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2010年11月24日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会議事録

医薬食品局

○日時

平成22年11月24日(水)


○場所

厚生労働省 共用第8会議室


○出席者

出席委員(11名):五十音順 敬省略

 大 石 了 三、 加 藤 総 夫、 佐 藤 田鶴子、 清 水 秀 行、

 手 島 玲 子、○永 井 良 三、 成 冨 博 章、  野 田 光 彦、

◎松 井   陽、 松 木 則 夫、 村 田 美 穂

 (注) ◎部会長 ○部会長代理

 他参考人2名


 欠席委員(7名):五十音順 敬省略

 鈴 木 邦 彦、 千 葉   勉、  西 澤   理、 林   邦 彦、

 檜 山 行 雄、 古 川   漸、 本 橋 伸 高

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 成 田 昌 稔 (審査管理課長)

 俵 木 登美子 (安全対策課長)

 内 海 英 雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 森   和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

 三 宅 真 二 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

 赤 川 治 郎 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催さ
せていただきます。
 本日は、お忙しい中御参集いただきありがとうございます。
 本日の委員の出席についてですが、鈴木委員、千葉委員、西澤委員、林委員、檜山委員、
古川委員、本橋委員より御欠席との御連絡をいただいております。
 現在のところ、当部会委員数18名のうち11名の委員の御出席をいただいていますので、
定足数に達しておりますことを報告いたします。
 本日のその他事項に関しましては、国立大学法人千葉大学医学部附属病院臨床試験部部
長・診療教授の花岡先生及び、独立行政法人国立成育医療研究センター臨床研究センター
治験推進室長の中村先生を参考人としてお呼びしています。それでは、松井部会長、進行
をお願いします。
○松井部会長 それでは、本日の審議に入ります。先ず、事務局から配付資料の確認と審
議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。
○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席
表、当部会委員の名簿を配付しています。議事次第に記載されている資料1~11をあら
かじめお送りしています。
 このほか、資料12「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料13「専門委
員リスト」、資料14「競合品目・競合企業リスト」を配付しております。また、当日配
付資料といたしまして、「メマリー錠およびレミニール錠に関する本橋委員の御意見」を
配付しています。
 続きまして、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リスト(資料14)について御
報告します。各品目の競合品目選定理由については、次のとおりです。
 資料14の1ページ「フェブリク錠10mg、フェブリク錠20mg、フェブリク錠40mg」で
す。本品目は、痛風、高尿酸血症を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬
剤として資料に掲げる3品目を競合品目として選定しております。
 次のページ、「メマリー錠5mg、メマリー錠10mg、メマリー錠20mg」です。本品目は、
中等度から高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制を効能・効果とし
ております。同様の効能・効果を有する薬剤として承認されている品目、開発中の品目と
して、資料に掲げる3品目を競合品目として選定しております。
 次のページ、「レミニール錠4mg、同8mg、同12mg、レミニールOD錠4mg、同8mg、
同12mg、レミニール内服液4mg/mL」です。本品目は、軽度から中等度アルツハイマー型
認知症における認知症症状の進行抑制を効能・効果としております。同様の効能・効果を
有する薬剤として承認されている品目及び開発中の品目としまして、資料に掲げる3品目
を競合品目として選定しております。
 次のページ、「プラザキサカプセル75mg、プラザキサカプセル110mg」です。本品目は、
心房細動患者における脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制を効能・効果としております。
同様の効能・効果を有する薬剤として承認されている品目及び開発中の品目といたしまし
て、資料に掲げる3品目を競合品目として選定しております。
 次のページ、「ロミプレート皮下注250μg調整用」です。本品目は、慢性型特発性血
小板減少性紫斑病を効能・効果としております。同様の効能・効果を有する薬剤として承
認されている品目及び開発中の品目につきまして、資料に掲げる3品目を競合品目として
選定しております。
 最後のページ、「バポナ殺虫プレート他」です。本品目は、ハエ、蚊及びゴキブリの駆
除を効能・効果としたジクロルボス樹脂蒸散剤です。同様の使用方法等を有する製剤が無
いことから、競合品目は無しとしております。以上です。
○松井部会長 今の事務局からの説明に特段の御意見等はございますか。それでは本部会
の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆さんの了解を得たものとし
ます。それでは、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。
 議題1、フェブリクについては、退室委員はいらっしゃいません。議決に参加しない委
員は、松木委員でございます。
 議題2、メマリーについては、退室委員は、永井委員でございます。議決に参加しない
委員は、大石委員、加藤委員、野田委員でございます。
 議題3、レミニールについては、退室委員は、永井委員でございます。議決に参加しな
い委員は、大石委員、加藤委員、野田委員でございます。
 議題4、プラザキサについては、退室委員は、永井委員でございます。議決に参加しな
い委員は、大石委員、野田委員でございます。
 議題5、ロミプレートについては、退室委員は、いらっしゃいません。議決に参加しな
い委員は、永井委員、松木委員でございます。
 議題6、ジメチルジクロロビニルホスフエイトについては、退室委員、議決に参加しな
い委員、共にいらっしゃいません。以上です。
○松井部会長 本日は、審議事項は6議題、報告事項が4議題、その他事項が1議題とな
っています。本日は参考人の先生に来ていただいている、その他事項から行います。また、
定足数の関係上、審議事項1、5、6、2、3、4、報告事項の順で行います。
 それでは、花岡参考人、その他事項の審議1について、御説明をお願いします。
○花岡参考人 その他事項の審議1「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議
において公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価について」、資料
11を御覧ください。メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウムのネフローゼ症
候群に対する公知申請への該当性について、医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討
会議の検討結果を説明します。
 3ページです。小児腎臓病学会より、本品目にネフローゼ症候群の効能を追加する要望
書が提出されております。
 6ページの中ほどです。ネフローゼ症候群は、委員の方は御存じのように、病理学的に
は微小変化型のほかに予後の悪いものとして、巣状分節性糸球体硬化症、びまん性メサン
ギウム増殖等、いくつかの病理学上に分類されます。これらのネフローゼ症候群につきま
しては、腎機能が重度に損なわれた場合、透析に移行することから、日常生活に著しい影
響を及ぼします。また、その下、2)医療上の有用性についてですが、本剤によるパルス
療法は、国内外における臨床試験あるいは報告において良好な結果が報告されておりま
す。また、海外においても同様の報告がございまして、既存の療法と比べて有効性・安全
性が明らかに優れていると判断されました。
 有効性につきましては、29ページの(1)です。国内外の臨床試験や報告におきまして
は、一定の有効性が認められており、又、国内外の教科書、ガイドライン等で標準的薬剤
として記載されていること、適応外使用の症例報告の内容等から検討し、本剤の有効性は、
日本人のネフローゼ症候群においても期待できると判断されました。
 安全性は、(2)になります。国内外で実施された臨床試験や国内の症例報告、企業に蓄
積された副作用情報等を基に検討を行った結果、本邦において本剤に関する既知の副作用
の発現に留意しながら、本剤を適切な用法・用量及び使用上の注意等に基づき用いる場合
には、海外と同様に安全性は許容可能と考えました。
 効能効果については、31ページです。本剤の効能効果は、ネフローゼ症候群とするこ
とが適当であると考えられました。また、使用上の注意については、一番下以降、次のペ
ージにかけて記載しております。通常本剤は、進行が速い重篤な症例を除いては、経口副
腎皮質ホルモン剤(プレドニゾロン等)による治療を行っても効果の不十分な場合に、原則
として投与を行うものと判断されました。よって、これを使用上の注意に設定することと
されました。
 用法・用量は、32ページに記載しています。国内外の臨床試験のプロトコールや教科
書、ガイドライン等を参考とし、成人、小児を分けて設定しました。投与回数や投与スケ
ジュールについては、用法・用量に関する使用上の注意として、最新の診療ガイドライン
等を参考に実施する旨を注意喚起することが適切であると判断されました。以上を踏ま
え、要望された本剤のネフローゼ症候群に対する有効性及び安全性については、医学・薬
学上公知であると検討会議で判断されました。以上です。
○松井部会長 委員の先生方から、御質問等ありましたらお願いします。いかがでしょう
か。では、異議なしと認めて、公知申請を行うことが適当といたします。花岡参考人、あ
りがとうございました。それでは、中村参考人、御説明をお願いします。
○中村参考人 それでは、リュープロレリン酢酸塩の中枢性思春期早発症の用法・用量変
更の公知申請の該当性についての検討会議の検討結果についてです。
 資料11の41ページになります。日本内分泌学会及び日本小児内分泌学会から、中枢性
思春期早発症に対し、最大投与量を90μg/kgから180μg/kgに増量するということにつ
いて要望が提出されております。医療上の必要性については、2.以降に記載されており
ます。日常生活に著しい影響を及ぼす疾患であり、欧米において標準的治療に位置付けら
れていることから、医療上の必要性は高いと判断されました。
 58ページ、(3)要望内容に係る公知申請の妥当性についてです。リュープロレリン酢
酸塩の欧州での承認用法・用量は、体重を10~50kgとして換算すると、75~188μg/kg
となり、今回の要望用量である180μg/kgを4週ごとに皮下投与する用量と同程度の投与
量となります。また、投与経路は筋肉内投与で違いますが、米国の承認用法・用量は、体
重を10~50kgとして換算すると300~750μg/kgとなっております。また、「Nelson小
児科学」等の標準的教科書にも記載されていることから、欧米の臨床用量における有効性
