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2011年3月3日 第23回高度医療評価会議 議事録

医政局

○日時

平成23年3月3日(木)15:00~17:00


○場所

都道府県会館  402号会議室


○出席者

猿田座長、伊藤構成員、金子構成員、佐藤構成員
柴田構成員、関原構成員、田島構成員、永井構成員
林構成員、藤原構成員、山中構成員、山本構成員
宮澤技術委員
(事務局)
医政局研究開発振興課長、医政局研究開発振興課治験推進室長
医政局研究開発振興課高度医療専門官・治験推進室長補佐
医政局研究開発振興課高度医療係長
保険局医療課企画官、保険局医療課課長補佐2名

○議題

1.第22回会議にて継続審議の評価を受けた技術の再評価結果について
2.新規申請技術の評価結果等について
3.協力医療機関の追加について
4.その他

○議事

○猿田座長
 時間が参りましたので、「第23回高度医療評価会議」を始めます。委員の先生方におかれましては大変寒い中、今日はまた、新しい場所にお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。
 本日の構成員の出席状況ですが、川上構成員、竹内構成員、葉梨構成員、堀田構成員、村上構成員、山口構成員からご欠席という連絡を受けています。本日は技術委員として、帝京大学の宮澤先生にお出でいただいています。それから委員でいらっしゃいますが、永井先生がいらっしゃっています。よろしくお願いします。
 早速ですが、配付資料の確認を事務局からお願いします。
○事務局
 配付資料について確認します。議事次第から始まりまして座席表。傍聴の方には、座席表は差替えで対応しています。開催要綱、構成員、技術委員名簿と続きます。次に第22回会議にて継続審議の評価を受けた技術の再評価結果として、資料1-1~資料1-4。次に、新規申請技術の評価結果として資料2-1~資料2-4。次に、協力医療機関の追加について資料3。最後に参考資料として、参考資料1~参考資料4まで付けています。本日の資料は以上です。過不足等がありましたら、事務局までお知らせいただくようお願いいたします。
 利益相反について確認します。対象となる医薬品及び医療機器の企業等について、資料1-1及び資料2-1に記載している医薬品・医療機器情報をご覧ください。6頁と26頁になります。対象となる企業又は競合企業に関して、事前に確認をしています。事前の届出以外に、特別に関与するような事例はありませんか。該当なしということでよろしいですか。以上です。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。いまお話いただきましたように、まず第1の議題の「第22回の会議において継続審議の評価を受けた技術の再評価結果」ということで諮らせていただきたいと思いますが、まず事務局からご説明をお願いします。
○事務局
 事務局よりご説明させていただきます。なお、撮影されている傍聴者はここまでとさせていただきますので、お願いします。
 6頁の資料1-1をご覧ください。第22回会議にて継続審議の評価を受けた技術の再評価結果として、整理番号032「心筋梗塞の急性期患者に対するエポエチンベータ投与による心機能改善効果」です。適応症は、急性心筋梗塞の急性期の再灌流障害が対象となっています。申請医療機関は、大阪大学医学部附属病院です。協力医療機関は、新潟大学医歯学総合病院、昭和大学藤が丘病院となっています。審査担当構成員として、主担当山本構成員、副担当永井構成員、田島構成員となっています。
以上です。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。それでは早速ですが、主担当の山本先生からご説明をお願いします。
○山本構成員
 前回、継続審議をさせていただきましたが、阪大から出ているエポエチンベータの投与の申請です。まず実施体制の評価は永井構成員にお願いしていまして、こちらはすべて適といただきました。田島構成員に倫理的観点からの評価をお願いしていまして、4.の同意に係る手続は不適、5.の補償内容は適となっていますが、その後はたぶん適に変えていただけると思います。お二人には、後ほどコメントをいただきたいと思います。
