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2011年1月25日 第57回労働政策審議会職業能力開発分科会議事録

職業能力開発局

○日時

平成23年1月25日(火)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第12会議室(12階)


○議事

○井上総務課長 それでは、本日の議題でお願いしています、第9次職業能力開発基本計画について、資料の説明をさせていただきたいと思います。お手元の資料の構成についてです。資料1は、第9次職業能力開発基本計画の全体像(案)です。これは、今回の計画の案を、全体として1枚で整理したものです。資料2は、第9次職業能力開発基本計画(案)です。これは、最終的に厚生労働大臣告示として官報に登載される形の計画で、これまでご議論いただいた内容を踏まえ整理したものです。これが、いわば計画本体です。
 資料3は、第9次職業能力開発基本計画案参考資料です。これは、計画本体には入ってまいりませんが、本日ご議論いただく際に、この資料2の計画の本体に随所に出てまいります数字の裏打ちとなる資料などをまとめているものですので、適宜ご参照いただければと思います。資料4は、前回12月17日の職業能力開発分科会でいただいた主要なご指摘について、整理をしたものです。それでは、資料1、資料2について説明させていただきます。
 資料1は、第9次職業能力開発基本計画の全体像(案)で、具体的に、成長が見込まれる分野の人材育成と雇用のセーフティネットの強化、ということで書いています。下にまいりまして、現状認識として3点挙げています。1つは、少子高齢化や産業構造の変化など、労働力の需給両面にわたる構造的な変化が著しく進展しているということです。2つ目は、非正規労働者の数や割合が増化している状況です。3つ目は、そうした状況の下、一人一人の能力を高め、生産性を向上させることが不可欠ではないかという認識です。
 今後の方向性として、4点挙げています。1点目は、成長が見込まれる分野の人材育成、あるいはものづくり分野の人材育成が喫緊の課題であろうということです。2点目は、雇用のセーフティネットの一環として、雇用保険を受給できない者も安心して職業訓練を受けることができる仕組み、求職者支援制度の創設が必要ではないかということです。3点目は、能力本意の労働市場の形成に資するため、教育訓練と結びついた職業能力評価システムの整備が必要ではないか。4点目は、我が国全体の職業能力開発について、全体として効率的・効果的な訓練が推進されるようビジョンを策定し、さらに職業能力開発、職業訓練のインフラ整備を行っていくプロデュース機能、これまではプロデュース機能として紹介していましたが、(総合調整機能)として今回加えています。これを、戦略的に強化していく必要があるのではないかということです。
 下は、今後の職業能力開発の基本施策の展開です。施策の分野ごとに大きく8つに分けています。1つ目は、成長が見込まれる分野・ものづくり分野における職業訓練の推進です。ただいま今野先生が到着されましたので、一旦説明を中断して開会をお願いします。

○今野分科会長 遅くなりまして申し訳ございません。ただいまから、第57回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いたします。本日は、三村委員と阿部委員が欠席です。それでは、よろしくお願いします。