・安全性は確立されていると考えました。
 55ページの7.公知申請の妥当性についての(1)要望内容に係る外国人におけるエビデ
ンス及び日本人における有効性の総合評価についてです。2)のとおり、国内臨床使用実
績に関する報告では、治療終了例の平均最大治療量は、94.3μg/kgでした。40%以上の
症例で90μg/kgを超える治療量が必要であったことが示されております。また、増量に
より90μg/kgを超えた症例のほとんどは、180μg/kg以下の用量でLH値の低下及び骨
年齢の進行抑制が認められ、十分な抑制効果を示しておりました。
 安全性については、57~58ページです。始めに、安全性に対する結論が記載されてい
ます。90μg/kgを超えて投与しても大きな問題は無く、90μg/kg以下の用量で実施され
た国内臨床試験の実績と比べて安全性に大きな差は無いと判断いたしました。以上によ
り、検討会議では、中枢性思春期早発症に対するリュープロレリン酢酸塩の最大投与量を
180μg/kgとすることは、医学・薬学上公知であると判断いたしました。以上です。
○松井部会長 委員の先生方から、御質問等ありましたらお願いします。それでは、公知
申請を行うことが適当と判断し、適応外薬の事前評価とするということで、よろしいでし
ょうか。その他事項、審議1については、御確認いただいたものといたします。花岡参考
人、中村参考人、本日はどうもありがとうございました。
── 花岡参考人・中村参考人退室 ──
○松井部会長 それでは、議題1に移ります。
 議題1について、機構から概要を説明してください。
○機構 それでは議題1、資料1「医薬品フェブリク錠10mg、同錠20mg及び同錠40mg
の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の
指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」です。機構より説明いたします。本剤は、
キサンチンオキシターゼ阻害薬であるフェブキソスタットを有効成分として含有する尿
酸生成抑制薬であり、痛風、高尿酸血症における血清尿酸値の低下作用を期待して開発さ
れた薬剤です。国内では、同じ作用機序の既承認薬として、アロプリノールが30年以上
に亘り臨床使用されています。海外においては、2008年4月に欧州、2009年2月に米国、
同年6月に韓国で承認されています。本品目の専門協議では、資料13に示す先生方を専
門委員として指名させていただいております。以下、本剤の有効性及び安全性について、
臨床試験成績を中心に説明します。
 なお、本剤の開発の初期において、投与開始から約2週間で維持用量まで増量する方法
で試験が実施された結果、短期間で血清尿酸値が低下することにより、痛風性関節炎の発
現が多く見られた為、以降の開発において徐々に増量する方法で改めて試験が実施された
経緯があります。まず、本剤の有効性について説明します。
 審査報告書の52ページの表11です。新たな漸増方法で追加実施されたTMX-67-□試験
において、主要評価項目とされた血清尿酸値6.0mg/dL以下達成率に関して、本剤の各投
与群とプラセボ群との間に有意差が見られました。
 56ページの表16ですが、TMX-67-□試験は、変更される前の漸増方法で有効性が評価
された試験ですが、主要評価項目とされた血清尿酸値変化率に関して、本剤群のアロプリ
ノール群に対する非劣性が検証されています。
 54ページの表14のとおり、新たな漸増方法で追加実施されたTMX-67-□試験において、
例数は少ないですが、本剤群では、アロプリノール群と同程度以上の血清尿酸値変化率が
示されています。
 以上の三つの試験結果についてまとめた67ページの表26を御覧下さい。変更される前
の漸増方法で実施されたTMX-67-□試験と、新たな漸増方法で実施されたTMX-67-□及び
TMX-67-□試験における血清尿酸値6.0mg/dL以下達成率及び血清尿酸値変化率は、試験デ
ザインが異なり、厳密な比較は困難であるものの、大きな違いは認められていません。
 新たな漸増方法で実施された長期投与試験であるTMX-67-□試験において、63ページの
表23、図3及び図4に示したように、効果の持続も確認されています。以上の試験成績
を総合的に判断した結果、本剤の有効性は示されていると判断しました。
 安全性については、67ページの(3)に記載しましたように、新たな漸増方法で投与さ
れた時の痛風性関節炎や「腎・膀胱関連の有害事象」、「甲状腺機能関連の有害事象」、
「肝機能関連の有害事象」、「皮膚関連の有害事象」、「心血管系有害事象」について個
別に検討した結果、現時点で大きな問題は見られていないことから、安全性は許容可能と
判断しました。
 製造販売後調査については、92ページの(5)製造販売後調査の計画についての項を御
覧ください。観察期間を□年間、目標症例数を□□例とした長期使用に関する特定使用成
績調査が計画されており、当該調査において一般の有害事象とは別に、独立した調査項目
として「痛風関節炎」が設定されており、又、その他の心血管系リスク等についても、情
報収集される予定です。さらに、痛風、高尿酸血症において患者数が極めて少ない女性に
ついて、□例程度が組み入れられ、女性における安全性についても検討される予定です。
 以上のとおり、機構での審査の結果、「痛風、高尿酸血症」を効能・効果として本剤を
承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断し
ました。
 本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年が適当であると判断
しております。原体及び製剤は、毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び
特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では、報告を
予定しております。御審議のほど、お願いします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいた
します。
○野田委員 漸増方法で、痛風性関節炎をアロプリノールと比較すると、80mg以外は差
が無かったという結果でした。漸増するということは、非常に重要です。その点を周知す
る必要があります。
 もう一点は、腎機能低下者での使用が、ある程度予想されるのではないかと思います。
添付文書からすると、確実なことを言えるだけの例数が少なく、結果として慎重投与にな
っていると思います。製造販売後調査で、その辺りを担保する、又は確保するようなこと
はないのでしょうか。
○松井部会長 いかがですか。
○機構 機構より説明いたします。製造販売後調査の計画については、92ページです。
腎機能障害のある患者については、透析の有無を把握すると共に、臨床検査項目にBUN、
血清クレアチニン、β2-ミクログロブリン、NAG等を設定し、eGFRで層別して解析
するということが計画されています。
○松井部会長 検討の対象になっているということですね。
○機構 はい。
○野田委員 ある程度、例数的な義務付けをするというのは、いかがですか。
○松井部会長 義務と申しますと、どのようなことでしょうか。
○野田委員 何例といったようにです。
○機構 それは、「製造販売後調査において、何例」と示すのでしょうか。
○野田委員 「腎機能に問題のある人が何例」といった形が良いかと思います。
○機構 現時点では、何例とはっきり書かれていません。しかし、いただいた御意見を参
考に、少し検討したいと思います。できるだけ腎機能患者さんの安全性データは、収集で
きるようにという御意見であると思います。
○松井部会長 野田委員、よろしいですか。ほかに、いかがでしょうか。
○清水委員 まず一点、用量のことで確認させてください。欧米での状況を確認すると、
80mg錠がスタンダードとなっています。各国で発売されている中、今回、本邦での規格
が10mg、20mg、40mgと効能・効果、用法・用量を世界用量と比べると、少なめに設定さ
れています。こちらは、一つの国内臨床試験の結果に基づくものということから、このよ
うになっているのですか。
○機構 そのとおりです。
○松井部会長 よろしいですか。
○清水委員 もう一点あります。
○松井部会長 お願いします。
○清水委員 包装について、一点確認させてください。添付文書の6ページに、10mg、20mg、
40mgの規格がある中で20mgだけが少し違う包装、単位数で発売になっています。例えば
PTPが、10mgと40mgでは140錠の14×10で発売になっています。しかし、20mgの場
合は、14×5で発売になっています。こちらに、何か特段の理由はありますか。
○機構 10mgの位置付けについてです。基本的に開始用量が10mgであり、2週間ぐらい
を目安に20mgあるいは40mgと徐々に上げていくという使い方をします。10mgで維持さ
れる人が、全くいないとは断言しませんが、基本的に10mgは初期用量になります。製剤
としては、20mg、40mg辺りが維持用量としてメインに使われるのではないかと考えてい
ます。
○清水委員 そうしますと10mgの包装は14×5の包装がある方が、リーズナブルである
と思います。その辺はいかがですか。
○松井部会長 どうでしょうか。
○機構 包装の適切性については、申請者に確認します。
○清水委員 過剰在庫にならないように、お願いします。
○松井部会長 特に安全性・有効性ということとは、必ずしも直接関係はありませんが。
ほかにいかがですか。
○大石委員 添付文書(案)の3ページ、血漿中濃度のグラフについてです。ほかの審議薬
の例から見ても、非常に分かりにくいと思います。スケールの問題もあるので、もう少し
分かりやすく工夫し、変更した方が良いと思います。
○機構 はい、早速検討します。
○松井部会長 ほかには、いかがですか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入りま
す。なお、松木委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への
参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議が無いようですので、承
認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは議題5に移ります。議題5について、機構から概要を説明してください。
○機構 議題5、資料5「医薬品ロミプレート皮下注250μg調製用の生物由来製品及び
特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は
劇薬の指定の要否について」、一般名、ロミプロスチム(遺伝子組換え)を機構より説明い
たします。ロミプロスチムは、トロンボポエチン受容体を活性化することにより、骨髄前
駆細胞から巨核球に至る過程における細胞の増殖及び分化を促進し、その結果として血小
板数を増加させる薬剤です。構造は、トロンボポエチン受容体との結合配列2か所を含む、
ペプチド鎖とヒト免疫グロブリンIgG1のFc領域が結合した一本鎖構造二つがジス
ルフィド結合したタンパク質です。
 本剤は、2008年7月にオーストラリアで承認されて以降、2010年7月現在、米国、E
U主要国を含む27か国で承認されています。本邦では、2004年よりアムジェン株式会社
により開発されました。今般、協和発酵キリン株式会社より、国内外の臨床試験成績を基
に、特発性血小板減少性紫斑病(以下、「ITP」と略します)に使用する薬剤として製造
販売承認申請されました。なお、本薬は、2006年8月に希少疾病用医薬品の指定を受け
ています。
 本品目の審査に関しまして、専門委員として資料13に記載されております委員が指名
されました。審査の概略について、国内臨床試験成績を中心に説明いたします。
 審査報告書の50ページを御覧ください。成人慢性ITP患者を対象とした国内第III
相試験では、本薬は3.0μg/kgの週1回の皮下投与から開始され、表7に示した用量調節