 プロトコールの評価ですが、今回は中間解析という記載が入りましたので、そちらについての正当性が適切に書かれているかという点だけですが、13.で不適と付けていまして、総評としては条件付き適とさせていただいています。まず、永井先生と田島先生からコメントをいただければと思います。
○猿田座長
 永井先生、よろしくお願いします。
○永井構成員
 これは、急性心筋梗塞の心筋保護を目指した治療法で、いまカテーテル治療による再灌流療法が非常によく行われています。また再灌流によって生存率等の成績が改善することは事実です。しかしながら、急性心筋梗塞のあと、特に再灌流を行ったあとに心臓が拡大してくる心筋リモデリングの患者さんが3割ぐらいおられまして、それが長期的な心機能の低下、慢性心不全に移行していくという問題があります。こうした心筋リモデリングの抑制を目指す治療が、いままではベータブロッカーとかレニン・アンジオテンシン系の抑制薬とかいろいろ試されていますが、これまでのところその効果は見られていません。
 そこで、研究者らがこれまでの基礎的な動物実験と予備的な臨床研究からエリスロポエチンが効果があるのではないかということを報告してきました。そこで、より大規模にその検証をしようということを目指したのが、この研究です。問題は、なかなか評価が難しいという点です。同じ治療を、同じような背景の方に行っても心臓が再灌流後小さくなる方と大きくなる方といます。かなりばらつきがありますので、それを乗り越えて薬の効果を見るというのはそう簡単ではないと思います。そのためにも、症例を十分に集めることが大事と思います。それができれば評価、検証ができるのではないかということで、その辺のデザインの仕方が1つのポイントになるのではないかと思います。実施体制等については、特に問題ないと思います。
 心臓の大きさの評価をよくエコーで行いますが、この研究者らはシンチグラムを使うということです。シンチグラムが評価としては妥当であると言われていますので、そのあたりもデザインとしてはしっかりできていると思いまして、体制は適としました。以上です。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。ディスカッションは後ほどにしまして、田島先生から倫理的な観点でお願いします。
○田島構成員
 初めの申請時には、12,000単位のエポエチンベータ投与群とプラセボ投与群という2群の予定をされていたのに対して、今回の再申請では薬剤の量について12,000単位に加えて6,000単位の投与群を追加して、プラセボ群と併せて3群の比較対照試験を行うことに変わりましたが、それに沿う説明に変更する必要がありますところ、その変更が部分的で不十分でしたのでわかりにくいということで、現状では不適ですが実施条件として4点の訂正をお願いできれば、適として良いと考えています。
 1点目は説明文書の「2.この試験について」の4頁第2パラグラフの41名の試験例について、19名がプラセボ投与群、22名が12,000単位のエポエチンベータ投与群だったことを付加していただきたい。2点目は、説明文書の「3.試験の目的」において、投与量の違いによる効果を調べるために12,000単位と6,000単位を設定した根拠について説明していただき、参加予定者600人をプラセボ群を加えた3群各200人ずつとすることを加えていただきたい。以下の2点は細かい誤記ではないかということの確認でしたが、3点目は評価表作成後に申請医療機関の追加提出資料によりまして、適切に記載されていることは確認されています。4点目は、説明文書では参加予定組織が17となっているのが18の間違いではないかということの確認を求めるものです。以上です。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。以上が副担当の先生方のご意見です。山本先生、総括的に。
○山本構成員
 永井先生からもお話がありましたように、急性心筋梗塞後にエポエチンが慢性期の心不全を改善する効果があるのではないかということが、実験データ的にはかなり期待できるということでしたが、残念ながら高用量の海外の試験では結果ネガティブで、今回は低用量というか、腎性貧血で打つ、通常用量を1回だけ投与するという国際的には低用量とみなされているようです。
