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2011年2月28日 第3回 医療計画の見直し等に関する検討会

医政局指導課

○日時

平成23年2月28日(月)10:00~12:00


○場所

厚生労働省専用22会議室


○出席者

委員

武藤座長
伊藤委員 尾形委員 安藤参考人(神野委員代理出席) 齋藤委員
末永委員 鈴木委員 池主委員 長瀬委員 伏見委員 布施委員
山本委員 吉田委員 大西参考人 井上参考人 惠上参考人

○議題

1.各都道府県の医療計画への取り組み状況等について
2.医療計画の新たな評価手法の導入等について

○配布資料

資料1「医療計画への取り組みについて」(千葉県)
資料2「地域医療連携体制構築に関する保健所の関与について」(山口県宇部環境保健所)
資料3「医療圏における地域疾病構造及び患者受療行動に基づく地域医療の評価について」(伏見委員)
資料4「保健医療計画の策定について」(青森県)

○議事

○武藤座長 まだお見えになっていらっしゃらない委員もいらっしゃいますが、定刻になりましたので「第3回医療計画の見直し等に関する検討会」を始めます。前回の2月18日からまだ間もないということですが、前回は川原教授、尾形委員、私から医療計画の策定に関する評価研究の発表をしました。今回は、それに引き続いて伏見委員から医療計画の評価の研究報告をさせていただくと同時に、現場、特に県の立場、保健所の立場から今日は青森県、千葉県、山口県からお越しいただいて、さまざまなご意見をいただきたいと思います。
 今日の出席状況を確認しますが、神野委員、中沢委員からご欠席のご連絡をいただいています。神野委員については、代理として安藤副会長がいらしています。よろしくお願いします。
 今日の参考人として、先ほどお話しましたように千葉県から健康福祉部の井上理事、青森県からは健康福祉部の大西保健医療政策推進監、山口県の保健所からは山口県宇部環境保健所の惠上所長にご参加をいただくことになっています。大西推進監については、ご都合により途中から出席と聞いています。
 前回お知らせして、今日予定していた在宅医療に関しては、次回第4回に検討することになりました。ご了承いただきたいと思います。
 事務局から、資料の確認をお願いします。

○猿田室長 事務局から資料の確認をします。議事次第、座席表、構成員名簿、資料1「医療計画への取り組みについて」千葉県の資料、資料2「地域医療連携体制構築に関する保健所の関与について」山口県宇部環境保健所の資料、資料3「医療圏における地域疾病構造及び患者受療行動に基づく地域医療の評価について」伏見委員からの資料、資料4「保健医療計画の策定について」青森県の資料です。資料は以上です。不足等がありましたら、事務局員までお声をおかけください。

○武藤座長 ありがとうございました。議事に入りますが、これからのカメラ撮りはご遠慮いただきたいと思っています。
 まず最初に、千葉県健康福祉部の井上理事から、各都道府県の医療計画の取り組み状況について、研究発表をお願いします。大体15分か20分ぐらいで、よろしくお願いします。

○井上参考人 千葉県の健康福祉部井上です。本日はこのような機会を設けていただきまして、ありがとうございます。トータル20分ということですので、10分から15分ぐらいでプレゼンテーションを終えたいと思います。スライドは紙でということですので、資料1を基にご説明をさせてください。
 千葉県の事例ということで、資料1のスライドに沿ってご説明します。ご説明したいアウトラインとしては、医療計画を作る背景となっている千葉の保健医療課題について触れたあとで、それに対する取り組みについて、いくつかの具体例を基にご説明したいと思います。千葉県の医療課題というのは、おそらく千葉県特有というよりも、千葉県を含む東京周県3県の千葉、埼玉、神奈川の共通の問題だと我々は認識していまして、このことを東京周辺共通の課題という形で受け取っていただければと思う次第です。
 スライド2に移ります。ここはイントロダクションで余談ですが、今後の50年間が高齢化という観点から、歴史的にいかに特殊かということをグラフにしてみたものです。このグラフは、横軸は大昔から遙か未来まで1万年の時間軸です。1万年の時間軸の中で、何千年かけて高齢化率が5%まで上がったのが、1950年から2050年まで一気に高齢化率が5%から40%近くまで上がります。このあとどうなるかについては、おそらくは2060年ごろをピークとして40%代前半の高齢化率、それからあとは下がっていくだろうと想像できます。したがって、日本の長い歴史の中で、たった一度だけ高齢化が"Overshoot"する時期があり、それがいまから2060年までの50年間が、歴史的に見ても特に特殊であるという理解に立って、いま県でも対策を進めています。
 次のグラフです。この高齢化は日本一律に起こっているのではなくて、濃淡があります。どう濃淡があるかというのを示してみたのが、次のスライド4のグラフです。平成17年~平成27年まで、目下の10年間で都道府県別に高齢者人口がどこで増えているかを目盛りやパーセントで示したものです。1位、2位、3位は東京を取り巻く3県です。この3県は人口2,200万人いて、高齢者の人口が5割です。1,000万人単位の人口で高齢者の人口が5割出ることは、いままでの人間の歴史では振り返ってみてなかったと言えますし、おそらくは今後もどこでも起こり得ない特殊な状況が、東京を取り巻く3県で起こっています。逆に45位、46位、47位に秋田、山形、鹿児島と書きましたが、いわゆる地方の県は今後大きな変化はありません。いま、なんとかなっていれば、10年後もなんとかなるというのが地方の県で、今後10年間大きな変化が起こるのが東京周辺の県です。このことを地図の上で、より視覚化してみたものが次のスライドです。
 具体的に千葉、埼玉、神奈川をもう少し細かく見ると、目下の高齢化がいちばん著しく起こるのは、都心から半径10kmから50kmまでのドーナツ型の地域です。東京に通勤する人たちが住んでいる人口密集地で、県で言うと千葉、埼玉、神奈川ということになります。これは2005年~2015年までの高齢化の進展の速さを視覚化したものですが、特段高齢化が急なのは東京を取り巻く通勤圏の人口密集地で、今後5年、10年、15年という期間に医療の需給のギャップが大きく崩れる場所があるとしたら、日本の中ではこの地域がいちばん最初だろうと思い、日々緊張感を持って仕事をしている状況です。
 その隣の円グラフも別の観点から見たものですが、2005~2015年までの日本の高齢者人口の増加、総計800万人が都道府県別でどこで増えているかというものを表したものです。東京が10%、千葉・埼玉・神奈川の周辺3県を一括りにしましたが、そこで23%、次いで大阪、愛知で、この3大都市県だけで今後10年間の高齢者増加の約半分は占める状況です。日本の高齢化というのは世界の中でも際立つと言われますが、それは日本一律の問題ではなくて、実は都会の問題であると我々は認識をしています。
 その下のグラフは、この高齢化のスピードとは全く独立した要因によって医療資源を首都周辺3県は抱えています。これは、首都周辺3県の医療資源を人口あたりの医師数、人口あたりの看護職員数、人口あたりの一般病床数という形で、全国平均と比較をしてみたものです。神奈川、千葉、埼玉と、いずれも医療資源に関しては全国でも最も低い部類です。特に千葉県は医師数で45位、看護職員数で45位、病床数で45位。これは、医療資源の総合力という意味でいうと、おそらくは最下位になるだろうと思っています。3県共通した課題ですが、今後最も速く高齢化が進む中で、最も医療資源が少ない状況にあることを千葉県は認識をした上で、保健医療計画を作っているという背景の説明をしました。ちなみに、千葉県の保健医療計画の改定時期は今年の4月で、いまはまさに改定の準備の最終段階にあるという状況です。
 次の頁のスライド7は余談ですが、東京及び周辺3県は、国連の大都市ランキングでは人口の大きさでナンバー1に入る大きさです。東京都ではなくて、東京を中心とした人口集積地というのは、国連の定義上は世界最大の都市です。いま、この世界最大の都市の特に人口通勤圏の周辺部が急速に老いており、ここでどういう対策を取るかということは今後続く、ほかの大都市の高齢化ということをも踏まえても、世界的な意味合いを持つのかなという思いも込めて、我々日々の仕事をしているという余談でした。こうした中での千葉県での医療提供体制の維持のための課題として、特に大きなものを以下4点挙げています。1番目は、先ほど説明したような背景による医療人材の確保。特に看護職員・介護職員をいかに確保するかを5年、10年という長期的な視点で我々は見ています。
 2番目は救急体制の維持。いわゆる5事業と呼ばれる事業の中でも、高齢化の進展が最も影響する分野は救急体制の維持で、半年前といま、いまと半年後、月単位でこの救急体制の維持の困難さが厳しくなってきていることを我々はひしひしと感じています。
 3番目は、在宅医療の推進。現状のままで高齢化が進むと、おそらく病院で診られることには相当制約が出てきます。在宅で診られるものについて、いかに在宅で診ていくかということは今後の大切なテーマだと考えています。このことは、単に医療提供体制を確保するという観点から大切なのではなくて、県民にアンケートを取ると、「どこで死にたいですか」「どこで最後を過ごしたいですか」で、病院で死にたいという人はあまりいません。県民の大多数の人が、自宅で最後を迎えたいと希望しており、それに沿う施策を取りたいと考えています。
 4番目は高齢化が進展してくると、いままで取り組んできた4疾病に加えて、新たなチャレンジが増えてきていると感じています。もはや脳卒中・心筋梗塞・がん・糖尿病だけをやっていればいいのではない。5年、10年というスパンで見ると、新たな課題が浮かび上がってくる。我々はそれを特に3つ取り出しています。1つ目は認知症。2つ目は最近はLocomotive syndromeという言葉でも呼ばれるようになってきた運動器の疾患。いかに最後まで身の周り、自分で歩けるようにするか。3つ目は終末期のあり方。これは医療の受け方、過ごし方といったことの県民への啓発も含めた終末期のあり方を、4疾病に加えた今後の課題の柱の1つとしなくてはいけないと考えています。
 そうした中で、今年の4月から組み変わる保健医療計画は、まだ正式な承認をされていませんが、ほぼ最終形のものが出来上がりつつあります。その中で、千葉県はほかの県と比べて、こんな特徴を持っていますという取り組み事例を3つご紹介します。
 1つ目は、4疾病の循環型地域医療連携パス。我々はこの4疾病を急性期病院から慢性期病院、中間施設、かかりつけ医、在宅と患者さんの状況に応じて施設を移していくための医療連携が、47都道府県の中で最も進んでいると自負しています。それぞれの疾病について共通のフォーマットを作り、そのフォーマットを関係する急性期、回復期、かかりつけ医、中間施設、みんなで共通して持って1人の患者さんの情報をシェアしていく取り組みを進めています。この4疾病の循環型地域医療連携パスだけで、千葉県の保健医療計画は3分冊のうちの1分冊を設けています。千葉県の保健医療計画は1冊がメインの案ですが、それに加えて別冊を2冊設けており、そのうちの1冊がこの地域医療連携パスをいかに普及させるか。どの二次医療圏で、どの医療機関がどの連携パスを使って仕事をしているかが一目瞭然でわかるものを設けています。その下の円グラフは、実際の普及状況を書いたものです。まだ完全ではありませんが、今後どんどん普及させていきたいと考えています。
 次の頁は、千葉県の取り組み事例の2つ目です。先ほど在宅の医療を推進していくということを申し上げました。具体的にどうしているかというと、千葉県の在宅医療を行い得る医療機関。これは在宅療養支援病院であり、診療所であり、歯科診療所であり、自宅訪問対応薬局であり、訪問看護ステーションであり、こうした医療機関をすべて網羅する別冊を保健医療計画の中で作っています。それぞれの医療機関がどういう在宅医療に対応できるかということをすべてわかるようにし、これを県民の目にもアクセスできるようにするというのが2つ目の取り組みです。もちろん、これは年ごとに変わるものですので、我々は毎年それぞれの医療機関に紹介をしてアップデートしていきたい。ホームページ上でもこれを掲示したいと考えています。
 取り組み事例の事例3と定めたものは、こうした千葉県の保健医療計画上の進捗をすべて定量的に評価をするという試みをしています。千葉県の医療・介護の状況がどんなふうに変わっていっているかを136の指標を見直し、それぞれの指標の予測値を示し、他県との比較も示し、数値の目標が達成できたか、できないかということで保健医療計画の達成状況を客観的に評価をする取り組みをも進めています。以上、千葉県の持つ医療課題及びそれに対する千葉県の保健医療計画上の取り組みの事例をいくつかご説明をしました。どうも、ご清聴ありがとうございました。