○井上総務課長 引き続き、資料1の説明をさせていただきます。1.は、成長が見込まれる分野・ものづくり分野における職業訓練の推進です。これを、(1)(2)と書き分けています。具体的な内容については、本文であります資料2で説明をしたいと思います。2.は、非正規労働者等に対する雇用のセーフティネットとしての能力開発の強化です。(1)では、これまで実施していました離職者訓練、それから来年度以降立ち上げていく中央と地方の訓練に関する協議会について触れています。(2)では、第2のセーフティネットの創設ということで、「求職者支援制度」の関係です。(3)は、ジョブ・カード制度の普及促進です。
 3.は、教育訓練と連携した職業能力評価システムの整備です。ここでは、「実践キャリア・アップ戦略」の構築、職業能力評価基準の普及・促進、技能検定制度の見直しといったことを挙げています。4.は、職業生涯を通じたキャリア形成支援の一層の推進です。ここでは、3点あります。(1)では、個人の主体的な能力開発の支援、(2)では、企業による労働者の能力開発の支援、(3)では、キャリア教育の推進です。
5.は、技能の振興の関係です。6.は、長期失業者、学卒未就職者等、特別な支援を必要とする者に対する職業能力開発の推進です。7.は、職業能力開発分野の国際協力の推進です。これは、開発途上国への訓練指導員の派遣等の国際協力、それから新たな技能実習制度の適切な実施などを内容としています。8.は、我が国全体の職業能力開発のプロデュース機能(総合調整機能)の強化です。これについては、1.から7.までの施策を効果的・効率的に推進していくための基盤になる部分として考えています。(1)では、職業能力開発ビジョンの提示、それから訓練計画の策定。(2)では、職業訓練のインフラの構築です。
 続いて、資料2をご覧ください。表紙をめくっていただきまして、目次をご覧ください。この計画案については、第1部から第4部の構成になっています。第1部は、計画のねらいなどの総説です。第2部は、職業能力開発をめぐる経済社会の現状についての分析をしています。第3部は、職業能力開発の実施目標で、今回9次計画を策定するにあたり、特に重要となる課題などについて触れています。第4部は、職業能力開発の基本的施策で、これは職業能力開発の各分野について、今後の取組の方向性を書いているものです。
 3頁の「第1部、総説」をご覧ください。1、計画のねらいです。ここでは、我が国の労働市場をめぐる環境は、目まぐるしく変化しています。それは、産業構造の転換であったり、あるいは女性や高齢者の就業の増加といった就業構造の変化、それから中国や東南アジア諸国の目覚しい成長の影響であり、さらに以下のパラグラフでは、少子高齢化の与える影響に触れています。人口減少社会の下において、職業能力形成機会に恵まれない非正規労働者の数や割合が高まっている中で、活力ある経済社会を構築するためには、若年者から非正規労働者までを含め、一人一人の能力を高め、生産性を向上させることが不可欠ではないかということです。
 このようなことを踏まえ、今後の施策の方向の展開性として、成長が見込まれる分野の人材育成、それからものづくり分野における人材育成、雇用のセーフティネットの強化、その一環としての求職者支援制度の創設、能力本位の労働市場の形成に資するための教育訓練と連携した職業能力の評価システムの整備が必要となるのではないかというものです。
 その次の所で、これらの取組を効率的かつ効果的に推進するために、多様な訓練の主体が適切に役割分担する中で、企業や地域のニーズを踏まえた訓練を実施することが必要であるため、国は、我が国全体の職業能力開発についてのビジョンを策定するとともに、職業訓練カリキュラム等のインフラ整備を行う、そうしたプロデュース機能(総合調整機能)を戦略的に強化することが必要ではないかというものです。
 3頁の終わりから4頁にかけまして、この計画が昨年6月に閣議決定された「新成長戦略」との整合性を図りつつ、今後の職業能力開発に関する中期的な基本方針を定めるものという位置づけ、性格を書いています。4頁2の計画の期間は、平成23年度から27年度までの5年間です。
 次の5頁は「第2部、職業能力開発をめぐる経済社会の現状」です。1.は労働市場の現状と変化です。ここでは、少子高齢化をはじめとして、労働力の需給両面にわたる構造的な変化が著しく進展していることに触れています。2.は労働力の供給面の変化ですが、最初に今後の人口の動向、そして少子高齢化の進展について触れています。次に、若年者の雇用情勢が厳しいものであることに触れています。そして、そのあとに、フリーター、ニートの状況について触れています。それから、女性の就業状況について、就業率などに関して記述しています。5頁の最後から6頁にかけまして、高齢者の就業状況、あるいは就業に関しての希望について記述しています。6頁の中ほどから、障害者について現在の障害者数、それから障害者の就労意欲の高まりということで、新規求職申込件数について触れています。それから、バブル崩壊以降の以下の件で、非正規労働者の関係について触れています。非正規労働者の労働者全体に占める割合、それからその非正規労働者の中での内訳、それから労働者が非正規雇用の就業形態を選んだ理由などについて、記述しています。
 6頁の終わりから3.労働力の需要面の変化です。ここでは、産業別に雇用者数を見た分析ということで、建設業や製造業における雇用者数の減、それからサービス業等における雇用者数の増などに触れています。7頁では、企業による人材育成について、企業の人材育成に対する考え方や、OJT、OFF-JT、従業員の自己啓発に対する支援といった側面で、企業が実施している割合などについて触れています。それから、個々の労働者の職業生活設計について、どのようにそれぞれ考えられているかなどについて記述しています。
 8頁をご覧ください。「第3部 職業能力開発の実施目標」です。ここでは、4つの実施目標を大きな課題として取り上げています。1は、成長が見込まれる分野・ものづくり分野における人材育成の推進です。ここでは、1つには我が国の経済社会が持続的な発展を続けるためには、介護・福祉等成長が見込まれる分野の発展を確実なものとしていくことが重要であり、これらの分野において必要とされる人材を確保できるよう、人材育成を戦略的に進めていることが必要であることを書いています。それから、ものづくりの分野について、ものづくり分野は基幹産業であり、国際競争力を有するものとして産業ニーズに即した人材育成を進めていく必要があるということを書いています。
 2は、非正規労働者等に対する雇用のセーフティネットとしての能力開発です。非正規労働者の増加、それから少子高齢化の進展といった中で、労働者一人一人の職業能力を向上させ、生産性を高めていくことが必要ではないかということです。赤字で書いて(P)としていますのは、現在当分科会において議論を継続中の求職者支援制度についての部分ですので、これはまた、その議論の進展に応じて記述を修正させていただくということで、本日はペンディングという形で整理させていただいています。
 9頁をご覧ください。ここでジョブ・カード制度について触れています。ジョブ・カード制度は、非正規雇用者等のキャリア・アップのための有効なツールとして活用が進んできたところ、今後、職業能力開発施策における基本的なツールとして、活用を図っていくことが必要ではないかというものです。
 3は、教育訓練と連携した職業能力の評価システムの整備です。背景として、成長分野を中心として、実践的な職業能力を備えた人材を育成するための環境整備が必要であること、それから職業能力形成の機会に恵まれない人の職業能力の開発を図ることが求められています。こうした状況を踏まえ、能力本位の労働市場を形成していくために、職業能力の評価システムの整備を図っていく必要があるということです。
 4は、我が国全体の職業能力開発のプロデュース機能(総合調整機能)の強化です。産業構造の変化など、構造的な変化が進む中で、我が国の訓練を進めていく中で、公的な能力開発の重要性が高まっている一方で、財政事情は厳しい状況です。このため、以下で国、地方公共団体、民間教育訓練機関等、多様な主体が役割分担をしながら、我が国全体として必要な職業訓練を着実に実施していくことが必要となっています。そのために、ビジョンの策定やインフラ整備を行っていきたいというものです。
 10頁からは、「第4部、職業能力開発の基本的施策」です。ここでは、大きく8本の柱です。1は、成長が見込まれる分野・ものづくり分野における人材育成の推進です。これは、(1)で成長が見込まれる分野、(2)でものづくり分野と分けています。(1)ですが、成長が見込まれる分野についての人材育成を戦略的に進めていく必要性、そしてそれを具体的に進めていくプロセスとして、こうした分野に必要となる人材に関するニーズなどを調査し、必要な基礎研究を行い、そして訓練カリキュラムなどを開発し、それがインフラとして活用できるように普及を図っていくと。さらに、開発した訓練カリキュラム等については、PDCAサイクルにより不断の見直しを行っていくということです。
 成長分野の職業訓練については、以下のくだりでは、これまでの委託訓練における成果などを踏まえ、民間教育訓練機関の活用を図っていくことが重要であると書いています。また、民間教育訓練機関等の以下の件ですが、これは昨年9月に発行しました新たな国際規格、非公式教育・訓練における学習サービスに係る国際規格、ISO29990の発行を踏まえ、訓練の質の保証等向上を図っていくことが必要ではないかというものです。
 10頁の下から11頁にかけまして、これは昨年、当分科会においてご議論いただきました指導員訓練について、ハイレベル訓練、あるいはスキルアップ訓練という形で進めていくことについて書いてあります。ここの具体的な内容については、後ほど出てまいります。11頁は、成長が見込まれる分野の職業訓練については、カリキュラムの開発などについて、大学や専門学校等との連携を深めていく必要があるのではないか。それから、最後のくだりでは、成長が見込まれる分野については、企業自らの人材育成が重要であり、これについてキャリア形成促進助成金等により、国が支援をしていくことが必要ではないかということです。その下の※の所では、新成長戦略においていくつかの分野について需要創造、雇用創造ということでの目標が掲げられています。これを付記しています。
 (2)は、ものづくり分野における職業訓練の推進です。ここでは、ものづくり分野の人材育成の重要性、その次には高レベルの指導員や高額な説備を必要とするものづくり分野の特性に鑑み、引き続き国自らが訓練を実施するなどの取組も必要ではないか、また、国と都道府県以下の件では、国と都道府県の役割分担について触れています。
 11頁の最後から12頁にかけまして、最先端の技術革新に対応しうる人材を育成するために、訓練カリキュラム等について不断の見直しが必要である、また、ものづくり分野の訓練についても、従来の分野のみならず、環境・エネルギー分野等の新しい分野の訓練を拡充させていくことが必要ではないかということです。同時に、ものづくりの訓練においては、ものづくりの基本となる技能を習得するための職業訓練も、引き続き重視していくというものです。
 「加えて」以下のくだりですが、職業能力開発大学校・短期大学校、ポリテクカレッジですが、ここと工科系大学や高等専門学校等との連携を強化していくことが必要ではないかというものです。最後に、グローバル化への対応です。グローバル化に対応できる人材育成の重要性について触れたあと、具体的な進め方は、企業による人材育成や、労働者個人による能力開発を国が支援していく形が、適切ではないかということで書いてあります。
 12頁の大きな2つ目の柱ですが、非正規労働者等に対する雇用のセーフティネットとしての能力開発の強化です。ここでは3つに分かれていますが、(1)は、雇用のセーフティネットとしての職業訓練の役割と機能強化です。従来の離職者訓練に加え、求職者支援制度の創設の必要性、それから国、中央と地方に設置された訓練協議会で訓練の計画を策定し、訓練が企業と地域のニーズにあったものとしていくことが必要であるということです。