 そちらで今回やってみるということですが、残念ながらその低用量でのいままでのエビデンスの集積はほとんどない状況なので、前回ガチンコ対決的に出てきた試験については検討をし直していただくということで継続審議をお願いしましたが、今回は6,000単位の1回打ちというところの用量設定の根拠が若干薄弱な気はいたしますが、用量自体がサイトカインであることを含めて、用量が上がれば単に効果が上がるというものではないだろうということ。それから、ある程度以上になると逆に有害事象が発生する可能性があること。そういう根拠からこういう形でしていただいています。もう1つはプラセボも入っている。それと人数が比較的に多くなっていますが、そこのところで無駄な試験を継続することがないようにということで中間解析を入れていただいているということで、コンセプトとしてはこの試験が満了もしくは中間解析で即時中止になる可能性もありますが、一応計画どおり実施されれば、少なくとも低用量でどの程度効果が見込めるかということがネガティブかどうかは、はっきりしてくるのではないかと思いますので、進めていただければと思います。
 ただ、最初いただいたときに実際に3種類のランダム化になりますので、その試験薬の割付、実際の手順が複雑になると思いまして、そこの記載を求めたのですが、これは追加提出資料で記載がされていましたので結構だと思います。あとは、私は統計の専門家ではありませんので、中間解析の方針と手法が記載されているのですが、2回解析を行うことになっていまして、2回やることと解析の手法について、それが適切かどうかということは、この場で統計の専門の先生方に少しご意見をいただきたいと思います。その点と、田島先生のおっしゃった同意説明文書の修正が適切に修正されれば、承認してよろしいかと考えています。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。たしか、この前の会のときに血液専門の堀田先生からは用量の問題が出まして、この量が本当にどれだけ効果があるかというのは山本先生がおっしゃったとおりですが、永井先生、そのあたりのことはどうですか。
○永井構成員
 これは、試験をしてみないとわからないと思います。
○猿田座長
 以上の点ですが、委員の先生方からご意見をいただきたいと思います。関原先生、この前は同意の取り方を言っていましたが、それはどうですか。
○関原構成員
 5頁の「3.試験の目的」と、「4.どのようなことを行うか」と書いてありますが、「4.どのようなことを行うか」の最初の4行に書いてあることは、良く使われる薬剤を使用すること以外は、患者のQL等の説明『3.試験の目的』話。私がいちばん引っかかったのは「慢性の心不全治療にかかる医療費の低減化を図れる」というところで極めて一般的な治験の目的の話と感じたのです。それをこんな箇所に「将来こういう病気になったらお金がかかるから、これがなくなればコストが低減しますよ」と書く話なのかというのが気になったということです。
○猿田座長
 ありがとうございました。山本先生、何かありますか。
○山本構成員
 医療費の低減化は、おっしゃるように2種類あると思います。個々の方で、もし慢性心不全になったら、もちろん最初は生活の質が落ちるわけで、それとともに医療にさらにかからないといけないから医療費も上がりますと。最初は病状が悪くなりますから、もちろんそちらのほうが患者さん個人にとっては問題だろうと思いますが、副次的に医療費は個人も上がるとは思いますし、全体としても急性期の心筋梗塞を助けたけれども、その結果、心不全の人を増やしてしまったら全体の医療費も増えるという両方の意味を含んでいるのだろうと思いますが、おっしゃるようにいちばんの問題は慢性心不全になって患者さん自身が困るのは、息切れとかアクティビティーが低下して生活の質が落ちることだろうと思います。
○関原構成員
 私が思ったのは、「どのようなことを行うか」ということと関係ない話で、これはむしろ試験の目的の話ではないかということです。現に、上に同じことが書いてあるわけです。患者の血流を増して心臓の動きを少しでも良くする。まさに、それがこのクォリティ・オブ・ライフの話だし、その結果として当然良くなれば医療費が減るという話だから、これを誘導しているように思われると変だなということだけです。以上です。
○猿田座長
