ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(感染症分科会結核部会)> 第22回感染症分科会結核部会議事録




2010年12月20日 第22回感染症分科会結核部会議事録

厚生労働省健康局結核感染症課

○日時

平成22年12月20日(月)
15:00~17:00


○場所

内閣府(中央合同庁舎第4号館)
1階108会議室


○議題

(1)結核に関する特定感染症予防指針について (2)その他

○議事

○水野補佐 定刻ですので、これより「第22回厚生科学審議会感染症分科会結核部会」を開催いたします。お集まりの皆様には、ご多忙のところご出席いただきまして誠にありがとうございます。
 開会に先立ちまして、委員の出欠状況を報告させていただきます。本日は、川城委員、高橋委員、丹野委員からご欠席のご連絡をいただいています。また、南委員、保坂委員が現在いらっしゃいませんが、現在の部会委員総数12名のうち7名のご出席をいただいており、出席委員は半数を満たしていますので、本日の部会は成立いたします旨ご報告いたします。
 本日の参考人をご紹介させていただきます。日本結核病学会・日本呼吸器学会を代表して東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門教授、渡辺参考人です。日本感染症学会を代表して、国立病院機構東京病院外来診療部長、永井参考人です。お二方には人材の養成の視点において、各学会の立場よりご意見をいただきたいと思います。
 次に、国立病院機構東京病院長、中島参考人です。政策医療として結核医療に非常にご貢献をいただいています国立病院機構の立場より、人材の養成の視点のうちネットワークの観点も含めて幅広く結核医療についてご意見をいただきたいと思います。ここでカメラ撮りは終了させていただきます。
 資料の確認をさせていただきます。議事次第、資料1から4、参考資料が1から3まであります。本日の追加資料として、「国立病院機構における結核医療への取り組み」があります。不足がありましたら、事務局までお知らせください。
 後の進行を坂谷部会長、よろしくお願いいたします。
○坂谷部会長 皆さん、本日はよろしくお願い申し上げます。今日の会議の進行ですが、お手元の議事次第に沿って進めていきます。どうぞ円滑な議事にご協力をよろしくお願いいたします。本日は2時間ちょうどくらいで終わるかと思います。議題は「結核に関する特定感染症予防指針の見直しについて」ですが、今日の作業として、「これまでの理論の視点に関する対応策」について確認を行うほか、「研究開発の推進」「人材の養成」また「普及啓発及び人権の尊重」の3つについての議論を行います。
 改めまして、事務局より本日の議論の進め方、資料について説明をお願いします。
○水野補佐 議事次第をご覧ください。本日は、議事が1から4まであります。1は、これまでの議論の視点に関する対応策について、2から4は、いつものように、議論の視点に関する議論です。
 資料1をご覧ください。いままでの部会において議論されてきた対応策をまとめて記入しています。こちらの対応策について後ほどご確認いただければと思います。
 先にお送りしました資料と本日の資料が一部変わっているところがありますので、ご案内いたします。資料1の9頁をご覧ください。対応策のところ、2のところ、上から5行目ですが、「患者中心の医療実現のため」という言葉が含まれています。資料12頁をご覧ください。対応策12のところですが、「地域医療連携ネットワーク構築のためには、医師会等の協力を得るように努める」というように言葉が少し変わっています。ご了承いただければと思います。
 進行ですが、この資料1をご確認いただいたあとは、資料2、資料3、資料4のほうになりますが、予防指針の第四から第七の範囲の資料です。第五の「国際的な連携」にあたるところは、視点はありませんので、特に資料は作成していませんが、後ほどまた追加の視点がないかご確認いただければと思います。
 資料2、3、4について視点を確認させていただきます。資料2をご覧ください。1頁目をめくっていただいて、「研究開発の推進について」の議論の視点です。1.「低まん延化に向けて、罹患リスクグループや感染が起こるリスクがある場の特定のための感染経路の把握、また海外からの結核の輸入の国内感染に与える影響を検証するために、分子疫学的調査・研究の強化をしていくことが必要か」、2.「開発された革新的技術について、臨床現場に適用するために必要な調査や制度の整備を推進していくことが必要か」、3.「開発された医薬品を早期に臨床現場で使用可能とすることを目的とした、積極的な関連情報収集などを行っていくことが必要か」という3つの視点があります。
 資料3、1頁目をめくっていただきます。議論の視点が2つあります。1.「結核病床、モデル病床があっても医療スタッフが不足し、使用できないことがあるとの指摘に対応するために、学会等との連携や卒後教育との連携をどのように図っていくかについて、検討することが必要ではないか」、2.「症例の相談体制確保のため、結核研究所、高度専門施設を中心とした広域ネットワークの構築や、既存のネットワークの活性化の具体的な方法を検討していくことが必要ではないか」とあります。
 資料4、1頁目をご覧ください。「国や地方自治体の関与による地域連携推進のための普及啓発をどのように行っていくことが必要か」とあります。
 本日の議論の視点は3つです。この資料の構成としては、自治体アンケートの結果と各視点に関連した資料が付いています。進め方としては、いつものように、資料の説明、そのあとに議論を行うというように進めていっていただければと思います。以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございます。ちょっと私もうっかりしておりましたが、資料1の9頁、11頁をもう一度ちょっとお願いできませんか。
○水野補佐 資料1の9頁です。対応策のところの2です。上から5行目に「患者中心の医療実現のために」という言葉が入っています。
○坂谷部会長 それが新しく入ったんですね。
○水野補佐 はい。それから12頁をご覧ください。12頁の対応策の覧には、12.「地域医療連携ネットワーク構築のためには、医師会等の協力を得るように努める」と言葉が変わっています。
○坂谷部会長 12頁の上から4コマ目「医師会等の協力を得るように努める」と、これですね。
○水野補佐 はい。
○坂谷部会長 それから。
○水野補佐 変更点は以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございました。ただいま事務局から説明がありましたように、これまでの議論の視点の対応策について、これまで議論した結果が書かれていますが、この対応策について、何かご意見などありましたら、ご発言をお願いいたします。前もって配られているとはいうものの、期間が短かったかも分かりません。読まれている方、読まれていない方あると思いますが会議の合間ででも少し目を通していただいて、何かご意見がありましたら、途中で発言いただければありがたいと思います。
 本日の議論の視点について、第五「国際的な連携」については特に視点はありませんが、何か追加のご意見はありますでしょうか。ありましたら、どうぞお願いしたいと思います。先ほど水野さんからありましたように、特別資料はありません。「国際的な連携」ということです。これについて、ご意見は何かありますでしょうか。
 国内では、みんな内向いてやっているわけではないのですが、外向いてということでしたら、結核研究所予防会が一手に引き受けてやっていたわけですが、何か加藤委員から特段のご意見はありますか。
○加藤委員 現在、ODAの予算が全体として、下がっていることもあって国際協力事業に関しては少なくなっています。世界的な動きとして、結核対策のみならず、保健システムに対して、国際協力事業の重要性が特に言われていますが相対的関係として、結核体策の予算が少なくなっているということがあります。
 国際協力という視点ではありますが、結核はもう当然、国境がない感染症ですから、近隣の国に関する技術協力は、同時に国内の問題であるということですので、そういった観点から国際協力についても十分な予算的配慮が必要ではないかと思っています。以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございました。国際協力は、グローバルな見方では、日本のポジションと言いますか、位置づけはどういうものと理解したらいいのですか。国連では、常任理事国に入るか、入らないかという話もありますが。
○加藤委員 これまでやってきたこと、特にWHOの西大陸事務局の地域によって行われてきたことは、国際的にも非常に進んでいる部分はいくつもあります。その中で日本の果たした役割は非常に大きいと理解しています。
 したがって、国際的には、日本の役割は強く期待されていますので、そういった観点からも、先ほど申し上げましたとおり、日本が世界の中の役割を十分果たせるような対応が必要ではないかと思っています。
○坂谷部会長 日本が特に得意な分野はあるのでしょうか。
○加藤委員 特に検査関係が多剤耐性対策等の一部として非常に重要視されています。その分野の人材育成に関しては非常に世界的にも大きな問題とされていますが、私たちは、1970年代から、国際研修で現場あるいは中央レベルの検査で喀痰検査に関する研修を行っているのですが、こういった検証をきちっとやっている所は非常に少ないということです。そういった意味では、今後とも多くの役割を果たすべきと思っています。
○坂谷部会長 担当として、地域的には、東南アジアはよく知っていますが、アフリカとか中近東に関しても、かなり力が及んでいるのでしょうか。
○加藤委員 近年、アフリカに対しての援助は、国際的にも非常に重要視されていますから、当然、日本としてもアフリカに対する援助の比重が少しずつ高まっています。従来から、イエメン、パキスタン、アフガニスタンへの援助も行っています。そういった意味では、特に日本の近隣の関係が大事だと申し上げましたが、国際的にいまさまざまな活動をしています。特に私どもの行っている国際研修は1963年から実施していますが、97カ国からトータルで2,100人を超える研修生が、来ています。それについても高く評価されています。
