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2010年11月26日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会議事録

医薬食品局

○日時

平成22年11月26日(金)


○場所

厚生労働省 共用第8会議室


○出席者

出席委員(11名):五十音順 敬省略

 加 藤 総 夫、 佐 藤 田鶴子、 千 葉   勉、  手 島 玲 子、

○永 井 良 三、 野 田 光 彦、 林   邦 彦、  古 川   漸、

◎松 井   陽、 村 田 美 穂、 本 橋 伸 高

 (注) ◎部会長 ○部会長代理

 他参考人1名


 欠席委員(7名):五十音順 敬省略

 大 石 了 三、 清 水 秀 行、  鈴 木 邦 彦、  成 冨 博 章、

 西 澤   理、  檜 山 行 雄、  松 木 則 夫

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 成 田 昌 稔 (審査管理課長)

 俵 木 登美子 (安全対策課長)

 内 海 英 雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 森   和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

 三 宅 真 二 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

 赤 川 治 郎 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催さ
せていただきます。
 本日は、お忙しい中御参集いただきありがとうございます。
 本日の委員の出席についてですが、大石委員、清水委員、鈴木委員、成冨委員、西澤委
員、檜山委員、松木委員より御欠席との御連絡をいただいております。
 現在のところ、当部会委員数18名のうち11名の委員の御出席をいただいていますので、
定足数に達しておりますことを報告いたします。
 本日の審議事項、議題3に関しましては、財団法人日本生命済生会附属日生病院長の寺
川先生を参考人としてお呼びしています。
○松井部会長 それでは、本日の審議に入ります。先ず、事務局から配付資料の確認と、
審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。
○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席
表、当部会委員の名簿を配付しています。議事次第に記載されている資料1~7をあらか
じめお送りしています。このほか、資料8「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、
資料9「専門委員リスト」、資料10「競合品目・競合企業リスト」を配付しています。
 また、当日配布資料といたしまして、「『ノルレボ錠0.75mg』の医薬品製造販売承認
に関するパブリックコメントについて」を配布しています。
 続きまして、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リスト(資料10)について御
報告します。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。資料10の1ページ
を御覧ください。
 「ノルスパンテープ5mg/10mg/20mg」です。本品目は、非オピオイド鎮痛剤で治療困難
な変形性関節症及び腰痛症に伴う慢性疼痛における鎮痛を効能・効果としており、本剤と
同様に非がん領域での鎮痛適用を有するオピオイド製剤として承認されている品目及び
開発中の品目について、資料に掲げる3品目を競合品目として選定しています。
 次のページを御覧ください。「ソニアス配合剤HD、ソニアス配合剤LD」です。本品
目は、2型糖尿病を効能・効果としており、チアゾリジン系薬剤であるピオグリタゾン塩
酸塩とスルホニルウレア系薬剤であるグリメピリドの配合剤です。本剤と同様の配合剤は
承認されていませんが、本剤の承認後、本剤の有効成分の一つであるグリメピリドの単剤
が本剤に取って代わる可能性を考慮し、資料に掲げる2品目を競合品目として選定してい
ます。なお、ピオグリタゾン塩酸塩の単剤につきましては、申請企業の品目となりますの
で競合品目としては選定していません。
 次のページを御覧ください。「ノルレボ錠0.75mg」です。本品目は、緊急避妊を効能
・効果としています。本剤と同様の性交後の避妊を効能・効果とする承認品目、開発中品
目は無いことから、競合品目は「なし」としています。
 次のページを御覧ください。「エディロールカプセル0.5μg、エディロールカプセル
0.75μg」です。本品目は、骨粗鬆症を効能・効果としており、同様の効能・効果を有す
る薬剤について、資料に掲げる3品目を競合品目として選定しています。
 次のページを御覧ください。「アルタットカプセル37.5、アルタットカプセル75」で
す。本品目は、胃潰瘍等を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤につい
て、資料に掲げる3品目を競合品目として選定しています。
 最後のページを御覧ください。「アリクストラ皮下注5mg、アリクストラ皮下注7.5mg」
です。本品目は、急性肺血栓塞栓症及び急性深部静脈血栓症の治療を効能・効果としてお
り、同様の効能・効果を有する薬剤について、資料に掲げる3品目を競合品目として選定
しています。
○松井部会長 今の事務局からの説明に特段の御意見等はございますか。
 それでは、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆さんの
了解を得たものとします。それでは、委員からの申出状況について報告してください。○
事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。
 議題1、ノルスパンについては、退室委員、議決に参加しない委員は、共にいらっしゃ
いません。
 議題2、ソニアスについては、退室委員は、いらっしゃいません。議決に参加しない委
員は、千葉委員、永井委員、野田委員でございます。
 議題3、ノルレボについては、退室委員、議決に参加しない委員は、共にいらっしゃい
ません。
 議題4、エディロールについては、退室委員は、いらっしゃいません。議決に参加しな
い委員は、加藤委員、千葉委員、永井委員、林委員でございます。
 議題5、アルタットについては、退室委員は、いらっしゃいません。議決に参加しない
委員は、千葉委員、永井委員、古川委員、本橋委員でございます。
 議題6、アリクストラについては、退室委員は、いらっしゃいません。議決に参加しな
い委員は、加藤委員、永井委員、古川委員、本橋委員でございます。
○松井部会長 本日は、審議事項は6議題、報告議題が1議題となっています。本日は、
参考人の先生に来ていただいている議題3から行います。
 それでは、議題3に移ります。議題3について、機構から概要を説明してください。
○機構 議題3、資料3「医薬品ノルレボ錠0.75mgの生物由来製品及び特定生物由来製
品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要
否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 まず、審査報告書の3ページを御覧ください。本剤は、合成黄体ホルモンであるレボノ
ルゲストレル(以下、「LNG」)0.75mgを含有する錠剤2錠をブリスターパックした緊
急避妊薬です。世界保健機関(以下、「WHO」)によると、「緊急避妊とは、1.避妊な
しの性行為後から数日以内、又は2.望まない妊娠を回避するための避妊方法の失敗時に、
女性が実施可能な緊急的な避妊方法である。なお、実施される緊急避妊法は、日常的な避
妊方法としては適していない。」と定義されています。
 海外では1960年代より緊急避妊法としてホルモン剤が投与されており、当初はエチニ
ルエストラジオール(以下、「EE」)の単独投与、その後、EE及びノルゲストレル配合
錠を用いた方法(以下、「Yuzpe法」)が用いられるようになりました。1998年に報告され
たWHOによる臨床試験(以下、「WHO1998試験」)において、Yuzpe法(LNG0.25mg
・EE0.05mg錠2錠を12時間ごとに2回投与)とLNG0.75mg2回投与(LNG0.75mg錠
を12時間ごとに2回投与)が比較され、LNG2回投与の有用性が示されたことから、海
外各国でLNG0.75mg錠が緊急避妊を効能・効果として承認されました。さらに2002年
に報告されたWHOによる臨床試験(以下、「WHO2002試験」)において、LNG0.75mg
2回投与とLNG1.5mg単回投与との有効性及び安全性が同様であったことから、服薬の
コンプライアンス改善を考慮し、WHOは緊急避妊法としてLNG1.5mgの単回投与を推
奨しており、2010年4月時点で、本剤が欧州、アジア、アフリカ等の海外48か国で承認
され、一般用医薬品又は医療用医薬品として使用されています。
 本邦においては、緊急避妊の効能・効果を有する薬剤は承認されておりませんが、主に
エストロゲン/プロゲスチン配合剤によるYuzpe法が適応外使用されています。本剤の有
効成分であるLNGは、本邦において既に経口避妊薬等での使用実績がありますが、今般、
緊急避妊を目的として実施された国内第I相試験及び第III相試験成績並びに海外臨床
試験成績に基づき新効能・新用量医薬品として承認申請がなされたものです。
 本剤の審査に関しまして、専門委員として、資料9に記載されている委員が指名されま
した。
 本剤の臨床試験成績に関する審査の概略について説明します。有効性については、審査
報告書の22ページを御覧ください。まず、海外各国における承認の根拠となったWHO
2002試験について説明します。本試験は、薬剤投与前120時間以内に十分に避妊措置を
講じない性交を1回経験した女性4,136例を対象とした無作為化二重盲検並行群間比較
試験として実施されました。22ページの表を御覧ください。妊娠例数及び妊娠率はLN
G1.5mg単回投与で1,356例中20例(1.47%)、LNG0.75mg2回投与で1,356例中24例
(1.77%)、妊娠阻止率は、LNG1.5mg単回投与で82%、LNG0.75mg2回投与で77%
であり、LNG1.5mg単回投与の有効性が示されました。
 24ページを御覧ください。国内第III相試験では、性交後72時間以内に緊急避妊を必