 ありがとうございました。この間の会議で問題になったのはそういうところだったものですから、先生方は何かご意見はありますか。一部直していただいて認めるという方向で、山本先生、永井先生もそういうことでよろしいですか。
○山本構成員
 中間解析ですが、事前にお話を伺ったときに、2回やる意味があるかどうかということもありましたので、私個人としては、できればポジティブな結果が出る場合は、今回の主要評価項目はサロゲートで取っていますので、副次のほうにハードエンドポイント的なものが含まれていますので、あまり早期にやめていただくよりは、できれば副次のほうもきちんと取っていただくほうが次につながると思いますが、これ以上ネガティブでやっても仕方がないときは、エネルギーの無駄になりますので早めにやめていただいたほうが。
 そういう観点で、現在の中間解析の概要が書かれていますが、これでいいかどうかというのは少し統計の方々にお話をいただければと思っています。
○猿田座長
 ありがとうございました。
○林構成員
 中間解析を実施されること自体は結構だと思います。2回解析をされる予定で、2回目の解析が組入れ開始から1年半後あたりと考えられます。組入れのちょうど3分の1、3分の2の症例が集まったあたりで中間解析をすることになる。2回目解析のタイミングは、組入れ開始1年半後あたりの症例ですから、それから6カ月観察した後となります。つまり、2回目の解析の結果を出すときにはほとんど全員で薬剤の投与が終わっている時期となります。そのため、実際的には2回目の中間解析の結果を受けてアーリーストッピングは起こらないかなと思います。タイミング等はもう一度考え直されたほうがいいのかなというのが正直なところです。
○猿田座長
 ありがとうございました。何かありますか。
○山中構成員
 そのように思います。2回やることにどのくらいメリットがあるかというのは計算をしたほうがいいと思いますが、少なくともいまの時期に2回目の解析をやることに関しては、その解析が終わるころには登録が全部終わっているわけですから、中間解析の意図は達成されないかなと思います。ですから、2回の中間解析をやるならやるで、その時期に関して再考をいただきたいと思います。
○山本構成員
 例えば中間解析をやって、その評価が出るまではその間エントリーを中断するとか、そういうことを含めれば2回目の解析は意味はあるということになるのですね。
○山中構成員
 ただ、試験によってはなかなか止めにくいというのもあって、それは試験ごとの状況に依存すると思いますが、この試験はいかがですか。パタッと登録を止められるような類いの試験ですか。中間解析が終わるまでここで登録は一時中止します、ということは原理的にはもちろん可能ですが。
○山本構成員
 研究事務局がしっかりしていれば可能ではあると思いますが、急性心筋梗塞で運ばれてきた方に1回投与する計画ですのでこの時期の何月何日からエントリーは中止ということをすれば、漫然と慢性期の疾患の方に例えばウォッシュアウトをして入れていくとか、そういうプロトコルではないので、できないことはないと思います。
○山中構成員
 一般論として、どうしても途中で登録を止めたくないという研究者側の意図というのは往々にして働くと思いますので、そのあたりはいかがですか。
○山本構成員
 続けて止めないで2回目の解析をやるのであれば、あまり2回目の中間解析の意味がないということと、それをあえてやるのであれば逆にそこで必ず中断をしないと、やる意味がないということです。1回目については、こういうところでいけますか。それをまた評価後に、少し修正のときにもう一度見ていただきながら修正をさせていただければと思います。
○猿田座長
 ありがとうございます。
○関原構成員
 大変素人の質問ですが、除外基準でありますように、これは前下行枝が完全に詰まったという話だったと思いますが、それ以外のところに治療の必要がある狭窄がある。この「治療の必要」というのは、薬を飲んでも治療だというし、どの程度の話を言っていますか。
○山本構成員
 治療の必要というのは、そのときの血管内治療の必要のあるというふうに出てきていたと思います。ちょっと書き方があれですかね。そこも誤解のないように直していただくようにしましょうか。
○猿田座長
 ほかにご意見がないようでしたら、いま山本先生に指摘していただいた少し訂正していただいてということでよろしいですね。