○坂谷部会長 ありがとうございます。話は尽きないと思いますが、委員の方々から何か加藤先生にご質問とかご意見がありましたら、この機会にどうでしょうか。
 本日の視点についての議論に入りたいと思います。資料2、「研究開発の推進について」から入ります。事務局から自治体アンケートの結果の説明をお願いします。よろしくお願いします。
○水野補佐 資料2の3頁をご覧ください。自治体アンケートの結果ですが、研究開発の推進に関する部分を抜粋したものです。表31をご覧ください。自治体で結核に関する研究を行っているかという質問です。返答した自治体、103箇所中23箇所で行っている。その内容については、表32をご覧ください。服薬支援、病院、保健所連携を含めたDOTSについての研究が多くあったということです。この研究については、過去5年分について質問しています。
 5頁、表33をご覧ください。これは、保健所レベルで結核に関する研究を行っているかという質問です。返答した自治体99自治体中、36箇所で行っています。内容としては、表34にあるとおり、DOTS及び集団感染、施設内感染対策についての研究が行われていたという結果です。様々な研究が行われているということです。以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございます。ただいま、説明のありました、自治体アンケート、資料2の3頁以降に関して、何かご質問等ありましたらよろしくお願いします。
 質問があるのですけれども、研究をしているかどうかということですけれども、これは、研究なのですかね、事業そのものなのですかね。
○水野補佐 そうですね。やはり、事業に関連した研究が行われていることだと思います。
○坂谷部会長 事業の研究面の部分を取り出すと、こういうことをやっているということですかね。
○水野補佐 はい。
○坂谷部会長 何かご質問、ご議論ありますでしょうか。視点1、「低まん延化に向けて、罹患リスクグループや感染が起こるリスクのある場の特定のための感染経路の把握、また海外からの結核の輸入の国内感染に与える影響を検証するために、分子疫学的調査・研究の強化をしていくことが必要か」という視点があるわけですけれども、これについて事務局が説明した資料1をもう1度ご覧いただきたいと思います。第1、原因の究明の「病原体のサーベイランス」、第2、発生の予防及びまん延の防止の3、法第17条の規定に基づく結核に係る健康診断(接触者健診)のところで、分子疫学的調査については、議論されています。推進の重要性については既に確認をしてまいりましたが、視点1の問いについては「分子疫学的調査・研究の強化をしていくことが必要である」と結論づけてもいいかと思いますけれども、いかがでしょうか。この審議会として発する文書として、分子疫学的調査研究の強化をしていくことが必要であるという結論的なことを文言に残すということですが、いかがでしょうか。ご異論ないでしょうか。
○加藤委員 技術的にもいま従来よりRFLPという手法から、VNTRという新しい手法にだんだん変わってきていまして、こちらのほうは従来の方法よりやり方も簡便ですし、短時間で結果が得られるといったことで、国際的にも広く使われている方法です。ただいまの議論のとおり、低まん延化に向けて本当にどこで感染が起きて、何が問題であるかを、これまで以上に特定しながら効率のいい対策を進めるために、ぜひ必要と思っています。
○坂谷部会長 ありがとうございます。世の中全体がデジタル化してきているわけですけれども、この分野についてもアナログ的なRFLPは満足と言えるかもしれませんが、VNTRに入りますとデジタル化しているという言い方ができるかもしれません。
 ご異論がないようですから、視点1の問いにつきましては、「分子疫学的調査・研究の強化をしていくことが必要である」と結論づけることを会の合意としたいと思います。ありがとうございます。
 それでは、視点2、視点3に移りたいと思います。視点2です。「開発された革新的な技術について、臨床現場に適用するために必要な調査や制度の整備を推進していくことが必要か」。視点3、「開発された医薬品を早期に臨床現場で使用可能とすることを目的とした、積極的な関連情報収集などを行っていくことが必要か」この2つです。前回のこの会、及び前々回で視点3については活発な議論がありました。それをもう少し広げたものが視点2ですけれども、革新的技術、新薬に関する類似した視点のため、それぞれに関する資料の説明の後、同時に議論を行いたいと思います。
 まず、技術的革新、革新的技術、新薬に関しての資料説明を加藤委員からお願いしたいと思います。
○加藤委員 それでは、お手元の資料2の7頁です。「開発された新技術の活用の可能性について」説明申し上げます。
 まず、LAMP法です。結核菌を検出する方法で、これは日本の栄研化学という会社が開発した方法で、この核酸精製技術、つまり、喀痰の中から夾雑物、すなわちいらないものを取り除いて、核酸を抽出する方法、PURE法と書いていますけれども、これとLAMPという検出方法を併せた、非常に結核菌の検出が容易になった簡易検出キットであります。従来、PCR、TRCという方法がありますけれども、これに比べても感度、特異度とも差がない。従来より、非常に簡易な方法で、なおかつ精度が非常にいい特性を持っていることがこれまでの研究でわかっています。
 実施に当たって、PCRというのは、詳しい先生もいらっしゃると思うのですけれども、65度の高温と低温を何回か厳密に温度管理しながら、繰り返さなければいけないという反応ですけれども、それに対して、これは一定の温度でできる。そういう意味では等温反応といいますけれども、そのために機器も特殊な機器がいらないということで、加温装置は必要なのですけれども、それに比べると、ずっと容易であるということです。PURE法という、核酸を抽出する技術が加わっていますので、従来からやっているように遠心分離機を使う検体を検査する前の処理がいらないということで、この検体がきてから1時間以内で結果が出るという、非常に容易な方法で、かつ1検体ずつ別に検査することができるということです。既に途上国でもこれが使えるということが証明されています。これは、日本独自の技術でして、これは喀痰だけではないのですけれども、様々な病原体の検出に使われる技術でして、これはFINDと言いまして、ジュネーブに本拠を持っている、様々な検出機器の開発支援を行う団体なのですけれども、ここが非常に有望な技術であるということで、FINDがやっている、いくつかのプロジェクトの中で、もっともプライオリティーの高い、優先度の高い技術と聞いています。開発が進んでいるということで、最終製品がほぼできていまして、いま承認の申請中ということです。様々な医療現場、夜間救急とかは細菌検出設備を持たないところですが、英語でpoint of careと言って、治療現場で使えるということが非常に大きな特徴で、こういう技術をぜひ役立てるのが必要ではないかと思います。
 2つ目は、「Line Probe Assay」という方法でして、これは日本のニプロという会社が開発した方法です。これを利用して、Isoniazid,Rifampicin,Fluoroquinolone,Pyrazinamideの4つの薬剤に対する遺伝子検査をするキットがかなり出来上がっていまして、臨床評価が終わっているということです。従来、遺伝子検査というのは、薬剤感受性検査は数週間かかると。非常に時間がかかりますけれども、これは遺伝子検査ですから、迅速に結果が出ます。従来、Rifampicinによるものは使われていたのですけれども、それにIsoniazidもFluoroquinoloneもPyrazinamideも使えるというような新しい方法で、おおよそ6時間で結果が出ます。薬剤耐性結核の院内感染の、コントロールのために、非常に有用性が高い。また、Pyrazinamideが従来の薬剤感染、非常に技術的に難しいのですけれども、それを補うだけの、非常に容易な検査になっています。また、遺伝子検査ですので、汚染等の問題が非常に少ないという特性があります。
 8頁、これは、現在ちょうど開発最中のところなのですけれども、日本のジェネテイン社の開発で、まもなく論文が出ることになっているようです。抗酸菌集菌用のプラスに荷電しているビーズによって、結核菌というのはマイナスに荷電していますので、電磁気的に吸着してそれを集菌する方法で、遠心分離機がいらないため、非常に容易です。なおかつ、遠心分離機がいらないので、菌の飛散をするという心配がない。それから、遠心分離機よりも菌数が少ないとき、集菌効率がいいのではないかということで、これも非常に有望な技術です。
 最後に、GeneXpertとありますけれども、これは喀痰をGeneXpert専用の容器の中に入れると、完全自動で、2時間半でRifampicinの耐性と結核菌の検出ができるというものです。今年、WHOが途上国での使用を推奨していて、世界的にも今後使えるようになっていくものです。痰から直接検査をすることができ、完全自動ということですから、業務の負荷もなく、Rifampicinと検出が一遍にできるという技術が既に使えるようになっているということです。
○坂谷部会長 とりあえず、技術のところで切りましょう。7、8頁について、いま加藤委員から詳細な説明がありましたが、何か他の委員の方からご質問はございませんでしょうか。PCRは増幅が入るわけですけれども、LAMP法のほうは、増幅過程があるのですか。
○加藤委員 そういう技術はないようです。
○坂谷部会長 だけど、感度が一緒なの。
○加藤委員 感度が非常に高い。
○坂谷部会長 これは、日本の技術ですよね。
○加藤委員 日本の技術です。
○坂谷部会長 それから、次のLine Probe Assay、これもニプロですが。
○加藤委員 これは、もともと日本が作った技術です。
○坂谷部会長 それから、その次の集菌ビーズ、これも横文字が付いていますけれども、片仮名ですけど、日本ですね。
○加藤委員 それも日本の技術です。
○坂谷部会長 それから、GeneXpert、これは。
○加藤委員 日本ではないですね。アメリカです。
○坂谷部会長 これは、機械がいりますね。
○加藤委員 機械ですね。これのいいところは、いわゆるP3という、バイオハザードがいらないということで、非常に有用だと思います。
○坂谷部会長 ご紹介でした。
○加藤委員 日本で開発された様々な技術があるので、ぜひ有用なものですから、開発した国でもありますし、ぜひ早く使えるようになればいいなと思っているところです。