 12頁から13頁にかけまして、訓練ニーズの把握と訓練カリキュラム等の見直しを行っていくことを書いています。13頁の(2)ですが、第2のセーフティネットの創設ということで、これは「求職者支援制度」の関係です。それから、(3)はジョブ・カード制度の普及促進です。ジョブ・カード制度については、最初のくだりにありますように、職業能力形成機会に恵まれない者へのツールとして始まったところ、有効なツールとして活用が進んできたと。そして、新成長戦略においても、平成32年までの目標として、「ジョブ・カード取得者300万人」と設定されているように、ジョブ・カードの活用場面を広げていくことが必要ではないかということです。
 このため、ジョブ・カードの対象訓練を拡大していく、それから第2のセーフティネットである求職者支援制度においても、ツールとして活用していくということです。14頁ですが、ジョブ・カードの普及促進についても、昨年の事業仕分け結果も踏まえ、見直しを行ったところですが、地域ジョブ・カード運営本部を中心として、普及推進を図っていくということです。
 14頁の3は、教育訓練と連携した職業能力の評価システムの整備です。ここでは、習得した職業能力を客観的に評価する「ものさし」としての評価制度の必要性、それから実践的な職業能力を備えた人材を育成していくための環境整備、職業能力形成機会に恵まれない人への職業能力開発及び向上といったことを背景にしまして、教育訓練と連携した職業能力の評価システムの整備が必要となっていることを記述しています。
 現在は以下の件では、職業能力評価基準について触れていまして、活用事例を参考にしながら普及・促進を図っていくことが必要ではないかということです。併せて以下のくだりでは、現在検討中の「実践キャリア・アップ戦略(キャリア段位制度)」の構築を進めていく必要があることについて、触れています。15頁をご覧ください。さらに以下の件では、技能検定制度、これが社会的ニーズにあったものとなるよう、職種の統廃合の推進、技能検定の試験基準の見直しなどを進めていくということです。
 4は、職業生涯を通じたキャリア形成支援の一層の推進です。ここでは、3つ挙げています。(1)は、個人の主体的な能力開発の支援ということで、個人の主体的な能力開発支援の重要性に触れたあとで、なかんずくキャリア・コンサルティングが重要になっていることから、職業生涯の節目においてキャリア・コンサルティングを受けることができる環境整備を図っていくと。そして、16頁に続いてまいりますが、そういったキャリア・コンサルティングを担うキャリア・コンサルタントの育成確保を進めていく必要性について、記述しています。
 (2)は、企業による労働者の能力開発の支援です。企業による労働者の能力開発支援、能力開発あるいはキャリア形成に対する支援について、公的にも支援していくことが必要である、さらに、企業内で実施困難な職業訓練などについては、公的な職業能力開発施設において、在職者訓練として実施することなどの必要性について述べています。(3)は、キャリア教育の推進です。各学校段階での計画的なキャリア教育の推進に関わり、キャリア・コンサルタント等の専門人材の養成・評価、これら人材による取組の活性化に取り組んでいくというものです。
 16頁の5は、技能の振興です。ここでは、技能の重要性について記述しており、17頁では若年者の技能離れがみられる中で、技能検定制度、技能競技大会等の取組を進めていくと。それから、ものづくり分野を中心とした熟練技能の重要性について、啓発をしていく、若年者の前段階にある児童・生徒が技能やものづくりに触れる機会の創出にも努めていく必要があるということです。
 6は、特別な支援を必要とする者に対する職業能力開発の推進です。ここでは、(1)から(5)までに分けています。(1)は、長期失業者に対する能力開発です。長期失業者については、スキルの向上、働く意欲の向上等が重要であり、求職者支援制度による新たな訓練の受講を促進したうえ、その効果の分析等を行い、有効な施策を講じていくことが必要ではないかというものです。
 (2)は、学卒未就職者の関係です。学卒未就職者については、さまざまな雇用対策が講じられているところですが、これら等を組み合わせて基礎的能力の向上を付与する訓練を、求職者支援制度による新たな訓練としての受講の促進として実施していくことが必要ではないかというものです。18頁です。(3)は、ニート等の若年者に対する能力開発です。ニート等の若年者に対しては、平成32年までの10年間の目標として「地域若者サポートステーション事業による就職等進路決定者数10万人」という目標が掲げられているところです。このため、地域若者サポートステーションを地域における拠点として相談などを行うほか、アウトリーチといったような手法で、積極的にアプローチしていくといった取組を含め、進めていくことが必要ではないかというものです。
 (4)は、母子家庭の母等に対する能力開発です。母子家庭の母等については、準備講習付き職業訓練と託児サービスの提供を組み合わせた支援が現在実施されているところですが、このような母子家庭の母等の特性に配慮した支援を引き続き実施していく必要があるということです。
 (5)は、障害者に対する能力開発です。障害者については、障害者の障害特性等に配慮し、専門的な訓練を行う、障害者職業能力開発校における訓練や、委託訓練の活用を進めていくことが必要であると考えています。また、一般の職業能力開発校においても、障害者を対象とした職業訓練コースを設け、あるいはバリアフリー化を進めていくことが必要であると考えています。そして、さらに以下の所ですが、障害者訓練にもデュアルシステムを導入していくことが必要であると考えています。
 19頁をご覧ください。7は、職業能力開発分野の国際協力の推進です。我が国の企業以下の件で、職業能力開発分野における国際協力についての考え方を述べています。以下で、具体的な取組を書いています。1つには、開発途上国への職業訓練指導員や専門家の派遣による協力、我が国の技能評価システムを相手国に移転を図っていく「技能評価システム移転促進事業」を推進していくこと。それから、国際機関等を通じた協力、また開発途上国の以下の件ですが、開発途上国の職業訓練指導員を我が国に受け入れ、訓練をしていくことも重要であると考えています。昨年7月以下のくだりですが、これは昨年7月に施行されました新たな入管法の下で技能実習制度を適切に運営していくことが必要であることについて、記述しています。
 20頁をご覧ください。8は、我が国全体の職業能力開発のプロデュース機能(総合調整機能)の強化です。(1)は、こうしたプロデュース機能(総合調整機能)の強化の必要性です。前段の所でこれまでも出てきた部分ですが、成長分野の人材育成、それからセーフティネットとしての訓練、ものづくり分野の人材育成といった形で、職業能力開発についてのニーズが高まっている状況があることを整理しています。
 OECDの報告書によると、以下のくだりでは、我が国のGDPに占める職業訓練等への公的支出の比率は、OECD諸国の平均よりも低くなっているという結果がありますが、これについてはさまざまな要因が考えられるところであり、1つには長期雇用制度の下で人材育成において企業が果たす役割が大きかったことがあるのではないかということを書いています。
 しかしながら、以下のくだりでは、企業の教育訓練投資が伸び悩んでいる中では、一方で先ほども申し上げましたように、人材育成、能力開発のニーズが高まっていると。これに対して、職業能力開発施策を充実していく必要があるのではないかということです。この際に考慮する事情として、一方で以下のくだりですが、我が国の財政事情が厳しいことを踏まえると、選択と集中を行い、職業訓練を効率的かつ効果的に行っていく必要があるのではないかということです。
 20頁から21頁にかけまして、こうしたことを踏まえまして、我が国全体の職業能力開発のビジョンを策定し、インフラ整備を行う。そのために、国がプロデュース機能(総合調整機能)を戦略的に強化していく必要があるのではないかということです。
 (2)が、そのプロデュース機能(総合調整機能)の1つ目の、職業能力開発のビジョン・訓練計画の策定です。ここでは、中期的なビジョンの策定、提示の必要性を書いていますが、この中期的なビジョンについてはご議論いただいています職業能力開発基本計画が、それに当たるものと考えています。また以下の件ですが、国、地方それぞれにおいて、関係者、関係機関のご参画をいただきまして、訓練のユーザーである労使等のニーズを踏まえた形で、毎年度の職業訓練の実施分野等が協議され、計画が策定されることが必要ではないかというものです。
 (3)は、職業訓練のインフラの構築について、5点に分けて整理をしています。イは、訓練カリキュラム・指導技法等の開発です。いちばん上の所で基本的な考え方を書いていまして、職業訓練の実施に必要不可欠な訓練カリキュラム等を広く利用できる政策資源として整備していく必要があるということです。22頁には、(1)で触れていますが、どのような形でニーズの把握を行い、それをカリキュラムとして開発し、あるいはそれをリバイスしていくかを書いています。さらに以下の件で、今後の重要となる部分として、キャリア・コンサルティング等の就職支援技法の開発等を挙げています。加えて以下の件で、政策資源として、訓練カリキュラム等が利用可能となるよう、普及・活用促進を図る必要性を書いています。
 ロは、職業訓練に係る情報の提供・品質の確保です。職業訓練受講者が、適切な職業訓練を選択することができるように、訓練情報の提供について充実していく必要性があることを書いています。なお以下の件ですが、これは新たな国際規格ISO29990の中には、訓練のサービスについての事項、それから訓練のマネージメントについての事項といったものが含まれています。この規格を踏まえまして、23頁では訓練の品質の確保と向上を図るためのガイドラインを策定し、その普及・促進を図っていくことが必要ではないかということです。
 ハは、職業訓練指導員等の育成・質の確保です。訓練で教える人材の確保の関係を書いています。ここでは、職業訓練指導員の育成のあり方について、当分科会でご議論いただきました内容を踏まえまして、ハイレベル訓練、スキルアップ訓練の方向性について整理、記述をしています。24頁は、キャリア・コンサルタントの育成について、キャリア・コンサルタントとして今後、特に必要となる知識などについて触れています。
 ニは、職業能力の評価システムの整備です。これについては、職業能力評価制度の整備の所でも触れていますが、「ものさし」としての評価制度が訓練を行っていくうえでも必要であるということで、そうしたインフラ整備を進めていく必要があると。具体的なものとして、「実践キャリア・アップ戦略」の構築、それから既存の施策であります職業能力評価基準や技能検定制度の活用について書いてあります。
 ホは、職業訓練の実施体制の整備です。最初に、基本的な考え方を書いていまして、職業訓練のさまざまな実施主体、雇用・能力開発機構、都道府県、民間教育訓練機関、企業等、こうした多様な主体によって、適切な役割分担がされ、全体として訓練が着実に実施されるようにしていくことが重要ではないかということです。
 24から25頁に続きますが、その中で国は、高度な施設等を要し、スケールメリットが必要となるものづくり分野における職業訓練や、雇用のセーフティネットの訓練を担っていく必要があるのではないか。それから、中小企業に対する支援としての在職者訓練については、国と都道府県で実施していくことが、引き続き重要であるということです。
 一方以下のくだりでは、国は民間教育訓練機関を活用した訓練を進める中で、民間教育訓練機関に対して、就職支援技法のノウハウの提供など、適切に支援をしていく必要があるというものです。
 その次には、民間教育訓練機関の活用に際しての、いわゆるインセンティブについて触れています。その次には、離職者訓練の委託訓練、これは平成23年度から基本的に都道府県に移管して、都道府県にお願いするという方針で進めていますが、その場合にはそれが円滑に進むよう、国が蓄積してきたノウハウを都道府県に提供するなどの措置を講じていく必要があるというものです。駆け足ですが、説明は以上です。