                     (異議なし)

○猿田座長
 そういう形で、この案件は決めさせていただきます。どうもありがとうございました。事務局から次をお願いします。
○事務局
 資料2-1をご覧ください。26頁からです。新規申請技術の評価結果として、整理番号033、高度医療名は「末梢血液細胞の遺伝子発現プロファイル解析による消化器系癌罹患の判別診断」です。適応症は胃癌、大腸癌、膵臓癌、胆道癌が対象となっています。申請医療機関は、金沢大学附属病院です。審査担当構成員は主担当山中構成員、副担当として藤原構成員、佐藤構成員、技術委員として宮澤技術委員が審議に加わっていただいています。以上です。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。この整理番号033の評価について、山中先生からお願いします。
○山中構成員
 主担当の山中です。今回申請されましたのはマイクロアレイのデータを使って、消化器癌への罹患の有無を診断するという医療技術です。金沢大学から申請されています。お手元の資料のロードマップ、ポンチ絵を見ていただいたほうがいいかと思います。ポンチ絵の「消化器癌検出検査方法」というタイトルのスライドです。
 少し具体的に医療技術について説明をしますと、消化器症状が出ていて、消化器系の癌が疑われる患者さんが来院されます。そういった患者さんから採血をして血液検体に対して独自に開発したマイクロアレイ解析を行って、消化器癌に罹患しているかどうかを予測しようという内容です。この申請で消化器癌として対象にしているのは、胃癌、大腸癌、膵臓癌、胆道癌の4つです。全部で25個の遺伝子を使いまして臓器横断的に、つまり腫瘍のそういった原発巣に関係なく、それからさらに早期癌から進行癌まで進行度に関係なく、すべて引っ括めて罹患の診断が行えるというのが、この技術のウリと申しますか、特徴のようです。金沢大学で技術開発をしまして、大学からスピンオフした企業で、この医療技術が提供されることになっています。
 承認状況は、もちろん国内外未承認で、将来的にキット化など適宜行った上で、薬事承認を目指すことになると思います。現在、マイクロアレイの解析から乳癌の再発リスクを予測するキットや原発不明癌の原発巣を予測するキットなどがFDAによって承認されていますが、そういった類いの体外診断用医薬品として、将来的な薬事承認を目指しているようです。一般論として、今後こういったDNAチップによる予測技術というのは、何を予測するかは別として、開発が活発化していくだろうと思われます。今回、高度医療に初めてDNAチップ診断が申請されたわけですが、この金沢大学の技術がこれまでにどういう評価が行われて今回の高度医療に申請されてきたかという経緯を少し整理しておいたほうがいいかと思いますので、簡単にご説明します。
 資料2-3、38頁をご覧ください。私から研究事務局に質問した回答の中に、私のほうで図を作成しているのですが、これを見ていただいたほうがわかりやすいと思います。今回申請されている医療技術の評価は、「バイオケミカル&バイオフィジカルリサーチコミュニケーションズ」という雑誌に掲載された1つの先行研究に、全面的に依存しています。この先行研究がどういうものであったかと申しますと、金沢大学などを受診してCTやMRIなどの専門的な検査で、消化器系の癌という確定診断が付いている76名の患者さんをケースとしてレトロスペクティブに集積しています。それから、地域検診などで30名の健常人の方をコントロールとしてレトロスペクティブに集積しています。全部で106名のデータになりますが、それを1対1にランダムに割る、ランダムにスプリットします。スプリットした半分のデータ、図の枝分かれしている左側に54例とありますが、こちらのデータを使って癌患者と健常人の間で発現状況が違っている遺伝子を25個ピックアップして、残りの半分の右側のほうで検証を行います。つまり、左側のデータから選ばれた25個の遺伝子を使って、実際に癌の罹患有無の予測ができるかどうかということを右側のデータで確かめましょうという研究です。図の枝分かれした右側のデータには52例とありまして、消化器癌患者が37名いて、感度は100%。つまり、すべて癌だということを特定できていることになります。それから健常人は15名が含まれていて、特異度は87%ですから、ほぼ癌でないことを診断できているようです。この先行研究の結果を基にして、今回の申請が行われているという経緯です。
 評価のほうですが、実施体制の評価と医療技術の有用性の評価は、藤原先生と宮澤先生にしていただきました。倫理面の評価は佐藤先生にしていただきました。実施計画書のほうは私のほうで評価しています。総評は、不適と判断しました。総評の理由についてはあとで述べますので、3名の先生方から審査ご意見を頂戴したいと思います。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。それでは、いまの順に従いまして、まず藤原先生からご意見をいただけますか。
○藤原構成員