ルールに従い、血小板数が50,000~200,000/μLに維持されるように12週間投与されま
した。最高用量は、10.0μg/kgとされていました。
 50ページの下半分を御覧ください。有効性の主要評価項目は、血小板数が50,000/μL
以上となった週数とされ、その中央値は、本薬群で11.0週、プラセボ群で0週で、有意
差が認められました。
 本試験での安全性は、52ページに記載しております。表8にありますように、有害事
象の発現割合は、本薬群91%、プラセボ群92%で治験薬との関連が否定されない重篤な
有害事象は、ありませんでした。
 次に審査報告書の61ページを御覧ください。ITP患者を対象とした国内臨床試験が
完了した被験者を対象に、本薬を長期間投与した際の安全性及び有効性を検証する長期継
続投与試験が本薬承認までの予定で継続されております。長期間投与した際の血小板数の
推移につきまして、図9に示しております。
 添付文書(案)の19ページを御覧ください。これに沿って、効能・効果と用法・用量に
ついて説明します。本薬の臨床的位置付けは、既存の治療で効果が認められない慢性IT
Pの出血傾向を改善するというものです。その為、効能・効果につきましては、国内外の
臨床試験の対象患者の背景も考慮して慢性ITPとし、効能・効果に関連する使用上の注
意で、他の治療により十分な効果が得られない場合と忍容性に問題がある場合に使用する
よう注意喚起することが妥当と判断しました。
 用法・用量は、20ページです。初回投与量は、1.0μg/kgを皮下投与するとされており
ます。国内第III相試験での開始用量は、3.0μg/kgでしたが、海外には1.0μg/kgを開
始用量とした第III相試験の成績があります。国内外の臨床試験における用法・用量と血
小板数の関係も考慮し、より安全性を重視した1.0μg/kgを開始用量とすることは、妥当
と判断いたしました。また、本薬の用法・用量は基本的に血小板数を見ながら調節するも
のですが、ITPの治療に十分な知識と経験を有する医師の管理下で、個々の患者の背景
を踏まえ、必要最小限の投与量に抑えることが適切であることから、臨床試験で用いた用
量調節法をそのまま臨床現場に適用するのではなく、臨床試験の規定より早い段階で、減
量や中止を考慮できるような用量調節法の目安について、用法・用量に関連した使用上の
注意に記載することとしました。
 審査報告書の97~98ページです。製造販売後調査等の計画について御覧ください。承
認申請前に得られていた本薬の有効性及び安全性の情報は、極めて限られていたことを踏
まえ、本薬が投与された全例を対象とした製造販売後調査を実施し、本剤投与中止後の血
小板減少症及び出血関連事象の悪化や血液及びリンパ系障害の副作用を重点的に情報収
集することとしています。現時点では、最長2年の調査期間が設定されていますが、さら
なる長期使用に係る問題点等が見出された場合は、必要に応じて調査期間の延長を検討す
る計画となっております。その他、骨髄レチクリン増生や骨髄線維化あるいは骨髄異形成
症候群の発生等についても、情報収集することが重要と考えております。
 以上のような検討を行った結果、全症例を対象とした使用成績調査の実施を承認条件と
して付した上で、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において
御審議いただくことが適当であると判断しました。
本剤は、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は、10年とすることが適当で
あると判断しています。また、原体及び製剤は毒薬又は劇薬に該当せず、生物由来製品及
び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では、審議
を予定しています。御審議のほど、お願いします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいた
します。
○佐藤委員 この薬の効果について、少し質問させてください。巨核球系の未熟な方で効
果を示すのか、それとも末梢のできあがった血小板の方へ直接作用するのか、または、骨
髄の方で巨核球系の方に作用するのでしょうか。これらの選択性を教えてください。もし、
骨髄での作用が強いのであれば、ほかへの系列に形成の異常が起こることも考えられま
す。
○松井部会長 作用部位についての御質問です。いかがでしょうか。
○機構 作用する部位ですが、末梢ではなく骨髄の方で作用します。審査報告書にもあり
ますが、いろいろな受容体系等への選択性を検討し、TPOの受容体に選択性が非常に高
く作用するということが分かっております。ほかの細胞を増殖させないかということにつ
いても、今後とも追っていく予定ですが、現在までのところ、例えば癌等ができたり、ほ
かの細胞が増殖してしまったような現象は見られておりません。その為、今は血小板を増
殖させるということにのみ働くと考えております。
○松井部会長 骨髄について、フォローアップをするという御報告でした。ほかにいかが
でしょうか。
○手島委員 構造と純度のことを少しお尋ねしたいと思います。5ページの2.品質に関
する資料の(1)原薬についてです。
○松井部会長 5ページですか。
○手島委員 5ページの8行目になります。
○松井部会長 お願いします。
○手島委員 「14個のアミノ酸残基から成るTMPペプチド鎖を、5個のグリシン残基
から成るペプチド鎖で結合した一本鎖のペプチド2つが」とありますが、1ページの構造
を見ると、最初は5個のグリシンです。しかし、次のペプチド鎖で結合しているのは、グ
リシン残基8個になります。ですから、これは5個~8個のグリシン残基からなるペプチ
ドで結合したという意味であると思いました。細かいところで、すみません。
○松井部会長 いかがでしょうか。
○機構 その8個と5個の部分ですが、原薬の1行目の「8個のグリシン残基」について、
ペプチドを介して繋がっているという部分が、手島委員がおっしゃった8個のものだと思
います。
○手島委員 そうですね、分かりました。
○松井部会長 よろしいですか。
○手島委員 分かりました。ありがとうございました。
○機構 少し分かりにくい表現でした。申し訳ございませんでした。
○手島委員 もう一点あります。11ページの□□□の関係についてです。「□□□□□
□□□□□□□□□」とありますが、高分子の場合には、蛋白等の抗原性が出てくること
があると思います。□□□□の□□□□から、□%以上の□□があるということですが、
□□□□ができるのは、非常に□□と考えて良いのですか。
○機構 手島委員のおっしゃるとおり、これは□□のものです。□□であることの意味も、
あるかもしれません。今のところ、「□□□□□□□□□□□□□」と判断しております。
○手島委員 分かりました。
○松井部会長 抗原性については、特に得られていないということでしょうか。手島委員、
そのような御質問ですか。
○手島委員 はい。
○機構 今後、抗体がどの程度出てくるのか調べていく予定です。現在の時点では、問題
となるようなことは起こっていません。
○松井部会長 手島委員、よろしいでしょうか。
○手島委員 はい。
○松井部会長 成冨委員、お願いします。
○成冨委員 添付文書(案)の21ページです。重大な副作用として、1%以下で稀ですが、
血栓塞栓症が起きることがあると記載があります。さらに、本剤投与後は、定期的に血小
板数を測定することと記載されていますが、血小板数の絶対値が多くなり過ぎることがあ
るのでしょうか。あるいは、血小板数は少ないが、急激に増えた場合に血栓塞栓症が起き
るのか、又は、血小板数と無関係にそのような血栓、塞栓が起こるのでしょうか。
○松井部会長 いかがですか。
○機構 審査報告書の81ページを御覧ください。(4)安全性についての2段落目の後方
に、血小板数と血栓症等の関係が記載されています。直感的に、血小板数が増え過ぎてし
まった場合は、危ないとも考えられます。必ずしも、増え過ぎた場合にのみ起こっている
わけではないので、患者側のいろいろな凝固制御系のファクターも加味されたものと考え
ます。
けれども、増え過ぎてしまった場合、危険ということは確かです。必ず血小板数をモニタ
ーするという注意喚起となっています。
○松井部会長 ほかには、いかがでしょうか。
○永井部会長代理 TPO受容体のアゴニストですが、既に低分子化合物が承認を受けて
います。この差別化は、どのように考えていますか。
○機構 多少は、現場にお任せする部分もあります。以前に承認されたものは、経口投与
可能で、毎日服用するものでした。こちらの場合は、1週間おきの皮下投与です。患者の
状態や医師の判断によっても違いがあると思いますが、効果については機序も同じで大き
な差は無いと考えています。安全性についても特に酷いことは、起こっていません。最初
は、現場で判断していただこうと思います。
○松井部会長 よろしいですか。ほかにはございますか。
○松木委員 添付文書の22ページの3)に、投与中止後に出血の可能性があるので観察を
十分に行いなさいという記載があります。原疾患が治っていないということではなく、そ
れ以上に血小板が減少したり、リバウンドが起こる可能性があるということですか。
○機構 この薬品は、原疾患を治すものではありません。投与を中止すれば、必ず元の値
に戻ってしまいます。投与を始める時点で出血の危険性があり、先ずはその血小板数を観
察する必要があります。
 リバウンドについては、以前の薬品同様、多い症例数で検討していません。その為、確
たることは言えませんが、基準より落ちてしまう患者も何人かいます。けれども、必ずし
も落ちるだけではありません。実際この薬品の原疾患の病勢の上下もあり、それがリバウ
ンドであるのか、現在は把握できていません。今後その情報が集積していき、リバウンド
であるのかが分かってくると思います。けれども、安全性を担保するという意味から、必
ず血小板数を観察すると記載いたしました。
○松木委員 「頻度不明」という表現方法には、違和感があります。重大な副作用が、頻
度不明で注意と言うのは、どういうことでしょうか。
○機構 「頻度不明」という言葉は、母数が定かではない場合等によく使われます。添付
文書では、よく出てくる文言です。
○松井部会長 この添付文書だけに限ったことではないのですね。
○機構 はい。この添付文書は、通常どおり整理されています。「頻度不明」と言うと、
頻繁に起き、悪い印象を与えるかもしれませんが、この表現は特別なものではございませ
ん。
○松木委員 そうですか。「症例数が少ない為に、まだ不明である」と分かる表現の方が、
良いと思います。
○松井部会長 今後、検討していただけますか。
○機構 はい。機構に添付文書等を整理している部署があります。相談していきたいと思
います。
○松井部会長 松木委員、よろしいですか。
○松木委員 はい。
○松井部会長 ほかにはございますか。ありがとうございました。それでは、議決に入り
ます。なお、永井委員、松木委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまし
て、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議が無いようですので、承
認を可とし、薬事分科会に上程とさせていただきます。
 それでは、議題6に移ります。事務局から概要を説明してください。
○事務局 議題6、資料6「ジメチルジクロロビニルホスフエイト(別名DDVP)をプラ
スチック板に吸着させた殺虫剤であって、一枚中ジメチルジクロロビニルホスフエイト
21.39g以下を含有する製剤の劇薬の要否について」です。事務局より説明いたします。
資料を1枚開いてください。ジクロルボスは、現在、その化合物と製剤が劇薬に指定され
ており、紙やフェルトに吸着させた殺虫剤は、1枚中0.5g以下を含有するものが、劇薬
から除外されています。したがって、ジクロルボスをプラスチック板に吸着させた本剤(販
売名バポナ殺虫プレート等)は、現在の規定では劇薬に該当します。しかしながら、今般、