○今野分科会長 これまで議論してきたことを踏まえて作ってありますので、どこでも結構ですので、全体としてご意見、ご質問があったらお願いいたします。

○水町委員 意見というか印象も含めて2点あります。1つは、8頁以下に第3部「目標」というものがありまして、その中の第4部の中に具体的な数字などが出てきています。5カ年の基本計画というときに、5年経ったあと、その途中でもいいのですが、検証可能にするような努力をもう少し加えたほうがいいのではないか。基本計画というのは、政府の中でいろいろと立てられますが、必ずしもきちんと検証されていないことがこれまでも多かったような気がします。具体的に数字を見ると、新成長戦略の中で10年目標としていくらという数字は出てくるのですが、新成長戦略はこういう目標を10年で掲げていると書いてあるだけで、この基本計画の中でどう位置づけられているかがはっきりしませんし、もしそういう数字が出ていたとすれば、その中で位置づけられる5カ年の中で、ブレイクダウンするとこういう数字になって、これぐらいが達成できていないと10年の目標は達成できないのではないかというような視点から、具体的、客観的に、いろいろな点で検証可能なものにして、お題目だけを立てて、何となくこのように進めていきますという感じにしないほうがいいのではないかというのが、私の感想です。
 もう1つは少し具体的になりますが、12頁の「非正規労働者等に対する雇用のセーフティネットとしての能力開発の強化」というところです。いちばん最初の目標のところでは、「非正規労働者が増えてきて、その訓練が必要だ」と書かれていて、そこでは非正規労働者自身も、この基本計画の対象になっているような意図かなと思ったのですが、ここになってくると、離職者、求職者等という話になって、非正規労働者そのものが、例えば短時間、有期契約で働いている人、実際に働いている人が視野に入った計画になっているのか、それとも短時間労働者、有期契約労働者はまた別のところで、企業の中でどうするか、別の法律でやることなので、ここではそこから落ちてきた失業者になった人、求職者になった人、離職者を対象に教育訓練をするということをメインに置いているのか、そこがどうなのでしょうか。もし実際に非正規として働いている人も射程に入れた計画だとすれば、もう少しそこについて具体的にどうするのか、OJTも含めて、非正規労働者自体の訓練をどうするかということが、パート法改正等で重要な課題になっていますので、その点とのかかわりをどう考えるかという点が、もう少しわかりやすければいいかなと思いました。

○今野分科会長 いかがでしょうか。

○井上総務課長 まず、この職業能力開発基本計画で策定した計画の実施状況などを検証することについては、今回第9次計画の議論を始めていただく際にも、現行の第8次計画に盛り込まれた内容に対応して、この5年間で何を実施したかは整理して、当分科会にも資料として提示させていただきました。
 もう少し客観的に検証できるようにというご趣旨かと思いますが、職業能力開発基本計画の中に盛り込んでいる新成長戦略の雇用・人材戦略に関する数値については、新成長戦略の中で10年後の数値目標が工程表で設定されております。その意味では、客観的に検証できる部分については、取り入れているつもりでございます。
 ただ、一方でこの能力開発につきましては、例えば主要な部分である離職者訓練、求職者支援訓練について、5年間を見わたしてどの程度の量というようなことは、数字の性格上設定できるものではないというところもありますので、全面的に数字で目標を立てることは難しいと考えています。
 2点目のご指摘は、12頁に非正規労働者の対策が、(1)の雇用のセーフティネット、そこに赤字で書いています求職者支援制度との関係がどうかということですが、求職者支援制度については、現在議論いただいているところですが、雇用保険の被保険者になれなかった者、被保険者にはなったが受給資格を得られなかった者、受給が終了した者を対象としてということになりますので、非正規労働者もそこに当たれば、この求職者支援制度の対象になってくるということが1つございます。
 それから、非正規労働者にとっての対策ということですと、(3)のジョブ・カード制度で、これは入口でキャリア・コンサルティングを行った上、座学と企業における実習を組み合わせた訓練を行い、その評価をした上で、キャリア・アップを図っていくということですので、ジョブ・カード制度が非正規労働者のみを対象とした制度ではありませんが、非正規労働者のための施策としても有効に機能していると考えています。
 ですので、この9次計画全体の中で、非正規労働者の方についての施策が、どれとどれがあるという形の整理をしていないので、その点では見えにくくなっているところはありますが、対象となる施策としては、今、申し上げたようなものが対象になると考えております。

○水町委員 2点目については、ジョブ・カードがあれば、いま実際に3、4割働いている、就労している非正規労働者の教育訓練が、発展的に展開されていくようになると考えていらっしゃるのか、それとも使えるものは使うけれども、ジョブ・カードを使えるだけで非正規労働者の職業訓練が、この5年、10年でうまくいくと考えられないとすれば、またさらにそれに加えて、どのような職業訓練をしていくか、それは企業レベルでのアクションプランを作らせてやるとか、いろいろな施策があると思いますが、そのようなさらなる工夫については、ここは全く関知していなくて、それはまた別のところで議論をしながら、摺合せをしていけばいいという意図と理解してよろしいですか。

○井上総務課長 2つございまして、ジョブ・カード制度自体につきましても、13頁をご覧いただければと思うのですが、出発点では、ジョブ・カードの対象となる訓練というのが、事業主に雇用されて行う雇用型の訓練と委託訓練の、この2つが対象となっていたところです。昨年の事業仕分けの結果も踏まえて、このジョブ・カード制度をより有効な施策にしていくための見直しの一環としまして、雇用型訓練や委託型訓練のみが対象では施策としての限界もありますので、公共訓練や基金訓練あるいは今後のご議論にもよりますが、求職者支援訓練といったものについても、ジョブ・カード制度の対象訓練として、ジョブ・カードでカバーされる領域を広げていくという方向性を打ち出しています。
 もう1つは、ジョブ・カードはご案内のように平成20年度から始まったものですが、その後のさまざまな状況の変化もあり、今般求職者支援制度の創設が検討されているところでございます。求職者支援制度の対象については、先ほど申し上げたとおりでごさいますが、実質的には非正規労働者の方もかなりカバーされてくると思いますので、このジョブ・カード制度と求職者支援制度を主要な軸として、非正規労働者の能力開発を進めていくというような考え方でございます。

○水町委員 ジョブ・カードはツールなのでカードを持っているから中身が発展していくと安易に考えずに、それプラス実態的にどう促していくか、企業が普通の行動をするとすれば、短期の人たちに訓練をしないというときに、どうインセンティブを与えていくかというときに、カードを持っていたらインセンティブになるということでは不十分だと思うので、カードを持っていることは大切かもしれないし、インフラにはなるかもしれませんが、それプラスどうやっていくかという施策の視点も必要だということを申し上げたいと思います。

○今野分科会長 ほかにいかがですか。

○高橋委員 大変よくまとめていただいていると思います。いま企業は新興国市場を中心とする、グローバル市場に打って出るために、グローバル人材の確保・育成に血眼になって取り組んでいるところで、それに関して各委員からかなり議論がありました。今回のこの案では、そうしたところがないのかなと思います。
 企業独自でも、当然グローバル人材の確保・育成を進めていきますが、それを後押しするような施策、あるいはそうしたところに自ら取り組もうとする労働者に対する支援といったような視点も、盛り込んでいく必要があるのではないかと感じました。
 2点目です。気になる表現が何カ所か出てきますので、具体的に申し上げたいと思います。9頁の3番の「能力評価システムの整備」の下から3行目に、「企業内における処遇の適正化を実現するためには、客観的な評価の「ものさし」が必要である」という表現があります。それから、14頁の3に「労働者の技能と地位の向上を目的とし」の2行目に、「企業内での処遇に結びつけるためには、『ものさし』としての評価制度が必要である」という指摘があります。さらに、24頁のニの2行目に、「労働者の技能と地位の向上のためには、処遇の指標が必要不可欠」とありまして、24頁についてはこの意味が全くよくわからないのです。9頁、14頁では、企業内における処遇の改善のためには、いろいろなものが必要であることはわかりますが、基本的には労使で十分に話合いをしながら検討していくことで、必ず客観的な指標が企業内での処遇に必要だというのは、かなり一方的な主張のような気がしますので、ここは修文が必要なのではないかと思います。
 最後になりますが、これは極めてテクニカルで、個人の好みもありますので、そうしてくださいという意味ではありませんが、端的に表れているものだけを申し上げますと、19頁の7の「職業能力開発分野の国際協力の推進」の2行目に「また」、4段落目に「また」、6段落目にも「また」、最後の行に「また」とありまして、1頁の内に4つぐらい「また」があります。
 あと、3頁に第1部「総説」とありまして、「計画のねらい」というのがあります。3段落目に「さらに」、次にも「さらに」とあります。最初の「さらに」の真ん中に、「以上を踏まえると」とありまして、また「以上のような取組を」とあります。1頁の中に同種の言葉があるのは、計画としてはきれいな文章ではないという感じがします。お任せしますが、見直していただくことができればと思います。