 お手元の27頁に私のコメントを書いています。実施体制については、責任医師も実施医療機関もきちんとした先生方あるいは医療機関ですので全く問題ないと思いましたが、医療技術の有用性は私のコメント欄に書いてありますように、消化器系癌として胃癌、大腸癌、膵臓癌、胆道癌と、全く治療方針も異なる癌をただ単に診断しましょうというところの臨床的な意義が非常に疑問で、意味があるのだろうか。それに対して、高度医療で5万6,000円も患者さんからお金を取ってやるぐらいだったら、このベンチャーの会社がもう少し少ない数の患者さんのサンプルをしっかり集めて、とっととPMDAの体外診断薬の申請あるいは事前相談等に臨んで開発を進めたほうが、よほど早く診療に導入できるのではないかと思いましたので、わざわざ高度医療にする必要はないかなと思いました。
 私も乳癌の領域で、自分でカスタムアレイを作って、こういういろいろな診断を試みたりもした時期もありましたが、結果は必ず出ますが、それが本当に臨床に導入できるかというのは非常に複雑なプロセスも経ますし、この申請者が述べていらっしゃるFDAの承認したマンマプリントも、オランダで非常に緻密な臨床試験成績を基に構築された検査法ですし、その臨床的な意義は現在EORTCというヨーロッパの癌研究機構を通じて6,000人ぐらいの患者さんを対象にランダム化比較試験をやられており、商品化はされていますが、まだ臨床的意義ははっきりしないです。それに比べると、BBRCの論文の内容や、やられている臨床研究のレベルが、かなり劣るような印象を持ちますので、高度医療にのせるのは時期尚早のような気がします。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。いまご意見をいただきましたが、技術のほうとして宮澤先生よろしくお願いします。
○宮澤技術委員
 まず、ここにも書いてありますが検査の方法。すなわち、技術そのものについては既に確立された技術と言っていいと思いますし、実施責任医師、医師医療機関の体制については問題ないと思われます。ただし、本技術の医療、現場における有用性についての問題は少なくないと思われます。この研究では、もともと感度が極めて低い腫瘍マーカー検査で、これは一般的に国民の認知もかなり高まっている検査ではありますが、臨床的有用性は必ずしも高いとは言えない。感度、特異度の低いものも少なくないし、日本ではPSAぐらいが有用な腫瘍マーカー検査と言えるものであって、それ以外のものは臨床的有用性は必ずしも高いものではないと言ってもいいと思います。
 特に、この場合も従来と同様ですが、もともとそういった意味で、あまり臨床的有用性が高いとは言えない検査を対象にして、それよりは優性、すなわち高感度だということをおっしゃっているわけですが、臓器特異性もありませんし、これまでの腫瘍マーカーでも陽性に出ている例に限りますと、そのデータの値そのものはステージに結構並行していますので、そういった意味では意味があるわけですが、この場合はそういったことについてはもちろん言及はされていません。そして、実際にプロトコールを進めていく上で、有症状者で陽性に出れば、結局は診断確定のために画像診断を生検も含んでやるということになるわけです。CT、MRI、超音波、内視鏡も含めて、そういった検査をやらざるを得ないので、本検査の金額は5万5,990円と非常に高額であるし、これだけの費用を払うなら、最初から画像診断をやったほうが診断的にずっと有用性ではないかということで、あまり意味がなさそうな感じがします。
 各25個の遺伝子の重み、診断能といってもいいのでしょうか、それについても不明ですし、たまたまcut off値を13に設定したところ、14以上で擬陽性となる症例がありますが、14以上のときでは画像診断等で見つからない場合には、また長期にわたるfollow-upの再検査、画像診断というようなことをやっていかなければいけない。一方、13以下で本当に癌が発生しないと言い切れるのか。このコントロール症例においても、follow-upには当然画像診断を含むことになろうかとは思われますが、こういった画像診断はしなくていいのか。いたずらに患者さんに安心を与えてしまって、その結果、あとで癌ができたときにどう説明できるのかなという心配もあるわけです。
 さらに、この4つの癌をたまたま選んでいるわけですが、腹腔内臓器のほかにも癌がありますし、非消化器系の癌の関連についても言及しなければいけないし、患者さんにもその辺はきちんと説明しておかないと混乱を招くのではないか。そういった臨床的なことも含めて、これはあまり保険に馴染まない。将来、これを保険収載されるということを高度医療では考えなくてはいけないわけですが、その趣旨にも馴染まないということで、これからも私は個人的な考えとして、こういった腫瘍を診断するための検査、特に簡単に済む血液検査、遺伝子検査を含みますが、そう簡単に保険収載されていくべきではないと考えています。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。技術的には、藤原先生も宮澤先生も確かに医学は別として、検査法としてのやり方はあるけれども、いまのところでは問題があるということです。恐れ入りますが、佐藤先生からコメントを。
○佐藤構成員