企業より製剤に関する経口及び経皮投与での急性毒性試験の結果が提出されました。さら
に、本剤の主な曝露経路である吸入での急性毒性試験結果も提出され、これらについて、
検討しました。
 まず劇薬指定基準の経口投与でのLD50ですが、ラットでは製剤換算で25,157mg/kg以
上ということで、指定基準以上の値を示しています。また、最も強い毒性を示した経皮投
与でのLD50も、6,200mg/kgで劇薬には当たらず、劇薬指定の除外が適当であると考えら
れます。
 「なお」以下の部分ですが、本剤の主な曝露経路である吸入での急性毒性試験の結果に
よると、ラットにおいて最高濃度139.5mg/立方?bで、死亡も毒性徴候も認められなかっ
たということでした。LD50は算定されず、本剤の殺虫機を使用しないものと両方につき
まして、暴露マージン(MOE)を算出しました。すると、1,132と368ということでした。
いずれも、不確実係数の100よりも大きい値を示したことから、本剤の吸入毒性は特異的
に強いものではないと考えられます。
 この結果より、当該製剤は劇薬に該当せず、劇薬指定から除外することが適当であると
考えます。御審議のほど、お願いします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいた
します。
○佐藤委員 私の専門分野ではないので、教えてください。6ページですが、「生体内に
取り入れられた本薬が速やかに分解されて、毒性の低い物質によって排泄される」とあり
ます。3枚目の「毒薬・劇薬等の指定審査資料のまとめ」に使用する場所が記載されてお
り、「人が長時間留まらない区域の所」、「下水槽等」は良いのですが、本剤のようなも
のが人体に入った場合、分解するのでしょうか。そして、体内に入らない場合、大気中に
溜まり、大気汚染の原因にならないのでしょうか。さらには、化学的にかなり分解するこ
とから、無害なものなのかどうか教えてください。
○松井部会長 いかがですか。
○事務局 分解については、6ページです。生体内に取り入れられて分解されます。それ
から、場所に揮発する濃度が4ページに記載されています。無有害量、NOAELですが、そ
ちらを算定した算出方法については、表の下に説明があります。ジクロルボスDDVPが、
空気中にどの程度の濃度で存在するかを推定したものです。実際に測定したところ、飽和
状態にしたとして、殺虫機を「使用しないもの」、「使用するもの」について、最高血中
濃度を推定し、0.165mg/立方?b、0.495mg/立方?bという状況でした。これが飽和濃度です
が、実際にはそこまで高められず、試験で採用したものは、それより低い139.5mg/立方
?bという値で行ったものです。
 したがって、閉め切った部屋の中では、最高に蒸散してもこの程度になります。動物へ
の影響も、毒性を全く示さなかったという状況です。これは、最高の濃度にした所であり、
換気等を行っていたり、通常の開閉が行われるような部屋では拡散してしまいます。さら
に、生体の中で吸入されて、それで分解されるという部分もあります。そのような状況か
ら、ごく微量のものが環境等へ影響するという御指摘ですが、蒸散する量自体がかなり微
量であり、特に影響は見られないのではと考えております。
○佐藤委員 虫に当てて使うものですが、動物等に着いて、最終的に生体内で分解される
と違う形になり、無害になっていくのだと思います。残留していくものについて、40日
おいた試験を行ったようですが、一定の期間を必要とするのですね。1か所ではなく、全
世界で使うとなれば、生体内で分解しないで残留し、後々影響を及ぼすようなことはない
のでしょうか。この薬は生体内ではなくても、自然に分解していくものなのですか。
○松井部会長 いかがですか。
○事務局 環境となると、殺虫剤として使われるジクロルボスは大変微量です。農薬等で
は、大量に使われています。そちらの方での影響評価を事務局の方で調べ、回答いたしま
す。
○佐藤委員 はい。
○松井部会長 ほかにありますか。よろしいでしょうか。
○松木委員 薬事法の書き方についてです。今回に限りませんが、1枚当たり何gといっ
た表現になっていますが、「プレート1枚」と書けば1枚の大きさは大体分かると思いま
す。1枚の大きさによって、かなり量が変わってしまいます。
○松井部会長 いかがですか。
○事務局 こちらは、規則の箇所の書き振りだと思いますが、3.「薬事法施行規則の改
正案」の(新)に、御指摘の追加の部分があります。「ジメチルジクロロビニルホスフエイ
トをプラスチック板に吸着させた殺虫剤であって、一枚中ジメチルジクロロビニルホスフ
エイト21.39g以下を含有するもの」という書き方で規定させていただきます。
○松井部会長 御質問の意味と回答は、合っていますか。
○松木委員 元々の薬事法もそのような表現が入っていますが、「1枚」といっても非常
に大きな1枚から小さな1枚まであると思います。質問は、規定は無いのでしょうかとい
う意味です。
○松井部会長 1枚というのは、面積の規定があるのでしょうか。
○事務局 いくつか製品があり、それぞれ1枚中に含まれているグラム数はありますが、
最高のものが21.39gとなっています。これを規定することにより、現在ある製品につい
てはすべて除外されることとなります。
○松木委員 ではなくて、要は「1枚」といった時には大きさが決まっていて、規定があ
るのかという質問です。
○事務局 その部分に定めはありません。
○松井部会長 決まっていないのですか。
○事務局 決まっていません。承認書には、それぞれの製剤についての定めはありますが、
1枚は何センチ以下である等の規定はありません。
○松井部会長 何も決まっていないのですか。
○審査管理課長 「毒劇薬の指定をどのようにするのか」と言ったところでは、現在は承
認内容の中のプレートの大きさは決まっています。プレートを使用した時の大きさは様々
です。最大のプレート21.39gのものを使用して試験を行ったとしても、劇薬に当たらな
いのではないかというデータに基づき、21.39gとなっています。今後、再び新しい製剤
が出てきた場合、変えることもあり得ます。その際には、規定をどのように変えるのか検
討が必要です。
○松井部会長 ほかにはございますか。
○加藤委員 劇薬の指定については、問題は無いと思います。資料9ページに、人体に対
する影響の試験結果のまとめがあります。様々な条件で、正確にコントロールされたとは
思えない実験が幾つか並んでいます。その中で、唯一コリンエステラーゼの低下が出てい
るのが「一般家屋」です。5倍量、10倍量とあり、極端とも言えますが対数を取ると対
照となります。特徴的であるのは、2日間暴露となっており、6番の実験結果の処理日と
60日後を比べると圧倒的に最初の濃度が高くなるようです。よく分かりませんが、封を
開けた最初の状態で非常に濃度が高くなり得るような状況があります。例えば、その2日
間だけの状態でコリンエステラーゼ等を測ると、非常に高くなる可能性があることを示唆
するデータであると思います。さらに、「5倍量、10倍量という場合にしか出ない」と
いうことになっていますが、これは十分にコントロールされた研究ではないと思います。
第2類の医薬品になることから、この添付文書を一般の方も読むと考え、このような危険
性があることが分かるような書き方にしたり、エビデンスを考えるべきだと思います。
○事務局 分かりました。先生の御指摘は、企業に伝えさせていただきます。
○松井部会長 ほかにはございませんか。劇薬の指定を取るということで、慎重になって
いるのだと思います。基本的に、問題無いという御意見でした。ありがとうございました。
それでは、議決に入ります。
 佐藤委員の詳細な質問に対しては、お答えいただくとして、本議題について、劇薬の指
定の解除を可としてよろしいでしょうか。御異議が無いようですので、劇薬の指定の解除
を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題2に移ります。永井委員におかれましては、審議の間、別室で御待機い
ただくこととします。議題2について、機構から概要を説明してください。
○機構 議題2、資料2「医薬品メマリー錠5mg、同錠10mg及び同錠20mgの生物由来製
品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒
薬又は劇薬の指定の要否について」です。機構より説明いたします。審査報告書の3ペー
ジです。メマンチン塩酸塩はグルタミン酸神経系のNMDA受容体チャネルを阻害するこ
とにより、過剰なグルタミン酸による神経細胞毒性や記憶・学習に深く関与する長期増強
の形成障害を抑制し、アルツハイマー型認知症(以下「AD」と略す)の症状を抑制する薬
剤で、ドイツのMerz社により製造販売されました。
 本薬は、2002年5月に欧州で「やや高度から高度のアルツハイマー型認知症」の効能
・効果で承認されたのを始め、2010年9月現在、本薬の錠剤及び液剤が欧州、米国を含
む70か国で、主に「中等度から高度のアルツハイマー型認知症」を適応として承認され
ています。
 本邦では、□□年からサントリー株式会社、(申請時アスビオファーマ株式会社、現第
一三共株式会社)により開発され、今般国内臨床成績等を基に、「中等度から高度アルツ
ハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」を効能・効果として、製造販売承認申
請がなされました。本品目の審査に関して、専門委員として資料13に記載されている委
員が指名されました。
 本品目の臨床試験成績に関する審査の概略についてです。有効性については、審査報告
書の48ページ「後期第II相試験」です。AD治療薬の有効性の臨床評価においては、認
知機能に加え、全般的臨床症状評価又は日常生活動作のいずれかで有効性を示すことが、
国内外で求められています。後期第II相試験は、海外第III相試験(MRZ90001-9605試験)
を対象としたブリッジング試験として位置付けられ、日常生活動作の指標であるADCS
ADL-Jと認知機能の指標であるSIB-Jの二つの主要評価項目が設定されました。
 図1から、ADCS ADL-Jでは、投与24週後において、プラセボに対する本薬の優越性が
示されませんでした。一方図2から、SIB-Jでは本薬20mg群においてプラセボに対する
優越性が認められました。以上の結果、ブリッジングは成立しなかったことから、国内第 
III相試験が実施されました。
 高度AD患者を対象とした第III相試験については、52ページです。第III相試験で
は、後期第II相試験の成績から、ADCS ADL-Jでは薬効評価は困難と申請者が判断した為、
主要評価項目として、SIB-Jに加え、全般臨床症状評価の指標であるModified CIBIC
plus-Jが設定されました。図4から、SIB-Jでは、投与24週において本薬20mgでプラセ
ボに対し優越性が認められましたが、図5に示すように、Modified CIBIC plus-Jではプ
ラセボに対する優越性は示されませんでした。国内で実施した主要2試験において、ADCS
ADL-J及びModified CIBIC plus-Jの有効性が示されなかったことから、日本人患者にお
ける本薬の有効性が検証されたとは言い難いと考えます。
 しかしながら、本邦の臨床現場におけるAD治療薬の選択肢は、ドネペジル塩酸塩(販
売名アリセプト)の1剤のみと、極めて限られている現状を考慮し、ADの中核症状の一
つである認知機能障害に対する本薬20mgの有効性は、両試験において示されていること、
国内外の試験の間でブリッジングは成立しなかったものの、本薬20mgの有効性は海外臨
床試験で認められており、海外では本薬は標準的治療薬として位置付けられていることも
踏まえ、本邦においても有効性は期待できると判断しました。
 安全性については、54ページです。表2は第III相試験において、いずれかの群で3
%以上に認められた有害事象を示しています。浮動性めまい等がプラセボ群より本薬群で
多く認められていますが、添付文書の注意等に従い適正に使用されれば、承認の可否に影