○坂谷部会長 ありがとうございます。他の委員の方々からのご質問ないでしょうか。よろしいですか。
○重藤委員 耐性遺伝子の感度とか特異度というのと、現在の薬剤感受性検査との相関、必要性がどうなるかと。
○加藤委員 Rifampicinについては、近畿中央胸部疾患センターでも検証されていますけれども、90数%、という高い感度があります。Isoniazidの耐性は、従来のものは低いのですけれども、実は日本の菌を使って従来ないミューテーションポイントをいくつか入れてまして、従来よりかなり感度が高くなっているということです。ですから、外国で使われている方法よりも、もっと優れた感度が得られているということです。PyrazinamideもFluoroquinoloneもそれなりの感度があるということで、かなり実用的な技術になっていると思います。
○坂谷部会長 それから、日本での開発の技術ですが、開発の過程で、例えば加藤先生のところの経験が関与しているというのは、このうちどれぐらいあるのですか。
○加藤委員 臨床試験のところで、実はいずれも。
○坂谷部会長 臨床試験の段階では。
○加藤委員 段階では、少なくともいずれも関係してやっております。
○坂谷部会長 技術そのものの開発のところでは、あまり関与されていない。
○加藤委員 そうですね。そのものは、直接関与してませんね。
○坂谷部会長 続いて、お薬の話に入ります。「新抗結核薬開発の現況と次世代の結核化学療法の動向」。これは、もともと土井先生のレポートですけれども、これも加藤委員から。
○加藤委員 9頁をご覧ください。世界の現状ということで、抗結核薬は1970年代にRifampicinが出たあと、1990年代にリファブチンが開発されていましたけれども、有力な薬はずっと開発されていなかったということです。2000年にStop TB PartnershipとTB-Allianceが設立され、、新抗結核薬の開発のため、様々な努力がされてきました。これらの目標は、2010年までに新薬の臨床導入、2015年には新しいレジュメを作って、治療機関を4ヶ月にしようということなのですが、なかなか導入までは至っていない状況です。2010年10月現在、Stop TB PartnershipのWGと、WHOが調査した結果、次頁が開発状況の図になっていますが、薬として化合物として開発されたのが15、臨床前期あるのが5つ、臨床試験にあるのが11ということで、全部で31の新しい結核薬のプロジェクトが進んでいるということです。
 その中で、特に臨床前期にある薬としては、資料に書いてあるように、4ヶ月とか、多剤耐性の6ヶ月標準治療に向けた併用レジメンの第?U相ということで、PA-824とMFLXとPZA、Pyrazinamideを使ったもの。RifampicinとGatifloxacinとPyrazinamideを使ったもの。TMC-207と既存の2次薬を使った多剤耐性の試験。大塚製薬が使った、新しいOPC-67683という薬を使ったトライアル。5番目として、SQ-109、これも全く新しい薬。それから、oxazolidinone、これも新しい化合物なのですけれども、こういったものも臨床試験期に入っているということです。この中で、日本で開発されつつあるのが、新しい世代のレスピラトリーキノロンといわれるDC-159a。核酸系抗生物質のCPZEN-45。Capuramycin。この辺は、実は日本で初期に開発された薬で、この結核研究所で基礎研究を経て、開発段階に行っているということです。更に、次の世代への新しいレジメンを、早く実現するため、従来、臨床試験のphase-?Tとphase-?U、副作用を確かめるphaseと、多剤のそれぞれ、1つ1つの薬の効果を確かめるphaseがあって、臨床試験が進んでいるのです。この臨床試験の?U相というのは、薬の効果を確かめる時期ですが、この時期から併用のレジメンを使った開発をしていく。つまり、開発を早めるために、こういう方向でいくことが、今回承認されました。様々な薬、まとめると3パターンの薬が開発上途にありますし、臨床応用に向けてもスピードを上げようというのが、世界の動きになっているということであります。
○坂谷部会長 ありがとうございます。特に、9頁の最初に書いてある世界の現状というところに、世界全体の目標としてこういうことが掲げられるようになってきたと。そのために新しい薬がいるわけですけれども、そのうちのいくつかは、日本で開発されたものであるということです。
 続きまして、新薬開発だけではなくて、参考資料2をご覧ください。厚生労働省においては、医療上の必要性の高い未承認薬・適用外薬について、製薬企業による開発促進に資することを目的とした取り組みがございます。その紹介をお願いします。
○水野補佐 参考資料3をご覧ください。これは、「第1回医療の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」、平成22年2月に開催されたものですけれども、その提出資料です。医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議が開催されておりますが、これの開催要綱を説明させていただきます。
 目的としては、「欧米では使用が認められているが、国内では承認されていない医薬品や適応について医療上の必要性を評価するとともに、公知申請への該当性や承認申請のために追加で実施が必要な試験の妥当性を確認すること等により、製薬企業により、未承認薬・適応外薬の開発促進に資することを目的とする」とあります。実際に、この会議で検討されている事項としては、医療上の必要性、医療上の必要性が高いと評価された未承認薬・適応外薬については、公知申請への該当性や承認申請のために追加で実施が必要な試験の妥当性を確認する。また、その他において、製薬企業が開発を行う医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬について、定期的に開発進捗状況を確認する。また、開発助成の是非、支援額の上限についての検討・確認等を行う、とあります。
 2頁目をみますと、実際、未承認薬・適応外薬にかかわる開発の要望の公募が行われています。募集期間は、2009年6月18日から、8月17日までに行われました。公募する要望の条件ですけれども、「未承認薬であれば、欧米4か国のいずれかの国で承認されていること、適応外薬であれば欧米4か国のいずれかの国で承認されていること」という条件で公募されています。実際、学会、患者団体等から要望が出されて、合計374件の要望があったということです。この要望について、製薬業界からも要望に関わる見解の提出がされ、各要望された薬剤について、医療上の必要性を評価することなどをこの検討会議で行われています。
 結核に関しては、Fluoroquinolone(レボフロキサシン)についても、このフローに則って作業が進められているところです。以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございます。公知申請というような制度があるのですよね。科学的に根拠が十分である場合には治験を行うことなく、既存の薬の承認申請を認める制度ということで、そういうものを利用して、昨年ですけれども、要望の公募がありまして、374件も申請があった。患者、学会等からの未承認薬・適応外薬にかかる要望と。それで、製薬業界から見解が出されて、それを基にしてワーキンググループが7つ設置された中で検討され、医療上の必要性を評価されたものが承認申請に向けた開発の実施をしなさいと国から製薬業界にお勧めがあって、申請をされるということであります。このことについて、何かご質問ありますでしょうか。この間、この部会と関係することについては、Rifampicin等EVが、非結核性抗酸菌ですけれども、堂々と使えるようになったという事実があります。ご質問ございませんか。これは、1回限りなのですか。毎年こういうことをやるのでしょうか。
○水野補佐 現在、一次募集で、374件ですけれども、2回目の募集に関しては、まだ未定ということです。
○坂谷部会長 それから、Fluoroquinoloneについても、この過程で認められたのですかね。
○水野補佐 第6回の会議において、医療上の必要性については認められております。
○坂谷部会長 という事実があります。できれば、こういうことを続けてやってもらいたいと思います。現在、加藤委員、水野補佐から説明いただいた資料は、開発中、または開発された技術や新薬についての紹介でしたけれども、これらを臨床現場に普及していくための工夫が必要であるかという問いです。また、関連した厚生労働省における取り組みの紹介が最後に水野補佐からありました。これについて、ご意見を求めましたが、ないようです。まとめますと、新技術の開発が着々と進んでいますが、これを臨床現場に適応するまでの時間がどうもかかっているということが問題です。なかなか実現しない。引き続き、研究開発については、積極的に実施していくとともに、行政、メーカー、学界などの関係機関との情報共有を行うことが重要であります。国もバックアップを積極的にやっていただきたいということです。
 世界的に見て、日本ではなかなかスピードが遅いということは間違いなくあると思いますので、是正をしないといけないということです。
 それでは、次の資料3に係る話題ですが、人材の育成、人材の養成についての議論に進みたいと思います。まず、事務局より人材の養成に関する施策と、国の施策、自治体アンケート結果について説明をお願いします。
○水野補佐 資料3、1頁をご覧ください。指針に基づく施策として、研修事業が挙げられています。こちらの研修事業については、参考資料2をご覧ください。1頁目に、結核研究所の実施する研修一覧があります。医師に対する研修、放射線技師に対する研修、保健師、看護師に対する研修等、また行政担当者に対する研修と各種あります。下の2つ、「結核対策指導者養成研修」と、「結核予防技術者地区別講習会」については、国庫補助対象事業となっています。また、地区別講習会については、各ブロックの自治体が持ち回りで主催するようなものとなっています。
 国の施策として行われている研修については、このような現状です。