要として来院した日本人女性を対象として、性交後72時間以内に本剤0.75mg錠2錠を1
回経口投与された結果、妊娠は63例中1例で認められ、妊娠阻止率は81%でした。国内
第III相試験は少数例の試験ですが、WHO2002試験と矛盾するような結果は得られて
いないことも考慮し、緊急避妊に対するLNG1.5mgの単回投与の有効性は、日本人女性
においても、期待できるものと機構は判断しました。
 安全性については、27ページを御覧ください。国内第III相試験で頻度の高かった有
害事象は、消退出血 46.2%、鼻咽頭炎 20.0%、不正子宮出血 16.9%、頭痛 16.9%、悪
心 13.8%、倦怠感 9.2%、傾眠 7.7%及び下腹部痛 6.2%であり、重篤な有害事象及び
死亡例は認められませんでした。日本人女性に対する本剤の投与経験は限られています
が、国内第III相試験での有害事象は、プロゲスチン投与時の副作用として既に知られて
いるものが多く、発現の傾向もWHO2002試験と大きく異なるものではないことから、
日本人女性においてもLNG1.5mg単回投与の安全性は許容可能であり、適正に使用され
れば大きな問題は無いと判断しました。
 用法・用量については、29ページを御覧ください。用量について、LNG1.5mgの有効
性及び安全性が示されたことから、本剤の用量を1.5mgとすることは妥当と判断していま
す。用法については、30ページの表に記載していますが、海外ではWHO2002試験にお
いて、性交後4~5日後と比較して性交後1~3日後で妊娠率が低く、妊娠阻止率は高い
成績が得られたことから性交後72時間以内に単回投与するよう用法が設定されており、
国内第III相試験においても、性交後72時間以内の女性に本剤が投与されたことから、
本剤の用法・用量を「性交後72時間以内にレボノルゲストレルとして1.5mgを1回経口
投与する」とすることは妥当と判断しました。
 効能・効果については、29ページを御覧ください。申請時効能・効果は、「性交後の
避妊」とされていましたが、本剤は適切な避妊が講じられなかった性交の後に、避妊の目
的で緊急的に用いられる薬剤であること及び性交後の記載は、性交後に避妊が可能である
との安易な理解を与える懸念があることを踏まえ、効能・効果は「緊急避妊」とすること
が適切であると判断しました。さらに、適正使用の観点から、本剤の使用上の注意として、
本剤は完全に妊娠を阻止するものではないこと、本剤は避妊措置に失敗した又は避妊措置
を講じなかった性交後に緊急的に用いるものであり、計画的に妊娠を回避するものではな
いことを注意喚起する必要があると判断しています。
 なお、36ページの「(6)製造販売後調査について」に記載されているように、300症例
を対象として、本剤処方時に服用者の背景(年齢、基礎疾患、既往歴、最終月経等)、性交
日時、緊急避妊薬又は低用量経口避妊薬の服用歴、服用前の月経状況等の安全性に関する
情報を収集すると共に、本剤服用後に服用日時、服用状況、避妊の有無と避妊方法、服用
後の出血状況、有害事象の発現状況、妊娠検査結果等を調査する予定です。
 以上のような検討を行った結果、本剤を「緊急避妊」の効能・効果で承認して差し支え
ないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断し
ています。
 本剤は原体、製剤共に毒薬・劇薬に該当せず、生物由来製品又は特定生物由来製品に該
当しないと判断しています。再審査期間は、4年とすることが適当であると判断していま
す。薬事分科会では審議を予定しています。御審議のほど、お願いします。
○機構 引き続き機構からです。本剤に関して、清水委員より3点ほど御質問がありまし
たので説明します。
 1点目は、「審査報告書の32ページ、『(1)本剤の臨床的位置付け』の3段落目、専
門委員より、本剤は、可能な限り速やかな処方が必要であることや性犯罪被害者云々の記
載につきまして、医療機関以外の団体・機関への周知の具体的な方策について検討した内
容を教えてください。」との御質問です。
 2点目は、「本剤の避妊について、情報提供を行う患者さん向けの資材、リーフレット
のようなものが検討されていると思いますが、それについて内容を教えてください。」と
のことでした。
 3点目は、「錠剤そのものに識別コードの刻印あるいは印字が無いように読み取れます
が、無いのであればその理由を教えてください。」という御質問でした。
 清水委員とお話しましたが、1点目の質問の趣旨は、「本剤を医療機関以外の機関にも
広く知らせることは重要である。一方で難しい面もあると考えるので、しっかりやって欲
しい。」ということでした。
 2点目は、「本剤に関しては適正使用の点が非常に重要であることから、患者さん向け
の資材、リーフレットについては、そういった点も留意して欲しい。」という趣旨でした。
清水委員には、「審査報告2」での御指摘を踏まえて、申請者の方に指導等を行っている
段階であり、申請者も検討しているということを伝えました。また、清水委員の御指摘を
踏まえ、そのような情報提供の重要性、リーフレットによる適正使用の推進の必要性につ
いても伝達指導したいと清水委員にも御了解を得ています。
 3点目の刻印については、現在、刻印を入れるべく準備をしているということで、清水
委員にも御了解いただいています。
○事務局 続きまして、10月の当部会において、本剤の承認に関するパブリック・コメ
ントを実施することについて御了解いただきました。11月10日~12月9日までの間、実
施しています。その途中経過の報告ということで、当日配付資料として「『ノルレボ錠
0.75mg』の医薬品製造販売承認に関するパブリック・コメントについて」をお配りしてい
ます。
 まず、パブリック・コメントの募集については、(別添1)の「意見募集要項」、(別添
2)の「品目概要」です。さらに、一部マスキングしていますが、部会資料にあります「審
査報告書」及び「添付文書案」です。それから(別添3)の「臨床試験の参考となる文献リ
スト」です。以上の資料を公表し、電子政府の総合窓口(e-Gov)において募集しています。
11月24日(水)までに寄せられた意見は、294件でした。承認するべきとの意見は293件、
承認するべきでないとの意見は0件となっています。なお、「その他の意見」として「子
宮筋腫の治療薬として必要」との意見が1件ありました。
 次のページに主な意見を挙げています。「緊急避妊薬は早急に承認されるべき」、「性
犯罪、性的被害を受けた女性を救う一つの選択肢になる」、「避妊の選択肢を広げること
は、女性を守るために必要」、「望まない妊娠を避けるために必要」、「緊急避妊の目的
で使用される中用量ピルでは副作用があり、女性への負担が大きい」「薬局で購入できる
ことが必要」、「安易に使用されないよう避妊指導が必要」等の意見が寄せられています。
以上、パブリック・コメントの途中経過についての報告でした。
 御審議のほど、お願いします。
○松井部会長 それでは、寺川参考人、御説明をお願いします。
○寺川参考人 私は、大阪市の日本生命済生会附属日生病院の院長をしております。どう
ぞ、よろしくお願いします。私自身は、必ずしもこの避妊及び避妊法の専門家ではござい
ません。私の専門領域はホルモンと癌ですが、2年前までは、医学部の産科・婦人科の教
授をしていました。そのために、産婦人科専門医としての見識でお答えすることはできる
と思います。
 今、機構の方からも適切な御説明がありました。私の理解するところでは、極めて高用
量でしたが、1960年に米国FDAで、バースコントロール・ピルとしての避妊薬が、世
界で初めて承認されました。先ほどの、受胎調節をするピルではなく、ポストコイタルピ
ルで性交後の妊娠を避けたいということで、ホルモン剤によるエマージェンシーピルの歴
史が始まっています。1960年代に続き、やはり欧米社会では性犯罪被害者に対して、何
とか妊娠を避けたいということから始まっています。当初は、エチニイルエストラダイオ
-ルというエストロゲンの1日量5mgを5日間連日服用させたようで、その避妊効果は
非常に高かったようです。けれども、多くの女性は非常に高度な悪心・嘔吐・頭痛で、5
日間続けて服用することは、ほぼ不可能に近かったようです。
 そして、10年ほど経ち、カナダのアルバート・ヤッペという研究者が、そこまでの大
量のエストロゲンを用いなくても、黄体ホルモン剤、プロゲスチンを併用することでエス
トロゲン含量を減らすことができるとしたのが、有名な「Yuzpe法」です。現在日本では、
このような適応はありません。けれども、女性の機能性出血の改善や月経周期の異常を改
善するプラノバールという中用量ピルは、ヤッペ先生の方法に従って今も使われていま
す。また、日本でも既に2006年に警察庁から、都道府県によって医療支援としてプラノ
バールを性犯罪被害者に対して無料で配布する制度があるようです。
 Yuzpe法も当初のエストロゲン量からすると、量がかなり減っています。しかし、量的
にはまだ多いです。その後、エストロゲンの単独、エストロゲンと黄体ホルモン剤のプロ
ゲスチンの合剤、そしてノルレボ錠が開発されました。するとLNGと略されているレボ
ノルゲストレルという異性体で、黄体ホルモン作用の活性が強くなりました。そのことか
ら、今回は黄体ホルモン剤、プロゲスチン単独だけで従来よりも避妊効果を高めることが
できました。そのことから、この資料にあるように、既にWHOで2回、1998年と2002
年に大規模なスタディが行われ、RCTが行われました。その結果として、今日御審議に
なるノルレボ錠、プロゲスチン剤を性交後72時間以内に服用することで、妊娠を避ける
ことができるとして、世界の大部分の国で承認・販売されています。
 この薬剤自身はフランスから出ていますが、全く同じ時期に、全く同じ成分がアメリカ
で、商品名「プランB」として販売されていました。既に1999年に発売されており、私
が米国等のドラッグストアで聞く範囲内では、17歳以上であればOTCとして処方箋無
しで薬局で売ってもらえるとのことでした。それ以下の場合には、保護者の同意が必要と
いうことです。これが、現在の状況です。
 Emergency Pill Websiteというサイトがあります。そのサイトを見ると、ノルレボ錠、
LNGと同じ成分のものが、今世界の多くで承認・販売されています。前回の低用量ピル
は、10年近く掛かってようやく承認されました。1999年くらいでしたが、とても時間を
かけて承認したことが分かります。それと同じですが、現在、日本を含めて世界で7か国
だけが未承認という現状になっています。
 したがって、当初から言えば非常に重要ですが、血栓症も含めて、ステロイドホルモン
含量をかなり減らし、さらにノルレボ錠にはエストロゲンは用いていません。世界的には