○今野分科会長 最後の3点目については、読みにくいということですね。

○高橋委員 はい。

○今野分科会長 そのほかに気が付いたところがあったら、赤を付けて事務局に回していただいて、それで修文してもらえればと思います。そうすると、1点目と2点目ですが。

○高橋委員 意見なので結構です。

○今野分科会長 せっかくですから。

○高橋委員 では、処遇の指標というのは意味がよくわからないので、それはご説明いただければと思います。処遇の指標が不可欠とありますが、何の処遇の指標なのかがよくわからないのです。

○井上総務課長 まず1点目のグローバル化への対応、グローバル人材育成のところです。これはこれまで当分科会のご議論におきましても、ご意見がありました。12頁の「成長分野・ものづくり分野の人材育成」の中のものづくり分野の人材育成の件の最後のところに、「グローバル化が進展し」以下のくだりですが、ここでグローバル化に対応できる人材育成の必要性、重要性、それについてどのような形で進めていくかということで書いております。
 グローバル化に対応した人材については、そこに書いていますように、1つには長期的な取組が必要であろうということ、それから、相手国や業種によって、必要とされる知識が多様で、訓練として行うのに汎用性があるのだろうかというところがありまして、公的な訓練として、直接実施するというのには馴染まず、ここに書いていますような、企業が育成する場合には、キャリア形成助成金によって支援し、個人の能力開発として行われる場合には、教育訓練給付の活用という形で進めていくのが、適切なのではないかということで、このような整理をさせていただいております。
 2点目の9頁、14頁、24頁における評価制度と処遇の関係ということですが、ここはさまざまご議論はあろうかと思います。ただ、もともと技能検定などの従来からありました能力評価のシステム、施策におきましても、その1つの目的は労働者の技能のレベルを適切に評価することによって、それを企業による労働者の評価にも結びつけて、最終的に処遇の改善を図っていくということもありましたので、その意識があって、このような記述としております。
 もう1つは、現在検討されています実践キャリア・アップ戦略におきましても、処遇との関係が議論されていると認識しておりますので、そうしたことも踏まえて、9頁、13頁の記述をしております。
 24頁の部分につきましては、分科会におけるご議論を踏まえ、内容について整理をさせていただきたいと思います。

○今野分科会長 いまの点で、グローバル人材のところで気になったのですが、内容ではないのですが、これだと、ものづくりのグローバル人材と読めてしまうのです。場所的に。人材のグローバル化は、別にメーカーだけではなくて、いま第3次産業がどんどんグローバル化しているので、違う場所のほうがいいかなと思うのです。ご検討ください。

○井上総務課長 これは、これまで当分科会でご議論いただいてきたときに、私どもの資料の出し方の問題もあるのですが、かなり同じ内容が繰り返し出てくる、重複感があるというご指摘もありまして、できるだけこの計画の形に整理するときに重複感を避けたいということがありました。グローバル人材について書くのであれば、確かにものづくり分野だけではなくて、成長分野もそうなのですが、私どもが捉えておりますこれまでのご議論の内容からすると、特にものづくりの関係でグローバル化のご議論があったという受け止めをして、位置づけをここにしたということで、それ以上の意味はございません。成長分野のほうにも目出しするような形で書く方向でということであれば、そのように修正させていただきます。

○今野分科会長 成長分野に書いてしまうと、ものづくり分野で落ちてしまうわけですね。難しいですね。

○高橋委員 ものづくりだけとしないほうがいいのではないですか。

○今野分科会長 これは分野横断的な話なのですね。

○高橋委員 もともとはそうです。

○井上総務課長 次回、ご覧いただけるように整理いたしますが、成長分野のところにもグローバル化の関係を重複しないような形で、目出しのような形で書かせていただきたいと思います。

○新谷委員 今野先生からもご指摘いただいた12頁のグローバル人材の記述のブロックですが、私も(2)「ものづくり分野における職業訓練の推進」にあることに違和感があります。ここにあると、この論調で見れば、ものづくりの海外進出を後押しするようなグローバル人材と見えて仕方がないのです。グローバル人材は、いまはサービス、外食の辺りも、特にアジアの需要を取り込むということで求められている実態もありますので、(1)の「成長が見込まれる分野」に移したほうが、違和感がないのではないかと思っております。
 併せてですが、3頁の「総説」の読み方です。これを見れば第9次計画の概念なり哲学がわかるということで記載されているのだと思いますが、今回の人材開発の組立てというのは、国が従来からやっていたナショナルミニマムあるいはセーフティネットとしての、例えば離職者訓練、特別な支援が必要な方への人材育成といった、守りの人材育成という部分と、今回は成長が見込まれる分野の人材育成、いわゆる攻めの人材育成という組合せが、今回の特徴ではないかと私は自分自身で整理をしていたのですが、そういった意味でいくと、ここは混ざって書かれていて、どこにどのようなウエイトで、真ん中辺りにものづくりがきて、セーフティネットのうちの求職者支援法、評価の部分だけ、ポンポンと書かれていて、大きな流れが見えにくいと思っています。
 ですから、この「総説」の中で、例えば攻めの部分については、日本の成長と競争力を支えるための人材をどう育成するかとか、あるいは守りについては、従来の離職者訓練の維持を図りつつ、第2のセーフティネットを構築していくのだとか、そういった大きな流れがわかるような書き方にしていただいたら、わかりやすいのではないかというのが1点です。
 もう1つは、8頁に第3部で「実施目標」とあります。先ほど高橋委員もご指摘をされたように、1.のところに攻めの人材育成の部分が書かれていて、ここにいろいろと書かれているのですが、従来からこの分科会で申し上げておりましたように、例えば「グローバル人材」という言葉がこの中に入っていなくて、1の部分というのは、そのあとの第4部のリードに当たる部分を書いてきていると思うのです。ここが、成長が見込める分野とものづくりというところのリードだと思うのですが、グローバル人材とか、イノベーションを起こせるような高度人材をどうやってつくっていくのか、我が国の成長力と競争力を維持するため、発展させるための人材をどうつくるかというところが、ここのリードからは読み取れないと思っています。従来この分科会で論議をしてきたことだと思いますので、その辺も記述をいただいたらどうかと思います。
 そういった意味では、10頁の成長が見込まれる分野の記述についても、新成長戦略の2020年までの目標として「公共職業訓練の受講者の就職率:委託訓練65%」と矮小化されたような数字が出ていますが、ここは大きな基本施策の中で競争力をどうやって持たせるかといったときに、それは委託訓練だけではないのではないかと思っております。あとのプロデュース機能とも関連するのですが、これは国として、厚生労働省以外に経済産業省あるいは文部科学省、大学といったリソースを活用してどのように人材育成、国としての施策を誘導していくのかという大きな流れが読み取れなくて、従来ある施策としての委託訓練の就職率65%というのは、大きな第9次計画という5カ年計画の中では、違和感があると私は思いました。
 最後に、15、16頁です。ここに個人のキャリア形成と、企業の能力開発の支援というのがあって、労働者のキャリア形成といったときに、最初に個人の自己啓発なり、労働者自らが能力開発をすると書いてあって、順番も違和感があるところなのですが、新成長戦略の2020年までの目標として、16頁の(2)の最後の段落には自ら自己啓発を行っている労働者の比率が書いてあります。ここの中身というのは、企業による労働者の能力開発の支援なので、企業の能力開発が自己啓発の支援だけに見えてしまいますので、(2)の最後の段落は、少なくとも(1)に移しておかないと、何か企業の能力開発はすべてが自己啓発であるかのように読み取れてしまう可能性もありますので、その点を申し上げておきたいと思います。