○武藤座長 井上理事、ありがとうございました。また最後に総括討論がありますので、そこの段階で是非ともご意見、ご質問がありましたらお寄せください。井上理事の発表について、委員のみなさんから何かありますか。

○鈴木委員 千葉県は、前回の委員会でも進んでいる県ということで、まず名前が上がった県ではあるということで非常に注目して聞かせていただきましたが、千葉県といっても全部が全部首都圏の中に入るわけではないと思います。県内でも外房や銚子に近いほうとか、地域差があると思いますが、その辺の県内の都市部と地方における違いというものは、計画の中でどのように反映されているのか。全部同じようなパターンで考えていらっしゃるのか。ちょっと違う部分もあっていいのではないかなとか、同じにはできないのではないかなと。非常に過密な所と過疎な所と、あまりにも差があるので、その辺はどうでしょうか。具体的に何かお聞かせください。

○井上参考人 ご質問ありがとうございます。おっしゃるとおりで、千葉県は人口620万人のうち、約3分の2の400万人が東京通勤圏の住宅密集地に住んでいます。残りの200万人が房総半島の太平洋岸南側、通勤圏ではない農村、漁村、山村という人口密度の疎の所に住んでいます。このように、2つの全く異なる側面を1つの県で合わせ持っているということは、我々の地域医療連携計画の作り方を非常に難しくしています。
 この2つを明確に章立てで分けてはいませんが、実際には人口密集地の対応、そうでない200万人の部分の対応に分けて考える地域医療計画の作り方をしています。具体的には、この2つの地域というのは二次医療圏で分かれてまいりますので、人口密集地の二次医療圏においては、そうでない二次医療圏においてはということは、一定の程度の区別をして計画を立てる必要があると考えています。

○武藤座長 布施委員、どうぞ。

○布施委員 1都3県は非常に特殊な所だと思いますが、同じような感じで見ますと千葉県は神奈川、埼玉と似ているかと思います。そこで、これらの県の方との意見交換をされていらっしゃるのかどうか。もう1点はいちばん大きいのは、東京への通勤者が非常に多くなっている実情です。先ほどおっしゃったとおり400万人ですが、東京との連携はどうされていらっしゃるかを教えてもらいたいと思います。

○井上参考人 ご質問ありがとうございます。1点目の千葉、神奈川、埼玉3県の共通する課題を持っているので、どう連携しているのかの点に関してですが、現時点ではまだこの3県の間で共通する問題に関するコミュニケーションが始まっていません。ただ、いま千葉県の健康福祉部内では、これは埼玉県、神奈川県に提案したいと考えています。その際には3県だけではなくて、東京通勤圏に位置する市にも一緒に出掛けたい。千葉県で言うと船橋市、柏市、市川市といった通勤圏に位置する市と、この3県の間で共通する連絡協議会で共通する課題に対する対応を議論する場を設けたいということをいま部内で議論をしつつ、まだ実際のアクションには至っていない状況です。
 2つ目の質問の東京との連携ですが、我々はこの3県共通で持っている課題と東京で持っている課題というのは、若干質が違うなと考えています。東京はもう少し医療資源も豊かです。それから、高齢化するという点では同じですが、高齢化する人たちの基盤も相当違います。3代、4代地元に住んでいますという人が多い東京と、自分の代で北海道から移り住んできましたという方が多い千葉、埼玉、神奈川とでは、住民のバックグラウンドも集団全体としては違うので、問題として東京と共通意識を持って話すことは少し難しいかなと考えている反面、実際の患者さんは東京と千葉県の間をやり取りをしていますので、救急においても非救急においても行き来する患者さん、どのようにお互いにスムーズに連携し合いますかという話合いはしています。特にこの点での課題は、地域医療連携パスです。4疾病、千葉県は千葉県独自の地域医療連携パスを持っています。東京都は、東京都としての千葉県とは違うバージョンを持っています。ですので、患者さんが両県を跨がって移動する場合に、東京の病院から千葉県のかかりつけ医に移るときに、どうパスを使うかということは悩ましい課題です。このことは東京都とも話合いをしていますが、なかなかいい結論が見えておらず、今後の課題かなと思っている次第です。

○武藤座長 末永委員、どうぞ。

○末永委員 いま伺いまして、非常に高齢化が進んでいて、さらに医療度の低いにもかかわらず、よくやっておられることを感心して聞いていました。1つ、2つ質問ですが、在宅医療関係機関一覧というふうに載っていますが、それだけうまくいっているというのは、急性期から在宅に至るまでの連携が例えばパスに則ってうまくいっているのか、在宅医療支援病院と診療所あるいは訪問看護ステーション等が連携した、そういう回路を持っているのかということをお聞きしたいのが1つです。
 もう1つは、課題の中で述べられていましたが、在宅死を望む人が多い部門については、こういう連携の中のどの部門、例えば診療所の先生に、より活躍していただくことを期待しているのか、どんなシステムをお考えなのかについてお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

○井上参考人 ご質問ありがとうございます。まず、いかに在宅医療を推進するために、急性期、慢性期、かかりつけの医療機関が連携をしているかですが、これはまだ連携の途中で完成はしていません。我々、県の医師会から地区の医師会を通じて、それぞれの地域ごとで是非この連携を作ってくださいという働きかけをしているところです。このことは、各急性期の医療機関も慢性期の医療機関も、かかりつけ医も重要性は認識をしていますので、私どもの呼びかけに応じて、それぞれの地域地域で、いまネットワークを作っていただいている状況です。ただ、その中でいちばんのネックになる部分は慢性期、かかりつけ、急性期が終わったあとの患者さんを受けてくれる医療施設がまだまだ不足をしており、いかに受けていただくか。特にかかりつけ医の方々は、クリニックで患者さんが来るのを待っているだけではなくて、自ら在宅に出掛けていくアクションを取っていただくかの働きかけが、いちばん力を入れているところです。
 それから、これは先生の2つ目の質問にも関わってくるところで、在宅で最後を看取れるためにどこの部分がいちばん大切か。いちばん大切なのは、実際に自宅で亡くなっていく患者さんを看取るかかりつけ医の先生です。かかりつけ医の先生は、いまはまだ外来しかやらない。自分をかかりつけとしている患者さんでも、自宅への訪問診療にはなかなか応じにくいと、いろいろな理由で応じにくいという先生方がおられます。我々行政としても、どうすれば各かかりつけ医、開業の医師が、より自宅に住まう患者さんの場に出掛けて、そこで診療していただけるようになるか。何が障害になっているかという問題を早く認識をし、その解決に努めていきたいと考えていますが、まだこれは道途上です。なるべく多くの県民が望むように、自宅で最後を迎えられるような体制を引き続き構築をしていきたいと考えています。

○安藤代理人(神野委員代理) いつもお世話になっておりまして、ありがとうございます。東京都の連携の中で、現在東京都は非常に療養病床が少ないということで、東京都のデータでは千葉、埼玉、神奈川に約5,000人の方が療養病床を利用するために流出しているということです。そのため千葉の慢性期病院においてはそのような影響を受けて困っていらっしゃるとか、千葉でも周辺部の県に患者さんをお願いしているということを聞いていますが、どうですか。

○井上参考人 正直を申し上げると、我々にとっては負荷になっています。データで示しましたように、もともと人口あたりの病床数が全国47都道府県中45位と非常に医療資源が乏しい中で、ほかの県、具体的に言うと東京から千葉にわざわざ回復期の病床に入院するために来られる方を受け入れる余裕は、県全体で見るとありません。
 ただ、これは個々の患者さんが来られ、個々の病院が受け入れられることについて行政が介入することではないので、私どもとして何か申し上げたりアクションを取っているわけではありませんが、県外からこうして回復期の治療のために千葉県のほうに来られる方が相当数のぼることは我々も認識をしており、今後これをどう対応していったらいいかなということは行政が介入する問題なのか、そうでないのかということも含めて、いま考えあぐねているところです。今後、東京都と行政同士で医療連携パス等の意見交換をする中で、このことも議題の1つにはなってくるかなとは考えています。