10年の歴史があり、それほど大きな副作用・副障害が出ているわけではありません。私
は、今は院長職で産婦人科診療はしていませんが、産婦人科医師としては、やはり承認し
ていただくようお願いするしかないと思っています。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいた
します。いかがでしょうか。
 私から1点あります。36ページの下から4行目です。市販後の調査のことだと思いま
すが、こちらに「葉書」と記載があり、気になりました。こうした調査は、非常にデリケ
ートであり、女性のプライバシーに関わります。葉書は、内容によっては非常に危険だと
思います。いかがでしょうか。
○機構 本薬は、性犯罪被害者も服用するということで、個人情報の保護の観点から再来
院が非常に困難な患者さんがいることも予想されます。このような郵便を用いた調査を想
定していますが、葉書の場合、最近使われている個人情報保護のシール等が付属した葉書
を検討しています。よって、個人情報の上にシールを貼り、きちんと個人情報が保たれる
形での調査になるよう既に検討されています。
○松井部会長 ありがとうございました。ほかには、ございませんか。
○寺川参考人 説明の補足が足りなかったと思う点があります。本薬は、中絶薬ではあり
ません。承認されて服用する方は、ほんの一部が性犯罪被害者の方であり、ほとんどの方
は避妊法に失敗し、本薬が必要になるというケースが多いと思います。私は医師として、
72時間以内に服用することで、妊娠が完全に防げると思われてしまうことを非常に心配
しています。
 生殖医学の分野からすると、排卵月経周期が正常な女性の健全なカップル、御夫婦の間
に性生活があれば、通常1周期当たりの妊娠率はおよそ8~10%です。
 データからノルレボ錠を服用した場合、72時間以内は有効ですが、それから遅れて服
用すると妊娠阻止率はみるみる下がります。いずれにしても、性交後72時間以内の服用
での妊娠率は、およそ2~2.5%です。正常周期の健康なカップルの8~10%に比べ、そ
の程度まで落ちるということです。そこから計算するとWHOの妊娠阻止率は非常に良い
ですが、この資料から同じ年の英国の妊娠阻止率は60%です。そのようなことを全部含
めると、72時間以内に適正に服用した場合の妊娠阻止率は、恐らく75~80%ぐらいだと
思います。すると、適正に72時間以内に服用しても、20~25%は妊娠に至る可能性があ
ります。
 非常に大切なことですが、服用したために妊娠の可能性が無いと考え、受診せずに放っ
ていると、異常妊娠等であった場合に大変なことになります。そのようなことから、注意
が必要です。本薬は、排卵の抑制を主たる機序にしています。排卵が終わった場合、その
機序は届きません。もし、排卵が終わった後の効果が期待できるとすれば、2錠中にLN
Gが1.5mgぐらいと高用量なので、排卵直前に服用し、排卵時期を少し遅延させて妊娠を
防ぐということです。
 さらにもう1点あります。女性の生殖器は、非常に巧妙にできています。排卵が終わっ
た後、5日~7日後のインプランテーションウィンドウに子宮内膜に黄体ホルモンの作用
が十分に行き届き、上手く受精した卵が卵管から下ります。そして、子宮内膜に着床し、
この流れがちょうどその期間に起こるようになり、そこから胚発生が起こり、胎児が育ち
ます。そのインプランテーションウィンドウと呼んでいる5日~7日の時期を1.5mgのL
NGを服用することで、少しずらすのだと思います。排卵が終わった方も、若干の妊娠阻
止の期待が持てるのは、排卵を遅延させて時期をずらすことにより、正常な着床をさせな
いということです。
 私が伝えたいことは、妊娠阻止率は100%ではなく、服用しても2割ぐらいの方、ある
いは25%の方には、妊娠が生じる可能性があるということです。よって、そのことを徹
底しておくことが、医療上の大きな問題で大事なことだと思います。
○松井部会長 重要なメッセージです。ほかにはございませんか。それでは、議決に入り
ます。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議が無いようですので、承
認を可とし、薬事分科会に上程とさせていただきます。
 寺川参考人、今日は遠方よりどうもありがとうございました。
              ── 寺川参考人退室 ──
○松井部会長 それでは、議題1に移ります。機構から概要を説明してください。
○機構 議題1、資料1「医薬品ノルスパンテープ5mg、同テープ10mg、及び同テープ
20mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査
期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説
明いたします。
 本剤は、オピオイドμ受容体の部分作動薬であるブプレノルフィンを有効成分として含
有し、7日毎に貼り替えて使用するマトリックス型の経皮吸収型製剤です。本邦において、
ブプレノルフィン塩酸塩を有効成分とする製剤は、注射剤が1983年5月に、坐剤が1990
年3月に承認されています。また、海外において、本剤は2010年7月現在、米国、ドイ
ツ等30か国で承認されています。
 本申請の専門委員としては、資料9に記載されている10名の委員を指名しました。
 審査内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。まず、本剤の臨床
的位置付けについて、審査報告書の51ページの「2)本剤の3段階除痛ラダーにおける位
置づけについて」の項を御覧ください。ブプレノルフィンは、非がん性疼痛においても準
用されているWHO方式がん疼痛治療法の3段階除痛ラダーにおいて、少量の使用は第2
段階、多量の使用は第3段階に位置付けられており、本剤の用法・用量では第2段階、非
オピオイド鎮痛剤で治療困難な疼痛に適用される鎮痛剤と位置付けられると考えており
ます。
 本剤の有効性について、審査報告書41ページの図8、43ページの図9を御覧ください。
一定量のNSAIDsの投与により十分な除痛が得られない日本人変形性関節症患者及び慢性
腰痛患者を対象とした国内第III相試験において、用量漸増期に非盲検下で本剤5~20mg
の範囲で至適用量を決定した後、二重盲検期に至適用量の本剤又はプラセボを7日毎に貼
付した時、主要評価項目であるFASにおける二重盲検期での「鎮痛効果不十分」をイベ
ントとしたKaplan-Meier曲線におけるイベント発生までの期間は、いずれの試験におい
ても本剤群ではプラセボ群と比較して統計学的に有意に長いことが示されています。
 本剤の安全性について、審査報告書56ページの表32を御覧ください。国内臨床試験に
おいて、約20~30%の症例が有害事象により中止に至っており、用量漸増期には悪心、
嘔吐、浮動性めまい、傾眠等のオピオイド鎮痛剤に特徴的な有害事象による中止、用量漸
増期以降には悪心、嘔吐に加えて、接触性皮膚炎、適用部位そう痒感等の投与部位の有害
事象による中止が多く認められています。したがって、本剤による治療開始の適否は、オ
ピオイド鎮痛剤としての副作用プロファイルを十分考慮した上で慎重に判断する必要が
あると考えており、添付文書(案)の「重要な基本的注意」の項において、変形性関節症及
び腰痛症に伴う慢性疼痛治療に十分な知識・経験を持つ医師の下で、本剤が適切と判断さ
れる症例についてのみ用いるよう注意喚起しています。
 また、本剤の適正使用のための施策について、審査報告書68ページの「(1)本剤の臨
床的位置づけ及び適正使用推進のための施策について」の項を御覧ください。本剤は非麻
薬であるものの、第二種向精神薬に指定されており、呼吸抑制や依存性のリスクがあるこ
とから、本剤を処方するすべての医師に対し、インターネット上のWebサイトを介した
講習(e-learning)、又は集合形式での講習を義務付けることが適切であると考えており、
承認条件として「変形性関節症及び腰痛症に伴う慢性疼痛の診断、治療に精通した医師に
よってのみ処方・使用されるとともに、本剤のリスク等についても十分に管理・説明でき
る医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ用いられ、それら薬局においては
調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤がなされるよう、製造販売にあたって必
要な措置を講じること」を付すことが適切であると判断しました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し使えないとの結論に達し、本第一部会で御審
議いただくことが適切と判断しました。再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬に該当し、
生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判断しています。薬事分科会では、
報告を予定しています。
 なお、事前に清水委員より5点の御質問をいただいております。
 1点目、「本剤を7日間製剤として開発した意図を教えてください」との御質問につい
ては、審査報告書の4ページの下から2行目及び脚注4に記載しましたとおり、海外にお
いて、本剤は当初3日毎に貼り替えて使用する製剤として開発されましたが、本剤貼付時
の血中濃度は貼付開始後7日間まで維持されることが確認されたため、その後は貼り替え
頻度がより少ない7日毎に貼り替えて使用する製剤として開発されています。本邦におけ
る開発は、海外と同一の製剤を用いて行われており、7日毎とした特段の意図は無いもの
と思われます。
 2点目、「他のオピオイド鎮痛剤からの切り替えに関して、審査報告書の53ページに、
申請者は他のオピオイド鎮痛剤からの切り替えを想定していなかった旨が記載されてい
ること、本剤の効能・効果は、『非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患』であること
を考慮すると、CTD1.8添付文書(案)の1ページ『用法・用量に関連する使用上の注意』
の項『1.初回貼付時』の『2)他のオピオイド鎮痛剤から本剤へ切り替える場合には、切
り替え前に使用していたオピオイド鎮痛剤の鎮痛効果の持続時間を考慮して、本剤の貼付
を開始すること。なお、高用量のオピオイド鎮痛剤から切り替えた場合には、十分な鎮痛
効果が得られないおそれがあるので、注意すること』との記載は、不要ではないか」との
御意見については、御指摘のとおり、本剤が適用される患者の多くは、NSAIDs等の非オ
ピオイド鎮痛剤により十分な鎮痛効果が得られない患者であると想定していますが、一方