響するような安全性に関する重大な懸念は認められないと判断しました。
 臨床的位置付けについては、69ページです。本薬は、海外で既に中等度以上にADが
進行している患者に対しては、ドネペジルと同様、第一選択薬として使用されています。
さらに、ドネペジル等のAChE阻害薬で、有効性又は安全性に問題がある場合の切替え
やAChE阻害薬との併用でも使用されています。現在、本邦ではドネペジル以外にAD
の効能・効果を有する治療薬は上市されておりませんが、本邦における本薬の臨床的位置
付けは海外と大きな違いは無いと考えています。
 本薬の効能・効果については、84ページです。効能・効果は既承認のドネペジルの記
載も踏まえ、「中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」
とし、本薬の効果について臨床現場に誤った印象を与えないよう、「効能・効果に関連す
る使用上の注意」においてADの病態そのものの進行を抑制する成績は得られていないこ
と等を記載しています。
 用法・用量については、85ページです。国内主要2試験において、SIB-Jで本薬20mg
の有効性が示されており、維持用量を20mgとすることは妥当です。また、投与開始初期
の用法・用量を1日1回5mgから開始し、1週間に5mgずつ増量することについては、
当該用法・用量について実施された国内主要2試験において、漸増期の有害事象発現割合
に本薬群とプラセボ群で差が認められなかったこと、浮動性めまい等の副作用が投与初期
に発現していることを踏まえると、妥当であると判断されました。よって、用法・用量を
「本薬を1日1回5mgから開始し、1週間に5mgずつ増量し、維持用量として1日1回
20mgを経口投与する」とすることが適切であると判断しました。
 製造販売後調査については、86ページです。製造販売後調査として、肝機能障害及び
腎機能障害患者等における安全性に加え、本薬の長期投与時の安全性及び有効性並びにド
ネペジルと併用した時、あるいはドネペジルから本薬に切り替えた時の安全性及び有効性
の情報収集をすることを目的に、2,500例を対象とした使用成績調査を組み込みました。
観察期間を1年間とした長期特定使用成績調査を実施する予定です。
 さらに臨床現場では、ドネペジルとの併用が行われる可能性が高いこと及び国内臨床試
験で本薬の有効性が検証されたとは言い難いことから、ドネペジルを服用中の患者に本薬
を投与した時の有効性及び安全性を検討する試験を製造販売後臨床試験として実施する
予定であり、デザインの詳細は今後検討を行っていく予定です。
 以上のような検討を行った結果、本薬を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品
第一部会において審議することが適当であると判断しました。
 原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品又は特定生物由来製品には該当し
ないと判断しています。再審査期間は、8年にすることが適当であると判断しています。
薬事分科会では、審議を予定しています。なお、当日資料として、本橋委員よりいただき
ました御意見をお配りしています。御審議のほど、お願いします。
○松井部会長 ありがとうございました。アルツハイマー型認知症に対する薬剤というこ
とで、この後の議題3とも関連するものです。本橋委員からの御意見にも、その旨が書か
れています。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
○成冨委員 このような薬剤は、抗生物質、あるいは降圧薬と同じような基準で考えない
方が良いと思います。多くの患者に満遍なく効くのではなく、ごく一部の人に著効を奏す
る可能性があるからです。以前、ホパテという薬剤がありました。その薬剤も、20人に
1人位の頻度で劇的に効くようなケースがありました。そのような事実があったので、当
時臨床医はその薬剤を重用していました。必ずしも有意差が付かなくても、製剤の有効性
が無いとは言い切らない方が良いでしょう。私は、機構の考え方に賛成です。しかし、議
題3にも同じことが言えるのですが、この場合は「中等度から高度のAD」、議題3では
「軽度から中等度のAD」ということで、程度によっての基準や判断材料が必要だと思い
ます。判断基準等が無い場合も使用すると思いますが、そのような基準等はありますか。
○機構 この程度であれば高度、中等度という明確な指標は決まっていません。専門協議
でも議論になったのですが、そのような基準を明確に添付文書に書いてはどうかという意
見もありました。現時点では、そのような明確な基準は無く、臨床試験でもその基準が各
試験で違っていたり、治験薬が違った場合には、それぞれの基準で行っていることもあり
ます。
 ただ、今回添付文書は、臨床試験にどのような患者がいたのかというところで、MMS
Eという基準がありました。それを記載しています。また、リーフレット等医療現場に対
する資料にも、そのようなことを記載するようにしています。
○佐藤委員 私も、同じ質問をしようと思っていました。標準的な判断の基準を作らずに
臨床試験を1万人ほど行うということは、結果をどのように読みとるのですか。推定でも
良いので、標準は何を基準にするのかを決めてから、投与の臨床試験を行うべきだと思い
ます。いかがでしょうか。
○機構 佐藤委員のおっしゃるとおりだと思います。ただ、それに関しては、まだ世界的
な標準がありません。一応、大まかではあります。例えば、添付文書の3ページの臨床成
績には、中等度から高度のアルツハイマー型認知症患者、MMSEスコアは5点~14点、
FASTステージが6a以上7a以下という形でこのようなスコアがあります。その付近の
ものが中等度から高度とされています。
 また、軽度から中等度となると、MMSEのスコアが10点以上と少し被った部分があ
り、そのようなところは明確に示すことができません。この治験に入った患者が、どのよ
うな患者か、大まかに情報提供を行います。臨床試験において、今後どのようにしていく
のかは、このような薬剤が市販されると学会等でも議論されると思います。よって、それ
も踏まえて、書けるようであれば記載するというようになると思いますが、現時点では書
けません。
○佐藤委員 それに追加して、基準を設けるのです。結局、使用可能となった時点で、恐
らくもう一つの薬とも関連します。高度であれば、このまま進行していく患者さんに対し、
今後多くの人が投与されると思います。しかし、効果の無い患者さんには、ただ飲ませて
ただけということになるのですか。
○機構 佐藤委員のおっしゃるとおりです。その辺に関しては、大変懸念しております。
添付文書の「重要な基本的注意」の(4)で「本剤投与により効果が認められない場合、漫
然と投与しないこと」という注意喚起があります。また、リーフレット等でも、そのこと
はきちんと説明していくように企業には申し伝えています。
○加藤委員 中等度、高度アルツハイマーを適応とすると、既に軽度の段階でドネペジル
を処方されている患者さんは、かなり多いと思います。そこで伺いたいのは、医師がドネ
ペジルとの併用をどう判断するかを添付文書に明示的にしっかりと書くのかということ
です。併用に関して、特記すべき有害や併用反応が無かったことは、報告書に書かれてい
るようです。併用に関して、ドクターとしては、今までドネペジルを出していた患者に、
どのように処方するかが一番悩むところだと思います。コリンエステラーゼ系に効く薬と
は全く作用機序が違うので、併用したいという考え方が当然あり得ると思います。それに
ついては、製薬会社をどのように指導して市場に出すのですか。
○機構 メマリー錠に関しては、ドネペジルと全く作用機序が異なっているところがあり
ます。これに関しては、市場に出た場合、今後併用されていくと考えています。
 併用の善悪は、海外にドネペジルと併用した試験成績があり、そこではきちんと有効性
が認められています。その為、併用ができないと言う必要はないと思います。
 ただ、市販後臨床試験において、メマリー錠とドネペジルの併用に関しての有効性、安
全性を確認していただきたいということで、臨床試験を行うことを指示していきたいと思
っています。
○加藤委員 もう一点は、動物試験の前臨床の神経毒性で、帯状回皮質の細胞壊死が起こ
るという記述があります。機構の審査の結果が、27ページにあります。これは、安全域
が3.8倍あるので、大丈夫だと考えられます。心配なことは、ドネペジルのようなコリン
エステラーゼ阻害系のアセチルコリンの作用を強めるような薬と併用した場合、アセチル
コリンの過剰により、帯状回皮質の障害が起こりやすくなる可能性もあるのかということ
です。考えた方が良いのか、御検討をお願いしたいと思います。恐らく実験データは、無
いと思います。いかがでしょうか。
○機構 その点に関して、明確に本剤がアセチルコリンの過剰放出に関与するのか分かり
ません。けれども、現時点で海外で10年以上使われている薬剤であり、それに関して特
別な注意喚起等が無いことから、恐らく問題は無いだろうと思います。先生の御指摘を踏
まえて、申請者にもお伝えし、今後対策が必要かどうかは検査していただきたいと思いま
す。
○松木委員 余り効果は強くありませんが、臨床現場の選択肢が増えるという意味では、
良いのではないかと思います。スコアを見ても標準誤差ですが、非常に大きなエラーバー
です。ですから、スコアの取り方、あるいはレスポンダー、ノンレスポンダーが明確なの
だと思います。臨床試験を行う際に、機構として早い段階から指導をしていく等をしなけ
れば、ドラッグ・ラグが大きくなってしまうと思います。
 こちらは、この人の記録として残して良いのかは分かりませんが、いろいろな学会から
要望が出ており、それが影響したのですか。
○機構 この判断に関してですか。
○松木委員 はい。
○機構 要望書があったので、何か影響したということは無いと思います。ただ、現場で
これだけニーズがあるにも関わらず、現在もアリセプト1剤だけです。御存じのとおり、
悪心や嘔吐があり、消化器官系障害で飲めない患者たちに対し、世界的にも標準の医薬品
がアリセプトを合わせて四つあるという中、日本は一つしかありません。現場の選択性の
無さという絶望感は、十分理解した上で審査しました。
○松井部会長 ほかにいかがですか。
○大石委員 選択肢を増やすという点では、良いと思います。けれども、添付文書の印象
というのは大きく、公平な立場で書かれているべきです。臨床成績での効果に関しては、
表もグラフも出ています。これは、効果が高いという印象を過剰に与えています。表もグ
ラフも同じデータであるが、それを二つに分けて強い印象を与えています。
 それから、CIBIC plus-Jのデータが出ています。その為、デイケアの話までは出さな
くても良いと思います。その点は、いかがですか。
○機構 大石委員の御意見では、SIB-Jのスコアの表とグラフの両方を出していて、その
グラフが非常に強く印象を与えることから、削除するべきということでしょうか。
○大石委員 ある程度の効果は出すべきですが、形を変えて同じデータを二つも出してい
るので、検討する必要があると思いました。
○機構 こちらに関しては、大石委員の御意見を踏まえ、申請者にお話をさせていただき
ます。
○松井部会長 委員から、かなり意見を出していただいたと思います。ほかにいかがでし
ょうか。
○清水委員 有効性が認められている臨床試験のデータにおいて、ネガティブデータにつ
いても出さなければ、誤解を受けると思います。
 もう一点あります。漫然投与のところが非常に心配です。機構から開発メーカーに、具
体的な方策についての指導は行っているようですが、その結果が「徹底した情報提供を行
います」という回答では、疑問に思います。さらに、中止の為の基準を作ることも簡単な
話ではないとよく分かりますが、単に情報提供を徹底して行うということだけで対策にな
るとも思えません。もう少し工夫をして欲しいと思います。
○機構 清水委員のおっしゃるとおりです。その点に関しては、どのようなリーフレット
を作成しているのか確認していません。内容も確認した上で、具体的にどのような対策が