○井上総務課長 いま新谷委員からご指摘のありましたナショナルミニマム、セーフティネットといった守りの能力開発あるいは成長分野の人材育成といった攻めの能力開発、今回の9次計画においては両方とも重要な柱であると考えておりまして、そうした攻めの能力開発に相当するところが、第4部の1の「成長分野・ものづくり分野の人材育成」です。守りの部分が2のセーフティネットのところということで、柱としてこのような柱立てをしているのは、そのような意識によるものでございます。
 ただ、ご指摘のように、総説のところでは総説という性格上、若干総花的な書き方になって、そこが見えにくいところはありますので、ご指摘を踏まえて内容を整理したいと思います。
 それから、8頁の職業能力開発の実施目標の1に、グローバル化が重要なので、グローバル人材を入れるべきではないかというご指摘もございました。これは、今日一通りご議論いただいたあとで、全体を整理する中で検討させていただきたいと思います。
 イノベーションの人材ということになりますと、これが公的な訓練というところで行われるところなのかどうか、私どもも見極め難いところがありますので、できれば、ほかの委員のご意見もいただければと思います。
 それから、10頁で、委託訓練の率が65%とあります。この数字自体は新成長戦略の「雇用・人材戦略」の工程表の目標で達成していく必要があると考えておりますので、書いております。
 大学等における人材育成についても積極的に書いていくべきではないかという点につきましては、第4部の「成長が見込まれる分野の人材育成の推進」の11頁の「加えて」以下のくだりで、大学、専門学校等との連携を深めていく、12頁の中程の「加えて、生産現場における即戦力となる」以下の件で、ものづくり分野においてもポリテクカレッジと工科系大学、高等専門学校等との連携を深めた人材育成をするということで触れてはおります。ここの部分について、もう少し書けるところがあれば書くという方向で考えたいと思います。
 それから、15、16頁です。16頁の(2)の最後の件で、自己啓発を行っている労働者の割合は正社員70%、非正社員は50%ということで、正社員と非正社員に分けた形で目標設定がされておりますので、(2)に入れたということがありますが、ご指摘を踏まえて(1)に移したいと思います。

○大久保委員 基本的な確認をします。7頁の上から6行目に企業の話が書いてありますが、どのように認識、理解をしておいたらいいかの確認です。企業の労働費用に占める教育訓練費の割合は伸び悩みをしている傾向にあるという話は、ここともう1回あとで出てきます。資料3の17頁に「教育訓練費割合の推移」というデータが付けてあります。バブルの崩壊で一旦落ち込んだものの回復傾向が見られるという大企業の状態だと思います。
 企業の労働費用に占める教育訓練費の割合が伸び悩んでいるので、公共職業訓練でそこをカバーしていくのだという話という流れになっている感じがするのですが、どちらかというと大企業の教育訓練費割合の伸び悩みという話ではなくて、中小企業についてどのようなサポートをするのかという話とか、非正規についての教育体制が整っていない中で、どのように企業内外で整えていくのかという流れにしたほうが、構造的にはいいのではないかという気がします。これは事務局に聞くのか、本来は使用者側の皆さんの意見も聞きたい感じもあるのですが、そこは確認したいと思います。
 2つ目は、4の職業生涯を通じた、職業生涯という言葉はもともとずっと使っている言葉でしたか、読みながら口慣れしなかったのですが、4のパートのところです。

○今野分科会長 何頁ですか。

○大久保委員 15頁の4です。最初は、もともとの大前提としては、少子高齢化に対応して、それによって特に高齢者の就業率も高めていかなければいけないという流れの中で、全体としての期間が長くなっていると。そうすると、若年から高齢に至るまで、何度も訓練の機会は出てくるわけで、その全体を推進していこうという話なのかなと思ったのですが、あまり「高齢」という言葉も出てきませんし、中身も、どこから通じてここにきていのかがいまいちよくわからないのです。前文の4の下の辺りは、客観的な現状認識からうまくつないだような文章を付けたほうが、わかりやすいのではないかと思ったのが2点目です。
 3番目は、19頁の7です。これは全体の資料1のサマリーの見出しにもありますが、開発途上国における日本型技能評価システム構築の支援とあります。これは質問ですが、「日本型技能評価システム」というものの中身がよくわからなかったのですが、技能検定を途上国へ移転を促進しているという話なら、そのように書いたほうがわかりやすいと思うのですが、何か別の意味を含んで、日本型技能評価システムの構築と書いているのであれば、そこは質問としてお聞きしたいと思います。

○今野分科会長 いま3点ありましたが、2点目については表現の問題を検討してもらえばいいですね。

○大久保委員 はい。

○今野分科会長 1点目と3点目についてよろしくお願いします。

○井上総務課長 7頁をはじめとしまして、何カ所か出てきます教育訓練費の伸び悩みという部分です。お手元の資料3の17頁、これは大企業、中小企業に分けた労働費用に占める教育訓練費割合の推移です。それから、18頁です。これは企業がOFF-JTあるいは労働者の自己啓発支援に支出した1人当たりの費用です。
 これは「教育訓練費の伸び悩み」という表現をしましたのは、少なくとも全体として増えているとは言えないことが1つございます。それから、産業構造の転換、国際化への対応等々ある中で、企業としても人材育成の必要性は増しているだろうという中で、こういう数字の推移ということは、伸び悩んでいるという表現が適切なのではないかということで、このような表現にいたしております。ただ、この部分につきましては、労使を含め、いろいろとご意見があろうかと思いますので、ご意見を伺った上で整理したいと考えております。
 それから、そうした企業における教育訓練費が伸び悩みしている状況にあっては、公的な訓練が必要となるロジックではないかという部分につきましては、公的な訓練というよりは、8のプロデュース機能(総合調整機能)の部分にも出てまいりますが、訓練についても、企業のほか国、都道府県、民間教育訓練機関等々、さまざまな訓練の実施主体があるわけですので、これら多様な訓練実施主体が適切に役割分担をしながら、国全体として必要になってくる訓練の質及び量の両面にわたる訓練を確保していくというロジックでございます。
 19頁の技能評価システムの移転促進事業の関係です。これは実は現在も、こうした技能評価システム移転促進事業という名称で、予算、施策が立っておりまして、それを引用したということです。
 内容については、ご指摘のとおり評価システム、日本の評価システム、技能検定を移転促進していくというものです。

○中村委員 関連でよろしいでしょうか。

○今野分科会長 どうぞ。

○中村委員 先ほど伸び悩みの話がありましたが、9頁の4の2行目に、「企業による教育訓練に対する投資の伸び悩み」という表現をされていますが、7頁、16頁、20頁は同じ表現になっています。果たして、この「伸び悩み」というのは適正な表現なのかどうかという疑問を持っています。
 その裏づけは、先ほど井上課長が説明されたように、資料3の17頁にあります。これを見ると確かに近年は伸び悩みに見えるかもしれませんが、このデータは2005年までのデータなのです。直近のデータは、次の18頁にある平成21年度職業能力開発基本調査で示されています。これを見ると、伸び悩みどころではなくて、半減しているわけです。
 したがって、私の意見は、厚生労働省の報道発表資料でも減少という評価をしているわけですので、企業による教育訓練への投資については、率直に「減少している」という表現が適切なのではないかと思いますので、意見として申し上げておきます。

○大野委員 大企業の表が17頁にあります。企業の教育投資というのは、景気の繁閑にものすごく左右される部分があって、それは私たちの力が足りないからということもあるのですが、このレポートの対象とする期間が、これからの5年間ということで考えていきますと、平成23年からの5年間と言いますと、おそらく企業はある程度一時的な厳しい状態から、少しずつリカバリーしていくだろうと。そうすると、基調としてはグローバル化のための教育投資をかなりやっていくような時代がくるのではないかという気はしております。
 大久保先生がおっしゃるように、比較的小規模の企業がどのような形の投資をやっているかというのは、ちょっとわかり難いところがありますけれども、おそらくグローバル化を指向していく企業というのは、それをやらないとグローバル競争に負けてしまうことになりますので、当然これはやらなければいけない必要投資という形で位置づけていくのではないかという気がしています。少し分かれていくのかもしれないという気がします。

○今野分科会長 お2人の共通しているところは、増やさなければいけないということについては共通しています。その種の表現にしておけばいいのですよね。大企業と中小企業に差があることについては、ご異論はないのです。減っているから増やすというのではなくて、増やす必要があるから増やすというような論理にしておけば、お互いに問題はないと。井上さん、言っている意味はわかっていただけましたか。文脈は少し変えなければいけませんが。