で他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用される可能性も否定できず、その際、本剤の
有効成分であるブプレノルフィンは、モルヒネ等に拮抗作用を示す恐れがあることから、
他のオピオイド鎮痛剤との同時投与を避け、特に高用量のオピオイド鎮痛剤から切り替え
る場合には、十分な鎮痛効果が得られない可能性がある旨を注意喚起することが適切と考
えております。
 3点目、「承認条件を付すことに対して、専門委員からどのような意見が出されたか、
又、承認条件の内容を警告欄に記載することも可能ではないか」との御質問でした。先ほ
ども説明したとおり、審査報告書の68ページ、「(1)本剤の臨床的位置づけ及び適正使
用推進のための施策について」の項に記載しましたとおり、専門協議では、本剤の使用は
変形性関節症及び腰痛症に伴う慢性疼痛の治療や自然経過等を熟知している医師によっ
てのみ呼吸抑制や依存性のリスク等十分に考慮して慎重になされるべきとの意見が多く
の委員より出されており、このような意見を踏まえて、当該承認条件を付すことが適切で
あると判断しています。また、当該内容を警告欄に記載することについては、警告欄は「致
死的、又は極めて重篤かつ非可逆的な副作用が発現する場合、又は副作用が発現する結果
極めて重大な事故につながる可能性があって、特に注意を喚起する必要がある場合に記載
すること」(平成9年4月25日付薬発第607号「医療用医薬品の使用上の注意の記載要領
について」)と位置付けられており、本剤に関して現時点では、承認条件の内容が遵守さ
れる限りにおいて、警告欄に記載するに相当しないと考えており、添付文書(案)の2ペー
ジ、「重要な基本的注意」の項(2)において、「本剤は、変形性関節症及び腰痛症に伴う
慢性疼痛治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとでのみ使用する」旨を注意喚起するこ
とが適切と判断しております。
 4点目、「入浴、シャワーに関する注意喚起が必要ではないか」との御質問について、
追加資料として11月18日に送付しましたCTD1.6の41~42ページ、ドイツ添付文書
では本剤貼付中の「温水浴」により、血中濃度が増加すること、「入浴、シャワー、水泳」
が本剤に影響することはないとの記載がありますが、本邦では前者に関して、添付文書
(案)の2ページの「重要な基本的注意」の項(10)において、熱い温度での入浴は避けるよ
う注意喚起しており、シャワーや水泳により本剤が剥がれ落ちる危険性が少ないことに関
しては、患者向けの資材等に記載して情報提供することが適切であると考えております。
また、フェンタニル経皮吸収型製剤では、国内外で入浴や外部加温による死亡例が報告さ
れているため、これらに関する注意喚起を「警告」欄に記載しておりますが、本剤では、
審査報告書の35ページ、表18に記載しましたとおり、現時点では転帰死亡の報告は無く、
警告として注意喚起する必要はないと考えております。
 5点目、「自動車の運転等に関して、『外国における使用状況等に関する資料』の44
ページのドイツ添付文書は制限の記載にメリハリがあり、参考になるのではないか」との
御意見については、審査報告書の58ページ、表36に記載しましたとおり、国内長期投与
試験において、傾眠は投与開始後4週目までの用量漸増期に多く認められているものの、
その後の継続期にも散見されていることから、ドイツ添付文書に記載されている「安定用
量で使用されている場合は、一般的な制限は無い」とする根拠は明確ではなく、添付文書
(案)の2ページ「重要な基本的注意」の項(11)に記載しているとおり、ほかのオピオイド
鎮痛剤と同様の注意喚起を行うことが適切であると考えております。また、ドイツの添付
文書に記載されている「アルコール、精神安定剤、鎮静剤、睡眠薬等中枢神経作用物質を
使用中に顕著である」ことと同様の内容は、添付文書(案)の2ページ、「相互作用」の項
において中枢神経抑制作用が増強する旨を注意喚起しております。なお、投与開始初期及
び増量時に眠気が顕著に出やすいことについては、適正使用関連資材等に記載して、患者
等へ情報提供するよう指導させていただきます。
 以上です。よろしく御審議のほど、お願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいた
します。いかがでしょうか。
○本橋委員 ドイツの添付文書の45ページに、有害作用では「精神障害がよく見られる」
とあります。しかし、日本の添付文書では「頻度不明」となっています。こちらについて
は、日本では余り起こらないと考えて良いのでしょうか。
○機構 国内臨床試験においては、御指摘のような精神神経系の症状が、高頻度に認めら
るという傾向は認められておりません。しかしながら御指摘のとおり、海外では高頻度に
認められており、本邦でも同じような事象が発現する可能性は否定できないことから、添
付文書(案)においては海外での情報を「頻度不明」という形で情報提供をしています。
○本橋委員 一度貼ると、しばらく効果が続くわけですね。その辺の注意も必要だと思い
ます。
○機構 分かりました。ありがとうございます。
○松井部会長 ほかにはいかがですか。それでは、今の注意も含めて、議決に入ります。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議が無いようですので、承
認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題2に移ります。議題2について、機構から概要を説明してください。
○機構 議題2、資料2-1、2-2「医薬品ソニアス配合錠LD及び同配合錠HDの生物由
来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並び
に毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤は、スルホニルウレア剤であるグリメピリドとチアゾリジン系薬剤であるピオグリ
タゾン塩酸塩(以下、「ピオグリタゾン」)を有効成分とする配合剤です。グリメピリドは
インスリンの分泌を促進させる薬剤であり、アマリール錠の販売名で1999年9月に承認
され、10年以上臨床使用されています。ピオグリタゾンは、インスリン抵抗性を改善す
る薬剤であり、アクトス錠の販売名で1999年9月に承認され、同様に10年以上臨床使用
されています。2型糖尿病の治療においては、1剤で効果が不十分な場合、作用機序が異
なる薬剤を併用することは一般的であり、ピオグリタゾンについては、スルホニルウレア
剤で効果が不十分な場合の併用療法が、既に承認されています。本剤と同じ有効成分を組
み合わせた配合剤は、2010年7月現在、世界29か国で承認されています。
 本品目の専門協議では、資料9に示す先生方を専門委員として指名しています。
 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明します。ピオグリ
タゾンのスルホニルウレア剤との併用療法については、既に承認されているものの、当該
併用効能を取得する目的で実施された第III相二重盲検比較試験の実施当時、グリメピリ
ドが国内で未承認であったため、当該試験にはピオグリタゾンとグリメピリドとの併用試
験成績は含まれていませんでした。その後1999年9月にグリメピリドが本邦で承認され、
国内においてスルホニルウレア剤の中ではグリメピリドが最も汎用されるようになった
ことから、本配合剤の承認申請のためにピオグリタゾンとグリメピリドとの併用試験成績
の収集を目的として、ピオグリタゾン/グリメピリド配合剤の臨床試験が実施され、今般
試験成績が提出されました。
 有効性については、審査報告書の14ページの表1に示したように、15/1mg群、30/3
mg群のいずれにおいても対照観察期終了時から治療期終了時点におけるHbA1c変化量の
有意な改善が示されています。
 臨床試験の対象とされなかったピオグリタゾンで効果不十分な2型糖尿病患者に対す
るグリメピリドの上乗せ効果については、19ページの2)に示したように、有効性を支持
する十分なデータは無いものの、ピオグリタゾンとグリメピリドは共に国内の医療現場で
汎用されている薬剤であることを勘案すれば、ピオグリタゾンが効果不十分な場合にグリ
メピリドを併用した時の有効性を疑うものではなく、製造販売後に情報収集することで大
きな問題は無いと判断しております。
 安全性については、20~23ページに記載のとおり、適正使用下での安全性には特段の
懸念は無く、本剤の安全性は許容可能と判断しています。
 医療用配合剤の承認要件への該当性に関しては、15~17ページを御覧ください。「1)
配合剤の科学的合理性」に記載のとおり、ピオグリタゾンとグリメピリドの併用には一定
の臨床的有用性が認められ、当該併用療法と生物学的に同等と判断される本剤の配合意義
は示されていると判断しており、又、患者の利便性についても2)に記載のとおり、その
向上が期待できると判断しました。
 ピオグリタゾン及びグリメピリドは、経口血糖降下薬が処方されている患者のうち、そ
れぞれ3~4割の患者に処方されているという調査結果もある国内の医療現場で汎用さ
れている薬剤であり、ピオグリタゾンとスルホニルウレア剤の併用療法は既に承認されて
いること、いずれも10年以上の臨床使用経験があり、国内PMSデータから両薬剤の併
用療法について成績が提示されていることから、相当の併用実態があると判断いたしまし
た。
 製造販売後調査については、30ページの(4)に示しました。観察期間を12か月、調査
予定症例数を1,000例とした長期使用に関する特定使用成績調査に加えて、ピオグリタゾ
ン単剤から本配合剤へ切り替えられた際の長期投与時の有効性及び安全性を検討するこ
とを目的とする特定使用成績調査を実施し、高齢者、肝機能障害患者及び腎機能障害患者
における本配合剤の安全性、服薬遵守状況とHbA1cの関係について検討すると共に、長期
使用に関する特定使用成績調査においては、グリメピリドの用法変更による安全性及び有
効性への影響について情報収集される予定です。
 配合比については、24ページの「(6)用法・用量について」に示しました。申請者が
引用した国内市販後調査結果等を踏まえると、本配合剤の含有量と異なる用量での併用療
法を受けている患者は少なくないものの、汎用されている用量のすべてを組み合わせた配
合剤を開発することは、医療現場における薬剤数の増加、誤処方のリスクが高くなる可能
性があること等のデメリットもあり、現実的ではないと考えます。したがって、本配合剤
の含有量として15/1mg及び30/3mgの2種類を選択したことを否定するものではありま
せんが、今後とも処方調査等により医療現場で必要とされる用量の組合せについて継続し