取れるのかを企業と相談の上、対策を立てたいと思います。
○村田委員 皆さんの御意見もよく分かります。私もそう思うのですが、実際には進行を
遅くする程度の効果です。その為、変化しないということが、効果なのかもしれません。
漫然と投与しないと言っても、それ以上踏み込むことは難しく、現場としては「効果が無
いので投与を中止する」と言いにくいという状況もあります。御理解ください。
 なお、「まだメマンチン塩酸塩は使えないのか」と、国際会議で言われ続けています。
是非とも早く通して欲しいと思っています。
○松井部会長 よろしいでしょうか。今日の委員の方々の総意は、アルツハイマー病の治
療に、オプションを与えるべきだということでは、一致していたようでした。この後、議
決を採りますが、何か付帯条件を加えて部会に報告することが良いと思います。まず、そ
のような付帯条件を加えるということで議決を採ります。なお、大石委員、加藤委員、野
田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮
いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議が無いようですので、付
帯条件を付けて承認を可とし、薬事分科会に上程とさせていただきます。その際、条件は
「漫然と投与しないこと」とします。
 村田委員より、「漫然と投与しないと呼びかけても難しいのではないか」という御意見
がありました。さらに、「漫然と投与しないように、何か工夫ができないか、又、併用に
関してはどのようにまとめるのか」もう一点は、「添付文書の記載を公正にしてほしい」
ということでした。併用に関しては、加藤委員の御発言でした。何か、御提案はあります
か。
○加藤委員 海外では、かなり併用実績があると思います。海外の添付文書を参考に、検
討していただければと思います。
○松井部会長 薬事分科会の際、医薬品第一部会では丁寧な議論をしたことが分かるよう
な報告にしたいと思います。よろしくお願いします。
 アルツハイマー型認知症に関して、もう一点「議題3」が残っています。それでは、議
題3に移ります。永井委員におかれましては、議題3の審議の間、引き続き別室で御待機
いただくこととします。議題3について、機構から概要を説明してください。
○機構 議題3、資料3「医薬品レミニール錠4mg、同錠8mg、同錠12mg、同OD錠4
mg、同OD錠8mg、同OD錠12mg及び同内用液4mg/mLの生物由来製品及び特定生物由
来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定
の要否について」です。審査報告書の3ページになります。ガランタミン臭化水素酸塩は、
マツユキソウの球茎より単離された第3級アルカロイドです。アセチルコリンエステラー
ゼ阻害作用によるシナプス間隙のアセチルコリン濃度の増加及びニコチン性アセチルコ
リン受容体に対するアロステリック増強作用を介したシナプス間隙神経伝達物質の分泌
の増加により、アルツハイマー型認知症(以下ADと略す)の症状の進行を抑制する薬剤で
す。
 本薬は「軽度から中等度のアルツハイマー型認知症」の治療薬として、初めに2000年
3月にスウェーデンで承認されたのを初めとして、2010年4月現在、フィルムコーティ
ング錠が、米国及び欧州を含む68の国又は地域で、内用液及び徐放カプセルが65の国又
は地域で承認されています。本邦では、2000年からヤンセンファーマ株式会社により開
発が開始され、2010年2月に国内外の臨床試験成績等を基に、「軽度及び中等度のアル
ツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」を効能・効果とし、フィルムコーテ
ィング錠、口腔内崩壊錠及び内用液の医薬品製造販売承認申請がなされました。本品目の
審査に関して、専門委員として資料13に記載されている委員が指名されました。
 本品目の臨床試験成績に関する審査の概略についてです。有効性については、48ペー
ジの「国内第III相試験」1.になります。本試験は、海外第III相試験(GAL-USA10試験)
を対象としたブリッジング試験として位置付けられ、認知機能評価の指標であるADAS-J
cogと、全般臨床評価の指標であるCIBIC plus-Jの二つの指標が主要評価として設定さ
れました。しかしながら、図2に示すように、ADAS-J cogでは、24mg群のみプラセボと
有意差が見られ、表2のようにCIBIC plus-Jでは16mg群でしかプラセボと有意差が見ら
れなかった為、ブリッジングは成立しませんでした。
 そこで、本薬の有効性評価により適した対象集団を選択したGAL-JPN-5試験が実施され
ました。51ページの「国内第III相試験」の2.になります。先ほどの試験同様、主要評
価項目にはADAS-J cogとCIBIC plus-Jの二つが設定されました。図3に示すように、
ADAS-J cogでは投与後24週において、本薬16mg、24mgとも、プラセボに対し優越性が
認められましたが、表4に示すように、CIBIC plus-Jでは16mg、24mgとも、プラセボに
対する優越性は認められませんでした。本薬の有効性評価において、より適した対象集団
が選択されたにも関わらず、GAL-JPN-5試験では、いずれの用量でもCIBIC plus-Jにお
いて、プラセボに対する本薬の優越性は示されず、日本人AD患者における本薬の有効性
が検証されたとは言い難いと考えます。
 しかしながら、本邦の臨床現場におけるADの治療薬の選択肢は、ドネペジル塩酸塩(販
売名アリセプト)の1剤のみと極めて限られている現状も考慮し、ADの中核症状の一つ
である認知機能障害に対する本薬の有効性は、GAL-JPN-5試験において検証されたこと、
国内外の試験間でブリッジングは成立しなかったものの、本薬16mg及び24mgの有効性は
海外臨床試験で認められ、海外では本薬は標準的治療薬として位置付けられていることを
踏まえ、本邦においても有効性は期待できると判断しました。
 安全性については、58ページです。表8を見ますと、GAL-JPN-5試験において、いずれ
かの群で5%以上に認められた有害事象を示しています。悪心、嘔吐、下痢等の消化器症
状、体重減少、浮動性めまい等が、本薬群でプラセボ群より多く認められましたが、認め
られた事象は、類薬のドネペジルと同様であり、添付文書に記載されている注意等に従い
適正に使用されれば、承認の可否に影響するような安全性に関する重大な懸念は認められ
ないと判断しました。
 本薬の臨床的位置付けについては、59ページです。本薬は、海外において軽度から、
中等度のADに対する第一選択薬及び他のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の有効性
又は安全性に問題がある場合の代替薬として位置付けられています。現在、本邦で使用可
能なAD治療薬は、ドネペジル1剤のみであり、有効性又は安全性等の理由により、ドネ
ペジルによる治療ができない場合には、他の選択肢が無いことも踏まえると、本薬が軽度
から中等度のAD治療薬の選択肢の一つとして位置付けられると考えます。なお、アリセ
プトとの併用については、原則として併用しない旨、添付文書の「重要な基本的注意」に
記載しています。
 本薬の効能・効果については、75ページです。軽度及び中等度のアルツハイマー型認
知症における認知症症状の進行とし、ドネペジル、メマンチンと同様の注意を「効能・効
果に関連する使用上の注意」に記載しております。
 本薬の用法・用量についても、75ページです。GAL-JPN-5試験において、認知機能障害
に対する有効性は、16mg及び24mgのいずれにおいても示されています。16mgよりも24mg
では消化器系有害事象や投与中止に至った有害事象の発現割合が高かったこと、認知機能
障害に対する有効性は、24mgへ増量することで更なる有効性が期待できる結果が得られ
ていることから、リスク・ベネフィットバランスを考慮した上で、24mgへ増量すること
は可能と判断し、用法・用量を「通常、成人にはガランタミンとして1日8mg(1日4mg
を1日2回)から開始し、4週間後に1日16mg(1回8mgを1日2回)に増量し、経口投与
する。なお、症状に応じて1日24mg(1回12mgを1日2回)まで増量できるが、増量する
場合は変更前の用量で、4週間以上投与した後に増量する」とすることが妥当と判断しま
した。
 製造販売後調査については、76ページです。製造販売後調査として、臨床試験におい
て投与経験の限られていた腎機能障害、肝機能障害患者における安全性及び有効性、並び
に本薬で懸念される胃腸障害及び心血管系有害事象の発現状況等を情報収集すること等
を目的に、□□例を対象とした使用成績調査を実施すると共に、長期における使用実態下
の安全性及び有効性を検討する目的で、□例を対象とした特定使用成績調査を実施する予
定です。
 さらに、ドネペジルで有効性に問題があると判断された患者において、ドネペジルから
本薬に切り替えた時の有効性及び安全性を検討する製造販売後臨床試験を実施する予定
であり、デザインの詳細は今後検討を行っていく予定です。
 以上のような検討を行った結果、本薬を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品
第一部会において御審議いただくことが適当であると判断しました。
 原体は毒薬、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品又は特定生物由来製品には該当しない
と判断しています。再審査期間は8年とすることが適当であると判断しています。薬事分
科会では、報告を予定しています。御審議のほど、お願いします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいた
します。
○佐藤委員 今回は、軽度及び中等度で効果があるということですが、様々な判定基準が
あります。専門的で分からないのですが、認知症症状の改善について効果があったと捉え
ているという判断でよろしいでしょうか。例えば、中核症状だけを考えて効果を調べると
します。けれども、この判定基準は日常生活まで踏まえており、周辺症状を含めての効果
になっています。中核症状、認知症症状が良くなったといえども、特に特定して中核症状
だけに効果があるものとは、考えなくても良いのですね。中核症状に効くというところで、
疑問に思う箇所があるので、確認させてください。
○機構 効能・効果に「認知症症状の進行抑制」とあるので、そのような御質問が出たの
かと思います。元々ドネペジルが承認された時は、認知症症状が「痴呆症」という言葉で
記載されていました。その後、「痴呆症」という言葉は控えて、「認知症」とした時から、
そのまま置き換えて「認知症症状」となりました。たまたま今回、認知機能というところ
と合致することもあり、そのようにお考えになったと思います。基本的には、中核症状を
含めたものに関して有効だと考えています。
○佐藤委員 中核症状に周辺症状を含めたトータルでの改善を考えれば良いのでしょう
か。
○機構 はい。
○佐藤委員 説明の際に、認知症症状ということを強調されたので、誤解をしました。
 もう一点あります。71ページにドーズディペンデントがあると考えるような記載があ
ります。現段階では、初期は考慮しながら8mg/日からとなっています。けれども、この
ドーズディペンデントを考えて、用量を増やすと効果があるかもしれないという文章にな
っています。実際には、どの程度まで臨床試験を行うことができるのでしょうか。限界は
あると思いますが、感情問題として「効かなければ増やした方が良い」という気持ちはあ
ると思います。いかがでしょうか。
○機構 その点に関しては、海外において36mgまで検討されています。しかし、36mgに
なると有害事象の問題も大きくなるので、観察はその時点で中止したということです。用
量依存性については、16mgと24mgの用量の依存的な効果として、それ以上は海外でも開