 続いて、自治体のアンケート結果の説明をさせていただきます。資料3、2頁をご覧ください。これは、人材の養成に関する自治体アンケート結果の抜粋です。表35をご覧ください。医療、福祉従事者に対して結核研修事業を行っているかというものですが、いま自治体の返答については102箇所中69箇所と、比較的多く研修を行っていることがわかりました。評価方法等にはアンケート等を使って行われているということです。以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございます。結核の研修、人材育成の中で、重要なポイントかと思いますが、研修に関しては、いままで結核研究所に全面的におんぶしていたということでありまして、参考資料2の1頁に書かれています、全国規模での研修であります。ご存じのように、地方自治体で、自治体の中での研修というのがありますけれども、それではなく、国が行う研修です。これは、いちばん下の2つが網掛けしてありますが、それから上のいくつかは全て結核研究所にお願いして、各都道府県持ち回りで現場を設定するのですかね。それで、このような、全国規模の研修を行ってきているということであります。下の2つはそうではなくて、結研以外の部分にもお願いをするということであります。このようにしてきたわけでありますけれども、何か加藤先生から補足はありますか。これだけたくさんのことをやってきていただいているということでありますね。
○加藤委員 1つ申し上げると、やはり各自治体の予算がなかなか厳しくなっているということで、参加が年によって少なかったり、あるいはインフルエンザ対策ということで、研修が出来なくなって少なくなることもあります。いちばん上に医師8日間と書いてありますが、昔は2か月とか3か月やっていたのですけれども、予算的なこともありますので、大分短かくなってきて、こういう状況になっているというのが現状です。私どももいろいろ工夫しますけれども、やはり自治体とも一緒になりながら、予算を確保することが必要ではないかと思っているところです。
○坂谷部会長 研修費や人の旅費とかを含めて結研にお預けしてあるのではなくて、受け入れ側の体制の整えと、講師連中の手配とか、それは結研がされて、自治体に募集を募られて、その人たちが来る旅費とか、滞在費とか、それは自治体が持つという仕組みですか。
○加藤委員 そうですね。
○坂谷部会長 そういうことですね。それから、加藤先生から、説明の追加をお願いしましたけれども、各委員からいかがでしょうか。こういう研修のシステム、やり方、やってきたことに関するご質問等がありましたら、また自治体のアンケートの結果についてのご質問がありましたら、お願いします。
○菅沼委員 募集人員で、参加人員はどのぐらい、同じくらい参加しておりますか。
○加藤委員 実積は、この数よりも若干少なめです。ちょっと、資料が手元にないのですけれども。
○菅沼委員 でも、若干ぐらいですか。
○加藤委員 コースによって様々なのですが、例えば医師臨床コースの場合は、実は後で結核病学会からご説明があると思うのですけれども、指導医、それから診療医の制度ができたから、今年非常に参加が増えたということが実はあって、増えているのもあります。
○菅沼委員 やはり、そういうモチベーションを上げるような工夫で、なるべく参加人員を増やすといいかと思います。
○坂谷部会長 これ、何年にわたってやってきていたのですかね。
○加藤委員 開始ですか。
○坂谷部会長 ええ。
○加藤委員 私も研究所創設とほぼ同時期から。
○坂谷部会長 日本国中で、結核の対策について、保健所勤務、臨床の現場で活躍している医師、看護師、それから保健師さんたち、特に保健所の所長さんクラス、大体、結研でこの研修を受けた方ということで、まれにそうでない人がありますけれども、私なんかも結研でいろいろ学びましたけれども、中で勉強をさせてもらったことはないのですが、そんなの珍しいので、ほとんど結研で勉強した方々が、いま日本の結核対策の第一線で、あるいはバックで頑張っておられる、そういう実状がありますね。結研としては、これを続けていかれる、あるいは予算的なことに関しては、何か加藤先生から報告はありますか。
○加藤委員 これは、もちろん予算のかなりを厚生労働省からの補助金で運営されていますけれども、私どもの大事な役割の1つということで、当然やらなければいけない研修と思っています。
○東海林委員 私も、昔、研修を受けに行って結構勉強になったと思っています。それで、実際、保健所の仕事が大変増えて、なかなか数日間まとめて空けるというのが難しいという状況があります。ただし非常に大事な研修でもあるし、受けて当然の研修なので、もう少し受けやすい体制をいつも私たちは要望しているのです。例えば、5日間まとめられなければ、2日、3日でもいいとか、そういう、非常に受けやすい体制も工夫してもらえばいいと思うのですが、いかがでしょうか。
○加藤委員 わかりました。2日、3日だと、多分分けてやらなければいけないのではないかと思っています。一応、コースはそれなりの性格を明確にして、初めて保健所の業務に就かれる方ということで、いろいろ工夫をしていますけれども、やはり、2日だけとはなかなかいかないので、そうなった場合には、分けて前期、後期みたいなことは工夫を検討することは必要かと思っています。
○東海林委員 最近のことを、勉強する機会は少ないと思っています。保健師も医師も保健所に入職した時に、いちばん先に受けるべき研修ではないかと私は考えています。ですから、保健所のほうも研修の費用が出ないなどの問題もあるのですが、なんとか都内であればできる工夫をしていきたいと思っているところです。その辺、よろしくお願いしたいと思います。
○坂谷部会長 それから、診療の現場では対応できるドクター、ナースが減っているということが話題になってきているわけですが、結研のほうで教える側のスタッフというのは十分おありになるのか、その面でも苦労されているのかどうなのでしょうか。
○加藤委員 人員の数は、以前に比べたら、大分、予算の関係で少なくなっていますけれども、内容的に不十分なところがあれば外部講師もお願いする形で、内容的には質が下がらないように、十分、その辺は配慮しているつもりです。結核研究所としての、機能全体を考えて、どういう人員配置にするかというのが、私どもの課題として、考えていかなければいけない問題ですけれども、少なくとも、この研修に関しては、必要なものは外部の先生方のお力もお借りして、きちんとやっている状況です。
○坂谷部会長 周りからサポートするとか、他の部所へ分けておくなど、そのような工夫もいるかもしれませんね。
 視点4に移ります。「結核病床、モデル病床がありましても、医療スタッフが不足し、すなわち医師不足、看護師の結核病床離れですが、使用できないことがあるという指摘に対応するために、学会との連携や、卒後教育との連携をどのように図っていくか、それについて検討することが必要ではないか」という視点です。これについて、先ほどご紹介があったように、本日は結核病学会・呼吸器学会、感染症学会より、参考人をそれぞれお呼びしておりますので、資料の説明をお願いしたいと思います。
 まず、結核病学会及び呼吸器学会を代表して、渡辺彰参考人よりお願いします。
○渡辺参考人 東北大学の渡辺です。2つの立場からお話を申し上げます。私は現在、呼吸器学会のほうでは学術部会という制度を取っていまして、10個ぐらい、例えば喘息であるとか、COPD、あるいは癌、そして、その中に感染症結核学術部会というのがありまして、その部会長を努めています。この立場と、結核病学会の理事長としての立場からお話申し上げます。
 資料3、3頁からですが、呼吸器学会の教育に関する活動ですが、もともとこの呼吸器学会というのは、昭和36年に結核病学会から分かれて、独立した学会です。そういうことで、非常に関係は深いのですが、しかも20数年前までは呼吸器と、結核と学術集会を連続して、同じところでやってきたというようなことがありました。ところが、その後、新しい会員がどんどん増えまして、特に若い会員があまり結核病学会のほうには入っていないということで、会員の結核離れが進んでいるという状況がありました。1997年から、結核病学会との共同企画としてのシンポジウム、これを学術集会の際に行っています。出席者は毎回200なり300とありますが、多いときは1000名でありました。こういった状況で、実は若い呼吸器会員が結核抗酸菌症に関する知識を欲しているという現れだろうと思われます。具体的には、平成19年の総会から現在まで、結核講習会という名前でやっています。受講証を発行しているのですが、実は、これは何もメリットはありませんので、ちょっとインパクトに欠けております。それから、呼吸器学会自体が、平成19年度からICD制度協議会に加盟していまして、最初は結核講習会と、ICD講習会を1つのプログラムで、2つの名前でやったものですから、そのときは受講者が1000名に達しています。その後、ICD講習会が独立しましたので、また減っています。具体的には第47回が平成19年、詳細はここに書いてあるとおりで、貴和先生、森下先生が司会で、加藤誠也先生にもお願いしてやっていただいています。
 4頁、平成20年第48回、このときがICD講習会との合同でありまして、1000名の会場がほぼ満員でありました。平成21年第49回は、580名。第50回、このときにICD講習会が独立したために、点数が取得できなくなったという状況であります。ということで、来年もこれをやる予定で、もう既にプログラムが決まっていますが、この後述べる結核病学会の認定医制度の指定学術集会を受講すると点数がいただけるということにしようということで、呼吸器学会の理事会でこれを承認していただきましたので、また増えるのではないかと思っています。
 6頁、こちらは、結核病学会の活動です。いくつかに分かれていまして、★印ごとにお話をします。
 まず、「結核症の基礎知識」。これは、結核病学会の教育委員会が平成9年に出したもので、主に医学部学生向けの内容です。その内容に関しては、結核教育用のスライド集、これを作成して、各方面に提供しています。いま、現在、在庫がありません。ただ、これは平成9年6月制定で、その後目次がずっと書いてありまして、こういった内容なのですが、ちょっと古くなってきているということで、これを改訂するような形で、教育委員会を中心にこれを作ろうという動きになってきています。その際には、スライドではなくて、パワーポイントで作って、資料を完成させようということを、現在目論んでいます。