○尾形委員 大変興味深いご報告をどうもありがとうございました。スライドの前半で、大都市部の高齢化問題というのがこれからの最大の問題で、私もそのとおりだと思いますが、そこで1点ご質問です。これまで我が国で進んできた、言葉は悪いですが、地方での高齢化問題と比べたときの大都市部の高齢化問題との相違というか、医療政策という観点から考えたときの強み、あるいは弱みといったようなことについては、どのようにお考えかということをお聞かせいただければと思います。

○井上参考人 ご質問ありがとうございます。地方の高齢化と、これまでの地方の高齢化と、これからの都会の高齢化さまざまな点が違いますが、いちばん違う点は何かというと地域社会、コミニティー、言い方は何でもいいですが、そうした地域の近所同士の支援のつながりが存在するかどうかという点です。私は田舎の農村の生まれですが、いまでも田舎に帰ると周りはみんな見知った方たちです。農作業をしてきた方々と一緒に住んでいます。いまは千葉県の集合住宅に住んでいますが、隣の人がどんな人か顔も知らない状況で日々生きています。隣の人がどんな人かを知らないという人たちの人口集積地は、これまでの地方の村人お互いみんなが知っている中での高齢化とは全く様相が違い、一人ひとりが孤立して、一つひとつの家族がほかと結び付きを持たずに生きている中での地域医療というもののあり方というのは、これまでの農村や地方の地域医療のあり方とは全く様相が異なる。この点が、とても大きな障害だと。新たに人工的な地域というものを作っていくには、どうすればいいかということをいま考えています。
 まだ我々として確たる方向性を持っていませんが、1つの団地あるいは1つの地域、全体を束ねる地域社会というものを農村では自然にできてきましたが、都会ではこれからある程度人工的に行政も介入して作っていかなければ、地域での医療あるいは在宅の医療というものが、うまく機能しないのではないかと考えています。

○伊藤委員 先ほど、東京都の医療資源の豊さとの連携というお話がありましたが、特に東京の中央部というのは病床数にしても医師数にしても人口あたり大変飛び抜けて高いというところで、こことの通勤というか、それの時間の多少の障害はあるにしても、いかにうまくご利用なさるかというような計画というのはお持ちかどうかをお尋ねします。

○井上参考人 私ども、その計画を持っていないのは、なかなか理由が難しいかなと考えているからです。いままでは、よく言われてきたのは「所詮、あなた方は千葉都民だろう。何か問題があれば、東京に医療を受けに行けばいいじゃないか。医師が少なかろうがベッドが少なかろうが、東京があるじゃないか」という言い方を時々されることがありました。それは、高齢化が進む前の時点であれば多くの方が日々東京に通っているわけですから、そうだったかもしれません。医療も国内版メディカルトゥーリズムで東京に受けに行けばいいということは、一面たしかであったと思います。
 今後高齢化が進んで、60代、70代、80代の方が増えていくと、彼らは以前のようにモーバイルではないので、東京まで20km、30kmかけて移動して、そこで医療を受けることが今後できにくくなってまいります。住んでいる場所から半径5km、10kmの中で、東京ではなく千葉の地元でいかに医療を確保するかというのは、今後我々が新たに抱える課題で、いままでのように隣に東京があるから大丈夫という状況とは違ってくる。違ってくるいちばんの要因は、高齢化の進展を要素として、我々はいつまでも東京に頼るわけにはいかないと考えています。

○池主委員 医療計画の中の歴史的な位置づけを見て、歯科は病床規制から始まっている中で常に潜在化している立場にあるわけですが、今回この資料で在宅医療の中で歯科診療所が出てきて少し安心しました。その前の医療提供維持のための特有の課題の中の「認知症・運動器疾患・終末期」に、摂食嚥下という意味で、すべて関与している部分が口腔の問題であるかと思います。4疾患循環器型の地域医療連携パスという、これは極めて本当に素晴らしい構想だと思いますが、その中のかかりつけ医の中に当然歯科医は入っているだろうと認識していますが、これはいかがでしょうか。

○井上参考人 そのとおりです。入っています。我々は今後の高齢化社会への対応を考えていくときに、いままで以上に歯科医が地域医療に参画をすることは大切になるだろうというのは県内の共通な認識です。例えば、いま千葉県内で胃ろうで栄養を受けている方は約2万人近くおられます。我々仮説としては、もし歯科口腔ケアというものが徹底させることができれば歯だけではなくて、広く嚥下能力ということを含めて、歯科医の仕事として歯科口腔のケアというものをもう少し徹底させることができれば、もう少しより多くの方がより長い期間、自分の口から食べることができるようになるのではないかと。
 このことは、それぞれの患者さんの生活の自立あるいは自宅で最後まで過ごせるかどうかにも直接関わることで、我々はいかに歯科診療所が地域医療、高齢期の医療、在宅での医療に、より積極的に関わってもらえるような施策を取るかということは大事なポイントの1つだと考えています。ご指摘ありがとうございます。

○武藤座長 ありがとうございます。また後ほど総合討論もあります。井上理事、ありがとうございました。
 次は、山口県宇部環境保健所の惠上所長から、「地域医療連携体制構築に関する保健所の関与」ということで、ご発表をお願いします。