発していません。よって、今回は24mgまでと考えていただければと思います。
○松井部会長 ほかにございますか。
○村田委員 この薬は、アリセプトにかなり近い作用機序です。アリセプトが承認された
時も、大変だったと思います。先ほどのメマンチンのように、全く作用機序が違う場合は、
よく分かります。しかし、このように非常に作用機序が近い場合、プラセボ、アリセプト、
ガランタミンとで3群比較をすると思っていましたが、なぜ2群比較で行ったのかを教え
てください。
○機構 開発時期にもよると思います。アリセプトがゴールデンスタンダードとなってい
るかにもよりますが、今回の場合は開発時期が相当前の部分があります。例えば第III相
試験の1.のブリッジングでは、まだアリセプトは承認されてから、数年しか経っていま
せんでした。第III相試験の2.もアリセプトしかなかった現状ですが、ゴールデンスタ
ンダードというほどでもなく、症例数の問題等もあり、無理に設定しなくても良いと考え
ました。
○村田委員 再スタートがずれていたのですか。
○機構 そうです。
○村田委員 その時は、アリセプトは既にゴールデンスタンダードになっていました。
○機構 はい。その時に、そこを置いてまで3群比較の試験をすると、症例数の問題等も
あり、企業との相談において、必ず設定して欲しいとは考えていませんでした。プラセボ
に対して有効性を示してくれれば、何とか承認可能ではないかと考えて相談等を進めてい
ました。
○松井部会長 ほかにございますか。
○清水委員 二点確認させてください。一点目は、服用の時期です。試験の中で食事等の
影響は無いということで、今回食事との関係は用法・用量の中には書かれていません。し
かし、副作用軽減の意味から、欧米の添付文書では、食事と共に服用となっています。服
用の時期について、副作用の観点からの議論はありましたか。
○松井部会長 どの副作用でしょうか。
○清水委員 消化器系の嘔吐、悪心です。
○機構 その点に関しては、薬物動態的な観点から見ても、特に影響は無かったと思いま
す。ただし、臨床試験においては、食後投与のデータがほとんどであった為、副作用への
影響は、明確になっていませんでした。本邦において、どのような規定とするのが良いか、
企業とも相談して検討させていただきます。
○清水委員 もう一点は、製剤についてです。OD錠の発売は、本邦だけの製品になるか
と思います。OD錠は硬度であり、一包化調剤の機械にかける時、破損してしまうような
硬さであるという情報があれば、教えてください。
 さらに、内用液については、添加物により甘味が付いていることは分かります。匂いや
味については、何か情報があれば教えてください。
○機構 OD錠に関しても、一包化が可能であるのかは確認していませんでした。こちら
は、確認した上で御連絡させていただきます。また、匂いや味についても、確認してして
御連絡します。
○松井部会長 ありがとうございました。ほかにございますか。それでは、議決に入りま
す。なお、大石委員、加藤委員、野田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基
づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議が無いようですので、承
認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題4に移ります。永井委員におかれましては、引き続き別室で御待機とい
うことでしたが、既にお帰りになりました。議題4について、機構から概要を説明してく
ださい。
○村田委員 議決してしまったのですが、こちらの薬も余り効果が無いことには、変わり
がありません。先ほど、レミニール錠(一般名、ガランタミン)の方で、議論をしてしまっ
たので、ガランタミンの方だけが余り効果が無いような言い方になってしまいました。実
際には、ほとんど同じようなデータだと思うので、添付文書等に関しては同じような付帯
条件を付けてください。
○松井部会長 はっきり申し上げず、すみません。先ほどの付帯条件ですが、両方の議題
について共通の事項とします。そのように取り扱ってください。
○機構 議題4、資料4「医薬品プラザキサカプセル75mg及び同カプセル110mgの生物
由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並
びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」、一般名、ダビガトランエテキシラートメタン
スルホン酸塩を機構より説明いたします。ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸
塩は、非ペプチド性の直接トロンビン阻害剤であるダビガトランの経口投与可能なプロド
ラッグであり、消化管から吸収され、エステラーゼによって活性本体であるダビガトラン
に変換された後、トロンビンを選択的かつ可逆的に阻害し、血栓形成を抑制します。
 本剤は、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社により、心房細動患者の血栓形成を
抑制する薬剤として開発され、今般、国内臨床試験及び日本人も参加した国際共同第 III
相試験の成績を基に、製造販売承認申請がなされました。
 海外では、同じ国際共同第III相試験の成績に基づき、2009年12月に欧州及び米国で
承認申請され、米国では2010年10月19日に「非弁膜症性心房細動患者の脳卒中発症リ
スク抑制」の適応で、既に承認されています。本品目の審査に関して、専門委員として資
料13に記載されています委員が指名されました。
 審査の概略について、日本人も参加した国際共同第III相試験の成績を中心に説明しま
す。本試験は、非弁膜症性心房細動患者を対象に、本薬110mgと150mgの1日2回投与に
おける脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制効果について、ワルファリンに対する非劣性を
検証することを目的とした非盲検並行群間比較試験です。対照薬のワルファリンは、
PT-INRが2.0~3.0となるよう投与量を調節されましたが、70歳以上の日本人患者では国
内の臨床実態を踏まえ2.0~2.6が目標とされました。
 試験全体の成績について説明します。試験全体では、合計1万8,113例が無作為化され
ました。有効性の主要評価項目である全脳卒中又は全身性塞栓症の発現頻度につきまし
て、年間イベント率の結果が、審査報告書の61ページの表6に記載してあります。本薬
110mg群、150mg群及びワルファリン群の年間イベント率は1.53%、1.10%及び1.68%で
した。ワルファリンに対する本薬群のハザード比については、60ページの下から4行目
辺りに記載してありますが、本薬110mg群のワルファリン群に対するハザード比は0.91、
本薬150mg群では0.66であり、いずれの本薬群でもワルファリンに対する非劣性が検証
されました。本試験で確認された本薬の安全性につきまして、63ページの表8に大出血
の年間イベント率が示してあります。本薬110mg群及び150mg群の大出血の年間イベント
率は2.67%及び3.11%で、ワルファリンの大出血の年間イベント率3.36%に比べ、110mg
群では有意に低く、150mg群ではワルファリン群との有意差は認められませんでした。し
かしながら、本薬の安全性が必ずしもワルファリンよりも高いというわけではなく、例え
ば62ページの表7に記載してある有害事象のうち、下から四つ目の胃腸障害に関しては、
本薬群110mg群及び150mg群の発現率が、34.6%及び34.5%となっており、ワルファリ
ン群の24.0%よりも低いことが示されております。また、消化管出血の発現率について
は、ここには記載されておりませんが、ワルファリン群に比べ本薬群で高いという成績も
得られております。したがって、消化管出血の既往を有する患者に対しては、添付文書で
注意喚起をすることとしています。
 本試験に組み入れられた日本人患者の成績について説明します。64ページの表9が年
間イベント率についてです。日本人患者は、326例が無作為化されました。本試験に組み
入れられた日本人症例数は、非常に限られており、試験全体の成績との類似性を判断する
のは限界があるものの、主要評価項目以外の成績からも総合的に検討し、全体集団にて認
められた試験成績と同程度の本薬の有効性は、日本人においても期待できるものと判断い
たしました。
 また、日本人の部分集団における出血の発現頻度につきまして、66ページの表11に記
載しています。こちらも、限られた症例数での検討ですが、大出血以外のデータも吟味し、
本薬の安全性が日本人で特別劣るようなことはないと判断しました。
 以上の試験成績より、本薬が日本人非弁膜症性心房細動患者における脳卒中及び全身性
塞栓症の発症抑制に用いる抗凝固薬の選択肢の一つとなる可能性はあるものと判断いた
しました。
 効能・効果及び用法・用量につきましては、添付文書(案)を御覧ください。効能・効果
としては、国際共同第III相試験の対象が非弁膜症性心房細動患者であったこと、又、本
薬では出血性の脳卒中の発症を抑制することは困難と考えられることから、「非弁膜症性
心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」とすることが、妥当と
判断いたしました。また、用法・用量は、1回150mg1日2回投与を標準的な用法・用量
とした上で、本薬の血中濃度が上昇すると考えられる中等度腎機能障害患者やP-糖蛋白
阻害剤との併用時並びに、高齢者や消化管出血の既往を有する患者等の出血の危険性が高
いと考えられる患者では、1回110mg1日2回への減量を考慮することが妥当と判断し、
必要に応じて減量する旨の用法・用量といたしました。なお、減量が必要な患者に対する
注意喚起の詳細については、慎重投与の項、重要な基本的注意の項等において記載され、
注意喚起が図られています。
 製造販売後の調査計画等については、審査報告書の94ページです。国際共同第III相
試験に組み入れられた日本人症例数が非常に少数であったこと、又、本薬は長期間投与さ
れる薬剤であることから、製造販売後調査等において、本薬の安全性及び有効性に関して
十分な情報収集を行う必要があると考えております。特に、抗血小板薬を併用している患
者、高齢患者、腎機能障害患者における本薬の出血リスクを含めた安全性や、胃腸障害と
消化管出血の発現についての検討、又、併用薬の影響等の検討が可能なように、十分な症
例数で長期間に渡る情報収集を行う必要があると考えております。申請者は、5,000例規
模の調査を実施し、観察期間を2年間とする製造販売後調査を計画しており、申請者の方
針は、おおむね妥当なものと判断しております。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品
第一部会において御審議いただくことが適当であると判断しました。
 本剤の再審査期間は、8年とすることが適当であると判断しております。また、原体及
び製剤は毒薬又は劇薬に該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当
しないと判断しております。薬事分科会では、審議を予定しております。御審議のほど、
お願いします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいた
します。
○大石委員 添付文書の9ページの禁忌についてですが、こちらには「イトラコナゾール」
だけしか書いていません。「ケトコナゾール」も禁忌のはずですが、抜けているのでしょ
うか。
○機構 「ケトコナゾール」の経口剤は、本邦では承認されておりません。その為、記載
しないことにいたしました。「ケトコナゾール」の経口剤は、禁忌に記載していないこと
が多いです。
○大石委員 分かりました。本文の調査報告書の45ページに「併用禁忌とされているケ
トコナゾール及びイトラコナゾール」という文章がありましたが、「ケトコナゾール」は