 基本的に、私も藤原先生、宮澤先生のご懸念と全く同じものを持っていますが、同意文書の倫理的な側面という意味からは適と付けました。28頁をご覧いただきたいのですが、コメント欄の?@と?Aは少し細かい点になります。これについては、34頁以下に事務局を通じて先方とやり取りをしたものがありますので、またご覧いただけたらと思います。問題は?Bで、「試料提供者にもたらされる利益及び不利益」というのが説明文書の中にありますが、果たして試料提供者に利益があるのかということがいちばん気になったところでした。先方からは、画像診断を嫌がる患者さんもいますとか、画像診断で見落とされる場合もありますというのですが、この研究計画では全員が画像診断を受けなければいけないし、仮にそこで見落とされた患者さんというのが本当に癌だけれども、画像診断では見つかっていないのか、あるいはRNAの発現の計画がまだ完成していないのかというところがよくわからないものですから、それを利益と言えるかどうかということをなお気にはしています。この点についても少し説明文書を直していただきましたが、これでいいのかどうかというのは保留をしたいと考えています。
 もう1つは、今回コメントとして書いてはいないのですが、山中先生のプロトコールの評価の30頁に、研究計画での利益相反のマネジメントについて書かれていますが、そのほかに私からは、説明同意文書のほうで利益相反のことを少し書いています。一般的な研究であればこのくらいで十分であろうかと思いますが、本件が大学発のベンチャー企業が入っているところから、そこでのお金のやり取りやこの研究の特殊性について、もう少し書いていただいたほうがよい気がしています。以上です。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。同意に関する手続のところではいいけれども、いろいろな問題があるということですが、もう1回総括的に山中先生から。
○山中構成員
 いま、お三方の先生からコメントをいただきましたように、少なくとも現時点では高度医療化で実施する臨床的意義に乏しいのではないかということが不適と判断した理由の1つです。もう1つ不適と判断した理由として、先ほど藤原先生が少し触れましたが、そもそも診断能力自体が先ほどの1つの先行研究からでは不明であろうということです。感度、特異度は確かに高いですが、先行研究では消化器系癌の確定診断が付いたあとの症例をケース、地域検診などですでに正常と判断されている健常人をコントロールに設定しているわけです。この2群の間に系統的にかなり大きな差があったとしても、全然不思議ではないと思います。どういうことかと申しますと、先行研究のケースとコントロールというのは、今回の試験で対象とするよりも、ずっと極端なケースと、ずっと極端なコントロールであった可能性が高いと思います。
 実際、例えば先行研究のコントロールですと、CEAやCA19-9でさえ、それぞれ単独のマーカーとして特異度約100%を達成しているようです。ですので、基礎疾患のない、喫煙者も含まれない、健常人の中でもかなりセレクトされた集団であった、癌症例のほうもかなり極端なケース群であった、そういった集団なので25個の遺伝子だけで高い感度、特異度というのを達成できた可能性というのはあると思います。そう考えるべきだと思います。同定されている遺伝子の発現状況が、癌と癌でない人の間で異なっている可能性についてはもちろん否定しませんが、先行研究における検討では研究デザイン上、特異度、感度といった診断能力が、かなり楽観的に見積もられていた可能性は極めて高いと思います。
 一方、今回の研究というのは癌関連の消化器症状を有している人を対象としていますので、そういった症例を対象に、癌症例と癌でない症例というのを区別できるかどうかが目的なわけです。先行研究が対象としている集団ほど、癌とそうでない方を区別するというのは容易ではないと思います。ですので、今回の試験の対象集団、つまり消化器症状を有している人を区別できるか、区別できないかに関して、特異度、感度という診断能がどのくらいの値になるかというのは、現時点では正直不明と言わざるを得ないと思います。
 また、マイクロアレイ研究でこういった診断能や予測能を報告した研究というのは枚挙にいとまがありませんが、結果の再現性が得られにくいということは周知の事実だと思います。ですので、今後どうするべきかというと、本試験の対象集団に相当する、かつ独立したデータを多施設で取得して、そこでも本当に診断能が担保できるかどうかということを確認するステップが最低限必要だと思います。このプロセスを経てからでないと、被験者から約5万6,000円の個人負担を徴収可能とする科学的ラショナーレは得られないと思います。ただ、そういった評価を実施して一定の担保ができたとしても、高度医療化で実施する臨床的な意義についてはまた別問題なので、今回に関してはトータルで考えて不適と判断させていただきました。以上です。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。以上、総括的には高度医療としては無理だという結論ですが、構成員の方々からご意見をいただきたいと思います。非常に明快にご説明いただきました。藤原先生、宮澤先生、いまのところでよろしいでしょうか。佐藤先生も同じご意見ですね。特にご意見がなければ、いまの山中先生の総括でお話いただいたとおり、ここでは不適とさせていただきたいと思います。よろしいですか。