○惠上参考人 山口県宇部環境保健所の惠上と申します。どうぞよろしくお願いします。本日は、地域医療連携対策の構築・評価にかかる保健所の企画・調整機能の向上に資するため、平成18年度から実施してきた研究事業を中心にして発表してまいります。なお、研究事業は地域医療の現場を対象として実施していますので、発表内容がやや細部にわたることをお許しください。
 これは、医療法の改正の主な経過ですが、医療計画への保健所の関与は、平成2年6月及び11月の両通知から始まっています。
これは、両通知の内容です。平成2年6月の通知は、現在の健康局サイドからのものです。また11月の通知は、現在の医政局サイドからのものです。これらの両通知に基づき、保健所としては二次医療圏単位の地域医療計画への関与を始めています。
 これは、第5次医療計画の経過ですが、平成19年7月、医政局の医療計画作成指針及び疾病又は事業ごとの医療連携体制構築指針、健康局の医療計画の作成・推進における保健所の役割の各通知において、保健所の役割や位置づけが明記されています。
 これは、第5次医療計画の内容です。保健所の役割は、医療計画作成指針及び疾病又は事業ごとの医療体制に記載されています。医療計画作成指針では、保健所が圏域連携会議を主催し、医療機関相互又は医療機関と介護サービスの事業所との調整を行うなど、積極的な役割を果たすことが助言されています。また、医療体制の総論では、圏域連携会議について、医療計画作成指針と同意の内容が記載されています。さらに各論では、保健所は地域保健対策の推進に関する基本的な指針に基づき、また健康局総務課長通知「医療計画の作成及び推進における保健所の役割について」を参考にして、医療連携の円滑な実施に向けて医療機関相互の調整を行うなど、積極的な役割を果たすことが助言されています。
 次のスライドは飛ばします。これは、平成18年度~平成21年度の実践的な研究の内容及び方法です。研究の目的としては、医療連携体制の構築・評価に係る保健所の企画・調整機能の向上に資するため、(1)の全国保健所の関与状況から(6)の市型保健所の関与のポイントまでの6項目を明らかにすることです。研究の方法としては、全国保健所の関与状況を把握するためのアンケート調査、地域医療連携体制の構築・評価の現場を把握するための現地ヒアリング調査を実施しています。なお、アンケート調査は平成20年度及び平成21年度の実施であり、本日は平成21年度の経過を発表します。また、現地ヒアリング調査は、47事例実施をしています。
 これは、平成21年度のアンケート調査における全国保健所の関与状況です。アンケート調査は、8月に実施をしています。関与している保健所は、平成20年度より2割高く約5割となっており、県型保健所が約6割に対し市型保健所が約2割と大幅に低くなっています。これは、指針や通知における市型保健所の位置づけや国庫補助事業の実施主体などが影響しているものと考えられています。
 次のスライドは、保健所が果たしている役割の状況です。果たしている役割は、圏域連携会議の開催が約7割、情報収集や施設調整が約5割と調整機能を発揮していますが、住民への普及啓発は4割弱と、やや低くなっています。
 これは、関与の疾病及びその地域連携パスの導入状況です。医療体制構築指針で優先的な関与が必要とされた脳卒中の関与は7割強と最も高くなっており、また例示された地域連携パスの導入は全体の5割強に及んでいるなど、厚生労働省の通知を一定程度尊重しています。
 これは、医療連携体制運用事例に係る評価指標の設定の状況です。評価指標の設定は約2割にとどまっており、PDCAサイクルがまだ普及しておりません。平成21年度前半の段階では、大半の関与事例において医療連携体制の構築に専念しており、評価指標を検討するまでには至っていないことによるものと考えられます。
 これは、同一の二次医療圏域に県型保健所が併存しない、保健所設置市における都道府県からの医療計画業務の受託の状況です。府県からの受託は、約4割と低い状況にあります。本来ならば二次医療圏域に県型保健所がない場合には、医療計画の作成推進業務の実態に即し、都道府県は当該市に委託することが望ましいと考えられます。また、同一圏域内に市型保健所及び県型保健所が併存する45保健所設置市では、受託市は1中核市及び1保健所政令市にとどまっています。
 これは、医療連携体制構築担当者の主な職種です。保健所が約5割と行政職と並び、連携の中心職種となっています。
 これは、富山県新川厚生センターによる在宅終末期医療連携パスの運用事例です。保健所関与のポイントとしては、センターが公平公正な調整役として事例検討会や活動研修会を通じ連携パスの普及と関係施設の参画を促進しています。また、この事例検討会は10年余り年6回開催され、毎年延べ170人程度が参加しており、医療連携体制の基盤づくりに貢献しています。
 これは、富山市保健所による脳卒中地域連携パスの運用事例です。保健所関与のポイントとしては、富山市では市生活習慣病総合対策の二次予防・三次予防として、医療連携体制構築を位置づけて、有識者検討会を経た上で着手していることです。また、市保健所では連携を主導するのではなく、公平公正な事務局として連携の支援に徹し、地域連携の要石として機能しています。このほか地域連携パスの評価のため、各病院で連携パスの個人データ入力をしていましたが、負担感が大きいとして各病院で作成した総括表で、運用状況を今後検討していく予定です。
 これは、兵庫県姫路保健所による脳卒中地域リハビリテーション体制構築の事例です。保健所関与のポイントとしては、平成20年度に市保健所が地域連携パスの運用を目指す研究会の事務局を引き受け、病院間相互の連携拡充を支援しています。また、在宅ケアに関する課題を検討するため、維持期ネットワーク連絡会を保健所が設置して運用支援をしています。このほか、圏域リハビリテーション支援センターの運用業務を受託して、地域調整の中核機関として機能も発揮しています。
 これは、大阪府吹田保健所による急性心筋梗塞地域連携パス導入促進事業の事例です。保健所のポイントとしては、既に保健所が関与するときには、複数の急性期病院が複数の地域連携パスを先行運用していました。そこで、まず共通目標として患者の長期予後の改善とQOLの向上という患者の視点を共有することから、共通化の検討を開始していることです。また、圏域唯一の包括的心臓リハビリテーション施設を効果的・効率的に活用するという医療者の視点でも調整をしています。このほか、退院時の発症登録及び受診時のかかりつけ医登録を行い、1年後にアウトカムを評価、把握する評価システムも整備しています。
 これは、島根県松江保健所による安来能義地域糖尿病管理連携システムの事例です。保健所関与のポイントとしては、協議会設立10年余りを迎え、現在保健所は必要に応じ、情報収集や事業企画で協議会事務局と協働しています。また、保健所では適正管理対策等の評価事業に当たり、協議会事務局と県保健環境科学研究所の間を効率的に調整しています。なお、7年余りの登録患者の約8割に当たる約600人について登録管理の前後を調べると、登録者のヘモグロビンA1Cの管理や合併症の発症数が有意に良好でした。
 これは、保健所の役割です。現地ヒアリング調査から、住民への普及啓発までの6項目に取りまとめています。表は医療連携体制構築の進行段階分類ということで、創設期、構築期、維持期、発展期の4つを挙げています。
 これは、保健所関与への期待です。現地ヒアリング調査から公平・公正な立場で企画・調整をすることから、連携体制構築のための予算を確保することまで5項目に取りまとめています。各項目には、それぞれ保健所が関与した場合の効果を記載しています。保健所関与の促進方策としては、保健所の本来業務として医療連携体制の構築を「地域保健対策の推進に関する基本的な指針の見直し」で位置づけることです。また、保健師が医療連携体制構築を担当する中心職種となっていることから、地域における保健師の保健活動指針においても明記するとともに、企画担当部署に保健師を配置することが望まれます。
 これは、保健所の関与のポイント点検票です。医療連携体制構築の進行段階的に創設期から構築期まで及び維持期から発展期までにそれぞれで分けてお示ししています。
 これは、保健所による評価の考え方です。医療連携体制構築指針では、ストラクチャー指標、プロセス指標及びアウトカム指標が例示されています。この一方で、現地ヒアリング調査から保健所が直面する現場においては、連携体制についての存在評価、アウトプット評価、アウトカム評価が重要であると考えています。
 これは、保健所による評価のポイントです。脳卒中や糖尿病ではアウトカム達成に数年掛かるため、進捗管理指標を設定することが重要であると考えられます。この間の評価指標を圏域で効果的・効率的に入力・収集できる体制を整備することも重要となります。また、一定水準の評価体制の維持のためには、評価の意義・効果・費用の認識を共有する取組が重要となります。保健所は、主に地域資源の活用率、人口面積のカバー率、保健所のパスの記入率等地域として総合的な評価を展開することが重要となります。
 これは、市型保健所の関与のポイントです。まず、保健所設置市では枠の中にありますように、全国4割程度の医療資源を占めていることから、市型保健所の関与が極めて重要となっています。保健所設置市は、生活習慣病対策に4疾病の地域医療連携を位置付けて、有識者による検討を経て着手する工夫をすることもできます。そして、都道府県では、医療資源が集中している実態に即し、保健所設置市に医療連携業務を委託することが望ましいと思われます。このほか、厚生労働省では医療計画の実施主体を都道府県としているため、保健所設置市が医療連携業務に関与できるようにするための位置付けを図ること。また、医療連携体制推進事業の実施主体に保健所設置市を加え、市型保健所の取り組みを推進することが重要となります。
 これは、平成21年度医療連携体制推進事業の主な要綱です。当該事業の実施主体は都道府県に限定されており、平成21年度で39都道府県が実施していますが、保健所設置市の取り組みを促進するためには、実施主体を保健所設置市にも拡大し、財政的に支援することも重要と思われます。
 いちばん最後のスライドは、平成22年度及び平成23年度の全国保健所長会保健所行政の施策及び予算に関する要望です。この中で、医療制度改革に関連した方策の推進及び地域保健体制の総合的な見直しに関連した方策の推進に向けて、医療連携体制を構築するための連携調整における保健所の役割をより明確にすることを要望しています。些か早口で申し訳ありません。以上で終わります。

○武藤座長 惠上所長、ありがとうございました。惠上所長のご発表について、何かありますか。ないようでしたら私から質問ですが、各関係者の調整に圏域連携会議が非常に重要だと思いますが、実施状況というか、市型、県型の保健所がありますが、これらの保健所類型での圏域連携会議の開催状況の違いはどうでしょうか。あるいは、その課題というか、いかがでしょうか?

○惠上参考人 アンケート調査で圏域連携会議の開催は、資料にございますが、約7割の保健所が取り組んでいます。

○鈴木委員 保健所の役割ですが、これを見ると地域において、もともと積極的にそういった取り組みをしようという医療機関なり医師会なりがあって、それに保健所が協力するというような位置付けが多いような気がしますが、位置付けとしては指導よりも調整役ということで、保健所が指導的に最初からそういうことを仕掛けていくとか、そういう事例はありますか。

○惠上参考人 指針では、連携会議の主催、調整が、保健所の主な役割として書かれていますが、都道府県によったら、本庁や保健所が中心になって、地域の医師会や基幹病院に働きかけていく事例もあります。

○鈴木委員 ないわけではないかもしれないけれども、そういうのは極めて限定的に、実際は医療機関や医師会の活動に乗っていくというか、そういう役割が主ではないかと思いますが。

○惠上参考人 主な役割は先生がおっしゃられているとおりです。保健所の主導は、2、3割という印象です。

○伏見委員 スライドの9枚目の保健所の果たす役割の中で、医療資源情報収集とか評価指標の収集分析という項目がありますが、具体的にどんな情報を集めていらっしゃるのか。それが医療計画の策定評価に、どのように発表されているのかがもしわかりましたらお教えいただきたいです。

○惠上参考人 最初の医療資源等の情報収集ですが、例えば圏域連携会議でそれぞれの疾病別の医療機能リストを作る際に、本庁の資料等を参照して圏域独自の情報を収集したりしています。この際に保健所がやると、行政調査として病院や医師会の協力が良いということで、保健所の方でしてほしいという声も上がっています。5番目の評価指標の収集・分析は、保健師が関与する取組の中で評価指標を設定しているものについては、保健所が事務局となって評価指標を収集・分析しているものもあります。なお、なかなか保健所のみでやるのは難しいということで、この際には医師会や医療機関の十分な協力が必要になろうかと思います。

○武藤座長 ほかによろしいですか。保健所の役割が極めて重要だと思うのは、1つはいま伏見委員がお話したように地域資源の情報収集、あとは連携パスの実施状況とか、連携パスのアウトカム評価とか、そうした情報の分析・解析、それをまた治療計画に反映するといった情報発信センターが必要だと思います。でも、実際にこれを行うのはなかなか大変だと思います。その辺の課題は何かありますか。

○惠上参考人 先ほどの発表の繰り返しになりますが、アウトカム達成には数年かかるので、それまで保健所として、圏域の医師会や基幹病院とともに連携体制を維持していくことが、最も重要だと思います。臨床の先生方がこと細かに、例えば地域連携パスのデータをすべて入力することを始めたものの、だんだんデータの収集・入力作業が負担に感じられて、もう少し簡便にということで地域連携パスが簡単になっていくことがよくあります。そのあたりを予め、医師会や基幹病院の先生方とよく協議して、効果的・効率的に入力収集できる、それも一定期間継続できる体制をよく考えることが重要であると思います。また一定期間継続するということになりますと、保健所所長も、医師会や基幹病院の先生もいろいろ異動がありまして、人が替わっていきます。そういう中で評価体制を維持するというモラールが落ちないように、評価の意義・効果・費用に関する認識共有を継続していく方法を事前に十分協議しないといけないと思います。そんなに簡単にできるものではないとも思っています。しかし、十分に協議をして、こうしたことを検討すれば、その都度、状況に応じながら、評価体制は継続していくと思います。

○武藤座長 ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。

○安藤代理人(神野委員代理) この前「社会保険旬報」で、山口県は非常に急性期から回復期、慢性期までバランスよく揃っていて、日本の中ではモデル的というか、平均値に最も近い位置にいるとあったのですが、それは行政の指導でそのように揃えたのか、あるいは偶然にそうなっているのか、そこら辺を教えてもらえますか。

○惠上参考人 行政の指導ということではなくて、地域の医療ニーズに適切に応えていく中で、医師会や基幹病院の先生方と一緒に創り上げていったものではないかと思います。補足になりますが、これからの保健所の役割としては、地域連携パスなどのツールが普及しますと、急性期病院から回復期病院までは多分流れていくと思いますが、そこからの連携、医療介護連携とか、医療とケアの連携とかは、保健所として、今後重点的に取り組むべき課題と思っています。