添付文書には入れなくても良いのですか。
○機構 はい。
○大石委員 もう一点あります。添付文書1ページに、「経口直接トロンビン阻害剤」と
記載されていて違和感を感じます。「トロンビン阻害剤」ではないのですか。
○松井部会長 いかがですか。
○機構 「経口投与可能な」という意味で書いていると思います。この記載については検
討します。
○大石委員 添付文書では、様々な書き方をするケースがあると思います。直接と間接と
いう意味があるのならば、この書き方で良いと思います。しかし、「カプセル」と記載が
あるので、注射剤等の分類までする必要は無いと思います。どちらにしても、添付文書全
体で統一していく方向を考えるべきだと思います。
○松井部会長 要望ということですね。よろしいでしょうか。
○機構 補足いたします。これまで、こちらについては、メーカーが自由に記載をしてい
ました。大石委員のおっしゃるとおりです。当機構も、添付文書の記載を整理している部
署があります。そちらに伝えたいと思います。
○松井部会長 是非、お願いします。
○佐藤委員 先ほど議論した認知症の薬に似たような質問ですが、ワルファリンとの差
は、大出血等に対しての発現頻度も余り無かったと言われています。本薬とワルファリン
との本質的なベネフィットは、使用した際にどこに求められているのでしょうか。
○松井部会長 いかがでしょうか。
○機構 一番大きなベネフィットとして考えられるのは、ワルファリンはINRを常にモ
ニターしながら、投与量を非常に頻回に調節していく必要があります。それに加えて、薬
物相互作用、食事の影響があり、コンプライアンスの問題等もあります。そのことから、
この薬のベネフィットは、決まった用量を継続して投与することが可能なことだと考えて
います。
○松井部会長 ほかにありますか。
○成冨委員 恐らくこの薬剤が市販されるとワルファリンは、すべてこれに切り替わり、
ワルファリンを使うドクターは少なくなると思います。けれども、多少問題なのは適応が
非弁膜症性になっている点です。弁膜症のあるAFの患者さんもいますが、「使用しては
いけない」との記載はありません。これは、暗黙のうちに認めるということですか。
○松井部会長 いかがでしょうか。
○機構 効能・効果を「非弁膜症性心房細動患者」と明記したのは、弁膜症性の患者さん
には使用できないという意味です。国内の臨床試験、海外の臨床試験、国際共同試験にお
いても、対象は非弁膜症性心房細動患者でした。そのような患者さんにのみ使われた為、
弁膜症性心房細動患者の有効性、安全性は明らかになっていません。弁膜症性を含む患者
さんは、ワルファリンによってINRをしっかりとモニターし、適切な用量のワルファリ
ンを投与されることが必要であると考えています。
○松井部会長 そうだとすれば、そのことを明記する必要があるのでしょうか。心疾患以
外にも、ワルファリンを使用している患者さんは沢山います。
○機構 トロンビンに限らずこのような薬は、ワルファリンが今まで使用されている分野
において、それに替わる薬の開発が進められています。それに対し、有効性、安全性が検
証できている部分については、認めていく方向です。そして、一番の大きなメッセージは
効能・効果です。そこから外れた患者さんについては、現時点では使っていただきたくな
いと考えています。そのことから、効能・効果に記載されていない部分について、「効く
可能性がありそうなので使用する」といったことは、基本的に控えていただきたいと思い
ます。
○松井部会長 くどいかもしれませんが、そのメッセージを記載せず、暗黙の了解として、
控えてもらうという意味ですか。
○機構 「効能・効果に記載が無いので使わない」ということは、多くは普遍的なものだ
と思います。
○松井部会長 了解しました。
○野田委員 用法・用量について質問します。「必要に応じて、1日2回投与へ減量する
こと」の「必要に応じて」の詳細として、「中等度の腎障害のある患者等では、1日2回
投与への減量を考慮すること」とあります。これは、血中濃度のモニタリングを義務付け
る程ではないということですか。
○松井部会長 いかがですか。
○機構 血中濃度をモニターすることが必要とは考えておりません。患者さんによって、
出血のリスクが高い患者さん、又は、逆に塞栓症の発現が考えられる患者さんがいると思
います。そこで、減量を考慮する際は、担当医の判断で良いと思います。そういったこと
から、必ず110mgに減量するのではなく、必要に応じて調節するということです。具体的
に、その用法・用量に関連する使用上の注意に記載されているような患者さんは、減量も
可能というような用法・用量にしたということです。ただし、減量する場合どのような用
量でも良いのではなく、臨床試験である程度の有効性が評価されている110mgに減量する
ことであれば、血栓塞栓症の発現抑制という有効性は、損なわれずに減量できるのではな
いかと考えております。
○松井部会長 よろしいでしょうか。
○野田委員 トリビアルな質問ですが、最初から減量した量を投与しても良いということ
ですか。
○機構 はい。このような背景の患者さんは、最初から110mgで良いということです。
○松井部会長 ほかにいかがですか。
○清水委員 二点、確認させてください。一点は、この薬は相互作用をベースに用量を調
節する設定になっています。このことから、「重要な基本的注意事項」に、その患者さん
が飲んでいる薬剤の情報を収集する必要があると明記した方が良い思います。処方薬だけ
ではなく、OTC薬やサプリメントも含めて、服用薬をきちんとチェックするべきです。
○機構 ありがとうございます。大変重要な御指摘をいただきました。その点については、
検討いたします。
○松井部会長 是非、お願いします。
○清水委員 もう一点は、製剤ですが1号カプセルそのものが大きくて飲みにくいという
ことがあります。サンプルがあるので、委員の方も見ていただければと思います。1号カ
プセルと2号カプセルでは、色が同じです。これは、シートで区別するということですが、
規格された絵を見ると、シートを外してしまった時にとても分かりづらいと思います。世
界基準として考えれば、指摘はあったが改良ができなかったという背景もあると思いま
す。どちらかのキャップの色の変更を検討していただけないのでしょうか。
○松井部会長 どうでしょうか。
○機構 製剤見本をいただいた時、我々も同じ考えを持ちました。現状で、メーカーに変
えられないかと話をしました。すると、清水委員のおっしゃるとおりグローバルの話であ
り、少し難しいということでした。その際、部会での御意見もあるかもしれないというこ
とで、引き続き検討すべき課題となっています。よって、今日の議論をメーカーにも伝え
ていきたいと思います。
○清水委員 是非、ボディかキャップの色を変えていただきたいと思います。
○松井部会長 ほかにはございますか。
○加藤委員 とてもプリミティブなことです。先ほど、ワルファリンからの移行と対比が
議論に出ていたのですが、ワルファリンの場合は有害反応が起こった時、ビタミンKで中
和できることは有名な話です。本剤はワルファリンとは全然作用機序が違うので、この場
合、「有害反応に対しビタミンKは中和薬として作用しない」ということを添付文書に記
載しなくても良いのでしょうか。
○松井部会長 どうですか。
○機構 加藤委員の御指摘のとおり、そこの所には全く記載がありません。恐らく、ワル
ファリンとこの薬が出てきた時、そのような問題が出てくると思います。このような薬が
幾つか並んだ場合、それが必要であるか検討したいと思います。
○松井部会長 ほかにはございますか。ありがとうございました。それでは、議決に入り
ます。なお、大石委員、野田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまし
て、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議が無いようですので、承
認を可とし、薬事分科会に上程とさせていただきます。その際ですが、先ほどの「併用服
用薬のチェックを必ず行うように」ということは、大事な記述です。よく検討していただ
きたいと思います。
 それでは、報告事項について、説明をお願いします。
○機構 報告事項について説明します。議題1、資料7「医薬品リン酸Na補正液
0.5mmoL/mLの製造販売承認について」です。本薬剤は、1管(20mL)中にリン酸水素ナト
リウム水和物1.79g及びリン酸二水素ナトリウム水和物0.780gを含有する注射剤です。
今般、株式会社大塚製薬工場より「電解質補液の電解質補正」を効能・効果とする製造販
売承認の申請がなされたものです。機構における審査の結果、承認して差し支えないと判
断いたしました。
 議題2、資料8「医薬品ルナベル配合錠の製造販売承認事項一部変更承認について」で
す。本剤は、合成黄体ホルモンであるノルエチステロン1.0mg及び合成卵胞ホルモンであ
るエチニルエストラジオール0.035mgを含有する経口剤であり、平成20年4月に「子宮
内膜症に伴う月経困難症」の効能・効果で承認されております。今般、ノーベルファーマ
株式会社より「機能性月経困難症」の効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承
認の申請がなされたものです。機構における審査の結果、承認して差し支えないと判断い
たしました。
 議題3、資料9「医薬品キンダリー透析剤4E、同透析剤4D及び同透析剤AF4P号
の製造販売承認について」です。本剤は、Ca濃度を既承認透析剤の中間濃度である
2.75mEq/Lとした人工腎臓用透析用剤です。今般、扶桑薬品工業株式会社より「慢性腎不
全における透析型人工腎臓の灌流液として用いる」を効能・効果とする製造販売承認の申
請がなされたものです。機構における審査の結果、承認して差し支えないと判断しました。
 議題4「医療用医薬品の再審査結果について」です。資料10-1~10-2をまとめて報告
します。これらは、いずれも医薬品再審査確認等結果通知書です。資料10-1、一般的名
称は「リバビリン」、「インターフェロンアルファ-2b(遺伝子組換え)」です。販売名
は「レベトールカプセル200mg」、「イントロンA注射用300、同600、同1000」です。
資料10-2、一般的名称「インスリンアスパルト(遺伝子組換え)」です。販売名は「ノボ
ラピッド注ペンフィル他」です。これらの品目について、市販後の使用成績調査、市販後
臨床試験、特別調査の成績等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14
条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効
能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要がない「カテゴリー1」と判断し
たものです。
○松井部会長 委員の先生方から、御質問等ありましたらお願いします。特にございませ
んでしょうか。それでは、報告事項については御確認いただいたものといたします。本日
の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。
○機構 先ほど、清水委員より御指摘いただいたレミニール錠の食後のお話ですが、確認
いたしました。食事の影響は、動態的には問題は無かったのですが、臨床試験に関しては、
2試験とも食後ということでした。この件に関しては、申請者とも確認し、対応を考えた
いと思います。よろしくお願いします。
○松井部会長 それでは、事務局から何かございますか。
○事務局 次回の部会は、既に御案内のように、明後日11月26日(金)午後4時から開催
させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。
○事務局 本日は、どうもありがとうございました。


(了)

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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