示してございます。この形で進めていきたいということをこの場において確認いただきたいのですが、よろしゅうございますか。こういう趣旨も含めて資料2により御確認賜ったということでございます。それでは、ちょうど45分でございます。時間となりましたので、本日の議論はこの辺りまでとさせていただきます。次回の実務会合あるいはハイレベル会合などの日程につきましては、別途御連絡、御相談申し上げたいと思います。
 本日は大変御多忙の中、ありがとうございました。また、司会の不手際をお許しいただければと思います。ありがとうございました。


(了)

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