 8頁、こちらは日本結核病学会自体が、先ほどの呼吸器学会に続いて、平成20年度からICD制度協議会に加盟しています。平成21年7月の札幌総会で、このときから講習会を開催しています。その内容は第84回が札幌で、受講者は219名でした。今年は京都で371名、来年は中島先生が会長で6月2、3日に東京で開催いたしますが、会場が間に合わないのではないかということをいま懸念しています。多数の参加が予想されています。
 9頁、これが結核・抗酸菌症認定医制度に関するものです。詳細はこのあとお話しますが、それに伴う生涯教育セミナーとして、中島先生の学術集会のときに、来年の6月2、3日に生涯教育セミナー1~5の形で、これを指定して受講すると点数がいただける形にしております。結核教育の入口から真ん中ぐらいのところを狙っているものです。さらに専門的な高いレベルの講習会は、先ほど加藤先生からご紹介のあった結核予防学会のコースと考えております。
 「新しい結核用語辞典」と「結核診療ガイドライン」を南江堂より出版していますが、これを一般医の知識の普及に供しています。特に「結核診療ガイドライン」に関しては、昨年出版したものです。この内容の情報を広めるということで、結核病学会の教育委員会委員長のほうから、各地方会、支部の学術集会の際に、教育講演として加えていただきたいということを申し入れています。これは先週、各支部長に発送しているのですが、すでに東海支部と私の東北支部とで教育後援に加えるという形で、実際の活動を行っています。
 最後は認定医・指導医制度です。これは平成22年5月に発足していますが、実際の認定の点数をいただけるのは平成23年4月の呼吸器学会の結核講習会が最初になります。そのあと6月の結核病学会総会で、生涯教育セミナーを受講すると点数をいただける。その内容は、10頁、制度規則です。今年の5月19日に制定したものですが、掻い摘んで紹介いたします。第3章第8条、(1)認定医(2)指導医です。認定医のほうは実はかなり入りやすくなっています。しかしながら、指導医はある程度の点数をいただく、あるいはいろいろな経験がないとなれないという形になっており2段階にしています。
 11頁、第13条、ここに具体的な詳細が書いてあります。認定医から指導医になるときはどういうステップアップをするか、ということが書いてあります。13頁、細則の3が認定の要件、こういったプログラムを受けていただく。この中に結核予防会医学科コース、指導者育成コース、先ほど加藤先生からご紹介のあった内容がここに入っています。ここで受けていただきますと、単位をこれだけいただけるという形での承認条件としています。細則4が更新の条件です。こちらも大体同じですが、これは所定単位、認定医50点、指導医80点を取得した者という形が認定の更新の条件です。以上、掻い摘んでお話申し上げました。
○坂谷部会長 ありがとうございました。質疑はあとでまとめて議論のときにお願いすることにいたします。次に感染症学会を代表して、永井参考人から説明をお願いいたします。
○永井参考人 15頁からが私どもの資料となっております。1頁目は、最近の感染症学会学術集会で結核がどのように扱われたかを示しております。感染症学会はすべての感染症を扱っておりますので、結核だけ特化して何かをするというわけではないのです。日本は結核中まん延国ですので、常にこういったテーマをピックアップして、教育講演なりシンポジウムを開いているということです。
 つい最近の中日本地方会では、教育講演で結核菌脂質を標的とした新しい免疫応答。シンポジウムでは、Emerging Infections Disease、多剤耐性結核についてお話をいただいております。今年の感染症学会の総会では、教育講演で「結核の診断におけるクォンティフェロン検査の有用性」ということでお話をいただいております。東日本の地方会では、ベーシックレクチャーで注目されている感染症、結核の診断と治療における最新の進歩ということで、常にアップ・ツー・デートな、結核に関わることについてはテーマを持って学会で情報を提供させていただいております。
 そのほか、以下にお示ししましたように、毎回のように講演なりワークショップを行っており、ここにお示しした抄録はすべて後ろに付けておりますので、後ほどご覧ください。
 26頁に、感染症専門医制度についての規則があります。これは平成7年制定ですので、だいぶ歴史はあるのですが、感染症の専門医を作るということで出来上がったものです。基本的にはベースの学会に入っていて、その上で認定医、あるいは専門医を採った上で感染症の専門医を採るというシステムになっておりまして、ベースの学会というのが、27頁の付則3)にありますが、内科学会を中心に、その他これだけのものがあります。特に呼吸器に限ったわけではなくて、産婦人科学会、脳外科学会等々が入りますので、こういった学会で認定医・専門医になった方たちの中で感染症について、さらに詳しく極めたいという方たちに感染症学会のほうから専門医の資格を与えているということです。
 トータル6年以上ということで、6年のうち3年間は本学会員として、本会が指定した研修施設で定められたカリキュラムに基づいて研修を受けることが必要になってきます。
 そのカリキュラムについては、32頁からありまして、35頁まで細かいことが書いてあります。これだけいろいろな感染症に関わるものがあるわけです。網掛けの部分が結核に関わる部分です。当然、全体の中の一部ということになります。32頁の一部は網掛けが抜けておりますが、真ん中辺りの「空気感染」の部分も入りますし、下のほうでは抗酸菌の培養・同定という部分も実は入ってくるということです。その部分の網掛けは抜けておりますが、いずれにしても、こういった形で、全体の感染症の中で抗酸菌および結核は必ず学んでいただくことになっています。しかしながら、呼吸器学会、あるいは結核病学会のように非常に大きなボリュームではありませんので、そういった点では全体の中の一部ということにはなります。その中で内容の充実を図っているというところです。以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございました。いま3つの学会の説明をいただきました。この内容につきまして、何かご質問がありましたらお願いします。また視点4の「卒業教育との連携をどのように図っていくかについての検討」も併せてお願いします。まず、渡辺先生、永井先生にご質問はございませんか。まず言っておかないといけないのは、前回か前々回でしたか、森亨先生に来ていただいて話を聞いたわけですが、最後のまとめのときに、「何でもいいですからご要望は」ということで、是非とも人材の育成について、この審議会でも特記していただきたいという言葉がありました。
 その以前から、国の制度として、モデル病床をお金を出して作りやすくしたのですが、実際、物理的にはできたのですが、患者がいざ来たときに、診るスタッフがいないので本来の目的に使えないということが多々あって困ったということです。それに対して各学会、予防会や結研には頑張っていただいて、人材の育成を続けていただいている、あるいは新しく入っていただいているわけですが、若い先生方にとって、自分は結核についても勉強したい、某かの専門的な資格を採りたいが、どこへ修業に行ったらいいのだろうか
ということで、迷うようなことはないでしょうか。
○渡辺参考人 先ほどの結核予防会の認定・指導医制度に関しては、たとえて言いますと、富士山の1合目から5合目ぐらいまでを担おうと思っており、6合目から上は結核病学会のコースだろうと思っております。そういう意味で、認定医が非常に入りやすい制度になっており、まずは若い人にここにたくさん入っていただく。実際に、これはアナウンスして制度自体、発足して点数をいただけるプログラムはまだないのですが、すでに300名近く会員数が増えております。特に若い方が入ってきておりますので、これを俗な言葉で言えば、とっつきやすい制度ではないか。そういう形で若い方をたくさん入れていきたいと思っております。
○坂谷部会長 14頁の「単位取得確認書類」に書いてありますが、予防会でいままでどおりの医学科のコースを修練されても、もちろんそれを持って専門医と認定医と認めるということもありますよね。
 呼吸器病学会のほうから見て、共同であるいは呼吸器病学会がやっていたICDの講習会から結核の部分が出ていったわけですが、それについては別に不都合はございませんか。
○渡辺参考人 これに関しましては、呼吸器のほうでは最初結核講習会があって、そのあとICD制度協議会の講習会が、最初だけそこに一緒に乗っかっていたのですが、やはり分けなければということで2つに分かれたのですが、結核講習会に関しては、今月初めの理事会で結核病学会が発足させた認定医制度の指定プログラムとして、これをお認めいただいておりますので、そこにまた多数の方が入って来られると思います。また、認定医制度のことを知らない若い先生方が、呼吸器学会の中で、こういうプログラムがあるということで認識していただければ、さらにそれが呼び水になるのではないかと思っております。
 ICD制度講習会のほうは、それも私が担当ですが、呼吸器のICD講習会の中でも随時結核・抗酸菌症に関するプログラムを入れていければと現在考えております。
○坂谷部会長 永井先生、感染症学会としては、先ほど一言おっしゃったように、専門医の研修カリキュラムに間違いなく、結核と非定型が入っておりまして、これを採ったものは結核と非定型に関してもちゃんとできるはずだということですね。
○永井参考人 研修施設に関しては学会側が認定しておりますので、その際に結核病床はどの程度あるかということに関していろいろ認定のほうで考えておられるとは思います。専門医の100%が結核を診ているかということについてはなかなか確認が難しいかもしれません。
 ただ、感染症学会専門医の5年ごとの更新は50単位あるのですが、その50単位の中に日本結核病学会で発表、あるいは参加したことによって点数をいただけることになっておりますので、その辺りは結核病学会との連携をとりながらと考えているところです。
○坂谷部会長 ありがとうございました。加藤先生、いかがでしょうか。結研、あるいは予防会がほとんど一手に進めていただいていた分野が、ほかの分野からもご参加をいただけるというか、教育に乗り出していただいているわけですが、こういうことについて何かご意見はありますか。
○加藤委員 当然、参加の機関がいろいろあるというのは非常に大事なことですので、やはり連携しながら研修できる機会をたくさん提供できれば望ましいと思っております。