○武藤座長 ありがとうございます。次に進めます。次は伏見委員からのご発表です。「医療圏における地域疾病構造及び患者受療行動に基づく地域医療計画の評価について」ということでお願いします。

○伏見委員 発表させていただきます。私の発表は、近年、電子化の推進などによって医療関係のデータが非常に増えてきていることと、コンピュータの普及によってそのようなデータの分析が一般的になってきていること、そのような背景を基に、「地域医療データの分析の特徴とその意義」について、簡潔にまとめさせていただきたいと思います。
 まず1頁目ですが、地域医療データ分析というのは、患者調査等の既存の官庁統計データ、公表されているDPCの調査データ、これは中医協の調査資料として年に1回公表されているものです、それから電子レセプトデータを利用して、特に疾病分類としてのDPC診断群分類等を活用して、地域医療の実態を定量的に把握する分析手法です。このようなことをここ数年にわたり研究しておりますので、その研究成果としてまとめさせていただきます。
 この方法を用いてできることは、地域における医療提供状況をわかりやすい形で可視化すること、および限られた地域医療資源(医療従事者、設備、医療費等も含めて)をより良く‘配分’するための定量的かつ客観的な指標を示すことです。
 初めに、DPCの診断群分類について、ごく簡単に説明させていただきます。DPCとは、Diagnosis Procedure Combinationの略で、我が国で開発されました診断群分類です。病名と診療内容に応じて患者を分類する手法です。分類される数は、大体2,000から2,500ぐらいになります。
 そのコード体系としては、下の図のようなコードを持っておりまして、体系的には14桁のコードのうち上位6桁が病名を表して、下位に行くに従ってどのような手術を受けたのか、さらに細かく手術や処置の内容、合併症等の状況がわかるようになっています。
 2頁目の下の図は、DPC傷病名分類の例です。現在は18に増えていますが、MDCという診療分野の体系に分かれていて、その中にさらに細かく、右側の列に書いてあるように、病名分類が作られています。この病名分類の数は約500になっていて、見ていただくとわかるように比較的一般的な病名が使われていますので、行政関係者あるいは住民、市民でも、理解しやすい分類になっているのではないかと思います。DPC分類を使って、地域の疾病構造や、どのような治療を受けているかという概要を把握することができる仕組みになっています。
 3頁目の上の図に示すように、医療計画4疾病につきましては、DPCの傷病名分類との対応が作られていて、DPCのコードに基づいて集められたデータを、医療計画の4疾病に対応させて集計分析することができるようになっています。
 3頁目の下の図に示すように、DPCに参加している病院の個別病院のデータが、中医協の資料として、毎年1回公表されています。最新のものは平成22年6月30日に、平成21年度7月から12月の入院患者について、病院の実名入りで、疾病別の患者数あるいは手術の実績等のデータが公表されております。図の下部に具体的にどのような形でデータが公表されているかが示してありますが、病院の名前、疾患名等が入った形で、それぞれの病院がどのような治療実績を挙げているかがわかるようになっています。
 4頁目上の図は、別のデータソースの例として、厚生労働省の統計情報部が実施している患者調査及び医療施設静態調査の個票データを都道府県等の行政機関がデータとして取得して、行政の運営使用として利用可能となっていることを示していますこれは以前から利用可能ではあったのですが、平成22年8月に出された通知によってより迅速に利用可能となっています。
 患者調査等のデータを用いると、DPC病院以外のデータも広く得ることができます。DPCデータは、急性期病院、大体1,600病院のみのデータですが、患者調査の退院票は、抽出調査にはなっていますが、基本的に日本の全医療施設が対象になっています。医療施設静態調査等は、病院・診療所については、基本的な機能がすべてわかるような形のデータになっています。
 4頁下の図は、患者調査のデータをDPCコードとリンクすることで、患者調査データにもDPCコードを付けることができることを示したものです。DPCの調査データと患者調査のデータを同じ基準で集計して分析することができるようになっています。
 5頁上の図は、北海道大学の藤森先生の研究事業で、電子レセプトを北海道の道庁で集計して分析に用いています。国保、健保連、協会けんぽ等から、匿名処理の下に電子レセプトデータを集めて、北大病院でさまざまな分析を行っています。これは3つ目のデータソースといえると思います。これについては、あとで詳しくご説明いたします。
 5頁の下の図は、今まで示した3つのデータソースを比較したものです。いちばん左側は、DPCの調査公表データです。これは基本的に急性期病院のみのデータです。いま公表されているものは病院別の集計になります。真ん中の列が、患者調査の退院票で、これは行政機関であれば個票を得ることができます。右側の列が電子レセプトデータで、これも手続によりますが、個票で入手することも可能になっております。抽出対象は、DPC調査データが急性期病院に限られているのに対して、それ以外のデータは全病院あるいは各保険者単位です。調査票数については、DPCデータは非常に数が多くて、詳細なデータが含まれています。一方、患者調査の退院票のほうは、数としては比較的限られて、約1カ月分の退院患者のデータのみが入っています。一方、電子レセプトについては、当然のことながら、すべてのレセプトについてリンクさせて、分析することができます。外来、あるいは患者の転院、転所等も分析できます。抽出割合については、患者調査の退院票のみ、小規模なサンプリングになっています。病名分類については、ICD10あるいはDPC分類がついています。手術の分類、患者の住所、これはどこに住んでいる患者がどこに行っているかという分析に必要ですが、退院票ではわかります。住所の分析は、国保等のデータを使えばある程度の推定はできます。連携については、レセプトデータである程度わかります。その他の個別の患者の属性等もある程度わかるようになっています。
 以上のことから、それぞれのデータソースごとに適している利用目的をまとめると、DPC調査公表データは、個別病院、特に急性期病院の診療実態、あるいは診療機能の把握に向いているといえます。患者調査退院票は、地域の医療提供状況全般の把握に向いています。電子レセプトデータは、診療行為あるいは医療費別の患者動態、あるいは医療連携の動態を把握することに向いています。
 6頁上の図は、DPCの公表データを用いて、東京都の例ですが、主に大学病院でそれぞれ比較的特殊な疾患の手術の実績がどの程度あるかを示しています。ここにお示しするように、大学病院であってもそれぞれの専門分野によってかなり実績の違いがあって、おそらく得意な分野、あまり得意でない分野が明確に分かれていることがわかります。いままではこのようなデータは全く公表されなかったのですが、このデータからはそれぞれの病院の特性がわかります。患者を紹介する時や自分で病院を選ぶときの参考に活用できるデータなのではないかと思います。
 6頁下の図は、都道府県別の公表データを用いた、手術患者の集約状況の分析の例です。我が国では、医療機関ごとの手術実績があまり高くない、要するに専門医療が分散してしまっていることが課題として挙げられていますが、その違いの実例を示したものです。6頁下図の熊本県は医療機関の機能分化が進んでいると言われている地域ですが、虚血性心疾患の手術患者の集約状況という形でみると、済生会病院と熊本中央病院が半年間で200例を超えるような実績を挙げていて、この2病院に患者が集約されていることがわかります。一方、すぐ隣の長崎県のデータが7頁上図です。長崎県は医療機関の機能分化があまり進んでいないということを県の担当者から聞いておりますが、データをみると、それぞれの病院の手術実績はあまり多くなく、手術が集約されていないことがわかります。循環器の専門病院として、後期専門研修の研修医を引き付けるような医療機関があまりないことが課題となっているようです。
 7頁の下の図は、このようなデータを組み合わせることによって、それぞれの地域において、それぞれの医療機関はどのような形で機能を分担しているか、あるいは分担していくべきかという方向性を見るようなデータを得るとこができることを示しています。診療分野別に縦軸に患者数、横軸に二次医療圏の全患者に占める割合(シェア)をとっていますMDC06は消化器系の患者で、右上に済生会のデータがあります。このデータから、年間に1,500人を超える患者を診ていて、二次医療圏の5割ぐらいの患者を占めていることがわかります。消化器の分野では、済生会、国立、社保ともに、かなり実績を挙げているということがわかります。
 MDC05は循環器系の分野ですが、済生会病院は年間400例を超える実績があって、地域シェアを圧倒的に取っていることがわかります。一方、社会保険病院、国立病院は、循環器治療を行っていますが、実績はあまり高くないといえます。済生会病院がこの地域で循環器治療の主導的な役割を担っていることがわかり、機能分化の1つの方向性を示しているとみることができます。
一方、MDC01の脳外科領域をみると、社会保険病院は年間に100例程度の患者しか診ていませんが、この領域は患者の数はもともと少ないですから、地域の8割近い患者を占めて地域貢献度が非常に大きいことがわかります。手術の実績が少なくても、地域において基幹的な役割を果たし、地域に貢献している医療機関として、地域での機能を認めていく必要があることがわかるデータになっています。
 8頁の上の図は、産業医大の松田先生の資料です。これは、熊本医療圏の救急医療のデータで、DPCデータで公表されております。このように地図上にマッピングすると、済生会、国立病院機構、赤十字病院が熊本市を中心に3つの方向の救急医療をある程度分担していることを示しています。3つの病院で救急医療を分担していることがわかるデータになっています。
 8頁下の図は、国立がんセンターの石川先生が、GIS上にマッピングしたデータで、DPC病院とその周辺の人口構造から、その病院がどの程度の時間距離の範囲で住民の人口をカバーしているかを表したものです。緑色は急性期病院に30分以内で行ける地域ですが、盛岡市付近などに認められます。一方、紫色は90分を超えないと急性期病院にたどり着けない地域で、三陸沿岸の地域に目立ちます。このように地域によって急性期病院へのアクセスがかなり違うことも示すことができます。
 平成23年の1月に行政担当者向けにセミナーを開催し、公表されているDPCデータを用いて分析する手法を示しました。9頁の上図はその際に使ったデータの例で、ホームページ上で公開されているデータの分析例です。
 これは佐賀県の例ですが、佐賀県のそれぞれの病院が、循環器系疾患でどのぐらいの実績があるかを簡単にグラフとして表すことができます。このデータはエクセルの表なので、一般的な分析能力があれば自由に使えるレベルになっています。
 9頁の下の図は、データソースが違って患者調査のデータを使っています。患者調査のデータには、患者の住所データが入っていますので、患者の住んでいる地域と、入院した地域を組み合わせてマッピングをすることができます。この図は、福岡県の循環器系の手術を行った患者のデータの例です。左側に患者の居住地の医療圏が13個並んでいます。色分けされているのが、入院した先の医療圏になります。本来であれば、二次医療圏の中で医療が完結するべきと考えますと、13色に塗り分けられるべきなのですが、実質的にはこのように4色ぐらいの色分けになっております。
 具体的には、福岡周辺の患者は福岡二次医療圏に集まってきていますし、久留米周辺の患者は、八女や有明も含めて、久留米に集まってきています。飯塚もそうです。北九州も周辺から患者が集まってきています。実質的には、13ある二次医療圏が4つぐらいの医療圏に再構築されているということで、これをマッピングとして表すこともできます。
 10頁の上の図は東京都の例です。先ほど千葉県の話がありましたが、この図は左側に療養病床に入院した患者が住んでいる東京都の二次医療圏、右側に入院先を色分けしたものです。もっとも特徴的なのは、棒グラフの右端のピンクの部分で、これは都外への入院を示します。データ上はどこの県かというデータもわかるのですが、当然ながら東京周辺の県が多いのですが、どの地域も2~3割が都外の療養病床に入院し、かなりの数で流出していることがわかるデータになっています。
 下の図は科学的な分析を加えたもので、どういう患者が二次医療圏を超えて移動するかを統計的に分析した例です。棒グラフが長いほど、遠くの病院に行く可能性が高く具体的には心臓、整形外科、がんの手術、すなわち待機的で、比較的難度が高いような手術を受ける患者は、より遠く、おそらく専門病院を選んで入院しているということを表しています。一方、緊急性の高い脳外科、外傷手術等は、あまり移動しない。高齢者は、特に移動度が低く、今後高齢化が進むと、このような移動の形がかなり変わってくることがわかります。
 11頁は、電子レセプトデータを北海道で分析した例です。上のデータはニーズ、下のデータが提供体制で、どこで医療を受けているかを表します。国保のデータを使うと、保険者から市区町村がわかるので、そこを患者の住所と見なして分析した例です。このように、ニーズはほぼ人口分布に応じて、北海道全土に広がっていますが、下の図に示すように、実際に冠動脈のカテーテル治療を行っている施設を見ると札幌周辺あるいはそれぞれの地域の都市部に限定されています。つまり、これらの地域に患者が大きく移動して、治療を受けている実態もわかると思います。
 12頁の図は、別の視点として、医療資源の必要度の推計方法を表した例になっています。疾患別に、標準的な在院日数はわかるので、それに応じて疾患別に急性期病床必要数を推計することができます。具体的にある二次医療圏の例ですが、MDC診療分野別に、例えば年間に患者が6,380人いて、標準在院日数をDPCデータで全国の標準値を求めれば、それらから必要な病床数がわかります。これを用いて計算していきますと、いちばん下から2番目の「合計」ですが、この地域の急性期病床として必要な数は4,600、現実にいまの一般病床が9,200あるということですから、急性期病床として機能する必要があるのは半分ぐらいではないかということも推計できるようになっています。
 12頁下の図は、この方法を使って、医師、看護職の充足率等を推計したものです。これは大雑把な推測ですが、先ほどの例から、急性期病床と、それ以外の慢性期、亜急性期の病床数が推計できますので、医師については、急性期は5床に1人ぐらいの医師数が必要として推計します。これは大学病院を除いたデータです。慢性期、亜急性期については、一般病床の16:1の基準を当てはめまして、医師の推計値と現在の医師の数から充足率を推計してみますと、青い線が医師の充足率です。推計上は100%を超えているわけですが、東北地方の一部では100%を切っています。いちばん低いのは岩手県です。上の棒グラフは、先日厚生労働省で行ったアンケート調査の結果ですが、その結果では岩手県がいちばん医師の不足感が強いというデータだったと思います。アンケート調査という主観的な調査と客観的なデータが一致した形となっています。赤い線は看護職ですが、先ほどご指摘がありましたように、東京近郊、関東地方では100%を切っておりますので、潜在的な不足状態にあるのではないかということがわかります。
 13頁の図は、医療資源必要量の点からのまとめですが、急性期病床としては46万床ぐらい、医療の労働力の充足率については、北海道、東北の医師不足、関東、東海での看護職不足、それ以外に、今回はお示ししませんでしたが、ICU病床、回復期リハビリテーション病床等も推計することができ、これらについては、かなりの不足があると考えられます。
 最後の13頁の下のまとめですが、DPC調査データ、患者調査データ、電子レセプト調査、基本的に3つのデータソースがありますが、これらを用いて地域医療提供体制を定量的に可視化することができ、さらにこのようなデータを都道府県レベルでも活用できる状況になってきていると言えると思います。
 具体的な分析の視点ですが、項目2のように、地域における医療機関の役割の点から、それぞれの医療機関の機能評価として、病態別に、実績及び地域貢献度というものを表して、専門性を明示し、機能分化、医療連携を促進していくことができるのではないか。項目3のように、病態別の地域医療圏の点から、専門性あるいは緊急性に応じて、医療圏はかなり異なっているので、それらに応じた設定が可能ではないか。項目4のように、地域医療資源の評価として、急性期、亜急性期医療については、必要量あるいは加不足量をDPCデータ等からある程度推計できるということです。項目5のように、今後の地域医療保健計画に、こういうデータを活用、応用していくことが可能になってきていると言えます。以上です。