て検討する必要があると考えています。
 以上のとおり、機構での審査の結果、2型糖尿病を効能・効果として、本剤を承認して
支し使えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断しました。
 本剤の再審査期間は4年、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品の
いずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。
 本日御欠席の清水委員より、事前に御意見を3点いただいています。1点目は、「本配
合錠LD、HDに加えて新たな規格が上市される場合には、医療安全の観点から十分な協
議が必要ではないのか」という御意見です。この点については、本配合錠LD、HDに加
えて、新たな規格が上市される際には、新医療用配合剤に該当するため、医薬品第一部会
で議論されることになります。また、企業側においても、配合剤の種類が増加することに
よる誤処方等のリスクを十分考慮し、ラインアップの見直しが行われるものと考えられ、
さらに機構の審査においても、販売名称による識別や誤処方等に対する安全対策が講じら
れているのか十分検討します。
 2点目及び3点目は、添付文書(案)についてです。添付文書(案)の4ページを御覧くだ
さい。2点目は、「『効能・効果に関連する使用上の注意』の(3)と『用法・用量に関連
する使用上の注意』の(4)は関連した事項であり、記載場所が離れていると分かりにくい」
との御意見です。この点については、ピオグリタゾン30mgにより効果不十分な患者さん
については、本配合剤の投与対象としては適切ではないため、「効能・効果に関連する使
用上の注意」には記載していません。しかしながら、ピオグリタゾン30mgにより効果不
十分な患者さんに、本配合錠HDを投与することは、グリメピリド単剤における承認用法
・用量に反している点を注意喚起すべきとの判断により、「用法・用量に関連する使用上
の注意」の(4)に記載をしています。上記のような観点から、記載を同じ注意喚起の中に
含めてしまうことは、適当ではないと判断しました。以上より、現行の記載とします。
 3点目は、本配合錠LDを服用中の患者さんに用量調節が必要になった場合の注意事項
についてです。具体的には、「LDからHDへの切り替えは、行わない旨を添付文書に記
載する必要は無いか」との御意見です。この点については、本配合錠LDで効果が不十分
となった場合、再度用量調節が必要となることから、通常は単剤併用による治療が選択さ
れるものと考えます。しかしながら、現時点において本配合錠LDからHDへの切り替え
を禁ずるほどの懸念及びエビデンスは無いことから、添付文書については現行の記載とし
ます。
 以上については、事前に清水委員に説明し、御了解を得ています。御審議のほど、お願
いします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいた
します。
○野田委員 「(3)の効能・効果に関連する使用上の注意」についてです。原則として、
既にピオグリタゾン塩酸塩及びグリメピリドを併用しており、状態が安定している場合の
み使用可能とした方が良いと思います。単剤ごとに投与量をタイトレートして決定したと
ころで、両剤の配合薬を用いるべきだと思います。
○機構 基本的には、単剤において用量調節された方が、本配合剤に切り替えられるとい
うのが適切な使われ方かと思います。しかし、今回提示されている臨床試験においても、
当初単剤で使われていた患者さんから、本配合剤に切り替えるということも行われていま
す。よって、単剤からの切り替えについても、問題は無いと考えています。
○野田委員 ただ、切り替えた後でのその用量が適切かどうかは分かりません。例えば、
ピオグリタゾン15mgを使っていた後にLDに切り替えれば、グリメピリド1mgを上乗せ
した形になりますが、その1mgが多過ぎたり、少な過ぎたりする可能性があります。し
たがって、1mgの方を1.5mg、0.5mgにする等を行った後で、それが偶然15mgと1mgに
落ち着いてから、こちらに移行すれば良いと思います。
○松井部会長 前々回の時、配合について多くのことをディスカッションしました。
○野田委員 前々回議論した配合剤には、上乗せによる切り替えの記載はなかったと記憶
しています。単剤同士で安定している場合に切り替えるということでした。
○機構 これまでの糖尿病の配合剤ですが、8月の部会で御審議いただいたリオベル配合
錠についても、既に御承認いただいたメタクト配合錠についても、単剤で効果が不十分な
場合に切り替えることを同じように記載しています。
○野田委員 リオベルにその記載は、無かったと思います。安定している際に移行するこ
とを原則としていませんでしたか。
○機構 リオベルについても同じですが、原則として既にアログリプチン及びピオグリタ
ゾンを併用し、状態が安定している場合、あるいはピオグリタゾン単剤の治療により効果
不十分な場合、本剤の使用を検討することとしています。
○野田委員 その場合、配合剤への移行はピオグリタゾン単剤からのみを認めているので
すか。
○機構 リオベルについては、アログリプチン効果不十分例における臨床成績が提示され
ていないことに加え、市販後の成績も無かったことから、現時点ではアログリプチン効果
不十例からの切り替えは判断ができず、その部分は記載されていません。
○野田委員 念のために、既に承認されているメタクトの資料を読んでもらえますか。
○機構 メタクトですが、「原則として既にピオグリタゾン塩酸塩及びメトホルミン塩酸
塩を併用し、状態が安定している場合」、あるいは「ピオグリタゾン塩酸塩又はメトホル
ミン塩酸塩単剤の治療により効果不十分な場合に、本剤の使用を検討すること」となって
います。
○野田委員 けれども、今挙がったピオグリタゾン、メトホルミン、アログリプチンに比
べて、グリメピリドの場合は低血糖の頻度が多いです。グリメピリドを上乗せする形の合
剤への移行は、少し例外的に考えた方が良いと思います。
○機構 今回のグリメピリドの上乗せは、15/1mgに関して1mgが開始用量の中に含まれ
ています。そのことから、そこまでの懸念は無いと考えています。30/3mgに関しては、
先ほど説明しましたが、添付文書(案)の4ページの「用法・用量に関連する使用上の注意」
の(4)に記載しています。ピオグリタゾン1日30mg単剤の治療で効果が不十分な患者さ
んが、本配合剤のHD錠に切り替えるという場合には、グリメピリド単剤で承認されてい
る用法・用量の開始用量0.5~1.0mgを逸脱することになってしまいます。よって、その
ような患者さんに関しては、「用法・用量に関連する使用上の注意」の(4)の記載のとお
り単剤併用を行います。
○野田委員 すると、30mgから上乗せして配合剤に変更する用い方は無いのですか。つ
まり、LDとHDでは、別の使い方になるということですか。
○機構 そのとおりです。
○野田委員 それでも良いのかもしれませんが、非常に分かりにくいと思います。
○松井部会長 逆に分かりにくいので、別に記載したということですね。
○機構 野田委員の御指摘は、グリメピリドが入っているために低血糖の懸念があるとい
うことです。このことは、我々も十分に認識しています。医療機関向け資材で十分な注意
喚起、情報提供を行うということでよろしいでしょうか。
○野田委員 基本的に合剤の原則としては、同じドースで相当長期間用いている人の中
で、数値が安定している人のみ切り替えることができる旨を強調した方が良いと思いま
す。特にグリメピリドの低血糖には、留意すべきだということが周知される必要がありま
す。
○審査第一部長 今後の糖尿病に関する配合剤の審査において、その点に留意して審査を
行っていくこととします。今回の配合剤についても、御意見を踏まえて情報提供を徹底し
ます。
○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。
○野田委員 3)を二つに分けたらどうでしょうか。「原則として」と「あるいは」以下
は、「例外的に」として4)にするのはどうでしょうか。
○機構 先に承認したメタクトで同じような記載をしていますので、そこの線引きも難し
いと思います。今後留意したいと思います。
○野田委員 メタクトの場合、メトホルミンもピオグリタゾンも基本的に低血糖を起こさ
ない薬です。先ほどのアログリプチンも単剤では低血糖を起こさないものなので、グリメ
ピリドといったSU系の合剤の時は、注意した方が良いと思います。
○機構 そちらに関しては、我々も十分に理解しています。組み合わせる相手によって、
考えるべきだという御指摘もよく分かります。
○野田委員 すべて前例と同じ書き方をするのですか。
○機構 そのようなことではありません。十分に先生の御意見は理解しています。
○松井部会長 私が見ても、「用法・用量に関連する使用上の注意」の(4)がさりげなく
書いてあるような気がします。野田委員は、こちらをもう少し強調して欲しいという御意
見であると思います。いかがですか。そのような低血糖に対する注意が必要ということで
すね。
○野田委員 ピオグリタゾンの効果不十分例についての臨床試験が無いことは、そのよう
な例に使われた時、低血糖等どのようなことが起こるのかが明らかになっているとはいえ
ません。
○松井部会長 (4)をゴシックにすることはできるのでしょうか。野田委員の発言の趣旨
を理解し、その点を検討していただけますか。
○審査第一部長 野田委員の御意見は十分に理解しました。清水委員からも、こちらにつ
いての御意見をいただいています。それも踏まえて検討したいと思います。
○松井部会長 よろしくお願いします。ほかに御意見はありますか。ありがとうございま
した。それでは、議決に入ります。なお、千葉委員、永井委員、野田委員におかれまして
は、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたし
ます。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議が無いようですので、承
認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題4に移ります。議題4について、機構から概要を説明してください。
○機構 議題4、資料4「医薬品エディロールカプセル0.5μg及び同カプセル0.75μg
の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の
指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いた
します。