○井上総務課長 工夫いたします。

○今野分科会長 ほかにいかがですか。

○上原委員 このA3の資料1は、基本計画を作ったときに頭に付表のように付けるのでしょうか。それが1つです。
 それから、副題で「成長が見込まれる分野への人材育成と雇用のセーフティネットの強化」ということで絞られていて、よくわかるのですが、成長が見込まれる分野ということで、例えば参考資料の29頁に新成長戦略の話が出ていて、右下に観光立国、とか、地域活性化戦略とあって、農業の話なども出てくるわけですが、例えばTPPなど現政権は指向しているようですが、そうすると農業も成長というより、産業の競争力を上げていくような局面が必要になってくると思うのですが、そういう農業者などは、ここで言っている能力開発の対象になるのかどうか。
 それから、同じ成長戦略で先ほどから出ているグローバル人材との関連ですが、(3)に「アジア経済戦略」とあります。要するに、フロンティアの部分を元気づけようというようなことだと思います。テレビなどでも、日本は為替環境とか置かれている状況からいって、伸びているのはアジアですから、国内での雇用がなかなか伸びないのではないかという意見が多々出ていました。そうすると、アジアに打って出るような人材、ものづくりだけではなくサービス分野も含めてですが、そういうのはここで言っている国が考える、先ほども創造的なものが出ていましたが、企業を支えるようなものはたぶん入らないのだろうと思うのですが、追い出すというと語弊がありますが、もう少しうまく雇用するほかの国へ、日本がないわけだから、もっとある国へ移動していくような。成長戦略の流れでいうと、第3の開国ではないけれども、そういう視点の施策も、この5年の中では要るのかなという気がするのです。
 もう1つは、せっかく作ったものを、厚生労働省としてはこういう計画に則ってやるのだということを示すわけですが、対象者は誰なのか。例えばハローワークの人であったり、能開機構の人であったりということだと思うのですが、そういう人を集めて説明会のようなことをやったほうが、せっかく考えていることが落ちてくるのではないか。
 冒頭に事業評価の話が出ていましたが、そういうことをやっていくことが、実務的な面では理解されて、なるほどそういうことを考えているのかと。ただ発表したから読めというよりはいいのではないか。ものづくり白書というのは、補助金を使って勉強会をやっていますが、あのような形があれば、もう少し理解が深まって、特にこれから展開していく地方などで議論が深まるのではないかと感じました。

○井上総務課長 資料1は計画そのものには入ってきませんが、計画の策定を発表する際に、計画のコンセプトを端的に示す資料として使用したいと考えております。
 いまご指摘のありました農業の訓練ですが、現状で申しますと、公共の職業能力開発施設ではほとんど行われていなかったのではないかと記憶しています。ただ、いま実施されている基金訓練では、いくつか例がございますので、これはどちらで実施するのが適当かというのを見ながら、必要な支援を行っていきたいと考えております。それから、新成長戦略の中の観光地域戦略の中で、地域戦略の中に農業の活性化が含まれていることを付言させていただきます。
 雇用があるところに打って出ていく。これは難しいテーマですので、この能開基本計画の中でどのように触れられるか少し検討させていただきたいと思います。
 最後に、貴重なご示唆をいただきました。この計画を策定し、広く国民一般にということもあるのですが、特に能力開発の関係者、雇用・能力開発機構の職員もそうですし、都道府県は能開基本計画と時期を同じくして、平成23年度からの5カ年の、都道府県ごとの職業能力開発計画を作ることにもなっておりますので、そうした都道府県の担当者なども含めて、委員からいまご示唆のあった勉強会も含めて、この計画の意図するところがきちんと担当者に理解されるようにしていきたいと考えております。

○井上委員 11頁の(2)「ものづくり分野における職業訓練の推進」の3段落目に、国と都道府県の役割分担についての記載があります。訓練施設ですが、大都市圏では10校以上あるような県がある一方、1校しか設置されていない県もあるかと思います。そうやって見ると、職業訓練のインフラは県によって規模がまちまちであるという実態があるかと思います。
 地域の訓練ニーズに応じた規模であるというべきであるのは当然だと思いますが、訓練を受講するという機会に地域格差があってはいけないのではないかと思いますので、そういう意味では、職業訓練のインフラについて小規模な県に対する国の支援、セーフティネットが必要であるということも記述するべきではないかと思います。

○井上総務課長 いま井上委員からご指摘がありましたように、たしか都道府県別で見ると、いちばん能力開発機構が多いのが東京都で、12校あったかと思います。その一方で、1校ないしは2校という県も少なからず存在しております。訓練機会の格差が生じないようにということだと思いますが、それは能力開発校をどの程度の数を設定するかということについては、都道府県の職業能力開発に取り組む方針なり、財政基盤という問題が一方にあるわけですが、国としてそういった訓練機会の格差が生じないように取り組んでおります。例えば雇用・能力開発機構が離職者訓練やものづくり訓練を行うポリテクセンターについては、基本的に各県に1所ずつ設置しておりますし、あと公共の職業能力開発施設が乏しい地域につきましては、従来においては離職者訓練の委託訓練、地元の民間教育訓練機関を活用した形で、訓練機会を広げるといったことも行ってきました。
 また、求職者支援制度においても、民間教育訓練機関を活用しながら、訓練機会を広げていくというようなことで、対処していきたいと考えております。

○井上委員 訓練機会とか地域格差については、私も随分この間発言をさせていただいてきましたが、民間教育機関と公共機関の差、どうしても営利目的というところもあったりしますから、そこはここに書き込めないにしても、どこかで反映していただけるようにご努力をいただければと思います。

○今野分科会長 工夫してみてくださいよ。

○井上総務課長 国全体、どこの地域でも、訓練が受けられるようにしていくことが重要だという文脈で、整理させていただきたいと思います。

○黒澤委員 2点ございます。14頁の3ですが、この能力評価システムの有益性と言いますか目的について、1つ重要な部分が抜けているかと思っております。それは何かというと、能力評価システムが整備されると、労働者が自らあるいは企業の支援を受けながら、職業能力を高めるインセンティブを高めるという部分も、入れたほうがよろしいのではないかというのが1点です。
 もう1点は、16頁の企業による労働者の能力開発の支援の(2)の部分です。この節以外のところではいくつか散りばめられてはいるのですが、少なくともこの節においては「企業内で実施困難な職業訓練や、指導的人材の育成については」ということで、在職者訓練の位置づけがなされています。この「実施困難」ということの意味ですが、これは大規模設備を必要とするというような意味だけにも取れてしまうのですが、実際は中小企業というのは特に資金制約、ノウハウの情報の制約があって、それをサポートすることも、公的な在職者訓練の非常に重要な意義でもありますし、先ほどからお話に挙がっている非正規社員は、通常であれば企業のコスト負担で能力開発をするというのが非常にされにくい人々であって、そういう方たちに対する在職者訓練の支援というのも重要であり、そういう意味においては、既存のジョブ・カード制度の中の雇用型訓練のような制度も存在しているということを、ここに明記することもよろしいのではないか。
 それに関連してもう1つ付け加えさせていただきますと、ジョブ・カード制度というのは最近特に能力評価の側面が、非常に強調される傾向があるのですが、実は企業内の非正規社員の能力開発、能力向上への寄与という側面もありますので、その辺りの側面をより明確に記していただければ、もっとわかりやすくなるのではと思いました。

○井上総務課長 3点ご指摘いただきました。14頁の3ですが、能力評価システムの整備の効果として、労働者のインセンティブを高めるという効果、評価されることによってインセンティブが高まるという効果については、記述させていただきたいと思います。
 16頁の(2)の「企業内で実施困難な職業訓練」というのは、おっしゃられるように施設の大規模な設備を必要とするといった面のみではなく、教える人材、教えるノウハウ、さらには資金的な問題といったことがあることをわかるようにというご指摘かと思います。それについても、そのような趣旨で整理させていただきたいと思います。
 また、ジョブ・カード制度のところでもご指摘がございましたが、企業内において非正規雇用に就いている方がキャリア・アップする、それはジョブ・カード制度の雇用型訓練に対する支援などで後押ししていくという点についても、整理して記述させていただきたいと思います。