○武藤座長 ご意見、ご質問はございますか。

○伊藤委員 大変興味深いデータをご紹介いただきまして、ありがとうございました。北海道におけるDPCの医療提供施設ですが、最も時間が重要視される救急のアクセスを示していると思いますが、DPCのデータを含めて、例えば救命率がどのくらいだったのか、社会復帰率はどのくらいだったか、こういうものが出るような要素はあるのでしょうか。

○伏見委員 非常に重要な課題だと思います。ただ、前者の救命率については、死亡率のデータもあります。ただ患者の重症度、病態というのは千差万別ですので、単純に医療機関別あるいは地域別の死亡率を評価に使っていいかというのは、研究班あるいは学問的にも課題がありますので、いまは検討を続けている段階です。
 連携や予後など長期的な観点については、DPCデータは急性期に限られたデータですので、それ以降のことはありませんので、それ以降の分析には、例えば電子レセプトなどの分析を併せてやっていく必要があると思います。

○鈴木委員 非常に役に立つデータをたくさん出していただいたと思います。病態別地域医療圏という話もあったのですが、そうすると、今の二次医療圏みたいに固定するのではなくて、疾患別というような感じで、これまでの医療圏とは違っていいのだというか、そうあるべきだとお考えでしょうか。

○伏見委員 これはあくまでも実態を表したものでして、現実的にはある程度の移動手段が確保されている場合は、このような比較的高度な手術を受ける患者は、二次医療圏の境界を越えて、特定の病院あるいは専門病院等に集約しているという実態を表していると思います。それがいいのか悪いのかというのは、当然議論のある点だと思いますけれども、日本の医療機関の手術集積度とか実績というものが、かなり分散しすぎているのは以前から指摘されている課題ですので、ある程度二次医療圏にこだわらず手術、あるいはある程度高度な医療技術を集積していくということを考える上では、二次医療圏を超えた移動というものも認めていく必要もあるのではないかと考えます。

○武藤座長 こうしたDPCデータ、患者調査、レセプト情報など、前回の作成見直しから5年経って、こうしたデータを利活用できることが、今回の非常に大きなポイントでもあります。
 次に移りますが、大西さんからお願いいたします。