 本剤は、活性型ビタミンD3誘導体であるエルデカルシトールを有効成分として含有す
る製剤であり、骨粗鬆症治療薬として開発された薬剤です。同じ作用機序を有する薬剤と
して、国内ではアルファカルシドール、カルシトリオールがあり、いずれも20年以上に
亘り臨床使用されています。なお、活性型ビタミンD3は国内では骨粗鬆症の治療に汎用
されているのに対し、海外ではほとんど使用されていない等、治療に対する考え方に国内
外で違いがあるため、海外では本剤は承認されていません。
 本品目の専門協議では、資料9に示す先生方を専門委員として指名しています。
 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明します。有効性に
ついては、審査報告書の50ページです。表12及び図1に示したように、日本人原発性骨
粗鬆症患者を対象とした第III相試験において、非外傷性新規椎体骨折発生までの期間に
おいて、本剤群のアルファカルシドール群に対する優越性が示されました。次に51ペー
ジの表13を御覧ください。腰椎及び大腿骨近位部の骨密度変化率についても、本剤群で
はアルファカルシドール群と比べて改善することが確認されました。
 安全性については、56~64ページの「(3)安全性について」です。血中カルシウム増
加、尿中カルシウム増加、尿路結石、胃腸障害、腎機能障害、肝機能障害、悪性腫瘍、心
血管系疾患について個別に評価した結果、大きな問題はみられないことから、本剤の安全
性は許容可能と判断しています。ただし、アルファカルシドール群と比べて本剤群で血中
カルシウム増加及び尿中カルシウム増加の発現頻度が高かったことから、その旨を適切に
注意喚起する必要があると考えています。この点については、申請者により適切な対応が
なされていると判断しています。
 製造販売後調査については、74~75ページの「(5)製造販売後調査について」です。
観察期間を女性1年間、男性3年間、調査予定症例数を3,000例とした使用成績調査が実
施され、高カルシウム血症の発現状況及び関連する検査値の異常変動の発現状況、男性患
者における安全性及び有効性を重点調査項目として、情報収集される予定です。
 以上のとおり、機構での審査の結果、骨粗鬆症を効能・効果として、本剤を承認して差
し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断しました。
 本剤の再審査期間は8年、原薬は毒薬、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生
物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定してい
ます。
 本日御欠席の清水委員より、事前に御意見を2点いただいています。1点目については、
添付文書(案)の14ページの「6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の(3)についてです。
「医療現場での具体的な指導はどのようにすべきか、又、このことについて製造販売後調
査の中に組み込むことは可能であるのか」との御意見です。
 この点については、妊娠を希望する患者さんは、医師と相談するように患者さん向け情
報提供資材で注意喚起していく予定です。医療現場においては、本剤の半減期等を勘案し、
医師により個別に判断されるものと考えます。清水委員の御意見も踏まえ、申請者に再検
討をお願いしています。
 なお、骨粗鬆症は高齢者に多い疾患であるため、若年の患者さんの症例が集積しにくい
こと、又、投与期間中は適切な避妊がなされること、投与中止後に妊娠が判明する症例、
かつ中止後にフォロー・アップできる症例は、さらに少ないことが想定されることを勘案
すると製造販売後調査において、本剤投与中止後の適切な避妊期間について、情報収集す
ることは困難と考えます。
 2点目は、審査報告書における略語の使い方についてです。53ページの「(1)本剤の
臨床的位置付けについて」を御覧ください。「アレンドロン酸ナトリウム水和物の略語と
してALNを使用しています。一方、審査報告書全体を通じてアルファカルシドールの略
語としてALFを使用していることについて、紛らわしい」との御意見でした。この御指
摘を踏まえ、今後審査報告書を作成する際には留意したいと考えます。
 以上については、事前に清水委員に説明させていただき、御了解をいただいています。
御審議のほど、お願いします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいた
します。
○佐藤委員 今回は出ていませんが、この薬剤と比較するものとして、現在ではビスホス
ホネートが臨床的に多く使われています。そこで起こる現象として、ここでは特に腰を中
心とした大腿骨や腰椎の辺りに効果があると考えています。動物実験でも、ほかの骨での
検査は行われていません。ビスホスホネートの患者さんの中で、歯のある顎骨辺りで頻繁
に、顎骨壊死という症状が起こっています。臨床的に歯科では、大変困ることが起きてい
ます。
 本薬については、製造販売後調査で多くのことが挙げられています。例えば、顎骨以外
の箇所で副作用が起きるのではないかと調査されています。恐らく骨の状況の局所的なも
のは、バイオロジカルな変化として、カルシウムが沈着してくるということが考えられま
す。臨床試験を行う時に、顎骨壊死についても注意をして欲しいと思います。
○松井部会長 顎骨以外にも、起こる可能性はありますか。
○佐藤委員 原因は分かりませんが、恐らく歯があることにより感染を起こしています。
ビスホスホネートの場合、投与するとそこで骨が緻密になり、感染が増幅して壊疽になり、
顎骨を取らなければいけないという症状が出てきています。
 同じようなカルシウムが沈着することについて、機序は違いますが、局所的に考えれば、
同じではないかと予想されました。審査の事前段階から、このチェックもして欲しいと思
います。
○松井部会長 いかがですか。
○機構 骨粗鬆症領域で顎骨壊死が話題の一つになっていることは、我々も認識していま
す。今後ビスホスホネート以外の薬剤の臨床試験で、どの程度評価ができるのかというと
ころもありますが、御指摘を踏まえて、審査をする上での論点の一つとして、既存のデー
タから、どの程度説明できるのかといった点を検討したいと思います。
○松井部会長 ほかには、いかがですか。
○永井部会長代理 ラットでは、がん原性があると書いています。これについては、添付
文書等に余り注意がありません。この程度の扱いで良いのですか。
○機構 ラットにおけるがん原性試験の結果は、添付文書(案)の14ページの「9.その他
の注意」に記載しています。こちらは、ヒトにおける影響についても、審査報告書等で議
論しています。高カルシウム血症が、長期間持続しないようにすることが重要と考え、定
期的な血清カルシウム値の測定等の注意喚起も行っています。
○松井部会長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入ります。
なお、加藤委員、千葉委員、永井委員、林委員におかれましては、利益相反に関する申出
に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議が無いようですので、承
認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題5に移ります。議題5について、機構から概要を説明してください。
○機構 議題5、資料5「医薬品アルタットカプセル37.5及び同カプセル75の製造販売
承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構よ
り御説明いたします
 ヒスタミンH2受容体拮抗薬であるロキサチジン酢酸エステル塩酸塩(以下、「本薬」)
は、1986年7月に胃潰瘍、十二指腸潰瘍等を効能・効果として承認されています。これ
らの酸関連疾患の主因となる胃酸分泌は3~4歳までに成人とほぼ同様のレベルに達す
ることが報告されていること、又、小児薬物療法検討会議において検討する薬物療法の候
補として、日本小児栄養消化器肝臓学会よりH2受容体拮抗薬及びプロトンポンプ阻害剤
に対する要望が出されていることから、申請者は小児医療の要請に応えるべく、本薬の小
児適応に対する開発を行うこととし、今般、臨床試験成績が提出され、新用量医薬品とし
て承認申請されました。
 なお、2010年6月現在、本薬は世界4か国で発売されていますが、小児に対する用法
・用量が設定されている国はありません。
 本品目の専門協議では、本日の配付資料9に示す専門委員を指名しました。
 以下、本薬の有効性、安全性について、臨床試験成績を中心に説明します。本申請に際
し、小児薬物動態試験、健康成人対象の薬物動態試験、小児臨床薬理試験及び小児一般臨
床試験の計4試験が実施されています。
 薬物動態については、審査報告書の11ページの図1及び表6を御覧ください。成人及
び小児を対象とした薬物動態試験の結果、小児患者における本薬単回投与時の薬物動態
は、体重を考慮した場合に健康成人の薬物動態と大きく異ならないと考えられました。
 胃酸分泌抑制効果については、7ページの表3及び13ページの「2)小児と成人におけ
る薬力学的効果の異同について」の1~5行目を御覧ください。それぞれ、薬力学的効果
を検討した試験として、小児及び成人の胃内pHが3以上を保持した時間の割合を記載し
ています。小児臨床薬理試験及び成人を対象とした公表論文の成績から、小児における本
薬の胃酸分泌抑制効果は成人に対し、大きく劣ることはないと推測できると考えました。
一方、有効性及び安全性を確認する試験としては、胃潰瘍、十二指腸潰瘍又は逆流性食道
炎のいずれかを有する、あるいは疑いがあると診断された患者さんを対象とした小児一般
臨床試験のみが実施されており、小児を対象とした検証的試験は実施されておりません。
この点について、機構は、小児を対象に上部消化管内視鏡検査による評価を行う試験の実
施は困難であること、さらに、本薬の投与対象となる小児患者は少ないことから、小児に
おいて本薬の有効性を検証する試験の実施は極めて困難であり、一方、本薬が胃酸分泌抑
制作用を作用機序とする薬剤であること、成人において胃酸分泌抑制作用に基づく消化性
潰瘍、麻酔前投薬等に対する有効性が確認されていることを踏まえると、成人と小児で薬
物動態及び胃酸分泌抑制効果に大きな差異が認められなければ、小児においても成人と同
様な有効性が期待できると考えました。したがって、一般臨床試験、薬物動態試験及び臨
床薬理試験成績を踏まえ、本薬の既承認の効能・効果に対する有効性は小児においても期
待できると判断しました。
 安全性については、15ページの「(4)安全性について」です。今回提出された臨床試