○浅井委員 投資対効果ということを考えて、ずっと悩ましく読んでいました。20頁の下のほうにいくと、「我が国の財政状況が厳しいことを踏まえると、効率的かつ効果的に行う必要がある」と控えめに記されているわけですが、人材育成、教育訓練をする以上は、それが結果として国の経済成長、雇用の創出、拡大に結び付かなければ、意味がないわけです。また、訓練をした方が、結果としてすぐに辞めてしまったら、これも効率的かつ効果的かどうかというと、非常に悩ましい部分があるわけです。
 そういった点から考えていきますと、例えばいま成長が見込まれる分野、介護、福祉、医療、子育てといった面において、必死になって国が人を育てても、例えば現場が苦しいから辞めてしまうということがある。こういったことを考えると、成長が見込まれる分野とものづくり分野を独立させて、別個のような述べ方がしてあるのですが、もしせっかく介護や福祉の分野で人を育てても、工場であれば当たり前の、例えば何?s以上は持ち上げてはいけない、これ以上の負担を体にかけてはいけないというレベルですら、非常に肉体的にきついということがあれば、まさにものづくりの技術を使いながら、ロボット等の支援を受けながら、介護、福祉に従事する人が楽になるような形で、仕事を続けていただける、そしてこの職業訓練を受けた結果が、非常に長く活かされて、結果として雇用が拡大し、経済成長に結び付くという形で、つながっていく必要があるのではないかと思います。
 また、ものづくりのところにおいても、企業が教育訓練を行うときも、そして国が行うにしても、結果としてそれで国が衰退したというのであれば、企業の業績が悪くなるだけであったというのであれば、これは少し疑問が残るわけで、例えばいまよく言われる例が、水ビジネス、原子力発電、鉄道等のインフラシステムの輸出がいい例です。単に「ものづくり」と独立させて、成長分野、システムと考えてしまうと、例えば水ビジネスを当てれば、儲からない技術に特化した1兆円のところで人を育てているだけではなくて、トータル100兆円のほうで、システムとしていかに儲けるか、国が成長できるかということを考えていかなければならないわけで、そうなると従来とは違った形で、成長分野とものづくりの間の関係を見ていかなければいけないのではないか。技術を活かし、そして、それがシステムとして高い利益を生むような形で、活かされるという形でのグローバル人材を育成していかなければいけないのではないかと思うのですが、1の成長分野とものづくり分野が切り離されているということは、何か意味があるのか、どういうことなのでしょうか。
○井上総務課長 意図的に切り離したというよりは、分けて書かないと重複する部分などが出てきて、わかりにくいのではないかということで、このような整理をしたということです。

○大久保委員 職業能力開発事業というのは、一般の国民にもマスコミにも、きちんと理解されていないと常々思っておりました。だから提案なのですが、8に書いてある「我が国全体の職業能力開発のプロデュース機能」の中に、地方で提供している職業能力開発も含めて、全体としての訓練サービスの全体像を、国民にわかりやすく伝える、理解を促進するという役割も、プロデュース機能の役割の1つとして書いたほうがいいのではないかというのが1点です。
 今回、この第9次の職業能力開発基本計画をまとめて、発表するわけですが、この職業能力開発基本計画を発表しても、マスコミも大変地味な扱いで、この基本的計画を出すというのは、そういうチャンスでもありますので、官報に掲載されるタイミングの中で、例えば厚生労働省の発表するホームページの中で、例えばここにいる委員の人たちがその解説点を書くとか、少し基本計画についても、もう少し一般の人たちに認知されるような、従来にない工夫をお考えになったほうがいいのではないかと思います。

○井上総務課長 いま2点ご意見を頂戴いたしました。1点目は、能力開発の関係が国民一般に知られていない。確かにそれはそのとおりでございまして、今回プロデュース機能ということで書いている中に、能力開発の各種施策や制度について、国民の理解を深めるための取組を加えさせていただきたいと思います。
 それから、能開基本計画の発表のときにも、いまのご指摘を踏まえまして、その中身がより広い範囲に理解されるように工夫をしていきたいと思います。

○澤田委員 私は前任の滝澤から代わりまして、なかなか日程が合わずに出席できませんで、今日初めてこの場に出席させていただきました。これまでの意見のやり取りを承知しているわけではありませんが、いま審議している文書がこの分科会のアウトプットになる文書という視点からいって、パッと見まして、3カ所ほど気になったところがありますので、指摘させていただきます。
 1点目は3頁です。総説の計画のねらいの2段落目の「また」のところで、中国や東南アジア諸国の目覚しい成長が」で始まっているところなのですが、最後に「国内企業にとっては国際競争圧力の増加を意味している」という表現なのですが、ほかに出てきますが、国際競争の激化を引き起こしているような状況であり、圧力を引き起こしているようなレベルではないと思います。ほかのところは全部国際競争の激化という表現になっていますので、そういうものを引き起こしているという表現の方が、現状に近いのかと思いました。
 もう1点は、9頁の3項目の上から3行目で、「若者や非正規労働者など職業能力形成の機会に恵まれない者」という書き出しなのですが、非正規労働者がそういう機会が少ないというのは、ほかのところにも書いてありますが、ここで若者と一括りで言ってしまいますと、正規従業員で働いている方もいますので、就労機会に恵まれていないとか、未就業のとか、そういう言葉を加えないとまずいのではないかと思いました。これはもう1カ所あったかと思います。
 それと、17頁の6項目の(1)から(5)までの5つですが、これらを要約して最初の4行に書いてあるのだと思いますが、誤解をされないかなと感じました。「長期失業者、学卒未就業者、ニート等の若年者、母子家庭の母等は」が主語になって、そのあと「知識・技能・経験の不足やコミュニケーション能力等の基礎的能力の不足、技能のミスマッチ等により」となっていますが、あとの文章を見ればわかるのですが、こういう層の方が、こういう要素を全部持っていると誤解されないかなということを感じましたので、ここは表現を考えていただきたいと思います。あとで細かく解説していますので、その理由を述べずに、就業が困難だという整理にしたほうが、要約して誤解を招くなら、そのほうがいいかなと感じました。すでに議論されているかもしれませんが、反映していただければと思います。

○井上総務課長 まず3頁の国際競争圧力の増加ですが、ここはこの文脈の中では、ほかの部分の国際競争の激化というよりは、国際競争力の圧力の増加の表現のほうが馴染むのではないかということで、このようにしておりますが、少し検討させていただきたいと思います。
 9頁の3の3行目ですが、若者とそのまま使っているのが誤解を招くのではないかということについては、表現を工夫したいと思います。
 17頁の6の柱書きの部分ですが、これは意図としては、長期失業者、学卒未就職者等々、それぞれの類型に応じて、知識・経験の不足・技能のミスマッチと結び付く形で考えていまして、例えば、長期失業者にコミュニケーション能力の基礎能力の不足が結び付くという意図で書いたわけではありませんが、確かにおっしゃられるように、全部がクロスするようにも見えますので、ここは表現を整理させていただきたいと思います。

○大野委員 10頁の「成長が見込まれる分野」のところですが、国内で作り出されていく仕事と申しますか、教育されていく人たちの個々の分野だと思うのですが、新しいところでやっていく人たちにとって、仕事としての魅力というのは何かということが、大事なのではないかと思います。仕事として深み、高みが出てくること、それに伴って報酬が上がっていくということが、仕事の設計としては大事なのではないかと思います。
 そういった意味で、評価システムの整備ということも言われておりますが、要望になるかもしれませんが、そういう新しくつくられる仕事だとか、こういった新しい分野の介護・福祉、子育てといったところの仕事の設計というか、そういったものが、あの仕事に就けばいい人生が送れるかもしれないと思うような、職務設計のようなものが必要なのではないかと気がします。
 それと、ここに観光というのがあるのですが、魅力ある仕事という意味では、あとにも「食・観光」という表現が15頁にありますから、意識されて書いているのだと思いますが、観光の中に日本の伝統的な料理だとか、ああいったものが大きなファクターになると思うので、そういったものの担い手をつくっていくことは、観光を拡大させていくには、大変大事なことなのだろうと思うのです。同時にそれは日本文化の継承、発展にもつながっていくことなのだろうという気がしております。この成長が見込まれる分野という形の中でもいいのかもしれませんが、文化の担い手みたいなものも積極的につくっていくのだという視点も、大いに入りうるのではないかという気がしています。意見として申し上げます。

○井上総務課長 ご意見を踏まえて検討させていただきたいと思います。

○今野分科会長 個人的には、前者は大変重要かなと思ってお聞きしておきました。そろそろ時間なので閉めたいかと思っています。今日はこれで終わりにさせていただきます。次回以降の日程については、また事務局から連絡をしていただきます。本日の署名ですが、労働側委員は高倉委員、使用者側委員は荒委員でお願いをいたします。ありがとうございました。


(了)

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