○大西参考人 青森県の大西です、よろしくお願いいたします。「青森県の医療計画についての考え方」です。平成20年度の医療計画の策定の状況と、実際にそれをどう評価しているか、そしてどのようなものであるべきかということを、関係者の間でまとめましたので、それを述べさせていただきます。
 まず、策定に関しては、そこにお示ししましたように、いろいろな協議会がその基になっております。これを基に、こうした協議会あるいは委員会の下に、4疾病5事業等をまとめたものであります。
 内部組織的にはワーキンググループを6個立ち上げまして、その6個を保健衛生課長、医師が束ねて、全体の進行を監視する、そして調整を図るというやり方で、健康増進計画など、全部まとめてですが、それが相互にどういう関連を持っているかをお互いに認識しながら、その中で医療計画を作ってきました。
 実際に、ほとんど国が定めた指針に基づいて行われておりまして、基本的には国の指針に従って策定しております。そして、協議会あるいは委員会の意見を踏まえまして、県独自の項目を付け加えながら、最終的にかなり分厚いものになってしまったというところです。最終的には、パブリックコメントなどを得ながら策定しました。
 ただ、次の糖尿病のところに例を出してありますが、実際には非常に分厚いものにはなっていますが、糖尿病の指針でいうと、具体的には数値目標は1つで、糖尿病腎症による新規透析導入率10%減少で、あとは調査が必要とか、ここにはありませんが、例えばいい指標であれば増加、悪い指標であれば減少といったような、実際にかなり多くの項目がありましても、現実には数字も得られないと。例えば治療中断率というのは、いまもって判断する術がないわけでありまして、そういった多くの数値が、結局は得られないまま、こういった医療計画を作っております。
 特に、そこの下にデータ収集について書いていますが、これは特に担当者の思いだと思うのですが、データ収集というのはかなり大変な作業になりまして、実際に労力、費用、経費も馬鹿にならないわけです。しかし、これは実際に多くのことの眼目になりますので、できればこうしたデータ収集の部分を、国が一括して、非常に大きなデータベースを持っていて、地方が二次的に使えるものになっていればいいのかなと思っています。国のデータは、ともすれば見易さが中心になっています。私もよくエクセルで使うのですが、使う前にトリミングしなければいけないということもありまして、そうしたデータを二次的に使用できると。そういうことを国にまとめてもらうのは、非常に重要だと思います。
 次に保健医療計画の策定に係る主な議論です。これは1例でありまして、要は実態に合った対策を立てなさいという意見も数多くいただきまして、その上で立てたわけですが、なかなか実態に合ったかどうかということは疑問のところです。
 次の保健医療計画に基づく施策の推進についてに書いてありますが、実際は、担当のかなり優秀な事務官が、土日はなく夜間もやることで、どれだけできるかというのが、この400頁という頁にまとまったわけです。しかし、実行主体が曖昧だし、実行の仕組みが不明、諸計画の関連がわかりにくい。これもそのときは議論をしたのですが、健康増進計画でいろいろと並べてみますと、どうしてもそれがストレートに伝ってこない。全体管理ができていない。例えばある委員会がまとめて全体を管理していくという方式にはなっていない。目標達成が、予算的なチェックがかかっていないものですから、そういったインセンティブがない。こういったことが言われています。ですから、次回はもっと実効性のあるものを、スリム化とか明確化、地域での普及啓発とか、そういうものを作っていきたいというのが担当者の思いです。
 特に指標ですが、これも非常にたくさんあります。しかしながら、どれをどう達成するかという、論理的なロードマップを明らかにできない指票も多くて、これが指標としての意義が見出し難いと感じているようです。
 (参考)に書いてありますが、こうしたいろいろな計画の中には、なかなか行政に大きな影響を及ぼすことがありまして、それはここでは基準病床と診療報酬に関してです。基準病床は、またあとでお話しますが、診療報酬については、確かに医療計画上は必要な医療機能ではあるのですが、実際には医療機関の状況に応じて実施できない場合もあり、また、しばしば変更もありますので、できれば医療計画での位置づけを要件としないほうがいいのではないかというのが、医療関連の担当の考え方であります。
 医療計画に関わる課題で述べておりますが、病床基準はなかなか難しいのですが、一旦病床を削減するとどうしても復活できないという事情がありまして、遊休資産化するという傾向にあります。また、不足するところは、ある程度公的な病院がカバーしていますので、そうしますと、結局そういった不足が固定化してしまうという状況にもなりまして、なかなか基準病床が有名無実化している状況もあります。ただ、基準病床はもともと最低基準ではあるのですが、実際には過剰なところが、これ以上ベッドを増やせないと廃れることが多いので、実際の意義もどうなのかという疑問があるところです。
 その次に医療計画に関わる課題です。疾病事業ごとに圏域を設定すると書いてあるわけですが、実際には、がん診療拠点病院、あるいは感染症指定医療機関等にしても、二次医療圏ごとに1箇所とか、そういった指定が結構ありまして、その辺の矛盾があるのではないか。
 実際にどうかというと、青森県、公的病院が過疎とかを含めてカバーしてあるわけですが、その疾患ごとの流れというものがありまして、住民にはそういった流れさえわかれば、自分が二次医療圏はどうのと意識する必要は全くないわけです。そういうことも含めれば、二次医療圏という考え方そのものも、考え直さなければいけないのではないかということです。
 最後に地方からの提案と書いてありますが、疾病や事業のための医療圏設定というのは不要である。これはすべての仕組みが要らないというわけではないので、またそれは考える必要があると思うのですが、少なくとも疾病や事業のためというのでは、二次医療圏の考え方は、あまり現実的ではない。
 2番目として、基準病床数です。基準及び地域の範囲について、できるだけ都道府県が自分の実情に応じて決定する仕組みとすべきではないか。ただし、全く任すというのも何でしょうから、国が一定の考え方を示した上で、そのような根本的なやり方を考えてもらったほうがいいのではないかということです。我々も、都市部に集中するというのは問題があると思いますので、その辺の仕組み的な制約は必要だと思います。
 それから、あくまでもこれはハード的なベッドばかりが言われておりますが、基準の医師数の算定、無床診数算定、そういったものも基準ないしそれに準じたものが必要なのではないかと思いまして、都道府県は実情に応じて決定するとしてはいかがかということで、まとめております。以上です。

○武藤座長 何かございますか。

○長瀬委員 最後に言われた基準医師数算定については、医師の数が少ないので、国の基準を県に任せろということでしょうか。

○大西参考人 そういうことではないです。そういうことも含まれてはいますが、例えば医師数の不平等な配置といったものがあるわけです。県がある程度そういう基準を持っていれば、議論する土台を作ることができる。そのためには、この地域にはこれぐらい必要だということを、ある程度基準を県で作れたらということでありまして、それが国である程度の考え方を示してもらえたらということです。

○猿田室長 最後のスライドですが、国の基準病床数制度の基本は、都道府県間の差をなくしていこうということでやっているのですが、ここで各県また知事に任せてしまうと、各県緩め競争になってしまいます。都市部で緩めていくと、最終的にいちばん影響が出るのが青森県だと思うのですが、そうなっても大丈夫ということなのでしょうか。

○大西参考人 私が言っているのはそういう意味ではありません。県のサイズ、人口を踏まえた上で、大枠は決めてもらうのは構わないです。ただ、その中での配分について、できるだけ県の裁量に任せてもらえればということなのです。

○猿田室長 もう1点、全体も含めてなのですが、よろしいでしょうか。

○武藤座長 そうですね。ここからは全体を含めて総括的なご発言をお願いいたします。

○猿田室長 この検討会において、基本的方向性を決めなければなりません。いままで3回の議論を踏まえると、各県の指標に基づいて、次の計画を作るときには評価をしましょうということになるわけですが、前回までの研究班の先生方のご発表とか、今日の伏見先生のご発表を聞くと、基本的方向性としては、各県の指標に加えて、患者調査、DPCのデータ、電子レセプトのデータも加えていくべきということが出てくるのかなと。
 仮にそうなったときには、今日はいちばんの県と、保健所長がいらっしゃっている中で、いま例えば伏見先生が言われたようなことを、新しい指針で、市型保健所も含めて、保健所の業務と定めたときに、全国の保健所の10割の保健所長がそれができるようになるのかというのと、いままで2つの県のご発表を聞いていて、「保健所」という言葉が出てこなかったのですが、いまの指針でも圏域連携会議を保健所が主催してやるようにと書いてあるのに、事実上中心となってできるのかということです。
 なぜこのような質問するのかというと、医療部会で現行の医療計画は、絵に描いた餅だということが言われていまして、指針では二次医療圏の設定は都道府県が自由にできるように、基準病床数も実情に合わせて、多い二次医療圏、少ない二次医療圏、数を設定してもらうというのが指針にある中で、それがなかなかできていない。
 4疾病5事業の医療圏の設定においても、基準病床数制度のための二次医療圏と違う医療圏を設定しなさいと、すでにいまの指針に書いてある中で、それができていない。ほかにもいくつかあるのですが、そのためにはDPCのデータとかレセプトのデータも将来的には含めて見直すべきというのが、いままでのご意見をまとめていくと、次の基本的な方向性に出てくる感じがするのです。
 ただ、さらに絵に描いた餅になるといけないということで、現実的なところはどうなのかというお話をしないと、また絵に描いた餅になるのではないかということで、この機会にしか聞くことはできないと思いますので、ざっくばらんなところをお聞きしたいと思っています。

○武藤座長 いまの件について、井上理事からお願いいたします。

○井上参考人 47都道府県全部の状況はわかりかねているのですが、千葉県ということで言いますと、いま伏見先生からご提案のあったような、DPCの活用、今後レセプトデータが電子化されていくに伴って活用できるリソースとしてのレセプトデータは、我々は非常に関心を持っております。このことは県内のこうしたデータの解析において、協力でき得るパートナーとしての千葉大学医学部とも、今後こうしたDPCあるいはレセプトデータが使えるようになったら、こんなことをしたい、あんなことをしたいということを、いま話しているところです。
 それですので、千葉県としては、今後こうしたデータが比較的県が使える形の環境が整えば、是非これを使って、これを基に県全体の医療政策を組み立てていきたいという強い意欲を持っております。ほかの県のことはよくわかりませんが、おそらくそうしたモデル県がいくつか出てくれば、47都道府県はその方向で動くでしょうし、それはおそらく必要なことだろうと思います。というのは、それぞれの県において局所的に抱えている問題は相当違いますので、それぞれの県レベルで、こうした解析ができないと、今後、県レベルでこうした仕事をすることがとても大切だろうと思っております。以上です。

○武藤座長 次は惠上さんからお願いいたします。

○惠上参考人 先ほどDPCの話をお伺いしていて、そのデータは、国レベルや県レベルの立場から中長期的な医療資源の配分や再配分を検討する場合に最も有効に活用されるものではないかと思いました。
 その意味で二次医療圏レベルでは、DPCのデータというのは、医療関係者が現場で感じていることを実際に数字として可視化したもので、それ自体で現場が求める短期的な医療資源の配分や再配分に直接繋がることは少ないのではないかと思います。現状で保健所は、必要に応じ、DPCのデータを含めてそのほかのいろいろな調査データを使って、医療連携体制の推進に取り組んでいます。私の保健所だけではなくて、多かれ少なかれ、全国の保健所が取り組んでいます。地域保健の中でも、医療の確保というのは喫緊の課題とされていますから、できる範囲内で全国保健所長会として、誠心誠意取り組んでいきたいと思います。

○武藤座長 大西さんからお願いいたします。

○大西参考人 特に基準病床と疾病ごとの圏域という考え方なのですが、二次医療圏という考え方が、すべてにわたって「二次医療圏」という表現になっていますので、そこは個別に考えたときに、非常にちぐはぐなものが出来てしまうと思うのです。
 がんについては拠点病院は二次医療圏にあるような話にはなっていますけれども、それはもう場所によっては直にきたり、いろいろなパターンがありますので、それをあえて二次という形に縛る必要はないのではないかなと思っていまして、そういった疾病に対する考え方、保健所単位の事業というのはもちろんありますが、そういった事業に対する考え方、あるいは病床に対する考え方というのは、みんな1つずつ洗い直して、絵に描いた餅にならない計画のために、何がいちばん重要なのかをもう一度考え直すべきだと思うのです。そこはかなり血を出さないといけないと思いますし、我々もできるだけ具体的な提案をしていかなければいけないと思います。