験と使用成績調査の成績、並びに公表論文での報告に基づき、本薬の小児に対する安全性
を確認しましたが、小児に特異的な有害事象の発現及び発現頻度の上昇は認められていな
いことから、現時点では成人に対する注意喚起に加え、さらなる注意喚起は必要無いと考
えました。
 以上のような機構の審査の結果、本薬の小児に対する有効性は期待でき、安全性は許容
可能と考えられることから、承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議され
ることが適当と判断しました。
 なお、本薬は小児に対する用法・用量を追加する新用量医薬品に該当することから、再
審査期間は4年とすることが適当であると判断しています。薬事分科会では報告を予定し
ています。
 また、事前に清水委員より御質問をいただいています。審査報告書の23ページの「2)
小児の年齢制限の設定について」です。「投与対象患者を『原則6歳以上とする』と記載
しないことに変更した理由がよく理解できません。補足が必要だと思います。記載しない
のであれば、用法・用量に関連する使用上の注意に、『小児への適応については臨床成績
を参照する』と記載してはどうでしょうか。」との御指摘をいただいています。この点に
ついては専門協議において、専門委員より「小児に対する使用経験は限られていること、
6歳未満の小児への使用経験は無いことから、原則6歳以上とすることが妥当であり、又、
年齢制限については、他の薬剤の状況を参考にすることも有用である。」との意見が出さ
れました。一方で、ほかの専門委員からは、「あえて6歳未満に使用を禁止する大きな理
由は無く、臨床現場としては年齢制限を設けず、使用上の注意において使用経験が無いこ
とを記載した方が良い。」との意見がありました。さらに、「カプセル剤の服用が可能に
なるのは、5~6歳の頃であると考えられ、年齢の下限は不要である。」との意見が出さ
れました。
 これらの専門委員の意見を踏まえ、機構は今回6歳以上の小児を対象に実施された臨床
試験において、安全性上、特に問題となるような小児に特異な事象は認められず、6歳未
満に投与したとしても、直ちに安全性上問題が生じる可能性は低いと考えられること、臨
床現場では6歳未満でも医師が患児の状態に応じ、必要かつ服用可能と判断した場合には
使用される可能性もあることも考慮し、本薬の使用に際し、一律に6歳未満の患者に使用
を制限する必要性は低いと考えました。ただし、小児への投与の情報提供として、添付文
書(案)の5ページの「使用上の注意」の「6.小児等への投与」において、「低出生体重
児、新生児、乳児又は幼児に対する安全性は確立していない」とあります。これらの患児
に対しては、使用経験が無いとし、臨床成績の項で臨床試験で実際に投与された患児の年
齢の範囲が分かるように記載することが妥当と考えました。この点について、清水委員に
事前に説明をして御了解をいただきました。御審議のほど、お願いします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいた
します。今、年齢制限に関して触れていました。カプセル剤の大きさにもよりますが、飲
めるとされる年齢は一般的に5~6歳以上です。
○機構 この品目に関しては、用法・用量の追加だけなのでサンプルは配布しておりませ
ん。大きさについては、添付文書(案)の5ページを御覧ください。37.5mgが5号カプセ
ルであり、75mgが3号カプセルとなっています。
○松井部会長 御意見はありますか。
○古川委員 疾患については、何も検討していないのでしょうか。小児の疾患について、
臨床試験は行われていないのですか。
○機構 審査報告書の8ページを御覧ください。今回、小児患者を対象とした一般臨床試
験が実施されています。この患者は、こちらの脚注に記載していますが、胃潰瘍、十二指
腸潰瘍又は逆流性食道炎のいずれかを有する、あるいは疑いがあると診断され、内科的治
療が必要な患者さんを対象に試験が実施されています。
○古川委員 勘違いしていました。副作用の時の単回試験では、特に問題が無いと書いて
ありました。臨床試験は行っていないが、大人に準じて小児も良いという内容の記載が多
いので、小児の臨床例が無いと思ってしまいました。
○機構 審査報告書の15ページの「1)今回提出された臨床試験について」を御覧くださ
い。まず、単回投与試験の結果及び反復投与された試験の有害事象のまとめが、3行目辺
りから記載されています。今回実施された臨床試験の中で、特段大きな有害事象は認めら
れませんでした。それに加えて、これまで実施された臨床試験で小児に対して投与された
場合、使用成績調査から小児の情報を確認し、さらに公表論文も確認して、安全性につい
ては小児に対して特異な事象は認められていないということから判断しています。
○佐藤委員 本薬については、16ページを見ると、調査症例数が1万2,000件や1万4,000
件とあるので驚きました。これが臨床上小児に使われるようになった時、症状が出ていれ
ば、通常使われる薬として投与されるのでしょうか。対象が稀少疾患ではないようですが、
どの程度の人に使われる目標ですか。
○機構 御指摘があった調査症例数について説明します。こちらは、大人も含めた症例数
です。本薬が1986年に承認されてから、1万2,000例の調査が行われました。その中で、
小児に対しては、26例程度になります。決して多いわけでは、ありません。
○佐藤委員 すると、臨床的に使われるようになっても、稀に使われるものという考え方
で良いですか。
○機構 審査報告書の8ページを御覧ください。本薬が有している効能・効果に対して、
小児に対する情報が、どの程度あるのかをまとめています。このような報告等を確認して
も、小児に対しては、それほど多くないことが分かります。このような用法・用量が追加
されても、急に多数の患者さんに使われることはないと考えています。
○松井部会長 それについては、私から追加します。この症例は、どれも決して稀な疾患
ではないと思います。内視鏡検査がさらに普及すれば、恐らく増えると思います。大人と
同様の症例数までとはいきませんが、稀な疾患ではないと予想されます。
 2~12歳とありますが、内視鏡検査は8歳くらいになると、全身麻酔をしなくても局
所麻酔だけで内視鏡検査を受けてくれる方も時々います。しかし、ほとんどの場合で全身
麻酔が必要です。したがって、検査をしても患者さんの大部分を見つけることができない
状況です。
○機構 追加で御説明いたします。「起源又は発見の経緯」の10ページを御覧ください。
申請者の調査ですが、各治療薬の売上げデータから、小児の酸関連疾患を有する小児患者
数は、約1万8,000人と推定されたと試算されています。
○松井部会長 それは、子どもですか。その患者数であれば、すごく稀ということではあ
りません。ほかには、ございますか。
○野田委員 確認ですが、今回は内視鏡による調査は、全く行われていないということで
しょうか。
○機構 今回、治験が実施されましたが内視鏡検査は実施されておりません。
○加藤委員 少し前から、疑問に思っていたことがあります。ロキサチジンとは直接関係
ないことですが、一般的にお伺いします。添付文書(案)の最後に参考文献が出ています。
今回の申請の添付文書(案)を見ると、ほとんど査読のある公表されている論文ばかりで
す。先ほどのエディロールは、すべて社内文書でした。このような査読公表されていない
社内文書に関して、何らかの形で薬理試験の結果が公開されているのか、あるいは文書に
アクセシブルなのか、ルール等はありますか。
 私は職業柄大学に居ますが、大学等では査読の無い論文以外は、価値が無いと言われて
います。こちらについて、どのような指導を行っているのかを教えていただけますか。
○松井部会長 エビデンスレベルということですか。
○加藤委員 はい。
○審査第一部長 新医薬品等の開発の途上で必要となる臨床試験、あるいは非臨床試験に
ついて、以前は厚生労働省の通知によって学術誌等での公表が指導されていました。しか
し、10年ほど前から、業界等からの要望もふまえ、又、承認申請に使用された資料概要
書等がインターネット上で公表されることとなったことにより、通知を改正して、個別の
臨床試験、非臨床試験の成績について、学術誌等で公表するようにという規定を外したと
ころです。
 今回のアルタットは、承認が非常に古いものです。したがってその当時は、公表するこ
とが指導されていました。そのため、査読があるかどうかや学術レベルはともかくとして、
公表論文が多くなっています。
 これに対して先ほどのエディロールは、今回初めて新薬として承認申請をされたという
ことで、そのような指導の対象とはされていません。よって、公表されていないというこ
とです。
○松井部会長 よろしいでしょうか。最後に、私がこのような意見を述べて良いかどうか
分かりませんが、小児科には安全性が確立されていない薬が沢山あります。それでも患者
さんの重要な事態に関しては、安全性が確立されていないにも関わらず、投与しなければ
ならないケースもよくあります。そのため、カプセルでは無理ですが、6歳以下は剤形を
変更してでも使えるようになって欲しいと思います。そして、今回の申請は、その前段階
として「6歳以上であれば使える」ということになって欲しいと考えています。小児科医
が、この苦しい立場にいることを御理解いただければと思います。
 よろしいでしょうか。それでは、議決に入ります。なお、千葉委員、永井委員、古川委
員、本橋委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を
御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議が無いようですので、承
認を可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題6に移ります。議題6について、事務局から概要を説明してください。
○事務局 議題6、資料6「医薬品アリクストラ皮下注5mg及び同皮下注7.5mgの生物
由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並
びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」、一般名「フォンダパリヌクスナトリウム」に
ついて事務局より御説明いたします。
 フォンダパリヌクスナトリウムは、アンチトロンビンIIIによる活性型血液凝固第?]因
子の阻害を選択的に増強する抗凝固薬です。静脈血栓塞栓症の発現リスクの高い下肢整形
外科手術施行患者及び腹部手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制の効能・効果