○坂谷部会長 ありがとうございました。今日は大学代表の方はおられないのですが、予防会の、複十字病院の院長である工藤先生が大学におられるときからよくおっしゃっていましたが、大学で結核病棟がある所が4割ぐらい。大学によっては結核の講義はあるけれども、空講義だけで実習は伴わないで卒業していく方が多いという話でした。
 ご意見として、医師国家試験の際に、いまみたいになるべく頻回に結核に関する問題も出していただくことが、若いドクター、学生を結核のほうに目を向けさせるいい手ではないか、という意見があったことを覚えております。いろいろ工夫が必要かと思います。
 まとめますと、自治体、学会、大学、結研、各関係機関が有機的に協調していくことが望ましい。いままで以上に手を携えて教育研修については取り組むべきであるということだと思われます。ほかにご意見はありませんか。次に視点5、「症例の相談体制確保のために、医療機関同士、結研、高度専門医療施設を中心とした広域ネットワークの構築や既存のネットワーク。例えば、NHOネットワークや、療研の協議会のネットワークの活性化の具体的な方法を検討していくことが必要ではないか」という視点が書かれているわけです。
 最近の部会で行われた「今後の医療のあり方」に対する議論の中で、高度専門医療施設を中心にした広域ネットワークの構築は必要である。それに関する1つの図が示されて考え方が出てきたわけです。これに関しましては、既存のネットワークの活用が有力視されております。それでは既存のネットワークにどのような可能性があるのか。こういうことのモデルとして、現状の紹介を結核研究所と国立病院機構から資料が提示されております。まず、加藤先生から先ほども縷々ご説明があったわけですが、既存のネットワークの視点からのご説明をお願いします。 ○加藤委員 資料3の36頁をご覧ください。36頁に指導者養成研修の全国会議ということで資料が付けてあります。いまの研修の話にも結び付くのですが、指導者養成研修というのは、1992年から国の委託を受けて、私どもの研究所で実施している研修です。対象者は結核対策及び診療の分野で相当の経験を有して、将来、その地域の結核対策指導医としての活動が期待できる医師ということで、自治体やそれぞれの病院から推薦を受けた人ということになっています。
 毎年、5~7人ぐらい、半分は臨床、半分は行政ということで、なるべく行政と臨床の先生が一緒になるような形で実施をしています。日程は5日×3回=15日間ということで、これは国の委託事業ですので、参加費、旅費等々、すべて国からの補助金によって賄われている研修です。
 全国的にはブロック別にお示ししていますが、合計109人です。なるべく全国的に偏らないようにということで、近年、特に参加のない県がいくつかあります。これはたまたまそういう人が見つからなかった県。参加に来たのですが、他の県に移ってしまったという県がいくつかありまして、いまそういう県になるべく参加をいただけるように働きかけている状況です。
 修了者はその地域の対策の委員会にメンバーとして参加されるとか、地域の研修の講師になられるとか、そういったことで活躍されています。ネットワークということで、実は修了者は現在まで109人いるのですが、国の対策についてもそれぞれの地域の立場から意見を出してもらおうということで、2008年から全国会議を開催するようにしました。2008年は、テーマとして地域における対策とか、ハイリスク対策、医療提供体制とか、サーベイランスということで、現在、この審議会で議論されている内容も含めて、地域の立場から意見を述べてもらおうということで始めています。2009年、2010年のいずれもいま審議されている内容に近いものを選びながら、テーマとして議論していただいている状況です。これは厚生科学研究の一部として実施されておりまして、結果については、厚生科学研究の石川班の報告書として提出されております。
 引き続き、結核医療法研究協議会については歴史がありまして、昭和28年に日本の結核医療を向上させる目的の研究を行うためということで設立されました。当時のことをご存じの先生から聞きますと、ストマイが日本に入ってきたとき、分配、あるいは研究のメカニズムとして作られたという、非常に由緒正しい歴史があると聞いております。
 したがいまして、研究事項が結核予防行政の進展に寄与することが定款に書かれております。現在、参加施設は151、会員数は393ということで、内科、外科、細菌科に分かれて研究事業を実施しています。
 全国耐性菌調査というのは5年ごとに行われており、毎回全国から会員がいらっしゃる施設から臨床データと細菌株を送っていただいて、私どもで解析して、国としての薬剤耐性菌の調査となっています。こういった全国的な調査はこの会だけが実施しているということです。
 内科会は再発に関する病理研究、あるいはキノロン剤の承認のための研究もこの会が実施しているということで、まさに予防行政に役立つ研究を実施しております。外科会は肺結核の症例、あるいは膿胸症例ということで、こちらもそういう形で研究を実施しております。以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございました。おわかりと思いますが、先ほどの渡辺先生、永井先生からの話は、渡辺先生がいみじくもおっしゃったように、1合目から5合目までに属するような方々の教育。その上にその方々が相談ができるような高度の専門家をどういうふうに育てるかという視点から、指導者養成研修があるということ。もっと専門的にオタクとは言いませんが、専門的な人たちの集まりとして療研というものがある。しかし、施設も会員数も先細り、横這になってきております。続きまして、国立病院機構の中島参考人からNHOの事業につきまして説明をお願いします。今回は人材の養成のところですが、ネットワークのほうから結核医療に関して幅広くご意見をいただきたいと思います。いただいたご意見につきましては、委員の皆様によるご議論の下、第3.医療の対応策に反映したいと思います。それでは中島先生、よろしくお願いします。
○中島参考人 国立病院機構東京病院の中島です。現在、144の病院が国立病院機構に属しております。そのうち結核病床を持っているのは53病院あります。その53病院で、全国国立病院等結核感染症協議会を作っております。今日は、その協議会の副会長として、私からご報告させていただきます。
 人材育成、あるいはネットワークということでしたが、全体に国立病院機構の現状で、いま結核医療についてどう考えているか、どう取り組みをするかということについてお話をさせていただきます。実は、いままでのご議論の中に、国立病院機構という言葉はほとんど出てこなかったというのは、我々としては非常にさびしいと感じました。この前、結核部会で議論があるということで、国立病院機構の結核感染症協議会の各施設から幅広くご意見をいただき、また役員会で非常に突っ込んだ討論を行いました。
 基本的にその辺りの議論からご紹介させていただきます。現代の結核の背景というのは、結核患者の高齢化に伴い、結核のみを疾患として持つ患者は減少して、いろいろな重篤な疾患、あるいは入院中に合併症として結核を発症する事例が非常に多くなってきた。これは結核病床を有する病院のみ(国立病院機構等)に結核患者の入院医療を依存する体制では、重篤な合併症、疾患に対しては十分な治療ができないという状況が出てきています。そういう治療をどこでやるかという問題があります。
 もう1つは、結核患者は減少しておりますので、結核病床を有する病院があまり集約されると、患者のアクセスに影響する。そのような背景因子が実はあるだろう。そういう中で、国立病院機構としては、結核以外の主たる疾患を持つ結核患者等に対しては、結核の患者の病態において総合的な機能を持つ地域基幹病院においても、感染症の管理下でしっかりと診療できるような体制を作ることが必要ではないか。ただ、それぞれの病院に結核を受け入れなさいと言っても、なかなか単純にはいきませんので、各都道府県ごと、あるいは自治体ごとにおいて地域の実情に応じて結核病床を有する病院のみならず、普通の病院で、例えば透析患者、外傷や急性の外科的疾患、精神疾患、脳血管障害、心筋梗塞などの患者を受け入れる一方で、結核患者を受け入れられるような医療機関も、いままでの結核病床を有する病院と地域の基幹病院と連携を是非強めていく必要があるだろう。そういうことをしないと、結核患者さんの治療という意味では、排菌があるから、もううちでは診られませんということを言っていたのでは、患者さんそのものが非常に不幸になるのではないか。そういう認識を我々としては持っております。
 そのような状況を踏まえて、国立病院機構としては何ができるだろうかということです。実は全国の結核の入院患者の43.4%を国立病院機構の中で診ております。患者さんを多数受け入れているわけですが、それ以外に、人材養成の課題としては機構は何ができるか。先ほどから散々ご議論がありましたが、医療従事者の結核の診療経験の不足について言えば、これは結核研究所、各学会等で非常に素晴らしい研修、あるいは養成システムがいまできております。いっぽうで、ベッドサイドで実際に患者さんを診るというのは、極めて重要なことだろうと思います。ある期間だけベッドサイドで結核患者さんを診るということは、1人の患者さんだけではなくて、その周りにいる何人もの患者さんも一緒に診られますから、結核の患者さんがどういうふうに治って、何が問題かというのが、いろいろな患者のケースで診られるわけです。ベッドサイドで教育するという意味では、国立病院機構はそれだけ患者さんを診ております。しかも、それが各都道府県に散らばった状態ですので、そういう役割は大いに貢献できるだろうと思っております。ただ、問題はそれをボランティアでやるというとなかなかみんな大変なので、これは何かの事業化をしていただければいいということです。例えば、医師やナース、コメディカル等の研修会等もやっていけるはずだと。事実、個別にはみんなそれをやっています。例えば、東京病院は100床の結核患者で、常に85人ぐらい診ていますが、この6年間は独立行政法人になってから各大学のドクターが、呼吸器の勉強をしたいというので半年とか、呼吸器研修医、専門医だと3、4年研修に来られているわけです。あるいは結核だけを勉強したいということで、2カ月、自衛隊の感染症感染症が出たとき来られた方もいます。現在までに、88人のドクターをベッドサイドで養成してきたわけです。