○武藤座長 先ほど大西推進監がおっしゃったように、国で出すさまざまなデータを二次利活用できるような形で下に降さないと、県の担当者も初めからやるというのは大変だと思いますから、その辺に対してはいかがですか。

○大西参考人 そこは是非お願いしたいところでして、例えば保健の分野にしても、ちょっとしたデータを使おうとしても、例えばエクセルというのは個別因子とか、セルを2つ付けたり、3つ付けたりすると、データベースとして非常に使いにくいものになるというのは明らかなわけなのです。それを見やすい形があるからと提供されるのは、具合が悪いわけです。
 見やすいのは、最終データとしては見やすいかもしれませんが、二次データとしたとしたときに非常に使いにくいもになっています。例えば国のデータというのは、二次データを市町村や各自治体に提供するのだという発想からは、そういうデータベースの作り方をしてもらって、それをどの市町村あるいは県が2度手間にならないようなデータの提供の仕方は非常に重要だと思います。
 また、県もそれをうまく使うというシステム作りが必要ですので、それは併せてやっていかなければいけないと。

○武藤座長 伏見委員にお聞きしたいのですが、今日ご発表になったデータ以外に、もっと利活用できる既存データというのはあるのですか。

○伏見委員 各病院、医療施設は社会保険事務局に届出事項を出していまして、施設基準のデータと一部治療実績のデータがありまして、あれはたしか都道府県別のPDFか何かでホームページなどに公表されていると思うのですが、そのPDFを取り込んでデータベース化するプログラムを研究班で作って、それをデータベース化して、できれば配付できるような形で用意したいとは考えています。それが1つ大きなデータにはなると思います。

○武藤座長 布施委員がいらっしゃるので、例えば健保連のデータ、協会けんぽのデータ、こうしたデータも非常に大きなデータベース化されていると思うのですが、その辺はいかがですか。

○布施委員 電子化されたレセプトデータは9割以上になってきていますので、今後ますます精度がよくなってきますから、十分に使える方向に進むのではないかと思っています。

○武藤座長 ほかにデータに関して何かございますか。

○鈴木委員 青森の大西先生の最後の提案は非常に大胆だと思いました。地方から医療圏は要らないという話が出てくるとは思わなかったのですが、逆に、青森などは非常に広いですから、通える範囲という意味では、いくつかのまとまりにはなるのかなという気がします。伏見先生のデータの9頁で、福岡県でも設定した医療圏は13あっても、患者が実際に通える範囲を見ると、4つか5つに分かれるということですが、私は患者の動きは非常に大事で、それが実態と掛け離れていると、絵に描いた餅になってしまうのではないかと思うので、そういうものを重視して作られると、実効性のあるものができるのではないかと思いますし、こういうデータを是非県や医師会、大学といった地域に提供して、検討していただくことが大事かなと思います。

○安藤代理人 高齢化ということですから、医療保険のレセプトデータだけではなくて、将来的には介護保険のレセプトデータを複合的に見ていかないといけないのではないかと思います。できれば素晴らしいかなと思います。

○武藤座長 まさに介護保険のデータベースはありますよね。

○池主委員 介護という問題が出ましたので、関連ですが、千葉の柏でコミュニティケア、中学校の登校圏ぐらいのレベルで、ケアの問題、介護に関連している対応を考えたコミュニティを作っていくという動きが並行して動いていると聞いています。
 地域の歯科医師会はそこに入っているわけですが、そういう問題と、前回も介護の問題は医療の問題と一緒に論じなければならないというご意見も出ていたようなので、もちろんこれは次年度の課題になってくるのでしょうけれども、その辺を意識して早めに1つの枠組みを作っていく必要があるのではないかと思います。井上参考人はいかがでしょうか。

○井上参考人 ご指摘ありがとうございます。いま千葉県では、地域医療再生臨時特例交付金をいただいたものを利用して、ご指摘があったように、柏市でモデルプロジェクトを行っています。モデルプロジェクトのコンセプトの1つは、いま委員がおっしゃったようなところにかかわるところなのですが、個々の患者からしてみると、医療保険からのサービスも受け、介護保険からのサービスも受け、両方を受けておられる。そういう中で、医療保険のサービス提供者と介護保険のサービス提供者の間のコミュニケーションがちゃんと取れていないと、患者にとっての統合的なサービスを提供することが難しいだろうと。 この点が、今後在宅医療を推進する上での鍵の1つであろうと考え、いままでは医療保険の提供者群の中で、急性期病院、慢性期病院、かかりつけの医師、かかりつけ歯科医師というものの中の連携に中心を置いていましたが、これと介護保険のサービス提供者のグループをいかにつなげていくかということが、いま柏でやっているプロジェクトのテーマの1つであり、このプロジェクトを成功させ、全県に広げていきたいと考えております。いまご指摘のあった、医療保険、介護保険のサービス提供者をいかにつなげるかということは、千葉県としても大事なテーマだと考えております。

○山本委員 いつも医薬品の話で申し訳ないのですが、お話を伺って、それぞれに大変興味深いお話しでした。しかし、薬局とか医薬品の提供体制のデータというのは、保険者レベルでもそうでしょうし、市あるいは県さらには、国も所管する部署が違うところもあって、なかなかデータや現状は調べにくいものなのでしょうか。
 千葉の例で、一部薬局のことが記載してありますが、それ以外には「薬」の部分がないのです。それでいて、この先、在宅医療は大切だという認識がある医療保険でサービスを受ける人、介護保険でサービスを受ける人それぞれに、実は医薬品は同じ薬剤師が担当しています。そういった意味で、こういう計画を策定するときも薬についてのデータは取りにくいものなのですか。それとも、全く視野になくて調べてもらえないのでしょうか。

○井上参考人 決して取りにくくはないと思います。千葉県でいうと、地域医療計画の別冊の1つとして、在宅医療関係医療機関一覧をまとめておりますが、その中の1つとして、自宅訪問に対応できる薬局もリストとしてまとめております。
 今後在宅医療を推進する上では、先ほど歯科のお話がございましたが、各薬局がそれぞれの患者の薬を自宅に届けていくことも、在宅医療を推進する上では鍵の1つで、これに対応していただける薬局を増やしていけるような施策を、いま千葉県でも取っているところでございます。

○齋藤委員 具体的な医療計画の策定の経緯等々についてお話いただいて、大変参考になりました。先ほど事務局から、まさに絵に描いた餅にならないようにするためにはどうしたらいいかという意見が出ていたのですが、私がいちばん心配しますのは、青森県から出ました、4頁目のスライドの下にありますように、いま国から都道府県に策定を義務付けられている計画がものすごくたくさんあるということです。
 介護との連携もそうなのですが、医療費適正化計画であったり、精神、福祉に関わる計画など多岐にわたっていて、それをすべてうまく連動させてやらないと、なかなかうまく動いていかないのではないかと考えます。そのため、この「保健医療計画に基づく政策の推進について」の中のマル3に書いてあるように、各計画がどういう構成になっていて、どのような構図で、どのように連携をするかを一度整理しないと、作る側も大変なのではないかと思います。そして、特にがん対策推進計画などでは二次医療圏を単位として策定することになっていても、一方で他の計画ではその制約がないという、お互いの計画の齟齬があるのではないかと思いますので、そこは点検していくべきなのではないかと思います。
 それから、保健所の役割の中で、連携体制の構築をするときに、保健所の業務を保健師が中心的にやっているというデータが出されたのですが、保健師はいまかなり分散配置になっていて、かなりいろいろなことを一挙にやらなければいけないような状況にあります。そして、こういう計画が立ち上がってくるとともに保健師の業務範囲がものすごく広がってきているということがあって、私どももいろいろ調べておりますけれども、むやみに全部保健師に業務が流れているという状況ですので、ここも少しスクラップ・アンド・ビルドをしていかないと、保健師自体がパンクしてしまうのではないかという危惧を抱いております。以上です。

○尾形委員 1点コメント、2点要望です。1点は、先ほどの伏見委員のご発表あるいは猿田室長のまとめに関連して、電子レセプトデータの分析は大変有効なツールだと思いますし、今後大いに活用すべきだと思うのですが、レセプトデータというのは基本的には保険者の下に蓄積するわけですので、その活用については、保険者と行政との関係あるいは役割の整理を行っていく必要があるのではないかと思います。コメントです。
 要望ですが、1つは首都圏の医療に関してです。これは20年近く前の経験なので、やや不正確かもしれませんが、当時7都県市サミットというものがあって、東京、千葉、神奈川、埼玉と、当時の政令指定都市である横浜、川崎、千葉市だったと思いますが、その首長が集まって、例えば首都圏の環境問題とか、共通する課題について討議をし、調整をするという場がありました。いまどうなっているかは私はよく知らないのですが、今後は是非、首都圏の医療問題をそういう場で取り上げていただければと思います。
 それから、保健所のあり方に関してですが、一方で、健康局で地域保健の検討会がありまして、私もそこに入っていて、この問題を議論しています。先ほど、惠上所長のスライドにも、保健所長会の要望書が出ていたと思いますが、特に医療計画への関与は非常に重要なポイントだと思いますので、是非、医政局、健康局、両局十分に連携して、この問題については対応していただきたいと思います。これも要望です。

○武藤座長 定刻がきました。厚生労働省側から何か全体を通してございますか。

○猿田室長 ございません。

○武藤座長 今日はお三方に現場の都道府県のご意見をいただきました。ありがとうございました。次回は3月25日の10時となっています。次回の検討会では、引き続いて医療計画を策定する立場の都道府県のご意見を伺いたいと思います。岡山県保健福祉部の佐々木部長、神奈川県保健福祉局保健福祉部長の中澤委員から、ご意見を伺います。あと連携に関して、学識経験者として、順天堂大学医学部の田代准教授にお越しいただいて、ご意見を伺うこととしています。それから、今日できませんでした在宅医療に関して、是非とも次回にご検討をお願いしたいと思います。今日は大変お忙しい中ありがとうございました。これで閉会といたします。
(了)


(了)
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