では、既に本邦で承認されています。今回の申請効能・効果である急性肺血栓塞栓症及び
急性深部静脈血栓症の治療に係る効能については、米国を初めとして、2004年5月以降、
欧州主要国を含む64の国や地域で承認されています。本邦では、□□年から、グラクソ
・スミスクライン株式会社により開発が開始され、今般、国内臨床試験成績等を基に、製
造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。
 本品目の審査に関して、専門委員として、資料9に記載されている委員が指名されまし
た。
 審査の概略について、国内臨床試験成績を中心に説明します。審査報告書の16ページ
を御覧ください。日本人の血行動態が安定している急性肺血栓塞栓症(以下、「PE」と
略す)の患者を対象とした国内第III相試験では、本薬の用法・用量として、体重50kg未
満の患者には5mg、体重50kg以上100kg以下の患者には7.5mg、体重100kg超の患者に
は10mgを1日1回皮下投与とされました。有効性については、16~17ページです。主要
評価項目とされた症候性静脈血栓塞栓症(以下、「VTE」と略す)の発現頻度は、本薬
投与群と未分画ヘパリン投与群のいずれにおいても0%でした。安全性については、17
ページです。Major bleedingの発現頻度は、本薬群では6.5%、ヘパリン群では0%であ
り、本薬群で発現したMajor bleedingの内訳は胃腸出血及び脳出血の各1例でした。
 日本人急性DVT患者を対象とした国内第III相試験では、体重50kg未満の患者には
本薬5mg、体重50kg以上100kg以下の患者には本薬7.5mg、体重100kg超の患者には本
薬10mgが1日1回皮下投与されました。有効性については、18ページです。主要評価項
目とされた症候性VTEの発現頻度は、本薬群及びヘパリン群のいずれにおいても0%で
した。
安全性については、19ページです。Major bleedingの発現頻度は、本薬群では3.4%、
ヘパリン群では0%であり、本薬群で発現した内訳は、胃腸出血1例でした。
 以上のような成績に加え、外国人の急性PE及び急性DVT患者を対象とした海外臨床
試験では、症候性VTEの再発頻度について、対象としたヘパリン群及びエノキサパリン
群に対する非劣性が検証されていることも踏まえ、急性PE患者のうち血行動態が安定し
ている患者及び急性DVT患者に対する初期治療薬として、本薬の有効性が確認されたも
のと判断しました。
 効能・効果と用法・用量については、添付文書(案)の1ページです。本薬の作用機序や
臨床試験での組入れ患者の背景を踏まえると、本薬の投与が適切と想定される患者集団
は、「血行動態が安定しており、かつ血栓溶解薬や肺塞栓摘出術の必要がない患者」であ
ると考えられるため、効能・効果を「急性肺血栓塞栓症及び急性深部静脈血栓症の治療」
とした上で、効能・効果に関連する使用上の注意において「ショックや低血圧が遷延する
ような血行動態が不安定な患者又は血栓溶解剤の使用や肺塞栓摘出術が必要な患者に対
する有効性及び安全性は確認されていない」と注意喚起することが妥当と判断しました。
 また、用法・用量については、海外でのエビデンスや国内第III相試験での規定に基づ
き、体重50kg未満の患者は1回5mg、体重50kg以上100kg以下の患者は1回7.5mgとす
ることが適切であると考えています。体重100kg超の患者に対しては、国内臨床試験にお
いて投与経験が無く、現時点では海外と同様に1回10mgとした上で、本薬の曝露量が腎
機能低下により高くなること、又、欧州では中等程度腎機能障害のある体重100kg超の患
者には7.5mgの投与も考慮する旨注意喚起されていることから、本邦においても同様の注
意喚起を行うことが適切と判断しました。
 なお、今回申請された本薬5mg及び7.5mg製剤は、既承認効能で使用されている1.5mg
及び2.5mgの製剤より濃度及び含量が高いことから、新しい製剤が臨床現場に提供された
場合、誤って投与されるリスクを最小化するための方策が必要と考え検討しました。今回
の申請効能・効果に用いる製剤は、5mg及び7.5mgの製剤のみとすること、又、既承認
の1.5mg及び2.5mg製剤とは効能・効果及び用法・用量が明確に異なることから、添付文
書も分けることがより適切と判断しました。さらに、医療過誤を防止するための対応策と
して、各製剤のラベルの色による識別、表示の工夫、効能と用量に関する説明用資材の各
医療機関への配付を現在検討しているところです。
 製造販売後の調査計画等については、52ページです。製造販売後調査では、有害事象
の発現状況及び出血性有害事象の発現状況、並びにVTEの再発の有無に加えて、体重
50kg未満の低体重患者の安全性、腎機能障害患者における本薬の出血リスクを含めた安
全性、又、国内臨床試験には含まれなかった体重100kg超の患者の安全性の情報を収集す
ることが重要と考えています。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部
会において御審議いただくことが適当であると判断しました。
 本剤5mg、同7.5mgの再審査期間は本薬の既承認の再審査期間である平成19年4月18
日から8年間の残余期間とすることが妥当であり、製剤は毒薬又は劇薬に該当しないと判
断しています。
 薬事分科会では、報告を予定しています。御審議のほど、お願いします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいた
します。
○佐藤委員 特定された疾患に使われているということですが、基本的なところで読み取
れない箇所があります。第10因子の活性を選択的に増強する目的で使われるために皮下
注にするのでしょうか。皮下注が珍しいわけではありません。けれども、投与方法との関
連から、どのような機序であるのか疑問に思いました。概略で結構ですので教えてくださ
い。
○機構 この投与経路は、機序と関係するわけではありません。昔からあるヘパリンは、
静注で用いられています。けれども、それよりも投与しやすい薬として、何年か前から低
分子量ヘパリンのエノキサパリン等が開発され、それらの薬は皮下注で十分に効果を発揮
することから、皮下注が選ばれています。そのことから、機序で投与経路を変えているわ
けではありません。
○佐藤委員 諒解しました。
○機構 1点補足します。本薬の場合、皮下注でもバイオアベイラビリティがほぼ100%
ととても高いです。そのため、静脈内投与と同じだけの曝露が期待できるということで、
皮下注でも十分有効な投与法ではないかと考えています。
○佐藤委員 わかりました。
○松井部会長 ほかにいかがですか。
○村田委員 審査報告書の3ページに教えて欲しい箇所があります。今回の検討で5mg
ないし7.5mg必要であるということで、以前のものと分けるために、添付文書を別々にす
るという説明がありました。3ページの1.に「静脈血栓塞栓症、下肢整形外科手術施行
患者等」が書いてありますが、その下にも「急性肺血栓塞栓症及び急性深部静脈血栓症の
治療」とあります。これは、2.5mg入っている製剤を2本使うことにより、その患者さん
にも使って良いという意味ですか。先ほどの分けるという話との関連がよく分かりませ
ん。
○機構 審査報告書の3ページの記載は、申請時のものです。当初、申請時は2.5mgの製
剤もこの用途に使いたいと申請者は考えていたようです。先ほどの誤投与のリスク等もあ
り、又、かなり濃度が薄いので、何本も注射する必要があります。5mg製剤と7.5mg製
剤を使って臨床試験が行われていますので、承認するのは5mg、7.5mgの製剤とし、1.5mg
と2.5mgの製剤は効能・効果と用法・用量を分けることが妥当ではないかと判断しました。
○松井部会長 対象の下肢整形外科手術施行患者等でよろしいですか。
○村田委員 これは申請時のものですか。審査で分けるよう指導したということですね。
分かりました。
○松井部会長 ほかには、いかがですか。
○永井部会長代理 こちらは活性を抑えたり、中和するような手段はありますか。
○機構 この薬の場合は、特に中和できるような有効な薬は知られていません。
○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。今回の目的をはっきりさせるために、治療用と
新たに明記したわけですね。今までの予防とは、決して違うということです。
 ほかにはありますか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入ります。なお、加藤委
員、永井委員、古川委員、本橋委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきま
して、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議が無いようですので、承
認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、報告事項について、説明をお願いします。
○機構 報告事項の議題1「医薬品パリエット錠10mg及び同錠20mgの製造販売承認事項
一部変更承認について」医薬品医療機器総合機構より御報告いたします。資料7を御覧く
ださい。
 本剤は、ラベプラゾールナトリウムを有効成分とする、プロトンポンプ阻害剤であり、
現在、胃潰瘍等の効能・効果で承認されています。
 今般、エーザイ株式会社より、逆流性食道炎の効能における新たな用法・用量を追加す
る新用量医薬品としての製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。
 機構における審査の結果、申請された用法・用量を承認して差し支えないと判断いたし
ました。
○松井部会長 委員の先生方から、御質問等ありましたらお願いします。
 それでは、報告事項については御確認いただいたものといたします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。
○事務局 次回の部会は、既に御案内のとおり、来年1月31日(月)午後1時から開催さ
せていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 1月は午後1時からということで、いつもと違いますので御注意いただき
たいと思います。それでは、本日はこれで終了させていただきます。
○事務局 本日は、どうもありがとうございました。


(了)

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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