 そういう所で、大学から半年来た方も、そこで結核を勉強することによって、大学においてはいちばん結核患者さんを診たことがある、経験したことのある状況ができるわけです。そういう意味では、各病院が個別にはやっているのですが、おそらくそれが機構として、もっと全体的にシステムとして確立すれば非常にいいのではないか。我々としてはコンサルテーションを受ける事ができるだろうし、地域の基幹病院等で診療の経験のない先生方に対するいろいろな助言ができるだろうと思います。
 そうは言っても、どうしても治療困難な患者さん、治療期間がすごく長くかかる患者さん、副作用等で標準的に決まりきった治療が非常に難しい患者さんというのは、かなりの頻度で出てまいります。あるいは多剤耐性の患者さんです。そういう方々をどこか受け皿として入院させるというか、診療する施設がいりますが、それも国立病院機構の中で十分にできるでしょう。実際にそれは現在でもやっております。
 1つ問題は国立病院機構の結核病棟というのは、なかなか経営的に難しいということがあります。病床が50床あっても、平均的な病床占有率は57%ぐらいです。患者さんが埋まっている所は、そんなに赤字ではないのですが、例えば、50床の病棟に1病棟当たりの人手をかけても、実際の患者さんが20人ぐらいしかいないと、人件費等で非常に費用がかかりますので、かなりの赤字になってしまう。その点については、国立病院機構の中でも若干逃げ腰になっている部分があります。そこは確かに我々が今後やっていく上で非常に大きな問題です。
 そういう背景の中で、これから国立病院機構に来る結核医療を中心とした取り組みについてお話をさせていただきます。お手元にパワーポイントの資料がありますので、それを中心にお話させていただきます。
 国立病院機構の医療の柱というのは、診療、臨床研究、教育研修の3本柱です。診療について、結核で言えば全国の入院患者さんの43%を診療しています。平成20年の総数は、国立病院機構、国、公的機関、医療法人等に菌が出ていて感染性があるということで入院された患者さんが3,689人おりますが、そのうち1,598人(43.3%)を国立病院機構で診ております。大体この数字はずっと変わらない。結核患者が減ってきたとしても、常にこのぐらいの数は国立病院機構で診ています。
 2番目に、多剤耐性の患者さんが全国でかなり散らばっていらっしゃるわけです。調査によって、その66%を国立病院機構施設で診ている。3つ目は、国立病院機構というのは受け皿としてドクターはどのぐらいいるのだろうかということで見ますと、パワーポイントの3枚目を見ていただくと、医師の総数が全国で16万7,000人余いるのですが、そのうち国立病院機構に属するドクターは7,533人(4.5%)を占めています。ただし、呼吸器内科と感染症内科を標榜しているドクターはどのくらいかと言いますと、国立病院機構のところを見ますと、呼吸器内科、感染症内科の12%は国立病院機構の中に属しているということです。呼吸器、あるいは関連の感染症の専門家のドクターは、それなりに国立病院機構に集まっていると言ったら変かもしれませんが、かなりいらっしゃる。そういう患者さんを受ける、あるいはドクターとしてそれなりに診療体制が整っているという意味での下地はあります。
 次は臨床研究についてお話します。国立病院機構というのは、144の病院で大きなネットワークを作っております。例えば、急に治験がいるとか何かあったときに、国立病院機構のネットワークを使いながら、かなりいろいろな結果が出せる。昨年の新型インフルエンザのワクチンの治験というのは、要するに副作用とか、そういうのはどうだろうかというので、2カ月ぐらいの間に一斉に国立病院機構の職員6,000人ぐらいの治験をやりまして、結局、これはあまり大きな副作用はないから、国民にワクチンを摂取しても大丈夫だという結論を出した上で、一斉のワクチン摂取が始まったわけです。そういう意味では、非常に大きく貢献できる団体です。
 結核等の治験に関しても、先ほど結核研究所で随分いろいろなことがありましたが、多くは国立病院機構の施設がその下で分担研究者として、あるいは分担研究施設として治験、あるいは検査法の開発等に貢献しているということがあります。したがって、国立病院機構は臨床研究、治験等についても、かなり非常に大きな力を持っている。
 パワーポイントの4枚目に、39病院が呼吸器疾患ネットワークを作っているとあります。その中で、リーダーは近畿中央胸部疾患センターですが、これだけの病院が状況によってはスムーズに動ける。次に「多施設共同研究」というのが6つ書かれております。これは近畿中央胸部疾患センターが主任研究者ということでおやりになっている、現在もまだオンゴーイングの検査が多いのですが、これだけの多施設が参加して、多くのデータを集められるということで、これも非常に大きいです。
 国立病院機構臨床評価指数というのも、そこで見ていただければ書いてあります。最後に、教育研修についても機構内の問題は、機構内同士ではなかなか動いていないのですが、他施設からの受け入れという意味では非常に大きな貢献をしている。ただ、これが機構全体としてこういう取組がシステムとして、あるいは事業として行っていけば非常に大きな戦略になるのではないかと思います。少し急ぎ足になりましたが、機構の状況としてはそういう現状です。
○坂谷部会長 ありがとうございました。縷々説明がありましたが、ご質問はありませんか。いかがでしょうか。中島先生へのご質問は何かおありになりますか。いちばん最初の頁に診療、教育研修、臨床研究があります。もう1本の柱には情報発信があって、それがNHOは弱いです。この辺は経験は素晴らしいところということかもしれません。しかし、随分の患者さんを診ている。結核の43%、多剤耐性など難治性に関しては、66%。日本の呼吸器病学は結核療養所からスタートしていますので、いまだに呼吸器内科医の全国の約12%が勤務しているということです。これを使わない手はないということですが、いかんせん研究の場である結核病棟を維持していくのに難義して、お金がない状況にあることを特記しないといけないと思います。
○保坂委員 非常に基本的なことですが、40頁のところで、中島先生にお聞きしたいのですが、国立病院機構の呼吸器内科・感染症内科医師数の表がありますが、そこの医師総数というのは、何を指しているのかちょっと。いま日本全国の医師総数というともっと多いと思うのですが、16万7,064人という数字は病院に勤務している医師の総数でしょうか。
○中島参考人 失礼しました。病院勤務の医師の総数です。
○保坂委員 病院勤務をしている医師の総数の16万7,533人のうち7,533人が国立病院機構のお医者さんだということですね。わかりました。
○中島参考人 そういうことです。失礼しました。
○坂谷部会長 ほかはいかがでしょうか。議論はございませんか。まとめますと、結核医療に関する医療資源が減少する。医師もナースも減っているという中、各関係医療、各関係機関がネットワーク強化と、その有効活用を図っていく工夫が必要である。図は書けたのですが、具体的に手を携えてやるという所が、まだ現実化していないということかもしれません。それぞれの組織で頑張っていただいておりますが、それぞれネットワークを作ってといいますか、手と手を携えてやる工夫が必要であると思われます。
 国立病院機構の結核医療についてご説明がありましたが、第3の医療の提供の対応策に付け加えるべき点について、皆様からご意見をお願いします。議論は済んでいるのですが、資料1の9頁です。横長の右端に対応策、2.必要な病床数が確保できていない云々。いままでも議論がありまして、このような対応策でよかれと書いてあるのですが、前回、今回の議論を踏まえて、さらに追加することはないかということです。ご意見を賜りたいと思います。必要な病床数が確保できていない大都市圏や、結核病床の閉鎖・返上により、医療アクセスが悪化している地域が問題となっており、患者中心の医療実現のために結核病床の確保、医療提供体制の再構築が必要である。都道府県レベルで標準治療の他、多剤耐性結核患者や管理が複雑な結核治療を担う拠点病院を定め、地域レベルにおいて、合併症治療を主に担う地域基幹病院を定め、都道府県で対応困難な症例を広域で受け入れる専門施設を定める。都道府県単位の拠点病院を中心として、地域の実状に応じた地域医療連携ネットワーク体制を整備する。また、地域連携ネットワークに対して専門施設が支援を提供できる体制(専門施設ネットワーク)を整備する。個別の患者の病態に応じた治療環境を整えるべく、また医療アクセスの改善を図るためにも、結核病床とその他の病床を併せたユニット化病床、感染症病床の利用を含めた一般病棟の中の陰圧病床の整備を検討する。このようなまとめをしていますが、これでよかろうか、追加のことはないだろうかということです。
○保坂委員 いつも国のいろいろな審議会で思うことですが、結核に関する特定感染症予防指針を作るときに、これが必要だ、あれが必要だと必要な議論が出てくるわけですが、中島参考人がおっしゃったように、例えば結核病床をきちんと用意しようと思ったら、現在の診療報酬の中ではとても賄えない部分があるのですが、ここは科学について審議する厚生科学審議会の中の1つなので、財政的な裏付けについて話をする場面がほとんどないのではないかと思います。それをしないでずっときたことが、結核についても難しい問題を招いているのだと思いますが、こういう所でそういうことは言ってはいけないのでしょうか。会長先生、ちょっと教えてください。
○坂谷部会長 座長を長くやってきた経験ではタブーでした。先代までは間違いなく言ってはいけないという雰囲気でした。ここまで言えるようになったという気がします。
 もともとこの事務当局は健康局ですから、本省は健康局、保健局、医政局と分かれていまして、法律的なこと、財政上のこと、保険点数のこと。こちらは大綱を決める役目があるわけですが、それに伴うお金の面は、あまり話題に乗せないような伝統というか、雰囲気というか、制度的にそうなっているわけではないのですが、あったのは確かです。
○保坂委員 ほとんどの方が医師ですよね。医師の責任は何かというと、ただ机の上で何か議論をして、それを文面にすることではなくて、現実に医療の現場そのものをちゃんとすることが私たちの責務であると思いますので、ここですぐに財政面について踏み込んだことを申し上げたりするのは難しいかもしれませんが、折角こういったことをする以上は、財政的な問題についても申し上げていくような会に是非なっていただけたらと希望します。