                 (異議なし)

○猿田座長
 どうもありがとうございました。それでは、この案件は不適とさせていただきます。
 議題の3に移ります。協力医療機関の追加で、2つの技術のことかと思います。事務局からご説明をお願いします。
○事務局
 資料3をご覧ください。45頁です。協力医療機関の追加として、17番、高度医療名は「経胎盤的抗不整脈薬投与療法」です。申請医療機関は、国立循環器病研究センターです。今回追加を予定している医療機関は、ご覧の2施設となっています。
 21番、高度医療名は「パクリタキセル静脈内投与及びカルボプラチン腹腔内投与の併用療法」です。申請医療機関は、埼玉医科大学国際医療センターです。今回追加を予定している医療機関は、ご覧の5施設となっております。
 事務局にて、倫理審査委員会の構成、医療機関の実施体制等を事前に確認しております。特にご意見がなければ、追加の手続を進めたいと思います。以上です。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。いまご説明いただきましたように、この前から通しましたこの2つに関しては、既にいろいろな所で追加協力をしていただけるということで、17番に関しては東邦大学と神奈川県立こども医療センター、21番のパクリタキセルの静脈内投与そのほかに関しては、筑波、新潟、市立貝塚、神戸市立、沖縄の5施設で追加協力をしたいということです。これも、特に委員の先生方からはご意見はありませんか。よろしいですね。これだけ、どんどんこういうふうに発展してきている技術は、非常にいいのではないかと思います。これも、お認めいただいたということにさせていただきます。どうもありがとうございました。
 その他ですが、事務局からは何かありますか。特にありませんか。だいぶ時間が早いですが、特に委員の先生方からご意見がなければ、事務局から、これからの日程をお願いします。
○事務局
 次回の日程ですが、現在調整中です。詳細等決まりましたら、追ってご連絡申し上げます。また、本日の議事録については作成次第、先生方にご確認をお願いし、そのあと公開させていただきますので、併せてよろしくお願いいたします。以上です。
○猿田座長
 どうもありがとうございました。これで「第23回高度医療評価会議」を終わります。
 ご協力をどうもありがとうございました。


(了)

照会先
厚生労働省医政局研究開発振興課
TEL 03-5253-1111
高度医療係 新美 内線2589

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