 これは他の会議のことですが、がん対策基本法に基づくがん対策推進協議会が一生懸命検討・提案しているのに、財政的裏付けがないためにほとんど無力だということから考えていることですが、すべての国の科学者が参加する審議会や検討会でそういうことを強く求めていくことで、もしかすると国を動かせるかもしれないと思いますので、よろしくお願いします。
○坂谷部会長 貴重なご意見をありがとうございました。記録に留どめます。
○林補佐 1点補足をさせていただきます。私どもは健康局、保健局、医政局と連携をして政策の実現に取り組んでおります。こういった場の議論が財政の問題に影響しないかというと、そういうことは決してなくて、診療報酬の議論をするに当たっても、こういった場で何がいま困っていて、何が必要で、こういう方向に向いていこうということがきちんと取りまとめられている。それが関係者の総意であって、また国民にも役に立つことがきちんと取りまとめられていることが政策にお金を投資する価値がある前提になります。こういった所でのご議論なくして、保健局が診療報酬の議論などをやっていくことは実際には難しいことで、こういったことを取りまとめていただく時期が近付いておりますが、それをもって私どもも全力を上げて必要な資源の確保に取り組んでいきたいと考えております。
○坂谷部会長 ありがとうございました。そのとおりであります。41頁の中島先生が出された資料の中で、全国的に各都道府県に1つあったはずのNHOの基幹病院が、すでに3つの府県でなくなっている事実があります。宮城県、福島県、山梨県の3つの県では、すでにNHOの病院として結核病棟で結核患者を診ることができない状況にまできている事実があります。
 次に資料4の「普及啓発及び人権の尊重」についての議論に移ります。視点6「国や地方自治体の関与による地域連携推進のための普及啓発をどのように行っていくことが必要か」。こういうことに関しまして、予防技術者地区別講習会についての資料を事務局より説明をいただきますが、地区別講習会につきましては、地域へ結核対策の普及啓発を図っていくための良い機会となっております。また地域連携の強化に活用できるのではないかということです。その視点からの説明をお願いします。
○水野補佐 資料4の2頁をご覧ください。先ほど人材育成のところでも出てきましたが、国庫補助の対象事業になっている結核予防技術者地区別講習会についてご説明いたします。これは平成22年の実施要領です。開催目的としては保健所、市町村、指定医療機関等で結核予防事業に従事している技術者に対して研修機会を提供することにより、結核対策に必要な最新の知識と学問の進歩に即応した技術の取得と向上を図るということです。
 歴史的背景としては、昭和33年から行っておりまして、全国を7行政ブロックに分けて行っております。平成10年以降は、ブロック内の当番県が持ち回りで主催をする形になっております。受講対象としては、医師、診療放射線技師、保健師、看護師、その他と幅広く参加はあります。内容としては、3頁の講義内容をご覧ください。内容は「講義」、「特別促進事業の報告・評価」、「結核行政担当者会議」と大まかに3つに分かれます。講義は合同講義がありまして、その中の1枠は厚生労働省から情報提供等を兼ねた講義を行わせていただいております。
 合同講義以外にはそれぞれ専門職に分かれて、三科別講義を対象を絞って行われております。特別対策促進事業の報告・評価につきましては、平成10年度より地域の結核問題・対策の格差を解消するために、県市の特別対策促進事業の実績について発表・評価を行う場として設けております。結核行政担当者会議については、平成13年度よりブロック内の結核行政担当者の会議及び情報交換の場として設けられております。
 4頁以降は、講義の内容となっております。今年のテーマは、「今後の結核対策-結核予防計画の改訂に向けて-」というような国が行っている施策に関連した内容について行っていただいております。講義内容としては、基礎知識から地域連携の強化というように、最近の内容についても触れていることもあります。
 厚生労働省のほうからは「最近の結核対策の動向」ということで情報提供等をさせていただいております。結核医療提供体制の再構築ということで、厚生科学審議会の結核部会で話された議論の概要についても、こちらで紹介しています。各専門のほうにつきましては、専門を少し特化した講義内容を行っていただいております。
 8頁は平成22年度の内容です。「特別促進事業の報告・評価」、「結核行政担当会議」の各地でどのようなことが行われているかというものです。各特別促進事業の報告・評価につきましては、DOTS等の先進的な取組、また効果的な地域連携が行われている事例について発表していただきまして、DOTSや地域連携の地区での普及啓発に主に貢献している内容となっております。また、結核行政担当者会議につきましては、各ブロック内での協議事項はそれぞれありますが、厚生労働省からも議題を提出させていただいておりまして、特に施策に関する議題、予防計画の見直し、医療提供体制の現状等、情報交換や意見聴取をしているところです。
 地方の現状や課題について、情報収集ができる場所であるということと、厚生労働省からも今後の方向性等、情報提供や意見交換ができる場として活用させていただいております。
 11頁の「地区別講習会の受講者」については、大体1,000人ぐらいが毎年受講しております。7行政ブロックに分かれていますが、北海道地区のみ平成17年より開催がありませんので、現在は6行政ブロックになっておりますが、1,000人ぐらいの人数で推移しているということです。説明については以上です。
○坂谷部会長 ありがとうございました。3頁に、テーマとしてまとめていただいておりますが、下から2つ目の「特対事業」は地方自治体がこういうことをやりたいということで、国に申請して認められれば自治体にやっていただくということです。上のほうの大部分は、右端に「講師及び担当」と書かれていますように、国が一括してプランニングから実施まで、国には手足がありませんので、手足となって予防会にやっていただいている事業です。
 それに関する人たちが集まって、その地域のブロックの結核の行政について議論する担当者会議が各ブロックで行われております。これが始まったころは、国からも厚生労働省、結核感染症からも人が行きまして、ブロックと密接な議論、意見の交換があったらしいのですが、最近はあまりお呼びがかからないという現象もあるようです。是非とも、そういうことも含めて中央、地方、現場の連携をいままで以上にちゃんとやっていかなければいけないということが結論になるかと思います。視点6について、ご意見がありましたらおっしゃっていただければと思います。いかがでしょうか。
 「対応策」のところで空欄になって、どのように行っていくことが必要かということを議論しなければいけないと思います。まとめとしては、地区別の講習会などを通した中央(本省)、地方、現場の連携は重要である。これは言うまでもないと思います。今後も継続していくことが必要であるということ以上に、さらに密接に意思の疎通と現実の作業が必要であると思われます。これがまとめになるかと思います。
 特に北海道では講習会に参加する人がいなくなってしまったということがあるらしい。地域が広いのと、患者が減っているのと、専門家が少なくなっているのと、全部引っくるめてこういうことになっていると思います。何か加藤委員から。
○加藤委員 北海道の事情は1度予算的な事情で、休もうと思って1回休んだら再開できなくなってしまったのです。現場ではこういう新しい技術を知る機会がないということで、非常に困っているのです。そういった意味では、対策の重要性は訴えていく必要はあると思います。
 追加させていただきますと、地区特別講習会実施にあたっては、プログラムを毎年いろいろ検討していまして、基礎知識から入れているというのは、私どもがやっている研修に保健所の方は全部来られないものですから、新しく入ってきた方は基礎知識が必要ですが、習得する機会がないということで、プログラムに入れなければいけない状況があったり、あるいは地域によっては行政担当者だけではなくて、地域の医療機関の方に参加してもらっている所もあるのです。そういう所は結核に対する基礎的知識を持っていらっしゃらない。例えば高齢者施設のスタッフとか、一般医療機関の方も中に入ったりするということで、そういう面で研修の機会の普及の役割もしています。地域ごとによってやり方が違いまして、行政担当者だけ来る地域もありますし、いろいろな方が入ってくる地域もあって、それぞれの地域の状況、あるいは地域の罹患状況等に合わせて、なるべくその地域に役立てるような形で実施しているということです。
 いま部会長からお話があった地方との連携につきましては、この2年辺りは水野補佐が地方の意見を精力的に吸い上げるような形で担当者会議が運営されていますから、そういった意味ではご懸念の部分は、だいぶ解決されていると見ているところです。以上です。
○坂谷部会長 水野さんには、積極的に走り回っていただいているということです。先ほど保坂委員からありました話は、ほかの審議会でも同様の話があったのですが、そのときの説明としては、国の財布の中が軽いということを踏まえて、それを知って議論すると、このぐらいしかお金がないからこの程度で抑えておくかという話になることもある。お金のことは頭に置かずに、理想をまず追求するのがよいだろうという話もあったように記憶しております。
 ですから、それを先にやって、現実的に何ができるかということを、次の段階で考えようということかと、良いほうに考えればそういうことだろうと思います。これで本日の議論はすべて終えることができました。事務局から何か伝達事項がありましたら、よろしくお願いします。
○水野補佐 次回の部会についてですが、1月末、2月末、次回、次々回の部会を予定しておりますが、詳細の日時と議題等については、追って事務局より連絡をさせていただきます。
○坂谷部会長 ありがとうございました。委員の方々から、事務局に対して何かご質問はありませんか。時間がまいりましたので、これで本日の部会を閉会にいたしたいと思います。本日はお忙しい中を誠にありがとうございました。ご協力に感謝いたします。


(了)
<照会先>

健康局結核感染症課 03-5253-1111(内線2381)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(感染症分科会結核部会)> 第22回感染症分科会結核部会議事録

ページの先頭へ戻る